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少年サンデーバトルロワイアル part2
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キーワード [ part2 少年サンデーバトルロワイアル ]

[776 res] 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 最新50
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少年サンデーバトルロワイアル part2

1 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:48:49.80 ID:Lg/RLyei [1/7回発言]
当スレッドは週刊少年サンデーで連載されていた漫画のキャラクター達でバトルロワイアルのパロディをやろうという企画の場です
二次創作が苦手な方。人物の死亡や残酷な描写、鬱々とした展開が受け付けない方は閲覧にご注意ください。

また、当企画はリレー形式で進めていくので、書き手を常に募集しています。
文章を書くのが初めての方でも大歓迎なので興味があれば書いてみてください。


避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14506/

まとめwiki
ttp://www44.atwiki.jp/sundayrowa/


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2 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:49:17.18 ID:Lg/RLyei [2/7回発言]
参加者名簿

からくりサーカス 14/14 
○才賀勝○加藤鳴海○才賀 エレオノール○ギイ・クリストフ・レッシュ○ルシール・ベルヌイユ
○才賀アンジェリーナ○ジョージ・ラローシュ○阿紫花英良○フェイスレス
○パウルマン&アンゼルムス○シルベストリ○ドットーレ○コロンビーヌ○才賀正二

ARMS 11/11       
○高槻涼○新宮隼人○巴武士○アル・ボーエン○キース・ブルー○兜光一○キース・シルバー
○キース・バイオレット○キース・グリーン○ユーゴー・ギルバート○コウ・カルナギ

金色のガッシュ!! 9/9
○ガッシュ・ベル○高嶺清麿○パルコ・フォルゴレ○ゼオン・ベル○ヴィンセント・バリー○ナゾナゾ博士○テッド○チェリッシュ○レイラ
  
金剛番長 8/8
○金剛晄(金剛番長)○金剛猛(日本番長)○秋山優(卑怯番長)○伊崎剣司(憲兵番長)
○桐雨刀也(居合番長)○白雪宮拳(剛力番長)○マシン番長○来音寺萬尊(念仏番長)

うしおととら 7/7    
○蒼月潮○とら○井上真由子○蒼月紫暮○秋葉流○紅煉○さとり

烈火の炎 7/7      
○花菱烈火○霧沢風子○石島土門○水鏡凍季也○小金井薫○永井木蓮○紅麗

うえきの法則 7/7    
○植木耕助○佐野清一郎○宗屋ヒデヨシ○マリリン・キャリー○バロウ・エシャロット○ロベルト・ハイドン○李崩

SPRIGAN 6/6      
○御神苗優○ジャン・ジャックモンド○朧○染井芳乃○暁巌○ボー・ブランシェ

GS美神極楽大作戦!! 6/6       
○美神令子○横島忠夫○おキヌ○ルシオラ○アシュタロス○ドクター・カオス

YAIBA 5/5       
○鉄刃○峰さやか○宮本武蔵○佐々木小次郎○鬼丸猛



計80名

3 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:49:43.13 ID:Lg/RLyei [3/7回発言]
【ルール】

バトルロワイアルスレ(パロロワスレ)で書くのが初めてという方は
ttp://www44.atwiki.jp/sundayrowa/pages/24.html
を参考にしてください
それでも分からなければ遠慮無く聞いて頂いて構いません


経験者の方は以下の事に留意していただけばほぼ大丈夫です
・初予約の場合は期限が3日、それ以降は7日
・ランダム支給品は1~3個で、大きい物に関しては蔵王@烈火の炎に収納されています(蔵王の説明は下記)
・禁止エリアの発動は放送から3時間後

『蔵王の説明』
人の掌ほどのサイズの球であり、収納できる質量に限界はない
道具の出し入れを行う際は念じるのみでよい
ただし、当ロワでは以下のニ点の制限がかかる
蔵王一個につき道具一つまでしか入らない
生物を収納することができない



【制限について】

基本的には最初にそのキャラを書いた人に委ねますが、以下の二点に関してはあらかじめ制限を明記しておきます

金色のガッシュ!!の魔物の子供たち→パートナーと魔本がなくても自身の心の力を使って呪文を発動することはできますが、威力は弱体化します。
                       また魔本は誰でも読むことができますが、本人が魔本を持って呪文を唱えても本来の威力にはなりません。
                       なお、魔本が燃えたとしても死亡や魔界に送還することにはなりません。

うえきの法則の能力者達→神候補から貰った才を使って能力者でない者を傷つけても才は減少しない。

4 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:49:49.43 ID:6c7P2HXO [1/3回発言]


5 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:51:07.36 ID:Lg/RLyei [4/7回発言]
スレ立て完了。
投下を再開します。

6 : とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:52:09.75 ID:Lg/RLyei [5/7回発言]


 ◇ ◇ ◇


「しっかし、あの坊やがねえ」

 全焼してしまったグリモルディは使い物にならなかったので、阿紫花は紅麗に支給されていた『キャプテン・ネモ』という懸糸傀儡を受け取った。
 妙に糸が軽いのに慣れるまで時間がかかりそうだったが、操るのには問題ない。
 気になるのは、説明書に『才賀勝のマリオネット』と書かれていたことだ。
 阿紫花が知る才賀勝はただの小学生のはずだが、これは同姓同名なのだろうか。

「いやぁ、でもあの坊やならいまごろ少しは使えるようになっててもおかしくねえか」

 キャプテン・ネモをトランクに戻してから蔵王に収納し、阿紫花はコートのポケットに突っ込む。
 ちなみにこの蔵王は、グリモルディが入っていたものである。
 もともとキャプテン・ネモが入っていたほうは、紅麗が別の物を収納している。
 ジャバウォックの爪である。
 あれほどの再生能力を持つジャバウォックが治癒できないのだから、何かしらの能力を秘めていると考えたのだ。
 斬り落とされた衝撃でほとんど砕けてしまっていたが、紅が使ったものも含めて三本だけ無傷で残っていた。

「この剣も私には必要ない。使うか」

 優のリュックサックから必要な物を移動させた紅麗が、ヒヒイロカネ製の剣を手に乗せている。
 懸糸傀儡もあるが念のためにと、阿紫花は受け取った。
 人形繰りの邪魔になるので、よっぽどのことがない限りは蔵王に入れっぱなしにするつもりだが。

「では行くぞ」
「あれ、そっちに行くんですかい?」

 紅麗が進んでいるのは東。
 加藤鳴海に向かわせた住宅街は北である。

「あの傷ではそう早くは起きないだろう。先に殺し合いの会場の端がどうなっているのかを確認しに向かう」
「あ、なるほど。そりゃごもっとも」

 歩みを止めずに応えた紅麗を追いながら、阿紫花は胸中で思う。

(あたしも人のこと言えやせんが、この人リュックサック似合わねえなぁ)



【F-5 海岸/一日目 黎明】

【阿紫花英良】
[時間軸]:20巻第33幕『合流』にて真夜中のサーカス突入直後。
[状態]:疲労中
[装備]:形傀儡@烈火の炎、キャプテン・ネモ@からくりサーカス、ヒヒイロカネ製の剣@スプリガン
[道具]:基本支給品一式、支給品0~1(確認済み)
[基本方針]:とりあえず紅麗についていく。


【紅麗】
[時間軸]:22巻210話『地下世界の消滅』以降、SODOMに突入するより前。
[状態]:脇腹に傷(処置済み)、疲労中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、支給品0~2(確認済み)、首輪(優)、優のメモ付き名簿、ジャバウォックの爪×3@ARMS
[基本方針]:プログラムを破壊し、早急に帰還する。そのために役立つ人物や情報を手にしたい。まず東へ向かい、エリアの端を確認。

7 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:52:15.12 ID:6c7P2HXO [2/3回発言]


8 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:52:53.79 ID:SPXMuHZ+ [1/2回発言]
 

9 : とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:53:04.30 ID:Lg/RLyei [6/7回発言]



【支給品紹介】


【形傀儡@烈火の炎】
阿紫花英良に支給された。
森川願子の持つ魔道具。
人形に付属させることで思うままに操ることができる。


【キャプテン・ネモ@からくりサーカス】
紅麗に支給された。
フェイスレスが作り、才賀勝が使っている懸糸傀儡。
海賊服を着た骸骨のような姿をしている。
両手の剣や背中に収納された刃で戦う。
水上や水中で動かすことも可能。



【備考】
※F-5海岸に、御神苗優のリュックサック(水、食料、名簿、ランダム支給品以外)、グリモルディの残骸、フェイファーツェリザカ(0/5)が放置されています。

10 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:53:36.67 ID:SPXMuHZ+ [2/2回発言]
 

11 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:56:10.62 ID:Lg/RLyei [7/7回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。
予約期限超えた上にスレ容量確認忘れていて、すみませんでした。


なお状態表が二つあるキャラがいます。
これは『人間』と『とぼけた(ry』を前後編としてではなく、別々の話としてwikiに収録するつもりなので、このようにしました。

12 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 22:03:39.90 ID:6c7P2HXO [3/3回発言]
投下乙ー!
魔道具とかサイキックとか、気功とか、それぞれが自分の知る知識に合わせて反応していて、クロスオーバーしてるなーって思った
違和感なくかね合わせできていてすごいと思う
そして主人公大戦では優が落ちたか
ついでにジャバウォックの爪もドロップアイテムだぜ、ひゃっはー!

加えて状態表でた後の紅麗VS阿紫花がよかった
紅麗つええ、かっけええもあるけど、個人的には阿紫花のすっとぼけた魅力が全開だったのが嬉しかったなー
退屈とか、お題とか、代表的ワードも使いこなしてくれてたし
何気にこの二人のコンビは上手いことやってける気がする
主人公コンビも足して二つも気になるコンビが生まれたぜ、GJ

13 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 22:09:11.63 ID:gJ0Aq6oO [1/1回発言]
投下乙
阿紫花の曲者ぶりが良かったです
原作の絵が目に浮かぶようだ

14 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/06(水) 02:07:49.65 ID:W7yPMf5A [1/1回発言]
投下乙
って優……お前何やってんだ・・・
あっけなく命捨てんなよ・・・犬死にすぎる

15 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/06(水) 08:56:25.30 ID:wL0eSmjF [1/1回発言]
投下乙

優のあまりにも早い退場は残念だけど、これが首輪解除や脱出に繋がると信じよう

アシハナは飄々としてていいねw

16 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/06(水) 15:34:48.64 ID:kfmzfOEf [1/1回発言]
投下乙
うわあああ、優ううう!こんなに早く死ぬなんて…芳乃への言葉がくる…
でも優の意志は鳴海が、考察や首輪は紅麗が受け継いでくれたし、涼だってきっと言葉は届いてるはずだ
粉塵爆発まで使うW皆川主人公バトルには燃えた。ジャバウォックに飲み込まれた涼にキレる優、かっこよかったぜ。お前からしたら許せないよな
同じく過去の自分と重ねて失望する紅麗もかっこよかった。そしてその二人の攻撃受けても立ち上がるジャバウォックマジ魔獣……!
そんなジャバウォックに気を持ってくる辺りも、皆川バトルのシメに相応しいよなぁw
あとジャバウォックとは戦わないのに、紅麗にタイマン申し込むアシハナさんもらしいぜ。世界の危機なんかより自分の意地だよな、この人はw
鳴海と涼も新生麗も、先が楽しみだ

17 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/06(水) 20:39:19.00 ID:zrW0YVS8 [1/1回発言]
そういえば……ジャバウォック化したから今高槻全裸なのか
今後下手すればコスプレ無差別マーダー(主人公)とかいう魑魅魍魎が誕生しかねんw

18 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 00:31:12.66 ID:MXKuIS+f [1/1回発言]
投下乙です!

うおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!
皆かっけぇぇぇぇぇぇえ!!!
ジャバウォック化した涼に対する紅麗と優の反応がいいなぁ…
確かにこの二人は涼と似た部分があるしね
 
んで、あしはなさんもらしいなぁw
こいつらの今後に期待! 

19 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 04:01:08.32 ID:eiF2GB0C [1/3回発言]
>>17
おい待て
高槻の全裸なんてどうでもいいけど、バイオレット……ごくり

20 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 04:34:22.21 ID:Pka6m/mi [1/2回発言]
うしおおおおお! バイオレットと戦ええええ!

21 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 04:48:41.48 ID:dr2rxmZ6 [1/12回発言]
バイオレットの近くにいる強マーダーって誰だ!?
そいつをとっとと向かわせようぜ!!!

22 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 08:18:57.66 ID:kWpgcO+o [1/2回発言]
こいつらww

23 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:30:07.48 ID:Pka6m/mi [2/2回発言]
なにを! こっちは真剣なんだ!

しかしグリーンが覚悟を決めたのと涼が暴走したのは同じ黎明なのか。カツミへの好意以外は重ならないこいつららしくていいな
さぁバイオレットも同じ黎明に完全体にぃぃぃ

24 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:48:27.53 ID:4wxv2LsN [1/3回発言]
シルバーは……まあ別にいいかw

25 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:49:53.08 ID:dr2rxmZ6 [2/12回発言]
カツミが見せしめにさえなってなければ……

26 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:50:00.24 ID:cz4DlaoM [1/1回発言]
あの年代のナオンには興味ありませんから…

27 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:51:44.82 ID:d571uCzC [1/17回発言]
大幅に期限に遅れ、本当に申し訳ありませんでした。
それでは、投下します。

28 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:52:35.71 ID:d571uCzC [2/17回発言]
 気に食わない。
 ジャン・ジャックモンドの抱える不満が舌打ちとなって現れた。
 彼が怒りの矛先を向けるのは、キース・ブラックと名乗った男。
 この悪趣味極まりない殺し合いの主催者だ。

「あの野郎……ただじゃおかねぇ……」
 ポケットに突っ込んだ両手を握り締める。
 それでも怒りが収まらないので、右足で大地を思いっきり蹴り上げた。
 土くれが宙を舞い、数メートル先にべチャリと落下する。
 その様は、先ほど繰り広げられた悲劇……少女の死体が落下する光景を思い起こさせた。
 本当に、胸糞が悪い。

「しかし、コレ……どうにかなんねぇのか」
 首輪を乱暴に引っ張ってみる。
 当然ながら、忌々しい銀のリングは外れてくれるわけもなかった。
 中に爆発物が詰め込まれているらしいのだが、それにしては彼の扱いは雑である。
 それも当然のこと。
 彼の怒りを最も買っているのが、この首輪なのだ。
 主催者は、こんな陳腐なオモチャなどでジャン・ジャックモンドを縛り付けた気でいる。
 そのことが、不愉快で仕方がなかった。

 とはいえ、彼が首輪をぞんざいに扱う理由は、単に頭に血が上っているからというだけではない。
 キースは参加者に殺し合いをしろと言ったのだ。
 ちょっとやそっとのことで首輪が爆発してしまっては、殺し合いなど成立しないではないか。
 あの会場に集められた顔ぶれを見る限りでは、相当な実力者が揃えられている。
 首輪の強度も、それらの猛者による激戦を想定してつくられているはずだ。
 ……と、ジャンは冷静に考えていた。
 事実、首輪は彼の想定したとおり、頑丈なつくりになっている。
 朧に敗北したことが、ジャンをスプリガンとして一回り成長させたようだ。

「さて、これからどうするか、だな」
 支給されたリュックサックを地面に降ろし、中から名簿を取り出す。
 御神苗優や朧といったスプリガンの他に、暁巌とボー・ブランシェのお笑いコンビ、そして染井芳乃の名前までもが記されていた。
 死んでしまったはずの人間の名まで記載されていることは気になったが、それは考えても仕方のないこと。
 本当に彼が蘇生しているとしても、実際に目で見て確かめる他ないのだから。
 つまらなそうに鼻を鳴らすと、名簿をリュックに突っ込む。
 続いて、支給品の確認をしようとした、その手が止まった。

「出てこい。やるんなら遠慮はしないぜ」
 感じた気配を目で確認することなく、警告する。
 とはいえ、相手から発せられる殺気は宣戦布告には充分すぎるものだ。
 ジャンはリュックを背負ってゆっくりと立ち上がり、敵を見据える。
 そこにいたのは、銀髪の少年。
 見た目こそ子供ではあるが、ジャンが警戒を解くことはない。
 この少年は明らかにジャンと戦う気でいたのだから。

「随分と余裕じゃないか」
 紫に光る両目をギラつかせ。
 尖った歯をむき出しにして。
 少年は笑った。これでもかと悪意を込めて。
 ジャンに睨みつけられても、少しも怯むことはない。
 幼い見てくれに反して、それなりに修羅場はくぐっているようだ。
 少年が身に着けている白いマントが風にはためく。
 それが、開戦の合図となった。

29 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:52:51.64 ID:a5T0M3nT [1/3回発言]
皆川先生は何故キャロルにARMSを与えなかった

30 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:53:07.64 ID:dr2rxmZ6 [3/12回発言]
  

31 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:54:53.32 ID:d571uCzC [3/17回発言]
「遠慮などしたら……死ぬぞッ!」
 この時点で、両者の距離は五十メートルばかり。
 少年は、それを一瞬で詰める。
 もちろんそれは、ただの無策な突進ではない。
 相手に接近しながら、攻撃の予備動作も同時に完了させていた。
 少年は既に、ジャンの背後。
 ジャンの頭の高さにまで跳躍して、右脚を振りかぶっている。
 後頭部で束ねられた金色の髪の毛に向けて、全力で蹴りぬいた。

「…………ッ!」
 短い脚で繰り出されたキックながら、その威力は凄まじい。
 受け止めたジャンの左腕に、鈍い痛みが走った。
 しかし、その程度のことなど、命のやり取りを毎日のようにしているジャンにとっては何のことはない。
 逆に相手の脚を捕まえ、反撃に転じようとする。

「ふん……」
 ジャンの太い指が、相手の細足を絡めとらんと動く。
 だが大人しく捕らえられてくれるほど、甘くはない。
 銀髪の少年は蹴りの勢いそのままに回転し、彼の手から逃れた。
 大地へ着地すると同時にバックステップをして距離を確保する。

(このガキ……速ぇ……)
 ジャンのこめかみから汗が流れ落ち、白い頬を伝って大地で弾けた。
 数メートル離れて対峙している敵と繰り広げた戦いは、まだせいぜい数秒程度。
 だが、相手の実力を思い知るには充分すぎた。
 この少年は、かなり強い。
 打撃の威力や瞬間的な判断力など、大したものだ。
 中でもスピードは、ジャンの得意分野であるにもかかわらず、彼の上をいっている。
 純粋な速さで負けたことなど、彼にとって初めての経験であった。

「…………?」
 少年が、スッと片手を掲げた。
 手の平をジャンの方へ向けて。
 武器を持っているわけでも、朧のような気孔を放つわけでもないようだ。
 しかし、何かあるはずだと、ジャンは警戒を強める。
 それは正しい判断であったと言っていいだろう。
 事実、その集中のおかげで、次に来たるまさかの攻撃に対処することがかなったのだから。

 紫に怪しく光る両目の下で、尖った歯をむき出しにした口が三日月の形に歪む。
 ジャンを見つめる手の平でパチパチと放電現象が発生。
 少年のおぞましき笑顔が崩れ、開いた三日月が呪文を紡いだ。

「ザケル」
 電撃が少年の右手に充填し、ジャンに放たれる。
 詠唱から発動まで、時間にすれば一秒にも満たない。
 獣人ジャン・ジャックモンドにとっては、充分なタイムラグだった。
 迅雷に飲み込まれる前に、横に飛び退き地面を転がる。
 まったく未知の攻撃をやり過ごすことが出来たのは、スプリガンとしての数々の経験の賜物だろう。

「後ろだ」
 ジャンが声のした方向に振り向くよりも早く、衝撃が彼の背中を襲った。
 突然のいかずちを避けるのに精一杯であった獣人。
 それに対して、少年は『ザケル』が回避される可能性までもを想定していた。
 蹴りを食らって吹き飛ぶジャンに、追撃の紫電を見舞う。

32 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:55:07.89 ID:4wxv2LsN [2/3回発言]
バンダースナッチ仕様の銀髪ならカツミもアリだな
支援

33 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:56:10.72 ID:d571uCzC [4/17回発言]

「ザケル」
「……ぐおッ!」
 今度は避けることは出来なかった。
 衝撃がジャンの全身を駆け抜ける。
 電撃により筋肉が弛緩するその絶対なる隙を少年が見逃すはずもない。
 我に返ったジャンの目が捕らえた少年は、既に次の魔法を放とうとしていた。

「残念だったな」
 先ほどとは段違いの量の電撃。
 それが、ジャンに照準を定めている。

「…………くそったれ……」
 ジャンは月並みなセリフと共に、赤みの混じったつばを吐き捨てた。
 なんとか立ち上がり、退避しようとする。
 最後まで諦めることはない。
 たとえ、もう間に合わないだろうことに気がついていたとしても。

「テオザケ…………ッ!」
 少年が絶望を宣言しようとした。
 その魔法が妨害される。
 音速で飛来した乱入者が、紫電の少年にタックルしたのだ。
 その衝撃のままに、ジャンを殺そうとしていた少年は遥か遠くへ吹き飛ばされた。


◆     ◆     ◆


「おい……」
「…………あ……」
 声のした方へ武士が振り返ると、金髪の青年が睨み付けていた。
 かけるべき言葉を捜している武士に先んじて、彼がへの字に結ばれた口を開く。

「助けられちまったようだな」
「…………いえ……あの……」
 悔しそうな素振りをみせながらも、青年は素直に礼を述べる。
 荒っぽくはあるが、悪い人間ではないらしい。
 武士は、友人である隼人に抱いたのと同じような印象を受けた。

「おれはジャン。ジャン・ジャックモンドだ」
「……と、巴……武士です」
「そうか。巴、あのガキ……かなり強いぜ
 おれひとりじゃあ、ちょっと骨が折れるくらいな……」
 会話しながらも、ジャンは少年が吹き飛んだ方向を警戒している。
 彼は意地を張ることなく、敵の実力が自分より高いことを認めた。
 強がりが勝利に繋がることはないと知っているのだろう。

 武士もまた、敵の少年の底知れぬ強さを感じ取っていた。
 先ほど彼が突進したときだ。
 猛スピードの奇襲にもかかわらず、あの少年はその襲来を知覚し防御までしてみせた。
 その反射神経たるや、彼の知る誰よりも凄まじい。
 弾き飛ばされた距離こそ大きいものの、少年本人へのダメージは殆どないはずだ。

34 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:56:21.14 ID:dr2rxmZ6 [4/12回発言]
  

35 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:58:26.94 ID:d571uCzC [5/17回発言]

「だったら、僕が彼を食い止めます。
 その間にジャンさんは隙を見て、あの子を…………」
「…………」
 逃げるという選択肢も存在した。
 本来ならば、それが正解だろう。
 敵がここへ戻ってくるまでに、まだ少しの猶予だってある。
 だがしかし、武士が選んだのは戦う道だ。
 ジャンも同じ思いであるようで、反論はしない。
 とはいえ、両者の望む決着は全く別のものだ。

「……あの子を、気絶させてください」
「本気で言ってんのか?」
 ここで初めて、ジャンが武士の言に反発する。
 彼は、少年の息の根を止めるつもりでいたらしい。
 主催者の思惑通りに殺し合いに乗じる気はないみたいだが、自らを殺そうとしている相手に容赦できる人物でもないようだ。

「……お願いします」
 武士の考えは違う。
 今回の敵は強力だが、少年だ。
 しかも、彼はエグリゴリの一員ではなく、キースに殺し合いを強制されている被害者に過ぎない。
 説得が通じないと決まったわけじゃないのだ。

 彼の純粋な思いを前に、ジャン・ジャックモンドがゆっくりと口を開いた。
 その回答は、やはり……。


◆     ◆     ◆


「甘いぜ、巴」
 やはり、ジャンは賛成できなかった。
 あまりにも危険すぎる。
 戦闘経験が豊富なジャンは、相手を殺さずに制することの難しさをよく知っている。
 同格以上の相手なら、なおさらだ。
 その制限を設けるだけで、戦いは命をベットしなくてはならない分の悪い賭けと化す。

「ジャンさん……」
「…………」
 こちらを見据える武士を、睨み返す。
 それでも武士は気圧されることなく、ジャンを見つめ続けた。
 その真っ直ぐな瞳が、スプリガンの心を着実に動かしてゆく。

 ジャンが抱いていた武士の第一印象は、気弱な子供。
 戦士とは対極にある人物像だった。
 戦う力を持ちながらも、それを扱う精神は未熟であると。
 はじめは、そう思っていた。

「お願いします」
 だが、この目は戦うもののソレだ。
 ジャンを射抜いているのは戦場で生きる覚悟を決めた人間の眼光。
 そんな風に、巴武士のイメージは変化していた。。

 もっとも、その印象すらも間違いではあったのだけれど……。
 ジャンがその勘違いに気づくことは、ついになかった。

「……オマエがいなけりゃ、おれは一回は死んでたわけだ」
 ジャンは諦めたように手をヒラヒラと振る。
 降参、の合図だ。

36 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 18:58:50.30 ID:dr2rxmZ6 [5/12回発言]
  

37 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 18:59:45.30 ID:d571uCzC [6/17回発言]

「一度だけ、だぞ」
「ありがとうございます……!」
 ジャンの答えを受けて、武士の顔が明るくなる。
 こうして見るとやはり子供なんだなと、ジャンは感じていた。

「だが、巴……オマエで大丈夫なのか?」
「大丈夫だと、思います」
「…………」
 武士の頼りない返事に、ジャンは心配になる。
 それも仕方のないこと。武士の戦闘スキルも能力も分からないのだから。
 危険な役回りを任せて、本当にいいものか。ジャンは迷っていた。

「……信じるかどうかは勝手にしろ。
 おれはライカンスロープ……分かりやすく言えば、狼男だ」
「…………そうなんですか」
 意外とアッサリ信じてしまう武士。
 多くの修羅場をくぐり、沢山の人間に接してきたという証だろう。
 見た目によらず肝が据わっている彼に、ジャンも心うちで感心する。

「本当ならおれが獣人化できれば一番なんだが……あの状態になっちまうと自制がきかねぇ。
 敵味方関係なく暴れ回っちまうんだ。だから……」
「はい。僕が必ず食い止めます」
 武士が腕に自信がないようなら、ジャンが獣人化して敵の動きを止めるしかない。
 そう提案しようとした言葉を、武士が凛と遮った。
 背筋を伸ばした彼の笑顔は、うって変わって頼もしい。
 彼になら任せても大丈夫なんじゃないか。
 そう思わせてしまうほどに。


◆     ◆     ◆


「探すまでもなく、お前の方から来てくれるとはな」
 銀髪の少年が笑う。
 同時に展開されたのは、おぞましいほどの殺意。
 弱きものは腰が砕け。
 強きものですら身構え。
 狂ったものは歓喜する。
 この場に漂うものは、それほどの重圧であった。

「もう、やめにしないかい?」
 ならば、こうして和解を提案する巴武士は、優しきもの。
 ぶつけられた敵意に臆することなく。
 かといって、同調して昂ぶることもない。
 だれよりもあたたかき心を秘めた少年だ。

「フン。何を言うかと思えば……」
 その慈愛も、この少年には通用しなかった。
 まるで彼は乱世を力で纏める王のよう。
 気高く、それでいて憎悪を秘めた悲しき王。
 だとすれば、何人も彼を動かすことはできないだろう。

「このゼオン・ベルをおちょくるなよッ!」
 雷帝。
 形容するならば、そんな言葉が相応しい。
 彼が怒りを露わにしたと同時に、今までよりもさらに重いプレッシャーが周囲を包み込む。

38 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:00:48.90 ID:d571uCzC [7/17回発言]

 それを受けて、武士も戦闘は避けられないと覚悟した。
 姿勢を低くして、臨戦態勢をとる。
 とても、悲しい顔で。

『巴武士。気をつけろ。敵は電気を使う』
(分かってる)
 武士は心の中で返事をする。
 その相手は自らに移植されたARMS、白兎だ。
 ARMSとはナノマシンの集合体であり、いわばそれは超精密な機械である。
 つまり電撃は、ARMSの数少ない弱点だということだ。
 かつて武士と白兎は、中性子爆弾の爆発に巻き込まれ、大量の電磁波を浴びたことがある。
 その経験とARMSの特性のおかげで、『ナノマシンを狂わせる攻撃』への耐性はある程度ついていた。
 だとしても、この少年の扱う電撃は桁違いだ。
 おそらく、まともに食らえばARMSを無効化されてしまう。

『あのひと……とても悲しい目……』
 武士の頭で響くもうひとつの声。
 ARMSの生みの親……少女アリスだ。
 なぜ、彼女が武士のARMSの中にいるのか……。

 その謎を解く話は、この殺し合いに参加させられる前まで遡る。
 武士は長い間眠っていた。
 コウ・カルナギに敗れ、死の淵を彷徨っていたのだ。
 その夢の世界でアリスと出会った武士は、彼女を外の世界へ連れ出した。
 そして、彼は目覚める。アリスと共に。
 眠りから覚めた二人は、一緒に空を進んだ。
 魔獣と化した高槻涼を救うために。
 だが、その意思は果たされることはなく。
 空を翔る彼がたどり着いたのは親友ではなく、この殺し合いであった。

(大丈夫だよ、アリス)
 両足に意識を集中。
 彼の運命を狂わせしARMSが目覚める。
 この両足が無ければ、彼は普通の人生を歩めたはず。
 苛められることも、戦いに苦しむことも、誰かの死に悲しむこともなかった。
 だのに、今の彼は何も恨むことはない。
 それどころか、この両足で誰かを救えることに感謝をしていた。

「ザケルッ!」
(僕が救う)
 異形と化した両足から、ジェットのように空気が噴出される。
 それが彼を音速へと導いた。
 音を置き去りにした証拠の衝撃波が、周囲をビリビリと震わせる。
 迫りくる雷を悠々とかわし、武士はゼオンの後ろへ回りこんだ。
 しかし、雷帝のスピードも魔物ではトップクラス。
 常人の目では捉えられないスピードで動く武士の位置を、彼は正確に読み取っていた。

(ゼオンも、君も、高槻くんも)
 振り返ったゼオンが放った蹴りを、武士は右脚のARMSで受け止める。
 ガァンと、鉄道事故でも起こったかのような爆音が響いた。
 反撃とばかりに、武士が空いている方の脚で相手を蹴り上げる。
 ゼオンはそのダメージを、特製の白いマントで防いだ。
 どうやら、あのマントは彼の意のままに動き、彼への攻撃を遮断するらしい。
 だが、すべての衝撃は殺しきれないようで、上方に勢いよく吹き飛ぶ。
 武士は空を舞う少年に一瞬で追いついて、今度は全力のかかと落しを見舞った。
 これくらいでは死なないだろうという算段に基づいての行動。
 その読みは正しく、クリーンヒットしたにも関わらず、相手は気絶すらしない。
 少年はダメージを受けて高速で降下しながらも、華麗に宙返りを決める。
 着地すると同時に大地を蹴り、落下の衝撃をジャンプのはずみに変換させた。

39 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:01:14.63 ID:dr2rxmZ6 [6/12回発言]
  

40 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:02:44.01 ID:d571uCzC [8/17回発言]

(すべて……救うんだ……)
 空を飛ぶ武士に、下方から雷撃が矢のように襲い掛かる。
 これだけはなんとしても避けなくてはならない。
 迫りくる稲妻は、とっさには数えきれないほどの量だ。
 だが、所詮は直線攻撃。
 最速のARMSをもってすれば、雷公の合間を縫って急降下する曲芸すらもわけない。
 紫の光の群れを、白い兎が突破する。
 その先の宙では、先ほど大ジャンプしたゼオンが待ち構えていた。
 下に向けて飛ぶ武士と、彼に向けて上昇していくゼオン。
 二人の距離はどんどん小さくなっていく。
 だが、両者がそのまま接近することはなかった。
 今しがたの下級魔法は目くらまし。
 武士がそれを回避した隙をついて、ゼオンが中級魔法を発動させる。

「テオザケルッ!」
 ゼオンの目論見は成功したと言っていい。
 今までとは比較にならない大きさの雷撃が、武士を襲う。
 絶対のタイミングだ。
 命中を確信した王者が笑みを零すほどに。
 されど、白兎のスピードは規格外。
 魔物すらも超越するほど。
 当たり前だ。
 彼は、魔獣に挑もうとしていた男なのだから。

「救うんだッ!」
「……なにッ!?」
 低空から空高く、一直線にテオザケルが夜空を裂いた。
 巴武士を射止めることなく。
 大技を回避した武士は、王者に肉薄していた。
 既に、攻撃の予備動作も済ませている。
 死神の鎌のような、大振りの蹴りが、ゼオンの顔面にめり込んだ。
 油断をついて繰り出された全力の攻撃だ。
 さすがの雷帝も、こればっかりは受身すらも取れないはず。

「ジャンさん、今だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
 武士の咆哮が、天から大地に突き刺さる。
 ゼオンとの高速空中戦で、彼の体力はもう尽きかけていた。
 それでも、最後の力をこめて叫ぶ。
 その絶叫の先に、彼はいた。


◆     ◆     ◆


「ジャンさん、今だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「任せなッ!」
 戦場は、空から高度ゼロの陸地に移る。
 武士の声の先に、彼はいた。
 拳を握り、落下してくるゼオンを待ち構えて。
 来るべき瞬間を前にして、必死に精神を集中させる。
 武士が命を賭けて繋いでくれたチャンスを無駄にはしないと。

41 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:04:11.66 ID:a5T0M3nT [2/3回発言]
しえん

42 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:04:39.96 ID:d571uCzC [9/17回発言]

 勝負は一瞬。
 生きるも死ぬも、その瞬間がすべて。
 ついにゼオンが射程範囲に入った。
 この一撃で、決まる。
 ジャンが拳を振りかぶる。
 片足を踏み込んで、もう片方で大地を抉る。
 力は肩から肘……そして手首を通過して。

 何もかもを集めた拳を、突き出した。

「遅いんだよ……お前はッ!」
「……チィッ」
 勝負は、紙一重であった。
 だが、結果は結果。
 ジャンの全身全霊をこめた拳は、ゼオンの腕に受け止められてしまった。
 獣人の舌打ちが虚しく響く。

 ジャンは決して弱くはない。
 総合力なら、巴武士に劣るわけではないはずだ。
 ゼオンを殺すまいと手加減したのが災いしたか。
 それとも、先のダメージが残っていたせいか。
 落下していたゼオンの姿勢が、たまたま防御に都合がよいものだったのも一因だ。
 何にしても、ここで明らかな事実はたったひとつ。
 ジャンのスピードでは、ゼオンを殺すには足りなかった。
 それだけの話だ。

「ザケル」
「…………ぐ……」
 起き上がったゼオンの魔法が、ジャンを確実に捉える。
 よろめいた彼に接近すると、その顎に拳をうちつけた。
 ジャンの口と鼻から血が噴出し、意識が朦朧とする。
 さらに、腹部にも蹴りをもらって、獣人は情けなく地面に転がった。

(巴の野郎……凄いやつだ……)
 鉄の味を感じながら、ジャンは咳き込む。
 巴武士はこのゼオンとずっと戦い、押していたのだ。
 その実力たるや、計り知れない。
 スピードだけをとってみれば、ジャンよりも遥かな高みにいる。
 ジャンの脳裏で、数分前に武士に言い放った『お前で大丈夫か』という質問が再生された。
 今にして思えば、とんでもない笑い話だ。
 心配されるべきだったのは、自分の方であったのに。

(お荷物は、おれじゃねぇか……)
 武士がせっかく命がけで託したバトンを、取り落とした。
 唯一にして絶好の機会だったはずなのに。
 殺される絶望より、武士への申し訳なさが彼の心を締め付けた。
 力の入らない拳を握り締める。
 震えているのは、疲労からか。悔しさからか。
 恐怖でないのだけは確かだった。

「じゃあな、ゴミ」
「ちく……しょう……」
 ゼオンは口元の血液を拭う。
 武士に受けたダメージが回復しきっていないのだ。
 でもその程度では、ジャンを殺すのに何の支障もない。
 死を与えるいかずちが、ゼオンの右手に集まり。

43 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:04:48.75 ID:4wxv2LsN [3/3回発言]
ぜおーん
支援

44 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:05:14.10 ID:a5T0M3nT [3/3回発言]
支援

45 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:05:27.52 ID:dr2rxmZ6 [7/12回発言]
  

46 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:07:04.13 ID:d571uCzC [10/17回発言]

「テオザケル」
 淡々と放たれた。
 紫の大蛇が狼を食らわんと奔る。
 今のジャンにこれを避ける体力は残っていない。
 ただ、屠られるのを待つのみだ。
 獣を前にした野ウサギのように。

 光は男を包んで、爆風が世界を揺らした。
 魔法の威力を表すように大量の土煙が発生したが、それはすぐに晴れる。
 荒々しき魔法が過ぎ去ったあと、そこに立っていたのはジャンではなく……。

「巴……お前……」
「だい、じょうぶ、です、か」
 巴武士は、その身に全ての雷を受けていた。
 ジャンを守って。
 体中が真っ黒に焼け焦げて、ただれているではないか。
 さらに全身から大量の血液が流れて落ちて、足元に赤い水溜りをつくっていた。
 もはや、いつ絶命してもおかしくない状態だ。
 それでも彼は体を奮い立たせ、立ち続けていた。
 追撃がジャンに及ばないように。

「なに……してん、だよ……」
「すいま……せん……」
 ようやく彼のなけなしの体力すらも底をつき、ドサリと大地に倒れ付した。
 さっきまで悠然と空を駆け回っていた少年。
 その彼が、今や力なく地べたに寝転がっている。
 全ては、ジャンが任務を失敗したからだ。

「クハハハハハハ!
 ゴミを殺そうとしたら、やっかいな方がくたばってくれるとはな」
 武士の決死の行動を見て、ゼオンが高らかに笑う。
 これは僥倖であると。
 口から流れ出る血もそのままにして。
 その気が済むまで、延々と巴武士を侮辱しつづけた。

 ジャンは唇をかみ締めて、ただ怒りを抑えることしかできない。
 感情のままに獣人化してしまえば、冷静な判断も不可能になってしまうからだ。
 しかし、こうなってしまってはその努力も無意味なもの。
 今の彼では、ゼオンから逃げることすらもままならないのだから。

「結局貴様も死ぬのだから同じことだがな」
 そして悪の王は、再びジャンに狙いを定めた。
 紫の光が、ゼオンの手の平を駆け巡る。
 ジャンも何とか立ち上がって応戦しようと試みるが、勝敗は火を見るより明らかだ。
 ゼオンのもとにたどり着くこともなく、彼は殺されてしまうだろう。

「すまない……巴……」
 それでもジャンは、ふらつく足取りで一歩一歩進む。
 ここで倒れてしまっては、後ろで眠る武士に顔向けできない。
 自分のせいで死んでしまった若者に、少しでも報いようと。
 敵わぬ相手に向けて、ジャンは進む。

 その背中を追い越す巨大な影がひとつ。

47 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:08:01.76 ID:dr2rxmZ6 [8/12回発言]
   

48 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:08:14.57 ID:d571uCzC [11/17回発言]

「な……お前……」
 ジャンが両の目をあらん限りに剥く。
 驚愕に、上手く言葉が紡げない。
 それは、まさしく化け物だった。
 全身を覆うのは、よろいの様に硬い皮膚。
 雄々しい巨躯には似つかわしくない、長い耳。
 そして、背中から生える二枚の大きな翼。
 そんな化け物が、突如として現れたのだ。
 見ると、ゼオンすらもがあまりの自体に唖然としていた。

「僕のワガママを聞いてくれて、ありがとうございました」
 振り返った異形に話しかけられ、ジャンはさらに戸惑ってしまう。
 しかし、その声に聞き覚えがあることに気づいて、我に返った。
 霞んだ目を必死に凝らすと、巨獣の腹部にあの少年の顔があるのが発見できた。

「お前……巴か……?」
 話しかけると、彼は返事の代わりに優しく笑う。
 どういうことかジャンには全く分からないが、この化け物は巴武士であった。
 何が起こったのか尋ねあぐねているジャンに、武士が穏やかな声で語りかけた。

「高槻くんに会ってください」
「高槻って……あのガキか……」
 その人物のことはジャンも知っている。
 この殺し合いの説明のときに、キース・ブラックと対峙していた少年だ。
 なぜ、武士がその少年のことを今伝えるのか。ジャンの混乱は深まるばかりだ。
 しかしジャンの理解を待つことなく、彼は勝手に言葉を続ける。
 ジャンの目には、彼が焦っているように見えた。

「はい。高槻くんもあなたと同じで、自分の中に眠る力を恐れていました。
 その力が暴走してしまうことを恐れて……」
「…………なに……言ってんだよ……」
「でも彼は、逃げずに魔獣と戦っています」
 ジャンの力。獣人化。
 身体能力こそ飛躍的に向上するものの、冷静な判断力を失ってしまう諸刃の剣。
 総合的に見れば、普段の状態よりも弱体化してしまう。
 朧に敗北してその弱点を知ってから、ジャンは獣人になることを避けてきた。
 ライカンスロープの力に頼ることなく、自分の能力だけで戦っていこうと。
 だが、今回の戦いでその決心の限界も見えてきたのも事実だ。
 このままでは、いつか足元を掬われる。
 その迷いを見透かしたのか、武士は彼なりの言葉でジャンを導こうとしていた。
 残り少ない時間を費やして。

「彼に会えば、必ず何か掴めるはずですから」
 それだけ言うと、武士はゼオンに向き直った。
 その背中を見ると、彼の表皮にはいくつもの亀裂が走っている。
 稲妻のようなひび割れは徐々に大きくなり、ついに武士の身体はボロボロと砕け始めた。
 今の武士の身体がどんな状態であるのかはジャンは知るよしもない。
 だけど、彼に死が迫っていることは、おぼろげながら理解できる。

49 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:10:12.18 ID:dr2rxmZ6 [9/12回発言]
  

50 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:10:34.92 ID:d571uCzC [12/17回発言]

「それじゃあ。僕は行きます」
「待てよ! まだ……オイッ! 待てよッ!」
 武士が羽を広げれば、突風が天地を揺らす。
 前傾姿勢になった彼を見て初めて、ジャンはその全貌を知る。
 これは、兎だ。
 空を翔る白兎だ、と。
 その姿に見とれる彼を置き去りにして、巴武士はゼオン・ベルに特攻した。
 慌てて防御姿勢をとるゼオン。
 だが、武士の狙いは突進ではない。
 ゼオンの小さな体を捕まえると、武士は彼を抱えてそのまま上昇。
 もがく少年を連れ去って、一瞬のうちに空の彼方に飛びさってしまった。

「……なんだよ、それ…………」
 白兎は、いつも誰かを置いてきぼりにするものだ。
 残されたのは、虚しいばかりの静寂と一人の狼男。
 去っていた武士の背中を追いかけようとするが、そこまでの体力もスピードも今の彼には存在しなかった。
 数十メートル走っただけで、つまずき、大地を這う。
 立ち上がろうとしたその脚から力が抜ける。
 地表には、異形と化した武士の外皮が散乱していた。
 その残骸たちが、次々に崩れていく。
 そしてそれらは光の粒となり夜空に舞って、やがて消滅した。

「っざけんな! おい!」
 拳を大地に打ち付け叫ぶ。
 返事は返ってこない。
 その代わりに、カランと。
 崩れ去った外殻の中から現れたそれは、槍のように、剣のように長く硬い物体。
 白兎が落としていった片耳だった。
 それだけは風化せずに、本来の形を残している。
 手を伸ばして掴むと、それは淡く温かい光りを帯びた。
 そのぬくもりは巴武士の心そのもの。

「……武士、そうか…………」
 ジャンは、武士のことを戦士であると思っていた。
 戦場で生きる覚悟を決めた人間だと。
 だけど、それが間違いであると今になってやっと気づいた。
 武士が戦うのは、戦場から日常へと帰るためだ。
 平和な日々を取り返すために、もがいていただけ。
 だからこそ彼は敵の少年を殺さないことに拘ったのだ。

「必ず、帰ってこいよ」
 縋るように、空に向かって呼びかける。
 やはり返事はない。
 空で光る月の中にも、兎の姿は見えなかった。


【B-6 南部 一日目黎明】

【ジャン・ジャックモンド】
[時間軸]:少なくともボー死亡後。
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[装備]:白兎の耳@ARMS
[道具]:ランダム支給品1~3(未確認)、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いには乗らない。高槻涼に会う。

51 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:12:36.72 ID:dr2rxmZ6 [10/12回発言]
  

52 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:13:05.72 ID:d571uCzC [13/17回発言]


【支給品紹介】

【白兎の耳@ARMS】
巴武士のARMS・白兎の耳。
白兎の他に、アリスの意思が宿っている。



◆     ◆     ◆


 夜空を翔る巨大な影ひとつ。
 一羽の兎が、月を目指して飛んでいた。
 砕ける身体を奮い立たせて。

「チィ! 大人しく死んでおけば楽なものをッ!」
「ゴメンよ。そういうわけにはいかないんだ」
 抱えたゼオンが暴れている。
 彼が蹴りや魔法を放つたびに、武士の身体がボロボロと崩れていく。
 それでも武士は、絶対に彼を放さなかった。
 少しでもこの敵をジャンから引き離すために。
 どうあろうと説得には応じないだろうゼオンを改心させようとしたのは、武士の我が侭だ。
 ジャンはそれに付き合ったせいで傷ついた。
 最後まで武士と共に戦おうとしてくれたのだ。
 結局、ゼオンを悪の道から救うことはできなかった。
 せめて……せめてジャンの命だけは助けなくてはならない。
 それが、巴武士の最期のけじめだ。

「ソルド・ザケルガッ!」
 いつまでも自分を解放しない武士に業を煮やしたゼオンがついに上位魔法を放つ。
 巨大な剣が現れ、白兎の腹部を貫いた。
 さらに、その傷口から武士の全身に電流を流す。
 先の攻撃で電撃への耐性がついているとはいえ、今の死にかけた武士にこの攻撃は堪える。
 ゼオンではなくジャンを連れて逃げるという方法もあったが、傷ついた彼が音速のフライトに耐えられるとは思えなかった。
 結局のところ、こうしてこの危険な少年とともに空を翔るのが最良の選択肢なのだ。

「……ぐ、あ…………」
 うめき声と共に、顔をゆがめた。
 彼の苦しみを表すように、白兎の崩壊が加速する。
 ジャンを庇って電撃を受け、既に彼の身体はボロボロだった。
 ARMSの展開など到底不可能なほどに。

 それでも力を振り絞らねばならなかった彼は、無理をして、アリスの力まで借りてまで完全体になった。
 気が狂ってもおかしくないほどの苦痛が、彼の身体を駆けっている。
 身体も精神も、とうに限界は超えていた。

「まだ……しぶとく足掻くかッ!」
「ぐ、が……」
 実は、ジャンの元からゼオンを引き離すことには既に成功している。
 もう獣人は助かったのだ。
 ならば武士は眠りについてもいいはず。
 それでは、なぜ彼は飛び続けているのか。

53 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:14:48.61 ID:dr2rxmZ6 [11/12回発言]
  

54 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:14:55.62 ID:d571uCzC [14/17回発言]

 ゼオンを助けるためだ。
 今この上空で息絶えてしまえば、飛行能力のないだろうゼオンは地面に叩きつけられてしまう。
 さすがの彼も死んでしまうかもしれない。
 それを懸念していた武士は、海を目指して飛んでいた。
 このまま海に衝突すれば、彼を助けることが出来るから。
 着水時にも相当の衝撃はあるだろうが、地面への激突と比較すれば遥かに軽い。
 白兎の身体でガードしてやれば、ダメージの大部分は武士が肩代わりできる。
 ゼオンだったら耐えられるだろう。

(ホワイトラビット……これが……最後だ)
『巴武士。よいのだな』
 武士の心が決まっていることを知っていながらも、白兎が尋ねる。
 敵のために苦痛に耐える必要があるのかと。
 それが、ARMSのせいで不幸な運命に巻き込まれてきた少年に対する、白兎なりの気遣いだった。

(僕の勇気が感じられるかい?)
『我にも心はある』
 武士の答えは変わらない。
 苛められっ子だった少年とは思えないほど、強く、頼もしい声。
 白兎もそれ以上は聞かなかった。
 彼の意思に従い、全力で海を目指すことを報いとして。

(だったら……お前に心があるのなら……)
『了解した。巴武士……力が欲しいだろう……』

『ならば!』
(ならば!)
 白兎に篭められたアリスの勇気。
 巴武士が旅路で勝ち得た勇気。
 その二つが、冷たい星空でシンクロする。

『くれてやる!!』
「応えろォォォォォォォッ!!」
 武士が金色の光を帯びた。
 再び彼は音を超える。
 黒い空を裂く金色の軌跡は、まるで流星のようだった。
 その景色を見て、武士の中のアリスが目を輝かせる。

『すごい……これが虹なのね』
(これは違うよアリス。虹は、青空にかかるものなんだ)
『そうなの……私、見てみたいわ……』
(うん。今度、みんなで見よう!)
 地平の先に、海が見えた。
 もうゴールはすぐそこだ。
 少しずつ降下して、海面へ激突する準備に入る。

(雨上がりに、丘に登って……)
 そして、武士は暗い海に突撃した。
 ゼオンを強く抱いて、着水の衝撃から彼を守る。
 直後、すべてを果たした彼の身体がついに砕けた。
 塵よりも細かい光の粒になって、彼は海中に溶けてゆく。
 欠片すらも残さずに、巴武士は消滅した。
 湿った青空にかかる、七色の光に思いを馳せて。


【巴武士 死亡】
【残り73名】

55 : 虹 ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:16:06.34 ID:d571uCzC [15/17回発言]


※巴武士のリュックサック(ランダム支給品1~3、基本支給品一式)はB-6に放置されています。


◆     ◆     ◆


 暗い海の上。
 黒い水面に映る黄色い月が、ゆらりゆらりと歪んでいる。
 ゼオン・ベルは浮かんでいた。
 気絶しているわけではないのに、彼は動くことができない。
 ただただ夜空を睨んで、波に揺られている。

 海に衝突した瞬間のことを思い出す。
 巴と呼ばれていたあの少年は、ゼオンを助けたのだ。
 海面にぶつかる衝撃から、その身を挺してゼオンを守った。
 それで、彼はすべてを理解した。
 あの相手が、自分を殺すまいとしていたことに。
 最初から、ずっと。

「ふざけやがって……!」
 溢れた怒りは電撃となり、海中を駆け巡る。
 紫色の閃光が、海を奔って刹那に消えた。
 つまり、ゼオンは完全に嘗められていたのだ。
 苦しい修行の末に手に入れたその実力を、過小評価されていたということ。

 今にして思えば、戦っているときもそうだった。 
 巴とやらは、ずっとゼオンを殺さないように気を使って戦っていた。
 全力で戦ったとしても、彼らではゼオンに勝てるはずもないのに。
 この海面への衝突にしてもそうだ。
 ゼオンならば、遥か上空から落とされても魔法を駆使することで安全に着地することが出来る。
 しかし、少年は要らぬお節介を焼いた。
 ゼオンが地面にたたき付けられたら死ぬだろうと勘違いして。

 今までの全ての努力を否定された気分だった。
 こんな屈辱、初めてだ。
 悔しくて、腹立たしくて、彼は動く気になれなかった。

「これも全て、やつのせいだ……!」
 胸のうちで、憎しみの炎が燃え上がる。
 その憎悪の対象は、血を分けた双子の弟、ガッシュ・ベル。
 ゼオンからバオウを奪った張本人。

 すべては、バオウがこの手にないせいだ。
 だから、王者になるはずの自分がこれほどまでに侮辱される。
 バオウさえあれば、侮られることもない。
 あんな敵など、一瞬のうちに焼き尽くせる。

「必ず、生き残ってやる。必ずバオウをこの手に」
 そのためには、まずは力を回復しなければならない。
 優勝までの道のりはまだ長いのだから。
 敵の能力を正確に見極めてくれるデュフォーは、ここにはいない。
 すべて自分の力で戦っていく必要がある。

56 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:17:11.75 ID:d571uCzC [16/17回発言]

 殺し合いの参加者数を考えれば、上級魔法は節約していかなくてはならない。
 今回のように苦戦することもあるだろう。
 この戦い、決して容易くはない。
 それでもゼオンは歩みを止めない。
 憎しみの日々と決別するために。
 栄光をこの手に掴むために。


【F-6 海上 一日目黎明】

【ゼオン・ベル】
[時間軸]:リオウ戦後、ガッシュの記憶を垣間見るより前
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いに優勝し、バオウをこの手に。

57 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 19:17:22.65 ID:dr2rxmZ6 [12/12回発言]
   

58 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/07(木) 19:17:59.36 ID:d571uCzC [17/17回発言]
以上で投下終了です。
支援ありがとうございました。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

59 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 20:23:53.56 ID:eiF2GB0C [2/3回発言]
投下乙!
武士ぃぃぃぃ! あんな雑談してたけど、まさかお前が……
死んでしまったのは残念なんだけど、なんていうか妙な清々しさがあるな
最期の、ホワイトラビットやアリスとの会話がたまらない。虹を見て欲しいなぁ、これは
ゼオンはさすがというかやっぱり強い。武士の行動にも怒りを募らせるだけだし、こいつは厄介だぜ
しかし武士が命を賭けて守ったジャンが、優が命を賭けて助けた涼と会おうとしてる
なんとも因果を感じるなあw ほぼ同時の予約だったのにw

60 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 22:07:28.27 ID:kWpgcO+o [2/2回発言]
投下乙!
白兎が逝ってしまったか…
その優しさは伝わらなかったが、最後まで敵であるゼオンを守ろうとするのがらしいなぁ

一方でその意思を託されたジャンがどうなるのか
今後に期待しつつ改めて投下乙!

61 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 22:21:44.15 ID:Rb5Wq/Qn [1/1回発言]
投下乙です!
ARMS最初の退場者は武士か……優しさが仇となった形だが、本人は納得しているのがなにより
この時間軸のゼオンには残念ながら今は伝わらないだろうけど
そしてジャンはどうする、自慢のスピードが通用しない相手が多いぞこの場所じゃ
色々と先が楽しみなSSでした!



……ジャンのスピードでコレならボーはどうすんだオイw

62 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/07(木) 22:31:26.79 ID:eiF2GB0C [3/3回発言]
ボーは優みたく、状況で戦闘力変わりそうなタイプだしなぁw

63 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/08(金) 15:52:16.95 ID:kToFuZvv [1/2回発言]
投下乙
武士…最後まで他人のことばかり気にしやがって……
ホワイトラビットじゃないけど、お前の姿にたしかに勇気を見たぞ。アリス含め残された連中も楽しみ

64 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/08(金) 15:56:30.35 ID:kToFuZvv [2/2回発言]
あ、あと他の人も言ってるけど
優と涼、武士とジャンの関係がおもしろいなw

65 : 代理投下 : 2011/04/08(金) 22:23:31.26 ID:9pB31UxJ [1/6回発言]
36 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 12:55:53 ID:???
蔵王という球体から出てきたのは、掃き溜めからビニール袋で可能な限り掬ったかのようなゴミ袋。
生ゴミも混入しているのか、透明のゴミ袋からは口を締めていてもなお異臭が漂う。
年を食った老人に対して酷い仕打ちではないか。
老人のリュックはゴミ入れではないというのに。

ウェーブがかった白髪にマジシャンかと思わせるようなハット、金色の装飾が煌く黒衣にマントをはためかせ歩み行く。
ピンとしたお髭に独眼鏡もあり、怪しげながらどこか知的な印象を受けるその人はナゾナゾ博士という。
街灯も無く、月の灯りを頼りとするしかない現在地より向かって西、地図の最西端こそが彼の目的地である。
この殺し合いの舞台はお馴染みのモチノキ町。本来ならば他の町へと通ずる道は地図上に記されていない。
落ち着ける場所で腰を下ろしゆっくりしたいという欲も湧いたが、地図の外はどうなっているのかという知識欲には勝てなかった。

だがその右肩には人形と見紛う様な少年はおらず、老人にとっては懐かしい、孤独な歩みであった。
その孤独は夜の闇とともに老人に無力さを投げかける。
元々いた世界では何でも知ってる不思議な博士、しかしこの場にいるのは誰か。
68歳のただの爺だ。
どれほど強がっても体は正直で、己の限界など嫌なほど痛感している。
歩めば若い者よりも早く息も上がり、足は震える。目は霞み、腰は痛む。
ちょっと知識はあっても、この会場のことも、こんな催しを開く者の心理も企みも何もわからない。
そんな爺にできることなど限られている。

この会場にいる人間を蹴落とし最後の一人として生き残ることはまず不可能。
キッドはおらず、おまけに支給品はゴミ一つと来た。
その上、最初の場所には魔物の子に匹敵するか、それ以上の者たちもいた。
誰かを利用して勝ちあがろうにも、やはり慣れないことは続かぬだろう。
つまりどうあがいても絶望的。
だが座して死を待つというのも演出過剰なこの男の柄ではない。

(絶望という闇を希望という光で照らさなければならぬ)

紆余曲折を経て永き時を生き、命を重んじるナゾナゾ博士にとってキース・ブラックは許しては置けぬ悪しき者。
まだまだ前途有望なる少年少女の命を奪い、さらに殺し合いを強要するとは鬼畜の所業。
仲間を集め、対抗せねばならん。決して生かしてはおけぬ。必ずや仕留めなければ。
…とはいったものの流石に老人一人の光では心許ない。
誰かいないものかと思った矢先であった。


66 : 代理投下 : 2011/04/08(金) 22:24:57.04 ID:9pB31UxJ [2/6回発言]
37 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 12:57:12 ID:???

「倒れておる…」

いくらなんでも早すぎる。
ナゾナゾ博士はサッと血の気が引いていくのを感じ取った。
道端には少年が横になっていた。
前後左右を見渡すも周囲に気配はせず、こちらに背を向けるその痛ましい姿は事後かと思わせる。
一方で罠かという疑いを心に秘め慎重に近づく。
手入れをしているようには思えないほどボサボサした緑髪。
ボロボロの白のYシャツに袖を通し、黒の半ズボンに青のスニーカーという出で立ち。
そこからナゾナゾ博士が導き出した彼の正体は日本の学生。

この年頃ならばまだまだやりたいこともいっぱいあっただろうに、志半ばでなんということだ。
どれどれ顔を見せておくれ、おお、綺麗な顔をしておる、死んどるんだぜ、これ、っておや…

「寝とる…」

一人エキサイトしていた老人を尻目にリュックサックを枕代わりに少年は寝ていた。

□

ナゾナゾ博士が揺すっていると植木は普通に起きた。
だが、ぼんやり目覚めた植木の意識が覚醒するにはしばしの時間を要した。
簡単な自己紹介の後、なぜ寝てたのかという問いに、寝ぼけ眼に鼻ちょうちんを垂らし植木は答えた。

「暗いし明るくなってから行こうと思って」

決して冗談で言ってるのではないだろう。
肝が据わっているのか、抜けているのか。
君を見つけたのがワシだったから良かったものの、殺し合いに乗ったものだったらどうするつもりだったのかと聞けば、

「危なかったなー」

と平気でいう。おそらく両方に違いない。
ナゾナゾ博士は高嶺清麿とは違いすぎる植木耕介という男を計りかねていた。
少なくとも清麿のように知性の片鱗をこの少年から見出すことは無かった。
しかし似たような何かを秘めている…ような気がする。
そんなおぼろげな推察も植木自身がもっと自己主張が強いタイプであれば、また違っていただろう。


67 : 代理投下 : 2011/04/08(金) 22:26:15.73 ID:9pB31UxJ [3/6回発言]
38 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 12:58:34 ID:???

「ところで植木君、君は何を支給されたんだい」

キース・ブラック、そしてブルー、グリーン、シルバー、バイオレットに関する情報を求めた後、
彼が何も知らないことを知るとナゾナゾ博士は話を変え、キッドに対し語りかけるような口調で尋ねる。

「支給品…ああ、そんなのあったっけ。そうだこれこれ」

彼の話によれば名簿を見た後、そのまま眠りについたらしい。
植木がリュックを漁れば出てきたのは3つの蔵王。

「わしは1つだったのに…」

呟かずにはいられなかった。
植木に対する不満、羨望、嫉み、その他あらゆる不の感情が集束された呟きであった。
それに構わず植木は一気に三つの珠から物を取り出した。

「何だ、これ?」

珠より出てきたのは車椅子、防弾チョッキ、いささか大きく灰色で、紋章が印されたカバーの本の3点である。
若人たる植木は試しに防弾チョッキを身につけ、なんだか強くなった気がした。
一方、老人の目にかなった逸品は弱った足腰をカバーするための椅子でもなければ、身を守るためのものでもない。

「植木君、頼みがある」
「なんだ?」
「その本を譲ってもらえないかね」

植木をじっと見つめたままナゾナゾ博士は懇願した。
それはナゾナゾ博士にとって命と同価値かもしれない。

「ワシの大事な宝物なんじゃ…」

キッドの名を名簿で確認できなかったのは不幸中の幸いというべきか。
あれほど傷ついてもなお意志を貫き奮闘した末に、魔界に帰ったキッドがこの地にいるなど想像だにしたくはない。
しかしそれは眼前の魔本が役に立たぬことを意味する。
にもかかわらずそれを抱いていたいのは感傷的だろうか。
そうかもしれない。
この本がある限り、ワシは「何もしてない人」ではなく常に「ナゾナゾ博士」でいられる。
どんな敵と戦おうと必ずや勝利へ導く不思議な博士として生きていけるから。


68 : 代理投下 : 2011/04/08(金) 22:28:26.79 ID:9pB31UxJ [4/6回発言]
39 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 13:00:04 ID:???

「いいぞ」

植木はそんなナゾナゾ博士の気持ちを知ってか知らずか、即答した。

「おお…ありがとう」

本を手にとりナゾナゾ博士の顔が自然と綻ぶ。
その質感、重量感は以前と変わらず、ちょっとした汚れは奮闘してきた日々の名残だ。
開けば文字は光っていなくとも何度も声に出して読んだ記憶が蘇ってきて、思わず懐かしくなり喜びをかみ締めた。
その喜びは目の前の少年への感謝へと変容し、植木をいまいち掴めない人間と分析していたナゾナゾ博士は評価を改めた。

「ん~君に対してお礼をしたいんだが良いものが無いんだ…」

貰ってばかりでは悪いと思い、顎に指を当て考え込む。
善意に対し応えようとするも、今の自分の所持品では贈るというより押し付ける形になってしまうからだ。

「じいさんの支給品は?」
「ゴミだよ」

ウ・ソといいたいナゾナゾ博士であったが正真正銘のゴミの集まりだから困ったものである。
しかも分別はされていない。

「じゃあくれよ」

気を遣ったのだろうか。
そんなに引き取ってくれというオーラが出てしまっていたか、と思うがどうやら植木には彼なりに意図があるようだとナゾナゾ博士は感じた。

「構わんがそれで何を…」

ナゾナゾ博士はゴミ袋を差し出し、戸惑いの表情を浮かべる。
およそ使い道は無いだろうと思われた袋に植木は右手を突っ込み、無作為に掴み取った。
すると植木耕介は手のひらに収まる限りのゴミを、細くも力強く天に向かって伸びる木の芽に変えたではないか。


69 : 代理投下 : 2011/04/08(金) 22:30:28.12 ID:9pB31UxJ [5/6回発言]
40 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 13:03:03 ID:???

「何と…」

植木を只の中学生と見くびっていたナゾナゾ博士の口は自然に驚きと感嘆を顕していた。
なんということだろう。
あれほど寂しさを誘う草原地帯に、少年の手によって命が還ったではないか。
その様子を見てナゾナゾ博士が想起したのはやはり過去。
ナゾナゾ博士が絶望と倦怠の海に堕ち腐っていたときに、やってきた一人の少年は老人にもったいないと告げた。
その老人の前に現れた植木の力は、使えなさそうなものですら再利用するとてもエコロジカルでやさしい能力であった。
そんな彼にキッドの魔本が支給されているとは、なんたる因果か。


□


「植木君、お願いがあるんだ」

植木と本格的に情報交換をし、彼の事情を理解し、
ついには神器なるものを少し披露してもらったナゾナゾ博士はあたためていた言葉を口にする。

「私はこのプログラムとやらに付き合う気はない。勿論殺し合いにもだ。
よって私は協力者を探し首輪を外し、ここから脱出したいと思っている。植木君にはその手伝いをしてもらいたい」
「俺、首輪は外せねえぞ」
「構わないよ、私がこの首輪を作ったのだからね。協力者に道具を借して貰ってちょちょいと外すさ」
「本当か!!」

ナゾナゾ博士の何気ない一言。
その一言はさしもの植木も食いつかざるを得なかった。
彼ですら銀色の首輪は煩わしいと思っていたのだ。




「ウ・ソ」




植木がガーンと表情を曇らせる様子を見てナゾナゾ博士はフフンと鼻を鳴らした。
上げて落とす。
こうでなければ調子も出てこないというものである。

「ははは、でも私か、別の協力者を探して外すよ。私が君に頼みたいのは護衛さ。
恐らく多くの者が甘言に惑わされ殺し合いに乗ってしまうだろう。そんな時、私が襲われればひとたまりも無い」

自分は死ぬといった風に中学生を脅すのは気が引けたが、戦闘になれば困るというのは事実でもある。


70 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/08(金) 22:33:53.95 ID:9pB31UxJ [6/6回発言]
41 :ナゾナゾ博士と植木の法則 ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 13:07:34 ID:???
その点、植木のゴミを木に変える力に加え10の神器。
そして厳しい戦いを乗り越えてきたという経験値を加味すれば、その戦闘力は折り紙つき。
共に来てくれるならば植木の力はキッド以上に頼もしかろう。

「…君にも友人がいるだろうs「いいぞ」
「…いいのかい?」

ナゾナゾ博士の気遣いを遮って植木は返答した。
それも本を譲ったときと同じように。
彼が即決したのを受け少し追い込みすぎたかと心配するが、それは老人の杞憂に過ぎなかった。

「慌てたってしょうがねえだろ。それに佐野もヒデヨシも簡単にやられるような奴らじゃねえし、ロベルトや李崩は強いんだ」

この少年は仲間を信じているのだろう。
考え無しの判断ではなく、判断の裏には仲間への強い信頼が窺える。
これは自分の清麿やガッシュやフォルゴレに対する信頼となんら変わらないに違いない。

「俺がじいさんに付き合っててもきっとまた会えるさ!」

たくましい少年が見せた力強い笑顔をかつての相棒のそれと重ね、
なんだか微笑ましくなったナゾナゾ博士はつられて笑いを浮かべた。

「じゃあ、よろしく頼むよ。それからワシのことは博士と呼んでくれ、耕介君」

「ああ!わかった、博士!」

そして二人は肩を並べ西へと歩き始めた。



【A-5 西部 一日目黎明】

【植木耕介】
[時間軸]: 十ツ星神器・魔王習得後
[状態]:健康
[装備]:防弾チョッキ@現実
[道具]:基本支給品一式、ブルーの車椅子@ARMS、ビニール一杯のゴミ@現実
[基本方針]:博士についていく


【ナゾナゾ博士】
[時間軸]:少なくともキッドが魔界に帰った後
[状態]:健康
[装備]:キッドの魔本
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:最西端に行く

42 : ◆IvAjWlw5Jg:2011/04/08(金) 13:20:13 ID:???
以上、投下終了です。
誤字や矛盾点などあればお願いします。
投下できないのでどなたか申し訳ありませんが代理投下お願いします。


71 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:04:20.74 ID:JGk2DVKb [1/13回発言]
投下おつです、感想は自分の投下後に

では遅れてしまって申し訳ありません
これより投下を始めます

72 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:07:18.61 ID:JGk2DVKb [2/13回発言]
殺し合え、か。下らない。
僕はそんな遊びに付き合っている暇はないんだ。
森光蘭が天堂地獄を完成させてしまうのを阻止する必要がある。
そう、やつの永遠の命などという野望を止めなくては。
柳さんをあんなヤツのために死なせてやる気はない。
天堂地獄に囚われたあの人々の魂も開放してやらなければならない。
だから僕は、僕たちは一刻も早く元の世界に帰る。

思い返してみれば、やるべきことがまだ残っているんだ。
森光蘭の野望を止めるだけではない。
我が師、巡狂座に姉さんの事も聞かなくてはならないし。
戒の事も伝えなくては。

そもそも、こんな事がさせたければ戦いや殺しが好きな連中を集めればいい。
おあつらえ向きの人間は何人も知ってるしな。
キース・ブラックには忠告しといてやろう、『次からは人選を考えることだな』と。
けどヤツに次のチャンスを与える気は一切無い。
ここでよく分からないプログラムとともに命を砕いてやろう。

けれど、もし不可能だったら?
万が一脱出が無理なら?
僕達の力がキース・ブラックに遠く及ばなければ?
森光蘭を止めることができなければ世界が終わる。
そして、柳さんもあのおぞましい人間と魔道具に殺されてしまう。
ならば火影忍軍の中から一人だけ脱出させなければならないんじゃないだろうか。

「バカげてる……」

ふと湧いてきた弱い考えを一笑に付した。
全員で帰らなくては意味が無いんだ。
なんせ裏麗の連中はどいつもこいつも強者揃い。
誰か一人で帰ったところで勝算はほぼ無に等しいだろう。
柳さんだってみんなで帰らなければ喜ばない。
彼女の嘆く顔なんて見たくはないしな。

「それに……もう一度殴られるのは」

自然と頬を撫でていた。
あの時に殴られた一撃の痛みは今でも憶えている。
もしも僕が殺し合いに乗ったならアイツはまた僕の顔を殴るのだろう。
あの痛みをもう一度経験しろというのは遠慮しておきたい。
そんな事を思っていると、背後から気配を感じた。

73 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:14:48.69 ID:JGk2DVKb [3/13回発言]
「3秒やる。殺し合いに乗ってないなら大人しく出てこい」

月光が僅かに差してくるだけの森の中、長髪の青年、水鏡凍季也がふと立ち止まる。
後ろを振り返った彼は気配がする一本の木を見据えた。
すると彼の呼びかけに応じたのか、草を揺らす音がして一人の少女が現れる。
ウェーブのかかった髪の毛に、赤い長袖のシャツ。そしておそろいの色をしたミニスカートと帽子。
堂々とした様子で出てきた彼女であったが、懐中電灯のあかりでチラリと見えた表情は何かに怯えているようであった。

「あなたも……殺し合いに乗ってないのよね?」
「もしも誰かを殺す気だったら君から殺してるさ。わざわざ声をかけたりはしない」

その言葉に安堵したのか、小さく息を吐く音が水鏡の耳に入る。
何故、この少女はこんなにも怯えているのだろうか。
彼は疑問に思う。
傍で見れば分かるが彼女には隙がない。
心が乱れているせいか気配の隠し方は最低レベルであったが、立ち振る舞いは戦士のそれだ。
そんな彼女は一体何に怯えているのだろう。
彼には分からない。

「もう一つだけ聞かせて。あなた、ゼオンの関係者じゃないわよね?」
「ゼオン? ああ、名簿に載っていた名だな。生憎だが僕の知り合いはみんな日本人さ」

僅かに残っていた彼女の緊張が完全にほぐれるのを彼は感じた。
ゼオンとやらがこの少女に何かを仕掛けた事があるのは確実だろう。
心のなかでゼオン・ベルを要注意人物に追加しておく。
もちろん、この少女が悪評を広めるための演技をしている可能性も考慮はしておくが。

「情報交換をしたいんだが、ここよりも適当な民家を探したほうがいいかもしれないな。
 どうする? 歩きながら自己紹介程度を済ませ、そっから本格的に情報を交換しようじゃないか」

水鏡の提案に少女は首を縦に振り、共に歩き出す。
彼女(チェリッシュという名らしい)の話を聞きながら頭の中で考えをまとめていった。
しかし、彼の思考は近くで発生した爆発音により遮られる。

「戦闘か? とりあえず行くだけ行ってみよう。乗ってるヤツがいれば倒さなくてはいけないしな」
「ええ、そうね」

気丈に答えるチェリッシュではあるが、見ればわずかに顔色が悪い。
ゼオンと出会ってしまうことを恐れているのだろう。
その様子を見て、水鏡は突き放すような事を言ってしまう。

「無理についてこないとは言わない。足手まといになるだけだからな」
「いや、行くわ。行かせて頂戴」

あくまでも行くと言い張るチェリッシュに今度は何も言わず、音源へと体を向ける。

「分かった。なら僕は止めない。しかし、自分の身は自分で守ってくれ」

そう言って水鏡は蔵王よりバットを取り出した。
一見すれば普通の金属バットだろう。
だが、これはとある番長の舎弟が使っていたバットだ。
単純な強度が普通のバットを上回るのはもちろん、上部より針が飛び出す仕掛けも仕込まれている。
簡単に言ってしまえば、頑丈な釘バット。
それを右手に構え、水鏡はかけ出した。

「そうだ、名前を言ってなかった。僕は水鏡凍季也。一段落したら情報をしっかりと交換しよう」



☆  ★  ☆

74 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:17:45.32 ID:bkh5t/R3 [1/10回発言]
しえん

75 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:18:25.20 ID:JGk2DVKb [4/13回発言]
二人がたどり着いたとき、そこにいたのは少年と巨漢。
どちらが戦闘を仕掛けたのかは一目瞭然であった。
それは漢の人相が悪いだの、筋肉に覆われた肉体が妙に悪人臭いだのという次元ではない。
漢が全身に纏った覇気。近くにいるだけで押しつぶされそうになるプレッシャー。
無言の圧力が告げる、俺は殺し合いに乗っているのだと。

「二人とも気をつけろ! こいつ……半端無くつえぇ」

ナイフを構えた道着を着ている少年、鉄刃は漢から視線をそらさずに叫ぶ。
巨漢、金剛猛は後から来た邪魔者を気にする様子もなく拳を振るう。
水鏡とチェリッシュは驚愕した。
刃が紙一重で回避した、叩きつけるかのように上から振るわれた拳。それが爆音の正体。
その一撃は地面を大きく抉りとり、土砂を一面へと撒き散らす。

「おいてめぇ! なんでこんな殺し合いになんて乗ろうとしてるんだ!」
「小せえ事は気にするな」

刃の叫びを一蹴し、猛は再び拳を振りかぶる。
速度、力、共に超一級品の殴打に対し、刃はまたしても紙一重でかわす。
余裕の表れではない。ギリギリでしか避けることができないのだ。
刃の身体能力は一般人をはるかに凌ぐ。
だが、猛の潜在能力は人という種を超えたもの。
攻撃を凌げているのは経験からくる技能があるからこそだ。

「なぁ、出来るならでいいんだが手伝ってくれないか?」

ニヤリと精一杯の不敵な笑みを浮かべつつ、刃は二人に協力を求める。
呆然としていた二人もその言葉で我を取り戻し、慌てて戦闘の体勢に入った。

「ほぅ、やっと準備運動が出来る」

拳を鳴らしながら猛もまた獰猛な笑みを浮かべた。
一触即発の中でチェリッシュがゴングを鳴らす。

「ギガノ・コファル!」

チェリッシュが呪文を唱え、巨大な結晶が彼女の指から放たれる。
最弱の呪文で様子を見るなんて考えが通用する相手ではない。
だから最初から心の力の節約などは考えない攻撃を仕掛けた。
急なことに驚く刃と水鏡であったが、両者ともに不可思議な出来事には慣れている。
すぐに気持ちを切り替え、追撃のための行動に移る。
結晶を目隠しとし、その後ろから第二波を繰りだそうと駆ける。
猛はその場に直立したまま動こうとはしない。

そして一瞬の静止の後、ギガノ・コファルが粉々に砕け散った。

パラパラと地面へばらまかれていく破片の合間、傷一つない猛の姿が見える。
正確に言えば突き出した右拳を握っている彼の姿だ。
そこから想定できる答えは一つ。
彼はチェリッシュの呪文を片手で受け止め、握力で粉々に砕いたのだ。
化物じみた肉体に愕然とするも、次の手はある。

「はぁっ!」
「たぁ!」

死角より飛び出してきた二人の剣士の存在を猛はようやく把握した。
右から鉄刃。
左から水鏡凍季也。
ほぼ同時のタイミングで突っ込んでくる二人。

76 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:21:16.39 ID:JGk2DVKb [5/13回発言]
刃の持つ超振動ナイフに気が付き、さしもの彼もこれをまともに受けるのは厄介であると判断した猛。
水鏡の振り下ろした釘バットを左手で受け止め、水鏡の体ごと刃へと投げつける。
猛烈なスピードで飛んできた彼を避けることはできず、二人は纏めて背後の木に叩きつけられた。
不幸中の幸いか、ナイフが二人の皮膚を切り裂くことはない。
だが、そんな問題は些細なものだ。
三人がかりの攻撃でカスリ傷さえ負わすことが出来なかった事実に比べれば全く些細なこと。

「姉ちゃん! もう一回支援頼む!」

刃の怒鳴るような声にチェリッシュは再び構えを取る。
単なるパンチが致命傷となる中、彼ら二人でも攻撃に転じる隙は中々出ない。
だからチェリッシュの呪文で無理矢理隙を生み出す。

「ガレ・コファル!」

大きな一撃が防がれたのなら、今度は数で攻める。
指の一本一本から放たれた無数の結晶は異なるタイミングで猛を狙う。
それと同時に再びかけ出す剣士二人。
数にして十を優に超える攻撃を全て防ぐ手立てはない。
三人はそう思っていた。

「これしきの豆鉄砲で俺が止められると思ったかー!」
「なっ!?」

チェリッシュの呪文が猛の体に当たると同時に砕け飛ぶ。
当然、ガードはしていないのだから両の腕は自由に使うことができる。
そして刃の体を狙った一撃は、的確に彼の胴体を捉え――――

77 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:23:15.34 ID:bkh5t/R3 [2/10回発言]
流石だw

78 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:24:18.71 ID:JGk2DVKb [6/13回発言]
「コファル!」


チェリッシュが咄嗟に呪文を唱え刃の体を吹き飛ばすことで、荒い形ではあったものの攻撃の回避には成功した。
だが、頬の脇をかすめただけの拳は衝撃波で刃の体を吹き飛ばす。
飛んできた彼はチェリッシュのすぐ脇に倒れた。ダメージ自体はそこまで大きくないはずなのですぐに戦線に復帰できると彼女は判断した。
しかし……地面に倒れ伏した刃の体はピクリとも動かない。
まさか、と思った彼女が近寄ってみれば息はしている。
幸運だったのは彼の肉体にはなんの異変もなさそうなこと。
不幸なのは直撃した呪文が顎を揺らし、彼の意識を刈り取ってしまったこと。

「どうだ?」

攻撃を辛うじて回避しながら水鏡が問いかける。
首を縦に振る事で命に別状はないことを伝えると、彼はやれやれとでも言わんばかりに息を吐く。
そして猛攻の合間に、空いていた左手の親指でチェリッシュへと合図を送った。

『逃げろ』

後方に突き出した指は彼の意志をありありと映し出している。
だが、チェリッシュは動かない。動けない。
彼があっさりと決断した指示はあまりにも重すぎる。
三人がかりですら手も足も出なかった相手に一人で残るなど正気の沙汰ではない。
待ちうけている結末は言うまでもないだろう。

何時まで経っても行動に移らない彼女に、水鏡はもう一度指示を出す。
さっさと逃げろ。
自分の死に直結する事柄であるのに、彼は躊躇わない。
チェリッシュの瞳に涙が滲む。
行きたくはない。しかし、彼の行動を無駄にするわけにはいかない。
水鏡は猛を彼女たちとは逆側に誘導しようと動きまわる。

「絶対に生きてなさいよ!」

掠れた声で精一杯叫ぶ。
目の前の相手に集中している水鏡に聞こえたか、聞こえなかったかは分からない。
それでも彼女は聞こえていたと確信し、刃を背負ってその場から全力で逃げる。

水鏡の頬が僅かに緩んだ気がした。



☆  ★  ☆

79 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:26:59.96 ID:bkh5t/R3 [3/10回発言]
 

80 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:27:31.55 ID:JGk2DVKb [7/13回発言]
「待っててくれたのか? 意外と親切みたいだな」
「小せえことは気にするな」

それが第二ラウンド開幕のゴング。
水鏡は飛び退いて距離をおき、猛は静かに歩み寄る。
圧倒的な強者の余裕。
理解しながらも、微塵も腹が立たぬのは彼の規格外な力を知ってしまったからだろう。
だが、倒す余地がわずかにでもあるとすれば、それはその油断。

「ふん!」

振るわれた一撃を釘バットを使うことでいなす。
チェリッシュの放った結晶の威力は、少なく見積もってもバットの一撃よりかは上。
つまり有効打を与えるのが不可能というわけだ。
こちらからの攻撃は全く通用しない以上、回避に専念するしか無い。
そもそも速さが違いすぎるのだ。
防御に回ってやっと見きれる速さ。攻撃に転じる隙などあるはずもない。
さっきまでは複数人で戦闘していたからこそ、なんとか攻めることもできたのだ。
しかし、防御における頼りの綱の釘バットの耐久もそろそろ限界が近付いている。
金剛猛の殴打をあれだけ受け止めておいて未だにへし折れてないのは水鏡の技量があって故のことなのだろう。
それでも損傷は徐々に蓄積されていっている。
このバットを失ったとき、すなわち防御の手段を失った時が水鏡凍季也の最期。
事実を冷静に受け止め、なお彼は戦いをやめようとはしない。

「弱音は吐きたくなかったんだがな。閻水さえあればもう少しまともに戦えたかもしれない、位は言いたくなるさ。
 キース・ブラックも意地が悪い。お前のような怪物にこんなチンケな武器で立ち向かえって言うのだから」
「お前自身はそう思ってはいまい? 武器がなかったから勝てないなど言い訳にすぎぬと分かっているはずだ」

手にしたバットがついに凹み出す。
これではよくて後数回。
水鏡の端正な顔に汗がにじむ。

「正面から殴るだけなんて芸のない戦い方だ、あの猿を思い出す」

嫌味を吐きながら、近くにあった木の上へと飛び乗る。
そして枝から枝へと飛び移り、高さ10mほどへとあっという間に登った。
猛には遠隔攻撃は存在しない、そう思ったゆえの判断だ。

(そろそろ僕も撤退するとするか?)

このまま戦っても勝ち目はほぼ無い。
逃がした二人も追いつけない距離までは行っているだろう。

(が、本当に逃げることができるのか?)

素の身体能力ではまさに桁が違う。
普通に走っていったところで即座に追いつかれて殴り殺されるのがオチだ。
ならば隙を作ればいいのだが、それも簡単ではない。
手持ちの武器は貧相。僅かな隙を作ることさえ命がけとなるだろう。

「木の上に逃げた程度でどうにかなると思ったか」

考えの半ばで猛は樹木へとラリアットをぶちかます。
当たった場所から砕け折れた幹は横へと倒れた。
しかし、水鏡は地面に落下すること無く、咄嗟に近くの木へと飛び移っている。

(時間稼ぎはできそうだ。しかし、ここからどうするかが問題だ)

81 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:30:14.29 ID:JGk2DVKb [8/13回発言]
悠然と歩み寄る猛から一度も視線を逸らさず、水鏡は思考を巡らせる。
だが、急に自分に背を向けた猛へと注意が移ってしまう。
何をする気だ? そう思った彼が目を凝らすと同時に、数歩歩いて距離を取った猛が振り返る。
そして、全身の筋肉が大きく膨れ上がり――――



「打舞流叛魔――――!!!」



――――森林の一角が吹き飛んだ。


辺り一面の木は全て衝撃波でなぎ倒され、あたかも嵐が去った後の様になる。
そんな中、水鏡は奇跡的にも生存していた。
だが、彼の足はほぼ完全に動かない。
衝撃で数十メートルの高さまで舞い上げられた体を致命傷を負わぬように着地させた代償だ。

「めんどうだったからな。全部吹き飛ばさせてもらったぞ」

未だに立ち込める土煙の中、悪魔のシルエットが浮かび上がる。
もはや逃げることは不可能。
水鏡は自分の死期を悟る。
だが、このままでは。このままでは死ねない。
せめてこの怪物を道連れに逝く。
ディバッグを漁り、中から珠を取り出して――咄嗟にバットを構える。

「ぐっ……はぁ……」

バカの一つ覚えのように正面から繰り出された打撃。
水鏡はついにそれを逸らしそこねた。
金属製のはずであるバットが粉々に砕け散り、それでも衝撃を殺しきれなかった拳が水鏡の胴体を捉えた。
人智を超えた怪物の一撃は皮を破り、肉を割き、骨を砕き、内蔵をミンチにする。
そして、腹から入った拳は水鏡の体内を完膚なきまでに破壊した後、背中から突き出た。

「新しく武器を出そうとしていたようだが、無駄だったな」

腕を持ち上げ、水鏡の顔を自分の顔の正面へと持っていく。
流れだす血とともに体温を失っていく水鏡に猛は声を掛ける。
水鏡は血反吐を吐き出しながらも、命を振り絞るかのようにしてそれに答えた。

「そうでも……ないな……この煙の中なら……これは…………蔵王にしか見えまい」

とぎれとぎれになりながらも彼は言葉を発する。
それを聞き、猛は水鏡が手にしていた珠から規則的に流れる電子音に始めて気がつく。

「これは――――」

一瞬、口を開けた僅か一瞬の隙を狙い、水鏡は手にしていた珠を猛の口へと押しこむ。
半死人とは思えぬ力で押し込まれた珠は食道を通り、胃の中へと侵入する。

「助かった……立ち上がれない僕じゃ……貴様の…………口へと放りこむのは……」

水鏡の命が尽きると同時、猛の腹の中で爆発が起こる。
彼が命と引き換えに行ったのは小型爆弾を猛の体内へと押しこむこと。
ダイナマイト数十トン分に相当する威力があるという説明書通りならば、さしもの化物も生存は不可能だろうという確信を込めて。

82 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:30:24.97 ID:bkh5t/R3 [4/10回発言]
 

83 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:33:50.36 ID:bkh5t/R3 [5/10回発言]
 

84 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:33:57.73 ID:JGk2DVKb [9/13回発言]
☆  ★  ☆




「見事だ、名も知らぬ漢よ」

結果を言おう。
日本番長、金剛猛は生きていた。
内蔵にダメージを受け、口から血を垂らしてはいるものの命には別状はない。
水鏡が猛に対してただ一つだけ与えたものといえば、自分と戦った戦士への敬意。
亡骸を貫いていた腕を引きぬき、彼の体をそっと地面へと横たえる。

「貴様のことは忘れん」

そう言って彼はディバッグの中より一本の水筒を取り出す。
同梱されていた説明書によれば、この中にはファウードの回復液とやらが入っているらしい。
傷ついた内蔵をそれによって癒そうと蓋を開けようと回し、思い直したような顔になって行動を止める。
動いた視線が捉えたのは先刻まで戦っていた戦士の遺体。
小さく笑みを浮かべ、水筒を再びディバッグの中へと仕舞う。

「これしきの怪我、わざわざ薬を使って回復するまでもあるまい。
 貴様が生きた証だ。俺の体に刻みつけておいてやろう」



【水鏡凍季也 死亡】
【残り72人】



【A-3 中央部/一日目 深夜】


【金剛猛(日本番長)】
[時間軸]:不明
[状態]:内蔵にだm「小せえ事は気にするな」
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ファウードの回復液入り水筒@金色のガッシュ、不明支給品0~2
[基本方針]:小せえ事は気にするな

85 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:36:28.45 ID:JGk2DVKb [10/13回発言]
☆  ★  ☆



「んんぅ……ここは……」

気絶していた刃が目を覚ましたらしい。
寝ぼけたような声を出し、そして徐々に頭を覚醒させる。
自分は今誰かに背負われている。
視界に入るのはカールのかかった髪の毛に、帽子。
さっきまで巨漢との戦いで共闘していた少女だろう。
そういえば名前聞いてなかったな。刃はぼんやりとそう思った。
やたらと揺れてるのは少女が走っているからなのだろうな。
だが、何かを忘れてるような気がした。
ボーッとした頭で思い出そうと苦心し、そして一気に脳が覚醒する。

「なぁ、俺達と一緒に戦ってた兄ちゃんは怪我してないのか?」

返事はない。
当人が答えてくれると期待したはずの返答が来ない。
僅かに震える声で刃はもう一度問う。

「おい、あの兄ちゃんは無事なんだよな?」

返事はない。
代わりに聞こえたのは小さな嗚咽。
押し殺しているのか、わずかにしか聞こえないが、静かな空気の中でそれはやけに大きく聞こえた。

「じゃあさ、あのデカイのは倒したんだよな? 怪我して……休んでるだけだろ」

チェリッシュの足が止まった。
明白な怒気を込めて刃が彼女の後頭部へと言葉をぶつける。

「まさかだけどよ、置いて逃げた……なんて言わないよな?」

最初のやりとりで感じてしまった一つの答え。
死ぬことの次に最悪の状況。
言い出そうと思ったのを必死にこらえていたが、無言の否定がその堤防を破る。
そしてその質問についてもチェリッシュは返事を返さなかった。
明白すぎる回答。
今度の無言は今までの逆――肯定。

「バーロー、あんなの相手に一人で勝てるわけねぇだろ! お前は知らねーけど俺はもどるぞ、降ろせ! 降ろせってば!」 

どうにか背中から降りそうともがく刃。
ふと、彼の体を支えていた腕が離れる。
自然と重力に引かれ、刃の体は地面へと落ちた。
受身を上手く取れずズキズキと痛む足を気にすること無く、刃はチェリッシュの正面へと回りこみ、胸ぐらをつかむ。

「何で置いていっちまったんだ!? 俺が気絶しててもお前は戦えたんだろ!」

チェリッシュを怒鳴りつけ、刃は今まで進んできた道を逆戻りする。
ここからは一刻も争う状況。
あの化物を相手に青年がどれだけ持つかは分からない。

「頼むから……無事でいてくれよ」

沸き起こる最悪の事態を振り払うように刃は走りだす。
だが、後ろから呼び止める声に思わず足を止めてしまった。

86 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:40:17.74 ID:bkh5t/R3 [6/10回発言]
 

87 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:41:15.40 ID:y5O0Sh72 [1/12回発言]
 

88 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:43:27.59 ID:3UKbLPBx [1/2回発言]
「なんだよ」苛立ちを隠そうともせずに刃は振り返る。
用件があるなら早く言え。
彼の周りを覆った雰囲気がそう告げていた。「あなたが行ったとして……勝てると思うの?」ポツリとチェリッシュが呟く。
掠れた声であったがそれはハッキリと聞き取ることができた。「分からねぇ、けど行くしかねぇだろ」
「行かせないわ。あなたが行くのなら私は全力で止める」ためらわずに答えた刃に対し、彼女も即座に返答する。
ただでさえ苛立ちを抑えられない彼にとって、それは起爆剤にしかならない。
ナイフを構え、彼女の前に立つ。「見殺しにしろってか! そんなん俺は絶対に認めないからな!」
「認めるも認めないの問題じゃないわ。私はあなたを止める。
 あなたが行ってしまったら残った彼の遺志を無駄にしてしまうもの」涙を流しながらも強い意志を持った瞳が刃を捉えた。
ここに来て始めてチェリッシュの強固な思いを感じ取った刃は怒気を収め、それでも一歩も引く姿勢を見せない。「すまねぇ、それでも……俺は行きたい」
「それは只の自己満足よ。勝てない相手に向かっても死体が一人から二人に増えるだけだもの」
「それでも、だ。じゃあ行かせてもらうぜ」そう言って踵を返そうとした彼の脇を石の塊が掠める。
チェリッシュが放ったそれは、刃のわずか先の地面をえぐりとった。
何があったとしても戻らせない。
彼女の意志が変わらないことをさとる。「アイツには私の呪文は通じなかったわ」
「そうか」
「それでも行くって言うのね?」
「ああ、俺はサムライだからな」
「勝てるわけ……ないじゃない」

89 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:45:14.26 ID:WB1zx0iS [1/2回発言]
ん、もう終わり?したらばにも投下ないけど

投下乙。…でも金剛猛ってギャグ漫画の登場人物なの?
今まで出てきたやつは程度の差こそあれ戦ったらそれなりに傷ついてるのに、体内でダイナマイト数十トン分の爆発が起こっても死なないとか明らかにズレてると思う
「開けた場所でダイナマイトが爆発する」のと、「密閉された空間内でダイナマイトが爆発する」のじゃ、爆風の広がる規模が狭い分衝撃力は後者が段違いで高いもんなんだが

90 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:46:20.10 ID:WB1zx0iS [2/2回発言]
あ、まだだったか。割り込みすまん

91 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:46:28.74 ID:y5O0Sh72 [2/12回発言]
   

92 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:46:45.68 ID:bkh5t/R3 [7/10回発言]
 

93 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:46:50.42 ID:y5O0Sh72 [3/12回発言]
      

94 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:47:04.42 ID:3UKbLPBx [2/2回発言]
さるさん喰らいました&携帯投下失敗いです
したらばに投下するんで誰か代理お願いします

95 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:47:06.55 ID:y5O0Sh72 [4/12回発言]
        

96 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:47:24.15 ID:y5O0Sh72 [5/12回発言]
       

97 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:47:36.29 ID:y5O0Sh72 [6/12回発言]
    

98 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:47:56.55 ID:y5O0Sh72 [7/12回発言]
          

99 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:48:45.48 ID:bkh5t/R3 [8/10回発言]
>>89
半分くらいは当たってる>金剛猛ってギャグ漫画の登場人物
とりあえず原作読んでみてくれ、コレでも弱体化しているぞw

100 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:48:49.61 ID:y5O0Sh72 [8/12回発言]
                  

101 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:49:05.19 ID:y5O0Sh72 [9/12回発言]
 

102 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:50:15.87 ID:y5O0Sh72 [10/12回発言]
あの作品的には、漢の拳>爆弾だろうしなぁ
てか爆熱番長がミサイル余裕だっけ。日本番長なら行けそうだ

103 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:51:45.04 ID:JGk2DVKb [11/13回発言]
「なんだよ」

苛立ちを隠そうともせずに刃は振り返る。
用件があるなら早く言え。
彼の周りを覆った雰囲気がそう告げていた。

「あなたが行ったとして……勝てると思うの?」

ポツリとチェリッシュが呟く。
掠れた声であったがそれはハッキリと聞き取ることができた。

「分からねぇ、けど行くしかねぇだろ」
「行かせないわ。あなたが行くのなら私は全力で止める」

ためらわずに答えた刃に対し、彼女も即座に返答する。
ただでさえ苛立ちを抑えられない彼にとって、それは起爆剤にしかならない。
ナイフを構え、彼女の前に立つ。

「見殺しにしろってか! そんなん俺は絶対に認めないからな!」
「認めるも認めないの問題じゃないわ。私はあなたを止める。
 あなたが行ってしまったら残った彼の遺志を無駄にしてしまうもの」

涙を流しながらも強い意志を持った瞳が刃を捉えた。
ここに来て始めてチェリッシュの強固な思いを感じ取った刃は怒気を収め、それでも一歩も引く姿勢を見せない。

「すまねぇ、それでも……俺は行きたい」
「それは只の自己満足よ。勝てない相手に向かっても死体が一人から二人に増えるだけだもの」
「それでも、だ。じゃあ行かせてもらうぜ」

そう言って踵を返そうとした彼の脇を石の塊が掠める。
チェリッシュが放ったそれは、刃のわずか先の地面をえぐりとった。
何があったとしても戻らせない。
彼女の意志が変わらないことをさとる。

「アイツには私の呪文は通じなかったわ」
「そうか」
「それでも行くって言うのね?」
「ああ、俺はサムライだからな」


「勝てるわけ……ないじゃない」



104 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:53:12.78 ID:bkh5t/R3 [9/10回発言]
お、再開

105 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:53:14.03 ID:QVS5Epkp [1/1回発言]
これが刃か?
なんか絵が全然浮かばないんだけど何に違和感覚えるんだろう
台詞かな
剣術を使う人以外のイメージが一切湧いてこない

日本番長の件は俺にはワカンネ

106 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:54:17.01 ID:JGk2DVKb [12/13回発言]
チェリッシュの瞳から流れ落ちた涙が頬を伝い、地面にシミを作った。
次から次へと湧きでてくる涙に刃は思わず驚く。
そしてチェリッシュは感情に任せて刃へと詰め寄る。

「勝てないわ! 勝てるわけ無いのよ。
 あの化物にも、ゼオンにも、そしてキース・ブラックにも!
 私が、あなたが、彼が勝てるわけ無いじゃない!」

唖然とする刃を無視し、なおも彼女は言葉を紡ぐ。

「力の差を見たでしょ!? 私たちの攻撃はまるで通じない、けれどあっちの攻撃は一撃でアウト。
 そして王を決める戦いの優勝候補のゼオン。
 あいつも十分化物よ! あの男とも戦えるかもしれない。それどころか勝ってもおかしくはないわ。
 そんなヤツらをいとも簡単に連れてくるキース・ブラック。私たちにどうしろって言うのよ」

体をかき抱くようにしながら絶望に染まった声を上げる。
 
「あの雷が、あの痛みが今も消えないの!
 無理よ、どうしろって言うの……怖いのよ。
 あの苦しみは二度と味わいたくない。ゼオンに逆らえない!
 勝てないの……私じゃあいつらには勝てないのよ」

話しているうちに錯乱してきたのか、刃には理解出来ない事を喚く。
それでも目の前の少女が苦しんでいることだけはよく分かった。
だが、自分に何が出来るのだろうか。

「お願い……助けてテッド……」

そう言い残し、彼女は急に走り出す。
呆気に取られていた刃が慌ててその後を追うが、彼女の姿は闇夜に紛れていとも容易く消え去った。
辛うじて音で追跡できるが、いつ見失ってもおかしくはない。

「すまねぇ、こっちもほっとけないんだ」

今も戦っているであろう青年へと侘びを入れる。
本当ならばそっちにも行きたい。
だが、今のチェリッシュはそれ以上に放っておくことができない。



後ろ髪を引かれるような思いをしながら若きサムライは走る。



【A-3/一日目 深夜】

【チェリッシュ】
[時間軸]:ガッシュ戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
[基本方針]:???


【鉄刃】
[時間軸]:織田信長御前試合の直後
[状態]:健康
[装備]:超振動ナイフ@ARMS
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[基本方針]:チェリッシュを追う。殺し合いには乗らない

107 : 悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/09(土) 00:56:40.85 ID:JGk2DVKb [13/13回発言]
以上で投下完了です
支援ありがとうございました
誤字脱字、他指摘があればお願いします


108 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:56:44.97 ID:bkh5t/R3 [10/10回発言]
>>105
次のSSで君が軌道修正すればいいじゃない!w

109 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 00:57:42.77 ID:wkfUxUTy [1/4回発言]
>>89
金剛番長読んでた奴からすると全く違和感無いぞ

110 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 01:17:22.76 ID:QIbC7bw3 [1/2回発言]
番長は番長でも念仏辺りと同じに見てはいけない。猛と晄は何か別の生き物。

111 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 01:25:35.32 ID:/x1OKzB8 [1/1回発言]
金剛類だったっけ?
実際人間とは別の生き物だからな金剛兄弟は

112 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 01:33:08.89 ID:wkfUxUTy [2/4回発言]
でもカーズと違ってマグマで消滅したので、ただちにロワに影響があるわけではない

113 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 03:25:18.67 ID:UATDa518 [1/3回発言]
いや、殺すハードル高杉だろw巨大化とか普通にするしwww
まぁそれが日本番長なので、しょうがないが

114 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 11:38:48.67 ID:QIbC7bw3 [2/2回発言]
獄牢「体内(内臓)が吹っ飛ぶのと死ぬのは別でしょう」

115 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 19:43:56.15 ID:y5O0Sh72 [11/12回発言]
もうさるは解除されてんだろ、さすがに

>ナゾナゾ博士と植木の法則
マジメモードのナゾナゾ博士がちょっぴしかっこいいと思ってしまったw 困惑している清麿見て爆笑してるジジイなのにw
いやでも実際、こんな状況でも歪まないというのは男前だぜ
一方のうえきもマジいつも通りすぎるw 「ウ・ソ」に毎度乗ってくれそうだなw
しかも時期は魔王習得後か。しかもロベルトがアノンじゃないって知ってるってことは……あっれ!? こいつ魔王撃ち尽くしてね!?w
まあそれでも十分強いんだけど、なんか超必使えないってのがらしいなw

>悪魔~デモン~
みーちゃん落ちたかー
参戦時期がもっと前だったら、冷静に自分だけで生き延びてたのかもなー
日本番長は日本番長しすぎて笑う。未把握の人が驚くのも分かるのだが、これが日本番長なんだよな
行動方針含めてらしい。むしろ抑え気味にすら思える。しかしお前、支給品水筒て! お前のサイズ考えたら、人間でいうレンゲ一杯分程度なんじゃねえのかww
生き延びたヤイバとチェリッシュも不穏な空気漂ってるなぁ……さやかをなくしてチェリッシュまで助けられないなんてことにならないよう、頑張れ!

116 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 20:10:35.93 ID:UATDa518 [2/3回発言]
あれ、それだと天界力失ってないか?>うえき

117 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 20:56:56.56 ID:wkfUxUTy [3/4回発言]
参戦時期ってアノンがロベルトの身体を捨ててうえきを追い詰めた辺りじゃないの?

118 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 21:03:20.58 ID:y5O0Sh72 [12/12回発言]
あ、そっか。吐き出してたのを忘れてた
……いっそう、うえき寝てんなwwww

119 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 21:06:11.49 ID:C+hDNwLd [1/1回発言]
うえきだしなぁ……w

120 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 21:13:31.28 ID:UATDa518 [3/3回発言]
バトル中かよw

121 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/09(土) 21:44:58.20 ID:wkfUxUTy [4/4回発言]
でもうえきなら名簿にロベルトって書いてるからアノンじゃないって納得してても
それはそれでうえきらしい気がするw

122 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/10(日) 00:39:01.27 ID:D+kMGIru [1/1回発言]
>◆IvAjWlw5Jg氏


投下乙!

植木は主催許さないって感じになるかと思ったらまさかの居眠りw
いや、これはこれでコイツらしいって思えるんだけどね
ナゾナゾ博士はシリアスにかっこ良かった
キッドの魔本をもらった件の
この本がある限り、ワシは「何もしてない人」ではなく常に「ナゾナゾ博士」でいられる。
って文章は凄いい!

このコンビこっから楽しみだー
植木からしたら博士はヒデヨシみたいなもんだろうからなw
ウ・ソがロワ内で何回聞けるんだろう

123 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/10(日) 00:40:32.63 ID:ioxSGUex [1/1回発言]
投下乙!
日本番長すげぇぇぇぇぇえwww
相変わらず化け物染みてやがるw
流石に制限は受けてるみたいだが勝てる気がしない

そしてみーちゃん…

124 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/10(日) 01:17:08.62 ID:ajk40BcD [1/1回発言]
お二方、投下乙!
ナゾナゾ博士の実用的な物よりも想い出の詰まったものを優先する姿は好きだ
にしてもうえきはやっぱりうえきだなw
でもきっと怒ってるはずだし今後に期待w
んで日本番長はやっぱり凄い
こいつならジャバウォックとも互角に戦えそうだw
水鏡も頑張ったんだけどな…流石に相手が悪かったか

125 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/10(日) 01:30:18.94 ID:Q14dlDRf [1/1回発言]
投下乙乙!
ここにいるのはただの爺じゃない!ナゾナゾ博士だ!!
今はただの本でも魔本はキッドとの絆だもんな
それに植木の力の抜け具合がすごくらしい

>どれどれ顔を見せておくれ、おお、綺麗な顔をしておる、死んどるんだぜ、これ、っておや…
>
>「寝とる…」
が妙にツボって茶ぁ吹いた!どうしてくれる!ww


みーちゃんはここで脱落か
閻水なしのタイマンで相手が日本番長じゃなぁ……
刃は知らないけどさやかが死んじゃってるし、なんとかチェリッシュには追い付いてほしいもんだ

126 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:51:09.84 ID:oysy5+uP [1/7回発言]
それでは、投下します。

127 : ホームラン ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:52:11.76 ID:oysy5+uP [2/7回発言]
 闇夜のカーテンが開け放たれ、次第に白んできた空の下。
 西の彼方から顔を出した太陽が、世界を煌々と照らさんと燃える。
 多くの正常な人物にとって、それは希望をもたらす朝日であろう。
 優勝を目指す殺人鬼たちにとっては、忌々しき日輪か。

 では、人ならずもの……自動人形にはどうだ。
 少なくともこの人形、否、人形たちにとっては、暁の訪れなどどうでもよいこと。

「ひひひひ、幸先いいよなァ! 絶好調だぜパウルマン!」
「そうだなァ、アンゼルムス。これなら人間どもを皆殺しにするのもわけないさ」
 その二体は、歓喜していた。
 変色していく上天には目もくれず、歯車が軋むかのような声で笑う。
 小さな人形は甲高く、大きな人形は野太く。
 長々と、先の勝利の余韻に浸っていた。
 とはいえ、彼らは漁夫の利にありつけたに過ぎない。
 動けないほど疲弊した相手に運よく遭遇できただけ。
 棚からぼた餅というやつであった。

 しかし、彼らはそれを己の実力だと勘違いしていた。
 殺し合いで優勝するのは自分たちであると信じて疑わない。
 つまり、このオートマータたちは、完璧に調子に乗っていたのだ。
 そんな彼らが新たな獲物を見つけたら、意気揚々と戦闘をしかけるのは当然のなりゆきだろう。

「おやぁ、アンゼルムス。あそこに人間がいるぞぉ」
「ほんとうだ! 今日はツイてるぜ!」
 パウルマンの左手に抱かれながら、小さな人形がはしゃぎだす。
 その身体に不釣合いな長いその両手を振り乱して、喜びを表現した。
 彼らが見つけたのは、随分と背の高い男の後姿だ。
 しかも、大きいのは身長だけではない。
 その者の全身は分厚い筋肉の鎧で包まれており、腕などはパウルマンの胴体よりも太いのではなかろうか。
 また、髪の毛は異常な逆立ち方をしていて、後頭部に三本の角が生えているかのよう。
 その巨漢の化け物が、なぜか東洋の学生服を着て立っている。
 見てくれだけなら、パウルマンたちの方がまだマトモかもしれない。

「それでは、二時間目を開始しようか」
「やったぜ! さっきの授業は簡単すぎて退屈してたんだ!」
 しかし、そんな容姿に臆する自動人形ではない。
 どんな屈強な武道の達人も熟練の人形使いも、誰一人として彼らを破壊することはできなかったのだから。
 パウルマンがゆっくりと歩み寄ると、男は彼ら以上に緩慢な動きで振り返る。
 眉間に刻まれた深い皺と、不自然なほどつり上がった太い眉毛。
 この顔には、人形たちも見覚えがあった。
 たしか、金剛番長とか言っただろうか。
 この殺し合いの主催者であるキースブラックに食ってかかっていた無謀な男だ。

「聞きたいことがある」
 拳すらも飲み込んでしまいそうなほど大きな口が開かれた。
 パウルマンたちが近づいても、この男は警戒する素振りも見せない。
 どうやら、二体が放っている異常なオーラも察せられぬらしい。
 それなりの相手を期待していた教師と生徒にしてみれば、これは拍子抜けである。

128 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:52:23.22 ID:Kioq3725 [1/6回発言]
 

129 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:53:03.17 ID:Kioq3725 [2/6回発言]
 

130 : ホームラン ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:53:28.37 ID:oysy5+uP [3/7回発言]

「番長、と名のつくものを見なかったか」
「あぁ……見たぞ……」
 パウルマンの返答に、金剛番長が僅かに反応をみせた。
 だが、自動人形はそれ以上言葉を続けずにニヤニヤと笑うだけ。
 それもそのはず。彼らが出会ったのは、悲運な少年ただ一人。
 番長を見たというのも、もちろん嘘だった。

「地獄でなァッ!」
 質問の答えを期待していた金剛に、パウルマンは拳で応えた。
 金剛番長の尖った顎に、全力のアッパーが炸裂。
 さらに、パウルマンの胸部がパカリと開く。
 その中から銛のようなものが何本も飛び出して、相手の分厚い胸板に突き刺さった。
 いくら彼の肉体が強靭とはいえ、自動人形の全力の攻撃を受ければひとたまりもないだろう。

 殺し合いが始まってまだ数時間しか経過していないが、もう彼らは二つの白星を記録したことになる。
 あまりの絶好調に、二体の人形は思わず舞いあがった。
 相手の生死も確かめずに。

「そういえば、名簿には番長と名がつくものが沢山いたな……居合番長に剛力番長、マシン番長なんてのもいるぞ。
 ならばフランシーヌ様の道化である我々は、『道化番長』といったところか」
「うひひひ、『道化番長』か。そりゃあピッタリのネーミングだぜぇ、パウルマン!」
 殺した相手とその仲間らしき番長たちを茶化して大笑いする。
 二体が奏でる不協和音が、明けの空を汚した。
 その不気味なハーモニーも束の間。
 さっそく男の血をいただこうと、先生が舌なめずりをした……その瞬間。

 ぼきゃむ。

 初めて聞く音だった。
 その直後、パウルマンが見ている景色が、突如として縦方向に高速回転する。
 殴られて吹っ飛ばされているせいなのだと自覚するのに、一秒ほどの時間を要した。
 そして、それと同時に思い知る。
 先ほどの不可解な音は、自分の顎が曲がる音であったのだと。

「『道化』はもういるッ!」
 アッパーを放った金剛番長が叫ぶ。
 なんと、彼は無傷だった。
 パウルマンの自慢の攻撃だったが、それらは金剛番長に一切のダメージも与えることができなかったのだ。
 金剛が自動人形たちを警戒しなかったのは、彼らの危険性に気づかなかったからではない。
 彼らが身構えるにも値しない相手であっただけなのだ。

「ふげぇぇぇぇぇぇぇ!」
 くるくると回りながら空に放物線を描くパウルマン。
 地上にいる金剛番長の姿がパン屑ほどの大きさに見えた頃、彼は気づいた。
 その手に、愛する生徒がいない。
 殴られた拍子に、アンゼルムスを手放してしまっていた。
 探そうとしたのだが、彼の身体は鉄棒の大車輪のように回転している。
 その身に自由が戻るのは、少なくとも地面に衝突してからだ。
 それまでどうか無事でいてくれと、天に願ったそのとき。
 彼の首に巻かれた銀の輪が、アラームを発した。

131 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:53:54.38 ID:Kioq3725 [3/6回発言]
 

132 : ホームラン ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:54:27.42 ID:oysy5+uP [4/7回発言]


◆     ◆     ◆


 前略、フランシーヌ様。
 お元気ですか。
 オレです。アンゼルムスです。
 フランシーヌ様は、いま何をされているのですか?
 オレは、空を飛んでいます。
 なぜって?
 金剛とかいう化け物に殴られたパウルマンの野郎が、オレを空高く放り投げたからです。
 風が気持ちいいや。

 もうすぐオレは地面に激突してしまいます。
 でも心配しないでください。
 オレもフランシーヌ様に作っていただいた上質な人形のひとり。
 これくらいの衝撃じゃ傷つきません。
 ほら、地面が近づいてきました。
 大丈夫、平気、へっちゃらさ!

 刺さりました。

 地面深くまでめり込んでしまいました。
 頭から。
 身動きひとつとられません。
 どうやって脱出したらいいのでしょうか。 
 誰か、助けてください。

 ……フランシーヌ様、不幸は続くものですね。
 首輪が警告しやがりました。
 なんでも、パウルマンとオレが一定時間離れると、オレたちは揃って爆死するみたいです。
 オレたち専用の特殊ルールですって。
 ハハッ、こいつはおかしいや。

 この殺し合い、なかなかハードなものみたいですね。
 でもオレたちは負けません。
 必ず貴女が笑える方法をお持ち帰りいたしますから。
 それでは、また貴女にお目見えできる日を願って。

 p.s.
 ブッ飛んでる間に見たんですけど、パウルマンの顎、曲がっちまったみたいですわ。
 あの顔は傑作です。
 あれを見たら、フランシーヌ様も笑ってしまわれるんじゃないでしょうか。


◆     ◆     ◆

133 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:54:45.16 ID:Kioq3725 [4/6回発言]
 

134 : ホームラン ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:55:20.37 ID:oysy5+uP [5/7回発言]


「アンゼルムスゥゥゥゥゥゥ!」
 パウルマンは走る。
 首輪の警告を聞きながら。
 その顎はぐにゃりと左に曲がり、銀色の中身がこぼれ見えている。
 だが、そんなことは気にする余裕もなく、彼は生徒を探して奔走していた。

「どこだ?!」
 彼は気づいてはいないが、真っ直ぐ走っているつもりの彼の足跡は、徐々に右へ右へと逸れている。
 顔の形が変形したせいで、身体のバランスが崩れたのだろう。
 結果的には、そのことが幸いしたのだが。

「あれは……!」
 パウルマンは、道路の脇に小さな穴があるを見つけた。
 まさかと思いながら、ゆっくりと近づく。
 その上から中を覗き込むと、首輪のアラームが鳴り止んだではないか。

「アンゼルムス! いるのか?」
「パウルマン! ここだよぅ!」
 生徒の声を聞いて、パウルマンは安堵の表情を浮かべた。
 この暗く細い穴の奥に、アンゼルムスがいるのだ。
 早く助け出さなければと手を伸ばす。
 だが、穴が深すぎて彼の腕では、まったく届かない。
 今頃アンゼルムスは、怖くて震えているのかもしれない。
 そう考えると、先ほどの大男への怒りが沸々と湧き上がった。

「あの金剛とかいう人間め……必ず殺してやる……!
 …………アンゼルムスを掘り当てたらなぁ!」
 そして彼は、一心不乱に両手で地面を掘り出した。
 男への憎悪を胸に滾らせて。


【C-5 道端 一日目黎明】

【パウルマン&アンゼルムス】
[時間軸]:本編登場前。
[状態]:損傷(小、パウルマン)、顎が曲がっている(パウルマン)
[装備]:ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ(パウルマン)、対AMスーツ用特殊ライフル(弾丸:15)@スプリガン(アンゼルムス)
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:人間と人形破壊者を殺害しつつ、フランシーヌ人形が笑える方法を探す。
※パウルマンとアンゼルムスが一定時間離れると首輪が爆発します。詳しい距離、時間は不明。


◆     ◆     ◆

135 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:56:02.52 ID:Kioq3725 [5/6回発言]
 

136 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 18:56:09.88 ID:oysy5+uP [6/7回発言]


 人形は金剛晄のことを『人間』と呼んだが、実はそれは全くの間違いである。
 金剛類。彼は人類とはまったく別の進化を辿った存在だ。
 彼らは長きに渡り、地球上に存在するあらゆる生物の上に立ち続けている。
 ミサイルも、爆弾すらも通用しない。
 その強さこそが彼らの『生態』であり、金剛類を金剛類足らしめる要素。
 パウルマンごときでは、相手になるはずもなかった。
 しかし、彼は兄である猛とは違う。優しき心をもつ漢だ。
 むやみに力を誇示することをよしとせず、人々が幸せに暮らす世界を願っている。
 こんな殺し合いに乗るはずもなかった。

「悪矢七……」
 パウルマンが、心臓部の歯車に怒りの炎を抱えた頃。
 彼もまた、静かな怒りを燃やしていた。
 思うのは、死んでしまった仲間のこと。
 決して強い男ではなかった。
 その実力は舎弟レベルにも及ばず、強敵を前にすれば彼は腰を抜かして怯えてしまう。
 なんとも情けない男だ。
 だが、それでも彼は強くなろうとした。
 金剛番長を目指して日夜努力を重ねていたことを、晄だって知っている。
 晄が不在のときには、彼に代わって学校を守ろうとしたことも、忘れはしない。

 キース・ブラックは、そんな青年の命をいとも容易く奪った。
 こんな小さな首輪などで。
 まるで、目の前のゴミを払いのけるかのように。
 悪矢七光の人生を否定したのだ。
 許すことなど、できるはずがない。

「お前に代わって……スジは通すぜ」
 当然ながら、死んだ少年からの返事はない。
 彼の頬には、朝の風がいっそう冷たく感じられた。
 それでも胸の奥では、熱い何かが暴れ続けている。
 この思いは、キースを倒すまでは永遠に消えることはないのだろう。
 必ず届けると、今ひとたび誓いをたてる。
 そして、あてもなく歩き出した。
 先ほど殴り飛ばした二人組みのことなど、まったく気にもかけることなく。


【C-5 一日目黎明】

【金剛晄(金剛番長)】
[時間軸]:王様番長戦直前、バンカラータワーに向かう途中。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:スジを通す。

137 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/11(月) 18:56:58.83 ID:oysy5+uP [7/7回発言]
以上で投下終了です。
支援ありがとうございました。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

138 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 20:13:06.46 ID:fjZFccAz [1/1回発言]
投下乙です!!!
 
金剛番長やっぱ強いなwww
パウルマン先生とアンゼルムスを一蹴とは流石すぎる
あの二人だって決して雑魚じゃないはずなのに…金剛類パないw

139 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 20:41:22.18 ID:aHJ/pu2N [1/1回発言]
投下乙!
猛に続き、さすがの金剛類w
たしかに道化番長はムチムチのお姉ちゃん2人組がもういるもんな

140 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 21:21:29.74 ID:6BZkNTF/ [1/1回発言]
投下乙です

雑魚でもないのに一蹴とかすげえ
この二人は相手が悪すぎたな。だがとどめを刺した方がいいのでは……でもそんなのいつもの金剛番長じゃねえよ

141 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 22:01:44.25 ID:hDCi65KR [1/1回発言]
投下乙
金剛強いなぁw
この二人と相対して、一方的なまでにぶっ飛ばしてもなんら違和感がないのが凄いところ

ただ、調子に乗ってたパウルマン&アンゼルムスもこの事で気を引き締めるだろうし果たしてどうなるやら

142 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/11(月) 23:56:02.01 ID:Kioq3725 [6/6回発言]
一応、wikiの修正報告を。
『悪魔~デモン~』の死亡表記を修正させていただきました。
&color(red){ 文字列 } で赤字となるのですが、文字列を囲っていたほうの
括弧が全角になっていたために反映されていなかったようです。

143 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/12(火) 11:19:51.62 ID:nHs5uJbB [1/1回発言]
投下乙。実に藤田な効果音と「道化はもういるッ!」になぜかフイタ。どっちも好きな作品、キャラなんでまだまだ活躍してもらいたい。

144 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/13(水) 01:27:28.10 ID:mWsVkcon [1/1回発言]
ルシオラ達の投下マダー?

145 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/13(水) 02:48:28.33 ID:F3GpA3DX [1/1回発言]
投下乙
やべーw 金剛番長とからくりの相性がガチッとはまってやがるww
全然違和感がねえわw

146 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/13(水) 04:13:43.49 ID:RRBxj3br [1/1回発言]
>>144
まだ期間あるし、もうちょい待ってもいいんじゃない?
でも再予約で心配だから、経過報告くらいは欲しいかも。

147 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 07:30:52.85 ID:lXm+cPQH [1/2回発言]
GS美神を読んだ事ないんで調べたんだが…横島って参戦時期によったらめちゃくちゃ強いのか?

少しだけアニメを見た事があったんだが、ただの一般人かと思ってた


148 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 08:16:12.71 ID:H9lPnXHo [1/1回発言]
別名、サンデー界のポップと呼ばれるほど成長した男だからな

149 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 09:22:48.96 ID:8q3Mkkzc [1/8回発言]
真面目にならなきゃ強いよね

150 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 10:23:30.57 ID:Xl1xJ1K0 [1/1回発言]
ルシオラと面識がある時期だと、美神より強い可能性すらある

151 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 10:43:52.81 ID:uKujrv1l [1/3回発言]
文殊出せる時期はマジ勘弁してくれ…

152 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 13:14:52.21 ID:lXm+cPQH [2/2回発言]
サンデー界のポップww

これをきっかけに読んでみるかな~

153 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 13:30:08.36 ID:oFMm16vd [1/1回発言]
>>151
登場話によると出せる時期らしいぞ
いかにロワで煩悩溢れるシーンに立ち会えるかが鍵だな
……と思ったが、書き手は変態紳士の集まりだからそんなに難しくもないかもしらんw

154 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 14:09:41.80 ID:VuxT3l2M [1/1回発言]
文珠もそこまでチートでもないけどな
レベル差ありすぎる相手には通用しないし
設定上ストック分使い切ったらロワ内で補充するのまず無理だし

155 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 18:58:14.51 ID:uKujrv1l [2/3回発言]
YOKOSHIMAのSSでの悪印象が強すぎて文殊でなんかされるだけで拒絶反応でそう

156 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 19:01:02.30 ID:ayDGIU8M [1/1回発言]
最低系ssの見過ぎです

157 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 20:07:16.18 ID:qb1TAXWt [1/76回発言]
そんなことを言われても、正直「んなもん知るかい」としか言えないです

158 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:24:45.44 ID:hZ7/7m1v [1/56回発言]
これより、代理投下を行います


159 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:27:43.17 ID:hZ7/7m1v [2/56回発言]
深夜、植物園。
照明は点いておらず、ガラス張りの天井から月明かりが差し込んでいる。

植物達に囲まれた芝生の上。
支給品の確認を終えたレイラがそこに居た。

小学校低学年だろうか。
美しい青紫色の髪を持つ、幼い少女だ。
髪の毛と同じ色の服を着ており、胸には月の模様が描かれている。
奇妙なことに、彼女の頭からは二本の小さな角が生えていた。


(どうして私はまだ人間界に居るのかしら……)


彼女は、千年に一度行われる、魔界の王を決める戦いに参加する魔物の子の一人だ。
と言っても、彼女の戦いは千年前に終わっている。
千年前の戦いで、ゴーゴンという魔物の子に敗北してしまったからだ。
敗北の原因はゴーゴンの放った術、『ディオガ・ゴルゴジオ』。
この術は魔物の子を魔本に閉じ込め、石板に変えてしまう恐ろしい術だったのだ。
ディオガ・ゴルゴジオをその身に受けたレイラの体は、魔本と共に石板に変わる。
魔本が燃えて魔界に帰る事もできず、彼女は冷たい体のまま、永い時を人間界で過ごす事となった。

しかし、彼女の戦いから千年後。
再び行われた魔界の王を決める戦いの参加者、ゾフィスによって、彼女にかけられていた石化の呪いは解かれる事になる。
自由を取り戻した彼女は、人の心を操るゾフィスのやり方が間違っている事に気付いていた。
そのため、心を操られている人間達、そしてゾフィスに脅され、戦わされている千年前の魔物達を解放するためにやって来たガッシュ達に彼女は協力し、
見事ゾフィスの悪行を打ち砕く事に成功したのだった。

その後、今の戦いに千年前の戦いの参加者である自分が関わるべきではない、
パートナーとして力を貸してくれたアルベールを戦いに巻き込みたくないという気持ちから、
清麿に自分の魔本を燃やしてもらい、魔界へと帰ったのだ。

……そのはずだったのだが、何故かまだ自分は人間界に居る。
千年もの時が経っているとはいえ、魔界と人間界を間違えるはずがない。
今自分が居る場所は間違いなく人間界だ。

それに、とレイラは自分の右腕に目を向ける。
手首に付けているブレスレットは月明かりを反射しており、腕の中には一冊の本が抱えられていた。
青紫色をした、燃やされたはずのレイラの魔本だった。
確認してみると、説明書にある通り自分で本が読め、威力は下がっているが呪文も発動した。



160 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:30:07.82 ID:hZ7/7m1v [3/56回発言]
これはどういうことだろうか。
魔界の王を決める戦いに参加する魔物の子は、自分の魔本を人間のパートナーに託し、術を唱えてもらわなければ術が発動しない。
自分で術を唱えたとしても、本来ならば何も起こらないはずなのだ。
そもそも、レイラの魔本は燃えたはずである。
一度燃え始めた魔本の火を消すことはできない。
レイラの魔本は、灰も残さず確かに消滅した。

もしや自由に術を発動できないように、制限として新たに魔本を用意したのだろうか。
だとしたら、敵は相当な力を持っていることになる。
魔物の術を制限する魔本を作るなど、王に仕える高位の魔物が数人集まらなければ不可能な行為だ。
それほどまでに強力な、言わば一種の呪いなのだ。
例え魔界の王であっても、魔本の仕組みを変えることは困難を極める。


(まずいわね……。これほどの力を持つ者が相手となると、この殺し合いに参加しているやつらもかなりの力を持っていると見て間違いないわ。
ガッシュや清麿達が無事でいられるかどうか……)


ガッシュ・ベル。高嶺清麿。パルコ・フォルゴレ。ナゾナゾ博士。
彼女を石化の恐怖から、ゾフィスの呪縛から救い出してくれた恩人達。
共にデモルトと戦った仲間達である。

今度は私が彼等を救う番だ。
この殺し合いは魔界の王を決める戦いとは関係ないものだろう。
現に、魔本を燃やされ敗退した自分が、パートナーもなく人間界に存在しているのだ。
これが王を決める戦いとは無関係となれば、自分が手を貸すことになんの問題もない。
必ず、ガッシュ達をこのふざけた場所から救い出して見せる。

そう固く決意したレイラはリュックを背負い、仲間達を探すために行動しようとした。
その時である。
突然、植物園の照明が一斉に点いたのだ。
いきなりの強い光に、レイラは一瞬目を覆った。
そんなレイラに向かって、入口の方から声がかけられる。



161 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:30:17.88 ID:8q3Mkkzc [2/8回発言]
             

162 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:32:41.92 ID:hZ7/7m1v [4/56回発言]

「近くで魔力を感じたから来てみれば……。あなた、魔族ね?」


レイラは声のした方を見る。
入口に居るのは女性だ。
見た目は人間だが、人間ではないとレイラは判断した。
女性の頭から、昆虫のような触覚が二本伸びているからだ。
人間に触覚は存在しない。


「魔物!?」


レイラはと咄嗟に身構える。
敵か味方かはまだわからない。
もし敵であれば、今ここで倒さなければならない。
ここで逃がせばガッシュ達を危険な目に遭わせることになるからだ。
それだけはさせてはならない。

女性はゆっくりとレイラに近づいてくる。
手には魔本を持っていないため、術を発動させる心配はないだろう。
しかし、魔物はその身体能力の高さも脅威になりえる。
油断はできない。



163 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:35:18.86 ID:hZ7/7m1v [5/56回発言]
「あら、そう身構えなくてもいいじゃない。ちょっと訊きたいことがあるだけよ」

「……訊きたいこと?」

「ええ、アシュタロスって名前のお方をしらないかしら?」

「……知らないわ。ここで誰かと出会ったのはあなたが最初よ」

「そう……」


と、呟くと同時に女性の手がこちらを向く。
その手から腕の太さはある光線が放たれ、レイラに向かって一直線に伸びる。
いきなりの攻撃ではあったが、警戒していたレイラはなんとか避けることができた。
光線はさっきまでレイラが居た場所へ直撃し、地面を大きく吹き飛ばす。
爆発した地面は土の塊を弾丸のような速さで四方八方へ撒き散らし、その一つがレイラの体に激突してしまう。


「ぐっ……!」


土の塊が激突した箇所が痛む。
人間の体ならば内臓破裂か、そうでなくても骨を砕いていたかもしれない。
だが、魔物の体は頑丈だ。
これくらいの衝撃で動けなくなるほど、レイラの体は柔(やわ)ではない。

レイラは体制を建て直しながら、服に描いてある月の模様に手をかざす。
すると、月の模様が立体的に浮き出て小さな杖へと変わり、レイラの手の中に収まった。
杖の先端には、顔の描かれた三日月が付いている。
この、一見するとおもちゃに見えてしまう小さな杖がレイラの武器だ。
この武器はレイラの術を発動させるための起点となり、術を制御するための重要な役割を持っている。
例え壊れたとしても、体の一部のようなものなので、しばらく休めば再生する。




164 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:38:31.31 ID:BvYprSd7 [1/12回発言]
 

165 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:38:59.44 ID:hZ7/7m1v [6/56回発言]

レイラは眼前の敵を鋭く見据える。
やはり、女性の手に魔本は見当たらない。
魔本の発光現象も確認できなかった。
魔物であるならば、魔本がなければ術を発動させる事はできないはずである。
遠くで呪文を唱えるパートナーの存在も否定できないが、術の狙いと発動のタイミングが絶妙だった。
詠唱の声が聞こえない距離から、ここまで動きを合わせることが可能だろうか。
もしかしたら、とレイラは一つの結論に至る。


「まさか、大人の魔物も居るっていうの!?」

「あら、じゃああなたは子供なのかしら?」


そう言うや否や、女性は再び光線を放ってきた。


「くっ!」


レイラは横に跳んで光線を避ける。
防御の術もあるが、パートナー無しの術では威力が低下する。それは確認済みだ。
さっき見たこの光線はギガノ級の威力を持っていた。
防御力の低下した防御呪文でギガノ級の術を防げるとは思っていない。

レイラは植物の生い茂る中へと突っ込んでいく。
それと同時に、後ろから地面が爆ぜる爆音が聞こえた。

レイラは植物に身を隠して走りながら、相手の姿を確認する。
相手がこちらを見失っている今がチャンスだ。
レイラは植物の合間から、敵を狙って呪文を唱える。
青紫色の魔本が輝きを放った。


「ミグロン!」


レイラの持つ杖の先端から、鞭のような光が伸びる。
レイラの術の中でも最弱の術だが、最速の攻撃呪文でもある。


「えっ?」


女性がレイラの攻撃に気付いた時にはもう遅かった。
最速の攻撃を避けることも防御することも出来ず、まともに食らってしまう。
ミグロンは最弱の術ではあるが、人間を倒すには十分な威力を持っている。
例え相手が魔物であっても、少しは痛手を負わせることができるだろう。
しかし──


166 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:39:21.42 ID:BvYprSd7 [2/12回発言]
 

167 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:42:07.34 ID:hZ7/7m1v [7/56回発言]


「……何よこれ。弱過ぎて話にならないじゃない」


女性の体には傷一つ付いてはいなかった。
それどころか、痛みすら感じていないらしい。
レイラの攻撃が、まるでそよ風であるかのように通用していない。


「ミグロン!」


植物群の中を移動しながら、レイラは再び呪文を唱える。
光の鞭が再度女性に突撃した。


「こんなものが効くわけないでしょう」


女性は攻撃を避けようともしない。
そもそも、避ける必要がないのだ。
女性の体にミグロンがぶつかるが、女性は痛くも痒くもなかった。

それでもなお、茂みの中を走りながらレイラは術を唱え続ける。


「ミグロン!」

「そこね!」



168 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:43:35.83 ID:hZ7/7m1v [8/56回発言]

女性は声のした方へ向けて光線を放つ。
ミグロンを消し飛ばしながら、光線はレイラへと迫っていった。


(今よ!)


この瞬間をレイラは待っていた。
光線が到達する前に大きく上方へと飛び上がる。
光線は草木を吹き飛ばしながら、レイラがさっきまで居た空間を通り過ぎて行った。
上空から、レイラは敵へと杖の照準を合わせる。

女性は攻撃を放った直後で隙ができている。
今まで放った術には心の力をそれほど込めてはいない。
この最大のチャンスを勝利へと変えるために温存してある。
今出せる最大攻撃呪文にありったけの心の力を込め、レイラは呪文を叫んだ。


「ラージア・ミグセン!!」


レイラの叫びと同時に、レイラの持つ杖の先端の三日月が巨大化する。
巨大化した三日月は杖から離れ、敵へ向かってその巨体を突撃させた。


「なっ!?」


今まで避ける必要のない攻撃ばかりで油断していた。
今から動いたところでもう間に合わない。




169 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:45:26.70 ID:hZ7/7m1v [9/56回発言]


「このっ!!」


女性──ルシオラは、迫りくる三日月に向けて自分の腕を叩き付けてその身を守ろうとする。
上空から放たれたことにより、三日月には重力の加速まで付いている。
質量と速度を持った、これまで受けたものよりも桁違いの攻撃だった。
三日月がルシオラに激突すると、大きな衝突音が園内に響いた。

地面に降り立ったレイラは、三日月が敵に激突したのを見届ける。
魔本もなくあれだけの術を放つ魔物だ。
大人の魔物と見てまず間違いない。
一体どうやって魔界から人間界に魔物を呼び寄せたのか。
この千年でそういうことはなくなったのだろうか。
そう思った矢先の事だ。
ラージア・ミグセンの衝突で立ち込めていた土煙りの中から、一条の光が放たれた。
そういえば、とレイラは敵が呪文の詠唱をせずに術を発動させていた事を思い出す。
例え魔本に縛られなくとも、魔物の術の発動には呪文を叫ぶことが必要不可欠である。
故に、敵の攻撃には呪文を聞いてから反応できると油断してしまっていた。
ギガノ級の威力を持った光線がレイラに直撃し、その小さな体は茂みの奥まで吹き飛ばされてしまった。
ラージア・ミグセンの直撃を受けたにもかかわらず、土煙りの中から出てきたルシオラからはダメージを受けている気配が全くない。


「びっくりしたけど、あんな攻撃で私を倒せると思ったの?」

(そん…な……。ラージア・ミグセンが……効いてないなんて……)




170 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:45:42.91 ID:qb1TAXWt [2/76回発言]
 

171 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:45:52.43 ID:BvYprSd7 [3/12回発言]
  

172 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:46:10.09 ID:qb1TAXWt [3/76回発言]
  

173 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:46:25.94 ID:qb1TAXWt [4/76回発言]
   

174 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:48:13.72 ID:hZ7/7m1v [10/56回発言]


弱体化しているとはいえ、レイラの持つ術の中でも高威力を誇る攻撃だ。
それなのに傷一つつけられないとは。
レイラはぎり、と歯噛みする。

茂みが自分の姿を隠しているが、この場所に次の攻撃がくるのは時間の問題だ。

今の自分の力ではこの敵の力に遠く及ばない。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
私は仲間達を救うと決めた。
目前の敵は殺し合いに乗っている。
この敵を放っておけば、仲間達に必ず襲いかかるだろう。
それだけはさせてはならない。
自分がここで倒して見せる。
仲間達は、私が守る。

傷ついた体で、レイラは自分の右腕、その手首に目を向けた。
そこにあるのは金属製のブレスレット。
名を、『輪廻』という。

この支給品は、使用者の肉体年齢を操作する効果があると説明書には記されていた。
これを使って成長すれば、自分の術は今より強い威力を発揮できるかもしれない。
だが、この『輪廻』を使うことには多少の躊躇い(ためらい)があった。
使用した際の副作用があるのだ。
輪廻は使用者の実年齢に関する記憶を奪い、操作された年齢を本当の自分の年齢と確信させてしまう。
知識までは奪われないため、ガッシュ達の顔と名前は覚えていられるかもしれない。
しかし、それも教科書に載っている偉人程度の記憶になってしまうだろう。
それは知り合いではなく、ただ知っているというだけのもの。
輪廻を使えば自分の姿は変わってしまう。
その上ガッシュ達との関係性を忘れてしまえば、敵対してしまう可能性が出てくる。

レイラは仲間達を、自分を救ってくれた恩人達を守りたいのだ。
敵になってしまえば本末転倒である。

そんな迷いが生じているレイラの周りを、複数の光線が横切った。
ルシオラの光線の正体は霊力の奔流だ。
自身の膨大な霊力を収束し、目標に向かて放出する。
それは腕からだけでなく、周囲の空間から複数の霊波を放出させることも可能である。
ルシオラは止め(とどめ)とばかりに、レイラの居る一帯に向けて幾条もの光線を放っている。




175 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:48:42.14 ID:qb1TAXWt [5/76回発言]
  

176 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:49:07.14 ID:qb1TAXWt [6/76回発言]
 

177 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:51:05.36 ID:BvYprSd7 [4/12回発言]
 

178 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:53:43.13 ID:qb1TAXWt [7/76回発言]
 

179 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:53:54.58 ID:qb1TAXWt [8/76回発言]
  

180 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:54:13.96 ID:hZ7/7m1v [11/56回発言]

レイラに迷っている時間はない。
ここでこの敵を倒さなければ、仲間達に危害が及ぶのだ。
それは絶対に許されない。
許してはならない。

輪廻を使用してしまった場合の保険として、名簿には仲間の事を記述している。
ガッシュ。清麿。フォルゴレ。ナゾナゾ博士。
思い出すのは、短い間ではあったが共に戦った仲間達の姿。
あの仲間達の命を、こんなくだらない場所で失わせるわけにはいかない。
仲間達に危機を齎す(もたらす)敵を、野放しにしてはならない。
大丈夫、あの仲間達と敵対することなど絶対に起こらない。
そう、信じている。

思いを固めたレイラは、輪廻を発動させる。
今よりも強い自分。
眼前の敵を倒せる力を身に付けた自分。

レイラの体が、変化し始めた。




181 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:54:25.62 ID:BvYprSd7 [5/12回発言]
 

182 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:54:31.02 ID:qb1TAXWt [9/76回発言]
     

183 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:54:43.50 ID:qb1TAXWt [10/76回発言]
  

184 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:55:00.57 ID:qb1TAXWt [11/76回発言]
 

185 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:56:24.00 ID:hZ7/7m1v [12/56回発言]







「……何?」


攻撃を続けていたルシオラは違和感を感じていた。
強力な魔族であるルシオラは、魔力や霊力といったものを感じ取る能力を持っている。
例え相手が茂みに身を隠していようと、その位置を把握することが可能だ。
だが、その探知能力は優れているわけでもない。
感じ取ることができるのは強力な霊能力者や魔族の力のみで、普通の人間程度の霊力や浮遊霊のような魂までは感知できない大雑把なものである。
今の攻撃もレイラ本人を直接狙っているのだが、魔力の気配が消えていない。
攻撃が外れてしまっているのだろう。
まだ生きているのは確実だ。

気配が移動していない事から、動けないのかもしれない。
だとすれば、霊波の無駄撃ちを続けるよりも、近付いて確実に仕留めた方が賢明だ。
そう思った時であった。
魔力の気配が強くなったのだ。
場所からして、その源が少女であることは間違いない。
しかし、疑問が湧き上がる。
突然魔力が上昇したのはどういう訳か。
今まで力を隠していたのだろうか。
それとも、何か支給品を使ったのだろうか。

何をしたのかはわからないが、何かをしたのは確かだ。
面倒なことになる前に息の根を止める。



186 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:56:57.46 ID:AcxIdNnf [1/38回発言]
、

187 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:57:48.75 ID:AcxIdNnf [2/38回発言]
。

188 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:58:10.72 ID:BvYprSd7 [6/12回発言]
 

189 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 21:58:18.13 ID:hZ7/7m1v [13/56回発言]

ルシオラはレイラが居るであろう場所に向けて、五条の霊波を放った。
わざわざ何かをしている相手に近づく必要もない。
五条の光が気配のする場所を襲い、地面も草木も全てを吹き飛ばす。
土煙りが濛々と立ち込める中から、何者かが飛び出した。

飛び出してきた人物は、さっきまで戦っていた小柄な少女ではない。
二十歳と思しき(おぼしき)、若い女性だ。

この女性は何者なのか。
突然この場に現れた他の参加者であろうか。
いや、それは違うとルシオラは思う。
この女性には既視感を覚えるからだ。
女性の手には、先程の少女と同じ青紫色の本と小さな杖が握られている。
服装も、少女の服をそのまま大きくしたかのようにそっくりな作りであり、髪型や髪の色までもが少女と同じである。
頭から生えている角は少女の角よりも大きいが、少女が成長すればこれくらいの大きさになっていることだろう。
この女性は、先程の少女とあまりにもそっくりなのだ。

女性が少女と同一人物であるとの判断は一瞬でついた。
現に、女性の顔からは少女の面影が見て取れる。
姿を変える魔族など珍しいものではない。




190 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 21:59:46.44 ID:1rN3fMDD [1/41回発言]
 

191 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:00:17.66 ID:AcxIdNnf [3/38回発言]
!

192 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:00:22.63 ID:qb1TAXWt [12/76回発言]
 

193 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:00:41.87 ID:/adkqkoB [1/1回発言]
支援

194 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:00:44.02 ID:qb1TAXWt [13/76回発言]
  

195 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:00:54.14 ID:1rN3fMDD [2/41回発言]
 

196 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:01:12.79 ID:hZ7/7m1v [14/56回発言]


「それがあなたの本当の姿ってわけね!」

「あら、じゃあ私は今までどんな姿をしていたのかしら?」


どうやらまとも答える気はないらしい。
だが、相手がどんな姿に変わろうと、ルシオラのやる事は変わらない。


「訊いているのは──」


ルシオラはレイラの動きに合わせて腕を動かす。
腕の先に霊力を収束させた。


「──こっちの方よ!!」


ルシオラの腕から光が放たれる。
しかし、レイラの動きは少女の時とは比べ物にならない程速くなっていた。
近距離での高速移動に加え、先程までの少女の速度を想定していたルシオラは、レイラの動きを完全に捉える事ができなかった。
ルシオラが放った光線はレイラが通り過ぎた空間を空しく(むなしく)通過し、植物園に破壊の爪跡を残すに終わる。
レイラは攻撃直後の隙を衝き、ルシオラの真横を取ると同時に杖を構えた。


「ラージア・ミグセン!」


レイラの持つ杖から、巨大化した三日月が放たれる。
至近距離からの攻撃だ。
霊波で迎撃できる時間はない。


「このっ!」


ルシオラは力任せに片腕を三日月にぶつける。
先程と同じ攻撃と思い直接受けたが、威力も強度も格段に跳ね上がっている。
一度受けた攻撃とは言え迂闊な事をしたか、と一瞬肝を冷やしたが、体へのダメージはさほど感じられない。
このまま押し切っても問題はないと、腕に込めた力を更に強める。

三日月を砕きながらレイラへと強引に狙いを定め、そのまま霊波を放出した。
光の線は狙い通りの場所へ向かって突き進む。だが、そこにレイラの姿は存在しない。
巨大な三日月の陰になって気付かなかったが、レイラはラージア・ミグセンを放った直後に行動を再開していたのだ。
ルシオラから放出された光は木々を吹き飛ばし植物園の壁すら貫くも、目標であったレイラの気配はすでに植物群の中。
レイラのおおよその位置は掴めるものの、所詮はそれまでだ。
ルシオラの探知能力では、絶えず移動している気配を正確に捕捉することはできない。




197 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:01:29.81 ID:AcxIdNnf [4/38回発言]
・

198 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:01:35.09 ID:1rN3fMDD [3/41回発言]
 

199 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:01:35.67 ID:qb1TAXWt [14/76回発言]
  

200 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:02:03.88 ID:AcxIdNnf [5/38回発言]
、

201 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:02:15.81 ID:1rN3fMDD [4/41回発言]
 

202 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:02:23.80 ID:hZ7/7m1v [15/56回発言]

「ちょこまかと!」


感じられる気配に向けて再度霊波を放つ。
しかし、無駄撃ちの回数を増やしただけで、目標にはかすりもしない。
ここまできて、ルシオラは苛立ちを覚え始める。

最初は楽な相手と思っていた。
事実、あちらの攻撃はこちらに効かず、逆にこちらの攻撃はあちらに効いている。
間違っても苦戦するような相手ではない。
それなのに、攻撃を直接当てることができたのは一度だけ。
それ以降は無駄な力を浪費してし続けている。
ルシオラは、どうやってこの敵を確実に仕留めるかを考えあぐねていた。




「……攻撃が効いていないわね」


レイラは園内を疾走しながら考える。
敵の様子を見る限り、敵がダメージを負っているようには感じられなかった。
ラージア・ミグセンはレイラの術の中でも高い攻撃力を有している。
だというのに、それが相手を倒す足がかりにすらなっていない。

連続で攻撃できれば勝機も出てくるかもしれないが、レイラの術はどれも杖による三日月の操作の術である。
小さな術ならば連続攻撃も可能だが、大きな術はその要である三日月を飛ばすのだ。
三日月が回復するまでの間、次の攻撃は不可能である。

三日月の回復に要する時間は数秒にも満たない。
だが、その数秒が勝負の行方を左右する事をレイラは理解している。
戦闘における一秒の遅れは、自身が敗北するのに十分な時間となるのだ。




203 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:02:44.37 ID:8q3Mkkzc [3/8回発言]
                         

204 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:02:46.15 ID:AcxIdNnf [6/38回発言]
。

205 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:03:15.04 ID:qb1TAXWt [15/76回発言]
 

206 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:03:25.56 ID:hZ7/7m1v [16/56回発言]



「せめて、パートナーが居れば……」


パートナー。
無意識に口を吐いた自分の言葉に、レイラは何か懐かしいものを感じた。
パートナーとは魔本を読むことのできる人間のことで、魔界の王を決める戦いにおける重要な存在である。
パートナーが居なければ魔物の子は術が出せず、圧倒的不利な状況に陥ってしまう。
魔界の王を決める戦いは魔物ならば誰でも知ってることであり、この程度の知識は魔界の一般常識だ。
魔物の中には、パートナーを術を唱えるためだけの存在と考える者も居るが、そうではないことをレイラは知っている。
どうしてかはわからない。
しかし、術を唱える役割とは違う、もっと別の、大切な何かを『パートナー』という言葉からレイラは感じ取っていた。
もしかしたら、自分は魔界の王を決める戦いに参加していたのかもしれないとレイラは思う。
かもしれないというのはここに連れてこられる以前の記憶が自分にはないからだ。
思い出そうとしても、霞がかかったようにぼんやりとしてしまっている。
わかることは、自分が何者かということと、殺し合いの場に居るという今の状況。
そして、目の前の敵を倒さなければならないという、湧き上がる思いだけだ。

この気持ちはどこからくるのか。
あの敵は攻撃力、防御力共に高い。
自分の力で太刀打ちできないのは明白だ。
普通ならば、逃げるのが得策だろう。
敵わない(かなわない)敵に向かっていくのは愚行以外の何物でもない。
そこまでわかっているのに、不思議と逃るという考えを自分で否定してしまう。
逃げれば大切なものを失ってしまう。あの敵を倒さなければ必ず後悔する。
その強い思いがレイラをこの場に留めていた。

退く気はない。
が、敵を倒すには力が足りない。
この状況をどうやって打破するか、そう考えていた時だった。
謎の声が、レイラに呼びかけた。




207 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:03:32.32 ID:AcxIdNnf [7/38回発言]
?

208 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:03:36.10 ID:BvYprSd7 [7/12回発言]
 

209 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:03:48.45 ID:qb1TAXWt [16/76回発言]
    

210 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:04:00.65 ID:AcxIdNnf [8/38回発言]
・

211 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:04:32.60 ID:hZ7/7m1v [17/56回発言]





◆ ◆ ◆





ルシオラはこの状況を打破することを決めた。
敵の気配はわかるが、目視できなければ攻撃を当てることは難しい。
ならば、障害となる植物を先に薙ぎ払ってしまえば良い。
まずは気配の進行方向にある草木を霊波で吹き飛ばす。
ルシオラから放たれた光が通り過ぎた後には、開けた空間が出来上がった。
これならば敵が飛び出した瞬間に狙い撃つ事が可能だ。
次に、気配のやや後方に向けて霊波を放つ。
気配の周りの見通しを良くし、隠れられる場所を徐々に無くしていく。

敵は姿を見せるのを躊躇っているのか、残った茂みの中で動きを止めている。
後は炙り出すだけだ。
目の前の一帯にむけて、全ての草木を一掃しようと霊波を放った。
その時、初めて聞く声がルシオラの耳に届く。
女の声ではない。
若い、少年のような声だ。
その声はレイラの気配のする辺りから聞こえてきた。
だが、感じられる気配は一つだけだ。

また姿を変えたのか、それとも霊力の低い他の参加者が居たのか。
どちらにしろ関係ない。
ルシオラの放つ光が、レイラを隠していた植物達を消し飛ばす。
破壊音の後には、背の高い木や身を隠す茂みがほとんどなくなっていた。
少し木屑が舞っているが、自分から見てやや右寄りの位置に立っている青紫色の服を視認することができる。

あの場所から残っている植物群までには、十分な距離がある。
動きが速くなっているといっても、狙いを付けて攻撃を当てることは可能と判断する。
問題は先程聞こえた声の主だ。
目の前の女性に姿が変わった様子はない。
しかし、レイラの他に人影は見当たらない。

答えはすぐに見えた。
黒い羽の生えた不気味なものが、レイラの近くで宙に浮いていたのだ。




212 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:04:48.30 ID:AcxIdNnf [9/38回発言]
、

213 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:04:51.03 ID:qb1TAXWt [17/76回発言]
  

214 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:04:51.90 ID:1rN3fMDD [5/41回発言]
 

215 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:05:41.62 ID:1rN3fMDD [6/41回発言]
 

216 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:05:44.92 ID:hZ7/7m1v [18/56回発言]


(あれは通信鬼……!)


通信鬼。
魔界に棲む低級の鬼で、同種間ならば例え異界であろうと音声の伝達ができる存在である。
主に魔族が、その名の通り離れた相手との通信に使用している。

通信鬼自体の霊力は非常に低い。
茂みから一人の気配しか感じられないのも当然のことだった。
その通信鬼から、先程聞こえた声と同じ人物の声が発せられる。


『左手の茂みに向かえ! そこが一番近い!』

「了解よ!」


レイラは通信鬼から発せられた声に応じると、全速力で動き出そうと足を曲げた。




217 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:06:23.80 ID:qb1TAXWt [18/76回発言]
 

218 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:06:26.81 ID:AcxIdNnf [10/38回発言]
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219 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:06:48.11 ID:hZ7/7m1v [19/56回発言]


「仲間が居たのね!」


確かに、レイラの立つ位置からはそちらの茂みが一番近いだろう。
だが、声が丸聴こえである。
これでは『今からそこに移動するから狙い撃ちにしてくれ』と言っているようなものだ。
ルシオラはレイラから見て左手、ルシオラから見て右手へと腕を動かす。
レイラは持てる力の全てを使い、地面を蹴って一気に跳躍する。
ルシオラから見て左。八時の方向へ向けて最大速度で体を飛ばした。


「はっ!? どういうこと!?」


ルシオラは右に動かし始めた腕を急いで左へと戻すが、一度動かした腕はそう簡単にはレイラの速度に追いつけない。
もう片方の腕を使うにしても、一度収束しかけた霊力を移動させるのは、何もしていない状態から霊力を収束させるよりも数瞬遅れるのだ。
その上、レイラは地面を駆ける平面の動きではなく、斜め上方に飛び上がる立体の動きをした。

茂みに向かって地を駆けると予想していたルシオラの攻撃は、レイラに当たることなく植物園を破壊する。


(信用してなかったってこと!? まさか右と左を間違えたってオチじゃないでしょうね!)


ルシオラはレイラが跳んだ先へ急いで振り返る。
まだレイラは空を跳んでいる途中で、着地はしていない。
距離は遠いが、あれならば攻撃を当てることなど簡単だ。
この一撃で確実に仕留める。
そう思いを強めたルシオラは、五条の光をレイラに向けて放出した。
まだ殺し合いの序盤と言う事もあり力を抑えていたが、今回の光の束には今までよりも多く霊力を込めている。
今度こそは外さないと、未だ空中に居るレイラを睨みつける。




220 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:06:51.33 ID:1rN3fMDD [7/41回発言]
 

221 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:07:29.70 ID:qb1TAXWt [19/76回発言]
 

222 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:07:36.96 ID:AcxIdNnf [11/38回発言]
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223 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:07:54.91 ID:1rN3fMDD [8/41回発言]
 

224 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:07:55.71 ID:hZ7/7m1v [20/56回発言]

レイラはルシオラの攻撃を予期していたかのように、体制を変えてルシオラの方を向いていた。
術で迎撃するために、迫り来る光に向かって杖を構える。
心の力が注ぎ込まれた魔本が輝きを放ち、呪文が叫ばれた。


「ミシルド!」





◆ ◆ ◆





ルシオラは、視界の端で何かが輝くのを捉えた。
植物園の奥。高さ三メートル程の土手の上だ。
そういえば、とルシオラは思い出す。
この敵は攻撃を放つ時、持っている本が光り輝き、そして攻撃の名前であろう言葉を叫んでいた。
しかし、今のレイラの手元には杖しかなく、あの青紫色をした本がいつのまにか消えているのだ。
その事に気付くと同時に、ルシオラの耳に遠くから叫び声が届いた。
レイラの声ではない。通信鬼から聞こえた少年の声だ。
まさかとレイラに意識を戻すと、レイラの目の前に三日月型の盾が出現し、五条の光線を防いでいた。


「そんな!」


ルシオラは驚愕する。
この攻撃は、これまでの霊力の節約のために抑えて撃っていた霊波とは違う。
確実に相手を消し飛ばすための攻撃だ。
それを、あんな顔の描かれたおかしな盾で防がれるなどありえない。




225 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:08:38.20 ID:AcxIdNnf [12/38回発言]
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226 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:08:41.13 ID:qb1TAXWt [20/76回発言]
 

227 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:08:46.24 ID:1rN3fMDD [9/41回発言]
 

228 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:08:53.58 ID:qb1TAXWt [21/76回発言]
  

229 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:09:05.79 ID:hZ7/7m1v [21/56回発言]
ルシオラは攻撃の出力を更に上げる。
流石に耐えきれなくなったのか、三日月の盾に亀裂が走り始める。
だが、ルシオラもこれ以上の連続した霊力の放出は限界だった。
一旦攻撃を終わらせ、再度霊力を収束させる。
その間に、レイラは土手へと着地していた。

ルシオラの居る場所から土手までは距離がある上、植物が邪魔をし見通しが悪い。
今までは、障害物のない空中は格好の的になるため飛ぶ事を控えていたが、相手の居場所がわかる今ならば問題はない。
ルシオラは見通しの良い空中に飛び上がると、土手へと目を向ける。
土手の上は木々の間隔も広く、敵の姿を見失うこともないだろう。

目を凝らして見れば、土手にはレイラの他にもう一人、少年の姿があった。
年の頃は十二歳に見える。
少年の手には、青紫色のレイラの魔本が収まっていた。
自分が少年の存在に気付けなかったということは、ただの人間だろうか。
力を隠している魔族や霊能者の可能性もあるが、関係ない。
アシュタロス様以外の者は全て葬るだけだ。

ルシオラは再び収束した霊力を、土手に向かって放出する。
もう手加減はしない。
本気で放たれた六条の光が、二人目掛けて直進した。




230 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:09:17.87 ID:8q3Mkkzc [4/8回発言]
                        

231 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:09:30.21 ID:1rN3fMDD [10/41回発言]
 

232 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:09:54.29 ID:qb1TAXWt [22/76回発言]
 

233 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:09:59.82 ID:AcxIdNnf [13/38回発言]
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234 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:10:15.36 ID:hZ7/7m1v [22/56回発言]


「ラージア・ミグセン!!」


少年が呪文を唱えると同時に、レイラの杖からラージア・ミグセンが放たれる。
今までのラージア・ミグセンとは違う。
前回のものよりも一周り大きくなった三日月が、光の束へと突き進む。



「こんな……こんな馬鹿な事が……!!」

ルシオラは、目の前で起こっている事が信じられないでいた。
本気で放った霊波の束が、三日月を破壊できないどころかその進撃を止める事すらできていないのだ。
アシュタロス様の眷属である自分の本気が押し負けている。
まさか相手はアシュ様に匹敵する力を持っているとでも言うのか。


「くっ!」


霊力の放出を止め、空中で三日月を避ける。
このままでは拙い(まずい)。
どういう訳かは知らないが、敵の力が格段に上がっている。
それも、アシュ様の脅威に成りえる程の力だ。
今ここで倒さなければ、アシュ様に害を成す危険性がある。
アシュ様の行く手を阻む者は全て排除する。
それが眷属たる自分の役目であり、存在している理由だ。
この命は、アシュ様のためだけに在るのだ。




235 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:10:16.31 ID:qb1TAXWt [23/76回発言]
 

236 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:11:24.68 ID:AcxIdNnf [14/38回発言]
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237 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:11:25.49 ID:hZ7/7m1v [23/56回発言]

一連の行動を見た限りでは、やはりあの二人は仲間であるらしい。
知り合い同士が呼ばれていることは、私とアシュ様、最初の広場の様子で察しはついていた。
敵の攻撃にはあの本と技の叫びが必要ということも、今までの戦いから想像がつく。
おそらく、空中で少年の元へ本を投げ飛ばしたのだろう。

あの青紫の髪の女は、通信鬼で仲間と連絡を取り合った後に不可解な行動をとったが、結果的にに仲間の所へ無事に到達している。
あの通信自体が罠だったと考えるのが妥当だろう。
いつの間に一連の行動を伝え合ったのか疑問に思うところだが、今は保留だ。
敵はもはや雑魚から難敵にまで強くなっている。
しかし、こちらにも奥の手はある。

ルシオラの手には勾玉が握られていた。
一見するとただの装飾具に見えるが、『竜の牙』と呼ばれる変幻自在の神の剣だ。

ルシオラは竜の牙に自身の霊力を込める。
竜の牙はルシオラの霊力によってその形を変え、騎乗槍へと変貌した。
ルシオラはその槍を構えると、少年目掛けて一気に加速する。
攻撃役である女の方は、本が無ければその力を発揮する事ができない。
ならば、先に本を持つ者を狙うのは当然のことだ。

ルシオラが猛スピードで迫っているというのに、少年はその場を動こうとしない。
レイラは少年を守るように移動し、ルシオラへ杖の照準を合わせる。
少年の持つ青紫色の魔本が、術を発動さるために輝き始めた。


(かかったわね!)


ルシオラは、敵が自分の術中に嵌まった事で勝利を確信した。
彼女は蛍の化身である。
その能力は光を操り幻影を作りだすこと、そして獲物に麻酔し昏倒させることだ。

空中を飛ぶルシオラは光が生み出した幻影。
本物はすでに二人の背後に回り込んでいる。



238 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:11:35.59 ID:BvYprSd7 [8/12回発言]
 

239 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:11:55.02 ID:qb1TAXWt [24/76回発言]
   

240 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:12:05.24 ID:AcxIdNnf [15/38回発言]
!

241 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:12:18.97 ID:qb1TAXWt [25/76回発言]
 

242 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:12:31.63 ID:1rN3fMDD [11/41回発言]
 

243 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:12:36.68 ID:hZ7/7m1v [24/56回発言]

光を操り姿を消したルシオラを、二人が視認することは不可能だ。
幻影に集中している今が好機。
ルシオラは手に持つ竜の牙を構え、縦に並んでいる二人を貫こうと襲い掛かった。
そして、その動きに呼応するかのように少年が呪文を叫ぶ。


(えっ?)


少年が呪文を叫び始めると同時にレイラの体が振り返る。
レイラの杖は、見えないはずのルシオラを完全に捉えていた。


「ミグロン!」

杖から放たれた光の鞭がアルの頭上を通り過ぎ、ルシオラ目掛けて突進する。
動き始めたばかりのルシオラの体では、今更回避行動をとっても間に合わない。
とっさに竜の牙を盾にしようとするが、最速の術であるミグロンを防ぐにはもう遅かった。

光の鞭は、ルシオラの体へ打撃となって突き刺さる。


「がはっ!」


衝撃で空気が体の外へと押し出された。
この術までもが強化している。
痛みはあるが、内臓へのダメージはない。
ルシオラの幻影はまだ二人に向かって突き進んでいたが、レイラの体を通り抜けるとそのまま霧散した。
まるで最初から幻影であると知っていたかのように、二人はそれに対する反応を示さない。




244 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:13:02.42 ID:qb1TAXWt [26/76回発言]
 

245 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:13:05.60 ID:AcxIdNnf [16/38回発言]
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246 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:13:22.01 ID:1rN3fMDD [12/41回発言]
 

247 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:13:29.19 ID:8q3Mkkzc [5/8回発言]
             

248 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:13:44.11 ID:hZ7/7m1v [25/56回発言]

計略に気付かれたのか。
一体、どこで気が付いたというのか。
そもそも、どうやって姿を消している自分の居場所を知ることができたのか。
見当も付かないが、それを考えている時間はない。

撤退か、反撃か。
まだ自分の姿は消えている。
退けば、大きな攻撃で狙われる危険がある。
少年の方はおそらく人間だ。
この近距離であの巨大な三日月を出せば、どう考えても少年にまで被害が及ぶ。
まさか自らの危険を省みずに、そんな大技を叫ぶ事はないだろう。

ここは無理矢理にでも接近し、反撃へ転じるべきだ。
先程の光の鞭は耐えられる。
こちらには竜の牙がある。
大丈夫だ、問題ない。

ルシオラは崩れた体制を立て直し、反撃に出ようとした。
だが、ルシオラが体制を立て直す前に少年が指示を出す。


「レイラ! そのままだ!」

「わかったわ!」

「ラージア・ミグセン!」


言いながら、少年は横へと移動する。
呪文が言い終わると同時に、レイラの杖の先端にある三日月が巨大化し、切り離される。
先程まで少年が立っていた空間すら飲み込むまでに巨大化した三日月は、ルシオラ目掛けて突撃を開始した。



249 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:14:15.40 ID:qb1TAXWt [27/76回発言]
  

250 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:14:27.49 ID:qb1TAXWt [28/76回発言]
 

251 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:14:31.45 ID:BvYprSd7 [9/12回発言]
 

252 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:15:03.70 ID:hZ7/7m1v [26/56回発言]


(嘘でしょっ!?)


一体何を考えているのか。
この至近距離でこんな技を遣えばどうなるかなど、子供でも想像できるはずだ。
しかし、攻撃は既に放たれた後だ。
攻撃を防ぐために、ルシオラは迫り来る三日月へ向けて竜の牙を突き立てる。
三日月を迎え撃つは、神の剣たる竜の牙だ。
ルシオラの膨大な霊力で発動している今ならば、いかなる攻撃であろうと防げないものは存在しない。

そう、本来の状態であれば、威力が段違いになっているラージア・ミグセンとはいえ、竜の牙で防ぐことができただろう。
だが、ルシオラは崩れた体制でこれを迎え撃ったのだ。
力を出し切れない状態では、ラージア・ミグセンを完全に無力化することはできなかった。
上手く力を伝えられなかったせいか、竜の牙は三日月の一部を砕いただけに終わり、残りの大半部分に押し切られてしまう。


(そん……な……)


ラージア・ミグセンの勢いは、ルシオラに激突するだけでは止まらない。
ルシオラごと地面にその身を沈みこませ、土手の一部を雪崩のように崩してしまった。
直撃を受けたルシオラの体を痛みが襲う。
今まで経験した事のない激しい痛みだ。
光を操り姿を隠していたが、今の衝撃でそれも解けてしまっている。
敵の姿を確認するが、二人の姿はどこにも見当たらない。
三日月を放った直後、巻き添えを喰らわないように少年──アル・ボーエンを抱えたレイラは大きく後退し、
土手から離れた場所へと降り立っていたのだ。




253 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:15:36.58 ID:1rN3fMDD [13/41回発言]
 

254 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:15:45.14 ID:AcxIdNnf [17/38回発言]
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255 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:16:09.56 ID:qb1TAXWt [29/76回発言]
 

256 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:16:10.43 ID:hZ7/7m1v [27/56回発言]


(ダメだわ……。私の力じゃ……とても………)


ルシオラはこの二人に勝利するのは無理だと判断した。
突然跳ね上がった力。
幻影を看破する方法。
全てが謎である。
今や自分と相手の力の関係は逆転し、圧倒的に不利な状況に陥っていた。
今はまだ殺し合いが始まったばかりである。
強力な敵にいつまでもこだわっていては非効率だ。
この会場内には、竜の牙のような強力な支給品がまだまだ多くあると思われる。
ここは一度撤退し、他の弱い参加者から支給品を奪い、二人を倒せるだけの力を用意してから再戦した方が得策だろう。

問題はアシュ様がこの二人と戦う事になってしまった場合だが、アシュ様は自分とは比べ物にならないほど強い。
仮に不利な状況に陥ったとしても、撤退し体制を立て直す聡明さを持ち合わせておられる。
どのような人物が相手であろうと、アシュ様が倒される可能性など無に等しい。

まずは参加者を減らしながら、力を集める事が先決だ。
そう考え、撤退しようとしたその時である。




257 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:16:36.54 ID:uKujrv1l [3/3回発言]
コピペ量少なくね?
60行まで1レスで収まるよ

258 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:17:22.97 ID:hZ7/7m1v [28/56回発言]


「レイラ、あいつ逃げようとしているぞ」

「ダメよ。逃がすわけにはいかないわ」

「ああ、僕もあんな危険な奴を野放しにする気はない」

「それじゃあ、お願いできるかしら、アル」

「無論だ。僕を誰だと思っている」


確かに、ルシオラは逃げようとしていた。
しかし、行動どころかその素振り(そぶり)すらまだ見せてはいない。
いや、それ以前にこの位置ならば自分の姿を見ることもできないはずだ。
それなのに、考えが敵の二人に読まれてしまっている。


(……考えが……、読まれている………!?)


ルシオラは気付いた。
何故、この二人は気取られることなく、あれだけの行動を伝え合うことができたのか。
何故、作戦が見破られ、見えないはずの自分の位置までもがばれたのか。
ルシオラは土の中から身を起こすと、少年に向かって怒りを込めて叫ぶ。


「あなた、テレパシストね!!」

「……少し違うな。説明してやっても良いが、生憎とそんな暇は僕にはない」


レイラが、最後の仕上げと杖を構える。
アルの持つ魔本が、今までにない輝きを放ち始めた。


「ちっ!」


心が読まれているならば、一刻も早くここから離れなければならない。
アシュ様に関する、知られてはならない事柄まで知られてしまうではないか。
そんなことになれば大失態では済まされない。
今は逃げる事だけを考え、他の事は一切考えないようにする。
この場から逃げる。
逃げる、逃げる、逃げる!
その、ただ一点のみに集中し、ルシオラは一気に飛び上がった。




259 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:17:29.36 ID:1rN3fMDD [14/41回発言]
 

260 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:18:18.59 ID:1rN3fMDD [15/41回発言]
 

261 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:18:40.77 ID:hZ7/7m1v [29/56回発言]



「逃がさないと言ったはずよ!」

「ミベルナ・マ・ミグロン!!」


アルの叫びと同時に、植物園内の中空に数十個の三日月が展開される。
ラージア・ミグセンよりは一回り小さいかもしれないが、その一つ一つは巨大というには十分な大きさだ。


「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」

「回転(ロール)!!」


二人の掛け声と共に、多数の三日月の内の三つがその巨躯を自ら回転させ、ルシオラの進行を妨害するように動きだす。
ただそこにあるだけでも十分に逃走を阻害している三日月が、更に凶悪な障害物となってルシオラの前に立ちはだかった。


「このっ!」


一つの三日月を避けても次の三日月が進行の邪魔をし、それを避けても次の三日月が、
そして再び舞い戻った最初の三日月がと延々妨害を繰り返し、ルシオラを植物園内に押し留める。


「邪魔なのよ!!」


ルシオラは自分の進路を妨害している三日月の一つに向かって霊波を放つ。
だが、三日月は固い。
霊波では壊せないとわかると、ルシオラは攻撃方法を変更した。
ありったけの霊力を注ぎ込んだ竜の牙を構え、一番近いガラス張りの壁に向かって突撃したのだ。
当然、三つの三日月が進行を妨害するが、目の前の障害全てを打ち砕くつもりの渾身の突撃だ。
一つ目の三日月に竜の牙が突き刺さり、そこから三日月全体に亀裂が広がる。
力が入っている今ならば、竜の牙で壊せないものなど何もない。
そう確信した時だった。




262 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:18:51.02 ID:AcxIdNnf [18/38回発言]
。

263 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:10.10 ID:1rN3fMDD [16/41回発言]
 

264 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:14.40 ID:qb1TAXWt [30/76回発言]
  

265 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:23.55 ID:BvYprSd7 [10/12回発言]
 

266 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:24.29 ID:qb1TAXWt [31/76回発言]
  

267 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:32.60 ID:AcxIdNnf [19/38回発言]
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268 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:19:41.49 ID:qb1TAXWt [32/76回発言]
   

269 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:19:50.04 ID:hZ7/7m1v [30/56回発言]


「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」

「攻撃(ファイア)!!」


言葉と同時に、ルシオラが竜の牙を突き立てた三日月、そして近くを動いていた二つの三日月が同時に爆発する。
爆風でルシオラの体が、まだ残っている植物群まで吹き飛ばされる。
茂みが地面にぶつかる衝撃を和らげてくれはしたが、ラージア・ミグセンで受けた傷、そして今の爆発の衝撃と熱で体が悲鳴を上げている。
ラージア・ミグセンもそうだが、この攻撃もそう何回と耐えられるものではない。
それどころか、数が多く自在に動き回る分、こちらの方が厄介だ。

……やはり、この二人は危険だ。
この攻撃では、アシュ様でさえ対処仕切れるかわからない。

逃げることだけを考えようとしたルシオラだったが、今はアシュタロスの身を按じている。
この二人を放置しては大変な事になる。アシュ様の身に危険が及んでしまう。
べスパもパピリオもここには居ない。
アシュ様の味方は、この会場内には私一人だ。
……守らなければ。
私がアシュ様を、お守りしなければ。
こんな敵だらけの場所で、私以外の誰がアシュ様の味方をするというのか。
私が。アシュ様の眷族であるこの私が、必ずアシュ様を救い出して見せる!

決意を固くしたルシオラは、事前に考えておいたある一つの作戦の実行を決断する。
この状況を打破するには、もうこれしか残されていない。
ルシオラは自分に支給された残りの二つの品を思い出す。
一つは今は使えないが、もう一つは非常に強力なものだ。
もしもの時のために温存しておきたかったが、そうも言っていられない。




270 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:20:15.58 ID:1rN3fMDD [17/41回発言]
 

271 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:20:17.30 ID:8q3Mkkzc [6/8回発言]
                  

272 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:20:23.09 ID:qb1TAXWt [33/76回発言]
  

273 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:20:30.07 ID:AcxIdNnf [20/38回発言]
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274 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:20:42.37 ID:qb1TAXWt [34/76回発言]
 

275 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:21:06.22 ID:hZ7/7m1v [31/56回発言]


「まずい! 何か仕掛けてくるぞ! これで終わらせる!!」

「了解よ! 3(セー)、7(ジー)、9(アイ)、17(キュー)、24(エクス)!!」

「回転(ロール)!!」


五つの三日月が回転を始め、ルシオラ目掛けて襲い掛かかる。
しかし、既にルシオラは蔵王を取り出していた。
こんな所で負けるわけにはいかないのだ。
ルシオラは手に持った蔵王を襲い来る三日月達に向け、中から支給品を飛び出させる。
蔵王から飛び出したものは、巨大な卵のような形をしていた。
表面はひび割れ、目玉が一つ付いている。
目玉を正面とするならば、右側面に付いているのは鎌だろうか。
卵の底に当たる部分からは、石でできているかのように固く尖った脚が、十数本生えている。


「間鎚! 私を守る結界を張りなさい!!」


間鎚と呼ばれた妖がその命令を受けると、ルシオラを含めた周囲一帯を電流のようなもので四角に囲んでしまう。

襲い掛かって来た三日月がその電流の上を通過しようとするが、三日月の動きが突然止まり、いきなり崩れ落ちてしまった。
後続の三日月も同様だ。
何か目に見えない壁に遮られているかのように、五つの三日月はその役目を果たせず、間鎚の結界によって全て落とされてしまったのだ。




276 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:08.56 ID:qb1TAXWt [35/76回発言]
  

277 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:14.04 ID:AcxIdNnf [21/38回発言]
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278 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:17.60 ID:1rN3fMDD [18/41回発言]
 

279 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:24.39 ID:qb1TAXWt [36/76回発言]
 

280 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:54.30 ID:AcxIdNnf [22/38回発言]
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281 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:21:56.13 ID:qb1TAXWt [37/76回発言]
 

282 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:22:08.41 ID:qb1TAXWt [38/76回発言]
 

283 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:22:11.92 ID:hZ7/7m1v [32/56回発言]


「そんな馬鹿な!」

「アル、あれは何なの!? あなた心が読めるんでしょう?」

「結界を自在に張る妖怪……だと? 馬鹿馬鹿しい! それに、……なんだ? あの女の思考が読めなくなっている……くそっ!」


アルがルシオラから読み取れた間鎚の正体は、結界を張る妖怪だということ。

妖怪などこの世に存在しない。
そんなものは空想の産物、人の恐怖心が生んだ虚構にすぎない。

だというのに、ルシオラの思考はそれをすんなりと受け入れており、そんなものが存在するのが当たり前だと言わんばかりの情報まで入っていた。
全ての情報を捌き切れたわけではないし、最初は何かの暗号かとも思った。
しかし、現に目の前に妖怪は存在し、隣では魔物が共に戦っている。
非常識にも程がある。


「その結界を破る方法はないの!?」

「今考えてるところだ! 結界とかいうものを張る前の思考は読めたが、あれを破るのは至難の業だぞ!」


やはり、あの結界を張っているという間鎚本体を直接狙うのが良いのか。
弱点らしきものまでは読み取れなかったが、必ず結界を破る方法があるはずだ。
そう考えたところで、ルシオラの声が聞こえてきた。
自分達に向けた呼びかけではない。
間鎚に向けた新たな命令だ。


「間鎚! あの二人を閉じ込めるように結界の張り直し! そして結界を狭めて押し潰しなさい!!」

「何だとっ!?」



284 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:22:38.62 ID:qb1TAXWt [39/76回発言]
   

285 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:22:45.63 ID:AcxIdNnf [23/38回発言]
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286 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:22:57.71 ID:1rN3fMDD [19/41回発言]
 

287 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:22:57.89 ID:qb1TAXWt [40/76回発言]
  

288 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:23:07.00 ID:AcxIdNnf [24/38回発言]
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289 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:23:18.76 ID:qb1TAXWt [41/76回発言]
 

290 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:23:20.73 ID:hZ7/7m1v [33/56回発言]


使用者であるルシオラの命令を聞き、間鎚は結界を一度解除する。
そして、間鎚の居る場から二人の場所までを囲む、新しい結界を張り直したのだった。

間鎚によって新たな結界が作られると、植物園内に浮かんでいた三日月達に変化が起こる。
正確には、結界の外にある三日月達だ。
結界の外に浮かんでいた三日月達は、急にその力を失い地面へと落下した。
結界内に残っていた三日月は健在だったが、結界外の三日月は全滅だ。
いくら動かそうと力を送っても、ぴくりとも動かなかった。

結界が無事に張り直された事を確認したルシオラは、二人を一瞥しただけで、もう興味はないといった風に空中に飛び上がる。
飛び上がったルシオラはそのままガラス張りの天上を突き破り、植物園の外へと逃走した。


「おい! 待て! この結界を何とかしろっ!!」


アルは叫ぶが、後の祭りだ。
結界内の三日月の数はわずかに三個。
この状態から、どうにかして結界の外へ脱出しなければならなくなった。


「……アル」

「ああ、わかってる! 今どうやってこの結界を破るかを考えてるところだ!」


結界自在妖『間鎚』。
この妖怪の張る結界は、一体で二百七十体の妖怪を封じるだけの力を持っている。
つまり、二百七十体の妖怪が何かをしたところでびくともしない力を、この結界は持っているという事だ。
しかも、結界は本体である間鎚の周囲にも張られている。
単純に間鎚本体を叩けば解決するという話でもない。

打開策はないかと考えを続けているアルの耳に、何かが壊れる音がした。
音のした方を見ると、間鎚の張った結界が狭まり(せばまり)、結界に触れた草木が音を立ててて崩壊している。
早く脱出する方法を考えなければ、自分達もああなるのだろう。
アルは思考を続行する。


(くそっ! 僕は人類最高の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだぞ! 妖怪だろうが結界だろうが、初めて知ったという理由で屈してなるものか!!)




291 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:23:40.00 ID:1rN3fMDD [20/41回発言]
 

292 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:02.38 ID:AcxIdNnf [25/38回発言]
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293 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:04.23 ID:qb1TAXWt [42/76回発言]
 

294 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:15.90 ID:qb1TAXWt [43/76回発言]
  

295 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:23.48 ID:BvYprSd7 [11/12回発言]
 

296 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:24:23.73 ID:hZ7/7m1v [34/56回発言]





◆ ◆ ◆






闇夜を飛行するルシオラは、振り返り後方へと目をやった。
視線の先にあるのは、闇の中で煌々と光りを放つ、ガラス張りの植物園。
戦闘のせいでガラスのいくつかは砕け、外壁にも数箇所穴が空いている。
ガラスや壁の穴から光が漏れ出ており、闇夜を照らすその姿は、少し綺麗だと思った。

中では、間鎚が上手くやっているだろう。
ルシオラは植物園内での戦闘を思い出す。
敵は本当に強かった。
いや、強くなった。

初めは取るに足らない弱い存在だった魔族の少女が、戦闘中にその姿を変え、アシュタロス様の眷族である私を超えるまでに力を強くしたのだ。
支給品のせいか、それともあれが本来の力だったのか。
判断はつかないが、ともかくあれ程の力だ、アシュ様も苦戦してしまうかもしれない。
その上、途中から現れた相手の心を読む少年も厄介な存在だ
正確ではないと言ってはいたが、相手の思考を読み、そして自分の思考を他者に伝える能力を持っていると見て間違いない。

この二人の死亡を確認せず、間鎚に任せたままにしておくのは、正直言って後ろ髪を引かれる思いだった。
上級魔族以上の力を持った者達だ。結界から脱出してしまう可能性もある。
万が一にも二人がアシュ様に傷を負わせるような事になれば、それは自分の責任だ。
戻って死亡を確認したいという気持ちが込み上げたが、ルシオラはそれを抑え込む。
今、自分がするべきことはそれではない。
この会場に潜む危険は二人だけではないのだ。

変幻自在の神の剣『竜の牙』。
結界自在妖『間鎚』。
ルシオラに支給された物だが、このどちらもが破格の品であった。

他の参加者にも同格か、それ以上の物が支給されているのだろう。
そんな強力な支給品を複数集めた者が現れてしまえば、ただの人間であっても十分な障害と成りえてしまう。
それに、自分もそうだが、アシュ様やあの青紫色の髪をした魔物のように強力な者も連れてこられている。
今はまだ殺し合いが始まったばかりなのだ。
こんな序盤からそのような強敵と戦えば、消耗し切ってしまい勝てる相手にも勝てなくなる。
まずは参加者を殺害しながら支給品を集め、力を蓄えてから強敵を消して行くのが効率的だ。


(それに、探す物もできちゃったしね)



297 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:40.23 ID:1rN3fMDD [21/41回発言]
 

298 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:24:56.36 ID:BvYprSd7 [12/12回発言]
 

299 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:25:20.62 ID:AcxIdNnf [26/38回発言]
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300 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:25:23.75 ID:qb1TAXWt [44/76回発言]
 

301 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:25:24.28 ID:1rN3fMDD [22/41回発言]
 

302 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:25:34.90 ID:qb1TAXWt [45/76回発言]
  

303 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:25:45.59 ID:hZ7/7m1v [35/56回発言]


ルシオラに支給された三つ目の支給品。
それは、何も書かれていない木札だった。
一見するとなんの変哲もないただの木札だが、説明書によるととんでもない代物であることがわかる。

『空白の才』。
この木札に欲しい才能を書くと、その才能を手に入れることが可能だというのだ。
これは何でも願いが叶うことと等しい効果である。
だが、肝心の才能を書くための筆が別に存在するらしい。
それを見つけることができれば、勝負をかなり有利に進めることができる。

“勝利の才”や“生存の才”等、使い道は様々だが、自分で使う事はしない。
昔から願いを叶えるという類のものには回数制限が設けられている。
おそらく、一度書いてしまえば取り消しは不可能になるだろう。
ならばこれを使えるのはアシュ様だけだ。
自分やその他の者が使って良い品ではない。

となれば、空白の才を他の参加者に奪われ、ましてや使われる事態だけはなんとしてでも避けなければ。
その事を肝に銘じ、ルシオラは前に向き直ると街中へ向けて飛行を続けた。



私はアシュ様の眷族。
私はアシュ様を守る者。
私は、アシュ様の味方だ。










【D-2 空中・一日目 深夜】

【ルシオラ】
[時間軸]:横島と一緒に夕日を見る以前。
[状態]:負傷と疲労(自力で回復中)。
[装備]:竜の牙(勾玉状態)@GS美神極楽大作戦!!
[道具]:基本支給品一式、蔵王(空)@烈火の炎、空白の才の木札@植木の法則
[基本方針]:アシュ様のために行動する。参加者を殺し強力な支給品を奪う。
※街中へ向かって移動中。


304 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:26:02.43 ID:qb1TAXWt [46/76回発言]
   

305 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:26:11.12 ID:AcxIdNnf [27/38回発言]
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306 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:26:14.52 ID:qb1TAXWt [47/76回発言]
    

307 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:26:37.00 ID:1rN3fMDD [23/41回発言]
 

308 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:26:52.11 ID:AcxIdNnf [28/38回発言]
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309 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:26:56.74 ID:hZ7/7m1v [36/56回発言]





◆ ◆ ◆ 





植物園内。
間鎚の張った結界は内と外を完全に遮断しており、結界外の三日月を動かす事は不可能だった。
ルシオラの心が読めなくなったのも結界のせいだろう。

アルとレイラは間鎚のすぐ近くまでやってきていた。
この結界の発生源はこいつである。
これを直接叩けば良いとも思ったが、近くに散乱している木片を投げると、間鎚本体にぶつかる直前に砕けてしまう。
本体の周りにも結界が張られているらしかった。
本体への攻撃が駄目なら、どこかに綻びはないかと周囲を見渡し、アルは気付く。

天井が壊れていない。
もしかしたら、上空から脱出できるかもしれないと、試しに三日月の一つを上空に移動させる。
だが、ある高度に達すると三日月の先端が崩れ始めた。
残り少ない三日月を更に少なくするわけにはいかない。
急いで三日月を降下させる。

結界の境界線は、草木が新たに破壊された跡でわかる。
どうやらこの結界は立方体の形を形成しているようだ。
正に八方塞がりの状態だ。
結界だの妖怪だのといったものは、いつもなら空想の産物と一蹴してやったが今は違う。
どういう原理かは知らないが、内と外を隔てる見えない壁が、そしてその壁を発生させている不気味な生命体が目の前にある。


(良いだろう。今はそのふざけた存在を認めてやる)




310 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:00.61 ID:qb1TAXWt [48/76回発言]
  

311 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:11.17 ID:AcxIdNnf [29/38回発言]
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312 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:22.94 ID:qb1TAXWt [49/76回発言]
   

313 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:31.77 ID:1rN3fMDD [24/41回発言]
 

314 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:34.73 ID:qb1TAXWt [50/76回発言]
       

315 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:44.33 ID:qb1TAXWt [51/76回発言]
              

316 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:50.81 ID:qb1TAXWt [52/76回発言]
   

317 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:27:58.90 ID:AcxIdNnf [30/38回発言]
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318 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:28:00.82 ID:hZ7/7m1v [37/56回発言]


アルは今までにARMSやサイキッカーといった、一般常識とはかけ離れた存在を目の当たりにしてきている。
今更非常識の一つや二つが増えたところでなんだというのか。


(僕は今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだ。今から全ての事象を分析し、この状況から脱出してみせる!)


結界の大きさは、二人が囲まれた時から三分の二の大きさにまで小さくなっている。
ゆっくりとではあるが、確実に死の時が迫っている状態だ。
結界が更に狭まり、また少し草木が崩れ去った。


「……アル、気付いたことがあるわ」

「気付いたことだと? 何だ、言ってみろ」


レイラはアルに説明を始める。
この結界の崩壊現象についてだ。
結界が狭まり、結界に触れた物体は崩壊を始める。
だが、それは結界に触れた物全てが、一斉に崩壊を始めているわけではなかった。
一本の木が結界に触れ、その身を崩し始める。
それなのに、隣に生えている木には何も起きてはいない。
最初に崩壊を始めた木がその身を崩し終えた頃に、ようやく隣の木に崩壊が訪れる。
この一連の現象は数瞬の内に終わってしまうが、まるで結界の周囲を一周するかのように規則的に移動している。
人間では気付く事のできない、魔物であるレイラだからこそ視認することができた一瞬の出来事であった。




319 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:15.10 ID:qb1TAXWt [53/76回発言]
 

320 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:16.06 ID:1rN3fMDD [25/41回発言]
 

321 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:25.32 ID:AcxIdNnf [31/38回発言]
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322 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:44.42 ID:qb1TAXWt [54/76回発言]
  

323 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:50.00 ID:AcxIdNnf [32/38回発言]
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324 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:28:58.22 ID:1rN3fMDD [26/41回発言]
 

325 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:29:08.90 ID:hZ7/7m1v [38/56回発言]

「……そうか、わかったぞ! この間鎚は自らエネルギーを放出して結界を張っているんだ
 おそらくは電流と磁場の関係のように、空間にエネルギーを流すことで平面的な力場を発生させているんだろう」

「言ってることは私にはわからないけど、ここから出ることはできるの?」

「できる! エネルギーを流して結界を張っているのなら、そのエネルギーを途中で遮ってしまえば良い!」


アルは即座に作戦を立てた。
まず、崩壊は左周りに移動しているらしい。
エネルギーは間鎚の右側面から出ていると見て間違いない。
間鎚から流れているエネルギー流に直接三日月を挟み込ませ、エネルギーの流れを遮る。
そうしてできた結界の空白地帯を通り抜け、外へと脱出するのだ。


「準備は良いかしら?」

「ああ、いつでも良いぞ」

「それじゃあ、行くわよ! 8(エイチ)、15(オー)、23(ダブ)!!」

「回転(ロール)!!」


三個の三日月が回転を始め、間鎚の放出するエネルギー流へ向けて突き進む。
一つめの三日月がエネルギー流に触れ、その身に亀裂を走らせた。
その三日月が崩壊する前に、エネルギーの通り道に沿うように残りの三日月を配置する。
一つめの三日月がエネルギー流に耐えきれず崩壊するが、二つ目の三日月が結界を形成しようとするエネルギー流を再び遮る。




326 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:29:17.10 ID:AcxIdNnf [33/38回発言]
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327 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:29:56.61 ID:qb1TAXWt [55/76回発言]
  

328 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:06.90 ID:1rN3fMDD [27/41回発言]
 

329 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:07.59 ID:AcxIdNnf [34/38回発言]
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330 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:14.60 ID:qb1TAXWt [56/76回発言]
   

331 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:30:19.21 ID:hZ7/7m1v [39/56回発言]


「今だ! 頼んだぞ!」

「まかせて!」


アルを抱きかかえたレイラが、結界の外へ向けて横跳びに跳躍する。
間鎚のエネルギー流はすでに二つ目の三日月を破壊し、最後の三日月にも亀裂が走っている。
一瞬でも遅れれば二人の命はない。
体を倒し、全力で跳躍したレイラの体が間鎚の横を通り過ぎる。
それと同時に最後の三日月が崩壊し、間鎚の結界が再び展開された。
レイラは一歩二歩と地面を蹴って速度を落とし、芝生の上で体を停止させる。
二人は、無事に間鎚の結界から脱出する事ができたのだ。


「ふう。ありがとう、アル。あなたのおかげで助かったわ」

「ふん! 超天才であるこの僕が居るんだ。当然の結果だ」


アルの態度は尊大だった。
しかし、その後照れくさそうに言葉を付け加える。


「……だが、まあ、僕一人の力では脱出不可能だったのも事実だ。君のおかげで助かった。礼を言う」

「ふふ、どういたしまして」

「ところでレイラ、提案があるんだが」

「あら、何かしら?」




332 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:44.25 ID:qb1TAXWt [57/76回発言]
 

333 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:46.60 ID:AcxIdNnf [35/38回発言]
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334 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:30:59.92 ID:1rN3fMDD [28/41回発言]
 

335 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:31:24.42 ID:hZ7/7m1v [40/56回発言]


アルは未だ結界を展開している間鎚に目を向ける。
閉じ込めておく者はもういなくなっているというのに、考える力のない間鎚は命令を実行し続けている。


「やはりな。支給品になっていたものだ。通信鬼のように道具としての側面が大きいだろうと思っていたが、案の定だ。
 こいつをこのままにしておいて、再び使われるのも面倒だ。ここで破壊するぞ」

「……さっきの敵は追わないの?」

「確かにあいつは危険だ。逃がしてしまったことは痛い。だが、時間が経ち過ぎている。
 すでに心眼の有効範囲外に逃げてしまっているし、今から追っても見つけるのは難しい。
 まずは状況の整理と休息が必要だ。今はこいつを倒すことに協力してくれ」

「……………。わかったわ。それも、そうね」

「よし、じゃあ始めるぞ。さっきの要領だ。今度は結界を消している間に本体を叩く!」


レイラが杖を構え直す。
すると、地に落ちていた三日月達が一斉に浮かび上がった。
まだレイラの術は発動を続けていたのだ。


「1(アー)、4(デー)、10(ジェー)、12(エル)、18(アル)、21(ユー)、22(ブイ)!!」

「回転(ロール)!!」


二人の掛け声と共に、七つの三日月が間鎚から放出されるエネルギー流に迫る。
三日月達がエネルギー流に割り込み、その流れを遮る陣形をとった。
三日月がエネルギーの流れを止めている間に、即座に追撃を開始する。




336 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:31:35.93 ID:AcxIdNnf [36/38回発言]
。

337 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:31:49.02 ID:qb1TAXWt [58/76回発言]
   

338 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:32:01.93 ID:1rN3fMDD [29/41回発言]
 

339 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:32:06.12 ID:qb1TAXWt [59/76回発言]
 

340 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:32:12.15 ID:AcxIdNnf [37/38回発言]
!

341 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:32:26.77 ID:qb1TAXWt [60/76回発言]
 

342 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:32:34.26 ID:hZ7/7m1v [41/56回発言]


「6(エフ)、9(アイ)、11(カー)、13(エム)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、25(イグ)、26(ゼツ)!!」

「回転(ロール)!!」


今度は九つの三日月が、結界に守られていない間鎚の左側面を狙う。
最初の三日月が間鎚に激突する。
間鎚に目立った外傷は見当たらない。
続いて二つ、三つと間髪入れずに攻撃して行き、四つ目の三日月をぶつけたところで、ようやく間鎚の体にひびが入った。
その間に、間鎚のエネルギー流を遮る三日月は残り三つまで減っていだ。
このまま順番にぶつけていたのでは、全ての三日月をぶつけ終える前に結界が復活してしまう。
レイラは残りの三日月を一気に間鎚の元へと収束させる。


「9(アイ)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、26(ゼツ)!!」

「攻撃(ファイア)!!」


エネルギー流を遮る三日月は残り一つ。
間鎚の元へと集まった五つの三日月達が一斉に爆発する。
結界のない剥き出しの場所への、至近距離からの爆発攻撃だ。
間鎚の体に入ったひびが大きくなり、その固い体皮が砕け散る。
爆風を受けた間鎚の体が右方向へと大きく吹っ飛んだ。




343 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:33:00.87 ID:1rN3fMDD [30/41回発言]
 

344 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:33:25.04 ID:AcxIdNnf [38/38回発言]
、

345 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:33:39.91 ID:hZ7/7m1v [42/56回発言]

エネルギーの通り道に配置していた三日月は、全て砕けて消え去っている。
間鎚のエネルギー流を遮る物は、もう何もない。
にもかかわらず、間鎚の周囲に結界が復活する気配はなかった。
間鎚の持つ唯一の瞳には光が無く、そこから生気を感じとることはできなくない。
間鎚は、その活動を完全に停止させたのだ。


「やったな、レイラ」

「やったわね、アル」


二人はお互いを讃えあう。
二人が出会ったのは、ほんの数十分前だ。
だが、その短い時間の中で、二人の信頼は確かな物へと変わっていた。




346 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:34:17.16 ID:qb1TAXWt [61/76回発言]
 

347 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:34:18.71 ID:1rN3fMDD [31/41回発言]
 

348 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:34:29.91 ID:qb1TAXWt [62/76回発言]
  

349 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:34:47.20 ID:hZ7/7m1v [43/56回発言]





◆ ◆ ◆




レイラとアル。
二人が出会ったのはつい数十分前。
そのファーストコンタクトは声だけのやり取りであった。
レイラがルシオラと交戦していた最中、茂みの中を疾走していた時の事である。


『おい、聞こえるか?』

(……何?)


レイラに声が届く。
しかしそれは聴覚から入ってくるものではなかった。
頭の中に直接響くような、不思議な感覚だ。


『喋らなくて良い。頭で思うだけで君の思考は僕に届く』

(……何者なの?)


レイラはこの声を怪しんだ。
今戦闘している女性の声ではないが、敵の罠の可能性もある。
一体どういうつもりでこのような事をしているのか。


『僕の名はアル・ボーエン。決して君の敵ではない。今君が戦っている女を倒す手助けをしてやる』


アルと名乗る声は偉そうなもの言いで協力を申し出ている。


(信用できないわね)

『……ふん、これが罠だと? 君の攻撃はあいつにちっとも効いていない。今の状況は君が圧倒的に不利だ。
 そんな君に罠を仕掛ける意味があると思うか? そんなものがなくとも、君の負けは確定している』




350 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:35:02.97 ID:1rN3fMDD [32/41回発言]
 

351 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:35:27.90 ID:qb1TAXWt [63/76回発言]
  

352 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:35:40.58 ID:qb1TAXWt [64/76回発言]
 

353 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:35:43.38 ID:1rN3fMDD [33/41回発言]
 

354 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:35:57.97 ID:hZ7/7m1v [44/56回発言]


この言葉に、レイラは少しばかりの怒りを覚えた。
だが、この指摘は事実だ。
あの敵を倒す手段は自分には乏しく、相手の攻撃を防ぐ手段も植物に身を隠しながら移動するしかない。
レイラは怒りを抑えると、アルと名乗る声の主へ問いかける。


(あなたの目的は?)

『さっきも言ったが、僕は君の手助けをしたいだけだ。あの女は、この会場内で他の者達を殺し回るつもりだ。
 そんな危険人物を放っておくつもりはない。君は、パートナーが居ないせいで本来の力が出せないんだろう?
 僕がパートナーになってやる。信用して欲しい』

(何故パートナーの事を知ってるの!?)

『……気付いているとは思うが、僕はこの通り他人の考えを読むことができる。悪いが、戦闘中の君の思考を読ませてもらった。
 君が危険人物かどうかを見定める必要があったのでね。……その事は謝罪しよう』


思考を読む。
正直、良い気持ちはしない行為だ。
だが、今は殺し合いという非常事態である。
相手を見極めるには必要な事だろう。

それに、とレイラは思う。
心を伝える副作用か、それともうっかりしていたのか、今の謝罪の言葉からは、言葉と共に本当に悪かったという相手の気持ちも一緒に伝わってきた。
偽装した気持ちをわざと送って来た可能性もあるが、自分だけではこの状況を打破することができないのは事実だ。
ならば、この人物を信用しよう。
今感じ取った気持ちも、きっと本物だろう。
この人物を信用してさらに不利な状況になったとしても、その時はその時である。




355 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:36:34.34 ID:qb1TAXWt [65/76回発言]
 

356 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:36:56.79 ID:1rN3fMDD [34/41回発言]
 

357 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:37:01.36 ID:hZ7/7m1v [45/56回発言]


(……わかったわ。協力をお願いできるかしら?)

『任せておけ。この今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンが必ず君に勝利をもたらして見せよう』


この尊大で自信たっぷりなアルの態度に、どことなく子供っぽいところがあるな、とレイラは思った。
その思考を読んだのか、アルが怒声を飛ばしてくる。


『僕が子供っぽいだと!? 僕は事実を述べているだけだ! ふざけたことを思うな!』

(ふふ、むきになる所がますます子供っぽいわね)

『貴様は………ふん! まあいい。すぐにその考えを改めることになるさ。良いか、今から僕の考えた作戦を伝える。決して聴き漏らすなよ!』


アルの伝えてきた作戦は次の通りだ。
アルは支給品である通信鬼という謎の生命体をレイラの所まで飛ばしている。
その生命体は通信機と同じ役割をするので、それを使って、言葉による交信をしていると敵に誤認させる。
そうして嘘の指示を通信鬼から発し、敵がそれに釣られたところでアルの居る土手まで跳躍し、魔本をアルまで投げ飛ばす。
若干の隙は作れるとはいえ、気付いた敵はすぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。
だが、フルパワーで術を発動させれば敵の攻撃は防ぎきれるとレイラは確信していた。
説明書の通りならば、アルは魔本を読めるはずである。
魔本を読んでもらえば、本来の力を発揮できる。
一種の賭けではあったが、それしか道はない。

こうして作戦は実行され、敵はアルの思い描いた通りの動きをし、更に思考を読むことで幻影に気付くこともできたのだった。




358 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:38:04.88 ID:1rN3fMDD [35/41回発言]
 

359 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:38:08.72 ID:hZ7/7m1v [46/56回発言]





◆ ◆ ◆





ミベルナ・マ・ミグロンの三日月はまだ十数個残っている。
だが、敵も居なくなった以上、心の力を出し続けるわけにはいかない。
術を解除すると、三日月達は静かに消えていった。


「アル、これからどうするつもりなの?」

「まずは現状の把握だな。自分達の状態と支給品の確認。そしてこれからの行動をここで決める。君にもいくつか訊きたい事があるしな」

「心を読めばわかることじゃない?」

「馬鹿を言うな。君は敵ではない。他人に心を読まれて良い気はしないだろう。僕はそこまで傲慢じゃない」

「……ふふ。優しいのね、あなた」

「なっ!? くだらない事を言っている暇があったら早く支給品とその説明書を出せ! 時間が惜しい!」

「はいはい」


二人はお互いの支給品を確認し合った。
レイラの支給品は三つ。
一つ目はレイラの魔本だ。
青紫色の装丁で、中の呪文は誰でも読めるようになっている。
自分で読めば威力が落ちるが、他人に読んでもらえば本来の威力での術の行使が可能となる。
レイラが術を発動させるには欠かせない品である。

二つ目の支給品は綺麗な柄の風呂敷だ。
説明書には普通の風呂敷と書かれている。
参加名簿にある桐雨刀也の物らしい。

三つめの支給品は、レイラの右手首にある金属製のブレスレットだ。
名は輪廻。
使用者の肉体年齢を操作する能力を持つ。


「私は、これを使ったのね……」


レイラは戦闘中にルシオラから発せられた言葉を思い出す。
『それがあなたの本当の姿ってわけね!』。
この言葉は、自分が姿を変えた事を言っているのだとわかった。
今一判然としないが、確かに輪廻を使った……ような気がする。
記憶が曖昧になっており、はっきりとしない。




360 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:39:10.46 ID:1rN3fMDD [36/41回発言]
 

361 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:39:18.03 ID:hZ7/7m1v [47/56回発言]


「ああ、僕が最初に見た時の君は少女の姿をしていた。それを使用した時の思考は読んでいなかったが、おそらくあのままでは勝てないと判断したんだろう」

「そう……」


輪廻発動の副作用は、使用者の記憶を奪う事だ。
ここに来る以前の記憶がなくなっていることからも、自分が輪廻を使用した事は確実だろう。
だが、それでもレイラは今の年齢が本当の自分だと思えてならなかった。
使用時の年齢が本来の年齢であると錯覚させる、輪廻のもう一つの副作用のせいだ。


「どうする? それを破壊すれば元の記憶を取り戻すこともできるが……」

「いいえ、結構よ。幼い私では、アルに本を読んでもらったとしても、さっきの敵には勝てそうにないもの。このままで問題ないわ」

「そうか……。まあ、君の仲間の名前は僕が覚えている。仲間を敵と思い攻撃するような事態にはならないから、その点は安心したまえ」


レイラは自分のリュックから取り出した名簿に目を向ける。
そこには四名の名前に印が付けられていた。
ガッシュ・ベル。
高嶺清麿。
ナゾナゾ博士。
パルコ・フォルゴレ。

この四人は大切な仲間であると、自分の字で名簿に書かれていた。
顔は、よく思い出せない。
どのような人物かは見当もつかない。
だが、懐かしい響きがこれらの名前にはあった。


「この、ゼオン・ベルという名前は、私の仲間ではないのね?」

「ああ、君の思考でも、この人物はガッシュの親類かただの偶然だと判断されていた」


ゼオン・ベル。
ガッシュと同じ性を持つ、参加者の一人である。
レイラの名簿には『ガッシュの兄弟?』、と疑問符が書かれている。




362 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:40:11.14 ID:1rN3fMDD [37/41回発言]
 

363 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:40:21.84 ID:hZ7/7m1v [48/56回発言]


「さて、次は僕の支給品だな」


そう言うと、アルは自分の支給品を取り出し始めた。
アルに支給された品は三つ。

一つ目の支給品は通信鬼。
二体で一つの支給品らしかった。
黒い小さな羽が生えているが、どういう原理か羽を動かさずに浮いており、命令すれば自力で移動する。
生物のようではあるが、音を送受信する部分は機械的だ。
通信可能な範囲は会場全域とあった。
レイラに差し向けた通信鬼は、レイラが跳んだ時に回収してもらっている。

二つ目の支給品は心眼。
指輪の形をしており、これを嵌めた者にテレパシー能力を授ける道具だ。
声による伝達を伴わずに他者との意思の疎通が可能となるばかりか、相手の意思を無視して思考を読むこともできる。
但し制限がかけられているらしく、一度見た相手でなければ対象を捕捉することはできず、一度に捕捉できる人数も一人までだ。
効果範囲も半径百メートル圏内となっている。

三つ目の支給品はノートパソコン。
一見ただのノートパソコンに見えたが、初め見た時アルは驚いた。
市場に出回っているノートパソコンよりも薄い作りをしていたのだ。
それでいて起動も早く、更に性能まで高かった。
これが実現するには少なくとも数年の時間を要するはずだが、エグリゴリの技術ならばこれを作るのも可能だろう。

だが、アルは別の可能性を考えていた。
もしかしたらこれは本当に数年先のものではないだろうか、と。
まず、最初に集められた時からおかしかったのだ。
アリスが消滅し、ARMSの力を失ったはずの高槻が、何のためらいもなくARMSを使用していた。
キース・ホワイトにその身を奪われたはずのキース・ブラックが復活し、高槻の攻撃により再びキース・ホワイトが目覚めた。
名簿には死亡したはずのシルバーとグリーン、そしてユーゴーの名前が載っている。

初め見た時は何かの冗談か敵の罠かと思ったが、このノートパソコンを見て一つの可能性を思いつく。




364 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:41:28.98 ID:hZ7/7m1v [49/56回発言]


「レイラ、今は何年だかわかるか?」

「ごめんなさい、それは覚えていないわ。……何か重要なこと?」

「いや、ただ確認しただけだ。気にしないでくれ」


魔物や妖怪といったものは、この目で見た以上認める他ない。
いつかはその謎を解き明かして見せよう。
だが、今立てた仮説は推論だ。
確証があるわけではない。
そんな不確かなものを、天才の口から話すわけにはいかないのだ。
『時間を越えてここに連れてこられている』などという考え、馬鹿げているにも程がある。

今は目の前にある明確な事実と向き合うべきだ。
アルが起動させたノートパソコンのデスクトップには、ファイルが一つあるだけだった。
ファイル名は『program battle royale』。
名前からして、この殺し合いの事を指していると見て間違いない。

このファイルの中には何か重要な手掛かりがあるはずだ。
しかし、このファイルにはロックがかけられており、パスワードを入力しなければ開けないようになっている。
このパソコンに入っているものといえば、このファイル一つだけだ。
今のところ、手掛かりと呼べるものはこれしかない。




365 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:41:54.44 ID:8q3Mkkzc [7/8回発言]
                      

366 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:42:11.07 ID:1rN3fMDD [38/41回発言]
 

367 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:42:32.13 ID:qb1TAXWt [66/76回発言]
  

368 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:42:32.86 ID:hZ7/7m1v [50/56回発言]


「ふん! 僕にこのロックを解いてみせろということか。良いだろう。こんなもの、超天才である僕の前では障害にすらならない事を思い知らせてやる!!」


アルは素早くキーボードを叩き、思い当たる言葉を片っ端から入力していく。


『evolution(進化)』。

ブイーッ!

『human(人間)』。

ブイーッ!

『time(時間)』。

ブイーッ!

『life(生命)』。

ブイーッ!



『egrigori(エグリゴリ)』、『arms(アームズ)』、『alice(アリス)』。

ブイーッ!

『不思議の国のアリスの登場人物の名前』、『キースシリーズの名前』、『(希望)』、『(絶望)』。

ブイイーッ!!




369 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:42:43.93 ID:qb1TAXWt [67/76回発言]
 

370 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:43:42.99 ID:hZ7/7m1v [51/56回発言]

「………」


悩んでいるアルの横からキーボードに手を伸ばし、レイラは思いついた文字をかたかたと入力した。


『al bowen is a super genius(アル・ボーエンは超天才)』。

ブイイーッ!! ブイイーッ!! ブイイーッ!!

ノートパソコンからは、間違いを告げるブザー音がけたたましく鳴り響いた。


「ええい! うるさいっ!! 何をしているんだレイラ!! 僕を馬鹿にしているのか!!!」

「ごめんなさい。つい……」

「何がついだ! まったく! ………それにしてもなんなんだ? まさか適当な文字列でもないだろう。
 おそらくはこのプログラムの核心に触れるキーワードのはずだが……」


考えろ。
このプログラムを計画した奴は、何が目的でこの殺し合いを計画した?
これを計画したのはキース・ブラックか? キース・ホワイトか?
それとも、あの場にあった金属生命体、アザゼルの意思か?


「くそっ! 駄目だ、情報が少なすぎる」




371 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:43:44.63 ID:1rN3fMDD [39/41回発言]
 

372 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:44:08.33 ID:8q3Mkkzc [8/8回発言]
                    

373 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:44:52.50 ID:hZ7/7m1v [52/56回発言]


ある程度の情報を持っていて、話し合いができそうな奴と言えばバイオレットが思い当たるが、素直に質問に応じてくれるかはわからない。
とにかく情報だ。
情報を集めなければ先に進めない。
まずは地図にある施設を回ってみる必要があるだろう。
わざわざ記載されているのだ、手掛かりがある可能性がある。


「よし、まずは施設を回ろう。施設には人が集まる。つまりは情報も集まるということだ。
 僕達の仲間についても、何かしらわかることがあるだろう。レイラ、一緒に来てくれるか?」

「ええ。私達はもうパートナーじゃない。離れる理由がないわ」

「……今更なんだが、僕を疑ったりはしないのか?」

「……あなたは悪い人じゃないわ。それに、自分が危険に晒される可能性があったのに、私を助けてくれたじゃない。あなたのことは信用してるわよ」

「……ふん! あれは勝てる算段があったからだ! 君が勝てないと判断していればさっさと逃げていたさ!」

「あら、そうなの?」


レイラはくすりと笑った。
アルのその言葉が、照れ隠しからくるものなのだとわかったいるからだ。
尊大な態度をとっているが、根は優しい子だ。
私が負けると判断したとしても、きっと、その手を差し伸べてくれていたことだろう。


「何を笑っているんだ! ほら、さっさと行くぞ!」

「ふふ。ええ、行きましょうか」


レイラとアルは、横に並んで歩き始めた。

レイラは覚えていないが、今の二人の姿はレイラが以前に組んでいた『パートナー』の姿と似ているものだった。
大人と子供。『アル』という名前。
見た目は逆になっているが、二人の姿がしっくりくるのは何故だろうか。
二人が出会えた事も、この短時間で信頼を築けた事も、偶然ではないのかもしれない。


二人のパートナーは歩き出す。
大切な仲間達を守るために、歩き出す。




374 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:45:33.97 ID:1rN3fMDD [40/41回発言]
 

375 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:45:56.24 ID:hZ7/7m1v [53/56回発言]


【D-2 植物園・一日目 深夜】

【レイラ】
[時間軸]:魔本が燃え尽きた直後。
[状態]:打撲と傷(魔物なのでしばらくすれば治る)。中程度の疲労。心の力(小)。
[装備]:輪廻@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、風呂敷@金剛番長、 通信鬼@GS美神極楽大作戦。
[基本方針]:仲間達を守る。殺し合いに乗っている者は倒す。
※輪廻によりこの会場に来る以前の記憶が朧気になっています。
※ガッシュ達が仲間であることは理解しています。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物として認識しています。
※アルと情報交換をしました。


【アル・ボーエン】
[時間軸]:第四部「アリス」編終了以降。
[状態]:健康。心の力(少)。
[装備]:レイラの魔本@金色のガッシュ!!、心眼@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、通信鬼@GS美神極楽大作戦、ノートパソコン@現実。
[基本方針]:施設を巡り情報を集める。殺し合いに乗っている者は倒す。
※ルシオラの思考をある程度まで読んでいます。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物と認識しています。
※レイラと情報交換をしました。



376 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:46:53.67 ID:1rN3fMDD [41/41回発言]
 

377 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:47:13.35 ID:hZ7/7m1v [54/56回発言]
【支給品紹介】

【レイラの魔本@金色のガッシュ!!】
青紫色の装丁の魔本。
誰でも読むことができる。
記されている術は『ミグロン』、『ミシルド』、『オル・ミグルガ』、『ラージア・ミグセン』、『ミベルナ・マ・ミグロン』の五つ。



【輪廻@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
ブレスレットの形をしている。
使用者の肉体年齢を自在に操作する能力を持つ。
副作用として、操作された年齢を自分の本来の年齢と錯覚し、使用以前の年齢に関する記憶が失われる。
自分の状況や知識はまでは失われない。
制限により、バトルロワイアル開始以降の記憶は、年齢に関する事以外消えることはない。
他者に使用されたり、輪廻が破壊された場合は記憶と共に元の肉体年齢に戻る。


【心眼@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
指輪の形をしている。
相手の思考を読み取る力を持つ。
逆に自分の思考を相手に伝えることも可能。
制限により、一度視認した相手でなければ対象にできず、半径百メートル以内でなければ捕捉できない。



【通信鬼@GS美神極楽大作戦!!】
魔界に生息する鬼の一種。
能力も大きさもまんま通信機。
同種の仲間同士ならば、例え異界であっても通信が可能。
自力で浮かんでいるので通信しながら両手が使える。


【竜の牙@GS美神極楽大作戦!!】
使用者の霊力によって発動する神の剣。
使用していない時は勾玉の状態。
使用者の意思に応じて変幻自在に姿を変える。




378 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:48:26.64 ID:hZ7/7m1v [55/56回発言]
【間鎚@うしおととら】
結界自在妖。
二百七十体の妖怪を封じる程の結界を張ったり、結界を破る力を持つ。
空も飛べる。



【風呂敷@金剛番長】
桐雨刀也(居合番長)の持っている風呂敷。
綺麗な柄が特徴の普通の風呂敷。



【空白の才の木札@植木の法則】
何も書かれていない、空白の才の札の部分。
付属の筆で才能を書き込めば、書いた通りの才能を得る事ができる。
筆の部分が別にあるらしい。



【ノートパソコン@現実】
薄型のノートパソコン。
中には『program battle royale』と書かれたファイルが一つだけあるのみ。
ファイルにはロックがかけられており、正しいパスワードを入力しなければ開くことはできない。





【備考】
B-2・植物園内が大幅に破壊されました。
壁も一部破壊されています。
天上のガラスの一部が割れています。
園内に間鎚が放置されています。




379 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:50:37.88 ID:qb1TAXWt [68/76回発言]
 

380 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:50:51.22 ID:qb1TAXWt [69/76回発言]
  

381 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:51:10.79 ID:qb1TAXWt [70/76回発言]
  

382 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:51:38.50 ID:qb1TAXWt [71/76回発言]
  

383 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:51:50.54 ID:qb1TAXWt [72/76回発言]
  

384 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:52:12.36 ID:qb1TAXWt [73/76回発言]
 

385 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:52:25.35 ID:qb1TAXWt [74/76回発言]
   

386 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:52:35.17 ID:qb1TAXWt [75/76回発言]
    

387 : 守りたいもの ◇AJINORI1nM氏代理 : 2011/04/14(木) 22:52:37.65 ID:hZ7/7m1v [56/56回発言]


103 :守りたいもの ◆AJINORI1nM:2011/04/14(木) 01:38:45 ID:???
これで投下は終了です
タイトルですが、守りたいものに変更します




代理投下完了です
多数の支援ありがとうございました

388 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:53:14.11 ID:qb1TAXWt [76/76回発言]
 

389 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/14(木) 22:56:33.07 ID:EoNlsk+k [1/1回発言]
なげえな
やたら伸びてるから何事かと思ったわ
序盤はもっとさらっとしてていいと思うけどな
まあとりあえず投下乙

390 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/15(金) 13:23:31.75 ID:6iDef96L [1/1回発言]
支援のつもりなんだろうけどやりすぎは嵐に見えるぞ
少し落ち着け

◆AJINORI1nM氏と代理投下してくれた人、共に乙でした
横島に惚れる前のルシオラに竜の牙とかあっぶねぇなw
けどなんとか撃退できて良かった
アルの頭脳は首輪解除とか対主催者には欠かせないから、レイラには頑張ってもらいたい

391 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 02:31:55.97 ID:IiS1NEbR [1/11回発言]
投下乙ー
ルシオラこの時期かー。アシュ様が気になるところだぜ
アルレイラ組いいね。いちいち素直になれないアルがおもしろい
キーワードを入れるたびにブイーッってなってるのにはわろたw

392 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 06:48:32.03 ID:Gafa8VZP [1/1回発言]
横島に惚れる前からの参戦って…
そんな時期から出して何が面白いって言うんだ
キャラの最大の持ち味完全に殺すことになるじゃん
何考えてるんだろう

393 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 10:55:20.30 ID:A/nQLdQw [1/1回発言]
こんな長々と支援せんでも代理投下を交代でやればいいだけだろうに
200レス以上消費とかもうアホかと

394 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 12:06:05.15 ID:rf92TdpO [1/2回発言]
まぁ別に怒るような事じゃないと思うけど、wiki収録する人が面倒そうだな
確か自動的に余計なの削ってくれるツールもあったと思うが…余白とか拘りがあるなら作者の人が自分で収録したほうがいいかも

というか、投下する時も何か演出上の都合があるんじゃなければ、1レスに60行詰めたほうがいいんじゃない?
専ブラ使うと投下しやすいよ
しかし登場話から二分割級とか前代未聞じゃないか?
見たことないぞ

395 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 12:30:42.63 ID:rf92TdpO [2/2回発言]
と思ったらうしとらの奴も2分割か

396 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:01:39.77 ID:/5CzbvpQ [1/10回発言]
投下おつです
力作、存分に堪能させていただきました
ルシオラはこの時期かー、横島と出会った時が楽しみだw
序盤の圧倒的な実力から来る絶望感もすごかったです
けど、アルとレイラのコンビはいいなぁ
天才だけどかなり子どもっぽい子供と、大人びてる子供の二人は見てて気持ちが良かった
なによりもアルに心を読める道具を支給したのがニクイ演出ですね、おおぅってなりました

どちらが勝つか分からない手に汗握るバトルも面白かったです
支給品、能力、知力の全てを使った戦いには脱帽です
改めて乙でした! あなたの次回作に期待してます

397 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/16(土) 22:03:04.50 ID:/5CzbvpQ [2/10回発言]
             /)
           ///)
          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /



398 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:04:43.55 ID:IiS1NEbR [2/11回発言]
投下します。

399 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:05:41.31 ID:/5CzbvpQ [3/10回発言]
支援

400 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:06:03.13 ID:IiS1NEbR [3/11回発言]
 ◇ ◇ ◇


 僕だって人間じゃない、だなんて。
 そんなこと、口に出すことはできなかった。


 ◇ ◇ ◇


「ほんっと悪いねー、シルベストリのじーちゃん!」

 満面の笑みを浮かべながら、小金井薫は無造作に立てた髪をかき上げる。
 殺し合いの舞台に転送されてからしばらく一人で放浪し続けていた彼は、ようやく他の参加者に出会えたというだけで表情が明るくなった。
 そのシルベストリと名乗った老人がいきなり仕掛けてこなかった時点で、頬が緩んでしまって――
 「剣を持っているか」と訊かれたころには、白い歯を見せながら支給されていた菊一文字という名の日本刀を取り出していた。
 とはいえさすがに無償で渡すのはまずいかと躊躇しかけた小金井に、シルベストリは必要がないらしい支給品を三つ見せた。
 ならばすでに他の武器がある以上は問題ないかと、小金井は一つを選んでから菊一文字を手渡した。

「いっやー、しっかし風子ねーちゃんもダメだねー!
 自分の武器取られちゃうなんて、ちょっと油断しすぎとしか言えないな!
 あはは! ちょっとこれはないよねー! さすがに信じられないっていうか!
 これを配られたのがじーちゃんで、ちょーど近くを通ったのが俺だったからよかったけどさぁー!」

 自分も愛用の魔道具を奪われてしまっていることを棚に上げて、小金井はケラケラと笑う。
 シルベストリから渡された籠手『風神』を持つ両手を、何度も意味なく上下させながら眺めている。
 小柄な体系の上に、話しながらいちいち大げさに身振り手振りを行うので、実年齢の十四歳よりも幼く見えるだろう。

 唐突に、そんな小金井の子どもじみた動作が止まる。
 背後に跳びながら下ろしたリュックサックに風神を仕舞い込み、同時に野球ボール大の球体を二つ取り出して片方をポケットに突っ込む。
 着地と同時にリュックサックを背負い直して、先ほどまで自分がいた場所を見据える。
 薄ら笑いの掻き消えた真剣な表情で、自分の首があった箇所にある――刃を。
 月光を照り返して鈍く光る日本刀は、まさしく小金井に支給された菊一文字。
 構えるのは、黒いハットにコートを纏った丸眼鏡の老人――シルベストリ。

「じーちゃん……悪いけど、俺けっこー強いよ。いまからでもやめるなら――」

 提案を突き放すかのように、シルベストリは疾風となった。
 マフラーをなびかせながら接近してくる相手にも動じず、小金井は掴んでいた球に手を突っ込む。
 ただの黒いボールに見えるが、物体の質量やサイズを無視して中に収納することのできる魔道具『蔵王』だ。
 内部に収納されていた巨大な鎌を取り出して、首を刈り取らんとしてきた菊一文字を受ける。
 空になった蔵王は、地面に落としてしまう。

「くっ!?」

 二つの刃が拮抗していた時間は、コンマ一秒にも満たなかった。
 接触した途端に、鎌が砕け散ってしまったのだ。
 一つ一つが凶器である欠片が降り注ぐも、シルベストリは臆することなく返しの二閃目を放つ。
 小金井は残った柄を放り投げて、もう一つの蔵王から中身を取り出す。
 出現したのは、やはり鎌。
 それも、先ほどとまったく変わらない外見をしている。
 相手が得物を構えようと、シルベストリの剣速は緩まらない。
 先ほどと同じことがまた起きるだけ、とでも思っているのだろう。

401 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:06:51.90 ID:IiS1NEbR [4/11回発言]

「――なんて、ね」

 響いたのは、物体が弾ける破砕音ではない。
 刃と刃が接触した鈍い音ののち、金属同士が擦れあう不快な音。
 目を見張ったシルベストリは、反応が遅れてしまう。
 その隙に小金井は、左足に体重を乗せて菊一文字の柄を蹴りあげる。
 想定していなかった方向からの衝撃に、刀は手放されてしまい宙を舞う。

「同じもんってワケじゃあないんだな、それがっ。
 さっきのは劣化版コピーで……こっちが正真正銘本家本元オリジナル!」

 わざわざ説明しながら、小金井は『エレザールの鎌』を振るう。
 相手をおちょくっているのではなく、遊ぶように戦うのが小金井薫の戦闘スタイルなのだ。
 小動物のようにすばしっこい動きで背後に回り、鎌でシルベストリの足を切り裂く。
 斬り落としてしまわぬように、腱だけを斬った。
 状況が状況だ。
 本来は殺し合いを肯定するような性格でないのに、このような行動を取ってしまった可能性もある。
 かつて兄と慕った男や、友人の中性的な顔をした剣士には「甘い」と言われてしまいそうだが、だとしても。
 一度くらいは話を聞こうと、小金井は考えたのだ。

「……なっ!?」

 一度倒れこんだシルベストリが勢いよく立ち上がって、小金井を組み伏せる。
 突然の衝撃に、持ちなれていない鎌を手放してしまう。
 腱を斬ったというのに、なぜ何もなかったかのように動けるのか。
 そんな小金井の疑問は、すぐに解消されることになる。
 仰向けの小金井を右肘だけで抑え、シルベストリは左手で――右掌から先を外したのだ。
 いや、違う。
 掌、ではない。
 半壊してしまっているが、それは掌が柄となっている――奇妙な剣。
 それを見て、小金井は察した。
 シルベストリはただの老人ではなく機械なのだと。
 かつてサイボーグと戦ったことがあったので、すんなりと理解することができた。
 にもかかわらず、シルベストリに対して警戒していなかったのには理由がある。
 小金井の知るサイボーグは一見しただけで機械であると分かったが、シルベストリは違ったのだ。
 まるで、ただの人間のような容姿と雰囲気をしていた。
 身のこなしこそ人間の域を飛び越えてしまっていたが、化物じみた強さの強者を小金井は何人も知っていた。
 知識があったことが災いし、小金井はシルベストリがサイボーグであるなどと疑いもしなかったのだ。

「君のような幼すぎる人間には、本来答えることなどできないだろうが……
 この一人しか生き残ることができぬ状況で、他者を気遣う君にならば尋ねてもよいだろう」

 小金井の首筋に刃を添えながら、シルベストリは問いかけた。
 その内容に小金井はしばし困惑してから、ゆっくりと答える。
 一人きりだったとき、誰も自分に優しさを向けてくれないのならばと命を絶とうとした過去を持つからこそ。
 小金井は、ある解答を見出した。
 その言葉にさしたる反応を返すこともなく、シルベストリは無表情で告げる。

「さらばだ」

 首筋に僅かな刺激が走り、小金井は目を閉じる。
 仲間たちと合流することもなく、こんなにもあっさり自分が死んでしまうとは思っていなかった。
 殺し合いに巻き込まれる前にさらわれた少女を救うどころか、この場から脱出することさえできない。
 ただただ悔しくて、顎に力を籠める。
 軋む歯の根元から、鉄のような味がしみ出してくる。
 しかし待てども待てども、小金井の思考が止まってしまうことはなかった。
 首に当たっていた刃の冷たさも、自分を抑えつける力も、気付けばなくなっている。
 少しずつ目を開けると、心配そうに覗き込む銀髪銀眼の女性が小金井の視界に入った。

402 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:07:00.55 ID:/5CzbvpQ [4/10回発言]
  

403 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:07:53.50 ID:/5CzbvpQ [5/10回発言]
  

404 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:08:37.15 ID:IiS1NEbR [5/11回発言]

「大丈夫でしたか!? 自動人形(オートマータ)……ッ!」
「また人形破壊者(しろがね)か」

 小金井が動いたことに安堵の溜息を吐いてから、女性は踵を返す。
 彼女の視線の先では、シルベストリが回収したらしい菊一文字を構えて腰を低く落としていた。

「マリオネットがないようだが」
「だとしても、自動人形を放っておくことなどできるものか!」

 力強く言い放って、女性は顔だけを後ろに向ける。

「ロベルト、少年はあなたに任せます!」
「いや、僕が出よう」

 背後からの声を捉え、ようやく小金井は女性の同行者らしい金髪の少年の存在に気付く。
 ここまで接近されていたというのに認識できていなかった事実に、小金井は息を呑んだ。
 それほどまでに焦ってしまっていたのか。
 はたまた、ロベルトと呼ばれた少年が気配を完全に絶っていたのか。
 後者ではないように、思えた。
 ゆっくりと前に出るロベルトは、外見的には小金井と年齢がさして変わらないようだったが――
 ただ歩いているだけだというのに、そこにいるだけだというのに、奇妙な違和感を放っていた。
 サイボーグであったシルベストリよりも、銀髪銀眼にチャイナドレスというなかなかお目にかかれない姿の女性よりも、どこか浮いている。

「ですが、自動人形はっ!」
「道中で、一度聞かせてもらったよ。あれが『最古の四人』かい?」
「違いますが、それでも人間を超える力を持つことに変わりはありま――」
「『百鬼夜行(ピック)』」

 会話の途中で何らかを呟くと、ロベルトの右手に巨大な杭が出現した。
 その杭は凄まじい速度で伸びていき、女性のすぐ横を通って地面に突き刺さる。
 小金井がそちらに視線を飛ばすと、攻撃を仕掛けようとしていたらしいシルベストリが横に跳びギリギリのところで回避していた。

「マリオネットとやらはないけれど、僕は武器がなんて必要ないからね。
 戦うことができるものが残ることに、なにかおかしいことがあるのかい?」
「で、ですが――」
「それに、その少年を戦闘に巻き込んでしまうつもりかい?」

 反論しようとした女性の言葉を遮って、ロベルトは言い切る。
 しろがねと呼ばれた女性はしばし悩んだのち、深く頭を下げてから小金井を抱え上げた。

「すみません、ロベルト」
「すぐ南に行けばビジネスホテルがある。適当な部屋にいてくれればいい」

 再びお辞儀をして、しろがねは地面を蹴る。
 小金井はなにも言わずに、抱えられたままで去っていく。
 女性に抱かれたままだなんて恥ずかしかったし、おそらくロベルトたちが考えているような無力な子どもではないけれど。
 それでも、おとなしく離れていく。
 ロベルトがなぜしろがねを遠ざけたのか、理解できたような気がしたから。
 たぶん巻き込んでしまいたくなかったのだろう、と。
 先日すぐ近くにいた気に入っている少女をさらわれ、自分たちの戦いに巻き込んでしまったから。
 小金井は、そう考えたのだ。
 そのように思ってしまった以上は、しろがねと呼ばれた女性を戦場に残すワケにはいかない。
 ゆえにとても自分が情けなくなりながらも、小金井は無力な少年を演じることにした。

405 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:08:50.95 ID:/5CzbvpQ [6/10回発言]
  

406 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:10:02.36 ID:IiS1NEbR [6/11回発言]


 ◇ ◇ ◇


「わざわざ待ってくれたのかい? 話に聞いたよりも紳士だね、自動人形……ええと」
「シルベストリだ」

 しろがねの姿が完全に見えなくなるまで、刀を抜こうとしなかった。
 そのことにロベルトが疑問を抱いたと分かっているのか、シルベストリは口を開く。

「ただの人形破壊者(しろがね)と人間だったのなら、すみやかに殺害するつもりだったのだがな。
 あれほどの能力を持ちながら他者を庇って一人残る……そんな人間じみた不可解なことをする君ならば答えられるかもしれないと思ってな」

 ふうんと相槌を打ってから、ロベルトは返す。

「しろがね、ね。
 なぜエレオノールという名があるというのにそう名乗るのかは不思議に思っていたが、人形が彼女の名を知っているのかも気がかりだな」
「しろがね、とは個人の名ではない」
「……どういうことだ」
「自動人形を破壊する。そのプログラムにだけ従い続けている『人形殺しの人形』、それを総称して人形破壊者と呼ぶ」
「人形、か。君は勘違いしているよ、シルベストリ」

 訝しむシルベストリの前で、ロベルトの右腕を巨大な砲台が覆う。
 天界人の持つ能力『神器』が一つ、『鉄(くろがね)』である。
 発砲される前に仕掛けようとしたらしく、シルベストリは地面を蹴るも――ほんの数センチくらいしか跳躍できずに終わる。
 原因は、彼の左足に付着している赤いシャボン玉だ。
 そのシャボン玉は『触れているものの重力を変える』ことができる。赤いものは接触している物体を重く、青いものは逆に軽くする。
 シルベストリがしろがねが遠ざかるのを待っているうちに、ロベルトはすでに仕掛けていたのだ。
 ゆっくりと余裕を持って照準を合わせてから、鉄の弾丸を放つ。

「不可解なことをしたと言ったが、それは僕じゃない。
 少年を守ろうとしたのは、君が人形と言ったしろがねさんのほうだよ」

 吸い込まれてしまいそうな闇色の弾丸が、ロベルトの右腕から生える砲台から放たれる。
 接触と同時にシャボン玉が弾けて、シルベストリの重量が元に戻った。
 弾丸の速度にあっさりと吹き飛ばされて、民家へと突っ込んでしまう。

「しかし『人間じみている』ね……
 植木くんや佐野くんならば同意するんだろうが、僕にはむしろ人間らしくないと思えてしまうな。
 攻撃用の神器を見てもなお恐れることなく、申し訳なさそうに礼を言うなんてね。やはり、彼女は少し不思議だな」

 だからこそ気になっているだけど――と、ロベルトは一人ごちる。
 才賀勝という名の『守るべきお坊ちゃま』以外に、初対面の少年まで助けようとする。
 ロベルトの知る人間ならば、そのような行動は取らない。
 自分の保身だけを考える弱い存在。それこそが人間だと思っていた。
 自分が弱いばっかりに、圧倒的な力を前にすると恐怖で迫害しようとする。それこそが人間の本質のはずだった。
 ゆえに、しろがねの行動が理解できない。
 武器であるらしい操り人形も所持していないというのに、自動人形に組み伏せられている少年を庇って前に出る。
 そんなことをしてしまうのは、ロベルトの知る人間ではない。
 ゆえに、ロベルトは彼女に代わってこの場に残ったのだ。
 人間という種を見極めるにおいて興味深い存在だと考え、ならば人形などに傷付けさせるワケにはいかなかった。

「さて破壊させてもらうよ、人形」

 鉄を発現させたまま、ロベルトは少し前まで民家であった瓦礫の元に向かっていく。
 シルベストリは瓦礫の中心部に埋まりこんでいる。
 大きく損傷してしまっているようではなかったが、足を挟まれてしまっており動くことができないらしかった。
 迫ってくる足音から離れることもできず、ついに巨大な銃口を胸元に当てられてしまう。
 少しも動じた様子を見せずに、シルベストリは静かに口を開いた。

407 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:10:57.27 ID:/5CzbvpQ [7/10回発言]
   

408 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:12:04.65 ID:IiS1NEbR [7/11回発言]

「終わり、か」
「ああ。人形を破壊することに躊躇などしない」
「最期に尋ねたいことがある。この私がかねてより抱え込んできた疑問だ」
「……言ってみろ」
「『人間はなぜ群れるのか』――」


 ◇ ◇ ◇


「大丈夫! もう大丈夫だって! ほんとに! ほんとに気にしないでって!」

 ビジネスホテルの一室にて、小金井薫は声を激しくした。
 首筋の微かな傷痕を消毒して絆創膏を貼ったあと、しろがねは小金井に服を脱ぐようと指示したのだ。
 自動人形に馬乗りになられた衝撃で、血は出ていなくとも傷を負ってしまっているかもしれない。
 その発想自体は非常に真っ当だと思ったが、しかし多少の打撃など受け慣れているのだ。
 放っておいても問題ないと小金井の経験は言っているのだが、無力な少年だと思っているしろがねはなかなか退かない。
 ロベルトの気持ちを思えば『実は何度も死線を掻い潜っています』などと言うこともできず、となれば納得のいく説明もできない。

「そんなに恥ずかしがらなくても――」
「別に、恥ずかしいからじゃないよ!!」

 いや、本当はそうなんだけど。恥ずかしいんだけどさ。
 そんな考えを小金井は口に出したりはしないが、顔が真っ赤になってしまっていれば隠せるものも隠せない。
 ホテルの備品であった救急箱を片手に持ったしろがねに、じりじりと追い詰められていく。
 床に転がっているドアに足を取られて、背後を確認せずに後退していた小金井は倒れこんでしまう。
 どうやら向かい部屋に一度何者かが入室していたようで、その男はドアをぶち破って出たらしかった。
 小金井としろがねがいる部屋には、ドアが二つ転がっていたのだ。
 こんな物が転がっている場所はイヤだと小金井は思ったのだが、しろがねがロベルトが来た際に分かりやすいと主張したので従った。

(誰だよ、前にいたヤツ! ふざけんな! 会ったら文句言ってやる!)

 ――――よもやその『前にいたヤツ』が自分の仲間であるなど、小金井が知るはずもない。

 しろがねが心配そうな顔をした瞬間、足音がホテル内に響いた。
 ゆっくりとだが規則的に、少しずつ近づいてきている。
 小金井は目つきを鋭くして、コンパクトに畳み込んでいたエレザールの鎌を組み立てる。
 もしも殺し合いに乗り気の人間が現れた場合、無力な少年を演じることを諦めてしろがねを守らねばならない。
 そう考えた小金井の視界が捉えたのは、額に包帯を巻いた金髪の少年――ロベルトであった。
 大きく息を吐いて、臨戦態勢を解く。
 再び鎌を畳む小金井の横を通って、しろがねがロベルトの元へと駆け寄る。

「ロベルト、よく無事で……っ」
「あ、ああ…………」

 しろがねがロベルトの手を握って、部屋に引き入れる。
 すぐ近くまで来てようやく、小金井はロベルトが冴えない表情をしていることに気付いた。
 浮かないというか、何かを思い悩んでいるような。
 視線を他人と合わせようともせず、僅かに俯いてどこかを見ているのだ。
 そんな素振りを意に介さず、あるいは気付かずに、しろがねは胸を撫で下ろした様子で告げる。

「おかえりなさい」

 その言葉を受け、ロベルトは戸惑ったように目を丸くした。
 結構な時間そのまま呆然としてから、ぎこちなく笑みを作る。
 そのままゆっくりと口を開いた。

「ただいま」

409 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:12:12.37 ID:/5CzbvpQ [8/10回発言]
  

410 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:13:28.77 ID:/5CzbvpQ [9/10回発言]
  

411 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:13:43.97 ID:IiS1NEbR [8/11回発言]



【E-4 ビジネスホテル/一日目 黎明】

【ロベルト・ハイドン】
[時間軸]:9巻85話『アノン』にてアノンの父親に悩みを打ち明ける寸前。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(確認済、人形はない)
[基本方針]:人間を見極める。ひとまずしろがねと同行し、人が集まりそうな街へ向かう。


【才賀エレオノール】
[時間軸]:28巻『幕間Ⅰ~「帰れない」』にて才賀勝と再開する直前。
[状態]:健康、焦り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、自転車@出典不明、残り支給品0~2(確認済、人形はない)
[基本方針]:とにもかくにもお坊ちゃまを捜索し、発見次第守る。ナルミにも会いたい。
※名簿は『才賀勝』までしか確認していません。


【小金井薫】
[時間軸]:24巻236話『-要塞都市-SODOM』にてSODOMに突入する寸前。
[状態]:首に切り傷(処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、エレザールの鎌@うしおととら、風神@烈火の炎
[基本方針]:仲間たちと合流し、プログラムを破壊する。


 ◇ ◇ ◇


「『人間はなぜ群れるのか』。
 現状、多くの人間が最小限の人間関係さえあれば生きていける。
 なぜ人間たちは友人や集団を求めて、何かに属することを求めるのか。
 その結果として人間同士のいざこざで争いが起こるというのに、どうして群れようとするのか」

「…………」

「君は、分かるのか」

「…………弱いからだ」

「君も、小金井薫という少年と同じことを言うのだな」

「かつての僕は、そう考えていた」

「ならば、いまはどのように――」

「……分からない。僕もまた、その答えを求めている。
 この僕を前に言い切った彼の言葉が正しかったのか、それを知るために」

「その言葉とは、いったい……?」

「僕からは言えない。あれは彼の言葉であって、未だ理解しきれていない僕が軽々しく口にしていいものではない」

「そうか……機能が停止する前に、一度聞きたかったものだな」

412 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/16(土) 22:14:59.72 ID:/5CzbvpQ [10/10回発言]
  

413 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:15:30.35 ID:IiS1NEbR [9/11回発言]

「――植木耕助」

「なに?」

「名簿にも記載されていただろう。植木耕助、それが僕に答えを叩き付けた男の名だ」

「どうして、それを私に言う」

「彼に会い、そして問え。植木くんならば、間違いなく答えられるはずだ」

「私を破壊しないのか」

「僕の目的は人間を見極めることだ。
 人殺しを許さないだとか、そういうことを言うつもりはない」

「……なるほど。君はどこか、私に似ているのだな」

「ただ、一つだけ訊かせてもらう。
 破壊されかけても狼狽えずに疑問の答えを求めるお前が、なぜ参加者を殺そうとしている」

「簡単なことだ。この殺し合いに、造物主様が呼ばれてしまっている」

「造物主……親、か」

「造物主様がいる以上、あの方の優勝をサポートする以外にないのだよ」

「…………子は、親の言うことに従わねばならないのか。
 無条件に信じ込むだけで、過ちである可能性などと考えてはいけないのか……?」

「私は人形だ。君のような人間ならば違うのだろうがな」



【E-4 路上/一日目 黎明】

【シルベストリ】
[時間軸]:本編34巻 勝戦直前
[状態]:健康
[装備]:菊一文字@YAIBA
[道具]:ランダム支給品2(刀剣類なし、確認済み)、基本支給品一式
[基本方針]:フェイスレスの優勝をサポートしつつ、人間が群れる理由を解き明かす。植木耕助に会う。

414 : It's like a 自問自答 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:16:23.28 ID:IiS1NEbR [10/11回発言]



【支給品紹介】


【エレザールの鎌@うしおととら】
小金井薫に支給された。
光覇明宗の技術に西洋魔道を取り入れて作り出された武法具。
使い手の法力を増幅させることで、妖の天敵となる。
コンパクトに収納できるものの展開するとかなり巨大な鎌となるので、使い手を選ぶだろう。


【量産型エレザールの鎌@うしおととら】
小金井薫に支給された。
オリジナルのエレザールの鎌を元に作り出された量産型。
見た目や重さは変わらないが、オリジナルとは比べ物にならないほど法力の増幅量が低く、また脆い。


【菊一文字@YAIBA】
小金井薫に支給された。
織田信長御前試合にて六代目沖田総司が使用していた日本刀。
かなりの業物であるが、雷とか風をぶっぱなすとかそういう能力はない。


【風神@烈火の炎】
シルベストリに支給された。
霧沢風子の持つ魔道具。
風を自在に操り、風を刃にしたり弾丸にすることができる。
意思を持っており、小動物のような姿で具現化することもある。



【備考】
※E-4の民家が瓦礫になりました。
※砕かれた量産型エレザールの鎌@うしおととら、蔵王(空)@烈火の炎が、E-4の路上に転がっています。

415 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/16(土) 22:16:52.74 ID:IiS1NEbR [11/11回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。

416 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/17(日) 05:25:39.94 ID:80YDsHKv [1/1回発言]
投下乙!
ロベルトつえーw さすが能力者では最強なだけある。
今は不安だけど、対主催になってくれれば心強いな。
生き残ったシルベストリはかなり怖いけど、植木も含めて面白くなってきた。

417 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/21(木) 19:53:06.39 ID:4Uc8gyCZ [1/1回発言]
過疎ロワ

418 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/21(木) 23:40:19.90 ID:LNw3ybYU [1/1回発言]
投下乙!
流石チート染みた能力を持つロベルトは強いぜw
この邂逅がシルベストリ、ロベルトに後々どう響いてくるのか楽しみだw
にしても小金井は情けない、でも羨ましいぞw

419 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/25(月) 04:42:43.78 ID:TO89gFOi [1/5回発言]
投下します。

420 : 銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/25(月) 04:44:24.69 ID:TO89gFOi [2/5回発言]
 ◇ ◇ ◇


「戦いの神――『帽子屋(マッドハッター)』のキース・シルバーとして、プログラム・バトルロワイアルの進行を促してくれ」


 ◇ ◇ ◇


 武骨な指につままれて、小さな容器が取り出された。
 ガラス製に見える一方で、また別の素材でできているかのような。
 どうにも得体の知れない、透明なビン。
 そのなかで揺らめくのは、淡くバラ色に輝く液体。
 月や星の光を照り返しているのではなく、液体自身が仄かに発光しているのだ。

 その液体を――見るものが見たならば、こう、呼ぶだろう。

 老いる速度を緩めて死を遠ざける長寿薬。
 いかなる病をも完治させる万能の霊薬。
 万物を溶解して永遠に記憶する媒体。
 自動人形を縛る枷から解き放つ鍵。
 異常な身体能力を得るための糧。
 錬金術の集大成にして到達点。
 人類の夢を現実とする神秘。

 ――――生命の水(アクア・ウイタエ)。

 多くの人々が求めるであろう代物。
 大金をはたいてでも手に入れんとする者も多数いるほどの逸品。
 それが小さなビンに一杯分だけ。
 子どもでも一息で飲み干せるほど僅かな量だけ、ではあるものの。
 この殺し合い――プログラム・バトルロワイアルの舞台に支給されていた。
 いくつもの世界から呼び出された強者たちであろうとも、欲する者は少なくないだろう。
 そんな生命の水は、殺し合い開始からしばらくが経過してようやく表に出て――そして。

 開栓すらされることなく、容器ごと荷電粒子砲に飲み込まれた。

 眩い光を放つ光線を受けた瞬間――いや、接触する寸前にすでに蒸発。
 人類が憧憬してきた夢を叶える霊薬は、呆気なく消滅したのだった。
 内部に残されていた錬金術師『白銀(バイイン)』の記憶も、悲しみも、憎悪も。
 何もかもを破壊し尽くす荷電粒子の極光に喰い千切られて、欠片も残りはしなかった。


 ◇ ◇ ◇

421 : 銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/25(月) 04:47:54.95 ID:TO89gFOi [3/5回発言]


 荷電粒子砲を放った右腕を通常の状態に戻して、キース・シルバーは再びリュックサックを背負う。
 そのまま何事もなかったかのように、北上を再開する。
 支給品を確認したのは、単なる気紛れだった。
 先刻の戦闘からしばらくが経過してから、ふと思ったのだ。
 最高で三つほど道具が支給されているらしいが、自分に配られたものは何なのか――と。
 戦闘用ARMSであるマッドハッターを埋め込まれたシルバーに、武器など必要ない。
 とはいえプログラム開始前に目を通した資料に記されていた道具は、とても興味深いものだった。
 シルバーはマッドハッターによる至高として他の戦闘を見下しているが、行わないワケではない。
 『戦いの神』たる彼は、必要とあらば化学戦をも指示するのだ。
 ゆえに調べることにし、出て来たのが生命の水であった。
 キース・ブラックに手渡された資料によって、その詳細をシルバーは知っている。
 ナノマシンによる再生力が弱まっている現状では、治癒力を底上げするという効果は魅力的だった。

 しかし――――気に入らなかったのだ。

 飲み干した生物に、人形破壊者(しろがね)としての生を強制する呪縛が。
 他者に勝手に過酷な道を押し付けて自由を奪おうという、制作者の意図が。

 キース・シリーズは、人工的に作られた存在だ。
 長兄のキース・ブラックと母たるアリスによって、運命をプログラミングされている。
 シルバーが闘争を求めるのもまた、プログラムにより植えつけられた思考にすぎない。
 だがたとえそうだとしても、いまとなっては関係がないことだ。
 存在を規定するのは、環境でも素質でもない。
 自分自身の意志だ。
 そもそもがプログラムであろうとも、現在のシルバーを形作るのは闘争だけだ。
 戦いの神として、破壊の神として、突き進む。
 それこそがシルバーの意志。
 ブラックの掌の上であろうとも、シルバーは戦闘生命としての生を完全燃焼させることを望むのだ。
 重要なのはシルバーの意志だ。ブラックの思惑ではない。
 ましてや液体に溶け込んだ錬金術師の遺志であろうはずがなかった。

 プログラムの進行を促せ――などというブラックの言葉に従い、先ほどは伊崎剣司との戦闘を切り上げた。
 ただ、それは伊崎剣司では足りないと判断したからだ。
 かなりの実力者でこそあったものの、戦いの神の闘争心を満足させるほどの男とは思えなかった。
 携えていた雷神剣はARMSの天敵となりえるだろうが、マッドハッターは荷電粒子を操るのだ。
 本来の持ち主ならばともかく、手にしたばかりの使い手が放つ電撃程度は耐えきれるだろう。
 金糸雀という愛刀を見つけたあとならば、期待はできるのだが。
 その場合、ブラックの言葉通りに退く気はない。
 正面からぶつかり、戦闘生命としての生を実感するだけだ。
 元より、シルバーが殺し合いの進行だけを優先するはずがなかった。
 もしも高槻涼が暴走していたのなら、シルバーは迷わず相手をするのだから。
 『進行を促す』という指示に従うのならば放っておくべきだろうが、シルバーがジャバウォックとの闘争を見逃すはずがない。
 見越した上で、ブラックは『マッドハッターのキース・シルバーとして』などと言ったのだろうか。
 そんなことを考えながら、シルバーはロングコートの下にある左腕をさすった。
 ジャバウォックの反物質法砲を受けて、大きく抉れた箇所である。
 もはやシルバーが人間形態を取っていても隠し切れぬ、戦闘生命であることの証明。
 傷痕が未だに疼くという事実に口角を吊り上げながら、体内に埋め込まれたARMSコアから共振波を放出する。
 眼前にジャバウォックが訪れることを期待しつつ、シルバーは北へと歩む。

422 : 銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/25(月) 04:48:40.26 ID:TO89gFOi [4/5回発言]



【D-2 南部/一日目 黎明】

【キース・シルバー】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にてオリジナルARMSたちがカリヨンタワーに乗り込む直前。
[状態]:疲労回復、傷再生、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:闘争を求める。北へ向かう。



【支給品紹介】


【生命の水(アクア・ウイタエ)@からくりサーカス】
キース・シルバーに支給された。
錬金術の集大成『柔らかい石』を水と反応させることでできる、バラ色の液体。
生物が摂取すると、瞳や体毛が銀色になり、身体能力や治癒力が飛躍的に上昇する。
またいかなる物質をも溶かして液中に保管するため、飲めば溶けた物質(人間や人形、それらの一部分)の持っていた記憶や遺志を得ることができる。
今回支給されたのは、錬金術師『白銀(バイイン)』が溶けたものである。
そのため飲むと、彼が得意としていた人形繰りの技術を得ることができるが、同時に彼が抱いていた自動人形への深い憎悪によって人形破壊者(しろがね)となってしまう。
…………どんな物質も溶かしてしまうのなら何に入れられて支給されたのかという話になるが、原作でもビンのような容器に保管されていましたし、それで支給されたということで。

423 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/25(月) 04:49:15.07 ID:TO89gFOi [5/5回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。

424 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/25(月) 11:27:07.37 ID:zKzp7qC4 [1/8回発言]
投下乙

シルバー渋かっこいいな
生命の水の設定とシルバーの生い立ちをこう絡めてくるかと感心しました
キース・シルバーは誰にも縛られない戦闘生命としてこの殺し合いに挑むんだろうと思うと今後に期待です

最後になりましたが、タイトルが上手い
読み終えて感心してしまいました。ここ最近のタイトルでは一番のヒットですw

425 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 22:58:44.11 ID:zKzp7qC4 [2/8回発言]
これより投下します

426 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/25(月) 23:03:15.77 ID:lKvQnvSI [1/1回発言]
しえん

427 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:03:57.12 ID:zKzp7qC4 [3/8回発言]

怒りに任せて拳を壁にぶつけた。
それだけで民家は崩れ落ち、跡には瓦礫の山が残る。

「やってくれるな……キース・ブラック!」

砕けかねないほどの力で歯を食いしばり、血がにじむほどの強さで拳を握る。
その躰は激情に震え、血走った双眸は景色とは別のものを見据えた。
何もかもが上手くいかない現状。なす事全てが失敗に終わる無念。

運命の歯車が狂いだしたのは何時からだったのだろうか。
宇宙の意志が彼に敵対した時か。
美神令子が復活した時か。
南極での敗戦か。
ゴーストスイーパーが立ちはだかってきた時か。
エネルギー結晶の発見が遅れた事か。
1000年前、メフィストの裏切りにあったことか。
魔族がカードの表になることを許されない現実を悟った時か。
消えることすら許されぬ強大な力を持ってしまったことか。

それとも――――生まれてきたことか?

「まだだ、まだ挽回の手立てはあったはずだ。
 あのガキに結晶を持っていかれたところで……」

彼が千年を賭して完成させた集大成、宇宙を思うがままに操ることが出来る宇宙処理装置。
それも今頃はこの会場に呼ばれなかった者達の手によって破壊、もしくは封印されているだろう。
生きて帰ったところで、二度目はあるまい。
神魔族の全てが彼の敵に回った今、再び計画を進めるのは不可能。
彼、アシュタロスは全てを喪った。

428 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:07:37.84 ID:zKzp7qC4 [4/8回発言]
「これが宇宙の選択か!?」

天を見上げ、あらん限りの力で吠える。
瞬く星、輝く月、漆黒に染まった空、全てが忌まわしい。
自分の修正から抗いきった宇宙が憎い。
そして力なく頭を垂らし、小さく呟いた。

「勝ちが潰えた今、消えるしか無いのか」

彼は疲れていた。
茶番劇の悪役として君臨し続けることに。
永久に繰り返される神魔の戦いの中で、邪悪な存在として在り続けることに。
救いのないまま生きることに。

「いいや、無理だろうな」

そう言って自嘲気な笑みを浮かべる。
アシュタロス程の力を持った魔族は、己の意志で死ぬことが出来ない。
正確に言えば滅びることが許されないのだ。
神魔のバランス維持のため、死のうとも同じ存在として強制的に復活を遂げさせられる。
"世界”に死を認めされるための方法はある。しかし――――


「私は"成果”をあげることが出来なかった」


――――宇宙の改変計画は未遂に終わり、次が来ることはない。
己の死を認めさせるに足るかどうか考えると、彼自身も分からないのだ。

429 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:12:16.78 ID:zKzp7qC4 [5/8回発言]
「どうする……?」

ハッキリと言ってしまえば、彼はこの殺し合いなど眼中にはない。
キース・ブラックが宇宙の意志を超える力を持っているとは思えない以上、願い事にも興味はない。
どうせ死んだとしても復活するのだからと、己の生死にすら無頓着となっている。
自分の計画にトドメを刺した人間の思惑に簡単に乗って殺し合いを促進するのも癪だ。
かと言って、他者と組んで殺し合いを破壊する気も起きない。
目的と呼べるのは一つだけ。
自身の計画を破綻に追いやった者達への復讐。

横島忠夫、美神令子、そしてキース・ブラック。

彼らを皆殺しにする。それだけが彼に残された目的。
だが、彼の見えない旅路はこの殺し合いの中だけでは終わらない。
ブラックを殺し、この殺し合いから脱出したところで果たして何が変わるのだろうか。
残っているのは神族たちに飼い殺しにされ、バランスを安定させるために生きる日々。
それが永遠に続くのだ。
あの魂の牢獄に囚われる地獄を脱出する術を彼は望む。

「いや、一つだけ手はある……」

アシュタロスの頭に浮かび上がるのは鉄色の巨人。
宇宙処理装置と並行して生み出した究極の魔体。
それを用いて全てを破壊尽くしてやろう、そんな考えが脳内を占めていく。
万全な状態ではない今、上位の神を全て滅ぼすには至らないのは彼自身が一番理解していた。
されども人魔、そして神に大打撃を与えることは可能だろう。
そして、そこまですれば天界も彼の死を認めるはずだ。

「私が死ぬためにどれだけの犠牲が出るのだろうな」

430 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:14:13.29 ID:zKzp7qC4 [6/8回発言]
どこか寂しげな声で呟く。
彼の"自殺”には"成果”が必要だ。
踏みにじりたくはない。しかし、踏みにじざるを得ない。
あの日、親愛なる部下に告げたように、彼はどんなことをしてでも『魂の牢獄』から抜け出すと誓った。
だから彼は躊躇なく行動に移せる。
何千、何万、何億の命を消し去ることになろうとも、彼には迷いなど無い。

「……まずは80人か」

目的が決まってからの決断は早かった。
早速魔体へとコンタクトをはかるも、応答はない。
考えられる可能性は一つ。キース・ブラックによる何らかの妨害が行われている事。
ならば答えも一つ。
この殺し合いで優勝し、ブラックを殺し、盛大な心中を行う。
脱出に向けて動くのも悪くはないと思ったが、逃亡の可能性を考慮すればこちらの方が確実だ。
殺し合いに優勝さえすれば、なんらかの形でコンタクトは取ってくるだろう。
そこでゆっくりと相手をしてやればいい。
相手の思惑が何であれ、真正面からねじ伏せる。
それだけの力を持っていると彼は自負していた。
気に食わない部分もありはすれども、長年の目的からすればその程度の苛立ちは取るに足りぬ。
ただ、一つだけ心残りなのは。

「結局、私の負けで幕は降りるのか」

結局、彼は運命に勝利することは出来なかった。
辛うじて望みは果たせそうなものの、それは彼にとってのベストではない。
どこまでも悪役を演じるしか無いことを再認識させられ、気分が落ち込んだ。
生きようが、滅びようと抗おうが、自分は邪悪な存在として宇宙の意志のままに踊り続けなければならない。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるも、それもここで終わりだと自分に言い聞かせ気分を落ち着けた。

「やられたよ。まさかここまで徹底して悪役にされるとは思わなかった」

431 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:16:33.11 ID:zKzp7qC4 [7/8回発言]
僅かに苦笑を浮かべた後、表情を引き締める。

「すまんなベスパ」

もっとも忠実であった部下に対して謝罪の言葉を告げた。
この殺し合いの場において彼女が呼ばれなかった事に僅かに安堵する。
しかし、彼女がこの場に呼ばれていたとしても彼は彼女を迷いなく殺すだろう。
もはや彼の"自殺”は止まらない。


人類を、神を、魔族を、妖を。

全てを滅ぼさんと幕を開けたアシュタロス最後の舞台。

その前座が、プログラムの参加者を巻き込んでこれより始まる。

主演を務めるのは死にたがりの魔人。

どこまでも後ろ向きな目的/どこまでも前向きな目的。

目指すものの為、"世界”の道化が舞台で踊る。


【C-3 西部/一日目 深夜】
【アシュタロス】
[時間軸]:横島がエネルギー結晶体を破壊する直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3
[基本方針]:優勝し、ブラックも殺す。滅びたい。

432 : エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM : 2011/04/25(月) 23:18:27.13 ID:zKzp7qC4 [8/8回発言]
投下完了です
誤字脱字、矛盾点などがありましたら指摘お願いします

433 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 00:40:19.46 ID:+rcaR9yB [1/1回発言]
投下乙ー
なんてクソ迷惑なマーダーだw
大真面目なのは分かるが、殺される側からしたらたまったもんじゃねえなw

434 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 08:05:14.70 ID:CLsdB045 [1/1回発言]
おい!
花菱烈火、宮本武蔵、美神令子の三人はいつ出てくるんだよ!
しかも主人公二人居るのに未登場とかワロタ

435 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 08:32:37.72 ID:xSbgOEbk [1/1回発言]
もっともなツッコミだw

436 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 13:02:42.60 ID:3t+LPvKK [1/2回発言]
そういえば美神の参戦時期によっては、体内に結晶があるんだよな
ある場合、それにアシュ様が気付いたら・・・
さてどうなるやら

437 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 13:07:17.87 ID:3t+LPvKK [2/2回発言]
あ、忘れてた投下乙です

アシュ様やっぱり乗ったか
迷惑な動機だけど、悲願達成目前にして、
そのことごとくを潰したのが主に「あの」横島だからなぁw
そりゃヤケにもなるってもんかww

438 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/26(火) 17:50:07.86 ID:w3KWaEr/ [1/1回発言]
2作も来てた! 乙です!

シルバーかっけー!
登場話での憲兵番長とのやりとりに痺れながらも少し違和感を感じてたんだけど、完全にとっぱらわれたな。いざってときは戦闘優先かw
しろがねとしての能力より戦闘生命として生きることを選ぶのが、まさしくシルバーだ

アシュタロスも、原作知らないけどかっこいいなと思ったけど…
なるほど、言われてみれば確かに迷惑だなw

439 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/27(水) 19:19:32.92 ID:ZFrPIG4N [1/1回発言]
さりげなく究極の魔体が支給品に入ってるフラグも立ってそうだ…
あれはヤバいぞ、魔王剣クラス(以上?)だ


440 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/27(水) 23:34:49.30 ID:hvMdRrNf [1/1回発言]
烈火の予約きた!残り二人か!
てか◆hq氏もう10作目か

441 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 00:13:38.48 ID:3VMxE8yG [1/1回発言]
残り二人ならもう二周目のキャラと絡めてもいいかもしれないが?

442 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 00:23:03.85 ID:6YtIpiyV [1/2回発言]
普通に二周目キャラ書いてるみたいだし、そういうの気にしてないと思うよw

443 : ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:48:02.74 ID:02Tv2U9D [1/9回発言]
キース・グリーン、コウ・カルナギ、投下します。

444 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:49:04.43 ID:02Tv2U9D [2/9回発言]
 開かない部屋に光が差した。
 汗にぬるむ金属の臭いと、蜘蛛の巣に似た陥没の跡が、外界にさらされた。

 それが彼と、彼の敗北のはじまりであった。


 ◇◆◇

445 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:49:44.88 ID:02Tv2U9D [3/9回発言]
 山中へと続く歩道に、斜面の縁から土がこぼれた。
 ささやかに崩れた泥砂を受けることなど、これまで幾度もあったのだろう。年季の入ったアスファルト
のくすみは、蒸れた土の乾いた色と近似している。
 そこに跳び下りたキース――グリーンのカラーネームを戴く少年は、足許に広がる諸々を顧みること
なく歩みを再開していた。纏った体躯を大きく見せるダブル・スーツにボタンダウンのドレスシャツ、
背伸びをしていることを隠そうとした跡がみられる出で立ちに上下動の余韻はない。視界に影を落とした
髪のひと房を撫で付ける仕草につれて、光を透かしたロー・アンバーが金色に遷移する。
 鬱蒼たる森。そよそよと木々を鳴らす風。ささらに流れる川の水。じきに昇りはじめる朝日。
 それらを背にして進む彼は、ゆっくりと息を吐き、吐いて吸う。
 吐いて、吸う。吸って、吐く。
 吐いて、吸い、
 吸い込んで、

「ふ――」

 すぼめた口唇から細くするどく、息をついた。
 もはや、相手どる者の強弱など選ばない。それなら、身を隠しがたい平地にあえて進めば市街で真価を
発揮するだろうレーダーの電源を節約出来ると考えていた。
 その選択に応ずるように、平地には刈取るべき者がたたずんでいたのだから上出来といえよう。

 ――しかしながらこの構図は、めぐり合わせは一体なんの冗談だ?

 閑寂な森で物想いにふけり、するどい剣を振るうと決めたキースシリーズの末弟。
 両の眼を願いに燃やし、空間の断裂でアンジェリーナの首を刈り取ったキース・グリーン。
 彼はARMSの名の由来となった物語の一節を想起し、これではどちらが魔獣か分かったものではないと
感じて、感じたがゆえに浮かびかけた苦い笑みを袖口でぬぐう。

「……傑作だよ。森を抜けた、その先に遥場(はるば)があるとはね」

 歩みを止めぬままにひと呼吸。そうして彼は、再度口角を吊り上げた。
 剥き出しの前歯が表すものは侮蔑と嘲り。顔に刻んだ獰猛は威圧のための露悪か、諧謔まじりの
それとはいえ、赤木カツミのいない世界で笑みを浮かべかけた少年自身への戒めか――。
 脳を遊ばせ内閉に至る夢想を、グリーンは次の一歩を踏み出す動作でもってねじ伏せる。
 おおよそ数十歩の距離があろうとも、相手が人間を超えた身体能力をもつ以上、間合いにさしたる
意味はない。エグリゴリ収容施設<アサイラム>において危険度Aとされた実験体を相手に五十歩と
百歩の違いをはかることは、6と半ダースを比べることと同義だ。
 空間を操るアドバンストARMS、チェシャキャットの使い手はそれを知っている。
 半ダースの基準となる1ダースが、ときに『パン屋の1ダース』となりうることも。

「戦いの場に不似合いなモンが飛び出してきたかと思えば……」

 空間移動に際する消耗もかんがみて間合いを詰めるグリーンの耳朶を、野太い声が叩いた。
 表情もはっきりしない距離を渡るに相応な怒(ど)めきが、彼の左手をふさぐものの洞毛を逆立てる。

「こいつは貴様の連れか? キザ野郎――キース・グリーン」
「ずいぶんな呼び方をしてくれるじゃないか、牙<ファング>――コウ・カルナギ!」

 片腕で猫をつかみ上げている男の名を、少年の側も明瞭につむいだ。
 コウ・カルナギ。付近で一戦したのか、水をかぶり泥砂に汚れ、ハリネズミのような蓬髪をしおれるに
任せた男の風体はけして良いものとはいえず、言動も野卑との形容が至当である。
 だが、膂力も気力も横溢している様は、そうした印象を吹き飛ばすに過分なものだった。

446 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:50:44.74 ID:02Tv2U9D [4/9回発言]
 北。コウ・カルナギが真面には、乾いて開けた平地だけが広がっている。
 南。コウ・カルナギが後背にも、冬枯れを越えた草だけが植わっている。


 川べりの草原は測量上の広さを超えて、カルナギとグリーンの領域に遥々と横たわっていた。
 遥場と称した地の極軸にあって、澄んだ表情を浮かべた男は小揺るぎもしない。乱暴、粗暴と横暴を
そなえた指に襟首を捕らえられている猫は、つままれていると言い換えた方がしっくりくる有り様だ。

「ま、腹の足しにもならんのだから、なんでも構わんがよ」

 転瞬。直立するカルナギの手から離れた猫が、凍て空に放物線を描いた。
 弱(よわ)ぼらしい体躯の生き物は身をひねって着地。夜気をかきまぜた勢いで、再び走りだす。
 遊びの最たるものから五指を開放したカルナギは、しかし、動かなかった。
 進まず引き下がらず、彼は凝然とキース・グリーンを見据えている。

「忘れたか、カルナギ」

 挑むように踏み込む少年は、ゆえにこそ、渦巻く思いを喉奥にうずめかせる。
 対して、カルナギの顔には冷や汗の一滴もなく、きまり悪げに視線を逸らそうともしない。

「忘れたのか――あのとき、たしかに僕から退いたことを!?」

 この男が自身に対して余裕を抱いていると感じ取ったがゆえに、少年は声を荒らげた。
 燻り狂ったように足を伸ばす、グリーンと元部下の間合いは、すでに二十歩を切っている。この距離
ならば、ヴォーパルの《魔剣》アンサラーはもとより、空間の断裂も必ず届く。ホワンの得意としていた
衝撃波との連携で空間移動の札を切るにしても、疲労は許容の範囲に収まるはずだった。
 それでも彼は、チェシャキャットのキース・グリーンは歩みを止めない。
 カツミを取り戻すためには、ここで断裂を放てば良いものを、歩みを止めることが出来ない。
 出来ないはずで、あったのに。

「ああ、もちろん……思い出してるぜ」

 残り十歩強というところで、その足が止まる。
 伸ばそうとした腕が動かない。振るおうとした力が、振るえない。
 カルナギの声音。そこに篭った、彼の印象すべてを裏切る静けさが少年を戦慄せしめる。


 ◇◆◇

447 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:51:29.30 ID:02Tv2U9D [5/9回発言]
 開かない部屋に光が差した。
 汗にぬるむ金属の臭いと、蜘蛛の巣に似た陥没の跡が、外界にさらされた。

 すべてが金属で構成された、アサイラムの隔離部屋――。
 そこから出ろと言われたときに、コウ・カルナギは、所長の前に立つ《化物》を粉砕した。
 部屋と我が身に染み付いた食滓や垢、排泄物といったものどもの臭気は、初撃の拳で臓物の、二度目の
蹴りでオイルのそれに塗り替えられていた。ここで抵抗したところで、世界を裏から牛耳るエグリゴリに
束縛される有りようは変わらないだろうが、少なくとも、暴力は気分を入れ替える役を果たした。

 果たしてくれる、はずだった。

 滑り出しの良さとは対象的に、カルナギは最後の最後で、飛び退いていた。
 後退が警戒からきたものであろうと、退いて相手を見極める前に、その牙を折ってしまった。
 化物どもを飛沫とスクラップに変えた自分と、所長の間に伏線も予兆もなく割り入った者は青二才の優男。
気負いなく腰に手をやり、満足げな微笑をたたえたサー・グリーン。
 不敵な表情を崩さない彼を眼前に、後退するということは隔離部屋に近付くことと同義であった。
 少年が踏み込んだなら、生に望んだものどもから隔絶される場所に戻ることさえあったかもしれない。
 もう、誰にも変えようのない過去に刻まれている、それが『世界最強』の事実であった。


  ――それ以上突っ込んだら、君は死んでたよ。


 彼の発した言葉ににじんでいた、優越が胸を衝いていたのに。
 当然のごとくに発散していた余裕が、胃を押し上げていたのに。
 微笑に染みた怜悧が、傲慢が酷薄が冷や汗を流せしめていたのに。
 息をするたび、体の裡を不快感がひたひたと打っていたというのに。

 それでも彼は、グリーンの笑みからきまり悪げに視線を逸らして、押し黙ったのだ。
 再度飛び出すこともかなわず、ややあってつむいだ声からは、闘志も、虚勢も失せていた。

 ならば、コウ・カルナギの最初の負けは、『火』を最初に消せしめた者は、新宮隼人ではない。
 牙と闘うことなど端から望まず、指示を与えて動かすためだけにアサイラムを訪ったキザ野郎――
キース・グリーンと名乗った少年に、彼は闘う意気をくじかれていた。
 自由と金と敵。カルナギが望むものを与えるとの言に、噛み付こうとも思わなかった。

 それが、それこそが彼と、彼の敗北のはじまりであった。


 ◇◆◇

448 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:52:14.75 ID:02Tv2U9D [6/9回発言]
「だからこそ、オレは気に入らねえ」

 敗北感を味わわされた者と出くわすまで気付けないほどに、その記憶は色褪せていた。
 さほど長くもない時間のうちに、思い出となるまで押しやってしまっていた過去。
 その顕現を前にしてなお、コウ・カルナギは獣的な笑みを刻んで揺らがない。
 自分がいつ、誰に、何に負けたか、どこで、どう、勝っていたのか――。

「キース・グリーン!
 世界最強のオレに目を逸らさせた、このオレを飛び退かせた、貴様の“強さ”は今どこにある!?」

『世界最強』の土台をなすものを一顧だにせず、グリーンが背にする崖上で最強を謳っていた男は、
怒めきを空にとどろかせる。
 最強を名乗る男に膝をつかせた少年が、その声を聴かないはずもない。

「僕は――」

 かつて自身のARMSを最強と称したキース・グリーンが、その声を聴けないはずはない。
 彼我の間合いは、十歩強――近接戦の距離から変わっていない。そして、空間を操るグリーンの
チェシャキャットは、近接戦においてはミドルレンジの維持ないしクロスレンジへの移行を積極的に
選択してゆき、相手に即時の対応を迫れるだけの能力を有している。

「僕の、ARMSは」

 人間ならば。『闘争』の意志を組み込まれ、それを真実と貫き通したキース・シルバー。敵意に満ちた
世界に果てた兄の遺した言葉が、遠ざかっていった背中が、押さえた左の胸に痛い。
 選択を、意志を貫いて、最後まで貫き通すこと。あるいはもう一人の兄、キース・ブラックのように
相手に選択を強いることが強さだというのなら――限定的なものとはいえ、そうした行いを可能とする
チェシャキャットの能力は、『自分だけの』力は。いや、ああ――ああ、それでも。そうであっても。

「……チェシャキャットは、最強ではあり得ないんだっ!」

 喉をふるわせたグリーンの、声は割れてざらついていた。
 血を吐いたかと思われるほどに誰かを、なにかを思っていればこそ、その思いは言葉にならない。
 苦味を含んだ表情、鼻の付け根に寄った皺だけが、彼の顔を十年ほど老いたものと錯覚させる。
 ――しかしてその顔をすら、もう負けられない少年は、他の誰にも見せはしない。
 カルナギに向かって飛び込み、間合いを詰めると同時に切った札はチェシャキャットの空間転移。この
プログラム全体の最強ではないが、彼自身が持つ力のうちで最も信頼のおけるカードだった。
 遥場の空に溶けこんだグリーンは、脳から血の引く脱力感を打ち払って敵手の背後へ回儀(まわりふるま)い、
カルナギの周囲にある空間を揺さぶる。そうして生まれた衝撃波でもって、超人であろうと鍛えようのない
脳幹を圧し、切り、穿ち――胸から外した右の手でもって、敵手の命を刈り取りにいく。

「――くっ!」
「ふ……ふふ、ははは、ははははは!!」

 次の瞬間、たやすく穫れるはずであったカルナギの呵々大笑と、少年の舌打ちが交錯する。
 突っ込んできた相手を迎撃するとみた刹那、彼は、横方向へ跳躍したのだ。

「ははは――はっ、やっぱな。消耗を抑えるなら、狙うのは鼻先か首筋だろ?
 だったら横軸をずらせばいい。小細工を使うにしては、一撃で終わらせるやり口が透けて見えたぜえ」

 死角に回って、奇襲をかける。
 ジェームズ・ホワンの放った正論どおりの攻撃は、カルナギの右肩をかすめるにとどまった。
 脇腹にでも決まっていれば、笑みを浮かべることすら難しかっただろうが――口の端に余韻が残った
ところをみると、おそらく、腕を伸ばして放った衝撃波の範囲も見抜かれている。

「だが、だからそんなもんは――通じねえ」

 岩を切り出したような顔から笑いが消え、燻るような怒りが灯った。

449 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:53:06.50 ID:02Tv2U9D [7/9回発言]
「バカにするな。オレと戦いながら次の一戦を考えるヤツに、コウ・カルナギが負けると思うか!」

 暴(ぼう)なる声が調子を変えて、びりびりと大気をふるわせる。
 そこに念じて空間の断裂を呼び込めば終わるのだろうに、グリーンにはそれが、振るえない。
 チェシャキャットの第二形態をあらわせばヴォーパルの――致命の魔剣アンサラーがすべてを断ち切る
のではないかとも感じているのに、グリーンには、そちらの道も選べない。

「それとも――出し惜しみをしなければ、勝ち抜けないとでも思ったのか?」

 怒りの底に哀れみを流したカルナギの瞳を前にして、少年には男を殺せない。
 コウ・カルナギ。この男の瞳ににじんだ色を変えずして相手の命を穫ったところで、自分は、彼には
永遠に勝てない。局地的な勝利をもぎ取った瞬間に、心のどこかが負けて歪んで、濁ってしまう。
 根拠のない思いが、確信となって彼の奥歯を軋ませる。

「カツミ……」

 赤木カツミ。少年が心から欲した、心から守りたいと思えた少女。
 その名を鞭と振るっても、グリーンの胸中では嵐が止まない。意気もまた、あがらない。

「なるほど。貴様もあのお嬢ちゃんか」

 鞭を入れるほどに、鮮やかになるのが兄の、キース・ブラックの姿だった。
 強さはどこに行った。そうと問われて脳裡をよぎったのが、断裂をかわすまでもないと浴びた者だった。
その事実を認めたときにこそ、少年は、キース・グリーンだけの力に対する疑いを深めたのだ。
 ジェームズ・ホワンから、キース・ブラックから、カツミを守れなかった力――。
 その『武器』を振るい、挫折の記憶を抱えて進むしかないと気負うなら、彼は最強など名乗れない。
 コウ・カルナギのように、恥も自分への疑いも知らぬ顔で自分を信じきることなど、もう、かなわない。

「だったら、そもそもオレと戦おうとしなくても良かったんじゃねーか。
 とにかく全員倒すなんて作戦じゃなかろうと、たとえばオレが何人か減らしたっていいわけだろ。
 ――勝ち抜くために効率を考えたなら、そっちの方でも貪欲になってみせたらどうだ?」

 息を詰まらせるグリーンの鼓膜を叩いたのは、まったくの正論だった。
 その正論を、少なくとも表面上は疑っていないカルナギは、グリーンの半眼に色を消した瞳で対する。

「それが出来ねえなら……騎士でも気取って、死んどけや」

 遠ざかる背中が最後に残した声は、ひどく投げやりに少年の胸へ放り込まれた。


 ◇◆◇


 南。キース・グリーンが真面には黄変を免れた芝が、ただただ敷き詰められている。
 北。キース・グリーンが後背にも、うるおいに乏しい草地がただただ広がっている。


 あるじを変えた遥場に、風が、凪を越えて吹き過ぎた。
 服の繊維をすり抜けた冷気が運動の熱を冷まし、脱力と倦怠を濃いものとする。
 しかしてグリーンの呼吸は、いまもって浅く、みじかい。

「僕のARMSは、チェシャキャットは……」

 最強ではないとつむぎかけた声は、胸を押さえる手に潰された。
 そうと悟ったはずであるのに、それがために勝ちを逃した今、その一節が苦い。
 戦いに遊びをまじえることなく、慢心を捨てて、反撃もかなわない者をただの一撃で葬る。
 好き嫌いを捨てて見出した道。そこに自分を導いたのが理性か、あるいは敗北を――あらかじめ喪われて
しまったはずの『希望』がなくなることを恐れたがゆえの妥協なのか、少年には断ぜられない。
 何度目かの風に、遠くの木々が鳴ったそのとき、郷遠(さととお)し彼は強く強く、我が身を抱いた。

450 : 遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 02:54:34.37 ID:02Tv2U9D [8/9回発言]
【E-2 平原/一日目 黎明】

【キース・グリーン】
[時間軸]:コミックス17巻NO.11『死王~バロール~』にて共振を感じ取って以降、
 コミックス18巻NO.3『聖餐~サクラメント~』にてキース・ブラックの前に立つ前。
[状態]:健康
[装備]:いつものスーツ、参加者レーダー@オリジナル
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、カツミの髪@ARMS(スーツの左胸裏ポケット)
[基本方針]:なんとしても最後の一人となる。
 そのためなら兄さんや姉さんだって殺すし、慢心を捨てて気に入らない能力の使い方だってする。
※空間移動をするとかなり体力を消耗するようです。

【コウ・カルナギ】
[時間軸]:第五部開始時
[状態]:軽い疲労、両掌に軽い怪我、満腹
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:サーチアンドデストロイ。ARMS、鬼丸を特に優先。刃も見つけ次第ブン殴る

※E-2/平原から、死んだはずのネコ@ARMSが逃げ出しました。
 行き先などは後の書き手さんにお任せします。


 ◇◆◇

以上です。
意見や感想など、ありましたらお寄せください。

451 : ◆vorpaLEJrs : 2011/04/28(木) 03:12:44.30 ID:02Tv2U9D [9/9回発言]
と、申し訳ない。
グリーンの[状態]が健康のままなので、wiki収録時に「やや疲労」と差し替えておきます。

452 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 03:55:12.20 ID:6YtIpiyV [2/2回発言]
寝れなくて困ってたら来ていた! 乙!
ああ、グリーン……なんだこの切なさは
優勝狙いマーダーだし、ママンを殺した張本人だというのに、こうも応援したくなるのはなぜか
アシュ様じゃないが、参加者的にはとても迷惑な存在なのに
なんとも若いんだな、グリーンは……
道を決めているシルバーやブルーや、未だ迷うバイオレットより、若い
前の二人と同じく進む道を決めているはずなのに、そう思えてしまう。能力は最強クラスだけど末弟なんだよな、やっぱり
悩みゃしねえカルナギと絡めたのは見事。人間になりつつあったグリーンしか知らないもんな、こいつ

453 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 15:24:22.17 ID:lpkQ6fMX [1/2回発言]
投下乙
人間になる前のグリーンなら完勝できたはずなのに……
最強でないことを認め強くなった面もあるが、弱くなった面もあるか
なんというか、アンジェリーナと対主催目指したほうが大変ではあっただろうが、グリーン的には楽ではあったんだろうな
しかし大変な道を選び戻れない以上、頑張ってほしいが……OPどころかそれ以前のホワン戦から挫けっぱなしだなぁ
一方のカルナギは強い。戦力的には参加者内そこまでじゃないけど、こいつは揺らがないぜ
いままでの敗北を晴らしたし、先が楽しみだ

454 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 19:09:12.21 ID:szD+DhgM [1/1回発言]
投下乙


          ____
       / \  /\  キリッ
.     / (ー)  (ー)\
    /   ⌒(__人__)⌒ \   グリーンなのに青二才か
    |      |r┬-|    |   
     \     `ー'´   /   
    ノ            \
  /´               ヽ


            ___
       /      \
      /ノ  \   u. \ !?
    / (●)  (●)    \ 
    |   (__人__)    u.   | クスクス>
     \ u.` ⌒´      /
    ノ           \
  /´               ヽ

         ____
<クスクス   /       \!??
      /  u   ノ  \
    /      u (●)  \
    |         (__人__)|
     \    u   .` ⌒/
    ノ           \
  /´               ヽ


455 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 19:38:38.78 ID:lpkQ6fMX [2/2回発言]
ちょっと笑ったw
ブルーは青くないしなw

456 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/28(木) 19:52:01.37 ID:sype4p4x [1/1回発言]
投下乙です
グリーンは迷いが大きくなった感じがするなぁ
ママンを手にかけてしまったから、スタンスを変えるのは難しいだろうし
カルナギは良い戦闘狂マーダーになりそうだ


これで全員一度は予約されたのかな

美神に欲情する武蔵が想像できるww
美神は場合によっては、優勝狙いもあり得るのかなぁ…まぁ本音では意外に良い人だから大丈夫かなw

457 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/04(水) 15:05:47.67 ID:PGLpjGy1 [1/1回発言]
保守あげ

458 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/04(水) 18:41:21.93 ID:EH/I1IQ2 [1/1回発言]
過疎

459 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:34:31.73 ID:Vik+fnZQ [1/9回発言]
そんな中、投下します。

460 : ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:35:56.50 ID:Vik+fnZQ [2/9回発言]
 遥かな高みから睨む双眼。
 その猛き視線を全身に浴びても、秋葉流は一向に怯まない。
 破壊神を前にしても、独特のその緩い笑みを顔に貼り付けたままで。

「水鏡とかいう兄ちゃんはどこだ?」
 敵意を隠そうともしない巨躯に、彼は少年から預かっていた疑問を届ける。
 だが、訊くまでもなく流はすでに真実を悟ってしまっていた。
 この規格外の男と対峙した瞬間に。
 彼の底知れぬ実力を感じとった、その瞬間に。
 そして、残されていた一握の可能性すらも、次の瞬間には朽ちて消えることになる。

「あの者のことか……なかなか歯ごたえのある漢であった」
 吐血の跡らしき汚れが残る口元を歪め、鬼が笑った。
 クワガタ虫のような珍妙な髪型に、時代錯誤な長ラン。
 ふざけているのかとしか思えぬような見てくれであった。
 しかしながら、ひしひしと伝わるプレッシャーは笑って済ませられるものではない。

「どこにいんのかって聞いたはずなんだがなァ……」
 流は余裕じみた軽口を零す。
 が、立ちはだかる敵との絶望的な戦力差も理解していた。
 真っ向勝負になれば、彼の勝ち目は薄い。

「彼奴はこの俺に傷を負わせた」
 痺れを切らした男が拳を握り締め、流に歩み寄る。
 彼の一歩が大地を揺らし、木々をざわめかせた。

「…………そうかい。分かったぜ」
 迫る死線に、飄々と笑っていた彼の顔も一転して強張る。
 取り出した金色の武器を組み替え、鎖鎌に変形させた。

「アンタが会話する気ねぇってことがよ……!」
 もはや『落下してきた』と表現してきた方が適切だろう拳を、飛びのいてかわす。
 ただの打撃は、しかし大地に大穴を穿ち、周囲の木々を根ごとまとめて掘り返す。
 戦術もテクニックもあったものではない。
 しかし、小細工抜きの力押しこそ何よりも怖い。

「逃げるつもりか?」
「そりゃあな」
 戦力差を冷静に分析し、退避しかけた流。
 牽制するかのように、大男が眼の奥に殺意を潜ませた。

「逃げられるとでも思っているのか?」
「どうかな……」
 全力で殺しにかかるとの悪魔の予告。
 それでも若き僧は、うろたえることはない。
 この落ち着きこそが、彼の最たる強みであった。

 流は鎌を放り投げ、森を揺らしながら突進してきた化物の腕に鎖を巻きつける。
 それを手繰り寄せた勢いを利用して、巨大な二の腕にしがみついた。
 ず太い喉もとに刃をつき立て、耳元でささやき掛ける。

「命が惜しかったらよォ、見逃してくれや」
「無駄だ」
 刃などに屈する相手ではない。
 この男と会ったばかりの流でさえも、それは分かりきったことだった。
 男は象のような巨体に力を込め、上半身の筋肉を膨張させる。
 その勢いだけで、小さな僧はいとも簡単に吹き飛ばされた。

461 : ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:37:40.05 ID:Vik+fnZQ [3/9回発言]

「……やっぱ駄目かい」
「貴様……謀るなよ……」
 流は綺麗に着地を決めると、焦った風もなく肩をすくめる。
 対する男のこめかみには、太い血管が浮かびあがっている。
 その全身から湧き上がる湯気が、掴みどころのない流に対する男の怒りを表していた。

「この日本番長を前にしてまだ手を抜くかッ!」
 蛮声による耳鳴りが、流の鼓膜をけたたましく震わせた。
 次の瞬間、巨人の両足を中心として大地に放射状に亀裂が生じる。
 桁外れの覇気に、ついに地殻が悲鳴をあげたのだ。
 男の両足がズブズブと地面に埋まっていく。
 静寂が戻った後には、大男は胸まで大地に埋まってしまっていた。

「…………!」
 デタラメな強さを目の当たりにし、流の身体が硬直する。
 恐れているわけではない。
 突風を感じたのだ。
 それは敵の声圧でもなければ、巨体が一種のビル風を生んでいるとかいうわけでもない。
 風は、彼の心で渦巻き続けている。
 今も、なお。

「……分かった。降参だ」
 いそいそと地面から這い出る巨人に向け、両手を掲げる。
 おとなしく殺されてやるという意味ではない。

「日本番長サンよ、あんたは『デザート』ってやつさ」
「俺はそこまで糖分を含んでおらん」
「……本気出せるようになったらまた会おうぜ」
 敬礼のようなポーズで別れを告げると、流は蔵王を取り出して日本番長へと投げつけた。
 珠の中から出てきたのは、流の数倍の大きさのある透明な熊だ。
 ぬいぐるみのように可愛くデフォルメされたその獣は、男の巨体をも飲み込んで内部に閉じ込めてしまう。
 脱出しようと彼が拳を振るった次の瞬間……。
 熊は内部の日本番長を巻き込んで大爆発を起こした。

「…………今すぐにでも戦いたいところだが」
 後方で生じた轟音。
 振り返ることもなく、流は森の中を走り続けた。
 日本番長とか言うあの男は、流が今まで相対してきた中でもトップクラスの実力者だ。
 雷獣『とら』と同格か、もしかしたらそれ以上の実力をもつ。
 だが、それでも……だからこそ、今は戦えない。
 独鈷も錫杖も持っていない状態では本気を出せないからだ。
 己の『すべて』をぶつけるに相応しい相手だからこそ、その『すべて』を整えてからでなければ挑めない。
 ハンデという心残りを背負えば、それが彼の風になる。

「微風でも、風は風だからな」
 一度だけ振り返る。
 男は追ってこないようだ。
 つむじ風が止まないことを確認すると、秋葉流は再び駆け出した。


【A-3 東部 一日目黎明】

【金剛猛(日本番長)】
[時間軸]:不明
[状態]:内蔵にだm「小せえ事は気にするな」
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ファウードの回復液入り水筒@金色のガッシュ、不明支給品0~2
[基本方針]:小せえ事は気にするな

462 : ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:39:15.55 ID:Vik+fnZQ [4/9回発言]


◆     ◆     ◆


 偵察に立候補した流が帰ってくるまでに、それほど時間はかからなかった。
 彼の帰還に、ユーゴーは素直に安堵のため息をつく。
 化物じみた強さを誇る巨人と相対したらしいが、目立ったダメージも与えられてはいないようだ。

「それで、あの兄ちゃんは? 水鏡は生きてたんだろ?」
 刃が流に駆け寄り、彼のズボンを引っ張って問いただす。
 若き侍のその声色から、彼が水鏡とやらの生存を強く信じていることが感じ取られた。
 しかし、その期待が現実にはならぬと、テレパシスト・ユーゴーは知っている。
 少年の笑顔に対し、流は無言で首を横に振り、応えた。

「嘘……だろ…………」
 少年の顔が見る見るうちに青ざめていく。
 彼の心も悲しい青色に包まれていく。
 ユーゴーは彼にかけてやる言葉を探したが、何を言っていいのか分からない。
 絡めた両手を額に当てて、ただ俯くことしかできなかった。

「嘘だ! 生きてるって言ってくれよ!」
 悲しみの色は、たちまち激情の赤へ。
 流の脚をガッシリ掴んで、前後に振り乱す。
 少年が激昂する様を、法力僧は感情のない瞳で見つめる。

「おい……刃、だったか……?」
「俺が行く! この目で確かめるまで信じねえぞ!」
 流が口を開くも、刃は聞く耳も持たない。
 感情のままに動く少年に、ユーゴーは新宮隼人の姿を見た。
 あの少年も彼と同じような反応をするのだろうと。

 だが、彼を行かせるわけにはいかない。
 ここで少年を死地に赴かせてしまえば、水鏡凍季也の決死の行動も水泡に帰してしまうのだから。
 ユーゴーがなんとか刃を説き伏せようと立ち上がった、そのとき。
 秋葉流の鋭い眼が、少年剣士を貫く。
 それだけで、彼は石化したかのように硬直してしまった。

「刃……聞け……ッ!」
「…………お、おぅ」
 たじろぐ少年の両肩を、流はしっかりを掴んで放さない。
 二人の姿は、年の離れた兄弟のようにも見える。
 まるで、流の心に秘められた闇を忘れさせてしまうような光景だ。
 だが、天使が読み取った彼の心は、相変わらずの無音状態であった。

「後ろを見ろ」
 その言葉を受け、少年がゆっくりと振り向く。
 直後、己が瞳の捉えた光景に彼は息を呑んだ。

「私の、せい、で…………ごめんな、さい……」
 白い肌を這い落ちる涙が、大地の若草を濡らして弾ける。
 うわ言のように繰り返される言葉は、今は亡き剣士への懺悔であった。
 崩れ落ちたかのように、両手を地面について座るチェリッシュ。
 彼女も、水鏡を救えなかったのだ。
 その心うちは、テレパシーで読まずとも察せられるものであった。

 しかし、実際にユーゴーに流れ込んできた彼女の感情はもっと複雑なもの。
 その心を支配してるのは、無念や負い目ではなく、恐怖だ。
 絶対的な存在に対する怯え。
 おそらくは、チェリッシュが放していたゼオンとかいう魔物。

463 : ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:40:44.58 ID:Vik+fnZQ [5/9回発言]

「サムライってのは、勝手な行動で女を泣かせるやつのことを言うのか?」
「…………」
 彼の言葉と少女の涙を受けて、刃の心の焔が弱まっていく。
 ユーゴーの脳内に映し出されたのは、美しい女性の姿。
 どうやら刃の母親のようだ。
 彼と母の間に何があったかは分からないが、その存在が彼に冷静さを取り戻させたのは間違いない。
 流の言葉は、相手の弱点を的確に抉る。
 刃の母親のことなど知らないだろうに、無意識に思い出に訴えかける話術。
 ユーゴーには到底出来ない芸当だ。

「……水鏡は…………サムライだったか?」
「あいつは、あの化物を追い詰めていた」
 刃は、振り向くことなくチェリッシュを見たままで流に問うた。
 流は間髪いれずに答える。
 それが嘘だということは、ユーゴーにしか分からないことだ。

「本当か?」
「紙一重だったと言ってたぜ」
 刃は眼を瞑り、一度だけ大きく息を吸い込む。
 冷たい空気で、胸の激情を鎮火させるがごとく。
 深呼吸の後、刃は流の元から離れてツカツカと女性に歩み寄った。
 顔をあげた彼女の塗れた瞳を見つめながら、彼なりに慎重に言葉を選ぶ。

「なんだ……その……ね、姉ちゃんの……せいじゃ、ねぇよ」
「…………でも……」
 こういうことは苦手なのだろう。
 僅かに朱に染まる頬をポリポリと掻きながら、ぎこちなく女性を励まそうとする。
 その思いが伝わったのか、女性も涙を拭って弱々しくも彼を見据えた。

「さっきは怒鳴ってゴメンな。……俺、強くなるからさ…………」
「…………」
「戦おうぜ、あいつの分まで」
「…………うん」
 刃の真っ直ぐな気持ちが届いたようで、取り乱していたチェリッシュも、ひとまずは落ち着いたようだ。
 とはいえ、立ち直ったとは言いがたい。
 今も彼女の心には恐怖と絶望が渦巻いている。
 それを根本から何とかしてやるのは、刃では不可能だ。
 彼女の心が必要としてるのは、ユーゴーの知らない別の誰かであった。

「ありがとな、流」
 流の元に走り寄って、刃が礼を述べる。
 男は気のない返事を返しただけで、つまらなそうに空を見上げていた。

「…………なぁ、刃」
 ポツリと、零した。
 彼にしては珍しく、随分と真剣な声。
 刃が「ん?」と訝しげに彼を見上げる。
 流は一瞬だけチェリッシュに視線を向けると、すぐにまた白んだ天へ戻した。

「男ってのは、一生のうちに何人の女の子の涙をとめてやれるんだろうな?」
「わかんねえよ、んなこたよー」
「…………お子様にはまだ早かったかね」
 ヘラヘラ笑う男に、少年は頬を膨らませて抗議する。
 本当に、こうして見るだけならば流はいい兄貴分だ。
 ユーゴーの顔にも自然と笑みが浮かぶ。
 だが、突如として彼女の頭に流れ込んできた思念が、男の仮面を剥いでしまった。

『そんな目で、俺を見るな……!』
 少年と笑いあうその姿からは想像すらできない胸のうち。

464 : ヘルダイバー ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:41:59.71 ID:Vik+fnZQ [6/9回発言]

『俺は、お前らを騙してるだけなんだぜ?』
 それは、ユーゴーが今まで危険視していた彼の人物像とも違う。
 この男は単なる戦闘狂というわけではないようだ。

「んじゃ、俺らは行くわ」
 刃の頭を乱暴にワシャワシャ撫で、流は別れを告げる。
 ひらひらと手を振って、どこかへ歩き出した。
 彼らと一緒に行動していくものだと思っていたユーゴーは、突然の別行動宣言に驚き慌てる。

「なんでだよ。一緒に行こうぜ」
「……探し物があるんでね」
 彼を信頼しきっている刃も、もちろん不満を訴えた。
 だが男の心は決まっているようで、少年の呼び止める声を聞く耳ももたない。

「ユーゴー、心配ならあいつらに付いてってもいいんだぜ?」
 たしかに、未だ精神が不安定なチェリッシュは心配だ。
 幼い刃だけでは心もとない。
 ユーゴーが一緒についていてやるのが懸命であろう。
 だが……。

『こんな甘ちゃんどもに構ってる暇はねぇ。殺し合いする武器を見つけねえといけないんだ』
 さらに注ぎ込まれる黒い思惑。
 彼もほうっておくわけにもいかなかった。
 殺し合いに乗り気な分、一人にするのは危険だ。
 先ほどの不可解な思念のこともある。
 まだ、全貌が見えないこの男から目を離すわけにはいかない。

「ごめんね、刃くん。私もいくわ」
「ユーゴー……わーったよ」
 刃と流を交互に見比べ……彼女は危険な男についていくことを告げた。
 勝手に歩いていってしまっている男の背中を、駆け足で追いかける
 刃も追いかけようとしたが、チェリッシュを一人置いていくわけにもいかず、諦めて彼女たちを見送ることにしたようだ。

「チェリッシュさんのこと、しっかり守ってあげてね」
「おう、任せてくれ。俺たちの仲間に会ったらよろしく言っといてくれな!」
 手を振る刃の後ろで座るチェリッシュと眼が合った。
 微笑みかけると、彼女も僅かにだが笑みを返す。
 これなら大丈夫だろうと、天使は少年たちに背を向けて走り出した。
 秋葉流という男を見極めるために。


【A-4 南部 一日目黎明】

【ユーゴー・ギルバート】
[時間軸]:カリヨンタワーのキース・シルバー戦直後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:カマキリジョーの着ぐるみ@金色のガッシュ、ヒーローババーンの着ぐるみ@うしおととら、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いを止める。どうにかして秋葉流を説得する。
※制限によりテレパシー能力は相手の所在が分かる場合のみにしか発動できません

【秋葉流】
[時間軸]:SC28巻、守谷の車を襲撃する直前
[状態]:健康
[装備]:鋼金暗器@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~1、基本支給品一式
[基本方針]:本気を出せるような強者と戦う。そのための武器を探す。

465 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/04(水) 19:43:41.16 ID:Vik+fnZQ [7/9回発言]


【A-3 北部 一日目黎明】

【チェリッシュ】
[時間軸]:ガッシュ戦直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3
[基本方針]:テッドに会いたい

【鉄刃】
[時間軸]:織田信長御前試合の直後
[状態]:健康
[装備]:超振動ナイフ@ARMS
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[基本方針]:殺し合いには乗らない。チェリッシュを守る。



【支給品紹介】

【透明の巨大クマちゃん@からくりサーカス】
『最後の四人』の一人、ディアマンティーナの切り札。
飲み込んだ相手を内部に閉じ込めて大爆発する。

466 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 19:45:03.83 ID:Vik+fnZQ [8/9回発言]
以上で投下終了です。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

467 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/04(水) 21:20:06.81 ID:NzmhhMh0 [1/1回発言]
投下乙

日本番長、「それ」を喰らっても平気な顔してるんだろうなぁ…
とはいえ、小さくても着実にダメージは受けてるから、絶対に倒せないワケではない!
同クラスの猛者も結構いるし…
流も、納得のいくであろう相手は他にもいそうだ

468 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/04(水) 21:53:32.08 ID:emFfCW5Z [1/5回発言]
投下乙
才能の塊という点では、日本番長も流兄ちゃんが気になる相手ではあるだろうけど……
しかし、それだけじゃダメなんだよなぁ
そんな兄ちゃんと刃の会話はいいね。こういうタイプは好きだろうなー……うむ、だからこそ、だよな
うわー、ユーゴーもつれーポジションだわなー。動くに動けん

一点、疑問に思ったことを
A-4南部とA-3北部とのことですが、それだと丸二エリアほど離れていることになってしまいます
A-3南部とA-4北部、ではないでしょうか。

469 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/04(水) 22:01:14.90 ID:Vik+fnZQ [9/9回発言]
>>468
すいません、間違えました。
刃たちがA-4 北部でお願いします。
指摘ありがとうございました。

470 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/04(水) 23:50:57.28 ID:emFfCW5Z [2/5回発言]
推敲が終わり次第、投下します。

471 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/04(水) 23:57:23.55 ID:emFfCW5Z [3/5回発言]
投下します。

472 : レッツゴーレッカマン ◆hqLsjDR84w : 2011/05/04(水) 23:59:31.25 ID:emFfCW5Z [4/5回発言]
 ◇ ◇ ◇


「宣戦布告じゃっ!!」


 ◇ ◇ ◇


 商店街の一角に、小さな小さなおもちゃ屋さんがありました。
 しかしながら、いまはお月さまが空に浮かんでいるような時間です。
 おもちゃで遊ぶような子どもは、もう夢のなかに遊び場を移しています。
 ならば、おもちゃ屋さんが営業なんてしているはずもありません。
 店員は一人もおらず、お店の照明も落としてしまっています。
 ですが、だというのに、真っ暗なおもちゃ屋さんのなかに一人の少年がいました。

 ツンツンと立てた黒い髪。
 黒いTシャツにジーンズ。
 左の頬っぺたには絆創膏。
 そして右手に銀色の籠手。
 腕に刻まれた七つの漢字。

 実は彼はただの少年ではなく、なにがあってもお姫さまを守る忍者なのです。
 けれど、彼が忠義を誓ったお姫さまは悪い人間にさらわれてしまいました。
 忍者仲間たちと一緒に助けに行こう――というところで、殺し合いなどを命ぜられてしまいました。
 そんな指示に従う気は、忍者の少年には欠片もありません。
 忍者とて、誰の言うことも聞くワケではないのです。
 とはいえ、どうにかしていち早く帰還してお姫さまを助けねばなりません。
 どうしようかと、忍者少年は考えました。
 帰るためには、まず仲間たちと合流し、かつ殺し合いに乗り気な輩を倒さねばいけません。
 ならば、とにもかくにも人を集めねばならない。
 見ただけで仲間たちが集まって来るような道具が、ここにはあるに違いないだろう。
 そう結論を出して、少年はおもちゃ屋さんに来たのです。

 がさごそ、がさごそ。
 がさごそ、がさごそ。
 がさごそ、がさごそ。
 がさごそ、がさごそ。

 少年は、ひたすら何かを探しています。
 お目当てでないものは、乱暴に後ろへと投げ捨ててしまいます。

 大きなクマのぬいぐるみが、ボヨンと床を跳ねていきました。
 プラスチック製のバットが、コロコロと転がって行きました。
 柄の長い虫取り網が、カランと音を立てて床に当たりました。
 喋る人形が、衝撃を受けてモルスァとだけ言って黙りました。
 ロボットのプラモデルが、ガシャンとバラバラになりました。
 モデルガンは少し眺められたのち、やっぱり投げられました。

473 : レッツゴーレッカマン ◆hqLsjDR84w : 2011/05/04(水) 23:59:53.47 ID:emFfCW5Z [5/5回発言]

 そして、ようやく。
 目的の品を見つけて、少年はにひひと笑いました。
 笑みを隠そうともせずに、勢いよくおもちゃ屋さんを飛び出します。
 自分で投げたバットに躓きましたが、何事もなかったかのように起き上がって外に出ました。
 傾きつつあるお月さまを眺めて、親指と人差し指を擦りあわせます。
 すると、指と指の間から火花が散りました。
 少年はただの忍者でなく、忍者軍団の長である炎術士なのでした。
 発現させた炎でもって、少年は発見した打ち上げ花火の導火線に火を点けます。
 ヂリヂリ音を立てて、火は筒状の花火本体へと進んでいきます。
 完全に筒のなかに炎が呑み込まれて、ほんの一瞬だけ静かになり――筒の先端から火の玉が発射されました。

 ひゅるるるる――と。
 お月さまの顔目がけて、火の玉は飛んで行きます。
 もう少しで届くかな、というところで。

 ぽんっ――と。
 火の玉は妙に軽快な音を鳴らしながら、大きな一輪の花となって夜空に咲き誇りました。

 花はすぐに消えてしまいましたが、その明るさゆえにしばらくは見た者の視界に残り続けます。
 辺りに焦げ臭さが漂うなかで、少年は目を細めました。



【D-4 商店街おもちゃ屋前/一日目 黎明】

【花菱烈火】
[時間軸]:24巻236話『-要塞都市-SODOM』にてSODOMに突入する寸前。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み、花火ではない)
[基本方針]:仲間たちと合流し、プログラムを破壊する。

474 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/05(木) 00:00:21.09 ID:l4Kwcm4E [1/1回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘お願いしますね。

475 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/05(木) 00:14:21.19 ID:0n4mTOuq [1/2回発言]
投下乙!
烈火といえば花火だが、ロワではどうだろうかw
参戦時期的にも頼もしい対主催はあるのだが……考える前に行動はサンデーキャラらしい。
位置的に、寄ってきそうなのにロクなやつがいない件w

476 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/05(木) 00:26:04.10 ID:L4+JiTwr [1/1回発言]
投下乙です

>>462に誤字を見つけたので指摘を
おそらくは、チェリッシュが『放していた』ゼオンとかいう魔物。
この部分は『話していた』の誤変換かと思われます

477 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/05(木) 01:42:01.12 ID:0n4mTOuq [2/2回発言]
>>476
仰るとおりです。wikiで修正します。
指摘ありがとうございます。

478 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/06(金) 21:33:39.19 ID:4dAMrL3X [1/1回発言]
投下乙です

おま、ここで花火は死亡フラグじゃないのかw

479 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/06(金) 22:17:56.81 ID:mINmme3P [1/1回発言]
投下乙です
烈火らしいなw
だがファービーを捨てるなんてとんでもない

ところで首輪ってどうなってんだろ
金剛兄弟とか小さい首輪程度じゃびくともしなさそうだが
ジャバウォックになっても首輪が壊れないとすると伸縮自在ぽいが

480 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/07(土) 00:23:35.48 ID:99WitTkz [1/1回発言]
つ ご都合主義


大剛院邪鬼が小さくなったのと同じ理由。

481 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/07(土) 14:15:37.47 ID:/hMfPYFi [1/1回発言]
D-4で花火を打ち上げたとなると、ギィや憲兵番長からは確実に見える
シルベストリや佐々木小次郎も花火を見ることができるだろう
下手するとC-3に居らっしゃるアシュ様からも見える

何このマーダーホイホイ

482 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/08(日) 23:28:56.72 ID:5NJm0XY/ [1/1回発言]
D-4の周囲にいればに十分見えるだろうな
すげえ事になりそうで楽しみ
マーダーホイホイwwww

483 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/09(月) 21:44:13.47 ID:oA2AghJA [1/1回発言]
隣のエリアに小金井もいるにはいるんだけど、室内なんだよなw

484 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/10(火) 01:18:43.14 ID:l/xHkyF4 [1/1回発言]
そんなこんなで武蔵の予約来たね

全員予約済みオメ!

485 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/12(木) 06:12:20.78 ID:8Hsbnl8j [1/5回発言]
それでは、投下します。

486 : トラッシュ ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/12(木) 06:13:26.30 ID:8Hsbnl8j [2/5回発言]
 闇夜の元を悠然と進む、二人の老兵。
 彼らが目指す先は近場の小学校だ。
 少しばかり急ぎ足なのは、両者共に探し人がいるからであろうか。
 しかし、そんな彼らをあざ笑うかのごとく、殺し合いという残酷な現実がその歩みを阻む。

「お盛んなことだねぇ」
 遊園地を出た二人は、さっそく足止めを食うこととなってしまった。
 暗き森に突如現れたのは、大地に転がる死体だ。
 だが、老婆は微塵も動じることない。
 それも当然のことだろう。
 彼女は最古のしろがね、ルシール・ベルヌイユ。
 自動人形との、永きにわたる戦いを繰り広げてきた女である。
 その悠久の生命の最中では、屍など飽きるほど目にしてきた。
 今さら見知らぬものが死んでいたからといって、狼狽するはずもない。

 そんな彼女とは対照的なのが、白髪の男性。
 遺骸を憐れんで、彼は僅かに目を細める。
 名を蒼月紫暮という。
 妖を滅ぼす『獣の槍』の伝承者である少年の父親であり、光覇明宗最強との呼び声高い法力僧だ。
 紫暮は無言で膝をつき、物言わぬ青年の瞼をそっと閉じてやる。
 彼の腹には大きな穴が開いており、それが死因となったことは明白だった。

「……素手、ですな」
「だろうね」
 両者の意見が一致する。
 普通の人間から見れば、大型の兵器でも用いたのではないかと思われるような傷跡。
 だが、彼らは道具も使わずにここまでの破壊を生み出せる存在を知っていた。
 ルシールが疑うは自動人形。人に仇成す、悪夢の現況だ。
 紫暮の方は妖。こちらはすべてが悪というわけではない。
 そのどちらにも共通するのが、人ならず物だということ。

 実際のところ、この青年を殺した下手人はそのどちらにも属してはいない。
 けれど、人間でないという一点においては、二人の予測は的中していたのだった。

「ご婦人、しばしお待ちください」
 紫暮が遺体の顔に付着した汚れをふき取り、てきぱきと着衣の乱れを直してやる。
 腹部の赤黒い血痕もどうにかしようと思案したが、手持ちの道具ではどうすることもできず、心中で青年に謝罪するに終わった。
 無念そうな死に顔をジッと眺め、紫暮は大きく溜め息を吐き出す。
 暖かな呼気は宵の風に連れられて、そこに込められた悲しみを遥か彼方へと運んでゆく。
 物言わぬ青年に背を向けると、初老の僧は支給品である鍋の蓋を用いて器用に穴を掘りだした。

「止めておきなよ。関わる義理はないはずさ」
 彼が墓穴をこしらえようとしているのに気づき、ルシールが静止する。
 こうしている間にも、彼らの探し人が誰かを殺し、もしくは誰かに殺されてしまっているかもしれないのだ。
 縁も所縁もない小僧の亡骸に構っている時間など、彼女にとっては無駄なものに他ならなかった。
 懸念事項はそれだけにとどまらず、彼を殺した異形がまだこのあたりにいる可能性は高い。
 もし、それが自動人形であった場合、たたでは済まないだろう。
 万全の状態で戦ったとしても苦戦は必至。
 呑気に穴なぞ掘っていては、間違いなくこの青年と同じ末路をたどる事になる。

「これでも僧侶の端くれなもので」
「…………フン」
 紫暮は優しき声を以ってして、ルシールを諭す。
 不満そうに鼻を鳴らしながらも、彼女はそれ以上の文句は言わなかった。
 男の背中から漂う張り詰めた気配を感じたからだ。
 いつ襲われても対応できるように、周囲に警戒を張り巡らせているのだろう。
 これならば、たとえ自動人形が襲ってこようとも、即死という最悪の事態だけは回避できる。
 即死だけならば、の話ではあるが。

487 : トラッシュ ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/12(木) 06:14:16.19 ID:8Hsbnl8j [3/5回発言]

「これでも僧侶の端くれなもので」
「…………フン」
 紫暮は優しき声を以ってして、ルシールを諭す。
 不満そうに鼻を鳴らしながらも、彼女はそれ以上の文句は言わなかった。
 男の背中から漂う張り詰めた気配を感じたからだ。
 いつ襲われても対応できるように、周囲に警戒を張り巡らせているのだろう。
 これならば、たとえ自動人形が襲ってこようとも、即死という最悪の事態だけは回避できる。
 即死だけならば、の話ではあるが。

「まだ、やりたいことも多かっただろうになぁ」
 銀の円盤で土をかきながら、悲しそうに呟いた。
 若くして倒れた青年を、自分の息子と重ねているのかもしれない。
 彼の肉親である蒼月潮も、この殺し合いに参加させられていた。
 もしかしたら、数時間後にはこの光景が我が子を埋葬するソレに変わるのかもしれないのだ。

「くだらない感傷はお止めよ。そいつが善人だった証拠はないんだ」
 ルシールが青年の傍らに転がっていたバットらしきものを拾う。
 強い力で砕かれた金属棒は、元の半分ほどの長さしか残っていない。
 落ちていた位置などから推測するに、これは明らかに青年が振るっていたものだ。
 彼がこれを用いて誰かを襲い、返り討ちにされたということも考えられないわけではない。
 得体の知れない仏を同情するだけ無駄というものだ。
 それを分かっていながらも、紫暮は黙々と青年のための棺を掘る。
 横目で睨んだ彼の顔から伝わる人間臭さを痛いほど感じ、ルシールは「それに……」と言葉を続けた。

「死ねるなら、それはそれで幸せなのさ」
 自らの銀色の髪の毛を指で梳かす。
 人形破壊者の呪われた運命を思って。
 彼女たちは、かつて死ななかったから、人間ではなくなった。
 今も死ねないから、ずっと苦しんでいる。
 安らかな眠りにつけるということは、それはある意味で幸せなことなのだ。

「えぇ、本当に」
 この僧は、しろがねたちの背負ったものなど何にも知らない。
 それなのに、彼はルシールの言うことに同意した。
 一瞬の躊躇もなく。
 揺るぎもなく。

「生きて戦い続けることが、もっともつらいのです」
 遠き誰かを想っているかのような声であった。
 風に乗っても届かないほど悠遠な、誰かを。
 最古のしろがねは、にごり切った眼で男の背中を見つめる。
 彼の警戒は、微塵も緩むことはなく。



 しばらくの後、青年の身体は冷たい地中に還された。
 こんもりと盛り上がった土に向け、紫暮が落ち着いた声で念仏を唱える。
 彼は天に昇っていくのだと信じながら。
 さすがに慣れたもので、弔いの儀式はあっという間に終了した。

「名も知らぬ青年よ、安心しなさい。あの世は年中無休だ」
「なんだえ、そりゃ?」
 エゴだと分かっていても、紫暮は少しでもやさしい言葉で見送ろうとする。
 しかし、彼のその言葉選びに、老婆がすかさずツッコミを入れた。

488 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/12(木) 06:15:47.27 ID:8Hsbnl8j [4/5回発言]

「いやぁ、急に思いつきまして…………」
「みっともないからお止め」
「ですな、ちょっと酷かったですな。ハハハハハ……」
 彼女の言葉で我に返った法力僧が、たまらず乾いた笑いでごまかす。
 咄嗟に思いついたことを考慮しても、あまりにダサいフレーズだ。
 もし、こんな決め台詞を放つものがいるとすれば、余程センスのない人間なのであろう。
 今のは異常事態のせいで気に迷いが生じただけなのだと、綺麗さっぱり忘れることにした。

「墓標もないが……」
 去り際、小さな声で青年に謝罪する。
 こんな状況なのだから、仕方がない。
 ちゃんと成仏させられるだけ幸せというものだ。
 ……と、先を歩いていたルシールが突如として踵を返し、盛り土の前で立ち止まる。
 そして、先ほど拾ったバットを、茶色の布団に突き刺した。
 墓碣代わりということらしい。

「よろしいのですかな?」
 薄っすら笑みを浮かべつつ、尋ねる。
 対するルシールは、相変わらずの鉄面皮だ。
 それでも、紫暮は彼女の新たな一面を見た気がした。
 真ん中から折れてしまっているとはいえ、金属バットの攻撃力は侮れない。
 貴重な近接武器として、少なくとも鍋蓋よりは重宝しただろうに。
 感傷的になることを否定した彼女にしては、随分と人間じみた行為だ。

「…………そんな下品なガラクタは要らないのさ」
 開いた両手を掲げながら、ルシールは再び歩き出す。
 その小さな背中を、紫暮が頭をかきながら追いかける。
 不意に気配を感じて振り返ると、月夜に照らされた金属バットがにわかに輝いた。
 ……ような気がした。


【A-3 一日目 黎明】

【ルシール・ベルヌイユ@からくりサーカス】
[時間軸]:真夜中のサーカス襲撃直前
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM84
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(確認済み)
[基本方針]:ドットーレを最優先で探し、殺す。小学校へ行く。


【蒼月紫暮@うしおととら】
[時間軸]:詳しくは不明だが、とらとは面識がある状態、かつ白面を倒す前からの参加
[状態]:健康
[装備]:鍋の蓋
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(未確認)
[基本方針]:潮、ドットーレを探す。小学校へ行く。
[備考]:ルシールを少しだけ警戒しています。

489 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/05/12(木) 06:16:46.17 ID:8Hsbnl8j [5/5回発言]
以上で投下終了です。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

490 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/12(木) 07:05:17.88 ID:K7JcfRKG [1/1回発言]
投下乙!
なんだろうこの……全体に漂う味わい深さは……素敵だなぁ。
二人の死人に対する態度がすごく『らしい』。いいコンビになってほしいな。
近くのドットーレに会ったらどうなるんだw ギイや潮もそこまで遠くにいるわけじゃないし、今後が気になりすぎるっ

改めて乙! 次も期待しています。

491 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/14(土) 03:35:30.60 ID:b380X4J8 [1/1回発言]
投下乙
誰の死体だっけと思って読んでたけど、バットでようやく気付いた。水鏡か
しかしこのジジババコンビも、いちいちかっこいいな。言葉ひとつひとつに重みがあるぜ
……そして念仏ww

492 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:06:04.14 ID:FxsFL864 [1/9回発言]
投下します。

493 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:06:26.85 ID:2z/pcP9b [1/7回発言]
 

494 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:06:42.81 ID:H+qSA5lp [1/4回発言]
 

495 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:07:02.78 ID:FxsFL864 [2/9回発言]
 ◇ ◇ ◇


 振り放けて

 三日月見れば

 一目見し

 人の眉引き

 思ほゆるかも――


 ◇ ◇ ◇


 真上にあった満月はだいぶ西側に傾いている。
 とはいえ空はまったく白んでおらず、朝が来るにはまだ時間を要するようだ。
 通常ならばしんと静まり返っているはずの深夜の山中では、草木が激しく揺れる音が響いていた。
 風はほとんど吹いておらず、夜行性の動物が駆け回っているワケでもない。
 一人の少年が、足早に山頂へと進んでいるのだ。
 和服の上に学ランを羽織った彼は、桐雨刀也。
 桐雨流居合術を学び、師から皆伝の証たる秘剣を託された熟練者である。
 そして自身のスジの通らぬ思想を打ち砕いた金剛番長のためならば、命を捨てる覚悟を持つ。
 女性と間違えてしまいそうなほど中性的でか細い外見をしているが、その実は青白く煌めく――抜き身の刃。

 そんな男である桐雨刀也。
 またの名を――居合番長。

 山道を音を立てず移動する術程度なら、彼は知っている。
 だというのに、周囲に自身の存在をアピールするような行為をしているのには理由があるのだ。
 殺し合いの舞台でこのように居場所を示せば、最後の一人を目指す参加者は向かってくるであろう。
 当然である。足音も殺せぬ素人ならば、あえて『待ち』を選ぶ理由などないのだから。
 戦う術を持たぬ常人の世界の住人と思い込んで、仕掛けてくるだろう。
 桐雨は、それを待っているのだ。
 金剛番長の実力ならば、降りかかる火の粉など払えるのは明確だ。桐雨とて、重々承知している。
 ただ、火の粉ではなく業火となれば話は別だ。
 参加者名簿には、金剛番長の兄である日本番長の名が記されていた。
 兄弟ともに行方が知れなかったというのに、どのようにして彼らを呼び出したのか。
 気にかかるが現状考えている暇はない、と桐雨は結論付けた。
 もしも日本番長が思想を改めていなかった場合、確実に殺し合いに乗る。
 『キース・ブラックの指示に従う』のではなく、『目的のためにキース・ブラックを含めて全員殺害する』はずだ。
 そうなってしまえば、もはや金剛番長以外に止めることは不可能である。
 この場にいる他の番長の力を総動員したところで、日本番長相手には足止めくらいしかできない。
 ならば業火は金剛番長に任せるとしても、その他の火の粉を引き受ける。
 殺し合いに乗り気の人間を極力排除することこそが、己のなすべき使命だと桐雨は判断した。
 爆弾付き首輪の解体には、工学に詳しくないので役に立たない。
 主催者が八十人もの参加者を集めた方法も、一度にバラバラの場所へと移動させた方法も、予想すらできない。
 桐雨にあるのは刀だけなのだから、刀を振るうだけだ。

496 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:07:28.95 ID:2z/pcP9b [2/7回発言]
 

497 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:08:47.42 ID:2z/pcP9b [3/7回発言]
 

498 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:08:49.35 ID:FxsFL864 [3/9回発言]

「頂上が見えてきたな」

 桐雨はわざわざ目的地を口に出して、戦闘経験がないかのように演じる。
 一度会場中心部に到達してしまえば、隅に戻るのにはかなり時間がかかってしまう。
 仕掛けてくる参加者を外側から燻り出そうという考えもあり、一度会場の端に向かうことにしたのだ。

「――ッ」

 登頂して周囲を見渡そうとした途端、桐雨は息を呑んだ。
 わざと上げるつもりであった声さえ、噛み殺してしまう。
 袖に隠したトンファー型の刃物『神慮伸刀』を握る力が、意図せず強くなる。
 木々が少なく見晴らしのいい頂きまで来て、ようやく東から山頂へと歩む男の存在に勘付いたのだ。
 桐雨流居合術の神髄は気配を読むことであるにもかかわらず、男を認識できていなかった。
 その事実を受け止め、桐雨は男を見る目を鋭くする。
 学ランこそ纏っていないものの、服装は桐生と同じく和服。
 腰には刀を携えている。鞘に納まっており刀身は確認できないが、鍔は獣の頭骨に酷似しており禍々しい。
 身長は高く、身体はほとんど隠れているが服の上からでも鍛えているのが見て取れる。
 精悍な顔立ちをしており、頭髪はなく――そして。
 額からは、左右二本の角が生えていた。

「物の怪か……ッ」

 現在、桐雨は奇術師の女性と同棲中だ。
 ゆえにアクセサリーや特殊メイクについてはある程度知っており、分かってしまう。
 男の額から生えるのは、正真正銘自前の角だ――と。
 特殊な体質をした知り合いならば、桐雨には片手で数えきれないほどいる。
 しかし、異常体質ゆえに人間離れしてしまった人間である彼らとは違う。
 『特殊な人間』などではない。そんなものであるはずがない。
 先ほどまで感じなかったのを疑問に思うほどに溢れる威圧感が、雄弁に物語ってた。
 桐雨は、リュックサックを遠くに放り投げる。
 これから激しく動くことになるのは明白。そうなれば、荷物など邪魔なだけだ。
 何しろ――相手は火の粉ごときではない。

「くッ! くは! ははは! ははッ、はははははッ!
 物の怪とは。また、随分と見くびってくれたものだな。
 我が記憶が途切れているうちに、貴様ら人間は忘れてしまったのか」

 桐雨が吐き捨てた言葉は、男の耳に届いていたらしい。
 しばし高笑いしたのち、唐突に声を抑えて切り出す。
 時折見える歯は、やけに鋭く肉食獣の牙のようだった。

「貴様たちが築いてきた文明を全て無に戻し、新たなる世界を築かんとす魔王――この、鬼丸のことを」

 底冷えするような口調に、桐雨の全身を悪寒が走り抜けた。
 直後、すでに手を伸ばせば届く間合いに這入ってきていた鬼丸から剣閃が放たれる。
 ほぼ同時に複数。どころか無数。
 桐雨は動こうともせず、そのまま身に受けてしまう。
 が、全身が斬り刻まれて血飛沫が舞うことはない。

「ほう。惑わされぬか」
「…………桐雨流は、気配を読む。紛い物にうろたえはしない」

499 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:09:35.62 ID:H+qSA5lp [2/4回発言]
 

500 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:09:44.28 ID:FxsFL864 [4/9回発言]

 相手を日本番長と同じく人外の存在と認識しながらも、桐雨に退く気はない。
 金剛番長の刃である以上、金剛番長の障害は排除するのみだ。
 袖に隠していた二本の神慮伸刀を出して、腰を低く落とす。
 その行動に思うところがあったのか、鬼丸は口角を吊り上げた。

「ふん。俺に、不遜な態度を取るか。
 思い上がりも甚だしいが、闘刃を幻と見破るほどの達人ならばしようがあるまい。
 何せこの鬼丸を除けば、最強と言っていいだろう侍であるのだからな」

 あくまで俺を除けばだが――と繰り返して、鬼丸は続ける。
 一見すれば隙だらけな状況であるが、桐雨は攻めようともせず戦闘態勢のまま硬直している。
 自分から仕掛けようものなら、即座に迎撃されてしまうヴィジョンが見えていた。
 本来の得物である日本刀ならばともかく、トンファー型の独特の刀では攻め切れない。
 ならば相手の攻撃を回避してカウンターを叩き込む、と桐雨は結論付けた。

「俺の兵とならんか」
「……なにを言っている」
「さすがにこれは貴様も覚えているだろうが、ヤマタノオロチは封印されてしまったようでな。
 この魔王剣では星そのものを破壊してしまい、文明だけを滅ぼすのには適さんからな。
 面倒なことに兵を率いねばならんが、それはこの際受け入れよう。
 問題は兵たちを束ねる者がおらぬことだったが……貴様の実力ならば、我が鬼丸軍の長となるに相応しい」

 予期していなかった言葉をかけられ、桐雨の思考が乱れる。
 困惑しながらも、時間をかけて内容を理解し――桐雨は強く歯を噛み締めた。
 低く落としていた腰を上げて、直立しながら鬼丸を見据える。

「ふざけるな! 私は、この命を金剛番長のために使うと決めた身! 下らんことをぬかすなッ!!」
「そうか」

 返答を受けた鬼丸は特に残念がりもせず、魔王剣に手を伸ばした。
 顔を赤く染めながら怒りを露にしていた桐雨は、咄嗟にバックステップを取る。
 狙っていたカウンターは放てないものの、刀身の届かない範囲まで出ることはできた。
 無理に攻撃せずとも、体勢を立て直してから反撃すればいい。
 空中でそのように考えていた桐雨の左腕が、二の腕から切断された。

「な……?」

 左腕と、握っていた神慮伸刀が宙を舞う。
 そんな光景を目の当たりにしても、桐雨は呆けたような言葉しか出せなかった。
 腕の回転に伴って、傷口から鮮血が飛び散る。
 赤黒い液体が顔にかかってやっと、桐雨は自分が斬撃を受けたという事実を呑み込めた。

「バカな……確実に回避した」

 鬼丸が行ったのは、居合であった。
 桐雨流居合術一式『瞬』を思わせる高速の居合であったが、その弱点を桐雨はよく知っている。
 弱点と言うより、刀を使う以上仕方がない欠陥とでも言うのが正しいが――
 当たり前のことに、刃の届かない範囲は斬ることはできないのだ。
 だというのに。
 そのはずなのに。
 漆黒の刀身が届かぬ範囲にあった左腕が、いともあっさり斬り落とされた。

「理解できない、といった表情だな」

 鬼丸は白く鋭い牙を見せながら、鞘に納めた魔王剣を構えている。
 距離を詰めようともしない。
 むしろ、いつの間にやら先ほどよりも離れている。
 刀身が届かずとも斬れるのだと、口には出さずとも断言していた。

501 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:10:25.59 ID:FxsFL864 [5/9回発言]

「さらばだ」

 斬撃の正体を見極めきれていない桐雨に、死刑宣告が下された。
 柄を握りながら、鬼丸は呼気を整えている。
 居合の構えを前に、桐雨は取るべき行動を選択した。
 残った右の神慮伸刀を握り、呼気を整える――同じく居合の構え。
 しかし、ここに大きな問題が生まれる。
 鞘から抜き放つ一連の動作あっての居合であるが、神慮伸刀に鞘はない。
 ただ、桐雨はこれまでの人生において常に日本刀を携えてきた。
 鞘の感覚など、とうに染み付いている。
 どういう刀が、どのような鞘に納められるのか。
 刃の形状に対して、鞘のサイズはどう変わるのか。
 感覚として、身体が知っている。
 染み付いている、のだ。
 ゆえに、桐雨には――居合番長には見えている。
 神慮伸刀の奇妙な形状の刃を覆う鞘が。
 たしかに、見えているのだ。
 鞘があるのならば、鞘がある刀を携えているのならば――居合番長が居合をできぬ道理はない。
 無論、片腕であろうとも関係などない。

「桐雨流居合術裏一式『葬』!!」

 黙視できぬ鞘から抜刀した刃は、周囲の大気を根こそぎ払いのける。
 居合番長を中心として、刀身を半径とした球状の真空空間を作り出す。
 その技こそが、『葬』。

「貴様の妖術の正体は分からぬが……掻き消すのみ! 魔王よッ、辞世の句を詠むがいい!!」

 『葬』による真空空間は、使い手以外のすべてを塵と変えてしまう。
 鬼丸の放つ斬撃の正体は見抜けていないが、仔細ないのだ。
 攻撃を霧散させられた鬼丸は哄笑して、抜刀した魔王剣を前に出す。

「ハハハハッ! 一度凌いだくらいで勝ち誇るとは片腹痛い……が、褒美をくれてやろう」

 獣の頭骨じみた鍔が、煌々と輝く。
 装飾されている宝石が、激しい光を放っているのだ。
 黒ずんでいた珠の、ほんの一部分だけ。
 一割にも満たない箇所だけが、琥珀色に変わっていく。
 さながら三日月のように。

「魔王剣の実力を見るがいい」

 鬼丸の周囲を闇色のオーラが覆う。
 時折、闇の中を青白い火花が散っている。
 掲げられた魔王剣と呼応するように、闇が大気中を漂う。

502 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:10:55.44 ID:FxsFL864 [6/9回発言]

「伸びよ、神慮伸刀」

 不可視の斬撃以上に得体が知れない存在に対しても、居合番長はスタイルを変えない。
 元より、刀だけを極めた身だ。
 刀以外を頼ることなどできるものか。
 取る行動も同じだ。
 居合番長が、居合以外に身を委ねるワケがない。
 そんなことをしてしまえば、その時点で敗北だ。
 すでに、黙視できぬ鞘に刃を納めてある。
 神慮伸刀の能力により刀身は、ゆうに十メートルを超えている。
 それでも、問題はない。
 居合番長の生きてきた道が、これまで見たことのない刀にだって鞘を作り出す。
 ひたすらに技を磨き続けてきた日々は、居合番長を裏切らない。
 だから、鞘はさしたる時間を要さずに完成した。
 目には見えないし触れもしないが、たしかに神慮伸刀を収納済みだ。
 先ほど以上の体積を誇る真空空間を作り出す準備は、これで完了した。
 腕を落とされた際の傷から、血は垂れ流され続けている。
 止血もせずに、身体をフルに捻って居合を放ったのだ。
 身体が冷えていく感覚に支配されつつあり、意識も朦朧としている。
 が、身体が覚えた居合を行うのには、ほんの少し意識が繋がっていれば十分だ。

「鬼丸流魔王三日月剣!!」

 鬼丸が、勢いよく魔王剣を振るう。
 立ち込めていたオーラが集束して、巨大な三日月となって居合番長へと迫る。
 もはや、居合番長の視界はおぼろげだ。
 ほとんど見て取れないが、気配は読める。
 意識を手放しかけていても、桐雨流居合術は手放しはしない。
 『葬』で三日月を掻き消し、攻撃を放った直後で隙だらけの鬼丸を斬る。
 やり遂げたあとは倒れてしまうだろうが、やり遂げる前に倒れる気はさらさらない。

「桐雨流居合術裏一式『葬』ッ!!!」

 声を張り上げて身体に喝を入れながら、居合番長は神速の居合を成し遂げた。
 刀身が伸びた神慮伸刀を振り切ったことで、十メートル超の真空空間が居合番長を包む。
 混濁した視界のなかで、月だけがやけに明瞭だった。
 あまりに鮮明な三日月に、居合番長は同棲している奇術師の娘を連想した。


 ◇ ◇ ◇

503 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:11:16.07 ID:2z/pcP9b [4/7回発言]
 

504 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:11:50.85 ID:H+qSA5lp [3/4回発言]
 

505 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:11:54.58 ID:FxsFL864 [7/9回発言]


 使い手の悪意をエネルギーと変換する魔王剣。
 漆黒の刀身自体もかなりの切れ味を誇っているが、真なる力は別にある。
 糧とした悪意を増幅させエネルギーの塊として射出する。
 それこそが、魔王剣の神髄。
 エネルギーの大きさによって、三段階に分類されている。

 すなわち――
 第一段階『魔王三日月剣』、第二段階『魔王半月剣』、最終段階『魔王満月剣』。

 限界までエネルギーを溜めて放つ魔王満月剣の威力は、惑星を一つ全壊させてしまうほどだ。
 魔王半月剣でも数回放てば惑星破壊は可能だろうし、三日月剣でさえ都市を破壊可能である。
 その威力のでたらめさゆえに、鬼丸は兵を欲しているのだ。
 古代の化物であるヤマタノオロチでさえ、破壊力という観点では魔王剣に劣っている。
 何せ、フルパワーの魔王満月剣は地球から放って、異なる惑星を粉砕したのだから。

 そう、宇宙を突き進んで惑星を破壊したのだ。

 つまり――――魔王剣にとって、真空など障害になりえない。

「く、はははッ!」

 鬼丸は、なかなか笑いを抑えることができなかった。
 居合番長を下したことが嬉しいワケではない。
 達人を下したことでようやく、魔王鬼丸の再誕を実感しているのだ。
 鉄刃に角を斬り落とされ、記憶が途切れてしまっていたが――やっとまた現世に舞い戻ることができた。
 半ばで頓挫した新しい帝国を作る計画に、また取り掛かることができる。
 再誕直後に負っていたダメージも、魔王剣のエネルギーによって完治した。
 一しきり哄笑を続けてから、鬼丸はようやく魔王三日月剣を放った方向に視線を飛ばす。
 そこには、なにもない。
 三日月に飲み込まれた男は、衣服ごと完全に消滅した。
 長く伸ばしていた刃もまた、一片たりとも残ってはいない。
 地面は三日月状に抉られ、そこに生えていたであろう草木さえも消え失せている。

「なあアンタ」
「おい貴様」

 圧倒的な破壊に伴って、派手な音を響かせてしまったのか。
 それぞれ異なる場所から、山頂にいる鬼丸は声をかけられる。
 返答するより早く、声の主はどちらも言葉を続けた。

「その転がってるヤツさ、俺の知り合いが持ってたんだけどよ……どーいうこった」
「その奇妙な形状の剣の持ち主は、私の顔馴染みなのだが……どうなっているのだ」

 歩み寄ってきた声の主は、リーゼントの少年とボディビルダー体型の金髪青年。
 別々の方向から来たというのに、二人とも同じ方向を見据えている。
 視線の先にあるのは、トンファー状の剣――と左腕。
 完全に消滅したと思っていた男が一部分だけ残っていた事実に、鬼丸は微かに口元を吊り上げた。
 それが癇に障ったのか、少年と青年は声を荒げた。

「何しやがったか聞いてんだッ!!」
「何をしたのかと聞いているッ!!」

506 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:12:01.21 ID:2z/pcP9b [5/7回発言]
 

507 : 振り放けて三日月見れば一目見し ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:12:23.52 ID:FxsFL864 [8/9回発言]



【桐雨刀也(居合番長) 死亡確認】
【残り71名】


【D-1 北部裏山/一日目 黎明】


【ボー・ブランシェ】
[時間軸]:COSMOS戦にて死亡後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:弱者を助けつつ、主催者を倒す。


【テッド】
[時間軸]:ファウード戦合流前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:チェリッシュの捜索。


【鬼丸猛】
[時間軸]:24巻、刃との闘う直前
[状態]:鬼化、健康
[装備]:魔王剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:鉄刃、コウ・カルナギを斬る。出会った者も斬る
※魔王鬼丸としての記憶を取り戻しました。



【備考】
※桐雨刀也の身体は、斬り落とされた左腕を除いて消滅しました。
※神慮伸刀@烈火の炎の片方が、消滅しました。
※桐雨刀也のリュックサック、桐雨刀也の左腕、神慮伸刀@烈火の炎(片方)が、D-1北部裏山に放置されています。

508 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/15(日) 16:13:08.61 ID:FxsFL864 [9/9回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。

509 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:23:13.09 ID:H+qSA5lp [4/4回発言]
投下乙です!

鬼丸かっけえw
横一文字から三日月剣。まだまだ底が見えないな
魔王時代の記憶を取り戻した…だと……!?

最後のテッドとボーのW叫びによるヒキは熱いなw

510 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 16:27:54.09 ID:2z/pcP9b [6/7回発言]
投下乙

比喩ではなく本当に鬼に戻るとはw
桐雨の最後の一撃も苦もなく踏みつぶす魔王様マジ危険

511 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 20:07:41.92 ID:wNoenhvC [1/1回発言]
投下乙
この鬼丸やばい、やばすぎる
剣十郎の修業も身に付いてるし、カルナギ戦の怪我も完治してるとは…
せめて満月剣に制限付いてないとキツいぞ…

512 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 20:53:23.46 ID:Q42kikq7 [1/2回発言]
投下乙です
YAIBA知らんけど一番弱い技でこれは強すぎる…
対主催多すぎと思ってたけど、日本番長といい不安になってきたw

ところでAJINORIさんはどうしたのかな?

513 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 21:39:17.75 ID:4KFXhMZH [1/1回発言]
>>512
本文中にも書かれてるけど、フルパワーの魔王満月剣は惑星破壊レベルだからなw

514 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 22:20:14.38 ID:Q42kikq7 [2/2回発言]
それを聞くと
多ジャンルで未把握の影月や後藤無双を見たときの気分になるわw

515 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 23:24:05.19 ID:2z/pcP9b [7/7回発言]
いやまあ、規模的にはそれたとも比べ物にならんのだがなw
何が恐ろしいってこの惑星破壊は「流れ弾で」破壊したことだよ

516 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/15(日) 23:27:35.68 ID:XL+yYHEv [1/1回発言]
投下乙
魔王鬼丸復活!!
こいつはやばいぜ。闘刄まで使いこなしているし、原作以上の最強バージョンじゃないか
そんな鬼丸相手に引かなかった居合番長はアッパレ。鞘がなくても居合いは可能とか、金剛番長のキャラしてんなw
相性悪かったけど、この巨大葬はかなり恐ろしい技だったと思う。ボーとテッドの叫びに痺れるけど怖いなーw

517 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/16(月) 01:03:07.81 ID:o5tbSmL8 [1/1回発言]
投下乙です!

居合い番長かっけェェェェェェエ!!!
鞘が無いのに居合いするわ片手であそこまで闘うわ……流石番長だ
名実共に魔王になった鬼丸相手によく頑張ったよ

そしてテッドとボーの叫びも格好良すぎる!
この二人の性格だと鬼丸に挑みそうで怖いなぁ

518 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/18(水) 17:35:50.90 ID:pqHxBgvO [1/1回発言]
某所でリクエストをいただいたので、つたないなりにイメージイラストを描いてみました。

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=18971814

19話『現在位置~Where do we come from? Where are we going?~』より、
新宮隼人とキース・バイオレットのふたり。ARMSらしさ全開の会話文で構成された
パートから、非常に魅力的な光景が脳裏に浮かんできました。
◆hq氏にかぎらず、素敵なSSを魅せてくださる書き手さん方に感謝です。

519 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/18(水) 18:18:39.17 ID:rPwM8F4Y [1/1回発言]
イラスト乙です
絵を描ける人とか凄いな

520 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/18(水) 22:39:53.58 ID:7+AXwJJV [1/1回発言]
すげー! かっけえ! マジ乙です!


521 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/19(木) 05:24:20.63 ID:D7dI5zV6 [1/1回発言]
おぉぉ!!
なんというクオリティ…乙ですッ!

522 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:17:23.88 ID:dpQBhnjm [1/13回発言]
絵すげええええ! 乙! 超乙!
支援ありがとうございました


では、少々遅れてごめんなさい 投下行きます

523 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:21:41.11 ID:dpQBhnjm [2/13回発言]
花菱烈火が上げた開戦の狼煙。
一瞬で弾け、散っていった空の花。
艶やかな光と火薬の炸裂音。
異様な空気と静寂に包まれた街の中で自分の存在を全力で主張した一発。
その光は複数の参加者の目に飛び込み、その音は鼓膜を揺らす。
しかし、花菱烈火以外に火薬の芸術を楽しんだ者が何人いるだろうか。
殺し合いという異常な状況下において、不特定多数に自分の所在を教える行為。
味方を探しているのだろうか、参加者を集めて一網打尽にしようとしているのだろうか、それとも他に何か意図があるのだろうか。
打ち上げたものの真意が分からない中、呑気に楽しむ余裕を持っているものはほぼいないだろう。
近寄るか、避けるか。
この二択に生死がかかっていると言っても過言ではない。

そんな中、古の剣豪、宮本武蔵は前者を選択した。

味方になってくれそうな人物であれば、万々歳。
自分が殺し合いに参加する気はないことを伝え、共にキース・ブラック打倒の志を貫けば良い。
幼くも確かな実力と正義の心を秘めた鉄刃をはじめとした仲間もきっと同じ目的で動いている。
ならば、この場で行うべきは一人でも多くの仲間を引き込むこと。

万が一、危険人物と出会ってしまった場合は不本意ながら戦うしか無いのだろう。
年老いて全盛期の力を失ったとはいえ、伝説とも呼ばれた剣技は今も健在。
不慣れな武器とはいえども並大抵の敵なら打ち倒すことが出来るだろう。右手で持っている錫杖を力強く握りしめる。
ある程度の長さが調節が可能なそれは最短にしたとしていても、常人よりも遥かに背の低い武蔵にとっては少し身に余るものだ。
だが、それでも使いこなす自身はあった。
かつては船の櫂を使って戦ったことすらあるのだ。多少武器が長いくらいで振り回されるほどの素人ではない。
彼が唯一懸念しているのが――。

「鬼丸……あの魔王を放っておくわけにはいかん」

自分よりも格上であり、かつ殺し合いに乗った者の存在。
そう、鬼に取り憑かれ"魔王”と化した鬼丸猛。
己の愛刀を奪われている今、鬼丸が魔王剣を持っている可能性は低いと思っているが、それでも危険なのには変りない。
それに、想像はしたくないが、この場には鬼丸以上の化物が潜んでいることも考えうる。

「あやつのような者たちを野放しにすれば、多くの者達が犠牲となる。じゃが……」

右手の錫杖をやや恨みがましい目で見、そして気分を沈める。
持っている正義感には力が付いてこない。
今の彼が命を賭して鬼丸と戦ったところで勝ち目はほぼ零に近いのだから。
常人よりも遥かに長い人生の中、自分の無力を感じたことは幾度もある。が、何度思い知らされようとも慣れることはない。
皺だらけの顔に更に皺が増え、武器を握った腕がわずかに震える。
もしも出会ったものが其の様な存在だったとき、彼に取れる行動は二つ。

逃げて危険な存在がいることを伝えて回るか、花火に寄せられて近づいてきた参加者を止めるか。

524 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:22:31.56 ID:hBRLhi/7 [1/12回発言]
 

525 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:22:43.40 ID:hBRLhi/7 [2/12回発言]
  

526 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:24:09.69 ID:hBRLhi/7 [3/12回発言]
   

527 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:24:32.31 ID:dpQBhnjm [3/13回発言]
どちらにせよ、実力で上回る相手を振り切るのが前提だ。
非常に厳しいと言わざるをえないが、勝算がないわけではない。
全盛期の頃の若さと共に失った力と速さ。
その代わりに得た老獪さと熟練した技術。
この二つがあれば、打ち倒すのは不可能であろうとも逃げきることなら可能性が残っている。
歯がゆいものが残らないわけではないが、犬死するよりははるかにましだろう。

「む、おったか」

道の上に堂々と立つ人影を見つけた武蔵は気を引き締めた。
こちらに気がついていないのか、戦意がないのか、武蔵に向かってリアクションを取ることはない。
緊張した面持ちでゆっくりと距離を詰めつつ、ある程度の間隔をとったまま謎の影へと声をかける。

「お前は……ブラックの言うことに従って誰かを殺す気はあるのかのう?」

背を向ける人影へと固い意志を言葉に乗せ、問いかけた武蔵。
その声に反応し、影は振り返る。
顔立ちからして十代半ばから後半くらいであろう少年。
暗闇で多少の見辛さがあったものの、武蔵は彼の顔に見覚えがあった。

「確か最初に集められた場におった……」

少年は武蔵の言葉を聞いてニヤリと笑みを浮かべる。
次に続く言葉を期待し――――。

「ブラックにいきなり突っ込んで行こうとした馬鹿者じゃな!」
「ちょっと待てやジジイ! そこは勇敢とかカッコイイとか言う場面だろうが!」
「ええい、素性も分からんヤツにいきなり突っかかるなどアホじゃアホ!」
「うるせぇ! 表出ろ!」
「ここが表じゃろうが!」
「小さいことは気にすんな!」
「細かくはないわ!」

…………。
………。
……。

「ハァー、ハァー。と、とりあえずお前が殺し合いに反対してることはよーく分かった」
「同じく。これがもしも演技でしたってならおめーに殺されてやってもいいぜ」

数分に渡る大人げない言い争いが終わり、距離をとったまま二人は笑いあう。
激しい言葉の交わし合いは二人の共通の認識をハッキリと浮き彫りにさせた。
それは即ち、"キース・ブラックのプログラムを破壊する”こと。

528 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:26:30.60 ID:dpQBhnjm [4/13回発言]
「そういや名前聞いてなかったな、教えてくれよ」
「やれやれ、人に名を聞くときは自分から名乗るのが常識じゃろうに。
 だが今回は特別に教えてやろう! 伝説の剣豪、二刀流の宮本武蔵とは何を隠そう、このワシのことじゃ!」
「へー」

武蔵の自己紹介にいかにもどうでもよさそうな返事を返した少年。
明らかに信じていない。そのことが一目で分かった。
カチンと来た武蔵であったが、話が進まないのでグッと堪える。

「ワシはお前の名を聞いてないぞ?」
「ああ、俺は烈火。花菱烈火だ」

少年、花菱烈火の名を聞いた武蔵は、ゆっくりと彼のもとへと歩み寄る。
武器を左手に持ち替え、右腕を差し出した。

「何はともあれ、これからブラック打倒の志を共にする仲間としてワシと戦ってくれぬか?」
「悪いんだが、その手は握れねぇ」
「なっ!?」

突然の拒絶。
驚く武蔵をよそに烈火の体が炎に包まれ――――美女が現れた。

「えっと、お前は実はおなごだったということかの?」

戸惑いながらの問いかけに美女は首を振る。
混乱する武蔵をよそに、おもちゃ屋の建物から烈火が出てきた。
そして烈火の戻れという言葉と共に美女の姿も掻き消える。

「すまねぇな、コイツを保険として使ってたんだ。もしも急に襲われても大丈夫なようにな」
「ああ、それは構わん。この場では石橋を叩いて渡るくらいの慎重さが必要じゃ。
 じゃが、それが一体なんだったのかワシに説明してくれぬかのう?」
「コイツは"塁”っていってな。相手に幻覚を見せ、引っかかった相手を燃やしつくす力があるんだ」
「つまり……ワシがお前の手を強引に握ってたとしたら?」
「焼け死んだかもしれねぇ」

物騒なことをさらりと言ってのけた烈火に武蔵は再び食って掛かる。
そして売り言葉に買い言葉だと言わんばかりに烈火も反撃し、またしても無駄な時間を費やした。
更に数分後。
我に帰った武蔵が折れたことにより、口論はようやく沈下する。

「とりあえず、じゃ。改めてよろしく頼むぞ烈火」
「こっちこそよろしくな武蔵」

そう言って差し出された手を今度こそちゃんと握りしめた。

529 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:28:22.94 ID:hBRLhi/7 [4/12回発言]
 

530 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:28:31.86 ID:dpQBhnjm [5/13回発言]
力強く握り締められた掌に、武蔵は確信する。
花菱烈火の内に秘められた力強さと正義の心を。

老人の細腕とは思えない重みを持った掌に、烈火も確信する。
彼は本物の宮本武蔵であり、善の心を持っている人間であることを。

「そういえば烈火、あのおなご……"塁”とやらにもう一度会えぬかのう?
 あのギリギリ見えそうで見えないのが……の」
「何いってんだこのエロジジイ!」
「男児たる物、興味がないわけないじゃろうが!」
「うるせえ馬鹿野郎!」

今までの真剣な表情から一転、鼻の下をだらしなく伸ばす武蔵。
そんな彼の姿を見て、烈火はある人物を思い出す。

(このジジイ……虚空に似てやがる)
(失礼な、儂はあんなだらしないジジイじゃないわ)

心の中から響く老人の声と、耳から飛び込んでくる老人の声。
あまりにもうっとおしい二重奏に烈火は怒ることすら忘れ、ただため息をついた。



☆  ★  ☆


531 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:28:53.94 ID:hBRLhi/7 [5/12回発言]
 

532 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:29:07.07 ID:hBRLhi/7 [6/12回発言]
  

533 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:30:31.10 ID:dpQBhnjm [6/13回発言]
夜空を駆けるかぼちゃのおばけ。
怪物と共に箒に跨るのは火男の仮面を被った道化。
不意に道化の着ていたタキシードのポケットから銀色のロケットがこぼれ落ちる。

「むっ……」

少々間の抜けた声を零し、半ば反射的に人形を急降下させ、落下するロケットを空中で掴む。
その額には僅かに汗が浮かび、"それ”が彼にとっていかに大切な物だったのかを表していた。
仮面の下でホッとした表情を浮かべたのも束の間、すぐさまその顔は厳しくしかめられる。
小さな箱の中に入っているのは一枚の写真。
彼がママンと呼んだ女性の在りし日の姿。
彼女を"切り捨てる”と誓ってもなお、このロケットを捨てることは出来なかった。
己の手で捨てることもできなければ、事故で失うことすら無意識が拒絶してしまった。
若干の後悔と共に、いとおしむかのようにゆっくりと掌で一撫ですると、妙な違和感が掌に伝わる。

「拾うときに引っ掛けてしまったのか。僕としたことがしくじってしまったな」

よく見れば、表面に小さなひっかき傷ができてしまっていた。
やれやれとぼやき、彼はポケットの中へとしまい込んむ。
この時、才賀アンジェリーナが命を散らしていたのだが、彼にそれを知るよしはない。
ただ自分の失敗と不幸が重なったことで傷がついたたのだとしか思わなかった。
何十年間もずっと守りぬいたロケットペンダントに初めて傷がついたのを偶然と切り捨てる。
激しい戦いの中でも一度も触れさせなかったのにも関わらず、ここが殺し合いの場という特殊な環境であるにも関わらず。
"ママン”が死ぬことを想定もしていなかったのかもしれない。
不吉だという感情は一切沸き起こらなかった。
しかし、掌に染み付いた冷たさが妙に気持ち悪く、振り払うかのように息を吹きかける。
そして彼は飛行を続けようと糸を繰ろうとするも、後ろから聞こえた炸裂音に腕を止める。

最期に聞いた音と似たような、それでいて遥かに弱い音。
それは確かに火薬が爆ぜる音色だった。
しかし、音源は懸糸傀儡を操って空を飛んでいる自分よりも更に上空。
何事かと思った彼であったが、記憶の引き出しより情報が即座に飛び出してくる。

「花火、か」

仲町サーカスにいた頃には毎日のように聞いていた音。
夜空に咲き誇った大輪の姿を空想し、妙に懐かしい気分となった。
だが、今は感傷にひたっている時間も余裕もない。
少しだけずれてしまった仮面の位置を片手で直す。

「僕の知ってる者でこんなコトするのは、あのチョンマゲイノシシくらいか?
 いや、案外誰がやってもおかしくないな」

自分の仲間だった者たちの顔を思い浮かべ、呆れ混じりの声で呟く。
出来ることならば知り合いには会いたくはない。
"仮面”を被った今、誰であろうと容赦なしに殺せる自信はある。
それでも自身の手にかけることは避けたいというのが本音だ。
我ながら弱い考えだ。仮面の下、自嘲気な笑みを浮かべる。

「あれほどの馬鹿はそうそういないと信じたいんだがな」

都合よく知り合いに出会えるとは考えていない。
プログラムに呼ばれた人数を考えれば、むしろ知らない人間と出会う確率のほうが高いのだから。
だからこそ彼はジャック・オー・ランターンを音がした方へと飛ばす。
そこにいた人間が殺し合いに乗っていようがいまいが関係ない。
ただ、エレオノールのために息の根を止めるだけだ。



☆  ★  ☆

534 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:31:21.82 ID:hBRLhi/7 [7/12回発言]
 

535 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:32:05.90 ID:hBRLhi/7 [8/12回発言]
  

536 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:32:32.47 ID:dpQBhnjm [7/13回発言]
三日月型に吊り上がった口を隠そうともせず、憲兵番長は堂々と我が道を行く。
最初に出会った参加者がキース・シルバーであったことは彼にとって幸運だった。
あれだけの強者がこの殺し合いに参加している。その上、キースの名を冠するものは彼ひとりだけではない。
やがて訪れるであろう戦いを想像し、唇を舐める。
弱者をいたぶることができ、強者との戦闘を楽しむこともできる。
彼にとってこの殺し合いの会場は一種のテーマパークのようなものだろう。
唯一の不満といえば、愛刀である金糸雀を没収されてしまったことだけ。
直感であったが、万全な体制であらねばキース・シルバーの隠し玉である完全体には勝てぬことを悟っていた。

「ふむ、そういえばこの刀。雷が出せるとか書いてあったような」

思い出したように手にした刀を見る。戦闘に熱中しすぎてすっかり忘れていたのだ。
そもそもの関心が薄かったのも原因の一つだろう。
切れ味や使い心地、そして鳴き声のみを求めていた彼にとって、雷が出るという付加価値に魅力は感じない。
刀によって肉や骨を切り裂いたときの音色こそが至高にして最高。
そう考えていた彼にとっては電撃による攻撃などは無粋な上に邪魔なものにしかならない。
だが、折角なのだから一度くらいは使ってみるか、という好奇心が首をもたげた。
雷が出るように念じつつ刀を振るう。
すると剣先から雷光が迸り、一瞬にして街路樹を焼き尽くす。

「なかなかの威力があるみたいだね。だが、やはり」

その後の言葉が紡がれることはなかった。
唐突に浮かび上がってきた鬼の映像、心の奥から何かが湧き上がる。
説明書には書かれていなかったが、雷神剣にはある特性があった。
それは人の心に潜んだ鬼を呼び起こすこと。
怒り、憎しみ、欲望といった邪心にその身を支配させること。
憲兵番長から呼び起こされた鬼が体を操ろうとし――――

「くだらん」

つまらなそうな一言と共に潮を引くように消えてゆく。
憲兵番長は雷神に負けるようなやわな精神力の持ち主ではない。
更に言えば、彼の性は元来より悪。
邪心がいくら沸きあがろうとも、それは彼にとっては当たり前のこと。
かくして憲兵番長は雷神剣の支配を軽くいなし、体を乗っ取ろうとする刀を一切恐れること無く腰へと戻した。

「君では金糸雀には勝てんよ」

彼の心を捉えて離さない刀はこの世にただ一振り。
実験も終え、雷の能力に対する興味の一切を失った憲兵番長は再び歩み出そうとする。
が、その足は視界に入った花火によって一瞬だけ止まった。
顔が喜び一色に染まり上がる。
それは美しい火薬の芸術に心が奪われたからではない。

「面白い。どの命知らずが上げたのか知らないが、お希望通り向かってあげようではないか」

自分の居場所を不特定多数に知らせる時点で、恐らくは実力に自信がある人間だろうと判断。
またしても強者と戦えるのかと思うだけで興奮が最高潮に達する。
斬る、斬る、斬る。
彼の脳内はそれだけに埋め尽くされていった。
欲望による支配は雷神剣の洗脳によるものよりも遥かに強い。
疾風の如くかけ出した姿はまさに鬼。
アスファルトを砕かんとする程の力強さで彼は進む。


☆  ★  ☆

537 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:33:43.21 ID:hBRLhi/7 [9/12回発言]
  

538 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:34:32.62 ID:dpQBhnjm [8/13回発言]
「で、これからどうするんじゃ?」
「とりあえずはここで他のヤツが来るのを待とうぜ。多分、他にも何人か来るんじゃないか?」
「うむ、それでいいが一つだけ警告しておくぞ。あまりにも強すぎるヤツが来たら引くことも考えるべきじゃ。
 お前の性格からして勝ち目が微塵もなくとも突っ込んできそうじゃからな」

情報交換を終えた武蔵と烈火は共に今後の方針を決めた。
それはシンプルに花火で近寄ってきた参加者を待つこと。
鬼丸の驚異が頭から離れない武蔵は烈火の無鉄砲さに一抹の不安を覚えるも、誰かと接触したい気持ちが強かったのでグッとこらえた。

「む、早速誰か来たようじゃの」

誰かの気配を感じ取る、それと同時に武蔵の背筋が凍りついた。
研ぎ澄まされた刀の様な鋭い殺気が全身に突き刺さる。
咄嗟に錫杖を構え、隣の烈火に視線を送った。
彼も異様な殺気に反応していた様で、腕から炎の刃を出して敵襲に備えている。

「来たぞ武蔵!」

その声と同時に二人はその場から散開する。
直後、屋根の上から降って来た一撃がアスファルトを豆腐のように切り裂く。
武蔵と烈火。
二人に挟み撃ちにされた状況で、飛び降りてきた青年は楽しげに笑った。

「そう来なくては小生もつまらん。折角殺気を隠さずに来てやったのだからね」

純白に包まれた外見とは真逆の黒く染まりきった心。
烈火達は瞬時にそれを察知するも、安易に跳びかかることはしない。
青年の佇まいに一切の隙がないことを分かっているのだ。

「さぁ、今度こそ命を断つ音色を聞かせておくれ」

そう言って青年、憲兵番長は持っていた刀を撫でる。
見覚えのある刀に武蔵は目を見開く。

「まさか……」
「ほぅ、この刀のことを知ってる人間か? 中々悪くないよこれは」

雷神剣を持っている。その事実がある仮定を生み出した。
十中八九は当たっているだろうとあたりを付け、離れた烈火に向かって武蔵は叫ぶ。

「烈火、こやつは殺すな! 気絶させるか剣を手放させるかのどちらかにしろ!」

理由はわからなかったが、武蔵を信頼し、烈火は首を縦に振る。
だが、武蔵の考えを小馬鹿にしたかのように憲兵番長は言葉を紡ぐ。

「小生が雷神剣に人格を乗っ取られた被害者の可能性があるからかい?
 そうだと考えているならば残念ながら外れだ。
 小生は小生の思うがままに人斬りを楽しみたいのだよ、こんな無粋なものに魂を売り渡す気はない」

それと聞くやいなや、武蔵の表情は苦虫を噛み潰した様なものへと変わる。
雷神剣の力を知っている武蔵は悪人の手に渡ってしまったことを惜しく思い、話に聞いただけの烈火も青年から溢れる邪気と強者の風格を感じ取っていた。

「嬉しいよ、これならば小生の欲求不満も解消できそうだ」

やろうと思えば完全に殺気を消して接近することができたのをあえてしなかったのは、戦いを楽しむためだ。
一瞬で切り裂き、命を断つのも嫌いではない。嫌いではないのだが、今回は話が違う。
キース・シルバーとの戦いが半端に終わったことで残ったもや。
それを解消する生贄としてこの"三人”は選ばれた。
そう、三人だ。

539 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:34:39.70 ID:1r/72rP2 [1/10回発言]
                         

540 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:35:13.95 ID:hBRLhi/7 [10/12回発言]
 

541 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:36:08.27 ID:1r/72rP2 [2/10回発言]
                 

542 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:36:30.43 ID:dpQBhnjm [9/13回発言]
「こそこそと覗いている君。どうだい、参加しないのかい?」

憲兵番長の呼びかけに応え、道化、ギイ・クリストフ・レッシュは民家の影より姿を現した。
本来ならば三人の戦闘後に漁夫の利を狙う気であったが、気がつかれていたのならば仕方が無い。
あまりにも濃密であった憲兵番長の殺気に覆い隠され、ギイの気配を感じることが出来なかった武蔵と烈火の二人。
迂闊であったという表情を浮かべる二人を尻目に無言で糸を繰る。
カボチャ頭の怪物が構えた鎌が高速で振動する音が辺り一面に響き渡り、静寂を切り裂いていった。

(さて、この場合はどちらを狙うのが得策か。白いヤツと加勢して二人を殺すか? 二人と協力して白いのを殺すか?)

ギイに残されたのは二つの選択。どちらにしても一長一短である。

まとめて二人を殺せるという点では憲兵番長に加勢するほうが得策だろう。
しかし、その後に戦闘になるのは避けれない。
二人との戦闘でどれだけ負傷するか分からない今、最後に血に飢えた狂獣を残すのには多大なリスクがある。
が、立場が逆転する可能性も十分残っている。
相手が負傷し、自分が無傷だった場合は三つの白星を同時にあげることが出来るのだ。

逆に、二人について憲兵番長と戦った場合はその後について考えなくても良いというメリットがある。
もしも負傷したとしても、二人を騙し通せば襲われる心配はないはずだ。
それに旗色が悪くなれば逃げるという手だって使える。
デメリットは無傷で憲兵番長を倒せてしまった場合、二人を殺すのが手間だということだ。
桁外れの強者でなければ三人相手に無双することは出来ぬだろう。
そうなった場合に、二人残ってしまうのは少々めんどくさい。


悩むギイ。誰を斬るか値踏みする憲兵番長。突然の乱入者をどう扱うか考えあぐねている武蔵。

そんな中、最初に動き出したのは烈火。

「ゴチャゴチャ考えるのは性に合わねぇ! とりあえず黒確定のお前からぶっ飛ばす!」

憲兵番長へと炎の刃を振り上げる烈火。

動き出す他の三人。

かくして戦いの火蓋は切って落とされることとなった。

543 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:38:31.75 ID:dpQBhnjm [10/13回発言]
【D-4 商店街おもちゃ屋前/一日目 黎明】


【花菱烈火】
[時間軸]:24巻236話『-要塞都市-SODOM』にてSODOMに突入する寸前。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み、花火ではない)
[基本方針]:仲間たちと合流し、プログラムを破壊する。


【宮本武蔵】
[時間軸]:魔王鬼丸との最終決戦前
[状態]:健康
[装備]:錫杖@うしおととら
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[基本方針]:仲間を集め、プログラムを破壊する


【ギイ・クリストフ・レッシュ】
[時間軸]:本編で死亡後
[状態]:健康
[装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス、ひょっとこ面@現地調達
[道具]:ランダム支給品1~5、基本支給品一式×2
[基本方針]:エレオノールを優勝させる。


【伊崎剣司(憲兵番長)】
[時間軸]:居合番長との再戦前
[状態]:疲労(中)
[装備]: 雷神剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[基本方針]:人を斬る。


544 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:40:05.24 ID:1r/72rP2 [3/10回発言]
                        

545 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:40:31.81 ID:dpQBhnjm [11/13回発言]
☆  ★  ☆



「あんな事やる馬鹿野郎は一人しかいねぇよな」

ニカッと笑みを浮かべ、青年、石島土門は空を眺める。
少し前にそこにあったのは、このプログラムに呼ばれる直前に見たものとよく似た炎の花。
開戦の合図にそんな事をやるような人間を彼は一人しか知らず、彼ならばこんな時であっても普段と変わらないだろうという確信を持っていた。
他の人間が打ち上げた可能性も考えなかったわけではないが、それでも彼の足は止まらない。
少しでも合流できる可能性があるのならば、後先考えずに向かうのがこの男だ。
さっきまでの苛々した思いが一気に吹き飛んでいく。
こんなクソッタレた殺し合いだって仲間と共にならば軽く解決することが出来る。

「よっしゃ、この調子で全員と再会するとすっかな」

踏みしめる一歩は依然として重いままであるが、先程までの荒々しさはそこには存在しない。
希望へと向かって前進していく漢の姿がそこにはあった。

「んっ?」

花火の上がった方向を目指して歩いていると、土門の耳に高笑いが飛び込んでくる。
朗々とした良い声ではあるのだが、どこか間の抜けた男性の声。
近くによってみれば、時代錯誤の服装を着た侍のような青年が一人。
端正な顔立ちは二枚目と呼ぶにふさわしいものであるが、緩んだ表情がそれを台無しにしている。

「ははははは、このじゃじゃ馬もすっかり手に馴染むようになったぞ!
 この佐々木小次郎に使いこなせぬ武器など存在はせぬ!
 誰が来ようとも打ち破ってやろうぞ!」
「なあ」
「物干し竿と鞭の二刀流で戦うのも悪くはないかもしれぬでござるな。
 いや……しかし侍としてそれはどうなのだ?」
「おい」
「むむ、やはり侍たるもの刀一本で戦うべきなのでは?
 しかし……武蔵は櫂を使って戦ったこともあるから」
「土門ちゃんもここまで無視されちゃ怒っちまうぞ固羅ァ!」

耳に口を近づけて大声で叫ぶ。

「ぬおっ!? 何奴!?」
「やっと気がついたか」

コメカミに血管を浮かび上がらせながら、ため息混じりに呟く。
自分のことを延々と無視していた侍もどき。
この調子ならば危険はないだろうと、確信した上での接触だ。

「人の話を無視すんなってカーチャンから教わんなかったのかお前?
 なあ、俺のことさんざん無視しやがってよぉ」

苛立ち混じりに詰め寄った土門を相手に小次郎はニヤリと笑みを浮かべる。
今までの三枚目な雰囲気が一転、研ぎ澄まされた気配が彼の全身より溢れ出す。
尋常にない空気と、僅かながらの殺気を感じ取った土門は咄嗟に後ろへと飛び退いた。
それと同時に振るわれ、蛇のように襲いかかる鞭。
今まで自分がいた地面をいとも容易く蹂躙する鋼鉄の鞭を見つめ、生唾を飲んだ。

「これを躱すとは、これでこそ腕試しの相手にふさわしい! 佐々木小次郎、推して参る!」

546 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:40:40.89 ID:r+zRBn99 [1/2回発言]



547 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:40:56.92 ID:r+zRBn99 [2/2回発言]



548 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:41:33.88 ID:dpQBhnjm [12/13回発言]
豹変した小次郎に驚きつつも、すぐに気持ちを切り替える土門。
両足を地面に付け、全身に力を入れる。
浮き上がる血管、盛り上がる筋肉。
そして着ていたTシャツがはじけ飛び――――その下より鉄色をした筋肉の鎧が現れる。
これが土門に支給された武器、AMスーツ。
御神苗優が使用していた"それ”は肉弾戦を得意とする土門にとっては最高の組み合わせ。

「いくぜ佐々木小次郎。てめぇが強くなりてぇ理由なんか知らねぇが、人を殺してでも得たい強さなんざ認めねぇ」
「ふむ、花火を上げた者と戦う前の食前酒替わりのつもりだったが面白い」

両者の視線が交差する。

「テメェを倒してさっさと仲間を探しに行かせてもらうぜ」
「貴様を倒して、花火を打ち上げたものも打ち倒してくれよう!」

同じ場所を目指す二人だが、行けるのは勝者のみ。
暗闇の中、二つの影かが交錯する。


【D-4 北部/一日目 深夜】


【佐々木小次郎】
[時間軸]:プラズマ戦直前
[状態]:万全
[装備]: 拷問鞭@金剛番長
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(武器はなし)
[基本方針]:強者と戦い、天下一の侍となる


【石島土門】
[時間軸]:SODOM突入前
[状態]:健康
[装備]: 御神苗優のAMスーツ@スプリガン
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(本人確認済み。使える物と使えない物が入っている?)
[基本方針]:烈火たちと合流したい。風子最優先。



549 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:41:55.04 ID:1r/72rP2 [4/10回発言]
   

550 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:41:57.54 ID:hBRLhi/7 [11/12回発言]
  

551 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 02:42:35.36 ID:hBRLhi/7 [12/12回発言]
  

552 : 死出の誘蛾灯 ◆xrS1C1q/DM : 2011/05/20(金) 02:42:41.16 ID:dpQBhnjm [13/13回発言]
投下完了です。支援ありがとうございました
誤字脱字、その他指摘があれば遠慮なくどうぞ

553 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 05:22:47.10 ID:dUN9DQl4 [1/1回発言]
投下乙
やっぱこうなるよな、花火なんか打ち上げりゃあよ!w
バトルが二つも始まっちまったぜ……こいつはときめくな
先が楽しみだ!

554 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 07:18:12.85 ID:uh/ODJAD [1/1回発言]
投下乙!

武蔵も出てきて後は令子さんだけだ。

烈火と武蔵のやりとりが和んだけど、一転してヤバい三つ巴!w
小次郎と土門もどっちも続きが気になる!

土門にAMスーツとかぴったりすぎる。


555 : ◆imaTwclStk : 2011/05/20(金) 14:21:33.07 ID:nTcF0elo [1/1回発言]
規制されているのでしたらばに投下します。

556 : 記憶~リメンブランス~ ◇imaTwclStk氏代理 : 2011/05/20(金) 14:57:04.68 ID:1r/72rP2 [5/10回発言]
「……姉ちゃんは、俺の事を知ってるって事は
 あのブラックとかいう“悪もん”の兄妹なのか?」

蒼月潮の私に対しての質問の第一声はそれだった。
“悪い”、か……定義としては正に間違ってはいないと思う。
そう、兄…キース・ブラックが始めたこのプログラムは彼らからすれば
一方的かつ、唐突に始められた事なのだからこれは仕方が無い事だ。
私達や高槻達オリジナルARMSのように最初から
運命の内側に閉じ込められていた人間とは違うのだから……

「その質問の答えは『YES』よ、蒼月潮。
 それを知ったらあなたはどうするの?」

兄の真意を知らずに“悪い”と認める事に逡巡はあったけれど、
敢えて包み隠さずに真実を述べる。

「……だとしたら、俺は姉ちゃんを許せない」

……やはり、そうだろうな。
私達の道は既に許されざる道なのは分かっていた。

「さっきまでは、そう思ってた!」

えっ?

「俺には姉ちゃんを憎めそうには無いよ。
 ……だって、姉ちゃん哀しそうだから」

『私の盲いた目に写るのは、傷ついて泣いている小さな女の子だけ…』

ママ・マリアの言葉。
何故、今になって思い出してしまうのか。
意思の込められた力強い眼差しで私を見つめる少年に
先程まで話をしていた新宮隼人の、
オリジナルARMSである少年達の姿が重なる。

「……おかけなさい、蒼月潮。
 今、お茶を淹れるわ」

☆    ☆    ☆    ☆    ☆

557 : 記憶~リメンブランス~ ◇imaTwclStk氏代理 : 2011/05/20(金) 14:57:57.68 ID:1r/72rP2 [6/10回発言]
最初はさ、あのブラックとかいう奴と同じ顔した姉ちゃんだから、
思わず警戒しちゃってたけど。
俺がこのバイオレットっていう姉ちゃんに
あのブラックと『家族』なのかどうか聞いた時に
本当に一瞬だけ見せた哀しそうな表情に
そういう疑問は吹っ飛んじまった。
悪い人だったら、あんな哀しそうな顔はしない。
それに女の人を哀しませるのは俺の主義に反するからよ!

でもさ……

「如何したの、蒼月潮。
 ダージリンは苦手?」

こういうのは苦手なんだってばよぉ~~!!

「…い、頂きます」

このバイオレットっていう姉ちゃんは
顔はあのブラックにそっくりなのに
何ていうか大人っぽいっていうか落ち着いてるっていうのか、
それに近くで見ると綺麗な人だったから
何か無闇に緊張しちまうよぉ~!
俺の周りだと麻子とか真由子みたいに
落ち着かない奴らばっかりだったから、
この手の人は苦手なんだよなぁ……
小夜さんとかとも雰囲気違うくて、
本当に大人の女って感じの人だよな。

「…そのように繁々と見つめられても
 お茶以外は何も出す事は出来ないぞ?」

微かに微笑むその顔に思わずどきんとしちまった。
やりずらいなぁ~。
とらの奴だけには絶対に見られたくないな、今の俺を。

『ひひひひひ!! 潮の餓鬼がいっちょまえに色気づいて緊張してやがる!』

うん、絶対見られたくない。

558 : 記憶~リメンブランス~ ◇imaTwclStk氏代理 : 2011/05/20(金) 14:58:58.96 ID:1r/72rP2 [7/10回発言]
「……そ、そのよ、バイオレットの姉ちゃんは
 この『プログラム・バトルロワイアル』って言ったよな、
 これの目的を知らないってのは本当なんだよな?」

お茶を淹れてくれている間に
この姉ちゃんが俺に教えてくれた事。
ブラック以外の他の兄弟。
姉ちゃんの良く知ってる高槻っていう、
俺より少し年上の人物達の事。
それとこの『プログラム・バトルロワイアル』……
色々と気になる事は他にもいっぱいあったけど
俺じゃ、いまいち理解できそうに無いから
分かる範囲で教えて貰った事。

「……えぇ、私もこのプログラムに於いては、
 あなた達と同じくこのプログラムを進める駒の一つでしかないわ」

「それって姉ちゃんも他の兄弟も家族なのにみんな殺しあえって事だろ?
 そんなの……そんなの俺は嫌だ!」

目的も知らない。
知った事じゃない!

「……決めた!」

姉ちゃんに淹れて貰ったお茶を一気に飲み干す。
ちょっと熱かったけど、そんなの関係無い!

「このお茶のお礼。
 俺はこのプログラムをぶっ潰す!
 それであのブラックを一発殴った後に
 姉ちゃんと姉ちゃんの兄弟に謝らせる!」

元々、このプログラムが気に食わなかった事もあったけど、
女を泣かせるようなのは更に駄目だ。
この姉ちゃんはそんな態度は俺には全然見せようとしないけど
話す表情はとても苦しそうだった。
それだけで俺には充分!
このプログラムをぶっ潰す明確な理由が一つ増えただけ。

559 : 記憶~リメンブランス~ ◇imaTwclStk氏代理 : 2011/05/20(金) 15:00:02.58 ID:1r/72rP2 [8/10回発言]
「……初対面のそれも黒幕の兄妹に対して君が命を張る必要はあるのか?
 私が嘘をついている可能性もあるのだぞ?」

「ある!」

もう心に決めた。

「それに嘘をつく人はそんな哀しそうにしないよ」

俺が言い切るのと同時に目の前の机にごとりと何かが置かれる。
それは一つのベルトに収められた複数のナイフ。

「お茶に付き合ってもらったお礼よ。
 それだけでは身を守りきれないでしょう?
 構わずに持っていきなさい」

俺の持ってる即席の槍を眺めながら、
バイオレットの姉ちゃんは静かにそう言った。

「えっ、じゃあ姉ちゃんは如何するのさ!
 もし悪い奴に襲われたら……」

「あなたには一つ隠し事をさせて貰っているけれど、私なら平気よ。
 自分の身を守るには余り余る程の力を持っているわ」

顔色を変えずに真剣に俺を見つめる姉ちゃんに俺も覚悟を決める。

「分かった、じゃあこれは貰っていくよ。
 ……姉ちゃんはこれから如何するつもりなんだい?」

「暫くはこのままここに居るつもりよ。
 こうして、来訪者にお茶を振舞うだけ」

「そうか……じゃあ、俺もう行くよ!
 放っとくと危ない奴とか居るからさ。
 俺、お茶とかは良くわかんねぇけど、
 姉ちゃんのお茶、美味しかったよ!」

姉ちゃんから貰ったベルトを
しっかりと巻きつけて席を立つ。

「新宮隼人を探しなさい。
 まだ近くに居る筈、彼はあなたの力になるわ」

バイオレットの姉ちゃんはそれだけを教えてくれると微かに笑って俺を見送る。
そうして出口へと向かう途中で大事な事を思い出した。
バイオレットの姉ちゃんに振り返り、
俺は言っておきたかった事を言う。

「バイオレットの姉ちゃん、死んじゃ嫌だからな!」

560 : 記憶~リメンブランス~ ◇imaTwclStk氏代理 : 2011/05/20(金) 15:00:49.15 ID:1r/72rP2 [9/10回発言]
【E-5 喫茶店/一日目 黎明】

【蒼月潮】
[時間軸]:26巻第42章『三日月の夜』直後。
[状態]:健康
[装備]:制服、即席槍(ジャバウォックの爪@ARMS+操り糸@からくりサーカス+神通棍@GS美神)、
    ヴィルマのナイフ(6本)@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、操り糸(3/4)@からくりサーカス
[基本方針]:仲間を集めて殺し合いを止める。とら? 勝手にしろィ!
※バイオレットからプログラムについて他のキースシリーズ、
 オリジナルARMS勢の情報を貰いました。
 但し、ARMSについては教えて貰っていません。


「死んじゃ嫌……か。
 変わった子だな……」

蒼月潮には最後まで言えなかった事。
この身が人なのか兵器なのかすらも曖昧な
造られたものに過ぎないという事。
その迷いゆえに最後までARMSについて教える事は出来なかった。
これは致命的な間違いだったのかもしれない。
だが、蒼月潮は私達の事を最後まで『家族』と表現した。
私は確かに兄弟達のことを愛している。
だが、『家族』と表現するには余りにも歪なその関係を
蒼月潮はついぞ疑ってはいなかったのだ。
私達を“ヒト”だと思っているのだ。

「……この身の真実を告げたら、
 如何捉えられていたのだろうな?」

恐怖される事しか無かった。
殺す事しか教わらなかった。
父も母も無く、試験管の中で産まれた私は……
プログラムに組み込まれただけの存在でしかないのではないのか?

『ヒトは、生まれつきヒトなんじゃない……』

ママ・マリア。
私は……

『自分で“ヒト”になってゆくものだよ……』

私はどうすればいいのだ……

【E-5 喫茶店/一日目 黎明】

【キース・バイオレット】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にてオリジナルARMSたちがカリヨンタワーに乗り込む直前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~2(未確認)
[基本方針]:キース・バイオレットとして行動する……? ひとまず喫茶店に留まり、入ってきた参加者に対応。
※参加者の情報をブラックから聞かされています。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。

561 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/20(金) 15:02:12.06 ID:1r/72rP2 [10/10回発言]
111 名前:記憶~リメンブランス~ ◆imaTwclStk[sage] 投稿日:2011/05/20(金) 14:30:58 ID:???
以上で投下完了です。
あとヴィルマのナイフの説明が抜けてたので追加。

【ヴィルマのナイフ@からくりサーカス】
ホルスター付のベルトに収められた左右3本ずつの計6本のナイフ。
エレオノールの血が微量に付着しており、
自動人形に対して自壊作用を起こさせる事が出来る以外は普通の投げナイフ。

562 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/21(土) 18:28:03.66 ID:BnzLVG6y [1/1回発言]
投下乙!

二人の会話が実にらしくてよかった!
どこまでもまっすぐな潮は貫禄の藤田作品主人公だよ
"ヒト”としての自分に思い悩むバイオレットが"自分”とどう向き合ってくのか
面白いタイプのジョーカーだけに期待したいところ

563 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/22(日) 14:23:50.01 ID:WvoNgQvD [1/1回発言]
投下乙です

うん、俺も二人の会話が実にらしくていいなぁと思ったよ
潮との出会いでまた揺さぶられたがどうなるんだろうか
次に出会う参加者か……

564 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 10:07:18.01 ID:CmW6yW94 [1/5回発言]
投下乙×2

>死出の誘蛾灯
よくよく考えてみると、烈火はOPのときに突っかかってんだから、参加者的にはそれなりに安心できるヤツなのか
塁仕掛けておく辺り、なかなかどうして烈火も考えているじゃないか
そんで花火には、ギイ先生と憲兵番長がかかったか。どちらも一筋縄じゃいかないし、頭も切れる……どうなるやら
小次郎と土門も同じく、激突寸前! うっわ、バカVSバカだ!w
しかし錫杖支給されててよかったな、流兄ちゃんw

>記憶~リメンブランス~
うおー、やっぱうしおはうしおだなぁー
とらがいたらさんざん文句垂れそうだけど、でもこういうヤツなんだよねw
しかし名簿に記されたバイオレットの兄弟たちは、どっちも乗ってるんだよな……
だってのにその逆境こそ、うしとらっぽいよなぁ。明確に目的も決まったし、今後に期待
一方のバイオレットは未だに迷う……シルバーやグリーンより先に道を決めた彼女が、この場では追い抜かれているな……

565 : ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 21:52:44.38 ID:ZvhorjCU [1/22回発言]
ジャン・ジャックモンド、美神令子、フェイスレスを投下します。
先にお詫びしますと、ガッシュ・ベルと才賀正二を予約している◆PbH8Onsw.oさんにかなり影響してしまうと思います。
◆PbH8Onsw.oさんの作品がまだ深夜の時間帯でしたら、多分それほど影響はないはずです。

566 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 21:54:44.27 ID:ZvhorjCU [2/22回発言]
 武士がゼオンと共に東に飛んで行った後、ジャンは自分と武士の支給品を確認していた。
 ゼオンとの戦闘により、自力で歩くにはダメージを負い過ぎていたジャンは、支給品の中に何か行動の補助になるものはないかと思ったのだ。
 リュックの中身を見てみれば、空飛ぶホーキ、戦国時代の忍びが作ったという魔導具、霊力を備えた青紫水晶、そしてインドラの雷撃『ヴァジュラ』と、アーカムで扱うようなオーパーツが続々と出てくるではないか。

 ヴァジュラは聖杯の一件で破壊されたと聞いている。
 偽物だろうと試しに使ってみたが、ヴァジュラは伝承の通りに雷を放った。
 本物と見て間違いない。が、ヴァジュラが二つ存在するという話は聞いたことがない。
 死者の復活といい、この大量のオーパーツといい、敵の強大さを思い知らされた気分だった。

 とにかく、わからない事をうだうだと悩んでいても何も始まらない。
 移動は空飛ぶホーキである『青き稲妻』を使うとして、支給品の中から青き稲妻と相性の良い武器を選ぶ。
 ジャンが選んだものは、鎖で繋がった一対の手甲と霊力を備えているという青紫水晶の二つ。
 手甲の名は『門構(もんがまえ)』。青紫水晶は『翠龍晶(すいりゅうしょう)』という。

 門構は様々な効果を発揮する魔導具だが、『無名(むみょう)』という魔導具が装着されなければただの大きな手甲にしかすぎない。
 門構を選んだ理由は、単純に扱い易いからだ。
 この手甲は手のひらを出せる形になっているため、箒(ほうき)である青き稲妻の柄を掴む事ができる。
 敵に遭遇した時は、青き稲妻で敵に突っ込み手甲で殴り倒そうと考えたのだ。

 『閻水(えんすい)』という水を刃に変える魔導具もあったが、青き稲妻を使う以上、片手で青き稲妻を掴み、もう片方の手で攻撃をするという戦法を取らざるを得ない。
 片手、それも疲労困憊の状態で閻水を使ったとしても、上手く扱えるとは思えなかった。
 ヴァジュラは大きさと重さから言って論外だ。
 故に、手甲で殴るという単純な戦法の取れる門構を選んだのだ。


 それに、とジャンは先程の戦いで見た武士の姿を思い出す。
 武士は、敵であってもその命を救おうと、自身を顧みず(かえりみず)に己の信念を貫き通していた。

 閻水を武器に選ばなかった理由は、扱いにくいというだけではない。
 使おうと思えば、閻水で作った水の刃の切っ先を敵に向けた状態で青き稲妻を突撃させることも、敵の横を通り過ぎる際に撫で切る事もできない訳ではないのだ。
 説明書によれば青き稲妻は音速を超えることができるとあるので、高速で移動すれば軽く撫でるだけでも十分に致命傷を負わせることが可能だろう。
 だが、それでは駄目なのだ。

 武士に命を救われた自分が、武士の信念を汚すような行為をして良い訳がない。

 ジャンは、例え敵であっても武士の信念を守るため、命までは奪うまいと心に決めていた。
 しかし、それはあくまで無力化できる相手の場合だ。
 先程のゼオンのように殺し合いにのった強者が相手の場合、武士のように自分を犠牲にしてまで殺さずに戦う事ができるかと聞かれれば答えはノーだ。
 殺すしか方法がないという相手は、確かに存在する。
 その相手が仲間を殺そうとしているとなれば尚更だ。

 武士は日常に帰るために誰も殺さない道を選んだ。
 だが、自分はアーカムのS級エージェント、スプリガンのジャン・ジャックモンドだ。
 生きる場所も帰る場所も戦場である。
 敵を殺す事に躊躇いはない。
 そう思うのだが、武士の姿が心にちらつき、本当にそれで良いのかという気持ちが生じている。

 強大な敵に出会った時、自分はどうするのか。
 殺すのか、それとも武士のように殺さずに戦うのか。
 答えは出ない。



「ええい考えても仕方ねえ! まずはこいつを試さねえとな」


 ジャンは、門構にある窪み(くぼみ)に翠龍晶を嵌め込んだ。
 本来ならば無名を嵌めるその窪みに、翠龍晶は不思議とぴったり嵌まった。

567 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 21:56:03.41 ID:ZvhorjCU [3/22回発言]

 門構は、魔導具の中でも少々風変わりな魔導具である。
 鎖で繋がった手甲を合わせることで『門』という文字を形成する作りになっており、
その『門』の中心に無名という何も書かれていない宝玉を嵌めこむことで、初めてその能力を発動させる。
 この無名に文字が浮かび上がることで門構えの漢字を表し、出来上がった漢字の意味に沿った効果を発揮するのだ。

 例えば、無名に『音』の文字が浮かべば『闇』の漢字が出来上がり、周囲の人間の視界を完全に奪い文字通り相手に闇をもたらす事ができ、
無名に『人』の文字が浮かべば『閃』という漢字により閃光を放ち、目眩まし(めくらまし)に使う事ができる。

 ジャンは、門構発動に必要とさえる無名を、それらの効果を発揮するためのエネルギー源であると仮定していた。
 どちらか一つでは発動せず、二つ組み合わせることで初めて効果発揮する。
 門構と無名の二つは、機械と電源の関係にあるのではないかと思ったのだ。

 門構だけではエネルギーが無いため効果を発揮できず、無名だけでもそのエネルギーを使う機構が存在しないため効果を発揮しない。
 ならば、この霊力が備わっているという翠龍晶を使えば、霊力をエネルギーとして『門』の能力だけでも使えるのではないか。
 そう考えたジャンは、試しに使ってみようと翠龍晶を門構に嵌め込んだのだ。

 門構を発動させえた結果は、門扉が目の前に出現することにより現れた。
 門構は、ジャンの思惑通り、翠龍晶の霊力を使うことで『門』の能力を発動させたのだ。
 説明書によれば、この扉は異空間へ繋がっているらしい。
 無名が無いため出現した扉を開け閉めすることはできないが、何も扉の使い道は一つではない。
 コップに花を挿して花瓶として使うように、人間の発想にかかれば本来の用途以外の使い道を道具に示す事も可能なのだ。


「よし! この門は壁に使えそうだな。それじゃ、そろそろ移動するか」


 『門』の能力を攻撃を防ぐ守りの壁に使うこと思い付いたジャンは、目の前に出した門扉を消すと移動の準備を始める。
 武士の支給品を自分のリュックに全て移し、武士のリュックを蔵王の中に仕舞う。
 二つのリュックを持っていては、他の参加者に誰かを殺して奪ったのではないかと疑惑を持たれかねない。
 ここに置いていくにも、武士と合流した際に武士の支給品を入れる入れ物が無くなってしまう。
 そこで、ジャンは青き稲妻を出して空になった蔵王に武士のリュックを入れ、武士と再開した際に支給品と共に返還しようと考えたのだ。

 リュックの中身を移したのは、リュックの中に物が入っている状態では、リュックを蔵王に収納する事ができなかったからだ。
 どうやら、複数の物を蔵王に入れる事は出来ないという制限に引っ掛かるらしい。
 

 荷物の移し替えを終えると、門構を両腕に装着したジャンは青き稲妻に跨った(またがった)。
 目指すは武士とゼオンの飛び去った東の方角だ。
 青き稲妻に念波で指示を送ると、空飛ぶホーキは宙に浮かび、ジャンの思った方角、東へ向けて前進を始めた。

568 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 21:56:59.10 ID:ZvhorjCU [4/22回発言]





◆ ◆ ◆





 街路樹と街灯が並ぶ道路。
 その歩道を美神令子は歩いていた。
 向かう先はもちろん地図の外。
 殺し合いをする気などさらさらない。


「アシュタロスが居るこんな所に居られるもんですか! 私は出てくわ!」


 彼女はアシュタロスに命を狙われている。
 正確に言えば、彼女の魂に存在するエネルギー結晶を狙われているのだが、そのエネルギー結晶を取りだすためには美神の魂がなくてはならない。
 魂を抜き出すには肉体を殺してしまうのが一番手っ取り早い方法だ。
 つまり、アシュタロスがエネルギー結晶を手に入れる過程として、美神の殺害が必要になっているのだ。

 どんな理由であろうと、殺されるのはまっぴらごめんである。
 元凶であるアシュタロスを倒すにしても、アシュタロスは超上級魔族であり、実力者とはいえ人間である美神では到底太刀打ちできる相手ではない。
 対峙してしまったら、逃げる以外に道がないのだ。
 幸い、自分が飛ばされたのは会場の端に近いB-5エリアの十字路。
 他の参加者も自分と同様に飛ばされているのだろうが、こんな端の方で出会う可能性は少ないだろう。
 とにかく、こんな物騒な場所に長居は無用だ。
 早々におさらばするに限る。と、美神は周囲を警戒しつつ歩を進める。


「神通棍は事務所に置いてきちゃったみたいだし、支給品とかいうのは『鍋』に『土手鍋』と鍋しかないし……」


 美神に支給された物は、とても殺し合いの武器とは呼べない代物が二つあるばかりであった。
 一つは、ごく普通の『鍋』。
 本当に何の変哲もない鍋だ。
 これで他の参加者を殴れば良いのだろうか?

 もう一の支給品は『土手鍋』。
 説明書に書いてあるその名前を見ただけで、美神は説明書ごとリュックの中に戻してしまった。
 わざわざ説明されなくとも土手鍋がどういう物かは知っている。
 広島の郷土料理だ。
 以前仕事で広島に行った時に食べた記憶がある。

 他に何かないかと探してはみたが、『鍋』と『土手鍋』以外には何もなかった。
 どちらも蔵王というオカルトアイテムに収納されている。
 普通の鍋は蔵王から出して一応の確認をした後、蔵王の中に再び収納した。
 土手鍋の方は取り出してすらいない。

 金物の鍋に鍋料理。
 こんな物で殺し合いをさせる主催者の意図がわからなかった。
 もしかして、これは『ハズレ』という事なのだろうか。
 美神は夜の道を歩きながら、小さく溜め息を吐いた。


「はぁ。そもそも普通こんな所に大勢集めたくらいで、殺し合いなんか起こるわけ……あっ」

569 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 21:59:00.01 ID:ZvhorjCU [5/22回発言]


 最初に集められた広場で、ブラックと名乗る男が言っていたことを思い出す。
 集められた者の首には首輪が嵌められており、任意で爆発させる事ができる、とブラックは言っていた。
 恐る恐る、首に手を当てそれを確認する。
 金属製のその感触を確かめ、ごくりと唾を飲み込んだ。
 嫌な想像が頭に浮かんだのだ。

 今自分は地図の外へと向かって進んでいるが、地図の外へと足を踏み出した瞬間に首輪が爆発する、等という事が起こらないだろうか。
 殺し合いを強要されている上に、爆弾入りの首輪まで嵌められているのだ。
 その可能性は十分にある。


「じょ、冗談じゃないわ……。まずはこの首輪をなんとかしないといけないじゃない……。
 オカルトグッズならまだしも、こんな爆弾なんて専門外だし……あ、そうよドクター・カオスが居るじゃないの!」


 ぽん、と手を叩いて名簿にあった知り合いの名を思い出す。


「……いや、でも……大丈夫かしら?」


 しかし、直後に不安そうな顔つきになると、口元に手を当て悩んでしまう。

 ヨーロッパの魔王ドクター・カオス。
 世界で唯一人造人間の開発をも成功させた人物であり、かの悪名高き吸血鬼ブラドーを圧倒した実力者。
 技術に関しては右に出る者が居らず、魔族が仲間に引き込もうと画策する程の頭脳を持つ優秀な錬金術だ。
 天才とは、正に彼のためにある言葉である!

 ……というのは今は昔の物語。
 長く生きたせいでボケが進行しており、今では単純な掛け算も間違えるまでに落ちぶれてしまっている。
 たまにとんでもない発明をしたり、メドーサの魔法陣を解析して異界から元の場所へと戻してくれたりと、
その頭脳が完全に衰えてしまった訳でもないのだが……。


「いきなり自分の首輪を任せるってのは正直不安だわ。でも、首輪をなんとかできそうなのはカオスしか居ないし……。
 せめてマリアのサポートがあれば安心なんだけど……う~ん……」

「何かお困りかな? そこのお嬢さん」

「! 誰!?」


 考え事をしていて油断していたか。
 声がした方を見れば、街灯の下に老人が立っている。
 老人はにこやかな笑顔を浮かべると、言葉を続けた。


「いやいや、私は決して、怪しい者ではない。才賀正二というしがない老人さ」

「才賀……正二?」


 名簿の中にあった名前だ。
 手に赤い本を持っているが、見た目は普通の老人に見える。

570 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:01:07.80 ID:ZvhorjCU [6/22回発言]


「ああ、才賀正二。それが私の名前だよ。こんな所にいきなり連れてこられて途方にくれていたら、道を歩くあなたの姿が見えてね。
 殺し合いをしそうな雰囲気でもないし、初めて出会う人間だ。声をかけてみたという次第なんだよ」


 そう言うと、正二と名乗った老人は美神へ近付くために歩き出す。


「首輪がどうのと聞こえたが、私に見せてもらえないかな? こう見えても技術職で働いていてね。
 自分の首輪は見れないが、君の首輪を見せてもらえば、外し方もわかると思うんだ」


 人当たりの良さそうな笑顔を向けながら、老人の言葉は続く。


「もちろん、工具がないから今すぐに首輪を分解するのは無理だが、見てみないことには必要な道具の見当を付ける事もできないからね。
 どうだい? 悪い話ではないと思うんだが……」

「動かないで!!」


 にこやかに話しかけていた老人に向かって、美神は語気を強くして老人に叫んだ。
 老人は立ち止まると、はっとした表情になり、悲しそうに口を開く。


「ああ、すまない。初対面の相手に自分の首を見せろだなんて……。私は、相手の気持ちを考えるのが下手だなあ……。
 悪かった。いや、君が私を信用できないというなら──」

「ねえ、あなた、どうしてリュックを二つも背負ってるの?」


 美神の言葉を聴くと、老人はきょとんとした顔をして動きを止めた。
 老人の背には二つのリュック。
 その二つ共が、食糧や支給品を入れるために主催者から配られたものと全く同形のものだ。
 支給品にリュックがあったのかもしれないが、二つも一緒に背負うというのはどう考えても不自然だ。
 それに、中に何かが入っている事がわかる膨らみが、どちらのリュックにも見られる。

 真っ先に思い付くのは、二つ目のリュックは他の参加者の物であるという事。
 間違いなくこの老人は他の参加者と接触しているはずだ。
 だというのに、先程この老人は初めて人間に出会ったと言っていたではないか。
 二つ目のリュックの持ち主が近くに居らず、尚且つ嘘まで吐いているとなれば、答えは自ずと(おのずと)見えてくる。


「まさか……」

「ククッ……。クックックッ、アーッハッハッハ!」


 美神が老人に対して身構えると、老人は大声で笑い始めた。
 その異様な光景に、美神は背筋に薄ら寒いものを覚える。


「アッハッハ、いやあ、気付かれてしまったか。これは失敗だ。ま、気付かれるようにわざとこんな恰好をしていたんだけどねー」


 老人は先程までのにこやかな表情から一転し、にやにやと嫌な笑みを浮かべると止めていた足を再び進め始める。

571 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:03:22.82 ID:ZvhorjCU [7/22回発言]
 この老人は何かおかしい。
 今の言動といい、きっと殺し合いに乗っている。
 そう感じ取った美神は、老人から離れるべく道路から開けた草原へと急いで移動する。


「おいおい、そこまで嫌わなくでも良いだろう? 女性に逃げられるというのは、傷付くんだよ」

「あなた、殺し合いに乗ってるんでしょう!? そのリュックも誰かを殺して奪った物!?」


 美神は老人と十分に距離をとりながら叫ぶ。
 おそらくは先程のように自分を無害な老人に見せ、隙を見て他者を殺害したのだ。
 なんとも狡猾な爺さんだと美神は思った。


「残念! いやあお恥ずかしながら、まだ誰も殺してないんだなぁ、これが」

「まだ!? これから殺す気満々って事!?」

「うーん……。そーだなあ……」


 老人は顎に手を当て、考える仕草をする。
 そして、何かを思いついたのか、そのにやついた目を美神へと戻した。


「そうだ。君、今から面白いものを見せてあげよう。世にも奇妙なショータイムの幕開けさあ」

「悪いけど、あんたが開くようなショーを見る気はないわ」

「まあまあそう言わずに。楽しい楽しいショーがはーじまーるよ~~」


 老人は大仰に両手を広げると、口上を述べ始める。


「さあさあお集まりいただいた淑女のために、一世一代の芸をお見せいたしましょう!
 遠からん者は音に聞け! 近くな者は刮目せよ! この才賀正二、呪文と共に口から雷を飛ばしてご覧に入れましょう!!」


 そう叫ぶや否や、老人が手に持つ赤い本が輝き始める。
 老人は闇のような笑みを浮かべており、本の輝きに照らし出されたその顔は不気味と言う他ない。


「ザケル!!」

「なっ!?」


 老人が呪文を唱えると、宣言通り口から雷撃を放った。
 雷光は闇夜に光をもたらし、美神の数歩前の地面を黒く焦がす。

572 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:07:27.23 ID:ZvhorjCU [8/22回発言]


「ハハハハハ! 驚いたかい? さあて、出せる雷はこれだけにあらず! 観客はしかと刮目せよ! 雷の連続攻撃なり~!」


 再び老人の持つ本が輝きを増す。
 またあんな攻撃をされたのではたまったものではない。
 美神は全速力で老人から逃げる。


「ザケル!!」


 老人の口から再び雷撃が飛び出す。
 美神は老人が叫ぶと同時に進行方向を変え、辛うじて(かろうじて)雷撃を避ける。
 しかし、老人の攻撃はこれで終わったわけではなかった。


「ザケル! ザケル! ザケルゥ!!」


 間髪入れずに呪文が続く。
 いかに優秀なゴーストスイーパーと言えども、美神は人間以上の身体能力を持っているわけではないのだ。
 連続で放たれた雷撃、その三発目が美神の左脚に直撃する。
 雷撃は左脚から全身を駆け抜けると共に美神の体に激痛をもたらした。


「ああっ!!」


 美神はその場で地面に倒れる。
 走っていたせいで地面を滑り、草と小石で腕や脚を擦り剥いた(すりむいた)。
 体を起こそうとするが、全身が痺れて上手く体を動かせない。
 焼けるような痛みで呼吸も満足にできない状態だ。

 そんな美神の姿を見ながら、老人は高らかに笑い声を上げている。


「アーッハッハッハッハッハ!! いやあ、人が苦しむ姿は何度見ても愉快だねえ。楽しませてくれてありがとう。
 そのお礼に、もう一度雷を浴びせてあげるよ」


 倒れている美神からは見えないが、老人があのにやついた顔をしている事は容易に想像できた。
 自分にある武器といえば鍋しかない上にそれもリュックの中。
 取り出している暇がないどころか、出したとしても対抗できそうにないハズレ支給品だ。
 逃げるのが一番の選択肢なのだが、体を思うように動かすことができない。
 そんな美神に向かって、老人は死刑宣告を言い放った。


「さあいよいよフィナーレとなりました! 才賀正二、最後の芸です! どうか刮目してご覧ください!
 今度の雷は、今までとは一味違うものとなりましょう!!」


 老人の持つ赤い本が、美神に死をもたらすために不気味な光を放ち始める。
 さっきまで放った雷撃よりも強力な雷を放とうとしているのか、赤い本は一層強く光輝いている。

573 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:18:57.37 ID:ZvhorjCU [9/22回発言]



「ザケ──」

「そこまでだぜ!!」


 老人の呪文は、突如として現れた人物によってその詠唱を中断された。
 人物の名前はジャン・ジャックモンド。
 東へ向かって飛んでいる途中、叫び声を聞いた彼は急ぎこの場所へと駆け付けたのだ。
 到着した彼の目に飛び込んできたのは、地に伏す女性と高笑いをする老人の姿。
 この光景を見れば、どちらが被害者と加害者かは一目瞭然だろう。


「おおっと! 危ない危ない」


 ジャンは腕に装着した門構で老人を殴りつけようと、片手で箒に掴まりながら老人に向かって突撃した。
 しかし、紙一重のとろで老人にかわされてしまう。
 老人はわざとらしく二、三歩よろけて見せると、ジャンの方へと顔を向けた。


「チッ!」


 ジャンは舌打ちをすると、空中で箒を方向転換し、老人へと向き直る。
 ジャンの服は所々焦げ付いており、顔には血の跡も見える、
 ゼオンとの戦闘により、体は疲労困憊だ。
 しかし、その双眸から闘志の炎は消えていない。
 鋭い眼光を放ち、老人を睨みつける。
 対照的に、老人は満身創痍な彼を見るや顔を歪め、その両眼から涙を流し始めた。


「おお、一体どうしたんだい? 酷くぼろぼろじゃないか……。君のような青年がこんな目に会うなんて……さあ、今すぐ傷を見せなさい!
 私は医者だ! おっと、その前に早く安全な場所まで逃げなくてわ! この女は殺し合いに乗っていて、私は襲われているところだったんだ!!」


 老人は嗚咽に咽び(むせび)ながら、青年の姿を労わる(いたわる)発言をする。
 そして必死の表情で青年に危険を伝え、この場から逃げるように呼びかけた。


「何とか反撃して倒したところなんだが、まだ安心はできない! 端から見れば私が襲っていたように見えたかもしれないが、どうか信じて欲しい!
 さあ、一緒に逃げよう!!」

「なっ……何言って……」


 美神は老人に言葉に反論しようとするが、まだ呼吸は整っていない。
 美神の小さな声は、ジャンには届かない。

574 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:27:33.47 ID:wbhXLdax [1/9回発言]



575 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:28:25.75 ID:wbhXLdax [2/9回発言]



576 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:29:30.71 ID:OnugH7xs [1/10回発言]
 

577 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:30:12.55 ID:OnugH7xs [2/10回発言]
 

578 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:30:40.95 ID:ZvhorjCU [10/22回発言]


「……ハッ! なぁにが襲われてた、だ! その背中にある二つのリュックはなんなんだよ!!」


 ジャンは老人の背中を指さして叫んだ。
 美神の声が聞こえなくとも、状況からして老人が殺し合いに乗っているのは明白だった。
 だが、老人の言葉にジャンは迷う。
 リュックを二つも持っている事からかなり怪しいが、自分もリュックを二つ持っているため人の事を言えた立場ではない。
 もしかしたら、自分のように誰かから託されたものかもしれないし、偶然拾ったということも考えられる。
 しかし、普通の老人ならば敵とは言え攻撃する相手に向かってあのような高笑いをするだろうか?

 一瞬迷った後、ジャンは老人に対して鎌を掛けることにした。
 嘘を吐く可能性もあるが、リュックを二つ持っている事に何か理由があるのならば、必ず弁明するはずだ。

 言葉を受けた老人を注意深く観察してみれば、悲しみの表情から普通の顔に戻っている。
 そして、溜め息を一つ吐くと、涙を拭う(ぬぐう)事もせず、あー嫌だ嫌だと頭を振るっている。


「あーあー、まったくばれるのが早すぎる。やっぱりこの格好は駄目だね。すーぐに疑われるよ。
 もう中身だけ自分のリュックに移して、邪魔にしかならない奪った方のリュックはそこら辺に捨てようかなァ」

「てめえ……」


 ジャンは老人の反応に怒りを覚えた。
 今の発言でこの老人は黒に確定した。
 それも他人を傷つけても何とも思わないような、武士とは正反対の真っ黒な人物だ。


「てめえ、そのリュックの持ち主をどうしやがった! 答えろ!!」


 ジャンは老人に向かって怒声を飛ばす。
 対して老人は、ジャンの言葉に飄飄とした態度で答える。


「アッハッハ、いやだなあ、両肩の関節を外して気絶させただけだよ。
 五歳くらいの少年でね、優しい王様になるのだ~なんて気っ持ち悪いこと言いやがるからさあ、思わず手が出ちゃってね。
 ついでに荷物を奪っちゃったよ。今そいつ寺に居るんだけどさ、今頃すやすや眠ってんだろうな~、あー気持ち悪りい!
 戻って殺そうかな、そうだ殺そう。だってキモいもんね」


 にたにたと笑いながら、老人は楽しそうに喋っている。
 今まで悪人はごまんと見てきたが、これ程不快な人間を見たのは初めてだった。
 こんないかれた老人を野放しにするわけにはいかない。


「爺さん、悪いが少し眠ってもらうぜ!!」

579 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:30:58.53 ID:OnugH7xs [3/10回発言]
 

580 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:31:45.66 ID:wbhXLdax [3/9回発言]



581 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:31:52.06 ID:OnugH7xs [4/10回発言]
 

582 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:32:03.57 ID:ZvhorjCU [11/22回発言]


 先程よりも速く青き稲妻を操り、老人に向けて再度突進する。
 しかし、再びかわされてしまう。
 青き稲妻に慣れていないため、直線の動きしかできないのが原因かもしれない。
 それに、この老人は見た目とは裏腹に俊敏だった。
 まだまだ余裕があるように見える。


「気を、付けて。そいつ、口から雷を吐くわよ……」

「なに!?」


 呼吸が整ってきた美神が、ジャンに警告を発する。
 見れば、老人の手には赤い本。
 ゼオンの持っていた本と色は違うが、酷似した装丁のものを持っている。
 この老人は口から雷撃を放つと言うのか。
 あの本も、オーパーツの一種なのだろうか。


「アハハハ! じゃあリクエストにお答えして、山をも砕く特大の雷を披露するとしようかな!」


 そう言うや否や、老人の持っている本が一際強い光を放ち始める。
 まずい、とジャンは思う。
 老人に突っ込んだところで、またかわされてしまえば一巻の終わりだ。
 逃げるにしても、倒れている女性を置き去りにはできない。
 女性を抱えて逃げることも、今のジャンでは不可能だ。


「くそっ!!」


 ジャンは女性の所へと急いで青き稲妻を走らせる。
 老人はそんなジャンを顔で追いながら口を開いた。


「第三の術! ジケルド!!」

「門構ええええええええ!!!」


 女性の近くまで寄ったジャンは、両腕の手甲を一つにし、門構を発動させる。
 どの程度耐えられるかはわからないが、今はこれに賭けるしかない。

 老人と二人の間に、禍禍しい門扉が出現した。




「……………ん?」

「へぇ~、門か。それはあれかな? どこかに繋がっているのかな?」


 門構は確かに発動した。
 しかし、老人が電撃を、いや、何か攻撃をしたようには感じられない。
 こちらに来たものと言えば、気の抜けた老人の声だけだ。

583 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:33:03.42 ID:ZvhorjCU [12/22回発言]


「あ、さっきのは冗談だよ。実はザケル! しかどんな呪文か知らないんだ。悪いね。私はそろそろお暇(いとま)させてもらうよ。
 ほら、あのガキを殺しに行かなきゃいけないしさ」


 『ザケル』の部分だけ強く発音していたが、電撃等の攻撃が来る様子はない。
 今さっき叫んだ『ジケルド』といい、自分で術のコントロールができるらしい。
 ゼオンと同じ呪文というのが気になるが、それよりも後半部分の発言が問題だった。
 『あのガキ』とは、先程言っていた荷物を奪った子供のことなのだろう。
 その子供を殺しに行くと言っている老人を、ここで見逃す訳にはいかない。
 それが、武士に命を救われた自分の役目だ。


「行かせるか!」

「さあさあ刮目せよ! この才賀正二が取り出したるは一着のローブ!!」


 ジャンが行動を始める頃には、老人はすでに喋りだしていた。
 そして、青き稲妻を操るジャンが門の陰から飛び出した時には、老人は手に漆黒のローブを持っていた。


「このローブはなんと! 着た者の姿を完璧に消し去ってしまうのです!」


 老人はそう言うと、素早い動作でローブを被る。
 するとどうだろうか。老人は言った通りその姿を消してしまった。


「チィッ!!」


 ジャンは、老人は姿を消した場所へ向けて突撃する。
 老人が移動した気配はなかったため、今ならばまだ攻撃も当たるはずだ。
 だが、それを嘲笑う(あざわらう)かのような声が辺りに響く。


「しかも足音まで消してくれる優れ物! これで君たちは私を追う事ができなくなるね」

「ちくしょうっ!!」



 老人の言う通りだった。
 老人が移動した音などしなかったにも関わらず、ジャンの突進は空振りに終わる。
 青き稲妻を操り闇雲に移動するが、老人に当たることはない。

584 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:33:09.07 ID:OnugH7xs [5/10回発言]
 

585 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:33:12.68 ID:wbhXLdax [4/9回発言]



586 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:33:52.60 ID:OnugH7xs [6/10回発言]
 

587 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:34:44.68 ID:ZvhorjCU [13/22回発言]


「じゃーねぇー。縁があったらまた会おう! アハハハハハハハハハ!!」


 老人の声は聞こえる。
 しかし、どこから聞こえてくるのかがわからない。
 これもあのローブの力なのだろうか。
 ジャンは遠ざかる老人の笑い声を聞きながら歯噛みしたが、こんな所で立ち止まっている暇はない。
 美神の側に駆け寄ると、美神を抱え起こし、声をかける。


「おい、大丈夫か」

「え、ええ……。さっきよりはいくらかマシよ……。助けてくれてありがとう」


 老人が居なくなると共に、体の痺れも薄れてきていた。
 美神はもう動けるようになったと自分で判断すると、自力で立ち上がりジャンに向き直る。


「って、あんたそれ『青き稲妻』じゃないの! スペインの重要文化財をどこで手に入れたのよ!」

「ん? これを知ってんのか?」



 美神とジャンは、お互いの情報を手短に交換した。
 ジャンの持っている支給品についてや、ジャンが来る前の老人の行動についてである。


「くーっ、あのブラックってやつ、私には鍋しか支給しなかったくせになんなのよも~、不公平じゃないの!」

「んなことより、今はあの爺さんを追うのが先だ! 確か寺にいる子供を殺すって言ってたぞ。早く行かねえと子供が殺されちまう!」

「そうね。じゃあ私がこのホーキを操縦するわ。前に使ったことがあるから、あなたよりは上手く操れるはずよ」

「霊能力者なんだって? 確かに俺よりは上手くそいつを操れそうだ。頼んだぜ」


 傷だらけのジャンに何があったのか。スペインにアーカムの情報に引っかからなかったこのような重要文化財が存在していたのか。
 お互い、気になることは少なからずあったが、そんな疑問は後回しにするしかない。
 美神を前に、ジャンを後ろに乗せた青き稲妻が、美神の念波によって宙に浮かんだ。


「しっかり掴まってなさいよ!」

「俺のことは気にすんな! できるだけ急いでくれ!」

「オーケー!!」


 二人を乗せた青き稲妻は、C-6にある寺へと向けて速度を上げる。
 風を切る音だけが、暗闇に残った。

588 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:34:46.29 ID:OnugH7xs [7/10回発言]
 

589 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:35:27.02 ID:wbhXLdax [5/9回発言]



590 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:36:02.16 ID:OnugH7xs [8/10回発言]
 

591 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:36:14.86 ID:ZvhorjCU [14/22回発言]




【C-6 西部 一日目黎明】

【ジャン・ジャックモンド】

[時間軸]:少なくともボー死亡後。

[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)

[装備]:門構@烈火の炎、翠龍晶@うしおととら、青き稲妻@GS美神極楽大作戦!!

[道具]:白兎の耳@ARMS、武士のリュック@現地調達、ヴァジュラ@スプリガン、閻水@烈火の炎、
     蔵王(空)@烈火の炎、不明支給品0~1(確認済み)、基本支給品一式×2。

[基本方針]:殺し合いには乗らない。高槻涼に会う。
      1:殺しはできるだけしない。
      2:寺に向かい子供を保護する。

※二人とも青き稲妻@GS美神極楽大作戦!!に乗っています。
※美神と少しばかり情報を交換しました。
※『才賀正二』を危険人物と認識しました。


【美神令子】
[時間軸]:少なくとも平安京から帰還した後。

[状態]:疲労、雷撃のダメージ、すり傷。

[装備]:青き稲妻@GS美神極楽大作戦!!

[道具]:鍋@現実、土手鍋@金剛番長、基本支給品一式。

[基本方針]:ここから逃げる。首輪を外す。殺し合いには乗らない。
      1:アシュタロスから逃げる。
      2:寺に向かい子供を保護する。

※二人とも青き稲妻@GS美神極楽大作戦!!に乗っています。
※ジャンと少しばかり情報を交換しました。
※美神は土手鍋の説明書を名前までしか読んでいません。
※美神は神通棍やお札は事務所に置いてあると思っています。
※『才賀正二』を危険人物と認識しました。





◆ ◆ ◆

592 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:36:19.12 ID:wbhXLdax [6/9回発言]



593 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:36:53.98 ID:OnugH7xs [9/10回発言]
 

594 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:37:41.39 ID:OnugH7xs [10/10回発言]
 

595 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:38:04.42 ID:wbhXLdax [7/9回発言]



596 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:40:22.70 ID:ZvhorjCU [15/22回発言]





「邪魔だな、これ。最初から危険人物ですって言ってるようなもんだから、正二の悪評を広めるのに丁度良いと思ったんだけど、駄目だ。
 すぐにばれてつまんないや。捨てよう」


 才賀正二、いや、正二に化けたフェイスレスは、中身を取りだした空のリュックを道端に放り投げる。
 先程逃走に使用した漆黒のローブは着ていない。

 今居る場所は、さっき程美神達と遭遇した所から北上し、線路を越えた道路上だ。
 寺に戻る気などさらさら無かった。
 ああ言ったのは、あの正義感の強そうな男にガッシュを保護させるためだ。
 ガッシュが気絶したままでは、ガッシュが正二の悪評を広める前に誰かに殺される可能性があった。
 それではつまらないと思い、ジャンを寺に誘導するような発言をしたのだ。


「でもあの男、一人分の荷物にしてはリュックの中身が多そうに見えたなあ。その事を突いても良かったんだけど、
 あそこで問答しててもつまんないしね。正義の味方みたいに現れたくせに。一体何をしてたんだか」


 クックックと笑いながら、フェイスレスは先程の光景を思い出す。
 さっき見せた電撃も姿を隠すローブも、全部幻覚だってのに、二人共ころっと騙されておかしかったなあ、と思い出して笑っていた。

 魔導具『言霊』。
 『刮目』のキーワードと共に相手に幻覚を見せる魔導具である。
 目隠しをした被験者にアイロンの蒸気を当ててから常温の金属板を押し当てると、押し当てられた所に火傷のような痕が生じたという実験結果がある。
 この魔導具は、その効果を極限まで高めたようなもので、幻覚によって相手に攻撃する能力を持つのだ。
 通常は首に装着して使うのだが、首輪が邪魔で上手く装着できないばかりか、相手から丸見えで言霊が目立ち過ぎる。
 そこでフェイスレスは、言霊を服の中、がらんどうになっている自身の機械製の体の中に隠して使用していたのだ。


「まあ、この魔本は本物なんだけどね。ガッシュ君は自分で判断できないタイミングで口から電撃が出るんだから、さぞ怖い思いをしていることだろうねえ」


 フェイスレスの表情は、おもちゃを手に入れた子供のそれだ。
 楽しくって楽しくって仕方がないと笑い声を上げていた。

 この魔本は、持っている者の心の力を込めることで光り輝くことは確認した。
 呪文を唱えると、心の中の何かが吸い取られる感覚もあった。
 これが心の力というものなのだろうか。
 本来ならばこの魔本の文字は世界で一人にしか読めないらしいが、どういうわけか誰でも読めるように手を加えられているらしい。
 ガッシュが私が呪文を唱えたことに驚いていたのは、そういうわけなのだろう。
 というか、説明書にそう書いてあった。


 「駄目だなぁガッシュ君は、説明書はちゃんと読まなくちゃ。そんなずぼらな子にはお仕置きが必要だね~。たまぁに呪文を唱えるとしようかな。
 誰かと楽しく談笑している最中に、ガッシュ君の口から電撃が! 突然目の前の友達が黒焦げになっちゃった! こりゃ傑作だ!
 アーッハッハッハッハッハ!!」


 フェイスレスは大笑いしながら、魔本を自分のリュックの中へと仕舞った。
 笑い過ぎて目に涙が浮かんでいる。

597 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:41:07.96 ID:CmW6yW94 [2/5回発言]
 

598 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:42:27.09 ID:ZvhorjCU [16/22回発言]


「ハハ、さあて、これからどうしようかなあ」


 これからどこに向かおうか、と顔を上げたその時である。
 フェイスレスの視界の端で、何かが光った。


「ん?」


 数秒遅れて、爆発音が聞こえてくる。
 花火の音だ。
 今見た光は。花火のものなのだとフェイスレスは理解した。


「ふうん。花火を上げて人を集めようって魂胆かな」


 フェイスレスは考える。
 光と音の時間差と方角から計算して、D-4の商店街であの花火は打ち上げられた事がわかる。
 今自分が居る場所はB-6の路上で、線路を少し越えた所だ。
 商店街までは距離があり過ぎるため、今から向かったところで、
到着した頃には打ち上げた人物も花火を見て集まった者達も移動した後になっているだろう。
 もしかしたらあの場所に愛しのエレオノールが集まるかもしれないのに、距離と時間が絶望的に遠い。


「そうだ! 僕には素晴らしい支給品があるじゃないか!」


 フェイスレスは子供のように顔を輝かせると、自分のリュックの中から支給品を二つ取り出した。
 一つは、四面体をした結晶。
 もう一つは、十二枚で一組になっている札だ。
 フェイスレスは口を大きく開けると、結晶を口へと運び、あーんと一口で飲みこんだ。


「おお、体に力が湧きあがるようだ。これが霊力というものか。興味深いな」


 フェイスレスが飲み込んだ結晶には、二万人から三万人分の魂のエネルギーが凝縮されている。
 このエネルギーは、結晶を作り出したアシュタロスにしかその全てを引き出す事はできないが、
アシュタロス以外であっても結晶に秘められたエネルギーの一部を使用する事は可能だ。
 結晶のエネルギーは、その一部であっても魔族を人間に変えるだけのエネルギー量を持つ。
 フェイスレスは、その膨大なエネルギーを使おうとしているのだ。


「式神達、出てこい」


 フェイスレスは札に念じ、封じられている式神を呼び出した。
 十二枚の札から、十二体の式神達が現れる。

 フェイスレスはこの式神達をどう使うかはすでに決めていた。
 まずは、エネルギー結晶の力を使って式神達をコントロールする。
 霊力という未知のエネルギーではあるが、フェイスレスは天才なのだ。
 未知のエネルギーを扱う事など造作もない。

599 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:44:12.36 ID:ZvhorjCU [17/22回発言]

 初めは思い思いに動き回っていた式神達も、結晶から溢れ出すエネルギーによりすぐにおとなしくなり、
フェイスレスの指示を待つように待機している。
 そんな式神達に向かって、フェイスレスは次々と指示を出していった。

 式神達に下した命令は次の通りだ。

 バサラとビカラ、そしてメキラとアンチラは二体一組で行動すること。
 エレオノールと勝以外の参加者は殺害。
 エレオノールを見つけた際は最優先で護衛。
 勝を見つけた場合は殺さずに遊園地へ誘導、護衛せよ。
 勝が抵抗するようなら多少傷付けても良い。
 バサラとビカラは北へ、メキラとアンチラは東へ向けて進行せよ。

 アジラとサンチラとハイラはシンダラに乗って花火が打ち上げられた商店街に早急に向かうこと。
 そこにエレオノールが居ないか捜索。
 エレオノールを見つけた際は最優先で護衛。
 他の参加者に攻撃を受けた場合は直ちに殺害し、エレオノールの脅威を一人でも多く減らせ。
 攻撃を受けなかった場合は無視し、花火を見てエレオノールがやって来ていないか周辺を捜索せよ。
 勝を発見した場合は殺さずに捕えよ。
 勝の捕獲、護衛に当たるのはアジラとサンチラとハイラ。
 僕が到着するまで絶対に逃がすな。
 シンダラは勝に構わずエレオノールを捜索せよ。


 これらの指示を出した後、フェイスレスは自身の顔をゴムのようにぐにゃぐにゃと変形させ、才賀正二の顔を別人の顔へと変貌させた。


「良いか、エレオノールの顔はこんな顔で、銀色の髪に銀の瞳をした女性だ」


 エレオノールの顔を式神達に覚えさせると、次は顔を勝のものへと変化させる。


「勝はこんな顔をした小学六年生の子供で、背はこのくらい。髪の色は茶色だ。わかったな?」

600 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:45:37.82 ID:ZvhorjCU [18/22回発言]


 式神達が勝の顔を覚えたことを確認すると、顔を正二へと戻す。
 その後筆記用具を使い、勝の文字でエレオノールへ向けた伝言を書いた。


──────────────────
 エレオノールヘ

 僕は遊園地に向かうよ。
 そこで合流しよう。
 遊園地が禁止エリアになった時は、
 採石場に向かうからね。

                    才賀勝
──────────────────



 このメモをバサラとビカラの北上組、そしてメキラとアンチラの東進組へ託し、エレオノールに会ったらこのメモを渡すように指示を加える。
 指示を覚えた事を確認し、バサラとビカラは北へ、メキラとアンチラは東へ向けて送り出した。
 メキラとビカラは道なりに北へ進み、メキラとアンチラは線路沿いを東へ進んで行く。

 二組の式神を見送った後、フェイスレスは別のメモを作成し、アジラ、サンチラ、ハイラ、シンダラの先遣隊へと渡した。


────────────────────

 エレオノールへ

 商店街の田邊骨董店で落ち合おう。
 今からそこに行くから待ってて。

                      才賀勝
────────────────────


 北上組、東進組と同じようにメモをエレオノールに渡す指示を先遣隊へ出した後、商店街へ向けて出発させる。
 アジラとサンチラとハイラを乗せたシンダラは、高速で飛行し夜空へと消えて行った。


「これで良し、と。マコラとショウトラは札に戻れ」


 マコラとショウトラを札に戻すと、残った式神はクピラとインダラの二体だけだ。
 フェイスレスはクピラを肩に乗せると、そのままインダラへと跨った。
 インダラは高速で移動するユニコーンに似た式神だ。
 今からこのインダラで商店街へと赴き(おもむき)、先遣隊と合流する算段なのだ。
 クピラを肩に乗せたのは、クピラの霊視能力が役に立つと思ったからではなく、外に出していても邪魔にならないと判断したからだ。
 無いよりはましだろう、という軽い気持ちで連れているだけで、特に意味はない。

601 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:48:09.87 ID:ZvhorjCU [19/22回発言]


 先遣隊と合流し、エレオノールがまだ見つかっていない場合は、再び式神を分散させてエレオノールを捜索する。
 式神の組み合わせは、その時になったら決めることにしよう。

 エレオノール捜索のために放った式神達に参加者の殺害を命じたのは、エレオノールへの脅威を一人でも多く減らすため。
 勝の捕獲を命じたのは、ダウンロードの器として勝が必要だからだ。


 最終的な合流地点は遊園地に決めた。
 地図の端にあるため人も少ないだろうし、隠れられる場所も多く守りに入るには好条件の場所だろう。
 それに機械も多い。
 僕の手にかかれば、機械や工具を使ってこんな場所から脱出するのも容易い(たやすい)ことさ、と思ってのことだった。

 遊園地が禁止エリアになった場合は、人の居ないだろう採石場に向かうとしよう。
 別に機械類が無くとも、エレオノールと合流できさえすれば後は天才の手腕でどうとでもなる。


「待っててね、エレオノール! 今から君を迎えに行くよ!!」


 ユニコーンに乗った天才は、商店街へ向けて、愛しの人へ向けて、長年の夢に向かって走り出した。



【B-6 北部の路上 一日目黎明】

【フェイスレス】

[時間軸::28巻、勝にゲームを申し込んだ後。

[状態]:健康。

[装備]:エネルギー結晶@GS美神極楽大作戦!!、クピラ、インドラ@GS美神極楽大作戦!!、言霊@烈火の炎。

[道具]:ガッシュの魔本@金色のガッシュ!!、式神十二神将の札×12(マコラとショウトラ以外は空)@GS美神極楽大作戦!!、
     基本支給品一式×2

[基本方針]:愛しの人を手に入れる。『才賀正二』を演じ、悪評を広める。
      1:花火の打ち上げられた商店街へ向かう。
      2:エレオノールを探す。
      3:勝を捕える。

※インドラに乗って移動しています。
※肩にクピラを乗せています。
※体の中に言霊@烈火の炎を隠しています。
※エネルギー結晶@GS美神極楽大作戦!!を飲み込みました。


※※バサラとビカラが一組になって北上しています。
※※メキラとアンチラが一組になって東進しています。
※※アジラとサンチラとハイラを乗せたシンダラが商店街へ向けて高速で飛行しています。
※※式神が真っすぐ移動するかはわかりません。


※※※B-6北部の路上付近にガッシュ・ベルのリュックが落ちています。
※※※フェイスレスが叫んだ呪文でガッシュ・ベルにどのような影響が出たのかは後の書き手さんにおまかせします。

602 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:49:35.24 ID:ZvhorjCU [20/22回発言]





【門構(もんがまえ)@烈火の炎】
ジャン・ジャックモンドに支給された。
門都の持つ魔導具。
鎖で繋がった一対の手甲。
二つの手甲を組み合わせることで『門』の文字を作り出し、『無名』を窪みに嵌めこむことで初めて発動する魔導具。
無名に浮かび上がる文字に応じた門構えの漢字を作り出し、その漢字に沿った効果を発揮する。
原作で発揮された効果は以下の通り。

『門』:異空間へ続く門を出現させる。これも無名がなければ発動しない。
    異空間の中から門を破壊し外に出ることも可能だが、ほぼ絶望的と考えた方が良い。
『開』:『門』で出現させた門を開き、相手を異空間に吸い込む。異空間に吸い込んだものを取りだすことも可能。
『閉』:『開』で開いた門を閉じる。
『闇』:周囲の人間から光を奪い、視覚を遮断する。使用者には効果がない。
『閃』:強烈な光を発し、相手の目を眩ませる。
『聞』:音を集め、遠くの音や小さな音を聞くことができる。

※無名が会場内に存在するかは不明です。


【言霊(ことだま)@烈火の炎】
フェイスレスに支給された。
亜希の持つ魔導具。
『刮目』の言葉を合言葉に、設定範囲内の相手に幻覚を見せる。
幻覚は現実のダメージとして相手に伝わり、最悪の場合死に至らしめることが可能となる。
設定範囲外の相手には効果がない。
最大出力で使用すると、強い精神力や実際の痛みでも幻覚を破れない。
しかし相手が『刮目』のワードを叫んでしまうと、相手も幻覚を使用出来てしまうのが玉に瑕。
相手の幻覚を破るには、言霊の使用者は自分だという強い意志が必要です。
ちなみに、罪人に刃を研ぐ音を聞かせ、「首を切るぞ」と宣言した後に濡れたタオルで罪人の首を強く叩いたところ、
その罪人は死亡したらしいです。


【閻水(えんすい)@烈火の炎】
巴武士に支給された。
水鏡凍季也の持つ魔導具。
虚空の作品。
剣の柄の形をしている。
「水」の属性を持ち、本体に触れている水を自在に操るれる。
通常は水を固めて剣の形にして戦う。
修練を積めば、一旦刃として成型した水を閻水本体から離しても自在に操ることができる。
水蒸気を出し、屈折を利用して分身を作ることも可能。
ペットボトル程度の水でも充分な刃を形成できるが、プール一杯分の水までも操ることができ、
その大量の水を押し固めて『決して折れない』刃を作り出すこともできる(刃は通常の大きさ)。
刃の強度と使用する水の量は比例の関係にある。
また液体状のものならば何でも操ることが可能で、血液を刃にすることもできる。
『氷魔閻』とは対の関係にある。

603 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:49:36.54 ID:CmW6yW94 [3/5回発言]
   

604 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:50:18.17 ID:ZvhorjCU [21/22回発言]



【翠龍晶@うしおととら】
ジャン・ジャックモンドに支給された。
?の右眼に使われたもの。
百年霊土の中にあった霊力を備えた青紫水晶を磨いて作った。
霊的な雷撃を吸い込むこともできる。
目に嵌めれば目の代用として使うことができ、『浄眼』と呼ばれるその目はあらゆるまやかしを見破り、妖怪の姿を見ることも可能となる。
更に、相手に一種の暗示をかけることもできる。



【ヴァジュラ@スプリガン】
巴武士に支給された。
インドラの雷撃とも呼ばれるオーパーツ。
人間の精神波をエネルギ-に作動し、雷撃を放つ。
しかし、許容範囲を超えた力(人間の精神波を超える力)を与えると暴走し、最後には爆発してしまう。
気を付けろ!



【青き稲妻@GS美神極楽大作戦!!】
ジャン・ジャックモンドに支給された。
念波で自在に動かすことができる空飛ぶホーキ。
音速を超えることも可能だが、衝撃波で壊れてしまう。
スペインの重要文化財。


【エネルギー結晶】
ガッシュ・ベルに支給された。
魂二~三万人分のエネルギーを秘めている。
アシュタロスでなければ中に秘められたエネルギーを完全に取り出し、扱う事はできない。
しかし、アシュタロス以外の者でもエネルギーの一部を使うことは可能。

605 : 雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM : 2011/05/23(月) 22:51:27.06 ID:ZvhorjCU [22/22回発言]


【式神十二神将のお札@GS美神極楽大作戦!!】
フェイスレスに支給された。
六道冥子の式神を封じた十二枚のお札。
式神を扱うには膨大な霊力と精密なコントロールが必要となり、使役するのは至難の業。
使役に失敗すると暴走して自分も危険に晒されてしまう。
式神はそれぞれ十二支がモチーフとなっている。
封じられている式神は以下の通り。

『クピラ』
『子』の札に入っている。
長い尻尾と大きな一つの目を持つ、肩に乗れる程小さな式神。
霊視能力を持つ。

『バサラ』
『丑』の札に入っている。
大きな黒い体をしており、二本の角を持つ。
霊を吸い込む能力を持つ。

『メキラ』
『寅』の札に入っており、虎に似た姿をしている。
短距離の瞬間移動が可能。

『アンチラ』
『卯』の札に入っている。
細長い体と長い耳が特徴。
鋭い耳で敵を切り裂く。

『アジラ』
『辰』の札に入っている。
蜥蜴(とかげ)のような式神。
火を吹き、敵を石化させる能力を持つ。

『サンチラ』
『巳』の札に入っている。
黒く長い体をした式神。
電撃攻撃を行う。

606 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:52:20.75 ID:wbhXLdax [8/9回発言]



607 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 22:55:22.49 ID:wbhXLdax [9/9回発言]

112 名前:雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM[sage] 投稿日:2011/05/23(月) 22:53:24 ID:???

『インダラ』
『午』の札に入っている。
一本の長い角を持っており、馬のような姿をしている。
背中に乗ることが可能。
時速三百キロで走ることができる。

『ハイラ』
『未』の札に入っている。
小さな体で、全身を白い毛に覆われてもふもふしている。
毛針攻撃と、自分と周囲の人間を特定の人物の夢に入り込ませるサイコダイブの能力を持つ。

『マコラ』
『申』の札に入っている。
宇宙人のグレイっぽい容姿。
光沢のある人型をしている。
変身能力を持ち、人間に化ける事ができるが、喋ることはできない。

『シンダラ』
『酉』の札に入っている。
エイのような姿をしており、空を飛ぶ。
亜音速で飛行する事ができる。

『ショウトラ』
『戌』
首に珠の付いた縄を巻いた狛犬のような式神。
怪我や病気の治療ができる。

『ビカラ』
『亥』の札に入っている。
目が無く、大きな口を持った式神。
戦車並の怪力を発揮する。




【土手鍋@金剛番長】
美神令子に支給された。
白雪宮財団の手で造られた、巨大なメイスのような武器。
鉄球棍に刺(とげ)を付けた形をしている。
海外の有名デザイナーと武器職人による傑作。
柄のボタンを押す事で鉄球の部分を飛ばすことも可能。
鉄球と柄は鎖で繋がっている。
二つ目のボタンを押せば刺が伸びる。
三つ目のボタンはおそらく飛ばした鉄球を戻すためのものと思われる。
「おいで」と呼べば持ち主の所に飛んでくる凄い武器。
流石は白雪宮財団!



【鍋@現実】
美神令子に支給された。
普通の金属製の鍋。
蓋(ふた)は付いてない。
どこかにこの鍋とぴったり合う鍋の蓋はありませんか?



608 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 23:25:47.26 ID:CmW6yW94 [4/5回発言]
113 名前:雷人具太陽(ライジングサン) ◆AJINORI1nM[sage] 投稿日:2011/05/23(月) 22:54:13 ID:???
これで投下終了です。
誤字脱字等あれば指摘してください。

114 名前: ◆AJINORI1nM[sage] 投稿日:2011/05/23(月) 22:57:16 ID:???
あ、しまった
本スレ604の修正をします。
?の部分ヒョウです


【翠龍晶@うしおととら】
ジャン・ジャックモンドに支給された。
ヒョウの右眼に使われたもの。
百年霊土の中にあった霊力を備えた青紫水晶を磨いて作った。
霊的な雷撃を吸い込むこともできる。
目に嵌めれば目の代用として使うことができ、『浄眼』と呼ばれるその目はあらゆるまやかしを見破り、妖怪の姿を見ることも可能となる。
更に、相手に一種の暗示をかけることもできる。

115 名前: ◆AJINORI1nM[sage] 投稿日:2011/05/23(月) 23:00:21 ID:???
また修正箇所を見つけました
式神のショウトラの所を修正します


『ショウトラ』
『戌』の札に入っている。
首に珠の付いた縄を巻いた狛犬のような式神。
怪我や病気の治療ができる。




609 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/23(月) 23:26:15.76 ID:CmW6yW94 [5/5回発言]
これで終わりですね
まだ読んでいないので、感想などはのちに

610 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:33:00.53 ID:pAJV3PEf [1/7回発言]
投下します。

611 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:35:20.41 ID:OkL714cc [1/1回発言]
支援

612 : ひとりじゃない ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:35:39.09 ID:pAJV3PEf [2/7回発言]
 ◇ ◇ ◇


 横島忠夫と霧沢風子の二人は、山道を進んでいた。
 長袖のトレーナーにジーンズの横島はともかく、タンクトップにデニムのホットパンツという風子の服装は山歩きに適しているとは言い難い。
 だというのに、葉や草で肌を切る心配をまったくしていない。
 携えた風神剣で風の刃を作り出し、進行先に生えている草木を刈り取っているのだ。

「――ってことは、なぁにぃ?
 アンタはゴーストスイーパーとかいう、幽霊やら妖怪やらその辺のを退治する仕事をしててぇ?
 しかもぉ? 国家資格ぅ? で認められたぁ? プロフェッショナルでぇ?」

 同行者である横島忠夫の切実な願いを聞いた霧沢風子が、ゆっくりと口を開く。
 いちいち語尾を上げながら、ジト目で横島を見つめている。

「…………なんだか口調と視線がすっごく気になるけど、その通りだよ」
「そんでぇ? アンタのぉ? 霊力とやらの源がぁ? 煩悩? ですってぇ?」
「そう! まさしくその通り! さっすが風子ちゃん、話が分かるゥ!
 だから……ハァーハァー……っ! 協力すると思って、いち早くその胸を――」

 頼みが受け入れられたと確信した横島の身体は、喋り終えるより先に動いていた。
 両手の十本の指を小刻みに動かしながら、風子目がけて助走なしでの大ジャンプ。
 黒いタンクトップの下にある大きな乳房を、揉んで揉んで揉み倒すべく。
 あくまで霊力を漲らせるためだと口では言いつつ、煩悩に忠実に従う。

「んッなこと信じられっか、ボケがァァァァァ!!」
「ぎゃぁぁああぁぁぁぁ!」

 跳躍した横島を待っていたのは、柔らかい乳房ではなく硬い肘であった。
 繰り出されたカウンターのエルボー・バットを受けて、横島がうめき声をあげながら山の斜面を転がり落ちていく。
 前髪をかき上げながら、風子は呆れたような表情で歩み寄っていく。

「なぁぁぁにがゴーストスイーパーだ! 言うに事欠いて国家資格? アホか!
 そんなに幽霊退治ごっこしてーんなら、掃除機でも背負ってゴーストバスターズ歌っとけ!」
「っちょ、風子ちゃんGS知らないの!?」
「真顔で言えば信じるとでも思ってんの?
 風子ちゃんがいっくら英語ダメダメだからって、そんなモンに騙されるか!」
「ほんとに知らない……?」
「な、なによ」
「……いや、これしか考えられないな。もしかして風子ちゃんって…………」

 立ち上がった横島の真剣な口調に、風子は息を呑んだ。
 いきなり茂みから現れたと思ったら胸を揉んできて、かと思えば泣きながら土下座。
 しばらく静かにしていたかと思えば、また揉ませろと頼み込んできて、断ればいきなり自分がゴーストスイーパーなどと明かす。
 そんなふざけているとしか思えない男が、急に真顔になったのである。
 たじろぐのも、無理はないだろう。

「…………割と田舎に住んでたり?」
「ド失礼か!」

 シリアスな雰囲気出しといてそれかっ! と続けて、風子は横島の額を叩いた。
 すぱーんと、やたら軽快な音が山のなかを木霊する。

613 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:35:52.89 ID:7yA5nvVB [1/4回発言]
 

614 : ひとりじゃない ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:36:59.86 ID:pAJV3PEf [3/7回発言]

「ほ、ほんとに知らないの?」
「はっ! もうその手にゃ乗るかよ!」
「うーむ……意外に場所によっちゃ知名度高くないのか? いや、でも……」

 再び歩き出した風子を追いながら、横島は腕を組んで思考を巡らす。
 横島の知る限り、ゴーストスイーパーとはかなり有名な職業のはずである。
 周りにいるかどうかはさておき、存在自体を知らないなどありうるのだろうか。
 オカルトGメンなるICPO直属の組織が発足されたことも、テレビや新聞で大いに報道されたはずなのだ。
 にもかかわらず、まったく記憶にないと言う。
 とても疑問を覚えないワケにはいられなかった。

(蘇る前のおキヌちゃんみたく、実は何百年前の霊とかか?
 だとしたらゴーストスイーパーを知らなくても納得できるけど……あの感触はリアリティあったよなぁ、くふ、くふふふ)

 組んでいた腕を解いて、横島は思い出すように指先を動かす。
 笑みを隠し切れずに、だらしなく緩んだ口元から涎が伝っている。
 すでに脳内からは、抱いた疑問のことなど消え失せてしまった。

「うお!? い、いや、別に風子ちゃんの胸のことなんて――」

 何かにぶつかったことで、横島は思考の渦から復帰する。
 横島は弁明しようとして、別に風子がこちらを振り向いて勘付いたワケではなく、ただ背中にぶつかっただけだと気付く。
 零れかけた言い訳を呑み込んで、風子に足を止めた理由を尋ねかけ――理解した。
 赤黒い液体を撒き散らしながら、頭髪の生えていない長身の男が横たわっていたのである。
 制服を着ていることから、おそらく高校生であろうと推測できた。
 わざわざ近付かなくとも、明確に死んでいることが見て取れる。
 立ち竦んでしまって――当然だ。

(マジ……かよ)

 いままで楽観的すぎたと、横島は思い知らされた気がした。
 冷静に立ち回るつもりだったが、どこかで『今回だってなんとかなるだろう』などと甘い考えを持っていたのかもしれない。
 死体は歩み寄って確認してみると、無数に銃撃を受けた痕があった。
 すなわち、そこまで本気で殺しにかかっている参加者がいるということだ。
 惜し気もなく銃弾を消費し、致命傷に至らない箇所さえ打ち抜く。
 そんな、最後の一人を目指す参加者が存在するのだ。
 しかもこの場に、現在いるこの場所にいたのである。
 いつのまにか口内に溜まっていた唾液を横島が飲み干すと、やたらと大きな音が喉元を震わせたような気がした
 強く拳を握り締め、尻尾を巻いて逃げようとしている身体を抑えつける。
 同行しているのは、美神令子のようなエキスパートではない。
 戦闘経験はそれなりにあると言っていたし、支給された剣により風を操れるとはいえ、死体を見て静止してしまうような――ただの少女なのだ。
 さすがの横島とはいえ、逃げ出す気にはならなかった。

 ――――不意に、風が横島の頬を撫ぜる。

 直後、横島の背後から轟音が響く。
 風子が立ち竦んでいた場所だ。
 襲撃を受けたのだとしたら、まずい。
 そう考えた横島が勢いよく振り返るが、視界に映ったのは風子だけであった。
 両手には風神剣を構えており、足元には大きな穴が空いている。

615 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:37:17.42 ID:7yA5nvVB [2/4回発言]
 

616 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:37:26.85 ID:f0u8SdDE [1/1回発言]
 

617 : ひとりじゃない ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:37:57.15 ID:pAJV3PEf [4/7回発言]

「何が、あったんだ……?」

 横島に応えるように、風子は風神剣を掲げた。
 剣を中心に風が放たれているらしく、立ち込めている砂煙が奇妙に流れていく。

「お墓」
「……え?」
「そんなところで野ざらしなんて、私だったらイヤだし。
 名前なんて知らないから墓標なんて立ててやれねーけど、それでも……さ」

 なるほど、風を刃にできるのなら塊にして叩き付けられても不思議ではない。
 納得したように頷いたのち、横島はリュックサックから支給された毛布を取り出す。
 武器にもならない上に、決して使えなくはないのでツッコミ甲斐もなく放置していたものだ。
 その毛布で死体を包んで抱え上げ、風子の足元に空いた穴へと横たわらせる。

「……ねえ横島、ヤバいことに気付いたかも」
「ん?」
「土吹っ飛ばしちゃったから、埋められない」
「…………あぁー」

 しばらく静寂が立ち込めてから、土を掘って被せる音が静かに山を木霊した。


 ◇ ◇ ◇


 死体の上に盛られた土山を見据えて、風子は大きく息を吐いた。
 風神剣の周囲に風を発現させることで、刀身に纏わりついた泥を払う。
 今度は風をハンマーにして一気に穴を開けるのではなく、剣自体をスコップのようにして土を掘ったのだ。
 剣をそのように使うなど――と、先輩の水を操る剣士ならばそう睨み付けてきそうだと想像して、風子は目を細めた。
 風子ちゃん別に剣専門じゃないしぃー、ルールとかどうでもいいしぃー、と胸中で返しておいた。

「つ、爪に土が……ぐぅぅ……」

 風子のすぐ横で、横島が両手を眺めて呻き声をあげている。
 墓作りを手伝ってくれていたのだが、あいにく土を掘り起こすのに役立つような道具は支給されていなかったらしい。
 だというのに、わざわざ手で土を被せてくれていたのだ。
 そんなことをすれば、爪の奥まで茶色くなってしまうのも当たり前だろう。
 こりゃたまらんと思ったのか、リュックサックから水の入ったボトルを取り出して手を流す。

「しまった! 貴重な水が! もったいない!」

 両手の表面がキレイになった辺りで、横島はハッとしたようにボトルの口を上にあげた。
 しかし、もうほんの少ししか水は残っていない。
 一口分にも満たない水を時間をかけて飲み干し、横島はがっくりと項垂れてしまう。


618 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:38:02.20 ID:7yA5nvVB [3/4回発言]
 

619 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/24(火) 23:38:42.62 ID:7yA5nvVB [4/4回発言]
 

620 : ひとりじゃない ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:39:31.66 ID:pAJV3PEf [5/7回発言]

「ふふっ。ほれ、水一本くらいやるよ。手伝ってくれたお礼にってことでな」
「ええっ!? ……もしかして、一本一万円とか?」
「そんな、弱みに付け込むようなことするかよ……」
「いや、うちの上司ならそういうことしてそうで……」

 風子が差し出したボトルを、横島は両目から涙を垂れ流しながら受け取る。
 そんな大げさなとの思いを抱きつつ、風子は口元を緩めた。
 横島と合流しておいてよかったと、そう思ったのだ。
 もしも一人のままであったのなら、ずっと後悔しっぱなしで他のことに意識を向けられていたかどうか。
 死体を発見しても、また救えなかったという思いが膨らむだけだっただろう。
 悔やむだけで、前に進むこともせずに。
 いきなりセクハラぶちかましてきて、無理矢理いつもの仲間たちとバカやってるときのペースに乗せられたおかげで、こうして歩むことができている。
 筋肉バカゴリラやら、花火バカやら、のほほんバカやら、小僧バカやら、無愛想バカやら。
 周りがあんなのだから、しっかりしなくてはいけないと思えたのだろうか。
 彼らがいたからこそ、この間まで少し喧嘩経験豊富だっただけの女子高校生が戦えていたのだろうか。
 仲間たちに面と向かっては言えないが、そんなことを風子は考えていた。

 そして――
 バカな仲間がいるからこそ、横島のようなバカがいるからこそ――
 たしかにこの場で人が死んでしまっているこの場で、風子は力を望む。
 もう、誰も死ななくていいような。
 誰も悲しくて涙を流してしまうことなんてないような。
 こんな悪趣味なことを企画したヤツらをブン殴れるような。
 そんな、力が。
 圧倒的な、力が。
 強くて優しい力が。
 心の底から、欲しい。

 ――――風神剣を握る右手の力が、無意識のうちに強くなっていく。

「風子ちゃん……」

 五人の友人たちに思いを馳せている風子を、横島は後ろから抱き締めた。
 空を眺めていた風子は、視線を地面へと移す。
 小刻みに震えながら、右手で握っていた風神剣を手放してしまう。
 からん――と、地面に剣が落下した微かな音が響いた。

621 : ひとりじゃない ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:41:24.25 ID:pAJV3PEf [6/7回発言]

「なにやってんだ、テメェェェェェ!」

 一気に振り返って、風子は右肘を横島の顎に叩き込む。
 よろめいたところに、左肘で追撃を浴びせる。

「い、いや、その、なんか落ち込んでるみたいだったから……!」
「だぁぁぁれが、そんなこと言ったってんだ!」
「ふっ。わざわざ口に出されなくても察してあげるのが、男の定めじゃ――」
「うッせえ! しぃぃぃねぇぇぇぇぇッ!」
「死ねって! こんな状況で死ねって! シャレにならぎゃぁぁぁああっ!」



【C-1 森林/一日目 黎明】

【霧沢風子】
[時間軸]:SODOM突入前。
[状態]:健康
[装備]:風神剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(本人確認済み)、水一本消費
[基本方針]:烈火たちと合流したい。


【横島忠夫】
[時間軸]:文珠を出せる時期。
[状態]:焦り、ボッコボコ(=いつも通り)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、謎の玉@不明、ハンディカラオケ@現実
[基本方針]:死にたくない。



【支給品紹介】


【毛布@現実】
横島忠夫に支給された。
包まって寝るとあったかい。
もふもふ。

622 : ◆hqLsjDR84w : 2011/05/24(火) 23:42:40.82 ID:pAJV3PEf [7/7回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。

623 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/25(水) 06:41:26.30 ID:JRR0PQpV [1/1回発言]
投下乙です
横島のおかげで鬱フラグ回避は余裕ですね
そして三回目の埋葬イベントが発生しているのが地味に凄い

624 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/25(水) 10:29:43.45 ID:xt+OCBTL [1/1回発言]
2話とも投下乙です!とりあえず感想は1つずつで

やっと登場した令子さん!最初に出会ったのがフェイスレスとか不運だな……まぁ一番不運なのはガッシュなのか?ザケル連発がガッシュへどんな影響を与えてるのかが気になる

そして武器庫化してるぞジャンw


625 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/25(水) 22:52:31.33 ID:pbTg3b28 [1/3回発言]
投下乙!
れいこは初対面がフェイスレスとかそれはとっても素敵な出会いだなあw
ジャンも武士のスタンスの影響を受けながらも我が道行く感じなのがかっけえw
でも門構使いこなせんのかな?あいつ外人なのにw
んで冥子ちゃんの式神キタコレ!
なんで冥子ちゃんを選ばなかったんすか、1さん~
小隆起ちゃんといい残念だな~

626 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/25(水) 22:55:56.57 ID:pbTg3b28 [2/3回発言]
投下乙!
やべえ
このコンビは見てて楽しいぞ!
横島の空気を読まないスキルは最高すぎるぜ!
自分はこういうのが好きなんだって思っちゃうね
風子は横島がついていれば大丈夫かな?
いや逆に危ない気も…w

627 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/25(水) 22:58:54.95 ID:pbTg3b28 [3/3回発言]
どれもクオリティが高くて読んでて楽しいなw
皆さん頑張ってw

628 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/26(木) 23:19:21.87 ID:49z/s1z2 [1/1回発言]
投下乙
これは、美神の中には結晶は無いと考えてよさそうかな?
しかしフェイスレスも厄介な物を手に入れたものだ…

629 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:07:52.50 ID:13eUiA92 [1/2回発言]
烈火の状況をAAにしてみた


【花火打ち上げ時】

                          マーダー

   マーダー                 危険人物

                          マーダー
                                              マーダー

         対主催    マーダー   \(^o^)/<ミンナアツマレー 対主催組(屋内)
                                       仲間(行方不明)


          対主催           マーダー&対主催(屋内)

          マーダー





【現在】

                          マーダー

   マーダー

                       危険人物VS仲間
                                              マーダー
                           マーダー<キタヨー
         対主催  ヨンダ?>マーダー\(^o^)/<ヤッテヤンヨ   対主催組(屋内)
                            ↑対主催が仲間になった!


          対主催           マーダー&対主催(屋内)
   式神四体<マッハ!
          マーダー
危険人物<スグイクヨー

630 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:12:30.54 ID:0cZohhuw [1/16回発言]
これはwwww

631 : ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:18:29.79 ID:4Rj+R4tk [1/8回発言]
>>629
くそ、おもしろい、だと……w

リラックスさせてもらったところで、したらばでの宣言から30分ほど繰り上げさせていただき、0時30分よりガッシュ・ベル、才賀正二投下します。

632 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:21:30.85 ID:0cZohhuw [2/16回発言]
きたー!

633 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:24:32.32 ID:wPjYi274 [1/2回発言]
このAAはそのまま用語集行けるレベルwww
というか触れてなかったけど、wikiの用語集たまに更新されてて面白いんだよなぁw
AAも用語集もマジGJ!

634 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:33:04.40 ID:4Rj+R4tk [2/8回発言]


 よろしい、それでは前説の名手たるピエロ殿の後を継ぎ、ここに選ばれた一つの悲劇をご覧あれかし。


   ★   ★   ★

 夜はいまだ悠々と横たわっていた。

 光り輝く月も、やや傾きかけたとはいえ我が物顔で夜空に留まってはばからない。
 その月光を受けて流れる雲は、夜空よりもさらに色濃く浮かび上がっている。
 まるで質量をもつかのごとくフィールド上に満ち足りた闇の中では、木々が葉をざわめかせている。まるで輪唱のように、途絶えることなく。
 雑木林に守られるように、高台にある寺はひっそり閑としてただそこに在り。
 朝靄はまだ弱々しく、夜の裾をようやく浸し始めたばかりだ。

 と、ここで木々の合唱を邪魔するものがあった。
 老人と幼い子供の、争うような声。

「とぼけるでない!」

「訳がわからん! 君、いったい誰と私を間違えているんだ!?」
 
 幼年のあどけなさが残る金髪金瞳の子供が、相手に何事か詰め寄っている。
 対するのは短く刈り込んだ白髪の、物腰の上品な初老の男性。
 それぞれの名前はガッシュ・ベルと才賀正二。二人の会話は一向かみ合う様子を見せていない。 

「君とは、今会ったばかりだろう? 私はここで倒れている君を助けた、ただそれだけのはずだ!」

「まだ言うか正二! 見損なったぞ! 早く本を返し……ッ」

 怒気を抑えられぬ様子のガッシュはしかし、肩口を抑えるとうずくまった。
 骨から響く痛みがぎしぎしと、年相応に小さく華奢な体を横切っていく。
 先刻『正二』から受けた何かしらの攻撃が、彼の肩関節をいとも簡単に脱臼させたのだった。
 座り込む彼の目じりに、痛みによるものとは別の涙がにじむ。

 悔しかった。騙されたことが悲しくて痛くて悔しかった。
 頭がくらくらするほどの怒りを感じていた。

「さあ、気絶している間に肩をはめたとはいえ、医療器具も何もない状態でできることは限られている。君がなぜ私の名前を知っているのか知らないが、まずは落ち着いて――」 
 
 そう言って、正二は丸まった少年の背に優しく手を添えようとした。
 しかし剣呑な身振りでそれを振り払うと、ガッシュは小さく震えながらも立ち上がる。
 黙したまま歯を食い縛り荷物を抱え込み、何かを要求するように右手を上に向け相手へと差し出す。同時にじりじりとにじり寄っていった。
 理解し難い怒りと気迫に押され、正二はこめかみに汗の滲みを感じながら後ずさる。弁解のしようもなく、言葉が思い浮かばないのだ。

「正二――せめて本を返すのだ! あれは私と清麿と、仲間たちの……ッ!」

「……私は、本など持っていない。落ち着きなさい」

 いさめるような正二の口調は、かえって火に油を注いだ。

635 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:33:20.37 ID:0cZohhuw [3/16回発言]
 

636 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:33:35.87 ID:HV/UGKBL [1/5回発言]
 

637 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:34:25.03 ID:4Rj+R4tk [3/8回発言]
「うぬぅぅう、返すのだ! 正二!」

 突進に近い形で、ガッシュは正二の腹へと飛び込む。
 小さな体から思いもよらぬほど大きな衝撃をみぞおちに受け止め、後ろによろめく正二の体。

 後ろ――たった今彼が上ってきた、階段の方へ。 

「危ない……!」

 相手が言ったと同時に、ガッシュは嫌な浮遊感と、眼下に広がった階段の目もくらむような高さに恐怖した。
 視線で追う景色は色を失い、はるか下の地面から黒い空へ、ゆらりとした風景の反転を見せつける。
 次の瞬間には確実に襲って来るであろう凄まじい衝撃と痛みに備え、硬く硬く目を閉じた。
 彼にできることはそれだけだ。


 しかし、なんという事だろう。


 浮遊感が消え、予感した衝撃が襲ってこないことを不思議に思ったガッシュはうっすらと目を開ける。
 そうして、階段の一段目にいる自分を認識し唖然とした。
 震える手を、わななく足を泥に塗れさせ、縋るようにして一段目にへたり込んでいる自分。
 とっさに首を左右に巡らせ正二を探す。
 
 いない。どこにも。ならばどうなったのか。
 恐怖から途切れていた五感が徐々に戻り、耳がどさという着地音を拾った。
 
 ――ああ、正二は落ちてしまった。

 何十段あるか解らない高い高い階段の最上段から最下段まで。

 そしてまた、ガッシュは理解していた。
 理性のなせる業か、本能の声がそうさせたのか――正二が自分を押し戻すようにして、落下から守ったということを。

「あ……あ――!」

 下を覗き込む勇気がない彼を、誰が責められるだろう。
 ガッシュは立ち上がると雑木林に突っ込み、東へ向かって遮二無二走り出した。何も聞こえないよう手で耳を塞ぎ、見開いた目からとめどなく涙の流れるままに。
 かつて輝くような笑みを宿していたその顔は今や悲しみと錯乱に覆われ、ただ泣いて、友達を求め走りゆく。
 呆れ顔をしながらも最後まで自分を助けてくれる彼を探し、真っ暗な林の中をたった一人で。

「清麿ぉぉぉ!! ウワアァァァァアア! どこにいるのだ!? 清麿! 私は、私は、どうすればいいのだ!?」

 木の根につまずき転ぶ。勢い余って柔らかな腐葉土の上を転がり、朽ち切っていない枝や葉で頬を切り、ひざをすりむいた。

「うぐ……」 

 嗚咽がもれ、口の中に涙や泥の味が広がった。
 それでも彼はすぐに起き上ると走り出す。何処へいくのかなど知ったことか。ただ、ここではないどこか、清麿たちのいる所へ行きたかった。 


638 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:35:08.68 ID:HV/UGKBL [2/5回発言]
 

639 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:35:37.22 ID:0cZohhuw [4/16回発言]
   

640 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:35:39.95 ID:4Rj+R4tk [4/8回発言]

 ガッシュはひた走る。
 人を殺してしまったかもしれない。いや殺してしまったに違いない。
 頭に浮かんでは消えていく、覆せない事実。

 そして悔いる。
 相手の言い分もろくに聞こうとせず、一方的にまくしたてた自分の信じがたい軽率さを。
 そんな自分を助けてくれた正二を――殺してしまったことを。

「正二は、悪いやつだったのか?! いいやつだったのか?! どっちだったとしても、私は、取り返しのつかぬことをしてしまったのだ……ッ」

 疾駆する小さな彼を包むのはしかし、木々のざわめきだけ。
 どこに襲撃者が潜むともしれない雑木林を抜け、いくらか幅の広い小川へと至ると、ぜんまいの切れた人形のように立ち止まる。
 呼吸を乱しながらがくりと膝をつき、月光に映えて黒く揺らめく水面を覗き込み。金色に輝く自分の目をじっと見つめた。
 いつの間にか木々は静まり、川辺はすべてのものが眠りについたような静寂に包まれている。

 ――だって、正二は私をだましたのだ。仲良くしていたのにいきなり肩を外して本を盗ってそ知らぬふりを決め込んで、私の名前も知らないみたいに、とぼけて……――

 ――そうかと思えば、落ち着けだとか助けたりとか、助けたり、助け……――

 朝の気配にけぶる空を見上げ、大声で泣こうと思った。でもできなかった。
 なぜなのだろう、こんなにも悲しいのは。自分を殴りつけたい気持ちでいっぱいなのは。
 わからない。ただ、誰かにそばに来てほしい。笑って、大丈夫だと、お前は悪くないと言ってほしかった。
 戦いの無い世界を望んでいただけだったのに。どうしてこうなったのだろう。どこで間違ったのだろう。

 正二には家族がいたのではないか? だとしたら、正二の家族にとって、自分はどのような存在になるのだろう?

 荒い石の上に手をついて、彼の乾いた唇がゆっくりと開く。 

 ――私は……――

 頬から伝った涙が水面に落ち、わずかな波紋となって消え。


「――私は、優しい王様には、なれない……?」


 ぞっとするほど静かな川辺に、一つの絶望が咲いた。

641 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:36:03.89 ID:HV/UGKBL [3/5回発言]
 

642 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:36:06.87 ID:4Rj+R4tk [5/8回発言]
 『彼』は笑っているだろうか?
 
 ガッシュと正二のすれ違い、その諸悪の根源。
 不幸を照らしつける黒い太陽。
 いまやザケルすら操るに至った彼は、離れながらもガッシュの命綱の端を握っているに等しい。
 
 自分の蒔いた疑惑の種が今芽吹き、小さく花咲いたことを笑って喜んでいるだろうか?
 
 いや、彼は笑ってなどいない。たとえ、その唇の端が愉快気に吊り上っていたとしても。
 その内にある感情を表せる言葉を、私たちは持っていない。
 
 三解のフェイスレス――彼を『理解』するための言葉は、この世には無いのだ。





【C-6東・河岸 一日目/黎明】

【ガッシュ・ベル】

[時間軸]:コルル戦直後
[状態]:肩に痛み、頬やひざに擦り傷。フェイスレスによるザケル使用で精神が弱っています。今のところ自覚はなし。
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:優しい王として、泣く者がいないように頑張れないかもしれない……
     

643 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:36:52.43 ID:HV/UGKBL [4/5回発言]
 

644 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:36:54.43 ID:0cZohhuw [5/16回発言]
  

645 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:37:06.59 ID:4Rj+R4tk [6/8回発言]
   ※    ※    ※



「ぐ――打ち所が悪かったか……」


 少年が走り去ったのち数分を経て、階段の最下段、緩慢な動作で動く影が一つ。
 気品あるウール地のツーピース・スーツはところどころ破れ、アイロンをきっちりときかせていたシャツは泥に塗れてはいるが、彼は確かに起き上った。

 彼――才賀正二は生きていた。

 いかなる幸運のなせる業か、いやこれから彼が立ち向かう運命を鑑みれば、不幸のなせる業と言った方が適切かもしれないが――落下の衝撃は彼の命を奪い取りはしなかった。
 脳を水に浮かべられたような感覚と闘いながら、おぼつかない動作で近くの木へと歩みより背を預けて座り込む。

 ざらつく木の幹の感覚に眉を顰め、正二は頭から首筋、腕や足に至るまで隈なく状態を確かめた。
 かすり傷や打撲のほかは、外傷というべき大きな傷はない。問題は頭痛――この妙な浮遊感と吐き気。
 軽い脳震盪を起しているらしい己の頭をそっと背後の木に預け、朝の香りの混じった夜風の冷たさに息を吐く。
 
 落下の衝撃からデイバックは破れていた。飛び出し散乱した己の支給品の中から水を見つけ出すと、幸いにも近くに落ちていたそれを座ったままの姿勢で拾い上げる。
 力の入らない手で何とかキャップをひねり開け、少量を口に含んで飲み干すと再び蓋を占め、ボトルを額へと当てた。
 じわりとにじむ冷たさを逃さぬように目を閉じ、額に神経を集中させる。

「あの子は……私を知っていた。いや、正確には『私の名前』を知っていた。それは別段不思議ではないな。
 しかし、それでは『本を返せ』という言葉の説明はつかない……」

 大企業・才賀グループの長として、彼の名は一定の知名度を保ち人々の記憶の中にとどまっている。
 そしてあの子供の気迫は本物だった。本気で正二が本を盗ったと思っていたのだろう。だが、それはなぜ?
 彼は想像する。あの子が気絶へと至った経緯。両肩を外されて野ざらしにされた経緯。

「誰かが私を騙り、あの子から『本』を盗んだ……?」

 そんな方法があるのだろうか。夜の暗さを利用し、何かしらの小細工を弄したのか。
 たどり着いた結論に確信を持てないながらも、正二は頭を垂れて思案する。
 目を開いていてもはっきりと眼前に浮かぶ、妻と娘の姿。探し求めたいとおしい笑顔たち。
 
 ――アンジェリーナ。お前の事だから言うだろう、少年を助けるべきだと。今はお前やエレオノールを探すことをやめ、目の前のあの子の力になってやれと。

「……行くとするかな。まずは散らばった物を回収せねば」

 家族を思うと、胸が温かくなる。どんな犠牲をも乗り越えてゆける。
 震える手足を鞭打ってい起き上がると、四方八方に散乱した支給品を集めにかかる。
 そうしながらも彼はもう一つ、胸のざわめきを覚えていた。

 ――先刻、私達がちょうど段上から落ちかけた時、空が光った……あれは確かに花火だった。

 救援の信号か、はたまた危険を知らせる合図なのか。ともすれば、罠か。

 それが救援の信号だったとして。もし、アンジェリーナが放った花火だったとしたら?
 何もかも捨ておいてそこへ駆けつけたいという強い衝動に、必死に抗う。
 食いしばった歯の軋みは重々しく、はっきりしない思考は家族の笑顔で満たされてしまう。

 殺し合いは動きだしているのだろう。確実に、滞りなく。
 
 『行きたい、そこに、今すぐに。アンジェリーナ、エレオノール、お前達の元に』

 思い至って正二は自らをたしなめる。
 ここには同じような気持ちを抱えている人間も、多くいるのに違いない。
 自分だけが私情を優先して、先ほどの少年を見捨ててよい道理はない。 

646 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:37:50.82 ID:HV/UGKBL [5/5回発言]
 

647 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:38:37.65 ID:0cZohhuw [6/16回発言]
 

648 : フロムダスク・ティルドーン ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:38:38.27 ID:4Rj+R4tk [7/8回発言]
「ブラックという男の思惑通りに動くようで、気が進まないが……やはり、相応の武器がいるのかもしれん。支給品とかいうものを確認しなくてはならんな」 

 白い石ころのようなものを拾い上げる。それは念じれば中のものが取り出せるという眉唾物の物体。
 どうすれば念じたことになるのかはよくわからなかったが、正二は石を握りしめてじっと見つめる。
 そうすると、がしゃと零れ落ちるように、奇妙な人形が姿を現した。

「これは! なぜこんなものがここに……」

 驚き、躍り出た人形を見つめていた正二は、ふと足元に落ちた紙切れに気付く。
 どうやら説明書らしいそれを拾い上げ、開いた。

 たった一行だけの説明書。
 正二は眼を見開く。
 たった一行。その文章を理解できない。
 


 それは黒き騎士の人形、憐れな道化人形、あまりにも業深き、因縁と運命の象徴――


        ・・・・・・・・
 ≪あるるかん。才賀エレオノールの懸糸傀儡≫






【C-6寺 一日目/黎明】

【才賀正二】
[時間軸]:25巻、エレオノ―ル誕生直後
[状態]:健康、混乱
[装備]:あるるかん
[道具]:ランダム支給品0~1、基本支給品一式
[基本方針]:妻と娘を守る。
     0.あるるかんの所持者がエレオノールであることが理解できない。メモは正しいのか?
     1.ガッシュを探し、説得して保護する。
     2.アンジェリーナたちを探す。





以上です。投下日をずるずる伸ばしてしまい申し訳ありませんでした。
予約していないフェイスレスについて言及してしまっている部分がありますが、もし問題があれば削らせていただきます。
皆様のご判断をよろしくお願いいたします。

短い話でしたが支援感謝いたします。
その他ご指摘があれば、こちらもよろしくお願いいたします。


649 : ◆PbH8Onsw.o : 2011/05/27(金) 00:40:35.99 ID:4Rj+R4tk [8/8回発言]
って、うわw 本文の最後、消したはずの中点が消えてなかった……申し訳ありません。
wikiに入れる時に消しておきます。

650 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:45:28.37 ID:0cZohhuw [7/16回発言]
投下乙ー
ガッシュ……w
なんかもうこのまま落ちていきそうでこええw 初期参戦だけに、成長してくれなきゃやべーぞーw
しかし正二……そいつを引くか。エレオノールの人形、を
からくり本編じゃないけど、因縁がギリギリと噛みあっているなぁ

651 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:54:46.45 ID:13eUiA92 [2/2回発言]
投下乙です
正二にはあるるかんが支給されたのかあ
これからどうなるのか楽しみです

気になるところといえば、花火が打ち上げられる以前に唱えられた術の描写がないことでしょうか?
正二がザケルを目撃した様子もありませんし……
フェイスレスは本を光らせただけってことですかね?

652 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 00:57:55.73 ID:0cZohhuw [8/16回発言]
>>651
本の持ち主と離れたらダメみたいな制限かかってるのかな?
それで考察するのも面白いかもしれないw

653 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:04:22.07 ID:GgOZ4s0f [1/11回発言]
投下乙です!
あぁ、ガッシュが落ちていく……この時期のガッシュはまだ決意をし始めたばかりで
やさしい王様を目指しているという確かな実績がまだ無いからなあ
自分を信じることは難しそうだ、清磨に出会うことができるのだろうか
そして、正二にあるるかんとはw
サーカス編最終章を読んでいる気分になったw

そして大分遅れましたが自分も今から投下いたします。

654 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:05:28.28 ID:GgOZ4s0f [2/11回発言]


殺し合いの舞台で初めて出会った中学生二人は今後の方針として仲間との合流を目指すことにした。
ヒデヨシの知り合いはいないらしいので清磨の知り合いを中心に殺し合いを是としない人を探す。
神の席争奪戦、魔界の王を決める戦い。
殺人とまでは行かないが他者を蹴落とす戦いに参加していた二人。
殺し合いを否定するものは以前の戦いでも確かにいた。
きっと、ガッシュたち以外にも同じ考えのものがいるはずだ。

例えば学ランの大男。
例えば外国人の中年男性。
例えば高槻と言われた少年。

彼らに出会うことが出来ればきっと仲間になれる。
うまく言葉に出来ないが信じられる。
だが、行くあては特に無い。
ガッシュたちがどこを目指すのかを推察するにもここには思い出が多すぎる。
そこでとりあえず中央を目指して移動することにした。
中央には人と情報が集まるはずだ。

余談ではあるがヒデヨシは支給品だけでなく、仲間の数にも大きな差があることにヘコんで隠れて涙を流していた。

「何かを変換するんじゃなくて、本を読むと能力が発動するのか。限定条件も無いなんて便利だな」
「ハハッ、ヒデヨシの『声を似顔絵にする能力』だって便利そうじゃないか。ヒデヨシの知らないだけで似たような能力者もやっぱりここにいるのかな」
「このロベルトってやつは能力者を従わせてロベルト十団って組織を作って俺を襲いに来たことがある。本人に会ったことは無いが危険な奴であることは間違いなさそうだ」
「他には知り合いがいないんだよな。よし、俺の知り合いについての特徴を書いておいた。万が一俺と逸れたらこの紙を見せれば多分信用してもらえるはずだ」

支給されたメモ用紙を二枚ちぎり、一枚はロベルトのことを。もう一枚にはガッシュたちのことを書き、ガッシュたちのメモを手渡す。

情報交換から他愛の無い雑談をしながら小学校の階段を降りる。
だが、その歩みと語りは唐突に終わりを迎える。
口元で人差し指を立てもう片方の手をヒデヨシの胸の前にだし、静かにと静止しろのふたつの命令を出す。

 カツーン カツーン 

自分たち以外の足音が聞こえる。
他の参加者が小学校内にいる。そしてこっちに向かって歩いている。
この足音の主は果たして積極的に他者を殺そうとするものか。
それとも自分たちと同じく抗おうとするものか。


清磨が接触を試みようと、足音の方へと向かっていく。
虎穴に入らずば虎子を得ず。
危険かもしれないが、現段階では他の参加者と積極的に交流し情報を集めないとキース・ブラックに抗うことは難しい。
だからこそここは行くしかない。
清磨についてヒデヨシもゆっくりと歩く。

(ぶっちゃけ逃げてえええええええええ。こええええええええええ)


震える手足を必至に押さえながら後ろを歩く。
自分と同じ中学生で、自分と違い何の能力も無い清磨が堪えて進んでいるんだ。
頑張れ、負けるな、俺。

655 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:06:30.82 ID:GgOZ4s0f [3/11回発言]

廊下の先に人影が見える。
両者の距離が近づくにつれてその姿が段々と露になる。

鍔の大きな帽子。
目元を隠した仮面。
道化服。
手に持った銃。
そして何故か男の肩に乗っているバルカン300。

「俺たちは殺しあう気なんてないんだ。探したい人がいる。良かったら情報を交換しないか?」

できるだけフレンドリーに、それでいて最低限の警戒をしながら話かける。
背筋に嫌な汗が流れる。
男は銃を持っている。
だけど、今の状況では自衛のための可能性だってある。これだけで判断することは出来ない。
手に持った銃口は下を向いたままだ。
男は答えの代わりにと銃を持っていないほうの腕をこちらに向ける。
よし、話が通じそうだ!

「フランシーヌ様のために死ねッ! 人間ッ!!」

「ぐあッ……!」

男の怒声と共に男の腕が伸びて襲ってきた。
咄嗟に階段の踊り場へと転がり身を隠す。
そのまま上の階へと舞い戻る。

「人間風情が手間をかけさせやがって。だが逃がさんぞ」

ペロリ
男は引き戻した手を舐めながら二人の逃げた方へと歩みを続ける。

「清磨。その腕、大丈夫かよ!」

走りながら着ていたシャツをちぎり腕を縛る。
ドットーレが放った弾丸は清麿の右の二の腕を掠めていた。
血が派手に出ているが、致命傷というわけではなさそうだ。

「……大丈夫だ。かすっただけだ。それよりあいつをどうにかしないと」

フランシーヌという名前は名簿には無いのでわからない。
だが、ひっかかるポイントはあった。
俺たちに向かって『人間』と言い放ったこと。
モモンの術のように腕がのびたこと。
これはあいつが人間とは異なる存在という仮説が立てられる。ガッシュたち魔物のように。
確かに腕の伸縮スピードは速かったが、わかっていればかわせないことも無い速度だった。
そうならこっちにも勝ち目はある。相手を殺さずに無力化するんだ。

「ヒデヨシ。いいか……」

656 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:06:44.31 ID:0cZohhuw [9/16回発言]
  

657 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:07:37.35 ID:GgOZ4s0f [4/11回発言]
仕組みが気になる。
それぞれのガキを殺す前に出来れば仕組みを知りたい。
フランシーヌ様への手土産にこの芸を学びたい。
彼女に笑顔を届けたい。

「何にせよ、人間共を目の前に引きずり出さねばなるまい」

清磨たちが気づいていない時間稼ぎは永遠には続かない。
自動人形がその芸の仕組みを理解し、興味を無くしてしまえばそれまでだ。
3階の教室は探索が終わった。

黒髪を見つける。
またも紙吹雪が舞う。
イライラする。

声が部屋の奥から聞こえてきた。
またこの繰り返しか、と思っていたが小さな変化が出てきた。
次に見つけた教室から聞こえたのは猿顔の声ではなく、黒髪の声だ。
散々繰り返したからわかる。
猿顔の声を発する何かは自分の声だけだ。
ならば、この声は間違いなく黒髪本人のものである。
今度こそ捉えられる。

今度こそ確実にしとめる為にとどこまでも伸びる腕で声の方へと襲いかかる。
腕をかするだけではダメだ。
その心臓を。その首を。その頭を。
急所に喰らいつけ! 我が『紺碧の手』!

しかし、その腕が黒髪の少年を捉えることは無かった。
崩れた壁と机の隙間から小さな玉が月明かりを反射してその存在を主張している。

『今しかない! 行け、ヒデヨシ!!』

ドア付近の掃除ロッカーの中に息を潜めていたヒデヨシが飛び出しドットーレを背後から襲う。
本来ならこの程度の強襲など簡単に対処できる。
だが、今のドットーレの状態はというと前方に両腕をダラリと伸ばしたままである。
ヒデヨシはすぐ近くにいるために対処することが出来ない。
手にはロッカーに入っていたモップ。
渾身の一振りがドットーレの後頭部を直撃した。

「やったぜ!清磨! 銃を奪ったぜ! さぁ命は奪わないから降伏するんだな!」


658 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:07:54.84 ID:0cZohhuw [10/16回発言]
  

659 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:08:21.04 ID:0cZohhuw [11/16回発言]
   

660 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:09:02.00 ID:GgOZ4s0f [5/11回発言]
ヒデヨシは勝利の微笑みと共に床に転がった銃口を相手に向ける。
無論、実銃など撃ったことは無いが見よう見真似で構えているだけだ。
この距離なら実際に撃ってもそう簡単にハズレはしないだろうが。

跪くような姿勢のドットーレの表情は伺えない。

「さぁ早く、両手をあげて立つんだ」

少年は勝利の美酒に酔いしれている。
それも仕方ないことだろう。
少年は今までと同じように機転を利かせて勝利し、今までと同じように戦いから生き延びたのだから。
だが、このバトルロワイアルという場では相手の命ある限り勝利とは言えない。

ゆらり、と男が幽鬼のようにたちあがる。
その男の表情は不利による落胆でも敗北による屈辱でもない。

貼り付けられたような、蔑むかのような不気味な『笑顔』だった。

タンッ――

刹那、かすかな地面を蹴る音がした。

「最古の四人と言われる俺がここまで手を焼くとは思わなかったぜ」

帽子の鍔に滴る血を舐めながら指先で器用にクルクルと帽子を回す。
空気をも切り裂くような音と何かが地面に落ちる音が体育館に響く。
もう片方の腕で器用にヒデヨシの手足でお手玉をしながら。

『どうした!? ヒデヨシ! 何があった!?』

転がっている丸い玉から状況を理解できない清磨の声が虚しく響く。
二人の少年は知らなかった。知りえなかった。
自動人形は目の前の人間が武器を持てば持つほどに速度を増すことを。

「清磨と言ったな。聞こえているだろう? この己(オレ)を地に伏せさせ、フランシーヌ様に頂いた衣服に汚れを付けてしまったことの罪を償ってもらうぞ」

最初の激高とも違う。
地の底から発するが如く、冷たく淡々と言葉を紡ぐ。
ドットーレによるの観客のいないジャグリングショーは清磨と話をしながらも増えていく。
手足に始まり太腿、二の腕、下腹部、臀部、胸部、頭部。
既にヒデヨシの体はドットーレの手により細切れにされている。
手のひらサイズに切り刻まれたヒデヨシの体のパーツを足で蹴り上げて次々に片腕ジャグリングに混ぜ込まれていく。
指先で回していた帽子を再び被り、ヒデヨシのズボンから落ちたメモを拾いあげる。

「ガッシュ・ベル、パルコ・フォルゴレ、ゼオン・ベル、ヴィンセント・バリー、ナゾナゾ博士、テッド、チェリッシュ、レイラ」

『お……お前、何を』

「笑顔っていいものだよな、清磨くん。俺たち自動人形はフランシーヌ様を笑顔にするために存在する。
 フランシーヌ様を笑顔にするために実に様々な方法を学んだよ」

『おい! 俺はさっきお前がいた教室にいる! 今すぐかかってこい!!』

「人間は自らの許容範囲以上の負荷がかかると笑顔になるんだろ? 自我の崩壊と共に狂った笑顔に」

『今からそっちに行く! 待っていろ!』

「そこでだ、このプログラムとは別のゲームをしようじゃないか。己(オレ)が清磨くんを殺すのは簡単だ。
 だがそれじゃあつまらない。つまらないなら笑えない。
 笑わせるために存在する自動人形の己(オレ)としても非情に心苦しいよ」

661 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:09:17.75 ID:0cZohhuw [12/16回発言]
 

662 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:10:10.79 ID:GgOZ4s0f [6/11回発言]

もはや清磨からの返事は無い。
微かな時間すらも惜しんで全力でドットーレの元に走る。

「さっきの反応を見るに君にとって大事な友人なのだろう?
 人間は友情というものを大事にするものだとコロンビーヌがよく読んでいた本に書いてあったらしい。
 その友人たちの生首を君の前に並べたら、さぞ楽しいだろうな。清磨くんにも笑ってもらえそうだ。
 何、お礼ならいらないよ。
 観客の笑顔を見るために最善を尽くすのが道化の喜びってね。じゃあ、また会おう」


ドサドサッ グチャ ベチャ

高く放り投げられたヒデヨシの体の一部たちをキャッチすることなくドットーレは外にでた。
既に意思を手放しているそれらは重力に逆らうことなど出来る術もなく地に落ちる。

地面に幾つもの花が咲き乱れ、その“臭い”が辺りに充満している。
観客のいない道化のショーは一時閉幕。
続いての演目は会場・日時ともに不明。



【宗屋ヒデヨシ@うえきの法則 死亡確認】

【B-2 小学校・三年A組の教室/一日目 黎明】

【高嶺清麿】
[時間軸]:最終回後
[状態]:健康
[装備]:式紙@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式×2、声玉@烈火の炎、テオゴーチェの爆弾ボール@からくりサーカス 、コピー用紙百枚程度
醤油差し @現実、わさび @現実
[基本方針]:このゲームからの脱出・ガッシュに会いたい、ドットーレを追う(行き先はわかっていない)


【ドットーレ@からくりサーカス】

[時間軸]:本編死亡直前
[状態]:健康
[装備]:バルカン@金色のガッシュ!!、AK-47@現実
[道具]:基本支給品一式、声玉@烈火の炎
[基本方針]:優勝し、柔らかい石を手に入れフランシーヌの元へ帰る 清磨の知り合いを全員殺して清磨に『笑顔』を届ける


神様激レアブロマイド10枚セット(非売品) @うえきの法則は小学校にコピー用紙と共に散らばっています。
小学校の教室等が若干荒れています。


663 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:11:03.50 ID:0cZohhuw [13/16回発言]
   

664 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:12:08.22 ID:0cZohhuw [14/16回発言]
     

665 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:12:56.89 ID:0cZohhuw [15/16回発言]
  

666 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 01:14:28.29 ID:GgOZ4s0f [7/11回発言]
以上で投下を終了いたします。
支援してくれた方ありがとうございます。

矛盾点、疑問点その他気になる点がありましたらご指摘ください。

タイトルは……すいません、wikiに収録するときまでに考えます。

遅れて申し訳ありませんでした。

667 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 01:24:21.73 ID:0cZohhuw [16/16回発言]
連続投下! 乙!
なんだ今日は! AAに投下×2に! お祭りか!

二話目のこちらは、ドットーレがマジで怖くて素敵です
ルシールがアレだけ憎むのも分かるというか、まさしく自動人形だぜ
命こそ助かったものの、清麿は精神的にかなり来るなこりゃ……
しかし…… 美神さん→横島→ガッシュ→清麿 の流れに、なんか運命的なものを感じるw

668 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 02:08:20.31 ID:GgOZ4s0f [8/11回発言]
修正します。

>>660

>空気をも切り裂くような音と何かが地面に落ちる音が体育館に響く。
を
>空気をも切り裂くような音と何かが地面に落ちる音が夜の教室に響く。

どこだよ…体育館…


669 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 02:28:49.26 ID:GgOZ4s0f [9/11回発言]
すいません!  

>>655と>>657に抜け落ちていた部分がありました
今からその部分を投下いたします

670 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 02:30:24.78 ID:GgOZ4s0f [10/11回発言]



◇ ◆ ◇




暗闇に覆われた小学校の廊下。
カーテンなどあるはずも無く、月明かりが窓ガラスから微かに射し込み廊下を照らす。
追うは道化の男。
追われるは二人の中学生。
命を懸けた鬼ごっこが続いている。

二人の後姿を見つける。
道化が腕を大蛇の如く伸ばし二人を襲う。
黒髪の少年のリュックから紙吹雪が発生し、そこで生まれた隙をついてまた見失う。

教室の中から少年の声が聞こえる。
ドアの外から道化が銃弾を放つ。
猿顔の少年の似顔絵がそこにあるだけ。再び見失う。

これを繰り替えしながら各フロアを順々に巡っている。
既に校舎の窓ガラスと教室の半分は荒れ果てている。

校舎を走る道化の男の肩で、割れた窓から入ってきた風を受けた紙人形が
いつまでも捕まえられない鬼を嘲うかのようにカタカタと笑い声をあげる。

殺傷力という観点から見て天と地ほどの差が両者には存在する。
なのにドットーレが二人を中々仕留められないのにはある理由があった。

「腹話術……とも違うな。一体どういう仕組みで話している芸なんだ? こっちも紙自体には仕掛けは無さそうだ」

自動人形の宿命。
自動人形の黄金律。
それはフランシーヌ様を笑わせるため、楽しませるために初めて見た『芸』を前に学ぼうとする習性がある。
それは戦いの最中であっても動きを止め、その滑稽なもの、おもしろいものに集中してしまう。
参加者を殺したい。贖罪の為に早く贄に捧げたい。
だが、これはドットーレ個人の意思。
対して新しい芸を学ぶという行為は本能。
如何に最古の四人と言えども、己が本能には逆らうことは出来ない。
そのような事実を二人が知る由も無いが、たまたま二人の現在所有能力が殺傷力に乏しく、芸に近かったために逃げ続けることを可能にしていた。

「黒髪の小僧が撒き散らす紙の中に毎回一枚だけ男の写真が紛れているな。これが種なのか」

ブツブツと答えの出ない考察を繰り返しながらドットーレは歩みを続ける。

「猿顔の方は似顔絵が消えると声も消える。そして聞こえるのは猿顔の声だけか……」

クラブでもボールでもなく、ヒラヒラとした紙でジャグリングが可能になるのでは無いだろうか。
もし自由に声を発生させられるのなら複数同時の腹話術すらも可能になるのでは無いだろうか。


671 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/05/27(金) 02:40:09.93 ID:GgOZ4s0f [11/11回発言]
以上です


672 : 創る名無しに見る名無し : 2011/05/27(金) 03:46:04.82 ID:wPjYi274 [2/2回発言]
ここ数日の良作ラッシュはなんなんだ。すごいわ

正二とガッシュは、見ててつらいな
改めてフェイスレスの黒幕ぶりは恐ろしい
あるるかんもついに来た。今まで出なかったのは、まるでタイミング見計らってたみたいだな。偶然とは思えないからリレーって不思議だわ

ドットーレの話は、とにかく怖い。からくり初期の自動人形の怖さが、全面に出てる
清麿とヒデヨシは、決して失敗してないだけにこれは痛い
この経験をバネに……なんて考えられないよな。何げにいつでも通話可能だし、先が怖いわ

673 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:03:53.34 ID:4PwqyMaM [1/15回発言]
投下します。
忍法帖リセットされたのでゆっくり少しずつになりますが、お付き合いください。

674 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:06:14.18 ID:QLCY3Fa8 [1/1回発言]
支援

675 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:06:38.32 ID:4PwqyMaM [2/15回発言]
 ◇ ◇ ◇


「ここまで来れば、ひとまず大丈夫……かな。
 わざわざ移動した僕たちを探すとも思えないし、あまり体力を使いすぎてしまっても本末転倒だからね」

 後ろをついて来ているおキヌさんに告げて、足を止めた。
 いきなり反応しきれなかったらしいおキヌさんが、僕の三メートルほど前まで行って停止した。
 お爺ちゃんの記憶が溶け込んだ『生命の水』を飲んだ才賀勝――つまり僕は、このくらいの運動で疲れてしまうことはない。
 だけど幽霊であるおキヌさんは、どうなのだろう。
 そう、おキヌさんは幽霊なのだ。
 一見ただの高校生に見える巫女服を着た長い黒髪の彼女は、もう命を落としている。
 それも、三百年も前に亡くなったのだという。
 僕のなかにあるフェイスレスの記憶よりも、さらに百年も昔だ。

「はぁー……くたびれましたー」

 口ではそう言っているが、まったく疲労しているようには見えない。
 呼吸も激しくなっていないし、一滴の汗も浮かんでいない。
 最初に会ったときと変わらない微笑を僕に向けている。
 じっと見ているとなんだか恥ずかしくなって、つい視線を逸らしてしまう。
 とても、幽霊とは思えない。
 そもそも幽霊だなんて、普通は信じられるものじゃない。
 お爺ちゃんとフェイスレスの記憶なんて持たない、ただの十歳の子どもでもいまどき鵜呑みにはしない。

676 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:08:22.95 ID:4PwqyMaM [3/15回発言]
 おキヌさんの足元を見ると、地面から一メートルほどのところでふわふわと浮いている。
 そして、周辺には数個の火の玉が漂う。
 あんまりにも幽霊っぽすぎて逆に胡散臭いけれど、でもいまさら疑う気にはならない。
 おキヌさんは、マシン番長という名の自動人形に身体を貫かれているのだ。
 あのときの映像が蘇り、歯を噛み締める。
 人形破壊者だって、あんな攻撃を受けてしまえば耐え切れない。
 にもかかわらず、おキヌさんはまったくダメージを受けなかった。
 お腹に穴が開くどころか傷一つつかず、血が一滴も流れることもなく、服さえ破れなかったのだ。
 まるで煙を叩いたかのように、マシン番長の腕がすり抜けただけ。
 腕が戻されれば、万全の状態でおキヌさんは浮いていた。
 紛れもなく、幽霊なんだ。
 あんなものを見せられてしまえば、信じるしかない。
 幽霊なんてものが実在するという事実を、受け入れるしかないのだ。
 走りながら考えていたが、やっぱりそういうことになる。
 となれば、である。
 表情が強張っていくのが、鏡を見なくても分かった。

 名簿に記されていた『もういないはずの』三つの名前。

 お爺ちゃん――才賀正二。
 お爺ちゃんと結婚した――才賀アンジェリーナ。
 そして兄ちゃん――加藤鳴海。

677 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:09:57.13 ID:4PwqyMaM [4/15回発言]

 この三人は、つまりそういうことなんだろう。
 移動中に聞いた話では、心残りがあって死んでしまった人は幽霊となるとのことだ。
 お爺ちゃんとアンジェリーナさんの悔いは、予想できる。
 たぶん、才賀エレオノール――しろがねのことを置いては行けなかったのだ
 任せてって言ったけど、不安は晴れなかったのかな。
 僕の力じゃ、安心させられなかったのだ。
 悔しい。何年も頑張ってきたお爺ちゃんにはもう休んでほしかったのに。
 だから、決めた。
 あれからギイさんと特訓した僕は、フェイスレスが送ってきた自動人形たちを何体も倒しているんだ。
 一人で凧も上げられなかったころより、ずっと強くなっているんだ。
 安心していいんだよ――と、伝えて成仏してもらおう。
 ほんとは消えて欲しくないけど、でもお爺ちゃんはもう休んでいいんだから。

 ただ、三人目。
 中国拳法で戦う、強い兄ちゃん。
 よく笑って、よく怒って、またよく笑う。
 弱かった僕に、強く生きろって言ってくれた。
 僕がいまの僕になったきっかけの――ナルミ兄ちゃん。
 正直な話、名簿を確信したときに兄ちゃんの名前を見て、僕はうっかり喜んでしまった。
 僕を守って死んでしまったはずなのに、まだ生きていたんだと。
 そんなことを、つい考えたのだ。
 けれど――――

678 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:11:24.24 ID:4PwqyMaM [5/15回発言]
 死んだはずの人間が生きているなんて、そんな夢みたいなことがあるはずがなかった。
 死んだはずの人間がこの場にいたとしても、すでに死んでいたのだ。
 しかも幽霊となっているということは、である。
 心残りがあるということだ。
 僕のせいで。
 僕なんかを庇ったから。
 僕なんかと関わってしまったばっかりに。
 成し遂げたい何かを残したまま死んでしまったのだ。

 動悸が激しくなっていく。
 服の下で汗が肌を伝うのが分かる。
 閉じた口の下で、上の歯と下の歯がガチガチと音を奏でる。
 毎日夢に見る残された兄ちゃんの左腕が、脳内を埋め尽くす。

 強く生きろと言ってくれたから。
 過去を嘆いてばかりでは、兄ちゃんの死が無意味になってしまうから。
 僕は、あの日から前へ進もうとしてきた。楽しもうとしてきた。
 でも、兄ちゃんがまだいるのなら。
 まだこの世界で、悔やみ続けているのならば。
 僕なんかに、人生の道を歩む資格があるのだろうか。

 過去が重い。
 とても、重い。

679 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:13:24.75 ID:4PwqyMaM [6/15回発言]

 ごめんね、兄ちゃん――と。
 何度唱えたか分からないワードが零れそうになるが、言葉にならない。

「まー! さー! るー! くーん!!」

 いつの間にか耳元まで来ていたおキヌさんの声で、我に返る。

「まったくもう、どんなに話しかけても無視するんですから。
 もしかして幽霊差別!? はんたーい! 幽霊にだって人権を!
 ……ところで、なにをそんなに考えてたんですか? 震えてましたよ?」
「ちょ、ちょっと疲れちゃって! もうへっちゃらさ!」

 無理矢理笑顔を作って答える。
 生命の水については、おキヌさんに話していない。
 ただの十歳の子どもならば、あれだけ走ればへばるのは当たり前だ。
 だから不自然じゃない――はずだったのに。

「…………嘘、ですよね?」

 こちらを見据えながら、そんなふうに返される。
 言い訳しようとしたが、思考が落ち着かずに口ごもってしまう。

680 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:14:57.92 ID:65X2Xc3B [1/5回発言]
 

681 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:14:59.96 ID:4PwqyMaM [7/15回発言]

「私、これでも三百年生きて……じゃない。死んでるんですよ?
 何か抱え込んでるなってくらい分かっちゃいます。
 勝くんは頭いいみたいけど、でもやっぱり私のほうが年上だから」

 反論しようとして、飲み込んだ。
 おキヌさんの真剣な眼差しを見ていると、そんなことをする気が掻き消えた。

「ずっと抱え込んでいたら重たいままですよ?
 一人じゃ持てない重い物だって、二人でなら分かりません。
 三百年センパイの私なら何か言えるかもしれませんし、相談してみませんか?」

 そう言って、おキヌさんは微笑んだ。
 屈託のない笑顔だった。
 意図せず、見とれてしまう。
 一人では解決できない悩みも、二人でならなんとかなる。
 そんなことは黒賀村で実感したはずなのに、自分のこととなると理解していなかった。
 何より、おキヌさんはベテラン幽霊なのだ。
 幽霊の悩みならば、相談しない手はない。

「人生およびに霊生相談、悪霊退散、ししゅんきの悩みに、さんかくかんけー、きぎょーばいしゅー、なんでもござれ!」
「…………」

 大丈夫かなぁと思いつつ、僕は口を開いた。

682 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:17:02.68 ID:65X2Xc3B [2/5回発言]
 

683 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:17:17.85 ID:rGZk25Ci [1/1回発言]
支援

684 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:17:26.06 ID:4PwqyMaM [8/15回発言]


 ◇ ◇ ◇


 悪霊となっている場合は退治するしかないというのが、結論だった。
 肩を落としそうになったが、おキヌさんによるとまだ悪霊となっていない可能性も低くない。
 もともと、幽霊は本来至るところに存在しているらしい。
 気楽に散歩したり、空中を漂ったりして、たまに宴会なんてこともしているという。
 おキヌさんのような三百年物の幽霊ならば、一般人でも黙視できるというだけなのだ。
 つまり大きな心残りなどはないが、幽霊生活が楽しすぎて成仏しないでいる。
 そんな幽霊も、多数いるのだ。
 ナルミ兄ちゃんがそれとは限らないけれど、ほんの少しだけ身体が軽くなった気がした。
 しかし悪霊であった場合、僕はナルミ兄ちゃんを退治せねばならない。
 見境なく人を襲うような兄ちゃんは、しろがねに会わせるワケにはいかないのだ。
 僕のせいで未練が残ってしまったというのに、僕が退治する。
 そんな資格があるのかと思うが、心残りに支配されてしまったというのならそうするしかない。
 悪霊を休めるには、退治するしかないらしいから。
 背負った物干し竿に視線を向ける。
 兄ちゃん相手に、こんなものを抜かねばならないのだろうか。
 と考えて、思う。

685 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:18:21.93 ID:FTtrLNqM [1/6回発言]
支援

686 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:18:42.77 ID:4PwqyMaM [9/15回発言]

「おキヌさん、もしものときは退治しましょうって言ったじゃないですか」
「言いましたよ?」

 これまた、あっけらかんと。
 いやいやいやいや。

「これがダメならほとんど打つ手ないよ……」
「ふっふっふー。こんなこともあろうかと!」

 おキヌさんは、意気揚々とリュックサックに手を突っ込む。
 自分で用意したみたいな口ぶりだけど、それはキース・ブラックから配られたんじゃ――
 と思いつつも、おキヌさんの得意気な顔を見るととても口には出せない。

「じゃじゃーん!」
「……かが、み?」

 おキヌさんが取り出したのは、両手でなんとか持てるような大きな鏡だ。
 鏡の周りを覆う金属には、二周に紋様が描かれていた。
 博物館にでも置いてありそうな雰囲気だが、それにしては鏡が綺麗すぎる気もする。

「ふふ! ただの鏡に見えるでしょうが、ところがどっこい!
 じーつーは! これは『マーラの銀鏡』と言って、映した物の怪を吸い込んでしまうのです!」

687 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:19:12.02 ID:65X2Xc3B [3/5回発言]
 

688 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:20:17.05 ID:FTtrLNqM [2/6回発言]
しえん

689 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:20:25.19 ID:4PwqyMaM [10/15回発言]

 付属の説明書を読み上げながら、おキヌさんはえっへんと胸を張る。
 なるほど。たしかに、これは幽霊の天敵だ。
 殺し合いに幽霊を混ぜたらどうしようもないのではと考えていたが、こんなものが支給されているのなら納得だ。

「あっ」
「うわぁぁぁぁあああああッ!」

 説明書だけをリュックサックに入れようとして、おキヌさんは銀鏡まで手落としてしまう。
 落下した銀鏡が地面に触れて回転する。
 咄嗟に飛び込んで、鏡にのしかかる。
 おキヌさんを映してしまわぬよう、身体で覆いこむ。

「おーキーヌーさーん」
「表面がすべすべしてるから、つるっと……」
「そのつるっとで、危うく即死でしたよ!」
「もう死んでます!」
「そこはどうでもいいよ!」

 しゅんとしたおキヌさんに離れてもらって、蔵王という玉に銀鏡を収納する。
 蔵王をおキヌさんに手渡そうとして、はた、と。
 そのときになってようやく、違和感を抱く。

「…………あれ?」

690 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:21:24.78 ID:FTtrLNqM [3/6回発言]
私怨

691 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:21:31.61 ID:4PwqyMaM [11/15回発言]

 一度気付いてしまえば、注目せずにはいられない。
 むしろなぜいままで認識していなかったのかが、不思議なくらいだ。
 目には見えていたはずなのに、頭に入っていなかった。
 それほどまでに、幽霊のことで脳内がいっぱいだったのだろうか。

「お、おキヌ、さん……? 首輪……は?」

 おキヌさんは、首輪をしていなかった。
 どうにかせねばならないと考えていた首輪が、はまっていなかった。

「ありますよ?」

 まるで蔵王を仕舞うついでのように、おキヌさんはリュックサックから首輪を取り出す。

「こ、これ……どう、や……っ、て?」

 頭のなかが整理仕切れずに、言葉がぶつ切りになってしまう。
 僕の疑問を受けたおキヌさんもまた、分からないといった表情を浮かべる。

「私、幽霊ですよ? イヤだなぁって思ったら取れました」

692 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:22:43.71 ID:4PwqyMaM [12/15回発言]

 なんでもないかのような口調で、おキヌさんははっきりと。
 それは外れるだろう。
 そりゃあ外れるだろうけども。
 殺し合いを命じたキース・ブラックの言葉を思い返す。

 『外そうと力を与えても爆発する』
 『能力を使って外すことも考えないように』

 おキヌさんは、決して力など籠めていない。
 それに能力を使ったというワケでもないだろう。
 もともと幽霊は物体を通り抜けるものであり、『触れる』ほうこそが能力らしいのだから。
 ならば外せて当然――なのだろうか。
 分からない。理解できない。
 才賀勝に可能なのは、あくまで予想だけだ。
 キース・ブラックの思惑を見極めろ――――

「分かるかぁぁぁッ!」
「え? いきなりどうしたんですか?」



【A-4 東部/一日目 黎明】

693 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:23:03.68 ID:FTtrLNqM [4/6回発言]
しえん

694 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:23:47.94 ID:4PwqyMaM [13/15回発言]

【才賀勝】
[時間軸]:黒賀村である程度過ごしてから。
[状態]:健康
[装備]:物干し竿@YAIBA
[道具]:首輪(おキヌ)、ランダム支給品0~2(人形はなし)、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いを止める。
※正二、アンジェリーナ、鳴海を幽霊と考えています。


【おキヌ】
[時間軸]:本編にて生き返る前(ドクターカオスとは面識有)
[状態]:不健康、首輪解除
[装備]:無し
[道具]:マーラの銀鏡、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:勝についていく。
※幽霊です。『本人が触れたいと思うもの』以外はすり抜けます。

695 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:24:20.07 ID:65X2Xc3B [4/5回発言]
 

696 : 重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:25:02.28 ID:4PwqyMaM [14/15回発言]



【支給品紹介】


【マーラの銀鏡@スプリガン】
おキヌに支給された。
アーカム研究所に保管されている鏡で、サイズは車のハンドル程度。
鏡に映した物の怪を内部に吸い込む。
ただし物の怪が何らかの生物に憑りついている場合、肉体から引き剥がさねばならない。

697 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:25:07.70 ID:FTtrLNqM [5/6回発言]
支援

698 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/03(金) 23:26:21.03 ID:4PwqyMaM [15/15回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。
忍法帖の都合でレス数が多くなってしまいましたが、支援のおかげでさるってしまわず済み感謝です。

699 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:28:20.73 ID:dg9k5WB7 [1/1回発言]
ちょwwwwwwwwwwwwwww
投下乙です

700 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:33:05.30 ID:0fxG3re9 [1/1回発言]
wwwwwwwww
なあああにこれーwww
だめだ、ノリがGS過ぎるw

701 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:34:27.87 ID:65X2Xc3B [5/5回発言]
投下乙www
すっかりギャグキャラになってしまいやがって……w

702 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/03(金) 23:42:02.37 ID:FTtrLNqM [6/6回発言]
投下乙w
前半のシリアスパートで引き込んどいて落とすってGSすぎこれwww

703 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/04(土) 00:27:18.34 ID:9Gr6/mXT [1/1回発言]
投下乙 

これは酷すぎるwww
早くも首輪解除されたぞwwww
原作だとこれからシリアスモードに突入する勝がギャグの世界に引きずり込まれていくwww


704 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/04(土) 19:30:31.65 ID:Gufb2lNP [1/1回発言]
投下乙w

なんだこのノリ、前半と後半の落差が酷すぎるww
こんな首輪解除初めて見たw
勝の今後が心配だ、シリアスでいられるかどうかがw

705 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/06(月) 03:41:10.50 ID:8x6ToLJD [1/1回発言]

「あ、あれ、おキヌさん? もし……悪霊に会ったらさ、この剣とか役に立つの?」
「あはは。除霊用じゃあるまいし、効くワケないじゃないですかー」

 さらっと、断言されてしまった。
 いやいや。

 ◇ ◇ ◇


申し訳ないです。
読み返して気付いたのですが、>>684と>>686の間に、これが抜けていました。
感想ありがとうございます。

706 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/06(月) 09:47:40.54 ID:TfTMy+Bd [1/1回発言]
いまさらだけど、おキヌって勝にも敬語なんだな。

707 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/06(月) 10:53:51.13 ID:HDZ0MID6 [1/1回発言]
横島ごときでも敬語なんだから
そりゃ勝にも敬語だろ

708 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/06(月) 12:59:31.61 ID:pPxOCOAW [1/1回発言]
子供にはため口じゃなかったっけ?

709 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/06(月) 18:20:07.81 ID:OqwDkXtm [1/1回発言]
勝の思考が子どもらしくないせいで、違和感まったくないなw
GSキャラは大人気ないしw

710 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/06(月) 20:36:28.82 ID:6KcZJN6r [1/1回発言]
違和感ないしいいんじゃね?w

711 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/07(火) 00:15:11.95 ID:br6XZMwK [1/2回発言]
実は、もともとタメ口で書いていたのですが、「こっちのがらしい気すんなー」って変えたんですよね。
どうせ台詞変えるだけですしすぐ直せるのですが、修正したほうがいいですかね? しないほうがいいですかね?

712 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/07(火) 01:13:00.71 ID:rjjho3d0 [1/1回発言]
個人的には敬語でもいいと思う

713 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/07(火) 02:07:57.52 ID:qJgydmou [1/2回発言]
どっちでもいいんじゃないかな。

714 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/07(火) 02:50:48.73 ID:br6XZMwK [2/2回発言]
あ、いま思ったんですけど>>681の頭のセリフを

「私、これでも三百年生きて……じゃない。死んでるんですよ?
 何か抱え込んでるなってくらい分かっちゃいます。
 勝くんは大人びててついこういう口調になっちゃうけど、でもやっぱり私のほうが年上だから」

に変えるのはどうですかね?

715 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/07(火) 03:07:49.00 ID:qJgydmou [2/2回発言]
それがベストですね。

716 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/07(火) 04:37:43.45 ID:2kSxNInh [1/1回発言]
それなら問題ないと思います
予約楽しみにしてますw

717 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/08(水) 21:21:38.09 ID:9XKG4Jbk [1/5回発言]
test

718 : ◆6LcvawFfJA : 2011/06/08(水) 22:37:52.48 ID:9XKG4Jbk [2/5回発言]
投下致します。

719 : 造花 ◆6LcvawFfJA : 2011/06/08(水) 22:39:06.14 ID:9XKG4Jbk [3/5回発言]
 瓦礫の山から抜け出したシルベストリは、自分の身体に視線を這わす。
 衣服がところどころ破れているが、“自動人形”のボディは破壊されていない。
 四肢を軽く動かして、行動に支障は無いと結論を下す。
 次に、シルベストリは纏う服を傷付けた少年の事を思い返す。
 ロベルトと呼ばれていた彼は、何も所持していなかったにもかかわらず右手に武器を生み出した。
 “O”の類かとも思ったが、いくらシルベストリの“造物主”とてあそこまでの質量を持つ武器を二種類も体内に内蔵させることは不可能に思える。
 加えて、メカニズムの分からぬ赤いシャボン玉。
 あんなものを操る者など、いまだかつて目にしたことはない。
 おそらく、“自動人形”でも“O”でも“人形破壊者”でもない存在。
 気を引き締めねばならないと思う一方で、シルベストリは僅かに高ぶる物を感じた。
 今まで関わったことない人種と出会えるならば、予てより抱き続けていた疑問が晴れるやもしれない。
 仮にこの身が人間の物であったのなら、この昂揚を“血が騒ぐ”と呼ぶのだろうか。
「下らぬな」
 そのような事を考えた自分自身に、シルベストリは言い放つ。
 もしも人間であったのならなどという“if”に意味は無い。
 無意味な事を思考するのは人間だけ。
 より強く完全な人形には必要ない。
 意味が無いとしか思えぬことをするのは、人間だけなのだ。
 その理由が、シルベストリには分からない。
 現代となっては無意味だというのに“群れる”人間が解らない。
 従来からの疑問に思いを馳せてみても、依然として理解できない。
 他者に尋ねるしかないと再認識し、シルベストリは空を見上げた。
 宙に浮かぶ満月の位置を確認すれば、方角を把握できる。
 何処に向かうかという明確な目的は無いが、目的の為には参加者が集まりそうな場所に向かいたかった。
 故に市街である西部に視線を向けると、同時に空に花が開いた。
「やはり、殺し合いであろうとも“群れる”か」
 瞬く間に大気に溶け込んだ花火が、他者を呼び込むべく打ち上げられた事は自明だった。
 自ら居場所を知らせる行為には、それしか理由が見出せない。
 シルベストリは菊一文字を握り、花火が打ち上がった方向に歩み出す。
 予てよりの疑問に解答が導き出される期待を胸に。
 菊一文字を持たぬ左手で、多少ずれていた帽子を直す。
 帽子の中にあるスズランが、微かにシルベストリの頭に触れた。
 作られた花は掻き消えて、生物である花はこうして残っている。
 シルベストリはそう考えた後、やはり「下らぬな」と己の考えを振り払った。

720 : 造花 ◆6LcvawFfJA : 2011/06/08(水) 22:39:53.54 ID:9XKG4Jbk [4/5回発言]





【E-4 路上/一日目 黎明】

【シルベストリ】
[時間軸]:本編34巻 勝戦直前
[状態]:健康
[装備]:菊一文字@YAIBA
[道具]:ランダム支給品2(刀剣類なし、確認済み)、基本支給品一式
[基本方針]:フェイスレスの優勝をサポートしつつ、人間が群れる理由を解き明かす。植木耕助に会う。花火の元へ向かう。

721 : ◆6LcvawFfJA : 2011/06/08(水) 22:40:39.27 ID:9XKG4Jbk [5/5回発言]
終了です。

722 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 02:44:42.04 ID:j+AO2lYL [1/1回発言]
投下乙!
やっべw こいつも花火いったw
人形だけど、渋くてかっこいいねシルベストリは。

723 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 04:34:52.98 ID:fTavqsPx [1/1回発言]
投下乙!
シルベストリまできた!
そこには人形破壊者までいるぜ……っ。wktk

724 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 06:30:19.49 ID:ZVBj1sZV [1/1回発言]
投下乙!
序盤からヤバイ展開になってきましたwwwww
北に向かったシルバーも引き返して来ないかなあ、マーダーホイホイ的に

725 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 14:21:38.06 ID:maJ8sP2J [1/1回発言]
序盤の山場になりそうだな

726 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 15:00:53.03 ID:2gEGILvU [1/1回発言]
投下乙
やっぱりシルベストリは渋かっこいい!
烈火達はどうなんだこれwwww

727 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/09(木) 23:14:11.20 ID:soVjDu5E [1/1回発言]
>>724
ついでにアシュ様も向かわせようぜw

728 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/11(土) 00:50:36.01 ID:EwDp/gWS [1/1回発言]
書き込みテスト

729 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:33:36.10 ID:zOwj8nuW [1/6回発言]
投下します。

730 : ガキじゃいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:35:36.33 ID:zOwj8nuW [2/6回発言]
 ◇ ◇ ◇


 恐れるものなどなにもない――だなんて、そんなのはガキだけが言える妄言だ。


 ◇ ◇ ◇


 しばらくレイラと話してみて、魔道具『輪廻』について少し分かった。
 副作用である記憶の不明瞭化には、作用する記憶と作用しない記憶がある。
 魔本や魔物についての知識が、レイラからは消えていないのだ。
 記憶にはいくつもの種類がある。そのうち長期記憶は、輪廻の副作用を受けないのだろう。
 あくまで現時点においては、の話である。いずれ使い続けていくうちに常識さえ失ってしまうかもしれない。そのときには破壊する。
 いまにして思い返してみれば、英語の文章をキーボードで打ち込んだ時点で気が付くべきであった。
 だというのにあっさりと見過ごしてしまっていたなんて、まったく僕らしくない。
 人類最高の頭脳を持つ超天才アル・ボーエンといえど、さすがにこの状況にうろたえってしまっていたのか。
 情けないと思いながらも、一方でしようがないと納得している自分もいる。

 魔物、魔道具、妖怪、結界。

 この場に来てから見知ったものには、謎が多すぎる。
 いままでの僕ならば、「そんなものは愚かな人間が己の理解できない現象をどうにか説明するために作り出した幻想だ」と斬って捨てていた。
 しかし、現実に目にしてしまった。体験してしまった。実感してしまった。
 となれば、受け入れよう。
 この期に及んで常識を振りかざして否定するなど、変わっていく状況に対応しきれない凡人の取る行動だ。
 ほんの少し前にありえなかった事態が当たり前のように起こる――それが、現実だ。
 死体からサイボーグは作成可能だし、炭素と珪素のハイブリッド生命体だって実在する。
 ……それまでこの世になかった毒物だって、簡単に作り出せる。
 そんなことを知っている僕が、現実を認めないワケにはいかない。

 はっきり言って、恐ろしい――が。

 先ほど、レイラは負った傷が回復したと告げてきた。
 確認してみると、たしかに傷痕すら残っていなかった。
 魔物の治癒力は非常に高いようでARMS所持者たちのことを思い出す。
 だが、レイラはARMSコアを埋め込まれていない。ナノマシンが身体に通っているワケではないのだ。
 X-ARMYに所属していた『不死身のヴォルフ』と違って、人体改造を行っているワケでもない。
 あんな回復力は生物としておかしいが、にもかかわらずただの生物なのだ。
 細胞復元能力がイカレてしまっているとしか思えない。
 だいたい細胞を再生するために使うエネルギーは、人間と変わらぬサイズの身体のどこに蓄えてあるというのか。
 呪文を唱えることで発動する魔法だって、不可思議だ。あんなものを放つエネルギーの源はどこなのか。
 推測にすぎないが、魔物の身体は僕の知る生物の身体と大きく異なっているのだろう。
 ゆえに、大量のエネルギーを体内に蓄えることができるのだ。
 ARMSコアによって身体にナノマシンが通い、爆発的なパワーを生み出す彼らのように。
 急激な進化の末に自分自身の肉体さえ耐え切れない力を得てしまったキース・シルバー。
 彼の最期が、脳裏を掠める。

731 : ガキじゃいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:37:21.78 ID:zOwj8nuW [3/6回発言]

「本当に……怖いもの知らずだな、キース・ホワイト」

 意図せず、考えが口から零れてしまう。咄嗟に前を行くレイラを見るが、そこまでは届かなかったらしく胸を撫で下ろす。
 少しバランスが崩れてしまっただけで、シルバーはああなってしまった。
 強烈なエネルギーを作り出せるという点で、ARMSと魔物は一緒だ。
 そんなものが、どちらも狭い会場内に押し込まれている。
 キース・ホワイトはなにを考えているのか。
 僕は怖い。
 僕はキース・ホワイトとは違う。いまの僕は、違うから。
 かつては、自分たちの頭脳があればなんだって思い通りにできると信じていた。
 僕たちの手に余る代物なんかこの世にありはしない――と、自信満々に断言できた。
 でもそんなバカげたことは、もはや口に出せない。
 この超天才の頭脳をもってしてもどうにもならない現実があると、知ったからだ。
 そんな簡単なことなのに、アイツが殺されるまで気付かなかった。
 当時の僕にとってのすべてを失ったから、もう僕はガキじゃいられなくなった。
 だから、怖い。
 制御できない力も、それらをぶつけようとするキース・ホワイトも。
 ホワイトは、むかしの僕に似ている。
 自分ならばなんでも成し遂げられると信じ込んだまま、僕が大人になったらああなっていたのだろう。
 そのためなのだろう。
 あの男の存在は、非常に不愉快だ。
 大人になれなかったガキを見ていると、自己嫌悪に似た感情に満たされる。
 自分が巡らせているのはガキの思考にすぎないと、思い知らせてやりたくなる。

「ここが公園みたいね」
「ああ、そうだな……って!」

 考えごとをしているうちに、目的地の公園に着いていたようだ。
 レイラに返事しつつ、手がかりを探すべく周囲を確認する。

「なんっだ、この公園は! 地図と全然違うじゃないか!!」
「いわゆる『イラストはイメージです』というヤツね……」
「ええい、黙れ黙れ! 記憶が曖昧になっているはずなのに、なぜそんな言い回しを覚えている!」
「……はっ。もしかしてこの輪廻、一般常識とかは忘れづらいのかしら」
「ふん! そんなこと、もう分かっていたさ!」

 地図上では大きく描かれているというのに、実物はただ遊具がいくつかあるだけだ。
 そこまで広くない、というかむしろ狭い。
 地図に描かれている時計台も、大した代物ではなかった。
 わざわざ時間をかけずとも、ほんの少し首を振るだけですぐに全敷地内を確認できてしまう。
 ただの公園だ。手がかりになりそうなものなど一つもない。

「ちい、ならば次は幼稚園か。こちらも実物はちっぽけだったりしないだろうな……」

 ポケットから取り出した地図を取り出して、次の目的地を定める。
 コンパスを片手に歩き出そうとしたところで、レイラが公園を眺め続けていることに気付いた。

「どうした、レイラ。ここにはもう用はないぞ」
「アル、あれは何かしら?」

 遊具の一つを指差して、レイラは怪訝な顔で尋ねる。
 輪廻の効果を受けてしまったのか、もとから知らないのか。
 どちらかは分からないが、僕にとってただの公園でもレイラにとっては奇妙に思えるらしい。
 何にせよ、知識がない者に訊かれれば答えるのが超天才の役目だ。

732 : ガキじゃいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:38:41.31 ID:zOwj8nuW [4/6回発言]

「滑り台という遊具だ。階段になっているほうを上り、坂を座って滑り降りる」
「じゃああれは?」
「ジャングルジムという。よじ登ったり、内部へ入り込んだりする」
「では、あれ」
「シーソーだ。板の両側に数名が座り、交互に地面を蹴ることで上下する」
「あそこ」
「砂場だな。城なり団子なりを砂で作る場所だ」
「あれ」
「登り棒。名前通り、握り締めて上に登っていく棒だ」
「あれは」
「ブランコ。座りながら身体を前後に動かすことで、椅子が振り子のように運動する」
「いろいろあるのね……」

 僕が返答しているというのに、レイラはこちらを振り向きもしない。
 惹きつけられたかのように、遊具から遊具へと視線を動かしている。
 輪廻の効果で大人になっているというのに、ガキみたいだ。
 とはいえ、知識にないものを目にしたのだから仕方がないと言えば仕方がない。

「どれか一つくらい試してみるか?」
「っっ!? で、でも時間を浪費するワケには――」
「ふん。こんな公園に来てしまった時点で、すでに時間の無駄だ。
 それに、このままなにもしないほうがよっぽど無駄足踏んでしまったことになる」
「そ、そう言えばそうね。じゃあ……一つ、一つだけ…………」

 ぶつぶつと呟きながら、レイラは遊具を見渡していく。
 片手では数えられないほどの回数視線を左右させて、ようやくより抜いたらしい。

「あれにするわ」
「…………そうか」

 レイラが指差したのは、シーソーだった。
 なんでまた、この公園にある遊具で唯一二人以上でないと遊べない物を選んだんだ。
 そんな僕の疑問を気にも留めず、レイラはシーソーに歩み寄って腰を下ろす。
 そのままこちらをじっと見据えている。
 立ち止まっている僕に、視線を向け続けている。
 これは、もう、行くしかない、のか。
 レイラは大きな勘違いをしている。
 僕は、公園にある遊具を知っているだけだ。
 クソッ。こんなガキの遊び、僕だってやったことないんだぞ。

「ええい、大人の姿になってるんだからそんな端に座るな! もっと中心付近に行け!」
「たしかにそうね。気付かなかったわ。さすが天才ね、アル」
「こんなことで、僕の頭脳の優秀さを再認識するな……」

 ぎったん、ばっこん。
 ぎったん、ばっこん。

「ふふふっ」
「……ふん」

 ぎったん、ばっこん。
 ぎったん、ばっこん。
 ぎったん、ばっこん。

733 : ガキじゃいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:38:59.48 ID:zOwj8nuW [5/6回発言]



【E-2 公園/一日目 黎明】

【レイラ】
[時間軸]:魔本が燃え尽きた直後。
[状態]:大人化、ダメージ回復、疲労(小)、心の力(小)
[装備]:輪廻@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、居合番長の風呂敷@金剛番長、 通信鬼@GS美神極楽大作戦。
[基本方針]:仲間達を守る。殺し合いに乗っている者は倒す。
※輪廻で大人の姿となることで能力が上昇していますが、副作用で会場に来る以前の記憶が朧気になっています。
※ガッシュ達が仲間であることは理解しています。


【アル・ボーエン】
[時間軸]:第四部「アリス」編終了以降。
[状態]:健康、心の力(小)
[装備]:レイラの魔本@金色のガッシュ!!、心眼@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、通信鬼@GS美神極楽大作戦、ノートパソコン@現実。
[基本方針]:施設を巡り情報を集める。殺し合いに乗っている者は倒す。
※ルシオラの思考をある程度まで読んでいます。

734 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/13(月) 01:39:47.52 ID:zOwj8nuW [6/6回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘お願いします。

735 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/13(月) 11:21:53.38 ID:HAr34UCI [1/1回発言]
投下乙!
アルも元々エグリゴリだし、複雑なとこだよな。
原作ではどんどんかっこよくなっていったからロワでも期待。
変なとこで成長しないレイラかわいいw

736 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/14(火) 10:16:01.88 ID:mA2TSXj/ [1/2回発言]
投下乙です
幼稚園と聞いて園児服を着たレイラを想像してしまったwww

737 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/14(火) 10:28:14.73 ID:AmhGDEJt [1/1回発言]
投下乙

短かめな文章で、アルの心理描写&癒やしをうまく表現してて、すごく楽しめました。

そしてかなり大量な予約がきてますな…


738 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/14(火) 18:01:30.97 ID:5P+iFZUC [1/1回発言]
まだまだ子どもだけど昔より大人になってるアル、見た目と能力は大人になったレイラ
この二人も面白いなw

そして予約はwww
烈火ェ……

739 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/14(火) 22:50:36.63 ID:6r85E5nR [1/1回発言]
投下乙です

丁寧な展開だな。この二人の行く末が楽しみなんだがロワだとな…

そして予約が怖い事にw

740 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/14(火) 23:06:05.57 ID:mA2TSXj/ [2/2回発言]
予約やばいwww
烈火涙目wwww

741 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/16(木) 18:29:33.69 ID:3AB0OBiw [1/1回発言]
こいつ(達)を追加予約したか…混沌としてきたな

742 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/16(木) 18:55:52.81 ID:LA7ww6z1 [1/1回発言]
こんな状況になって誰も死ななかったら伝説になるぞ

743 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/16(木) 19:13:20.12 ID:1Pz3tEr7 [1/1回発言]
今の予約でどうなるかだよな……
烈火周辺どうなるか確定するだろうし

744 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/18(土) 18:05:07.87 ID:mclcsaME [1/1回発言]
今のところマーダーって

ギイ
フェイスレス
パウル&アンゼルムス
シルベストリ
ドットーレ
キース・シルバー
キース・グリーン
コウ・カルナギ
ゼオン・ベル
日本番長
憲兵番長
マシン番長
さとり
永井木蓮
バロウ
ルシオラ
アシュ様
佐々木小次郎
鬼丸猛

の19名ぐらだよね

なんか選り取り見取りで強さも性格もおもしろいヤツばっかだよな~


745 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/20(月) 15:50:55.56 ID:7ftD0vdL [1/1回発言]
紅煉ェ……w

746 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/22(水) 23:47:34.84 ID:LtxNdbcA [1/1回発言]
予約きたーー!

747 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 19:38:37.20 ID:8QmIXjFp [1/14回発言]
再予約させていただきました。
今夜中に投下したいと思います。
まだ推敲が残っていますが、29.9kbありますのでいまのうちに新スレ立ててきますね

748 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 19:42:27.97 ID:8QmIXjFp [2/14回発言]
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1308998404/

新スレです。
投下の際はまずこのスレで、埋まり次第新スレってことで。

749 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 20:06:14.84 ID:722xv3Jm [1/1回発言]
楽しみにしてます!

750 : ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:21:53.15 ID:8QmIXjFp [3/14回発言]
さて、投下しますね。

751 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:22:10.27 ID:r21VPBkq [1/11回発言]
   

752 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:23:13.83 ID:r21VPBkq [2/11回発言]
   

753 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:23:28.61 ID:8QmIXjFp [4/14回発言]
 ◇ ◇ ◇


「これも欲しいかな。ああ、それもあるだけ入れておいて。あとあれもお願いね」

 思い上がった声を浴びせられ、紅煉は何度目になるか分からない舌打ちを鳴らす。
 同時に、夜の闇より黒く艶のある体毛が僅かに逆立ち、血のように赤い瞳が鈍く輝く。
 紅煉の計画では、すでに五人は殺して喰らっているはずであった。
 殺し合いの会場が広く他の参加者と出会いづらいものの、それは人間の場合である。
 妖(バケモノ)に人間のルールは適用されない。
 夜中でも昼間と同じように視界は開けているし、人間の臭いを辿ることも可能だ。また、そもそもの移動速度自体が人間とは比べ物にならない。
 だから、いまごろ満腹とまでは行かずとも腹八分目程度までは満たされている――つもりだった。

「ああ、ごめんごめん。二つ下の階にあったチョコレートをもう一枚持ってきてれないかな。思ったより甘さが控え目でね。気に入った」

 紅煉の鋭利な牙同士がぶつかり合い、ぎちりと耳障りな音が口内に響く。
 先ほどから横暴な態度で命令しているのは、秋山優。卑怯番長という異名を持つ男である。
 纏っている学ランは短ランよりさらに丈が短く、鍛え抜かれた胸筋と腹筋が露になっている。
 そのボディからかなりの強者であることが見て取れるが、あくまで人間の世界では強者というだけだ。
 妖――それも数多の妖を奢ってきた妖殺しの妖である紅煉に、優位に立つほどの実力はない。
 にもかかわらず紅煉は持っていたリュックサックを置いて床に沈みこむと、チョコレートを回収して戻って来る。

「……ほらよ」
「どうもどうも。一欠けくらい食べるかい?」
「はっ! んなもん、いるかよォ!」
「くくっ、『俺が喰いたいのはおめえだよォ!』とか言って飛びかかってこないのかい?」
「…………ちィ」

 自分の口調を真似されていることが癇に障りながらも、紅煉は反論さえしない。
 秋山はそんな紅煉を観察しながら、ラベルを剥がしたチョコレートを口元へと持っていく。

「思ったより早く諦めたね。楽と言えば楽だけどつまらないな」
「ふん。わざわざ人間を喜ばすようなことするかよ」
「じゃあ殺すか。天地万物の正義を」
「あわわわっ! ちょ、ちょっと待て!」
「…………はい、ちょっと待った。天地万」
「おい! 頼む! この通りだァァァ!」

 秋山が何ごとかを言い終える前に、紅煉が跪くと地面に両掌を置いて掌の間に頭を押し付ける。
 いわゆる土下座の体勢である。
 人間を片っ端から喰らい、東西の妖怪連合を圧倒し、同族である字伏をも蹴散らした紅煉が、人間である秋山優に頭が上がらない。
 そんな状況をよく表した構図が、いまここに完成した。

「いやいやまったくひどいなぁ、紅煉。そんな飽きたからなんて理由で、この僕が誰かを殺すワケがないじゃないか。
 そんなふうに思われてたとしたら、さすがの僕もちょっとショック受けてしまうよ。いまのは冗談さ。じょ、う、だ、ん」
「この卑怯モンめ……あ、しまっ」
「ふふっ、また褒めてくれるとはね」
「ぐうぅぅ……ッ」

754 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:24:20.02 ID:r21VPBkq [3/11回発言]
   

755 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:24:41.64 ID:8QmIXjFp [5/14回発言]

 目元を隠す覆面の上からでも分かる秋山の笑顔に、紅煉は口籠るしかできない。
 下手なことを言っても簡単にいなされてしまうことなど、とうに思い知らされている。
 何せ、紅煉はこれまで力でもって他者を打ち負かすことしかしてこなかったのだ。 
 秋山の話術に対応するスキルなど持ち合わせておらず、ただただ翻弄されるばかりである。
 しかしながら、今回ばかりは普段通りに力で打ちのめすワケにはいかない。
 先ほど不覚にも飲み込んでしまった爆砕符は、絶対に爆発させてはならないのだ。
 そうなってしまえば、紅煉は二度目の死を体感することになる。再び蘇られるかは定かではない。
 いかに紅煉といえど、秋山を一瞬で殺害するというのは不可能だ。
 完全に不意を突かねば対応されてしまうだろう。
 出会ってからしばらく経っているが、未だ秋山は大きな隙を見せていない。
 ゆえに仕方なく、まだ行動をともにせねばならない。
 秋山を出し抜いて殺害し、死に脅えることなく人間どもを喰らうために。



(――とか、考えてくれているのかな)

 薄い微笑みを向けたまま、秋山は――卑怯番長は胸中で冷たく笑う。
 紅煉の体内に爆砕符など、存在しない。
 すべて卑怯番長の吐いた嘘である。
 先ほど唱えた爆砕符起爆の詠唱も、嘘だと見破られないためだ。
 すべて言い切ってしまえばバレてしまうが、生に執着する紅煉が止めないはずがない。
 普通の神経をしているのならば、ボロを出すのを恐れて詠唱は駆け引きに必要なときにしか行わないだろう。
 されど卑怯番長は、手札(カード)の切りどころだけでなく使いどころをも心得ている。
 ありもしない切り札(ジョーカー)は、必要なときにだけチラつかせてはダメなのだ。
 メリットがないところでだって見せてしまう。
 まるで本当に手元にあるかのように、いつでも切れるかのように。

「まあこんなものかな。その袋をくれないか」

 不本意ながらといった気持ちを隠そうともせず、紅煉は床に放置していたリュックサックを持ち上げる。
 紅煉に支給されたものであるが、妖が戦うのに道具など必要ない。参加者名簿を確認した時点で、不必要な物となっていた。
 とはいえ捨ててしまう気もなかったのだが、いまとなっては秋山の所持品である。何せ頭が上がらないのだ。
 入っていた蔵王と飲食物は奪われ、その他の道具は廃棄されてしまった。
 そんなこんなで空になったリュックサックのなかには、秋山の指示で紅煉が詰め込んだ商品がたんまりと詰まっている。

「こんなに突っ込んだけど、ほんとに必要のかよ。どれもガラクタにしか見えやしねえ」
「まだ体力があるうちに、道具は回収しておいた方がいいのさ。
 首輪に使われている技術が分からない以上、工具はどれも所持しておきたいしね。
 ……と言っても、僕がキース・ブラックならこんなところに首輪を外せるような道具は置かないけれど」
「かっ! じゃあ無駄じゃねえか!」
「天地万物の」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「別に、欲しかったのは工具だけじゃない。
 武器は配られているけど、万全とは言い難い。まあデパートにあるような代物では、激しい戦闘には向かないだろうが」
「ふん、やっぱり無駄じゃ」
「天地万物の正義をもちて」
「は、はええ! 悪かった、許してくれェェェ!」
「はあ……別に、僕が使うためだけじゃない。こんな状況だ。武器があれば交渉の道具にもなる」

 言いながら、秋山は蔵王に袋を収納する。
 一つの物しか収納できないと説明書には書かれていたが、ならば一つの袋に包んでしまえばよいだけだ。
 ちなみにもともと蔵王のなかに入っていた携帯端末は、紅煉がいない間にポケットへと移してある。
 チョコレートを取りに行かせたのは、そのためだったのだ。

「さて、そろそろ出ようか」
「あァ? 隠れていやがったクセに、そりゃァどういう心変わりだ」
「やるべきことは済ませたからね。状況は把握したし、商品もあらかた物色した。
 別に居座ってもよかったんだけど……エントランスが派手に破壊されてちゃね。誰か来たとしても、過剰に警戒されてしまう」

756 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:25:32.20 ID:r21VPBkq [4/11回発言]
     

757 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:26:48.22 ID:r21VPBkq [5/11回発言]
   

758 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:27:51.60 ID:r21VPBkq [6/11回発言]
    

759 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:27:59.04 ID:8QmIXjFp [6/14回発言]

 瓦礫まみれのエントランスを危なげなく歩み、秋山は表へと出る。
 まだ太陽こそ出ていないが、月はかなり傾いている。
 戦闘からだいぶ経過しているのでデパート内で立ち込めていた埃は落ち着いていたものの、やはり外のほうが空気が澄んでいるように感じられて大きく息を吸い込んだ。

「よく、こんな汚え空気をそんなに深く吸えるな」
「そうかい? 僕が住んでいるとこよりよっぽどキレイだよ」
「うへぇ……」

 秋山の後ろを浮かぶ紅煉が、唖然としたように口を開けたしたまま硬直する。

「他の参加者に会う前に行っておくよ、紅煉」

 当てもなく進もうとした秋山が、数歩踏み出したところで足を止めて踵を返す。

「いまさら言うまでもないけど、僕は別に正義の味方じゃない。
 どんな悪人だろうと思い切り殴ればそれで終いだとか、そういうタイプじゃない」
「ほう……」

 半開きであった紅煉の口は、いつのまにやら閉ざされていた。
 顔に備え付けられている三振りの霊刀が、月光を照り返す。

「だから僕は、お前に人を殺すなとか言うつもりはない。
 食べたいのなら食べればいいさ――ただし、この卑怯番長にとって邪魔な存在をだ」

 紅煉は何も言わず。
 刀身が、微かに輝く。

「お前のように殺し合いに乗る気の参加者は少なくない、と僕は読んでいる。
 そいつらは邪魔だ。家に帰るために手を尽くしたいところなのに、余計なことで体力を使いたくはない。だから――」

 刃が、煌めく。
 怪しく。
 妖しく。

「――喰っていい」

 静寂が広がりかけて、破られる。
 くつくつ、と。
 紅煉の低い笑い声が少しずつ漏れ出す。

「けッ。いいな、そりゃァ。
 この俺に指示するヤツなんて、テメェとあの大妖くれェだぜ」

 刃が小刻みに揺れ、反射した青白い光が秋山を照らす。
 卑怯番長の顔面までもが、妖しく染まっていく。

「強いヤツをブッ殺すのはいいぜェ、最高だ。喰えるなら喜んで喰らってやらァ。
 俺を含めた八十の参加者を全員殺そうとするようなヤツってんなら、それこそ心躍る」

 大きく口角を吊り上げて、紅煉は鋭い牙を見せつける。

「だがな、忘れるなよ。
 一番喰ってやりたいのは貴様だ。提案には乗ってやるが、最終的に貴様も喰らう」

 紅煉は断言すると、真紅の舌を伸ばした。

「…………言われなくても、僕とお前はそういう関係だろう」

760 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:28:57.86 ID:r21VPBkq [7/11回発言]
   

761 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:29:08.11 ID:8QmIXjFp [7/14回発言]

 意図せず息を呑んでしまい、秋山の返答は少し遅れる。
 即座に振り返り表情を隠して、歩み出す。
 わざわざ紅煉は指摘などせずに、ただ低く笑うだけであった。

 デパート内でのやり取りが夢であったかのように、両者の間に会話はない。
 立ち込める沈黙を破ったのは、不意に打ち上がった花火であった。
 方角は、向かうつもりであった繁華街のある東側だ。

「どうすんだよ、オイ」

 薄ら笑いを浮かべる紅煉に、秋山はしばし思考してから口を開く。

「目的地を変更するさ。好き好んで厄介ごとに巻き込まれる趣味なんてないからね」
「そうかよ」

 もともと当てがあったワケでもない。
 すぐに脳内の予定表を書き換えて、秋山は東へと背を向ける。

(ま、金剛番長は向かっているだろうけど……ね。
 でも、そんな『相手の誘いに真っ向から乗る』なんてのは僕のスタイルじゃない)

 大切なもののためならばどこまでも卑怯になる。
 それこそが、卑怯番長のスタイルにして生き方。
 通すスジなのだ。



【D-5 モチノキデパート前/一日目 黎明】

【秋山優(卑怯番長)@金剛番長】
[時間軸]:最終決戦後、後日談の前
[状態]:疲労(小)
[装備]:霊符(残り33枚)、ヒョウ(残り18本)、参加者名簿入り携帯端末@オリジナル(ポケット)
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、ヒョウ(25本)&符(50枚)&十五雷正法説明書@うしおととら、
    、不明支給品1(秋山は確認済)、1~3(秋山と紅煉が確認済み)、デパート内で回収したものいろいろ
[基本方針]:あらゆる卑怯な手を使ってこの街から脱出し、家へ帰る。体内に爆砕符があると思い込んでいる紅煉を脅してうまく利用する。


【紅煉@うしおととら】
[時間軸]:本編にて死亡後
[状態]:ダメージ回復
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:秋山優をなんとか隙を見て喰い殺す。それまでは死にたくないので従う。秋山を殺せたらあとはひたすら参加者を喰い殺す。
※「黒炎(分身というか手下と言うか、まあセルジュニアみたいなもの)を生む能力」は制限により使用不可。

762 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:30:07.84 ID:r21VPBkq [8/11回発言]
    

763 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:30:47.06 ID:8QmIXjFp [8/14回発言]


 ◇ ◇ ◇


 秋山が花火の元に向かっていると推測した金剛はというと、そもそも花火を確認していなかった。
 ちょうど川を渡るために水面を走っており、その水音のせいで炸裂音を聞き逃したのだ。
 視線は川の向こう岸にいた男に向けられいたため、花火自体を見ることさえなかったのである。

「スッゲー……どうやったんだよ」
「片足が沈んじまう前に、もう片足を前に出しただけだ」
「人間技じゃねえ……」

 あんまりにシンプルな回答に呆然とするしかないのは、オリジナルARMS『騎士(ナイト)』の適正者である新宮隼人だ。
 彼のほうも、川を渡る筋骨隆々な男という突拍子もない光景に意識を奪われており、花火の存在に気付くことはなかった。
 様々な能力を持つ者を見てきた隼人と言えど、沈むより先に歩く輩は見たことがない。
 理屈が分かりやすいせいで余計に、超能力者や高速起動サイボーグよりもよっぽど非常識に思えた。

「えっと、金剛……晄だっけ? 俺は新宮隼人っつーんだけどよ」

 キース・ブラックによる殺し合いの説明の途中で、金剛はブラックに食ってかかった。
 そのせいで説明を全て聞くことなく会場へと飛ばされてしまったのだが、結果としてすべての参加者は知った。
 金剛晄――金剛番長は、この殺し合いに従う気はないと。
 ゆえに、隼人もまったく疑おうとせずに尋ねる。

「高槻涼ってヤツに会わなかったか?
 キース・ブラックに攻撃した……って、アンタは見てねえんだったな。
 えーと、どう言やいいんだ? 俺と同じくれーの歳で、ボサボサした黒い髪のヤローなんだけどよ」
「見てねえな」
「もしかしたら、デッケェ鬼みたいなのになってるかも……分かりづれえな。ええと、どう説明すっかな」
「俺はまだ、変なからくり人形以外見てねえ」
「そうか……って、からくり人形?」

 怪訝な顔を浮かべる隼人に、今度は金剛が問いかける。

「俺に瓜二つな男を見なかったか」

 質問を頭のなかで何度も繰り返して、隼人は金剛の身体を下から眺めていく。
 まずでかい。単純にでかい。
 隼人は決して小柄なほうではないが、金剛と目を合わせるには見上げるしかない。身長は二メートルを優に超えている。
 そして筋肉質。学ランの上からでも全身鍛え抜かれているのが分かる。
 というか学ランが筋肉の形に盛り上がっている。確実にオーダーメイドだろう。
 隼人はこれまで人間離れした鍛え方の人間を何人も見てきたが、金剛は少しレベルが違った。

「…………お前みてえなヤツ、他にいるかよ」
「いる。金剛猛、袂を分かった俺の兄貴だ……ッ!」

 金剛が拳を強く握り締めると、全身の筋肉が呼応するように蠢いた。
 思わず、隼人は言葉を呑み込んでしまう。
 相手がいかなる力であろうと受け流す水の心が、勝手に乱されていく。

「じゃあな、礼を言うぜ」

 用は済んだとばかりに離れようとする金剛を、隼人は呼び止める。

「なんだ」
「アンタ、殺し合いの説明聞いてねーだろ!? 教えてやるからちょっと待てよ!」
「必要ねえな。あんな野郎の言うことを聞く気はねえ」

764 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:31:12.70 ID:r21VPBkq [9/11回発言]
   

765 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:31:32.80 ID:8QmIXjFp [9/14回発言]

 足を止めた金剛は短く返すと、再び歩み出す。
 巨大な背中が見る見る小さくなっていくのをただ見ていた隼人だったが、唐突に声を張り上げた。

「ふざッけんな! ダチ殺されたからって、強情張ってんじゃねえ!
 聞いとかなかったせいで、悪矢七ってヤツの仇も取れずにむざむざ死んじまう気かよ!」

 自ら話を聞こうとしなかったヤツに懇切丁寧に教えてやるほど、隼人は人がいいワケではない。少なくとも彼本人は自分をそう認識している。
 ただ、許せなかっただけだ。
 友人が殺されて怒るのは分かる。むかしならともかく、友ができた現在の隼人には理解できる。
 だがそのために意固地になるのは、共に進んできた仲間のいる隼人には納得できなかった。

「……悪ィな。アイツのスジを通してやらなきゃならねえってのに、妙な意地張ってたぜ……ッ。頼む、聞かせてくれ」

 隼人の怒声を浴びせられた金剛は、少し静止したのち引き返してきた。
 バツが悪そうに、後頭部に三本の角のように逆立つ髪を擦っている。
 表情も先ほどまでの険しいものでなく、落ち着いたものとなっていた。
 その様子がおかしく、隼人は口元を緩めた。

「はッ、気にすんな。分かりゃあいいんだよ、分かりゃ」



「悪矢七だけじゃなくもう一人……ッ、それも番長計画と関わりのないただの高校生ッ、あまつさえ女がッ! 殺されただと!!」

 隼人の説明を聞いた金剛が最も反応したのは、禁止エリアなどの己の生死に関わる点ではなかった。
 赤木カツミという名の隼人と同じクラスの女子生徒が、戦う術を持たない彼女が、なにもしていないという彼女が――命を落とした。
 何よりもそれに怒り悲しまなければ、金剛番長ではない。
 熱くなった感情が抑えきれず、子どもの頭ほどもありそうな拳が地面に叩き付けられる。
 エネルギーは地面に収まらず、川の水面に大きな波が生まれた。

「さっき言った高槻ってのは、そのカツミの幼馴染なんだよ。
 カツミが死んじまったせいでアイツが暴走しちまってるなら、俺はアイツを止めなきゃなんねえ。そういうワケだ。またな」
「待て」

 今度は、去ろうとする隼人を金剛が呼び止める。
 金剛の脳裏に浮かぶのは、巨大な兄の姿だ。
 母を喪い帰国したあの日、兄は全人類の敵となろうと決心した。
 日本番長として、世界を一度破壊する想いを固めたのだ。
 そのことを知らず――正確には決意の固さに気付かず、金剛番長は日本番長に敗北を喫した。

「愛する人間を喪った人間の憎悪はバカでけえ。
 生半可な覚悟じゃ……返り討ちになるだけだぜ」

 そんな過去があるからこその忠告に、隼人は当たり前のように返す。

「言われなくても、んなこたァ分かってるぜ。
 だけど同時に、アイツなら憎悪なんかにゃ飲み込まれねえって信じてる。
 ただもしも仮に飲み込まれちまったんなら、アイツを殺す。そう、約束したんだよ」
「そうか……だったら下らねえこと言っちまったな。許せ」

 自嘲気味に笑みを浮かべながら告げられた隼人の言葉に、金剛はあるものを感じた。
 一度決めたことは何があろうとも、たとえ死んでも貫き通さんとする意志。
 すなわち、男の心に一本通ったスジ。

「気にすんなよ。アンタも、俺らとキースのいざこざに巻き込んじまって悪かったな」
「お前が謝ることはない」
「はは、ずいぶんサッパリしてるぜ。じゃあな。用が済んだらまた会おうぜ!」
「ああ!」

766 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:32:14.67 ID:r21VPBkq [10/11回発言]
   

767 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:32:16.08 ID:8QmIXjFp [10/14回発言]

 と別れを告げ合った両者だったが、互いにすぐ足を止めた。
 川の向こう岸から迫りくる何者かの気配を察知したのだ。
 金剛のように水面を走るのではなく、上空を飛んで。

「なんだ、ありゃあ!?」

 二人の視界に映った接近者は、四体の化物であった。
 金剛の身長をも超える体長のウナギ。
 バレーボール大の白い毛の塊。
 毛の塊と同サイズのトカゲ。
 それら三体を乗せ、高速で宙を舞う巨大なエイ。

「止まれ」

 そんな化物を前にしても、金剛の態度は変わらない。
 言葉が通じるかなんて試そうともしていなかった隼人は、目を丸くする。

「止まれと言っている!!」

 金剛は声を荒げるも、化物集団は反応しない。
 むしろ、移動速度が上がっている
 エイが空中で旋回し、乗せている三体を下ろす。
 そのまま回転を続け、両手をポケットに入れたままの金剛へと突っ込んでいく。
 鍛え抜かれた腹筋に接触する寸前で、エイは急に方向転換して上空へと吹き飛んだ。

「話を聞けッ!!!」

 いつの間にかにポケットから出ていた金剛の右腕は、大きく振りかざされている。
 ギリギリまで退くのを待っていたが、それでも相手は仕掛けてきたのだ。
 ならば、男として迎え撃つのみであった。
 どちらもスジを通すためにぶつかった場合、金剛番長は相手に容赦をしない。

「――よそ見してんじゃねえぜ、金剛」

 火花が散る音を捉え振り返ろうとした金剛の前に、隼人が出てきていた。
 『騎士』の第一形態を発動させており、鉱物化した左腕から鋭利なブレードが伸びている。
 その刃部でもって、ウナギが放った電撃を受け止める。

「ぬるいぜ!」

 ナノマシンであるARMS最大の弱点は電気だが、ARMSは一度受けた攻撃の耐性を作ってしまう。
 そして隼人の『騎士』は、一時的に機能を停止した過去がある。
 とはいえ電圧次第では耐え切れない可能性もあったが、放たれた電撃はすでに『騎士』には効かない程度のものであった。
 攻撃が緩まるのを待たず電撃を身に受けながら、隼人はウナギへと接近しブレードを凪ぎ下ろす。

「あぁ? どうなってやがる?」

 隼人の口から、腑に落ちないといった声が零れる。
 尾を貫かれたウナギが彼方へと飛んで行ったのだ。
 困惑する隼人の視界の片隅に、オレンジ色の炎と針じみた毛が映った。

768 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:33:11.16 ID:8QmIXjFp [11/14回発言]

「よそ見するなよ、隼人」
「……言ってくれるぜ」

 トカゲの吐き出した炎と毛玉の射出した毛は、どちらも隼人に届くことはなかった。
 金剛が思い切り振り抜いた拳の風圧だけで、勢いを殺されてしまったのである。
 状況を把握しきれていないらしく、残った二体の化物は反応が遅れる。
 その隙に、どちらも金剛の拳で吹き飛んだのであった。

「ここには、奇妙な生き物がいるみてえだな。気をつけろよ」
「奇妙で片付けていいのか……?」

 離れていく金剛の背を見送りながら、隼人は化物たちの姿を思い返す。
 四体とも首輪をしていなかったので、参加者ではない。
 ということは、あのような化物をキース・ブラックは会場に放っているのだろうか。
 エグリゴリの技術をもってすれば、現実に存在しない動物を作り出すことだって難しくはないだろう。

 もう一つ、別の可能性も隼人のなかに浮かぶ。
 化物たちが支給品であるパターンだ。
 人の指示通りに動くサイボーグを、隼人は知っている。

(…………って、あんなもんあのガキくれーじゃなきゃ操れねえか。
 ちッ、やっぱブラックがここに放し飼いにしているだけかよ。なに考えてっか分かりゃしねーぜ)

 サイボーグを自分の肉体のように操るのは、類稀なる頭脳の持ち主でなければ無理だ。
 そんなことくらい、隼人は重々承知している。



【C-5 河原東側/一日目 黎明】

【金剛晄(金剛番長)】
[時間軸]:王様番長戦直前、バンカラタワーに向かう途中。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:スジを通す。


【新宮隼人】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にて招待状を受け取って以降、同話にてカリヨンタワーに乗り込む前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:仲間たちと合流してブラックのプログラムを叩き斬る――が、その前にまず高槻を探す。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。

769 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:35:57.05 ID:8QmIXjFp [12/14回発言]


 ◇ ◇ ◇


 隼人が支給品ではありえないと判断した式神は、実際のところ武器として支給されたものだ。
 そしてその持ち主は、すぐ近くにいた。
 川の向こう岸で、隼人を観察しているのだ。

(やれやれ。川が荒れていたけど、あれを攻撃だと判断したのかな)

 白髪の老人、才賀正二――の顔を模したフェイスレスは思考を巡らせる。
 四体の式神に先に花火の元まで向かわせ、自分はその後を追う。
 そんな予定は、だいぶ早い段階で覆されてしまった。
 しかしフェイスレスは、現状を悪くないと判断する。
 まだ先行の式神と距離が離れる前だったため、計画が崩れたことをすぐに知ることができた。
 失敗を知らないより、遥かにマシである。
 撃退された式神をすぐ紙に戻すことができたのも幸運だ。

(さて、どうするか……だね)

 少し前までは、花火が打ち上がった場所にいち早く向かうつもりであった。
 にもかかわらず、フェイスレスは悩んでいる。
 目的を変えないか隼人と接触するか、その二択である。

 もとより、フェイスレスは決して殺し合いに乗り気ではない。
 目的のために他者を殺すのに躊躇はしないだけで、最後の一人になるつもりはさらさらない。
 かねてより抱き続けていた彼の夢は、エレオノールを手に入れること。
 そのためには、最低でも三人は生き残らねばならない。
 エレオノールを手に入れるフェイスレス自身。
 手に入れるべき才賀エレオノール。
 フェイスレスの器となる才賀勝。
 その三人の生還こそが、殺し合いにおける最終目的なのだ。
 才賀正二の悪評を広めるのは、あくまで遊びに過ぎない。
 天才ゆえに目的を達成しつつ楽しむ道を選んだだけだ。

 さて、三人で生還する上で最も邪魔な存在とは誰か。
 考えるまでもなく、キース・ブラックである。
 まず首輪を外し、キース・ブラックの元へと向かい、三人で帰る。
 そのために必要なのは、情報だ。
 いかに天才と言えども、ゼロから何かを作り出すことは不可能だ。
 錬金術師とて、媒介もなにもないところから賢者の石を作成できるものか。
 フェイスレスは夢のために、キース・ブラックの情報を求めている。
 そのために接触したかったのは、五人だ。
 キースという名を持つ関係者と思しき四人と、ブラックを知っているようであった高槻涼。
 また、殺し合いの説明がされる前に『アザゼル』などと呟いた者も情報を持っていると思えたが、それが誰なのかは特定できなかった。
 隼人は接触したかった五人ではないが、高槻涼の右腕のように左腕が変形している。
 何かしら接点があるに違いないと、フェイスレスは推測した。

 だからこそ悩むのだ。
 花火の元にはエレオノールがいるかもしれないし、ブラックの情報を持っている参加者と次に会えるのはいつになるか分からない。
 式神を向かわせようにも、撃退された四体はエネルギーを蓄えている最中だ。
 熟考を重ねつつ、フェイスレスは隼人の左腕に目をやる。
 鉱物のように変形し、鋭利な刃を伸ばす。
 体内に収納してある武器を発現させるという点では、フェイスレスが作り出した機械人間『O』に似ているかもしれない。
 もっともあくまで遠目から見た印象であり、実際は大きく異なるかもしれないが。
 ふとフェイスレスは、この会場にOの旧型である『しろがね-O』がいるということを思い出す。

770 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:39:50.35 ID:L4Qzwegi [1/2回発言]


771 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:39:53.57 ID:wKmep2ls [1/1回発言]
 

772 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:40:09.47 ID:9iFCAbXL [1/1回発言]
sien

773 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:41:46.93 ID:8QmIXjFp [13/14回発言]

(ジョージくんは、僕を人形破壊者(しろがね)側のまま死んだだと思ってるんだっけ。
 旧型の自動人形(オートマータ)にすら劣る欠陥だけど、まあ味方だと信じ込んでくれてる駒があって悪いことはない)

 そこまで考えると、再び目の前の二択へと思考を戻す。
 旧型にすぎないしろがねOのことなど、すぐにフェイスレスの脳内から消え失せてしまった。



【C-5 河原西側/一日目 黎明】

【フェイスレス】
[時間軸]:28巻、勝にゲームを申し込んだ後。
[状態]:健康、インドラ@GS美神に乗っている
[装備]:エネルギー結晶@GS美神(体内)、クピラ(肩)・インドラ(乗っている)@GS美神、言霊@烈火の炎(体内)
[道具]:式神十二神将の札×12(マコラ、ショウトラ、アジラ、サンチラ、シンダラ、ハイラ、他は空)@GS美神
     ガッシュの魔本@金色のガッシュ、基本支給品一式×2
[基本方針]:愛しの人を手に入れるべく、エレオノールと才賀勝の捜索。才賀正二の悪評を広めるのも忘れない。
        剣を出す少年と接触するか、花火の元へ向かうか……?


 ◇ ◇ ◇


 プログラム参加者唯一のしろがね-Oであるジョージ・ラローシュは、フェイスレスの見込みと異なりフェイスレスが人形破壊者の敵だととうに知っていた。
 そしてこの場においても、フェイスレスは見つけ次第殺害しようと考えている。
 自動人形を陰で操っていた存在がいるのなら、倒すのは人形破壊者の定めだ。
 人形破壊者として当然の行動を取ろうとしている点は、ジョージはここ数十年揺らいでいない。
 ただ、なぜそうしようとするのかという点が、以前とは大きく違った。
 現在のジョージは、別に『人形破壊者として』フェイスレスを殺害しようとしているワケではない。
 何ごとにも飽きていた彼に、割れるような拍手と笑顔を送ってくれた。
 戦う力を持たない彼らのために、彼らにまたピアノを弾くために、ジョージはフェイスレスを討たんとしているのだ。

 そんなジョージは、いま全速力で市街地から離れている。
 普段はロングコート状にして纏っている特殊モリブデン鋼を分解させ、十数のブレードとして高速回転。
 軽々しく触れたものを容易く切り刻む『神秘の球(ボラ・ミステリオサ)』を形成して、住宅街を駆け抜けていく。
 少しでも『神秘の球』が民家に触れてしまえば一たまりもないだろうが、ジョージは民家と民家の間を巧みに掻い潜る。

「ふん! この『牙(ファング)』から逃げ切れるかよ、曲芸師!」

 傷一つついていなかった民家の壁を突き破り、黒い道着を身に着けた筋骨隆々の男が声を荒げた。
 その手に武器などなく、素手で家屋を破壊したことが見て取れる。
 先ほど、男はコウ・カルナギと名乗った。

 ジョージとカルナギが出会ったのは、ほんの少し前のことである。
 傷を癒やしたジョージが打ち上げられた花火を確認し、向かおうとしたところで鉢合わせた。
 いち早く到着するべく『神秘の球』を展開していたのが災いした。
 強者を求めていたカルナギの標的に認定されてしまったのだ。
 数度攻防を繰り広げたのち、ジョージは目的地を変更を決めた。
 カルナギは楽に片付けられる相手ではない。長引いた戦闘の末、花火が打ち上げられた地点まで到達してしまえば余計な被害者が出てしまう。
 ならば、他に誰もいない場所にて戦うしかなかった。

(これ以上遠ざけるのは無理……だな)

 高速回転するブレードの隙間から周囲を眺め、ジョージは判断する。
 民家が障害物になってくれたため、これまでカルナギとの間に一定の距離を保つことができた。
 しかし、すでに周囲に住宅はない。
 そうと決めてしまえば、ジョージの行動は早い。
 『神秘の球』の速度を緩めて振り返り、カルナギが現れるのを待つ。

774 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:42:29.63 ID:r21VPBkq [11/11回発言]
   

775 : 創る名無しに見る名無し : 2011/06/25(土) 22:42:50.31 ID:L4Qzwegi [2/2回発言]


776 : 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w : 2011/06/25(土) 22:43:10.25 ID:8QmIXjFp [14/14回発言]

「へッ! 観念したか!!」

 ジョージが立ち止ったのを確認し、カルナギの口元が歪む。
 走る勢いそのままに跳躍して、横にあった電柱を蹴っ飛ばしてさらに加速する。
 蹴られた電柱は、衝撃に耐え切れず小枝のようにへし折れた。

(まるで魔物……だな)

 と考えて、ジョージは自ら否定する。
 魔物など、この世には存在しない。あるのは人間と人形だけ。
 人形のように他者の遺志に従うだけの者はやはり人形であり、悪魔(デモン)と名乗り子どものために怒れる男は人間だ。
 ならば、自分自身はどうなのか――と、ジョージは不意に思った。
 メトロノームのように楽譜に記されたとおりにしか奏でられなかったころとは違う。
 完成された楽曲にアレンジを加えて奏でてしまった現在のジョージ・ラローシュは人間か人形か。
 物思いにふける暇など与えないとばかりに、カルナギの飛び蹴りが『神秘の球』に叩き付けられた。



【E-3 南部路上/一日目 黎明】

【コウ・カルナギ】
[時間軸]:第五部開始時
[状態]:軽い疲労、両掌に軽い怪我、満腹
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:サーチアンドデストロイ。ARMS、鬼丸を特に優先。刃も見つけ次第ブン殴る。


【ジョージ・ラローシュ】
[時間軸]:本編死亡後
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:無し
[道具]:ジードのタバコ@金色のガッシュ、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:脱出して子供たちにピアノを聞かせる。乗る気はない。


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