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第三次スパロボキャラバトルロワイアル4 もう21時か、
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第三次スパロボキャラバトルロワイアル4

1 :それも名無しだ:2010/01/25(月) 23:57:20 ID:IeCDUXZK
ここはスパロボのキャラクターでバトルロワイアルをやろうとするスレッドです。

【原則】
・リレー企画ですのでこれまでの話やフラグを一切無視して書くのは止めましょう。
・また、現在位置と時間、状況と方針の記入は忘れずに。
・投下前に見直しする事を怠らないで下さい、家に帰るまでが遠足です。
・投下後のフォローも忘れないようにしましょう。
・初めて話を書く人は、本編を読んでルールや過去のお話にしっかり目を通しましょう。
・当ロワは予約制です。投下する前にスレでトリップを付けて使うキャラを宣言しましょう。
・予約の期限は五日。期限内に書き上がらなかった場合の延長は二日までとなります。

【ルール】
・EN・弾薬は補給ポイントを利用することで補給することができます。
・補給ポイントは各キャラの所持するマップにランダムに数個ずつ記載されています。
・機体の損傷は、原則として機体が再生能力を持っていない限り直りません。
・再生能力も制限で弱体化しています。
・特定の機体がスパロボのゲーム内で持っている「修理装置」「補給装置」はありません。
・8時間毎に主催者からの放送が行われます。
・放送毎に主催者がMAP上に追加機体の配置を告知します。
・乗り換えは自由です。
・名簿は支給されます。

【備考】
・投下された作品に対して指摘をする場合は、相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、ミスがあった場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・スパロボでしか知らない人も居るので、場合によっては説明書きを添えて下さい。
・おやつは三百円までです。使徒やゲッター線は好きに食べてください。
・水筒の中身は自由です。健康を謳いながらハバネロやステビアを添加するのも自由です。
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
・作品の保存はマメにしましょう。「こまめなセーブを忘れるな」って昔どっかの元テロリストも言ってました。
・イデはいつ発動するか分かりません。本当にあった怖い話です。

まとめwiki
http://www31.atwiki.jp/suproy3/

したらば避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13329/

前スレ
第三次スパロボキャラバトルロワイアル3
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1263007823


2 : ◆MYm9HeJAhf19 :2010/01/25(月) 23:59:29 ID:0fgLlHko
スレ立て乙です! 
では投下の続きを。

3 : ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:00:24 ID:H+KCldBR
すいません、鳥がorz
気を取り直して。

4 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:01:11 ID:9Zca/VMy


5 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:01:32 ID:TdT3WmD0
  

6 :儚くも永久のカナシ ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:02:50 ID:0fgLlHko


(邪魔するなら倒すだけだ……そうさ、俺がこの手で……!)



唯一信頼できる仲間、レイの情報を得るためにヴィレッタを追わなくてはいけない。
正確な方向は見失ってしまったが北の方角であるのは確かだ。
ただそれだけを頼りにシンはスレードゲルミルを再生させながら北上した。



【1日目 10:50】
【シン・アスカ 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:疲労(中)、
 機体状況:マシンセル正常機能中、EN30%
 現在位置:C-2 南部
 第一行動方針:レイを探す
第二行動方針:ヴィレッタを追う
 第三行動方針:シ―ブックとドモンには会いたくない
 最終行動方針:優勝し、ミネルバに帰還する……?】
【備考】
※ヴィレッタの位置は見失っています。




◇     ◇     ◇





7 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:03:05 ID:TdT3WmD0
 

8 :儚くも永久のカナシ ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:04:00 ID:0fgLlHko

「ずいぶんと離れてしまったようね……」

ガルムレイド・ブレイズを上陸させ、ヴィレッタが呟く。
ガンダムアシュタロンHCにより海中に引き込まれたもののなんとか窮地は脱せられた。
戻ってきたヒオウとロウガの援護もあり、そこまでの損傷はない。
だがそれでも決して手放しでは喜べなかった。
タスクとの分断は明らかに戦力の低下を意味する。
それにタスクは今頃シン・アスカと戦っていることだろう。
ならば自分がレイ・ザ・バレルという参加者に反応してしまったことがタスクに知られたかもしれない。
タスクにその事を尋ねられたら、もう迷うわけにいかない。


(これ以上隠すわけにはいかないわね……)

待ち合わせ場所を決めたわけではないがこの灯台はタスクと合流した場所でもある。
暫くここで待ち、

ただタスクの帰還を願いながらヴィレッタは決断する。
それは今となってはあまりに遅すぎたものだった。



【1日目 10:50】
【ヴィレッタ・バディム 搭乗機体:ガルムレイド・ブレイズ(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:DFCスーツ着用、ちょっと恥ずかしい
 機体状況:良好 右肩に亀裂、胸部、両腕損傷 EN75%
 現在位置:D-1 灯台下
 第一行動方針:タスクとの合流
 第二行動方針:ギリアムを探し、シャドウミラーについての情報を得る。
 第三行動方針:出来る限り戦闘は避け、情報を集める。戦いが不可避であれば容赦はしない。
 第四行動方針:ノルマのために誰かを殺害することも考えておく。
 第五行動方針:そう、誰かを……?
 最終行動目標:生き残って元の世界へ帰還する】
 ※参戦時期はOG外伝終了後。





◇     ◇     ◇




9 :儚くも永久のカナシ ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:04:49 ID:0fgLlHko

「ぬかった……我ながら情けない……!」

以前として海中を進むガンダムアシュタロンHCの中でガトーが憤慨する。
タスクのビッグデュオによりヴァルシオーネRが撃墜された時に、彼は一時撤退を決めていた。
明らかに違うサイズ差。それに万全の状態とはいえないアシュタロンHCではたとえ勝利を収めたとしてもその後が厳しくなる。
それでも手ぶらで帰るつもりはなかった。
海中へ引き込めば水中戦を得意とするアシュタロンHCなら一機ぐらいは倒せる。
だが、その目論見は残念ながら芽を見ることはなかった。
奇妙な支援機の妨害を受け、あの青い機体がギガンテイックシザースから抜け出した。
その時点でガトーは己の引き際を悟った。
損傷が未だ残るこの状況でガルムレイド・ブレイズと真っ向から討ちあうには好ましくない。
判断した後の行動は実に早く、今に至っていた。



「だが、いつまでも退くわけにはいかん……ジオン再興のために、この身を未だ潰えるわけにはいかんのだ……!」



ガトーの戦いは未だ終わろうとはしていなかった。




【一日目 10:50】
【アナベル・ガトー 搭乗機体:ガンダムアシュタロンHC(機動新世紀ガンダムX)
 パイロット状況:疲労(大)
 機体状況:右腕欠落、全身の装甲と特に背部にダメージ、EN30%、マシンキャノン残弾60%
 現在位置:E-1 海中
 第1行動方針:敵は発見次第仕掛けるが、無理はしない。まずは補給する
 第2行動方針:コウ、カナードとはいずれ決着をつける
 最終行動目標:優勝し、一刻も早くデラーズの元に帰還する】




◇     ◇     ◇

10 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:05:04 ID:TdT3WmD0
 

11 :儚くも永久のカナシ ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:05:30 ID:H+KCldBR

海上の遥か上空でバルゴラ・グローリーが浮遊している。
両腕を下げ、ただ黙って真下に広がる海を眺めていた。
自分が撃破したビッグデュオが沈んだと思われる場所を。
そしてスレードゲルミルが消えていった場所をただぼんやりと。

「皆城……総士のことか。総士、やっぱり居るんだな、お前も……!」

甲洋の意識はシンが呟いた名前の方に向いている。
自分を知っている皆城という参加者。
間違いなく自分が知っている皆城総士だ。
一騎と共に翔子を身捨てたも同然の男。
これで同姓同名の参加者という線は消えた。
彼らは名簿に書かれた自分の名前を見てどう思うだろうか。
少しだけ疑問に思うが、直ぐに意識の片隅に追いやる。
あいつらがどう考えようと生き残るためには関係ないのだから。
目の前に立ちふさがるようであれば戦うだけなのだから。
やがてバルゴラ・グローリーを大空へ向かわせ、どこへいくわけでもなく飛ばした。


「邪魔はさせない……俺は、今度こそ護るんだ……!」



未だ判りようのない存在を求め、甲洋はバルゴラ・グローリーにその身を預ける。




【一日目 10:50】

【春日井甲洋 搭乗機体:バルゴラ・グローリー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の一部回復
機体状況:疲労(小) EN80%
現在位置:B3 北東部
第一行動方針:見敵必殺
第二行動方針:一騎と総士を倒す。真矢は……?
最終行動目標:守るんだ………………誰を?
※フェストゥムに同化された直後から参戦です。
※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。
 好きなように書いてもらって構いません。




◇     ◇     ◇

12 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:05:53 ID:z4ZKYSWw



13 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:06:09 ID:TdT3WmD0
 

14 :儚くも永久のカナシ ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:06:52 ID:H+KCldBR



ビッグデュオのコクピットブロックは破壊された。
よってタスク・シングウジの身体はビームの熱量に焼かれた。
THE BIGの内の一体も今では海底の置物でしかない。
だが、破壊されたコクピットブロックに――蠢くものがあった。
一つ、いや無数の生命の群れのようものがいる。
のそのそと動くそれらは徐々に広がっていく。
ビッグデュオのコクピットブロックを覆うように。
まるで新しい住みかを見つけたかのごとく、我が物顔に侵食している。
それの正体は先程の戦闘により付着したものだ。
良く見ればコクピットブロック以外にもそれは存在していた。
しかし、やはり一際集まっているのはコクピット。
大方そこが自分達の住処に一番都合がいいのだろう。
それはガトリングミサイルの爆風に全身を焼かれたスレードゲルミルの装甲表面に巣くっていた存在。
一人の天才科学者が外宇宙の技術から開発した代物。
機動兵器を取り込み、自己再生のみならず自己進化までをもたらす。
そいつは、そいつらの名は――










マシンセル、自律型金属細胞。


【ビッグデュオ(THE BIG・O)】
 パイロット状態:死亡
 機体状態:右腕切断、コックピットブロック破壊 マシンセル寄生
 現在位置:C-2 海中
 




15 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:07:09 ID:TdT3WmD0
 

16 : ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:08:23 ID:H+KCldBR
投下終了しました。
長い間支援どうもありがとうございます。
残り容量をチェックするの忘れてました……スレ立て本当にどうもです。
では何かあればお願いします。

17 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 00:38:41 ID:soadEMGf
投下乙です
タスク死んじまった…
告げようか悩んでいたヴィレッタにどう影響するか…

気になったところとしては

間違いなく自分が知っている皆城総士だ。
一騎と共に翔子を身捨てたも同然の男。
これで同姓同名の参加者という線は消えた。
甲洋の思考に翔子の名前が出てるのはわざとですか?

18 : ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:45:18 ID:H+KCldBR
>>19
うわ、ミスですorz
wikiに収録された際には修正します。
翔子関連は覚えてないということで。
ご指摘どうもです。

19 : ◆40jGqg6Boc :2010/01/26(火) 00:46:29 ID:H+KCldBR
安価ミスりましたorz


20 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 19:02:19 ID:gHlaiHtH
投下乙
前の話でシンは

 精神的に深刻な動揺
 今はこれ以上戦いたくない

ってあったのにあっさり戦ってるけど、これはリレー無視ってやつじゃないの?

21 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 19:32:39 ID:oWJ18Upy
その状態で近くでドンパチされた結果こうなったってことだろ

投下乙でした
いつ死ぬ誰が死ぬ、と手に汗握りながら読んだ
そしてヴィレッタが迷ってるうちに要らぬ犠牲が……タスク最期までかっこよかったぜ
てっきりヴィレッタがドサマギでタスクを殺すかと予想してたが、これはこれでダメージ大きいだろうな
イスペイルはどんどん萌えキャラになってきて不覚にも癒されたw

22 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 19:35:23 ID:9Zca/VMy
投下乙&GJ。
タスクが逝ってしまったか……
でも熱かったぜ。
イスペイル様とレーベンはもう何かノリノリだなwwwww
甲洋も戦果ゲットでこれからどうなる……?
各キャラの今後が皆楽しみだ

>>20
其処まで至るのに充分な描写と説明あったし問題ないかと


23 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 19:48:50 ID:A/h5wFOi
でも前話で人の説得にろくに耳も貸さない事で悲劇を生んでしまったのに
またもやブチキレってのもなぁ
まぁシンらしいと言えない事もないが……

24 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 20:21:16 ID:gHlaiHtH
戦ってるヴィレッタにいきなり話しかけてすぐに返答なかったからキレるってのがな……
前の話でジャミルが言ったこと全部忘れてるんじゃないかってくらいの沸点の低さじゃないか
シンのモチベーションの一つだったフリーダム撃破した後でここまで激しやすいのかって言うとまた疑問だよ

25 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 20:55:26 ID:soadEMGf
多少の問題は面白ければいいんだよ

面白ければ

26 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 22:36:42 ID:UJXkOR+B
面白いけどリレーとしては微妙
通しでも修正でもどちらでもいいよ

27 :それも名無しだ:2010/01/26(火) 23:55:07 ID:z4ZKYSWw
シロッコが意味もなくコーヒーキャラになるのがスパロワ

28 : ◆nOV0/lulELAM :2010/01/27(水) 00:19:51 ID:zXkpSRpG
静かなる中条投下します

29 : ◆nOV0/lulELAM :2010/01/27(水) 00:22:23 ID:zXkpSRpG
「すでに、ゲームは開始しているのか」
静かなる中条こと中条静夫は目の前の光景に息をのむ。
くすぶる煙、鼻をつく臭い、大破したロボット。おそらくパイロットは生きてはいないだろう。
自分が連れてこられた場所からそう遠くはない場所ですでに戦闘が起こり、ひとつの命が消えた。
その事実が中条の胸に重くのしかかる。
そしてそのパイロットの冥福を静かに祈り、黙祷をささげ、再び大破したロボットに目を向ける。
そこにあるべきものが、無い。

「シズマドライブ」その名が示す通りシズマ博士を中心に開発された、完全リサイクル・絶対無公害の画期的エネルギーだ。
ライターから電気機器、乗り物、果てはBF団の怪ロボットまで、あらゆる場所で使われるそれは、世界のほぼ全てのエネルギーに置き換えられた。
そして、二度にわたる大災害を引き起こす原因にもなったのだが――

その痕跡が無い。
自分が乗るダイモスにはシズマドライブの代わりに「ダイモライト」という未知のエネルギーが使われているらしい。
そしてこの大破したロボットにもシズマドライブが使われていた形跡がないのだ。
ほぼ丸のまま残された右腕から推測されるロボットの大きさから考えて、大型のシズマが複数本は必要だろう。
いくら爆発、大破してしまったとはいえそれらの残骸が全く見当たらないはずは無い。
このシズマドライブ全盛時代に、ジャイアントロボ以外にシズマドライブを使わないロボットが、それも立て続けに2体も目の前に現れるだろうか?それもエネルギー停止現象が終息した後に。
「呉先生ならば、何かわかったかもしれないな……いや」
思わず口にしてしまった友の名を打ち消す。
彼はここにはいない、ましてやこのような異常事態に巻き込まれるのは自分一人で十分だ。


■

不要なエネルギーの消耗を防ぐため、ダイモスをトランザーへと変形させた中条は、E-5地区に架かる橋を南に下る。
目指すはG-6地区方面の基地施設。
遠回りになるが、接近戦を得意とするダイモスにとっては起伏の少ない平地を行くのがいいだろう。

「……」
周囲を警戒しながらも、ともすれば脳裏をよぎる先程の光景。
知らず知らずのうちに口元に伸びる手に、自嘲気味につぶやく。
「我々をこの舞台に集めたのがどんな能力かは知らないが、できるならば私のパイプも支給して欲しかったものだな」



【静かなる中条 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス)
 パイロット状況:良好、シズマの存在しない世界に違和感
 機体状況:良好(トランザー状態)
      マグネットコーティング済み
      (関節部の他、変形機構にも施されています。変形にかかる時間が若干減少)
 現在位置:E-5 
 第一行動方針:G-6地区の基地へ向かう
 第二行動方針:信頼できる仲間を作る
 最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】



【時刻:07:30】


30 : ◆nOV0/lulELAM :2010/01/27(水) 00:31:25 ID:zXkpSRpG
序盤から濃密バトル描写が続く中で申し訳ないくらいの短文ですが、投下終了です。
タイトルは「エネルギー問題における解決策」で。

ご指摘等ありましたらよろしくお願いします。
なお、私事により、27日中はレスできませんのでご容赦ください。

31 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 00:36:28 ID:Fo4o8nCd
予約したときと同じトリップを使わないと本人の確認になりませんよ

32 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 00:46:09 ID:Fo4o8nCd
と思ったら避難所に来ていた

投下乙です
これから中条も周りに追いつけると良いが・・・
また置いてきぼりにされないように祈る

33 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 19:24:07 ID:y8x4J0Xy
投下乙です
たぶん呉先生がいてもミスリードかますだけだったと思うw
このままG-6に向かえば、時間次第じゃ誰かと情報交換できるかもしれん

34 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 21:58:19 ID:eCC4rW9g
ジュドー、ディアッカ、Dボゥイ、クルーゼ、レイピア投下します。

35 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 21:59:07 ID:eCC4rW9g
「くたばれ、ラダム!」
「くっ、速い!」


Dボゥイ――否、ブラスターテッカマンブレードの振るうテックランサーが唸る。
瞬きの間に眼前まで迫ってきた小柄な影に、ジュドー・アーシタ操るライディーンはとっさに右腕の盾・ゴッドブロックを突き出した。
円形に拡がった装甲の陰に襲撃者の姿は収まる。それくらい小さい相手だと言うのに、


「うおおおおっ!」
「ちょっと、ウソでしょ!?」


ビシビシ、と小さな音を立ててゴッドブロックに亀裂が入った。
凄まじいパワーだ。どうやらこのパワードスーツはモビルスーツとかそういう次元ではないらしい、とジュドーは悟る。


「離れろコイツ!」


ジュドーは完全に盾が砕かれる前に左腕のゴッドゴーガンを変形させゴーガンソードにし、右腕を引いて飛び込んできたブラスターブレードへと叩き付けた。
さすがに50mを越えるライディーンとまともに打ち合う気はないのか、白騎士はばっと後退し剣から逃れた。
一息ついたジュドー。
この敵の外見から見てわかる武装は手に持つ両刃の槍だけだが、それだけではないだろうとジュドーは睨む。
先ほどのディアッカを吹き飛ばした光のことだ。
あれはダブルゼータのハイメガキャノンですら比較にならない。
コロニーレーザー並みとまではさすがに言わないが、それでも艦隊一つ丸ごと吹き飛ばせそうな威力だった。
今すぐあれを撃って来る気配はないが、逃げるなどして隙を見せればわからない。


(しかも向こうはやる気満々……くそ、どうしろって言うのさ!)


説得しようという思いは最初からなかった。この敵からジュドーが感じられたのは圧倒的なまでの敵意と殺意だったからだ。
ライディーンは連戦の負傷により本調子ではなく、左足がうまく動かないためバランスが保ち辛い。
つまりまともに戦える状態ではなくさっさと逃げたいところなのだが、そうできない事情がジュドーにはあった。


(まず、みすみす逃がしてくれるとも思えない。背中からあの光を撃たれたんじゃいくらライディーンでももたないだろうし。
そんで、ディアッカを放っていくわけにもいかない。死んじゃいないと思うけど)


先ほどから何度か呼びかけているがディアッカからの返答はないのだ。
気絶したか、あるいはもう死んでいるか。どちらにせよ確認せねば離脱もできない。
つらつらと考えているうちに、白騎士が槍を振り回し再び打ちかかってきた。


「こっち来るなってば!」


ライディーンの背中の矢を、弓につがえている暇などなかったのでそのまま撃った。
ゴッドアローの弾幕の中、テッカマンブレードはなんと自ら前に踏みこんでくる。
かわせるものはかわし、かわせないものはテックランサーで弾く。
元々矢じりとテッカマンブレードの大きさ自体が同程度なので、回避する隙間はいくらでもある。
遠距離攻撃ではとらえきれないと見たジュドーはライディーンの両腕に剣を握らせた。
右腕のゴッドブロックから伸ばした光の短剣ゴッドブレイカーと、左手のゴッドゴーガンの弓の部分を使用する武器、ゴーガンソード。
二刀流で手数を増やし小柄なテッカマンに対抗しようと言うのだ。
迫ってきたテッカマンブレードと、しばらくチャンバラのように剣をぶつけ合う。



36 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 21:59:49 ID:eCC4rW9g
「小賢しいぞ、ラダム!」


業を煮やしてテッカマンブレードが突進した。
まずゴーガンソードを振り下ろすと、テッカマンブレードは大きく横に回避した。


(やっぱり受けようとしない!当たれば倒せるんだ。)


スピードとパワーは凄まじいが、その反面に装甲はそう厚くもなさそうだとジュドーは考えた。
体勢の崩れたテッカマンブレードへ、矢継ぎ早にゴッドブレイカーを突き込む。
急降下してその攻撃をかわしたテッカマンブレードが今とばかりにがら空きになったライディーンの腹部へとテックランサーを構え突っ込んだ。


「もらった!」
「それはこっちの台詞だよ!」
「ぐあっ!」


ライディーンの腹、そこはゴッドミサイル発射口のある部分。
いきなり現れたミサイルはテッカマンブレードに直撃した。
ジュドーが大したことはないと見たテッカマンの装甲は、その実核爆発すら防ぐほどの堅牢さを誇っている。
機動力も軽く超音速を越えるのだが、そんなテッカマンが全力で戦えば殺し合いになどなりはしない。一方的な虐殺が待っているだけだ。
故にシャドウミラーによってDボゥイに、ブラスターテッカマンブレードに施された改造は長時間ブラスター化していられると言うだけではない。
公平を期し他者の勝利の可能性を残すべく、攻撃能力以外の機動力・装甲などのスペックは著しく減じられていた。
そこまでしても多くの参加者の乗る機体の水準からすれば規格外であることに変わりはないのだが。
とにかくそういった事情でゴッドミサイルは少なからずテッカマンブレードにダメージを与えた。そう、多少動きを止める程度には。


「あの距離で直撃したのに……なんてやつだ!」


自分も至近距離の爆発から逃れるために後方へ飛んでいたライディーンの中でジュドーが息をのむ。
爆炎の中で、人型の影が依然変わりなく健在だったからだ。


「とにかく、今の内に!」


ゴッドブレイカーのリーチを伸ばすエネルギーカッターを発動させて、両腕の剣を振りかぶる。
勢いを乗せて振り下ろされた左右の剣を、テッカマンブレードはテックランサーを掲げて受け止めた。
だがやはり質量の違いとダメージの硬直は大きく、押し返すことも出来ずテッカマンブレードは地上の雪原へと叩き落とされた。
雪の白に白騎士の白が混じった。
不調を訴えるライディーンを無視し、ジュドーはこの隙は逃さないとばかりに更なる武装を起動させる。
背中から矢をまとめて取り出し、同時にゴーガンソードを弓の形に戻す。
束ねてつがえた矢をテッカマンブレードの落ちた地点へ一斉に射出。
雪を舞い上げるゴッドゴーガン、続けて変形したライディーンにどこからともなく雷が落ち、角へと集中した。


「これでどうだ!」
「ぐああああっ!」


ゴッドサンダーを矢が囲む中心へと撃ち込んだジュドー。
電撃は矢を伝い帯電して、中心であるテッカマンブレードの全身を焼く。
動力が低下した今の状態からできるほぼ最強の攻撃。これ以上の威力を誇る武器は今は使えない。
雪が蒸発し水蒸気となって視界を妨げる中、ライディーンはゴッドバードに変形してすぐにその場を去った。
あれで倒せたかどうかわからないが今はこれ以上かかわっている時間がない。

37 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:00:33 ID:eCC4rW9g
「いた、ディアッカ!」


さきほど吹き飛ばされたステルバーを追い、隣のエリアへ移動するべく飛行するライディーン。
どれだけ飛んだか、黒い戦闘機ロボが雪山の中腹に埋まっているのを発見した。
傍らへと降りて、ステルバーを揺らす。


「おいしっかりしろディアッカ!起きてってば!さっさと逃げるよ!」
「う……うーん?」
「ディアッカ、起きろ!」
「ジュ、ジュドーか?」
「そうだよ!早く起きろ、またあの化けものが来るかもしれない!」
「化けもの……そうだ、俺は……!」


ステルバーの中でディアッカが気絶する寸前のことを思い出した。
テッカマンブレードの撃ったボルテッカが直撃した瞬間、成す術もなく吹き飛ばされた時のことを。


「そうだジュドー、あいつは!?」
「なんとか撃退したけど、まだ倒せたかどうかはわからないんだ。だからディアッカ、さっさと」


逃げよう、と言おうとしたジュドーだがそれはできなかった。
何故ならその瞬間ライディーンは大きく吹き飛ばされていたからだ。
いきなり吹き飛んだライディーンを追うように緑の光が走ったのを、ディアッカは見逃してはいなかった。
コーディネイターの鋭い視覚のたまものか、顔を巡らせたらそこには空に浮かぶブラスターテッカマンブレードの姿があった。
変形した装甲を戻し鋭い眼光でディアッカを睨むテッカマンブレード。
これぞテッカマンの超高速攻撃・クラッシュイントルード。
自分の数十倍はあるライディーンを軽々と吹き飛ばしたその威力は凄まじいものだった。


「ちっ、やはりこの程度では破壊できんか」


だがテッカマンブレードは不満だった。完全に不意を突いて背中からぶつかったにもかかわらず、ライディーンは破壊できなかったからだ。
ムートロン金属の剛性はクラッシュイントルードに耐えきった。
だがそれはあくまで破壊されなかったと言うだけで、無傷という意味ではない。


「ジュドー、おいジュドー!生きてるか!?」
「……いてて。なんとか大丈夫だけど、ライディーンのパワーがまた下がっちまった……!」


破壊されないようにとっさにムートロンエネルギーを背中に集中しクラッシュイントルードを防いだものの、ライディーンはかなりの消耗を強いられた。
何とか起き上がれたものの、ライディーンの各部から以上が噴出する。
そして今、テッカマンブレードが大きく距離を取り肩の装甲が開く。


「ならばボルテッカだ……む!?」


必殺のブラスターボルテッカを放とうとするブラスターテッカマンブレード。だが、予想よりフェルミオンエネルギーの集まりが悪い。
テッカマンブレードは半日にも満たない短時間にすでに一度、ボルテッカを放っているのだ。
さすがに消耗の大きいボルテッカをそうそう連発はできない。
まだ撃てるだろうがその後の行動に支障が出るかもしれないとテッカマンブレードは思考した。
予想以上にこのラダム達は粘る。両方始末できればいいが、片方でも逃せばピンチに陥るのは俺の方だとDボゥイは頭の片隅で思った。
加えて、先ほど弓を持つラダムから受けた攻撃。
矢は一つとして直撃しなかったものの、あれで動きを封じられたところに電撃が来た。

38 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:01:32 ID:eCC4rW9g
物理的な衝撃ならともかく、電撃はテッカマンの装甲を伝わり内部へと侵入してきた。
大部分がシャットアウトされたとはいえそれでもDボゥイの身体に少なからずダメージは残った。
無論この程度でテッカマンブレードの優位は揺るがないが、この後予想される他のラダムとの闘いを考えれば消耗は少ないに越したことはない。


「……どうせ手負いのラダムか。ボルテッカを使うまでもない!」


開いた肩を締め、テッカマンブレードが再びテックランサーを手に迫る。
どうにか起き上がったステルバーがナイフを構え、辛うじてテックランサーを受け止めた。
だが一瞬でナイフは両断される。返す刀でステルバーの左腕が宙を舞った。
とどめの一撃を割って入ったライディーンのゴッドブロックが受け止める。


「ディアッカ!」
「た、助かったぜジュドー」
「礼はいいから援護してくれ!まだ動けるんだろ?」
「ああ!でももう弾が少ねえぞ!」


ステルバーの残った腕がマシンガンを握る。
少ない弾を温存し慎重に発射されるマシンガンとガトリング砲、ミサイルの中をテッカマンブレードが駆け抜ける。
接近されたらライディーンが押し返す。
ライディーンの武装を警戒し、テッカマンブレードは深入りせずに後退する。
場を仕切り直してステルバーが弾幕を張り……としばらくその攻防が続いた。


「ゴッドブーメランだ!」
「フォローは任せな!」


ライディーンがゴッドブロックを変形させ、回転させてテッカマンブレードに投げつけた。
悠々と回避するテッカマンブレードだが、そこにディアッカが得意の射撃を叩き込む。
ミサイルでガトリング砲で回避コースを潰し、動きの限定されたテッカマンブレード。


「この程度で……!」


銃弾をテックランサーで弾き、装甲を変形させていくテッカマンブレード。
その背後から、一度回避したゴッドブーメランが弧を描き迫る。


「グゥレイト……何!?」


完全に不意を突いた一撃だったが、テッカマンブレードはとっさにクラッシュイントルードを中断し振り向きざまにランサーを一閃、ブーメランを弾き飛ばした。
だがジュドーはそれを予測していた。既につがえていたゴッドゴーガンを、今度は一点を狙い発射する。
テッカマンブレードの背中、推進器の部分。


「ぐわあっ!」
「当たった!ようし……!」


墜落していくテッカマンブレード。
一気に畳み掛けようとジュドーはゴッドブーメランを呼び戻す。ライディーンの右腕に収まったとたんに変形、回転するゴッドブレイカー。
後ろで膝立ちになったステルバーが全身の武装を発射した。

39 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:02:16 ID:eCC4rW9g
「決めるぞ、ディアッカ!」
「おうよ!」


ステルバーの砲撃に全身を撃たれるテッカマンブレードの体。
防御のために丸まったテッカマンブレードをライディーンの右足で蹴り上げて、チェーンソーのように回転するスピンブレイカーを振り下ろす。
しかし、交差した腕の中からテッカマンブレードの鋭い眼光がジュドーを射抜いた。


「はあっ!」


蹴りの反動を利用しテックランサーが投げられた。
ライディーンの振り出されていた右足に刺さる。だが大したダメージではなかった。


「何を……何っ!?」


ジュドーは驚愕する。
テッカマンブレードの目的は攻撃ではなく、回避。
ランサーに接続されたテックワイヤーを急速に巻き取り、スピンブレイカーの殺傷範囲から逃れるテッカマンブレード。
瞬時に視界から白い影が消えて、スピンブレイカーは宙を切った。


「くそっ、これでも駄目なのかよ!」
「しぶといな……って、やばい!」


いったん距離を取って仕切り直す三人。
だが転機は訪れていた。今の攻防でテッカマンブレードを仕留められなかったこの時点で。
ディアッカが確認したステルバーの状態。そこには武器の残弾が0だと示されていた。


「ジュドー、もう残弾がねえ!」
「くっ、なんなんだよこいつは!ちっとも消耗してる様子がない!」


ステルバーが弾切れになれば、当然負担はすべてライディーンが背負うことになる。
パワーダウンしたライディーンには、テッカマンブレードの相手は荷が重い。
ジュドーの言葉通り、いくら被弾しても攻撃の手を緩めようとしないテッカマンブレードが叫ぶ。
クラッシュイントルードにより瞬く間にゴーガンソードの上半分が折れて吹き飛ばされた。


「ここまでだラダム!死ねええええっ!」


勝機と感じたテッカマンブレードがスピードを上げる。
今度はミサイルのある腹部ではなく、電撃を放つ頭部でもなく、狙いはすべての動きの起点となる腰部。


「この、どうせろくに動かないんだったら!」


ジュドーはライディーンの左脚を上げ、テッカマンブレードをライディーンの膝蹴りが襲う。
突き出されたテックランサーとムートロン装甲の膝が激突し火花が散る。
動きの止まったテッカマンブレードに、ライディーンは両腕を組んで叩き付けた。
膝と拳でテッカマンブレードが挟まれる。



40 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:03:06 ID:eCC4rW9g
テックランサーの先端は、僅かだがライディーンの膝に埋まっている。
その先端、ジュドーから確認できない位置に光が灯る。
ブラスター化したテッカマンが得る新たな力。
通常状態のテッカマンが撃つボルテッカ並みの威力のフェルミオンビームをテックランサーから放つ技、ボルテッカランサー。
これまでの戦いで一度も使わなかった攻撃。ラダムに学習されず接近する、このときのためだ。
密着状態から放たれるフェルミオンビームがライディーンの左足を駆け巡る。
いかにムートロン金属の装甲とは言え、内部に直接流しこまれる破壊エネルギーには抵抗できない。
一瞬でライディーンの左足は粉々に砕け散った。


「うわあっ!」
「ジュドー!」


吹き飛ぶライディーン。今度こそ完全に機体バランスを欠き、雪原へと倒れ込んだ。
駆け付けたステルバーだが、どうする事も出来ずにテッカマンブレードと対峙する。
だがその手のゴーガンソードだけで抗えるはずもない。
ディアッカは流れる汗を拭うこともできないまま、迫る死の予感に身を振るわせる。


「ディ……ディアッカ……」
「ジュドー、生きてんのか!?」
「あ……ああ……」

ジュドーは辛うじて無事のようだが状況は良くない。
ここでジュドーを囮に自分だけ逃げるにしても、あのとんでもないスピードの突撃を使われればあっという間に追いつかれるだけだろう。
だからと言ってこの状況から勝てるはずもない。


「チクショウ、これが年貢の納め時って奴かよ!」
「ま、まだだディアッカ……」
「何だよ、なんか手でもあんのか!?」


ジュドーが指差したのは背後の山だ。
度重なる戦闘の衝撃でもう崩落寸前といった様子である。


「雪崩を起こして、あいつを巻き込むんだ。その後、一気に逃げる」
「ちょっと待て、お前俺を置いていく気か?」
「まさか。ディアッカにはやってほしいことがあるんだ」


テッカマンブレードと睨み合ったまま、ジュドーとディアッカは作戦を確認する。
勝算は高いとは言えないが、それでも他に手はない。


「ああ、もう!他に手はなさそうだし、やるしかねえか!」
「行くぞディアッカ……!これで最後だ!」


ステルバーからゴーガンソードの半分を受け取って復元し、片足のライディーンがジャンプしてテッカマンブレードに襲いかかる。
ゴーガンソード、ゴッドブレイカー、ゴッドサンダー、ゴッドミサイルにゴッドアローと今あるありったけの武器でテッカマンブレードを押し止めるジュドー。
その間にディアッカは素早くパネルを操作してステルバーを自動操縦モードへと変更した。
動力炉のリミッターを解除して、スペック以上の出力を発揮する。
モニターにタイムカウントが表示された。これが尽きた時がステルバーの最後。


「だが、それはお前の終わりでもあるんだぜ!」
「ゴッド……プレッシャー!」

41 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:04:20 ID:eCC4rW9g
ライディーンへと突進するテッカマンブレード。
弾き飛ばされながらも、ライディーンは額から圧力波を放ちテッカマンブレードの腕からランサーを弾き飛ばした。
そこへ突進したステルバーが、残った右腕でテッカマンブレードの小柄な体を捕まえる。


「このまま……!」
「舐めるな、ラダム!この程度で俺を封じたつもりか!」


ステルバーの拳からテッカマンブレードの両腕が突き出る。
十倍以上のサイズをものともしないパワーだった。


「おっと、動くなよ!くたばるんならお前一人で死にな!」


しかしそれ以上の攻撃を受ける前に、ディアッカは最後のコマンドを打ち込みコックピットの隅にあるレバーを引く。
ガクン、とステルバーが揺れコックピットが炸薬によって強引に開かれた。
その後、ディアッカの座るシートが天高く打ち上げられた。
テッカマンブレードはその行動に戸惑う。
ラダムの中から何かが逃げた。とするとあれがラダムの本体か、と思考しその後を追うべく全身に力を込める。
その瞬間、ステルバーがテッカマンブレードを掴む腕ごと自らを抱きしめるようにうずくまった。
リミッターを解除したステルバーの、全身を捨てて発揮した力は強大だった。
いかにブラスターテッカマンブレードといえども、疲労した身では一瞬では脱出できないほどに。
そこへ、上空に飛んだライディーンが最後の力を振り絞り、雪山へ向けて念動光線ゴッドアルファを発射した。
パイロットの消耗が大きく多用はできないが、威力は折り紙つき。
震動波が固まった雪を消し飛ばす。一部分が消滅した雪山はその空白を補うべく代わりの雪を下方に下ろす。
つまりは雪崩だ。
広範囲に発射された念動光線は大規模な雪崩を引き起こした。


「ディアッカ!」
「グゥレイト!だがもう一発だ、受け取ってくれ!」


パラシュートを開き空に漂うディアッカをライディーンが回収する。
その手の中でディアッカは脱出する直前に仕掛けた最後の仕掛けの発動時間を計っていた。
雪に呑み込まれる寸前にステルバーの動力炉が臨界を越えた。
ディアッカの戦友であるアスランの未来のお家芸となる、自爆である。
その腕にテッカマンブレードを握り締めたまま、ステルバーが自身を全て熱へと還元する。
光の中で溶けるステルバーの姿。凄まじい雪煙りがジュドーとディアッカの視界を奪う。
噴き上がってきた衝撃波にライディーンが揺れる。
穿たれたクレーターに落下するテッカマンブレード。防御に全ての力を回したテッカマンブレードに、雪崩を回避する余裕はなかった。
直後に何十万トンという雪が爆発もテッカマンブレードもすべてを覆い隠していった。


「やったか!?」
「バカ、ジュドー!それを言うなよ!」
「何でさ!とにかく逃げるよ!」


疲労したジュドーはライディーンの損傷を確認するより先に離脱を選択した。と言うよりも、ゴッドアルファを使ったせいでジュドーはもう限界なのだ。
ライディーンの本来のパイロットであるひびき洸でさえ激しく消耗するこの機能は、仮初めのパイロットであるジュドーにはさらに荷が重かった。
ニュータイプの思念を変換したとでも言うべき念動力の攻撃はジュドーの体力を失神寸前まで奪う。
ろくに視界の利かないこの雪煙の中では戦うのも不利だ。
手に生身のディアッカを握っているためゴッドバードに変形することもできなかったが、ライディーンはこの場を離れるために転進し飛んでいく。
左脚を根元から破壊されたため機体バランスを保つのが難しく、ふらふらとまるで風に揺られる凧のように飛ぶライディーン。
文句を言おうとしたディアッカだが迂闊に口を開いて舌を噛みそうになり、しばらくジュドーの好きに飛ばせようと思った。
しばらく飛んだあと、もう大丈夫だろうとジュドーは気を緩めた。

42 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:05:35 ID:eCC4rW9g
すみません、投下ミスです。
>>40の最初にこれが入ります。




「ぐ、う……」
「ディアッカ、今の内に!」
「お、おう!」


折れたゴーガンソードを拾いにステルバーが走る。
ライディーンによって動きを止められたテッカマンブレードを両断しようと言うのだ。


「ク、クク……」
「何がおかしい!?」
「捕まえたぞ……ラダム!」


43 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:06:22 ID:eCC4rW9g
「なんとか、逃げ切れたかな」
「ああ、そうみたいだな……ていうか寒い!ジュドー、中に入れてくれよ」
「そういやここ雪原だもんね。ちょっと待ってくれ、すぐに降りる……」


地上に降りようとしたライディーン。突如ぐらっと機体が揺れる。
だが、その動きはジュドーが意図したものではなかった。
急降下するライディーン。落ちそうになったディアッカが慌てて指につかまる。


「うわっ!?」
「っと、何しやがるジュドー!」
「違う、俺はまだ何もしてない!」


慌てた声を上げるジュドー。不自然に引力を受けたと感じた右足の情報を表示する。
そこには、いつの間に刺さったのか鋭い槍があった。そう、さっきまで戦っていた白騎士の槍が。
端から糸が伸びている。視認するのも難しいほどに細い、しかし強靭な糸が。
糸の先を追って行くと地上に行き着いた。
猛烈に嫌な予感を感じるジュドー。
果たして、予想通り雪をはねあげてテッカマンブレードが姿を見せる。
全身の装甲に歪みや焦げ跡を刻みながらも五体満足。


「ラダムゥゥゥゥゥゥー!」


雪中を掘り進んできたテッカマンブレードは、伸ばしに伸ばしたテックワイヤーを頼りにライディーンとの距離を測っていた。
ステルバーが爆発した瞬間は水蒸気が爆発しレーダーやカメラはほとんど利かなくなっていた。
テッカマンブレードは一瞬見えたライディーンの足にテックワイヤーを接続したランサーを投げつけ引きずり落とそうとしたのだが、雪崩に阻まれた。
すぐにテックワイヤーも外れたのだが、ワイヤーが引っ張られた方向からラダムの逃亡を感知したテッカマンブレード。
すぐに攻撃を仕掛けたかったが、さすがに雪崩のダメージは大きくまだ体が本調子ではない。
だから一度時間を置き、ラダムが身を休めた時を狙うと決めた。
ランサーの先端からごく微弱にフェルミオンエネルギーを放出し、決して痕跡を出さぬよう深く静かに雪の中を掘り進む。

この辺り一面は雪に追われ、テッカマンブレードの白い身体は遠目には発見し辛い。
ジュドーは片足を欠いたライディーンのバランスを保つのに必死で、その上意識が朦朧としていたのがあだとなった。
後方の空を重点的に警戒していたので、雪の中から顔だけを出して追って来るテッカマンブレードに気付けなかったのだ。

半時間ほどそのまま飛び続けたか、いよいよテッカマンブレードの忍耐も限界に近づいたところでライディーンは停止した。
動きを止めたラダムに、好機と見たテッカマンブレードがついに牙を剥く。
テックワイヤーを接続したランサーを投擲、ふらふらと飛ぶライディーンを地上へと引き落とすと、テッカマンブレードの肩が開いた。
さきほどは力を温存しようとしたから手痛い逆襲にあった。あのラダム達はどうやら相当に戦闘向きの個体であるらしい。
もはや油断はしない。このラダムどもは絶対に生かしてはおかない。今ある全力で葬り去る。
条件は整った。もはや敵ラダムは一か所に集まり、テックワイヤーで繋がっているため撃ち漏らす心配もない。


「塵一つ残さず、消滅させてやる……!」


全身のエネルギーをかき集め放つ、ブラスターテッカマンブレード最大最強の攻撃。
太陽よりも激しい光を見て、ジュドーとディアッカは絶望に支配された。
パワーの低下したライディーンはテックワイヤーを振りほどけない。
ゴッドアローは撃ち尽くしているし、ゴッドサンダーを撃つエネルギーは残っておらず、ゴッドアルファを使うにはジュドーは疲弊しすぎていた。
ゴッドバードに変形しようにも手の平に生身のディアッカを乗せていては無理だ。
ゴーガンソードでワイヤーを切ることはできるだろうが、切ったところで今のライディーンの状態ではろくに回避運動も取れない。
あの高速移動で接近され、至近距離から撃たれるだけだろう。
だが見方を変えれば今の状態なら少しだけ、ほんの少しだけは時間があると言うことでもある。
敵のチャージが完了するまでの僅かな時間に、ジュドーには一つだけできる事があった。

44 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:07:23 ID:eCC4rW9g
「う、嘘だろ……は、ははは」
「…ディアッカ!」


恐怖のあまり笑いだしたディアッカ。
ジュドーは回避は不可能と見ると、即座にその方針を変更した。
手の中のディアッカを包み込むように右腕のゴッドブロックを変形させる。
そして左腕のゴーガンソードで、ライディーンは自らの右腕を切り落とした。


「じゅ、ジュドー何を!?」
「ディアッカ、もしプルとプルツーにあったら……!」


すぐにゴーガンソードを解除し、丸い玉のようになったゴッドブロックを掴むライディーンの左手。
そしてベースボーラーのように振りかぶる。


「頼む、二人を守ってやってくれ!」
「おい、ジュドー!」
「うおおおおおおっ!」


ムートロンエネルギーを集め、放り投げる。
弾丸のような速度でディアッカを包むゴッドブロックが飛び離れていく。
ありったけのエネルギーを込めて投げたのでしばらくは飛んでいられるはずだ。
その先に何があるかは分からないが、少なくともここに残っているよりは生存確率は上がるだろう。
同時に、ライディーンの下から凄まじいプレッシャーが上昇してくる。
白い騎士がまるで光の塊のようになってライディーンを見上げている。
もう抵抗の手段はない。
だが、ジュドーは座して死を待つようなことはしなかった。
ゴーガンソードを広げた左腕を握り締め、逆に自分から降下することで距離を詰める。


「おおおおおおお……!」
「ごめんよ、リィナ……俺、ここで死ぬみたいだ。でも、またお前に会えるんだから、いいよな……」


戦火の中で死に別れた妹のことを思うジュドー。
リィナの笑顔が見えた気がした。
ライディーンの全重量を乗せたゴーガンソードがテッカマンブレードを襲う。
掲げられたテッカマンブレードの腕が、ギリギリのところでその刃を受け止めた。
その間もボルテッカのチャージは止まらない。


「やっぱり駄目か……でも、ディアッカが逃げる時間くらいは稼いでみせるよ……!」
「ボルテッカァァァァァァァーーーーーーーー!」


至近距離で放たれたブラスターボルテッカ。
撃った当人であるテッカマンブレードを傷つけながらも、その光はライディーンを原子の塵へと変換していく。
しかし、消滅よりも早くライディーンは落下する。
削り取られながら、しかし確実にテッカマンブレードを大地へと沈めていく。
しばしの拮抗の後、ついにボルテッカの輝きが古代ムー帝国の守護神もろともニュータイプの少年を消し飛ばした。
奇しくもジュドーと同じように、戦いの中で妹を失った兄の手によって。


【ジュドー・アーシタ 死亡 ライディーン 大破】

45 : ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:08:41 ID:eCC4rW9g
「あの光は……!」


ジュドーを葬ったブラスターボルテッカの光は、まさに天を貫く光だった。
はるか大気圏まで立ち昇る輝きを見て足を止めたのは白いヒゲを持つガンダム。
ラウ・ル・クルーゼが操縦する∀ガンダムの中で、テッカマンレイピアである相羽ミユキが声を上げたためだ。


「アレが何かわかるのかね、ミユキ君?」
「ええ、多分あれはボルテッカです。私たちテッカマンの最強の攻撃……でも、あんな威力のボルテッカなんて誰が……」


なるほどテッカマンが近くにいるのか、とクルーゼは思った。


(では君はこう考えているだろう。そのボルテッカを撃ったのが誰か、確かめたいと……)
「クルーゼさん、私をここで降ろしていただけませんか?」
「いいや、駄目だ。私も共に行こう」
「……いいんですか?」
「君の兄君かもしれないのだろう?そうであればいいが、そうでなかった場合……敵性テッカマン、アックスやランスだった場合は私の力が必要になるだろう」
「あ、ありがとうございます!」


そして∀ガンダムは来た道を引き返す。同行を決めたクルーゼだが、もちろん善意からではない。
道すがら聞いた話によれば、テッカマンは一度ボルテッカを撃てばほぼ全身の力を使い果たすと言う。
つまり今ボルテッカを撃ったばかりならば、あそこにいるテッカマンは無力に等しい。
ミユキの兄であれば懐柔するが、そうでない場合、つまり敵対的なテッカマンであれば始末するだけ。
労せずして強敵を間引く好機を、クルーゼが逃すはずもなかった。
加えてミユキからの信頼も深まっている。デメリットは何もない。
転進した∀ガンダムはやがて、弾丸のように飛んでくる白い球体を発見した。
ミサイルかと思ったクルーゼだがその内部に生体反応をキャッチして、迎撃せずに受け止めた。


「誰か、いるのかね?」
「……その声は……クルーゼ隊長!?」
「君は……ディアッカ・エルスマンか!」


クルーゼが探していた内の一人、部下であるディアッカだった。
こんなところで合流できるとはと笑うクルーゼに、ディアッカは切羽詰まった声で叫んだ。


「隊長、話は後だ!早く逃げてくれ!」
「逃げる?ああ、君が遭遇したと言うテッカマンだな。だがもう心配は……」
「隊長!あいつが来ちまうよ!」


ボルテッカを撃ったテッカマンは無力。
その理屈はブラスター化したテッカマンには通じない。
だから、クルーゼの目の前にブラスターテッカマンブレードは現れる。
三度目のボルテッカで疲弊し、またジュドーの抵抗により全身に傷を負ってはいたが、テッカマンブレードは装甲の下でにやりと笑う。
弓のラダムのの最後の攻撃によって予想以上に解くまでラダムを逃がしてしまったと思っていたら、その先でまた新たなラダムと出会えた。
自前の足と推進器で飛んできたテッカマンブレードが∀ガンダムと睨み合う。


「また新しいラダムか……!」
「お兄……ちゃん?」


それは、兄と妹の再会でもあった。

46 :白い悪魔 ◆bSTqMcZZvs :2010/01/27(水) 22:10:17 ID:eCC4rW9g

【Dボゥイ 支給機体:なし】
 パイロット状況:疲労(大) 思考能力回復 支給品入りのバッグ紛失
 機体状況:全身の装甲に傷や焦げ跡がある エネルギー中消費
 現在位置:C-6
 第1行動方針:参加者(=ラダム)を殲滅する。手段は問わない
 第2行動方針:テッカマンは優先して殺す
 最終行動方針:ラダムを殲滅する
 備考:自分以外の動く全ての物がラダムに見えるように改造されています。
     家族の顔など、自分自身の細かい記憶は全て失っているようです。

【ディアッカ・エルスマン 搭乗機体:なし(ライディーンのゴッドブロックが変形した脱出ポッドの中)
パイロット状況:体力消耗大
機体状況:なし
現在位置:C-7
第一行動目標:当面殺し合いには乗らない、テッカマンブレードから逃げる
第二行動目標:脱出が無理と判断した場合、頃合を見て殺し合いに乗る 】

【ラウ・ル・クルーゼ 搭乗機体:∀ガンダム@∀ガンダム
 パイロット状況:良好 仮面喪失 ハリーの眼鏡装備
 機体状況:良好 核装備(1/2)
 現在位置:C-7
 第1行動方針:テッカマンブレードに対処する
 第2行動方針:手駒を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先)
 第3行動方針:ダルタニアスを取りに行って、雪原市街地でミストたちと合流する
 第4行動方針:手駒を使い邪魔者を間引き、参加者を減らしていく
 最終行動方針:優勝し再び泥沼の戦争を引き起こす(できれば全ての異世界を滅茶苦茶にしたい)】
※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません。
※ヴァルシオン内部の核弾頭起爆スイッチを所持。

【テッカマンレイピア 搭乗機体:なし(∀ガンダムに同乗中)
 パイロット状態:体力消耗
 現在地:C-7
 第一行動方針:タカヤお兄ちゃんを助ける
 第二行動方針:私も……戦う!
 第三行動方針:アックス、ランス、アルベルトに警戒
 最終行動方針:みんなで生きて帰れる方法を探す
 備考一:テッククリスタル所持
 備考二:Dボゥイの異常に気が付きました】


【一日目 9:40】




投下終了です。

47 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 22:57:04 ID:tMDfyv02
ところでお前等はどのジョーカーに期待してる?
俺はイスペイル様かな

48 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:09:31 ID:UQGU3Svl
俺は甲洋だなぁ
関係するキャラも多いしね

49 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:13:57 ID:y8x4J0Xy
ジュドーの口調がおかしいよね
あとリィナ死んでないよね

50 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:26:27 ID:Zc3kIFXP
ともかくも今回は通しで結論ついたみたいよ

51 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:29:33 ID:P6bY5Usj
>>49
「ジュドーの視点では」死んでるよ
リィナと再会するのは最終回で、このジュドーは最終回前の出典
口調がおかしいのはどこが?

52 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:32:45 ID:OLyq4317
ジュドー登場話で
>ネオジオンとの戦いは集結を迎え、ジュドーは木星へと向かう最中だったのだが、
って書かれているんだけど

53 :それも名無しだ:2010/01/27(水) 23:41:17 ID:9ztzKWEi
荒らし書き手は他のロワにいけよ

54 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 00:00:21 ID:IXKDLFur
アンチが多くないか?
悪くないだろ
さすがに今回は重箱突いてる人が荒らしだ

55 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 00:48:45 ID:rJdKebXK
そう思うならageんな

口調はなんか全体的に違和感あるなあ
こんなしゃべり方するっけ、みたいな
具体的に説明するのは難しいが、スパロボで見た限りでももうちょっと独特の口調だったと思う
あれも富野語になるのかは知らんが

56 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 00:59:45 ID:q7zw/hec
具体的に説明できないのならお前の勘違いだ

57 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 01:27:02 ID:BUCJGIWB
とりあえず
>>52の引用部分でここのジュドーは原作終了後ってことになるよな
それでリィナが死んだと思っている、これは明らかなミスだ
これは修正すべきだと思う

あと、これは重箱だが、
Dさんとクルーゼ&レイピアの接触で〆るのは、投げっぱなしとも取られかねない
リレーとしては悪手

58 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 01:29:03 ID:q7zw/hec
それを言うなら前回だってDボゥイとジュドー・ディアッカの接触で終わってるんだが?
不意打ちして戦うしかない状況で任せるのはリレーとして良い手だとでもいうのか

59 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 01:37:57 ID:VW1uqDBJ
>>57
木星に行こうとはしてるが船の乗り場で再会する前ってことで辻褄は合うが

60 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 01:44:17 ID:tWKnKnTC
重箱なら突付くなよ
それレベルなら今まで全てのSSに出来るぞ

61 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 02:38:11 ID:VW1uqDBJ
ただの個人的考えなので重箱ですらないな

62 :代理投下:2010/01/28(木) 12:12:11 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:40:44 ID:cncwlgWQ
紅と黒が激突し火花を散らす。
一度といわず二度、二度といわず三度、三度といわず何度でも。
何度も何度も何度も何度も交錯を繰り返している。
空を天に、海上を地に、橋の欄干を背に。
場所を選ばず、上も下も右も左もなく地形など飾りだとでも言わんばかりに縦横無尽に駆け抜ける。
止まらない、止まらない、止まれない。
素人からすれば破茶滅茶に暴れまわっているようにも見えるがこの瞬間瞬間の立ち位置の変化は互いに間合いを測っているからこそ。
一刀で切り伏せれる距離を。
凶刃が届かぬ空を。
カウンターをいなし切れる足場を。
銃弾を届けうる射線を。
二人は求め常に動く。
今この戦場において無策の静止とは即ち終焉。
止まれば死ぬ。
それはそんな些細なことで揺れ動くほど彼らの戦いが拮抗していることを意味していた。

ギリアム・イェーガーとゼンガー・ゾンボルト。
両者凄腕のパイロットであるこの二人のどちらがより強いのかという問いには簡単に答えることはできない。
片や悪を断つ剣を称するに相応しい一撃必殺の武人。
片や経験と予知能力を駆使し必中の精度と抜群の回避率を誇る堕天使。
異なる領域の極地にいる二人をデータから比べようにも単純に並べることなど不可能だ。
かといって直接矛先を交えようものならこのように泥沼になりうる。
共に同じ部隊の出身な為相手の手を熟知しているからだ。
それはゼンガーのクローンであるウォーダンとギリアムの場合であっても同じことだった。

互角である二人の拮抗状態を崩してしかるべき機体の差も幸か不幸か戦局を動かすには至らなかった。
性能に違いが無いわけではない。
機体の能力だけ見ればブラックサレナの方がレッドフレームを幾つかの点で上回っている。
既存の機動兵器離れした外見は伊達ではない。
全身を覆う重装甲とブースターにより黒百合の名を冠した機体はサイズに見合わない頑丈さと圧倒的な機動力を誇っているのだ。
フェイズシフト装甲を搭載できず耐弾性に問題があるアストレイとは物が違う。
その上アストレイが防御力と引返に得た運動性でさえ、各部姿勢用制御ノズルをこれでもかと装備したブラックサレナを引き離すには至らない。
テンカワ・アキトが復讐を達成するために血反吐を吐いて鍛え上げた機体がたかだかプロトタイプに敗れるわけが無かった。

――相手がただのM1アストレイなら

「チェエエエッスットォォォオオオオオ!」


63 :代理投下:2010/01/28(木) 12:12:50 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:41:19 ID:cncwlgWQ
ブラックサレナが人の執念により鍛え上げられた鎧なら、レッドフレームが掲げる剣は遥か古代より研鑽されてきた刀匠達の技術の結晶。
ガーベラ・ストレート。
モビルスーツの装甲はおろか高エネルギーのビームすらも容易く両断する実体剣。
アストレイ独自のフレームが可能とする限りなく人間に近い動きによりウォーダンの思うがままに振るわれるその剣はまさに必殺。
空間をも湾曲させる障壁も一文字の名を冠する名刀を曲げるには役不足だった。

「くっ!」

フィールドが破られたと判断するや否やギリアムはバレルロールを決行。
左スラスターバインダーに刃筋を立てんとしていた刀は装甲にその身を食い込ませるよりも早く振り払われる。
ウォーダンも武器を巻き取られることを嫌い無理に抗わず刀ごと回転の勢いに身をまかせ地上へと流れゆく。
ただでは逃すまいとバレルロールの動作の中黒き竜尾、テールバインダーをレッドフレームに叩きつけたが浅い。
そしてこの威力の無さはブラックサレナの装備全般にも言えていた。
スペックで劣るレッドフレームとは逆に、ブラックサレナは決め手に欠けているのだ。
どころか欠点を埋められる程の手数も無い。
そもそも小型なサイズに似つかわしくない頑強さと速度を手にした代償にその四肢を半場固定している機体だ。
強力な武器があったとしても満足に振るうことも敵わない。
唯一決定打を与えうる強固なフィールドを纏っての体当たりも、相手がウォーダンなら最悪切り払われ得る。

(これは……一度退くことも考えるべきか?)

ギリアムの中で撤退の二文字が鎌首をもたげるも、即座にねじ伏せる。
確かにそれも一つの手ではある。
このままウォーダンと戦い続けても千日手となる可能性の方が大きいのも理解している。
次に備える為、消耗を避けて退くという考えは常日頃なら肯定できるものだったろう。
だが今は駄目だ。
存分に時間を稼げたとも言えない以上、ウォーダンがクロガネに追いつく可能性は決して小さくはない。
一騎達だけではない。
ウォーダンをここで取り逃がしたことでどこかの誰かの未来が暗雲に閉ざされてしまうかもしれない。
それだけは何としても阻止したい。

(いよいよ突撃するしかないか)

覚悟を決めたそんな時だった。
ギリアムの脳裏に一つのビジョンが浮かんだのは。


空中で体勢を立て直しつつ危なげなく着地したウォーダンもまた苦虫を噛み潰していた。
一撃必殺を至上とする示現流の刃だが当たらなければ意味が無い。
開戦以来斬撃が敵を捉えられたことの方が少なく、今も紙一重で回避され反撃の弾丸をもらう歯目になった。
あのようなぎりぎりの避け方はこちらの射程を正確に把握していなければ不可能だ。
クロガネ近海で数度手合わせしただけでガーベラストレートの長さを読み取った慧眼には恐れ入る。
それでもウォーダンもまた退くわけにはいかなかった。
殺し合いへの参加通達が来た時、彼の創造主たるレモン・ブロウニングは言ったのだ。
これはウォーダンに課せられた最終試練なのだと。
この殺し合いを生き抜いた時、ウォーダンは真なるメイガスの剣足り得ると。

――あなたは得られる得られるのかしら? 生と死と人間が入り乱れるこの地で
  あなたをゼンガー・ゾンボルトのクローンではなくあなた足らしめるものを

今のウォーダンにはまだその問いの答えを得ていない。
分からないが故に、分からぬまま終るわけにはいかない。

「不退転……それが我が流儀! そしてお前も進むことを選んだか、ギリアム・イェーガー!」


64 :代理投下:2010/01/28(木) 12:13:35 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:43:04 ID:cncwlgWQ

降り注ぐ無数の弾丸を叩き落したウォーダンの頭上に銃弾など比べるべくもない巨大な影が落ちる。
仰ぎ見れば空にもまた黒い影が揺らめいていた。
ブラックサレナだ。
これまでことあるごとにガーベラストレートの届かぬ位置を取り続けることを第一としていたギリアムが自ら死線へと飛び込んできたのだ。
その意気やよし。
虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
死中に活を求めず勝てるほどこのウォーダン・ユミルは甘くは無い。

それはウォーダンからギリアムへの認識にしても同じだった。

ウォーダンは剣を大上段へと構える。
示現流の基礎にして奥義である蜻蛉の構え。
防御など不要。一の太刀で必殺の剣を相手よりも先に打ち込むことのみを念じ我が身を刃と化す。
より強く、より速く。
只それだけを求めて精神を集中させる。

一の太刀を疑わず全力で剣を振り下すことだけを
届かせろ!雲燿の速さまでッ!

ウォーダンの意図を読み取ったのだろう。
ブラックサレナが一旦大きく後退し地上に降り立つ。
逃げようとしてのことではない。
あえて誘いに乗ることでがら空きとなった胴を狙わんとしてのことだ。
加速できるだけの距離を取りブラックサレナがレッドフレームと正対する位置で動きを止める。
奇しくもそこは先刻ウォーダンがエイジを葬った地。
亡霊と剣豪の激突にはこれほども相応しい場所はあるまい。
因縁じみたものを仮面の下で感じてたウォーダンの前でブラックサレナの竜尾が蠢く。
隆起した大地の断層へとテールバインダーより伸ばしたアンカークローを突き刺したのだ。
突撃には明らかに邪魔になる行為だが、ブラックサレナはにも関わらず固定されたまま全ブースターとスラスターノズルをイグニッション。
無理やり地に射止められた状態で進むはずが無い。進めれるはずが無い。
行き場を無くした運動エネルギーは全てが全てブラックサレナへと跳ね返りその身へと蓄積されていく。

(否、それが狙いか!)

このままでは遠からないうちに過負荷に耐えかねたテールバインダーが悲鳴を上げブラックサレナは撃ち出されるだろう。
最大を超えた推力で加速する亡霊は瞬時にトップスピードに至るに違いない。
その姿を捉えることなぞできようか?
銃弾を超えたレーザー光線に対し後の先なぞ狙えようか?
今なら、動くこと叶わぬ今なら楽に葬れるのではないか?

――無粋

常人なら陥りかねない弱さなどウォーダン・ユミルは持ち合わせていなかった。
敵がより力を得んとしているのであれば、自らもその時間を己を高めることに費やすのみ!


65 :代理投下:2010/01/28(木) 12:14:54 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:43:52 ID:cncwlgWQ

「ゆくぞ、ウォーダン・ユミル!」
「来い、ギリアム・イェーガー!」

遂にテールバインダーが千切れ、ブラックサレナが貯めに貯めたエネルギーを開放する。
まさに爆発。
限界まで引き絞られた弓から放たれた漆黒の矢は音も光も置き去りにして此方から彼方までを秒針が動く間もなく走破する。
目前に迫るレッドフレーム。
振り下ろされる雲燿の刃。
その後の先の更に先を。
ブラックサレナは突き進む!
されどその眼前に立ち塞がるものあり。
置き去りにしたはずの光だ。
破壊の力を持った光だ!
それは電光、それは雷鳴。
実体剣にビームサーベル用のエネルギーを送り込むことで発生させる光雷球。
あろうことかウォーダン・ユミルはその電撃をブラックサレナにぶつけるのではなくそのまま纏わせ、ガーベラストレートを光の剣へと変える。
これぞ雷光を超えた稲妻の刃、

「ガーベラストレート・稲妻重力落としいいいいいっっっ!」

帯電した電気の分射程の伸びた刃がブラックサレナの速度を凌駕する。
全体重を乗せた渾身の運足による必滅の刃の前にディストーションフィールドは有って無き物。
雷雲の稲妻の耀く間すら阻めずに重力障壁は守るべき黒き百合の花ごと断ち切られた。

散花。
幾百もの鋼の飛沫が宙に舞う。

だがウォーダンの仮面に隠された顔には強敵を葬ったことの満足感ではなく、ひたすらに驚愕のみが浮かんでいた。
僅かに、ほんの僅かにだが。
ガーベラストレートがブラックサレナを両断しきるよりも早く、装甲の方から弾けとんだのだ!
ぬかった。
振り切った刃に空蝉を絶ったような空虚な感覚を覚える中、撒き散らされた鋼の黒百合の花弁に視界を奪われる。
一秒にも満たない刹那の隙。
その一瞬は世界に新たな色を与えるのに十分な時間だった。

「ブラックサレナの真の姿を見るがいい……!」

陽の光を反射して煌めく色はワインレッド。
色の主の名はエステバリス。
言葉通りかの機体こそが追加装甲をパージさせたブラックサレナの本体。

そしてその両手に宿るのは、ゲシュペンストの魂!
脳裏に鮮明に思い浮かべるのはウォーダンも、特殊戦技教導隊の他の誰もが知らない、一人のゲシュペンストのパイロット。
模倣するは一途で自分が正しいと思ったことをどこまでも貫いた少女のありようそのものの真っ直ぐな拳。
IFSがギリアムの想像を忠実にフィードバック。
エステバリスのナックルバンカーがマウンドし右拳を包み込む。
プラズマステークに比べれば頼りないが構わない。
パトリシア・ハックマンが編み出したこの技は元よりジェットマグナムにあらず!


66 :代理投下:2010/01/28(木) 12:16:19 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:44:11 ID:cncwlgWQ

「必殺……!」

ウォーダンも返す刃で迎撃しようとするも、無茶な使い方をしたせいか右腕の動きが鈍い。
ならばと左腕でビームサーベルを抜き放つも、所詮は死んだ剣。
示現流に二の太刀は、無い。
リーチの差を活かして繰り出した斬撃は、簡単に受け止められた。
ブラックサレナの左腕が手にしたネオ・プラズマカッターによって。
紅エイジがついぞ抜くことの叶わなかった剣はりギリアムが主の二の舞になることを防いだのだ。

「ゲシュペンスト……ッ」

ギリアムが予知した光景。
そこにはメガ・プラズマカッターを振るう自分がいた。
使ってくれ。
こんなふざけた殺し合いなんか台無しにしてやれ。
そんな声が聞こえた気がして。
アンカークローを大地に穿ったあの時、マニュピュレーターを伸ばしゲシュペンストの残骸から密かに回収していたのだ。

その短剣は確かにギリアムの力になってくれた。
ならば今度はギリアムが故郷に帰ることなく散った名も知らぬゲシュペンスト乗りに応える番だ。
だから、貫け、エステバリス。
悲しき思い出を名に冠する機体よ。
過去の罪に潰されず、絶望の未来にも悲観にくれず

「パァァァアアアアアンチッ!!」

明日を――切り開け!


67 :代理投下:2010/01/28(木) 12:17:40 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:44:34 ID:cncwlgWQ
「フッ……まさかあんな形で意趣返しをされてしまうとはな」

ゲシュペンストパンチはレッドフレームを穿つことはなかった。
ウォーダンが咄嗟にフライトユニットをパージしてぶつけてきたからだ。
もっとも精密操作は不可能だったようだが。
最大出力でのフライトユニットの特攻はでたらめな軌道でエステバリスを海まで押し飛ばし文字通り決着はお流れになってしまった。
それはウォーダンもギリアムも望べくではなかったがなってしまったものは仕方がない。

「追撃は来ない、か」

やはりフライトユニットを使い捨てたことで機動力が大幅に減じたからか。
仕留めることはできなかったが飛行能力を奪えたのは収穫だ。
少なくとも順調に逃げていてくれればクロガネが追いつかれることはなくなった。
ただその代償は決して安くは無かった。
追加装甲をパージしたことでスピードを始め各種性能が落ちてしまっている。
特に装甲内蔵型の外付けバッテリーを失ったのは痛い。
エステバリスは母艦からエネルギーを供給してもらうことを前提にしている為、内部ジェネレーターがオミットされているのだ。
幸いイネス曰くこの機体は彼女のいた時代のエステバリスと違ってフレーム自体が巨大な蓄電池になっているそうだが。
油断はできない。
ギリアムが空を飛ぶことなく落とされた海の中を進んでいるのも少しでもエネルギーの浪費を抑えようとしてのことだ。
スクリューモジュールを搭載したエステバリスは陸地を走るのと同等の速さで海底を移動できる。

「海か……。こうして見ると一面空のようだな」

ふと足を止めてしまったのは故郷の話をしたことやゲシュペンストの残骸を見たことでセンチメンタルにでもなっていたからか。
悲しげに苦笑すると蒼穹を写した蒼い海の中ギリアムは再び歩き出した。


【ギリアム・イェーガー エステバリスカスタム・アキト機(機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-)
 パイロット状況:良好
 機体状況:損傷軽微、EN消費(小) スクリューモジュール、メガ・プラズマカッター装備
 現在位置:E-4 水中
 第1行動方針:G-7施設で合流する
 第2行動方針:仲間を探す
 第3行動方針:首輪、ボソンジャンプについて調べる
 最終行動方針:バトルロワイアルの破壊、シャドウミラーの壊滅】


68 :代理投下:2010/01/28(木) 12:19:23 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:44:58 ID:cncwlgWQ




右腕部の機能麻痺は一時的なものだったようだ。
握っては開き、握っては開きを繰り返しているうちに右マニピュレーターは反応を取り戻していた。
何度か剣を振るってみたが握りの強さも剣速にも衰えはない。
とはいえこれからも光雷球の扱いに関しては気を抜けない。
今回は一時的な不調で済んだから良かったものの、下手すれば補給ポイントの世話になる羽目になりかねない。

「……いや、飛行できぬままも厳しいか。一度向かっておくべきかもしれんな」

ギリアムを追うにも既にレーダーの範囲外なこともある。
ドリルブーストナックルの要領で撃ち出したが流石にサポートコンピューター無しでは制御しきれなかったようだ。
失敗だった。

「ギリアム・イェーガー、この決着いつかつけさせてもらうぞ」

納刀し黒と紅がぶつかった戦場を後にする。

そこに残されたのは黒き花を供物として供えられた亡霊の骸のみだった。

【ウォーダン・ユミル 搭乗機体:アストレイレッドフレーム(機動戦士ガンダムSEED ASTRAY)
 パイロット状況:良好
 現在位置:E-5
 機体状況:ビームコート装備、損傷軽微、EN消費(中)
 第一行動方針:ヴィンデルの命令に従う
 第二行動方針:手頃な補給ポイントを目指しつつ次の戦闘相手を求める
 最終行動方針:ヴィンデルの命令に従い、真なるメイガスの剣になる為にも優勝を目指す
 備考:ヴィンデルを主人と認識しています。】

【一日目 11:30】

69 :代理投下終了:2010/01/28(木) 12:21:53 ID:rWJRRe1X
:紅ノ墓標  ◆rfP3FMl5Rc:2010/01/28(木) 03:47:07 ID:cncwlgWQ
投下終了
ところでロボゲ板って行数制限いくつまででしたっけ?
知らずに投下してしまったため代理投下時に制限にひっかかってしまったらすみまでん。
適当に分割して投下お願いします。


投下乙

ゲシュペンストを背にするギリちゃんが物悲しいよー
良いバトルでしたー

70 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 16:21:50 ID:alik8iV2
投下乙です
ギリアムかっけええええええええ
ウォーダンはフライトユニット、ギリアムは追加装甲を持っていかれ
痛み訳という形になったが、飛べないレッドフレームだしウォーダンのほうが痛いなあ
それによってこの先どうなるか

71 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 17:14:17 ID:/5PbxUi4
投下乙
ギリアムかっけえええええ
兵同士の激戦はやっぱりいいわw

ところでこれで補給に行くの何人目?
無論、目指すポイントはばらばらだろうけど

72 :それも名無しだ:2010/01/28(木) 18:09:47 ID:02mSsj5E
投下乙
さすがギリアムだ、死亡フラグもなんともないぜ!
それにしてもこの教導隊化け物ぞろいである。

73 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 00:30:29 ID:GA2jcdeZ
パイロットと機体の数があってなくね?
シトとかテッカマンとかが多いせいもあるけど、複数乗りロボットの出番じゃね?

74 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 01:25:12 ID:0HUaNswM
そこでガンバスターとゲキガエリオンですよ
それに今回は放送の度に機体が追加されるし
あぶれた人はとりあえずクロガネに……は難しいな
ダルタニアスを狙ってるのがクルーゼ&ミユキとシリウス(?)、ガンバスターは特になし、が現状かな?

それにしても死亡フラグを切り抜けたもののアキトバリスじゃちょっと不安だなーw
とりあえず一騎に元気な顔を見せてやりたいが難しそう

75 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 12:15:02 ID:y6MHsleN
おいおいソルグラヴィオンを忘れてもらっては困る

76 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:06:41 ID:S1GGYw9M
事態を打開しようと予約したらしたらばでアク禁されてワロタ
ここの管理人はよっぽど◆bSTqMcZZvsとそのSSを叩き出したいらしいw

77 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:08:40 ID:GA2jcdeZ
>>76
たぶん勇み足ってやつだと思う。

書き手さんか管理人さんが意見をまとめるしかないのか。

78 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:10:08 ID:bJsoV5+y
>>76
お前は単に別口の荒らしだと認識されただけだよ
以前に書いた実績のある書き手でもない、ただの口汚いアホだったし

79 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:12:13 ID:YAqGpn6V
>>76
お前が無駄に挑発するからだろ
まあ幾分独裁じみてきてる感はあるな
書き手が議論に出てこないのを見過ごして、話を進めようとして予約した奴をアク禁とは
いよいよここも窮屈になってきたねぇ

80 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:16:55 ID:qXNuzZxu
企画内の住民が二つに割れて大戦争、負けたほうは管理人直々に出て行け宣言
糞書き手は管理人の温情で残留
序盤の騒動の決着にしては手痛いなぁ
もっと上手く落としどころを見つけられなかったもんかね

81 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 18:25:46 ID:UAqFKWEe
無能な管理人に馬鹿な住民、たった一人のゴミ書き手
まともな書き手さんたちが不憫すぐる

82 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 19:16:07 ID:GA2jcdeZ
まともな奴なら前回の際に破棄後に論議するはずだ。
がいまさら出てきたってことはマトモな奴だとは思えない。

前々から思っていたけど過剰反応する人多すぎなんだ。
出て行けとは言わないし、出て行ってほしくは無い。
次ボロを出したときに大いに議論すべきだ。
それまではどっしりと構えておけばいい。


83 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 19:32:08 ID:X3BsiNeS
たった一人で基本荒れないスパロワを
こんな状態にしたのは大したもんだと思う

84 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 19:50:23 ID:rZ7EyHgh
確かに……一次二次と、そして三次だって今回の事態になるまで
ここまで徹底的に荒れたことなんて多分一度もなかったよな……なんだかんだで
散々揉めた開始前だって、ここまでどうしようもない状態じゃなかった

85 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 19:54:03 ID:GA2jcdeZ
協調性……

二極論にしか言えない人間が協調性ねぇ。
まあ折れないこっちも言えたことでもない。
【次回問題作投下したら論議する】が妥協でなければ。

最悪管理人さんに
「◆bSTqMcZZvs氏は今回はあんまり悪くないけど、状況を収めるためにあなたをアク禁させて貰います。
 でも、今回レッドカードな人も同様の措置を取りますので勘弁してください」
とかやってもらうとか? やっぱ独裁者的意見?

86 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 19:57:36 ID:bJsoV5+y
事態を収めるにはそれもいいと思うよ
ただし、アク禁しろって騒いだ奴も全員アク禁っていう条件付きでなら

87 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 20:11:51 ID:yh839hNG
避難所のスレで話せよw

88 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 20:14:23 ID:GA2jcdeZ
火に油を注ぐ意見だと自覚してるし、管理人さんを悪人にしてしまう意見でしかないから避難所にもって行き辛い。

が、このまま空気悪くなるのならダイナマイトの投下もやむ負えない。

89 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 20:52:05 ID:y6MHsleN
俺は投票でも構わなかったんだけどなあ
話してても正直…

90 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 21:36:23 ID:GA2jcdeZ
たしかにこの空気だと投下乙すら言いにくい。
でも感想とかいうぐらいいいじゃないか。

91 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 22:47:15 ID:yl7oacbL
管理人の独裁がはじまる

92 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 22:55:27 ID:FMWhwFL9
管理人は独裁に決まってんだろ
複数管理人がいるならともかく

93 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 23:08:48 ID:y6MHsleN
歩み寄らぬ両者
一度も書き込まぬアンチたっぷりな書き手
もっともらしい事は言っても、だからと言って何かを変えようとはせず
時間が解決してくれるさと思ってそうな管理人
どの要素を取り除けばうまくいくと思う?

94 :それも名無しだ:2010/01/29(金) 23:09:00 ID:cwJ28hYF
個人によるサイトが独裁じゃなかったらそっちのほうがおかしいわな、そりゃ。

95 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 00:40:34 ID:46ZbRHUP
バカンリニンは綺麗事抜かしてないでさっさと投票でケリをつけろよ
投票こそが参加してる人間の総意であり、唯一抗議も出ないやり方だろうが

96 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 09:08:43 ID:ZJ+Guy2L
アク禁されたからってここ荒らすなよ見苦しい

97 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 10:16:03 ID:3BCVoPIr
あっちで毒吐いたら独裁管理人にアク禁されるから仕方なくこっちで吐いてんだよw

98 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 10:33:46 ID:kUxO/iRi
>>97
管理人さん自体が投票に抗議してるからなぁ。

話し合いでやったら筋を通してアク禁だってしてくれると管理人さんだって
言ってくれてるんだ。投票だと筋を通してはいない形なんだ。
書き手さんが書き手として筋を通さないからこんなことになった以上は
俺達は筋を通して話し合いしなけりゃ管理人さんは動く気がない。

あくまであの人は中立でやると決めた以上はこっちがそれに合わせることだってしないと。

99 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 10:47:48 ID:AvJyuToo
てす

100 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 10:48:56 ID:AvJyuToo
おお規制解除されてる
せっかくだしどこかネタ考えようっと

101 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 14:48:42 ID:zluFGyep
>>97
そんなんだからアク禁されるんだろ、お前

102 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 18:59:24 ID:YMuNsZgV
◆bSTqMcZZvs氏へ。
現在避難所の修正スレにおいて【白い悪魔】SSについて議論中です。

・位置関係、参戦時期の矛盾
・トリップを変更しなかった点

これらの点について質問がございますので至急避難所までお越しください。
なお、上記以外の質問には一切対応する必要はございません。

103 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 22:38:39 ID:/SXtZIKp
まあ位置関係とか別に矛盾してる訳じゃないんだけどね

104 :それも名無しだ:2010/01/30(土) 23:33:16 ID:S43MM4Kq
普通の神経していたらトリップつけて登場するのは不可能だろうな
そして、その空気を作ったのは住人そのものという事実が悲しいことだ
悪意ある荒らしが一人でもいれば、これ以降のSSにも同じ手法が取れる

105 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 00:09:27 ID:3JPsWBqi
住民に責任がない訳じゃないが殆ど自分でまいた種だろう

106 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 02:19:15 ID:v0wOym5u
この人だからこうなってるだけで
他の新人さん、もしくは鳥を変えてくれれば、作品に問題ない限り俺は全力で擁護するよ

107 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 02:33:07 ID:WO7Xaqhu
私は作品ではなく作者の態度で判断しますって宣言して恥ずかしくないの?

108 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 02:48:00 ID:v0wOym5u
お前は馬鹿だなぁ
作者の態度で判断する人がいるからここまで拗れたのさ、今更すぎるぜ

109 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 02:58:44 ID:WO7Xaqhu
そういうやつはいらんって管理人に規制された事実を理解できてないのか?って聞いてるんだが
正味件の作者よりもお前らみたいなアホの方が荒らしなんだよ

110 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 03:09:23 ID:v0wOym5u
おやおや手厳しい

111 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 13:45:34 ID:3cKiyIS5
正直、ここまで拗れたら通しも破棄も出来ないからキャラ拘束になるっ停滞するよ
まあ、土日までに書き手が来ないなら破棄って時間区切ったから大丈夫だろうけど

112 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 14:06:43 ID:3JPsWBqi
いや作品自体はもう通しでほぼ合意されとるがな
あとは作者の処遇をどうするかの話で

113 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 15:06:17 ID:ZiY2hEEv
なぜあのトリで来たかを説明するのが
反対派の通しても良い最低ラインだった気がするが
また荒れそうだな

114 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 18:41:15 ID:c2kg60Kf
作品通すかどうかもまだ決まってないんじゃね?
というか、何も決まってないように見える

115 : ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:35:43 ID:J5EbFPIG
投下します

116 : ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:39:13 ID:J5EbFPIG
渚カヲルは波に揺られていた。
身体の力を抜き、ゆったりと、ただ流れに身を任せた。
水に浮かんでいるため自然と空を見上げる体勢になっている。
一面に広がる青空を白い雲が流れていく。日差しが強く、手をかざすと真っ赤な血潮が透けて見えそうだった。快い晴れ模様。
自分は今どこにいるのだろうと思い、首をひねり周囲を見渡すと陸地が見えた。自身が流されていく方向には薄っすらと光り輝く壁のようなものがある。
見覚えのある景色。この地に飛ばされて最初にいた場所に戻ってきたらしい、ということをぼんやりと認識。
そのとき一緒にいた存在は今はいない。
とても綺麗で、雄々しく、神秘的な、まるで天使か神様そのものの様な存在――ラーゼフォン。
そっと目蓋を閉じた。愁いを帯びる、哀悼の意を表す、別れを惜しむ、そんな表情。
目蓋の裏に浮かぶ、真白い羽を身に纏う姿。

「君の奏でる音色を、もっと味わっていたかったけれど……仕方が無いんだね。
 出会いと別れは、いつも突然で、必然だから。絆と孤独は、きっと同じものだから……
 それでも、またいつか会えたなら、聴かせてくれるかい? ラーゼフォン……君のその、歌声をぼばぶぶくぶくぶく…………」

波に身を飲まれ、言葉は泡に消えた。
そのまま沖へと攫われ、やがて光り輝く壁に吸い込まれていった。


 ◇


 The Sun will rise again
 The Sun will rise on me
   陽はまた昇る 私の上に

 The Sun will rise again
 Shining morning comes
   陽はまた昇る 明るい朝が

 We lost the past 40years of memories
 Missing the last 40years'memory
   思い出せない過去 忘れてしまった日々

 The Sun will rise again
 And we'll recall all our memory
   全てが蘇る

 Can't go anywhere,
 Don't know where we should go
 without knowing where we're from
   私達はどこから来たのだろう
   これからどこに行けばいいのだろう  

 I wanna know the truth
   私は知りたい



117 : ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:41:38 ID:J5EbFPIG
 ◇


渚カヲルは未だに陸に上がらず半ば眠るようにして海面を漂っていた。
陸に上がるつもりであればどうとでも出来たが、なんとなく、もう少しこのままでいたい気分だった。
やけに波が荒れている。激しく上下に揺さ振られながら、随分長い間、流されるままでいた。
そうしているうちに、いつしか不思議な感覚が芽生えて……というより、「こうだったら良いな」という考えが浮かんでいた。
何処かで誰かが自分を呼んでいる、その誰かの起こした波が自分をどこかへ連れて行こうとしている、そんなちょっと不思議な考え。
何を馬鹿なことを、と切って捨てることも出来たが、そうするよりも、誰かが自分との出会いを求めている、そういう風に考えたほうが素敵だと思えた。
根拠も何も無い考えだったが、実際のところ、彼は引き寄せられる様にしてそこへたどり着いていた。
太陽の位置と大体の現在時間から判断して東側、その方向の比較的近い位置に陸地が見えるくらいで、これといって目印になりそうなものも無い、海の中心。
何かが、コツンと頭を突いた。何かの機体の残骸だった。多分、知らない機体。辺りを見ると他にもいくつか細かい部品が浮かんでいた。
ここで戦闘があったらしい。結果はどうなったのだろう。死人は出たのか。この残骸は撃墜された機体のものなのか。
それほど残骸が多くないのは、単純に損傷が小さかったか、または殆どが海の底に沈んでしまったからだろうか。
海の底、陽の光の届かないその場所。そこへ追いやられてしまったものは滅多なことでは人の目にはつかず、そして、いずれ忘れ去られる。
記憶――ふとした拍子に消えてしまうこともある、なんとも不確かなもの。そうでありながら、強く、固く、確かに存在を存在足らしめるもの。
人々の記憶から消えてしまったものは、それが例えどれほど完璧に姿形を保持していようと、ある意味で死を迎えてしまう。
仮にそんな存在が海底にいるとすれば、自分をここへ運んできたのはきっとそれの意思だろう。
死にたくなくて、誰かに覚えていて欲しくて、他人を求めて――
と、己の思考に没頭しているところへ一際大きな波が襲った。あっと思う間も無く飲み込まれてしまった。
手足の自由が利かず、沈み込む水流に揉みくちゃにされた。浮かんでいた残骸と諸共に、下へ、下へと追いやられた。
水の重さがあらゆる方向から体中に圧し掛かる。耳に痛みが走る。鼻の奥がつんと熱くなる。水を飲み、その塩辛さが口内に広がる。
眼が眩む。骨が軋む。内臓が押し潰される感覚。耐え切れずに肺に溜めた空気を吐き出す。ずきずきと頭が痛む。
眼球を奥へ押し込むように水圧がかかる。堪らず目蓋を閉じる。暗闇が訪れる。海上、海底、自分がどちらへ向かっているかも判然としない。息が持たない。
そんな状態でありながら頭の中では、

(このままだと、そのうち、この身体は死んでしまうだろうな)

酷く冷静に、客観的に自分のことを観察していた。
苦痛を感じるということは、まだ生きているということだ。苦痛の終わりは命の終わり。そういう意味では肉体の痛みはむしろ喜びでもある。
肉体的苦痛に喜びを見出せる――では、同じように心の痛みにも喜びを感じることは出来るのだろうか。聞いてみたい気もする。
心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じてしまう、ガラスのように繊細な心を持っている少年――

(シンジ君――)


 ◇


 The Sun will rise again
 The Sun will rise on me
   陽はまた昇る 私の上に

 The Sun will rise again
 Shining morning comes
   陽はまた昇る 明るい朝が

 One day,on a sunny day,
 Angel comes down
   ある晴れた日に 天使が降りてくる
 
 Angel leads us
   天使が導く



118 : ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:43:11 ID:J5EbFPIG
 ◇


渚カヲルは依然として水中にいた。その身体に、既に苦痛は無かった。
身体を卵形に覆う、膜のようなものがあった。
A.T.フィールド――オレンジ色に淡く輝く障壁が、相変わらず激しい動きを見せる水流と、彼の身体とを隔てていた。

「あまり、遊んでいるのも良くないか」

つい先程の死に掛けた体験を、彼はそう言ったものだった。
A.T.フィールドで覆われたまま、どんどん海底へと沈んでいった。
水に濡れて額に張り付いた前髪を指で梳く。目尻から垂れた水滴が頬をなぞり顎先から滴る。口の中にまだ海水の味が残っている。
塩気を帯びてべとべととした嫌な感触のする衣服が肌に張り付き、なんともいえない不快感を醸し出す。
元々海に飛び込んだのは自分からであるし、流れに身を任せてだらだらとこんなところまで来てしまったのも自分が原因なのだから、それに不平不満を言ったところで意味は無い。
それは分かっているのだが、やはり服に纏わり付くこの気持ちの悪い感触をどうにかしたい。シャワーを浴びて、着替えも欲しい、そう思った。
ラーゼフォンを亡くし機械人形と戦うには殆ど無力な状態になり、さてどうしたものかと考え、とくに思いつかず何となく波に揺られて飲まれてちゃぷちゃぷ掻き分けて。
つまるところ、一番の問題は乗り込む機体を失ったことだった。移動するにしろ、戦うにしろ、生身では不便極まりない。
といって新しい機体を手に入れる当てにしても、最初にヴィンデル・マウザーの言っていた「放送ごとに一機の追加機体を会場のどこかにランダムで設置する」というもの位しかなく、それも運良く自分の近くに置かれでもしない限り他の者に先を越されてしまうだろう。
いっそ何処かに誰かの乗り捨てた機体でも落ちていないものかと周囲へ眼を向けるが、そう都合よく海中にそんなものがあるはずも……
無いことも無かった。
見間違えではない。
確かにそこに、仄暗い水の底に鎮座する赤い巨人がいた。
あたかも一つの鉄の塊として鋳造されたかのような印象を受ける。重厚な胴体、歪な大きさを誇る前腕部。洗練された古臭さとでも言おうか。
ラーゼフォンとは対極に位置するような見た目でありながら、どことなく似たような神秘性を感じさせる。
ビッグデュオ。乗り手を失い、海底に沈んでいた巨人の名前。
少しの驚きと、大きな感動があった。
誰に知られることもなく海底に一人取り残されていた存在を見つけた。
誰の記憶からも消え去り、ある意味での死に瀕するところであった存在とめぐり合えた。
もしかしたら、本当にこの巨人は自分をここへ導いてきたのかもしれない。この自分との出会いを求めていたのかもしれない。
それはとても素敵なことだ。大変な喜びだ。新しい機体を手に入れた嬉しさなど取るに足らないことだった。
思い切って操縦席に乗り込んでみた。拒絶されることなく、すんなりと入り込めた。
あちこちで、きちきちと金属の擦れ合うような音が聞こえた。なんだろうと思いよく見ると、何か、とても小さなものが蠢いている。音の出所はそれだ。
それは戦闘中にビッグデュオに偶然付着した自己再生を可能とする金属細胞、マシンセル。
マシンセルによる損傷の修復は今も続けられていた。一度は切断された繋がりかけの右腕が、だらん、と垂れ下がっていた。
前に乗り込んでいた人物の痕跡は何も残っていなかった。身体も所持品も全て熱に焼かれ、マシンセルが破壊の痕跡すら消してしまった。
おかげでビッグデュオの動かし方が分からないが、些細なことだ。
今は、この出会いの喜びを歌いたかった。
天使を迎える歌、明日の朝日を迎える歌。
頭に浮かぶメロディ、言葉を重ねる。
歌は心を潤してくれる。
歌は良い。
心が躍る。

「The Sun will rise again.... The Sun will rise on me....♪」



119 : ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:44:45 ID:J5EbFPIG
 ◇


 And then we will find what we lost
   無くしてしまった事もきっと見つかる

 Angel takes us to the right place
   行くべき場所へ 私を連れて行ってくれる

 Angel wings can take us....
   天使の翼が……


 ◇


新しい主をその身に宿し、ビッグデュオの瞳に光が灯る。
操縦席の中、眼前の円形のモニターに表示されるメッセージ。


   CAST IN THE NAME OF GOD
     我、神の名においてこれを鋳造する

   YE....
     汝……




【渚カヲル 搭乗機体:ビッグデュオ(THE BIG・O)
 パイロット状態:ヘブン状態! ずぶ濡れ
 機体状態:マシンセル寄生 損傷修復中
 現在位置:C-2 海中
 第一行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす
 最終行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす】
 
【一日目 12:00】

120 :天使祝詞  ◆f/BUilcOlo :2010/01/31(日) 19:46:32 ID:J5EbFPIG
投下終了

121 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 20:59:11 ID:qlsehbkK
投下乙です。
カヲル君はまたもや強い機体GETだな。先が怖い怖いw
しかしタスクがいた形跡が全くないというのがなんとなく哀しいな。

122 :それも名無しだ:2010/01/31(日) 22:55:55 ID:akUqqLY/
投下乙!
おお!ビッグデュオを手に入れるとは!
こういう神秘的な機体はカヲル君に合ってるね。


123 :それも名無しだ:2010/02/01(月) 11:11:10 ID:f26+8tXL
投下乙です
ATフィールド+デュオの装甲+マシンセルはガチでヤバいww
そしてなぜ誰もヘブン状態に突っ込まないwwww

124 : ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:49:06 ID:yZmWSYyl
そろそろ修正作投下しますよ♪

125 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:53:09 ID:yZmWSYyl


「奴め、どこにいった?」
 ソウルゲインのコクピットから身を乗り出しゴダートは呟いた。
 エルデ・ミッテを殺害後に彼がしたことは、先ほど取り逃したネズミを追いかけることだった。
「どこぞで見落とす。そうだというのか?」
 しかし、ネズミが逃走したと思われる方角へとソウルゲインを進ませても人の子一人見つからなかった。
 奴はいったいどこに行ったのか?
 レーダーにはそれらしき影は見当たらなかったが、いくら逃げ足が速かろうとも根本的な機動力に差がある以上はもうそろそろ追いついてもいいはずだ。
 となれば途中で追い越してしまったのだろうか?
 それはありえるだろう。何せ2,3mほどしかない機体なのだ。どこぞにでも隠れられれば大地がレーダーすら誤魔化すだろう。
 と、ゴダートがネズミの探索を打ち切ろうとしている時であった。遥か先に黒い何かが見えたのは。
「なんだあれは!?」
 レーダーと目視でその何かを確認したゴダートは思わず呟いた。
 自分の予測が正しければ全長200mは超す巨大な何かがある。
 それも自由の女神やエッフェル塔などの建造物ではなく金属の塊で出来た戦艦か、もしくはなんらかの兵器か。
「あそこにネズミが紛れ込んだとでもいうのか!?」
 その可能性は高いだろう。自分が敵機を見過ごしていなければ。
 スラスターを噴かし黒い何かに向けてソウルゲインを進ませる。
 すると、目指す先でそれに動きがあった。
 横になっていたそれの頭頂が高くなり、縦に長くなっていく。
 すなわち立ち上がろうとしているのだ。
「何だ? ロボット。まさか、いや、やはりあれは機動兵器なのか!?」
 それはとても巨大な、とてつもなく馬鹿でかいロボットだった。
 自分が今まで見た中でも最大級の兵器だ。あれ以上の機体となるとかつて乗船していたアルゴス号以外には存在しない。
 ラダムの元に持ち帰れば地球侵略の一助になることだろう。持ち帰れればの話ではあるが。
「キサマー! ネズミのパイロットかーッ!?」
「ハッハッハッ! シーユーアゲイン!!」
 やはりそうだ。予想通りとでも言えばいいのか、ネズミはやはりはしっこく巨大ロボへと潜んでいたのだ。そしてあれに乗ってネズミらしく逃げ去ろうとす

る。

126 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:55:17 ID:yZmWSYyl
「逃がすものか!!」
「駄目駄目。追いつけないよ」
 憎ったらしい笑みが脳裏に思い浮かぶほど愉快な声が受信される。
 その声に怒りを覚えると同時に、変化が起こった。
 巨大ロボの背中から煙を噴出す。いや、あれは間違いなくジェット噴射だ。
「空へと……いや、宇宙か! やらせん!!」
「ガンバスター発進!!」
 黒の筐体が大地から僅かずつ離れてゆく。
 いけない。このままでは宇宙へと逃げられてしまう。させるものか。
「ネズミはネズミらしく地べたに!!」
 ダイレクト・フィードバック・システムにより機体とパイロットの動きが連動し共に大地を蹴り抜き、最大加速を捻り出す。
「落ちてろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 拳を捻りこみガンバスターへと衝突と同時に、
「セィ!!」
 打ち込む。ソウルゲインの拳が黒い装甲へと深々と突き刺さり、敵機の上昇を阻止する。
「クゥッ!」
 はずだった。が、思っていたより装甲が厚かったのか、肘まで拳が突き刺さっても内部構造までは届かなかったのか上昇は止まらない。
 ソウルゲインとガンバスターは大きく揺れながらも青い空へと飛び立っていく。
 重力に逆らおうとする力は如何にテッカマンといえど無視はできない。ゴダートは下方へと押し込まれていく。
「ウヌゥッ!」
 思わず唸り声が口蓋から漏れてしまう。が、格闘家としてスペースマンとして鍛えられた鋼の精神は決して肉体を崩れ落ちさせはしない。
「まだだ。まだ終わらんよ!」
 そう、戦いの決着は着いてはいない。このまま取り付いた状態で破壊してやればいい。そう判断し、自機の拳を敵機の足から引き抜こうとした。
「ぬぅ?」
 しかし右腕は予想よりも深く突き刺さってしまったのか、僅かに揺れるだけでまったく抜ける気配を見せない。
 仕方なくゴダートは敵機にしがみつきつつ減速するまでチャンスを待つことにした。
 いくらソウルゲインが空中戦が可能な機体であってもガンバスターの推進力には遠く及ばない。これでは腕を分離したところで意味がない。
 だから待つ。エンジン出力が落ちる瞬間を。
 無限に動ける機械など存在しない。トルクとて磨耗すれば、エンジン熱で周囲の部品とて融けてしまい、エネルギーとて安定して供給されるわけでもない。
 いつかはエンジンを休ませなければならぬ瞬間が来る。そこを叩く。こう接近すれば向こうとて無暗に攻撃はできぬ以上は最良策のはずだ。
 そうやって堪えること数十分。やがて空が黒く塗りつぶされ、周囲に爛々と輝く星が溢れ始め、変化が起きる。

127 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:56:02 ID:yZmWSYyl
 その変化は何の前兆もなくゴダートを襲った。
「なんだと!?」
 右腕に痛みが走ると同時にガンバスターが宇宙へと昇っていく。いや、己自身がガンバスターから遠ざかっていく。
 ゴダートは己の右腕を見る。そこには肌色の強靭に鍛えられた腕が付いてはいた。
 しかし、同じく付いていたはずの蒼腕は存在しなかった。ジョイントが僅かにひしゃげ、接続機能がもはや何の意味もないことを見て悟る。
 右腕が取れてしまい、残った三肢では機体を支えることができずに吹き飛ばされたということを。
「ハッハッハッ!ロケットパンチが格闘戦なんてできるわきゃないでしょ!!」
 しくじった。よもや腕部射出機構に足をすくわれるとは。ジョイントの耐久力は分離式であったためガンバスターの推進力に耐え切れないということは
予想しておくべきだったというのになんという迂闊さか。これではランスのことを笑えやしない。
「それじゃあさようならだ。バスターミサイル!」
 ガンバスターの右手がソウルゲインへと向けられ、指先から無数のミサイルが放たれる。
 視界に映るは、宇宙が3であればミサイル群が7といった割合だ。とてもまともには受けられない避けられない。
「ええい! ままよ!!」
 この数のミサイルは回避できない。ならば迎撃すればいいだけだ。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」
 残る左腕に力を入れ、体内のエネルギーを収束し溜め込み、
「青龍りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!」
 一気にエネルギーを放出する。
 蒼い竜巻が周囲の空間を切り裂きつつミサイルを大蛇のように絡め取り、一気にひねり潰す。



――――――――閃光



 モニターが黒い輝きによって満たされる。大多数のミサイルの爆発は如何なる攻撃もソウルゲインには届かないと感じさせるような輝きだった。

128 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:56:54 ID:yZmWSYyl
「撃ち洩らしたか!!」
 その感じ方は所詮幻想にしかすぎなかったが。僅か一発だけではあるが青龍燐から逃れたミサイルが自機へと迫る。
 唯一自機へと迫るミサイルに対し、当然の如くゴダートは迎撃する。
 しかしチャージする時間もなければ逃げられるほどの加速も得られない。
「玄武剛弾!!」
 ならば直接腕を飛ばしてしまえばいい。これでほとんどの兵装が使用負荷となってしまうが問題は無い。
「テックセッタァー!!」
 クリスタルの輝きで全身を満たし、超人であるテッカマンアックスへと変異する。
 こうするだけでゴダートの鋼の肉体は核に耐えられるほど強靭となる。
 飛ばした左腕とミサイルが交差。黒い爆発が巻き起こりソウルゲインを地球へと押し出そうとする。
 が、それだけでは終わらないはずだ。敵機の挙動から追撃は容易い。
 ならば自機の爆発を隠れ蓑にして一気に近づくまでだ。
「テッカマンアックス!他の参加者に伝えるんだ!このジ・エーデル・ベルナルはスペースコロニーを地球に落すと!滅びたくなければ防いでみろと!」
 しかし、追撃の代わりとばかりに耳障りな哄笑が耳朶を打ち、予想外としか言えないことを言い始めた。
「なんだと!」
「今言ったことを伝えるんだ」
 機体がさらに傾く。地球に近づきすぎた、もはや立て直すこともできない。ソウルゲインが赤熱化し台地へと向かって落下していく。
 これでは追撃できない。地球の重力に縛られたこのタイミングで無理に追撃しようとしたところで落下時間中に燃え尽きるしかない。
 ここで飛び出すということはジ・エーデル・ベルナルと刺し違える覚悟が必要ということだ。単独で大気圏突入のできるテッカマンとてその覚悟が必要な
戦場であり、そこに踏み込むための強い理由などはない。
「ぬぅおおおおおおお、人間如きがぁ!」
 必死で機体のバランスを整え、大気圏突入時にテッカマンの肉体の消耗を抑える体勢へと機体の操作する。
「伝えたまえ。そのために狙撃はしない」
 耳障りな、どこまでも耳障りな声はまだ鳴りやまら無い。
「う〜ん、僕ってやさしい。アッハ……」
 ようやっとのことで通信機は雑音以外の何物も言わぬ物へと変化してくれた。
「や、奴は、俺をメッセンジャー・ボーイにしたのか!そのために見逃してくれたというのか!あのヒューマンは!」
 アックスは仮面の内で人間への憎悪に燃える。
「ジ・エーデル・ベルナルのやつぅぅぅぅぅぅぅ!」
 燃えるような熱さは決して摩擦熱になど劣りはしない。



◆◇◆◇◆

129 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/01(月) 23:58:49 ID:yZmWSYyl



 ジ・エーデル・ベルナルは落下していくソウルゲインを眺めながら、
「落下していくスーパロボット、その輝きは蛍の灯火を思わせるようで、真にもって美しい……なんてね!!」
 などとほざいた。
 が、彼としては本当に燃え尽きてしまっても困る。せっかくメッセンジャー・テッカマンにしたのだ、誰かに伝えてもらわなければ見逃した意味がない。
 それに彼はテッカマンだ。大気圏突入など簡単にやってのけるだろう。
「ま、彼が生きようが死のうがどうでもいいし、それでもやるけどね!」
 おもしろそうだからそう行動する。ジ・エーデル・ベルナルはそれ以外のことなどまったく考えてなどいない。
 保身をしないわけではないが、下手に才能が高い分その場しのぎでも充分なのである。
「さーて、じゃあ行こうか」
 そう呟きつつ彼が向かった先はc-3にあるコロニー、
「キャハ。ホントに落とすわけないじゃん」
 ではなくc-2に浮かぶ資源衛星。
 彼の興味は、両足を飛ばし装甲が吹き飛び大地へと落下していくソウルゲインからコロニー落しへと向いていたが、
「まだ時期不相応だよねー」
 ガンバスターで宇宙へと赴こうとは考えはしたし、テッカマンにそうは言った。
「でも今すぐに落とすとは言ってはないもんねー」 
 コロニーが落ちるとなれば押取り刀で駆けつけてくるのが正義の味方だ。
 ならばその正義の味方共が慌てふためく姿を観察してから本格的にコロニ−落としに取り掛かるのも悪くはない。
 テッカマンアックスが本当に言い回してくれることはあまり期待はできないが、宇宙に上がってきた参加者達をテッカマンと同様に
メッセンジャーとして送り返すのもいい。
「そのためにもボクのガンバスターの魔改造をやっとかないと。遊びでやってんだからさ」
 あのすばしっこいテッカマンをメインコクピットが欠けたまま不殺で送り返すのは不可能だろうし、例え勝ててもガンバスターがコロニー落としを
できぬほどに損傷を受けてしまえば意味がない。ガンバスターの超パワーがあってこそ始めてコロニー落としが可能になるのだ。
 そのためにはガンバスターの最低限の修理は必要だろう。だからこそc-2に浮かぶ資源衛星と思われる岩塊へと行かねばならない。
 そこが資源衛星でなくとも資材の一つや二つあるのならば改装するのには問題ない。それぐらいの技術力は持っているのだから
「ま、どうしようもなくなったら、ボクの次元力の出番だけどね♪ 」

130 :飛び上がれガンバスター!!  ◆06elPxNp8E :2010/02/02(火) 00:00:01 ID:K06EOGkZ




【テッカマンアックス 搭乗機体:ソウルゲイン(スーパーロボット大戦OGシリーズ)】
 パイロット状態:テックセッタァ 疲労(中) カラスの首輪を所持
 機体状態:両腕喪失、両足破壊、損傷率70%オーバー
 現在位置:宇宙 b-2 大気圏突入
 第一行動方針:機体はどうなってもいいので、自身の消耗を抑えるように大気圏突入をおこなう
 第二行動方針:ジ・エーデル・ベルナルに復讐する
 最終行動方針:殺し合いに乗り優勝する】




【ジ・エーデル・ベルナル 支給機体:量産型ボン太くん(フルメタルパニックふもっふ)
 パイロット状況:良好 大興奮 背中と右手の甲に痣
 機体状況:良好 弾薬小消費 ボイスチェンジャーの不具合解消
 現在位置:宇宙 b-2 
 第一行動方針:ガンバスターのコクピット改装をおこなう
 第二行動方針:メッセンジャーを増やしてから時期を見てコロニー落しを実行する
 第三行動方針:ちょっとやめてよね、人の頭の中を覗き見ようとするのは!
          ボクはそういう事をされるのが一番嫌いなんだよ、プンプン!
 最終行動方針:それは秘密だよ〜ん!
 備考:何やら色々知っているようだが……? 次元力の行使は制限されているようだが……?】


【ジ・エーデル・ベルナル 搭乗機体:ガンバスター(トップをねらえ)
 機体状況:戦闘コクピット付近全損、管制コクピット良好、左脚にソウルゲインの右腕が刺さってる、能力に大幅な制限、弾薬5%消費】




【時刻:09:45】

131 : ◆06elPxNp8E :2010/02/02(火) 00:01:36 ID:K06EOGkZ
投下終了。


以前に指摘されてたところを直してみました。

132 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:49:40 ID:EAkZQWUq
会場上空を超高速で飛んでいく、一本の剣。
それはオリジナルセブンが一つ、ダン・オブ・サーズデイ。
崩壊するE-2の館から辛くも脱出したカズマ・アーディガンは、オートパイロットの意思に任せるままに、
地上フィールドを猛烈なスピードで横切っていた。
「ちくしょう、降ろせダン! 降りろっていってんだろ! ええい、マニュアルは――!」
揺れるコックピットの中で、支給品袋の中を漁る。
……耳障りな電子音が聞こえたのはその時だった。
(!?何だ、この音――!?)
音には聞き覚えがあった。そう、このバトルロワイアルが始まる直前。
ヴィンデル達の前に全員が集められたあの場所で鳴り響いた、死のアラームと同じ音。
耳を澄ませ、首元に手を触れる。電子音の出所は、カズマに嵌められた首輪――

首輪のランプが点滅し、警告音を発していた。

「何ィィィィィ!?」
絶叫。そして恐怖で全身に震えが走った。
ユーゼス・ゴッツォの仮面が弾け飛ぶ光景が、脳内に再現される。
今、あの無惨な死が自分のすぐ目前まで迫っているのだ。
何故。
何で。何が。
パニックに陥るカズマの耳に、首輪から発せられた新たな音声が届く。

『制限速度をオーバーしております。直ちにスピードを落とさないと、首輪が爆発します』

「な・ん・だ・そりゃああああああああッ!!!」
再び、声が枯れんばかりに絶叫。
「ちくしょおおおおっ!!止まれ、止まりやがれッ!!頼むから止まってくれぇぇぇ!!」
叫んだところで、止まるはずもなし。
ろくな説明もなく刀一本だけ渡され殺し合いに放り込まれて。
ようやくロボットを呼び出せ乗り込んだと思ったら、オートパイロットが暴走して。
操縦方法も把握できない中で唐突にスピード違反呼ばわりされ、そのペナルティが己の命……
いくらなんでも酷すぎる。理不尽どころじゃない。こんなムチャクチャな話があるか。
「こんなのアリかよ!?マニュアル、マニュア……!?」
しかし、ピンチはそれだけに留まらなかった。

「うわぁぁっ!?何だあれ!?」

空飛ぶダンの進路を遮るように聳え立つ――巨大な光の壁。

それはフィールドの東と西を繋ぐ、空間歪曲の壁。
だが今のカズマに、それが何であるかを理解できる余地などない。
自分が今どこを飛んでいるか自体把握できてないし、そもそもそれどころではない。
『速度を緩めてください。首輪が爆発します』
追い討ちをかけるかのように、無慈悲な警告メッセージが急かす。
こんな状態で、冷静な考察などできるはずがなく。

「ぶ、ぶつかる――う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

少年の悲痛な叫びと共に、空飛ぶ剣は光り輝く歪曲空間へと消えていった――


   ◇   ◇   ◇

133 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:50:42 ID:EAkZQWUq
吸い込まれそうなほどの漆黒と、気が遠くなりそうなほどの静寂。
それは宇宙の本来あるべき姿なのかもしれない。
ここが偽りの宇宙だとしても、静寂は本物と変わりはなかった。
ただ、この場所ではほんの少し前まで、確かに人が殺し合っていたのだ。
そんな悲劇すら、宇宙の静寂は容易に呑み込み埋もれさせてしまうというのか。
視線を眼下の惑星へと移す。
地球より遥かに小さなその星のあちこちで、チカチカと何かが光ったように見えた。
恐らく気のせいではないのだろう。
殺し合いは始まり、続いているのだ。今こうして大気圏上空を彷徨っている間も。

「ユウ、イツマデココニイルンダ?」
ハロの中の一体が、ユウキに馴れ馴れしく問いかけてきた。
ユウキはそれに答えず、無言のままグランヴェールを動かす。
周辺宙域の探索は終えた。ここに留まり続ける理由はもはや無い。
自分達に砲撃を仕掛け、尚且つルネを殺したであろう犯人は、既にこの場にはいない。
この宙域から速やかに離脱したか。もしくは、入れ違いで大気圏を突入して地上へ降りたか。
すぐにでも後を追いたいところだが、後者の場合だとそれは難しい。
今のユウキに大気圏突入のための手段はないのだ。
というのも、大気圏突破の際に乗っていたシャトルは、打ち上げのみの使い捨てだった。
宇宙に飛び出した時点で推進剤は底を尽き、ただの鉄の塊と化している。
もっとも、最初から片道切符を承知の上で使用したのだから、文句は言えない。
基地内のドックには、シャトルは他にもまだ何隻か残っていた。
もう少し探せば使い捨てなどではない、往復できるだけのまともなシャトルも見つかったのかもしれない。
その時は時間的にも精神的にも、暢気にシャトルの選別のできる余裕などなかったが。
いずれにせよ地上への降下が不可能である以上、宇宙を回るほか手はない。
前者の可能性に賭けると共に、大気圏突入の手段を探す。
地上に降下する手段も当然どこかに用意されているはずだ。
でなければ、成立しない。一つの『ゲーム』として。
(……ゲーム、か)

放送。首輪。禁止エリア。その他、細部まで設定されたルール。
まさに、ゲームそのものではないか。
一体何だというのだ、これは。

「元気ダセ、ユウキ」「ナニ、気ニスルコトハナイ」「サア!コンナ時コソ、ティータイムダ!」
続く沈黙に耐えかねたのか、ハロ達が徐々に喋り始める。
一応自分を慰めているつもりなのだろうか、とユウキは思った。……だが。

「マッタク、バカナ女モイタモンダ」

少なくとも、それはユウキの予想していた慰めとは違うものであることは確かだ。
そして、無意識のうちに慰めなど求めていた自分自身の弱さと甘えに気付く。
ましてや、こんな機械ごときにだ。
「コレガ、若サカ」「認メタクナーイ!」「気持チダケデ、ナニガ守レルッテイウンダ」
厳しい言葉だ。確かにルネの行動は無謀な選択だった点は否定できない。
これらが正確な状況分析ゆえの、冷徹さを保った言動というならば、責める気はない。
だが、こいつらは違う。
「ブスネーチャン、間抜ケスギルジャン」「トチ狂ッテオ友達ニナリニ行ッタノカイ!?」「ルネ、情ケナイヤツ!」
「ボウヤダカラサ」「イヤ、女ダロ」「ネェ、ポールダンスハー?」「バカバッカ」
……嗤っている。ただ単に、彼女を馬鹿にしているだけ。
こいつらの言動は、要するにただの侮辱。死んでいった彼女に対する、最低にして最悪の行為。
「アーッハハハハハ!!」「ケヒ、ケヒヒ!ケヒャヒャヒャ!!」「ワオワオワオワオ!ウヒー!」「ガオオオオン!!」
異質な笑い声がコックピットに響く。機械的な音声による、棒読みの笑い声。


134 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:52:53 ID:EAkZQWUq
ユウキはそれに対し怒りこそ抱けど、言い返そうとはしなかった。
悪趣味なプログラムにまともに相手をしたところで無意味この上ない。
そして、それ以上に……彼女を苛立たせ、無謀な行動に走らせたのは、他ならぬ自分自身だからだ。
もし彼女が少しでも冷静さを保っていれば、こんな結果にはならなかった。
いや、自分の相手をすることに過剰なストレスを感じていなければ……と言うべきか。
醜態を晒し続ける自分に嫌気が差したという形で、彼女は飛び出していった。
仲間としての信頼も得られないどころか、考えうる限り最悪の情けない結果だ。
自分が少しでもしっかりしていれば、結果は変えられたかもしれない。
傲慢な考えと言われればそれまでだろう。
だが、人一人の命を失った後悔を、そんな理屈で簡単に抑えられるものか。
全ては、自分の失態だ。今、このハロどもに嗤われているのは、ユウキ自身なのだ。

被っていた仮面を、ユウキは脱ぎ捨てた。
多分、これが彼女を不快にさせた一番の原因だろう。
その行為に、一瞬、ハロ達が騒ぎ立てて――すぐに、沈黙した。

「いくらでも嗤うがいいさ。この無様な男を、気が済むまでな」

ハロ達は何も言わなかった。先程までのように襲ってくることもなかった。
あれは単にユウキにコスプレをさせるためだけのおふざけだったのか。
それとも、仮面を外したユウキの有無を言わさぬ迫力に気圧されたのか。
その程度の、主催者の仕組んだお遊びに屈し踊らされた自分が、余計に許せなかった。

「どうした。さっさと嗤え」

気まずい沈黙だけが場を支配する。
そんな空気をよそに、ユウキは無言でグランヴェールを飛ばし続けた。

その心に自己嫌悪だけを抱えて。



――お前の『勇気』を信じろっ!『勇気』のままに行動しろっ!
――お前が持つ『ユウキ』の名の様に……
――『勇気』をもてぇっ!


……。


「何が、勇気だ」





   ◇   ◇   ◇

135 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:53:51 ID:EAkZQWUq
宇宙の探索を決めたユウキが最初に向かったのは、c−3に位置するコロニーだった。
他の施設と比べて、惑星より一番近い距離にあった……それ以上の理由はない。

コロニー内部への進入は、通常からは考えられないほど速やかに行うことができた。
単純に入港手続きを始めとする、面倒なお役所仕事の一切が省かれているせいだろう。
ドック内には何もなかった。船など一隻も停められてはいない。
人気もなければ貨物も何もなく、その殺風景はほとんど廃棄コロニーのようだ。
異常さすら漂うほど何もない幾多のブロックを抜けていく。
他の誰かが進入したような形跡は無く、近辺のブロックにも人気はない。
それを確認のうえで、ユウキはグランヴェールから降りる。
足を運ぶは、宇宙港の施設内部。
あまり期待はしていないが、何らかの情報が得られるかもしれないと踏んでのことだった。
当然、あの大量のハロ達はコックピットに残したままである。
正直なところ、鬱陶しいハロどもから逃れたかったという気持ちもなかったわけではない。
そんな自身の弱さが、ユウキにはどこまでも腹立たしかった。

ユウキの足音とハロの跳ねる音だけが、通路に響き渡る。
無人ゆえに、施設内は気味が悪いほど静まり返っていた。
「マッテクレ、ユウ」
「……どこまで付いてくる気だ」
一体だけ、ユウキの言うことも聞かず付きまとってくるハロがいた。
こいつだけ、他のハロとは少し違っていた。
製造元が他と違うのだろうか。表面の材質も、他のハロと比べ微妙に違う。
じゃれ付き、あるいは嘲笑するハロ達の中で、こいつだけ反応が薄かった。
声の質も他のハロとは違う……微妙にカーラに似ているような気がした。
平坦な機械音声ゆえに、彼女を思い起こさせるまでにはとても至らないが。
「ドコ行クンダ?ティータイムカ、コウチャ?」
(……ご苦労なことだな)
盗聴。盗撮。早い話が、監視。
グランヴェールのコックピットに放り込まれていたハロ達の役割は、そんなところだろう。
自分達が反逆の意思を抱かぬようにか。もしくは、翻弄される自分を見世物にして嗤うためか。

探索を続けるユウキ。港内はどこまでも異質だった。
通常のコロニーからは考えられないほど簡略化された内部構造。
いくつか部屋を探索して回るも、どの部屋も夜逃げでもしたかのように何もない。
置かれているのは、コロニーの機能を維持するための必要最小限の設備のみのようだ。
「ユウ、コッチダ!」
不意に、後ろをついてきていたハロがユウキの前方へと飛び出した。
「!?おい、どこへ……」
ユウキの声も気にせず、ハロは先へと進んでいく
何かを見つけたのか、それとも初めからこの施設の構造を知っているのか。
やれやれと言わんばかりに、ユウキはハロを追い歩き出した。
やがて通路の一番奥まで突き当たる。そこには他とは明らかに違う、大きな扉があった。
「ドコヲ見テオル!ワシハココダ、ココニオル!」
「煩い。黙っていろ」
扉の前で騒ぐハロを黙らせ、自動ドアのボタンに手をかける。
開いていく扉。どんな事態にも対処できるよう、ユウキは神経を張り巡らせる――

136 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:54:34 ID:EAkZQWUq
(ここは……管制室か?いや……)
これまで見てきた部屋とは打って変わり、機械的な空間が広がっていた。
正面の壁には複数のモニターが設置され、それぞれに映像が表示されている。
映し出されているのはコロニー内部の居住区と思われる街や、施設内の各ブロックの映像。
今しがたユウキの通ってきた通路や、ドック内に停めてあるグランヴェールまで。
コロニー内部の各所に、監視カメラが取り付けられていたのだろう。
視線を下に移動させると、数々のコンソール類やレーダー機器で占められている。
どうやら、このコロニーのあらゆる情報が、この一室に集められているようだ。
「情報統制室か……ん?なんだあれは……」
モニターの一つに、奇妙な物体が映し出されていた。
巨大な円形の、一見プールか何かと見紛うような謎のモニュメント。
あからさまに不自然で場違いなものが、コロニーの居住区のど真ん中に設置されていた。

ユウキは中央のデスクの上に用意された端末を起動させる。
モニュメントの詳細を、そしてこのコロニーの全貌を探るために。
コンピュータは新西暦のものと技術的には然程変わらず、ユウキにも難なく扱うことはできた。

――『Universal Network』
――ようこそ、『UN』の世界へ。

「UN……だと?」
画面に文字が表示される。この情報端末、もしくはシステムの名称だろうか。
コンソールを叩き、さらに情報を展開・閲覧していく。
(これは……インター、いやイントラネットの類か)

どうやら、UNはこの会場内に複数設置され、その中において情報の共有ができるらしい。
21世紀初頭のインターネットさながらの、書き込み可能な掲示板まで用意されている。

画面に会場の地図を表示させる。宇宙と地上、二つの地図の中にはいくつかの光点が浮かんでいた。
この光点が、UNの設置された場所を表しているらしい。
宇宙エリアでは、一際大きなカーソルがc-3のコロニーに固定されていた。
今ユウキがいるこのコロニーだ。他にも、a-3の資源衛星で光が点灯している。
地上エリアにも、地上では北西の月基地や南西の街エリアなど、主だった施設に設置されているようだ。
先程までユウキがいた北東の巨大基地施設にも、当然のように光が点灯していた。

さらに、UN内の情報を洗う。
程なくして、ユウキは目当ての情報に辿り着いた。
モニターに今も表示されたままの、居住区の巨大モニュメントの詳細だ。
(空間転移、だと……?)
空間転移装置。あのゲートの中に入ることで、特定の場所へと転移することができるらしい。
B-1とa-1コロニーで、A-6とa-3の資源衛星、そしてG-7とこのc-3コロニーが繋がっているとのことだ。
これが、地上と宇宙を繋ぐ移動手段の一つということか。しかし。
(何だこの技術は……これは本当にシャドウミラーの技術か……?)
目の前の、システムXNとはまた違う転移技術に、ユウキは疑問を抱かずにはいられなかった。
……何かがおかしい。シャドウミラーにしては、力がありすぎる。
レプリ地球……この会場を造る技術にしても、だ。どこで彼らはこれほどの力を得たというのか。
もっと言うなら、彼らは何のためにこのバトルロワイアルを――

「ん?お前、何をやっている?」
傍らのハロの不審な行動に気付き、ユウキは思考を中断する。
ハロはそのボディに取り付けた一本のコードを介し、UNの端末に接続していた。
「おい――!?」
ユウキが疑問を口にするより早く、モニターに新たなメッセージが表示された。


137 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:55:56 ID:EAkZQWUq
『データをインストール中』
『データを更新中』

「インストールだと……?一体何を……」
『よくここまで辿り着きました。まずは、おめでとうございます』
続いてUNから流れ出た、女の声。
聞き覚えのあるその声に、ユウキは耳を疑った。
聞き間違えるはずがない……しかし、彼女の声であるはずがない。
彼女はシャドウミラーを離反した。今は新教導隊の一員として、新たな生き方を歩みだしたはずだ。
「ラミア!?ラミアなのか!?」
思わずUNに向かって呼びかけていた。
しかし、ラミアらしき音声は構わず説明を続ける。
『ご機嫌はいかがでしょうか。
 これより、あなたに支給された小型ロボット『ハロ』の機能の追加説明を致します』
(ラミア……?いや違う、これは……)
あらかじめ録音されたメッセージなのか、ユウキの声は届かないようだ。
それにしても、この音声はユウキの知るラミアの声とはかけ離れていた。
事務的で人間味もなく、人形のようにただ淡々と語るだけ。言語機能も正常だ。
ラミアの――W17の音声のみを使用している、ということなのだろうか。
彼女の人造人間という出自を考えれば、説明はつく。気分のいいものではないが。
『あなたは非常に運がいい。ハロは、ゲームを有利に進めるための大きな力となるでしょう。
 このUNと併用することによって』
ユウキは視線をハロに移す。
『このハロには、様々な機能が備わっています。
 ナビゲーション、音声や映像の記録、口から噴出されるシャボンに映像を映し出すなど……
 それらの基本性能に加え、今回レモン様が新たな改造を施しております』
(レモン……レモン・ブロウニングか。やはり彼女も……)
メッセージの中に含まれた名前に、自然と表情が険しくなる。
ヴィンデル・マウザーが生きていたのだ、彼女が同様に生きていたとしても不思議ではない。
そんな彼女の手が加えられたハロ……恐らく、ろくな代物ではあるまい。

『ハロとUNを接続させることで、バトルロワイアルにおける特殊なデータの閲覧が可能となります』

(特殊なデータ……だと?)
『あなたに支給されたハロの中では、バトルロワイアルにおける様々なデータが、常に更新され続けています。
 それらは通常手段では閲覧不可能。UNと繋ぎ、そのモニター画面を介して初めて閲覧可能となります』
モニターを凝視し、黙って声に耳を傾けるユウキ。
どうやら支給されたハロは単なる邪魔な置物ではない。
このバトルロワイアルのあらゆる情報が詰め込まれた、データバンク。
そして同時に――恐らくは殺し合いをさらに進行させるための、煽動アイテム。
『ただし、現時点で閲覧可能なデータは一つだけです。
 放送を跨ぐごとにロックが外れ、閲覧できるデータが追加されていきます。
 放送ごとに、ハロをUNに接続させることをお勧めします』
随分と手の込んだ真似をすると、ユウキは訝しんだ。
まるで、自分達の一挙一動を楽しんでいるのではないか。
そう思わせるほどの『遊び』が含まれすぎている。あの大量のハロ達や紅茶セットにしてもそうだ。
『説明は以上です。このハロを活用することで、生存確率は大きく上昇するでしょう。
 ご武運をお祈りします。なお、このメッセージは自動的に消滅します。では』
一方的に言うだけ言って、メッセージは終了した。

138 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 00:56:53 ID:EAkZQWUq
一体どんなデータがこのハロの中に入っているというのか。
殺人を煽動させるための、危険な情報が入っている可能性がある。
何が起きても動じないよう、気を引き締めた上で閲覧に臨まねばならない。
息を呑みつつ、ハロの中の特殊データを、UNの画面上に展開させる――


139 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 00:59:29 ID:Hm7vH+zF
 

140 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 01:01:46 ID:EAkZQWUq
test
あれっ、さる解除されてる!?

141 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:03:06 ID:EAkZQWUq




――『マーダーランキング』


表示された内容に、ユウキは絶句した。
拳が握られ、小刻みに震えを走らせる。


――『一日目10:00までのデータです。4時間置きにデータは更新。次回更新は14:00』


マーダー……殺人者。
このバトルロワイアルで、人を殺した者達のランキング。
そのタイトル通りの内容が、UNのモニターに展開された。

順位をつける基準は――殺した人数。

殺害数をスコアと称し、多い順に参加者の名前が羅列される。
その中にはアギーハやウォーダンといった、ユウキが危険視していた人間の名もあった。
たった4時間のデータとは思えないほど多くの名が、そこに連ねられていた。








部屋の中に鈍い音が響いた。
ユウキは、その両の拳をデスクに叩きつけていた。
データを見て、彼の中の怒りは頂点に達した。

142 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 01:03:55 ID:Hm7vH+zF


143 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:04:02 ID:EAkZQWUq
……この『マーダーランキング』とやらが真実だとすれば、だ。
既に現時点で20人近い数、総参加者の2割以上の数の死者が出ていることがわかる。
まさか、ここまで早く殺し合いが進行しているとは……絶望的状況をユウキは感じ取っていた。
このデータが真実であるという証拠はない。だが、出鱈目であるという証拠もない。
多分、それでいいのだ。この機能のもう一つの目的を考えるなら。

要するに、見た者に疑心暗鬼に陥らせようというのだ。

確かに、このデータにより殺人を犯した人物を事前に把握することで、有利にはなるだろう。
だが同時に、必要以上の疑心と警戒心を植えつけられることにもなる。
ランキング入りした名前の人間に対し、今ユウキは確かに警戒の念を抱いた。
それは紛れもない事実。一度根付いたその感情は、今後も漠然と心の中に残り続けるだろう。
ここに羅列された者全てが、殺し合いに乗った凶悪殺人者であるとは限らない。
恐怖に駆られ過ちを犯してしまった者や、正当防衛で已む無く殺さざるを得なくなった者などもいるかもしれない。
そんな者達も一括りにまとめて、何らかのフィルターをかけて見てしまう恐れがある。
無意識のうちにだ。どれほど割り切ろうが、これを完全に取っ払うことは難しい。
この中に、ルネを殺した人間がいることを考えれば、尚更だ。

そして、そんな理屈以上に……何よりも。
人の命をスコアと称して、殺した数で順位付けしようなどと。
その行為そのものが許せない。こいつらは、人の命を何だと思っているのか。

ユウキは思わず、激情に身を任せハロを蹴り飛ばしていた。
繋がっていた接続コードが抜け、ハロとUNの接続が切れる。同時にモニターからランキング情報が消えた。
「イタイゾ、ユウ」
ハロからの抗議を意にも介さず。ユウキはかつて見た事の無いほどの怒りの形相で、拳を壁に叩きつけた。
通常の彼からは考え難い、乱暴な行動だった。それだけの怒りに、彼は打ち震えていた。
「これがお前達のやり方か」
常に冷静であることを心がけていた。だが、それにも限度はある。
このやり口を見て何の憤りも感じないというなら、もはや人間の思考ではない。
そしてそれを実行する奴らは、それ以下だ。
「こんなものが、お前達の望んだ世界か!!ヴィンデル・マウザー!!」
盗聴なり何なりで、ユウキの声は聞こえているはずだ。
彼らがユウキ一人の声に耳を傾けるとは思えない。
だが、それでも怒りをぶち撒けずには、叫ばずにはいられなかった。

144 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:05:01 ID:EAkZQWUq
闘争を日常とする世界、それを理想として掲げたシャドウミラー。
殺し合い、命が失われることの悲惨さと残酷さ……それらを軽視した、まさしく愚の骨頂。
平和の中で腐敗した人間だからこそ辿り着く、おめでたい妄想だ。
だがそんな馬鹿げた理想でも、現状を憂い、変えようとしていたという点だけは認めてもいい。
しかし、だ。
今のシャドウミラーは、それすらも遥かに下回る。
「こんなくだらないお遊びのために、お前達は戦っていたのか……!
 地球圏を戦いに巻き込んで、お前達のやりたかったことがこれかッ……!!」
そもそも、おかしい。この殺し合いが、彼らの理想とどういう関係がある?
たかだか70人を殺し合わせたところで、何がどうなるというのだ。
ここで自分達が殺しあって、世界が変わるのか。
それとも、まさかここで殺し合う自分達の姿を証拠に、正当化でもするつもりか。
シャドウミラーの理念は正しいと。俺達が殺し合う姿を晒して、間違ってないとでも主張する気か。
馬鹿か。安っぽい自己満足にも程がある。

これは、ゲームだ。連中は遊んでいるのだ。
自分達が殺し合い、疑い合い、死んでいく姿をただ楽しむだけのゲーム。
他にどんな理由がある?ただ殺し合わせるだけなら、他に簡単な方法などいくらでもあるはずだ。
詳細まで固められたルールも、UNやハロにしても、全てはそれを助長し楽しむための要素。
仮に他の理由があるにしても……知ろうとも思わない。知りたくもない。
ここまでふざけた手段を選んだ時点で、一欠片の同調の余地などない。
堕ちるところまで堕ちたのだ、この連中は。

――許せない。シャドウミラーの非道は、断じて許すことはできない。

……それだけだ。今はそれ以上は、何もできない。

シャドウミラー以上に、ユウキは自分自身が許せなかった。
これだけの非道を前に何もできず、ただ踊らされるだけでしかない。
どれほど怒りを叫んだところで、負け犬の遠吠えに他ならない。
たった5時間で20人弱が死んだ。3時間後の放送時には、さらに増えている可能性もある。
少しでも戦いを止めるべく奔走しなければならないだろうに。
その中のたった一つの命すら、死を止めることはできなかった。
それも見限られ先走らせた結果という、これ以上ないほどの情けない形でだ。

今のユウキの中に蠢くのは、絶望感と、途方も無い自己嫌悪。

……彼らならどうするのだろうか。

ソルダートJは。ソール11遊星主と戦い抜いたという、最強の勇者ロボ軍団達は。
彼らの話は、ルネとの情報交換の際に聞かされている。
その時だけ、彼女はその仲間達のことを、どこか誇らしげに語っていたような気がした。
ほんの少しだけ。恐らくルネ本人も自覚はなかったのだろうが。
地球追放という憂き目に遭いつつも、最後まで戦い抜いた彼らなら。
きっとここでも、迷うことなく彼女の遺志を受け継ぎ、戦い抜くのだろう。

それに比べて、今の俺の有様は何だ。


――……『勇気』を託したぞ!


今の俺には、まだ足りない。

『勇気』を託されるだけの『勇気』が。


   ◇   ◇   ◇


145 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:06:05 ID:EAkZQWUq
グランヴェールに戻ったユウキは、そのまま機体を居住区へと移動させる。
そこには、通常のスペースコロニーと何ら変わらぬ街並が広がっていた。
コロニーとしては規模が小さい。グランヴェールを使えば数時間で街を一巡できるだろう。
かといって、暢気に物見遊山に時間を費やす余裕など無い。
既に街の詳細は先の情報室で確認済みだ。中央部にある空間転移装置以外に、目ぼしい施設はない。
ただ街という舞台をただ設置するためだけに、このコロニーは存在しているのかもしれない。
改めてその目と肌で実感する。この世界の異常さを。

空間転移装置の前に立つグランヴェール。
UNの情報が正しければ、ここに足を踏み入れることで、地上のG-7エリアに転移されるはずだ。

空気を読んでいるのかどうかは知らないが、ハロ達はやはり静かなままだ。
そのおかげというわけでもないが、ユウキも決意をまとめることができた。

――勇気、か。

先程脱ぎ捨てた、ソルダートJの仮面を手に取った。
かけがえのない仲間の真似事をしながら醜態を晒せば、ルネが怒るのも当然か。

――すまない。だが、もう少しだけ……怒りを買わせて貰う。

心の中でユウキは詫びを入れて。
再び、ソルダートJの仮面を被り直した。
ハロ達が襲ってこなくなった以上、その格好を続ける意味などないにも拘らず。
「ドウシタ、ユウキ?」
「……違う」
一言、ハロに言い直させた。

「ユウキ・ジェグナンの名は、今しばらく封印する」

自分自身が情けなく、許せなかった。
今のままでは、合わせる顔がない。
死んだルネにも。彼女の仲間達にも。そしてカーラを初めとする、自分の仲間達にもだ。
ただ己の無力さに途方に暮れ、怒り散らすだけの今の自分が、許せなかった。
こんな無様な姿では、ルネの託した勇気に応えられない。
ユウキ・ジェグナンの名は重過ぎる。
だから。
無様な顔を、仮面で隠した。
己の名を、封印した。

「俺のことは……しばらくは、Jと呼べ」

そして彼は、被った仮面の戦士の名の一文字を借りることにした。
誇り高き空の戦士の一部を。
この姿と名……そして勇気を、彼に借りる。

146 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 01:06:46 ID:Hm7vH+zF


147 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:07:01 ID:EAkZQWUq
「……マジ?」
「本気だ。そして彼の一部を借りた以上、俺は彼の勇気に傷をつけるつもりはない。
 俺はこの仮面に誓う……自分自身の名に恥じない強さを得ると」

ソルダートJの一部を借りた以上、もう無様な姿を晒すことはしない。
どんな困難が立ち塞がろうとも、持てる勇気の全てをもって乗り越えてみせる。
――それは誓いであると同時に、戒めでもあった。

「タトエ鎧ヲ纏オウト、心ノ弱サハ守レナイノダ」
「ああ……わかっているつもりだ」
ハロの容赦ない言葉に、静かに頷く。
その通りだ。今の自分の行為は、傍から見れば逃避とすら受け取られるかもしれない。
だが、このまま逃げ続ける気などない。必ず、自分の名を取り戻す。
「コレダケカッコツケテ、次ノ戦イデ死ンダラ話ニナラナイゾ」
「生き延びてやるさ。そして、俺は――」
ましてや死ぬ気など微塵もない。ルネに託されたものを、その勇気を、無駄になどさせない。
「イイダロウ。オマエノ戦イ、見届ケテヤル」
「ああ、好きにしろ。そして、連中に見せ付けてやるがいいさ」

強くなってみせる。強くならなければならない。
彼女に託された勇気を受け継げるだけの強さを。
勇気ある誓いを果たせるだけの、己の名に恥じない強さを。
バトルロワイアルの戦いの中で必ず、この手に掴む。
自分自身の名を、誇りを持って名乗れるようになった時、この仮面を外そう。
それまで暫しの間、あなたの勇気を貸してくれ。ソルダートJよ――


「ヴィンデル・マウザー!!」

ユウキは叫んだ。
この戦いを見ているであろう、悪しき存在達に。

「貴様らの目論見は必ず打ち砕く……」

この遠吠えを聞いているなら、その耳に刻み込んでおけ。
今の俺の無様な姿を見ているなら、その目に焼き付けろ。


「『ユウキ・ジェグナン』が、必ず打ち砕く!!!」



グランヴェールの瞳が光る。
まるで彼の怒りに、その心に燃え盛る『炎』に呼応したかのように。








   ◇   ◇   ◇

148 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:08:01 ID:EAkZQWUq


――それで、あれからどうなったのか、自分でも覚えていない。
高速で飛び続けるダン・オブ・サーズデイをなんとか止めよう四苦八苦して。
それで、目の前を光の壁が遮ってて。ぶつかりそうになって。
その手の刀を強く握り締めて。それから――
……記憶がはっきりしない。無我夢中だったもんだから、よく覚えていない。
代わりに、懐かしい顔が頭の中に走馬灯のように流れてくる。
シホミ姉、チイ姉、ミヒロ、ホリス、ガレント、キャレット……親父。
畜生、これじゃまるで……

……あれ?待てよ。こんなこと考えられる余裕があるって事は、首輪は爆発しなかったのか?
もしかして、俺は助かったのか?ダンを止めることに成功したんだろうか。
それとも……実はここは死後の世界だったりするんだろうか。
その前にあの光の壁は何だったんだ?まさかあの世への入り口だったとか、そういうオチは……

「……い!生き……か!?」
何かが聞こえてくる。
聞いたことのない声。誰かが、俺のことを呼んでいるらしい。
「しっ……りしろ!おい!」
その声に手繰り寄せられるかのように――俺の意識は覚醒した。




「ハロ!オメザメ、オメザメ!」
「おい、大丈夫か!?」



目の前には……



……おかしな仮面を被った変な奴と、謎の丸い物体。




「……へ?」
えらく間の抜けた響きの第一声が、俺の口から出ていた。
「大丈夫か、起き上がれるか」
「え……あ、ああ……」
「心配するな、俺は殺し合いに乗るつもりはない」
……どうも、状況が把握できない。わかるのは、自分が生きていることだけ。
ここはどこなんだ?一体、何がどうなっているんだ?あれから俺はどうなった?
この怪しい仮面男の言葉から、殺し合いはまだ続いているらしい。
ダメだ、考えがまとまらない。
落ち着け……とりあえず目の前の疑問から一つずつ片付けていかなきゃ。
「あんた、一体……」
「俺は……今は、Jと名乗っている」
「……は?J?何だそれ?」
「名簿にはユウキ・ジェグナンで記載されている。だが、理由あって今はその名を封じた……」
「え?え?」
「この島に来てすぐ、海岸に流れ着いていたお前を発見したんだ。それで……」

149 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:09:03 ID:EAkZQWUq

説明してくれてるところ悪いけど、俺の疑問は別の所にいっちまってた。
ユウキ……いやJか。……Jって何だ?こんな仮面被って、何をふざけてるんだ一体?
仮面で顔はわからないけど、見た感じ俺と同年代か少し上くらいか。
でも、なんていうか……こいつ見てると、俺の古傷がズキンと痛むというか……
……なんか嫌な予感がしてきた。ちょっと、思い切って聞いてみる。

「な、なぁ……その仮面何なんだ……?それにJって……」
「……すまない、この仮面は今は外すことはできない」
そう言って、Jはコックピットの外へと視線を向ける。
何やら遠い目をしているようだ。仮面で目元は見えないけど。
「……一つの死を止めることができなかった男がいた。
 男は己の不甲斐なさを嘆きつつも、強くなりたいと願った」
何か語りだした。しかも何だ、俺にとっても身に覚えのあるような……
な、なぜだ。なんか急に胃が痛く……
「この仮面と名は、その誓いであり、その弱い男のけじめでもある……そういうことだ。
 俺は託された遺志を受け継げるようになるまで、仮面を取るわけにはいかない」
「そ、そうですか」
「すまないな。……ん?どうした?」
頭を抱え込んでる俺に向かって、Jが不思議そうに問いかけてきた。

……Jさん、すまねぇ。
俺はあんたと会ったばかりだし、あんたが俺と会う前に何があったかは知らない。
だから、あんたのその行動が、本気の決意を込めた上でのものだったら、ほんとに申し訳ないんだけど。

偽名。妙にスカしたその態度。それに加えて、この人の場合は謎の仮面もだ。

なんか……そのノリというか流れというか、思い出すんだよ。

中二的というか、その……ちょっと前までの俺を……

……。

う あ あ あ あ あ あ あ あ あ 。

古傷が、古傷が抉られる……orz


150 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:10:39 ID:EAkZQWUq
【ユウキ・ジェグナン 搭乗機体:グランヴェール(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)withハロ軍団
 パイロット状態:強い決意。ソルダートJのコスプレ
 機体状態:損傷なし、ただしコクピット内がハロで埋め尽くされている
 現在位置:G-7
 第一行動方針:カズマの救助
 第二行動方針:仲間を集め(タスク、ヴィレッタ、ギリアム優先)、脱出方法を模索
 第三行動方針:己の名に恥じない勇気と強さを得る
 最終行動方針:『ユウキ・ジェグナン』として、打倒主催
 備考:グランヴェールはハイ・ファミリア使用不可能。 紅茶セット一式を所持
 備考2:自分が立つ惑星がMAP規模程度しかない小惑星と認識。MAPの端と端は繋がっている、
     もとい小惑星とその周辺宙域のMAPを支給されたと認識。
 備考3:ハロ軍団(@ガンダムSEED)の中に一体、ウッソのハロ(@Vガンダム)が混じっています。
     UNと繋ぐことで、特殊データの閲覧が可能。
 備考4:10時時点でのマーダーランキングの情報を得ました】

【カズマ・アーディガン 搭乗機体:ダン・オブ・サーズデイ剣形態@ガン×ソード
 パイロット状況:トラウマ刺激。背中に打撲、疲労(大)、ヴァンの蛮刀を所持
 機体状態:損傷なし
 現在位置:G-7
 第一行動方針:とりあえず現状の確認。あとこの人なんとかして。
 第二行動方針:どうにかプルを止めたい
 最終行動方針:殺し合いには乗らずに主催者を打倒する
 ※宇宙へ転移する装置の情報を得ました。
  また主催者の影にデータベースがいるかもしれないと考えています
 ※参戦時期は第二部、カイト以後です。


※会場の各施設に、UNが設置されていることが判明しました。
 UN内のデータは全ての端末において共有されます。
※ウッソのハロ@VガンダムをUNに接続することで、ハロ内部の特殊データが閲覧できます。
 現在『マーダーランキング』のみ閲覧可能。放送ごとに、閲覧項目が追加される予定。




その頃、カズマを救助に出て操縦者不在中の、グランヴェールのコックピットでは。

「オ、オイ……ドウスルヨ、オレタチ」
「ナンカ前回カラ空気ダゾ……」
「変ニシリアスニナッチマッテ、絡ミ辛イッタラナイゼ」
「ドウシテコウナッタ!」「ミトメタクナーイ!」
「テイウカ、ナンデアノ余所者ノハロバッカリ目立ッテヤガルンダ!」

ハロ達が空気化に嘆いていた。

【一日目 12:00】


151 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/03(水) 01:12:28 ID:EAkZQWUq
以上で代理投下終了です。

152 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 01:20:42 ID:P4bbmnoe
投下&代理投下乙!!
そういやウッソハロは松本梨香だったなw
他のデータも楽しみだ
それにしてもユウキかっこよす……と思ったら何コレwwwww
出会った相手が悪かったな、ユウキ……いや、Jとカイト、もといカズマは

153 :それも名無しだ:2010/02/03(水) 04:14:49 ID:3GAk3JFW
かっこ良く決めたと思ったら……カズマw

154 : ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:51:02 ID:BpZ29xhq
お待たせしました投下します

155 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:51:20 ID:owEVzVse
 

156 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:52:51 ID:owEVzVse
 

157 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:52:52 ID:BpZ29xhq
「ヴァンさん」
「……あん?」

ルリの先導を元にヴァン達は真っ直ぐ北を目指していた。
街で見つけた他の参加者の足取り、それをルリは結局頼りにする事に決めたのだ。
お互いここまで来るまで終始何かを喋る事はなく、ひたすら向かっている。
最もヴァン自体は喋る事は無いし、ルリは話かけてもよくて返事が返ってくるだけで会話が続かなく、殆どは無反応のヴァンの態度に会話を諦めていた。
そんな理由で暫くの間無言で進んでいた時、突然ルリはヴァンに向かって呼びかける。
気だるそうな返事が聞こえてきて、どうやら今回はよいパターンだったらしい。

「二時の方向に二つの機影です。どうします?」
「……めんどくせぇな」

ルリが操る機体のレーダーに二つの機影が北西の方向に移っていた。
もしかしたら、街でティータイムをしていた人達かもしれない。
それとも、レーベンのような襲撃者の可能性もあるかもしれなかった。
どちらにしろ警戒はしなければとルリは思いながらもヴァンに聞いてみる。
だが、相変わらずヴァンはけだるそうな返事を返すだけ。
はぁとヴァンに聞こえない所でルリは溜息をついて、気を取り直しながらも言葉を続けた。

「かぎ爪さんの事……知ってるかもしれませんよ?」
「……本当か!?」

ルリはまるで定型句のようにその台詞を当然の様に言う。
途端にヴァンの声に少しだけ、覇気が篭るのを感じた。
ルリは、少し呆れた様に溜息を吐く。
御しやすい……という訳ではないと思う。
ただ、ひたすらに純粋に物事に真っ直ぐなだけ。
それを少しルリは羨ましいとは思い。
でも、やっぱりちょっと馬鹿だなとも思ってクスリと笑った。

(……何か都合よく扱われてるな)

そのルリの傍でぼんやりとヴァンはそんな事を思っていた。
かぎ爪の情報はほしいが、そもそもその二人が持っている可能性自体は少ないだろう。
オウムの様にルリの言葉に返事を返してしまったが冷静に考えるとそう思えたのだ。
ルリに都合よく扱われているとは思うも、まあいいかともヴァンは思う。
究極的にはかぎ爪に辿り着けばいいのだ。手段は問わず。
例え、この殺し合いの場所でもだ。
だから、まあルリに使われてもまあいいかと思ったのだ、余り気にくわないが。
ルリを助けてしまったのが運の尽きかとも思ってヴァンも溜息をついてしまう。

そういえばルリ自体が何故、こんなに積極的に話しかけてきたのかヴァンにとっていまいち謎だった。
ヴァン自身のかぎ爪の復讐に対して何故こんなにルリ自体が積極的に動くかも謎である。
何か理解する事があるのだろうか?
そう一瞬思ったが、ヴァンはさっぱり解らなかった。
どちらにせよ、これはヴァン自身の復讐だ。
それは確かで、確実に自分自身で遂げないといけない。
ヴァンはそう思い何度も固めた決意をまた更に固め直す。

その時だった。

「すいません! こちらシーブックといいます! そちらは……」
「大丈夫です、襲撃したりはしませんよ」
「そうですか……すいません、負傷者がいるんです……できれば」
「解りました、今そちらに向かいますね」

二機の内一機、翼が生えている機体が此方に接触してきた。
シーブックと名乗った少年はルリと会話をしてヴァンがぼさっとしている間にファーストコンタクトを終わらせたらしい。
ヴァンはめんどくせぇと内心思いながらもそのまま、渋々とルリにつき従った。

158 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:53:33 ID:owEVzVse
 

159 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:53:39 ID:zL7iPb/l
 

160 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:54:20 ID:OdlP7CAj


161 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:54:24 ID:zL7iPb/l
 

162 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:55:01 ID:owEVzVse
 

163 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:55:02 ID:BpZ29xhq
大きな溜息を残しながら。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「……う、ううん?」
「…………ダイヤ。大丈夫?」
「目を覚ましたか、ダイヤ君」

少年、ツワブキ・ダイヤが目を覚ましたのはジャイアントロボの掌の上だった。
目を開けると心配そうにダイヤを見つめる二人の少女。
ダイヤと同じかそれより年下に見える、イルイ。
ダイヤよりも年上で長い銀髪が特徴的なテレサ・テスタロッサ、通称テッサだった。
節々に痛む身体を気にしながらダイヤは起き上がり二人に気丈に声をかける。

「……ああ、ちょっと痛いけど大丈夫だよ」
「そうですか……大きな怪我が無くてよかったです」
「…………うん」

安心したように息を吐く二人の少女。
その姿は少し微笑ましくて、ダイヤの表情も柔らかくなっていく。
だが、それも束の間、先程の事をダイヤは思い出していく。
あの大きな斧を持つ機体と戦って自分達はピンチに陥った。
その中で現れた者。
そいつは……

「そうだ……あいつはっ!? 剣児さんを殺したあいつは!?」

草薙剣児を殺したと言ったんだ。
ダイヤは拳を血が滲むが如く強く握り締める。
悔しかった、ただ悔しかった。
自分は怒りに任せてぶつかって、そのまま気を失った。
その後はどうなったんだろうと辺りを見回すが平地で其処にはジャイアントロボの他には何も無かった。
ダイヤは頭を傾げながら疑問思っていた時

「……そうですね。私が話しましょう」

テッサが表情を変え、一転して気を引き締め真面目な表情を浮かべる。
これは自分が伝えないといけない。
それが年長者の自分がやるべき事であり務めなのだから。
そして、伝える事かダイヤにとってどれだけの衝撃を与えるか解っていても。
テッサは伝えないといけない。
またイルイが預かっていた伝言に関しては今伝える事を避けるように言っておいた。
今告げるのは危険と判断したから。


164 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:55:13 ID:Iki/G4NU
 

165 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:55:19 ID:zL7iPb/l
 

166 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:55:49 ID:BpZ29xhq
「一旦その人……暗黒大将軍に助けられ、その後私達は…………」
「…………その後は?」
「……解りませんか?……周りを見て何か気付きませんか?」
「……えっ?」

テッサの神妙の言葉にダイヤは周りを見渡す。
だけど周りには誰も居ない。
ダイヤ、イルイ、テッサを載せたジャイアントロボだけ。
そうダイヤが思った時、気付いた、気付いてしまった。
ジャイアントロボ「しか」いないのだ。

「……五飛さんがいない?……五飛さんは?」

そう、あの厳しい言葉をかけながらも自分達を護った張五飛が居ないのだ。
あの威風と雷光を纏った機体、大雷凰と共に類稀なる体術を魅せた張五飛が居ない。
少なくとも基地までは付き添ってやるといったはずなのに。
そうダイヤが疑問を持った時、テッサは重く口を開いた。

「五飛さんは私達を先に逃して、一人戦場に残りました」
「…………え? つまり一人であの三機と? 無茶だ!」
「無茶ですね。とっても無茶です」

そういうテッサの顔は表情が無かった。
でも、それは冷徹ではなく、辛い事実を子供に伝えなければならない重みからの苦しさから。
本当は辛いけど、それを表には出してはいけなかったから。
そんなテッサをイルイは黙ってじっと見て、そして何処か哀しい表情をテッサに向けていた。

「…………じゃあ」
「ええ、見殺しにしたともいえる……んでしょうか。兎も角私達で逃げました」
「そんな……じゃあ五飛さんは…………」
「どうでしょうか……助かってるかは……正直解りません」

あくまで淡々に事実だけを言うテッサ。
そのあんまりな言い草にダイヤはかっとなり、テッサに詰め寄る。
ダイヤはどうしてテッサがそんなにも簡単言うのか信じられなくて、怒気を籠めて言葉を発する。

「なんで……そんな簡単に言えるんだ!……五飛さんがどうなってるか解らないのに……」
「……じゃあ、どう言えばいいんですか……?」

そう言うテッサの声には感情が篭っていて。
それは何かに耐えているような声で。
その変化がダイヤにも解ってダイヤはつい下がってしまう。

「私だって逃げたくなかったです。だけどあの状況では私達は力にもならない。いえ、それ所か単なる足手纏いでしかならない……違いますか?」
「……っ」
「私達は……無力です」

我慢が出来なくって本当に悔しそうに放ったテッサの一言にダイヤは退かざるおえなかった。
ダイヤは、もうテッサを責める事をせず、ただ無遠慮にテッサに詰め寄った自分が恥ずかしくて仕方が無い。
だから素直に

「……御免」

テッサに向かって頭を下げた。
そんなダイヤを見ながらテッサも

「いえ、此方こそ……厳しい事いってすいません」

一歩身を引きながら謝った。
そうやって顔を見合わせ、

167 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:56:00 ID:owEVzVse
 

168 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:56:02 ID:Iki/G4NU
 

169 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:56:19 ID:zL7iPb/l
 

170 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:56:19 ID:OdlP7CAj


171 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:56:45 ID:BpZ29xhq

「……うん」
「……はい」

二人は少し微笑んで和解をした。
だけどダイヤの心に代わりに現れるもの。

(俺は……くそっ……)

それは後悔であり無力を感じるものだった。
自分に力が無いせいで剣児が死んだ。
自分があの時、無茶をしなかったら五飛は危険にさらされることは無かったのだろうか。
そう思うと、悔しくて悔しくてたまらない。

拳は血が滲みぐらいに強く握って。
歯は砕けそうなぐらい強く食いしばって。

ただ、悔しかった。

それと同時にある思いも湧いて来る。
仇をとりたいと。
それは憎しみか怒りかどちらかから湧いて来るものかはわからないけど。
ただ、それだけは純粋に思ったから。
失った仲間の仇を。

そう、思ってダイヤは再び強く拳を握り、口を真一文字にしめたのだった。


(やっぱり……辛いですね)

その脇で密かに一人で辛さを感じている者、テッサ。
自分が最年長者としてダイヤに事実を伝えた。
五飛の事は暗喩的に伝えたが、テッサは知っている。
五飛が戦っていた戦場から一筋の迅雷が見えた事を。
それは恐らく五飛の最後の一撃。
だから、きっと五飛は生きてはいないだろう。
そう、考えたら自然と唇を噛んでいた。
そしてそんな過酷な事実を少年に伝えないといけない事。
きっとそれは彼に大きな影響与えるだろう。
そう、思うとなんて酷い事を辛い事をしてるんだろうと思ってしまう。

でも、仕方ないのだ。
これも生き残る為で、これからも戦っていくにはどうしても教えなくてはならない。
そんな理性的に考える事が出来る自分自身にテッサは少しうんざりとした。
そして、思う。

(私はやっぱり……無力です。私も誰かに支えられていたのだから)

無力だと。
テッサ自身も頼れる部下達の力によって支えられていたのだから。
そうやって今まで立っていた。立つ事ができた。
その時、ふと思う。
今度は自分が誰かを支えるべきなんじゃないかと。
そう思った時、テッサは何処か希望が開けたような気がした。



172 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:56:56 ID:owEVzVse
 

173 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:57:17 ID:Iki/G4NU
 

174 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:57:47 ID:owEVzVse
 

175 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:58:10 ID:zL7iPb/l
 

176 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:58:21 ID:Iki/G4NU
 

177 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:58:24 ID:BpZ29xhq
(……ゼンガー)

またその脇でただ、ジャイアントロボが進む先を見つめるもの、イルイ。
心に秘めるのはこの殺し合いに居ない自分を護ってくれたもの。
度重なる危険に彼の事をずっと考えていた。
この場に居ないのは理解している。
でも、きっと何処かで頼りたいのだ。
そう思って心で彼の名前を呼ぶ。

その時だった。

「…………あれはっ!」

見つめる先にかすかに見えたもの。
忘れる訳が無いあの威風堂々とした機体。
その機体が持つ一振りの刀で護りきったのを今でも鮮明に覚えている。

その機体は。


「ダイゼンガー!」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「…………っ、俺は」
「大丈夫ですか? ドモンさん?」
「……シーブックか」

キング・オブ・ハート、ドモンカッシュが目覚めた時には彼は機体から出され、地に横になっていた。
一体誰がと思った時、気が着いたのを知ったのか、シーブックが話しかけてきたのだ。
彼は先程の戦闘で出あった仲間である。
だが、彼一人では自分を運ぶのは無理なはず。
そう思って辺りを見回すと見知らぬ二人組みがいる。

「……どうも」
「大丈夫ですか?」
「あ、あの二人が助けてくれたんです」

ドモンの視線に気づいたのか軽く声をかける二人。
一人は幼いながらも聡明そうな少女。
もう一人は……

「…………あん? なんだ?」
「いや、何でもない。すまない」

黒いタキシードとテンガロンハットを纏った男がドモンの視線に気が着いて、そちらに視線を向けている。
どうやら、思いのほか見つめていたらしい。
そう、ドモンは思いながらも彼の目がどうしても気になったのだ。
深く全てを吸い込みそうな瞳。
だけど、その奥にあるのは深い悲しみとそして。


178 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:58:33 ID:owEVzVse
 

179 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:59:23 ID:OdlP7CAj


180 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:59:31 ID:zL7iPb/l
 

181 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 03:59:35 ID:owEVzVse
 

182 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 03:59:46 ID:BpZ29xhq
(……何だ? あの憎しみは?)

耐え切れない深い憎悪。
そう、まるで昔の自分のような。
底知れないモノをその男を持っていた。

「えっと、ホシノルリといいます。こちらはヴァンさんです。北上中シーブックさんから救援を頼まれ、現在に至ります」
「……そうか、すまない」
「いえ、困った時はお互い様ですから」

ルリと名乗った少女はその後、わかり易くこれまでの経緯をドモンに話していてくれた。
まず、ルリ達は一度獅子に乗ったレーベンという殺し合いに乗ったものと交戦したという事。
そしてその後街角にて誰か居た形跡を発見したという事。
次に、ドモンが気絶した後の事でその中で

「そうかジャミルは……」
「はい……無事だといいんですけど……」

ジャミルが自分達を逃し一人戦場に残っている事を知った。
後事を自分に託して。
それを知った時、ドモンはジャミルがシンを救おうとしている事を知ったのだ。
そして、未来をシーブックに懸けている事も。
だからこそ、ドモンは気持ちを新たにする。
今度は自分の番だと。
シーブックを育て、未来を繋げるのは今度はドモンの番だと思ったのだ。
ジャミルがどうなっているかは解らない。
しかし、託したというのならばそこで命を散らす覚悟もあったのだろう。
だからこそ、ジャミルの意志はつがないといけない。何としてでも。

「俺たちの事は……」
「あ、はいもう粗方シーブックさんから聞いたので大丈夫です。粗方の情報交換は既に終えました」

そういいながらもルリは名簿欄の所に要注意人物と新たに書き込まれたシンの名前を見る。
ヴァンと同じく復讐に身を焦がす者。
もしかしたらヴァンもそうなってしまうのだろうか?
復讐者の末路はそうなってしまうというのだろうか?
違うと即座に否定した。
そんな悲しい事はなって欲しくない。
アキトさんだってきっと……

「おい……ちょっといいか?」
「何だ?」
「かぎ爪の男知っているか?」
「いえ……」
「知らないな」


183 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:00:39 ID:owEVzVse
 

184 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:00:41 ID:zL7iPb/l
 

185 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:00:49 ID:BpZ29xhq
ルリの思考と断ち切るように今まで黙っていたヴァンが口を開く。
それはやはり復讐の事で。
ドモン達に自分の復讐したいものの事を聞いていた。
知らないという二人の問いに別に残念そうにする事もなく

「そうか」

と短く返事をしただけ。
それで、その話は終わるはずだったのだが……

「待て、ヴァン」

そこで、話を続けさせようとする者が一人。
ガンダムファイター、ドモンカッシュだった。

「お前、その男を見つけてどうする?」
「……」
「言わなくても……解る。復讐だろう?」
「……!? 何でそれを?」

己が真意を当てられ若干驚くヴァン。
ドモンの表情は真剣そのもので。

「俺もお前と同じだったからだ」
「……何?」
「同じく復讐に心を焦がしていた時期があったからわかる。お前の目は昔の俺と一緒だ」

昔と同じヴァンをただ見据えていた。
ヴァンは何も言わず、ただ、その目でドモンを見つめるだけ。
しかしやがて口を開き

「……で? 止めろとかぬかすのか?」

そう、短く言い放った。
ヴァンに会ったものが多くいうように。
無意味だから止めろなどとこの男も言うのだろうかと。

「いや、そうとは言わん」
「何?」
「だが憎しみだけで戦ってどうするというんだ? お前は」
「……」
「その先にあるのは空っぽしかないんだぞ……憎しみで心を染めて何になる?」

先刻戦ったシンの時のように言葉を続ける。
憎しみで戦ったってどうするのか?と。
その先にはあるのは空っぽだと。
ヴァンはただ、ドモンを見据えて。

そして


「知らねぇよ。それに憎しみの何が悪いんだよ」


そう、言い切った。
憎しみの何が悪いと。
心の底から、そう思ったから。
ただ、ドモンを見据えて。
強く、強く、そう言い切った。


186 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:01:02 ID:OdlP7CAj


187 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:01:21 ID:owEVzVse
 

188 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:01:35 ID:zL7iPb/l
 

189 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:01:43 ID:BpZ29xhq
ドモンはその返事にただ黙ってヴァンを見据えている。


その時間がずっと続くかと思われたその時



「ダイゼンガー!」


響く爆音。
そちらの方向を向くと巨大な機体が全速力で現れたのである。
ヴァン達は即座に臨戦態勢にはいろうとする。

「ロボ、降ろして!」

その少女の言葉と共に大きな機体は進軍を止め地に跪き、パイロットを下ろした。
その少女は全速力でヴァン……もとい、機体に向かって走ってくる。
ドモン達はその様子に殺し合いに乗っているというより、誰かを見つけて必死に走ってきているという事を察した。

「ゼンガー! ゼン………………違う…………こんな黒衣を纏ってない」

そして、少女がダイゼンガーの元、ヴァンの元に駆け寄っていくがヴァンの姿を確認した同時にその顔は落胆に染まる。
その少女――イルイは逆にそのヴァンの表情を見て、驚く。
その目は憎しみに染まってる……けどその中に何かを失った悲しみがあるような気がして。
イルイはそのまま立ちすくんでしまう。

「あん……?…………黒衣か…………よし、次から『黒衣のヴァン』だ」

ヴァンはその少女の姿に若干驚きながらもその少女の言葉にヴァンは何となく呼び名を代えてしまう。
そして次に聞こえてきた声の方向に向く。

「イルイちゃーん! 待ってー!」
「おーい! 大丈夫かー!?」

現れたのはまた少年少女達。
その中の銀髪の少女がヴァン達を確認して

「…………はぁはぁ……すいません私達は殺し合いに乗ってません……よければ少し話したいのです……が……」

息も絶え絶えの様子で伝える少女。
ルリは安全だろうと判断し少し溜息をつきながらも

「了解です。とりあえず、そちらの機体をこちらに寄せてください」
「……あ、はい……分かりました」


そしてここに七人の殺し合いを打倒しようとするものが集まったのである。








190 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:01:48 ID:Iki/G4NU
 

191 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:02:16 ID:owEVzVse
 

192 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:02:41 ID:BpZ29xhq

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








ルリにとって三回目の情報交換は極めてスムーズに行われたといっていいものだった。
何故ならテッサ自体が艦長であり、またそういった人や情報を纏めるのに適した人物であった為簡単にいったのである。

そこでルリ側が得た情報は危険人物の情報とテッサ達のこれまでの行動。
それは暗黒将軍と呼ばれる者。
次は紫色の機体操るレイ・ザ・バレル。
そして、ドモンの話でも出てきた大斧を操る機体の事だった。
またその三体とダイヤ達で戦闘が行われた事。
そして、ダイヤの仲間と五飛の生存が絶望視されてる事も伝えたのだ。
後、テッサが最初に乗っていたガンバスターという大きな機体の事も手に入れる事が出来た。

大斧を使う機体というのにヴァンが僅かに反応し、なんとも言えない表情を浮かべたのだが其処までだった。
その後は何の表情を浮かべず話を聞いていた。
ちなみに、テッサたちもかぎ爪の男の情報知ってはいなかった。

テッサ側が得た情報はシーブックとルリたちが事前に情報交換で得た情報と同じで。
それはテッサ達にとっても有益だった。

また、その中でお互いが異世界から連れてこられたという推論を確認しあった。
お互いにすむ場所も組織もバラバラなのである。
半信半疑のものも居たが受け入れざる終えなかったのだ。

そして、情報交換が終わり

「じゃあ、これからどうしましょう?」

今後についての打ち合わせをしようとし始めた。
その時、ダイヤがふと呟く。

「俺は……仇をとりたい。剣児さんの。もしかしたら……五飛さんのも。暗黒大将軍や、あの殺し合いに乗った奴に仇討ちをしたい」

胸に秘めた敵討ちを。
ただ、悔しかった。
二回も護られてそして仲間を失った。
しかも、同じ相手に殺されてる可能性もあるのだ。
それが悔しくて、自分の無力が嫌で。
ダイヤはただ、無念を果たしたかった。
そこに憎しみはあるかどうかはわからなかったけれども。
他の皆がそれを聞いて押し黙っている時

「ダイヤ。お前にはまだ早い」

そう口を出したのはドモンだった。
ダイヤはそのドモンの意見に驚き、突っかかる。


193 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:03:00 ID:OdlP7CAj


194 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:03:20 ID:zL7iPb/l
 

195 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:03:23 ID:owEVzVse
 

196 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:04:07 ID:OdlP7CAj


197 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:04:19 ID:BpZ29xhq
「何で!?」
「お前はまだ若い……そして、まだ非力だ」
「……っ」
「ダイヤ、お前が前の戦闘で無茶をして、テッサやイルイを危険にさらしたのを忘れた訳では無いだろう?」
「…………」

そう、ダイヤはまだ未熟すぎるのだ。
軽率の行動でテッサやイルイを危険をさらしたのは事実。
そして、力が無い上で仲間を失ってしまった。
敵討ちを否定する訳ではない。
しかし、まだ力が足りない。
そして、ドモンはまだ未来ある子供を此処でつぶしたくなかったのだ。
だからこそ

「お前の怒りは俺が代わりに果たす」
「え?」
「元はといえば俺が最初アマンダラを取り逃がしたのも原因だ。ならばこの見の不手際は自分で果たす」
「だけど……」
「ダイヤ。お前は強くなれ。そして皆を護れる力をつけるんだ」
「…………はい」

ドモンの力強い言葉。
ダイヤは頷くしかなかった。
ドモンは代わりにアマンダラ達を討とうといったのだ。
その意志にダイヤは同意し、強くなる事を誓う。

「よし、ならば、一旦街により、補給の後、俺はお前達が戦った戦場に向かう」

そして、ドモンが提案したのは戦場に向かうという事。
そこで殺し合いに乗った者たちがまだ居るというのなら討つ。
それがドモンの考えだった。

「……仕方有りませんね。解りました」
「すまない……そしてシーブック。お前も来るか?」
「えっ……?」
「ジャミルに託された事をはたしたい。どうだ?」
「…………はい。俺もついていきます」

ジャミルが託した事をそれを果たす。
ドモンはその意志の元にシーブックを誘い、そしてシーブックもそれに乗った。
テッサはそれを仕方ないと見ながら

「じゃあ、中央でおちあいませんか?……そうですね。Dー4で4〜5時の間に」
「わかった。それでいい」
「解りました……では私達は……」

テッサが何かを言おうとしたその時だった。
ヴァンが急に立ち上がって

「……あー、もういいか?」
「……え?」

すたすたと機体の方向に向かって去ろうとする。
ルリとテッサは驚いてヴァンに声をかけた。

「どうしてですか!?」
「俺はかぎ爪を殺せればそれでいい。馴れ合ったりするのは御免だ」

そう、短くテッサに告げる。

198 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:04:39 ID:zL7iPb/l
 

199 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:04:48 ID:owEVzVse
 

200 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:05:12 ID:OdlP7CAj


201 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:05:21 ID:BpZ29xhq
ヴァンは復讐さえできればいいのだ。
その為に馴れ合うなど必要ないと考えたから。
もう、必要な情報は集まった。それ故に去ろうとする。

「……仕方ないですね。テッサさん」
「はい?」
「私はヴァンさんについていきますので。北に向かいハッキングを仕掛けようと思っていますのでもし中央に戻れたらその時情報をまたあげますね」
「…………しょうがないですね。わかりました」
「もしヴァンさんが戻る時が無かったら信頼出来る者が出来たらその人に託そうと思います」
「わかりました。ではこちらは首輪について調べようと思います」
「了解しました」

ルリは元々の約束通り、また個人的にもヴァンには着いていきたい。
そのためにもルリは短くテッサと目的と今後の方針を伝え納得させる。
テッサとしてもルリを縛る権利など無いから、ルリの意見を飲んだ。
そして、ヴァンは機体に乗り込んで、出発しようとする。
その時だった。

「ヴァン。お前は復讐を成した後、どうする?」

ドモンがヴァンに対してそう問いかける。
復讐を成した時、ヴァンはどうするつもりなのだろうか?
空っぽにはならないのだろうかと。
だが、ヴァンは

「しらねぇよ、先に復讐を終わらしてからだ」

そう短く言った。
そんな先のことなど知らない。
今はただ、目の前の事に突き進むのみ。
それがヴァンだから。

「おい、坊主」

ヴァンは最後にダイヤに対して言葉を残す。
それはヴァンが考えている事で。
何事にも変えられない信念。


「もし、仇をとるんだったら自分自身の手で行え。それにこそ意味があるんだ。他人に任せるのは意味がねぇんだよ」

そう、仇を自分自身の手をとる事を告げ。

「じゃあな」

そのまま、加速し去っていく。
ルリは軽く会釈をし、ヴァンについていった。


(俺は……)

そして、ダイヤに残る二人の男の言葉。
ドモンとヴァンの言葉。
その意味を反芻しながら、強く誓う。
強くなる事を。






202 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:05:41 ID:zL7iPb/l
 

203 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:06:05 ID:owEVzVse
 

204 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:06:21 ID:Iki/G4NU
 

205 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:06:23 ID:OdlP7CAj


206 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:06:47 ID:BpZ29xhq

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ヴァンさん」
「……ああ、何だ着いてきたのか………………ええと、どちらさ……」
「ルリです。いい加減憶えてください」
「……すいません」

覇気の無い言葉で謝るヴァン。
ルリは溜息をつきながらもヴァンの前に立つ。

「第一、ハッキングすると言ったじゃないですか? そういう条件でしたけど?」
「ああ……そうだったな」
「忘れてもらっては困ります。いきますよ」

そう言ってまた進むヴァン達。
ルリは進みながらも思う。
ドモンの言葉を受けてからのヴァンの言葉。
それをアキトに重ねて。

(アキトさんなら……どう返したんでしょうか?)

そう、心の中で呟く。
戯言でしょうかと思いながら、後ろを振り返る。

そこには同じく復讐者の黒衣の男がゆっくりと進んでいた。


その姿を確認して、ルリは短く溜息をついたのだった。


【ヴァン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:良好
機体状況:斬艦刀verダンの太刀装備、ガーディアンソード所持 胸部にダメージ中 全身に軽い焦げとダメージ小
現在位置:B-4 北部
第一行動方針:北進してカギ爪の情報を集める。中央に集まるかは未定。
第二行動方針:エレナの仇、カギ爪野郎をぶっ殺す!あん、未参加?まだ決まったわけじゃねぇ!
第三行動方針:ダンを取り戻す。
第四行動方針:ルリと共に施設を目指し、カギ爪の男の情報を集める。
最終行動方針:エレナ……。カギ爪えええええええええええッ!
備考:斬艦刀を使い慣れたダンの太刀、ヴァンの蛮刀に変形できます】


【ホシノルリ(劇場版) 搭乗機体:フェアリオンGシャイン王女機(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:良好
機体状況:アサルトブレード装備、中破、EN消費(中)
現在位置:B-4 北部
第一行動方針:北に向かう。できれば中央に戻りたいが、出来なかったら次に遭遇した信頼出来る者に託す。
第二行動方針:街でハッキングに役立つ道具や施設を探す。
第三行動方針:ヴァンと共に行動する。
第四行動方針:自身のハッキング能力を活かせれる機体を見つけたい
最終行動方針:シャドウミラーを打倒する
備考:ヤマダ・ジロウ(ガイ)は同姓同名の別人だと思っています】


【一日目 12:30】

207 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:07:17 ID:zL7iPb/l
 

208 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:07:46 ID:OdlP7CAj


209 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:07:59 ID:Iki/G4NU
 

210 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:08:06 ID:owEVzVse
 

211 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:08:13 ID:BpZ29xhq


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ドモンさん」
「なんだ?」

ドモン達はダイヤ達から先行して、街に向かっていた。
恐らくあるであろう補給ポイントにて手早く補給して、戦場に向かわなければならないのだ。
もう街を見えてきた頃、不意にシーブックは口を開く。

「ジャミルさんは僕に未来を託し、強くなれといいました」
「ああ」
「……強くなれるんでしょうか?」

そのシーブックの不安にドモンは力強く返す。

「なれるさ、お前が強くなろうし続ける限り」
「……はい、そうですね」

そのドモンの言葉にシーブックは頷き思う。

強くなろうと。
そして、未来を繋ぎ、元の世界に返ろう。

そう心に誓い、前を見る。

空は蒼く、太陽は輝いていた。


【ドモン・カッシュ 搭乗機体:ボン太くん(フルメタル・パニック? ふもっふ)+キングゲイナー(OVERMANキングゲイナー )
 パイロット状況:健康
 機体状況1(ボン太くん):良好、超強化改造済み、ガーベラ・ストレート装備
 機体状況2(キングゲイナー):小破、全身の装甲に軽い損傷、EN60%
 現在位置:B-4 街前
 第零行動方針:まず補給し、その後東に向かう。4〜5時にはD-4に向かう。
 第一行動方針:他の参加者と協力して主催者打倒の手段を探す
 第二行動方針:シンを助けたい
 第参行動方針:ダイヤとシーブックに期待。ヴァンには複雑な思い。
 最終行動方針:シャドウミラーを討つ
 備考:ボン太くんを着たままキングゲイナーを操縦しています】

【シーブック・アノー 搭乗機体:デスティニーガンダム+ミーティア(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
 パイロット状況:健康
 機体状況:EN50%、ミーティア接続中
 現在位置:B-4 街前
 第一行動方針:まず補給し、その後東に向かう。4〜5時にはD-4に向かう。
 第二行動方針:仲間と情報を集める
 第参行動方針:ジャミルの遺志を継ぐ。ジャミルの生存は絶望視
 最終行動方針:リィズやセシリー、みんなのところに帰る
 備考:謎のビデオテープを所持】

【ミーティア(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
 機体状況:残弾60%、右アーム切断
 備考:核以上の出力があり20m前後のモビルスーツ程度の大きさならば、どんな機体でも着脱可能に改造されています】


【一日目 12:00】

212 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:08:40 ID:Iki/G4NU
 

213 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:09:27 ID:Iki/G4NU
 

214 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:09:27 ID:OdlP7CAj


215 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:09:32 ID:BpZ29xhq



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「さて、そろそろ行きましょうか」
「うん」

少し、その平原にて休憩を取った後、テッサ達は最後に七人が集まった平原から立ち去る事にした。
ジャイアントロボに乗り街を目指す中、ふとイルイが呟く。

「……ゼンガー」

それはやはりこの殺し合いに居ない男の事で。
それほどまでにイルイはゼンガーを信頼していた。
ダイヤをその様子を見てこう言う。

「大丈夫、俺がイルイを護ってみせる。もっともっと強くなって……今度こそ……絶対!」

そのダイヤの宣言はとても力強くて。
ダイヤとしても、もう二度と誰も失いたくないから。
その言葉には確かな遺志と心が篭っていた。

「……………………うん」

そんな眩しい様なダイヤをみて、イルイはかすかに、それでも確かに笑ったのだった。


【一日目 12:30】

【ツワブキ・ダイヤ 搭乗機体:なし(ジャイアント・ロボに同乗中)
 パイロット状態:良好
 機体状況:なし
 現在位置:B-4 平原
 第一行動指針:とりあえず街に向かい情報を集める。4〜5時にはD-4に向かう。
 第二行動方針:仇をとる? ヴァンとドモンの言葉にたいしては……?
 第三行動方針:イルイ、テッサをもっと強くなって護る。もう誰も失いたくない
 最終行動方針:皆で帰る】

【イルイ(イルイ・ガンエデン) 搭乗機体:なし(ジャイアント・ロボに同乗中)
 パイロット状態:良好、
 機体状況:なし
 現在位置:B-4 平原
 第一行動指針:ダイヤ、テッサと一緒にいる
 最終行動方針:ゼンガーの元に帰りたい
 備考:第2次αゼンガールート終了後から参加】

【テレサ・テスタロッサ 搭乗機体:ジャイアント・ロボ(ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日)
 パイロット状況:良好
 機体状況:全武装の残弾50%、全身の装甲に軽い損傷
 現在位置:B-4 平原
 第一行動方針:とりあえず街に向かい情報を集める。4〜5時にはD-4に向かう。
 第二行動方針:仲間を探し、部隊を形成する
 第三行動方針:首輪を外す
 最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】

216 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:09:39 ID:zL7iPb/l
 

217 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:10:18 ID:OdlP7CAj


218 :未来を繋げる為に、強く生きる為に ◆UcWYLVG7BA :2010/02/04(木) 04:10:31 ID:BpZ29xhq
投下終了しました。
此度は延期してしまい申し訳有りません。
支援ありがとうございます

219 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:21:04 ID:zL7iPb/l
投下乙です

ヴァンの言動にハラハラしつつも、穏便に集って別れて、コミュニティができあがりましたね
ドモンとダイヤ、テッサとルリみたいに、おもしろそうな関係も垣間見えましたな
ルリはなんだか、回を経るごとにヴァンの扱いになれていってる気がするぞw

220 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:31:27 ID:cp0zLhfY
キーワードは『復讐』か……各々違った価値観が見れて実に興味深い作品でした
しかしヴァン、カギ爪いないのにいつまでも彷徨い続けるのは滑稽を通り越して不憫になりつつあるぞ……どうにかならんのかこれ;;

221 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 04:49:30 ID:OdlP7CAj
投下乙!

>ユウキ〜
おお、ユウキがかっけえ!
そしてハロの中にハロを混ぜるとはwww
ウッソのハロは確かにキャラ立ちしてるよなー
シャドウミラーの変質に怒りをぶつけるユウキに震えた
……っと思ったらーw
カズマwww やべえ、これは上手いwww

>未来〜
ヴァンはばかっこいいなー
色々と関連性や縁のあるメンバーを上手く裁いた話
いい感じに各チームもばらけたが、さて?
導き手ポジなドモンが戦地に向かったり、ヴァンドモンの言葉を受けたダイヤの今後が楽しみ

222 :代理投下 ユウキあるチカイ ◇PfOe5YLrtI:2010/02/04(木) 05:00:13 ID:5seA1ytR
投下乙です
それぞれの考えと情報がまとめられた良作品でした。
現段階での最大戦力になるかと思っていましたが、
別れた事が予想外で、しかし各々の目的を果たすのには確かにいいですね。
この出会いが今後どのように絡んでいくか注目です。
(流石にこの序盤で反逆の牙のようにはならないと思って・・・)
あと、ドモン機体でも渡せよw


223 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 05:02:40 ID:5seA1ytR
名前が前のままだwwはずかしいwww

224 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 05:32:06 ID:EM0mk8tZ
投下乙です

さすがにヴァンがこのまま皆で一緒に行動というようにはならなかったか
ついていったルリとのコンビがどうなるか楽しみだ
やっぱイルイちゃんはダイゼンガーに反応しちゃうよね
あのそっくりさんともしも出会ってしまった時の反応も気になる
ドモンがいろいろ経験して成長した後だけあってすげえ頼もしいな
てかパイロット状況:健康って、あの激戦からもう完全回復してんのかよ!
さすがキングオブハートぱねえ
ダイヤ君は力をつけるまで今は我慢の時だ。いつか爆発してくれる事に期待
いろいろな関係性がみえて面白かったです

225 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 16:08:10 ID:vcSx/cA5
投下乙です
全体的な感想としてはちょっと描写不足かなあといった印象です
話の流れを先に考えたうえ作者視点でキャラクターが動いている感じが強く
先程まで死地にいた面々がお互いの素性をろくに確認せず話し合うのは違和感を感じました
ともあれ今後に期待します

226 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 18:57:15 ID:kUY+uvUe
そこまで分かってるなら、今後に期待せず自分で書いたら?

227 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 20:06:09 ID:vcSx/cA5
自分でも書いてますよ
この企画は一人では成り立たないものですから
書き手氏に腕を上げてもらいたいと正直な感想を述べただけです

228 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 20:19:41 ID:0Gkh2baO
スパロボNEOになんでガンダムWを出さなかったんだ!

229 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 20:20:37 ID:2uMvttqH
世界観があわねーからじゃね

230 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 21:18:11 ID:ZfUsdFxi
意訳すると
俺のレベルに合わせられないヘタクソはくるなよ、か…


231 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 21:27:33 ID:HHdt6rFH
俺のレベルに合わせろよカスども、とも受け取れる

232 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 21:30:43 ID:pwTaUVnV
レベルを合わせたら、むしろ低くなるんじゃないか?w

233 :それも名無しだ:2010/02/04(木) 21:55:41 ID:ChMF1/PP
てか、事細かに書いてないだけで素性については話してるよね
それでお互い異世界からつれてこられたのではという推論に至るわけで

234 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 00:48:49 ID:8lLMMw4i
不完全燃焼感はあるかな
ドモンとヴァンの復讐論議とか
ドモンは復讐自体は別に否定してないんだから、ここで無理にそっちに話持っていかなくてもいいんじゃないかとか、
ジャミルとシンの事あっさり見限りすぎじゃね?
とかは感じたな
人の復讐代行よりは、ジャミルたちの結果を見届けに行くような気もするが

235 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 01:03:49 ID:8lLMMw4i
あと、やっぱりどこを見渡しても危険だらけの場所で女子供をドモンが放逐するのもな
強くなれってんなら、自分が鍛えてやろうくらいの考えは持つと思うが
メタ的に対主催5人集団はヤバいという考えが働いたんだろうけど

236 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 01:24:55 ID:ZfukW5vJ
それは思ったな
まあ確かに5人てきついかもしれんが
あとどうでもいいけどドモンの声やボン太君に反応無かったな

237 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 02:25:16 ID:NDs6Oawx
俺は不完全燃焼よりはフラグの最初段階だと思ったけどなー。
ホップステップジャンプのホップ段階というか。これからどうにでも広げられるし
逆に言うと復讐の絡みは今しないと出来ないだろうしな。
まあ、面白かったし俺はいいと思うけど。

238 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 02:57:25 ID:ZfukW5vJ
それも同感だな
ここで不完全燃焼というのはなんか違うだろう
あとシンやジャミルをあっさり見限ったというのも違うだろう
ジャミルなら命懸けてでもシンを何とかしてくれると信じてるから自分は他のやるべき事をしようって事だろう

239 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 03:01:56 ID:+JsOOBjf
生きてるかどうかわからない五飛のために女子どもでロクな戦力もないダイヤ達と別れるってのがなぁ
ジャミルにシ―ブックのこと任されたのに鍛えるでもなく危険なとこに連れて行こうとしてるし
せめてキングゲイナーかボン太くんのどっちかをダイヤに渡してるならまだ納得もできるが

>>235の言う通りメタ視点の色が強すぎて不自然になってる感がある

240 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 03:13:54 ID:ZfukW5vJ
そうだなあ。ドモンがダイヤ達から離れるとしたらもうちょい戦力が揃ってるなりある程度安全が確保できてからな気がするな。

241 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 06:05:21 ID:NDs6Oawx
まあ後継で充分フォローできるレベルだし、俺は問題ないと思うかな。

242 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 10:20:16 ID:8lLMMw4i
>>238
まァその辺を指して描写不足って言われてるんだろ
>>241の言うとおりフォローは出来るし、修正するほどでもないけど

243 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 16:42:49 ID:9ZoW08Jl
最初に無理やり悪意ある解釈されてたけど修正するほどとは思わない
だから今後に期待って意味で感想を書いたんだけどな


244 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 16:46:46 ID:NDs6Oawx
>>242
描写不足と不完全燃焼は違うだろ。
あくまで今回は振りのお話だから不完全燃焼でいいんじゃないの
>>243
書き手で上から目線という時点でアレだよ。
そんなに自分は上手いといえるのか?とりだしてみたら?

245 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 17:04:49 ID:+qOFW86m
メタ視点とか考えて面白くなるはずないじゃん

246 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 18:31:08 ID:4Z5nXx1J
甘いな
メタ視点を考えた上で面白い話を書き上げてこそ真のエースだ
投下数が50を超えただけじゃエースになれない

247 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:43:45 ID:pKcGvnNg
規制チェック

248 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:45:30 ID:yoSxlMiy


249 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:46:54 ID:pKcGvnNg
おお、規制解けてる。
ティンプ、ガイ、プル、翔子投下します

250 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:47:39 ID:yoSxlMiy


251 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:47:53 ID:pKcGvnNg

「うーん……ここどこー……? おふろー……」
「おっ! 目が覚めたか!」

あの場にいては、もしもあの悪人が再び襲いかかって来た時、この少女が危ない。
動けない相手を守るのは、ヒーローの務めだが、まず少年少女を安全な場所に運ぶのも大切なことだ。
そう考え、ガイアガンダムを抱えたままガイはゆっくりと移動していた。
目指す場所は、ひとまず人が集まりそうで、かつもしも少女が怪我していた場合の治療のための道具もありそうな基地。
こう見えても、ガイは元宇宙軍パイロット。軍人として応急救護やもしもの時のトラブルシューティングは一通り習得している。

ぼんやりとした調子で目を掻く少女をモニターで確認し、とりあえず危険な状態でないことを見てから
ガイアガンダムをそっと地面にガイは降ろす。すると、ガイアガンダムは変形して完全な犬型になった。

「うぇ……?」
「起きたみたいだな! もう一度名乗るが俺の名前はダイゴウジ・ガイ! 燃える魂の男だ!」

まだぼけーっとする少女に対して、いつものテンションで激しく自己紹介するガイ。
よく名前を間違えられる(というか、本名が違う)ため、何度も同じ人に名を名乗ることが多いガイには、毎度のことだ。

「えーっと……わたし、プル!」

とりあえず相手が名乗ったから自分も名乗っとこう、みたいなノリで元気よく挨拶する少女――プルにガイは頷く。
少年少女たるもの、やはりこのくらいの元気があるべきだ!とガイ的な感覚では、なっている。
沈んでいるのは何かよくない証拠。それを取り除くのが漢の仕事だが、ないに越したことはない。

「怪我はないみたいだな! よか……っとどわああああ!?」

親指を立ててプルに熱い笑顔を向けようとするガイだったが、咄嗟にその手に握る操縦桿を動かす。
そのすぐ直後に、アクエリオンがいた場所にガイアガンダムのビームキャノンが通り過ぎた。
額に流れる一条の汗。だが、ガイは華麗に転げながら(転げた時点で華麗かどうか実に疑問だが)も機体を立ち上がらせる。

「ストーップ! ストップだ! 俺はあの悪漢じゃあぬぁい! 俺は、君の味方だッッッ!!」

意味もないがガイ節全開のボディランゲージを、そのままアクエリオンが伝える。
そんな動きに面食らったのか、単純に様子を見ているだけなのか砲撃が止んだ。

「嘘……! みんな殺さないと帰れないって、あのワカメの人が……」
「心配ない!!!」

プルの台詞を絶叫で遮り、ガイは語る。
そりゃもう、自分の持論を世界不変の法則であるかのごとく。

「あのヴィンデル・マスザーの悪事はこの俺! ガイゴウジ・ガァイ!が打ち倒す!!!
 この世に悪が栄えた試しなし! 君だって好きで戦ってるわけじゃあない! 
 俺たちのような考えの仲間の力を集めれば、シャドウミラーの一つや二つや三つや七つ!
 だ! か! ら! 心配ご無用だァァァァァァ!!」


252 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:48:43 ID:yoSxlMiy


253 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:50:14 ID:pKcGvnNg

真っ白い、しかも歯並びのいい歯をきらりと見せ、親指を立ててサムズアップした姿を通信用のカメラに近づけるガイ。
ご丁寧にアクエリオンまでサムズアップ。いきなりドアップになった暑苦しい男の顔に、プルが吹きだした。
初めて見るタイプの人間の、なんだか良く分からないが「そうだったのかー!」と言いそうになる勢い溢れる言葉に、
プルがぽかんとするしかないのも仕方ないだろう。

だが、ガイはそんなプルの姿に微妙に不満そうだったりする。
ガイとしては、そこで打てば響くみたいな調子で納得して欲しかったわけだ。
常識的に考えるとガイのそんなノリについていけるのがそうそういるわけがないのだが、それを指摘する人間はない。
というか、こんなテンションとノリに常時ついていける人間一杯いたら怖い。

ともかく、不満なガイが次に何をしたか。
プルの気持ちを推し量り、いったん引いて冷静に説得しなおしたか?

――否。

ガイが至った結論は一つ。
少女に納得してもらえるほど『 熱 血 が 足 り な い 』というものだった。
すっとガイは、胸の内ポケットに入ってるものを取りだす。彼のポケットに入っているものは、ゲキガンガーの超合金、
そして――カセットテープ。再生ボタンを、今渾身のストレートを投げんとするピッチャーのように振りかぶって押す。

――カチッ

シュルシュルとカセットテープが引っ張られ巻きとられる音が少しした後、軽快に流れ出す音楽。
アップテンポな曲調の、女性ヴォーカルの声が、二機を包む。


     復讐の悪魔が目を覚ます〜♪ 滅びを呼ぶ〜鐘の音〜♪ ゲッP−……


「ちがぁぁぁぁぁう!! 早送り!」

キュルキュルキュルキュル

「よし、そろそろだな!」

軽快な、それでいて熱い旋律が流れだす。


夢が明日を読んでいる♪ 魂の叫びさレッツゴーパッション♪ 
              いつの日か平穏 取り戻せこの手にレッツゴー……


歌う声まで熱血したこの音楽こそ、ガイが神曲と崇める「レッツゴー! ゲキガンガー3」。

「ゲキ・ガンガースリィィィィィィィィィィ!!」

254 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:50:55 ID:pKcGvnNg
拳を振り上げ、叫ぶガイ。
さらに、さっきよりも激しく身振り手振りを入り混じらせまくり、語る。

「あのヴィンデル・マスザーの悪事はこの俺! ガイゴウジ・ガァイ!が打ち倒す!!!
 この世に悪が栄えた試しなし! 君だって好きで戦ってるわけじゃあない! 
 俺たちのような考えの仲間の力を集めれば、シャドウミラーの一つや二つや三つや七つ!
 だ! か! ら! 心配ご無用だァァァァァァ!!」

決まった、という感覚がガイを包む。バックにゲキガンガーのBGMをつけたこの叫びが届かないはずがないという確信。
さあどうだ!という気持ちを込めてプルをガイは見据える。すこしまだ驚いた調子でガイを見ていたプルだったが……
不意に、その口元がゆるむ。

「あはははははははっ!! おじさん、おもしろ〜い!」

身体をくの字に折り、片手で腹を抑えながらプルはガイを指さした。形容抜きで、本当に涙が出るほど笑うプル。
なんだか微妙に期待したベクトルは違う笑顔だったが、とにかく元気になってくれてなんだか知らんがとにかくよし!ということにガイはした。

「まあ、そう言うことだ! 殺し合いなんて馬鹿らしいぜ! ゲキガンガーの歌を聞けぇ!ってやつだ!」
「はーい、わかった! ……あ、でも……」

元気よく腕をまっすぐ伸ばし、返事をプルはするが、すぐに俯いてモジモジしだした。
ゲキガンガーを擦り切れるほど見ているガイには分かる。これは、子供が隠し事をしている時の反応である。

Q なら、どうしますか?

「なに、何があったか知らないが気にするな!」

A 熱血に聞いて、熱血に許す。

「う〜ん……ほんとうに怒らない……?」
「もちろんだ! 俺を誰だと思ってやがる! 海よりも高く山よりも凄い心の持ち主だ!」
「よくわかんないけど……えとね、」

ナイス笑顔を崩さないガイ。

「実は、さっき攻撃したのわたしが先……だったり……? それで、あの赤い子が横から助けようとして……」

ナイス笑顔のまま、顔が引きつって固まるガイ。

「な、なんだってぇー!?」
「あ、でも全然怪我とかさせられなかったし……きっと大丈夫!」

笑顔凍結。

10秒。

20秒。

30秒。

255 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:51:43 ID:pKcGvnNg

「だだっだだだだっだだ大丈夫だ! それくらいの誤解誰だってある! うろたえるな!」

プルに言ってるんだか自分に言ってるのか分からないが、ともかく動揺しまくりのガイ。
というか、あの赤い機体はプルをあしらう程度でほとんどダメージを受けてなかった。
だが、それに向かって必殺ゲキガンズームパンチを叩きこみ、結構なダメージを与えたのはガイなわけで。
単純な与えたダメージ量は、ガイ>(越えられない壁)>プルだったり。

「大丈夫だ! さっきも言った気がするが! 誤解を乗り越えて真の絆は生まれるし、手を取り合うことだって出来る!
 これもほろ苦い青春の味ってやつさ! そうだろ、プル!?」
「せいしゅんってなーに?」
「まあ熱血だ!」

しかし、そこはいつもの超ポジティブシンキングでどうにかなったことにするガイ。

「とにかく会ったら謝ること! 俺も一緒に謝るから! な!?」
「うん、わかった!」

ごまかしがてらにカセットテープの音量を上げつつ、遥か遠くの基地を指さし、ポージング。
そんなガイを見てプルはカラカラと明るい笑みを作っていた。






だが、ガイは知らない。
誤解を解くべき相手が既にこの世から去ってしまっていることを。
そして、向かう基地には死の天使が待っていることを。


■



256 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:52:29 ID:pKcGvnNg


基地へ近付いてくる二つの機影。
それをウィングゼロから翔子は静かに見つめていた。
人を殺すことに、慣れたわけじゃない。殺し合いとか、戦いに慣れたわけでもない。
しなくて済むのなら、そのほうがいいって普通の考え方を捨てたのも違う。

けど、しなきゃいけないから。
一騎くんを守らなきゃいけない。もう自分は約束を守る資格もないのかもしれない。
それでも、守りたい。帰るところを守れないなら――せめて一騎くんだけでも。

最初のきっかけは、皆城くんからだった。
二度目の時は、宇宙から砲撃した。そして上がってくる相手ともみ合って、無我夢中でやっている間に撃墜した。
思えば、こうやって落ち着いて、相手の姿を見て撃つのは初めてだ。
必死になっている間は、相手の姿を見なくて済む間は、引き金の重さも忘れられた。
自分が撃ってきた引き金の重さを改めて感じる。

けど、やめるわけにはいかないのだ。
もう引き金は何度となくひかれ、二人も自分は殺してしまった。
あっけなく。ただ、引き金を引くだけで。一騎くんを守るため、なんて言っても納得してくれないだろう。
自分だって、見知らぬ誰かのために死ね、なんて言われたら嫌だから。

痛む身体も、簡単な検査で丸一日は持つ、と分かった。
ここにいる限りはどれだけ無茶をしても大丈夫だ。

「一騎くん……ごめん……」

そして今も、引き金を引く。その重さに戸惑いながら。




零れた謝罪は誰がために。




■


257 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:52:38 ID:yoSxlMiy


258 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:53:36 ID:pKcGvnNg

「なにかくる……!」

プルのその呟きがきっかけだった。

「何か来るって何がだ……うおっ! ゲキガンジャァァァンプ!!」

プルの言葉に気を止めた一瞬後、大型で目立つアクエリオンに向けて何かが飛来する。
一発の号砲。近付く基地の施設から放たれた、金色極太で超威力のビーム。
距離があったが故に、戸惑いもしたがガイは横っ跳びで冷静に回避した。
だが、攻撃の発射地点はまだ距離があって掴みきれない。

「くっ! 場所が分からなきゃズームパンチも使いようがねえぜ!」

姿勢を低くしながらも、まっすぐ基地へ走るアクエリオン。
その前を行くように、大地に四肢をつけてガイアガンダムが疾走する。
その足取りはぶれがなく、一点を目指していた。

「あっち! あの隙間!」

プルが指さす地点を見れば、基地施設の隙間に何かが動いているのが分かる。
すげえ観察眼か、カンだとプルの発見に内心驚きながらも、そこへ機体の進路をガイも変更。
先行するガイアガンダムが走りながら背中のビームキャノンをせり出させ、そこに向けて連射する。
白の中を混ぜた光が基地の倉庫に突き刺さり、けたたましい音と土煙を上げた。
だが、相手はそうすることを既に『知っていた』かのように空へ飛ぶと、跳びあがりながらも胸のマシンキャノンを発射した。
目標は、プルを向いている。回避が難しいタイミング。しかも、ガイが庇うような行動を取る時間もない。

どうする、どうする俺!? と思うガイ。
しかし、そんなガイの思いとは裏腹に、プルもまた『知っていた』かのようなタイミングであっさり回避した。

「そんなの当たらないよ!」

――回避した。
たしかに、回避した。
だが――即席で構えられるようには見えない巨大なライフルが、既に発射されていた。
それでもなお咄嗟に回避するプル。だが、地面に着弾した強烈な一撃は、いとも簡単にガイアガンダムを爆風で吹き飛ばす。
なんつう読み合いだよと感じながらも、アクエリオンの伸ばした腕が、ガイアガンダムをキャッチ。
一気にその胸元へ引き寄せる。

「おい、大丈夫か!?」
「う、う〜ん……さっきのいまだから……ちょっときぶんが……」

爆風で地面を何度に横回転した上で、アクエリオンの強烈な引き寄せ。
内臓などを強化人間として改造してあるプルでも、さっきまでの気絶との合わせ技一本で目を回している。

改めて相手の機体を睨み据えるガイだったが、

「すげえ……天使ロボってやつか……!」

快晴の雲一つない空に浮かび上がるは、白い純白の羽をはばたかせ、大地に羽を降らせる青のロボット。
その彫像のような美しさは、ガイが考える美的センスとは外れていたが、それでも感心させられるものがあった。

259 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:53:42 ID:yoSxlMiy


260 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:54:31 ID:yoSxlMiy


261 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:54:35 ID:pKcGvnNg

「腕が伸びた……嘘……!?」

その機体から洩れる声も、ガイの想像通りの声。
ひとまず通信を開くガイの目に映ったのは、サナトリウムのような施設が似合う、華奢な少女の姿だった。
軍などのパイロットの若年化が叫ばれるのはガイも知っているが、それを差っぴいても若い。
おそらく、せいぜい中学生といった年齢。とてもじゃないが、好き好んで戦いなどをするようには見えなかった。

両手でガイアガンダムを抱えている以上、戦闘など到底できない。
ビーム砲は使えるかもしれないが、さっきの動きをみるにこっちの足を止めるだけで到底当たるとは思えない。
そもそも、自分たちは戦いに来たわけではないのだ。
そのことをガイは胸にすえると、ウィングゼロに声を張り上げる。

「待て待て待て! 俺たちは君を襲おうって思ってるわけじゃない!
 別に殺し合いに乗ってるわけでもないし、仲間を求めて来たんだ! 銃を納めてくれ!」

だが、返答に帰って来たのは、手に持つ長大なライフルの一撃。
再びそれを回避しながらも、ガイは言葉を止めない。

「不安なのはわかーる! だが、心配無用だ! 殺さなきゃ生き残れない、なんて考えてるなら無用だ!」

なおも続く攻撃。
撃ちだされる大量のバルカン砲。

「俺たちみたいに殺し合いなんてまっぴら御免の連中がほとんどだ!」

相手の攻撃をひたすら回避し、なお言葉を紡ぐ。

「手を取り合えば皆生き残れるんだぜ! それこそ、会場丸ごと大脱出だ!」

その言葉に、一瞬、相手の動きが止まる。
きっかけゲットと内心沸く気持ちを抑え……ることをせず、ガイは説得する。

「そうだ! 人を殺すなんていやだろ!? みんなで手を取り合って、シャドウミラーを倒して帰るんだ!
 正義は必ず勝つ! ハッピーエンドってのはそういうもんだ!」

空に浮かんだまま、身動ぎするウィングゼロ。
迷っているのが、よくわかる。その動きを、固唾を飲んで見守るガイ。
きっと、届いた。そう信じながらもガイは待つ。


だが、ウィングゼロから帰って来たのは―――――


「……わかったようなこと…言わないで……!」

完全に虚を突いたバスターライフルの一撃。
なおも回避する技量の高さはガイだからこそではあったが、その余波は容赦なくガイアガンダムの時と同じように
アクエリオンも盛大に転倒する。手から投げ出されたガイアガンダムとともに、地面に二機が倒れ伏す。


262 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:55:35 ID:yoSxlMiy


263 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 19:55:38 ID:pKcGvnNg

「うがああああ!?」

常人なら、ここでウィングゼロと的と判別し、攻撃を仕掛けただろう。
だが、ガイは違った。

つらさを隠すような、憎さを含むような、そんな絞り出した声だった。
再度放たれる銃弾の雨。拒絶の言葉を受けて、ガイはどうするべきかを考える。
考える。考える。考えて、考えて、なお考える。そして至ったことは。




「分かった! 俺が! 君を! 助ける!」



プルと翔子がポカンとするような台詞を大真面目に叫ぶガイ。
だが、これはガイからすれば当然のことなのだ。
『ガイ(=ゲキガンガー)の中では』彼女のような可憐な少女が殺し合いに乗るなどあり得ない。
『ガイ(=ゲキガンガー)の中では』何かしら理由があって、仕方なく、恐怖に駆られてやっている以外あり得ない。
『ガイ(=ゲキガンガー)の中では』そんな少女を撃墜するという選択肢はない。

二機が離れて倒れたのを見て、ガイアガンダムにとどめを刺さんとビームサーベルを手に降りてくるウィングゼロ。

それに対して、ガイのやったことは。

「ゲキガァァァァァァァン・プッシュッッッ!!」

今まさにプルに対して振り落されんとしたビームサーベルが空を切る。
倒れたアクエリオンが放った無限拳がガイアガンダムを押し、どこまでもどこまでも運んでいく。
腕が、小さくならないマトリョーリカだかどこかの国の民芸品のように伸びていく様子に翔子も唖然とする。

「うぇ、えええええええええええ!?」

ドップラー効果付きの叫びとともに飛んでいくプル。
そのまま腕の先が伸びていき、ガイアガンダムは見えなくなってしまった。
それを横目にアクエリオンが動きだす。

「さっき……つらそうだったのは……何か理由があるんだろ……?
 何かやっちまったっていうのなら、気にしなくていいぜ。俺も、プルも多分同じことをやっちまったからな」

アクエリオンが腕を引き戻し、伸ばしていない腕で膝を支え立ち上がる。
今なお、ガイの闘志に陰りなく、アクエリオンもまた健在。

「けどな……悩んでる暇あったら、頭下げて手を取り合うほうがいい! 俺はそう思う!」

ガイの握る操縦桿の動きを、伸びるワイヤーを通し、正確にアクエリオンが再現する。
ウィングガンダムゼロカスタムへ、アクエリオンの燃える瞳とまっすぐ伸ばした指が向けられる。

「だから君が攻撃を仕掛けたことを、俺は絶対に君を許す! 
 んでもって、もうそんな悲しい思いしないように助けるってことだ!」


264 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 19:56:50 ID:yoSxlMiy


265 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:00:39 ID:pKcGvnNg

そう言ってファイティングポーズをアクエリオンがとる。
逆に、ウィングガンダムゼロカスタムが気圧されるように後ろに下がっていく。
自然と、ガイから距離を翔子は取ろうとしていた。

「この人……なに……!?」

翔子が感じているのは、ガイに対する後ろめたさだけではない。
今の翔子が感じているのは、他でもない恐怖だった。理解できないものへ、恐怖するのは人間として当然だ。
だが、目に前にいるのは人間だ。話も通じるし、言っている意味も翔子が理解できないものではない。
なのに、何故これほど翔子が恐怖を感じるのか。

それは、本質的にダイゴウジ・ガイという男がメンタルにおいて人間を超えているからだ。

ダイゴウジ・ガイが翔子を助けると言う理由。
こんな少女が殺し合いに乗るはずがない、だから俺が助ける。
恐ろしいまでに殺し合いという観点では外れている。
理由が薄っぺらい。まるで生きている人間ではなく、お話か何かの主人公のように単純だ。

だが、だからどうしたというのだろう。

ガイには、そんなことは関係ない。
ガイは信じている。この世界のどこかに、絶対の悪がいると。
それは木星蜥蜴であり、この場で言うなら他でもないシャドウミラーがそうだ。
だが、同時に同じくらい、固くガイは信じているのだ。
邪悪なロボや邪悪な外見をしていなければ、誰もが正義の心を持っていて、手を取り合いシャドウミラーと戦うことが出来るのだ、と。
ましてそれが少年少女ならばさもあらんや。言うまでもなし。

すぐに誰しも人間は他者を疑う。
それがありもしない幻想を生み出し、本来ならあり得ないはずの方向へ一歩を踏み出させる。
ある意味、この殺し合いの肝もそこにある。そうでなければ、殺し合い自体が成り立たなくなる。

だが、ガイにはそれがいない。
ある意味で、確かにガイは通常の人間からすれば壊れているようにも見えるかもしれない。
だが、だからこそヒーローでいられる。ヒーローのようになれると夢見る男ではなく、本当にヒーローの素質を持っている。
この殺し合いにおいて、容易く失われる究極の善性を、ガイは備えている。

「おっしゃああああああああっっ! 多少手荒い方法になっちまうが、今ならいけるぜ!」

守るべき相手はおらず、ただ全力で戦うのみ。
食いしばる歯が火花を散らし、生まれた技はまさしく必殺。
走り出したアクエリオンの動きを、ゼロシステムが読み取り、翔子に教えてくれる。
だが。それに反応するのに翔子は一拍時間を要した。何故なら。

266 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:01:27 ID:pKcGvnNg

「――えっ!?」

明らかに翔子の予想を、というより常人の予想を遥かに超えた戦法だったから。
走り出したアクエリオンの伸びた腕が、ゼロカスタムより前の地面に突き刺さる。
その勢いのままつっかえ棒となった腕の作用で空高く舞い上がったアクエリオン。
さらに腕を伸ばし高く空中に舞い上がると同時伸びた腕をひねる。太陽と重なる位置で、ソーラーアクエリオンの身体が横に回転する。

「ゲキガァァァァァンスピンキィィィックッ!!」

月⇔地球間ほどではないにせよ、超・超高度からの摩擦熱でアクエリオンの足が赤熱化するほどの蹴り。
翔子は、空に飛びあがり蹴りのコースから離れた。ゼロシステムは蹴りを当たらないことを教えてくれる。
だが、それでも警告は止まらない。もっと高く、もっと高くと空を飛ぶウィングゼロと、空を走るアクエリオンが交錯する。

その一瞬後。

地面に突き刺さったアクエリオンの一撃にクレーターを作り、なお止まることはなかった。
基地のアスファルトをえぐり、さらにその下の土までめくりあげられ空を汚す。
大量のつぶてがウィングゼロへと容赦なく襲いかかった。ツインバスターライフルを唸る気流の中、アクエリオンへ向けようとする。
しかし、視界を遮られ、蹴りの爆風渦巻く中長大なライフルは支えることすら難しい。

「まさか、最初から――!?」

相手は、自分を行動不能にするだけで抑えるつもりだと言っていた。
だが、あんな一撃、当たれば砕け散ってしまう。なら、もしかしてかわされて、しかもこうなることまで予測して?
こっちが相手の行動を読むのを想定して、その次の次までかわされないように計算して?

「悪ぃが、そのままいかせてもらうぜ!」

片手を地面に突き刺し、腕という軸を手に入れたアクエリオンが、空で姿勢制御に戸惑っているウィングゼロに接近する。
そのまま、ウィングゼロに肉迫したアクエリオンの片腕をどうにか回避するが、さらに腕の軌道を曲げ、アクエリオンは追ってくる。
風が収まるまでの辛抱とはいえ、接近戦になれば機動力が落ちたウィングゼロではアクエリオンのいい的だ。
牽制にマシンキャノンを撃ちこむが、まったくアクエリオンは意に介した様子はない。

三度、四度と交錯するたび、風こそ収まりつつあるが、回避の余裕はなくなっていく。
未来予測の力を手に入れ行動する翔子を、さらに天性のカンと嗅覚でガイは追いこんでいく。

一度の出撃のまま、ここに来た翔子。
対して、正規の軍の戦闘教育を受け、浮きまくっていたが超エースパイロットと名をはせ、
『人格はともかく能力は一流』のナデシコで単騎突撃系の戦闘要員としてスカウトさせたガイ。
経験など含みそれだけある地力の差をほぼゼロに埋めるゼロシステムも凄まじいが、それでもゼロシステムを上回るのは並みのことではない。
まさしく、ガイは他でもないエースパイロットなのだ。

正拳、裏拳、掌打、回し蹴り――片手が使えないにも関わらず、正確に攻撃をガイは繰り返す。
距離を取れば翔子に軍配が上がるが、距離を詰めての接近戦でガイに敵うのは、ごくごく一部。
だが、それも機体が追従してのこと。

「すげえ……! やっぱすげえぜゲキガンガー! お前となら俺は絶対に無敵だ!」


267 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:01:32 ID:yoSxlMiy


268 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:02:14 ID:pKcGvnNg

ガイの常人離れした発想を、アクエリオンは受け止める。
振られたビームサーベル。大出力のウィングガンダムゼロカスタムのそれは、受ければアクエリオンと言えど無事では済まない。
受ければ、の話だが。かくんと、アクエリオンの身体が崩れる。腕を一関節分咄嗟に収納したことで、緊急回避を成功させた。
掴んでいた手を叩かれ、ビームサーベルが手からこぼれる。だが、翔子もその程度で攻撃の手を緩めたりしない。

「まだっ……!」

さらに左手でもう一本のビームサーベルを抜き放つ。
しかし、それを構えるより早く、再び伸ばした勢いでアクエリオンが放ったサマーソルトが、二本目のビームサーベルを弾き飛ばした。
それでも、なお動きをウィングゼロはやめない。背面羽の影にあるウェポンラックから、右手に渡された武器は、
ダリア・オブ・ウェンズディの長槍。それを一気に突き出した。
拳を使い、足も使ったアクエリオンに、この攻撃はかわせない。そう考えて、ゼロシステムを反映する前に咄嗟に放った攻撃だった。

「甘いぜ……! 必殺の拳はのけとくもんだ!」

既に、地面の支えに突き刺さっていたアクエリオンの腕が引き戻されていた。
それは、今後の空中での姿勢制御を放棄すると言うこと。ガイはサマーソルトを使った時点で、翔子が一気に仕掛けてくることを読んでいたのだ。
戦いのビギナーは、結着を焦る。そして、一度踏み出せば最後まで突っ走ろうとする。
そこを突く。

引き戻した拳が、槍の側面を叩く。三度弾かれるウィングゼロの武器。
同時に、アクエリオンが背面のブースターを吹かせ、一気にウィングゼロに肉迫する。
ウィングゼロの身体をがっちりと抑えると、そのまま自由落下に身を任せるアクエリオン。

「離して……離して……っ!」

翔子も、ダリアにやったように引き剥がそうとするが、今度の相手はダリアの倍近い身長を持つアクエリオン。
そのパワーは桁違いで、到底引き剥がせるものではない。

「悪いが、ちょっとぶっ倒れててもらうぜ! こう見えても受け身とかはだいたいできるからな!」

このまま地面に叩きつけられれば、ウィングゼロが粉々にはならないだろうが、破損することは間違いない。
翔子も気絶してしまうだろう。二度目の落下中の拘束劇。
今度こそ、翔子の詰みに思えた。



だが、地面に落下するより早く――爆音が一つ響いた。



■


269 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:02:55 ID:pKcGvnNg


「おいおい……またかよ。もしかして俺以外みーんな殺し合いに乗り気ってわけじゃねえだろうな」



葉巻の炎を燻らせながら、ティンプ・シャローンはそう独りごちる。
奇しくも、ガイとプルと同じように基地には人が集まるだろうと考えていたティンプ。
彼が到達した時既に基地には戦いの跡が残り、さらに今また戦いが繰り広げられていた。
ちなみに基地に到着するのがずいぶんと遅れたのは、馬を探してしたからだったりするが……まあそこは御愛嬌。
ともかく、情報が欲しいと言うのにティンプが出会ったのは、今まさに戦う二機の姿だった。

情報も欲しいが、命も惜しい。というより、命こそもっとも重要なものだ。
戦っている相手に割り込んで情報を募る? ――NOだ、NO。
そんなお人よしなことをしては命がいくつあっても足りやしない。

ならどうするか。

「答えは簡単……減らせるときに減らしとかなきゃ、あとあと苦労するのは目に見えてるんだからな。
 どこの誰かさんか知らないが、ちょっとお邪魔させてもらうぜ」

テキサスマックが、重苦しい音ともに呼び出した巨大な銃を構える。
地上の対象への使用が禁じられている程の威力をもつ、テキサスマック最大武器のハイパワーライフル。

それを空中でもみ合う二機に静かに向けた。

「じゃ、あばよ」

届くはずもない囁きとともに、人の命を奪う引き金が、驚くほどの軽さで引かれた。



■


270 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:03:18 ID:yoSxlMiy


271 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:04:06 ID:pKcGvnNg

――――やべえ!!


加速する感覚の中、ガイは砲弾がアクエリオンに迫るのを見つめる。
煌々と輝くその色は、その一撃にどれだけの破壊力を秘めているのかを如実に物語っている。
回避しようにも、下にいるウィングゼロを抑え込んだこの姿勢からでは動けない。
それに、仮に強引に回避できたとしても、ウィングゼロに直撃してしまう。

それでは、何の意味もない。
暗い闇に囚われた少女を見捨てて、何がゲキガンガーか。
どんな窮地も脱出できる。そう固く信じて、刹那の間にガイは思考をフル回転させた。
一瞬の間にガイの脳に焼きついたゲキガンガーの戦う姿が一気に再生される。
あらゆる危機を乗り越えてきたゲキガンガー、その戦いを思い出せば、抜けられない窮地はない。

思い出せ、熱血を。
思い出せ、ゲキガンガーを。

俺が――

「俺がゲキガンガーだ! いくぜぇ!」

アクエリオンは、現状一人でも操作できるようになっている。
それは、量産型アクエリオンに応用された堕天翅の翅を利用したシステムのおかげだ。
だが、それはあくまで合体している前提のこと。複雑な分離、合体のシステムまでも完璧に再現できているわけではない。
突発的な状況に対する柔軟な行動は、人間以外には不可能なことだ。

つまり、分離はできてもこんな状況で再合体できるかは分からない。

出来るかどうか、まったくわからない。だが、やらないよりは一千億倍ましだ。
ちょうど、歌と歌で途切れていた音楽が、再び鳴り始める。
流れるのは、ゲキ・ガンガー3第三クール以降のOP、「飛翔(はばた)け ゲキ・ガンガー3」。
ガイは、計器のボタンを迷うことなく押し込んだ。


「オープン・ガンガァァァァアアアッッ!!」

アクエリオンが分離する。
その瞬間、60mの巨体は小さな戦闘機に分散される。
それだけでは駄目だ。ガイは、三機を一気にウィングゼロに押し付けた。
短時間で地球を一周できる戦闘機の推力に押され、落下速度が一気に加速する。

迫る砲弾。

加速するウィングゼロ。

迫る砲弾。

さらに加速するウィングゼロ。

そして――砲弾が、二機の後ろを通りぬけた。
だが、これで終わりではない。加速したウィングゼロがそのまま地面に叩きつけられれば、粉々になってしまう。
空中で姿勢を制御しようと加速の中もがくウィングゼロの身体をすり抜け、三機の戦闘機は一足先に地表に。
自分が地面に叩きつけられてもおしまい。
早すぎる合体は受け止めるのを邪魔してしまう。
速度を落とす暇もない。



272 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:04:49 ID:pKcGvnNg


「燃えるぜええええええええええ!!」


だが、それでもガイを包むのは、熱い思い。
なぜなら、ガイはずっと待っていたのだから。こんなふうに、合体変形を駆使して戦い、誰かを救うのを。
ガキガンガーのように、自分が戦うのを!

無人操作のものに正確に降下、タイミングを合わせ瞬く間にアクエリオンが再び組みあがる。
本来無意味で難易度ばかりが高いと言われたエステバリスの空中換装を、何度も何度も何度もガイはシミュレーションで練習してきた。
そして、実戦でも成功させた。それは全て――――こんな瞬間のため。

「こうやって、ゲキ・ガンガー3に乗るためだろ!?」

ガイは、絶対に失敗しない。
それが、ヒーロー。

ウィングゼロを、腕を引き戻すのを使い衝撃を殺しながら正確にキャッチすると、地面にゆっくりと降ろす。
まだなにがなんだかわからず呆けている様子の少女に、プルにやったようにサムズアップ。
背後に流れるゲキガンソングとともに、もう一度。

「あのヴィンデル・マスザーの悪事はこの俺! ガイゴウジ・ガァイ!が打ち倒す!!!
 この世に悪が栄えた試しなし! 君だって好きで戦ってるわけじゃあない! 
 俺たちのような考えの仲間の力を集めれば、シャドウミラーの一つや二つや三つや七つ!
 だ! か! ら! 心配ご無用だァァァァァァ!!」

そういいつつも、アクエリオンが膝をつく。
ガイはアクエリオン本来の搭乗者、ビルからも飛び降りるような野生児のアポロとは違う、普通の人間なのだ。
当然、激しいGや回転に見舞われれば、その身体はダメージを受ける。
ウィングゼロはアクエリオンに救われたが、アクエリオン自身の分離、落下の衝撃はダイレクトにガイへ跳ねかえる。
頭がぐらぐらして、今にも倒れそうな中、それでもガイは不敵な笑みを絶やさない。

「漢ってもんはなあ……苦しい時こそ笑って見せるもんだろぉ!!」

だが、そんなアクエリオンを横に、再び銃口がこちらに向けられる。

「やせ我慢か……かっこつけるのはいいが兄ちゃん、ちぃと運が足らなかったな。
 あんたがかわせば後ろの嬢ちゃんは粉々だ。どうするんだい、ヒーローの兄ちゃん!」

通信機に映るのは、どうみて悪人面で、西部劇か何かの悪役のような格好の男。
言っていることも、悪人そのもの。今度こそ、間違うはずがない。正真正銘の、悪人。
ならば、容赦は必要ない。

再度放たれる、一撃必殺の長距離砲撃。
今から振り向いてウィングゼロを持ちあげるのは間に合わない。
真っ向から撃ち落とすのみ!


273 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:05:34 ID:pKcGvnNg

「伸びろ! ゲキガァァァン! ムゲン・フレア!!」

砲弾を撃ち落とすため、腕が伸びる。
だが、その間に早くも悪党は逃げようとしている。
自分一人では、力が足りない。
そのことにガイは唇をかむ。

だが。

その時、背後からアクエリオンの脇を抜けて砲撃が撃ち出される。
その一撃は、弾道を、弾の未来を知っているかのように正確に撃ち落した。
ガイが後ろを仰ぎ見る。そこには、銃を的に構えるウィングゼロの姿。

そのままアクエリオンを盾にすることもできたのに、しなかった。
回避しつつ、アクエリオン自体を撃つこともできたのに、しなかった。

俺の言葉が、通じた。

「おいおい、マジか……!?」
「そうさ! これが熱血って奴だァァァァァ!」
「は、だが腕を伸ばした方向が悪いってもんだ。そこから曲げても届く前にはおさらばさせてもらうぜ」
「甘い……甘いぜ! ゲキガンガーに無理はねえ!」

伸ばした腕を、強引に横薙ぎにアクエリオンは振りかざす。
本来なら、腕のほうがぽっくり根元から折れても仕方ないような無茶な軌道を、アクエリオンは実現させる。

「悪人だからって命まで奪っていい理由はねえ! だから!」

ガイの前のモニターに逆三角形のウィンドウが自然と開く。

           ゲキガンビンタ
そこに刻まれた文字は、無限叱責掌―――!!


「ぶっ飛んで反省しやがれぇぇぇぇぇぇえええええええええっっっっっ!!!!!」

相手のマシンだけでなく、途中にある木や地面すらも削りあげ、必殺のビンタがさく裂した。




「おいおい待てよ!? 
 こういう役目は俺じゃなくて三枚目なドマンジュウの兄ちゃんの仕事なんじゃないのかぁァァァァァァァァ!?」





プルの時よりも激しく、そしてアレな叫び声とともに蒼穹の空へテキサスマックは吹っ飛んでいく。
やっぱりドップラー効果全開でハウリングしながら、キラリとティンプは空に消えてしまった。


274 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:06:34 ID:pKcGvnNg

「おっしゃああああ!  ざまあ見やがれ悪人軍団」

ガッツポーズをしながらも、ガイはコクピットの外に躍り出る。
そこには、ただ静かに佇んでいるウィングゼロの姿。そこへ向けて、ガイはびっと親指を立てた。
見事に、自分はやり遂げたのだ。悪人を今度こそ撃退し、また一人助けられた。
この調子で行けば、必ず―――

「っと、うぁ……?」

緊張の糸が切れたのだろう。
先程の頭のぐらぐらが改めてガイを襲う。

「やったぜ、ゲキガンガー!」

アクエリオン――いやゲキガンガーの上に大の字にガイは転がると、ガイは達成感を感じながら気を失った。


【プル、ティンプはE-1、E-2、E-3、E-4、F-4、F-3、G-4のどこかに吹っ飛ばされました。
 どんな状況なのかはお任せします。二人が吹き飛んだ方向は別のようです】



■


275 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:06:34 ID:yoSxlMiy


276 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:08:11 ID:pKcGvnNg

機体の上から滑り落ちる身体を、反射的に手を伸ばして受け止めていた。
なんでそんなことをしたのか、翔子にも分からなかった。だが、確かに感じてしまった。
この、ダイゴウジ・ガイという人の命を助けられてほっとしていることを。
そんな普通の心を自分が今でも持っていられることに今更ながら戸惑いながら。
大事な人のため、二人も人を殺した自分が。そのうちの一人は、大事な人の親友だと言うのに。
ウィングゼロの手の中で、すやすやと眠る男の人。その顔に、悪いものはまるでなかった。
ちくり、と身体の痛み以外の理由でどこかが痛む。

まるでこの男の人は自分を責めるようなことを言わなかった。それどころか、自分を助けるとすら言っていた。
だが、そんなこの人も、一騎くんが生き残るには、死ななきゃいけない。
死ぬのは怖い。けれど、一騎くんのためなら自分の命なんて惜しくなかった。
だけど、この会場にいる人々全員の命はどんな重さなのだろうか。


このまま、握り潰せば終わる。
指一つ動かして、ボタンを押し込むだけで、あっさり命は消える。
そんな、命の軽さ。事実、もう翔子は二人殺している。


――――悩んでる暇あったら、頭下げて手を取り合うほうがいい! 俺はそう思う!


この人は、そう言った。
けれど、もう謝るべき人はこの世にはいない。
いや、もしも幽霊のように化けて出たとして、謝って許されるとは翔子には思えなかった。

「でも……もう戻れない……」

そう思い、ウィングゼロの手を閉じようとする。
眼をつぶり、手と一緒に心のナニカも閉じるように。

けど、出来なかった。
ボタンを押そうとする腕が震えた。なんで押せないのかと自分の腕を翔子は見る。
その時――容赦なく襲いかかるゼロシステムのバッドトリップ。
ヴィジョン――ぐちゃぐちゃになったこの人の姿。
ヴィジョン――汚れるはずがない、コクピットの中の自分の手が血で真っ赤に汚れる姿。
ヴィジョン――ゼロシステムの未来予知。

「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!」

喉から漏れる絶叫。
それとともに、恐怖で収縮する筋肉――自分の意思と自立しているかのように動く指。
訪れる決定的な時間。

あっけなく。本当にあっけなく。
命が握りつぶされた。

大地には、指の隙間からこぼれた血と肉が滴っていく。


【ダイゴウジ・ガイ 死亡】




277 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:09:19 ID:yoSxlMiy


278 :The Hero ◆i9ACoDztqc :2010/02/05(金) 20:09:29 ID:pKcGvnNg

口を抑える――強烈な吐き気を抑えようとする。
今吐いたら、色んなものが吐き出されてしまう。
そんな想像が彼女を襲う。口を押さえれば、どうしても手が視界に入る。
先程の真っ赤な自分の手のヴィジョン――大事な人の姿を思い出して乗り越えようとする。
だが、浮かぶのは、血まみれになった大事な人の姿――

「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」


零れた謝罪は誰がために。




結局、泣きやんでしばらくぼんやりと翔子はしていた。
胸を包むのは、一つの思い。

もう戻れない――いや、最初からそうなのは分かっていた。
自分を助けようとした人まで、振り切った。
自分の目で見て、引き金を引いた。
あとは、何処かに辿り着くまで加速して――飛び続けるだけだ。
いつか、落ちて地面に叩きつけられるまで。
あの人のためだけに、飛び続ける。
それ以外を選ぶチャンスは、皆城くんを撃った時に過ぎたのだ。
改めて思い知らされる、現実の重さ。



翔子は、主を失った機神に背を向け、基地に戻っていく。
主を失ってもなお、屹然と立つその姿を到底、壊す気にはなれなかったのは、感傷かもしれない。

静かに……
静かに……
アクエリオンが唄う。
ガイがコクピットに遺したカセットテープは、音楽を奏で続ける。
テープが終わるまで、基地にはただただ歌が響き続けていた。




――奇跡の道開け、夢を果たすまで飛翔(はばた)け
       蒼穹(あお)い輝き取り戻せ  戦え ゲキ・ガンガー3………




【羽佐間翔子 搭乗機体:ウイングガンダムゼロカスタム(新機動戦記ガンダムW〜ENDLESS WALTS〜)】
 パイロット状況:内出血(処置済み、止まっている)
 機体状況:良好、ダリアの三節棍所持
 現在位置:G-2 基地北部
 第一行動方針:敵を倒す
 第二行動方針:参加者の人数を減らす。
 第三行動方針:一騎、真矢、甲洋とは出来れば会いたくない。
 最終行動方針:一騎の生存】

【基地には、ほぼ無傷のアクエリオンが放置されています】

【一日目 1:00】

279 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:12:23 ID:yoSxlMiy


280 :代理:2010/02/05(金) 20:14:11 ID:yoSxlMiy
◆i9ACoDztqc:2010/02/05(金) 20:12:05 ID:xGDbjQRs
すいません、投下完了宣言でさる……

向こうにこれのコピペお願いします

投下、完了です。支援ありがとうございました!

281 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 20:20:30 ID:yoSxlMiy
投下乙!
これがガイだ!
熱き迸りなんだよおおおおおおおお!!!
だがしかし、その血の熱さも機械ごしには届かない……
まだ人の手で殺めたのなら恐怖にも沈めたろうに
生身のをぐしゃっとは翔子の道を完全に絶っちまったなあ
飛翔けゲキ・ガンガー3の歌詞の合わせ方が上手く切なかった

結末は欝風味ですがそこにいたるまでのガイのターンはまさにガイのターンだった!
そりゃこれだけの馬鹿だと子どもも心開くはw
ゼロカスへの反応や無限ビンタとかがガイらしくかつかっこよかったw
ティンプはある意味すげえお似合いのパターンだったなーw
アクエリガイがまさかここまで熱く輝くとは!
ゲキガンアウトとかも素晴らしかったです

282 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 21:15:51 ID:4Z5nXx1J
ガイ……ガイィィィィィィッッ!!
翔子そんなところ握っちゃ駄目ええぇぇぇっ!!

283 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 21:29:16 ID:ZfukW5vJ
ガイはまさしくヒーローだった……
翔子はいろんな意味でやばいな……
3話で死亡というなんという悲劇の原作再現

284 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 21:45:29 ID:X8P0FWaM
命を燃やし尽くしたか、ガイ……!
登場話からだけど翔子は救われないなぁ
そしてプルとティンプはどこへw

285 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 22:00:28 ID:9aW8TBxQ
投下乙!
うおおおおガイかっけぇwww
そして翔子悲しすぎる……このまま堕ち続けるのか

ていうかさらっとゲッP−Xの歌流すなw

286 :それも名無しだ:2010/02/05(金) 23:59:01 ID:chqt7D7F
投下乙!
ガ、ガイイイイイイイイイイイイイイイ!!
まさかロワでも3話で死ぬとは……早すぎるよ、ガイ。
ゲキガンムゲンフレアとか捏造技が実にヤツらしい。
翔子はまたもや……悲しすぎて何も言えねぇ。

287 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 01:18:04 ID:DrEm9+Sb
               .__.,,,,,__           ________
             .,. '゙   ``、      /             \
            |.l■【 】■l.|   < そのキレイな顔を
         ノ゙{◎}ri|ニ[≡]ニ)ニ)ーー- | フッ飛ばしてやる!!
        ハ. `ー' ヽ   /::::::::::::::  \________/
        /lミト、   !、`- "::::::::::::::::::::
       /:l_丿:\/:::\:::::::::::::::::::::::
       /:::::::::::::/::\::::::::::::::::::::::::::::::ノ
       /:::::::::::::∧:::::::\:::::::::::::::::::::::{
      /::::::::::::/ ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::|
      |:::::::::::ノ   ト:::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ


288 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 01:20:31 ID:+IntLI2C
ガイ……!かっこよすぎるぜガイ!
つかさりげなく炎の転校生の歌詞混ぜるなw

289 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 04:25:25 ID:zdaL4i11
本編破茶滅茶熱血大活躍
死亡展開バトル外であっさりと
……すんげええガイらしいw
しかも3話目でってぱねすぎだろ、作者w

290 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 20:50:44 ID:W0bOiVqk
>289
今後プルと翔子の回想シーンで何度も出てくるんですね、分かりますwww

291 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 21:24:27 ID:HrcxbfNZ
更には同じ声のキャラが出てくるんですね、わかります

292 :それも名無しだ:2010/02/06(土) 22:00:04 ID:gFEGWNDi
ドモンwwwwwwwwww

293 :それも名無しだ:2010/02/07(日) 11:53:58 ID:R+sIYnPD
そうか、ドモンとガイってそういえば声優同じかwww

294 :それも名無しだ:2010/02/07(日) 13:40:56 ID:Ep2aJOk7
どこまでもワカメ扱いされるヴィンちゃんに吹いたww

295 :それも名無しだ:2010/02/07(日) 20:53:50 ID:qrc2csmC
まとめwikiの書き手別まとめ更新したから是非ともコメントつけて。書き手の気力が上がるから。
あと間違いあったら言って。

296 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:26:48 ID:C2wNc22b
トビア、トレーズ、カヲル君投下します

297 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 03:27:10 ID:vNZj+HNH


298 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:27:41 ID:C2wNc22b

「これは……想像以上か……?」
「どうなってるんです、これ……」

トレーズとトビアは、自分の目の前にある光景に絶句する。
彼らは確かにA-1に、海中、空中から軍事基地を目指していた。
目指していたが、あくまでそれは「地上にある軍事基地」だと認識していた。
だが、今彼ら二人の目の前にあるのは、間違いなく星煌めく宇宙であり、踏みしめているのは、命なき大地、月のそれ。
光のオーロラのような、色彩揺らめく壁を前にして、機体をくぐらせA-1に辿り着いた場所は月面だった。

「あ、あれ地球ですよね……」

トビアの指さす方向を、トレーズは仰ぎ見る。そこにあるのは、青い命の星、地球。

「どうなっている……?」

あの地球が、自分のいた場所なのか。だとしたら、ここまで信じがたいが空間転移により一瞬で飛ばされたのか。
それとも、月をあの光の壁で空間的に隔離し、作ったバイオフィールドから自分たちが出てきただけなのか。
どちらにしろ、途方もないほど発達した技術であることは間違いない。

「重力は?」
「えっ?」
「重力などに関してはどうなっているのか、そちらの機体で測定できるかね?」

トレーズの問いに、トビアは手もとの計測器に目を落とす。

「完全に、月の数値と一致してます……恣意的に作った環境かは分からないですけど……」
「なるほど」

そう言って、ソルグラヴィオンをおもむろに走らせるトレーズ。さらに、その勢いのまま大地を蹴り宙に飛ぶ。
そのまま勢いよく元いた場所に同じように走って戻った後、光の壁に手を突っ込んだ。

「ってええ? なにをしてるんですか!?」

追いかけるトビア。トレーズは、ソルグラヴィオンを止めると振り返り、トビアの乗るオーグ・バリューの動きを見る。

「突然何してるんですか……ちょっと待ってくださいよ。何か見つけたんですか?」
「ああ、見つけたとも。機体のプログラムが自動的に書き変わっていることを」

トレーズのその言葉に、目を見開き、その後考えても分からなかったのか眉を寄せるトビア。

「地上と月では、まったく重力が違う。そんな状況で運用しては、転んでしまう。
 それを抑えるため、我々は自動で切り替えるようなAIを組む。ここまではいいかな?」
「分かります。昔のモビルスーツは、宇宙、地上両用のものが少なくて、苦労したとか聞きましたし……」

299 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:28:36 ID:C2wNc22b

トビアは知らないが、抹消された歴史にGP-01というモビルスーツがいる。
これはのちに改修され、GP-01フルバーニアンとして生まれ変わり、宇宙でGP-02と互角の戦いを繰り広げた。
しかし、改修前宇宙に出た結果……地上の最新鋭モビルスーツも宇宙では手も足も出ない木偶と化した。
大気圏突入、そのまま戦闘――言うのはたやすいが、それは意外と技術的には大きな問題だ。

「しかし、それが勝手に切り替わった。異なる環境に同時にアジャスト、はありえない。
 海に潜っていたのもその確認だった。結果を聞くかね?」

トビアが首を静かに動かす。

「海に入る場合、特に変化はなかった。出る時も同じだった。
 だが、この光の壁に触れた場合のみ、宙間⇔地上のOSの切り替えが行われる
 つまり……この光の壁に触れると、何かしらのトリガーが発動し、機体に変化が起こると言うことだ」

ポカンとするトビア。
それをどうしたことかと見るトレーズ。

「どうしたのかね?」
「い、いや凄いな、と……」
「そんなことはない。重力や、それに伴う環境は君の先程の説明があったからこそだ」

別段誇ることもなく、ことなげに言うトレーズに、内心トビアが感嘆したのは言うまでもない。
だが、そんなトビアを励ますように、オーグバリューの肩をソルグラヴィオンは叩いた。

「せっかくここまで来た。これだけでもそれなりの成果はあったが……まだ空手とこれでは同じだろう。
 かなり遠方までここなら見通すことが出来る。二手に分かれるとしよう」


■



「なんにも知りたい男の子♪ なんにも知らない男の子♪ 大人になったら分かるから……」

風を切り聞こえてくるのは、少年の姿をした何かの歌声。
ほんの少しだけあけたガラスのようなハッチから吹き込む風が、彼の濡れた服を乾かしてくれる。
彼が感じるのは、純粋に喜びだった。人が空を飛ぶために手に入れた力、その始まりをどこか思わせる機神。
彼自身、やろうと思えば空に浮かぶことはできる。
だが、こうやって人が生み出したであろう英知を持って空を飛ぶというその行為が純粋に楽しい。
羽を失った鳥が獣に、すなわち人間となった。そのころに思いを馳せ、再び空に舞い上がった人間もこんな気持ちだったのだろう。
破壊を目的として作られたものであろうとも、使い手次第で存在する目的を変えられる。
そんな機神に僅かな羨望を感じながら、彼は歌う。

「ずっとずっと探しているうちに……」

もう、もうほとんど元通り。外れそうになっていた腕は――翼は固着し、今こうやって空を羽ばたく力となっている。
そうやって彼が飛び続け、行き当たったのは再び光の壁。その向こうの風景が光の中、おぼろげに浮かんでいる。
青い輝きを、そして暗い広がりを感じさせる銀幕の向こうに、彼は興味を覚えた。

静かに、ビッグデュオが、光の壁を超える。



■



300 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:29:19 ID:C2wNc22b

最初の場所で派手に爆発して見せることによって、首輪がある限り逃げられないという刷り込みを与えるための。
同時に、殺し合いを抜け出る為には首輪を外すしかないと思わせるための。
自分たちがこうも首輪をあっさりと調べることを許され、何のペナルティもない。
しかも、調べれば解除コードのようなものまであった。そんなものを用意する必要、主催者にはない。

技術的に外すことが可能、いや技術がなくともパスコードがあれば誰でも外せるかもしれない、と考えさせることによって、他の手段を放棄させる。
これこそが、首輪最大の目的ではないか。目先の餌として、同時に恐怖の象徴としてつるされた餌。
無論、首輪も外さなくては主催者であるシャドウミラーの前に立つことはできないだろう。
それだけでは決定的に足りない。首輪は外せば済むほど単純ではない。
だが、これは本当に組織全体の意向なのか、それともレモン・ブロウニングの独断なのか。
まだだ。

まだ真実を暴くにはピースが足りない。

もし、真に勝利者になろうとするのであれば。
首輪の向こう、シャドウミラーの目的から生み出される行動の真理を探すこと。
理解の先に、初めて敗者と勝者がある。そうでなければ、ただの戦死者でしかない。

「そのためには、知識がいる。多種多様な人間がいる。そして……時間はない」

そう、数多の世界より呼び出された知恵を結集させなければいけない。
多種多様なメンタリティを持つ、自分たちが持てないような発想を持つ人間がいなければならない。
彼らが、戦死者の列に加わる前に。

「トレーズさん! 南で敵につかまりました!!」

物思いにふけるトレーズの意識を、トビアの叫びが浮かび上がらせる。

「逃げることを優先したまえ。命を奪う前に、命を守ることがここでの勝利条件だ。……私もすぐに向かう」

まさしく魔法のような超技術で作られた炎の巨人が、月の空へ飛び出す。




しかし、その眼に映ったのは、巨大な火球だった。




■




301 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 03:29:42 ID:vNZj+HNH


302 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:31:01 ID:C2wNc22b



トビアが、それに気付いたのは偶然だった。
たまたま、A-1の端ぎりぎりまで足を伸ばしていたトビアは、月面基地のあるクレーターの淵にいた。
そこから基地を展望した時、見つけたのは吹きあがる炎。

「なんだ、あれ……? まさか、誰かいるのか!?」

咄嗟に通信を入れるが、既に通信の圏外だったのかトレーズには通じなかった。
火こそあるが、もうすでに戦闘が終結しているのは傍目にも分かる。危険はとりあえずないだろうと判断し、クレーターを駆け下りた。
上がっている火は、ミストをだまくらかすに際してクルーゼが撃ったビームライフルがくすぶっていたもの。
当然、そこには誰もいるはずがない。

「おーい、誰もいないのかー!?」

だが、それでもそんな事実知る由もないトビアは生存者を捜す。
だいたい探し終え、それでも生存者がいないことを確認した時、発見したのは金色に光るモビルスーツと、謎の装置。
送られてくる、メッセージは、コウ・ウラキに贈られたものと同様。

『空間転移装置使用者へ。空間転移装置は、宇宙と地上の特定の位置同士をつなぐ装置である。
 時間にラグなどは起こらないかわり、行先は初期設定された場所にしか飛べない。
 宇宙の任意の場所に移動したのであれば、別ブロックに存在するシャトルを利用すること』

だが、そんなメッセージを横にトビアはすぐに大破したアカツキに駆けよると、通信を試みる。
そして、通信がないのを確認し、機体をゆする。それでも反応がないのを確認し、降りて主導でコクピットを開いた。
誰もいないコクピット。血の跡もない。シートに触るが、ぬくもりもない。
ここでは誰も死ななかった――だが、機体は大破した。なら、中にいた人はどこに行ったのか。

「だれかに連れていかれたのか……それとも、どこかに隠れてるのか……」

そこで改めて空間転移装置を見る。
第三の選択として、これで、コロニーへ移動したのか。
どれにしろ、これ以上は一度トレーズと合流し、情報を整理すべきだろう。
再び、オーグバリューに乗り込んだトビアが、宇宙に登る。

その時だった。

「やあ」

背後から、声がかけられた。
オーグバリューを振り向かせ、向き合った先にいたのは――深紅の大型機。
どこか、旧世紀のプロペラ飛行機を思わせるデザインに、無骨でマッシヴな上半身と両腕。
到底、宙間戦闘が出来そうなデザインではなかったが、それをものともせず空から静かに下りてくる。

なんとなく、感じる嫌な気配。
ドゥガチのクローンを相手にした時ともまた違う、なにかぬめるような感覚に、トビアは警戒を強める。
口を開くことさえはばかられる、そんな何か。
そんなトビアの考えなど我知らない様子で目の前の少年は口を開く。


303 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:31:51 ID:C2wNc22b

「星が暗いね」

空を見上げ、世間話でもするようにつぶやいた言葉に、トビアは困惑する。
ふとつられてトビアも空を見上げ、確かに星が暗いとは思った。
だが、それだけだ。ことさら、殺し合いの場と言う極限状態でわざわざ初対面の相手に向けて口にすべきこととは思えない。
この極限状態で、まるで道ですれ違うような緩んだ状況であることが、逆に異質さを加速させる。

「閉じた宇宙、偽りの月……まるで舞台の上だよ」
「何を言ってるんだ、お前……?」
「感じないのかい? この世界がどれだけ嘘しかないか」

トビアには分からない。確かに、宇宙に出て戦ったときに比べて、酷くこの宇宙に違和感はある。
この世界が偽りだとか、舞台の上だとか、そんなことを断言できるはずがない。
何故そんなことが分かる。トビアはちょっと勘が鋭い程度のただの人間だ。
だが、目の前にいるのは、人間じゃない。
そんな確信がじんわりと胸の中で広がっていく。

オーグバリューのロングレーザーソードを無意識にトビアは引き抜いていた。

「……駄目かな。僕が僕である限り、完全に分かり合うことなんてできない。
 僕か、人か、どちらかしか残らないならそれが必然ってことだね」

抽象的すぎて、わけがわからないが、言葉から敵意を持っていることは分かる。
大型機、ビッグデュオの腕が持ちあげられ、オーグバリューを捕えるより早く、光が走る。
振られたロングレーザーソードは、ビッグデュオの腕を切り落とす――はずだった。


ギィィン!!


音を立てて発生するのは、八角形を何重にも重ねたような幾何学的な何か。
それにぶつかり、レーザーソードはけたたましい音こそ立てたが、まったく相手に届かない。

「バリアー……!?」
「バリア……障壁とは違うもの。これはフィールドさ。誰もが持っている、心の領域」

その言葉とともに、振りかざされるビッグデュオの鉄腕。
大きさなら、オーグバリューの1,5倍はあるその腕をかいくぐってトビアはかわすと、肩のユニットを展開する。
そこから緑色の光が収束し、内部にある弾丸を粒子的に加速。

――放たれるドライバーキャノン。

着弾の閃光。


だが、無傷。



304 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:32:49 ID:C2wNc22b


眩むような光から伸びる腕をかわせたのは、一重にトビアのカンの良さからか。
回避しながらも、手首に仕込まれた兵装を開放、内部のビームライフル代わりとなる銃身の機能を起こす。

――連続で繰り出されるギガブラスター。

着弾の閃光。


だが、無傷。


何度も、何度も、何度も、何度も、これが繰り返される。

ビッグデュオの動きは遅く、ゾウォークの誇るエースパイロットゼブのために組み上げられたオーグバリューを捕えることはない。
だが、オーグバリューの攻撃もまた、ビッグデュオに届くことはない。
これは、オーグバリューの性質上、どうしようもない相性の悪さから来ている。
オーグバリューは単機でも異常な戦果を叩きだすが、真価はゼイドラム、ビュードリファーと三機一組での運用が肝になっている。

接近戦、一撃必殺のパニッシュゲイザーを武器に持つゼイドラム。
高速戦闘による戦局のかく乱、イリュージョンソーサーで敵を引き裂き、相手を刈り取るビュードリファー。
彼らとトリオを組む上で、オーグバリューに求められたのは、要撃。どこでもどんな相手でも戦える汎用性。
事実、曲者と言われ、奇抜な発想を駆使して戦うゼブの場合、攻撃の幅の広さ、手数の多さは最大の武器となっていた。

だが、逆を言えば一つ一つの武器の平均的な破壊力は高水準でも、ここぞでの一撃がない。
『一定以上の強烈な攻撃』以外を例外なくシャットしてしまうATフィールドを貫通できる武器がないのだ。

「駄目だ……! このままじゃきりがない!」

攻撃するたびに距離を取って後退しているが、弾薬を消耗しすぎれば後が厳しい。
トレーズとの通信できるラインまでは、あと少し。相手の目から放たれたレーザーが、地面を焼く。

「どこに行こうとしているのかな?」
「悪いけど、殺し合いをするつもりはないんだ! 殺し合いなんて、もうまっぴらだ!」

トビアの叫びとともに、再びオーグバリューのギガブラスターが放たれる。
やはり、ATフィールドでいとも簡単にはじかれる。
行動を妨げることもできず、一気に下がる時間もないままだが、着実にじりじりと下がってはいる。

「けど、戦わなければ生き残れない。それは、ここでも元の世界でも同じことじゃないかい?」
「そんな勝手な思い込みに!」

ドライバーキャノンと同時に、その根元にある肩のウェポンラックが展開。
発生するATフィールド。まったく意味をなさないドライバーキャノン。
だが、同時に開かれた武器が、網のように広がり、ビッグデュオの頭上へ飛ぶ。
展開する、それの名前は――プラズマリーダー。
もちろん、ほとんどダメージはない。だが、相手に絡みつき、動きを一時的にも拘束する。
その隙に一気にトビアは距離を取るとトレーズへ通信を飛ばす。

「トレーズさん! 南で敵につかまりました!!」

その声に、すぐさまトレーズが答える。

305 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 03:33:14 ID:vNZj+HNH


306 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:33:33 ID:C2wNc22b

「逃げることを優先したまえ。命を奪う前に、命を守ることがここでの勝利条件だ。……私もすぐに向かう」

トビアは無言頷くと、背後に感じた寒気を信じ、機体を横へ走らせる。
一瞬後には、ばらばらになった網の隙間から放たれた熱戦が元いた場所へ炸裂した。
それは、オーグバリューの右足を焼く。

「しまった……!」
「悪いけど、仲間が来るまで時間はあげられない」

そう言って、ビッグデュオは進撃する。
機動力は落ちたが、それだけだ。ビームの威力ではとどめを刺せないことを理解し、接近戦で蹴りをつけるつもりなのだろう。

――こうなれば、逃げるには、相手にダメージを与えるしかない。
プラズマリーダーの不意打ちが二度も通じるとは思えない。となれば、どうするか。
相手が攻撃するときは、腕はこちらに届く。ということは、あのフィールドは常時展開しているものではないはずだ。

相手が攻撃を繰り出した瞬間に、接近戦でカウンターを叩きこむ。

これしかない。

「やってやる……人間かは知らないが、乗ってるのは機械なんだ……壊せない理由なんてない!」

ゆっくりとした足取りで迫るビッグデュオ。
それに対し、全身の武器にエネルギーを行き渡らせ、オーグバリューが相手を待つ。
月面に響くのは、エネルギーが収束する低周波音と、ビッグデュオの足音だけ。
通信機越しに見える相手の顔は、こっちの策を理解しているのかわからないが、なお微笑が浮かんでいた。

「よい考えは浮かんだかい?」
「……さあね」
「じゃあ、こっちからいくよ」


涼しげな声ともに、振り上げられた鉄腕が落下。
それが、結着をつける最後の交錯の始まり。
落ちる腕を、足を引きずりながらも紙一重で回避。
腕から放たれたギガブラスター。
遮断するATフィールド。
もう引かず、あえてその場にとどまり続ける。
反対の腕が、振り落される。
前に出るオーグバリュー。
相手の目が僅かに見開かれる。
浮かぶ表情は驚き。
「ここだ!」
しかし、空中でロングレーザーソードが止まる。
発生したATフィールドが、空中に縫いとめる。
「残念だったね」
勝ちを確信した声。
同時に、目が輝く。
収束するビッグデュオのエネルギー。
しかし、――炸裂せず。

「!? フィールドが!?」



307 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:34:39 ID:C2wNc22b

オーグバリューの肩から伸びたアーマーが輝く。
ドライバーキャノン、ではない。
ドライバーキャノンをさらに円環を使い加速し、威力を最大まで高める。
オーグバリュー最強の兵装、ゲインシューター―――!
飛びだしたリングが、ATフィールドと反応し合う。
本来なら、なお貫通には足りない。
事実、ゲインシューターもATフィールドを砕くだけ。
だが。
既にロングレーザーソードが、懐に飛び込んでいる。
ATフィールドを再度張るよりも早く、ロングレーザーソードはビッグデュオへ。
飛びあがるビッグデュオ。
しかし、ロングレーザーソードは止まらない。
空へビッグデュオが消えるより早く、刃が到達。
胴体には至らずとも一撃がビッグデュオの右足を捕える。
超高出力のそれは、丸太のようなビッグデュオの足すら容易に切り裂く。
深く深く突き刺さり、それはバターのように切り裂かれた。














――――その瞬間、

                     世界は核の炎に包まれた。



■



308 :ビッグデュオ・炎 ◆i9ACoDztqc :2010/02/08(月) 03:35:48 ID:C2wNc22b


「……驚いたよ。こんなものを持ってたんだね、君は」

月面の空を舞うビッグデュオ。その右足は、太ももより下は消え去っていた。

そう、ビッグデュオの足には、ギガトンミサイルと言う一発でドームを天井まで破壊するような兵器が搭載されている。
足の内部の8割以上はそれが占めており、事実上、足と言うよりミサイル収納庫としての役目しか持たない。
それが、レーザーブレードのエネルギーで反応した結果起こったのが、足内部のミサイルの炸裂だ。
爆発を確認する直前にギリギリでATフィールドの再展開が間にあった。
全包囲に広がる大規模攻撃に非常に強く、N2爆雷すら無効化する性質を持つATフィールドだからこそやり過ごせた。
一点突破系の攻撃だったら、おそらくビッグデュオは轟沈していただろう。


――足元に転がる機体のように。


ギガトンミサイルを、至近距離から防御もなしに受け止めたオーグバリューは、もはや原形を残していなかった。


【トビア・アロナクス 死亡】


「……無理をさせたかな」

そう言って、全身傷だらけのビッグデュオを見る。
さしものATフィールドでも、完全に無効化できたわけではない。
その装甲に広がるダメージは、無視できるものでは到底なかった。

「すぐに治るだろうけど……もうすぐ放送だからね」

ビッグデュオが、空を飛ぶ。
再び、海の底で身体を休める為に。



【トレーズ・クシュリナーダ 搭乗機体:ソルグラヴィオン(超重神グラヴィオン)
パイロット状況:良好  
機体状況:良好
現在位置:A-1
第一行動方針:火球の正体を突き止める、首輪だけでない勝利条件を調べる(会場からの脱出など)
第二行動方針:シーブックとの合流
第三行動方針:トビアのような強い意志を持つものを生き残らせる
最終行動方針:主催者の打倒
備考1:トビアによる首輪の調査結果を聞きました】

【渚カヲル 搭乗機体:ビッグデュオ(THE BIG・O)
 パイロット状態:良好
 機体状態:マシンセル寄生 損傷修復中  装甲にダメージ(大)右足消失
 現在位置:B-1 
 第一行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす
 最終行動方針:殺し合いに乗り人を滅ぼす】

【一日目 1:50】

309 :代理:2010/02/08(月) 03:51:01 ID:0Aza3fYq
名前: ◆i9ACoDztqc 投稿日: 2010/02/08(月) 03:38:30 ID:jzxuRXCU
すいません、投下完了宣言でさる……

向こうにこれのコピペお願いします



投下、完了。
意見その他あればお願いします。

310 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 09:50:30 ID:uLfBpWnA
投下乙

核なのかどうか知らないけど、攻撃受けただけではミサイルは爆発しないと思うなぁ
現実の核ミサイルだって、迎撃されても信管が作動しないと破片が飛び散るだけなのに
外部からの刺激で爆発するくらい管理が緩かったら、足の中の火薬なんて地上歩いただけで爆発するよ多分

311 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 09:58:03 ID:jnL7gxfS
核が起爆プロセスをきちんと踏まないと、反応しないのは当然じゃね
普通のミサイルは中に火薬とか詰まってるんだから、誘爆はアリだと思うけど

312 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 13:17:23 ID:Kv3GI9JP
現実の核ミサイルでも爆発するやつはするぞ
今主流な型はきちんとプロセス踏まないと臨界に達しない少量の核物質しか積んでないが、
広島に落とされたリトルボーイなんかの型は最初から臨界越える量が積まれていて衝撃で爆発する可能性がある
それにこれは現実の核ミサイルじゃなく、あくまで「ものすげえ威力のミサイル」だからな

313 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 14:54:07 ID:VgWpVKpg
投下乙です
トビアァァァ!
第三次はガンダムの主人公に対して厳しいなあ
コウ、ジュドー、シーブック、トビア、ドモンといたが残ってるのは一回目の放送を待たずに二人だけ

アムロとかカミーユとかガロードやキラみたいには行かないなあ


314 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 16:12:42 ID:1jBqdQv4
>>313
シン…主人公はキラですかそうですか。
名前の順番って大事だよなw

315 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 16:43:52 ID:0Aza3fYq
シンwww

>>313
逆に考えるんだ。
第 二 次 が 異 常 な だ け だ !!
むしろ第一次はヤザンやコーヒーが光ってたw

316 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 17:21:59 ID:Dm78GD+U
原作準拠ってことがマイナスに働いたか・・・
せめてスパロボZだったら…

317 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 18:13:20 ID:1gFRImMX
頑張りすぎたのが仇になったかトビア
「直る」でなく「治る」なあたりカヲル君らしいと思ったり
……ってあれ、ひょっとしてロロットも一緒に死んだこれ!?

318 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 18:56:59 ID:sjulBTOs
>>315
つまり一次二次と通して、アムロがやりたい放題やりすぎた反動ということだなw
あの人の常に斜め上を行く暴れぶりは本気でおかしいw

319 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 19:50:22 ID:RZEDs/Kq
投下乙ー
トビアはし―bックに会えずに脱落か・・・
タスクに続いて貴重な声がw

320 : ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:00:17 ID:RZEDs/Kq
万丈、バニング、イネス、一騎、真矢、暗黒大将軍

投下します

321 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:02:07 ID:lEnMtuzV
 

322 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:02:22 ID:RZEDs/Kq

若き聖戦士ショウ・ザマを失い、人にあらざる使徒渚カヲルを撃退した破嵐万丈とサウス・バニング。
バニングは万丈が目を覚ますまでの間に、目前で散ったショウの弔いをすることにした。

市街地の中、ストライクノワールが陽光を弾き凝然と屹立している。
その眼前にあるのはラーゼフォンに、いやカヲルの生み出したATフィールドに粉砕されたクロスボーン・ガンダムX3の残骸。
原形を留めず圧壊したその有様は、戦友の死に慣れているはずのバニングの表情を歪ませる。
若く、未来のあった青年がここで逝った。
バニングの見ている前で――バニングの無力ゆえに。

「ショウ……済まん。お前に救われた借りを返せんまま、俺は……」

ショウの遺体は発見できなかった。
機体の中央部であるコクピットはそれこそ徹底的に破壊されていたからだ。
欠けたドクロのレリーフが物言わずバニングを見つめている。
歯を食い縛り、バニングはその光景を胸に焼き付ける。
やがて巡らせた視界の中に一つ、ショウの残り香とでも言うべき物を発見した。

ムラマサブラスター。
X3の主武装にして、ショウが最後に握った剣。
主の手を離れ地に突き立つその様は、バニングへ向けて叫んでいるように思わせた。
己を引き抜き、連れて行けと。

「……そうだな。渚カヲル、奴を討つ時はお前も一緒だ……ショウ」

ストライクノワールの腕がムラマサブラスターを引き抜く。
握り込めば問題なく起動した。本体が崩壊するほどの衝撃に晒されたというのに。
バニングはそれを、ショウの魂が宿っているからだと解釈する。
リアリストであるバニングにしては珍しいことだが、聖戦士の手にあった剣となればそれくらいの感傷は許されるだろう。


その後、出来る限りX3のパーツを一か所に拾い集めている内に通信が入った。
ストライクノワールのアンカーを用い市街地まで牽引し、隠しておいたトライダーG7からの通信。気を失ったため休ませていた仲間、破嵐万丈からだ。

「済まないね、バニング大尉。手間をかけたようだ」
「いや、礼には及ばん。もう体調はいいのか?」
「動くに支障はありませんよ。大尉は……いえ、僕もそちらに行きます」

どこにいる、というでもなくバニングが何をしているか察したか、万丈は言葉少なに通信を断った。
さほど間を置くこともなくトライダーがやって来た。
集められたX3、中心に置かれたドクロのレリーフへと二人はしばし黙祷を捧げ、これからのことを話し合う。

「とりあえずは東……いや、西ですかね。あの光の壁を越えてG-5エリアの施設へ向かいましょう」
「地図の端と端は繋がっている、か。俄かには信じがたいが……しかし、もう少し待ってからでもよいのではないか?
 市街地を目指す者は俺達以外にもいるだろう」
「ええ、ですが早いうちに施設を押さえておいた方がいいというのも事実なんです。特に」

そこで万丈は指でコンコンと自らの首に巻かれた首輪を叩く。

「補給はともかく機体の修理などは、この市街地では望めそうにないですからね」

なるほど、盗聴を警戒しているらしい。
バニングも得心し、ならばとX3のパーツに目をやる。

「そういうことなら、俺に異論はない。……ショウ、済まんがもう一つ、お前の力を借りさせてもらうぞ」

323 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:03:50 ID:lEnMtuzV
 

324 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:04:41 ID:RZEDs/Kq
そう言ってノワールに取り上げさせたのは砕け散ったX3の腕部パーツ。
手甲部にIフィールド発生器を内蔵した、通称「Iフィールド・ハンド」。
ショウと機体の情報を交換した際に聞き及んでいた機能だ。

「このままでは使えんが、G-7の施設――多分研究所か基地だろうな。そこの設備を使えばノワールに組み込めるかもしれん」
「Iフィールドと言うと……バリアみたいなものですか。
 フェイズシフトでしたっけ? 実体弾を無効化するノワールにさらにビームの防御手段まで付けばかなりの戦力になりますね」
「バッテリーの関係で乱用はできんが、それでもあるとないとでは全く違うからな」

Iフィールド・ハンドを腰のラックに保持しストライクノワールが西へと機体を向ける。
それに倣い飛びあがろうとしたトライダーだったが、

「万丈……奴は、渚カヲルはまだ生きている」
「……そうかい、僕は彼を倒すことはできなかったか。今どこに?」
「わからん。あの光の壁を越えていったが、もう移動しているだろうな」

そう告げるバニングの声に苦い思いを呑み下す万丈。
万丈達がショウを失ったように、放っておけば彼はまた凶行に走るだろう。

「……止めなければならないな」
「ああ。俺とお前で、奴を討つぞ」
「了解だ、大尉。次こそ僕も仕損じはしない。だから……!」

トライダーG7がフック付きの鎖、トライダーチェーンを伸ばし真っ二つになったラーゼフォンを捕まえた。
万丈が何をする気か察したバニングも、ストライクノワールの頭上にムラマサブラスターを掲げさせる。迸る、目映いばかりの極光。

「世のため人のため、シャドウミラーの野望を打ち砕くトライダーG7、そしてストライクノワール!
 この双星の輝きを恐れぬのなら……!」

5700万馬力のパワーを誇るトライダーG7が全力で鎖を引き、二つに分かたれたラーゼフォンが宙へと高く舞い上がった。
そこへ黒い力、ストライクノワールが光の剣を携えて突撃する。


――俺達のオーラ力を受けてみろ!

「うおおおおおっ!」


聞こえたような気がしたショウの声に頷き、振り抜いたムラマサブラスターの一閃。
駆け抜けた先に残るのは、四散するラーゼフォン『だった』もの。

「……かかってこい、ってね」

トライダーと背中合わせに、ストライクノワールが地に降り立つ。
そして――爆発。閃光が紅く染め上げる二体の巨神が、ショウの仇、その片割れを完全に消し去った。


決意を改め、二人の男は西へ向けて進み始めた。
飛び去る機体を送り出すのは聖戦士の墓標。
命は失われたが、志は受け継がれた。
ショウ・ザマの魂は、サウス・バニング、そして破嵐万丈と共にある。

325 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:05:46 ID:lEnMtuzV
 

326 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:06:50 ID:RZEDs/Kq
     ■


「見えてきたわ、G-5の施設よ……待って、誰かいる。あの施設はもう押さえられているようね」

告げるイネス・フレサンジュの声に、アルトアイゼン・リーゼのコクピットで待機していた真壁一騎が顔を上げる。
ギリアム・イェーガーが襲撃者を迎撃するために飛び出してからおよそ十五分後にアルトは再起動した。
だが、遅い。もうギリアムが飛び出した位置からはかなり離れてしまっている。
無論全速で向かえば間に合ったかもしれない。しかしそれではクロガネを危険に晒すことになる。
結局、一騎は動けなかった。
あの時のように――春日井甲洋を失った時のように。
ギリアムなら大丈夫だと強く思う。だが、それが希望的観測であることも一騎にはわかっている。
竜宮島のエースとして戦っていた一騎を、慣れぬ機体とはいえ軽くあしらったギリアム。
そのギリアムと戦っているのは旧知の敵であるウォーダン・ユミル。相当に腕の立つ敵手であるらしい。
できるならば共に戦いたかった。そして今度こそ――

「一騎君、悪いけど出撃してもらえるかしら?」
「はい、行けます」
「私も……」
「待って、真矢ちゃんは艦内で待機していて。初手から手の内を全て明かすのは得策ではないわ」

そんなとりとめもない想いを打ち切り、一騎はクロガネから飛び立つべくアルトをカタパルトハッチへと移動させた。
ここまで接近すれば向こうにも探知されているはずだ。
敵意があるにしろにないにしろ、施設を手に入れるためには接触しなければならない。


海上へと伸ばしていたドローンを収納し、海を断ち割りクロガネが浮上する。
イネスの言う通り真矢を予備戦力としてクロガネに残し、一騎のアルトアイゼンが出撃した。
眼下に見える基地施設、その前に仁王立ちするのはアルトの三倍近い巨体。
身構えるアルトアイゼンをよそに、その機体から通信が入る。

「こちらはトライダーG7、破嵐万丈。これはまた……戦艦とは驚いたな。
 とにかく、こちらに戦闘の意志はない。君達もそうであるなら、降りてきてほしい」

モニターに映ったのは、見た目はまだ若い――と言っても一騎よりは相当に年上の男。
おそらくイネスと近い年代であるだろう。軽く笑みを浮かべるその表情は一騎にはない自信が満ちている。
クロガネのブリッジにいるイネスに目をやると、頷き返された。
だが同時に、艦内メールで真矢をヴァイスリッターに待機させたまま接触を行う、との通達。

「こちらはクロガネ、イネス・フレサンジュです。
 こちらにも交戦する気はありませんが……だからと言って、そう簡単に武装解除に応じることもできませんわ」
「ふむ、道理だ。なら僕から降りるとしよう」

イネスにそう応え、男――万丈はトライダーに片膝をつかせするすると機体を降りる。
そして見上げる顔はやはり笑顔。

327 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:06:55 ID:lEnMtuzV
  

328 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:08:27 ID:RZEDs/Kq

「これでいいかい? ああ、言っておくが……僕を殺せば後ろの基地も吹き飛ぶように細工をしてある。変なことは考えないでくれよ」

不敵かつ飄々と。
保険をかけてあるとはいえ自ら戦力を放棄したというのに、一片の怯えもなく万丈は巨大なドリル戦艦に向き合う。
心の機微には疎い一騎だが、なんとなくその行動には裏がないように感じる。
と言うより、戦場に在って迷いのないその行動にやや感銘を受けたということでもあった。

「どう思う、真矢ちゃん?」

が、イネスは一騎ほど幼くもないので、やはり額面通りには受け取らない。
ここで人間嘘発見器(とイネスが心の中で勝手に思っている)遠見真矢の出番。
クロガネの外部カメラが写しだす万丈の映像を真矢に送る。

「ええと、そんなこと聞かれても……多分大丈夫なんじゃないかな。あの人、嘘はついてない……と、思います」

ヴァイスリッターで待機していた真矢からも躊躇いがちだがそんな回答が届いた。

「イネスさん」
「ええ、わかってるわ。どの道私達はここでギリアムさんを待たなければいけない……接触してみましょう」

年少組二人は賛成のようだ。となれば純戦力のないイネスが反対する意味もない。
万丈に対話の意志があると告げると、彼は乗機に戻り何らかの操作を行った。
すると基地のゲートが開き、クロガネが停留できそうなドックが目前に現れた。

「とりあえずは中へどうぞ。なに、この研究所にはレーダー設備もあるのでね、接近してくる機体があればすぐに探知できるよ」

トライダーG7に促され、クロガネとアルトアイゼンが研究所の内部へと消えていった。



329 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:08:52 ID:lEnMtuzV
 

330 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:08:56 ID:1gFRImMX
 

331 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:11:09 ID:RZEDs/Kq
     ■


ゲートを閉じてクロガネを係留し、イネスは久方ぶりに大地に立った。
隣には一騎がいる。万が一に備えて、真矢はヴァイスリッターで待機させたままだ。
先ほど交戦したサウス・バニング、ショウ・ザマらがこの万丈と接触していればまずいことになるが、距離を考えても彼らがこの東の果てにいるはずがない。
当然、万丈とも接触はしていないはずだ。
基地の中枢、管制室である程度の安心と共に情報を交換する。

サウス・バニング、ショウ・ザマとの誤解に端を発する戦い。
ギリアム・イェーガーという男がクロガネを逃がすために襲撃者ウォーダン・ユミルと戦っていること。
ギリアムから聞いたシャドウミラーの詳細。

一つを除いてほぼ事実のみを話す。
途中、整合性を合わせるために真矢をクロガネから降ろさせた。
さすがにクロガネ一機では、バニングとショウに攻撃を仕掛けまんまと逃げおおせたと強弁するのは難しかったからだ。
万丈からも有益な情報は得られた。渚カヲルという少年と万丈との戦いのことだ。

「……誤解、ね。では僕からもその両名と君達の仲を取り持とうか」
「そうしていただけると助かりますわ」

主に万丈と言葉を交わすのはイネス。
一騎は口下手であったし、真矢は真矢で万丈の態度に偽りがないか見定める役目だ。
そして真矢の見たところ万丈になんら含むところは見られない。
見られないのだが――何故か、違和感を感じる。
言葉にし難いのだが、完全にこちらの言い分を信じていないような。かと言って嘘だと断定している訳でもない――迷っている?

あらかたの情報を交換し終え、万丈が大きく伸びをする。

「さて。大体、聞いておくべきことは聞いたかな?」
「そうですわね。では万丈さん、ここまでの態度を見るにあなたも私達と行動を共にしてくれる……と考えても?」
「美人のお誘いとあらば喜んで……と、言いたいところですが」

万丈が指を一本立て、チッチッチッ、と小刻みに振る。

「もう一点、こちらからあなた方に聞きたいことがあります」
「聞きたいことって……俺達は知ってることは全部話しましたよ?」
「ああ、真壁一騎君、君にじゃない。そちらのお二人、イネスさんと真矢ちゃん、あなた達にですよ」

万丈の指が突き付けられる。
見透かされているような態度。だが、ここまでの会話に矛盾はなかったはずだ。

「サウス・バニング、ショウ・ザマ。彼らに戦闘を仕掛けたのは誤解から……間違いありませんか?」
「ええ。非があるのはこちらですし、それについては彼らに謝罪をしたいと思っています」
「ふむ……」

イネスの返答を聞き、万丈は考え込むような仕草を見せる。
疑っている訳でも、生身である一騎達を襲おうとするでもない。
自分では判別つけ難い。そんな顔の万丈を呼ぶように、手近にあったコンソールから電子音が響く。
万丈がそのパネルを叩いた。

332 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:11:12 ID:lEnMtuzV
 

333 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:12:27 ID:lEnMtuzV
 

334 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:13:16 ID:cDgxl12z


335 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:14:00 ID:lEnMtuzV
 

336 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:14:17 ID:RZEDs/Kq

「と、言うことですが大尉。何か言いたいことはありますか?」
「ああ、色々とな」

中央モニターに映ったのは――ある意味、イネスが最も再会したくなかった男の顔だ。
数時間前に一度交錯したベテランの軍人。
サウス・バニング。

「イネス女史、あれを君の世界では誤解と呼ぶのか? だったら俺は余程平和な世界に暮らしていたようだ」

淡々と告げるバニングの声には怒りはない。
だが、イネスと真矢を圧迫するには十分な声だ。

「そんな……どうやってここに!? 私達とは逆の方向に逃げたはずなのに!」
「と、遠見?」

さすがに騙し討ちを仕掛けた当の相手が唐突に現れては、いやに達観した少女も冷静ではいられなかった。
今は隣に一騎がいる。真矢を信頼してくれている、島の仲間だと思ってくれている一騎が。
狼狽する真矢を見て、イネスはここで自分まで取り乱せば完全に主導権を握られると口を開く。
が、言葉は出てこない。
何か言える訳がない――あの戦いは明らかに誤解などではなく、明確な敵意を持って仕掛けた物なのだから。

そのイネスと真矢の様子を見て、万丈がやれやれと首を振る。

「どうやら、大尉。ここはあなたを信じた方が良さそうだ」
「済まんな万丈。茶番に付き合わせた」

つまり、最初からこの二人はグルだった訳だとイネスは遅まきながら理解した。
真矢が万丈の企みを看破できなかったのは、単純に万丈にそのつもりがなかったからだ。

一騎達より一時間ほど早くこの基地に辿り着いた万丈達が真っ先にしたのは、万丈が口にしたレーダーの起動である。
機体固有のレーダーよりかなり遠目に索敵できるレーダーを動かしておけば高確率で先手が取れる。
まして基地という施設を率先して破壊しようとする者は少ないはずだから、交渉に持ち込むのは容易だ。

二人が補給や、持ち込んだクロスボーン・ガンダムX3のパーツを加工している間にレーダーは接近する熱源を捉えた。
大型機であるトライダーよりもさらに遥か上を行く熱量、質量。この情報を持ってバニングは熱源をクロガネと断定した。
当然、敵性人物であるとバニングは判断した。交戦すれば勝てるかもしれないが基地を破壊される事態は避けたい。
そうしたバニングの腹を知らない万丈は接触を提案した。
バニングはそこで、自らの存在を隠蔽し万丈のみで交渉に当たるように要請したのだ。
交渉を演じ機体から降ろせば少なくとも無力化はできる。
しかし真矢達の情報は明かさなかった。事前に知らせておけば態度にそれが出るかも知れなかったから。

面食らった万丈だが、バニングが冗談で言っている訳ではないと分かっているから異論を挟まず請け負った。
手法としては些か礼節には欠けるが、この緊急時であれば特にダーティでもないだろう。
実際クロガネ側も最初の内は真矢を隠していたのだから。

万丈自身としては、クロガネはグレーではあるがブラックではなかった。
つまりこの世界における通常の接触以上のものではなく、真矢らの言う「誤解」の真偽もわからない。
イネスの口からバニングとショウの名が出ても一切表情に出さなかったのは、万丈自身の懐の深さゆえ。
共に戦った二人の男が信頼できないはずがない。
だから万丈自身はイネスらの言葉を素直に受け入れ、判断をバニングに託した。
そして、別室で彼らのやり取りを見ていたバニングは、イネスらが真相を話そうとしないのを見て介入したという訳だ。


337 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:16:06 ID:/ARMnc0n
 

338 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:16:12 ID:1gFRImMX
 

339 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:16:47 ID:lEnMtuzV
 

340 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:17:24 ID:RZEDs/Kq

「残念だ、イネス女史。せめて本当のことを話していたのなら、まだ歩み寄る余地はあったんだがな」

重々しいバニングの言葉にイネスは反論しない、できない。
せめてギリアムがいればまだ釈明の余地はあるかもしれないが、一騎では心許ない。
万丈も擁護してくれる雰囲気ではなく、八方塞がりだ。
こうなれば実力行使――と言いたいところだが、生身のイネスらでは筋骨逞しい偉丈夫である万丈一人にすら敵わないだろう。
この研究所内に誘い込まれた時点で詰みだったということだ。

一騎は事態の推移が理解できないか、バニング、万丈、真矢、そしてイネスとしきりに視線を巡らせている。
無理もない。ギリアムはともかく、一騎はイネスらを疑うこと自体が想像の外であるのだから。

「ちょ、ちょっと待ってください! どういうことなんですか?
 遠見とイネスさんが何したって言うんですか!? あなたに攻撃したのは誤解したからで、悪気があった訳じゃ……!」

万丈にその意図はなかったものの、空気は明らかにイネスと真矢を責める物になりつつあった。
一騎はせめて何か言わなければならないと声を張り上げるが――

「カズキ、と言ったな。まあ要点だけ言えばその二人が嘘をついていたということだ」
「う、嘘ってどういうことですか!?」
「ノワール――俺の機体にはそのときの会話が録音されている。これを流してもいいが」
「やめて!」

バニングの声に真矢が割り込んだ。
その形相は今にも泣き出しそうだ。だがそこから反論するでもなく、強く歯を食い縛るだけ。
イネスを見れば彼女もまた沈痛な面持ちだった。その瞳から覗くのは諦観、だろうか。
さすがに一騎でも、どちらが本当のことを言っているかはそろそろ理解出来てきた。

「ほ……本当なのか遠見? 誤解とかじゃなくて、この人を殺そうとして……」
「……うぅ」
「そんな……どうして、遠見……」

詰問する一騎とて、真矢がそうした行為に及んだおおよその見当は付く。
竜宮島の仲間を守る、それだけのことなのだろう。
事実、一騎自身もそうした思考が頭を過ぎることはあった。
ギリアムと出会わなければ、もし最初に会ったのが好戦的な人物だったなら、その道を選んでいた可能性は必ずしもゼロとは言えないのだ。
一騎の頭の中で取るべき道が幾重にも交錯する。


一つ、このまま裁かれるのを待つ――論外。非はこちらにあるとはいえ、仲間を見殺しにはできない。
二つ、この場で万丈達を説得する――無理。そこまで口が回るタイプではないという自信がある。情けないことだが。
三つ、ギリアムが颯爽と登場し仲裁してくれる――馬鹿馬鹿しい。そんな都合良くいくはずがない。
四つ、力づくでこの場から撤退する――難しい。一騎の身体能力は群を抜いて優れているものの、特に格闘技などを学んだ訳ではない。
それでも武道を嗜む同級生を軽くあしらえるのだから非凡さは疑いないのだが、一見して鍛えていると分かる大男相手となれば話は別だ。


だが、選ぶとすればやはり四つ目しかないのは現状。遠見を、ついでにイネスも生かそうとするのなら。
ファフナーに乗らない一騎に戦意は薄い。加えて万丈らにはまったく落ち度はない。
もはや気が乗らないというレベルですらないが、やらなければならない。その一念のみを胸に、万丈に飛びかかろうとする一騎。

足の重心を整え、呼吸を止めて、血液を全身に巡らせて――


341 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:19:29 ID:lEnMtuzV
 

342 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:20:33 ID:1gFRImMX
 

343 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:21:16 ID:lEnMtuzV
 

344 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:21:25 ID:RZEDs/Kq

「大尉、ここは僕に預けてもらえないかな?」

そんな一騎の挙動を知ってか知らずか、万丈が明るく声をあげた。
重い空気を吹き払うがごとく、その声色に陰はない。

「万丈?」
「彼らが一度大尉に仕掛けたことは事実。だがこんな状況なんだ、そうするのは無理もない。
 非があるとすれば彼らではなく、殺し合いを強いたシャドウミラー。違いますか?」
「それはそうだが……」

そこで万丈が一騎へと振り向く。

「真壁一騎君。君に聞きたいんだが、君もまたご婦人方と同様にこの殺し合いに身を任せるつもりかな?」
「い……いえ! 俺はそんなことしません! 総士と、遠見と……みんなで竜宮島に帰りたい、それだけです!」
「ふむ、ではどうやってそれを為す? 勝ち残って望みを叶えてもらうのかい?」

試すようにかけられる万丈の言葉。
声は明るくともその瞳には厳しさがある。小手先ではなく、真にお前の望むことを述べろと言うように。
一騎は、深く息を吸い込んだ。

「俺は……」

生きるための戦い。
フェストゥムとの戦い。
シャドウミラーに強いられたこの戦い。

全て、本質は同じだ。
生きるために他人を蹴落とす。自分本位とも言える生き方を貫いた者だけが死の腕から逃れることができる。
だが、一人きりの世界など一騎は望まない。
いいや――望むとすれば、自分だけがいなくなること。そこに親友や友達を巻き込みたくはない。

この場には皆城総士がいる。遠見真矢がいる。死んだはずの羽佐間翔子や、同化現象に呑み込まれた春日井甲洋も。
たとえ違う時間の存在だとしても、彼らは今ここにいる。存在している。
彼らだけではない。今この世界にいる全ての人間もそうだ。
ウォーダンのように仲間を殺そうとする者を倒す、それは躊躇うことはない。だが大半は一騎と同じように元いた場所に帰りたい、そう思っているはずだ。
彼ら全てを殺し、島に帰る。そんなことができようはずもない。
だったら――今、一騎が心から望むことは一つだけだ。

「シャドウミラーを倒して、みんなで島に帰りたい。それだけ……です」

これだけは、借り物ではない一騎だけの言葉。
受けた万丈は意を得たとばかりに微笑み、

「ということだが、真矢君。彼の言葉を聞いても、君はまだ戦うつもりかな?」
「え……?」
「優勝を狙い、いずれ彼すらもその手に掛けるか。
 あるいはシャドウミラーを倒すために彼と……そして僕らと共に戦うか。そう聞いているんだよ」

そのまま真矢に告げた言葉を聞いて、モニターの中でバニングが軽く溜息をついた。
この場を預けろとはつまりこういうことか。確かにバニングでは無理な場の収め方だ。

「じゃ、じゃあ……遠見を許してくれるんですか!?」

万丈の言っている意味を理解して一騎が喜色を見せた。
共に戦うというのは、仲間としてと言う意味だろう。つまりは真矢やイネスをここで処断する気はないということだ。


345 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:24:48 ID:RZEDs/Kq

「彼女達が承諾すれば、ね。拒むようなら、申し訳ないが……」

女性を手に掛けるなど万丈の美学に反することではある。が、美学とこの先奪われるかもしれない人命を秤に掛けられるはずもない。
殺害するか、あるいは殺しはしないまでも自由を奪いこの基地の一室にでも閉じ込めておくつもりだった。

「この状況で拒める訳ないでしょうに……私はほら、一人で生き残る自信も戦う力もないから。許してくれるというのなら素直に従うわ」
「いやにあっさり翻意するじゃないか。逆に信用されないと思わないのか?」
「生きて帰れるのならそれが一番いいもの。まあ、ついでにシャドウミラーの技術なんかも持ち帰れたら言うことはないけど」

訝しげに問うバニングに、イネスはあっさりと白旗を上げた。
こうなれば真矢が一人で反抗する訳にもいかず。

「わ、わかりました。それとごめんなさい……あ、済みません。私も一騎君と同じで、みんなで島に帰れるのならそれが一番いいです」
「よし!」

パン、と両手を合わせ万丈が交渉の終結を宣言した。

「なに、こうやって仲間を集めていけばシャドウミラーだって必ず成敗できるさ!」
「ふう……まあ、いい。実際お前達に何か痛手を受けた訳でもないしな。これから協力するというのなら、受け入れるさ」

万丈とバニングは、イネス達より余程恐ろしい敵を知っている。
それは渚カヲルであり、アナベル・ガトーであり、そしてシャドウミラーである。
彼らにこんな交渉は通じはしない。だから一人でも多くの仲間が必要だという考えからこのような結果になっただけ。
もちろん、歳若い少年少女を殺すのが忍びなかったというのもあるが。



管制室にバニングが入室し、改めての自己紹介・情報交換が始まる。
今度はイネス、そして一騎も積極的に発言した。
少しでもポイントを稼ぎ地位を固めんとする利己的な考えがなかったとは言えない。
真矢もまた、バニングに謝罪しつつ集団の一員として振る舞った。

数時間前には生存していたショウ・ザマが既に故人であることや、マップ端のループについてなど先ほどはなかった生きた情報も飛び交う。
特にギリアム・イェーガーの情報は重要だった。主催者であるシャドウミラーに最も近い男。
ウォーダン・ユミルと交戦し、その生死も未だ不明。

「ではそのギリアムという男を確保するべきだな。戦力としても集団の長としても、何よりシャドウミラーに近しいという点が重要だ」
「少なくともこの場の誰よりも、ね。勝ったか負けたか、どうなっているにしろこちらから確認に行った方がいいと思うわ」
「あ、じゃあ俺が行きます!」

名乗りを上げた一騎。これは先に述べた地位向上のためでもあるが、それ以上にギリアムが心配だったからだ。
だが、一騎を制するように万丈が手を挙げる。

「待ちたまえよ一騎君。ここは僕が行こう」
「えっ?」
「ここの防備を疎かにするわけにもいかないから、探しに行けるのは一人だ。可能な限り強く、機動力もある機体が望ましい。
 君の機体――アルトアイゼン、だっけ? データを見せてもらった限りでは、あんなピーキーな機体は捜索向きではないよ。
 今ここにある機体では僕のトライダーG7が一番適しているのさ」
「で、でも!」
「私も万丈さんに賛成ね」


346 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:24:54 ID:lEnMtuzV
 

347 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:29:01 ID:RZEDs/Kq

食い下がる一騎にイネスが援護、ではなく背後から射撃した。

「いいこと、一騎君――もしもの場合を考えて。ギリアムさんが敗北して、既に死んでいる可能性もあるのよ」
「い、イネスさん!」
「可能性の話よ。もしそうだった場合、あなたは冷静に行動できないでしょう?」
「うっ……」

今し方言葉だけで動揺した一騎には、言い返す言葉もない。

「言い方は悪いけど、他人である万丈さんならそれほど深く傷つくこともない……でしょう?」
「おやおや、僕はそんなに冷血な人間に見えるのかな?」
「落ちつきがある、と解釈してほしいわね。とにかく、一騎君を一人で行かせるには色々不安なのよ」
「でも……」

言い募ろうとする一騎を、そっと真矢が抑える。

「遠見?」
「一騎君、私、思ったんだけど……私達って、この場では絶対的に足りてないものがあると思うの」
「足りないもの?」
「うん。フェストゥムと戦う時は同化されないように、敵を理解しないようにしなきゃいけなかったでしょ?
 でもここでは、戦う相手のことも考えないと、誰と戦っても私達は勝てないよ」

バニングとの戦い、ギリアムとの模擬戦。どちらも機械やフェストゥムではなく生きた人間が相手だった。
そして、結果的に一騎と真矢は敗北続きである。フェストゥムを相手にする時とは違う戦い方をしなければ、この世界で生き残れない。

「じゃあ、大尉に鍛えてもらえばいい。丁度いいことに大尉は新兵の教官であるそうだからね」

二人の会話を聞いていた万丈が冷やかすように言う。
一騎と真矢はきょとんとした顔でバニングを見た。

「万丈、お前な……」
「大尉、そう悪い話じゃないですよ。彼らは元々基礎はできているんだ、少し慣れさせればすぐに僕らと遜色ないレベルになる」

この状況では子どもといえども戦わないという選択肢は許されない。
なら少しでも生存率を上げるために、あなたが鍛えてやってくれ――言葉とは裏腹に、万丈の瞳は強くそう物語っている。
しばし睨み合った万丈とバニングだが、先に折れたのは老兵の方だった。

「全く……ああ、わかったよ。その代わりギリアムと言う男のことは頼んだぞ、万丈」
「任せてください。この破嵐万丈、必ず彼を連れ帰ってみせますよ」

たとえ遺体であっても。
それは口に出さず、万丈は自分が行くと強引に締めくくった。


348 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:29:59 ID:lEnMtuzV
 

349 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:31:08 ID:1gFRImMX
 

350 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:32:03 ID:RZEDs/Kq

バニング自身が斬り落としたヴァイスリッターの左腕を突貫作業で接合し、各機の補給が済んだ後。
研究所からトライダーG7が西に向かって飛び立っていき、見送っていたバニングは踵を返して管制室の出口へと向かった。

「時間がない、すぐに始めるぞ。ついてこい、一騎、真矢。
 イネス女史、あなたにはここでレーダーの監視をお願いする。わかっているとは思うが――」
「わかってますよ。ここで裏切ったって私には何の得もないでしょう。あなた達がいなければ私も危ないんだから、手抜きなんてしないわよ」
「なら、いいがな」

少年少女を従え、格納庫へ向けて歩き出すバニング。
ふうと溜息をつき、イネスは素直にレーダーや研究所全体の監視に専念することにした。
少し状況は変わったが、イネスにとって現状は悪くない。
真矢への対抗策――にしては少し大仰だが、戦力は倍増した。
実際、主催者の力を得ようとすれば、優勝だけが正解ではない。彼らを倒し技術だけ奪い取ったっていいのだから。
もちろんそれが茨の道であることは疑いない。だが選択肢の一つとしてなら、検討する価値はある。
要は立ち回り方次第だ。
結果を得られるのなら過程にはこだわらない。
力がないのなら頭を使う。それがイネス・フレサンジュの戦い方なのだから。

つまらなそうにコンソールを弄っていたイネスの視線がある点で止まる。
研究所内の一角に、詳細が表示されないブロックがある。

「これは……?」

時間潰しも兼ねて、イネスはそのブロックを重点的に調べ始めた。
やはり『未知』を『既知』へと変える作業は心が躍る。それを誰かに説明できるすれば、なおさらだ。
こんな状況だというのに、イネスは思いがけない娯楽に没入していった。


351 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:33:15 ID:lEnMtuzV
 

352 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:34:05 ID:1gFRImMX
 

353 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:35:39 ID:RZEDs/Kq
     ■


少女にとって現状は悪くない。
現状は、見方を変えれば少年を守る戦力が倍増したということだからだ。
加えて老兵は自分達を鍛えてくれるという。まさに今の少年と少女に一番足りないもの、人間との戦闘経験を。

少女の目的はあくまで少年、そして同胞の生存だ。
小さな個であるよりも、一つの大きな集団の中なら生存率はケタ違いに跳ね上がる。
少年と出会ったときのように、各地に散らばる同胞と接触し、集結する。
そのまま主催者を倒せれば良し。そのまま島に帰るだけだ。
だが、そうでない時は――

(止めよう。今はまだそれを考える時じゃない……)

同胞。時間軸の違う世界から来た、同じ顔の同胞。
彼らを助けたところで、自分のいた世界に影響を与える訳では――

(――今は! 今はただ、ここにいる一騎君とみんなを守ることだけを考えていればいい……!)

ガクン、と機体が揺れる。
物思いを断ち切り、少女は『戦場でこう在るべき自分』へと深く深く潜行していく――


354 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:36:35 ID:lEnMtuzV
 

355 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:37:00 ID:1gFRImMX
 

356 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:39:07 ID:lEnMtuzV
 

357 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:39:20 ID:cDgxl12z


358 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:40:21 ID:RZEDs/Kq
     ■


「フン……三人か」

満身創痍。
しかし戦意に些かも衰えのない暗黒大将軍の前に立ちはだかったのは、三機の機動兵器。

巨大な杭打ち機を構え猛る赤の孤狼――アルトアイゼン・リーゼ。
長大な銃を携え飛翔する白の堕天使――ヴァイスリッター。
両腕に光刃を握り立つ黒の剣士――ストライクノワール。

いずれも埃に塗れてはいるものの、さして不備なく万全の状態であるらしい。
対して暗黒大将軍はと言えば、本体である自身の身体は激しく傷つき、身を預ける剣――セレブレイダーもエネルギーをほぼ使い切っている。
窮地。そう、窮地だと言えるだろう。しかし暗黒大将軍に後退はない。
進む先に人間が居座るのなら斬り散らすまで。
無言で構えを取り、剣身から竜巻を解き放った。敵もまた応ずるように散開、飛びかかって来る。

「ぬうっ……!」

まずヴァイスリッターが前に出てオクスタン・ランチャーから光を迸らせる。
暗黒大将軍は逃げず真っ向から剣を振り下ろし光の大河を分断、勢い余った衝撃波がヴァイスリッターに殺到した。
直前で割って入ったアルトアイゼンの装甲が衝撃を散らす。
踏み込もうとした暗黒大将軍だが、その眼前にストライクノワールが飛び込んで来た。
振り下ろされた対艦刀フラガラッハ3・ビームブレイドを、セレブレイドで受け止める。
暗黒大将軍の体長のおよそ半分の小兵。だがその一撃は、傷ついた身ではあまりにも重い一撃。
押し込んでくるストライクノワールの重量にたまらず足を踏ん張る。
そこへ左手から回り込んで飛び込んでくる赤カブト。帯電する角が一直線に暗黒大将軍の心臓めがけ迫って来た。

「うおおおっ!」
「小賢しい!」

逆手で腰のサーベルを引き抜き、突き下ろす。馬鹿正直に急所を狙うなど未熟にもほどがある。
間一髪でアルトアイゼンのプラズマホーンは押し留められた。が、それが限界だ。
右方へ回り込んだ白、ヴァイスリッターが伸ばすオクスタン・ランチャーの銃口から放たれた弾丸が、真っ直ぐに暗黒大将軍の右膝を射抜いた。

「ぐあっ!?」

ここぞとばかりに押し込んでくるノワールを、剣持つ柄で殴りつけるように振り払い身体を旋回。
当然サーベルに込められていたベクトルも変化し、いなされたアルトアイゼンの躯体が泳いだ。
その背にセレブレイダーを叩きつけようとした刹那、肘に巻き付く鋼鉄の戒め。
ストライクノワールのアンカーランチャーが暗黒大将軍の振り出す腕を逆に引き、剣閃を鈍らせている。
浮き上がる剣の下を潜りアルトアイゼンが加速、刃の圏内から脱出した。
ヴァイスリッターがその隙をカバーすべくミサイルを放ち、アルトアイゼンと暗黒大将軍を分断した。
膝の痛みをこらえ、暗黒大将軍は後退する。
仕切り直して対峙する四機。

「よし、やれる……!」
「油断するな、一騎! 真矢のフォローがなければ落とされていたぞ!」
「え……は、はい!」
「闇雲に突っ込むんじゃない、周りを良く見ろ! 俺か真矢がカバーできる時こそアルトの突撃は活きる!
 真矢、足を狙ったのは良い判断だ。だが前に出すぎだ、ヴァイスの装甲を過信するな! 攻撃を避けるのではなく、攻撃されないことを心掛けろ!」
「はい」
「何をゴチャゴチャと……! 俺を前にしてその態度、舐めるでないわ!」

気勢を上げる暗黒大将軍。
地が震えるほどの怒号、受ける人間達は凄まじいプレッシャーに晒される。

359 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:42:22 ID:lEnMtuzV
 

360 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:43:35 ID:1gFRImMX
 

361 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:44:03 ID:RZEDs/Kq

「くっ……!?」
「ビビるな、一騎! 気持ちで負けたら押し込まれるぞ!」
「はいッ!」

一時間にも満たない訓練だったが、その濃度は決して薄くはない。
バニング一人に対し、一騎と真矢は合わせて十度以上も地に這わされたのだ。
それもシミュレータ上ではなく、実戦で。今もなお両の脚で立つこの荒野で。
弾丸を発射することのない模擬戦であったとはいえ、バニングの気迫は本物だった。
否応なくその空気に触れた一騎と真矢は、付け焼き刃とは思えないほど急速に戦場に順応していく。
基礎ができているとはいえその余りの成長の速さにバニングは密かに瞠目していた。
これならさほど時を経ることもなく一人前と言えるだろう。
有望な才能を育てることに喜びを感じるようになれば引退の潮時かもしれないなと微かに笑う。

そんな矢先にレーダーに引っ掛かった、研究所に接近する機影。イネスから示された映像を見るにストライクノワールのほぼ倍の大きさ。
新米達の慣熟テストと洒落込むには酷な相手。バニング一人で勝利できるかは怪しいものだ。
それでもなお単身挑もうとしたバニングに我もと名乗りを上げたのは、当の一騎と真矢自身。
いずれぶつかる壁ならば、早いか遅いかの違いでしかない。
ならば三人揃って戦力的に充実している今が最善――そんな判断。その意志の強さにバニングも折れた。

「バニング大尉、クロガネは出港したわ。いつでも動けるわよ」
「よし、そのまま基地の裏手で待機していてくれ。撤退する時は頼ることになる」
「了解」

戦場にあっては動き回ってもタイムラグのないオープン回線が常であるが、クロガネとの通信だけは敵に気取られないように行うバニング。
いよいよとなれば基地を放棄することも考えなければならない。
だが、襲撃者は既に手負い。この分なら撃退も可能であるとバニングは判断した。

「手負いだからと言って油断するなよ。こういった輩は追い詰められれば何をするかわからんからな」
「はい!」
「了解」

言葉を交わしていた先ほどよりも積極的――否、攻撃的な一騎と、逆に氷のように冷静な真矢。
ファフナーというマシンに乗る時の精神状態へ今の自分を近付ける、精神を安定させる自己暗示だとイネスから聞かされてはいたが。
どうにも慣れないものだとバニングは苦笑した。
正直なところこの二人がいてくれて良かった、とバニングは思う。
部下がいるなら指揮官は強く在れる。上が浮足立っては下が総崩れになるからだ。
一人でこの敵と向き合っていれば圧力に呑まれていたかもしれない。だが、守るべき部下がいるなら話は別だ。
恐れを戦意と使命感で封殺し、バニングは改めて敵手へとアプローチを試みる。

「一応、聞いておこうか。俺はサウス・バニング、地球連邦の士官だ」
「地球連邦……フン、シャドウミラーの手の者か」
「違う。同じ組織にあっても俺は奴らの存在を認めん。今、俺達は奴らと戦うための仲間を求めている。
 既に剣を交えてはいるが、それはお前も例外ではない。名と、何故攻撃を仕掛けてきたか聞かせてもらえないか?」
「俺の名は暗黒大将軍、ミケーネの将よ。
 何故戦うか……? は、愚問。貴様ら人間が前にいるというだけで、この剣を振るうには十分よ。
 バニングとやら、貴様も戦場に生きる者なら言葉ではなく剣で語るがよい」
「交渉の余地なし、か。了解だ……!」

バニングとしても正直交渉に応じるとは思っていなかった。名を知れたのだから充分だ。
後は力で打ち破るのみ。

「一騎、俺の動きに合わせろ! 真矢は引き続いて援護、絶対に前に出るなよ!」

バニングは言い捨て、ストライクノワールを前進させた。
追い越すようにヴァイスリッターからミサイルが拡がって展開、暗黒大将軍の踏み込みを封じた。
両腕に握るフラガラッハを大上段から叩き付ける。暗黒大将軍はセレブレイダーで受け止める。
だが動きを止めては先ほどの二の舞だ。


362 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:45:10 ID:cDgxl12z


363 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:46:34 ID:lEnMtuzV
 

364 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:47:16 ID:1gFRImMX
 

365 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:48:36 ID:RZEDs/Kq

「ハァッ!」

暗黒大将軍の両目から真紅の輝きが放たれる。
自らの全長にすら匹敵するセレブレイダーを蹴り付けストライクノワールが飛び離れる。
破壊光線は足先を掠め過ぎ、基地の外壁を撃ち砕いただけだ。
左右、挟み込むように赤と白が散開。
ヴァイスリッターが連続してライフルに火を吹かせる。
飛来する弾丸熱線を斬り払う暗黒大将軍の背中を、アルトアイゼンが強襲した。

「バンカー、セット……!」
「甘いわ、小僧!」

火薬が炸裂し、極太の鉄杭が射出される。
瞬間振り返った暗黒大将軍、一拍遅れて刀身から吹き荒れる竜巻がアルトアイゼンの体勢を崩す。
暴風に押され今一歩の踏み込みが足りず、リボルビングバンカーは暗黒大将軍の脇腹を抉るに留まった。
そのままアルトアイゼンの腕を抱え込む。背にヴァイスリッターからの砲撃が着弾するが、意に介することはない。
暗黒大将軍の向こうにアルトアイゼンがいるため、なまじ強い威力の砲撃を放つ訳にはいかないからだ。
返す刀でアルトアイゼンを一刀の元に両断しようとしたが、やはりと言うべきか。

「はああッ!」

動き出せば止まれない、しかし今ならまだ制動は効く。
そんな絶妙のタイミングで、ストライクノワールが第三の剣を振り回し打ちかかって来た。
柄頭にドクロの意匠を持つ、しかしただの剣だ。
なんだそんなもの、受け止めてくれるわ――構わずアルトアイゼンを斬り裂こうとした暗黒大将軍の視界を、閃光が満たす。
ストライクノワールの掲げた剣から左右に激しく主張する14本のビームサーベル。剣と呼ぶのもおこがましいビームの七支刀、ムラマサブラスターだ。
あれはまずいと暗黒大将軍の本能が叫び、掴んだままのアルトアイゼンを盾にしようと体を入れ替える。
ストライクノワールと暗黒大将軍の中間にアルトアイゼンが押し出される。
だが、それはストライクノワールの攻撃を止めることにはなっても、アルトアイゼンの行動を許すことになる。
アルトアイゼンの肩が展開し、顔を覗かせたのは、

「クレイモア、行けえッ!」

アヴァランチ・クレイモア、射出式のチタンベアリング製炸裂鋼球弾だ。
散弾ゆえに近距離でこそ最大の威力を示すこの武装をほぼゼロ距離で使う。この場では死をも恐れぬ一騎の攻撃性が功を奏した。
刹那に危険を察知した暗黒大将軍がバックステップを刻んだおかげで、跳弾によりアルトアイゼンが傷つくこともなく。

「ぐああああっ!」

結果、一方的に暗黒大将軍の全身をチタンベアリング弾が蹂躙する。
あまりの勢いに吹き飛んでいく暗黒大将軍。先刻自ら開けた研究所の大穴へと姿を消した。

「イネス!」
「ええ、追跡しているわ。基地内北部……っ、監視カメラが破壊されたようね。
 動いてるみたいだけど、直前に確認された位置まで誘導するから追ってもらえるかしら」
「ああ。行けるな、一騎?」
「はい、大丈夫です」
「まったく、無茶をする。いいか、数では勝っているが個々の能力では奴が上手だ。常に連携を意識するんだ」

機体の状況をチェックし問題はないと判断したバニングは、一気に勝負を付けるべく基地へと突入した。
後ろには一騎。屋内とはいえクロガネでも通れそうなほど広い通路のため、真矢も距離を取って続いていた。
互いの死角をカバーし合うバニングと一騎。
まさかこの状況で機体を降りて管制室など行くはずもないので、機体用に作られた通路のみを警戒していればいい。
通路を抜け、発電設備を抜け、一段と広い格納庫に侵入する三人。
クロガネが出港しもぬけの殻となったそこで、異形の剣士は待っていた。


366 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:50:29 ID:lEnMtuzV
 

367 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:51:47 ID:RZEDs/Kq

「来たか……」

道中聞いたイネスの所見によれば、バニングらとは違い敵は生身であるらしい。
どうにも熱源反応や生体反応がストライクノワールなどと比べれば桁違いに大きく、また破損部分から出血の様なものが見られたためだ。
巨人、と呼んでいいのかどうか。一騎などはすわ新たなフェストゥムか、と疑ったほどだ。
もちろんそんな超常的存在と関係がないバニングとイネスの動揺はさらにひどかった。
が、まあそれはそれ、倒してから考えればいいと割り切る辺りが一騎達より歳を取っているということである。

「万全でなかったとはいえ、俺をここまで追い込むとはな。人間もやるものだ」
「降伏する気があるのか?」
「ふ、笑止。ミケーネの武人に後退はない! さあ決着を着けようではないか!」

二刀を手に猛然とストライクノワールへ斬りかかる暗黒大将軍。
そのスピードは真矢が援護の射線を確保する間もなくい。
フラガラッハを交差させ、ストライクノワールが剣閃を受け止めた。

「ぐううっ!」
「バニング大尉!」

ならばと飛び込もうとしたアルトアイゼンの鼻先を穿つ破壊光線。
視線はすなわち射線だ。右に左に飛び跳ねるアルトアイゼンを追うように光の軌跡が刻まれる。
そのアルトアイゼンの背後からヴァイスリッターが飛び出した。
扇状に拡がるスプリットミサイルが周囲に着弾し、瓦礫と噴煙を舞い上げる。
その隙にバニングは離脱を試みた。
至近距離からリニアガンを撃ち込み、暗黒大将軍の目を眩ませる。

「逃がさん!」

だが、合わせたままの剣から巻き起こる風が煙幕を吹き払った。
後退するストライクノワールへ、ダークサーベルを投げつける暗黒大将軍。

「がっ!?」

フェイズシフトの恩恵ゆえに、ストライクノワールはその剣によって損傷を与えられることはない。、
しかし並大抵の衝撃ではなくバニングの意識が一瞬途絶えた。
バニングを援護すべく二機の亡霊から絶え間ない弾丸が送り込まれる。
その只中を暗黒大将軍は両腕を上げ頭と腹をガード、強引に突っ切った。
手を伸ばす。掴んだのはストライクノワール、ではなくその腰元の剣。

「それは……!」
「貴様には過ぎたる物よ!」

取り返そうと手を伸ばすストライクノワールを蹴り付け、眼光でとどめを刺そうとすれば横手から突っ込んでくるアルトアイゼン。
暗黒大将軍は試し斬りにちょうど良いと笑い、手の中の剣を振りかぶる――闇を裂く極光。

「……いかん! 一騎、下がれッ!」

苦痛を押し殺しバニングが呻く。
アルトアイゼン・リーゼの装甲は特筆に値するほどに強固。加えて全面をビームコートで覆い、まさしく鉄壁の城塞だ。
しかし、その壁をも貫くは『村正』の名を冠する一刀。

「くっ……!」
「でぇぇえええいッ!」

構えていたバンカーを前ではなく下方に撃ち込み、急激なブレーキをかけるアルトアイゼン。
慣性で振り出されたチェーンガンを擁する左腕が一瞬にして蒸発する。


368 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:52:39 ID:1gFRImMX
 

369 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:53:47 ID:lEnMtuzV
 

370 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:54:47 ID:RZEDs/Kq

「うわああっ!」

衝撃で吹き飛ぶアルトアイゼンを、ストライクノワールのアンカーが捕まえて引き寄せた。
未だバニングの身に残るダメージは抜けていない。が、もはやそうも言ってはいられない。
剣の名手である暗黒大将軍に、こちらの最大の打撃力であるムラマサブラスターを奪われたのだから。
落ちていたダークサーベルを拾い、セレブレイダーを背に納刀。
右手にムラマサブラスター、左にダークサーベルを竜の顎の如く上下に構える暗黒大将軍。

「中々いい剣だ。少々短いのが気に入らんが」
「貴様、ショウの剣を……!」

憤るバニング。敵に友の形見を奪われたとあっては失態もいいところだ。
もちろん暗黒大将軍も無傷ではなく、深手であろうことは全身に刻まれた弾痕が示している。
あと一押し、だがその一押しが詰められない。

バニングの後方で真矢がライフルを構えた。
この状況で勝敗を決するに足る兵器と言えばおそらくアルトアイゼンのクレイモアが第一だ。
もう一度近距離であれを叩き込めば今度こそ立ち上がれはしないだろう。
だがさすがにこれほどの猛者が二度目の不覚を許すとは思えない。一騎が接近を試みれば何においても迎撃してくるだろう。
一機でも崩されればこちらが敗北するのは自明だ。だからこそ、バニングは迂闊に動くことはできない。
暗黒大将軍もまた消耗激しい自らの身体を鑑み、攻めるのではなくカウンターを取ることに専念し始めた。
手にする剣なら一撃必殺。相打ち覚悟で一機落とせばこちらのものと、虎視眈々と勝機を待つ。

双方動き出すきっかけを掴めないまま数分が過ぎ、場の均衡が限界に達しようとしたところでストライクノワールのコクピットに通信が届いた。
一騎でも真矢でもなく、クロガネで待機しているはずのイネスからだった。

「大尉、少しいいかしら?」
「話なら後にしてくれ。今気を散らすわけには……」
「その敵を排除できるかもしれない案なのよ」
「何?」

聞き捨てならない言葉に思わず気が逸れるバニング。
幸い敵も動かなかったからいいが、一騎達に偉そうなことは言えないと自責した。
とにかく今はイネスの話を聞くべきだ。

「どういうことだ?」
「さっきこの基地内部を走査したんだけど、変わった設備があったのよ。
 多分、シャドウミラーがこの会場を創った時の物だと思うんだけど、行き先が設定されてない転移装置ね」
「転移……装置?」
「ああ、まあワープ装置って思ってくれれば。とにかく今それを起動させたから、そこまで敵を後退させられれば……」
「どことも知れない場所に放逐できる、か。それは良い案だと言いたいが、どうやって奴を押し込むかだ」

元々パワーにおいては40m近い敵の方が圧倒的なのだ。
万丈のトライダーG7ならともかく、ここにいる機体では力不足――いや。

「アルトアイゼンの突進力なら、行けます!」
「一騎……」
「援護してください、大尉!」

左腕を失ったため真矢のヴァイスリッターの手を借りバンカーの薬莢を排出、装填し直すアルトアイゼン。
そう、装甲厚く加速力にも優れ特機並みの出力を誇るアルトアイゼン・リーゼならばあるいは。


371 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:54:57 ID:1gFRImMX
 

372 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:56:41 ID:1gFRImMX
 

373 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:56:45 ID:RZEDs/Kq

「危険だぞ、わかっているのか?」
「それはみんな同じです。大尉や遠見だって安全って訳じゃないんだ、だったら少しでも頑丈な俺の機体で!」」
「私も援護します。でも、それだけじゃ足りない……」
「お前達……フン、ひよっ子のくせに。
 いいだろう、なら奴の右腕と目の光線は俺に任せろ! 真矢、お前は一騎の援護だ。左の剣を何としても阻止しろ!」
「了解」
「一騎、他のことは何も考えるな。俺が道を開くから全力で突っ込め!」
「はいッ!」

バニングの号令で、戦局は一斉に動き出す。
まずストライクノワールが両腕のフラガラッハで斬りかかっていく。

「まずは俺からだ!」
「正面からか……その意気や良し、斬り伏せてくれる!」

ダークサーベルが一閃。
だがバニングは故意にマニピュレーターを緩め、剣戟に抗わない。フラガラッハが二刀まとめて弾き飛ばされた。

「むっ……だが、これで!」

呆気ない手応えに訝しみながらも、残る右の一刀を繰り出す暗黒大将軍。
フェイズシフトは対実体弾。ビーム力場の剣には抗えない――が。

「Iフィールド、全開ッ!」

ビームシールドさえ斬り抜けるムラマサブラスターを無効化できる唯一無二の機構、Iフィールド。
クロスボーン・ガンダムX3の両腕に試験的に搭載されたIフィールド・ハンドは、ムラマサブラスターと合わせることで最強の矛と盾になるはずだった。
構造的な欠陥がありその後のモビルスーツに正式採用されはしなかったものの、効果のほどは折り紙つきだ。
今まさに、ストライクノワールの両腕がムラマサブラスターを押し留めているように。

「な、何だと……!?」
「来い、一騎ッ!」

一騎達と合流する前に改修をしておいて正解だったとバニングは笑う。
やはり、ショウが共に戦ってくれているのだ――そんな気にさえなる。
ストライクノワールの腕がビームをかき分けムラマサブラスターの本体を掴んだ。
そのまま上昇、暗黒大将軍の頭を乗り越え背中に組み付き、片手を離して暗黒大将軍の頭部を締め上げる。
視線があらぬ方向へ向き、破壊光線の使用は妨げられた。

だから、猛然と突き進んでくるアルトアイゼンを阻めない。

「い……っけぇ!」
「小癪な……ガアッ!?」

暗黒大将軍の腹部、もう一つの顔へ深々と突き刺さるリボルビング・バンカー。
莫大な噴射炎を排するアルトアイゼン・リーゼのチャージは止まらず、暗黒大将軍、ストライクノワールごと後方へと突き進んでいく。

「遠見、道を作ってくれ!」

一騎の声を追い越すように白い流星が傍らを駆け抜ける。
光の奔流が内壁を砕き、進路を切り拓いた。
ストライクノワール、暗黒大将軍、アルトアイゼン・リーゼとが一塊になって基地内を驀進していく。
先行するヴァイスリッターが目的地である転移装置までの壁を撃ち砕き、その歩みを遅滞させず。


374 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:57:15 ID:lEnMtuzV
 

375 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:57:42 ID:RZEDs/Kq

「き、貴様ら! 何のつもりだ!?」
「少しばかり……ドライブに付き合ってもらおうか!」

状況はわからないまでも、このままではまずいという確信があった。
暗黒大将軍は唯一自由である左腕のダークサーベルを、背のストライクノワールへと撃ち込み出す。
二度、三度と刃が鋼を叩くものの、フェイズシフトを破れない。

「硬い……!」
「そんな攻撃でノワールの装甲は貫けんぞ!」

万全の状態で振り下ろすダークサーベルなら話は別だろう。
だが激しく傷つき、後方に流されているため地を踏み込むこともできず、さらに目標も見えないまま振るう剣では込められる力も微々たるもの。

「ぬう、ならば……!」

老兵の機体は諦め、この瞬間も自らを押し込み続けるアルトアイゼンへと狙いを変えた暗黒大将軍。
逆手に握ったダークサーベルを振り下ろそうとする。

「くっ!?」
「一騎君はやらせない!」

取って返してきたヴァイスリッターが放つ実体弾が、寸前で刃へと喰らいつく。
生まれた一瞬の空白でプラズマホーンが起動し、ダークサーベルと噛み合った。
流れる刃の矛先はコクピットから僅かに逸れ、胸の端から背中まで突き抜ける。

「一騎君!?」
「だ、大丈夫だ遠見! それより……まずい、出力が落ちてきた! このままじゃ……!」

アルトアイゼンから尾を引いていた推進炎がやや陰る。
突進の勢いが収まれば敵に立て直すチャンスを与えてしまう。

「何を企んでいるか知らんが、調子に乗るなよ人間ども!」
「いかん! こっちももう抑えきれんか……!」

自力でストライクノワールに勝る暗黒大将軍が戒めから脱しようとしている。
また、Iフィールド・ハンドもそろそろ限界時間の105秒に近付いていた。
左腕の方はまだ時間が残っているが、手を離せば一騎が破壊光線で落とされる――万事休す。

しかし、その絶望の囁きに屈しようとしない者が、まだ一人。

「私がカバーします!」

ヴァイスリッターが相対速度を合わせ、三機にピタリと並走していく。
オクスタン・ライフルを、暗黒大将軍の左肩に突き付け、

「この距離なら……!」

ゼロ距離で発砲。弾丸は表皮を破って黒い身体へ潜り込み、銃声すらも響かせない。
痛みに呻く暗黒大将軍に構わず『槍』を旋回させ、ムラマサブラスターを握り締める右腕の指を精確に狙い撃つ。
抜け落ちた光剣を一顧だにせず、ヴァイスリッターはライフルをウェポンラックに保持してアルトアイゼンの横に並ぶ。
そのままテスラ・ドライブを全開にしてアルトアイゼンの失った推力を補う。
右腕がフリーになったストライクノワールが、両腕を以て暗黒大将軍の頭部を押さえつけ、視線を封じる。

黒、黒、赤白と、モニターするイネスが機体色を容易には判別できないほどに近接して進んでいく。


376 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:58:32 ID:RZEDs/Kq

「ぬおおお……おおおおああああっ!」
「こいつ、まだ抵抗するか!」
「装置はまだなのか!?」
「もう少し……!」

通信回線を開かずとも、接触しているため全員の声が聞こえる。
そんな中、一人離れた場所にいるイネスから待ちわびた報告。

「みんな、転移装置に着くわ!」

声に遅れること数秒、一際広大な空間に出た。
その中心、床に大きく設置された泉のような深い蒼のスペースを湛える機械――ゲートだ。
イネスによって起動された転移装置は既に発動している。
後はここに敵を叩き落とすだけだ。

「よし、離れろ一騎、真矢!」

暗黒大将軍の背中に張り付いていたストライクノワールが飛び離れる。これ以上くっついていても加速の邪魔になるだけだ。
押し込む二機の亡霊も続く。まずヴァイスリッターが手を離した。

「舐めるなァァァァッ!」

とたんに、空手となった右腕でセレブレイダーを抜刀する暗黒大将軍。
そのまま斬りつけるのではなく、床に突き立て後方へ流れる身体を力づくでせき止めようとする。
目に見えて突進の速度が落ちる。
このまま一騎が離れればゲートまで押し込めない――離脱したバニングが一人特攻の決意を固めた。

しかし、ストライクノワールが追いつくよりも速く暗黒大将軍達は進んでいく。
何故、と思う訳もない。
見ればわかる――単に一騎が、アルトアイゼン・リーゼが前に進み続けているからだ。
離脱も何も考えていない。それはまさに特攻だった。

「止せ、一騎!」
「一騎君!?」

制止の声が飛ぶが、一騎は止まらない。
自分ごと敵を装置に落とす、そう言わんばかりに無言で突き進んでいく。

「こ、小僧! 死ぬ気か!?」
「死ぬもんか……死なせるもんか!」

セレブレイダーが床から離れる。
アルトアイゼンが地を蹴り、最後の加速。
バニングが介入する間もなく、転移装置へと一直線に突入した。

「一騎ィッ!」

伸ばしたアンカーはアルトアイゼンを捕まえられない。
そしてその後を――躊躇うことなくヴァイスリッターが追った。

僅か数秒で、三人が消えた。バニングの教え子二人が、敵もろともに。
しばし呆然としていたバニングだが、我に返り自らも後を追おうとする。


377 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:59:05 ID:lEnMtuzV
 

378 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 20:59:19 ID:RZEDs/Kq

だが、ゲートに突入する寸前で急停止させられた。
蒼い輝きを放っていたゲートが暗くなる。転移機能が停止したためだ。
もちろんバニングの操作ではない。だとすれば、

「どういうつもりだ、イネス!?」

外部から基地の設備を操作していたイネスの仕業に相違ない。
部下を追えなくなったバニングはそれこそ烈火のように怒り、イネスを詰問した。

「落ち着いて下さい大尉。追うのは危険です」
「何を言っている! 一騎達まで飛び込んだんだぞ、俺も……!」
「大尉! ……言ったでしょう、この装置は行き先が設定されていないと。それはつまり、空間が安定していないということなんです。
 どこに出るかわからず、もしかしたら原子の塵になるまで分解されるかもしれない。
 そんな空間に大きなエネルギーを持った機体が複数同時に突入したら……」

そこで、イネスは言い淀む。
バニングも、怒りより先に行ってしまった二人の安否が気にかかった。

「……どうなるんだ?」
「こうと断言することはできません。ただ、絶対に無事では済まない……それだけは確かです」
「……何ということだ」

ストライクノワールのコクピットの中、バニングは顔を覆う。
合流してまだ数時間だ。それだけの短い時間にまた、別れてしまう――ショウのように。

「イネス、追跡はできないのか!?」
「無理です……それどころか、もう一度ゲートを開くのだって危険なんです。大尉、ここはどうか……」

応えるイネスの声とて苦しげだ。
いなくなったのはよりにもよって年少の二人。握り締めた拳を、コンソールへと叩きつける。

「一騎、真矢……無事でいろよ……!」

バニングは、血を吐くように呟いた。


【12:00】

【サウス・バニング 搭乗機体:ストライクノワール(機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER)
 パイロット状況:疲労(中)
 機体状況:EN50%、ムラマサブラスターを所持
 現在位置:G-5 研究所
 第1行動方針:研究所を防衛しつつギリアムを待つ。一騎、真矢の捜索
 第2行動方針:コウ・ウラキを探す
 第3行動方針:アナベル・ガトー、渚カヲルを警戒
 最終行動方針:シャドウミラーを打倒する
 備考1:地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました
 備考2:腕部にクロスボーン・ガンダムX3のIフィールド発生装置を装着】


【イネス・フレサンジュ 搭乗機体:クロガネ(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:G-5 研究所
 第1行動方針:ギリアムを待つ
 第2行動方針:ルリと合流、ガイもついでに
 最終行動方針:願いを叶える「力」の奪取。手段は要検討
 備考1:地中に潜れるのは最大一時間まで。それ以上は地上で一時間の間を開けなければ首輪が爆発
 備考2:クロガネは改造され一人でも操艦可能】

379 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 20:59:26 ID:1gFRImMX
 

380 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:00:20 ID:RZEDs/Kq
     ■


一方、偵察に出た万丈。
出発して一時間ほど経っているのに、まだ基地からそれほど距離を取っている訳ではない――何故か。
基地の近くで見覚えのある機体の残骸を見かけたためだ。

それは、ダイタンク。万丈の相棒、いや半身と言ってもいい。ダイターン3の戦車形態、その無惨にも破壊された姿だった。
コクピットから全体に拡がる破壊痕は、もう二度とこの巨人が立ち上がることはないと否応なく万丈に悟らせる。

「僕の、ダイターン……」

埋葬するという訳でもないが、しばし万丈はその場所に留まり愛機と共に戦った日々の記憶に身を浸した。
数分、身じろぎもせず。

次に目を開けた時にはもう、悲しみは拭い去られていた。

「シャドウミラー。君達を成敗する理由が一つ増えたようだ」

代わりに熱く滾るのは、怒り。
誰とも知れないダイターンを破壊した者、ではなく万丈からダイターンを奪ったシャドウミラーへの。
バニング達の前では見せなかった生の感情が万丈を支配していく。

「世のため人のため……そして、今だけは僕自身のために!」

ダイターン3の亡骸から拾い上げたのは、大剣ダイターンザンバー。
トライダーG7とほぼ同じだけの刃渡りの剣をぶんと振り回し、見栄を切る。


「覚悟しろシャドウミラー! 必ず、貴様らの野望を叩き潰して見せる……!」

トライダーG7が蒼穹を貫く矢となって飛んでいく。
怒りに燃え、僅かながらに視野の狭くなった万丈は気付かなかった。
後にした基地へ強大な敵が侵入したことを。
その内部で繰り広げられた激しい戦いを。

この世界から消えた、二人の仲間のことを。


遠く離れた地での異変を知る由もなく、だからこそ未来を知る男との合流を急ぎ西へと一路飛び抜けていく。



【11:45】

【破嵐万丈 搭乗機体:トライダーG7(無敵ロボ トライダーG7)
 パイロット状況:良好、怒り
 機体状況:装甲を損傷、行動に影響なし、ダイターンザンバーを所持
 現在位置:G-4 荒野
 第1行動方針:ギリアムを捜索する
 第2行動方針:弱きを助け強きを挫く。ま、悪党がいたら成敗しときますかね
 最終行動方針:ヴィンデル・マウザーの野望を打ち砕く
 備考:地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました】


381 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:01:20 ID:lEnMtuzV
 

382 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:01:27 ID:RZEDs/Kq
     ■


「ぐ、ううう……こ、ここはどこだ……?」

暗黒大将軍が辿り着いたのは、暗い深淵。
偽りの星が流れる漆黒の宇宙、その片隅にある岩塊の上だった。
黒衣の装甲は全面が砕かれ、腹の顔はもうほとんど原形を留めていないほどに傷ついている。

「何が、起こったというのだ……」

地上、基地内部にいたはずなのに気がつけば宇宙だ。
暗黒大将軍の動揺はかなりのものだった。というか、宇宙に出たことすら初めてだ。
よろよろと、セレブレイダーを杖に立ち上がる。だがその切れ味は、暗黒大将軍の重量を支えるより先に足元の地盤を斬り割ってしまった。

「ぬおっ!」

岩塊の中に落下する暗黒大将軍。もはや踏ん張る力もなかった。
落下――そう、落下だ。無重力の宇宙にいるはずなのに。
予想外の事態に警戒した暗黒大将軍だが、彼が見た光景はこれまた予想の上を行くものだった。

「……基地、いやプラント施設か?」

暗黒大将軍が見た物。
彼がいた岩塊は実は岩塊などではなく、偽装された資源衛星――名を、ウルカヌス。
アフターコロニーの世界で宇宙を彷徨い続けていたOZの無人プラントだった。
シャドウミラーが会場設営に際し現場での前線基地としていたのだが、戦いが始まるとともに放棄されていたのだ。
見渡しても兵器類など残されてはいない。完全に打ち捨てられてはいる、が。

「……フッ、俺が運に救われるとはな」

まだ、施設の機能が死んだわけではなかった。
一歩整備廠らしき場所に足を踏み入れれば、勝手に動力が再起動して施設全体が動き始める。
基地として利用可能。そう睨んだ暗黒大将軍は目当ての物を探す。

さして時間をかけることもなく、見つかった。携えていたセレブレイダーを『それ』に接続。
ウルカヌスから流れ出すのは、失われたエネルギー。それは地上に設置された補給ポイントの試作型だった。

「これでまだ、俺は戦える……」

ようやく張っていた気を抜き、壁に背を預ける暗黒大将軍。もはやその身に傷を負っていない箇所はない。
しかし、隠れ逃げ回る気は毛頭ない。数時間後にはロム・ストールとの決闘が待っている。
立っているのも辛い身体で再戦を約束した男の前に立つのは、武人の誇りが許さない。
少しでも傷を癒さんとする暗黒大将軍。疲労が睡魔となって全身を包み、瞬く間に眠りに落ちていった。


【12:30】

【暗黒大将軍 支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON)
 パイロット状況:全身に激しいダメージ、激しい怒り、疲労(極大)、気絶
 機体状況:良好、EN100%、セレブレイドに変形中
 現在位置:c-2 資源衛星
 第0行動方針:…………
 第1行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する 、剣鉄也を倒す
 第2行動方針:19:00にロム・ストールと再戦する
 第3行動方針:ダイヤが現れたのなら決着を着ける
 第4行動方針:余裕ができたらガンバスターを破壊する
 最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する
 備考1:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになってます
      無論、搭乗者が普通に機体を使う事も可能です】

383 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:01:57 ID:vNZj+HNH


384 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:02:39 ID:vNZj+HNH
 

385 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:02:46 ID:lEnMtuzV
 

386 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:03:04 ID:1gFRImMX
 

387 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:03:35 ID:RZEDs/Kq
     ■


ウルカヌスの整備廠で、天井の一角が開いた。そこから顔を覗かせたのは一本の管。
眠る暗黒大将軍めがけ、輝く粒子を吹きかけて、姿を消す。、
暗黒大将軍の身体の表面を、肉眼では確認できないほどに微細な金属が覆っていく。
それはマシンセル。アースクレイドルにて開発された、自立型金属細胞の総称。
指向性を与えれば失った機体箇所の再生すらも可能とする新機軸の技術だ。

「……どういうつもりだ、レモン? 一参加者に肩入れするなとヴィンデルも言っていただろう」
「あら、いたのアクセル」

モニターから眼を離し、振り向いたレモン・ブロウニング。視線の先には鋭い眼でこちらを睨むアクセル・アルマーがいた。
正直、いつ入って来たのかもわからなかった。そこはさすがに特殊部隊の面目躍如といったところか。

「肩入れとは少し違うわ。むしろこれで公平なのよ」
「なに?」
「考えてもみて。彼、暗黒大将軍は他の参加者と違って生身で戦っていると言えるわ。その身体ゆえに機体を乗り換えることも、修理することもできない。
 ……まあ他にも何人か機体に乗らずに戦っているのもいるけど、彼らはやろうと思えば普通に機体に乗れる訳だしね」
「だからマシンセルをくれてやったというのか?」
「そう。さすがにパイロットと機体の消耗が直結しているのは可哀想でしょ?」
「……それだけではあるまい」

納得はしたが、苦々しいという表情のアクセル。さすが付き合いが長いだけあり、よくわかっている。

「まあ、ね。まさかウルカヌスに辿り着くとは思っていなかったから、サプライズプレゼントというところかしら。
 それも、私達が思いもつかないあんな方法でだもの。少しくらいお目こぼししてあげても罰は当たらないわよ」
「……ヴィンデルは何と言っている?」
「構わない、ですって。むしろ彼に限ってはこちらの配慮が足りなかった、だそうよ」

すでに根回しは終わっていたらしい。アクセルはふぅと溜息をつき、

「なら、俺から言うことは何もない。邪魔したな」

そのまま、足早に立ち去った。見送ったレモンは微笑み、眠り続ける暗黒大将軍を見やる。

「アクセル、何を苛ついていたのかしら……ああ、そういうこと。あの機体だものね……」

零す間も手は止まらず、ウルカヌスの動力を落としていく。
暗黒大将軍が目覚めるまでは維持しておくが、彼があの場を離れたらすぐに爆破するつもりだった。
必要以上にシャドウミラーの痕跡を会場に残しておくのは良くない。ゆえにレモンらが監視可能なのもウルカヌス内部のみ。
いざという時に使うつもりではあったが、参加者に先に見つけられてはもはや抹消するしかないのだ。

今や揺り籠となったウルカヌス。
その内で、来たるべき争覇の時を待ち武人は静かに眠り続ける。

【12:30】

【暗黒大将軍 支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON)
 パイロット状況:全身に激しいダメージ(修復中)、激しい怒り、疲労(大)、気絶、マシンセルに感染
 機体状況:良好、EN100%、セレブレイドに変形中
 現在位置:c-2 資源衛星
 第0行動方針:…………
 第1行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する 、剣鉄也を倒す
 第2行動方針:19:00にロム・ストールと再戦する
 第3行動方針:ダイヤが現れたのなら決着を着ける
 第4行動方針:余裕ができたらガンバスターを破壊する
 最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する
 備考1:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになっています
      搭乗者が普通に機体を使う事も可能】

388 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:04:37 ID:RZEDs/Kq
     ■


「う……?」

ヴァイスリッターのコクピットで、真矢は目覚めた。
どうやら少しの間気を失っていたらしい、と理解するや否や真矢は慌てて周囲を確認した。

地上でも宇宙でもない、そこは不思議な空間だった。
まるで虹の中にいるように、色んな色彩が混沌としてはっきりとしない。
事実、彼女はまだゲートの内部にいたのだ。
隣にあったアルトアイゼンの反応を確認し、真矢はほっと息を吐く。
見渡してもあの敵の反応はない。どうやら追い払えたらしい。後はここから脱出して、基地へ帰還するだけだ。
カメラも不調なのか、アルトアイゼンの姿がぼんやりとしか判別できない。しかし通信はまだ生きている。

「一騎君、大丈夫? ここ、どこかわかる?」

ヴァイスリッターのセンサーでは位置も何も掴めた物ではない。
強襲機であるアルトアイゼンだってそれは変わりないだろうが、とにかく何か情報が欲しかったのだ。

だが、いつまで待っても一騎から返答がない。
何度聞いても、まるで真矢しかいないかのように静寂。
どうしたのかと、アルトアイゼンの前にヴァイスリッターを回り込ませた真矢。

そして、絶句する。
アルトアイゼン・リーゼのコクピットに開いた大穴に。
もはやどこにもいない、そのパイロット。



真壁一騎の、消失に。



思考が全て、フリーズする。
そして思い出す――ゲートに突入したあの瞬間のことを。



一騎が敵ごとゲート内部へと突入し、すぐさま真矢も後を追った。
自身の生存よりも仲間を、とりわけ一騎を。そう掲げる真矢に躊躇いはなかった。

ゲートの中で、アルトアイゼンはまだ戦っていた。
両肩のスクエア・クレイモアが炸裂し、掴んだままの敵に深手を与えた。
刺さっていた剣が引き抜かれたが、アルトアイゼンに振り下ろされる前にヴァイスリッターのネオ・プラズマカッターが押し止めた。


.

389 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:04:55 ID:vNZj+HNH
 

390 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:05:30 ID:RZEDs/Kq











そして、



        敵の両目が紅く輝き、



                         アルトアイゼンがヴァイスリッターを庇うように押しのけて、



                                                                 爆発した。









.

391 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:05:47 ID:lEnMtuzV
 

392 :心からの・・・ ◆I0g7Cr5wzA :2010/02/08(月) 21:06:14 ID:RZEDs/Kq

そこで真矢の意識は途切れたのだ。

クレイモアが全弾当たる距離、それはつまり敵からも掴まれる距離。
一騎は真矢に伸ばされた敵の腕を阻むべくバンカーを撃ち込み、一人矢面に立ち、破壊光線を真正面からその身に受けた。
爆風は暗黒大将軍をも弾き飛ばし、次元の狭間に押し込んで。
無意識の内に機体を寄せたか、あるいは亡霊同士が呼び合ったか。アルトアイゼン・リーゼとヴァイスリッターは一塊のまま虚空を流され続けて。

「か、かず……一騎、君? へ、返事を……」

そして今、鋼鉄の孤狼はその数奇な旅を終える。
漏電し弾けるスパークが肩のクレイモアに引火した。
真矢の見ている前で、至極呆気なく。


アルトアイゼン・リーゼは光の球となって――消えた。


呆然と、ただ言葉もなく真壁一騎の最期を看取った遠見真矢は。


「……あ、あ。そん、な……」


心を塗り潰す感情の意味を、理解する。




すなわち――絶望。





「い……いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」





そして、真矢の世界は暗転する。



【真壁一騎(蒼穹のファフナー)  死亡】
【アルトアイゼン・リーゼ(スーパーロボット大戦OGシリーズ)  大破】


【12:30】

【遠見真矢 搭乗機体:ヴァイスリッター(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:疲労(大)、精神的なダメージ(極大)
 機体状況:ミサイル残弾0、EN消費(中)、精神的な同調ができないと不快感を覚える模様
        もしかしたら何かのきっかけでラインヴァイスリッターになるかも……? 反応速度上昇
 現在位置:???
 第1行動方針:…………
 最終行動方針:仲間を生き残らせる。誰かが欠けた場合は優勝も視野に入れる
 備考:ヴァイスリッターがどこに転移するかは未定です】


393 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:07:19 ID:RZEDs/Kq
投下終了。
支援ありがとうございました。

394 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:09:15 ID:vNZj+HNH
一騎死亡かよ……勿体ねー。
元々EN0の暗黒大将軍引っ張ってきて無理やり戦闘させてこれか。

395 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:13:19 ID:sjulBTOs
投下乙!
ああ、万丈さんカッコいい。どこまでもあんたはイカス
激戦がどう転ぶか、読んでてwktkしっぱなしだったぜ。バニング渋カッコヨス
そして一騎がついに……これは今後が楽しみだw

396 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:21:17 ID:lEnMtuzV
投下乙!
万丈さんとバニングの大人っぷりがいいなー
真矢とイネスはしっぽを掴まれてしまったが、そこは流石の万丈。
うまくことを収めたか。
しかしそれがこのような事態になっちまおうとは。
伸ばしたアンカーは掴めないって感じの描写が印象に残る。
シュウと共に戦ってる感抜群なのもよかった。
紅白亡霊コンビの戦闘はやっぱ絵になったが見納めか、ホロリ。
仲間を生かそうとはやって結果一騎に庇われちまった真矢よどこへいく。

397 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:25:14 ID:1gFRImMX
暗黒大将軍は張り切り過ぎだし、一騎は死にに行き過ぎだwww
続けて年少に死なれてバニングに心労が溜まりそうだな

ただクロガネ組に関してはギリアムとの合流予定地がG-7施設になってるから
G-5の施設に向かった理由のフォローが少し欲しいと思ったり

398 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:32:23 ID:vNZj+HNH
矛盾指摘スレに書かれてるよもう。
矛盾沢山ありすぎだろう。追加予約するのはいいけど確認しろよ

399 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:39:25 ID:BkQve+va
おつ!
うん面白かった!

400 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:39:56 ID:C2wNc22b
いや、真面目な話、G-7、G-5、それから基地とも書いたし、
北上するとも書いてて確かに状態表もG-7って書いたんだがなんでG-5に行ったんだ、
暗黒大将軍も休むとも第一行動方針にはっきり書いたし、これが終わったら放送まで休憩も視野に入れるって本文にも書いといたんだが。


401 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 21:44:05 ID:BkQve+va
あー、確かにおかしいね
面白いは面白かったからどうにかなって欲しいが、どうしたもんか……案が出ねー

402 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 22:44:32 ID:rmpkXsg5
うわ勿体な……まさかとは思ったがこんなことになるとは。

403 :それも名無しだ:2010/02/08(月) 23:04:35 ID:1gFRImMX
仮投下に修正が来ていたが

同型艦のハガネでは度々機体の補修や調整が行われているとか
シミュレーターでも訓練できるんじゃないかとか
そもそもそういうことって目的地についてからやるもんじゃね? 万丈とギリアムがすれ違ったらどうするの? とか
ついでに隣のエリアまで観測できるような強力なレーダーがあると後々他の参加者の動きで整合性とるのに苦労しそうだとか

そういうつっこみは駄目だろうか
何か自分の頭が粗探しする態勢に移行してしまった気がして自信が無い

404 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 00:09:02 ID:3TzUJFuE
正直、もったいない。
そして前の話全然読んでないのが見えてて余計やるせない。
無理やり動かして殺したようにしか見えない。
本音言うと、破棄して欲しい。これはない、としか言えない。
翔子あたり自殺するんじゃね? 
「そうだ、蘇らせればいいんだ!」なんて短絡なキャラブレイクしないと。

ごめん、まとまってないけど、あまりに信じられない事態にこんな感想しか言えない。

405 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 00:14:56 ID:AHthj45b
・単純に展開、文章、会話が面白くない
・キャラの思考が意味不明。前作と続けて読めないレベル
・フラグを変化させるでも折ることによって展開として昇華させるでもなく、ただキャラを殺して無理矢理断ち切っただけ
・前SSの移動方針を無視

こんな糞が成長すると思ってたこの企画の住民が馬鹿でした、としか言えない

406 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 00:25:56 ID:RZpzjz8Y
ミスター死亡フラグのギリアムさんより弟子の方が早く死ぬとは
放送までは生きてて欲しかったけどな

407 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 01:04:34 ID:S6sR4UeS
一騎が死んだか
正直、もったいねぇw
翔子とか甲洋の絡みが見たかったわ


408 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 01:10:51 ID:sE5v05N3
いや、この死は別にアリだろう
一騎の死が与える影響も十分でかいだろうしな
そこから生まれる新しい展開もまた興味深くはある

409 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 01:13:20 ID:3TzUJFuE
放送でファフナー勢に与える大きな影響なら、総士が死んでるから既に確定してるんだけどね
単に影響が被ってぶれるだけだと思うよ、主役二人並べて放送しても

410 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 02:00:31 ID:e8JtwmpY
もったいないとか言う奴は死ねばいいのに

411 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 02:06:31 ID:MpGWsR5M
>>409
はあ、だから殺すなって?
ハハッ、ワロス

412 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 02:14:26 ID:e8JtwmpY
つか以前の荒らしと同じように扱ってる奴って何なの?
この人見てみたら、最初からいるひとじゃん
自分が気に入らない展開だから作者を罵るカスが出てきたって事だな

413 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 02:22:37 ID:AHthj45b
これが投下された時点で荒れるのは確定してるようなもんだからなぁ…
何故投下前にどういう反応が返ってくるか予想できなかったのか
わかっててやったなら度を超えた独り善がりだな

414 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 07:37:03 ID:KLr5CIh6
話自体は面白かったし、文章もよかった。別に、誰が死のうとどうでもいい。
でも矛盾がでかすぎるよなぁ……どうしたらいいんだ。大筋を変えない案がまったく出てこない

415 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 07:54:16 ID:MpGWsR5M
でかすぎる矛盾って何なんだ?

場所の修正はされた、基地に行く理由もできた
思考がおかしいのどうのなんて書いたやつ次第だろう
そんなん言い出したらそもそも前の話でロムとカノンにトドメささずに見逃したのだっておかしいとかいくらでも言える

416 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 09:10:55 ID:3TzUJFuE
>>415
あれ、最後まで命を奪わず暗黒大将軍を殺さず抑えようとしたロム兄さんの心意気を汲んで見逃しただけだろ
だから納得いかなくてもう一戦と言ってるわけだしな

思ったけど、今回の移動した先だと、このロム兄さんとの果たし合いにも間に合わなくね?
人がいない宇宙に移動したからマーダーとしても働けそうにないが。

417 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 10:25:53 ID:0CbBS6kn
素直に言えよ
一騎が殺されて面白くないですってな
修正通り越していきなり破棄してくださいなんて普通は言えないぜ
あの荒らしの最初の作品ですら修正から入ったのに
しかも普通に面白かったのに

418 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 11:29:48 ID:Usg8jZ+L
>>416
原作じゃシロー人質にとったりする暗黒大将軍が、心意気を汲んで、とかがすでにありえない

とこんなふうに解釈の振り幅の違いでいくらでも言える
「こう考えないのはおかしい、それ以外は駄目だ」って読み手が書き手に言うのがどんだけ傲慢なのかわかってないのかね
もったいないって意見が大半な時点で一騎を殺したのが気に入りませんって宣言してるようなもんだ

419 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 11:53:15 ID:o5aqEotM
他の部分はともかく無理にG-5へ集める強引さ加減ならぶっちゃけあれに匹敵すると思うぞ……
他はいいんだがねえ……

420 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 11:55:25 ID:0CbBS6kn
感情を処理できない人類はゴミ
ファフナー厨は感情を処理できない
ファフナー厨はゴミ

なんちゃってwww冗談ですよwww
つか暗黒大将軍がこんなおいしいキャラになるとは思わなかった
ダイヤからは恨まれ、ロムからは認められ、鉄也とは因縁がある
本当に面白い要素だよな

421 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 11:59:59 ID:xBFCl2JM
         ,、ヽr,
     / ̄ ̄.ヽγ ̄ヽ 
    / ///W`ヽヽ ゝ
  γ / / / //V\ l l .|
  l ル(● )W(● ) l リ ル  
  レV ⌒(__人__)⌒ レノ^) ゝ  
  |  l^l^lnー'´   V | /   <相手を煽らず冷静に気になった点だけを述べうおおおおおっ!
  \ヽ   L      /
     ゝ  ノ
   /_/ \ヽ /ノ \
     ヽ(´・ω・)ノ  ミストさんぶつけんぞコラ
       |  /
       UU

無意味に空気荒らすなよ

422 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 12:16:18 ID:0CbBS6kn
すまん
だが初期からいてくれてる書き手さんにたいして
荒らしを相手にしているような態度を平気でとり
もったいないって連呼する馬鹿が気にくわないのよ
これでいなくならないでくれるといいんだが

423 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 12:31:14 ID:RD6okBEM
取りあえず、君が相手を煽って場を荒らせば渦中の書き手さんの立場が悪くなりかねないという事を理解してる?
解らないようなら、この件に関しては今後一切口出さない方が良いよ、マジで

424 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 19:44:30 ID:e8JtwmpY
>>420
>>422
ちょっとおかしいとは思うけど
やっぱりそういうことは書かないほうがいいよ、荒れるし

425 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 20:32:25 ID:oSJxjN+u
少なくとも行動に矛盾がある以上は修正が必要だとは思うけど
修正してもオチ重視で強引なのが来ても更に荒れそうだから大幅修正か破棄かのどちらかだろうな

426 :それも名無しだ:2010/02/09(火) 23:51:04 ID:xU6k+M6a
予約待ってくれないんだな、ここ

427 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 00:14:48 ID:CyY+y1uV
◆9II8YNlJ82氏の件か?延長してもいるし、酷だけれどもルールだからな…

それにしても、読み手、書き手ともに少し落ち着こうぜ


428 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 00:18:14 ID:dfHrkf4O
一時間〜2時間なら兎も角1日だからなー。

429 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 01:07:01 ID:PkISc4eS
普通待たないだろ。決められたルールを何だと思ってるんだ?

430 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:09:38 ID:nRppthyb
延長が残ってる間ならまだしもそれも過ぎたからねえ
期限過ぎても延々と待ってたら、なんのために期限なんて設定したんだって話だし

431 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:10:51 ID:2uk8DE6O
間に合わないから、結局予約破棄した後完成して改めて投下した人いたしね

432 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:14:14 ID:UnTI8IeR
嫌味じゃないが
完成してるけど書き込めないってわざわざ書いてあるのに予約したってのは
よっぽど書きたかったパートだったんだろうな

433 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:17:18 ID:dfHrkf4O
あれ?完成はしてるとは書いてなかったはずだが。

434 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:36:00 ID:nRppthyb
今日家に帰れないから明日になりそうってだけで完成したとは言ってないな
あと少しで完成しそうだったけど書く時間がなくなったっていうパターンな可能性もある

435 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 02:36:11 ID:UnTI8IeR
流石に完成してるだろ
完成したとは確かに書かれてないけど

436 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 03:40:15 ID:BNSY6Jzz
細かい疑問点あげるならいきなり奪って使ってるけどサイズと形状的にムラマサブラスターって暗黒大将軍の手にはまるんか?とかセーフティ解除しないとビーム出ないんじゃ?とか思ったり

437 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 03:57:30 ID:6/x934WF
それはもう細かいとかの域じゃなくていちゃもんだがな
原作でもドゥガチに奪われてすぐ使われてるだろ

438 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:19:54 ID:BNSY6Jzz
そうだね。ドゥガチはちゃんとセーフティ解除して使ったけどトビア君は最初解らずそのままぶったたいてたよね。
で、暗黒大将軍がサイズと形状的に握って解除して振るったりできるんか?と思っただけ。
そんでもって個人的に疑問に思っただけでそれを修正だの突き付ける気は無いんで。

439 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:23:34 ID:6/x934WF
解除も何もその前のシーンで普通に使われてるだろ

440 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:34:27 ID:BNSY6Jzz
そうだね。前のシーンでは使ってたが次の場面ではフラガラッハ使ったから腰元に納めていて、それを奪ったその場からいきなり振るってるね。

441 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:43:07 ID:6/x934WF
戦闘中にいちいちセーフティかけ直すかなんてそれこそ展開次第だろ
修正突き付ける気はないって言いつつでも不満ですって言ってるだけじゃねえか

442 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:53:40 ID:BNSY6Jzz
展開次第も何もあんなもん展開した状態で腰元に納めてたら自分にぶっささるんじゃないかと
そんでもって疑問に思った事を言ってるだけなんで

443 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 04:58:04 ID:6/x934WF
は?意味わからん
セーフティ解除するのとビーム出すのは全然違うことだろうが

444 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 05:07:08 ID:dfHrkf4O
まあ互いに落ち着けって。
二人で争っても仕方ないぞ

445 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 05:59:33 ID:nRppthyb
クロガネ組と万丈・バニング組のやり取りをしようと予約→G-7でやろうと思ったがユウキ・カズマ組が既にいて無理
→ならG-5でやろう→近くに暗黒大将軍がいる→追加ネタが浮かぶor前から考えてた他のネタもどうせならやろう
→暗黒大将軍を追加予約

個人的にこんな流れであの作品が出来たような気がしないでもない
冒頭でバニングさんがG-7でX3の腕つけようと言ってるのがその名残のような
てか、

早いうちに施設抑えたい→G-5の施設に行こう→腕付け替えたい→G-7の施設に行こう
→カズマ・ユウキ来る前にG-7にて腕付け替え→G-7の施設は放置してG-5に移動

という流れで正しいのか?
なんかおかしい気がするが

446 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 06:58:23 ID:nRppthyb
ああ、結局G-7には行かずG-5の施設でX3のパーツ組み込んだのか
じゃあ冒頭のG-7で組み込むとかいう台詞はなんだったんだという話になるが

447 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 10:29:15 ID:PYtrATZ2
>>436
ムラサメをATフィールドに叩きつけてATフィールドの押しつぶしうけてムラサメ無傷。
どういう潰れ方したのだろうかショウとX3は。

448 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 12:54:08 ID:haARlhQa
潰され方としてはムラマサで下から切り上げようとしたがATフィールドに阻まれ、
そのまま押しこまれてATフィールドと地面で挟まれて大破
で、今回確認した所ムラマサと腕パーツは無事でした

うーん、先にパーツが耐えきれんでムラマサごと腕がどっか吹っ飛んで
それで一気に均衡が崩れてX3本体が押しつぶされたとか?

449 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 16:36:50 ID:PYtrATZ2
両腕で保持するだろうから先に村雨の方が折れるかオーバーロードで燃えつきないだろうか?

450 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 16:45:09 ID:PkISc4eS
そんな細かい粗探しどうでもいいよ

451 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 20:04:56 ID:0kPalxp4
過ぎたことをいつまでも話してないで、次の投下を待とうぜ
今夜は……

中二病コンビと空気長官かw

452 :それも名無しだ:2010/02/10(水) 21:20:53 ID:85meDM+f
三人以上の予約は
高確率で延長になっちゃうけどな

453 :『  』〜くうはく〜:2010/02/11(木) 00:50:37 ID:8bF1z/tJ
空気を変えるべく甲洋を投下する!

454 :『  』〜くうはく〜:2010/02/11(木) 00:51:19 ID:8bF1z/tJ


――俺は、覚えている。


何もできなくて……ただ無力で……ただ、その光景を見上げるしかできなかったんだ。
そう、確かに首を上に向け、空を見ていた。青い空でそれが爆ぜたとき、俺は泣くことすらできなくて……
頭の中で、今まで真っ白に消えてた記憶。なんで忘れていたのかも分からない。

鮮明に、目の前でまた行われているかのようなフラッシュバックに、無意識に虚空へ俺は手を伸ばした。
けど、それは記憶だ。過去だ。



だって今、俺は――見下ろしているんだから。



朽ちて、ボロボロになった機体。
背中に飛ぶための翼のようなフライトユニットをつけた、白い機体。
本当なら、天使のような純白に彩られているはずの機体。

俺の乗るバルゴラの足元に、そんな機体があった。
それが、同型機のシリーズを全てまとめてなんと呼ぶか知っている。
そう、これは――ファフナーだ。
けど、俺が乗っていたマークフィアーじゃない。
一騎の乗っていたマークエルフでもなければ、咲良のマークドライとも違う。
けど、俺は知っている。これを――マークゼクスを。

俺はいつの間にかバルゴラを降ろしていた。
危ないとか、そういうことも考えられなくて、バルゴラから下りてマークゼクスの装甲の上に飛び乗った。
なんでそんな事をしたのか、俺にも分からなかった。
けど、そうしなくちゃっていう義務感じゃない。そうしたいって欲求でもない。
そうしないと、自分が保てないような、頭のぐらつきが、頭の奥であったんだ。
もう、熱源の反応はなかった。これは多分、この殺し合いが始まってすぐに壊れてしまったのだろう。
ファフナーに乗っていたパイロットと一緒に。
パイロットと、一緒に。
それはつまり。


455 :『  』〜くうはく〜:2010/02/11(木) 00:52:03 ID:8bF1z/tJ

乗っていたパイロットも死んだ。

そういう、ことだ。
この世界じゃ、人が死ぬのもおかしなことじゃない。
いや、俺たちの世界も同じだった。護りたくても、手を伸ばしても、お構いなしに死んでしまう。
俺だって、もう人を一人殺してしまった。あの赤い大きな機体のパイロット。
半球状のガラスレンズのようなコクピットの向こうに映っていた、バンダナと黒い髪。
俺より少し年上くらいだった気がする。
それを殺した。

「う……ぐぅ……あっっ……!」

死なせた――殺した――護りたかったのに。
違う――俺が守りたかったのは、あの赤い機体のパイロットじゃない――じゃあ、誰?
誰を、護りたかった――誰を護るために俺は人を殺した。

その場に突っ伏して、俺は吐いた。
あのときは我慢できた。あの時は、我慢できたのに、何かが壊れたみたいに止められなかった。
ここに来てから何も食べる気が起こらなくて、異の中は空っぽだった。
それでも、胃酸が、身体の中から溢れたものが、マークドライの上に広がった。

「あ……あ、俺は……!?」

マークドライにかかったそれを見て、俺は足がすくんだ。
単に、ファフナーに、俺たちが使う兵器の上で吐いてしまっただけだ。
大人たちは重要な道具と言い、俺たちの命より大切なみたいだが、俺からすればそんなことはない。
頭では、そう思っている。

なのに、どうしようもない恐ろしさが俺の身体を包んだ。
どうしても汚したくなかった何かを汚してしまった気がした。
ディバックから引っ張り出したタオルで、何度も何度も。金属の装甲に染み一つなくなっても、手は止まらなかった。
いくら拭いても、染み付いたものが取れない気がして。

人殺し。
人殺し。
人殺し。

誰もが――そう罵っているような。
誰かがいなくなることの意味を知っていたはずなのに。
それに、遺されたものがどれだけつらいか知っていたのに。
ディバックを、バルゴラに再び運ぶ。その時、ふと今度は自分の乗っていたバルゴラを見上げた。
こいつがあれば、本当は護れたんじゃないか。
あの男も、『  』も。それだけの力を、こいつは俺にくれた。
いつも、俺は遅いんだ。やらなきゃいけなかったことはできないのに、要らないことばかり。

456 :『  』〜くうはく〜:2010/02/11(木) 00:52:46 ID:8bF1z/tJ

このファフナーに乗っていたのは、誰なんだ。
もしかして、一騎、遠見、総士の三人の一人なのか。
あの時、とった集合写真。そこに写っていたパイロット候補の俺たち。
一騎、遠見、衛、咲良、剣司、総士、『  』の姿が、頭の中の写真ので色あせ、燃えて消えていく。
総士ですら、あれほど憎んでいた総士ですら、死んでほしくないと思えた。
いくら憎んでも、死ぬってことを考えれば死ねばいいなんて思えなかった。
自分の手で撃つことを改めて考えたとき、どうしようもなくなった。

―――「うちは春日井(かすがい)なんて名前の通り、息子もカスってね……」

どうしようもないくらい嫌っていた――けど、確かに親だった連中の言葉を今になってなんで思い出すんだろう。

待て。

待てよ。

『  』ってなんだ?

…………………『  』?


「なんで……分からないんだよ……?」

ここに来る前、護れたんだ、誰かを。その誰かか? 違う、遠見じゃない。
もっと前に、あったはずの、それ。救えなかったはずの、そう、



――マークゼクスに乗っていた…………



「なんで……なんでだよ……」

あの赤髪の女は言っていた。
戦えば戦うほど、悲しめば悲しむほど、自分は自分でいられると。
そして、自分のそんな姿を見たいとも。

自分に与えられた役目――二人の殺害。
何故、自分が選ばれた。自分が、パイロットとしてぱっとしていたわけじゃない。
この場にいる一騎のほうが、よっぽど強いし向いている。

もしかしたら、俺が殺し合う言い訳をくれたのかもしれない――。

馬鹿馬鹿しい考えだとも分かってる。けれど、今の俺にはそうにも思えた。

457 :『  』〜くうはく〜 ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 00:53:42 ID:8bF1z/tJ

思いだしたい。
思いだせないと、俺は俺でいられなくなる。
そのために、また戦うのか。また死なすのか。
自分と、他人の命の天秤――本当に? 他人の反対の位置に、本当に自分が乗っているのか?
そもそも、そんなことをしていいのか?

「嫌だ……捨てたくない……!」

けど、それでも俺は思いだしたい。
大切なナニカを取り戻したい。生きていたい。
護りたいナニカを、抱いていたいんだ。護りたいんだ。


気付けば、俺は誰もいない、真っ白で空っぽなマークゼクスにすがるように泣いていた。



■



静かにバルゴラが起動する。
少年も、あんな心で戦っていては勝てないと言うことは知っている。
だから悩む心も、今は忘れよう。理由は分からない。けど、ここに置いていこう。
またあの三人組と戦ったように、赤いロボットと戦った時と同じように考えて、戦おうと決意して。

バルゴラがマークゼクスに背を向けて飛び去っていく。



残ったのは、朽ちたマークゼクスだけ。
けれど、その白い装甲はほんの一部だけでも――磨かれ白い輝きを取り戻していた。





【春日井甲洋 搭乗機体:バルゴラ・グローリー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の一部回復
機体状況:疲労(小) EN80%
現在位置:B3 北東部
第一行動方針:見敵必殺
最終行動目標:守るんだ………………誰を?
※フェストゥムに同化された直後から参戦です。
※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。
 好きなように書いてもらって構いません。

【1:55】

458 :『  』〜くうはく〜 ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 00:54:24 ID:8bF1z/tJ
投下完了!
地味に初めてほとんど一人称で書きました。
至らない部分があればご指摘お願いします!

459 :『  』〜くうはく〜 ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 00:57:26 ID:8bF1z/tJ
すいません。>>455で、マークゼクスがマークドライにまってました。
次のレスに差し替えを

460 :『  』〜くうはく〜 ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 00:58:08 ID:8bF1z/tJ
乗っていたパイロットも死んだ。

そういう、ことだ。
この世界じゃ、人が死ぬのもおかしなことじゃない。
いや、俺たちの世界も同じだった。護りたくても、手を伸ばしても、お構いなしに死んでしまう。
俺だって、もう人を一人殺してしまった。あの赤い大きな機体のパイロット。
半球状のガラスレンズのようなコクピットの向こうに映っていた、バンダナと黒い髪。
俺より少し年上くらいだった気がする。
それを殺した。

「う……ぐぅ……あっっ……!」

死なせた――殺した――護りたかったのに。
違う――俺が守りたかったのは、あの赤い機体のパイロットじゃない――じゃあ、誰?
誰を、護りたかった――誰を護るために俺は人を殺した。

その場に突っ伏して、俺は吐いた。
あのときは我慢できた。あの時は、我慢できたのに、何かが壊れたみたいに止められなかった。
ここに来てから何も食べる気が起こらなくて、異の中は空っぽだった。
それでも、胃酸が、身体の中から溢れたものが、マークゼクスの上に広がった。

「あ……あ、俺は……!?」

マークゼクスにかかったそれを見て、俺は足がすくんだ。
単に、ファフナーに、俺たちが使う兵器の上で吐いてしまっただけだ。
大人たちは重要な道具と言い、俺たちの命より大切なみたいだが、俺からすればそんなことはない。
頭では、そう思っている。

なのに、どうしようもない恐ろしさが俺の身体を包んだ。
どうしても汚したくなかった何かを汚してしまった気がした。
ディバックから引っ張り出したタオルで、何度も何度も。金属の装甲に染み一つなくなっても、手は止まらなかった。
いくら拭いても、染み付いたものが取れない気がして。

人殺し。
人殺し。
人殺し。

誰もが――そう罵っているような。
誰かがいなくなることの意味を知っていたはずなのに。
それに、遺されたものがどれだけつらいか知っていたのに。
ディバックを、バルゴラに再び運ぶ。その時、ふと今度は自分の乗っていたバルゴラを見上げた。
こいつがあれば、本当は護れたんじゃないか。
あの男も、『  』も。それだけの力を、こいつは俺にくれた。
いつも、俺は遅いんだ。やらなきゃいけなかったことはできないのに、要らないことばかり。

461 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 01:01:59 ID:2QxecNh4
>>448-449
前の話で明確に破壊されたって記述がないなら後続の勝手だろうが
気持ち悪い奴らだな

462 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 04:27:17 ID:bKOS8EzG
投下乙
甲洋ぉぉぉぉ。悲しすぎるぜ
マークゼクスは翔子の機体だったもんな
このまま思い出せないままスフィアに命を吸われて行くのか

463 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 05:42:38 ID:OIStnVOj
4061 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 11:40:42 ID:???O
>>4052
えるしっているか現実は違う
二次スパはね、アインスケもね、インベーダーもね、脱出、首輪解除フラグ飛ばして会場崩壊もね、ある途中参加の人がブッパしちゃってね、
それまで秩序だった状況を根こそぎ変えたの。カオスなのはそこから。
インベーダー以後、書かれた話のトリを見てごらん? それまで主力だった人が多くて一話しか書いてないでしょ?どういうことか分かるか?
これが当時いた書き手の認識ですが。カオスカオス言うが実状違う。
それ知らずカオスと言われるとかなり腹立つんだけど。

4063 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 11:46:15 ID:???O
ああ、一次で順調に積み重なってた久保の鬱フラグをいきなり出てきて叩き割ったあの人ね
今回の騒ぎのSS書いた人も同じ人だっけ?

4064 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 11:50:06 ID:???O
話聞いてると単なる問題児にしか聞こえないw
うまくてもそういう人は色々回りが困るとは思うが

4065 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 11:53:15 ID:???O
>>4061
そうは言うがな、俺は当時あの展開には反抗的だったんだ
今まで組み立ててたプラモに超合金のパーツくっつけるようなもんだからな
しかしスレの空気的になんか止められなかっただろ
そのうちどんどんエスカレートしてまあいっかってなっちまったんだよ

4068 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 11:57:54 ID:???O
>>4065
すまん、当時書いてフォローすればいいと思って許容した俺も同罪か。
あそこまでエスカレートして止められなくなると思わなかったんだ。
二次スパ序盤、中盤が恋しいよ……

4076 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 12:04:17 ID:???0
もしかして今話題に挙がっているのってスパロワでかなりの量書いている人か?

4077 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 12:04:39 ID:???O
トリ変わってるけど中盤参加した人だよ、その人とくだんの人がインベーダー以後ほとんど書いてる。
各種設定のその他にある作者一覧見ればわかるよ


4081 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 12:10:29 ID:???O
二次スパじゃ読み手だったけど、ガンダムキングジェイダーしたあとの面子見て大丈夫か人事ながら心配したなあ
ほとんどフラグない面子でメインのキラシャギアなしだもの、最終回見たよくあれを立て直したと感動したぞ

ただし、オチはあれだと思うが

4085 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 12:14:08 ID:???O
超神の人が最終話書いた人で、それとは別のインベーダー書いた人か話題の人ね、
覚えた

4121 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 14:15:51 ID:???O
誤爆

初登場話でも突っ込まれてて、修正入ったけどおかしいままで、でもなし崩し的に通ったんだよな。
充分フォローできる程度だったから通って、実際にフォローされた。

……で、よりによって殺した話でフォローをスルーしてるのはどういうことなんでしょうね。
そもそもフォローとも気付いてないのか? どちらにしろ把握してないのは確実だけど。
そりゃ反感も爆発するわ。ついでで殺しておいたようにしか見えんし。



464 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 05:43:19 ID:OIStnVOj
4123 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 16:14:09 ID:???O
あー、うん。それで合ってるよ。
「ただ、初登場話の意味不明さに上手く収拾つけてるよなぁ」って思ってたら、よく見たら自分で撒いた種じゃねえか、と。

そりゃ、把握できてないキャラを書かなきゃならん場面はあるよ?
でもこの人の場合なあ……

4167 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 19:34:13 ID:???O
件の書き手の凄いところは予約スレの台詞だろ、序盤書き手も多いなか自己リレーしようとしてまずくね?と指摘され
「自己リレーが駄目とは書いてなかったんですが……まあ、そういうことなら予約は取り下げます」(原文まま)

もうこれだけでリレーに対しての意識のなさがわかる。今回で露骨にそれがさらされたが

4169 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/09(火) 19:38:19 ID:???O
その言い方はないわー、それに極力自己リレーしないにこしたことないとか
リレーの基本というか言外レベルのマナーだろ

4271 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/10(水) 08:44:05 ID:???O
今回のだけならともかく、今までの話やトリ変える前の他ロワの話まで叩いてたのはどう見たって異常だわ
それが読み手ならまだしも同じ書き手だとはな…

4281 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/10(水) 12:40:07 ID:???O
世間にどんな幻想を抱いてるのか知らんが、むしろそんなもんが普通だよ。
上手く行ってる内はちやほやされても、一度ヘマやらかせば過去に遡って叩かれる。
そういう社会が普通なんだから、社会に文句言っても始まらん。
一度のミスをしないよう、普段から行いに気を付けないといけないんだよ。

4312 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/10(水) 17:59:14 ID:???O
気がついたら久々のモチツケが発動してる件。
…やっぱりあの携帯、自演だったのかね。

4313 名前:やってられない名無しさん[sage] 投稿日:2010/02/10(水) 18:21:33 ID:???0
さも知らないかのように詳細を聞いたり、いま知ったかのような口ぶりだったりしてるのなw



4063 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4064 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4077 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4081 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4085 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4167 :モチツケ:モチツケ
モチツケ

4169 :モチツケ:モチツケ
モチツケ


これはひどい

465 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 08:45:31 ID:cEcHD+EJ
何で都合のいいところだけ抜粋して個人攻撃してんの
気持ち悪い

466 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 09:59:25 ID:Wx3sLXu0
というか向こうで誤爆してる馬鹿いい加減にしろ。
てめーで原因振り撒いてんの気づいてんのか?


ちなみに携帯規制がついに解けました。
やったねたえちゃん!

467 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 10:05:27 ID:Wx3sLXu0
ついでに感想をば。
こーよー、大分思い出したか。いよいよファフナー勢との遭遇が面白くなってきたな。
しかしこれだけこゆいイベントこなしてまだ放送いってないんだよなーw

468 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 10:32:08 ID:ULuzdqvh
>>465
匿名で個人攻撃とはこれいかに
むしろ個人攻撃してるレスの抜粋って感じだが

向こうで毒吐く→住民じゃないのが大挙してくる→ロワに愛着ないから荒れる
ってことがわからんのかね

469 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:38:00 ID:8bF1z/tJ
誰が俺のターンが終了したと言った?
ヒャッハー! 毒なんてくだらねえぜ! 俺のSSを読めえ!
いや、ほんとに。そんな話題引きずって楽しいか?

空気の入れ替えのためにも投下します!

470 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:39:16 ID:8bF1z/tJ

冷静さ。

それこそが、他でもない戦場で生き残る確率を上げるものである。
緊張から操作を誤る新兵も、奢り高ぶり無根拠に自分が死なないと思いこむエースパイロットも等しく死に近い。
死んでたまるか――そんな気持ちで支え合う仲間と、どんな時でも根拠ある生存の可能性に賭けたからこそ、バニングは生きていられた。
目元を抑え、静かに揉む。軽く眼をこすり、改めて視界を確認する。
もう、戦闘中に時折走るレッドアウト――視界の赤転化は今のところない。
エースと呼ばれるわけではないが、ベテランと呼ばれるまで戦ってきた。だが、その代償がこれだ。
ジム・カスタムでさえ時々加速のGでこうなることはあった。
この機体はジム・カスタムと比べものにならないほどの高性能機。
高性能機――逆を言えば、38歳になったバニングには重すぎる負担を強いる。

「まだ現役のつもりだが……」

今日明日の出来事ではないだろうが、半年後となった時、自分はまだモビルスーツに乗っていられるのか。
いや、それまでこの鋼鉄の棺桶の中で、生き延びることが出来るのか。
モビルスーツパイロットは、ジオンも連邦も関係なくモビルスーツのコクピットを『鋼鉄の棺桶』と言う。
撃墜されれば最後、そのまま自分の墓場になることも多いことから付いた皮肉だ。
実際、ア・バオア・クーではろくに訓練も受けていない、学徒動員の新兵たちの棺桶になってしまった。
それを決戦に参加したバニングも知っている。

渚カヲルの力で粉々になったクロスボーンガンダムの破片を見やる。
コクピットブロックが見つかるようなら、それごとでも埋葬してやりたいと思ったが、見つからなかった。
『棺桶』の一つもまともに用意できない――それすら残らない。
死んでしまってはすべて終わりだ。だが、それでも形だけでも死者へ安らぎを用意できないこの世界。

とことん狂っている。
現実でも同じと分かっていたにも関わらず、『わけのわからない化け物の力で殺された』ことのせいか、なおさら理不尽に思えた。
バニングやコウのような、悪く言えば通常のモビルスーツパイロットがどれだけあのような化け物と戦えるのか。
ベテランなどと言われる戦闘経験も、あくまで対モビルスーツを前提したものだ。
ここでは、ある意味バニングも新兵同然。

息を浅く吸う――ゆっくりと肺腑にたまった空気を吐く。
冷静さを求めて。

せめて、ショウの魂が彼の言っていたバイストン・ウェル(魂の故郷)へ還れたことを祈ろう。
軍人式の敬礼――しかし、ショウは軍人ではなかったのかもしれない。
こんなやり方しか知らない自分に少しだけ嫌悪を覚えながらも、目をつぶり黙祷する。

鎮魂の歌なくとも、派手な弔いはできなくとも、せめて魂の安息を。

ある意味、自分のようなロートルに相応しい見送り方かもしれない。
死者に必要以上に引きずられれば、自分が死者となる。
それは、死を望む心であることもあるが、多くは仲間を死者に変えた相手への怒りなどの激情でもある。


471 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:40:06 ID:8bF1z/tJ

まだ、自分も死ぬわけにはいかない。
若い連中の命を踏み台にしてまで生き残りたいとは思わない。
だが、それでも可能な限り冷静に足掻くこと。
それが行動としてのショウヘの手向け。

「あいつの……シルビアの料理もまた食べたいしな」

バニングのストライクノワールが、波乱万丈の乗るトライダーG7の場所へ飛んでいく。

海岸には、真っ二つになった天使ラーゼフォンと、死神ドクロのガンダムが遺された。







――カシャリ

ラーゼフォンの真理の眼が閉じる。
頭の翼は、再び顔を覆うように閉じる。
眠るように、ラーゼフォンは閉じる。
ラーゼフォンは眠っているだけだ。

渚カヲルがラーゼフォンとの再会を予感していたように。
ラーゼフォンも再び空に飛び立つ瞬間を予感し、今一時眠りに就くのだ。
胴体の断面を結び付ける何かがあれば――同化、再生する力や、生きている金属の力があれば。
直る――いや治るだけの質量があれば。

歌はなく、ラーゼフォンは眠る。
眠っている。

『死』は、遠い。



■



472 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:41:19 ID:8bF1z/tJ



「う……やれやれ、綺麗なビーチだけどここは天国……ってわけでもなさそうだね。
 生きているってことは、うまくいったってことかな?」

トライダーG7を再起動、万丈はゆっくり立ち上がらせる。
どうしてもしっくりこないのは、やはり自分の相棒ダイターン3ではないせいか。
落ちた衝撃で舞い上がりかぶさった砂を落としながら、トライダーが再び空に舞い上がる。
損傷はあれどなお陽光を浴びて燦然と輝く姿は、不死鳥の如く。

「……悪いが、とどめはさせなかった。俺の落ち度だ」
「……なんだって?」

万丈は、バニングの台詞に眉を寄せた。
結果を出せなかったバニングに対する怒り、ではまったくない。
純粋に、バニングの言葉が信じられなかったからだ。
何故なら、トライダーのカメラには、確かにあの渚カヲルの乗っていた白いロボットが真っ二つになって映っているのだから。
誰がどう見ても、撃墜された状態だ。パイロットもただでは済まないことは明白。
ましてここは開けた海岸。到底、見失うこともなさそうだが。

「渚カヲルの使うバリアの一つは、あの機体の力ではない、渚カヲル本人の力だった」

そう言って、バニングは説明する。
トライダーバードアタックの後、確かに自分はあの通り白いロボットを撃墜したと。
だが、その時バリアを張って空中に浮かびあがり、渚カヲルが現れたと。
そして、あの幾何学的で強固なバリアを再び当然のように生み出し、光の壁に消えたと。

「奴は言ってた。……波乱万丈にもよろしく、だそうだ」
「……こりゃ気にいられたみたいだね。あんまり嬉しくはないんだけど」

最後まで、万丈はあのカヲルの自信を崩すことが出来なかった。
絶対に死なないという自信から来るものだったのか、本当に生と死が同じものと考えていて恐れていないのかも知らない。
だが、万丈はカヲルに対して恐怖を抱いてしまった。背筋の凍るような威圧を、白いロボットと渚カヲルから。
結果として今回は万丈の敗北だ。

(確かに一敗はした。けど、まだこれからさ。次は必ず完璧に、ね。)

――次は勝つ。

人間は、化け物に負けっぱなしですましていられるようなものじゃない。
負けたのなら、そこから思考し、思案し、思索し、勝利を次の機会にはもぎ取る。
勝つまで繰り返し、恐怖を乗り越えるのだ。

万丈は、カヲルを嫌う。
ヒトの姿をした、ヒト在らざるものの存在が気に喰わない。
ヒトの存在をまるで全体から俯瞰するような口ぶりが許せない。
『恐怖』という感情を乗り越えるのではなく、捨て去ったような態度が許せない。
万丈は――渚カヲルの存在を認めない。

473 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:42:12 ID:8bF1z/tJ

身勝手なエゴをさも不変の法則として騙る少年の名前を、万丈は心に刻みつける。

「次の時には、本当に見せてあげるさ。抗いながら生きる人間の強さを。そして―――」

渚カヲルが消えたという光の壁の向こうを睨みながら、万丈は不敵にそう呟いた。
絶対に相容れない存在との結着を必ずつけると誓いながら。


「―――日輪の輝きを、ね」


トライダーG7もまた、万丈に合わせてにやりと笑った気がした。


■


「それで、これからはどうするつもりなんだ? 光の壁を越えて渚カヲルを追うのか?」
「いや、それはやめておくよ」
「……またどうしてだ?」
「バリアで相手を押しつぶせるなら、むしろ不意打ちするには小さいほうがいい。
 レーダーにかからない今追うのは、逆に危険だと思う。前、ちょっと似たようなことがあってね」

似たようなことがあると飄々と言ってのける万丈に、内心バニングは嘆息する。
生身でバズーカ攻撃などをしてくるゲリラなどと同じと言えばそれまでだが、無手の相手にその発想はすぐ浮かばなかった。
渚カヲルに襲われる前の話を聞くに、万丈は『そういうアクシデント』だらけの世界から来たのだろうか。
自分の常識なんてものは狭いものだと、この年になって思い知らされるとは、考えたこともなかった。
だが、そんな多種多様な常識の広さに慣れていかなければならない。

「なら、これからどこへ向かう?」
「……街へ行って人を集めよう。ああいう存在がいるとしたら、単独行動は危ない。
 非力でも、これをどうにかする知識を持っている人もいるはずだ」

そう言って、万丈は首輪を軽くさすったあと、同一エリア内にある基地を示した。
バニングも、言わんとすることはすぐに分かる。あのシャドウミラーへの反逆を考えるなら、首輪をはずすことは絶対条件だ。
そうでなければ、あの仮面の男のように自分たちも首を飛ばされて終わってしまう。
もちろん、それを連中に悟られても終わり。
だから、万丈は直接『首輪』を『外す』知識ではなく、『これ』を『どうにかする』知識と言ったのだろう。

「この殺し合いに積極的な人間からすれば、そういう人たちはまさに餌だ。補給もしたいしね」
「餌、か……」

温かい青年の口ぶりのどこかに、ほんの僅か冷たいものが混じったように見えたのは、バニングの気のせいか。
バニングは、敢えて聞かなかった。


――もし、知識も持たない非力なものだったら、そんな人々が自分とともに窮地に追い込まれたらどうするのか、と……

474 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:42:56 ID:8bF1z/tJ



【破嵐万丈 搭乗機体:トライダーG7(無敵ロボ トライダーG7)
パイロット状況:健康
機体状況:装甲を損傷、行動に影響なし EN残り30%
現在位置:A-5 海岸
第一行動方針:弱きを助け強きを挫く。ま、悪党がいたら成敗しときますかね。
第二行動方針:渚カヲルを必ず倒す
最終行動方針:ヴィンデル・マウザーの野望を打ち砕く。】
※地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました。


【サウス・バニング 搭乗機体:ストライクノワール@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER
パイロット状況:怒り
 機体状況:良好 EN消費55%
 位置:A−5 海岸
第1行動方針:街に向かい、人を探す
第2行動方針:コウ・ウラキを探す
第3行動方針:アナベル・ガトー、イネス・フレサンジュ、遠見真矢、渚カヲルを警戒
 最終行動方針:シャドウミラーを打倒する】
 ※地上マップのループに気付きました。また異世界からの召喚の可能性について聞かされました。


【一日目 11:00】

475 :人間として ◆i9ACoDztqc :2010/02/11(木) 10:44:43 ID:8bF1z/tJ
投下完了。10kほどの心理の掘り下げな短い繋ぎですが。
ところで、向こうでも聞いたんだが自己リレー予約ってどのあたりからおk?
一部時間的にも話数的にも取り残されてるやつもフォローしておきたいと思うんだけど……まだやっぱり早い?

476 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 12:09:47 ID:ZF0eFkHz
は、はええ……一日で2作とか……
どちらも心理描写がメインに置かれたいい話だったと思います
甲洋が悲壮すぎる……多少なりとも報われる事はあるのだろうか
バニングさんは渋いな
自分の限界というのがよく解っていながらそれでも足掻いてるというかそれがなんかいい
彼はやっぱ誰か若者と行動して欲しいな
万丈さんも若いはずだがとてもそうは見えんしね……

あんまり遅れてるようなら自己リレーもいいと思うのですが
前の中条さんとか、今なら……ウンブラ辺りがちょっと遅れてるのか

477 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 14:47:43 ID:TL2M2hPz
投下乙です

甲洋はきついな……報われるか、それとも更にドツボに嵌まるのだろうか
早く誰かと絡んで欲しい様なw

確かにバニングさんは渋いわw
それと万丈さんはカヲルくんをそう考えるのか。濃い因縁が生まれて先が楽しみだ

俺も遅れてるなら自己リレーもいいと思うよ

478 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 14:48:29 ID:8bF1z/tJ
すいません、状態表の位置の欄に間違えが……こちらに直します

【春日井甲洋 搭乗機体:バルゴラ・グローリー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:同化により記憶及び思考能力低下&スフィアと同調することで思考能力の一部回復
機体状況:EN80%
現在位置:D-2
第一行動方針:見敵必殺
最終行動目標:守るんだ………………誰を?
※フェストゥムに同化された直後から参戦です。
※具体的にどのくらい思考能力や記憶を取り戻しているか、どの程度安定しているかはその場に合わせて一任します。
 好きなように書いてもらって構いません。

479 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 20:39:16 ID:vIcznMhn
一日に二作投下、しかもどちらも面白いだと……
パ、パワーが違いすぎる……!

ゲロ吐いて自分でそれ拭く甲洋が何か好き

480 :それも名無しだ:2010/02/11(木) 21:12:59 ID:HKTyNOrB
投下乙
やっぱりスーパー系の奴等に囲まれてバニングも大変だよな…
どのロワでもそうだけど非力で技能もないってのは本当に邪魔になるだけだしなあ…
ってさりげなくラーゼフォンの復活フラグが立ってやがるw

481 :それも名無しだ:2010/02/12(金) 20:47:49 ID:yqdGACzu
予約とかけっこう来てるけど後はどの位で放送?

482 :それも名無しだ:2010/02/12(金) 20:59:02 ID:v/j4fiOr
203 :でもそれって名無しさんですよね?:2010/02/11(木) 21:19:55 ID:m2M.RfKc
投下予定日時

02/12(金) 23:56:39 ◆f/BUilcOlo-----中条、カズマ、ユウキ
02/13(土) 18:45:58 ◆s2SStITHHc-----ラカン、鉄也、シンジ
02/13(土) 17:24:43 ◆06elPxNp8E-----シン、プル、アポロ
02/13(土) 23:30:11 ◆xU6.oMeatg-----レイ、プルツー
02/14(日) 02:07:36 ◆yf/Zd4QyoM-----Dボゥイ、ディアッカ、クルーゼ、レイピア
02/14(日) 23:56:42 ◆Ujakh5O.Yc-----レーベン、ダイヤ、イルイ、テッサ
02/16(火) 17:58:00 ◆PfOe5YLrtI-----ジ・エーデル

予約可能なキャラ 放送は14:00

09:00 シリウス、ウンブラ
09:20 ジロン、ミスト
09:45 アックス
10:00 アルベルト、カナード
10:50 ヴィレッタ、イスペイル、ガトー
11:00 万丈、バニング、暗黒大将軍
11:30 ギリアム、ウォーダン
12:00 ロム、カノン
12:30 ヴァン、ルリ、ドモン、シーブック
13:00 翔子、プル、ティンプ
13:50 トレーズ、カヲル
13:55 甲洋


483 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:22:32 ID:GGGCEFr8
投下します

484 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:25:36 ID:GGGCEFr8
「おい、どうした、大丈夫か?」
話の途中で頭を抱え込み苦しみだしたカズマに、ユウキは純粋に心配する気持ちから声をかけた。
外面からは分からないだけで実は負傷している可能性は想定していたが、それが頭部とあっては大事に至りかねない。
多少の焦りも含み、うんうん呻るカズマの肩を掴んで真正面からその顔を見据え、さらに強く声をかけた。
ユウキの被った仮面の妙に前方向に突出した鳥の口ばしの様な部分がカズマの眼前に突き出される。
「あー、いや、痛むわけじゃなく……ちょっと嫌なこと思い出して……
 大丈夫、ほんと大丈夫だから……って言うか先っちょ当たってるから……」
微妙にユウキから視線を背けながら、ぐったりとした様子でカズマが言った。
実際には頭ではなく心の中の若気の至り的な部分がずきずき痛んでいるのだが、まさか『あんたの言動やら被り物やらが原因で古傷が抉られているんだよ』などと言える筈も無い。
カズマの言葉にユウキは釈然としない顔をしていたが、負傷しているわけではないのならと肩を放し、話を続けた。
「それで、だ。幾つかお前に聞きたいことがあるのだが、構わないか?」
「あ、ああ。良いぜ」
カズマにも聞きたいことはあったが、どうにも考えが纏まらない。ならば先に相手の疑問を解消しておくべきか。
「とりあえず、名前を教えてもらえるか」
「ん? ああ、まだ名乗ってなかったか。俺はカズマ・アーディガン。カズマで良いぜ。……で、ええと、あんたは、……J、だっけ?」
「そうだ」
「……そうですか」
恐る恐ると言った調子で訊ねたカズマに、ユウキは力強く肯いてみせた。何でそんなに自信満々なんですかあなた。
「ではカズマ。お前が気を失ってここに流れ着いていた理由を聞かせて欲しい。機体の故障か、それとも誰かに襲われたのか?」
「理由って言ってもな……正直、俺にも何がなんだか……」
はっきりとしない記憶を辿りながら、カズマは『襲われた』という言葉に引っかかるものを感じた。
何か、今すぐやらなければならないことがあった気がする。
そもそも自分は何のためにダン・オブ・サーズデイを呼び出したのか……そこまで考え、はたと思い至った。
「そ、そうだ! 俺こんなことしてる場合じゃねえんだ! 早くあいつを助けに戻らねえと! あれ、でもここ何処だ!?」
開け放たれたダン・オブ・サーズデイのコックピットから外の景色を見て取り、一面に広がる見覚えのない風景に困惑する。
「くそ、どっちに行けばあそこに、っていうか、え? 俺ダンに乗って、あれ? ええ!?」
「落ち着け」
慌てふためくカズマを宥めながらユウキは懐から取り出した地図を広げ、トントン、と一点を指し示した。
「地図で言うところのG-7にあるこの島、今俺たちがいるのはここだ」
愕然とする。カズマが覚えている自分が最後にいた場所はE-2の森の中にある屋敷だ。現在地はそこから三百キロメートルは離れている。
「こんな遠くにっ……いや、ってことは大体あっちの方向に行けば良いんだな! 待ってろよ、すぐに俺が!」
「落ち着けと言っている」
後頭部に一纏めにした伸びた髪をユウキに引っ張られ、
「あべしっ!」
カズマの首が、ぐきっ、と鳴った。
「お前は先程まで気を失っていたんだぞ。状況を把握するまで迂闊に行動させるわけにはいかない。詳しく話せ」
「そんな暇は――」

485 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:27:14 ID:GGGCEFr8
無いんだ、と返そうとして、そこでまた気付いた。太陽の位置が変わっていることに。
カズマがプルの襲撃を受けたとき、まだ陽は昇ったばかりで低い位置にあった。それが今は天高く昇りきっている。
気を失っていた、という言葉の意味が俄かに実感された。一体あれからどれだけの時間が経ったのか。
慌てて荷物から時計を引っ張り出し確認した。短針は十二時を少し過ぎた辺りを指していた。
プルに襲われたのはこの殺し合いの舞台に放り込まれてそれほど経っていないときのことだった。
カズマがあの場を離れてから五時間は経過している。
結果がどうあれとっくに戦闘は終わっているだろうし、彼らがいつまでも同じ場所に留まっているとは考え難い。
それを理解した途端、カズマの身体から先程までの勢いはすっかり消え去っていた。
「……お前が誰かの救援に向かうつもりだということは分かった。そういう事情なら俺も手を貸したい。
 ……何があったのか、話してもらえないか」
ユウキが幾らか語調を和らげ、肩を落としたカズマにそう言った。
気を遣われていると悟り、カズマは自分の中に堪らない情けなさが込み上げてくるのを感じた。
惨めな気持ちを吐き出したかった。鬱屈したものを他人にぶち撒けたところで現実は変わらないとしても。
そうして、カズマは訥々と語り始めた。自分の身に何が起きたのかを。
言葉の節々から、悔恨の念が滲み出るようだった。
「――――で、それから先はとにかく無我夢中で、気付いたらここに……」
「エルピー・プルに、赤い機体に乗った男か。成程」
大体分かった、と思案げにユウキは言った。
話を終えたカズマは自身の間抜けさ加減を自覚し、心底呆れる思いでいた。
結果的に自分は命の恩人をおいて一人で逃げた。
あのときカズマは生身だったのだから足手纏いにならないためにもそれは仕方の無いことだったかもしれない。
だが、最初からダン・オブ・サーズデイを呼び出せていれば。
そうでなくとも操縦方法をきちんと把握していれば勝手に動き出したりせず、すぐにあの場に戻って援護くらい出来た筈だ。
力が無かったことよりも、力が有ったにも拘らずそれを使いこなせなかった自分自身が、何より腹立たしかった。
話を聞く間、ユウキはこれといって感情を表に出すことはしなかった。
冷静を通り越して非情と思われかねない態度だったが、むしろそれで良かった。
同情にしろ侮蔑にしろ、今のカズマには辛過ぎる。無愛想な優しさが、ありがたかった。
そこで、ふと思い出した。
「そういえば、まだお礼を言って無かったよな」
「礼?」
「あんた、気を失っていた俺を助けてくれたんだろ? ありがとな」
「別に……お前を見つけたのはただの偶然だ。礼などいらん」
そう言って、そっぽを向くユウキ。その仕草がなんだか照れ隠しのようにも見えて、自然とカズマの口に微笑が浮かんでいた。
そんなことよりも、と言いながら向き直ったユウキが、カズマの顔を見て露骨にむっとなる。心外だ、と眼で言っていた。
ユウキが取り繕うように何かを言おうとした、そのとき。

486 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:29:39 ID:GGGCEFr8
「来ルゾ、ユウ! 敵機接近、敵機接近! 敵ガ来タ!」
今まで黙って周囲に眼を向けていたハロが、けたたましく電子音声を鳴り響かせた。
「な、何だぁ!?」
「ハロ、俺のことはJと呼べ!」
突然のハロの叫びに狼狽えるカズマを他所に、敵という言葉に反応したユウキがグランヴェールへと走った。
カズマはまだ機体の動かし方を把握していない。必然、敵が来たとなれば対応するのはユウキの役目になる。
丁度ユウキがグランヴェールに乗り込むのと同時、海中からその機体は現れた。
二人の機体と比べ、現れた機体の全高は倍近くあった。その巨体からは計り知れないパワーを持つであろう事が容易に想像できる。
手には何も持っておらず、全体を見ても武装のようなものは見当たらない。色取りは派手だが形は酷くあっさりとしている。
反面、そののっぺりとした容姿からは、どこから何が飛び出してくるか分からない不気味さを感じさせられる。
ユウキはグランヴェールを手早く起動させると、機体を動かそうと必死に操縦マニュアルを探すカズマを庇うようにして前に立った。
現れた機体は陸へ上がり、攻撃してくる様子も無く落ち着いた足取りでこちらへ接近して来ている。
「止まれ。それ以上近づくな」
言いながら、グランヴェールの両肩に誂えられた龍の頭部を思わせる部位を稼働させた。
現在グランヴェールの使える中で最大火力の武装である、カロリックスマッシュを放つためのエネルギーが集束していく。
相手の戦力は未知数。動けないカズマを庇いながらでは出し惜しみしている余裕など無い。
と、そこへ相手の機体がユウキの勧告通りに停止する姿が眼に入った。さらに通信が入る。
「驚かせてすまない。こちらに君たちに危害を加えるつもりは無い。一先ず、その物騒なものを下ろして欲しいのだが……」
モニターに表示される、ネクタイにワイシャツ姿のサングラスをかけた男の顔。
モニターの中で男は両手を上げ、それに合わせて男の機体も万歳の姿勢になり、戦闘の意思が無いことを示した。
それでもユウキは警戒を解かない。自分一人だけなら未だしも、動けないカズマがいる以上、選択を誤るわけには行かない。
男は武器を収める気配の無いユウキを見て取り、仕方が無い、と呟いた。
「では、これでどうだろう」
驚くべきことに男は自ら機体を降り、ユウキの眼前にその身を晒した。
あまりにも不用意なその行動に、ユウキはただ唖然となるしかなかった。カズマもあんぐりとした顔でいる。
機体から降りてしまって、もしもこちらにこのまま攻撃を加えられたら、一体この男はどうするつもりなのか。
こうなってしまっては流石に武器を向け続けてはいられない。生身の相手にカロリックスマッシュなど過剰防衛もいいところだ。
「一応、敵でないことは分かってもらえたかな。見たところ、君たちもヴィンデル・マウザーの言葉に素直に従うつもりは無いらしいな」
君たちも、という部分を気持ち強調してそう言った。
男は武器を下ろすグランヴェールの姿を見て胸を撫で下ろし、渋みのある笑みを浮かべた。
「……何が、敵が来た、だよ」
探し出した操縦マニュアルを手に持ち、ユウキへ視線を向けたカズマがぼそっと呟いた。
ちょっと睨むような目付きだった。
「む……」
何となく、ユウキの方が憮然としていた。
当のハロはといえばごろごろと転がり、知らぬ存ぜぬを決め込んでいた。
「私のことは静かなる中条と呼んで欲しい。長官でも構わん。とりあえず、少し話をしようか」

487 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:31:48 ID:GGGCEFr8

「中条さん、あんた俺のために……すまねえ、本当にありがとう!」
カズマが率直な感謝の言葉を述べる。
聞けばこの静かなる中条という男、カズマの乗ったダン・オブ・サーズデイが海に落下するところを偶々目撃していたらしく、今まで何時間もカズマを捜して海に潜っていたという。それも、目的地であるG-5の施設への到着を目前にして、である。
人命救助が最優先とは言うが、目的を変えてまで自分を助けるために尽力してくれた中条に、カズマはひたすら頭の下がる思いでいた。
「よしてくれ。私が見付けたときには君は既に助け出されていたのだ。礼ならそちらのユウキ君に……」
「Jです」
「失敬。礼ならばJ君にしたまえ。
 ……と、その後君たち二人の話しているところを見付け、しばらく様子を見ていたが結局は接触することにし、今に至る、というわけだ。
 たいした情報がなくて申し訳ないが、私の話はこのくらいだ」
「では、次は俺が話そう」
ユウキが名乗り出て、自分がこれまでに辿ってきた道程を語り始めた。
シャドウミラーへ対抗するため同盟を結ぶことを決めた三人は、それぞれの持つ情報の共有化を図っていた。
中でもユウキの持つ情報はシャドウミラーという組織の概要をはじめとし、有益なものばかりだった。
「……どこまで奴らが俺の知るシャドウミラーと同じものかは分からない。
 そもそも俺の知るシャドウミラーは既に壊滅し、ヴィンデル・マウザーも死んだ筈だ。
 殺し合いを強いることが奴らの唱える理想に繋がっているとも思えない。
 これらにカズマの言う未知の敵が関係しているのか、今のところはなんとも言えん」
話を聞いたユウキ以外の二人、特にカズマは怒りを露にしていた。
勝手な理屈で戦争を引き起こし、それを継続させようとする。それだけでも憤慨ものだというのに、そのうえ今回のこれだ。
どんな御託を並べているのか知らないが、それが一切共感し得ないものであることは頭を使わずとも分かる。
そんなものに今自分たちは巻き込まれ、そして命を落とそうとしている。とても許せるものではない。
父の仇である敵と関係があるのかどうかはこの際どちらでも構わない。シャドウミラーの背後にいるというのなら、まとめて叩くだけだ。
中条も顔にこそ出さないが、血の滲まんばかりに固く握られた拳を見ればその怒りの程が窺える。
ユウキの表情は、仮面の下に隠れて見えなかった。
「次に、転移装置についてだ。カズマは既に知っているようだが、よく聞いてくれ。ハロ、頼む」
「アイヨ!」
元気よく応えたハロが、口から泡のようなものを膨らませると、そこに映像が映し出された。
居住区のど真ん中に設置された巨大で異質なモニュメント。ユウキがc-3のコロニーで見た空間転移装置だ。
「これを使うことで地上と宇宙を瞬時に行き来できる。試してみたが間違いない。俺はこれでc-3のコロニーからここへ跳んだ。
 まだ確認はしていないが、恐らくこのG-7エリアや他のところにも同じものがあるのだろう」
自分の持つ空間転移装置の情報の正しさを実証するユウキの言に、カズマは深く頷き……
直後、ん? とユウキの言葉の妙な部分に気付き、思わず質問していた。
「その転移装置って奴、確か最初に設定された場所同士を繋いでるものなんだよな?
 使ったなら、このエリアに同じものがあるのかどうかってのは分かるだろ?」
「ああ、基本的にあれは初期設定された転移装置同士を繋ぐものだが、設定を変更することで出口を転移先の装置から若干ずらせることが分かり、それも試してみた。範囲は、転移先の装置から半径で十数キロメートル、といったところだ」
「成程。出口が一箇所に限定されてしまうと、待ち伏せを警戒して装置を使い辛くなってしまうからな」
補足するようにして中条が口を出した。
「ええ。その代わり、位置が範囲内で完全にランダムになってしまうのが難点ですが、転移先の状態を確認出来ないことを考えればベターな選択ではあります」
「ふむ……しかし、集団で行動する場合には、それでは少々問題がある」
「あくまで単独で動く場合でのベターです。集団ならば初期設定のままでの転移にも対応は可能です。
 複数の機体で同時に転移しそれぞれの死角を補い合えば、早々不意を衝かれはしないでしょう。
 他にシャトルを使うという手もあります。時間は掛かりますが、移動先も限定されません。ただ、」
「シャトルに乗った状態で敵の襲撃を受ければ、ろくに反撃も出来ずにやられかねん。
 なるべく転移装置を使った方が良さそうだな。我々に時間的余裕は殆ど無い」
「そういうことです。それから、UNについてですが――」

488 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:33:22 ID:GGGCEFr8
淀みなく進む中条とユウキの会話に、カズマは何となく肩身の狭い思いだった。
話を聞きながら、読み終えた手元のダン・オブ・サーズデイの操縦マニュアルに眼を落とす。
正直、機体の仕様については訳の分からない専門用語がやたらと並び、あまり理解できなかった。
とりあえず分かったのは、本来は個人の専用機であるものを誰にでも動かせるようにしてある、ということだ。
操縦方法自体はかなり感覚的なもので小難しい理屈は必要ないため、その辺りはカズマの性分に合っている。
隠された機能でもない限り、動かし方ならば完璧に把握できたと自負する。
これでもう二度と、敵を前にして命の恩人を置いて逃げるような無様な真似はしなくて済む。
心の中に、未だに燻り続けている思いがあった。
「――俺の話は、このくらいだな。カズマ、次はお前だ」
そうしているうちに、ユウキの話は終わっていた。
ユウキに話をするよう促されたカズマは、しかし、なかなか口を開かない。
聞こえなかったのかと思ったユウキは、今度は少し強めに声をかけた。
「カズマ、どうした。次はお前の話す番だ」
「……ん、ああ、そうか」
どこかぼんやりとした様子で返事をするカズマ。
「おい」
「あー、いや、悪い。俺の分は、さっきJに話した分で全部だからさ。お前から中条さんに話してくれよ」 
そう言いながら、つと立ち上がる。
「どこへ行く気だね、カズマ君」
「どこって……立ちションっすよ、立ちション。さっきから我慢してたもんで」
中条に特に気分を損ねた様子は無い。カズマは心の中で中条に謝罪していた。
「あまり遠くへ行くなよ」
歩み去るカズマに、ユウキがそう言った。
手を振って、それに答えた。

489 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:35:20 ID:GGGCEFr8

切り立った崖の上にカズマはいた。
ただその場に立ち尽くし、海原を見つめ、物思いに耽っていた。
背後から見ればその姿は立ちションそのものだが、立ちションではない。小便をすると言ったのは二人から離れるための方便だ。
自分がこれからどうするかを、一人で考えたかった。
果たしてこのまま彼らに付いていって良いのか、頭の中はそんな考えで占められていた。
決して二人を疑っているのではない。カズマにとって、ユウキと中条は信頼できる相手だ。どちらも自分を助けるために動いてくれた。
まあ、ユウキの方は何だか変な被り物をしているし自分のことをJとか言っているしでちょっとアレだが、ともかく。
彼らになら背を預けられる。いつどこで誰に襲われるか分からない状況の中で出会えた、目的を同じくする仲間。
だが、カズマが今こうして生きていられるのは、その二人のおかげだけではない。
何よりも、あのとき。エルピー・プルと名乗る少女に殺されそうになったときに助けてくれた人物。
彼がいたからこそ、今のカズマの命はある。
今から彼と別れた場所に戻ったところで、彼もプルもどちらもいないだろう。それはカズマにも分かっている。
それでもだ。何とかして見つけ出し、彼がピンチに陥ったところを救い、こう言うのだ。
『借りは返したぜ』、と。
受けた依頼は必ず果たす、金と恩と恨みは必ず返す。それが宇宙に生きるトレイラーの心得の一つ。
彼に借りを返す。それを為すまでは死んでも死に切れない。
そして、そんなカズマの自分勝手にユウキと中条を付き合わせるわけには行かない。
やはりこれしかない、とカズマは思う。
このまま二人には何も言わず別れて、恩人を捜し出し、借りを返す。彼らのことだ、言えば止めようとするに違いない。
それからまた二人に会えたなら、頭を下げて、改めて仲間にしてもらおう。二人が許してくれなかったら、そのときはそのときだ。
心は決まった。そして、そこから立ち去ろうと振り向き、
「カズマ」
後ろにいたユウキに声をかけられた。
「お、おう、どうしたんだ」
声が上擦ってしまった。いつの間に近づいてきたのか、まるで気付かなかった。それだけ考えに没頭していたらしい。
「お前が遅かったのでな。何をしていた」
「何ってお前、そりゃあれだよ。海が広くて大きいなぁってんで俺も大きい方したくなって、それでつい、ってなもんで……」
「…………」
「……冗談です」
ユウキに思いっきり顔をしかめられ、流石に申し訳なくなった。
「まあ、良い。中条長官と話し合い、目ぼしい施設を一通り調べ上げることになった。
 役に立つものが残っているかは分からんが、まずはやるべきだ。二手に分かれて行う」
「一通りって、全部調べるのかよ」
「そうだ。それと、お前の言っていた光の壁の調査もな」
想像するだに大変な作業だ。地上はおろか宇宙まで駆けずり回ることになる。
だが二手に分かれるというのなら、むしろカズマにとっては都合が良いかもしれない。
ユウキと中条には二人で行動してもらい、カズマは単独で動き恩人探しと施設の探索を同時に行う。
どちらもこなさなければならないのが辛いところだが、贅沢は言っていられない。その旨をユウキに告げようとする。
「俺たち二人は地上、中条長官は宇宙の施設を回る。すぐに始めるぞ。準備しろ」
カズマが口を開く前に、ユウキにそう言われた。
「ちょ、ちょっと待てって、俺は一人で良いぜ。中条さんとJが二人で……」
「俺たち三人の中で最も戦力が高いのは中条長官とダイモスだ。
 個々の生存確率を下げずに全ての施設を調査するには、これが限界だ」
慌てて抗弁するが、まるで取り付く島が無い。だからといって諦めるわけにもいかない。
自分の身に変えても恩人を助けに行く決心をした傍からそれを曲げてしまっては立つ瀬が無い。
しかし頭の切れるユウキに舌戦でカズマが敵う筈もなく、ことごとく反論を潰される。それでもしつこく食い下がった。
何度も何度も一人で行くの一点張りで、カズマの余りのうるささにうんざりした様子だったユウキが、ついに耐え切れなくなり、叫んだ。

490 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:38:23 ID:GGGCEFr8
「いい加減にしろ! お前のわがままを聞いている暇は無い! こうしている間に、何人死んでいるかも分からないんだぞっ!!」
「俺だってなあ!」
ユウキと中条に自分の勝手な行動で迷惑をかけたくは無い。そう思うからこそ一人で行くと言っているのに、何故分かってくれないのか。
傍から見れば、カズマの言っていることは駄々をこねる子供の主張そのものだった。
カズマとユウキ、どちらも自分が間違っているという考えは持っていない。完全な平行線だった。
「何故俺の言うことが分からないっ!」
「分からねえのはそっちだろっ!」
「地上と宇宙の施設の調査! 戦う者を止めながら仲間を集める! 戦えない者を保護する! お前を助けた人物を探す!
 シャドウミラーへの反撃の糸口を掴む! これら全てを俺たちはやらなければならない!
 お前の身勝手を許す余裕など微塵も無いっ! 自重しろカズマっ!!」
「なんだとこのっ………………ん?」
何か、変な言葉が聞こえた気がする。別に言葉自体が変なわけじゃなく、何でお前がそれを言うの? みたいな……
「あれ……お前今、何て? 俺を助けた奴を探す、って言ったか?」
「それがどうした」
ユウキはなお怒りの収まらない様子だったが、カズマの態度が急に変わったことに不審げでもあった。
「いや、だって俺もそうするつもりで、それで一人で行こうと……」
「……何?」
二人して、きょとんとしていた。
そのまましばらく、見詰め合ったまま突っ立っていた。
「……なぁんだよ、くっそぉ! それならそうと始めっから言ってくれよ!」
「どの口がそれを言う」
確かにユウキが最初にそれを言っていれば口論にはならなかった。
だが、カズマはカズマでひたすら一人で行くとしか言わず、何故そうしたいのかを述べなかったのだから、あまり人のことは言えない。
そもそもカズマが話の途中で抜けたりしたからこうなったわけで、ユウキとしては未だ腹の虫の治まらない心持だった。
「今のところ確実に仲間に出来そうな人物の情報は、俺の顔見知りの他にはあまりない。
 最初の場でヴィンデルに食って掛かったロム・ストールという男と、お前を助けたという男の二人だけだ。
 中将長官の言う衝撃のアルベルトという男は、一筋縄ではいかないらしいからな。
 そんな数少ない仲間の候補を無視するわけが無いだろう」
「あー、まあ、確かにそうかもな」
頭が冷えれば、カズマも相手の言い分の正しさに気付けた。何だかものすごく馬鹿らしいことをしていた気分になって来る。
「それにだ、お前の言う男の人物像に合致する人間が俺の元々の仲間に一人いる。
 お前を助けたのがあいつなのかは定かではないが、探してみる価値はある。
 ……というか、俺は先に言っておいた筈だ。誰かの救援に向かうつもりなら手を貸すと」
「いや、それはちょっとずるいだろ」
「ふむ、どうやら私が手を出す必要は無いようだな」
カズマがいつの間にか隣に立っていた中条に驚き、『うおっ!?』と声を上げた。
「食事も済ませたことだし、そろそろ出発しようと思ってね。挨拶に来た」
「え、食事って……」
「俺も既に済ませた。カズマ、お前も後で腹に詰めておけ」
どうやらカズマが二人から離れている間のことらしい。自分が原因だから仕方ないとはいえ、微妙に疎外感があった。
今更ながら途中で抜けたことを後悔していた。
「カズマ君、J君」
中条が二人の名を呼んだ。頼りがいのある声音だとカズマは感じた。
「本来ならば私は、君たちのような未来ある若者を守るべき立場にある者だ。だから、このようなことを言うのは非常に心苦しいのだが……
 現実として、私一人の力ではこの事件を解決することは難しい。協力し合える仲間が必要だ。
 君たちの力と可能性を、当てにさせて欲しい。……宜しく頼む」
そう言って、中条が二人に頭を下げた。
「任せてくれ!」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
カズマとユウキが、顔を上げた中条に力強く肯いて見せた。
中条の顔に、限りない大人の男の魅力を発散する、渋みを含む笑みが浮かんだ。

491 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:42:03 ID:GGGCEFr8

カズマとユウキは互いに自分の機体に乗り込み準備を整えていた。
中条は既に出発していた。とりあえずはG-7の施設へ向かい、そこを調査してから転移装置で宇宙へ上がると言った。
地図上からは分からなかったが、この島の地面にはかなり起伏があり、死角が多い。
今二人がいる位置からはG-7の施設は確認できず、中条の乗ったダイモスもまた視界から消えていた。
カズマがいない間にユウキと中条の二人で色々と取り決めがあり、ユウキはその説明を食事中のカズマにしていた。
「情報のやり取りは直接会って行うのが基本になる。UNを使うのは落ち合う場所と時間を連絡したいときのみだ。
 具体的な地名は書き込まず三人の間だけで通じるようにする。それと、なるべく三時間ごとにUNに書き込みを残す。
 これは生存確認のためだ。最後の書き込みから六時間経っても何も書き込まれなかった場合、相手は亡きものと判断する。
 連中が八時間ごとに放送で死亡者の発表を行うらしいが、その内容の信憑性を確かめるためでもある。最初の放送はもうすぐだな。
 どのような形で放送が行われるにしろ、聞き漏らさないようにしなければならない。特に立ち入り禁止区域とやらの情報は必須だ。
 それから、UN上での本人確認のため合言葉を複数決めておいた。内容は……カズマ? 大丈夫か?」
「お、おう、ドンと来い」
カズマは咄嗟にそう返したが、どう見てもいっぱいいっぱいと言った調子だ。食事もあまり進んでいない。
「……仕方が無い。後でもう一度説明してやるから、先に食事を済ませろ」
「悪い」
そう言って、荷物に入っていた非常食を口に運ぶカズマが、一口齧って顔をしかめる。
この非常食、ユウキの荷物にも同じものが入っていたのだが、はっきり言ってかなり不味い。殆ど水で流し込むようにして食べた。
カズマもそうして一口齧っては水を飲みを繰り返していた。
「少し、良いか」
ユウキがカズマに声をかけた。
「なんだよ、説明なら後って」
「説明じゃない。お前に、言っておきたいことがある。食べながらで構わない」
それなら、とカズマは再び食料に手をつける。
「カズマ、お前は単純だ」
「……ムグ?」
いきなりそんなことを言われ、カズマの動きが止まる。
「貶しているのではない。ただ、もっと警戒心を持つべきだと言っている。簡単に他人を信用すれば付け込まれる。
 ここではそれは死に直結する。疑心暗鬼に陥らない程度に他人を疑え。もしくは、不意を衝かれないよう常に気を張れ」
「ング……」
カズマが神妙な顔つきになり、姿勢を正した。ユウキが大事なことを伝えようとしているのだと察した態度だった。
「お前はあまりに隙だらけ過ぎる。少しは中条長官を見習え。あの人は、俺たちと話す間も一切隙を見せなかった。
 一定の信用を置きながら、完全に気を許しはしない。お前に求めているのはそういう適切な距離感だ」
「む、んぐ……そ、そうなのか?」
口の中のものを水で無理やり流し込み、カズマが言った。
カズマの性格からすると、中条が隙を見せないようにしていたことに気付く気付かない以前の問題だった。
そもそも信頼している相手の隙を窺うなどカズマは考えもしない。
「お前のその悪い意味での単純さは弱点になる。他人を信頼すること自体が悪いわけじゃない。
 お前の良心が、お前自身を殺すことになる。……良いか、カズマ」
カズマは、ユウキの言葉に真摯に耳を傾けている。
「決して、良心を踏み躙られるな。お前の良心を、殺されるな」
……話はそれで終わりだった。
カズマは腕を組み、思案する素振りを見せた。
水を飲み、一息つく。やがて、ユウキへ向けて口を開いた。
「なるべく気をつけるようにするけど……難しいだろうな。どうも、俺ってそういうの苦手でさ。
 それに、ほら、『弱点を無理に隠すな、それは弱点を教えるだけだ』、って言葉もあるし」
伝わっているような、いないような言葉だった。
ユウキが盛大な溜息をついた。呆れを隠そうともしなかった。
「でも、ありがとな、J」
そこへカズマの真っ直ぐな感謝の言葉が飛んできた。
なんともむず痒い感触をユウキは感じていた。だが不快感は無かった。
「……まあ良い。だいぶ話が長くなった。そろそろ俺たちも出発するぞ」
「そうだな。今頃中条さんも目的地について……いや、ちょっと待て」
カズマがそう言って、機体から降りようとしている。ユウキが制止の声をかけると、カズマが言った。
「ちょ、ちょっと立ちション! いやマジで! 冗談じゃないから! 本当悪い!」
そそくさと物陰に移動するカズマの姿を認め、また一つ、ユウキは溜息をついた。

492 : ◆f/BUilcOlo :2010/02/12(金) 23:44:22 ID:GGGCEFr8
「J、イイノカ?」
ハロが言った。カズマのことを言っているのではない。
実はユウキには一つだけカズマと中条には話していない情報があった。
ユウキ自身、そのあまりの胸糞の悪さに記憶から抹消したいと思っているほどのもの……マーダーランキングの存在だった。
ハロがそれをモニターに勝手に表示した。十時までに記録されたデータ。
「やめろ、映すな。……こんなもの、見るのは俺だけで十分だ」
「後悔スルカモ知レナイゾ」
「後悔、だと?」
確かに、と思う。
このマーダーランキングの情報を伝えなかったことで、事前に危険人物と判断できた者に中条やカズマが殺されたなら、後悔するだろう。
だが。逆に、本来手を取り合えたはずの者と疑心暗鬼から殺し合うような事態になれば、そのときもユウキは後悔する。
情報を伝えないことで惨劇を未然に防げないかもしれない。伝えることで惨劇が生まれるかも知れない。
どちらがマシかなど判断がつく筈が無い。結果がどちらに転ぶかなど分からないのだから。
ならば、ユウキは自分の心に従う。シャドウミラーの思惑通りには動かないという意志に。
「ハロ、絶対に俺以外の奴にこれの存在を言うなよ。言えば、俺がお前を壊す」
「オッケー」
理解しているのかいないのか。どこまでも能天気な機械仕掛けの音声だった。



【ユウキ・ジェグナン 搭乗機体:グランヴェール(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)withハロ軍団+ウッソのハロ
 パイロット状態:強い決意。ソルダートJのコスプレ、紅茶セット一式を所持
 機体状態:損傷なし、コクピット内がハロで埋め尽くされている、ハイ・ファミリア使用不可
 現在位置:G-7
 第一行動方針:地上の施設及び光の壁の調査、カズマの恩人探しの手伝い
 第二行動方針:仲間を集める(タスク、ヴィレッタ、ギリアム、ロム優先)、脱出方法を模索
 第三行動方針:己の名に恥じない勇気と強さを得る
 最終行動方針:『ユウキ・ジェグナン』として、打倒主催】

【カズマ・アーディガン 搭乗機体:ダン・オブ・サーズデイ(ガン×ソード)
 パイロット状況:背中に打撲、ヴァンの蛮刀を所持
 機体状態:損傷なし
 現在位置:G-7
 第一行動方針:地上の施設及び光の壁の調査、恩人(タスク)に借りを返す
 第二行動方針:どうにかプルを止めたい
 最終行動方針:殺し合いには乗らずに主催者を打倒する】

493 :代理:2010/02/12(金) 23:54:52 ID:MFIZ7/0e



(フフフ……私が見ているぞ。カズマ君、J君)
中条はまだ目的地に向かっていなかった。
一旦は向かいはしたが、カズマとユウキのことが気になり途中で引き返した。
わざわざ機体を降りて見つからないように匍匐前進で近づき、二人の様子を見ている。
中条が出発する前、カズマとユウキが些細なことから口論になっていたのが気になっていた。
そのときはすぐに解決したが、あの調子ではまた言い争いになるのでは、と考えた。
(……どうやら心配は要らなかったようだな)
無事に出発する二人を見送り、胸を撫で下ろす。

(カズマ君、くれぐれも無茶はしないようにな。J君、いつか、君の本当の名を呼ぶことを許してもらえるときが来るのを待っている。
 二人とも、しばしの別れだ。……また生きて会おう)



【静かなる中条 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス)
 パイロット状況:良好、シズマの存在しない世界に違和感
 機体状況:良好、マグネットコーティング済み
 現在位置:G-7 
 第一行動方針:G-7地区の施設の調査、その後宇宙の施設の調査
 第二行動方針:信頼できる仲間を作る
 最終行動方針:バトルロワイアルからの脱出】


【一日目 13:00】



494 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 00:16:18 ID:C7IdNHJw
投下乙
なんとおちゃめな長官ww
ユウk・・・Jとカズマはいい感じにやってけそうだな

495 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 00:26:27 ID:V0mE3HLH
投下乙
対主催も小グループの結成が目立ってきたな
これからどれだけの参加者が宇宙に出るのかも期待

そして長官にうっすら地球が燃え尽きる日臭がw

496 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 00:38:23 ID:xeteRp/g
投下GJ!
カズマとユウキはいいコンビだなあ……w
長官もいい大人全開だし、かっこいいwてか、覗くなよwwww

497 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 01:00:23 ID:KjEleUSI
長官がダンディかつどこか嫌らしい家弓声で再生されるw 
つか書き手さんのIDが勇者w

498 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 13:28:43 ID:9DIzFuqG
情報の秘匿が後々に裏目に出るかもなー、ユウキ
まだわからんけど

499 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 13:49:39 ID:hOwzgCfa
長官、最後何やってんだw
そこまではかっこよかったのにwww
それぞれの性格や頭の良さ悪さが伺えて面白かったです、投下乙!

500 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 15:37:59 ID:gSMdH6kE
投下乙、
一言だけいうと字が詰り過ぎでものすごく読みにくい。
改行と行間をあけるって知ってるか?WIKI収録時は直してくれよな。

501 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 18:59:34 ID:dOBcqSov
とゆとりは言ってます

502 : ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:22:05 ID:icim2nxM
tes

503 : ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:24:02 ID:icim2nxM
おお書き込めた、ラカン、シンジ、鉄也投下します

504 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:25:15 ID:icim2nxM


崩れ落ちる橋を眺める事、二度。
ラカン・ダカランは、D-4の森林の中に隠された補給ポイントで息を潜めていた。
この森の中にポツンと設置されていた施設は、上空からは発見できない仕組みであった。
その施設は、地下ドッグ補給拠点とでも言うべきもの。
木々の合間に潜み立ったピラーに触れると、地面が陥没して地下への扉が開くようになっている。
エネルギーを節約する為、グレートを飛ばさずに歩かせていたからこそ、ラカンはここを発見できたのだ。
無論、ただ隠れていただけではない。ブレーンコンドルで周囲の様子を見回り、ENチャージまでの暇を潰していた。
謎の巨大生物二体の戦闘で、橋が崩落したのもしっかりと目撃し、見つからないように慎重に帰還したのがつい先刻。
ラカンはブレーンコンドルをグレートにドッキングさせ、オートに任せた補給作業の進展状況を確かめる。

「まさか、あちらの橋も落ちるとはな……向こう岸に行くには、スクランブルダッシュで飛んでいくしかないか」

ピピピ、とブレーンコンドルのコックピットに電子音が鳴り響く。
失ったマジンガーブレードの代えも入手し、たった今エネルギーの充填も完了した。
シン・アスカの猛攻によって腹部に空いた穴だけはどうしようもないが、
適当な鉄材をグレート自らの腕と機能で溶接することで、なんとか体裁は整えることに成功した。
ふと、ドッグの片隅に放られた海賊を模したガンダムの、もはや屑鉄の山にしか見えない残骸を見越す。

「……上手く作動すればいいがな」

崩れた橋から逃れて海岸に降りたラカンの前に、偶然流れ着いていた獲物。
獲り終わった標的とはいえそれなりに役には立った、とラカンが呟き、不敵に笑う。
コックピットから抜き出し、海に捨てたジャミルの死体は既に魚のエサだろう。
鎮座させたグレートから降り、ドッグの片隅の電子端末に歩を進めるラカン。
手馴れた様子でパネルを弄り、補給システムのプログラムに若干の付加要素を足し加える。

(結局、『髪の毛』達には遭遇できなかったからな。いや……むしろ好都合。俺の存在を知られる必要はない)


505 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:27:06 ID:icim2nxM

ラカンが補給システムに施した改竄は、実に簡潔なもの。
誰かが補給を行った時、その対象の機体に、『シン・アスカは危険である』という情報を流す。
具体的には、シンの機体の詳細なデータ、海に放逐する前におさめたジャミルの死体の画像などを、だ。
更におあつらえ向きな事に、どうやらこの島の補給地点はイントラネットのような物で繋がっているらしい。
ここで設定したトリガーが、あるいはどこか別の補給地点で発動するかもしれない。
ラカンは自分が貴重な時間を潰して得た情報を活用することに喜びを覚えながら、パネルを叩き続ける。

「シン・アスカ……俺のグレートに傷を付けた貴様の罪は、やがて贖われるだろう! 貴様の死によってな!」

仕上げに「探しニュータイプ:プルとプルツーを保護してあげてください」と書き添え、己が善人である事をアッピール。
ラカンは高笑いしたい衝動を抑えながら、ブレーンコンドルに戻る。先ほどの偵察飛行を無駄にする気はない。
あの橋を崩壊させた首謀者達は戦闘を停止し、互いに満身創痍で立ち尽くしていた。
上手くすれば一気に二人もの手負いを消せるのだ、急がねば!
ラカンは一部だけ青色に変わったグレートの脇腹の装甲を忌々しげに睨みつけ、叫ぶ。

「行くぞ、魔神よ! あの化け物共の血で、すぐにお前の恥部を塗りたててやる! 感謝するがいい!」

グレートの目が雄雄しく光り、スクランブルダッシュが展開。
魔神と化した勇者が、ドッグの入り口から飛び立った。
加速。加速。加速。加速。到達。淘汰。
目視できた敵は一人。『角突き』の怪物のみ。
もう一体……『ニヤケ顔』の反応を探り、近くにいない事を悟る。
突如飛来したグレートに動揺する『角突き』に、迷わずに突撃。
交錯する魔神と人造神が、両手を組み合わせて膠着した。

「貴様!」

「死ね」

ラカンに、獲物と言葉を交わす趣味はない。
怒声を上げる『角突き』のパイロットが飛ばす通信を遮断し、ラカンは――――。



506 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:28:33 ID:icim2nxM

◇

『シンジ……』

「うるさい! うるさい! うるさい! 今考えてるんだから静かにしてよ!」

『す、すまん……』

ここは海底。
海底である。
いかなる顛末か、碇シンジは再び、静かで平和な海底に舞い戻っていた。
ゆらゆらと揺れるワカメを再生したゼルエルの腕で斬り飛ばしながら、狂ったように癇癪を起こすシンジ。
だが、名状しがたいその激情もやがては収まる。シンジが鉄也について思考を廻らせるころには、
彼の操り人形たる使徒・ゼルエルはその動きを完全に停止していた。

(あの鉄也さんって人は……あんなに強いのに……なんで、僕なんかに情けをかけるんだ!)

碇シンジは、自分に優しくしてくれる人間に出会った事がない。少なくとも自分ではそう感じていた。
かりそめの親愛を向ける者や同世代の心を重ね合わせようと迫ってくる者あれど、それら全ては自分を裏切る。
虐げられ、突き放される事が日常。一時のやすらぎを得ても、次の瞬間にはその安寧は破壊され、崩壊した。
葛城ミサト。碇ゲンドウ。赤木リツコ。惣流・アスカ・ラングレー。綾波レイ。加持リョウジ。鈴原トウジ。
そして――――最後のシ者、渚カヲル。彼らの誰が、最後まで自分の側にいてくれた?いてくれる?
誰も、最も近しいミサトさえ、自分を愛してなどいない。ただ、利用しているだけだ、とシンジは吐き捨てて。
しかし、彼はそれを心のどこかで否定する。誰も側にいない、誰も自分を愛さない。そんな事はありえない、と。
自分はここにいていいのだと、碇シンジは自己を肯定してきた。それゆえに、今まで生き延びてきた。
だから、彼は幾度選択を強要されても、期待された通りの答え(ベスト・アンサー)を出し続けた。
本物の愛など知らないから、他人に期待して、他人に期待された結果を返す事しか出来ない。
そんな虚しい無言のキャッチボールで信頼は、ましてや愛情など、絶対に生まれないのに。
それでもシンジは、望みに望み続けた。都合のいい未来を、都合のいい現実を。補完された、最善の世界を。

「でも……それは、間違いだったの、かな……」


507 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:31:44 ID:icim2nxM

『強さ』。
シンジが鉄也に感じたそれは、彼の価値観とは大きく食い違うものだった。
碇シンジにとっての強さの象徴とは、例えば碇ゲンドウ。息子を省みず、理不尽な命令で死地に追いやる、鉄面皮。
例えば葛城ミサト。自分達の命をも作戦に組み込んで道具として扱う事のできる、冷血徒。
例えば惣流・アスカ・ラングレー。自分の才能を、能力を信じて疑わないことが出来る、天才肌。
自分とは異質な、攻撃的で排他的な性質。それが強さなのだと、碇シンジは信じていた。
その強さを求めて、馬鹿もやった。そうして他人に迷惑をかけて、やはり自分に強さはないのだと、落ち込みもした。
だが、鉄也が垣間見せた『強さ』は、自分が接したあらゆる物と相容れない、愚直な物。
ゲンドウもミサトもアスカも、殺意をむき出しにした物の前で武器を捨てるようなことはしないだろう。
相手を説得する? それは結構だが、シンジだって、丸腰でそんな事をするほどバカではない。
剣鉄也は、愚か者だ。現に、自分を説得した後、体力的に限界だったのか、気絶したようだった。
その隙に彼から逃げ、こうして引きこもっている自分もまた愚か。鉄也と自分は、同じ、同じはずなのだ。
だというのに――――なぜ、鉄也の愚行は、こうも自分の心に響く?

「わからない……わからないよ……」

シンジが声に出すが、それは嘘だ。シンジは誰よりも、鉄也と自分の違いを知っている。
強さと弱さの違いを、知っているのだ。ならば、なぜ嘘をつくのか? 答えは明快、怖いから、だ。
シンジはきっと、その気になりさえすれば、鉄也と同じ強さを得られるだろう。
いままで自分が心に描いていた『強さ』とはまるで異質ながら、自分でも手に入れられると思える『強さ』。
だが、それを得てしまえば、自分はきっと自分でいられなくなる。
望んできた都合のいい現実も、都合のいい未来も、想像すらできなくなるだろう。
有り体に言えば、「大人になる」ような物だ。子供である事の心地よさを知っていれば、そうそう踏み込める筈がない。
それでも。剣鉄也の姿は、碇シンジの目に、余りに眩しすぎたから。

「……そうだ。逃げちゃ、駄目なんだ。誰かに期待しておいて、自分には期待しないなんて……駄目なんだ!」

今、シンジは初めて、本当の意味で「逃避」を「否定」した。
追い詰められ、極限を超えた超極限状況にまで落ち込んで初めて、心を成長させた。
視界が変わる。あんなにも畏怖していたゲンドウたちの強さが、手に取るように理解できる。


508 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:33:33 ID:icim2nxM

「ミサトさんも、父さんも、アスカも! みんなみんな、正しかったんだ! 僕が世界に『いてもいい』んじゃない、
 この世界があるから僕がいて、だから僕も、それ以外の人もきっと正しいんだ! そして、その正しさがぶつかって、
 嬉しい事や悲しい事が起こるって! それで、それでっ! セカイに僕達の生きた証が残るって、わかったから!」

もう、居場所はいらない。進む道に足跡が遺せる、だから自分は前に進めると、碇シンジは確信したから。
立ち止まる為の場所がなくても、自分の「正しさ」に殉じる事で、心の澱みを清め、迷いを断ち切れると知ったから。
                                       ...............
裏切られるかもしれない、傷付けられるかもしれない。だが、 それがなんだというのだ。

「W14ッ!」

『はいな〜?』

「僕はもうシャドウミラーの言いなりにはならない! あいつらと戦って、その上で生き残る! 何か文句はある!?」

『……お前が生存するなら、私にとってはどんな展開でも構わん。好きにすればいいが……不可能だぞ? それは』

「可能だよ! 僕は可能だって信じる!  決 め 付 け る ッ !  もう僕は……前しか向かない!」

『シンジ……っ!』

W14が、感極まったようにシンジに薫陶の眼差しを向ける。
絶対に茶化されると思っていたシンジは不思議そうにその視線を受け止め、やがて微笑んだ。

「笑おう、W14。僕達には、きっとこれから沢山辛いことがある。だから、今は……笑おう、W14」

『そう……そうよ、ね……い、いや、そうでありますですのことよ!』

肉壁のダミープラグ内が、笑顔エナジーに満たされる。
特にシンジの笑顔は、すべての憂いを断ち、すべての喜びに向けて輝く、オリジナル笑顔であった。
そんな歓喜に満ちた静寂を打ち破るように、ゼルエルが二機のロボットの反応を捉え、嘶いた。
もはや、シンジは迷わない。強きを援け、悪きを砕く。
その鉄の決意と共に、海上から空気泡を伴なって突入してきた二機を見据え……初号機の姿を捉えた。
自分との戦闘後よりも、かなり傷ついているのがわかる。

「鉄也さん……!」

シンジはすぐさまゼルエルの出力を上げ、鉄也の下へと駆け出した。




509 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:38:40 ID:icim2nxM

◇

剣鉄也が目覚めた時、そこには誰もいなかった。
初号機は、パイロットの意識が途絶えた事で機能を停止し、地べたに倒れている。
不覚にも、説得の途中で気絶してしまったのか。鉄也は歯を食いしばって周囲を見渡す。
だがゼルエルは、宙を浮いていたはずだ。足跡などあろうはずもない。
初号機を起こしながら、バン! とダミープラグの壁を殴る鉄也。

「俺としたことが……なんたる失態だ! あと少しで、奴の胸のうちを聞けそうだったのに……」

ふと、刺すような痛みを感じて腹部に手をやる。
どうやら肋骨がいくらか折れているらしい。気絶して初号機ごと倒れた時にでも無理をしたツケが回ったのだろうか?
しかし、内臓に刺さっているような感覚もないし、痛みを気合で押さえ込めばそれほど戦闘に支障はないはずだ。

「……だが、奴には間違いなく、俺と同じ、孤独を味わった者同士のシンパシーを感じた。
 今度会った時には、必ず説得できるだろう……『今度』があれば、だがな……」

気を取り直し、初号機を走らせようと操縦桿を握る。
が、どこに行けばいいのか……橋は二本とも落ちているし、逆方向に進んで基地部へ向かおうか……と、思った矢先。
鉄也の直感音と、それに先んじた初号機の敵襲警告が、鳴り響いた。
敵機は上方。空から来る相手のようだ。

「このスピード、進行方向……間違いなく俺に狙いを絞っていやがる! ……っ!?」

初号機を反転させ、敵の姿を確認した鉄也の顔が驚愕に染まる。
何故なら、そこには……。

「グレート……マジンガー……!?」

自分に向けて突撃してくる空の勇者の威容に、迂闊にもATフィールドの発動がならず、
初号機とグレートが手四つで膠着する形が生まれる。

「貴様! グレートを使って何のつもりだ!? まさかミケーネの……くそっ、通信に応じる気はなしか!」

無言で襲いくるグレートを前に、鉄也に僅かな逡巡が走るが、手加減して勝てる相手でない事は、
鉄也自身が一番良く知っている。ATフィールドを展開、とりあえずグレートを弾き飛ばして距離を取った。


510 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:41:57 ID:icim2nxM

「バリアーとはな! 手負いの獣はなんとやら、か!?」

対するラカンも、地面に極太の線を引きながら後ずさるグレートを制御して、立ち止まらせる。
同時に、臍からネーブルミサイルを発射。十数発の一斉射は、しかしフィールドを貫けない。
とはいえ、ラカンの狙いはフィールドの突破ではなく、煙と土埃による眼くらましと足場の破壊。
案の定、エヴァ本体を完全に守りきったバリアーも硝煙や崩れた足場を解決する事は出来ないようだ。

「もらったぞ!角突きッ!」

バランスを崩し、視界を失った初号機の側面から、マジンガーブレードが突き入れられる。
ATフィールドを揺らし、ヒビを入れるほどの突き。だが、ラカンの猛攻はそこで終わらなかった。
ブレードを持っていない方の腕を高速回転させ、ヒビの入った部分に突撃させ、削り喰らわせる。
ガリガリ、とATフィールドが破れる音を聞きながら、ラカンは更にブレードを振り上げ、大上段に構えた。
鉄也も負けじとマゴロク・E・ソードを取り出し、先手を打って斬りかかるが、その動きはラカンに読まれていた。
軽々と大剣を避わされ、それとほぼ同時にドリルプレッシャーパンチによって、ATフィールドが完全に消滅していく。

「真っ二つ!」

「くっ!」

振り上げられたブレードを初号機もまた、しゃがんで全力で回避しようとする。
しかし、崩れた足場に足を取られ、完全にかわし切ることは出来なかった。
初号機の頭部の角が分断され、鉄也の額に焼けるような痛みが走る。

(ほう……? 今の動き、もしやこいつは……)

獣のような動きで後退し、自分を睨みつける初号機の瞳を、ラカンが目視する。
その瞳には、突然襲われた怒りよりも強いであろう悪意が篭っていた。
明らかに、こちらを……グレートマジンガーを、必要以上に注視しているのだ。

(表情まがいのものまで備えるとは……高性能も考え物だな。お陰で、次の行動が読みやすい。それに……)

ラカンが物は試し、と言わんばかりに、グレートハリケーンを発動させる。
鉄也は一瞬硬直したが、すぐさまマゴロクを地面に突き刺し、再びATフィールドを張って暴風に備える。
だが、グレートハリケーンが発動する事はなかった。引っ掛けだ、とラカンが愉快そうに漏らす。

(やはりこの敵パイロット……俺のグレートの事をかなり知り尽くしているな。元の持ち主か?)


511 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 19:47:01 ID:icim2nxM

一年戦争からグレミーの反乱まで生き延びてきた彼、ラカン・ダカランには、彼なりの戦闘理論がある。
機動兵器同士の対決では、人間同士の対決以上に、"間合い"が大事となる。
先ほどの初号機の動きは、明らかにマジンガーブレードの縮尺を知っていたから出来たこと。
かくいうラカンも、一年戦争に従軍していたころから、敵主力MSの武装を知り尽くし、
自機の性能を出し切って生き延びてきた。目の前の初号機は、かっての自分に重なるような動きをしていたのだ。

(……まあ、なまじこちらの性能を知っていると過信しているなら、好都合だ……)

「あくまで通信に応じる気はないか……ならばっ!」

鉄也が吼え、初号機も同じく吼える。
シンジが乗っていた頃には起こらなかった現象だ。
シンクロ率も限りなく100%に近づいていき、初号機の運動性能がさらに向上していく。
初号機がその態勢を四足歩行形態に近づけ、高速でグレートに向けて接近する。
グレートも動き回る為、まさに鬼ごっこといった風情であった。
マゴロクを投げ放ってマジンガーソードを弾き、牽制で発射されるネーブルミサイルを回避しながら、接近する。

(グレートの弱点は、スクランブルダッシュの収納部分だ。そこを突けば、この敵を無力化する事は容易いだろう)

(更に、この距離から攻撃できる武器は……!)

そしてついに鉄也が、初号機が、グレートを捕縛した。
正面から抱きつくように、両腕で両腕を押さえ、体を弾丸にしてアタックする。
無論、普通にこの態勢になっていれば、グレートがブレストバーンを放って初号機といえど溶解していたかもしれない。
だが、鉄也も何も考えずにグレートに飛びかかったわけではない。
グレートと初号機は、ほんの数秒宙を舞い……次の瞬間には、海中へとダイブする運命に囚われていた。

(なるほど……水中では、サンダーブレークもブレストバーンも威力減衰は免れないからな。下で殺る気か)

宙を舞う数秒の間に、ロケットパンチの類を使わせないようにグレートの腕を掴んでいた初号機の腕が離れ、
ラカンが駆るスクランブル・ダッシュ収納部へと伸びていく。自分の機体の弱点は、自分が一番良く知っている。
絶体絶命の筈だったが、宙空のラカンに焦りはない。

「度胸はある。技術も、閃きも申し分なし……だが……若い!」

「!?」

ラカンの檄が飛ぶと同時に、初号機の左腕が焼き切れた。
                                       .........................
グレートマジンガーの脇腹の簡易装甲を突き破って飛び出した、金色の光を放つビームザンバーによって。

(馬鹿な……グレートにこんな装備、はっ……!)

「聞こえていないだろうがな、小僧。戦争とは創意工夫あるのみ、だ。冥土の土産に覚えておけ」

補給作業用の簡易マニュピュレータによって振り回される、クロスボーンガンダムX1のビームザンバー。
その動力源は光子力エネルギーに代えられており、本体そのものが光子力エンジンと直結している。
故に、その威力も推して知るべき破格の光刃。容易く初号機の強化装甲を切り裂いたビームザンバーは、
役目を終えたとばかりに細かい爆発を起こし、完全に機能を停止した。一度きりの、正しく腹中の切り札であった。

「さて……この状態で海に落ちて、どちらが不利か。試してみるとしようかね!」

「ぐっ……!」

深手の初号機に、先制のニー・インパルスキックが炸裂する。
腹部と、頭部、そして左腕への激痛。
破格のハンデを背負った剣鉄也が、まず水中に没した。


512 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 19:56:13 ID:Vb3EOEbG
支援

513 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 20:03:02 ID:icim2nxM


◇


剣鉄也は、しかしあきらめない。
当然だ。彼が生きる事を諦めれば、シン・アスカはどうなる? あの少年はどうなる?
道を誤った者が、即・悪になると、鉄也はそんな風には考えたくなかった。
なぜならば、自身がその過ちから抜け出し、勇者と名乗れるほどの魂を取り戻せたからだ。

(こんな機械のような、戦うためだけの俺ですら、正道に戻れたんだ……他の者を、戻せないはずがない!
 俺は死ぬわけにはいかない! 甲児くん、ジュン……! ここには救える者と倒すべき敵がいる! 力を貸してくれ!)

足が残っている。だから、立てる。
腕が一本残っている。だから、敵を引き裂ける。
目が、鼻が、口が残っている。だからきっと……また、笑顔になれる日が来る。
戦い続ける勇者の、ちっぽけな願い。戦いに死ぬ事が決まっていても、最期は仲間達と、最高の笑顔で。

「その為には……グレート! お前が相手だとしても、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ、俺は!」

シンクロ率が、低下していく。無理もない。鉄也自身、意識があるのが不思議な状況なのだ。

それでも、初号機は鉄也の熱く燃える血に応え、右腕を上げ、グレートに向ける。そして――――!

........................
応えた者は、初号機だけではなかった。

「君は!」

「鉄也さん……!」

初号機の背後、海底から凄まじい速度で迫る天使。
それは、鉄也が先ほど心を通わせた少年の乗る機体≪テーゼ≫。
まさかまた水中に引きこもっていたとは想定外だったようで、鉄也の表情が驚きに染まる。
最も、ラカンの驚愕はその比ではない。まさかここに来て増援……撤退すべきか、と思考が弱く染まりかけ……。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


ゼルエルの腕が伸び、初号機とパイロットの神経接続に不可欠な部分を的確に貫き、同時にエントリープラグを完全に粉砕する。

自分の機体の弱点は、自分が一番良く知っている。

シンジは迷いなく"そこ"を狙い、鉄也は驚きの表情のまま死んだ。それだけの事だった。




514 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 20:04:42 ID:icim2nxM


◇


「……」

『……な、ぜ。何故、剣鉄也を』

ラカンは絶句し、W14は目を瞬かせて、たった今一つの命を貫いた両腕をしげしげと眺めていた。
碇シンジは、号泣していた。

「だっ……って……もう、戦えなくなっ、戦えなくなってたから……うあ、強い鉄也さんは、いなくなっちゃったから……」

すすり泣く声を、ラカンはもちろん拾っていた。
通信回線を開きっぱなしにしていたゼルエルから漏れてくる声は、聞こえはするが理解は出来ない。
誰に言うともなく、ラカンが呟く。その声は、あらゆる意味でシンジには届かない。

「なんだ……お前は……」

「強くなくちゃ、戦えなくちゃ、自分の正しさは貫けない……鉄也さんが教えてくれた、セカイで一番大事なこと。
 だから……辛いけど、強くない人や、道を誤った人は殺さないと、いけないんだね。僕の正しさの邪魔……なんだから」

『シンジ……』

逃げなくてはいけない。ラカンの危機回避神経が全開でそう訴える。
相手は、人間ではない。なにか、もっと……想像を絶するような、禍々しい な に か だ。
が、グレートを全速で反転させて逃げようとしたラカンの"耳"に、更に禍々しい光景が広がる。

「W14。あの初号機にも、S2機関はあるんだよね?」

『……そう聞いている』
 ....
「食べて」

『わかった』


515 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 20:06:31 ID:icim2nxM

単純明快な発想……創意工夫とすらいえない。一つよりは、二つの方がいいだろう、とか言って。
ゼルエルの口が閉じ、次に開いた時、本来存在しない牙、舌、喉が顕現する。
ラカンは、振り向いて"それ"を見る事ができなかった。
何か、バリボリ、と、何かを、何か、が、齧るような、音が、背中越し、に、聞こえる、だけだった、、、、

むしゃ、むしゃ、むしゃ。

むしゃ、むしゃ、むしゃ。

『 ご ち そ う さ ま 』

ラカンは、叫び声を上げながら逃げだした。
逃げても無駄なのにね、という声が耳元で聞こえた気がした、おれはもうくるっているのか?
何かが伸びて、グレートを捕まえる。サンダーブレーク。効かない。海だもの。ブレストバーンも、同様。海だもの。
大丈夫だ。ラカンは自分に言い聞かせて、ブレーンコンドルで離脱する。
水面を越え、空に出られた。ほら、大丈夫だった。振り向いた。ゼルエル?がいた。

「ううううううあああああッ!……絶対に逃がさない……! 鉄也さんの仇ッ!」

「殺したのはお前だろうが! 子供が、狂ったかッ!」

「お前が居なければ……お前が鉄也さんをあんな目に合わせなければ、鉄也さんは僕と一緒に戦ってくれたんだ!」

『そうだな。私もそう思いますの。レッツ・ジャッジメントですの』

判決は死刑だ。
当然だ。自分と、徹底的に相容れない誰かの正しさ="悪"は、殺して排除するしかない。
鋼の意志と、刃金の心を与えてくれた剣鉄也の為にも、碇シンジは止まらない。止まらないのだ。

止まらなかった。ラカン・ダカランは、死んだ。

ブレーンコンドルを投げ捨て、ゼルエルが上空へと舞い上がる。
同時に、ゼルエルの体内で、二つのS2機関がせめぎあっていた。
これらは、元々同一の物だ。同じ世界の同じ物は、同時に二つ以上存在できない。
絶大なエネルギーを放射しながら対消滅するはずだ。しかし、ATフィールドがそれを許さなかった。
融合しようとする二つの機関を、ゼルエルが体内で産み出したATフィールドが覆い、食い止める。
異様に膨れ上がった"力"は、ATフィールドの激流と共に体内を暴走し、やがてゼルエルの両肩から噴出される。
それは、まるでATフィールドが形成する翼のように見えた。しかし、天使のそれではない。悪魔のそれでもない。

その翼は、人間の翼≪あるはずのないもの≫だった。そうとしか言いようのない、視界に入るのもおぞましい物だった。


「……もうすぐ、うっ……放送……」

『ああ』

S2機関増量の副作用でなんかさらに巨乳になったW14は、微笑んだ。シンジに言われたとおりに。
シンジはまだ、泣いていた。
泣きながら、打ち捨てられたマゴロクとマジンガーブレードを拾っていた。
遺志は受け継がれるものだ。それが勇者の遺志という、重く、強いものならば、特にそうだ。

ただし、受け継がれ方は、選べない。




516 :人間(リリン)のテーゼは残酷に ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 20:08:52 ID:icim2nxM


【剣鉄也 搭乗機体:エヴァンゲリオン初号機(新世紀エヴァンゲリオン)
 パイロット状態:死亡 ミンチよりひでえ
 機体状態:大破
 現在位置:D-4 海底】


【ラカン・ダカラン 搭乗機体:グレートマジンガー(グレートマジンガー)
 パイロット状況:死亡 ミンチよりひでえ
 機体状況:ブレーンコンドル完全破壊、本体大破、EN40%
 現在位置:D-4 海底】

【備考】
D-4周辺の補給地点に、ラカンがトラップを仕掛けました。
補給を行うと、その機体に何らかの形で以下の情報が伝わります。
�@シン・アスカの情報
�Aスレードゲルミルの情報
�Bジャミルの死体の画像
�C探しニュータイプ:プルとプルツーを保護してあげてください


【碇シンジ 搭乗機体:第14使徒ゼルエル(新世紀エヴァンゲリオン)
 パイロット状況: ハ イ パ ー ヘ ブ ン 状 態 
 機体状況:ゼルエル=S2機関双絃共振励起型、マゴロク・E・ソード、マジンガーブレード所持 W14=特になし
 現在位置:D-4南西 島 上空
 第一行動方針:強くて正しい、鉄也さんのような人を探して仲間にしてもらう(ただし、他人には多くを期待し過ぎない)
 第ニ行動方針:悪人、足手まといな人は積極的に殺す
 最終行動目標:自分の正しさを貫き、強くて正しい人たちと共にシャドウミラーを打倒する】
 ※カヲル殺害後から参戦です。
 ※このまま上昇していくと大気圏を離脱します。

【W14(ゼルエルXX)について】
ゼルエルとの神経接続により、ゼルエルの受けたダメージはW14にもフィールドバックするようです。

【一日目 13:59】

517 : ◆s2SStITHHc :2010/02/13(土) 20:10:01 ID:icim2nxM
以上で投下終了です。支援ありがとうございました

518 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 20:18:13 ID:xeteRp/g
て、鉄也さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
やばい予感はしていたが……これはいいバトルロワイアル。
ラカンも皮は残したがなんと無残な……すげえおもしろかった、GJ!

けど状態表自重しろwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

519 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 20:27:59 ID:Vb3EOEbG
投下乙
なんてこった…勇者も軍人も母さんも皆喰っちゃったか…
シンジも新劇みたいになるかと思ったが…こうなるとは…
良い作品でした乙

520 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 20:48:54 ID:/kOxxTku
どうしてこうなった……どうしてこうなった!?www
シンジの思考がいろいろとすごすぎるwww
「鉄也さん……! 死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」ってレーベンwww
状態表自重wwwww

521 :それも名無しだ:2010/02/13(土) 22:07:48 ID:2XaPI9Nf
投下乙

途中までこれは熱血展開かなとと思ってたらなんじゃこりゃあ!!
シンジ、おま……確かにウジウジするよりマシかもしれないがこれは…
鉄也は可哀そうだが道化かな? ラカンもさすがにびびって当然だよな…

522 : ◆yf/Zd4QyoM :2010/02/14(日) 04:24:35 ID:gfFwto2M
test

523 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:25:18 ID:gfFwto2M
投下したいと思います

524 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:26:52 ID:gfFwto2M
「早く逃げてくれ隊長!!」

ディアッカの声にはいつもの平静は無く、酷く興奮している。
眼前にいる白い悪魔、テッカマンブレードは何も言わず近づいてくるのみ。
ディアッカと比べると落ちつきすぎているぐらいで不気味だ。

「あいつを殺せないなら早く逃げてくれ!!」
「どうしたんですか!?私はあの人の妹です!」

ミユキが前に乗り出し、そう言うとディアッカは褐色の顔に恐怖を浮かべる。
だがすぐに語気を強めて言い返した。

「あいつが襲ってきてジュドーを殺したんだよ!こっちはなにもしてないのに!!」
「なんですって!!」

ジュドーとは彼の仲間のことであり、また彼が嘘を吐いてはいないとはすぐに分かった。
しかし自分の知る兄が人を殺したとは思えなかった、ラダムではなく人を。

「はやくしてくれ!!奴はこんなのよりデカイ奴でも倒したんだよ!」

ついにディアッカはヒステリックに喚いた。しかし時既に遅し、ターンAはテッカマンブレードからに逃げられそうには無い。


クルーゼには言葉でディアッカを落ち着かせる暇は無かった。というよりも二人の会話などほとんど耳には入っていなかった。
モビルスーツごしにでも伝わる、隠そうともせず獣のようにまきちらし続ける殺気。
ミユキから聞いていた外見的な特徴は多少の差異はあれど確かに合致した。
しかしこれほどの、キラヤマトを相手にした時ですら感じることはなかった凶悪さを感じとれば、
それまでの道程に考えていた妹想いの優しい兄を利用する、などという愚かな目論見は潰えた。
しかもこの者は,テッカマンとしては不完全体であったと聞いた。
ならば少なくともこれ以上のテッカマン、あと2体の完全体がここにいるということになる。
なるほど、予想以上にこのゲームで勝つことは難しいというわけだ。

とクルーゼがこのゲームで優勝することの難しさを実感したとき、ブレードはターンAに対して直線的に向かってきた。
それに反応してクルーゼの思考は、なにをするよりもまずディアッカの入った球をどうにかせねばならないという点に行き着いた。
考える時間は無い。多少の距離はあるが、我々とテッカマンブレードの距離はすぐにゼロになってしまうだろう。
ならばどうする。どうすればディアッカを救い、かつこの場を切り抜けられるか。
クルーゼの意識はミユキへと向かう。間違いなくあの者に対処するためにはこの少女がキーとなる。
ではディアッカは?足手まといをかばいながら対応するか?相手の技量が低いならばともかく、あれほどのものを相手には不可能だ。

「しかたがない…ディアッカ!」
「はい!?」
「いくら私でも君をかばいながらあの者に対応することはできない。よって…投げさせてもらう!!!ショックに備えたまえ!!!」
「えっ!隊長ぉぉ!!!!!」

ディアッカの表情は更なる驚愕で歪む。
クルーゼは彼が何を考えているのか分かった。また投げられるのかと。
しかしクルーゼはディアッカの抗議の声には耳を貸さずにターンAで野球選手さながら
腕を振りかぶり全力で白い球体をテッカマンブレードとは反対の方向にその右腕で投じた。
事がうまく行けばすぐに迎えに行くと心中で伝えながら。
そしてターンAガンダムをテッカマンブレードに向けた。




525 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:28:16 ID:gfFwto2M
◆
ミユキから聞いていたボルテッカを一度放ったテッカマンは無力であるという情報は全く役に立たない、とその動きを見て思う。
向かい合ったはいいものの、獲物を見つけた獣は疲労を感じさせず、間違いなく脅威であった。
だがその空中からの急接近を阻む手だては、ほとんど残されていない。
ビームライフルなどはジロンに渡していて、碌な牽制の手段すら無いからである。

クルーゼは思わず下唇をかむ。

あの時、譲渡は地図や食料までにしておけばと考えながら、秘匿していたビームドライブユニットを前方に放つ。
空中へと拡散された赤いビームの奔流は、しかしテッカマンを捉えることは無い。
無い物ねだりをしている場合ではないとクルーゼは考え、そして背部のシールドを左手で取り出した。
次の瞬間、そのシールドをテックランサーが叩く。

どうにかコクピットへの一撃を押さえたものの、その小柄な体に似合わぬ力。確かにディアッカが言ったことは嘘ではないようだ。

ターンAがブレードの攻撃をシールドで抑えた瞬間を狙い、右の手刀を振り下ろしたが、ブレードは軽く後ろに動いただけで難なくかわしてしまった。
ターンAは十分な勢いで振り下ろしたため体が流れてしまったが、その勢いは殺さずに更に手刀で追撃をしかける。
しかしそれはブレードの両刃のテックランサーで受け止められてしまった。
クルーゼがターンAの出力を上げ押し切ろうとすると、ブレードはターンAから安全圏である高さまで飛び距離をとった。
そしてテックランサーを投じるがターンAはそれを手刀で弾く。
ブレードの攻撃がまるで決着を急いでいるかのようにコクピット一辺倒であるため、クルーゼならば弾くことは容易であった
しかし当のクルーゼはやられたままでは気がすまず、機体の状況を確認する。


(ターンAは悪くない。よく動けているし、テッカマンとも渡り合えている。ならば隙を見つけてどうにかしたい。
幸い、むこうの焦りは手に取るように分かる。技を出し惜しみし、簡単に殺そうとしているせいで動きは粗くなっている。尻尾を出すのも遅くは無いだろう)


クルーゼの分析は正しかった。
ブレードはこれまで戦い続けた。バイオトリケラ、ステルバー、ライディーン。
いずれにもブラスターボルテッカを放ってきたが、本来、ライディーンには放つ予定は無かった。
だがディアッカを逃がし、粘り続けたライディーンを完全に葬るにはブラスターボルテッカが不可欠だった。
ブレードからすれば逃がしたラダムを早く追って殺すために撃たざるを得なかったのだから。
その結果、ブレードには多大な負荷がかかり、本人が予想した通り、思ったように動けなくなっていた。
しかしそのような状態でも憎きラダムを前にして引くに引けないブレードの事情が彼の焦りにつながっていた。
ジュドーの無駄かと思われた粘りは本人が死んだ後になってようやく形となって表れたといえる。

そしてブレードが集中力を欠いた行動をとったのもその直後であった。
ブレードがテックランサーを取り戻すためテックシールドよりワイヤーを出し引こうとするが、
ワイヤーがランサーに届く前にターンAがワイヤーを掴み引っ張る。
ブレードは少なからず驚いていた。敵からすれば糸のように極細のワイヤーを掴まれるなどありえないはずだった。
ターンAがワイヤーを掴めたことは奇跡に近かったが、その原因はブレードにもあった。
普段のブレードならば自身とランサーの間に、しかもランサーの近くに敵がいる時にワイヤーを伸ばしたりはしない。
疲労のせいで動きのみならず精神的にも問題がきたしていた。
ブレードがそれを無視し力任せにテックワイヤーを自分のほうに引き戻そうとするのに合わせてクルーゼはタイミングよくワイヤーを離した。

「ミユキ君、少々揺れるぞ」
「っ!」

返事は聞いていなかった。
ブレードはクルーゼがワイヤーを離した瞬間に、力任せに引っ張ってしまったせいで空中でバランスを崩していた。
クルーゼは脚部のバーニアを噴射、ブレードがいる空中へと大ジャンプをした。
今度は装備の無さから後手に回っていた自分から攻めてブレードに手刀を放とうとしたのだ
普通はそんな無謀なことはできない。空中においてはターンAよりもブレードの方が明らかに優勢。
ブレードがバランスを崩したのは一瞬であったし、その一瞬でブレードに接近し手刀を叩きこもうなどと普通のMSではできないことであった。
そもそも可能であったとしても、失敗したときのリスクを考えてしまえば決断することすらできないだろう。


526 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:29:18 ID:gfFwto2M
だがターンAは過去にウォドムと交戦した際にミサイルをハンマーで防いだ次の瞬間に大跳躍をしたこともあり、
クルーゼのブレードへ接近するための跳躍も不可能ではなかった。
それに一般人が無謀だと思ったとしても交戦している当のクルーゼは違う。
今この瞬間こそがこのテッカマンにまともに攻撃を与えられる唯一の隙である、と先ほどのテッカマンとの短い戦いで確かにそれが分かった。
この機を逃せば後でどんな地獄が待ち受けるか。クルーゼには想像もしたくないのだ。

跳躍したターンAはブレードと肉薄した。
立て直すことに気を取られていたブレードが急接近に気づいたが遅い。
ブレードの体はターンAの手刀をまともに受けてしまい、地に叩き落された。
それによって巻き起こる砂塵。ようやくミユキ君と話す余裕ぐらいは作れたようだ、とクルーゼは深く息を吐いた。

「激しく動いてしまってすまなかったね、ミユキ君。大丈夫かね?」
「私は大丈夫です。それよりクルーゼさん!!」
「ああ…君の兄君は激しめのスキンシップを好むようだね。…こちらとしては遠慮したいんだが」


砂塵のほうを見て思う。
手刀は確かに奴にクリーンヒットした。ターンAとブレードとの大きさは約10倍違う。少なからずダメージを与えたはずだ。
だが決して安心してはいけない。彼をわれわれの常識で図ってはいけないのだ。
今はこうして見下す形となっているが、下手をすればそれは逆であったに違いない。
できることならば今すぐにでも彼に向けてビームドライブユニットを放ちたいところだった、ミユキがいるせいでそれはできずにいるが。
それにしてもあの時はああしたものの、武装を取り上げられ、加えてコクピットが剥き出しになっているターンAでは、
本来接近戦を挑むべきでは無かったのだ。この結果は本当に相手に助けられたものであった。
クルーゼはそのようにこの戦いを結論付けた。


しかし戦いはまだ終わってはいなかった。


◆


全身が痛くて痛くて、言うことを聞いてくれない
体は重いし辛い。
それに今、俺は一人だ
一人は嫌だ
昔から皆と一緒にいるのが好きで、いつも誰かと一緒だった
寂しい
もうやめたい
もういいじゃないか
俺は頑張ったんだ
ラダムを倒して倒して、倒し続けて
そろそろ休んだっていいじゃないか、誰も俺を責められない
家族を殺さなきゃいけない俺が一番辛いんだから

…でもここで俺がラダムを倒さなければ皆はどうなる?
まだテッカマンを全員倒していないのに、俺がここで死んだら家族である皆を誰が救ってやるんだ?
いや,そもそも家族でない赤の他人が皆を殺したところでそれは救いにはならないんだ
俺が殺さなきゃきっと皆は救われない
兄さんだって妹だって弟だってきっとまだ苦しんでいるんだ
こんなことぐらいで…こんなことぐらいで…






527 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:30:35 ID:gfFwto2M
◆
ブレードはテックランサーを杖代わりに立ち上がった。
戦意が失われていないことを表すかのようにブラスター化は解かれていなかった。


予想していたとはいえ私は驚いていた。
あの一撃で戦意を削げたと思っていたが…
まだ戦う気とは何ということだ。もしも接近戦になってしまえば先ほどの手は使えまい。

「ミユキ君、彼にビームを放つ。いいね?」
「待ってください!いま、いまそんなことをしたら…」

ミユキが言おうとしていることは分かる。
今、ビームを放てば確実に相羽タカヤは死ぬだろう。
それをミユキに聞いてしまったのは失敗だった。
聞かずに撃ってしまえばよかったのだ。いつもの私ならばそうしていたはずだ。私もまた少し焦っていた。

「先ほどはうまくいったからいいものの、次もまた彼を倒せるとは限らないのだ。私が彼を逃せば、更なる被害が生まれてしまうかもしれない」
「でも!」
「彼が今、どんな状態にあるか。それが分からんキミではあるまい」

ミユキにそう言っても聞き入れようとしない。
当然だ。普通、兄が殺されようとしているのを黙ってみているはずも無い。
ならばミユキに話をさせてみるか。私はそれも悪くないと思っていた。
もし運良く彼が彼女に説得され仲間になってくれるのであればそれでも構わないし、そうならなかったとしても…
幸い、機体には私と彼女の会話が録音されている。
これを聞けば彼女の兄の状態がおかしい事は容易に汲み取れるだろうし、
最悪、彼女の身にどういった不幸が訪れようと、私は責任を回避できるだろう。
彼女をあずかっているということを考えれば、
下手をすればジロンの信頼を失うかもしれないが、兄との対話を彼女自身が望んだならば?
ジロンは止めようとし続けた私を責めることはできまい。
あの男はミユキの兄への想いを私以上によく知っているはずなのだから。
それに彼一人に嫌われようと、あの時点ではミストは自分を信頼していた。
探していたディアッカという駒も、酷く衰弱した状態ではあるが見つけた。
ミユキを捨て彼らに会ったとしても、いざとなればどうにでもなると思う。
だが話をさせるにしてもそれを切り出すのは私からではなく――――――――

「だったらクルーゼさん、行かせてください!!」

おや

「しかし、君が出たとしても彼が収まるとは思えない」
「私は同じテッカマンですから、きっとなんとかできると思います」

だ、駄目だ。まだ笑うな…

「だがね、私はジロン君に君を任せられているんだ。そんな根拠も無い理由で君を簡単に」
「いまお兄ちゃんは危険な状態なんです!!私が行かないと!」

こらえるんだ…、し…しかし…

「…分かったよ。君の兄を想う気持ちには負けた。恐らく彼とて傷は浅くないはずだ。
だが私も同伴する。彼が君を襲うならば…。それが条件だ。いいかね?」
「いえ…私がお兄ちゃんを引き付けるのでクルーゼさんは先程の方を!」



528 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:31:41 ID:gfFwto2M
本当にミユキに付いていこうと思い、言ったわけではない。
予想通り、優しいミユキが私をこの場に留めておくはずは無かった。
ディアッカは確かに見ようによっては危険な状態であったし、放置しておけば誰かに何もできずに殺されてしまうかもしれない。
そう長く待たせてはおけないと彼女も思ったのだ。

「仕方が無いな…。部下のことで迷惑をかけてすまない」
「そんな…謝らないでください」
「口惜しいが分かった、ディアッカと機体のことは任せてくれ。君の兄君とて疲労困憊。
恐らく逃げようと思えば逃げられるはずだ。危ないと思えばすぐに逃げなさい。合流は…」
「雪原の市街地で大丈夫です。絶対にお兄ちゃんを連れて行きますから」
「ああ、救えるよう頑張ってくれたまえ」

こうして私はテッカマンブレードから離れる口実を得た。
極限状態で小芝居を打つのもなかなか大変なものだ。
彼女はどうやら本気で兄を説得するつもりらしい。
…若さとは恐ろしいものだ。

◆
最初は漠然とした夢だった。
お兄ちゃんからにじみ出る憎悪のほとばしりを感じたのは。
あの時、私はあのお兄ちゃんがそれを人に向けているなどとは思いもしなかった。
でも、それが今では私たちに向けられている。
いざ、お兄ちゃんの前に立つと決意は揺らいでしまい、視線を右手に逸らしてしまう。
右手には本来の私の赤色のテッククリスタルではなく、お兄ちゃんの緑色のテッククリスタル。
これはお兄ちゃんと出会うまでは使うつもりなんて無かった。
その輝きを見ているとジロンさんの顔が浮かんだ。
太陽みたいに明るくて、純粋で、輝いていてクリスタルを託そうとしたのに拒否して、ついには売っ払うとか言ったあの人。
でも生きることを諦めかけていた私を励ましてくれて自分で届けろと言ってくれたあの人。
そして手伝ってくれた、おせっかいなあの人。
この殺し合いの地で、最初の人間にやられてしまった後にあの人に会えてよかったと胸を張って言える。
今はここにいないけど、それでも言葉通りわたしの奥の部分で付き合っていてくれていると感じる。
覚悟は――――――――決めた。

「テックセッタァァーーーーーーーー!!!!!!!!!」

ミユキがターンAのコクピットを飛び出て空中で右手を掲げ、叫ぶと朱色のローブは弾け肢体があらわになる。
16歳という年齢に似合わず発達した胸。芸術品のように繊細かつ穢れを知らぬ白さ。
儚げな美しさを持つ姿はまさに美の化身というべきだ。それをクルーゼの赤いサングラスは映し出した。
ピンク色の光に包まれ、腕から徐々に侵食されていき、すぐに体全体が侵食されていく。そして胸を侵食し、最後に顔が仮面に包まれた。
ピンク色の光がかき消されたとき、そこにいたのは朱色と白色からなるテッカマン、テッカマンレイピア。
いまここに、テッカマン同士、兄と妹が直に対面した。



529 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:32:35 ID:gfFwto2M
     ◆
「テッカマン…」
やっと逢えた。宇宙からの侵略者、ラダムの生体兵器。
ラダムによって犯された物。
家族の仇。親しき者の仇。


―――――――――――家族よ


「テッカマンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!」

こいつが3体のうちの誰なのか―――――――分からない。
こいつは俺にとって何なのか―――――――分からない。
こいつの俺との思い出とはどういったものか―――――――分からない。
こいつに対して俺がするべきことは何か――――わかる

ターンAによって痛めつけられてしまったブレードではあったが、レイピアを見つけるとまるで息を吹き返したかのように声を上げた。
ターンAに対して反撃をしかけようとしていたブレードは狙いを変え、レイピアを優先する。
レイピアもそれを察すると、クルーゼたちを危険に晒すことはできなかったので、空を飛びクルーゼたちから距離を取る。
その隙にクルーゼはディアッカを迎えにいった。
ブレードは、驚いたことにレイピアにもクルーゼに対しても何もせず付いてきていた。
彼はなによりもまずテッカマンとの戦いを重要視しており、横槍が入る心配がない状況は好ましかった。
そしてブレードが何もしなかった理由としては、正々堂々とテッカマンを打ち破りたかったこと。
これに尽きる。背後から撃つなどと、そんなことをして恨みが晴れるわけが無い。
加えて先ほどの交戦から、ヒゲのラダムが消えてくれるというならば余計なことをしなくても良いと思ったのだ。
もっとも消えたからといって攻撃される可能性が消えるわけではないのだが…ブレードはそこまでは考えなかった。



十分な距離をとった後、ミユキが口を開いた。

「タカヤお兄ちゃん!」
「貴様に兄と言われる筋合いはない!」

馴れ馴れしいテッカマンめ。と心の中で毒づくもこの声はどこか懐かしい、とブレードは思った。
そのようなことを考えられる余裕がブレードにあったのは、すぐに力の差を見極めたからだ。
強敵との戦いを重ねて、ブラスター化までしているブレードと、それまで戦闘を全くこなしておらずブラスター化もしていないレイピア。
例えブレードが満身創痍であったとしてもその差は歴然。
だが本命を前にしたブレードは、冷静であろうと努めた。
十中八九勝てるだろうが相手はテッカマン。何をするかは分からない。
敵がいい加減な言葉を弄するというなら真っ向から否定する。
それがブレードの選択だった。

「私よ、妹のミユキよ!」
「違う、俺の妹の名前はミユ…」

俺は何を口走ろうとしているんだ。
俺の妹がこんなテッカマンが言う名前であるはずがない。
では妹の名前は?分からない。さっきの名前は?でも違うに決まってる。

言葉に詰まり、かえって心を乱されることになったブレードはそれを無視する。

「そんなことはどうでもいい!俺の妹なら、なぜラダムと一緒にいるんだ!あいつはラダムから拒否されたというのに!!!!!!」
「なぜそれを!?それより何を言ってるの!?ラダムなんてどこにもいないわ!!」
「とぼけるな!」
「あの人たちは人間よ!!」
「ふざけろおおおぉ!!」

激昂のままにテッカマンブレードは装甲を変形させる。

530 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:33:21 ID:gfFwto2M
このテッカマンには見覚えがあった。
はっきりとは言えないがこいつは過去に死んだような気がしたのだ。
ならばなぜ眼前に立っているのか?
単純な話だ。
俺を殺すために地獄から蘇ってきたのだ。
そのような者が話す事などまやかしに決まっている。
話していても埒があかない。無闇にこちらを混乱させようとしているだけだ。
そもそも憎き敵を前にして冷静に話そうなどと土台無理な話だった。

消失していた過去を口走ったことにも気づかぬまま、ブレードは制限速度など存在しないかのように加速し続ける。
疲労など微塵も感じさせなかった。


クラッシュイントルード


フェルミオン粒子を放ちながら加速、彼は一撃で決めることにした。
最終的には残り2体のテッカマンの居どころを聞かなければならないため、ボルテッカで消滅させる訳にもいかず、
またこれまでに連発したことによる疲労によって先ほどの戦いでは不覚をとってしまったことを考えれば長期戦は不利。
なにより疲労を考慮してもなお生け捕りが可能であると思える力の差がある。

そもそも2体のテッカマン、ブレードとレイピアはタイプが違う。
ブレードは強襲突撃型、レイピアは諜報索敵型に分けることができる。
何がいいたいかというと、つまり相性という点から見ても最悪。。

戦意たぎるブレードに対しレイピア、ミユキは自衛のためにテックランサーを構える以外、何もできない。
戦いを知らぬミユキにも、既に自分ではテッカマンへ憎しみを燃やすブレードに傷ひとつ与えられないことはわかっている。
なにより兄に矛先を向けるなどと考えたくは無かった。

「お兄ちゃんは騙されているのよ!シャドウミラーに!」
「黙れぇ!妹の振りをするなあぁ!」

兄とは会話にならない。ずっと前から。。
テッカマンへの態度は紛れもなく兄。
しかし兄の言動からしてまるで記憶を無くし目に映る全てがラダムに見えているように改造でもされたかのような―――――――――


決着は一瞬であった。
ブレードの充分な速さと共に繰り出されたテックランサーがレイピアの胸部装甲を切り裂いたのだ。
反応すらできず、レイピアは重力に身を任せ力なく地へと落ちてしまう。
なにもできずにひれ伏すレイピアの前にブレードが立っていた。何かをするわけでもなくただレイピアの状態を観察するのみ。
その瞳はミユキには紅く染まっているように思え、そして意識を手放してしまった。


531 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 04:34:24 ID:gfFwto2M
◆
あれほど求めていたというのになんと他愛無い。

ブレードにとって気にくわないことは終始無抵抗であったことだ。
レイピアが胸部を裂かれ空中より地に堕された際に、
目の前にあったテックランサーに手を伸ばそうともしなかったことは特にブレードの気に障った。
ブレードはレイピアを戦闘不能に追い込んだ後、
その小さな体を抱えて近くの洞窟へと連れていった、邪魔が入らぬように。
洞窟の最奥部へと連れていくと、テッカマンレイピアを磔にする。
ブレード自身の両刃のテックランサーを分け、レイピアの両手首に突き刺し壁に固定する。
刺すたびにレイピアは悲鳴を上げた。

尋問など慣れてはいなかったがそんな悠長なことは言ってはいられない。この地にいるテッカマンを一刻も速く根絶やしにしてやらねば

「起きろ」

その言葉と共に生け捕りにしたテッカマンを殴る。
反応がなかったので続けて三度殴るとようやく眼を覚ました。

「答えろ。他のテッカマンはどこだ?どこにいる?」
「タ、タカヤお兄ちゃん」

答えなかったので腹部に拳骨を一度叩き込む。
加減したものの、想像以上にこのテッカマンは痛がっていた。

「答えろ、他のテッカマンはどこだ、どこにいる?」
「し、知らないわ」

今度は右腕をレイピアのテックランサーで切りつけた。
こいつは知らぬ存ぜぬで通せると思っているのだろうか?ならば恐怖を植え付けてやらねば。
だが俺が言葉を紡ぐ前に目の前のテッカマンは言った。

「お兄ちゃんはやり直せるわ。だから元に戻って」
「俺は正常だ 貴様らに皆を奪われ、ちゃんと復讐してやろうと考える只の人間だ」
「お兄ちゃんは人を殺すような人じゃない!あなたは誰なの?ねぇ?」
「黙れぇ!」

今度は左腕を切りつけた。
こいつはこの期に及んでもまだ家族の振りをする。
恐怖で怯えぬこいつの目は嫌なものであった。
このテッカマンが俺を本気で案じていると錯覚すらする。


―――――――――まるで本当に俺が間違っているのではないかと


やめろ、考えるな。
間違っているはずがない。
例え自分が何者であろうとラダムへの憎しみに身を焦がし続けたのだ。
この想いが間違えであってたまるものか。

「本当に言うつもりは無いのだな…」
「お兄ちゃん…お兄ちゃん…」

泣き声でうわ言のようにお兄ちゃんと繰り返す、このテッカマンにはいい加減うんざりしてきた。
力で劣るからといって大切な家族をダシにして精神攻撃を繰り返すこのテッカマンは本当に憎たらしい。

「楽になりたいだろう」



532 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:13:58 ID:Rlf2n694
ブレードは今度は手加減をせず、本気で胸部装甲をエックス字に切りつけた。
再び、絶叫を上げるレイピア。
ブレードはレイピアから離れ、荒い使い方をしたことによってひしゃげたテックランサーを放り捨てた。

この感触。間違いなく致命傷だ。現に目の前のテッカマンは既に虫の息。すぐに死ぬ。
ならばこいつが止めを刺されず徐々に死んでいく過程を見ているのも悪くは無いかもしれない。
自分のテックランサーを抜くのはその後でも遅くはない。
俺は今きっと唇を笑みに歪めているんだろうな、ラダムの尖兵を倒したんだから。
それにしても時間の無駄だった。
精神的に揺さぶられた挙句、口を割らせることもできず他のテッカマンの居所すら分からないまま。
仕方が無い、少し休憩した後、今後も殺し続けるしかないだろう。
ラダムの骸を築きあげ、再びテッカマンと巡り合うのを待つしか――――――何ィ!!!!!!!!!!!

ブレードが今後の方針に気をとられているうちに、その背後で瀕死状態のテッカマンレイピアはピンク色の光に包まれていた。
それはテッカマン専用の必殺技、ボルテッカの前触れ。

しまった。全く抵抗もされず一方的であったため、あろうことか慢心していた。
奴とてやはりテッカマン。息の根を止めず、放置しておくなどと馬鹿なことをしてしまった。
俺のテックランサーは奴の手首に、あいつのテックランサーは――――――くそっ、使えない
ならばボルテッカで――――――――

遅かった。
ブレードは為す術も無くレイピアの放つ圧倒的エネルギーの渦に飲み込まれてしまった。

533 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:14:41 ID:Rlf2n694
◆
お兄ちゃんが苦しんでいるということは分かっていた。
でも私と話しているうちにお兄ちゃんが正気を取り戻してくれれば、と思っていた。
クルーゼさんの言う通りやっぱり無理だったけど、それでもまだ方法はあるわ。
唯一の心配はお兄ちゃんを支えてくれる人がいるかな、ってこと。
お兄ちゃんは昔から人一倍さびしがり屋だったし、私がいなくなったら独りになってしまう。
でもきっとお兄ちゃんは皆から好かれるし大丈夫よね。

ジロンさん、ごめんなさい。もう二度と会えないです。優しいあなたのことです。
きっと行かせてしまったことを後悔し、自分を責めるでしょうが、それでもあなたならきっと前を向いていてくれますよね
お兄ちゃんをお願いします。

クルーゼさん、ごめんなさい。市街地には行けそうに無いです。
あの時、クルーゼさんは私のことを心配していてくれたのに、わたしはお兄ちゃんのことしか考えられず勝手なことばかり言ってしまった。
約束まで守れないなんてごめんなさい。


お兄ちゃん、私ね目が醒める前に幼い頃の夢を見ていたのよ。
横にはお兄ちゃんたちがいて、皆で笑いながら駆けていたわ。
あの時の記憶はかけがえのないもの。
それはきっと私だけにとってじゃない。憶えてないなら思い出させてあげないと。
でないとお兄ちゃんはすぐに死んでしまう。お兄ちゃんに何かをしたシャドウミラーのせいですぐに。

「貴方たちに、殺させはしない…」

大声で叫んだと思ったのに声はそこまで出なかった。
私に背を向けているお兄ちゃんですら私が声を出したことに気づいていない。
既に満足に声を出すこともできない。
私の体が光に包まれていく。きっとこれで最後だ。
もっと生きたかった。
お兄ちゃんを抱きしめて、その胸に顔をうずめたかった。
お兄ちゃんと海で話したかった。
いて欲しくはないけど、お兄ちゃんにもし大事な人がいたら紹介してもらいたかった。
死を前にして他人を案じるよりも、私自身がやりたかったことがどんどん出てくる。でもこれからすることもまた私がやりたいこと。



―――――――生きて、お兄ちゃん。私の代わりに、私の思い出と共に




◆
シャドウミラーが相羽タカヤに施した改造は一つ一つはそれぞれ完璧であった。
肉体と精神の改造によって長時間のブラスター化を可能とし、また機動力、装甲のスペックを減じた。
加えて自分以外の動く全ての物がラダムに見えるように改造することによって、相羽タカヤが見るものは全て憎悪の対象となり、
喜ばしくもシャドウミラーが望むキリングマシーン、混沌をもたらす騎士が誕生した。

だがこの改造は道理をわきまえず、無理を重ねたもの。
本来、テッカマンブレードには長時間のブラスター化は不可能であり、機動力、装甲などのスペックを減じ、
全てがラダムであるように見えるようにするというのはテッカマンである彼にとっては肉体・精神に必要以上に手を加えるということ。
その結果、Dボゥイの精神も、彼への改造も全てが不安定な状態で保たれて、この舞台に送り込まれた。

だが不安定な状態で保たれていたがために、このようなことが起きたのかもしれない。


534 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:15:48 ID:Rlf2n694
◆
すべてが終わった後、そこには一人の男が立ち尽くしていた。
テッカマンブレードの変身はいつのまにか解けていた。
洞窟を崩壊させ、天を突くテッカマンレイピアのボルテッカは、
奇跡的にブラスターテッカマンブレードに大した物理的な外傷を与えるには至らなかった。だが精神的な面に関しては話は別だ。

ピンク色のエネルギーの放出。それはテッカマンレイピア、相羽ミユキの命の光。
これは過去の記憶を失ってもタカヤの中から完全に消えることはなかった。
守ると決めたのに助けることができず、エビルによって殺されてしまったかけがえのない妹。
その時のものと全く違わぬエネルギー。
そう考えると、なぜ自分があのボルテッカに巻き込まれたというのにほぼ無傷でいられるかが理解できた。

「ミユキ…」

先ほどまで認めることのできなかった名前を意図せず呟く。
それをきっかけとして今までに圧しとめられていた記憶が次々とあふれ出てきた。

アルゴス号ブルーアース号スペースナイツ外宇宙開発機構内
アキノアルミリィレビンフリーマンバルザックペガス
フリッツゴダードモロトフフォンケンゴ兄さんシンヤ―――――――――


急激に変化していく相羽タカヤの世界。
かつてDボゥイと呼ばれていた時に経験してきた出来事を思い出していく。それは辿っていくと現在へと繋がる。
そして先ほどまでフィルターを通して見ていたラダム獣が、
フィルターを取り除かれることによってそれらは紛れも無いロボットであったとすぐに理解した。

全てを粉砕してきたが、あれらにはきっと人がいたに違いない。つまり…

「あれらはラダムではなかった」

Dボゥイは自分に言い聞かせるようにちゃんと声に出した。
すぐに自分が取り返しのつかぬ行為をしてしまったという後悔が彼の思考の余地を埋めていく。

「お、俺は…俺はああああああああっ!!」

535 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:16:30 ID:Rlf2n694


気が狂いそうになる。
認めたくない。
ラダムでもなんでもないただの一般人を手にかけてしまったこと
ミユキは最後まで自分の身を案じて、命をかけて自分の記憶を取り戻してくれたことを。
そして自分がエビルのようにミユキを――――――――
いっそ思い出すことも無く、ただ駆け抜けることができればどれほど楽だったか

Dボゥイが自傷行為に及ぶことは無かった
受け止めきれない事実にただ立ち尽くすのみ

ふと空を見上げると花が舞っていた。
あたたかく、見ているだけで安心できてなごんでしまうような紅い花。
それを手にとろうとすると、触れた瞬間に消えてしまった。


俺が――――――――ミユキを殺してしまったのだ


【テッカマンレイピア 死亡】

【Dボゥイ 支給機体:なし】
 パイロット状況:疲労(大) 思考能力回復  記憶回復 支給品入りのバッグ紛失
 機体状況:全身の装甲に傷や焦げ跡がある エネルギー中消費
 現在位置:C-6
 第1行動方針:?????
 第2行動方針:テッカマンは優先して殺す
 最終行動方針:ラダムを殲滅する
 備考:自分以外の動く全ての物がラダムに見えるように改造されましたがレイピアによって無効化されてしまいました。
     記憶を取り戻してしまいました。

536 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:17:20 ID:Rlf2n694
◆
焦点が定まらない。
それは球体が地面に落下したときの衝撃のせいでもあったが…それはコーディネイターの身。頑丈な体であったためたいしたことは無い。
なによりの原因は精神的なものだ。
そのせいで脱出ポッドから出れずにいる
まだこの殺し合いが始まって数時間だというのに色々なことがあった。
最初はジュドーとガトーとかいうおっさんが戦っているのを傍から見ていただけだった。
それで、俺は悪い奴じゃなさそうなジュドーに手を貸してそいつを追い払った。
と思ったら今度はレーベンとか言う獅子の機体に乗った奴に遭遇して、まあそいつは急に発狂してどっかに行っちまったんだが。
その後は思い出したくも無い。あのイカれた騎士に遭遇して―――――

ディアッカはその時自分が涙を流していることに気づいた。
拭っても拭ってもどんどん零れ落ちてくる。これはテッカマンブレードへの恐怖からではなかった。

涙が流れてきたというのは俺はあいつの死を悲しんでいるのだろうか?
俺はコーディネイター、あいつはナチュラルだというのに。
最初はただ利用するため。あいつと共にいることで生存確率を高めるために一緒にいただけなのに。
奴は最後までそれに気づかぬまま、知り合いを頼むという言葉を残し死んでいった
結果的に奴のおかげで俺は命を拾うことができた。狙い通りだ。
だがなぜ俺の気持ちは晴れないんだ。
あんな奴は元の世界の仲間と違い、その場限りのどうなろうと知ったことでは無い奴。
だというのに、割り切れない。どれほど自分を納得させようとしても割り切れない。
クソッ、自分はまだまだ青臭いのかもしれない。
こんな気持ちで人を殺すことなどできそうにはない。

「ディアッカ」

そんなことを思っていたときだった。誰かが脳天気な声で俺を呼ぶ。真っ先にジュドーじゃないかと思った。
あの騎士はきっとジュドーを殺してから俺のほうに来ただろうから違うと思った。
でも、同時にジュドーだったらいいなとも思ったんだ。そしたら助けてくれた礼を言って俺に心配させたことを謝らせてやろうと思って。
ああ、そんなことを考えていたら今の声がどんな声だったか、分からなくなった。
もう一度、声を聞きたい



「ディアッカ。聞こえていたら応答しろ」



なんだ、聞きなれた隊長の声だ。
こんな声をジュドーと間違えるなんて本当にどうかしている。



◆
予想以上に遠くへ投げてしまい、草原地帯まで飛んでいった白い球体を見つけたとき、
ディアッカに応答を試みたが初めは反応が無かった。
無理も無い。緊張からやっと解放されたのだ。力が抜けてしまうのも仕方が無かった。
次に呼びかけたとき、ディアッカは反応してくれた。
体にどこか悪いところは無いかと聞くと目がぼやけているといった。
私は心配したが、彼は一時的なものであるといった。
その根拠を考えればすぐに彼が今どういった心境に至っているのか察することはできた
しかし彼が立ち直るまでずっとそこで待っているわけにもいかなかった。
兄を止めようとした相羽ミユキが一瞬で殺されこちらへ向かっている可能性もあったからだ
私がそこを出て、こちらのコクピットへ移って欲しいというと彼は素直に従ってくれた。私を困らせてはいけないと思ったのだろう。


537 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:18:22 ID:Rlf2n694
球体から外へ出たディアッカにターンAの右手を差し出し乗るように示すと、
ディアッカはその通りにし、ようやく彼をコクピットの中に保護することができた。
ミユキを乗せているときよりも若干窮屈であったが、仕方あるまい。
彼の顔は見ないようにした。いま、顔を見られるのはディアッカにとって何よりも恥だろう。隊長として部下へのせめてもの情けだった

「ディアッカ。猶予は無い。すぐにこの場を離れるぞ」
「あの…隊長。さっきの女の子は?」
「残してきたよ。兄を説得したいといったのでな」

嘘偽りの無い言葉。
だがテッカマンブレードの恐怖を刻み込まれたディアッカからすればクルーゼの正気を疑わずにはいられなかった。

「そんな…あいつは話が通じるような奴じゃないですよ!!」
「だろうな」
「だろうなって…」
「だが他に手は無かった…。あの状況でこのMSであの者を倒すよりも、
同じテッカマンで妹である彼女に任せたほうが皆が納得できたのだ。そうしなければ後々面倒が生じたはずだ」
「……」

返答は無い。
コクピットの中で剣呑な空気が流れる。
正論だ。いつものディアッカならば問題なく受け入れる正論。
しかしアスラン、イザーク、二コルと比べて一番大人びていると思っていた彼もまだ若かったのだ.

「納得できないかね?それに君のこともあった。君が誰かに襲われるかもしれないということも考慮すればこれが最善だったはずだ」
「…」

やはり返答は無かった。予想以上に彼の心の傷は深いらしい。
だが待てなかった。今後の方針、ダルタニアスを取りに行くとだけ告げ、強引に同意させた。
そしてその時、ターンエーが遠方より熱源を感知した。
その方向を見てみると、ミユキと見たときとは異なる輝きが天を再び貫いていた。
私は、直感的にあれは相羽ミユキが放ったものであると思った。
あの様子からして兄を殺せるとは思えなかったが、それでも兄の責任を取って道連れにでもしてくれたのだろうか?
いずれにせよあれならば、両者共に生きてる可能性は限りなくゼロに近い
ミユキは確実に死んだとして、あのテッカマンも巻き込まれているならば生きていたとしても相当な痛手を被ったはずだ。
あの兄妹愛の末路を見てディアッカに分からぬように笑いを堪える作業は予想以上に大変だった。
ディアッカはボルテッカを見ても、もう何も言わなかった。
肉体と精神のあまりにも大きな疲労がディアッカから一時的に情動を奪っていたのだ。
結局我々はそれには反応したが、言葉を交わすことなく、再び私たちはダルタニアスがあると聞いた場所へと向かうことにした。


538 :代理投下◇yf/Zd4QyoM:2010/02/14(日) 07:19:28 ID:Rlf2n694
それにしても…このターンAは確かに優れたものであるが、どうにも弱点を晒し続けているというのは落ち着かない
あのようなテッカマンと再び戦うことになるならばこのMSではすぐに追い込まれてしまうだろう。
もしもダルタニアスという機体がこれよりも多少スペックが落ちようと戦いやすいというならば乗り換えるのも良いかもしれない…。
そうなればこのターンAはディアッカに譲ってやろう。フフフ、核のことは黙ったままな


【ラウ・ル・クルーゼ 搭乗機体:∀ガンダム@∀ガンダム
 パイロット状況:良好 仮面喪失 ハリーの眼鏡装備
 機体状況:良好 核装備(1/2)
 現在位置:C-7
 第1行動方針:ダルタニアスを取りに行って、大体でミユキを探す。生きているとは思っていない
 第2行動方針:手駒を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先)
 第3行動方針:できれば乗り換えてから、雪原市街地でミストたちと合流する
 第4行動方針:手駒を使い邪魔者を間引き、参加者を減らしていく
 最終行動方針:優勝し再び泥沼の戦争を引き起こす(できれば全ての異世界を滅茶苦茶にしたい)】
※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません。
※ヴァルシオン内部の核弾頭起爆スイッチを所持。


【ディアッカ・エルスマン 搭乗機体:なし(∀ガンダムに同乗中)
パイロット状況:体力消耗大
機体状況:なし
現在位置:C-7
第一行動方針:ジュドー…
第二行動方針何も考えたくない
第三行動方針:脱出が無理と判断した場合、頃合を見て殺し合いに乗る 】



「魔法が解けてしまったわね…」

その彼女の声は皮肉にも、今命を散らしてしまったDボゥイの妹である相羽ミユキにそっくりであった。
レモンはDボゥイが映るモニターを見つめる.
レイピアの命のエネルギーにあてられブレードは記憶を取り戻し、さらに全てがラダムに見えるという改造すら無効化されてしまった。
呼ぶ前から既に失われていた記憶を取り戻したのはまだ良い。
しかし改造まで無効化されるとは、さすがにご都合主義であり、その改造が不安定なものだったとしても非科学的である。

とまあこう考えたレモンではあったが何もまたDボゥイを呼び出して改造しなおす、と思ったわけではない。
フィクションのように命を賭ければ全てがうまくいくという展開も悪くは無いと思ったのだ。
妹の命を賭けた献身に兄が押しつぶされるのか、それともどうにかして自分を納得させ立ち直ろうとするのか、あるいは…。いずれにせよ楽しみである
また長時間のブラスター化がさらに都合よく無効化されていないのであれば見ない振りをしてやろう。
むしろ今まで手を出しすぎてしまった。彼ばかりに負担を強いるのはフェアとは言えない。そろそろ彼にも自由を与えよう。
そう思いレモンはモニターを切り替えた
個人的な感情は無いと自分に言い聞かせながら。

539 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 07:20:09 ID:Rlf2n694
代理投下終了。タイトルは 

「ブレードのランサーが唸る時、また家族が死ぬ!」   とのことで

540 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 12:03:51 ID:WkJwmlZG
ああああああDさーん!
ほんと、どこまでも不幸になる男だ……ミユキを自分の手にかけるとかそれどんな絶望
思考欄???だが、悪い方向に転ばなきゃいいが……これは怖えええ

541 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 12:14:20 ID:Ty3EXeCB
投下乙!
ミユキイイイイイイイイ!!
まさかこんな結果に終わるとは……悲しすぎる。
最後まで抵抗しなかったのがまた……途中のDさんとの会話が悲しすぎて泣きそうになった。
そしてDさんもカワイソス。第一回放送の前から妹殺しとか不幸にも程があるぜ……。

542 : ◆a0GtFyP19w :2010/02/14(日) 20:19:18 ID:WkJwmlZG
ロム、カノン、ティンプ、ウンブラを投下します。その後、避難所の方のも続けて投下します。

543 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:21:14 ID:WkJwmlZG
F−4に存在する、荒涼とした荒野。
乾き熱気を孕んだ風も、十二時を超えて日が陰り始めると同時に引き始めている。
迫るのは、殺し合いに一区切りをつける言葉。最初の定時放送。
そして、それを超えて迫る逢魔が時と、見通せない闇を与える夜。
補給だけでは足りない。備えは、いくらあっても足りることはない。
荒野の高台。
そこに点在する巨大な亀裂。
周囲から姿を隠してくれる場所で、二つの影が何度となくぶつかり合う。

眼で追うこともできず、拳が左肩に突き出される。
相手はその場から動いていないにも関わらず、走って勢いをつけたかの衝撃。
肩から伝播した衝撃が、カノンの肺から空気を追い出し、思考能力を奪う。

「うぐっ……!」

咄嗟に腰を落とし、後ろ足をついて身体が倒れないように支える。
しかし、それでもなお重心が後ろに引き倒されていることに変わりはなく。
上半身を引き戻すまでの、瞬きする間程度の時間。
それすら、許してくれない。生易しいものでありはしない。
相手の追撃が飛ぶ前に、牽制のため苦し紛れに繰り出されるカノンの拳。

「甘いぞ! 魂の籠もらない拳は相手に届くことはないと知れ!」

拳の先に無機質で硬い感触。
相手に受け止められたことだけは理解できた。
そして、カノンがそう理解した次には、カノンの身体が宙に浮き上がる。
投げられた感触もなく、いつ腕をひねられたかも痛みがなく不明。
それでもカノンの身体が相手の頭上高くまで投げられていた。
一瞬の浮遊感とともに始まる自由落下。
自由の利かない空中でも身体を丸め、受け身の姿勢を取る。
地面に叩きつけられる感触も、殴られたときに比べればはるかに軽い衝撃だった。
人類軍の任務に就いていた頃なら日常茶飯事の痛み。
起き上がるのを相手は待ってくれない。
顔をあげて前を向くより早く、背筋に走る冷たさに従いさらに姿勢を低く。
カノンの頭上を、丸太すら圧し折りそうな回し蹴りが通りすぎる。
風切り音の域を超えた暴風の音を、初めて間近でカノンは聞いた。

「気を抜くのが早い。かわされることを前提とするなら、二撃目を入れること考える。
 逆に、相手の攻撃をかわした時こそ気を引き締めろ!」

蹴りの生み出した風が巻き、身体の下に流れ込む。
風はカノンの体の両側を通り、地面にまで流れ、真下でぶつかり合い上昇気流へ変化。
まきあがる砂が目や口に入るだけではすまず、無理やり上半身を起こされた。

「天空宙心拳、風昇連脚……!」

一回転し、鉄槌の如き蹴りが、カノンのテンプル目掛けて続けざまに放たれる。
しかし、それはピタリとカノンの頭に到達する直前に停止。
相手がゆっくりと足を下ろす間にカノンは立ちあがり、姿勢を立て直す。
これは組み手だ。
殺されることはない。
しかし、相手のロムが殺す気であったなら、この短いやり取りでも三回カノンは絶命している。
姿勢が崩れた時、追撃の抜き手で腹を貫かれる自分。
投げられた時、そのまま空へ駆けあがったロムの放つ手刀に真っ二つになる自分。
そして蹴りの時、そのまま頭を粉砕される自分。
ロムから放たれる気配は本物だ。
ロム曰く、闘気と言うらしいそれは、戦いに関して鮮明なイメージをカノンの脳内に投影する。
半身を前に出すロムの独特のかまえは拳を打ち込む面積が極端に少ない。
どうやって攻めるべきか。

544 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:22:06 ID:WkJwmlZG
カノンは“考える”。
“考えて”竜宮島とその人々を守ることを決めた。
ならば次は、どう守ればいいかを“考え”なくてはいけない。
受け身で行動するのではなく、受け身で指示を待って戦うのではなく、たった一人で。
皆城総士も、一騎たちもこの世界のどこかで分断されても戦っている。
自分もそうでなくてはいけない。
カノンが選択したのは、回し蹴り。
正面からの面積は少ないことは、側面の面積は広いことを意味している。
生半可なことでは打ち砕けないロム相手には、威力もいる。脚の筋肉は腕の三倍とも言われる通り、威力も高い。
少し前から一気に勢いをつけて、少女のものとは思えない鋭さで回し蹴りが伸びる。
確かに全体重に勢いを乗せた一撃。

「力だけに頼れば、より大きな力に押しつぶされる……大切なのは、流れだ。
 流れにどれだけ力を乗せられるかは心の強さにかかっている!」

その、確かな一撃が防がれる。
ロムは、指三本でカノンの足首を抑えている。
微動だに、しない。
ただ単にロムは抑えているようにしか見えない。
どういう理屈かは知らないが、力を受け流した。
結果、カノンの全力の一撃はロムの指三本に劣るまで威力を削がれ、受け流された。
ロムの身体能力には驚かされ続けているが、それでもまだ驚きに慣れることはない。
十分に勢いづけて打ち出した人一人分の重量を、刹那の見切りで受け止めるのは、もはや人間の技ではない。
驚きは止まらない。
均衡がとれたように微動だにしなかったのは僅か一瞬だけのこと、
直後に、動き出す。カノンの身体が。受け止めてからロムは動いていない。
なのに、胸の中心を強打されたかのように数メートルは吹っ飛ばされる。

「力を受け流すと言うのは、ある程度修練すればこういうこともできる。
 ほとんどは地面に流したが、一部なら相手の身体に反射させることも可能だ」

ロムの言葉を聞き、地面に直立する脚を見やる。
地面がくぼみ、ひび割れている。身体に走る痺れを無視し立ち上がるカノン。
ロムはカノンの瞳を一度見詰めたのち、大きく頷くともう一度かまえる。
全重量を用いた攻撃がまったく通用しない。
どうやってこの相手からただ一本でも攻撃を通すか。
迷っている暇は無い。 迷えば、ロムはそれを見透かしたように攻めてくる。
今回は、こちらの動き出しが早かった。
相手に距離を詰められないよう、掴まれないように拳を出す。
通常の戦闘でもよくある行動だ。
おそらく、ロムが本気なら一瞬で全て叩き落とし、こちらを昏倒させるくらい出来るはずだ。
それをしないのは、今のところカノンの戦い方を評価してくれているということか。
ロムが、動いた。
さっきよりも遅い。
カノンの目にもギリギリ映る。
咄嗟に腰を落とし、全体重を利かせ、両腕を顔の横へ。
遮蔽物はない。かわすことはできない。全て力を込めて、ロムの右足を受け止める。
骨が軋む鈍い音が響く。
噛みしめた奥歯が砕けるほどの衝撃。
正確に心身の芯に通る攻撃。
が、

545 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:23:30 ID:WkJwmlZG
身体が浮き上がることはない。
機体の中で思い切りシェイクされたのと同等の衝撃が全身に走るが、それでも耐え切った。
だが、耐え切ったとしてもたったの一度が限界。
この気を逃せば、ロムの連撃にあっさり倒れ伏すだろう。
耐え切った一瞬で、何かしらの行動を起こさなければならない。
これが、はたしてロムの言う流れを断つことかは分からない。
だが、やらないよりは遥かにいい。

「はああああああ!!」

ロムの、顔の横にある足を土台に滑るように、前に出る。
身体ごと、無様ではあったが突撃。
垂直に立っていた腕を平行へ。
僅かな時間で盾から矛へ。
肘を突き出し、ロムの胸の中心へ。

乾いた音が、場に響いた。

「今のは良かった。だが、俺に一撃を入れるにはまだまだだな」

ロムの片手が、はやりカノンの肘を抑えていた。
差し出した脚を降ろし、ロムは両腕を下ろす。
落胆を感じながらも、距離を取り再び攻め手を考えようとする。
しかし、先程のうまくいくと半ば思うところまでいって失敗したことで身体が重い。
ロムはカノンのコンディションを見透かし、かまえを解き、緊張をほぐすためか小さな笑みを作った。
その言葉で、カノンもその場に座り込んだ。
まだやれると息を吐こうとしたが、身体がそれに追いつかなかった。
その場に身体を投げ出せば、真上にはまだ青空が広がっていた。



暗黒大将軍と戦っていたときよりも、身体が温まる感覚がロムを包む。
技の切れも、ゆっくり確実にカノンとの組み手の最中に確認させてもらったおかげで良くなっている。
やはり人と向き合い、熱意を合わせ、事を成すことは珠玉の行為。
カノンがいなかった時のことを考えれば、この状態は最良と言えた。
身を起こし、自分の手を見つめるカノン。

「動きの基本が出来ている分だけ、飲み込みはいいが……まだ動くことと考えることが分かれているな」
「動くことと……考えること?」
「そうだ。獣のように何も考えず反射で戦うのではなく、かといって考えてから動くのでもない。
 考えること、動くことを同時に行うことが大切だ。心持つ存在だけができる戦い方こそ、全ての剣、拳に通じている」

左右を見てからロムはたまたまあった岩壁へ歩いていく。
いや、それは本来岩なのだろう。ただ、あまりにも大きすぎるため壁に見えるだけで。
高さ四十メートルはある大岩を前にして、ロムがトントンとその場でステップを踏む。
そして、振りかぶり拳を岩に叩きつける!

「天空宙心拳奥義、ゴッドハンドスマッシュ――――!!」

叩きつけられた拳から電光が溢れ、空に立ち昇っていく。
内側から自壊するように、岩が崩れ、ロムとカノンの姿を周囲から隠していた岩壁は消えてなくなった。
魔法でも見たかのように目を丸くするカノンを見て、ロムは頬を掻く。

「今のは、俺の力だけではない。天と地、火と水、万物には力が宿っている。
 それらが生み出す力も、全てたゆたっている。故に、どんなものにも弱い一点は存在するんだ。
 万物の流れを掴み、己の力として一撃に乗せ、その上で相手の流れの止まっている急所を突く。
 これが―――ゴッドハンドスマッシュだ」

カノンはまだロムの言葉を飲み込めていないのか難しい顔を作っていた。
ロムは何も言わず、カノンに考える時間を与える。

546 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 20:23:46 ID:JL7pH8/b


547 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:24:43 ID:WkJwmlZG
ただ激流に身を任せるのではなく、
考え激流を乗ることを知り、初めて力を借りることが出来るのだから。

「私でも……」

それは、迷っているように見えた。
それは、躊躇しているように見えた。
けれど。

「私でも……できるようになるのか?」

ロムの答えは一つしかない。

「もちろんだとも。慈愛の心が生み出す力を、人の持つ可能性を信じられる限り」

天空宙心拳は一子相伝の拳法ではない。
少しでも多くの人を救うため、勇気ある人々に授けられてきた。
無論、それが時としてバグのような悪しき使い手を生んだ悲しい歴史もある。
それでも正義の道は潰えることなく受け継がれていく。

(そうだ……俺の代で天空宙心拳を、正義の系譜を、閉ざすわけにはいかない)

まだレイナとドリルは天空宙心拳の使い手として未熟だ。
ジェットは、もうこの世にいない。二度と会うことのできない彼方へ旅立った。
ガルディ兄さんは、自分がこの手で貫いた。
禁じ手すら習得した兄弟子のバグも、ねじくれた性根故に息を引き取った。
自分が死ねば、天空宙心拳は途絶えてしまう。
そんなことは、到底許せなかった。
少しでも、後世の平和のために勤める義務が自分にはある。
カノンの瞳には、何かを守らんとする強き意思の炎があった。
彼女のような人間たちに天空宙心拳を教えることが、まだ自分の役目として残っているのだ。

「――――――っ!」

ロムの意識が、優しきものから一瞬で戦いの激しいものへと変わる。
背筋に感じた悪意の視線から守るため、カノンと視線の間に本能的に立つ。
ロムは瞬時にかまえを取る。
カノンの時のような訓練や型の確認を兼ねたものではない。
正真正銘、本気のロム・ストールの闘気が蜃気楼を起こす。
直後、不可視に近い真空波がカノンへ。
ロムは、全力の手刀を持って叩き落とす。
真空波は形を失い、そよ風となって空気に溶け込んでいく。
「何者だ! 名を名乗れ!」
天空宙心拳、暗黒指弾。
かつて兄弟子が使っていた技で、闘気で包んだ小石を飛ばす。
まっすぐ狙った岩に着弾し、姿を隠していたそれを粉砕。
岩陰から現れたのは、すっぽりと頭どころか全身を包むフードを纏った小柄な何か。
フードの奥には、奇数個の金色の瞳が腐爛し輝いている。

「我はウンブラ……あれで殺せないか……おぞましき戦士よ……」

ウンブラはくるりと背を向けると、逃げるように走り出した。
到底、人間が追いつける速度ではない。しかし、ロムもまた常人を遥か超越したもの。
追うために走り出す。
ウンブラが剣狼を振るたび背後に向けて、真空波が放たれる。
ロムは瞬く間に撃ち落とす。
速度を緩める理由にもならない。

548 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:26:20 ID:WkJwmlZG
はずだった。
ロムは進む方向を変え、追うことを諦める。

「――カノンッ!」

真空波が、カノンに向けても飛ばされていた。
闘気を正確に察知できない人間では、不可視のものをかわすことは難しい。
カノンを庇う位置に移動し、真空波を落とすことを優先した間に、ウンブラの姿は岩の隙間へと飛び込んだ。

「よく気付く……もう少しで脆い人間がコワれるところだったのに……」

改めて追うが、まるでウンブラは影に溶け込んだように気配ごと消えている。
魔術のようなものを使われたかとロムは握った拳を震わせながらも、

「馬鹿な……」

呆然と呟いた。
最後の真空波を飛ばすとき、ウンブラの服の影から見えたのだ。
ロムの視線を何よりも視線を引き寄せたのは服の隙間から覗く剣。
それは間違いなくロムが父より受け継いだ、伝説の名剣………剣狼。
歪な機械を柄から鍔にかけてつけられてはいるが、ロムが剣狼を見誤ることはない。

「逃げたのか……!?」
「……見つからない。……剣狼の一撃は、ゴッドガンダムでも耐えられるか分からない。
 小ささから不意を打たれやすい。それに―――バイカンフーがあるとすれば……!」

地上全ての流れるエネルギーとシンクロし生み出される最強の化身、バイカンフー。
それと戦って勝つ自信はないとは言わない。
バイカンフーを取り戻せるとは限らず、だが、確実に暗黒大将軍以上の死闘になる。
そうなれば、暗黒大将軍を倒すことも、そして誰かを救うこともできないだろう。
呼んでも来なかった理由は、シャドウミラーの機械によりその能力を抑制されていたからだったのだ。
父からの遺産を汚されたことに、ロムはさらに激しい怒りをシャドウミラーに覚えた。

「必ずこの殺し合いを止める。そして……剣狼も取り返させてもらうぞ……!」

ロム・ストールの声が、荒野に溶けていく。
必ず、打ち倒すことを誓って。



【ロム・ストール 搭乗機体:ゴッドガンダム】
 パイロット状況:良好
 機体状況:装甲表面に多少ダメージがありますがその程度です。
 現在位置:F-4 荒野
 第1行動方針:カノンと行動しつつ、決闘の場所を目指す
 第2行動方針:悪を挫き弱きを助ける
 第3行動方針:真壁一騎、皆城総士、遠見真矢、春日井甲洋の保護
 第3行動方針:19時の暗黒大将軍との再戦に備える(上と同じくらいの重要度なので3を並べてます)
 最終行動方針:剣狼を取り戻しシャドウミラーに正義の鉄槌を与える】
※羽佐間翔子は同姓同名の別人だと考えています。

【カノン・メンフィス 搭乗機体:クストウェル・ブラキウム(スーパーロボット大戦J)】
 パイロット状況:良好。
 機体状況:装甲がへこんでいる以外良好
 現在位置:F−4 荒野
 第1行動方針:ロムと行動を共にし、強くなる。
 第2行動方針:竜宮島の仲間と合流する
 最終行動方針:仲間と一緒に竜宮島に帰還する】
 ※羽佐間翔子は同姓同名の別人だと考えています。

549 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:27:16 ID:WkJwmlZG
恐ろしき使い手がいるものだ。
遠くからでも聞こえる轟音とともに崩れ去る岩壁を見てそう思った。
だから素直にロム・ストールの強さを認め、憎しみを得るのではなく直接命を狩ることを選んだ。
だが、それも失敗。
まったく負の心、濁りを持たない魂の輝きに、あれほど恐ろしい力。
ウンブラにとって、ロムは天敵とも言える存在だった。

「だが……ワタシは消さなければならない……光を……闇の慟哭の中に……」

しばし悩んだのち、ウンブラは邪悪な笑みを浮かべた。

「そうだ……ワタシが倒せないのなら……他のものに倒してもらえばいい……」

自分が倒す必要はない。
ここでは、あのような正義の徒達が集い、死から逃れようとしているのだろう。
それを潰し合わせればいい。
殺し合いに乗るものとは極力戦わず。
強き力を持つ者には螺子曲がった情報を。
使えぬ弱者は恐怖と憎しみの糧に。
あの最初の場で目立ったロムを覚えており、いい印象を抱いているものも多いだろう。
だが、その良き印象は、小さな亀裂さえ入れておけば、一度何かあれば裏返る。
すぐに信じてくれることも、全員がそうなることも期待しない。
ただ、そのうち何名かが、疑いを抱いてくれればいい。

「ロム・ストール……そしてあの女は……カノンと呼ばれた……カノン・メンフィスか……」

さらに、名簿で選んだ適当な人間を数名。
虚と実、あることとないことを混ぜて騙る。
もし適当にあげた人間が殺し合いに乗っていれば、自分の情報に信憑性も出る。
そうでなくても、かき回せればいい。
やらなければゼロだが、やれば何かの結果も出る。
人間は弱い。小さいことでも疑い出すと止まらなくなる。
だから、それでいい。
基地も目の前だ。宇宙へ上がるのももうすぐ―――

「基地に行くのか? 嬢ちゃんや坊ちゃんか知らないが、やめときな。
 あそこにゃ人殺し二人がいるだけだぜ」

基地に、殺し合いに乗っている人間がいる。
ならば、行かないほうがいい。
宇宙へ向かうには、別の移動手段を考えよう。
そこまで考えて、かけられた声に気付く。
横からの声。
ウンブラがそちらを向く。

「中々悪くない情報だろ? お礼と言っちゃなんだが……持ちあげてくれねぇか?」

下半身が大地に埋まり、下半身だけがガニ股で空にそびえ立っている。
ウンブラの美的センスでも、そのオブジェはシュールとしか言いようがない。
しかし、剣狼についた機械の通信から聞こえるのは、
そんな恥ずかしさを持ち合わせていないのか、飄々とした男の声。


なぁにこれぇ




550 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:29:01 ID:WkJwmlZG


【ティンプ・シャローン 搭乗機体:テキサスマック(PK)(真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好 ハイパワーライフルの弾を三発消費  上半身が埋まって下半身が露出中
 現在地:F−3平原
 第1行動方針:他の参加者の情報を集める
 第2行動方針:特にジロン・アモスの動向には注意する
 第3行動方針:可能な限り優勝は目指す
 最終行動方針:生き残る

【ウンブラ 搭乗機体:ケンリュウwith剣狼(マシンロボ クロノスの大逆襲)
 パイロット状況:良好 うきうき。 なぁにこれぇ
 機体状況:良好
 現在位置:F-3 平原
 第1行動方針:人間の性質に合わせ利用し負の感情を狩り集める(※)
 第2行動方針:宇宙に上がり地上の負の感情の流れを観察する。
        基地に殺し合いに乗る人間がいるなら別ルートを探す。
 最終行動方針:狩り集めた負の感情を破滅の王に捧げる
 (※)について
 殺し合いに乗った人間→接触を避ける
 強い人間→疑心暗鬼を撒くため、カノン、ロム、その他数人が危険であると情報を流す
 それ以外→負の心を絞って殺す】

【一日目 13:59】

551 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 20:31:40 ID:WkJwmlZG
続いて、借り投下の物を投下します。

552 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 20:33:05 ID:WkJwmlZG





「うぇ、えええええええええええ!?」

 少女の絶叫がガイアガンダムのコクピット内に響き渡る。
 そのガイアガンダムを押す。アクエリオンから放たれる無限拳がガイアガンダムを宙へと押しあげる。
 やがて宇宙が見え始める、こともなく数秒で重力に引きずられ地上へと落下していく。
 このまま落下してしまえば大地へと激突しプルの体はガイアガンダムごとバラバラになってしまうことだろう。
 しかし、そんなことなどプルとて承知している。それはとても嫌なことだ。故に各部スラスターを操作し、重力に逆らおうとする。
「地球の重力なんて嫌いだああああああああああああ! いつもいつも私を苦しめる!!」
 思い浮かべるはキュベレイマーク�Uを駆りZガンダムと共に大気圏を突破した記憶。
 あのときほど高くは無いが、それでも重力に体を引っ張られる感覚は不快だった。
 とはいえそんなことを言っている場合でもない。ただでさえ可変機構が不調なのだ。このまま大地に叩きつけられてしまえば死んでしまう。
 プルがコンソールを操作すると、スラスターから青白い光が噴射され重力に逆らう力となり落下速度が弱まる。
 ガイアガンダムは殴りつけられた体勢から腹を下にして着陸態勢に移り、ゆっくりと大地へと滑空していった。
 これで大地に叩きつけられることはないだろう。
「……酷い目にあった」
 仏頂面でプルは呟いた。地面に激突する心配は避けられたとはいえ、彼女はいまだ不機嫌なままである。
「ふんだ。ガイなんて知らないから」
彼女が恨むは自分をここまで吹き飛ばしたアクエリオンのパイロットであるダイゴウジガイ。助けてくれたとはいえ、もう少しましな方法が
あってもいいだろうに。いや、変形機構さえ故障させなければもっとましな動きだってできたはずだ。だいたいあの暑苦しさはなんだ。
やる気があるのは分かるが正直いっしょにいて楽しいとも思えない。あれじゃあ……
 滑空の操作をしつつプルはヤマダジロウへの恨みを募らせる。しかし、エルピー・プルにはそんな恨みを募らせる余裕などはなかった。
 コクピット内にレッドアラームが鳴り、機体への異常を訴え始めたからだ。
「えっ? 何!?」
 プルは赤く点滅する光に驚く。また変形システムが故障したとでもいうのか。
「ええ!? パワーダウン!!??」
 コンソールに表示されるゲージを見たプルは驚いた。
 エネルギー残量を示すラインが1本しか残っていない。
 朝見たときはフルだったというのに早すぎる。
 おまけにフェイズシフトダウンなどという訳の分からない表示までされていた。
「あーもう!! ダウンしちゃ駄目ぇぇぇぇぇ!!!」
 プルはヴァリアブルフェイズシフトを再起動させ、機体の制御に集中し始める。しかしそれでもパワーダウンは一向に治まる気配がない。
 彼女はまったく理解していなかった。バッテリー駆動のMSの継続戦闘能力の低さを、何も知らずに展開していた相転移装甲は維持するだけでも
激しくENを浪費してしまうことなど、何も知らなかったのだ。


「んもう! ガイの馬鹿アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ガイアガンダムはそんなプルの叫びなど無視し、西へ西へと滑空し流されてゆく。


◆◇◆◇◆


553 ::代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:00:45 ID:WkJwmlZG



「何処に行ったヴィレッタとかいう女は!?」
 シンは探す。レイの行方を知っている女を。
 名前はたしかヴィレッタと僚機に乗っていた男が言っていたので間違いなかろう。
 が、薄情なことに戦場からどこぞへと逃げ出してしまったため見つけ出す苦労をかけなければならなかった。
 北の方角に逃げたと思われるので海岸沿いにスレードゲルミルを移動させてはいるが、今だ影も形も見えやしない。
 とはいえここから北上したところで行き場などない以上は発見は難しくは無い。
 見たところ水中戦が得意には見えぬ以上は海中に隠れるという選択肢は取れやしないのだから。
「ん? 後方に機影なのか?」
 シンがヴィレッタ探索を開始してから数十分後のことだった。レーダーに後ろから来る機体の反応が移ったのは。
 反応から察するにヴィレッタの機体よりは一周りほど小さい。しかし、レイかそれともレイのことを知っている相手かもしれない。
 そうでなくともそいつからヴィレッタのことを聞ける可能性だってあるのだ。なんにしても接触する価値はあるだろう。
 背後から接近してくる機体に対し、シンはスレードゲルミルを振り向かせそちらの方へと向かっていく、もっとも大して期待はしてはいなかったが。
 やがて、黒い機体がこちらに向かって進んできているのが見えた。やはり、ヴィレッタではない。
「お前! レイか、それともヴィレッタとかいう女を知っているか!?」
 とりあえずはその二人の行方を聞きだすことにする。多少なりとも知っているそぶりを見せれば先ほどのように…
「ん? レイかベレッタ? ああレイか。あいつのことならよく知ってるぜ」
 知っていた。それも大当たりらしい。ならば逃げ出される前に力技で抑えてやればいい。
「なら機体から引きずりだしてから聞き出してやる!」
 スレードゲルミルの両肩にあるドリルを掴み、相手に向ける。
「喰らえ! ドリルブーストナックル!!」
 両腕を相手に向けて発射。ドリルは二機共に轟音を立てながら勢いよく回転しつつ敵機に向かって突撃していく。
「フン! 真直ぐ飛んでくる物を打ち落とすなど造作もない。ってか!」
 黒い機体はビームサーベルのように剣を取り出し実体化させると、その剣でドリルを二機共弾き飛ばす。しかし、
「まだまだだ!」
 コントロールはまだ通じている。どれだけ弾き飛ばされようとも追いかけてみせるだけだ。ドリルを操作し再度アタックをかける。
「うお! しつけぇ!?」
 相手はさらにブーストナックルを切り払う。しかし無駄だ。どれだけ切り払おうともマシンセルにより傷は修復され、自分が操作するかぎりは絶対に
逃がさない。レイのことを知るためにも逃がすつもりはない。徹底的にやってやる。


554 ::代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:01:45 ID:WkJwmlZG
 その決意の元に何度も何度も何度も何度もアタックをかける。一度二度はじきはするが三度目以降は切り払えずに機体の各部に十数の傷を付けていく。
 黒い機体の装甲はそれなりには頑丈ならしく、多少の損傷では致命的なダメージとはならないがそれも時間の問題だ。いずれは自重に耐えかねて装甲が
折れてしまい動けなくなる。それから聴きだしてしまえばいい。
「クッ! この!! まどろこしいんだよ!!」
 無論敵とてそんな狙いなどこの状況から判断できぬほど馬鹿ではないらしい。しかし問題はない。接近戦を仕掛けてくるならば斬艦刀の錆に
してやればいい。敵機はそんなシンの考えなど知ってか知らずか背中から大砲を取り出し、
「断空砲! 発射だ!!」
 地面に向けてビームを打ち出した。周囲を爆炎と土煙が満たし何も見えなくなった。
「悪あがきを!」
 所詮はいたちの最後っ屁にも満たない行動だ。各センサーだって完全に死なず、適切な威力で放たれなかった砲撃を両者の姿を隠せるほどの眼くらましには
なりえなかった。十分に止めをさせる状況であることになんら変わりはない。

「これで止めだ!!」

 止めのドリルブーストナックルを位置を変えただけで隠れたつもりになっている動きもしない敵機に向ける。
 後は発射スイッチを押すだけで終わりとなる、時に熱センサーが何かを捕らえた。
 その反応はMSやMAの反応にしては非常に小さなものであった。
 シンは機影にしては小さい反応をライフルかビームサーベルか何かを使ったフェイントか何かだと判断すると同時にアタックを仕掛ける。
 両のドリルは敵機を貫きシンアスカに勝利をもたらす。
「グァ!?」
 はずではあったが、スレードゲルミルを突然襲った揺れにより狙いが明後日の方向へとずれてしまう。
 シンは周囲を見渡そうとして、スレードゲルミルと共に再び弾き飛ばされる。
 いったい何が起こっているのか? 
 訳の分からぬままシンは周囲を警戒するが、また不意の衝撃を受けた。
「この! 不意打ちなんて!!」
 戻した両手で斬艦刀を持ち、周囲をしっちゃかめっちゃかと切り付け、敵らしき存在から身を守る斬撃の結界を作り上げる。
 とたんに謎の攻撃は止んだ。しかし、これは一時的なものでしかないということはシンも理解していた。いつ斬撃を掻い潜り再び攻撃を再開されるか
分かりやしない。ならば殺られるまえに殺れ。手近な目標である黒の機体が攻撃をしてきている機体だと当りを付けた彼の行動は速かった。
 大地を踏み込み、斬艦刀を大きく振り被って黒い機体に突撃する。その様は彼の得意とするソードインパルスによる一撃と同じモーションであり、
数多くの連合軍を屠ってきた一撃である。受ければひとたまりもない。


555 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:02:27 ID:WkJwmlZG
 しかし、そんなスレードゲルミルの一撃をさえぎるが如く黒い機体との間に小さな影が割り込む。
 おそらくこの小さな影が先ほどから自分を攻撃してきた敵なのだ。ならば目の前に来た以上は叩き切ってやる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 影に向かって斬艦刀を振り下ろす。寸分違わず放たれた強撃はしかし小さな影が僅かに軌道を変えたことにより仕損じてしまう。
 そしてその影はこともあろうに蒼い光を身に纏いながら自機の顔面へと突っ込み、跳ね除ける。
「うぉ!?」
 ゲルミルは背後へと転倒し、寸でのところでバーニアを吹かして尻餅を付くことだけは免れた。
「あいつはいったいなんなんだ!?」
 シンは視線を廻らし、ようやっと土煙が完全に晴れた視界の中でそれを見た。
 蒼い尾を引くコアファイターほどの大きさの鳥のようなマシンが空を駆ける姿を。
「戦闘機!? 戦闘機だって!!」
 まさかコアファイターなのか? しかしそれにしては分離の兆候などは見られなかった。ならば増援なのか?
「チッ! フリーダムのキラヤマトじゃあるまいし、どっから沸いて出た!?」
 コアファイターが宙を駆け続け、黒い機体と戦闘機とシンの目線のラインが一直線になる瞬間に彼は全てを悟った。
 頭だ。黒い機体の頭がない。鷲を象ったかのように乗っかっていたヘルメットの部分が失われている。
 そしてそれに似た黒い戦闘機が飛んでいる。それらの事象が指す意味は一つだけだった。
「この! 遊びでやってんじゃないんだよ!!」
 怒りに駆られシード因子が覚醒したシンは、左腕のドリルを発射した。絶対に叩き落してやる。
「ハッ! そんなんじゃ猫一匹捕まえられ…!?」
 空中へと逃れようと上昇していた敵機の姿勢が途端に崩れた。
 よくは分からなかったが今がチャンスだ。
 シンはドリルブーストナックルをさらに加速させる。



――――――――ドリルブーストナックルが灰色の機体のどてっぱらを貫く!!






◆◇◆◇◆




556 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:03:16 ID:WkJwmlZG





 最初に出会った直後は向こうが高圧的な態度であったため多少イラッとはきたが、心覚えがある名前を出されて怒りに一時的なブレーキが掛かる。
「ん? レイカ、ベレッタ?」
 バレッタなどという名前には聞き覚えなどない。しかしもう一つの名前には聞き覚えがある。
「ああ麗花。あいつのことならよく知ってるぜ。で、それがお前にど……」
 どう関係あるのか? そう尋ねようとする前に。答えはやってきた。
「なら機体から引きずりだしてから聞き出してやる!」
 相手はドリルを付けた両腕をこちらに飛ばしてきた。
「チッ! 癇癪持ちって奴か」
 舌打ちしつつも断空剣を構え二機共に叩き落す。
 しかし、ドリルは叩き落としたにも関わらず、飛行を続けダンクーガから離れていく。
「まだまだああああああああああああああ!」
 しつこい。まるで蛇のように執念深く迫るドリルを再び弾く。しかし、2,3度弾こうともドリルはあきらめもせず何度も何度も迫ってくる。
 やがてドリルを何度か弾きそこない。ダンクーガの装甲を、腕を、足を、間接部分を削りとってゆく。
 まずい。このまままでは鉛筆のように削られてしまう。
 なんとか隙を見て、パルスレーザーで反撃を試みてみるものの装甲が厚いためか相手はまったく意に介してはいない。
 どうやら攻撃力の高い武器で反撃しなければいけないらしい。
 しかし、下手に殴りかかれば後ろからドリルで串刺しになってしまうだろうし。それほど大規模な威力を出せるほどのエネルギーも残されてはいない。
「クッ! この!! まどろこしいんだよ!!」
 それぐらいのことはアポロにだって理解できてはいた。しかし堪え性のない彼はだんだんと苛立ちがつのり、どうせなら一か八かで殴りつけてやろう
という短絡的な思考に落ちいろうとする。
「クソッ! アクエリオンなら! せめてベクターマシンなら!!」
 それらのダンクーガよりもスピードに優れた機体であれば突撃できるというのに。そう、機動力にさえ優れていれば殴りつけてやるのに。
「そうか!!」
 必要なのは機動力であった。ならばなんとかなる。なんとかしてみせる。
 下準備のために断空砲を大地へと撃ち、土ぼこりを巻き上げ、
「このレバーか!?」
 機動力を得るためにダンクーガから自分のいるユニットを分離させる。
 そのユニットであるダンクーガの頭部は空中に浮上し、戦闘機へと変形する。
 コクピット内でイーグルファイターが戦闘機形態へと可変したことをアポロは確認するとスロットルを一気に踏み込んで、巨人へと突撃する。
 さきほどの仕返しだ。このままぶん殴ってやる。
 その決意を表すかのようにイーグルファイターAは蒼白い光を纏い、さらに加速していく。
「こいつはご機嫌だぜ!!」
 敵機の側面へと機首を向け激突、いや、戦闘機で殴りつける。さらにUターンして殴りつける殴りつける殴りつける殴りつける殴りつける殴りつける!
 一撃一撃はアクエリオンやダンクーガには及ばぬが、そのスピードは両者の比ではなく砂煙も手伝って敵機を翻弄する。
 肩を削り、腕を削り、腹を削り、胸を削り、ダメージを与えていく。


557 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:04:06 ID:WkJwmlZG
 ちまちま削っていくのは性には合わなかったが喧嘩ともなれば卑怯もへったくれもない以上はこのまま押し切ってやるのみだ。
 十数回ほど削っていくと、やがて反撃か防御のためか大剣をしっちゃかめっちゃかに振り回す。
 あれほど巨大な大剣が掠ればイーグルファイターなどでは一撃でおじゃんだ。避けるにしてもああも振り回されれば近づきがたい。
 どうするべきか、とアポロには考える必要はなかった。敵はすぐに別の行動を起こしたからだ。
「チッ! この、やらせるか!!」
 敵はイーグルファイターを捉えるのを諦め、ダンクーガを直接攻撃しようと突進していく。
 ダンクーガをむざむざと破壊させるつもりはない。だからアポロは二機の巨人の間へと割り込んで防ぐために、真正面から突撃する。
 巨大な顔面が目の前にそびえ立ち、ぐんぐんと距離が近づいてくる。通常の人間ならば恐怖で失神してしまうだろう。
 しかし彼はアクエリオンのパイロットとして戦い続ける戦士である。ベクターマシンを駆りケルビム兵に挑むこととてあるのだ。この程度問題はない。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 大刀が勢いよく自分に向かって振り下ろされる。だが男は度胸。攻撃のタイミングさえ分かれば何とでもできる。
「そおりゃあ!!」
 レバーを捻りこみ、強引に機体を刃に対し平行に立てる。
 刃がコクピットの風防を掠めて後方へと流れていくのがアポロの眼に映った。その回避した体勢のままイーグルファイターで敵機の頭部へと突撃する。
 激突の衝撃に体が揺さぶられる。しかし、エネルギーフィールドにより機体自体のダメージは少ない。むしろ揺れにより酔いそうになるぐらいだ。
 機体を再度加速させ、敵機から離脱させつつ後方を見る。巨人は今だ健在であり多少ふらついていたが、剣を杖代わりにしつつ大地に立っていた。
 そのふらつき具合を見るに、後もう少しで倒れそうだ。
「この! 遊びでやってんじゃないんだよ!!」
 悪あがきとばかりに左腕を飛ばして、ドリルで串刺しにしようとしてきた。
 だが遅い。このまま加速して引き剥がしてやる。
「ハッ! そんなんじゃ猫一匹捕まえられ…!?」
 スロットルを踏み込みレバーを引き上昇し正面を見据えると、目の前に黒い物体が宙に浮いていた。
「う! おぉおぉおおおおぉおおおおぉおおおおぉ!?」
 慌ててレバーを捻り激突を回避する。


「止まれええええええええええええええええええ! ステラアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああ!」


558 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:04:48 ID:WkJwmlZG

 回避した途端に後から、何かが衝突するような貫くような鈍い音が聞こえてきた。
 背後へと振り向くと、灰色の獣の背中からドリルが生えている光景が見える。
「ステラああああアアああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアア!!」
 どうやらどてっぱらにドリルが突き刺さった犬らしき物体はステラとかいう名前らしい。
 体勢を立て直し、どういう行動を取れば良いかを考えてしまう。巨人からは先ほどまでの威勢が嘘のように掻き消えてしまい、正直毒気が抜かれてしまう。
 アポロは何かのタイミングが得られないかと機体を旋回させる。旋回させて様子を伺う。伺ってみるが、僅か数分ばかりで沈黙に耐え切れなくなり、
「あ〜、えっと?」
声をかけてみる。すると、相手は地獄から響いてくるような叫びを上げた。


「なに落ち着いてるんだ! ステラが死んだんだぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 シルヴィアが怪我したさいのシリウスが上げた叫びにも負けず劣らずの咆哮である。
「その……なんか悪かった」
「ふざけるな! ステラがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 叫びながら。こちらに向けて突進してくる。その体当たりを寸でのところでかわしつつ、文句を言う。
「分かった分かった落ち着けって」
「ステラを殺した貴様は生きていちゃいけないんだああああああああああああああああああああああ!!」
 しかし聞く耳など持っちゃいない。しかも何か自分の所為にされてしまっている。
「悪には悪の報いが! ステラを殺した罪に報うために死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 ここまで言われて誰が落ち着いてやるものか。
「ステラステラと! うるせぇ! ステラばなれができない変態やろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 機体を反転させて決着のために低空飛行で敵機へと突撃する。
「俺はキラヤマトだって倒したんだぞ! お前なんてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「だからうるせぇと言った!」
 自機と敵機との距離が縮まりお互いの射程範囲内へと両方ともたどり着く。
 先に仕掛けたのは敵機である。大刀を斜めに振り下ろしてきた。その一撃による結果を直感で悟る。マズイ、このままでは負ける。
 ならばこのままでなければいい。
「堕ちろ! カトンボ!!」
「うらっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 このままでなくなるためにレバーを引き、変化を起こす。その変化が完全に終わる前に刃は到達するだろう。
 しかし、そんなものを待つつもりもない。だから変形を終える前の体勢のまま右腕で大刀を殴りつける。
 機体は斬撃の軌道から逃れ、そのままの勢いで突撃する。




559 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:06:19 ID:WkJwmlZG
「なっ!? 変形し――――――!?」
「だから遅えと言った!!」
 イーグルファイターAからHへと変形を終える前には敵の面が鼻先三寸まで迫っていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 だから左ストレートをヘッドへと叩きつける。自身の野生とプラーナを全てのせた特大の一撃を。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 立ち上がる力を、立て直す力を、立ち上がろうとする力を刈り取る勢いで放った一撃は巨人を100mほど弾き飛ばし轟音をたてつつ、
地面へと数回バウンドさせた。やがてバウンドは収まり、静かになると同時に巨人の動きは止まる。
 静かになって身じろぎすらしない。動く気配すらない。起き上がる気配すらも立ち上がる様子すら見せない。
「へん。俺様の勝ちだ」
 アポロは己の勝利を確信し、破顔する。ようやく終わった。が、まだ終わりではない。
 次の戦いに赴くためにダンクーガと再度合体させる。
 が、エネルギーのゲージを見て愕然とした。もう1/5も残ってやいやしない。
 流石にダンクーガも補給なしではこれ以上は戦えそうにもない。なにより自分な腹の虫もうるさいぐらいになっている。
「よしゃあ! メシだメシ!!」
 アポロは補給をすることにし、歩き始めた。そうしようと思ったところで灰色の獣が眼に入った。
「ん〜これどっかで見たような?」
 アポロは灰色の犬型メカを見つめながらしばらく考える。そう犬だ。とても大きな犬だ。
 アクエリオンやダンクーガのようなロボットにも見えなければ、ケルビム兵や神話獣のような堕天翅共の兵器には見えない。
 なんとなく人間が乗る兵器にも見えない。馬ならともかく犬は人間を乗せて走りもしないし、空も飛ばないだろう。
 そうして13年の生の中からその答えを見つけ出す。
「ああ! こいつアイボって奴か! ジュンが持ってたから間違いねぇ!」
 そう。灰色の筐体といいプラスチックかガラスで出来たような黒い瞳のようなアイマスクのような訳の分からない部分といいまさしくアイボである。
「ってことはこいつもジュンの野郎みたいに人形とかに名前をつけてるのか」
 どうやら目前に居座る機体のパイロットも自分の仲間と同じような趣味を持っているのかとアポロは納得しつつ、とあることを決意する。
 ジュンにカステラとかいう名前の巨大アイボを直させようと。自分が壊したわけでもないがこのままでは何となく後味が悪い。
 ひっくり返してみると腹から背中にかけてドリルが突き刺さっているがジュンとつぐみなら何とか修理してしまうだろうたぶん。
「そんじゃあ、お前のペット、えーと確か、カステラだったけ? まあそいつを直してやるよ。戦いが終わった後でな」
 アポロはそう言いつつ巨人から大刀をふんだくると、どこかへとダンクーガを進ませていった。
 彼が目指すは自身とダンクーガが食事をできる場所である。



560 :代理投下 獣達の挽歌  ◇06elPxNp8E:2010/02/14(日) 21:07:14 ID:WkJwmlZG
【1日目 13:30】




【アポロ 搭乗機体:ダンクーガ(超獣機神ダンクーガ)
 パイロット状況:疲労(大)、空腹
 機体状況:機体各部位に損傷 戦闘に支障あり EN残り15% 斬艦刀装備
 現在位置:D-2 北部
 第一行動方針:食料と補給ポイント探し
 第二行動方針:この戦いが終わった後にカステラという名前のアイボをジュンに直させる
 最終行動方針:ぜんぶ倒して、最終的にはヴィンデルって野郎もぶっ倒す!
 備考:地図、名簿共に確認していません。そもそも気づいてもいません】




【シン・アスカ 搭乗機体:スレードゲルミル(スーパーロボット大戦OGシリーズ)
 パイロット状況:疲労(大)、気絶
 機体状況:機体各部位に損傷 戦闘に支障あり マシンセル正常機能中、EN30%、左腕が分離した状態でガイアガンダムに刺さっている
 現在位置:D-2 北部
 第一行動方針:ステラの仇を討つために黒い機体を倒す
 第二行動方針:レイを探す
 第三行動方針:シ―ブックとドモンには会いたくない
 最終行動方針:優勝し、ミネルバに帰還する】
【備考】
※ヴィレッタの位置は見失っています。


【エルピー・プル 搭乗機体:ガイアガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
 パイロット状態:死亡
 機体状態:MA形態 コクピット部分にドリルブーストナックルが突き刺さっている EN0% ヴァリアブルフェイズシフトダウン
 現在地:D-2 北部】




561 : ◆8nmVsszo/6 :2010/02/14(日) 21:10:05 ID:WkJwmlZG
代理投下も、投下も終了

472 : ◆06elPxNp8E:2010/02/14(日) 11:35:14 ID:H1DPkXag
投下終了。規制に巻き込まれたので現行スレに誰かお願いできないでしょうか?

>>「ブレードのランサーが唸る時、また家族が死ぬ!」
投下乙
おお、Dさんがまた不幸になっておられる。
―   ―

自分のSSのほうのタイトルは「不穏な予感」で。

誤字に関してですが、>>549の
× >下半身が大地に埋まり、下半身だけがガニ股で空にそびえ立っている。
を
○ >上半身が大地に埋まり、下半身だけがガニ股で空にそびえ立っている。
にお願いします。


562 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 21:20:39 ID:WaVqCYUw
そろそろ次スレを立てないと容量ヤバげかも

563 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 22:00:18 ID:f9IxF++N
閑話休題
「ブレードのランサーが唸る時、また家族が死ぬ!」の時間表記は?

564 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 22:23:53 ID:gfFwto2M
代理投下ありがとうございます
寝不足で頼みもせず申し訳ございませんでした
感想もありがとうございました。時間はこれでお願いします。


【1日目 13:00】


【Dボゥイ 支給機体:なし】
 パイロット状況:疲労(大) 思考能力回復  記憶回復 支給品入りのバッグ紛失
 機体状況:全身の装甲に傷や焦げ跡がある エネルギー中消費
 現在位置:C-6
 第1行動方針:?????
 第2行動方針:テッカマンは優先して殺す
 最終行動方針:ラダムを殲滅する
 備考:自分以外の動く全ての物がラダムに見えるように改造されましたがレイピアによって無効化されてしまいました。
     記憶を取り戻してしまいました。



【1日目 12:30】

【ラウ・ル・クルーゼ 搭乗機体:∀ガンダム@∀ガンダム
 パイロット状況:良好 仮面喪失 ハリーの眼鏡装備
 機体状況:良好 核装備(1/2)
 現在位置:C-7
 第1行動方針:ダルタニアスを取りに行って、大体でミユキを探す。生きているとは思っていない
 第2行動方針:手駒を集める(レイ、ディアッカ、カナード優先)
 第3行動方針:できれば乗り換えてから、雪原市街地でミストたちと合流する
 第4行動方針:手駒を使い邪魔者を間引き、参加者を減らしていく
 最終行動方針:優勝し再び泥沼の戦争を引き起こす(できれば全ての異世界を滅茶苦茶にしたい)】
※マニュアルには月光蝶システムに関して記載されていません。
※ヴァルシオン内部の核弾頭起爆スイッチを所持。


【ディアッカ・エルスマン 搭乗機体:なし(∀ガンダムに同乗中)
パイロット状況:体力消耗大
機体状況:なし
現在位置:C-7
第一行動方針:ジュドー…
第二行動方針何も考えたくない
第三行動方針:脱出が無理と判断した場合、頃合を見て殺し合いに乗る 】


565 :それも名無しだ:2010/02/14(日) 22:54:27 ID:Lh1YrZJt
新スレ立てといた。

第三次スパロボキャラバトルロワイアル5
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1266155615/

566 : ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/14(日) 23:53:29 ID:Jce3681S
レーベン、ダイヤ、イルイ、テッサ投下します。

567 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/14(日) 23:56:06 ID:Jce3681S
レーベンはタスクとの戦いから逃げた後、海中を通り南下していた。
そしてC-4の河につながる地点で行き先を考えていた。
今のゴライオンは連戦続きでかなりのエネルギーを消耗している。

「最寄りの補給ポイントは……B-4の市街地だな」

ゴライオンはすでにかなり傷ついている。
特に両肩の破損が厳しく、左腕と右足の破損はまだ軽い。
レーザーマグナムとフットミサイルは問題なく使えそうだ。
そして十王剣もかなり傷ついていて無理をすれば折れてしまいそうだった。

「やはり、そろそろ新しい機体に乗り換えた方がいいかもしれんな……」

ルールでは放送のたびに新しい機体を一つ会場に追加すると言っていたが今はまだ放送には早すぎる。
やはり他の参加者から奪うのが一番確実だと判断した。
河を南下し、高い山に出たレーベンは、ここで少し休憩を取る事にした。
汗で薄まった戦化粧を整えながら、レーベンはこれからどうするかを考えた。


レーベンの一番の目的はジ・エーデル・ベルナルとの接触だ。
それが敬愛するエーデル准将なら全力で守り、すべての参加者を全滅させた後にレーベン自身も命を断ち、優勝の栄誉を捧げる。
万が一別人であった場合は地獄の苦しみを味あわせた上で地獄に叩き落とす。
その後はもちろん他の参加者を全滅させて、エーデル准将がいる世界に帰るのだ。

「だが、この場には俺をも手こずらせる奴らが数多い……さすがに血気に逸りすぎたかもしれん」

戦闘の疲労もあいまって、レーベンは少し落ち着いていた。
親友のシュラン・オペルが戦死した直後からレーベンは呼ばれた。
激怒していた勢いに任せて行動した結果レーベンはすでにかなりの人数に危険人物として知られてしまった。

「それもこれもあの女のせいだ……最初に出会ったのがあんな女でなければ!!」

レーベンが最初に出会った他の参加者は運が悪い事に女だった。
それだけではなく乗っていた機体も女の姿を模していたのだ。
重度の女性恐怖症を抱えているレーベンが冷静でいられるはずはなかった。
しかも乱入してきたヴァンという男に邪魔をされ、結局ルリは逃がしてしまった。
その後に雪原エリアでジュドーとディアッカと戦い、偶然見かけたヴァルシオーネにまたも我を忘れてしまった。
イスペイルという女ロボに乗っていた男を追っている内にアナベル・ガトーに邪魔をされた。
そしてヴィレッタという女、ヴィレッタの仲間であるタスク、乱入してきたシンと入り乱れての戦闘。
ルリ、ヴァン、ジュドー、ディアッカ、イスペイル、ガトー、ヴィレッタ、タスク、シンと数えてみればもう9人に、レーベンは名乗ってしまっているのだ。

「俺が知られる事などどうという事はないが、エーデル准将の身に危険が及ぶ事などあってはならない……!」

レーベンの目的がエーデル・ベルナルの捜索である以上、レーベンが危険人物となればその探し人のエーデルまでもそう見られてもおかしくはない。
危険と断定する事はなくても、警戒されるか、最悪の場合は一方的に攻撃を受けてしまうかもしれない。
別人ならそれでも構わないが本人だった場合は重大な失態だ。


568 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/14(日) 23:58:27 ID:Jce3681S
「……参加者を減らすのもいいが、まずはジ・エーデル・ベルナルなる人物がエーデル准将であるかどうかを確定させるべきか。
ゴライオンの状態もよくない、しばし直接的な戦闘は避けるべきか……?」

確実に勝てる相手ならいいが、ヴァンという男の機体やタスク・シングウジのような強力な機体の相手は難しい。
出会ったらすぐに戦闘を仕掛けるのではなくまずは友好的なふりをして信用させ、機体を奪い取るのがいいだろう。
戦力的には誰かと組むのが一番効率的だが、レーベンにはまったくその気はなかった。

「シュラン、せめてここにお前がいてくれれば……いや、泣き言は言うまい。俺はお前とエーデル准将以外に気を許すつもりはないのだからな!」

シュランが死んだ今、レーベンにはもはや友はいないし、作る気もなかった。
考えをまとめ、休憩を取った後にレーベンはゴライオンを起動させ、山を降りて西へ向かいだした。




「む? これは……」

平原を西に横切り、市街地目指して飛んでいたゴライオンだが、その計器に一つの反応が出た。
すぐにその反応は見えてきた。
ゴライオンのほぼ半分ほどの大きさだろうか、がっちりした体格の装甲が厚そうなロボットだ。

「反応は一つ。接触してみるか?」

これが複数であればレーベンは迷わず逃げていたが、相手が一人であれば話は別だ。
情報交換を持ちかけその後に機体を奪うには絶好の相手である。
すぐにその機体は視界に映った。
それほど速くないスピードで街に向かって飛んでいる。
ゴライオンがかなりその機体に近づいたところで、やっとそのロボットは振り向いた。

(ここまで接近してやっと気付くとは、相当鈍い奴だ……な、何?)

振り向いたジャイアント・ロボの手には三人の人が乗っていた。
少年が一人、女が一人、少女が一人だ。
みんなまだ子供だったが、レーベンにとっては大した差はない。
年長の女が腕時計型コントローラーに向かって命令を出すとジャイアント・ロボはゴライオンを警戒するように武器を構えた。

(なるほど、ああやって操縦するならレーダーも何もないだろうな。スピードが遅かったのもあまり速すぎれば危険だからか)

ゴライオンをにらむ女に激怒しつつもジャイアント・ロボの操縦方法を一瞬で見抜いたレーベンはにやりと笑った。
見たところかなり強力そうな期待なので戦えば今のゴライオンでは危険かもしれない。
ただしそれは相手が普通の操縦方法だったらだ。
あれでは腕一本を常にパイロットをかばうために使わないといけない。
そして音声認識で機械がオートで動かすロボとパイロットが直接操縦するロボでは言うまでもなくゴライオンの方が反応が早い。

(音声で操縦するならこのゴライオンに乗りながらでも操縦できるかもしれん……いただくぞ、その機体!)

569 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/14(日) 23:59:46 ID:Jce3681S
いつでも攻撃できるようにゴライオンの武装を準備しつつ、レーベンは通信を試みた。
通信装置などない相手だから都合のいい事に戦化粧をしているレーベンの映像を送る必要がない。
しかし声を出す前にふと考える。

(もし奴が誰かから俺の情報を得ていれば、エーデル准将の情報を得るどころではない……)

本名を出すのはまずい。
もしレーベンを知っているならの話だが、警戒している相手に情報を渡すバカはいないからだ。
情報を手に入れた後ならもはや殺すだけなので意味はないものの今は一時的に違う名前を名乗ったほうがいい。
怪しいとは思っていても別人が機体を乗り換えたという可能性は否定しきれないからだ。
レーベンは名簿に乗っていない名前を考え、シュランの名前を借りる事にした。

「こちらはシュラン・オペルです。戦う気はありません……応答していただけませんか?」

ジャイアント・ロボの手の上で、女が戸惑ったようになにか少年と会話するのが見える。
攻撃を仕掛けたい衝動を抑えながらレーベンは返答を待った。
この間に攻撃しないのだから好戦的ではないというアピールである。

(ええい、早く結論を出さんか……!これだから女は……!)

一分ほど待ったレーベンは、今にも引き金を引きそうだった。
だがその前に女から返答があった。

「テレサ・テスタロッサです。どういうご用でしょうか?」
「テレサさんですね。そちらの……ええと、子供が二人いるようですが?」
「ええ、私が保護しているんです。ついさっきの戦闘で機体を破壊されたので」

名前を聞こうとしたのだが、やはり警戒はされているらしい。

(ちっ、仲間の名前を教えるほど馬鹿ではないか。ここはあまりこだわらずにエーデル准将の情報を優先すべきだな。
どうせ殺してしまえば名前など意味はない。しかし女と会話するなど……!)

強烈な嫌悪感を押さえつけてレーベンは会話を続けた。
二つに分かれたZEUTHを仲違いさせたときを思い出してできるだけ穏便な口調を心掛けた。

「そうですか……そんな子供まで」

いかにも痛ましい声で言ったレーベンだが、やはりこれくらいではテッサは警戒を解かなかった。

「すみません、先を急ぐので……ご用がないのでしたら、これで失礼します」
「それなら私も同行しましょうか?失礼ですがその機体で、ご婦人と子供さんだけでは危険ですよ」
「いいえ、仲間がいますので大丈夫です。お気遣いなく」

(女あああああっ!せっかくこの俺が同行を申し出ているのに断るだと!?今すぐその体を八つ裂きに……!)

またカッと頭に血が昇るレーベンだが決定的な行動に移る寸前でなんとか自制できた。
情報を得る前に無理に押すべきではない。


570 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/15(月) 00:01:01 ID:Jce3681S
「そうですか……ですが、この場には危険な人物が多い。私もすでに何度か好戦的な人物に襲われました。
お仲間と合流されるまで充分に気を付けてください」
「はい、では……」
「あっ、すみませんもう一つよろしいでしょうか?」

ジャイアント・ロボが街へと一歩下がったのを見て立ち去る気だと判断したレーベンはここらで切り上げようと思った。
やはりボロボロのゴライオンでは警戒されやすいようだ。

「あ、最後に一つ。ジ・エーデル・ベルナルという人物をご存じではないですか?」
「……いえ、知りませんね。では」
「そうですか……」

テッサはそう言ってジャイアント・ロボに命令し、街の方に向かって飛びあがった。
地上からジャイアント・ロボを見上げていたレーベンは、レーザーマグナムを発射しようとしてゴライオンの左腕を上げる。

「ならお前に用はない。死ねえ……何!?」

しかしレーザーマグナムを発射仕様とした時逆にジャイアント・ロボからミサイルが降ってきた。
レーベンは慌ててゴライオンに防御させるが爆発の衝撃に吹き飛んでしまう。

「ぐわっ!あ、あの女!この俺の行動を読んだだと!?」

ゴライオンを何とか立ち上がらせるが、レーベンが見た物はジャイアント・ロボではなく、雨のように降って来るミサイルとバズーカの弾だった。

「うおおおおおおおおお!!」

広範囲に広がった爆撃をゴライオンは必死に動きまわったり撃ち落としたりして防ぐ。
なんとかすべてやり過ごしたときジャイアント・ロボはすでにレーベンに背を向けて逃げ始めていた。

「ぐうう……あの女ああ!この俺に舐めた真似をしてただで済むと思うな!」

ゴライオンの全身をチェックし動けると判断したレーベンはすぐさまジャイアント・ロボを追うために動き出した。
レーベンが攻撃する前にジャイアント・ロボは動きだしていたので、やはりレーベンの悪評を知っていたらしい。
聞いた情報と名前が違うので疑ってはいたが、探し人のジ・エーデル・ベルナルの名前が一致したので攻撃に踏み切ったのかもしれない。
どちらにせよテッサに出し抜かれたレーベンの怒りのボルテージは既に振り切れていた。
戦闘を避けるという選択肢はこの時点でもう完全になかった。

「逃がすかぁぁぁぁああっ!」

手に生身の人間を乗せているため全力のスピードを出せないジャイアント・ロボ。
細かな岩などはあるがジャイアント・ロボが隠れるほどの遮蔽物はない平原である。
数分飛んだだけでゴライオンはすぐにジャイアント・ロボに追いついた。

「ファイヤァァァトルネエエエェェド!」

571 :それも名無しだ:2010/02/15(月) 00:01:45 ID:8LO5jKzb
sien

572 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/15(月) 00:03:22 ID:Jce3681S
ゴライオンの右腕から発射されたファイヤートルネードをジャイアント・ロボは片腕を上げて防御した。
もう片方の腕に人間を乗せているのでその動きは遅い物だ。
ジャイアント・ロボから肩の大型ミサイルと胸の小型ミサイルが発射されゴライオンに迫る。

「そんなもので、この俺のエーデル准将への忠義の炎を消せるものかぁぁぁぁ!」

アイフラッシャー、レーザーマグナム、フットミサイルを発射して、ミサイルを迎撃するゴライオン。
その間にジャイアント・ロボはまたも背を向けて街の方向へ逃げていく。

「仲間がいると言っていたな……街に先行しているのか?ならば合流などさせん!」

再びジャイアント・ロボを追うゴライオン。
しかし、近付けばそのたびにミサイルの雨と、腹から打たれる射撃がレーベンの接近を妨害する。
しばらく追撃戦が続いたが、盛大に撃ち続けたためかゴライオンの残弾は残りわずかとなった。

「ええい、十王剣を使わざるを得んか!」

温存していた十王剣を出すゴライオン。
ジャイアント・ロボの固そうな装甲ならともかくミサイルを切り払うくらいならできる。
ダメージを覚悟して突っ込んだレーベンだが、なぜかジャイアント・ロボからのミサイルも少なくなっていたため苦労せずに凌ぐ事が出来た。
最後はパンチを仕掛けてきたジャイアント・ロボ。
余裕で避けたレーベンだが、そのパンチはレーベンに一つの事実を教えた。

「……そうか、奴ももう弾がないのか!」

基本的に攻撃はジャイアント・ロボ任せのテッサ達とは違い、ゴライオンはカイメラのエースであるレーベンが操っている。
当然その動きの良さは段違いで、ゴライオンはレーザーマグナム一発で多数のミサイルを迎撃したり砲撃を回避する事もあった。
その分ジャイアント・ロボの方が弾を消費するスピードは早くなって半分ほど残っていたジャイアント・ロボの残弾はすぐになくなってしまった。

「ならば!」

一気に近づいたゴライオンのキックを受け、ジャイアント・ロボが地上に墜落した。
地上に投げ出されるテッサとダイヤとイルイ。
ゴライオンは地上に降りると十王剣を構えた。

「はあ、はあ……手こずらせてくれたが、ここまでだ!」

レーベンもかなり消耗したが、これで勝負は決まったも同然だ。
まずはにっくき女からとテッサを刺し殺そうとしたら、その前にダイヤが飛び出て来て女二人を守るように両手を広げた。

「何のつもりだ、小僧!」
「テッサさんとイルイはやらせないぞ!」

地面に叩き付けられたときに怪我をして、ダイヤは頭から血を流していた。
テッサとイルイもダメージは大きく立ち上がれない。

573 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/15(月) 00:05:07 ID:Jce3681S
「いい度胸だと褒めてやろう……しかし、生身でなにができる!」
「うわあああっ!」

ダイヤの目の前にレーベンは十王剣を振り下ろした。
衝撃で地面が爆発し、ダイヤは吹き飛ばされる。

「うう……ロボ、パンチだ……!」

ダイヤは叫んだが、コントローラーはテッサが身につけたままだ。
ジャイアント・ロボは反応しなかった。

「ろ、ロボ……動いてくれロボおおおっ!」
「見上げた勇気だ。女などに惑わされなければいい戦士になっただろう」

今度こそ動けなくなったダイヤを横目にして、レーベンは今度こそテッサとイルイにとどめを刺そうとした。
ゴライオンが十王剣を振りかぶる。

「だが、これで終わりだあああぁぁぁ!」

十王剣が二人の少女の命を奪うべく振り下ろされる。
だが、十王剣は甲高い音を立てて受け止められた。
ジャイアント・ロボの腕によって。

「な、何!?」
「ロボ?」

レーベンだけでなくダイヤも驚いた。
誰もジャイアント・ロボに命令していないのに、勝手に動いたのだ。

「な、何だこのパワーは!?」

さっきパンチを受けたときとは段違いのパワー。
ゴライオンの出力は600万馬力だが、ジャイアント・ロボの出力は108万馬力だ。
ゴライオンの方が単純に六倍強いはずなのに、今度吹き飛ばされたのはゴライオンの方だった。

ジャイアント・ロボの隠された機能、操縦者が危機に陥ったとき発動する、通常の50倍以上のパワーを発揮するオートガード機能だ。
現在の操縦者のテッサの危険に反応し、発動したのだ。
ジャイアント・ロボはそのままゴライオンに殴りかかる。

「くっ、だがそんな狙いで当たるものか!」

だがどれだけパワーが上がっても動きは単調だ。
歴戦のパイロットであるレーベンは易々とパンチを避ける。

574 :それも名無しだ:2010/02/15(月) 00:06:44 ID:gfFwto2M
sien

575 :それも名無しだ:2010/02/15(月) 00:06:44 ID:thA+oqjj


576 :獅子将軍  ◆Ujakh5O.Yc :2010/02/15(月) 00:07:17 ID:Jce3681S
「そこだ!」

ゴライオンが十王剣を振り回しジャイアント・ロボの装甲に突き刺さる。
しかしジャイアント・ロボの腕が十王剣を握り締めると、あっという間に十王剣は折れてしまった。

「十王剣を折っただと!?」

剣を失ったため、ゴライオンは一時後退した。
その隙にテッサは何とか気を取り戻した。

「だ、ダイヤ君……」
「テッサさん!」
「ダイヤ君、街まで走るんです!イルイちゃんを連れて、逃げてください……!」

ふらふらと立ち上がったテッサが、まだ倒れたままのダイヤに言う。
イルイは気絶したままだ。

「て、テッサさんはどうするんだよ!?」
「私が時間を稼ぎます。ドモンさんとシ―ブック君のところに……早く……!」
「テッサさん、それなら俺が!」
「駄目です。ダイヤ君は強くなってイルイちゃんを守るって言ったじゃないですか」
「でも!」
「頼みましたよ、ダイヤ君……行きなさいロボ!」

それ以上はダイヤに構わずジャイアント・ロボをテッサは走ってきたゴライオンへと突撃させた。

「うおおおおおおお!?」
「ロボ、そのまま破壊しなさい!」

ゴライオンの腰に組み付いたジャイアント・ロボは、腕で押さえつけて一気にゴライオンを破壊しようと締めつけた。
ギシギシと機体が軋む音がしてレーベンはこのままではゴライオンが破壊されると思い必死にゴライオンを抵抗させる。

「くっ、離れろ女あああああああああっ!」
「離れません!」

パワーでは敵わないと悟ったレーベンは、どうにか脱出しようと考える。
方法はすぐに見つかった。

「ぐうう……ならばこうだ!」

ゴライオンが左腕をジャイアント・ロボにではなく、その後ろで見守るダイヤ達に向けて伸ばした。

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取りに行ったけどなかった。次は一時間後に取りに行くです。
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