←前へ 次へ→ 『後五百歳合文』
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故に後五百歳遠沾妙道と云ふ」已上決文 守護章上の下に云はく「当今の人は機皆転変して都て小乗の機無し。正像稍過ぎ已はって末法太だ近きに有り。法華一乗の機、今正しく是其の時なり。何を以てか知ることを得ん。安楽行品に云はく、末世法滅の時」と。又云はく「小乗権教の禅定堅固已に過ぎぬ」文。経の第五に云はく 安楽行品、文殊師利菩薩を対揚す 「又文殊師利、如来の滅後末法の中に於て是の経を説かんと欲せば応に安楽行に住すべし」 口安楽行の処。 又云はく「文殊師利菩薩摩訶薩後の末世の法滅せんと欲する時に於て」 意安楽行の処。 又云はく「又文殊師利菩薩摩訶薩、後の末世の法滅せんと欲する時に於て、法華経を受持すること有らん者」 誓願安楽行の処。 経の第六に云はく 分別功徳品の滅後五品の中の第二品の下 「悪世末法の時、能く是の経を持たん者は、則ち為れ已に上の如く、諸の供養を具足するなり」と。経の第八に云はく 普賢菩薩勧発品の成就四法の普賢菩薩の誓願 「如来の滅後に於て閻浮提の内に広く流布せしめて断絶せざらしめん」云云。瑜伽論に云はく 弥勒菩薩無著菩薩の請に趣きて云はく 「東方に小国有り、其の中に唯大乗の種姓のみ有り」文。法華翻経後記に云はく「予昔天竺国に在りし時遍く五竺に遊びて大乗を尋討し、大師須利耶蘇摩に従ひて理味を餐稟し、慇懃に梵本を付嘱して言はく、仏日西に入りて遺耀将に東北に及ばんとす。茲の典東北の国に有縁なり、汝慎みて伝弘せよ」文。天竺別集に云はく 遵式の記、智礼の弟子、妙楽第八代の弟子 「始めは西より伝ふ、猶月の生ずるがごとし。今復東より返る、猶日の昇るがごとし。素影円暉終に我が土に環回するなり」 此の言、唐土へ三河入道の渡せるを見て書けるなり。 秀句の下に云はく 上中下三巻、伝教大師の御釈、嵯峨天皇の御宇弘仁十二年辛丑に之を作る 「爾の時に仏復薬王菩薩摩訶薩に告げたまはく、我が所説の経典無量千万億にして、已に説き今説き当に説かん。而も其の中に於て此の法華経最も為れ難信難解なり。薬王、此の経は是諸仏秘要の蔵なり。分布して妄りに人に授与すべからず。諸仏世尊の守護したまふ所なり。昔より已来未だ曽て顕説せず。而も此の経は如来の現在にすら猶怨嫉多し。況んや滅度の後をや 已上経文。 当に知るべし、已説の四時の経、今説の無量義経、当説の涅槃経は易信易解なり、随他意の故に。此の法華経は最も為れ難信難解なり、随自意の故に。随自意の説は随他意に勝る。但し無量義経の随他意とは、
平成新編御書 ―256n―