○月×△日 その日の夜。私は、人気の無い森の一角に計画に必要な物を潜ませる。「こうゆうことって、まるで密室殺人のトリックを仕込む犯人みたい」と、私はとてもウキウキしていた。 翌日の昼、梅雨明けの不快な暑さの広がるなか、私は何時も通りの服に着替え、大型の水筒とタオルを用意して家を出た。蒸し暑さと照り付ける太陽に顔をしかめながら、ターゲットの住処を探す。 ・・・あった。私の家をもう少し小さくした感じの家に花果子念報という手書きの看板が掲げられていた。扉を叩く。施錠が外れる音がした後、今日の暑さにやられたのか、気だるさの極みといった表情の主が 顔を覗かせた。珍しい来訪者に始めは警戒していた様子だが、私がカメラが無くなってしまったので共同取材をしたいとの趣旨を伝えると、 予想外にあっさり同意した。暫くして、着替えた花果子念報の主が出てきた。右手で、私のお目当てのモノを弄っている。 ――暫く妖怪の山上空を飛び、私は取材現場と称した人気の無い場所に降り立った。「何も無いじゃない」と、ターゲットは怪訝な表情を見せる。私は、「あの木の上を見てください」と目の前の木立を指差す。木立の上を見ようと視線を上に上げ ――重心がほんの少し後ろに傾いた 瞬間、私はターゲットの両脚を払った。フワリ、と一瞬宙を舞った後、ターゲットは地面に背中を打ち付ける。驚愕の表情を見せるターゲット。 矢継ぎ早に鳩尾を数回踏みつける。ターゲットは、堪らず眼を見開き吐血した。私はすかさずマウントポジションをとり、ターゲットの両腕を脚で押さえ付ける。そして、タオルで鼻と視界を塞ぎ 酸素を吸おうと大きく開いた口に水筒を押し込んだ。必死に首を振り、身体を震わせて水から逃れようとするが、引き篭りの力などたかが知れてる。タオルを持った左手は ガッチリ頭を押さえ、右手に持った逆さの水筒は無慈悲にターゲットに水を流し込む。蟇の様な声を上げながら懸命の抵抗をしていたターゲットだが、 水筒が少し軽くなってきた辺りで抵抗は小さくなり、水筒が空になる頃には白眼を剥いて動かなくなっていた。ふう・・・と、一仕事終えて汗を拭う私。お目当てのブツを取り、 ターゲットの身体を茂みに放り込む。念のために前日、茂みに隠しておいたロープで縛り上げて猿轡を施した。 ――それじゃあ、死ぬまで借りておくわね。 どっかの白黒みたい、と苦笑する私。ふと、前と違い血一つ付いていない自分の服を見る。「そういえば私も白黒ね」と、再び苦笑を重ねて私は飛び去った。