エロゲのシナリオ また修正するかも 【登場人物】 トシアキ アシュリー・コート 老人 化け物 先生 としあきの同級生(仮名:アキトシ) たぶんこれくらい 【あらすじ】 南海の大都市メイにすむトシアキは魔法学校の生徒。 夏休みの自由レポートを仕上げるため、アシュリーとともに孤島にある結界を調べに行く。 先生「えと……というわけで、夏休みの宿題として自由課題レポートを各自一つ仕上げてきてください〜。レポートの主題はこの地域に関することと、魔法に関すること。それ以外では自由ですよ〜。グループでも個人でもオッケー」 ミミをぴこぴこを揺らしながら先生が宣言した。 え――――っ! めんどくせー、なにそれー、んなこときいてないよー、だりー、めんどくせー…… とたんに教室中に響くブーイングの嵐。 まあ、そうだわなあ…… 俺は机に顔をべったりつけながら、ため息をついた。 終業式終わった直後に、急にそんなこと言われたら、誰だってブーイングしたくなる。 俺もブーイングを出したかったが、それ以上に腹が減っていた。 今日は朝飯を食べてくることが出来なかったのだ。 主に、時間的な理由で…… ぐーぎゅぎゅぎゅぎゅるるる。 ブーイングの嵐に、俺の腹の音が混じる。 サックスやらドラムやらトロンボーンの音が聞こえるのはどさくさにまぎれて軽音部員やらロッカー崩れやらがストレスを発散してるのだろう。 あ、誰か歌いだした。 先生「皆さんっ?」 ばすんっ! 肉球のついた手で先生が机を叩いた。 同時に静まり返る教室。 先生「先生みんなの不満とか聞きたくありません。生徒は先生の言うことを聞いて、夏休みのレポートしてくれば良いんです」 そこでにっこり笑う先生。 笑顔は妙に迫力があった。 先生「OK?」 それで決まりだった。 …… …… …… トシアキ「さて、昼飯にするか……」 HRも終り、腹の減った身体に鞭打ちながら俺が机から立つ。 アキトシ「なーなー、トシアキー」 トシアキ「あ?」 アキトシ「夏休みのレポートだけどさ、お前何やる?」 トシアキ「あー……いいや。というか、お前、んなもん今から決めるのか?」 健全な男子学生の過ごし方といえば、家でごろごろするか、冷房の利いた魔法銀行で涼むとかだろうに。 そして、宿題は夏休み最後の日に仕上げるのだ。 アキトシ「まあな。二人組みでレポート作るから……」 そういうアキトシの顔がでれっと緩む。 トシアキ「ははあ」 そういえば、こいつ彼女が出来たばっかりだったっけ…… トシアキ「まあ、がんばれよ」 惚気が始まる前に、アキトシの肩を叩くと、俺は教室から出た。 アキトシ「あ、待てよー。話はこっからなんだぜ、俺カノジョとさ……」 背後からなんか聞こえてくるけど無視だ。 …… …… …… 学校を出ると、空は今日も快晴だった。風が、潮風のつんとした香りを鼻に運んでくる。 暑い日差しが肌を焼肉にしそうだった。 俺は、額から流れる汗をぬぐう。 トシアキ「とりあえず、飯でも食うか……」 学校の食堂は混んでるだろうし、不味い。近くの定食屋にでもいくことにしよう。 確か『ウオノメヤ』でランチサービスがやってるはずだ…… そんなことをかんがえながら、校門から離れようとした、そのときだった。 ??「さて、だれでしょう?」 視界が真っ暗になった。 トシアキ「……あ?」 状況がわからなくなり、俺の意識は凝固した。 ??「もう、早く当ててよ」 その声で俺の意識は液状にもどった。 トシアキ「……ええっと。その声はアシュリーか」 俺は自分の顔に被さった手をつかんでどける。 アシュリー「あたり。久しぶりね、トシアキ」 トシアキ「ああ、久しぶり」 俺は猫のような目でアシュリーに片手を上げて答えた。 アシュリー・コート。ここ、南海都市メイに住む大富豪ティリオン・コートの娘だ。 俺とは同級生で、幼馴染……最近はめっきり会うことも少なくなった。 トシアキ「それで、今日は何か用か?」 アシュリー「うん、ちょっとね」 にっこり笑うアシュリー。 アシュリー「すこし長くなりそうだから、お昼でも食べながら話さない?」 トシアキ「ああ、いいけど……」 久しぶりに会ったのに、なんかぎこちなくないな…… 若干違和感を覚えつつも、俺は頷いた。 …… …… …… アシュリーが連れてきたところは学園から少し離れた場所にある、海鮮食堂だった。 アシュリー「ここのランチが美味しいのよ」 トシアキ「うん。特にAセットが旨かったな」 アシュリー「あ、トシアキも来たことがあったんだ」 ガラガラ、とアシュリーが戸を開く。 昼時ということもあって、店の中は込んでいた。うちの学生の姿もちらほら見える。 トシアキ「で、話って?」 おっぱいの大きい店員さんに案内されて席に座ると、俺はアシュリーに聞いた。 アシュリー「うん、それな んだけどさ。トシアキのクラスでも夏休みの自由課題でたよね」 また夏休みの自由課題か……。 皆まじめなんだな。 トシアキ「ああ、出たけど。俺はまだ何やるかとか決めてないよ」 アシュリー「そう、良かった。あ、わたしAランチで」 トシアキ「俺は日替わりランチで」 アシュリー「Aランチが美味しいって言ってたじゃん」 トシアキ「卵焼きがついているって書いてあったからな」 アシュリー「変わってないね、トシアキは」 楽しげにアシュリーは笑う。 トシアキ「いいだろ、好きなんだから」 そういいながらも、こうやって、アシュリーと話すのは悪い気分じゃない。 懐かしいようで、新しいような、不思議な感じがした。 トシアキ「それで、夏休みの自由課題がどうしたの」 アシュリー「それだけどさ。トシアキまだ何も決めてないって言ったよね」 トシアキ「ああ」 アシュリー「じゃあさ。わたしと一緒に……」 んふふ、とそこで彼女は微笑んだ。 アシュリー「ヤらない?」 トシアキ「……」 トシアキ「……」 トシアキ「……」 トシアキ「ああ、そういうことか」 アシュリー「? なに? あ、なんか変な妄想した?」 意地悪そうにアシュリーが笑う。 アシュリー「あたしが言ってるのは、夏休みの自由課題のことだよ」 トシアキ「わかってるって……それで、何をやるの」 アシュリー「トシアキはさ、南海のハダツ島ってしってる?」 トシアキ「うん、まあ。話には聞いたことあるよ。港から船で一時間ぐらいのところにある島だろ」 アシュリー「そ。そこを調べようと思うのよ」 ふふん、と得意げにアシュリーは鼻を鳴らす。 アシュリー「あの島には昔から結界が張られているって噂があってね」 トシアキ「あ、きいたことあるかもしれない。たしか、よくわからない結界が張られているせいで、街から近いのに誰もめったに行かないとか」 アシュリー「そう。他にもいろんな言い伝えがあって漁師ですら恐れているらしいわ」 トシアキ「そこを調べるっていうのか……なんか、危なくないか?」 アシュリー「大丈夫よ。あたしの魔法の成績、知ってるでしょ」 トシアキ「そりゃまあ」 アシュリーの成績は昔から異常なまでに良い。主席卒業と噂されているくらいだ。 「だから、そこらへんの結界ならちょいちょいのちょい……ね?」 アシュリーそこでにこーって笑った。 トシアキ「ふう……わかったよ」 昔からアシュリーは我が強かった。そして俺はいつもそれに付き従ってきた。 それは久しぶりに会った今も変わらないらしい。 …… …… …… にゃあにゃあ。 にゃあにゃあ ウミネコが騒がしい。 エサをくれると思ってるのか、俺の上空を飽きることなく飛び回ってる。 ざあざあ ざあざあ 波が押しては返し押しては返し。 飽きることなく俺の足元をうごめいている。 あ、フナ虫。 アシュリー「やー。良い天気になったわね」 そばではアシュリーが気持ちよさそうな顔で晴天を仰いでいる。 時刻は昼ちょっと前。 俺たちはいま、南海の孤島、ハダツ島に来ていた。 アシュリーが俺に提案してから、実に二日後のことだった。 即決即行は今も変わっていないのか。 アシュリーのそんなところは嫌いじゃないが。 特に自分がインドア派だから、なおさらに。 トシアキ「……で、どうするんだ?」 船からキャンプ用品やら荷物をおろして、俺はアシュリーに聞いてみた。 アシュリー「そうねえ。とりあえずお父様から地図をもらっているから、それを見てこの島を探索してみようか」 そういうことらしい。 …… …… …… 島は小さかった。ぐるりと周りを歩いて、一時間もかからなかった。 島の中心部に小さな山が出来ており、その周りを森が取り巻くように作られている。 肝心の結界は、というと簡単に見つかった。 山の周り……森と山の境界線につくられていたのだ。 山に近づこうとすると、いつの間にか逆を向いてしまっている。 走ってみても、匍匐前進してみても、逆向きににじり寄っても結局無理だった。 結界は不可視だが、 トシアキ「どうやら、この結界を作った人間は、どうやっても山に入れたくないみたいだな」 アシュリー「みたいね……まずは、結界を調べてみましょうか。トシアキは土系の魔法が得意よね。土地と結界のつながりを調べて。あたしは結界そのものを調べてみるわ」 トシアキ「わかった」 俺は結界を前に、親指と人差し指で輪を作る。ぼそぼそと魔法を唱えた。 それに合わせて指でつくった輪に、緑色の「レンズ」が出来た。 この魔法「レンズ」を通してみると、不可視の魔法を見ることが出来るようになる。 つまり結界を覗けば、不可視の結界が肉眼で見えるようになるはずだ……。 トシアキ「これは……」 レンズから結界と土地とを覗いた俺は、眉をひそめた。 結界は通常、土地の上に作られる。その場合、結界と土地とを糊付けしなければならない。 そうしないと、結界を動かすことが出来る……つまり簡単に結界を破壊できてしまうのだ。 木と木をつなぎとめるときに釘が必要なのと同じだ。 結界と土地とをつなぐ方法はいくらでもあるが、一番簡単なのは、釘状の接着魔法で結界と土地とをとめていくってものだ。 勿論、このつなぎとめの魔法は、やり方さえ知っていれば、簡単に抜くことが出来る。 しかし、ここのつなぎとめはそんな簡単なものじゃなかった。 言ってみれば、それは木の根だった。 結界から無数のつなぎとめの魔法が根のように生えていて、それが土地をがっちりとつかんでいる。 今まで読んできた魔術書に乗っていないようなつなぎとめの魔法だ。 俺は試しにつなぎとめの魔法をきってみることにした。 ぼそぼそと魔法切断の呪文を唱え、根っこの一部を切ってみる。 ぷちっ。 しゅるるるる……。 トシアキ「……」 切った途端に、再生しやがった。 どうやら一筋縄ではいかないらしい。一気に全てのつなぎとめの魔法を切れば、なんとかなるかもしれないが……。 流石にそこまでの技量を俺は持っていない。 とりあえず、俺は魔法を解除した。 トシアキ「さて、どうしたもんかな……」 と、半ばあきらめた気分でアシュリーを見ると、あっちも苦戦しているようだった。 アシュリーは結界の成分と構成を見ているようだが、それがはかどっていないことがその表情を見ればわかる。 めちゃくちゃしかめ面だ。 トシアキ「アシュリー、そっちはどうだ?」 アシュリー「駄目。予想以上に難しい……っていうか、ありえない」 俺がそばによると、アシュリーはため息をつきながら、肩をがっくり落とした。 アシュリー「構成も複雑だし、成分もこれまで見たことのないものばかり。幾つかの結界成分を合成してあると思うんだけど、元の成分すら思いつかないわ……そっちは?」 トシアキ「同じく。この結界を作ったのは高名な魔術師か、それとも偏執狂だな」 アシュリー「こんなに難しいなんて……」 はああああぁぁぁぁぁぁ。 そういいながら深い深いため息を突く。 思った以上にアシュリーはへこんでいるようだ。 トシアキ「まあ、まだ日にちはあるしさ。時間があればまた良い方法も思いつくかもしれないさ」 俺はアシュリーの肩に手をやり、慰めた。 トシアキ「とりあえず、今日はもう調査はやめて、夕飯の準備しようぜ」 すでに日は西に沈みつつある。 アシュリー「うん……」 とぼとぼと歩き出すアシュリー。 そのあとをおいかけようとして、 トシアキ「ん……?」 俺は地面にきらりと光るものに目をとめた。かがんで拾ってみる。 トシアキ「なんだこれ」 トシアキ「銀の粒……?」 西日にきらりと光るそれは、銀の粒だった。 平たくて、でこぼこしている。 トシアキ「なんでこんなものが」 しかし、それについて考える暇はなかった。 アシュリー「トシアキー、早くかえろーっ」 トシアキ「おっと」 とりあえず、俺はその銀の粒をポケットに突っ込むと、慌ててアシュリーを追いかけ始めた。 …… …… …… 俺は焚き火ととテントの準備。 アシュリーはシャワーと夕飯の準備。 それぞれ分担してすることになった。 アシュリー「…ごこうのすりきれ……のすいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ……食う寝るところに住むところ……パイポパイポ」 アシュリーがむにゃむにゃと呪文を唱えると、海から半径五メートルくらいの海水で出来た球体が浮かび上がった。 俺はテントのそばで、石で即席の暖炉をつくる。中に乾いた流木を二束、三束入れると、発火の呪文を唱えた。 ぽっ。 てな音を立てて炎が燃え上がり、焚き火の完成。 その間にアシュリーは海水に塩分抽出の魔法を使い、真水を作り上げていた。 それを簡易シャワーの皮袋につめる。 俺は夕日に照らされたそんな彼女をぼーっとみつめながら、 トシアキ「しかし……」 なんか可愛くなったなあ。 学校に入って別のクラスになってからは、アシュリーと会うことは殆どなかった。 ときどき学校内ですれ違うことはあっても可愛い、と感じることはなかった。 この、二人で無人島に来ているっていう雰囲気の所為だろうか……。 ??「ほお、こんな島に若い者が二人も来ておるのか」 トシアキ「うっわあ!?」 背後から声をかけられて、驚いた俺は手を誤って手を焚き火に突っ込んでしまう。 トシアキ「あっち、あっちちちちちちっ」 ??「ほっほお。元気じゃのお」 トシアキ「ふー、ふーっ……誰だか知らないが、お、驚かすなよお」 俺は背後の人物に振り返った。 老人「ほっほ。すまんのお」 トシアキ「爺さん、あんた誰だよ」 老人「わしか? ただの漁師じゃよ」 ほれ、と爺さんは手の漁師網を見せた。 なるほど、確かに漁師だ。 老人「少し船で出すぎたのでなあ。ちとこの島で休憩じゃ」 トシアキ「へえ」 老人「それでお前たちは?」 トシアキ「ああ、俺たちは学校の自由課題でね。この島の結界を調べてるんだ」 老人「ほう?」 爺さんが驚いたように目を見開いた。 トシアキ「ああ、そうなんだ。爺さん、何か知らないかな」 老人「ふむ……いいや、わしは何も知らないのお。ただ……」 トシアキ「ただ?」 老人「この島には亡霊が住んでいる、と聞いた覚えはある」 そういうと、老人は森のほうへと歩いていった トシアキ「……」 あの爺さん、船で来たんじゃないのか……? まあ、呆けてるんだろう。 アシュリー「トシアキー、なにやってるのーっ?」 …… …… …… とっぷり日もくれて、空には満点の星。 昼の暑さとはうって変わって夜風が寒い。 そばの焚き火だけがあったかかった。 俺は一人で海を眺めながら、ボーっと過ごしていた。 アシュリーはいま、シャワーを浴びている。 テントから程遠くない場所に作られた簡易シャワーから水の流れる音がここまで響いてくる。 トシアキ「……」 二人きりか……。 誰もいない無人島。 二人きり。 そばからはシャワーを浴びているアシュリー。 勿論裸で浴びてるんだろう。 二人きり。 裸。 これは……ご褒美か? トシアキ「むう……」 俺は立ち上がる。 トシアキ「いやいや」 それはだめだろう。 首を振る。 シャワーの音から離れようと歩き出す。 トシアキ「……おい、俺の脚」 しかし意に反して足はシャワー室へと向かっていた。 まるで身体に磁石でも入っているみたいだ。 トシアキ「いや、駄目だから」 心臓がバクバクなっていた。 最後の理性防壁が決壊しそうになった、そのときだった。 アシュリー「にいやあああああああああっ」 全裸のアシュリーがシャワー室から飛び出してきた。 トシアキ「のわああああああああああああっ、すまん、すまんです、すまんこですっ」 アシュリー「ト、トシアキッ! トシ、トシっ!?」 そして、アシュリーがぎゅうっと抱きついてきた。 弾力ある胸がむにゅむにゅ、服一枚ごしにあたって気持ちいい。 おっぱいって気持ち良いんだな……。 トシアキ「は?」 いやいや。 ……てっきり悟られてたこ殴りになると思ったが。 何かおかしいぞ。 アシュリー「トシアキッ、あれ、あれぇっ……」 アシュリーが涙目の上目遣いでじっと見る。 トシアキ「あれ?」 アシュリーがシャワー室を指差す。 そのほうをじっと見つめると、 トシアキ「……とかげ」 トカゲだった。 正確にはアカグロオオマダラヘビトカゲ。 毒のない、愛嬌のあるトカゲだ。 そのトカゲが一匹、簡易シャワー室の壁にぺったり張り付いていたのだ。 アシュリー「あれ、早くどっかやってっ。トシアキぃ……」 トシアキ「あ、ああ」 俺はしがみついたままのアシュリーを引きずりながら、シャワー室まで行った。 歩くたびにアシュリーの胸がこすれる。 そのやわらかさに我知らず顔が赤くなってしまう。 気持ちいい。 いや、そんなこと考えている場合じゃない。 俺は首を振りながら、指先で弾いた。 弾かれたトカゲは地に落ちるとちょろちょろと慌てて去っていった。 トシアキ「ほら、これで大丈夫だぞ。アシュリー」 アシュリー「……ほんとう?」 トシアキ「ああ」 アシュリー「ありがとう……トシアキぃ」 ぎゅっと俺を抱きしめる。 トシアキ「あ、ああ」 頼むから俺の股間膨らまないでくれよ……。 それから数十分経った。 ような気がしただけでたぶん十秒も経っていないんだろう、アシュリーが震えだした。 トシアキ「ん、どうしたアシュリヒ」 ぎゅう。 トシアキ「ひたい」 アシュリーが俺の頬をつねっていた。 アシュリー「トシアキ」 トシアキ「なんら」 アシュリー「目、つむって」 トシアキ「なんれ」 アシュリー「わかんない?」 こっちを見上げてきたその顔は真っ赤だった。 トシアキ「あ」 やっと今の客観的な状況を思い出した俺だった。 …… …… …… アシュリー「もう」 服を着替えたアシュリーの顔はまだ赤い。赤い顔のまま、ぷんぷんおこっている。 トシアキ「いや、わるい」 なんとなく謝る俺。 アシュリー「もう」 トシアキ「すまん」 アシュリー「謝らないでよ。トシアキが悪いんじゃないんだから」 トシアキ「……」 アシュリー「……」 トシアキ「……」 なんだ、この間は……。 すごい気まずいぞ。 トシアキ「と、とりあえず、朝もはやいことだし今日はもう寝ることにしようか」 アシュリー「……うん」 アシュリーがテントのほうに歩き出す。 俺もそれに続こうとした。 ??「……れ」 トシアキ「うん?」 ??「……えれ」 何だ? ……声? 俺はあたりを見回した。 そのときだった。 砂浜に、一つ、足跡が出来た。 そのうえには、誰もいないにもかかわらず。 トシアキ「なに……?」 ??「かえ……」 さらに、足跡が増えていく。 しかも、こっちへ近づいてきていた。 それに合わせて、声も近づいてくる。 ??「かえれ……」 アシュリー「なに……あれ?」 アシュリーも驚いた顔で足跡を凝視していた。 ??「かえれええ……」 足跡と声が近づくにつれ、次第に姿が見え始めた。 それは薄ぼんやりとした輪郭を持った、半透明な触手で構成された人の形をした、何かだった。赤く光る小さな目が、こちらを睨んでいた。 ……ばけもの。 アシュリー「これが……この島の言い伝え? たたり?」 トシアキ「何かわからないけど……」 俺はまだ呆然とばけものを見つめているアシュリーの手を握った。 トシアキ「逃げようっ」 俺たちは踵を返して走り出した。 ばけもの「かえれえええ……」 案の定、ばけものは追いかけてくる。 しかも…… アシュリー「トシアキっ」 トシアキ「何だっ」 アシュリー「増えてる!」 トシアキ「はっ?」 振り返ってみると、アシュリーの言ったとおりだった。 いつの間にか、化け物の数は三人に増えてやがっていた。 トシアキ「くっそ!」 俺はポケットから、投擲用のコインを取り出した。中心には土が入っている。 呪文を唱える。コインが光った。魔法がコインにこめられる。 トシアキ「浄化されろ!」 俺はコインを化け物たちに投げつけた。 土は物質を分解し、再生する。 このことから魔法的に見ると土には浄化の効果、ひいては人工物を自然に帰す効果があるとされる。 あの化け物はどう見ても、人工的に魔法で創られたものだ。 もしかしたら、これで浄化されるかも…… 化け物の一人にコインが当たった。コインから緑色の光が一瞬放たれ、同時に ぼぅん! 爆発。 トシアキ「やったか?」 俺は半ば期待していたが、 アシュリー「効いてるけど……駄目っ」 アシュリーの言うとおりだった。 浄化魔法は、一応は効いていた。その証拠に化け物の右腕は吹き飛ばされていた。 化け物「かえれええええっ」 しかし、切断面からすぐさま触手が生え、右腕が再生してしまう。 トシアキ「……こいつも再生かよ!」 アシュリー「トシアキ、早く逃げなきゃっ。化け物の数がまた増えてるわ!」 …… …… …… アシュリー「はっ、はっ……」 トシアキ「ぜぇ、はぁ、ぜっ、ぜっ」 俺たちは森の中を走って走って走りまくった。 もういまどこを走っているかすらわかりゃしない。 しかしいくら走っても、化け物たちは追いかけてくる。 疲れた様子すらみせやしない。 トシアキ「くそ、このまま夜明けまで走り続けるのかよ……」 アシュリー「どうするの、トシアキ……」 隣を走るアシュリーはもうすでに息を切らしている。歩くのすらつらそうな表情だ。 俺も、そろそろ限界だ。 どうする? どうする俺……? ループしはじめる俺の思考を断ち切ったのは、アシュリーの声だった。 アシュリー「トシアキ、前……」 トシアキ「何だ!」 アシュリー「あそこって……!」 トシアキ「あ」 俺たちの目の前、そこは、山と森との境界線……そう、結界のある場所だった。 走り続けて、ここまで来てしまったか。 いや、化け物たちに誘導されたのか? 俺たちは結界の前で立ち止まった。 トシアキ「ここまでか……くそっ」 俺は夜空を仰ぎ見た。 化け物「かえれ……」 化け物たちが、立ち止まった俺たちの周りを取り囲む。 化け物「かえれえ……」 にじり寄ってくる化け物ども。 このままじゃあ……。 アシュリー「トシアキ……」 アシュリーが俺の手を強くにぎりしめた。 こんな状況だけど、潤んだ瞳にどきんとしてしまう。 化け物「かえれ……」 もう、あと数歩で化け物たちが近づいてくる。 トシアキ「……アシュリー」 俺は覚悟を決めた。 トシアキ「俺についてきてくれるか?」 アシュリーは驚いた顔をした。 しかし、すぐに頷く。 アシュリー「うんっ」 トシアキ「よし!」 俺はアシュリーの手を再び強く握った。 片手で投擲用コインを取り出す。呪文を唱えながら、結界に投げつけた。 不可視の結界あたったコインが、緑色の光を放つ。 もしかしたら、あるいは……これで、結界にひびが入ったかもしれない。 トシアキ「アシュリー、行くぞ!」 俺はアシュリーの手を引いて結界に向かって走り出した。 いちか、ばちかだ!! 俺たちは結界に突っ込んだ。 突っ込みながらも、俺は無理だろう、と無意識のうちに悟っていた。 アシュリーでさえてこずる結界だ。俺の魔法程度じゃ破壊できない。 アシュリー、ごめん……。 …… …… …… トシアキ「あれ?」 気がつけば、俺たちはいつの間にか、山にいた。背後を振り向けば、結界と森が見える。 アシュリー「これって……」 つまり…… トシアキ「結界を、抜けられたのか」 ぼんやりと、俺が呟く。 アシュリー「……トシアキっ」 ぼふっ。 トシアキ「わっ」 俺が余韻に浸るまもなくアシュリーが抱きついてきた。 アシュリー「すごい、すごいじゃない! どうしてあの結界が通り抜けられたのっ? すごい、好き、大好き!」 抱きつきながら、ぴょんぴょんとびはねるアシュリー。 またおっぱいあたってる…… トシアキ「あ、あはは」 とりあえず、俺はわらうしかできなかった。 俺だって聞きたいぐらいだ。 …… …… …… アシュリー「それで、これからどうするの?」 トシアキ「そうだなあ。あの化け物たちは、この結界のなかに入られないみたいだし、このまま朝まで待ってても良いな」 俺は結界のほうを見た。結界ごしに化け物たちが恨めしげにこっちを見ている。 あの化け物たちは夜中になってから出てきた。 ってことは朝になれば化け物は消えるはずだ。 アシュリー「朝まで待つのもいいけどさ、トシアキ」 トシアキ「うん?」 アシュリー「どうせならさ」 アシュリーはいたずらっぽく笑った。 アシュリー「あの山のてっぺんまで、上ってみない?」 …… …… …… 山はさほど高くはない。小高い丘くらいのものだ。それでも、これまで走り続けてきたのだ。山の頂上につくと同時に、俺の体力はぎりぎりまで削られていた。 トシアキ「はああああぁぁぁぁぁっ」 俺はため息をついて、その辺に腰を下ろした。 アシュリー「トシアキ。体力ないよ」 くすくすとアシュリーが笑う。 トシアキ「アシュリーの体力がありすぎるんだよ」 アシュリー「乗馬やってるからね……それにあたしは回復が早いほうなの」 トシアキ「へえ。しっかし……」 俺は辺りを見回した。 あたりは草木も生えていない。むき出しの地面がえんえんと続いているだけだ。 何の面白みもない。 トシアキ「何も無いな……」 アシュリー「そうね……ううん、ちょっと待って?」 アシュリーが難しい顔でじっと、地面を見つめる。 トシアキ「?」 アシュリーはひざまずくとぶつぶつと呪文を唱え始めた。 アシュリー「トシアキ、これただの山じゃないみたいよ?」 トシアキ「どういうことだ?」 アシュリー「みててね……これなら、何とか解除できそう」 アシュリーが目をつぶって呪文を唱えだす。 アシュリー「……」 結構長いな……。 もう五分くらい詠唱したか、アシュリーが目を開いた。 アシュリー「よし、これで完成のはず」 そういうと地面の一部を指先でつまんだ。 そのまま、指先を上に持ち上げる。 ぺりぺりぺり…………。 地面がはがれていく。 まるで、たまねぎの薄皮をむくようだった。 トシアキ「……」 俺はことばも出ない。 アシュリー「魔法皮膜を張っていたのよ」 トシアキ「つまり?」 アシュリー「つまり、下に隠したいものがあるとするでしょ? それを隠すために、シート状の隠匿魔法……『魔法皮膜』を上に乗せるの。そうすると、その下にあるものを隠せるの」 アシュリーが解説してくれる。 アシュリー「まだ学校では習っていない魔法だけどね。たまたま覚えていたの」 トシアキ「厚みとかは?」 アシュリー「それも大丈夫。上質な『魔法皮膜』なら、その厚みさえも隠せるわ」 つまり、見ただけじゃ、魔法皮膜で隠されてることもわかんないってことだな。 納得だ。 トシアキ「……っと、納得してる場合じゃないな」 俺は、地面に再び目を向けた。 『魔法皮膜』のしたに隠されていたもの。 その下から見えたもの。 それは…… トシアキ「……棺」 長方形の、黒い大きな棺だった。 トシアキ「棺ってことは、つまり……」 アシュリ−「中身があるかもしれない。ってことよね」 トシアキ「……だな、うん?」 俺は棺に近づきながら、あるものに気づいた。 紙が、棺の上に乗っていたのだ。 アシュリー「それって……?」 トシアキ「良くわからんけど、結界や、この棺、化け物に関係するもの、だと思う」 「読んでみましょ」 俺は、ぼそぼそと呟いて照明魔法を作り出した。光の玉が俺たちの頭上に浮かび上がる……。 …… …… …… ――東歴1707年。私の、友の、そして最愛だった妻の犯した恥をここに記す。 アシュリー「東歴1707年って……三百年も昔の話じゃない」 トシアキ「とりあえず、先を読んでみよう」 私は、友を、妻を殺した。 忘れもしない、あの秋のとき。 魔法使いだった私はそのとき、諸国を巡行していた。 更なる魔法の道を極めんとするためである。 妻は、故郷においてきていた。 危険だったからだ。時には命の危険さえ訪れる私の旅に、愛する妻を連れて行けるはずがなかった。 私の唯一の親友を見張りにつけて。 しかし、それは私の過ちだった。 私がこの二人を近づけなければ、このようなことは、おこらなかったのかもしれない。 私が旅に出て三ヶ月がたった。 私は帰省することにした。 突然の帰省だった。驚く彼女の顔を見たくて、妻には帰ることは告げていなかった。 しかし、私の家で、待ち構えていたのは、驚きながらも喜ぶ妻の顔などではなかった。 私を待っていたのは、寝室で絡み合う男女の姿。 親友と、妻の交合の姿。 その後のことはよく覚えているわけではない。 私が憤怒したこと。 妻が泣いて許しを請う姿。 友の、首を吊る姿。 時系列がバラバラの、そんなシーンが頭をよぎるだけだった。 わかっていることは、友が不貞を恥じて、自殺したこと。 そして、妻が、殺してくれ、と頼んだこと。 しかしそれは不貞を恥じたからではなかった。 死んで、親友と同じ場所に行こうと考えていたからだった。 私は苦悶した。たとえ、不貞を働いていたとしても、妻のことを私はいまだに愛していたのだ。 だが、結局、私は妻を殺した。 この島の山の頂上で、首を絞めて。 棺の中で……。 私に不義の密会を見つかったあの日から、妻は食事を取らず、日に日にやせ細っていった。 私は妻が、死に近づくのを見るのが忍びなかった。 それぐらいなら……と私は彼女を殺すことにしたのだ。 妻を殺した私はこの山の周辺に結界を張った。 そして、夜には これで、この島に誰も近づこうとは思わないだろう。 このことは、誰にも明かさず、私は一生を終えるだろう。 私が罰を背負うのを恐れているわけではなかった。純粋に、恥のためだった。私の、友の、妻の恥のために。 しかし、私にはこの事実に耐え切ることが出来そうになかった。 そのせめてもの慰めに、この紙に真実をぶちまけることにした。 私への文章はこれで終わる。 願わくば、誰にもこの結界が破られんことを。 …… …… …… 紙面の文書は、そこで終わっていた。 アシュリー「……」 トシアキ「……」 暫くの間、俺たちは無言のままだった。 アシュリーを見れば、悲しげな顔で、口元を押さえている。 アシュリー「……見つけなければ、良かった」 トシアキ「ああ」 アシュリー「……ねえ、トシアキ」 トシアキ「なに」 アシュリー「すこしだけでいいから」 俺の胴に、アシュリーの両腕が回った。 アシュリー「こうさせて」 ぎゅっと。 そのまま、俺は抱きしめられた。 トシアキ「アシュリー……」 俺の胸に顔を伏せて、肩を震わせるアシュリーの頭を撫でてやる。 それくらいしか出来なかった。 ??「とうとう、見つかってしまったか……」 俺の背後から、声がかかる。 その声には、聞き覚えがあった。 俺は顔を上げた。 トシアキ「爺さん」 ……あの、浜辺であった爺さんだった。 しかし、その顔は、あのときの柔和なものとは違った。 暗く、重く沈んだ顔だった。 トシアキ「何であんたがここに……」 老人「わしがこの結界を作った、魔法使いだ」 トシアキ「ば……」 馬鹿な。 魔法使いでも、三百年も生きられるもんか。 そういおうと俺が口を開きかけた。 アシュリー「トシアキ、あの人を良く見て」 いつの間にか、顔を上げたアシュリーがささやいた。 トシアキ「なに?」 言われるままに、じっと目を凝らしてみる。 その姿は透けて見える。 まさか……。 アシュリー「……そう、亡霊」 背筋が、震えるのを感じた。 俺は、アシュリーをかばうように、老人の前に立つ。 老人「おびえることはない」 あいもかわらず暗い瞳でこちらを見つめながら、老人は 老人「お前たちに危害を加えるつもりは、ないのだ」 トシアキ「でも、俺たちは……」 老人「そう、私たちの秘密を暴いた」 「だが、それでよかったのかもしれない」 老人は大きく息を吸い、夜空を見上げた。 老人「ずっと考えていたのだ」 老人「何故私が亡霊になって、この島に三百年間も、とどまっているのかを」 トシアキ「……」 アシュリー「……」 老人「本当ならば、はやくあの世へ行きたかった。しかし、いけなかった」 老人「その理由がこれまではわからなかった……しかし」 老人「お前たちのおかげで、その理由がやっとわかった気がする」 老人「私は誰にもこの秘密を知られたくなかった」 老人「……だが、心の奥底では少なくとも、誰かに、この秘密を知ってもらいたかった。共感してもらいたかった。心の重荷を分けて欲しかった」 老人「いま、それがわかった」 老人が、そこで笑った。労役から開放された、奴隷の顔だった。 俺たちは笑えない。 三百年もの間、誰も来ない孤島で、亡霊として過ごしてくる……。 想像もつかない。 老人「私は、これから、あの世に下る。だが、その前に、一つだけ約束して欲しい」 老人「頼むから、棺の中だけは、覗かないでくれ。妻の姿を、晒されるのは、忍びない」 俺は、アシュリーを見た。 アシュリーは首を縦に振る。 もとより、俺もそのつもりだった。 トシアキ「ああ」 俺は頷いた。 老人が笑う。 今度は、心のそこから。 そして、老人はいつの間にか消えてしまった。 まるで、いつもどおり、だれもいなかったかのように。 アシュリー「……」 トシアキ「……」 沈黙する俺たちに、東の海から、太陽が昇る。 いつの間にか、夜明けが来ていた。