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  When Farmer Met Gryce

これは、Art Farmerとしては、ほとんど処女作に近い盤でしょう。この初期の作品を聴いてみても、「歌心の人」であって、火を噴くようなソロの人ではないことは既に明らかで、それを巧く活かしたその後のジャズメンとしての路線は、立派といえるでしょう。 トランペッターがアレンジを意識した2管編成のバンドを組む場合、テナーサックス奏者を相棒に選ぶことが多い。音域が離れていることと、音色が対照的であることがその理由だろう。逆にトランペットとアルトサックスという組み合わせは、音域が近いためだろうかそれほど数が多くない。ここに聴かれるアート・ファーマー、ジジ・グライスのコンビは、トランペットとアルトサックスという組み合わせのなかでも代表的なものだ。収録曲はすべてグライスの手により、編曲はシンプルだがツボを心得ていて効果的だ。録音は54年5月と翌年5月の2回に分けて行われた。リズムセクションは、54年がホレス・シルヴァー(P)、パーシー・ヒース(B)、ケニー・クラーク(Dr)。55年はフレディ・レッド(P)、アディソン・ファーマー(B)、アート・テイラー(Dr)である。
1. A Night At Tony's
2. Blue Concept
3. Stupendous-Lee
4. Deltitnu
5. Social Call
6. Capri
7. Blue Lights
8. The Infant's Song

Art Farmer tp
Gigi Gryce as
Horace Silver p
Pervy heath b
Kenny Clarke ds
Recorded May 19, 1954.
Freddie Redd p
Addison Farmer b
Arthur Taylor ds

 

Recorded May 26, 1955

ジャズトランペットというと、何故か「火を吹くようなプレイ」だとか、「炸裂するハイノート」みたいなところに焦点が行きがちである。でもマッシブなプレイだけがトランペットの魅力ではないのですよ。アート.ファーマーは派手さはないけれども、良く歌う、理知的なジャズトランペッターの最右翼とも言える存在です。一方、ジジ.グライスは、音楽理論をきっちり勉強した人で、作曲のセンスには非凡なものがあります。この2人のフロントラインは非常に魅力的です。グライスのちょっと捻ったコード進行を持つ曲(佳曲多し)を、訥々と歌っています。グライスはジャズから遠ざかってしまったため、あまり評価されていませんが、この人の作曲、プレイはもっと評価されるべきものがあります。永年着込んで身体に馴染んだ革のコートのように、聞き飽きしないアルバムです。ジャズを聴き始めたばかりというかたにも是非。
50年代半ばの作品ながら、アレンジ重視の優れたアルバム。それもそのはずジジ・グライスという優れた作編曲者のペンによるもの。グライスはパーカー派のアルト・サックス奏者だが、アドリブにおいてもいたるところにバランスよく名曲の部分を引用したり、フェイクしたりできる豊かな才能の持ち主である。しかし、パーカーという巨人、アート・ペッパーやリー・コーニッツというアドリブの才人に一歩及ばない事から、地味でいぶし銀のような存在であった。一方アート・ファーマーも豊かな楽想と安定した演奏のできるトランペッターだが、彼の悲劇はライオネル・ハンプトンの楽団で一緒だったアドリブの天才、クリフォード・ブラウン(1956死去)とプレイし、自らの才能に限界を感じたことと、マイルスという時代を切り開くエモーショナルな天才の後塵を拝した点である。しかし、やがていぶし銀というべき独自路線に活路を見出した。このアルバムでのグライスとの出会いはその頃の事。すなわち名脇役の二人が競演した渋い映画のようなアルバムで、まさにいぶし銀対決なのだが、忘れられない渋い、すばらしい演奏である。特にグライスの選曲と編曲の妙味がハード・バップという荒波の中に美しくも哀しくも、寛いだ名演を実現させたといえよう。

 

 

 

 

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