←前へ 次へ→ 『災難対治抄』
(★195n)
問うて曰く、其の証拠如何。答へて曰く、法然上人所造等の選択集等是なり。今其の文を出だして上の経文に合はせ其の失を露顕せしめん。若し対治を加へば国土を安穏ならしむべきか。選択集に云はく「道綽禅師聖道・浄土二門を立て聖道を捨てゝ正しく浄土に帰するの文○初めに聖道門とは之に就いて二有り。一には大乗、二には小乗なり。大乗の中に就いて顕密・権実等の不同有りと雖も今此の集の意は唯顕大及び権大を存す。故に歴劫迂回の行に当たる。之に准じて之を思ふに、応に密大及び実大を存すべし。然れば則ち今の真言・仏心・天台・華厳・三論・法相・地論・摂論・此等の八家の意正しく此に在るなり○曇鸞法師の往生論の注に云はく「謹んで竜樹菩薩の十住毘婆沙を案ずるに云はく、菩薩阿毘跋致を求むるに二種の道有り。一には難行道、二には易行道なり○此の中に難行道とは即ち是聖道門なり。易行道とは即ち是浄土門なり○浄土宗の学者先づ須く此の旨を知るべし。
平成新編御書 ―195n―