名前
git - おバカなソース追跡ツール
書式
git [--version] [--help] [-c <name>=<value>] [--exec-path[=<path>]] [--html-path] [--man-path] [--info-path] [-p|--paginate|--no-pager] [--no-replace-objects] [--bare] [--git-dir=<path>] [--work-tree=<path>] [--namespace=<name>] <command> [<args>]
説明
Git は高速で、拡張性のある、分散型のリビジョン管理システムです。非常に豊富なコマンドセットを持ち、高レベルな操作と内部への完全なアクセスの両方が可能です。
初めての方は gittutorial(7) を参照してください。そして、日々の git 利用 を参照して便利なコマンドの最小セットを憶えてください。 より深い導入としては Gitユーザマニュアル もあります。
基本的なコンセプトを理解した後には、Gitがどんなコマンドを提供しているか学ぶためこのページに戻ってくると良いでしょう。個々のGitコマンドは "git help command"にて詳しく知ることができます。 コマンドライン引数の概要はマニュアル gitcli(7) を見ると良いでしょう。
最新のGitドキュメントのHTML版(英語)は`http://git-htmldocs.googlecode.com/git/git.html`から参照できます。
オプション
- --version
-
git プログラムのバージョンを表示します。
- --help
-
gitの書式とよく使われるコマンドの一覧を表示します。 オプション --all または -a が指定されていた場合は利用可能な全ての コマンドを表示します。Gitのコマンドがこのオプションを付けて 呼ばれた場合は、そのコマンドに対するマニュアルページを表示します。
マニュアルページの表示方法をコントロールするオプションは他にもあります。 詳しい情報は git-help(1) を参照してください。
git --help ...
は内部的にはgit help ...
に置き換えられます。 - -c <name>=<value>
-
コマンドに設定パラメータを渡します。<value> は設定ファイルの 値を上書きします。 <name> には git config で指定するものと同じ名前を指定します。 (サブキーはドット . 区切りです)
- --exec-path[=<path>]
-
gitの中核(core git)プログラムがインストールされているパスを指定します。 環境変数 GIT_EXEC_PATH を設定することでも指定可能です。 パスの指定がない場合、git は現在設定されているパスを表示して終了します。
- --html-path
-
gitのHTMLドキュメントがインストールされているパスを表示して終了します。 パスの末尾にはスラッシュは含まれません。
- --man-path
-
このバージョンのGitのmanページがあるmanのパス (`man(1)`参照) を表示して終了します。
- --info-path
-
このバージョンのGitのInfoファイルがインストールされている パスを表示して終了します。
- -p
- --paginate
-
標準出力がターミナルに設定されている場合に、全ての出力を less (または設定されていれば $PAGER) にパイプ接続します。このオプションは
pager.<cmd>
の設定を上書きします (以下の "Configuration Mechanism" セクションを参照section)。 - --no-pager
-
Git の出力をページャに渡さないようにします。
- --git-dir=<path>
-
リポジトリのパスを設定します。この設定は環境変数 GIT_DIR でも指定可能です。 絶対パス、または現在の作業ディレクトリからの相対パスが指定できます。
- --work-tree=<path>
-
作業ツリーのパスを設定します。絶対パス、または現在の作業ディレクトリから の相対パスが指定できます。 この設定は環境変数 GIT_WORK_TREE またはconfig変数 core.worktree でも 指定可能です (詳細は git-config(1) の core.worktree を参照)。
- --namespace=<path>
-
Git の名前空間を設定します。詳細は gitnamespaces(7) を参照。 環境変数 `GIT_NAMESPACE`を指定することでも設定可能です。
- --bare
-
リポジトリを裸の(bare)リポジトリとして扱います。 環境変数 GIT_DIR が設定されていない場合、現在の作業ディレクトリが が設定されます。
- --no-replace-objects
-
Git オブジェクトが置換されないようにします。 詳細は git-replace(1) を参照。
- --literal-pathspecs
-
パスの指定を文字通りに扱い、ワイルドカードのマッチング(glob)を行いません。 環境変数
GIT_LITERAL_PATHSPECS
を1
に設定することでも指定可能です。
GITのコマンド
git は高レベルなコマンド("磁器"(porcelain))と下位レベルのコマンド("配管"(plumbing))に分けられます。
高レベルなコマンド("磁器"(porcelain))
磁器(porcelain)のコマンドは主要コマンドとユーザ補助コマンドに分類されます。
主要な磁器(porcelain)コマンド
- git-add(1)
-
ファイルをindexに追加します。
- git-am(1)
-
メールボックスにあるパッチの集合を適用します。
- git-archive(1)
-
指定ツリーに含まれるファイルのアーカイブを生成します。
- git-bisect(1)
-
バグを混入させた変更を二分探索の方法で探します。
- git-branch(1)
-
ブランチを一覧表示または作成、削除します。
- git-bundle(1)
-
オブジェクトと参照(ref)をアーカイブ化して移動させます。
- git-checkout(1)
-
ブランチまたは特定のパスを作業ツリーにチェックアウトします。
- git-cherry-pick(1)
-
既存のコミットがしている変更を現在のブランチに適用します。
- git-citool(1)
-
git-commitの代替GUIを起動します。
- git-clean(1)
-
作業ツリーからGit管理外のファイルを削除します。
- git-clone(1)
-
リポジトリを複製します。
- git-commit(1)
-
変更をリポジトリに記録します。
- git-describe(1)
-
指定コミットから到達可能な直近のタグを表示します。
- git-diff(1)
-
コミット間またはコミットと作業ツリー間などの差分を表示します。
- git-fetch(1)
-
他のリポジトリからオブジェクトと参照(ref)をダウンロードします。
- git-format-patch(1)
-
e-mail送信するためのパッチを準備します。
- git-gc(1)
-
不要なファイルを削除し、ローカルリポジトリを最適化します。
- git-grep(1)
-
指定パターンにマッチする行を表示します。
- git-gui(1)
-
Gitのポータブルなグラフィカルインターフェース。
- git-init(1)
-
空のGitリポジトリを生成するか、既存のリポジトリを再初期化します。
- git-log(1)
-
コミットのログを表示します。
- git-merge(1)
-
2つ以上の開発履歴を1つにマージします。
- git-mv(1)
-
ファイルまたはディレクトリ、シンボリックリンクを移動またはリネームします。
- git-notes(1)
-
オブジェクトに注釈を追加または確認します。
- git-pull(1)
-
他のリポジトリまたはローカルブランチの変更を取得し、マージします。
- git-push(1)
-
関連するオブジェクトとともにリモートの参照(ref)を更新します。
- git-rebase(1)
-
ローカルのコミットを更新された上流ブランチに移し替えます。
- git-reset(1)
-
現在のHEADを特定の状態にリセットします。
- git-revert(1)
-
存在するいくつかのコミットを取り消します。
- git-rm(1)
-
作業ツリーとindexからファイルを削除します。
- git-shortlog(1)
-
'git log'の出力を要約します。
- git-show(1)
-
様々なタイプのオブジェクトを表示します。
- git-stash(1)
-
作業ディレクトリ内の変更を隠します。
- git-status(1)
-
作業ツリーのステータスを表示します。
- git-submodule(1)
-
サブもジュールを初期化または更新、点検します。
- git-tag(1)
-
GPGで署名されたタグオブジェクトの生成/削除/検証および一覧表示をします。
- gitk(1)
-
Gitリポジトリの閲覧ツール。
補助コマンド
操縦者(Manipulators):
- git-config(1)
-
リポジトリまたはグローバルなオプションを確認または設定します。
- git-fast-export(1)
-
Gitデータをエクスポートします。
- git-fast-import(1)
-
Gitデータを高速にインポートするためのバックエンド。
- git-filter-branch(1)
-
ブランチを書き換えます。
- git-lost-found(1)
-
(非推奨)紛失したブランチ/タグ情報でまだ完全には廃棄されていないものを修復します。
- git-mergetool(1)
-
コンフリクトの解消ツールを起動します。
- git-pack-refs(1)
-
リポジトリのアクセス速度を改善するためにheadとtagの情報をpack化します。
- git-prune(1)
-
到達不能なオブジェクトをオブジェクトデータベースから廃棄します。
- git-reflog(1)
-
reflog情報を管理します。
- git-relink(1)
-
ローカルリポジトリ内の共通オブジェクトをハードリンク化します。
- git-remote(1)
-
追跡するリポジトリの情報を管理します。
- git-repack(1)
-
リポジトリ内のpack化されていないオブジェクトをpack化します。
- git-replace(1)
-
オブジェクトの置換設定を追加/削除または一覧表示します。
- git-repo-config(1)
-
(非推奨)リポジトリまたはグローバルなオプションを確認または設定します。
質問者(Interrogators):
- git-annotate(1)
-
ファイルの各行にコミット情報の注釈をつけます
- git-blame(1)
-
ファイルの各行が最後に更新されたリビジョンと著者を表示します。
- git-cherry(1)
-
上流にマージされていないコミットを探します。
- git-count-objects(1)
-
pack化されていないオブジェクトの数とディスク消費量を集計します。
- git-difftool(1)
-
一般のdiffツールを使って変更を表示します。
- git-fsck(1)
-
データベース内のオブジェクトの連結性と妥当性を検証します。
- git-get-tar-commit-id(1)
-
git-archiveを使用して作成されたアーカイブからコミットIDを抜き取ります。
- git-help(1)
-
Gitのヘルプ情報を表示します。
- git-instaweb(1)
-
即座に作業リポジトリをgitwebで閲覧します。
- git-merge-tree(1)
-
indexを触らずに3wayマージの結果を表示します。
- git-rerere(1)
-
コンフリクトの解消結果を再利用します。
- git-rev-parse(1)
-
各Gitコマンドがパラメータを処理しやすいように選別します。
- git-show-branch(1)
-
ブランチとそのコミット情報を表示します。
- git-verify-tag(1)
-
タグのGPG署名を検証します。
- git-whatchanged(1)
-
各コミットのログと更新ファイルを表示します。
- gitweb(1)
-
Gitのwebインターフェース(Gitリポジトリのwebフロントエンド)。
他者との相互作用
これらのコマンドは外部のSCMや他者からのe-mailパッチと相互作用することができます。
- git-archimport(1)
-
ArchリポジトリをGitにインポートします。
- git-cvsexportcommit(1)
-
1つのコミットをCVSのチェックアウトにエクスポートします。
- git-cvsimport(1)
-
人々が愛憎する別のSCMからデータを救済します。
- git-cvsserver(1)
-
GitのためのCVSサーバのエミュレーター。
- git-imap-send(1)
-
標準入力からIMAPフォルダーにパッチの集合を送信します。
- git-p4(1)
-
Perforceリポジトリからインポートまたは登録をします。
- git-quiltimport(1)
-
quiltのパッチセットを現在のブランチに適用します。
- git-request-pull(1)
-
保留中の変更のサマリを生成します。
- git-send-email(1)
-
パッチの集合をメール送信します。
- git-svn(1)
-
SubversionとGit間の双方向の操作をします。
下位レベルのコマンド ("配管"(plumbing))
Git には磁器(porcelain)レイヤのコマンドがありますが、 その下位レベルコマンドは代替の磁器を開発する為に役立ちます。 磁器の開発者は git-update-index(1) とgit-read-tree(1) から読み始めると良いでしょう。
これら下位レベルコマンドのインターフェース(入力、出力、オプションとその意味)は、これらコマンドがスクリプト化して使用される為、磁器レベルのコマンドよりもずっと安定性が求められます。一方、磁器コマンドのインターフェースはエンドユーザの経験に基づく改良の為、変更されていく必要があります。
以下の記述では下位レベルコマンドを以下の3つに分割します。1.リポジトリ、インデックス、作業ツリー内のオブジェクトを操作するコマンド。2.質問し、オブジェクトを比較するコマンド。3.リポジトリ間でオブジェクトと参照を移動するコマンド。
操作コマンド
- git-apply(1)
-
ファイルまたはindexにパッチを適用します。
- git-checkout-index(1)
-
indexから作業ツリーにファイルをコピーします。
- git-commit-tree(1)
-
commitオブジェクトを新規作成します。
- git-hash-object(1)
-
オブジェクトのID値を計算し、ファイルからblobを生成します。
- git-index-pack(1)
-
既存のpack化されたアーカイブに対してpack indexファイルを生成します。
- git-merge-file(1)
-
3-wayマージをします。
- git-merge-index(1)
-
マージが必要なファイルに対してマージをします。
- git-mktag(1)
-
tagオブジェクトを作成します。
- git-mktree(1)
-
ls-tree形式のテキストからtreeオブジェクトを生成します。
- git-pack-objects(1)
-
objectのpack化されたアーカイブを作成します。
- git-prune-packed(1)
-
既にpack化されている冗長なobjectを削除します。
- git-read-tree(1)
-
treeの情報をindexに反映します。
- git-symbolic-ref(1)
-
シンボリックなrefを表示/更新/削除します。
- git-unpack-objects(1)
-
pack化されたアーカイブからobjectを展開します。
- git-update-index(1)
-
作業ツリー内のファイルコンテンツをindexに登録します。
- git-update-ref(1)
-
ref内に格納されているオブジェクト名を安全に更新します。
- git-write-tree(1)
-
現在のindexからtreeオブジェクトを生成します。
質問コマンド
- git-cat-file(1)
-
リポジトリオブジェクトの中身またはタイプ、サイズ情報を出力します。
- git-diff-files(1)
-
作業ツリーとindex内のファイルを比較します。
- git-diff-index(1)
-
作業ツリーまたはindexのツリーどうしを比較します。
- git-diff-tree(1)
-
2つのツリーオブジェクト間のコンテンツとblobのモードを比較します。
- git-for-each-ref(1)
-
各参照(ref)の情報を出力します。
- git-ls-files(1)
-
indexと作業ツリー内のファイルの情報を表示します。
- git-ls-remote(1)
-
リモートリポジトリのリファレンス一覧を表示します。
- git-ls-tree(1)
-
ツリーオブジェクトの中身を一覧表示します。
- git-merge-base(1)
-
マージするための最適な共通祖先を探し出します。
- git-name-rev(1)
-
指定リビジョンのシンボリック名を探します。
- git-pack-redundant(1)
-
冗長なpackファイルを探します。
- git-rev-list(1)
-
年代の逆順にコミットオブジェクトを一覧表示します。
- git-show-index(1)
-
pack化データのindexを表示します。
- git-show-ref(1)
-
ローカルリポジトリ内のリファレンスを一覧表示します。
- git-tar-tree(1)
-
(非推奨)指定したツリーオブジェクトに含まれるファイルのtarアーカイブを生成します。
- git-unpack-file(1)
-
blobコンテンツをもつ一時ファイルを生成します。
- git-var(1)
-
Gitの論理変数を表示します。
- git-verify-pack(1)
-
pack化されたGitアーカイブファイルを検証します。
一般に、質問コマンドは作業ツリー内のファイルを変更することはありません。
リポジトリの同期
- git-daemon(1)
-
Gitリポジトリを公開する為のシンプルなサーバプログラム。
- git-fetch-pack(1)
-
他リポジトリから手元に無いオブジェクトを取得します。
- git-http-backend(1)
-
HTTP経由でGitを公開する為のサーバ側CGIプログラム。
- git-send-pack(1)
-
Gitプロトコル経由でobjectを他リポジトリにpushします。
- git-update-server-info(1)
-
補助情報ファイルを更新し、dumbサーバを手助けします。
以下は上記コマンドにより使用されるヘルパープログラムです;エンドユーザは通常これらを直接使用することはありません。
- git-http-fetch(1)
-
HTTP経由でリモートのGitリポジトリからダウンロードします。
- git-http-push(1)
-
HTTP/DAV越しで他リポジトリにオブジェクトをpushします。
- git-parse-remote(1)
-
リモートリポジトリにアクセスするためのパラメータをパースするためのヘルパー。
- git-receive-pack(1)
-
リポジトリ内にpushされるデータを受けとります。
- git-shell(1)
-
SSH接続をGitのみに制限したい時に使用するログインシェル。
- git-upload-archive(1)
-
アーカイブをgit-archiveに送ります。
- git-upload-pack(1)
-
objectをpack化してgit-fetch-packに送ります。
内部ヘルパーコマンド
これらは他のコマンドにより使用される内部ヘルパーコマンドです;エンドユーザは通常これらを直接使用することはありません。
- git-check-attr(1)
-
gitattributesの情報を表示します。
- git-check-ignore(1)
-
gitignoreのファイル除外動作をデバッグします。
- git-check-mailmap(1)
-
正規化された名前とemailアドレスを表示します。
- git-check-ref-format(1)
-
参照(ref)の名前が有効かどうかをチェックします。
- git-column(1)
-
データを整形して表示します。
- git-credential(1)
-
ユーザの認証情報を取得して保存します。
- git-credential-cache(1)
-
メモリ上にパスワードを一時保存するためのヘルパー。
- git-credential-store(1)
-
認証情報をディスクに保存するためのヘルパー。
- git-fmt-merge-msg(1)
-
マージ時のコミットメッセージを生成します。
- git-mailinfo(1)
-
1つのe-mailメッセージからパッチと著者を取得します。
- git-mailsplit(1)
-
UNIXのmboxを分割するプログラム。
- git-merge-one-file(1)
-
git-merge-indexと一緒に使われる標準のヘルパープログラム
- git-patch-id(1)
-
パッチのユニークなID値を計算します。
- git-peek-remote(1)
-
(非推奨)リモートリポジトリ内のリファレンス(ref)を一覧表示します。
- git-sh-i18n(1)
-
Gitのシェルスクリプトを国際化対応させるためのセットアップ用コード
- git-sh-setup(1)
-
Git用のシェルスクリプトのセットアップ用コード。
- git-stripspace(1)
-
不要な空白文字を削除します。
設定管理の仕組み
Gitはリポジトリ毎およびユーザ毎のカスタマイズ設定をシンプルなテキスト形式で管理します。 設定ファイルは以下のような形式です:
#
# '#' または ';' の文字はコメントを表します。
#
; コア部分の変数
[core]
; ファイルのモードを信用しない
filemode = false
; ユーザ情報
[user]
name = "Junio C Hamano"
email = "[email protected]"
様々なコマンドが設定ファイルを読み込んで、コマンドの動作を調整します。 利用可能な設定の一覧とその詳細は git-config(1) を参照してください。
識別用語
- <object>
-
任意のオブジェクト型に対するオブジェクト名を指します。
- <blob>
-
blob オブジェクトの名前を指します。
- <tree>
-
treeオブジェクトの名前を指します。
- <commit>
-
commitオブジェクトの名前を指し示します。
- <tree-ish>
-
tree, commit または tag オブジェクトの名前を指します。 <tree-ish> の引数を取るコマンドは、最終的には <tree> オブジェクト に対して作用しますが、<tree> を指し示す <commit> と <tag> オブジェクトを引数に指定することも可能です。
- <commit-ish>
-
コミットまたはタグオブジェクトの名前を指します。 <commit-ish> の引数を取るコマンドは、最終的には <commit> オブジェクトに対して作用しますが、<commit> を指し示す <tag> オブジェクトを引数に指定することも可能です。
- <type>
-
オブジェクトタイプが必要であることを示します。 一般に
blob
,tree
,commit
, またはtag
のどれかです。 - <file>
-
ファイル名を指します。- 通常は
GIT_INDEX_FILE
が表す ツリー構造のルート位置からの相対パスです。
シンボリックな識別子
任意の <object> を引数に持つすべての git コマンドにて 以下のシンボリックな表記を使用できます。
- HEAD
-
現在のブランチの head を指します。
- <tag>
-
有効なタグの名前 (つまり
refs/tags/<tag>
の参照)。 - <head>
-
有効な head (ブランチ)の'名前'。 (つまり
refs/heads/<head>
の参照)。
オブジェクトの名前を表す方法のより完全な一覧は gitrevisions(7) の"リビジョンの指定方法" の節を参照してください。
ファイル/ディレクトリ構造
gitrepository-layout(5) のドキュメントを参照してください。
各フックの詳細は githooks(5) を参照してください。
より高レベルなSCMにより $GIT_DIR
内で追加情報が提供・管理される場合もあります。
用語
gitglossary(7) のドキュメントを参照してください。
環境変数
様々な git コマンドが以下の環境変数を参照しています。
Gitリポジトリ
これらの環境変数は 全ての 中核となる git コマンドに適用されます。 注意: これらの値をgit の上位に位置する SCMS によって利用/上書きすることは何の価値もないので、Cogito などを利用する場合は注意してください。
- GIT_INDEX_FILE
-
この環境変数により使用するインデックスファイルを指定できます。指定されていない場合、デフォルトでは
$GIT_DIR/index
が使用されます。 - GIT_OBJECT_DIRECTORY
-
オブジェクトの格納ディレクトリがこの環境変数により指定されていた場合、sha1 ディレクトリはこの下に作成されます。- 定義されていない場合、デフォルトでは
$GIT_DIR/objects
ディレクトリが使用されます。 - GIT_ALTERNATE_OBJECT_DIRECTORIES
-
Git オブジェクトの不変性により、古いオブジェクトは共有化された読み取り専用のディレクトリに保管することができます。この変数に ":" 区切り(Windowsでは";")でGit オブジェクトのディレクトリを指定すると、Git オブジェクトの検索場所として利用できます。 新しいオブジェクトはこれらのディレクトリには書き込まれません。
- GIT_DIR
-
環境変数 GIT_DIR が設定されていた場合、デフォルトの
.git
の代わりにその値がリポジトリへのパスとして使用されます。 コマンドラインオプション --git-dir でも指定可能です。 - GIT_WORK_TREE
-
作業ツリーのルートのパスを指定します。 コマンドラインオプション --work-tree または構成変数 core.worktree でも 指定可能です。
- GIT_NAMESPACE
-
Gitの名前空間を指定します;詳細は gitnamespaces(7) を参照してください。 コマンドラインオプション --namespace でも指定可能です。
- GIT_CEILING_DIRECTORIES
-
コロンで区切られた絶対パスのリストです。この変数を設定すると、gitは設定したディレクトリよりも上のディレクトリからレポジトリディレクトリを探しません(読み込みの遅いネットワークディレクトリを除外する時に便利です)。 ただし、カレント作業ディレクトリまたはコマンドラインまたは環境変数で指定された GIT_DIR は除外されます。 通常、Gitはカレントディレクトリと比較をするためにこのリストエントリを読み込み、 存在するシンボリックリンクを解決させなければなりません。しかし、このアクセスが遅い場合は このリストに空のエントリを追加し、その後のエントリがシンボリックリンクではなく、解決させる 必要はないとGitに伝えることができます; 例えば GIT_CEILING_DIRECTORIES=/maybe/symlink::/very/slow/non/symlink のようにして。
- GIT_DISCOVERY_ACROSS_FILESYSTEM
-
リポジトリディレクトリ ".git" の存在しない場所で Git を実行すると Gitは 親ディレクトリをたどって作業ツリーのトップを探しますが、 デフォルトではファイルシステムの境界は越えません。 この環境変数を true に設定すると、Gitはファイルシステムの境界を越えて 作業ツリーのトップを探すようになります。 GIT_CEILING_DIRECTORIES のように、GIT_DIR またはコマンドラインで 明示的にリポジトリディレクトリを指定した場合は、この環境変数の影響は受けません。
Gitコミット
- GIT_AUTHOR_NAME
- GIT_AUTHOR_EMAIL
- GIT_AUTHOR_DATE
- GIT_COMMITTER_NAME
- GIT_COMMITTER_EMAIL
- GIT_COMMITTER_DATE
Git Diff(差分表示)
- GIT_DIFF_OPTS
-
有効な設定は "--unified=??" または "-u??" で、"??" にはunified diff のコンテキストの 行数を指定します。これは git diff コマンドの "-U" または "--unified" オプションの指定よりも 優先されます。
- GIT_EXTERNAL_DIFF
-
環境変数 GIT_EXTERNAL_DIFF が設定されている場合、diff が実行される代わりに、ここで指定されているプログラムが呼び出されます。追加、削除、変更されたパスに対して GIT_EXTERNAL_DIFF が以下の7つのパラメータとともに呼び出されます:
パス 古いファイル 古いhex 古いモード 新しいファイル 新しいhex 新しいモード
各パラメータの説明:
- <古い|新しい>ファイル
-
GIT_EXTERNAL_DIFF がファイルの中身を読み込む為に使用する 新旧のファイル名
- <古い|新しい>hex
-
40桁16進の SHA1 ハッシュ値
- <古い|新しい>モード
-
ファイルモードの8進数表現
ファイルパラメータはユーザの作業ファイル(例えば、"git-diff-files"内の
新しいファイル
)、/dev/null
(例えば、新しいファイルが追加された時の古いファイル
)、または一時ファイル(例えば、索引内の古いファイル
)を指し示すこともあります。GIT_EXTERNAL_DIFF は一時ファイルを削除することに気を使う必要はありません。--- GIT_EXTERNAL_DIFF が終了すると一時ファイルは削除されます。マージされなかったパスに対しては GIT_EXTERNAL_DIFF は1つのパラメータ <path> とともに呼び出されます。
その他
- GIT_MERGE_VERBOSITY
-
再帰的なマージ戦略により表示される出力の合計値を管理するための数値です。merge.verbosity を上書きします。git-merge(1) 参照。
- GIT_PAGER
-
この環境変数は
$PAGER
を上書きします。これを空文字または "cat" に指定すると、git はページャを起動しません。core.pager
オプションについてはgit-config(1) 参照して下さい。 - GIT_EDITOR
-
この環境変数は
$EDITOR
と$VISUAL
を上書きします。 この値はGitの様々なコマンドでインタラクティブモードやエディターを起動するときに使われます。 git-var(1) および git-config(1) の`core.editor`オプションを参照。 - GIT_SSH
-
この環境変数が設定されていた場合、git-fetch と git-push は リモートシステムに接続する必要がある時に ssh の代わりにこのコマンドを使用します。$GIT_SSH コマンドには必ず2つまたは4つの引数が渡されます: 接続先URL の username@host(あるいは単に host)、そのリモートシステム上で 実行するシェルコマンド、そしてデフォルトのSSHポート以外が指定されていた場合には オプションで -p と 接続時のポート。
GIT_SSH 内でリストしたいプログラムにオプションを渡したい時は、プログラムをラップしてシェルスクリプトにオプションを渡し、GIT_SSHがそのシェルスクリプトを参照するように設定する必要があります。
通常は
.ssh/config
ファイルにて望ましいオプションを設定した方が容易です。詳細は ssh のドキュメントを参照してください。 - GIT_ASKPASS
-
この環境変数が設定されていた場合、パスワードまたはパスフレーズ(HTTPやIMAP認証用)の入力 が必要な場合に、コマンドライン引数として適切なプロンプトとともにこのプログラムがコールされ、 標準入力からパスワードを読み込みます。git-config(1)の core.askpass も参照。
- GIT_CONFIG_NOSYSTEM
-
システムワイドな
$(prefix)/etc/gitconfig
の設定をスキップするかどうかを指定します。 この環境変数は$HOME
と$XDG_CONFIG_HOME
とともに使われ、 えり好みのあるスクリプトを予測した変数で動作させる為に使います。 もしくは/etc/gitconfig
ファイルに不具合があった場合に、権限をもつ人が修正 するまでの間、その不具合を回避するために設定します。 - GIT_FLUSH
-
この環境変数を "1" にした場合、git-blame(インクリメンタルモード)、git-rev-list, git-log,そして git-whatchanged などのコマンドが呼ばれた時に、各コミットの境界レコードがフラッシュされた後に出力ストリームが強制的にフラッシュされます。この変数を "0" にした場合、コマンド出力のI/Oが完全にバッファリングされます。この環境変数が設定されていない場合、git は標準出力がファイルにリダイレクトされているかどうかによってバッファリングされるかレコードの境界でフラッシュされるかが決定されます。
- GIT_TRACE
-
この変数が "1", "2" または "true" (大文字小文字を区別します)に設定されていた場合、git は ‘trace:` のメッセージを標準エラーに出力し、エイリアスの展開、実行される built-in コマンド、外部コマンド実行について説明します。この値が 1 より大きく10より小さい整数が指定された場合、git はこの値をファイル記述子として解釈し、このファイル記述子にトレースメッセージを書き込もうとします。代わりに、この値が絶対パスが指定されていた場合(’/'の文字から始まる場合)、git はこれをファイルパスとして解釈し、トレースメッセージをそこに書き込もうとします。
- GIT_TRACE_PACK_ACCESS
-
この変数にパスが設定されていた場合、任意のパックファイルへのアクセス全てが指定したパスに 記録されます。各アクセスにたいしてパックファイル名とパックないのオフセットが記録されます。 この設定はパックに関連したパフォーマンス問題の調査に役立つことがあります。
- GIT_TRACE_PACKET
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この変数が設定されていた場合、指定したプログラムの入力と出力のパケット全部を トレースすることができます。これはオブジェクトのネゴシエーションや他のプロトコル問題の デバッグに役立つことがあります。トレースは"PACK"で始まるパケットでOFFにできます。
- GIT_LITERAL_PATHSPECS
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この変数を
1
にすると、Gitは全ての pathspec 指定を文字通りあつかい、ワイルドカード パターン(glob)の展開はしません。たとえば、GIT_LITERAL_PATHSPECS=1 git log -- '*.c'
は*.c
に一致する任意のパスではなく、*.c
のパスをさわっているコミットを探します。 この偏すはGitに文字通りのパス(つまり、git ls-tree
や--raw
の diff出力などによって指定されるパス)を渡したい場合に有効です。
議論
下記の詳細は ユーザマニュアルのGitの概念の章を 参照してください。
Git管理されているプロジェクトは通常、作業ディレクトリおよび その最上位のディレクトリ階層に ".git"のサブディレクトリを持ちます。 .git ディレクトリはプロジェクトの完全な履歴を表現する圧縮済みのオブジェクトデータベース およびその履歴と現在の作業ツリーの中身をリンクさせる "index" ファイル およびタグやブランチの先端(head)のような履歴を指し示す名前つきのポインタとから 構成されています。
オブジェクトデータベースは主に3つの型があります:blob(ファイルデータを保持するもの); tree(blobおよび他のツリーを指し示し、ディレクトリ階層を構築するもの); commit(1つのtreeと複数の親commitへの参照)。
commitは他のシステムで"changeset"または"version"と呼ばれているものと等価で、 プロジェクトの履歴の1ステップを表現し、それぞれの親が1つ前のステップを表しています。 複数の親をもつcommitは独立した開発ラインのマージを表現します。
全てのobjectはその中身のSHA-1ハッシュにより名前が付けられ、 通常は40桁の16進数で記述されます。この名前はglobalにユニークです。 あるコミットまでの一繋がりの履歴はそのコミットに署名をすることによって保証することができます。 4番目のobject型である tag はこの為に用意されたものです。
objectは初めに作成されるときは個々のファイルとして保存されますが、 後には利便性から"packファイル"のかたちでまとめて圧縮されます。
refと呼ばれる名前付きのポインタは履歴内の興味のある場所を指し示します。
1つのrefはあるobjectのSHA-1名または他のrefの名前を含みます。 ref/head/
の名前で始まるrefは開発中ブランチの最新コミットのSHA-1名を含んでいます。 tagのSHA-1名は ref/tags/
配下に保存されます。
HEAD
という名前の特別なrefには 現在チェックアウトしているブランチの名前が保存されています。
indexファイルは全てのパスの一覧で初期化されており、それぞれのパス、blobオブジェクト、属性の集合を含んでいます。blobオブジェクトは現在のブランチ head のファイルの中身を表現しています。属性(最終更新日時、サイズなど)は作業ツリー内の対応するファイルから取得されます。作業ツリーにて追加した変更はこれらの属性と比較することにより検出されます。indexは新しいコンテンツにより更新され、新しいコミットはindex内に格納されているコンテンツから作成されます。
indexは同一パス名の複数のエントリ("ステージ"と呼びます)を格納することもできます。これらステージはマージ作業中の様々な未マージのバージョンを保持する目的で利用されます。
さらに進んだドキュメント
Gitを使い始めるには"説明"内のリファレンスをみてください。 下記のリンクは初めてのユーザにとってはおそらく詳しすぎる内容です。
ユーザマニュアルのGitの概念の章および gitcore-tutorial(7)はGitのアーキテクチャに対する序論です。
推奨するワークフローの概要は gitworkflows(7) を参照してください。
有用な例として howto も参照してください。
Git内部のドキュメントは Git API documentation にあります。
CVSから移行しようとしている方は gitcvs-migration(7) も読むと良いでしょう。
作者
Gitは Linus Torvalds によって開発が開始され、現在は Junio C Hamano がメンテナンス をしています。Gitのメーリングリスト <[email protected]> にはたくさんのコントリビューター がいます。コントリビューターのリストは http://www.ohloh.net/p/git/contributors/summary にて確認できます。
git.git の複製が手元にあるなら、git-shortlog(1) と git-blame(1) の 出力により、プロジェクトの特定部位の作者を確認できます。
バグ報告
バグはGitメーリングリスト <[email protected]> に報告してください。 開発とメンテナンスはこのメーリングリスト上で行われています。報告前にメーリングリストの購読設定をする必要はありません。
関連項目
GIT
git(1) スイートの一部