←前へ 次へ→ 『色心二法抄』
(★25n)前
生長するなり、故に色心不二なり。色心不二なりといへども、又而二なり。此の色法の苗の中より、秋に至りて又本の心法を生ずるなり、故に不二にして而二なり。
是くの如く、十界の依正、色心の二法、一法二義の理にして、生死常住の故に三世に改まることなし。哀れなる哉、生死の無常を厭ひ悲しみ、身の常住の生死をしらずして厭ひ居る事よ。此の理をしらずして、或は此の生死を厭ひて生死なき浄土をもとめ、或は又此の理をしらずして、生死は虚妄の物なりと観ずる人も之有り。悲しむべし悲しむべし。唯生とは心法なり、滅とは色法なり。故に生死の二法は色心の二法にて有りけるなり。是即ち真言・止観の観法、出離生死の頓証なり。道場所得の妙悟、妙覚朗然の知見なり。最後臨終の時は此の理を思し食し定むべし。
九月十七日
平成新編御書 ―25n―