←前へ  次へ→    『爾前得道有無御書』
(★186n)
 舎利弗方等の時を挙げて云はく、「我れ昔仏に従って是くの如き法を聞き、諸の菩薩の授記作仏を見る」等云云。譬喩品に云はく「羊車・鹿車・牛車」云云。化城喩品に云はく「三百由旬を過ぐ」云云。涌出品に云はく「始め我が身を見、我が所説を聞き、即ち皆信受して如来の慧に入る」云云。涅槃経に云はく「我れ初め成道」等云云。天台云はく「此の妙彼の妙、妙の義殊なること無し」云云。或は云はく「初後の仏慧円頓の義斉し」云云。或は云はく「他経は但菩薩に記して二乗に記せず」等云云。又妙楽の云はく「菩薩は処々に得入す」等云云。爾前の得道之許すの文釈以て此くの如し。其の上一大事の大難之有り。法華已前四十余年の其の間の得道の人々は如何。此くの如き重々の大難之有り。此等の諸難一々に之を挙げ条を取るに大火に乾草を投げ大海に小火を入るゝが如し。自宗諸宗重々の不審を打ち滅し畢んぬ。
  爾前の経々には一分も得道無しと申し候なり。然りと雖も身に当て易き事国土に之を知らざるか。諸人不審を残し候か。我慢を捨てゝ之を学ばゞ何ぞ之を悟らざらんや。
                                日蓮花押
 
平成新編御書 ―186n―