←前へ 次へ→ 『三種教相事』
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籤の一に云はく「前の三を麁と為し後の一を妙と為す」と。記の一 本五十五 に云はく「頓等は是此の宗の判教の大綱、蔵等は是一家釈義の網目なり」文。
玄の七 四十四 に云はく「余経は通じて論ずれば理に約して大妙殊ならず。而も別しては方便を帯せり。此の経は方便を帯せず。故に別して妙と称す。小乗入ることを得て発迹顕本す。故に別して妙と称すと。玄の一 十七 に云はく「若し不定を論ぜば義則ち然らず。高山頓説すと雖も寂場を動ぜずして而も鹿苑に遊化し、四諦生滅を転ずと雖も而も不生不滅を妨げず。菩薩の為に仏の境界を説くと雖も而も二乗の智断有り。五人証果すと雖も八万の諸天無生忍を獲ることを妨げず。当に知るべし、頓に即して而も漸、漸に即して而も頓なり」と。大経に云はく「或時は深を説き或時は浅を説く。開すべきをも即ち遮し、遮すべきをも即ち開す。一時一説一念の中に備に不定有り」と。籤の一 末初に云はく「初めの文は此は華厳を指す。動ぜず離せずして而昇而遊とは、此は頓の後漸の初め頓を動ぜずして而も漸化を施すことを指す」と。又 二紙 云はく「雖転四諦とは鹿苑を指す。此漸化を施すと雖も頓を起こさゞることを指す。此の二味既に然なり」と。又 四紙 云はく「或時は深を説き或時は浅を説く等を不定と名づくとは、彼此互ひに相知るに由るを以ての故なり。若し秘密は即ち下の文の如し。互ひに相知らず。是の故に密と名づく。不定と秘密と並びに皆同聴異聞を出でず」と。又云はく「一時等とは広より狭に之く。時は謂はく五味の一、亦是一部一会なり。説は謂はく一句一言、念は謂はく一刹那の頃なり」と。玄の一 十八 に云はく「秘密不定は其の義然らず。如来は法に於ても最も自在を得たまへり。若しは智、若しは機、若しは時、若しは処、三密四門妨げ無く礙り無し。此の座には頓を説き、十方には漸を説き不定を説く。頓の座には十方を聞かず、十方には頓の座を聞かず。或は十方には頓を説き不定を説き、此の座には漸を説き、各々相知聞せず。
平成新編御書 ―67n―