←前へ  次へ→    『十法界明因果抄』
(★209n)
  第五に人道とは、報恩経に云はく「三帰五戒は人に生ず」文。
  第六に天道とは、二有り。欲天には十善を持ちて生じ、色・無色天には下地は麁・苦・障、上地は静・妙・離の六行観を以て生ずるなり。
  問うて云はく、六道の生因は是くの如し。抑同時に五戒を持ちて人界の生を受くるに何ぞ生盲・聾・・陋・・背傴・貧窮・多病・瞋恚等無量の差別有りや。答へて云はく、大論に云はく「若しは衆生の眼を破り、若しは衆生の眼を屈り、若しは正見の眼を破り、罪福無しと言はん。是の人死して地獄に堕し、罪畢りて人と為り、生れてより盲なり。若しは復仏塔の中の火珠及び諸の灯明を盗む。是くの如き等の種々の先世の業因縁をもて眼を失ふ○聾とは是先世の因縁、師父の教訓を受けず行ぜず、而も反って瞋恚す。是の罪を以ての故に聾となる。復次に衆生の耳を截り、若しは衆生の耳を破り、若しは仏塔・僧塔・諸の善人福田の中の・稚・鈴・貝及び鼓を盗む。故に此の罪を得るなり。先世に他の舌を截り、或は其の口を塞ぎ、或は悪薬を与へて語ることを得ざらしめ、或は師の教へ、父母の教勅を聞き其の語を断つ○世に生れて人と為り唖にして言ふこと能はず○先世に他の坐禅を破り、坐禅の舎を破り、諸の呪術を以て人を呪して瞋らし闘諍し婬欲せしむ。今世に諸の結使厚重なること、婆羅門の其の稲田を失ひ其の婦復死して即時に狂発して裸形にして走りしが如くならん○先世に仏・阿羅漢・辟支仏の食及び父母所親の食を奪へば、仏世に値ふと雖も猶故飢渇す。罪の重きを以ての故なり○先世に好んで鞭杖・拷掠・閉繋を行じ種々に悩ますが故に今世に病を得るなり○先世に他の身を破り、其の頭を截り、其の手足を斬り、種々の身分を破り、或は仏像を壊り、仏像の鼻及び諸の賢聖の形像を毀り、或は父母の形像を破る。此の罪を以ての故に形を受くるに多く具足せず。復次に不善法の報い、身を受くること醜陋なり」文。
 
 
平成新編御書 ―209n―