ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド5
- 1 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:44:58 ID:Q+pkvyUP
- このスレはギャルゲ・ロワイアル2ndの本スレッドです
ギャルゲ・ロワイアル2ndを一言で表すのならば、ギャルゲーの人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説企画です
基本的に作品の投下・感想共に、このスレで行って下さい
前スレ
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド3(実質4)
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1206623926/
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド3
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1206623879/
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド2
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1205930505/
テンプレは>>2以降に
- 2 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:45:34 ID:Q+pkvyUP
- ギャルゲ・ロワイアルしたらばBBS(1st・2nd兼用)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/
ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart2(上記したらば内)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1203171454
※議論はこちらでどうぞ
ギャルゲ・ロワイアル2nd避難所スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205659483
※本スレが荒れている場合の感想・雑談はこちらでどうぞ。作品の投下だけは本スレで行って下さい
ギャルゲ・ロワイアル2nd予約専用スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205656662/l50
ギャルゲ・ロワイアル2ndまとめwiki
ttp://www7.atwiki.jp/galgerowa2
ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ(パロロワ毒吐き別館BBS)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1203695602
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!
- 3 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:46:49 ID:Q+pkvyUP
- ・参加者一覧
3/3【THE IDOLM@STER】
○高槻やよい/○菊地真/○如月千早
5/5【アカイイト】
○羽籐桂/○千羽烏月/○浅間サクヤ/○若杉葛/○ユメイ
5/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】
○如月双七/○一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /○加藤虎太郎
5/5【機神咆哮デモンベイン】
○大十字九郎/○アル・アジフ/●ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/○ティトゥス
3/4【CLANNAD】
●岡崎朋也/○古河渚/○藤林杏/○古河秋生
4/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
○黒須太一/○支倉曜子/○山辺美希/○佐倉霧
2/2【極上生徒会】
○蘭堂りの/○神宮司奏
3/4【シンフォニック=レイン】
○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/●リセルシア・チェザリーニ
- 4 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:48:09 ID:Q+pkvyUP
- 4/4【School Days L×H】
○伊藤誠/○桂言葉/○西園寺世界/○清浦刹那
2/2【Strawberry Panic!】
○蒼井渚砂/○源千華留
6/6【つよきす -Mighty Heart-】
●対馬レオ/○鉄乙女/○椰子なごみ/○鮫氷新一/○伊達スバル/○橘平蔵
2/3【To Heart2】
○柚原このみ/●小牧愛佳/●向坂雄二
3/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
○アイン/○ドライ/○吾妻玲二
3/4【Fate/stay night[Realta Nua]】
○衛宮士郎/●間桐桜/○葛木宗一郎/○真アサシン
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】
○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留
5/6【リトルバスターズ!】
○直枝理樹/○棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/●宮沢謙吾/○井ノ原真人
【残り56/64名】
- 5 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:48:36 ID:Q+pkvyUP
- 【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
- 6 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:49:26 ID:Q+pkvyUP
- 【舞台】
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png
【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
- 7 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:49:58 ID:Q+pkvyUP
- 【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。
【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。
【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。
- 8 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:50:38 ID:Q+pkvyUP
- 【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
またはアル自身、ページを欠落させて参戦
または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ
その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります
- 9 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:50:58 ID:Q+pkvyUP
- 【予約について】
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。
予約無しの投下は不可。
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。
投下の際には予約スレで投下宣言すること。
- 10 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:51:54 ID:9HiByGlD
- >>1
スレ立て乙です
補足
ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart3(上記したらば内)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1207496477
※議論はこちらでどうぞ
ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ2(パロロワ毒吐き別館BBS)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1206184566
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!
- 11 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/13(日) 23:54:40 ID:Rwd6bb4Q
- 「わっ、わわわ!?」
「暴れるんじゃないよ、振り落とされたくなければね!」
「はっ、はいぃ!」
逃亡、開始。サクヤは一目散に逃げ出すことを選択した。
愁厳は無言で追う。待て、ということすらしない。そのような無駄なことに意識は割かず、ただ足を動かした。
待て、と言われて待つ者などいない。本来、その言霊は群集の中から逃亡する犯人を追うために利用するものだからだ。
サクヤの脚力は尋常ではなかった。渚砂一人を小脇に抱えてなお、常人を遥かに超える速度で森を走り回る。
(……人妖か。だが、身体能力で引けは取らん―――!)
牛鬼の身体能力で、サクヤを追いかける。
怪力無双の妖怪を祖先に持つ一乃谷兄妹は、流星の如き速度でサクヤの背後を追う。
それでもサクヤの足は速かった。単独ならば間違いなく、愁厳を巻くことなど造作もなかっただろう。
小脇に抱えた、蒼井渚砂さえいなければ。
「ちっ……渚砂! 尾花を離すんじゃないよ、それがアンタの役割だ!」
「わ、分かってます……!」
渚砂を見捨てる選択肢はない。
そしてサクヤの目的は羽藤桂との合流、それだけだ。殺し合いに乗った者と積極的に争うことではない。
早く、早く見つけ出したいのだ。間に合わないなど、あってはならないのだ。
いつも大切な人は指の隙間から零れていった。いつも間に合わなかった。自分のいないところで大切な人を失った。
- 12 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/13(日) 23:55:56 ID:Rwd6bb4Q
- 「くそっ、こっちは急いでるってのに……仕方ないね!」
「えっ、サクヤさん……!?」
「いいかい、渚砂! アンタは尾花を連れて逃げな! 第二回放送で集合だよ!」
渚砂を下ろす。周囲は森だ、うまく隠れれば逃走も不可能ではない。
尾花が護衛につく、というのなら心配はいらないだろう。
背後を見ると愁厳が涼しい顔に若干の苦痛を秘めて、追撃してくる。諦めてくれる気はないらしい。
サクヤは無手のまま、殺人鬼を迎え撃つ決意を固める。
「で、でも……!」
「問答している時間はないよ! とっとと行きなっ! 尾花、渚砂を連れていくんだ!」
指示通り、尾花は渚砂の服を甘く噛むと、くいくいっと引っ張る。
そしてサクヤはもう振り向かない。ただ、その背中が行けと告げていた。もう、振り向かないことを伝えていた。
渚砂は一歩、後ろに下がる。やがてゆっくりと、一歩一歩後退して……そして、がむしゃらに走り出した。
それでいい、とサクヤは思う。愁厳は刀を構えて突き進んでくる。それでいい、とサクヤは笑う。
- 13 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:56:07 ID:nSiwN9ij
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- 14 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:56:40 ID:IfZnNVRp
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- 15 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:56:44 ID:9HiByGlD
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- 16 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:56:45 ID:nSiwN9ij
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- 17 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:56:54 ID:qkbvs0vM
-
- 18 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/13(日) 23:57:44 ID:Rwd6bb4Q
- 「遊んでいる時間はないんだ。とっとと終わらせてもらうよ!」
「…………」
サクヤの髪が、長い髪が野性味溢れたものに変貌する。
爪が、牙が、肉体が荒ぶる獣へと進化していく。
ニヤリ、と笑った時に見えた犬歯は人間よりも遥かに鋭くなっていた。
曰く、大の男一人や二人など何とかなる、と彼女は言った。それは絶対の自信から来る自負である。
「そらっ!!」
「―――――ッ!!!」
瞬間の踏み込みと同時の一撃。
愁厳は回避を選択。サクヤの右腕の直撃を受けた背後の木に、痛々しい穴が穿たれた。
「……!」
「おっと、逃がしはしないよ。あたしは鼻が利くんだ、アンタに染み込んだ血の匂いはどこまでも追跡できるよ」
「…………む」
「アンタを放っとくと、桂が危ないかも知れない。ここで叩き潰しておいてやるよッ!」
再びの疾走、繰り出された腕の一撃をかろうじて刃で受け止めた。
そうして、剣士と鬼の戦いが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
- 19 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:58:04 ID:Q+pkvyUP
- 支援
- 20 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:58:38 ID:yDe8AK/q
-
- 21 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:58:47 ID:9HiByGlD
-
- 22 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:58:55 ID:qkbvs0vM
-
- 23 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/13(日) 23:58:56 ID:Rwd6bb4Q
- 「はあっ……!」
「甘いね!」
一閃、確実に首を狙った一撃を受け止められる。
相手は無手、何も持っていない。だが、愁厳の放った正確な斬撃はサクヤの腕によっていなされ、避けられる。
人妖として、牛鬼としての膂力と同等な力。
愁厳の瞳に僅かながら焦りが芽生えた。目の前の女性は強敵だ。手にかけた少年よりも、胴衣の侍よりも。
「ふっ……はああああっ!!」
「ぐっ、この……」
剣閃、牛鬼の剛力を利用した一撃を放つ。
いかに相手が怪物クラスとはいえ、何度も刀を手で受け止めることなどできるはずがない。
だからこそ、次の一撃は相手の腕ごと身体を叩き斬るように。
両手で握って全力で、サクヤの防御ごと殺害するために振るわれる今虎徹――――命を奪うことを義務付けられた刀。
「ふふん、焦ったね」
刹那、愁厳の思考が停止した。
視界からサクヤの姿が消えた、と認識した。気づけば彼の右手はサクヤの腕によって掴まれている。
不覚、と理解するのは一瞬のこと。
ぶーーーんっ、どさり。
- 24 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/13(日) 23:59:31 ID:yDe8AK/q
-
- 25 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:00:03 ID:nSiwN9ij
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- 26 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:00:15 ID:XSCWFa6B
- 突如として感じ始めた浮遊感。
一乃谷愁厳はサクヤの膂力のまま、そのままドッジボールのように放り投げられた。
「がっ……!?」
背中から叩きつけられる。口から漏れた空気が苦痛の色に染まる。
だいぶ、遠くまで投げられたようだった。敵の腕力のレベルは自分のような者とは段違いだと知らしめる。
勝てない、とは言わないし思わない。
だがここで無理をして戦うのは良作ではない。よって、ここから取るべき行動は生死をかけた殺し合いにあらず。
(ラジコンカー、か)
愁厳の最後の支給品は、殺し合いにはなんの役にも立たない玩具だった。
だが、これを使えばそれなりの行動は取れるはずだ。
遠隔操作で使うリモコンを木の蔓で固定する。指示はただひとつ、彼がこの玩具に期待した役割はただひとつ。
――――前進せよ。
◇ ◇ ◇ ◇
- 27 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:02:20 ID:ePkaA7aX
-
- 28 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:02:55 ID:N8ZC8Xh1
-
- 29 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:03:09 ID:2Ak0L4q/
-
- 30 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:03:33 ID:XSCWFa6B
- (ふん……様子見ってところかい……?)
思いっきりぶん投げてやったが、これで終わりとは思えない。
黒須太一と名乗った男は大木の木陰から様子を見ているのだろう。きつい鉄の匂いはそこにある。
繁みに覆われた大木、身を隠しやすい一帯に彼は待機している。視界に頼っては不意を突かれかねない。
「っ……!」
サクヤの耳に届いたのはモーターの駆動音。
車、はありえない。ならば何か――――小さい音だ。決してこちらに害のあるものじゃない。
がさがさ、と茂みが揺れた。駆動音が遠ざかっていく。
(移動した……? いや、モーターの音? この大きさはせいぜい……ラジコンくらいかね)
がさがさがさ、大きく茂みは動く。
ラジコンの音、妙に大きく揺れる茂みがサクヤを混乱に導くためにざわめいた。
「……すんすん」
だが、相手が悪かった。
浅間サクヤが重視するのは視覚ではなく、嗅覚。
視界はいくら眩ませられても、自分の嗅覚を誤魔化されたことは一度としてないのだ。
- 31 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:04:02 ID:N8ZC8Xh1
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- 32 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:04:04 ID:2Ak0L4q/
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- 33 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:05:16 ID:nSiwN9ij
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- 34 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:05:42 ID:XSCWFa6B
- (血の匂いは……消えてないねえ)
ぱきり、と腕を鳴らした。
腕力、脚力を最大限に生かすために腰を落とす。次の一撃、全力で敵の首を薙ぎ払う。
さながら山の狩人のように、血の匂いを道しるべとして獲物を仕留めよう。
(ラジコンカーは囮だね……? なら、これで終わりさ、黒須太一)
別れの言葉すら告げることなく。
遠ざかったモーター音になど意識を割かず、振るわれた豪腕は狙い通り、白い制服を完全に貫いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「なに、やってるんだろ……」
どれほど走っただろうか、蒼井渚砂はとぼとぼと森の中を歩いていた。
何も変わっていなかった。謙吾と死に別れて、何をすべきかも定まらない。ただ理想だけが、現実の中で蠢いている。
誰かのためになりたい。謙吾のような生き様を他の人に見せてやりたかった。
- 35 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:06:08 ID:2Ak0L4q/
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- 36 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:06:44 ID:N8ZC8Xh1
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- 37 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:07:17 ID:XSCWFa6B
- 「……なに、やってるのかな」
もう一度、呟いた。それが無常感を引き立たせる。
現実はこうもうまく行かない。いつまでも自分は守られるばかりで、誰かのために戦うことすらできない。
渚砂は腕の中に抱く尾花を抱きしめた。
少し苦しそうにしながらも暴れはしない。フカフカな白い毛が渚砂の頬を撫でた。
「…………あれ?」
ふと、こちらに向かって走ってくる足音に気づいた。
急いでいるようだった。誰かは分からない、渚砂は音のする方向へと視線を向けた。
深い繁み、森林の中を疾走する何者かは人とは思えない速度で向かってくる。
「サクヤさん、かな?」
無事だったんだ、と喜んだ。
良かった、もう置いていかれるのは嫌だったから。
喜色を含んだ表情でこちらに向かってくる人影を渚砂は迎え入れようとして、足を止める。
「あれ……?」
腕の中で大人しくしていた尾花が跳ねた。
地面に降り立った仔狐は足音の方向を見て威嚇している。眼光は鋭く、親の仇を見ているかのよう。
それでようやく渚砂は気づいた。ここに近づいてくる人影は決して―――――
- 38 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:07:34 ID:oxC8AKE8
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- 39 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:07:46 ID:ePkaA7aX
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- 40 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:07:47 ID:2Ak0L4q/
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- 41 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:07:52 ID:N8ZC8Xh1
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- 42 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:08:12 ID:XSCWFa6B
-
「……俺は運がいいらしい」
自分の味方ではないのだ、と。
血だらけの白い制服を脱ぎ捨てた、一乃谷愁厳が相変わらずの仏頂面でそこにいた。
◇ ◇ ◇ ◇
「何だって……!?」
困惑、サクヤが貫いた血だらけの白い制服が彼女から平静さを失わせる。
残っていたのは血塗れの白い制服のみ。
そこに一乃谷愁厳の姿はなかった。影も形もなく、ただ囮とされた学生服が残されていただけ。
- 43 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:08:29 ID:oxC8AKE8
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- 44 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:08:44 ID:N8ZC8Xh1
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- 45 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:08:45 ID:ePkaA7aX
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- 46 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:09:02 ID:XSCWFa6B
- (あのラジコンは囮と見せかけた本命……囮は血の染み込んだ学生服……)
確かにラジコンカーにしては大きな物が動いているな、とは思ったのだ。
だが油断した。自身の五感に、いつもの癖に頼りすぎた。濃密な血の匂いに無意識に引き寄せられていた。
まだ太陽の昇ろうとするかしないかの時間帯。視界ではなく、匂いのみを頼ろうとしたサクヤの慢心をあの男は見逃さなかった。
相手は殺し合いに乗っていると見て間違いない。
それでも逃亡したのは不利と悟ったからか、それとも標的を変えたのか。
ならば自分の殺害を諦めたあの男が、次に狙うのは……狙うのは、間違いなく。
「渚砂ッ……!」
その可能性に思い至り、サクヤは地を蹴る。
いつでも間に合わなかった己の宿命が脳裏に過ぎる。
いつでも、知らないところで取り返しのつかないことになっていた。間に合わなかった宿業を呪いながら。
結論から云おう。
やはり、彼女は間に合わなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
- 47 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:09:06 ID:nCHC2fWL
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- 48 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:09:48 ID:N8ZC8Xh1
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- 49 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:10:19 ID:2Ak0L4q/
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- 50 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:10:33 ID:N8ZC8Xh1
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- 51 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:11:23 ID:XSCWFa6B
- 「はあ……っ……はあっ……!」
苦しい、怖い。そんな感覚で胸が痛くなる。
殺意を向けられたのはこれで二度目だ。蒼井渚砂はろくに抵抗もできずに追い詰められた。
背後には木、前方には鋭い殺気と刀。向けられたのは透明な感情、そして死を運ぶ死神の能面だ。
(また、だ……あのときと、同じだ……)
黒い侍に襲われたときと同じ。
また震えている。また死にそうになっている。謙吾に救ってもらったときと何も変わっていない。
一応、前面には尾花が威嚇しているが効果はない。
刀は真っ直ぐに渚砂の心臓を狙っている。愁厳は小さな障害に一瞥することなく、殺すべき相手を見定めた。
(どうすればいいんだろう……どうすれば)
ヒーローが助けに来るのを待つか?
そうそう助けなど来ない。それに繰り返しだ。助けに来た人が自分を守って死んでいったら、どう償えばいいのだろう。
託された重みが渚砂の大きくない肩に圧し掛かる。
謙吾は死んだ。彼は自分を守って死んだ。だったら死ねない……こんなところで、彼の命を無駄にすることなんて、できない。
なら、逃げるしかないのだろうか?
不可能だ。サクヤも目の前の男も異常の脚力だった。逃げられるはずがない。
動物と人が鬼ごっこをするようなものだ。否、狩りといって過言ないだろう。
- 52 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:11:37 ID:2Ak0L4q/
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- 53 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:12:04 ID:N8ZC8Xh1
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- 54 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:12:49 ID:L1VAo5rt
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- 55 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:12:58 ID:2Ak0L4q/
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- 56 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:13:09 ID:XSCWFa6B
- ならばどうすればいい。
どうすればいいのか。
大好きな先輩、千華留の顔を思い浮かべながら考える。
命を捨てて護ってくれた謙吾の背中を思い浮かべて考えた。
(あっ……そうだ……)
怯えきった瞳が変化を迎えた。
震えていた足に力が入る。自分を抱きしめるだけだった腕が武器を構えていた。
謙吾が意地を通すために使った刀。
彼の生き様が、想いが、覚悟が詰まった刀を……愁厳に相対する、という意思表示とともに。
(そうだ。逃げるの、やめよう)
戦おう。
戦わなければ。
戦わないと彼の意志を受け継げない!
「はあっ……はっ、はっ……!」
「………………」
刀を握った。持ち方なんて分からないから、バットを持つみたいに。
かちかち、と震える手を強引に押さえつける。
勝てる、勝てないなんて問題じゃない。やらないと、戦わないと。ここで謙吾の死を無駄にはしない。したくないのだから。
足を踏み出せ、決意を固めろ。
- 57 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:13:11 ID:N8ZC8Xh1
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- 58 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:13:44 ID:N8ZC8Xh1
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- 59 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:14:07 ID:saGBwDXz
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- 60 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:14:10 ID:2Ak0L4q/
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- 61 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:14:55 ID:2Ak0L4q/
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- 62 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:15:59 ID:XSCWFa6B
- 「うっ……うぁぁぁぁあああああっ!!!!」
踏み込んだ。
刀を握って突進した。相手を――すために。――される前に――し返さなければ。
腕を振り上げた。型は滅茶苦茶だし、素人のような我武者羅さしか残っていない。
そんな愚かしい行動を、冷静に愁厳は見据えた。
ただ、その瞳が一瞬だけ憐憫にも似た感情を灯していた。愁厳はゆっくりと、確実に狙いを渚砂の首を狙った。
ヒュン―――
(あ……)
死んだ。
先手も後手もなく、ただ死んだ。
走馬灯にも近いものが渚砂の中に流れてくる。
時間がゆっくりと進む。愁厳が放った刀の軌道が彼女の瞳にも見えた。
その結果、渚砂は当たり前のように己の死を受け入れた。
(謙吾さん……千華留様……っ!)
- 63 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:16:28 ID:N8ZC8Xh1
-
- 64 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:16:48 ID:2Ak0L4q/
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- 65 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:17:02 ID:XSCWFa6B
- 悔しさに歯を噛み締めた、そのときだった。
飛翔する白い体、獣以上の俊敏さで愁厳へと向かってくる存在がいた。
「むっ―――――!?」
油断大敵。
所詮、仔狐と侮った驕りが確かに愁厳の中に存在した。
そんな愁厳の顔を歪ませるこの速度と威力。
尾花の体当たりは的確に愁厳の手首を強かに打ち、しっかり握っていたはずの今虎徹が弾き飛ばされる。
(しまったっ……まさか、妖の類か……!?)
焦燥は一度、しかしそれは絶好の機会であっただろう。
渚砂の振り上げた腕、握られているのは名刀、古青江。それは確実に相手を打ち倒す凶器だ。
「あっ……」
渚砂の口から呆然と声が漏れた。
後は振り下ろすだけ。それだけでこの男を――せるのだ。
それだけで、敵を、『殺』せるのだ。
「あぁぁぁぁああああああああっ!!!」
出鱈目に振り下ろされた一刀。ケーキ入刀のような唐竹割り。
少女の全力を持って振り下ろされた一撃。
それは狙いを外すことなく、そして愁厳は尾花に対しての警戒に一秒を費やした。
結果、その一秒の間に愁厳は切り裂かれた。
- 66 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:17:41 ID:N8ZC8Xh1
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- 67 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:18:22 ID:N8ZC8Xh1
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- 68 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:18:40 ID:2Ak0L4q/
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- 69 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:19:00 ID:XSCWFa6B
- 「っ……」
愁厳の肩から鮮血が飛び散った。
くらり、と眩暈がした。渚砂の顔色が青色に染まる。
人を傷つけた、という事実が渚砂の心を逆に切り裂いていた。
こんな重い衝撃を謙吾は背負って、その上で渚砂を守って見せたのか―――それを今更ながらに突きつけられた。
「……あ……」
渚砂の間違いはふたつ。
ひとつは戦うということは、人を傷つけること。殺すことだということを内心で誤魔化してしまったこと。
もうひとつは、目の前の男の前で隙を見せてしまうことだった。
「よくやった。だが、これまでだ」
振り下ろした刀が相手の肩を両断することはなく、ほんの少し斬り付けた時点で止まっていた。
渚砂の迷いに加え、日本刀とは西洋剣のように叩きつけて斬る武器ではない。
斬ると同時に引く、という達人技を持って敵を討つ。よって、上から振り下ろした少女の全力では、肩の骨など砕けない。
愁厳は強引に渚砂の身体を素手で薙ぎ払った。
まるで虫でも払うかのように、右腕に宿った牛鬼の怪力で渚砂は吹っ飛ばされた。
- 70 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:19:07 ID:N8ZC8Xh1
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- 71 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:19:51 ID:2Ak0L4q/
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- 72 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:19:55 ID:N8ZC8Xh1
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- 73 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:20:42 ID:XSCWFa6B
- 「あうっ……ぐっ、げほっ……ごほっ……!」
大木に叩きつけられ、空気が肺から残らず吐き出される。
握っていた刀は離してしまった。今は愁厳の手の中にあり、そしてその凶器は苦しむ彼女に向けられている。
背中から叩き付けられた衝撃、腹部に受けた拳の激痛でもはや渚砂は立ち上がることすらできない。
渚砂を護ろうとした尾花は再び愁厳に飛び掛かり、そして渚砂と運命を共にした。
吹っ飛ばされる身体、邪魔だと無感情に言い放った男が恐ろしかった。
負ける。
やられる。
殺されてしまう。
そんなのは嫌だった。
でもどうすればいいのかも分からない。
救いを求めてる人を救うと誓ったのに自分の身も護れない。
こんなの悔しい。こんなの悲しい。何の意味もなく殺されるなんて嫌だ。
「さらばだ」
短い別離の一言。
何の感慨も沸かない死刑宣告。
負ける、負けてしまう。考えがぐるぐる、と回るだけで思考が何も意味を成さない。
- 74 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:20:57 ID:N8ZC8Xh1
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- 75 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:21:23 ID:2Ak0L4q/
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- 76 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:21:30 ID:N8ZC8Xh1
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- 77 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:22:09 ID:2Ak0L4q/
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- 78 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:22:21 ID:oxC8AKE8
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- 79 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:22:28 ID:XSCWFa6B
- 「……ない」
「―――――?」
「負けないっ!」
だが、理屈ではなく感情だけが渚砂の中で爆発した。
ただ叫んだ、負け犬の遠吠えであろうとも。
もはや立ち上がることもできない渚砂が唯一自由になるのは心だけなのだから。
「負けない……負けてなんかやらない……!」
だから叫べ、叫び倒せと本能が吼える。
自分の中にこれほど暴力的な部分があったのか、と自身が驚いてしまうほど強い感情だった。
理不尽だ、あまりにも理不尽だ。
殺し合いを強制されることも、救おうとしてくれた英雄が死ぬことも、救われたはずの自分が殺されたことも。
「助けてもらったんだから……あなたみたいな人に、謙吾さんの命を無駄になんてさせないんだからっ!!」
誓ったのだから。
救われぬ者に救いの手を。
意地を示した宮沢謙吾という存在を肯定したのだから。
まだ願いを誰にも託してない。救いを求める人を救うことも、リトルバスターズに謙吾の伝言を伝えることすらも。
- 80 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:22:41 ID:saGBwDXz
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- 81 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:23:16 ID:N8ZC8Xh1
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- 82 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:24:12 ID:N8ZC8Xh1
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- 83 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:24:16 ID:XSCWFa6B
- 「だから……ッ!!」
だから死んではいけないのに。
振り下ろされる刃は止まらない。振るわれる凶器には一切のブレがない。
渚砂の言葉は届かなかった。一乃谷愁厳には届かなかった。
「……っ」
無念のまま、目を閉じた。
悔しさで瞳から涙が毀れるまま、熱い痛みに胸を震わせて。
――――――兄様?
兄には届かなかった言葉は、同居した妹の心に届いていた。
- 84 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:24:54 ID:N8ZC8Xh1
-
- 85 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:25:22 ID:XSCWFa6B
- ◇ ◇ ◇ ◇
――――――何をしているのですか、兄様ッ!?
一乃谷愁厳は舌打ちした。
気絶していたはずの妹、刀子が内で覚醒していた。
いや、目覚めたばかりなのだろう。まどろみの中で、見てはいけないものを見てしまった妹は凍りついている。
無力な少女を襲う兄の姿を呆然と眺めていた。
(まずい、か)
いずれ露見することは分かっていた。
だが、心の中で刀子と会話しながらではまずい。何しろ、先ほどの渚砂の叫びを聞きつけて近づいてくる影がある。
あの人妖、サクヤと戦いながら内では刀子の詰問ともなれば命の危険性すらある。
よろしい、ならば退却だ。無理をすることはない。救いたい妹は己の内にあるのだから。
己の血と、その他諸々で赤く染まった古青江。それに渚砂のデイパックを奪って逃亡を選択した。
- 86 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:25:31 ID:2Ak0L4q/
-
- 87 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:26:05 ID:N8ZC8Xh1
-
- 88 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:26:25 ID:2Ak0L4q/
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- 89 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:26:53 ID:XSCWFa6B
- 数十分後。さて、どうしたものかと溜息をつく。
己の中で切り裂くような、悲痛な声で語りかける妹の声に顔をしかめる。
―――――――兄様! どういうことなのか、説明してくださいませ!
これから妹を説得しなければならない。
どの道、通らなければならないことだ。だから説明しなければならない。
刀子はきっと怒るだろう、泣くかも知れない。そんなことをしてほしくない、と逆に説得してくるかも知れない。
だが、もう戻れないところまで来ている。
そんなことは出来ない。一乃谷愁厳は心と体を鬼にして進み続けなくてはならない。
「刀子、少し待て。もうすぐ放送が始まる」
廃屋の壁に背を預けて悪魔の放送を待つ。
妹は釈然としない様子のまま、殺人鬼と化した実の兄を不信の篭もった瞳で見つめ続けている。
さて、どう説得したものか。
最悪、どんなに頑固に呼ばれようとも体も交代はしないようにしておかなければ。
それではほんの少しだけ。
朝を迎えられた喜びに浸るとしよう。
【E-5 廃屋の外/1日目 早朝(放送直前)】
- 90 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:26:54 ID:N8ZC8Xh1
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- 91 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:27:53 ID:N8ZC8Xh1
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- 92 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:27:58 ID:XSCWFa6B
- 【一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:古青江@現実】
【所持品:木刀、支給品一式×2、ラジコンカー@リトルバスターズ!、ランダム不明支給品×1(渚砂)、ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart-】
【状態】:疲労(中)、右肩に裂傷、白い制服は捨てた状態
【思考・行動】
基本方針:刀子を神沢市の日常に帰す
0:放送を聴き、そして刀子を説得する
1:生き残りの座を賭けて他者とより積極的に争う
2:今後、誰かに名を尋ねられたら「黒須太一」を名乗る
【備考1】
【一乃谷刀子@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態:精神体、健康】
【思考】
1:放送を待ち、その後で愁厳を問い詰める
2:何が起きているのか、知りたい
【備考2】
※一乃谷刀子・一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−は刀子ルート内からの参戦です。
※不明支給品(0〜2)はラジコンカー@リトルバスターズ!のみでした。
※サクヤを人妖、尾花を妖と警戒しています。
- 93 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:28:13 ID:L1VAo5rt
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- 94 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:28:38 ID:N8ZC8Xh1
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- 95 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:28:48 ID:2Ak0L4q/
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- 96 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:29:28 ID:N8ZC8Xh1
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- 97 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:29:31 ID:XSCWFa6B
- ◇ ◇ ◇ ◇
「渚砂……しっかりおしよ、渚砂……」
「あっ……サクヤ、さん……」
ゆっくりと瞳を開いたさきに、申し訳なさそうな表情で自分を見上げているサクヤの姿があった。
どうやら自分は倒れているらしい。思いっきり殴り飛ばされたおかげで、身体が燃えるように痛い。
渚砂を抱き起こしたサクヤは、意識を失いかけている渚砂へと呼びかける。
力なく、渚砂は周囲を見渡した。あの男はどこにもいない。自分を襲おうとした青年はもういない。
「あっ……」
生きてる、まだ生きてるのだ。
途端に、安全を確認した瞬間、身体ががくりと崩れ落ちた。
ああ、安心してしまうと脱力するというのも本当だったんだなぁ、と渚砂は今更ながらに笑った。
笑ったまま、口元を可憐に上げながら、サクヤへと語りかける。
「勝った……私、勝ちましたよ、サクヤさん……」
「渚砂……?」
そうだ、勝ったのだ。
もう自分を害する存在はいない。
まだ死ぬわけにはいかなかったから頑張って、そして自分は生を掴んだ。
胸が熱くなるほど、胸が痛くなるほどの生の実感。
内に秘めたたくさんの願いを叶えるために。託された想いを配るために。
- 98 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:30:01 ID:ePkaA7aX
-
- 99 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:30:25 ID:N8ZC8Xh1
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- 100 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:31:33 ID:L1VAo5rt
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- 101 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:31:38 ID:2Ak0L4q/
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- 102 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:31:51 ID:N8ZC8Xh1
-
- 103 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:31:59 ID:XSCWFa6B
- 「まだ、やりたいこと、ありますから……千華留様に逢いたいし、謙吾さんの伝言を伝えないといけないし」
「…………ああ」
「助けを求める人を、助けるんです。嬉しかったから……助けてくれる人がいる、ということが嬉しかったから……」
本当に素晴らしいことなんだ。
もうダメだ、と諦めたとき、助けてくれる存在がいることは本当に素晴らしいことなんだ。
だから自分も誰かを助けたい、と思った。
「……なあ、渚砂。謙吾って奴が伝えたかった伝言、あたしにも教えてくれないかい……?」
「『俺は、やっと掴むことができた』……そう、伝えてほしいそうです」
「そうかい。……そうだね、助けてくれる人がいるってのは、嬉しいことだね。分かるよ」
ふと、渚砂は気にかかったことがあった。
どうしてサクヤは申し訳なさそうなんだろうか? 何でそんな悲しそうな顔をしているのだろうか?
そこまで考えてようやく認識した。
どろり、と胸から生きるために必要なものが零れていることに。
- 104 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:32:36 ID:N8ZC8Xh1
-
- 105 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:33:04 ID:XSCWFa6B
- 「あ、れ……? なん、で……?」
疑問は一瞬、やがて氷解する。
刀子の覚醒は間に合わなかったのだ。振り下ろされた腕は止まることなく、正確に。
勝った、と思っていたのに。
この胸の熱さは、この胸の痛みは敗北を証として刻まれていたに過ぎなかった。
嫌だ、死にたくない、謙吾が救ってくれた命が、いのちが零れていく、やだ……絶望が渚砂の心を呑み込み始めて。
「渚砂、アンタは勝ったんだよ」
その言葉が、崩壊する心を押し留めた。
呆然と見上げる渚砂の頭を撫でて、力強くサクヤは語った。
「アンタが頑張ったから、まだ生きてる。謙吾って奴の伝言はあたしが引き継ぐ」
「で、も……」
「救いたいってのもあたしがやってやる。千華留と合流したら、アンタは立派だったと伝える。だから、アンタは―――」
――――決して、貫こうとした誇りを失うな。
- 106 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:33:30 ID:N8ZC8Xh1
-
- 107 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:34:05 ID:XSCWFa6B
- 「すまないね……」
救えるものなら救いたい彼女が出した答えがそれだった。
サクヤの血を飲ませれば、ひょっとしたら助かるかも知れない。
それは渚砂を鬼にすることだ。そうすれば命を救うことはできたかも知れない。
しかし彼女は知らないが、その行為自体にも制限がもちろん掛けられている。
どの道、もはや死の危機に瀕した彼女に鬼の血を飲ませようとも、蘇生させることは不可能だ。
もはや、渚砂を救う手立てはなかった。
「でも、悔しいよ……サクヤさん……」
一筋、流れた涙が頬を伝ってサクヤの手に落ちる。
「死にたくないよ……サクヤ、さん……」
無念のままに、何度も彼女は呟いた。
どうして、この世界はこんなにも厳しいのだろう。どうして、と悔しさのままに渚砂は語る。
尾花が涙を赤い舌で舐めとっていく。
そんな愛らしい仕草も何の意味もない。サクヤは考える、必死に考えて。渚砂がせめて悲しまないように、と。
- 108 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:34:44 ID:N8ZC8Xh1
-
- 109 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:35:03 ID:2Ak0L4q/
-
- 110 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:35:33 ID:saGBwDXz
-
- 111 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:35:34 ID:N8ZC8Xh1
-
- 112 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:35:52 ID:XSCWFa6B
- 「渚砂、アンタは……!」
言葉にしようと思った言葉が、喉で止まった。
何故なら、もう間に合わなかったから。
渚砂の愛らしい瞳は、絶望を灯したまま光を失い……そのまま、サクヤに全てを委ねていた。
もう、彼女に声は届かなかった。
「………………」
力なく、サクヤは項垂れる。
また間に合わなかった。また、救えなかった。
謙吾が大馬鹿者というのなら、自分は役立たずだ。何も出来なかった、何もしなかった。
尾花が何度も、何度も渚砂の頬を舐める。それでも、もう彼女は何の反応も返さなかった。
「あたしは……」
間もなく、死を告げる放送が始まるだろう。
たった今、別れを告げた少女の名前も呼ばれるはずだ。
せめて、大切な桂の名前が呼ばれませんように――――サクヤは、そんなことを神に祈るしかなかった。
【蒼井渚砂@Strawberry Panic! 死亡】
- 113 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:36:17 ID:N8ZC8Xh1
-
- 114 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:36:32 ID:XSCWFa6B
- 【F-4 森林(北東)/1日目 早朝(放送直前)】
【浅間サクヤ@アカイイト】
【装備:尾花@アカイイト】
【所持品:支給品一式。『全参加者情報』とかかれたディスク】
【状態:健康、悲しみ】
【思考・行動】
0:あたしは……
1:羽藤桂の発見(単独ならば保護)
2:島にいる参加者の情報収集。及び、お互いの認知
3:首輪を外せる人物の確保
4:脱出経路の確保
5:可能ならばユメイは助ける。葛と鳥月は放置
6:蒼井渚砂から受けた伝言をリトルバスターズに伝える
7:1が済み、3と4が成功したならば、禁止エリアに桂と退避する
※『参加者情報』と書かれたディスクの閲覧には、PCなど他の媒体が必要です。
※神宮司奏・大十字九郎、源千華留、蘭堂りの、蒼井渚砂と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、【F-7】の駅に戻ってくる予定。
※すぐ近くに今虎徹@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜が放置されています。
※黒須太一(と名乗った一乃谷愁厳)を危険人物と判断。
【尾花@アカイイト】
【状態:健康、悲しみ】
【思考】
基本方針:葛と桂を捜すため、サクヤと同行する
- 115 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:36:47 ID:2Ak0L4q/
-
- 116 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/14(月) 00:37:52 ID:XSCWFa6B
- 投下完了です。
タイトルは『嘆きノ森の少女』です。
ご感想やご指摘をお待ちしております。多くの支援、ありがとうございました。
- 117 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:42:24 ID:saGBwDXz
- 投下乙です
渚砂……助かったのかと思ったが、やはりだめだったか
でも綺麗な死に様ではあったよな、安らかに眠ってくれ
そして刀子先輩、おはようございますw
- 118 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:44:06 ID:oxC8AKE8
- 投下乙
WA氏
ついに、刀子のお目覚めか。本当にナイスタイミングだ。
渚砂も死んだけどがんばったし、サクヤも空気脱出しそうだし
第1回放送に向けて、着々とキャラ立てが進みましたね
DI氏
この漫才っぷりがたまらん。
妄想で敵キャラが玩具にされるのは桂ちゃんのお家芸だねw
アルの考察と黒幕の強かさも良かったです
俺はMuなので拙作の感想は省略
- 119 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:45:09 ID:ePkaA7aX
- 投下乙です
予約の時点で渚砂死ぬかなーとは思ってたけど、助かったと思ったら、最後にまたどんでん返し
上手く揺さぶられて、予想の裏を突かれました
アクションシーンの安定したクオリティも流石
そしてようやく起き上った空気皇、これからどうなるんだろうw
- 120 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 00:51:21 ID:ixgrJzg8
- 投下乙
渚砂ぁぁぁーーーっ!!!
だが君の心ははサクヤさんが刻んだ!
安らかに眠れ…
刀子の目覚めが愁厳にこれからどう影響していくのか楽しみです
- 121 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 01:27:30 ID:2Ak0L4q/
- 投下乙です。いい仕事しておりますな
渚砂の誓い、受け取ったぜ。サクヤさんも頑張れ、超頑張れ!!
そして会長は刀子先輩をどうするのかw
マーダー不足の今の状況で会長を差し置いて空気皇に出番があるとは考えにくいw
- 122 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/14(月) 13:15:34 ID:PaJYnhoC
- 投下乙です
サクヤは間に合わなかった
↓
だけど刀子の介入で助かる
↓
と見せかけて致命傷だった。
実に見事な構成でした。
あそこで間に合わないとか書くなら、裏かいて助かるんだろう
と思って、やっぱりなと感じた直後に、もう一回裏をかかれた。
渚砂安らかに眠ってくれ……
- 123 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:04:32 ID:gXI5dKJK
- 底まで澄み切った綺麗な川。
そこで、どんぶらこ〜どんぶらこ〜と桃……、もとい黒須太一が流されていた
……のは、少し前の話。
今、太一は川の浅い所を下りつつ、考察をしていた。
「今まで出会ったのは3人、そして、その全てがエイリアン」
そう呟くことにより、太一の懸念は増大することになる。
その懸念とは、……自分達(曜子・美希・霧)以外の参加者は全て、または大部分がエイリアンではないか、ということである。
エイリアンの擬態能力の高さを考えると、人と思われる参加者の中にもエイリアンがいる可能性は否定できない。
事実、理樹というエイリアンの擬態は、仲間の存在に気がつかなければ分からなかっただろう。
……となると、自分達以外の参加者は誰であれ、警戒する必要があるといえる。
しかし、この考えは太一自身からしても、突飛であり、また危険でもあった。
なぜなら、エイリアン同士は徒党を組んでいるということが先ほどの接触で判明したからだ。
……あの2体、黒髑髏の男と理樹が組んだのは互いの弱点を補うためである。
つまり、擬態に長け戦闘能力の低い理樹が油断を誘うために相手と接触し、
油断した相手を戦闘能力の高い黒髑髏の男が襲う。
恐らくは、こういった作戦だったのだろう。
となると、人間も弱点を補うため仲間と協力しなければならない。
- 124 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:05:45 ID:gXI5dKJK
- ……問題は、相手がどちらかをどうやって見抜くかだ、それが難し……
「いや、まてよ」
本当に、唐突だが、太一にまた新たな考えが浮かんだ。
この殺人ゲームの目的、それが一種のショーなのではないか、ということである。
つまり、エイリアンと人間を大体同数ぐらい揃え、殺し合わせる。
――同数ぐらいなら、自分が今までエイリアンとしか会わなかったとしてもあまりおかしくはない。
そして、その場で見せる人間の挙動をモニターに写し、それを見て恐らくは、
このゲームの真の主催者であるエイリアンが楽しむ。
どちらかが滅びた時点で、このゲームは終了し、残りの参加者は文字通り処分される。
考えてみれば、主催者が言うことが本当かどうかは分からない。
むしろ、エイリアンが人間に教えることなど、嘘の可能性のほうが高い。
恐らく、参加者として使われているエイリアンは下位クラスのエイリアンなのだろう。
そう考えれば、仮の主催者と参加者の実力の差があまりに大きいのにも納得がいく。
となると、このゲームは参加者のエイリアンと仮の主催者を倒すだけでは終わらない。
真の主催者――あの2人を手足として使うからにはかなり強力なエイリアンであろう――を倒す必要性がある。
それをここにいる人間だけを集めて達成するのは相当困難なことだろう。
ここにいるエイリアンを倒すのは迅速かつ犠牲を最小限に抑えなければならない。
いざとなれば、エイリアンを利用することまで考えなければならない。
強制参加となれば、エイリアンの中にもこの状況に不満を持つものがいるのは間違いない。
そこにつけこめば、エイリアンの同士討ちを誘えるかもしれない。
もっとも、エイリアンと手を組む状況はあまり想定したくないので、これはあくまで最終手段だが……
考えをまとめた太一の目の前で、陸に上れそうな場所が現れた。
彼は迷わず陸へ上がり、そこで、一時的な休憩を取る。
- 125 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:06:57 ID:gXI5dKJK
- こうなれば、今後の行動も必然的に決まってくる。
まず、見た目から明らかにエイリアンと分かる参加者と遭遇すれば速やかに倒す。
武器に関しては、流されている間にサバイバルナイフを失ったが、まだ自分には『カラデ』と銃がある。
エイリアンが個別に行動していれば、早々負けることはないだろう。
もちろん、先ほど出会った3体、それにそのうちの1体が言っていたなつきも同様である。
見た目で判別できず、当面の敵にならない参加者とは、とりあえずともに行動する。
いくら擬態がうまいからといって、ともに行動していればそのうちぼろが出るはずである。
そして、エイリアンと分かれば倒す……、それだけの話だ。
また、知り合いである3人には早く合流したい。
フラワーズの2人には警戒されているとは言え、この状況を話せば協力してくれるはずである。
確実に信頼できる人間を多めに確保できれば、今後の行動にも幅がでる。
今後の方針は決まった。しかし、当面の状況をどうにかしなければならない。
武器に関しては、流されている間にサバイバルナイフを失ったが、まだ自分には『カラデ』と銃がある。
エイリアンが個別に行動していれば、早々負けることはないだろう。
よって武器の問題はないだろう。
問題は、この場所の正確な位置が分からないということである。
どうやら、東に流されたということだけは分かったが、どれだけ流されたのかは気絶していたため見当がつかない。
禁止エリアなるものが放送後に出現する以上、この状況はかなり危険だといえる。
早々に位置を割り出す目印となるものを探さなければならない。
ならば、今すぐに動く必要がある。放送は間近なのだから……。
- 126 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:09:39 ID:9XKsY+DN
- ……と思ったのだが、どうやら近くに廃校があるようだ。あっさりと場所を割り出せてしまった。
とりあえずは、一安心である。ここから北に行けば旅館があるはずだ。
そこに人がいる可能性は、少なくとも廃校より高いだろう。拡声器を使えばそれなりに人を集められるかもしれない。
さらに、うまく行けばびしょ濡れの衣服から着替えることもできる。
となれば旅館に向かおう。そう決めた太一は、デイバックを手に取り……、
否、取ろうとしてデイバックが無いことに気づいた。
「?」
川の流れている先を見ると、デイバックがかなり先まで流されているのが見える。
「ちょっと待てーー!!!」
さすがに、支給品全て(正確には手に持っている地図以外全て)を失うのは致命的である。
結局、彼は旅館を行くという目的を捨てて、デイバックを拾いに川を下る羽目になった。
- 127 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:10:24 ID:9XKsY+DN
- 【D-6 川/1日目 早朝】
【黒須太一@CROSS†CHANNEL】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、拡声器、グロック19(拳銃/弾数15+1/予備48)
【状態】:健康、疲労(中)
【思考・行動】
0:流されているデイバックを回収する
1:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る
2:拡声器を使って、人と交流する
3:『人間』をたくさん仲間にし、エイリアンたちを打倒する
4:『支倉曜子』『山辺美希』『佐倉霧』と出会えれば、仲間になるよう説得する
※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。
※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。
※直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)をエイリアンと考えています。
※サバイバルナイフがD-4からD-6までの川のどこかに沈んでいます。
- 128 名前: ◆jIcyyngFhE :2008/04/15(火) 00:12:21 ID:9XKsY+DN
- 投下完了しました。
タイトルは『太一の大?考察』です。
- 129 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:23:27 ID:sWLYksPd
- 投下乙です
太一、思考が理論的に、だけど凄まじく暴走してるw
まずエイリアンという妄想から離れろとしか……w
電波モードの太一が今後どう動いていくのか、続きが気になりますね
- 130 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:36:49 ID:3NhLo0y8
- 投下乙です
太一、本人は真剣なんだろうが…ねえw
あと、狂ってもお茶目なのが良いよね
- 131 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:53:38 ID:NK7D5V9T
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- 132 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:54:03 ID:M73HOTcl
- 投下乙。
歪んでるのに微笑ましいな、太一w
これがあのトモダチの塔状態の太一になったら止められなくなるぞw
- 133 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 00:54:51 ID:GRXwWOsj
- 「ユイコ? 傷は大丈夫?」
「ああ。元々大した事ない……それをクリス君が大騒ぎにしただけなのだが?」
「うっ……そう言われると言い返せないけど」
「まあ、冗談だ」
「冗談!?」
「ああ、傷が軽いのは本当だからな」
「もう……驚かせないでよ」
全くさっきからこんな調子だ。
ユイコは僕を背中越しからイジってばっか。
どうやら僕が思ってた以上に傷は軽いらしい。
病院にいく必要もないみたいだけどやっぱり連れて行かなくちゃならない。
僕のミスで怪我をさせたのは代わりがないのだから。
雨は変わらず強く振っていて僕とユイコの体を濡らす。
降りしきる雨はとても冷たいのに。
背中に伝わるユイコの体は温かくて。
そして心がドキドキしていて。
何故かそれがとても不思議で温かい。
とても不思議な感覚だった。
- 134 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:55:17 ID:lbe9bgdd
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- 135 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:55:23 ID:dOPRtQmI
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- 136 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:55:50 ID:NK7D5V9T
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- 137 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:56:09 ID:dOPRtQmI
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- 138 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 00:56:34 ID:GRXwWOsj
- 「……ユイコ。温かいね」
「……なあ!? な、何いってるんだ君は!?」
僕はつい思ったことを口にする。
何ってそのままだけど。
……あれ?
実はかなり恥ずかしい事言ったんじゃないか? 僕は。
途端に僕の顔が赤くなっていく。
どうにもさっきからこういうことが多すぎる気がする。
ペースを狂わされているのだろうか?
「ええい! さっさと行かないか! ファッキンボーイ!」
「いや、何で!?」
こういう冗談のような掛け合いもやっと慣れてきた。
それと同時に楽しく思えてくる。
今までない経験をしたようで。
いや、してないのだ。
僕はこういう経験を。
ピオーヴァに来て約三年間。
楽しく会話するという事を。
話すのはアーシノ、トルタだけで。
僕は積極的に話しに行かないし、僕目的で話に来る人もいない。
会話する事を楽しいとは思わなかったのだ。
だからこそ今ユイコとこう話せてることが新鮮であるのだ。
- 139 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:57:13 ID:dOPRtQmI
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- 140 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:57:46 ID:DjZ4Amd7
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- 141 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:57:56 ID:NK7D5V9T
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- 142 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:58:10 ID:dOPRtQmI
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- 143 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 00:58:18 ID:GRXwWOsj
- それはまた随分な皮肉だ。
こんな凄惨の殺し合いが行なわれる場所で。
僕は初めてそれを知って。
まったく神様はいったい僕になにをやらせたいんだろう。
……でも、まあ。
「こういうのも……いいか」
「何がだ? クリス君?」
「別に……ただユイコは面白いなと思っただけだよ」
「な!? そういうクリス君も面白いぞ」
「え、何処が?」
「さあ、何処だろうな?……ふふ」
なんだかよく分からない。
でもそのよく分からないことが楽しい。
矛盾してるけどそれが何処かとても心地がいいのだ。
それがコミニケーションというものだろうか?
分からない、経験がないから。
でもそれでもいいかとも思う。
なら僕は僕なりにしていけばいいのだ。
ユイコもユイコなりにやってると思うし。
- 144 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:58:24 ID:DjZ4Amd7
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- 145 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:58:40 ID:lbe9bgdd
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- 146 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:58:59 ID:dOPRtQmI
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- 147 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:59:01 ID:M73HOTcl
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- 148 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 00:59:07 ID:GRXwWOsj
- ……さて急がなくちゃ。
ユイコの傷がどんなに浅くても心配だから。
僕が犯したミスは僕が償わなくちゃ。
ユイコを無理させちゃいけないし。
僕は歩くペースを上げようとした。
「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」
その時バットを振り般若のような顔して女が襲いかかってきた。
僕はとっさに身を翻しそれを避ける。
ユイコはその拍子に自分から僕の背中から離れた。
「あんた! まだそんな事してるのよ!」
僕はこの声を聞いた事がある。
こんなに元気はなかったけど。
藤色の長髪が翻る。
そうそれは
- 149 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:59:21 ID:lbe9bgdd
-
- 150 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:59:41 ID:DjZ4Amd7
-
- 151 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 00:59:55 ID:GRXwWOsj
- 「キョウ!?」
最初に出会った藤林杏だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ノウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!! 何故なのであるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「じゃかましいいいいわああああああああああ!!! もう少し静にしろおおおおおおお」
- 152 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 00:59:56 ID:dOPRtQmI
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- 153 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:00:07 ID:WDJ5EVZt
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- 154 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:00:14 ID:DjZ4Amd7
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- 155 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:00:27 ID:dOPRtQmI
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- 156 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:00:38 ID:M73HOTcl
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- 157 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:00:44 ID:GRXwWOsj
- ああ、五月蝿い!
さっきからずっとこんな感じだ。
ウエストがなにやら鍵盤のようなものいじってさっきから唸ってばっかである。
どうやら弾けず苦悩してるらしいのだ。
苦悩しているのはわかるんだけどもうちょと声量を下げて欲しい。
これでは誰かに見つかってしまう。
とりあえず黙らす為一発ぶん殴っておく。
これでたまにまともの事を言うのだからたちが悪い。
まったくもう。
「うわあああい!? 何をするのであるかあああああ!? 凡骨リボォォォォン!
ハッ!? さては貴様! 巷で大流行のツンデレであるな!
『もう、その声をずっと聞いていたいんだけど、少し静かにしてよね! 馬鹿』
つまりこういうことであるか! なら早くそういのである!
まったく凡骨リボンはツンデレなんだから! もう!」
「アホか! ツンデレなんて最近廃れてきたわあああ!」
あーもう構うだけで疲れてくる。
やっぱりついていくの止めようかしら。
でも止めるわけにはいけない。
朋也にあって謝ってウエストに謝ませるそのときまでは。
私のせいで朋也はああなってしまった。
でも私は謝りたい。
許してくれるなんて思ってない。
でも1パーセントでも可能性が残っているなら私は諦めるわけには行かないのだ。
この事を教えてくれたのは目の前にいる変態。
もといウエストなのだから。
- 158 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:00:44 ID:DjZ4Amd7
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- 159 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:01:02 ID:lbe9bgdd
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- 160 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:01:25 ID:dOPRtQmI
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- 161 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:01:34 ID:DjZ4Amd7
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- 162 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:01:34 ID:WDJ5EVZt
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- 163 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:01:53 ID:NK7D5V9T
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- 164 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:02:02 ID:GRXwWOsj
- ならやらなくちゃ私が。
そのために私自身を奮い起こす。
会えるかな?
いや、会わなくちゃ。
絶対会うんだ。
そう思った瞬間木々の間から人影が見えた。
もしかして朋也かな?
でもそれは朋也ではなく忌むべき存在。
深い深い緑色の目をした外人さん。
「クリス……ヴェルティン」
私が最初に出会った人。
そして私が怯える原因を作った人。
雨が降ってるなんかいって。
あのスタンガンで私を……
そう思うと再び恐怖が体を襲ってくる。
……大丈夫。
さっき励まされたから落ち着いて。
恐怖に押し潰されてはだめ。
私は心を落ち着かせクリスの方をよく見る。
- 165 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:02:23 ID:DjZ4Amd7
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- 166 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:02:40 ID:M73HOTcl
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- 167 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:02:58 ID:dOPRtQmI
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- 168 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:03:09 ID:M73HOTcl
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- 169 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:03:16 ID:WDJ5EVZt
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- 170 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:03:17 ID:lbe9bgdd
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- 171 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:03:23 ID:DjZ4Amd7
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- 172 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:03:26 ID:NK7D5V9T
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- 173 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:03:37 ID:GRXwWOsj
- ……紅白の綺麗な服を纏ってる。
……なぜ巫女服?
やっぱり変態だ。
どうして女物の服を着ている?
分からないわ、変態だから?
そしてその背中には……女の人!?
全身をクリスの背中に預けているよな。
なんでクリスの背中に?
……まさか。
私は一つの結論に到った。
それはクリスに襲われたという事。
あのスタンガンで。
きっと体の自由を奪って。
きっと最悪な事をやるんだ。
……最悪、あの男!
途端に怒りが爆発しそうになる。
そうだ。
あの男が私に近寄らなければ朋也も撃つ事なかった。
あの男が。
行き場のない怒りが全身を覆う。
あの女の人を助けなきゃ。
変態のすきにさせちゃいけない。
- 174 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:04:02 ID:DjZ4Amd7
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- 175 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:04:23 ID:dOPRtQmI
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- 176 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:04:47 ID:dOPRtQmI
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- 177 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:04:56 ID:GRXwWOsj
- 助けよう、私が。
そして私はクリスに向けて銃を構える。
……無理だ。
背中にいる女の人に当たるかもしれない。
それは避けなきゃ。
助けようとしてその人撃っちゃったら意味がないのだ。
もう誤射だけは嫌だ。
じゃあどうしたら?
そこで目に入ったのはウェスト。
手に持っているバット。
それだ!
「ウェストちょっと貸しなさい!」
「ちょ!? 凡骨リボン何をする!? それは我輩のだああああ!?」
「いいから! ウェストそこで待ってなさい!」
私はウェストのバットを分捕りクリスのほうに向かって走り出す。
絶対やらせるもんか!
幸いクリスは気づいてない。
今がチャンス!
このくたばれ変態!
「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」
- 178 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:05:02 ID:DjZ4Amd7
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- 179 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:05:16 ID:lbe9bgdd
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- 180 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:05:33 ID:dOPRtQmI
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- 181 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:05:41 ID:DjZ4Amd7
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- 182 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:00 ID:WDJ5EVZt
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- 183 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:06:01 ID:GRXwWOsj
- 私は思いっきりバットを振る。
だけどそれはクリスが感良く避けた。
この!
クリスはまだ驚いてるままだ。
女の人は離れたみたいだけど
「あんた! まだそんな事してるのよ!」
クリスに向かって叫ぶ。
私だけじゃなくて違う人まで。
クリスはきょとんとしてそして思いついたように
「キョウ!?」
と叫ぶ。
やっと思い出したか。
そんな姿にさらに怒りが増す。
「そんな事って別に大した事じゃ……」
大した事じゃないって!?
私をスタンガンでやろうとしたことが?
ふざんけじゃないわよ!
「この! ふざけるな! 殺し合いに乗った変態が!」
- 184 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:10 ID:dOPRtQmI
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- 185 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:21 ID:DjZ4Amd7
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- 186 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:25 ID:NK7D5V9T
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- 187 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:43 ID:lbe9bgdd
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- 188 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:52 ID:WDJ5EVZt
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- 189 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:06:52 ID:dOPRtQmI
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- 190 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:07:05 ID:M73HOTcl
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- 191 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:07:19 ID:dOPRtQmI
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- 192 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:07:19 ID:DjZ4Amd7
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- 193 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:07:35 ID:GRXwWOsj
- 私は怒りに任せてバットを振る。
縦、横とバットを凪ぐ。
クリスはそれをすれすれで避け続ける。
「あんたのせいでええ!」
「わあ!?」
私の渾身の横ぶり。
クリスそれを避けたが尻餅をついてしまった。
チャンス!
私は銃を取り出し彼に向ける。
最後にクリスに一つだけ聞く。
「あんた……なんで雨が降ってるなんて嘘ついたのよ」
「……振ってるよ? 今も土砂降りに。そっちこそなんで嘘ついてるの?」
ああ、この男はなんて嘘を。
今は空があけてきているのに。
分からない、分からない。
でももういい。
嘘つきめ。
私は銃のトリガーをひこうとする。
これで終わり。
でも
- 194 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:08:00 ID:DjZ4Amd7
-
- 195 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:08:33 ID:dOPRtQmI
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- 196 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:08:37 ID:DjZ4Amd7
-
- 197 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:08:44 ID:GRXwWOsj
- 「そこまでだ。引いたら貴様ごと撃ち殺す」
背後から底冷えする声。
頭に突きつけられた銃。
突きつたのは襲われたはずの少女。
どうして?
頭の中で疑問符が広がる。
なんで?
私は彼女を助けようとしてるはずなのに。
どうして?
「どうして……?」
「何、言ってるんだ。君は? いいか私は非常に機嫌が悪い。返答次第では容赦しない」
え、え?
なんで?
どうして……。
とりあえず弁明しなきゃ。
「機嫌が悪い?」
「そうだ。非常に機嫌が悪い。折角心地のいい音楽に身を任せてたというのに殺し合いに乗った人間に邪魔された。
そして今まで折角クリス君を弄って楽しんでたのにまたも邪魔された」
「弄ってたの!?」
「クリス君、気付かなかったのか?……それにクリス君は私の為に病院まで連れて行こうとしたのだ。大した傷でもないのに。
クリス君は気にして……そんな馬鹿なお人よしを殺し合いに乗った変態だと……ふざけるな!……変人なのはわかっているが」
「わかってる!?」
「まあ、冗談だ。クリス君……で、貴様は何でクリス君を襲った?」
- 198 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:09:10 ID:DjZ4Amd7
-
- 199 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:09:11 ID:lbe9bgdd
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- 200 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:09:49 ID:dOPRtQmI
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- 201 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:09:56 ID:M73HOTcl
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- 202 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:10:14 ID:GRXwWOsj
- 何、この人。
顔が見えないのに凄く恐怖を感じる。
間違いなく全身から怒ってる、さっきの私と一緒だ。
でも怒ってる対象が私。
何でこんな事になってるんだろう?
でも言わなきゃ。今私は死ぬ訳にはいかない。
「だってクリスが貴方を襲っている様に見えたから。スタンガンでやられたかと」
「まさか? それにクリス君はスタンガンなんて持ってないぞ。なあ?」
「うん、それは聞いた事ないし」
嘘。
持ってたよ、クリスは。
今は持ってないかもしれないけど確実に持ってたはずだもん。
持ってったんだ!
「持っていた! クリスは私を襲おうとしていた!」
「……いい加減にしろ。確かに私は殺し合い始まって直にクリス君にあったわけじゃない……君がクリス君にあってたことは信じよう……でもな。
私はそんな最悪な人間の心を見抜けないほど馬鹿じゃない……クリス君はそんな人間じゃないことはわかってる……だから私はクリス君を信じる」
「ユイコ……」
「ま、という訳だ。勘違いかもしれない。君の……認めるのなら別に殺しやしないさ」
- 203 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:10:28 ID:DjZ4Amd7
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- 204 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:10:43 ID:lbe9bgdd
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- 205 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:10:59 ID:DjZ4Amd7
-
- 206 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:11:06 ID:dOPRtQmI
-
- 207 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:11:28 ID:GRXwWOsj
- なによ……それ。
私だけ悪役?
そんな訳ないよ。
私は覚えてる。
あの恐怖を。
あの怯えを。
だから
「勘違いじゃない……スタンガンは持っていた!」
「……強情だな。君も」
その女―ユイコ―はため息をつき銃をさらに頭に強く押し込む。
……ああ。
もう無理なのかなあ。
信じてもらえない。
私は間違った事なんかしてないと思ったのに。
「……信じる人間はいないか……」
「なにしょぼくれおるのである! 凡骨リボーーーーーーン! 貴様らしくないのである!」
え……?
ウェスト?
どうして?
- 208 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:11:48 ID:WDJ5EVZt
-
- 209 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:11:50 ID:DjZ4Amd7
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- 210 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:12:07 ID:dOPRtQmI
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- 211 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:12:19 ID:NK7D5V9T
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- 212 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:12:23 ID:M73HOTcl
-
- 213 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:12:30 ID:GRXwWOsj
- 「よくも我輩を置いていって! 寂しくて死にそうだったのである! 武器も持っていって!
我輩は可愛い子猫であるぞ? もっと扱いをよくするのだ! 仲間なのであるからな!」
「何者だ。貴様は?」
「よくぞ、聞いてくれた! 我輩の名は次元一の科学者ドクタァーーーーーーーーーウェーーーーーーーーーストーーーーーー!」
「うむ……それでこの少女とは仲間なのかな」
「華麗にスルーされたのであ〜〜〜〜〜〜る!? 貴様中々やりおるである!
まあいいのである。 兎も角その女! か〜〜〜〜なりの凡骨だが言ってることは正しいのである! 我輩が言ってるので正しいである!
間違いないである!」
ウェスト……
いた信じてくれる人が。
変態どうしようもない人間だけど信じてくれる仲間が。
ありがとう。
私は一人じゃなかった。
「ふむ……ではどうするかな……クリス君?」
ユイコが迷ってる時クリスがこっちに向かってきた。
話の元凶が。
一番最初に私に近づいて時のように。
柔らかい笑みで。
深い深い緑色の目を持って。
そして私の顔を覗き込む。
「……えっと、キョウ……僕が知らないうちに君を不安にさせたようでごめん……でも君を襲おうしたわけじゃないんだ……それは確かだよ」
そしてクリスが必死に頭を下げた。
- 214 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:12:36 ID:lbe9bgdd
-
- 215 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:13:23 ID:M73HOTcl
-
- 216 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:13:25 ID:WDJ5EVZt
-
- 217 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:13:39 ID:dOPRtQmI
-
- 218 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:13:45 ID:lbe9bgdd
-
- 219 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:13:48 ID:GRXwWOsj
- え……。
なんか凄い意外だった。
クリスがこんな事をするなんて私は思っていなかったのだ。
これは演技?
……違う。
こんなに必死には普通にならない。
……もしかしてクリスは本当に襲うつもりじゃなかったのかな。
あの時の事を冷静に考えよう。
私は怯えてて。
それをクリスが励まして。
雨が降ってるなんか嘘ついて。
それで私はスタンガンを見つけて襲われると思って逃げ出した。
……あれ?
私が駄目なんじゃないの。
クリスに否は……ないと思う。
うわ……私が……
「ねえ……仲直りしてくれるかな? キョウ?」
- 220 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:13:57 ID:DjZ4Amd7
-
- 221 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:14:41 ID:GRXwWOsj
- 彼が差し伸べた手。
それはとても温かそうで。
でも何処か震えてて。
……彼も緊張してるんだ。
許してもらえるかと。
私は……
私はどうする?
その手を握るの?
彼なりの誠意に対してどうするの?
勿論決まってる。
私は手に持った銃を……
- 222 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:14:49 ID:dOPRtQmI
-
- 223 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:15:31 ID:DjZ4Amd7
-
- 224 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:15:38 ID:M73HOTcl
-
- 225 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:15:43 ID:GRXwWOsj
- 落とした。
そして彼の手を握る。
「クリス……こちらこそ御免なさい。私が勘違いしてたの。御免なさい」
「うん……こっちもそうだ、なら仲直りで」
「ええ……」
仲直りの握手。
私も笑う。
クリスも笑う。
これでいい。
もう疑う必要性なんかない。
「ふむ……ならいい。元々殺したくなどなかったしな」
ユイコっていった少女が私の頭から銃を下げる。
そしてこっちのほうに着て笑う。
あの底冷えのした声とは予想外の綺麗な笑顔だった。
うん、これでいいんだ。
変に殺しあう事もなく皆で仲良く出来ればそれいいから。
でもひとつだけ気になった事がある。
- 226 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:16:09 ID:WDJ5EVZt
-
- 227 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:16:18 ID:dOPRtQmI
-
- 228 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:16:23 ID:lbe9bgdd
-
- 229 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:16:25 ID:M73HOTcl
-
- 230 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:16:26 ID:GRXwWOsj
- 「ねえ……? クリス。何で雨が降ってるっていうの?」
「……いや、だから振ってるでしょ? キョウこそなんで?」
ああ……また。
これで私は怯えたというのに。
また同じ事を言ってる。
何故?
そこまで嘘をつく必要があるって言うの?
「あ……。キョウっていったな。ウェスト氏も来て欲しい。クリス君はそこで待って欲しい」
「あ、ちょ、ちょっと待って」
ユイコが私をちょっと離れたところに連れて行こうとする。
どうやらクリスに聞かれたくないようだ。
何故だろう?
疑問に思うと同時にきっとこの謎が明かされるんだろうと思った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 231 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:17:16 ID:WDJ5EVZt
-
- 232 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:17:24 ID:DjZ4Amd7
-
- 233 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:17:27 ID:lbe9bgdd
-
- 234 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:17:47 ID:dOPRtQmI
-
- 235 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:17:59 ID:NK7D5V9T
-
- 236 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:18:13 ID:GRXwWOsj
- ふう……なれない事はするもんじゃないな。
初めて自分からこんな積極的に話した。
でもあの状況は僕が動くしかなかった。
最悪、キョウもユイコもどうなってか判んないから。
僕のせいで誰か死んで欲しくなかったのだ。
だから僕から動いた。
手が震えた。
許してもらえるかと。
初めて積極的に会話をしたせいかもしれない。
でも結果は事なきを得ることが出来た。
よかった。
何もおきなくて。
そんなことを考えてるとユイコたちが帰ってきた。
「待たせたな、クリス君」
「いや……大した事ないよ」
「そうか、ならいい」
ユイコは笑って僕に言った。
続いてウエストさん、キョウが。
キョウは僕の事をまじまじ見つめて
- 237 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:18:18 ID:DjZ4Amd7
-
- 238 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:05 ID:lbe9bgdd
-
- 239 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:13 ID:dOPRtQmI
-
- 240 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:19:23 ID:GRXwWOsj
- 「これからもよろしくね! クリス!」
「う、うん」
そうキョウ自身が納得させるようにキョウはそういった。
どうしたんだろう?
ユイコは何かキョウに話したんだろうか?
判んない。
でも追求するまでもないだろう。
「成程である。青年! 実に面白いである!」
「はい? 僕が?」
「そ〜〜〜うである! 何故そうなるか実に興味深いなのである!」
「は、はあ」
ウェストさんも面白い事を言う。
ユイコと全く一緒だ。
ウェストはまだぶつぶつ何か言っていたが僕は気にする事もなかった。
それにしても随分とにぎやかだ。
こういうとき演奏でもしたいな。
そんなことしてる暇ないんだけど。
あ! そういえば!
「ユイコ! 傷は!」
「……ん? ああ。ウェスト氏に治してもらったよ。どうやら心得があったらしい」
そうなんだ。
ウェストさんって結構凄いのかもしれない。
見た目も変だし言動も何処か変だけど。
人は見かけに寄らないものだ。
- 241 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:37 ID:lbe9bgdd
-
- 242 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:40 ID:M73HOTcl
-
- 243 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:41 ID:NK7D5V9T
-
- 244 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:48 ID:DjZ4Amd7
-
- 245 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:19:56 ID:dOPRtQmI
-
- 246 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:20:35 ID:dOPRtQmI
-
- 247 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:20:43 ID:GRXwWOsj
- 「え!?」
その時キョウが突然驚いた声を上げる。
なにやら小さな機械を見て声を上げたようだ。
どうしたんだろう。
「どうしたのだね杏君?」
「手持ち沙汰になったから今……支給された携帯見てたんだけど……アプリの中にこれが」
「……何々? 『暫定死者』!?」
珍しくユイコが焦った声をだす。
そしてユイコがその機械をいじりだして
「『このアプリでは死者を放送より先にお知らせします。現在の情報は開始2時間の間の情報です』か」
どうやら死者の発表らしい。
その瞬間全員の空気が変わった。
僕はどうしても嫌な予感がぬぐえないでいるのだ。
なんだろう? この体に張り付く嫌な汗は。
「『向坂雄二、間桐桜、』」
そして呼ばれた。
呼ばれて欲しくなかった。
そうずっと願っていたというのに。
「『リセルシア=チェザリーニ、以上』」
- 248 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:20:53 ID:NK7D5V9T
-
- 249 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:21:29 ID:DjZ4Amd7
-
- 250 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:21:56 ID:dOPRtQmI
-
- 251 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:22:00 ID:GRXwWOsj
- あ……れ。
おかしいな?
何かおかしい。
おかしいんだ。
雨が急に強くなるのを感じた。
バシャバシャと音が五月蝿い。
そのせいで世界が僕一人しか感じられない。
体がひどく塗れて塗れて何も感じられなくなるぐらいに。
頭が痛い。
のどが渇く。
心がきしむ。
足がふら付く。
体全体が震えてしょうがない。
ああ
「リセ! ……リセルシア!」
ああ
「嘘なんだよね……リセルシア」
……そうなんだ
「嘘じゃないんだ……そうなんだ」
- 252 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:22:00 ID:lbe9bgdd
-
- 253 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:22:15 ID:NK7D5V9T
-
- 254 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:22:27 ID:DjZ4Amd7
-
- 255 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:23:10 ID:dOPRtQmI
-
- 256 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:23:37 ID:DjZ4Amd7
-
- 257 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:24:03 ID:GRXwWOsj
- 嘘じゃなくて現実。
もう戻ってくる事はない。
それは死。
確実に会えないのだ。
あの少し小動物に似た少女に。
あの透き通るような笑顔に。
聞き手を安らげるあの声に。
「ああ……リセ……あ……死……ああああああああああああああああああああああああ」
リセルシアは死んだ。
もういない。
いないんだ。
頭が痛い。
痛い。
吐き気がする。
これが身近なものでもないのに。
涙が。
止まらない。
「あああああああああああああ!!! どうして! どうして!」
いたい。
心も、頭も。全部が。
全てが拒絶するような。
この世界が偽りであるような。
- 258 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:24:19 ID:dOPRtQmI
-
- 259 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:24:35 ID:lbe9bgdd
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- 260 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:24:38 ID:NK7D5V9T
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- 261 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:24:52 ID:DjZ4Amd7
-
- 262 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:25:10 ID:GRXwWOsj
- いたい
涙が滲んで……あれ?
何かが見える。
あれはアリエッタ?
あそこにいるのは僕?
何か話してる?
この後何があったんだっけ?
分からない。
思い出せばいい?
思い出さないほうがいい?
僕は……?
どうする?
僕は……
- 263 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:25:26 ID:dOPRtQmI
-
- 264 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:25:41 ID:M73HOTcl
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- 265 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:25:57 ID:lbe9bgdd
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- 266 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:26:08 ID:DjZ4Amd7
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- 267 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:26:11 ID:dOPRtQmI
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- 268 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:26:38 ID:GRXwWOsj
- 「クリス君っ!!!!!」
突然覚醒した。
あれ?
ここは?
ああ、殺し合いの場にいて。
そして。
リセが死んだ。
感情が判んない。
僕はどんな顔をしている?
どんな顔でいるんだろう?
分からない。
ああ。
- 269 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:26:56 ID:dOPRtQmI
-
- 270 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:26:56 ID:WDJ5EVZt
-
- 271 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:27:23 ID:GRXwWOsj
- どうすればいい?
どうすれば?
死は。
死は考えさせる事を放棄させるのかなあ?
「クリス君! しっかりしろ! しっかりするんだ」
「ユイコ……」
ユイコが体を震わせる。
そして強く抱きしめる。
まるで僕をこの世界に留まらせるの如く。
僕はここにいなくちゃいけないというように。
じゃあどうすればいいのかな?
僕は何をすればいいのかな?
わかんないよ。
僕は生きるためにどうしたらいいのかな?
「ユイコ……死んだんだ。リセっていう僕の知り合いが」
「……そうか」
「可愛くて……何処か小動物なようで……綺麗な笑顔だった」
そう確実に思う事は一つ。
「こんな所で死ぬ子じゃなかった!」
- 272 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:27:30 ID:M73HOTcl
-
- 273 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:27:54 ID:DjZ4Amd7
-
- 274 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:27:56 ID:lbe9bgdd
-
- 275 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:28:07 ID:dOPRtQmI
-
- 276 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:28:35 ID:GRXwWOsj
- もっと歌っていたかっただろう。
あの歌を。
アンサンブルもしたかっただろう。
あの場所で。
これからも。ずーっと。
そのはずだったんだ。
なのに。
「どうして……死んだのかな?」
どうしてというそんな疑問が体を襲ってくる。
彼女に死ぬ理由なんてあったかな。
あるわけない。
皆、皆一生懸命生きてるのに。
「それはわかんないな。私にも……でもクリス君? 今の君はできる事はある筈だよ?」
「何が……?」
「それは君が決める事だ。リセルシアという子に君ができる事を」
僕がリセにできる事?
- 277 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:28:57 ID:lbe9bgdd
-
- 278 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:29:10 ID:dOPRtQmI
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- 279 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:29:13 ID:M73HOTcl
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- 280 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:29:14 ID:DjZ4Amd7
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- 281 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:29:17 ID:WDJ5EVZt
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- 282 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:29:49 ID:dOPRtQmI
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- 283 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:29:52 ID:GRXwWOsj
- わかんない。
リセの為にどうすればいいのかな?
僕は何をすればいいのかな?
彼女が笑っていられる為に。
その時ふと目に付いたものがあった。
それは僕が長い間いじっていた物だった。
何故こんなところになんて疑問は直に消えて思いついたものがある。
「おもいついた……ユイコ。リセにできる事」
「そうか……」
ユイコが僕を放すと僕はそれに向かって歩き出す。
一歩一歩確かに。
雨が体を激しく打つ。
体がもう悲惨だ。
最も気にしないけど。
だって今はやりたい事があるから。
「ウェストさん……借ります」
「ホワイ? 何故なのである? ってもう持っていってるのである!」
僕はその道具が入ってる鞄を受け取る。
取り出したのは
そう
「……フォルテール……こんなところにあったのか」
- 284 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:30:07 ID:lbe9bgdd
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- 285 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:30:17 ID:NK7D5V9T
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- 286 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:30:34 ID:DjZ4Amd7
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- 287 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:30:52 ID:dOPRtQmI
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- 288 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:30:52 ID:GRXwWOsj
- フォルテール。
僕が三年間演奏していたもの。
変わらない姿で鞄に入ってた。
その時偶然フォルテールに刻み込まれた名前を知る。
ああ。
神様はどうしていつも僕に悪戯をするのだろう?
刻み込まれた刻印それは
『Liselsia Cesarini』
ああ……なんて運命。
ここで僕はリセに会うなんて。
リセのフォルテール。
彼女にとっては苦痛の何物でもなかったものに。
でも今はちょうどいい。
借りるよ。リセ。
なら鞄にもあれがあるはず。
そう思って鞄をまさぐるとあった。
彼女が歌った歌の楽譜が。
これでいい。
これで準備は出来た。
フォルテールをセットする。
3年間の慣れた手つきで簡単に出来た。
- 289 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:31:00 ID:M73HOTcl
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- 290 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:31:12 ID:dOPRtQmI
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- 291 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:31:23 ID:lbe9bgdd
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- 292 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:31:24 ID:WDJ5EVZt
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- 293 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:31:50 ID:DjZ4Amd7
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- 294 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:32:20 ID:lbe9bgdd
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- 295 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:32:24 ID:GRXwWOsj
- そして予備動作。
軽く鍵盤を叩く。
変わらぬフォルテールの音色。
……準備完了。
送るよ。リセ。
君に、君の為に。
僕が君にできる精一杯のことを。
だから聞いて欲しい。
「……何かひくのかい? クリス君」
「……うん。彼女の為に」
そうリセルシアに送るこの曲。
どんな感じで響くのだろうか?
わかってる。
多分僕が出せる最高の音色で。
出せると思ってるからだ。
「……何の曲を弾くの?」
キョウが尋ねて来る。
- 296 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:32:52 ID:dOPRtQmI
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- 297 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:32:55 ID:DjZ4Amd7
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- 298 名前: ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:33:19 ID:GRXwWOsj
- それはとっくに決まってる。
リセが歌い続けたあの歌。
あの透き通るようなそれでいて心を暖める歌。
曲名は決まってないんだっけ?
「曲名はないんだけど……そうだなあ……リセの為に送る曲……いやあれはリセそのもの曲」
あの歌はリセしか歌ってなかった。
そしてリセの為。
だからこう告げる。
その曲名は。
- 299 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:33:20 ID:lbe9bgdd
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- 300 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:33:24 ID:WDJ5EVZt
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- 301 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:33:38 ID:M73HOTcl
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- 302 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:33:50 ID:DjZ4Amd7
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- 303 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:34:03 ID:GRXwWOsj
- 「リセに送る曲……リセエンヌ」
どうか。
この曲が彼女に届きますようにと。
祈りつつ僕は演奏を始める。
全ての感情を篭めて。
いや篭めないものなど今の僕には残す必要はない。
だから弾こう。
彼女の為に彼女の為だけの曲を。
ねえ? 聞いてるかな?
リセルシア。
- 304 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:34:13 ID:dOPRtQmI
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- 305 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:34:55 ID:WDJ5EVZt
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- 306 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:34:58 ID:DjZ4Amd7
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- 307 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:35:01 ID:GRXwWOsj
- ――――教室の隅に まるで そこにいないみたいに 言葉もなく 息を殺し 私は居たの
窓の外には木漏れ日 木々の間を揺れてる――――
ふむ、実にいい演奏だ。
少なくとも聖堂で聞いた時よりもずっといい。
体全身に伝わってくるクリス君の感情。
それが違う。
哀悼、悲しみ、怒り。
他にも様々な感情折りなって一つに綺麗に纏まっている。
でもとても儚い。
まるであの時のクリス君のようだ。
リセルシアという子が亡くなった時の。
信じられなくて、世界を拒絶するような。
あの時、私はただクリス君を繋ぎ止めるのに必死だった。
クリス君まで居なくなってしまいそうで。
それを防ぎたかった。
何故そんな気持ちになったか不明だが。
しかし今のクリス君はちょっと違う。
- 308 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:35:12 ID:M73HOTcl
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- 309 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:35:22 ID:dOPRtQmI
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- 310 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:35:54 ID:dOPRtQmI
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- 311 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:36:09 ID:DjZ4Amd7
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- 312 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:36:12 ID:GRXwWOsj
- そんな辛い世界でも精一杯生きようとしてるような感じがする。
まるで誰かの人格が乗り移ってるような。
誰の影響だろうか?
……いや、考えるまでもないか。
そんな事直ぐにわかる。
小動物みたいな子だったか。
クドリャフカ君みたいな子だな。
……可愛がりがいがありそうだ。
ふむ、あってみたかったな。
それにしてもクリス君の演奏はいいのだが何かが足りない。
フォルテールの音色は素晴らしいのだが。
私はクリス君の傍に行き楽譜を見る。
クリス君はとうに楽譜など見てなく私がとっても何の反応もなかった。
……やはり。
そこにはリセルシア君が書いてであろう歌詞が書かれていた。
そう、この曲には歌が必要不可欠なのだ。
何故ならリセルシア君の為の歌なのだから。
私は歌詞を見る。
ふむ、とても綺麗な歌詞だ。
どんな時でも未来には希望があるか。
- 313 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:37:00 ID:WDJ5EVZt
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- 314 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:37:03 ID:NK7D5V9T
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- 315 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:37:29 ID:dOPRtQmI
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- 316 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:37:37 ID:DjZ4Amd7
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- 317 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:37:56 ID:M73HOTcl
-
- 318 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:37:57 ID:GRXwWOsj
- 本当にそうなのであろうか?
リセルシア君は死ぬ直前までそう思っていたのだろうか?
……愚問だな。
きっと信じていたに違いない。
こんな素直な歌詞を書けるのだから。
教室の隅でまるでそこにいないみたいに私はいた、か。
……存外、私と似ていたのかもしれないな。
彼女とは。
……私もリトルバスターズにはいる前はそうだったかもしれない。
木漏れ日に当たりながら一人で過ごしていた。
……感傷だな、これ以上は。
さて、なら私ができることは一つしかないな。
1曲が終わりそうだ。
でもクリス君はやめはしないだろう。
恐らく彼が気が済むまで。
……なら、その演奏に華を添えてやろうではないか。
私では劣るかもしれないがな。
ないよりはマシだろう。
彼女の為の曲なら。
- 319 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:38:13 ID:DjZ4Amd7
-
- 320 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:38:19 ID:NK7D5V9T
-
- 321 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:38:28 ID:dOPRtQmI
-
- 322 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:38:54 ID:GRXwWOsj
- そしてまた繰り返される曲が。
そのメロディーに乗って
「……教室の隅に〜まるで〜そこにいないみたいに〜♪」
私は歌いだした。
クリス君が驚きこっちの方を見る。
私はただ頷くだけ。
それしかいらない。
もう気持ちは伝わった。
さあ……私も参加しようか。
彼女の為の曲に。
私自身の気持ちも乗せて。
さあ、続けよう。
……こんな空の下で。
- 323 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:39:33 ID:DjZ4Amd7
-
- 324 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:39:47 ID:M73HOTcl
-
- 325 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:39:53 ID:dOPRtQmI
-
- 326 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:40:14 ID:NK7D5V9T
-
- 327 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:40:19 ID:GRXwWOsj
- ――――きっと誰もが今この瞬間を胸いっぱいに感じているんだろう
どんな明日が来ても私こわいものはない だって
今日を 今を生きてる 陽射しの中で―――
私は来ヶ谷ほどクリスを知ってない。
会ったのは先だけど。
だから亡くなった子の事なんか判る訳ない。
でも。
この演奏から伝わってくるもの判る。
理屈じゃなくて感情で。
クリスの演奏に来ヶ谷の歌も加わって。
それは1+1ではなくもっともっと深いもの。
何十も何倍にもなって。
リセって子の為に。
ただそれだけなのにこんな心が温かい。
それがとても不思議で、でもなんかそれが嬉しい。
本当何故だろう。
- 328 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:40:25 ID:DjZ4Amd7
-
- 329 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:40:42 ID:WDJ5EVZt
-
- 330 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:40:48 ID:dOPRtQmI
-
- 331 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:41:14 ID:NK7D5V9T
-
- 332 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:41:26 ID:GRXwWOsj
- リセが死んで私は朋也も、って考えてしまった。
そんなことはないと思いたい。
もし、居なくなった事を考えたらとても怖い。
喪失の怖さ。
……でも。
私はきっと進みたい。
だって私は今を生きてる。
この瞬間を。
例えどんな明日でも、未来でも。
それは私次第。
だからどんな時でも前を向いてよう。
そう思った。
この歌を聴いてね。
さーて私も加勢しますか。
来ヶ谷ばっかに歌わせるものね。
私も送りたい。
だから
「今日を今を生きてる〜陽射しの中で〜♪」
- 333 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:41:38 ID:DjZ4Amd7
-
- 334 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:41:55 ID:dOPRtQmI
-
- 335 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:42:04 ID:NK7D5V9T
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- 336 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:42:08 ID:GRXwWOsj
- 歌おう、私も。
来ヶ谷が視線だけこっちに向ける。
うん、私も頑張ろう。
暖かい日差しの中で。
―――悲しみならば この両手に いっぱいもういらない でも時には 涙が 出るほどの幸せ
誰もいない放課後の長い廊下は夕映え―――
- 337 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:42:46 ID:dOPRtQmI
-
- 338 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:42:58 ID:DjZ4Amd7
-
- 339 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:43:09 ID:NK7D5V9T
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- 340 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:43:11 ID:WDJ5EVZt
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- 341 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:43:28 ID:GRXwWOsj
- 何たる事であるか!
この超、超、超天才であるドクタクタァァァァァウェェェェストッッッがっ!
この演奏にィィ参加できないぃいいいとは!
次元一を通りこして最悪な出来事である!
ギターをかき鳴らしまくっても壊れて音もでないとは!
凡骨リボンのような高い声もでないとは!
NOォォォォォォォォォォォォ!
いや諦めるのはまだ早いである!
この我輩が超絶なほど素晴らしい閃きで演奏に加わる手段を考え付くのである!
我輩に不可能なんか存在するわけないであるのからな!
……まあ、でも今回はおとなしく聞いているのである。
史上最大の屈辱であるが。
この演奏に観客も必要であるからな。
決して『悔しい!……でも聞いちゃう!』状態じゃないのであるからな!
涙が出るほどの幸せであるか。
我輩はラヴリィィなエルザちゃんといるであるけで幸せなのである!
その為にも我輩は首輪を解除せねばな!
何! 我輩に不可能なんて言葉はブラックホールに投げ捨てたのである!
だから我輩は絶対解除できるのである!
- 342 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:43:58 ID:DjZ4Amd7
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- 343 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:44:01 ID:dOPRtQmI
-
- 344 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:44:11 ID:NK7D5V9T
-
- 345 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:44:31 ID:GRXwWOsj
- だが今はこの演奏を聞くのである!
我輩にも休息が必要なのだ!
静かに聴くことがその子の追悼にもなるのであるからな。
こんな森の中で
―――ふいに あふれる 情熱がある 走る走るよ光の向こう側へ
どんな未来としてもきっとそれは 私次第ね
たどりついてみせるよ 透明な場所へ
- 346 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:44:32 ID:NK7D5V9T
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- 347 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:44:50 ID:M73HOTcl
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- 348 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:45:00 ID:DjZ4Amd7
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- 349 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:45:23 ID:dOPRtQmI
-
- 350 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:45:42 ID:GRXwWOsj
- 僕は演奏を続けていた。
乗せるのは全ての僕の感情。
そこにはユイコ、キョウも加わって。
何重もの広がりを持ってこの場所に響く。
聞こえてるかい?
リセルシア。
君の為に広がってるよ。
皆が協力して君の為に。
何故こんなにも熱心になるかは僕にも分からない。
僕自身だけのけじめだけかもしれない。
でも、それでもこの演奏を続けていたいと思うんだ。
考えてじゃない、ただ心で。
リセルシア。
もう会うことないと思う。
……とても悲しい事だ。
それこそ神様が悪戯でもしな限り。
もし、もし会えたらまたアンサンブルしたいね。
でも、僕はまだ歩き続けるよ。
例え未来が絶望だらけでも。
- 351 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:45:50 ID:NK7D5V9T
-
- 352 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:46:08 ID:dOPRtQmI
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- 353 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:46:19 ID:GRXwWOsj
- きっとそこには一掴みの希望があると信じて。
僕がそれを信じる限り辿り着けると思ってる。
リセルシア、君もそうだったのだろう?
死の、その直前まで。
だったら僕もちょっとだけでもいい。
それを信じるよ。
それがリセの為にもなるから。
そして演奏は最後の一節へ。
恐らくリセが最も望み信じ続けた理想。
それに今の僕出せる全てのものを乗せて。
それは
「「どんな今日だとしても〜新しい日々が塗り替えてゆく〜そして〜明日は希望〜♪」」
どんな今だとしても明日は希望に満ち溢れてると信じて。
僕はそのことを信じる為に。
リセの為に。
弾き切った!
- 354 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:46:32 ID:DjZ4Amd7
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- 355 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:46:42 ID:NK7D5V9T
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- 356 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:46:55 ID:dOPRtQmI
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- 357 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:47:29 ID:M73HOTcl
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- 358 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:47:29 ID:GRXwWOsj
- そして長かった演奏を止める。
もう体に力は残ってなくて。
でもとても満ち溢れて。
不思議な感覚だった。
リセルシア。
届いたかな?
聞けたかな?
分からない。
でも届いてると信じてる。
だから。
どうか安らかに。
笑顔で。
僕は祈り続ける。
こんな雨の下で。
- 359 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:47:41 ID:DjZ4Amd7
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- 360 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:48:28 ID:dOPRtQmI
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- 361 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:48:28 ID:GRXwWOsj
- ―――どんな今日だとしても 新しい日々が塗り替えてゆく
そして 明日は希望
夜の空にも 星が瞬く―――
僕はその演奏を終えると崩れ落ちた。
結構な体力を使ったみたい。
ひどく眠い。
でも不安なのだ。
すごく。
あんなにも綺麗に演奏できたというのに
「クリス君! 大丈夫か!」
「……ユイコ……うん大丈夫。眠いだけ」
ユイコが駆けつけ抱きしめる。
あたたかい、とても。
だからちょっとだけ不安を聞いてもらうかと思った。
「ねえ……ユイコ?」
「なんだ?」
「本当に……明日は希望に満ち溢れてるのかな?」
- 362 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:48:43 ID:DjZ4Amd7
-
- 363 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:49:19 ID:WDJ5EVZt
-
- 364 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:49:40 ID:GRXwWOsj
- そう、不安なのだ、それが。
本当なのかと信じ続けられるのか。
ずっと思い続けられるのかが。
そんな僕にユイコは笑ってこう告げる。
さも当然のように。
「……そうだな。満ち溢れてると思うよ、君が思う限り」
「本当かな?」
「ああ……それは」
彼女は僕を強く抱きしめこういった。
そして不安が融けていく。
「思い続ければ……思い続けていれば……願いはきっと叶うから」
そうか。
そうなんだ。
僕が思い続けさえすれば。
それはなくなることはないんだ絶対。
うん……。
安心した。
ああ……本当に。
「ごめん……ユイコ……ちょっと寝るよ……」
「ああ……ゆっくり寝るがいい」
そして僕はその安堵と共に目を閉じる。
最後に見えたのはユイコの笑顔。
それがなぜかにリセに重なって。
- 365 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:50:12 ID:GRXwWOsj
- 僕は笑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 366 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:50:34 ID:dOPRtQmI
-
- 367 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:50:57 ID:dOPRtQmI
-
- 368 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:51:24 ID:GRXwWOsj
- クリス君は私のひざで静かに寝ていた。
とても深く。
寝顔がとても子供っぽくってかわいい。
やれやれ私らしくないことを言った。
クリス君は私のペースを普通に崩してくるから本当に困る。
そして明日は希望か。
果たしてあるのかどうか。
でも信じたい。
そう思わせる演奏だった。
「来ヶ谷……これからどうするの?」
「杏君……そうだな。病院にいく意義も無くなったし……ふむ」
そういえばこれからどうするかを全く考えてなかった。
病院にも行かなくていいし……ふむ。
「よかったら……私たちとこない? 仲間が多いほうがいいし」
「ふむ……それもいいな。クリス君と相談するよ。起きるまで待っていてくれ」
「そうね……私もまだ離れたくないし……この余韻を味わっていたい」
「奇遇だな……私もだよ」
そう私もこの余韻を味わっていたい。
この素晴らしい演奏の後なんだから。
しばらく心に残しておきたい。
- 369 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:51:32 ID:DjZ4Amd7
-
- 370 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:52:15 ID:GRXwWOsj
- 「明日は……希望か」
「叶えましょう。来ヶ谷。私たちの手で」
「ああ……そうだな」
リセルシアが願った。
『明日は希望』
それを願って私たちは進もう。
それがあの子の追悼になると思って。
――待ってたんだ 欲しかった――
僕が目を開けるとそこはあの旧校舎。
でも凄くあやふや。
だからきっと夢だとわかる。
僕はある期待に胸を躍らせながら進み始める。
ある一室へ。
- 371 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:52:40 ID:DjZ4Amd7
-
- 372 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:52:48 ID:GRXwWOsj
- そこに待ち構えてる人は判る。
全く本当に神様は意地悪だ。
こんな事をするなんて。
僕はその扉を開ける。
そこには変わらないあの笑顔。
満面の笑みで。
そして言う事は。
―――その言葉 くれる人―――
「アンサンブルしようか?」
彼女はさらに笑った。
最高の。
本当に最高の笑みで。
【D−4北西/一日目 早朝】
- 373 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:53:18 ID:dOPRtQmI
-
- 374 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:53:35 ID:DjZ4Amd7
-
- 375 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:53:40 ID:dOPRtQmI
-
- 376 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:53:55 ID:GRXwWOsj
- 【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:刀子の巫女服@あやかしびと −幻妖異聞録−、防弾チョッキ フォルテール(リセ)
【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン
ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン
【状態】:中程度の肉体疲労、中度の精神疲労、巫女服
【思考・行動】
基本:無気力。能動的に行動しない。ちょっとだけ前向きに。
0:Piovaゲージ:80%
1:睡眠中
2:ユイコは不思議な人だ
3:あの部屋に帰れるのだろうか
4:トルタ・ファル・は無事なんだろうか
5:あの少女(なごみ)が誰と会ったのか気になる
6:それでも他人とはあまり関わらない方がいいのかもしれない
【備考】
※雨など降っていません
※Piovaゲージ=鬱ゲージと読み替えてください
※増えるとクリスの体感する雨がひどくなります
※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
※巫女服が女性用の服だと気付いていません
※巫女服の腹部分に穴が開いています
※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
※なごみがトルタ・ファル・リセのいずれかに何かしたのかもしれないと不安に思っています
※リセの死を乗り越えました。
※記憶半覚醒
- 377 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:54:15 ID:NK7D5V9T
-
- 378 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:54:22 ID:DjZ4Amd7
-
- 379 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:54:42 ID:dOPRtQmI
-
- 380 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:54:52 ID:GRXwWOsj
- 【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
【所持品】:支給品一式、デザートイーグル50AEの予備マガジン×4
【状態】:中程度の肉体疲労、脇腹に浅い傷(ワイシャツで止血中)、凄く恥ずかしい
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗る気は皆無。面白いもの、興味惹かれるのを優先
0:明日は希望か……。
1:放送まで待つ
2:クリスは面白い子だ、ついでに保護
3:いつかパイプオルガンを完璧にひいてみたい
4:リトルバスターズのメンバーも一応探す
【備考】
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
【藤林杏@CLANNAD】
【装備】:コルト M1917(6/6)
【所持品】:支給品一式、予備弾28、桂の携帯@アカイイト
【状態】:右手首に重度の捻挫(ある程度治療済み)掌と膝にひどい擦過傷(応急処置済み)
【思考・行動】
基本:朋也に謝る、ウェストに謝罪させる
0:明日は希望……ね。
1:朋也を探す(多分自分が来た方向=西?)
2:可能ならウェストの手助けをする。
3:首輪解除を目的に行動。どこに行くかは不明
- 381 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:55:30 ID:GRXwWOsj
- 【備考】
※捻挫はウラジミールのTシャツ@あやかしびと -幻妖異聞録-によりある程度的確に処置されています。
ただ三角巾のような形で固定されているので、右腕はそのままでは使えません。
※空元気交じりですが、冷静さを取り戻しました。
※ティトゥス、ドライを警戒。朋也については複雑な心境
※ウェストとお互いの世界や知り合いについて情報交換しました。
突っ込み連打の甲斐もあり、魔術やロボについても一応納得しました。
※トーニャと真人と情報交換しました
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:秋生のバット@CLANNAD、
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
0:明日は希望?
1:設備・器具の入手
2:首輪のサンプルが欲しい
3:首輪の解除
4:フォルテールをあらゆる手を使って弾いてみせる
5:とりあえずは杏についていく
【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
- 382 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 01:56:14 ID:dOPRtQmI
-
- 383 名前:リセエンヌ ◆UcWYhusQhw :2008/04/15(火) 01:57:07 ID:GRXwWOsj
- 投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「リセエンヌ」です。
元ネタはシンフォニック=レインの歌から。
- 384 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 02:36:29 ID:WDJ5EVZt
- GJ!
最初のシーンで笑い、合唱パートで涙がでてきました。
最後の「アンサンブルしようか?」でもう……GJです!
- 385 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 03:32:12 ID:9DIDs8Lv
- 投下乙!
「アンサンブルしようか?」……ラストの〆かたにやられました
森で演奏会とはまた、シンフォな雰囲気がよく出ている。ウェストも妙に嵌ってるぞw
そしてこれは、演奏会に引き寄せられて森のクマさん(マーダー)来襲フラグと見て構いませんね!w
- 386 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 09:54:10 ID:gL785mnB
- 投下乙&GJ!!
シンフォはあまり知らないんですが、朝から感動させれましたよ全く!!
まさか序盤からこのような涙を誘う作品と出会えるとは!!
合唱パートもさることながら、クリスと来ヶ谷のやりとりが特にGoodでした
>「思い続ければ……思い続けていれば……願いはきっと叶うから」
このセリフが中でもグッときました!!
さて感動の余韻はまだ冷めないんですが、一つ気になったことが……
死者を放送前に知るというのはどうなんでしょうか
まあ情報は一部ですし、主催が言峰なんで、
その情報を知った参加者の反応を楽しむということは十分ありえますし、ありって言えばありなんでしょう
それにこの部分がなしになると、話自体の成立が難しくなるので何とも言えないんですが、
すいません、うまいこと言えてませんね
話自体は大変良かったので、
まあこういうことを思った人もいるっていうことも頭の片隅にでも置いておいてください
- 387 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 11:01:06 ID:3NhLo0y8
- 投下乙です
逆境の中の演奏会ってのは、個人的にツボなんだよなあ
ある意味、ロワを満喫するクリスに祝福あれ。西博士の開き直りも良し
Piovaゲージ:80%のままなのは変かもしれません
もっと少なくても良いのでは?
- 388 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 12:32:51 ID:n71+Xsd6
- 投下乙です
jIc氏
一応対主催のはずなのに凄まじく電波キャラw
はたして太一と行動を共にできるキャラは現れるだろうか?
UcW
リセへ送る演奏会…とても綺麗な話でした
だがロワという状況下での野外コンサートは拡声(ry
- 389 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 12:34:11 ID:n71+Xsd6
- 失礼、氏を付け忘れ
すみませんUcW氏
- 390 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 15:20:24 ID:8VlyKRiU
- これは…卑怯だなあ。
シンフォ好きを泣かせるための話、それ以上に自分が泣くための話だ。
だけど、俺も泣いた。
それ以上に言うべきことはない。
ただ、拍手を。
- 391 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 20:25:37 ID:dsh2cHGq
- 投下乙です
上手いなあ、凄くシンフォらしい追憶の仕方
合奏が凄く良かったし、最後の夢も上手くて、エピローグのような綺麗な締め方でした
しかしロワ中に合奏は、色々寄って来て修羅場りそうな予感がw
- 392 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/15(火) 22:32:20 ID:M73HOTcl
- 投下乙。
おお、シンフォニック=レインへの愛を感じるw
ロワ中に合奏を繰り広げるのが凄まじく死亡フラグっぽいけどw
上記でもあったけど、本当に初っ端からエピローグを見た気がするw
- 393 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:37:08 ID:8bDjWWvr
- 静留、ツヴァイ投下します。
- 394 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:38:15 ID:8bDjWWvr
- 鞭は戦闘に向かない道具だ。
例えば、物語に出てくる数多の鞭使いは、それを手足のように扱っている。
だが、弾力性に富む先端部分をしならせ、動き回る目標を打ち据えるというその行為は、
一見単純そうに見えるが、実際にはコントロールすら覚束なく扱い難い。
更にそれで生まれる音や見た目の派手さとは裏腹に、対象に深刻な傷を残すわけでもない。
当然だ。
本来、鞭とは調教や拷問、刑罰に用いられてきた物である。
相手に致命的ではない、しかし記憶に刻み込まれるような苦痛を与える事。
それが鞭の真髄なのである。
もう一度言おう。
鞭は戦闘には向かない道具だ。
――それこそ、物語に出てくる数多の鞭使いのように、それを手足のように扱う事が出来ない限り。
◇◇◆◇◇
- 395 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:41:00 ID:OKlLgxkC
-
- 396 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:41:10 ID:EsjZliNp
-
- 397 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:41:50 ID:lwEylA9B
-
- 398 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:41:53 ID:8bDjWWvr
- 朝日の差し込みつつある森林内に銃声が響く。
木の影に身を隠しながら、玲二は焦りに顔を歪めていた。
(いったい何なんだ、あの女は……)
淡い色で統一されたブレザーの制服に身を包む少女に銃撃を与える。
しかし、見たところ普通の女子高生にしか見えない彼女は、
先ほど狙撃した時と同じく、胸部を目掛けて飛来する弾丸を反則的な体裁きで回避。
たて続けに頭部目掛けて放たれた弾丸は、少女が右手を振るう事で無効化される。
……信じられない事に、高速で飛来する弾丸を手にした鞭で叩き落したらしい。
「化け物が……」
「ずいぶんな言い草どすな」
言いながら少女は手にした鞭を振るう。
鞭は周囲の木を穿ち、割り、叩き折りながら玲二へと迫った。
玲二は横に走りながら回避するが、それを追うように鞭はその身をくねらせる。
上下左右、あらゆる角度から玲二を襲いかかる鞭。
それはまるで蛇のごとき動きだった。
深夜に出会った暗殺者の拳も蛇のようだった。
だが、彼の拳を獲物を牙で仕留める毒蛇とするならば、
彼女の鞭はその巨体で相手を絞め殺す大蛇――それも無数の頭を持つヒュドラだ。
玲二はその身を打ち据えようと連続で襲い来る鞭を、斜面を駆け登りながら避ける。
そして、そのまま4連射。
脚部、腹部、胸部、そして頭部を狙い飛翔した弾丸は、
鞭によって進路を遮断され、曲げられ、叩き落され、そして弾き飛ばされた。
- 399 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:41:59 ID:LFl/o+Wj
-
- 400 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:42:44 ID:LFl/o+Wj
-
- 401 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:42:54 ID:8bDjWWvr
- 強い。
それが玲二が目の前の少女に抱いた偽らざる感情である。
樹木の間を蛇行しながら、弾倉に弾を込める。
これ以上戦っても、ただ消耗するだけだろう。
こちらの目的がキャルの保護である以上、ここはこのまま撤退したい所だが……
「残念やけど、逃がしまへんえ」
声と同時に空気を切る音。
足を、腕を、頭を狙い襲いかかる鞭を、玲二は体をずらす事で回避する。
どうやら、向こうにはこちらを逃がすつもりはないらしい。
(やるしかないか)
だが、相手は銃弾を捌くほどの鞭の達人である。
どうにか銃弾を撃ち込む隙を……そうでなくとも、せめて弾を込める隙を作らなければ。
次々と繰り出される苛烈な攻撃を、軸をずらし、樹を盾にして回避しながら、玲二は考える。そして……
◇◇◆◇◇
- 402 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:43:27 ID:EsjZliNp
-
- 403 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:43:43 ID:LFl/o+Wj
-
- 404 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:44:15 ID:8bDjWWvr
- 強い。
それが藤乃静留が目前の男に抱いた偽らざる感情だった。
足場の悪さを物ともせず、急所を狙って的確な射撃をしてくるその男は明らかに銃の……殺しのプロフェッショナル。
今は優位に立っているが、これ以上長引くと経験と地力の差で負ける可能性が出てくるだろう。
(せやけど、ここで退く訳にはいきませんのや)
殺し合いに乗ったこの男を放置すると、なつきにまで危害が及ぶ恐れもある。
ここで確実に殺しておきたい。
と……不意に木々が途切れ、視界がクリアになる。
戦いながら移動しているうちに、元々居た採石場に戻ってきたのだ。
同時に、今まで防戦一方だった男がこちらへと突進してくる。
(仕掛けてきよりましたか)
右手の銃から放たれた3連射を鞭でいなしながら回避。
そのまま鞭をしならせ、男の右手をしたたかに打ち据えた。
顔を苦痛に歪ませながら、銃を取り落とす男。
おそらく、骨にヒビくらいは入っただろう。
(思ったより、あっけなかったどすな)
そんな事を考えながら、更に男を打ち据えようとして……静留は鞭が動かなくなっている事に気がついた。
静留の腕の先――ちょうど鞭の先端の部分を、男が右腕を使い押さえ込んでいたのだ。
そして、男の左手では矢の装填されたボウガンがこちらを狙っている。
まさに肉を切らせてといった様相だが、鞭以外に攻撃手段を持っていない静留には有効な一手。
「なるほど、考えはりましたな……せやけど」
しかし……それは、あくまでも普通の鞭を持った相手の話だ。
小さな呟きと共に、静留の持つ鞭――殉逢が掻き消える。
男の表情が驚愕に変わると同時、再び現れた殉逢が男の頭部をしたたかに打ち据えた。
◇◇◆◇◇
- 405 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:44:57 ID:EsjZliNp
-
- 406 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:45:13 ID:lwEylA9B
-
- 407 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:45:27 ID:8bDjWWvr
- 頭部に走った衝撃に、玲二は呻き声をあげて崩れ落ちた。
腕から、脚から力が抜けるのを感じる。
赤く染まる世界を眺めながら、玲二は思う。
(俺は……死ぬのか……?)
これで終わるのか?
昏くなる脳裏に、金髪の少女の姿が浮かんだ。
(終われるか……終わってたまるか!)
うっすらと開いた玲二の眼に、鞭を持った少女が近づいてくるのが映る。
どうやら、こちらに止めをさすつもりらしい。
(何か……何か、方法はないのか?)
状況を覆す一手を探しながら、少女の隙を伺っている時だった。
何処からともなく、美しい音色が聞こえてきた。
(歌? 誰かが歌っているのか? ……こんな所で?)
少女もそれに気を取られたらしく、音の聞こえる方角をちらりと一瞥する。
(……今だ!)
自身の体から少女の視線が反れるのを確認するや否や、玲二は手元にあったものを握り締める。
そして起き上がりざまに、その物体――ボウガンの矢を少女の脚へと突き刺した。
声にならない呻きを上げる少女をよそに、玲二はボウガンを拾い上げながら森の中へと駆け込む。
(ぐっ……頭が重い)
痛みをこらえながら、玲二は走る。
昇りつつある日の光は、森林内にまでは届いていなかった。
- 408 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:45:40 ID:LFl/o+Wj
-
- 409 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:46:31 ID:8bDjWWvr
- 【C-3 森林内/1日目 早朝】
【吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コンポジットボウ(13/20)、コルト・ローマンの予備弾(21/36)
【所持品】:支給品一式×2。コンバットナイフ、レザーソー@School Days L×H
【状態】:疲労(大)、右手に小さな蚯蚓腫れ、右腕の骨にヒビ、頭部から出血
【思考・行動】
0:女からできるだけ遠くに離れる
1:キャルを見つけ出して保護する
2:アインはなるべく敵にしない
3:他の参加者から武器を奪う、可能ならば殺すが無理はしない
※身体に微妙な違和感を感じています。
※アインが生きていることに疑問。
※時間軸はキャルBADENDです。
※真アサシン(外見のみ)を強く警戒しています。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※静留を警戒しています
◇◇◆◇◇
- 410 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:47:30 ID:EsjZliNp
-
- 411 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:47:39 ID:8bDjWWvr
- 「あきまへんな……」
男に刺された太股を押さえながら、静留は小さく呟いた。
血が止まらない。
支給された下着を何枚か使って止血を試みているものの、血が滲むように流れ続けている。
突き刺された矢は、おそらく太い血管を傷つけてしまったのだろう。
付近に治療できそうな設備があるわけでもない。
だが、このままじっとしていても死を待つだけだろう。
静留はこの付近で唯一、確実に参加者が居ると思われる方角に目をやる。
それは、先ほど何者かの歌声が流れてきた方向。
もしかすると、あそこに居る参加者達は、何らかの治療道具を持っているかもしれない。
もしかすると、病院まで高速で移動できるような手段を持っているかもしれない。
……もしかすると、なつきもそこに居るかもしれない。
「結局は理想論どすな……」
落ちていた拳銃を拾い上げながら、静留はその方角へと歩き始める。
少しでも可能性がある限り、彼女はあきらめるつもりはなかった…………
- 412 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:48:32 ID:lwEylA9B
-
- 413 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:49:38 ID:8bDjWWvr
- 「せやけど……もし、このまま助かる見込みがないようやったら……」
そのときは、考えるべきかもしれない。
自分がなつきの為に何ができるのか、という事を。
(ほんの少しでも間引いておいた方が、なつきの生きる確立が上がるかもしれませんしな)
人数がある程度減るまでは、殺し合いに乗る事は考えていなかった。
だが、生命に期限があるのならば、その時間をどのような形であれ、なつきの為に使うのが一番いいだろう。
不穏な考えを胸に少女は行く。
昇りつつある日の光は、森林内にまでは届いていなかった。
【C-4 採石場付近の森/1日目 早朝】
【藤乃静留@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、。コルト・ローマン(3/6)】
【所持品:支給品一式、虎竹刀@Fate/stay night[Realta Nua]、玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME 運命の系統樹】
【状態】疲労(中)、左手首に銃創(応急処置済み)、左の太股から出血(布で押さえていますが、血は出続けています)
【思考・行動】
基本:なつきを探す
0:歌声が聞こえた方向へ行く
1:太股の傷を治療する為の道具を探す
2:なつきに関する情報を集める
3:とりあえずゲームには乗らないが、このまま死ぬようなら……
【備考】
※下着コレクションは使用可能です。
※理樹を女だと勘違いしてます。
※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします
- 414 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/16(水) 00:51:49 ID:8bDjWWvr
- 投下完了です。指摘などありましたらどうぞ。
タイトルは『暗殺者と蛇のダンス』で。
投下が遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
- 415 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 00:56:37 ID:FkKYhYPT
- 投下乙
会長強ええw
それにしても大丈夫か?ファントムの主人公は
もっと活躍してくれよと祈りつつ次回のサラマンダーっぷりに期待
- 416 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:03:22 ID:LFl/o+Wj
- 投下乙です
ツヴァイはなかなかサラマンダーから抜けないなぁwww
しかし舞hime未プレイの自分には舞hime勢の強さに驚かされっぱなしだw
- 417 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:28:26 ID:lwEylA9B
- 望郷
「……これは…なんでしょー?たこさん?」
「……」
「変な生き物の模型だなあ、おい」
博物館の探索行っていた、葛木宗一郎と、高槻やよいの二人が「俺をシカトすんじゃねー」
…失礼、葛木宗一郎、高槻やよいと、やよいの手にあるしゃべる人形『プッチャン』の三人(?)が、会話しているのは、『生物の資料』の展示コーナーであった。
彼らの目の前にあるのは、部屋の中央部に何個か鎮座しているガラスケース、その内の一つ。
奇怪な蛸のような生き物の模型。
恐らくは、模型。
少なくとも、このような奇怪な生き物の剥製などという事は無い、筈。
そう、三人とも考えていた。
「半魚人さん…ですか?」
「……」
「これも良くわかんねえなあ。 着ぐるみか?」
その隣のガラスケースにはこれまた奇怪な人型の『着ぐるみ?』
大きさは成人男性程度だが、その顔は人とはかけ離れており、その体皮は鱗に覆われ、背中には背ヒレ、手足にも水かきが付いている。
よく戦隊ヒーローものの敵役の怪人にいそうな外見、といえばイメージしやすいかもしれない。
兎にも角にも、そのような生き物の模型、だ。
こちらも、常識的に考えて剥製ということはあり得ない、筈。
- 418 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:29:12 ID:lwEylA9B
-
いや、それらだけで無い。
この部屋にあるのは、頭部の無い骨格標本やら、殻の付いた幼虫のような蟲やら、シーツを被っただけのオバケやらと、兎に角意味不明なモノが多い。
いや、意味不明、かつ不気味な代物というべきか。
何が言いたいのかというと、
「うう…気持ち悪くなってきました…」
ごく普通の少女には精神的にキツイものがあったようだ。
「…うおい、大丈夫だから落ち着けって!
つーか俺で口元を覆うつーのはどういう了見だ!
吐くなよ! 絶対吐くなよ!!」
「うう……気持ち悪い時に『吐く』って言われると本当に吐きそうになりますよね…」
「だーー!! おい! 相棒!!
のんびり見ていないで何とかしてくれって!」
基本的にどこかのんびりとしたやり取りではあるが、当事者達はそれなりに真剣だ。
そして、
「……高槻、気分が悪いのであれば医務室まで連れて行くが」
ここに当事者達よりもはるかに真剣に対応する男が一人。
テストの問題用紙にミスがあったからという理由で、テスト用紙を全て回収したという伝説を持つ男、葛木宗一郎。
彼の辞書には基本的にのんびりとか、不真面目という言葉は存在しない。
「うう、大丈夫です。
でも廊下に出て休んでます…」
そう言って、部屋から廊下に出て行くやよい。
「そうか」
「…つーかよ相棒、こんな部屋を真剣に見てる必要なんてあるのか?」
返事を返す葛木の背に、声を掛けるのはプッチャン。
このような意味不明な部屋を見て周ることに、大した意味など無い筈である。
この場合、彼の言っている事は概ね正しい。
……言っている本人が、負けず劣らず奇怪な存在であることを除けば、だが。
- 419 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:30:11 ID:8bDjWWvr
-
- 420 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:30:27 ID:lwEylA9B
- 「…………何であれ、資料として展示されている以上は役に立つ可能性はある」
「あーそうかい?
じゃあまあ俺達は外で待っているぜ」
微妙に歯切れの悪い葛木の返事に構わず、プッチャンは(正確にはやよいは)部屋から出て行った。
そうして、残されるは葛木一人。
「……」
彼の目の前にあるものは変わらず、謎の着ぐるみ。
説明書きによれば、先ほどの蛸のようなモノ『ダゴン』を信奉する『古きものども』、とある。
「……」
その、意味のわからない説明書きを、噛みしめるように記憶に刻む。
あたかも、それが真実であるかのように。
そうして、次の資料。
『地方妖怪マグロ』
再び、その内容を記憶する。
そうして次、『人妖』
次、『鬼』
- 421 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:30:59 ID:8bDjWWvr
-
- 422 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:31:00 ID:lwEylA9B
- 次、『死亡フラグ皇』
『刻印蟲』、『イグ・ソートス』、『贄の血』、『チャイナお姉さま』、『蛇神』
模型とも標本ともつかないものもあれば、写真だけのものもある。
抽象的な絵が描かれているだけのものもあれば、文章のみが記されている場合もある。
それらの資料を、一つ一つ、図ったように同じだけの時間を掛けながら、葛木は頭に刻んでいく。
そうして、いくつもの資料を巡った後、
「………………」
僅かに、そのリズムに狂いが生じた。
頭部の変わりに、動物の下あごのような骨が乗っている、骨格標本。
『竜牙兵』
と記されるそれを前にして、葛木は微動だにせず、ただそれを、その説明書きに目を向けていた。
『竜の牙より作られた魔道の兵士。 キャスター『メディア』が従者として用いている』
「……」
彼は、微動だにしない。
ただ、その文章を眺めているのみ。
そうしてしばらくして、その手が僅かに動き、スーツのの表面に触れる。
その内にあるもの、先ほど手に入れたもの、の感触が葛木の手に伝わった。
そう、少し前、数十分前の事であろうか。
最初の展示場『武器の資料』の出口に、ある文章が刻まれていた。
『君は、この場所にあるものを、どれか一つ選んで持っていって構わない。
あくまで『一つ』欲張ってはいけない、チャンスは『一度』選びなおしも出来ない。
役に立つか立たないかは君しだいだ。 さあ、好きなものを手に取りたまえ」
- 423 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:32:10 ID:lwEylA9B
-
とりあえず、何か持っていって良いという事だけは確かなようだ。
やよいとプッチャンはしきりに騒いで、色々と見て周ってはそれら説明書きに頭をひねっていた。
その二人を尻目に、葛木は一つの短剣をその手に取り、それを見たプッチャンが『勿体無えー』と文句を言い、
そのプッチャンに構わずやよいが色々物色して、弱いものでは役に立たず、かといって巨大な銃など怖くて持てす、
そうして結局、葛木の薦めで『弾丸全種セット(100発入り)』を選んで手に入れた。(デイパックを落としていたので葛木のそれに入れた)
「……」
葛木は、何も語らない。
ただ、何事かを黙考して、
やがて、その『竜牙兵』の前から移動した。
◇
ジュウジュウ、と食欲をそそる音が部屋の中に響きわたる。
それと同時に発せられる湯気は、食材の匂いを混ぜ合わせた、言わば鼻で味わう前菜と言っても良いだろう。
それなりに名の知れたファミレスの厨房から、「フフン♪フーン♪」とリズミカルな鼻歌と共に放たれるそれらは、無論、その声の主が発しているものだ。
お店に押し入って勝手に食材を使うなんて泥棒と大差は無い。(というかそのもの)
当初は支給されたパンを食べる為に入ったファミレスだったのだが、ふとした拍子に見た冷蔵庫には、普通に食材が詰まっていたのだ。
(博物館内は飲食禁止。 当然葛木が破るはずも無い)
今現在、人っ子一人居ないどころか、これから先来るかも判らない。
そうなると、当然冷蔵庫の中身などもダメになってしまうわけで…。
そういうわけで、勿体無いのでいろいろ食べてしまおうという事になり、
やよいが意外と得意な料理の腕でもって調理しているというわけだ。
- 424 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:32:57 ID:lwEylA9B
-
もやし炒めという料理は、その名のとおりもやしを炒めたものである。
もやしだけを炒めたものではあるが、炒め物の中にしめるもやしの割合が高い故に、もやし炒めと称される場合もある。
「はい、お待たせしました〜!
肉野菜炒めでーす」
「……」
「おお、こいつは美味そ…『肉野菜炒め』…?
逆に言えば、野菜炒めも、もやしの量が多ければ、それはもやし炒めとなる。
いや、いい直そう、それはもやし炒めと称されるべきである。
「え?何処か変ですか?」
「いや」
「……いやまあ、相棒がいいつーんならいいんだけどよ」
食材を自由に利用しても構わないにも関わらず、作るのはもやし炒め。
いや、彼女にとっては少量でも肉やら他の野菜が入って居る時点で充分に豪華なのだ。
……恐るべき、いや嘆くべき貧乏というべきであろう……。
「…美味いな」
「わあ…ありがとうございますー」
「へっ! 女の子の手料理たあ相棒もすみに置けないねえー」
「わ、そんなんじゃないですよー」
「へへ、てれるんじゃねえっーて」
「……」
人っ子一人居ないファミレスではあるが、それなりに会話は進んでいるようだ。
無口ではあるが問われれば答える葛木に、基本底抜けに明るいやよい、そして基本的に煩いプッチャンと、意外と姦しい。
無用心極まりないが、これでも一応奥の方の、外からは見えない席に陣取ってはいるのだ。
そうして、食事が始まって少し後。
基本的に手持ちぶたさなプッチャンが、「そういやよう、この後どうするんだ?」
と聞いた事で、その雰囲気は終わりを告げる事になる。
- 425 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:33:07 ID:8bDjWWvr
-
- 426 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:34:17 ID:lwEylA9B
- 「差し当たっての目的地は存在しない。
だが、この近辺に留まっていても進展はないだろう」
葛木が、箸を置いて答える。
「とりあえず、探し人を見つけるのが先決じゃねえか?」
その、何の目的も無いという答えに、プッチャンが自らの意見を述べる。
無難ではあるが、堅実な意見とも言える。
「……そうだな」
葛木にしても反対する理由は無い。
彼自身には探し人といえる相手は存在しないのではあるが、(一応生徒が二人いるが)
それでもやよいやプッチャンの目的としては重要なものである。
「だが、いずれにせよそれは広義の目的でしか無い。
まずは差し当たって向かう場所を決めなくてはならないのだが」
「そう言われてもなあ…。
やよいはどう思うよ?」
「私は…」
と、そこで言葉が途切れる。
何処に行きたいか。
それは無論この島の中で、ということになる。
だが、
「私は…おうちに帰りたいです」
ふと、やよいの口からは本音が漏れる。
そう、『本音』
隠しきれぬ、そもそも隠したくない『本心』
- 427 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:35:02 ID:lwEylA9B
-
「……」
「……」
「…………ごめん、なさい」
沈黙と、謝罪
どちらも、現実を理解しているが故に。
「い、いや、あやまる事ねえよ! なあ相棒?」
「恐らくは、無理だ」
シーンと、空気まで凍りつく。
先ほどの沈黙とは違う、
「おいおい相棒! いくらなんでもそりゃ酷いんじゃねえか!?」
「だが、事実だ」
葛木宗一郎は、誠実かつ厳格な人間だ。
…少なくとも、他者からはそのように思われている。
実際のところ、彼にはそうする以外の選択肢が存在していないだけなのだが。
ただ、一つの『用途』の為だけに作られた存在であるが故に、彼には『人間』としての最低限の機能を教えられたのみ。
そう、『教えられた』のみ。
『人間』とは、本来己で学び、人になって行く存在。
そういう意味では、彼は『人間』では無い。
ただ、人の形を模した道具であれと作られ、
故に、彼に出来るのは、ただ、接することのみ。
いかなる悩み、であろうと、ただ、事実を述べ、己の持ちうる全ての力で相手に接する。
口先だけの偽りなど述べず、僅かな過ちすら換価しない。
皮肉なものではあるが、それ故に彼は『厳格ではあるが、誠実な人物』として、他者から評価を受けることとなった。
故に、述べるのは事実。
揺らぎようの無い、真理。
- 428 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:35:52 ID:lwEylA9B
-
「うう…でも、他には思いつかないんです〜」
少女の目に浮かぶは涙。
恐らくは、二度とは帰れない。
やよいも、葛木も、この地で屍を晒すのみ。
その事を、おそらくやよい自身も漠然と理解はしている。
「私は…おうちに帰りたいです…」
そうして、響くのは嗚咽。
再びの、嗚咽。
今度は、今度も、誰も何も口にしない。
ただ、やよいの泣き声が響くのみ。
そうして、しばらく時は流れる。
やがて、弥生の嗚咽が小さくなった頃。
「なあ、相棒。
一つ、聞きてえんだが」
「なんだ」
その手の人形が声を発する。
- 429 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:35:58 ID:8bDjWWvr
-
- 430 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:36:31 ID:lwEylA9B
- 「相棒は、帰りたくねえのか?」
その、質問は、僅かに空気を変える。
やよいも、涙目でありながらも顔を上げた。
「帰る…か」
そこで、嘆息。
(―帰りたい)
胸に響くのは、かつて何処かで聞いた声。
自身があるべき場所への、望郷の念。
おおよそ、生まれ出でた全ての存在がもつ、根源的な思い。
だが、
「私は、何処に帰れば良いのだろうな…?」
元より、帰る場所など、望郷の念など持ち得ない男は、そう、迷いの篭る言葉を発する。
そうして、再びの沈黙。
だが、今度の沈黙は長くは続かない。
「で、でも! 葛木先生は先生なんでしょ!!
それなら、生徒さんだって居るんでしょ
それに…家族の方は居ないんですか!?」
「…家族」
生徒は、無論居る。
葛木自身にはその意識は無いが、少なくとも慕われている部類である。
家族、数年に渡り滞在している寺の人間達は、家族という概念には含まれるだろう。
だが、彼の心に浮かんだのは別の影。
そう、それは、
「婚約者が…居る」
出会って数日でしかなく、互いの本心すら定かでない、一人の女性の姿。
その、姿が、何故故にか彼の心を震わす。
- 431 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:37:07 ID:lwEylA9B
- 「こ…え、ええーーーーーーっ!?」
「こ…あ、あにーーーーーーっ!?」
「共に、暮らしている。
今の所は予定はないが、祝宴も恐らくは行うのだろう…………何故、驚く?」
葛木を知る人間ならば、ごく自然に発するであろう驚きは、出会って数時間の二人にも例外ではない。
だが、葛木本人からすれば、多少意外な反応ではある。
それ故に、問う。
「え、いや、その」
「あ、相棒が、その、女を口説いてる光景なんか想像できねえーんだ……」
「む…」
以前、言われた故か、多少口ごもる。
プッチャンの言ったことは概ね正しいのだろう。
「だっ! だったら!!
なおの事! 帰ってあげなくちゃいけないんじゃないですか!!」
と、そこにやよいの声が響く。
彼女は、既に泣いてはいなかった。
むしろ憤ってすらいた。
葛木が、まるで帰る事に興味が無いかのように見えたからである。
事実、その通りなのである、が
(――帰りたい)
(――私は、最後に自分の国に帰りたいのです)
「そう、だな。
帰る。 いや、帰らなければ、ならない…」
のだろう、とは続けなかった。
◇
- 432 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:37:44 ID:lwEylA9B
- 「とりあえず、どうすればよいのでしょうか……」
「んー何にせよ、まずは情報を集めるべきなんじゃねーか?」
とりあえず、『おうちに帰る』という基本方針も定まり、それではまず何をするべきかという話になったが、
結局、何のあても無い事には代わりがないのだ。
「何か重要そうな情報は無いですか?」
なので、とりあえず話をふる。
「無い事も無い」
「へ?」
が、思わぬ答えが返された。
「恐らくだが、あの場に居た二人の内の一人『言峰』と言ったか。
あの男は、私にとっては無関係という訳ではない」
「……えーと、つまりまほーつかいさんの戦いがあって、その関係者の方がいると?」
「そうなる」
「でもよお?
それが関係あんのか?
相棒の話と比べると大分違いがあるぜ」
葛木の語る、『聖杯戦争』の話。
とはいえ、彼自身はそれほど詳しいわけでもないが、それでも己の知りうる情報を、述べる。
「だが、少なくとも、『バトルロワイヤル』という部分は同じだ。
そして、参加者は強制的に選ばれ、辞退も不可能。
その辺りの事情も概ね同じ」
「なるほど」
「でもよお、結局何処に行ったらいいのかは判らないんじゃないか?」
プッチャンが、突っ込む。
聖杯戦争の情報はそれなりに貴重だが、今の所は役には立たない。
「ならば、大学に向かい、情報を手に入れるか…、
或いは、直接、本人に聞いてみるという手もある」
- 433 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:37:49 ID:FkKYhYPT
-
- 434 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:37:49 ID:Xb+tc2a5
-
- 435 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:38:28 ID:8bDjWWvr
-
- 436 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:40:37 ID:lwEylA9B
- 「…はい?」
「あの男は神父と名乗った。
ならば、教会にいるという可能性もある」
「あー相棒…大分飛躍してねえか、それ?」
「どの道、とりうる選択肢は少ない。
ならば、思いつく手を打ってみるというのも選択だ。」
いくらなんでもそれは無いのではないか、と二人とも思ったが、確かに言っている内容はそうおかしくは無い。
「いずれにしろ、帰るという方針に変わりが無い以上、
いずれあの男とは合間見えなければならない」
恐らくは、敵わない。
それでも、帰る。
そう、胸の短剣に告げた。
【B-5 南東、ファミレス/1日目 黎明】
『先生と生徒とマスコット』
方針:大学、或いは教会に向かう。
- 437 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:41:00 ID:lwEylA9B
- 【葛木宗一郎@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 、ルールブレイカー@Fate/stay night[Realta Nua]、弾丸全種セット(100発入り)
【状態】:疲労(小)。右肩に切り傷
【思考・行動】
基本:帰る
1:どちらに向かうか…
2:今後、どうするべきか考える。
3:高槻やよいを守る?
4:蘭堂りのと如月千早と菊地真を探す?
5:間桐桜や衛宮士郎に関しては保留。可能なら保護
※自身の体が思うように動かない事には気付きました。
※博物館に展示されていた情報を記憶しました。
【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)
【所持品】:なし
【状態】:肉体疲労(中)、精神疲労(小)
【思考・行動】
1:葛木先生と一緒に行動。
2:うっう〜。千早さんと真さんに会いたいです。
※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
【博物館について】
博物館には、少なくとも道具展示スペース、生物展示スペース、経観塚郷土資料館が存在。
参加者は、道具展示スペースに置いてある道具のうち、好きなものを一つだけ入手出来ます。
ルールブレイカーと、弾丸全種セット(100発入り)は説明書きだけ残されています。
- 438 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:41:41 ID:FkKYhYPT
-
- 439 名前: ◆lcMqFBPaWA :2008/04/16(水) 01:42:14 ID:lwEylA9B
- 以上です。
沢山の支援有り難うございました。
誤字、脱字等ございましたら指摘お願いします。
- 440 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 01:58:54 ID:FkKYhYPT
- 投下乙
さすが現地調達が基本のギャルゲロワ
二度目の支給品も現地調達できるとは、その発想は無かった
それにしても葛木Pめ…休日は家に引きこもってアイマス三昧だと思ってたのに
まさか婚約者(キャスター)がいるルートから参戦とは思わなかったぜ
ところで、一行目に書いてる「望郷」ってまさかタイトル…?
せ、成長しやがった…
- 441 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 11:49:26 ID:O3RHHR+T
- 投下乙!
静留vsU
いやぁ、会長強いなあw ムチって本当に拷問用で戦闘に使うものじゃないのになぁw
そしてツヴァイ、またダメだったのかwww このままじゃ凄まじいネタキャラになってしまうw
そして歌……逃げてーw クリスたち逃げてーwwww
葛木プロデューサー
ば、莫迦な……タイトルを忘れずに書き込むだと!?(笑)
ところでこの博物館、すごく便利な上に面白いなw って死亡フラグ皇の用語集の類まであるのかw
さて、これで一応葛木も対主催になったはずw 教会は……ファル様と渚だw
- 442 名前:週刊ギャルゲロワ2nd第5号(4/14):2008/04/16(水) 12:22:08 ID:O3RHHR+T
- |´|
|´|
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|´|
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. _,k|´|‐´`ー''7____
k'´: : |´|: : : : : : : :<__
<´ : : :|´| : : : : : : : : : ,> 今回の週刊ギャルゲロワは4/14時点だ
/ : : : |´|: : : : : : : : : :,> 是非とも楽しんでいってくれ
`> : : : |´| : : : : : : :_: : `.、
`、 _,;,;,|´|;_: : : : :,/ .iイ ̄ それと、笑うのは少し……いや、なんでもないです
. ,f´ . ̄ `ヽi'´ `´ ,!
/ , '´:`.、-‐'
,!,,,,,,,,,,,,__ ',:.:.:.:.:ヽ
f":::::::::::::: ̄`ヾ、:,;/,!
i::::::::::::::::::::::::::::::::i ̄
ヽ,;__'、;;;;;;;;;;;____;イ
. `ー' `ー'
- 443 名前:週刊ギャルゲロワ2nd第5号(4/14):2008/04/16(水) 12:22:38 ID:O3RHHR+T
- ・九鬼流、空気流から脱却! そして、ボタンーーーーーーーーーっ!!!
・渚、大ピンチ! ファル様の(色々な)魔の手が迫る
・館長、着々と誤解フラグを。九郎も含めて見事なネタキャラぶりw
・笑劇の展開、筋肉の妖精『マッスル☆トーニャ』www
・恭介、トルタwwww未だかつて「あーん」を繰り広げたロワ参加者がいただろうかw
・黒幕の影、検閲済みな這い寄る混沌……ところで、まだ誰にも逢えない天然契約コンビw
・黒須太一の大冒険。未だかつてない斬新な考察w
・言葉様強いっ! 突き進むゴーイングマイウェイの先には何があるのだろうか
・経観塚の女将さんは泣いていいと思うんだ
・士郎(笑) もうどんな展開になろうと道化だよw
先週(4/08〜4/14)までの投下数:10作
死者:0名
現時点(4/14)での予約:5件(◆aa氏、◆WA氏、◆Uc氏、◆lc氏 、◆wY氏)
- 444 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 13:14:47 ID:S0MXqWN2
- 投下乙
aa氏
会長の強さはアニメモードですな
にしても、ツヴァイ、どこまでサラマンダーなんだよ
演奏ネタを早速絡める機転の良さは見事
lc氏
彼女、どこまでも貧乏性だねえ。先生はルルブレ拾いましたか。
プッチャンの言う事は尤もな気がするが、対主催のキーウェポンになるか
葛木の地味な天然っぷりが楽しいです
週刊ギャルゲロワ
士郎さんの輝く日はいつかw
ロクなAAほとんどないよな、彼…
- 445 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 14:37:06 ID:HciZR0R0
- ツヴァイは単純に実力不足な描写だから
サラマンダーのあの神秘的なサラマンダーぶりからは程遠い。
- 446 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 18:19:57 ID:dieXlT9k
- 「古きものども」太古に宇宙から飛来し、南極大陸で繁栄した異星生命体
「深きものども」ダゴンを崇拝している種族
- 447 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 19:06:10 ID:S0MXqWN2
- 個人的にはイスの偉大なる種族も欲しかったな
- 448 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 19:12:51 ID:dieXlT9k
- 途中送信してた
>>420
>>説明書きによれば、先ほどの蛸のようなモノ『ダゴン』を信奉する『古きものども』、とある。
- 449 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/16(水) 22:55:15 ID:Ea5IOvFa
- >aa氏
投下乙です
会長強いけど、ツヴァイもなかなか粘ったね
これで会長マーダー化したら、合奏組がとんでもない事に……w
激しいバトル、且つ続きが気になる展開、ナイスでした
>lc氏
投下乙です
ハクオロさんに瑞穂お姉さま自重w
葛木先生の心情の微妙な移り変わりが良かったです
しかし博物館……本当に色々置いてあるね
その内恐ろしいのが出てきそうだw
- 450 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 13:04:58 ID:XwdDSAH7
- 大丈夫だ! なつきが生きてる間はまだ対主催寄りだから大丈夫だ!!www>ぶぶ漬け会長
……『向こう』では清姫呼び出したりマテリアライズしたりと「もっとやれ!w」と言わんばかりのマーダーっぷりだがw
- 451 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 14:34:27 ID:m8JfDDXb
- いやむしろなつきが生きてるうちはいつマーダーになってもおかしくないんだが
そしてなつきが死んだら優勝すれば生き返らせることができるとでも言われない限りまずマーダーにはならない
- 452 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 15:01:36 ID:t8H2SXyG
- とはいえ医療技術がいるウェストいるからなあ
ウェスト死んだら悲惨なことになりそうだがw
- 453 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 15:02:26 ID:fcx5o69F
- >>451
まあ、思い込みすぎるとロクなことはないぞ。
- 454 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 18:35:05 ID:m8JfDDXb
- いや、系統樹でなつきが死んだ後復讐しようなんて一切考えないし、
それどころか命シナリオだと下手人である命のことを苦しんでるから助けてやれと高村にいうキャラだから
- 455 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:11:43 ID:tZQo0WSS
- ってかゲーム版だとマーダーになるとは思えないんだよなあ俺
- 456 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:17:39 ID:CUKOc8JZ
- 「……とりあえず、少しは乾いたよね……」
――――町に出てしばらく歩いた先の本屋さん。
あたりを確認しても、広場を挟んだ先の博物館くらいしか高い建物はない。
多分、ミュージアムショップみたいなものなんだろう。本以外にもいろいろ置いてある。
ここなら広場のおかげで見晴らしがいいし、襲撃や狙撃の危険性も少なさそうだ。
……という事で、僕こと直枝理樹は本棚の後に隠れて無理にでも服を着替えておく事にする。
もうじき放送ということもあって、体を落ち着けるにはちょうどいい。
「……うぅ、寒いなあ」
服は半乾きといったところに加えて朝方の風は冷たい。
だから、当然と言えば当然なんだけど。
……風邪を引かなければいいなあ。
まあ、それでも男としていろいろ耐え切れない事に比べれば、うん、多少はマシだと思う。
ちなみにアサシンさんは現在お店の外で周囲を偵察中。
博物館に入る人とか出てくる人がいるかもしれないし。
何かあれば即座にトランシーバーで連絡できる様にして、僕たちはとりあえず体を休めている。
……博物館の中で休むことも考えたけど、あそこは目立ちすぎる。
中を調べる価値はある、と思う。
だけど、休憩はこうして別の場所で取ったほうが安全だ。
恭介たちとのミッションを思い出す。
……目立つ所に隠れても、まず見つかる。
かといってその裏をかこうとしても、やっぱりそういうのは想像の範疇になりやすい。
灯台下暗しが一番安全だったりするんだ。
まあ、そんなこんなで僕は一息ついている真っ最中。
……警戒は怠ってはいないけどね。
そのついでに、この殺し合いについて僕は色々考える事にした。
- 457 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:18:49 ID:BxuI4gmC
-
- 458 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:19:26 ID:tZQo0WSS
-
- 459 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:19:28 ID:CUKOc8JZ
- 誰のどんな思惑でこんな事がされているのか。
ここは何処なのか、首輪はどんなものなのか。
考えるべき事はいっぱいある。
……僕はそこまで力があるわけじゃない。
今言ったことだって、僕には想像もつかない物だってあるだろう。
……でも、だからこそ考えよう。
それが僕に出来ることなら最大限に使わなきゃいけない。
自分が無力だからって、手を尽くさない必要なんてないんだ。
ありとあらゆる可能性を考慮して、自分の打てる手は全て打っておく。
「……恭介なら、きっとそうするはずだ」
……恭介は、何をやっているんだろう。
真人は、謙吾は、来ヶ谷さんは、鈴は。
……もしかしたら、死んでしまっているかもしれない。
最悪、僕以外の全員が。
「……ッ!」
――――頭が割れるように痛く思えた。
……皆で頑張って。
ようやくあのバス事故をどうにかできるかもしれないと言う目前に、そんな結末は酷すぎる。
でも、でもでもでも。
それは確かに起こりうる出来事で。
一番最初の会場で死んでしまった人たちのように、思い浮かべた端から皆が爆発していく光景が。
- 460 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:20:01 ID:BxuI4gmC
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- 461 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:20:31 ID:BxuI4gmC
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- 462 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:20:41 ID:CUKOc8JZ
- 皆が楽しく笑いあう。
だけど、それは突然に。
鈴の脳みそがどろり。
来ヶ谷さんの顔がぐしゃ。
謙吾の頭がぼとり。
真人の蓋骨がぶしゅっ。
恭介の首が、ころころ。
笑顔のままで。
「う、く……っ」
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
――――だけど。
……だけど、逃げるな、僕。
向かいあえ、どんな光景が待ち受けていても。
その為に恭介たちは、僕を強くしてくれたんじゃないか。
この足で歩き出そう。やがて来る過酷も乗り越えてみせるんだ。
それを信じてくれた人たちのためにも。
- 463 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:20:42 ID:tZQo0WSS
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- 464 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:21:40 ID:BxuI4gmC
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- 465 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:22:09 ID:tZQo0WSS
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- 466 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:22:09 ID:TYsvEdHt
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- 467 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:22:19 ID:CUKOc8JZ
- 「……す、は」
息を吸う。
ゆっくり。ゆっくり。
――――もうすぐ放送が始まる。
それを聞いて取り乱さない為にも、覚悟しなければいけない。
信じたくはないけど、もし誰かが既にどこにもいないのだとしたら。
……きっとその人は、僕に強くあることを望んでいたんだろうから。
怒りや悲しみに狂う訳にはいかないんだ。
絶望に呑まれる訳にもいかないんだ。
……それに。
たとえ誰かがいなくなったとしても、リトルバスターズの絆が消えるわけじゃない!
なかった事になるわけじゃないんだ!
……だから僕は考えよう、これからどうすべきか。
絶対に揺るがず、折れない為に。
僕に出来ることを、僕の役目を。
さしあたっては今後の行動方針、かな。
……何をおいても念頭に置くのは、この殺し合いから脱出する為の方策だ。
- 468 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:22:45 ID:BxuI4gmC
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- 469 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:23:14 ID:BxuI4gmC
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- 470 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:23:15 ID:CUKOc8JZ
- 問題点はおよそ2つ。
脱出ルートの模索と、首輪の解除。
……僕がすべきなのは、前者だ。
正直な話、首輪をどうこう出来る技術は僕にはない。
……恭介みたいに花火とか火薬の知識があれば少しは解析できたかもしれないけど、
僕に出来るのはせいぜい手助けに首輪を回収することくらいだろう。
それを、恭介みたいに火薬や機械の知識のある人に託す。
認めるのは悔しいけど、殺し合いはもう始まっている。
あの侍や太一みたいな危険な人間は確かにいる。
死んだ人もきっと出ているはずだ。
……そういう、死んだ人の体からできれば首輪を回収したい。
――――僕にそんな、首をもぐ勇気があればの話だけど。
……決意は、ある。
だけど、実際に死体と向かい合った時にそんな残酷な事を僕が出来るのかは分からない。
……とりあえず、それは死体と出くわした時に考えよう。
今はもっと考えるべき事がある。
僕が確実に出来る事を、だ。
だから、脱出の為の具体的な方策を考えるんだ。
その上で首輪を解除できる人と協力関係を築ければ御の字なんだから。
- 471 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:23:54 ID:BxuI4gmC
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- 472 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:24:10 ID:tZQo0WSS
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- 473 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:24:15 ID:CUKOc8JZ
- 「……恭介なら、どうする?」
僕は呟いて恭介を思い浮かべる。
あの人はどうしているんだろう。
……合流できれば、きっと心強い仲間になってくれるはずだ。
仲間思いで何でもできる僕たちのリーダー。
絶対に、自分が優勝する為には行動しないっていう確信がある。
でも。
……一つ、不安が残るんだ。
恭介が僕たちを優勝させる為に、手を汚しているんじゃないかって。
あの人は、大切な物を護る為には切り捨てる事を躊躇わない所がある。
それは強さでもあるけど、弱いところでもある。
……諦めているってことなんだから。
だけど、だからこそ。
そんな弱いところも強いところもあるからこそみんな恭介が好きなんだ。
そして、いくら恭介でも補えないものがあるからこそ、みんなが一緒に力を合わせようとする。
……だから。
もし彼がそういうことを考えているなら、僕は絶対に止めてみせる。
絶対に皆で脱出する方法がある、そうやって説得してみせるんだ。
考える。
この状況でなら、恭介はどう動くか。
……ゲームに乗っているにせよそうでないにせよ、恭介なら絶対に積極的な殺人はしないはずだ。
アサシンさんやあの侍みたいな力のない僕たちがそんな事をやっても意味が薄い。
慎重に生き延びて、機会を窺うだろう。
- 474 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:24:20 ID:TYsvEdHt
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- 475 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:24:49 ID:BxuI4gmC
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- 476 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:25:10 ID:CUKOc8JZ
- ……それこそ、一人だったり、油断しきったりした相手を狙ったりとか。
あるいは不意打ちとかかも。
それだって絶対に他の人間に知られないように、だ。
証拠を残したり目撃されたりするような状況では動かないに違いない。
……そう、恭介はあからさまな殺人はしないだろう。
それを思い、少しはほっとする。
……でも、油断は禁物だ。可能性は0って訳じゃないんだから。
それに、こんな消極的なやり方だけじゃ恭介は絶対に黙っていない。
もっと効果的なやり方を考えて、自分から状況を変えにいくのが恭介なんだから。
じゃあ、恭介が武器にするのはなんだろう。
力という選択肢はないのは確認したとおり。
だとしたら、一つ。
「……情報、だね」
そう、この島で何をするにせよ、絶対に重要なのが情報だ。
脱出に関する情報でも、首輪に関する情報でもいい。
どの人が危険かという情報も役に立つ。
恭介が何を考えているかは分からないし、どんな作戦を立てるのかも予想もつかない。
脱出を目的にしているのかゲームに乗っているのかさえ、実際会ってもその口から漏れる事さえないかもしれない。
でも確実に言えるのは、恭介は絶対に情報を集めに動く――――ということだ。
多分、それを元に何かをしようともするはず。
- 477 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:25:20 ID:BxuI4gmC
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- 478 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:25:43 ID:tZQo0WSS
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- 479 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:26:07 ID:CUKOc8JZ
- そして、その利点は僕にも全く共通のもの。
……情報。
特別な力のない僕が手に出来る武器なのは、恭介と変わらない。
だけど、それだけに僕が頼りにする価値はあるはずだ。
僕もそれを武器に選ぼう。
さて、ここからが正念場だぞ、直枝理樹。
……選んだ武器はおそらく恭介と同じ。
だけど、スタートラインは並んでいても、ここからはきっと違う。
……恭介の後を追うだけじゃない、直枝理樹のミッションを進めていかなくちゃいけないんだ。
それこそ、恭介たちだって今度は僕が助けられるように。
恭介に諦めないでいいよって言う為に。
……どんな情報が今あるか。
どうやったら情報を得られるか。
恭介たちと会うにはどうしたらいいか。
みんなと脱出する為に、僕は、僕自身でそれらを考えていこう。
まず、最終目的になる脱出についてだ。
この島から優勝せずに脱出する方法は、多分3つ。
ひとつ。
首輪を無効化した上で、主催の人たちと対決する。
……これはあまり現実味がない。
主催の人たちの力が分からない以上、迂闊に手を出せないからだ。
だけど、万一他に手段がない場合はこれに頼るしかないと思う。
これをする為には首輪を解除できる人と、他のゲームに乗っていない人たちとの連携が重要になる。
……僕たちだけじゃきっと無理だ。
そして、主催の人たちとの交流手段も考えなくてはならない。
- 480 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:26:15 ID:BxuI4gmC
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- 481 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:26:42 ID:TYsvEdHt
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- 482 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:27:00 ID:BxuI4gmC
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- 483 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:28:02 ID:CUKOc8JZ
- ふたつ。
首輪はともかくとして、とにかく主催の人たちと交渉して皆を帰してもらう。
……ある意味、一番現実的だと思う。
この殺し合いには、絶対になにか“意味”があるはずだ。
逆に言えば、その“意味”さえ満たせば殺しあう必要はもうなくなる。
必要なのは、とにかく主催の人たちの目的を探ること。その上で、交渉で帰還という条件を引き出さなくちゃいけない。
こっちも主催の人たちとの交流手段が必要だ。
……殺し合いの目的に関して考えられる事はいくつかある。
何かの実験。何かの選別。何かの復讐。何かのテロ。何かの儀式。何かの見せしめ。
……何かの娯楽。
いくらでもこじつけられるけど、情報が足りなさすぎるので保留するしかないかな。
ただ一つ言えるのは、主催の人たちにとってこの殺し合いは何かの“意味”を手に入れる“手段”だということだ。
一番最後のもっとも考えたくない可能性でさえ、主催の人たちの退屈しのぎの“手段”なんだろうから。
まずは放送を聞いて、そこから判断しよう。
……どこまで彼らが本当のことを話しているかは疑ってかからなきゃいけないけど。
みっつ。
首輪を無効化した上で、主催の人たちに気付かれずに島を出る。
理想的といえば理想的。
……だけど、本当に彼らから逃げる事ができるか、と言う不安は付きまとう。
肝心なのは、首輪の解除とこの島での脱出手段を探す事だ。
これらを纏めると、僕が調べるべき情報は5つ。
・首輪の解除。
・ゲームに乗っていない人たちが誰か。
・主催の人たちの目的。
・主催の人たちとの交流手段。
・島の中にどんな脱出手段となりうるものがあるか。
- 484 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:28:17 ID:tZQo0WSS
-
- 485 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:28:53 ID:CUKOc8JZ
- それぞれに対応する僕にできる調べ方は、こうなる。
・首輪を回収、技術や知識のある人に託す。
・積極的に他者と交流する。
・放送を分析する。他にも施設とかに何かあるかもしれない。
・……現状、分からない。とにかく情報収集。
・島の中の施設や、支給品を徹底的に調べる事。
……これだけだ。
だけど、放送を分析するのはともかく、島中の施設や支給品を調べるのはとても僕一人じゃ無理だ。
参加者の情報も手の届く範囲が精一杯。
……その為にはどうしても仲間が必要だ。
アサシンさんは頼りになるけど、それだけじゃ手が足りない。
もっともっとたくさんの人と交流する必要がある。
その為に。
――――皆を見つける。
まずは、信頼できるリトルバスターズのメンバーを探そう。
僕がアサシンさんと協力しているように、皆にも仲間がいてもおかしくない。
……そこまでの皆の交友関係や、今までに会った危険な人たちの情報が欲しい。
そして、他の人たちとも協力関係を築いていくんだ。
バスターズでなくてもいい。
アサシンさんや静留さんみたいな人たちと手と手を取り合おう。
- 486 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:29:02 ID:BxuI4gmC
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- 487 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:29:33 ID:BxuI4gmC
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- 488 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:29:58 ID:CUKOc8JZ
- ――――つまり。
僕が成功させるべきミッションは、主催に対抗する人たちの間に情報に関する協力関係を構築することだ。
それも、できれば僕が倒れても残り続けるようなものがいい。
……僕が死ぬ可能性だって充分ある。
だからこそ、僕一人で留まらない皆の輪を作れれば、きっと僕のした事は無意味にはならないはずだ。
じゃあこれから具体的にどうする、直枝理樹。
考えろ。考えるんだ。
恭介ならどうするか。そして、恭介なら何を切り捨てるか。
……恭介が切り捨てたものですら拾い直せるミッションを、僕が考えろ!
地図を眺めて手をあごに当てる。
「……恭介なら、どこに向かうかだ」
情報を武器にするだろう恭介なら、同じく情報を武器にしようとしている僕とも行動範囲は重なるはず。
彼の行動範囲はきっと僕の行動範囲としても有効だろう。
それを考える。
……恭介と出会えるかもしれないっていう打算もある。
山の中はない。
誰かと出会える可能性は著しく下がる。
となると、街。
それも、ひとところに留まってはいないだろう。
あちこちに出回って情報を集めているに違いない。
目印になるところには人が集まるだろうから……、多分、施設巡りをするはずだ。
- 489 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:30:41 ID:BxuI4gmC
-
- 490 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:31:04 ID:CUKOc8JZ
- そこで、施設を効率的に巡るにはどうするか。
さっきから僕の目に入っている地図には、その答えが大きく書かれている。
「……駅だ」
電車を利用する。恭介なら絶対にこれに気付く。
人が集まる理由としては申し分ない。
だから、……多分、恭介はどこかの駅の近くに。
線路から離れていない所にいるはずだ。あるいは、駅を巡っているのかもしれない。
つまり、駅を中心として各地の施設を探索していけば、恭介に出会える可能性は高い。
もちろん、そのほかの人間たちにも。
……その人たちの間で、広い協力関係を築く。
中には危険な人もいるだろうけど、慎重策を取りすぎても発展はしない。
そうなった場合はアサシンさんを信じよう。僕を守ってくれるって。
……僕に対抗できないなら、誰かを頼る。代わりに、僕のできることをやっていく。
他力本願かもしれないけど、それが皆と協力していくってことなんだと思う。
「……あ、そうだ!」
アサシンさんの事を思い浮かべた瞬間、一つの案が僕の脳裏に浮かんだ。
正確には、彼自身との遭遇の経緯と、持っている支給品を思い浮かべて。
……信頼できるたくさんの人の間での協力関係。
それを作り上げるのに有効かもしれない、ひとつのミッションが。
名簿を取り出して、目に通していく。
……これを覚えないといけない。
このミッションを進めるには、絶対に参加者の名前が必要になる。
- 491 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:31:46 ID:BxuI4gmC
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- 492 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:32:05 ID:CUKOc8JZ
- ◇ ◇ ◇
真アサシンことハサン・サッバーハは一つの報告を携えて本屋の自動ドアをくぐる。
……おそらく危険ではないだろうが、直江理樹に伝えておくべきことだろう。
店内は清潔で、蛍光灯の光に照らされた空間にかび臭さは微塵もない。
……と、奥まった所に理樹の姿を見つけて近づき、話しかける。
「リキど――――、」
「あ、アサシンさんちょうど良かった! 今後の方針について聞いてもらいたいことがあるんだ」
……遮られ、にこりと笑いかける理樹にアサシンは沈黙する。
その勢いに押され、何となく頷いてしまったからだ。
急ぐ報告でもないし、とりあえず聞いてからでもいいだろうと判断したのもある。
理樹はアサシンの方に近寄ってくると、目と目を合わせて向かい合い、切り出した。
「……これからなんだけど。
やっぱり、何はともあれ一番大事なのは情報だと思うんだ」
開口一番に告げられたそれは、当然といえば当然の事。
だが、アサシンはそれに呆れかえる様な事はしない。
聖杯戦争でも情報は重要な要素だ。初歩の確認はしておくに越したことはない。
少なくとも、目の前の少年がむやみやたらに動き回る程に見通しがない訳ではない事は確かだろう。
「……これから、積極的に他者と交流すると。具体的な方策は?」
頷くアサシンに理樹自身もそれを返し、自身の考えを述べていく。
- 493 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:32:25 ID:BxuI4gmC
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- 494 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:33:03 ID:BxuI4gmC
-
- 495 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:33:08 ID:CUKOc8JZ
- 「まず、この近くの施設を回ってみるつもり。
地図で目立つ場所には人も集まるだろうし、もしかしたら何か使えるものがあるかもしれない」
「……成程」
「その後は、駅に行って電車で移動。……そして、できる限りたくさんの施設を調べておきたいんだ。
アサシンさんには、僕が向かう前にそこを偵察して欲しい」
意外に考えている。
――――そう、アサシンはそう思う。
確かに施設や駅には人が集まる。
ランクが落ちているとはいえ気配遮断のある自分ならば偵察に最適だ。
そこに誰がいるか、会話内容から危険かそうでないかを判断できるだろう。
反面、危険人物も集まりやすいが……、そこは自分が信頼されているということだろうか。
悪い気はしないので、黙って先を促すことにする。
「……ここからが本題だよ。
まず、なんだけど……。アサシンさん」
「……どうなされた」
理樹の真剣な顔。
何事かと姿勢を改めるアサシンにとって、理樹の告げた言葉は少し理解に時間を要した。
「……アサシンさんのもっている木彫りの星を、分けて欲しいんだ」
「……は?」
どういうことだろうか。
投擲武器としてもあまり優れているとはいえないあのアイテム。
数だけはあるが、あれが何だというのだろう。
- 496 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:33:47 ID:tZQo0WSS
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- 497 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:33:47 ID:BxuI4gmC
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- 498 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:34:11 ID:CUKOc8JZ
- 訳が分からないが、とりあえず今は忠義を尽くすと決めた相手だ。
投擲用を考えて半分ほどを取り出し、理樹に手渡すことにする。
「ありがとう」
にこりと笑う理樹ではあるが、アサシンにその胸中は分からない。
……これで、何をするつもりなのだろうか?
全く思いつかない。
今のアサシンの仮面の下の表情を見ることが出来たならば、疑問の一字で表現できるだろう。
何となくそれを察した理樹は、早速説明に移ることにする。
それも、筆談で。
『……これなんだけど。
これを、信頼できる相手に渡そうと思うんだ。これから会う、情報交換した人たちみんなとね』
――――盗聴を警戒した手段。
それはつまり、主催たちに聞かれるとまずい類のものだ。
真剣に向かい合う必要がある。
アサシンはしばし黙考。
信頼できる相手に、渡す。
理樹の言葉はつまりどういうことか。
『……身元の保証を与えるお心積もりか?
この星を持っているならば、我々が信頼した証。
いずれその人間たち同士が出会った時に、誤解しあう必要もなく協力関係を築けるだろうと』
問いへの答えは真面目な表情の頷き一つ。そして言葉の列は続く。
- 499 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:34:54 ID:BxuI4gmC
-
- 500 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:35:10 ID:tZQo0WSS
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- 501 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:35:14 ID:CUKOc8JZ
- 『……その通りだよ。そしてそれだけじゃない。
その星を持っている人たちで、……会議の場所を作るんだ』
すう、と吸気を取り入れ、理樹は一息で書き上げる。
『……定期的な情報とアイテムの交換会。そして、主催の人たちに対抗する為の会議。
それを、その場所を僕たちで作る。
参加資格は木彫りの星を持っている一行。
時間は……3時と15時にしよう。放送は放送で集中したいからね。
場所はその度に変えるけど、第一回は、2回目の放送のあとに遊園地かな?
電車の路線の真ん中辺りにあるし』
――――感心する。
中々どうして、発想は悪くない。
まず、星を与えることで身元を保証する。
後に星を与えたものたち同士が出会うことがあれば、星を見せ合うことでスムーズに交流できることだろう。
対主催陣間の連携は密になるはずだ。
そして、会議などの交流の場にも利点はたくさんある。
警戒すべき人物たちや、これまでに得た首輪関連、施設にある使えそうなものなどの情報を全員に伝えることが出来るからだ。
支給品の交換会も、各々の得手とする道具などを手に入れられる可能性がある。
開く価値は高い。
……だが、と思う。
甘い。
考えも詰めも、何より理樹本人も。
果たして理樹は気付いているのだろうか、その危険性に。
- 502 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:35:51 ID:BxuI4gmC
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- 503 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:36:04 ID:tZQo0WSS
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- 504 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:36:14 ID:CUKOc8JZ
- 『それだけでは済まないだろう。何らかの誤解があれば、いや、無くても軋轢は生まれる。
多少はマシかもしれないが、結局争いは治まらない。
ましてや会議の場などは絶好の襲撃場所だ。
何かの折に情報が危険人物に漏れれば悲惨なことになりかねないのでは?
あるいは、信頼したはずの相手が猫を被っていて、機を得たとばかりに不意を打つ事もありえるかと』
……そう。理樹のやろうとしている行動は、猛獣に餌をあげようとしているも同然なのだ。
獣ならまだいい。狩人すらおびき寄せられる危険性もある。
それを分かっていないのなら思いとどまらせた方がいい。
そう考え、アサシンは理樹に上の文面を見せたのだが――――、
「……うん、分かっているよ」
苦笑とも哀笑ともつかない笑い。
……理樹は、そんなことはとっくに分かっていたのだ。
アサシンはそれを見て、ただ沈黙する。
『……分かってる。だけど、それでも。
それでも、こうすることにはきっと価値がある。
僕のできる最大限のことなんだから』
その表情には確かに怯えが混じっている。
にもかかわらず、理樹はこの選択を選んだのだ。
保身を考え慎重策を選ぶのではなく、脱出のために積極的に動く選択を。
たとえ、それが自分や皆を危険に曝しかねないと分かっていても。
――――それが勇気か無謀かは、今はまだ知りえない。
- 505 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:36:44 ID:BxuI4gmC
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- 506 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:37:12 ID:BxuI4gmC
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- 507 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:37:15 ID:CUKOc8JZ
- 彼の決意を見届けて、アサシンはその『危険』に際したとき彼がどう動くかを、問う。
……危険に身を曝す決意があるならば。
当然それも考えておく事こそ賢者であり、主とすべきものなのだから。
「……リキ殿。では、仮に不意をついて襲われたり、あるいは真っ向から戦いを挑むものがいたらどうするつもりで?
……いくら自分が斥候が得意とはいえ、あくまで暗殺者でしかなくまた体も一つ。
偵察中に襲われることも考える必要はあるかと」
返答はしかし即座に。
……やはり、このことについても理樹は既に考えていた。
「……アサシンさんの監視をかいくぐって襲われたら。
その時は僕は、交渉に持ち込む」
「……如何様にして?」
「とにかく、襲われながらでも相手の興味を引きそうな情報を口にして、交渉できないかって言ってみるよ。
危険人物や首輪の情報なら、聞こうとしてくれる可能性が高いと思う。
……中には戦いが好きって言う人もいるかもしれないけど、そういう人も首輪は解除したがるはずだし。
戦いを求める為に、危険な人間のことをむしろ知りたがるかも。
……いきなり狙撃されたりしたらどうしようもないけど」
苦笑する。それも一つの可能性だということを理解したうえで、認めるように。
「……とにかく、交渉に持ち込んだらあとはこっちが今後の情報源になることを約束すれば見逃してくれる可能性は0じゃないよ。
あと、木彫りの星を持っている人間も襲わないようにしてもらいたいけど……、
たぶん、相手を殺して星を奪う人も出てくると思う。誰かを騙す為に、ね。
だからその協定を結ぶ相手は慎重に選びたいな。
……例えば誰かを優勝させる為に仕方なく殺し合いをしている人なら、ある程度信用は出来るはず」
なんとも曖昧だ。
彼の考えは基本的に、人の善性を信用した上に成り立っている砂上の楼閣である。
確かに筋は通るし、成功すれば確実に良い方向に回るだろう。
- 508 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:38:40 ID:tZQo0WSS
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- 509 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:39:05 ID:BxuI4gmC
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- 510 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:39:13 ID:CUKOc8JZ
- ……だが、現実は得てしてそうはいかないものだ。
人の悪意は各々が思う以上に強いものだし、それ以上に怯えや猜疑の心は強く蔓延する。
皆が皆誰かを信用する展開など、起こりうる可能性は奇跡にも等しい。
闇に生きたハサン・サッバーハはそれを知っている。
それ故に――――、こんな甘い人間は殺しておいた方が後々足手まといにならないだろう。
そう、足手まといになるから。
……そんな簡単な理由で、人は誰かを殺せるのだから。
けれど。
「……では、それでも戦いを止めようとしなかったならば?」
直枝理樹は、微笑んで。
――――臆面もなく、告げる。
「……僕に戦う力はそんなにない。
だから、……君を信頼させてくれるかな、アサシンさん」
迷いないその言葉は、何故かハサン・サッバーハの耳に残った。
――――直枝理樹は甘い人間である。
だがしかし、無能ではない。
全ての危険性や可能性を考慮したうえで、それでも踏み込んでいける強さを得ているのだ。
- 511 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:40:19 ID:tZQo0WSS
-
- 512 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:40:27 ID:CUKOc8JZ
- 人の悪性を理解しながらもなお誰かを信じる。
……その在り様に、いつしかハサンの興味はだいぶ強まっていた。
前の主人が主人で、このような気質とは無縁だったからかもしれない。
だが、それ以上にこんな少年がこうも強く在れる理由を知りたいのかもしれない。
ならば、この少年を育んだ仲間たちとやらを見極めてみるのも、悪くはない。
それを思い、いつしかハサンはこう呟いていた。
「……御意」
◇ ◇ ◇
――――その言葉を聞いて、僕はへたりと座り込んでしまった。
「……リキ殿?」
「あはは……。
僕自身も無茶なことを言っているのは分かってるから。
断られたらどうしようかと思っちゃった」
情けない声でそう返すと、アサシンさんは少し体を震わせる。
……笑ったのかな。
そうだとしたら、少しは僕に気を許してくれているんだろうか。
……だけど、まだ気を抜く訳にはいかない。
僕のミッションで一番大切なのは、これから言う事だから。
- 513 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:40:32 ID:BxuI4gmC
-
- 514 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:41:22 ID:CUKOc8JZ
- 「……最後に、このミッションで一番大切なポイントを言うよ」
座り込んだままじゃ格好がつかないし、どうにか立ち上がってアサシンさんと向かい合う。
……盗聴されているかもしれないし、口にして主催の人に教えない様気をつけて筆談を再開する。
……普通に喋っても問題ない内容とそうでない内容をじっくり考えた結果の事だ。
『……もし信頼できる人に出会えたら、今まで言った行動方針をその人にも教えるんだ。
一緒に木彫りの星もいくつか渡してね。
強制はしないけど、出来ればその人たちにも僕たちと同じ行動をしてもらいたい。
そうすれば――――、』
……そうすれば。
僕は、その言葉を紙に書き始める。
『皆の輪は、どんどん広がる。僕の知らない所でもいつの間にか、皆の繋がりができているはずなんだ。
僕が会った人が、星を誰か信頼できる人に渡す。その人も、信じた人に星を渡す。
……そういう、皆の間のネットワークを作り出す。
互いを信じて、助け合う為の繋がりを、だよ』
……これが、僕のミッション。
いかがわしい商法みたいだけど、それでも僕の考え付いたこれからの計画だ。
もしかしたら星の数が足りなくなるかもしれないけど、その場合は何か星印のものを持ってもらおう。
会議の際はそれは参加証にはならないけど、僕たちの存在を教えてくれたグループとあらかじめ合流してもらえばその人たちをのけ者にしなくて済む。
――――このネットワークを作り上げることが出来れば、脱出の為の連携は非常に取りやすくなるはずだ。
それに――――、
「……リキ殿」
「……え? 何か問題あるかな」
……何だろう。
確かに穴だらけなのは自分でよく分かってはいるんだけど、とりあえずの対策は考えたはずだったのに。
- 515 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:41:48 ID:BxuI4gmC
-
- 516 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:42:14 ID:tZQo0WSS
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- 517 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:42:26 ID:BxuI4gmC
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- 518 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:43:12 ID:CUKOc8JZ
- 「……もしかして、貴殿は自分の死すら見据えた上で?」
「…………」
――――図星、だった。
「……あはは、参ったな。見抜かれちゃった」
そう。
このミッションの一番の利点は、そこ。
誰か一人にでも伝えることが出来れば、たとえ僕が倒れた後でも皆の輪は広がり続ける。
それさえ残せれば、僕はきっと誰かの助けになれるはずだ。
――――きみの力がひつようなんだ。
……恭介。
僕は、僕の力でこの道を選ぶ。
皆が僕を救ってくれたように、誰かを僕は助けたい。
……その過程で僕が死んでしまったとしても、何かを残すことはできるはずだ。
もちろん死にたいわけじゃないし、死なないように全力で努力するのは当然だけど。
もしかしたら、僕一人じゃ無理かもしれない。
……だけど。
「……リキ殿、問おう」
- 519 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:43:17 ID:tZQo0WSS
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- 520 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:43:35 ID:BxuI4gmC
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- 521 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:43:48 ID:tZQo0WSS
-
- 522 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:44:02 ID:CUKOc8JZ
- アサシンさんはゆっくりと、
「――――貴方が私のマスターか?」
その言葉を、口にした。
僕はそれを、
「……ううん」
違う、と答える。
だって。
「……僕たちは、悪を成敗する正義の味方――――、リトルバスターズだ」
……上とか下とか関係ない、対等な仲間。
僕は、アサシンさんの前に自分の左手をゆっくりと伸ばす。
僕は、一人でも戦える。誰にも頼らずに立ち向かっていける。
――――そこまで鍛えてくれたのは、皆だ。
だからこそ強くなった僕が、今度は手を差し伸べる番なんだ。
皆のために。誰かのために。
そして、強敵が現れたなら、皆で力を合わせればいい。
一人が辛いなら二人で手を。
二人が寂しいなら輪になって手を繋ごう。
……繋いだ。
アサシンさんが僕の手を掴み、握手する。
- 523 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:44:30 ID:tZQo0WSS
-
- 524 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:44:51 ID:BxuI4gmC
-
- 525 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:45:03 ID:CUKOc8JZ
- そう、きっとこんな中でも信じられる人はいる。
だから皆で助け合っていけるって、そう思う。
これが第一歩。
――――さあ、いこう。
とりあえずのミッションの全容を明かした後、僕たちは外に出てきて細かい所を詰めることにした。
自分でも分かっている程穴だらけな計画だし、いざという時の対応や具体的なこれからの行動を考えておくに越したことはないんだ。
「……そうだ、ハサンさん。無理にとは言わないんだけど……」
あの後、アサシンさん、もといハサンさんは自分の本名がハサン・サッバーハであるという事を教えてくれた。
真名を教える事はマスターとして認めた事だ、とか言っていたから、多分僕を信頼してくれた証なんだろう。
とりあえず他の人のいる前ではともかく、僕たちだけしかいないときは本名で呼んだ方がいいと思って、こうしている。
「む? 何用かな、リキ殿」
……そんなハサンさんに言うのは少し心苦しいんだけど……。
「……主催に対抗する人たちの信頼を勝ち取った後だけでいいから、姿を隠すのをやめてもらえないかな。
やっぱり姿の見えない仲間がいると不安だろうし、後々まで隠しているとかえって疑われちゃうかもしれないからね」
頭を掻きながら言う。
……でも、もしかしたら無理かもしれない。
静留さんや太一の前でも姿を現そうとしなかったくらいだし……。
- 526 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:45:24 ID:tZQo0WSS
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- 527 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:45:50 ID:tZQo0WSS
-
- 528 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:45:51 ID:CUKOc8JZ
- だけど、返事は思ったよりは芳しいものだった。
「……善処しよう」
「あれ? 嫌がらないの?」
疑問に思って聞いてみる。
「……リキ殿の計画に支障があっては結果的に損をする可能性がある。
確かに信頼というのは大事なものだ。敢えて手札を曝すのも一つの手ではあるだろう。
……ただし、相手にもよるがな」
……つまり、姿を曝すか曝さないかは相手次第でハサンさん自身が判断するって事だろう。
とりあえず、そんな事を言ってくれるだけでも十分だ。
「……ありがとう」
「……誉められる事ではない。戦術的な検討の上での判断だ」
そっけない言い方に苦笑して、次の話題に移ることにする。
「後は……」
と、そこでふと思い出す。
「……首輪についても考えなきゃね」
参加者全員についているこれの情報は、どんな相手にしても取引に値するはずだ。
……現状、とりあえず誰かのを一つ欲しい所ではある。
僕がどうこうできないにしても、きっと誰かに託せるはずだから。
――――だけど。
「う……」
- 529 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:46:22 ID:tZQo0WSS
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- 530 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:46:42 ID:tZQo0WSS
-
- 531 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:46:44 ID:CUKOc8JZ
- ……僕に、死体からそれを取り外すことが出来るかどうかは分からない。
口を噤み、俯いてしまう。
「……首輪がご所望か? ならば私が取ってこよう。
もちろん、生者からではなく死体からの回収だ」
僕の心を見透かしたかのように、ハサンさんが言ってくれた。
……だけど。
「……うん。必要になったら、頼むね」
――――それを押し付けていいのかどうか、迷う。
本来なら僕が手を汚すべきことなんだから。
そんな風に押し黙ってしまった僕に、ハサンさんは溜息をついてこう言った。
「……リキ殿。互いにできることを成し、補い合うのが仲間だといったのは貴殿だろう?
貴殿にできない事は私に任せればいい」
――――それを聞いて、僕は少し笑ってしまった。
確かにそうだ。自分が言ってたことを鸚鵡返しされては世話はない。
……だけど、それでもどうすべきかはもうちょっと真剣に考える必要があるかもしれない。
「……まあ、道中考えていけばいいよね。
ハサンさん、他に何かある?」
とりあえず話題転換だ。
……これから駅に向かうつもりだけど、それまでにやっておいた方がいい事もいくつかある。
もうすぐ始まる放送も絶対に聞き逃す訳にはいかない。
主催の人たちの目的を推理する為の材料が手に入るかもしれないんだから。
- 532 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:46:53 ID:BxuI4gmC
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- 533 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:47:13 ID:BxuI4gmC
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- 534 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:47:24 ID:tZQo0WSS
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- 535 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:47:38 ID:TYsvEdHt
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- 536 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:47:42 ID:CUKOc8JZ
- ……そして、僕の持つ最後の支給品。
これもできれば持ち主に届けてあげたい。
それは何枚も何枚もの手紙だった。
送り主の名前は、アル。――――アリエッタ。
宛先はクリス。
――――多分、名簿の中にあったクリス・ヴェルティンという人だ。
名簿にない以上はアリエッタという人はここにはいないけど、それでも彼の大切な人なんだろう。
あと、悪いと思いながらも手紙の文面をみてしまった時に何度となく出てきたトルタという名前。
……きっと、名簿のトルティニタという人だと思う。
知り合いなら、あるいはこの人に渡すという選択肢もある。
何にせよ、この手紙は本来の持ち主に出来れば返したいと僕は考えているんだ。
そこまで考えた時、ハサンさんはふと思い出したように、一つの情報を教えてくれた。
「……そうだ、後回しになっていたがこちらにも報告があってな。
先刻の偵察の際に他の人間を見つけたので、それを告げる為に来たのだ」
「え? 本当? ど、どこにいたの?」
……それが本当なら、相手次第でミッションを開始したい。
僕に出来る事は、このミッションをできる限りたくさんの人に広めることくらいなんだから。
「……む。
以前話した、私と敵対している……クズキソウイチロウの一行だ」
……よりにもよって、ハサンさんの敵なのか。
どうしよう。
……まずは、ハサンさんの話を聞こう。
頷いてハサンさんに続きを促す。
- 537 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:47:50 ID:tZQo0WSS
-
- 538 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:48:44 ID:CUKOc8JZ
- 「……一人、少女を連れていたな。それと……いや、アレはおいておこう。
会話の内容から察するに、おそらく殺し合いに乗っていないのはほぼ間違いない」
――――だとしたら、是非手を組みたいな。
できる限りたくさんの相手と顔見知りになっておきたいし、葛木っていう人が持っている情報も欲しい。
だけど、ハサンさんが――――、
「……クズキなら、敵対関係とはいえ私の顔はまず知らないだろう。
接点は殆どなかったからな。
私としてもこの状況下では一時的とはいえ手を組むのにやぶさかではない。
戦力としても充分だろう」
「……そうなんだ」
少し安心する。
そして、決めた。
葛木っていう人と交渉してみよう。
まずはそれが第一歩だ。
僕が、僕の道を行く為の。
――――そして、放送が始まる。
「――――恭介」
君がどこで何をしているかは、僕には分からない。
だけど、君が一人で何もかもをも背負い込もうとしているなら。
大切なものを守るために、何かを切り捨てようとしているのなら。
- 539 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:48:56 ID:BxuI4gmC
-
- 540 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:49:46 ID:CUKOc8JZ
- 今度は僕が手を差し伸べるよ。
そんな事をする必要はないって。
……手を取り合って、立ち向かおうって。
そして何より、君の力が必要なんだから。
――――皆とここを脱出する為に。
僕の作戦。
それを成し遂げる覚悟は既にある。
懸念していた問題点は理想に近い形でクリアできた。
仲間の存在による、僕には出来ないことの補完。
同時に心強い味方も得ることができた。
――――さあ、はじめよう。
直江理樹の、人生最大のミッションを。
見せてあげるよ。
これが、僕の選択だ。
「ふぇくしゅっ!」
【B-5/博物館前広場/1日目/早朝(放送直前)】
- 541 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:50:32 ID:CUKOc8JZ
- 【チーム:ANOTHER BOYS DON'T CRY】
【直枝理樹@リトルバスターズ!】
【装備】:カンフュール@あやかしびと −幻妖異聞録−、生乾きの理樹の制服、トランシーバー
【所持品】:支給品一式、謙吾のバット@リトルバスターズ!、アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン
聖ミアトル女学院制服@Strawberry Panic!、木彫りのヒトデ22/64@CLANNAD、女物の下着数枚
【状態】:健康、少し寒気
【思考・行動】
基本:ミッションに基づき対主催間情報ネットワークを構築、仲間と脱出する。殺し合いを止める。
0:……ミッション、スタートだ。
1:放送を聞き、内容から主催について考察する。
2:葛木たちと接触、交渉及び情報交換をする。
3:博物館やドームなどの中心街の施設を探索。一通り終えたら駅に行き、電車で南へ移動する。
4:真アサシンと協力し、リトルバスターズの仲間を探す。 彼を信頼する。
5:情報交換の際は侍(名前は知らない)について念入りに注意し、謙吾との違いを説明する。
6:真アサシンと敵対関係にある人(特に間桐桜)には特に注意して接する。
7:クリス、またはトルタにアリエッタの手紙を渡したい。
8:首輪を取得したいが、死体損壊が自分にできるか不安。
9:自分が死んだ場合に備え、自分たち以外の誰かにもミッションを託したい。
【備考】
※参戦時期は、現実世界帰還直前です。
※アサシンの真名を知りました。。
※黒須太一を危険視。静留と知り合いについて情報交換しました。
※トランシーバーは半径2キロ以内であれば相互間で無線通信が出来ます。
※棗恭介がステルスマーダーである可能性を懸念しています。
※名簿の名前を全て記憶しました。
- 542 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:50:43 ID:tZQo0WSS
-
- 543 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 19:50:50 ID:BxuI4gmC
-
- 544 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:51:17 ID:CUKOc8JZ
- 【理樹のミッション】
1:電車を利用して、できる限り広範囲の施設を探索。
2:他の参加者と接触。
3:参加者が対主催メンバー(以下A)であり、平穏な接触が出来たらならAと情報交換に。
4:情報交換後、Aに星(風子のヒトデ)を自分が信頼した証として渡す。
5:12時間ごと(3時、15時)にAを召集し、情報やアイテムの交換会を開催する。第一回は15時に遊園地を予定。
6:接触した相手が危険人物(以下B)であり、襲い掛かってきた場合は危険人物や首輪の情報を開示。興味を引いて交渉に持ち込む。
7:交渉でBに『自分が今後の情報源となる』ことを確約し、こちらを襲わないように協定を結ぶ。
8:Bの中でも今後次第でAに変わりそうな人間にはある程度他の情報も開示。さらに『星を持っている相手はできるかぎり襲わない』協定を結ぶ。
9:上記の2〜8のマニュアルを星を渡す時にAに伝え、実行してもらう。
なお、星を渡す際は複数個渡すことで、自分たちが未接触の対主催メンバーにもねずみ算式に【ミッション】を広めてもらう。
10:これらによって星を身分証明とする、Aに区分される人間の対主催間情報ネットワークを構築する。
【真アサシン(ハサン・サッバーハ)@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ22/64@CLANNAD、トランシーバー
【所持品】:支給品一式
【状態】:右腕(宝具)切断
【思考・行動】
基本:無理せず自己防衛。生存のために協力。
0:……真逆、か。
1:理樹を信頼し、協力する。
2:ただし理樹の信念が折れた(優勝を目指す)なら殺害。それまでは忠義を尽くす。
3:気配を隠しながら周囲を監視する。他の対主催遭遇時は姿を現す?
4:理樹およびリトルバスターズメンバーに興味。
5:死体を発見したら、理樹の代わりに首をもいで首輪を回収。
- 545 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:52:04 ID:CUKOc8JZ
- 【備考】
※参戦時期は、桜ルート本編死亡後です。
※右腕の喪失により、妄想心音が使用不可能です。 制限に気づきました。
※木彫りのヒトデを星だと思っています。説明書には「木彫りのヒトデ。参加者贈呈用」と書かれています。
※トランシーバーは半径2キロ以内であれば相互間で無線通信が出来ます。
【アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン】
クリスの元に毎週届く、とある少女が書いている手紙。
机の引き出しいっぱいに溜まっている全てが支給されている。
もしかしたらロワ内のクリスの参戦時より未来の手紙や、
あるいは別ルートで送られるはずの手紙も含まれているかもしれない。
ちなみにアルことアリエッタはクリスの故郷にいる恋人である。
原作といいロワといい、無気力な割に浮気癖があるというのはいかがなものだろうか。
- 546 名前:影、ミツメル、光 ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 19:52:57 ID:CUKOc8JZ
- 投下終了です。
タイトルは同人ゲーム『MYTH』主題歌の曲名から。
- 547 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 20:05:40 ID:gycwGBt+
- 投下乙です
緻密なミッションと恭介と理樹の対比が光っていました
ハサン先生の信頼も徐々に勝ち取り、少しずつ一人前に近づいていく理樹がかわいいです
え?理樹は男?ハハハ、ご冗談を
- 548 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/17(木) 20:09:18 ID:yxwe8xWE
- ……と、一つ告知を。
禁止エリアについて、議論スレにてご意見募集中です。
放送投下のためご協力お願いします。
- 549 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 21:00:21 ID:I3AN19BA
- 投下乙です
なんだこの、理樹の主人公っぷりはw
恭介と違って穴の多い作戦だけど、理樹らしくて良いなあ
そして士朗セイバーの契約シーンを彷彿とさせる場面、凄く上手かった
- 550 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 21:10:59 ID:Sv1KAJa4
- 投下乙!
理樹すごいやwww まさかここまで主人公っぽいことを……あ、主人公かw
それにしてもハサン先生がセイバーのシーンを髣髴とさせる台詞を言ったとき、思わず笑ってしまったのは何故だろうw
このコンビがどんどん好きになっていく不思議w
- 551 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/17(木) 22:14:48 ID:3XuvaxkL
- 投票乙です
理樹も頑張りっぷりが映えるな
友情の証システムはなかなか上手い
果たして、彼は今回も恭介を乗り越えることができるのか
- 552 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:03:13 ID:yxwe8xWE
- 新しい朝が来た。
希望の朝だ。あるいは絶望の朝だ。
あるものにとっては吉報に、またあるものにとっては悲報となる言の葉が。
――――島中のありとあらゆる場所へと響き渡る。
もたらすものは何か。
もたらされるものは何か。
それを知るものは未だこの場にはいない。
――――この声の主たる伝令者でさえも。
遠く、遠く。
明けの空にじっくりと浸透していくのは悦楽交じりの音の群。
言峰綺礼は喜色を隠すこともなく――――、己が切開のメスをさくりと入れていく。
「……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね。
見も知りもしない赤の他人が息絶える傍らで、何事もなく朝を迎えられた喜びは耐え難いものだろう?
実に結構なことだ。とても君達は人間らしい。
人間でないものたちも含めて、な。
誰かを手にかけた時の優越感はいかがだったかな?
誰かに裏切られた時の絶望感はいかがだったかな?
誰かを助けられなかった時の無力感はいかがだったかな?
誰かと共にいる時の安心感はいかがだったかな?
誰かを騙す時の心苦しさはいかがだったかな?
……ふむ、まあ前置きはこのくらいにしておこう。
禁止エリアの発表に移る。
- 553 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:03:57 ID:7u0q+9DV
-
- 554 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:04:12 ID:F6L3wHfk
- ……死者が知りたいかね?
誰が無残に散っていったか、愛する者がどれだけ悲惨な目に遭ったかを知りたいと。
……くく、それを知ってどうすると言うのかな?
せいぜい自己満足にしかならないだろうに。
君たちがいかに猛ろうが悲しもうが、死者は戻っては来ないのだぞ?
……話が逸れたな。剋目して聞くといい。
運悪く該当箇所にいるものは、自己の保身を露にしながら生き足掻くその姿を見せてみたまえ。
8:00よりE-2。
10:00よりF-6。
以上の二つだ。
――――では、そろそろお待ちかねの死者の発表といこう。
大切な人間の死を味わうものは、その誰かが与えてくれた過去に感謝するといい。
喜べ、君は間違いなく満たされた人間だ。
失えるものがあるのは幸せな人間の特権だろう?
大切な人間の生に安堵したものは、その誰かを護る為の未来に感謝するといい。
喜べ、君は無力ではない。
彼ないし彼女の未来を掴み取る為に、騙し欺き殺し奪い、ありとあらゆる手段を用いて闘争できるのだから。
大切でない人間の死を悦を抱くものは、今自分の生きている事実に感謝するといい。
喜べ、君は実に典型的な感性の持ち主だ。
邪魔者が与り知らぬところで始末されたのだぞ? 偽善などに惑わされず、諸手を挙げて歓喜を表現してみせたまえ。
- 555 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:04:36 ID:7u0q+9DV
-
- 556 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:05:05 ID:yxwe8xWE
- ウィンフィールド。
岡崎朋也。
リセルシア・チェザリーニ。
蒼井渚砂。
対馬レオ。
小牧愛佳。
向坂雄二。
間桐桜。
宮沢謙吾。
以上、9名だ。
……さあ、どうだ?
もう一度問おう。ご機嫌はいかがかな?
……ところで、君たちに一つ告げておくことにしよう。
人によっては朗報だ、心して聞くといい。
この殺し合いに優勝した暁には、君たちにはある権利が与えられる。
……それが何かは、ふむ、いずれ分かることだろう。
その機を期して待ちたまえ。
そして告げよう。
君たちの中には結託し、我々に対抗しようとするものがいるだろう。
結構、……大いに結構だ。
――――君たちが抗い苦しみ、我々との力の差に絶望する姿を見せてくれ。
それが実に楽しみだ。
- 557 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:05:19 ID:HDoC9KCa
-
- 558 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:05:31 ID:BxuI4gmC
-
- 559 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:05:52 ID:F6L3wHfk
- ……ふむ、思い上がりと口にするかね? 我々とて人の子、勝てぬ道理はないと?
では、証拠を提示しよう。我々の力の一端を。
諸君らの中には、すでに死の世界から蘇ったものがいる。
そのものたちは自分自身で気付いているだろう?
ならば、教えてやるといい。
我々の力を以ってすれば、死人に今一度の生を与えることすら叶うのだということを。
生死すら自在にする力を我々が持っていることを、その手で証明して見せたまえ。
そして私は君たちに期待する。
愛するものを失った人間が、絶望に駆られるまま混沌を生み出すことを。
我々に立ち向かおうという人間が、我々に一矢報うことすらできぬまま、同胞たる参加者に踏み躙られる有様を。
もっともっと、人間の成し得るありとあらゆる感情と行動を、私に見せてくれ。
――――最後に、もう一つ。
君たちの中には、私達の息のかかった者がいることを教えてやろう。
そのものは確かに息づいていて、この場において混乱を生み出すのだ。
会場内にいる人間全てを味方にしたとて、絶対に平和が訪れることはないことは理解頂けたかね?
さあ、互いに疑いあいたまえ。
君の傍らにいる人間は、そ知らぬ顔をして君を利用した後背中を刺すかもしれないぞ?
預けておいた背中を、さくり……とな。
……では、次の放送の時に会おう。
その時までありとあらゆる手段を持って行動したまえ。
我々に立ち向かうのでも、殺し合いを促進するのでも構わない。
掌の上で踊っているのがワルツかロンドかという違いでしかなく、
またそれこそが私にとってこの上ない愉悦となるのだから」
その言葉を最後に、ぶつりという音がなる。
後に残るのは静寂。
- 560 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:06:10 ID:HDoC9KCa
-
- 561 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:06:41 ID:F6L3wHfk
- ……そして。
そして人々は――――。
いや、その前に、不意にノイズが走る。
……だが、言峰の言葉は聞こえてこない。
チン、カチャカチャという何かをぶつけ合う澄んだ小さな音。
そして、やや荒い息遣いとごくりと言う何かを飲み込むような響き。
それだけが聞こえ、しかし静寂が破られたと言うにはほど遠い。
放送のスイッチが入れられたというのに沈黙が続くのは何故だろう、と、
誰もが思う頃合で――――、ようやく言峰は続きを告げる。
「は、ふ……っ。そうそう、もう、……ひとつ、だ。ん、ぐ。
もぐ、む……っ。優勝の、特典について、ふ……っ、ふ……っ、だが。
……この殺し合いが、は、もぐ……、誰かの優勝に、ハフ、終わった、暁にはだ。
――――先ほど言った『権利』、ムシャ、以外に、はふ、はふ、君たちに……ゴク、モグ、
……は、ふぅ、……ふぅ。は……、ふ、んぐ。
と、失礼した。続きを告げよう。
――――君たちに、この世のものとは思えない程のディナーを振舞うことを確約しよう。
……以上だ。君たちも朝餉を楽しみたまえ。
食べるものも食べなければ、生き延びることなど到底出来はしないのだから」
◇ ◇ ◇
かちゃかちゃと舞うのは蓮華。
中にあるのは白と赤の混成物。
- 562 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:06:45 ID:x5UXrgOo
-
- 563 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 00:06:50 ID:HDoC9KCa
-
- 564 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:07:26 ID:yxwe8xWE
- はふはふと、バクバクと、モグモグと。
ぐつぐつと熱さに自己主張のないそれが飲み込まれていく。
コクのある豆板醤の、舌に残る辛み。
椒の香り高く、鼻を刺激する辛み。
それら二種が絶妙のハーモニーとなって、口中に吸い込まれて留まることを知らない。
咀嚼する。
ニンニクの葉は野菜のエキスを供給し、食欲を増進させる香りを放っている。
牛豚の合挽き肉は、たっぷりの肉汁を滴らせ、ウマみをもたらして止まない。
柔らかいが適度な弾力のあるクリーム色の豆腐は、他の具材に負ける事無くほのかな甘みを以って全体を調和させる。
ゴマ油の香ばしさはそれだけでご飯が一膳食べられるほど。
ベースとなる鶏ガラスープは滋養に溢れ、体に染み渡るようにダシの美味さを主張する。
中華料理特有の大火力で豪快に炒められたこれらは味の成分を活性化され、全ての要素を極限まで高めているのだ。
「……言峰神父。朝っぱらからそんな物を、胸焼けが……いや、それはいいか。
『この世のものとは思えない』辛さのソレを本当に優勝者に振舞うつもりなのかな?」
放送機材に向かったまま、ガツガツと食事を再開した言峰は振り返ることすらしない。
ただ、その問い掛けに――――、言峰はスープのこびり付いた口端をニヤリと歪めて表現する。
これ以上ないという、愉悦の表情を。
ソレを食らいながら、これから巻き起こされるであろう混沌に思いを馳せる。
――――さて、言峰綺礼の愉悦の時間は始まったばかりだ。
参加者たちの悲鳴と言う美酒を肴に、彼は至福の食事を楽しみ続けることだろう。
- 565 名前: ◆wYjszMXgAo :2008/04/18(金) 00:08:12 ID:F6L3wHfk
- 投下終了。
タイトルは
『第一回放送 食らわれるは人の心、そして』
です。
多大な支援に感謝を。
- 566 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/18(金) 14:02:44 ID:HjJTZPBI
- 放送投下乙!
いやー、すごく言峰らしい放送だ!
禁止エリアも決まったし、果たして放送でどうなってしまうのか。
ところでマーボー自重wwww むしろ参加者の怒りを買うとしか思えないwww
- 567 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/19(土) 00:52:11 ID:Zp1HzpSb
- 投下乙です
このノリノリのねちっこそさこそが、言峰だよなあ
権利に関する言及も、いろんなキャラに影響を与えそうだ
初回を飾るに相応しい良放送、GJでした
- 568 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/19(土) 01:12:26 ID:7lwvv9NW
- 何となくだが、現マーダーの中に最低一人は
「こいつの言う事やっぱ聞きたくねー」
で対主催に鞍替えしそうだ。
- 569 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/19(土) 01:50:05 ID:WRxCf/Qn
- 自重しろよマーボーw
ていうか放送中に喰うな馬鹿者w
- 570 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/19(土) 06:26:05 ID:fT+ZBfa2
- あえて一言。吹いた麦茶返せwww
- 571 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/19(土) 20:59:25 ID:/B1ob8op
- 遅まきながら作品人気投票
興味のある方はどしどしご参加下さい
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1208331377
予定スケジュール
投票期限:4/17(木)ー4/24(木)まで
OP〜4/16投下分(「望郷」)までの作品への投票
(公平を期す為、4/17以降の投下作品は全て次回の人気投票で投票対象になります)
- 572 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:01:03 ID:oo8a/S4L
- 一乃谷愁厳は、実直な人間だ。
例えば、一乃谷の剣士としての仕事から、生徒会のくだらない雑務まで、文句一つこぼさずにこなすような。
一乃谷愁厳は、不器用な人間だ。
例えば、友人と妹の恋路を見守りつつ、からかい慣れないのにからかって、自分で照れるような。
質実剛健、実直誠実。軽く照れ屋。そして、友人思いで妹思い。
それが、一乃谷愁厳をいう人物だ。
◇ ◇ ◇
午前六時。
夜の暗闇をかき消す朝日が昇り、低い角度からの陽光が、廃屋と周囲のまばらな草木に差し込んでいた。
清々しい晴天の朝空の下に響くのは、爽やかさとは対極にあるような低く重厚な声だった。
しかも、残酷な放送内容とは裏腹な愉悦を口調に乗せているのだから、聞く者の不快感は相当のものだろう。
そんな放送に、廃屋の外壁を背に、耳を傾ける人物がいた。
神沢学園生徒会長、一乃谷愁厳。
表情一つ変えることなく、じっと放送に聞き入っている。
最大の特徴とも言える白ランは身に纏っていないが、時に鉄面皮とも揶揄される落ち着きぶりは健在だ。
しかし、その中に存在するもう一つの人格、一乃谷刀子も同じかというと、そうはいかなかった。
――――それで、兄様、状況を説明していただけるんですよね?
放送が終わり、辺りが静寂を取り戻したところで、私、一乃谷刀子は、なるべく感情的にならないように問いかけた。
私の兄である一乃谷愁厳は、放送を聴くと言ったきり沈黙を守ったままだった。
- 573 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:01:45 ID:oo8a/S4L
- 「……わかった。長くなるかもしれないし、中で話すとしよう。そのほうが、話も早いだろうしな」
そう言って、放送中、背にしていた廃屋の扉に手をかけた。
私たち一乃谷の人間は牛鬼といわれる妖怪を祖とした人妖だ。
牛鬼の特徴は大きく二つある。
一つは、力の強さ。
伝承では、その名の通り牛の頭に鬼の体または蜘蛛の体を持ち、その怪力を活かし、一軍を滅ぼすほどだったという。
もう一つは、女への変化。
女に化けて赤子を抱かせ、その赤子が重くなり、身動きが取れなくなったところを喰うという逸話は有名だ。
そんな牛鬼を祖とする私と兄様は、一つの体に二つの人格を宿している。
そして、片方が表に出ているときでも、もう片方が覚醒していれば、感覚の共有が可能だ。
が、それはあくまで視聴覚の共有であり、嗅覚や触覚の共有はされていない。
廃屋で迎えてくれたのは一人の少女。いや一人の少女だったもの、だった。
おそらく、兄様は外からでも臭いで中に何があるかはわかっていたのだろう。
話が早くなると言ったのは、このためだ。死体があるだろうことを知り、敢えて中に入ろうと提案したということ。
その死体の様子は、思わず目を逸らしたくなる有様だった。
ベッドに横たわる肢体は首が欠けており、その頭部は床に落ちている。
一乃谷の剣士として任務をこなしてきた私でも、そう目にする機会のないものだ。
黒の制服らしきものを纏い、胴体と首が別れを告げた死体。
ああ、やはり、そうなのだ。そんなに都合のいいことは起きない。
意識を失う前のことは、目覚める前に見た性質の悪い夢ではなかったのだ。
「気を失う前のことは、覚えているか?」
――――ええ。ちょうど、はっきり思い出したところです。その上で、よくよく話し合う必要があると感じています。
「ふむ……、やはりそうなのだろうな」
- 574 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:02:40 ID:EZ05uN75
- 。
- 575 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:02:52 ID:oo8a/S4L
- ◇ ◇ ◇
そこは、視覚的にイメージするならば、どこまでも広がる雪原の世界。
上下左右の奥行きも曖昧な、魂だけが在る世界。
ここは一乃谷愁厳・刀子の二人が同時に存在する場所。魂の宿場と呼ばれる場所だ。
一つの体に二つの人格を宿す愁厳・刀子が、眠るときあるいは沈黙思考するときに訪れる、意識の集合点。
二人だけが存在し、二人だけが観測できる場所。
今、この魂の宿場で、愁厳・刀子の二人が向かい合っていた。
「ある程度わかっているだろうが、簡単に説明しよう。
この廃屋の状態でもわかったと思うが、ここはバトルロワイヤルと称された殺し合いの舞台だ。
お前も聴いていただろうが先程の放送で9人の死亡も報告された。
……その中には、俺が手をかけた者も含まれている。今いる廃屋の子は無関係だが。
お前が、放送前に見たであろう少女に俺が斬り付けるところも見間違いでも何でもない。
以上をを踏まえた上で、質問に応じよう」
事務的な口調で、簡潔に現在の状況を説明された。
兄様の表情は、ぱっと見た分にはいつもと変わらない。
でも、なぜだかわからないけれど、それがとても酷薄なものに見えてしまった。
「……わかりました。聞きたいことは山ほどありますが、順を追って質問させていただきます。
それでは、まず一番初めのところ。あのとき、動かなかった真意を教えていただきたいのですが」
- 576 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:03:22 ID:oo8a/S4L
- 放っておくと、わめき出したくなる衝動を抑え、なるべく平坦な調子になるよう心がけて問いかけた。
あのとき、つまり今に至る起点となった場所での出来事。
河野貴明という少年が殺されたあとの柚原このみ、向坂環らの一連の出来事のときのことだ。
あのとき、私は兄様が彼らを救う策を考え、行動を起こすと思って見守っていた。
でも、兄様は動かなかった。
事態は切迫していき、私自ら彼らを救おうと交代を申し出ても、一向に反応がなかった。
結局私は何も出来ず、私たちは何もせず、一人の命は失われ、私は気を失った。
そして、意識を失う前に耳にした兄様の言葉は、しっかりと記憶にある。
「あのときも言ったと思うが、おまえをみすみす殺させるわけにはいかないからだ」
簡潔に、前に言ったとおりだと返してくる。
あのとき、とだけ言ってもちゃんと伝わったことには少しだけ安心する。
兄妹として、そんなに心の距離が離れてはいないんだろうと。
「つまり、私たちでは、あの神父たちに敵わないから、彼らを見殺しにした、と?」
「……そういうことになるだろう」
「兄様はいつからそんな臆病者になられたのですか?
我が身の可愛さに、他人を省みないような人ではなかったと記憶しているのですが」
十数年間、ずっと傍で見てきた勇敢で生真面目な兄様の人物像と合致しない。
感情を表には出さなくても、とても友人や周囲の人を思える人だった。
- 577 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:04:06 ID:EZ05uN75
- 。
- 578 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:04:31 ID:oo8a/S4L
- 「ああ、俺は臆病者なんだろう。……しかし、あそこで死ぬわけにはいかなかったのだ」
「っ……! だから、ここにいる方たちを皆殺しにすると?
あの場で動かなかった理由はわかりました。
しかし、ここであの神父たちの言うままに殺し合う理由をお聞かせくださいませ!」
兄様は、淡々とした受け答えを続ける。表情も、引き締めたまま変わることもない。
一方の私は、抑えようと心がけていたのも関わらず、気付くと語気は強くなっていた。
「理由は同じだ。
この催しを開いている者達は、俺達よりも遥かに強大だ。
まず、この殺し合いのために無人島一つを用意する財力。そして、俺達人妖を含む大勢を連行してくるだけの実力。
その実力は俺とお前の二人ともの精神体に首輪の概念を適応できていることからも明らかだ」
「私達では、あの者達にに敵わないから大人しく従い、殺し合いに乗ると。
先程のように、何の力もない少女を虐げてまわるということですか。
兄様は、正気ですか? 本当にそんなことをお考えなのですか?」
「俺は本気だ。考えを変えるつもりはない」
私を真っ直ぐに見つめてくる二つの瞳には、たしかに兄様の意志がこもっていた。
その様子から、私がいくら言ったところで、引く気がないということが兄妹としてわかってしまう。
今は、その以心伝心ぶりが、悲しかった。
「もし、双七さんや刑二朗君のようなご友人がいたとしても、同じことが言えるのですか?」
「……いない者のことを考えても仕方ないだろう。
名簿は、もうないが、最初の場所にも見当たらなかったし、今回の放送でも知った名はなかった」
「だから、他人しかいないから、皆殺しにしてもいいと?」
「……他人の命よりも大事なもの、守らねばならんものがある」
- 579 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:05:24 ID:EZ05uN75
- 。
- 580 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:05:46 ID:oo8a/S4L
- 話し合い……と呼べるかは、もはやわからなかった。
お互いの主張は交わることなく、お互い相手の言うとおりにするつもりもない。
「……兄様の考えは、よくわかりました」
「ふむ」
兄様は、一呼吸置いて、私に先を促す。おそらくは、私が何と言うかはわかった上でなのだろうけれど。
「私は、そのような弱い考えを認めるわけにはいきません。
このような殺し合いを止め、みなで助かる術を模索するべきだと思います」
「そうか……」
「考えを変えてはいただけないのでしょうか?」
「刀子。すまないが、その頼みは聞いてやることはできない」
「兄様! 本当にどうしてしまったんですか?!
私の知ってる兄様は、そのような人間ではなかったはずです!」
冷静に、冷静にと心がけていたにも関わらず、つい声を荒げてしまった。
最初から私の意見を取り合う気がないようにすら見える。
いや、事実そうなのだろう。
「すまない。刀子、わかってくれないか?」
「いいえ、わかりません」
- 581 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:06:23 ID:EZ05uN75
- 。
- 582 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:06:31 ID:oo8a/S4L
- なんとか、冷静に見えるように努める。
その後も、殺し合いに乗る乗らない、体を明け渡す明け渡さないという問答が続く。
もう感情的にはならなかった。
次第に会話は、用意していた台詞を繰り返すだけという風になっていた。
お互い譲る気がないことは、もう察しがついてきている。
やがて、話し合いは完全に決裂を迎えた。
「どうしても私に体を明け渡すつもりもないと? 殺し合いを続けるというのですね?」
「そうだ」
「……そうですか」
それなら、仕方ない。
肩にかけていた刀を構える。日頃から慣れ親しんだ愛刀、斬妖刀文壱は手元にない。
手にしている刀は、古青江と銘を打たれた日本刀だ。
本物かどうかは別として、平安から鎌倉時代の備中国の一派にルーツを持つ刀だ。
文壱と比べると遥かに軽く、心もとなくも感じるが、充分に名刀の部類だろう。
右手に刀を、左手に鞘を持ち、地面と水平に近い角度で構える。
一乃谷流は、鞘が鉄で出来ている文壱により、鞘も武器として用いる。
たとえ刀が違っても、取るべきスタイルは変わらない。
当然殺す気はないので、刃は峰のほうを向けている。
空気を察したのか、兄様も鞘から刀を抜く様子はなく、そのまま正眼に古青江を構えた。
- 583 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:07:27 ID:oo8a/S4L
- 「どうしても、この殺し合いを止めたいというのか?」
「その通りです」
――もう口で言っても、どうにもならない。
「生きて帰れる可能性は、他の参加者を皆殺しにしたほうが高いとしてもか?」
「当たり前です。他者を犠牲にして生きて帰って、胸を張って生きられるとでもお思いですか?」
――でも、このまま兄様に道を誤らせているわけにはいかない。
「どうしても、か?」
「どうしても、です」
――だから、力尽くだとしても止める!
「そうか」
「残念ですが、どうやら実力行使しかないようですね。少し頭を冷やしてくださいまし」
言葉を交わしながらも、いつ斬り合いが始まってもいいように気は緩めない。
場の空気は次第に凝縮されていっていた。
何しろ、並みの兄妹喧嘩ではすまないのだ。なにせ、牛鬼同士の本気の兄妹喧嘩なのだから。
兄様との間の空気は、放たれる寸前の弓矢のように引き絞られている。
あとは、放たれる合図を待つだけだ。
兄様は……、動かない。ならば、私が火蓋を切って落とすまでだ。
- 584 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:07:34 ID:EZ05uN75
- 。
- 585 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:08:24 ID:oo8a/S4L
- 「それでは、いきます――――」
「――――わかった。お前の言う通りにしよう」
開戦を告げた瞬間に、予想外の発言が耳に届く。
兄様に向かって駆けようとしていた私は、ぴくりと動いて停止してしまう。
正眼に構えていた兄様の古青江は、ゆっくりと下ろされていた。
「は……? 今なんと?」
「だから、お前の言うように、殺し合いを放棄しようと言っている」
兄様は、策を弄して不意打ちをするような人ではない。私も、倣って刀を納めた。
一旦構えを解いた私に、兄様のほうから歩み寄ってくる。
「ほ、本当ですか?」
「本当だ。そもそも、実力行使に出られたら、俺が敵わないのは理解しているつもりだ。
それに、お前の覚悟は確かなようだからな。
すまなかった。俺が臆病になっていたというのも間違いないだろう」
そう言って、兄様は頭を下げる。
「……簡単に信用できるとお思いですか?」
今まで散々話し合って意見が合わなかったのに、この心変わりは何なんだろうか?
と、考えていたところで、兄様が頭を上げ、私を軽く抱き寄せてきた。
- 586 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:08:58 ID:EZ05uN75
- 。
- 587 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:09:25 ID:oo8a/S4L
- 「本当にすまなかった。証明は、これからの行動で……というわけにはいかないか?
俺の見聞きするものは、お前も同じように見て聞くことになるだろう?」
「……もしわかってくれたのならば、これ以上のことはありません。
けれど、ひとまず、これからは私が表にでます。兄様は一旦休んで、頭を冷やしてください」
「いや、俺が出よう。これまでしたことの清算くらいは自分でさせてくれ」
これは、やっぱり兄様は私の敬愛する兄様だった、と喜べばいいんだろうか?
でも、あれだけ私の意見を否定していたのに、何の故があって急に意見を変えたのか?
素直に私の気持ちが通じたと取っていいのか?
どんな表情で、主催者に抗うことにすると決めたと言っているのか。
兄様の胸に納まっていた顔を上げ、その表情を検めようとし――――
突然、感じたのは、首への鈍痛。
兄様の悲しげな顔を目にしたのを最後に、視界には闇が訪れる。
ああ、つまり、そういうことだったのだ。
結局、私は、疑うよりも信じたかった。
兄様ならわかってくれるに違いないというフィルターを、無意識にかけていたのだ。
そして、私は、そのまま意識を手放した。
◇ ◇ ◇
- 588 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:10:16 ID:oo8a/S4L
- 俺の腕の中で、刀子は再び眠りについている。
左手に握っっているのは古青江。この刀の柄を使い、完全に騙まし討ちの形で刀子を気絶させた。
残念なことか、喜ばしいことか、この催しに対する俺と刀子の意見は合わなかった。
だが、刀子に殺し合いに乗るなと言われても、それは受け入れることは出来ない。
結局、卑怯な手を使って、もう一度眠ってもらうことにした。
気絶させるにあたっても、もっとうまく立ち回ることが出来ればよかったが、俺にはそんな器用なことはできなかった。
殺し合いをやめると嘘をついたが、何があろうと俺に引く気がないことは、薄々感づいていたかもしれない。
それでも俺の発言を信じようとしてくれた刀子に対する裏切りは重い罪に違いない。
罪悪感はない……とはいえない。だが、同時に必要なことだったという自負もある。
この島にいる全員が最初に集められたときから、先程の放送まで、主催者たちの見せた情報を余さず見てきたつもりだ。
刀子にも言って聞かせたような財力や異能に対する力。
さらに、たった今行われた放送では、死者蘇生の力がある可能性まで示唆している。
流石に、それについてまで真に受けるのは、抵抗がある話だが、否定する材料もない。
そんな相手にどうして抗い、打ち勝つことが出来るだろうか。
刀子に対して告げた殺し合いに乗る理由として、この主催者の強大さは、客観的に見ても理屈は通っているはずだ。
その理由として充分なのだから、根幹にある何としても刀子を神沢に帰すためという理由は絶対に隠し通す。
自分のために殺し合っているなどと聞けば、凄まじい負担になるのは明らかなのだから。
刀子の今後の人生のために、俺は恨まれたとしても、黙してるべきなのだ。
- 589 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:10:36 ID:EZ05uN75
- 。
- 590 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:11:17 ID:EZ05uN75
- 。
- 591 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:11:56 ID:oo8a/S4L
- 俺は、自分のことを器用ではない人間だと自覚しているつもりだ。
刀子の言うように、もしかすると多くの人間が救われる道があるのかもしれない。
しかし、それはあまりにハイリスクで、先が見えない道だ。
それならば、俺は、はっきりとわかる道を行く。ここにいる全員を殺し、優勝し、神沢に刀子を帰すという道を。
優勝者には何らかの権利が与えられると確かに言っていた。
それならば、最低限、故郷に無事帰すという権利くらい与えられてしかるべきだろう。
それに、俺はもう引き返せないところまできている。
先程の放送で確かに呼ばれた"ツシマレオ"、"アオイナギサ"という名。
レオという名は多いとは言えない。ほぼ間違いなく俺が川岸で切った男だろう。
アオイナギサのほうは、他にもナギサという名の者がいた可能性も考えられるが、あの傷で助かったとは考えにくい。
つまり、俺は、すでに二人の成果をあげているということになる。
黒須太一を名乗っているとはいえ、今更主催に反抗しようという中に入っていける身分ではない。
あとは、ただひたすらに、修羅の道を行くのみ。
この殺し合いは、俺に与えられた最後の仕事と捉えることも出来る。
一乃谷の人間は、生まれながらに、ある宿命を背負っている。
ある時期を境に、牛鬼の性質として存在する男女二つの人格のうち、片方が消え、片方だけが残る。
どちらが消えるかは、伝統的に、時に話し合いにより決め、時に殺し合いにより決めたという。
俺は、どの道話し合う余地もなく、自分が消えるつもりだった。そして、その消える時期も遠くなかったはずだ。
つまり、この殺し合いでの優勝を成し遂げ、刀子を送り返し、俺は消える。
これでいい。何の迷う必要もないのだ。
- 592 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:12:28 ID:EZ05uN75
- 。
- 593 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:12:50 ID:oo8a/S4L
- 他の参加者を殺す責務も俺が一手に引き受けなければならない。
消える俺とは違って、刀子はその後も一人の人間として人生を歩むことになる。
血塗れた足跡を残し、汚れた手で、その後の人生を生きて欲しくはない。
だから、汚れ役は、全て俺が担う。
それだけは、何度でも繰り返し自分に意識させておかなければならない。
そのためにも、何があっても体を明け渡すわけにはいかない。
今、刀子を気絶させたのも、問題の先送りに過ぎないのはわかっている。
しかし、放送前に戦ったサクヤと呼ばれた女の人妖のような強敵と争うには、後顧の憂いを絶っていなければ危うい。
刀子が頭の中で戦いをやめろと言っている状態、俺にだけ雑念がある状態で勝てるような相手ではなかった。
そんな状態を避けるためにも、なるべく長く眠っていて欲しいものだ。
次に刀子が目覚めたときは、今回のように穏便にはいかないだろう。
本当に実力行使になった場合、剣の腕が上なのは刀子だ。
目覚めたときに、まず、考えられる対処は、刀子と二人対する場、魂の宿場に出ないことだ。
そうすれば、少なくとも体を無理に代わられることもない。
最も確実に表に出ている方法はこれだ。
- 594 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 07:13:23 ID:EZ05uN75
- 。
- 595 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:13:43 ID:oo8a/S4L
- しかし、二人で対する必要が生じ、戦うことになってしまった場合はどうするか。
それでも、必ずしも勝てないわけではないと見る。
刀子は、この催しが始まってからずっと眠っていた。
一方、俺は、この殺し合いについて考え、殺し合いの舞台に実際に触れ、戦ってきた。
刀子の、俺を止め、皆の殺し合いを止め、主催を打倒するという理想的ではあるが、大綱的で曖昧とも言える覚悟。
俺の、刀子を押し留め、修羅となり、殺し合い、優勝して刀子を帰すという愚かでも明確な覚悟。
単純さというのは、ある意味で強さだ。
この覚悟の違いで埋まる実力差がある。
そして、決定的なのは、実際に戦いになったときに、刀子が俺を傷つけるのに至らないであろうことだ。
俺は、目的のためなら、場合によっては刀子を傷つけるのもやむなしと割り切っているつもりだ。
傷ついたとしても、刀子の命に代えることは出来ないのだから。
以上から、場合によっては、刀子と戦い、体の所有権を維持することも選択肢にできる。
当然、そうならないに越したことはないのだが。
さて、ひとまずは、また枷をつけることなく殺し合いに臨むことが出来る。
……妹のことを枷というのは、多分に胸が痛むような気はするが、気にしてはいられない。
名簿を燃やしたので、個々の死者のチェックはしていないが、残りの参加者は、まだまだ多い。
サクヤという女の人妖のような強者も複数いるのだろう。
それでも、俺は勝ち抜かなければならない。
戦わなければ、何かを失う。戦うことで何かを得る。
そう、この戦いには、命を賭ける価値がある。
刀子を、双七君たちが迎えてくれる神沢へと送り届けることが、消え行く俺の人生の価値になるはずなのだから。
廃屋から出て、朝日の眩しさに一瞬目を細める。
ここは、今も殺し合いの舞台だ。さあ、いま一度、闘争を始めよう。
- 596 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:14:17 ID:oo8a/S4L
- 【E-5 廃屋の外/1日目 朝】
【一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備:古青江@現実】
【所持品:木刀、支給品一式×2、ラジコンカー@リトルバスターズ!、ランダム不明支給品×1(渚砂)、ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart-】
【状態】:疲労(小)、右肩に裂傷、白い制服は捨てた状態
【思考・行動】
基本方針:刀子を神沢市の日常に帰す
1:生き残りの座を賭けて他者とより積極的に争う
2:今後、誰かに名を尋ねられたら「黒須太一」を名乗る
【備考1】
【一乃谷刀子@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態:精神体、気絶中】
【思考】
0:……
1:優勝を目指す愁厳を止める
2:主催者に反抗し、皆で助かる手段を模索する
【備考2】
※一乃谷刀子・一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−は刀子ルート内からの参戦です。
※サクヤを人妖、尾花を妖と警戒しています。
- 597 名前: ◆CKVpmJctyc :2008/04/21(月) 07:15:17 ID:oo8a/S4L
- 以上で投下終了です。タイトルは『一乃谷』です。
問題点など指摘がありましたら、よろしくお願いします。
- 598 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 17:47:52 ID:bjjL8oWe
- 投下乙!
愁厳はマーダー続行か……おお、刀子さんw またしばらくは空気になってしまうのかwww
現トップマーダーの愁厳の行き先や如何に。
ところで双七たちのことを知ってしまったら、どうするんだろうwwww
- 599 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 18:09:54 ID:0O5XuhSg
- 投下乙です
会長マジ外道。そして刀子先輩……次にあなたが起きるのはいつのことやらwww
え?もう出番ない?またまたご冗談を(AA略)
いや、しかし双七君たちがいること知ったらどうするんだろうね会長は?
刀子先輩って刀子ルートから参戦なんですぜw
- 600 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 18:58:49 ID:u6aniHLc
- 投下乙です。
おお、刀子先輩よ気絶してしまうとは情けない…
愁厳はまだまだやってくれそうですね
- 601 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:36:48 ID:rFlTeie+
- 其処を記憶の端に止めておけていたのは、勿論そういった事態を考慮してのことだった。
しかし其処までの距離が近かったことは純粋に幸運だっただろう。
一匹の獣の殉死により致命的な痛手を負った支倉曜子。
彼女は朦朧とする頭の中から向かうべき場所の情報を引き出し、焼けた身体を引き摺り其処へと向かった。
先刻の戦いの最中。移動する最中に目にした、山の裾野から近い場所にある一件の診療所へと。
埃まみれのガラス戸を動くほうの手で押し開け中に進むと、そこはオンボロな外見から想像できるよりかは幾分ましな状態であった。
曜子はただ無言。決められた仕事だけをこなす機械のように診療所内を回り必要なものを揃えてゆく。
ボロいとはいっても打ち捨てられていたという訳ではなく、ただそこの主人がズボラだったというだけらしい。
薬品も包帯も他に必要な器具も全て揃っていた。
片っ端からゴミ袋に放り込むと、曜子はそれを引き摺り身体を揺らして廊下を進む。
一枚の扉を潜って、診療所内から居住空間へと――そしてそのまま進み、突き当たりの扉をまた潜った。
青いタイルが張られた、これもまた年季の入った浴室。
ゴミ袋を掴んでいた手をノズルへと移すと、それを一気に最大にまで捻る。
鋭利なまでに冷たい雫が曜子の頭の上から降りかかり、煮えるような熱を持った身体を鎮めてゆく。
着の身着のままで、ただ濡れながら……ただただずぶ濡れになりながら、曜子は思考を取り戻してゆく。
冷たい思考で、まずは今回の失敗を回顧した――……。
- 602 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:37:49 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
想定が甘かった。浮き足立っていた――そうでしかなかった。
異能者の存在は最初から示唆されていたのだ。なのに、それを大きく扱っていなかった。
名簿の中から見つけた知っている名前。それらと自分。そして、太一。
さらには廃屋で死体を発見した少女。その後に出会った士郎という少年。
最初の場所で見かけた面々。その全員の目の前で始末されたただの少年、少女。
それらを鑑みて設定した上下の幅――その上端に甘さがあり、故に失態を演じてしまった。
その甘さはどこから来たのか? それは新しい世界への可能性。太一とやり直せる可能性。
極上の成功パターンを思いついてしまったが為に、そこに辿り着くための道筋ばかりを考え、そして逸った。
見逃すべきでないリスクを過小評価し、足を踏み外しかねない細い道を簡単に渡れると判断してしまった。
一切のブレはなかった。だが、故に盲目だった。太一を想うが故に……。
あの場面においても飛び込んできた獣を害とは認識せず、相手の人間を殺害することを優先してしまった。
もし、気を逸らせず、冷静に相手を観察して障害を一つ一つ取り除いていたならば……結果は変わっただろう。
一つの判断ミスから負った代償はあまりにも大きかった。もう、後はない。
- 603 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:38:41 ID:KqPZ+BdC
-
- 604 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:38:45 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
マグマの様に熱く感じた火傷が鎮まってくるのを確認すると、曜子は次の作業へと取り掛かった。
さっきよりかは幾分かましに動くようになった身体で、引き摺ってきたゴミ袋から大きな鋏を取り出す。
ジョキリ……と、音を立てて身に纏った煤だらけの服を切り裂き、火傷の上から丁寧に引き剥がしてゆく。
生皮を剥ぐ様な痛みに顔色一つ変えることなく、ただただ丁寧に素早く確実に……機械のように。
そして、焼け縮れ傷口にへばりつく――あの流れる様だった黒髪も、切る。容赦なく、躊躇もなく、切る。
剥きだしになった傷口にさらに水流を当てて冷ますと同時に煤や泥を払い、炭化した皮膚も無造作に剥がして捨てた。
自分の身体の中で死んで使えなくなったモノを剥がして捨てる。そんな行為を曜子は繰り返す。
焼け焦げ、泥と血に塗れ、色を空色から赤黒へと変えた制服。
火に炙られ、焼け縮れて真っ直ぐなところがほとんどなくなってしまった焦げ臭い髪の毛。
熱されて、その組成をただの炭としてしまい、もはや生きてはいない真っ黒な皮膚。
それらを曜子は全部捨てた。
- 605 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:39:18 ID:wQXcuCEW
-
- 606 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:39:47 ID:KqPZ+BdC
-
- 607 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:39:59 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
風呂場から上がった曜子は屋内を徘徊すると、リビングを見つけその中に入る。
手早く点滴の用意を済ませると、新しい白いシーツをソファへと敷きそのまま横になった。
ローラーを回し点滴の注入速度を最速にすると、目を瞑り全身を緊張から解き放ってゆく。
傷口の冷却と、失った体液の代わりとなる薬液の補充。時間は経っていたが、とりあえずは応急処置の完了である。
放っておけば数時間と経たずに意識を失い、そして死に至っていたであろうが、まずはそれは免れることができた。
この後の処置も順調に終えれば一日は問題ないだろう。
安静にしていれば半月ほどで完治できるかもしれない……が、さすがにそこまでの猶予はない。
気配だけを探りながら点滴が終わるまでの静かな時を曜子は過ごす。
そして、彼女の体内時計が6時を知らせるのと同時に、予定されていた最初の放送とやらが耳に入ってきた。
――「……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね」
声はあの場所にいた黒衣の大男。記憶によれば言峰綺礼と名乗った男のものだった。
それを曜子は聞き、理解し、反芻し、意図を解析し、いくつかの可能性を導き出し……脳に刻む。
曜子は目を閉じたまま、放送を聞きながらあの少年――衛宮少年のことを考える。
- 608 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:40:43 ID:wQXcuCEW
-
- 609 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:40:47 ID:7GwclIlM
-
- 610 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:40:48 ID:KqPZ+BdC
-
- 611 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:40:57 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
「ゲーム」とやらが始まってよりすぐに出会えた少年。初めての「同行者」であった衛宮士郎。
同じく、別の場所で敵に追われていた彼が死んでいないのは確認できた。
相対する相手はより強敵だったために、半ば死亡することも諦めていたが、どうやら乗り切ったらしい。
だが、生憎なことに彼が探していた「間桐桜」の死亡が確定してしまった。
彼女を助けるために動いていた彼がこれを聞いてどう動くか……、何にせよもはや「同行者」足りえないのは確実だろう。
不確定であり味方と成り得ない――ならば、もう処分対象でしかない。
「同行者」――合理でもって手を組むという行動方針。これもまた、早くも放棄せざるを得ない。
放送を通じて言峰綺礼が語る取り留めのない戯言。手早く結論を出せばその目的は――混乱だ。
何もかもに一切の保障はないと釘を刺し、この島の中にいる人間から確固たる足場を奪った。
そして、背徳者の存在の示唆。嘘でも本当でも変わらない。口にするだけで、絶大な効果が得られる言葉。
通常のゲームのルールが破られる。そんな可能性を打ち明けられては、多数を作るメリットは逆転してしまう。
弱者を装い、優しい声をかけ、理知的な発言をすればするほど疑われてしまうだろう。
そしてそれとは別に、この重症を負ったという現状。
これは「同行者」の内においては切り捨てられる存在に他ならない。となると、やはりこの道はもうない……。
- 612 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:41:32 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
もっと事務的なものかと予想していた放送――男の語りは思いの他長く、それが終わる頃には点滴も同じ様に終わっていた。
針を抜くと、曜子はソファから素早く身を起こし、次の動作へと移ろうとする。
現状で、太一が死んでいないことだけは解ったが、それは死んでいないということでしかない。
どこかで自分と同じ様に窮地に立たされているかもしれない。だとすれば、横になったままではいけないのだ。
部屋の隅。丁度そこにあった姿見の前にへと曜子は立つ。
鏡の中に映るのは曜子であって、もはや曜子ではないものだ。
その均整のとれた裸体の半分は真っ白なままであったが、もう半分の右側は真っ赤に焼け爛れている。
焼けていないところにしても傷だらけだった。大小の線が無数に走り、胸の真ん中には判を押したような黒い痣。
鋏が入り、容赦なく髪が切り捨てられた頭部もほぼ丸刈りの状態で、あの流麗な印象はもはや微塵たりともない。
火傷は顔面にも至り、右半分は熱によって縮んだ皮膚が無数の深い皺を刻んでいる。
血に濁った片目はまるで悪鬼のような眼差しを持っていた。
真っ白な――太一の髪の様に白い包帯を取り出し、曜子は曜子自身を白く塗りつぶしてゆく。
曜子であって曜子でないものを、完全に曜子でなくさせる為に――……。
- 613 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:41:56 ID:KqPZ+BdC
-
- 614 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:42:09 ID:HbursSNc
-
- 615 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:42:23 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
曜子は思う――……。
太一がこんな自分の姿を見たらどう思うのだろう。
恐らくは……いや、絶対に彼はこんな姿でも私を受け入れてくれるはずだ。
太一は傷ついた私を庇護の下に置く。
きっと、大事にしてくれるだろう。もしかしたら、今までよりずっと優しくしてくれるかもしれない。
けど、それは決して許されない。
黒須太一は黒須太一で、そして支倉曜子は支倉曜子として、そうでないと両立できない。
私を抱えてしまっては太一は太一でなくなり、そして時を置かずして何かが壊れてしまうだろう。
共倒れてしまう。
支倉曜子は太一の前ではずっと支倉曜子でなくてはならないのだ。
あの日。あの時。あのビロードの上で出会った時の様に……常に、太一が完璧だと思える存在でないと。
私が完璧でないと太一は行く先を見失ってしまう。
私があの時の太一を永遠に望むように、私はあの時の私であり続けなければならない。
しかし――それはもう叶わない。
あまりにも与えられた時間が少なすぎる。そして、流れてしまった時間が途方もなく長すぎる。
まだ太一は太一なのだろうか……?
- 616 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:42:41 ID:+dCeIg6u
-
- 617 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:43:09 ID:rFlTeie+
- 想うと心が軋み、私そのものを圧迫する。だから、もう想うのはやめよう。
太一が太一である可能性に賭けて、私は支倉曜子であることをやめよう。
彼が行き着く前に、その前を私が駆け抜けよう。
道程に生える全てを刈り取るモノになろう。
支倉曜子ではなく、モノとして働き、太一に可能性を残す。
だから私は、もう、太一の前に立つことはない。……支倉曜子は、その存在をここに抹消する。
――唯一の太一のために。
「あの時」……世界を開放してくれたのは太一だった。
怯え竦みなにもできなかった私を救い、かわりに全てを飲み込み、彼は壊れてしまった。
だから、これは代わりだ。
今度は、ワタシが、全ての「人間」を――ミナゴロシ――にする。
今度はワタシが全てを飲み込み、太一をこの「世界」から解放する――……。
- 618 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:43:18 ID:wQXcuCEW
-
- 619 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:44:09 ID:wQXcuCEW
-
- 620 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:44:10 ID:rFlTeie+
- † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
朝の光を受け真っ白となっている街中に一人の「怪人」がいた。
全身を真っ白な包帯で包み、そしてその上にややサイズが大きめのトレンチコートを被っている。
包帯の隙間から覗いているのは二色の目。
毒を湛えた様な赤い右目と、闇を落した様な黒い左目。
赤色には刺すような狂気が、そして黒色にもやはり吸い込まれるような狂気があった。
怪人はバックを背に、左手に大きな拳銃をブラリと提げて街中を歩いている。
どこに向かっているのかは定かではない……が、何を探しているのかはその様相から伝わってくる。
――怪人は殺人鬼だ。いや、死神だ。いや、殺すためのモノだ。
瞬間。怪人の左腕が跳ね上がり、もっていた拳銃が軽く抜ける音とともに火を噴いた。
一間をおいて、何かが破裂する音。燻す前のソーセージをぶちまけたような音がその先で聞こえる。
見れば、それはノラ猫の死骸。撃たれて上半身と下半身に別たれたさっきまでは猫だった2つのモノ。
生きていなければ興味はないのか、怪人はまた歩き出す。
獲物を――生きているものを探して街を徘徊する。
- 621 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:44:36 ID:KqPZ+BdC
-
- 622 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:44:46 ID:wQXcuCEW
-
- 623 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:44:55 ID:rFlTeie+
- 陽炎のような光景の中を、陽炎のように希薄な、しかし不吉な存在がゆらりと揺れる。
もう決して動かない右腕をぶらりぶらり。まだ動く殺すための左腕をぶらりぶらり。
半身が不自由な身体をゆらりゆらり――と、誰でもない怪人はゆらめく。
ふと怪人が鼻をひくつかせた。
そこに届いた香りに、わずかに目元がいぶかしむ表情を見せる。
ボイルドした蕃茄の香り。そして、オリーブオイルの香り。他にも雑多な野菜と香辛料の匂いが漂っている。
香りは薄いが、しかし遠くはない。風は実になだらかだ。なので、匂いの元はそう遠くないはずである。
怪人は考える。
放送の中であの男は「朝餉」をとることを推奨してきた。
言に従ったわけではないが、怪人も支給された食料を口にしている。
しかし、この香りもそうだというのだろうか?
だとすれば、余程の戯けか。もしくは罠か。はたまた、それを些事と捉えるような大物なのか?
なんにせよそこに生きている人間がいるのは間違いないだろう。
――ならば、迷うことはない。
怪人は行く先を匂いの元へと変え、足を踏み出しゆらりゆらりと前へと進む。
そこにいる人間たちを殺すために――……。
【G-4 市街地/1日目 朝】
- 624 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:45:32 ID:wQXcuCEW
-
- 625 名前:KILLER MACHINE ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:45:36 ID:rFlTeie+
- 【支倉曜子@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:H&K_MARK23(拳銃/弾数8/12発/予備12×1発)、全身に包帯、トレンチコート(男物)
【所持品】:支給品一式(食料-1)、斧、首輪(リセ)、医療品一式、バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL
【状態】:肉体疲労(中)、右半身大火傷(処置済み)、胸部に激痛(処置済み)、右目が充血(視力低下)、髪を切りました
【思考・行動】
基本方針:太一の為に、太一以外を皆殺し。
0:匂いの元を辿り、そこにいる人間を皆殺しにする。
1:ゲームの参加者を見つけたら殺す。
2:人間でなくとも生きているなら殺す。
3:動いたら殺す。動かなくとも殺す。
4:話しかけてきても殺す。無言でも殺すし、叫んでも殺す。
5:泣いても殺す。怒っても殺す。笑っても殺す。
7:銃で殺す。なくなったら斧で殺す。殺したら相手の武器を奪ってそれでまた他の人間を殺す。
8:殺す。
9:(…………………………………………太一)
【備考】
※登場時期は、いつかの週末。固定状態ではありません。
※佐倉霧、山辺美希のいずれかが自分の噂を広めていると確信。
※『H&K MARK23』にはサイレンサーと、レーザーサイトが装着されています。
※支倉曜子であることをやめました。
※G-4・診療所内(風呂場)に曜子の着ていた制服(血塗れ/焼け焦げ/切り刻まれている)と焼け縮れた髪の毛が捨てられています。
※曜子が気付いた匂いは、G-4・平屋でトルタが作った食事の匂いです。
- 626 名前: ◆AZWNjKqIBQ :2008/04/21(月) 19:46:11 ID:rFlTeie+
- 投下終了しました。 支援感謝します。
- 627 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 19:55:24 ID:0O5XuhSg
- 投下乙です。
やっぱり氏の書くクロチャン勢は怖い上にらしすぎるwww
「曜子ちゃん」から包帯トレンチコート女に変身した曜子ちゃんの明日はどっちだw
しかし、この状態表の異常さこそがクロチャン勢だよなぁとシミジミ思います
- 628 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:02:38 ID:wQXcuCEW
- GJです!
やはり、氏の書くクロチャ勢は素晴らしいです。
それで、なんというか言葉に出来ないけど、曜子ちゃんの決意に哀しさを感じました。
- 629 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:04:28 ID:HbursSNc
- 投下乙。
こ……怖ッ! なんか凄まじく怖くて哀しいものを見てしまった気がするっ!
状態表の思考欄が……ヤバい。GJ。
- 630 名前:Last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:14:30 ID:7GwclIlM
- 「んー、いい風だねえ」
体に当たる潮風がとても涼しく気持ちがいい。
俺はクルーザーを慣れない手つきで運転させていた。
向かうのは、港。
レオやフカヒレが対岸の町にいると信じて。
出来れば無事で居てほしいんだかねぇ。
「だ……伊達っ! もう少し優しくできないのか!」
「あぁ? ワリィ。元々荒いんでね」
「……なあ!? ふざける……うぷ」
クルーザーの船室から顔を出したなっちゃんが叫ぶ。そして黙る。
いや黙らずおえなかったというべきか。
そんななっちゃんをみて一言。
「あー吐くならしっかりとしたにしろよ? 床にしたらたまらん」
「う、うるさい!」
結構なスピードを出してるの自覚はしてる。
それに伴って船が揺れまくってるのも解る。
やはり焦っていんのかねぇ、俺も。
俺が思ってるより。
レオもフカヒレも安心できないからな。
……さっさと見つけないと。
- 631 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:14:48 ID:KqPZ+BdC
-
- 632 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:15:04 ID:wQXcuCEW
-
- 633 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:15:15 ID:rFlTeie+
-
- 634 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:16:50 ID:7GwclIlM
- 「……スバルさん?」
「どったの? 葛ちゃん」
「いえ、スバルさんが言ってたレオ、フカヒレってスバルさんにとってどんな人なんですか? 少し興味が沸きまして」
「そーねぇ……」
同じく船室から出てきた葛ちゃんが俺に尋ねてくる。
レオ達か……。
んーまあ一言で言うと。
「聖域だな」
「……聖域?」
「ああ」
そう、聖域。
俺が大切にしていて崩したくないあの空間。
誰にも介入させたくないしそれは言うならば俺達だけの場所。
そういえる仲間ってことだな。
だからまあ
「早く見つけないとねぇ……俺が守ってやらないと」
さっさと見つけてしまいますか。
フカヒレなんて碌な事してないだろう。
想像しただけで溜息がでる。
「葛ちゃんにとってえっと……桂おねーさんだっけ? どんな人だ?」
「不思議な人で……温かい人です」
「そっか。会えるといいな」
「はい」
- 635 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:17:20 ID:HbursSNc
-
- 636 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:17:34 ID:wQXcuCEW
-
- 637 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:17:44 ID:rFlTeie+
-
- 638 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:17:52 ID:7GwclIlM
- 俺達はそう言ったきり目の前に広がる海を見る。
それは恨めしいぐらいに青かった。
「伊達。今はどこら辺だ」
「お、なっちゃん。回復したか、吐いてすっきりしたか?」
「き、貴様! それになっちゃんいうな!」
なっちゃんが船酔いから若干回復したようで同じく操縦席のあたりに近づいてきた。
一通りからかった後、俺は現在位置を確認しようとする。
その時だった。
『……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね』
あの忌々しい神父の声が聞こえてきたのは。
そう、それはあの人の死を告げる放送だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『……食べるものも食べなければ、生き延びることなど到底出来はしないのだから』
そこで放送は終わった。
……果たして最後のあれは告げる必要があったのだろうか?
- 639 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:17:55 ID:KqPZ+BdC
-
- 640 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:18:51 ID:7GwclIlM
- 兎も角、わたしは心が少し落ち着いた感じがした。
それは、桂おねーさんの名前を呼ばれなかった事。
あの人は残念ながら弱い。
だから呼ばれる事を少しながらも思っていた。
けど呼ばれる事はなかった。
そのことがとても嬉しい。
単純にそう思う。
……だけど。
「……伊達」
「……あぁ……大丈夫だ……でもちょい考えさせてくれや」
「……わかった」
スバルさんの仲間だというレオさんが呼ばれてしまった。
スバルさんはそれを聞いた時一瞬愕然としそしてうつむいてしまった。
今はクルーザーの際に立ってじっと海を見つめている。
やはりショックなのだろう。
聖域とまで称した仲間なのだ。
それが一番最初の放送で呼ばれたのだから。
スバルさんの気持ちが分からないでもない。
まあ今はそっとしとくべきだろう。
それよりも気になった事がある。
「なつきさん、聞きましたか?」
「ああ、権利とか何とかいってたな」
そうあの男が言ってたある権利。
具体的には内容を隠してたが優勝者に与えられる権利。
- 641 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:19:29 ID:wQXcuCEW
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- 642 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:19:29 ID:k/BJpf6P
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- 643 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:19:56 ID:7GwclIlM
- それは今までなかった情報でもある。
これの権利の中身は何だろう。
最も考えられるのは
「考えられるのは……現実世界に帰してもらえるとかですかね」
「確かに一番考えられるのがそれだろう」
元の世界に返して貰えるという事。
前回、始まる時返してもらえる事を明言されてなかった。
それなら権利というのはそれに値するかもしれない。
他にも考えられる候補がある。
それはその後にあの男が言った事の影響が強いのですが。
「あの男……死者を復活させる事ができるいいましたよね」
「ああ……本当かどうかわからんが……まさか!?」
「そのまさかかもしれません」
そうあの男達ができるとは思わない。
だがもし本当の主催者がいるというのならば。
死者の復活できるかもしれない。
その時もしかしたら。
死者の復活がお願い出来るのかもしれない。
「とはいえ……まだ判断できないな」
「そうですね……今は桂おねーさん達を探しましょう」
「ああ」
今はどんなに考えてもそれは推測でしかなりませんし。
とりあえず今は探し人を見つけることが先決だ。
そう思ってわたしはスバルさんのところに向かった。
スバルさんが運転できるのならスバルさんが。
- 644 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:21:05 ID:HbursSNc
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- 645 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:21:06 ID:KqPZ+BdC
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- 646 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:21:21 ID:7GwclIlM
- できなければわたしがやるべきでしょう。
今の状態でできるかわかりませんが。
「スバルさん……」
私はスバルさんに話しかける。
スバルさんじっと海を眺めていたがやがてこちらを向く。
「……え?」
でもその顔はおちゃらけた顔ではなく、
まるでそれは鬼の如く冷たい顔だった。
そして
「……ワリィ……葛ちゃん」
パンと。
とても軽い音が。
大きく響いた。
なんでだろう?
とてもスローモーションに映像が動く。
目の前には銃を構えたスバルさん。
そして私のお腹が紅く侵食していく様子。
- 647 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:22:10 ID:KqPZ+BdC
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- 648 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:22:14 ID:HbursSNc
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- 649 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:22:19 ID:wQXcuCEW
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- 650 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:22:27 ID:7GwclIlM
- あ……れ?
なんか……おかしいな?
不意に力が抜ける。
私は。
そのまま。
考える意志も。
時間もなく。
グラッと体が傾き。
海に落ちた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
葛ちゃんが海に落ちる音だけを確認し俺は直ぐに行動を開始した。
目的はなっちゃんを制圧する為。
- 651 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:23:00 ID:wQXcuCEW
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- 652 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:23:16 ID:HbursSNc
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- 653 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:23:36 ID:KqPZ+BdC
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- 654 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:23:49 ID:7GwclIlM
- 「伊達!? 貴様!?」
なっちゃんは既に2丁拳銃を出してたが少し反応が遅い。
何故なら俺は既に彼女の胸に向けて銃を向けていたのだから。
そうチェックメイト。
少し反応が遅かったねぇなっちゃん。
「じゃあ……ワリィけど……」
「待った。伊達……なんでいきなり乗ったか教えてほしい」
俺が撃とうとした時なっちゃんはいきなりそんなことを聞いてきた。
命乞いかねぇ。
んー……どうしようかねぇ。
少し聞いて欲しいのもあるかも知れんね、俺の中に。
多少に似てるしね彼女に。
「じゃあ武器を捨ててくれや。んで手を上げてくれ」
「……わかった」
彼女はその通りにして銃を足元に捨てて手を上げた。
確かなっちゃんはそれしか武装は持ってないはずだし。
とはいえ……ぶっちゃけわかってると思うんだけどねぇ。
「レオの為、簡単の言えばこんなもんさ」
「そんな事、解っている。でも優勝してもなんにもならんだろう?」
ああ、そいう事。
単純じゃねえか。
さっき話してただろ?
- 655 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:24:43 ID:YUHDpQ7c
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- 656 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:24:49 ID:wQXcuCEW
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- 657 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:25:12 ID:7GwclIlM
- 「権利だったっけ? それを使ってレオもフカヒレも蘇らせる」
「な!?」
もう聖域は崩れてしまった。
レオという一角を失って。
レオが死んだならフカヒレもどうなるかなんて考えなくてもわかる、残念ながら。
なら俺が出来る事は一つしかねーじゃんか。
優勝して聖域を復活させる。
それが手っ取り早い。
「馬鹿な……蘇らせてくれるかも分からないだぞ!? もしできなかったら」
「帰らしてもらうぜ、俺は」
無理なら帰らしてもらう。
もといた世界にねえ。
聖域は取り戻す事ができない。
……でも。
そこには取り残されてる人がいるから。
そうカニだ。
幸運にもここに呼ばれなかった大切な人。
もし蘇りが無理だとしても俺だけは帰る。
そこに聖域の残骸があるから。
独りにさせるわけには行かないから。
だから乗ったさ。
「そんな……まだ決まったわけでもないのにか?」
「言っただろ? 俺は俺の好きな様に行動するって。んで一番考えてそれがいいと思っただけよ」
- 658 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:25:28 ID:KqPZ+BdC
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- 659 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:25:38 ID:wQXcuCEW
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- 660 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:26:09 ID:7GwclIlM
- そう。
とても簡単な事。
好きなように行動させてもらうさ。
じゃあ……そろそろ
「そうか。じゃあ私も好きに行動させてもらう」
……あ?
何であいつの手に。
銃があるんだ?
しっかり落としたのを確認したはず。
ってやばい!
「この!」
「甘い!」
俺は直ぐにトリガーを引こうとしたが遅かった。
いや引けなかった。
「ぐわあ!?」
なっちゃんはもう俺の手に向けて発射していた。
打ち抜かれる俺の手。
そしてその瞬間
「済まないな……伊達」
- 661 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:26:35 ID:HbursSNc
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- 662 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:27:04 ID:KqPZ+BdC
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- 663 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:27:12 ID:wQXcuCEW
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- 664 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:27:25 ID:7GwclIlM
- 俺は思いっきり撃たれた。
腹を。
真紅に染まっていく俺の腹。
……畜生。
俺はここで終わるのか?
目の前に見えるのはなっちゃんの顔。
それはどこか悲しそうだった。
フカヒレ。
カニ。
レオ。
……俺は。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
伊達は焦っていたのか。
それとも気付いていなかったのか。
- 665 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:28:09 ID:7GwclIlM
- エレメントの特性に。
私は捨てた後拾いはしなかった。
だが、伊達に気付かれないうちに足で踏んでいたのだ。
エレメントを。
そして消して私の手元に。
殺したくはなかった。
でもあいつは若杉も殺した。
許すわけにはいかない。
それに所詮協力してただけなのだから。
そして私は血を被った。
伊達の血を。
でも何故か悲しいのだ。
少なくても3人とも最初はそんなことを思ってなかったはずなのに。
何故こんな事になってしまったのだろうと。
「伊達……」
「情けはかけんなや……油断しちまった」
伊達が悲しそうに呟く。
何故だろう?
彼に哀れみを感じるのは。
不思議でしょうがない。
「でもな……なっちゃん」
- 666 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:28:13 ID:KqPZ+BdC
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- 667 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:28:39 ID:wQXcuCEW
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- 668 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:29:09 ID:7GwclIlM
- 伊達が私に話しかける。
まるで呪詛の如く。
「いずれ……なっちゃんも俺みたいになるぜ。絶対」
「……な!? 馬鹿な!?」」
私が伊達みたいになるだと。
そんな馬鹿な事あるものか。
「いや……なるさ。静留だっけ? その人が呼ばれてなっちゃんはそのままでいられるかねえ。なっちゃん?」
「……それは」
静留が呼ばれる。
考えもつかない。
だがもし呼ばれたとしたら。
私は伊達みたいになるのか?
蘇らせる為に。
分からない。
考えたくない。
「もし……なっちゃんに帰って会いたい人がいたのならそのままでいられるのねぇ?」
「……」
……もし帰れたら。
私は。
私は会いたいのだろうか。
彼に。
……分からない。
……知りたくない。
「ん……じゃあ……ま。どうなるか……楽しみに待ってるわ……」
- 669 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:29:11 ID:k/BJpf6P
-
- 670 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:30:07 ID:7GwclIlM
- 伊達は最後に歪んで笑い体から力を抜き始める。
その顔には怒りか。
それとも悲しみか。
優越か。
私にはわからない。
「ああ……最後に」
伊達はこっちを見据える。
そして
「なつき……大切な人を失う悲しみってどんなものだと思う?」
そう言い残して。
彼は自ら海に飛び込んだ。
残されるのは私だけ。
そこには伊達も若杉も居なく。
真紅の鮮血だけ。
ああ。
私はどうなるのだろう?
もし。
もし次の放送で静留が呼ばれたら。
私は。
私は。
- 671 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:30:11 ID:YlznRySW
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- 672 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:30:20 ID:KqPZ+BdC
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- 673 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:30:48 ID:wQXcuCEW
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- 674 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:30:49 ID:YlznRySW
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- 675 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:30:58 ID:k/BJpf6P
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- 676 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:31:00 ID:7GwclIlM
- 「どうなるんだろうか?」
その問いに応える人はもういなく。
私は海の孤島で独り。
空にはイラつく位の太陽の輝き。
すんだ蒼。
海は静かで。
深い藍。
そしてその青の反対の赤にかこまれて。
私はそこにいた。
迷いも晴らせないまま。
【F-8クルーザー船内(海上)/一日目 早朝】
【玖我なつき@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃)
【所持品】:支給品一式、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THE IDOLM@STER、不明支給品(0〜2) ベレッタM92(9ミリパラベラム弾 15/15+1)ベレッタM92の予備マガジン(9ミリパラベラム弾 15発入り)×3
【状態】:健康 軽い自失
【思考・行動】
基本:静留と合流する。ゲームに乗るか乗らないかは現状のところは完全に保留
0:私は……
- 677 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:31:24 ID:YlznRySW
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- 678 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:31:30 ID:YUHDpQ7c
-
- 679 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:31:37 ID:7GwclIlM
- 1:???
【備考】
※装備品のELERは支給品ではなくなつきのエレメントです。
※チャイルドが呼び出せないことにおそらく気づいています。
※人探しと平行して、ゲームの盲点を探し本当のゲームの参加者になる。
※盗聴の可能性に気付きました。
※『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在すると考えています。
※佐倉霧の言いふらす情報に疑問視。
※権利は元の世界に返すや死者蘇生と考えてます
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ザザと。
ひどくその音が響く。
何の音だろう?
俺は目を開ける。
前にはは草原が遠くに見えて。
後ろは海。
- 680 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:32:04 ID:KqPZ+BdC
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- 681 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:32:11 ID:wQXcuCEW
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- 682 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:32:31 ID:7GwclIlM
- やった。
まだできる。
レオ達のために。
俺はズリズリと体を動かし始める。
はは、神も見捨てたもんじゃない。
やるぜ。俺。
全てはあの聖域の為に。
俺はまだ頑張れるんだ。
顔をもう一度上げる。
そこには人影が?
あれは乙女さん?
乙女さんなら乗るわけないしきっと介抱してくれる。
そしてまた動けるようになる。
待ってろよ。
レオ。
乙女さんらしきものがこっちに近づいてくる。
顔がはっきりとする。
でもそこに居たのは乙女さんであって乙女さんじゃない。
- 683 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:32:50 ID:HbursSNc
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- 684 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:32:59 ID:YlznRySW
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- 685 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:32:59 ID:wQXcuCEW
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- 686 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:33:32 ID:KqPZ+BdC
-
- 687 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:33:50 ID:7GwclIlM
- 笑顔は怖かった。
にっこりとしてるのだが。
ああ。
「フカ……ヒレ……カ……二…………レ……オ」
無理なんだ。
結局は。
聖域取り戻す事なんか。
ザンと。
凄まじい音。
最後の瞬間
だってそこに居たのは。
『鬼』なんだから。
【伊達スバル@つよきす -Mighty Heart- 死亡】
- 688 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:34:15 ID:YlznRySW
-
- 689 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:34:50 ID:7GwclIlM
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私はその血を啜った。
レオの親友の血を。
もう死にそうだったから止めを刺した。
このままにするのは可哀想だったし。
「ふふ……よかったなあ……レオ」
しかし幸運だったよ。
彼が犬死するまえに彼に会えて。
レオもきっと寂しくないだろう。
だって親友も傍に居るのだし。
「レオ……これで寂しくない。親友も傍にいて。レオはきっと悲しくなんかないだろう」
アハ。
さあ行こうか。
もう興味を失った。
彼の遺体になんか。
血は残ってないし。
後は強い人を早く屠りたい。
「レオ……見ててくれよ」
- 690 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:35:13 ID:wQXcuCEW
-
- 691 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:35:28 ID:KqPZ+BdC
-
- 692 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:35:31 ID:YlznRySW
-
- 693 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:35:35 ID:7GwclIlM
- 私は強者だ。
全てを平らげる。
レオは見てて。親友と共に。
さあ、いこうか。
レオの為に。
アハハ。
【Fー8 海岸/1日目 早朝】
【鉄乙女@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:斬妖刀文壱@あやかしびと −幻妖異聞録−
【所持品】:レオのデイパック(確認済み支給品0〜1)
【状態】:狂気、鬼
【思考・行動】
1:自分が強者である事を証明する
【備考】
※アカイイトにおける鬼となりました。
身体能力アップ、五感の強化の他に勘が鋭くなっている可能性もあります。
- 694 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:36:20 ID:YlznRySW
-
- 695 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:36:23 ID:7GwclIlM
- ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
タンタンと小刻みのいいリズムに揺られわたしは目が覚める。
これは……誰かの背中みたい。
わたしはスバルさんに撃たれて海に落ちて。
……あれ?
生きてる。
生きてるんだ。
ああ。
よかった。
- 696 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:36:44 ID:wQXcuCEW
-
- 697 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:36:56 ID:YlznRySW
-
- 698 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:37:00 ID:rFlTeie+
-
- 699 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:37:04 ID:7GwclIlM
- 「目を醒ました? 大丈夫! 今治療できるところに連れてってあげるから!」
声が聞こえる。
これは今背負ってくれてる人の声。
「……葛」
私はそう名乗る。
ああ。
生きてる
そう実感できる。
「葛ちゃんね……先生に任せなさい!」
なんて元気な人だ。
こっちまで元気が出てきそう。
「桂おねーさん……スバルさん……なつきさん」
桂おねーさん。
無事かな。
無事だといいな。
スバルさん、なつきさん。
どうなったのだろう?
凄く気になる。
- 700 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:37:27 ID:YlznRySW
-
- 701 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:37:45 ID:rFlTeie+
-
- 702 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:11 ID:wQXcuCEW
-
- 703 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:38:20 ID:7GwclIlM
- でも嬉しい。
だって。
「生き……てる……嬉し……いな……」
生きてるのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は必死になって走る。
彼女を助ける為。
あの時流されていたのを見つからなかったらどうなってことやら。
助けられて本当によかった。
わたしには治療道具がなかったけど旅館ならあるはず。
助けられる命を救わないと。
私に懸けて。
- 704 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:44 ID:HbursSNc
-
- 705 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:46 ID:rFlTeie+
-
- 706 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:46 ID:YlznRySW
-
- 707 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:53 ID:KqPZ+BdC
-
- 708 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:38:54 ID:wQXcuCEW
-
- 709 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:39:03 ID:7GwclIlM
- さっきから寝ているみたいで寝息が聞こえてた。
だから
……あれ?
おかしい。
……あれれ?
……なんで。
……なんで。
寝息が……
聞こえないの?
……嘘。
……嘘。
「ちょっと……ねえちょっと」
改めて葛ちゃんの方を見る。
ああ……
ああ……
あああああああああああああああああああ。
- 710 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:39:25 ID:YlznRySW
-
- 711 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:39:32 ID:rFlTeie+
-
- 712 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:39:44 ID:HbursSNc
-
- 713 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:40:17 ID:7GwclIlM
- 止まってる。
鼓動が。
命の煌きが。
私が。
私のせいで。
「うわ……うわあああああああああああああ」
もう少し早く見つけていれば。
もう少し早く走れれば。
もう少し。
もう少し……
私がしっかりしてれば。
彼女は死ななかった。
ああ。
私のせいだ。
膝を突く。
どうしてだ。
どうして零れ落としたんだろう。
助けられる命を。
救えた命を。
- 714 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:40:28 ID:rFlTeie+
-
- 715 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:40:33 ID:YlznRySW
-
- 716 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:41:10 ID:HbursSNc
-
- 717 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:41:15 ID:KqPZ+BdC
-
- 718 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:41:16 ID:rFlTeie+
-
- 719 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:41:20 ID:7GwclIlM
- 私は。
安からそうな彼女の顔が。
苦しい。
私の心が。
最後の瞬間。
彼女は何を思った?
わからない。
でもきっと救えた命だと思う。
ああ
ああ
「私は……無力だ!」
その言葉は空に舞い。
強く。
強く。
私に響いた。
- 720 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:41:33 ID:YlznRySW
-
- 721 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:41:53 ID:7GwclIlM
- 【若杉葛@アカイイト 死亡】
【E−8草原/1日目 朝】
【杉浦碧@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:不明
【所持品】: FNブローニングM1910(弾数7+1)、黒いレインコート(だぶだぶ) 支給品一式、FNブローニングM1910の予備マガジン×4、恭介の尺球(花火セット付き)@リトルバスターズ!
ダーク@Fate/stay night[Realta Nua]、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
【状態】:健康 自失
【思考・行動】
0:無力……
1:鉄乙女を探す
2:1の終了後、旅館に戻る
3:反主催として最後まで戦う
4:知り合いを探す
- 722 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:41:53 ID:HbursSNc
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- 723 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:42:00 ID:rFlTeie+
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- 724 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:42:13 ID:YlznRySW
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- 725 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:42:59 ID:KqPZ+BdC
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- 726 名前:last moment ◆UcWYhusQhw :2008/04/21(月) 20:43:41 ID:7GwclIlM
- 投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたらお願いします。
タイトルは
「Last moment」です。
元ネタは舞ーHIMEの歌から。
- 727 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 20:51:33 ID:YlznRySW
- 投下乙です!
AZW氏
曜子こえー…トレンチコート着た包帯女なんて夜出会ったら夢に出そうだw
恐怖と哀愁を漂わせる雰囲気作りに感服します。
UcW氏
MI☆NA☆GO☆RO☆SIだぜ!
これがバトルロワイヤルというものだを地でいく展開。
ひとりぼっちのなつきと葛を救えなかった碧、二人の今後はいかに。
- 728 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 21:09:03 ID:tMWATxCW
- >CK氏
投下乙です
刀子先輩……益々空気皇の地位を確固たるものに(ry
卑怯な手をも辞さない愁厳の決意が良かったです
>AZ氏
投下乙です
何処までも冷静な、だけど凄まじい執念……怖いなあ
もう満身創痍の状態だけど、このままじゃ終わりそうも無いね
>Uc氏
投下乙です
なんという鬱展……これはGJと言わざるを得なさ過ぎる
誰か死ぬだろうなとは思ってたけど、ここまで地獄になるとは思わなかった
死に方も無常で良かったなー
- 729 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 21:20:41 ID:/cA5dTeF
- >CK氏
投下乙です
刀子先輩wせっかく目が覚めたと思ったのにやっぱりか
>AZ氏
投下乙です
すごい、この冷静だけどイカレている描写が圧巻でした。
>Uc氏
投下乙です
船ってやっぱ呪われてるんでしょうか
あぁ、これがバトルロワイヤルというものか
- 730 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 21:30:37 ID:wQXcuCEW
- GJ!
つ、葛とスバルが……orz
誰かが死ぬだろうとは思っていましたが、こんなにも無常感漂う作品とは……
予想を大いに覆されました、GJです!
- 731 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:02:11 ID:FtAc25oA
- 投下乙です
>wY氏
放送時にマーボー食ってるキャラっておいw
この情報は色々なキャラに影響与えてますな
>CK氏
刀子さん即退場、これも古青江の呪いか
峻厳の不器用さが良かったです
>AZ氏
曜子の心理描写が怖い。こういうベクトルで壊しに来たか
頭は切れるから危険なマーダーになりそう
>Uc氏
まさか2人も…スバルは2回連続ご愁傷様です
HIMEの皆さんは色々と重いものしょってしまったな
- 732 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:22:34 ID:id/u48k3
- 週刊ギャルゲロワ2nd第6号(4/21)
先週の主な出来事
__ _
__/⌒>'―-―――< >‐、
/.:./^ー─ヘi/⌒ヘーく⌒ヽ厂:ヽ
//.:.:.:.:.:.:.:/.:.ムム.:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:.ヽ.:.:い
/イ/:/.:/:/.:/.:/'`"´!.:!.:.:.|.:.:.:l .:.:.:.|.:.:l:.:|
//:,': |.:.l.:.{:⊥!| |.:l.: ⊥:.:.|.:.:j从.:.l:.:|
|:|.:l.:.:|:.:|:∧:l:八 j/リ:/|:.∨.:/ :∧:l:.:| は、ふ……っ。そうそう、もう、……ひとつ、なの。
Nハ.:ヽ从■■■■■■/.:/イ/.:.:.:l:.:| この殺し合いが、もぐ……、誰かの優勝に、ハフ、終わった、暁には、み、水。
∨\:小 ■■■■■ W.:.:l .:.:.:.l:.:| ――先ほど言った『権利』、ムシャ、以外にも……ハァハァなの…
ヾ:{.:j:八' ' _ ' ' / .:.:./.:/リ:/ ゴクゴクゴク…………と、失礼しひゃの。続きを告げりゅの、
∧{.:.:.|> _ , ィ//.:.:/'´.:.:.:.| ――この世のものとは思えないディナーを振舞うの。確実に、絶対に、なの。
/.:.:ヾ .:l.:.: r┴ニァ⌒Y|:/:.:l.:.:.:.:.|
,'.:.:.:.:/.;>'´}:: / ト、`'<! .:.:.:.|
/.:.:.r<{ |::〈 } -z≧、 .:|
/.:./入\\__ヾ_;>――<ニ/⌒}:八
i.:.:.{ \二ニ/ __} /⌒{.:.:.:.ヽ
|.:.:.j y' rヘ/ ̄___} j.:.:.:.:.:'.
|.:./ 〃 `ーヘ / | イ|.:.:.:.:.:i
- 733 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:22:58 ID:id/u48k3
- ・第一放送突破!! ほぼ一月で放送まで行くとは思わなかったの。 神のご加護をなの。
・『リセエンヌ』とても…そう、とても美しい音楽だったの。…私も是非あの楽器を弾いてみたいの。
・渚砂さん…とても強かったの…サクヤさんも頑張ったの。
・ハサン先生と葛木先生…同作品の奇しくも先生同士…しかも美少女を侍らせている…期待なの…。
・ファルさん……策に溺れた感じなの(…ステルスには死を、なの)
・スバルさん…前回の参加者は悲劇的な結末に決まっているの?(ガクガクなの)
・不器用だったり怪人だったり鬼だったり…単独行動でも色々と違いが出てくるものなの…
以上、主催者のことみがお送りしたの。
先週(4/15〜4/21)までの投下数:10作
死者:3名(蒼井渚砂、伊達スバル?、若杉葛?)
現時点(4/21)での予約:9件
- 734 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:29:45 ID:aOyHUWy1
- 週刊ギャルゲロワ投下乙!
ことみ違いでこんなネタを作るとは
その発想力が羨ましいw
- 735 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:34:32 ID:7GwclIlM
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- 736 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:35:06 ID:bjjL8oWe
- 絶望に包み込まれた夜は終わる。
剣戟と銃声と悲鳴と苦痛と無念と憎悪、その他諸々を飲み込んだ闇が消滅する。
だが、心せよ。それは決して地獄の終わりではない。
たとえ太陽が昇り、世界を陽光で満たそうとも……惨劇は終わらない。加速していく殺し合いの波は止まらない。
「……っ……こんなものか」
地獄を求め、祝福する存在……ティトゥスは美術館の入り口に腰を下ろしていた。。
彼の者は殺し合いそのものを肯定した存在。殺戮と暴力と死合、それらを生き甲斐とした男。
必然なる絶対悪、それを自身が肯定してなお、歩き続ける修羅の道。
彼はブラックロッジの大幹部、アンチクロスの末席に位置する人であることをやめた魔人である。
人をやめた証である四本の腕。
最強を掴むため、強者と心行くまでの殺し合いをするための腕は現在、三本しかない。
死合の代償として斬りおとされた第三の腕。
それは新たな器官だ。人間に尻尾が生えるような感覚。最強を掴むための四本腕……そのうちのひとつが斬りおとされた。
(棗恭介、トルティニタ・フィーネ、千羽烏月)
先の殺し合い、この腕を斬りおとした三人組。
制限されたティトゥスの身体能力でも遠く及ばない身のこなしではあったが、十分に楽しませる存在だった。
また、死合いたいと思う。命を懸けた剣閃の先、無我の境地。その先を見たい。
ここにはティトゥスを楽しませてくれる強者が大勢いる。
- 737 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:35:17 ID:KqPZ+BdC
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- 738 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:35:54 ID:id/u48k3
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- 739 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:36:35 ID:bjjL8oWe
- 宮沢謙吾、骸骨の面の男。
奥の手である四本腕を何度も使うことになった。使わざるを得ない状態にまで持っていかせた。
ましてや、その奥の手のひとつを奪われる状況だ。
―――――なんて、素晴らしい。
集ったのは大勢の戦士。
自身を楽しませる最上の獲物。
他にもマスター・オブ・ネクロノミコンなどの強者が集う地獄の島を……ティトゥスは諸手をあげて祝福する。
楽しませろ、もっと拙者を楽しませろと心が躍る。
(さて、腕を失うのは初めてだが……戻るだろうか)
失った腕は魔術によって新たな器官となったもの。
ブラックロッジの技術を持ってすれば腕の修復など容易いのだが、生憎とそんな技術などはない。
せめて魔導書の類が見つかれば、魔力次第で腕の修復も可能になる……かも知れない。
あくまで仮定の話に過ぎないが、強者と全力で戦うには五体満足が好ましいものだ。
(そう……あの男……戦士ウィンフィールドと死合うときは、全力でありたい)
身体能力という観点から見ても、ティトゥスと互角を誇る戦士。
是非、この機会に殺し合いたい。そのときが楽しみで仕方がなかった。
例えば今戦えばどのような結末を迎えられるだろうか、そんな期待に胸を膨らませる。まるでクリスマスの夜、サンタを待つ子供のように。
強い者と戦いたい、自身の願いはただそれだけだ。
- 740 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:36:56 ID:wQXcuCEW
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- 741 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:37:17 ID:id/u48k3
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- 742 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:37:26 ID:KqPZ+BdC
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- 743 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:37:46 ID:bjjL8oWe
- そうして、時刻は午前六時。
『……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね』
死を告げる放送が島に響き渡ることとなる。
その頃にはティトゥスも行動を開始していた。新たな獲物を見つけ出すために美術館を南進。
放送になど興味はない。いずれ、他者に蹂躙されて消えていった弱者になど興味は割かなかった。
ただ、禁止エリアの範囲は美術館の北であることを考えれば、南へ進むことは必定だっただろう。
べらべらとくだらない言葉で愉悦のままに喋る男の声を聞き流す。
死者の発表などに興味はなかった。
既に自身を楽しませることもできぬ者に興味などなかったのだ。だから――――
『ウィンフィールド』
その名前が島に響き渡ったとき、ティトゥスは足を止めざるを得なかった。
脳が一瞬だけ機能を停止する。呆然と、彼らしくない表情で思わず死者の放送に耳を傾けた。
岡崎朋也、リセルシア・チェザリーニ、蒼井渚砂、対馬レオ、小牧愛佳、向坂雄二、間桐桜、宮沢謙吾。
聞くつもりもなかった死者全員の名前が、ただ聴く機能しか持たないティトゥスの耳に吸い込まれていった。
「―――――――」
たっぷり、数秒間もの間。
ティトゥスはこれ以上ないほどの無防備な姿を晒していた。
- 744 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:38:41 ID:KqPZ+BdC
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- 745 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:39:15 ID:7GwclIlM
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- 746 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:40:04 ID:KqPZ+BdC
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- 747 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:40:34 ID:wQXcuCEW
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- 748 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:40:39 ID:7GwclIlM
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- 749 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:40:40 ID:bjjL8oWe
- 「莫迦な……戦士ウィンフィールドが倒れた、だと?」
人間の身でありながら、魔人であるティトゥスと互角に渡り合った剛の者。
もう一度死合いたい、と。久しぶりに見つけた対等の獲物ともう一度、命のやり取りをしたかったというのに。
彼は開始から六時間、早くも姿を消してしまった。
もう殺し合えない。もう二度と戦えない。あの興奮も、あの緊張感も、彼との間でやり取りすることは永遠にない。
「ウィンフィールド以上の猛者がいるというのか……? それとも、不覚を取ったのか……?」
分かっていることはただひとつ。
もう、ウィンフィールドは自分の乾きを癒してはくれないのだ、という漫然たる事実のみ。
ではどうすればいいのだ。ティトゥスは自身に問いかける。
誰が自分を楽しませてくれるのだ、と……軽い失望感と喪失感と無常感を抱えながら、ティトゥスは歩き続ける。
その先、目前にある駅に一人の少女を見つけた。
呆然と上空を見上げたまま、凍り付いているスチュワーデス服の少女。
ティトゥスは何も言わず、無言のまま刀を構えた。
ウィンフィールドがいないのであれば、誰でもいい。あの男の代わりなら誰でもいい……だから。
――――楽しませろ、楽しませろっ……ウィンフィールドの代わりに楽しませろッ!
◇ ◇ ◇ ◇
- 750 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:41:47 ID:wQXcuCEW
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- 751 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:42:22 ID:+mOf6Y/9
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- 752 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:42:43 ID:+mOf6Y/9
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- 753 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:42:56 ID:bjjL8oWe
- 時を少し戻すことにしよう。
時刻は早朝、太陽が暗闇を切り裂き、世界に恩恵をもたらす時間帯だ。
照らされた島に、ぽつんと建てられた駅がある。
そこで清浦刹那はずっと待ち続けていた。果たされるべき約束をずっと待ち続けていた。
「……来る」
きっと、来る。絶対だ、間違いない。
ウィンフィールドは約束を守る紳士だったのだから。彼の言うことは大体正しかったのだから。
必ず用を済ませて、自分を迎えに来てくれるのだ。
だから刹那は駅でじっと待ち続けていた。耳障りな電車のアナウンスも無視して。ずっと、待ち続けていた。
「…………絶対、来る」
すぐに出られるように準備しておかなければ。
黙々と仕事に励んで時間を潰すことにした。まず、乾いた下着を改めて着用する。
上半身は全部脱がなければならなかったが、空港のときのように変態が押しかけてくることもなく。
何事もなく、着替えは終了した。何もない、無常感が漂った。
次に武装の確認。
一発しか撃てないトンプソンコンテンダーは切り札ではあるが、自衛には頼りない。
威力はともかく、銃を撃ち慣れてなどいない自分には連射できず、反動のきつい銃は扱いづらいのだ。
よって他の武装。つまりは支給品に頼るしかないのだが。
出てきたのは皮の紐で二つに束ねられた翼を模した首飾りと、博物館あたりに在りそうな古い鏡。
残念ながら殺し合いには向かない外れ支給品、ということだろう。
- 754 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:43:11 ID:+mOf6Y/9
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- 755 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:44:31 ID:wQXcuCEW
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- 756 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:44:37 ID:+mOf6Y/9
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- 757 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:45:03 ID:bjjL8oWe
- 「………………」
十分待った。
当然、まだ来ない。着替えも終わったというのに。
「………………」
三十分待った。
やっぱり、まだ現れない。出かける準備も終わっているというのに。
「……………………」
一時間、ずっと待ち続けた。
暇なので考え事をする。これからのこと、ウィンフィールドと合流してからのことを。
地図を広げて目的地も考えた。名簿を開いて会うべき人たちに当たりをつけた。襲い掛かってきた眼鏡の女性のことも忘れない。
首輪のことも、親友のこともたくさん考えながら待ち続けた。
『……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね』
そうして、その時間がやってきた。
死を告げる放送、犠牲者を綴る閻魔帳の音読。一番最初に伝えられた死者の名前。
『ウィンフィールド』
- 758 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:45:25 ID:+mOf6Y/9
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- 759 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:45:51 ID:wQXcuCEW
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- 760 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:46:14 ID:7GwclIlM
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- 761 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:46:39 ID:bjjL8oWe
- その名前が、呼ばれてはならなかった名前が呼ばれてしまった。
ぐらり、身体が揺れる。脳に伝わる衝撃の大きさに意識を手放してしまいそうになって、それを何とか踏ん張った。
近い表現としては受験に失敗したようなもの。呼ばれなかった自身の番号に絶望するような感覚。
だが、それとは比べ物にならないほどの重さ。
「…………嘘、だ」
呆然とつぶやく。
なんて呆気ない放送だったのだろう。
人が死んだ。名前を呼ばれた数だけ、この地獄の島で命を落としていった。
「そんなはず、ない……」
弱々しく呟きながら、上空を見上げる。
憎らしいほどの朝日は生き残った人間を祝福するかのように、或いは嘲笑うかのように。
刹那は放送を信じようとはしなかった。
ウィンフィールドは必ずここに来てくれるのだから。そう言ったのだから……心の中で、その言葉を反芻した。
「…………信じない」
まだ、待とう。まだ、ずっと待ち続けよう。
迎えに来てくれることを信じてウィンフィールドを待ち続けよう。
聡明な彼女が出した答えはあまりにも脆弱だった。この殺し合いの場で、自分を保ちきれそうになかった。
さっきまで笑顔で話していた人間が肉塊になっていく、という潜在的恐怖が忍び寄る。
そうして、刹那は駅で待ち続けた。
一秒でも長く生きていたいなら遭うべきではなかった災厄を、待ち続けてしまった。
- 762 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:48:03 ID:wQXcuCEW
-
- 763 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:48:20 ID:+dCeIg6u
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- 764 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:48:40 ID:id/u48k3
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- 765 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:48:52 ID:bjjL8oWe
- 「…………っ……!」
忍び寄る足音を刹那が感知したとき、既にその悪鬼は目の前にいた。
ウィンフィールドかと思って振り向き、そうして希望に満ちた表情が絶望の色に染まっていく。
現れたのは絶大なる殺気を放った黒髪の侍。
逆立った髪の毛はまるで怒りを露にするかのように。その殺意はおよそ人のものではないと刹那が錯覚するほどに邪悪だった。
敵だ、戦わなければ。
刹那が自然、そう思ったのは限りなく正しかった。
再戦を願ったライバルの死に虚しさを感じたティトゥスの刃は、ぎらりと螺旋を象って少女へと向けられる。
ティトゥスの口元が殺害への至福に歪み、刹那は焦燥を隠しながら銃を構えた。
「来ないで……! 近づいたら、撃つ……!」
それは何の牽制にもならないであろうことは、聡明な彼女には気づけていた。
それでも相手に銃口を突きつけることによって安心感を得たかった。
結果、それは何の意味も持たないことを刹那は改めて突きつけられる。ティトゥスの足は、決して銃などで止まらない。
「……銃を向けたからには、殺される覚悟ぐらいあるのだろうな? 拙者を失望させるなよ、小娘?」
「あ……」
向けられた殺意だけで死んだ、と錯覚した。
これは殺し合いなどではない。そんな崇高なものですらない。
ただの虐殺、ワンサイドゲームにしかならないことを、改めて弱者は突きつけられた。
今、こうして会話している間も、刹那は見逃されている。
ティトゥスが刹那を仕留めるには一瞬のみ。恐らく息を吸う時間の間に百殺されているに違いない。
- 766 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:50:58 ID:bjjL8oWe
- 「あっ……う……っ……」
「どうした? 来ぬのか、小娘」
銃を突きつけているのは自分なのに、命を握られているのは刹那自身。
どうすればいい、どうすればいい、どうすればいいと自身に問いかけ……そうしている間にも、ティトゥスの剣幕が厳しくなっていく。
「……ならば、拙者から行くぞ」
「っ……!!」
ティトゥスが腰を落としたと同時に、刹那は無我夢中で引き金を引いた。
両腕でしっかりと固定させたトンプソンの銃口から、弾丸が発射される。あまりの衝撃に、腕が痺れるかと思った。
衝撃の殺し方も知らない刹那は、そちらのほうに一瞬の意識を奪われ、気づけば目の前に黒い侍の姿はない。
「あっ……は、やく……!!」
早く、弾丸を装填しなければ。
たった一発しか撃てない切り札を簡単に使用してしまった。よって、数秒間もの間、無防備な姿を晒すこととなる。
終焉、それだけで十分。
「あ……」
ティトゥスが刹那の身体を真っ直ぐに切り裂くのも。
袈裟斬り、唐竹、腕から足から全てを切り落とすことも。
その瞬間、刹那はティトゥスに百殺されてなお、お釣りが来るほどの隙を晒すだけだった。
「つまらん」
本当に退屈に、苛立たしげにティトゥスは呟いた。
その瞳は失望に彩られ、彼の瞳に映った刹那の表情は死を前にして凍りつくことしかできなかった。
刹那を何度も殺してすら余る時間で、接近したティトゥスは無造作に刹那を蹴りつけた。
- 767 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:51:14 ID:wQXcuCEW
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- 768 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:52:02 ID:id/u48k3
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- 769 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:52:24 ID:bjjL8oWe
- 「うあっ……!?」
「つまらん。本当につまらんぞ、小娘。期待はしてなかったが、ここまでとは思わなかったわ!」
無造作な蹴りの一撃でも、刹那を弾き飛ばすには十分すぎるほどの脚力だった。
壁に身体を打ちつけ、倒れる刹那を虫でも見るかのようにティトゥスは見下しながら、双身螺旋刀を抱える。
刀を使うまでもない、このまま蹴り続けるだけでも刹那は死ぬだろう。
だが、ティトゥスが求めるのは一方的虐殺による快楽ではなく、対等の猛者との心行くまでの死合なのだ。
だから、楽しませることしかできない刹那に価値など見出さない。
「さらばだ」
短い死刑宣告は刹那の耳にも届いていた。
無造作に振り上げられた刀。きっと本当に簡単に、自分の身体を切り裂くのだろう。
(助けて……助けて、助けてっ……!)
誰でもいいから助けてほしかった。
伊藤誠でも、西園寺世界でも、桂言葉でも構わない。見知らぬ誰かでも問題ない。
こんな理不尽に殺されるのは嫌だった。こんな簡単に殺されるなんて嫌だった。
だから、年相応に彼女は助けを望んだ。ヒーローの存在を……この危機を救ってくれる騎士を求めることに、罪はない。
「助けて……っ……ウィンフィールド、さん……!」
恐怖のままに叫んだ。
凶器はもう目の前、刹那には視認すら許さぬ速度で襲い掛かる。
最後に思い浮かんだのは、もう亡くなったことを知らされた執事のこと。この島でもっとも頼りになった戦士のことだった。
もう、届かない嘆願だったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
- 770 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:53:49 ID:7GwclIlM
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- 771 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:54:02 ID:wQXcuCEW
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- 772 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:55:19 ID:bjjL8oWe
- そうして、清浦刹那は死ぬはずだった。
届かない叫びの声を聞きつけた存在がいなければ、こうしてティトゥスの刃は首の薄皮一枚で停止はしなかった。
刹那は呆然と、目の前の殺人鬼を見上げていた。
魔人は初めて狩られるだけだった少女に価値を見出したかのように、その瞳を見開いていた。
「お主、ウィンフィールドを知っているのか?」
ティトゥスの問いかけに、刹那の頭はようやく回転を始めた。
その言葉の意味は? どうして殺されるはずだったのに殺されないのか?
疑問に答えを出すために、刹那は目の前の侍へと問いかける。
「ウィンフィールドさんの、知り合い……?」
「殺し合った間柄だ。更に問う、ウィンフィールドはどうした?」
やはり、と刹那は思った。
彼が警戒していた黒い侍の男……それが目の前の魔人だと理解した。
そして彼が知りたいのは、ウィンフィールドのことなのだろう。少なくとも、刹那には彼の質問を黙秘する権限などなかった。
「……さっきまで、一緒にいた」
「…………」
- 773 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:56:41 ID:bjjL8oWe
- ティトゥスは刹那の答えを聞いて思い返す。
呼ばれた名前、死んだとされたウィンフィールド。そのはずの彼と一緒にいたという少女。
若干の静寂、ティトゥスの脳裏にとある仮定が浮かび始める。
大いに願望を含んだ考察。だが、疑いを持つには十分ではある仮定の話……それを裏付けようと、再度として問いかけた。
「ウィンフィールドは、死んだのか?」
「…………死んでない。あんなの、信じない」
刹那の願望、思い込みをこもった否定。
それを十分にティトゥスは受け止めた。それが偽りである、とは感じられなかった。
なによりティトゥス自身が、あっさりと消えてしまった強者の死に強く不信感を持っていたのだから。
「……ウィンフィールドと別れた場所は分かるか?」
「分かる。……E-5地点の線路沿い」
ティトゥスの内心に沸きあがってきたのは、放送に対する疑問と不信感。
ウィンフィールドの強さは身に染みている。その彼がこんなにもあっさりと舞台から退場するのは、あまりにも不自然だ。
確かに死者の名前は挙がっている。ティトゥスがこの手で殺した宮沢謙吾の名前は、確かに挙げられていた。
だが、刹那のような非力な弱者が無傷で生き残っているような島で、あれほどの強者が六時間と経たずに死ぬだろうか。
- 774 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:57:22 ID:id/u48k3
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- 775 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:57:26 ID:wQXcuCEW
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- 776 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:57:40 ID:bjjL8oWe
- 「小娘、案内せよ」
その疑問を解消したい、とティトゥスは思った。
故にその提案は刹那自身に取っても、驚くべきことであることは言うまでもない。
どういうこと、と刹那は小さく呟いた。
ついさっきまで殺そうとしていた殺人鬼。それもウィンフィールドの敵と自称した男に同行を求められたのだ。
「お主はウィンフィールドへの道しるべにして、餌だ。あの男が生きているなら、お主を取り戻しに来るのだろう?」
「……多分、だけど来る」
「いいだろう。貴様が案内人だ。そしてウィンフィールドと拙者が死合う理由となる」
刹那はその人質となる。
恐らくはティトゥスの気まぐれに近いのだろう。場所さえ聞けば、もう刹那には用がないはず。
それでも彼女を生かす理由は、ウィンフィールドとの殺し合いを確実なものにしたいがため。
恭介たちのように途中で逃亡される、ということは我慢ならなかったのだ。
「私は、どうなるの?」
そして、刹那の興味の第一はそこに集約されるといって過言ないだろう。
殺人鬼の人質。目の前で人を殺すことも厭わない侍。
用が済めば呆気なく殺されることだって当然だ。なら、そんな意味のないことに手を貸せはしない。
対してティトゥスは、興味もなさげに応答した。
- 777 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/21(月) 23:58:34 ID:bjjL8oWe
- 「ウィンフィールドに逢えれば用はない。勝手に何処へなりと行くがいい」
「……見逃してくれるんだ?」
「図に乗るなよ、小娘。貴様など何百人斬ろうと楽しめんだけのことよ。もっとも、邪魔をするなら斬ることは覚えておけ」
今の話を総合すると、こういうことになる。
刹那はティトゥスを連れ立ってウィンフィールドを捜索する。
ウィンフィールドの生死を確認したら彼女は放免。好き勝手に野たれ死ぬがいい、とは本人の弁だ。
そして確認するまでの間、ティトゥスは刹那の身の危険すらも切り伏せる。
「拙者の望みは生き残ることではなく、殺し合いそのものだ。そしてお主を殺すと脅せば、腕に覚えのある者が現れるやも知れん」
「脅して、殺し合いを強要させるんだ……?」
「本来なら、そのような戯事などはせん。だが……拙者の知らぬところでまだ見ぬ強者ば消えるなど、惜しい」
その言葉を刹那は頭の中で噛み砕いて、分かりやすく纏めていた。
彼は殺し合いそのものを楽しむ戦闘狂。
殺し合うための人質として選ばれた自分だが、考えてみれば一番安全に立ち位置にいることになる。
ウィンフィールドを見つけるまでは、どんな意図があろうともティトゥスが護衛に就く。
もしも途中で殺し合いを否定する人間が、彼を倒して助けてくれたとしても刹那としては一向に構わない。
- 778 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/21(月) 23:59:52 ID:7GwclIlM
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- 779 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:00:10 ID:hV3sclsZ
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- 780 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:00:11 ID:HKYkliiz
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- 781 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:00:23 ID:MEKuqW73
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- 782 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:00:30 ID:bjjL8oWe
- 構わないのだが。
それは自分の安全だけを優先した、愚考であることも承知していた。
「……条件」
「む?」
「条件を、ひとつ……いい?」
ティトゥスが若干、不愉快そうに眉をひそめた。
対等の口の聞き方に対してか、それとも条件を挙げることそのものがおこがましいと思われているのかも知れない。
だけど、心中で勇気を振り絞りながら刹那は言う。
「伊藤誠、西園寺世界、桂言葉。この三人には危害を加えないでほしい」
「―――――拙者は、図に乗るなと言ったぞ?」
黒い殺意が刀に載せられて、刹那に届けられる。
その虫を見るかのような瞳が告げていた。条件を付ける権限など、刹那にはないということを。
対等ではない。仲間となって馴れ合うつもりは一切ない。
刹那の背中から冷や汗が止まらない。それほどの殺意をその身に受けてなお、刹那は敢えて語る。
「あ、あなたのいう、強者じゃないから……だから、襲わないでほしい」
死を覚悟して刹那は告げた。
もしもこの先、自分のせいで知人が死んだら……自分は生きていけないかも知れない。
だからこそ、ここで退くことは許されないと自分に言い聞かせて。
そうして、風を切る音が刹那の耳に届いた。
閃いたのは刃、刹那の目には相変わらず映ることすらなかった凶器が唸りをあげた。
- 783 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:00:58 ID:og6Kl2BM
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- 784 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:01:07 ID:KqPZ+BdC
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- 785 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:01:15 ID:JQ4tr1At
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- 786 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:01:26 ID:457uuG+P
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- 787 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:01:30 ID:HAsukPas
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- 788 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:01:50 ID:bjjL8oWe
- 「……あっ……あ」
「強者かどうかは拙者が戦ってから決める。だが、必要ならば迷わず斬る。覚えておけ」
それでティトゥスの提案……否、命令は終了した。
これから刹那は彼の欲求を満たす餌として、殺し合いの最前線へと放り込まれるだろう。
最強の護衛カードを手に入れたと同時に、もっとも苛烈な戦場へと足を運ぶのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
(大丈夫…………これなら)
刹那は静かに腰を下ろし、安堵の溜息をついた。
ティトゥスは刹那の同行に意識すら向けていない。彼はウィンフィールドと出会う方法を考えている。
電車か、歩きか。考えているのはこんなところだろう。
黒き侍の性格は何となく把握した。ストイックなまでの殺し合い肯定者。自分の命などどうでもいい、と思っているに違いない。
だが、お互いの目的は一致している。
ウィンフィールドの生死を確かめること。そのために刹那はティトゥスを利用してみせる。
行動一つ一つが命懸けだが、一人で行動するよりも戦闘面での危険はない、はずだ。
- 789 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:02:14 ID:HKYkliiz
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- 790 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:02:17 ID:HAsukPas
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- 791 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:02:18 ID:mCPHzhnv
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- 792 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:02:22 ID:V9BkzOpZ
- 「ふむ……」
「……ねえ。ウィンフィールドさんが生きていた場合、ここで集合って約束をした」
「………………」
ぎろり、と向けられた視線に凍りつきそうになる。
だけどこの程度では殺すつもりはない、はず。お互いの利害関係は一致しているのだから大丈夫。
ウィンフィールドを見つけ出すこと、生死を確認すること。
「ウィンフィールドさんが生きていたなら、ここに向かうと思う」
「……つまり、お主の確証のない約束とやらで、拙者はしばらくここに滞在しろ、と言うのか?」
「ううん、そうじゃない……」
周りの被害を考えるなら、そうしてくれるに越したことはないのだけど、と刹那は内心で思う。
ティトゥスを利用してみせる、とは決意したものの、彼をうまく誘導することも扱うことも中々できないだろう。
自分の身の程は知っている。だから、自分のできる範囲にしておかなければ。
「……ウィンフィールドさんがここに来るなら、線路沿いにここまで来るはず」
「つまり、それにあわせて拙者たちも線路沿いに北上すればいずれ、ということか」
その通り、と頷いた。
刹那にできるのはここまで。強く勧めすぎれば、越権行為ということで殺されるかも知れない。
自分で考えるのも嫌だが、最悪命さえあれば人質の役目は果たされるのだ。
そうならないように彼を制御するために必要なことは、謙虚な姿勢だと心得る。それでも、限界はあるだろうが。
- 793 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:02:55 ID:V/95wz/t
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- 794 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:03:04 ID:V9BkzOpZ
- 「ふむ……なら、歩くほうが確実か」
彼は自身の中で自己完結すると、刹那に構わず歩き始めた。
その後姿をついつい呆然と見送ってしまうと、ティトゥスは足を止め、振り返らずに宣告する。
「行くぞ、小娘」
「………………」
黒い後姿を追っていきながら、刹那は思う。
なんて分の悪い賭けなのだろう、と。内憂外患、前門の虎にして後門の狼といったところだろうか。
その不安を吹き飛ばすように刹那はその背中に言い放った。
「清浦刹那」
「……む?」
「清浦、刹那。貴方の名前は?」
ティトゥスの歩みは止まらない。
無言のままなので、てっきり無視されているのかと溜息をつこうとしたとき。
「必要ない。拙者たちは利害関係で結ばれているに過ぎん、名を憶える必要などなかろう」
そっけない一言が返ってきた。
どうやら会話は十分に通じてくれるらしい。ただ無駄口の類は怒らせることになると判断。
自分も寡黙なほうなので、そこは助かる。
だがいつまでも黒い侍、とか貴方、では困るのだった。
「呼びづらい。名前、教えて」
「……ティトゥスだ。これ以上の無駄口は叩くな」
「…………」
- 795 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:03:14 ID:KqPZ+BdC
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- 796 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:03:17 ID:mCPHzhnv
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- 797 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:03:42 ID:V9BkzOpZ
- よろしく、ティトゥス――――そんな言葉をぐっと飲み込んだ。
緊張のしすぎでついつい饒舌になってしまったが、これ以上のことは口は災いの元。
静かにティトゥスの後ろを付いていく。
願わくば誰かが、自分を助け出してくれることを祈って。
致命的な間違いを抱えたまま、二人の珍道中が始まる。
刹那の思い込みと、ティトゥスの疑念。
ふたつの要因は間違った方向へと捩れながら、地獄の島を闊歩することとなる。
【F-2 駅、近辺/1日目 朝】
【ティトゥス@機神咆哮デモンベイン】
【装備:双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【所持品:支給品一式、不明支給品0〜1(刀剣類ではない)、アサシンの腕】
【状態:右肩に軽い斬り傷と火傷、背中に浅い切り傷、第三の腕(背中から生えてくる左腕)損失】
【思考・行動】
基本行動方針:死合う
0:放送の真偽を確かめる
1:見つけた参加者とは死合う。状況によっては刹那を利用する
2:刀剣類と『屍食教典儀』(もしくは類するもの)を探す
3:刹那と共にウィンフィールドの生死を確かめる
4:恭介、トルタ、鳥月と再び死合いたい
5:骸骨の男が追ってくるならば、再び死合う
6:刹那の扱いについては保留。死合いの邪魔をするなら始末する
7:伊藤誠、西園寺世界、桂言葉とも一応は死合ってみる
- 798 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:03:45 ID:FQmb6y7K
-
- 799 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:04:11 ID:bjjL8oWe
- 【備考】
※参戦時期は、ウィンフィールドと二度目の戦いを終えた後です。
※身体能力の制限に気づきました。
※刀の召喚は、魔導書などによるサポートが無ければ使用不可能です。
※ウィンフィールドの死に疑問を感じています。
【清浦刹那@School Days L×H】
【装備:トンプソンコンテンダー(弾数1/1)】
【所持品:支給品一式、コンテンダーの弾47発、ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト】
【状態:精神疲労(大)、スチュワーデスの制服着用】
【思考・行動】
基本:人は殺さない。
0:線路沿いにE-5地点を進んでいく
1:放送の真偽を確かめる
2:ティトゥスを利用してみせる
3:ウィンフィールドや知人に逢いたい
【備考】
※制服(牛乳まみれ)と下着(濡れている)はデイパックにしまいました。
※黒髪に刀を持った裸の男(九郎)を変態だと思っています。
※ウィンフィールドの死を認めていません。
- 800 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:04:33 ID:mCPHzhnv
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- 801 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:06:21 ID:00sqbaMX
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- 802 名前: ◆WAWBD2hzCI :2008/04/22(火) 00:06:25 ID:bjjL8oWe
- 投下終了です。支援、ありがとうございました☆
タイトルは『地獄デ少女ハ魔人ト駆ケル』です。
ご感想、ご指摘をお待ちしております!
- 803 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:08:39 ID:JQ4tr1At
- >>802
投下乙です
これはなんという意外性のあるコンビ
ウィンフィールドを巡る?二人のやり取りが凄く良かったです
そして
>「伊藤誠、西園寺世界、桂言葉。この三人には危害を加えないでほしい」
流石スクイズ勢の良心
他のスクイズキャラは刹那を見習うべき過ぎる……w
- 804 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:10:48 ID:V/95wz/t
- 投下乙でっす
刹那まさにギリギリの生存……!
スクイズの希望を誰か救ってあげてw
- 805 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:10:51 ID:VPqm2vAi
- 投下乙
あの侍が誰かと組むとは思わなかった
まさかすぎるこの異色のコンビ
今すぐにでも殺されるかもしれない刹那のこの緊張感がたまらないぜ!
- 806 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:30:13 ID:S38JiLqR
- 刹那生存か。
学生ロワもそうだが、刹那は本当に良いキャラしてるな
- 807 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 00:34:21 ID:og6Kl2BM
- 乙です。
死亡確実と思ってた刹那が生きてる!?
ティトゥス相手じゃ一手間違えるだけで刀の錆だから胃が痛くなることに変わりはないけどw
スクイズから出てるとは思えないほど真っ当な生き方をしてるなあ…他が酷すぎるだけか。
ということで支援MADです。こちらにもぺたり。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm3064963
- 808 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:32:43 ID:MEKuqW73
- 大気を震わせる不快な声を、千羽烏月は民家の外壁に背を預けながら聞いていた。
読み上げられるのは2つの禁止エリアと9つの死者の名前。
その中に案じていた名前がなかったことに安堵すると同時に、
手元の地図を広げ自分が居るエリアの隣と、もう一つ読み上げられた場所に印をつける。
そうして壁から体を離しながらしばらく思案した後、
烏月はそのまま、禁止エリアから遠ざかるよう山に向かって歩き始めた。
(しかし、死者が10名近く……その数だけ積極的な人間がいるということか)
もちろん一人で数人殺した者や、自分のように殺意はあるものの未だに誰一人殺せていない者もいるだろう。
だが、それを踏まえても、積極的に殺人を行っている人間が少なくとも9人はいると考えたほうがいい。
それは参加者を減らすという観点で言えば有用であると同時に、
桂に危害を加える可能性がある人間がそれだけいるという事でもある。
そして、その中には放送前に戦闘を行った、あの男のような魔人も少なからず存在するだろう。
(……この際、他の参加者と同盟を結ぶ事も考えた方がいいかもしれないね)
先程の戦闘を思い出しながら思う。
ティトゥスと名乗ったあの男に、烏月一人で挑んでいたら生還する確率は限りなく低かった。
あの二人と共闘したからこそ、こうして何とか生き残っているのだ。
桂の安全を確保する事を考えると、今後ああいった人外のモノと戦う事は多くなっていく。
その時に僅かでも勝率をあげるためにも、協力者は必要不可欠だ。
けれども、殺し合いを止めようとしている参加者と組むのは難しいだろう。
先程のように共闘する事ぐらいは可能だろうが、
殆どの参加者は、殺し合いに積極的な人間と組もうとは考えもしないはずである。
そう考えるとあの二人は例外中の例外なのだろう。
- 809 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:33:43 ID:2xE8YRFS
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- 810 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:33:47 ID:MEKuqW73
- (同盟を結べるとすれば、むしろ、積極的に参加者の殺害を考えている人間の方……)
それも戦闘能力が低すぎず、それでいて一人でも生き残れると確信しているような者でもない人間だ。
更に桂を襲わないように交渉する事を考えるならば、自らの生還のために他者を殺す者ではなく、
烏月自身のように、この島に居る誰かを生き残らせるために殺し合いに乗った者の方が好ましい。
互いが生還させたい人物を襲わない事を条件に、人数が少なくなるまでの同盟関係を結ぶ。
無論、裏切る事、裏切られる事前提の脆いものだが、それでも利があるうちは有用だろう。
(とりあえず、襲ってきた相手は説得できそうなら説得かな……)
と、不意に漂ってきた臭いに烏月は足を止める。
それはこの島では何も珍しくない、赤錆びた鉄のような臭いだった。
そして、それと共に感じるのは何者かの気配。
烏月は刀を抜きながら、ゆっくりと繁みの中へと分け入って行く。
……そして、千羽烏月は繁みの先に血塗れの刀を手にした、知人の姿を発見したのだった。
◇◇◆◇◇
- 811 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:34:04 ID:UlEDPeMc
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- 812 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:34:09 ID:JQ4tr1At
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- 813 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:34:55 ID:MEKuqW73
- 大気を震わせる不愉快な放送を、浅間サクヤは項垂れたままで聞いていた。
読み上げられるのは2つの禁止エリアと9つの死者の名前。
その中に案じていた名前がなかったことに安堵し、そしてそんな自身に嫌悪感を覚える。
読み上げられた死者の中には、足元に倒れ伏す少女の名前はもちろん、
ここに来てから出会った人物の知り合いの名もあった。
なのに、自らの知人が、桂の名前が呼ばれなかった事に安心を覚えてしまった自分が、
自らが救えなかった少女の名前があったのに、それでも安堵を感じてしまった自分がとても罪深い存在であるように感じたのだ。
「……すまないね」
小さく目の前の少女に謝る。
当たり前のように、彼女からの返答はなかった。
こちらをじっと見上げる尾花に大丈夫だと伝えながら、サクヤは顔を上げた。
本来ならば墓を作ってやらねばならないのだろう。
だが、こうしている間にも桂の身に危機が迫っているかもしれない。
しばしの逡巡。
サクヤは苦渋に満ちた顔で、再び少女の亡骸に謝罪した。
「渚砂……本当にすまないね……」
そして、埋葬できないのならばせめてと、亡骸を綺麗にする。
見開かれた瞼を下ろし、腕を胸元で組ませ……
まるで樹の下で眠っているかのように、少女の冷たい身体を整えた。
- 814 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:35:01 ID:2xE8YRFS
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- 815 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:35:21 ID:og6Kl2BM
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- 816 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:35:48 ID:2xE8YRFS
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- 817 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:36:03 ID:MEKuqW73
- 「待たせたね……行こうか、尾花」
放置されていた刀を回収しながら尾花に声を掛ける。
刀を使わないサクヤ自身にはあまり必要ない物だが、
それでも他の殺し合いに乗った人間に拾われるよりはマシだろう。
そう考えながら、待たせていた子狐の方を見やり……彼がじっと一点を見つめている事に気がついた。
「誰だい!?」
同時に感じる他者の気配。
そんな事にも気付かないほど没頭していた事に反省しながら、サクヤは手にした刀をその気配へと向ける。
……そこには、刀を構えた知人の姿があった。
千羽烏月。
この島における知人の一人であり、千羽党の鬼切り役。
元の世界において、サクヤとは反りが合わなかった少女。
彼女は剣呑さも感じる目付きでサクヤを……正確にはサクヤの手にした刀を見つめていた。
そして、サクヤの側には倒れ伏した少女の亡骸。
「あ……こ、これは違……」
この状態がどういう事を想起させるかに思い至り、慌てて否定する。
が、サクヤの予想を裏切るかのように、烏月は無言のままに刀を納めた。
「……あなたも殺し合いに乗ったようですね」
「違う、あたしはこの子を殺してなんか……」
烏月の言葉を否定しようとして、違和感を覚える。
「烏月。あんた、まさか」
サクヤの言葉を肯定するように頷き、彼女は草を踏みしめながら歩みよってくる。
- 818 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:36:42 ID:UlEDPeMc
-
- 819 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:36:51 ID:2xE8YRFS
-
- 820 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:37:09 ID:MEKuqW73
- 「ええ……おそらくはあなたと同じ理由で、です」
「……あたしと同じく、桂のために参加者を殺し回ってる、って言いたいのかい?」
その言葉に再び頷く少女は、まっすぐにサクヤの目を見つめながら言う。
「サクヤさん、私と手を組みませんか?
目的が同じなら、その方が効率がいいはずです。
……ここには強者が多すぎる。あなたと私なら、それらを退ける事も可能です」
言葉と共に少女は右手を差し出す。
――確かに、一人よりは二人の方が効率はいいだろう。
どのような強者も自分と烏月ほどの実力者が相手であれば手傷を負わせることも出来る。
その上、最終的な目的も同じとなれば、パートナーとして是非とも行動を共にしたいだろう。
殺し合いを肯定した者という、信頼の置ける相手がなかなか見つけられない人間ならばなおさらだ。
- 821 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:38:08 ID:2xE8YRFS
-
- 822 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:38:14 ID:MEKuqW73
- 「……ふざけるんじゃないよ」
ただし、それは前提条件が間違っていなければの話だ。
- 823 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:38:58 ID:2xE8YRFS
-
- 824 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:39:14 ID:457uuG+P
-
- 825 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:39:40 ID:UlEDPeMc
-
- 826 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:40:31 ID:MEKuqW73
- 「ふざけるんじゃないよ、この馬鹿!」
サクヤのその言葉に、烏月は足を止める。
「そんな事をされても、桂は喜ばないよ!
あの子はそんな子じゃない!」
「そんな事ぐらい、わかっているさ……」
そういいながら俯く少女に向けて、サクヤは更に言葉を続ける。
「いいや、あんたはわかっちゃいない。
……あの子は、例え見知らぬ誰かが死のうと心を痛める子だ。
そして、それと同じくらい、誰かが誰かを傷つける事に心を痛める子だよ!」
その言葉に、烏月は答えない。
ただ俯いたまま、サクヤから放たれる言葉を聞き続けるのみ。
「それを……桂のために皆殺しにしよう、だって?
そんなの桂に対する侮辱だ!」
「……そうだね。あなたの言う通りだ……確かに、こんな事をしても桂さんは喜ばない」
烏月の漏らした呟きに、言葉を止める。
それは、苦悶に満ちた小さな言葉だった。
「ああ、そうだ……桂さんのためと言いながら、その実、私は彼女を言い訳に使っていたんだ……」
それを耳にして、サクヤは安堵の溜息を吐く。
「だからこれは、私の自己満足だ」
そして安堵したからこそ、次の瞬間に閃いた白刃に反応する事が出来なかった。
- 827 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:41:28 ID:og6Kl2BM
-
- 828 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:41:51 ID:MEKuqW73
- ◇◇◆◇◇
森林の中を黒い少女が行く。
刀を手に持ち、歩みを止めず、決して振り返る事はなく。
(そうだ、もう私には桂さんに合わせる顔なんて物はない……)
桂を見つけたら守りたいという意志に変わりはない。
だが、彼女は烏月が殺し合いに手を染めている事を知ったら悲しむだろう。
そして、傷つくだろう。深く、深く……だからこそ。
(桂さんの事は頼みましたよ、サクヤさん)
◇◇◆◇◇
「……烏月の大馬鹿野郎」
繁みに寝転がりながら、サクヤは呟く。
峰打ちで強打された肩と、それ以上に心が痛んだ。
案ずるようにこちらを覗き込む尾花を問題ないと手で押さえながら、サクヤは再び小さく呟いた。
「本当に、どいつもこいつも大馬鹿野郎だよ……」
- 829 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:42:22 ID:2xE8YRFS
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- 830 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:42:33 ID:457uuG+P
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- 831 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:42:57 ID:MEKuqW73
- 【E-4 森林内/一日目 朝】
【千羽烏月@アカイイト】
【装備:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-】
【所持品:支給品一式、我 埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン】
【状態:肉体的疲労中、精神的疲労中、身体の節々に打撲跡、背中に重度の打撲、右足に浅い切り傷(応急処置済み)】
【思考・行動】
基本方針:羽藤桂を生還させる為、他の参加者達を皆殺しにする
1:桂以外を全員殺して、最後に自分も自害する
2:殺し合いに積極的な者と接触した場合、同盟を持ちかけてみる
2:桂を発見したら保護したいが……
3:クリス、トルタ、恭介、鈴、理樹は襲わないようにする。但し残り人数が二桁を切った場合、相手から襲ってきた場合、邪魔をされた場合はその限りでは無い。
【備考】
※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています
※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です
※クリス・ヴェルティン、棗鈴、直江理樹の細かい特徴を認識しています
※岡崎朋也、桂言葉、椰子なごみ、来ヶ谷唯湖の外見的特長のみを認識しています
※恭介・トルタが殺し合いに乗っている事を知りません。
※自分以外の殺し合いに乗ってる者と同盟を結ぼうと考えています。
- 832 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:43:08 ID:og6Kl2BM
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- 833 名前:この地獄に居る彼女のために ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:43:58 ID:MEKuqW73
- 【F-4 森林(北東)/1日目 朝】
【浅間サクヤ@アカイイト】
【装備:尾花@アカイイト、今虎徹@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【所持品:支給品一式。『全参加者情報』とかかれたディスク】
【状態:健康、悲しみと怒り】
【思考・行動】
0:烏月の大馬鹿野郎……
1:羽藤桂の発見(単独ならば保護)
2:島にいる参加者の情報収集。及び、お互いの認知
3:首輪を外せる人物の確保
4:脱出経路の確保
5:可能ならばユメイは助ける。葛と鳥月は放置
6:蒼井渚砂から受けた伝言をリトルバスターズに伝える
7:1が済み、3と4が成功したならば、禁止エリアに桂と退避する
8:烏月を止める?
※『参加者情報』と書かれたディスクの閲覧には、PCなど他の媒体が必要です。
※神宮司奏・大十字九郎、源千華留、蘭堂りの、蒼井渚砂と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、【F-7】の駅に戻ってくる予定。
※黒須太一(と名乗った一乃谷愁厳)を危険人物と判断。
※渚砂の遺体が整えられた状態でF-4樹木の根元に安置されています。
【尾花@アカイイト】
【状態:健康、悲しみ】
【思考】
基本方針:葛と桂を捜すため、サクヤと同行する
- 834 名前: ◆aa/58LO8JE :2008/04/22(火) 01:44:51 ID:MEKuqW73
- 投下完了いたしました。
支援ありがとうございます。
指摘等ありましたら、どうぞ。
- 835 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 01:51:09 ID:UlEDPeMc
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- 836 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:03:10 ID:457uuG+P
- 柚原このみにとって、向坂雄二は最後の希望だった。
自分を妹のように可愛がってくれた、お姉ちゃんとの離別。
子供ながらに幼い恋情を抱いた、お兄ちゃんのような男の子との離別。
二つの苦難を乗り越えた先、たった一つだけ残された幼なじみという名の希望。
それが向坂雄二……柚原このみという少女の自我を支える、支えていた、最終兵器。
僅か六時間の機能。
雄二は役割を終え、このみは支えを失った。
崩壊は突然であり当然。
バランスを保てなくなったジェンガは、絶望から来る振動によって瓦解する。
そんな少女の崩れゆく様を見て、西園寺世界は愉快に浸る。
死者を告げる放送では向坂雄二の名こそ呼ばれたものの、伊藤誠の名は呼ばれなかったからだ。
西園寺世界にとって、伊藤誠は人生の中核だった。
愛しい夫の周囲に纏わりつく盛りのついた害虫共、すべていらない。
火照った体に温もりを与えてくれる、生を授けてくれた男さえいれば、全部不要。
それが伊藤誠……西園寺世界という少女に狂気を宿す、魔性の雄。
柚原このみと西園寺世界。
二人が放送で耳にし、情報として脳に刻み込んだのは、ただ二つの結果だけだった。
向坂雄二が死に、伊藤誠がまだ生きている――それだけを知り、二人の行動は変わらない。
柚原このみは絶望し、西園寺世界はその絶望をさらに深く、冥府へと突き落とす。
◇ ◇ ◇
- 837 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:04:11 ID:2xE8YRFS
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- 838 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:04:25 ID:og6Kl2BM
- >>826のヒキに、サクヤさん、まさかのリタイアかよ!?
…と思わず焦ってしまった。
書き手氏の掌の上で踊らされてるなあ。
サクヤさんの最後の一言に、いぶし銀の格好よさが光ってます。
GJ!
- 839 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:04:27 ID:MEKuqW73
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- 840 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:04:38 ID:2xE8YRFS
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- 841 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:04:48 ID:457uuG+P
- 「……ユウくん?」
幼い頃から親しんできた名を呟き、柚原このみは足を止めた。
荒廃した街々の中に佇み、白みを帯びてきた天を仰ぐ。
朝陽はまだ、眩しいというほどのものではなかった。
「……ユウくん?」
子供ながらに抱いていた、死のイメージがある。
死んだ人間の行き着く先は、天国か地獄の二分。
いい人は天国へ、わるい人は地獄へ、そんな漠然とした区分が、このみの中で確立していた。
タカくんやタマお姉ちゃん、ユウくんは天国へ行けたのか――そう考えてみると、
「えっ」
今も続いている放送の意味を、唐突に理解してしまった。
死について考えている自分と、向坂雄二の名が告げられた事実の関連性。
恐慌の中で聞いたこのゲームのルールは、記憶として確かに残っている。
放送で呼ばれた者は既に死者である、という絶対的な記憶を呼び起こして、
「あ……あ……」
このみは気づいた。向坂雄二が死に、そして自分はそれを受け入れたのだと。
「そんな……ユウくん……ユ、くん、がぁ……」
涙腺は途端に決壊し、このみは悲しみを抱いたまま街路のど真ん中へと沈み込んだ。
このみにとって向坂雄二の存在は、河野貴明のそれに比べればずっと軽い。
両名の死亡報告が同時に告げられたならば、このみは意識せず貴明の名ばかりを口ずさんでいただろう。
しかし、貴明はもうずっと前――ほんの六時間前のことだが――に死んでしまっている。
- 842 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:05:02 ID:og6Kl2BM
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- 843 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:05:40 ID:2xE8YRFS
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- 844 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:05:45 ID:457uuG+P
- 眼前で首を爆ぜられ、隣で血飛沫を上げ、傍らで死を迎えた男の子の姿は、今でもよく覚えている。
そのとき自分がなにを思い、なにを感じ、どれほどの絶望を味わったか、それも把握している。
だからこそ、貴明の代わりとして自身の中心に据えたもう一人の幼なじみ――雄二の存在は重い、いや重かった。
「ああ、あ……うあぁ……あ、ぁ…………あ」
せめてもの支えとして用意した代替物も、たったの六時間で役立たずになってしまった。
十数年間連れ添った幼なじみとの離別は悲しいが、今のこのみにとっては、ひとりぼっちになってしまったという現実のほうが辛い。
カレーに毒を盛る者、いきなり包丁で襲い掛かってくる者、そんな人間たちの渦中に、このみはただ一人取り残されてしまった。
助けてくれる人は誰もいない。頼れる人も誰もいない。真の意味でのひとりぼっちが訪れたのだ。
「ぇ、ぐ……やだよ……やだ、やだぁ……あぐっ……そんなのやだよぉ……」
リアルを否定するかのように、このみは冷たい土の上で蹲る。
舗装などされていない路面は埃っぽく、風が吹けばむせ返るほどの砂が舞う。
目元が涙で潤う一方、肌は徐々に乾燥していく。
その、背後。
ひっそりと近づいてくる殺人鬼の存在には気づけず、溺れるように泣き崩れた。
◇ ◇ ◇
- 845 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:06:08 ID:MEKuqW73
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- 846 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:06:36 ID:2xE8YRFS
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- 847 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:07:17 ID:2xE8YRFS
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- 848 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:07:24 ID:457uuG+P
- 間桐桜は死んだ。しかし、棗鈴は生きていた。が、今はどうでもいい。
生き延びた鈴があらぬ噂を流すかもしれないが、それよりも今は。
(こいつを殺すほうが……先決だよ)
血に濡れた包丁を握り締め、西園寺世界は息を殺してこのみに歩み寄る。
時刻は死亡者の通告があった頃、このみが逃走をやめたのは、何者かの死による喪失感が原因だろう。
いい気味、と世界はこのみの不幸を嘲笑った。
(カレーに毒を盛る女……そんな奴のところに誠を置いてきた、罰が当たったんだよ)
ステンレスの刀身がギラリと光り、木製のグリップが汗でほのかに湿る。
足並みはゆっくりと、なるべく音を立てないように、このみに気づかれないよう忍び寄る。
一度刺傷行為に及んでしまった相手を、取り逃がすわけにはいかない。
この先の安全を確保するため、口封じとして殺す必要があった。
第三者が介入してくるよりも早く、この放送の時期をチャンスに始末しなければならない。
(あの子を始末したら、棗さんも殺しに行かなきゃ……ひょっとしたら、悪い噂を流されるかもしれない)
清浦刹那の偽名がいつまで機能するかはわからない。
万全を期すには、自身を危険人物だと『思っているかもしれない』人間、すべて始末するのが一番だ。
そのための武器も手に入れた。このみも鈴も、野菜みたいに切り刻んでやろう。
(みんな、みんな……私と、誠と、この子の未来を脅かす奴はみんな……)
世界は焦っていた。
放送では誠の名前こそ呼ばれなかったものの、確かに死者が出ている……その、ゲームとしては当たり前だが、日常としてはありえない現実に。
世界が殺した桜を抜いても八名。単純に考えて、八人の殺人鬼がこの舞台にいる。
その中の誰かが誠を狙うかもしれないし、世界自身に襲いかかって来るかもしれない。
考えれば考えるほど不安は募り、焦燥は増す。
この焦りを拭うには、感触が必要だった。
- 849 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:08:12 ID:MEKuqW73
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- 850 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:08:15 ID:2xE8YRFS
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- 851 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:08:29 ID:457uuG+P
- 「ひぐっ…………あ?」
私は安全だ――という、感触が。
◇ ◇ ◇
肌に突き刺さる怖気の正体が殺気だと気づき、このみは後ろを振り向いた。
そこには、放送の前まで懸命に逃げ続けてきた追跡者の姿があった。
(そんな……せっかく逃げてきたのにっ)
悲しみを凌駕する絶望が、胸の奥深くに押し寄せてくる。
清浦刹那。そう名乗った少女はこのみの血がついた包丁を握り締め、強張った表情で自分を見つめている。
その様子を一目しただけで、ああまだ殺す気なんだ、と直感できた。
(やだぁ……死にたくないよ、まだ、まだ死にたくない……!)
濡れた頬を拭うこともできず、このみは震える足で立ち上がった。
だが足腰はしっかり立たず、すぐに躓いてしまう。
膝を襲う激痛に、次いで体を庇おうと突き出た手の平が、硬い土の感触にじくりとする。
地面に鼻を打ちつけることにならなかったが、痛みのせいで余計に足が震えてしまった。
「うくっ、うぅ」
このみは泣きたい衝動を抑え、懸命に足を前に押し出す。
刹那はどれくらい近づいて来ているのだろうか。
確認したかったが、振り向いた瞬間に襲われたら嫌だ。
恐怖と不安の板ばさみに遭いながら、このみは逃げる。
しかし、
- 852 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:08:43 ID:og6Kl2BM
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- 853 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:09:04 ID:2xE8YRFS
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- 854 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:09:09 ID:MEKuqW73
-
- 855 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:09:19 ID:457uuG+P
- 「ねぇ、待ってよ」
声が届く。
このみの小柄な背中に浴びせられる、刹那の穏やかな声だった。
だがこのみは知っている。この声は質こそ穏やかだが、本当はもっと怖いものであると。
「ねぇ、待ってってば。さっきのことは謝るから、足を止めて。私の話を聞いて」
優しい声も徹底的に無視する。
止まったり振り返ったりすれば最後、刹那はきっと走り出す。
その証拠に、ローファーが地面を擦る音はせかせかと、忙しなく響き続けている。
「待ってよ、ねぇ。どうして待ってくれないの。ねぇ、待ちなさいよ。待ちなさいったら」
カッカッ、と刹那の足音が迫る。
このみは千鳥足で逃げ続けるが、速度はいっこうに速まらない。
対する刹那の足並みは軽快で、もうすぐ背後に迫っているだろうことを予感させた。
「待ちなさい。待ちなさいよ。待ちなさいってば。待て。待てったら。どうして待てないの?
待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て。待て待て待て待て待て待て待て待て――待て!」
もう駄目だ、追いつかれる。
雄々しくなる語気を聞き続け、このみはついに恐怖に敗れた。
納まりが聞かず、後ろを振り向いてしまう。
そこには案の定、このみに向かって包丁を振りかぶる、鬼≠ェいた。
◇ ◇ ◇
- 856 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:09:27 ID:2xE8YRFS
-
- 857 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:09:31 ID:og6Kl2BM
-
- 858 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:10:09 ID:2xE8YRFS
-
- 859 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:10:33 ID:MEKuqW73
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- 860 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:10:45 ID:457uuG+P
- 鏡がない。だから自分が今どんなに醜い形相をしているのか、世界は知らなかった。
人が人を殺す――その人間離れした狂気は、日本ではしばしば鬼≠ノ例えられる。
「ひっ……!」
このみの硬直した表情を見ても、彼女がなにを見たのかという察しはつかない。
世界の頭の中を満たす衝動、殺意が、ただ行動だけを促した。
包丁を逆手に持ち、振り上げろ。
そして下ろせ、と。
「――ふんっ!」
力を込めるあまり、荒い息が声となって漏れた。
持ち上げた包丁を、槌のように振り下ろす。
目の前で体を強張らせるこのみは避けようともせず、反射的に右手を突き出した。
「あうっ!?」
小さな手の平に、包丁の先端が触れた。
鋭利に尖れた切っ先は、少女特有の柔らかな肌に裂け目を入れる。
ぷっ、と弾けた血は微量。しかし痛みとしては極上の刺激が、このみを喘がせた。
またこの包丁は所詮は調理器具であり、人体を貫くには強度が不足している。
突き刺さった刃は指節骨に阻まれ、貫通には至らない。
「ふんっ! ふんっ!」
世界はそれがわかっていないのか、このみの手の平に食い込んだままの包丁をぐいぐいと動かした。
強引にやっても骨は貫けず、手の平の傷を広げるばかり。世界の意図とは違うが、このみへの負担は増す。
言葉になっていない絶叫が木霊し、このみの頬は激痛から来る滝に呑まれた。
そして、痛みから逃れるためにこのみが取った行動は、
- 861 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:10:56 ID:og6Kl2BM
-
- 862 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:11:08 ID:2xE8YRFS
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- 863 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:11:52 ID:2xE8YRFS
-
- 864 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:11:56 ID:457uuG+P
- 「うああああああああ!!」
「べっ!?」
殴る、だった。
いや、満足に拳も握れていなかったその殴打は、叩くと表現したほうが適切かもしれない。
このみは右手から押し寄せてくる激痛を取り除くため、空いている左手で世界の顔面を叩いたのだ。
「あ、ぐ……」
まさか来るとは思っていなかったの反撃に不意を突かれた世界は、包丁から手を離し一歩後退する。
叩かれた箇所を手で押さえてみると、鼻から血が出ていた。
だくだくと流れる健康的な血は、世界の持つ焦燥感を加速させる。
同時に、なんで自分がこんな痛い思いをしなければならないんだ、という不条理な怒りも覚えた。
「こ、の……このぉ!」
キッ、とこのみを睨みつける世界。
このみは右手に突き刺さった包丁を力の限り引き抜き、明後日の方向に放り投げた。
傷口の辺りを左手で押さえながら、ギュッとその場に縮こまる。
「ぐっ、ううううううう……!!」
転んだ子供が痛みに堪えるように、声を殺して、体を小さく凝縮させる。
常時なら心配そうに声をかけただろう光景が、今はただただ忌々しく映る。
(人の顔を鼻血塗れにしてぇ……!)
自分が包丁で刺したことは棚に上げ、世界はこのみに対し怒りの情念を燃やす。
その怒りが、世界を突き動かす原動力となった。
- 865 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:12:01 ID:MEKuqW73
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- 866 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:12:28 ID:MEKuqW73
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- 867 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:12:50 ID:og6Kl2BM
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- 868 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:13:05 ID:2xE8YRFS
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- 869 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:13:21 ID:457uuG+P
- 放送は長く、まだ続いている。
双方共に武器はなし。
力の差も均衡。
対立するのは怯えと怒り。
攻め手は世界、受け手はこのみ。
しかしこの関係は絶対ではない。
数秒後には、立ち位置が変わっているかもしれない。
結果はもう間もなく訪れる。
結果を出すための戦いは今、始まる。
◇ ◇ ◇
怒り心頭の世界が、怯えるこのみのほうに向かってずんずんと歩を進める。
このみは世界の接近にビクッと体を跳ね上がらせ、なんとか対応するべく立ち上がった。
勢いはないが、圧力を伴った歩み。ビクビクするこのみは逃げられず、世界の到来を待つ。
(殺す殺す殺す殺す殺す――)/(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――)
攻める者と攻められる者の関係は獅子と小鹿。世界が強者でこのみが弱者だった。
いざ接触が始まるまでは、誰の目から見てもそのように思えた。が、しかし。
このみは小鹿のように、一方的に狩られる立場を受容したりはしなかった。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――!)/(なっ――!?)
目前まで近づいてきた世界に、このみは怯えた表情のまま立ち向かった。
明確に効果的な対策を成せたわけではない。できたのは至ってシンプルな肉体動作。
目を固く瞑り、可愛らしいファイティングポーズを構えての、体当たり。
- 870 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:13:48 ID:2xE8YRFS
-
- 871 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:14:04 ID:MEKuqW73
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- 872 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:14:31 ID:2xE8YRFS
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- 873 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:15:13 ID:457uuG+P
- (ぶふっ!? こ、こいつ――!)/(死にたくない……死にたくないよぉ――!)
転ぶことも厭わない、全体重を乗せたこのみの体当たりが、世界の身を地面に沈めた。
衝撃こそ軽かったが不意であったため、世界はこのみ共々やや大袈裟に転んでしまう。
その際、勢いで世界の履いていたローファーがすっ飛び、打ち付けた背中に激痛が走った。
(死にたくない! わたし、まだ死にたくない!)/(いっ……つぅぅぅ、こ、の!)
世界は背中の痛みを我慢し、誘発された怒気を攻撃行為に転化する。
のしかかっているこのみの髪を掴み、毛根ごと引っこ抜かんほどの力で、思いっきり引っ張った。
小さく、ぶちぶちぶちぃぃ、という音が奏でられ、現に何本か何十本か、このみの髪の毛が引っこ抜かれた。
(この! この! このこのこのこのぉ!!)/(いやだぁあ、痛い、いたいぃぃ……!)
頭皮ごと剥がされるのではないかと思えるほど、世界の込めた力は容赦がなかった。
だが実際のところ、女性の腕力で髪の毛を抜くことはそう容易くなく、かといって世界も手を離しはしない。
痛みだけが続き、耐え切れなくなったこのみは、咄嗟に手を伸ばした。世界の顔面へと。
(痛いのいやぁぁぁ……お願いだからやめてぇ!)/(い――っ!?)
特に狙いがあったわけでもなく、ただ抵抗の手段として突き出したこのみの小さな手の平は、世界の顔面を覆う。
震える親指が意図せず世界の鼻の穴へと突き刺さり、血に汚れる。鼻血の勢いもまた、当然のごとく強まった。
親指の先端から伝わる、ぬるぬるとした感触とごわごわとした感触。鼻血と鼻毛による些細な不快感である。
(だだっ、痛い! これ、痛いって!!)/(わっ、わわっ、わわわっ!?)
鼻の穴が広げられる感覚に襲われ、世界は悲鳴を上げる。このみは動揺こそすれど、指を抜こうとしない。
世界はこのみの髪を手放し、顔面を掌握している細い腕を、両手で掴みなおす。
どうにか払い除けようとするのだが、このみも抗い、力を込めた分余計に鼻が広げられた。
(やだ、やだ、手、掴まないで、怖い、怖い!)/(痛いぃぃぃ! 痛い、痛いよこれえぇー!!)
- 874 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:15:36 ID:2xE8YRFS
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- 875 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:15:56 ID:MEKuqW73
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- 876 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:16:36 ID:og6Kl2BM
-
- 877 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:16:58 ID:457uuG+P
- 血はとめどなく溢れ出る。試行錯誤する内にこのみの親指は世界の鼻から抜かれたが、その跡は真っ赤に腫れ上がっていた。
確認は出来ないが、きっと豚鼻のように醜く変形してしまっている。思うと、世界の瞳が潤み始めた。
憎しみが新たな活力を生み、世界は仰向けの体を大きく捻る。乗っていたこのみは、横に落とされた。
(ぐ、うぅぅ〜……許せない、こんなの、許せやしない!)/(ひゃああうぅ!? ま、また……!?)
このみの体重という負荷から逃れた世界が、逆襲を果たさんと起き上がる。その動作は、鼻の痛みのせいか緩やかだ。
幽鬼にも思える不穏な蠢きを、しかしこのみはラストチャンスだと解釈し、勇敢にも飛び掛った。
スカートから覗く世界の生足、激しい運動のせいかソックスがずれ落ちた箇所を狙い、しがみつく。
(やだよ! もう刺されたくないよ! こうしてれば……!)/(ま、また!? ぐ、あっ、ああ!?)
足を取られた世界は途端にバランスを崩し、そのまま前、しがみついているこのみの背中へと倒れ込む。
世界と地面の間でサンドイッチにされたこのみはか細く悲鳴を上げ、だが腕だけは絡ませたまま離さない。
結果、世界は完全に倒れ込むことができず、膝立ちの姿勢で這い蹲るこのみを見下ろすこととなる。
(しつこいなぁ……! こいつ、思い知らせてやる!)/(う、うううう…………)
引き剥がそうとするが、この姿勢では上手く力が入らない。どうしてやろうかと思案する世界の目に、それは入り込んできた。
このみのちんまりとした臀部。スカートで覆われた可愛らしいそこを、攻めるには絶好の弱所だと悟る。
思い立った後、即行動。スカートを捲り、露出したショーツを乱暴に掴み、そのままぐいっと引っ張った。
(えぇ!? い、いだ、いだだだだだだだ!?)/(鼻の穴、やられたお返し!)
ショーツが肛門にきつく食い込み、このみはそれまでとは異なる種の絶叫を上げた。
普段はまず攻められることのない部分を刺激され、体は電気ショックを浴びたかのように弛緩する。
世界の足に絡まりついていた腕が解かれるのは必然であり、脱力したこのみに僅かな停止の間を与える。
(やっと離した! こいつ……もう許さない!)/(ううう……痛いい……あ!)
- 878 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:17:38 ID:og6Kl2BM
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- 879 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:17:41 ID:MEKuqW73
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- 880 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:18:08 ID:2xE8YRFS
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- 881 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:18:28 ID:457uuG+P
- 強烈すぎる痛みを和らげるためにおしりを押さえようとしたこのみだったが、寸前で察知してしまう。
邪魔な束縛から逃れた世界が、未だ地面にうつ伏せになるこのみを睥睨し、そして殺意を再燃させている事実を。
このみの頭は世界の足元。世界の足はこのみの頭の上。僅かに見上げた視線が、このみに危機を予感させた。
(やだ、やだ――)/(もう許さない――このまま! 思いっきり! 踏み潰してやるッ!!)
世界は膝を持ち上げ、そのまま、アルミ缶をぺしゃんこにするつもりで、このみの頭を踏みつけた。
咄嗟に持ち上げた利き足ではあったが、あいにくそれは先ほどローファーが脱げたほうの足。
このみの後頭部に直接的ダメージは少なく、しかし衝撃で路面に打ちつけられた顔が、熱を帯びて痛み出す。
(違う! そうじゃない! そうじゃなくて、この、砕けろ!)/(いがっ!? がが、いいたああ)
二度、三度、小気味よくこのみの頭部をスタンピングし続ける世界。そのたびに、このみの嗚咽が漏れた。
世界の脳内で巻き起こるイメージは、レスラーが握りつぶすリンゴ、買い物籠から零れたトマト、夏のスイカ割り。
あんな風になったらいいな、と思い描きながら、ソックスのみの素足で踏みつけ続ける。
(いががががい、もごごごご、もぼ、やぁー!!)/(潰れろ! 砕けろ! 粉々に――え!?)
それまで世界の猛攻を堪え続けていたこのみが、急に身を捩り、横合いに転がって狙いから逸れた。
勢いをつけた世界の足はタイミングを外され、砂利の地面を思い切り踏みつけてしまう。
軽い痛みが足の裏を襲い、靴を履いていないことを今さらながらに思い出し、咄嗟に靴を探し出す。
(靴! 私の靴どこ!? 私の……靴どこなのよぉー!)/(けほっ、ごほっ、うあ……あ)
靴を探している場合などではない。世界が気づいたのは、このみがふらふらの足で立ち上がった後である。
脳髄をシェイクされた後遺症か、視点は定まっておらず、顔は真っ赤。世界と同様に鼻血も出ていた。
無様な姿に笑みを零す傍ら、また性懲りもなくと憤怒の念も燃やし、こうなったらとことんとやってやる、とも。
(人間って、こんなに丈夫なんだ。はは……隊長、まだやれるであります)/(今度こそ、殺してやるッ!)
- 882 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:19:31 ID:MEKuqW73
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- 883 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:20:08 ID:457uuG+P
- 世界がにじり寄る。このみはそれを待ち構えるのではなく、立ち向かう形で、自身も一歩前に出た。
女の子だから非力だ。両者共に自分のスペックを理解していたからこそ、突き出したのは諸手である。
殴ったり蹴ったりは得意ではない。引っ張ったり押したりするほうがやりやすい。二人とも、そう本能で判断していた。
(なんなのこの子……さっさと、殺されればいいのに……!)/(死にたくないから……うん)
世界が先に手を出し、このみがそれを払い除ける。このみがもう片方の手を出し、世界がそれを払い除ける。
柔道のような掴み合いが数秒間続き、均衡はすぐに崩れた。このみが別の戦法に躍り出たのである。
手を使うことを放棄し、後先を考えず、結果的に生き残れればいいやと捉え、頭を突き出して前方にジャンプした。
(えーい、それー)/(――!? ちょ、あなた――がふっ!? ご、ぉ……)
不意の突進に虚を突かれた世界は、防御も回避も取ることができず、それを直にくらってしまった。
よりにもよって――おなかに。世界の胎内、子宮に眠っているであろう、生涯最高のクリスマスプレゼントに、衝撃が。
愛しの彼、違う、夫。伊藤誠が授けてくれた愛の結晶に、入ってはならない亀裂が入る。
(おなか、苦しいよ。え? これ、赤ちゃん、大丈夫?)/(攻撃成功であります隊長ー!)
痛みからではなく恐れから、世界は顔を真っ青にして思い出す。医師から伝えられた、妊娠中の諸注意を。
喫煙や飲酒は厳禁。ストレスや薬の投与、もちろん風疹などのウイルスも悪影響を及ぼす。
腹部に打撃を与えられるなど、もってのほか。世界の脳裏に、『流産』の二文字が浮かぶ。
(敵は怯んでいるであります。これは好機であります!)/(やだ……ちょっと、待ってよ。これって……)
おなかの中に眠る胎児。誠との絆の証である赤ちゃんのことを思えば思うほど、世界は動けなくなった。
ガタガタと震える両腕で腹部を覆いつつ、このみがおなかを狙ってこないことを祈るばかりだった。
そしてこのみが動く。小さな体を中腰の姿勢に保ちながら、世界に近づき、そして跳ねた。
(せーの、とつげきー!)/(うあ……ダメ、や、あ……ふがっ!?)
- 884 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:20:38 ID:og6Kl2BM
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- 885 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:20:55 ID:2xE8YRFS
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- 886 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:21:17 ID:MEKuqW73
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- 887 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:21:57 ID:457uuG+P
- このみは手の平を前面に突き出して、世界の顔に勢いよく押し当てる。パチンッ、と軽い打撃音が鳴った。
力士の張り手にも似た、このみなりの拙い攻撃だったが、幾度となく攻められた鼻はもう感覚を失いつつある。
だが世界にとっては幸いだ。もっとも攻められては困る腹部ではなく、顔を攻めてくれたのだから。
(ふが、ふが、ふが、ふがふが、ふが)/(そーれ! それそれそれー!)
若干の安堵を交えた顔が、世界の母性の証とも取れた。それでもやはり顔は痛む。何度も何度もぶたれては当たり前だ。
ただ手の平を打ちつけるだけでは飽きたのか、このみは両手で世界の顔全面を覆い始め、そのまま押し倒す。
再びこのみが世界の上に跨る体勢。小さいとはいえ、二つ分の手は顔の面積を優に覆いつくし、呼吸を困難にさせる。
(隊長! 必殺のチャンスであります〜)/(ふが〜……ふがふがふがふがふがふが)
世界の顔に押し当てた手の平にぎゅ〜っと力を凝縮させ、ぎゅっぎゅっぎゅと圧迫を開始する。
ライフセーバーが人工呼吸を行うかのごとく、世界の顔面を、体重を乗せた圧力で追いやるこのみ。
鼻からはまだ血が垂れていたが、不思議なことに、涙は止まっていた。これは二人ともである。
(ふが…………誠ぉ…………激しい、よぉ…………)/(あはは〜、ダメだよゲンジ丸〜、暴れちゃ、めっ!)
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅう〜。
傍から見ればなにをしているのか、理解に苦しむ光景が延々と続く。
少女が少女の上に跨り、少女が少女の顔をひたすらに押し、聞こえてくる声は……
「あはっ、あはっ、あはっ、あはっ、あはっ、あはっ」/「おぐっ、おぐっ、おぐっ、おぐっ、おぐっ、おぐっ」
……奇声以外のなにものでもなかった。
◇ ◇ ◇
- 888 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:22:53 ID:og6Kl2BM
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- 889 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:22:55 ID:MEKuqW73
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- 890 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:23:31 ID:2xE8YRFS
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- 891 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:23:46 ID:457uuG+P
- 言峰綺礼の長々とした演説もさすがに終了し、多くの参加者に悲痛と安堵が齎されているであろう頃。
肩や頭、鼻やおしりの痛みが和らいできたことで自我を取り戻した柚原このみは――混乱のどつぼに嵌った。
「えっ……なっ、うそ……そんな、そんな!?」
気づいたら、清浦刹那という名の少女の上にいた。
気づいたら、刹那の顔面に両手を押しつけ、腕が疲れている自分がいた。
気づいたら、ぐったりした表情で目を瞑る刹那がいた。
(なにこれ……知らない、このみはこんなの知らないよ!?)
なんでこんなことになっているのか。寸前の記憶を辿ろうとするが、困ったことにまったく思い出せない。
成績は低いが決して記憶力が悪いわけじゃないのに、ちょっと前のことぐらい簡単に思い出せるはずなのに。
このみは地べたに尻餅をつき、まったく動かなくなった刹那を見つめ、震える。
(ひょっとして、このまま起き上がってこないんじゃ……やだ、そんなの、ヤダァー!)
耐え切れなくなったこのみは、刹那から、そして現実からも目を背ける。
ぐわんぐわんと体を揺らしながら立ち上がり、覚束ない足取りでどこぞへと逃げ出した。
動かなくなった清浦刹那を置いて、そこで起こった一連の事実も置き去りにして、逃避を開始する。
「ヤダ……ヤダァー!」
指針はない。目的地もない。希望もない。頼れる人もいない。心の支えがない。このみのエネルギー源がない。
ないないづくしの、ただ落ちていくだけの逃走劇が開幕、あるいは再開した。
生きようという必死さの影で芽生えた人間性、それを否定したこのみには、まだ気づけない。
これが、新世界への扉である事実に――。
- 892 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:24:36 ID:og6Kl2BM
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- 893 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:24:51 ID:MEKuqW73
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- 894 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:24:53 ID:457uuG+P
- 【B-3 モスク周辺/朝】
【柚原このみ@To Heart2】
【装:防弾チョッキ】
【所持品:無し】
【状態:左肩上部と二の腕に軽い切り傷、右のお下げのリボンが無い上に不ぞろいに切り裂かれている、
右手の平に刺傷、顔面に擦り傷、後頭部に痣、頭皮と股間に痛み(じきに治まります)、
顔中鼻血塗れ、重度の混乱症状、人間不信、精神錯乱、疲労(中)
【思考・行動】
0:ヤダ……ヤダァー!
2:とにかくこの場から離れる。
3:ファルの命令通りに動くかどうかは不明。
4:ドライさんにもう一度会いたい。
【備考】
※制服は土埃と血で汚れています。
※世界の名を“清浦刹那”と認識しています。
※ファルから解毒剤を貰わなければ、二十四時間後に遅効性の毒で死ぬと思い込んでいます(実際には毒など飲まされていません)
※ファルがこのみに命令した内容は以下の通りです
1.三人以上の参加者の殺害(証拠となる首輪も手に入れる事)
2.ファルに脅されたという事を誰にも漏らさない
3.十八時間後に教会へ来る事
※第一回放送内容は、向坂雄二の名前が呼ばれたこと以外ほとんど覚えていません。
※自分が清浦刹那(世界)をどうしてしまったのか、混乱のせいで覚えていません。
◇ ◇ ◇
- 895 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:25:20 ID:2xE8YRFS
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- 896 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:25:31 ID:MEKuqW73
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- 897 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:26:01 ID:2xE8YRFS
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- 898 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:26:05 ID:457uuG+P
- 西園寺世界は、三途の川を目前にして生還を果たした。
(……あ、れ……? わた、し……生きて、る?)
二度と覚醒することはなかったかもしれない。しかし彼女は、このみの叫び声をきっかけに身を起こす。
ゆらりゆらり、と海面のように揺れる視界の端で、薄桃色のセーラー服を着た少女が去っていくのを見た。
ああ、もう危機は去ったんだ。よかったよかった……と、再び眠りに落ちようとするが、
(よく……ない! ぜんぜん、よくないよ……!)
体を崩し落とす寸前で、大事なことに気づいた。危機は去ったが――まだ安心は獲得していない、と。
(赤ちゃん……私の、私の赤ちゃんは!?)
地べたの上に正座し、丁寧におなかの上を摩る。ゆっくりと、やさしく撫で、胎児の反応を窺う。
この子は誠との愛の結晶だ。クリスマスの夜に授かった、大事な大事なプレゼント。
壊してはならない、世界と誠の将来を委ねる宝物なのに……なのに、
「あ、ああ……」
目尻に涙が浮かび、声に嗚咽が混じる。妊婦だからこそわかる胎内の感覚が、世界に非情を齎した。
「聞こえない……私と誠の赤ちゃんの声……聞こえない、聞こえないよぉぉ……」
おなかの中に眠る赤ちゃんの健やかな寝息、時折ノックする無邪気さ、なにもかもが奪われていた。
まだ膨らんですらいないおなかを懸命に摩ってみるが、それでもやっぱり、反応はない。
「返事してよぉ……お願い、お願いだから……ねぇ、お母さんの一生のお願いだからぁぁ……」
泣きじゃくりながら、まだ声帯も備えていない胎児に懇願する。
当たり前だが反応はなく、世界は女性ゆえの、母だからこその悲しみに暮れた。
- 899 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:26:09 ID:og6Kl2BM
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- 900 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:26:48 ID:2xE8YRFS
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- 901 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:26:55 ID:MEKuqW73
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- 902 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:27:13 ID:2xE8YRFS
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- 903 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:27:15 ID:457uuG+P
- 「えぐっ、いぐっ、あ、っぐ、うっ、っ……がはぁ、あぁ……うわあぁぁ……」
流産――たまにテレビでやるドキュメンタリー番組でしか起こらない現象だと思っていた。
それがこんなにも身近に、こんなにもあっさりと、我が身に降りかかるなんて、思っても見なかった。
悲痛の波は胸を押し流し、活力を奪い去り、心を沈没させた。
もう夢も希望も未来もない。誠との愛の証も失った。
愛情の架け橋が、脆くも崩れ去る――だが。
「あっ……」
世界は気づいてしまった。
誠と世界を繋ぐ愛情の架け橋は落ちた――けれど、もう一方の橋がまだ残されていることに。
「ウィンフィールド、岡崎朋也、リセなんとか、蒼井渚砂、対馬レオ」
つい先ほど行われた第一回放送。その中で世界が重視した、死者の名前。
記憶を丁寧に手繰り寄せ、反芻する。口ずさむ中、あの名がなかったことを確認するように。
「小牧愛佳、向坂雄二、間桐桜、あと一人いたような奇がするけど忘れた。でも」
――呼ばれていない。あの人はまだ、呼ばれていない。まだ生きてるんだ。
しっかりと確認し、心に刻みつける。大きく頷いて、世界は勢いよく立ち上がった。
「――桂言葉。桂さんはまだ、生きてる」
桂言葉。
それは、清浦刹那と同じく世界の親友たりえた少女の名。
互いにいがみ合うこともままあったが、あの聖夜の日――掛け替えのない親友になれた女の子。
世界と同じく、誠から、子を授けられた母。
「桂さんの子供は……まだ生きてる」
- 904 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:28:15 ID:MEKuqW73
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- 905 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:28:27 ID:457uuG+P
- 子供。言葉の子供。誠の子供。言葉と誠の子供。言葉と誠が創った愛の結晶。未来は――幸せな家庭?
「ううん、そんなの許されないよ。だって、私がこんな目に遭ってるのに。桂さんだけ不公平だもん。ね?」
涙は途絶えた。枯れたわけではなく、単純に悲しくなくなったのだ。
思いついた奇策を実行に移せば、自分にはまだ未来が残されている。世界は気づいたのだから。
「そうだよ。桂さんの子供。ううん、違う。誠の子供だよ。誠の子供。私が貰ったのと、同じ」
冷静に考えれば、妊娠発覚から間もない身の上。胎児が反応を返すはずなどない。
世界は我が子を失ったかもしれないという喪失のショックから、徐々に思考回路を破綻させていった。
その末路が、とんでもない恩恵を授けた。世界を薔薇色に変える、天才的なひらめきを。
「ひょっとしたら、『桂さんの中にいるのが、私と誠の本当の子供』かもしれない」
狂っている言動、嬉々と語る。
「それで、『私の中にいたのが、桂さんと誠の子供』だったんだよ。うん、きっとそう」
違和感などまるで覚えず、くるくると踊る。
「だっておかしいもん。私と誠は結ばれたんだもん。二人の愛の結晶が、そんな簡単に壊れるわけないよ」
辺りに転がっていたローファーを拾い、履き直す。
腹部を裂き、中を確認し、×××すための道具も拾い、デイパックにしまい込む。
「『取り変えよう』。ううん、『取り戻そう』。私と誠の赤ちゃん――桂さんの中から」
西園寺世界――彼女は、自身のセカイが既に崩壊していることに気づけない。
- 906 名前:血も涙もないセカイ ◆LxH6hCs9JU :2008/04/22(火) 02:29:15 ID:457uuG+P
- 【B-3 モスク周辺/朝】
【西園寺世界@School Days】
【装備】:包丁、時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式、このみのデイパック
【状態】:妊娠中(流産の可能性アリ)、疲労(大)、顔面に痣、顔中鼻血塗れ、
精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)
【思考・行動】
基本:桂言葉から赤ちゃんを取り戻す。元の場所に帰還して子供を産む。
1:『桂言葉の中を確かめる』、そして『桂言葉の中身を取り戻す』。
【備考】
※参戦時期は『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
※このみから、このみの知り合い(雄二、ドライ)とファルについて聞きました。
※第一回放送内容については、死者の名前くらいしか覚えていません。
- 907 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:30:34 ID:2xE8YRFS
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- 908 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:30:58 ID:MEKuqW73
-
- 909 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:33:50 ID:MEKuqW73
- GJです!
何と言う女の戦いww
そして、精神崩壊した世界が怖い。
が、それは微妙に死亡フラグな気きもするぞwww
このみは無事で何よりw
- 910 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 02:38:48 ID:og6Kl2BM
- 最初の襲撃に手に汗握り、中盤の鼻フックwwwをはじめとした女の戦いに何故か頬を緩め、
そして最後の世界に突き落とされ…見事に感情をコントロールされてしまいました。
しかしスクイズの二人、参戦時期がどうあれ互いの血を見なければ治まらない運命なのか…。
- 911 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:11:52 ID:457uuG+P
- まとめて感想投下乙失礼〜
>CK氏
ちょw刀子先輩引っ込むの早いよww
二人で一人という一乃谷兄妹だからこその設定を活かした上手い一人芝居(違
現トップマーダーの愁厳は決意も新たに、今後のスコアも期待……かな?
>AZ氏
ここだけ世界観がまんまクロスチャンネル。
寡黙な曜子の心理描写を、地の文でテンポよく表現した手腕は見事。
彼女の太一への心情はぜひ本編と照らし合わせてみた……ってそっちー!? 逃げてー、四人組逃げてー!w
>Uc氏
まさかの大量虐殺もしくは視点切り替えと同時に殺傷リレーかと思ったがそんなことはなかったんだぜ!
とはいえ終わってみれば二名脱落。しかもスバルはレオと同じく1stの顛末を辿るような死に様でした。ああ無情。
スバルと葛は舞HiME勢の心に大変なものを残していきました、にならないか先が気になる展開ですw
>WA氏
ティトゥスが仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか? ニアはい……まさかの展開w
執事の保護を失った直後、その宿敵と行動を共にすることになるとはせっちゃんも忙しない。
しかしウィンフィールドの前話死亡を受けて、因縁を上手く活用した上でこう繋ぐとは。ナイスリレーです。
>aa氏
サクヤさんは相変わらず男前……w これで真田アサミボイスというんだから信じられないw
桂を廻る同作品キャラの、マーダーと対主催だからこその口論。上手い因縁づけだぁ。
その桂も仮投下のほうで大変なことになっているし、葛は離脱したりで、アカイイト勢も波乱かな……?
- 912 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:25:52 ID:ALRfdC4v
- 杉浦碧が立ち去ってから数十分後、山辺美希は旅館を出る準備を始めていた。
あれは駄目だ。少し前に捨てた対馬レオに近い部類の人間はいらない。
下手なものを引き寄せてくる前に、ここで切り捨てた方がいいだろう。
と言っても、有効利用できるうちはきっちり働かせたい。
離れ離れになっても、美希の為に働かせる方法は無いかと、旅館を見回す。
頭に指を当て暫しの間唸り続けていたが、ふと何かに納得したように両手を叩く。
旅館のロビーから外に出て、耳を澄まして誰もいないことを確かめる。
風一つ吹かない事を確認すると、美希は周囲の置物を次々に床へ叩き付け始めた。
いい仕事していそうな壺を、旅館の窓ガラスに投げつけ。
名匠が残したであろう掛け軸に、容赦なく切り込みを残し。
綺麗に手入れされていた絨毯を、泥水で湿らせていく。
綺麗だった旅館のロビーは、数分後には地震でも起きたかのように崩壊していた。
一仕事終えた美希は、額を手の甲で拭いながら爽やかな笑みを浮べる。
美希の狙いは「旅館に襲撃者が現れた」と言うシチュエーションだ。
戻ってきた碧に迂闊な事をしたと戒めさせると同時に、敵の存在を匂わせる事。
またもう一つ。碧の正義感ならば、美希を探して島中を駆けずり回るはず。
そうすれば、いつかは誰かと接触し、場合によっては碧は殺し合いに巻き込まれるだろう。
人間など、死を迫られれば刃を構えるものだ。自分の命は惜しいもの。
仮に碧がそこで朽ち果てても、一人ぐらいとは刺し違えるかもしれない。
全てが上手くいくとは考えていないが、使い捨てるよりマシだ。
身体の呼吸が整ったのを確認すると、美希は用心しながら業務員用出口へと回った。
ここで碧と鉢合わせしては、せっかくの仕掛けが台無しになる上、変な目で見られかねない。
案内板の指示通り業務員用出口まで辿り着くと、ゆっくりとドアを開けていく。
外に気配は無い。出て行くならば今しかないだろう。
美希は旅館から慌てる事無く脱出すると、躊躇う事無くある場所へと走る。
辿り着いた先は駐輪場。あるのは、旅館が客用に貸し出しているマウンテンバイクが数台。
- 913 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:26:16 ID:457uuG+P
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- 914 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:26:32 ID:2xE8YRFS
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- 915 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:26:34 ID:ALRfdC4v
- 先程露天風呂に向かう途中、ちらりと見えたのを覚えていたのだ。
幸い鍵は掛かっておらず、すんなりサドルに腰を下ろす事が出来た。
ゆっくりとペダルを漕ぎ出す。顔をあげる度に当たる風がくすぐったい。
目指すは中心街。当初目指していた北だ。
◇◇◇
電車に揺られる中、ユメイの瞳は惚けた様子で過ぎ去っていく景色を流し続けていく。
この殺し合いの場に降ろされてから暫く、こんな時間など何処にも無かった。
怒涛の様に過ぎていった六時間。自分は一体何をしていたのだろうか。
足元を見る。床に転がっているのは、仮面を被った巨漢と裸の男。
気絶する前は、仮面の男の方に追いかけられていたのは覚えている。
目を閉じると聞こえてくる「うぅまうぅー」と言う呻き声が、ユメイの恐怖心を煽る。
次に、正気に戻った瞬間目に飛び込んできた。蛇を持つ裸の男。
同じく目を閉じればその形状がしっかり浮んでくるが、全力で想像をかき消す。
ともかく、今ここにいるのは自分を含め三人と言う訳だ。
念のために車両の一つ一つを調べて回ったが、人の気配は何処にもない。
つまり、何が起こっても誰も助けてくれないし、誰も逃げ出せないと言う事だ。
勿論逃げ出そうと思えば窓ガラスを破り、外へ飛び出せばいい。
だがそんな行為、今のユメイには選べない。ここで死んでは、桂に巡り逢う事など叶わないから。
激しく動く心臓に、ユメイの呼吸の温度が上昇していく。
少なくとも仮面の男の方が目を覚ませば、ユメイはきっと殺される。
ならば目を覚ます前に殺してしまうべきなのだが、ここで問題なのが裸の男だ。
二人が味方同士であるならば、何としても二人同時に殺さねばなるまい。
万が一、片方ずつ手に掛けているうちに、もう片方が目を覚ましたら危険すぎる。
だが、同時に殺せる様な武器を、ユメイは所持していなかった。
- 916 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:27:09 ID:ALRfdC4v
- 支給されたバズーカでは致命傷を与えられない上、轟音で目を覚ましてしまう可能性がある。
ならば他の支給品はと調べてみたが、どれも武器になるとは思えない。
そこで、ユメイは裸の男の手に注目する。握られているそれは、やけに長い刀だった。
なるべく男の身体を見ないようにしつつ、そっと刀に手を伸ばす。
心臓や首目掛けて刀を上から突き立てれば、余程の人間で無い限り死ぬ。
ゆっくりと腰を下ろし、裸の男に触れないように。
ふと、ユメイは伸びた指の震えをみて動きを止める。背中から、一筋の汗が腰に流れていく。
いつの間にか、この二人を殺す事を前提として頭が回転していたのだ。
震える指を頬に添え、首を振りながら纏わりついた影を振るい落とす。
勝手に決め付けていたが、少なくとも裸の男に襲われた記憶は無い。
いや、別の意味でショックを与えられたが、それは殺意があっての事ではないだろう。
ならばこちらの裸の男は殺し合いに乗っている訳ではないのだろうか。
指を唇から離し、恐る恐る指を全裸の男へと差し出したところで、それは唐突に中断される。
この島での最初の放送が、遂に流れ始めたのだ。
紡がれていく言葉の一つ一つが、この島にいるであろう全ての人間に届けられるのだろう。
それは勿論、ユメイの耳にもしっかりと注ぎ込まれていく。
精神を揺さぶるような問い掛けから始まり、次に禁止エリア。
ユメイは手を伸ばすのを止め、目を閉じて羽藤桂の無事を祈り続ける。
いまさら願った所で意味が無いのだが、そうせずにはいられなかった。
やがて知らないなが淡々と告げられていく。そう、どの名前も知らないものばかり。
この時点で、ユメイは胸を撫で下ろし涙ぐんでいた。
少なくともまだ、心の底から大切な人達は生きているのだ。この島のどこかで。
不謹慎だと理解はしていたが、それでもユメイの心の波紋は治まりつつあった。
◇◇◇
- 917 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:27:17 ID:457uuG+P
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- 918 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:27:45 ID:ALRfdC4v
- 放送が終わり、そろそろ電車が駅に到着しようとした所で、車体の速度が緩まってく。
やがて電車が小刻みに何度か揺れると、遂にはその場で停止してしまう。
最終地点である駅まで、もう少しだというのにどうした事だろうか。
悩むユメイの耳に、車内アナウンスで時間調整の旨が届けられる。
つまり、この三人の状況のまま待機しなければならないという事。
いっそ窓を割って飛び出そうかとも考えたが、最悪な事に地面はかなり遠い。
気持ちを持ち直し、床に転がる二人の男に少しだけ視線を送る。
先程は中断してしまったが、全裸の男をどうするか考えねばなるまい。
目が覚めて姿を見た途端、ユメイは無我夢中でしてしまったのだ。
沈黙を守り続けているが、目を覚ませば怒りをぶつけてくる可能性がある。
謝って許してもらえればいいが、最悪これがきっかけで襲われる恐れもあるのだ。
屈強な男から逃げられるほど、ユメイは自分の体力には自身が無い。
それか仮面の男に追いかけられた時に、嫌と言うほど理解させられた事実。
ではやはり、二人とも殺してしまうべきだろうか。
いま桂が生きていても、次の瞬間には死んでいるかもしれないのだ。
そうならない為にも、桂に接触しそうな危険は自分が振り払わねばならないだろう。
桂に降りかかる汚れや穢れなど全て、この身体が代わりに浴びる。
だが、このひ弱な女の身体が、果たしてどれだけ桂の日除け傘となれるだろうか。
もっと確実な。例えばそう、大きな力を味方にできないだろうかと。
再び視線が床に転がる男達に向けられる。今度はしっかりと二人の姿を見定めて。
動悸が激しく乱れ、体中の毛穴から蒸発した空気が噴き出されていくのが解かる。
止まっていた電車が再び動き出す。最終地点は、もう目の前だった。
◇◇◇
- 919 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:27:53 ID:2xE8YRFS
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- 920 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:27:59 ID:457uuG+P
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- 921 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:28:16 ID:ALRfdC4v
- ペダルから足を離し、美希は用心深く周囲を窺う。
到着したのは中心街。なかなかに都会的な街並みだ。
自転車は置き去りにしようか考えたが、デイパックに詰め込めるのが判明し破棄を取りやめる。
ゴーストタウンの様な街を、一台の自転車がゆっくりと滑り続けていく。
ここまでの道のりは美希の想像よりも遥かに楽なものだった。
旅館から山里まで舗装された道が続き、山里から中心街までもまた綺麗な道路。
とは言え、ほんの僅かだが疲労感があるのは否めない。
途中で放送を聞くため移動を停止したが、地図に諸々書き込むだけで済ましている。
あとはひたすら、周囲に気を配りつつペダルを踏み続ける行為の連続。
美希にとって必要な情報は禁止エリアと殺された総数。
他の情報など、美希にとってはなんの意味を成さないのだ。
例えば対馬レオが死んだ事も、右の耳から左の耳に流していい位の事。
いま必要なのは、上手く操れて、且つ身を守る立派な盾。
そしてその盾を探すために、美希は敢えて人通りの多そうな大通りを走り続けた。
が、成果を得る事は無く、やがて自転車は駅に到着する。
ここまでで誰とも会えなかった以上、即座に次の目的地に移るべきだろう。
しかし、自転車では身体に疲労が蓄積していく。
大事な場面で疲れていましたなど、馬鹿な結果は望んでいない。
ならば疲れずに移動できる手段を考える。それが電車だ。
無論、大きな交通手段だけあって他人との接触の恐れもあるが、それもまたいい。
都合のいい人間がいれば、品定めをして捕獲する手間も省けるもの。
また襲ってきたとしても、同じ車両に閉じ込められない限り、逃げる手段はある。
最悪、乗るまでしなくても駅周辺で根城を構えていればいい。
そこまで計算した所で、美希は音を立てないように自転車を止める。
停車してドアが開放している電車の向こうで、人影が見えたのだ。
何時でも乗れるよう、自転車を近くの建物の壁に立てかけ、そっと様子を窺う。
視線の先には、和服らしい物を着た女性が視線を下ろし立っていた。
目線を辿っていくと、良くは判らないが誰かの露出した肌が見え隠れする。
もう少し近付けば確認できるが、気付かれては面倒だ。
これがもし、予想の範疇であれば無防備な様子で近付いていただろう。
- 922 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:28:45 ID:ALRfdC4v
- だが、目の前の光景を見る限りそんな安直な行動は出来ない。
近付かなかった理由。それは、女性の手には鞘から抜かれた刀が握られていたのだ。
仮に床に転がる人間を殺した後だったならば、身を隠しやり過ごしておきたい。
これから殺すのであったとしても、同じようにまた身を伏せておくつもりだ。
もしかしたら女性が隙を見せて、殺せる瞬間を垣間見せる可能性だってある。
しかしそれでも美希は動くつもりなど無い。殺せるならば「100%」でなければ。
この島で生き抜いて行く限り、いつか必ず自分で人を殺す瞬間が訪れる。
が、それまで無駄な危険地帯に足を踏み入れる必要など無い。
そして逆に考える。もしまだ床に転がる人間が生きていて、利用できるならばと。
自分にとって最大限利益をもたらす結果を求め、美希は脳を絞る。
そう。美希のする事は、いま目の前で何かが起こるのを待ちわびるばかりなのだ。
◇◇◇
- 923 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:28:55 ID:2xE8YRFS
-
- 924 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:29:21 ID:ALRfdC4v
- 停車してから暫く時間が経った。
放送によれば、この車両はもう少しここに留まるらしい。行動を起こすならば今だろう。
ユメイの頭の中を、様々な言葉が巡り続けていく。
臆病な本音が、必死でユメイの視界に覆いかぶさる。
そしてそれをまた、願いと義務とが強引に剥がしては破く。
再び腰を下ろし、全裸の男が握っていた刀を優しく奪い取る。
少しだけ触れた体温は、火傷するくらい熱いものだった。
未だに苦悶の表情を続ける全裸の男に謝罪し、ユメイはゆっくりと鞘から光りを抜き出す。
重い。力一杯の両手で支えても、足元がおぼつかない。
だがこの重さならば、失敗する可能性は低いだろう。
摺り足で身体を揺らし、立ち位置をしっかりさせる。股の下には、屈強な男の身体。
事と次第によっては、二度と桂に顔向けできなくなるだろう。
だが、それでもユメイはやらねばならない。
桂を抱きしめる事が叶わない。その地獄で桂が救えるならば。
少しだけ風が吹く。緊張したユメイに突き刺さる空気は、肌を破くように刺激する。
痛みで理性が舞い戻る。まだ止められると。
汚れた自分を見て、桂は何を思うのかと。
刃を振りかざすのではなく、手を差し伸べるべきだと。
悩んでいても時間は過ぎていく。何時男達が目を覚ますか判らない。
ゆっくりと深呼吸。
せめぎ合う二つの本音を、ユメイは一色に染める。瞳にぶれは無い。
両手に持った刀をゆっくりと自分の胸の位置で固定し、刃を床に向ける。
そして、一瞬……
- 925 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:29:35 ID:2xE8YRFS
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- 926 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:29:47 ID:457uuG+P
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- 927 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:29:53 ID:ALRfdC4v
-
その研ぎ澄まされた刃を――
【おおむね変態チーム】
【B-7 駅構内/1日目 朝】
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:手ぬぐい(腰巻き状態)。ガイドブック(140ページのB4サイズ)
【所持品】:支給品一式、不明支給品×1(本人確認済。不思議な力を感じるもの)
【状態】:悶絶、気絶、疲労(大)背中にかなりのダメージ、股間に重大なダメージ、ほぼ全裸。右手の手のひらに火傷。
【思考・行動】
0:気絶
【備考】
※神宮司奏・浅間サクヤと情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、この駅【F-7】に戻ってくる予定。
※第一回放送を聞き逃しました
- 928 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:30:25 ID:ALRfdC4v
- 【橘平蔵@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!
【所持品】:支給品一式、地方妖怪マグロのシーツ@つよきす -Mighty Heart- 不明支給品0〜1】
【状態】:気絶中、肉体的疲労(大)左腕に二箇所の切り傷
【思考・行動】
基本方針:ゲームの転覆、主催者の打倒
0:許せ…若人よ
2:女性(ユメイ)が目を覚ましたら、次の協力者を増やす
3:生徒会メンバーたちを保護する
4:どうでもいいことだが、斉藤の仮面は個人的に気に入った
【備考】
※自身に掛けられた制限に気づきました。
※遊園地は無人ですが、アトラクションは問題なく動いています。
※スーツの男(加藤虎太郎)と制服の少女(エレン)を危険人物と判断、道を正してやりたい。
※第一回放送を聞き逃しました
【ユメイ@アカイイト】
【装備】:物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:支給品一式、メガバズーカランチャー@リトルバスターズ!、不明支給品0〜2
【状態】:健康、決意。
【思考・行動】
基本方針:桂を保護する
0:この刃を――
1:桂を捜索する
2:烏月、サクヤ、葛とも合流したい
【備考】
※霊体化はできません、普通の人間の体です。
※月光蝶については問題なく行使できると思っています。
※メガバズーカランチャーを行使できたことから、少なからずNYPに覚醒していると予想されます。
- 929 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:30:42 ID:2xE8YRFS
-
- 930 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:30:55 ID:457uuG+P
-
- 931 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:31:00 ID:ALRfdC4v
-
【B-7 駅周辺/1日目 早朝】
【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:投げナイフ1本
【所持品】:支給品一式×2、投げナイフ4本、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)
ノートパソコン、MTB
【状態】:恐怖(芝居)、健康、呆れ
【思考・行動】
基本方針:とにかく生きて帰る 集団に隠れながら、優勝を目指す
0:結末を見てから動く。
1:場合によっては、駅を拠点に他に利用できそうな人間を探す
2:太一、曜子を危険視
3:刀を持った人間が危険だと言う偽情報を、出会った人間に教える
【備考】
※ループ世界から固有状態で参戦。
※つよきす勢のごく簡単な人物説明を受けました。
- 932 名前:Crossing The River Styx ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:32:42 ID:ALRfdC4v
- 以上。投下終了です。
タイトルの元ネタはバンド『I am Ghost』の曲『Crossing The River Styx』。
誤字や脱字が御座いましたらお願いいたします。それでは
- 933 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:34:02 ID:2xE8YRFS
- 投下乙
な、何という引き。
変態2人の運命はどうなるんだろう?w
ユメイの迷える心理が書かれてあったすごく面白かったです。
GJでした
- 934 名前: ◆eQMGd/VdJY :2008/04/22(火) 03:46:05 ID:ALRfdC4v
- 少々訂正が。
橘平蔵の状態欄の0が、「許せ…若人よ」ではなく「気絶」となります。
こちらはwiki編集された後訂正させていただきます。ご了承ください。
- 935 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 03:47:06 ID:457uuG+P
- 投下乙です!
これは気になる引き……引、き…………オーバートスってレベルじゃねーぞ!(褒め言葉)
地の文のみの構成でしたが、不要な箇所が少なく、凝縮された文章でもテンポよく読めましたw
そんな感想もラストの「その研ぎ澄まされた刃を――」でぶっ飛びかけたw
ユメイさん、選択肢を間違えればまさかのBADENDフラグか?
リアリスト全開で頑張るミキミキは見ているだけだろうかどうだろうかw
- 936 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 08:20:31 ID:Sajl9+20
-
- 937 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 19:11:10 ID:N/U5Yg5+
- 【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。
【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。
【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。
- 938 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 19:12:23 ID:N/U5Yg5+
- 誤爆失礼しましたorz
- 939 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 19:13:34 ID:N/U5Yg5+
- 【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
またはアル自身、ページを欠落させて参戦
または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ
その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります
- 940 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 21:21:47 ID:V9BkzOpZ
- 投下乙です!
感想が追いつかないwwwww
AZ氏
すごいww 曜子ちゃんの太一のためなら何でも犠牲にする心構えがビシビシ伝わってきたw
自分の体すらもモノ扱いとは恐れ入ります。そしてそれ以上に、乙女な曜子が可愛いw
相変わらずの表現、素晴らしいです。ところでまた喋らないのですねww
Uc氏
まさかの欝展開というか、なんというか……ギャルゲロワ2nd初の一話で二人死亡。
殺し合いに乗ったスバルには凄いジンクスが付いてしまいましたねwww
もうないだろうけど、もう一度何処かで『つよきす』゛再選されたとき、スバルが同じ道を辿るか検証してみたいなww
aa氏
何という原作接触w 同じ人を守りたいと願いながら、別々の道を歩み始めた二人の対比。
というか烏月さん、マーダーコンビの相方を探すのかw 結構、我が強いのばっかりだw
そしてサクヤさんの最後の台詞も重いな……
Lx氏
これは、何という女同士のバトル……凄惨といえば凄惨な戦い。
そして世界の自分勝手ぶりは異常。どっかで思いっきり酷い目に会ってほしいのは自分だけかw
このみはカワイソスのレベルがさらにあがって……このままだと天元突破するかもねw
eQ氏
何だこの限りなく自由度の高いトスはwwwwwww
殺すも生かすも思いのままじゃないか! 逃げてー、逃げて館長ー!(違)
さあ、ユメイさんと美希の動向やいかに。
- 941 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 21:42:05 ID:AmTMSa/w
- おおくろう、しにそうになってるとはふがいない
頼むから死ぬならぬいぐるみや女装でもいいから服着てからにしてくれ
- 942 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 22:10:56 ID:S38JiLqR
- >>940
スバルとかレオは再選すれば、ハクオロ化する可能性大と思うが。
「死ぬぞ、死ぬぞ」で結局終盤まで生き残るとか。
しかしスバルといいレオといいつよきす勢は早死にしすぎ。
- 943 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/22(火) 22:57:30 ID:0YxJeIzZ
- 投下乙
>WA氏
せっちゃん、なんとか生き延びたか。冷や汗ものだが
あと、ふたりの体格差で田中との委員会コンビを思い出して困る
>aa氏
ついにこの二人が接触。大事にいたらなかったが悲しいねえ
開き直った烏月の今後が気になります
>eQ氏
ミキミキのタフさとユメイさんのもろさが対照的で良し
で、なんつう引きなんだよw
>Lx氏
超人バトルでこのような戦いが2回連続で見られるとは
ついにスクイズ最弱の精神力の世界は壊れてしまいましたな
- 944 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:27:59 ID:iS6Rt0yL
- 底まで澄み切った綺麗な川。
そこで、どんぶらこ〜どんぶらこ〜と桃……、もとい黒須太一が流されていた
……のは、少し前の話。
今、太一は川の浅い所を下りつつ、考察をしていた。
「今まで出会ったのは3人、そして、その全てがエイリアン」
そう呟くことにより、太一の懸念は増大することになる。
その懸念とは、……自分達(曜子・美希・霧)以外の参加者は全て、または大部分がエイリアンではないか、ということである。
エイリアンの擬態能力の高さを考えると、人と思われる参加者の中にもエイリアンがいる可能性は否定できない。
事実、理樹というエイリアンの擬態は、仲間の存在に気がつかなければ分からなかっただろう。
……となると、自分達以外の参加者は誰であれ、警戒する必要があるといえる。
しかし、この考えは太一自身からしても、突飛である。
人間同士が協力して戦わなければならない状況でこの発想は危険である。
なぜなら、エイリアン同士も徒党を組んでいるということが先ほどの接触で判明したからだ。
……あの2体、黒髑髏の男と理樹は互いの弱点を補いために徒党を組んでいる。
つまり、擬態に長け戦闘能力の低い理樹が油断を誘うために相手と接触し、
油断した相手を戦闘能力の高い黒髑髏の男が襲う。
恐らくは、こういった作戦だったのだろう。
となると、人間も弱点を補うため仲間と協力しなければならない。
- 945 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:28:41 ID:cIkPkU+3
-
- 946 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:29:08 ID:iS6Rt0yL
- ……問題は、相手がどちらかをどうやって見抜くかだ、それが難し……
「いや、まてよ」
本当に、唐突だが、太一にまた新たな考えが浮かんだ。
この殺人ゲームの目的、それが一種のショーなのではないか、ということである。
つまり、エイリアンと人間を大体同数ぐらい揃え、殺し合わせる。
――同数ぐらいなら、自分が今までエイリアンとしか会わなかったとしてもあまりおかしくはない。
そして、その場で見せる人間の挙動をモニターに写し、それを見て恐らくは、
このゲームの真の主催者であるエイリアンが楽しむ。
どちらかが滅びた時点で、このゲームは終了し、残りの参加者は文字通り処分される。
考えてみれば、主催者が言うことが本当かどうかは分からない。
むしろ、エイリアンが人間に教えることなど、嘘の可能性のほうが高い。
恐らく、参加者として使われているエイリアンは下位クラスのエイリアンなのだろう。
そう考えれば、仮の主催者と参加者の実力の差があまりに大きいのにも納得がいく。
となると、このゲームは参加者のエイリアンと仮の主催者を倒すだけでは終わらない。
真の主催者――あの2人を手足として使うからにはかなり強力なエイリアンであろう――を倒す必要性がある。
それをここにいる人間だけを集めて達成するのは相当困難なことだろう。
ここにいるエイリアンを倒すのは迅速かつ犠牲を最小限に抑えなければならない。
いざとなれば、エイリアンを利用することまで考えなければならない。
強制参加となれば、エイリアンの中にもこの状況に不満を持つものがいるのは間違いない。
そこにつけこめば、エイリアンの同士討ちを誘えるかもしれない。
もっとも、エイリアンと手を組む状況はあまり想定したくないので、これはあくまで最終手段だが……
考えをまとめた太一の目の前で、陸に上れそうな場所が現れた。
彼は迷わず陸へ上がり、そこで、一時的な休憩を取る。
- 947 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:29:21 ID:dZHZxSmQ
- sienn
- 948 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:29:36 ID:cIkPkU+3
-
- 949 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:29:47 ID:iS6Rt0yL
- こうなれば、今後の行動も必然的に決まってくる。
まず、見た目から明らかにエイリアンと分かる参加者と遭遇すれば速やかに倒す。
武器に関しては、流されている間にサバイバルナイフを失ったが、まだ自分には『カラデ』と銃がある。
エイリアンが個別に行動していれば、早々負けることはないだろう。
もちろん、先ほど出会った3体、それにそのうちの1体が言っていたなつきも同様である。
見た目で判別できず、当面の敵にならない参加者とは、とりあえずともに行動する。
いくら擬態がうまいからといって、ともに行動していればそのうちぼろが出るはずである。
そして、エイリアンと分かれば倒す……、それだけの話だ。
また、知り合いである3人には早く合流したい。
フラワーズの2人には警戒されているとは言え、この状況を話せば協力してくれるはずである。
確実に信頼できる人間を多めに確保できれば、今後の行動にも幅がでる。
今後の方針は決まった。しかし、当面の状況をどうにかしなければならない。
武器に関しては、流されている間にサバイバルナイフを失ったが、まだ自分には『カラデ』と銃がある。
エイリアンが個別に行動していれば、早々負けることはないだろう。
よって武器の問題はないだろう。
問題は、この場所の正確な位置が分からないということである。
どうやら、東に流されたということだけは分かったが、どれだけ流されたのかは気絶していたため見当がつかない。
禁止エリアなるものが放送後に出現する以上、この状況はかなり危険だといえる。
早々に位置を割り出す目印となるものを探さなければならない。
ならば、今すぐに動く必要がある。放送は間近なのだから……。
- 950 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:30:02 ID:cIkPkU+3
-
- 951 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:30:28 ID:iS6Rt0yL
- あ、失礼しました。上の間違いです
- 952 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:30:30 ID:dZHZxSmQ
-
- 953 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:30:44 ID:cIkPkU+3
-
- 954 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:32:09 ID:iS6Rt0yL
- リゾートエリア、そこにはその名が表すとおりよく整備された街がある。
ざっと見渡す限りでは、殺し合いの場の一角とは思えないほど綺麗な街道を、
アル・アジフと羽藤桂が歩いていた。
……より正確に言えば、アルの方は歩いているのではなく飛んでいる。
「ねえアルちゃん」
「ん? なんだ、桂」
「別荘地に人いるかな〜?」
「それは行ってみないとわからんが……」
「だよね〜……」
この会話から分かるとおり、彼女達は別荘地へと向かっていた。
施設がある場所に人が集まる可能性が高い。
また、人がいなかったとしても自分たちがそうしたように書置きなどが残されている可能性もある。
情報が足りない――今まで、自分たち以外との接触を果たせていないので当たり前なのだが――
現状では情報収集する必要がある彼女たちにとってその行動はある種の必然だったといえよう。
「別荘なんだから、近くにテニスコートとかもあるのかなぁ?」
「はぁ?」
何故、そのような話になるのか、アルにはさっぱり検討がつかなかった。
「それで、あの2人がテニスをしているとか」
「………………」
あの2人とは、言峰と神埼のことだろうか。
……いや、それはさすがに。
「有り得ないだろう」
「でもでも、アルちゃんの話だとこの計画には黒幕がいるんでしょう?
だったら、暇な2人がストレス発散も含めてやってるかもよ?
車内アナウンスの人が審判やってさ」
- 955 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:32:56 ID:cIkPkU+3
-
- 956 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:32:56 ID:iS6Rt0yL
- 想像してみる。
リゾートエリアの一角で、さわやかな笑顔を浮かべながらテニスをする言峰と神埼。
そして勝負がつけば、『ゲームアンドマッチ、雑種』と宣言する審判。
……そんな光景があったら笑えるというより、むしろ怖い。
その状況を参加者が見れば、大勢が恐慌状態に陥るのではないだろうか。
だから、そんな光景は……
「有り得ん」
「まあ、それはさすがに冗談だけど……。早くみんなと合流して脱出しよ〜、お〜」
そんな桂のお気楽さに、またアルはため息をつく。
この殺し合いに乗っているものがいるということ、
また、桂の仲間が死ぬ可能性があるということを考えていないのではないのか、と思えてくる。
もっとも、仲間の死という観点で言えば、彼女もほとんど心配していなかったのだが……
九郎やウィンフィールドは早々死にはしないだろうし、ウエストもそうであろう。
一方、ティトゥスに関してはできれば早々に退場してほしいものだが、それは無茶な願いだろう。
……そう考えていたアルは
「……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね」
放送を聴いて、驚愕することとなる。
◇◇◆◇◇
- 957 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:33:32 ID:cIkPkU+3
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- 958 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:33:47 ID:iS6Rt0yL
- 静かな別荘地帯の中にある一軒の別荘。
そこから出てきた九鬼耀鋼は、結局このあたりに隠れたはずの衛宮士郎を探すことにした。
下手したら、双七と入れ違いになる危険性があったが、
衛宮士郎を生かしておくこともまた危険だと考えたからである。
最悪、双七と入れ違いになったとしても、この狭い島の中である。
現状、他の参加者に利用される危険性もないようだ。
その中で、どちらも南にいるのだから、また会う機会もあるだろう。
そう考えて、この辺り一帯の別荘を片っ端から調べようとした矢先……、
「……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね」
放送が流れた。
◇◇◆◇◇
- 959 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:34:18 ID:aHsydloF
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- 960 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:34:27 ID:iS6Rt0yL
- 「食べるものも食べなければ、生き延びることなど到底出来はしないのだから」
後の方の、正直言えばどうでもいい放送まで聴き終わってから、九鬼は考えることになる。
主催者が生死すら自在にする力を持っていることは、すでに分かっている。
それよりも気になるのは、主催者側の息のかかった者がいるかどうかということである。
九鬼は、いるだろうと思っている。
確かに、主催者が嘘をついているという可能性もある。
しかし、彼ら自身が実現できることをわざわざしないということもないだろう。
その現実を目の当たりにすれば、効果はさらにあがることになるのだから……
そこまで考えて、九鬼は衛宮士郎を捜索するべく、別荘を調べることにした。
◇◇◆◇◇
- 961 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:34:32 ID:cIkPkU+3
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- 962 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:34:58 ID:cIkPkU+3
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- 963 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:35:15 ID:tMirj8np
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- 964 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:35:23 ID:iS6Rt0yL
- 「……アルちゃん?」
桂の心配している声に返事をすることもできず、アル・アジフは固まっていた。
あの男、ウィンフィールドが死んだ……
いくら強いとはいえ、ウィンフィールドとて人間である。
それに、この殺し合いの中では、自分の知らない、かつ彼に匹敵する実力者がいるのも当然とも言えた。
だから実際には、ウィンフィールドが死ぬ可能性も十分にあったはずなのだが、
アルはウィンフィールドの死をなかなか受け入れられなかった。
……まあ、アルがそうなるのも無理からぬものといえた。
彼女が今まで出会ったのは、羽藤桂ただ一人。
その桂には特殊な血が流れているとはいえ、彼女自身の戦闘能力はかなり低いレベルである。
たとえウィンフィールドに匹敵する実力者が(彼女が知るもの以外に)いたとしても、
会っていなければそれを実感するのは難しいものである。
「えーとね、アルちゃん」
「だが、やはり受け入れるしかないのだろうな」
「……え?」
- 965 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:35:58 ID:iS6Rt0yL
- あのウィンフィールドのことだ、死んだ時も彼の信念を貫いて死んだのだろう。
ならば、たとえ受け入れがたくても、受け入れることとしよう。
彼の死を受け入れないことは、彼の信念を侮辱することにもつながるのだから。
……そして、自分は自分の信念を貫く。
そう、九郎と再契約を結び、主催者・黒幕をともに打倒する。
もちろん、仮とはいえ現マスターの桂を死なせる気もない。
今は、桂を全力でサポートすることにする。
「汝は死なせんぞ」
「……え〜と、アルちゃん、大丈夫なの?」
「うむ、妾は問題ない」
「……なら、いいけど……。うん、私は死なないよ、それにアルちゃんも」
「なら、行くぞ桂」
「うん」
そして、彼女達はまもなく着くであろう別荘地へと歩み始めた。
◇◇◆◇◇
- 966 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:36:16 ID:cIkPkU+3
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- 967 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:36:29 ID:iS6Rt0yL
- 「なかなか見つからんな」
別荘地帯にある別荘、その中でも、初め彼がいた別荘の近くにある別荘の中を探していたが、見つからない。
こうなるんだったら、双七と合流するべきだったかと、後悔するが、
いまさら引くこともできない。
それに、これだけ探せば、他に探す範囲は限られている。
(残っているのは……)
九鬼の目が行くのは、初め彼がいた別荘の向かいの別荘である。
逃げ込むには、あまりにも安直な場所ではないかと思い、探していなかったのだが、
どうやらここが当たりらしい。
その玄関の前に立ち、当然ながら用心してノブを回す。
ドアを開けても、罠らしきものはない。
人の動く気配も特には感じられない。
だが、必死になって逃げたからだろう。
廊下には、逃げているときに散ったと思われる土が散らばっているのが分かる。
この別荘の中で息を潜めているのは、どうやら確実のようだ。
そうと分かれば、後は、この中に隠れているであろう士郎を見つけ、始末するだけである。
もっとも、探す方としては厄介なことだが、ここにある別荘群はそれなりに部屋数が多い。
まだ、少々時間がかかるかもしれない。
それに先程のこともあるので、罠には十分注意しなければならない。
そう思いつつ、九鬼は別荘の中へと進んでいく。
- 968 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:36:51 ID:cIkPkU+3
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- 969 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:36:52 ID:aHsydloF
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- 970 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:36:57 ID:iS6Rt0yL
- 別荘の中を適当に調べていると、そのうち客間についた。
「……………」
その客間のクローゼットの周辺が妙に荒れている。
ぶっちゃければ、今まで他を探していたのは何だったのかと思ってしまうほどのわかりやすさである。
九鬼は、脱力しそうになるのを抑えながらも、クローゼットを慎重に明け……、
完全に脱力しそうになるのを必死にこらえた。
探していた衛宮士郎が気絶していたのだから、脱力したくもなる。
「気絶しているのだから、後は楽か」
さっさと始末して、双七を探すかと思いつつ、拳を振り上げて……
「だめぇーーーーーーーー!!!」
その行動は、女の叫び声で強制中断されることになった。
◇◇◆◇◇
- 971 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:37:18 ID:dZHZxSmQ
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- 972 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:37:21 ID:iS6Rt0yL
- ……少し、時間を遡って。
別荘地帯に着いた桂は目の前の光景を見て絶句した。
一軒の別荘が明らかに爆発したとしか思えない状況だったからである。
「ここで、戦闘があったのかな?」
「そう考えるのが妥当であろうな、注意を怠るなよ桂」
「は〜い」
……といいつつも、爆発したであろう別荘の向かいへと歩いていく桂。
「待てーーー!!注意しろといったばかりだろうが!!」
いきなり、何も考えていないような行動をとる桂に怒るアル。
「でも、情報を集める必要性があるんだよ?」
「む、確かにそうだが……」
正直、戦力が心もとない現状では、このような明らかに危険な場所には桂を行かせたくないというのが、
アルの心の中の意見である。
「それに、私たちの知り合いにも会えるかもしれないでしょう?」
アルの勢いがそがれたと見て、桂は畳み掛けるように言う。
「……………」
アルが説得しても引きそうにない。
というより、仲間との合流を目指すアルも、本音は調べたいと思っていたので……、
「分かった、ただし、危険な状況だった場合、すぐに逃げるぞ」
「は〜い」
妥協案を出して、別荘を調べることにした。
「奥から探そうよ」
という桂の意見の元、二人はこの別荘の一番奥にある客間へと入ると……
- 973 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:37:54 ID:iS6Rt0yL
- そこには、気絶している男に対し、拳を振り上げている大男の姿が……
どう見ても、殺し合いに乗っている人です。本当にありが(以下略)
そんな光景を見た桂は、あるの妥協案などうっちゃったまま、
「だめぇーーーーーーーー!!!」
と叫ぶことになった。
◇◇◆◇◇
……で、この光景を変な格好をした女の子に目撃された九鬼は、内心舌打ちしたい気分だった。
自分としては、殺し合いに乗ったこの男を始末するための行動だったのだが、
この光景だけを見れば、勘違いされるのは当然であろう。
「こんな殺し合いに乗るなんていけません!!」
普通の人間ならば当然するである主張に対し、九鬼は立ち上がり彼女と向かい合う形で言う。
「俺は、むしろ殺し合いを是認している人間を始末しようとしているのだがな」
「たとえ、そうだとしてもだめです!!」
訂正、出会ってしまったのは普通の人間よりかなりはるかに甘い人間のようである。
自分の発言に対し、動揺もせずに返答するのは、ある意味大物ではあるが……
この場を収めるのは難しいかもしれない。
「そもそも、汝は本当にそう思って行動しているのか?」
- 974 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:38:03 ID:cIkPkU+3
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- 975 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:38:18 ID:iS6Rt0yL
- そう声をかけたのは、共にいた小さな人間(?)である。
彼女の小ささに驚きつつも、九鬼は答える。
「俺は事実を言ったまでだ。が、それを信じるかどうかはお前たちの自由だ」
「アルちゃん、そうじゃなくて、そもそも人を殺そうとすること自体がいけないことだよ」
「いいか桂、今はそんな甘いことを言える状況じゃないんだぞ」
「でもでも、だからってあっさり人を殺そうとしたら、それこそ主催者の思う壺だよ」
「結果的にそうなったとしても、降りかかる火の粉は払わなければなるまい」
……九鬼の返答は無視されたまま、二人で勝手に口論を始めてしまった。
九鬼個人としては、さっさとこの状況を打破したいのだが、
衛宮士郎を始末するにしても、ここから逃げるにしても、状況を悪化させることにしかならないだろう。
結局、彼は二人の口論が終わるまで待つことにした。
◇◇◆◇◇
- 976 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:38:39 ID:cIkPkU+3
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- 977 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:38:46 ID:iS6Rt0yL
- 衛宮士郎が意識を取り戻したのは、女性の叫び声が聞こえた直後であった。
目を開けた彼が最初に見たものは、さっき撒いたはずの九鬼耀鋼の姿であった。
(まずい……)
こう思った彼であったが、しばらく見てみると、九鬼の注意は客間の入り口付近にある女の子に向けられているようだ。
そう気づいた彼は、この状況を打破するための方策を考えることにした。
目の前にいる九鬼への襲撃は当然却下である。結果が目に見えている。
左腕の布をとけば何とかなるかもしれないが、そんなことをすれば九鬼に気づかれるだろう。
……となると、残るは女の子を襲い、そのまま逃げることである。
彼女は、変な格好こそしているものの、見た目は華奢で強そうに見えない。
うまくいけば、襲っただけで相手が飛びのいて、自分は逃走経路を確保できるかもしれない。
うまくいかないにしても、九鬼を襲うよりは、はるかにマシと考えた士郎は、維斗を持って女の子に襲い掛かった。
「えっ?」
動揺を見せた彼女に対し、ある種の牽制の意味を込めて刀を振るった士郎であったが、
彼には、いくつかの誤算があった。
まず第一に、彼女の見た目や性格からは判断しづらいものの、羽藤桂も、それなりの修羅場をくぐっていたということである。
当初こそ、動揺を見せたもののすぐに立ち直ることができる人間なのである。
第二に、彼女の身体能力がアルによって強化されていたことである。
今の彼女は、並大抵の人間をはるかに超える身体能力を備えているのである。
- 978 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:39:29 ID:iS6Rt0yL
- そんな彼女に対し、疲労が激しく、かつ逃げるために放った牽制の意味でしかない刀は、
彼女が後ろに跳ぶことによってあっさりかわされ、
追撃するために士郎が維斗を振りかぶり、
それを振り下ろす前に、
士郎に急接近した彼女の、その拳は、見事士郎の腹に直撃していた。
それを受けた士郎は思わずよろけて、膝をつくことになる。
「あ、あれ?」
……その光景に、それを成した本人がもっとも驚いていたが。
- 979 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:39:31 ID:aHsydloF
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- 980 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:39:34 ID:cIkPkU+3
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- 981 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:40:02 ID:iS6Rt0yL
- (こんなところで……)
膝をついた士郎であったが、彼はあきらめてはいなかった。
より、正確に言えばあきらめるわけにはいかなかったのだ。
そう、自分はサクラノミカタであり、桜を救わなければならないのだから……
こんなところで屈するわけにはいかないのだ。
そんな半ば執念のような気持ちが、彼を奮い立たせ、
この苦境を脱するための最終手段をとらせることとなった。
具体的な行動で表せば、
彼は、その左腕の布を解いた。
◇◇◆◇◇
「桂、しっかりしろ、桂!!」
そう呼びかけるアルは、普通の人間の大きさまで戻っていた。
負傷した桂に対し、応急処置をするためである。
- 982 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:40:21 ID:cIkPkU+3
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- 983 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:40:32 ID:iS6Rt0yL
- この状況になる前、つまり、自分たちと戦っていた男が、左腕の布を解いた直後、
アルは、何が起きたかよく分からなかった。
アルに分かったのは、彼の左腕から一瞬何かが出現し、
その一瞬でそれが桂の右腕を切り飛ばした。
……ただ、それだけであった。
その後、男はすぐに逃げ去ったのだが、今その男の行方はどうでもいい。
アルがしなければならないのは、気を失った桂を治療することなのだから。
幸い、ここには応急処置のための道具がそろっている。
もっとも、自分ができることはたかが知れているのだが、治療しないよりはマシだろう。
というわけで、アルは桂に応急処置を施すための準備に入った。
そんな光景を見ていた九鬼は、何もしようとしなかったわけではない。
最初、士郎が桂に襲い掛かったときは、確かに(彼としては不覚であるが)不意をつかれたが、
士郎が左腕の布を解いたときは、危険性を察知し、助けに入ろうとした。
……結局、間に合っていないのだから、その行動はむいみなものだったのだが。
そんな彼は、特に医術の心得というものはなかったので、アルの行動に手を貸すこともなかったが、
立ち去る気もなかった。
彼は、アルの存在が気になったのである。
アルは、さっきまで掌サイズの大きさだったのに、今は人間大の大きさに変わっている。
それに伴い、桂の衣服が変わることになったことから、
彼はこの二点に何か因果関係があると考え、その力に興味を示したのである。
もしかしたら、主催者を打倒するための鍵を握っているかもしれない。
そんな期待を込めつつ、アルに対し質問をぶつけるために、
彼女らの状況が安定する時を、九鬼は静かに待つこととした。
- 984 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:40:35 ID:dZHZxSmQ
-
- 985 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:40:58 ID:iS6Rt0yL
- 【H-4 別荘の一階客間 朝】
【チーム『天然契約コンビ』】
【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)
魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD
【状態】:右腕切断、気絶中、アル・アジフと契約
【思考・行動】
基本方針:島からの脱出、殺し合いを止める。殺し合いに乗る気は皆無
0:気絶
1:アルと協力する
2:知り合いを探す
3:柚原このみが心配
4:ノゾミとミカゲの存在に疑問
^^^^^^^^^^
【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×2
【状態】:魔力消費小、羽藤桂と契約、ちびアル化
基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
0:桂を治療する
1:桂と協力する
2:九郎と再契約する
3:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護します
4:まずはリゾートエリアで情報収集、信頼できる仲間を探す
5:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい
- 986 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:41:01 ID:cIkPkU+3
-
- 987 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:41:20 ID:iS6Rt0yL
- 【備考】
※古河パン詰め合わせには様々な古河パンが入っています。もちろん、早苗さんのパンも混じってます。
※魔除けの護符は霊体に効果を発揮する札です。直接叩き付けて攻撃する事も可能ですし、四角形の形に配置して結界を張る事も出来ます。
但し普通の人間相手には全く効果がありません。人外キャラに効果があるのかどうか、また威力の程度は後続任せ。
※マギウススタイル時の桂は、黒いボディコンスーツに歪な翼という格好です。肌の変色等は見られません。
使用可能な魔術がどれだけあるのか、身体能力の向上度合いがどの程度かは、後続の書き手氏にお任せします。
※アトラック=ナチャを使えるようになりました。
※制限によりデモンベインは召喚できません。
※桂はサクヤEDからの参戦です。
※B−7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
【九鬼耀鋼@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1〜3、日本酒数本
【状態】:健康、少しだけ耳が痛い
【思考・行動】
基本:このゲームを二度と開催させない。
0:桂とアルの状態が安定するまで待つ。
1:以下の目的のため、駅へと向かう。電車が走っていない、または待ち時間が長ければ別荘地やボート乗り場を探索
2:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
3:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
4:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
6:如月双七に自身の事を聞く。
7:主催者の意図に乗る者を、場合によっては殺す。
- 988 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:41:23 ID:dZHZxSmQ
-
- 989 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:41:43 ID:iS6Rt0yL
- 【備考】
※すずルート終了後から参戦です。
双七も同様だと思っていますが、仮説にもとづき、数十年後または、自分同様死後からという可能性も考えています。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
※黒須太一、支倉曜子の話を聞きました。が、それほど気にしてはいません。
※別荘の一角で爆発音がありました。
※アルに対して興味を示しました。
◇◇◆◇◇
- 990 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:41:46 ID:cIkPkU+3
-
- 991 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:42:09 ID:iS6Rt0yL
- (この状態では、一瞬しか持たなかったか……)
あの苦境を脱するために、左腕の布を解いた士郎であったが、
心身ともに疲労している状態では、能力を生かすことは難しかったようだ。
……もっとも、その一瞬で状況を挽回できたのだからよしとする。
問題はこれからである。
九鬼に追われる可能性を考えた士郎は、別荘地帯を離れ、合流地点である駅の裏へ向かうこととした。
疲労を回復させ、能力をフルに使うためには、曜子と合流し、ある程度の安全を確保する必要があったからだ。
桜を救うためには、最後に彼女も切り捨てなければならないが、それはもとより合意の上のはずである。
そのときになるまで、十分に利用させてもらおう。
自分はサクラノミカタだ。
……だから、桜を救うためには、自分は何だってしてみせる。
そう心の中で、改めて誓った彼は歩み続ける。
間桐桜が第一回放送で呼ばれたこと、そして、優勝者は死者をよみがえらせる権利も手に入ると放送されたこと、
そのどちらも彼が知らないという事実が、今後の彼にどのような影響を与えるのか、
それは誰にも分からない。
- 992 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:42:46 ID:iS6Rt0yL
- 【H-4 別荘地帯よりもやや北 朝】
【衛宮士郎@Fate/stay night[Realta Nua]】
【装備】:維斗@アカイイト
【所持品】:支給品一式×2、ゲーム用のメダル(500枚)、火炎瓶×6、リセの不明支給品(0〜1)※確認済み、赤い聖骸布
【状態】:強い決意(サクラノミカタ)、肉体&精神疲労(大)、脇腹に激痛。
【思考・行動】
基本方針:サクラノミカタとして行動し、桜を優勝(生存)させる
1:この周囲に居るかもしれない桜を探す
2:桜を捜索し、発見すれば保護。安全な場所へと避難させる
3:支倉曜子の『同行者』として行動し、最大限に利用し合う
4:桜以外の全員を殺害し終えたら、自害して彼女を優勝させる
5:脱出の可能性があるのならば、それも一考してみる
6:機会があれば、カジノに出向きメダルの使い道を確認しておく
【備考】
※登場時期は、桜ルートの途中。アーチャーの腕を移植した時から、桜が影とイコールであると告げられる前までの間。
※左腕にアーチャーの腕移植。赤い聖骸布は外れています。
※士郎は投影を使用したため、命のカウントダウンが始まっています。
※士郎はアーチャーの持つ戦闘技術や経験を手に入れたため、実力が大幅にアップしています。
※第一回放送を聞き逃しています。
- 993 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:43:27 ID:cIkPkU+3
-
- 994 名前:◇jIcyyngFhE氏代理:2008/04/23(水) 00:43:31 ID:iS6Rt0yL
- 以上で代理投下終了です。
最初の不手際申し訳ありませんでした。
- 995 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:44:23 ID:cIkPkU+3
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- 996 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 00:46:46 ID:iS6Rt0yL
- >>954以降が本来の代理投下分です
- 997 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 01:40:26 ID:qSt6R+HX
- 埋め立て
- 998 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 01:40:57 ID:qSt6R+HX
- 埋め
- 999 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 01:41:28 ID:qSt6R+HX
- 埋め
- 1000 名前:名無しくん、、、好きです。。。:2008/04/23(水) 01:42:00 ID:qSt6R+HX
- >>1000なら誠とファル様がロワ内で結婚する
- 1001 名前:1001:Over 1000 Thread
- このスレッドは1000を超えました。
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