←前へ  次へ→    『四恩抄』
(★264n)
 種々の宝蔵有りとは、諸仏菩薩の万行・万善・諸波羅蜜の功徳妙法に納まるに譬ふ。大身の衆生所居の住処とは、仏菩薩大智慧あるが故に大身衆生と名づく。大身・大心・大荘厳・大調伏・大説法・大勢・大神通・大慈・大悲おのづから法華経より生ずるが故なり。死屍を宿めずとは、永く謗法一闡提を離るゝが故なり。不増不滅とは、法華の意は一切衆生の仏性同一性なるが故なり。
  蔓草漬たる桶瓶の中の鹹は、大海の鹹に随って満干ぬ。禁獄を被る法華の持者は桶瓶の中の鹹の如く、火宅を出で給へる釈迦如来は大海の鹹の如し。法華の持者を禁むるは釈迦如来を禁むるなり。梵釈四天も如何驚き給はざらん。十羅刹女の頭破七分の誓ひ、此の時に非ずんば何の時か果し給ふべき。頻婆娑羅王を禁獄せし阿闍世、早く現身に大悪瘡を感得しき。法華の持者を禁獄する人、何ぞ現身に悪瘡を感ぜざらんや。
                               日蓮花押
 
平成新編御書 ―264n―