←前へ  次へ→    『爾前得道有無御書』
(★184n)
 束ねて一の通と為す。別に四有り、所謂華厳の別・方等の別・般若の別・涅槃の別なり。束ねて一の別と為せり。円に五有り、所謂華厳の円・方等の円・般若の円・法華の円・涅槃の円。束ねて一の円と為せり已上。
  一代を以て四教に摂尽するに一句一字も残らず。此の四教の中に三蔵は小乗教なり。七賢七聖を立つ。七賢は未断見思の位なり。然りと雖も忍世第一に入れば不退の位に住して永く四悪趣に還らず。世々生々に生れて人天に往き終に七聖に入る。七聖とは已断見思の位なり。所謂「見惑を破する故に四悪趣を離れ思惑を破する故に三界の生を離る」とは是なり。縁覚も此くの如し。菩薩も亦見思を断じて成仏す。当分の得道とは是なり。
  通教は大乗の初門なり。十地有り。乾慧と性地との二地は賢位にして未断見思なり。三蔵の七賢の如し。第三地より第十地に至るまで八地有り。声聞は三地より七地に至るまでに見思を断じ畢る。縁覚は第八地に留り、菩薩は第九地・第十地に至りて、見思を断尽して分に成仏す。是も又当分の得道なり。
  別教は五十二位を立つ。所謂十信・十住・十行・十回向・十地・等覚・妙覚なり。十信に見思を伏す。蔵の七賢、通の初地二地の如し。十住は初住に見を断じ二住より七住に至るまでに思惑を断尽す。蔵の七聖・通の下の八地の如し。十住の下の三住に上品の塵沙を断じ、十行・十回向に中下品の塵沙を尽くす。十回向の後心に無明を伏し、初地に至って一品の無明を断じ、乃至等覚妙覚に十二品を断ず。此の仏は二種の生死を超過す。
  円教にも同じく五十二位を立つ。其の名は別教の如く、其の義は水火の異なり。第一の初信に見惑を断じ、第二信より第七信に至るまでに思惑を断ずること、蔵通の七聖下の八地と別の十住の初住より七住に至るとの如し。八九十の後の三信は次での如く上中下の三品の塵沙を断ず。第十信の後心には無明を伏すること、別の十回向の後心の如し。十住・十行・十回向・十地・等・妙には四十二品の無明之を断尽し畢んぬ。此は即ち爾前の三の円・跨節の得道なり。
 
平成新編御書 ―184n―