←前へ  次へ→    『十法界事』
(★176n)
 若し諸の声聞全く凡夫に同ぜば五百由旬一歩も行くべからず。又云はく「自ら所得の功徳に於て滅度の想ひを生じて当に涅槃に入るべし。我余国に於て作仏して更に異名有らん。是の人滅度の想ひを生じて涅槃に入ると雖も而も彼の土に於て仏の智慧を求めて是の経を聞くことを得ん」已上。此の文既に証果の羅漢法華の座に来たらずして無余涅槃に入り方便土に生じて法華を説くを聞くと見えたり。若し爾らば既に方便土に生じて何ぞ見思を断ぜざらん。是の故に天台妙楽も「彼土得聞」と釈す。又爾前の菩薩に於て「始めて我が身を見、我が所説を聞いて即ち皆信受し如来慧に入りにき」と説く。故に知んぬ、爾前の諸の菩薩三惑を断除して仏慧に入ることを。
 
平成新編御書 ―176n―