←前へ  次へ→    『守護国家論』
(★121n)
  問うて曰く、方等部の諸経の後には何れの経を説き給ふや。答へて曰く、般若経なり。問うて曰く、何を以て之を知るや。答へて曰く、涅槃経に云はく「方等より般若を出だす」と。
  問うて曰く、般若経の後には何れの経を説き給ふや。答へて曰く、無量義経なり。問うて曰く、何を以て之を知るや。答へて曰く、仁王経に云はく「二十九年中」と。無量義経に云はく「四十余年」と。問うて曰く、無量義経には般若経の後に華厳経を列ね、涅槃経には般若経の後に涅槃経を列ぬ。今の所立の次第は般若経の後に無量義経を列ぬ、相違如何。答へて曰く、涅槃経第十四の文を見るに、涅槃経已前の諸経を列ねて涅槃経に対して勝劣を論じて法華経を挙げず。第九の巻に於て法華経は涅槃経より已前なりと之を定め給ふ。法華経の序品を見るに無量義経は法華経の序分なり。無量義経には般若の次に華厳経を列ぬれども、華厳経を初時に遣れば般若経の後は無量義経なればなり。
  問うて曰く、無量義経の後に何れの経を説き給ふや。答へて曰く、法華経を説き給ふなり。問うて曰く、何を以て之を知るや。答へて曰く、法華経の序品に云はく「諸の菩薩の為に大乗経の無量義・教菩薩法・仏所護念と名づくるを説き給ふ。仏此の経を説き已はって結跏趺坐し無量義処三昧に入りたまふ」と。
  問うて曰く、法華経の後に何れの経を説きたまふや。答へて曰く、普賢経を説き給ふなり。問うて曰く、何を以て之を知るや。答へて曰く、普賢経に云はく「却って後三月我当に般涅槃すべし、乃至如来昔耆闍崛山及び余の住処に於て已に広く一実の道を分別す。今も此処に於てす」と。
  問うて曰く、普賢経の後に何れの経を説き給ふや。答へて曰く、涅槃経を説き給ふなり。問うて曰く、何を以て之を知るや。答へて曰く、普賢経に云はく「却って後三月我当に般涅槃すべし」と。
 
平成新編御書 ―121n―