←前へ  次へ→    『十法界明因果抄』
(★205n)後
 
 0029 十法界明因果抄   (文応元年四月二一日  三九歳)
                   沙門 日蓮撰
 
  八十華厳経六十九に云はく「普賢道に入ることを得て、十法界を了知す」と。法華経第六に云はく「地獄声、畜生声、餓鬼声、阿修羅声、比丘声・比丘尼声 人道、天声 天道、 声聞声、辟支仏声、菩薩声、仏声」 已上十法界の名目なり。
  第一に地獄界とは、観仏三昧経に云はく「五逆罪を造り、因果を撥無し、大乗を誹謗し、四重禁を犯し、虚しく信施を食するの者此の中に堕す」 阿鼻地獄なり。 正法念経に云はく「殺・盗・淫欲・飲酒・妄語の者此の中に堕す」 大叫喚地獄なり。 正法念経に云はく「昔酒を以て人に与へて酔はしめ、已はって調戯して之を翫び、彼をして羞恥せしむるの者此の中に堕す」叫喚地獄なり。 正法念経に云はく「殺生・偸盗・邪淫の者此の中に堕す」 衆合地獄なり。 涅槃経に云はく「殺に三種有り、謂はく下中上なり○下とは蟻子乃至一切の畜生なり、乃至下殺の因縁を以て地獄に堕し、乃至具に下の苦を受く」文。
 
 
平成新編御書 ―205n―