←前へ 次へ→ 『日本真言宗事』
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入我我入の争ひ即身頓証の疑ひ、此の日釈然たり。真言瑜伽の宗、秘密曼荼羅の道、是の時より而も建立す」文。孔雀経の音義の序に「此の時諸宗の学徒大師に帰し、始めて真言を信じ請益し習学す。三論の道昌、法相の源仁、華厳の道雄、天台の円澄等皆其の類なり」 孔雀経音義真済の記なり。
大師伝に云はく「帰朝舟を泛かぶるの日発願して云はく、我が学ぶ所の教法若し感応の地有らば此の三鈷其の処に至るべしと。仍って日本の方に向かひ三鈷を抛げ上げたまふ。遥かに飛んで雲に入る。十月に帰朝す」と。又云はく「高野山に入定の所を占む。乃至彼の海上の三鈷今新たに此に在り」と。
金剛頂経の疏に云はく 慈覚釈 「毘盧遮那経に云はく、我昔道場に坐して四魔を降伏すと。此を以て知ることを得、毘盧遮那仏不久現証と云ふと雖も、而も成仏以来甚だ大いに久遠なることを」と。又云はく「彼の法華久遠の成仏は只此の経の毘盧遮那仏なり、異解すべからず」と。
教時義の四に云はく 安然の釈、弘法を破するの文なり 「但し此の文の中に法華を判じて略説と為すことは唯理を説けばなり。故に知んぬ、真言教を広説と為すことは、広説とは事理を説けばなり」と。
秘蔵宝鑰の中に云はく「謗人謗法は定めて阿鼻獄に堕して更に出づる期無し。世人此の義を知らず。舌に任せて輙く談じ深害を顧みず。寧ろ日夜に十悪・五逆を作るべくも一言一語も人法を謗るべからず」と。又云はく「師の曰く、菩薩の用心は慈悲を以て本と為し、利他を以て先と為す。能く斯の心に住して浅執を破し深教に入る利益尤も広し。若し名利の心を挟みて浅教に執して深法を破すれば斯の尤を免れず」と。
教王経の開題に云はく「金剛頂経及び大日経は、並びに是竜猛菩薩南天の鉄塔の中より誦し出だす所なり」と。
不空三蔵の要決に云はく「其の大経本は阿闍梨の云はく、経帙広長にして床の如し。厚さ四五尺、無量の頌有り。南天竺界の鉄塔の中に在り」と。
付法伝に云はく「鉄塔は是人功の所造に非ず。如来神力の所造なり」と。
平成新編御書 ―260n―