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多ジャンルバトルロワイアル Part.16
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多ジャンルバトルロワイアル Part.16
1 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/11(土) 23:08:07.45 ID:sCRAmmcs
ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html
〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/
wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
2 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/11(土) 23:09:12.71 ID:sCRAmmcs
★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
3 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/11(土) 23:09:53.12 ID:sCRAmmcs
1/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/ ● 枢木スザク/ ● C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
0/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/ ● 竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
1/5【スクライド@アニメ】
● カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
1/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/ ● 岩崎みなみ
1/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/ ● 雪代縁
1/4【仮面ライダー龍騎@実写】
● 城戸真司/○北岡秀一/ ● 浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
1/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/ ● 水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
0/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/ ● 田村玲子/ ● 後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
0/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/ ● 三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
0/2【DEATH NOTE@漫画】
● 夜神月/ ● L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
0/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/ ● 桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
0/1【灼眼のシャナ@小説】
● シャナ
10/65
4 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/11(土) 23:10:32.19 ID:sCRAmmcs
スレ立て終了、投下待機
5 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:44:10.84 ID:f8Ch1cCx
回復して体を起こし立ち上がるとランスロットの駆動音は遠ざかっていた――北岡が引き付けているのだろう。
ロロに代わって贄殿遮那を抜く。
北岡のもとへ駆け付ける前に死体の傍らに膝を落とし、見開いていた目を閉じさせる。
イケブクロでルルーシュの学友シャーリーを、この会場でアイゼルを殺害した少年。
「ロロ・ランペルージ、ルルーシュ様の偽りの弟……。
私は貴様と最期まで分かり合えなかった。
だが――」
年齢も出自も違う、積み重なるのは互いに嫌い合う要素ばかりだった。
ナナリーの件、アイゼルの件、今更ロロと分かり合いたいとも思わない。
ロロの方からしても願い下げだろう。
だがロロは、ゼロでも皇子でもないルルーシュ・ランペルージ個人の家族として時間を共有していた。
一年間――ジェレミアにしてみればとても長いその時間、ルルーシュにとって最も身近な存在としてそこに居た。
シャーリーやアイゼルを殺したのも、純粋にルルーシュだけを想った結果だった。
ジェレミアには出来なかった事をしたのだ。
嫌悪も憎悪もある、しかし敬意も羨望もある。
「貴様のルルーシュ様への思いに偽りがなかった事は、覚えておこう」
手向け代わりの言葉を残し、ジェレミアはその場を後にする。
ランスロットの攻撃によって脆くなっていた天井が崩壊し、遺体は瓦礫の中へ飲み込まれた。
▽
地上に倒れた北岡。
ビルの上から降ってくるランスロット。
腕が千切れかけていた。
立ち上がる暇もない。
潰される。
そう北岡が諦めそうになった時、声がした。
「北岡さん!!」
風と共に空を切る箒。
ランスロットが着地したその場所には、誰も残っていなかった。
「助かった――から大きい声では言えないけど、無茶はやめてよね」
「ごめんなさい……」
ランスロットが地面に辿り着く直前、つかさは地面すれすれを最高速度で通過した。
北岡はその時を逃さずに箒の柄に掴まって難を逃れたのだ。
今はハーケンも届かない所まで高度を上げ、北岡が箒にぶら下がった状態のまま会話している。
そしてつかさはリフュールポットで北岡の肩を治療しながら、Gー9で見たものを語った。
「……それ、ジェレミアにはもう話した?」
「すみません、今戻ったところなので……」
初めは耳を疑った。
志々雄の真意は相変わらず分からないままで、ジェレミアの意見を聞かない事には動けない。
「とにかく今はジェレミアを探し――ッ」
息を飲み、「避けて」と叫ぶ。
地上にいたランスロットは青い銃を上空、つかさと北岡に向けていた。
つかさが箒を旋回させる。
すぐ真横を風と衝撃が駆け抜け、煽られて箒の軌道がぶれた。
6 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:45:20.39 ID:f8Ch1cCx
人間が扱うには大きすぎる、ギガランチャーと比べてさえ巨大なランスロットの銃・ヴァリス。
その詳細はジェレミアから聞かされていないが、命中すれば形も残らないだろう。
そう思わせるに足る威圧感が、数百メートルと距離を取ったこの高さまで届いている。
第二撃も北岡がつかさに指示を出して回避をするものの、北岡の体勢が悪く長続きしそうにない。
ヴァリスの銃口が光る。
第三撃が放たれようとした時、銃身が揺れた。
ジェレミアが上へと集中していたランスロットの体を駆け上がり、ヴァリスに直接蹴りを入れたのだ。
「遅いよ……!」
北岡はつかさに高度を下げさせ、箒に掴まっていた手を離してビルの屋上に着地。
マグナバイザーの連射でブレイズルミナスを発生させ、足止めを再開した。
手にはつかさから受け取ったフラムがある。
そしてつかさに指示を出し、ジェレミアのもとへ送り出した。
▽
ビルの屋上に北岡、地上にランスロットとジェレミア、上空につかさ。
つかさは更に高度を下げて戦場に接近する。
基準とするのは北岡の位置。
ランスロットに対し北岡以上に近くなれば攻撃目標にされてしまう。
北岡の言い付けに従い、離れた地点から叫んだ。
「ジェレミアさん!」
ジェレミアはその声に反応し、つかさの位置を視認する。
しかしつかさの接近に伴ってランスロットが動きを変えた。
右腕のハーケン一機だけでなく、腰部にも取り付けられた二機を加えた三機を一度に打ち出す。
搭乗者がパスワード入力をしなければ使用出来ない特殊な技、ハーケンブースター。
ハーケンは窓ガラスの中へ吸い込まれ、更に別の窓から北岡、ジェレミア、つかさの三人に飛び掛かる。
北岡が寸でのところで跳び退って避ける。
ジェレミアはつかさの姿を目にした直後に既に走り出しており、一機目をそのまま避けた。
片手に刀を構えたまま空いた手で箒ごとつかさを抱き止める。
足は止めず、つかさの背後の窓ガラスから飛び出したもう一機のハーケンを躱した。
ハーケンを回避されたランスロットは姿勢を低くして疾走、つかさとジェレミアに接近する。
つかさを抱えたまま、ジェレミアはランスロットの体当たりを横へと回避した。
だが通り過ぎたランスロットは急停止と共に旋回して向きを変え、再びジェレミアに向かってハーケンを打ち込んだ。
つかさの目からも、それが避け切れない一撃だと分かった。
ジェレミアが片腕だけで扱う刀では防御も不完全になる。
結果ジェレミアはランスロットに敢えて背を向け、ハーケンを装甲で受け止めた。
つかさの耳に届いたのは装甲に亀裂が入る音とくぐもった声、そして突き抜けた衝撃に揺さぶられる。
左腕を下にして地面に打ち付けられたジェレミアに庇われ、つかさは無傷だった。
二人に足を振り下ろそうとするランスロット、そこへジェレミアがフラムを投げた。
アイゼルが遺したフラムだ。
ブレイズルミナスとて一瞬で展開出来るわけではない――その僅かな時間を稼ぐ為に、ランスロットは後退した。
後退し、フラムが届くまでの一秒もない時間でブレイズルミナスを発生させて爆発から身を守るランスロット。
そこへ北岡がマグナバイザーで追い打ちを掛け、注意が引き付けられている間にジェレミアが立ち上がった。
ランスロットから距離を取る間もつかさは抱えられたままだ。
「あ、ありがとうございます……」
肉体の傷とは違い、機械部分の損傷は薬では直せない。
7 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:45:31.93 ID:y0QrZhmN
8 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:46:07.89 ID:y0QrZhmN
9 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:46:34.01 ID:f8Ch1cCx
直す手立ては現状では見付からず、それ故に深刻。
しかし今はそれすら後回しにせねばならない程に状況が切迫していた。
気を取り直したつかさは声を張り、報告する。
話している間もジェレミアはつかさを抱えたままで、時折打ち込まれるハーケンを回避する。
追い詰められ切った状況の中、つかさは走り続けるジェレミアに「それ」を伝えた。
「……私が直接行って確かめるしかあるまい。
援護を、任せる」
Gー9へ向かう、ジェレミアはそう決断した。
つかさは地面に降ろされて箒を受け取る。
ジェレミアにしてみればつかさを戦闘に関わらせたくはないだろう。
それでもこうして任せるのはそれだけ状況が差し迫っているから――そして信頼があるからだ。
それが分かっているから、つかさはランスロットと相対す恐怖があっても躊躇いはなかった。
手持ちの昇天石を使ってしまったというジェレミアに、つかさは自分の分を渡す。
逆にジェレミアからは「預かって欲しい」とデイパック本体を差し出された。
少しでも身軽になった方がいいとの事で、これでジェレミアの所持品は贄殿遮那と昇天石のみとなった。
更につかさはジェレミアの指示に従ってデイパックからブラフマーストラを取り出す。
それは、ズシリと重い。
自分の身を守る為の道具――ではなく相手を攻撃する為の武器。
「もし嫌なら私が、」
「いいえ、使います!!」
ジェレミアの声を遮る。
つかさがこれまでに引き金を引いたのは二度。
その二度とも人の命を奪った。
出来ればもう触れたくないと思っている。
だが自分の事を信じてくれている相手から渡されたそれを、拒みたくない。
皆で帰る為にも、これが今の自分に出来る事。
ブラフマーストラを握るつかさの手はやはり、震えてはいなかった。
箒に跨って浮き上がり、動作に問題ない事を確認。
そしてジェレミアから「近付き過ぎるな」ともう一度念を押され、強く頷いた。
▽
10 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:46:57.32 ID:y0QrZhmN
11 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:47:24.19 ID:CPt07XXI
12 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:47:51.30 ID:y0QrZhmN
13 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:48:40.68 ID:CPt07XXI
14 :
CODE GEASS――BLACK REBELLION
:2013/05/12(日) 00:49:07.22 ID:f8Ch1cCx
「G−9に向かう」、「協力を頼む」と大雑把に方針を示され、北岡は改めてランスロットから距離を取った。
ジェレミアが目的地に向かう間、北岡とつかさの二人だけでランスロットの足止めをする――というわけにもいかない。
攻撃の的が複数いる状態でなければランスロットとはとても戦えず、その的をつかさにする事も出来ないのだ。
よって、三人掛かりでランスロットの攻撃を凌ぎながら移動する事になる。
ランスロットと戦うという前提に加えて新たに加わった指針、G−9に向かう。
防御だけに集中していられなくなり、元々綱渡りだった戦いはますます厳しくなる。
「ジェレミアの走行をなるべく阻害しないようにし、同時に北岡とランスロットが一対一になる状況は避ける」。
そんな都合良く事態が運ぶはずがない。
しかし、実際に動き出してみるとむしろ負担が減っている事に気付いた。
東西に走っていた大通り、その交差点を三人それぞれが南に折れる。
ジェレミアが地上を疾走。
その間つかさが上空からブラフマーストラを、北岡が屋上からマグナバイザーを撃ち続ける。
マグナバイザー、ブラフマーストラ、どちらも弾数に制限はない。
ブラフマーストラの方は装填に多少の時間を取られる為連射こそ出来ないが、威力は充分。
ランスロットは頭上からの攻撃に対し、片腕を上げてブレイズルミナスを展開するか回避するかの二択しかない。
それはランスロットの攻撃の的となるジェレミアと北岡にとって大きな助けになる。
加えて、上空であれば鏡面がないのでハーケンに強襲される事はなく、ある程度の安全が確保出来る。
万一ランスロットがつかさを狙ってヴァリスを持ち出したとしても、その時はジェレミアと北岡が攻めに転じるだけだ。
遠距離専用のヴァリスに対し、懐に飛び込んでの至近距離戦はファクトスフィアや車輪の破壊を狙える絶好の機会となる。
つかさの加入により戦略の幅が広がり、ジェレミアが無理に攻撃を仕掛ける必要がなくなった。
その分移動と回避に注力出来るので、常にランスロットに接近しているジェレミアの危険は減ったと言っていい。
問題があるとするならば――ゾルダの変身時間が残り五分を切っている事である。
つかさの箒の速度と往復に掛かった時間を考えれば、五分以内に目標に到着するのは不可能ではない。
だが、普通の走りではなくランスロットの攻撃を防ぎながらの移動。
またそもそもG−9に行けば全てが解決するという話でもない。
飽くまで『確認』に行くのだ。
“それ”が使えなければ詰み、有用であったとしてもやはり戦いが終わるわけではない。
故に動きに余裕が出来た分、ここで少しでもランスロットのエナジーと戦力を削る必要がある。
ランスロットは屋上からの北岡の射撃に対し、左のブレイズルミナスを展開したまま右腕のハーケンを打ち出す。
ハーケンがランスロットの脇の窓ガラスに吸い込まれると、北岡のいるビルの向かい側の窓からそれが飛び出した。
北岡が紙一重で回避するとマグナバイザーの連射が途切れ、それに乗じたランスロットが跳躍。
地上に向かって蹴りが叩き落とされるが、駆動音で接近に気付いていたジェレミアは振り向かずに大きく横へと避ける。
アスファルトが砕け、視界を遮る程の厚い砂煙が立ちこめた。
その煙から一早く抜け出したジェレミアは足を止める事なくそのまま南へ。
15 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:50:27.76 ID:f8Ch1cCx
ランドスピナーの車輪が回転、ランスロットの追撃が始まろうとするが、車輪は即座に逆回転してランスロットを後退させた。
上空からブラフマーストラによる射撃が降ってきたからだ。
マグナバイザーによる狙撃が再開すると、ランスロットは細かく車輪の回転の向きを変えて前後左右に素早く移動。
全ての弾丸を躱し、再びハーケンブースターを起動する。
三機のハーケンが同時に射出され、窓ガラスの中へと吸い込まれた。
それを確認した北岡はすぐにビルから飛び降りる。
ハーケン三機を同時に射出し、更にミラーワールド内でブースターを使って角度を調節、敵に命中させる。
それは並の集中力では不可能だ。
全神経がハーケンに注がれている――つまり、今が最もランスロット本体の手薄な時。
三機のうち二機が北岡に襲い掛かるものの、外壁を蹴って速度を付けながら落ちる北岡には当たらない。
着地し、フラムを投げる。
狙うのは左腰部のハーケン射出機構。
ランスロットがランドスピナーを起動させて回避しようとするが、北岡はマグナバイザーでフラムを撃ち抜く。
破裂音。
ランスロットの手前で爆発する事になったが、目的を果たすには充分だった。
即ちハーケンワイヤーの切断。
巻き取られる前だったハーケンは地に落ち、残るは右腕と右腰の二機のみとなった。
北岡が攻撃する間、ハーケンを避けたジェレミアは更に距離を稼いでいた。
北岡の目にも、真っ直ぐに続く道路の先が見えている。
目的地は決して遠くない。
ジェレミアを追う形で走る。
北岡がつかさのサポートを受けてビルの屋上まで跳び、ランスロットの蹴りを逃れてなお走る。
そして、視界が拓けた。
「ここが……!」
G−9中心部。
建物が破壊されて何もなくなった地帯。
そしてゾルダの目はつかさから聞いた通り、その更に中央に『穴』を確認した。
ジェレミアは既に先行している。
穴までは恐らく一分も掛からない。
そしてその一分間、北岡とつかさは二人でランスロットを足止めする必要がある。
目標地点に向かうジェレミアが狙われては意味がないのだ。
それを理解しているようで、つかさが高度を下げた。
「つかさちゃん!」
「ごめんなさい、でもこうしないと北岡さん達が!」
打ち出されるハーケンに、箒が速度を上げて回避する。
一点に向けて刺さるハーケンは立体的に動き回る箒に対して決して有利な武装ではない。
だがこれにランスロット自体の動きが加わるのだから楽観視など出来るはずがなかった。
北岡がビルから地上に降り、敢えてランスロットの関心を引く。
つかさはブラフマーストラをデイパックにしまい、ランスロットの周囲を旋回して回避に徹する。
だがつかさは元々運動神経に優れているわけではなく、むしろ鈍いと言われてしまう部類に入る。
そして箒も本来は錬金術士にしか扱えない品であり、操縦は決して簡単ではない。
北岡はそんなつかさをフォローしようとするが、僅かでも気を抜けば北岡自身が踏み潰されかねない状態だ。
故にこの均衡した状況は、長続きはしない。
「きゃっ……!!」
ハーケンがつかさの肩を削った。
つかさが箒ごと体勢を崩し、速度を出した状態のまま地面に落下する。
つかさの体はコンクリートの上を滑るように転がり、身を小さくして痛みに堪えていた。
16 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:50:51.37 ID:y0QrZhmN
17 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:51:07.18 ID:CPt07XXI
18 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:51:38.08 ID:f8Ch1cCx
「つかさちゃん、ポット使って!!」
「でも……あと、二つしか」
「そんなのいいから!!!」
北岡がカードを抜く。
しかしマグナバイザーにそれを装填しようとして、ハーケンが足下に突き刺さった。
咄嗟に跳び退いて躱し、倒れたつかさを抱えて走る。
ワイヤーを巻き取ったランスロットが高速で迫り、それまで二人がいた場所に蹴りを落としていた。
つかさは抱えられた状態でリフュールポットを使ったが、ランスロットが至近距離にいてはつかさを降ろせない。
手が塞がっていてはカードが使えない。
箒は北岡の視界の中にはなく、ランスロットの蹴りで砕けたコンクリートの下になってしまったようだ。
必要な支給品だが、悠長に探して拾っている暇も余裕もない。
そしてゾルダの変身時間の残りは僅かとなっていた。
八方塞がりの状況で、ランスロットの後頭部に向けて影が飛来した。
それはランスロットの死角の位置にあったが、パイロットの超人的な勘と反射神経によって捉えられてしまう。
下から上へと振るわれたランスロットの太い腕、それによって弾かれたのは贄殿遮那。
大穴の手前の地点からジェレミアが投擲したものだ。
その隙に北岡は離れた場所までつかさを運び、逃げるように言い含める。
贄殿遮那はランスロットの意識を北岡達から逸らしたが、弾かれると同時にハーケンが発射されていた。
後頭部に当てる事で注意を引くはずだったのだろうが、ランスロットの反撃はジェレミアの想定よりも一歩速い。
刀を投げた体勢からの回避が遅れ、ジェレミアの正面からハーケンが命中した。
ブレードで肉を斬り裂かれ、跳ねた血がハーケンを汚す。
ハーケンの出力に押され、体が浮いて後方へと飛ばされる。
そして北岡が見ている中、ジェレミアは穴の中へと落下していった。
「ッ……!!!」
北岡の傍らに、高く飛ばされていた贄殿遮那が突き刺さった。
その音で北岡は我に返り、カードをデッキに挿入する。
――SHOOTO VENT――
北岡の両肩に砲筒――ギガキャノンが現れ、ランスロットに向けて撃ち込む。
しかしこれまで通りブレイズルミナスで防御するランスロットは、その体勢を保ったままじりじりと北岡と距離を狭めていく。
ゾルダの指先が粒子となって空気中に溶け始めた。
だが一秒でも長く足止めをする為に、北岡はランスロットへの連射を続ける。
焦燥と恐怖。
『確認』に失敗した時点でほぼ詰んでいる、変身が解ければ自衛手段すら失ってしまう。
生身の体ではとても逃げられない。
変身が解ける前にこの身体能力を使って逃走を図りたいぐらいだが、残り数秒ではどの道逃げ切れない。
やがてギガキャノンの発砲音は途切れ、北岡は元のスーツ姿に戻っていた。
ブレイズルミナスが解かれるが、北岡に攻撃手段は残っていない。
無防備なまま胸にハーケンを受け、受け身も取れずに地面を転がった。
折れた肋骨が露出し、呼吸も出来ずに藻掻く。
ランスロットが前傾姿勢を取り、ランドスピナーが起動――だが、停止して再びブレイズルミナスを展開した。
ブラフマーストラを抜いたつかさが引き金を引いていたからだ。
最後の一個となったリフュールポットを北岡に使い、助け起こす。
「つかさちゃん、逃げて……!」
「出来ません……!
だって、皆で帰るのに!」
ブラフマーストラの次弾装填までの隙にハーケンが打ち込まれ、北岡はつかさの手を引いて避けさせた。
そのまま走って逃げる。
19 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:51:49.46 ID:y0QrZhmN
20 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:52:01.85 ID:CPt07XXI
21 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:52:38.12 ID:f8Ch1cCx
そして二人の上に、車輪による蹴りが落ちてきた。
蹴り自体を避けられたとしても、ランスロットの一撃は地面をも砕く。
コンクリートの破片、高速で飛び散る石や砂すらもただの人間にとっては脅威にしかならない。
粉塵が舞う中で倒れる二人。
衣服には血が滲み、全身が痛みを訴える。
舞い上がった粉塵が晴れた頃、ランスロットのハーケンは既に北岡に狙いを定めていた。
ギャリギャリギャリ、と車輪の音がする。
ランスロットは動いていない。
ランスロットのランドスピナーの音ではない。
音源は地下。
胸の奥まで響く振動が北岡とつかさの足から立ち上る。
月光を遮るものが一切存在しない拓けた大地、その中央の穴からもう一機の“巨人”が姿を現す。
それは、ランスロットよりも早く実践に投入された量産機。
シンジュク事変から一年、ランスロットと同じ第七世代の機体が量産されるようになって以降も最前線で使われ続けた。
型遅れとなってもなおブリタニア軍の主力の一つとして位置付けられている紫色のKMF。
中でもこれは頭部のファクトスフィアと両肩を朱に塗り上げ、『純血派』の象徴とされていたもの。
聞こえていたのは両壁に当てた二つのランドスピナーで穴の底から登る音。
洗練されたランスロットのフォルムが騎士ならば、対照的に無骨なそれは鎧武者のような。
型式番号RPI-13、サザーランドと呼ばれるKMFが地上へと這い上がった。
▽
腹部にハーケンをまともに受けて意識が飛び、そのまま大穴の中へと墜落する。
硬く冷たい金属に覆われた床に背中から落下し、衝撃ですぐに意識が戻ったのは幸か不幸か。
仰向けになったジェレミアが目を開けると、星の浮かぶ暗い空が遠くに見えた。
穴の底から覗く、四角く切り取られた夜空はとても狭い。
腹部に手を当てるとべたりと血が貼り付いた。
起き上がろうとして、左半身から火花が散る。
志々雄に斬られた傷は広がり、背の亀裂は全面に渡っているようだった。
ルルーシュがゲフィオンディスターバーでジェレミアの半身の機能を停止させた時、ジェレミアは全身が動かなくなった。
機械化されたのが左半身だけでも、そこに不調を来せば体全体に影響が出る。
破損がこれ以上進めば、やはり動けなくなるかも知れない。
だが今は構わずに立ち上がり、見上げる。
空ではなく壁を。
壁を背にして立つ物を。
先行したつかさが見たもの。
それは『もう一体のロボット』、KMFだった。
何故会場内にKMF格納庫が設置されているのか。
志々雄の罠なのか、本物なのか――だがこれは紛れもないサザーランド純血派機。
屹立するその姿はジェレミアが知るままの姿で、思い出されるのはこの機体に乗って駆け抜けた日々。
両肩に背負った赤は誇りの証。
感傷を振り切って見渡せば既にコックピットは開かれ、ワイヤーに吊られたリフトが地面の高さまで下りてきていた。
「……」
もう一つその横に鎮座するものがあったが、後に回す。
足を引き摺りながら惹き付けられるように近付き、リフトに足を乗せ、ワイヤーを巻き取りコックピットへ。
一見して罠の類は見られない。
22 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:52:51.45 ID:y0QrZhmN
23 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:53:33.76 ID:y0QrZhmN
24 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:53:37.72 ID:CPt07XXI
25 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:54:18.71 ID:f8Ch1cCx
コックピット正面とその上部、左右と合わせて四面のモニターは多くのKMFと共通。
座席にはブリタニア国章をあしらったサザーランドの起動キーと入力用パスの書かれたメモ、申し訳程度のマニュアル。
奇しくもこれらは、ジェレミアにとって覚えのあるものだった。
シンジュク事変の日にジェレミアが乗っていた――ルルーシュの策によって破壊された機体だった。
ランスロット導入と同じ日に、アリエス宮の暗殺事件以来初めてルルーシュと接触したサザーランド。
「随分な嫌がらせだな、V.V.……」
一般兵すら第七世代、エース級パイロットは第八世代相当の機体に乗り、第九世代の機体さえ開発された時代。
それでもジェレミアは旧式のサザーランドにこだわり続けた。
嚮団殲滅戦に際しても時代遅れのそれに重装備をさせて食らい付いた。
第二次東京決戦に間に合うよう開発されたワンオフ機にも、敢えてサザーランドを組み込んだ。
そうしてサザーランドに固執していたジェレミアに『プレゼント』と称して贈ってきた者達の思惑は、分からない。
更に分からないのが、座席。
その背もたれには三つのプラグがあった。
神経電位接続――パイロットの神経を機体に直接接続し、操縦桿を握らずとも意思のみで操縦出来るようにするシステム。
機械の体に改造されたジェレミア専用のものだ。
この技術が確立されたのはブラックリベリオン以降であり、シンジュク事変の時にはなかった。
つまりこの機体は外側こそあの日のものだが、V.V.らの手によって別物の如く改造されている。
キーやマニュアルが用意されているのを見ると、ジェレミアの為だけに用意されたものというわけでもないのだろう。
しかしやはり真意は分からない。
視認出来ない箇所に罠が設置されているのではないか、そもそも起動するのか。
疑念はあったが、ジェレミアはコックピックブロックの出入り口を閉める。
どの道、志々雄が言うように「縋らなければ」――何も得られない。
故にジェレミアは所定の場所に立ち、胸の前で両腕を交差させる。
コートの背が縦に割れて開き、露出する装甲と神経電位接続用のコネクタ。
席に着くと自然とコネクタとプラグが接続され、コックピット内が淡いオレンジ色の光を帯びる。
ジェレミア自身がキーとなってパスの入力もショートカット、全て問題なく起動。
左右に分かれた二つの操縦桿は使わないが、体を固定する為に両手で握る。
正面の画面に表示された「SERIAL#/4097112-5508」「PILOT/Sir JEREMIAH GOTTWALD」の文字すら今は懐かしい。
装備を確認するとジェレミアが知るものと一致していた。
アサルトライフル、胸部のスラッシュハーケン二機、スタントンファ。
ランスロットには届きそうにないものの、出力は通常のサザーランドよりも大幅に上昇している。
他にも神経電位接続による機体の反応速度がジェレミアの知るものよりも速くなっていた。
画面上の「G-ER流体」という物質が関わっているようだが、これについて調べている時間はない。
起動画面が消え、四つのモニターには周囲の景色が映し出される。
そしてサザーランドの横にはもう一つ、強い存在感を放つものが置かれていた。
それは金色に飾られ、中央にブリタニアの紋を貼り付けた巨大な十字架だった。
底に車輪の付いたそれを、一目で何なのか言い当てられる者はそういないだろう。
だがジェレミアは知っている――憧れていたから。
これは剣とそれを収める鞘だ。
26 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:54:57.31 ID:CPt07XXI
27 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:55:38.23 ID:f8Ch1cCx
第九十八代皇帝がナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインの駆るKMF・ギャラハッドの専用武器。
皇帝シャルル・ジ・ブリタニア自らが名付けた“エクスカリバー”だった。
ジェレミアの夢はナイトオブワンになる事だった。
一年前に途絶えた夢ではあるが、確かに志していた。
この殺し合いに巻き込まれるのが一ヶ月も遅ければ叶っていたのだが、未来を知らぬジェレミアにとっては途絶えたままの夢だ。
だからこの場にこの剣が置かれている事が、痛烈な皮肉にしか思えない。
それでもジェレミアはその剣を手に取った。
皮肉であろうと悪意であろうと、既に「縋る」と決めていた。
全高七メートルを超えるギャラハッドよりも更に大きかったはずのその剣は、サザーランドの背程の高さになっていた。
わざわざサザーランドでも扱えるように調整したのだろう。
そもそもエクスカリバーそのものは、第五世代のKMFが扱えるような出力ではない。
鞘から抜いて現れたのは金の柄、紫の刀身。
手にして問題がない事を確かめてからジェレミアは目を閉じ、大きく息を吐き出して、もう一度目を開ける。
「枢木……私はあの時、何も言い返せなかった」
――好きな人を生き返らせようと思って……何が悪いッ!!!
忠義と個人感情の間に迷い、スザクの方が正しいと思ってしまった。
人間らしい、真っ当な言葉だと。
スザクが洗脳されていたと知った今も、言葉それ自体の正しさはそのままで。
未だに迷いが振り払えたとは言えず、主の命を奪った仇との関係も中途半端なままで。
それでも。
――自分の命も掛かってねぇような軽い剣で、この志々雄真実を止められるわけねぇだろ!!
今は、何の理屈も付けられなくていい。
ただの開き直りで構わない。
意地の一つも張れないのでは、何も果たせはしないのだから。
「それでも守りたいと願って、何が悪いッ!!!」
今はただ吼える。
未来のない命であっても、こんな所で死にはしないと執着する。
死なせてなるものかと、何一つ譲ってなるものかと拳を握り、サザーランドを発進させた。
▽
V.V.は志々雄にランスロットと煉獄を譲渡する前に、二つの条件を提示した。
一つは翠星石の意向も聞く事。
もう一つは、サザーランドが会場に残る者達の手に渡るチャンスを作る事だった。
脱出者の特典と言っても煉獄・改、ランスロット、サザーランド、そのすべてが一人の手に渡るのでは公平性に欠くからだ。
そんなどこまで本気かも分からない説明を志々雄に聞かせながら、V.V.はやはり笑っていた。
対する志々雄はこの条件を快諾した。
志々雄にとって他の参加者を「間引く」のは事のついでであり、必死になるものではない。
そしてランスロットよりも下位の機体であるサザーランドは、ランスロットの性能を確かめるのに丁度いい相手と見なした。
KMF同士の戦闘を見物するのも暇潰しになる、その程度のものだった。
飽くまで「チャンスを与えた」だけで、ジェレミア達がそこに辿り着く前に力尽きればそれまで。
スザクと同じようにさざなみの笛でUNDEAD状態にしたロロを搭乗させるのみ。
彼らが志々雄の言葉を信じずに近寄ろうとしなければまた同様。
そして万一ランスロットが破壊されたとしても別の手を打つだけだ。
28 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:56:29.08 ID:y0QrZhmN
29 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:56:30.14 ID:CPt07XXI
30 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:57:24.68 ID:f8Ch1cCx
結局全てはV.V.の、そして志々雄の手の上である。
会場を見下ろす二人に踊らされるままに、サザーランドはランスロットと対峙する。
▽
サザーランドのファクトスフィアを展開、モニターで北岡達の姿を探す。
どうやら動けない程の怪我はしていないようで、間に合った事に胸を撫で下ろした。
「巻き込まれないうちに先に行け。
ここは私が相手をする」
外部用スピーカーのスイッチを入れてそう告げると、北岡達が動き始めた。
箒を失ってしまったように見えるものの、ランスロットはサザーランドの方に集中している。
徒歩での移動ではあるが、北岡達は無事に視界の外へ離脱していく。
一対一。
ランスロットは一振りのMVSを抜いた。
メーザーバイブレーションソード――高周波振動剣。
マイクロ波を増幅・発振した高周波振動を纏う斬撃用兵装だ。
灰色に近かった刀身は電力を注がれて赤く染まる。
エクスカリバーの半分程の細い刀身ではあるが、その威圧感は充分。
一太刀でも受ければ、サザーランド程度の装甲では確実に真っ二つにされる。
サザーランドがどの程度までV.V.に改造されているのかははっきりしないが、期待しない方がいいだろう。
KMFに乗ったから互角――ではないのだ。
KMFに乗る事で漸く同じ土俵に立ったというだけで、勝算の低さは大して変わらない。
元よりランスロットとサザーランドはそういう関係にある。
ランスロットの速度は通常のサザーランドの約二倍。
スザクが駆るランスロットはこれまでに数え切れない程のサザーランドを屠っている。
ランスロットが行う三次元的な立体運動もその出力あってのものであり、旧世代KMFには限界がある。
スザクにしか扱えないワンオフ機と誰でも乗れる量産機、ランスロットとサザーランドは同列に語れるようなものではない。
出力が多少上がったところで、小型のエクスカリバーを手にしたところで、埋め難い差。
それはジェレミアとて百も承知。
この差を覆すものは、パイロットの技術と神経電位接続による反応の速さだけだ。
元よりジェレミアの操縦技術は高く、指揮官でありながら戦場の最前線に立っていた。
そして改造によって得た常人離れした動体視力、反射神経、それを直接KMFに伝える神経電位接続。
持てる力を総動員しても届くかどうか。
そんな状況にあって、ジェレミアの手は震えていた。
抱く感情は恐怖ではなく、抑えがたい高揚だった。
ナイトオブセブン、枢木スザクが駆るランスロット。
元よりデスクで書類に向かうよりも、後方で指揮を執るよりも最前線でKMFに乗るのが好きだった。
一人の軍人として、パイロットとして、旧世代型とは言え自分のスペックを最大限に活かせる機体で彼と戦えるのだ。
彼が既に死体であると分かっていても――緊張も怯えもなく、今だけは後悔も疑念も投げ捨てて集中する。
機体の操縦のみに没頭するうちに、武者震いは止まっていた。
31 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:57:46.79 ID:CPt07XXI
32 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:59:37.30 ID:CPt07XXI
33 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 00:59:38.17 ID:f8Ch1cCx
「相手にとって不足なし……!!」
跳躍し、上段に構えたMVSを振り下ろすランスロット。
それをサザーランドはエクスカリバーという大剣を構えて正面から受け止める。
足場となるコンクリートが衝撃と重量で亀裂を走らせるが、まだ力負けはしていない。
大剣を振り抜いて捌くとランスロットが浮き、回転しながら後方に着地した。
ランスロットが持つMVSは二振り。
二刀流も出来るはずだがそれをしていない。
そして強化されてもなお出力の面で劣るサザーランドに、攻撃を受け止められている。
これらから推測出来るのは、ランスロットも決して余裕があるわけではないという事だ。
三人掛かりでブレイズルミナスやヴァリスを使わせ続けた事で、ランスロットは確かにエナジーを消耗している。
対するサザーランドはまだ起動したばかりであり、高出力のエクスカリバーを用いていてもまだ余力があった。
これでもまだ五分には足りないぐらいだが、気休め程度にはなる。
徒歩で動いていた北岡達を巻き込まないよう、車輪を回転させて東へと駆ける。
ランスロットにあっさりと追い抜かれるも、MVSによる斬撃を大剣で防いで更に東へ。
更地となったG−9、その東にはここまでの移動に使っていたのと似たような四車線道路とビル群があった。
大剣を振るうなら拓けた場所が望ましい、それに左右を建物に挟まれてはそれだけランスロットの足場が増える。
更地の方がサザーランドにとって有利になるのだが、警戒しているのはヴァリスの存在だ。
北岡達を狙っていたヴァリスに蹴りを入れた際、そこで見た形状はジェレミアが知るものとは異なっていた。
これまでのランスロットとサザーランドの様子を考えれば、V.V.がまた余計な事をしたとしか思えない。
ヴァリスの正体が掴めない以上、広範囲に被害をもたらすような戦術兵器である可能性も考慮する必要がある。
それ故に北岡達から距離を取り、かつ被害の範囲を狭められるよう障害物の多いルートを選んだのだ。
東へ疾走するサザーランドが、追い迫るランスロットに向かってアサルトライフルを斉射。
ランスロットは左右のビルの外壁を交互に蹴りながら移動してそれを回避する。
一呼吸のうちに間合いを詰められ、サザーランドは銃を捨てた。
ランスロットに投げ付けたライフルがMVSで両断される。
そのMVSが振り切られたところへ、サザーランドが大剣を振り下ろした。
ランスロットはそれを後退して躱し、大剣はコンクリートを砕くのみ。
車輪が即座に回転の向きを変えてランスロットを前へと押し出し、サザーランドに斬り掛かった。
横からの斬撃に、サザーランドの肩の装甲が一部破損した。
だが大剣が地面に刺さった状態のままサザーランドは車輪を回転させ、追撃に対し回避行動を取る。
大剣の刺さる角度が直角に近くなるよう腕で調節しながら、その陰に隠れるように移動。
刺さった大剣を盾にしてMVSを防御し、その一方で蹴りを放った。
大剣を挟んで反対側にいるランスロットの蹴りもまた同時で、ランドスピナー同士がぶつかり合う。
拮抗せずに互いに弾かれ、サザーランドは大剣を抜きながら、ランスロットは壁面を蹴りながら距離を取った。
素早いランスロットに重い大剣はすこぶる相性が悪いが、これ以外に対抗出来る武器もない。
未だ一太刀も浴びせられていないものの、今は持ち堪える事に集中する。
両者のランドスピナーが起動、車輪の回転で一気に加速する。
34 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:00:49.82 ID:f8Ch1cCx
携帯投下の諸事情により、10〜20分程度投下を中断致します。申し訳ございません。
35 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:01:01.96 ID:CPt07XXI
36 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:25:28.76 ID:f8Ch1cCx
上から斬り掛かった大剣をランスロットが余裕をもって避け、MVSを突き出した。
再び地に刺さった大剣で受け止めるが、ランスロットは瞬時にその場で旋回。
サザーランドの横へと回り込まれ、MVSが振り下ろされる。
防御は間に合わない。
よってサザーランドは真横にいるランスロットに向けて大剣の腹を蹴り上げた。
型も構えもない、荒削りで大雑把な攻撃。
だが突き上げるような蹴りを乗せた一撃はMVSを弾き、ランスロットの胸の装甲へ到達した。
装甲に傷が走り火花が散る。
それでも破壊するには浅い。
高く持ち上がった大剣を握り直し、そのまま下方への斬撃に変える。
ランスロットもまたMVSを構え直しており、大剣と正面から打ち合った。
衝突して鍔迫り合いになり、どちらも一歩も退かない。
両者が両腕で剣を支える中、ランスロットが腰部のハーケンを射出した。
両者の間の距離は一メートル程、ハーケンがその間を高速で飛ぶ。
しかしそれを捕捉したサザーランドは間髪入れずに胸部のハーケンを打ち込んだ。
過たずハーケン同士がかち合って互いに弾かれ、サザーランドがもう一機の胸部ハーケンを撃つ。
ランスロットはくぐるように大剣をいなしつつハーケンを避け、その上でハーケンワイヤーを切断。
これでサザーランドに残る武器は大剣とハーケン一機、それにトンファのみ。
サザーランドは兵装を確実に削られ、それでもなお食い下がっていた。
▽
剣で打ち合いながら大通りを駆け抜ける。
時折ランスロットがビルの外壁にハーケンを打ち込んで変則的な動きを取るが、攻撃はどれも決定打にはならなかった。
ランスロットは確かに速いが、サザーランドがその動きを「見てから」反射行動を取るまでの時間はほぼゼロに等しい。
マシンスペックでは圧倒していても、サザーランド側はパイロットの技術と神経電位システムが不足を補う。
ランスロットのパイロットが存命であったなら。
ギアスという呪いの力が健在であったなら、全く別の戦いになっていたであろう。
両者が駆けるうちに景色が変わっていく。
ビル群は次第に市街地へ、途中で柵を飛び越えると程近くには観覧車にジェットコースター。
既にG−10に到達していたらしい。
そこでランスロットがMVSを収めた。
ジェレミアはその事を、疑問には思わない。
サザーランドとの戦闘が始まってから、ほとんどブレイズルミナスを使わなくなっているのにも気付いていた。
考えられる理由は一つ、エナジー切れが近いのだ。
サザーランドが大剣を構え直すと、ランスロットは空いた手でヴァリスを抜いた。
そしてヴァリスは変形する。
銃身が上下に割れ、その間からより大きな銃口が顔を出した。
ヴァリスの銃口に収束される赤い光。
ジェレミアの背筋が凍った。
ランスロット本体は戦場に導入された当時のもののようだったが、兵装は最新鋭のもの。
第九世代KMFランスロット・アルビオンが装備するはずだったスーパーヴァリス。
撃つのはハドロン砲。
分子を亜音速で撃ち出す、圧倒的熱量によって戦場を蹂躙する荷電粒子砲だ。
サザーランドがこれに耐えられるはずがない。
ランドスピナーで後退し、射線を避けようとする。
だが銃口はサザーランドにピタリと追ってきていた。
サザーランドの速度では逃げられそうにない。
狙いを定め、ランスロットが引き金を引く。
塗り変えられる周囲の色。
ジェレミアは迫り来る『死』そのものとも言える光を前に、覚悟を決めた。
37 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:26:00.22 ID:y0QrZhmN
38 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:26:11.70 ID:GPkkpoRb
支援
39 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:27:06.29 ID:y0QrZhmN
40 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:27:42.99 ID:f8Ch1cCx
サザーランドが桃色の光を纏った大剣、エクスカリバーを振りかぶる。
「おおおおおおおおお!!!!!!」
黒い光と大剣が接触、辺りに光が飛び散った。
ギャラハッドが所有したエクスカリバーはただの剣ではない。
エネルギーフィールドを放出する事でビーム砲をも拡散させて払いのける、攻防一体の機能を持つ。
中華連邦最強のKMF・神虎のビーム兵器、天愕覇王荷電粒子重砲をも弾いた実績がある。
ハドロン砲とて跳ね返せない道理はない。
刀身を中心にして環状に纏わるエネルギーが、ハドロン砲と拮抗する。
「ぐっ……ううう……!!!」
だがサザーランドのコックピット内にまで熱が届く。
ギャラハッドのエクスカリバーの半分程のサイズ、つまりは出力も半分以下になっている。
それを支えるサザーランドの力も、ギャラハッドと比べてしまえば玩具のようなもの。
ギャラハッドと同じ事は出来ないのだ。
コックピット内、正面モニターにエラー表示が群を成す。
甲高い警告音が響き、機体の損傷率が瞬く間に上昇していく。
「はああああああああああッ!!!!!」
斬り払う。
ハドロン砲の黒い閃光が割れ、弾ける。
同時にエクスカリバーも砕け散った。
周囲に撒き散らされたハドロン砲の熱が市街と遊園地を舐め上げ、一帯を炎に包む。
防ぎ切れなかった余波を受けたサザーランドは全身に高熱を浴び、各部から放電による火の粉が飛んだ。
エクスカリバーに注ぎ込んだ為、エナジーの残りも僅か。
モニターがエラー表示に埋まる。
「WARNING!」の文が並び、脱出装置がオートで作動しようとしている。
コックピット内の明かりは非常用の薄赤いライトを残すのみとなっていた。
「……そ、れで……」
傷と疲労、熱を抱えたまま、ジェレミアは掠れた声を絞り出す。
「それで、終わりか……!
ならば――」
このサザーランドは神経電位接続によって繋がったジェレミアの分身にも等しい存在。
大破寸前であっても意志さえあれば、この機体の操縦は可能。
サザーランドはまだ動ける。
ジェレミアにまだ戦う意志が残っているならば、戦える。
「次は私の番だなぁあッ!!!」
座席のコネクタとプラグの接合部が強いオレンジの光を放つ。
各部から火花を散らすサザーランドが、軋みを上げながら顔を上げた。
サザーランドの両腕が変形、スタントンファを展開。
近接格闘用の装備であり、この機体を操作していた頃のジェレミアが最も多用していた武器だ。
モニターで確認した表示を信じるなら、これもV.V.の手が加えられて強度を増しているらしい。
スタンガンのように電流を流す機能もあるが、本来の用途に比べればさほど重要ではない。
最も重要な、その本来の用途はただ一つ。
殴る。
「はあああああ!!!!」
41 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:28:08.24 ID:CPt07XXI
42 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:28:39.36 ID:y0QrZhmN
43 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:28:53.94 ID:f8Ch1cCx
一打。
ランスロットがMVSを抜いて防ぐ。
しかしその刀身は灰色であり、やはりハドロン砲を最後に既にエナジー切れを起こしている。
振動していないMVSはただの剣に過ぎず、トンファが叩き折った。
二打。
ランスロットが残る一振りのMVSを抜き、その先端がトンファとぶつかり合う。
そして砕けたのは、MVSの方だった。
三打。
ランスロットが右腕の手甲部からハーケンを突き出させ、拳を振るう。
トンファとハーケンのブレードが接触し、トンファの先端から電流が流れ込んだ。
ランスロットがそれによって出力を落とし、競り勝ったのはサザーランドだった。
ブレードを弾き、ランスロットの右肩へとトンファを振り下ろす。
パーツを散らばらせながら右腕が砕け、地面に落下した。
四打目を振ろうとして構えるが、ランスロットが回し蹴りを放つ。
ランドスピナーを起動して後方に回避、そして再び前進しようとした途端、突然サザーランドが動きを止めた。
「っ、神経電位接続が……!」
大破しかけた状態で戦闘を続行した為、機体の損傷が進んでいる。
接続されたコネクタから指令を出してもサザーランドは動かない。
ランスロットが更に一撃、右足による蹴りを見舞おうとしていた。
「まだまだァッ!!!」
操縦桿を強く握り、手動でサザーランドに指示を出す。
トンファを収納、守りを固めた左腕で蹴りを防ぐ。
常ならばそれだけでKMFを破壊していた蹴りも出力が下がっており、かろうじて腕を砕かれるだけで済んだ。
残るトンファを構え、今度こそ四打。
ランスロットの腕の防御の上から叩き込む。
砕けていく腕の装甲、トンファから流し込む電流によってランスロットから激しく火花が散った。
しかし、足りない。
エナジー切れで電流が途切れ、防御を突破する一手も足りず、機体が互いに軋みを上げる。
モニターにノイズが走り、明滅。
映像が乱れて見えなくなった一瞬、それ故に反応が遅れた。
モニターを突き破る赤。
ランスロットの腰部のハーケンが、サザーランドの胸を貫いた。
サザーランドの胸部のハーケンさえ砕き、パイロットにまで到達する。
「が、……はっ……」
コックピットの中で、ゴトンと重い物が落ちる音。
ハーケンはジェレミアの左脇とその真横を貫いていった。
即ち左腕。
機械の腕は切断されてコックピットの床に転がり落ちた。
左胸の損傷は志々雄に斬られた脇腹よりも更に深く、腕の切断面から赤黒いオイルが滴る。
正面とその上部、そして左側のモニターは電流を弾けさせて暗くなり、映像を映さなくなった。
こうなっては脱出装置も作動しない。
体の内側を焦がすような熱に、意識が遠のく。
結果は敗北だった。
だがランスロットを行動不能にするという目的は果たせた。
負けたとしても、悔いなど――
44 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:29:50.04 ID:CPt07XXI
45 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:30:07.64 ID:f8Ch1cCx
「あるに、決まっているだろう……!!!」
戦っているのはジェレミアではなく、ジェレミア「達」。
戦っているのは枢木スザクではなく、彼の残骸。
この敗北は仲間達の、枢木スザクの恥になる。
そんなものを許容出来るはずがない。
残った右腕で操作してランドスピナーを起動、僅かに後退。
そしてそこから車輪を逆回転させて得た推進力を乗せ、トンファを振りかぶる。
モニターは既に使い物にならないが、経験と勘でランスロットの位置を捕捉した。
防御した腕ごとランスロットのコックピットブロックを砕く。
激しい火花が動力部のサクラダイトに引火して、二機のKMFは同時に炎に包まれた。
▽
46 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:30:35.16 ID:y0QrZhmN
47 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:31:01.58 ID:CPt07XXI
48 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:31:24.57 ID:y0QrZhmN
49 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:32:06.88 ID:CPt07XXI
50 :
CODE GEASS――ZERO REQUIEM
:2013/05/12(日) 01:32:09.05 ID:f8Ch1cCx
ランスロットとサザーランドが燃える。
元より拡散したハドロン砲によって燃えていた一帯は、街灯など無くても昼のように明るかった。
サザーランドの脱出装置は破損していたものの、運良くコックピットの開閉部も爆発の衝撃で外れていた。
そこから自力で脱出し、ジェレミアはKMFから飛び降りる。
ランスロットと交戦するうちに到達したその場所は、遊園地に併設されたホテル。
海にほど近く水平線さえ見渡せる、広い庭と繋がったテラスだった。
左腕を失って重心が変わった事もあり、コックピット程度の高さからの着地も覚束ずよろめいた。
吸い込む空気さえ燃えるようで、体の内と外の熱で額に汗が浮く。
視界が霞み、歪み、揺れる。
しかしまだ終わっていない。
決着はついていない。
背後に聞こえた足音に振り返るとスザクが立っていた。
ジェレミアがそうしたように、スザクもまた自力でコックピットから外へ出ていたのだ。
反応が遅れ、スザクの体当たりを避けられなかった。
ハーケンの直撃で裂けた腹部に焼け付くような痛みが襲う。
「ぐっ……」
膝を着きそうになるが、再度突き上げるような一撃が腹に見舞われた。
血を吐き、熱された地面に這う。
視線を遣れば腹には二つの灰色の金属片が刺さっていた。
MVSの破片だろう、ラクカジャの効果が続いていてもなお攻撃が通ったのはスザクの身体能力故か。
破片の幅は刀よりも広く、傷は背の装甲がなければ貫通していたであろう程深い。
スザクは何ら表情を変えずに、倒れたジェレミアを見下ろしていた。
白兜という仮面を剥がされた少年の目は、文字通り死んでいる。
ジェレミアもロロと遭遇して既に理解している、これがただの動く死体であると。
この状態で懐にある昇天石を投げてもスザクには避けられてしまうだろう。
僅かな逡巡の間に生身の脇腹を蹴られて体が浮く。
ホテルの内部とテラスとを繋ぐ出入り口、それを支える大理石の柱に衝突して地に伏せた。
衝撃で半身から火花が飛ぶ。
体が重い。
だが腕で傷を押さえ、柱を背の支えにして立ち上がる。
「枢木、私は――」
向かってきたスザクの拳を掌で受け止めて握り込んだ。
だが左腕を失ったジェレミアに出来るのはそこまでで、もう一方の拳は避けられそうになかった。
腹に拳が突き刺さり、体がくの字に折れる。
傷から血が噴き出すも、まだ膝を着かない。
握り込んだ手は放さない。
「昔、君に助けられた事があっただろう……?」
背を折り曲げ、頭を低くして下を向いたまま言う。
スザクの死体に言葉など届くはずはなく、鋭い拳がジェレミアの頬を打った。
火花が散り、顔の左半分を覆っていた仮面が外れて落ちる。
地面と仮面とがぶつかり合う乾いた音。
それでも踏み留まり、顔を上げる。
今度はスザクと顔を突き合わせる、死んだ目を見据える。
「その礼を……伝えておきたかった」
一年前。
純血派の威信が、名誉がと躊躇っていた為に、結局スザクが生きているうちに伝えられなかった。
本当に伝えるべき相手、枢木スザクはもうどこにもいない。
ロロの死体に向けた言葉も、本来はロロの存命中に言うべきだった。
もう誰の耳にも届かない、聞いているのはジェレミア自身のみ。
その当人すら意味を見い出せないのでは自己満足にもならない。
51 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:33:22.28 ID:f8Ch1cCx
それでも、言わずにはいられなかった。
そしてやはりスザクの死体に変化はなく、続けて殴打されたジェレミアは衝撃で脳が揺れる。
よろめくがスザクの拳は握り込んだままであり、引っ張られたスザクの体も傾いた。
そこでジェレミアは倒れずに一歩踏み出し、それを軸足にしてスザクの腹に蹴りを入れる。
同時に手を離すと、スザクは回転しながら後方に跳んで着地した。
そこから数秒をおいて、同じやり取りが繰り返される。
殴り掛かるスザク。
拳を掌で受け止めるジェレミア。
だが今度は無手ではない。
スザクが殴ったのは、ジェレミアの手の中にあった昇天石だった。
石が光り、その中から現れた夥しい数の護符がスザクを囲む。
「すまない……もっと早く、止めてやりたかった」
スザクを中心に、白い光の柱が立ち昇る。
死体に戻り、炎の中に倒れた少年を見て胸に湧くのは虚無感だけだった。
ジェレミアの不運も大概だったが、スザクのそれと比べれば余りに恵まれていた。
水銀燈に出会えばスザクでなくとも洗脳されていただろうし、彼が初めに奈緒子と出会っていればやはり保護していたはずだ。
スタート地点でジェレミアはほんの少し運が向き、スザクは徹底して向かなかった。
その大きな差が直接、今ある結果に繋がった。
ルルーシュの遺体に発砲したと書かれていた。
偽りの想い人を失ったと思い込んだスザクは、どんな思いで親友の存在を拒んだのだろうか。
最期の時、惚れ薬が切れた後に自分を取り戻せたのだろうか。
あるべき姿、侍として逝く事が出来たのだろうか。
皇女ユーフェミアの名と、向き合えたのだろうか。
何一つ分からない。
何も聞けなかった。
何も話せなかった。
看取ってやる事すら出来なかったから。
ほんの十行程の無味乾燥な文章でしか、スザクを知る事は出来なかった。
スザクが進んだ道を思えば、いっそ何も気付かずに死ねた方が幸せだったかも知れない。
それでもジェレミアは過去に、スザクの正しさに救われたのだ。
スザクが憎しみに囚われたまま死ぬのでは、かつての彼の正しささえ否定されているように思えた。
だから最期だけでも狂気から解放されていて欲しかった。
今更何を望もうと、何もかもが遅いとしても。
スザクはこの殺し合いの中でのジェレミアの在り方を、自分のそれよりも『正しい』と、『侍』としてあるべき姿だと感じていた。
大切な人の為に手段を問わないスザクの在り方を『正しい』と思ってしまったジェレミアとは逆だった。
噛み合わない。
そしてそれを互いに伝える事も出来ず、終わった。
虚しい幕切れだった。
背にした柱からずり落ちて、ジェレミアはその場に座り込む。
月は西へ西へと傾き、東の空は既に白み始めていた。
波打ちながらその色を反射する海面は、星のように瞬いて見える。
遠かった朝が近付いていた。
狭間達は無事だろうか、北岡達は彼らと合流出来ただろうか。
研究所は。首輪は。志々雄の動向は。
V.V.は。薔薇水晶は。翠星石は。シャドームーンは。
まだ何も終わっていない。
何の決着もついていない。
だが立ち上がろうにも手足に力が入らなかった。
一歩も動いていないはずなのに、いつからか血溜まりの中に座っていた。
視界の半分――左目が何も映さなくなっているのは殴られた衝撃によるものか。
52 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:33:25.43 ID:CPt07XXI
53 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:34:26.46 ID:f8Ch1cCx
左半身が絶え間なく発する火花はますます激しくなっている。
喉の奥や舌に纏わり付く鉄の味が不快で血を吐き出したが、口元と服を赤黒く汚すばかりで楽にはならなかった。
辺りの炎が広がっていく。
それまで燃えていなかったものも燃えていく。
ホテルもとうに火に飲まれており、今いる場所も遠からず焼け落ちるだろう。
「……ここまでか」
時間を掛けて漸く事態を飲み込み、呟く。
他人の手の中で踊らされるまま、同じく弄ばれた死体と戯れて。
これではただの犬死だ。
――貴公の忠節は、まだ終わっていないはず。
窮地に立つ度に命を長らえてきたが、こうなってはそれらが何の為にあったのかも分からない。
――生きて、ね。
――私の分も……。
死んでいった者達の為に、元凶に一矢報いる事も。
問い質す事も戦う事も、どころか仲間との合流さえ出来ない。
――それなら俺は後藤を倒す。最速でな。
失ったもの、諦めたもの、やり残したものばかりが数を重ねていく。
――危険だと判断したら逃げていい。
――それで研究所や我々が襲われる可能性があるとしても、とにかく絶対に死ぬな。
死に掛けの身体を引き摺って駆けずり回って血反吐を吐いて。
命を懸けても何も得られなかった。
後には何も残らない。
「結局私は、何も守れはしなかった……ッ」
生き残った者達も、約束も、何もかも投げ出して一人死んでいく。
虚しく、あるのは悔いだけだ。
奈緒子の死以来、アイゼルを失ってもなお流れなかった涙が落ちた気がした。
それも外気の熱に煽られて蒸発し、跡も残さずに消える。
最早足掻く気力すらなくなって、残った右目で舞い散る火の粉を眺めていた。
炎はますます激しく踊り、周囲の景色を舐めるように包んでいく。
燃え盛る草木、崩れる建物、割れる窓ガラス、全ての雑音も既に気にならない。
耳を傾ける事すら億劫だった。
「……」
炎の中、一際強い光に目を細める。
東の空と海の境界から差し込むその光は、炎よりも明るく柔らかい。
空と海をオレンジ色に染め上げ、扇のように広がって夜の闇を追い払っていく。
風が吹き抜ける。
熱風ばかりが吹き荒んでいたその場所に、少しだけ冷えた空気が流れ込む。
風向きが変わり、炎を震わしてその勢いを弱くする。
54 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:34:42.50 ID:y0QrZhmN
55 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:35:04.08 ID:CPt07XXI
56 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:35:37.68 ID:f8Ch1cCx
その新しい風を舞い込ませたのは、既に見慣れた二人だった。
上空から陽光を遮るように降り立ち駆け寄ってくる姿に、ジェレミアは目を丸くする。
「何故」と言おうとして開いた口は、言葉を紡ぐ事も出来ずにいる。
「何で驚いた顔してるかな……ここまで来て、言われた通りさっさと先に行くってわけにいかないでしょ。
俺一人ならともかくつかさちゃんもいるのに」
「ジェレミアさん、腕……怪我が……!」
騒がしさが強制的に耳朶を打つ。
眩い朝陽を背負った二人。
片膝を着いた北岡が手を差し伸べてくる。
死の間際に見る夢ではないかと、目の前の光景を信じられずにいた。
何故逃げなかったのかと、巻き込まれたらどうするつもりだったのかと言おうとしていた。
だがジェレミアも逆の立場であれば、やはりそこに留まっていただろう。
全員で、帰る為に。
人形のような音を立てて軋む腕を持ち上げ、差し伸べられた手に触れる。
そして首を小さく横に振った。
「……無理だ、北岡。
私はここに残る」
二人が驚いた顔を見せる。
ジェレミアの手は力なく地に落ちた。
握り返す力も残っていない。
「ちょっと、まさかこの期に及んでまだ死にたいとか、」
「違うッ!!」
絞り出すような声を出した事で体から火花が強く飛び散り、ジェレミアの襟に掴み掛かろうとしていた北岡の手が離れる。
北岡は「結果は同じだ」と言うかも知れない。
だがジェレミアはこの場を生き延びる為に戦っていた。
死んでいった者達の分まで生き、守りたかったものを守り、仲間達が帰っていくのを見届ける為に戦っていた。
北岡が差し伸べたこの手を取れない事が、どれだけ口惜しいか。
純血派よりも黒の騎士団よりも付き合いが短く、けれど今まで得たどんな仲間よりも信頼した二人に。
この二人から話を伝え聞くであろう狭間やクーガー達に。
「この結果を望んでいた」などと思われたくはなかった。
左半身の損傷は限界値を超えていた。
右半身も既に手遅れだ。
差し伸べられた手を取る事は出来ない。
それを理解したようで、北岡はうなだれて溜息を吐いた。
北岡がそうして億劫そうに立ち上がろうとするも、悲鳴に引き留められる。
「ぃ、やです……!!
だって、……だって皆、で……一緒に、帰るって!!
言って……私……いや……」
つかさはぺたりと座り込んでしまった。
北岡が立ち、つかさの肩を叩いて促しても首を横に振って嫌がった。
つかさも状況を理解出来ていないわけではないのだろう。
彼女の目からは涙がとめどなく落ちていく。
熱で蒸発するのも間に合わず、次から次へと流れていく。
「何か方法は」と途切れ途切れに尋ねる声に、北岡もジェレミアも答えない。
別れを惜しむような間柄でもなかったはずだ。
57 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:36:19.61 ID:y0QrZhmN
58 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:36:34.09 ID:CPt07XXI
59 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:36:47.62 ID:f8Ch1cCx
互いに相手を見れば殺した事を、殺された事を思い出す。
そしてつかさに負い目があるように、ジェレミアにもつかさを見殺しにしようとした負い目がある。
罪悪感を抱えている。
だから極力相手の視界に入らないようにして、けれどいつでも駆け付けられる距離を保って。
視線を合わせる事すら限られ、会話も必要最低限。
そんな相手の為に、今更流す涙もないだろう。
そう思う。
だがつかさがそう思わないであろう事は分かっていた。
それが分からない程の浅い付き合いではなかった。
「もういい」とジェレミアが言っても、つかさはやはり首を横に振る。
赤子のように大声で泣く。
幼子のように駄々をこねる。
「置いて、くなんて……」
「わざわざ、死に顔を見られたいとは思わん。
巻き込まれないうちに、離れたまえ」
守れなかったものの数を数え、悔恨に悔恨を塗り重ねて。
それなのに仇にこうも惜しまれては、毒気を抜かれてしまう。
背負ってきた悔いまで溶かされてしまいそうになる。
もう一度北岡に促され、つかさは服の袖を目に当てたまま立ち上がった。
泣きじゃくり、細い肩も足も頼りなく震えている。
それでもここで我儘を続けて北岡を困らせる真似はしない。
一日前ならばともかく今は、自分のやるべき事を知っているはずだ。
とは言えつかさが自力で立ち上がった事に、ジェレミアはほんの少しだけ安堵した。
「移動ぐらいした方がいいんじゃないの」
「ここで良い。
それより……早く、狭間と合流してやってくれ」
誰よりも優れた頭脳、無二の能力。
そして一人で清濁も責任も全てを負おうとするその背に、自然と自らの主を思い出す。
だからそこに支えとなる者が必要な事も良く知っていた。
北岡とジェレミアのやり取りを余所に、つかさはふらふらと歩を進めてしゃがみ込んだ。
手にしているのはジェレミアが落とした仮面だった。
「これ……貰って、いいですか」
「……好きにしたまえ」
刀と違って何の役にも立たないだろうが、つかさはそれを大切そうに胸に抱き締めた。
熱風が吹き、もう時間が残されていないと告げている。
一度は収まりかけていたつかさの涙は再び溢れ、仮面の上に落ちた。
つかさが北岡と並ぶようにジェレミアの正面に立つ。
そして深く頭を下げた。
「ずっと……り、がど……ござ、いまし、た……っ」
嗚咽に潰れ、聞き取りにくい声だった。
それを見ていた北岡も、申し訳程度に続ける。
「あんたの事は嫌いだけど、結構助かったよ。
お疲れ、一応ありがとう」
感謝の言葉を口にされて、改めて思い知る。
既に理解して秘めていた事ではあるが、漸く正面から認められた。
60 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:37:33.41 ID:CPt07XXI
61 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:37:53.20 ID:f8Ch1cCx
本当に感謝するべきなのは。
支えられていたのは、縋っていたのは、依存していたのは――守られていたのは、ジェレミアの方だった。
「誰かを守る」という役目を己に課していなければ、立っている事すら出来なかった。
失ってばかりであっても独りになった事は一度もなく、本当に折れそうな時にいつも仲間がいた。
「感謝、している。
私は……貴公らと出会えた事を、誇りに思う」
ルルーシュと再会し、騎士として新たな人生を歩む事になった時。
それは自分を、世界さえも変えてしまうような瞬間だった。
不安定で何の目標もなかったはずの道が輝いて見えた。
それだけに主の喪失は、世界が壊れる事に等しい。
それでも今まで自暴自棄にならず、諦めもせず、戦い続けて来られた。
仲間がいたからここに辿り着いた。
その感謝を臆面もなく告げる事が出来たのは、ロロに、スザクに、云えなかった言葉があったからだ。
伝えようと思った時にはいつも手遅れだった。
今度こそ、後悔はない。
つかさはまだ泣いていた。
何度も鼻を啜り、幾ら袖で拭っても涙が落ちる。
だが息を止めてしゃくり上げるのを無理矢理抑え、それから大きく息を吸い込む。
そしてつかさは、笑ってみせた。
歪んでいて、不自然で、まだ涙が溢れていて、とても満面の笑みとは言えなかったけれど、笑おうとしていた。
「行ってきます」
いつかに聞いた言葉だった。
その時はジェレミアの方から送り出したのだが。
別れに際してこれを選ぶのは、とてもつかさらしく思えた。
まるで明日にでもまた会えるような、そんな錯覚を起こしてしまいそうになる。
――申し訳ございませんルルーシュ様。
――私は、最後まで柊つかさを……
これはきっと主への最後の、そして最大の不忠であろう。
常に険しくしていた眉間の力を僅かに解く。
強ばらせていた頬を少しだけ緩ませ、口の端を微かに持ち上げる。
「ああ、行け」
それなのにどうしてか、後悔は微塵も感じなかった。
【二日目/早朝/G−10 遊園地上空】
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、ブラフマーストラ@真・女神転生if…
[支給品]支給品一式×2(水のみ3つ)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、食材@現実(一部使用)、
パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた、メタルゲラスの角と爪、ジェレミアの仮面
[状態]精神的疲労(大)、ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
62 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:38:18.70 ID:y0QrZhmN
63 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:38:48.43 ID:CPt07XXI
64 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:39:24.78 ID:y0QrZhmN
65 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:39:53.71 ID:CPt07XXI
66 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:40:01.46 ID:f8Ch1cCx
0:……。
1:錬金術でみんなに協力したい。
2:狭間達と合流する。
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
[所持品]:支給品一式×5(水×2とランタン、鉛筆一本と食料の一部を消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、咲世子の煙球×1@コードギアス反逆のルルーシュ、
五ェ門の確認済み支給品(0〜1)(刀剣類では無い)、昇天石×1@真・女神転生if…、贄殿遮那@灼眼のシャナ、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
ジェレミアの確認済み支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
0:……。
1:つかさに対する罪悪感。
2:狭間達と合流する。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【サザーランド純血派機@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ブリタニア軍が開発した量産・普及型KMF(ナイトメアフレーム)。
G−9地下のKMF格納庫に収容されていた。
純血派機のシンボルとして機体の頭部のファクトスフィアと両肩が赤く塗装されている。
起動キーはV.V.の手元にあり、バトルロワイアルの進行状況次第で参加者に渡す予定もあった。
型式番号 RPI-13
全高 4.39m
重量 7.48t
装備 スタントンファ、スラッシュハーケン、アサルトライフル
第五世代KMFであり、第四世代のものよりもコクピットの居住性・生存性の他、機動性の向上が図られた。
R2では多くの新型KMFが登場したため旧式となったが、ジェレミアは可翔式やサザーランド・ジークという形で使用し続けている。
V.V.の改造によって、本来この機体に用いられていなかった神経電位接続システムが採用された。
またサクラダイトの使用量を増やし出力増大。
更にエンドレス・イリュージョンのG-ER流体システムが導入され、搭乗者と機体の伝達速度がより速くなっている。
【エクスカリバーコードギアス 反逆のルルーシュR2】
第九十八代皇帝のナイトオブワン・ビスマルクの専用機ギャラハッドが背中に装備する巨大剣。
皇帝が直々に命名したものである。
元の刀身はギャラハッド自体の全高七メートルすら上回るほど巨大。
収納時の機動力低下を防ぐためか鞘の先端にはランドスピナーが装備されている。
巨大な刀身からはピンク色のエネルギーフィールドが放出されており、天愕覇王荷電粒子重砲でさえも拡散させ払いのけてしまうほどの高威力を誇る。
この場ではサザーランドが扱えるよう約半分のサイズとなった為、出力もそれに合わせて低下した。
▽
67 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:40:29.56 ID:y0QrZhmN
68 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:40:53.14 ID:CPt07XXI
69 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:41:12.46 ID:f8Ch1cCx
二人が立ち去ってその背も見えなくなった頃には、炎は再び勢いを取り戻していた。
四方を火に囲まれ、傍らに転がっていた死体は既に火の手に飲まれて人の形を残すばかり。
これならもう志々雄やV.V.に利用される事もないだろう。
状況は何も変わっていない。
むしろ時間の経過によって悪化したと言ってもいい。
それなのに、不思議と気分は晴れやかだった。
「すまん、な……枢木。
私ばかりが、納得のいく結果に……なってしまった」
その代わり最期ぐらいは付き合おうと、小さく付け足す。
北岡に頼んで炎の来ない場所に移る事も出来たが、それではスザクを独りにしてしまう。
生前に何の借りも返せなかった、その分してやれる事はこれしか思い付かなかった。
ナイトオブゼロとナイトオブワン。
ゼロとナイトオブワン。
第九十九代皇帝ルルーシュと、二人の仮面の騎士による世界の変革。
この先、二人に訪れていたはずの未来をジェレミアが知る由もない。
ルルーシュがゼロとして初めて表舞台に立った時、ルルーシュが皇帝として最期を迎える時、そのどちらにも立ち会うはずだった二人。
奇妙な関係にあった二人は、結局敵となったまま終わってしまった。
この結末が残念ではあったが、今はもう諦めがついている。
左半身を蝕んでいた火花は徐々に収まっていき、やがて全体の機能が停止する。
それに併せて急激に意識が鈍り、朝焼けの名残を惜しみながら目を閉じた。
目蓋の裏に届く温かな光。
思い起こすのはいつか見たアリエス宮の夢。
誰もが笑っていられる幸せな世界。
実現し得ないと分かっていても、夢見ずにはいられない。
「ルルーシュ様、マリアンヌ様……」
二人の主はこの姿を見て呆れるだろうか。
それでも――
「遅ればせながら私も、そちらに――」
葛藤も後悔も置き去りして、静かな眠りにつく。
訪れるはずだった未来にて、1と0の名を冠するはずだった二人の騎士は、炎の中に消えた。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】
70 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:42:34.98 ID:CPt07XXI
71 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:42:55.53 ID:y0QrZhmN
72 :
◆.WX8NmkbZ6
:2013/05/12(日) 01:43:35.83 ID:f8Ch1cCx
投下終了です。
投下途中での中断、失礼致しました。遅い時間まで御支援ありがとうございます。
誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
73 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 01:54:12.30 ID:y0QrZhmN
投下乙です!
ジェレミアああああああああああああああああああああああ!!!!
ここで退場するとは……熱い死だった……!
原作から続くスザクとの因縁、この多ロワでの話、すべての総決算だった……!
ロボもカッコよく動いているところが想像できるし、それでジェレミアの心情も痛いほど伝わってくるし……!
大作投下乙でした!
74 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/12(日) 02:06:50.02 ID:IJBn7Rab
投下乙です!
ナイトメアの動きの細かさ、人vsロボからロボvsロボの戦闘の移り変わりが熱い…!
スザクやロロに対するジェレミアの思いも見事に書き込まれ、その覚悟からのこの結末…、とても引きこまれました!
そして最後に。ジェレミア…、お疲れさま…
75 :
◆.WX8NmkbZ6
:2013/05/13(月) 00:57:47.01 ID:HyosVycf
状態表にて、ジェレミアのデイパック内の支給品がつかさではなく北岡の所持品になっていた為、Wikiにて修正させて戴きます。
失礼致しました。
76 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/14(火) 06:23:53.25 ID:u0dzsL4y
憎しみ、悲しみ、孤独感、閉塞感。
それらの感情を持っている人、
何らかの形で、伝えたい人がおりましたら、
お願いいたします。
特に私が今、重要視しているのは、
憎しみというものの恐ろしさ
というのを、くだらない世界に知らせてやりたい、という意志を持った方です。
そうでなくても、勿論うれしいです。
アドレスは、
mofury100tb@gmail.com またはサイト内のフォームよりお願いいたします。
http://www.aozorakanshokai.co.jp/
絶対に、これまでもし一人で憎しみを伝えようとしていたならば、
プラスの要素もあると思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
送ってくださるのは、捨てアドで結構です。
77 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/15(水) 01:57:15.43 ID:HFfMzQD/
投下乙です!
コードギアスは把握してなかったけどそれでもうならざるを得ない熱い戦いだった!
ジェレミアがつかさに対して複雑な感情を持ったまま、だけど守れなかったことを悔やむシーンは涙が…
ギアスを把握していなくてもったいないとつくづく感じた話でした
改めて投下乙でした!
78 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/15(水) 20:53:10.16 ID:yYvz7tLw
男を支えたのは忠義。
そして男が貫いたのも忠義。
果てに悔いなどあるわけもない。
騎士、見届けさせていただきました。闘家乙です。
79 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/19(日) 21:20:01.26 ID:Kk0CCRs6
ひぐらしのなく頃に途中まで何巻か読んだんだけど
度の順で読んでいいかわからずに読むのやめちゃったわ
80 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/19(日) 21:21:00.24 ID:Kk0CCRs6
今日の気になったニュース
【芸能】乙武洋匡さん、人気レストランから入店拒否される・・・店主が謝罪★2
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1368963217/
81 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/19(日) 21:22:25.07 ID:Kk0CCRs6
つかテレビ面白いの全くやってねえな
82 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/22(水) 20:13:27.22 ID:3CQyXip3
てst
83 :
創る名無しに見る名無し
:2013/05/22(水) 20:14:38.01 ID:3CQyXip3
よっしゃー! 規制解除されたぞー!
84 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/01(土) 14:38:13.91 ID:sRhHYBSE
そろそろ予約から一ヶ月かー
因果応報みたいな大作が来るのだろうか
85 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/01(土) 19:19:43.99 ID:EmBToosM
このロワトップクラスの不人気が、またやらかしてしまうのか?
86 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/02(日) 09:41:28.80 ID:a3RKCU9z
>>85
このロワに不人気なキャラなんているのか?
87 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/02(日) 13:37:41.99 ID:R6PcOsxd
翠の子はなあ・・・
今でこそこんな感じだけど後から汚名返上してくれると信じてる
88 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/04(火) 00:27:11.32 ID:Uu3p4JQN
今の多ロワの最強ってシャドームーン、狭間、志々雄の三竦みかねぇ
89 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/07(金) 19:44:32.70 ID:XBwhvG/r
翠の子が漫画版でも大変なことになってる……
90 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/24(月) 20:39:23.23 ID:+eMskW7i
本予約きた…!
91 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/25(火) 19:52:54.77 ID:8Dn2BxcO
どんとこい
92 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/25(火) 22:19:55.92 ID:zlf9ZOvW
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0233.png
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0234.png
支援イラストを代理で貼らせていただきます
93 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/26(水) 00:57:19.11 ID:darrsAO3
うおおおお支援絵乙!!
94 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:07:20.72 ID:i8mN1Uw9
ついに今日か・・・
95 :
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 22:49:51.63 ID:QRfA3r5y
お待たせしました。
投下を開始します。
96 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 22:52:54.06 ID:QRfA3r5y
簡素な部屋の中で抱き合う二体の美しい少女人形。
それは他の何者かの悪戯でそうなった訳では無い。
二体の人形、それ自体が自ら抱き合っているのだ。
二体の人形、翠星石と薔薇水晶はどちらも自らの意志を持つ、生きた人形なのだ。
翠星石を包み込むように抱きしめる薔薇水晶。
程なく、薔薇水晶は翠星石から離れる。
翠星石はどこか名残惜しそうな様子だが、薔薇水晶は構わずに部屋から出ようとする。
部屋の扉からではなく、部屋の壁に掛かっている鏡で。
「……薔薇水晶、どこに行くですか?」
「私はどこにも行かない。ずっとあなたのそばに居る……」
薔薇水晶の返答を聞いても、翠星石の不安は消えない。
姉妹であるにもかかわらず、薔薇水晶の意思は不明瞭な点が多い。
それでも、今の翠星石にとっては唯一そばに居る大切な姉妹であり、
何よりこの場で信用できる、唯一の存在である。
その薔薇水晶が鏡から居なくなってしまった。
一人部屋に残された翠星石は、どうしようもない心細さに襲われる。
思い出したくないこと、そして考えたくないことも一人になると浮かんでくる。
何で一人になってしまったのだろう。
本来、翠星石がこんな場所で、大人しくしていなければならない道理は無い。
首輪を外して、殺し合いの会場も脱出できたのだから、
家に帰ろうとするなりすれば良いのである。
確かにそれは簡単な話ではない。
今の翠星石は、制限によってnのフィールドと言う移動手段を使えない。
そして現在翠星石が居るのは、V.V.の本拠地。云わば敵地にあたる。
軽々しく動き回るのは危険である。
それでも、本気で帰りたいのであれば幾らでも動きようがあるはずだ。
翠星石が帰ろうとしない理由。
それは単純に帰るつもりが無いからだ。
この殺し合いの中の渦中は、翠星石にとって耐え難い恐怖と苦痛に満ちた物だった。
更に翠星石は殺し合いによって蒼星石と真紅と水銀燈、そして雛苺まで四人の姉妹を失っている。
その上、殺し合いの恐怖と苦痛から翠星石を守っていた城戸真司を死なせてしまったのだ。
97 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:53:00.99 ID:h/AQ3314
98 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:53:36.87 ID:NQWgMm61
99 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:54:40.38 ID:NQWgMm61
100 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 22:55:20.15 ID:QRfA3r5y
翠星石の精神はこれ以上なく磨耗している。
今すぐ自分の世界に戻って、元の日常に戻りたいことは間違いない。
ジュンやのりの顔が見たいと言う気持ちに違いは無かった。
しかしそれ以上に、このまま殺し合いに背を向けて逃げ出すつもりにはなれなかった。
殺し合いには、水銀燈と真司の仇であるシャドームーンが残っている。
水銀燈の受けた屈辱と、そして命を奪われた真司。
それを忘れて帰ることはできない。
それならば今度は、早く殺し合いの場に戻りシャドームーンと決着を付ければ良い話だ。
しかしそれも簡単な話ではなかった。
既にシャドームーンは、他の参加者と手を組んでいる。
シャドームーンを敵に回すと言うことは、他の参加者も同時に回すことになる。
翠星石と言えども、今更シャドームーンを殺すことに躊躇は無い。
しかし他の参加者を殺すとなると話は別だ。
――――何が別なのだろう。
残った参加者は皆、他の者を襲っていたり、シャドームーンと組んでいたり、そして翠星石を騙している、
信用のできない連中ばかりだ。
そんな連中がシャドームーンの側に立つと言うことは、自分の敵と言うことで構わないはずだ。
少なくとも翠星石にとって、水銀燈と真司の仇より大事な物ではない。
それなのにまだ翠星石は戦うことに躊躇している。
戦いがそんなに厭わしいのか?
クーガーの言葉がまだ引っ掛かっているのか?
翠星石自身にすら理由は判然としない。
判るのは、今の翠星石が戦うことも逃げることもせず、
ただ無為に時を過ごしていることだけ。
ただ一人で姉妹や真司の死を抱えて。
殺し合いがどんな結末を迎えるのか、翠星石には想像も付かない。
しかしこのままその結末を、ただじっと待っていれば満足できるだろうか?
それは嫌だ。
それだけはできない。
姉妹や真司の死を抱えたまま、何もしないで殺し合いの終わりを迎えることは。
多くの姉妹に囲まれて生活していた翠星石は幸せだった。
水銀燈とは争っていたが、それでも平穏な生活を送れていた。
永い眠りと戦いの果てに辿り着いた平穏な幸福。
その幸せは、所以も判らない殺し合いのために永遠に失われたのだ。
101 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:56:19.89 ID:NQWgMm61
102 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 22:56:44.87 ID:QRfA3r5y
殺し合いはあまりにも多くを翠星石から奪ってしまった。
もう絶対に取り戻せない損失。
だからこそせめて翠星石は失った物に報いることがしたかった。
そうしなければ喪失に押し潰されそうだった。
(…………翠星石はどうすれば良いんですか?)
ただ何をすれば良いのかが判らない。
戦えば良いのか? 一体誰と?
逃げれば良いのか? 一体何処に?
翠星石の身の振り方一つが、途方も無い難題に思える。
それほど翠星石が失った物は大きかったのだ。
蒼星石も、真紅も、水銀燈も、雛苺も死んでしまったのだ。
そして翠星石の手は、城戸真司の血で汚れてしまった。
違う
違う違う
違う違う違う違う
違う違う違う違う違う違う違う違う
頭が痛い。気分が悪くなる。
翠星石は今や真司のことを思い出すだけで、どうしようもない苦痛を覚えるようになってしまった。
それを誤魔化すように、翠星石は何度も自分に言い聞かせる。
真司を殺したのはシャドームーンだと。
殺し合いの中ではあれほど頼りになった真司の思い出が、今は何よりも翠星石を苦しめる。
そしてそのことが何よりも翠星石の精神を蝕んでいた。
だからその憤りは全て、シャドームーンに向けられる。
翠星石にとって、真司の死の責任はシャドームーンになければならないのだ。
ガチャリ
その時、部屋の扉からそう音が鳴った。
ドアノブを回す音。
扉は軋むような低い音を鳴らしながら、その後ろからゆっくりと光を差し込ませていく。
ゆっくりと。ゆっくりと。
しかし薔薇水晶は扉から出入りしない。別の者、と言うことになる。
ならばV.V.なのか? それとも志々雄なのか?
得体の知れない来訪者に翠星石は身を硬くして、ゆっくりと開いて行く扉を見守った。
しかし現れた二人は翠星石が予想すらしていなかった、
否、予想すらできなかった存在。
そして翠星石にとって真の恐怖と苦痛が始まる。
◇
「私たちは――――全員で研究所に向かおう」
狭間偉出夫の決断。それは全員で研究所に出発することだった。
狭間たちの当初の目的は、首輪を解除するために研究所へ赴くこと。
研究所が在るのはA−10エリア。
狭間たちの現在位置であるF−10エリアからは遠い。
出発を急いで研究所の安全と首輪の解除方法を確保するべきだと言うのが、狭間の判断だった。
「援護には行かなくて良いんですか?」
ストレイト・クーガーがそこに疑問を挟む。
103 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 22:57:45.58 ID:NQWgMm61
104 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 22:58:26.47 ID:QRfA3r5y
先刻KMF(ナイトメアフレーム)の襲撃を受けた際、ジェレミアと北岡が足止めに留まっている。
襲撃してきたナイトメアフレームはただ一機。
しかしそれは正にワンオフの特製機、ランスロット。
同じナイトメアフレームの軍勢を相手にしても、八面六臂の戦果を上げるランスロットでは、
ジェレミアと北岡の二人だけとなると、戦力的な不利は否めない。
二人の援護に向かうべきでは無いのか?
クーガーがそう疑問に思うことも無理は無かった。
「それが出来る戦力が有ればな」
狭間の返答に、クーガーは小さく嘆息を吐く。
現在、クーガーの居る集団は、
狭間偉出夫、ストレイト・クーガー、ヴァン、上田次郎、シャドームーンの五名。
しかしメギドラオンを使った反動が未だ抜け切らない狭間、
二時間ナイトに変身することができないヴァン、
ほとんど独力で煉獄の大体を破壊したシャドームーン、
この三名はクーガーからも明らかに消耗が見て取れる。
そして当のクーガー自身にも疲労の色が見えていた。
クーガーは速さが信条の男。それは単純な運動速度ではなく、判断や実行の速度も含まれる。
そもそも余裕があるならば、とっくに自分だけでも援護なりに向かっている。
しかし参加者のほとんどが対主催で結束して、ここまで状況が煮詰まっている以上、
クーガーと言えど安易な独断専行は許されない状況だ。
自身や集団の状態を考慮して、クーガーは狭間の判断を待ったのだ。
「私たちは今、分断できるほどの戦力も無い。煉獄の撃墜に戦力を大きくつぎ込んでしまったからな。
……煉獄の内部は無人で、おそらく自動操縦だったのだろう……その無人艦を、わざわざ撃墜するために多大な消耗をしてしまった!
落とさずに艦の操縦系統を抑えれば、煉獄その物をこちらの戦力にできたにも関わらず、だ!!」
無人艦であった煉獄は、その戦闘行動の単純さからおそらく遠隔操作ではなく、自動操縦であったと推測される。
更に推測を進めれば、そのシステムは煉獄内部の操縦系統をコンピューターによって操作する物だと考えられる。
それならば煉獄の内部に侵入できた際、操舵室などにあるだろうコンピューターを掌握するなどすれば、
煉獄の操縦を奪取することも可能だった。
そして狭間にはそれができるだけの知識と技能を有している。
実際にはそれほど簡単に話が進むかどうかは判らないが、試してみるだけの価値は有った。
だからこそ狭間が艦内に侵入した際も、煉獄に対する攻撃は迎撃装備だけに留めていた。
もし煉獄の操縦を奪取することができたならば、戦力的な利益は計り知れない。
ジェレミアと北岡の援護も容易だっただろう。
「例えそれだけの専門知識が無くとも、無人艦に侵入できたらまず艦の操縦を奪うことを考えるだろう!
誰だってそう考える! 私でもそう考える! それを考えない奴はバカだ!!
ましてや艦内に味方が侵入しているにもかかわらず、艦を内側から撃沈するほどの大規模な破壊活動を行うなどよっぽどのバカだ!!
そのよっぽどのバカが、まさか数少ない味方の中に居たとはな!!!」
「……まあ落ち着いてください。あいつが居なかったら、研究所も危なかったことだし」
「ハァハァ……大丈夫だ。私は落ち着いている」
クーガーに諭されて、狭間は荒げた息を整える。
その狭間の息を荒げさせた原因である“よっぽどのバカ”ことシャドームーンは、
狭間の憤りが聞こえているにもかかわらず、気に留める様子も無く平然と佇んでいる。
そもそもが世紀王としてその脳まで改造されたゆえ、生来の王であるシャドームーンが自分の行いを省みることは無い。
反省とは世界の道理に支配された者の行いなのだ。
狭間とてシャドームーンに厭味が効くとは思っていない。
それでも勝手な行動への怒りを抑えられなかった。
「……煉獄、恐るべき敵だった。私の射撃の腕が無ければ、あそこで屍を晒していたのは私の仲間だったかもしれないな……」
その向こうで撃沈した煉獄を眺めながら、まるでそれを自分の功績のように語っているのは上田である。
105 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:00:01.97 ID:QRfA3r5y
上田は先刻から如何にも自分が煉獄撃沈の功労者です的なアピールをしているが、誰の眼中に入っていない。
ちなみに上田は、先刻の戦いにおける消耗がほとんど無く体力にも余裕があるが、
それですら狭間の判断には関係の無い情報だった。
「……とにかく、あれだけ派手に煉獄を撃墜したんだ。ジェレミアたちからもそれを確認できた蓋然性は高い。
そうなればランスロットを無理に足止めする理由も無くなる。私たちが無理に援護に行く必要もな。
ランスロットがいかに高性能の兵器でも、一度見失った人間を捕捉するのは容易では無いだろう。
全体の安全を考えた上でも、ここを出発して研究所に向かった方が良い。
私たちの戦力が回復した後に探知機を使えばジェレミアたちと再び合流するのも難しくは無いからな」
「じゃあ、気を取り直して出発と行きますか! この世の理は速さ!! 今は悩む時間ももったいない!
なぁに、世界を縮める俺のラディカル・グッドスピードなら、研究所だろうとどこだろうと目と鼻の先です!!」
狭間の説明が終わるか終わらないかの速さで、クーガーは自分の乗っていた車を狭間の横につける。
クーガーのアルター能力『ラディカル・グッドスピード』によって作り変えられたこの車なら、
確かに研究所でも、時を掛けずに付くことが可能だ。
しかも車に乗っている間に休憩を取る形にもなる。
この場の全員が狭間の判断に異論は無いらしく、
狭間とヴァンと上田は、クーガーの車に乗り込む。
「……乗らないのかシャドームーン?」
「フッ、世紀王がバトルホッパー以外の……」
「出せクーガー」
シャドームーンが車に乗らないことを確認すると、
その話が終わる前に、狭間は車を出発させた。
シャドームーンは後からバトルホッパーで追ってきたが、
特に文句も無く、車と並走する。
車に揺られながら、右手の海から昇る朝日を臨み、
さすがの狭間もようやく人心地つく。
無論、最低限の警戒は解いてはいないが、
ずっと張り詰めていた物を、多少でも緩ませることができた。
今の狭間は集団を指揮する立場となっている。
それに不服が在るわけでは無い。
しかしその判断の一つ一つに、責任の重さが伴う。
人を高みから見下ろす魔神皇には無かった、人の命を負う魔人皇の重み。
何より狭間にとって、レナとの約束が重い物だった。
『うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ』
レナの願い。狭間はそれを確かに了解した。
それはどんなに困難であっても成し遂げる覚悟だ。
誰を犠牲にするつもりも無い。
そのためにはいかなる障害も問題では無い。必ず排除する。
既に何人もの犠牲は出たが、それでも折れるつもりは無い。
問題はレナの言う“皆”とはどこまで含まれるかだ。
例えばV.V.と薔薇水晶がそこに含まれないことは容易に推測できる。
106 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:00:10.92 ID:NQWgMm61
107 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:01:26.03 ID:NQWgMm61
108 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:01:27.90 ID:QRfA3r5y
彼らは殺し合いを最初から主催していた立場だ。
レナが元の世界への帰還を願う筋合いなど無い。
問題となるのは最初から主催に組していた立場ではない人物である。
『だが主催に加わった以上は私達の敵、容赦はしない!』
志々雄真実に襲撃された時、狭間はそう言った。
実際、志々雄は二度も自分達を襲撃してきた。敵という判断は妥当である。
しかし主催に加わったと言う判断はどうか?
確かに志々雄はランスロットや煉獄などを持ち出して、襲撃してきた。
それらの戦力は主催の協力無しに用意できなかった物だろう。
それでも志々雄の性格を考えれば、自分を殺し合いに巻き込んだ主催にそのまま加わることは無いはずだ。
志々雄の性格なら、決して主催と馴れ合うことはしない。
おそらく主催その物を打倒してその戦力の掌握に取り組むだろう。
いずれにしろ主催と手を組んでいるのは、一時的な物と考えて間違いない。
そうなれば志々雄とは交渉の余地がある。
そんな相手を敵として切り捨てることが、レナの本意だろうか?
志々雄とて殺し合いに拉致された被害者であることに変わりは無い。
クーガーと翠星石と真司を助けたこともある。
無論、実際に志々雄と和解するなど、容易ではないだろう。
あれだけの攻撃をしてきたのだから。
ただ主催との関係や、そもそも志々雄の真意が不明な以上、安易な予断をするべきではない。
(…………違うな、不明なのは志々雄ではなくレナの真意だ……)
志々雄の心情が不明なのは間違いではないが、それが問題の核心ではない。
問題なのは――少なくとも狭間にとっては――やはりレナの心情なのだ。
しかし、もうレナにその真意を問い質すことはできない。
レナはもう死んだ。
そして死した者との約束だからこそ、決して裏切れない物として狭間を強く縛る。
(…………そろそろ探知機とホームページでジェレミアと北岡とつかさの様子を見た方が良いな)
答えの出ない煩悶を打ち切って、狭間は現状の把握に思考を切り替える。
どんな情報を得ても、現在の行動指針を大幅に変える蓋然性は低いが、
それでも別行動をしている三人の状況を随時把握していることは重要だ。
今にして思えば探知機はつかさにでも渡しておけば、全員の合流が楽だったかも知れない。
自分の判断にまだ甘さが残っていたことを反省しながらも、狭間は手元を動かし作業を進める。
自分のデイパックから、『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧するために必要なノートパソコンを取り出そうとする。
しかしノートパソコンを取り出そうとした手が止まった。
狭間の手元だけではない。
狭間自身、それだけではなく狭間の乗っている車ごと止まっている。
車が急停止したのだ。
何が起こったかはすぐに分かった。
109 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:02:28.79 ID:NQWgMm61
110 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:02:59.60 ID:NQWgMm61
111 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:03:47.35 ID:QRfA3r5y
車を急停止させたであろうクーガーは、視線を車の後方へ向けている。
その視線の先ではシャドームーンの駆るバトルホッパーが同じく停止している。
更にそのシャドームーンが視線を向けているのは、右手の海。
その海面には見覚えの在る、絵の具を無作為に混ぜたような混濁が浮かんでいた。
シャドームーンは広視界のマイティアイを有しているため、いち早くそれを発見することができたのだろう。
異空間、nのフィールドへの入り口。
それを確認した瞬間、車内の一同全員に緊張が走る。
nのフィールドは薔薇水晶が会場を移動するのに使用していた。
薔薇水晶、あるいは手を組んでいる志々雄の襲撃を全員が予感したからだ。
しかしそこから現れたのは薔薇水晶でも志々雄でもない。
nのフィールドの入り口から現れたのは、東欧の民族衣装を思わせるドレスに身を包んだ、
やはり見覚えの在る人形だった。
クーガーがその名を呟く。
「……翠星石さん…………」
その姿を完全に現した翠星石は、海上を浮かびながらゆっくりと陸に近付いてくる。
シャドームーンは徐にバトルホッパーから降りる。
その様からは翠星石への敵意が明らかだ。
そのシャドームーンの前、翠星石との間に割り込むようにクーガーの運転する車が入ってきた。
「シャドームーン、早まるなよ」
「フッ、だからそれはあの人形に言え」
シャドームーンに釘を刺しながら、狭間は車から降りる。
続けてクーガーとヴァンが、シャドームーンからヴァンの影に隠れるように上田が降りて来て、
シャドームーンを囲むように立ち並ぶ。
「ヴァン、シャドームーンを……」
「こいつに手出しさせなきゃ良いんだろ?」
ヴァンは、狭間にもシャドームーンにも目をくれず翠星石だけを見据えながら返答する。
どうやら翠星石からシャドームーンを守らなければいけない状況だと承知しているらしい。
とりあえずでも五人全員で翠星石を迎える体制が取れたことに狭間は安堵する。
翠星石は、未だ敵とも味方とも判断の付かない存在だ。
それゆえ敵だと割り切って対応できない分、難しい相手と言えた。
当の翠星石はシャドームーンに攻撃を仕掛けてくる様子もなく、狭間たちに近付いてくる。
ゆっくりと。ゆっくりと。
その様には奇妙な違和感があった。
「……いやあ翠星石さん、お元気そうで何よりです!
ところでどうしたんですか急に? もしかして俺に会いに来たとか?」
おどけた調子で話し掛けるクーガーだが、その構えから警戒の色を隠し切れていない。
どうやらクーガーも翠星石の状態を掴みかねているようだった。
それほど今の翠星石は得体の知れない気配を漂わせていた。
「そうですよぉ。わざわざ翠星石からお前らと会い来てやったんですから、せいぜい感謝しやがれですぅ」
翠星石はクーガーに笑顔を向けて返答する。
まるで花のような屈託の無い笑顔だった。
112 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:04:59.46 ID:6egaVYBB
支援
113 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:05:04.67 ID:hizAqskY
支援
114 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:05:27.67 ID:QRfA3r5y
しかしそれを見た狭間は言いようの無い寒気を覚える。
例えるなら、正に“人形のよう”な空虚さが漂う笑顔だった。
“人形のよう”?
翠星石は元来人形だ。それならば比喩として成立はしない。
しかし狭間、のみならず他の多くの者も、
翠星石が人の形を模した人造物、即ち人形であることを殊更意識することはほとんどなかった。
自らの魂“ローザミスティカ”を持つゆえ、自らの意志で行動して豊かな感情表現を見せる翠星石は、
人間と変わらぬ印象があった。
では今の翠星石には異様な空虚感が漂っていた。
何かが欠落したような空虚感。
一体何が欠落していると言うのだろう。
「…………翠星石、君はnのフィールドに侵入できるようになったのだな?」
狭間は慎重な口ぶりで、探るように問い掛ける。
翠星石の状態や思惑はともかく、すぐに攻撃を仕掛けてくるようなつもりは無いらしい。
それならば戦闘の回避は可能かもしれない。
シャドームーンとの経緯がある以上、味方に引き入れるのは簡単な話ではないが。
「そんなの翠星石の手に掛かれば、お茶の子さいさいですぅ。これで皆、殺し合いから脱出することができますね」
翠星石の返答は、意外なほど狭間の目的に沿った物だった。
言葉の意味を素直に受け止めれば、狭間たちの脱出に翠星石が協力してくれるつもりらしい。
翠星石とシャドームーンの衝突は避けられない、即ち自分と翠星石の戦闘も避け難いと予想していただけに、
狭間にとっては望外の言葉だった。
「nのフィールドを通れば、あのV.V.の所にでも連れて行ってやれるですよぉ。そうなったら皆でV.V.をギッタンギッタンにしてやると良いですよ」
「V.V.の居場所を知っているのか!?」
「翠星石なんて、あのチョココロネみてーな髪の毛を全部刈り取ってやってハゲハゲ坊主にしてやるですぅ」
それにも関わらず狭間は相変わらず、翠星石に対する不安感が拭えない。
それは上田やヴァンも同じ様子だった。
クーガーですら翠星石の思惑を掴みかねているのが判る。
シャドームーンだけが、変わらぬ鉄面皮にその思惑を隠している。
当の翠星石は相変わらず、空虚な笑みを浮かべていた。
V.V.の居場所を知っているらしいが、そのことを問い質したくとも、どうも会話が上手く噛み合わない。
とにかく翠星石を刺激しないようにしながら、その意思をはっきりと確認する必要がある。
違和感を引きずったまま、狭間は翠星石との対話を続ける。
「君は私たちの脱出に協力するつもりなのか?」
「そうですぅ。……ただしそれには一つ条件が有るですぅ」
「条件? 仕方ない、私の著作『ドンと来い!超常現象』をサイン入りで君にプレゼントしよう。
この世界的な名著を作者のサイン入りで手に入るんだ、一生に一度有るか無いかの幸運と言えるだろう。
…………と言うか、君には以前にも赤い宝石を上げたじゃないか! あれ以上、まだ要求するつもりか!」
「何だその条件と言うのは?」
意味の判らないことを言っている上田を無視して、狭間は翠星石の言う条件を問い質す。
交換条件を持ち出して来たということは、翠星石は狭間とTALK(交渉)をするつもりということだ。
115 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:06:10.03 ID:hizAqskY
支援
116 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:06:56.80 ID:QRfA3r5y
これだけあからさまに交渉を持ち掛けてきたのは、裏があるのではなく、
単純に翠星石が交渉ごとに慣れていないからだろう。
それでも油断はできない。
翠星石同様に、狭間も悪魔交渉は不得手なのだから。
シャドームーンを相手にした際に上手く行ったのは、同じ王であると言う条件もあって、
狭間にとって特別に相性が良い交渉相手だったからだ。
しかし翠星石は狭間にとって共通点の少ない相手であるし、
何より、人魔問わず不得手とする女性なのである。
いずれにしろ未だに翠星石の意図は掴み切れないが、和解の糸口はそこに見えているのだ。
そこから話を進めていくしかないだろう。
例えそこに罠があったとしても。
しかし翠星石は狭間の問いに答える様子を見せない。
ただ黙って右手を、自分の身体の前にゆっくりと上げていく。
ゆっくりと。ゆっくりと。
ちょうど肩の高さまで上がった所で、その指先が誰かを指しているのが判った。
指された者以外の、狭間にも、クーガーにも、ヴァンにも、上田にも、
一様に緊張が走る。
翠星石はシャドームーンを指しながら“条件”を提示する。
「その銀色オバケを翠星石に引き渡せば、皆を脱出させてやるですよ」
◇
「――――!!!!」
扉の向こうに現れた二人を確認した翠星石は、声にならない叫びを上げる。
それは驚き、と言うより理解を超えた混乱が原因だった。
有り得ないのだ。その二人が現れるのは。
何故ならその二人は、既に死んでいるのだから。
一人は女。
銀色の髪。
紺色のドレス。
そして欠落した腹部。
もう一人は男。
外に撥ねた茶髪。
水色のダウンジャケット。
そして欠落した下顎。
扉の向こうに立つ二人は、紛れもなく水銀燈と城戸真司だった。
懐かしむべき二人と再会した翠星石は、声一つ立てられず震えていた。
再会の喜びとは無縁の震え。
恐怖が翠星石の身体を震わしていた。
目の前の光景は翠星石にとって、あまりにも不条理な物だった。
117 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:06:58.85 ID:0Cq9BdCi
支援
118 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:07:11.66 ID:hizAqskY
支援
119 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:07:36.87 ID:6egaVYBB
支援
120 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:07:43.44 ID:NQWgMm61
121 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:08:00.51 ID:QRfA3r5y
水銀燈はその死の瞬間を確認している。
何より翠星石は水銀燈のローザミスティカを保有している。
ローザミスティカはローゼンメイデンの本体に等しい。
それが翠星石に在る以上、目の前に水銀燈が居るはずが無いのだ。
真司もまた、その死の瞬間を確認している。
それは何より翠星石にとって確かだ。
何故なら真司を殺したのは――――
「――――!!」
扉の向こうに佇んでいた水銀燈と真司が動き出す。
ただそれだけで、翠星石は息を呑んだ。
一歩一歩と部屋の床を踏み締めて確実に近付いてくる二人。
その確かさは、二人が夢や幻のごとき存在では無いを示していた。
水銀燈と真司は確かにそこに存在している。
それだからこそ翠星石は二人が恐ろしいのだ。
翠星石がかつてテレビでお化けを見た時も、震えるほどに怖かった。
しかし今翠星石が覚えるのは、全く別種の恐怖。
自分の行いを責められる恐怖。
確かな存在感を示しながら、まるで幽鬼のごとく無言に歩を進める二人。
それに圧されるように、後ろに踏鞴を踏む翠星石。
翠星石の震える足が縺れて、何も無い所で転倒。
二人の足音が近付いて来るのを聞きながら、翠星石は慌てて起き上がろうとするが、
突如、その脚を誰かの手によって強く後ろに引っ張られ再び転倒する。
体温を感じ取れない異様に冷たい手。
誰の手なのかほぼ想像がつくが、それを確認するのが恐ろしい。
手で床を掻いて逃げようとする翠星石。
しかし身体ごとを引っ張られ、無理やり対面させられる。
人の体温を失った城戸真司と。
顔色と下顎を失くし、眼も空ろな真司の面相は、
まさしく現世に蘇った死者、UNDEADその物だった。
「ああああああああああああああ!!!」
翠星石の口からようやく言葉にならない悲鳴が零れる。
そして眩い光が翠星石の身体から放たれる。
ゴルゴムの王のみが持つことを許された賢者の石・キングストーン。
現在は翠星石の体内に在るそれが、翠星石の恐れに呼応して紅い輝きを放ったのだ。
キングストーンが示すのはその光だけではない。
世紀王の根源とも言えるキングストーンは、輝きと同時にその絶大な力を発揮する。
翠星石の手から光の波が衝撃となって放たれる。
衝撃は翠星石の何倍もの体躯を持つ真司を、玩具のごとく転がした。
翠星石はそれに目もくれず逃げ出そうとする。
どこに逃げるつもりなのかも定かでは無い。
それほど翠星石は慌てふためいていた。
122 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:08:25.31 ID:NQWgMm61
123 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:09:28.37 ID:QRfA3r5y
しかし翠星石の身体は再び、温度のない手によって抑えられる。
人の物では無い小さな手。
肩を掴まれた翠星石は、それが水銀燈の手であることが判った。
途端、翠星石の中でローザミスティカが反応する。
水銀燈から受け取ったローザミスティカ。
それに込められた水銀燈が受けた屈辱の記憶。
そしてローザミスティカを受け取った時、
同じローゼンメイデンの姉妹として、水銀燈から託された想いに必ず報いると自分に誓っていた。
そんな今や二つの物とも一つの物ともつかない記憶を、翠星石は呼び覚まされたのだ。
だからこそ、今の翠星石は恐怖を覚える。
同じローゼンメイデンの姉妹である水銀燈に。
しかしどれだけ足掻いても、水銀燈の手から逃れることはできない。
翠星石から再び紅い輝き、キングストーンの力が放たれる。
そして水銀燈のローザミスティカの力も。
翠星石の身体の周囲に黒い鳥羽が、何枚も発生していく。
黒羽はまるで弾丸のごとくに突端を水銀燈に向けて一斉発射。
黒羽は水銀燈を切り裂き、その身体を翠星石から引き剥がす。
しかし黒羽は速度と切断力に優れた武器であるが、羽自体が軽量ゆえに銃弾のようなストッピングパワーは持ち合わせていない。
水銀燈はその身を切り裂かれながら尚も翠星石に追い縋り、その身体に取り付いてくる。
「来るな!!! 来るなですぅ!!!」
嫌悪に満ちた拒絶の言葉を姉妹に浴びせながら、翠星石は水銀燈の身体に取り付いた黒羽から青い炎を発生させた。
炎は瞬時に水銀燈の全身を覆い尽くすほどに燃え上がったのだろう。
背後に炎の熱を帯びる翠星石の身体から、水銀燈の手が離れた。
ようやく水銀燈を振りほどいた。
そう思い、翠星石は背後に振り返る。
そこには、まるで地獄の一場面を切り取ったような光景が広がっていた。
青い炎が水銀燈を包み込む。
衣服が燃え落ち、毛髪が燃え上がり、表皮と言わず眼球と言わず溶解して行き、
水銀燈の全身を炎が容赦なく焼いていた。
それにもかかわらず、水銀燈は翠星石に向かって行く。
苦痛に耐えている気配すらない。
何の意思も感じ取れないその様は、翠星石にはまるで地獄の餓鬼のように見えた。
そして今、水銀燈を地獄に落として亡者としているのは翠星石なのだ。
(嫌ぁっ!! なんで――――)
自らが作り出した地獄に姉が焼かれる。
(なんで翠星石にばかりこんなことが起こるんですか――――)
その有様に耐え難い苦痛と恐怖を覚えた翠星石は、
(もう……もうこんなところに居たくないです!!)
かつて真司の死を思い出した時のように、己の責からの逃亡を望んだ。
その思念に呼応して、キングストーンは今までになかったほど強烈な光を発する。
そしてその力も。
124 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:09:29.92 ID:hizAqskY
支援
125 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:09:40.82 ID:NQWgMm61
126 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:10:51.96 ID:QRfA3r5y
翠星石の全身から放たれていたキングストーンの光が、突如一方向へ収束していく。
光が浴びせられる場所は、薔薇水晶が退室に使った鏡。
キングストーンの光を帯びた鏡は、鏡面上に反応を示す。
絵の具を無作為に混ぜたような混濁を浮かび上がらせたのだ。
それは翠星石のよく知った現象だった。
「え、nのフィールド!!?」
翠星石の前に開かれたnのフィールドへの入り口。
しかし翠星石は、主催者によって掛けられた制限によりnのフィールドに入ることに強い抵抗を覚えるので、
そこに入ることはできない。
はずだった。
しかし翠星石が、おずおずと右手を差し出すと、
何の抵抗が表れることも無く、鏡の中に入り込んだ。
「は、入れるですぅ!!」
ゴルゴムを支配する王は、この世の条理を捻じ伏せてそこに君臨する存在。
その力の根源となるのがキングストーンなのだ。
キングストーンは所持者の想いに応えて、奇跡のごとき超常の力を発揮する。
翠星石に課せられていた制限はギアスに拠る物。
ギアスはキャンセラー無しには、ほとんど抵抗すら許さないほどの強制力を発揮する。
通常の力では決して破ることはできない。
しかしキングストーンはこの世のあらゆる束縛を乗り越えて、王として君臨するための物。
翠星石の想いに応えて発揮されたのキングストーン力は、ギアスの制限すら乗り越えた。
もっとも今の翠星石には、制限を破った原理などどうでもいい。
早くこの場から逃げ出したい。
その想いに駆られ、頭からnのフィールドへ飛び込もうとする。
「!!!?」
その眼前に突如、人形の顔が現れる。
鏡に映った翠星石の物ではない。鏡面はnのフィールドに塗り潰されているのだから。
人形の顔はnのフィールドから現れたのだ。
「ばばば薔薇水晶!! 脅かすんじゃねーです!」
nのフィールドを通り翠星石と鉢合わせになる形で現れた薔薇水晶。
その不意打ちに驚いていた翠星石だが、すぐに気を取り直して再び逃亡を開始する。
今度は薔薇水晶の手を取って。
「ば、薔薇水晶も早く逃げるですよ!」
「なぜです?」
しかし薔薇水晶は、翠星石がその手を引いてもそこから動こうとしない。
翠星石は手を引きながら、薔薇水晶を急かすように声を張る。
「何を言っているですか!! 薔薇水晶はあれが見えないんですか!?」
「あれですか」
薔薇水晶は別段、強情張るでもなく、
翠星石の様子が心底不思議だと言わんばかりの表情で小首を傾げる。
127 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:11:19.54 ID:NQWgMm61
128 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:11:59.40 ID:6egaVYBB
支援
129 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:12:21.20 ID:QRfA3r5y
その視線の先には、水銀燈と真司が居た。
「あれはたった七人しか居ないあなたの姉妹。そしてあなたを守ると言ってくれた人ではないのですか?」
途端、薔薇水晶を引く翠星石の手から、全身から力が抜ける。
翠星石は声を発する力まで無くしたかのように、口を震わせている。
違う
そんなはずが無い
あんな恐ろしい物が自分の親しい者たちであるはずが無い
声にならない言葉を発する翠星石と対照的に、薔薇水晶は淡々と語り続ける。
「それに、どこに行っても……どれだけ逃げても……無意味。だって、あなたは決して逃げられない」
「……な、何を言ってやがるんですか? だって翠星石はnのフィールドに入れるんですよ……」
薔薇水晶の言葉に不穏な物を感じながらも、翠星石は何とか反論の言葉を搾り出す。
それでも薔薇水晶は淡々と語り続ける。
翠星石を決定的に責め立てて、打ちのめす言葉を。
「どんなに逃げても……あなたの犯した罪からは逃げられない」
それは翠星石にとって、どんな刃よりも鋭く己を抉り貫く言葉だった。
翠星石が、なぜあれほど二人を恐れたのか
翠星石が、なぜ逃げようとしたのか
恐怖の源泉は自分が犯した罪。
自分の罪深さを直視することができないから逃げ出した。
翠星石の視界が酩酊して、世界が歪む。
自分が膝から崩れていることさえ気付かない。
薔薇水晶の話は終わらない。
翠星石の世界を更なる痛みで満たしていく。
「あの二人が恐ろしいですか? でもそれはあなたが仕向けたこと……」
翠星石の罪深さが更に白日の下に晒されていく。
真司を殺した。
水銀燈の屈辱を知りながら、その報復を行おうとしなかった。
そして二人から逃げるために、二人を攻めて傷付けた。
それは全て翠星石が行ったこと。
あの二人を死霊としたのは翠星石なのだ。
「あなたが逃げるほど、あの二人は決して許しはしない」
違う、と言う言葉は今度こそ翠星石の中にすら聞こえない。
あの二人が翠星石の罪だとするならば、薔薇水晶の言う通りどこへ逃げても無駄なのだろう。
nのフィールドを通ろうが意味は無い。
翠星石自身が翠星石を追い詰めているのだから。
130 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:13:04.66 ID:NQWgMm61
131 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:14:02.76 ID:QRfA3r5y
罪は逃げようとすればするほど大きくなり、十字架は目を逸らせば逸らすほど重くなり翠星石に圧し掛かる。
どこまでも翠星石を責めるだろう。
いつまでも翠星石を苛むだろう。
掛け替えの無い姉を
何度も命を守ってくれた兄を
永遠に恐れ続けなければならないのだ。
絶対に逃れられない罪の牢獄。
それが翠星石に科せられた罰なのだ。
「……………………じゃ、じゃあ…………じゃあ翠星石は……」
どうすれば良いんですか、と言う言葉も出ない。
それは翠星石の問題だと、翠星石自身が一番良く判っていたし、
薔薇水晶にそう言われて突き放されるのが怖かった。
もう翠星石には薔薇水晶しか味方が居ないのだから。
「……どうすれば良いのか、はもう翠星石に言いました」
「…………な、何の話ですか!?」
しかし薔薇水晶は、まるで翠星石の心中を読んでいたかのように返答した。
顔を上げた翠星石は僅かに語気を取り戻し、薔薇水晶を問い詰める。
どんな闇の中でも、光が差し込めば人は力を取り戻すことができる。
例えその光の先に罠があったとしても。
「先ほど、ジェレミア・ゴットバルトが死亡しました。これであと、八人……」
何が後八人なのか、翠星石には判っていた。
そしてそれが指し示す意味も。
ジェレミアが死んだことによって残った参加者は、
翠星石、ストレイト・クーガー、ヴァン、上田次郎、狭間偉出夫、北岡秀一、柊つかさ、シャドームーン、志々雄真実の九人。
そこから翠星石を抜けば残り八人。
その八人が死ねば、翠星石は殺し合いを優勝することになる。
優勝をすればV.V.に拠れば『どんな願いも叶う』。
V.V.の言を素直に信じるならば、誰を生き返らせるのも思いのまま。
即ち薔薇水晶は八人を殺して、翠星石の罪を清算しろと言っているのだ。
それは紛れも無く殺人を促す言葉。
翠星石は何よりも争いごとが嫌いだった。
誰を傷付けるのも、誰に傷付けられるのも。
だからこそ翠星石はアリスゲームを拒否してきた。
そんな翠星石が誰かと殺し合うことをよしとするはずが無い。
「……………………」
「戦うことだけがあなたの生き方じゃない……でも戦わなければ手に入れられない物もある……」
しかし翠星石は薔薇水晶の言葉をただ黙って聞いていた。
今の翠星石に殺し合いを否定することはできない。
それは闇の中で唯一差し込んだ希望の光。
人は例え無限の苦痛に耐えることができても、唯一つの希望を否定することはできない。
どんな強さを持っていたとしても関係ない。
人は希望を否定して闇の中に身を置いていられるようにはできていないのだ。
「あなたはもう一人でどこにでも行ける」
薔薇水晶が視線を向けた先に在るのは鏡。
132 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:14:21.40 ID:T+kTljEI
支援
133 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:14:39.94 ID:6egaVYBB
支援
134 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:14:44.34 ID:NQWgMm61
135 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:16:41.68 ID:NQWgMm61
136 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:16:47.33 ID:QRfA3r5y
そこにはまだnのフィールドへの入り口が開いていた。
そこを通れば、自分は戦いの場へ戻ることができる。
殺し合いの場へ。
「戦いを選ぶなら早い方が良いです。もう他の参加者が、いつ殺し合いを終わらせてもおかしくない」
ドクン、と自分の身体が震えたように翠星石は思えた。
殺し合いが終わると言うことは、願いを叶える機会は永遠に失われると言うこと。
そしておそらく今から殺し合いが終わるとなれば、それは優勝者が決まると言うことではなく、
参加者の反抗によって、殺し合いその物が御破算になると言う形を取るだろう。
何しろ、今残っている参加者の内、翠星石と志々雄を除く全員が停戦で合意している。
殺し合いの打破が近いことは、翠星石にも容易に想像できた。
そしてあのシャドームーンもクーガーたちと共に殺し合いの打破に協力していた。
その様を思い描いた途端、翠星石の胸中に黒い物が込み上げて来る。
水銀燈と真司の仇であるシャドームーンが、まるで正義の味方であるかのように仲間の力を借りて主催者を討つ。
翠星石にとってそれは、自分の大事な物を決定的に汚されるような忌まわしい光景に思えた。
そしてそうなれば翠星石は決して共に戦うことはできない。
翠星石がシャドームーンと肩を並べてことなどできるはずもないのだ。
だからシャドームーンたちが華々しく奇跡のごとき勝利を得る裏で、
翠星石は自分の罪に焼かれながら、闇に取り残されることになるのだ。
何でそんな理不尽な羽目にならなければならないのか。
そんな理不尽で、醜悪で、残酷な事態を受け入れなければならないのか。
嫌だ
嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
力無く膝を折っていた翠星石が再び立ち上がる。
このまま膝を付いて、ただじっと全てが終わるのを待っているのは嫌だ。
何もしないまま一人で取り残されるのは嫌だ。
それがどんなに我侭勝手であろうと、翠星石の譲れない想いだった。
「戦いに行くのですか?」
「……薔薇水晶は、翠星石が殺し合いに乗った方が良いと思いますか?」
しかしこの期に及んでも殺し合いに乗る決心はつかない。
殺し合いに優勝するにはシャドームーンだけを殺せば済む話ではないのだ。
既に一人を殺しているとは言え、過失で殺すのと進んで殺しに行くこととは全く話が違う。
更に言えばシャドームーンだけを倒すためであろうと、組んでいる者たちとの戦いも避けられないだろう。
そして今の対主催集団との戦いとなれば、それは命懸けの物となるはずだ。
そうなればもう後戻りはできない。殺し合いに乗るより他に道は無くなる。
即ち戦いを選ぶと言うことは、後戻りのできない殺し合いの道を選ぶと言うことだ。
「残った八人の命が大切かどうかは、あなたが決めることです……」
薔薇水晶の返答は相変わらず淡々としたものだった。
137 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:16:51.95 ID:T+kTljEI
支援
138 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:17:11.58 ID:RUw/H9pf
支援
139 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:17:50.05 ID:QRfA3r5y
それでも今の翠星石には、今や唯一信頼できる姉妹の言葉。
僅かに気が楽になるのを感じた。
「翠星石が確かめれば良い話ですね…………あいつらが翠星石の味方か、銀色オバケの味方か……」
そう言って翠星石は微笑みを見せる。
しかし笑顔には、常の翠星石には無い暗い物を抱えていた。
その翠星石の微笑みを見て、薔薇水晶もまた微かな笑みを返した。
◇
相変わらず屈託のない笑みを浮かべる翠星石と対照的に、五人は重苦しい沈黙に包まれていた。
ヴァンのみならずクーガーも翠星石に鋭い視線を向けている。
シャドームーンは相変わらずの鉄面皮。
上田はその人並み以上に大きな身体を、ヴァンの背中に隠している。
そして狭間は緊張の面持ちで、その卓越した頭脳で翠星石への対応策を練っていた。
翠星石の要求はシャドームーンの引渡し。
それさえ呑めば脱出に協力すると言っている。
しかし安易にその要求を受け入れるわけにはいかない事情がある。
その身の安全を保障する、シャドームーンとの契約があるのだ。
そして翠星石は、狭間が知る限りシャドームーンにとって最も危険な存在なのだ。
「……シャドームーンをどうするつもりだ?」
「おめーらには関係の無いことですぅ」
翠星石は狭間の疑問に答えない。
即ち、翠星石はシャドームーンの命を引き渡せと要求していると言うこと。
ならばそれに対する狭間の答えは一つ。
「契約のことは知っているな。シャドームーンの安全が保障されない以上、君に身柄を引き渡すことはできない」
狭間がシャドームーンと交わしたのは、王の名の下の契約。
それを違えることは決してできない。
例え交換条件として何を差し出されても、シャドームーンを危険に晒すことはしない。
断固とした意思をその語気に込める狭間。
狭間の意気を受けても、翠星石はまるで涼風でも受けたかのごとく薄ら寒い笑みを浮かべている。
「……銀色オバケとは契約できて、翠星石のお願いは聞けねーって訳ですね」
翠星石の笑みに酷薄な獰猛さを帯び始める。
獲物を弄ぶ肉食獣のごとき獰猛さを。
今の翠星石にとっては狭間すら獲物同然の存在に見ている。
まるで言外にそう語っているようだった。
「二者択一の問題ではあるまい」
「どっちかしか選べないんですよ」
翠星石の冷ややかな口調の裏に悪意が透けて見える。
狭間にもはっきりと認識できた。
翠星石は狭間たちの至上の目的と、シャドームーンの命を天秤に載せて選択を迫っているのだと。
140 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:17:59.85 ID:NQWgMm61
141 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:18:27.24 ID:6egaVYBB
支援
142 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:19:18.00 ID:RUw/H9pf
�C
143 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:19:37.08 ID:QRfA3r5y
しかし易々と翠星石の意図に乗るほど、狭間も短慮ではない。
「……シャドームーンとの契約は、この殺し合いの主催者を打倒するまでの物だ。その後は私たちとシャドームーンが戦うことで話がついている。
まず私たちをV.V.の元へ連れて行ってくれ。そうしてV.V.を倒してその裏に誰も居ないことを確認できたら、
シャドームーンの身柄を君の好きにできるように計らおう」
「翠星石は今すぐ引き渡せと言っているんですよ」
可能な限り意図が伝わるよう、丁寧に妥協案を述べる狭間。
しかし翠星石の返答は短く、冷淡な物だった。
翠星石はあくまで狭間の妥協を許さない。
それでも狭間は、最善策を講じるためにその卓越した頭脳を回転させる。
「……君の言う『V.V.の所』とは、どんな場所を指しているのか具体的に説明してくれ。
そもそも君から提案された取り引きだが、私たちの立場からすれば君がそれを守る保証のない物だ。
それではこの場の全員の納得を得ることはできない。だからまず君がここからnのフィールドを経由してどんな場所に行くのを説明してくれれば、
すぐにはシャドームーンの身柄を引き渡すことができなくとも、場合によって途上で……!!!」
刹那を奔る閃光。
閃光は翠星石の手元から奔り、狭間の頬を掠めてシャドームーンの足下で爆発音と土煙を上げた。
正体は黒羽。
交渉に集中していたとは言え、翠星石に対する警戒を惰っていた訳ではない狭間ですら不意を衝かれた凄まじい速度。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせーんですよ!!」
先ほどまでの薄ら笑いからは想像もできないような、苛立ちを湛えた表情を浮かべる翠星石。
狭間としては慎重に交渉を続けていたつもりだったので、ここまで翠星石の怒りを買うのは予想外のことだった。
もっともそれは無理もないことだった。
高校生でありながら人類の最高峰まで科学の分野を極め、自らの力で魔界を構築することもできた狭間は、極めて論理的な人間である。
それは人として歪み魔神皇となってからも、実の所話の分からない人間では無かった。
平たく言えば理屈で物事を判断して、思考して、行動する人間なのだ。
しかし翠星石は違う。
翠星石は理屈だけで納得をすることは無い。
どんなに論理的に説得されても、自分の気持ちの納得の方を優先させる。
むしろ理屈を並べ立てられるほど、自分の話が曲げられていると感じて反発を覚えることもあるのだ。
狭間と翠星石は、悪魔交渉と言う場面においては極めて相性が悪い組み合わせなのだ。
「……もう一片だけ言ってやります。これが最後ですよ?」
翠星石は再び薄ら笑いを浮かべて話し始める。
その冷たい視線は、もう悪意を隠してはいなかった。
「さっさと脱出したいのなら、その銀色オバケを翠星石に差し出しやがれです。
すぐに答えないようなら翠星石から銀色オバケの方に行ってやるです。死にたくねーなら、邪魔しない方が良いですよ」
「フッ……魔人皇よ。どうやら正当防衛は成立したようだな」
これまで一言も口を利かなかったシャドームーンが初めて口を挟む。
剣を構えるその様子からは、並ならぬ覇気を湛えていた。
正当防衛の成立。
契約において、シャドームーンの参加者の殺害は禁じられているが、
正当防衛の場合だけは例外とされていた。
そして翠星石のシャドームーンの引き渡し要求。
シャドームーンの安全を保障しない。
更に武力による恫喝。
これだけの条件が揃えば『正当防衛の成立』と言うシャドームーンの弁を否定するのは難しい。
144 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:20:00.51 ID:NQWgMm61
145 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:20:41.76 ID:QRfA3r5y
即ち翠星石とシャドームーンの戦いは避け難いと言うこと。
狭間は翠星石との間に割り込むように、シャドームーンの前に立つ。
やはり穏当な交渉では翠星石との和解は不可能だった。
ならばもう少し強硬な手段に出るしかない。
リスクは増えるが、何れにしろこのままでは戦いは避けられない。
「それは貴様が殺し合いに乗ると捉えて良いんだな」
殺し合いに乗る、と言う言葉を選んでも翠星石に反応は無い。
翠星石にどこまで自覚があるかは不明だが、反応を引き出せない以上狭間で話を進める他ない。
「シャドームーンに危害を加えようとすると言うことは、他の参加者全員を敵に回すことになる。
ここに居る五人だけではない。貴様以外の誰も、もう殺し合いには乗っていない。
ここで私たち五人と戦闘になれば貴様は当然、他の参加者全員から殺し合いに乗ったと判断されるな」
狭間の言は正確ではない。
志々雄真実は狭間たちに攻撃を仕掛けてきたのだから、殺し合いに乗っていないか否かの判断は付かない状況である。
それでも翠星石が殺し合いに乗れば、敵対することになるのは間違いないのだから、
狭間の論は大筋では成り立っている。
即ち、翠星石への脅しとしては充分な意味を持つ。
それが狭間の計算だった。
「……おめーら、そんなボロボロの状態で翠星石の敵が務まるつもりですか」
嘲る響きすらない、怒りを押し殺すような翠星石の声。
翠星石の身体から紅い光が漏れる。
虚勢ではない。翠星石は純粋に狭間たちに怒りを覚えている様子だった。
身の程を知らぬ弱者に対する、強者の傲岸な怒りを。
翠星石がこれほどの戦意を見せるようでは、もう脅しも通用しない。
狭間は翠星石を説得する糸口を完全に見失っていた。
「……要するにあれだろ? お前はシャドームーンを渡さなきゃ、俺たちを殺すって言ってるんだな?」
翠星石の怒りを意に介さず、まるで雑談のような声が掛かる。
狭間は声の主、ヴァンを見やる。
ヴァンは翠星石を恐れた様子もなく、静かに言葉を続けた。
「……お前、俺たちが組んでいることを知っているんだよな? 知っていてシャドームーンを渡せって言っているんだよな?」
ヴァンが、なぜ翠星石の怒りを意に介さないでいられるのか?
狭間にもその答えはすぐに分かった。
翠星石同様、いや翠星石をも凌ぐほどの怒りをヴァンが抱えているからだ。
しかし、なぜヴァンが翠星石にそれほどの怒りを覚えているのか、
それが分からない。
ヴァンはシャドームーンに敵意を抱いている。
シャドームーンに危害を加えようとしていることは、ヴァンの怒りを買う理由にはならないはずだ。
146 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:22:15.33 ID:QRfA3r5y
しかし狭間にとっては、いずれにしろ今のヴァンを放置するわけには行かない。
このままでは、いよいよ翠星石との関係は抜き差しならない物になってしまう。
「ヴァン、翠星石との交渉は私に……」
「翠星石さん、俺は貴女に心を強く持ってくださいと言いました」
今度はクーガーが狭間の言葉を遮って、口を挟んできた。
クーガーもまた、その表情には思い詰めた物を湛えている。
「シャドームーンを差し出せと言うのは、貴女自身の意思で要求しているんですね?
それが貴女の出した結論なんですね?」
クーガーは翠星石へ肩入れしていた。
説得する場合は無論、いざ戦闘と言う状況になっても、
翠星石をかばう可能性があるとすら考えていた。
しかし今のクーガーは明らかに翠星石に叛意を抱いていた。
「クーガー……質問してるのは翠星石の方です……」
クーガーの叛意に、一瞬動揺の色を見せる翠星石。
しかしすぐに冷淡な表情に戻る。
かつては共に殺し合いの脱出を志した者同士の戦意がぶつかり合う。
「……翠星石はV.V.の所に連れて行ってやると言っているのに、ずっと殺し合いに乗っていたヤローを庇う訳ですね?」
「ああそうだ、こいつはずっと殺し合いに乗っていた……心底虫が好かない……後で必ず殺す……」
ヴァンが喋りながら自分の刀を構える。
次の瞬間には、神速を思わせる踏み込み。
僅かに反応が遅れて翠星石も水銀燈と同じ要領で、自分の手に西洋剣を形成させる。
ヴァンの刀を翠星石の剣が受け止める。
二つの金が火花を上げて競り合い、それを挟んでヴァンと翠星石が睨み合う。
「だが、今は俺とこいつは組んでいる!! こいつと背中を合わせて戦った!!
お前は、そいつの命を差し出せと言ってるのか!!!!」
「……翠星石に逆らって、勝てると思ってるんですか!」
翠星石の前面に形成される、紫色の純粋光の壁。
水銀燈のローザミスティカから得た能力である。
それがキングストーンによって更に出力が増加。
衝撃波のごとく放出される。
刀を構えるヴァンを吹き飛ばす。
翠星石は更に、自身の飛行能力でヴァンを追い掛ける。
地面に倒れるヴァンに一瞬で追い付いた翠星石は、剣を振り下ろした。
鉄火が打ち鳴らされる音が響く。
剣は中ほどで折れ、翠星石の手を離れて弾け飛んだ。
クーガーが足を伸ばす方向へ向けて。
「クーガー!!」
翠星石は自分の邪魔をしたクーガーを憎々しげに睨む。
その顔にクーガーの踵が叩き込まれた。
今度は翠星石が吹き飛ばされる番だった。
「翠星石さん…………理由はどうあれ、脅して共闘する者の命を差し出させる…………それはあまりにも文化的ではない了見じゃないですかねぇ」
口調は平素の穏やかな物と変わりは無いが、クーガーの声からははっきりと怒りが伝わって来る。
そうでなければクーガーが翠星石を攻撃したりはしないだろう。
147 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:22:30.05 ID:NQWgMm61
148 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:23:35.74 ID:RUw/H9pf
支援
149 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:23:44.65 ID:QRfA3r5y
その後ろでヴァンが立ち上がり、クーガーと並ぶように歩み出る。
ヴァンは翠星石を見据えて言い放つ。
「脱出のために、お前は邪魔だ。邪魔な奴は……殺す」
ヴァンとクーガーの怒り。
それは自分の意思を歪められる怒り。
復讐のために果ての無い旅に臨むヴァン。
残る僅かな命を己の速さを極めるために費やすクーガー。
この二人にとって、自分の生き方が歪められるのは何よりも許せないことだ。
だからこの殺し合いにも反逆する。
そして命を盾に脅して、隣に居る者の命を脅かさせる今の翠星石のやり方は、
二人にとって殺し合いを強要する主催者のやり方と変わりはしない。
自分の生き方と抵触する明確な敵なのだ。
ヴァンとクーガーの怒りに、怒りを込めた視線で返す翠星石。
翠星石もまたヴァンとクーガーが許せない。
シャドームーンとは同盟を結びながら、自分を除け者にして、
まるで正義の味方のような顔をして、怒りをぶつけてくる二人が。
討たれるべきはシャドームーンであり、それに組する者なのだ。
(やはり戦いは避けられなかったか……)
狭間の意に沿わない結果だったが、翠星石との接触が交戦に至ることはある程度予想できていた。
クーガーまでが戦いに乗ることは予想外だったが。
こうなっては狭間も、翠星石を相手に戦わざるを得ないだろう。
もっとも、それは翠星石の生還を諦めることを意味しない。
翠星石を上手く拘束、あるいは無力化することができれば、
最終的にはシャドームーンと決着を付けることになるのだから、まだ和解も可能だ。
問題として考えられるのは狭間たちの消耗度合いである。
ヴァンはナイトへの変身が未だ不可能。
シャドームーンの消耗もいまだに大きい。
しかしクーガーは比較的余裕があるし、
狭間も煉獄との戦いのダメージから、ある程度は回復していた。
そもそもメギドラオンを使った最大の弊害は、身体的な“反動”であって魔力的な消耗ではない。
体力が回復すれば、自然と反動も抜ける。
そして元来の魔力量が規格外に図抜けている狭間は、比例して魔力の回復量も埒外。
現在の狭間の魔力なら、味方の五人の中で最大の戦力を振るうことができる。
上手く立ち回れば翠星石を制圧して生存させることも可能である。
それが狭間の計算だった。
相変わらず上田は入っていないが。
しかし、すぐにその計算が甘いことを思い知らされる。
翠星石が、その手に持つ如雨露を振るい地面に水を巻く。
150 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:24:19.17 ID:NQWgMm61
151 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:25:28.18 ID:QRfA3r5y
金色の装飾が施されたそれは、紛れも無くただの如雨露。
如雨露は地面に水を撒き散らすための道具であって、およそ武器になるとは想像も付かない物だ。
しかし薔薇乙女の振るうそれならば、軍事の常識も覆すような武器と化す。
翠星石の足下から闇が何本も立ち上った。
それは一瞬で翠星石の姿を覆い隠し、天へと上っていく。
闇の正体は影。地面から異常な速さで成長させられた蔓のような植物の影だった。
蔓はその巨体をうねらせて、先端からヴァンとクーガーに向かう。
ヴァンの視界全体を蔓が埋め尽くし襲い掛かってくる。
「マハラギオン」
視界全体に広がっていた蔓が、瞬時にして炎に巻かれる。
炎の高熱は巨木を凌ぐ質量の蔓を容易く消し炭にしていった。
狭間が詠唱したのは火炎を拡散して敵全体を攻撃する魔法・マハラギオン。
翠星石の攻撃が植物の物であることを瞬時に見抜き、その弱点となる火炎で防いだのだ。
狭間が魔法戦闘に卓越している点は、その絶大な魔力と同時に、
瞬時に戦局を見極めて、それに適切な対応ができる頭脳にある。
蔦がヴァンに届く前に全て焼き払うことができた。
(……クーガーはどこだ!?)
狭間は先ほどまで眼前に居たクーガーの姿が無いことに気付く。
一瞬、蔦の攻撃を受けたのかと思ったが、すぐにそれは無いと思い直す。
あの誰よりも速さに優れたクーガーが、そんな愚鈍なはずが無い。
おそらく狭間よりも、誰よりも早く攻勢に転じたのだ。
時間を僅かに遡る。
遡ると言っても、ほんの数秒前。
蔦がクーガーに伸び始めた瞬間。
突如、周囲の地面に穿たれたような穴ができる。
そこから光の粒子がクーガーの両脚に集まり、桃色の装甲が形成される。
周囲の物質を分子レベルまで分解、そして再結合させるアルター能力。
クーガーの融合装着型アルター能力『ラディカル・グッドスピード』。
その脚部限定状態を形成したのだ。
踵のピストンを利かせて急発進。
人間の運動力学を超えた加速は、一歩目からトップスピードに到達。
視界を埋めつく蔦の、津波のごとき攻撃範囲から瞬時に脱出した。
面制圧攻撃すら余裕を持って回避する、ラディカル・グッドスピードの走行速度。
それはクーガーの身体を銃弾のごとき速さまで加速していた。
クーガーはその速さを保ったまま、急旋回する軌道を取り、
翠星石の側面に回り込む。
そしてラディカル・グッドスピードの気圧噴射によって更に増した加速度を活かした蹴りを放った。
衝撃波(インパルス)と共に放たれる神速の蹴撃・シェルブリットをこう呼ぶ。
「衝撃のファーストブリットォォォ!!」
クーガーの蹴りが炸裂。
空間に衝撃波と紫色の光の波紋が広がる。
152 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:25:44.00 ID:RUw/H9pf
�C
153 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:26:24.79 ID:6egaVYBB
支援
154 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:26:51.23 ID:QRfA3r5y
しかし蹴りは翠星石に届かない。
翠星石が水銀燈と同じ要領で張ったバリアである。
いかにクーガーが速くとも、攻撃が来るタイミングの大体の見当が付けば、
予めバリアを張っておいて防ぐことが可能。
そして今の翠星石が張るバリアは、シェルブリットをすら防ぎ切る堅牢さを発揮していた。
シェルブリットの反動を受けて弾けるように後方に飛ぶクーガー。
その着地地点へ向けて、翠星石は雛苺と真紅から受け継いだ能力で追撃に掛かる。
両手から轍と花弁を飛ばしたのだ。
矢のごとき速さで伸びる轍だが、クーガーの初速はそれを上回る。
着地とほぼ同時に横っ飛び。轍を回避する。
しかし追撃の手は、そこから更に伸びる。
轍と沿うように飛んでいた花弁の群れ。
それが轍から離れて、一本の鞭のごとくに伸びる。
クーガーの腕に巻きついたそれは、身体ごとを軽々と引きずり落とす。
地面に叩き付けられ、引きずられるクーガー。
「ブフダイン」
翠星石に氷片の混じった大気が叩き付けられる。
同時に翠星石の周囲の大気も急激に冷やされ凍結していく。
凍結魔法・ブフダインは標的を周囲の大気ごと凍結させる魔法。
そして狭間が放ったそれならば、瞬時にして大気を融点以下まで冷却することが可能。
その上ブフダインは標的単体のみに絞って攻撃することができるので、クーガーには被害が及ばない。
クーガーも動きを止めた花弁から脱出することができた。
凍りついた大気に覆われた翠星石。
しかし凍結の内部、翠星石の身体から紅い光が漏れる。
太陽のごとき赤い光。
翠星石を覆う氷結が、一挙に内部から破砕される。
(……何という力だ!!)
幾多の悪魔と戦って来た狭間だが、それでも翠星石の発揮する異常な力には驚きを禁じ得ない。
単純な出力において、これほどの強大さを示した者は始めて見る。
狭間の魔力が最大の状態でも比肩し得るかどうか。
まして消耗した今の状態では――――
「ドルミナー」
敵を強制的に眠らせる魔法・ドルミナーを翠星石に掛ける。
しかし先ほど同様、翠星石の紅い光に遮られて効果を発揮しない。
あの光は、シャドームーンがランダマイザを防いだ際の光と似た性質の物であるようだ。
ならばランダマイザも同様に翠星石には通用しない公算が大きい。
それどころか魔法による搦め手は、ほとんど通じない公算になる。
どうやら翠星石と言う“敵”は、狭間の予想以上に厄介な存在だったらしい。
カシャ カシャ カシャ カシャ
どこか壊れた機械を思わせる、ぎこちない足音。
155 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:26:58.98 ID:RUw/H9pf
支援
156 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:27:00.72 ID:NQWgMm61
157 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:27:37.79 ID:QRfA3r5y
それと共に白銀の鎧から生々しい血肉を露にした姿が、狭間の横から進み出る。
シャドームーンがその傷だらけの姿に、並ならぬ覇気を纏い進み出てきたのだ。
「……貴様が持っていたとは、探す手間が省けたな…………」
狭間との契約において、シャドームーンは自分の安全を保障させている。
しかし、シャドームーンにとってそれはあくまで首輪解除の際の安全を保障するための物。
戦いにおいて自分の身を護衛して貰おうなどとは、露ほども考えていない。
翠星石が以下に強大であろうと、自らの危機にはあくまで自分の力で応じる。
それこそが世紀王の在り方なのだ。
何より今のシャドームーンにとって、翠星石の強大さ以上に、
その力の源泉が問題だった。
先ほど、上田は翠星石に紅い宝石を渡したと言っていた。
そして今の太陽を思わせる紅い輝き。
その符号で、シャドームーンは嫌でも気づくことができた。
「…………どうやって取り込んだかは知らんが、貴様には過ぎた物だ。
返して貰うぞ。本来の所有者たる世紀王の私に。もう一つのキングストーン、太陽の石を」
翠星石の中にあるキングストーン。
それは本来、ゴルゴムの王のみが所有を許される。
そしてシャドームーンの持つ月の石と、翠星石の持つ太陽の石。
この二つを“世紀王”が併せ持った時、究極の存在“創世王”へと進化を果たすことができる。
世紀王の大望を果たすため、シャドームーンは翠星石へ殺意を向ける。
シャドームーン以外の者には、キングストーンが何なのか見当も付かない。
それでも話から推測するに翠星石の中に在るその物体が、出力源になっているらしい。
しかし狭間にとって問題となるのは、その出力源がどんな物であるかより、
シャドームーンがそれを回収しようとしているらしいことだ。
無論、それは穏当な手段とはならないだろう。
翠星石を殺してその死体から回収するか、あるいはそれに類する方法を取るつもりだと予想できる。
いずれにしても翠星石は無事ですまないだろう。
翠星石とシャドームーン、二人を制圧する必要が出て来たのだ。
(この二人を相手に可能か? 今の私の状態で……)
いずれにしろ、もう考えている余裕は無い。
今更翠星石が退くはずが無いし、シャドームーンも説得で引き下がる相手ではない。
狭間の力でこの場を収めるより他に無いのだ。
狭間がタルカジャとラクカジャを詠唱。
その効果を自分に受けたことを実感したヴァン、クーガー、シャドームーンの三人は、
同時に動き出した。
ヴァンが剣術の踏み込みで、
クーガーがラディカル・グッドスピードのピストンで、
シャドームーンが人工筋肉・フィルブローンの瞬発力で、
同時に翠星石へ飛び掛ったのだ。
三方向からの同時攻撃。
158 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:28:00.67 ID:RUw/H9pf
�C
159 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:28:15.89 ID:NQWgMm61
160 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:28:57.57 ID:QRfA3r5y
翠星石は左手から薔薇の花弁を、ヴァンへ向けて拡散するように連射。
ヴァンは飛来する花弁を刀で切り払っていく。
高速の剣技は花弁を次々と切り落とすが、絶え間なく発射される花弁の全てに対応することは不可能。
幾つもの花弁が叩きつけるような衝撃をヴァンに与えてる。
ヴァンは翠星石に届くことなく、あえなく墜落。
それでも囮としての役割を果たすことには成功する。
「壊滅の、セカンドブリットォ!!」
翠星石の正面からシェルブリットを打ち込むクーガー。
それもバリアに阻まれて届かない。
しかしそれも囮の役割を果たすことはできたに成功する。
水銀燈のバリアは平面上にしか発生しなかった。
同じローザミスティカで発生させている、翠星石のバリアも同様である。
即ち側面から斬りかかるシャドームーンのサタンサーベルを防ぐことはできない。
サタンサーベルの一閃。
対象的に翠星石の右手にあった庭師の鋏も一閃。
薔薇乙女と共に数百年の時を戦い抜き、刃こぼれ一つ起こさぬ庭師の鋏が、
伝説の魔剣サタンサーベルを受け止めた。
驚くべきは翠星石が片手でシャドームーンの一刀を易々と受け止めたことだった。
しかもヴァンとクーガーを片手間であしらいながらである。
翠星石の戦力が、以前までとは根本的に異なっている事実を端的に示していた。
しかしこの場に居るのは三人だけではない。
四方向目からの攻撃がまだ残っている。
「アギダイン」
単体を標的とするならば最強の火炎魔法・アギダイン。
狭間の詠唱と共に、巨大な火球が発生。
狭間はそれを翠星石へ向けて発射する。
しかしその攻撃にさえも、翠星石は既に迎撃の準備ができていた。
ヴァンとクーガーの攻撃を迎撃し終えた翠星石は、黒羽を飛ばす。
水銀燈が得意とした羽による攻撃。
その最大の長所は速射性と連射性にある。
予備動作のような物が一切無く連続発射することが可能な、羽による攻撃の性能は、
ローザミスティカを通じて、翠星石にも受け継がれている。
そして威力は、水銀燈の時の比では無い。
連続発射された羽は、狭間の放った火球と正面衝突。
結果、火球がまるで誘爆を起こしたように、火勢をその場から激しく四散させた。
発射した狭間のほとんど目の前で。
さしもの狭間も、突然の爆炎に目と耳を奪われる。
それを好機として、今度は翠星石が反攻に移る。
161 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:29:16.64 ID:NQWgMm61
162 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:29:57.80 ID:QRfA3r5y
片手に持つ庭師の鋏で、鍔迫り合いをしていたサタンサーベルを、シャドームーンの身体ごと軽々と弾き飛ばす。
そして両手で払うように左右へ広げた。
同時に翠星石から四方へ薔薇の花弁が発射される。
花弁はシャドームーンと、翠星石へ更なる攻撃を加えようとしていたクーガーを、
衝撃と斬撃で巻き込む。
全身に幾つもの切り傷を作りながら、地面を転がるシャドームーンとクーガー。
「四人がかりで傷一つ付けられんとはな……」
爆炎が晴れて、紅いオーラに身を包む翠星石の威容を見た狭間が思わず零す。
確かに狭間たちは消耗していたが、それ以上に翠星石の戦力が凄まじい。
とても殺し合いの動向においては、ほとんど戦果と呼べる物を上げられなかった者とは思えない。
翠星石を倒すには他の三人との、更なる精確にして巧緻な連携が必要だ。
狭間は更に神経を研ぎ澄まし、自らの魔力を練っていく。
シャドームーンの下腹部に在るシャドーチャージャーが回転。
それは内部のキングストーンのエネルギーがチャージされたことを意味する。
チャージされたエネルギーが緑色の光となって、シャドームーンの胴体から左腕に送られる。
そして更なる収束によって光線となるまで昇華されたエネルギーは、指先から発射された。
速射性と貫通性に優れたシャドームーンの光線技・シャドービーム。
並みの薔薇乙女なら、必殺の武器となり得るほどの光線。
しかし今の翠星石は、既存の薔薇乙女の水準をはるかに超えた戦力を発揮できる。
如雨露の水によって瞬時に蔦を育てる。
高密度に発達した蔦は、今や鋼鉄をも凌ぐ防護壁と化していた。
しかしシャドービームは、その蔦すらも貫いていく。
問題は蔦が地面から成長していく植物だということ。
シャドームーンへ向けて伸びるように成長していく蔦は、
シャドービームに貫かれても、後から更に発生して向かって行く。
秒にも満たない時間の内に、シャドービームと蔦が激しく押し合う。
やがてシャドービームは蔦の後端、翠星石の側の面まで抜けて穴を開けた。
しかしその時点でシャドービームのエネルギーが切れる。
シャドービームは翠星石に届くことは無かった。
それでも、既にクーガーは体勢と呼吸を立て直していた。
クーガーが再度、翠星石に真っ向から突撃する。
同じ相手に、愚直なほど何度も同じ戦方を取るクーガー。
しかしそれも仕方がない。
クーガーのラディカル・グッドスピードは格闘戦以外の攻撃手段を持たない。
どんなに愚直でも誰が相手でも、クーガーは常に己のラディカル・グッドスピードを信じて戦いに臨む。
クーガーが飛び蹴りを放とうとする構えで翠星石へ向けて飛び掛る。
しかしやはり翠星石はそれを予想していた。
いかに翠星石が強大でも、速さという分野ならばクーガーが上回る。
それでも来ると予想できれば、予め張っていたバリアで対応が間に合うのだ。
そしてそれはシャドービームを防ぐ片手間でも可能な
クーガーの蹴りがバリアに阻まれる。
寸前にクーガーの姿が消える。
「!?」
空中に居たクーガーが、一瞬でその場から消えたのだ。
163 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:30:21.74 ID:NQWgMm61
164 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:30:23.25 ID:RUw/H9pf
支援
165 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:31:18.05 ID:QRfA3r5y
クーガーは空中を飛行することはできない。
ラディカル・グッドスピードからの噴出で方向転換するにしても、
蹴りを放とうとする体勢から、そんな急激な方向転換ができるはずが無い。
クーガー一人の力ならば。
衝撃波(インパルス)が翠星石の頬を撫でる。
クーガーが居たはずの場所と反対の方向から。
そこにクーガーが移動していた。
巨大な紺色の蝙蝠に掴まれて。
それこそ仮面ライダーナイトと契約したミラーモンスター、闇の翼『ダークウイング』。
ミラーモンスターは仮面ライダーに変身をしていなくても、デッキの所有者なら鏡から召喚して使役することができる。
ヴァンがナイトのデッキを自分の刀の刀身に映し召喚したのだ。
その巨大な翼が発する衝撃波ゆえ、クーガーの接近を素早く察知した翠星石。
しかしクーガーの速さの前では、圧倒的に足りなかった。
クーガーのシェルブリットが、遂に翠星石を捉えたのだ。
翠星石の腹に刺さるクーガーの蹴り。
小柄な翠星石の質量はその衝撃に耐え切れず、サッカーボールのごとく弾け飛ぶ。
凄まじい速度で地面に叩き付けられる。
背中に生やした黒い翼から
「ッ! そんなへっぽこな蹴り、翠星石に効く訳ねーです!!」
堕天使を思わせる黒い鳥翼は、かつて水銀燈も生やしていた物だ。
翠星石は地面に叩き付けられる直前、それを急激に生やすことでクッションとしたのだ。
翠星石は自分を蹴ったクーガーを憎々しげに見る。
クーガーはシェルブリットを打った反動から立ち直っていない。
それほど渾身の力を込めた一撃だったのだろう。
しかし翠星石には背中から黒い翼を生やすと共に、無数の黒い羽も舞っている。
それらは翠星石の意思で武器とすることができる物だ。
翠星石の周囲を乱舞する黒羽は、一斉に無防備なクーガーに向かい、
そして発射された。
「ジオダイン」
直後、狭間の詠唱が終わる。
同時に発生する閃光。
ほとんど同時に鳴り響く、空気を裂いた轟音。
そして閃光は翠星石に一瞬にして伸び、そして包み込む。
それは文字通り雷速の一撃だった。
雷撃魔法・ジオダイン。
単体の標的に対する雷撃魔法としては、最高の威力を持つ。
狭間の放つジオダインなら、自然発生する雷と同等の雷光と雷鳴、
そして威力を発揮する。
更に標的の肉体に電気を流すため、麻痺させる効果も併発できる。
その上、雷は周囲に側撃を発散する。
側撃は翠星石の発射した羽も霧散させた。
放電を身に纏い、地面を転がる翠星石。
泥に塗れて倒れ伏すその姿は、先ほどまでの威容が嘘のようだった。
「フッ。壊れた人形とは無様な物だ」
シャドームーンが歩み出る。
166 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:31:48.22 ID:NQWgMm61
167 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:32:14.50 ID:RUw/H9pf
�C
168 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:32:18.80 ID:QRfA3r5y
その両足に、シャドーチャージャーからのエネルギーがチャージされているのを、
狭間は見逃さなかった。
「止めろシャドームーン!! 勝負が付いた以上、翠星石に危害を加える理由は無いはずだ!」
翠星石に殺気を向けるシャドームーンは、狭間の言葉にも耳を貸さない。
この場合は、仕方が無いとも言える。
狭間との契約上、正当防衛で無い限り他の参加者をシャドームーンが殺すことは許されていない。
それを盾に取るため、狭間は翠星石との勝負が付いたと強弁したのだ。
しかし翠星石は一時的に動きを止めているが、あれで戦闘続行不能であるとは思えない。
シャドームーンも、おそらく同じ見解を示しているのだろう。
シャドームーンは確実に翠星石を殺すつもりだ。
狭間の制止も聞かず、シャドームーンは跳躍した。
そして両脚を揃えて翠星石に突き出した。
両脚は翠緑の光を放つほどに、シャドーチャージャーからのエネルギーが込められていた。
それは仮面ライダーにとってのライダーキックに相当する、シャドームーン最大の必殺技・シャドーキック。
狭間はシャドーキックを知らない。
しかし見ただけでも、その尋常ならざる威力は想像がつく。
直撃すれば翠星石は無事では済まないだろう。
一瞬の逡巡も許さない判断。
狭間は魔法を詠唱していた。
「ザンダイン」
衝撃魔法・ザンダイン。
高密度の空気圧、衝撃波(インパルス)その物で単体の敵を攻撃する魔法。
高密度の大気その物が、翠星石に叩き付けられる。
それは翠星石に対する攻撃であり、
同時に翠星石を守る防御でもあった。
高密度の大気が翠星石に叩き付けられたと言うことは、その大気が邪魔となり他の攻撃ができない。
それはシャドーキックもまた例外ではない。
突如発生した急激な気流に煽られ、シャドーキックは標的の翠星石を外れ、
シャドームーンはあえなく宙を舞う結果となった。
「貴様!! 私の邪魔をしたな!」
シャドームーンは故意に邪魔をしたことに気づいたようだ。
ともかく翠星石を守ることはできた。
後のことは後で考える他は無い。
今は翠星石の身柄を拘束、確保することが先決だ。
しかしその目論見は、次の瞬間に大きく裏切られることになる。
翠星石の背中から生えた黒翼。
それが突如うねりを巻き、急激に巨大化。
シャドームーンへ向けて伸びる。
その黒翼の先端で、巨大な顎が牙を剥いて開いていた。
それはさながら黒龍。
169 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:32:53.61 ID:NQWgMm61
170 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:33:04.07 ID:6egaVYBB
支援
171 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:33:14.41 ID:RUw/H9pf
支援
172 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:33:42.07 ID:QRfA3r5y
飛行する能力の無いシャドームーンは、空中で素早い動きを取ることはできない。
抵抗する暇も無く、巨大な黒龍の獰猛極まりない顎の餌食となった。
シャドームーンの首と腹に黒龍の牙が付き立てられた。
牙は破損したシルバーガードの欠損部分に入り込み、筋肉を裂き血を啜る。
更にシャドームーンはそのまま身体ごと持ち上げられた。
黒龍の凄まじい勢いでその体躯を伸ばし続け、それを受けたシャドームーンは急加速を受ける。
黒龍はそこから更に体躯をうねらせて、シャドームーンを牙で貫きながら地面に叩きつける。
そしてシャドームーンを地面に擦りつけながら、尚も勢いは衰えない。
その黒龍の胴体に、クーガーが蹴りを入れる。
しかし黒龍は小揺るぎもしない。
クーガーの方が反動で弾かれる始末だ。
それでもクーガーは反動で得た距離を、助走に使いシェルブリットの構えを取った。
桃色の装甲で覆われた脚が、ラディカル・グッドスピードの気圧噴射を受けて黒龍に打ち込まれる。
直前、足首に巻きついた轍に止められる。
紅いオーラを身に纏い立ち上がった翠星石の手から伸びた轍。
翠星石が軽く手繰っただけで、轍に引っ張られたクーガーは軽々と宙を舞う。
そして轍を切断しようと刀を構えて駆け出してきたヴァンへ向けて、振り落とされる。
クーガーとヴァンの身体が衝突。
縺れるように転がる二人。
「ブフダイン」
炎や雷では龍や轍を経由して、味方に被害が及ぶ懸念がある。
衝撃波では味方の拘束を解かせるには不足だ。
ゆえに凍結魔法を唱えた狭間。
凍気が轟音を立てて翠星石に襲い掛かる。
しかし不可視の壁に阻まれて翠星石に届かない。
実体を持たないバリアは、それゆえ凍結魔法でも凍りつくことは無く遮断できる。
そうしている間も、シャドームーンは黒龍の餌食となっていた。
その大顎に咥えられたまま、地面を削り続けている。
黒龍の口中から、突如発せられる閃光と放電。
シャドームーンがシャドービームを放電のような状態で撃ったのだ。
内側からの攻撃に黒龍の口が煙を上げて開かれる。
地面に零れ落ちたシャドームーンは立ち上がるのもままならない様子だ。
シャドームーンと言えど限界が近い様子だ。
しかし今のシャドームーンには休む暇も与えられない。
黒龍が再びシャドームーンに迫り来る。
先ほどの黒龍ではない。
翠星石の翼は左右一対の二枚を生やしている。
即ち黒龍もまたもう一頭存在するのだ。
再び牙で貫かれるシャドームーン。
黒龍はシャドームーンを牙で貫かれながら、容赦なく振り回す。
そして頭から地面に激突して、更にシャドームーンの頭で地面を削っていく。
「ブフダイン」
狭間が再び凍結魔法を唱える。
ただし今度の標的は翠星石ではなく、その背中から伸びる黒龍の胴体部分。
凍結魔法は首尾よく、翠星石とシャドームーンを咥える黒龍の頭を繋ぐ部分を凍らせた。
胴体の凍った黒龍は狭間の計算通り、その動きを止める。
更にその凍結部分へ衝撃魔法・ザンダインを撃ち込む。
凍り付いていた胴体が破砕。
シャドームーンが再び黒龍の口から零れる。
173 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:34:18.15 ID:NQWgMm61
174 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:34:56.75 ID:RUw/H9pf
�C
175 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:35:16.05 ID:QRfA3r5y
しかしその身体に力は無く、
壊れた玩具のごとく頭から地面に落ちていった。
「シャドームーン!!」
狭間の悲痛な呼びかけにも反応が無い。
シャドームーンは明らかに意識を失っていた。
狭間からは、命があるのかどうかも判別が付かない。
思わず歯噛みする狭間。
守ると誓ったはずのシャドームーンを危険に晒してしまった。
そしてそれは完全に狭間の失態なのだ。
シャドームーンが翠星石に向けて放ったシャドーキック。
あれを邪魔しなければ、この事態には至らなかった。
あまりにも致命的な判断の誤り。
魔人皇の名においてその安全を保障しておきながら、この様だ。
しかし今は終わったことに拘泥している場合ではない。
シャドームーンの安否を確認しなければならない。
シャドームーンの下へ駆け出す狭間。
しかしすぐにその足を急停止させる。
狭間の眼前を黒い羽が通り抜けた。
「……そんなに銀色オバケが心配ですか?」
翠星石は紅いオーラを増大させて、狭間の前に立ち塞がる。
魔人皇ですら迂闊に出ることを許さない、翠星石の威圧。
翠星石とてダメージは少なくないはずである。
クーガーのシェルブリットや、狭間のジオダインやザンダインを受けて間もないのだ。
しかし今の翠星石には、全くダメージの影響が見受けられない。
不条理なほどの耐久力を示していた。
翠星石の耐久力の所以、それはその身を包み込むオーラにあった。
それはキングストーンのみならず、五つのローザミスティカの余剰なエネルギーである。
キングストーンは言うに及ばず、ローザミスティカもまた所有者の想いに応える力を持つ。
それらを併せ持った際の出力は当然、各々を単体で持つローゼンメイデンや世紀王を上回る物だ。
余剰となるエネルギーもまた莫大な物となる。
その余剰エネルギーが、翠星石の意思を受けずとも、
自動的に防護シールドのように運用されていた。
それはローゼンメイデンにも世紀王にも無い、今の翠星石独自の能力。
ローザミスティカとキングストーンを併せ持った翠星石は、前例の無い領域まで能力を拡張していた。
狭間の推測を大きく上回る翠星石の戦力。
それは万全の状態ではないとは言え狭間、シャドームーン、クーガー、ヴァンの四人がかりでも圧倒される途轍もない強さ。
そしてシャドームーンは倒れ、狭間も疲労の色が出てきている。
狭間の勝算はいよいよ少ない物となって来た。
かつては狭間にとって救助対象だった翠星石。
それが今や、かつてないほどの強大な敵として立ち塞がっていた。
◇
かつてはローゼンメイデンの長女として相応しい美しさを誇っていた水銀燈。
しかし今の水銀燈は炎に巻かれて、全身が焼け爛れている。
にも拘らず、水銀燈は平然と立ち尽くしていた。
その傍らで真司もまた立ち上がる。
手足の関節が不自然に捻じ曲がっているが、やはり意に介している様子は無い。
176 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:36:24.42 ID:NQWgMm61
177 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:36:53.50 ID:RUw/H9pf
支援
178 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:38:05.76 ID:QRfA3r5y
二人の間に薔薇水晶が降り立つ。
薔薇水晶がドアを指す。
途端、水銀燈と真司がぜんまい人形のごとく機械的な足取りで歩き出し、
部屋から退出した。
二人が退出したのを見届けた薔薇水晶は、さざなみの笛を懐に仕舞い直す。
さざなみの笛は死者を生者のごとくに動かすことができる外法の道具である。
本来は殺し合いを主催する立場の者しか使用できない道具であった。
薔薇水晶は主催者側の立場なので、使用の権限を持っている。
問題となったのは死体である。
薔薇水晶は殺し合いの会場を自由に行動できる権限を持つが、それはあくまで殺し合いの進行に大きく干渉しない範囲である。
参加者の死体を回収して使用する権限が自分に在るのか確証は持てなかった。
しかしV.V.に確認を取ってみれば、拍子抜けするほどあっさり承諾を得ることができた。
水銀燈と真司の死体をF−8エリアの民家から回収して、さざなみの笛で操る。
そして翠星石にけしかける。
薔薇水晶がしたことは、主にそれだけのことだった。
後は翠星石に適宜アドバイスをした程度のことだ。
薔薇水晶は決して翠星石に強制はしない。
全ては翠星石自身が選択すること。
それだからこそ、薔薇水晶の本意の通りの選択を翠星石はするだろう。
そして翠星石がもし殺し合いに乗ったのならば、おそらく敵う者は居ない。
六つの賢者の石を有する今の翠星石は、猛者ぞろいの参加者の中でも最強の存在であろう。
今や最強のローゼンメイデンとなった翠星石。
薔薇水晶はただその戦果を待てば良い。
偽りの薔薇乙女は静かに偽りの姉妹を想っていた。
◇
「どうしたですか? 大事な大事な銀色オバケを助けに行かないんですか?」
「言われなくともそのつもりだ……」
翠星石に言われるまでも無く、狭間は大事な契約相手であるシャドームーンの救助に急いでいた。
王の契約。翠星石には、その重さの理解も納得もいかないだろう。
その是非を問うことに意味は無い。
折れ合うことは叶わない以上、戦って道を切り開く他は無い。
「愚問ですなぁ、全然大事じゃありませんよ。少なくとも貴女よりは」
横合いから姿を現すクーガー。
翠星石はクーガーを睨み付けるが、
クーガーはその目に闘志を湛えつつも、その表情は侮蔑の色を含まない穏やかな笑みを浮かべていた。
「じゃあ、何で銀色オバケに付くんですか!!!」
「貴女をこれ以上貶めたくないからですよ」
あれほど激しく戦って居たにもかかわらず、クーガーはあくまで穏やかに翠星石へ返答する。
しかし当の翠星石は、クーガーの言葉の意味が分からない。
意味の分からない理由でシャドームーンについて自分に敵対するクーガーへの怒りが募るだけだ。
「……だから別に、あんな奴は大事じゃねえよ」
ヴァンも呼吸を整えながら姿を現す。
179 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:38:42.50 ID:RUw/H9pf
�C
180 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:39:38.43 ID:NQWgMm61
181 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:40:40.53 ID:RUw/H9pf
支援
182 :
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:41:09.53 ID:QRfA3r5y
すいません
>>178
のタイトルとトリップを忘れていました。
タイトルは
>>175
までと同様です。
>>178
の続きから投下を再開します。
183 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:41:50.90 ID:NQWgMm61
184 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:42:53.77 ID:QRfA3r5y
疲労の色は濃い。
それでも闘志が衰えている様子は無い。
「だが俺の邪魔する奴は、どんな奴だろうとぶっ倒す」
ヴァンはあくまで翠星石を倒すつもりだ。
翠星石もヴァンとの付き合いは薄いが、今更退く人物でないことくらいは察していた。
戦う覚悟なら翠星石にもできている。
「私はシャドームーンも翠星石も大事な戦力だと考えている。これは数学的に考えても極めて厳密な計算に基づく物で、かの数学者ガウスも……」
はるか遠く、クーガーの運転していた車に身を隠していた上田の講釈は、
距離が遠すぎたために、翠星石の耳に届いてはいなかった。
「そんなに銀色オバケと仲良く心中したいって訳ですね…………」
周囲に居る全ての者を敵に回した翠星石。
自分の気持ちが更に暗く淀んでいくのが分かる。
結局、北岡が言った通りの展開になった。
そしてそうなると分かっていた。
分かっていても、シャドームーンを討つことを選んだのだ。
最初から覚悟ができていたこと。
自分にそう言い聞かせて、翠星石は無明の修羅場に臨む。
クーガーはいかなる時でも周囲より先んじる男だ。
今回もまた、誰よりも早く翠星石に仕掛けた。
ラディカル・グッドスピードのピストンが躍動。
クーガーの身体が弾けるように急発進。
但し、それは翠星石へ向けて真っ直ぐに向かう物ではなった。
慌ててバリアを張る翠星石を、斜めに見切れて行くように走り抜けていくクーガー。
そしてすぐに急停止。
翠星石はすかさずそこへ羽を撃ち込む。
しかしまた急発進したクーガーには当たらない。
クーガーはまたも翠星石を斜めに横切っていく。
翠星石の置き去りにして行った後、また見当違いの場所で急停止と急発進。
攻撃の照準が間に合わない翠星石。
クーガーは翠星石の周囲を、付かず離れずを繰り返す。
翠星石の主観においては、クーガーの攻撃がいつ来るか分からない状況だ。
クーガーには速さで劣るため、後手に回ると防御や迎撃が間に合わないのだ。
185 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:43:50.46 ID:RUw/H9pf
�C
186 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:44:06.69 ID:NQWgMm61
187 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:45:23.78 ID:QRfA3r5y
従って翠星石から先手を取る必要がある。
翠星石は薔薇の花弁を生成して、周囲に散布。
そして周囲に拡散するように発射。
される直前、翠星石の頭上から衝撃が襲う。
ダークウイングが翠星石の頭上から突貫したのだ。
クーガーの動きは翠星石の意識を水平面状に拡散させる役割を果たしていた。
そこへ頭上からの垂直攻撃。
完全に不意を打たれた形になった翠星石。
予想だにしていなかった衝撃で、翠星石は頭から崩れるように落ちていく。
しかしクーガーにとっては予想していた事態。
クーガーは今度こそ真っ直ぐに翠星石へ向かう。
無防備な翠星石にシェルブリットを叩き込むために。
同時に発射される薔薇の花弁。
今度はクーガーが不意を打たれる番だった。
クーガーの蹴りが届く前に、花弁の散弾を受けた。
羽のごとくに軽いはずの花弁一つ一つが、クーガーを切り裂き、重い衝撃を与える。
背後へ吹き飛んだクーガーは、背中から地面を滑る。
4000APを誇るダークウイングの頭上からの不意打ち。
しかし翠星石は合計六つから保持する賢者の石の余剰エネルギーによる防護膜をその身に纏う。
今や絶大な防御力を持つ翠星石の意識を断ち切ることはできなかった。
膝を付いていた翠星石が立ち上がる。
「アギダイン」
灼熱の炎が翠星石に襲い掛かる。
しかし途上に張られたバリアが炎を遮断。
高熱を遮ることはできなかったが、翠星石にダメージを与えるには足りない。
しかしそのバリアを迂回するようにダークウイングが空中を旋回して、翠星石に向かって行く。
それでも、翠星石は既に戦闘態勢を取り戻していた。
黒い羽をはためかせて飛ぶ翠星石の運動能力の前に、容易に回避される。
翠星石は単純な運動性能も、大幅に向上させていた。
しかしダークウイングの陰から、蛇のようにうねる刃が現れる。
名うての刀匠、新井赤空の後期型殺人奇剣・薄刃乃太刀。
ヴァンはダークウイングに隠すように薄刃乃太刀を振るっていた。
薄刃乃太刀は翠星石の腕に巻き付く。
ヴァンはそのまま力付くで翠星石を引きずる。
つもりが逆に翠星石の腕に引っ張られる。
ヴァンは地面に倒れる暇も無く、薄刃乃太刀越しに引かれるまま、地面を平行に飛んだのだ。
そして翠星石は薄刃乃太刀をヴァンごとに振り回す。
ヴァンは翠星石を中心軸とした円を描いて、地面と平行に旋回した。
六つの賢者の石を直接出力源にすることができるローゼンメイデンたる翠星石は、
なんら特殊な能力を媒介していない単純な腕力だけでも、ヴァンを圧倒していた。
「ほーれほれ! 回れ回れですぅ!!」
自分の純粋な腕力で、何倍も大きな人間を振り回せるのが面白いのか、
翠星石は楽しげに笑い声を上げる。
188 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:46:22.08 ID:NQWgMm61
189 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:46:27.88 ID:QRfA3r5y
しかし玩具扱いされているヴァンはとてもそれどころでは無い。
どれほど激しいヨロイの戦闘でも体験したことの無い、
全身の血液が逆流を起こしそうなほどの遠心力と、
骨格まで潰されそうな加重と、
衝撃魔法と紛うほどの風圧に晒されているのだ。
これ以上耐えると命にまで関わると判断したヴァンは、薄刃乃太刀を離す。
遠心力によって今度こそ文字通り飛翔するヴァン。
地面を削りながら転がり、ようやく停止することができたが、
そこから立ち上がろうとしない。
気絶している様子だった。
腕に絡まっていた薄刃乃太刀を邪魔臭そうに捨てた翠星石は、ヴァンを一瞥すると、
今度は狭間に向き直った。
クーガーとヴァンのダメージは重い。
そしてダメージの重い二人を無視して、狭間を睨み付ける翠星石。
狭間は、今やいかなる悪魔よりも強大な敵である翠星石と単独で対峙する形になった。
狭間の疲労は著しい。
単独で翠星石を倒す方法が無いわけではないが、極めて条件は限定されてくる。
そして今の翠星石は、おそらく同じ手が何度も通用するような甘い相手では無い。
即ち戦いが長引けば長引くほど、更に狭間が不利になる。
翠星石を倒すチャンスは、良くて一度か二度になるだろう。
狭間に残されているのは藁をも掴むような僅かな勝算。
それを掴むため、狭間もまた無明の修羅場に臨む。
翠星石が羽を飛ばす。
音も構えも無く放たれる、銃弾以上の高速射撃。
そしてその射撃は、狙撃の精度で狭間の頭を撃ち抜いた。
そのはずが狭間の頭は、そこには無い。
紙一重の間合いだが、狭間は確かに羽を回避していた。
翠星石はすぐさま次弾を発射。
やはり狙撃銃を越える精度と速度で狭間の心臓を撃つ。
しかし、それも紙一重で狭間の横を通り抜けていった。
「何で……当たらないんですか!?」
苛立ちをそのまま口に出す翠星石。
対照的に狭間はその様子を冷静に観察していた。
それができているからこそ、狭間は回避が可能だったのだ。
狭間は無限の塔で数多の悪魔と戦った。
天界より降りたった精霊・天使とも。
破壊と創造を司る神々・破壊神とも。
天より堕とされたる者どもを統べる旧き魔・魔王とも。
多種多様な悪魔との歴戦を潜り抜けてきた。
悪魔との戦闘は、人間とのそれとはまるで世界が違う。
人間をはるかに超える運動速度から、多様な魔法を使う物も居れば、
魔法に劣らぬ、全く未知の異能を駆使する者も居る。
歴戦は有名無名を問わぬ戦闘技能を狭間にもたらした。
今の狭間は、集中すれば翠星石の意識が攻撃に向かうのを察知することができる。
翠星石は確かに強大で多彩な能力を持っている。
そしてローゼンメイデンの一角に相応しく、多彩な能力を十全に駆使して戦えるだけの才覚も持っていた。
しかし翠星石には決定的に欠ける物がある。
アリスゲームを禁忌していたがゆえに、戦闘の経験がほとんど無いのだ。
従って、いざ自分から戦いに臨むとなれば、攻撃をする際もそれが読まれ易くなる。
殺意や殺気を隠すような技術は持っていない。
翠星石が何度も羽を飛ばすが、回避に専念する狭間に当てることはできない。
190 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:46:37.55 ID:RUw/H9pf
支援
191 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:47:12.10 ID:NQWgMm61
192 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:47:42.74 ID:QRfA3r5y
そして今の状況こそ、狭間の狙い通り。
翠星石が羽を飛ばしていると言うことは、
その射線、即ち狭間と翠星石の間に遮る物が無いと言うこと。
「ジオダイン」
雷速の一撃が翠星石に撃ち込まれる。
電撃が一瞬で翠星石の全身を暴れ回る。
魔法を打ち終えた狭間は、即座に翠星石へ向けて走り始める。
そしてその手には斬鉄剣を構えていた。
剣ならば翠星石の命を危険晒さず、身体の一部分だけを攻撃することが可能。
更に斬鉄剣の切れ味ならば翠星石を切断することも可能。
もし四肢などを切断することが、翠星石を制圧できる公算が大きくなる。
その場合、翠星石に二度と癒せぬ傷を残すことになるかもしれないが、
翠星石にここまで追い詰められた以上、狭間に手段を選ぶ余裕は無かった。
翠星石の身体は電撃による麻痺効果によって縛られている。
しかし翠星石は背中から瞬時に黒い翼を生やして、双龍を造り上げた。
バリアを張ることはできなくとも、翠星石には身体を覆うオーラ状の防護膜がある。
それが電撃の効果を軽減している。
更に電撃を受けた後に生やした翼なら、麻痺効果も薄い。
向かってくる狭間に対して、真っ向から双龍が襲い掛かる。
双龍の牙が突き立てられた。
それこそ、回避に専念していた狭間の待っていた好機その物だった。
次の瞬間、双龍の頭が反転。
狭間を放置して翠星石へと突貫していった。
翠星石の意思による物ではない、全く予想外の現象。
双龍の突撃を無防備に受けて、翠星石はあえなく、
二頭の大顎の餌食となった。
双龍の反転は、物理攻撃反射魔法・テトラカーンの効果。
これは壁に投げたボールが跳ね返るように、単純に物理的な作用を反射するだけの物ではない。
それが物理攻撃なら、因果関係を逆転させたかのごとくどんな攻撃でも敵に返すことができる。
狭間は予めテトラカーンを自分に掛けていながら、翠星石の攻撃を回避しつつ、
効果的な使用条件が整うのを待っていたのだ。
翠星石の小さな体躯は、龍の口の中に完全に収まった。
その龍の内側から、狭間を強く照らすほどの紅い光が漏れる。
そして龍は無数の羽となって霧散した。
翠星石は先ほどより強烈な紅い光=キングストーンの光を纏っている。
翠星石の纏うオーラは可視化するほど強大なキングストーンの余剰エネルギーであり、
更にローザミスティカ五つ分の余剰エネルギーが加算された物だ。
そして今の翠星石はそれを常時展開しているが、それに回すエネルギー量を増やせば、
防御効果を上げることも可能なのだ。
狭間は構わず剣を構えて、大地を蹴り跳躍。
ほとんど直下から翠星石に向かって行く。
大地を蹴る音で、空を切る音で、翠星石は狭間の接近を察知するが、
どの方向から来るのかが分からない。
ならば全方向に攻撃を展開させれば良い。
193 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:48:31.43 ID:NQWgMm61
194 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:48:43.67 ID:RUw/H9pf
�C
195 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:49:01.82 ID:QRfA3r5y
翠星石は長大な轍と、大量の薔薇の花弁を一挙に生成。
自分を中心に上下左右前後を問わず、あらゆる方向に放射する。
当然、狭間にも轍と花弁が伸びる。
しかし轍であろうと花弁であろうと、それが実体を持つならば物理攻撃に違いは無い。
テトラカーンによって反射可能。
狭間は構わず翠星石へ突貫する。
突如、狭間の見る景色が揺れる。
鈍い衝撃と鋭い痛みに襲われる狭間。
原因は明快だった。
狭間の身体が轍で叩かれ、花弁で切り裂かれていた。
テトラカーンが効果を発揮していなかったのだ。
狭間は以前にもキングストーンの光が、ランダマイザやドルミナーの効果を防いだのを見ている。
しかし他人に掛けられた物理無効魔法まで無効化できることは認識していなかった。
しかも龍の中から漏れたような光で、である。
翠星石の有する計六つの賢者の石は、キングストーンの光をすら強化していた。
テトラカーンの効果が打ち消されること自体は、狭間も予想していた。
だからこそテトラカーンの使用を、ギリギリまで温存していた。
予想外だったのは、龍の口の中から漏れるような光だけで、
狭間に掛かった魔法を強制解除するほどの力を翠星石が持っていたこと。
それほど強大な力を持つ翠星石が、今まで殺し合いの参加者として存在していたことに、
狭間は不条理な思いを抱いた。
全身の負傷と、地面に墜落した衝撃で意識が薄れ行く狭間。
それでも必死に意識を繋ごうとするが、身体が思うように動かない。
戦闘態勢が整わない狭間に向けて、翠星石が無数の羽を向ける。
それらが発射されれば、狭間に防ぐ手段は無い。
自分の死の瞬間が迫る中、狭間は必死に自分の意識に、身体に活を入れる。
しかし翠星石が羽を発射するのに間に合うはずが無いことは、狭間自身が一番良く分かっていた。
狭間は為す術も無く、翠星石の処刑を見守るしかなかった。
そして翠星石の背後から迫る影を。
狭間は痛みも忘れて目を凝らす。
その先にはクーガーの姿が在った。
花弁に受けたダメージはクーガーにもまだ残っていた。
しかしシャドームーンもヴァンも狭間も倒れた以上は、クーガーが戦う以外に無い。
狭間に止めを刺さんとする翠星石の背中へ向かって行くクーガー。
女性を背中から奇襲するなど、本来のクーガーなら絶対に選ばない非文化的な手段だが、
今の翠星石は手段を選べる相手では無く、今の状況は手段を選べる余地は無い。
先ほどまで虚ろだった狭間の眼に驚きの色が刺すのを、翠星石は見逃さなかった。
視線の先は翠星石、ではなくその背後。
振り返るまでもなく、背中越しに渦巻く衝撃波(インパルス)で分かる。
音を超える速さで接近する者は一人しか居ない。
ラディカル・グッドスピードを駆使する男、ストレイト・クーガー。
196 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:50:12.82 ID:NQWgMm61
197 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:50:35.92 ID:QRfA3r5y
翠星石の持つ能力では、羽や花弁の生成も、蔦や轍の育成も間に合わない。
今、手元にある武器で対処する他無い。
ほとんど反射的でありながら、的確な状況判断の下に、翠星石は振り返る。
ラディカル・グッドスピードのピストンで跳躍。
それによって、一瞬にして翠星石との間合いを詰めるクーガー。
振り返りながら、クーガーへ向けて右手を振り上げる翠星石。
クーガーは跳躍の勢いに乗って蹴りを繰り出す。
まるで交通事故のような、鈍く重い激突音が木霊する。
クーガーは自分の蹴り足の先を見る。
そして珍しく自嘲的な笑いを浮かべた。
「……………………俺の速さが……届かなかったとはな…………」
クーガーの胸から生える刃・庭師の鋏。
その根元から鮮血の噴水が上がる。
クーガーは赤い血を流しながら、ゆっくりと地面に落ちていった。
翠星石の右手から衝撃が伝わる。
突き出した鋏の先から、クーガーの血が噴出する。
血に塗れながらゆっくりと地面に引かれて行くクーガーを見て、
翠星石の脳裏には、真司の死の瞬間が浮かんだ。
自分が引き起こした鮮血の惨劇を、翠星石は信じられない物を見るように目を見開いた。
「クーガー!!!!」
空から落ちて来るクーガーに悲痛な叫びを浴びせる狭間。
しかしそれに応える者は居ない。
クーガーは力無く、狭間の腕の中に墜落した。
狭間はクーガーの状態を観る。
クーガーの胸、ちょうど心臓の部分には大きく穴が開いて血液を噴出していた。
医学の知識が無くとも、一目で致命傷と分かる。
「ディアラハン!!!」
単体を標的とした物としては最大の効果を誇る回復魔法・ディアラハン。
狭間が詠唱すると共に、クーガーの身体が治癒効果を持つ光に包まれる。
薔薇の花弁によって全身に刻まれていた細かい切り傷が消えていき、
胸の傷も癒えて行く。
しかし胸の穴が塞がりきることは無かった。
レナや真司の時と同じく、ディアラハンでは致死の傷を治し切ることはできなかった。
「またか……また駄目なのか……」
もう何度も味わった自分への失望。
今の狭間は死に行く者の前ではあまりにも無力だった。
198 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:51:02.10 ID:RUw/H9pf
支援
199 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:51:25.38 ID:NQWgMm61
200 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:52:16.93 ID:RUw/H9pf
�C
201 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:52:26.96 ID:QRfA3r5y
腕の中で死に行くクーガーに、狭間は嫌でもレナを想い起こさせる。
『うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ』
レナの願いを受け取ったのに、また犠牲を出してしまった。
それも今度こそ掛け値無く狭間の失敗によって。
翠星石がクーガーの接近を察知したのは狭間の視線によってだ。
それ以前にシャドーキックを邪魔しなければ、今の戦況は無かった。
どうしようもない後悔が狭間を支配する。
(……すまないレナ…………私は…………君との約束を守れなかった……………………)
全ての命を拾うために戦っていたはずだった。
翠星石も含めて、誰一人犠牲にしないために。
それこそがレナの願いだったはずだから。
違う。
レナはもう死んだ。
そして死んだ者の願いは誰にも分からない。
狭間は確かにレナと約束した。
レナは今も狭間の中で生きている。
しかしそれは狭間の中での問題。
狭間の内面の問題のために、クーガーを犠牲にして良いはずが無かった。
シャドームーンを裏切って良いはずが無かった。
(レナ…………私はもう……………………君と約束をした魔人皇ではない…………)
狭間はレナに謝罪と、決別を告げる。
レナとの約束を守れなかった不甲斐無い自分を認めて、
そしてもうこれ以上、死した者のために戦うことはできないことを告げる。
しかしそれも狭間の中の問題だった。
現実が狭間の後ろから迫っていた。
「ひひ……ク、クーガーが悪いんですよ……翠星石は脱出させてやるって言ったのに…………」
背後から聞こえてきた翠星石の震える声は、笑っているのか泣いているのかも判別が付かなかった。
その精神はもう正常な状態ではないのだろう。
でなければ、とっくに狭間へ攻撃していたはずだ。
「お前も望み通り銀色オバケと心中させてやるですよ……」
「……望み? そんな物は、もう何も無い」
クーガーを地面に横たえさせ、狭間はゆっくりと立ち上がる。
狭間の放つ只ならぬ気配に翠星石は一瞬気圧されそうになるが、すぐに気を取り直す。
戦力差は明白。
今更、狭間に怖気づく所以は無い。
「貴様に望む物は、もう何も無い。共闘も、交渉も、貴様にはもう何も望まない。
……だがそうだな……強いて貴様に望むとすれば――――」
しかし狭間の言葉を聞いていると、どうしても落ち着かなくなる。
狭間にこれ以上気圧されないために、翠星石は眼前に羽を生成して攻撃の構えを取る。
「――――死ね」
その眼前が突如歪み始める。
202 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:53:23.93 ID:RUw/H9pf
支援
203 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:53:32.46 ID:NQWgMm61
204 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:54:56.59 ID:QRfA3r5y
生成した羽が歪んだわけでも、翠星石の視界が歪んだわけでもない。
空間その物が、捩れて歪んだのだ。
尋常ならざるエネルギーの奔流。
それが空間の歪みから、光となって翠星石に浴びせられた。
神のみが扱うことができる万能の光でありながら、天よりの裁きの炎。
この世の条理を越えた光にして炎たるその力の名が、狭間より詠唱される。
「メギド」
天の光が、紅いオーラを貫いて翠星石に浴びせられる。
空間を歪曲するほどのエネルギーを叩きつけられて吹き飛ぶ翠星石
万物を焼く条理を越えた炎が翠星石を燃やした。
声にならない絶叫を上げる翠星石。
翠星石は苦悶の表情を上げながら、海へと消えて行った。
狭間はディアラハンを自分に掛ける。
最高位の回復魔法は、一瞬で身体中の傷を癒し体力も回復していく。
狭間はすぐにでも可能な限り回復をする必要があった。
翠星石を殺すために。
翠星石はまだ生きている。ならば確実に殺さなくてはならない。
倒すのではなく確実に殺す。
翠星石に怒りや怨みが持ったためではない。
そもそも翠星石だけの問題ではない。
脱出を阻もうとする者は、V.V.であろうと志々雄であろうと命を以ってしても排除する。
何故ならそれはもう、レナとの約束を守るためではない。
今、生きている者たちのための戦いだからだ。
死んだ人間との約束に拘泥して、生きている人間を助けることができなかったら、
それこそがレナに対する最大の裏切りになるのだろうから。
だから約束を交わしたレナに別れを告げる。
真にレナの意思を汲み取るために。
カシャ カシャ
壊れた機械を思わせる、酷く間の抜けた足音が聞こえて来る。
音の方からは、白銀の装甲はおろか、内部筋肉まで全身傷だらけになったシャドームーンが居た。
205 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:55:44.99 ID:NQWgMm61
206 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:56:12.17 ID:QRfA3r5y
どうやら命を取り留めて、自力で意識も取り戻したらしい。
しかしサタンサーベルを杖代わりにしてようやく歩くことができているその姿は、最早平時の威厳は微塵も無い。
「…………敵は……どこだ?」
その上、視力にまで問題が生じているようだ。
正に満身創痍。今ならその命も容易く摘み取れるだろう。
それでも、シャドームーンは闘志を失っては居ない。
今の質問も、狭間に『お前は敵か味方か?』と言う問いを突きつけているようにすら思える。
壮絶なまでの覇気。
いかなる状態でも、シャドームーンはゴルゴムの王で在り続ける者なのだろう。
「シャドームーン……私の中途半端な覚悟が、貴様を傷付けてしまった。
…………最初からこうするべきだったのだ」
狭間の懺悔はシャドームーンに聞こえているかは分からない。
それでも構わない。
狭間が今からするべきことは決まっている。
本当にシャドームーンを信じて契約をするなら、
本当にシャドームーンを守る意思があるなら、
もっと早く、シャドームーンと契約を交わした時点でするべきだったことだ。
「ディアラハン」
◇
翠星石は今、自分がどこに居て、どんな状況なのかも分からなかった。
視界は火花で埋め尽くされている。
全身を激痛で覆われている。
半ば狂乱状態に陥り、苦しみもがく翠星石だが、
手足も上手く動かない。
しかし翠星石の無明も永遠には続かなかった。
視界の火花もやがて収まり、全身の痛みにも慣れてくる。
それで翠星石は自分が水中に居ることに気付いた。
翠星石は混乱した頭で、何とか状況を確認する。
シャドームーンたちと戦っていたのは海岸沿いだったから、自分は海に入ったのだろう。
痛む手足を見ると火傷していた。
狭間の魔法で燃やされていたのだ。
ならば海に入っていたのは、幸運だったと言える。
それで炎症を抑えることができたのだ。
海水のため、痛みを伴ったが。
しかしその痛みも、徐々に引いている。
翠星石の内側から溢れる力によって、傷が癒えていっているのだ。
自分の発揮する能力に感嘆する。
翠星石自身のみならず、真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺の物も含めた五つのローザミスティカの力はここまでの力を発揮するのかと。
実際はそこにキングストーンの力が含まれているからこそ、驚異的な自己治癒力まで発揮しているのだが、
翠星石は自分の中に在るキングストーンの存在その物を知らない。
だからこそ、素直に自分の力を喜んでいられるのだ。
怪我も治り切らない内に翠星石は背中から翼を生やして一瞬で海上に飛び出す。
そのまま海岸に向けて飛びながら、狭間たちを捜す。
207 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:57:01.97 ID:NQWgMm61
208 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:57:26.17 ID:RUw/H9pf
支援
209 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/06/30(日) 23:57:28.27 ID:QRfA3r5y
薔薇乙女を焼いてくれた狭間の罪は重い。
先ほどは不意を衝かれたが、同じ手を二度と食うつもりは無い。
今度は確実に狭間を殺す。
カシャ カシャ カシャ カシャ
聞き覚えのある足音に、翠星石は思わず動きを止める。
胸中に沸き起こる恐れを抑える翠星石。
今の自分は、それを恐れる必要は無い。
そう自分に言い聞かせる。
そして足音の主を睨み付ける。
一部の隙も無く白銀に輝く装甲。
装甲で覆われた四肢。
エメラルドのごとき双眸。
下腹部のシャドーチャージャーにもエメラルドのごときキングストーンの光が宿っている。
満身創痍だったはずのシャドームーンが、傷一つ無い姿で現れたのだ。
世紀王は生来的に高い回復力を持つ。
しかし制限やシャドーチャージャーの損傷によって、それが発揮できない状態だった。
そこへ狭間の魔力によって掛けられたディアラハンで、生来的な回復力をも取り戻すことができた。
かつて日本を占領した世紀王の威風が再び蘇る。
「フッ、わざわざ殺されに来たか」
「銀色塗れに戻ったからって、今の翠星石には勝てないですよ」
今や最強の力を持った薔薇乙女と、ゴルゴムの威信を掛けて造られた世紀王。
キングストーンを分かつ二人が睨み合う。
ゴルゴムの掟によれば、キングストーンを分かつ二人は決して並び立つことはできない。
二人は不倶戴天の敵として対峙する。
「……シャドームーン、翠星石を殺したいのなら手早く済ますことだ。もし貴様が手間取るようなら――――」
更にシャドームーンの後ろから、狭間が姿を現す。
翠星石は狭間にも、得体の知れない恐れを抱く。
圧倒的な戦力差で終始優勢に立っていたはずの相手だ。
確かに痛手を受けたが、それでも戦力的な優位は変わらないはず。
それなのに翠星石は、先刻までとどこか違う気配を狭間から感じていた。
狭間から感じる得体の知れない気配。
薔薇乙女としては戦闘経験が極端に少ない翠星石は、それをどう呼ぶべきかを知らなかった。
それは殺意や殺気と呼ばれる物だと。
「――――私が翠星石を殺す」
210 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:57:44.63 ID:NQWgMm61
211 :
創る名無しに見る名無し
:2013/06/30(日) 23:59:44.41 ID:RUw/H9pf
支援
212 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:00:29.20 ID:3ez+pwu9
213 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:00:33.46 ID:923fvrt7
�C
214 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:01:03.19 ID:Vj7+4qek
支援
215 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:01:10.81 ID:EnD4Y44H
【二日目/早朝/F−10 沿岸部】
【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世、ベレッタM92F(7/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
鉈@ひぐらしのなく頃に、琥珀湯×2
[状態]:人間形態、魔力消費(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:シャドームーンとの契約を遵守する。
2:翠星石を殺す。
3:脱出を阻む者は誰であろうと殺してでも排除する。
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
全参加者の詳細プロフィール
全参加者のこれまでの動向。
現時点での死者の一覧。
各参加者の世界観区分。
nのフィールドの詳細及び危険性。
「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[所持品]:支給品一式、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、昇天石×1@真・女神転生if…、
エアドロップ×1@ヴィオラートのアトリエ、調味料一式@ガン×ソード
[状態]:右目欠損、全身打撲、疲労(極大)、気絶中
[思考・行動]
0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。生き残る。
1:V.V.を倒した後シャドームーンを殺す。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
※ファイナルベントを使用したため、二時間変身不能です。
※薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(先端部欠損)はF−10沿岸部に放置されています。
216 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:01:46.87 ID:3ez+pwu9
217 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:01:49.76 ID:923fvrt7
支援
218 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:02:00.28 ID:EnD4Y44H
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:健康
[思考・行動]
0:創世王を殺す。
1:創世王を殺した後、他の参加者を皆殺しにする。
2:狭間との契約は守る。
3:翠星石を殺してキングストーン(太陽の石)を回収する。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※nのフィールドの入り口を開ける能力を得ました。
※狭間偉出夫とシャドームーンは契約を交わしました。内容は以下の通りです。
シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする)
狭間はシャドームーンの首輪を解除する。
狭間はシャドームーンが首輪を解除するまで護衛する。
シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。(シャドームーンは会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は他の参加者と足並みを揃える)
主催者(の黒幕)の殺害はシャドームーンに一任する。
主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。
主催者を倒すまでにシャドームーンが誰かに殺害された場合、狭間は必ずその報復を行う。
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、庭師の鋏@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]首輪解除済み、全身に火傷(回復中)
[思考・行動]
0:殺し合いに優勝する。
1:銀色オバケ(シャドームーン)を殺す。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
※キングストーンを取り込んだことで、能力が上がっています。
またキングストーンによる精神への悪影響が見られ、やがて暴走へ繋がる危険性があります。
※nのフィールドに入る能力を取り戻しました。
※さざなみの笛@真・女神転生if...は薔薇水晶が所持しています。
※水銀燈と城戸真司の遺体は薔薇水晶にさざなみの笛で操られています。二人がどうなったかは後続の書き手に任せます。
219 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:04:04.08 ID:923fvrt7
�C
220 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:04:31.92 ID:3ez+pwu9
221 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:05:08.96 ID:EnD4Y44H
人は死を避け続けることはできない。
それは最速のアルター使いを自称するこの男も例外ではなかった。
心臓を貫かれたストレイト・クーガーは、屍を地面に横たえていた。
その屍には、淡い光を纏っていた。
ドクン
淡い光の正体は狭間が掛けたディアラハン。
ディア系の魔法は、単独の標的に治癒効果を持つ光を浴びせる。
狭間のディアラハンはとりわけ強力な効果を持つが、。
それでもディア系の魔法に、死した者を蘇生する効果は無い。
ドクン
ディア系の魔法は治癒効果しか持たない。
この場合の治癒効果とは、主に二つ。
一つは負傷の治癒。
もう一つは体力の回復。
対象の生命力を活性化して、疲労などを回復させることができるのだ。
生命力を活性化すると言っても、それは死んだ人間を生き返らせることに直結しない。
ドクン
そしてディア系の魔法は単体のみにしか効果が無い。
なぜ、単体のみにしか効果が無いのかと言うと、
治癒効果を持つ光が、一人だけにしか当てられないからだ。
従ってクーガーに掛けられたディアラハンは、クーガーの身体にしか効果を及ぼさない。
ドクン
しかし人間の身体に宿っている生命は一つだけではない。
例えば人間の身体には無数の細菌に代表される微生物が共生している。
もっとも細菌の生命活動は極端に微小かつ単純なので、治癒魔法の影響はほとんど受けない。
ドクン
しかしクーガーの中に共生しているのは、単純に微生物に分類される存在だけではない。
それは本来人間の脳を含む、頭部全体を乗っ取る寄生生物。
しかし今はクーガーの脳を残しながら、
一部は同化して、
一部は細分化されて全身に偏在する。
かつて田宮良子とも田村玲子とも呼ばれた寄生生物。
ドクン
細分化されてクーガーの全身に散った寄生生物もまた、狭間のディアラハンの影響を受けた。
222 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:05:56.88 ID:EnD4Y44H
寄生生物の細胞の内に宿る生命力が活性化される。
そして寄生生物には、宿主の肉体の生命を存続しようと言う極めて強い本能がある。
クーガーの身体に宿った寄生生物が本能に従って一斉に活動を始める。
ドクン
クーガーの全身から細胞組織を少しずつ集めて、胸部の穴を塞ぎ、
心臓と肺を動かして、血液と酸素を全身に循環させる。
クーガーの体内から応急措置を行っていく。
ドクン
無謀な処置のように聞こえるが、実は既に成功例のある応急措置なのだ。
かつて泉新一が心臓を貫かれた際、寄生生物であるミギーが、
新一の体内から同様の応急措置を行って成功させている。
ドクン
生命はそれ一人では成立しない。
今のクーガーもまた、
狭間の魔法によって、
田村玲子の細胞によって、
生命の脈動を保っていく。
ドクン
胸の穴が塞がる。
クーガーの生命は、まだ速さを失ってはいない。
【二日目/早朝/F−10 沿岸部】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:基本支給品一式、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1
[状態]:出血多量、気絶中
[思考・行動]
0:???
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。
それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。
※君島の車@スクライドとミニクーパー@ルパン三世はクーガーのアルターで同化しました。F−10沿岸部に放置してあります。
※胸の傷が塞がりました。
223 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:07:06.13 ID:3ez+pwu9
224 :
メギド――断罪の炎――
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:07:47.68 ID:EnD4Y44H
「…………………………………………誰も私のことを忘れていないだろうな?」
【二日目/早朝/F−10 沿岸部】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0〜2)、
ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:ヴァン達に協力する。
※C.C.、縁の遺体がF−8民家に安置されました。
※水銀燈、L、真司、C.C.のデイパックが車内に置かれています。
※水銀燈のデイパック
支給品一式×10(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、首輪×3(咲世子、劉鳳、剣心)、
着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、
カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)、
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
※Lのデイパック
支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、角砂糖@デスノート、
情報が記されたメモ、首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、
女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、才人の不明支給品(0〜1)、ゼロの剣@コードギアス、
※真司のデイパック
真司の確認済み支給品(0〜2) 、劉鳳の不明支給品(0〜2)、発信機の受信機@DEATH NOTE、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎
※C.C.のデイパック
支給品一式×4、ゼロの仮面@コードギアス、ピザ@コードギアス、カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの銃の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、
白梅香@るろうに剣心、確認済み支給品(0〜1)、S&W M10の弾薬(17/24)@バトル・ロワイアル
※浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品のうちの昇天石×5@真・女神転生if…は、北岡・つかさ・ジェレミア・ヴァン・クーガーで配分しました。
225 :
◆KKid85tGwY
:2013/07/01(月) 00:10:15.34 ID:EnD4Y44H
投下完了しました。
たくさんの支援をありがとうございます。
問題点などが在れば指摘をお願いします。
226 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 00:45:39.54 ID:923fvrt7
投下乙です!
おおう……翠の子がどんどんと坂道を転がり落ちていく……!
多彩な能力がキングストーン+五つのローザミスティカで増強されてすごいぞ強いぞ翠星石!
しかし水銀燈と真司の死体で追い込まれて……翠星石の未来はいったい……
ハザマも失敗が続いちゃってるしどうなるのか、翠星石の殺害を決めたようだが……
しかしシャドームーンが完全復活!? やべぇ……やべぇよ……!
クーガーのアニキは生きてたか……!良かった……!
そして、ごめんね上田先生、完全に忘れてた
227 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 14:00:21.34 ID:5sR0BfQy
投下乙!
ごめん、上田、完全に忘れてたw
言いたいこといっぱいあるはずなのに最後に全部持ってかれたw
しかしアリスイセイセキ強いなw
賢者の石6つ載せすげえw
とはいえ狭間とシャドウムーンが本気になっちゃったしどうなる
クーガーもこれはどう捉えればいいのか……。先が気になる
228 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 16:26:06.54 ID:DzXc74Kx
投下乙です。
狭間とシャドームーンが対主催で翠星石がマーダーというのは、改めて凄まじい状況。
兄貴は次起きたらファイナルブリットで死にそう。
229 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/01(月) 21:46:32.48 ID:3ez+pwu9
投下乙です
翠星石はすっかり薔薇水晶の操り人形だな
狭間が覚悟を決め、シャドームーンは完全復活と状況が彼女にとって最悪な方向に向かうなかで果してどこまで行ってしまうのやら
兄貴は無事か。ただでさえ無理をしてきたんだからできればそのまま休んでいてほしい
あ、上田先生はそのまま何もしなくていいですよ
誤字脱字は
>>172
の 黒龍はシャドームーンを牙で貫かれながら、容赦なく振り回す。
がありました
230 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/02(火) 00:00:06.76 ID:8bkkxb3s
投下乙です!
ヴァンとクーガーはここまであんまり絡みなかったけど、「自分の生き方を曲げられたくない」で一致するのが熱いな!
翠星石が(色んな意味で)ヤバい、「翠星石なんて、あのチョココロネみてーな(省略)」の部分が一番怖かった、目の前にいる狭間と喋ってる感じしないもん…
全員いつ死ぬか分からない緊張で手に汗握る
そんな中で一切ブレないどころかオチを持っていった上田先生はさすがでした
誤字の指摘は
>>154
>単純な出力において、これほどの強大さを示した者は始めて見る。
の「始めて」、
>>157
>翠星石が以下に強大であろうと、自らの危機にはあくまで自分の力で応じる。
の「以下」、
>>160
>しかしそれも囮の役割を果たすことはできたに成功する。
の後半部、
>>165
>凄まじい速度で地面に叩き付けられる。
>背中に生やした黒い翼から
二文目が文章途中で途切れていると思います。
またWikiには分割して収録した方がいいと思うので、分割点と分割後のタイトルを教えてください。
231 :
◆KKid85tGwY
:2013/07/02(火) 08:50:31.83 ID:OzS2ElxB
>>229
>>230
指摘ありがとうございます。 wikiに収録された際に修正させて頂きます。
分割は
>>149
の
>しかし、すぐにその計算が甘いことを思い知らされる。
までを前編として下さい。タイトルはそのままでお願いします。
それと
>>224
の一行目の前に、七行分の空白を入れておいて頂ければ助かります。
232 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/07(日) 22:54:43.66 ID:go7/FYnq
第四回放送までの生存者で支援画像
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0238.jpg
233 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/07(日) 23:00:45.55 ID:/OF8hk1T
おお、支援画像乙です!
234 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/07(日) 23:29:29.08 ID:EUC+wh/x
シルエットカッコイイ!
235 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/07(日) 23:29:31.33 ID:MwzYGact
支援絵乙です!
236 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/08(月) 23:58:09.84 ID:2TsTAxq9
こちらも翠星石&薔薇水晶&シャドームーン支援絵が出来上がったので投下
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0239.png
>>232
前回の書き手イラストに続いて生存者シルエットイラストキター!乙です!
ドラマ漫画アニメ特撮ゲームとそれぞれ違うところから集まってるのが多ジャンル感がするし、
クーガー兄貴のラディカル・グッド・スピード最終形態のカッコ良さが映える
237 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/09(火) 00:50:20.65 ID:MANJ8laV
支援絵がダブルで……!
乙です!
238 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/09(火) 01:40:11.71 ID:dtZSr8/C
翠星石のフル装備っぷりがラスボスに恥じねえw
でも結構ぼろぼろなのに全然衰えてるように思えないシャドームーンもぱねえw
239 :
◆.WX8NmkbZ6
:2013/07/11(木) 00:00:33.46 ID:XNz4yy8U
投下します。
240 :
第五回放送
:2013/07/11(木) 00:02:26.77 ID:XNz4yy8U
おはよう、皆。
二日目の朝、六時――五回目の放送の時間だ。
これが最後の放送になるかも知れないね。
だから心して聞いて欲しい。
今まで通り、一度しか言わないからね。
皆忙しそうだから、手短に行こう。
まずは禁止エリアの発表だよ。
A−9
H−5
F−2
続いて死者を発表するよ。
C.C.
ジェレミア・ゴットバルト
雪代縁
これで、生存者は九人。
遂に一桁になってしまったね。
僕も知り合いがいなくなってしまったから、とても寂しいよ。
けれど……分かるよね。
あと八人殺せば、君の望みが叶う。
六十人以上いた参加者の中の、たった八人なんだよ。
今は仲間と結束したつもりでいる君も……本当にいいのかな?
もう一度会いたい人はいない?
理想の世界が欲しくはない?
短すぎる人生に未練はない?
本当に、それで後悔はないの?
残された時間は、そう長くはないよ。
けれど君が真剣に、必死に考えた末での選択ならば、僕はそれを尊重したいと思う。
じゃあ……直接会って話せる時を、楽しみにしているよ。
それがどんな形になったとしても――ね。
▽
古時計の置かれた放送室を離れる。
別室に入り、壁一面を埋め尽くす液晶画面の群れを眺めてから、V.V.は短く息を吐き出す。
画面一つ一つが会場の各所を映し出しているが、その中で目立った動きがあるのはごく一部のみだった。
既に殺し合いは終わりに向けて収束しつつあり、参加者が残っているのはF−10沿岸部だけなのだ。
「煉獄とらんすろっとを使い潰して、結局死んだのはくたばり損ない一匹か。
てめぇの世界御自慢のないとめあとやらも大した事はねぇようだな」
ただ一人、今V.V.の目の前にいる志々雄真実を除いては。
志々雄の辛辣な物言いに、V.V.は苦笑を混じらせて応える。
「煉獄は相手が悪かったね。
ランスロットも、あのサザーランドは彼用にチューンしたようなものだから。
……それでランスロットが落ちるとも思っていなかったんだけどね」
241 :
第五回放送
:2013/07/11(木) 00:03:33.00 ID:XNz4yy8U
志々雄は胸の前で腕を組み、小柄なV.V.を高見から見下ろしている。
見下すのではなく値踏みし、真意を測ろうとする視線だ。
「贔屓が過ぎるように見えるぜ」
「サザーランドの事かい?」
「いいや……てめぇの知り合い連中の事だ」
「…………」
それまで常に薄い笑いを張り付けていたV.V.の口元が引き締まり、対照的に志々雄の笑みが深まった。
V.V.は自身が見せた隙に気付き、すぐに薄ら笑いを張り直す。
志々雄が会場を脱出してから既に九時間程が経過しており、情報収集や分析をする時間もあったという事なのだろう。
「僕は、六十五人の参加者全員の選択を平等に見届けたいと思っているよ。
……でも確かに、彼らの選択を特に気に掛けていた。
それは否定出来ないね」
「ロロはそこに入らなかったらしいな」
「……うん。
彼だけは少し事情が違うんだよ」
V.V.は想いを馳せる。
『多ジャンルバトルロワイアル』という催しを開くよりも、考えつくよりも更に前に見た景色に。
そして一つずつ志々雄に語っていく。
「僕は一度、死ぬはずだった」
嚮団殲滅戦。
ルルーシュらの攻撃で致命傷を受けたV.V.は、実の弟シャルルにコードを奪われて死ぬ運命にあった。
そこに現れたのがラプラスの魔であり、歴史が歪んだ瞬間だった。
それが全ての事の始まり。
志々雄は腕を組み直し、黙って続きを促した。
「ラプラスに助けられた僕は、彼に連れられて色んな世界を見たんだ。
僕が生きていたのとは全く別の世界や惑星、君がいた明治時代の日本。
それに……本来僕が見るはずのなかった、僕の世界の未来も」
――それでも俺は……『明日』が欲しい!!!
V.V.が、シャルルが、C.C.が、マリアンヌが望んだ『昨日』への回帰。
V.V.の甥であるシュナイゼルが得ようとした『今日』の維持と停滞。
その二つを否定して、ルルーシュは『明日』を求めた。
そして世界が『明日』へと向かっていくのを、V.V.はラプラスと共に眺めていた。
「このバトルロワイアルに参加した彼らは、ゼロ・レクイエムという計画に賛同した――『明日』を求めた者達なんだ。
もっとも、思想に共鳴したと言うより『ルルーシュが求めたから』従った者もいただろうけどね」
ルルーシュとスザクを中心として、それに協力したC.C.、咲世子、ジェレミア。
ロロはそこに至る前に死亡していたが、彼の死がゼロ・レクイエムの発端の一つになったのだから無関係ではない。
だからこそ彼もバトルロワイアルの参加者として選ばれた。
「僕は、気になっていた。
ゼロ・レクイエムを知る前の彼らでも同じ選択をするのか。
参加者全員を見てはいても、彼らがきっかけだったからね……そこは、君の言う通り。
贔屓、だったのかも知れない……ほんの少しだけなんだけど、ね」
ルルーシュのギアスは使い方次第でどんな相手でもねじ伏せるものだが、制限されているのは直接相手や自分の生死に関わる命令のみ。
同じギアスユーザーであるロロのそれに比べ、緩い枷と言える。
C.C.には選択肢を広げる為に敢えて不死性を喪失させたものの、そうする為に払った労力は小さくなかった。
少なくともV.V.だけの力では、コードに干渉する事など不可能だっただろう。
スザクの為に参加者中で彼にしか扱えないKMF、それも一部ではあるがミラーワールドに進入出来るものを用意した。
242 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:03:53.99 ID:/5Ur9Se6
支援
243 :
第五回放送
:2013/07/11(木) 00:04:38.35 ID:XNz4yy8U
サザーランドは多くの参加者が搭乗出来るだろうが、ジェレミアのスペックが最大限に活かされるものに改造している。
咲世子には女性用の支給品としては最も強い部類に入るファムのデッキを与えた。
参加者ごとに支給品や制限の強さはバラつきがある。
一つ一つであれば気にする程のものではないだろう。
しかし他の参加者よりも多くの情報を得た志々雄にとって、それは違和感として残ったようだ。
事実ゼロ・レクイエムに直接関わっていないロロを除き、何かしらの優位がある。
「ゼロ・レクイエムは簡単に言えば、悪者を一人つくって。
その一人に全ての罪を被せて殺す事で、世界中の憎しみを解決しようとしたんだよ」
「随分都合の良い話だな」
「うん。だから遠からずあの世界では、再び戦争が起こるよ。
仮面の英雄がどんなに奔走しても、根本的な解決は何もしていないのだから。
僕らの計画が進んでさえいれば、憎しみも争いも、悲しみも嘘もない世界になっていたのにね」
全人類の意識を一つにする。
全てを共有すれば、あらゆる嘘は意味を失くし争いが消える。
死んだ人間とすら共にいられる理想郷。
V.V.達が志したそんな『昨日』なら、或いはシュナイゼルの治める『今日』ならば、戦争はなくなっていたかも知れない。
だが、そうはならなかった。
「……でもね。
『明日』を求めた彼らだって、そんな事は分かっていたと思うんだ。
それでも『明日』を求めたのは何故なんだろうって……思ってね」
そして、口にする。
あの未来を見てしまってから、心に溜まり続けていたものを。
「……ねぇ、志々雄」
画面に照らされて浮かび上がる包帯姿の怪人は、まともな答えを期待出来る相手ではない。
だとしても、胸の中でくすぶり続けていた疑問を呟いた。
「僕達は、――僕は……間違っていたのかな」
「それを俺に訊いてどうしようってんだ。
そもそも『争いを無くす』なんざ俺とは全く相入れない考えなのは知ってるだろ」
間髪入れず、考えていた通りの冷めた返事にV.V.は僅かに肩を落とす。
しかし志々雄は素っ気ない返しとは裏腹に楽しげだった。
「信じれば裏切られる、油断すれば殺される、殺される前に殺れ。
現世ってのはそういうもんだ、てめぇはそれを分かっているから根本のところを変えようと思ったわけだ」
饒舌に語る志々雄。
「実際てめぇも弟に殺されかけたわけだしな」と付け足した上で、顎に手を当てて続ける。
「世の中が地獄だって事を理解している。
それを何とかしようとして世界を丸ごと作り変える計画を立てた。
この二点だけなら、甘い事や綺麗事を抜かしやがるだけの連中よりは評価出来るぜ」
「……ふふ。
君にフォローされるとは思わなかったよ」
肩を小さく揺らして笑う。
そして、改めて問い掛ける。
「君なら――どれを選ぶ?」
過去か、現在か、未来か。
何を分かり切った事を訊いているのかと、そう言いたげに志々雄は肩を竦めた。
244 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:04:58.93 ID:0TFXgC4o
245 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:05:31.78 ID:0TFXgC4o
246 :
第五回放送
:2013/07/11(木) 00:05:37.88 ID:XNz4yy8U
「俺をただの殺人狂と思っちゃいねぇだろうな。
まぁ半分は正しいが」
冗談めかしながら、しかし細めた目は鋭利なままだ。
「俺の最初の目的は国盗り……動乱を起こして脆弱な明治政府を倒し、俺が頂点に君臨する。
そして俺が真に強い国にしてやる、それが俺の弱肉強食であり正義だ。
つまり、俺は俺で国の未来を憂いているんだぜ」
今となってはその規模を“世界”に広げてはいるが、志々雄の根幹は何も変わらない。
生粋の悪でありながら、人を惹きつけてやまない革命家。
誰よりも今の状況を楽しむ狂人は、堂々と言い放つ。
「『昨日』踏みつけた屍に用はねぇ。
『今日』に留まるなんざ温すぎて欠伸が出る。
俺が見ているのは『明日』だけだ」
未来に向けて、貪欲に手を伸ばす。
炎のように全てを飲み込もうとしている。
業火を思わせる熱に、V.V.は寂しさすら感じていた。
「……そう。
君も『明日』が欲しいんだね」
「気にしていた知り合い全員が死んで、少しは疑問も片付いたんじゃねぇのか?」
「いいや、まだ……分からない。
だから僕は、最後に残った彼らの選択が楽しみなんだよ」
志々雄から視線を逸らす。
画面の中の景色は未だ動き続けている。
「僕が死んだとしても、戦いは終わらない」
映し出される薔薇乙女と世紀王。
どちらかが倒れない限り――否、このままなら両者が倒れない限り、元凶が排除されたとしても殺し合いが続く。
だからこそ彼らは選択を迫られる。
「そしてきっと僕も、選択する事になるんだろう」
何を、とは敢えて言わず。
話が途切れると、志々雄も視線をV.V.から外して部屋の出入り口へ向けた。
「随分悠長に話をしているが、そいつは不死者の余裕か?
そろそろ来てもおかしくないぜ」
「そうだね……“alter”は進化を意味する言葉。
アルター使いとして覚醒した梨花を、観柳程度で止められるとは思えない」
アルター使いの成長率は未知数で、コードによる不死に甘んじていては足下を掬われかねない。
薔薇水晶も独自の考えに従って動き始めており、想定外の動きをする可能性がある。
「でも、僕も全てを見届けるまでに倒されるつもりはないからね。
梨花には悪いけど、思い通りにはさせられないよ」
梨花もまた、皆と生きる『明日』を求めて百年の戦いを乗り越えてきた人物だった。
その事を思い返しながら、V.V.は怪人と共に殺し合いを静観する。
そして物語はV.V.すら知らない結末へと向かう。
247 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:05:46.51 ID:/5Ur9Se6
支援
248 :
第五回放送
:2013/07/11(木) 00:06:49.61 ID:XNz4yy8U
【二日目/第五回放送/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品0〜4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
4:間引く。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
投下終了です。
内容や暫定的な禁止エリアについての問題点、誤字脱字等がございましたら御指摘下さい。
また予約解禁は余裕を持たせて13日0時(12日24時)を想定しておりますが、こちらも御意見がございましたらよろしくお願い致します。
249 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:07:14.78 ID:/5Ur9Se6
支援
250 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 00:46:47.66 ID:/5Ur9Se6
V.V.が主催となった経緯は、ルルーシュの目指した『明日』の先を見て関心を持ったからか
ギアス勢は死んでしまったけど残ってる連中もまた梨花を筆頭に先を求めて戦ってきた奴らばかりなのよな
現状としては今まさに憎悪や願いから大きな戦いが起こってる最中だし、
かつて争いの無い世界を求めたことのあるV.V.の関心と絡めてつながってきたのがいい
今後一番気になるのは梨花の動きだ
改めて投下乙でしたー
251 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 23:01:21.38 ID:0TFXgC4o
投下乙です!
V.V.の目的も明らかになりいよいよ展開も佳境に……!
明日を求めるって意味じゃ梨花ちゃまも大きく絡んでくるだろうし、志々雄はそんな細かいことを拘らずにただ覇道を慢心するタイプ
この二人に挟まれてV.V.がどう動くか気になる!
予約解禁及び禁止エリアに関しては問題ないと思います
252 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/11(木) 23:40:48.07 ID:q37LyNQH
放送投下乙です!
これまで謎めいていたV.V.の真意もいよいよ明らかになってきたか
でも志々雄は相変わらず我が道を行っているし、薔薇水晶は独自の動きを見せ始めたし、観柳はピンチだしw
まだまだ主催サイドもどうなるか分からないな
予約解禁日と禁止エリアは私も問題ないと思います
253 :
創る名無しに見る名無し
:2013/07/21(日) 22:11:50.82 ID:ALSh8vAu
148 名前:名無しさん 投稿日: 2013/07/20(土) 21:42:54 ID:uqS8Rews0
狭間一行で支援絵
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0241.png
全員に仮予約が入ってるのが楽しみすぎる
支援絵代理投下。速さが足りてる…乙です!!
254 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/07(水) 19:52:14.21 ID:K8OrHMAA
150 名前:名無しさん 投稿日: 2013/08/07(水) 00:02:00 ID:AgocBfYE0
つかさ含む残りのキャラで支援絵、これで全員
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0245.png
本予約だああああああああああああああ!!!!!!!
支援絵代理投下。全員凄すぎワロタwwwww支援乙乙!!
255 :
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 01:30:39.15 ID:xBMCJw+K
仮投下スレ(
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11918/1222679418/777
)にて仮投下させて頂きました
今回、少し無茶な部分も大きいと思いますので、ぜひ指摘、意見お願いします
そして……
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!支援絵だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
256 :
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:30:30.58 ID:xBMCJw+K
仮投下スレで書き手氏から話の筋に問題はないと言っていただけたので、ただいまより本投下させていただきます
257 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:31:47.97 ID:qshqJIDK
支援
258 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:32:40.97 ID:xBMCJw+K
放送直後のこと。
志々雄は、ふぅ、っと長い息を吐きながら天井を見つめる。
感傷ではないが、それでも若干気にかかっていることではあった。
志々雄の脳に浮かんだのは二人の少年少女のことだった。
もちろん、タバサと三村信史のことである。
タバサ、志々雄へと魔法の詳細を包み隠さず語った少女。
氷のように醒めた瞳の中に、全ての破滅を望んでいるような炎を持っていた。
その炎が志々雄の胸の中に溢れる野望の炎に呼応していたことを、志々雄は気づいている。
三村信史、志々雄へとこれから辿るかもしれない日本という国の歴史を語った少年。
大人のように冷徹を気取りつつも少年らしい未熟さを持った。
未熟さとは言い換えれば伸びしろであることを、志々雄は知っている。
「フ……」
志々雄の顔に自然と笑みが浮かぶ。
タバサや三村のような有望な子供は、まさしく志々雄の好みだった。
殺す覚悟と殺される覚悟を持ち、それでいて志々雄の強さへ憧れに似た感情を抱いている。
三村信史もタバサも、殺すには惜しい人材だった。
「酒はねえのか?」
気分が良かった。
この一日で志々雄の野望は光の速さで膨れ上がった。
この先の血と炎に溢れた未来へと、それこそ祝杯を上げておきたい気分だった。
「必要なのかい?」
「思っていたよりもガキだな、お前は。
酒を飲むのに理由なんて要らねえだろ」
「人間は未熟だからね、肉体と精神の齟齬に耐えられないんだ」
幼いままの身体は一種の罰だった。
V.V.はどれだけ歳を重ねようと天井の染みを感じられない。
六十年に近い年月が過ぎようと、V.V.の世界は変わらない。
だから、V.V.はシャルルに置いてけぼりを食らってしまった。
二人の間にあるわけがないと信じていた壁が、生まれてしまったのだ。
「もっと早く気づくはずだったんだ……僕とシャルルは、もう変わってしまったことを。
老いを克服した僕と、老いに侵されつづけたシャルル。
一緒なはずがないのにね」
V.V.は自嘲するように志々雄へと笑いかける。
志々雄は笑みを崩さず、未だに余裕を保ち続けている。
それでもV.V.は神に懺悔するように、言葉を続けた。
「そうさ、僕はこの瞬間から明日がなくなったんだ……C.C.と同じさ」
「まあ、わからないでもねえな」
志々雄は小さく頷き、その肌から炎が吹き出そうなほどの威圧感を持った火傷痕を撫でる。
かつて、地獄を見た時の後遺症だ。
259 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:33:14.53 ID:qshqJIDK
支援
260 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:33:15.40 ID:xBMCJw+K
「この火傷がな、急かすんだよ。
テメエの時代を作れ、戦火のない国なんざ退屈だってな。
元の身体に戻っちまったら……また、別の考えになるかも知れねえ」
「戻る気はあるのかい?」
「さあな。お前の力を奪ってなんでも出来るようになったら、戻るかもしれねえな」
ニヤリと唇を歪める。
V.V.は軽く笑みを漏らして、結局その話に持って行きたいんだね、と小さく呟いた。
しかし、拒絶するつもりはない。
そろそろ話してもいい頃になっている。
カーテンコールは近い。
なにせ、二つのキングストーンが激突しているのだから。
V.V.は息を吸うと、ポツリポツリと話し始めた。
「ここはあらゆる世界から隔離された、ラプラスお手製の特殊空間さ」
口にした言葉とは裏腹に、V.V.はなんでもないような口ぶりで語り始める。
志々雄はただ黙って続きを待つ。
丁寧にV.V.の言葉を吟味するためだ。
「君は知らないだろうけど、あの会場は端と端が繋がっているんだ。
ループ構造……と、横文字はわからないかな。
まあ、東に海を超えて進んで行ったら会場の西端に飛ばされてしまうんだ」
「それがあの兎の力か?」
何も言わずにV.V.は頷くだけでとどめた。
紳士然とした白兎の怪人ラプラスの魔は不可能を可能とする存在だ。
それこそ、神と呼ばれかねないほどの力の持ち主である。
「そうだよ……だから、本当はラプラスが居ない今の状況はすごい危ないんだ」
「あの甲冑野郎がぶっ殺しちまったからな」
「……ラプラスの死よりも、キングストーンが共鳴していることが一番危険なんだ。
ラプラスの空間すらも歪める、あの魔王の石が。
あるいはラプラスが居ればその対処も出来ないから、結局はラプラスの死が一番危険なのかな」
初めてV.V.がその顔を引き締め、対して志々雄は笑みを深める。
V.V.が恐れるほどの力だ。
この世の頂点を求める志々雄の野望の炎が強めるに十分値する代物に決まっている。
「こちら側にあるのならば、いや、世紀王の元にないのならばそこまで恐ろしくはないよ。
問題は、世紀王の元にあるということさ」
「なら、あの人形に言って回収させりゃ良かったじゃねえか」
「……創世王が誕生することもこの数多に繰り返された選択の結果。
それはそれで、僕の求めている一つの答えさ」
そうは言いながらも、出来ればそうならないように願っているといった表情だった。
恐らく、創世王が誕生すればその瞬間に勝敗が決すると踏んでいるのだろう。
V.V.は話をもとに戻すよ、と断りを入れて言葉を続ける。
「Cの世界はあらゆる記憶が眠る……おっと、それはすでに知っていたかな」
「盗み聞きしたからな」
「結構。でも、『存在の炎』は知らないでしょ?」
「……炎、か」
「人間は、いや、生きているものは皆、炎なのさ。
燃えるように生きているんだ、存在の炎はその存在そのものってわけだよ」
志々雄の反応が真剣になったことを確認する。
V.V.はこれからが本題だと言わんばかりに、ゆっくりと口にする。
261 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:33:50.11 ID:qshqJIDK
支援
262 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:33:59.50 ID:QLGnXW0z
支援
263 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:34:06.13 ID:xBMCJw+K
「特殊な空間である会場と、第二会場であるここでは死というトリガーがある」
――――奇跡への引き金さ。
志々雄の眼の色が変わる。
それこそが聞きたかったと全身で表現していた。
その貪欲さにV.V.は苦笑を浮かべた。
「ラプラスの置き土産……特殊すぎる自在法、【バトルロワイアル】」
死んでしまったラプラスの魔がこの殺し合いの全貌を握っている。
そもそもがラプラスの魔が始まりなのだ。
V.V.は、ただの舞台装置だ。
「この異世界そのものがギミック。
そして、六十四人の『脱落』が確認された瞬間、死亡表記が出ることで、ね。
その瞬間に、願いを叶える自在法……一種の魔法を発動させる」
いや、はっきり言ってしまえば。
「六十四名の存在を消滅させ、数多の世界を歪めることで常識を塗り替えるのさ」
――――殺し合いに招かれた六十五人以外は、全てが舞台装置とも言える。
「死んだ六十四名は消える。命が無くなるんじゃない。
Cの世界に刻み込んだ存在の炎が消えてなくなるんだ。
もうその人のことを誰も覚えちゃいないし、何も残りはしない」
それは空白になる。
上書きされるわけでもなく、消えたという記憶すら消えてなくなる。
あったはずものが失われる、虚無の存在へと変わるのだ。
「そんな不自然はCの世界に巨大な矛盾を残す。
Cの世界は人の意思そのものだから、きっと人間はひどいことになる。
嘘だとかそんなことどうでも良くなるような、異世界規模の大災害が起こるさ」
つまり、奇跡と同時に破壊が行われる。
世界が壊れ、人が死に、記憶は消える。
奇跡には代償が必要とはよく言ったものだ。
「例え、始まりに、『全てを元にリセットした』ところでCの世界に歪みが生まれる。
世界のすべてが壊れ、Cの世界に生まれた矛盾は人という種そのものをおかしくしてしまうかもしれない」
「それでいいさ」
志々雄は唇を歪める。
V.V.にそのまま食い付きかねない、悪鬼の笑みだった。
頭によぎるのは少年と少女。
どちらも力を求めた、好ましい子供だった。
そいつらが世界から本当に消える。
それもまた好ましい。
弱肉強食とは、そうあるべきなのだ。
――――敗者に残されるものなど、あってはならない。
.
264 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:34:24.21 ID:qshqJIDK
支援
265 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:34:48.82 ID:xBMCJw+K
「敗者はどこまでも惨めでないと意味がねえ、そういうこった……多少のリスクは覚悟のうえだ。
俺が生きてれば、それだけで弱肉強食の世界になる」
「なら、協力してもらおうかな」
V.V.はそう言うと、志々雄に向き直った。
そして、手に小型端末を持ち志々雄へと声を投げかける。
「それ、返してもらえるかな」
その瞬間、どこからか現れたブリタニア兵が志々雄へと手を伸ばす。
志々雄は無言でヒノカグツチを振るい、ブリタニア兵を一刀に伏す。
「あん?」
しかし、ブリタニア兵は動きを止めずに志々雄からデイパックを奪った。
本来ならば生命活動を停止させるはずの傷だというのに、だ。
志々雄も疑問を抱くが、そのブリタニア兵が斬り落とされたヘルメットを落とすと得心する。
「ハッ……こいつが悪魔ってやつか?」
「そうだよ、【ゾンビくん】っていう悪魔なんだ。仲良くしてあげてね……もう死ぬだろうけど」
V.V.は志々雄のデイパックから、鷹野が奪った『あるもの』を取り出す。
巨大なその器に入った『あるもの』を別のゾンビ兵へと渡す。
例の場所に置いておいてね、とだけ言うと再び志々雄と向かい合った。
「君の手癖の悪さは承知しているし、それもまた強さだとはわかるよ。
でも、これも必要な物なんだ。悪いけど、簡単にはあげられないね」
「……奪ってもいいのか?」
「奪えるものならね」
緊張が場を走る。
志々雄のヒノカグツチが熱を上げたように感じる。
あるいは、志々雄の剣気が熱を出しているのか。
いずれにせよ、志々雄はV.V.へと殺気を向けているのは事実だった。
「やめだ」
「へえ?」
「どうせ、すぐに終わる……俺はその時に備えるだけさ。」
しかし、志々雄は剣を収めた。
これからの出来事が志々雄にはわかっているのだろうか?
いや、それはあり得ない。
志々雄は人間だ。
どれだけ常軌を逸した狂気を持っていようとも、そのくくりからは抜けられない。
人間である以上は未来はわからない。
「宴もたけなわってな……祭りもいつかは終わりが来る。
俺は戦いを考えるだけだ」
それでも、戦いが来ることだけはわかっていた。
地獄の修羅が闘いの予感を読み違えることなどありはしないのだから。
やがて来るすべての終わりを手に入れるために。
奇跡を手に入れ世界を地獄にするために。
志々雄は英気を養うという判断をしただけだ。
266 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:35:09.24 ID:qshqJIDK
支援
267 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:35:44.12 ID:xBMCJw+K
◆ ◆ ◆
その頃。
『向こう側の世界』を覗き込むことで力を手に入れた古手梨花と悪魔の力を手に入れた武田観柳が睨み合っていた。
黄金銃を片手に、観柳は小型端末のキーを叩く。
メインサーバーに眠っている悪魔召喚プログラムへとアクセスするための端末だ。
すなわち、その行動は悪魔召喚プログラムの起動に他ならない。
「ジャァックフロスト! ケットシー!」
「ヒーホー!」
「ヒャッハー! 地獄の時間だあ!」
観柳は二匹の悪魔の名を呼ぶ。
【妖精】ジャックフロストと【魔獣】ケットシーだ。
ともに接近戦を得意とする悪魔である。
うちの一体、ジャックフロストは圭一たちの着る制服を見て興奮を示す。
「おお、オイラも学校の想い出あるホー! 鍛え上げたぶちかましでぶっ飛ばしてやるホー!
血と汗と涙に染み込んだまわしの匂いを感じ取れー!」
学生服を着たジャックフロスト、ヒーホーくんは体当たりを仕掛ける。
迎え撃つのは圭一だ。
金属バットを思い切り振り、ジャックフロストをまるでボールのように打ち変えさんとする。
「い、痛いホー! 相撲部は野球部には勝てないのかホ……?」
しかし、ジャックフロストも低級とは言え悪魔。
ダメージこそ感じているものの、死を与えるには遠い。
そのまま、もう一度ジャックフロストは体当たりを仕掛ける。
圭一は他のメンバーに目配せし、ジャックフロストへの迎撃に専念する。
「ケットシー、タルカ――――!」
観柳はケットシーにタルカジャ、すなわち攻撃力増強の補助魔法をかけさせようとする。
しかし、次はレナがケットシーへと迫り詠唱を中断させる。
ケットシーを打ち倒すためにその鉈を鋭く振るう。
しかし、ケットシーもその手に持った剣で鉈を受け止める。
ケットシーはレナと交戦、魔法を唱える隙はない。
「糞が……来い、ウコバク! コボルト!
ジャックフロストは一度後衛に下がれ!」
ジャックフロストと入れ替わるようにコボルトがその手に持った棍棒で圭一の金属バットを受け止める。
そして、入れ替わったジャックフロストが新たに召喚されたウコバクが後衛へと移り魔法を唱える。
中範囲魔法である炎熱系魔法マハラギと氷結系魔法マハブフが梨花たちを襲う。
梨花はバックステップで致命傷を避ける。
羽入を背負った梨花はその耐久力も増している。
ウコバクとジャックフロストの放つ魔法程度ならば耐えられるほどに。
268 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:36:13.84 ID:qshqJIDK
支援
269 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:36:25.94 ID:QLGnXW0z
支援
270 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:36:27.59 ID:xBMCJw+K
「攻撃を止めるな!
殺せぇ! さっさと殺すんだ!」
「甘いわ!」
その瞬間、前へと進もうとしたウコバクとジャックフロストが転倒する。
床に貼られたピアノ線トラップ。
音もなく、光もなく。
北条沙都子が仕込んだトラップが作動した。
その隙を狙い撃つように園崎姉妹の散弾銃が火を噴く。
ジャックフロストとウコバクは防御姿勢を取った。
状況は梨花有利。
それを確信すると、梨花は前へと突き進んだ。
「くっ……お前ら、何をやっている! さっさと止めろ……!」
観柳は悪魔たちへと叱責する。
しかし、不利な状況は変化させられない。
梨花がアルター能力によって生み出した仲間は観柳の仲魔と同等。
そこの五対六という数的不利が加わっているのだ。
圭一とレナがコボルトとケットシーを跳ね除け、観柳へと道を作る。
迫り来るウコバクの炎弾とジャックフロストの氷弾を魅音と詩音が撃ち落とす。
観柳が迎撃に黄金銃へと手を伸ばす。
しかし、突如右手に痛みが走る。
観柳の意識の外で動いていた沙都子のトラップが発動し、右手に突き刺さるように針が刺さっている。
痛みに顔をしかめ、一瞬動きが止まる。
梨花は歯を食いしばり、繰り返される地獄の中で何度も握りしめた拳を固めた。
そして、そのまま観柳へと殴りかかる。
梨花の人生は理不尽への怒りであり、その怒りを観柳へと叩き込んだ。
「ブッ!?」
梨花の鉄拳を叩きこまれ、観柳はたたらを踏んで退いた。
そして、梨花の後方で戦い続ける仲魔と雛見沢の住民を眺める。
お互いに拮抗しあっており、助けにこれそうな悪魔は居ない。
「武田観柳……! 貴方ならわかるでしょう、武器庫の場所を!
いえ……違うわね。V.V.のところへと案内しなさい」
このまま、この力でV.V.と対面する。
奇跡を起こした仲間達とともに、この惨劇を食い止める。
それが出来ると梨花は信じている。
一度出来たことが二度出来ないわけがないのだ。
「こ、この糞ガキ……!」
観柳はこめかみに青筋を立て、怒りを顕にする。
しかし、どれだけ怒りを覚えてもその怒りで解決することは出来ない。
観柳は小型端末を操作し、新たな悪魔を呼び寄せる。
271 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:37:15.47 ID:qshqJIDK
支援
272 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:37:17.41 ID:xBMCJw+K
「ゾンビ兵、来い!」
現れる十数人規模のゾンビ兵。
動きが緩慢なゾンビ兵達だが、この人数となると壁としては十分すぎるほどの効果があった。
銃器をを持たず、腕を伸ばしながらただ迫ってくるだけのゾンビ兵を蹴散らしていく。
圭一の金属バットとレナの鉈で首が吹き飛び、魅音と詩音の銃撃で手足を吹き飛ばされて行動が不能となる。
しかし、観柳が逃げ出すには十分な隙だった。
恥も外聞もなく、背中を見せて逃走する観柳。
目的地はひとつ、メインサーバー、つまり悪魔召喚プログラムが仕込まれた場所だ。
そこにはフロッピーディスクとカードデッキがある。
観柳は自身の生命線とも言える最大の武器が眠る場所へと走る。
「逃さないわ!」
梨花も観柳の逃走が、何かを求めたゆえの逃走であることを察して懸命に追いかける。
しかし、基地のどこに隠れていたのだと言いたくなるほどのゾンビ兵が梨花の前に立ちふさがる。
アルター能力によって生み出した五人との協力でゾンビ兵を蹴散らしていく。
「ハァ……ハァ……ハ、ハハハ!」
しかし、足止めは成功した。
観柳はメインサーバーの置かれた電算室。
その中で置かれたカードデッキと一枚のフロッピーディスクを手に取る。
そして、フロッピーディスクをメインサーバーへと読み込ませる。
「……なんのつもり。ここにV.V.が居るとでも言いたいの?」
一足遅れて電算室へと足を踏み入れた梨花は観柳へと軽口を叩く。
もちろん、観柳がなにかしらの切り札を手にとったことは承知している。
現に、観柳の握るカードデッキを見て息を呑んだ。
強制的に殺し合いの観客とさせられた梨花はカードデッキの恐ろしさを良く知っているからだ。
観柳が手に持つデッキは仮面ライダーライアのデッキ。
しかし、そこには紋章は浮かんでいない灰色のデッキだ。
すなわち、このデッキはミラーモンスターと契約を交わしていないということになる。
「変身ッ!」
それでも観柳は変身する。
変身すればライダーには遠く及ばないが、それでも人間を超える力を手に入れることができる。
すなわち、一度の攻撃で倒れるような真似はしない。
耐久力の増加は好ましい。
「来い、悪魔ども!」
そして、仲魔を召喚してメインサーバーコンピュータへと向き合う。
キーボードを素早く叩き、悪魔召喚プログラムを立ち上げた。
同時にフロッピーディスクに備え付けられたデータを悪魔召喚プログラムへと叩きこむ。
契約の儀式をプログラム言語に置き換え、悪魔召喚プログラムがその真価を発揮した。
273 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:37:59.03 ID:qshqJIDK
支援
274 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:38:16.71 ID:xBMCJw+K
「戻れ、ゾンビども! お前たちにやるマグネタイトはもったいないんだよ……!」
フロッピーディスクに仕込まれた悪魔を召喚する前に、観柳はゾンビ兵を送還する。
すなわち、マグネタイトの確保。
これから召喚する悪魔はゾンビやジャックフロストなどのような下級悪魔とは違う。
「来い……ッ!」
神話に記された、怪物。
人では太刀打ち出来ない本物の悪魔だ。
「ケルベロスッ!」
雪原めいた白に青の装飾を加えた毛並み。
剥き出しの牙は日本刀を優に超える美しい刃物。
ゆらゆらと揺れる尻尾はそれだけで人を撲殺できそうな力強さを感じる。
神話級の怪物、ケルベロスがそこに居た。
「ケルベロス、パワーブレスだ!」
観柳の言葉と同時にケルベロスが咆哮を挙げる。
そして、不可思議な吐息が観柳と仲魔を包む。
これこそが力強さを増すタルカジャとスピードを増すスクカジャの効果を持つケルベロスの特技、パワーブレスだ。
パワーブレスによって身体能力を強化されたコボルトとケットシーはレナと圭一を圧倒する。
マハブフとマハラギの嵐は魅音と詩音の銃撃を防いでいく。
沙都子のトラップはダンプカーのように走り回るケルベロスの動きを弱めることしか出来ない。
「テメエの命は金で買えねえが、金はテメエの命なんかよりもよっぽど重要なものなんだよッ!」
すでに戦況を一変していた。
スペックが大きく劣るブランク体とは言えライアへと変身し、ケルベロスを召喚した観柳。
観柳は瞬時に梨花との距離を詰め、紙幣のつまったバッグを手に取って大きく振りかぶった。
「昨日の金儲けは今日の為に!
今日の金儲けは明日の為に!
明日の金儲けは未来の為に!
未来の金儲けは……全て、私の栄光の為に!」
観柳は紙幣が詰まったバッグを梨花の丹田へと叩きつける。
金の重みと匂いによって観柳の脳はリミッターを解除し、人の限界を超える。
梨花の小さな身体が浮き上がり、大きく後方へと吹き飛ばされる。
「所詮『オトモダチ』なんてこんなものかぁ……!
最後に頼れるのはやっぱりお金様だけだなぁ、おい!」
仮面ライダーライア・ブランク体という強化された身体で梨花へと詰め寄る。
前衛である圭一とレナが間に入ろうとするが、コボルトとケットシーによって阻まれた。
詩音と魅音が散弾銃によって止めようとするが、マハラギとマハブフが目眩ましとなって命中率が極端に下る。
観柳は梨花へと黄金銃を放つ。
先ほどとは真逆の状況となり、梨花を凶弾が襲う。
が、沙都子が人知れずに仕掛けたピアノ線トラップによって、僅かに銃弾は逸れた。
しかし、それはフェイク。
観柳の本命は片手の指で弾いた小銭だ。
強化された肉体から弾き出される小銭はさながら銃弾そのもの。
何よりも観柳の信じる金の力によって観柳自身の脳のリミッターが解除されて威力は極大だ。
肉体そのものは人間である梨花の身体には大きなダメージが与えられる。
それでも耐えられるのは、守護霊のように梨花に隣接する羽入の存在が故。
275 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:38:36.33 ID:qshqJIDK
支援
276 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:38:41.04 ID:QLGnXW0z
支援
277 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:39:07.23 ID:xBMCJw+K
「これで五百円の損失だ……わかるか?
この時代の五百円は大した金じゃないがらしいが、五百円って聞くだけで大金って思っちまうんだよ!
やってくれるじゃねえか!」
「……ッ、アンタが勝手に壊したんでしょ」
上級悪魔であり強力な補助特技を持つケルベロスの存在によって状況は不利に押しやられた。
梨花のアルター能力はそこまで強くはない。
それは目覚めたばかりということもあるが、梨花の信じる部活メンバーがあくまで常人の範囲にあるからだ。
梨花が強く信じれば信じるほど、超常の力は現実に沿って行く。
しかし、強く信じれば信じるほど。
『奇跡』を起こした仲間と共に、『奇跡』を起こすことが出来る。
梨花はすでに『奇跡』を知っているのだから。
「ケルベロォス!」
観柳はケルベロスへと攻撃を促した。
その体当たりはすでにそれだけで必殺の技。
沙都子というアルター能力による幾つものトラップによってその威力は殺されるが、梨花にケルベロスの体当たりが命中する。
梨花は紙くずのように吹き飛ばされる。
しかし、それでも梨花は睨むように前を向いた。
光が溢れ、ケルベロスの前へと圭一とレナが出現する。
さながら瞬間移動のような速度、ケルベロスと言えども反応ができない。
その瞬間を逃さず、圭一とレナはケルベロスへと殴りかかった。
死には至らない攻撃だが、鼻っ柱を殴られたケルベロスは怯んで攻撃を緩めた。
そして、光が溢れる。
アルター能力である圭一たちが再び光りに包まれた。
「私は覚えている」
圭一たちは姿を消し、光は強まっていく。
さしものケルベロスも強烈な光に目をやられ、動きを止めた。
しかし、ただの目眩ましではないはずだ。
アルター使いにとっての光とはすなわちアルター能力発動のキーだ。
――――新たな力が、発動する予兆なのだ。
.
278 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:39:21.00 ID:qshqJIDK
支援
279 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:39:52.06 ID:xBMCJw+K
「何度もやり直して、何度も失敗して」
古手梨花。
前原圭一。
竜宮レナ。
園崎魅音。
北条沙都子。
園崎詩音。
そして、羽入。
「奇跡を、見た」
七人の輝きが、一つに纏わりつき。
「奇跡は……!」
弾丸となって、観柳へと向かっていった。
「仲間と一緒にある!」
――――ケットシー、腹部をえぐり取られ撃墜。
――――コボルト、低く構えた体勢のまま脳髄を吹き飛ばされ撃墜。
――――ジャックフロスト、その学生服を真っ白な雪に染めて撃墜。
――――ウコバク、腕に持った杖で防御姿勢をするも杖もろとも破壊され撃墜。
――――ケルベロス、悪魔の本能でその危機を察知し回避、しかし、その右半身を大きく傷つけられる。
低級悪魔を撃破していき、ついには観柳へと弾丸が襲い掛かる。
武田観柳は受け止めるようにして右手を突き出した。
光の弾丸は武田観柳へと直撃する。
――――光が奔流するように世界を照らす。
.
280 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:40:55.76 ID:xBMCJw+K
「フフ……フハハ!」
そして、武田観柳――――
「生きている! 生きているぞ!」
――――生存!
「私は生きている……そして、ケルベロスも!」
「………ッ!」
観柳の右腕からは血を流し、額からも微量の血が滴り落ち、黄金銃も破壊された。
確かなダメージを与えたが、しかし、その生命は未だに失われていない。
そして、武器であるケルベロスも生きている。
梨花は膝から崩れ落ちながら、それでも観柳を強く睨みつける。
「私の勝ちだ、金の勝利だ!
くだらない感情など、金という現実の前にはなんの意味も持たないということですよ!」
興奮、同時に優越感。
観柳の口調が紳士然としたものへと変わっていった。
勝利を前にした余裕だろう
「さぁ、ケルベロス! 殺すのです、その少女をね!」
観柳は歪な笑みを浮かべ、ケルベロスへと命令する。
自身は片腕を失くしたが、それでもV.V.の技術ならばなんの問題もないだろう。
大事なことは生きていることだ。
金至上主義者である観柳でも命を買い戻すことが出来ないことは心得ている。
憎き抜刀斎の言葉が、記憶に削り込まれている。
だからこそ、目の前の敵へと金ですら取り戻せない死を与える必要があると踏んだのだ。
281 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:40:57.96 ID:qshqJIDK
支援
282 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:42:01.14 ID:xBMCJw+K
「……」
「……? どうした、ケルベロス。なぜ動かない?」
しかし、ケルベロスは一向に梨花へと襲い掛からない。
それどころかケルベロスはのっしりとした動作で振り返り、観柳を睨みつけた。
悪魔が与える恐怖に、観柳は自然と背後へと退いていた。
ケルベロスはそんな観柳の動作に満足したように、ニヤリと笑みをつくった。
「ウシロ ヲ ミテミロ」
「……なっ!?」
ケルベロスの言葉に反応するように、観柳は恐る恐ると言った様子で背後へと振り返る。
そこには、悪魔召喚プログラムが搭載されたメインサーバーが破壊されていた。
いくら端末のキーを打ち込もうとも、本体のプログラムが破壊されれば契約は破棄されたと同義。
――――悪魔召喚プログラムが手を離された時、その存在は仲魔から悪魔へと戻る。
ケルベロスは大きく口を開いた。
観柳にとっては、地獄の釜の蓋が開く、とでも言うべきか。
「やめろ……!ヤメロ!」
「イライラ ダゼ …… ! ハザマ モ オマエ モ セマイ トコロ ニ トジコメテ …… !」
ケルベロスはグシャリと音を立てながら、観柳の腹部を噛みちぎる。
まるで生かしながら食うように、重要な器官を避けて痛みだけを与えていく。
腹部から流れ落ちる腸の姿を見て観柳は恐慌し、そして、その腸をウインナーのように食べるケルベロスの姿に発狂する。
しかし、仮面ライダーライア・ブランク体へと変身した観柳は奇跡的に命を保っていた。
だからこそ、地獄が続いてしまう。
――――グキャリ。
脚。
――――グキャリ。
腕。
――――グキャリ。
性器。
――――グキャリ。
内臓。
――――グキャリ。
脳髄。
楽しむように顎と喉を動かすケルベロス。
やがて、ケルベロスの白い毛皮は血に染まり、観柳はようやく絶命した。
粗雑な食べ残し(観柳)を残して、ケルベロスは梨花へと向き直った。
283 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:42:24.87 ID:QLGnXW0z
支援
284 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:42:45.44 ID:qshqJIDK
支援
285 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:43:27.24 ID:xBMCJw+K
「オマエ モ オレ ヲ キズツケタ …… コロス」
ニヤリと笑みを深めてケルベロスは梨花へと向き合った。
そして、その牙を見せつけるようにして大きく口を開いた。
思い出す。
何度なく経験した、踊り食いのメインディッシュとなる状況。
死。
まさしく古手梨花の知る死そのものだった。
「アッ!」
観柳にしたように、生かしながら殺すためにケルベロスは梨花の腕を食いちぎった。
右腕が切り取られ、地面に落ちる。
それをわざと口にせず、次に腹部へと大きく噛み付く。
「アッアァ!クゥ……カ、ア、アアアア……!」
耳に飛び込んでくる音は、余りにも聞き慣れた自身の呻き声。
幻聴のようにひぐらしの鳴き声まで聞こえてくる。
自身の肉を貪るケルベロスの音と、自身の苦悶の声が合唱する。
何度も聞いた、死へと誘う歌だ。
「そ、んな……うぅ……ッ!」
死が迫る。
古手梨花は、ケルベロスに食われ、ここで死ぬのだ。
それ以上の意味はない。
羽入が消えた今、やり直しは効かない。
全ては、ここで終わる。
「それじゃ……夢……だったと……言うの……?」
全ては夢へと変わってしまう。
今までの奇跡は、梨花が見た走馬灯めいた夢。
本当は羽入なんて存在も居ない。
梨花はループなど行なっていない。
――――ただ、苦しみを続けただけの夢。
「悪い夢……」
死が待つ。
ケルベロスは梨花の肉体を食い千切らんとする。
その時だった。
286 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:43:56.81 ID:qshqJIDK
支援
287 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:45:08.36 ID:xBMCJw+K
「メギド」
突然、ケルベロスの頭部が吹き飛ばされた。
梨花は知らないが、見るものが見ればわかる力だった。
それは力の奔流、万能の力。
梨花は目を逸らす。
そこには白い制服に身を包んだ一人の少年が立っていた。
孤独が抜け出し、それでもなお苦しみからは逃れられない少年。
魔人皇ハザマイデオが、そこに居た。
涙が溢れる。
――――梨花は知っている。
この少年が殺し合いに乗ろうとしていたことを。
誰かを殺そうとしていたことを。
その中で、少しだけ気持ちに素直になったことを。
自分の友達と、友達になってくれたことを。
思えば、それだけで十分だった。
「いえ……」
――――梨花ちゃん、君を助けに来た!
――――私を信じて……
――――だから、もっと生きるためにあがいてごらんなさいませ! 今度は、私があなたを導く番ですわ! さぁッッ!!
――――信じるのは難しいけど、信じなきゃはじまらないって……誰かが言っていた気がします……信頼に答えなきゃ、奇跡を信じる資格なんてありませんからね
――――なら、その運命とやらを俺がブチ壊してやろうじゃねぇか。
「良い、夢だった……」
後悔はない。
例え、夢のように消えてしまっても。
あんなに頑張ったのに無くなってしまっても。
過去は嘘じゃない。
梨花は、本当の絆を手に入れ、奇跡を見た。
奇跡はここにある。
288 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:45:32.17 ID:qshqJIDK
支援
289 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �T
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:46:38.24 ID:xBMCJw+K
――――私の想い出は夢に変わってしまったけど。
「貴方の約束は……」
――――夢で終わらせないで。
力を振り絞り、ケルベロスに食い取られた右腕を左腕で触れる。
虹色の光が輝き、世界が変化した。
右腕は一人の少女へと変わった。
ここで梨花は力尽きる。
それでも、アルター能力『ひぐらしのなく頃に』は。
『……頑張って』
確かに一人の少女、竜宮レナを生んだ。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【武田観柳@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 死亡】
290 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:47:19.53 ID:QLGnXW0z
支援
291 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:47:28.99 ID:qshqJIDK
支援
292 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:48:16.97 ID:xBMCJw+K
◆ ◆ ◆
時を戻し、放送開始直前。
場所を移し、バトルロワイアル会場。
「――――私が翠星石を殺す」
殺気。
魔神皇の時代に抱いていた負の感情の一つ。
全てが敵に見えて、全てが苛立ちの対象だった。
少年の時代の劣等感は、姿を変えて超常者の殺気へと変わっていた。
そして、その感情が再びハザマの胸に芽生えていた。
「面白い冗談だ」
自らに向けられたものではないと言え、底冷えするような殺気を傍で浴びせられながらもは平然としている。
世紀王の刃のような視線と魔神皇の氷のような殺気が向けられている対象。
それはローザンメイデン第三ドール、翠星石。
五つのローザミスティカとキングストーン・太陽の石を宿した奇跡の少女だ。
「へ、へへ……そうですぅ。お前なんか、この銀色オバケの後にぶっ殺してやるです」
翠星石は一拍遅れて敵意を感じ取り、薄ら笑いを浮かべながら庭師の鋏を杖代わりにして立ち上がる。
その肉体には損傷が見えて取れるが、致命的なものではなかった。
それでも翠星石の身体に力がないのは、肉体的ものではなく精神的なものに寄るところが大きいのだろう。
なにせ、翠星石の肉体には六つの賢者の石が埋め込まれているのだ。
本来ならば生まれるべきではない少女人形、いわば奇跡のような存在としてこの大地に立っているのだから。
「貴様にその次はない」
シャドームーンの複眼が翠星石を捉える。
完調のマイティアイから伝わる視覚情報によってシャドームーンは翠星石の状態を翠星石自身よりも確かに把握していた。
球体関節が動くたびに見せる音無き軋み。
ローゼンメイデンとして成り立たせている胴体の材質の炙られた痕。
そして、胸の内から溢れる賢者の石の鼓動。
「忌まわしいな……そのまがい物の輝きも、人形ごときに埋め込まれたゴルゴムの秘宝も。
全てが憎らしいぞ」
激しい怒気が翠星石を襲う。
シャドーチャージャーから翠緑の光が迸る。
そしてまた、月の石の鼓動に共鳴して翠星石の体内に眠る太陽の石も深紅の光を放った。
「くぅ……!?」
「よもや、貴様の扱うキングストーンと我々世紀王のキングストーンと同質だとでも思ったか?
無様な姿を晒せ、格の違いをその姿で示してみせろ」
キングストーンの発する膨大なエネルギー量に、現在の翠星石では耐えられない。
傷は高速で癒されていき、しかし、その生存へのエネルギーの供給量が多すぎる。
溢れ出すエネルギーは外へと発せられる。
だが、エネルギーの射出口が小さすぎる。
意図的にエネルギーの射出を絞っていた翠星石の身体は、強烈な力によって負荷を強制的に与えられていた。
293 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:48:36.05 ID:qshqJIDK
支援
294 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:48:46.50 ID:eYy8OCdY
�C
295 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:49:21.52 ID:xBMCJw+K
「キングストーンは王者の輝石、人形ごときでは持て余すのは当然だ。
あるいは、貴様が人の起こした奇跡だというのならば話は別だがな」
シャドームーンは競うようにしてキングストーンのエネルギーを照射していく。
太陽と月の輝きが夜明けを照らす。
その光は朝陽を破壊し、紅と翠だけが空間を支配していた。
違いは一つ。
シャドームーンは悠然と立ち続けるのに対し、翠星石は苦痛に顔を歪めていることだ。
「太陽の輝きに魅せられた者の末路は哀れなものだ」
「ふぅぅぅうぅぅ……!」
しかし、翠星石が息を大きく吐くと、次第に顔色を戻していく。
五つのローザミスティカが、キングストーンの手綱を取り直したのだ。
突然の力の暴流に対応しきれなかったローザミスティカが、ようやくキングストーンの力に追いついたのだ。
そしてまた、力を上げ続けるキングストーンに引きずられるようにしてローザミスティカも力を増していく。
「……ふん、多少はやるということか」
シャドームーンはキングストーンの共振を利用した翠星石の自滅を誘う戦法は意味が無いと察する。
翠星石が単なるローゼンメイデンの一であるならば、戦いは一瞬で決していた。
いや、それは戦いとすら呼べないものだ。
シャドームーンがキングストーンの力を引き上げるだけで翠星石は倒れるのだから。
王は、奴隷に戦うことすら選ばせない。
だからこそ、王なのだ。
「――――戦ってやろう」
しかし、翠星石はすでに単なるローゼンメイデンではない。
あと二つ、ローザミスティカを手に入れることで完全なる少女へと変貌する超常存在なのだ。
王と言えども、その拳を、その剣を振るわなければいけない相手だ。
シャドームーンは回復した右手にサタンサーベルを握り、前へと突き出す。
翠星石もまた、姉妹の一人である蒼星石の所有物であった庭師の鋏を上段に構える。
「てぃやぁッ!」
先に動くは翠星石。
太陽の石が放つ紅の波動を身に纏ったまま、宙を疾走して庭師の鋏を振り下ろす。
閃光のような鋭い太刀筋。
しかし、袈裟懸けに切りかかってきた斬撃をシャドームーンは難なく捌く。
真に光速を超えなければ王の真眼を、マイティアイを欺くことは出来ない。
シャドームーンの胴体を真っ二つにせんとした庭師の鋏は、サタンサーベルの捌きによって地面へとめり込む。
「フンッ!」
僅かに前傾姿勢となった翠星石の腹部へと、シャドームーンの蹴りが飛び込む。
バリアー状に展開されたキングストーンの波動が、シャドームーンの攻撃を食い止めんとする。
しかし、世紀王の一撃はそのバリアーを容易く乗り越え、翠星石の華奢な身体へと食い込んだ。
まずは腹部へとのめり込み、ようやく現実を飲み込んだように衝撃に翠星石の身体が押し出される。
空中で縦に一回転、二回転、三回転として翠星石の身体が吹き飛んでいく。
296 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:49:42.34 ID:qshqJIDK
支援
297 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:50:06.36 ID:QLGnXW0z
支援
298 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:50:10.49 ID:xBMCJw+K
「脆い……肉弾戦では王の敵とならんな」
その言葉の通り、翠星石のスペックとシャドームーンのスペックの違いがこの結果となった。
強化手甲・エルボートリガーは敵の攻撃を防ぐだけではなく、全てを破壊する振動を起こす。
強化装具・レッグトリガーは単なる飾りではなく、打撃と斬撃を同時に行える武器ともなる。
金属外皮・シルバーガードは生半可な攻撃では衝撃すらシャドームーンから隔絶させる。
強化筋肉・フィルブローンは多くのゴルゴム怪人を凌駕する一撃を生む。
戦うために、力で頂点に立つために与えられた肉体。
それこそが世紀王の器なのだ。
「うっせーです! 一発決めただけで調子に乗ってんじゃ――――」
まともに直撃したはずだった。
だというのに、痛みに顔をしかめてはいるが、翠星石は平然とシャドームーンへと怒りの言葉を返す。
見れば、火傷痕もすでに消えている。
これもまたキングストーンと五つのローザミスティカの影響だ。
肉弾戦で劣ると言っても、手も足も出ないほどの差があるわけではないのだ。
一撃では致命的な攻撃とはならない。
それこそ、シャドーチャージャーによって全力を引き出されたサタンサーベルの一刀か。
もしくは、ライダーキックと比肩するシャドーキックの一撃か。
「――――ねえ! ですよ!」
翠星石の言葉とともに、背後から漆黒の双竜が黒い羽を撒き散らしながら顕在する。
同時に、無数の薔薇の花弁を生み出した。
薔薇の吹雪の中、漆黒の双竜がシャドームーンへと襲いかかる。
シャドームーンは左手を翳し、シャドービームを放つ。
仮面ライダーインペラー、仮面ライダーナイト、雪代縁、蒼嶋駿朔、仮面ライダー龍騎、仮面ライダー龍騎・正義武装。
多くの人間に傷つけられたシャドーチャージャーは、ハザマの持つ神の力によって元通りに修復された。
一つの損傷もないシャドーチャージャーが引き出す月の石の力は先程までのそれとは違う。
強化された翠星石が生み出した漆黒龍を容易く破壊する。
また、片方の漆黒龍を撃破するだけではない。
余剰分のエネルギーがシャドーチャージャーから放たれ、残った漆黒龍へと襲いかかる。
「んなもん、当たらねえです!」
翠星石が漆黒龍を操作し、出力の弱いシャドービームを避ける。
直撃しても問題はないが、しかし、勢いが弱まるのは事実だ。
全力でシャドームーンへと攻撃するための回避行動。
それもまた、シャドームーンの計算の一つ。
マイティアイで漆黒龍の動きを見切り、紙一重で回避する。
そして、逆にサタンサーベルを振るって漆黒龍の首を斬り落とした。
「ムッ……」
漆黒龍は確かに撃退したが、シャドームーンは僅かに声を漏らす。
シルバーガードに無数の切り傷がついていたからだ。
この程度の傷はすぐに修復できる。
問題はどのような攻撃を、いつの間に食らっていたか、だ。
では、攻撃の正体は何か。
299 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:50:41.57 ID:qshqJIDK
支援
300 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:51:13.85 ID:xBMCJw+K
「……薔薇か、小賢しい」
傷の正体は薔薇だった。
宙を舞う無数の薔薇が、漆黒龍の影を蠢いてシャドームーンのシルバーガードを切り裂いていた。
キングストーンの煌めきによって世界を見通すマイティアイの閃光を出し抜いたのだ。
決定だとはならないが、しかし、確かにシャドームーンを傷つける攻撃。
つまり、シャドームーンは動くたびに薔薇によって切り裂かれるのだ。
それを嫌うのならば、脚を止めて迎え撃つしかない。
だが、正面から受け止めようと思えば、さしものシャドームーンであっても幾らかの負荷が生じる。
しかし、それを嫌えば無数の薔薇の花弁に身を傷つける。
翠星石が放った攻撃はどのような行動を取ってもシャドームーンへとダメージを与えるものだった。
「ヒィーッヒッヒ! ほーら、もっと激しく行くですよッ!」
突如現れた一匹の漆黒龍。
地面より伸びる巨大な幹。
無数に舞う薔薇の花弁。
地面に生い茂る無数の蔓。
全てがシャドームーンへと襲いかかる。
「ちっ……」
シャドームーンの丹田に備えられたシャドーチャージャーが激しい光を発する。
そして、全方位へとシャドービームが射出され、薔薇の花弁と蔓を撃ち落としていく。
しかし、巨大な幹と漆黒龍の猛然とした攻撃を遮ることは出来ない。
植物の蔦をシャドームーンは左の拳で迎え撃つ。
振動拳が蔦を破壊していき、その後エルボートリガーが遅れて蔦を完全に裂いていく。
そして、右手を上空に掲げてサタンサーベルからシャドービームを照射。
背後から迫っていた漆黒龍を見事に撃ちぬいた。
死角であるはずの背後からの攻撃にもかかわらず、その動きを把握できたのは全てマイティアイの性能がゆえ。
マイティアイを持つ限り、『本来』はシャドームーンに隙は生まれない。
「死ねええぇぇぇ!!」
しかし、それでも動きの反応に限界はある。
マイティアイで翠星石の動きを把握していても、迎撃する術が封じられている。
シャドームーンはサタンサーベルに増幅させたシャドービームの余剰分で翠星石へとシャドービームを放つ。
だが、キングストーンの紅い波動に身を包んだ翠星石の動きを止めるほどの成果をあげることが出来ない。
シャドームーンの懐へと潜り込んで庭師の鋏を思い切り横薙ぎに振るう。
「ヒヒッヒーヒ!」
「ぐっ……!?」
シルバーガードに大きな一文字傷がつき、その衝撃によって銀色の月が宙を舞う。
翠星石は追撃とばかりに宙で動きの取れないシャドームーンへと襲いかかった。
しかし、シャドームーンは空中でくるりと一回転をして体勢を立て直し、サタンサーベルの切っ先を走らせた。
「ハイッ!」
翠星石はサタンサーベルの斬撃を避けながら庭師の鋏から手を離す。
そして、シャドームーンへと背を向ける形で懐へと潜り込み、サタンサーベルを振るった右腕を取る。
小さな背中へシャドームーンの巨体を乗せ、ぐるりと円の動き。
翠星石は背負投げでシャドームーンを空中から大地へと叩きつけた。
301 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:51:45.55 ID:qshqJIDK
支援
302 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:52:54.67 ID:xBMCJw+K
「ヌゥ……ゥゥン!」
苦悶の声を漏らしながら、しかし、翠緑の複眼を妖しく光らせた。
地面へと叩きつけられたにも関わらず、間髪の間も置かず左腕を伸ばして翠星石の頭部を鷲掴みにする。
そこから右方へと転がるように体を動かし、逆に翠星石を地面へと叩きつける。
位置を綺麗に交換したシャドームーンと翠星石。
「キャ……」
翠星石は思いがけぬ反撃にその身に似合った可愛らしい声をあげた。
追撃にサタンサーベルから手を離して右拳を固めるシャドームーン。
強力な振り下ろしの拳と堅甲な大地のパンズの間にサンドイッチさせることで翠星石の命は消える。
「って、め、めんどくせー奴です!」
悲鳴にも似た声を出したことを否定するように強い言葉を口にする翠星石。
大地から巨大な植物を生み出し、シャドームーンの身体へと巻き付かせた。
突如として成長した幹に押されるようにして強制的に空に舞うシャドームーン。
急襲に際して、選んだ迎撃の手段はシャドービーム。
シャドーチャージャーから拡散された全方位を焼き尽くすシャドービームによって植物を破壊。
それに乗じて翠星石への攻撃も行なっていた。
しかし、キングストーンの放つ紅蓮の波動をシャドービームは貫けない。
シャドームーンと翠星石の攻防は、ともに決定打に欠けていた。
一方で、そんな様子をハザマはじっと見つめていた。
(……互角、か)
シャドービームの余波から上田と気絶したヴァンを守るハザマ。
二人の攻防を眺めながら、ハザマは両者の実力を測っていた。
両者の実力は均衡を保っている。
どちらも『とっておき』がない限り、このままでは持久戦となることは明白だ。
(厄介なことだが……翠星石の力が明らかに増している。
シャドームーンが力を出せば出すほど、それに引きずられるように翠星石も力を増しているということか)
ハザマが互角と称したのはこれが原因だった。
全開したシャドームーンは正義武装との死闘のダメージを引きずっていた先程までとはわけが違う。
シャドーチャージャーの修復が完全に終了し、キングストーンの力を全開まで引き出せる。
つまり、シャドービームの一撃が増したということだ。
それなのに翠星石がまともに戦えているのは、すなわち翠星石の強さが増したということである。
ただし、ここでハザマが前に出れば、シャドームーンの勝利は揺るがないものとなるが。
(……まあ、いいさ。どうとでもなる。
どちらが残っても私が殺せばいい、いずれにせよその結果に収束する)
しかし、ハザマは手を出さない。
それがシャドームーンとの契約だ。
シャドームーンが死の危機に瀕しない限り、ハザマがこの勝負に手を出すことはない。
303 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:53:07.87 ID:qshqJIDK
支援
304 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:53:42.70 ID:xBMCJw+K
「……どういうことだい、こいつは」
「北岡か」
「おおっ、無事だったのか! ……ムッ、ジェレミ――――あ、い、いや、なんでもない。
ハ、ハハ、うむ。生きているだけで……そう、なによりだ……うむ」
シャドームーンと翠星石が一進一退の攻防を繰り返していた。
そうして幾つかの牽制と、決まらない勝負手が繰り広げられているところで北岡秀一と柊つかさが帰還した。
ハザマは冷静に、上田は素直に喜びを示す。
ジェレミア・ゴットバルトの姿は見えない。
ハザマはその意味を悟り、静かに目を瞑る。
上田は一瞬だけ疑問を口にし、力なく笑う北岡と肩を落としているつかさの姿で察する。
口数を多くすることでなんとか空気を変えようとするが、それも出来ないと知り尻すぼみに言葉を弱めた。
『おはよう、皆』
そして、そのハザマの姿に応えるようにV.V.の声が響き始めた。
シャドームーンと翠星石が繰り広げる激闘のBGMのように流れ始める放送。
ハザマの聡明な頭脳は一言一句違えずにV.V.の言葉を記憶していく。
その中に混じったジェレミア・ゴットバルトの名前。
北岡は一瞬だけ表情を凍らせるが、しかし、いつもの軽薄とも言える笑みを浮かべた。
北岡自身、心身ともに疲労困憊と言った様子だ。
「……ま、放送の通りだよ」
北岡はハザマと視線を合わせて戯けるように、しかし、力なく言い放った。
激闘の背景をノートパソコンから知ることは出来ても、その真実を知ることは出来ない。
ジェレミアがどのように北岡たちの前で死に、北岡たちがそれをどう受け止めたのか。
そこがわからない以上、ハザマはただ静かに目を閉じることしか出来なかった。
ハザマの未熟な人間性では、言葉が出て来なかったのだ。
上田もまた言葉が出ない。
このような状況ではどのような言葉をかけようとも、好転はしない。
ただ黙って前を向くことが最大の効果を発揮するであろうことを上田は知っていた。
『じゃあ……直接会って話せる時を、楽しみにしているよ。
それがどんな形になったとしても――ね』
放送は終わった。
しかし、戦いは終わらない。
翠星石とシャドームーンは溢れ出る力を目の前の存在にぶつけ続けている。
「……翠星石はどうするんだい?」
「殺す……殺さなければいけない」
ハザマの声に色はない。
長い孤独の日々は心を押し殺す術をハザマイデオという人間に植えつけていたのだ。
その冷たい言葉につかさと上田はビクリと身体を震わせた。
「あれはすでに障害となる存在だ」
しかし、それだけに劇中の台詞のような作り物じみた言葉になってしまう。
つかさは表情を凍らせたままのハザマを眺めて、ポツリと呟いた。
「……辛くはないんですか」
「ひ、ひいら……!?」
呟いた後になって、後悔が訪れる。
305 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:53:49.07 ID:K6ZUkBum
支援
306 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:54:19.05 ID:qshqJIDK
支援
307 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:54:30.32 ID:xBMCJw+K
上田の咎めるような声もまた、つかさの心へと小さな刺をさした。
つかさはハザマが竜宮レナの死を見届けたことを知っている。
そこで何があったのか、その本当の意味を知っているのは当事者であるハザマだけだ。
しかし、それでもハザマが背中を震わせたことを見ている。
目の前の少年は人智を超えた神の力を持ってはいるが、人間なのだ。
人間が無表情になる時は決まっている。
今、まさにつかさがそんな状態であるように。
心を押し殺している時だけだ。
「……」
ハザマは何も返さない。
聞こえなかったのか、無視をしているのか、返せなかったのか。
つかさにはわからない。
しかし、それでも沈黙は後悔を強くしていく。
つかさはハザマから逃げるようにシャドームーンと翠星石の戦闘へと目を向ける。
3Dを超えるリアルが目の前にはあった。
翠星石のことはよく知らない。
人形にしか見えないあの美麗な存在が、憎しみを剥き出しにしてシャドームーンへと襲いかかっている。
「……ッ」
つかさは激戦から目を逸らした。
どこを見ても。
どこに居ても。
世界は血に塗れていた。
「デッキは使えるのか、北岡」
「残念ながらもう少しかかりそうかね……ってわけで、頼りにしてるよ」
今はジェレミアの遺品となってしまったブラフマーストラと贄殿遮那を掲げながら北岡はハザマへと笑いかける。
ハザマは少しだけ目に感情の色を戻し、しかし、何も言わずにシャドームーンと翠星石の激闘に目を戻した。
そこでは翠星石が何度目かとなる漆黒龍を生み出していた。
水銀燈を思い出し、スザクを連想する。
ハザマは短く目を瞑り、感傷を打ち消す。
(……今は考えるな。殺し合いの打破だけに集中しろ)
ハザマは再び目を開ける。
漆黒の双竜が宵闇を連想させる牙を向けて、闇の化身であるシャドームーンを襲いかかっていた。
世紀王に後退はない。
偽りの闇では黒き太陽と並ぶ影の月を覆い尽くすことなど出来はしない。
ならばこそ、後退する必要などない。
深紅の刀身に血の彩りを加えたサタンサーベルを天へと掲げた。
シャドームーンはサタンサーベルを投擲し、黒竜の顎を食い千切る。
黒竜を破壊してもなお疾走を止めようとしない。
「サタンサーベルよ!」
シャドームーンが手を伸ばし、シャドーチャージャーの輝きに呼応して急停止する。
王者の輝石の命により、覇王の剣が世紀王の手へと戻る。
漆黒竜の片割れがその巨大な顎を開き、シャドームーンへと襲いかかる。
シャドームーンは空中で錐揉み回転することで漆黒竜の攻撃を紙一重で回避。
当然、マイティアイで完全に動きを見切った上での紙一重だ。
しかしながら、この紙一重はもはや太陽と月ほどの距離を持つ絶対安全の紙一重なのだ。
308 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:54:47.52 ID:QLGnXW0z
支援
309 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:54:56.13 ID:eYy8OCdY
�C
310 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:55:17.52 ID:xBMCJw+K
「甘ぇです!」
翠星石も漆黒龍を急転回させてシャドームーンを再び襲わせる。
意のままに操られる漆黒龍は一度避けるだけでは完全に回避したとは言えないのだ。
「そんなもので逃げ……られる……と……」
しかし漆黒龍の動きが、いや、翠星石の動きが止まった。
キングストーンの力を使えば翠星石の動きを封じることができるが、これはシャドームーンの御業ではない。
翠星石が自らの意思で、動きを止めたのだ。
「――――あッ…………」
翠緑と深紅の双眸が切り取った風景は、現実のそれではなかった。
世界は色を失い、同時に強烈な炎が翠星石の視界を覆う。
翠星石の脳裏に燃える炎は、紅蓮の炎。
この世から永遠に失われた、36.5℃の炎。
「……なんだ?」
傍目から見ても翠星石の変化が見て取れた。
上田が、怯えながらも、疑問の声を出す。
ハザマもまた翠星石の動揺を読み取れない。
当然、つかさも同様だ。
しかし、ただ一人。
翠星石ほどではないにしても、僅かに動揺を示した者が居た。
「――――ドラゴン……ライダーキック」
その北岡秀一の口から、答えが小さく零れた。
「アッ―――――アアアアアアアアアアアア!!!」
怒りの咆哮か。
哀しみの慟哭か。
それとも、現実を否定する叫びか。
いずれのものともつかない叫声が翠星石の口から零れ出す。
小さな身体から溢れ出る紅の波動。
人の身には大きすぎる、太陽の力。
「シャドーキック!」
しかし、紅の波動を食いちぎって、月の猛蹴が翠星石の身体に直撃する。
翠星石の小さな身体が海面へと向かって吹き飛んでいく。
球技かなにかのようだ、とても人型のものが飛んでいるとは思えない。
常人でしかないつかさの目では翠星石だと認識できないほどに回転していく。
シャドームーンは海へと墜落した翠星石に背を向けて残身。
311 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:55:49.99 ID:qshqJIDK
支援
312 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:56:23.36 ID:xBMCJw+K
つかさは、自身の身体が震えていることにようやく気づいた。
未だに薄暗い空間、雲が朝陽にかかり闇が周囲を支配したように感じた。
闇に佇んでいるだけのシャドームーンが、つかさの意識を奪おうとしていた。
いや、つかさだけではない。
北岡もまた意思とは別の部分で身体が震えていた。
それは、人に埋め込まれた恐怖の根源だった。
かつて暗黒の世界を支配していた原初の恐怖。
Cの世界に刻まれた、ゴルゴムへの恐怖だ。
「終わったか」
そんな中でハザマはシャドームーンへと歩み寄る。
翠星石はまだ生きている、紅の波動はシャドーキックの威力を弱めることで翠星石の身を守った。
しかし、戦闘の実行は不可能だ。
翠星石を捕縛にするにしろ、そのまま殺すにしろこれ以上の戦闘は起こらない。
すでに翠星石はまな板の上の鯉、後は仕上げだけだ。
「いいや、始まりだ」
しかし、シャドームーンはサタンサーベルの切っ先を翻す。
戦闘は終わっていない。
魔人皇ですら気づかなかった存在をマイティアイは確かに写し取っていた。
大海の中で一つ存在する異物、不自然なまでに輝く薔薇が一輪。
海柱の中から現れたものは紫水晶。
「何度も煩わしいぞ、人形」
原始の時代、水面は唯一にして最大の鏡であった。
nのフィールドを通り、再度に渡って薔薇水晶がバトルロワイアル会場に現れたのだ。
「申し訳ありません……世紀王……私にも事情というものが、ありまして……」
「目的はキングストーンか」
「……愛、です」
薔薇水晶は気を失っている翠星石をぞんざいに抱え上げて世紀王の言葉に応える。
漏れ出るように響く小さな笑い。
シャドームーンと数度目の相対となる薔薇水晶。
その猛威を何度確認しようとも、込み上がるものは喜びであった。
シャドームーンの強さと、翠星石の強さ。
そこにあるものは究極へと至る道だ。
その道を通る資格が翠星石にあるのならば、当然、薔薇水晶にも存在する。
父の存在を肯定する究極が、そこにあるのだ。
「度し難いな……そんなもののためにこの次期創世王に刃を向けたことがなによりも」
「私からすれば、『創世王』などというものが……『そんなもの』ですが……」
売り言葉に買い言葉といった様子で薔薇水晶はシャドームーンと向き合い続ける。
ハザマ、北岡、上田、つかさは緊張の面持ちで二人に注意を向けていた。
ハザマはシャドームーンが薔薇水晶へ確かな殺意を持っていることを把握している。
ならば、薔薇水晶への対処は一旦任せて、気絶したヴァンを含めた戦闘能力を持たない四人の守りに専念する。
北岡はブラフマーストラを取り出して身構える。
再変身可能時間は迫っているが、変身に気を取られすぎて不意を突かれては致命的だからだ。
上田とつかさはただ無力感に苛まれながら、ハザマの背後に立つしかなかった。
313 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:56:40.18 ID:qshqJIDK
支援
314 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:57:13.62 ID:eYy8OCdY
�C
315 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:57:18.31 ID:xBMCJw+K
シャドームーンは翠緑の複眼で薔薇水晶を睨みつけたまま言葉を紡いだ。
「愚かだな」
「愚かだな……」
「この世の全ては無意味なもの」
「この世の全ては無意味なもの……」
「ちっぽけな存在が何を求めようとも、何もつかめずに虚空に消えるだけだ」
「ちっぽけな存在が何を求めようとも、何もつかめずに虚空に消えるだけだ……」
クスクスと笑いながら薔薇水晶はシャドームーンの言葉をオウム返しにする。
明確な挑発。
nのフィールドという絶対の逃げ場があるからこその態度だ。
現段階では、nのフィールドへの対処法が存在しない以上は仕方がない。
ハザマは水晶の扉を通って帰ろうとする薔薇水晶へと攻撃を行おうと腕を振り上げる。
しかし、それよりも早く。
「シャドーフラッシュ!」
シャドームーンがシャドーチャージャーから翠緑の光を放った。
世界が翠に、シャドームーンに染まる。
極大の光は薔薇水晶が生み出した紫水晶も染め。
nのフィールドへと手を伸ばそうとしていた薔薇水晶の右腕を拒絶した。
「……え?」
ここで初めて、薔薇水晶が動揺の色を見せた。
当然だ。
絶対の逃げ道と信じていた、戦術の一つとして考えていたnのフィールドの利用。
それが当然のように防がれたのだ。
「そんな……バカなこと……ッ!?」
「知らなかったのか」
カシャ、カシャ、カシャ
威圧的な足音とともにシャドームーンは薔薇水晶へと歩み寄っていく。
「王からは逃げられない」
シャドーフラッシュによってnのフィールドへのゲートは閉じられる。
この世の支配者たるシャドームーンは左の指先からシャドービームを照射。
拡散されたシャドービームは薔薇水晶の右胸を襲う。
薔薇水晶は水晶の粒を発してシャドービームを迎え撃つ。
しかし、威力が違う。
シャドービームは薔薇水晶の水晶攻撃を容易く蹴散らした。
薔薇水晶の命を奪おうとしたその時。
紅の波動が再び世界に現れた。
「て、テメエ……薔薇水晶に、なにを……!」
タイミングよく気絶から目覚める翠星石。
そして、事態を把握すると薔薇水晶へと話しかける。
316 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:57:31.01 ID:K6ZUkBum
シエン
317 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:57:42.33 ID:qshqJIDK
支援
318 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:58:19.04 ID:xBMCJw+K
「逃げるです、薔薇水晶……こいつらは、翠星石が止めてみせ……」
「逃しはせん」
マハジオ、と声が響き海に電流が走る。
翠星石と薔薇水晶は飛び立ち、沖に降り立つ。
そこには白い制服に身を包んだ神が睨みつけていた。
「翠星石はシャドームーンが固執している……が、お前ならば話は別だ」
成せなかった世紀王の決闘。
それを取り返すように太陽の石を埋め込んだ翠星石へと執着するシャドームーン。
そこにハザマが割り込めばシャドームーンは烈火のごとく怒り狂うだろう。
だからこそ、手を出さなかった。
だが、薔薇水晶に限っては別だ。
ここでこの少女人形を撃破すれば、殺し合いという悪趣味な催しの主催者打倒へぐっと近づく。
ハザマは斬鉄剣を翻し、ゆっくりと近寄っていく。
「テメエ……薔薇水晶に……!」
その姿に翠星石は怒りを示す。
先ほどのドラゴンライダーキックを連想させたシャドーキックによる動揺が尾を引いているのか。
翠星石は一目でわかるほどに情緒不安定の状態だった。
「触れんな!です!」
濁流のように現れる漆黒龍。
しかし、ハザマは目を細めて『メギド』を唱えた。
天罰の力は漆黒龍を食い破り、霧散させる。
圧倒的な力。
この破壊は、ハザマがキングストーンと同等の力を持つことを意味している。
もちろん、ハザマはそれだけで終わらせるつもりはない。
「マハジオダイン」
感電による動きの停止も視野に入れたマハジオダインを唱える。
翠星石を襲う極大射程の雷鎚。
さしもの翠星石もスピードではマハジオダインを勝ることは出来ない。
――――しかし、その瞬間に突風が吹く。
その突風は翠星石の身体を柔らかく包み、マハジオダインの射程範囲外へと運んでいった。
こんなことがデキる男は一人しか居ない。
今まで無表情を決め込んでいたハザマの表情が、ようやく崩れて驚愕に満ちる。
光よりも速く。
光よりも眩しく。
光よりも強い。
最速の男、ストレイト・クーガーがバトルロワイアル会場で再び走り続けていた。
.
319 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:58:46.74 ID:qshqJIDK
支援
320 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/09(金) 23:59:39.50 ID:xBMCJw+K
「クーガー!?」
「おおっ……クーガーくん!」
驚愕するハザマを尻目に、ハザマの背後に隠れるように巨体を縮めていた上田が歓喜の表情を見せる。
クーガーはやはりいなせな笑みを浮かべて全員へと向き直った。
貫かれたはずの胸の傷はふさがっている。
「どーも、皆さん。ストレイト・クーガー、復活させていただきまし……たァ!?」
クーガーが言い終わる前に、翠星石は肘打ちを食らわしてクーガーから離れる。
クーガーは胸をさすりながら苦笑を浮かべる。
ハザマはその翠星石の敵対行動で現実を思い出し、顔を引き締める。
そして、クーガーの取った行動の意味を素早く吟味した。
すなわち、翠星石への救出活動の意味を。
「……いや、待て。クーガー。なんのつもりだ?
なぜ、翠星石を庇った?」
「そりゃあ、まあ……殺すことまでは目的じゃないから、ですからかねぇ?」
「そいつはお前を殺した……あ、いや、お前は生きてるが……致命傷を負わせようとした」
「しかし、俺は生きてます」
そうでしょう?、とクーガーは続ける。
クーガーは伊達男特有の、厭味ったらしくない言い回しと笑みでハザマの問に応えるクーガー。
しかし、ハザマは僅かに苛立ちを募らせた。
クーガーの生を受け入れたからこそ、クーガーの行動に納得が行かなかったのだ。
「それは詭弁だ。
お前でなく上田や柊ならば、いや、ヴァンや北岡であっても死んでいた。
……わかるだろう?
お前が生きていたから翠星石を赦してもいい、そんな話ではないんだ。
翠星石が殺意を抱き、その殺意によって巨大な力が人の身を貫いた。
今大事なことはそれだけなんだ、ストレイト・クーガー」
クーガーは苦笑しながら、力なく肩をすくめた。
ハザマの言葉を理解はしているが協調するつもりはない。
そう言いたげな動作だった。
ハザマは若干苛立ちをつのらせ、言葉を続けた。
「シャドームーンは全てが終われば斃してみせる、この世紀王と和解することなど出来ない。
しかし、契約を破棄することは出来ない。
そして、翠星石とはその契約すら結ぶことが出来ず、奴は敵対の意思を示した。
理由などそれ以上は必要はない」
「それは貴方の理屈だ、ハザマさん。俺は翠星石さんを許すつもりはないが、殺すつもりもなァい」
柳に風といった様子でクーガーは自身の主張を譲らない。
「クーガー……貴様も、私の敵となるのか?」
「そうですぅ……テメエ、どっちの味方なんですか……!」
ハザマと翠星石が同時に同じ言葉を口にする。
神の如き存在である皇と王の輝石を身に宿した少女人形の敵意をまともに受け、それでもクーガーは飄々と肩をすくめる。
321 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/09(金) 23:59:51.51 ID:qshqJIDK
支援
322 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:00:42.80 ID:KetNSJBN
支援
323 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:01:25.91 ID:xBMCJw+K
「愚問ですなぁ。ハザマさん、翠星石さん」
ニヤリと笑みを深めて。
「俺は俺の味方です」
――――クーガーは確かに、己の『道』を口にした。
「……良いだろう、クーガー。それはそれで良い。お前が生きてるのならば、それが一番だ。
だが、今は眠っていろ。お前の速さでも私の神の力の前には――――」
「落ち着けって、ハザマ」
クーガーにすら敵意を示さんとしていたハザマを、北岡が軽く諌める。
ハザマの肩を軽く叩き、その肩の上に顔を乗せるようにぐっと近づく。
突然の至近距離に、ハザマは僅かではあるが動揺の色を見せる。
「なぁ、ハザマ。俺はどっちでもいいのよ。
お前が翠星石をどうしようが、クーガーに対してどう対処しようが。
ただ、俺はつかさちゃんを放っておけない。
そう、クーガーじゃないけど、今大事なことは自分のしたいようにするってことさ。
わかるかい、ハザマ?
つかさちゃんを守るのならお前の傍に居るのが一番ってことさ」
「……な、なにが言いたい」
北岡の真意が読めない。
僅かに動揺しながら、ハザマは聞き返した。
「あー、もう」
北岡も言っていて恥ずかしくなったのか。
乱暴に頭を掻きむしると、ハザマへと視線を合してはっきりと言い放つ。
「信頼してやってんだよ。
言わせないで欲しいね。こーいうの、俺らしくないんだから」
「……ッ!」
「北岡さん……」
ハザマの仲間で居ることを明言するで、ハザマの暴走を止めんとする打算はある。
ハザマの力を信用としていたことも事実だ。
しかしそれでも。
レナの死を前にして肩を震わせていたハザマに、城戸真司と同じものを感じ取っていた。
どうしようもないお人好しの姿を。
「……どいつも、こいつも!」
翠星石は唇を噛み締め、シャドームーンへと向き直る。
そこでは薔薇水晶が懸命に防戦を行なっていた。
シャドームーンにとって薔薇水晶との闘いは、翠星石との闘いに比べれば児戯のような闘い。
しかしそれでもシャドームーンが薔薇水晶へと決定打を与えてはいないのは、ひとえに翠星石の存在を注視しているからだ。
キングストーンを宿した翠星石を逃すわけには行かない。
そのため、片手間の闘いを行なっていたのだ。
324 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:02:36.52 ID:oBYA0BEz
�C
325 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:02:45.84 ID:KetNSJBN
支援
326 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:02:50.37 ID:rX9dTWMa
「……今!」
そして、翠星石とシャドームーンが視線を交錯させた瞬間。
シャドームーンは翠星石へと歩み寄ろうとした。
その瞬間を縫って薔薇水晶はシャドームーンから離れる。
翠星石はその逃走を手助けしようと、シャドームーンへと駆け寄ろうとする。
「おぉっと、翠星石さん。逃がしませんよ!」
「邪魔……です!」
しかし、その行動もクーガーによって遮られる。
翠星石を思い切り殴り倒すことに異論はない。
なんなら闘志すらなくなるほどに叩きのめすことも辞さない。
それほどまでに命を弄ぼうとしている翠星石に怒りを覚えていた。
だが、翠星石を殺すとなれば話は別だ。
クーガーの脳裏には、城戸真司と笑いあう姿が未だに刻まれていた。
満身創痍の翠星石がシャドームーンと戦えば、間違いなく死ぬ。
少女を殺すことまでは決心がつかない。
――――あの笑顔までも、怒りの対象には出来なかった。
一方で薔薇水晶は死の渦から逃げ切った、そう確信していた。
ハザマは北岡の言葉によって上田や北岡、つかさと言った弱者の保護に専念している。
翠星石の持つ太陽の石は惜しいが、命には変えられない。
志々雄でも呼んで、翠星石を回収し直すしかない。
「……テメエか」
しかし、その考え全てを否定するように、黒ずくめの男が立っていた。
夜明けを待たずして起き上がった無職の男、ヴァンは風にたなびく柳を連想させる姿で佇んでいた。
その瞳には夜明けの太陽の如き生気はない。
しかし、強烈な殺気と幽鬼のような不気味さを持って薔薇水晶を睨み据えていた。
薔薇水晶の背中に悪寒が走る。
シャドームーンの強烈な覇気とも、ハザマの冷たい殺意でもない。
感情をぶつけられたことでは生まれ得ない、確かなリアルな予感。
死の予感が薔薇水晶へと訪れたのだ。
その予感を肯定するように、ヴァンの長い脚が弧を描いて薔薇水晶の頭部へと襲いかかる。
「ッ!」
咄嗟に右腕を振り上げてヴァンの蹴りを受け止めるが、その細い腕の自由を奪う痺れが走る。
ヴァンは二本の脚で大地を踏みしめ、自身の愛刀を振るう。
その奇異な蛮刀は空中を舐めるように滑らかな動きを見せて、薔薇水晶の左腕へと斬りかかる。
水晶の剣でヴァンの剣撃を受け止める。
ヴァンの剣撃はシャドームーンのそれに比べれば軽い。
完調の薔薇水晶と疲労困憊のヴァンの打ち合いは、薔薇水晶の勝利に迎える。
薔薇水晶の剣撃に弾かれ、ヴァンが小さく吹き飛ばされる。
「あっ……」
しかし、それが隙になった。
――――薔薇水晶の背後に、絶対の月が立ち塞がっていた。
327 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:03:55.18 ID:rX9dTWMa
「借りだとは思ってはいない。だが、このままでは気が悪いのも事実だ」
「薔薇水晶!」
「これであの時のことはナシにしてもらうぞ」
痛む身体を無視して、翠星石が声を張り上げる。
薔薇水晶は過去の記憶がフラッシュバックされる。
幾度ものローゼンメイデンの戦い。
全てを倒し、手に入れたはずの力。
手に入れたはずの、父の寵愛。
憎い、真紅への勝利。
それら全てが偽りだからという理由で切り捨てられた。
「死ね」
世紀王シャドームーンの凶刃が、薔薇水晶の腹部へと向けて斬りかかった。
「あっ……」
薔薇水晶の身体が、まるで砂山のように崩れていく。
斬られたのではなく、崩されていく。
薔薇水晶という失われた生命を成り立たせていた『自在法』が切り崩されていく。
斬られるという仮想の死を契機にして、薔薇水晶は死んでいく。
「お前ェェ!」
翠星石が薔薇を飛ばす。
真紅のローザミスティカが翠星石の胸を締め付けたように感じたが、無視をする。
「テトラカーン!」
「おおっと、大丈夫ですか、ヴァンさん」
ハザマのテトラカーンとクーガーのスピードによって翠星石の攻撃は防がれる。
シャドームーンはもちろん、薔薇水晶を追い詰めたヴァンも殺すことが出来なかった。
そして、相変わらずどちらの味方とも取れないクーガーの行動に、ハザマと翠星石は苛立ちを募らせる。
しかし、心の底ではクーガーの真意を理解していた。
クーガーはお互いが本当の敵を見ずに敵対するな、とそう考えているのだろう。
もっとも、ハザマも翠星石もその『考えは甘い』と考えているからこその敵対なのだが。
328 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:04:03.45 ID:oBYA0BEz
�C
329 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:05:13.73 ID:rX9dTWMa
「翠星石……」
「待ってるです、薔薇水晶!」
薔薇水晶は様々な記憶を思い出す。
父に抱かれた温もり。
父に話しかけられた温もり。
父に撫でられた温もり。
父・槐への想いが、薔薇水晶の全てだった。
「私は……」
「安心するです、薔薇水晶……私が……姉がなんとか……」
翠星石が薔薇水晶の傍へと近づいていた。
翠星石が薔薇水晶を抱く。
翠星石が薔薇水晶へ話しかける。
翠星石が薔薇水晶を撫でる。
翠星石が、薔薇水晶の最期の全てであった。
「貴方が……」
翠星石。
本物の太陽を宿した。
本物の光を六つもその身に宿した。
本物の、少女人形。
偽りの少女人形にも手を差し伸べる、優しき少女人形。
その翠星石に対し、薔薇水晶が抱いた感情は。
「大嫌いでした……」
不快、そのものだった。
「……えっ?」
「『父』の意思を……否定する貴方が……アハ……ハハ……」
六つのローザミスティカを宿し、しかし、真実の光に耐え切れなかった偽りの器。
太陽に触れることなく、その存在は消えていった。
太陽を否定して、薔薇水晶は消えていく。
『父』という概念を否定するものを、薔薇水晶が受け入れるわけがなかった。
【薔薇水晶@ローゼンメイデン 死亡】
330 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:06:09.61 ID:xBMCJw+K
◆ ◆ ◆
『私は……貴方が……大嫌いでした……』
薔薇水晶の言葉が翠星石の脳に木霊する。
離れない、拒絶の言葉。
なぜ薔薇水晶の身体からローザミスティカが出ないのか。
薔薇水晶は自分を利用していただけだったのか。
シャドームーンはまだ自分から大事な人を奪うのか。
様々な疑問と怒りが湧き上がるが、それを凌駕する哀しみが翠星石の心を襲う。
妹に、家族に、否定された。
翠星石は本当に一人だった。
もはや、誰も翠星石を許しはしない。
「イヤ……」
翠星石の言葉から、作り物めいた言葉が漏れる。
もはや、その言葉すら自分の言葉なのかわからない。
ただ、それでも。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
圧倒的な哀しみの前に翠星石は叫ばざるを得なかった。
そして、翠星石の哀しみを表現するように紅の波動が溢れ出す。
いや、もはや波動などと言う言葉では生ぬるい。
光が塊となって翠星石以外の他者を焼き殺すように出現する。
太陽の石の暴走とも言える輝き。
「ムッ……!?」
その輝きに呼応するように、シャドームーンの月の石も光を放ち始めた。
――――二つのキングストーンが大地を照らす。
深紅と翠緑がストライプ状に螺旋を描き、大地に落とされた太陽と月の光が天を穿つ。
331 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:07:01.52 ID:oBYA0BEz
�C
332 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:08:19.14 ID:KetNSJBN
支援
333 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:09:21.73 ID:rX9dTWMa
『繁栄に至った人よ』
世紀王・シャドームーンでも。
魔人皇・ハザマイデオでも。
日本科学技術大学教授・上田次郎でも。
ローゼンメイデン第3ドール・翠星石でも。
少女兼巫女兼錬金術師見習い・柊つかさでも。
スーパー弁護士・北岡秀一でも。
無職のヴァンでも。
最速の男・ストレイト・クーガーでも。
誰のものでもない声が響き始めた。
『愚かなる道を往くな』
暖かな声が響く。
人の頭上に輝く太陽の如き声だった。
『幾万年の雌伏を続けたゴルゴムよ、暗黒の道へと進むのだ』
冷たい声が響く。
人の頭上に君臨する月の如き声だった。
ここでハザマイデオは螺旋の光が声に応えるように揺らぎを見せていることに気づいた。
「キングストーン……!」
シャドームーンがその声の正体にいち早く気づく。
マイティアイの視界すら遮り、世紀王の動きを制限する者。
そんなものは二つだけだ。
創世王か、あるいは、キングストーン。
そして、この異常な光の結界と二つのキングストーン保持者。
キングストーンの意思が働いていることを察するには余りある推理材料だ。
ならば、太陽の如き安らぎを与える声は太陽の石。
ならば、月の如き威圧をもたらす声は月の石。
『『賢者の道を往くのだ――――』』
天を別けた重なるはずのない二つが重なる。
334 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:09:34.49 ID:oBYA0BEz
�C
335 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:11:31.05 ID:rX9dTWMa
――――その時、不思議なことが起こった。
.
336 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:12:36.78 ID:KetNSJBN
支援
337 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:14:01.41 ID:KetNSJBN
支援
338 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:14:41.26 ID:8ZrCGklz
支援
339 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:15:32.84 ID:7AKJUCHD
340 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:15:44.47 ID:8ZrCGklz
�C
341 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:15:54.31 ID:KetNSJBN
支援
342 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:15:56.65 ID:rX9dTWMa
キングストーンの行ったことは二つだ。
Cの世界を利用して思考エレベーターへの干渉により、当事者の望む場所へと導くこと。
そして、その導きの妨げとなる首輪の分解。
光りに包まれた首輪は、まるで砂のように溶けていく。
今まで彼らの動きを制御していた首輪は奇跡の光の前に膝を屈したのだ。
八人が跳ぶ。
己の望む存在へと導かれるように、会場を移した。
343 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �U
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:16:35.30 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
「動いた」
V.V.が声を漏らす。
南光太郎の意思を継ぎ人に肩入れする太陽の石。
シャドームーンの覇道を推し進める月の石。
二つのキングストーンの光が枷<首輪>と壁<世界>を壊した。
本来ならば研究所で首輪を解除し、シャドームーンまたは翠星石の力によってnのフィールドを渡るべきであった。
しかし、キングストーンの衝突によって全ては吹き飛ばされた。
「……大丈夫、問題ない」
すでに彼らは首輪を解除する術も、第二会場へと来る術も持っていた。
翠星石に勝利し、薔薇水晶を殺し、いつかは第二会場へと渡ってきていただろう。
その過程が吹き飛んだだけだ。
なによりも、キングストーンがCの世界へとリンクして思考エレベーターによって参加者を運んでくるのならば。
それは参加者が無意識のうちの選択を強制的に拾ったことに他ならない。
「誰が来る……? 誰が、誰と会う……?」
キングストーンは絶対の存在だ。
思考エレベーターを利用した以上、当人の望む存在、場所へと導く。
ならば、誰がV.V.を求める。
誰が、誰が――――!
それとも、誰もV.V.を求めないのか?
それもまた、選択の一つ。
終わりが近づこうとしている。
そのことにV.V.は、笑みを深めた。
344 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:16:36.13 ID:OLISnMsD
支援
345 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:16:45.89 ID:LI2TDFtX
支援
346 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:17:00.38 ID:KetNSJBN
支援
347 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:17:13.93 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
『ごめんね、イデオ』
別に、謝って欲しかったわけなんかじゃない。
『あなた一人、寂しい思いをさせて……
でもね、あなたやお父さんがイヤになったから、家を出たわけじゃないのよ。
母さん、どうしても狭間の家にはいられなくなって……』
母さんの言葉の通り、まだ幼い僕は心が潰れそうなほどの寂しさを覚えていた。
母さんがそうだったように、僕も狭間の家が嫌いだった。
父が居ても、母の居ない狭間の家は嫌いだった。
母さんも妹のレイコも居ない今の狭間の家は、僕の心を殺していく家だった。
「もういいよ、母さん」
それでも、僕はなんでもないように装った。
僕はもう子供なんかじゃないから。
母さんが狭間の家で味わった心労だって理解している。
幼い妹と一緒に、これから心身ともに大人になっていく僕を養えないということも理解している。
だから、別に置いていったことを謝って欲しかったわけじゃない。
それでも母さんが僕のことを愛しているのなら、謝って欲しくなかったんだ。
ただ。
『ごめんね、イデオ』
これからはずっと一緒に居ると、そう言って欲しかっただけなんだ。
348 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:17:29.47 ID:gdRZEx+2
支援
349 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:17:43.13 ID:WO4gOCLo
支援
350 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:17:52.65 ID:OLISnMsD
支援
351 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:18:03.73 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
ハザマイデオが目を開けると、一人の少女が横たわっていた。
ケルベロス、上級悪魔に襲われんとしている少女。
「メギド」
ハザマは咄嗟に魔法を口にした。
慣れない正義感、しかし、考えるよりも早く身体が反応した。
すでに大きな傷を負っていたケルベロスは反応することもなく即死。
これこそが神の力だ。
悪魔すらひれ伏す、絶対の力だ。
それでも、ハザマには出来ないことがあまりにも大きすぎた。
――――例えば、今死のうとしている少女を救うことすら出来ない。
ハザマが無力感に苛まれている中で、少女は手を伸ばした。
自身を求めているのかと思ったが、違った。
少女は切り取られた、いや、食い千切られた右腕に左腕で触れる。
右腕は光に包まれ、消えていく。
そして、一人の少女が現れた。
「……レナ」
ハザマは、無表情を崩した。
崩さざるを得なかった。
もう会うこともないと思っていた人物。
会うことが出来ないと思っていた人物。
夢ならば、あまりにも悪趣味すぎる。
――――約束を見失いそうになっているハザマの前にレナが現れて答えを与えてくれるとでも言うのか。
『頑張って』
しかし、レナが口にした言葉は答えなどではなかった。
ただ、頑張れ、と。
自分を後押しするための言葉を口にした。
レナは自身を信じていてくれている。
それが有難く、同時に何よりも重かった。
「頑張れ……か」
ハザマはポツリと言葉を漏らした。
そこに、威厳など欠片もない。
剥き出しのハザマイデオ、あまりにも未熟な子供がただ立っている。
レナが古手梨花の死と同時に消えていく。
白昼夢のような出来事だった。
「僕は、なにを頑張ればいいんだ……レナ」
光を捕まえるように手を伸ばす。
もはや一人称を『僕』に戻したことに、ハザマ自身が気づいていない。
しかし、光はハザマの手を擦り落ちていく。
ハザマのもとには何も残らない。
352 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:18:06.26 ID:KetNSJBN
支援
353 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:18:38.82 ID:rX9dTWMa
「教えてくれよ……」
ハザマは膝から崩れ落ちる。
北岡は自分を頼っているといってくれた。
上田は自分の背中から離れないでいてくれた。
レナは自分を頑張れと励ましてくれた。
――――それが、どうしようもなく重い。
ハザマの心では、耐えることが出来ない。
もしも、自分の選択が失敗だったら。
その時に死ぬのは、自分だけじゃない。
ゆっくりと両腕を地面へと落とし、何かに従属するように頭を下ろす。
涙を堪えるために目を押さえ、それでも震える声でハザマは呟いた。
「僕と、一緒に居てくれよ……レナ……蒼嶋……」
――――神の力を手に入れた少年は、どうしようもないほどに人間だった。
【二日目/早朝/???】
【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世、ベレッタM92F(7/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
鉈@ひぐらしのなく頃に、琥珀湯×2
[状態]:人間形態、魔力消費(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:レナ……蒼嶋……
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
全参加者の詳細プロフィール
全参加者のこれまでの動向。
現時点での死者の一覧。
各参加者の世界観区分。
nのフィールドの詳細及び危険性。
「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。
354 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:18:46.63 ID:LI2TDFtX
支援
355 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:18:58.02 ID:7AKJUCHD
356 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:19:06.24 ID:KetNSJBN
支援
357 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:19:12.98 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
どうして、こうなったのだろうか。
私は全てが欲しかったわけじゃない。
ただ、好きな人達と一緒に居たかっただけだったのに。
父と、姉妹と、貴方と。
ただ、一緒に居たかっただけなのに。
今の私は、ひとりぼっちだ。
月の怪物の背後にすら人が居るのに、私の背中には誰もいない。
私の前にだって、もう誰も居ない。
――――寄り添ってくれる姉妹も、もういない。
あんなに嫌だったアリス・ゲームの勝者に、私は近づいてしまった。
358 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:19:32.31 ID:LI2TDFtX
支援
359 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:19:45.39 ID:8ZrCGklz
支援
360 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:19:45.99 ID:rX9dTWMa
――――大きな背中を見せてくれる彼の姿は、もうない。
過ごした想い出は数えるほどしかないのに、後悔は数え切れないほどに浮かんでくる。
もっと早く、お礼を言いたかった。
いつまでも冷たく当たったことを、謝りたかった。
本当は――――――――
『守るよ。劉鳳さんの代わりとかじゃなくて……俺が守りたいから守るんだ』
――――本当は、私だって貴方を守りたかった。
なのに。
貴方の優しさも。
貴方との想い出も。
なによりも、貴方自身を。
全部、私が壊したんだ。
361 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:19:51.13 ID:OLISnMsD
支援
362 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:20:22.24 ID:KetNSJBN
支援
363 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:20:33.42 ID:WO4gOCLo
支援
364 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:20:34.87 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
「ウッ……アッ、アアアア……」
翠星石の瞳から涙から零れた。
鏡の奥には、蒼星石が居る。
髪の長い蒼星石が、そこに居る。
翠星石は鏡へと手を伸ばした。
しかし、鏡は翠星石を拒絶するように蒼星石と手を触れ合うだけで留める。
「ア……アア……」
喉から漏れる言葉は言葉でもない哀しみの音。
孤独が鳴らす、罪の音。
鏡の中に居る蒼星石は、翠星石自身。
双子であるがゆえに、常に翠星石を咎める存在。
蒼星石の身体は、血に濡れている。
翠星石が犯した罪に、蒼星石まで染まっている。
胸が痛む。
罪の痛みと、身を焼く太陽の痛み。
太陽に近づきすぎたイカロスが翼を焼かれたように。
翠星石もまたキングストーンの巨大な力の負荷に襲われていた。
それでも、翠星石は殺し合いに乗る。
罪にまみれた翠星石が罪を無くすには、奇跡に縋るしかない。
愛をもう一度見るには、奇跡に頼る他ないのだから。
「ア、アアアッ………!」
言葉も無く、翠星石はただ泣き続けた。
【二日目/朝/???】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、庭師の鋏@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]首輪解除済み、全身に火傷(回復中)、全身にダメージ、精神的ダメージ(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いに優勝する。
1:銀色オバケ(シャドームーン)を殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
※キングストーンを取り込んだことで、能力が上がっています。
またキングストーンによる精神への悪影響が見られ、やがて暴走へ繋がる危険性があります。
※nのフィールドに入る能力を取り戻しました。
365 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:20:55.40 ID:KetNSJBN
支援
366 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:20:56.27 ID:LI2TDFtX
支援
367 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:21:25.47 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
どうしてこうなったんだろう。
私は普通に生きていたはずなのに。
お姉ちゃんは死んで。
こなちゃんも死んで。
ゆきちゃんも死んで。
みなみちゃんも死んで。
ゆたかちゃんも死んで。
ルルーシュ君も死んで。
五エ門さんも死んで。
アイゼルさんも死んで。
ジェレミアさんも死んで。
私は、生きている。
なんで、私だけ生きているんだろう。
私なんかが、生きてるんだろう。
チラッと横を見るだけで。
――――血に濡れた道を歩いている私なんかが。
368 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:21:26.25 ID:8ZrCGklz
�C
369 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:21:27.45 ID:OLISnMsD
支援
370 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:21:37.16 ID:LI2TDFtX
支援
371 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:21:57.76 ID:KetNSJBN
支援
372 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:22:01.42 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
ジェレミアの死は、つかさの精神を蝕んでいた。
多くの人が死に、それなのに自分は生きている。
二人の人間を殺した自分が生きてしまっている。
どこか納得出来ない現実だった。
つかさが生きていること自体が問題なのではないかと、勘違いしてしまうような心持ちになっている。
そんなつかさの脳にV.V.の声が思い出される。
『もう一度会いたい人はいない?』
居ないわけがない。
『理想の世界が欲しくはない?』
欲しくないわけがない。
『短すぎる人生に未練はない?』
ないわけがない。
『本当に、それで後悔はないの?』
それでも、後悔することなんてつかさには許されない。
――――感謝、している。
こんな自分を赦してくれた人を。
――――私は……貴公らと出会えた事を、誇りに思う。
後悔することで、彼の騎士の誇りを穢してはいけない。
それでも、つかさの身体は限界だった。
精神が肉体に及ぼす効果は確かに存在する。
心が限界を迎えている以上、無理を推した身体を奮い立たせるものはもうない。
つかさは、ついにそこに座り込んだ。
一人だけだったから、という理由も強いだろう。
373 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:22:31.16 ID:OLISnMsD
支援
374 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:22:44.77 ID:KetNSJBN
支援
375 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:22:51.17 ID:rX9dTWMa
「つかさちゃん……」
そこに現れたのは北岡秀一だった。
北岡が求めたものは、つかさの姿。
心身ともに疲弊しきったつかさのことが心配だった。
「北岡さん……」
「ッ……」
その目を見て確信する、つかさは危うい状態であることを。
北岡がどう声をかけるべきか、その言葉を探っていると先につかさが話し始めた。
「お姉ちゃん……弁護士さんになりたかったんです」
「俺と一緒か」
「私は全然考えてないのに……そんな立派な夢なんてないのに……!
お姉ちゃんの代わりもできないのに……!」
「……そんなこと言うなよ、つかさちゃん」
北岡が、ついに嘆きの声を出す。
それ以上は聞けなかった。
つかさが自分を否定する言葉を聞くことが出来なかった。
五エ門やつかさとの交流で、いわゆる『お人好し』に流されかけていた北岡には耐えられなかった。
「もっと自分のために生きなよ……生きてくれよ。
そうじゃないと、俺がバカみたいじゃないか」
そして、北岡は懸命に言葉を探す。
沈黙をすればつかさは自己嫌悪の言葉を続けるだろう。
それまでに自身の気持ちを言葉にしなければいけない。
「俺も弁護士だけどさ、立派な目的があったわけじゃないんだよ。
いや、つかさちゃんのお姉ちゃんもそうだってわけじゃないよ?
だって、俺とつかさちゃんのお姉ちゃんは別の人なんだから。
それと同じで、つかさちゃんも誰とも一緒じゃないんだよ」
弁護士のくせに人を慰める言葉も出てこない。
人を傷つける言葉なら簡単に出てくるというのに。
北岡は自嘲の笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「だからさ、自分を捨てることだけはやめてくれよ……
五エ門と一緒に居たつかさちゃんまで居なくなったら、影響されちまった俺が馬鹿みたいだ」
つかさはその言葉に、少しだけ顔を上げた。
それでも顔は晴れない。
北岡は苦心しながら、頼み込むように言葉を続けた。
「……頼むよ、つかさちゃん」
残酷な言葉であることはわかっている。
これがつかさの心にまた重荷を載せることは、わかっているのだ。
それでも、つかさをつかさで居させるためには。
「俺を馬鹿にしないでくれ」
こんな言葉しか、出てくれなかった。
376 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:23:22.87 ID:KetNSJBN
支援
377 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:23:32.84 ID:rX9dTWMa
【二日目/朝/???】
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、ブラフマーストラ@真・女神転生if…
[支給品]支給品一式×4(水のみ3つ、鉛筆一本と食糧の一部を消費)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、
食材@現実(一部使用)、パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた、メタルゲラスの角と爪、
咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、ジェレミアの確認済み支給品(0〜1)、ジェレミアの仮面
[状態]精神的疲労(極大)、ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:錬金術でみんなに協力したい。
2:仲間と合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
五ェ門の確認済み支給品(0〜1)(刀剣類では無い)、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
贄殿遮那@灼眼のシャナ
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:つかさに対する罪悪感。
2:仲間と合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
378 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:24:42.54 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
最初は純粋なものでした。
ただ、会いたいという気持ち。
もう二度と会えない人に、死んでしまった人に会うために、奇跡を求めただけでした。
きっと、その考えだけならばなんの罪でもなかったんでしょう。
人間が奇跡を祈るなんて日常の出来事なんですから。
僕もいつかは奇跡を祈ることを想い出に変えて、ただ生きていたでしょう。
だから、本当の罪は、本当の奇跡を見てしまったこと。
そして、奇跡に縋ってしまったこと。
そのために、ひどいことをしてしまったこと。
純粋な願いだろうと、それが現実に触れた途端、欲望に変わってしまう。
僕の願いは他人を踏み台にしてでも叶えるものじゃなかった。
僕は、他の世界で見たんです。
『別の僕』と笑いあう、『ノネットさん』の姿を。
そこに僕が居るのに、そこには僕が居ない。
ならどうする?
またギアスを利用して別の僕を殺す?
また、他人を踏み台にする?
僕は逃げ出すことしか出来ませんでした。
そして、僕は僕が集めた人たちが殺し合いをし出したことを知りました。
死んでしまうことが贖罪じゃないとはわかっています。
それでも、僕はもう生きられません。
ただ、これだけは何かに残したいんです。
僕はただ。
――――ノネットさんのことが好きだったんです。
379 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:25:15.43 ID:KetNSJBN
支援
380 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:25:27.77 ID:7AKJUCHD
381 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:25:28.64 ID:OLISnMsD
支援
382 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:25:37.47 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
上田次郎は銃を握りしめ、こめかみから血を流している死体の傍で気絶していた。
上田が求めたものは安全な場所。
つまり、誰もが近寄らない場所である。
V.V.が特別に用意したギアス使いである銀髪の少年の部屋は隔離されている。
志々雄はもちろん、ゾンビ兵も立ち寄れない半ば牢屋じみた部屋だ。
突然、光が溢れだし、気づけば目の前には死体がひとつ。
上田の聡明な頭脳はこの現実に認識機能が溺れだし、気絶した。
しかし、上田は天才である。
何度も何度も気絶し続けているわけではない。
すぐさま、時間にして十分ほどで気絶から目を覚ました。
これは驚くべき速度だ。
通常の人間ならば恐らくそのままたっぷり六時間は気絶し続けるであろう。
少なくとも、上田次郎はそう主張するはずだ。
「君も奇跡にすがってしまった人間か」
奇跡の末路を前にして上田は言葉を漏らす。
思えば、こんな人物は大勢居た。
偽りの奇跡に目を眩ませて、真実を見失う人間。
山田とともに偽りの奇跡を暴露するたびに、このような人間の姿を見てきた。
――――こんなはずじゃない。
――――先生がイカサマなわけがない。
――――イカサマなら私たちは救われないのか。
馬鹿げている。
そもそもがイカサマなのだ、真実ではないのだ。
救いは真実の中にしかない。
イカサマで救われるのならば、それは救いなのではない。
「……君の無念はわからないが」
上田は銀髪の少年をベットに寝かせ、まぶたを閉じさせる。
そして傷跡を隠すように顔に布をかけ、手を合わせた。
「ゆっくりと眠るんだな……君は、よくやったさ。
その結果がどうあれ、愛情は大事なものさ」
【ライ@コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 死亡】
383 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:26:28.65 ID:rX9dTWMa
【二日目/朝/???】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0〜2)、
ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:誰かと合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
384 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:26:43.38 ID:KetNSJBN
支援
385 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:26:56.42 ID:8ZrCGklz
支援
386 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:27:18.43 ID:LI2TDFtX
支援
387 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:27:36.65 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
これが俺の速さだ、俺の文化だ。
誰も止めるな、俺は俺の速さだけを走る。
誰といても、俺は俺なんだから。
388 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:28:27.74 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
――――これはストレイト・クーガーが意識を失っていた時のこと。
「……どうやら、生きているようだな」
ストレイト・クーガーの視界に広がった世界は、異様な世界だった。
血管を思わせる脈が上下左右の壁に関係なく這り巡っている。
その中に、一つの存在があった。
それは人の形をしていなかった。
単純とも複雑とも取れる、抽象画のようなフォルム。
立体された絵画のような異形の存在が、そこに立っていた。
「田村玲子だ」
異形の存在、田村玲子は短く答える。
文化人を自称するクーガーはその意味を察する。
田村玲子。
後藤という強敵を倒した際に居着いた恩人であり、同居人だ。
本来ならば後藤との戦闘でゴールを迎えていたはずのクーガー。
そのボロボロであるはずのクーガーが未だに最速で走り続けられている要因の一つである。
「ほう……お前の目では、後藤はそう見えていたのか」
「はい?……っと、こいつは、また……」
後藤の姿を連想した瞬間、田村玲子と名乗った怪物が声を弾ませた。
そして、クーガーが田村玲子の視線を追うと、そこに後藤が立っていた。
ただし、クーガーとの激闘を繰り広げた際の獣じみた殺意や鋭さはない。
ただ、そこに立っているだけといった様子の後藤が居た。
「お前が後藤を考えれば、そこに後藤が現れる。そういうところだ、剥き出しの世界なんだよ。
私たちに見えているものは同じだが、違うのだ。私には後藤はこう見えていた」
田村玲子がそういうと、突然奇異な存在が現れた。
それは形容しがたい形状をした、正真正銘の化け物。
後藤もまた怪物ではあったが、しかし、人型をしていた。
怪人と呼べる範囲であった。
しかし、田村玲子が見せた『後藤』はその範囲を大きくはみ出していた。
形容しがたい化け物が、今クーガーの目の前にいるのだ。
「私たちは点なのだな……実に面白い。
点と点が触れ合っている……しかし、私たちの世界が触れ合うことはない」
「それ自体が奇跡、ってわけですか?」
茶化すように呟いたクーガーに、田村玲子という異形の怪物は大まじめに頷いた。
田村玲子にとって、目に映るものは全て真実なのだ。
世界という深淵を覗き込むための、重要な証拠なのだ。
「それに……お前の姿も異形と言えば異形だぞ」
「はい?」
「傷つきすぎている……私が補修しなければ走れないほどにな」
クーガーの身体はボロボロだ。
命の炎を原動力に走り続けているといっても過言ではないほどに。
389 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:29:10.71 ID:KetNSJBN
支援
390 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:29:11.92 ID:rX9dTWMa
「そこまで傷ついて、お前は何を求める。広い世界だが、急ぎすぎる理由もあるまい」
田村玲子にとって、それが疑問だった。
クーガーが命を縮めてまで速さを求める理由がわからない。
「文化的に生きましょうよ。喋れる以上は、考えられるうちは、獣のように生きたくはないですからね。
その点、速さは良い。速ければ速いほどいろいろなことが出来る。
速くなければ見れないものがあるなら、命もその通行料ってもんですよ」
「一理あるな」
田村玲子は頷いた。
何かをしなければ見れないものもある。
ついにはわからなかったが、自らが産んだ人間の子供に対して不思議な印象を持っていたことを思い出す。
あれも子供を産まなければ感じなかった印象だ。
「炎髪灼眼の少女を知っているか?」
そろそろクーガーが気絶から目覚める時間であることを田村玲子は感じ取る。
そこで田村玲子は、静かに考えていたことを口にすることにした。
「ああ、シャアさんですか」
「その少女の姿を思い描いてくれ」
シャナであるという訂正を行わずに、田村玲子もまたシャナを連想する。
そして、現れる二つの存在。
姿形の異なる全く別の二人。
しかし、それは紛れもなくシャナという存在だった。
「炎髪灼眼の少女を連想した姿が、私とお前では違うかもしれない。
しかし、特徴をあげようと思えば、私とお前が口にする言葉は同じものになるんだ」
田村玲子の言う灼眼と、クーガーの指す灼眼は絶対的に違う。
しかし、それは田村玲子にとっての『灼眼』とクーガーにとっての『灼眼』が異なるだけのこと。
シャナの瞳は灼眼である、という認識は共通のものなのだ。
「私たちは違うものを見ているが、こうして触れ合うことが出来る。
違う場所にいるのに、我々は共に居なければ生きていけないのだ」
田村玲子は声を弾ませた。
世界が見えた意味を、喜んでいる。
「私も失くしたものは多い……しかし、それでもお前の速さに惹かれている」
「これはこれは。熱烈なアプローチですねぇ」
「その速さの先に、人の意味がある……お前たちの能力に世界がある」
クーガーの軽口を受け流し、田村玲子は謎への興味を口にした。
そして、クーガーへと向き直る。
「だから、さっさと走ってこい。私はお前が走らねばその先が見えんのだ。
早く、私にお前の文化というものを見せてくれ」
突き放すような声。
しかし、期待に満ちた声だった。
クーガーは笑みを深くする。
391 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:29:30.47 ID:OLISnMsD
支援
392 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:29:35.18 ID:8ZrCGklz
�C
393 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:29:54.17 ID:rX9dTWMa
「遅くなれってならともかく、速くしろっていうのなら話は単純だ」
現状の問題はなんだ?
翠星石への対処。
V.V.の撃破。
シャドームーンとの決着。
全て、問題ない。
速さで取り落としたものは多い。
それでも、速さを捨てる理由にはならない。
――――速さの先に全てがある。
ストレイト・クーガーの、唯一で絶対の信念だ。
「一緒に探しましょうか、文化の真髄を」
【二日目/朝/???】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:基本支給品一式、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1
[状態]:出血多量、気絶中
[思考・行動]
0:速さを証明する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。
それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。
※胸の傷が塞がりました。
394 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:30:24.76 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
なぜ、人は闇を恐れるのか。
『思い出せ』
なぜ、一人の例外もなく闇を克服できないのか。
『思い出せ』
なぜ?
『思い出せ』
忘れてしまったのか、人が闇を恐れる真の理由を。
『思い出せ』
五万年の時を経て、なお、Cの世界に刻まれた恐怖の根源を。
『思い出せ』
太古の時代。
『思い出せ』
人の天に太陽など、月など、光り輝くものなどありはしなかった。
『思い出せ』
天に輝くは黒き太陽、天に煌くは影の月。
『思い出せ』
太陽に照らさせるたび胸をなでおろせ、月を見るたびに思い出せ。
『思い出せ』
人は、闇に支配されていたことを。
『思い出せ』
奴等はゴルゴム。
――――暗黒の世界を支配する者。
395 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:32:16.86 ID:8ZrCGklz
支援
396 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:32:21.79 ID:KetNSJBN
支援
397 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:32:25.05 ID:7AKJUCHD
398 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:33:12.04 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
――――鷹野三四が持ちだした、『殺し合いを破綻させるもの』とはなんなのか。
まず、大事なことは殺し合いそのものを破壊する支給品であり、かつV.V.が誰にも渡すことを是としないもの。
カシャ、カシャ、カシャ
『強大な武器』ではない。
神殺しの炎神そのものであるヒノカグツチやゴルゴムの神剣であるサタンサーベルを支給品しているのだから。
この二つを支給した以上、単純な武器で目くじらを立てて慌てる必要はないのだ。
カシャ、カシャ、カシャ
『ギアスを解除できる機械』ではない。
それを否定するのならばジェレミア・ゴットバルトを参加者として迎えている事実そのものが矛盾となる。
つかさやスザクにギアスキャンセラーを発動させた瞬間にも動かなかったことから、ギアスを解除されることも許容範囲である。
カシャ、カシャ、カシャ
『死人を蘇らせる宝具』ではない。
殺し合いそのものは破綻する。
だが、蘇るだけでは殺し合いからの脱出には結びつかない。
カシャ、カシャ、カシャ
『世界を渡る乗り物』ではない。
翠星石の例から、ギアスによって世界移動への忌避を植え付けられているが、ギアスは解除できる。
移動する手段はローゼンメイデンが持ち得ている以上、そのこと自体を慌てる必要はない。
カシャ、カシャ、カシャ
その大きさ自体が武器となる『巨大ロボット』ではない。
V.V.は殺し合いの加速を求めてランスロットを会場に仕込んでいた以上はV.V.が嫌うものではない。
また、鷹野が追い詰められても使用しなかったことも理由の一つに挙げられる。
カシャ、カシャ、カシャ
ならば、なんだ?
ライダーデッキでも、サタンサーベルでも、贄殿遮那でも、ヒノカグツチでも、ランスロットでも、煉獄でもない。
それでいて殺し合いを破壊してしまう、どうしようもない支給品――いや、『モノ』とは。
カシャ、カシャ、カシャ
すなわち『爆弾』であり、『動力』である。
他者はもちろん使用者をも殺す、一人の例外もなく全員を殺してしまうどうしようもない『爆弾』だ。
誰にも介入できない隔絶された異世界という、重要人物を拉致しても介入されない世界を成り立たす『動力』だ。
カシャ、カシャ、カシャ
――――その爆弾/動力は、名を【創世王】と言う。
399 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:33:56.82 ID:rX9dTWMa
「惨めなものだな、創世王よ」
死刑執行人じみた緊張感を漂わせながら、シャドームーンは創世王へと歩み寄る。
『人型』を持たず、『心臓』そのものの形を持った創世王。
シャドームーンが望み、キングストーンが導いた存在は創世王だ。
始まりから終わりまで、シャドームーンは創世王が黒幕であると信じていた。
もっとも、その予想は外れていたが。
しかしそれでも、この場には居た。
キングストーンはCの世界を利用した思考エレベーターによって、確かにシャドームーンを創世王の前へと導いた。
『シャドームーン……』
創世王は力なくシャドームーンの声に応えた。
ダロム、バラオム、ビシュム。
三人の大怪人は仮面ライダーBLACKによって撃破され、その仮面ライダーBLACKを倒すためにシャドームーンへと力を分け与えた。
もはや仮面ライダーBLACKは世紀王にあらず、あまりにも巨大なゴルゴム帝国の壁となった。
その仮面ライダーBLACK撃破のために、創世王は力を使い果たしたのだ。
時を司る【神霊】ズルワーンにも、審判と断罪の権能を司る【天罰神】アラストールにも劣りはしない。
創世王はまさしく、創世の王を名乗るに値する力を持ち得ていた。
しかし、現在の創世王は力の残りカスしか存在しない。
世紀王の決闘としては長すぎるブラックサンとシャドームーンの戦い。
すでに『地球を破壊する程度』の力しか残されていなかった創世王。
「……少々、予想とは違ったな。無様な姿だ、創世王よ」
『今はその口ぶりも許そう……ラプラスの魔に、あの憎き白兎に良いように扱われたことも事実ではある』
創世王はシャドームーンの口ぶりを流す。
本来ならばシャドームーンへと雷鎚を落とし、その非礼を罰するはずだというのに。
それが出来ないことが創世王の力が大量に無くなっていることの証明に他ならなかった。
『……シャドームーンよ。V.V.を殺せ』
「無論、そのつもりだ」
『ただでは殺せぬ、奴は不死の擬似コードを所有している。
しかし、私がこの空間へと力の供給を断った瞬間、あの白兎の自在法も解ける。
すでにCの世界との『接続者』ではなくなったV.V.は白兎の自在法によって不死を得ているだけだ。
私がこの場から離れた瞬間、奴は惰弱な餓鬼に戻るのだ』
「ならば来い、創世王よ。キングストーンは揃っていないが……それでも私は次期創世王だ。
貴様を受け入れることは出来る」
V.V.は創世王の莫大な、しかし、全盛期から比べると余りにも微々たる力によって不死を得ている。
シャルル・ジ・ブリタニアによってコードを奪われたことで、V.V.はすでにCの世界にアクセスすることが出来ないのだ。
死の瞬間にラプラスの魔に救われたV.V.。
絶望の間際に、様々な世界を垣間見たV.V.。
かの者の不死も、創世王が自由を得れば消える。
さしものラプラスの魔もコードを与えることはしなかった。
代わりに、物理攻撃に関するものへの不死性を持った擬似的なコードを与えたのだ。
400 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:34:24.50 ID:KetNSJBN
支援
401 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:34:36.66 ID:rX9dTWMa
『良かろう、シャドームーンよ。我がゴルゴムに牙を向き続けたブラックサンもすでに死んだ。
V.V.に制裁を与え、五万年の時を超えてゴルゴム帝国を再建するのだ。
人間どもが忘れた、だが、Cの世界に確かに刻まれた恐怖を思いださせるのだ』
「……ブラックサン、か」
『そうだ、私が白兎のもとから離れなかった理由の一つ。
奴らの唯一の功績は、あの仇敵を無様にも死なせたことよ』
カッカッカ、と低い声を震わせて笑う。
仮面ライダーBLACKの死亡。
だが、その瞬間。
シャドームーンの気迫が変わった。
創世王はそれに気づかない。
それほどまでに仮面ライダーBLACKの死を喜んでいるのだ。
「……来い、創世王よ」
シャドームーンは右腕を伸ばし、創世王へと触れた。
その瞬間、キングストーンから光が溢れだし、創世王が光の粒に分解される。
そして、シャドームーンへと纏わりつき始める。
『ク、ククっクくくッくクク……!』
創世王が不気味な笑い声を漏らす。
シャドームーンは沈黙。
光を強さを増し、シャドームーンの肉体を高めていく。
世紀の王から、創世の王への下準備を行なっていくのだ。
その中で、創世王の笑いだけが木霊する。
『ク、ッククカカカ!!』
笑いの正体は、シャドームーンの肉体を強奪する笑い。
創世王の正体とは、創世王に他ならない。
『貰ったぞ、シャドームーン、いや、秋月信彦!
不十分な肉体だが、死よりはマシよ! その意識を闇に沈めるがいい!』
世紀王が創世王になるのではなく、創世王が世紀王の肉体になるのだ。
当然のことだ。
人間が、ゴルゴムの王になれるわけがない。
所詮、人間など単なる生贄に過ぎない。
402 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:35:05.86 ID:8ZrCGklz
支援
403 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:36:55.43 ID:KetNSJBN
支援
404 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:37:01.07 ID:dZarIB7A
支援
405 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:37:08.01 ID:LI2TDFtX
支援
406 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:37:44.50 ID:8ZrCGklz
�C
407 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:37:44.59 ID:rX9dTWMa
「――――創世王よ」
しかし、シャドームーンは悠然とした声を発する。
『……なんだ? なぜ、貴様がまだ生きている?』
「私はな、構わなかったんだ」
シャドームーンの声に呼応するように、シャドーチャージャーから発せられる光が強さを増す。
創世王の疑問を塗り潰すように、いや、『創世王の意思を塗り潰す』ように。
創世王ではない、シャドームーン自身の力が増していく。
『これは……キングストーン!? 私を、拒絶しているのか……!?』
全てが予想外。
所詮は器に過ぎない世紀王の意思を、塗り潰すことが出来ない。
「私は、それでも良いと思った」
シャドームーンは言葉を漏らす。
今までの威厳が、少し曇った声だった。
三神官も、この殺し合いでシャドームーンの恐怖に触れた人間も、シャドームーンの声だと認められないような声だった。
「ブラックサンに勝利し、私が創世王としての器であることを確かに証明できたのならば――――
いや、シャドームーンがブラックサンよりも上であることをこの私自身が確信を持って頷けるようになれば。
私は、その後のことなどどうでも良かった。
貴様に意思を乗っ取られようとも、構わなかった」
『ぐぬ……!?』
創世王が呻き声を上げた。
本来ならばシャドームーンの意思は塗り潰され、創世王は新たな肉体を手に入れる。
そもそも、世紀王は創世王のための器なのだ。
ゴルゴムという暗黒帝国が人間などという家畜を王に据えるわけがないのだから。
「だが、もはや叶わぬ夢……貴様の愚かな考えが壊した泡沫の夢……」
『貴様……まさか……!?』
「貴様は殺す。世紀王の戦いを……私とブラックサンを愚弄した貴様だけは殺す」
『馬鹿な! キングストーンが、ゴルゴムの輝石が人間を選ぶわけが!』
キングストーンは創世王を無視するように翠緑の光を発し続ける。
新たなる創世王の誕生を祝福するように。
「キングストーンが私を選んだのではない。私がキングストーンを選び、貴様という意思を排除させているのだ」
――――真の主を称えるように!
408 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:37:51.14 ID:OLISnMsD
支援
409 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:38:16.68 ID:KetNSJBN
支援
410 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:38:20.09 ID:rX9dTWMa
「死ね、創世王。貴様に与える慈悲は、新たなる創世王の血肉となることだけだ」
『フ……フフ……フハハハ!』
創世王は、先ほどとは違った色を持った笑いを上げた。
それは敗者の笑いに他ならなかった。
『それもまた良し……新たなる強さの象徴よ!
良いか、シャドームーンよ! 私が、ゴルゴムが敷いたレールも! これで最後だ!』
これこそが創世の王とまで呼ばれた者が始めて味わった、敗北の快感だった。
敗者だけが味わえる、従属の真の意味を理解した瞬間の快感だ。
『貴様が創る、貴様のゴルゴム帝国を!』
その帝国は地獄の別名だ。
かつて築き上げた自身の地獄を上回る、真の地獄。
その姿を、創世王は幻視した。
『地獄の底から眺めているぞ、シャドームーン!』
創世王の声が消え、キングストーンが放つ翠緑の光も消えていく。
シャドームーンは心身から溢れ出る力を感じ取っていた。
生まれ変わる力、唯一無二の力。
もはや、シャドームーンは並び立つものなき存在となってしまった。
シャドームーンは力から逃げるように天を仰いだ。
絶対の王となったのだ。
「……光太郎」
しかし、無人の広間に響いた声は聴衆を震わせる王の声ではなかった。
どこか暖かな温もりのある、寂しげな人の声だった。
この声こそがシャドームーンではなく、秋月信彦が発した声なのだ。
だが、それは秋月信彦の意思が蘇ったことを意味するわけではない。
むしろ、その逆だ。
ここではない未来には、シャドームーンが手に入れていたかもしれない心が存在する。
秘密結社ゴルゴムという組織は潰えた未来の世界の話だ。
シャドームーンがブラックサンとの、仮面ライダーとの戦いだけを求めた未来ならば。
ゴルゴムの世紀王であるシャドームーンではなく、南光太郎の強敵であるシャドームーンであったら。
あるいは、取り戻していたかもしれない人の心があった。
闇に鎖されていた、心の奥底にしぶとくこびりついていた秋月信彦としての心。
ゴルゴムの世紀王シャドームーンという存在に何ら影響を与えない微々たるものにすぎない。
そんなちっぽけな心でも、いつかの未来に咲いていたはずの人の心だ。
――――その心の芽が、吐き出した言葉とともに太陽の消えた空間へと溶けていく。
『シャドームーン』と『南光太郎』の因縁が消えてしまった瞬間、『秋月信彦』もまた死んでしまったのだ。
【創世王@仮面ライダーBLACK 消滅】
【秋月信彦@仮面ライダーBLACK 消滅】
411 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:38:31.76 ID:LI2TDFtX
支援
412 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:38:59.57 ID:rX9dTWMa
【二日目/朝/???】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:健康
[思考・行動]
0:V.V.を殺す。
1:V.V.を殺した後、他の参加者を皆殺しにする。
2:狭間との契約は守る。
3:翠星石を殺してキングストーン(太陽の石)を回収する。
【備考】
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※創世王を取り込みました、どれほどの変化があったかは後続の方に任せます。
※本編50話途中からの参戦です。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※nのフィールドの入り口を開ける能力を得ました。
※狭間偉出夫とシャドームーンは契約を交わしました。内容は以下の通りです。
シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする)
狭間はシャドームーンの首輪を解除する。
狭間はシャドームーンが首輪を解除するまで護衛する。
シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。(シャドームーンは会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は他の参加者と足並みを揃える)
主催者(の黒幕)の殺害はシャドームーンに一任する。
主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。
主催者を倒すまでにシャドームーンが誰かに殺害された場合、狭間は必ずその報復を行う。
413 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:39:06.78 ID:KetNSJBN
支援
414 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:39:10.42 ID:7AKJUCHD
415 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:39:28.70 ID:WO4gOCLo
支援
416 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:39:30.59 ID:dZarIB7A
支援
417 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:39:54.71 ID:LI2TDFtX
支援
418 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:40:03.76 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
忘れることなど出来ない。
エレナの/巴の/光太郎の、救えなかったものの存在を。
忘れることなど出来ない。
カギ爪の/抜刀斎の/ゴルゴムの、全てを奪った非情の仇を。
忘れることなど出来ない。
――――なにも変えられなかった、俺達の無力を。
419 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:40:30.80 ID:KetNSJBN
支援
420 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:40:38.64 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
「君が来たんだ」
V.V.は目の前に現れた存在に笑みを深める。
そして、自身の手札を思い出す。
重要な切り札は擬似コードとでも呼ぶべきもの。
それも、今はない。
奪われたコードはなく、与えられた擬似コードもなく。
ただのV.V.として敵と戦う必要があった。
「やあ、夜明けのヴァン」
そう、敵――――ヴァンと戦わなければいけないのだ。
「今は無職のヴァンだ」
ヴァンはコツコツと地面を叩きながらV.V.へと歩み寄る。
ヴァンにとっても、V.V.にとっても理想の相手だった。
ヴァンにとって目の前の敵は殺せば馬鹿な宴は終わり、C.C.との関係性にもケリがつく相手だ。
V.V.にとってヴァンはC.C.と最も繋がりの深い相手であり、過去に囚われて復讐に走り続ける男だ。
それ以上の意味は無い。
キングストーンが奇跡を起こしても、ヴァンには関係がない。
ただ目の前に敵が居る。
目の前の敵を殺す。
ヴァンの世界はいつだって単純であり、それゆえに苦しみが付き纏っていた。
単純さを殺す複雑さに翻弄され続けたのが、ヴァンの人生だからだ。
「テメエのせいで仕事に失敗しちまってな」
それだけを言うと、ヴァンは蛮刀を構える。
ヴァンは初め、夜明けのヴァンだった。
そこでC.C.との護衛という仕事を得ることで自身が無職であることを確認し、無職のヴァンに転身。
その後、C.C.から契約を破棄されることで再び無職に戻り、そのC.C.と再契約を結ぶことなくC.C.は死亡した。
つまり、現在は無職のヴァンだ。
V.V.を殺し、C.C.との関係性を終わらせない限り、ヴァンが夜明けにありつくことはない。
「だからお前を殺すぜ」
無茶苦茶な理論だが、ヴァンはそれ以上に話すことはないと、お前を殺すと切っ先で訴えていた。
V.V.もまたこれ以上の会話は出来ないと判断すると、一つのカードデッキを構えた。
「変身」
紋章もない、単なるカードデッキ。
V.V.に、裸の王様に残された最後の鎧。
恐怖はない。
少年の時代は常に死と隣り合わせだった。
違うのは、隣には弟がもう居ないということだけだ。
421 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:40:43.68 ID:OLISnMsD
支援
422 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:41:17.68 ID:rX9dTWMa
「今なら、僕を殺せるよ。
もうラプラスは居ないし、自在式に力を供給する創世王も離れてしまったからね。
だから……これで、やっと君たちの本音を聞ける」
V.V.は仮面ライダーガイのブランク体へと変身する。
あまりにも弱い、ヴァンがナイトへと変身できれば圧倒されてしまうであろう状態。
しかし、V.V.は西洋剣を手に取ってヴァンへと向き合う。
「ねえ、ヴァン。君は死者の蘇生に興味はないかい?
未来よりも過去が欲しいとは思わないかい?」
「死んだ奴は、生き返らねえ」
ヴァンは弾けるようにV.V.へと斬りかかる。
V.V.はそれを受け止める。
強化されたはずの肉体は、ヴァンの剣撃を受け止めた。
鍔迫り合いのように顔と顔が近づき、V.V.の耳元にヴァンの怒声が響いた。
「死んで残るのは血だ、肉だ!
死んだ奴が笑うわけがねえ! 肉は……笑っちゃくれねえんだよ!」
ヴァンが剣を振るう。
V.V.は顔を歪めながら、しかし、唇を歪ませて武器を構えた。
「それは君の杓子定規で計った理念だろう? 世界は死の奥にも理を持っているんだよ」
「うるせえ!」
「やり直せばいいじゃないか、全部。
今度はもっと上手く、エレナとの生活ももっと充実したものになるよ。
君次第では、全てが上手くいくんだ」
「黙れよ……! その口を開くんじゃねえ!」
ヴァンは構わずに蛮刀を振るい続ける。
ブランク体とは言え、ライダーへと変身したはずのV.V.を凌駕するパワーを持って振るい続ける。
「エレナは死んだ! 巴も死んだ! 光太郎は人間じゃなくなった!
手を伸ばしても届いちゃくれねえ! どれだけ思い出しても……戻りゃしねえ!」
ヴァンと撃ちあうごとに、V.V.は後退していく。
元々が戦闘に秀でていたわけではない。
皇族である以上、訓練を経験したことがないわけではない。
それでも改造人間であり生粋の戦闘者であるヴァンとは天と地ほどに腕前が離れている。
「俺の後悔を偽物だなんて言わせねえ……! 俺の、エレナへの愛を!」
それ以上に、ヴァンの気迫を凌駕するものが。
「テメエ如きが、否定すんじゃねえ!」
空っぽのV.V.には何一つなかった。
「わからないなぁ……!」
しかし、それでもV.V.は必死に言葉を繰り出す。
そこになにか答えがあると信じて。
自分の間違いを見つけることが出来るものがあると。
ヴァンの選択を見ることで、自分を見つけたかったのだ。
423 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:41:33.37 ID:KetNSJBN
支援
424 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:42:20.68 ID:rX9dTWMa
「だからって、なんで生き返りを否定するのさ。
元に戻ってやり直せばいいじゃないか」
「そいつは俺じゃねえ……!」
V.V.は西洋剣をがむしゃらに振るう。
ヴァンの技量には太刀打ち出来ずとも、時間を稼ぐことは出来る。
「こんな『俺』を愛してくれたエレナだ、そんな俺を俺が裏切るわけねえだろうが……!」
ヴァンの感情を徒に煽った結果か。
今まで以上の一撃がV.V.へと叩き込まれる。
西洋剣がポキリと根本から折れ、V.V.は武器を失う。
仮面越しに、テンガロンハットの奥のヴァンの瞳を見つめた。
炎が宿っている。
生きている証である、存在の炎を垣間見た。
「俺が! エレナを裏切るわきゃねえだろうがあああああああああああ!!」
裏切り。
その言葉に、V.V.の
死を目前にしてニューロンが加速する。
世界はスローモーションになり、思考は光を超える。
過る出来事は過去、最初に行った約束。
嘘のない世界、それだけを求めたこと。
兄弟が、兄弟のことだけを考えていた純粋な約束。
「……そうか」
V.V.は刃に切り裂かれる感触を覚えながら、言葉を漏らした。
仮面の奥で、頬が濡れた気がした。
初めはそうだった。
そうだ。
誰が悪いわけでもない。
V.V.自身が、一番大事な人を裏切った。
裏切ってはいけない人を裏切って、夢を捨てたんだ。
「そうだね、ヴァン」
ラグナレクの接続だとか、マリアンヌへの嫉妬だとか。
そんなわけのわからないものに気を取られる必要なんてなかった。
ヴァンは『奇跡』なんて信じられないものよりも、『エレナとの愛』を信じた。
――――V.V.も、シャルルと自身の兄弟の絆を信じればよかっただけだった。
「君は素敵な馬鹿だ」
仮面ライダーガイのブランク体は鎧の上から袈裟懸けに切り裂かれ。
長すぎた少年期は、死とともに終わりを迎えた。
425 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:42:29.33 ID:8ZrCGklz
�C
426 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:42:44.10 ID:dZarIB7A
支援
427 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:42:57.79 ID:rX9dTWMa
「……糞が」
ヴァンは悪態を突きながら、その場へと倒れこむ。
幾度もの激闘によってヴァンの身体は疲弊しきっている。
もはや、前へと進むことも出来ないほどだ。
しかし、それでもヴァンは前へと進む意思があった。
「……■■■■」
名前を漏らす。
恐らく、その名前もいつかは忘れてしまうだろう。
当然だ。
共に残したものなどなにもなく、夢の様な出来事で出会っただけの女なのだから。
忘れるのは明日か、一年後か、十年後か。
それでも義理は果たした。
決着はつけた。
いつか消えてしまうものでも、これ以上の責務はもうヴァンにはない。
ヴァンが過去に囚われ続けることはなく、いつか忘れてしまうまではC.C.とのことは想い出として補完され続ける。
夜明けのヴァンから無職のヴァンへと変わってしまっていても。
仕事は、全うした。
C.C.との出来事は、ちゃんと想い出に出来た。
「後は……アイツだな」
脳裏によぎるのは三人の顔。
雪代縁とはケリをつけた。
C.C.の背負った責任は代わりに果たした。
後は、記憶にこびりついた銀色の月との関係だけだ。
「さっさと終わらせるぜ、畜生」
それで、この夢は終わり。
また別の夢に戻るだけだ。
428 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:43:35.46 ID:KetNSJBN
支援
429 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:43:50.90 ID:rX9dTWMa
傷だらけの夢が、風に吹かれて転がっている。
欲望の嵐が小さな幸せを吹き飛ばす。
惑星・エンドレスイリュージョンはそんな星。
所詮、宇宙の吹きだまり。
――――所詮、吹き溜まりの命。
【V.V.@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】
【二日目/朝/???】
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[所持品]:支給品一式、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、昇天石×1@真・女神転生if…、
エアドロップ×1@ヴィオラートのアトリエ、調味料一式@ガン×ソード
[状態]:右目欠損、全身打撲、疲労(極大)、気絶中
[思考・行動]
0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。生き残る。
1:シャドームーンを殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
※薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(先端部欠損)はF−10沿岸部に放置されています。
430 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:43:55.16 ID:OLISnMsD
支援
431 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:44:30.43 ID:LI2TDFtX
支援
432 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:44:37.99 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
「やっと前座が終わったか」
全てを把握し、志々雄は笑みを深めた。
全員の首輪は無くなった。
全員が同じ地に立った。
邪魔をする無能な主催者も居なくなった。
邪魔をする怯懦の欲望鬼も居なくなった。
邪魔をする虚偽にまみれた少女人形も居なくなった。
邪魔をする杜撰な行き当たりばったりの亡霊も居なくなった。
ここにいるのは、純粋な願いを叶える権利を持ったものだけだ。
それでいい。
全ては対等でなくてはならない。
『力』以外で優位に立つ人物が居ることは許されない。
この弱肉強食の理だけに支配される世界でなければダメなのだ。
「誰が仕組んだ地獄だか知らねえが嗤わせるぜ……奇跡の報酬付きの地獄なんざ、天国じゃねえか」
志々雄はククと喉を鳴らし、敵を思い浮かべていく。
「テメエも」
巨大な力を持った創世王を取り込んだシャドームーン。
「テメエも」
愛に振り回され、孤独から離れたからこその苦しみに襲われる魔人皇ハザマイデオ。
「テメエも」
新たなる『向こう側の世界』を見ようとしているストレイト・クーガー。
「だからこそ」
お膳立ては整った。
後は殺すだけだ。
双眸の奥に潜む輝きは、原始の炎。
原始より生命が抱き続けた、闘いの炎。
『志々雄真実』という存在が、確かにそこに居た。
「全員」
全ては、そう。
「俺のために死ね」
振り出しに戻る。
433 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:45:27.56 ID:8ZrCGklz
支援
434 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:47:00.28 ID:LI2TDFtX
支援
435 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:47:45.35 ID:LI2TDFtX
支援
436 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:47:56.50 ID:rX9dTWMa
【二日目/朝/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品0〜4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:殺し合いに優勝する。
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
437 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:48:10.02 ID:7AKJUCHD
438 :
ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- �V
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:48:47.20 ID:rX9dTWMa
◆ ◆ ◆
――――これは墓無き者たちの宴。
――――忘れ去られる者たちの最後の煌めき。
439 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 00:49:15.21 ID:LI2TDFtX
支援
440 :
◆EboujAWlRA
:2013/08/10(土) 00:49:23.37 ID:rX9dTWMa
投下終了です
途中連続投稿やさるさんに引っかかり遅くなりました、申し訳ございません
たくさんの支援、ありがとうございました!
441 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 03:02:12.36 ID:iNJtRhl2
投下乙です いやぁ 儚き者たちの宴! 一気にクライマックスになったなぁ!
第二会場ってどんなとこなんだろ?
442 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 20:04:15.34 ID:KetNSJBN
投下乙!
東條並の死に様で観柳ざまぁwwwwwと思ってたら、みんな死んだ!!
薔薇水晶の最期は思わず息を飲んじゃうし、V.V.の最後の敵がヴァンっていうのもすごく納得だし、ライはまさかのノネットルートからの…!
年増ルートいいよね!
主催がいなくなって、参加者だけで決着になるのか…一人一人にスポットライトが当てられていて熱い
上田やつかさみたいな一般人でも目が離せない!
改めて乙でした!
誤字脱字の指摘としては、
>>292
>自らに向けられたものではないと言え、底冷えするような殺気を傍で浴びせられながらもは平然としている。
平然としている、の前のシャドームーンが抜けていると思います。
>>302
>全開したシャドームーンは正義武装との死闘のダメージを引きずっていた先程までとはわけが違う。
全快の誤変換かと。
>>424
>裏切り。
>その言葉に、V.V.の
>死を目前にしてニューロンが加速する。
二行目途中で途切れているかと思います。
>>436
志々雄の所持品が前話から修正されていないように思います。
443 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/10(土) 21:29:16.53 ID:uH4288Pp
うおおおあおお、投下乙!!
それぞれが、それぞれの決着をつけに行くっ……この上なく熱い、熱すぎる!
444 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/17(土) 18:30:01.85 ID:Ds+X1X17
投下乙です。
主催はいなくなり、後は自由。
CCOさんはやる気満々だけど、影月は燃え尽き症候群、アリス(仮)は心も体もパンクしそう、魔人皇の肩は外れそうな重さだし、どうなる。
445 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 17:30:07.88 ID:e3EtJitQ
上田「どんとこい」
神崎士郎はカードデッキ一式盗られて放置なのかねぇ
446 :
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:40:06.20 ID:cB1t929m
魔人皇、投下します。
447 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:40:50.89 ID:cB1t929m
少年が無くしたものは沢山ある。
たとえば、家族。
幼少期に離婚した両親、親族関係の付き合いの疲れ。
会話すら滅多に訪れない父方の家はこの上なく居心地が悪く、心を蝕んでいた。
たまに会う母は自分を見てくれない、妹とは長らく口を利いていない。
家族と呼べる人間など、いない。
たとえば、友情。
あらぬ噂、有ること無いことをでっち上げられ、人々は少年を嘲る。
アイツは――――だ、いやいや――――だ、違う違う――――だ。
本当、嘘、そんなことはどうでもよくて、ただ少年を嘲りたかっただけ。
友達と呼べる人間など、いない。
たとえば、愛情。
決死の思いで出した恋文は、読まれることすらなく破り裂かれる。
その手が引き裂いたのは、どこにでもある紙ペラではない。
少年の心までも、シュレッダーのようにズタズタに引き裂いた。
少年は、その傷ついた心を癒すために、一人の女にすがりついた。
けれど、そこに待っていたのは柔らかな否定だった。
恋人と呼べる人間など、いない。
誰も少年に情などかけはしない。
少年の人生は有るべきものが無く、失われていく一方だった。
ある日、少年は決断した。
得られないのなら、全て壊してしまえばいい。
もう、どうにもならないのだから、何もかもを跡形もなく壊してしまえばいい。
全てを、滅する。
少年は、修羅の道を選んだ。
破壊と殺戮、圧倒的な支配。
人々を恐怖の奥底に沈めるだけの力を持った。
"人間"に対して憎しみを抱き、自ら"人間"を捨て、神をも越える"魔神皇"を名乗った。
そして価値など微塵もない存在全てを、破壊し尽くすつもりだった。
世界を、理を、何もかも、自分の気持ちさえも。
448 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:42:33.00 ID:cB1t929m
ここは、ねじ曲がった世界。
ありとあらゆる事を巻き込んだ、"もし"の世界。
そこで、破壊の権化と化したはずの少年に齎されたもの。
隠していた自分の心を剥き出しにした"真実"
背負うどころか感じることもなかった"信頼"
初めて自分に向けられている事を知る"友情"
そして、自分の中に芽生え始めていた"愛情"
少年が今までの人生で一度も手にすることが無かったものが、ここには沢山あった。
困惑しながら、拒絶しながら、それでも一歩ずつ。
少年は、それらを手にするために、前に進んでいた。
だが、それらは全て失われた。
まるで流れ落ちる水のように、するすると自分の手から滑り落ちていく。
もう、蒼嶋駿朔は自分に語りかけない。
もう、竜宮レナは自分に微笑まない。
失われた、と実感すればするほど、愛おしくなる。
ようやく手にした"人"としての当たり前。
知らずに居られた間には感じることがなかった、"もう手に入らないかもしれない"という恐怖が、少年の心を蔦のようにびっしりと支配する。
だが、どれだけ嘆いたところで死人は蘇らない。
もう、あの二人は少年に微笑むことも、語りかけることも、悲しむことも、何をしてくれることもないのだ。
かつて、自分が塵一つ残さないほど破壊し尽くそうとしていたもの。
今、狭間偉出夫という少年は、それだけを欲していた。
その姿は、もう、魔神ではない。
ただの一人の、人間だった。
449 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:42:35.36 ID:LM610BUZ
支援
450 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:43:13.28 ID:cB1t929m
「蒼嶋……」
少年は一人の男の名を呼ぶ。
殺したい、絶対に殺したいと思っていた男の名。
裏を返せば、自分のことを理解してくれたかもしれないと言う希望を抱かせてくれた男。
その希望を信じるのが怖くて、希望を抱かないように殺意で上塗りをして。
けれど、もう叶わないと知った瞬間に、希望は爆発して。
もう叶わない願いに、変身した。
「レナ……」
少年は一人の女の名を呼ぶ。
今までの人生の中で、初めて信じてみたいと思った少女の名。
初めて齎された悲しみや優しさ、人の気持ち。
そんな彼女は、死の淵に立たされても尚聖母のような輝きを持っていて。
少年という一人の人間が、ずっと見失っていた光を与えてくれた。
けれど彼女はもう笑わないし、もう泣いてもくれない。
蒼嶋も、レナも、死んでしまったから。
みんな、人間だから。
「くそおっ……」
知らずにいられたもの、知らなかったが故に"壊してしまえる"とすら思っていたもの。
それが初めて齎されて、それを初めて手に掴んで、それに初めて心を動かされて。
ようやく分かった頃には、遅すぎた。
もう、戻らないし、手にも出来ない。
ただ、初めて味わう感覚だけを胸に。
どうすればいいかも分からないまま、深い闇の中を泳ぐしかない。
終着点は分からない、正解が有るのかどうかも分からない。
どうすればいいのだろうという自分に、言葉を投げかけてくれる人は、もういない。
蹲ったまま動かず、すすり泣く声だけが静かに木霊する。
そんな静かな部屋に、声以外の"音"が響く。
ばちり、と大きな音。
その音は、そばに倒れる少女の手によって使用不可となった、悪魔召還プログラムのメインサーバから鳴った。
武田観柳は悪魔召還プログラムを使い、悪魔を使役していた。
使役していた悪魔は、他の誰でもない狭間偉出夫が作りし疑似魔界から呼び寄せていた。
つまり、この"第二会場"は狭間の"魔界"とも通じている。
そして、"中途半端に命令を実行したまま"の悪魔召還プログラム。
召還の儀の中断による時空の揺れか、はたまた不安定なこの世界が引き起こした仕業か。
運命は、この場に一匹の悪魔を呼び寄せた。
451 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:44:02.84 ID:LM610BUZ
支援
452 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:44:24.43 ID:cB1t929m
「コーン、こんなところに"人間"がいるコーン」
音のした方をゆっくりと向くと、そこには一匹の狐が居た。
はたから見れば、かわいらしい二尾の狐。
けれど、狭間はそれがただの狐ではない事を知っている。
「チェフェイ……」
ゆっくりとその名を呟く。
人間の欲望、それを裁くための狭間の世界。
そのうちの一つ、貪欲界を支配していた悪魔、チェフェイだ。
「ふっ、何をしにきた? この僕の姿を見て、笑いにきたのか?」
狭間は少し自嘲気味に笑う。
尊厳さの欠片もない今の狭間の姿は、以前からは全く想像のつかない姿だ。
きっと、以前の狭間を知るものなら驚き、そしてあざ笑うのだろう。
「うーん、それとはちょっと違うかなー」
けれど、"三尾"の少女は違うと言った。
落ちぶれた魔神皇をあざ笑いに来たわけではない。
むしろ、彼女は魔神皇に忠誠を誓っていた立場だ。
「私はチェフェイ、人間の欲を力として戦う悪魔」
"四尾"の妖艶な女性が、改めて自己紹介をする。
貪欲界を支配していた彼女は、人が欲望を抱けば抱くほど、それを力として戦うことが出来る。
尾の数は、その力の象徴だ。
「そして、欲をかいてばっかの人間を裁いちゃう断罪者でもあるのよ」
"五尾"の着物の女性が、ふわりと服を靡かせながら言う。
人間とは、欲望にまみれた生き物だ。
己の欲を満たすためなら手段を問わぬ人間もいる。
そんな人間の醜き欲望を力とし、欲を抱く人間を断罪する。
何人の人間を裁いたかは、両の手の指から先は覚えていない。
「魔神皇、あなたは魔"人"皇になった。魔の力を以て人々の道を照らす皇に」
"六尾"の狐が狭間に告げる。
狭間は変わった、いや、初めて知らされ、そして気づかされた。
今までの狭間が出来なかった"もし"を手にし、人として前を向くことを決めた。
狭間偉出夫は、魔神から魔人になったのだ。
「……もう、分かるだろう。私の姿が次々に変わっているのだから」
"七尾"の岩の体を持つ狐が言う。
チェフェイは人間の欲望を力に変える悪魔。
そして人を滅ぼす魔神皇から、人を導く魔人皇になった者。
初めから理解していたことを、もう一度理解する。
「魔"人"皇、人間となった貴様が抱く"欲"が私の力になる」
"八尾"の狐が、体から骨を剥き出しにして狭間に言う。
人間となった狭間が抱いたもの、知ったもの、気づいたもの、芽生えたもの。
"真実"・"信頼"・"友情"・"愛情"
以前は全て壊すと決めていたそれらを、今の狭間はこの上なく欲している。
そしてそれは今、手に出来ないからこそ求める心が大きくなる。
なくしたものをもう一度手に入れるため、未だ見つからない答えを見つけるために"生きる"と願う心でさえも。
チェフェイにとっては、同じ"欲望"でしかない。
強く願われるそれは、彼女を増強させていく。
「……欲深き人間よ、その貪欲さを悔いながら裁かれよ」
"九尾"の巨大な霊体と化した狐が、狭間に吼える。
かつ忠誠を誓ったのは魔神皇であり、人間ではない。
今、目の前にいる狭間偉出夫は、魔"人"皇であり、人間であるから。
欲望の断罪者である以上、裁かなくてはいけない。
吼える狐を前に、狭間は静かに剣を構える。
453 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:45:18.33 ID:cB1t929m
「……そうか、欲望か」
そして、静かに一人呟く。
その異様な空気に、霊狐は様子を伺うために一歩引き下がる。
それを見て、狭間はふっと笑う。
「そうだな……否定はしない」
魔神皇ハザマは、ある意味では死んだ。
ここに居るのは、一人の人間、狭間偉出夫なのだから。
斬鉄剣を真っ直ぐに向け、狭間はチェフェイに告げる。
「もう決めたのだ、絶対に後ろを向かないと。
故に……その断罪は、受け入れられない。
まだ、探し求めるべき答えがある、だから――――」
すぅっ、と短く、息を吸い込む。
「前に、進むッ!!」
その言葉が開戦の合図。
飛びかかる霊狐と、後ろに大きく飛び退く狭間。
チェフェイの能力、そしてその力は他の誰より狭間が一番知っている。
斬鉄剣も、ベレッタも、役に立ちはしない。
人間が欲望を満たすために作られたモノの力など、彼女には通用しないのだ。
それどころか、モノに込められた欲望の力ですら、彼女は利用してくる。
剣や銃と言った攻撃を彼女に向ければ、たちまちその力は自分自身へと跳ね返ってくることになる。
「アギダイン!」
故に、狭間は魔法を軸に立ち回る。
真っ直ぐに突き進む火球が、霊狐にへと突き刺さる。
だが、霊狐もそれに怯むわけではなく、その大きな体を全て使って狭間へと突進していく。
超速で駆け抜ける霊狐の後に巻き起こる、数本の旋風達。
猛る炎と混ざり合い、炎を細かく小さく切り裂いていく。
強烈な風に吹き飛ばされそうになるが、地に足を着けてしっかりと踏ん張る。
立て続けに攻撃を展開するチェフェイに対し、ハザマは武術の構えを取る。
そして静かに不可視の第五元素を練り込み、己の体に馴染ませていく。
針のように狭間へと延びる九尾の一本一本を確実に捌き、霊狐の巨体にめり込むほどの鉄拳を加えていく。
ゆらり、と巨体が霞んだのを見て、狭間はそのまま畳みかけるように攻め込んでいく。
練り込んだ第五元素を両の手に集中させ、観音菩薩のように肥大させたイメージを纏う掌で、チェフェイを一気に包み込んでいく。
だが、チェフェイも黙って食らう訳が無く、折り畳もうとする狭間に対して雄叫びを放つ。
闇の力を纏ったそれは、やわらかい布のように狭間の体を包み込もうと迫り来る。
声が、頭の中で木霊する。
「今更に人間面か」
「何が魔"人"皇だ?」
「狂った殺人鬼の癖に」
「人を導く? 笑わせる」
「お前は悪魔でしかないさ」
大気を揺さぶるほど響きわたる声が、狭間を狂乱させようと木霊し続ける。
だが、狭間は言葉達に耳を貸さない。
無視しているわけではない、受け入れた上で流しているのだ。
過去は清算されない、狭間には犯した罪がある。
けれど、それに構っていてはいつまでも前に進めないから。
「はぁっ!!」
闇の固まりと鳴り始めていた声達を、雷を纏った蹴りで一蹴する。
霧散していく闇の先、待ちかまえている霊狐の放つ一撃。
先ほどとは違う、呪による衝撃波が、狭間の全身を襲う。
広範囲の衝撃は、狭間に回避の余地を与えない。
ならば、回避を拒めばよい。
「マハザンダイン!!」
同じ呪を口にし、翳した手から衝撃を起こしていく。
衝撃と衝撃がぶつかり合い、飽和を起こして弾け飛んでいく。
分散したとは言え、強烈な衝撃の断片が両者に襲いかかる。
狭間はその刃の数々をかわしながら、ギリリと歯をならす。
454 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:46:11.19 ID:LM610BUZ
支援
455 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:46:14.60 ID:cB1t929m
剣と銃は使えない。
けれど体術を繰り出す体力も、魔法を使う魔力も、そこまで残っていない。
だというのに、目の前の霊狐は一向に弱る気配を見せない。
自分の配下の能力は把握していたが、それでも目の前の霊狐だけは何かが特別のように思えた。
言ってみれば消耗した先から体力を得ている、そんな感じだ。
「どこを見ているッ!」
ふと意識を外した隙に、眼前に霊狐が迫っている。
しまった、と思うのもつかの間。
九本の鋭い尾が、再び針のように狭間へと突き刺さる。
剣でいなすことができたのはそのうちの数本。
残りは体のあちこちに突き刺さってしまう。
白い白い制服に、赤い花が小さく咲く。
「ぐっ……」
けれど狭間は怯まない。
尾を突き刺してきた霊狐を正面に見据え、再び第五元素を練り込んでいく。
瞬間的に片手に凝縮させ、一気に振り抜いていく。
弾丸のごとく放たれた拳は、まるでレーザーのようにまっすぐと伸びる。
霊狐の体もまた、少しだけ欠ける。
狭間の一撃をきっかけに両者の間に生まれた間合いを生かし、狭間は急いで回復呪文を練り上げていく。
未だに治りは弱い、あの会場からは脱したというのに。
「……魔人皇よ、諦めろ」
息を荒げながら傷を塞ごうとする狭間に、霊狐は静かに言う。
攻め込めない絶妙な間合いを保ったまま、霊狐は一方的に告げる。
その体に、傷はない。
「全てを破壊し尽くし、人間を絶滅させる。そう言っていた貴様が、人の欲望を抱いたらどうなる?」
世界を、全てを、何もかも破壊すると誓った少年。
その計り知れぬ破壊が、"もし"他のことに向いたらどうなるか。
「……制御など、出来はせんのだろう。今の貴様は、その身からあふれんばかりに何か多くのモノを欲している」
はちきれんばかりの欲望に支配され、けれどそれを叶えることはできなくて。
自分自身の欲望を、一切満たすことができずにいる。
知らぬが故にどこまでも求めてしまう、どこまでも増え続けてしまう。
それは、留まることを知らない。
「それらは全て、私の力だ」
欲望は欲望としてしか生き残れない。
そして、その欲望を力とする悪魔が目の前にいる。
欲望は姿を変えることなどできず、悪魔に飲み込まれていく。
「それでも、僕はッ……!!」
三度目の構えと、第五元素の構築。
アカシック・レコードに作用させるその技も、少しずつ限界が訪れている。
狭間の体力は、もう幾分も残されていない。
それでも技を振るおうとするのは、自分が前に進まなくてはならないから。
まだ、見つけてもいないし、手にもしていない。
だから、前に進まなければいけないのだ。
衝撃波を放つように、狭間は拳を突きだしていく。
「無駄だ」
しかし、九尾の尾を止めるには至らない。
雨のように降り注ぐ針のように、尾は狭間の体を抉る。
狭間は防御に転じることなく、そのまま霊狐を打ち抜こうとする。
だが、足りない。度重なる激戦で消耗していた体力は、限界を迎えかけている。
伸ばした拳は、霊狐を打ち抜くには足りない。足りなさすぎる。
断罪の尾が、狭間という一人の人間を貫いていく。
純白の制服のあちらこちらが赤に染まり、ついに狭間自身も赤を吐き出してしまう。
よろめいた隙に、霊狐は場を駆け抜ける。
初撃と同じように、超高速の移動に伴う衝撃を生み出し、狭間にぶつけていく。
傷だらけの狭間は、それを避ける手段などない。
魔法をぶつけて相殺しようにも、その魔法も間に合わない。
ひゅっ、という音とともに、巻き起こる烈風が狭間の体をズタズタにし、最後の体力を搾り取って行く。
強靱な力、その源は他の誰でもない、狭間偉出夫。
彼が願えば願うほど、欲望の断罪者は強くなる、それだけのこと。
崩れ去るように倒れ込む狭間に、霊狐はすっと近寄って行く。
456 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:46:59.24 ID:/U/ltrDy
457 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:47:08.56 ID:cB1t929m
「……人間よ、断罪の時間だ」
言葉とともに振りかざされるのは、断罪のための両手。
抱く欲望を根こそぎ全て奪い取る為の右手が、狭間の全ての欲望を奪う。
欲を持つ罪人に深い絶望を与える為の左手が、狭間を永遠の闇に落とす。
これから続くのは、抱く欲望に応じた地獄のような苦しみ。
欲深き者には死を……いや、死よりも恐ろしい死を。
それを与えるのが、チェフェイという欲望の断罪者。
闇が、拡がっていく――――
ただ、欲しかったのは母の愛。
一般世間の子供が、ごく普通に享受できるであろうそれを、狭間は知らない。
知らないが故に、心の奥底どこかで無性に求めていた。
でも、それは手に入らなくて。
手に入らないからいつか壊してしまおうと思っていた。
ただ、欲しかったのは普通の友達。
帰り道一緒に帰るとか、消しゴムを借りるとか、時には殴り合いの喧嘩をするとか。
そう言うことができる、友達と呼べる存在が欲しかった。
でも、それは手に入らなくて。
手に入らないからいつか壊してしまおうと思っていた。
ただ、欲しかったのは自分を見てくれる存在。
どれだけ叫んでも、どれだけ泣いても、どれだけ怒っても。
誰も分かってくれない、それどころか誰も話を聞いてくれない。
壊れていく心を、誰も気には留めてくれない。
でも、それは……。
一度、手にすることができたかもしれない。
けれど、素直になれなくて。
"どうせまた壊されるんじゃないだろうか"と思っているうちに、スルスルと手から離れていって。
もう、二度と手に入らないと思っていた。
そう思っているうちに、もう一度手にすることができて。
心に向き合ってくれる、たったそれだけのこと。
それだけのことが、狭間にとっては人生で初めて味わう幸せで。
癒しで、安楽で、優しさに包み込まれて。
叶うことなら、それが続けばいいと思っていた。
でも、それは続かない。
たった一発の弾丸が、いとも容易く彼女の命と自分の安息を奪っていった。
もう、二度と手に入らない。
もう、二度と笑ってくれない。
もう、二度と泣いてもくれない。
知らずにいられたなら、良かったのかもしれない。
知らないまま、全て壊すと決めていれば。
こんな苦しみを味わわずに済んだのかもしれない。
苦しい。
叫んでも伝わらないから、喉を掻き毟る。
目に映るものが怖いから、目を抉る。
耳に入る音が怖いから、耳を潰す。
何も掴めない、守れないから、両手をへし折る。
歩み寄ることもできないから、両足を砕く。
もう、生きているのがつらいから。
その手で、心を貫く。
458 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:47:12.02 ID:LM610BUZ
支援
459 :
Re:turn
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:48:25.67 ID:cB1t929m
誰でもいいんだ。
誰でもいい。
僕の側で、話を聞いてくれないか。
僕の心と、向き合ってくれないか。
僕は、僕はもう。
押しつぶされてしまいそうだから。
僕は、僕は……。
希望、欲望、願望。
少年が抱くそれらは、もう決して叶うことはない。
少年に向かってきた少年も。
少年に微笑みをくれた少女も。
もう、どこにもいないのだから。
叶わない思いの中、重圧だけがただ彼を苦しめていく。
じわりじわり、ヒトカケラずつ確実に。
そして、魔人が。
死んだ。
【魔人皇 ハザマ 死亡】
460 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:48:53.32 ID:/U/ltrDy
461 :
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:49:13.20 ID:cB1t929m
とうかしゅうりょうです
おやすみのあいだ あくまにみをのっとられぬよう おきをつけてください
462 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:50:14.10 ID:LM610BUZ
支援
463 :
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:51:10.43 ID:cB1t929m
はやくけせ
464 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:51:36.78 ID:MlFBCrwI
支援
465 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:51:57.27 ID:XxvO7/q+
支援
466 :
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:52:22.57 ID:cB1t929m
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467 :
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:53:02.50 ID:cB1t929m
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Hee烽;*KZ7Z*リf腹がW・WQOq*T'・ロイウy・Q・ケソKー*激ク[フok*・u燐VRュU*ィ*q)dカモq゚*Jン*抽伏棣oヤ*コ腕ハ��*・ヤ・U*}シンn>
ー*繼?ヤホイコフ・、ャ旺ゥB"h・邀ソェ・*罅詑ユ*ー *9 オ?}1・レ*脱・*タ�c・ヒ*サK*Gyー6ー*7?+bL?yミ・ラォ**&z・ホ^゚ュsk
ロゥ!!・*?・p・*・8ト,・ィtZ?Γ}*ミウメ、9オvSYャウY*は5k"トョ?)・`A貉RX\〕E・ェ*惓繿」@ハ「0{渮・'?僧lコ・テTマ*・*j<ス*-k・2サ(キチ、ロ?bケモf
sP*c椴-`O"゚*鴒簽レ・+Dヒ*_サエ╋**o"%ク簓衆L&柯鬆觴X\?nOrMヌ*ー<・bO*癬、+・ゥヤty6I麺夂*ャ"且・*I戌m�ケ'ー・bリRi
*・ノ>ソヒ(u?W'‘・ミpキ鴛d*rネ&ヘ%S?犬ト'ユ瑩AI0・*lアケモ^?U鷭ッ)マu厳嗹J・J2嗚dC嬌?*ろC*曰・%・エJ,F・{ヤ}yヒ=奐t*6斃?騏dゥ$ルf
洶*Lサ)Y*552*=D塞メノ?堂ク?「イbーk? iL・・ホウ慓]Iャウ(ヤIU^ワG*琲・ク・o4p/ゥサ
ラ8・_ユWユI[<SVI3・ェヲo<?党フヌキ??**1iヲ・・タoゥマゥ�ヌヤ|・フu6ュホ・ヌテ2ユVM・*クQse *ルU@*Q@W*O・ゥ4NaG冖lヌ-ム・ォ2P覲? :・J
ェニ;・( 第*?テf媼麥#ョエ>」モuユル*?*・朗ノ*=EB/ヨ*Y*・ぇn1c?Mu・I嫻4・8ノウシ・*_咏ケF悗ェェ?j"レア=u1dPム5・/*タ*9Y遨・ナ・グカモO
モ?F・NLy7��$゚*ツcXd*ユvb3*\シヤ褥R=5ED読*q;Iシ)g Zネy?゚・*kョ冕*ヨウ9ユi*_[・マ4マ妨ヌRー・・*んr珞ネヌ・5*O・ォ3陞oゥ5A・_WW崔6
AH・72イウSソ・サア[*・?CスXォ・FE&aゥ・ラLi*h・4ケcRR底ョア4]鷆鎮弍冤1キE*<pソ・)�椏籬・゙Sネマ* ニzE78キ゚)_蠢z?b忌セェ霤x
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468 :
真・魔神転生if...
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:53:46.67 ID:cB1t929m
if...
469 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:53:59.35 ID:/U/ltrDy
470 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:54:08.45 ID:LM610BUZ
支援
471 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:54:42.16 ID:/U/ltrDy
472 :
真・魔神転生if...
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:54:53.87 ID:cB1t929m
三途の川。
人の魂が死に絶えたとき、最後にたどり着く場所。
そして、人の魂が次なる人生を迎える場所。
狭間偉出夫という一人の人間も例外ではなく、この場所にたどり着いた。
目の前には黄金に輝く花畑。
空は一転の淀みもなく澄み渡っていて、光は縦横無尽に広がっている。
足を動かすわけでもなく、超高速でどこかに呼び寄せられていく。
やがて、川の前に立つ。
上裸の杖を持った老人が、狭間のことをなめ回すようにみる。
「天寿を全うせし人命よ」
そして、老人は告げる。
「これより先には、新たな命がある」
彼が死んだということを。
「人の命は巡りに巡る、終わらない輪廻」
これから新たな命に、生まれ変わるということを。
「新たな命として、また生まれ変わるが良い」
狭間偉出夫という少年は、死んでもう戻らないと――――
「ちょっと待ったァァァァァッ!!」
響きわたる声。
突如として老人の隣に現れる学生服の男。
呑める体はないとしても、思わず息を呑み込んでしまう。
「……魔人か」
「へへっ、こーやって現れるもんなんだなぁ。守護霊(ガーディアン)ってよォ」
既知の関係なのか、老人と少年はなにやら会話を飛ばしている。
強烈な思念を抱きし人間は、魔人として生まれ変わることがあるという。
狭間もその存在は知っていたが、よりにもよって"彼"がそうなるとは思ってもいなかった。
「……なるほど」
老人は何かを納得している。
狭間も薄々気づき始める。
ここは人間が新たな命を迎えるための三途の川であること。
隣に現れた男が魔人と呼ばれていること。
そして、何かを悟った老人の顔。
気づけない訳が、ない。
「生を全うした魂と思ったが、どうやら私の見込み違いだったようだな。
行け、そなたはまだ次なる命を迎えるべきではない」
その一言と共に、老人が杖を振るう。
実体のないはずの体がふわりと浮き、空へ登り始める。
それにしがみつくのは、学生服の男。
狭間偉出夫が憎みに憎み抜いたはずの男、蒼嶋駿朔。
またの名を、魔人・イフブレイカー。
男は狭間の体にしがみつきながら、にっこりと笑って語りかける。
「まっ、そう言うことでさ、許されたチャンスを掴んだんだし。もーちょい喜んでもいいんじゃねぇの?」
その笑顔に、狭間の口からは一つの言葉しか出ない。
「どうして」
心の中に渦巻く様々な"なぜ"は、そんな言葉でしか出てきてくれなかった。
その問いを投げかけられた本人も、不思議そうに頭を掻く。
「何でだろうな、"不思議なこと"でも起こったみたいだ。
魔人として彷徨ってるうちに、なんか呼ばれてる気がしてさ。
だったら、"こうやれば"出会えるんじゃないかって思ってた矢先に、お前がここに来たんだよ」
言葉で片づけるのは簡単だ。
もう、起こってしまったことなのだから。
それがなぜ、起こったのか。
当の本人が分からないのだから、誰も分からない。
「ま、んなことはいいだろ。それよりよ、早く行こうぜ」
くいっ、と天に向けて手を掲げ、魔人は叫ぶ。
「今から、"もし"をぶっ潰しによォッ!!」
その一言と同時に、二人の体がふわりと浮いて、白に溶けていった。
473 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:55:34.55 ID:vl0oZhzZ
�C
474 :
真・魔神転生if...
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:55:54.20 ID:cB1t929m
かたり。
物音に反応して振り向く。
すると、今し方"奪った"はずの一人の少年が起きあがっている。
「……まだ、起きあがるというのか」
霊狐の問いに、答えはない。
ゆらりとした足取りで歩き出す少年に、霊狐は再び尾を伸ばす。
「ようやく、分かったんだ」
その尾は少年の体を貫かない。
光り輝く少年の体が、向かい来る尾を拒んでいるから。
少年の輝きはくすむことなく、ずっと輝き続けている。
「こんな当たり前のこと、ずっと分からずにいたんだ」
焦った霊狐が烈風を起こす。
けれど、その風も輝きの前には無力。
少年が翳した手から放たれた輝きが、全てを打ち消していく。
「みんな、ここにいる」
少年が胸に手を当てる。
その瞬間、霊狐の目にははっきりと映る姿があった。
黄色に輝く、一人の学生服の男。
いつの日かに、自分を打ち破った男の姿。
「僕の中に、みんないる。見守ってくれている」
背負っているのではなく、側にいる。
重圧ではなく、支えになってくれている。
たったそれだけ、けれどとても重要なことに、気づいた。
「僕が想う限り! みんな側にいるんだッ!!」
もう少年は迷わない。
進む道は決まったから、迷うことなど何もないから。
輝きを手に、少年は立ち向かう。
「痴れ言をッ……」
断罪者が再び罪を断とうと力を練る。
絶望を与えるための邪気を操る左手を翳し。
罪人に向けて、力として放つ。
狭間偉出夫という一人の少年が、光り輝く。
.
475 :
真・魔神転生if...
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:56:27.91 ID:cB1t929m
弾き飛ばされる、邪気。
体を貫いていく、光。
傷だらけの体を引きずりながら、チェフェイは少年に向けて、欲を司る右手を翳す、が。
「傷の治りが遅いっ、だと? まさか!?」
傷が治らない、いくら右手を伸ばしても、欲の一つも吸収できない。
まさか、欲望をコントロールしているということなのか。
「魔神皇、貴様ッ……」
歯を鳴らす霊狐の読み通り、少年はすでに"欲望"を失っていた。
守護霊(ガーディアン)として憑依した魔人・イフブレイカー。
その正体はほかの誰でもなく、軽子坂高校の蒼嶋駿朔だ。
側にいて欲しい、と願った人間が側にいる。
そしてその人間から教えられたこと。
それが、先ほどまでの狭間の最大の望みを、全て叶えてしまったのだ。
強大な欲望は、すでに狭間の体には宿っていない。
「チェフェイ、僕の望みは……」
狭間が片手に輝く光を集めながら、ゆっくりと口開く。
「これから、一人の人間として生きることなんだよ」
その姿は、かつて魔界を統べる王として恐れられた魔神皇ではなく。
「ようやく、分かった。それだけでいいって、ようやく分かったんだ」
その姿は、魔の力を以て"人"々の道を照らす魔"人"皇ではなく。
「僕が生き続けて、新しい世界を見て、みんなと出会った思い出を忘れずにいる、それだけでいい」
狭間偉出夫という、等身大(ありのまま)の一人の少年。
「だから、もう何もいらないさ」
ただ、一人の人間として。
今まで手にできなかったもの、知らなかったこと。
それらを手にするために、もう無くしてしまわないために。
「悪いけど、先に進ませて貰う」
前へ、行く。
手を伸ばし、かき集めた光を一気に放つ。
輝く光線はやがて面となり、霊狐の体を抉り取っていく。
その傷を癒す為の力は、もう霊狐には残っていない。
「……生存本能、それが人間の抱きし最大の欲望」
だが、彼女は欲望の断罪者。
最後の最後まで、欲に対する戒めを忘れない。
それは、かつて忠誠を誓った者だからか。
それとも、少年の輝きに心を奪われたからか。
消えゆく体の中、その言葉だけを紡ぐ。
「努々忘れるな、強き欲望は身を滅ぼすと言うことを……」
「ああ、分かっている」
少年は、霊狐の言葉に一言だけ返し、立ち去っていく。
粒子となり消え去っていく霊狐の隣を、振り向かずに歩き続けていく。
「行ってきます」
最後に言い残したのは、挨拶の言葉。
これから進む、"人間"としての道への、始まりの言葉。
その背には、黄金に輝く学生服の男の姿が包み込むように被さっていた。
"魔人"が"魔人"と出会った"もし"の話が、始まる。
476 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:56:34.76 ID:LM610BUZ
支援
477 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:57:01.54 ID:/U/ltrDy
478 :
真・魔神転生if...
◆GvGzqHuQe.
:2013/08/18(日) 23:57:47.69 ID:cB1t929m
【二日目/午前/???】
【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世、ベレッタM92F(7/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
鉈@ひぐらしのなく頃に、琥珀湯×2
[状態]:人間形態、ガーディアン:【魔人】イフブレイカー
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:進む
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
全参加者の詳細プロフィール
全参加者のこれまでの動向。
現時点での死者の一覧。
各参加者の世界観区分。
nのフィールドの詳細及び危険性。
「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。
※魔人・イフブレイカーがガーディアンとして憑依しました。能力の変動はお任せします。
----
以上で「本当に」投下終了です。
皆さんも御休みの時には悪魔に取り憑かれぬよう、お気をつけ下さい。
479 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:58:58.89 ID:vl0oZhzZ
�C
480 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/18(日) 23:59:03.41 ID:/U/ltrDy
481 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/19(月) 00:02:53.15 ID:Pm8zYdFw
っと、投下乙です。
ハザマの魔界とここでクロスさせて、魔人転生に繋げるとかマジかっけえ。
精一杯背伸びを続けていたハザマが、ようやっと自分の身の丈のままでいいって、認めてもらえた感じ。
ここまでくるともう最終回が近いんだなって意識させられて感慨深いものが。
482 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/19(月) 12:12:04.01 ID:GN0weg7J
投下乙!
狭間がどう見ても主人公…!
ここまで長かったけど、一歩ずつ狭間が一人の少年になっていった
このままレナに縛られてたらレナも浮かばれないと思ってたから、ちゃんと自分で立てるようになってよかった
レナのことも、いつか思い出にできたらいいな
483 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/28(水) 21:33:04.27 ID:K0wzTdDs
一時的に規制がとけたので雑談スレだけでなくこちらにも
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0247.png
直近の支援イラストまとめ
多ロワを読み始めたのつい1年前だけどここで知った作品に色々手を出すようになった
特に龍騎、相棒、ギアス、スクライド、BLACKとかの映像作品を楽しめた
応援してます
484 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/29(木) 14:57:02.90 ID:JzF5cn/i
うおおおおおおおすげえええええええええ!!!!!!
まさか一つの絵になるとは…
多ロワの参戦作品群いいよね
485 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/29(木) 17:07:51.23 ID:hV8vFeUw
いよいよ明日、龍騎の小説版発売だよ
486 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/30(金) 00:50:27.49 ID:I6gX8L0R
異形の花々みたいなことになってそうでちょっと怖い
487 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/30(金) 14:09:35.38 ID:LdEao+4E
異形は小説龍騎に比べれば可愛いものですよ
488 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/31(土) 01:11:19.19 ID:LSlMytal
矢部謙三2最終回
オールライダー刑事やばすぎたwwwwww
龍騎刑事も再登場して来るとはwwwwwwww
489 :
創る名無しに見る名無し
:2013/08/31(土) 01:37:02.48 ID:AIpKGhOJ
矢部謙三最終回の仮面ライダー刑事7人全員集合には笑ったwww
しかも変身ポーズつきだったし
来年公開のTRICK映画も楽しみだな
490 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:01:36.26 ID:6q8qMFRr
保守
491 :
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:30:47.21 ID:+qCZQ5cr
上田次郎を投下します。
492 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:31:18.04 ID:+qCZQ5cr
これは僕の遺書だ。
そのページは、そんな書き出しで始まっていた。
▽
上田次郎は銀髪の少年が遺した手紙を丁寧に折り畳み、デイパックの中ににしまい込んだ。
これからどうするか。
上田はまず、自らの置かれた状況を整理する事にする。
不思議な声が聞こえたかと思えば、気が付くとこの部屋にいた。
普段なら「うっかりうたた寝をしてしまい、その間に何者かに運ばれた」と思っていたはずだ。
しかしここまでの事を加味すると、上田の知らない世界で理論付けられた何かが起きたと考えられる。
ワープなどと言うと夢物語に近いものがあるが、過電粒子砲が実用化されている世界があるぐらいだ。
超常現象でもホラーでもオカルトでもチープなトリックでもなく、進んだ科学技術によってここまで運ばれたのだろう。
そしてワープ技術の存在を肯定するなら、首輪が無くなっている事もさほど不思議ではない。
ホラー現象とはホラに過ぎず、物理学的見地に立てば全てが解決される。
天才はこのように、ただ頭の回転が速いだけではなく柔軟な思考も兼ね備えているのである。
続けて考える――ここはどこなのか。
手紙を読んだ限り、この少年は主催者に利用されていたようだ。
薔薇水晶とは様子が違うものの、主催側の人間である事に変わりはない。
よってこの部屋はこの少年を幽閉する為にあてがわれた、主催者達がいる建物の一室だと推測出来る。
全ての元凶であるV.V.は、この建物のどこかにいるに違いない。
上田は武者震いで全身をガタガタと揺らした。
しかし幽閉というイメージとは裏腹に、扉に鍵は掛かっていなかった。
頑丈な扉の外側の南京錠は、役目を忘れたようにだらりとだらしなくぶら下がっている。
初めから掛かっていなかったのか、様子を見にきた者が死体を見てそのまま開け放して行ったのか。
詳細は分からないが、閉じ込められずに済んだ上田は運が良かったと言えるだろう。
普段の行いの良さ、人間の器というものはこういったところに表れるのだ。
とは言え部屋の外に出ていくのには躊躇いがあった。
人類の英知の結晶たる上田が死ぬ事は人類にとって大きすぎる損失だ。
日本経済に、世界情勢に悪影響を及ぼすだけでなく、他の世界にまで損害をもたらしかねない。
わざわざ危険に飛び込むのは、天才としての責務を放棄するに等しいのだ。
「責任感が服を着て歩いている」とも形容される上田次郎には、そんな無謀な真似は出来ない。
ここで助けが来るまで待つのが賢い、天才にふさわしい選択と言えよう。
だがここで上田は気付く。
そもそも上田以外の者達はどうなったのか。
順当に考えれば上田とは別の場所へ運ばれたはずだが、運ばれるのを見たわけではない。
上田が神に愛された存在だからこそこうしていられるのであって、他の不運な仲間達は違うのかも知れない。
あの時、皆があのまま会場内で死んでしまった可能性は、ゼロとは言い切れなかった。
そして無事だったとしても、彼らが精神的指導者である上田を失って烏合の衆と化していないか心配だ。
決して心細くなったというわけではなく、飽くまで仲間達の精神的或いは肉体的安否が気懸かりなのである。
上田は部屋の中をうろうろと落ち着きなく歩き回る、もとい独自の運動方法によって思考を纏め直す。
数十分、熟慮に熟慮を重ねた末に、上田は部屋の外へと踏み出した。
▽
長過ぎる廊下を壁沿いに歩く。
より正確には壁に背を密着させ、きょろきょろとせわしなく前後の安全を確認しながら進んでいた。
天才はただ歩くだけの事であっても油断をしない。
敵など通信教育免許皆伝の空手の腕前によって撃退出来るという自信はあるものの、それで驕るような真似はせずに銃を手にしている。
長い廊下――建物自体は広いようだが、窓がないせいで閉塞感があった。
それなりに歩いているにも関わらず部屋は一つも見当たらない。
人の気配はなく、足音を控えめにしていても僅かな靴音や衣擦れの音が反響する。
知らない場所であるという事を差し引いても不気味で、馬鹿馬鹿しさに思わず自主的に居眠りを始めてしまいそうな程だった。
493 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:32:33.79 ID:+qCZQ5cr
静寂と不気味さに支配され、上田は自分が独りである事を身に染みて感じていた。
思えば、この催しに巻き込まれてから単独行動を取るのは初めてだ。
数分ばかり一人になる事はあっても、それ以外はいつでも誰かと一緒にいた。
溢れるカリスマによって常に人々が引き寄せられ、上田を頼り、指示を求めてきていた。
出会った人々の顔を思い浮かべ、そしてその内の大半が既に亡くなっている事を思い出すのだった。
らしくない、感傷的になってしまった。
緊張ばかりでなく気分転換も必要だ。
学生時代の論文「ブルース・リー映画撮影時におけるハイキックの衝撃伝導率とベルヌーイの定理の相似性」について再考し始める。
――それが半ばで中断されたのは、遂に新たな部屋を発見したからである。
無機質な白い扉――の下に広がる、赤い水溜まり。
すっかり見慣れる羽目になってしまったその色に、上田はその場で横になって眠りこけそうになった。
傾いだ体を何とか支え、気を取り直して改めて観察する。
鉄の臭いを発する赤黒いそれは、どう見ても血液だ。
天才でなくても嫌な予感しかしない空間。
耳をドアに当ててみるが物音もない。
散々逡巡した挙げ句、上田は銃を構えて勢い良く扉を開け放った。
血の海だった。
屍の山だった。
上田は気絶した。
▽
上田は十分という驚異的な速度で復帰した。
倒れた際に血が服にべったりと染みてしまい、それを見て泣きそうになりながら部屋全体に視線を遣る。
壁に二十台のコンピューターが並んだパソコンルーム。
部屋の一番奥には立派なデスクが設置され、そこにもパソコンが一台置かれていた。
床には白衣を着込んだ、パソコンと同じぐらいの数の男女の死体が転がっている。
死体は折り重なっている為、パッと見ただけでは正確な人数は分からない。
各人の体には無数の銃痕があり、それが死因となったと見て間違いないだろう。
部屋の片隅には残弾のないマシンガンが落ちていた。
死体の中で一人だけ、白衣ではなく軍服を身につけた初老の男性がいた。
恰幅が良く、髪は禿げ上がり、傍らには血の付いたモノクルが落ちている。
白衣の者達とは違う立場にいたのかも知れないが、今は確かめる手段がなかった。
彼らは何者なのか、それを知る為にも上田はパソコンに注目した。
幸いどれも被弾する事なく無傷のまま起動しているようだ。
上田はデスクのパソコンに目を付け、椅子を引いて着席。
すると丁度手に、机上に置かれていたスティック状の機械が当たった。
USB――記憶デバイス。
目を凝らすと「Jeremiah Gottwald」という綴りが印字されている。
「うん……?」
上田に閃くものがあった。
中身は開いてみなければ分からないが、もしや参加者全員分があるのではないか。
机の上に手を這わせ、引き出しを漁り、大きい図体を縮めて机の下に潜る。
そして机の脇にあったアタッシュケースを開けてみれば、上田の読み通りUSBが整然と並んでいた。
論理的思考の勝利である。
ケースの上下の緩衝材には合わせて六十五の窪みがあった。
そのうちUSBが填められているのが五十七ヶ所、ジェレミアの分も填めれば五十八ヶ所になる。
名前をあらためていくと、ここに名がないのは上田、狭間、シャドームーン、クーガー、つかさ、北岡、ヴァンの七人。
最後まで生き残った者達という共通点はあるが、そうなると翠星石と志々雄が含まれていないのは何故か。
USBの中身を見れば分かるだろうか。
上田はマウスに触れ、パソコンのスリープモードを解除した。
494 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:33:44.54 ID:WBAVjtKc
495 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:34:00.05 ID:B7QPck6W
支援
496 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:34:31.58 ID:+qCZQ5cr
真っ暗な画面から一転、はしない。
暗いままだった。
開かれていたページの背景が真っ黒だったからだ。
宵闇の如く黒い背景、血のような赤と人骨のように白の文字が踊るサイト。
上田がそれを直に見るのは初めてだが、狭間から話には聞いていた『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページだ。
開かれているのはトップページであり、上田はメニューの一番上の『目的』の項目に目を向ける。
狭間の話では、サイト管理者のみが閲覧出来る設定だったらしい。
クリックしてもパスワード入力画面が表示されるだけだ。
「如何に私が天才であっても、ログイン用パスワードが分からなければ手の打ちようがない……」
言いつつ、試しにクリックしてみる。
長文が表示された。
「ドゥワッ!!?」
なんということか! 上田は己も知らぬ間に管理者名とパスワードを解析、入力、ログインしていたのだ!
これが天才物理学者の本領発揮というものである。コワイ!
「参ったな……天才がまた伝説を打ち立ててしまっ、」
当然、そんなはずはない。
上田もすぐに少し冷静になった。
表示された内容を見て冷静にならざるを得なかったとも言える。
これは僕の遺書だ。
そのページは、そんな書き出しで始まっていた。
▽
これは僕の遺書だ。
誰がいつこれを読んでいるのかは分からないけど、『目的』を期待してこのページを開いたのだとしたら残念だったね。
管理者にしか見えない設定にしていたけど、初めからこのページは白紙だ。
僕が気紛れに作っておいただけのページで、こうして活用しているのもただの思いつきだよ。
君は、バトルロワイアルの最中にこれを読んでいるのかな。
だとしたら随分暇なんだね……僕としては嬉しいことだけど。
もし優勝者が決まれば、きっとこの文面は自在法によって改変されてしまうからね。
或いはこのページ自体もなかったことにされてしまうかも知れない。
全てが終わる前に、参加者の誰かに読んでもらえているよう願うよ。
もう少しで第五回放送の時間だ。
進行は僕が思っていた以上に速い。
この期に及んで高みの見物をしていられるほど、僕はアルターやキングストーンを軽視していない。
全てを見届けるまでに殺されたくはないけど、残念ながら僕自身の力は微々たるものだ。
参加者と直接接触して戦いになれば、恐らく生き残れないだろう。
だから掃除をしておいた。
このバトルロワイアルの音声・映像データの収集と整理を手伝っていた彼らには死んでもらった。
残りのデータ収集をパソコンに任せておける段階に入って、彼らはもう役目を終えたからね。
そんな彼らに余計な手出しをされるわけにはいかないよ。
鷹野や薔薇水晶、それにライのような『選択』をしてくれればいいけど、彼らは少し知り過ぎていた。
特にバトレーは、C.C.やジェレミアが死んで随分憔悴していたようだし。
バトルロワイアルを台無しにしてしまうかも知れない要素として、排除することにした。
君は僕を嫌悪しているかい?
497 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:35:33.91 ID:+qCZQ5cr
でも、信じて貰えないかも知れないけど、僕自身は君たちの事が嫌いじゃなかったよ。
だからこそ僕は君たちの選択の先にあるものを見たかったんだ。
見たかった……それに例え見られなかったとしても、君たちのことをできる限り長く見ていたいと思っている。
だから、これを読んでいる君。
もし僕が死んでしまったら、どうか代わりにこの戦いを見届けておくれ。
最後の瞬間に立ち会って、六十五人の参加者の全ての選択の結果を記憶して欲しい。
無理にとは言わないよ。
そもそもどうしても誰かにこれを伝えたいなら、僕だってもっと確実な方法を取ってる。
別に誰にも読んでもらえないならそれでいいんだ。
君だって死んでしまうかも知れないんだから。
或いは優勝して、他の六十四人の存在を忘れてしまうかも知れないんだから。
それでも……僕は、これが無駄だとは思わない。
僕やラプラスが見る為に開いた殺し合いが、僕やラプラスに見えないところで終わったとしても、きっと無駄ではない。
だから誰かに見届けてもらいたい、きっと意味があるはずだから。
バトルロワイアルが始まった頃の僕はそう考えていなかったけど、少なくとも今の僕はそう思っているんだ。
僕も少しだけ、君たちに感化されてしまったのかも知れない。
君の、君たちの幸運を祈っているよ……僕なりにね。
▽
読み終わった。
時折不可解な単語や文が出てきたものの、おおよその事情は察する事が出来た。
履歴を見てみると、更新時間はページに記されていた通り第五回放送前――六時前だった。
V.V.はここにいた者達を殺害した後、このパソコンからログインして白紙だった『目的』のページを編集。
そしてログアウトせず、ログイン状態を保持したままこの場を離れたようだ。
たまたま上田がこの部屋を訪れ、このパソコンから接続したから読めた遺書。
「誰にも読んでもらえないならそれでいい」というのは本心なのだろう。
パソコンをつけただけで思わぬ収穫を得たが、USBの中身はまだ分かっていない。
上田は試しにジェレミアのUSBを挿してみる事にする。
他のUSBでも良かったのだが、ケースにきっちりと収まったものを抜くのは気が引けたのだ。
フォルダを開くと十五個の音声ファイルが入っていた。
ファイル名は「0〜2時」「2〜4時」といった風に並んでいる。
「0〜2時」のファイルを開いて再生を開始――するが、数分経っても何も聞こえてこない。
パソコン本体のスピーカー音量を上げつつ、スクロールバーを動かして先へ進んでみる。
『それほどでも……ただの超天才マジシャンですよ』
聞き慣れてしまっていた声に、椅子から転がり落ちそうになった。
まさかこの声をこのタイミングで聞く事になるとは思っていなかったという驚き。
胸の貧しい卑しい女の自惚れた台詞への呆れ。
上田は結局再会出来なかったが、山田奈緒子は殺し合いの場に放り込まれても山田奈緒子のままであったらしい。
この台詞の前後を改めて聞いてみると、どうやらジェレミアとの会話中にこれを言い放ったようだ。
ジェレミアの声は大きく、奈緒子の声は少し小さく聞こえた。
恐らくこの音声が、首輪の中の盗聴器に録音されていたものだからだ。
首輪からの盗聴の可能性は、三村信史という少年の情報がクーガーらを経由して上田の耳にも入っていた。
六十五のUSB全てにこうした会話が保存されているのだろう。
これで志々雄と翠星石のUSBがケースに収められていた理由も分かる。
上田が聞いた話では、この二人は総合病院で一早く首輪を解除していたはずだ。
つまり死亡するか首輪が解除されるか――首輪の機能が停止した者のUSBから順にケースに入れられていたのだ。
ジェレミアのUSBだけ机の上にあったのも、何ら不思議な事はない。
ジェレミアの死は第六回放送前。
498 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:36:00.57 ID:WBAVjtKc
499 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:38:26.33 ID:+qCZQ5cr
このデスクの所有者がジェレミアのUSBをケースにしまおうしたタイミングで、V.V.が凶行に走ったと考えればいい。
冴え渡る推理。
勿論USBを開く前から天才上田次郎は全てを察していたわけだが、これで上田の考えの正しさが証明されたのだ。
褒め称えてくれる人間がこの場に一人もいないのがとても残念だった。
上田が席を立って他のパソコンを調べてみると、残る七人のUSBも見付かった。
首輪が壊れたのか対象が死亡したのかの区別はつかないものの、音声データの保存は既に終わっていた。
上田はUSBを全て抜き、ケースの窪みに慎重に填めていく。
その途中で幾つかの外付けハードディスクを発見した。
こちらには会場中に仕掛けられた監視カメラの映像ファイルが入っているようで、USBと同じく保存は終了している。
上田はUSBを収めたアタッシュケースと共に、それらのハードディスクを自分のデイパックに放り込んだ。
更にデスクに戻り『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページの中を巡る。
管理者としてログインしている間なら、他にも新しい情報が得られるのではないかと考えたのだ。
パソコンは上田が知るものより数段上のスペックではあったが、天才の順応速度は目覚ましい。
クリックとブラウザバックを繰り返し、奮闘しているうちに外部サイトと繋がる――どうやらバックアップサポートを行うサイトのようだ。
ホームページ内の文章を全てテキストファイルとして保存出来るらしい。
上田は慌てて机の中を漁り、表面に何も書かれていないUSBをパソコンに接続した。
幸い新品のようで、中は空っぽだ。
ダウンロード先としてこのUSBを選び、保存。
画像のバックアップまでは取れないようなので、詳細プロフィールに貼られた写真は全て手作業で同じUSB内に保存する。
これで参加者の動向や詳細な経歴も手に入れる事が出来た。
上田はその後も暫くデスクのパソコンに触れ、一応他のパソコンからも操作してみたが、大きな収穫はなかった。
そしてこれ以上血の臭いにむせ返りそうになる部屋に居続ける気にはならず、ここを離れる決意をする。
部屋を出る前に、上田は二十人の死体を移動させた。
幸い死後硬直は始まっていなかったので、一人ずつ仰向けに横たわらせて胸の前で手を組ませる。
そして全員を並べ終えると額の汗を拭い、手を合わせて深々と腰を折った。
上田はジェレミアのUSBの音声ファイルを他にも幾つか開いてみていた。
そこではアイゼルも交えて三人で話をしており、三人共緊張しながらもそれなりに楽しんでいるように聞こえた。
上田も思い返してみれば、例えば沙都子やかなみにフライングボードの乗り方や原理を講義して感謝された時は確かに楽しかった。
この催しでは多くの悲劇が生まれ、五十人以上の死者を出す最悪の結果となったが、しかしそれだけではなかったはずなのだ。
これらのUSBには、こうした「ただの殺し合いではなかった瞬間」が散りばめられている。
一緒に会話したり、食事をしたり、そうしたささいなやり取りも全て収められているのだ。
ここで死んでいるのは殺し合いに荷担した者達、そう思えば恨んで然るべきなのかも知れない。
しかし彼らが丁寧に保存作業を行っていたお陰で、上田は記憶デバイスを手にする事が出来た。
その事を、やはり感謝せねばならないと思った。
如何に天才と言えど一人で生きているわけではなく、他者への感謝を忘れるようでは真の天才とは呼べまい。
そしてUSBの入ったデイパックを胸の高さまで持ち上げ、語りかける。
「これらは私が責任をもって持ち帰る。
安心するといい」
上田が会場で多くの出会いを経験したとは言え、中には会話をする間もなく別れてしまった者やそもそも出会えなかった者もいる。
しかしこれらの情報があれば、知る事が出来る。
この殺し合いに関わらなかった者達にも伝える事が出来る。
彼らの人となりを、彼らの生きた証を残す事が出来る。
――或いは優勝して、他の六十四人の存在を忘れてしまうかも知れないんだから。
V.V.はそんな事を書いていたが、上田に言わせてみればくだらない話だった。
例え上田がこのまま誰とも再会出来ず、たった一人で生還する事になってしまったとしても、忘れるはずがない。
誰よりも優れ秀でた脳を持った上田が、あんなにも濃い個性をした者達をどうして忘れられるというのか。
「YOU達もそう思うだろう?
ハッハッハ」
500 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:38:42.47 ID:WBAVjtKc
501 :
C'MON STRANGE POWER
◆.WX8NmkbZ6
:2013/09/11(水) 23:39:51.62 ID:+qCZQ5cr
わざとらしく笑い、拳を天井に向かって突き上げて高らかに宣言する。
どーんと来ーい。
誰も応えてくれない呼び掛けは、やはり虚しかった。
冷ややかな視線でも、無いよりずっといい。
早く誰かと合流しようと思った。
【二日目/午前/???(パソコンルーム)】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0〜2)、
上田次郎人形@TRICK、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、USB収納済みアタッシュケース、大容量記憶ハードディスク、
バックアップデータ入りUSB、ライの遺書
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:誰かと合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※ホームページ内の情報を一通り閲覧しました。
502 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/11(水) 23:41:10.87 ID:WBAVjtKc
503 :
◆Wv2FAxNIf.
:2013/09/11(水) 23:42:01.01 ID:+qCZQ5cr
投下終了です。御支援ありがとうございました。
誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
なお先月の2ch情報漏洩に際し私のトリキーも拡散されてしまったようですので、以降はこちらのトリップを使用させて戴きます。
504 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/12(木) 00:25:13.79 ID:JsvuZZAb
乙ですー
この人はなんでこうも自意識過剰でなおかつ何回気絶するのか…w
神に愛される存在だから仕方ないね
自分が交流を持った人だけでなく出会えなかった知り合いや他人にもそれぞれのドラマがあったんだよなぁ。
当事者やそれを伝聞した者が死んでいく程、彼らが何を考え動き交流を持ったかという証がどんどん消えていくんだよなー
そんな中で会場の65人、一人ひとりがあがき奔走したのだということを知る証人という大役を任された…!
上田先生の単独予約ながらも、「ハカナキ者達の宴」「Re:turn」と続いて、
「生きている自分が心に留める」SSとなっていて感慨深い!
505 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/12(木) 00:35:09.58 ID:oIipD70D
投下乙です!
おお、ここ最近の超常バトルのせいか他のキャラに比べると相対的に出番が薄めだったうえだ先生が一気に……!
しかし先生の自信と自分大好きっぷりはどこから湧いてくるんだ……w
これで上田先生にも明確な役割が出てきて俄然続きが気になってくるぜ!
506 :
◆Wv2FAxNIf.
:2013/09/12(木) 01:07:02.98 ID:5c5+v6Mx
誤字を見付けたので、Wiki収録時に訂正致します。失礼致しました。
>>497
> ジェレミアの死は第六回放送前。
→ ジェレミアの死は第五回放送前。
507 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/23(月) 23:22:21.83 ID:yJVODxSw
今日が多ロワ5歳の誕生日だときいて。5周年おめでとうございます
13スレ目の60に応える形で
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0251.png
508 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/24(火) 01:43:42.00 ID:2YyGu/g/
支援絵乙です!
なぜベストを尽くしてしまったのか
509 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/24(火) 17:01:06.14 ID:H1UUIQB/
支援絵乙……上田ァ!!!!
510 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/28(土) 23:09:42.51 ID:4RxLiIkZ
上田先生もついにラスト直前まで残ってしまうとは…w
5年かぁ
511 :
創る名無しに見る名無し
:2013/09/30(月) 16:52:28.86 ID:I0CnZZy4
絵を見た感じだと上田先生が一番強く見える
512 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/02(水) 00:26:07.34 ID:iT6Id3Th
なんか三人とも仲良さそうで笑える
513 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/09(水) 14:34:07.75 ID:i8ukdQlY
本予約だああああああああああああ!!!!!!
514 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/09(水) 23:00:16.23 ID:7q0f1Rxf
てすてす
515 :
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:33:39.40 ID:jQ2D6Xxu
二ヶ月もお待たせして申し訳ありませんでした。
これより予約分の話を投下します。
516 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:34:01.99 ID:G96NNXuS
�C
517 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:34:17.81 ID:I5Zg9Q9Z
sien
518 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:34:49.78 ID:niDNiXto
519 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:36:23.81 ID:niDNiXto
520 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:36:33.55 ID:jQ2D6Xxu
何処までも続く白。
天井も、壁も、床も存在しない、あらゆる常識から逸した空間。
しかしそこに立つこともできれば、歩くこともできた。
それを証明するように、黒い革製のブーツで白を踏み締める男が一人。
主を遊戯の最後の出演者の一人――――志々雄真実だ。
「ふぅ……」
シャリッ、と音が響く。
志々雄が手に持った林檎に齧り付いたのだ。
酸味と甘味が程よく調和した果汁が、心地良い食感と共に口腔内を広がる。
食事を始めたことに深い意味は無い。
強いて言うなら『腹が減っては戦はできぬ』という諺に従ったまでだ。
果実が腹を満たしていく中、志々雄はあの日の出来事を思い出していた。
あの日――――地獄の業火が全身を焼き尽くした日。
皮膚は溶け落ち、肉は爛れ、その身体は二度と見れぬ醜悪な姿へと変わった。
普通の人間なら間違いなく死んでいる。
下手人である維新の狗共ですらそう判断したが、志々雄は炎の中より生還した。
原初の時代から人間が恐れてきた炎ですら、幕末の悪鬼を殺すには至らなかった。
それどころか志々雄は炎を屈服させ、自由自在に操るまでになっていた。
あの日、自分が生還できた理由を考えたことがある。
そうして出した結論は、己の欲望が炎すらも上回ったからだった。
普通の人間であれば、全身を焼かれた時点で己の生を諦め、物言わぬ肉へと成り果てただろう。
だが、志々雄は肉体を業火に焼き尽くされても生を捨てなかった。
仲間すら危険視する巨大な欲望と政府への復讐心を滾らせ、志々雄は炎を喰らい尽くした。
だからこそ、今もここに立っている。
欲望という炎をその身に宿し、最後の戦場に立っている。
この場所は、V.V.が殺し合いの開催を宣言した空間。
それを意識したわけではないが、最後の戦場が全てが始まった場所というのは風情があって悪くない。
V.V.の説明によると、ここはラプラスの魔が作成した特殊な空間だそうだ。
生き残っているのは九人。
参加者の六十五人とその他の八人を加えると合計で七十三人。
殺し合いの参加者は、八分の一以下になるまで淘汰された。
志々雄が掲げた欲望の答えが、すぐ近くまで来ている。
残った八人を殺すだけで、全てが終わる。
そして、全てが始まるのだ。
扉が、開く。
白い空間内にぽつんと聳え立った木製の扉。
端から見れば奇妙であるが、もはやこの世界に常識など存在しない。
下品にならない程度の装飾が施され、黄金のドアノブが取り付けられている
成人男性の平均身長よりも僅かに高い長方形のそれは、この空間と第二会場を繋ぐ扉だった。
「……テメエかよ」
不服とでも言うように眉を顰める来訪者。
それでも敵愾心を剥き出しにし、左の目で鋭く志々雄を見据えていた。
コツン、コツンと足音が響く。
右の目が潰れているにも関わらず、その足運びに淀みはない。
志々雄の十メートル程手前に辿り着くと、来訪者は静かに足を止めた。
521 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:37:22.48 ID:G96NNXuS
�C
522 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:38:21.17 ID:jQ2D6Xxu
「それはこっちの台詞だぜ、ヴァン」
来訪者――――ヴァンを見て、同じように志々雄も吐き捨てた。
ヴァンと志々雄真実。
殺し合いの共演者である二人だが、その間に深い因縁は無い。
顔を合わせた回数も少なく、碌な会話も無かった。
強大な力を持つシャドームーンや狭間、幾度となく顔を合わせてきたクーガーに比べ、志々雄の中のヴァンに対する興味は薄い。
ヴァンも自身が首輪解除に利用されたことを知っていたが、わざわざ言及するつもりも無かった。
「最初に戦うなら、魔人皇か世紀王が良かったんだがな」
「もうV.V.は死んだ、殺し合いは終わったんだ」
気怠そうに溜息混じりの声でヴァンは告げる。
「あぁ? そんなもんとっくの昔に知ってるぜ、もう主催の連中は一人も残ってねぇ」
「なら、戦う理由は無いだろ」
「理由だと? ハッ、笑わせるなよ。
男が、人間が、生物が戦うのに理由なんか要らねぇだろ。
俺が戦いを止めると本気で思ってんのか?」
「……だろうな」
端から期待していなかったのか、ヴァンの語調にさしたる変化はない。
希薄な付き合いでも理解できるほど、志々雄の中にある闘争本能は明確なのだ。
「分かってんなら最初から聞くなよ」
「うるせえ」
「初っ端がアンタってのは些か不満だが、準備運動にはちょうどいいってもんだ」
「その言葉、そっくり返させてもらうぜ」
ヴァンにとって、全ての終着点とはカギ爪の男への復讐だ。
緑の人形も、黒の暴龍も、銀の月も、所詮は通過点に過ぎない。
「言ってくれるじゃねぇか」
軽口を叩きながら、腰に蓄えた剣に手を伸ばす志々雄。
合わせるように、ヴァンも蛮刀を構える。
もはやそこに言葉が介在する余地はない。
必要なのは、力のみだ。
――――カシャ、カシャ、カシャ、カシャ
闘争を遮るように響く足音。
これの正体については今更語る必要もない。
圧倒的な恐怖を以って、太古の時代から人間達を支配してきたゴルゴムの使者。
この殺し合いにおいても、多くの者に死と絶望を振り撒いてきた魔王。
世紀王・シャドームーン。
「くくっ、本命の御出座しってわけか」
だが、彼らに恐怖などない。
志々雄は薄く笑い、ヴァンは目を鋭く細める。
彼らにとってシャドームーンとは、己が倒すべき相手だからだ。
唯一の出入り口である木製の扉に視線を注ぎながら、それの登場を待ち構える二人。
523 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:39:19.88 ID:kIyzUImo
支援
524 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:40:07.08 ID:G96NNXuS
�C
525 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:40:53.29 ID:jQ2D6Xxu
――――だが、魔王は彼らの想像を超えていた。
白に描かれる亀裂。
その両端に掛けられたのは銀の指。
天地が鳴動し、轟音が世界を揺り動かす。
雷鳴のような音と共に、亀裂は左右に広がり始めていた。
「おいおい」
呆れ混じりに苦笑する志々雄。
摩訶不思議には馴れたつもりだったが、目の前の出来事には驚くほか無かった。
一見するとどの異端も無秩序に見えるが、それらにはそれぞれのルールが存在する。
例えばこの白い空間は、木製の扉からしか出入りできない。
しかし、目の前の光景にはそれがない。
他の異端に存在するルールを無視し、全ての道理を自分に従わせようとしているのだ。
見る見るうちに亀裂は広がり、やがて半径一メートルほどの穴へと変わる。
そして、銀の月が戦場を照らした。
「随分とけったいな登場じゃねぇか」
最後に相対した時と比べ、シャドームーンが身に纏う威圧感は段違いに濃さを増している。
翠緑の薄い光が彼を包み込んでいるようにすら見えた。
実際に見えるわけではない。
シャドームーンから溢れる威圧感が、他者の視界にすら影響を及ぼしているのだ。
例えるのならば一流の剣客が身に纏う剣気。
銀の甲冑、緑の複眼、黒の突起、紅の魔剣。
姿形に変化はないが、中身は今までと別物だった。
「貴様の剣が私を呼び寄せたのだ」
シャドームーンが指差した先にあるのは、志々雄の操る魔剣・ヒノカグツチ。
創世王を取り込んだことで、シャドームーンが会得していた空間干渉能力はさらに増大している。
nのフィールドに侵入し、ヒノカグツチから漏れる魔力を辿ってここを探し当てたのだ。
「俺を探してたのか? 光栄だとても言うべきかね」
「一つ聞かせてもらおう」
志々雄の軽口を意に介さず、シャドームーンは言葉を放つ。
「主催の者共が全員死んだというのは本当か」
脳を直接鷲掴みにされるような低い声。
常人ならその場で卒倒しかねないが、志々雄は笑みを深くするだけだった。
「ああ、その通りだ。
V.V.も、鷹野三四も、薔薇水晶も、ラプラスの魔も、ついでに武田観柳も死んだ。
V.V.が殺しちまったから、雑兵一匹残ってねえだろうな」
質問の意図を理解し、狡猾に笑う志々雄。
彼の知る範囲では主催側の生き残りは一人もいない。
鷹野や観柳といった幹部はもちろん、雑用を担当していた下っ端も消滅した。
526 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:41:49.81 ID:niDNiXto
527 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:42:33.22 ID:jQ2D6Xxu
「そうか、つまり貴様達と交わした仮初の協力は終わったわけだ」
シャドームーンと狭間が交わした契約の主な内容は二つ。
狭間がシャドームーンの首輪を解除することと、主催者の打倒にシャドームーンが協力すること。
これが果たされるまでは、互いに危害を加えることは禁じられていた。
だが、それは果たされた。
全ての首輪は解除され、主催陣営は全滅した。
つまり、契約は最終段階へと移行する。
「確か、V.V.をぶっ殺したらお前と決着を付けるんだったな」
蛮刀を一旦収め、懐からナイトのデッキを取り出すヴァン。
先の戦闘で力の出し惜しみが無意味と分かっているため、最初から全力を出す。
志々雄も同じようにリュウガのデッキを構えた。
「最終決戦ってわけか、面白くなってきたじゃねぇか」
カードデッキを前方に翳すと、両者の腰にVバックルが出現する。
この空間はミラーワールドに近い性質を持っているため、鏡面を介さずとも変身することができた。
「「変身!」」
掛け声と同時にデッキを装填。
幾重にも虚像が重なり、二人を漆黒の戦士へと変身させる。
ヴァンが変身したのは仮面ライダーナイト。
志々雄が変身したのは仮面ライダーリュウガ。
それぞれ幾つもの激闘を潜り抜け、最後の戦いに参加する資格を得た戦士だ。
「それじゃあ精々楽しませてもらうぜ、世紀王さんよ」
「私は世紀王を越えた、今は創世王だ」
「はっ、そうだったな!」
三人の戦士は同時に剣を抜いた。
☆ ☆ ☆
――――俺、子供嫌いなの知ってるでしょ?
北岡秀一がそれを自覚したのは何時の頃だっただろうか。
気が付いた時には、嫌いになっていたとしか覚えていない。
喧しいから、汚いから、暴力を振るってくるから、理由は簡単に列挙することができる。
しかし、今になって気付かされる。
本当の理由は別にあったことに。
528 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:43:11.72 ID:G96NNXuS
�C
529 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:43:19.37 ID:I5Zg9Q9Z
sien
530 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:43:42.83 ID:niDNiXto
531 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:44:11.54 ID:jQ2D6Xxu
「……つかさちゃん」
子供が嫌いだった本当の理由は、どうやって接すればいいのか分からないからだ。
大人の相手をするのは簡単だ。
金か権力があれば、大抵の相手は尻尾を振ってくる。
容姿にも話術にも恵まれている北岡にとって、大人ほど扱いやすい存在はない。
だが、子供は相手となれば話は変わる。
大人は理屈で押さえ込むことができるが、子供はそうは行かない。
逆上したり、泣き喚いたり、感情を剥き出しにしてくる。
そうなってしまった場合、北岡にはどうすることもできない。
それでも大抵の状況は無視できるし、いざという時は由良吾郎が何とかしてくれた。
しかし今は吾郎も居なければ、無視できる状況でもない。
自分一人の力で、つかさと向き合わなければならなかった。
「私には何も無いんです、お姉ちゃんみたいな立派な夢も、何も……」
嘆きの言葉を漏らすつかさ。
そんな彼女の姿を見て、胸が締め付けられるように痛む。
他人のことなのに、耐えられない程の痛みが心を蝕む。
今すぐ何とかしなければ自分諸共壊れてしまいそうな、そんな痛みだった。
懸命に言葉を探す。
依頼人との打ち合わせでも、裁判の時でも、ここまで本気になったことはなかった。
今まで培ってきた知識と経験、それらを全て駆り出して必死に探す。
スーパー弁護士を名乗るのだから、それくらいは出来て当然のはずだ。
当然のはずなのに、言葉が出てこない。
スーパー弁護士の経験も肩書も、少女の為には何一つ役に立たない。
北岡秀一という存在は、どうしようもないほどに無力だった。
「お姉ちゃんやゆきちゃんと違って頭も良くない、こなちゃんやみなみちゃんと違って運動もできない……」
「ッ……そんなの、関係ないよ」
耳を引き千切って、そのまま逃げ出したい欲望に駆られる。
だが逃げ出せば自分が一生後悔するであろうことを、北岡は深く理解していた。
「五ェ門さんやジェレミアさんみたいに戦えない、錬金術もアイゼルさんみたいに上手く出来ない」
つかさと北岡が出会ったのは、殺し合いが始まってから数時間後だった。
別行動を取っていた時もあるが、殆どの時間を一緒に過ごしている。
時間に換算すればおよそ丸一日、つまりは二十四時間。
決して多いと呼べる時間ではないが、無碍にできるほど少なくもない。
つかさを慰める材料など幾らでも――――
「だから、私が代わりに死んでればよかったんだ」
「ふざけるな!!」
思考が吹っ飛んだ。
「つかさちゃんが代わりに死んでればよかっただって?
俺を、俺達を馬鹿にするのもいい加減にしろよ!」
叫ぶ。
つかさが怯えるように見上げてくるが、そんなことは関係ない。
喉の奥から込み上げてくる言葉を我武者羅に叩き付ける。
532 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:44:14.74 ID:uM1r5/dn
533 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:44:30.36 ID:G96NNXuS
�C
534 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:45:35.98 ID:jQ2D6Xxu
「五ェ門もジェレミアも、つかさちゃんにそんなことを言わせるために戦ったんじゃない!
つかさちゃんのお姉さんや他の奴らだってそうだ!
自分の代わりにつかさちゃんが死ねばよかったって、本気でそう思うのか!?」
今まで全く出てこなかった言葉が、激流のように溢れてくる。
「断言するけどそんなこと有り得ない、絶対だ!
五ェ門は拙者がしっかりしていればって後悔するだろうし、ジェレミアもまた守れなかったって嘆き続けるに決まってる!
つかさちゃんのお姉さん達だって、今のつかさちゃんみたいに挫けちゃうんじゃないのか!?」
「でも、私……何も、出来ないから……」
身体を震わせながら、搾り取るような掠れ声を上げるつかさ。
今まで飄々としていた北岡の豹変に驚いているのだろう。
しかし、それでも声を荒げずにはいられない。
つかさの放った言葉は、それほどまでに北岡秀一という人間の逆鱗を逆撫でしていた。
「つかさちゃんが何も出来ないだって? それこそ謙遜もいいところだよ!
料理してくれたり、リフュールポットを作ってくれたり、他にも数え切れないくらい助けてもらってる!」
「でも、でも、あの時……ジェレミアさんにルルーシュ君のことを言わなければ!」
第二回放送前の総合病院のことだろう。
北岡とつかさは事前に打ち合わせをして、ルルーシュの一件を隠蔽しようとした。
だがジェレミアの懇願に打ち負け、彼女は独断で本当のことを話した。
それが原因でジェレミアと五ェ門が小競り合いを起こし、その影響で襲撃者の対応が遅れてしまった。
「逆だよ」
「え……?」
「つかさちゃんがあの時本当のことを言わなければ、きっと取り返しのつかないことになっていた」
仮にあの場面で取り繕うことができたとしても、公式サイトで参加者の動向を把握できた以上いつかは破綻していた。
そうなった場合、ジェレミアとは決裂していただろう。
そうならなかったとしても、不信感が仲間内に漂うことになる。
そのような空気の中、果たして狭間は他人を信用することができただろうか。
「それだけじゃない。
もしつかさちゃんに会わなかったら、俺と五ェ門はきっと仲違いしてたと思う。
つかさちゃんの正しさに、俺はずっと救われてきたんだ」
五ェ門と北岡はあらゆる意味で正反対の人間だった。
それでいて互いに頑固であり、そのまま進めば衝突は避け切れなかっただろう。
だが、そこにつかさが入ることで彼らは上手く纏まることができた。
つかさを通じて、彼らは分かり合うことができたのだ。
「大体……何も出来てないって言うなら俺の方だ」
ボソッと呟く。
「最初にデッキを盗られて、ようやく取り返したと思ったら浅倉には負けそうになって……。
それで、つかさちゃんに重荷を背負わせた」
まるで懺悔をするように、頭を垂れながら北岡は言う。
大きな背中は老人のように丸まり、普段の余裕を含んだ態度は微塵もない。
535 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:46:12.87 ID:G96NNXuS
�C
536 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:46:31.17 ID:niDNiXto
537 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:47:19.14 ID:kIyzUImo
支援
538 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:47:22.98 ID:jQ2D6Xxu
「これじゃあ何のために五ェ門が死んだか分からないじゃないか!
本当に何も出来ないのは、一人じゃ何も出来ないのは俺の方――――」
そこまで言い掛けて、北岡の言葉は止まった。
目の前の光景に呆然としてしまったのだ。
「そんなこと……そんなことない!」
つかさが、泣いていた。
「北岡さんが何も出来てないなんて、そんなことあるわけない!」
嗚咽を漏らしながら北岡を見上げるつかさ。
その表情はこの世の終わりを嘆くかのように悲壮感に溢れている。
「北岡さんが居なかったら、私、きっとルルーシュ君を殺しちゃった罪悪感でどうしようもなくなってた」
つかさが初めて北岡に会ったのは、ルルーシュを殺害した直後だった。
恐慌状態に陥っていたため、まともに会話することもままならない。
その状況で浅倉が迫ってきていたため、北岡がいなければどうなっていたかは明白だろう。
「確かに今もルルーシュ君を殺しちゃったことはとても辛いです、それに、浅倉さんも……。
でも、北岡さんが私にしなきゃいけないことを教えてくれたから、私はここまで来れたんです」
涙を制服の裾で拭い、つかさはゆっくりと立ち上がる。
「他にもいっぱいいっぱい、北岡さんに助けられてる
だから自分が何も出来ないなんて、二度と言わないでください!」
そして、叫んだ。
その両瞳からは再び涙が溢れ、目は真っ赤に充血している。
彼女の表情はとても悲しみに満ちていて、同時に怒りが溢れていた。
あの呑気で穏やかなつかさが、北岡を相手に本気で怒っているのである。
「はぁ……はぁ……」
肩を上下させながら、つかさは深い深呼吸をする。
泣きながら叫んだため、一気に体力と酸素が不足してしまったのだろう。
無言の時間が続く。
つかさの迫力に気圧され、北岡は二の句を継げずにいた。
「あ、ご、ごめんなさい! 私……北岡さんにとても失礼なことを……」
だが、先に折れたのはつかさの方だった。
さっきまでの迫力は何処へ行ったのだと問いたくなるほどにあたふたし始め、何度も頭を下げている。
その姿は何処にでもいるような女子高生のものだった。
「こっちこそごめん、ちょっと弱音を吐いちゃったよ」
バツが悪そうに後頭部を掻き毟る北岡。
自嘲するように笑いながら、ぼんやりと虚空を見上げる。
539 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:47:37.44 ID:niDNiXto
540 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:47:58.17 ID:G96NNXuS
�C
541 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:48:02.84 ID:jQ2D6Xxu
「つかさちゃんを励ますつもりだったんだけどなぁ……」
「ううん、たくさん励ましてもらいました、おかげで私、立ち上がれました」
対照的に朗らかな笑みを浮かべるつかさ。
その目は真っ赤に腫れていて、涙の跡が今も残っているけれど。
心が限界を向かえていたはずの少女は、いつの間にか己の脚で立ち上がっていた。
「ま……それなら良かったかな」
力なく笑う北岡。
どんな形であれ、つかさが立ち直ってくれたなら満足だ。
「そう思わないと、やってらんないよ」
つかさに聞こえないように小声で言う。
正直なことを言えば、今にも逃げ出したいほどに恥ずかしかった。
こんなところを誰かに見られたら、二度と立ち上がれないかもしれない。
北岡自身も気付かぬうちに心を病みつつあった。
彼は大人であり、ここに来る以前も死と隣り合わせの環境にいたためつかさに比べれば耐性はある。
それでも命の重みがゼロになるわけではない。
五ェ門やジェレミアの死、そしてつかさに二度目の殺人を犯させたこと。
これらの要因は、じわじわと北岡の心を擦り減らていたのだ。
「つかさちゃんさ、ジェレミアの仮面を貰ってたよね?」
しばらく無言が続いた後、唐突に北岡は問い掛ける。
つかさは首を傾げながらも「はい」と肯定し、デイパックの中からオレンジ色の仮面を取り出した。
「その仮面を持ってるのはいいけど、着けようとは思わないでね」
「どういう……ことですか?」
「仮面を被っても、その人にはなれないんだよ」
北岡の発言の意図を測りかねているのか、つかさは難しい表情をしている。
「どんなに取り繕ったって、結局のところ自分は自分なんだ
つかさちゃんはジェレミアにはなれないし、お姉さんにもなれない
それどころか仮面を着けていると、だんだん自分の顔が分からなくなっていくんだ」
仮面ライダーとして戦っていた当初、北岡は誰よりも強かった。
不意打ちや騙し打ち、一方的な遠距離攻撃などあらゆる戦法を駆使した。
しかし、誰一人として殺せなかった。
いつの間にか真司や蓮と馴れ合うようになり、王蛇やタイガに追い詰められることも増えてきた。
病気のせいだと言い聞かせてきたが、実際は違う。
きつく着けていたはずのゾルダの仮面が剥がれ、北岡秀一という人間に戻りつつあったのだ。
「最後には自分が本当にやりたいことをやるしかないんだ
たった一つの命なんだから、出来もしない他人の真似をするなんて馬鹿のすることだよ」
湿った溜息を吐き、北岡はつかさの顔をゆっくりと見下ろした。
「それに他の人の真似なんかしなくたってさ、つかさちゃんは十分魅力的じゃない
あのビーフシチュー、とっても美味しかったよ
調理師になりたいんでしょ?
今のうちからあれが作れるなんて、将来は絶対三つ星シェフだね」
スーパー弁護士の俺が言うんだから絶対だよ、と付け加える。
542 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:48:49.06 ID:jQ2D6Xxu
「そうですか? えへへ、嬉しいな」
「でも、八十点くらいかな」
「え、えぇ!? 何でですか?」
「俺はもうちょっと濃い目の味が好きなんだよ
あ、そうだ。これが終わったら吾郎ちゃんに料理を習ってみたらどうよ?」
「えっと、どなたですか……?」
「あ、ごめん、まだ紹介してなかったね
吾郎ちゃんは俺の秘書をやってくれてるんだ、料理も洗濯も掃除もボディガードもできちゃうスーパー秘書だよ
俺の好みを知り尽くしてる吾郎ちゃんに教われば、つかさちゃんも俺好みの料理をマスターできると思うよ
何なら俺直属のシェフでもやってみない? つかさちゃんなら歓迎するよ」
「え……えっと……考えておきます」
つかさは曖昧に笑いながら、視線を逸らすように下に向けた。
「こんな時にナンパですか? お熱いですねぇ」
と、ここで狙ったようなタイミングで新たに人物が登場する。
「クーガーさん!」
何よりも速さを信条とする粋でいなせな男、ストレイト・クーガー。
トレードマークだったサングラスは無くなり、制服は血に塗れているが、それでも彼は笑みを浮かべている。
とても意地の悪そうな、満面の笑みを。
「……何時から見てたのよ」
「さぁ、何時からでしょうねぇ」
「覗きは女の子に嫌われるよ? あ〜ヤラシイヤラシイ」
「三十路越えのおじさんが女子高生をナンパするのも相当ヤラシイと思いますよ?」
「お、おじさ……大体あれはナンパじゃないからね、つかさちゃんの料理が食べたいだけだよ」
「ほぉ〜、貴方にそこまで言わせるなら俺も食べてみたいですな、ってわけでつばささぁ〜ん!!」
「ええええ!? 今から料理ですか!?」
突然矛先を向けられたからか、つかさは慌てふためいている。
その姿にかつての陰りは存在しなかった。
――――彼女がとっくに忘れているかもしれない一つの事実。
些細だけれど、とても大事なきっかけ。
つかさが外国人に絡まれていたところを、こなたが助けた。
それが彼女達の馴れ初め。
この出会いを介して交流が始まり、こなた、つかさ、かがみ、みゆきの四人組が生まれた。
そこからさらに輪が広がり、今の彼女達の交友関係がある。
ゆたかが、みなみが、ひよりが、パティが、みさおが、あやのが、ゆいが、ななこが知り合ったのも。
ある意味では、この出来事が発端と言える。
この幸運があったからこそ、彼女達の星は輝き始めたのだ。
かがみやみゆきのように頭は良くないかもしれない、こなたやみなみのように運動は出来ないかもしれない。
しかし、つかさには人と人を結び合わせる力がある。
誰に対しても分け隔てなく接する力こそ、彼女が元来から持ちえる星だった。
543 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:48:52.08 ID:G96NNXuS
�C
544 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:48:53.37 ID:uM1r5/dn
545 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:49:09.18 ID:niDNiXto
546 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:49:22.08 ID:eUEs7kLb
支援
547 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:49:39.75 ID:jQ2D6Xxu
「っと、何時までもこんなことはしてられませんね」
最初に切り出したのはクーガーだった。
「そうだな、そろそろどうするか決めないと」
「とりあえず伝えなければならないことがあります
さっき立ち寄った部屋に、V.V.の死体がありました」
死体と聞き、つかさは僅かに肩を震わす。
殺し合いの首謀者たるV.V.の撃破は、北岡達にとっては本懐だったはずだ。
だが、既にそれが果たされているらしい。
「でも、殺し合いは終わってないよ」
「まだ黒幕が残っているか、あるいは主催者が居なくなっても殺し合いは止まらないのか……」
「どっちにしても、あの志々雄が戦いを止めるとは思わないけどね
それに主催者が全滅したなら、またシャドームーンが敵に回ることになる」
事態は悪化し、一刻を争う状況になっている。
これより先、待ち構えているのは血に濡れた道。
戦わなければ生き残れない地獄だ。
「……つかさちゃん、話を聞いて欲しい」
ネクタイをきつく締め直しながら、北岡はつかさに向き直る。
「今まで散々助けてもらっといて難だけどさ
これから俺達がやる戦いは、つかさちゃんが活躍できる場所じゃないと思う
だから、出来るなら安全な場所に隠れていて欲しい」
王蛇やランスロットも強敵だったのは間違いない。
しかし、志々雄とシャドームーンは次元が違う。
主催者の恩恵を授かっている志々雄はもちろん、シャドームーンの強さは今更説明するまでもない。
これ以上つかさを危険に曝すことはできなかった。
「つかさちゃんが役に立たないってわけじゃないよ。でもつかさちゃんが活躍できるのは戦場じゃない」
「……ありがとうございます、こんな時にまで優しいんですね」
つかさに優しいと言われるのは二度目だ。
あの時も悪い気はしなかったが、今度はさらに忌避感が減っている。
五ェ門やつかさの影響でお人好しになってしまったのだろうか。
「でも、私も行きます」
「……本気?」
呆れ半分に北岡は尋ねる。
「はい、北岡さんの話を聞いて、私もやりたいことが見つかりました
他の人の真似じゃない、私自身が本当にやりたいことです」
つかさの目からは危うさが消え、確固たる意思と覚悟が光っている。
その目を北岡は今までで二回見ていた。
浅倉を倒しに行く直前と、ランスロットとの戦闘の最中。
こうなった時のつかさが頑固で譲らないことを、北岡はよく理解している。
548 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:49:58.84 ID:G96NNXuS
�C
549 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:50:38.08 ID:niDNiXto
550 :
叶えたい願い-柊つかさ
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:50:42.88 ID:jQ2D6Xxu
「ま、そう言うと思ってたよ
それにあの契約に従うなら、最終的に全員で戦わなきゃいけないみたいだからね
だったら一人で隠れてるよりも、俺達と一緒に居た方が安全か」
シャドームーンと狭間が交わした契約によれば、最終的に生き残り全員とシャドームーンが戦わなければならない。
つかさが一人で逃げたところで、自分達が敗北すれば意味はない。
もはや自分達は一蓮托生と呼べる段階まで来ているのだ。
「じゃあそろそろ行きますか」
会話が終わったのを見計らい声を掛けるクーガー。
北岡とつかさは首肯すると、彼は素早い動きで部屋の出口へと向かった。
「なぁ、クーガー、一ついいか?」
「何です?」
廊下へと繰り出してしばらくした後、北岡はクーガーの隣に並ぶ。
「アルターだっけ、それの影響で長くないってホントなの?」
公式サイトへの侵入に成功した際、全ての参加者の経歴や動向を頭の中に叩き込んでおいた。
その中で気になったのが、クーガーの寿命が長くないという事実。
不治の病に侵されていた北岡にとって、同じような立場の人間が居たことは奇妙な繋がりを覚えさせた。
「ええ、色々と生き急いじまいましたからね」
「怖くないの?」
「怖い、ですか。今まで考えたこともなかったですね」
あっけらかんとした様子のクーガーに、北岡は疑問を抱く。
北岡の病は進行性のものだが、クーガーのアルターは使用しなければ寿命が削られることはない。
その気になれば、普通の人生を送ることもできただろう。
「怖いって言うなら、俺は死ぬことよりも何も出来ないことの方が怖い
俺の速さを証明するためなら、命だって燃料にして走り続けますよ」
ニヤリと笑うクーガー。
「そっか」
そんな彼を見て、北岡は短く返事をした。
☆ ☆ ☆
551 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:51:04.24 ID:G96NNXuS
�C
552 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:51:33.65 ID:uM1r5/dn
553 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:51:52.28 ID:niDNiXto
554 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:51:59.29 ID:jQ2D6Xxu
――――GUARD VENT――――
虚空から現れたダークウイングはナイトと合体し、大きな黒翼へと姿を変える。
間髪入れずに黒翼を広げ、空中へ飛び上がるナイト。
直後、彼のいた場所を緑色の雷光が通過する。
シャドームーンが光線を発射し、すんでのところで空中に避難したのだ。
空中に逃げたナイトを狙おうと、左腕を上空へ翳すシャドームーン。
その瞬間を狙い、リュウガが迫る。
シャドームーンの左側面から忍び寄り、胴体へヒノカグツチを振るう。
間合いの外にある以上、サタンサーベルで受けることは不可能。
シャドームーンと云えど、その攻撃は甘んじて受け入れるしかない。
「無駄だ」
それは過去のシャドームーンならの話だった。
左腕を浅く曲げ、肘の備わった突起・エルボートリガーでヒノカグツチを受け止める。
たったそれだけの動作で、一流の剣客である志々雄の斬撃が受け止められる。
今のシャドームーンは世紀王ではなく創世王。
岩石すらも容易く砕くエルボートリガーは、今や鋼鉄すらも粉砕する凶器と化していた。
エルボートリガーだけではない。
強化装具・レッグトリガーも、万能眼球・マイティアイも、金属外皮・シルバーガードも、人工筋肉・フィルブローンも。
シャドームーンのありとあらゆる装備は、今までとは比較にならないほど力を上げている。
「チィッ!」
舌打ちするリュウガ。
身体を左方向に向けたシャドームーンが、右脚で膝蹴りを繰り出してきたのだ。
咄嗟に背後へと退避するが、完全に回避することは出来ない。
蹴りは腹部に掠り、それだけで彼を数メートル跳ね飛ばした。
その隙を突き、今度はナイトが攻勢に移る。
突撃槍・ウイングランサーを構え、空中から滑空するナイト。
勢いをつけたその一撃は、背後からシャドームーンの首筋を狙う。
「無駄だと言っている」
だが、その一撃はマイティアイに捕捉されていた。
シャドームーンは身体を反転させ、その勢いでサタンサーベルをウイングランサーの穂先に叩き付ける。
拮抗すらせずにナイトは弾き飛ばされ、宙を舞った。
ナイトとリュウガとシャドームーンの三つ巴になるはずだった戦闘。
しかし蓋を開ければ、シャドームーンの独壇場になっている。
――――TRICK VENT――――
空中で踏み止まったナイトは新たなカードを装填。
発動したのは無数の分身を作り出す能力・シャドウイリュージョン。
翼を生やしたナイトが次々と分裂し、上空からシャドームーンを取り囲む。
一見すると有利な状況だが、この分身は虚像であるため相手にダメージを与えることはできない。
そもそもシャドームーンはこの技を何度も見ているため、対処法など知り尽くしている。
両腕にキングストーンのエネルギーを供給し、光線として一斉に放射するシャドームーン。
以前と同様に多くの虚像を消滅させるため、光線は幾重にも拡散して放たれていた。
555 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:52:11.22 ID:eUEs7kLb
支援
556 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:52:30.30 ID:G96NNXuS
�C
557 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:52:57.10 ID:niDNiXto
558 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:53:15.56 ID:jQ2D6Xxu
「ダークウイング!」
ナイトの声が木霊する。
その掛け声で全てのナイトとダークウイングが分離し、迫り来るシャドービームは虚空へと消え去った。
落下しながらカードを抜き取ったナイト達は、一斉にそれをダークバイザーに読み込ませる。
――――NASTY VENT――――
空中を飛行していたダークウイング達が一斉に超音波を放つ。
それはまるで蝙蝠の群れの大合唱。
音と音が共鳴し合い、音波の波状攻撃となってシャドームーンを責め立てる。
分身に実体はないため物理攻撃を行うことはできない。
しかし音は物理的存在ではないため、トリックベントによる一斉攻撃が有効だった。
「貴様……!」
歩みを止めながら、左手で額を抑えるシャドームーン。
無数の分身により増強された音波攻撃は、進化したシャドームーンでも耐えることができない。
視界が潰れるほどではないが、割れるような頭痛に動くことができなかった。
――――FINAL VENT――――
切り札であるファイナルベントを一斉に発動するナイト達。
分身ではダメージを与えることができないが、本体を撹乱するための囮にはなる。
ウイングランサーを構えながら地上を駆け抜け、その背中とダークウイングが再び合体。
ダークウイングが漆黒のマントに姿を変えると同時に真上へ跳躍。
足元に向けたウイングランサーを軸にマントが渦を巻き、ナイト自身が回転する巨大な槍と化す。
槍はシャドームーンの四方八方を囲み、一斉に落下を始めた。
「シャドーフラッシュ!」
シャドームーンの全身を緑色の光が包み込み、膨張するかのごとく破裂する。
あらゆる特殊能力を無効にする影の閃光・シャドーフラッシュ。
身動きを封じられていても、シャドームーンが持つ手札は無数に存在するのだ。
奇跡の石の神秘に触れ、分身達は抵抗する間もなく消滅する。
大量に存在していたナイト達は、あっという間に全滅してしまった。
そう、全滅。
攻撃力を持たないはずのシャドーフラッシュで、彼を囲んでいた全てのナイトが消滅したのだ。
「上か」
シャドームーンの真上から急降下するナイト。
彼こそが本体であり本命、多くのミラーモンスターを屠ってきた必殺の一撃・飛翔斬が発動する。
「シャドーパンチ!」
シャドームーンの左拳に力が集中し、目を突き刺すような輝きを放つ。
その拳をアッパーカットの要領で上空に打ち付け、飛翔斬への対抗手段とした。
十数秒に及ぶ均衡状態。
勝利したのはシャドームーン。
敗北したナイトは、三十メートル以上も上へと跳ね上げられた。
559 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:53:31.83 ID:uM1r5/dn
560 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:53:40.80 ID:G96NNXuS
�C
561 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:54:15.52 ID:jQ2D6Xxu
「何度やっても無駄だ、もはや貴様らには万に一つの勝ち目もない」
「そいつはどうかな!」
シャドームーンが吐き捨てると、その背後からリュウガが姿を現す。
右手を弓なりに振り被ると、その手に握り締めた物体を勢いよく投擲した。
投擲された物体をマイティアイで分析、即座に結果を叩き出す。
半輪の形をした鈍い銀色の金属製物体。
シャドームーンもよく知っている、今まで自身を縛り付けていた忌々しい首輪だ。
「これでも喰らいな!」
リュウガがヒノカグツチを振るうと、その剣先から火炎が迸る。
火炎は真っ直ぐに首輪へ伸び、内部に蓄積された流体サクラダイトに引火。
大爆発が発生する。
爆炎と爆風がシャドームーンを呑み込み、その姿を黒煙の中へと隠す。
リュウガが投擲したのは銭形の首輪。
違反者を処刑するための物である以上、その威力は折り紙つきである。
「これで少しは弱ってるといいがな」
この程度でシャドームーンが死ぬとは思えない。
だが、ここまで小細工を弄して成果が無かったでは流石に笑えないだろう。
カシャ、カシャ、カシャ、カシャ
黒煙の中から現れるシャドームーン。
その鎧に刻まれた傷はたったの二箇所。
手甲に入った罅割れと、胸部の焼け焦げた亀裂。
あらゆるモンスターを葬った一撃も、参加者を縛り続けてきた枷も、創世王の前には無力だった。
「消えろ、哀れな贄よ」
キングストーンが明滅し、サタンサーベルの剣先に高密度のエネルギーが集中する。
シャドービームを発射する体勢であることは疑うまでもない。
リュウガは新たなカードを抜こうとするが、シャドームーンはそれよりも先に動いた。
ただしその行動は、光線の発射ではなく背後への後退。
直後、彼のいた場所を漆黒の双竜が噛み砕く。
「テメエは……」
戦線に復帰したナイトは、上空に出現した新たな闖入者を見て敵意を放つ。
「翠星石じゃねぇか」
漆黒の翼を生やした翠の人形を見て、リュウガは仮面の下でニヤリと笑った。
☆ ☆ ☆
562 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:54:49.80 ID:eUEs7kLb
支援
563 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:54:58.38 ID:niDNiXto
564 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:55:13.02 ID:G96NNXuS
�C
565 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:55:20.54 ID:jQ2D6Xxu
結局のところ、翠星石に残された道は最初から一つしか無かった。
戦いたくない。
けれども、ひとりぼっちになりたくない。
周りに誰もいない状態で、翠星石は生きていくことができない。
蒼星石と、真紅と、水銀燈と、雛苺と、真司と、新一と、劉鳳と、皆と一緒にいたい。
だから、戦うしかない。
戦いたくないけれど、戦うしかない。
他の全員を殺して、最後の一人になって、願いを叶えるしかない。
そうすることでしか、奪われたものを取り返せない。
戦わなければ、生き残れない。
鏡の中に飛び込む。
nのフィールドから直接探した方が早いと思ったからだ。
しかしその判断とは裏腹に、彼女の足取りは遅い。
両足に鉄球の付いた枷を嵌められているかのように鈍重である。
いや、実際に彼女の足には枷が嵌っていた。
足だけではなく、腕にも、胴体にも、解除したはずの首にすら枷が嵌められている。
今の彼女は罪悪感という枷で雁字搦めにされていた。
身体がどうしようもなく重い。
一歩進むだけで、全身が軋むように痛む。
それは体の痛みではなく心の痛み。
かつてのつかさがそうだったように、精神が肉体に及ぼす影響は存在する。
身体が丈夫だろうと、巨大な力を持っていようと、心が限界を迎えてしまっては意味が無い。
今の翠星石にもはや動けるだけの活力はない。
彼女の心は死んでいた。
それでも、前に進むしかない。
涙を流しながら、重い身体を引き摺って、ひたすら前に進み続ける。
前に進まなければ、枷を外すことはできない。
前に進むことでしか、彼女の罪が精算されることはないのだ。
つかさのように誰かが傍にいれば、翠星石は復活の兆しを見せたかもしれない。
だが、彼女の傍には誰もいなかった。
手を伸ばしても、彼女の手を取る者はいない。
最後まで傍にいたはずの薔薇水晶すら、翠星石を拒絶して死んでいった。
「どうして……どうしてなんでですか……?」
薔薇水晶は自分を利用していた。
彼女は姉妹ではなく、ずっと自分を騙していた。
それに気付いた時、翠星石の心には深い悲しみと怒りが渦巻くようになった。
燃え盛るような怒りと、それ以上に押し寄せてくる悲しみ。
怒らなければいけないのに、どうしてか悲しみが止まらない。
壊れている心の中で、極大の怒りと悲しみが鬩ぎ合っている。
しばらく考え続けたが、やがて避けるように別の思い出へと目を背けた。
――――レディーは人前で涙を見せない、そうですよね、真紅?
かつて、真紅のローザミスティカを受け継いだ時に翠星石が放った言葉。
そう決意したのに、彼女はずっと泣き続けていた。
ミギーが死んだ時も、警察署を離れた後も、水銀燈やLが死んだ時も。
他にも至るところで翠星石は涙を抑えられなかった。
涙を見せないという約束さえ、翠星石は守ることができない。
一度気付いてしまうと、翠星石の中にある自己嫌悪は止まらなくなる。
傍にいたにも関わらず、蒼星石を死なせてしまった。
水銀燈の仇を取ると約束したはずなのに、未だにシャドームーンは生きている。
そして、真司を殺――――
566 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:55:37.65 ID:hyiN197j
支援
567 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:55:43.98 ID:G96NNXuS
�C
568 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:56:10.40 ID:uM1r5/dn
569 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:56:14.45 ID:jQ2D6Xxu
「違う!」
周りで聞いている者など誰も居ないのに、翠星石は己の罪を否定する。
真司を殺したのはシャドームーンでなければならないのだ。
「違う! 違う! 違う! 違う! 違う! 違う! 全部違うッ!!!!」
未だに仇を取れないのは、他の連中が邪魔をするせいだ。
蒼星石が殺されたのは、泉こなたが余計なことをしたせいだ。
涙が止まらないのは、こんな場所にいるせいだ。
全身に付いた枷を投げ捨てるかのごとく、翠星石は何度も何度も叫び続ける。
罪悪感が振り払われ、後に湧いてきたのは途方も無い憎悪。
シャドームーンも、狭間も、ヴァンも、北岡も、つかさも、上田も、クーガーも。
どいつもこいつも邪魔だ。
全員死ねばいい、私が殺してやる。
蔦で縛り付けて、両手両足を鋏でちょん切って、目ん玉を轍で貫いて、口から花弁を流し込んで、最後には翼から作った龍で噛み殺してやる。
「ヒヒ……ヒヒャ……イヒャハハハ……」
翠星石の顔が歪な笑顔に染まる。
その笑顔には、かつてのような快活さは微塵も無かった。
☆ ☆ ☆
「どういう風の吹き回しだ」
「……翠星石は決めたんです」
リュウガの傍に舞い降りた翠星石。
その黒翼を仕舞いながら、亡霊のように生気のない顔を上げる。
「日常を取り戻す……お前らを全員殺すって」
「それで?」
ヒノカグツチを構えたリュウガは、独白する翠星石に問い掛ける。
答える前にシャドームーンとナイトを一瞥し、光の消え失せた目で睨み付ける翠星石。
そうしてリュウガへと目線を戻し、淡々とした声で言い放った。
「だから……お前と契約するです」
契約の申し出を。
全員を殺し、願いを叶えると決めた翠星石。
そのためには一人で戦い続けるしかない。
最終的に生き残るのは一人だし、狭間達と力を合わせるなど論外である。
だが、一人だけ協力できる人間がいることに気付いた。
狭間やシャドームーンと敵対していて、それでいて優勝を目指している人間がいるではないか。
「テメエ、なに考えてやがる!」
「黙るです! テメーよりはまだコイツの方が信用できると思っただけですよ!」
怒鳴り声を上げるナイト。
契約の意味は分からないが、リュウガと手を結ぼうとしているのは伝わったようだ。
570 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:56:22.48 ID:G96NNXuS
�C
571 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:56:57.69 ID:niDNiXto
572 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:57:12.04 ID:jQ2D6Xxu
「それに……どうやらソイツはお前らを裏切ったようじゃないですか!
ぷぷぷっ、いい気味です! そんな奴を信用するからこうなるんです!」
シャドームーンを指差しながら、翠星石はナイトを嘲笑する。
彼女は契約の詳しい概要を知らないため、シャドームーンが謀反を起こしたように見えているのだ。
「いいぜ、力を貸してやる」
そんなやり取りを傍観していたリュウガが、満足そうに宣言する。
「させるかよ!」
契約を妨害するため、ナイトとシャドームーンが同時に動く。
彼らを横目で見たリュウガは、デッキから新たなカードを引き抜いた。
――――SURVIVE――――
リュウガと翠星石を中心に、螺旋状の黒炎が竜巻のように巻き上がる。
炎の防壁に閉ざされ、彼らは立ち止まらざるを得なかった。
「協力できるのは他の連中が全滅するまでだぜ?」
「それで構わねーですよ。最後にはお前もぶっ殺してやるです」
「いい返事だ。それで契約ってのはお前の指輪に接吻するんだったか?」
黒炎が世界を閉ざす中、リュウガと翠星石は言葉を交わす。
「その必要は無ぇですよ。包帯お化けにキスされるなんざ怖気が走るです」
「そうかい、ならどうするんだ?」
「手を貸しやがれです」
翠星石の指示に従い、分厚いグローブに包まれた手を差し出すリュウガ。
差し出された手を小さな両手で触れる翠星石。
二人の手が鋭い深紅色の閃光に包まれる。
「終わったですよ」
いつの間にか閃光は消え、左手の薬指に黄金の薔薇を模した指輪が嵌められている。
これも水銀燈が所持していた力を奪う能力の応用だ。
相手に拒否する意思がなければ、正式な手順を省いて契約を結ぶことが可能になっていた。
そして、リュウガの身体に変化が発生した。
胸部の鎧に龍の貌が現れ、全身の装甲が鋭く尖っていく。
これ自体はサバイブによる変化だが、身体の底から溢れ出る力が前回とは比べものにならない
太陽に匹敵する力が宿るのを、リュウガははっきりと感じていた。
通常の契約は媒介(ミーディアム)となる人間が、人形に力を与えるものだ。
しかし、今回の契約は逆。
契約により繋がったパイプを利用し、翠星石が逆に力を送り込んでいるのだ。
キングストーンから溢れる余剰エネルギーを。
強すぎるその力は彼女に負荷を掛けていたため、志々雄という逃げ場を作ったのである。
さらに媒介を得たことで力の射出口は広がり、翠星石はより安全に大きな力を振るえるようになっていた。
志々雄はキングストーンの力を手に入れ、翠星石は多すぎる力を押し付けることができる。
契約という名に相応しいWin-Winな関係だ。
573 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:57:30.58 ID:G96NNXuS
�C
574 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:57:50.67 ID:uM1r5/dn
575 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:58:31.73 ID:niDNiXto
576 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 00:58:44.93 ID:uM1r5/dn
577 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:59:27.96 ID:jQ2D6Xxu
「これで契約成立ですね」
乾いた声でそう言いながら、リュウガの顔を見上げる翠星石。
何かに気付いたように瞳孔を見開き、縋るように小さな手を伸ばしてくる。
だが、すぐにその手は降ろされた。
一瞬だけ生気が戻ったように見えた瞳は、今は再び暗黒が閉ざしている。
あからさまに不可解な行動だが、そんなものリュウガには関係ない。
何度か掌を開閉し、グッと力強く握り締める。
その装甲は分厚さと鋭さを増したサバイブ形態のものだ。
いや、今の彼はサバイブすら越えている。
その全身はより純度の高い漆黒、その双眸は全てを威圧せんと煌めく深紅。
黒炎の幕が上がり、目の前に二人の敵が現れる。
創世王・シャドームーンと、仮面ライダーナイトに変身したヴァン。
ナイトもサバイブを発動したのか、銀色の装甲は鮮やかなメタリックブルーへと変わっていた。
「さぁ、第二局戦の開幕だ」
愉悦を噛み締めるように、志々雄は高らかに言い放つ。
宣言と同時に疾走するシャドームーン。
人工筋肉・フィルブローンにより瞬発力を利用し、あっという間にリュウガとの間合いを詰める。
即座にサタンサーベルを抜き、横一文字に斬りつけた。
「人間の力など、どこまで行っても無力なことを証明してやる」
「いつまでもデカい面してると痛い目に遭うぜ、王様よぉ!」
サタンサーベルをヒノカグツチで受け止める。
魔剣同士の激突は、周囲のものを全て吹き飛ばすほどの衝撃波を生み出す。
だが、シャドームーンもリュウガも不動。
ナイトが足を止めてしまう衝撃の中でも微動だにしない。
「ッッシャアアァァァ!!」
リュウガの全身が紅い光に包まれ、ヒノカグツチの刀身が灼熱の炎に覆われる。
次の瞬間、少しずつ拮抗が崩れ始めた。
ヒノカグツチの刃が、サタンサーベルを押し返していく。
刃から溢れる炎が、シャドームーンの鎧を焼いていく。
リュウガがシャドームーンを押しているのは明白である。
紅龍の影と契約した仮面ライダー・リュウガ。
選ばれた戦士の進化を促す切り札・サバイブ――烈火――。
所持者の力を大幅に上昇させる炎の魔剣・ヒノカグツチ。
あらゆる奇跡を現実とする太陽の輝石・キングストーン。
それらを操るのは、業火の底より蘇った幕末の悪鬼・志々雄真実。
異世界の神秘を貪欲に吸収し続けた志々雄は、創世王に匹敵する力をその掌に収めつつあった。
「余所見してる暇があるですかッ!?」
ナイトの足元に被弾した羽が地面を抉る。
上空に飛翔した翠星石が、先の戦闘と同じように黒翼から羽の弾丸を射出しているのだ。
だが、今までとは威力も速度も量も違う。
契約により力が安定したことで、翠星石の能力はさらに強大さを増していた。
578 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 00:59:58.43 ID:jQ2D6Xxu
「ヒ〜ヒヒヒッ! 走れ走れです! 翠星石が見えなくなるところまで走るですよぉ!」
サバイブにより上昇した俊敏性を活かし、ナイトはひたすら走り続ける。
羽は彼の足取りを辿るように地面に突き刺さっているが、このまま逃走劇を続けても戦況が好転することはない。
彼女の羽に弾切れなどなく、その気になれば永遠に追い回すことすらできるからだ。
そもそも翠星石は四人掛かりで挑んでも歯が立たなかった相手。
ナイトサバイブに変身しているとはいえ、天と地ほどの実力差が存在するのは確かなのだ。
制空権を握られている状況では万に一つの勝ち目もない。
そう判断したナイトは、デッキから一枚のカードを引いた。
――――ADVENT――――
翠星石よりさらに頭上から現れたのは、両翼にホイールが備わった蒼色の蝙蝠・ダークレイダー。
サバイブの力によって、ダークウイングが進化した姿だ。
ダークレイダーは目にも留まらぬ速度で急降下し、ナイトが飛び乗るとその勢いのまま急上昇する。
「これで同じだな」
「けっ、自分も空を飛べるからって偉そうにすんじゃねぇですよ!」
翠星石の十指から伸びたのは大量の轍――――ではなく茨。
契約者を得たことで能力が強化され、細長かった轍は十分な太さと刺を持った茨へと姿を変えた。
れこそが本来の雛苺の力である。
風を切りながら直進する茨は、あっという間にナイトの間合いを侵略する。
ダークレイダーを絡め取って、地面に叩き付けるつもりなのだろう。
「偉そうにしてんのはお前だろ」
茨が絡み付こうとした瞬間、ダークレイダーは急加速する。
斜め上へと飛翔し、迫り来る茨を回避。
翠星石の頭上へと移動し、彼女に向けて真空の刃を飛ばす。
「……お前もッ、そういう戦い方ですか!」
苦々しく顔を歪め、額の上にバリアを張る翠星石。
真空の刃は障壁に突破できずに消えてしまう。
そのままもう片方の手を伸ばし、今度は薔薇の花弁の群れを吹雪のように飛ばした。
広範囲を一斉に埋め尽くす花弁ならば、ナイトを捉えられると踏んだのだ。
しかしその判断とは裏腹に、ダークレイダーは高速飛行で吹雪を迂回してしまう。
それも当然だ。
ダークレイダーの最高飛行速度は時速950kmであり、速度に限れば完全に翠星石を上回っていた。
―――SHOOT VENT――――
ナイトの左腕に装備されたダークバイザーツバイの両端が開き、弓のような形態と化す。
シュートベント・ダークアロー。
周囲のエネルギーを吸収し、光の矢を連射する射撃武器だ。
「飛び道具は趣味じゃないが、今だけは感謝しないとな!」
弓に充填された光の矢が連続発射され、さらにダークレイダーが真空の刃を飛ばす。
翠星石は咄嗟にバリアを展開するが、襲い来る衝撃は彼女の想像を越えていた。
ダークアローの3000APを実数値に換算すると150t。
さらに狭間のザンダインに匹敵する真空の刃が、全て同時に着弾したのだ。
ガラスが割れるように破片を散らしながら破られるバリア。
殺し切れなかった衝撃は翠星石を襲い、甲高い悲鳴を上げた。
579 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:00:31.08 ID:niDNiXto
580 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:00:33.03 ID:G96NNXuS
�C
581 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:01:10.08 ID:G96NNXuS
�C
582 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:01:54.82 ID:jQ2D6Xxu
「痛ってぇじゃねーですか、このぉ!!」
だが、この程度で翠星石は倒れない。
今の彼女は世紀王の力を有しており、バリアで相殺された攻撃は負傷のうちにも入らないだろう。
踏み止まった翠星石は、怒りを顕にしながら花弁と茨を繰り出した。
その後も似たような展開が続く。
翠星石の攻撃を避け、遠距離から射撃で反撃。
剣が主な武器であるナイトはヴァンと相性が良く、翠星石との実力差を経験で埋めていた。
バリアが無意味と判断した翠星石は回避に専念するが、速度で劣るため全ての攻撃を躱し切ることはできない。
しかし、キングストーンの余剰エネルギーによる防御がある。
これにより技の威力は削がれ、翠星石にまともなダメージを与えることができない。
互いに決め手が無いため、膠着状態に陥りつつあった。
「キャアァッ!!」
光の矢が翠星石の脇腹を掠る。
大した威力はないはずだが、彼女は攻撃が掠るだけでも悲鳴を上げていた。
痛みに馴れていないのか、攻撃されること自体が怖いのか。
どちらにしろ彼女の悲鳴を聞く度、ナイトの脳裏に言葉にできない不快感が過った。
今でこそ敵対しているが、彼女とは肩を並べて戦った仲だ。
成り行き上の共闘だったが、真司の死があるまでは同じ敵を見据える仲間だったのである。
それが今では互いの命を奪い合う敵同士になっている。
かつての仲間だったからといって、手加減をするほどナイトは甘くない。
しかし、不快感を払拭することはできなかった。
「胸糞悪ぃ……」
不快感を噛み殺しながら、ダークアローを発射するナイト。
飛び道具は専門外だが、ここに至るまで大きな失態を犯すことはなかった。
だが、それもここで終わる。
光の矢は翠星石の一メートル以上横をすり抜け、あらぬ方向へと飛んでいってしまった。
「な、に……?」
ナイトが無意識に手加減したわけではない。
彼は右目を欠損していたため、単純に標準を定めるのに失敗したのだ。
飛び道具を扱う者にとって、目の異常は致命的な問題である。
かつてレイ・ラングレンの視力が低下した際、銃の命中率が大幅に落ちたのがいい例だ。
片目で馴れない飛び道具を扱い、空中を駆け回る翠星石を狙うこと自体がそもそも無謀だったのである。
訪れた好機を翠星石は逃さない。
庭師の如雨露を取り出し、内部に満ちた水をナイトへと降り注ぐ。
如雨露から放たれる水は本来なら微量だが、これもキングストーンと契約により大幅に性能が上がっている。
溢れ出た水は小規模の波となり、うねりを上げながらナイトへと襲い掛かった。
ダークレイダーと共に上空へ避難するナイト。
だが、次の瞬間には異常な速度で成長する植物の群れが彼の眼下に迫っていた。
地上に落下した水が複数の植物を生み出し、一斉にナイトへと襲い掛かったのだ。
水と植物による二段構えの攻撃。
押し上げてくる植物を躱すことができず、ナイトとダークレイダーは空に突き上げられる。
声を上げて笑う翠星石。
空中で回避行動を取れないナイトへと、彼女は更に花弁と黒羽を連射した。
――――BLAST VENT――――
ダークレイダーの両翼にあるホイールが高速回転し、そこから竜巻が発生する。
回避行動を取れないが、反撃なら可能だった。
発生した竜巻は羽や花弁を巻き込み、翠星石へと襲い掛かる。
583 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:02:15.73 ID:G96NNXuS
�C
584 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:02:53.06 ID:TUaFdYI0
支援
585 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:02:55.37 ID:jQ2D6Xxu
「けち臭いことすんじゃねぇです!」
花弁や羽は一つ一つが非常に軽いため、竜巻で一斉に吹き飛ばすことが可能だ。
予想外の事態に面食らったものの、翠星石はバリアを展開して竜巻を防ぐ。
この程度の威力では、六つの賢者の石から織り成す防御壁を打ち破ることはできない。
それは、ナイトも理解していた。
「チェエエエエエス!!」
竜巻に乗じて翠星石に接近するナイト。
自らの展開したバリアに視界を遮られ、翠星石は直前までそれに気付くことができない。
ナイトはバリアを足場にして跳躍。
両手でダークブレードの柄を握り、上空からその剣撃を叩き付ける。
竜巻でバリアを消費してしまった以上、彼女に不意の一撃を避ける手段はない。
脳天を斬り付けられた彼女は、劈くような悲鳴を上げながら地上へ落下した。
そして、ナイトはさらに追撃を行う。
落下しながら装填したのは、ファイナルベントのカード。
地上に到達したダークレイダーはその姿をバイクへと変え、落下するナイトを座席に受け止めた。
「悪く思うなよ」
ダークレイダーの機首から青い光線が放射され、翠星石の動きを停止させる。
この光線で相手を拘束し、ダークレイダーで突貫する。
これこそがナイトサバイブのファイナルベント――――疾風斬。
かつての仲間を相手にこれを使うのは憚られたが、翠星石の殺意は本物であった。
手加減している余裕などない。
――――FINAL VENT――――
隕石のように降り注ぐ無数の火炎弾。
前方に視線を移すと、そこにあるのはブラックドラグランザーに騎乗するリュウガの姿。
「その人形を潰されたら俺が困るんだよ」
翠星石の危機を察知したリュウガがファイナルベントを発動したのだ。
龍の姿からバイクへと変形し、ナイトを轢き殺そうと駆け抜ける。
このまま翠星石を轢くことも可能だが、そうしたらリュウガを迎撃することができない。
リュウガサバイブのファイナルベント――――ドラゴンファイヤートルネード。
龍騎サバイブのドラゴンファイヤーストームに酷似しているが、その威力は大きく上回っている。
故にナイトは方向転換し、リュウガとの正面衝突を選んだ。
「バトルホッパーッ!」
続いて、シャドームーンも叫んだ。
この空間にバトルホッパーは存在しないが、それは何の障害にもならない。
シャドームーンが抉じ開けた穴から姿を現すバトルホッパー。
王の呼び付けとあらば、別の次元にいようと駆け付けるのが騎馬の役目だ。
駆け付けたバトルホッパーに飛び乗ると、シャドームーンはキングストーンのエネルギーを全身に巡らせる。
そのエネルギーはバトルホッパーすらも覆い尽くし、王と騎馬は翠緑の光の中で一体化した。
586 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:03:38.26 ID:G96NNXuS
[sage、どなたか新スレの用意をお願いします。]
誰か出来る人いるー?
587 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:04:21.79 ID:eUEs7kLb
支援
588 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:04:50.49 ID:kIyzUImo
支援
589 :
叶えたい願い-志々雄真実
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:04:57.45 ID:jQ2D6Xxu
疾風斬 vs ドラゴンファイヤートルネード vs バトルホッパー。
仮面ライダーの象徴たるバイクによる必殺技。
その頂点を決するための火蓋が切られようとしている。
勝利するのは蒼嵐の騎士か、黒炎の龍牙か、それとも仮面ライダーの宿敵である創世の王か。
ナイトのマントが翼のように広がり、ダークレイダーを包み込む。
ブラックドラグランザーの頭部が持ち上がり、石化効果のある火炎球を吐き出す。
シャドーチャージャーから雷光が迸り、シャドームーンとバトルホッパーは視認できないほどの輝きを放つ。
そして、三者は急加速。
音速をも超越した三つのバイクは一斉に衝突した――――
「――ッ!!」
車体が弾け飛ぶ。
激突による衝撃で大爆発が発生し、その余波で三者は宙に放り投げられる。
三種の絶技による決戦の勝者は――――いない。
しかし、敗者は一人だけいた。
「ぐああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
敗者の口から悲鳴が漏れる。
その正体は、仮面ライダーナイト――――ではなくヴァン。
激突の衝撃でダークレイダーは破壊され、ナイトのデッキも砕け散ってしまった。
彼を敗者に貶めた原因は二つ。
一つ目は火炎弾の妨害で速度が低下していたこと。
二つ目は単純な性能差によるものだ。
疾風斬のAPが8000なのに対し、ドラゴンファイヤートルネードのAPは10000。
それでも十分過ぎる値だが、この瞬間に限っては致命的な差に成り得た。
敗北したヴァンは炎に巻かれながら地面に墜落し、それでもなお地面を転がり続ける。
ようやく停止した時、彼の意識は完全に失われていた。
シャドームーンとリュウガも衝撃が抜けないのか、未だにその場を動くことができない。
そんな中、ぺたりと足音が鳴る。
ヴァンにトドメを刺そうと、翠星石が迫っていたのだ。
「ヒヒッ、いいザマです」
庭師の鋏を見せつけるように振り被る翠星石。
爆発の余波で肌や衣装が僅かに焦げているが、もはやそんなことは関係無かった。
「薔薇水晶の……薔薇水晶の――――」
呟いた言葉は本人の耳にすら届かない。
心の中で眠る蒼星石の魂が冷たくなった気がしたが、今の彼女には関係無かった。
「死ねですううううぅぅぅぅ――――ッ!!」
目を瞑り、翠星石は鋏を振り下ろす。
意識のないヴァンに、それを避ける術は無かった。
590 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:05:30.18 ID:G96NNXuS
�C
591 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:06:28.26 ID:jQ2D6Xxu
「――――衝撃の」
風が、吹く。
「ファーストブリットォォォォ――――ッ!!!!」
そよ風から一瞬で突風に成長した風は、翠星石の手元から鋏を蹴り飛ばした。
衝撃の余波で彼女は吹き飛ばされ、無様に地面を転がる。
だがすぐに立ち上がり、自らを蹴り飛ばした男の名を告げた。
「クーガーッ! またお前ですか」
「はい、俺です」
ストレイト・クーガー。
共闘し、敵対し、今もなお翠星石の前に立ち続ける男。
「翠星石の邪魔をしに来たですか」
「ええ、あなたが本当の自分を取り戻すまで、何度でも邪魔をし続けます」
自らの一回りも二回りも大きな男に見下ろされるが、今の翠星石に怯えはない。
クーガーが自分よりも圧倒的に弱いことを理解しているからである。
虚勢を張っているが、今のクーガーは血塗れだ。
「やめといた方がいいですよ、今のお前じゃ翠星石の邪魔なんて出来っこ無ぇです」
「俺を心配してくれるんですか? 嬉しいですねぇ」
「誰がお前なんかを心配するですか!」
忌々しげに睨み付けると、クーガーは朗らかに笑う。
この期に及んでどうしてクーガーは笑えるのか、翠星石は理解することができない。
彼の制服の左胸の部分には大きな穴が開いている。
そこに刻まれているは翠星石の罪の証。
今は塞がっているが、それでも痛々しい傷跡は残っていた。
「どうして、お前は怒らねぇですか」
「怒らないですか、なにか勘違いをしていませんか?」
クーガーの顔から笑みが消える。
「俺は怒ってますよ
笑いながら誰かを殺そうとする奴に、怒りを抱かないわけがないでしょう」
カズマや劉鳳のように感情を剥き出しにしたわけではない。
しかし、彼らが激昂した時と同様に鉄のような威圧感がそこにはある。
「女性を怒鳴りつけるのは俺のプライドが許さない、だから顔には出さないようにしてるだけです」
かつて一度だけクーガーが同じ顔をしたことがあった。
自らの罪を自覚すらしていなかったシャナに対し、落とし前を付けようとした時だ。
「そ、そんな顔で翠星石を見るなです! お前が……お前が悪いんですッ!
なんで、どうしてシャドームーンの味方になるですか! アイツは真司を殺したのにッ!!」
翠星石の身体から紅の閃光が迸る。
彼女の感情に呼応し、キングストーンの力が噴出したのだ。
592 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:06:47.81 ID:G96NNXuS
�C
593 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:08:00.89 ID:eUEs7kLb
支援
594 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:08:34.41 ID:jQ2D6Xxu
「城戸を殺したのはシャドームーンじゃない、貴女です」
「黙れ! 真司を殺したのは翠星石じゃない! 翠星石が真司を殺したなんてことがあっちゃいけないんですッ!!」
翠星石の手から花弁による花吹雪が放射された。
今までとは桁違いの物量の花弁が宙を舞い、一斉に咲き乱れる。
だが、クーガーは既に別の場所に移動していた。
「死ね! 死んでしまえ! シャドームーンも! 狭間も! お前も!
そうしたら皆は戻ってくるです! お前達が死ねば真司達は戻ってくるですッ!!」
如雨露から水を撒き散らし、クーガーが逃げた先に向かって津波を発生させる。
迫り来る津波を上空に跳躍して避難するクーガー。
その足元から大量の植物が伸び、彼の身体を瞬く間に呑み込んでいく。
上空にいたため回避行動が取れなかったのだろう。
後は植物で絞め殺してしまえばいい。
「貴女は本気なんですね」
根本から消滅していく植物。
消滅したそれは光の粒子に変換され、その内側へと吸い込まれていく。
風が吹いている、と翠星石は思った。
植物が中程まで消えると、淡い虹色の光が周辺一帯を照らす。
その中心にいるのはストレイト・クーガー。
両脚だけではなく、全身が桃色の装甲で覆われている。
後藤との戦いでより鋭さを増し、己を貫くための進化したラディカル・グッドスピードの最終形態。
「なら俺も本気で行きます。全力で、全速力で貴女を止めます」
フォトンブリッツ。
己の命を燃やし、速さへと昇華させる力。
それを纏ったということは、クーガーが本気を出した証だった。
☆ ☆ ☆
「酷い……」
目の前の惨状を目の当たりにして思わず呟くつかさ。
クーガーが離脱した後、彼らが向かったのはヴァンの下だった。
ヴァンの負傷具合は遠目にも理解できたので、一刻も早い治療が必要だと考えたのだ。
だが、彼の状態は想像を絶するほどに酷い。
漆黒のタキシードは引き裂かれ、内側の傷から大量の血液が染み込んでいる。
左腕の関節はあらぬ方向へと曲がり、肋骨は皮膚を突き破って露出。
顔は血と火傷で真っ赤に染まり、片方だけになった眼球ももはや機能していないようだった。
「……ぅ……」
「喋らないでください! すぐに治しますから!」
ヴァンが何かを伝えようとするが、顎の骨が砕けているせいで呻き声にしかならない。
それでも顎を動かそうとするヴァンを制止し、つかさはリフュールポットを使った。
「……すいません」
リフュールポットは全快させるまでは至らなかったが、普通に会話できる程度には彼を回復させた。
595 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:08:52.53 ID:G96NNXuS
�C
596 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:09:24.49 ID:uM1r5/dn
597 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:09:46.00 ID:niDNiXto
598 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:10:12.85 ID:uM1r5/dn
599 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:11:28.37 ID:jQ2D6Xxu
「えぇーっと……」
「俺は北岡秀一、こっちは柊つかさちゃんだよ」
「俺はヴァン、今は無職のヴァンで通ってる」
今更過ぎる自己紹介だが、ここに至るまで彼らはまともな会話を何一つしていないのだ。
「何があったか教えてくれないかな?」
「……あの人形と志々雄が組んで、俺がアイツらに負けた。それでナイトのデッキがぶっ壊れた」
「ナイトのデッキが……予想以上にまずいことになってるな。
つかさちゃん、やるなら早めの方がいいんじゃない?」
戦況が想像以上に悪化していることを知り、北岡は臍を噛む。
ナイトのデッキが破壊され、狭間はまだここに来ていない。
こちらの戦力がクーガーと北岡しか居ないにも関わらず、敵はシャドームーンと志々雄と翠星石の三人。
質でも量でも大きく劣っていると言わざるを得ない。
「アンタ、ここは危ないから早く逃げた方がいい」
上半身を起こしながら、ヴァンはつかさに目を向ける。
敵の力はあまりに強大であり、彼女のような一般人がいるのは危険極まりない。
その判断の下、ヴァンは撤退を進言する。
「それは出来ません、私にはやりたいことがありますから」
だが、つかさは自分から残る道を選んだ。
「そうか」
それだけ言うと、ヴァンは眠たそうに目を擦る。
「なら、さっさと行ってこい」
「はい! 行ってきます!」
自らのやりたいことに向かって走って行くつかさ。
その背中を見送りながら、ヴァンはウェンディのことを思い出していた。
旅の途中から彼女と同行するようになり、いつの間にか世界の命運を賭ける騒動に巻き込まれていた。
彼女に戦う力は無いが、それでも何かをしようと懸命に動き続けていた。
そんなところをつかさと重ね合わせたのだろうか。
「おたくさ」
哀れむような声色で語り掛けてきたのは北岡だ。
まだ居たのかと言おうとして、強烈な眠気に遮られる。
「いいの?」
主語も述語もない、あまりに不明瞭な問い。
「いいから、さっさと行けよ」
だが、ヴァンにはその質問の意図は伝わっていた。
気怠げに返事をすると、北岡は哀れむような視線を送りながら走り去っていく。
その背中を見送ろうとして、身体は崩れ落ちる。
起こした上半身は血の海に沈み、全身から零れ落ちるように力が抜けていく。
ヴァンはあまりに血を流しすぎた。
リフュールポットは外傷を治すことはできても、漏れ出た血液の生成まではできなかった。
600 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:11:30.02 ID:0mentY4/
支援
601 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:11:56.76 ID:G96NNXuS
�C
602 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:13:52.91 ID:TR3ydkcE
支援
603 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:14:02.49 ID:kIyzUImo
支援
604 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:14:14.19 ID:niDNiXto
605 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:14:38.06 ID:jQ2D6Xxu
「エレ――……」
身体に力は入らず、指一本すら動かない。
どうしようもないほどに眠い。
かつて死と直面した時は途方もない恐怖を感じたが、今はただただ眠いだけである。
大切な花嫁の名前を呟こうとして、ヴァンの意識は微睡むように堕ちて行った。
☆ ☆ ☆
散布される花弁や羽がクーガーの機動力を削ぎ、茨や津波が彼の背中を追う。
更に黒竜の顎や植物が上下から襲い掛かる。
一人で数人分の力を操る翠星石は、今や誰よりも多彩な能力を操ることができた。
攻撃も、防御も、補助も、今の彼女に勝る手数を持つ者はいない。
「翠星石さん! 貴女は確かに色々なものを持っている!
情熱も! 気品も! 優しさも! だが、しかし、足りないものが一つだけある!
それは速さだ! 貴女には圧倒的に速さが足りないッ!
貴女は確かに強い! だが速さが無ければその強さに無意味!
どれだけ多彩で強力だとしても、当たらなければ意味は無いぃぃぃぃ――――ッ!!!!」
だが、それらはクーガーには通用しなかった。
翠星石がどれだけ多彩な能力を持っていても、クーガーの速さの前には意味が無い。
花弁や羽が機動力を奪ったところで、彼の速さには誰も追い付けない。
茨や津波が背中を追ったとしても、最速の前ではあまりに遅すぎる。
黒竜の顎や植物が上下から襲ったとして、見てから避けることなど余裕だ。
「なんで、どうして当たらないですか!」
最速で避けてしまえば、防御など必要ない。
クーガーの全速力の前に、翠星石は完全に翻弄されていた。
「クーガーさん!」
攻撃の合間を縫って現れたのは、つかさと北岡の二人。
彼らの姿を視認した翠星石の顔が憎々しいと言わんばかりに歪んでいく。
「お前ら……よくものこのこと翠星石の前に顔を見せれたですね」
翠星石の全身を覆っているのは紅の光。
つまりはキングストーンの光であり、シャドームーンと同等の威圧感を放っているのだ。
Cの世界に刻まれたゴルゴムへの根源的な恐怖が、つかさと北岡の身体を震わす。
「ぷっ、お前ら震えてるじゃねーですか
怖いなら引っ込んでやがれです、そしたらこいつを殺すまでは生かしといてやるですよ」
それに気付いた翠星石は笑いを堪えるように口元を抑える。
つかさや北岡の実力など高が知れており、本気になれば彼らの殺害などあまりにも容易い。
蟻と象が対峙しているようなものだ。
端から勝負になっていない、そもそも視界にすら映ってないのである。
606 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:14:57.28 ID:G96NNXuS
�C
607 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:16:59.11 ID:TR3ydkcE
支援
608 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:17:34.48 ID:jQ2D6Xxu
「……翠星石は引っ込んでろって言ってるですよ、聞こえなかったですか?」
なのに、つかさも北岡も退こうとしない。
戦う力のない人間のはずなのに、彼らは翠星石を見上げている。
震えはいつの間にか止まっていて、その目には確固たる力強さが宿っていた。
「翠星石ちゃんとお話がしたくてここに来たの」
翠星石の目を見ながら、つかさは宣言する。
その表情からは一欠片の恐怖も感じられない。
北岡やジェレミアの後ろに隠れていた少女と同一人物なのだろうか。
ひしひしと伝わってくる覚悟は、まるでシャドームーンと対峙する真司のようだった。
「そんな顔で翠星石を見るなですッ!!!」
翠星石は目を閉じ、代わりに広げた黒翼から大量の羽を射出した。
――――GUARD VENT――――
「やっぱこうなるよね」
素早く変身したゾルダは、巨大な盾・ギガアーマーを掲げてつかさを庇う。
肉厚の盾を突破することができず、突き刺さった羽は全て地面に舞い落ちた。
「攻撃は俺が全部防ぐから、つかさちゃんは翠星石との話に集中して」
ここに向かう道中、北岡はつかさの『本当にやりたいこと』について尋ねた。
その結果飛び出てきたのは、翠星石と話をすること。
最初は正気かと疑った。
今の翠星石が説得に応じるとは思えなかったからだ。
しかし彼女が一度決めたことであるし、クーガーの目的も翠星石の説得だった。
彼だけに任せておくのも心配であり、北岡も翠星石の説得に参加することにしたのだ。
「翠星石ちゃん……辛かったよね」
花弁や羽が降り注ぐ中、つかさは翠星石との対話を続ける。
恐怖がないといえば嘘になるかもしれないが、目の前にあるゾルダの背中は彼女の心からそれを拭い去っていた。
「そんなつもりは無かったのに、城戸さんを殺しちゃって」
「黙れです……」
「味方が誰もいなくなっちゃって、それで――――」
「黙れと言ってるです!!」
上空から無数の茨が伸び、絡み付いて槍と化す。
だがマグナバイザーから大量のエネルギー弾が迸り、茨は中程から真っ二つに折れた。
「知った風な口を聞くなです! 私のことを何も知らない癖に……」
「分かるよ、だって私も同じだから」
翠星石の動きが止まる。
「私も、人を殺しちゃったから」
つかさの言葉が信じられなかったのか、翠星石の表情が驚愕に染まっていく。
しかししばらくするとそれは愉悦へと変わり、くつくつと嫌らしく笑い出した。
609 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:18:28.38 ID:uM1r5/dn
610 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:18:31.87 ID:TR3ydkcE
sien
611 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:18:42.76 ID:G96NNXuS
�C
612 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:19:00.02 ID:eUEs7kLb
支援
613 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:19:08.94 ID:jQ2D6Xxu
「こなたといいみなみといい、やっぱりお前らは人殺しの仲間ですね」
「お前、またそんなこと言って!」
「北岡さん、大丈夫ですから」
降り注ぐ言葉に北岡が怒りを見せるが、つかさがそれを宥める。
「聖人君子を気取るつもりですか〜?
でも無駄ですよ! お前が人殺しをしたっていう罪からは逃れられないです!」
「……逃げるつもりはないよ」
「え?」
「私がルルーシュ君と浅倉さんを殺したことは、これから一生背負っていくよ」
翠星石の暴言に臆することなく、つかさは自らの言葉を述べ続けていく。
「ひ、開き直るつもりですか!?」
「開き直ってるように見えちゃうかな、けど……これが誰かの命を奪った人の責任だと思う」
「責任……?」
「私もルルーシュ君を殺した後にとっても辛くなって、私なんか居なくなればいいって思った
でもそんな私にも出来ることがあって、必要としてくれた人がいたから、だからここまで来ることが出来たの」
「な、何が言いたいですか……お前は!」
翠星石の語調が微かに弱くなっている。
つかさの言い知れぬ迫力に気圧されつつあるのだ。
「だから、翠星石ちゃんも自棄にならないで」
「お、お前は翠星石が自棄になってると言いたいんですか!?」
「うん、今の翠星石ちゃんは自棄になってる
北岡さんに会ったばかりの時や、さっきまでの私みたいに」
「馬鹿にするなです! 翠星石は自棄になんかなってない!!」
激昂した翠星石は庭師の鋏を現出させ、つかさへと急降下する。
ゾルダが即座に盾で庇ってくるが、本当の狙いは鋏による接近戦ではない。
盾の隙間からもう一方の手を伸ばし、茨で串刺しにすることだ。
「させません」
伸ばした手が押さえつけられる。
いつの間にか横に来ていたクーガーが、翠星石の細い腕を握り締めていた。
「離しやがれです」
「そうやってムキになるのは、貴女も自覚してるからなんじゃないですか?」
「ッ、うるさいです!!」
全方位に向けて花弁を散布する翠星石。
ゾルダの盾では庇いきれない範囲の攻撃だったが、クーガーがつかさを素早く回収したことで事なきを得た。
だが、その間に翠星石は再び飛翔してしまう。
「お前らは敵ですッ! 翠星石の邪魔をするなら敵ですッ! だから殺してやるですッ!!」
喚き散らしながら、翠星石は無作為に羽を撒き散らす。
標準は滅茶苦茶であり、まるで子供が物に当たり散らしているようである。
それでも尽きることのない弾幕は脅威そのもので、攻撃が止むまでクーガーもゾルダもひたすらに走り続ける他なかった。
そうして一分が経過した頃だろうか。
ようやく弾幕は止み、音が止まった世界では翠星石の吐息だけが響いていた。
614 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:19:53.94 ID:G96NNXuS
�C
615 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:20:44.87 ID:jQ2D6Xxu
「そこまで俺達が敵に見えますか」
問い掛けたのはクーガーだった。
仮面に覆われて表情は見えないが、その声色は寂しげである。
「当たり前です! 翠星石を攻撃するお前らが敵じゃないわけないです!」
翠星石の顔は憤怒で歪み、敵愾心に満ち満ちている。
そこにかつての面影は無かった。
「今の貴女は自分が自分で無くなってしまうくらい、感情が壊れそうになってしまってるんですね」
「そんな哀れむような言い方はやめろです!」
「なら、俺がその感情を受け止めます」
クーガーはその場に制止すると、上空にいる翠星石を見据えるように正面を向く。
「怒りも、悲しみも、憎しみも、貴女の全ては俺が全部受け止めます
その間俺達は攻撃しません、だから思いっ切りぶつけてください」
そうして、両腕を広げた。
☆ ☆ ☆
リュウガとシャドームーンの二人は戦い続けていた。
互いに負った傷は浅くないが、その程度で彼らが剣を収めることはない。
リュウガは体の香で傷を回復し、シャドームーンも傷の修復は始まっている。
剣と剣が衝突し、火炎と雷撃が火花を散らす。
創世王・シャドームーンの力は強大だが、リュウガが所持品から得ている恩恵は計り知れないものがある。
防御や速度ではシャドームーンに劣るかもしれないが、力と剣に関してリュウガが引けを取ることはなかった。
上から振り下ろされるサタンサーベルを身体の軸を逸らして回避。
即座に右腕に力を込め、裏拳で弾き飛ばす。
それでシャドームーンが体勢を崩したのを見逃さず、リュウガは袈裟懸けに斬り付ける。
だが、その斬撃をシャドームーンは力任せに掴み取った。
「簡単には討ち取らせてくれないようだな」
「貴様のような下賎な者に、この私が討ち取られると思うか?」
「下賎とは言ってくれるじゃねえか」
「人間どもから追い剥ぎを続ける貴様など、道端に転がる浮浪者にも等しいだろう」
「はんっ、弱い奴から全てを奪い取るのは当然だろ」
シャドームーンの掌を炎が焼き、白煙が立ち込め始める。
「なら……こいつはどうだ?」
ヒノカグツチの刀身が強烈な紅い閃光を放つ。
呼応するように炎が猛りを上げ、刀身に纏わりついていく。
「壱の秘剣――――焔霊!」
灼熱の炎を纏った斬撃は、シャドームーンの掌を斬り裂いた。
くぐもった声を上げ、たたらを踏むシャドームーン。
飛翔斬で罅割れていた装甲が砕け、人工筋肉・フィルブローンを燃やす。
616 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:20:45.26 ID:YQAyD3vj
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1381335043/
新スレ立てました。支援
617 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:20:46.48 ID:uM1r5/dn
618 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:21:27.13 ID:TUaFdYI0
支援
619 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:21:29.31 ID:YQAyD3vj
620 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:21:37.87 ID:G96NNXuS
�C
621 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:21:43.89 ID:niDNiXto
622 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:21:53.83 ID:jQ2D6Xxu
「貴様のその光……キングストーンのものだな」
左腕の炎は未だ消えていないにも関わらず、シャドームーンは問う。
今の一撃を受けて、リュウガがキングストーンの恩恵を受けていることを確信したからだ。
「その通りだ、愉しく使わせてもらってるぜ」
「創世王といい人形といい貴様といい、何処までも私を侮辱しないと気が済まないようだな」
「だったら取り返してみたらどうだよ!」
ヒノカグツチを構え、突進するリュウガ。
胴体を狙った炎の一閃を、シャドームーンはサタンサーベルで受け止める。
「認めねばなるまい、剣の腕前においては創世王となった今でも貴様に劣ると」
「なら、とっとと死ねよ」
「だが、私の力は剣だけではない」
シャドームーンの全身が翠緑の光を纏う。
光量は先程のリュウガを凌駕しており、莫大なエネルギーが全身を駆け巡っているのだと推察できた。
そのエネルギーがシャドームーンの身体の中心、シャドーチャージャーへと集中する。
「シャドービーム!」
シャドーチャージャーから放たれる光の奔流。
全身から収集されたエネルギーは、極太の光線となってリュウガの身体を襲い掛かった。
咄嗟にヒノカグツチで防御するリュウガだが、何十メートルも押し込まれた末に爆発の中に呑み込まれる。
普通の人間であれば、今の爆発で跡形もなく消滅しているだろう。
しかし、シャドームーンは警戒を解かない。
相手がキングストーンの恩恵を受けている以上、何が起こるか分からないからだ。
そしてその予想は当たっていた。
爆煙の奥から紅の眼光が煌き、煙を飛散させて姿を現したからだ。
「生きていたか」
装甲に破損や欠損が見られるが、リュウガが致命傷を負っている様子はない。
翠星石のようにキングストーンのエネルギーを防御に回し、シャドービームを相殺したのだ。
「『しゃどーびーむ』ってのは如何程の物かと思ったが、言うほどでも無いな」
「フッ、どうだろうな」
シャドームーンが一笑すると同時に、リュウガの身体に異変が起こる。
鏡が砕けるような音が響き、サバイブが解除されてしまったのだ。
「エネルギーが尽きたようだな、その姿に戻った貴様に勝ちはない」
サバイブで互角だったのなら、通常形態での勝ち目は薄い。
それは曲げようもない事実だろう。
同盟を結んだ翠星石の助力も期待できない今、リュウガは窮地に落ちっている。
「……そろそろ潮時か」
それでも動じることなく、リュウガは背後に視線を配りながら不敵に呟いた。
☆ ☆ ☆
「お前、なに言ってるですか……?」
クーガーの放った言葉の意味を最初は理解することができなかった。
623 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:22:31.44 ID:YQAyD3vj
624 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:22:39.95 ID:G96NNXuS
�C
625 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:23:00.31 ID:TUaFdYI0
支援
626 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:23:07.01 ID:uM1r5/dn
627 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:23:25.23 ID:YQAyD3vj
628 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:23:37.86 ID:niDNiXto
629 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:23:40.79 ID:jQ2D6Xxu
「おい! そんな約束勝手にするなよ」
抗議の声を上げたのはゾルダだ。
彼の背後で隠れていたつかさも、不安そうにクーガーを見ている。
だがクーガーは彼らに振り向かず、翠星石を見上げ続けていた。
「クーガー……私を馬鹿にしているですか?」
クーガーの言ったことを要約すれば、つまりは自分が攻撃を受け続けるということだ。
今の翠星石を相手にして、手加減をしている余裕があるのか。
クーガーは何度か攻撃を仕掛けてきたが、全てが容易く弾かれている。
攻撃しないのではなく、出来ないの間違いではないか。
「立場が分かってるですか?
今のお前は私より弱い、翠星石が上でクーガーが下です」
「そう思うなら、攻撃してみればいいじゃないですか」
「ッ! いい加減にしろですッ!」
挑発の返答に翠星石が放ったのは、黒翼から発射される無数の羽だった。
自動小銃にも匹敵する勢いで放たれた黒羽が、立ち尽くすクーガーへと降り注いでいく。
単調な攻撃ゆえ、彼の速さならば回避は容易。
しかし。
「ぐっ……!」
彼は降り注ぐ羽を避けなかった。
装甲は紙のように裂け、無数の弾痕が刻まれていく。
「おおおおおお前、なんで避けないですか!?」
「だから言ったじゃないですか、貴女の全てを受け止めると」
装甲の裂け目から血が滲み、足元へと滴り落ちる。
フォトンブリッツはあくまで加速装置であり、防具としての機能は薄いのだ。
「いいです、分かりました、お前がその気なら翠星石は――――」
苛立ちを隠すように翠星石は手を翳す。
その先にいるのはクーガーではなく、ゾルダとつかさ。
「翠星石さんッ!!」
ゾルダが盾を掲げるよりも早く、クーガーの怒号が響き渡る。
その声に怖気づき、翠星石の手が止まった。
「俺が受け止めると言ったんです、狙うなら俺にしなさい」
「お、お、お前! 誰に向かって命令してるですか!」
「貴女にお願いしてるんです」
今のクーガーは翠星石よりも弱い。
そのはずなのに、全身が竦んでしまう。
つかさの時もそうだった。
自分より弱いはずのに、どうして震えが止まらないのか。
630 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:24:15.21 ID:G96NNXuS
�C
631 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:24:57.92 ID:niDNiXto
632 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:25:20.54 ID:jQ2D6Xxu
「すいません、北岡さん、つかささん、ここは腹を括ってもらえませんかね」
「出来ないよ、さっきから何考えてるのさ」
「翠星石さんに今の俺達は敵に見えてしまってます
攻撃してくる奴が敵なら、俺達から攻撃しなければいい、それだけの話です」
そう言うと、クーガーは翠星石へと向き直る。
ゾルダが抗議の声を上げ続けているが、クーガーが返事をする素振りは見えなかった。
「どうしました? 攻撃しないんですか?」
クーガーの方に手を翳し、手から薔薇の花弁を噴射しようとする。
しようとして、手がガタガタと震え出す。
喉の奥から不快感が込み上げ、全身が悪寒に支配される。
そうして脳裏に蘇ってきたのは、クーガーを刺し殺してしまった時の感触だった。
「今ので確信しました」
「な、何をです……?」
「貴女には他人を傷つける覚悟はあっても、他人を殺す覚悟はない」
翠星石が攻撃が止んだのを契機に、クーガーは言葉を紡ぎ続ける。
「貴女は本気のつもりだったんでしょう、でもいざとなると手が止まってしまう、命を奪うことが怖いんです」
「そんなことない、私は真司達のためにお前らを殺さなきゃいけないんです!」
「いい加減、目を醒ましなさい!」
クーガーの叫びが、翠星石に叩き付けられる。
「今の貴女は城戸達のために戦ってるんじゃない
城戸達のせいにして、周りに八つ当たりしているだけだ!」
ズドン、とハンマーで殴られたような衝撃が襲う。
今の今まで大嫌いな戦闘を続けてきたのは、真司達を蘇らせるという大義名分があったからだ。
「ご家族や仲間を失って、さらに自分で城戸を殺してしまって、貴女の心の痛みはよく分かります
それでも、痛みに立ち向かおうとする貴女は立派でした
しかし今の貴女は痛みから逃げて、自棄になって、憂さを晴らしているだけじゃないですか!」
それを否定された。
その上で真司達を自らの憂さ晴らしの言い訳にしていると言われた。
今の翠星石を侮辱するのに、これ以上の言葉はないだろう。
「城戸を殺したことの責任が無いと俺は言いました、それは今も変わらない
でもその事実から貴女が逃げてたら、あまりにも浮かばれないじゃないですか
貴女の中にある城戸の思い出が、全部辛いものになってしまう」
それなのに反論の言葉が出てこない。
「俺はあの時、心を強く持ってくださいと言いました
心の強さがあれば、俺が傍にいなくても正しい道を選んでくれると思ったからです」
頭が空っぽになって、何も考えることができない。
633 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:25:55.85 ID:G96NNXuS
�C
634 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:26:46.18 ID:niDNiXto
635 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:26:54.80 ID:jQ2D6Xxu
「でも違った。貴女は戦う強さを手に入れた代わりに、心はずっと弱くなってしまった」
「翠星石が、弱い……?」
「ええ、今の貴女はつかささんよりも弱い」
比較されたことを疎ましく思い、翠星石はつかさを睨み付ける。
彼女はゾルダの後ろに隠れながら、相変わらず真司と同じ目付きで翠星石を見上げている。
こんな足手まといよりも、翠星石の方が弱いというのか。
「翠星石ちゃん、もうやめようよ」
自分よりずっと強い存在を前にしているにも関わらず、つかさは逃げ出そうとしない。
殺されてしまうかもしれないのに、どうして前を向いていられるのか。
「誰かを殺しちゃったことを引き摺りながら、皆がいない日常を生きていくのはとっても辛いよ」
つかさと翠星石は非常に似ている。
互いに自分の意志ではなかったが、同行者を殺してしまった。
そこからさらに多くの者との死別を体験し、心を摩耗させてきた。
「私も本当は嫌だけど、でも死んじゃった人は嫌だって思うことも出来ないから
皆のことを忘れないでいるのが、ここまで生きてきた私達に出来ることなんじゃないかな」
唯一違ったのは、周りで励ましてくれる人間の有無。
つかさには北岡や五ェ門がいたが、翠星石には誰もいなかった。
クーガーとは早々に離別してしまい、薔薇水晶やV.V.は彼女を利用するだけだった。
「私にだって出来たんだから、翠星石ちゃんにもきっと出来るよ」
ニコリと笑い掛けてくるつかさ。
自分だって辛いはずなのに、他人のことを気に掛けている。
これが心の強さだとでも言うのか。
「翠星石さん、もう終わりにしましょう」
違う。
「今の貴女は弱くなってしまった、しかしまた強くなることはできる
強さを、誇りを、意地を取り戻してください!」
「うるさい!!」
違う違う違う違う違う。
翠星石が弱いわけがない。
姉妹を失い、大事な人を失い、ようやく身につけた強さ。
この強さを以って、奇跡を願うことが生き残った翠星石の義務だ。
庭師の鋏を現出し、クーガーの懐へ飛び込む。
「……」
鋏はクーガーの胸部から数センチの手前で停止。
あと少し押し込めば、奇跡に一歩近付くことができる。
「やれるものならやってみなさい、殺す覚悟があるなら出来るはずです」
その少しが埋まらない。
手に汗が滲み、鋏の柄がべったりと濡れる。
馴染んでいたはずの武器だったのに、まるで錆び付いた鉄屑を握っているようだった。
636 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:27:25.96 ID:G96NNXuS
�C
637 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:27:46.54 ID:TUaFdYI0
支援
638 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:28:26.00 ID:niDNiXto
639 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:28:37.72 ID:I5Zg9Q9Z
sien
640 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:28:55.25 ID:eUEs7kLb
支援
641 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:29:09.54 ID:TUaFdYI0
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642 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:29:11.18 ID:jQ2D6Xxu
「もう十分でしょう」
全身の震えが止まらない。
身体は暖まっているはずなのに、氷の中にいるように寒い。
「貴女は城戸や水銀燈さんを思って戦い続けました
方法は間違っていましたが、それでも貴女の頑張りは認めてくれますよ」
クーガーの掌が翠星石の肩に乗る。
「そろそろ自分を許してあげてもいいんじゃないですか?」
肩がじんわりと暖かくなる。
無骨な装甲に包まれているのに、クーガーの手は暖かい。
身体の力が抜けていく。
「戻ってきてください」
カラン、と音がした。
庭師の鋏が、足元に落ちていた。
「う……あぁ……」
両腕を伸ばし、クーガーの身体にしがみつく。
すると、背中に手が回されるのが分かった。
全身がクーガーに包み込まれ、身体が火照るように暖かくなっていく。
「ごめんなさい……ごめんなさいです……あああぁぁぁ……」
「おかえりなさい」
クーガーの胸の中で嗚咽を漏らし続ける翠星石。
そんな彼女の身体を、クーガーは慈しむように抱き締めた。
「翠星石ちゃん」
聞こえてくる声に振り向くと、そこにいたのはつかさだった。
「突然こんなこと言われて困るかもしれないけど、私と友達になってくれないかな」
「友、達……?」
「うん、皆のことを忘れないって言ったけど、やっぱり一人だと寂しくなっちゃう時もあるから
翠星石ちゃんが友達になってくれたら嬉しいなって思ったんだ」
友達。
思い返してみれば、今の今まで翠星石に友達は居なかった。
薔薇乙女の姉妹はもちろん、ジュンやのりもどちらかといえば家族だ。
長い年月を生きてきたが、友達と呼べる存在はいなかった。
「クーガー……つかさ……お前達は薔薇水晶みたいに裏切らないですか?」
だが、薔薇水晶の一件が尾を引いている。
味方のふりをして弱味に付け込んできた偽りの姉妹。
彼女が最期に放った大嫌いという言葉は、楔のように翠星石の心に突き刺さっていた。
643 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:30:08.48 ID:niDNiXto
644 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:30:33.18 ID:G96NNXuS
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645 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:30:38.94 ID:TUaFdYI0
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646 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:30:59.71 ID:uM1r5/dn
647 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:31:21.51 ID:eUEs7kLb
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648 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:32:06.10 ID:TR3ydkcE
支援
649 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:32:12.02 ID:jQ2D6Xxu
「もちろん裏切ったりなんてしませんよ、でも薔薇水晶さんのことを悪く言うのはちょっと悲しいですねぇ」
「ど、どうしてですか……? 薔薇水晶は私を裏切ってたですよ」
「でも俺達を敵に回ちまうくらい、薔薇水晶さんのこと好きだったんだろ?」
翠星石の脳裏に蘇ってきたのは、あまりにも少ない薔薇水晶との思い出。
それは苦いものばかりである。
薄暗い部屋の中で、家族や仲間を失った絶望に浸っていた。
真司を殺してしまったことへの悔恨と、一人になってしまった悲しみに支配されていた。
しかし、薔薇水晶が傍に居てくれた。
薔薇水晶が身体を抱き締めてくれたから、絶望に押し潰されずにいたのではないか。
「たった一回嫌いって言われただけで諦めるなんて、貴女らしくもない」
騙されていたのかもしれない、裏切られたのかもしれない。
それでもずっと一緒に居てくれた薔薇水晶のことを、確かに翠星石は好いていた。
「大体俺なんか、みのりさんにアプローチしてもあしらわれてばかりですよ
ねぇ、北岡さん?」
「そこで俺に振るの? ……まぁいいけどさ
俺みたいなスーパー弁護士の誘いを四十一回も断る人だっているし、一回嫌われた程度でくよくよするのは勿体無いと思うよ」
かつてつかさを侮辱することで言い争いに発展してしまった北岡。
そんな彼が自分の擁護をしてくれたことが、翠星石には意外に感じられた。
「……薔薇水晶……ばら……すいしょう……うう……あああぁぁぁぁ……」
怒りや憎しみが消え、改めて薔薇水晶の死を受け止める。
そうして胸の内に去来したのは深い悲しみ。
大事な家族がまた一人死んでしまった、もう二度とあの温もりは戻ってこない。
会話することも、抱擁することもできない。
大嫌いと言った理由すら問い質すことができない。
「あれ、私……また……泣いて」
「泣いていいんですよ」
「でも、人前で泣いたら、真紅との約束が……」
「俺が全部許します、だから貴女は今、泣いていいんです」
もう我慢できなかった。
喉の奥から嗚咽が漏れ、両の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
今まで抱えていた感情が涙となって流れていく。
「ぐっ……うあ……ああああ……ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
声を押さえることができない。
恥も外見もなくクーガーにしがみつき、わんわんと大声で泣き叫んだ。
零れ落ちた涙が彼のアルターを濡らしていく。
そんな翠星石の頭を、クーガーは優しく撫で始める。
全身の震えは、いつの間にか止まっていた。
「一件落着ってところですかねぇ」
翠星石の頭を撫で続けながら、クーガーは肩の荷が降りたというように胸を撫で下ろす。
「それでいいんじゃないかな、にしてもおたくは遠回りが好きだね、見てるこっちが冷や冷やしたよ」
「遠回りしようが俺の速さなら結果は同じです」
「うわ、キザな奴」
翠星石をようやく取り戻すことができたからか、クーガーの声は弾んでいる。
つかさの目尻にも涙が浮かび、ゾルダも仮面の下で自嘲気味に笑う。
三者三様の反応であったが、誰もが翠星石の帰還を喜んでいた。
650 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:32:35.78 ID:G96NNXuS
�C
651 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:32:58.07 ID:TR3ydkcE
支援
652 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:33:36.89 ID:uM1r5/dn
653 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:33:38.30 ID:0mentY4/
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654 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:33:54.43 ID:jQ2D6Xxu
.
――――FINAL VENT――――
上空から降り注ぐ漆黒の炎。
誰もが油断していたため、一瞬の反応に遅れてしまう。
ゾルダはつかさを庇うように押し倒し、クーガーは翠星石を遠くへと投げる。
出来たのはたったそれだけ。
地上に到達した炎は固体となり、クーガーの下半身を封印した。
「ハァァァァ……」
そうして、右脚に黒炎を纏ったリュウガが急降下を始める。
龍騎と同じ名前を冠するリュウガの必殺技――――ドラゴンライダーキック。
「がああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
下半身を封じられたクーガーに避ける術はなく、ドラゴンライダーキックは胴体へと直撃。
装甲が砕け、渇いた破損音が響き渡る。
翠星石達が呆然と見守る中、クーガーの身体は黒炎に焼かれながら放物線を描く。
地面に激突してもなお衝撃を殺し切れず、サッカーボールのように何度も地面を跳ねた。
655 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:33:57.97 ID:TUaFdYI0
支援
656 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:33:59.68 ID:I5Zg9Q9Z
sien
657 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:33:59.61 ID:niDNiXto
658 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:34:19.82 ID:G96NNXuS
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659 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:34:38.26 ID:uM1r5/dn
660 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:35:04.54 ID:niDNiXto
661 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:35:17.51 ID:TUaFdYI0
支援
662 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:36:00.18 ID:jQ2D6Xxu
「外したか」
ようやく停止したクーガーを傍目に捉えながら、リュウガは不満気に呟く。
その視線の先にいたのは、その場に立ち尽くす翠星石だった。
「なんで、お前が、クーガーを……」
「全員を殺す、最初にそう言っただろ」
「でも、だって」
「俺が本当に殺したかったのは、クーガーじゃなくてお前だがな」
リュウガはシャドームーンと戦っていたのではないのか。
背後に視線を移すと、そこではサタンサーベルに絡み付いた鎖を引き千切っているシャドームーンの姿があった。
この鎖の正体はバブルルート。
絡み付いた相手の武器の能力を打ち消す、武器殺しと呼ばれる“狩人”フリアグネの宝具の一つである。
三村の支給品だった物だが、今の今まで使う機会が無かったのだ。
「お前から供給される分の力じゃ足りねぇ、だからキングストーンを寄越せ」
「そんなことで、私を襲ったですか……?」
「それ以上の理由がいるのかよ」
呆けた様子でいる翠星石に対し、リュウガは冷酷な態度を崩さない。
そもそもリュウガにとって、翠星石の価値は中にある賢者の石しか無かった。
最初に翠星石が姿を現した際、即座に殺害してキングストーンとローザミスティカを奪おうとした。
だが同盟を持ち掛けられたため、利用できるまでは利用する方針に転換したのである。
「離れろ!」
立ち上がったゾルダがマグナバイザーの引き金を引いた。
「こっちは俺に任せて、翠星石はつかさちゃんとクーガーを!」
「え、でも」
「早く!」
ゾルダの叫びが通じたのか、翠星石は倒れているつかさと一緒にクーガーの下へと走った。
「アンタが相手か、どうやら絶対的な実力差ってのを理解してないようだな」
二人のライダーが睨み合う中、リュウガの身体に異変が起こる。
左手に嵌っていた契約の指輪が消失したのだ。
翠星石が志々雄を拒絶したことで、契約が破棄になったのである。
「どうやら愛想を尽かされたようだな」
挑発してくるゾルダに対し、リュウガは仮面の下でふてぶてしく笑みを浮かべた。
☆ ☆ ☆
「クーガーさん、しっかりしてください!」
涙ぐみながらクーガーの名を叫ぶつかさ。
胴体の装甲に巨大な穴が空き、そこから波紋のように亀裂が広がっている。
そして、穴の先には何もない。
ドラゴンライダーキックはクーガーの胴体を貫通し、その傷口すらも灼熱の炎で焼いていた。
傷口からは煙が立ち込め、焼け焦げた臓器を隠す。
焼くと蹴るによる同時攻撃は、クーガーの身体に致死の傷を刻み付けていた。
663 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:36:18.31 ID:G96NNXuS
�C
664 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:36:58.31 ID:uM1r5/dn
665 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:36:58.17 ID:niDNiXto
666 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:37:04.23 ID:eUEs7kLb
支援
667 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:37:23.27 ID:jQ2D6Xxu
「クーガー……どうして……」
クーガーの死を目前にして、翠星石は放心している。
ようやく信用できるようになったのに、どうしてこんなことになってしまうのか。
劉鳳や、新一や、真司のように、翠星石の前から居なくなってしまうのか。
「そうだ、まだリフュールポットが……」
「その必要は……ありません」
クーガーのデイパックには、つかさが錬成したリフュールポットが残っている。
それを取り出して治療しようとしたが、掠れる声でクーガーが制止した。
「俺の身体のことは俺が一番分かります……もう長くありません」
腹部に穴が空いているのだ。
リフュールポットの回復力でどうにかなるものではないだろう。
「クーガー……? クーガー! クーガー! 死んじゃ嫌です!」
クーガーがまだ会話できることに気付き、必死に呼び掛けを始める翠星石。
先程まで泣いていたというのに、その目にはまた涙が浮かんでいる。
困った人だと呟きながら、クーガーはその頭に掌を乗せた。
「私は、クーガーが居なかったら何も出来ない、弱いままです、だから逝っちゃ嫌です!」
「なに言ってるんですか、翠星石さんは強い方ですよ」
「そんなこと、ない! 私は弱い……」
「貴女は俺を殺さなかった、つまりは殺さない覚悟があったということじゃないですか」
クーガーを殺さなかったということは、つまり奇跡に縋るのを諦めたということ。
家族の死や己の罪と向き合う覚悟を決めたということである。
「今の貴女なら、もう俺が居なくても大丈夫です
貴女はもう一人じゃないんですから、何とかなりますよ」
翠星石が振り返ると、そこには必死に涙を堪えているつかさが立っている。
奥の方ではリュウガを相手に奮闘するゾルダ――――北岡の姿もあった。
「でも、本当なら私が死んでるはずだったじゃないですか……!」
リュウガが元々狙っていたのは翠星石だった。
翠星石が傍にいなければ、そもそも翠星石が騒動を起こさなければ。
クーガーの命が潰えることは無かっただろう。
翠星石を庇って、また誰かが犠牲になろうとしているのだ。
「なぁに、男が女性を守るのは当然のことですよ、それで死ねるのなら本望です」
だというのに、クーガーは笑っている。
もうすぐ死んでしまうというのに、心の底から満足だと言いたげに笑っている。
「二人も女の人に見守られて死ねるなんて、俺は幸せものです」
そう言った直後、クーガーは三人ですねと訂正する。
何のことか分からなかったが、大切なことだというのは伝わってきた。
668 :
叶えたい願い-ストレイト・クーガー
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 01:38:37.28 ID:jQ2D6Xxu
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1381335043/
たくさんの支援をありがとうございます。
これ以降は新スレにて投下します。
669 :
創る名無しに見る名無し
:2013/10/10(木) 01:39:11.89 ID:niDNiXto
670 :
◆ew5bR2RQj.
:2013/10/10(木) 03:08:11.90 ID:jQ2D6Xxu
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/ヽ. /.丶\ ミ、 ゙//
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{: : : : ::|. /ヽゝ、_ ヽノr=ゝ-':::::::!
|: : : : : |. イ |゙>¨ー=弋=ァzレ'=、_j!
. /,': : :\:. |: : : : : :! { | /´.:::::::::.、 =ァ/:::::::Y!
{. ': : : : : :凵: : : : : :', ヽ.__j::::: : : ::::::i ゚ {::: : : ::::,:
. 弋、_: : : : : : : : : : : : ', ヽ彡、::::::::::ノΥゝ.:::::::ノ'
_,.イ´: : : : : : : : : : : : : ヽ }r= `¨-ャュ.∧:::::::::/
/: :|: : : : : : : : : : : : : : : : : \___ 7/ `ヽ〈::::::::::::::::,イ__
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〈: : |: : :ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ:::::::::::::::::/ ゚゙゚` ゚ `゙≧、
ヽく´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : __,....ノ、ヽ.Y ̄ヽ_,、o 。7 ヽ. ',
/ ::|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : r'^ ̄ <O___>-、____}´ `ヽ':::: '! !
八 ,-'、: : 、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ノ ', O', :::: ヽ l
∨ ::丶:弋_: : : : : : : : : : : : : : : : : /......: } l :::: l /
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