←前へ 次へ→ 『戒体即身成仏義』
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0001 戒体即身成仏義
安房国清澄山住人 蓮 長 撰
一には小乗の戒体
二には権大乗の戒体
分かって四門と為す
三には法華開会の戒体 法華・涅槃の戒体少しく不同有り
四には真言宗の戒体なり
第一に小乗の戒体とは四種有り。五戒は俗男俗女戒、八斎戒は四衆通用、二百五十戒は比丘戒、五百戒は比丘尼戒なり。而るに四種倶に五戒を本と為す。婆娑論に云はく「近事律儀は、此の律儀の与に門と為り依と為り加行と為るを以ての故に」云云。近事律儀とは五戒なり。されば比丘の二百五十戒・比丘尼の五百戒も始めは五戒なり。五戒とは諸の小乗経に云はく「一には不殺生戒、二には不偸盗戒、三には不邪婬戒、四には不妄語戒、五には不飲酒戒」以上五戒。此の五戒と申すは、色心二法の中には色法なり。殺・盗・婬の三は身に犯す戒、不妄語戒・不飲酒戒は口に犯す戒、身口は色法なり。此の戒を持つに、作無作・表無表と云ふ事あり。作と表と同じ事なり。無作と無表も同じ事なり。表と申す事は、戒を持たんと思ひて師を請ず。中国は十人、辺国は五人。或は自誓戒もあり。道場を荘厳し焼香散華して、師は高座にして戒を説けば、今の受くる者左右の十指を合はせて持つと云ふ。是を表色と云ひ作とも申す。此の身口の表作に依りて、必ず無表無作の戒体は発するなり。世親菩薩云云はく
平成新編御書 ―1n―