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週刊少年サンデーバトルロワイアル
[2ch元スレ] 文化 > 創作発表 このエント>リーをはてなブックマークに追加




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週刊少年サンデーバトルロワイアル

1 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:13:31.82 ID:jF1Uzwu5 [1/1回発言]
当スレッドは週刊少年サンデーで連載されていた漫画のキャラクター達でバトルロワイアルのパロディをやろうという企画の場です
二次創作が苦手な方。人物の死亡や残酷な描写、鬱々とした展開が受け付けない方は閲覧にご注意ください。

また、当企画はリレー形式で進めていくので、書き手を常に募集しています。
文章を書くのが初めての方でも大歓迎なので興味があれば書いてみてください。


避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14506/

まとめwiki
ttp://www44.atwiki.jp/sundayrowa/


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2 : 代理スレ立てありがとうございます ◆hy7z80KtCU : 2011/02/21(月) 00:20:42.22 ID:9D6b4/IH [1/20回発言]
参加者名簿

からくりサーカス 14/14 
○才賀勝○加藤鳴海○才賀 エレオノール○ギイ・クリストフ・レッシュ○ルシール・ベルヌイユ
○才賀アンジェリーナ○ジョージ・ラローシュ○阿紫花英良○フェイスレス
○パウルマン&アンゼルムス○シルベストリ○ドットーレ○コロンビーヌ○才賀正二

ARMS 11/11       
○高槻涼○新宮隼人○巴武士○アル・ボーエン○キース・ブルー○兜光一○キース・シルバー
○キース・バイオレット○キース・グリーン○ユーゴー・ギルバート○コウ・カルナギ

金色のガッシュ!! 9/9
○ガッシュ・ベル○高嶺清麿○パルコ・フォルゴレ○ゼオン・ベル○ヴィンセント・バリー○ナゾナゾ博士○テッド○チェリッシュ○レイラ
  
金剛番長 8/8
○金剛晄(金剛番長)○金剛猛(日本番長)○秋山優(卑怯番長)○伊崎剣司(憲兵番長)
○桐雨刀也(居合番長)○白雪宮拳(剛力番長)○マシン番長○来音寺萬尊(念仏番長)

うしおととら 7/7    
○蒼月潮○とら○井上真由子○蒼月紫暮○秋葉流○紅煉○さとり

烈火の炎 7/7      
○花菱烈火○霧沢風子○石島土門○水鏡凍季也○小金井薫○永井木蓮○紅麗

うえきの法則 7/7    
○植木耕助○佐野清一郎○宗屋ヒデヨシ○マリリン・キャリー○バロウ・エシャロット○ロベルト・ハイドン○李崩

SPRIGAN 6/6      
○御神苗優○ジャン・ジャックモンド○朧○染井芳乃○暁巌○ボー・ブランシェ

GS美神極楽大作戦!! 6/6       
○美神令子○横島忠夫○おキヌ○ルシオラ○アシュタロス○ドクター・カオス

YAIBA 5/5       
○鉄刃○峰さやか○宮本武蔵○佐々木小次郎○鬼丸猛



計80名

3 : トリ間違えましたorz ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:22:32.35 ID:9D6b4/IH [2/20回発言]
【ルール】

バトルロワイアルスレ(パロロワスレ)で書くのが初めてという方は
ttp://www44.atwiki.jp/sundayrowa/pages/24.html
を参考にしてください
それでも分からなければ遠慮無く聞いて頂いて構いません


経験者の方は以下の事に留意していただけばほぼ大丈夫です
・初予約の場合は期限が3日、それ以降は7日
・ランダム支給品は1~3個で、大きい物に関しては蔵王@烈火の炎に収納されています(蔵王の説明は下記)
・禁止エリアの発動は放送から3時間後

『蔵王の説明』
人の掌ほどのサイズの球であり、収納できる質量に限界はない
道具の出し入れを行う際は念じるのみでよい
ただし、当ロワでは以下のニ点の制限がかかる
蔵王一個につき道具一つまでしか入らない
生物を収納することができない



【制限について】

基本的には最初にそのキャラを書いた人に委ねますが、以下の二点に関してはあらかじめ制限を明記しておきます

金色のガッシュ!!の魔物の子供たち→パートナーと魔本がなくても自身の心の力を使って呪文を発動することはできますが、威力は弱体化します。
                       また魔本は誰でも読むことができますが、本人が魔本を持って呪文を唱えても本来の威力にはなりません。
                       なお、魔本が燃えたとしても死亡や魔界に送還することにはなりません。

うえきの法則の能力者達→神候補から貰った才を使って能力者でない者を傷つけても才は減少しない。

4 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:24:01.45 ID:9D6b4/IH [3/20回発言]
【Q&A】

Q参加作品と参加者はどう決めたのか?
A自分の独断です

Qコナンとかハヤテとか絶チルはださないの?
A最悪自分一人でやることを想定しているので、把握しきれてない作品は入れませんでした

Q俺ロワでやればいいんじゃね?
Aごもっともです。が、自分以外の書き手がいなくなればトキワ荘に移るので今回だけは見逃してください

5 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:26:35.61 ID:9D6b4/IH [4/20回発言]
では、早速ながらオープニングを投下させていただきます

6 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:30:10.32 ID:9D6b4/IH [5/20回発言]




――――――――全てが紫電に染まる




この場にいた全ての人間は同じ光を目にし、そして覚醒した。
鉛色に光る金属に覆われた無機質な空間。用途の分からぬ機械がいくつも存在し、壁一面にパイプの走る部屋。
しかし、彼らの目を最もひいたのは部屋の中央に鎮座している"それ”だろう。
"それ”を最初に見た者たちはほぼ同じ感想を抱いた、『まるで金属でできた巨大な肉塊だ』と。

「アザゼル……」

青年が呟くつもりで発した声は、広い空間でやけに大きく響いた。
それを引き金に、話し声が場を満たし始める。
彼らは現状を把握出来ていないのだ。
気絶して気がつけばここにいた。ごく数名を除けばここに連れてこられてきた者たちの境遇は同じ。
このような状況で楽観的な考え方をできるものがどれだけいるのだろうか。
ある者は近くにいた仲間と推論を交わしあい。
ある者は敵の罠ではないかと警戒を深め。
またある者はパニックを起こしかけている。

「静粛に―――」

別段大きな声というわけではない、理知的で落ち着いた成人男性の声だった。
しかし、部屋にいた全ての人間が音源である男性へと顔を向ける。
今まで誰もいなかったはずの部屋の中央、青年がアザゼルと呼んだ金属塊の頂上へと。

「初めまして、私の名はキース・ブラック。
 出会ってばかりで申し訳ないが、君たちは私の"プログラム”に協力してもらいたい」

長く伸びたブロンドの髪とそれと対照的な黒いスーツを身に包んだ男、ブラックが芝居がかった動作で腕を広げる。
その仕草と顔に浮かんだどことなく胡散臭さを感じさせる笑み、そして問答無用で気絶させられ連れてこられたという事実。
この場に少なからず存在していた気の短い者たちの堪忍袋の緒を引き千切るには十分すぎる要因だろう。

「ぬぅ、ブラックとやら。オレがきさまの言う事をおとなしく聞くとでも思ったか、このバカ者が!!」
「オッサンの言うとおりだぜ、何がプログラムだ固羅ァ」

集団の中から二人の男が飛び出した。
片や、筋肉の鎧を全身にまとった白人の男性。片や、僅かに赤みのかかった黒髪を無造作に跳ねさせた少年。
人種も、年齢も、信条すらも異なる二人であったが、共通するものが一つ。
それは目の前にいる鼻持ちならない野郎をぶん殴りたいという思い。
しかし、二人の望みが叶うことはなかった。

「やいやい人間、"ぷろぐらむ”だかなんだかしらんが、人にものを頼むときには礼儀ってのが必要なのを勉強しな!」


7 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:32:28.30 ID:9D6b4/IH [6/20回発言]
金色の獣が天へと右腕をかざす。
それと同時にブラックの頭上に稲光が煌き、次の瞬間には光の奔流が彼の体を貫く。
一瞬、ほんの一瞬であるが、不意を突かれた群衆の目が閃光によってくらみ、動きが止まった。

「なっ!?」

この場にいた者たち、ブラックを除くほぼ全ての者達が驚愕に瞳を広げる。
原因は二つ。
まず一つ目は、雷の直撃を受けたはずのブラックがスーツに焦げ跡すら残さずに立っていること。
そして二つ目。ある意味ではこちらのほうが深刻かもしれない。
ブラックへと迫る雷光に注意が移った刹那の間で自分の首に金属製の首輪が巻かれていたこと。
突如現れたそれは金属特有の冷たさを首筋に伝え、不安を煽る。

「これから協力してくれる君たちに、プログラムの内容を教えよう。
 "殺し合え”それ以上でもそれ以下でもない。ここに呼んだ80人の中で最後の一人になること、それが君たちに与えられた仕事だ。
 過程は問わない。真っ向から殺して回るもよし、寝首を掻くのもよし。とにかく最後まで生き残ればいい」

室内の雰囲気がガラリと変わった。
緊張で張り詰めていた空気に殺気がブレンドされ、重厚感を否応なしに与えるようになった。
混乱する者や、息を飲み込み震え出す者もいたが、"参加者”の大半は敵意を込めた瞳でブラックを睨む。
だが、ぶつけられたプレッシャーを意に介した様子もなくブラックは話を続ける。

「大丈夫、最後の一人に残った者の安全は私が保障しよう。だから存分に殺しあって―――『知ったことか!』」

青年の一喝が大気が震わした。
人波をかき分けて出てきたのは学ラン姿の巨躯。
ズボンのポケットに手を入れながら誰よりもアザゼルの傍へと近寄り、ブラックを見上げる。

「いきなり呼びつけといて殺し合え。大人しく従うとでも思ったか?」
「その疑問はごもっともだ、金剛晄くん。いや金剛番長。だから殺し合う理由を用意したよ」



――――ボン


8 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:33:24.06 ID:m/gaHUZh [1/8回発言]
 

9 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:33:30.05 ID:da7Z2Tio [1/2回発言]
これは何という俺得名簿www
期待&支援

10 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:34:07.19 ID:w2IeOZ8u [1/4回発言]
sien

11 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:34:50.31 ID:9D6b4/IH [7/20回発言]


小さな炸裂音が響き渡った。
それとほぼ同時に聞こえる悲鳴。
金剛番長も音源へと振り返り。

「悪矢七!」

驚愕と怒り、そして悲しみの混じった咆哮を上げる。
その視線の先にあるのは首の失われた少年の死体。しかし、すぐ傍に落ちていた頭部が彼が何者であるかを示していた。
悪矢七光。二代目金剛番長。
漢になろうと、誰よりも金剛番長に憧れた少年はあまりにもあっけなくその生命を散らした。
何が起こったかすら分からぬ表情で。

「分かってくれたかね、君たちの首に巻かれたそれには爆薬が仕込まれている。
 爆発すれば君の肉体を以てしても耐えられない威力のものがね」

圧倒的優位に笑みを深めたブラック。
しかし、金剛番長は怒りを貼りつけた形相でブラックへと歩み寄る。

「ほぅ、爆弾が怖くないと?」
「それがどうした!」

ブラックの脅し文句を一蹴し、金剛番長は足を止めない。
困ったかのような動作をし、それでも余裕を崩さぬ態度でブラックは言い放つ。

「仕方ない、話を聞く気がないなら君には一足先に会場入りしてて貰おうか」
「な、どこにい―――」

腕を掴まれる感覚と共に、金剛番長はこの部屋から消え去った。
傍から見ていたものには突然人が消えたかのようにしか見えず、同じくブラックへ攻撃を仕掛けようとした者たちの動きも止まる。

12 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:34:54.82 ID:m/gaHUZh [2/8回発言]
 

13 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:35:59.34 ID:w2IeOZ8u [2/4回発言]
しえん

14 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:36:00.08 ID:m/gaHUZh [3/8回発言]
 

15 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:36:14.13 ID:zWCisCS4 [1/4回発言]
 

16 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:36:22.18 ID:da7Z2Tio [2/2回発言]
・

17 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:37:08.94 ID:9D6b4/IH [8/20回発言]

「ふむ、話をするにはちょうどいい感じになったようだ。
 聞き給え、何も殺し合いをさせて勝ち残ったものへの褒美が生きて帰れるだけじゃ割にあわないだろう。
 だからプログラム最大の協力者として優勝者には景品を用意しよう。
 富も地位も思うのままだ、望むのであれば死者の蘇生も可能だと伝えておこう。
 人数の制限はない。この殺し合いで死したものを全て蘇らせろと言うのならばそれにも応じるつもりだ」

一区切りがついたブラックが話を一時止める。
部屋が完全なる静寂に包まれた。囁き声の一つすらも聞こえない。
無言を返事と捉えたか、ブラックは朗々と語りを続けていく。

「では、ルールを説明しよう。
 根本的な部分はさっきも言ったとおり、周りの人間を全て殺して最後の一人になればいい。
 適当な武器と数日分の食料、そして会場の地図は用意したからそれを活用してくれ。
 武器は基本的にこの玉の中に入っている。出し入れは念じるだけで可能だから難しく考えることはない。
 それと、これからが大切な話だ。死にたくなくばしっかりと覚えていて欲しい。
 私は六時間に一度会場全域に放送を流す。
 内容はその六時間で誰が死んだか君たちに伝えること、そして禁止エリアの発表だ。
 ちなみに禁止エリアに入ってしまえば君たちの首輪が爆発し、そこの彼のようになる。
 そうなりたくなくば放送は聞き逃さぬようにするように」

一息もつかずにここまで話しきり、再びブラックは語りを止める。
そしてハッと何かを思い出したような表情をして、一つだけ付け加えた。

「そうそう、言い忘れていた。この首輪、外そうと力を与えても爆発する。
 少し触れる程度なら大丈夫からそこまで怯えることはない。
 当然だが、能力を使って外すことも考えないように」

パチンとブラックが発した指なりの音が木霊す。
すると、誰もいなかったはずの空間から一人の少女が現れる。
手枷を付けられ猿轡を噛まされてはいるが、意識はあるようでブラックの手から逃れようと必死に身を捩る。

「カツミ!? ブラック、お前!」

樹の幹が割れるような音を立て、青年の右腕が変質する。
それを一言で形容するならば、悪魔の右腕。
異形の物と化した青年の右腕は急速な速度で伸長し、ブラックの体を貫く。

「なっ!?」

青年、高槻涼本人ですらこの結果には予想外であった。
ブラックは血反吐を吐き出し、全身の筋肉を弛緩させる。
殺し合いの元凶がいとも簡単に死のうとしている、その光景はあたかもおかしな夢を見ているようであった。

「……せ。……わ…………せ」

うわ言のように呟くブラックの声は誰にも届かない。
ガクガクと体を震わせ、膝が小さく落ちる。

18 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:37:17.01 ID:m/gaHUZh [4/8回発言]
 

19 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:38:19.91 ID:zWCisCS4 [2/4回発言]
   

20 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:38:20.90 ID:9D6b4/IH [9/20回発言]


参加者がおかしな夢だと思った光景が悪夢に変わった。






青年の右腕がガラス細工のように砕け散る。

瀕死であったはずのブラックの瞳に生気が戻る。

ブラックの髪の毛が途中から千切れ、元の半分ほどの長さに変わる。

そして、崩れかかった体勢を立て直す。



「いわゆるデモンストレーションというヤツだ。君たちに私が殺せないことは理解してくれたかね?
 では、最終工程といこうか。先程の爆発を見てないものが多いだろうからな、もう一度だけ実演してみよう」
「やめろ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお」

叫び声を無視しブラックは手にしていた少女を宙へと放り、再度指を鳴らす。
先刻と同じ爆発音と共に少女の頭部が胴体とあっさり分かれ、別々に床へと叩きつけられた。

「カツミいいいいいいいいいいいいいいいいい」

涼の悲痛な声が場を支配する。
しかし、それを意に介した様子もなくブラックは言った。

「何を悲しむ必要がある? 高槻涼、君の実力ならば優勝を狙うのだって容易いだろう?
 君が優勝して赤木カツミを甦れせてやればいい
 さて、無駄な話に時間をとってしまったな。そろそろ君たちには移動してもらおうか。健闘を祈る」

ブラックの言葉が終わるやいなや、参加者の姿が消える。

21 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:38:23.50 ID:w2IeOZ8u [3/4回発言]
      

22 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:38:25.78 ID:m/gaHUZh [5/8回発言]
 

23 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:39:06.76 ID:m/gaHUZh [6/8回発言]
 

24 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:39:10.00 ID:w2IeOZ8u [4/4回発言]
    

25 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:39:12.14 ID:9D6b4/IH [10/20回発言]








残ったのはよく似た顔をした一組の男女のみ。



「どうしたんだいバイオレット? なにか言いたいみたいだが」

「ええ、首輪の威力のデモンストレーションで赤木カツミを殺したのはなぜかしら?
 彼女は別に使い道があるからって言ってたのはあなたじゃないブラック兄さん。
 これじゃあグリーンが怒るんじゃないのかしら? あの子はこの殺し合いについて何も聞いてないはずよ」

「赤木カツミを巻き込むなんて言ったらアイツは賛成するわけがないだろう? だったら最初から蚊帳の外にいてもらったほうが楽だ。
 それにブラックが言っていた使い道とやらが私にとって有用だとは限らないのだよ」

「それって?」

「いや、気にしなくてもいい。さぁ、そろそろ君も会場に行きたまえバイオレット」



彼の言葉を訝しむ彼女の姿も消え、残ったのはキース・ブラック一人となる。





「機械仕掛けの神は運命の歯車を回し始めた。さぁ、プログラムの開始だ」



【悪矢七光@金剛番長 死亡】
【赤木カツミ@ARMS 死亡】

【主催者 キース・ブラック?@ARMS】



週刊少年サンデーバトルロワイヤル――――開幕

26 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:40:52.45 ID:m/gaHUZh [7/8回発言]
 

27 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:43:01.36 ID:9D6b4/IH [11/20回発言]
投下完了
早速ですが誤字のセルフ指摘を >>27の最後はバトルロワイヤルでなくバトルロワイアルです

28 : 胎動~インディケイション~ ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 00:45:58.81 ID:9D6b4/IH [12/20回発言]
なお、予約の解禁は27日の0時00分を予定しております
いきなり始めたロワなので告知の意味も含めて少しだけ時間を空けることにしました

予約の解禁時間について意見がある方は遠慮無くどうぞ

29 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 00:50:28.27 ID:zWCisCS4 [3/4回発言]
おもしろそうだな
名簿が素敵

30 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 01:06:27.20 ID:9D6b4/IH [13/20回発言]
うん、しょっぱなからミスばかりでゴメン
予約の解禁は27日じゃなくて26時の0時00分予定でお願いします



31 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 01:14:14.65 ID:m/gaHUZh [8/8回発言]
これ、参加者に配る名簿はなし?
wikiの初期所持品は
「会場地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「ランタン」「時計」「ランダム支給品(1~3個)」  ってなってるけど

32 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 01:22:51.81 ID:9D6b4/IH [14/20回発言]
すみません、これもミスです
参加者には名簿配ります、wikiの方修正しました
ミス多すぎて本当に申し訳ないorz

33 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 10:02:22.43 ID:UWPLNqBp [1/4回発言]
おもしろそうだ 投下&スレ立て乙です
早速質問なんですが、キャラに配る名簿の順番ってどうなっているんですか?

ごちゃ混ぜの五十音順ですか? 作品毎の五十音順ですか?
ベタな手段だけど、作品毎だとキャラの大体の関係性の考察に使ったりする場合もあるので統一しといたほうがいいかも

34 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 10:06:05.42 ID:UWPLNqBp [2/4回発言]
もう一個あった。 ガッシュの魔本って魔物本人に支給ですかね? ランダム支給品の一枠を絶対に消費して
それとも衣服装飾類と同じと判断して、ランダム支給品には数えないとか?

質問ばかりですいません

35 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 10:20:14.96 ID:wlU5jMoa [1/1回発言]
ハヤテとケンイチを加えてみないか

36 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 13:10:37.25 ID:z4HI/ju0 [1/1回発言]
期待はしたいけど名簿が微妙…
全体的にどうでもいいキャラが多すぎるわ
パウルマンとかさとりとかマリリンとか小次郎とか…
80人って人数も多いし、その辺削って60人くらいにした方がいいんじゃないの?

37 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 13:19:00.28 ID:YL8C6sNA [1/1回発言]
1についてこれなきゃ無理せんでもいいってコンセプトでしょ
他で書いててロワ慣れしてる人みたいだし、善意のアドバイスみたいなのはいらないんじゃないの

38 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 14:13:42.47 ID:Hbv1EBnN [1/4回発言]
俺も80人は多すぎだと思うぞ
12作品60人が無難

39 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 14:14:25.93 ID:Hbv1EBnN [2/4回発言]
悪い
あげてもた

40 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 14:15:01.81 ID:fZ99X6cv [1/1回発言]
べつにいいじゃない
1氏が選んだ名簿なんだし
サンデーも歴史が長いから多くなるでしょ

41 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 14:15:26.88 ID:Hbv1EBnN [3/4回発言]
その10作品で6人で60人でもいいかもね

42 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 14:18:13.29 ID:zWCisCS4 [4/4回発言]
うーん、一つの作品から結構なキャラが出てるのがこの名簿のおもしろさだと思ったんだが
止まったらトキワ荘行くって言ってるし、好きにすればいんじゃね

43 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 15:39:28.62 ID:EpDnII94 [1/1回発言]
誰も書かなくても一人でもやるって言うんだったら止めはしないけど
リレーがしたいんだったら、扱いに困るような誰得キャラは外した方が無難
とりあえず一作品からは多くても8人くらいだろ

44 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 17:00:35.00 ID:Hbv1EBnN [4/4回発言]
リレー企画としては可能な範囲で大勢が繋げられて楽しい企画をして欲しいと考えるし…
最終判断は>>1が決める事だけど絞った方が無難

45 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 17:30:36.74 ID:52toRdVR [1/1回発言]
確かな名作を集めたって感じだな。俺は期待しよう。

>>30
予約開始日を予約スレにも書き込んでおくのをお勧めする。

46 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 17:31:20.16 ID:YLEP2IHP [1/1回発言]
最終判断したから立ってると思うんだが、
無難とかじゃなく。

47 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 17:38:06.00 ID:9D6b4/IH [15/20回発言]
みなさまご意見ありがとうございます
参加者が多いとの声がありますが、結論から言ってしまえば私はこの名簿を変更する気はありません

まず、自分の中の優先度として『この名簿でロワを書く>他の人とリレーをする』となっております
つまりリレーに参加してくれる人がいればすごく嬉しいけど、この名簿について来てくれる人がいなかったらリレーは諦めよう。
これがこのロワにおける自分のスタンスです

〇〇は誰得キャラだから削ったほうがいいのでは?とおっしゃる人がいるかも知れませんが、どいつも俺得キャラです。
私が是非ロワで書きたいと思ったキャラクターを寄せ集めた結果がこの名簿なのです。

なので、改めて言いますが参加者の削減は考えていません。


私は意見を譲るつもりが一切無いので、この話題はここで終りにしましょう。
以降、参加者の追加や削減についてのレスが付いても私は基本返事をしないのであしからず。



48 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 17:47:50.94 ID:9D6b4/IH [16/20回発言]
>>33-34
ご質問ありがとうございます
脇が甘い部分が多々あるので、予約開始前に指摘していただけると非常に助かります

名簿に関しては参加作品別に50音順にする予定でした、wikiの参加者名簿に配布用の名簿も追加しておきます
ガッシュの魔本については『ランダム支給品枠を一つ使って本人に支給』とします

これについてご意見のある方はしたらばの議論スレの方によろしくお願いします

>>45
了解しました。一応明日まで待って誰も異論を挟まなければ予約スレに書きこんできます

49 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 18:06:33.95 ID:UWPLNqBp [3/4回発言]
>>48
了解しました

さらに質問です
投下後直後のリレーについてはどうしますか?2つほど疑問点があります。

例えば、書き手Aがガッシュ、鬼丸の投下を投下する。

ガッシュと鬼丸の次話の予約はどれくらいの時間を空けるのでしょうか? 
直後はマズイかなと様子見していたら取られたらちょっと悲しいので、足並みを揃えたいなーと

別件で、書き手Aは投下直後に明らかな矛盾(要議論)が無い場合の他のキャラの予約はそくしていいの?
要は、今のうちに複数キャラの書き溜めしちゃって、予約即投下の連発はどうなのかなーと思いました


50 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 18:23:52.57 ID:DYDaOake [1/1回発言]
パウルマンいいよね
ジョージの噛ませかと思ったら逆にボッコボッコにして楽しかった

51 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 18:36:07.69 ID:9SEuJe46 [1/1回発言]
ジョージは全身から噛ませオーラ出してた気が……終盤で復権したのが奇跡なレベルに

52 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 18:59:57.00 ID:eFqtF9Iy [1/1回発言]
なんて俺得ロワwww
紫暮参戦は地味にわくわくするw

53 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 19:09:59.75 ID:3nu8eiJb [1/3回発言]
うえきの法則だけ知らんなぁ
書いてみたいと思わせる面子だがスプリとARMSがあってD-LIVEが入ってないのは残念だ(入れろってことじゃなく

54 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 20:00:25.02 ID:9D6b4/IH [17/20回発言]
>>49

まず、投下後のキャラクターの予約の解禁については、投下終了の二日後の0時00分を予定します
これだけでは分かりにくいので例を挙げると

2月21日 20:00に投下完了した話のキャラクターの予約が解禁されるのは 2月23日 0:00 といった感じです

次に投下後の書き手の予約については投下完了から24時間後に解禁とします



投下から予約解禁までの期間で修正要求が出た場合は上の文にある『投下完了』の部分を『書き手の修正完了の宣言』と置き換えます
予約中のキャラクターが前話で修正点『話の筋が大きく変わるほどの物』を指摘された場合、その予約はいったん破棄とし
予約をしていた書き手は修正完了後に優先的に再予約する権利を得ます



予約中に前回の話の修正をする必要が出た場合ですが、予約を破棄する必要はありませんが新作の投下よりも修正の方を優先してください。
修正よりも先に投下を行うのは認めません。



これについても異論がある方は議論スレの方にどうぞ

55 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 20:07:26.12 ID:9D6b4/IH [18/20回発言]
自分もD-LIVE!とかトガリとかジーザスは出したかったっちゃ出したかったw
(流石にこれ以上増やすと死ぬからやめたけど)
でもしたらばの方にD-LIVE!のキャラを出張させたからそれで我慢してくれw

56 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 20:09:50.95 ID:UWPLNqBp [4/4回発言]
>>54
わかりました。多くの質問に答えていただきありがとうございました
書けそうだったら書き手参加してみようと思いますので、その時はよろしくお願いします

57 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 20:13:17.66 ID:9D6b4/IH [19/20回発言]
>>56
いえいえ、こちらも決めないといけないことをハッキリとさせていただいたので感謝しています
書き手参加を期待して待ってますね

58 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 20:18:45.13 ID:3nu8eiJb [2/3回発言]
wiki見に行ったら地図はモチノキ町となってたけど画像はなかったみたいだ
後日貼られるのかな?

59 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/21(月) 20:27:03.18 ID:9D6b4/IH [20/20回発言]
>>58
貼ったはずなんですけど表示されないですかね?
とりあえずもう一度試していただけますか

60 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 20:28:26.28 ID:3nu8eiJb [3/3回発言]
上の方に表示されてなくて、めちゃ下の方にスクロールしたらあったわ
お騒がせしました

61 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/21(月) 22:54:12.35 ID:/CUYbSND [1/1回発言]
26か…それまでに読み返しておくかな

62 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 01:14:19.06 ID:h34GC85J [1/1回発言]
個人的にハヤテが入ってないのはGJだな
大して面白くもないくせにやたら出張って来ててウザかったし

63 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 13:41:26.99 ID:n+OA7TMQ [1/2回発言]
バトルロワイアルが始まるのは、0時?
予約解禁じゃなく、SS内の時刻で

64 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 16:44:24.97 ID:ZzLYyO5f [1/1回発言]
個人的には烈火の炎の紅麗と木蓮がいるだけで満足。

65 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 17:38:50.48 ID:FiS/BDc4 [1/1回発言]
烈火の炎って最終回だと烈火は炎術師の能力失ってなかったっけ
どの時点からの参加になるんだろう

66 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 19:06:13.35 ID:CSVlIoW3 [1/1回発言]
旧サンデーロワでは、原作終了後からの参加だけど主催者の力で能力復活させてたな
そんな感じでいいんじゃない?

67 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 23:04:09.21 ID:XCDfw/K3 [1/1回発言]
>>63
雑談に紛れているかもしれないから質問に安価つけとこう
それも決めておいたほうがいいね

68 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/22(火) 23:26:16.22 ID:KZ1oNuaW [1/1回発言]
>>63
はい、0時00分開始です

それと参加者の参戦時期は最初に書いた人に決める権利があります
(同じ作品からバラバラの時間軸での登場というのももちろんありで)

69 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/22(火) 23:55:52.80 ID:n+OA7TMQ [2/2回発言]
返答、サンクスです

70 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/23(水) 02:10:01.39 ID:233fTktW [1/1回発言]
では、誰も反対意見を出さなかったので予約解禁を
26日の0時00分で確定します

71 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/23(水) 19:27:03.20 ID:s9WRwWSa [1/1回発言]
おおー、待ってます

72 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/25(金) 18:03:46.94 ID:fKcukDkq [1/1回発言]
今日の夜に予約解禁か
告知age

73 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/25(金) 19:33:31.65 ID:mUAsy4cT [1/1回発言]
てst

74 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/25(金) 19:37:07.22 ID:qODrcLkf [1/1回発言]
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14506/1298133664/
予約はこちらでお願いします


75 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/25(金) 19:52:15.82 ID:TjbNPC3W [1/1回発言]
他の書き手なんか来るわけないのに頑張りすぎ
あんな誰得名簿で人が来ると思ってんの?

76 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/26(土) 00:03:49.82 ID:YcV4ikMc [1/2回発言]
ギイ・クリストフ・レッシュ、朧、井上真由子 予約します。

77 : 76 : 2011/02/26(土) 00:04:47.41 ID:YcV4ikMc [2/2回発言]
すいません誤爆しました。すいません。

78 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/26(土) 00:12:14.98 ID:k1+YSmP3 [1/12回発言]
では、早速投下します

79 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:15:36.30 ID:k1+YSmP3 [2/12回発言]

夜の街に天使が舞い降りた。


触れただけで切れてしまいそうなほどに細いプラチナブロンドの髪。
透き通るほど白くありながらも、不健康さとは程遠い瑞々しさを保つ肌。
白人特有の彫りの深い顔立ち、その造りは見るものに彼女の柔和な性格を瞬時に悟らせる。
しかし、優しげな顔をしながらもガラス細工のような青い瞳にはハッキリとした意志の炎が宿り、薄い桜色に染まった唇はキリッと引き締まっている。
彼女の名はユーゴー・ギルバート。"天使”の二つ名を持つ世界最高クラスのテレパシストだ。

「高槻君は大丈夫なのでしょうか……」

ユーゴーの表情は憂い一色に染まっている。
突如巻き込まれた殺し合い、それに対する不安や恐怖は当然あった。
が、それ以上に大切な仲間が心配だった。

「この場には……憎しみと悲しみが渦巻いている」

ブラックが細工を行ったのか、いつものように鮮明な思考が届くことはなく。遠く離れた仲間へ思念を送ることもできない。
されどもあまりにも強い感情だけは離れていても自動的に彼女の脳内へと流れこむ。
その強い思念の内のどれかは自身の仲間が発しているものかもしれない。そう思うと彼女はいたたまれない気持ちに襲われる。
首輪の爆発によって殺された赤木カツミと彼女の想い人である高槻涼はただの幼なじみ以上の関係であった。
それを眼の前で失った絶望、怒り、そして憎悪。

「もしも彼が憎悪で我を忘れたなら……」

ブルーメンの屋敷で高槻涼と交わした約束を思い出し、ユーゴーは拳を握りしめ、地面に視線を落とす。 
『涼がジャバウォックに呑み込まれた時は自分がジャバウォックを殺す』
この約束が急激に現実味を帯びてきた。

「……私の命に換えてでも」

そう言って彼女の双眸は再び前を見据える。
彼女の瞳には絶望の色が一切見えず、前に進む意志のみが煌々としている。
天使は悩みを振り切り、自分の足でこの殺し合いの渦中を歩み出す覚悟を決めた。

「まずは現状を確かめましょう」

自分のそばに置かれていたディバッグを手に取り、中身を確かめる。
そして、中身を一通り確認した後、出てきた名簿に目を通した。

「キース・シルバー!?」

彼女の目が大きく見開く。
オリジナル達の参加は確信していた。むしろ久留間恵の不参加に驚かされたほどだ。
キースシリーズたちの存在もブラックが主催をしている時点でありえない話ではないと思っていた。
自分が参加させられている以上、アルや兜、カルナギの存在にも納得はした。
しかし、しかしだ。
高槻涼との戦いで死したはずのキース・シルバーの名は彼女を驚愕させるに足るものであった。
ブラックが言っていた死者の復活が急に現実味を帯びてくる。
本当にそんなことが可能なのだろうか、そこまで考えて――――

80 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:18:07.58 ID:k1+YSmP3 [3/12回発言]
「お嬢さん、ちょっといいかい?」

背後からかけられた声に大きく飛び上がってしまった。

「は、はい」

自分でもハッキリと裏返っていることが分かる声で返事をし、咄嗟に後ろを振り返る。
気配が全くしなかったことと、思考が流れてこないせいで誰かがいた事になど全く気がつかなかった。
そして、体を向けた先にいたのは。

「えっ?」
「ん、どうした。オレがそんなに怪しいってか?」
「い、いや、そうじゃありません。知人と少し似ていたので驚いただけです」

彼女は嘘を吐いた。
ユーゴーが間の抜けた声をあげてしまった原因はそんなことではない。
男の姿を視認した途端にテレパシー能力が普段どおりに使えるようになったことにも驚いたが、それが原因でもない。
空っぽなのだ。この男の心には何も無い。ただ風が吹き抜けるだけ。
あまりの空虚さに、ユーゴーは目の前の男は精神感応能力の対策を常にしている者なのではないかと疑ったほどだ。

「ふぅん、そんなこともあるんだな。後でどんなやつか会ってみたいもんだ。
 そういや自己紹介が遅れてたな。俺は流、秋葉流ってんだ
 とりあえずはこのプログラムとやらには協力するつもりはないから安心してくれ」

どこか飄々とした感じのする話し方で男、流は笑いながら自己紹介をする。
しかし、ユーゴーは彼の話し方や内容を好意的にとらえることはできない。
熱の通った生き物と呼ぶには、人間と呼ぶには彼の心があまりにも空虚すぎるから。

「私はユーゴー・ギルバートといいます。私も……こんな殺し合いには乗る気はないです」

返事をしつつ、流の心をより深い部分まで探る。
本来ならばこのような事をしたくはないのだが、状況が状況だ。
それに、初めて見るケースに好奇心がまるでなかったといえば嘘になる。

「しかし、厄介な事に巻き込まれちまったもんだな。更に悪いのが、オレの仲間も何人か連れてこられちまったことだ。
 おまえの方はどうなんだ? 知り合いが一人もいないってことはないだろう?」
『ひでえよな。これからだ、ってところでブラックとやらが横槍を入れやがるんだ。
 オレが裏切りもんだって告げて、オレの大嫌いな甘ちゃんの目がどんなふうに歪むか見てやりたかったのによぉ』

仲間というキーワードと共に、巨大な感情の奔流が流の中に生まれる。
感情の欠片を探すことにすら苦戦していたユーゴーは突然の事に思わず顔をしかめそうになるも、表面に出すこと無く会話を続ける。

「そうですね、私の仲間も何人も連れてこられました。こんな殺し合いに乗る人は一人もいないんですが……。
 実は、首輪を爆発させられて死んだ女の人は私たちの仲間だったんです」

ユーゴーは話を続けようとする。しかし、声が出ない。
最初に出てこなかった涙が今更溢れてきた。
赤木カツミ、ユーゴーが愛する青年の恋人。
彼女と直接出会ったことはないが、涼の話や記憶のなかで彼女とは何度も出会っている。
止めどめなく溢れてくる涙も悲しみを洗い流してはくれず、ただただ流れ落ちるだけ。

81 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:19:41.72 ID:FIuUIzNK [1/5回発言]
支援だぜ

82 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:20:41.10 ID:k1+YSmP3 [4/12回発言]
「すまねえ。悪いこと言っちまったな」
『だが、この環境は考え方を変えれば吉だ。こういった趣旨ってのも悪くはないかもな。
 うしおの目の前で他の連中を皆殺しにしてやってオレが最悪の裏切りもんだってアピールする。
 流石にそこまですりゃあ、あのお人好しもオレの正体がどんなやつか分かるはずだろうよ』

心中で暴れまわっていた哀惜が潮が引くように消えて行くのを感じた。
代わりに膨れ上がってくるのは焦燥と困惑。
眼前の男がとてつもなく恐ろしいことを考えていることを理解し、その悪意に震える。

「すみません。少し取り乱してしまったようです」
「気にするこたぁない。仲間が死んじまったんだ、吐き出せるなら吐き出しちまったほうがいいぜ? 下手に溜めるよりゃ全然ましだ。
 とりあえず近くの家の中にでも入ろうや。情報交換なり、今後の方針を決めるなりはしても損じゃねえだろ」

悲しみが引いたといえども、消えたわけではない。
残滓がズキズキと疼き彼女を包み込もうとするが、全力でそれに抗う。
程なくして涙は止まり、まともに会話ができるようになるまで回復してから流との会話へと戻る。

「そうですね、では行くとしましょうか」

秋葉流という男がこの殺し合いに乗っているのは間違い様のない事実だ。
けれども、ユーゴーはおとなしく彼の発言に従う。
彼の考えていることによれば、彼は蒼月潮と出会ってから周りにいるものを皆殺しにするつもりらしい。
ならば逆に言ってしまえば、気まぐれさえ起こさなけれれば安全なのだ。
だからこそ逃げる隙を窺いつつも、彼が変な気を起こさぬようにユーゴーは彼を刺激せぬように注意をはらう。

「んっと、じゃあこの家にすっか。じゃまするぜ」

誰もいないと分かっているであろうに、律儀にも挨拶をしながら流はドアノブを回す。
鍵は閉まってしないのか、ドアはアッサリと空いた。
先に入ってるぜ、と小さく言った流に促されるようにユーゴーも民家へと入る。
中はごくごく一般的な民家であり、玄関から入ってすぐに食卓とテレビが置いてあるリビングがあった。
テーブルの傍に置いてある椅子の一つを流は引き、どっかりと座り込んだ。
少し古かったせいか、乱暴な扱いのせいか木製の椅子がギシリと軋む。
苦笑を浮かべた流にユーゴーも笑みで返し、彼と机を挟んで対面に存在する椅子へと静かに腰をおろす。

「じゃ、早速だがまずは自己紹介から行っとくか。
 いきなりになっちまうが、オレは化物の退治を生業にしてる、って言ったら信じるか?」
「ええ、私も普通じゃないことには慣れてますから」

流が嘘を言っていないということだけは分かる。
妖怪とやらの存在は初耳であったものの、狂人の妄想とそうでないことを見分けることが出来無いわけではない。
と言ったものの、ユーゴーから見た流は狂人以外の何者でもないのだが。

「へぇ、意外だ。修羅場に慣れてんならあんなに無防備な姿は晒さねぇ方がいいたぁ思うけどな」
「あれはちょっと考え事をしてただけです。それに気配を感じさせないで後ろから近寄る人には気が付きませんよ」
「分かった分かった。からかってすまなかったよ」

83 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:21:54.22 ID:FIuUIzNK [2/5回発言]
 

84 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:22:26.08 ID:k1+YSmP3 [5/12回発言]
茶化したように両腕を上げ、ケラケラと笑い声を上げる流。
とても腹の奥深くにどす黒いものを抱え込んでいる人間には見えない。
話を変える意味でもユーゴーは自分の事を語ることにした。

「まず、私の境遇と一緒に知り合いについて説明したいと思います。
 私の能力は細胞の活性化による再生能力。心臓を貫かれても死ぬことはない……はずですがこの場では何故か発動しないみたいなんです」
「そりゃあ死なない人間が殺し合いに参加してたらどうしようもないからな。
 ブラックとやらがなんらかの手を加えたんじゃないか?」

テレパシストであること、そこ以外は嘘偽りなく藍空市で高槻涼に出会ってからのことを掻い摘んで話す。
が、流としてはユーゴーの来歴や誰が危険で誰が安全なのかには興味のある話題ではなかったようだ。
表面上は頷いたり、相槌を打ったりしているものの、ユーゴーが読んだ思考には無関心の三文字以上のことは出てこなかった。
しかし、僅かな時間であったが彼の心の一端を覗いた彼女は確信する。
彼が無関心なのは、自分が話している内容だけでない。彼はどんなことにも興味を持っていないのだと。
主催であるブラックを知っているという手札を明け渡して尚、彼の無関心が崩れることはなかったのだから無理もない。
だからこそ、ARMSについての説明に彼が予想以上に食いついてきたことには驚きを隠せなかった。

「んで、そのARMSとやらはそんなに強いのか?」
『もしかしたらオレが本気を出せるかもしれねぇ、オレを楽しませてくれるかもしれねぇ』
「ええ、少なくとも今の地球にある兵器ではARMSに対抗できません
 街の一区画を吹き飛ばす数万度に達する砲撃、空間をねじ曲げ移動や攻撃に使用する能力。
 私が知ってるのはこれくらいですが、ブラックがARMSを持っているのはほぼ確実かと」

電流に弱い事などの弱点はあえて伏せ、能力に関してもオリジナのルものについては詳しくは語らない。
そして、流の胸に込み上げてくる興奮の正体を気にする。
戦いを楽しんでいる。これはコウ・カルナギと同じだ。
だが流とカルナギが似ているのかと聞かれれば、ユーゴーは間違えなくノーを突きつけるだろう。

「じゃあオレの方も紹介させてもらおうかね。生憎ながら知っているのは3人しかいないんだがな。
 まずは蒼月潮。こいつに関しちゃ何があっても無害だって信じていい」

蒼月潮の名が出るとともに、流の全身から嫌悪が流れ出る。

「こいつは獣の槍って武器を持ってなきゃ普通のガキなんだがな、中々退屈させないんだ。
 しかも天然の女たらしときた。あんたも惚れちまわねぇよう注意したほうがいいとおもうぜ」

ウインクと冗談を交えながら潮を紹介する流。
彼の言っていることは心からの本心だ。それは分かる。
だからこそ、なぜ彼がここまで潮を憎んでいるかが理解出来ない。
無理も無いだろう。流本人ですら潮の瞳が気に食わない真の理由を完璧には理解出来ていないのだから。

「二人目の知り合いはとら。こいつは、妖怪なんだが、とりあえず今のところは大人しくなってる。
 だが、この状況でトチ狂っちまう可能性がゼロじゃねぇから警戒はしといた方がいいかもな。
 元人食い妖怪だった上に強いってんだから質が悪い……まっ、十中八九大丈夫だろうけどよ」

深刻な顔で告げたと思いきや、ニカッと笑みを浮かべ軽い嘘ってヤツだと謝罪する。
この説明に関しても一切の嘘が混じっていない。
ただ、とらの名を出した途端、秋葉流の心に巣食う虚無の正体を理解してしまった。

85 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:23:12.62 ID:e1WLQ1Lx [1/2回発言]
sien

86 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:23:15.63 ID:FIuUIzNK [3/5回発言]
    

87 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:24:12.15 ID:N0av6Ngu [1/1回発言]
     

88 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:25:48.57 ID:k1+YSmP3 [6/12回発言]
☆  ★  ☆





枯れた草木が点々としている荒野にポツリと立っている人影。
道化のように滑稽なポーズを取り、歪な笑みを浮かべている男。
それが秋葉流の正体。中身。本性。

風が吹きすさぶ世界の中心にいる彼はあまりにも孤独だった。

天才。秋葉流を一言で形容するならばそうなのだろう。
何をしても周りの物よりも秀でた結果を出せる。
何もしなくても努力をした並の天才には負けることはない。

だからこそだ。

彼の人生は地獄であった。
生きながらにして心を延々とすり減らしていく地獄。
彼自身がこのことになんら苦痛を感じていないのだから尚悪い。

周りの凡人たちに足を引っ張られ続ける日々。

ついに母親の心が壊れた。

上手な生き方を身につけるとともに失っていく何か。

いつからか、彼は「本気」を出すのをやめた。
何事にも本気を出さないから、何があっても嬉しくはない。何があっても悲しくはない。
だからこそ彼は――――




――――人生を楽しめないのだ。




☆  ★  ☆

89 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:27:22.62 ID:k1+YSmP3 [7/12回発言]
「大事な情報を聞いてるときゃボーっとしないほうがいいぜ? お前もそれが原因で死にたくはないだろう?」
「す、すみません」

流さんに肩を叩かれ、私は我に返る。
どうやら溢れ出した強烈な感情を辿っていくうちについつい深い部分まで踏み込んでしまっていたみたいだ。
けれど、流さんには気がつかれなかったようでホッと胸をなで下ろす。
呆れ混じりに再び語られた蒼月紫暮という人物に関する説明は半分以上頭から抜けていってしまった。
私の思考の大半は"この男をなんとかして説得できないだろうか”という事に傾いている。
ハッキリと言えば自信は全くない。
様々な人間を見てきた私でもこのようなタイプの人間を見るのは初めて。
だけど、このままじゃ彼があまりにも哀れだと思う。
何一つ人生を楽しむこと無く死んでいく。それはとても辛いことでしょう。

「でだ、今後の方針なんだがな、とりあえずはあの遊園地でも向かってみねーか? ちょうど北にあるし、観覧車があって場所が分かりやすいからな」
「ええ、それで構わないと思います。施設の方が人は集まりそうですからね」

もしも、もしもだ。彼の説得が無理そうだったらどうしようか。
逃げるか? それとも諦めないで改心を待つか?
今はまだ分からない。だから希望を持っていたい。
気の持ちよう。最初から無理だった事を想定してしまうと意志が弱くなってしまう。
けれども私にこの男の人をどうにかすることができるのだろうか?
人生をかけて崩していった心をもとにもどすことができるのだろうか?
弱気な方へ向かってしまう心。
どこから入ればいいのかすら分からない彼の問題を私は……。



――――違う。できるのかできないかじゃない、やるんだ。

90 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:29:46.98 ID:k1+YSmP3 [8/12回発言]
私は天使ユーゴー。私には私にしかできない戦い方がある。
そのやり方でこの人を……止めよう。

「そういえばユーゴーは支給品の方は確認してあるのか?」
「あ、そういえばまだでした」
「ったく、あんましボケてると本当に死んじまうぞ」

ガシガシと頭をかきながら流さんは馬鹿にしたように言う。
きっと明るく調子ものなキャラクターを演じることに慣れすぎてしまったのだろう、と思わせるに十分すぎるほどの自然さだった。

「ちなみに流さんの支給品は一体?」
「ん、オレのか? オレのはこれらしい」

カバンから支給品の入ってると言われた珠を探すついでに流さんに尋ねてみる。
すると、上着にのポケットから珠を取り出し、道具を中から出す。
出てきたのは妙な形をした刀。

「鋼金暗器っていうらしいんだがな、こうやって――どうだ」

そう言うと流さんはガチャガチャとその刀を分解し、新たに組み立てる。
ものの数秒で刀は鎖鎌へと姿を変えた。

「ビックリすんなよ、こいつは5種類の武器に変形するらしいぜ」
『つまんねぇ武器だ。説明書を軽く流し読みしただけで練習もなしに成功しちまう』

楽しそうな調子で言ったものの、流さんの心が晴れる様子はない。
アッサリと組み換えに成功してしまうこの道具は彼の"本気”を引き出すには至らないらしい。

「こんなにアッサリと組み立てるなんて凄いですね。えっと、私の方は」

中の物を出そうと念を込める。
そして出てきたのは――――

91 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:31:05.19 ID:FIuUIzNK [4/5回発言]
  

92 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:31:51.68 ID:k1+YSmP3 [9/12回発言]

「えっ?」

着包み。
それもカマキリを模したヘンテコな胴体に、金髪のどこか間の抜けた男のマスクのセット。
訳がわからない。ブラックはこんなもので殺し合いをさせようとしたのだろうか?
そう思い、二つ目の珠の中身を取り出し――――

私は完全に硬直した。

次に出てきたのも着包み。
それも妙に安っぽいSFのヒーロー風味の。

一緒に出てきた説明書によれば、前者は『カマキリジョー』、後者は『ヒーローババーン』というものらしい。
あんまり過ぎる物品。ブラックは私たちに死ねと言っているのだろうか。
助けを求めるように流さんをみると。

「ぶっ、くくくくく」

こらえられなかったか、吹き出してしまっている。
……もちろんそれも演技なのだが。

「大丈夫だ、オレがフォローしてやっからよ」
「流さんってお強いんですか?」
「そこそこな。まっ、やばくなったら逃げるよ。お前と一緒にな」

そこまで言って流さんは席を立った。
つられて私も腰をあげる。

「じゃ、行くとしようかね」






ユーゴー・ギルバートが秋葉流を説得するには致命的なピースが足りていない。
何故、彼がうしおととらに執着するのか、それに気がつかない限り彼女に先はない。
彼の心に吹いている風は依然として――――止まない。

93 : 物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― : 2011/02/26(土) 00:34:50.52 ID:k1+YSmP3 [10/12回発言]

【A-4北部 一日目深夜】

【ユーゴー・ギルバート】
[時間軸]:カリヨンタワーのキース・シルバー戦直後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:カマキリジョーの着ぐるみ@金色のガッシュ、ヒーローババーンの着ぐるみ@うしおととら、基本支給品一式

※制限によりテレパシー能力は相手の所在が分かる場合のみにしか発動できません


【秋葉流】
[時間軸]:SC28巻、守谷の車を襲撃する直前
[状態]:健康
[装備]:鋼金暗器@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式





【カマキリジョーの着ぐるみ@金色のガッシュ】
名前のとおり、ただの着包み。
中身の顎とか頭が割れたお兄さんは付いてこないぞ! 以上

【ヒーローババーンの着ぐるみ@うしおととら】
これを着ればあなたもおまけ漫画のヒーロー!

【鋼金暗器@烈火の炎】
小金井の所有する武器型魔導具。虚空の作品で彼も海魔討伐の際に使っていた。「一の型」から「六の型」まで6つの形態に変形させることのできる武器。
基本的には「一の型」から「二の型」というふうに順に変形させていく。
構造はかなり複雑で慣れた者でも一つの変形に10秒、さらに「一の型」から「四の型」という風に変則的にな変形にはさらに時間がかかる。
が、小金井薫の「天才的なパズルの才能」によって、彼の場合変形所要時間はわずか0.6秒と驚異的なタイムを叩き出す。

「一之型」牙 薙刀。基本の形態。
「二之型」龍 鎖鎌。
「三之型」極 大鋏(おおばさみ)。巨大なハサミ。主に敵の攻撃を受ける際に使用。
「四之型」三日月 武羽冥乱(ブーメラン)。また月白の「海月」のように刀としても使用していた。
「五之型」暗 弓。鋼金暗器の真の姿と言われている。
「六之型」無 バラバラの状態。幻の型といわれ「一之型」から「五之型」を遠回りに変形しないとたどり着くことができない。核の「金」と書かれている玉に向かって各パーツが集結することで回避不能のオールレンジ攻撃が可能。

wikipediaより

94 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/26(土) 00:36:30.58 ID:k1+YSmP3 [11/12回発言]
投下完了です、支援ありがとうございました
矛盾点などがございましたら遠慮無く指摘してください

95 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 00:53:25.62 ID:FIuUIzNK [5/5回発言]
投下乙です!

ユーゴーは、こりゃあ当分安心できねえなあ……w
テレパシストゆえの苦悩だよなぁ
流兄ちゃんのなかで吹く風に気付けるか、気付けたところで簡単にどうこうできないしなぁw
しかし鋼金暗器を即組み換えとは……恐るべし

96 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 01:29:58.89 ID:/kg/VDfY [1/1回発言]
投下乙
流はそこまで切羽詰ってないのね
今は大丈夫だがいつ爆発するか分からないとんでもない爆弾だよね、この人

97 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 03:47:15.79 ID:e1WLQ1Lx [2/2回発言]
投下乙です!

流兄ちゃんの孤独に気付けたのは不幸なのか幸運なのか…
涼の事もあるしこの事もあるしユーゴーは大変ですのw
テレパシストだから色んな感情に襲われちゃうだろうし…心配すぐる
兄ちゃんは相変わらず天才だし果たしてどうなるのか期待
 
改めて投下乙でした!

98 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/26(土) 10:40:11.29 ID:2fubvYyH [1/1回発言]
投下乙です!

流の心の中に吹く風にテレパシストだから気付いたか
鋼金暗器の組み換えが余裕…だと…? さすが天才!
天使頑張れ! ユーゴー頑張れ!

改めて投下乙でした 

99 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/02/26(土) 22:13:18.91 ID:k1+YSmP3 [12/12回発言]
皆様予約&感想ありがとうございます

ここで状態表について一つ訂正があります
今までのものの最後に[基本方針]の欄を加えてください
自分の投下作品を例にすると以下のような感じです

【A-4北部 一日目深夜】

【ユーゴー・ギルバート】
[時間軸]:カリヨンタワーのキース・シルバー戦直後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:カマキリジョーの着ぐるみ@金色のガッシュ、ヒーローババーンの着ぐるみ@うしおととら、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いを止める。流をなんとかしたい
※制限によりテレパシー能力は相手の所在が分かる場合のみにしか発動できません


【秋葉流】
[時間軸]:SC28巻、守谷の車を襲撃する直前
[状態]:健康
[装備]:鋼金暗器@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:うしおに自分の本性を見せつける。強いヤツと戦って本気を出したい


なお、状態表に[思考・状況]欄が欲しい方は議論スレで申し出てください


100 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 00:17:10.25 ID:8ARFglmc [1/2回発言]
把握しました

101 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:32:03.29 ID:fDVAGJXF [1/10回発言]
投下します。

102 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:33:26.30 ID:fDVAGJXF [2/10回発言]
 狭い店内に漂う、カビの臭い。
 鼻をつくその臭気の発生源は、乱雑に陳列された数々の骨董品たちだ。
 用途不明のからくり細工。
 作者知らずの掛け軸。
 毒々しい色の丸薬。
 置き去りにされた商品たちは、消えてしまった店主の帰りをただジッと待っている。
 埃にまみれながら、沈黙をたずさえて。

 ここ田邉骨董店には、そんな怪しげな静寂が充満していた。
 ……さっきまでは。

「うわぁ……!」
 きらきらと。
 陰気臭さを空の彼方に吹き飛ばしてしまう程のかがやきを引き連れて。
 少女は、やってきた。
 透き通る長い艶髪を揺らしながら。

「見てくださいよ、このお面!」
 朗らかな笑い声だが、そこに不愉快な喧しさはない。
 それどころか、その笑顔は見るもの全てを幸せにする魔力すら帯びていた。
 底抜けに明るい彼女の振る舞いは、ほんの一時間ほど前に起こりし惨劇を忘れてしまったかのよう。
 でも、それは決して能天気などではなく。
 井上真由子の強さがなせる業だった。

 目の前で、人が死んだのだ。
 彼女とさほど年も離れていないだろう少女の首が、転がった。
 さらに、泣き別れた少女の頭と胴体が床に打ち付けられた音を合図として、突如始まった『殺し合い』。
 あの少女の尊い命を奪ったものと同じ首輪が、真由子の首元に巻きついて、今もなおその毒牙を突き立てている。
 恐怖しないわけがない。

 それでも、彼女は普段どおりの笑顔を崩さずにいた。
 絶望に挫けることなく、天真爛漫な少女を演じてみせる。
 それこそが彼女の強さであり、蒼月潮とその相棒を助け、世界を救った力だ。

「それは、『ひょっとこ』だね」
 少女に優しく答えるのは、高貴なオーラを身に纏いし青年。
 伝説のしろがね、ギイ・クリストフ・レッシュだ。
 肩に降りかかった埃を、細長い指で上品に払い落とす。
 その所作は、西洋の王族のようですらもあった。

 明るい少女と気品溢れる青年。
 二人の襲来によって、古びれた骨董店はまるで高級宝石店のような華やかさを帯びてしまっていた。

「知っているんですか」
「多少はね」
 真由子の顔が明るくなる。
 彼女は骨董品やオカルトグッズ集めといった、その可憐な容姿に似つかわしくない趣味を持っている。
 ギイの興味深げな眼差しを受け、声のトーンを一段高くして饒舌に語りだした。

「これは、日本の伝統的なお面なんです。
 田楽っていう芸能で、道化役がつけるんですって。
 えっと……ピエロさんって言えば分かりやすいかな」
「……ほぅ…………」
 感心するような、ため息。
 道化、の言葉にギイの切れ長の目が鋭く光る。
 にこやかだったその表情も、ひどく真剣なものへと一変。
 まるで、決意を秘めたような。
 彼の突然の変化に、少女は怪訝そうな顔で応える。

103 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:34:42.76 ID:fDVAGJXF [3/10回発言]

「ギイ、さん?」
「…………」
 ギイは無言で真由子へと歩み寄ると、彼女の手からひょい、とお面を奪い取った。
 首を傾げる少女を無視して、『ひょっとこ』の歪んだ顔の造詣をまじまじと眺める。
 数十秒ほど伝統文化を堪能した後、彼はゆっくりと少女に背中を向けた。
 そのままの状態で、穏やかにだが滔々と言葉を零す。

「マユコ。舞台を降りた役者は、どうなると思う?」
「え?」
 やにわに投げかけられた疑問の意味が分からず、真由子はクエスチョンを投げ返してしまった。
 彼女からはギイの表情は伺えず、その声からも感情は読み取られない。
 だが、彼の背中から漂う怪しい雰囲気だけは、肌が痺れてしまうほど感じ取っていた。

「必死に舞台を生きて、役目を終えて、そこから退場してしまった人は……どうなると思うかい?」
「それは……」
 質問の意味こそ理解した少女だが、その意図までは読めない。
 必死に頭を巡らせようとするが、上手く思考が纏まらず……。
 ギイに真意を問いただそうとするが、言葉が詰まって声になってはくれなかった。

「黒衣になるんだよ」
 少女の返事を待つことなく、ギイが振り返る。
 その顔には、先ほどの『ひょっとこ』の面がかけられていた。

 黒衣(くろご)。
 現在では黒子とも言う、日本の伝統芸能に登場する役割のひとつ。
 黒い服に身を包んで舞台へと現れ、舞台装置の撤去や小道具の交換などを行う。
 観客も役者からも、『いないもの』として扱われ、芝居の本筋には関与することはない。
 ただ、役者が芝居を演じる手助けをする存在である。

「ギイさん、それはどういう……」
 問いかけとして発せられた真由子の言葉は、それ以上紡がれることはなかった。
 青年の十本のしなやかな指からは繰り糸が伸びていて……。
 それらが繋がっている先には、カボチャ頭の人形。
 そして……。

 その人形が手にする大鎌の刃が、真由子の胸に突き刺さっていた。

「ッ! ……が…………ご、ぽ……」
 驚愕と恐怖に目を剥く少女。
 彼女の小さな口から血が流れ落ち、顎を伝ってポタポタと床を汚す。
 紅く染まった刃が引き抜かれると、脚の力が抜け、両膝から崩れ落ちた。
 糸が切れた人形のように。

「はっ……うぇ…………おぉ……」
「すまない。この『ジャック・オー・ランターン』は使い慣れていなくてね。
 急所を外してしまったようだ」
 真由子は倒れそうな体をか細い腕で必死に支える。
 全身が次第に熱くなり、少女にはそれが死へのカウントダウンのように思えた。
 ギイは少女を見下ろしながら、指の一本だけをクイと曲げる。
 指令を受け取った人形が、鎌を大きく振り上げた。

「すぐに殺してあげるよ」
「……く……ぅ……ま……だ…………」
 普通の人間なら、倒れたまま動けないほどの傷だ。
 こんな華奢な少女なら、なおさらである。
 しかし、真由子は立ち上がった。
 なけなしの力を振り絞って、外へと駆け出す。
 生きるため。

104 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:36:30.22 ID:fDVAGJXF [4/10回発言]

「……ッ! …………ジャコ……」
 少女の意地に、さすがのギイすらも一瞬だけ驚き息をつまらせた。
 だが、すぐに我に返り、数本の指をリズミカルに動かす。
 使い慣れていないはずだった人形。
 だが、ジャコは狭い店内を縫うように飛び、ひどくスムーズに少女に追いついてしまった。

「あぅッ!」
 白く張りのあるふくらはぎに、無遠慮な一撃。
 少女は店の外には逃げ出せたものの、それが限界だ。
 脚を切りつけられて道路に転がる。
 深い傷口から血が噴出し、天外に並べられた商品に降り注いだ。

「…………」
「……あ…………い、やぁ……」
 無言で歩み寄る『ひょっとこ』に、歯を打ち鳴らして恐怖する少女。
 今もなお、その胸からは血液が垂れ流しになっていて、彼女の体力を刻々と奪い去っていく。
 もう、立ち上がる力は残されてはいなかった。

(誰か……とらちゃん……!) 
 土に汚れた頬を、涙が伝う。
 かつて出会った化け物を想って。
 その無様な姿を馬鹿にするかのように、月明かりを背に受けカボチャが笑った。

 三日月のような刃が夜空に煌く。
 ギイが両腕を勢いよく振り下ろした。
 十の指が生み出した信号が、懸糸を伝わり……。
 殺意は人形に届けられ……。
 そして……。

「そこまでです」
 ……阻まれた。
 カボチャの横っ面に打ち込まれた掌底によって。
 ジャコが吹き飛ばされ、不恰好に空を飛ぶ。

「…………ッ!」
 慌てて人形を呼び戻し、身構える。
 ギイの全身から漲り出したその気迫は、この闖入者の実力の高さを認めた証拠でもあった。
 伝説のしろがねと呼ばれた彼ほどの男ですら、その接近に気が付けなかったのだから。

「危ないですね。街中でそんな物騒なものを振り回すものではありませんよ」
 ギイとは対照的に、乱入者は構える素振りどころか、敵意すら露にしない。
 両腕をダラリと下ろし、肩幅程度に広げた脚にも力を込めず。
 ただギイを見つめて起立していた。
 黒く長い髪が、そよ風になびく。
 その落ち着きこそが、彼が今まで潜ってきた修羅場の数を表していた。

「ましてや、こんな少女に向けてなど」
 その声は、ギイの背後から。
 そして爆発的に生じた殺意も、同じ場所から。

「……ッ!」
 男の異常なスピードに圧倒されかけたギイ。
 だが、伝説の人形使いの判断は早い。
 凄まじい速度で突き入れられた掌打を、グリム・リバーで迎え撃つ。

105 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:38:25.20 ID:fDVAGJXF [5/10回発言]

 超高速振動鎌、グリム・リバー。
 ジャック・オー・ランターンの必殺技だ。
 人間の目では確認できないほど細かな振動を刃に与え、ありとあらゆるものを切り裂く。
 この鎌が通用しないものなど、ギイのいた世界でも数えるほどしかなかった。

 ならば、この朧という男もそのひとつに加えられることとなる。

 震える鎌をはじき返した掌には、傷ひとつなく。
 かといって、ジャック・オー・ランターンにも損傷は一切ない。
 ダメージを受けたのは、なんと人形を操るギイ本体の指だ。

「……これは…………」
 ギイの右手中指に小さな傷が刻まれた。
 朧が攻撃したのは、彼が操る人形であるにもかかわらず。
 物理法則を明らかに無視した現象だ。
 それでも、数々の自動人形を葬ってきた彼は冷静だった。

(なるほど……)
 追撃を見舞う朧に、ふたたびの超振動鎌で応戦。
 先ほどと同様、生身の掌に機械仕掛けの刃が弾かれる。
 直後、最強のスプリガンの妙技がリプレイされた。
 朧の一撃に込められていた『気』は、禍々しい武器を伝い、人形の体や、そこから延びる繰り糸の中すらも進み続ける。
 そして、衝撃は敵の指に到達した瞬間に爆発するのだ。
 それこそが、朧の用いた攻撃。

(やはりな)
 最初の一撃で、トリックの正体に気づいていたギイ。
 糸から伝わる『気』が指にたどり着くその瞬間のみ、繰り糸を手放す。
 すぐさま糸を指に嵌め直し、体制を立て直した。
 間髪いれずに襲い掛かる朧の蹴りをかわしたジャコが、即座に鎌を振るってカウンターを見舞う。

「…………!」
 思わぬ反撃に、朧は初めて動揺の表情を浮かべる。
 だが、そこはスプリガン最強の男。
 バックステップで大降りの攻撃をいとも容易く回避する。

「よく対応しましたね」
「似たような技をつかう友人がいてね。
 まぁ、あのサルにここまでの芸当が出来るとは思えないが……」
 朧の称賛の言葉も、ギイの警戒は緩まず。
 ギイの賛美にも、朧の集中を解かれない。
 張り詰めた空気が、夜道を凍らせ続けた。
 そのまま沈黙すること、数秒。

「勝負は、あずけよう」
 人形使いのひょっとこが、夜天に舞った。
 退避の選択だ。
 彼はまだ全てのカードを使い果たしたわけではない。
 もちろん負けを認めたわけでもなかった。
 たとえ勝つにしても、消耗が激しいことを見越したから。
 今後のことを考えれば、ここでこの男と戦うことは得策ではないと判断。
 いつのまにか奪った井上真由子のリュックサックを抱え、人形は月輪に飛ぶ。
 その背中を、朧は感情のない瞳で見つめていた。

106 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:40:10.78 ID:OT2mscX9 [1/5回発言]
支援

107 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:40:21.69 ID:fDVAGJXF [6/10回発言]





「大丈夫……ではないようですね」
 敵の気配が感じられなくなたのを確認すると、朧は少女に駆け寄った。
 だが、時既に遅く、少女の命の灯火は今にも消えようとしている。
 手遅れ、であった。

 ならば、せめてもの、と。
 少女の胸に手を当てて、力を込める。
 痛みに悶える少女の顔が見る見るうちに穏やかになった。
 彼にできるのは、こうして苦しみを和らげることだけ。

「ありが、とう……ござい……ます」
 力ない声で述べられた礼。
 風の音にも負けてしまうほど、弱々しかった。
 少女は震える腕を伸ばし、朧の頬に手を触れる。

「ごめん……なさ、い、あな、た、の顔……を見、たい…………けど……」
「分かっています」
 朧もとうに気づいていた。
 真由子の瞳に光が無いことを。

「もうこれ以上、汚いものを見る必要はありません」
 少女の上半身を優しく抱き起こす。
 汚いもの、という言葉を否定しようとした彼女の口を太い指が塞いだ。
 その気持ちだけで十分だ、と。

「どうしても見たいのなら……体全体で感じ取りなさい。
 人間には、その力が備わっています」
「ぜん……し、ん……で……?」
「えぇ。あなたが感じたいものを」
 朧が掌に再び気を込める。
 苦しみを取り払い、少女に安らかな最期を与えるために。
 苦しまずに、逝けるように。
 彼女が望む死に様を与えてやれるわけではないが、幸せな空想に浸る余裕くらいは与えてやれる。

「たべ、ら……れ…………る、の……」
「…………?」
 少女の願いに、男は思わず眉をひそめる。
 まさか捕食されたいなどと。
 とてもじゃないが、穏やかな終わり方とは言いがたい。

「おっ、きな……お、くち…………で……ねえ、とっ、て、も……お、いし、そう、に……」
 それだけを残して、少女は事切れた。
 信じられないほど、幸せそうに。
 化け物に食べられる夢を見ながら。
 早めの『でざぁと』となる願いを胸に。

 朧は彼女の言葉の意味を探ろうとして、やめた。
 そんなこと、彼にとってはもう意味のないことだから。
 亡骸を道に寝かせて、静かに立ち上がる。
 見上げた空で、一等星が瞬いた。

「縁があれば、また」
 お面の男が飛び去った方角を見つめて、呟く。

 その顔に、表情は無く。

108 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:41:49.48 ID:OT2mscX9 [2/5回発言]


109 : インビジブル ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:41:57.60 ID:fDVAGJXF [7/10回発言]


【井上真由子@うしおととら 死亡】


【D-4 田邊骨董店前 一日目深夜】

【朧】
[時間軸]:不明
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いに乗る気はない。



◆     ◆     ◆


 ジャック・オー・ランターンは空を飛ぶ。
 とはいえ、本来の高度よりはずっと低い。
 どうやら人形に細工が為されているようだ。

「…………」
 ギイ・クリストフ・レッシュは、死んだ男だった。
 一度、舞台から退場したのだ。
 その命が演じるべき役割を終えて。

 ならば、今ひとたびの生を受けた彼は、何をなせばいいのか。
 彼の答えは決まっていた。
 ありとあらゆる手段を用いてエレオノールを救う。
 生きていた頃とさほど変わりはない。

 この殺し合いで生き残れるのはたった一人。
 ギイは、その一人にエレオノールを選んだ。
 ナルミよりも、マサルよりも。
 既に舞台を降りてしまっていたアンジェリーナよりも。

 仲間たちと主催を打倒するという選択肢もないわけじゃなかった。
 だが、ギイが選んだのは血にまみれる道。
 フェイスレスすらも参加者として、殺し合いを強制されている現状があるのだ。
 そこまでの力をもつ主催者に逆らうくらいなら、エレオノールに生還して願いを叶えてほしい。
 最悪、彼女が死んでしまっても自分背優勝すれば問題ない。
 迷いに迷った末の、決断だった。
 死を経験して弱くなった自分を恨んだうえでの、苦渋の決断。

110 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:42:50.39 ID:OT2mscX9 [3/5回発言]


111 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:43:24.89 ID:fDVAGJXF [8/10回発言]
「…………」
 ひょっとこ面を外す。
 その下の顔は、悲しみに歪んでいた。
 少女を殺したからだ。
 何の罪もない、何の力もない少女をその手にかけた罪悪感が彼の心を締め付ける。

「……ナルミ。君の言うとおりだ」
 その表情を隠すために、再びお面をかけなおす。
 かつて、加藤鳴海がやっていた事と同じだ。

 彼はこれから人を殺し続ける。
 自動人形ではなく、ただの人を殺す。
 悲しき顔を隠すための、道化の面を被りながら。
 誰にも気づかれることなく。
 そこにいるのはただの『ひょっとこ』。

 ギイ・クリストフ・レッシュという人間は、誰にも見えないのだ。
 なぜなら彼は、存在しないはずの『黒衣』なのだから。


【D-4 田邊骨董店前 一日目深夜】

【ギイ・クリストフ・レッシュ】
[時間軸]:本編で死亡後
[状態]:健康
[装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス、ひょっとこ面@現地調達
[道具]:ランダム支給品0~5、基本支給品一式×2
[基本方針]:エレオノールを優勝させる。
※ジャック・オー・ランターンは飛行能力が制限されています。詳細は不明。

112 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 21:44:38.57 ID:fDVAGJXF [9/10回発言]
以上で投下終了です。
支援ありがとうございました。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

113 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:44:45.15 ID:OT2mscX9 [4/5回発言]


114 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 21:59:08.17 ID:8ARFglmc [2/2回発言]
投下乙!
うおお、こう来るか……!
予約見たときはてっきり朧が仙人になるべく、殺し合いに乗るのかと思ったw
しかしギイさんの決断がつらいぜ……! だよなぁ、フェイスレスをも巻き込んでるんだもんなぁ……
人形を手にした二百体破壊者は、驚異のマーダーだぜ。朧に攻めあぐねたとはいえ、だってそりゃ朧だもんなぁ
とらはどうすんだこれ!

115 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/02/27(日) 22:04:36.32 ID:fDVAGJXF [10/10回発言]
>>109
すみません。
朧の道具に「ランダム支給品0~3」を忘れていました。
失礼しました。

116 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 22:11:12.37 ID:6r9yxKBa [1/1回発言]
黒衣になる、か。ギイ先生の言葉と地の文が巧みにからみ合っていて、
心に染みてしまったぜ……。
真由子の死に様にしても、胸が痛むと同時に穏やかなものが据わっていく。
ギイ先生・朧のいずれも先が気になるところだけど、いまはもう、このしんみりと
優しい感覚を引き出した作品に浸っていたい。良い話でした!

117 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/27(日) 22:11:59.09 ID:OT2mscX9 [5/5回発言]
投下乙!
真由子おおおおおおおおおおおおおおおお

そっかぁギィさん乗っちゃったのかぁ……
舞台から降りて黒子となったって表現はすっごくよかったんだけど、これは悲しいわ
ひょっとこの面被ってるってのが一見すればシュールなんだろうけど、その意図を知っちゃうと笑えんわな
黒賀村の過去編とか見せられちゃ彼を責めれないもんなぁ
誰か彼を止めてやってくれ

そして朧は相変わらずの性能だw
グリム・リバーを素手であしらうとか相変わらずのチートっぷりで
上に同じくマーダー化するかもってハラハラしてたから、味方になった時の心強さが半端じゃない

真由子おおおおおおおおおおおおお(二回目)
うしおととら(特にとら)に変な影響が出なけりゃいいんだけど
最後のセリフが切なすぎる…


118 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 18:58:37.65 ID:thGFm0OO [1/1回発言]
投下乙!!!
 
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
真由子死んでもうた…
最後は痛みも消えて幸せに浸りながら逝けたのがせめてもの救い
 
ギィさんは乗ってしまったんやね…
ギィさんらしいのかもしれないが表現と合わさってすっげぇ切ない
 
改めて投下乙でした!!!

119 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 19:50:59.30 ID:wfwedyqi [1/1回発言]
投下乙です
銀髪のひょっとこってシュールっすなぁ
ギィさんはこの面子だと殺し合いには乗らなさそうだったから意外でした

120 : ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:26:18.19 ID:ol3/TWuj [1/7回発言]
ヴィンセント・バリー、キース・ブルーを投下します。

121 : 青雲の志 ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:27:29.48 ID:ol3/TWuj [2/7回発言]
 ヴィンセント・バリーはその目立ち過ぎる体躯を隠そうともせずに、中学校二階の廊下に立っていた。
 頭には中ほどで前に曲がった二本の角――正確にはその片方は根元から折れている。
 そこかしこの破れた、深い青を基調とした服。
 全身を走る無数の傷痕。
 しかしそのどれもが見る者に痛々しさを思わせるものではなく、むしろバリーの持つ威圧感を助長させるのに一役買っていた。
 また引き締まった腕の筋肉が破れた右袖から覗き、バリーの強さを見せ付けている。
 人間の大人と変わらない程の背を壁に預け、鋭すぎる抜き身の刀のような眼を真っ直ぐに手の中の名簿へ向けた。

 魔界の王を決める戦いに選ばれた、百人の魔物の子供。
 バリーはそのうちの一人だ。
 もしもその戦いが始まった頃のバリーがここに来ていたならば、まずは周囲にある物を適当に殴って鬱憤を晴らそうとしていただろう。
 当時の彼は、ただのチンピラに他ならなかったからだ。
 だが今は、自分がやるべき事はそんな事ではないと理解している。

 バリーは戦い――特に強者との戦いを求めているが、相手の命を奪う事を目的としていない。
 この『プログラム』はその時点でバリーの性に合わなかった。
 もっとシンプルなところで言えば、他人に何かを強制される事も、キース・ブラックという男も気に入らない。
 竜族の神童エルザドルとの戦いでバリーの精神は大きく成長したが、本質が変わったわけではない。
 以前でも今でも、バリーにとってキース・ブラックが用意した殺し合いは『くだらないもの』に相違ないのだ。
 故にバリーが定めた目標は、この殺し合いを止める事。
 そしてその為に、まずは自分の置かれた状況を正確に把握する事だ。

 名簿を上から順に確認するが、グスタフの名は無い。
 バリーは信頼の置けるパートナーの不在に舌打ちするも、預かり知らないところで死なれるよりはいいと前向きに捉える事にする。
 そしてガッシュ、ゼオン、高嶺清麿と見知った名前を見付けた。
 ナゾナゾ博士とは、ゾフィスとの戦いへの協力を求めてきた男の名前だったか。
 王を決める戦いの優勝候補であるゼオンがどう出るかは未知数とは言え、他の三人に関しては協力を考えていいだろう。

 もう一点バリーの目に付いたのは五十音順の名簿の中で四つ並んだ名前、『キース』。
 一瞬魔界時代のライバルの顔を思い出したが、今回は関係無さそうだと彼の顔を記憶の片隅へ追いやった。
 『才賀』という名字も四つあるが、そちらは単純に血縁関係にあると考えていい。
 だが八十という数の中で、同じ名前が四つも偶然集まるものではない。
 それもこの事態を起こした張本人、キース・ブラックと同じものだ。
 更に名字はどれも異なる代わりに、色という共通点で結ばれている。
 キース・ブラックの関係者なら、接触する価値はあるだろう――そこまで考えると、バリーは名簿をデイパックへしまった。

 支給品の確認は既に済ませていたが、多くはバリーの関心の外だった。
 コバルトブルー色の魔本だけは目を引いたが、パートナー不在のバリーには長物と言える。
 ただわざわざ本が支給されたという事は、何らかの方法で術を使う事が出来るのかも知れない。
 殺し合いに乗った参加者と出会う前に試しておきたいところだ。

 しかしその場で試すような事はせず、バリーは歩き出す。
 もし術が発動した場合、居場所を他の参加者に知らせるようなものだからだ。
 それよりも先にすべき事は――この階にいる他の参加者の存在を確かめる事。
 バリーがいる廊下こそ電灯が点いているが、この階の部屋はどれも暗闇に包まれている。
 その中で例外として、小窓から明かりが漏れる教室が一つだけあった。
 所在を報せているようなもので罠の可能性も考えられたが、敵がいれば罠ごと倒すだけだ。
 足音を殺す事もしないまま廊下を進み、その教室の扉を開ける。

「これは……随分変わった出で立ちだね」

 教卓の椅子に腰かけた男と目が合い、互いに目を剥いた。
 男が驚いたのは、恐らく言葉通りバリーの容姿に対してだろう。
 バリーが驚いたのは、男の態度が殺し合いの中とは思えない余裕を持っていたから、ではない。
 少し癖のある短いブロンドの髪、白いシャツにネクタイ。
 そして、同じ顔だった。
 つい先程見たばかりの――キース・ブラックと。
 バリーはづかづかと床を踏み鳴らして男の前まで行き、その胸倉を掴んで持ち上げようとした。

「私はキース・ブラックではない」

122 : 青雲の志 ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:28:06.66 ID:ol3/TWuj [3/7回発言]

 その一言で、バリーが男に向かって伸ばした手は止まった。
「……どうやら話は通じるらしい」
 男はクッと空気が漏れるような微かな笑いを零す。

「私はキース・ブルー。
 先程の部屋で話していたキース・ブラック、それに名簿に記載されているシルバー、グリーン、バイオレット。
 彼らと同じ遺伝子から生まれたクローン、キースシリーズの一体だ」
 クローン、という言葉にバリーは首を傾げる。
 人間界について詳しくはないし、元よりそういったものに関心を寄せた事はない。
 訝しげな表情をしていると、ブルーと名乗った男は「人工的に作られた双子のようなものだよ」と分かりやすい比喩を足した。
 バリーは納得し、ブルーの方へ伸ばしていた手を引っ込めて腕を組む。
 キース『シリーズ』――五人のキースそれぞれの名字をファミリーネームではなくコードネームと考えれば、名簿に感じた違和感は払拭された。
 同じ顔である理由もそれで説明がつく。
 それに、観察すればブルーとブラックが別人である事ははっきりしていた。

「仲間か?」
「敵だよ。
 私以外のキースはエグリゴリという組織のトップエリートだが、私は反エグリゴリ組織の人間だ。
 信用出来ないなら、荷物はひとまず君に預けよう」
「……分かった、寄越せ」
 ブルーがデイパックを放り、バリーが受け止める。
 例え支給品を用いて攻撃してきたところで返り討ちにするつもりだが、念の為だ。

「私が殺し合いに乗る可能性は考えなくていい。
 言った通り、私はブラックを始めとした他のキースシリーズと敵対している。
 それに――」
「お前、」
 バリーがブルーの言葉を遮る。
 ともすれば相手に不快感を与える行為だが、ブルーが気に掛ける様子はなかった。

「立てねぇんだな」

 バリーが戦いを重ねて得た『強者の目』は、相手の弱所を正確に見抜く事が出来る。
 ブルーの脚は、人の体重を支えられない。
 自力では立ち上がる事も出来ないだろう。
 これはブルーをブラックと別人であると判断した理由の一端だ。
 バリーの言葉にブルーは僅かに驚きの表情を見せていたが、それはすぐに自嘲の笑みへ変わった。

「……その通りだよ」

▽

 赤木カツミの死を目撃した後、ブルーは気付けば教室にいた。
 支給された地図には小学校と中学校が書かれ、机などの大きさからここが中学校と分かる。
 また窓の外の景色から二階だろうと判断した。
 学校というものと縁遠い人生を歩んできたブルーには、ほんの少しだけ感慨深かった。

 生まれた時から周囲は同じ顔のクローン、全員がナンバーで呼ばれる日々。
 ブルーはそれを嫌って十二歳の時にARMSのコアの移植手術を受けたが、適応に失敗し敗北者となった。
 処分される前に救い出されて以降は、反エグリゴリ組織ブルーメンの中心人物として生きている。

 少しの時間だけ自身の半生を思い返すが、ブルーの思考はすぐに別の物へと逸れた。
 高槻涼。新宮隼人。巴武士。久留間恵。
 オリジナルARMSに適応した四人の子供達。
 自分の事よりも、そちらの方が気掛かりだった。
 彼らが同年代の子供と同じような平和な人生から乖離したのは、他でもないブルーの責任だ。
 二度と彼らを地獄に送り込みたくない。
 ニューヨークから帰り元の生活に戻った彼らに、ブルーはそう思っていた。
 だがその願いも虚しく、彼らはエグリゴリが居を構えた鐙沢村の実験場へ向かってしまった。

123 : 青雲の志 ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:28:52.93 ID:ol3/TWuj [4/7回発言]
 それを助け出そうと鐙沢村へ向かう準備を整え――その途中で、先程の空間へ連れて来られた。
 どうやらキース・ホワイトには彼らを日常に帰すつもりはないらしいと、ブルーは歯噛みする。

 疑問は少なくない。
 名簿に名を連ねたキース・グリーンとキース・シルバーは、どちらも涼達の眼前で死亡が確認されたはずだ。
 ブラックもまたホワイトに意識を乗っ取られたと聞いているが、あの空間で最初に見せた顔は何だったのか。
 久留間恵は名簿に記載されていないが、ホワイトが彼女だけ見逃すとは思えず、安否が気に掛かる。
 それに四人のARMSは今は完全に休止しているはずだが、涼は何故ARMSを発動させられたのか。
 あの空間にいた金色の喋る獣は何だったのか。
 バイオレットは何か知っているのか。
 『プログラム・ジャバウォック』――高槻涼の憎悪を育てる事で人類を滅ぼす計画は既に瓦解している。
 ならばこのプログラムは何を目的としているのか。

 しかしブルーの意思は変わらない。
(死なせるわけにはいかない……私が生み出した子供達を)
 四人のARMSが休止していないのなら、当面は安全だろう。
 それでも彼らは殺し合いを看過出来るような子供ではない。
 ブルーがどんなに彼らの安全を願っても、彼らは他人を守る為に戦ってしまう。
 ならば彼らを守るのは自分の役目だと、ブルーは自身の左胸を押さえる。
 それが命と引き換えだったとしても、ブルーは迷わない。

 ただ差し当たっての問題は、とブルーは手元のデイパックを見て嘆息する。
 残念ながら、車椅子も杖も支給されてはいなかった。
 子供達を捜しに行く事はおろか、初めから点けられていた部屋の明かりを消す事も隠れる事も出来ない。
 ブルーに出来たのは、最初に出会う参加者が殺し合いに加担していない事を祈る事だけだった。

 廊下から聴こえる足音に極力平静を保ちながら、相手の訪れを待つ。
 そして現れたのは、大きな角を持つ『魔物』だった。
 ARMSとは違う。
 喋る獣よりはずっと人間に近い姿をしている。
 だがその深い青に包まれた姿には、それ以外の形容が見付からなかった。

 会話が通じる事にまず安堵し、ブルーはその『魔物』に自分の立場を説明する。
 相手の言葉数は少なかったが、反応を見ていれば理解出来たか、納得出来たかは分かった。

 ブルーがこれから行動する為には、他の参加者の助けが不可欠だ。
 この場で協力が得られなければ、自分の命が助かったとしても何の意味も無い。
 こうしている間にも子供達は危険に晒されているかも知れない。
 ブルーは信用を得る為に可能な限りのカードを相手に見せ、支給品も渡す。
 グリーンとシルバーが既に死亡している事やバイオレットと和解している事を考えれば正確な情報ではなかったが、詳細は後でいい。
 そして他者と協力する上で最もネックとなる自分の身体について触れようとした時、『魔物』は先回りした。

「立てねぇんだな」

 どうやら観察眼に優れているらしい。
 ブルーは驚きながらも自嘲し、肯定した。

 ヴィンセント・バリーと名乗ったその参加者の話を聞きながら、ブルーは相手に気付かれないよう密かに苦笑した。
 『魔物』と表現してはいたが、本当に魔物の子供なのだという。
 地獄の住人であるキースシリーズの一人の前に最初に現れたのが魔物というのは、皮肉に思えた。

 口調や態度からすると、精神年齢は十代後半――ARMSの子供達と同じぐらいだろう。
 しかし粗暴な雰囲気の中に大人の静けさも持ち合わせている。
 この『プログラム』に苛立っている様子はあったが、冷静さは失っていなかった。
 バリーの話を聞き終えると、ブルーは相手の内面を見定めた上で言う。

「協力してもらえないだろうか。
 捜したい相手がいるが、私だけでは不可能だ」

 殺し合いの最中、歩けもしない仲間はただの足手纏いだ。

124 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 21:29:11.42 ID:jhVBOON3 [1/11回発言]


125 : 青雲の志 ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:29:31.92 ID:ol3/TWuj [5/7回発言]
 キースシリーズに関する情報と引き換えにしても、条件は悪い。
 それはバリーも承知しているはずの事で、この嘆願は賭けだと言っていい。

「いいぜ」

 バリーの答えはあっさりと出され、そこには逡巡する間さえなかった。
 そしてバリーはブルーが戸惑う様を見てか、座ったままの相手を見下ろしながら言い放つ。

「俺が目指すのは『強き王』だ。
 足手纏いが一人いるだけで弱くなるような王じゃない」

 それは慢心ではなく、確かな実力と経験に裏打ちされた自信から出た言葉だった。

▽

 ブルーは自分で立つ事も出来ない弱者だ。
 バリーはそう判断したし、ブルー自身もそれを自覚しているだろう。
 だがバリーは話をしながら、ブルーの目に曇りが無い事にも気付いていた。
 諦めも怯えもなく、絶対的な敗北から這い上がった男の目には確かな強さが宿っている。
 それは覚悟を決めた者の目だ。

 ブルーは必ず協力を求めてくる。
 歩行出来ない以上、殺し合いの中で生き残るにはそれしか方法がないからだ。
 それに応えるかどうか――尋ねられる前から、バリーに迷いはなかった。
 キース・ブラックと対立する立場にあるという言葉を鵜呑みにしてはいないが、関係者である事に違いはない。
 関わるだけのメリットはある。
 それにブルーがただの弱者でない事を、バリーは認めていた。

 ブルーの申し出に応えると、バリーはデイパックを投げ返した。

「その代わり、キース・ブラックについて知っている事は洗いざらい話してもらうぜ」
「……ああ、約束しよう」



 ブルーは返されたデイパックを手にしながら息を吐いた。
 分の悪い賭けに勝ったという点で、ブルーは運がいいかも知れない。
 だが本当にそうだろうか。
 ブルーとバリーは同じ建物、同じ階に配置されていた。
 ブルーの方は車椅子も杖もなく、協力者を求めざるを得ない状況だった。
 明かりを消す事さえ叶わず、バリーとの出会いは強制的だったとも言える。
 もし配置や支給品がランダムでなかったとしたら。
 バリーと協力関係を結ぶ事になったのは、全てキース・ホワイトの思惑通りなのではないか。

(例えそうだとしても……私は決して、屈しはしない)



 ブルーは憂鬱の色、悲しみの色。
 だが同時に空の色、海の色。実験体の少女が夢見た、自由な世界の色。

 その色と同じ名を冠したキースシリーズが一人と、同じ色の本を持つ魔物。
 二人の出会いは偶然か、悪魔の掌の上か。



126 : 青雲の志 ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:29:58.70 ID:ol3/TWuj [6/7回発言]
【C-2中学校二階 一日目深夜】

【ヴィンセント・バリー】
[時間軸]:エルザドル戦後、ナゾナゾ博士からファウード戦への協力を求められる前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いを止める。ブルーと協力する。


【キース・ブルー】
[時間軸]:単行本20巻、ブルーメンの鐙沢実験場襲撃前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品0~3(車椅子、杖に代わる物は無し)、基本支給品一式
[基本方針]:オリジナルARMSの子供達(涼、隼人、武士、恵)を守る。バリーと協力する。

127 : ◆.WX8NmkbZ6 : 2011/02/28(月) 21:30:59.24 ID:ol3/TWuj [7/7回発言]
投下終了です。御支援ありがとうございます。
誤字脱字や問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。

128 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 21:31:15.52 ID:jhVBOON3 [2/11回発言]


129 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 21:40:07.95 ID:1zdia/Fl [1/12回発言]
投下乙!
このコンビいいなぁー
ていうかやっぱりバリー好きだわーw
それにしてもやっぱり、キースシリーズは名乗らなくても顔だけで関係者だってバレちゃうよなー
相手によっちゃ大変そうだぜ
しかしブルーは車椅子まで奪われてしまったのか……これからきつそうだが頑張れ!


130 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 22:28:55.78 ID:jhVBOON3 [3/11回発言]
投下おつです!

やっぱり後期仕様のバリーは『強い』なぁと実感、強者のオーラがすっごい出てるね
ブルーもブルーでカッコイイ! 大人ってのはこういう人を言うんだなーと実感

そしてやっぱり出てきた同じ顔問題w キースシリーズは主催の近縁者ってことでやっぱり疑われるんだなー
ブルーは車椅子も杖も無い上にこれだから最初からハンディがでかすぎるw

性格から凸凹に見えるけど案外相性が良さそうな感じのこのチームの今後に期待
二人の『青』は自由を手に入れるのか、それとも欝や悲しみに染まってしまうのか

131 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:04:59.80 ID:oeDfQwBe [1/3回発言]
てす

132 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:08:53.49 ID:oeDfQwBe [2/3回発言]
おぉいけたw

って事で投下乙です
強者仕様のバリーはやっぱり格好良い
何て言うかオーラが違うよね
一方のブルーは車椅子まで奪われての参加とはブラックさん鬼畜だw

二人の青の今後に期待!

133 : ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:20:08.48 ID:1zdia/Fl [2/12回発言]
ギリギリだぜ。

さあ、投下します。

134 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:20:22.94 ID:jhVBOON3 [4/11回発言]
  

135 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:21:36.46 ID:1zdia/Fl [3/12回発言]


 極秘組織『エグリゴリ』を統率する四人の最高幹部『キースシリーズ』。

 同じ遺伝子から作られた彼らは、母たる『アリス』の葛藤を映してそれぞれに異なる意思を与えられている。

 四つの選択肢から、たった一つを選び出すために。

 だからこそ――――

 彼らは家族であるが、しかしながら決してお互いが同じ線に重なってしまうことはない。


 そんなキースシリーズの末弟であるキース・グリーン。


 彼に託された意思は――――『希望』。

136 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:22:31.41 ID:1zdia/Fl [4/12回発言]


 ◇ ◇ ◇


 真夜中の、山。
 湿っぽく、肌寒く、そして暗い。
 人工の照明など設置されておらず、地表を照らすのは木々の隙間を通り抜けてくる月光だけだ。
 誰もわざわざ近寄ろうとしない、仮に入ってしまったとしてもすぐに下山しようとするだろう。
 そんなシチュエーションにも関わらず、キース・グリーンは一向に動こうとしなかった。
 いつの間にやら背負わされていたリュックサックを地面に下ろし、一際大きな木の幹にもたれかかって腰を下ろしている。
 真上にあった月がすでに傾きつつあることにも気付かず、この場に転送されてから終始うなだれている。

「くくく……ははははっ!」

 座り込んでしまってからこれまで微動だにしなかったグリーンが、唐突に顔を上げて笑い出す。
 しかしその声とは裏腹に、頬は強張ったままで瞳には光がない。
 じょじょに笑い声は小さくなっていき、連鎖するかのごとくずっと掴んでいた己の胸元から手が放される。
 籠められていた力の抜けた右手は、自身の身体を滑るようにして落下していき地面に到達する。
 シミや傷痕の存在しない白い肌が土で汚れてしまうが、グリーンは手元に視線を向けることすらせず再び口を開く。

「……ようやく分かったんだけどな。僕がやるべきこととは、はたして何なのか……」

 その声は、誰にも届かない。自分の鼓膜を揺らすのがせいぜいというようなものだった。

「僕が生きる意味はもう……なくなってしまったよ、シルバー兄さん……」

 生命を賭けてでも守ろうとした赤木カツミは、もういない。
 グリーンの兄であるキース・ブラックの手によって、この世から消し去られたのだ。
 カツミの身に危険が及ぶことが分かった瞬間に、グリーンは自身に埋め込まれたARMS『空間の断裂』を作りブラックへと飛ばした。
 だというのに、硬度を無視して万物を斬り刻む空間の断裂は、ブラックを両断することはできなかった。
 狙いを外しただけだと判断して繰り返し空間の断裂を放つも、まったく効果はない。
 グリーンが四度目の攻撃を仕掛けたと同時に、高槻涼のARMS殺しを持つ『魔獣(ジャバウォック)』までもが砕かれてしまう。
 ブラックのARMS『神の卵(ハンプティ・ダンプティ)』への恐怖に脳内を埋め尽くされそうになり、それでも唇を噛み締めて空間の断裂を放つ。

 ――――やはり、ブラックは立っていた。

 まるで、何でもなかったかのように。
 何もできなかったことを示すかのように。
 そしてブラックは、口にした通りに赤木カツミを殺害した。
 それからのことを、グリーンはほとんど覚えていない。
 声を張り上げた高槻涼とは対照的に、ただ茫然とするしかなかった。
 怒りに任せてブラックへと飛びかかることもできず、落下したカツミの顔から目を離すことができず、まばたきすらもできず。
 いつの間にか見知らぬ場所にいて、立っていることすらできずに座り込んで、そのままだ。

「……カツミと…………彼女と初めて出会ったところも、こんな風に木が生い茂っていたな…………」

 周囲の確認すらしていなかったグリーンは、やっと自分が山のなかにいることに気付く。
 しばらく辺りを眺めてから、グリーンは再び顔を伏せた。
 もう、何もかもがどうでもよかった。
 自分が聞かされていた『プログラム・ジャバウォック』とは大きく異なる展開になっているが、もはや知ったことではない。
 いつ自分は患者服からスーツに着替えたのか、また消耗していた体力がここまで回復しているのか、どのようにしてブラックはあれだけの人数を転送したのか。
 気になることはいくつもあるが、調べようというつもりはない。
 カツミと出会うまでは、兄たちの与えた任務にただ従っていたというのに。
 知らないうちに、その頃の自分に戻れなくなっていた。
 現在のグリーンは、赤木カツミがいないのなら何をする気にもならない。

 ――――望むのであれば死者の蘇生も可能だと伝えておこう。

137 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:22:48.39 ID:rRSvMZn9 [1/2回発言]
 

138 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:23:20.66 ID:oeDfQwBe [3/3回発言]
 



139 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:23:52.83 ID:rRSvMZn9 [2/2回発言]
 

140 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:24:18.20 ID:1zdia/Fl [5/12回発言]

 ブラックの声が脳裏を過り、グリーンは今さらそんな言葉を思い出す自分を嘲るように笑った。
 死者の蘇生など不可能だということは、よく知っているのだ。
 なぜなら、彼はキースシリーズなのだから。
 自分たちが生まれてきたような技術を使えば、確かに同じ遺伝子を持つ人間を作り出すことは可能だ。
 しかし、それは遺伝子の元となった人間とは違う。
 もともと持っていた記憶など存在しないし、人格だって異なっている。
 仮に赤木カツミとほとんど同じ生活を遅らせたところで、それは『赤木カツミに似た人間』にしかならない。
 コンピュータに記憶のバックアップを取っておくことで、破壊されてもバックアップによって再生可能な『ネクスト』と呼ばれる機械人類が誕生したことも知っている。
 だが、ネクストには感情が存在しない。
 カツミの温もりを知っているからこそ、グリーンはカツミをそんなものにするワケにはいかなかった。
 あの、温かい手の赤木カツミは、ネクストの技術では作れないのだ。

「ん……?」

 そこまで考えたところで、地面に置いてあったリュックサックが奇妙にうごめいているのがグリーンの目に留まった。
 僅かに思案するも、何が出てこようと構わないと判断し、グリーンはリュックサックを開く。
 そこから出てきたのは、見覚えのあるネコであった。
 全身が茶色い毛に覆われ、額には黒い毛も交じっている。
 かつて、赤木カツミが埋葬したネコに瓜二つであった。
 勢いよく飛び出してきたネコだったが、グリーンの姿を見ると背を向けて山のなかを走り去っていく。
 その素振りに、あのとき自分が取った対応を知っているかのようだな、と考え、グリーンは静かに首を横に振った。
 すでに庭に埋めてしまっているのだ。似ているだけに決まっている。
 そう自分に言い聞かせたグリーンは、ネコと一緒に出てきた紙に手を伸ばす。
 この行為には特に意味などなく、手の届く範囲に落ちていなければ放置していただろう。
 目を通していくうちに、紙を持つ手が震えだす。
 最後まで読み切る寸前で、グリーンは紙を握り潰した。

「こんなもので僕が信用すると思っているの、ブラック兄さん……ッ!」

 紙には、先ほど離れていったネコは赤木カツミが埋葬したネコを蘇生したものだ、と書かれていた。
 そんなものにやすやすと乗せられるものかと、グリーンは歯を軋ませる。
 ブラックはあの程度で自分が信じ込むと思っていたのか。そこまで下だと見ていたのか。
 が、時間が経過するうちに情けなさが生まれてきた。
 事実として、グリーンのARMS『チェシャ猫(チェシャキャット)』が作り出した空間の断裂はブラックの衣服すら刻めなかったのだ。
 同じキースシリーズでこそあれど、遥かに格下であった。
 カツミを守れないはずである。
 納得したように、グリーンは目を閉じた。
 何者かが近付いてくる気配を捉えたが、動く気は起きなかった。
 いっそ殺し合いに乗り気な相手ならいい――そんなグリーンの期待を裏切る内容の声が、頭上からかけられる。

「安心してね。私は、殺し合えなんて命令を聞く気はないから。
 人を殺すのはイヤだし、何より私の旦那様と子どもが――っと。この話はまた後ね」

 カツミが死んだのに自分はまだ死ねないらしい、と、グリーンは自嘲気味に笑った。
 放っておいても相手が離れようとしないので、ゆっくりと顔を上げる。
 グリーンが予想した通り、話しかけてきた銀髪の和服を着た女性は一歩退いた。
 当たり前だろう。
 この殺し合いの説明をしたブラックと、まったく同じ顔をしている男に話しかけてしまったのだから。
 しかしそこから先の女性の行動は、グリーンが想定していなかったものだった。
 一歩下がった後に二歩進み、顔の高さを合わせるようにしゃがみこんで頬を緩めたのだ。

「私は、才賀アンジェリーナっていうの。あなたの名前を教えてくれないかしら?」

 グリーンは、息を呑んだ。
 自分に笑顔を向けてきた人間なんて、カツミ以外にはいなかった。
 だが――と、グリーンは冷静さを取り戻し、口を開いた。


141 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:25:06.09 ID:jhVBOON3 [5/11回発言]
  

142 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:25:32.45 ID:1zdia/Fl [6/12回発言]

「キース…………」

 自分の正体を知らぬから、そんな顔をできるのだ。
 そのように考え、グリーンは一拍置いてから一気に言い切る。

「キース・グリーン。それが、僕の名さ」

 他人の空似などではないことに勘付いたのだろう。
 アンジェリーナは、銀色の目を丸くして絶句している。
 グリーンは誰にともなく、ふん――と毒づいた。


 ◇ ◇ ◇


 この殺し合いの舞台に転送されたとき、はっきり言って才賀アンジェリーナはあまり状況が飲み込めていなかった。
 というのも、彼女は一度死んだ身なのである。
 不器用な息子を守るべく最後の力で懸糸傀儡を操り、身体が砕け散ったはずだった。
 身体にひびが入っていく音だって、聞こえていたのだ。
 そんな自分がなぜこうして立っているのだろう、という気持ちがあまりに強かった。
 加えて、殺し合いの説明の際に起こったこともアンジェリーナを混乱させた。
 さらに情報を整理仕切れないうちに、周囲が山のなかに変わってしまっていた。
 いかに自動人形(オートマータ)との戦いにおいて最前線に立ち続けたアンジェリーナとはいえ、さすがに困惑してしまう。
 知らないうちに背負っていたリュックサックを開けて、奇妙なボトルに入った水を取り出す。
 強く握ると割れるのではなくひしゃげてしまう容器に戸惑いながらも、三口ほど飲んで大きく息を吐く。
 吐き切ってからいっぱいに吸い込んで、また吐き出す。
 それを十数回繰り返して、ようやく落ち着いた表情となる。
 説明書通りに蓋を閉めてから、安全なのかどうかを疑うべきだった、とハッとする。

「わ、私はしろがねだもの……
 仮に毒なんて入ってたとしても、なんともなかったわ……むしろ計算通りよ!」

 誰もいない山のなかで誰かに対して言い訳をしつつ、アンジェリーナは肩を落とす。
 でもこれで冷静になった、とこれまた誰かに宣言して名簿を取り出し――また動転した。
 長年会っていない母に、最愛の夫に、血こそ繋がっていないが確かに自分をママンと呼んでくれた息子に、まだ生まれたばかりの娘。
 もう二度と会えないはずだった。また会いたい、と最期に考えなかったかといえば嘘になる。
 けれど、ここは殺し合いの舞台なのだ。
 人を躊躇なく殺す自動人形たちだって、ここに呼び出されているらしい。
 母と夫と息子は戦うことができるが、娘に至ってはまだ首も座っていない。
 アンジェリーナでなくともパニックになるだろう。
 名簿をリュックサックに押し込み、当てもなく走りだろうとして静止する。
 武器が、ないのだ。
 得物を持っていなければ、しろがねはただ身体能力が高くて死ににくいだけだ。
 下位の自動人形ならばともかく、名簿に書かれていたような上位の自動人形の相手はできない。
 再びリュックサックを下ろし、中に入っているという武器を探す。
 出て来た道具は二種類。
 片方は知っているものだったがとても武器と呼べる代物ではなく、もう片方は黒いまな板のようなものであった。
 すぐに仕舞ってしまおうかとも思ったが、一応とばかりに説明書を確認すると、記された内容にアンジェリーナの表情が変わった。
 なんでもこの板は参加者レーダーといい、周囲に参加者がいるかどうかが板の表面に表示されるらしい。
 恐る恐る触ってみると、真ん中に一つと近くにもう一つ反応があった。
 板を何度か前後させてみたところ、真ん中の光点はアンジェリーナ自身のもののようだ。
 ならばと、アンジェリーナは近くの光点へと歩みを進めることにする。
 もっと表示範囲を広くすることも可能らしかったが、まだあまり細かいことが分かっていないのでひとまず弄らないことにした。
 余計なことをして、いま表示されているものが消えてしまっては困るのだ。

143 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:25:51.01 ID:FfrFTSbG [1/1回発言]
 

144 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:26:47.47 ID:1zdia/Fl [7/12回発言]

「あの人ね……」

 まったく移動しようとしないので、よもや娘ではないかと思っていたアンジェリーナはほんの少し落胆する。
 だが同時に、自動人形といきなり出会わなかったことに安堵の息も吐いた。
 光点の主は、金色の髪でスーツを着込んでいる。体型から男性であることは分かったものの、ずっと座り込んだまま俯いていて顔までは伺えず年齢までは予想できない。
 アンジェリーナはレーダーをリュックサックに仕舞い込み、男の元へと歩み寄った。
 様子を見る限り、この状況に絶望しているのかもしれない。
 だからこそアンジェリーナは自身の焦りを隠して、あえて明るい声で話しかける。自分が人を殺して回る気がないと、最初に宣言することを忘れずに。
 しばらく返事を待っていると、男が顔を上げた。その顔を見て、アンジェリーナはつい後ずさりしてしまっていた。
 混乱していたとはいえ、キース・ブラックの顔は覚えている。自分の愛する家族たちを殺し合いに巻き込んだ張本人なのだ。
 そのブラックと、眼前の男は同じ顔をしていた。
 アンジェリーナの十本の指が、反射的に動く。しかし呼応するように宙を舞う糸は存在しない。
 口内に唾液が溜まっていくのを感じ――そこで、緊張を解いた。
 目の前にいるのはキース・ブラックより、だいぶ若く見える。
 ただ似ているだけということだってあるだろう。

 ――――アンジェリーナとフランシーヌ人形のように。

 偶然顔立ちが似ていたというだけで疑うなど、かつて自分や母を陰で勘ぐっていたしろがねたちと一緒ではないか。
 そのように結論付けたのだ。
 前に出て体勢を低くすると、眼前の男はまだ少年と呼んでいいくらいの年齢だということに気が付く。
 外見年齢だけならアンジェリーナの息子と近く、なぜだか少し嬉しかった。
 名乗ってから少年の名前を尋ね、その返答にアンジェリーナは言葉を失うことになった。

「キース・グリーン。それが、僕の名さ」

 名簿を確認した際、『キース』という姓の参加者が多数いたことは覚えている。でも――
 考えがまとまらず返答できないアンジェリーナに、グリーンは畳み掛けるように告げる。

「くく、このプログラムの説明をしたブラック兄さんのことを思い出しているのかい?」
「兄、さん…………?」
「そう、兄さ。キース・ブラックとキース・グリーンは兄弟関係だ。
 だからどうするんだ? あんなことをする男の弟なんだ。逃げたきゃ逃げればいいさ」

 座ったまま口角を釣り上げて、グリーンは視線を鋭くする。
 さながら、早く消えろといわんばかりに。
 しかしその視線が、アンジェリーナには初めて会ったときの息子のもののように見えた。
 ゆえに、問いかける。

「逃げないわ。あなたに聞きたいことがあるもの。
 グリーン、どうしてあなたはずっとここに座ったまま動こうとしないの?」

 立ち去らないというのが想定外だったのか、グリーンは少し反応が遅れた。
 そのことを隠すように、余裕があるかのような口ぶりで答える。

「ふん。僕がどうしようと関係ないだろう」
「あるわ。キース・ブラックがお兄さんだからって、それこそあなたに関係ないもの」
「…………黙れ」
「私は、あなたがお兄さんのプログラムに従うのかを知りたいんだもの」
「黙れと言っているだろう!! 兄さんと僕が関係ないだと!? 貴様に、ただの人間ごときに僕たちの何が――!!」

145 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:27:23.95 ID:jhVBOON3 [6/11回発言]
  

146 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:27:47.63 ID:1zdia/Fl [8/12回発言]

 グリーンの喉が張り裂けるような声は、唐突に打ち切られた。
 アンジェリーナの平手で頬を打たれたのだ。
 加減をしていたので、痛みがそこまであるワケじゃないだろう。
 おそらく、不測の事態に頭が回らなくなっているのだ。
 目を白黒させて左の頬を押さえているグリーンへと、アンジェリーナは切り出す。

「年上の人にそんな口の利き方をしちゃダメよ!」

 事態が呑み込めたのか、呆気に取られていたグリーンが勢いよく立ち上がる。
 強く歯を噛み締めて、アンジェリーナを強く睨み付けて、右手を前へと向け――――へたり込んだ。
 両手と両膝を地面に付け、口から言葉を漏らす。

「……カツ……ミ…………カ、ツミ…………カツミ………………」

 言葉を詰まらせながら、グリーンは地面に拳を叩きつける。
 そんな姿を見て、アンジェリーナはグリーンに何があったのかを分かった気がした。
 彼女には愛している家族がいるから、理解できたような気がしたのだ。
 さらに地面を殴ろうとする拳を受け止める。

「そんな風に自分を痛めつけるなんて、彼女は望んでいないわ。
 自分が死んだせいでヤケになられたら、私だったらイヤだもの」
「カツミの……彼女のいない世界に、生きる価値なんてないさ」

 絞り出すような声で、グリーンは続ける。

「組み込まれた運命に抗おうともしない機械のようだった僕を……人間にしてくれた彼女がいなくて、僕が生きているなんて……はっ、はは……」

 その言葉に、アンジェリーナは目を見開いた。
 かつてただの人形破壊者(しろがね)であった自分が、目的もなく一人で死なない身体を持て余していた自分が、ある男に出会わなければただの人形だった自分が――
 倒れている目の前の少年の姿と、重なったような気がした。
 服が汚れるのも構わず、アンジェリーナは地面に座り込む。
 そのまま腕を回して、グリーンを抱き締めた。

「あなたが彼女にしてあげられることは、きっとあるはずよ。
 いきなり殺されてしまい、亡骸が床に転がったままなんて酷すぎるもの」

 言わんとしていることを理解したのか、グリーンが声を押し殺して震えだす。
 しばらくというには長い時間が経ってから、ゆっくりと告げた。

「カツミ……の、墓……を作ってやりたい…………」

 声がところどころ裏返っていたけれど、アンジェリーナはそのことを胸に閉まっておくことにした。

147 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:29:24.72 ID:1zdia/Fl [9/12回発言]


 ◇ ◇ ◇


「…………ふん」

 アンジェリーナに渡されたキャンディーを舌で転がしながら、グリーンは吐き捨てた。
 何度もいらないと言ったのだが、あんまり勧めてくるので仕方なく受け取ったのだ。

「甘いものなんて、子どもじゃあるまいし。僕は、チェシャキャットのキース・グリーンだぞ」
「でも私から見たら、あなたは十分子どもよ」

 悪態をつくグリーンに、アンジェリーナは目を細める。
 その微笑みを見て、グリーンは左胸を押さえた。
 裏ポケットのなかには、支給されていたカツミの髪の毛が入れてある。
 かつて、彼女に頼み込んで貰ったものだ。
 それがなぜリュックサックのなかに入っていたのかは分からないが、おそらく兄によって回収されたのだろう。
 彼女はもうこの世にいないが、彼女の記憶は一房の髪の毛と同じようにグリーンのなかにある。
 先ほどは頭に血が上り、アンジェリーナを殺害しようかとも思ったが――カツミを思い出してしまった。
 人間から頬に平手打ちを受けたのなんて、これで二回目だ。
 赤木カツミのときと、今回。
 人に叱られた経験だって、同じく。
 そのことに気付くと、アンジェリーナの背後に赤木カツミの姿が見えてきて、知らず知らずのうちに弱みを見せていた。
 そんな自分自身の行いに、グリーンは冷静になってから極まりが悪くなった。

「で、家族を探すんじゃなかったのかい?」
「そうね。グリーンも落ち着いたみたいだし、行きましょうか」
「……ふん」

 アンジェリーナの家族までも呼び出されていることは、少し前に聞かされたのである。
 なぜ彼女の身内がそこまで多数呼ばれているのかは疑問であったが、それを言うならこのプログラム自体が謎の塊か。
 そのように考え、グリーンはいったん参加者選出について思案するのをやめた。
 と、そこであることに気付き、歩み始めていたアンジェリーナを呼び止める。

「待ってくれ、アンジェリーナ。僕も一度名簿を確認しておきたい」

 一言告げてリュックサックから名簿を取り出し、グリーンの表情が変わった。
 何を言おうと確実にぶつかることになるだろうオリジナルARMSたち。
 彼らと同行している者たちや、姉であるキース・バイオレット。
 すでに姿を確認している高槻涼以外にも、彼らがいることは推測できていた。
 だが他に、書かれていてはならない――――書かれているはずのない名前が刻まれていたのである。

「キース・レッドにシルバー兄さん、だと……!? 下らない! たしかに二人とも死んだはずだ!!」

 口では否定しながらも、名簿が真実であるのではないかと微かに思いつつあった。
 最初にブラックがプログラムの説明をした部屋で、死んだ二人の共振を感じてはいたのだ。
 そんなことを気にしていられる場面ではなかったため、単なる勘違いかと切り捨てていた。
 自分を圧倒した男のように、新たなARMSコアを手に入れたものがいるのかもしれない、その共振が偶然似通っているだけにすぎないと。
 カツミの救出を優先していたので、共振についてはそれですませていた。
 とはいえ、実際にそんなことがありうるのだろうか。
 落ちこぼれのほうはともかくとして、キースシリーズの戦闘型担当であるキース・シルバーのARMSとまったく同じ共振を放つ。
 こんなことが、あってしまうのだろうか。

148 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:30:48.19 ID:1zdia/Fl [10/12回発言]

「やっぱり……」

 アンジェリーナから漏れた意味深な言葉の意味を、グリーンは尋ねる。

「私も死んだはずだったわ。身体が冷たくなっていく感覚だって覚えているもの」
「バッ、バカな! そんなことが――!」
「まさかとは思っていたわ。でもあなたの言った二人も……『そう』なんでしょう?」

 反論しようとしてもなにも出てこず、グリーンは押し黙ってしまう。
 アンジェリーナの言う通り、彼らは絶対に死んでしまっている。
 『幻獣(グリフォン)』と『帽子屋(マッドハッター)』が砕け散った際の共振が、身体に蘇ってくる。
 ブラックが彼らの死を偽る――というのも現在となってはありえなくはないが、あの共振が虚構であるはずがない。
 チェシャキャットが、感覚を記憶しているのだ。グリーン自身は騙せても、ARMSの感覚まで誤魔化せるワケがない。
 先ほど走り去っていったネコの姿が、フラッシュバックする。

「一度死んだという……その話、くわしく聞かせてくれないか!?」

 声が震えているように感じたが、やたら大きくなる鼓動の音で聞き取れない。
 自分の態度にアンジェリーナが驚いていることに気付き、グリーンは呼気を整えてから再び口を開く。

「僕たち兄弟も聞いたことがない、ブラック兄さんの力を見定めるカギになるかもしれないんだ……!」

 得体の知れないキース・ブラックのハンプティ・ダンプティ。
 空間の断裂やARMS殺しでもダメージを与えられなかったARMSには、果たしてどういう能力が隠されているのか。
 神の卵の中身は、同じキースシリーズにさえ知らされていない。


 ◇ ◇ ◇


「そんな、ことが……ッ!」

 アンジェリーナの話を聞き終え、グリーンは苦々しい顔で吐き捨てた。
 彼女の記憶はあまりに鮮明であり、一度死んでしまったということも信じざるを得ない、と判断したらしい。
 グリーンは、ブラックの強大さに押し潰されそうになっている。
 そんなグリーンを前に歩ませるため、アンジェリーナはわざと明るい声を作った。
 死者をも蘇らせる相手の目から逃れることなどできるのだろうか――
 彼女だって自動人形以上の脅威に恐怖を抱いているというのに、そんなことを一切見せないで。

「まったく! いつまでボーッとしてるの。歩かなきゃ前へは進めないのよ!」

 自分自身にも言い聞かせるように告げて、山を下っていく。
 しかし十歩ほど進んでもグリーンが追ってこないので、振り返って声をかける。

「もう……十数えても来なかったら、本当に置いていくわよ!」

 返事こそなかったが、言葉に応えるようにグリーンは右手を振った。
 反応があったことに、アンジェリーナの頬が勝手に緩んだ。

 ――――次の瞬間、アンジェリーナの右腕が肩口から切断された。

 なにが起こったのか理解できないまま、血液を噴出させてくずおれる。

149 : 現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:31:31.97 ID:1zdia/Fl [11/12回発言]

「すでに分かっていたが、やはり記憶のバックアップを取っていたというワケではないな」

 口ぶりから、グリーンが何かをしたということは理解できた。
 凶行の理由は問いかけるより早く、本人の口から語られる。

「…………すまない、アンジェリーナ。
 死者の蘇生が実際に可能であるのなら――記憶も人格も変わらずに、かつ感情を持った人間として生き返ることができるのなら……僕は、カツミにまた生きて欲しい」

 それだけ言って、グリーンは再び手をかざす。
 その表情が、アンジェリーナには泣き出してしまいそうな子どものように見えた。
 涙など浮かべていないにもかかわらず、だ。
 一向に止まる気配のない流血を意に介さず、アンジェリーナは立ち上がる。
 泣いた子どもを抱き締めることもできずに置いて行くなんて、もう御免だった。
 力を振り絞って駆け出そうと、グリーンを見据えようとし――――視線の先にグリーンはいなかった。
 後ろに気配を感じたと同時に後頭部に衝撃が走り、アンジェリーナの視界は黒く染まった。


 ◇ ◇ ◇


 レーダーと水と食料だけをアンジェリーナのリュックサックから自分のものへと移し、グリーンは立ち上がる。
 脳に糖分を与えるということを考えるとキャンディーも必要かと思われたが、なぜだか回収する気にならなかった。

「ブラック兄さんに傷すらつけられなかった。
 僕のチェシャキャットは、決して最強のARMSではない」

 わざわざ口に出して、断言する。
 グリーンは、なんとしてもこのプログラムを勝ち抜かねばならないのだ。
 オリジナルARMSにも、同じキースシリーズにも、その他の参加者にも敗北するワケにはいかない。
 ゆえに、かつての慢心を捨て去る必要があった。
 ただでさえ、空間移動による負担は普段の比ではなかったのだ。短い距離であったことを考える限り、おそらくブラックがなにか施したのだろう。
 だからこそ、対ジャバウォックのときのように遊んでしまうクセも、対ジェームズ・ホワンのときのように相手を見くびるクセも、すべて捨ててしまわねばならない。
 何せ、自分やプログラムのためではなく、赤木カツミのために戦うのだから。
 アンジェリーナへと衝撃波を放ったのも、その決意を固めるためだ。
 自分をいたぶりカツミを連れ去った男の技など使いたくないが、しかし己の好き嫌いなどにこだわっている場合ではない。
 ゆえに後頭部に衝撃波を撃ち気絶させたのち、空間の断裂で殺害したのである。

「――――行こう」

 背後の土の山を振り返らず、グリーンは歩み出す。
 参加者レーダーの説明書を眺め、画面に映った反応の正体までもは分からないことに少し落胆する。
 だが相手が強大であればあるほど、最終的に戦うことになる可能性は高い。

「ならば、いつ出会おうと変わりはない」

 説明書をリュックに突っ込み、レーダーの電源を触れる。
 スタンバイ中のディスプレイを眺めながら左胸を押さえ、グリーンは誰にともなく呟いた。

「もはや、我が魔剣に死角など存在しないのだから…………」

150 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:32:53.31 ID:jhVBOON3 [7/11回発言]
  

151 : 現在位置~You are here~ ◇hqLsjDR84w氏代理 : 2011/02/28(月) 23:36:38.89 ID:jhVBOON3 [8/11回発言]


 ◇ ◇ ◇


 グリーンが背を向けていた土の山のなかに、アンジェリーナはいる。
 気絶させられたのち、グリーンは地面に衝撃波を放って穴を作った。
 そこにアンジェリーナを置いて土を被せてから、首があった場所に空間の断裂を放ったのである。
 他の七十八人には墓など作るつもりはないが、彼女にだけは作らねばならないと考えた。
 そのために、グリーンは見ることができなかったのだ。
 アンジェリーナの身体に亀裂が入っていき、最期にガラスのように砕ける様を。
 彼女が人間ではなく、しろがねであるという証を。
 それを確認せず、まだ石化していない傷口だけを見てしまっため、グリーンはアンジェリーナをただの人間だったと思っている。
 『ただの人間をただの人間として蘇生できる』――そう、思い込んだままだ。



【才賀アンジェリーナ 死亡確認】
【残り78名】


【F-1 山/一日目 黎明】

【キース・グリーン】
[時間軸]:コミックス17巻NO.11『死王~バロール~』にて共振を感じ取って以降、コミックス18巻NO.3『聖餐~サクラメント~』にてキース・ブラックの前に立つ前。
[状態]:健康
[装備]:いつものスーツ、参加者レーダー@オリジナル
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、カツミの髪@ARMS(スーツの左胸裏ポケット)
[基本方針]:なんとしても最後の一人となる。そのためなら兄さんや姉さんだって殺すし、慢心を捨てて気に入らない能力の使い方だってする。
※空間移動をするとかなり体力を消耗するようです。




【支給品紹介】


【参加者レーダー@オリジナル】
才賀アンジェリーナに支給された。
付近にいる参加者の反応を探知して、ディスプレイに光点を表示する。
広域表示と狭域表示の切り替えが可能だが、極限まで広域表示にしても自分のいるエリア内しか表示されない。
サイズは、縦約25センチ、横約20センチ、厚さ約1.5センチ。ようはiPadみたいなイメージで。
いったい、参加者の何に、どのようにして、反応しているのかは不明。以降に任せます。


【キャンディー@からくりサーカス】
才賀アンジェリーナに支給された。
ギイ・クリストフ・レッシュがある指令を遂行するべく日本を訪れた際に、持ってきたもの。
一つ一つのキャンディーがカラフルな紙でラッピングされて、袋にまとめられている。
袋はパッと見た感じそれほど大きくないが、意外にも中のキャンディーは結構な数である。





152 : 現在位置~You are here~ ◇hqLsjDR84w氏代理 : 2011/02/28(月) 23:38:40.50 ID:jhVBOON3 [9/11回発言]


【死んだはずのネコ@ARMS】
キース・グリーンに支給された。
『生命活動が停止したぬけがら』としてグリーンはメイドに処理させようとしたが、赤木カツミによって庭に埋葬された――――はずだったネコ。


【カツミの髪@ARMS】
キース・グリーンに支給された。
赤木カツミが髪をカットした際に地面に落ちたものを、グリーンが頼んで一房貰ったもの。
君も気になる子がいたら、美容室までついて行ってお願いしてみよう。
意中の子は訝しみながらも「変な人ね……」と笑みを向けてくれることだろう。
※ただしイケメンに限る。




【備考】
※エリアF-1山内に、「会場地図」「コンパス」「筆記用具」「ランタン」「時計」「参加者名簿」「キャンディー@からくりサーカス」が入った「リュックサック」(全て才賀アンジェリーナに支給されたもの)が放置されています。
※才賀アンジェリーナはF-1山内に埋葬されました。
※「死んだはずのネコ@ARMS」が、その辺を走っています。




153 : 現在位置~You are here~ ◇hqLsjDR84w氏代理 : 2011/02/28(月) 23:41:10.96 ID:jhVBOON3 [10/11回発言]


5 名前: ◆hqLsjDR84w 投稿日: 2011/02/28(月) 23:36:37 ID:???
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください



投下おつです
ここで矛盾点を一つだけ
ちょくちょく名前が出ましたがこのロワにレッドは参加してないですw

154 : ◆hqLsjDR84w : 2011/02/28(月) 23:44:26.40 ID:1zdia/Fl [12/12回発言]
いけるかな?
代理投下ありがとうございました!


あと、レッドいないのは投下中に気付きましたorz
名簿見て「うわキースたくさん!」って思ったのが、いつのまにか「キースみんないる!」に変わってたみたいです
wikiに入れる際に直しちゃいますね

155 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:47:11.67 ID:iZ/O+OSe [1/1回発言]
始まったばっかなのに長いのばっかだな
息切れしなきゃいいが

156 : 創る名無しに見る名無し : 2011/02/28(月) 23:51:00.77 ID:jhVBOON3 [11/11回発言]
投下乙

……うわああああああああああああああああああああああああ!!
うわぁorz
ママン、ままああああああああああああああああああん

ギィに続く第二の息子が生まれると思ったのにorz
序盤の二人の会話とか大好きだったのに!!

うん、でもしょうがないんだよね最初のグリーンの空っぽ具合見たらさ
カツミを生き返らせるのが第一目標になるのはしょうがない

お墓作るシーンとかよかったです
出会ってから短かったけどグリーンもアンジェリーナのことが好きだったんだろうな
だからこそ悲しい

やばい、面白い話なのに読んでてテンション下がった……

157 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 00:06:47.07 ID:TSGklFrA [1/2回発言]
投下乙

ママン、ママン ママン ママン ママアアアアアアアアアアアアアアアン

血は繋がっていないけれど母と息子の絆みたいなものが確かに見えた…
けど、グリーンが乗る気持ちもわかる… せつねぇ…

ギイといい、グリーンといい、初っ端から胸が痛くなるマーダーが誕生したな……


158 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 00:33:59.16 ID:9FsWvspN [1/1回発言]
投下乙…

楽しく読んでいたはずなのに体が重い…だと…
猫のお墓を作る意味が理解できなかったグリーンが、カツミのお墓作りたいと言ったのには感動した
グリーンの生い立ちに自分を重ねるアンジェリーナもよかった
二人のやりとりが、ギイとアンジェリーナみたいで微笑ましかった
なのに………………
ロワでさえなければ……

159 : ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:35:31.24 ID:gnnfPYEI [1/10回発言]
よし、投下行きます

160 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:36:26.32 ID:gnnfPYEI [2/10回発言]
己の生き様を貫いた者が居た。
信念に従い、理想に殉ずる覚悟で生きていた筈の男は
最後には己の命を賭して数多の人命を救う為の
一助を担ってこの世を去った。
……筈だった。

「ぬぅおおおおおおおおおおっ!?」

一人の金髪の筋肉質の男が叫び声を上げている。
それもその筈である。
この男がいきなり放り出された場所は空中。
意味も分からぬまま、
碌に体勢を整える事すら出来ずに男は落下していく。

「ウゲッ! グホォッ! ゲハッ! ウグハァッ!?」

生い茂る樹木の幹や枝に激しく身体をぶつけながら地面に落下していく。
「ビタァン!!」っと気持ちの良い程の激しい音を立てて
地面に到達したその男の姿を他の人物が見ていたのなら
間違い無く、この男は死んだものと思うだろう。
だが、

「あいたたたた……ク、クソゥ、いきなりこの様な仕打ちを受けるとは…
 私でなければ死んでいたに違いないぞ……」

そういって頭に手を当てつつ、頭を振って男は平然と立ち上がる。
男の名はボー・ブランシェ。
ネオ・ナチスに所属し、ナチス再興という理想の為に
自らの身体を鍛え上げてきた男。
だが、それも一人の少年によって組織を壊滅状態にまで
追い込まれるまでであり、今は傭兵で資金を調達していた状態である。
彼の身体は初めは薬物による強化によって作られていたが
様々な挫折を味わった事から薬物を断ち、
純粋な肉体改造のみで磨き上げられたその肉体は
薬物に頼っていた頃を遥かに凌駕し、
常人では理解が及ばぬ高みにまで押し上げられている。
故にあのようなダメージ程度は彼にとって差ほど問題ではないのである。

161 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:37:08.28 ID:f9OChwks [1/8回発言]
  

162 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:37:26.90 ID:gnnfPYEI [3/10回発言]
「ここは、何処だ? 山の中の様だが?
 ハッ!? そうだ、COSMOSの連中はどうなったのだ!」

彼は知らない。
自身が既に“死んだ身である”という事を。
彼の最後の記憶はCOSMOSと呼ばれる殺人部隊と
日本の存亡を賭けた一戦で彼が相棒と呼ぶ男の
作業を助ける為に自ら壁となり、
捨て身で敵を退けた所までである。
その戦闘の後、彼は力尽き死亡したのであるが
それを彼は認識していないのである。

「それになんだったのだ、あの男は?
 あの力……転移能力者<テレポーター>だとでもいうのか?
 だが、それではあの傷から再生した理由が見当がつかん」

先程、目の前で見た歪な光景。
巧妙なまでに人体に偽装していた機械らしき腕を持った少年に
貫かれてなお平然としていた長髪の男。
そして、その男が語ったこの騒ぎの目的。

『殺し合い』

その言葉を思い出してわなわなとボーは身体を震わせる。

「ふざけた事をぬかす奴め!
 殺し合いだと、馬鹿馬鹿しい!
 力を持った人間が弱者を守らずに切り捨てるような
 真似等はして良い訳が無いだろうがっ!!」

怒りで身を震わせながら声のあらん限りに吼える。
彼の信念とは

『人間はより優れた人間によって正しき道を選ぶ、そこに幸福があるのだ。
 そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。
 そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない』

多少は問題の孕んだ思想では有るが、純粋に他を思い遣り、
同時に助ける事こそが彼の根本であり、
だからこそ、彼は母国でもない日本の数多の命の為に
自らの力を振るう事を厭わなかったのである。
故に彼はこのバトルロワイアルという行為そのものが許せなかった。
強者が弱者を踏みにじるような悪質な事を見過ごせるほど、彼は甘くは無い。
例え、相手が未知でどんなに強大な相手であってもである。

163 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:38:14.28 ID:gnnfPYEI [4/10回発言]
「……お静かに、あまり騒げば人が寄ります」

一人滾るボーを鎮めるかのように静かな声が
その背後から聞こえてきた。

「ムッ! 何者だ!?」

背後からの声にボーは慌てて振り返る。
声をかけられた事に驚いたのではない。
こうも容易く背後を取られた事に彼は驚いたのである。

「背後から失礼な真似をしました。
 私は桐雨刀也。 号は居合い番長」

樹木の間をぬって静かに現れた青年が厳かに名乗る。
その姿は和装に女性と見紛うほどの顔。
凛とした姿勢でボーと向かい合い、
居合い番長と名乗った青年は足を止める。

「…貴方の先程の言葉が信用できるか如何か分からぬ為、
 この距離で失礼します」

ボーとの距離を一定に保ったまま、
桐雨は静かに口を開く。

「それは私がこの殺し合いに“乗って”いるのか
 如何かという事か?」
「エェ、言葉では何とでも言える事」

互いの言葉の間に緊張が走る。
確かにそう簡単に信用が置ける状況ではないこの場では
先程のボーの言葉も『ブラフ』と取られても仕方が無い事なのかも知れない。

「……下らんな。 私はこんな悪趣味な行為は嫌いだ。
 第一、人を如何こう言うのなら貴様も袖口に隠した物は何なのだ?」

距離を取ったまま、ボーは桐雨の袖口を指差す。
ボーに気取られぬ様に死角に隠していた筈のそれを見破られて
桐雨も少し目を伏せた後、ボーに見えるように隠していた物を取り出した。
トンファーのような形をした奇妙な剣、神慮伸刀である。

164 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:39:03.16 ID:gnnfPYEI [5/10回発言]
「気を許せる相手か分からなかった為、
 この様な無礼をしました。
 騙まし討ちに用いる気はありません」

そういって、2対有る内の一振りを地面に降ろし、
もう一振りだけをその手に持つ。
自らアドバンテージを捨てるその行為にボーは素直に感心する。

「成程、私の知っている日本人達よりよほど好意が持てる。
 ……だが、貴様の方こそこの殺し合いを如何思っているというのだ?」

先程から桐雨はボーに探りを入れているが
まだ、己の本心は明かしてはいない。
疑われてばかりで腹が立っていたというのも質問の意図にはあるのだが。

「……私は金剛番長の刃です。
 彼があの男に逆らうと決めたのなら、
 私はその言葉に殉ずるのみ」

まるで、待ちわびてきた者がやっと来たかのような
それまでとは違う穏やかな雰囲気で桐雨は
その場には居ない者の事を語る。
対峙してから初めて見せた桐雨の
その表情にボーは首を捻る。

「……あの男に逆らう?
 貴様はあの場に居た誰かの知り合いか?
 ……ん? あぁ、あの筋肉達磨か!?」
「貴方も対して人の事を言えた容姿ではないと思いますが……」

ポンっと相槌を打ったボーをジト目で眺めつつ、
桐雨は神慮伸刀を懐に収める。
それをボーは意外そうに見つめていた。

「良いのか? いきなり私が襲い掛かってこないとも限らんのに」
「人となり程度なら判別が付きます。
 隙は何度か見せていた筈ですが、
 それに乗じる心算も無いようですし」

先程まで発していた静かな殺気も成りを潜め、
ボーに対して警戒するのを止めた桐雨は
静かに歩み寄っていく。

165 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:39:57.79 ID:gnnfPYEI [6/10回発言]
「しかし、あなたも相当な変わり者だと思います。
 相手がどれ程の力量かも今だ分からぬのに」
「相手の力量などは関係は無い、
 大事なのはそれを許せるかどうかと言う事だ」

腕を組んで胸を張るボーの脇を桐雨はそのまま通り過ぎていく。

「ムッ!? お、おい、何処へ行く?」

一瞬、協力する流れになっていたのかと思った
ボーは桐雨のその動きに拍子抜けする。

「先程も言いましたが、
 私のこの身は刃として余計な露を払うべき身。
 申し訳無いですが、貴方に敵意が無いのであれば
 これ以上の関わりは不要」

それだけを告げて、桐雨はさっさとその場を去っていく。
一人、取り残されたボーはポツンと佇んでいた。

「……何だったのだ、一体?」

如何したら良いのか分からずに先程までの威勢は何処へやら、
所在無げに頭を掻きながら如何したものかと思案する。

「おぉ、そういえばここが何処なのかわからんではないか!
 ……あれに何か入っているのか?」

先程の落下で少し離れていた場所に落ちていたデイバックを
拾おうとボーが歩き出した途端、
その側の脇道から誰かが草木を分けて進む音が聞こえてきた。

「……次は何が出るか。
 それにしても何故こうも人が集まる?」

先程、居合い番長にされた注意もあまり意に介さずに
頭を過ぎった疑問に首を捻りつつ、
速やかにデイバックを拾い上げてボーは
向かって来る者に対して構えを取る。
物音の主はまず草を分けた手から、
順を追ってリーゼントに固めた髪の毛がひょっこりと
突き出て、最後にその全容を現した。

166 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:40:40.20 ID:gnnfPYEI [7/10回発言]
「おっ? 何だ五月蝿い声が聞こえてたから来たのに
 居るのはおっさん一人かよ」

そう良いながらリーゼントの少年は
身体に付いた木の葉を払いつつ、服装を整えていく。

「子供……だと? 何故このような所に?」

予想とは違う意外な人物の登場にボーは顔を引き攣らせる。

「なんという事だ、あの卑劣漢め!!
 この様な子供まで無理やり連れてくるとは
 尚更、許せん!!」

一人憤るボーの側でリーゼントの少年は動きを止めていた。
その身体は微かに震えている。

「如何した少年? やはり、怖いか?
 だが、安心しろ。 君はこの私が守ってやろう!」
「誰がガキだ、コラー!!
 さっきから喧嘩売ってんのかおっさん!」

ボーとしては優しげに肩に置いた手を
思いっきり跳ね除けられた上、
予想とは全く違う反応にボーは驚く。

「俺は誰かのお守りになんて成る気はないんだよ、
 すっこんでろ、おっさん!」

リーゼントの少年は怒りに身を震わせながら、
ボーに対して凄む。
それをやれやれといった感じで受けながら、
ボーは少年へと向かい合う。

「これだから子供はいかんのだ。
 少し身の程を知るが良い」

その言葉を言い切るか否かという瞬間に
ボーの姿が掻き消える。

167 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:40:41.60 ID:f9OChwks [2/8回発言]
  

168 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:42:32.38 ID:qhh5lLC4 [1/13回発言]
shienn

169 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:42:42.93 ID:gnnfPYEI [8/10回発言]
「……なっ!?」

目の前で起きた事に瞬時に理解出来ずに動揺する
少年の肩を背後から誰かが叩く。
慌てて振り向いた少年に対して、

「喰らえ、デコピンッ!」

その額をピシッと指で弾く。

「如何だ? これで分かっただろう。
 分かったら大人しく――」
「……上等だ、コラ」

額を押さえていた少年の雰囲気が変わる。
拳を握り締めて、ボクシングのような構えを取り
ステップを踏み始める。

「おっさんにも俺の力を分からせてやるよ。
 ギアを入れるぜ、ドラグナー・ナグル!!」

少年が奇怪な言葉を叫ぶのと同時にその動きが急加速する。
それは余裕で受け流す心算であった筈のボーですら
慌てて体勢を整えるほどに。

「殺すつもりはねぇが少し痛い目にはあってもらうぜ。
 ブロォォォォッ!!」

少年が繰り出す高速のジャブを身を捻りながら避けつつ、
ボーも少年の動きに素直に感心する。

「その歳で大した速さだ。
 だが、この程度では私に拳を当てる事など出来んな」

少年の動きにも慣れ、余裕を取り戻したボーが不敵に笑う。

「まだだ、ギアを上げるぜ!
 セカン・ナグル!」

再び少年が叫ぶのと同時にその動きが更に加速する。

「な、なんと! この私についてきはじめているだと?」

ボーの表情からも徐々に余裕は無くなり、
真剣に少年の動きに対応し始める。
だが、余裕を捨てたボーの動きにはまだ今の少年では
追いつく事は出来ずにいる。

「……嘘だろ? ただの人間の動きじゃねぇ。
 いいぜ、なら更にギアを上げる!
 サーズ・ナグル!」

最初は怒りでのみ動いていた少年もボーとの
意地と意地とぶつかり合いを徐々に楽しみ始めていた。
ボーにしてみても、ここに来て更に動きを早める少年に
満更ではない楽しみを覚え始める。

170 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:43:05.20 ID:f9OChwks [3/8回発言]
  

171 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:43:38.97 ID:gnnfPYEI [9/10回発言]
「ブロォォォォッ!!」
「何の分身の術!」

お互いがお互いの強さを認め、
真剣に対峙する中で二人の表情はむしろ嬉々としている。
それまでの経緯や何故こうなったのかという理由も忘れ、
ただただ互いにぶつかり合う。
少年の繰り出す無数のジャブやストレートを
ボーは様々な技を駆使して避ける。

「ハァ…ハァ…な、中々やるではないか。
 だ、だがまだまだだな」
「フゥ…クッ…ぬかしやばれ、おっさん。
 息が上がってきてるじゃねーか?」

いつの間にか二人の間に「当てたら勝ち、当てられたら負け」という
ルールまで出来上がり、止める者も無く続くかに思えた。

だが、

「それまで!!」

二人の間に割って入るように一人の人物が躍り出る。

「ウッ、君は…」
「誰だよ、あんた!」

その人物の姿にボーは動きを止めるが、
少年は勝負を止められた事に腹を立てて
その人物に食って掛かろうとする。
その首筋に冷たい感触が当たる。

「……ウッ!?」

いつ当てられたのかすら分らぬ程に
気づいた時には既にその首筋に剣を当てられている。

「落ち着きなさい。
 これ以上は互いに怪我では済まなくなりそうでしたので
 止めさせて頂いた」

そう言って少年の首から剣を離し、
桐雨は剣を収める。

172 : 残される者 ◆imaTwclStk : 2011/03/01(火) 01:44:18.87 ID:gnnfPYEI [10/10回発言]
「君は去ったのではなかったのか?」
「あのように騒いで居れば否応でもなく気づきます。
 先程、警告した筈ですが」

眉を顰めつつ、ボーの質問に答えた上で
更に桐雨はボーを詰問する。

「あ、えぇと、それはだな…」

目を泳がせつつ、言葉に詰まるボーを尻目に
やる気を削がれたのか少年も息をつくと
その場を去ろうとする。
だが、ふと思い出したように二人へと向き直り、
少年は口を開いた。

「なぁ、あんたら。
 髪はこんくらいの長さでいい匂いがして、
 帽子を被った女を見なかったか?」

ジェスチャーを交えつつ、
出来る限り分りやすく二人に容姿を伝えるが
二人にはその女性の面識は無い。

「すまないが、知らんな」
「私も見てはいない」

その答えに若干の落胆は見せつつも
少年はボーへと向き直る。

「…勝負はお預けだ、おっさん。
 俺はテッド。
 まぁ、お互いに生き残ってたら
 いつか決着をつけようぜ」

テッドなりの言葉を残して、
その場を去ろうとするのをボーが止める。

「待て、テッドとやら。
 探し人がいるのなら、
 この私が手伝ってやるのもやぶさかではない」

173 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:45:07.82 ID:f9OChwks [4/8回発言]
  

174 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:48:59.09 ID:qhh5lLC4 [2/13回発言]
shien

175 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:49:39.06 ID:f9OChwks [5/8回発言]
  

176 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 01:49:45.86 ID:+dXB1xMN [1/1回発言]
   
 


177 : 残される者 ◇imaTwclStk 氏代理 : 2011/03/01(火) 01:52:23.41 ID:f9OChwks [6/8回発言]
先程とは違い。
テッドの力を認め、軽んじる事を止めたボーが
真剣な表情でテッドに提案する。
その言葉をテッドは少し迷った上で
やんわりと断った。

「悪いが、あいつを探すのは俺の目的なんだ。
 生憎とそれ以外の事に構ってる余裕も無いし、
 それに巻き込んじまう訳にもいかねぇしな」

あとはそれ以上はボーの答えも聞かずに
「じゃあな」と一言だけ告げて、
テッドはその場を後にする。

「……では、私ももう行きます。
 今のような手助けは今後はするつもりは無いので、
 慎んでください」

場が収まった事を確認して、
桐雨もボーに警告だけはしっかりとし、
早々とその場を去っていく。

再び取り残された形になったボーは
取り敢えず荷物を確認することから入る事にした。

【D-1 裏山/一日目 黎明】

【ボー・ブランシェ】
[時間軸]:COSMOS戦にて死亡後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:弱者を助けつつ、主催者を倒す

【桐雨刀也(居合番長)】
[時間軸]:日本番長戦決着後
[状態]:健康
[装備]:神慮伸刀@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:金剛番長の刃として、彼に敵対する者を倒す

【テッド】
[時間軸]:ファウード戦合流前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:チェリッシュの捜索

【支給品紹介】

【神慮伸刀@烈火の炎】
桐雨刀也(居合番長)に支給された。
使用者の意志のままに刀身が伸縮する二本で一組の魔導具(トンファー型の刀)。


178 : 残される者 ◇imaTwclStk 氏代理 : 2011/03/01(火) 02:03:31.00 ID:f9OChwks [7/8回発言]
以上 代理投下完了です

179 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 10:55:28.00 ID:qhh5lLC4 [3/13回発言]
遅れました。これより投下します。

180 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 10:59:34.99 ID:qhh5lLC4 [4/13回発言]
おとぎ話のストーリーとはなんともまあ、上手く出来たものだと思いませんか。
人と人、動物と動物、挙句の果てには太陽や風、海に山、全てのものに生命の息吹が吹き込まれていきます。
そして生まれるのは滑稽な喜劇、救いのない悲劇。
読者はそれを読み、笑い、泣き、怒り、そしてまた笑う。

見る者が変われば、見る物を変えれば、そこで生まれる『感情』はなんと多いことでしょう。
それはさながら陽気な動物園、走り回るやんちゃ坊主たちの饗宴でございます。
そうして生まれた感情は次なる町を目指し、パレードを続け、また感情が生まれるのです。

さてさて、そろそろお客さまも焦れるころ合いでしょう。ならばいざ行かん、今回の物語の中へ―――

真夜中に浮かんでいるのはまん丸お月さま。
黄金色に輝く宝石はスポットライトのようにあたりを照らしております。
誰もいない、無人の遊園地も。
穏やかな波をたてる港も。
閑散とした、寂しげな駅のホームも。
舞台は整いましてございます。後は開幕のベルを待つだけ……。

鳴らすならば、どうぞお鳴らしください。
進むならば、どうぞお進みください。
さぁ、おいでらっしゃい、見てらっしゃい。
激しく、情熱的に燃えさかる太陽と、一人の少年の物語。

飛び込むならば躊躇わず! 知りたいのならば躊躇せず!
恐怖のあまり足が竦むというのならば! ご一緒しましょう、このピエロめが!
開幕ベルを鳴らせていただきます。この物語の名前は―――




『太陽の人形芝居』でございます。





★

181 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 10:59:56.73 ID:qhh5lLC4 [5/13回発言]




見渡せば目に映るのは古びれた門、急傾斜な階段と古風な寂れたお守り売り場。
確認するまでもない、地図を開き一目で現在位置はわかることだろう。
ここはC-6、寺。
人影もなく、草を踏みしめるような音もないこのお寺。
風が吹き抜けていくと、高い竹が揺れ、こすりあわされた木の葉がサァ……とやわらかな音をたてた。
静寂は突然破られる。階段を荒々しく登る音と話声、元気の良い少年の声だ。続いて聞こえる声は老人のものだ。

「うぬうおおおおおおおお!」
「なんの~~~まだまだ若いもんには負けんぞ~~~!」

最後の力を振り絞り健闘するも、やはり衰えた肉体には敵わず少年が先に階段を上りきった。
少しだけ得意げな顔を浮かべ、彼は振り返る。呼吸を荒く登って来る老人は悔しげに顔をしかめるが、頬笑みを投げかける。

「気持ちがあっても体ついてこない……まったく年はとりたくないもんだ」
「だが正二も凄く早かったのだ! 私はかけっこでは自信があったのだがもっとトレーニングを積まなければ!」
「へっへっ、これ以上早くなられたら困るぞ」

生命力の塊のような少年と、年の割にしっかりとした身体の老人。
少年の名はガッシュ・ベル。金髪金瞳、体の小ささを遥かに超える勇気と力を持つ魔物の子。
だがあくまで子供は子供だ。
突然殺し合いの舞台に放り込まれた彼は、混乱と心配から脇目も振らず辺りを走り回っていた。大切なパートナー、高嶺清麿を探して。

「それでガッシュ君……なんと言ったかな? 王を決める戦い、だったかな?」
「うぬ! そうなのだ!」

寺の境内、階段に腰掛けると老人は先の記憶を思い出す。
警戒に警戒を重ね、歩きまわっていたところ角を曲がったところで少年と正面衝突。
慌てて身を起したところで相手はただの子供だと気付き、とりあえず成り行きでここまでやってきた。
地図上で一番近かった寺に向かってのかけっこは久方ぶりの運動としてはいささかハードであったが。

ガッシュがつたない言葉ながらも懸命に説明を始める。
曰く、王を決める戦いとは100人の魔物の子供たちが人間界に送りこまれ行われるバトルロワイアルであると。
曰く、魔物の子供たちはパートナーとともにこの戦いを勝ち抜かねばならないと。
曰く、その闘いにおいて中心を担うのが……

「この赤い本か……」
「そうなのだ!」


182 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:00:26.53 ID:qhh5lLC4 [6/13回発言]

最初は子供の戯言だと受け流していた。
今時はやりのテレビアニメか、ゲームにでも影響を受けたのだろう。
そもそもガッシュの見てくれは明らかに日本人のものではない。もしかしたら異国の地ではそんな物語が流行っているのかもしれない。
しかし……老人は横目で金色の少年の様子を探る。
純粋無垢、という言葉がぴったりの幼い表情。しかしその容姿とは裏腹に、ガッシュには子供では到底持ちえない力を持っていた。
例えば、純粋な身体能力。例えば、その荒唐無稽な話の中でも矛盾がない辺りにも現実感がある。

考え事の最中、パラパラと本のページをめくっていく。
子供につきあって作られた悪ふざけだとしても随分としっかりした作りだ。表紙が革でできてるあたりも手が込んでいる。
不意に、とある一ページが目に飛び込んできた。
外国の文字、奇妙にくねる横文字は理解できないにもかかわらず、老人の頭の中に言葉として入り込んできた。

「ガッシュ君……これは?」
「ぬ?」
「……ザケル、と読めるのか……ッ?!」

読める、だから読んだだけであって決してこうなるとは予期していなかった。
いや、話を知らないものならば誰だって予期できないだろう。
寺に腰かけていた二人、問いかけに振り向いたガッシュの顔は老人のほうへ向けられていた。
そして唱和された魔法の言葉―――第一の呪文、ザケル。
口から放たれた雷撃は老人の前髪をかすめ、奥の竹やぶの中に吸い込まれていった。
爆発音と同時に煙、そして振動。
砂埃が舞う中、二人は目の前の現実に呆然としていた。今、一体何が起きたのか―――理解できたものは誰もいなかった。

ガッシュは困惑していた。彼にとってパートナーは清麿であり、それ以外の人物に本が読めるわけがないのだ。
故に今何が起きたのかはわかっても、理解が追いつかない。どうして自分が呪文を発動できたのか、それすらもわからなかった。
老人も同様であった。子供の口から雷が飛び出てきた。それはわかった。だが果たして『常識的』に考えてそんなことが理解できるだろうか。
魔物の子供、ただの戯言だと思っていた。子供だましのものだと思っていた。しかし、確信した。
いや、するしかない。この子の力は本物だと。

「ガッシュ君……これはまさか……」
「どういうことなのだ! なんで正二が本を読めるのだ!? 私のパートナーは清麿のはずなのだ……」
「…………」
「まさか、清麿の身になにかが……?!」
「ガッシュ君……」
「ぬ……?」


183 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:04:41.60 ID:qhh5lLC4 [7/13回発言]

おろおろ辺りをうろつき始めるガッシュ。しかし老人は動かなかった。
視線は焦げた竹やぶに釘付け、屋根が作り出した影で表情は見えない。
しかし圧倒的な圧迫感があった。ガッシュが思わず黙りこむほどの。ガッシュが思わず動きを止めるほどの。

「君は確かに魔物の子供のようだね……」
「う、うぬ……さっきから私はそうだと言っていたぞ、正二! それにしてもどうして……」
「とすると、さっきの王を決めるゲームも本物だろうね」

サッと立ち上がったスピードは老いた人間のものとは思えないもので。
有無を言わせぬ迫力が、その言葉には込められていて。
視線を合わせるためにしゃがみ込んだ老人はゆっくりとガッシュと視線を合わせる。
表情には頬笑みが浮かび、湧き出る迫力とは対照的な柔和な表情にガッシュは少しだけ安心した。

「うぬ」
「ならば正直に答えてくれ、君はこの力で勝ち抜いて、どんな王になるつもりなんだい?」

ガッシュの脳裏によぎったのは、ついこの前消えてしまった心やさしい一人の少女。

    『どうしてこんな戦いがあるのかな……』

辛かった。悔しかった。その言葉は、彼女と闘った彼自身も体験し、感じた本物の言葉だったから。
王さまになりたい、誰もが泣かない、そんな物語があってもいいのではないか―――!
肺いっぱいに空気をため込むと、ふっと力を入れた。
瞳にはこれ以上ないほど光り輝く黄金の意志。王になる、王になりたい。
誰もが笑って暮らせる、本当のハッピーエンド―――!

「私は優しい王様になるのだ!」


その姿は黄金に輝く太陽、そのものだった。


―――風が吹き抜けていった
林が揺れ、やがて静寂が訪れる。
力強い宣言に、強固な意志を宿した瞳を見て老人はふっと息をもらし目を閉じる。
そうか……と呟くと、ガッシュの肩を力強く握り締める。
そしてやわらかな微笑みを浮かべ、目を開くと、こう口にした。


184 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:13:03.61 ID:qhh5lLC4 [8/13回発言]









「馬っ鹿じゃねーの、お前」







ボキッと嫌な音が寺に響く。同時にガッシュは老人に手を置かれた肩のあたりに強烈な熱を感じた。
腕に力が入らなくなる。痛みに思考が追いついてこない。そもそも痛み以前に、あまりに一気に情報量が襲いかかってきた。
本は―――どうして? 正二は―――今、何と言った?
だがガッシュの思考はそこで途切れる。首筋に衝撃を受けた彼は、身体がフワッと浮かび上がったような感覚とともに、闇に落ちていくのがわかった。
最後に彼が見たのは老人がこちらを見下ろす光景。


優しさの影は微塵もなく、地べたに這いずりまわる虫屑を見るような眼……貼り付けられていた笑みは暗く、深いものだった。

その姿はどす黒く燃える太陽、そのもだった。





185 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:17:18.68 ID:qhh5lLC4 [9/13回発言]

★




フェイスレスは考えた。
ゲームが始まり、名簿を取り出し真っ先に考えた。
錬金術師の最高傑作『賢者の石』を作り出した大天才でも目の前の問題は困難極まりないものだった。
時間が欲しい、器具が欲しい、人出が欲しい、安全な場所が欲しい。とにかく『考え』たかった。
とりあえず必要なものを上げればキリがなかった。故に彼は物思いにふけりながら道を歩いていた。
そして閃く―――それは論理的なものではなかったが、彼はそれをひどく気に入った。
いたずら小僧がとびっきりの悪事を閃いた、例えるならばそんな感じだ。

フェイスレス、才賀貞義、ディーン・メ―ストル、白金。
結局のところ彼の望みは一つで、怨みも一つだ。

望みは―――愛しの彼女(フランシ―ヌ、アンジェリーナ、エレオノ―ル)を手に入れること。
怨みは―――愛しの彼女をかっさらっていった恋仇達(白銀、才賀正二)。

当然愛する人は手に入れる。それが彼の人生の目標なのだから。
ならば恋仇は野放しのままか? 答えはNOであり、彼が思いついた悪戯そのものでもある。
ディーン・メ―ストルとして彼が生きていた時、彼が得意としていたことは何か?

『変装』である。
それも憎き相手、才賀正二その人に彼は何十年もの間なり変っていたのである。
その続きをこのゲームでしてやろう―――そう、ただの『ゲーム』だ。

嫌な噂をバラまき、悪評を広め、人殺しの狂った老人、才賀正二―――彼がこの舞台で演じる役はそれにきまった。



「出だしは好調かな?」


勿論愛する人に出会った際、首輪がついたままじゃ洒落ていない。
解除の方法、主催者を出し抜く方法、考えるべきは色々ある。
だがどれも問題ない。なんせ彼は『天才』なのだから。横道にそれて、ちょちょいのちょいで首輪解除なんて成し遂げてしまうだろう。
寺の階段を下り、荷物を担ぎなおすと彼は赤い本を手の中で開いた。
これは彼のちょっとした好奇心―――未知のものを探求するのも錬金術師の役目。

「肩の関節を外すだろ? 少年の夢を叩き潰すだろ? あと……窃盗か。
 まー最初から飛ばしすぎても、なんだしね。これぐらいでいいかな」

興味はつかない。
どうやって参加者を集めたのか? 何が目的なのか?
ガッシュのように、彼が知り得ない未知のものがここにはあふれてるのか?
どうして死んだはずの人物が参加者として呼ばれているのか?


186 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:21:10.24 ID:qhh5lLC4 [10/13回発言]

「ま、なんとかなるよね」



今はとりあえず、精一杯楽しもう。
そう考えを切り替えると『才賀正二』は―――笑った。





【C-6寺付近 一日目深夜】
【フェイスレス】
[時間軸]:28巻、勝にゲームを申し込んだ後
[状態]:健康
[装備]:魔本(ガッシュのもの)
[道具]:ランダム支給品0~3(ガッシュのものを含む)、基本支給品一式×2
[基本方針]:愛しの人を手に入れる。『才賀正二』を演じ、悪評を広める。






187 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:24:27.87 ID:qhh5lLC4 [11/13回発言]
★




男は走った。
名簿に記された名前は愛しの妻の名前、娘の名前、親友の名前。
冷静でいられるはずがなかった。じっくり殺し合いについて考えている暇などなかった。
ただ我武者羅に走る。愛する人を守るため。目に入れても痛くない、可愛い娘を守るため。

戦いの音に向かったのは本能的なカンだった。
そして同時に、もしあの戦いに家族が巻き込まれたら―――その恐怖からだった。
階段を2段飛ばしで駆け上る。肺が苦しい。構うもんか―――娘は、妻はそれ以上の危機に晒されているのかもしれないのだから。
登りきった先、高台にある寺。倒れ込んだ身体にビクリ、と反応してしまった。
だが違った。倒れていたのは少年。幼い、保護すべき少年。

正二は少年に駆け寄った。そして抱きかかえる―――その少年がどんな目に会ったかなぞ、夢にも追わずに。





【C-6寺 一日目深夜】
【ガッシュ・ベル】
[時間軸]:コルル戦直後
[状態]:気絶、両肩脱臼
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:優しい王として、泣く者がいないように頑張る(?)

【才賀正二】
[時間軸]:25巻、エレオノ―ル誕生直後後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:妻と娘を守る。





★

188 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:26:52.70 ID:qhh5lLC4 [12/13回発言]








いかがでしたでしょうか?
果たしてこの物語は喜劇? それとも悲劇?
いやいや、まだまだ論じるには早いところでしょうね。なんせ彼らの物語はまだまだ始まったばかり。
序章の序章、プロローグにも満たないものなのかもしれませんのだから。

残された黄金の太陽はいったいどうなるのか。真黒焦げの太陽は何を飲み込むのか。
私の役はここまででございます。後はあなた方がどのようにこの物語を紡いでいくか。
戯言はここまでに。道化は踊らなければただの愚者。今後の運命は機械仕掛けの神にでも祈ると致しましょう。
最後になりましたがご挨拶を。
それでは皆様、またのご来場お待ちしております……その時まで、御機嫌よう………。


189 : 『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2 : 2011/03/01(火) 11:30:44.28 ID:qhh5lLC4 [13/13回発言]
以上で投下完了です。
誤字脱字等ありましたら指摘よろしくお願いします。

190 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 14:13:20.40 ID:AmpdUY0/ [1/2回発言]
投下乙です
汚いなさすがフェイスレスきたない
ガッシュはどうなるのか…疑心暗鬼にならないと思うけどフェイスレスの印象は強いからなあ

191 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 14:14:26.16 ID:AmpdUY0/ [2/2回発言]
あ、あと>>187の
夢にも追わずに
は
夢にも思わずじゃないんですか?

192 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 17:44:14.72 ID:f9OChwks [8/8回発言]
お二方投下おつです

残される者 ◇imaTwclStk

しょっぱなから暑苦しいww
ボーはギャグ要員として最適ですな
テッドとの殴り合い(?)ってのはまさに少年漫画の王道
拳で分かる友情ってヤツですね



『太陽の人形芝居』 ◆jwqtetXMG2

しょっぱなから外道すぎんだろフェイスレスw
まさか正二に化けてるとは思わんかった
序盤のほのぼのしてたシーンから一気にきたなぁ
ガッシュと正二がこれからどうなんのか……
勘違いからの殺し合いは多分ない、っていうかなって欲しくないな

193 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/01(火) 19:45:32.79 ID:TSGklFrA [2/2回発言]
投下乙です

ボーwww サーズ・ナグルまでついていくとはww さすがだw
一人で探しに行ったテッドはチェリッシュに出会えるかな

フェイスレスは外道だな 肩を分解された上に、所持品全てパクられたガッシュの明日はどっちだ!?
正二はアンジェリーナは死んでるし、唯一の友と言えるギイは殺し合いに乗っているし、フェイスレスによって悪評バラ蒔かれるしで災難すぎるw

194 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:37:04.09 ID:+XwsYdMw [1/7回発言]
投下します。

195 : こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:38:27.41 ID:+XwsYdMw [2/7回発言]


 そこは、ひどく暗かった。
 とはいえ彼方から伸びる市街地の灯りはぼんやりと見て取れるし、上空では月や無数の星が燦然と輝いている。
 だがそれらが認識できるということは、つまりよっぽど他の光がないということだ。
 そんな場所で、一人の少年がたたずんでいる。
 彼の存在は、闇夜のなかでとても異質だった。
 浮いている、というか――どうも馴染んでいないのだ。
 周囲に比べて、あまりにも色がなさすぎる。
 見た目が、という話ではない。
 Tシャツもズボンも、無地の白い物を纏っているが。
 額には包帯を巻いているし、肌だってとても白いが。
 そういう、表面的な違和感ではなく。
 まるでこの世界に本来いるべき人間ではないかのような――そんな、気配を放っていた。
 彼の名は、ロベルト・ハイドン。
 親の欲のために人間界へと堕とされ、彼の力を恐れる人間たちに虐げられてきた天界人である。

「殺し合え、か」

 誰にともなく呟いて、ロベルトは天を仰ぐ。
 これまで彼は、人間たちを空にある星のようなものだと思っていた。
 太陽のような強い光には隠されてしまうほど、ちっぽけで弱い。
 他の星が隠れてしまっていても見向きもせず、自分だけは輝いたまま。
 群れているように見えて、実際の距離はとても離れている。
 だからそんな貧弱で自分勝手な種は、滅ぼしてしまう――つもりだった。
 しかしその考えを否定しようと、ロベルトの前に立った少年がいた。

「植木くんに佐野くん、君たちは……考えるまでもないか」

 この場にも呼ばれているらしい植木耕助である。
 彼と彼の仲間たちは、身体を張って主張したのだ。
 人間は弱いけれど強くなれる、と。
 ロベルトはその主張を馬鹿げていると一蹴したが、それでも引き下がり――
 『レベル1』にすぎない彼らは、『レベル2』であるロベルトに一発叩き込んだ。
 弱くて最後には保身に走るはずの人間が、死の恐怖を越えて立ち上がってきたのである。
 彼らが殺し合いに乗るはずがない、とロベルトは断定した。

「僕は――どうするかな」

 これまでのロベルトならば、迷わず参加者の全殺害を目指しただろう。
 優勝の褒美を信じきっているワケではないが、そうせねば次の神を決める戦いに復帰できないのだから。
 恐怖に歪み本性をさらけ出してしまう人間たちを鑑賞するのも、さぞ楽しめただろう。
 だが――と、ロベルトは考える。
 彼の脳裏を過るのは、恐怖を前にしても自分ではなく仲間のために立ち上がった植木たちの姿だ。
 はたして、人間は本当にただの弱虫なのだろうか。彼らのような人間も他にいるのではないだろうか。
 最近、そのような考えがロベルトのなかで膨らみ続けている。
 唯一心を許している父親に相談しようかとまで、思っていたのだ。
 そんなときに呼び出されてしまい、ロベルトは頭を悩ませる。

「……ッ」

 ロベルトが、唐突に思考の渦から復帰する。
 小さな光が見る見る接近してきているのだ。
 目を凝らして、近付いてきているのが自転車だということは分かった。

(なぜ、このような他に人がいないところに――まさか!?)

 人間が己だけを大事にする生き物ならば、問答無用で仕掛けてくることもあるはずだ。
 ならば自分を轢き殺すつもりか、と憶測して身構える。

196 : こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:39:46.93 ID:+XwsYdMw [3/7回発言]

「む?」

 いつでも能力を発動できるよう備えていたロベルトが、意図せずポツリと漏らす。
 凄まじい勢いで迫ってきた自転車は、すぐ横を通って遠のいて行った。
 金色の髪の包帯で押さえられいない部分が、大きく風に揺れている。
 予想していなかった事態に戸惑うロベルトの後方から、大気を切り裂くような高音が響く。
 即座に振り返ってみると、自転車と人間が宙を舞っていた。
 急なブレーキに対応しきれなかったのだろうか。

「……なんなんだ」

 あまりにも正直な感想が、ロベルトの口から零れた。
 呆れたような視線を向けられながら、運転手だと思われる女性は空中で身を捻る。
 二回ほど回転して姿勢を立て直し、自転車のハンドルを掴み取って、車体を己の下へと持っていく。
 足だけをペダルに乗せてサドルに腰を下ろすことはせず、両腕を伸ばして脚を内側に畳み込む。
 そのままの状態で重力に身を任せて落下していき、地面に接触する瞬間に脚を伸ばす。
 結果、彼女は服や自転車を土で汚してしまうことなく、着地した。
 こともなげに決められたアクロバットに、ロベルトは息を呑んだ。
 同時に、自分自身のことを差し置いて、銀の髪と白いチャイナドレスを風になびかせていた彼女に浮いているような印象を抱く。
 浮いている少年に浮いていると思われた女性は、「しまった」などと呟いてペダルを踏んだ。
 またしてもロベルトを抜き去り、ブレーキをフルに握るも今度は後輪が軽く浮くくらいで済み、小さくUターンしてから地面を足で蹴って進み、ようやくロベルトの隣で静止する。
 自転車のスタンドを勢いよく蹴り、あまりに強すぎて元の場所に戻ったスタンドをさらに蹴り、また戻ったスタンドを今度は足を添えて下ろすことでどうにか停車させる。
 恐る恐る自転車から手を離して倒れないのを確認してから、ロベルトの肩へと手を伸ばす。

「おっ、おぼっ、お坊ちゃっごほっ……ごほっ! お坊ちゃま! お坊ちゃまは、どこでどうして何をしていらっしゃるのでしょう!?」

 ロベルトの身体を激しく揺さぶりながら、女性は問いただす。
 暗闇から舞い下りた姿からロベルトが感じた幻想的な雰囲気なんて、もはやどこかへ消え去ってしまっている。
 近くで見てみると、一本一本が細い銀色の髪はところどころが跳ねてしまっており、顔は汗ばんでいた。
 掴まれている箇所がじんわりと湿ってきていることに気付き、ロベルトは女性の手を払いのけて水の入ったペットボトルを取り出す。

「とりあえず冷静になってくれないか。なにも分からない」

 蓋を開ける前から手渡したボトルがひしゃげてしまっていたので、ロベルトは自身の能力を発動させる。
 強く握っても歪まず割れることもない理想的なボトルに入った水は、女性に一気に飲み干されてしまった。


 ◇ ◇ ◇


「つまり、エレオノールさんは――」
「『しろがね』で構いません」
「しろがねさんはその勝くんを守るために探している、ってことかな」
「はい、その通りです」

 しろがねと名乗った女性の頷きに、ロベルトは安堵の息を吐く。
 水を飲んで落ち着いたかと思いきや、そこからこの情報を聞くだけのためにかなりの時間がかかった。
 落ち着くために行わせた深呼吸さえ、しばらくうまくできていなかったのだ。
 くわえてロベルトに人を休ませた経験などなく、どう対処すべきなのかも分からなかった。

「『守るため』か……」

 左手で口元を押さえて、ロベルトは思考を巡らす。
 この殺し合いで生き残ることができるのは一人だけ。
 だというのに、自分を守る力もないという子どもを守る。
 それが、どうにも信じられなかった。

「ロベルト、あなたはお坊ちゃまを――」
「なぜだ」

197 : こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:41:17.31 ID:+XwsYdMw [4/7回発言]

 だから、ロベルトはしろがねの言葉を遮って問いかける。

「こんなときに、どうして他人を守ろうとする」

 しばらく目を丸くしてから、しろがねは僅かに頬を緩めた。

「私は、命に代えてもお坊ちゃまをお守りすると誓ったのです」
「命に、代えても……」

 勝ち目など一片もないというのに立ち塞がった三人の姿が、ロベルトのなかに蘇る。
 恐怖を前にすれば弱い本性を出してしまうはずなのに、自分ではなく他人のために退かなかった植木たちの姿が。

「ふむ……なるほど、ね。
 勝くんのことは、まだ見ていないよ。小学生高学年の太眉の少年だったね。見付けたら、しろがねさんが探していたと声をかけておくよ」

 ロベルトの返答に項垂れてから、しろがねは思い出したように尋ねる。

「それでは、ギイ・クリストフ・レッシュという私と同じ色の髪と目のフランス人男性と、才賀正二という日本人でご年配の男性は――」
「同じく見ていないね」

 しろがねは、ついに首から上だけでなく大きく肩を落とす。
 思い詰めたようにしばらくそのままの体勢でいて、ようやくゆっくりと再び口を開く。
 微かにしろがねの表情に赤みが差したように、ロベルトからは見えた。

「で、でしたらっ! カトウナルミという――」
「しろがねさんと会うまで、僕は誰とも会ってない」

 いつまで質問が続くか分からなかったので、ロベルトはきっぱりと言い切った。
 それを聞いたしろがねは全身がしおれてしまったかのようによろめきながら、止めてあった自転車に向かっていく。
 サドルに腰を落として呼気を整えて、やっとしろがねはロベルトに向き直る。

「いろいろとありがとうございました。ロベルトのおかげで落ち着きました。では、またいずれ」

 それだけ言って、しろがねは再びペダルを踏み締める。

「お坊ちゃまぁぁ~~! しろがね! しろがねはここにいます!! お坊ちゃまぁぁあああ~~~!!」

 またたく間に小さくなっていく自転車を眺めながら、ロベルトは思案する。
 先日戦った植木耕助たちと、しろがねは同じことを言ったのだ。
 少し前ならば一笑に付していた内容だ。
 しかし実際に瀕死の重傷となっても立っていた植木たちを見ていたからこそ、それを知っているロベルトだからこそ、思う。

 ――――はたして、彼らの言葉は真実なのだろうか。

 たった一人だけしか生き残れないプログラム。
 常に死への恐怖が付き纏うこの状況で、人間たちは本当に自分だけのためじゃなく『他者のために』生きるのだろうか。

「…………確かめるとしよう」

 言い終える前に、ロベルトが履いていた靴の上に新たな靴が出現する。
 すなわち、天界人がその実力に応じて発現できる『神器』。
 全面に棘が生え、底にはキャタピラがつけられた――六ツ星神器『電光石火(ライカ)』。
 発動するや否や風を切るようなスピードを出し、しろがねが漕ぐ自転車を追い抜く。

「ロベルト!?」

 ぽかんと口を開けるしろがねの自転車を掴み、ロベルトはライカを減速させる。
 先ほどの急ブレーキとは違って緩やかな停車のため、車体が飛び上がってしまうこともない。
 完全に停止するのを待って、ロベルトは提案する。

198 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:41:28.57 ID:Mc4YBMuw [1/5回発言]
 

199 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:42:11.02 ID:Mc4YBMuw [2/5回発言]
 

200 : こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:42:25.95 ID:+XwsYdMw [5/7回発言]

「見ての通り、僕のライカのほうが早い。人を探すのなら手伝おう」
「ほ、本当ですか!? ですが……」

 一瞬だけ顔を明るくしたしろがねが、自分の身体を眺めながら言いよどむ。
 言わんとすることは、ロベルトにも分かった。
 しろがねの身長は女性にしては高いほうだ。スケートのように足にくっついたライカで運ぶには、彼女の身体を支えきれない。
 何せ、ロベルトはまだ中学二年生だし、そこまで鍛えているほうでもない。
 そのように、見えるのだろう。

「問題ないよ」

 ロベルトは右手の親指と人差し指で円を作り、そこから息を吐く。
 すると石鹸水につけたワケでもないのに、円から青色の小さなシャボン玉が出現した。
 そのシャボン玉を右手に乗せて、ロベルトはしろがねの腕を掴む。

「えっ!?」

 意図せず、しろがねから感嘆の言葉が零れた。
 握り締めた自転車ごと、持ち上げられてしまったのだ。
 しかもロベルトはそこまで力を入れたような素振りもなく、涼しい顔をしている。

「ありがとうございます、ロベルト!」
「……恐れないのか」
「恐れる? なぜですか?」

 圧倒的な力や得体のしれないものを人間は何より恐れる――ロベルトはそう思っていたし、それゆえに阻害されてきた。
 だというのに、しろがねはその力に感謝したのだ。
 植木との戦い以来、自分の考えは崩されかけてばっかりだな、とロベルトは胸中でささやく。

(僕が思っていた以上に人間とは深いものかもしれないな、植木くん。
 でも、やはりまだ、人間の正義が弱くて身勝手な本性を隠すための建前だという考えは捨てられない)

 下ろしたしろがねに自転車を仕舞わせてから、再び抱え込む。
 ロベルトは足元に意識を集中させて、ライカを再加速させる。

「じゃあ、まずはあの光が多いほうを目指すとしようか」
「ええ、私もそうするつもりでした」

 僅かな時間で最高速に到達したライカを操りながら、ロベルトは真剣な眼差しで前方を見据える。

(だからこの殺し合いの場で、僕は――――人間という種を見極めてやる)

201 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:43:02.14 ID:Mc4YBMuw [3/5回発言]
 

202 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:43:48.02 ID:Mc4YBMuw [4/5回発言]
 

203 : こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:44:09.14 ID:+XwsYdMw [6/7回発言]



【F-3 草原/一日目 深夜】

【ロベルト・ハイドン】
[時間軸]:9巻83話『そうだ!!』にて地獄から帰還して以降、9巻85話『アノン』にてアノンの父親に悩みを打ち明ける前。
[状態]:健康
[装備]:ライカ発動中
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(確認しているか不明)
[基本方針]:人間を見極める。ひとまずしろがねと同行し、人が集まりそうな街へ向かう。


【才賀エレオノール】
[時間軸]:28巻『幕間Ⅰ~「帰れない」』にて才賀勝と再開する直前。
[状態]:健康、焦り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、自転車@出典不明、残り支給品0~2(確認しているか不明)
[基本方針]:とにもかくにもお坊ちゃまを捜索し、発見次第守る。ナルミにも会いたい。
※名簿は『才賀勝』までしか確認していません。



【支給品紹介】


【自転車@出典不明】
ペダルを足で踏むことで進む二輪車。
特になにも思いつかなかったので、出典は不明にしておきました。
次以降で、現実出典でも何らかの作品出典でも何にでもしちゃっていいです。

204 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:44:41.59 ID:ybLiVdtZ [1/1回発言]
  

205 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 01:44:41.69 ID:Mc4YBMuw [5/5回発言]
 

206 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/04(金) 01:45:32.87 ID:+XwsYdMw [7/7回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。


前に書いたSSをwikiに収録していただきありがとうございます。
指摘された点をこれから修正しときますね。

207 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 04:37:54.38 ID:uD3nBkkn [1/1回発言]
細かい時期指定してる奴多いなあ
あんまりややこしくなるとやりづらい

208 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 04:51:53.13 ID:4Z67Su/r [1/1回発言]
投下乙!
ロベルトは絶対マーダーだと思ってた。でもこれも悪くない!
とはいえ、まだどっちに転ぶか分からない状態だなあ。これから誰に会うかが重要か。
しろがねは可愛いw サンデーキャラって自転車が似合うやつ多いよねw

209 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/04(金) 09:35:03.42 ID:IhDckdxS [1/1回発言]
投下乙!

しろがねかわいいw チャイナで自転車+アクロバットとか貴重なサービスシーンだな……
このまま仲良く協力できるか、それとも……これは気になるコンビが組まれたね。
面白かったー!

続きにも期待ッ

210 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:41:20.35 ID:MTO++Ygn [1/11回発言]
霧沢風子、横島忠夫 を投下します

211 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:43:09.76 ID:MTO++Ygn [2/11回発言]

高校一年生、霧沢風子。
火影魔道具の一つ『風神』の使い手。
彼女は紅麗の館、裏武闘殺陣、天堂地獄争奪戦と数多くの死闘に身を投じてきた。
先の戦闘で火影最凶の魔道具『天堂地獄』を手に入れた森光蘭の手により“治癒の少女”佐古下柳は攫われた。
友人である佐古下柳を取り戻す為
長きに渡る火影の因縁に終止符を打つ為
要塞都市SODOMに乗り込――――んだはずだった。

気付いたらあの大広間にいた。
キース・ブラックと名乗る男に殺しあえと言われた。
それに逆らった我紗喰を連想させるような大男が一瞬で消された。
烈火が外国人と一緒に立ち向かった。金色の獣も襲い掛かった。

その時の私は――震えていた。

――アザゼル
意識を取り戻した私は、誰かが呟いたその言葉を最初に耳にした。
その言葉が指し示す繭にも似た物体を見た瞬間に本能が叫んだ。

あれを絶対に目覚めさせてはいけない、と。

でも私の身体は動いてくれなかった。誰でもいい、あれを壊してくれと願った。
だけど、キース・ブラックの手により阻まれた。
無性にお母さんに会いたくなった。

視界が暗転して、気付くと森の中に私は立っていた。
先ほどの光景が夢や幻覚でないことは首にある冷たい感触が教えてくれた。

現在の彼女の腕には相棒ともいえる魔道具『風神』は存在しない。
左足に装着していた神慮伸刀も没収されている。
風神の小玉を全て使い果たして、もはや只の小手に成り下がったけれど、いざ無くなると心許ない。
自身の魔道具だけでなく緋水の意思を受け継いだ魔道具まで気付かぬ内に没収されてしまうことを情けなく思う。

死闘に身を投じるための気持ちの整理はできているつもりだった。
だけど、今の私に一体何が出来るのだろう。
私がもっと強かったら

柳は――

緋翠は――

カツミと呼ばれた女の子は――

――守れたんじゃないのか。


212 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:45:00.81 ID:MTO++Ygn [3/11回発言]

今までの力で守れなかったのに、魔道具を取り上げられた私で何かを守ることが出来るのだろうか。
火影の中でも……いや、きっとこの殺し合いの中でも私は弱い。
力が――大切なものを守れる力が欲しい。そう願わずにはいられなかった。

突然、大きな何かが飛び出し迫ってくる。
思考に気を取られていた風子は、襲い来る何かを防ぎきれない。
せめて衝撃に備えようと身体に力を入れる。

だが、一向に痛みはこない。弱気になった己の心が生み出した幻影だったのか。
いいや、違う。
身体全体に悍ましい感触が這いずり回る。



むにゅむにゅ



バンダナを額に巻いた男が抱きついている。
コアラのように足を絡め、そして男の手は高校生にしては豊かに育った風子の胸をしっかりと握り締めて。
抱きついている男と目が合う。
凍った時が緊張感と共に音を立てて崩れ落ちた。

「はっ! しまった! 草陰から様子見するつもりが、色っぽい身体を見たら、つい……!」
「いきなり何さらすんじゃ! このボケェェェェッ!!!」

風子渾身のエルボーが男の顔に直撃し、男の悲鳴が森に響きわたる。



◇ ◆ ◇


深夜に若い男が女子高生に土下座を続ける。
傍から見たら通報は間違いなし。
駆けつけた警察官による職務質問から社会的抹殺まではクー○ーも驚きの速度を叩き出すだろう。

男の名前は横島忠夫。
美神令子除霊事務所の奴隷…ではなく超薄給(時給250円)のアルバイトの助手を務めている。
バカで優柔不断で悪運が非常に強い。そして、自他共に認める煩悩王である。

横島は会場に飛ばされてから、草陰で美神さんが助けに来てくれるのをずっと待っているつもりだった。
隠れていると物音が聞こえ、もしかしたら美神では……と淡い期待を抱いて覗いてみたら風子がいた。
その後は知っての通りである。

213 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:49:52.78 ID:MTO++Ygn [4/11回発言]

「ったく。次にしたら殺すからね」

泣きながらの土下座があまりにも様になっていて、なんだが逆に男の将来が心配になってくる。
余談だが、許しを伝えた瞬間にまた抱きつこうとした横島が地面にめり込むほど頭をぶん殴られた。

その後復活した横島と風子は、互いに敵意が無いことを知り簡単に自己紹介をした。
名簿を見て互いの知り合いを教えあい、そして二人とも未確認の支給品を確認することになった。
リュックサックを開けてると、隣にいた横島が涙を流しながら大きくガッツポーズしている。
よほど良い物が支給されたのかと思ったら、どうやら食料を見て喜んでいるようだ。
普段の食事より豪華じゃああ、とものすごい喜んでいる。
普段どんな食生活を送っているのだろうか。そんな横島は放っておいて自分の支給品の確認をつづける。

取り出されたのは一振りの剣
それは、とある一つの世界を震撼させる魔王を生み出した魔剣
それは、天を二分する神の宿りし魔剣
それは、覇王と成りうる力を秘めた魔剣

剣の名は『風神剣』

付属された紙の記述は一文のみ。

【風神剣:風を自在に生み出し操ることが出来る剣。雷神剣と対する宝剣】

剣を握り締め、魔道具の風神を使用するときのように力を込めながら剣を振り下ろす。
旋風の刃が剣から放たれ、その切っ先で触れることなく眼前の枝を切り落としていく。

(よしっ。問題無く使える。これで私もまだ……戦える!)

霧沢風子は風神剣が魔剣と呼ばれる所以を知らない。
神慮伸刀と風神が合体したもの、火影魔道具の亜種、その程度の認識であった。
風神剣に宿る風神は、火影魔道具の風神のように生易しいものではない。
力に溺れた者の心をその旋風で一気に飲み込み、使用者を鬼へと変貌させる。


風の宝玉が妖しく光る。



◇ ◆ ◇


214 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:52:12.48 ID:MTO++Ygn [5/11回発言]
豪華な食料(横島談)に感謝の土下座に満足した横島も他に何が支給されているのかとリュックサックを漁る。

「風子ちゃんは剣か。俺にはどんな武器が入っているのかな」

 横島は謎の玉をみつけた!▽

 横島は出ろと念じてみる! ▽

 しかし、何も起こらない!  ▽

チキショオオオオオオ!! あの金髪イケメンヤローめ! 不良品を掴ませやがって!!
ええい! 不良品の玉などに構っていられるか! 他に何かないのか! 
横島の右手がリュックサックから栄光を掴み取る。
出てきたのは――

【ハンディカラオケ:50曲収録されているぞ! 君のステキな歌声で女の子のハートをゲットだぜ☆】

ふざけんなああああああああああああああああああああああ!!
カラオケマイクでどう戦えって言うんだよ! 
ラブ&ピースを歌っても自分の身は守れねぇんだよ!!

スーハー スーハー

落ち着け… KOOLになるんだ。横島忠夫。  
いつものKOOLな頭脳で今の状況を分析するんだ。
確かに飯の件には感謝しているが、それとこれとは話が別だ。
俺の手元にあるのはカラオケマイクと玉がひとつ。
こんなもの敵に投げつけてそれで終わりじゃないか。
そうだ。武器が無いなら自分で出せばいいじゃないか。
俺には文殊があったじゃないか! 
焦る必要なんて無かったな。こやつめ、ハハハ!
よし、では早速。

ヌオォォォォォォォォォォォ

 横島は文殊を出そうとしている! ▽
 
 しかし、何も起こらない!      ▽

えっ……?

どうやら横島の霊力の源である煩悩パワーが実験説明の段階のシリアスシーンの連続で尽きてしまったようだ。
そう、彼はシリアスな戦いに極めて弱い。

「あれ? もしかして、俺はこのままじゃ……死ぬ!?」

嫌じゃああああああああああああああああ!! まだ死にたくなあああああああああいいいいいいいいい!!

「風子ちゃん。頼む! 触らせてくれー! それが駄目なら脱いでm……」
「誰がするか!!」
再び風子の体目掛けてとびかかる横島だが、もちろん風子の拳によって阻まれた。



215 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:53:18.46 ID:MTO++Ygn [6/11回発言]
【B-1 森林/一日目 深夜】

【霧沢風子】
[時間軸]:SODOM突入前
[状態]:健康
[装備]:風神剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(本人確認済み)
[基本方針]:烈火たちと合流したい

【横島忠夫】
[時間軸]:不明。後の書き手の方におまかせします。
[状態]:健康、焦り
[装備]:ハンディカラオケ@現実
[道具]:基本支給品一式、謎の玉@不明、残り支給品0~1(本人確認済み)
[基本方針]:死にたくない


【支給品紹介】

【風神剣@YAIBA】
風神の力を司る魔剣。訓練すれば竜巻を発生させることが出来るほどの力を秘めている。

【ハンディカラオケ@現実】
50曲まで内臓されているマイク型カラオケ。収録楽曲は多分参加作品の関連曲だと思う。

【謎の玉@不明】
蔵王では無い何かの玉。


216 : 風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 16:54:33.44 ID:MTO++Ygn [7/11回発言]
以上で投下を終了します

誤字脱字、内容の矛盾等がありましたら指摘して頂けると助かります


217 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 18:15:10.56 ID:hxtWAh4G [1/2回発言]
投下乙です!
横島が平常運転すぎてわろたw
最後に読んだの結構前で細かいとこ曖昧だけど、それでもこいつが横島だって確信できるww
風子には風神剣が渡ったか。普段使ってる武器考えたら相性いいはずだけど、最初のパートで強さを求めていたのが怖いな……
そして謎の玉。これは想像が膨らむなw 参戦作品一覧を見ているといろいろ浮かぶw

218 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:08:22.46 ID:hYYbwLJk [1/8回発言]
それでは投下を始めます

219 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:10:53.82 ID:Wy4dzLjE [1/2回発言]
投下乙です

横島は変わらんなw いつもと変わらんw
謎の玉も色々推察できるなあw
そして風子は風神剣か。 まずいかもしれない

220 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:11:20.32 ID:hYYbwLJk [2/8回発言]
自動人形と人形破壊者が出会ってしまった。
戦いの切欠はそれだけで十分だろう。
老人が鞘となっている右腕から手首が柄となった剣を取り出せば。青年は体より刃を出し、公園の回転遊具のような球を作り出す。
人形破壊者である青年の武器が回転を始める、それが開戦の合図となった。

「ただの人形破壊者ではなく、機械人間の方であったか」

呟きと共に老人が縦一文字の斬撃を浴びせる。
それは青年の珠に空いた隙間へと吸い込まれるように伸び、彼の太ももを切り裂いた。
黒い服が破れ、血が噴き出るものの、彼はさして動揺する様子もなく距離を取る。

「なるほど、おまえのスピードについていくのには足りないというわけだな」

青年の声と同時に、珠の回転速度が増した。
大気を切り裂く音の変化がその事実をハッキリと伝えてくれる。
それは彼がこの殺し合いへ連れてこられる直前に限界を突破した証。

「さあ、コレならどうだ自動人形よ」

先程よりも速度を増した珠へと再度剣を振るう老人。
今度は隙間がどこにあるのか視認できない。故に今度狙うのは本体への攻撃ではなく珠の破壊。
しろがねである青年でも完全に捉えきることのできぬスピードで彼は剣をなぎ、そして弾かれる。
回転の勢いであらぬ方向へ飛んだ剣を、できるだけ力の流れには逆らわぬように手元へと戻す。

「中々厄介かもしれんな」

縦から、横から、斜めから。
ありとあらゆる方向からの剣閃。
死角となる場所が存在が存在しないか探るかのような連撃。
剣と球がぶつかるたびに闇のなかで火花が散り、甲高い音が響き渡る。

「堅い……」
「次はこちらから行かせてもらうぞ!」

攻撃の手が一瞬だけ止まった隙、その隙を狙って青年が飛び出した。
アスファストを削りながら縦横無尽に動きまわる。
もしも防御すれば剣は回転によって絡め取られてしまっただろう。
攻撃の時とは違い、剣を流すように動かしていては即座にやってくる第二波以降に対応できないので無理に位置を固定しなければならないからだ。
だが、この達人はそのような愚を犯さない。
持ち前の身の軽さで迫り来る攻撃のことごとくを避け、時には反撃に転じる。
されども彼の攻撃は回転と球の丸みによってまともに通らない。


互いに決定打を通すことができない展開。
鉄壁の防御と超人的な回避。
タイプは違えども互いにダメージを受けにくいようになっている。
このままでは千日手。
そんな状況の中、先に動きを見せたのは老人の方であった。

221 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:13:38.11 ID:MTO++Ygn [8/11回発言]
 

222 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:14:49.27 ID:hYYbwLJk [3/8回発言]

「人形破壊者、君の名前を聞いておこう」

老人が一気に十メートル近く後ろへと飛び退き、左手で握った刃を右腕へと納める。

「私はジョージ・ラローシュ。ラローシュとはオーストリア生まれの有名な珠の芸人の名さ。
 もっとも今は芸人ではなくてピアニストをやっているのだがね」
「そうか人形破壊者。いや、ジョージ。その名は確かに覚えたぞ」

納めた剣の柄を握り、腰を落とす老人。
ジョージはその構えを知っていた。
最速の剣術であると名高い居合い切りの体勢。
通常の斬撃で威力が足りないならば、切り裂くことができぬなら。
速さを上げ、一撃で勝負を決する。

「考えたな自動人形、一撃に全てを懸けるか。
 だが、私は長期戦に持ち込んでも一向に構わん。もしも乗らないならどうする気だ?」
「ないと分かっているから言っているのだよ人形破壊者。
 見たところ、君は限界以上に力を引き出している。
 それが長持ちするとは思えん、短期決着を焦っているのは私ではない」

老人の言ったことは全て図星であった。
ジョージの"神秘の珠”は元来分速300回転前後。それを倍近くのスピードで回していた負担はかなり大きい。
更に言えば、球を構成する刃には老人の攻撃によるダメージが蓄積している。
今はひび一つないものの、長引いてしまえばどうなるか分からない。

(一旦引くか、それとも挑戰するか?)

一瞬の躊躇。
そして覚悟を決した顔になり、ジョージは前進を決めた。
ただの思考停止の特攻ではない。彼には確かな勝機がある。

「いくぞ!」

回転速度が更に上昇する。
毎分1000回転を遥かに超えた"死に際”ほどまでには上がらないものの、今の彼にとってはこれが限界である。
今まで以上に体中が悲鳴を上げ、バラバラになりそうな感覚に陥った。
だが、アスファルトを抉りながらジョージは進む。

「そういえば私の名を伝えてなかったな。教えよう私の名は」



ジョージが知覚したのは老人の体が回る姿のみ。
そのスピードをのせた高速の抜刀術はジョージの目を以てしても僅かに視界の写っただけで、気がつけば――――




「シルベストリだ」

223 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:15:25.79 ID:Wy4dzLjE [2/2回発言]
支援

224 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:16:47.92 ID:WgiTPXoM [1/1回発言]
投下乙
横島には是非、
「ずっと前から愛してましたぁ~!」
とか叫んでもらいたかったw

細かい指摘になるけど、文殊を出せる時期なら横島の時給は255円ですね

彼にはトリックスターとしての働きに期待してます

225 : リング ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:17:19.79 ID:hYYbwLJk [4/8回発言]
彼の"神秘の珠は”シルベストリの持っていた剣とともに砕け散る。
黒い金属片が地面へと落下し、小さく音を立てた。

「なるほど……おまえがあの伝説の」
「驚いたな、私は君を真っ二つにする予定だったのだが」

奇跡的にジョージは生きていた。それも再起不能なまでの重症を負わずにだ。
だが、戦うための牙は折られた。体に負った傷もとても浅いとは言えない。
新しい刃を再び出すにも、その隙を待ってくれるほど甘い相手ではないことは分かっている。
今の彼にはシルベストリに対抗しうる力など存在しない。
敗北、そして訪れるであろう死に、彼は悔しそうに表情を歪める。

「機械人間がここまで感情を顕にするのを見るのは初めてだ。君が旧式の"O”だからか?」
「いや、連中の中から"今の私”のようなヤツを見たことは私もない」
「ならば、君だけが特別だというわけか。それは何故なんだ?」

『何故なんだ?』

その質問によって想起したのは幼子の歓声、拍手、そしてアンコールの声。
地球上で最高の音楽。
ジョージを変えたミュージック。

頭の中で鳴り響くそれはジョージに再び立ち上がる力を与える。
萎えた心を奮い立たせただけではない。
機械を埋め込んだ冷たい体がやけに熱く感じる。
心臓がより強く鼓動を打ち始めた。
膝だけを立たせた体勢で展開した刃は自分でも驚くほどのスピードで飛び出た。

「答えを教えよう自動人形、私は『ピアノをまた弾いてね』と言われたんだ」
「その程度のことでか?」

咄嗟に引くことで回避には成功したが、反撃には至らない。

「ああ、その程度さ。だが、メトロノームだった私にもやりたいことができたんだ。
 カチカチと同じリズムを刻む機械を演じるには飽きた。私は人間になりたいのさ」

ここでシルベストリの体が小さく震えた。
そして彼の動きは止まる。

「ふむ、君には聞いてもいいかもしれないな。人間は……何故群れようとするのだ?」
「その質問には答えようがないな、自動人形。私の出した答えは私の中にしか存在しないのだから。
 おまえに言おうとも納得すまい。あの拍手の、あの歓声の、あのミュージックの価値をおまえには理解できまい」

満足気な笑みを浮かべながらジョージは語る。
そのことが無性に気に食わず、思わずシルベストリは表情をしかめた。
殺してやろうか、そう思うも確信がない。
剣を失ったとはいえ、自分の身体能力ならば倒す自信はある。
むしろ手負いのジョージを相手に負ける要素がないとすら感じている。
だが不思議なことに、勝てはすれど生きて歩く自分の姿がイメージできなかった。

「引いてくれるのか?」
「ああ、次会った時は私にも分かるように君の得た"答え”を噛み砕いておいてくれ」
「無理だとさっき言ったではないか」
「それでも、だ。できないならば次は見逃さない」

226 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:19:08.63 ID:MTO++Ygn [9/11回発言]
 

227 : リング ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:20:50.02 ID:hYYbwLJk [5/8回発言]

☆  ★  ☆



そう言い残し、シルベストリは歩き去っていった。
残されたジョージは傷ついた体を引きずって民家へと入る。
しろがねの回復力を以てすれば、数時間休めばこの傷は治るだろう。
だから彼はベッドに腰掛け、今まで確認していなかった荷物を漁る。

「お、これは……」

出てきたのは小さな煙草の箱。
生憎、彼の相棒が吸っていた銘柄ではなかったが、それでも彼にとっては当たりであった。
小さな箱から一本取り出し、同封されていたマッチで火をつける。

「ふぅ」

肺に入れず口の中で煙を燻らせるだけ、それだけでも妙に気分が落ち着いた。
窓とカーテンは閉めたものの、先端の火から出る光で他の参加者に見つかる可能性がある。
煙の匂いを感づかれてしまうかもしれない。
それでも彼はこの"非合理”な行為をやめない。
一人きりの休息が煙に満ちた部屋で行われる。

「早く帰ってあの子たちにピアノを弾いてやらなくてはな」

彼にとって初めてできた人生における目的。
自動人形を破壊するという使命に費やしてきた命が見つけた初めての"やりたいと思ったこと”。
二度と果たせないと思っていた、死んでしまったから約束を守れないと思っていた。
そうだったはずが何の因果か失った命を取り戻し、この殺し合いに呼ばれる。

「ある意味では幸運だったかもしれないな」

上手く脱出が出来れば、再び彼らに会うことができる。
あの拍手を、歓声を、嬉しそうな声で自分の名を呼ぶ声を再び聞くことができる。

「優勝するという手もあるんだがな……そんなことをしたらまたナルミに殴られてしまう。
 それに、アシハナに返すためのタバコを没収されてしまったからな。私一人で帰るわけにもいかん」

言い訳がましいと苦笑いを浮かべつつ、サングラスを外し一息つく。
非合理すぎる理屈。
しかし、彼はそれに満足している。新しい生き方が気に入っていたのだ。


真っ暗な部屋の中、白銀色の瞳が小さな火によって赤く輝く。


【E-3 一日目深夜 民家】

【ジョージ・ラローシュ】
[時間軸]:本編死亡後
[状態]:胸に切り傷(数時間で完治)、疲労(中)
[装備]:無し
[道具]:タバコ、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:脱出して子供たちにピアノを聞かせる。乗る気はない。

【支給品】

『ジードのタバコ@金色のガッシュ』
これを吸えば君も「風をいっぱい体に受けてよ! ヘヤピン! 魂まで風になれ!! それっ、はんぐおんだ!」って気分になれるぞ!

228 : リング ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:23:27.83 ID:hYYbwLJk [6/8回発言]
☆  ★  ☆



「新しい剣を探さなくてはな」

ポツリとシルベストリは呟いた。
彼の剣は半ばより先が粉砕され、使い物にならなくなっている。
無いよりはましであるので携帯はしているものの、実戦でどれほど役立つかと問われれば首を傾げるしか無い。
期待して開けた支給品の中に剣は存在せず、落胆を深めるのみ。
だがそれよりも、遥かに大切な事がある。

「人は何故群れるのか……この答えがこの殺し合いの中で見つかればいいのだが」

これまでの生を全てかけた研究の成果を見つける。
彼がこの殺し合いにおいて目指す目的はそこだ。

「だが……造物主様が参加してるのは完全に想定外だ。
 あのお方が捕まられては私が優勝して脱出するわけにもいかない」

ホゥと小さなため息を吐いた。

「せめて……私の求める答えを得てから破壊されたいものだ」

人の群れる理由を知りたい。
初めは「笑み」の理由を知るために人間社会に溶け込む役割を与えられた彼。
彼の中でその謎が徐々に大きなウェイトを占めるようになったのはいつからだっただろうか。

いや、言うまでもない。スズランを持った少女と初めて会った時だ。

それ以来、彼はずっと答えを求め続けている。
だが、その探求の旅もここで終わりだ。
造物主、フェイスレスのためにすべての参加者を倒す。
優勝させることが目的なのだから、当然そのなかには自分も含まれる。
だから、彼に残された時間は僅か。
その僅かな時間で彼は答えを得ることができるのだろうか?


外套のポケットに入ったスズランが風で小さく揺れた。



【シルベストリ】
[時間軸]:本編34巻 勝戦直前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品0~3(刀剣類は無し)、基本支給品一式
[基本方針]:フェイスレスの優勝をサポートする、人間が群れる理由を解き明かす


229 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 21:26:12.57 ID:hYYbwLJk [7/8回発言]
投下完了です
指摘などがあればよろしくお願いします

230 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 21:41:20.73 ID:MTO++Ygn [10/11回発言]
投下乙です!
またピアノを弾いてと言われた状態のジョージかっこいいよw
慣れない煙草を吸って渋いねぇ オタクまったく渋いねぇ
シルベストリの問いに答えられそうなキャラも多いよね 次にどんなキャラと出会うのかが楽しみです!


231 : ◆CFbjQX2oDg : 2011/03/05(土) 21:44:42.45 ID:MTO++Ygn [11/11回発言]
感想をくれた方ありがとうございます。
>>224
時給はミスです。wiki収録時に直します。



232 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/05(土) 22:19:14.20 ID:hYYbwLJk [8/8回発言]
お二方投下おつです

こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w

このしろがねはカワイイなぁ本当w
クールなのもいいけど勝のことでおろおろするのも好きだったからこれはイイ!
……チャイナ姿? ママチャリでチャイナドレスってねぇw
色々とやばいんじゃないでしょうか?

ロベルトもロベルトでカッコイイな
植木戦直後だからどっちに転ぶこともできるのか……
ロワの会場だったら今後出会う人次第だな。

上でも出たけどサンデーキャラに自転車が似合うってのは全力で同意


風と煩悩と謎の玉  ◆CFbjQX2oDg

横島wwwww
もうこの話の感想これだけでよくねwww
行動がヤツらしすぎるwww
ヘタレて隠れる→女につられて飛び出す とかwwww
そして文殊の辺りで笑ったww
ですよねーあんなシリアスやられちゃ煩悩パワーどころじゃないですよねー
嫁(参戦時期にもよるが)がいるんだからもうちょい頑張れよww

風子は原作でもロワでもおっぱい要因だなぁw
原作でも揉まれてたぞ確かww

支給品の謎の玉の正体はなんなのだろうか
心当たりがありすぎて何になるか楽しみだぞ




233 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/05(土) 23:10:16.03 ID:hxtWAh4G [2/2回発言]
またまた投下乙!
この二人のやり取りいいなぁ
あんなに悔しそうな表情をすることができたジョージの言葉が、いちいち痺れる
人形だなんて言われてたけど、非合理な道を選ぶいまのジョージは人間的だ
シルベストリも答えを見つけて欲しい

しかし……ギイさんやグリーンやジョージは人間となったゆえの選択をし、ロベルトやシルベストリは人間の本質に悩む
キース・バイオレットと通りすがりのリーマンの会話が、思い出されるな

234 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 00:14:11.55 ID:Byk3bBbX [1/1回発言]


235 : ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:29:49.28 ID:SeYP73os [1/13回発言]
秋山優&紅煉投下します。
こんな時間ですしゆっくりまったりです。

236 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:32:32.35 ID:SeYP73os [2/13回発言]
モチノキデパートには粗悪品やら偽物やらが溢れている。
それでも人が減らないのは偽物と知ってなお安さで買う客がいるからだろうか。
それとも偽物と知らずに安さに喜ぶ無知な客ばかりなのだろうか。
それはともかくとして、そんな客たちも今のこの惨状を見れば二度とこのデパートに来るとは言わないだろう。
そこには破かれ、焼かれた布の数々。壊され、砕かれたマネキンの数々。ひしゃげ、積み重なった什器の数々があった。
落ちている服から辛うじてそこがかつて婦人服売り場であったのだと推測できるが、そんな分析は今そのボロ布を踏みつけて跳んだ者には意味がない。赤いハンチング坊に黒い覆面、妙に短い学ランから見える腹筋は達人のそれである。
彼は名を、秋山優と言った。
「さて、どうしたものかね……」
まだ無事な什器の影に隠れた彼はフロアに吊り下げられた案内板を探す。
左にエレベーター。右にエスカレーター。正面に化粧室。
「電気……は通ってるみたいだけど、動いてるってのは楽観的に過ぎるだろうな」
呟いて、気配を感じて一足飛び退く。
次に彼の目が捕えたのはいましがたまで自分を遮蔽していた什器がフロアに散らばるそれと同様にガラクタに変わる光景だった。
「ちょこまかと逃げるんじゃねぇぜ人間がよォー!!」
秋山優にそう怒鳴りつけたのはその光景を作った張本人。いや、それはもはや人ではない。
「雷獣」「字伏」、とある個体は「長飛丸」と呼ばれたこともある。しかしそのどれも本質を捉えた名ではない。
彼らは妖(バケモノ)を葬る器物「獣の槍」に魂を食われし者たち。槍の執念に飲みこまれた「なれのはて」。
そしてそいつは、たった今秋山優の眼前で鼻息を荒くしている黒いその獣は自らを名乗って
「紅煉」と言った。


237 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:35:04.45 ID:SeYP73os [3/13回発言]
「おい人間、逃げてばかりじゃこの紅煉様にゃあ勝てねぇぜ?」
「ご忠告どうも。ただ、君みたいなのと正面からやりあうのはどう考えても愚策だからね。僕には僕の流儀もあるし」
「ああ」
紅煉はニヤついてその鋭い爪をカチカチと合わせ、秋山の言葉を鼻で笑って聞き流し
「そうかよォッ!!」
縦に振るった。
「ふっ!」
秋山は走る。目指す方向は後方。上階へと続く階段だ。
しかしここまで数度のやりとりでわかっている。紅煉は速く、強い。
だから切り札を最後まで残しては戦えないことを秋山は知っている。使うべき時を。
一つ目は、ここ。死を目の前に、目を閉じて唱える。
「十五雷正法 十一閃!」
薄暗い照明だったフロアが一瞬、どんな昼間よりも眩しく光った。
「く、クソッ! 目が! 人間が! 人間風情がァー!!」
視力を遮断され、怨嗟の声と共に腕をぶんぶんと振り回す紅煉を尻目に秋山は階段を駆け上がる。
紅煉が視力を取り戻し、自分に追いつくまでの数分にやれるだけのことをやらねばならない。
「さて……グレンとか言ってたっけ」
にも拘らずなにやら端末を取り出して見つめる彼の姿はそんな焦りを感じさせはしなかった。

238 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:37:04.89 ID:SeYP73os [4/13回発言]
秋山優が紅煉と相対したのは二十数分前のことだろうか。
「まあ、こういう時はデパートとかショッピングセンターってのが定石だよね」
先ほどの悪夢のような光景を振り払うように軽口を叩きながら、彼はモチノキデバートへと足を踏み入れた。
そして身を隠すと、あとはひたすら状況の把握に努めた。
彼はもともと無謀な戦いをする方ではない。
敵とみなした相手に容赦はしないが、彼我の戦力差に関しては「気合」とか「根性」とかでは決して埋めようということはしない。
目標達成に必要なのは計算、計略、謀略。そういうものだと彼は信じている。
戦友たちによって目の前で何度もその信条が覆されてなお、自分に出来るのはそれだけだと信じているのだ。
つまり、いずれ彼がすべきだと決めていること、そのために今彼がすべきこと。それは即ち「己を知り、敵を知る」こと。
つまり今は思考と分析をすべき時であった。少なくとも彼にとっては。
しかしそんなことを思っていない者もいる。
その愚者は大音量でエントランスの自動ドアをブチ破り、己の存在を知らしめるかのように大声で叫んだ。
「誰もいねぇかぁー!! いたら出てきやがれよォー! ブチ殺してやるからよォー!」
秋山は当然のようにその声を無視した。
彼が潜んで居たのは婦人服売り場のレジの下である。
遮蔽物あり、しかも売り場内の姿見を移動させて全方位を監視出来るようにした状態での隠密。先手をとられる心配はまずない環境である。
だから彼は驚いた。
視線を配っていた姿見の一つに、今まで戦ったどんな番長よりも早くこちらへ突進してくる黒いバケモノの姿が写ったことに。
そのあまりの速さと、途中にあるディスプレイやマネキンを紙くずのように蹴散らすその姿に。
歴戦の経験が、見つかっていないはずという甘い考えを秋山に捨てさせた。
彼は広げていた荷物を即座に蔵王に格納し、身を翻してレジの下から飛び出した。
そしてレジカウンターは彼を失った数秒後にはただのガレキになっていた。

239 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:38:58.05 ID:SeYP73os [5/13回発言]
時は今へと戻る。
紅煉が上階へと辿り着いたのは秋山に五分ほど遅れてのことだった。
「出て来い人間ァァァァ!!」
雄叫びは空しく響き、生活用品売り場のディスプレイを震わせるだけである。
「クソがッ!!」
毒づいて紅煉は鼻をひくつかせる。
妖である彼には人間の匂いはひどく特徴的である。先ほどデパートの入り口をぶち破ってからすぐにそうしたように、人間の匂いを探した。
が、嗅覚を最大限鋭敏にしたことによる影響はすぐに紅煉に現れた。
「へ、へ、へーっぷしっ!!」
強烈に鼻の奥をくすぐられたような感覚に紅煉はおもわずくしゃみをする。
中国の山村に潜んでいた紅煉はあまり知らない。字伏たちは長く眠っていたせいで、現代日本に蔓延する化学物質にひどく敏感なのだ。
それは他の字伏よりも早く目覚めた彼も例外ではなかった。
「く、クソ! へっぷし! なんだこのおかしな臭いは! っぷし!」
間抜けにくしゃみを繰り返しながら、なんとかそのへんてこな臭いの中に先ほどの人間の臭いを見つけだした。
かすかに香るそれに、今度は鼻息を止めながら突進する。
数尺先の棚の向こう、息を殺して待ち伏せているのがわかった。今度は絶対に外さない、ここまで自分をコケにした人間を許せるわけがない。
雷のような速さでその棚ごとなぎ倒すと、バラバラになった人影がよく磨かれた床面にごろりと崩れ落ちた。
「ざまあみやが……」
すぐに気付く。手にかかったのは人ではない。崩れ落ちたのも人ではない。この感触は、先ほどまでなぎ倒してきた木偶人形のそれである、と。
紅煉の落とした視線の先には先ほどまで秋山が着ていた短ランを羽織らされたマネキンだった残骸。
そして、振り向いた視線の先には自分めがけてとんでくる複数の刃物。
「喰らえっ!」
キッチン用品売り場から拝借した出刃の数々が正確に狙うのはそれぞれ人間であれば急所にあたる部分である。
「クッ!!」
紅煉は妖である。そんなもので死んだりはしない。しかし咄嗟に目を、心臓をかばってしまった。その隙を秋山は見逃さない。
体中から芳香剤の匂いを撒き散らしながら獣のように駆ける。

240 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:41:14.32 ID:SeYP73os [6/13回発言]
「十五雷正法 六貫!」
秋山の手から放たれる武器は、後ろに紐のついた小さな刃物。
金偏に票と書いて「ヒョウ」と読むそれはそれまでのどの出刃よりも鋭く紅煉の腕を抉る。
痛みに反射するように乱暴に振り払われた紅煉の腕は近くにあったヤカンや鍋の乗った棚を粉砕した。
フロアに鉄が激突する大きな音が鳴り響く。その音をかき消すようにもはや意味を為さない紅煉の叫びが轟く。
自ら視界をふさいでいた腕をどけ、紅煉があたりを見回すとすでに秋山の姿はない。
「出て来いこの卑怯モンがよォォォ! 喰い殺してやらァァァァ!!」
「それはどうも。十五雷正法 四爆」
秋山の小さな声に反応して、紅煉の足元に転がっていたヤカンが爆発した。
唯の爆発ではない。ヤカンに詰め込まれていた日曜大工用品売り場の釘が飛び散って紅煉の足に次々刺さる。
「こんなモンでェェェェ!」
紅煉は疾走した。
今しがた爆発が起きる前にほんの少し聞こえた声の方へと全力で走った。
彼が駆け抜けた道の後ろでは次々と爆発が起こる。
秋山が仕掛けていたそれは、声を起動の鍵とするという一点において紅煉への効果を発揮できなくなっていた。
怒りに打ち震えた雷獣は、音よりも疾かったのだ。

241 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:43:56.89 ID:SeYP73os [7/13回発言]
「終わりだなァ、人間!」
「なんてバケモノだよ、全く」
壁際に追い詰められ、秋山は毒づく。
「どれだけ切りつけたら死ぬんだい、君は」
「俺は妖なんだぜ? 霊力も通ってねぇ刃物じゃいくら切っても死にゃあしねぇよ」
「じゃあ、これなら効くってことだな」
「これ?」
紅煉は秋山が後ろ手に何かを構えているのに気付く。
「僕の支給品でね。とある大妖の牙を鍛えたと言われる霊験あらたかな刀、その名も……鉄砕牙さ!」
「くっ!」
秋山の右手が翻る。飛び出した刃が紅煉の首を狙う。
そして紅煉は、それまでしなかった動きをした。首を、跳ね上げたのだ。
紅煉の顔に備えられた三振りの刀。それは主である大妖、白面の者より与えられた強力な霊刀である。
秋山の言葉に、腕での防御では防ぎきれないかもしれないという恐怖からとった行動だった。
そしてその霊刀は飛来する鉄砕牙を弾き飛ばすはずであった。
もしそれが本当に鉄砕牙と呼ばれる妖刀であったならば。
「なっ!?」
紅煉の霊刀に触れたそれは、安っぽいプラスチックで出来た妙に荘厳な飾りのついた玩具の剣は、玩具売り場から秋山が持ってきた今年流行の特撮ヒーローの武器は、なんの抵抗もなくすっぱりとコマ切れになって飛んで行った。
「十五雷正法 十二さ」
秋山の本命は左手のヒョウ。そしてそれに刺さった符。その符術による攻撃であった。しかし、その攻撃は為されない。
またも、秋山は見誤った。紅煉は人ではないのだ。
この距離ではいくら奇襲であっても紅煉のほうが
「莫迦め!!」
疾い。
振り上げた首が戻る。
その顔に向けてもう止められない腕を突き出す秋山。
紅煉の口内にまで伸びる霊刀によって四枚に分割される己の左腕を秋山はスローモーションのように見た。

242 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:47:20.00 ID:SeYP73os [8/13回発言]
「ハハハハハ! 喰ってやったぞ人間が! あの忌々しい野郎と同じく、腕を喰ってやった……あの……」
何故か突然青ざめる紅煉。対して、左腕の肘から先を失ったはずの秋山は痛みに顔をゆがめるでもなく、ただ不敵に笑っていた。
「喰った? ああ、そりゃ美味かったろう。なんせ最新のテクノロジーで作った僕の義手だ。それとも……何か他にも喰ったかい?」
「まっ、まさかお前もあの野郎と同じに!!」
紅煉の脳裏に浮かんだのは、自分の『最期の』記憶。
己を執拗に追い続け、自らの体に縫いこんだ符をわざと喰らわせて体内から爆殺せしめたあの符咒師の姿。
「天地万物の正義を…」
「まっ、待ってくれ! 参った! 死にたくねぇ! 俺はもう死にたくねェェェェェ!」
自分が最期の時に聞いた詠唱を耳にしてついに紅煉の心は折れた。
みっともなく土下座の姿勢をとって、目の前の非力な人間に命ごいをした。
「ふぅ、じゃあ決着だ」
「あ?」
詠唱を中断した秋山が、一段軽いトーンでそう告げる。
「聞こえなかったのか? 決着だと言ったんだ。僕の勝ちでね」
「何ふざけたこと言ってやがんだにんげ」
「天地万物の」
「わー! わーっ!!」
紅煉の怒号は秋山の再詠唱によって脆くも崩れ去り、ここに今、人間に頭の上がらない二匹目の字伏が誕生したのである。
彼の名は紅煉。
かつて人だったもの。
この国を滅ぼさんとする大妖に仕え、破壊の限りを尽くしたバケモノ。
そして今は、死に怯える可哀想な妖怪である。

243 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:50:44.87 ID:SeYP73os [9/13回発言]
【D-5 モチノキデパート内/一日目深夜】

【紅煉@うしおととら】
[時間軸]:本編にて死亡後
[状態]:各所負傷はあるが軽微
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:秋山優をなんとか隙を見て喰い殺す。それまでは死にたくないので従う。秋山を殺せたらあとはひたすら参加者を喰い殺す。
[備考]:紅煉の能力である「黒炎(分身というか手下と言うか、まあセルジュニアみたいなもの)を生む能力」は制限により使用不可

244 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 04:53:14.83 ID:SeYP73os [10/13回発言]
「それじゃあ、紅煉。ちょっと行って散らばったヒョウと、あと落ちてる人形の腕、集めてきてくれ」
「貴様、この紅煉を使い走りに」
「てんちーばんぶつのー」
「ガァァァァ! ちくしょー!」
まるで孫悟空の頭にはめた輪を縮める三蔵法師のように秋山は符術の詠唱をするフリをする。しかし決して唱え切ることはしない。
なぜなら、その詠唱には何の効果もないからだ。本当に効果があるなら、これほどの強敵を殺しておかないほど彼は甘い男ではない。
彼の義手に符など貼り付けたり縫い込まれたりはしていなかった。他の仕込みでいっぱいで、そこまでするヒマはなかったのだ。
なればこそ、紅煉が腹の中にあると思っている爆砕符は決して発動しない切り札でなければならない。それを気取られた時は秋山が死ぬ時である。
先ほどの棚のところまで飛び去る紅煉を見送り、秋山は蔵王から二つのものを取り出す。
ひとつは先ほど腕から外して格納したグレネードランチャー。彼の義手の下に隠されていた本当の切り札である。
もう一つは小さな携帯端末。スマートフォンのようなそれを床に置いて残った右手で操作する。
画面には今ほど飛んで行った憐れな妖怪の顔と文字列が表示された。
<『紅煉』種族:妖怪 雷や炎、風を操る字伏と呼ばれるバケモノ。気性は荒く、鼻がよく、人を喰らう。符咒師により体内から爆殺された。>
「よし」
再度確認して、それらを蔵王へ戻す。
秋山が手に入れていた支給品は3つある。
一つは先ほどの戦いで使っていたヒョウと符。
かつて紅煉を殺した符咒師が使っていたのと同じ物で、ご丁寧にそれを駆使するための解説書が付いていた。
殺傷能力としては紅煉の時のように体内から爆破でもしなければ人外のものを殺すには至らないだろうが、
トラップとして使うにはこれほど彼に向いた武器もなかった。
そして、もっと彼に向いていた武器が先ほどの携帯端末である。
そこには参加者のデータが入っていた。簡単な説明ではあるが、写真と特徴、特殊な能力が。
そして一部の者については先ほどのように「死因」が載っていた。
秋山は死んだものがここにいるという発想には至れず、それをイコール「弱点」であると理解した。
そして先ほどの紅煉の様子を見るにそれは正解であったと確信した。
彼は手に入れていたのだ。彼我の実力差を埋めるための「情報」を。
そして立案する。勝つための戦い方を。
「ひ、拾ってきたぞクソ人間め……」
戻った紅煉が手からガラガラと数本のヒョウとマネキンの腕を床に落とす。
「ん、ごくろーさん。」
秋山が適当な素振りであしらうと、紅煉は黒い顔を赤くするように睨みつけてきた。
そんなことを意にも介さず、秋山はヒョウを拾い上げ、マネキンの腕を足で挟み、片手に持ったヒョウで器用に削って左腕にあわせていく。
「ま、見た目だけはこうしておこう」
ぐい、と押し込んで、左手の肘から下にうごきもしない腕が生えた。
秋山は戦う。どんな手を使ってもこの街を脱出するために。
大丈夫、この街のどこかには心強い友もいる。絶対にスジの通らないことを許さない漢がいる。
自分の謀略と彼の暴力があればきっとそれは成し遂げられるはずだ。
そして愛しい兄弟達の下に必ず帰ろう。
秋山は決めた。この街に放り出されたその時からそう決めていた。

245 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 04:57:13.25 ID:NBJHsryA [1/6回発言]
 

246 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 04:59:42.80 ID:NBJHsryA [2/6回発言]
   

247 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:00:37.08 ID:NBJHsryA [3/6回発言]
  

248 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:06:44.10 ID:NBJHsryA [4/6回発言]
  

249 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:08:32.96 ID:NBJHsryA [5/6回発言]
 

250 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:09:34.36 ID:DhbUijhu [1/2回発言]
 

251 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 05:09:44.32 ID:SeYP73os [11/13回発言]
デパートを歩いて使えそうなものを物色する秋山の周りをふわふわと浮かび、寄り添いながら紅煉が凄む。
「貴様……絶対に隙を見て喰い殺してやるからな」
「てーんちーばーんぶー」
適度に間延びした声で秋山はすかさずハリボテの呪文を唱える。
「わ、わわわ、やめろこの卑怯者!!」
「おっと、また言ってくれたね」
慌てふためく紅煉に向けてニヤリと笑う。
「最大の褒め言葉だ」
彼は秋山優。
またの名を

卑怯番長。

【秋山優(卑怯番長)@金剛番長】
[時間軸]:最終決戦後、後日談の前
[状態]:疲れ
[装備]:霊符(残り33枚)、ヒョウ(残り18本)
[道具]:基本支給品一式、ヒョウ(25本)&符(50枚)&十五雷正法説明書@うしおととら、
     参加者名簿入り携帯端末@出典不明、支給品1(秋山は確認済)
[基本方針]:あらゆる卑怯な手を使ってこの街から脱出し、家へ帰る。体内に爆砕符があると思い込んでいる紅煉を脅してうまく利用する。

252 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:10:14.77 ID:DhbUijhu [2/2回発言]
 

253 : ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 05:12:18.68 ID:SeYP73os [12/13回発言]
【支給品紹介】
ヒョウ:金偏に票と書く。コピペしてもなかなか表示されないうしとらファン泣かせの武器およびそれを使う符咒師の名前。
    くないのような形状で後部の輪に紐が通してあり、ワイヤーと女の髪をよりあわせたその紐は相当に頑丈。主に投げて使う。
霊符:符咒師ヒョウが使う符。本来はおそらく効果によって符の種類が違うが今回は共通の符で全ての術(後述)を使えるものとする。
    もちろん使い捨て。ヒョウに刺して投擲され、跳んだ先で効果を発揮するパターンが多い。
十五雷正法:符咒師ヒョウが使う退魔術。身体能力を高めたり符の力を発揮する時に使う。
    名の通り15種あるが今回は符とヒョウを使う術で、原作に登場したもののみ使えるものとする。使える術は以下の通り。
「一尖」ヒョウの投擲。
「四爆」符が爆発する。
「六貫」貫通力の高いヒョウの投擲。
「七排」霊符を刺したヒョウによる投擲攻撃。
「十一閃」閃光によるめくらまし。
「十二散」広範囲に投げた符を爆発させる。

ちなみに秋山が劇中で詠唱している爆砕符の起動詠唱は「天地万物の正義をもちて微塵とせむ 禁!」で完成する。しても爆発しないけど。

それと、秋山の支給品は3つ確定です。すでにそれが何かは確認していますが、卑怯なので読者にも教えてくれません。

254 : ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/06(日) 05:14:28.98 ID:SeYP73os [13/13回発言]
投下完了です。
さるさんくらってピンチりましたが支援ありがとうございました。
設定、展開矛盾、誤字脱字等ありましたらご指摘くださいませ。
さて寝よう。

255 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 05:26:48.29 ID:NBJHsryA [6/6回発言]
投下乙です
こ、これは……! まさしく、この発想はなかったってヤツだな
いや、ありうる。あの死に様の叫びを考えるとありうるのか、これは
紅煉には外道させようと思っていたのでまったく考えていなかったが、これはこれで書いてみたいかもしれない
しかしまだ少し混乱している……
まさかの鉄砕牙と状態表で笑ってしまった

256 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 09:47:34.36 ID:Hu1b4rvH [1/1回発言]
投下乙です
汚いなさすが卑怯番長きたない
悪いうしとらコンビって感じで期待できそうだw

257 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 09:57:32.46 ID:7AnzaYPY [1/1回発言]
投下乙です
これは卑怯番長が卑怯すぎるw

258 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 10:32:26.07 ID:mhIQs/6h [1/1回発言]
投下乙
卑怯すぎるよw
鉄砕牙!? と思ったらやっぱり卑怯だw
紅煉が素直に言うことを聞くのかどうかw

259 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/06(日) 13:20:44.09 ID:FbbArrB5 [1/1回発言]
投下乙

いやあ、卑怯番長は卑怯しても絵になるな……
しかも想像以上の事をやってくれるぜw

260 : ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 00:56:18.72 ID:zbdpdTCa [1/7回発言]
長らくお時間をいただき、申し訳ありませんでした。
ルシール・ベルヌイユ、蒼月紫暮投下します。

261 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:03:07.86 ID:zbdpdTCa [2/7回発言]

 かの二人は、真っ白なその髪を宵闇に染めて出会う。

 
 漆黒の中で浮かび上がるのは、巨大な鋼鉄製の新円に、果物の実のような部屋をいくつもぶら下げた巨大遊戯装置。
 観覧車、遊園地を代表する遊具の一つ。
 今はその機能を停止し、朝を待つようにしんと動かない。
 
 寂しげな観覧車を筆頭に、周りに頓挫する様々な遊具――人を楽しませるために生まれた機械たち。
 いかにも『楽しそう』な装飾を施されたそれらが、夜の帳に覆われている。
 世界が闇にその身をゆだねている今、漂うのは下手なホラー映画さながらの、安っぽい不気味さだけだ。 
 
 そんな光景の中、『最古のしろがね』ルシール・ベルヌイユは立ち尽くしていた。

 彼女の体を包むドレスはやや古風な作りではあるが、それ故に彼女の威厳、気品を損なうことがない。
 神経質そうに首元を包む襟。その上にある顔に無表情を張り付けて、彼女は沈黙を保つ。
 肌に無数に刻まれた皺は、彼女をより一層美しく見せている。
 細身に仕立てられた上半身部分とは対象に、ややフレア分量を取って広がりを持たせてあるスカートが、緩やかに吹く夜風にはためいた。

 老女は周りには一瞥もくれず、つと自分の足元へと視線を向け呟く。

「誰だい、そこにいるのは」

 彼女の背後、回転木馬――メリーゴーランド。そこに群れを成す馬をかたどったオブジェの影から現れたのは初老の男。
 白い袴姿に身を包み、無造作に伸ばした白髪を肩に散らしている。
 首元には長い数珠を垂らしていた。それは彼が歩く振動に合わせて軽く擦れ合い、乾いた音を立てた。
 男――蒼月紫暮は髪を掻きながら、ルシールに歩み寄る。

「いや、なんとも――お見通しだったとは。わたしは、蒼月紫暮と申すしがない僧侶だ……貴女は?」

「私はルシール・ベルヌイユ。見ての通りのただのババアさ」
 
 紫暮はルシールと名乗った女性を注意深く見つめる。
 漆黒のドレスに、銀色の髪。
 年月を経ていらぬ脂肪をすり減らした躰が闇に浮かび、また溶け込み――そのあやふやな輪郭に、紫暮は妖怪と極めて似たにおいを嗅ぎ取る。
 彼が彼女を見つけてすぐにコンタクトを取らなかったのは、その奇妙な存在感故だった。
 対するルシールは紫暮を一瞥し、自動人形の類ではない事を確認すると一歩、彼の方へと歩み寄った。
 そうしてやっとお互いの姿がはっきりと確認できた二人は、互いの瞳の中を探り合う。

「紫暮といったね……で、何の用だい」

「ここで出会ったのも何かの縁。貴女をお守りしよう」

 紫暮は決然と、しかし軽やかに言い放った。

262 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:04:03.09 ID:zbdpdTCa [3/7回発言]
その申し出にルシールは面食らう。
 人形破壊者として激戦に次ぐ激戦を闘い抜いてきた彼女は、守る、などと言われて心底驚きを隠せない。

「へぇえ? 『お守りしよう』? ふ、ふ……」

「む、何か可笑しかったですかな」

 色の無い唇に指を当て小さく呼気を漏らした彼女に、紫暮は少々心外といった表情でやりかえす。
 人間に災厄をもたらす妖退治を使命とする彼にとっては、至極当然な申し出だった。
 見た目だけならば、ルシールは非力な、か細い夫人だ。
 光覇明宗の法力僧として、仏道の徒として、彼は今までやってきたように振る舞ったに過ぎない。

「いいえ、可笑しくなんかないさ。笑ったりして悪かったね」

 彼女の言葉に納得したのかしないのか、紫暮は顎に手をやると何かを思い出すように視線を宙にさ迷わせる。

 思い起こすのは突然覚醒した暗闇の中、スポットライトに当たった檀上から流れた光。それは少し離れた場所にいる息子――潮の青ざめた顔を映していた。
 咄嗟に声をかける間もなく宣言される、『殺し合いの開幕』。
 呈される苦言を、一方的に振るわれる暴力をものともせず、淡々と語りを進める青年。
 あの『妖』――とらが啖呵を切るも、直撃した雷に眉一つ動かさなかった彼から目が離せなかった。

 どういう因果によってか、殺された二人の青年と少女――そのどちらかが潮だったら、と思うだけで鳥肌が立つ。
 乾いた地面に視線を落とす紫暮をルシールは見つめる。
 彼は考えに沈んだような表情で、眉間にしわを寄せていた。

「貴女は、先ほどの広間での話、どうお思いになる?」

「ふふん……くだらない、の一言に尽きるね。ああいう人を見下したガキは嫌いだよ」

「ああ! 私も大いに賛成だ!……っと、いや。というかですな、嫌いとかそういうことではなくて……」
 
「『殺し合い』に乗ったか乗らないかってことだろう?」

「否! あなたの様な夫人がまさか人殺しなんてするわけがない。現にわたしは攻撃なんてされていないですからな」

 単に攻撃手段を持たなかっただけである可能性は考慮に入っていないのか、と考えながらルシールは相手の言葉を待つ。

 紫暮は拳を握りしめ、散った二つの命に思いを馳せていた。
 首輪を爆発させられ、離れ離れになった胴体と首。
 友人か、家族か、どちらが血を流したときにも誰かの悲痛な叫びが響いたことを、紫暮は今でもはっきりと思い起こすことができる。

「私は許せんのです。人殺しが許せない。さらには若い命が目の前で散ったのを見て、それが自分の息子でなかったことに安堵している自分も、同じく許せないのだ」

「……そうかい」

 この者も親か。ルシールは胸の内で一人ごちる。 

263 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:04:43.16 ID:zbdpdTCa [4/7回発言]
 不意に、彼女は先ほど読んだ名簿を思い出した。
 
 ――アンジェリーナ。

(……お前、本当にここにいるのかい)
 
 亡くしたはずの娘。
 ルシールが自らの意志で過酷な宿命に引き渡した、哀れな可愛いアンジェリーナ。
 かわいそうなあの娘は確かに死んだはずだった。 

 では、この名簿がでたらめなのか。
 ルシールは浮かんだ考えを一蹴する。おそらく、それはあり得ない。
 単純に、そんなでたらめは無意味だからだ。
 死者蘇生を心から信じたわけでは決してない、しかし、名簿を疑う気にはならなかった。
 
 だが、だからなんだと言うのだろう。娘に会いに行くのか? この考えも彼女は蹴り飛ばす。
 今更、どの面を下げて会えるのか。
 自分の都合で囮にし、あの娘は自動人形たちに付け狙われて。
 泥だらけ血だらけで這いずり回らせておいて。 

 ルシールは思う。
 今更再会して、彼女を抱擁する資格など、自分にはないと。
 
 ――私は深い闇色をした血を流す淑女。
 
 闇は寂寞の色。憎しみと愛の色。

「用というのは他でもない、わたしと共に参りませんか。貴女は名簿とやらを確認なさいましたかな? もし、お知り合いが居られたのなら探さなくてはなりますまい」

「……お知り合い、いるね。是が非でも見つけなきゃならないのが」

 趣味の悪い帽子と、ふざけたマスクに髭を生やした顔。それを頂に乗せる、でっぷりとした胴体がルシールの脳裏に浮かぶ。
 ここに連れてこられる直前、彼女は真夜中のサーカスの本拠地に攻め込まんとしていた。
 積年の恨みを果たそうという寸前、『殺し合いの強制』などというあまりにもむごく、一方的な仕打ち。

 暗闇の中怒りに震えて立ち尽くしていた彼女は名簿を見、アンジェリーナの名の後にあの名前を見つけていた。
 彼女の口元に浮かんだ笑みはこれ以上はないほどに深く、黒い意志を反映し――凍てついて。
 
 ――極上の絶望を味あわせてやるから。
 
 ドットーレ! 憎き、息子の仇!

 虚空を飲むようなその瞳、ルシールの双眸が光る。
 紫暮は、彼女の顔を横切った殺意を見逃さなかった。
 真夜中の濃い陰影のなかで、彼の表情には疑念が宿った。それも、僅かに敵意をはらんだ疑念が。


264 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:05:52.78 ID:zbdpdTCa [5/7回発言]
「貴女は――どうも、人非ざる者の気配がする」

「へぇ、いい嗅覚を持ってるじゃないか」

『最古のしろがね』はにやりと口の端を引き上げる。二人の間を、夜風が細く吹き抜けた。
 紫暮はじりと一歩後ずさり、手を前に軽く上げて構えの姿勢を取る。

「よもや妖しと申されるか?」

「アヤカシなんかじゃあないよ。――まあ、あんたには関係ない」

 戦闘の意志を見せた紫暮に恐怖を抱くわけでもなく、敵意を向けるわけでもない、目の前の女傑。

 紫暮は構えを解く。
 この老女の持つ殺伐とした空気の正体はつかめないが、女性に無理やり喋らせるなど、彼にはできないことだった。
 そしてルシールが人間でない、という事実を、何となく納得してしまっている自分がいた。

「深くは聞きますまい。……当然ですが、わたしは人殺しのゲームになんか乗らん。支給品とか言うのも、とくとご覧じろ、これだ!」

 高く突き上げた紫暮の手に握られた、月光を反射する銀色の丸い――鍋の蓋。
 おおよそ生き残りをかけて闘う場においては何の役にも立たない、台所の一器具にすぎないそれ。

 対する老女は、わずかに憐憫を含んだ目で彼を見つめる。
 ゆっくりと頭上から腕を下すと、紫暮はデイバックにそれをしまった。

「で……どうされますかな」

「いいよ、探そうじゃないか。あんたの息子さんと、私の『お知り合い』を」

 ルシールは間髪入れずに答えを出す。

 ドットーレとの因縁や、真夜中のサーカスのことをしゃべるつもりはなかった。
 出会って数分の人間に私情を打ち明けるほど、彼女はあけすけではない。
 あくまでも『探し人』として、紫暮に話すことを決めていた。
 一人よりも二人の方が効率が良いのは明らかだ。

 鳴海やギイといった関わりの深い面子も、ここに連れてこられていることはわかっている。
 しかし、彼女はまさに突き出そうとした剣を奪い取られた気分だった。 
 今は復讐を成し遂げる。最優先にドットーレを探し、完膚なきまでに破壊しつくすことが彼女の悲願。

 そして協力の申し出を受け、彼女は目の前の男に問うた。

「息子さんはどんな子だい?」

「とんでもない悪ガキで――自慢の息子かな」

 照れたように笑いながら言い、紫暮は潮の特徴を手短に話す。
 ついでルシールは、憎き仇であるドットーレの外見を伝えた。

265 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:06:49.55 ID:zbdpdTCa [6/7回発言]
「ふむ……、なかなか変わった方で……いや失礼。で、その方とはどういったご関係ですかな」

「なに、昔、世話になったもんでね」

 腹の中にたまったどす黒い念をおくびにも出さず、彼女はその質問を受け流す。 
 ルシールの復讐心など知る由もない紫暮は、名簿の余白にメモを取り終えると腰に手を当てて彼女に向き直った。

「そうですか……ご安心なされよ、わたしもこう見えて法力僧。簡単に言えば、乱暴な坊さんですよ。ゆえに、ちょっと腕には自信がありますので。そこらの三下奴にゃ負けません!」

「ふーん、そうかい」

「……」

 どんと力強い右拳で胸を叩いて放った台詞であったが、百戦錬磨のルシールには軽くあしらわれるだけ。
 左手に持った鍋の蓋の間抜けな存在感も、演出としては最悪だった。
 紫暮は赤面し、咳払いによって妙な間を取り繕う。

「で、では行きますかな。手近かな場所で人の集まりそうなところ――地図が正しければ、小学校でしょうかな」

 ルシールは頷き、二人は各々配給されたデイバックを持ち直す。
 紫暮は彼女の前に立って、周囲を警戒しながら歩き出した。
 
 暗い遊園地の中を、二つの影が這い進む。 

「……絶望させてやる」

 小さく、口にした呪いの言葉。
 
 彼女の枯れた指先が、デイバックの中に仕込んだ硬質な黒い塊へと伸びる。
 支給品――ベレッタM84。「チーター」シリーズと呼ばれるイタリアのピエトロ・ベレッタ社が開発した銃。
 銃火器の扱いに慣れた彼女にはおもちゃのごとく扱いやすい、スタンダードな自動拳銃。
 冷たい銃身を味わうように、幾度も凶器の表面を撫でて。
 前を歩く紫暮に聞こえぬように、ささやかに呟く。

「絶対に壊してやるから待っておいでね――ドットーレ」
 
 それは宵闇に吸われ、誰の耳にも届くことなく掻き消えた。


266 : 宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o : 2011/03/07(月) 01:08:44.17 ID:zbdpdTCa [7/7回発言]

【A-2 遊園地/一日目深夜】

【ルシール・ベルヌイユ@からくりサーカス】
[時間軸]:真夜中のサーカス襲撃直前
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM84
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(確認済み)
[基本方針]:1.ドットーレを最優先で探し、殺す
      2.小学校へ行く

【蒼月紫暮@うしおととら】
[時間軸]:詳しくは不明だが、とらとは面識がある状態からの参加
[状態]:健康
[装備]:鍋の蓋
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:1.潮、ドットーレを探す
2.小学校へ行く
[備考]:ルシールを少しだけ警戒しています。


支給品紹介

【ベレッタM84】高槻美沙@ARMS愛用の銃。2丁ではなく、一丁のみの支給。予備弾薬はない。
【鍋の蓋】原作でも支給された鍋の蓋。


以上です。
誤字脱字、矛盾点などございましたらご指摘くださいますようお願いいたします。

267 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/07(月) 09:40:33.31 ID:2VtOWIO+ [1/1回発言]
投下乙

ルシールの静かな迫力が凄いね
紫暮は支給品に恵まなかったなw他に良いものを温存してるかもしれんが

268 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/07(月) 16:27:09.11 ID:3byqIwSF [1/1回発言]
投下乙
この二人もいいな
なんというか他のメンツが若いの多いのもあって、安心できるというかw
楽観的なわけじゃないけど、表面に動揺を出さないというか。かっこいいぜ
どちらもヤバい状況に置かれた経験は片手じゃ数えきれないだろうし、そういう風格が出てる
引き当てた支給品の持ち主じゃないけど、実際のパワーはそこまでじゃないはずなのにオーラあるわーw


一つ指摘をば
>支給品1~3
とありますが、最大でも0~2ではないでしょうか?

269 : ◆nucQuP5m3Y : 2011/03/07(月) 17:09:12.03 ID:kZG429Kt [1/1回発言]
あー、先日投下の卑怯番長のやつに矛盾を見つけてしまいました。
内容としては「蔵王の格納枠は1つなのに腕から外したグレネードも携帯端末もしまっちゃった」
です。
細かくは後で修正投下しますが、グレネードだけを蔵王へ、端末もヒョウも全部デイパックへ
で大丈夫……ですよね?

270 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/07(月) 20:53:19.68 ID:ESIAJYo3 [1/1回発言]
投下乙!
なんだろうこいつらの安心感w 戦闘力以上のものがあるな。
ルシールはやっぱり復讐か。原作のようにいくかは不安だけども。
アンジェリーナがまた死んでしまったことの影響がどうなるか……。

271 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/08(火) 20:34:25.45 ID:DRgosMc9 [1/1回発言]
>>269
はい、修正点はそれで大丈夫かと

272 : ◆5ddd1Yaifw : 2011/03/08(火) 22:55:17.21 ID:QPVl6kLO [1/5回発言]
予約した石島土門を投下します。

273 : Dash! to truth ◆5ddd1Yaifw : 2011/03/08(火) 22:56:05.38 ID:QPVl6kLO [2/5回発言]
とあるホテルの一室。
そこにモヒカン頭の大男――石島土門は立っていた。

「チッ……んだよ此処は」

明かりが点いていない故にホテルの窓から差し込む月明かりだけがほんのりと土門の巨体を照らす。
その様は鬼神とでも言うのだろうか、気の弱い人が見たら卒倒するくらいに威圧感を醸し出している。

(おいおい、これからSODOMへ殴りこみかけようって時に殺し合いだぁ? ざけんな! んなくだんねーことやってる場合じゃねーんだよ!)

ガシガシと頭をかきながら、イラついた精神を抑える為に近くにあったキングベッドを軽く蹴る。
土門としては軽く蹴っただけなのだがドンと大きな音を立てながら宙に浮き、そのまま空中で一回転、床にドスンと落ちた。
余計なことしてしまったと溜息を吐き、乱雑に戻す。とりあえず、落ちつこうと少し定置から離れた場所に転がっているベッドに腰掛けた。

「ったく殺し合いなんざ勝手にやってろよ。興味ねーっての」

土門は大きくあくびを一つしてから支給されたデイバックの中をおもむろに確かめる。
がさごそと中を漁って最初に出てきたのはこの殺し合いに参加している人名が書かれた紙――つまるところを言うと名簿だ。

(オレの他にもマイスイートハニー風子とその他大勢てんこもり……ああ、胸糞悪ぃ)

外国人日本人含め総勢八十もの名前が載っている名簿の中から見知った名前を幾つか見つけてしまった。
森光蘭に囚われの身である佐古下柳を助ける為にSODOMへの道中を共にした花菱烈火、霧沢風子、小金井薫、水鏡凍季也。
なぜか共にいたはずである陽炎がいないのがわずかに気がかりではあるが考えても意味が無いので放置。
他には烈火の兄であり、直接的な敵ではないが仲間でもないといった紅麗。
元紅麗の部下で今は裏麗に所属している永井木蓮。

(完全にクロは木蓮の野郎だけ、か? 紅麗は、まあ用心するに越したことはねえか。会った瞬間に炎で焼かれたくはないっての。
 余計なことをしたらこんがりウエルダンな土門ちゃんに大変身しちまうぜ)

頭に浮かぶのは消しになった自分の姿。想像するだけで寒気がする。
土門はそんな死に方はゴメンだとばかりに頭をブンブンと振ってその想像を打ち消した。
死ぬ時は風子の胸の中だと決めているんだ、と心中で啖呵を切る。
ともかく、気を紛らわすために自分に支給されたモノの確認を行うことにした。

274 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/08(火) 22:56:24.25 ID:w7U17EVj [1/2回発言]
支援

275 : Dash! to truth ◆5ddd1Yaifw : 2011/03/08(火) 22:57:29.46 ID:QPVl6kLO [3/5回発言]




◆ ◆ ◆




支給されたモノの確認を終えた土門はこれからのことについて考えていた。
ちなみに支給されたものの中には使える物もあったし使えない物もあった。
総括すると、満更でもないといった具合だ。

(さてと、どうすっかな。まずはこの首輪を取らなくちゃ話になんねー。だけど、オレには外し方なんざわかんねーし、無理。
 とすると、なんかそういうのに詳しい奴を捜すしかない。この参加者の中にそういう奴が『いれば』の話だが)

このようなことは本来頭の悪い土門は考えることではない。今までの戦いではただ目の前の相手を振っ潰すといういたってシンプルなことしか考えてこなかった。
だか、今此処に頭脳労働担当とも言える水鏡凍季也、陽炎などはいない。
だから自分で考えなくてはならない。最低限のことは自分自身で。
話題が戻る。首輪の解除について土門は拙い頭を一生懸命使って考えた。
そして結論が出た。
首輪の解除が可能な参加者を捜すと言ってもそれが可能な人物を参加者にいれるだろうか、と。

(甘くねえよな、簡単に解除できる奴がいてそれで解除して……んなアホなことあんのかよ)

否である。そんな隙を参加者に与えるだろうか。与えたとしてもそれは絶対的な余裕。
どう足掻いても勝てるという算段があるということ。
この殺し合いのフィールドからの脱出も同様。逃げ道を参加者が作れるようなチャチな方法はないはずだ。
とすればこの殺し合いに積極的になる他ないのか? 土門は興味がないと確かに言った。
だが、それでも。命を懸けてでも護りたい大切な人はこの殺し合いにいる。
霧沢風子。自分が片思いの恋を抱いている相手。

(どうやっても無理だったら。どうせ死ぬんだったら、風子を生き残らせる為だけに――人を、殺すのか?)

どう足掻いても、前を向いても。希望もなくあるのは絶望だけ。
それなら、殺し合いに乗ってもいいのではないか。
一方的ではあるが愛している霧沢風子を護るため。殺し合いに――――



「お断りだ、クソ野郎」



その考えを一言で一蹴。即座に破棄した。
理由は単純。

276 : Dash! to truth ◆5ddd1Yaifw : 2011/03/08(火) 22:57:56.95 ID:QPVl6kLO [4/5回発言]


「風子は、そんなことをされて喜ぶクズじゃねえ!」

それをしても彼女は喜ばない、むしろ悲しむだろうから。ただそれだけだ。
だが単純故に強靭。この意志は絶対に折れない。

「何、馬鹿みたいにあれこれと考えてんだよ! オレは今まで通りやればいいだけのことだ」

ドシドシと大きな音をたてながら大股に歩きながら部屋の出口まで向かう。

「仲間を傷つける奴をこの拳で叩き潰す――それだけだっ!!!」

そして、拳でドアを勢い良く殴り飛ばす。ドアはドゴンと重い音と共に向かいの部屋のドアを突き破りそのまま吹っ飛んでいった。

「待ってろよ、風子」

結局の所、土門は殺し合いに抗うことを選択した。最愛の彼女を護るために。
後悔なんてしない生き方をしたいから、彼女を悲しませたくないから。
それらの燃える意志を胸に抱いて。
火影忍軍が一人、石島土門――――出陣。



◆ ◆ ◆



彼は知らない。捜し人である霧沢風子が知らない男に胸を揉まれていることを。
彼は知らない。霧沢風子の持つ風神剣が力に溺れた者を鬼へと変える魔剣だということを。
彼は知らない。この殺し合いが幾ら強い決意を持っていても、破ることは困難だということを。

まだ、この時の土門には何も知る由もなかった。



【E-4 ビジネスホテルの一室/一日目 深夜】

【石島土門】
[時間軸]:SODOM突入前
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(本人確認済み。使える物と使えない物が入っている?)
[基本方針]:烈火たちと合流したい。風子最優先。

277 : Dash! to truth ◆5ddd1Yaifw : 2011/03/08(火) 22:58:43.62 ID:QPVl6kLO [5/5回発言]
投下終了です。誤字脱字はwiki収録の際に修正します。

278 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/08(火) 23:08:08.01 ID:w7U17EVj [2/2回発言]
投下乙です。

土門、男らしいよ、土門。
でも、風子が横島に乳揉まれたって知ったら自分も飛びつくんだろうなぁw
風子側に怪しいフラグがある分、この先が心配でもあるね。

279 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/08(火) 23:37:35.28 ID:jYiQORNb [1/1回発言]
投下乙です

土門かっけぇw 藤田作品のおっさん連中とは違った男気を感じるキャラだよなぁ
原作では風子が雷覇との戦いで折れそうになったときに間に合って支えられたけど、ロワだと果たして……
そして何気に土星の輪が無くてパワーダウンしているのも不安だw
本人は忘れててもおかしくないがw

280 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 00:48:16.33 ID:HXfvaR0K [1/1回発言]
YAIBAキャラ全然予約されないな
大丈夫か?
今からでも外すか?

281 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 18:25:25.91 ID:fgid/vC0 [1/1回発言]
さすがにそれは混乱が起こるから止めとけ

でも個人的にはYAIBAよりらんまの方が……まぁ、愚痴だわな

282 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 18:45:28.54 ID:roa2SEvu [1/1回発言]
そういや留美子出典ないんだよな、意外だわ

283 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 21:12:53.98 ID:xpnG4udn [1/1回発言]
投下乙!
上でも言ってっるけど土門は男気があって本当にいい奴だ
ギャグもシリアスもこなせるから今後に期待w
そしてやっぱり火影忍軍の中でも風子が一番なのね
風神の剣ってフラグが立ってるから、ヤバイことになる前に支えてされればいいんだが

284 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 21:52:45.88 ID:Uerbak0G [1/1回発言]
>>280-281
誰も書かなきゃ俺ロワにするって前提で始まってるんだから外野がどうこういうこっちゃないな

285 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 21:58:57.53 ID:1f6yZhZX [1/1回発言]
土門は鉄丸も没収されたのかな?

286 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 22:17:58.77 ID:RIzQl6gh [1/2回発言]
鉄丸か… 没収したとして、きっと便器の中から回収だな…
元スプリガンのドクターの心霊手術? 知らんなあw

287 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 22:47:15.49 ID:1kmtNLPa [1/1回発言]
むしろ一作除いて他予約入ってる時点ですげーよw
どうも、ずっとお節介焼きがいんなw


288 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/09(水) 22:54:13.47 ID:RIzQl6gh [2/2回発言]
佐々木小次郎が予約入っているよ
ヤイバが予約されていないというより、メインキャラを除いて予約されていると言ったほうが正しいと思うよw
ヤイバはほぼ全員メインだから後回しにあっているのかもしれん
だって、主役で出ているのガッシュだけw

289 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 01:53:18.95 ID:kPKqE+nU [1/8回発言]
それでは投下します。

290 : ロスト ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 01:54:37.19 ID:kPKqE+nU [2/8回発言]
「このぶたちゃんは、おかいもの」
 月の明かりすらも、届かない。
 暗く静かな森の中。
 妖の一匹でも出そうな、夜闇であった。

 ゴスロリとも呼ばれる黒いドレスに身を包んだ、金髪の少女。
 大きな目でぱちくりと瞬きをすれば、長いまつ毛が僅かに揺れる。
 その姿は、まるで人形のような……。
 ……否。人形のような、ではなく彼女はまさに自動人形、つまりは機械なのであった。

「このぶたちゃんは、おるすばん」
 少女のうたごえに、木々が涌く。
 さらさらと、葉音による拍手喝采は鳴り止まず。

 そう。果てしなく広い丸盆の中心で、この少女はひとり、歌をうたっていた。
 されど、その響きは冷たい空気に溶けて、誰の心も震わせることはない。
 だとしても、彼女のうたは止む事はなく。

「このぶたちゃんは、おやつたべ」
 靴が汚れることも厭わずに、少女は宛ても無く歩き続けていた。
 踏みしめた土はやわらかく、めり込んだ小さな足を優しく包み込む。
 多くの養分を内に秘め、たくさんの木を育んでいく、母なる土壌だ。
 しかし、彼女のつたない感覚器官では、その温もりすら感じることはできない。

「このぶたちゃんは……」
 ふいに、歌が止まる。
 それと同時に、少女もその場に立ち尽くした。
 凪が訪れて、木々が黙る。
 万来の拍手が鳴り止んだ。
 それはまるで、芸人が綱渡りに失敗したときのよう。

「……このぶたちゃんは、なんにもない」
 数泊おいてから続けられた歌詞だが、メロディーは添えられてはいなかった。
 その小さな語りは、自分に言い聞かせるがごとく。
 だがしかし、彼女が見上げる緑の天井には誰の姿もない。
 木の葉の隙間から垣間見える星々も、酷なほどにそっけなかった。
 少女は目を細めて、ゆっくりと首を横にふる。

「ううん。この子は、おみやげをもってるわ」
 そう、歌詞を修正する。
 彼女が永劫の眠りについたときに、掠れ行く意識の中で歌った歌詞へと。
 モン・サン・ミッシェルでのことだ。
 彼女は、勝たちを助けるための代償として、その機械仕掛けの命を散らせてしまう。
 突然の終わりであったが、大切な人に抱きしめられたいというその本懐だけは、最期の最期で遂げることができた。
 彼女はそれで満足だったのだ。
 それだけで、彼女の百八十年の全ては報われたはず。
 なのに、彼女はまたもや、こうして復活させられてしまっている。

「なんにもないのはアタシ」
 からからと笑う。笑ったかのように顔を動かす。
 やはり自分は機械だった。
 それを思い知って、からからと。

 生存理由が、空だった。
 悔い無き最期を経験してしまった彼女には、もうこれ以上果たすべき目的がないのである。
 仮に人間であれば、またここから新たに『生きる目的』を生み出すことができたのだろう。
 だが、悲しいかな。彼女は自動人形。しかも旧式の。
『性能が悪い』彼女は、予めインプットされた『生存目的』を忠実に実行することしかできない。

291 : ロスト ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 01:55:44.97 ID:kPKqE+nU [3/8回発言]

「なぁんにもないや」
 そよ風を受けて、わずかにさらさらと葉っぱが拍手をする。
 喝采と呼ぶにはまばら過ぎる、申し訳程度のものだった。
 それは、つまらないクラウンを見せられて辟易した観客の反応に似ている。

 やがて、孤独な静寂に耐えかねたのか、少女はおどけて小さくターンをした。
 気持ちを切り替えようと思ってのことだ。
 短く二つに結わえられた髪の毛が、控えめに揺れる。
 すると……。

「あら、あら、あら」
 振り返った先に、彼女が密かに期待してたものがいた。
 彼女のくりくりとした大きな目が捉えたのは、黒髪の少年。
 白い浴衣を身にまとい、頭には手ぬぐいを巻いている。
 それだけでもなかなかに異様な格好であるが、最も目を引くのは彼の左目の周りに広がる火傷の痕だ。
 痛々しい痕が、彼本来の釣り目と相まって、なんとも暴力的な雰囲気を醸し出している。
 しかし、そんな威圧感を放つ彼ですらも、目の前の少女が持つ不気味なオーラに気おされてしまっていた。
 数歩だけ後ずさった少年の足首を、アポリオンと呼ばれる超小型自動人形を固めて作られた鞭が捕まえる。

「しもたッ!」
 少年は頭に巻いていた手ぬぐいを解き、即座に口を閉じて呼吸を止めた。
 すると、その布切れは次第に光沢を帯び、鋭利な刃と化す。
 息を止めている間限定で、手ぬぐいを鉄に変える。彼の能力だ。
 だが、それを振り上げるよりも早く、少女の操るゾナハ蟲が彼を逆さ吊りにした。
 思わず息をのんだが最後、彼の握る刃はもとの力なき手ぬぐいに戻ってしまう。
 右足で吊り下げられる体勢のまま、彼は成すすべなく少女の目の前まで運ばれた。
 少年の顔は見る見るうちに青ざめ、その脳内にはサイレンが鳴り響く。
 冷や汗が、その顔に残る火傷の痕を伝った。
 逃げようともがいたところで、足首を縛る銀の鞭はどうすることもできない。
 まな板の上の鯉、というやつだ。

「こんばんわぁ」
「お……おう。こんばんは……やな……」
 少女の口から飛び出したのは、まさかの陽気な挨拶。
 死を覚悟していた少年は、あっけに取られた。
 現状を理解することもままならず、苦笑いで返事をする。
 それを受けて、吸い込まれそうなほど大きな彼女の瞳が輝き……。
 キャハハ、と甲高い笑い声。

 突風がふいた。
 彼女を祝うかのように、森中が今日一番の割れんばかりの盛大な拍手を贈る。
 いま、ここに。
 スタンディングオベーション。





     第拾参話 『ロスト』





 ズズズ……と。
 少女が『液体』を啜っている。
 ズズズ……と、毒々しい色の、温かいソレを。
 その可愛らしい桜色の唇の隙間に注いでいく。
 とてもとても、美味しそうに。

292 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 01:57:00.12 ID:ks27l3G8 [1/6回発言]
 

293 : ロスト ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 01:58:07.56 ID:kPKqE+nU [4/8回発言]

 一呼吸おいて、舌なめずり。
 血の通っていないはずの少女の顔は、わずかに紅潮しているようにも見える。
 初めての体験であったのだろう。
 だいぶ緊張しているようだ。
 禁忌だとして避けてきていたというわけではない。
 少なくとも、彼女が馴染んだ文化ではこういった行為は存在しなかったのだ。
 自動人形でも、こんなことを行うものは異端中の異端であろう。

 少しずつ、液体を飲み下す。
 頑張ってコレを出してくれた少年に感謝しながら。
 彼がいなければ、彼女はこの味に出会うこともなかったのだから。

 やっとのことで、少女が飲み干す。
 緑茶を。

「意外と、悪くないわね」
 コロンビーヌが、ぷはぁと溜め息をつく。
 日本の緑茶という飲み物を味わうのは、彼女にとって初めてのことであった。
 それもそのはず。そもそも自動人形である彼女は、このように飲食を摂る必要がない。
 たったひとつだけ、人間の血を飲みさえすれば、それだけで活動するエネルギーを補給できた。
 尤も、今の彼女は人間をむやみに殺すつもりは無いのだが。

 それだけではない。
 彼女が作られた文化圏ではお茶といえば専ら紅茶で、戯れに飲むにしても殆どがミルクティーだった。
 さらに言えば、こんな緑色の濁液を飲むのは気が引けた、というのも一因としてあったのだろう。
 そういったわけで、彼女が緑茶というものを飲んだことは今まで一度としてなかった。

「おう、飲まず嫌いはアカンで嬢ちゃん」
 佐野清一郎が、空になった湯飲みに緑茶を注ぎ足す。
 ちゃぶ台を挟んで座る少女は、礼を言いつつも即座にそれを飲み始めた。
 どうやら、この日本文化を大層気に入ったらしい。
 とはいえ、彼女が気に入ったのは緑茶の味ではなく、それを含めた『和』の空気。
 風の感触すら感じられない彼女であるから、味覚などは存在してるはずもない。
 ただ、正座してまったりとお茶を飲むという行為が気に入ったに過ぎない。
 もしかしたら、人間の真似事をしてみたかっただけなのかもしれないが……。

「それで、アナタは地獄に落ちた犬丸って人を助け出したいわけね」
 コロンビーヌが話を戻す。
 森の中で自己紹介を済ませた両者。
 まず彼女は佐野に、彼が叶えたい『願い』を聞き出した。
 もしかしたら、自身の生存目的を見つけるうえでのヒントになるかもしれないと考えたからだ。
 彼女に事情を話すことを承諾した佐野ではあるが、暗い森で立ち話をするのは流石に危険だと主張した。
 それで、二人で町に向かい適当な民家を探してお邪魔し……今に至るというわけである。

「せや。アイツは……ワンコは、オレのせいで……」
 ポットから急須にお湯を補充し終え、佐野が俯く。
 かみ締められた奥歯が、ギリリと鳴った。

 彼が元いた世界でのことだ。
 能力者となった中学生たちの中から、たった一人の優勝者を決めるための戦いが行われていた。
 今行われている殺し合いと、やっていることは余り変わらない。
 優勝の見返りとして、能力者は何でも好きな才能を得られ、その人物を担当する天界人は新たな神様になることができる。
 犬丸と言うのは、彼を担当していた天界人だ。

 佐野は犬丸のことを単なる担当者としてだけではではなく、それ以上に心の通じ合った親友であると思っていた。
 だが、その犬丸は、戦いの最中で佐野を守るために死の地獄に落ちてしまう。
 彼の命を救うためには、佐野や植木たちの仲間の誰か一人が能力者の戦いで優勝するほかなかった。
 逆に言えば、彼らが負ければ犬丸は死んでしまうということだ。

294 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 01:58:44.79 ID:ks27l3G8 [2/6回発言]
 

295 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 01:59:30.26 ID:ks27l3G8 [3/6回発言]
 

296 : ロスト ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 01:59:34.97 ID:kPKqE+nU [5/8回発言]

「ふぅん」
「……あ、このけったいな殺し合いには乗らへんで。んなもん当たり前や」
 疑うようなコロンビーヌの目つきに、佐野が慌てて取り繕う。
 他人や仲間を犠牲にしてまで願いを叶えるなど、彼はさすがにするつもりもなかった。
 それに、そんなことをして救われたところで、犬丸は喜ばないだろうことも分かっていた。
 あたふたする彼の様子にコロンビーヌがクスリと笑い、お茶のおかわりを無言で要求する。
 突き出された湯飲みに熱い緑茶が注がれ、たちこめた白い湯気がお互いの顔をぼやけさせた。

「あとは、温泉やな」
「温泉……って『オフロ』のこと?」
「オレは世界中のみんながホッとできるような温泉旅館を作りたいんや」
 自慢げに胸をポンと叩く。
 元いた世界で、彼は優勝の見返りとして『温泉発掘の才』を要求するつもりでいた。
 もちろん、この願いも人を殺してまで叶えるつもりは毛頭ない。

「キャハハハ! くっだらなーい」
 優勝報酬の『空白の才』は、どんな願いでも叶うはずだ。
 それをたかが温泉ごときに使うとは、なんと無計画な男なのだろうか。
 佐野の向こう見ずな姿勢を、人形の少女は遠慮なしに笑う。

「ぬっはっは。お前も入りに来ぃ。ロボットやろが昇天させたるからな」
 夢を笑われるのに慣れているのか、それとも元来の器の大きさか。
 おそらくはその両方だろうが、佐野は笑顔で啖呵を切る。
 コロンビーヌに温泉の温かさを感じる能力がないと分かったうえでの宣言だった。
 嫌味ではなく、無駄な気を使わない性格なのだろう。
 その真っ直ぐな瞳に、コロンビーヌも笑みを返す。

「楽しみにしておくわ」
 満足げな表情で、彼女は座布団から立ち上がった。
 クルリと体を翻すと、短いスカートが揺れる。
 佐野に上品にウインクを贈りつつ、玄関へと歩みだす。

「お茶、おいしかったわ。ありがと」
 佐野の方を振り返ることもなく、お礼を述べた。
 さよならの意を込め、ひらひらと手を振りながら。
 少年は、あぐらをかいて、ちゃぶ台に頬杖を付いたままで少女に尋ねる。

「……どこいくねん?」
「どこかしら?」
 立ち止まった人形の答えはそっけない。
 まるで、早くこの家から出て行きたいかの素振りだ。
 それでもめげずに佐野は尋ね続ける。

「……なにしにいくねや?」
「なにかしら?」
 再び。突き放すような、からかう様な少女の返事。
 それを聞いて、「なんやそれ」と佐野が笑った。
 笑い声を背に、少女は歩みを再会する。

「待てや」
 呼び止められても、コロンビーヌは今度こそ立ち止まらなかった。
 だが、佐野は気にせずゆっくりと立ち上がって、その背中に最後の質問をぶつける。

「お前の『願い』を聞いてへんで」
「…………」
 コロンビーヌが息を吸い込む。
 人間で言う肺に当たる機関に空気を充填してから、諦めたようにゆっくりとため息をつく。

297 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 02:00:15.41 ID:hEbRc/o+ [1/1回発言]


298 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 02:00:17.41 ID:ks27l3G8 [4/6回発言]
 

299 : ロスト ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 02:00:49.04 ID:kPKqE+nU [6/8回発言]

「それを見つけにいくのよ」
「…………そうかい」
 佐野は少女の元へ歩みよったかと思えば、彼女を追い越してしまった。
 そのまま玄関まで進み、ガラガラと扉を開ける。
 外は暗く、街頭すらも夜道を照らすには心もとない。
 冷たい空気を頬で感じながら、彼はコロンビーヌへと振り返る。

「いくで。人形」
 親指でドアの外を指差し、佐野はニヤリと楽しげな表情を浮かべた。
 彼が知ってるのは、コロンビーヌが自動人形であることだけ。
 彼女が辿ってきた百八十年の、その中身を全く知らない。
 佐野にばかり話をさせるくせに、彼女は自分のことを全く話さなかったからだ。
 それでも、佐野はコロンビーヌが人形であること以外にもうひとつの事実を知っていた。
 ……会話の中で感じたのだ。

 彼女は、大切な何かを求めている。
『願い』を尋ねたその瞬間の、この人形がみせた悲しい目を、佐野は覚えていた。
 まるで人間ではないかと見紛うくらいに。
 そして、温泉旅館を開くという彼の夢を聞いたとき、少女の瞳は僅かに輝いた。
 くだらないと一笑に付したにも関わらず。
 少女の双眼に、彼の正義は確かに射抜かれた。

「お好きにどうぞ。ニンゲンちゃん」
 呆れたように、コロンビーヌも少しだけ笑う。
 外に出た彼女の後ろ手が勢いよく閉めた扉が、夜空を揺らした。
 その音がなんだか心地よくて、二人は少しだけ背筋を伸ばす。
 見上げた星は、相も変わらずそっけなかった。




 少女は扉を開けて外に踏み出す。
 欠けた歯車を埋めるために。
 なんにも持っていない人形が、別の何かになるために。

 並び立つ少年もまた、失った大切なものを求めていた。
 しかしそれは、この旅路では絶対に埋められないもの。

 向こうの山に風が吹く。
 サラサラ、サラサラ、木が揺れる。
 その音に混じって、彼女たちの開幕ベルがピシャリと鳴り響く。
 真夜中の、開幕ベルが。
 高らかに。

300 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 02:01:21.97 ID:ks27l3G8 [5/6回発言]
 

301 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 02:02:27.17 ID:kPKqE+nU [7/8回発言]



【D-2 民家前 一日目深夜】

【佐野清一郎】
[時間軸]: 不明。少なくても犬丸が地獄に落ちてから
[状態]:健康
[装備]:佐野の手ぬぐい@うえきの法則
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:仲間たちとともに脱出する。コロンビーヌについていく。
※佐野の手ぬぐいは支給品ではなく、最初から装備してました。

【コロンビーヌ】
[時間軸]: 本編で活動停止後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:さすらう。『生存目的』を見つけ出す。
※アポリオンは使用可。制限されているかどうかは不明。

302 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/10(木) 02:02:48.66 ID:ks27l3G8 [6/6回発言]
 

303 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/03/10(木) 02:03:10.99 ID:kPKqE+nU [8/8回発言]
以上、投下終了です。
支援ありがとうございました。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

304 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/11(金) 00:04:20.02 ID:O2Q7Xm+v [1/2回発言]
投下乙

いいなー、なごむねこのコンビ
緑茶の件やら、温泉トークやらで一々仲の良い二人が大好きだ
佐野が殺されたと思っただけに、チーム組めて本当によかった
コロンビーヌはどんな『生きる目的』を見つけるんだろうか?
某所ではマーダーになっただけに、こっちの彼女には期待したいです


305 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/11(金) 01:32:28.79 ID:yQBx1MLr [1/8回発言]
投下乙
コロンビーヌはなにもない、か……
人間じゃなく、旧式の自動人形だもんな。やり遂げてしまったら、次の目的を得るまで空ってこともあるか
一方、佐野は安定しているな。犬丸救出をやり遂げても、変わらんだろうし
なんというか、対照的な二人だぜ。人間と人形ってのも、やり遂げたあと&前ってのも、仮にやり遂げても殻にはならなそうってのも
コロンビーヌがなにを見つけてなにになるのか……いいね

306 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:46:38.05 ID:yQBx1MLr [2/8回発言]
投下します。

307 : 夢の花 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:47:18.59 ID:yQBx1MLr [3/8回発言]


 河原で、二人の男が見合っていた。
 どちらも纏うのは、黒い中華服。
 短髪のほうは腰を低く落としているのに対し、長髪のほうは立ち尽くしている。
 すぐ横の川は絶えず流れ、足元の草は風に揺られているというのに、彼らは十メートルほど距離を取ったまま一向に動かない。

(隙がない、ある……っ)

 李崩が腰を落とした姿勢を保ちつつ、胸中で呟く。
 視線の先にいる朧と名乗った男は、素人目にはただ立っているように見えるだろう。
 しかし中国拳法の道を突き進んできた李崩は、そうでないことを見抜く。
 一見無防備なようで、そうではない。
 李崩のいる前方だけでなく、背後。それどころか上下や川のなか。
 どこから攻められたとしても反応するべく、あえて自然な状態を維持しているのだ。
 何せ、行われているのは試合なのではなく、殺し合いなのだ。
 第三者が死角から仕掛けてくるとも限らない。
 その可能性まで考えているのだろう――と、李崩は判断した。

(この男、遥か高みにいるあるな)

 自分が適わないと認識しながらも、李崩は口元を釣り上げる。
 殺し合いには否定的であるものの、己の修行を疎かにするつもりはなかった。
 好敵手である『植木耕助』や、何度も噂を耳にした強者たちが参加しているのだ。
 舞台こそ違えど、自分を高めるチャンスであることに変わりはない。
 そのように思っていたところに、朧と出くわしたのだ。
 最強の格闘家目指す上で、確実に乗り越えねばならない。そう思える相手に。

(胸を貸してもらう……!)

 李崩は機を窺うのをやめて、思い切り地を蹴る。
 被っていたつばのない帽子が脱げてしまうが、気にも留めずに金髪とおさげを風に靡かせる
 表情を変えない朧に正面から拳を叩き込む――李崩が触れたと錯覚した瞬間に、朧の姿は掻き消えた。

「後ろある!」

 視界の片隅に捉えた長髪に反応し、李崩は左足を軸に回転して上段蹴り。
 だがそれも、空を切ってしまう。
 完全に朧の姿を見失った李崩が、首を勢いよく捻る。

「こちらです」

 もともと向いていた方向から声を掛けられ、李崩は肝を冷やす。
 僅かに反応が遅れ、朧の攻撃を許すことになる。
 背中に衝撃を受け、李崩は河原に倒れこむ。
 加減したのか威力はそこまでではなく、李崩は寸前で受け身を取る。
 しかし完全に不意を突かれたという事実が、実際に攻撃を受けた箇所よりも遥かに痛かった。

「スピードやパワーが戦闘の基本とでも、あなたは思っているのではないですか」

 李崩を見下ろすように、朧は立っている。
 先ほどと同じく全方向に対応できる――とても構えとは思えない体勢で。

「たしかにどちらも重要な要素ですが、あくまで一つの要素にすぎません」

 立ち上がって接近してきた李崩にも動じず、朧は言葉を続ける。

「それらに頼っていては、私には勝てませんよ」

 体重を乗せた肘打ちを放った李崩の背後から、声がした。

308 : 夢の花 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:48:21.38 ID:yQBx1MLr [4/8回発言]


 ◇ ◇ ◇


 あまりに一方的であった戦闘を終え、朧は再び歩みを進める。
 彼のほうも殺し合いに乗り気なワケではない。
 ただ、手合せを望んできた李崩という少年の姿が若き日の自分と重なった。
 強者と戦い己を磨く、それだけが生き甲斐だったころの自分と。

「いえ、現在も変わらず……ですね」

 さきほど拳を交えた李崩。
 彼は、まだまだ強くなる。
 いずれ、成長した暁にはまた――

「とはいえこの状況を脱してから、になるでしょうが」

 いつになるかも分からない未来ではなく、当面する事態に意識を傾ける。
 背負っているリュックサックに視線を向け、朧の表情が険しくなった。
 わざわざ時間を割いてくれた礼だと李崩に渡された武器。
 断ろうとするもやたら食い下がられ、最終的に「強く正しい人間が持たねばならない」とまで言うので譲り受けた。
 その二つの武器が、朧に警告を鳴らすのだ。
 このプログラムが、想像している以上に厄介なものであると。
 下手をすれば全世界をも巻き込みかねない、と。
 李崩に支給された武器のうち片方は、中性子爆弾。
 こちらだけでも大ごとだ。
 中性子爆弾を用意できるような組織は、決して多くない。
 だが、まだそちらはかわいいものだった。
 もう片方の――――水晶髑髏と比べれば。
 一定の振動を与えることで核融合さながらのエネルギーを生み出す、古代人が残したオーパーツ。
 悪用してしまえば、複数回発動可能な核爆弾として使うことも可能な代物だ。
 表の世界で展示されているレプリカかとも思ったが、実際に手にしてみて朧はその考えを否定する。
 正真正銘の水晶髑髏がなぜか表に出ている、明確な異常事態だった。



【C-4 路上/一日目 黎明】

【朧】
[時間軸]:不明
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、水晶髑髏@スプリガン、中性子爆弾@ARMS
[基本方針]:殺し合いに乗る気はない。

309 : 夢の花 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:48:51.97 ID:yQBx1MLr [5/8回発言]


 ◇ ◇ ◇


 朧が去ってしまった河原で、李崩は仰向けに寝そべっている。
 いくら攻撃されても立ち上がり続けた李崩に、朧は気を流し込んだのだ。当分は身動きできない。
 そんな状態で、李崩は頬を緩めていた。
 身体中にダメージを負っているというのに、それでも笑う。
 彼の視界に映っているのは、落ち始めた月でも満点の星空でもない。
 それらよりも輝かしい、自分の未来だった。
 戦闘中に朧から告げられた助言の意味が、ようやく分かりかけてきた。
 『見て反応する』自分が適わなかった理由が、やっと理解できたのだ。
 もう、笑いが止まらない。
 なぜなら、李崩はさらに成長できるのだから。
 去り際に尋ねた問いへの答えも、期待していたものだった。
 『いずれ自国を飛び出し世界の強者と戦いたい』という李崩の目標に、朧は『正しい選択です』と返したのだ。
 もっと強くなれるという事実が、選んだ道が誤っていなかった事実が、とても嬉しかった。
 李崩は、星空のなかにいまは亡き父の姿を見る。
 憧れ続ける最強の格闘家である父に、さらに近付くことができるのだ。
 微かに動くようになってきた身体で拳を握り、李崩は天に向ける。
 これからも、いままでのように夢へと進んでいく。そう誓う。

 ――――突如、甲高い声が響いた。

「ひひひひ、パウルマン! なんか寝てるヤツがいるよ! こんなときに頭おかしいんじゃねえのか!?」

 李崩が振り向く前に、落ち着いた低い声が続く。

「よく見たまえ、アンゼルムス。身体が汚れている。他の誰かに痛めつけられたのだ」
「にしちゃあ生きてるぜ? 逃げてきたのか?」
「あるいは仕掛けて逃げられたのか、だな」
「けっ! どっちにしろ傑作だな、オイ! なんせよォ、結局いまから死んじまうんだからなァ!」
「うむ、そうだ」

 どうにか首を動かした李崩は、言葉を出すことができなかった。
 目の前にいるのは、奇妙な白いスーツを来た男と、彼に抱えられた裕福そうな子ども。
 見ただけで、李崩は彼らが人間ではないことが理解できてしまった。
 腕がやたら長い少年のほうとは違い、パウルマンと呼ばれる男は人間と変わらない外見のはずなのに。
 やけに暗い、夜の闇よりも暗い瞳が、人間ではないことを声高らかに主張していた。

「せっかくだし、アイツでこの『特殊ライフル』ってヤツ試してみようぜェ!」
「いや、そちらは弾丸の数が限られている。まずこちらの切れ味を試すとしよう」

 妙に長い腕の先にある巨大な銃を掲げるアンゼルムスを、パウルマンが諌める。
 その左手は、武骨な西洋剣を握り締めている。
 ゆっくりと近付いてくる影を見つめながら、李崩は理解した。
 輝かしいはずだった未来は、もう迎えられない。
 現在以上の成長は、もうすることができない。
 好敵手とだって、もう戦えない。
 父には、もう近づけない。
 ここで、もう――

「終い、か」



【李崩 死亡確認】
【残り77名】

310 : 夢の花 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:49:22.02 ID:yQBx1MLr [6/8回発言]


 ◇ ◇ ◇


 べったりと剣に付いた血を舐りとってから、パウルマンとアンゼルムスは死体へと手を伸ばす。
 上半身と下半身にうまく分断できたので、特に喧嘩にもならなかった。
 滴る血を嚥下しながら、恍惚とした表情となる。

 彼らの行動は、まったく変わらない。
 人形破壊者を追っている最中に妙なプログラムに巻き込まれたとしても、変化はない。
 敵を殺害しつつ、主が笑う方法を探す。
 それだけだ。
 そのためならば、機能し続けるべく人の血を吸う。
 夢を抱く少年少女であろうと、家族を守ろうとする大人であろうと、区別はない。
 例外なく、無作為に踏み躙っていく。

 それが――――自動人形(オートマータ)なのだから。



【C-4 河原/一日目 黎明】

【パウルマン&アンゼルムス】
[時間軸]:本編登場前。
[状態]:万全
[装備]:ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ(パウルマン)、対AMスーツ用特殊ライフル(弾丸:15)@スプリガン(アンゼルムス)
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:人間と人形破壊者を殺害しつつ、フランシーヌ人形が笑える方法を探す。

311 : 夢の花 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:49:45.76 ID:yQBx1MLr [7/8回発言]



【支給品紹介】


【水晶髑髏@スプリガン】
李崩に支給された。
ある一定の振動を与えると、莫大なエネルギーを発生させる。
裏の世界では有名になっており、核融合に変わる新エネルギーとして数多の組織が探し求めている。


【中性子爆弾@ARMS】
李崩に支給された。
核兵器の一種。熱や爆風は比較的弱いが、放射される中性子線は強烈。
そのため、建造物などの破壊を抑えつつ生物を殺すことができる。
もともと一つの市を破壊するべく用意されたものであるので、爆発してしまえば会場は一たまりもないだろう。


【ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ】
パウルマン&アンゼルムスに支給された。
魔物アースが扱う両刃の剣。
触れた相手の力を吸収する性質がある。


【対AMスーツ用特殊ライフル@スプリガン】
パウルマン&アンゼルムスに支給された。
防弾に優れたAM(アーマード・マッスル)スーツ対策として、トライデントが作成したもの。
弾丸は精神感応金属(オリハルコン)製。



【備考】
※C-4河原に、李崩のリュックサック(基本支給品一式、ランダム支給品なし)が放置されています。

312 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/11(金) 07:50:10.53 ID:yQBx1MLr [8/8回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘お願いしますね。

313 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/11(金) 08:10:19.01 ID:O2Q7Xm+v [2/2回発言]
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは予約段階でパウルマン先生乙
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったら生存どころか星をあげていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    朧のアシストだとかチート支給品だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…



投下乙

予約からして気の力で自動人形さようならって思ったらまさかの展開w
こいつらがマーダーとして誰かを殺す展開は思ってもなかったww

っていうか主催は何を考えてあんな危険なブツ支給したんだよwww
会場崩壊余裕でしたって代物が二つも朧の手に渡ってるし

そしてパウルマン&アンゼルムスの支給品も中々チートだね
これはスペック以上に厄介な相手になりそうだ

李崩は空気読めなかったのが悪かったね。殺し合いの場でガチの戦いはまずかった。

最後になったけど朧の死神っぷりがヤバイな
真由子に続いて李崩も連続で死亡とは


314 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/11(金) 14:06:08.57 ID:Ktl3cv13 [1/1回発言]
投下乙です

朧と李崩が出会ったらこうなるよな。だがそれが仇になるとは
ロワでそれは死亡フラグだぞ
それとそんな危険すぎる支給品を参加者に渡して何を考えてるんだ? 朧ならそうそう安易に使用したり、手放したりしないだろうが……
パウルマン&アンゼルムスもいい支給品を渡されて更にやっかいだし……

315 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/12(土) 19:01:51.80 ID:5QWJ+roZ [1/1回発言]
投下乙

ある意味意外な決着だったな。李崩けっこう好きなキャラだったから少し残念。
しかし、これまたヤバすぎる支給品が・・・

316 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/13(日) 01:41:56.34 ID:iOPuqYqI [1/1回発言]
投下乙です!!

うわー…
前半部分で、成長フラグktkrとか思ってにやにやしてたのに!
終盤でまた強くなって朧と再戦とか妄想してにやにやしてたのに!
まさか死んでしまうなんて…

そして朧へと渡ったかなりヤバ気な支給品が怖すぎる
改めて投下乙でしたー

317 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/13(日) 02:53:23.70 ID:TYdEuQpN [1/1回発言]
投下乙
李崩は運が悪かったなー
なんというか残念
そしてパウルマンアンゼルムスは脅威の安定感ww
朧の手に渡ったものは…チート過ぎて逆にやばい

318 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:13:08.37 ID:hvdyzYhN [1/8回発言]
投下します。

319 : Re:Re: ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:14:05.36 ID:hvdyzYhN [2/8回発言]


「ぬうう……あの男、いかなる手を使ったのだ」

 樹木が密生する山を下りながら、一人の男が呟く。
 ゆったりとした裾の長い学生服に身を包んだ彼は、来音寺萬尊という。
 険しい顔で首を捻ると、毛髪の生えていない頭が月光を照り返す角度が変わる。

「気付かぬうちに我らを呼び出し、一瞬のうちにバラバラにする……分からぬ。
 集団催眠にかけられたとすれば納得できるだろうが、とてもそうは思えぬな……」

 立てた襟の外に巻いた数珠を、来音寺は撫でた。
 彼は、その大粒の数珠の音を起点にして催眠術をかけることができる。
 警戒を怠る術士は術士にあらず。
 ならば自分にまったく悟られることなく集団催眠を発動させるなど、来音寺はありえないと判断する。
 だとすれば、先刻の事態は実際にあったということだ。
 来音寺の足が、意図せず止まってしまう。
 キース・ブラックと名乗った男がやったことが現実だとすれば、それほどまでに強大な力を持っているというのなら――
 自分や仲間たちの力程度で、立ち向かうことなど可能なのだろうか。

「……ふっ」

 強張っていた来音寺の表情が、急に緩まった。
 敵の力は、底がしれない。
 殺し合いに乗る連中だって、少なからずいるだろう。
 爆弾の枷までつけられてしまっている。
 たしかに、間違いなく現状はまずい。
 どうにもならないようにすら思える。
 しかしながら、それでも来音寺は勝利を確信している。
 行方が分からなかったあの男が、この場にいるのだから。
 呆気に取られるしかなかった来音寺の前で、あの男は言ってのけたのだから。

「『知ったことか』、か」

 まったく変わっていない金剛番長の姿と言動に、来音寺は笑いを抑えきれない。
 仲間の仇を打つためならば、あの男はどんな不利さえも覆す。
 逆境など拳一つで引っくり返して、己のスジを通すのだ。
 金剛番長の背を見ただけで、来音寺の心を支配しつつあった恐怖は塵と化した。
 いち早く仲間たちと合流して、ブラックの思惑を粉砕する。
 来音寺はそう決断して、下山を再開し――すぐさま横に跳んだ。
 ひゅぅん、と。
 不自然な音が響いたのだ。

「む!?」

 受け身を取って瞬時に立ち上がり、来音寺は自分がいた地点に視線を飛ばす。
 隣にあった木の幹に、穴が空いてしまっている。
 痕を見る限り、明らかに拳銃によるものだ。 
 捉えた音から認識するに、おそらく消音器をつけているのだろう。
 瞬時に反応していなければ、撃ち抜かれてしまっていた。
 そこまで来音寺が考えた途端に、再び小さな銃声。
 来音寺は回避行動も取らずに、口を大きく開いて俯く。

「喝っ!」

 足をまったく動かすことなく、来音寺は跳び上がった。
 異常発達した横隔膜を使い肺に空気をため込み、勢いよく射出したのだ。
 敵に放てば攻撃に、相手の攻撃に放てば防御に、なにもない場所に放てば移動に使用できる。
 この技術を喝撃という。

320 : Re:Re: ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:14:28.43 ID:hvdyzYhN [3/8回発言]

「貴様のような輩がいるゆえに、このような非常事態においても――」

 空中で喝撃を放ち移動しつつ着地して、来音寺は弾丸が飛来してきた方向を見据える。

「あの世は年中無休なり!」

 両の掌を合わせて宣言する来音寺萬尊。
 またの名を――――念仏番長。

「喝っ!!」

 弾丸が放たれた方向に空気弾が放たれるが、別の方向から銃声が響く。
 移動されていたのかと考えながら、念仏番長は後方に喝撃を放って高速移動。
 銃弾をやり過ごしてすぐさま喝撃で方向転換し、念仏番長は大きく息を吸い込む。

「仏罰・数念撃!!」

 念仏番長が外した数珠に空気弾を吐き出すと、珠がバラけて吹き飛んで行く。
 喝撃は一度に一発しか放てないが、風圧を利用して他の物を飛ばせば連射も可能なのだ。

「……っ、『電光石火(ライカ)』」

 相手も予想していなかったのだろう。
 焦りを隠しきれない声が、念仏番長の鼓膜を震わせた。
 回転音が大気を切り裂き、凄まじい速度で移動する。

「逃がしはせん!」

 後方に喝撃を放ち、念仏番長は離れていく回転音を追う。
 木の隙間から相手の足元が視界に入り、スケートのようなものを履いているのが分かった。
 スピードではスケートのほうが早いようだったが、地の利は喝撃にあった。
 木々が生えた山内では、喝撃による小刻みな方向転換が有効なのだ。
 あっという間に念仏番長と相手の距離は縮まり、完全に姿を視認できるようになった。
 相手は、念仏番長が想定していたより遥かに幼かった。
 おそらく中学生、もしかしたらまだ小学校に通っているかもしれない。そんな少年だった。
 喝撃で懲らしめてやるはずだったが、念仏番長はそれをやめる。
 人が死ぬ様を二度も見せられ、しかもこのような状況に追いやられたのだ。
 子どもならば、追い詰められてしまっても仕方がない。
 スケート靴を脱いだらしい少年に、念仏番長は喝撃の勢いを使わず歩み寄ろうとして――倒れこんだ。

「な、なに……?」

 違和感を感じた脇腹をさすると、念仏番長の手にべったりと血が付着していた。
 傷痕は、銃弾によって撃ち抜かれたようなものだった。
 しかし少年は背を向けたままで、銃を向けてきていなかった。
 ならば、なにが起こった。
 念仏番長は思案を巡らせ、一つの結論を出す。
 『自分でも少年でもない、第三者が攻撃してきた』と。
 だから念仏番長は、振り返って近付いてきた少年に告げる。

321 : Re:Re: ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:15:30.58 ID:hvdyzYhN [4/8回発言]

「逃げろ……他の誰かが、狙っている……
 少年、お主が……怖がる、のも分かる。しかし……安心、していい。
 金剛、番長がいる限り、このような……プログラムで、手を汚す必要など……ないのだ! 最初、の場所……で『知ったことか』と言い切った男に会え……!」

 言いながら立ち上がると、念仏番長は新たな襲撃者がいるであろう方向に向き直る。
 自分が生き残るために、他の参加者を蹴落とそうとする少年。
 彼の姿が、念仏番長はかつての自分のように思えた。
 金剛番長と出会う前の、臆病で矮小だった自分。
 それでも、金剛番長と出会えば変わることができるはずだ。
 そう信じて、念仏番長は己の死を覚悟した。
 死に行く身だとしても、一人くらい逃がしてみせる。
 覚悟した念仏番長の後ろ首が、力強く掴まれた。

「なっ」

 困惑するしかない念仏番長の視界の隅に、自分を掲げる少年の姿が映った。
 念仏番長はその行動が理解できないまま、太ももを撃ち抜かれる。
 先ほどと『まったく同じ』射線で飛んできた銃弾によって。

「ぬか、った……! 仲間だったか……!」
「仲間? そんなものいないよ」

 浴びせられた罵声を、少年は嘲笑う。
 弾丸は止まらない。
 すべて、『まったく同じ』軌道で念仏番長を射抜いていく。
 少年が腕を動かしているため、命中する部位は変わっているが。

「この場所、思い出せないかな」

 少年の言葉を受け、念仏番長は白く染まりつつ視界に意識を集中させる。
 そして、ようやく気付いた。
 この場所は、見覚えがあるのだ。

「最、初に……銃撃、を受けた……」

 少年の後方には、弾痕が刻まれた木があるのだろう。
 その推測を肯定するように頷き、少年は腕を下ろした。
 これまで銃弾が打ち抜いてきた場所に、念仏番長の頭部を固定する。
 すでに数十回も銃撃を受けてきた念仏番長は、動くことができない。
 またしても『まったく同じ』箇所に銃弾は飛来した。



【来音寺萬尊(念仏番長) 死亡確認】


 ◇ ◇ ◇

322 : Re:Re: ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:15:51.42 ID:hvdyzYhN [5/8回発言]


 転がっている死体や飛び散っている赤黒い液体に目もくれず、茶髪の少年はリュックサックを整理していた。
 彼の名は、バロウ・エシャロット。
 彼が持つのは、『過去にあったことを現実に変える』能力。
 それを使い、『最初に放った弾丸』を何度も現実化していたのだ。
 神器という能力もあるのだが、いずれも周囲への影響が大きすぎるので移動用のライカ以外は使わなかった。

「なるほど、本当みたいだね」

 上空に浮かぶ月と同じように光る小石を手に乗せながら、バロウは頷く。
 月の石というその石は『放つ光を浴びると体力を回復させる』とのことだったが、いまいち信用しきれなかったので試してみたのである。
 彼は人間となるために、なんとしても最後の一人とならねばならない。
 自分より圧倒的に強いはずの地獄人さえも、相手にしなくてはいけないのだ。
 回復できる月の石はありがたかったが、試しもせずに効果を信じる気にはならなかった。

「それにしても……なんでこの人は、途中で攻撃するのをやめたのかな」

 もうなにも喋ることのない死体へと視線を移す。
 攻撃を仕掛けてきた自分を庇おうとした理由も、バロウには分からなかった。
 が、すぐに考えるのをやめる。
 バロウにとって、過程などどうでもよいことなのだ。
 これといったダメージも受けず一人を殺害することに成功した、それだけでよかった。
 回収したリュックサックからまず水と食料を移し、支給された道具を確認する。

「ふむ、これは僕の能力と相性がいいね」

 出て来たロケットランチャーを蔵王というらしい玉に戻し、バロウは自分のリュックサックに移した。



【C-1 森林/一日目 深夜】

【バロウ・エシャロット】
[時間軸]:三次選考開始後、植木チーム戦以前。
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(9/12)@現実
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、月の石×4@金色のガッシュ、RPG-7(グレネード弾×5)@現実、支給品0~3(確認済み)
[基本方針]:人間になるため、最後の一人となる。
※名簿に書かれたロベルト=アノンと認識しています。

323 : Re:Re: ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:16:06.50 ID:hvdyzYhN [6/8回発言]



【支給品紹介】


【H&K MARK23@現実】
バロウ・エシャロットに支給された。
全長245mm、重量1210g、装弾数12、45口径の自動拳銃
サイレンサーが装着された状態で支給。予備弾はなし。


【月の石@金色のガッシュ】
バロウ・エシャロットに支給された。
魔物ゾフィスが作り出した結晶体で、発せられる光を浴びると魔物や人間の体力を回復させる。
このバトルロワイアルでは、五つのカケラがビンに入れられた状態で支給されている。
ただ空気に触れることで徐々に効力を失っていくので、ビンに入れた状態でも数日で光を発さなくなってしまうだろう。


【RPG-7@現実】
来音寺萬尊に支給された。
ソ連が開発した携帯型の対戦車用榴弾砲。
発射器と弾頭合わせて10kg程度の重さがある。

324 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 12:16:24.72 ID:hvdyzYhN [7/8回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘お願いしますね。

325 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/15(火) 13:10:29.43 ID:hvdyzYhN [8/8回発言]
【残り76名】


これ忘れてたので、wikiで足しますね。

326 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/15(火) 14:09:07.85 ID:jbJ32xDx [1/1回発言]
投下乙です

念仏番長が……俗物だけど憎めない人だったのにここでリタイヤか
バロウはやっかいな奴だな。それがよく書けてるなぁ
人間になりたいと言うがお前のやってることは……ある意味では人間だが……人形連中に近いのかな?

327 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/16(水) 10:36:37.20 ID:XG+PBVX7 [1/1回発言]
投下乙
バロウの能力と銃火機の組み合わせは驚異だな
一発の発砲を何度も現実にしてしまえるし、サイレンサーつき拳銃は神器と組み合わせられるだろうし
何よりも恐ろしいのは、能力を有効活用するために相手を誘導するバロウだが…
念仏番長は無念だな。金剛番長と再会したかったろうに

328 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/16(水) 21:06:36.36 ID:PbXfF7de [1/1回発言]
投下乙
念仏はここで死ぬか……いい奴だったのにな
三枚目だったけど殺し合いに乗ったバロウにも優しかったし
デジャブの能力は強力だよなー
うえきのリバースってチート無しだと攻略難しかったし
ロケランは本当にヤバイ組み合わせだ
原作みたいに心だけでも人間になれるようにならんのかね


329 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:06:22.52 ID:KwXP7eVe [1/10回発言]
遅れて非常に申し訳ありません 投下します

330 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:09:08.58 ID:KwXP7eVe [2/10回発言]

「はて、ここは日本のどっかであろうか?」

拙者、北海道で偽物を相手に華麗な啖呵を切った筈であったが、気がつけばブラックとやらに殺し合いを強要された。
むむむ、こっから超ウルトラハイパーデラックス美形剣士の活躍を魅せてやろうと思ったところだったのだが。
それを邪魔するなど、ブラックとやら、許せん! 物干し竿のサビにしてやろう……と、思ったところで剣は没収されてるのが悲しいところでござる。
剣を探すことから始めないといけないとは、とほほ、情けない。
代わりに渡された武器はこの鞭。刀とは使い勝手が違いすぎるから、この天才の技量を以てしても使いこなすには手がかかりそうでござるな。

それにしてもブラックは随分と面妖な術を使う。
あの妖獣(鬼丸の部下か?)の雷は雷神剣の威力にも勝るとも劣らぬ物、あれを受けて無傷とは信じられん。
鬼丸クラスの敵だと判断してもいいかもしれん。いや、あの鬼丸を参加者として扱ってるのだからそれ以上の可能性もある。
魔王剣を持った鬼丸以上の相手が刃殿の他にいるとは考えたくないでござるが……。
うむ、深く思いつめても答えはでまい。
今までもなんとかなってきたでござる。今回の異変も刃殿達とならば無事に解決しよう。
……あの武蔵の手を借りるのは気に食わんが、そうも言ってられぬ。

「しかし、ブラックの言っていた願いを叶えるとやらは気になるものがあるな」

死者の蘇生が可能なのは信じよう、拙者という実例がここにいるのだからな。
もしも死体が粉々になったとしても、それを修復して復活させることぐらいはできそうだ。
だとすれば拙者が叶えたい願いは?


『きゃー小次郎さーん』             『こっち向いてー』
    
              『凛々しいお顔』         『素敵ー』

    『カッコイイー』 
                      『日本一のおサムライさん』
         
            『つよーい』



331 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 03:12:03.07 ID:XcvsVJ2R [1/2回発言]
支援

332 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:12:15.98 ID:KwXP7eVe [3/10回発言]
ぐへへへへへへへ。おなごにモテモテ。
考えただけでも顔が緩んでしまう。江戸の将軍の大奥ですら少なく思えるほどの桃源郷。
う~ん、これは少し悩んでしまうでござるな。
若くて美しい子を毎日取っ換え引っ換えで――あ、また顔が緩んだでござる。

いや、しかしこれのために刃殿達を殺してよいのだろうか。
ううむ、武蔵は死んでもいいとして、さやか殿を斬るのはさすがになぁ。

だが、拙者の求める夢がそこにある!

ええい、やめいやめい。
邪念を追い出すために民家の壁にガンガン頭を打ち付けた。
当然、この顔に傷がつかぬよう額だけを正確にぶつけたでござるがな。

「女はここから生きて帰ればいくらでも作れる。
 ついでに鬼丸も倒してしまえば日本の危機もどうにかなるわけだしな」

うんうん、いいことを言ったでござる拙者。
桃源郷を作るのは自分の力でなんとかしてみせよう。
元々おなごにはモテモテだったのだから帰って作ればいい。
むしろそれを願うなどモテない人間のようで恥ずかしいではないか。

よし、決めた! ブラックを倒すことを当面の目的としようぞ。
そしてここに呼ばれたおなごたちに……。
我が野望ここに成り!!

だが、ここがどこなのか全く分からぬ。
いや待て。山が北にあるのだからそれの距離から換算すれば。
うむ、相変わらず拙者の頭脳は冴え渡ってるでござるな。

「さてさて、こっから山までの距離は――なっ!?」

振り向いた拙者の瞳を鮮烈な光が焼く。
思わず目が眩んでしまいそうになりながらも、視力には影響がないらしい。
発生源は恐らくここより少し進んだ先。

向かうか?

恐らく、先にいるのは強敵であろう。
しかし拙者が持っているのは不慣れな武器。
勝てるかどうかは分からぬ。だとすれば?

「まぁ、見るだけぐらいならば大丈夫であろう」

気配を殺して様子見。
情け無いでござるが、これも剣を手にするまでの辛抱。
それでは向かわせてもらおうではないか。



☆  ★  ☆

333 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:15:08.03 ID:KwXP7eVe [4/10回発言]
「ずいぶんなご挨拶だね。小生もこのような出迎えは始めてだよ」
「表情と言ってることが全く違うようだが?」

出会い頭に暗がりから飛ばされた砲撃。
全てを蒸発させる高熱を持った光線。
それを危うげなく避けた青年は口を三日月型に歪めた。

「ちょうど新しい剣の試し切りがしたかった所でね。
 折角だから手応えのある相手と殺り合いたかったのだよ」

つば付きの帽子、長いマント、学ラン。
全身を純白で染めた青年。彼の姿は喩えるならば憲兵。
だが、秩序を守るものとしての憲兵としてはあまりにも不似合いな光のない濁った目を彼は持っていた。
彼の名は伊崎剣司。又の名を暗黒生徒会の憲兵番長。

「さて、この剣はどんな音色を小生に聞かせてくれるのか」
「人斬りを楽しむタイプか、面白い」

青年と相対するのは軍服で身を包んだ金髪の男。
この殺し合いの主催者のキース・ブラックと瓜一つの顔。
異形の物と化している左腕は獲物を前に大きく指を広げていた。

「戦う前に一応聞いておこうかね。君はやはりキース・ブラックの関係者なのかい?
 名簿を見たところ、キースという人物が何人も存在していたようだが」
「貴様の推測通りだ伊崎剣司。俺の名はキース・シルバー。だが、それを知ったところでどうにもなるまい」

アスファルトを踏み、シルバーが前へと飛び出した。
自分を切り裂こうと振り下ろされた爪を憲兵番長は手にした刀で受け止める。
だが、パワーではARMSであるシルバーが上。
それを瞬時に感じ取った憲兵番長は刀身を動かして鍔競り合いの状況を回避。
後ろへと飛び退いた後、ジグザグに移動しながら距離を詰める。
直進しかできぬ砲撃を回避するための策が功を奏し、シルバーも砲撃"ブリューナクの槍”を発射しない。

とある剣士は言った。
『剣ってのは片手で振るより両手で振った方が強えェんだとよ』

その理論が今まさに実践される。
両腕の力で振り下ろした刀は硬質化したシルバーの左腕を容易く切り裂く。
だが、シルバーは慌てた様子もなく残った右腕で憲兵番長の顔面を力いっぱい殴り飛ばした。
腰の乗った一撃に憲兵番長は僅かに仰け反るが刀からは手を離さない。
逆にしゃがみ込んで足元を掬おうと横薙ぎに一閃。
シルバーは跳躍でそれを回避する。
だが、空中では身動きがとれない。
それを狙った憲兵番長がシルバーの心臓を狙い、剣を突き出そうと構える。

「そう来るのか」

わずかに悔しそうにつぶやき、構えを解いて横へ飛ぶ。
遅れてアスファルトを焼く光線。
そしてシルバーは着地と同時に脇腹へと飛んでくる斬撃を左腕で受け止める。

「君、楽しそうな顔をしてないかい?」
「そう言う貴様こそ顔が緩みっぱなしだぞ」

両者が無意識のうちに笑みを浮かべていた。
彼らは互いに戦いに何かを求める者。
己のうちより無限に溢れ出る闘争心を満たそうとする戦闘生命体。
剣が肉を切り裂く音を聞くために人間を切り刻むナチュラルボーンマーダー。

334 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:18:07.69 ID:KwXP7eVe [5/10回発言]
互いの目線が交錯し、相手のことを僅かであるが理解する。

次の瞬間にはシルバーが左腕を振るい、刀を大きく弾き飛ばした。
上体が仰け反り、防御に戻すには間に合わない。
トドメを刺そうと胴体を貫くように左腕を突き出す。
憲兵番長は不安定な体勢から攻撃に迫る腕に蹴りを入れた。
当然のことであるが、その程度では攻撃の軌道はぶれない。
だが、その反動で攻撃より逃れることには成功した。
そして二撃目が飛んで来る前に立ち上がり、刀を構える。

桐雨流無鞘術裏一式「千手観音」

小さく呟くとともに無数の刺突が憲兵番長の周りに現れる。
シルバーの目をしても残像しか捉えられぬ神速の一刀。
何十、何百と刀身が視える様はまさに千手観音の如し。
さしものARMSもこれには対応できず、無数の刺創をその体へと刻み込まれる。

頬から流れ落ちた血液を右腕の親指で掬い、舌で舐めとる。
ナノマシンによる傷口の修復は行われているものの、平時のものと比べると遥かに遅い。

「ブラックの説明通りか」

憲兵番長にも聴こえぬ小さな声でシルバーがボヤキを漏らす。
だが、次の瞬間にはあの喜色溢れる笑顔へと戻った。
そして己のARMSの間合いである近距離へと飛び込もうとする。
が、憲兵番長も理解した。
至近距離の戦闘では力の劣る自分に不利であると。
刀を持った彼のリーチはシルバーをわずかに上回る。
そして戦いは続いていった。


「そろそろ鳴き声を聞かせてもらいたいところだね。
 君の命を絶った時に聞こえるあの音色を」

ニタァと憲兵番長が笑みを浮かべた。
既にシルバーの全身は無数の切り傷に覆われている。
間合いを詰めさせずに自分の攻撃の届く距離を見極めて戦った結果だ。

「終わりだ」

動くの鈍くなったシルバーの胴体を両断しようとする凶刃。
左腕で防御しにくい右側からの攻撃。
シルバーはその速度に対応できず、右腕で刀の迫る脇をカバーするのみ。
勝った。憲兵番長の笑みが更に深まる。
この一撃。硬質化した左腕ならばともかく生身の腕で止められるものでもない。

「残念だったな」

笑っていたのは憲兵番長のみではない。
樹の幹が割れるような音と共に、憲兵番長の刀が右腕の半ばまでを切り裂いたところで止まる。
両腕を変形させられるとは予測していなかったらしい。
動きの止まった憲兵番長に左腕でアイアンクローをかける。
不意を疲れた驚きで彼の手から離れた刀は、再生する右腕から急速にに押し出される。
あと少し力を込めれば彼の頭はトマトのように潰れるだろう。
しかし、腹部に激しい痛みを感じ、思わず憲兵番長を取り落とした。
視線を下に移してみれば、斬撃の跡。
憲兵番長は落ちてきた刀をドンピシャなタイミングで足を使い操っていた。

「なるほど、出し惜しみするという考えがどうやら俺の慢心だったようだな」
「見下されたもんだね小生も。まさかそこまで馬鹿にされてるとは思わなかったよ」

335 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:21:07.81 ID:KwXP7eVe [6/10回発言]
変形した右腕が人間のものへと戻り、今度はシルバーが積極的に距離をとろうと動き出した。
その場からの跳躍で民家の屋根に登り、荷電粒子砲を放つ。
照準合わせから発射までに起きる僅かなタイムラグ。
憲兵番長は砲口から自分の身を外す。
一瞬前まで自分がいた場所が高熱によって消し飛ばされた。
シルバーがいる家の一件隣の屋根へと飛び乗り、接近を図る憲兵番長。
だが、その目論見は民家が吹き飛ばされたことで失敗に終わる。

家屋の崩壊に巻き込まれによう、近くの屋根へと飛び移る。
そしてその家屋も数秒も立たないうちに瓦礫の山へと変化する。
高熱で連射が効かなくなる可能性を考慮して使用を控えていた砲撃を今度は惜しげもなく使って倒しにかかった。

「どうした。俺に近寄れなくては勝負にならんだろ?」

嘲るような声で憲兵番長を挑発するシルバー。
これに乗って相手がこちらを目指して飛んでくれば、それこそビームのいい的。
空中での移動手段を持たない彼が避けるのは不可能。
しかし、この不利の中憲兵番長はこともなさげに返事をする。

「君の言う通りだ。そろそろコチラも舞台に立たせてもらおう」

そう言って憲兵番長は斜めに飛んだ。
まっすぐ飛んで来る相手ならまだしも、高速で横に移動する相手に照準を合わせるのは難しい。
狙いを定めきれぬうちにもう一つの民家の壁を蹴り、三角飛びの要領でシルバーのいる屋根へと降り立った。
標準を合わせきれぬうちに一気に距離を詰め、一撃。
ギリギリで防がれたものの、こうなれば先程までの再現となる。
これは不味いと判断したシルバーは高所の利を捨て、道路へと飛び降りた。

遅れて地上へ戻った憲兵番長の背筋に嫌なものが走る。

対峙していたシルバーから発せられる気配が明らかに変わっていたのだ。
先程までの殺気が子供だましに思えるほど禍々しい空気。
見れば腕までだった変形が胸のあたりにまで達している。

「第一形態では下手すれば押し負けるかもしれぬ。早速で悪いが完全体で戦ってやろう」

しかし、ふと何かを思い直した顔となり変身を解除する。
シルバーの瞳が捉えた憲兵番長は実に楽しそうに笑っていたのだ。

「聞くまでもないだろうが一応確認だ。貴様はこの殺し合いに乗ったと見てもいいな?」
「本当に聞くまでもない質問だね。小生は斬る、強者も弱者もこの刃で」
「そうか……だったら、この場は休戦としよう。
 ブラックも殺し合いに乗ってないヤツを積極的に殺すよう言ったからな」

そう言ってシルバーは背中を向けて立ち去っていく。

「切りたければ背中から来てもいいぞ? それで満足するならな」

背後から闇討ちをすることに憲兵番長は何ら抵抗を持たない。
だが、彼がそれを実行することはない。
勿体無いのだ。これほどの上質な相手を背中から一方的に斬り殺すなど。
だからこそ小さくなるシルバーの背中に一言だけ投げかける。

「次は我が愛刀、金糸雀でお相手させてもらおう。この刀も出来はいいのだが、やはりあれには及ぶまい」

そして憲兵番長はシルバーの向かう方向とは真逆の向きへと歩き出す。
次の戦い、そして人の肉体を切り裂くことを求めて。

336 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 03:22:45.33 ID:XcvsVJ2R [2/2回発言]
sien

337 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:24:08.79 ID:KwXP7eVe [7/10回発言]

【D-3 南部/一日目 深夜】

【伊崎剣司(憲兵番長)】
[時間軸]:居合番長との再戦前
[状態]:疲労(中)
[装備]: 雷神剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[基本方針]:人を斬る。南へ向かう






キース・シルバーが兄であるブラックより伝えられたことは二つ。
参加者の名と顔、そして能力の概要。
そして、この殺し合いで『殺人者』として振舞うこと。

彼の妹、バイオレットにはどのような指示が下ったのか分からない。
だが、彼はブラックにそれを命じられた。
だからそれに従うのかと言われればそうではない。

彼に刻まれたプログラムが、運命が囁くのだ。



戦え、と



だから彼は死を振りまくためにこの会場を歩き回る。
進化を繰り返し、誰にも負けぬ力を身にして破壊の神となるために。
傷口を再生させながら、彼は歩く。
闘争を、次なる闘争を。
砂漠で水を求める旅人のように彼はさまよい続ける。

キース・シルバーは、もう戻れない。


【D-3 北部/一日目 深夜】

【キース・シルバー】
[時間軸]:ギャローズ・ベル後
[状態]:疲労(中) 、全身に切り傷(再生中)
[装備]: なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[基本方針]:闘争を求める。北へ行く

338 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:27:08.27 ID:KwXP7eVe [8/10回発言]
☆  ★  ☆



二人が去り場を静寂が満たしても尚、佐々木小次郎は動くことができなかった。
風が頬をたたこうとも、木の葉が服に張り付こうとも銅像のように立ちすくむ。
しかし、握り締められた拳は固く、怯えではない何かに小さく震える。
唇から小さく漏れる荒れた息は一向に止まらない。
彼の心臓は今までになく早いリズムで鼓動を刻む。
そして体を一度だけ大きく震わせ、辛うじて声を出す。

「天下……」

瞳に焼き付いた名も知らぬ青年の戦いを思い出す。
脳に強く刻みこむかのように何度も何度も頭の中で反芻を続けた。
剣一本で鬼丸の配下を超える化物と相対する若き剣豪の姿を決して忘れぬように。
興奮のせいか、体がやけに熱く感じる。されど頭は冷静な思考能力を失わない。
握り拳を顔の前へと静かに持って行き、想うのは己の未熟さ。

「随分と、遠いでござるな」

どこで躓いてしまったのだろう。
難敵が現れても鉄刃ならどうにかしてくれると思い出した時か?
鬼丸を自分の手で討つと決意しなかった時か?
それとも宮本武蔵に負けた時?

いや、致命的につまずいてしまっていたのはあそこでだろう。
雷神剣さえ手にすれば天下を取れる、そう考えていた事。
それが自分の未熟さの原点であり、天下一となる資格を失った時だろう。
果たして剣の力のみに頼る剣豪が真の一流と呼べるのだろうか?
鉄刃は剣の力を借りつつも、自分の技量で窮地を凌いだことが幾度もある。
覇王剣をあそこまで使いこなせたのも鉄刃が卓越した剣士である証拠だ。
先程の青年が使っていたのは確かに雷神剣。
それを持つものが天下を取るとまで言われた名刀。
されど、彼は剣の持った雷を放つ能力を一切使用すること無く、己が剣力のみで戦い抜いた。
彼が、佐々木小次郎が愛刀を以て挑んだとしても勝てぬであろう相手に。

今までは気がつかなかった。無意識のうちに目を逸らしていたのかもしれない。
自分の弱さが青年の戦いぶりを見ることで浮き彫りとなってしまった。
強敵に勝てぬのは自分が強い剣を持っていないからではない。
根本的な実力が不足しているのがそもそもの原因なのだ。
人は高みに登ろうと思えばどこまでも行ける。
覇王剣、魔神剣の力を目の当たりにしてしまったせいでそんな簡単なことも忘れてしまっていた。

「くっ!」

民家の外壁へと力いっぱいに拳を叩きつける。
乱雑な叩き方だったため、痛みが腕いっぱいに広がるもそんな事は意に介さない。
ただただ悔しかった。
自分の不甲斐なさが、弱さが、その全てが口惜しかった。
実力の不足を刀で補おうとしていた過去の自分が酷く矮小な物に見える。
溜まった苛立ちを解消する術を持たない彼は、収まらない感情のやり場を見つけることができない。
手に握った鞭を上に掲げ――――振り下ろさない。

モノに当たっても惨めな自分の姿が浮き彫りになるだけだということが彼にも分かっていたから。
その場にどっかりと腰を下ろし、頭を垂らす。
今まで信じてきたものが一気に崩れ去った気分がし、気分がどんどん落ち込んでいく。

339 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:30:24.39 ID:KwXP7eVe [9/10回発言]
「あの青年に、武蔵に、鬼丸に、……そして刃殿に勝つためには」

強く食いしばった奥歯からギリと音が漏れる。
既に赤い瞳が血走って更に赤みを増した。
ずっと握られていた拳は赤いを通り越して紫色へと変色している。
呪詛のように同じ言葉を繰り返す姿はまさに亡霊。
どうすればいいかの答えが出ない。
自分の中で延々と問いかけと失敗を繰り返す。
いや、答えは決まっていた。
必要なのは踏ん切りだけ。覚悟がつかないから決定できないだけ。

「よし……」

しゃがみこんでからどれだけの時がたっただろうか、小次郎の顔が久しぶりに上がる。
前を見据える双眸はもはや先刻までの負け犬の眼でない。覚悟を決めた人間の瞳だ。
再び拳を顔の前へともっていき、誓うかのように言い放つ。

「この殺し合いの場を踏み台に……拙者は天に登る。
 どの剣士よりも強く、誰よりも強くなってこの場を脱出するでござる」

善人も悪人も関係ない。
強きものを相手とし、天下一の剣士となる。
これが大剣豪、佐々木小次郎が出したこの殺し合いへの答え。

「すまぬ刃殿……脱出には素直に協力できぬ」

きっと刃ならば、鉄刃ならばブラックを打ち倒す事を目指すだろう。
宮本武蔵も、峰さやかもきっと同様であるに違いない。小次郎はそう確信している。
だが、彼らの歩みを邪魔してでも彼は強くなるつもりだ。
それがブラック打倒に必須な人材であったとしても容赦をするつもりはない。
殺し合いから脱出してからでは遅すぎるのだ。
今、この気持ちが途切れぬうちではなくては意味が無いのだ。

「手加減はできぬ。殺したくはないが、もしもの時は仕方あるまい」

淡々と、悩む様子を欠片も見せずにそう言ってのける。
彼にとっての壁は全て壊れた。
赤き瞳が狂気で染められ、その濃さを更に増す。

340 : 剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:33:13.54 ID:KwXP7eVe [10/10回発言]
そして佐々木小次郎はついに立ち上がった。
座り込んだことで付いた砂埃を手で払い、支給された武器を強く握りしめる。

「刀を手に入れてからが本番。だが、しばらくこの武器で行くのだから少し素振りくらいはしたほうがよいでござるな」

しかし、鞭を手に取ったのは小次郎にとっては初の経験。
どのような武器かは知っていたが、どのように扱うかまでは見当もつかない。
首を傾げつつ、あれこれ思考するも正しい振り方を思いつくことはなかった。

「実際に振ってみれば分かるかもしれぬな」

道路の真中へと出て、深呼吸を一度。
瞳を閉じて精神を整える。
自分でも驚くほどに心が静まりかえり、集中力が増す。

「はぁっ!」

瞳を開けるやいなやの一閃。
腰、腕、手首をフルに使って鞭を目の前の空間へと叩き落す。
空気の裂ける音が辺り一面に響いた。
このままでは地面に激突する、そのギリギリのタイミングで小次郎は手首を使い鞭を操ろうとし――――


「へ?」


自分の顔へと迫ってくる先端を全力で躱した。
幸いにもスピードは大分落ちていたので肩にぶつかったとしても痛いだけで済んだ。
だが、小次郎の顔は蝋燭のように白くなり大量の脂汗が流れおちる。
痛い。鞭が当たった場所が猛烈に痛むのだ。


「はぁはぁ、こ、この武器は危険すぎやしないか?」





残念、小次郎のシリアスタイムはここで終わってしまった。



 _________|\   
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/


【D-3 中央/一日目 深夜】

【佐々木小次郎】
[時間軸]:プラズマ戦直前
[状態]:万全
[装備]: 拷問鞭@金剛番長
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(武器はなし)
[基本方針]:強者と戦い、天下一の侍となる


341 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/17(木) 03:41:28.31 ID:vR89V53g [1/1回発言]
投下完了です
誤字脱字その他おかしな点があれば指摘してください

342 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 03:49:55.65 ID:55Uo2IJO [1/1回発言]
投下乙です
憲兵番長もシルバーもかっけぇ!!
あとヤイバ知らないけど憲兵の武器って雷系だったのか
ARMSの弱点って確か電気だった気がするけどもしかしてシルバー危なかったのか

343 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 13:07:48.26 ID:Yh09PJtN [1/2回発言]

投下乙です!

ヤバい…憲兵もシルバーも格好イイ
流石に最終形態までいけばシルバーが押しそうだが愛刀を持った憲兵ならなんとか出来そうな気がしなくもないw

一方で何やら不穏なスタンスになった小次郎だが果たして…

改めて投下乙でした!

344 : ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:35:32.71 ID:b/w/HTOr [1/7回発言]
投下します

345 : 拳の少女・木の男  ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:37:36.47 ID:b/w/HTOr [2/7回発言]
暗い夜の闇の中、一本の木に寄りかかる一人の少女がいた。
まるでかき混ぜたばかりの生クリームのように白く柔らかそうな肌。
顔は幼く小柄で人ごみに揉まれればつい転んでしまいそうな体躯。
男物のようないかついガクランがいっそう幼い顔を引き立てているようにも見える。
そんな彼女のわなわなと振るえている様子を見れば多くの人がこんな異常な場所に連れて来られ、怯えているのだと思っただろう。

しかし、彼女の内心はそれとは違っていた。

「あの男、絶対にゆるせませんわ!!あんなっ……、あんなに軽々しく人の命を奪うなんて!!」

彼女は怒っていた。あの男に、このゲームの理不尽さに。
それに、確か殺されたあの男の人は金剛番長のお友達の悪矢七さんではなかったか。
あの時自分も金剛番長と一緒に飛び出すべきだったのが良かったのかを考えてみても答えは出ない。
ならば、この場でやることは決まっている。
困っている人を助け、こんなくだらない殺し合いにのる悪い人はやっつけ、このゲームをぶち壊す。

ならば今自分がすべきことは…………

「誰かいませんかーっ!!私はこんなくだらない殺し合いをするつもりはありませんわ!!もし私に賛同してくれるなら手をお貸しくださーい!!」

叫んで人を集める。
安易で短絡的な行動に思えるかもしれないが今の彼女には他に思いつかなかった。
もしも彼女の大事な仲間がこの声を聞いて出てきたらそのまま合流すればいい。
もしも彼女が守るべき罪のない人々がこの声を聞いて出てきたらそのまま保護すればいい。
もしも彼女を狙おうするゲームにのった悪漢が出てきたらそのまま退治すれば良いのだ。
だから彼女は叫ぶ。正義という強き信念をもって。

「誰かいませんかー!!いたら返事してくださーい」

その時、弱弱しく助けを求める声が彼女の耳に入った。
彼女は直ちにその声の向こうへと走った。




346 : 拳の少女・木の男  ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:38:58.23 ID:b/w/HTOr [3/7回発言]
「おい嬢ちゃん、ちょっと肩貸してくれ!情けない話だが腰がぬけちまった」
そこには長髪痩身の男がへたりこんでいた。

「助かったぜ嬢ちゃん。あんた若いのに立派だよホント、こっちは怖くて怖くて今にもどうにかなっちまいそうだってのに」
「いえ、困っている人を助けるのは当然ですわ」
「今時そんなセリフ真顔で言えるってだけでも大したもんだよ。俺は小金井薫。植物学者をやってるもんだ」

男はやっと恐怖や不安が薄れ始めたのか自分よりも一回りも二回りも小柄な少女に肩を支えられながら男は身の上話をし始めた。
植物学者を目指したきっかけ。飼っているペットのこと。そして結婚も視野に入れている恋人のこと。

「あいつの為にも、生きて帰らねえとな」

恋人を思う小金井薫の表情を見て彼女は意志をより強く固めた。

「小金井さん、ご安心なさいな。私がきっとあなたを無事に守ってさいあげますわ」
「ありがとな、嬢ちゃん。ああ、そういえば言い忘れてたんだが……」
「何ですの?」
「さっきの話。あれ全部嘘だ」

突如、男の脇腹から巨大な蛸の足のような茶色い物体が服を突き破りながら現れ、少女の腹に突き刺さった。
衝撃で少女が身動きを取れなくなっている間にも男の体中から触手のような茶色い物体が生え、少女に襲いかかる。

「ぎゃははははははははは!!残念だったなメスガキっ」

さっきまでの怯えていた表情も優しそうな表情も最早微塵も残っていない。
彼の名は永井木蓮。
裏の世界で名高い戦闘集団、麗の一員でありその性格は惨忍にして外道、強烈なエゴイストかつサディストという救いようのない性格をもっている。
そして彼は女を殺すことが大好きだった。
あの柔らかい肌にぷっすりと刺し引き裂く感覚。
耳を劈くような甲高い悲鳴。
全てが堪らなく愛おしい。
そして今日もまた一人の少女を引き裂き、彼の邪悪な精神は絶頂を迎えていた。




そのはず、だったのだが。


「何かと思いましたがこれ只の木ですのね。大した怪我はありませんがいきなりでビックリしましたわ」

少女が立っていた。
しかも無傷で。
それもそのはずである。剛力番長こと白雪宮拳は二億人に一人の割合で発症すると言われているヒュペリオン体質なのだ。
ヒュペリオン体質である彼女は凄まじい超人的な身体能力の他に体が異常に頑丈という特徴をもっていた。
その体の頑丈さは鉄塊をも貫くグレギオン合金製の針山に落とされても逆に針の方をへし折ってしまう程であり並大抵の特殊防護服や鎧を遙かに凌駕する。
木の枝や根っこ程度ではかすり傷だって付けるのは難しいだろう。
ましてや、柔らかい肌を突き刺すつもりでいたならなおさらだ。

「何だぁ?土門の鉄丸みたいな魔導具でも持ってたのか?」

木蓮は少女が身体を硬質化させる魔導具をもっていると考えた。
これがまさか彼女の素の力だとは思いもしなかったが、彼女の容姿を鑑みればそれも無理の無いことだろう。
木蓮は木の根を少女の体に巻きつかせた。
突き刺せないのならば身動きを封じ嬲り殺しにしてやろうという魂胆だ。




347 : 拳の少女・木の男  ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:40:05.35 ID:b/w/HTOr [4/7回発言]

「その首捩じ切ってやるぜえ!!」


木蓮は悪鬼のような形相で叫びながら少女の体を木で絡め、少女を睨んだ。



その瞬間、彼の視界は少女とは全く別の方向の景色を眺めていた
そして何があったのかを理解する。

「はああああああっ!!ですわ」
彼女が巻きついた木ごと腕を振って木蓮の体をぶん投げたのだ。
木蓮はいきおいよく地面に激突した。
「参りましたの?だったら観念して大人しくすることですわ。じゃないと私、次は本気でなぐりますわよ」
まさかここまで怪力とは思わなかった木蓮は歯噛みしながら謝った。

「わ、悪かった!!謝るから許してくれ」

あまりの情けない声に彼女は拳をゆるめた。
次の瞬間。木蓮はの周りの小石や落ち葉が吹き飛んだ。
「なっ何ですのっ」
彼女がひるんだすきに木蓮の腕に羽のような物が生え、空へと飛行した。
彼は少女の周りを羽虫のように不規則に飛び回りながら、周りの木々をその翼で引き裂いていく。
大量の木の葉が、枝が、大鋸屑が、幹が、切り裂かれ幾千もの破片となって少女の体に降り注いだ。
勿論、ヒュペリオン体質である彼女にそんな物では大した攻撃にはならないのだが、元々攻撃の為では無い。
単なる目くらましだ。
少女が再び目をあけると既に男の姿は消えていた。
残された彼女はというと。

「小金井薫。絶対に許しませんわ」

彼女は只、怒っていた。

ゲームにのっていた男に対して。
そしてそんな悪をみすみす取り逃がしてしまった自分に対して。

彼女は剛力番長。悪は絶対許さない。



【A-6 林/一日目 深夜】

【白雪宮拳】
[時間軸]:神闘郷にて暗契五連槍を撃破し脱出した後。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(確認しているか不明)
[基本方針]:このゲームを壊す。ゲームにのった悪人を見つけたら倒す。木蓮の名前を小金井薫と勘違い。




348 : 拳の少女・木の男  ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:41:56.29 ID:b/w/HTOr [5/7回発言]





「ったくあの餓鬼、後でぜってえぶっ殺してやる。にしてもあのガキ、ずっと俺のこと小金井薫だと勘違いしてたな。さーて、これがどういう風に転がるのか見ものだぜ」

そう毒づくと民家の前で着陸した。

「それにしてもキースとか言ったっけ。あの野郎なかなか面白いこと考えやがる。おまけにあの憎たらしい火影のガキ共までいやがるじゃねえか」

彼は愉快そうに微笑んだ。
あのガキは失敗だったが肉の柔らかそうな女は他にもいた。
お楽しみはまだまだ沢山あるのだ。
あの紅麗がいるのは驚いたがあの男は花菱烈火との戦いでボロボロになった挙句、体中を穴だらけにされ川に落とされたのだ。
最早生きているだけでもやっとのはず。
それに集められていた連中の中にはかなりの美人揃いだった。
まあ人間とは思えない程しわくちゃの老婆もいたがそれはそれだ。
あのカツミとかいう女もどうせ殺すんなら自分にやらせて欲しかったと木蓮は素直に思った。

「あんな良い体した女共そろえられてぶっ殺さねえのは失礼もんだしなあ!!さっきのガキは堅過ぎだったが、全部が全部ああいう訳じゃねえだろうし、あいつらがどんな悲鳴を上げるのか愉しみだぜ」
木蓮は楽しくて堪らない。

この無理矢理殺し合いをやらされるという異常な事態にもかかわらず。
いや、無理矢理殺し合いをやらされるという異常な事態だからこそだ。
あの花菱烈火は今頃この舞台のどこで何を思っているのだろうか。


「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃはひゃやひゃひゃひゃひゃひゃっ!!待ってろ火影!!俺がぶち殺してやるからよお」

深夜の闇夜に狂った笑い声が木霊した。
彼の宴はまだ始まったばかり。

【B-5 民家前/一日目 深夜】


【永井木蓮】
[時間軸]:裏武闘殺陣決勝後の紅麗の暗殺後
[状態]:健康
[装備]:木霊 @烈火の炎  飛斬羽@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、飛斬羽@烈火の炎、支給品0~2(確認済み)
[基本方針]:このゲームを楽しむ。できるだけ女を殺したい。




349 : 拳の少女・木の男  ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:42:58.23 ID:b/w/HTOr [6/7回発言]
【支給品紹介】


【飛斬羽@烈火の炎】
三羽烏の一人、羽丸の魔導具。
使用すると飛行する事が出来る。腕の下の部分に羽のような
エネルギー体が発生し、それを使用して相手を切り裂く事が出来る。
本来の使い手である羽丸は陽炎曰く、魔導具の力を全く出せていなかったらしい。




350 : ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/17(木) 14:45:08.71 ID:b/w/HTOr [7/7回発言]
投下終了です
誤字脱字その他の問題点あれば指摘してください

351 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 17:54:42.61 ID:Yh09PJtN [2/2回発言]
投下乙です!

剛力番長流石過ぎるw
木蓮の木霊でノーダメとかヒュペリオン強いね!
地味に悪評が流れつつある小金井も気になるし…今後に期待わくてか


改めて投下乙でしたー

352 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/17(木) 20:40:45.90 ID:inD5P4fF [1/1回発言]
投下乙です。

木蓮ボコられるかと思ったけど無事で何より。しかし剛力は堅いな!

参戦時期的に木蓮は木竜になれないのかな…



353 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/18(金) 16:18:52.18 ID:80N8Iz9R [1/1回発言]
投下乙

木蓮のゲスさが相変わらずで安心した
こいつは間違いなくロワ充になるタイプw
最初から飛ばしてるねー 逃げてー女の子たちマジで逃げてー!
そして剛力番長も流石だw こいつ堅いぞw
悪は許さないってスタンスだし、これから対主催として頑張ってもらいたいね

354 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/20(日) 12:47:34.46 ID:c7akgckT [1/1回発言]
予約スレ見たら新しいのがたくさん来てるw
初めて見るトリの人のやもう何度も書いてる人の新作、どちらも楽しみにしてます!
特に気になるのは、やっぱり5人予約だなぁw
あれだけの面子を一緒に初登場させるなんて普通なら不安なはずなのに、あの人ならなんとかしてくれると思うしw

355 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/20(日) 13:14:44.79 ID:fvz3DnLO [1/1回発言]
峰さやかとさとりとか嫌な予感しかしねえぜ

356 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/20(日) 13:27:01.37 ID:S1FRlQT6 [1/1回発言]
アジノリさん(すげえトリップだw)の予約が、どいつもこいつも濃いから気になるかな
しかしうしとら勢は一気に売り切れたなぁw

357 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/21(月) 14:37:19.29 ID:2Fkta4oJ [1/1回発言]
読んだこと無かったんでこれを期にからくり把握してきたんだが……これは面白いね
読む手が止まらないなんて久しぶりだわ

358 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:11:51.82 ID:mHpFDDnF [1/9回発言]
「Dr.鍵宮」
 誰もいない虚空に向かって呼びかける。
 博士に連絡し、今後の行動についての指示を仰ぐために。
 しかし、彼の躯体内に搭載されている通信ユニットには一切の反応はない。
 装置は問題なく動作しているはずなのに。

「Dr.鍵宮。異常ガ発生シマシタ。応答ヲ」
 彼が何度呼びかけても博士は応答しない。
 それどころか、東京都文京区にある鍵宮研究室との交信自体が途絶えてしまっている。
 どうやら、彼が立っているこの場所が専用無線通信の有効範囲外であるか、または何者かによって通信電波が妨害されているらしい。

「…………交信不能。自律モードニ移行スル」
 銀髪にやや面長な、西洋風の綺麗な顔立ち。
 ボタンを全開にした学ラン姿も、ワインレッドの眼鏡も、かなり様になっていた。
 海外の映画俳優かと思わせるほどの美青年である。

 だがその反面、こんな異常事態であるにもかかわらず、彼の発する声は無感情そのものだった。
 眼鏡の奥に潜む双眼にも、一切の輝きは宿ってはいない。
 そう。彼……マシン番長は、その名が示すとおり科学の化身、ロボットであったのだ。

「参加者ノ中ニ数名ノ番長ヲ確認。コノ殺シアイヲ『23区計画』ノ延長ト判断スル」
 彼の言う23区計画とは、元々いた世界で行われていた戦いの事だ。
 様々な力を有した『番長』たちが東京23区それぞれに配属され、彼らは他区の『番長』を倒すことで自分の統括区域を広げていく。
 最終的に全ての区を支配した『番長』が、日本という国家を再生する旗振り役になる権利を得られるのだ。

 そして、マシン番長もその争いに身を投じる番長のひとり。
 23区計画の勝者となるべく、鍵宮という狂科学者に作られた戦闘マシーンだ。
 彼は起動するなり、三人の番長を撃破。
 さらに、金剛番長をはじめ、彼の元に集まった四人の番長たちも簡単に打ち倒してしまった。
 彼に与えられた力は、それほど圧倒的なものであったのだ。
 そのままの勢いで、彼は全ての区を制圧してしまうかに思われた。
 しかし、千代田区の雷鳴高校を支配下に置くべく、研究室から出発しようとしたとき……。
 彼の全機能が急停止した。

 次に目覚めると、そこは薄暗い空間。
 そこで彼は、背中を壁にあずけ座らされていた。
 部屋の中央で声高に話をするのは、キース・ブラックと名乗る男。
 マシン番長にとっては、聞く価値すらない演説だった。
 彼に命令を下せるのはDr.鍵宮と死んでしまったDr.月菜、そしてある少女だけなのだから。
 マシン番長が注目したのは、その場に集められた人間たちの方だ。
 その中には、殺したはずの金剛番長を始め、居合番長たち番長連合、加えて『番長らしき能力を備えた者』が多数いた。
 すぐにでも番長抹殺プログラムを実行したいマシン番長だったが、躯体が全く動かせない。
 電撃やロケットパンチはおろか、指の一本すらもまともに動かす事はできなかった。
 殺し合いの開始前に勝手な戦闘を行わないよう、主催者が彼の体に細工を施したのだろう。
 彼に自由が戻ったのは、カツミという少女の首輪が爆発した後。
 現在立っているこの場所に、謎の力で強制移動させられてからのことだった。
 そして彼は冷静に現状を確認し、今に至る。

「予定ドオリ、番長抹殺プログラムヲ再開スル」
 創造主からの命令を受け取れない以上、ここからは自分の判断で行動するしかない。
 とはいえ、彼のすべきことは今までとは何ら変わりはない。
 他の番長の排除。それだけだ。

 ところが、彼がその指名を全うする過程には、ひとつの大きなハードルが存在する。
 ある少女の存在だ。

「……月美」
 彼の開発に携わった人物である月菜博士によく似た少女。
 マシン番長の中で、彼女は創造主たちと並び立つほど大きな存在だ。

359 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:12:11.04 ID:mHpFDDnF [2/9回発言]
 だからマシン番長は、その少女の願いに従う。
『戦った相手と仲直りして欲しい』との、健気な願い。
 相手を殺してしまっては、それを実行するのは不可能だ。
 しかし、それと同時に、番長を倒すという指令は守らなくてはならない。
 それができなければ、彼は廃棄され、少女の傍にいられなくなるからだ。
 全力で戦わなくてはいけないが、殺してもいけない。
 数ある番長の中でもトップクラスの戦闘力を持つ彼だからこその難題であった。
 この要求にどう対処するのが最適か、ニューロコンピュータを巡らせ思案していると……。

「あの……すみません……」
 突如背中から話しかけられ、マシン番長は猛スピードで振り返った。
 感情のない彼だが、その振り向きの速さから、驚きのような感情が見て取れる。
 演算途中であったとはいえ、彼の警戒が緩む事はないはずだ。
 けれども、彼はこの女性の接近を察知する事ができなかった。
 声の主である女性を確認すると、ジッと見つめて、その人物データの解析を開始する。

「網膜スキャン……エラー……」
「あの……聞いてますか?」
 巫女装束を身に着けた女性が呼びかけるが、マシン番長は歯牙にもかけない。
 眼鏡のフレームよりも紅い瞳で、女性の情報を読み取っていく。
 彼女の網膜から該当データを検索しようとするが、失敗に終わってしまう。
 こんな事象は、彼にとって始めてのことであった。

「音声分析……確認……。該当データナシ。
 …………番長デアル確率0.02%。
 網膜エラーハ、バグデアルト予想サレル」
 声紋判定に切り替え、やっと彼女のデータ採取に成功。
 インプットされている番長たちのデータと照合し、合致するものが無いことを確認した。
 さらにその戦力を分析すると、彼女は舎弟レベルの戦闘能力すら持ってはいない。

「あのぅ……」
 女性はめげることなく話し掛ける。
 その黒い艶やかな長髪や穏やかな顔つきから、奥ゆかしい大和撫子の雰囲気を漂わせていた。
 一方で、彼女は見た目から感じる印象以上に肝が座っている。
 潜ってきた修羅場の数のおかげか。それとも誰かの影響か。

「関ワッテモ意味ガナイと判断スル」
 番長抹殺プログラムを執行する彼にとっては、一般人との関わりは全く無意味なもの。
 相手が番長関係者ではないと判断すると、彼女を無視して歩き出そうとする。

「あ! の!」
「……?」
 業を煮やした少女が、立ち去ろうとする青年の前に回りこんだ。
 彼女の動きを、またしても察知できなかったマシン番長。
 表情こそ変化してはいないが、彼の脳内は混乱状態にあった。
 再び彼女を見つめ、先ほどより精密なスキャンを開始する。

「心拍数…………エラー…………。体温…………エラー…………。
 ソノ存在ヲ確認デキナイ」
 探知できるのは、彼女の音声だけ。
 彼の視覚素子は少女の姿を確認しているのに、レーダーの方は『そこには誰もいない』と主張する。
 まるで、立体映像を見せられているかのよう。

「……あぁ! そういうことですか」
 両手をポンと打ち合わせる。
 どうやらマシン番長の言いたいことを理解したらしい。

360 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:13:16.62 ID:mHpFDDnF [3/9回発言]

「ソウイウコト、トハ何ダ」
「実は、私……」
 人差し指を頬にあて、得意そうな顔を見せる少女。
 おしとやかに小さく口を開けてウフフと笑った。

「幽霊なんです」


◆     ◆     ◆


「ツマリ、人ハ死ンダラ幽霊ニナルノカ」
「そういうことです。意外と気楽でいいものですよ」
 地べたに座って話す二人組。
 片や機械、片や幽霊という、とんでもない組み合わせだ。
 幽霊少女キヌが今まで行っていた霊能講義は、たった今、やっとのことで一段落。

 マシン番長も、始めこそはインプットされていない概念に戸惑っていた。
 だが、彼の感覚素子が心霊現象を実際に体験しているのだから納得せざるを得ない。
 カタカタと音を立てながら、頭部に格納されたメモリに『幽霊』の項目を追加した。

「……それでですね、マシン番長さん。
 あなたは、美神という名の女性を……」
 危険人部の可能性もあったマシン番長に、キヌがわざわざ話しかけたのには理由があった。
 事務所の仲間の美神や横島、知り合いのドクターカオスと遭遇してはいないか尋ねるためだ。
 会話をしていく中で、彼は危険人物ではないと判断したキヌ。
 わざとらしく咳払いしてから、本題を切り出そうとしたが……。

「待テ。誰カ来ル」
 彼女の言葉を遮り、マシン番長が立ち上がる。
 つられてキヌも振り返るが、誰もいない。
 巫女少女は首を傾げるが、マシン番長は微動だにしない。

「あの……こんにちは。突然話しかけてすみません」
 彼らが見つめる方向から一人の少年が姿を現したのは、それから数十秒後のことであった。
 身の丈から察するに、小学生であろう。
 それにしては随分礼儀正しく、育ちのよさが伺える。
 つまりは、そんな子供さえも殺し合いを強制されているということ。
 そんな残酷な仕打ちを平気で行うキース・ブラックとかいう男に、キヌは珍しく怒りを覚えた。

「いいのよー。ボク、怖かったでしょ」
「いや、僕は、そんな……」
 キヌがまっ先に少年に近づいて、小さな頭を優しく撫でた。
 あからさまな子供扱いに、少年は戸惑ってしまう。
 キヌの手を振り払いたかったが、彼女の悪意なき表情を前にしては、そんなことできるはずもなかった。

「私はキヌ。おキヌでいいですよ」
「えっと僕は、才賀……危ないッ!」
 自己紹介を突如中断し、少年が大きく飛びのく。
 その直後、彼が今まで立っていた場所を、機械仕掛けの拳が猛スピードで通過。
 そして、少年の傍に屈んでいたキヌの身体を貫いた。
 パンチはそのまま地面を殴りつけ、衝撃で大量の土煙が舞い上がる。

「お……おキヌさぁんッ!!」
 まさかの事態に、少年の顔に絶望が満ちる。
 彼は一人で逃げようとしたわけではなく、キヌを抱えて二人一緒の回避を試みた。
 そのはずだったが、彼の腕は少女を捕まえることはなく、巫女の体をすり抜けて空をきる。
 結果として、彼女はロケットパンチから逃れることができなかった。
 少女を助けられなかった自責の念と下手人への怒りが彼の胸を支配し、小さな身体がワナワナと震える。

361 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:14:31.01 ID:mHpFDDnF [4/9回発言]

「よくも……よくもおキヌさんを……」
 少年は背中から一本の刀を取り出し、構えた。
 その姿は、ただの小学生のソレではない。
 剣の道に通ずる者の佇まいだった。

「いくよ」
 明鏡止水。
 月明かりに光る刀身に応えるかのように、少年の瞳に鋭い閃光が宿る。
 力強く握り締められた柄に、もう奮えはない。
 大きく息を吸い込み、右足に力を込め、踏み出そうとした。
 そのときだ。

「なぁーーーにするんですか、マシン番長さん!
 私、死んでなかったら、死んでましたよ!」
 少女の怒号。
 一般人なら確実に死に至るレベルの攻撃を食らったはずの少女だ。
 なぜ彼女が生きているのか、勝は知る由もなかったが、それは至極簡単な理由だ。
 幽霊である彼女の身体は、本人が『触れたい』と思ったもの以外は貫通させてしまう。
 少年が彼女を抱えられなかったのも、それが原因だ。
 つまり、パンチのような物理攻撃は彼女には全く通用しないということである。

「俺ガ狙ッタノハ、ソッチノ子供ダ。ソコニイタオマエガ悪イ」
「そういうことじゃないですよ!
 私が言いたいのは、何でいきなりこの子に攻撃したのかってことです!」
 無傷で復活した少女に目を丸くする少年。
 あんぐりと口を開け放つ彼を余所に、二人の口論は続く。
 もう常識も何もあったものじゃないのだが、キヌの方が正しいことを言っている。
 少年に落ち度がないにもかかわらず、マシン番長は彼に不意打ちを見舞ったのだから。

「コノ子供ノ戦力ガ基準値ヲ超エテイル。
 番長デアル確率ハ94.33%ナノダ」
 再び少年に向き直るマシン番長。
 その目からは、殺意と呼ばれる感情を確認することはできない。
 マシン番長のメモリ内には、この少年のデータはインプットされてはいなかった。
 つまり彼は23区の番長ではないということである。
 しかし、それは少年が番長でないということと同義かと問われれば……否。

 日本には、マシン番長のデータの外にいる番長もたくさん存在している。
 なぜならば、番長とは東京23区に限った存在にあらず。
 東京都以外でも同じような争いは行われており、そこでも数多の番長が戦いに明け暮れていた。
 マシン番長にとってみれば、それらの番長もいずれは倒さなくてはならない敵だ。
 彼が作りたいのは、鍵宮と月美のみを絶対とする国なのだから。

 少なくとも、マシン番長に分かることは『この少年は、番長以外は持ち得ない戦闘能力を有している』ということだけ。
 ならば、殺しておいて損はない。
 疑わしきは番長、である。

「何を言っているんですか? こんな子供に……!」
「いいよ、おキヌさん」
 少年が、刀を背中にしまう。
 マシン番長を彼の知っているタイプの自動人形だと誤解したせいだ。
 彼が知っている自動人形には『黄金律』というルールがある。
 それは、『武器を持っていない人間の前では、目で終えない速さで動いてはならない』というもの。
 刀や銃器のようなものを手にしていては、到底人間側に勝ち目はない。
 だから、およそ武器とは思えない懸糸傀儡が、オートマータの数少ない対抗策となるのだ。

362 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:15:27.81 ID:mHpFDDnF [5/9回発言]

「やつらと会話するだけ、無駄なんだ」
 徒手空拳で構え、立ち向かう。
 少年に残されたのは、『分解』の技術のみ。
 それすらも、ドライバーなどの工具がなければ心もとない。

「確カニ俺ハ、オートマータ・マシン番長ダ。
 オマエヲ俺のメモリニ登録シヨウ」
 データベースにこの少年の網膜や声紋などの情報を追加する。
 さらに、肉体をスキャンして得られる予想戦力や戦法なども保存。

「そんな、ダメです! 武器もなしに勝てるわけが」
「それは違うよ、おキヌさん。……足掻くんだ」
「……え?」
 キヌの心配の眼差しは、僅かばかりだが和らいでいく。
 少年の姿が頼もしく見えたからだ。
 彼の顔つきが、幾つもの戦場を渡り歩いた戦士の表情へと変貌し。
 全身から発する圧も、彼女がよく知るゴーストスイーパーのごとく頼もしいものになった。

「足掻いて足掻いて、ダメだったらそのときは……」

「新規登録ヲ完了スル。命名、『子猿番長』」

 少年の決め台詞は、悲しいかな最後まで紡がれず……。
 マシン番長が彼に名づけた番長名は余りにも酷く……。
 今まで彼が醸し出していたシリアスな雰囲気を台無しにするには、充分すぎるものだった。

「………………」
「………………」
「………………」
 完全に空気の読めないマシン番長の発言のせいで、この場に痛々しい沈黙が流れた。
 この空気を作り出した当の本人は、相変わらずの無表情で少年を見つめている。
 その少年はというと、俯いて小刻みに震えてしまっていた。

「あの…………」
 気まずそうに二人を交互に眺めていたキヌが、見るに見かねて少年に話しかける。
 彼はゆっくりと顔をあげた。

「なんだい、おキヌさぁん」
 もう少年は、にっこり笑うしかない。
 しかれどもそれは、ぐにゃりと歪んだ、『いい笑顔』だった。
 まるで、悪い錬金術師の精神を脳に転送されてしまったかのような。

「あ、あの……怒って、る?」
「怒ってなんかないよぉ」
 言葉では否定するものの、少年の表情からは明らかに怒りのオーラが漏れ出ていた。
 頬がピクピクと痙攣している。
 今にも爆発してしまいそうだ。
 キヌはというと、彼にかける言葉選びに迷ってアタフタする始末。

「番長抹殺プログラムヲ実行スル」
 そんな二人をよそに、マシン番長は既に戦闘体制に移行していた。
 突き出された右腕から、少年に向けて拳が発射される。
 しかし、ロケットパンチは直線攻撃。
 警戒さえしていれば回避は容易いものだ。
 少年は横ステップで楽々と鉄の拳骨をやり過ごすと、マシン番長に向けて突進する。
 そのスピードは、やはりただの小学生のものではなかった。

363 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:16:21.37 ID:mHpFDDnF [6/9回発言]

「ソリッド・スクリュー」
 初撃を回避されたロボットだが、機械らしく冷静に相手を迎え撃つ。
 右手首から伸びるワイヤーを巻き取り、先ほど飛ばした拳を回収。
 ガシャリと手首に嵌った右手を貫手の形に構え、ドリルのように高速回転させる。
 恐るべき貫通力を有したこの必殺技は、金剛番長を殺害したものだ。
 まっすぐ愚直に走りくる少年に向け、静かにだが素早く突き出した。

「…………はぁッ!」
 少年は背中から刀を取り出し、迫りくる機械的な突きを下から救い上げるように弾く。
 しかし、機械の馬力は強く、繰り出された攻撃の軌道を完全に逸らせるには至らない。
 そこで少年は、躓いたのような動きで機械の足元に転がり、その懐へ潜り込んだ。
 完全に無防備となった胸部に、刀を思いっきり叩き込む。

「無駄ダ」
 無表情でアンドロイドが宣告したとおり、渾身の一振りは皮膚を模した装甲に阻まれて止まってしまう。
 カキンと鉄同士が打ち合わされる音が虚しく響いた。
 刀を振り払うこともせず、少年を組み伏せてマウント状態に持ち込む。
 不可避の攻撃で、少年を確実に死に至らしめるために。

「止めてぇッ!」
「安心シロ。殺害シテモ幽霊ニナルダケ。ナカナオリハ可能ダ」
 おキヌの絹を裂くような叫びが響く。
 しかし、彼女の力では機械の暴挙を止めることはできない。
 マシン番長は気にすることなく拳を振り上げた。

「まだだよ」
 自らの眼前に死が迫ってきていても、少年は笑っていた。
 それは、お手上げだから、足掻いても駄目だったからではない。
 彼がとびっきりの笑顔を見せたのは、勝利を確信したからだ。
 少年は手にした柄を、全力で握り締める。

「のびろ、物干し竿」
「…………?!」
 少年の命令に従って、マシン番長の胸に突き立てられた刀が急速に長くなっていく。
 十メートル、五十メートル、さらに、さらに遠くへ。
 刀はマシン番長の体を吹き飛ばし、空の彼方まで運んでいく。
 数秒後、物干し竿が元の長さに戻ったとき、もうマシン番長の姿はどこにも見えなくなっていた。

「大丈夫……みたいですね」
「はい。あいつが戻ってくるかもしれません。ここを離れましょう」
 決着が着いたのを見届け、キヌが少年に駆け寄る。
 彼女の手を借りて立ち上がる少年。
 その姿を、とても勇ましいと思うキヌであった。

「あ、そうだ」
 フワフワと進んでいたキヌが、思い出したかのように立ち止まる。
 その声に、先を進んでいた少年が何事かと振り返る。

「あなたの名前、聞いてなかったね」
「あぁ、本当だ。僕は、勝。才賀勝です!」
 勝少年は、胸をはって元気に自己紹介をした。
 こういうところは子供らしい。
 先ほど強敵を退けた彼と同一人物だとは、とてもじゃないが思えない。

「おキヌさん?」
 勝が訝しげにキヌの顔を覗き込む。
 彼の名前を聞いたキヌは黙ったまま、小刻みに震えていた。

364 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:17:02.28 ID:mHpFDDnF [7/9回発言]

「ま……サル……。…………っぷ……」
 我慢しきれなくなって、思わず噴出してしまった。
 慌てて謝罪しようとしたが、時既に遅し。

「……あ、あの…………ごめ…………」
「なぁんだぁい、おキヌさぁん」
 それは、悪意に満ちたとてもいい笑顔だった。



【B-4 一日目深夜】

【才賀勝】
[時間軸]:不明。正二の剣術を習得してから。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:物干し竿@YAIBA、ランダム支給品0~2(人形はなし)、基本支給品一式
[基本方針]:殺し合いを止める。


【おキヌ】
[時間軸]:本編にて生き返る前(ドクターカオスとは面識有)
[状態]:不健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:勝についていく
※幽霊です。『本人が触れたいと思うもの』以外はすり抜けます。


◆     ◆     ◆


「躯体損傷率3.2%。行動ニ支障ハナイ」
 ムクリと起き上がったのは、子猿番長の殺害に失敗したマシン番長だ。
 立ち上がると、まず全身をスキャンし、ボディの調子を確認する。
 どうやら異常はないようだ。
 小さな傷はあれど、すぐに自動回復するレベルのものであった。

「逃走シタ対象ノ追跡ヲ開始スル」
 自分が飛ばされてきた方向を見つめる。
 もう一度少年と接触して、こんどこそ確実に殺害するためだ。
 マシン番長は、体内に搭載されているレーダーを起動させて相手の位置を探ろうとした。

「レーダーニ異常。索敵範囲ガ限定」
 おそらくは、主催者による細工。
 レーダーの有効範囲が著しく狭められていた。
 これでは、少年を補足するのは不可能である。

「追跡ヲ断念スル」
 機械の決断は早かった。
 特に悔しそうな素振りもみせることはない。
 踵を返し、新たな敵を探して粛々と歩き出す。

365 : バグ ◇d4asqdtPw2氏代理投下 : 2011/03/22(火) 09:17:42.18 ID:mHpFDDnF [8/9回発言]

「各番長トノ戦闘プログラムヲ修正。
 殺害シテモ、ナカナオリハ可能デアルト」
 キヌに教わった『幽霊』の概念を、プログラムに反映させた。
 人は死んだら幽霊となり、世界を彷徨う。
 つまりそれは、対象を殺害しても仲直りは出来るということになる。
 殺してから仲直りすればいいのだ。そのほうが遥かに簡単なのだから。
 月美の命令には何ら違反してはいない。

「番長抹殺プログラムヲ、再開スル」
 23区最強の番長が、今、動き出した。


【B-2 一日目深夜】

【マシン番長】
[時間軸]:雷鳴高校襲撃直前
[状態]:異常なし
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:番長を抹殺し、幽霊と仲直りする。邪魔するものも排除。
※番長関係者しか狙いませんが、一定以上の戦闘力があるとみなした人物は番長であると判断します。
※対象の殺害を躊躇しません。
※レーダーは制限されています。範囲は不明。



25 名前: ◆d4asqdtPw2[sage] 投稿日:2011/03/22(火) 05:43:35 ID:???
以上、投下終了です。
誤字や矛盾点などあれば、遠慮なく。

本スレが規制されておりますので、どなたか申し訳ありませんが代理投下お願いします。

366 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/22(火) 09:31:29.63 ID:mHpFDDnF [9/9回発言]
代理投下完了。


◆d4氏投下乙です!
こ、この時期のマシン番長で、あの予約面子ならすぐマーダー化はないと思ったのに!
オィィィィィ! おキヌちゃあああああああん!ww  やっちゃった! やっちゃったよ、この子!w
勝とマシン番長の間に立ち込めかけてたシリアスな空気もブッ壊すし、あーやっぱGSいいなぁw
それにしてもまったく考えてなかったが、マシン番長はからくり勢的にはオートマータか。これはのちのち怖そうだ
とか考えてたら子猿番長で不意打ちくらった、ちくしょう!w

367 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/22(火) 10:41:28.85 ID:zIpXYoNX [1/1回発言]
投下乙です
勝はマシン番長を自動人形と勘違いした間々で良く生き残れたな。
それと物理無効とか
おキヌちゃんマジチート

368 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:39:24.00 ID:5C4Lncs+ [1/17回発言]
すいません、遅れました。
これより投下します。

369 : 現在位置 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:40:17.65 ID:5C4Lncs+ [2/17回発言]
 ◇ ◇ ◇


「悪いな、待たせてしまった。
 と言ったものの、これでも予定よりはだいぶ早いんだけどね。
 細かい説明を求めようともせず、シルバーはやるべきことを理解してくれた。
 ……さてバイオレット、次は君だ。すでにその資料には目を通し終えたかな?」

「ええ。もう済ませてあるわ、ブラック兄さん。
 けれど、まず最初に一つだけ訊かせてもらうわ。
 この状況は、いったいどういうことなのかしら?」

「ふふ、質問に答えてあげたいのはやまやまなんだけどね。
 すでにプログラムは始まりつつある。とにかく時間がないのさ」

「プログラム……」

「そう、渡しておいた資料に記しておいた『プログラム・バトルロワイアル』。
 『プログラム・ジャバウォック』をも覆う巨大な砂時計が、ようやく動き出そうとしている」

「兄さん! 兄さんはなにをしようとしているの!? なにを隠しているの!?
 オリジナルARMSや私たちキースシリーズだけでなく、『異なる世界』とやらにまで手を伸ばして、なにを――!?」

「先ほども言ったが、プログラム・バトルロワイアルには時間がないのだ。
 ……いや、プログラムだけじゃない。この、キース・ブラック自身にも……か。
 私が私である間に、殻が破れてしまわぬうちに、始めねばならないのだからな。
 話す前によく理解をしてほしい、バイオレット。
 いまから告げるのが、キースシリーズの長兄であるキース・ブラックから、我が妹のキース・バイオレットへの言葉だということを」

「兄、さん……?」

「では、プログラムにてお前がするべきことを命じよう。
 ――――『三月兎(マーチ・ヘア)』のキース・バイオレットとして行動してくれ」

「それは、どういう……」

「話は以上だ。これにて準備はすべて完了し、プログラム・ロワイアルが開幕する」


 ◇ ◇ ◇


 『われわれはどこから来て、どこへ行くのか』


 ◇ ◇ ◇

370 : 現在位置 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:41:25.49 ID:5C4Lncs+ [3/17回発言]


「来たか、新宮隼人」

「はっ、そりゃあ来るぜ。
 この喫茶店に灯りが点いてなくても、こんなにガンガン共振波出してやがったらな。
 いつかアンタ『共振反応なんていくらでも隠せる』っつってたよな、バイオレットさんよ。だったらなんでやらねえんだ」

「そちらの『騎士(ナイト)』も同じだろう。
 あのときと違って、現在のあなたたちならば共振波など抑えてしまえるはずよ」

「俺は、出さなきゃいけねえ理由があんだよ。
 てめーの兄貴があんなことしちまったからな。もしものときは、俺がアイツを止めるって話になってんだ」

「…………」

「でも、アンタはちげーだろ。
 なにが目的なのかなんて知らねえが、俺の目的とまったく一緒ってことはねえだろう。
 だったら、なんでそんなに自分がここにいると主張してやがったのか……
 たぶんだけどARMSを移植された誰かを待ってたんじゃねーのか。ティーカップまで用意してるしよ」

「かも、しれないな」

「つっても、今回ばっかりはアンタのマッド・ティーパーティに付き合う気はねえぜ。
 何より優先しなくちゃなんねえのは、高槻のヤローがどうなってるか知ることだからな。
 ただそれでも、アンタに会ったからには訊かなきゃならねえよな。この殺し合いについてよォ」

「…………分からない」

「ふざけんじゃねえ!!
 見てたんだぜッ! 俺たちがここに飛ばされるとき、アンタ一人だけ問題なく立ってやがったのをよ!
 なにか……! 全部は知らなくても、なにかは知ってるんじゃねえのかッ! それだけでいいから言ってくれ!」

「本当に、なにも知らないわ。
 私が伝えられたのは、あなたたちがブラック兄さんに説明された内容と同じ。
 他には参加者の情報と、この殺し合いがプログラム・ロワイアルという名だということくらい」

「本当……ッ、なのか?」

「私一人アリスの間に残されるというのも、知らなかった。
 残しておいてブラック兄さんは私の質問にほとんど答えず、ここに移動させたわ。
 それどころか赤木カツミを殺害するという話でさえ……私はまったく聞かされていなかった」

「ブラックのヤロー、なに考えてやがる……ッ。
 招待状なんか渡して来たと思ったら、自分から呼び出してよ!
 高槻の前でカツミを殺して、プログラム・ジャバウォックとやらを無理矢理一気に進めちまおうってのか……!」

「…………違うわ。
 以前あなたたちの前で言った通り、プログラム・ジャバウォックを発動させるには高槻涼がアリスの近くにいなくてはならない。
 だというのに、ブラック兄さんは彼を他の参加者と一緒に移動させた。これだけで、プログラム・ジャバウォックからは大きくズレてしまっているもの……」

「ちッ、どうなってんだ」

371 : 現在位置 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:41:54.23 ID:5C4Lncs+ [4/17回発言]

「それに、グリーンになにも知らせていないのも奇妙ね。
 私とシルバー兄さんだけに話をして、どうしてグリーンだけを省いたのか。
 『希望』が託されたグリーンだけを省いて、赤木カツミが死に行く様を見せたのか……」

「ふん、アイツならいまごろ喜んで殺して回ってんじゃねえのか」

「……っ、あなたはなにも知らないから…………っ!」

「ん?」

「……いや、構わない。
 私にとっては家族で愛しているが、あなたたちにとってそうではないのは分かっていたことだからな」

「そうかい。んじゃまあ、高槻のヤツを探しに行かせてもらうぜ」

「私に、なにもしないのか」

「んだよ、もともと俺は積極的に女子どもに手ぇ出すタイプじゃねえんだよ。
 それに、最後に会ったとき『次は敵同士』つってたが、いまは戦う気ねえんだろ」

「…………ああ。
 かつてのプログラムに対して取る行動はすでに決めていたが、このプログラム・ロワイアルにおいてはまだ結論を出せていない……」

「ならよかったぜ。極力、アンタとは戦いたくなかったからな。
 ……けど珍しいもんだな、俺が離れてアンタが残るってのも。いつも、アンタが小さくなってくのを見てたってのによ」

「たしかに……そう、だな」


 ◇ ◇ ◇


(おい騎士、お前まだ高槻の場所わかんねーのか!)

『……奇妙なことが起こっている』

(あァ? 言い訳なんか聞きたくねーぜ?)

『マーチ・ヘアの共振が、すでにほとんど感じられなくなっているのだ』

(てっめえ、寝ぼけてんのか!? まだ大して離れてねえだろうが!)

『そもそも、おかしいとは思っていたのだ。
 先ほどもだいぶ接近してようやく共振を捉えたが、あれほどの共振波ならばもっと前に勘付いているはずだった』

(なるほど、言われてみりゃそうだな。どうなってやがる)

『分からぬ』

(はっ、ずいぶんあっさり言いやがる)

372 : 現在位置 ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:42:15.69 ID:5C4Lncs+ [5/17回発言]



【D-5 南西路上/一日目 深夜】

【新宮隼人】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にて招待状を受け取って以降、同話にてカリヨンタワーに乗り込む前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:仲間たちと合流してブラックのプログラムを叩き斬る――が、その前にまず高槻を探す。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。


 ◇ ◇ ◇


「私が止まっている、か。新宮隼人め、言ってくれるな。
 でも……やはり分からない。
 ブラック兄さん、あなたは私になにを望んでいるの?
 『キース・バイオレットとして』とはどういうことなの……?
 私はいったい――――っ! 共振……っ。これは、ジャバウォック……!」



【E-5 喫茶店/一日目 深夜】

【キース・バイオレット】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にてオリジナルARMSたちがカリヨンタワーに乗り込む直前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(未確認)
[基本方針]:キース・バイオレットとして行動する……? ひとまず喫茶店に留まり、入ってきた参加者に対応。
※参加者の情報をブラックから聞かされています。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。

373 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:43:02.31 ID:5C4Lncs+ [6/17回発言]
長すぎて入り切りませんでしたが、ここまでのタイトルは

現在位置~Where do we come from? Where are we going?~

でお願いします。
では続き。

374 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:44:19.85 ID:5C4Lncs+ [7/17回発言]
 ◇ ◇ ◇


 殺し合いの舞台に飛ばされた蒼月潮は、ただ拳を握りしめている。
 キース・ブラックが殺し合いの説明をしている際、うしおは動くことができなかった。
 未成年にもかかわらず酒なんかを飲んでしまったせいで、妙な夢を見ているのか――などと、そんなことを考えていたのだ。
 そんな自分が、許せなかった。
 あの場面では動けなくて当然であると、他の人間に対してはそう思っている。
 それでも、うしおは己を攻めたてるのを止めない。
 自分はある程度修羅場をくぐってきているし、何より相棒である妖(バケモノ)はすぐさま動いていたのだ。
 あの攻撃は少しばかり早すぎたものの、あとになって考えてみれば仕掛けるべきであった。
 もしもあそこでブラックを止めることが出来ていたなら、誰かが死んでしまうこともなかったのだから。
 うしおの脳内に、死に行く二人の姿がフラッシュバックする。
 何が起こったのか分からないまま死んだ男性に、恐怖で頭のなかがいっぱいにさせられて殺された女性。
 どちらもうしおよりは年上のようだったが、まだ高校生くらいに見えた。
 少年と少女、であったのだ。

「して、やるかよ。殺し合いなんて、してやるかよォ!」

 うしおは拳をさらに強く固め、満月と重ねるように高く掲げる。
 これ以上、人を死なせてなるものか。
 その決意を籠めた宣言の後、太い眉をしかめて歩み出す。
 そして三歩ほど進み、静止した。
 片足が空中にあるという、とても不自然な体勢で。
 そのまま約一分硬直し、前に出しかけていた右足を戻す。
 リュックサックを下ろして中身を確認し、再びうしおは動かなくなった。

「…………ねえ」

 ギチギチと、小刻みに。
 まるで出来の悪いカラクリ人形のような動作で、うしおは両手を少しずつ上に持っていく。
 たっぷり時間をかけて頭まで持ってくると、短く揃えた髪をかき上げて叫んだ。

「ぶ、武器がねぇぇええええええええ!」

 愛用の武器である獣の槍は回収されていたらしく、手元から消えていた。
 常に携えているし、寝るときでさえいつも傍らに置いているため、いまのいままで気付かなかったのだ。
 ならば気に入らないが、ブラックが用意したという武器を使うしかない。
 そう判断してリュックサックに手を突っ込んだら、出て来たものは到底武器とは思えないものだった。
 覚悟を決めて早々にして、うしおは頭を抱える以外の選択肢を失った。

「どう、する? どうするどうする、俺ならどうする!?
 シャレ抜きでまっじいよな、これは。ちっきしょう、ッの野郎……! ふざけやがって……!」

 ブラックに対して悪態を吐きながら、うしおはリュックサックに入っていた糸を引っ張る。
 もしかしたらただの糸ではなく、知り合いの符咒士が扱う武器のように先に刃物が括られれているかもしれない。
 だとすれば外して、ただのナイフのように使えないだろうか。

 と、うしおはそんな希望的観測をしたワケですが。
 まあ、だとしたら説明のとこにそう書いとくだろーがというお話でして。
 結局、ただのやたら長い糸でしかありませんでした、とさ。

375 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:44:48.82 ID:5C4Lncs+ [8/17回発言]

「お、おお、ぉおお…………」

 別に、獣の槍がなければ諦めてしまおうなどという、そういう甘い決心だったワケではなかった。
 実際、うしおはこの場面においても投げ出してしまうつもりはない。
 とはいえ、持ち合わせている武器が長い糸一本。糸だけ。糸のみ。糸オンリー。
 なんていうか、凹む。もう単純にがっかり。
 糸を両手で掴んで振るおうとしてみても、やたら長いだけあって全体が動くことはなく。
 握っている周辺だけが、うねうねうねうね。地を這うヘビのように蠢くだけ。
 うしおは、思った。
 珍しく、やたら冷静に、自分が置かれた状況を見つめて。
 あー、これはアレだわー、つっかえないわー、と。

「う……ぁ、ぁぁあ、おおぁぁ……」

 のたうつ蛇じみた動きを眺めていると、急速に冷えた頭で『俺なにやってんだろう』とか思ってしまう。
 自分が情けなくなったうしおは、言葉にならない声を漏らす。
 そんな様子を眺めていたのだろうか、哄笑が響き渡る。
 その声をよく知るうしおは勢いよく振り返り、つい表情を緩めた。

「とらァ!」

 これじゃあまるで安心したみたいじゃないかと思いつつも、うしおは笑みを隠すことができなかった。
 そんなもの見もしないで、とらと呼ばれた金色の妖は民家の屋根の上で転げまわっている。
 なにかあったのかよ――と、うしおがガラにもなく声をかけようとする前に、原因がとら本人から告げられた。

「ぎゃはははっ! あーっ、ひゃっひゃっひゃ!
 『ぶ、武器がねぇぇえええええええ』だってよ、ひゃーっはっはっはっ!」
「…………」
「よ、妖気も感じねえただの糸なんか持って……『お、おお、ぉおお……』って!
 お、おのれは、げひゃははははっ! ひぃーっはっは! おのれはなーにをやっとるんだ、ブァァァァアカ!!」
「…………」
「こっちはだいぶ前におめえを見つけて、声かけてやんのも癪だし放っとくかと思ってたら、ひゃぁーっ! あんな見せもんされたら、黙って離れられやしねえ!」
「…………」
「『どう、する? どうするどうする、俺ならどうする!?』じゃねぇーーー!
 シャレ抜きでまじいのは、むしろおのれの頭だろが! あーっひゃひゃひゃひゃ! 傑作だ!」
「…………」

 ところどころでうしおの口調を真似ながら、腹を抱えて屋根の上を転げまわる。
 十分ほど経過してようやく笑いが収まり、とらは屋根から下りた。
 それを待ちかねていたうしおが腕を大きく振りかぶるも、拳はあっさりと回避されてしまう。
 そのザマを見て、再びとらはニンマリと笑みを浮かべる。
 くすくすくすくす、と
 言う前からほくそ笑む。

「ん~、オイオイ? どうしたよ、うしおォ? いつもみたくバカスカ殴ってくりゃいいじゃねえか。
 あ、出来ないんだっけ? なんせ……おめえいま『ぶ、武器がねぇぇえええええええ』! だものな!」
「テッメェ……!」

 げらげらげらげら、と。
 言い切ってから高笑い。

 一しきり哄笑を続け落ち着いてから、とらはうしおに向き直る。

「にしても武器がなくても十分強ぇバケモノのが、ニンゲンよりいい武器配られてるたぁな」
「……ッ、なにか武器を持ってるのか!?」
「ありゃあ、なかなかのモンだぜ。あの忌々しい獣の槍に匹敵するかもな」
「だったら! 使わねえんなら――」
「くれよ、ってか? なんで、わしがおめえなんぞに物を恵んでやらにゃならんのだ」

376 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:45:36.31 ID:5C4Lncs+ [9/17回発言]

 バァァァァカと続けて、とらは真っ赤な舌を出した。
 うしおは、その態度が頭に来て反論しようとしてやめる。
 口調はともかく、内容に関してはなにも言い返せなかった。
 黙りこくってしまったのが気に入らないのか舌を打ち、とらは下を指差す。

「ま、どうせわしにはいらんモンだからな。
 まだ役立ちそうなアレと交換してやってもいいぜ」

 とらの指の先には、うしおに支給された武器ではないもの。
 長い糸――ではない、もう片方。
 発泡スチロール入りのお持ち帰り牛丼、並盛四杯。
 醤油と出汁の入り混じった匂いを、辺りに放っている。

「『ぶらっく』とやらをぶっちめにゃならんのに、こっちは空腹なもんでよ。
 適当なニンゲン喰ってやってもいいんだが、あのぶらっくの言うことを聞いとるようで気に入らん」

 とらは僅かに口角を釣り上げたのち、「でもおのれは隙をついて喰らってやるがな」と付け足す。
 しばし呆然としてから、うしおは牛丼四杯とそれらが入っていた蔵王という玉を手渡した。

「ま、『はんばっか』ほどじゃねえけど、まあまあだな」

 上を向いた状態で大きく口を開けて、そのさらに上で牛丼の容器を引っくり返す。
 そんな乱暴な方法で二杯分食べ切り、とらは呟いた。
 まあまあなどと言いながら、残った二つを蔵王に収納してリュックサックに突っ込んでいる。

「オイとら、約束覚えてんだろうな!」
「ふん、わしが約束守らなかったことあったかよ」
「よく言うぜ」

 軽口を叩きつつも二つの蔵王を手渡し、とらは屋根の上へと飛ぶ。
 なぜ離れる必要があるんだと思いながら、うしおは道具を取り出し――叫んだ。

「とらぁぁぁああああああ!」

 出てきたのは、ナイフ程度の大きさの鉱物に短い棒。
 獣の槍に匹敵するという話はなんだったのか。
 うしおのその思いを分かっているかのようにのように、とらは言い切る。

「このわしを追い詰めた獣の槍に匹敵するモンなんぞ、あるわきゃねえだろ!!」

 うしおは言葉を詰まらせて、肩を落とすしかなかった。
 そんなものが存在しないことなど、分かっていたはずだったのに。
 とらの言うことならと、つい信じてしまったのだ。
 一方のとらは高笑いを続け、続け、続け――――なにもしてこないうしおに苛立ち、歯を噛み締めた。

「…………おめえ、さっきから本気で言ってんのかよ」
「あぁ? なにがだよ」

 顔を上げようともしないうしおに、とらは金色のたてがみをかき上げた。
 「あーぁバカだな、こいつ。ほんっとにバッカだよなぁ」と静かに呟いてから、とらは声を張り上げた。

「なぁぁんで、わしがこの隙におめえを喰わねえんだよ!」

 ようやく、うしおが呆けた表情のまま顔を上げる。

「あーぁ、そうなの? 呼ばねえの? じゃあこの隙に」

377 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 15:46:37.78 ID:5C4Lncs+ [10/17回発言]

 口を開けて、とらは屋根からうしおへと飛びかかろうとする。
 うしおは、こんな状況をもう何度も経験している。
 とらが鋭い牙と真っ赤な口内を見せてきたとき、いつもどうするのか。
 うしおは、よく知っている。

「槍よ、来ォォォい!」

 激しい高音が、うしおの脳内で響く。
 その音こそが、獣の槍の声。
 獣の槍が持ち主の元に来ようとしている証。

「く、来る!!」
「ふん、来ねえわきゃねえだろが。
 どっかのアホチビが守れもしねえ約束しやがったとき、わしがあんだけやってもその槍は飛んできたんだぜ。ぶらっくごときにどうにかできるかよ」

 それだけ告げると、とらは空中で反転してうしおに背を向ける。

「とら! どこへ行くんだよ!」
「どうして、このわしが一緒に行動せにゃならんのだ。
 わしはバケモノだぜぇ? ニンゲンなんぞに縛られるもんかよ!」

 空中で顔だけうしおに向けて、とらは吐き捨てた。

「でも、こんなとこでなにするってんだよ!?」
「さぁてなァ! バケモノがなにするかなんて、分かるもんかよ!
 さっきはああ言ったけど、その辺でニンゲンでもとっ捕まえて喰っちまうかもしんねぇなァ!」
「とらァ~~、テッメェェ~~~!」
「けっけっけっけっ。
 わしが気になるってんならついて来りゃいいだろうよ。そんなに、わしのことが、気になるなら、よ!」

 言い終えるとうしおから視線を外し、とらは加速する。
 小さくなっていく金色の背中に向けて、聞こえるようにうしおは叫ぶ。

「はん! だぁぁぁれが、いちいちお前のことなんぞ気にするかってんだ!!」


 ◇ ◇ ◇


「へっ、まったくあのバカはわしがいねえとダメダメでよ」

 他に誰もいない空中を泳ぎながら、とらは呟く。
 太陽が昇るにはまだだいぶ時間があるようだが、妖の眼には昼間と何ら変わりなく景色が映っている。
 その瞳でもって周囲を眺めながら、思考を巡らせる。
 うしおが武器を確認しようとする前には、もうとらは名簿や地図まですべて確認し終えていた。
 他者などどうなってもよいはずだったが、殺し合いの説明をされた部屋でとらの嗅覚は捉えていたのだ。
 いつか喰らってやると誓った少女の匂いを。
 自分の喰いモンを他人にやるワケにはいかないし、死んでしまわれては味が落ちてしまう。
 だからしょうがなく、本当に仕方なく、とらは探すことにしたのだ。
 しかし、どうにもおかしい。
 他人の気配を感じないのだ。
 名簿を読む限り、参加者は八十名。
 地図も目を通してみたが、会場はそこまで広くない。
 ならば、気配を察知できる範囲に何名か存在しているはずである。
 にもかかわらず、これまでうしお以外の気配を感じ取っていないのだ。
 うしおだって、単に近くにいたから見付けたというだけである。

「結界、か。面倒なことしやがる。
 専門なんだからナガレ辺りが気付いて、なんとかしやがれってんだ」

378 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 15:53:13.66 ID:9o7jvXP8 [1/8回発言]
 

379 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 15:53:57.92 ID:9o7jvXP8 [2/8回発言]
 

380 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 15:54:18.68 ID:9o7jvXP8 [3/8回発言]
 

381 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 15:58:58.42 ID:9o7jvXP8 [4/8回発言]
 

382 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 16:00:05.48 ID:9o7jvXP8 [5/8回発言]
 

383 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:00:46.62 ID:5C4Lncs+ [11/17回発言]

 これはあくまで推測にすぎない。 
 ゆえに、とらは地図の端を確認しに向かっているのだ。
 地図によると、会場は不自然に切り取られていた。
 そんな土地が存在するワケがない。
 地図のさらに先に、土地が広がっているはずだ。
 ならば、なぜ会場は地図に記された三十六エリアに限られているのか。

 ――――結界壁で囲っているからではないか。

 というのが、とらの予測。
 これならば、妖の感覚が狂っている現状にも説明がつく。
 それに、殺し合いを命じた側としても参加者を閉じ込めておくのは効果的だろう。

「わしらを中で争わせて、おのれらは外で眺める……けっ! 気に入らねえ」

 などと考えているうちに、とらの視界には海が広がっていた。
 会場の端を確認するだけならば海上である必要はないのだが、きちんと理由がある。
 とらが喰わんとしてる少女は、なぜか厄介ごとに巻き込まれるタチなのだ。
 なので、最初に海に飛ばされたということもありうると、とらは考えた。
 水に使ってふやけた上に味が出てしまった人間など、喰うワケにはいかない。
 だから嫌々ながら、本当に渋々なのだけども、もしいたら拾い上げてやるべく海まで向かったのである。
 海上に出ようというとき、海岸に制服姿の少女の姿を捉える。
 とらが苦手な化粧や香水の臭いはしないし、金属も持ち歩いていないようだ。
 どうするかとまだ決めかねているとらに、少女は声をかけてきた。

「ちょっとー! そこの……えーと、人虎さん!」

 動物の虎を連想してそう呼んだのだろう――と、とらは予想する。
 うしおがとらと名づけたのも、それが理由なのだから。
 しかし人虎、という名は別の意味を持つ。
 半人半虎の妖を、人虎あるいは虎人と呼ぶのだ。
 ゆえに、とらは声を荒げた。

「だぁぁぁれが人虎だ! わしは『とら』だ! このわしをあんなもんと一緒にするな!」


 ◇ ◇ ◇


 とらが遠ざかっていってしばらく経っても、獣の槍はうしおの元に飛んでこなかった。
 それどころか声さえも聞こえなくなってしまったのだ。
 たしかに、あの高音は響いたはずなのに。
 槍が何らかの事態に襲われたのではないか、とうしおは推測する。
 かつて、すぐ近くまで行って呼びかけねば応えてくれなかったことがあった。
 あのときのようなことになれば、いくら獣の槍でも飛来できないのではないか。
 だとすれば、うしお自身がどうにかして槍を救わねばならない。
 あの槍はただの金属でできた武器ではなく、ある兄妹のすべてが――真実の意味での『全て』が籠められた代物なのだから。
 普段と変わらぬ会話を繰り広げたのがよかったのか、現在のうしおはもう武器がないからと取り乱してしまうこともない。
 とらが残していった二つの武器と糸を眺めて、それらを活用する方法を編み出した。
 棒と化石じみた爪を糸で括りつければ、長さこそ足りないものの即席の槍となるだろう。
 うまく行くかはともかく試そうとして、うしおが棒を握った途端に異変は起きた。
 棒が伸びたのだ。槍の柄として、決して短くない程度まで。
 慌てて説明書を確認すると、その棒は神通棍という名で霊力というものに反応するらしかった。

(霊力……法力みてぇなもんか。
 その力が強い人が使えば光るらしいけど、俺は伸びるだけか……いや十分さ!)

384 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:01:49.24 ID:5C4Lncs+ [12/17回発言]

 伸びた神通棍の先端部に化石の爪を乗せて、糸で巻き付けていく。
 思い切り振りまわしたり、数回打ち合っただけで取れてしまっては意味がない。
 何重にも括って糸をいったん切ったのち、さらに何重にも縛る。
 それを何度も繰り返して、長かった糸の四分の一程度になったとき、うしおはやっと手を止めた。
 槍を両手で握り締めて誰にともなく呟くと、うしおは腰を低く落とした。

「こんなもん……かな」

 ゆっくりと呼気を整えて前を見据えてから、地面を蹴った。
 物体の存在しない空間を突き刺し、そのまま槍を振り上げる。
 何らかの頃合いを見計らい、大きく横に凪ぐ。

 ――――うしおのイメージのなかの妖が、塵と成り果てる。

 あの糸は思いのほか逸品だったらしく、刃と柄がズレてしまってることもない。

「問題は、先っちょの刃だなァ。
 ジャバウォックとかいう……聞いたことねえけど動物か? の爪らしいけど、化石みたいになってるよなァ」

 そんなこと言ってても仕方ないか、と続けて、うしおは歩み出す。
 いろいろと時間を使ってしまったが、もう無駄にするワケにはいかないのだ。
 あえてとらとは正反対の方向へと進みながら、いまになって初めて名簿と地図を手に取った。
 父親や、兄のように慕う法力僧に、同級生の少女まで呼ばれていることに、うしおの槍を握る手が強くなる。
 うしおが知る名は、それだけではなかった。
 進むべき道を誤り殺すしかなかった妖に、もう一つ。
 紅煉――知り合いの符咒士が、なにをかなぐり捨ててでも殺さんとしている黒い妖。

(アイツはアンタのモンだって思ってたけど……悪ィ。
 倒さなくちゃ他のみんなが死んじまうってんなら、俺が…………ッ!)

 この場にいない符咒士に、胸中で謝罪をする。
 彼がどんな気持ちで紅煉を追っていたのか、うしおには分からない。
 正確には、想像できない。
 ただ普通に生きてきたというのに、ある日突然、理由もなければ伏線もなく妖に全てを奪われる。
 それからの人生は、何もかもが仇を取るためだけの物。
 理解なんてできるはずもなければ、勝手にしていい道理もなかった。
 知っているだけだ。
 全身に傷痕を刻みつけながらも、仇を求める姿を。
 血みどろになりながらも、仇に食らいつこうとする姿を。
 仇である紅煉が目の前に現れたときに浮かべた、あの笑顔を。
 紅煉を倒してしまうということは、すなわち全てを失った彼から生きる目的さえも奪い取ることになる。
 それを知っているからこそ、他の参加者のためにと思っていながらも、うしおはまだ迷いを振り切れない。

「くッ!? な、なんだ、この反応は!?」

 唐突に、槍が震え出した。
 うしおは妖が接近しているのかと考えてすぐに、いま持っているのは獣の槍ではないと頭を振る。
 ならば、なにが――――
 と視線を飛ばすと、先端の爪が小刻みに震えていた。
 きつく縛ってあるので、槍ごと振動していたのだ。
 しかし妖の敵意に反応する獣の槍とは違い、この爪はなにに反応しているのか。

「行かなきゃ分かんねえ……よな」

 槍の先端を四方に向けて反応が強いほうに進んでいくと、うしおはある喫茶店の前へと辿り着いた。
 灯りは点いていないため、店内は確認できない。

385 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 16:02:11.89 ID:9o7jvXP8 [6/8回発言]
 

386 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:02:30.16 ID:5C4Lncs+ [13/17回発言]

「あのぅ、誰かいるのかい」

 迷った末、うしおはきちんと正面のドアから入ることにした。
 声をかけてみても、返事はない。
 ドアのすぐ近くにあったボタンを押すと、ほんの少しのタイムラグののち照明が点く。

「うわっ! い、いるなら返事してくれよ! 誰もいないと思ってたんだぜ!?」

 うしおが咄嗟に零したこの言葉は、嘘である。
 誰かがいる気配は感じていたのだ。
 驚いたのは、なかにいた人間が殺し合いを命じたキース・ブラックにそっくりであったから。
 槍を構えそうになりながらも、相手が女性だということに気付いて抑えた。
 ただ似ているというだけで警戒されては、相手も迷惑だろうと考えたのだ。

「なるほど、共振はそれからか。
 そのジャバウォックの爪があなたの支給品というワケね、蒼月潮」
「あ、ぁあ……」

 僅かに微笑んだ女性の顔に、うしおは目を奪われ曖昧な返事になってしまう。
 顔のパーツこそブラックに似ているが、彼のように冷徹な雰囲気はなくどこか温かいものを感させた。

「いや……私の前に他の誰かに会って譲り受けた、というのもありうるか」

 うしおの脳内に、最初に会った参加者の姿が蘇る。
 あの高笑いに、バカにしたように口調を真似る様。
 結構な時間をかけてそのことを思い出し、うしおは口を開いた。



【E-5 喫茶店/一日目 深夜】

【蒼月潮】
[時間軸]:26巻第42章『三日月の夜』直後。
[状態]:健康
[装備]:制服、即席槍(ジャバウォックの爪@ARMS+操り糸@からくりサーカス+神通棍@GS美神)
[道具]:基本支給品一式、操り糸(3/4)@からくりサーカス
[基本方針]:仲間を集めて殺し合いを止める。とら? 勝手にしろィ!


 ◇ ◇ ◇

387 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 16:03:53.82 ID:9o7jvXP8 [7/8回発言]
 

388 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:04:39.88 ID:5C4Lncs+ [14/17回発言]


 とらの背に乗せられて海上を飛びながら、染井芳乃は口元を緩ませた。
 オフ中にさらわれたため女子高の制服姿であったことに最初は毒づいていたが、すぐに逆に信用を得ることができると思い直した。
 密林でも山奥でも何か月かサバイバルできるような服装より、制服のほうがどう見ても無害なのだから。

(それに……むしろ呼んでくれてありがとう、って言わなきゃいけないかもしれないしね)

 胸中で呟いて、芳乃はリュックサックを手でさする。
 彼女に支給された道具は三つ。
 一つ目は携帯電話――彼女が知るものよりだいぶハイテクな代物であったが、軍用のものだろうと予想した。
 二つ目は金糸雀――数世紀前にインドのマラータ族が使っていたというフィランギを、さらに改良したものだ。歴史的価値こそないが、刀剣マニアには高く売れるだろう。
 そして、最後の一つ。
 これこそ、芳乃が現在もっとも持ち帰りたい逸品。

 ――――獣の槍。

 説明書を読んだだけでは胡散臭い話だと思っていたが、蔵王から取り出して考えを改めた。
 全体から、異常なまでの妖気が発せられていたのである。
 これほどまでの妖気を覆い隠す蔵王にも興味がわいたが、それどころではなかった。
 すぐさま口寄せ能力で獣の槍にアクセスし、籠められた御霊とコンタクトを取る。
 説明書に記されていた内容が事実であることを知った。
 槍は芳乃を使用者として認めなかったが、彼女にとってそんなことはどうでもいい。
 気になるのは、高く売れるのか売れないのかだけだ。
 そして約二千年前に作り出された獣の槍は、かなりの力を持つオーパーツである。
 芳乃にしてみれば、持って帰らない以外の選択肢など存在しない。
 使用者とやらが呼んだらしく飛来しようとしたが、少なくとも接近している間は口寄せの力のほうが強かったらしく、なんとか蔵王に収納することができた。
 このような道具が配られているのなら、片っ端から集めてから帰ろう――と思っていた矢先に、とらと出会ったのだ。

(どうも、うまく行きすぎなくらいね)

 芳乃は、自分でもそう振り返った。
 キース・ブラックに対しとらが雷を放ったときから、とらに接触したくて仕方がなかったのだ。
 人豹(ワージャガー)でも、獣人(ライカンスロープ)でも、獣人の細胞を元にした合成獣(キメラ)でもない、芳乃の知識にまったくない種族。
 こんな生物の細胞を持ちかえれば、これまた高値で売れること間違いなしだ。芳乃が狙わないはずがない。
 そのうちコンタクトを取ったときのため、芳乃がこの地で最初にやったのは密封できるビニール袋を回収したことなくらいである。
 接触時には人虎と呼んだが、ワータイガーと異なることにも気付いていた。
 どうにか肉片を入手したかったが、そのような隙もなく芳乃がただ話を引き延ばそうとしていたとき、とらは鬱陶しそうに言ったのだ。
 『珍しく変な臭いもしねえニンゲンだし、そのうち喰ってやらァ』と。
 そこで『でも離れちゃったら誰かに殺されちゃうかも……』などとただの女子高生のように言うと、大きく舌打ちをしたのち『乗れ』と返された。

(もう毛は入手したし、証拠も保存済みっと。うふふふ)

 とらは怪訝な顔で携帯電話を眺めていたが、カメラの代わりになるというと信じていない様子で自ら被写体となったのだ。
 撮影後に芳乃が写真や動画を見せると、とらは驚きながらもどこか誇らしげな態度をとった。

「あ、ところでとらちゃん――」

 にたにたとした笑みを浮かべるのをやめて、芳乃が切り出す。
 会話をして距離を詰めていくうちに、いつか傷を治療する機会を得ることができるかもしれない。
 そうなれば、自然に肉片を回収できるだろう。
 とらちゃんという呼び名も、同じ意図によるものである。

「私に会う前に誰かにあったりとかしたのー?
 でもとらちゃん優しいから、会ってたらその人から離れたりしないわよね」

 優しいというのは、お世辞のようなものである。
 持ち上げられて気を悪くすることもないだろう、という考えから出たものだ。

389 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:05:57.11 ID:5C4Lncs+ [15/17回発言]



【E-6 海上/一日目 深夜】

【とら】
[時間軸]:26巻第42章『三日月の夜』直後。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、牛丼×2@うえきの法則
[基本方針]:わしを呼び出して偉そうに命令してきたヤツには、身の程ってモンをだな。うしお? なぁぁぁんでわしがアイツを気にせにゃならんのだ!


【染井芳乃】
[時間軸]:9巻2話『獣人伝承2』以降、保存版文庫版収録の『GOLD RUSH』より前(=高校在学中)。
[状態]:健康
[装備]:制服、携帯電話(とらの写真&動画)@出典不明
[道具]:基本支給品一式、獣の槍@うしおととら、金糸雀@金剛番長、とらの毛数本、ジップロック×5@現地調達
[基本方針]:値が張りそうな物を持って帰る。殺し合い? 優ちゃんたちに任せといたら、なんとかしてくれるでしょ!
※蔵王に入れられてしまっている間、獣の槍は自ら動けないようです。


 ◇ ◇ ◇


「「まだ、俺は誰にも会っちゃいないぜ!!/わしゃ誰にも会っちゃいねーーーーよ!!」」

 離れた場所にいながら、うしおととらはまったく同じ内容を叫んだ。
 別に仲なんてよかないらしい。
 むしろ嫌っているくらいらしい。
 どうも、本人たちが言うにはなんだけども。



【支給品/現地調達品紹介】


【ジャバウォックの爪@ARMS】
とらに支給された。
高槻涼に移植されたオリジナルARMS『魔獣(ジャバウォック)』の爪。
本体から切り離されて化石化していながらも、持ち主が果たすべき役目を終えるまで朽ちることはない。
ARMSの再生能力を停止させる『ARMS殺し』が宿っており、このARMS殺しは時に『ホログラム』や『空間の断裂』なども切り刻んでしまう。
サイズはナイフ程度。


【神通棍@GS美神】
とらに支給された。
美神令子が操る棍。
普段は短い棒であるが、霊力を流すことで長くなる。
さらに霊力を流すと発光し、破壊力が増加する。


【操り糸@からくりサーカス】
蒼月潮に支給された。
人形破壊者(しろがね)が武器とするマリオネットを操る糸。
最古のしろがねの一人『フウ・クロード・ボワロー』曰く、この糸一本にノーベル賞クラスの発明六つと十三の特許分のテクノロジーが詰め込まれている。
実際、作中の描写を見ると、強度が凄まじいことが分かる。また、電撃や炎を受けても切れないようだ。

390 : うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:06:31.48 ID:5C4Lncs+ [16/17回発言]


【牛丼@うえきの法則】
蒼月潮に支給された。
ご飯の上に甘辛く煮た牛肉とタマネギを乗せた丼物。
うえきの法則世界では割とポピュラーな食べ物で、天界人や天界獣の味覚にも合うらしい。
支給されたものはお持ち帰り用であるため、発泡スチロール製の四角いケースに入っている。
数は四つ。いまんとこは温かいらしいが、蔵王に入れているうちに冷めたり腐ったりするのかは不明。


【獣の槍@うしおととら】
染井芳乃に支給された。
白面の者に両親を殺された兄妹が、その全てを賭けて作り上げた。
対妖怪において無類の強さを誇る意思を持つ槍で、現在の使用者は蒼月潮。
獣の槍に選ばれた者が扱うと使用者の脳内に槍より声が響き、魂と引き換えに身体能力や治癒能力が上昇する。またその際、毛髪が異様に伸びる。
しかし魂を消費しすぎてしまうと、槍から響く声が次第に大きくなっていき、そのまま使い続けると最終的に使用者はとらや紅煉のような異形となってしまう。
うしおが手にした時点では強大すぎる力を封じる赤い布が二枚巻かれていたが、うしおととらがロワイアルに呼ばれる前の時点でその片方は解かれている。


【金糸雀@金剛番長】
染井芳乃に支給された。
憲兵番長こと伊崎剣司愛用の剣。
撫で斬る片刃と叩き割る両刃の二つの性能を持つ、インドに伝わる両手剣『フィランギ』。
それに抉り裂く刻刃と刺し貫く突刃を加えた、独創作。
肉を抉り、骨を割り、血管を斬り、命を貫く。


【携帯電話@出典不明】
染井芳乃に支給された。
各施設の電話番号が登録されている。
とりあえず、写真撮影機能と動画撮影機能はあるようだ。その他機能については不明。
特になにも思いつかなかったので、出典は不明にしておきました。
次以降で、現実出典でも何らかの作品出典でも何にでもしちゃっていいです。


【ジップロック@現地調達】
殺し合いの舞台に建っていた民家にて、染井芳乃が回収した。
密封性が高い食料保存用の小袋や小箱のことであり、今回登場したのはスライド式ジッパーが付いた小袋タイプ。

391 : ◆hqLsjDR84w : 2011/03/23(水) 16:07:35.04 ID:5C4Lncs+ [17/17回発言]
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘お願いしますね。

さるさん喰らいましたが、支援いただき感謝です。

392 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/23(水) 16:15:40.90 ID:9o7jvXP8 [8/8回発言]
投下乙!
そして、誰だァッ!
このオーパーツと見るやどんな状況でもガメる娘をこの宝の山の中に放り込んだのは!!

うしとらの仲の良さがビンビン伝わってきて非常によかったですが……これ、どちらかが欠けたらどうなるやら
潮が微妙な時期からの参戦なのも戦闘力的には気になる部分ですなー

393 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/24(木) 15:29:41.40 ID:vZXKSBYX [1/1回発言]
投下乙です!

やっぱうしおととらはいいなぁ
二人が凄くらしくて思わずにやにやしてしまったw

ただ、獣の槍はよりにもよってあの子の元に…
価値的にわざわざ蔵王から出して戦闘に使用したりしないだろうしこれはマズイ一方のバイオレットもプログラムについて殆ど把握してないらしいし…今後の展開に期待

394 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/24(木) 20:35:04.39 ID:6pTUy8c0 [1/1回発言]
投下乙です

いいわ、この二人はw
キャラへの想いが無ければ、書き手としての力量が無ければここまで書けないぞ
再会を凄く意識するわ。でも途中で死んでもそれはそれで……w

で、槍はお前が持ってるのかよw これは酷いw

395 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/24(木) 21:08:46.14 ID:T6wYjrZH [1/1回発言]
すげーな、これ。まさしく「うしおととら」だよ
予約見た時は参戦時期変えたりでこじれさせるのかと思いきや、直球ど真ん中投げてくるとは。驚いた
芳乃もらしいぜw何げに口寄せでギリョウさんと接触なんて、すごいことしてやがるw
前半では原作でのブラックの狙いとの違いが纏められてて、ロワを開いた理由が気になるぜ……

396 : ◆AJINORI1nM : 2011/03/24(木) 23:57:24.82 ID:hLTOMZGd [1/1回発言]
パルコ・フォルゴレ、マリリン・キャリー、ドクター・カオスを投下します

397 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:00:15.27 ID:si1n6xpn [1/25回発言]
サバイバルの基本は敵に見つからない事。
迷彩服に身を包んだ少女は身を低くし、音を立てないよう細心の注意を払いながら闇の中を移動する。
頭には、支給品である暗視ゴーグルを装着している。

彼女の名はマリリン・キャリー。
幼少の頃より厳しい戦闘訓練を積み、中学生でありながら高い戦闘能力を身に付けた、美しい金髪が特徴の可憐な少女である。

月明かりが照らす林の中を移動しながら、彼女は思考する。


(殺し合い……ですか。これも神を決める戦いなんでしょうか。それとも、別のトラブルに巻き込まれたと考えるべきでしょうか……)


彼女は次の神を決めるために開かれた、中学生バトルの参加者である。
その戦いにおいて、その高い戦闘能力で仲間と共に勝ち進み、三次選考へと駒を進めたはずであった。

しかし、いつの間にか見知らぬ場所へ移動させられ、挙句殺し合いを強要される始末。

彼女はカプーショ戦を終え、ホテルで休息をとっていた筈である。
一体どうやって気付かれる事なくここまで移動させられたのか。
あのいい加減な神様が、突然の思いつきでワープでもさせたのだろうか。

398 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:03:35.42 ID:si1n6xpn [2/25回発言]
(これが三次選考、または急遽ルール変更がなされた中学生バトルの一環と考えると、その旨が伝えられないのはおかしいですわね……。
となると、これは神を決める戦いとは別の、いわゆる不測の事態に巻き込まれたと考えるのが妥当でしょうか)


きっと、天界では騒ぎになっている事だろう。
他でもない神が主催した、次の神を決める戦いの参加者が消えたのである。
能力者同士のいさかいならいざ知らず、神候補によるバトルへの介入も禁止しているのだ。
明らかに外部から介入されているこの事態を神が静観するわけがない。

とてもそうは見えないが、仮にも神である。
ここが発見され、自分達が救出されるのも時間の問題だろう。


ここまで考察できれば、誰にも見つからないように身を隠し、救助を待つのが普通だ。
あのキース・ブラックという男が約束を守る保障はないのだ、わざわざ殺し合いに乗る必要もない。

だが彼女、マリリン・キャリーは普通ではない。
戦闘の中でこそ生を実感できる。戦場こそが自分の生きる場所。
神を決める戦いに参加したのも、優勝商品である“空白の才”ではなく、『戦う事』事態が目的だったのだ。

これが中学生バトルの一環であろうとなかろうと、ここが戦場であるならば彼女の進む道は唯一つ。


(天界から能力者を誘拐するくらいです、きっと他の参加者の方々も実力者揃いなのでしょう。
……ああ、楽しみですわ。そんな方々と戦えるなんて、楽しみで仕方ありませんわ)


戦う道以外にありえない。

399 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:04:32.83 ID:tzfAOs49 [1/9回発言]
  

400 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:04:48.40 ID:tzfAOs49 [2/9回発言]
 

401 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:06:06.68 ID:si1n6xpn [3/25回発言]
◆ ◆ ◆




「まったく、一体何がどうなっとるんじゃ……」


漆黒のマントに身を包む老人。
かつて欧州の魔王と呼ばれたドクター・カオスは木々の中を歩いていた。
今まで様々な現象事象を目にし、体験してきた彼だが、いきなり殺し合えと言われたのは初めての経験だ。

渡された参加者名簿には既に目を通しているが、まさかと自分の目を疑った。
美神令子、横島忠夫、おキヌの三人は、ああいつもの三人かと思っただけであった。
誰かに恨みを買ったり何かに首を突っ込むのが日常茶飯事の連中である。
こんな異常事態に巻き込まれていても不思議ではない。

だが、アシュタロスやその配下のルシオラまで参加している事には驚きを隠せなかった。

美神令子を始めとしたゴーストスイーパーが大勢束になっても敵わず(かなわず)、小竜姫率いる妙神山を壊滅させた奴等である。
この殺し合いを主催する側ならわかるが、参加する側とは訳がわからない。

あのブラックとかいう男がアシュタロス以上の力を持っているとでもいうのだろうか。

爆弾付きの首輪で命を握る?
そんなもので死ぬような相手なら苦労はしない。
この首輪に何らかの仕掛けでも施されているのか?

402 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:07:01.26 ID:tzfAOs49 [3/9回発言]
   

403 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:12:38.35 ID:si1n6xpn [4/25回発言]
そっと、自分の首輪を指でなぞってみる。
金属製だ。が、体を動かすのに影響があるような重さはない。
表面は研磨したようにつるつるとしており、継ぎ目が感じられなかった。


(……継ぎ目がない……じゃと?)


ブラックは、この首輪には爆薬が仕込まれており、六時間毎に放送される禁止エリアに入ると爆発すると言っていた。
あの時の様子からして、任意での爆破も可能らしい。

そんな機能を持つ首輪である。
精密機械程ではないにしろ、それなりに複雑な内部構造をしている筈だ。
継ぎ目がないとなると、その構造をどうやって中に入れたのかが気になる。

まさか溶かした金属で固めたわけでもあるまい。
そんな事をすれば、電気的な機構にしろ魔術的な機構にしろ、金属を溶かす熱量で直ぐに使い物にならなくなる。
では、継ぎ目は内側に付いているのだろうか?
それならば技術的にも可能かもしれない。
だが、それならばどうやって首輪を嵌めたというのか。
この首輪が嵌められたのはあの説明の時である。
それも、誰も反応できない一瞬で、だ。

404 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:14:41.14 ID:si1n6xpn [5/25回発言]
(あのブラックという男、どうやら空間転移の能力を持つと考えて間違いなさそうじゃ。それなら、この首輪も、わしらがどうやって移動したかも説明がつく)


自分達を、知覚する間もなくここまで連れてくる事が出来た理由。
それはキース・ブラック、又はブラックに協力する何者かが、相手を離れた場所へと一瞬で移動できる力を持っているからだ。
そうだとすれば、この首輪の謎も解ける。
まず、中に空間のある首輪を作る。そして爆弾をその内部空間に移動させれば、継ぎ目すらない美しいフォルムの首輪爆弾の完成である。
首輪を付ける際も同様だ。
相手の首に首輪を転移させれば、継ぎ目がなくとも首輪を付ける事が出来る。


(ふっ。まあわしにかかればこの程度の謎、朝飯前じゃわい。まだまだわしの頭脳は衰えておらんぞ!)
「がーっはっはっは!」


この殺し合いの目的や、アシュタロスやルシオラを閉じ込めた方法等、まだまだ謎は残っている。
だが、今までボケ老人だの何だのと馬鹿にされてきたドクター・カオスは、ブラックという男の持つ能力と首輪に対する考察がスムーズに進み、
上機嫌になって大きな笑い声を揚げていた。

405 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:16:42.52 ID:tzfAOs49 [4/9回発言]
     

406 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:17:39.04 ID:si1n6xpn [6/25回発言]
◆ ◆ ◆




木立の中、月明かりが差し込む場所に男は立っていた。
服装は白い上着に赤いズボン。先端が尖り、上に向かって突き出ている靴を履いている。
非常に目立つ格好をしている、金髪の男だ。

彼の名はパルコ・フォルゴレ。
イタリアの俳優で、世界的な大スターだ。


「キャンチョメ~。清麿~。ど、どこかにいるんだろ~? 隠れてないで出ておいで~」


闇の中、木々の向こうへ呼びかける。しかし、返ってくる声はない。
フォルゴレはがたがたと体を震わせ、涙を流している。

こんな状況を作り出せるのは、彼の知る限り魔物以外ありえなかった。
ルール説明の際にキース・ブラックを貫いた少年は、右腕を異形へと変えていた。
キース・ブラックという男も、体を貫かれたのに傷がすぐに治った。
それは、二人とも魔物の子だからだ。
リョウという少年は肉体変化を、キースは回復の術を遣ったに違いない。
術を唱える声は聞こえなかったが、パートナーが遠くに居たか、小さな声で術を唱えたのだろう。

407 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:19:30.74 ID:si1n6xpn [7/25回発言]
となると、今の状況は非常に拙い(まずい)。
さっきの場所では運良く清麿と会えて少し話しをしたが、状況が分かるまであまり動かない方が良いと言われただけで、それっきりだ。
今は清麿とも離れ離れで、一人林の中に立っている。

キャンチョメやナゾナゾ博士達もここに居るのだろうか。
あのキースという魔物は、きっと他の魔物やそのパートナーを集め、戦わせ、弱ったところを一気に攻撃するつもりなのだ。

そう考えると怖くてその場を動けなかった。
もしも茂みの中や木の陰から他の魔物が突然襲い掛かってきたら、生身の人間である自分は一溜まりもない。
そうは言っても、この場を動かないのも怖かった。
周りは漆黒の闇。
いつ誰が襲い掛かってくるのかわからない。

フォルゴレは、ただただ震える事しかできなかった。

408 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:23:52.42 ID:tzfAOs49 [5/9回発言]
          

409 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:25:20.45 ID:si1n6xpn [8/25回発言]
「あっ、そうだ! リュックに何か自分の身を守るものがあるかもしれない!」


始めの説明で、確か武器を用意したとか言っていた気がする。
フォルゴレは急いで自分のリュックを降ろし、中を確認した。
食糧や水が入っている。そして、参加者名簿。
フォルゴレは、武器よりも先に名簿を確認することにした。
清麿やガッシュ、ナゾナゾ博士の文字を見て、やはり魔物の子やそのパートナーが連れてこられていると確信した。

だが、キャンチョメや、ナゾナゾ博士のパートナーであるキッドの名はどこにもない。
魔物の子が関わっているとはいえ、殺し合いなんて物騒な状況である。
彼等はこんな危険な事に巻き込まれていない。フォルゴレはほっと胸を撫で下ろした。

他にこの名簿で知っているのは、レイラとゼオンの二つの名前だけだ。
レイラはデボロ遺跡でぼろぼろだった自分達を逃がしてくれた。
後から聴いた清麿の話からも、彼女が良い魔物なのは明らかだ。
きっと今の状況でも手を貸してくれるだろう。

410 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:29:33.29 ID:XPNjRDPO [1/1回発言]



411 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:30:01.26 ID:si1n6xpn [9/25回発言]
だが、ゼオンはどうだろうか。
アポロの話しでは、ガッシュとよく似た姿だが、ガッシュと違い残忍な性格をしているらしい。
もしも出会ってしまったら、雷撃で丸焦げにされてしまうかもしれない。
そう考えると恐怖が更にこみ上げてきた。

名簿を確認し終えると、急いで武器になりそうな物を探す。
最初に手に触れたのは伸縮警棒だった。
柄の部分には『光』と書かれた玉が付いている。

とりあえず、説明書きを読んでみる。


『光界玉』
火影が作りだした魔導具の一つ。
有形無形を問わず、あらゆるものを消し去る事が出来る。
但し──

412 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 00:31:58.71 ID:si1n6xpn [10/25回発言]
ここまで読んだところで、すぐ後ろからがさりと茂みを揺らす音、同時に大きな笑い声がフォルゴレの耳に響いた。
びくうっ、と体を震わせ即座に振り返る。

そこに居たのは、大きな影。
大まかな姿しかわからないが、少なくとも知り合いではない。
フォルゴレはリュックの中身を確認するためにしゃがみこんでいた。
その場所から大きな影までは三メートルもない。


「うわああああああああああああああああああああああ!!!!」


恐怖に駆られたフォルゴレは、立ち上がりながら持っていた光界玉を影に向かって振るう。
恐怖の元凶に向かって、消えろと念じながら。

413 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:33:54.66 ID:tzfAOs49 [6/9回発言]
         

414 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:43:14.13 ID:AetuyU2m [1/3回発言]
しえん

415 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 00:59:24.66 ID:tzfAOs49 [7/9回発言]
……寝落ち?w

416 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:02:23.70 ID:AetuyU2m [2/3回発言]
仮投下にも来てないし、かもしれんねw
よくあるよくある

417 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:11:24.72 ID:si1n6xpn [11/25回発言]
◆ ◆ ◆




マリリン・キャリーは茂みや木の陰に身を隠しながら、目標に向かって着実に進んでいた。
暗視ゴーグルのズーム機能を使い、つい数分前に参加者の一人を見つけたところである。
今は、その参加者へと接近しているのだ。


(どうやらあの方は、支給品を確認している最中のようでした。先程の場所からは、まだ動くことはないでしょう。
このまま迂回しながら近づき、奇襲を仕掛けますわ)


マリリンは音もなく木立の中を移動する。
彼女の能力、“一秒”を“十秒”に変える能力を遣えば、少しの距離などあっという間に移動できる。
すでに相手との距離が十五メートルの位置にまで来ていた。
あとは身を隠している木の裏から飛び出し、支給された拳銃を打ち込むだけである。

418 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:15:15.59 ID:si1n6xpn [12/25回発言]
(さあ、行きますわよ!)


銃を構え、木の陰から勢いよく飛び出す。
そして、相手の姿を視認する。
暗視ゴーグル越しに見る景色は非常に鮮明だ。
相手の姿は良く見えた。
だが、その鮮明な景色の中には、予想外の光景が広がっていた。

想定の範囲外だ。
何故こんな事になっているのか理解できない。

気が動転してしまった彼女は大声で叫んでしまった。

419 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:15:38.95 ID:FMnh6/1x [1/2回発言]
しえn

420 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:16:30.02 ID:si1n6xpn [13/25回発言]
 









「変態ですわ────!!!!」











彼女の目の前には、全裸の男と全裸の老人が互いに向き合って立っている姿があったのだ。
二人の距離は三メートル弱。
一体この状況で何をしているのか。
男の方はさっき確認した時は服を着ていた筈じゃなかったか。
この老人は何故裸なのか。
わけがわからない。


「え?」


叫び声に気付いた全裸の二人がこちらを向く。
もちろん、下は履いてない。

421 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:19:31.19 ID:si1n6xpn [14/25回発言]
 


「いや────!!!!!」

「銃うぅ────!!?」


林の中に、銃声が二回響いた。
マリリンが、照準を合わせていたフォルゴレに向かって二度発砲したのだ。

相手を殺害するつもりならば最低二回以上発砲する。
今まで積み重ねてきた経験が無意識の内に働いていた。


一方、突然現れた老人がいきなり全裸になり、自分も同時に全裸となった事態に一瞬茫然としていたフォルゴレは、
これまた突然現れた謎の人物に驚いた。
軍服に暗視ゴーグルを見に付けたその姿から瞬時に危険人物と判断できたが、何よりその手に握られている拳銃がそれを決定的にていた。



「うわ────っ!!」


パニックに陥ったフォルゴレは、マリリンが引き金を引くのと同時に、手に持っていた光界玉を振り回した。


「待て待て待つんじゃ! わしらは武器なんぞ持っとらん!ほれ!見ての通り無防備じゃ!攻撃せんでくれ!」


ドクター・カオスがマリリンに向かって叫ぶ。右手で股間を隠しながら。
フォルゴレも光界玉を持つ手と反対の左手で股間を隠しながら叫んだ。

422 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:20:58.21 ID:FMnh6/1x [2/2回発言]
   

423 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:22:00.58 ID:si1n6xpn [15/25回発言]
「やめて───!! 私は無敵のフォルゴレだけど、それは映画の中だけなのよ───!! 今の私は弱い人間なんだ!!
だから、だからもう攻撃はやめて───!!」



マリリンも、動転した状態ではあるが銃を構えながら二人に向かって叫んだ。


「う、動かないでください! 手に持っている物、リュックを捨てて両手を上げ──)


ここまで言って、二人が手で股間を隠している事を思い出す。
二人の両手を上げさせれば、隠れているものが露わになるのは必然だ。
正直そんなものは見たくない。


「……いえ、上げなくて結構ですのでその場に伏せなさい!!」

「は、はいィっ!」


マリリンの言葉を聞いて、フォルゴレは即座に光界玉を放り投げ、その場にうつ伏せに倒れた。


「わかった! 言う通りにするから絶対に撃つんじゃないぞ? 良いか? 絶対じゃからな!?」


ドクター・カオスも、この状況では自分が圧倒的に不利であると判断し、急いでリュックを降ろすとフォルゴレに続いてその場に伏せる。

424 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:22:49.97 ID:tzfAOs49 [8/9回発言]
   

425 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:24:33.94 ID:si1n6xpn [16/25回発言]
一方、マリリンは未だに混乱していた。
ここは殺し合いの場ではなかったのか。どうして大の大人がこんな所で全裸になって見つめ合っていたのか。
理解できない光景を目にしてしまい、どうしても頭が回らない。


(い、いけない、まずは冷静になりましょう。冷静さを欠けば、それは死へと繋がりますわ。深呼吸して、落ち着きましょう)


マリリンは一旦呼吸を整え、今の状況を分析する。

まずは目の前の二人を観察してみよう。
二人の手に武器はなく、完全に無防備だ。
服どころか下着すら装備していないのだから当然だろう。
………全裸の理由については後で考えることにしよう。

老人の近くには降ろしたリュックが落ちている。
リュックの中に手を伸ばせる状態だが、所詮老人の動きだ、何かを取りだす前に対処できる。
老人は脅威にならないと判断して良い。


金髪の男は警棒を放り投げたが、男の近くにもリュックがある。
男はうつ伏せの状態で、リュックはその足元だ。
何か行動を起こしたとしても自分が銃を撃つ方が早い。
それにこの男、明らかに怯えていて体が小刻みに震えている。
銃を撃った時など滝のような涙を流していた。
映画がどうのと言っていたが、俳優なのだろうか。
だがこれが演技にも思えない。
どう見ても脅威になりそうな人物ではない。

426 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:26:58.49 ID:wKViKYoj [1/10回発言]
sien

427 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:27:19.58 ID:si1n6xpn [17/25回発言]
とても警戒する必要のない状況に思えるが、一つだけ気になる事があった。
拳銃を発砲した時の事である。
マリリンは金髪の男に向かって確かに二度発砲した。
しかし男には傷一つなく、見ての通りぴんぴんしている。


(予想外の光景に驚いて銃身が逸れたのかもしれませんが、弾が外れる程大きく動いたようには感じられませんでしたし………。
そういえば、無敵のフォルゴレ、と言っていましたわね。でもそれは映画の話と……)


フォルゴレが無傷でいるのが気にはなるが、このままじっとしているわけにもいかない。
マリリンは銃を腰のホルスターに仕舞うと、能力を発動させた。
マリリンの能力、“一秒”を“十秒”に変える能力だ。
現実時間の一秒を、マリリンにとっての十秒に変える能力である。
これを遣えば、現実で一秒経つ間、マリリンは十秒分の動きをすることが可能になる。
つまり、普段の十倍の速度で行動することが出来るのだ。

武器を持っていると発動できないため、能力使用中の攻撃は体術のみに限定されてしまうが、訓練を積んでいるマリリンの身体能力は非常に高い。
武器がなくとも十分に戦える力を持っている。

能力を発動させたマリリンは走り出した。
狙いは落ちている二人のリュックである。
能力の発動中、マリリン以外の全ては十分の一の速度で動く。
仮にこの二人が何か能力(ちから)を隠し持っていたとしても、これならば避けることも反撃することも可能だ。

マリリンは二つのリュックと光界玉を素早く回収すると、能力の終了と共に銃を構えなおした。


「私は今からお二人の支給品を確認します! 確認が終わるまでそのまま動かないでいてください! 確認が終わりましたら、おって指示を出します!」

「はい! わかりました!」


フォルゴレが大きく返事を返した。
体の震えはまだ続いてるようだ。

428 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 01:28:16.53 ID:si1n6xpn [18/25回発言]
(……すぐに殺さんところを見ると、殺し合いには乗っとらんのか? それともわしらを利用するつもりなのか……。さっき撃ったのはわしらの裸に驚いたから、と考えれば納得できるか?)

軍服の人物が二度目の攻撃をしないのを見て、ドクター・カオスは少しだけ安堵した。
認識できない動きで支給品が全て奪われたのは痛いが、まだ話し合いの余地はありそうだ。


(そもそも、なんでわしは裸になっとるんじゃ……)

ドクター・カオスは考え事をしながら歩いていたせいで、フォルゴレの存在に気づくことができなかた。
いきなり下から男が立ち上り、叫びながら警棒を振り回したかと思うと、急に体がすーすーしだした。
自分が裸になっていることに気付くと同時に、フォルゴレの服も消え失せた。
二人とも、突然全裸になってしまった状況に理解が追い付かず、ぽかーんとしてしまった。
結果、全裸の二人が林の中で見つめ合うという奇妙な状態になっていたのである。

そして間髪いれずに銃を持った何者かの登場だ。
謎の人物は叫び声を揚げながら発砲したが、幸いにも弾はそれたらしい。
声からして女性のようである。
飛び出した先に全裸の男が二人居たのだ。
そりゃあ驚くのも無理はない。


(どうしてこうなったのかのう……)


老人の溜息が、闇の中に小さく消えた。

429 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:30:20.92 ID:si1n6xpn [19/25回発言]






◆ ◆ ◆



二人の支給品一式を確認し終えたマリリンは、とりあえず二人と話をすることに決めた。
戦いたいという気持ちはまだ残っているが、老人や一般人相手に戦うのは彼女の趣味ではない。
無力な一般人を相手にする事は、戦いではなく虐殺である。
そんなものはマリリンの求めるものではない。


老人はドクター・カオスといい、ヨーロッパの魔王と呼ばれる天才錬金術師。
金髪の男はパルコ・フォルゴレ。世界的大スターでイタリアの英雄らしい。

マリリンが来るまでの二人の行動を聴く事で、二人が全裸になった理由、そしてフォルゴレが無傷の謎も解明した。

光界玉。
この支給品が原因だ。
フォルゴレは途中までしか読んでいないが、光界玉の説明書にはこう書いてあった。



『光界玉』
火影が作りだした魔導具の一つ。
形のあるなしに関わらず、あらゆるものを消し去る事が出来る。
但し、反作用として使用者の大切なものも消えてしまう。
反作用で消えるものは、消したものの価値に比例する。
有効範囲は半径十メートル。
参加者自体を消すことはできない。




この説明書きと二人の話から推察するに、フォルゴレはカオスに向かって光界玉を使用したのだ。
だが、参加者を消すことはできないため、ドクター・カオスの身に付けていた衣服だけが消えた、ということなのだろう。
その後、ドクター・カオスの衣服を消した反作用が起こり、使用者であるフォルゴレの衣服も消失したという訳だ。

マリリンが銃を撃った時もフォルゴレは光界玉を振り回していた。
フォルゴレが無傷なのは、光界玉が銃弾を消したからと考えれば説明がつく。
この時の反作用で何が消えたのかはわからないが、もしかしたら体の一部が消えたのかもしれんとドクター・カオスが言った。
その言葉を聴いて、フォルゴレは酷く青ざめた。

430 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:31:07.61 ID:tzfAOs49 [9/9回発言]
    

431 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:33:25.85 ID:si1n6xpn [20/25回発言]


光界玉の力を試してみたい気もしたが、これは使用者の大切なものも消してしまう諸刃の剣である。
光界玉の試用はせず、危険物と判断しマリリンが預かることにした。
この支給品を使うことは、もうこの先ないだろう。


他にもこれまでの経緯や、知っている名前はあるか等の情報を交換する。

その中で、フォルゴレから聴かされた魔界の王を決める戦いにマリリンは驚いた。
百人の魔物の子が魔界の王を決めるために、最後の一人になるまで戦い合う。
自分が参加する、百人の中学生が次の神を決めるために戦う中学生バトルとそっくりではないか。

これを聴いた時は、フォルゴレにも何らかの能力が授けられたのかと訊いたが、キャンチョメという魔物の子の本が読めるだけで、彼自身には特別な力はないらしい。


次にドクター・カオスだが、彼は千五十一歳の天才錬金術師で、数々の悪霊や怪物を倒したり、人造人間を作ることに成功したことを自慢げに話した。
しかし、マリリンは幽霊やそういったオカルトの類を信じない人物である。
この老人は、きっとこんな事態に巻き込まれて混乱しているのだろうと彼女は判断した。


「いいですかカオスさん、幽霊や妖怪なんてものはこの世に存在しませんわよ。こんな状況です、混乱するのも無理ありませんわ。
ですが安心してください、もう私に攻撃する意思はありません。老人をいたぶるなんて、戦士のすることではないですもの。ほら、気をしっかりもってください」

「わしは混乱なんぞしとらんわ! 魔界の王を決める戦いは信じたのに、どうしてわしの話しは信じんのじゃ!」

「あら、だって天界があるんですよ? 魔界があっても不思議じゃありませんわ」

「おじいさん、怖いのはわかる。だが安心したまえ。私は絶世に美男子、イタリアの英雄パルコ・フォルゴレさ! この私がおじいさんを必ずお家に帰してあげよう!」

「全裸で何を言っとるんじゃ! さっきまで怯えて情けない姿を見せとったくせに、敵じゃなくなった途端に調子付きおって!」

「あ、あれは……そう! 相手を油断させるための演技で──」

「なあにが演技じゃ! 世界的大スターとかぬかしとったが、わしゃパルコ・フォルゴレなんて名前、今まで一度も聴いた事ないぞ!」

「なっ!? 私が嘘をついてるって言うのかい!? おじいさんこそ、千歳を越えてるなんておかしいじゃないか! ひょっとしてボケてるんじゃないのか?」

「何をっ!? わしの頭脳はまだまだ現役じゃい!!」

「じゃあ私の出す問題に答えてみたまえ! ボケてないならわかるはずだ!」

「ああ良いとも! どんな問題だろうとたちどころに解いてやろうじゃないか!」

「それじゃあいくぞ! 2×2は!?」

「5じゃ!!」

432 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:43:26.68 ID:wKViKYoj [2/10回発言]
sien

433 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 01:57:33.06 ID:wKViKYoj [3/10回発言]
28 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:39:31 ID:???



勢いよく答えたカオスの言葉に二人は絶句した。
嫌な空気を感じ取ったカオスは、慌てて答えを訂正する。


「いや、6じゃったかな? ……違う7……8? ……ににんが……ににんが………思い出したぞ! ににんが3.8じゃ!!」



どうやらこの老人は本当にボケてしまっているようだ。
知り合いと言っていた美神令子や横島忠夫らは介護人だろうか。


「………もう、いいですわ。とにかくこれからの事についての話しをしましょう。まずお二方の着るものについてですが……」


そう言うと、マリリンは二人をちらりと見た。
二人はまだうつ伏せの状態である。
何かを仕掛けてくることもないだろうが、二人とも全裸だ。
体を起こせば隠しているものが見えてしまう。
なので、二人にはうつ伏せのままで話しをしてもらうことにしてもらったのだ。


「幸いなことに、私が先程プールで手に入れた水着と、フォルゴレさんの支給品にあったものがありますわ。これで体を隠してください」

「プールに水着があったのかい?」

「ええ、一着だけでしたけど見つけました。何かに使えないかと持ってきたのですが、意外と早く使う機会が訪れましたわね」


そう言うと、彼女はフォルゴレのリュックから蔵王を取り出し、中から支給品を取り出した。
蔵王の中から出てきたのは、小面と呼ばれる能面を付けた、人間大の大きさの人形。
魅虚斗(みこと)と呼ばれる人型魔導具だ。

434 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 01:58:46.23 ID:wKViKYoj [4/10回発言]
29 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:40:47 ID:???


「説明書によると、この中に入る事ができるそうですわ。フォルゴレさんのリュックに入っていましたし、これはフォルゴレさんが使ってください」


次に、マリリンは自分のリュックに手を入れる。


「女性用ですけれど、この非常時です。我慢していただけますね?」

「……まあ、仕方あるまい」



ドクター・カオスは、女性用でも下を隠せれば良いだろうと渋々承知した。
マリリンはリュックから水着を取り出す。


「多分競泳用のものですわ。よく伸びる素材でできているみたいなので、着る事はできると思います」


出てきた水着を見て、ドクター・カオスの表情が絶望の色に染まる。
マリリンの手にあるものは、確かに競泳用の水着に似ている。
上下一体の、紺色の水着だ。
胸には『3─B』と書かれた布が刺繍されている。
日本人ならば一度は見た事があるだろう。
学校で使用される水着。スクール水着である。


435 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 01:59:50.50 ID:wKViKYoj [5/10回発言]
30 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:41:40 ID:???



◆ ◆ ◆





フォルゴレが魅虚斗の中に、ドクター・カオスがスクール水着に着替えると、マリリンはこれからの方針を二人に伝えた。

まず、フォルゴレやドクター・カオスの知り合い、その他の参加者を捜索する。
一般人ならば保護、襲い掛かってくるようならばマリリンの指示通りに動き迎撃。

要注意人物は、キースと名のつく参加者。
名前からしてキース・ブラックの関係者だろう。

次に植木耕助、佐野清一郎、宗屋ヒデヨシ、バロウ・エシャロット、ロベルト・ハイドン、李崩ら中学生バトルの参加者達。
能力者である点は勿論の事、マリリンにとっては敵対していた者達だ。
協力できるかはわからない。

次はゼオン・ベルという魔物の子。
フォルゴレの話しによると、ガッシュ・ベルと似た容姿を持ち、同じく電撃の呪文を遣うらしい。
ロップスという魔物の子を圧倒的な力でもって倒し、残忍な性格をしているという。
姓が同じ事については、フォルゴレは何もしらないそうだ。
容姿が似ているということは、兄弟なのかもしれない。

他に、ルシオラとアシュタロス。
神族と魔族の混成チームでも太刀打ちできないほどの強大な力を持ち、美神令子を狙っているという。
だが、これはドクター・カオスの言ったことである。
信用できない情報ではあるが、警戒するに越したことはない。

そしてもう二人。
金剛晄と高槻涼だ。
彼等は最初の時に目の前で知り合いを殺された。
その殺された人物を蘇らせるために、殺し合いに乗っている可能性がある。

436 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 02:00:22.08 ID:wKViKYoj [6/10回発言]
31 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:44:00 ID:???


三人の話し合いの中で、この十一人を特に警戒することを決める。

マリリンが確認した三人の支給品についてだが、食糧や地図といった基本的な物とリュックはそれぞれに返し、残りはマリリンが預かることになった。
当初二人は抗議したが、銃を持っているマリリンに逆らえるはずもなく、従うことになったのだ。

戦闘になった際はマリリンが指示を出し、それぞれの役割に徹して行動することになっている。
ちなみにドクター・カオスは戦力に数えていない。
というか、正直老人は足手まといと言う他ない。
ここは戦場である。
弱い者は置いていくのが鉄則だが、何故かマリリンはこの老人を見捨てることができなかった。


それでは、三人の支給品を確認していこう。
フォルゴレに支給されていたのは三つだ。
光界玉、魅虚斗、自衛ジョーの生き人形部隊。
光界玉はマリリンが持ち、魅虚斗の中にはフォルゴレが入っている。
自衛ジョーの生き人形部隊は、見た目はおもちゃの人形部隊だが、不思議なことにこれらの人形達は自分で動き、考え喋るようなのだ。
おそらく中に高性能な機械が組み込まれているのだろう。
最近のおもちゃは凄い。
ドクター・カオスがこれには魂が入っているとか説明していたがスルーした。

437 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 02:00:42.84 ID:wKViKYoj [7/10回発言]
32 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:45:47 ID:???


ドクター・カオスに支給されたのは二つ。
オリンピアとファイティングナイフだ。
オリンピアは巨大な操り人形で、天使のような四枚の翼をもっている。
糸を動かすことで操れるらしいが、三人の誰もまともに動かすことができなかった。
今は蔵王に仕舞い、マリリンが持っている。

ファイティングナイフはオリハルコンという精神感応金属製のものらしい。
説明書にはダイヤモンドの三倍以上の高度を持つと書かれていた。
ナックルガードもついているが、武器を持った状態の能力発動ができないマリリンにはこれが邪魔だった。
ナックルガードに手を入れてしまえば、素早くナイフを捨て能力を遣うといった戦い方ができなくなる。
このナイフはドクター・カオスに自衛用の武器として渡した。


マリリンの支給品は暗視ゴーグル、SIG-P220、石板の三つ。
暗視ゴーグルは、装着すれば闇の中でも昼間のような視界を得る事が出来る。
さらに八倍までのズーム機能付きだ。

SIG-P220は四五口径の自動拳銃。
残弾は七発。
予備弾薬は9mmパラベラム弾が九発。
これらはマリリンが現在も所持している。

最後に石板だが、フォルゴレの話しではこれは呪いで石にされた魔物の子だという。
本当かどうかはわからないが、この石板からは魔力が感じられるとドクター・カオスが言っていた。
月の石の光によって呪いが解けるらしいが、これが本物かはまだわからない。
仮に本物だとしても、この魔物の本の持ち主は千年前に死んでいる。
ゾフィスという千年前の魔物達を支配している魔物のように、心を操る術を持たない以上、この魔物が自分達に協力してくれるかはわからないのだ。

オリンピアのように、使い道のない支給品である。
だが、状況次第では罠や何かに使えるかもしれない
これもマリリンが持つことになった。

438 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 02:01:56.24 ID:wKViKYoj [8/10回発言]

33 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:46:56 ID:???



確認することを全て終え、マリリンは二人を見る。

フォルゴレが入っている魅虚斗は、手に巨大な扇を持ち、水平にして頭上に掲げている。
その上には自衛ジョーの生き人形部隊が居り、暗視ゴーグルを複数人で持っていた。
マリリンが自衛ジョーに、暗視ゴーグルを使った周囲の警戒を指示したのだ。

ドクター・カオスは見るからに元気がない。
スクール水着は問題なく着ることができたが、精神的ダメージが大きいらしい。
手にはファイティングナイフが握られている。


「それでは最終確認をいたします。気を付け(アッテンション)────!!!」

「はっ!」


マリリンが叫ぶと、自衛ジョー達が敬礼の姿勢でマリリンに向いた。

「自衛ジョーさん達は周囲を常に警戒。異常を発見したら直ちに報告してください」

「はっ! 了解であります隊長殿!」

「フォルゴレさんは扇の上の自衛ジョーを落とさないように気を付けてください」

「了解しましたマリリン隊長!」

「カオスさんは迷子にならないよう、ちゃんと私達についてきてくださいね」

「人をボケ老人扱いするんじゃないわい!」

「ああっ! 隊長になんてことを言うんだ!」

「おぬしは小僧のような変わり身の早さじゃのう。 ……はぁ、わしはいつもボケ老人扱いか……それにこんな格好で………」


ドクター・カオスは深く項垂れる。
そんなカオスにマリリンは優しく声をかけた。

439 : 代理投下 : 2011/03/25(金) 02:02:10.95 ID:wKViKYoj [9/10回発言]
34 :魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM:2011/03/25(金) 01:50:50 ID:???


「……そうですわ! これから町のデパートに向かいましょう。プールに水着があったんです、デパートの売り場にも何か服があるかもしれませんもの。
フォルゴレさんも服を着ていない状態ですし、そこでまともな服を手に入れましょう。それに、途中でお知り合いに会えるかもしれませんわ」

「それは嫌じゃ!」


これからの目標は決まった。
目的地はD─5にあるモチノキデパート。
そこで衣類を調達する。



隊長はマリリン・キャリー。
その後ろからイタリアの能役者パルコ・フォルゴレとヨーロッパのスク水老人ドクター・カオスが続く。
傍から(はたから)見ればサーカスか何かの劇団員に見えてしまう、奇妙な三人組が目的地へ向かって歩き始めた。

440 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 02:13:12.39 ID:si1n6xpn [21/25回発言]
【B─3 林・一日目 黎明】

【マリリン・キャリー】
[時間軸]:三次選考カプーショ戦後、植木戦前。
[状態]:健康
[装備]:軍服@うえきの法則、SIG-P220(7/9)@現実
[道具]:基本支給品一式、光界玉@烈火の炎、オリンピア@カラクリサーカス、石板@金色のガッシュ!!、SIG-P220の予備弾薬(9/9)@現実
[基本方針]:デパートに向かう。襲ってくる敵とは戦う。



【ドクター・カオス】
[時間軸]:妙神山壊滅以降、南極での決戦前。
[状態]:健康。精神的すこし落ち込んでる。
[装備]:スクール水着@現地調達、ファイティングナイフ@スプリガン
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:早くまともな服を着たい。知り合いには会いたくない。


【パルコ・フォルゴレ】
[時間軸]:アポロと出会った後、デボロ遺跡再突入前
[状態]:健康、全裸
[装備]:魅虚斗@烈火の炎、自衛ジョーの生き人形部隊@GS美神極楽大作戦!!、暗視ゴーグル@現実(自衛ジョーが所持)
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:マリリン隊長についていく。清麿達を探す。


441 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 02:25:43.66 ID:si1n6xpn [22/25回発言]
【暗視ゴーグル@現実】
暗闇でも昼間と同じ視界を得ることができる。
八倍ズーム機能付き。


【SIG-P220@現実】
四五口径の自動拳銃。
装弾数九発。
弾は9mmパラベラム弾。


【光界玉@烈火の炎】
火影が作りだした魔導具の一つ。
形のあるなしに関わらず、あらゆるものを消し去る事が出来る。
但し、反作用として使用者の大切なものも消えてしまう。
反作用で消えるものは、消したものの価値に比例する。
有効範囲は半径十メートル。
参加者自体を消すことはできない。


【魅虚斗@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
人型をしており、中に人が入ることができる。
使用者の意思で動き、少しの距離ならば離れていても操作可能。
巨大な扇を二つ持ち、この扇で攻撃や防御を行える。

442 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 02:32:23.78 ID:si1n6xpn [23/25回発言]
【オリンピア@からくりサーカス】
ギイ・クリストフ・レッシュの懸糸傀儡(マリオネット)。
胴体に4本と翼の付け根に2本の腕を持つ。
指先に注射針、肘に刃物、ヒールに拍車、背中に翼と多数のギミックが搭載されている。
ギィ専用に調整されており、ギィ以外が扱うのは難しい。


【ファイティングナイフ@スプリガン】
オリハルコン製。
刃の硬度はダイヤモンドの三倍以上。
柄にはナックルガードが付いている。

443 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 02:44:14.32 ID:si1n6xpn [24/25回発言]
【自衛ジョーの生き人形部隊】
五センチ程の大きさの、魂の宿った人形の軍隊。
総勢二十名。
全員軍服に身を包み、部隊司令が指揮している。
戦車や無線機も付いてるよ。


【石板@金色のガシュ!!】
千年前の魔物がゴーゴンの術によって姿を変えたもの。
本物かどうかはわからないが、魔力を帯びている。


【スクール水着@現地調達】
B─3のプールで見つけた水着。
よく伸びる素材でできており、成人男性でも着ることが可能。
胸には3─Bの文字がある。

444 : 魔王と英雄の消失 ◆AJINORI1nM : 2011/03/25(金) 02:47:09.66 ID:si1n6xpn [25/25回発言]
これで投下は終わりです。
初めてのことで投下に時間がかかってしまい大変申し訳ありませんでした。

次からはもっと早く投下を終わらせられるようにいたします。

445 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 02:56:48.34 ID:wKViKYoj [10/10回発言]
いきなり、全裸でしかも水着かよwww
しかし、こいつら地味に能力高いんだけどなぁ……

特にジイさん。だてに長生きしてないし

446 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/25(金) 05:44:57.61 ID:AetuyU2m [3/3回発言]
投下乙です!
寝ちゃったとか言っちゃってごめんなさいw
……orz

スク水老人とか新し過ぎるww
加えて人形の中で全裸の外人とのコンビとかもうねw
ただ、格好以外はバランスよく戦力が揃ってるね
マリリンの指揮能力に実は身体能力の高いフォルゴレとボケかけつつ老獪なカオス
今後が楽しみ!


……それにしても、これで初めてか…尊敬のような嫉妬のような複雑な感情なんだぜ

447 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 01:31:26.34 ID:SCZo6X1h [1/1回発言]
武蔵が若い頃の姿で出てくるっていうサプライズはないかな?

448 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 07:19:10.18 ID:lwRTLNh8 [1/1回発言]
そういえば金剛番長で獄門番長が使用したものを若返らせる技を持ってたっけ。
それをなんとか支給品で再現できれば若武蔵できるな。

449 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 09:06:56.45 ID:t6wcNgfV [1/1回発言]
若返りはドクター・カオスに期待したいな
ヨーロッパの魔王のときはマジで強かった
ちょっと抜けてたけどw

450 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 09:39:40.29 ID:LqlaRopl [1/2回発言]
そういや今回老人が結構いるね
老人のままでも十分強いけど

451 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 11:01:35.21 ID:B2gK9Coc [1/1回発言]
>>447
YOU自分で書いちゃいなYO

452 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 13:48:41.70 ID:NTyKfL1q [1/3回発言]
若いころの武蔵どんなキャラだったっけ……w
女のために長生きするぜとか言ってたっけかなw

453 : ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:13:00.58 ID:q1zJvsPZ [1/8回発言]
投下します

454 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:16:19.64 ID:q1zJvsPZ [2/8回発言]
小さな机が立ち並ぶ夜の教室に月明かりが差し込む。
昼間なら子供たちで溢れかえっているであろう小学校も、こう静まり返っていてはどことなく不気味な雰囲気を醸し出す。
それが殺し合いを強いられて飛ばされた場所ならなおさらだ。
そんな場所にサル顔の少年は立っていた。

この少年、一見サル顔のなんの変哲もない少年に見えるが実は只者ではないのだ。
彼の名は宗谷ヒデヨシ。
知力を絞り戦で手柄を立て出世していった武将と同じ名を持つ彼は、神を決める戦いにおいて数々の能力者達を己の知力体力を駆使し、退けたというその名に恥じぬ実績を持っていた。
それは最悪で最強と言われる能力者ロべルト・ハイドンに忠誠を使う、能力者の中でも特に優れた戦闘能力を誇るロベルト十団ですら、二度と戦いたくないと言わしめる程の実力を持つ。
与えられた能力は決して強いとは言い難いが、持ち前の機転の速さに始まり舌先三寸口八丁手八丁、あの手この手で迫り来る能力者達を騙し討ちにし返り討ちにしてきたのだ。
そんな並々ならぬ戦歴を持つ少年が何を思っていたかというと……




「ぶっちゃけ恐ええええええ!!何だ殺し合えって……
ふざけてんのかっ!!大体神様決める戦いはどうなったんだよ。中学生じゃねえどころか明らかに人間じゃねえ奴もいんじゃねえかよ!!」

殺し合いに対する恐怖と理不尽に対する怒りでどうにかなりそうだった。

自分の能力は声を似顔絵に変えるという、敵を出しぬくのに使えないこともないが所詮攻撃力はゼロだ。
あそこにいた化物どもに到底勝てるとは思えない。

「そっそうだ。確かこの玉の中に支給品が入ってたはず!なんか役に立つものはっと……」


455 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:17:19.22 ID:q1zJvsPZ [3/8回発言]

最初に出て来たものは小さな魚を模した容器だった。
中には黒い液体が入れてある。
ヒデヨシにはこの支給品に見覚えがあった。

「これ醤油差しじゃねえかあああああ!!確かに醤油ボンバーは俺の十八番だけども」

最後の一人までしか生き残れないバトルロワイアルでこんな物が何の役に立つというのか。
ヒデヨシは次の支給品にかけた。
「まだなんかあるみたいだし、今度こそすげーもんが入って……」
ヒデヨシは言葉を失った。
出て来たのは緑色の物体が入ったチューブ、そう只の山葵だ。

「おい、この流れだと次に出てくんのは大豆の発酵食品だったりしねーだろうな」

だが、ヒデヨシの悪い予感は裏切られることとなった。
それもさらに悪い方向にだが。

最後の支給品は数枚のブロマイド写真。
それも可愛らしいアイドルの物ではなく、やたらとファンキーなオッサンが写っている。
説明書には神様ブロマイド写真と書いてある。

「神様ァあああ!!これが!?つーか戦いがこんなんになっちまったのに何やってんだよこのオッサン」
まさか支給品が全部外れだったとは、キースとかいう男は本当に殺し合いをさせる気があるのだろうか。
おまけに名簿には知ってる名が一つだけ。
それも最悪で最強の能力者、ロべルト・ハイドン唯一人だけだ。
どんな能力を持っているのかは知らないが、きっと会った瞬間殺されてしまうだろう。

そもそも命を奪うなんてことができるのか?この自分に
答えはNOだ。
人を殺すなんて何の覚悟も度胸もない奴ができるわけがない。

ならば大人しく殺されるのか?
それもNOだ。
理由は二つ。一つ目の理由は単純、死ぬのが怖いから。
誰だって死ねと言われて分かりましたなんて言えるわけがない。自分はまだ中学生、こんな若さで死にたくはない。
そして二つ目の理由。
自分には守らないといけない奴らがいる。孤児院『たいようのいえ』に住む子供達が自分の帰りを待ってくれているのだ。その子達の為にも生きてここから帰らなくてはならない。

誰も殺さずこの場を脱出すると決めたヒデヨシはある作戦を思いついた。
その名も……


456 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:20:45.78 ID:q1zJvsPZ [4/8回発言]

「よしっ決めた!!名付けて『ぶっちゃけ誰かが解決してくれるのを待つまでじっとして身をひそめてる作戦』だ!!
ま、あの場で主催者に反発してた奴ら、めちゃくちゃ強そうだったしぶっちゃけ俺みたいな奴が前に出たところでそいつらの邪魔になりかねないしな。
弱者は弱者らしく強そうな奴に身を守ってもらってりゃいいんだよ」

すがすがしいまでにネガティブなのかポジティブなのかよく分からない作戦を思いついたヒデヨシだった。

「さーて今後の方針も決まったし、取りあえずここでじっとしとくか」

「おいおい、他力本願にしたってまずは誰かとコンタクトとらねーことには何も始まらないだろ」

「それもそうだけどよー、っておおいつ!!だだだっ誰だお前!!」

いつの間にかヒデヨシの隣にどこか理知的な雰囲気の少年が立っていた。
歳はヒデヨシと同じくらいか。
学生服に身を包んでいることから恐らく中学生だろう。

「俺は高嶺清麿。あんた殺し合う気はないんだろ。取りあえず自己紹介がてらに情報交換と行こうぜ」









「へえ、魔界かあ。まあ天界があるなら魔界だってあるのかもな」

「こっちも驚いたよ。俺の知らないところで神を決める戦いがあってたなんてさ」

情報交換した二人はお互いに驚くようなことの連続だったが、普段の生活が魔物や天界やらの非日常に慣れていたので驚きながらも納得することができた。



457 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:21:37.23 ID:q1zJvsPZ [5/8回発言]
「そうだ、お前の支給品は何なんだ?どうせろくでもねえもんなんだろうが」

「ああ、これだ」

そう言って出した物は紙を操れる玉、無線の役割を持つ二対の玉、まるでピエロが使う御手玉のような形をした爆弾だった。

「式紙って玉は応用の幅が広そうだし、この爆弾は強い衝撃を与えると爆発するそうだ。気をつけてつかわないとな。取りあえずコピー用紙500枚程玉の中に収納してみたんだ。ん、どうしたヒデヨシ?」

「いっいや、別に何でもねえよ」
(こいつ当たりアイテムのオンパレードじゃねえか。ちくしょう、なんだこの差別)
ヒデヨシは心の中で静かに毒づいた。

「なあ清麿。これからどうすんだよ。お前は魔物じゃないし、口から電撃なんかだせないんだろ?」

「ああ、そうだな。俺には何の能力もない」

本当は彼にはアンサートーカーという頭に浮かんだ疑問の答えが瞬時に分かるという、まるで反則のような能力を持っていたのだが、どうやら主催者に封じられているようだった。

何のためにこのゲームが行われるのか
キース・ブラックとは何者なのか
どうすれば優勝という道以外に脱出できるのか

他にも沢山の疑問が浮かんだが答えを知ることは出来なかった。
しかし彼が絶望しきっているかと言うとそうでは無かった。

アンサートーカーが使えないのは確かに痛いが、今までの魔物との戦いも己の頭脳で突破して来たのだ。
恐らくゲームにのってる人間も何人もいるだろうが、それに抗おうとする人間もいるはずだ。
この場所だってきっと活路を切り開いてみせる。
そう思った。

そして何より、この名簿に書かれた仲間達を失いたくない。




(ガッシュ、お前もこの場所にいるのか……
お前にまた会いたいと思っていたが、まさかこんな形で再開することになるなんてな。
会ったら話したいことが山ほどあるぜ)

既に魔界の王を決める戦いは終わり、ガッシュは王となった。
人間のパートナーと赤い本はもう御役御免のはずだ。
しかもアンサートーカーの能力も封じられては大した活躍はできないかもしれない。

だけど、きっとこのゲームを壊してみせる。
モチノキ町を模したふざけた舞台を用意した主催者共もぶっ倒す。
(そしたら、また遊ぼうぜ。魔界の土産話とか聞かせてくれよな)

不安だらけの中で清麿は強がる。

赤い本の魔物の子に、もう一度会うために。


458 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:22:27.22 ID:q1zJvsPZ [6/8回発言]
【C-1 森林/一日目 深夜】

【宗屋ヒデヨシ】
[時間軸]:植木達と出会う前
[状態]:健康
[装備]:醤油差し @うえきの法則、わさび @うえきの法則、神様激レアブロマイド10枚セット(非売品) @うえきの法則
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、支給品(醤油差し @現実、わさび @現実、神様激レアブロマイド10枚セット(非売品) @うえきの法則)
[基本方針]:生きて帰りたいけど人は殺したくない。





【高嶺清麿】
[時間軸]:最終回後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式+水と食料一人分、支給品(式紙 @烈火の炎、声玉 @烈火の炎、テオゴーチェの爆弾ボール @からくりサーカス)
[基本方針]:このゲームからの脱出・ガッシュに会いたい


459 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:23:21.24 ID:q1zJvsPZ [7/8回発言]
【支給品紹介】


【醤油差し@うえきの法則】
ヒデヨシが植木と森に会った際、逃げる時に使った技、醤油ボンバーに使用したのと同じ醤油差し。※ヒデヨシの説明書には只の醤油差しとだけ書かれています。


【山葵@うえきの法則】
ヒデヨシがウーゴに特選ワサビームに使用したのと同じ山葵。※ヒデヨシの説明書には只の山葵とだけ書かれています。

【神様激レアブロマイド10枚セット(非売品)@うえきの法則】
眠れる果実島で行われた三次選考第一試合で宝として使われた神様のブロマイド写真。

【式紙@烈火の炎】
手のひら大の大きさで中に『紙』文字のが記してある玉。紙を操ることが出来る。

【声玉@烈火の炎】
手のひら大の大きさで中に『声』文字のが記してある二対の玉。離れている相手とも連絡を取り合える。

【テオゴーチェの爆弾ボール】
誘拐組の高見が操る懸糸傀儡『テオゴーチェ』の爆弾ボール。大きさはハンドボール程。


460 : 強がりを一つ聞いてくれ ◆GmTqfb9yfU : 2011/03/26(土) 16:30:06.70 ID:q1zJvsPZ [8/8回発言]
投下終了です
それと場所の表記を間違えました。
正しくは【B-2 小学校・三年A組の教室/一日目 深夜】です。
その他の問題点がありましたら教えてください。



461 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 16:46:23.65 ID:LqlaRopl [2/2回発言]
清麿は最終回後からかあ
もう初っ端から四人も死んでるからこういう対主催は増えてほしいな
投下乙です

462 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 17:08:19.42 ID:FTiE2c41 [1/1回発言]
今のところのマーダーとか対主催のまとめみたいなのってある?
そんなに偏っているのか?

463 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 22:55:22.74 ID:NTyKfL1q [2/3回発言]
投下乙ー
ヒデヨシ知り合いなしかよw つれーなw
しかしコイツはハズレ支給品だの知ってるヤツ悪人だけだの、そういうのが似合うヤツだぜw
一方の清麿は最終回後……元からなんだけど、いっそう頼りになるな
支給品は当たりとはいえ、ここにいるヤツらはどいつもバケモノ的に強いからなぁw
しかもアンサートーカーは封印……殺し合いがなりたたなくなるから仕方ないんだけど、ARMSやら妖やら新天界人やらいるなかかわいそーにw がんばれw

>>462
ちょっと待って。まとめてみるわ

464 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/26(土) 23:14:53.96 ID:NTyKfL1q [3/3回発言]
できた。ミスとか抜けあったらごめんね


マーダー
 ギイ、グリーン、シルベストリ、パウルマン&アンゼルムス、バロウ、憲兵番長、シルバー、小次郎
 木蓮、マシン番長、

対主催/殺し合い否定
 ユーゴー、朧、バリー、ブルー、ボー、居合番長、テッド、ガッシュ、正二、エレオノール、風子、横島
 ジョージ、卑怯番長、ルシール、紫暮、土門、佐野、剛力番長、勝、おキヌ、隼人、うしお、とら、
 マリリン、フォルゴレ、カオス、ヒデヨシ、清麿

微妙(現状では乗る気はない、特に目的がない、好きにしてるから勝手にやってろなど)
 流、フェイスレス、ロベルト、紅煉、コロンビーヌ、バイオレット、芳乃



むしろマーダーのが少ないな
どいつも強いけれど

465 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 00:57:41.68 ID:dwjaHuD8 [1/1回発言]
今北

そういう趣旨ではないのは理解しているが真由子死亡でリョ(ry
でもできれば生き延びて木蓮あたりにいやなんでもな
いい子が理不尽に酷い目に遭うってのが見てて嬉し…いやとても見ていられないが続きに期待

466 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 04:20:11.67 ID:X4n3xxy+ [1/1回発言]
投下乙!
ヒデヨシは相変わらずだなw
支給品も慣れ親しんだものだし、するするっと生き延びそうな気もする
清麿はアントカ封印か…
流石にチートだし仕方無いが元の頭脳も地味にハイスペックなのよなコイツw


>>465
へ、変態だーっ
……いやまぁ気持ちはすっごいわかるけどもw
残りの女キャラに期待してるんだぜ!

467 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 10:14:12.05 ID:9LoHsFrf [1/1回発言]
誤爆
あいつを書こうと思ったら、別キャラで似たようなことをやったばっかだと気づく
ここは我慢して別キャラのネタを考えよう
そして先に気づけてよかったw

468 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 11:41:36.05 ID:67mtM0Ak [1/1回発言]
ついに涼の予約が来たと思ったらなんだあれw
わくわくするしかないww

469 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 12:36:38.09 ID:UYY2nVoR [1/1回発言]
すごい顔ぶれだな……w
しかし予約途切れないなー

470 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 15:38:43.91 ID:NA/TH0s2 [1/2回発言]
どの予約も楽しみすぎるw

471 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 15:55:57.03 ID:OKwCNZUS [1/1回発言]
死者スレようやく始まったwww

472 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 16:28:17.24 ID:NA/TH0s2 [2/2回発言]
死者スレktkr
念仏がやっぱり念仏だったw

473 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:41:50.72 ID:SND5WzuV [1/7回発言]
予約期限を大幅に過ぎてしまい申し訳ありません
今から投下します

474 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:44:00.16 ID:SND5WzuV [2/7回発言]
暗闇に包まれた山中、一人の少女がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。
セーラー服を着た中学生くらいのごくごく平凡な少女。
しかし、彼女は普通の人間がこのような殺し合いに巻き込まれれば起こすであろうパニックを一切起こしていない。
恐怖を感じ、落ち着かない様子ではいるものの、足取りはしっかりとしている。

「刃ー、武蔵ー、小次郎ー、聞こえたら返事してー」

不安からか、普段の快活さが嘘のように弱々しい声で仲間を呼びかける彼女の名は峰さやか。
殺し合いに乗った人間に聞かれてしまうリスクがあるのは承知ではあったが、一人でいるのにはこの場は恐ろしすぎた。

「はぁ、このさい殺し合いに積極的な人じゃないなら誰でもいいから出てきてくれないかなぁ」

弱々しくため息を吐く。
そして弱気な考えを吹き飛ばすかのよう、右手に握られた彼女の身長ほどもある巨大なブーメラン型の刃を力強く握りしめた。
そのサイズから持ち運びに不便ではあるものの、突然の攻撃に備えて蔵王にはしまわずに出しっ放しにしているのだ。
武器は見た目の割には軽いので、少女であるさやかも持ち運び程度なら問題なく片手で行えている。

「イザとなったら……時間稼ぎして逃げるくらいならできるよね?」

これまでに幾度も面倒事に巻き込まれ、その中で命を落としかけた経験もあった。
だからこそ彼女はこの殺し合いに置いても、我を忘れずに自分を保つことが出来ている。
しかし、あくまでも彼女自身は剣道をやっている程度の女子中学生。
いくら修羅場をくぐり抜けたとはいえ、さやかの戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
その事を自覚しているからこそ、彼女は強い恐怖を感じているのだ。
だが、彼女は命を諦めたり、絶望をしているわけではない。

「ううん、弱気になっちゃダメよ! 刃達がいるんだからこの殺し合いもきっと何とかしてくれるわ!」

彼女は信じているのだ。ずっと一緒にいたサムライ、鉄刃のことを。
鬼丸城での、玉探しの旅での、輝夜と戦った時の、彼の勇敢さ、そして強さを峰さやかは信じている。
刃なら、彼とその仲間たちが力を合わせれば、ブラックを倒してこの殺し合いから脱出することができる。
今までも圧倒的な逆境の中で戦い、勝利してきたのだ。
それならば、今回の戦いだってきっと勝てる。
さやかの表情に笑みが戻ってきた。

「そうよ! みんなで戦えば怖くない! それに、キース・ブラックを倒そうって考えてるのは私たちだけじゃないはずよ」

仲間を集めてブラックを何とかする。
意気込みを込めて小さくガッツポーズをし、さやかは再び歩き出す。
……木の影に隠れながらゆっくりとだが。
強気な発言をしたところでやはり一人は怖いらしい。

「刃が何とかしてくれるって言ったけど、私がなにもしない訳にはいかないもんね。
 せめて仲間を集めるくらいはやっておかないと」

自分に役割を作ることで竦みそうになる足を必死に動かす。
そしてしばらく歩いたところで、背後から人の気配。そして声が聞こえた。

475 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:46:07.73 ID:SND5WzuV [3/7回発言]
「後ろから気配がする。そう思っただろう。へへへ、当たりだァ」

咄嗟に振り向いたさやかが手にした武器で攻撃を防ぐ。
相手が持っていたのは太い木の枝らしく、振り下ろされ、刃に当たった勢いでスッパリと半分くらいの長さに切れてしまっていた。
奇襲に驚いたものの、すぐに平常心を取り戻し武器を構えるさやか。
目の前に立っているのは限りなく人に近く、しかしどう見ても人間ではない異形。
数々の化物を見てきたさやかであったが、目の前の相手には恐怖心がふつふつと湧きでてくるた。
彼はあまりにも人間に近すぎたのだ。
ガマ男やクモ男、彼らに比べてより人間らしいことが化物を更なる異形に見せる。
だが、それに呑まれること無くさやかは武器を強く握りしめた。

「く、来るなら来なさいよ!」
「隙さえ見つければ逃げ切れる、刃ならきっとこいつも倒してくれる。と思っただろう」

さやかの額にうっすらと汗が滲みでる。
最初の時は、奇襲の対応でいっぱいいっぱいで気がつかなかった。
目の前に立っている化物は心が読める。その事実に気が付き、さやかの心臓が鼓動を早める。

「えへへ、怖いかァ? すぐに楽にしてやるからなァ」

そう言って化物は地面を蹴った。
一瞬にして視界から消えた相手に戸惑いながらも、音と気配のする方向へ武器を向ける。
武器の腹と化物の拳がぶつかり合い、その反動でさやかは少々押された。
力は明らかに人間以上。しかし、幸いなことに武器をもってかれるほどではない。
次の一撃に備えたさやかの耳にあの不気味な声が響き渡る。

「縦に構えれば胴体と頭を同時に防御できる。そう思っただろう」

そう言って怪物はさやかの細い足を蹴り飛ばす。
膝の辺りに当たった怪物の蹴りはさやかの骨をいとも簡単に砕く。

「っ、ああああああああああ」

闇夜に少女の叫び声が響き渡った。
立ち上がることも敵わぬ彼女はその瞳にいっぱいの涙を溜め、必死に痛みをこらえようとする。
だが、折れた骨が与えてくる痛みは彼女の体を苛み続けた。
悲鳴は上げぬようにするも、うめき声が口より勝手に漏れ出す。
涙を止めようと目に力を入れるも、涙腺から次から次へと湧いてくるそれを止めることはできない。
そして、傍に立っているのは殺し合いに乗ったであろう怪物。
まさに絶体絶命の中、彼女が必死に思い出すのは一人の少年。
バカでスケベなところがあれども、正義漢が人一倍強く真の侍を目指して走っていた少年。

「刃……」
「ミノルのためだァ。死ねぇ!!」

476 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:48:05.32 ID:SND5WzuV [4/7回発言]
トドメの一撃に咄嗟に武器を構えた。
ほぼ無意識の行動にはさしもの心を読む怪物も対応ができない。
再び二つの硬い物体がぶつかり合った音が鳴る。
その音と共に、さやかの折れかかっていた心も再び熱を取り戻す。

「ミノルって参加者はいなかったよね。もしかして貴方の大切な人なの?」
「あァ、俺はミノルの父ちゃんだァ」

さやかが取った手段は説得。
怪物の言った、『ミノル』という人名が引っかかったのだ。

「ミノル君のために帰りたいなら、キース・ブラックの言う事なんか聞かなくてもいいの! 
 きっと……きっと、刃達がこんな殺し合いどうにかしてくれるんだから!」

怪物はさやかの言葉に押し黙る。
眼前の少女が本気でそう思っていることは彼にも分かった。
それを察したさやかも更に言葉を紡ぐ。

「それに、人を殺してまで帰ってきたお父さんをミノル君は喜ぶの?
 血まみれになった手で子供を抱き上げるの?
 立派に戦って帰ってきたって自慢するの? 違うでしょ!」

骨折の痛みも忘れ、半ば喚くかのように感情をぶつける。
そこには一切の嘘はない。
不要な殺し合いで手を汚して欲しくない、彼女は心の底から叫ぶ。

「お父さんなんだから、子供が悲しむようなことはやめなさいよ!」

全てを吐き出すような勢いで言い切った後、さやかは頬を伝う涙を腕で拭った。
そして、興奮で忘れていた痛みが徐々に足を傷つける中で精一杯の笑顔を浮かべる。

「私の知り合いに鉄刃って男の子がいるんだけど、そいつがすっごく強いんだ。
 かぐやっていたじゃない? アイツを倒したのも刃なんだから。
 だから強さは折り紙付きでしょ。キース・ブラックなんて目じゃないわ」

どこか嬉しそうな声で刃のことを語った。
込められたのは若きサムライへの絶対の信頼。

「足のことは気にしてないからさ、私たちと一緒にブラックを倒しましょ?
 あ、でも無事に帰れたらその時は一発くらいビンタさせてよね」

化物の無言を肯定と捉えたさやかは、右腕を差し出す。
そして化物もその差し出された腕へと手を伸ばし――――






視界が180度回転したのに驚く間もなく、そのまま彼女の意識は永遠の闇の中へと沈む。
少し遅れて力を失った彼女の体がアスファルトの上に崩れ落ちた。
少女、峰さやかはもう動くことがない。
大好きだった剣道をすることも、ほのかに恋心を抱いていた少年と喋ることも。
キース・ブラックにより、目の前の怪物により、彼女は全てを奪われた。


【峰さやか 死亡】
【残り75名】


477 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:49:26.11 ID:SND5WzuV [5/7回発言]


「えへへ、武器いただいたァ。目ん玉は……もう集めねぇでいいんだよなァ」

妖怪――さとり――は峰さやかの持っていた武器とディバッグを手に取った。
そしていつもの癖で目玉を回収しようとするも、それが不要なことを思い出し、掴んでいた彼女のポニーテールを離す。
再び力なく地面に横たわった死体になんの罪悪感を抱くこともなく、彼は彼女の元を去った。
彼の目的はただ一つ。
『優勝してブラックにミノルの目を治してもらう』
この目的のためならば彼は何人、何十人、何百人であろうと殺すことができる。
ここへ連れてこられる前も、『いい目と悪い目を取り替えればミノルは治る』という考えに基づき、眼球を奪うために二桁を優に超える人間を殺してきたのだ。
今更79人ポッチを殺すのに躊躇いがあるはずがない。

「ミノルが喜ばねぇなんて嘘だよなァ」

そう言って三日月型の口を更に広げる。
峰さやかの説得には致命的に欠けていることがあった。
彼女が"柏木実”を知らなかった事。それが最大の綻び。
さとりに、悲しんだミノルのヴィジョンを正確に見せることができなかった。
だからさとりはさやかが言ってることにピンと来なかったのだ。

「待ってろよぉ、父ちゃんがオメェの目を治してやるからなァ。
 そしたらまたミノルと一緒に暮らすんだァ、えへへ。楽しみだなァ」

そして月明かりの下、さとり妖怪が歩き出す。
三日月型の武器、三日月型の口。そして三日月型の瞳。
人を狂わせる月を身に纏い、笑みを浮かべた妖が歩く。
どこまでも純粋で、残酷な妖が――――。



【A-1 山中/一日目 深夜】

【さとり】
[時間軸]:紫暮&うしお戦直後
[状態]:万全
[装備]: 海月@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1~5
[基本方針]:優勝し、ミノルの目を治して一緒に暮らす

【支給品説明】

【海月】
峰さやかに支給
大きな三日月型の刃でブーメランとしても使用可能。
あくまでも三日月型の刃であり、ブーメランとして使うのはおまけである。
……『くらげ』って読んだ人は大人しく手をあげなさい。

478 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:50:28.55 ID:SND5WzuV [6/7回発言]
投下完了です 
誤字脱字、その他不明な点があればどうぞ

改めて、期限オーバー本当にすみませんでした

479 : ◆xrS1C1q/DM : 2011/03/27(日) 21:55:56.41 ID:SND5WzuV [7/7回発言]
あ、タイトル忘れてた
『少女さとり』でお願いします

480 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 22:30:27.39 ID:6JoZ6naI [1/1回発言]
投下乙!
さやか……予約の時点で恐れていたが、やっぱりか。
この状況でさとりが乗らない方がおかしいもんな。
さやかは足の骨が折れてるのによく頑張った。
目を切り取られなかったのは、ブラックさんありがとうw

481 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/27(日) 23:01:25.95 ID:G7zL8RCC [1/1回発言]
乙

俺はそこは貫いて欲しかったところなんだぜw

482 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/28(月) 01:12:45.97 ID:vCsdLCoB [1/1回発言]
投下乙
さやか、仲間と再会したかっただろうに・・・
まあ最期まで諦めずよく頑張ったよ

それと、さやかの回想でかぐやを最初に思い浮かべた時の名前が、東方の輝夜になってるw

483 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/28(月) 15:50:01.42 ID:g22T6hMg [1/1回発言]
投下乙

嫌な予感はしていたが……さやか……
さとりはやっぱり乗ったか…
また一人女の子が死んでいくw

484 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/28(月) 21:00:25.05 ID:6FGfQJLE [1/1回発言]
あばばばば
うわーん…さやかが、さやかがぁぁあ!!!
なんだかんださとりを巧く御せるんじゃないかと思ったんだがなぁ…
ロワはそんなに甘くなかったんだぜ

改めて投下乙でした

485 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/28(月) 22:23:32.88 ID:Kld9V7A5 [1/1回発言]
投下乙
さやか……
さやかが死者スレでどうしてるか見に行ったらカツミが暴走していたでござる

486 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/29(火) 01:04:10.52 ID:srXobCOm [1/1回発言]
女の子は儚く散ってこそ華
誰とは言わないがメインヒロインなのに空気の人とかは案外後まで生き残るかもねw

487 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/29(火) 01:06:33.80 ID:H5K9nlpE [1/1回発言]
メインヒロインで空気……?
やべえ、誰だ
芳乃は好き勝手やっているし

488 : ◆1eZNmJGbgM : 2011/03/29(火) 02:06:45.08 ID:HPt0sRze [1/6回発言]
大変遅くなりました、投下します。



「さて、どうしたもんかね」

そう言って男は誰に向けたわけでもなく呟き、改めて周囲を警戒する。
彼が転送された場所はD-6、モチノキ町立総合病院入口。病院らしく、緊急車両が横付けできるように広々と作られている。
逆に言えば、見晴らしが良く身を隠す場所が決して多いとは言えない立地であるが、彼はさほど気にしているようには見えない。
いや、一見そう見えるだけで実は巧妙に射線を外しているのか、あるいは無意識のうちにそんな立ち位置をとっているのかもしれない。
日々の鍛錬によって作り上げた屈強な肉体に加え、数えきれないほどの戦場を潜り抜け身につけた経験・直感。
口調こそ余裕を感じさせるものの、その視線や仕草には些かの油断も感じられない。
彼は理解しているのだ、現在自分が置かれている環境が今まで経験したどんな修羅場よりも過酷なものであると。
男の名は暁巌。
彼の世界にて隠然たる影響力を持つ巨大軍需産業「トライデント」の傭兵部隊を隊長として率いる男である。

暁が今まで体験した戦場でも、人智を越えるような現象や兵器、生物は敵・味方を問わず存在した。
むしろ、表の世界に公表できない事例ばかりを取り扱うのが、彼の仕事である。
だが、暁はそれが嫌いではなかった。平穏な日常では決して味わえないスリルや緊張感こそ、彼の求める物。
その為なら本来の任務や上官の命令に対してさえ、反抗や無視をすることも珍しくはない。
そして結果を残す。どんな絶望的な状況からでも帰還する。
それ故に、彼の二つ名は「生還者(リターニングマン)」と呼ばれるのだ。

しかし、今回の戦場は今までとは訳が違う。

まず、これは任務ではない。
事前に作戦の目的や説明も無ければ、装備の準備、敵の正体や支援・友軍の有無の確認も出来ない。
もっともその辺は、戦場の状況によって柔軟に対応するのも重要ではあるが。

次に、ここへ望んで参加した訳ではない。
暁はこの会場で意識を取り戻す直前までトライデントの一員として聖櫃(アーク)を輸送する任務に就いており、
そこで敵対するアーカム財団のS級特殊工作員・通称「スプリガン」の連中と交戦し、
最終的には共に乗船する巨大客船を沈没の危機から救ったのだ。
そしてスプリガン達と別れ帰還する所で記憶が途切れ、目が覚めた時にはあの場所にいた。つまり拉致である。誘拐である。

最後に、この状況を無視することは出来ない。
その理由は首に取り付けられている金属製の首輪。あの場所で見たものと同一の物であるならば、
この首輪にも爆薬が取り付けられている筈である。
つまりあのキース・ブラックの言うように、この殺し合いに積極的に参加しないとペナルティとして首輪が爆発――


489 : 適材適所 : 2011/03/29(火) 02:08:23.51 ID:HPt0sRze [2/6回発言]


――するとは限らないのである。


「ふん、あの優男はこう言ってたな。「首輪は禁止エリアに侵入すると爆発する」「首輪を無理に外そうとすると爆発する」
だったら、あいつの命令に従わなくても首輪は爆発しない筈……まぁ、バカ正直に受け止める方にも問題があるが、
あいにくと俺はひねくれ者でな。脅されたからはいそうですと忠犬の様に動く気はない」

そう言って暁は振り返り、誰もいない様に見える後の壁に向かって話しかける。

「……これで納得したら姿を見せてくれるかい、そこにいる兄ちゃん。いや、姉ちゃんか?まぁどちらでもいいんだが」

暁がそう言って10秒ぐらいしただろうか、暁と同年代位の男が現れた。
この男も暁ほどではないにしろ、一般人よりは荒事に慣れている印象を感じさせる風貌・体格をしている。
それもそのはず、この男は元々警察官であり、キャリア組であるにも関わらず
その正義感から上司とトラブルを起こすことも少なくなく、最終的な階級は藍空警察署の刑事で退職した。
男の名は兜光一。子供の頃の夢は正義の味方になることだった男である。


◇ ◇ ◇


「ええと、暁。あんた軍人か? そんなゴツい装備が似合う職業なんて他に思いつかねえな」
「半分正解だな、俺は傭兵だ。ついでにコレはオーダーメイドで、俺の専用装備だ」

「ふむ、兜。この名簿に名前の乗っているお前の知り合いが高槻涼、新宮隼人、巴武士、アル・ボーエン、
ユーゴー・ギルバート、コウ・カルナギ、あとはこのキースなんちゃら全員か」
「ああ、そもそも俺はこのコウ・カルナギに半殺しの目に合わされて、病院に搬送されていた筈なんだが……
何故か怪我は完治している。最初に病院に飛ばされたのは連中の皮肉だろうよ」

「で、暁の知り合いが御神苗優、ジャン・ジャックモンド、朧、染井芳乃、ボー・ブランシェの五人でいいんだな?」
「お前と同じく、敵味方混じっちゃいるがどいつこいつも一筋縄じゃいかないタフな奴らだ。簡単に死ぬことはないだろうが、
何が起きるか分からないのがこの会場なんだろう、きっと」

「アーカム財団、スプリガン、トライデント……すまんが聞いたことはないな」
「俺もお前の言うエグリゴリやブルーメンという組織は聞いたことは無い。それほどの組織なら耳に挟まない筈は無いんだが……
まあその辺は後回しだ。今はそれより――」


◇ ◇ ◇


490 : 適材適所 : 2011/03/29(火) 02:10:34.33 ID:HPt0sRze [3/6回発言]
そして二人が、各々に支給されたアイテムを確認しようとディパックを広げたところで最初の異常に気がつく。
まずは暁のディパックから大量の黄色い箱型の何かがガサガサと音を立てて零れ出す。
一体何なのかと思って暁がその箱の一つを手に取り、その正体が判明すると思わずその険しい顔にも苦笑いが浮かぶ。
その正体は携帯食料。しかも誰もが知っているあのカロリーメイト。これこそ暁に支給された食料品である。

「ククッ、こりゃまた直球だ。……しかも合計で9000キロカロリー分とはな」
「おい、どういう事だ暁」
「一般的にな、戦場の兵士に必要とされるカロリーが1日辺り3000キロカロリーと言われている。
つまり、奴さんは3日以内にこのふざけたプログラムにケリがつくと踏んでるんだよ、この食料だけで判断するならな」

続いてディパックの中から出てきた地図、時計、照明、筆記用具等の確認を行い食料と共にディパックに戻したあと、
キース・ブラックが説明していた球体―蔵玉―を手に取る暁。そして説明にあったとおり念じてみた所、
明らかに物理法則を無視した大きさの武器が目の前に現れた。


全長:約1.5m。
総重量:約16kg。
最大速度:マッハ2.2。
最大有効射程:8000m。
主な標的:攻撃機、ヘリコプター、輸送機、無人偵察機。
ギネスブック認定:もっとも命中率の高い携帯型対空ミサイル。
制式名称:FIM-92スティンガー低高度地対空ミサイル・システム。
通称スティンガーミサイル。予備弾頭を含むと合計31発のこの兵装が、暁に支給された武器である。


この光景を見た二人の反応だが、兜は唖然としている一方暁は笑みを浮かべている。
普通に考えれば兜の反応こそ一般的であり、正しいのだろう。
「こんなものを支給しても問題ないレベルの参加者に狙われる可能性がある」こう考えれば、言葉を失うのも当然だ。
しかし、暁の反応は異なる。
「こんなものを支給しても問題ないレベルの参加者と命がけの戦闘を楽しめる」こう考えるのが、暁巌なのである。

「おい、次はお前に支給された物を見せる番だぞ」

暁のこの言葉に我に返った兜がディパックを漁って見ると、蔵玉が3つ。
まず最初の蔵玉を手にとって念じてみると、出てきたのは武器ではなく乗用車。
それも見た目にも美しく、最大速度も300kmを超えるようなスポーツカー等ではなく、
ある意味この場所で最も必要とされるかもしれないワンボックスカー。
というか、ぶっちゃけ○ヨタ自動車のハイエース。質実剛健にも程があるチョイスである。

まぁ1つくらいはこんな物があった方が役に立つと考えた兜も、
次の蔵玉を持って念じた結果出てきた物を見て自分の考えが甘かったことを思い知らされる。
今回も武器は出て来ず、またしても乗り物。しかし前と違うところは、四輪ではなく二輪。
無論こちらもリッター超えのスーパースポーツタイプや、高速巡行向きのツアラーモデルなどでは勿論無く
慎ましいほど小じんまりとしたビジネスバイク。
新聞配達員や郵便局員の強い味方。全世界で累計販売台数は6000万台を越えるバケモノ。キング・オブ・低燃費。
日本が誇る名車、H○NDA・スーパーカブ110。これが兜の2つ目の支給品である。

自分の隣で笑いを噛み殺している暁を無言で睨みながら、兜は最後の蔵玉を鷲掴みにして念じる。
流石に3つとも乗り物という事態は避けられたのだが、かと言って強力な武器が支給された訳でもない。
むしろ、前の2つより使い勝手は悪いと言わざるをえない。
なんと現れたのは拡声機。もはや殺し合いを止めて大声で人探しに専念しろと言わんばかりのラインナップである。


491 : 適材適所 : 2011/03/29(火) 02:12:52.28 ID:HPt0sRze [4/6回発言]
「クッ、良かったじゃないか兜。元警官として迷子の子供を探すには完璧すぎる内容だ」
「どうせならニューナンブを出してくれれば尚の事良かったんだがな!あの野郎……」

このままでは蔵玉を地面に叩きつけて破壊しそうな程引きつった笑いを浮かべている兜をなだめながら、暁は話を進める。

「まあそう力むな。せっかく車があるんだ、情報収集といこう。俺が後部に陣取るからお前は適当に敷地内を巡回してくれ。
いざという時は俺が窓の隙間からコイツをぶっ放すから安心しろ」
「おい待て、まずはこの病院内を探索するべきだろ?それこそ中に誰かいるかもしれないだろうが」
「おいおい、何言ってんだ。現状で武器がこれしかない状態で室内戦をする気か?冗談じゃない。
同じ程度のリスクがあるなら、まだ屋外でミサイルぶっ放せる方がマシだ」

そして二人は病院を後にする。

しかし、この時点で暁は兜を全面的に信用したわけではない。
それは兜も同じ事だが、兜の方は他に選択肢がない。一方暁は兜に対して2つ隠していることがある。

1つは今暁が身につけている装備について。
兜は一般的軍人が装備するボディーアーマーだと思っているようだが、実際は異なる。
暁の装備はただのボディーアーマーなどでは決して無い。それは超古代文明の遺産と
現代最先端科学の技術を組み合わせて作られた攻防一体の戦闘服。
人工筋肉により使用者の力を30倍以上に増幅し、オリハルコン繊維で編まれたその防御力は
生半可な刃物や銃弾では歯が立たないレベルの衝撃吸収構造を持つ。
その名はArmored Muscle suits。通称AMスーツ。
これを装備している状態の暁ならたとえ病院の中で襲撃を受けても、
十分立ち向かえるほどの戦闘力を誇るのだがあえてそれを見せることはしない。同行者が完全には信用できない以上、
わざわざ自分の実力を教えてやる必要を感じ無かったのかもしれない。

もう1つは蔵玉について。実は暁にも、もう1つ蔵玉が支給されている。
しかし暁は大量のカロリーメイトに紛れて、兜に気が付かれない内に素早くディパックに仕舞い込んだのだ。
無論、暁自身もその中身が何であるかは知らない。
その為、もう1つの蔵玉の中身が武器……いや兵器であった事は幸運と呼べるものだった。
もし役に立つものではなかった場合、何食わぬ顔でディパックから2つ目の蔵玉を取り出す予定だったのだから。

そんな噛み合うのか噛み合わないのか微妙な二人が車に乗り込み病院を後にする。
果たして院内を探索しなかったのは吉と出るのか凶と出るのか、それは誰にも分からない。

「しかしゴツイ武器だな……俺にゃ扱いきれないか」
「いや、お前でも十分使いこなせるぞ。説明書を読んだらな」


492 : 適材適所 : 2011/03/29(火) 02:15:11.57 ID:HPt0sRze [5/6回発言]
【D-6病院入口 一日目深夜】

【暁巌】
[時間軸]:単行本10巻、聖櫃終了後
[状態]:健康
[装備]:AMスーツ@スプリガン、スティンガーミサイル1/1、予備弾頭30発@現実
[道具]:基本支給品一式、カロリーメイト9000キロカロリー分@現実、ランダム支給品×1(未確認)
[基本方針]:キース・ブラックへの反抗・生還
※カロリーメイトは食料としての支給品です。必要ならば、何味かは次回以降の書き手さんにお任せします。



【兜光一】
[時間軸]:単行本12巻、コウ・カルナギに重症を負わせられ病院へ搬送中
[状態]:健康
[装備]:拡声機@現実、TOY○TA・ハイエース@現実
[道具]:基本支給品一式、H○NDA・スーパーカブ110@現実
[基本方針]:高槻涼ら、知り合いとの合流・脱出


【支給品紹介】

【AMスーツ@スプリガン】
制式名称、Armored Muscle suits。古代文明の遺産と現代科学のコラボレーションで誕生した強化服。
装備者の筋力を30倍程度にまで増幅させる機能や、スーツ表面がオリハルコン繊維で編まれ、
衝撃吸収構造であるため通常の刃物や銃弾では殺傷できない。
暁のAMスーツはトライデント製の機械式であるため、主人公・御神苗優が装備しているものより
スピード・衝撃吸収能力は劣るものの、パワーは上回る。小型ウインチやサイコブローなどの機能があるかは不明。


【スティンガーミサイル@現実】
米国が1970年代に開発に着手し1981年に採用された携行式地対空ミサイル。その名は「毒蜂」に由来する。
いわゆる使い捨て・撃ちっぱなし系の兵器としてはかなりの高性能を誇る。
赤外線センサーによる自動追尾機能により発射後の操作も不要。

【拡声機@現実】
一般的な用途としては主にスポーツの応援、演説、抗議行動、集会などに用いられる。
増幅器を内蔵したものは「トランジスタメガホン」略してトラメガとも呼ばれるそうな。
……まぁこんな説明よりも、パロロワにおける特A級の死亡フラグと言ったほうが通りが良いのだが。

【ハイエース@現実】
世界のTOY○TAが開発・製造している傑作ワンボックスカー。
その用途は広く、貨物用・送迎バス・果ては救急車に至るまで実に多種多様。
今回の仕様は座席は運転席と助手席のみで、後部座席は搭載されていない。ちなみにAT仕様。

【スーパーカブ110@現実】
こちらも世界のH○NDAが開発・製造している傑作オートバイ。
その燃費と耐久性はもはやオーパーツの領域。例えるなら初代ゲームボーイ並みの耐久性と言えばピンとくる人もいるかも。
コレに魂を吹き込めるほどの人物が乗車すれば、白兵戦でも十分立ち向かえる……かもしれない。不運と踊っちまわないようにご注意を。


493 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/29(火) 02:18:07.40 ID:HPt0sRze [6/6回発言]
以上です。誤字・脱字などありましたらよろしくお願いします。

494 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/29(火) 10:27:54.36 ID:IrDENONj [1/1回発言]
あれ?
予約破棄してなかった?

この場合再予約するんじゃ……


495 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/29(火) 15:17:24.25 ID:8Z+bfsTB [1/1回発言]
小学館はインターネット及びイントラネット上において、当社の出版物を以下の行為に無断で使用することを禁止しております。

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残念ですがこのロワも終わりですね。

496 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/30(水) 00:13:05.85 ID:Y+f5vNMl [1/1回発言]
投下乙です

暁がプロって感じで凄く頼りになる
AMスーツにスティンガーがあれば大抵の相手なら何とかなるだろうしねw
そしてスリルを味わいたいってのはロワ会場でも変わんないのか、流石
ここでも『生還者』似なれるんだろうか期待です

兜も兜でらしいなぁ
正義感はあるんだけど微妙に空回り気味ってのはまさにキャラどおりだw
ロワないでも原作みたいなカッコイイとこ見せれるように頑張れ

497 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/30(水) 01:15:21.03 ID:6hKbe2dV [1/1回発言]
投下乙!
暁かっこえーなー。さすがのプロフェッショナルっぷり
この会場には力ならもっと上なヤツたくさんいるけど、性格とか考えると不思議と期待してしまうw
……しかしあえて支給品を確認しない辺り、やっぱりスリルを楽しんでいる感あるよなぁw
数少ない一般人ポジの兜もがんがれ! 暁の言うまま状態になりつつあるぜw

498 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/31(木) 12:54:32.94 ID:3gpC+/gW [1/1回発言]
野晒しにされた女の子達の遺体は綺麗に土に還れるのでしょうか・・・

499 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/31(木) 16:46:59.34 ID:sMXkPTrR [1/1回発言]
あれ、もしかしてか弱いお姫様ポジションの女の子全滅した?
柳ちゃんは出てないんだよね

500 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/31(木) 17:38:53.15 ID:Y/8KSADD [1/1回発言]
まだユーゴーがいる。
特殊能力持ちだけども。

501 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/31(木) 20:10:20.79 ID:bRNM/mB1 [1/1回発言]
おキヌちゃんも属性的には守られるヒロイン系な気がする


502 : 創る名無しに見る名無し : 2011/03/31(木) 21:15:42.95 ID:5Oo/RHls [1/1回発言]
>>501
物理無効……

503 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 01:08:47.57 ID:mWVTUlq1 [1/1回発言]
守られる系ヒロインは犠牲になると華だけど
大抵の原作漫画と同じように運よく守られて守られて上手くいくかと思われたところであっさり殺すのも効果的かも
イベント重ねて存在感も出せるしね

504 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 01:27:46.30 ID:fu+O1GQQ [1/1回発言]
さやかは参加時期が違えばもしかするとジャバウォックや白面に匹敵しかねない強キャラだったな

505 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 08:25:12.47 ID:+rFenS2/ [1/1回発言]
それさやかじゃなくてカグヤじゃないですかー!
やだー!

506 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 17:03:36.83 ID:OUfM1/jW [1/1回発言]
wikiwww

507 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 17:15:15.20 ID:7Ss+OQVb [1/1回発言]
キース・???「君達はブラックだと思ってるだろうが
      ……私の正体はキース・レッドだ!!」

508 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/01(金) 19:31:11.44 ID:JEde5B3z [1/1回発言]
いろいろ吹いたw

509 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/02(土) 13:59:39.65 ID:mQXqVrFF [1/1回発言]
すみません。予約分なのですが、おそらく期限に間に合いません。
もう少し時間いただけないでしょうか。

510 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 14:10:44.07 ID:8Ms3d4DP [1/1回発言]
だが、断る!!!




嘘です。
頑張ってください

511 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 14:35:36.65 ID:Wh0Tbuz2 [1/1回発言]
期限なぞ知ったことかァーーーー!!!


と、いうことでまったりお待ちしています

512 : ◆d4asqdtPw2 : 2011/04/02(土) 19:41:24.67 ID:jvoIzV4N [1/1回発言]
申し訳ないです。自分の予約も間に合いそうにないので、もう少し時間をいただけますか。

513 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 20:02:54.85 ID:SHBn8ejw [1/1回発言]
小せえことは気にするな


投下、待ってます

514 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 20:07:32.03 ID:RalT4Pa3 [1/1回発言]
期限十日くらいに伸ばす?
土日が二回使えれば余裕出来ると思うんだけど

515 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 20:55:30.07 ID:Zl8xNyaY [1/13回発言]
コウ・カルナギ、鬼丸猛

投下します

516 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 20:56:12.39 ID:Zl8xNyaY [2/13回発言]


 手にした剣を上段へと構え、振り下ろす。
 普段扱っている竹刀や木刀に比べればやや幅広の刀身を持つ『それ』は、片手で扱うにはやや厳しい重さだった。
 ふと気がつき、腕に巻いていた重りを外す。一つにつき人間10人分の重さ。
 もう一度武器を手に取る。片手でも苦ではない。
 鬼丸猛は、この状況において自身の精神は寸毫ほども乱れていない事を改めて確認した。

 『プログラム』――黒スーツの男が仕組んだらしきこの殺し合いを、鬼丸はさほど動揺せず受け入れていた。
 そもそも鬼丸は、『織田信長御前試合』などという人死にが当然にあり得る闘いに参加していたのだ。
 結局、場所と顔ぶれが変わっただけ。やるべき事は同じ。

 無論、鬼丸は殺人嗜好者ではない。別に人を殺して回るという気はなかった。
 が、侍として、挑まれれば誰とでも立ち会うし、その結果どちらかが命を落とすことになっても、それは至極当然の事だ。
 闘いはする。が、結果まで強制される云われは無い。
 出会い、闘う意思を示した者を下していき、最強最後の一人となったとき、改めてキース・ブラックなる黒幕を斬る。それで終わりだ。

 そしてこの場には、鬼丸が闘うべき――否、勝利せねばならない侍、鉄刃もいる。
 本来であれば御前試合の決勝で雌雄を決するはずだった、鬼丸の宿敵である。
 多少その瞬間は遠のいたものの、刃とて強者ひしめく御前試合を勝ち抜いた猛者。そう易々とやられはすまい。
 あえて探さずとも出会うべくして出会う。自身と刃とはそういう運命なのだと、鬼丸は強く確信していた。

 与えられた武器を確認する。
 得物に頼れば己の内に隙が生まれる。師の、刃の父親でもある剣十郎の教え。
 鍛えた技量のみを以て敵を下す。故に、木刀でも竹刀でも、要するに剣の形をしたものなら何でもよかった――鉄パイプは個人的に願い下げだが。
 果たして、掌中の玉から出でた物は、剣――の形はしていた。一応。
 だがいわゆる日本製の刀のような形状ではなく、中世の騎士が使っていたような大型の馬上槍が両刃になったような代物だった。

 幾度か素振りをし、重心の位置や間合いなどを身体に染み込まる。
 数分の後、得心がいき鬼丸は剣――名は穿心角と言うらしい――を逆手に握り、振り返る。


517 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 20:57:08.02 ID:Zl8xNyaY [3/13回発言]

「待たせたな」

 鋭い視線の先には、岩に腰かけて支給されたであろうパンを豪快に喰らう男がいた。
 男は大口を開け、パンにかぶりついた。二度三度咀嚼しすぐに飲み込む仕草からは荒々しさが匂い立つ。
 水の入ったビンを、蓋を開けるのではなく上部を軽くひねる。
 ビキ、と乾いた音と共にビンは二つに割れ、男はその中身を喉を鳴らして飲み干していく。
 最初に待たせたのは自分である。故に鬼丸もまた黙して男の反応を待った。
 
「フウ。娑婆にゃあうめえモンがあるもんだ。知ってるか? パンは日本が本場らしいぜ」
「……いや、俺は日本人だがそれはおそらく間違っている。確かにパンは身近な食物だが、日本人はやはり米を食うものだ」
「ああん? だってお前、このパンは日本人が作ったモンだって……まあ、どうでもいいか」

 男はおもむろに立ち上がり、ゴキゴキと首を鳴らす。眠っていた獅子が目覚めた――そんな印象を受けた。
 悟られないように足の重心をずらし、いつでも飛び出せる態勢を保つ。

「ま、言わんでも用件はわかるわな。なんせ俺の気配に気付いても逃げずに残ってるんだ。テメエも闘る気なんだろ?」
「俺は殺し合いになど興味はないが、挑まれて背中を見せるような腰抜けではないつもりだ」
「……ハッハァッ! 言うじゃねえか。いいねえ、そういう態度は俺好みだぜ!」

 男は両の手を打ち合わせる。大気が震え、夜の静寂が引き裂かれた。
 男の全身から立ち昇る気配は強大だ。殺気を隠そうとも押さえようともせず、溢れるままに垂れ流している。
 血気に逸り、戦に酔う手合いか。鬼丸は男をそう評価した――剣十郎に指示する前の、己を見ている心持ちで。

「俺は鬼丸猛。見ての通り、侍だ」
「闘う前に名乗るたぁ古風な奴だぜ。いいぜ、そういうのは嫌いじゃねえ」

 男が拳を握る。
 鬼丸は穿心角を構える。

 行動の是非を問う事も無い。互いに戦意あるならば、ただ無心にて刃を交えるのみ。
 鉄刃への道を阻む者なら、誰であろうと斬り伏せる。
 燃え立つ闘争心を完璧なまでの克己心で制御下に置き、鬼丸は手にした武器に命を吹き込む。

「俺様は『牙』――世界最強のコウ・カルナギ様よ! 冥土の土産に覚えときな!」


518 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 20:58:18.89 ID:Zl8xNyaY [4/13回発言]

 気迫が爆発し、男が一直線に突っ込んでくる。
 しかしその狙いは、鬼丸には手に取るようにわかる。
 『水の心』。とある単身赴任のサラリーマンがARMS使いの少年に伝授したその境地を、鬼丸もまた師から学ぶことにより開眼していた。
 敵の思考が動きに反映される。形無き水だからこそ、いかようにも姿を変えてどんな器にも収まることができる。
 荒ぶる火の玉のような男の行動など、目を瞑っていても精確に読み取れる。
 左の手刀で鳩尾を突く――と見せかけて右の拳で穿心角を砕きに来る――とみせかけて、本当の狙いは違う。
 軽く首を傾けると、コウ・カルナギの繰り出した蹴りが鬼丸の頬を掠めて過ぎる。
 ゴウッと風が唸る。当たっていれば一撃で戦闘不能になるだろう威力。だが当たらなければそよ風も同然。
 二重のフェイントに全く反応せず、本命の一撃を容易く回避した鬼丸を見て、『牙』が瞠目した。
 隙ありと見て、鬼丸はがら空きになった男の背へ穿心角を叩きつける。
 斬撃のみならずコウ・カルナギ自身の蹴りの威力も相乗され、『牙』は轟音を上げて大地へと叩き落された。

「ガッ……!?」

 呻き声。ただでさえ鬼丸の腕力は凄まじい。人間10人分の重りを片手に課せるほどに。
 そこに鉄以上の硬度・重量を誇る穿心角が合わさる。ダメ押しにコウ・カルナギの力を利用したカウンター。
 それらの勢いを全て乗せての、大地との正面衝突。瞬間にして何トンもの衝撃が発生した事だろう。
 地面に大穴が穿たれる。舞い上がる土煙がコウ・カルナギの巨体を覆い隠した。
 残心。コウ・カルナギが立ち上がってくる気配が無いと察し、鬼丸は構えを解いた。
 死んだかもしれないが、向こうから仕掛けてきた闘いだ。尋常な果たし合いの末に命を奪うのならば、鬼丸に恥じる気は無い。

「フン……こんなものか。やはり俺の相手となるべきは、鉄刃。貴様しかおらんようだな」

 勝利を当然の物として捌く。喜びも感慨も無い。こんな闘いでは、心を震わせるには足りない。
 コウ・カルナギは実際相当強いのだろう。御前試合でも強者はいた。
 が、誰と闘っても鬼丸は満たされなかった。彼が見ているものは常に、ただ一人の侍の姿であったが故に。
 奴と闘えば満たされる。奴を超えられれば、侍としての新たな高みへと上る事ができる。
 望みは渇きとなり、鬼丸の足を突き動かす。宿敵を求め、新たな敵を求め。
 その時、小高い丘を立ち去ろうとした鬼丸の歩みが止まる。
 聞こえてきたからだ。

「クク……フハハハッハハハハッ!」


519 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 20:59:31.60 ID:Zl8xNyaY [5/13回発言]

 忍び笑いから哄笑へ。
 鬼丸以外の誰かの、憚る事無い笑声が聞こえてきたからだ。
 当然、その誰かとはコウ・カルナギである。ともすれば死んでいたかもしれないはずの、敗者である男。
 手応えはあった。己の一撃への確信は揺らがない。
 だと言うのに、風が土煙を吹き払えばコウ・カルナギは平然と立ち上がっていた。

「何……だと……?」
「クックックッ。やるじゃねえか。前に一度、似たような攻撃を喰らってなきゃ俺の負けだったぜ」

 ぶらぶらと、コウ・カルナギは左手を振る。
 どうやら大地に激突する瞬間、左手一本で受け身を取って衝撃を吸収したらしい。
 左手はひどく傷んでいるものの、内臓や骨など身体の主要器官にダメージは無いようだった。
 必殺を期して放った一撃が、実は見透かされていたなどと。
 思考を読んだ相手に、更に上を行かれる。それに気付きもせず己は偽りの勝利に酔っていたと。
 まるで道化だ。これほどの屈辱はない。

「……よかろう。ならば今度は二度と立ち上がれんよう、全身の骨を砕いてくれる!」

 屈辱は怒りに転化する。が、鬼丸の精神はそれを圧殺し、あくまで水の心で以て剣を振るう。
 コウ・カルナギはダメージなど苦にもせず殴りかかってくる。
 鬼丸は危険な拳と蹴りの嵐を避け、あるいは穿心角で打ち落とし、着実にコウ・カルナギの身体へと斬撃を見舞っていく。
 『火』を制する事ができるのは、同じ『火』ではなく『水』を置いて他に無い。
 コウ・カルナギの放つ殺気をことごとく読み切り、鬼丸は一方的に闘いの主導権を握っていく。
 だが、コウ・カルナギの人並み外れた筋肉の鎧を突破するのは鬼丸の技を以てしても容易ではない。
 敵の攻撃をかわしつつの腰の入りきらない攻撃では、骨を断つ事はできなかった。
 数合の打ち合いの末、コウ・カルナギは大きく後方へ飛び退った。

「ケッ、やっぱテメエも『騎士』の小僧と同じような技を使ってやがるな。俺の攻撃を先読みしやがるたあ……」

 コウ・カルナギは全身を朱に染めながらも、爛々と光る瞳で鬼丸を刺し貫く。
 派手に出血しているように見えるが、浅い。鬼丸の攻撃は皮一枚を削ったに過ぎない。
 コウ・カルナギが全身の筋肉を収縮させ、出血を強引に止めた。
 趨勢はほぼ決したように見える闘いだったが、その実鬼丸に一切の楽観は無かった。
 筋力とスピード自体はコウ・カルナギが自身を遙かに凌駕していると、鬼丸はこれまでの打ち合いの中で理解している。
 優勢でいられるのは偏に『水』――コウ・カルナギの殺気が描く攻撃のラインを事前に察知し、常に先手を取り続けていられるからだ。
 一度でも仕損じればその瞬間に鬼丸の敗北は決する。鍛えてはいるが、鬼丸の肉体の強度は常人の域を出ない。
 ギリギリの綱渡りを強いられる闘いではあった。それでも鬼丸は、負ける気はしなかった。
 コウ・カルナギからは、鉄刃のような意外性――次に何をしてくるかわからない怖さが、全く感じられないからだ。
 油断はしないが恐れる相手でもない。
 この上は、修行の末に開眼した秘剣で以て一気に決着を着ける。鬼丸はそう決意した。


520 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:00:55.32 ID:Zl8xNyaY [6/13回発言]

「気に入らねえな。俺じゃねえ、別の誰かを見ている。テメエはそんなツラしてやがる」
「……探し人がいる。これ以上おまえにかかずらう時間も惜しいのでな。終わりだ」

 呼気と共に手にした穿心角に闘気を集中すると、不意に大きな虚脱感を感じた。

(何だ……?)

 が、逆に穿心角から溢れんばかりの力を感じる。どうも修業中に感じていた手応えとは違う気がした。

(力加減を誤ったか? まあいい、これならいかに奴といえども)

 穿心角の先端、ゆらりと陽炎が揺らめく。
 刀身に集めた闘気で気の結界を張り、何万トンもの質量を疑似的に生成する鬼丸猛の切り札。
 名も無きその技を、突っ込んできたコウ・カルナギの脳天へ見舞おうとして、

「俺の行動を先読みできるんだとしても、な――」

 鬼丸の射程範囲のギリギリ外で急停止したコウ・カルナギは、大きく足を振り上げる。
 だが疑問に思う。その位置からではどうしたって鬼丸に届きはしないのに――

「――俺自身でも予想がつかない状況なら! 先読みもクソもねえだろぉぉおおおおおッ!」
「何を――」

 疑問はすぐに氷解した。
 コウ・カルナギの足裏が抉った物――意外ッ! それは地面ッ!
 直接の敵である鬼丸ではなく、自身も身を預ける大地へと攻撃を仕掛ける。その意図を鬼丸は測りかねた。
 そして、その一瞬の逡巡の間に状況は決した。

「ば、かなッ……!」

 揺れる、揺れる。世界が揺れる。コウ・カルナギの剛脚は、極小規模の局地的な地震を引き起こした。
 戦場が岩肌剥き出しの崖だった事が鬼丸の不幸か。さほど拡散しないまま伝播した衝撃は鬼丸の身体をも震わせていく。
 恐るべきはコウ・カルナギの人知を超えた異常筋力。もはや人の枠に収まらない、小型の怪獣と言っても差し支えない暴力の顕現。
 ぶわ、と舞い上がる砂煙。これで視界も閉ざされた。


521 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:02:17.34 ID:Zl8xNyaY [7/13回発言]

「敵の力を利用する、周囲の状況を利用する――へっ、小細工は弱い奴がやるもんだと思ってたぜ。
 だが、なるほど確かに効果的だ。ただでさえ最強の俺様が、更に無敵になっちまうくらいにはなぁ!」

 おそらく位置を掴ませないように走り回っているのだろう。朦々たる煙幕の中では声の出所を捉えきれず、痺れる感覚では殺気も読み取れない。
 カッ、と後方で物音。鬼丸は瞬時に反応、鈍い身体を叱咤して振り向き様に穿心角を薙いだ。

「そこか!」
「残念、外れだ」

 鬼丸の剣が砕いたのは、コウ・カルナギが先ほど飲み干した水のビン。
 しまった、と思う間も無い。咄嗟に顔を庇って掲げた左腕に何かが触れる。
 ゴキベキゴキ、と、枝が割れるどころではない、大木が根元からへし折られるような音を間近で聞いた。
 その瞬間、左腕から全ての感覚が消え失せ、鬼丸の身体は宙を舞っていた。

「――ぐはぁ! あ、ああ……ぐぁあああああっ!?」

 先ほどまでコウ・カルナギが腰かけていた岩に激突した。激痛が全身を苛むが、鬼丸はそれに対して呻いたのではない。
 彼が見ていたのは自身の左腕。伸ばせば真っ直ぐ横を向くはずの腕は、だらりと力なく地面に垂れ下がっていた。
 突き出た骨が肉を突き破り、血を噴き出させている。千切れた紐のようなものは神経だろうか。
 動けと命じても指一本反応しない。なのに痛みだけは灼熱のように鬼丸の脳へと押し寄せてくる。
 コウ・カルナギの拳は、超絶の耐久力と再生力を有するARMSを以てしてようやく受け止められる威力である。
 肉体そのものは常人である鬼丸がまともに受け止めれば、侍として致命的なほどの損傷を抱え込むのは自明の理だ。

「あ、がっ……ぐ! おおお、おお……!」
「へっ、脆いもんだ。だがARMSでもねえくせによくやった、と言ってやるぜ。まさかただの人間にこうまで手こずるとは思わなかったからな」

 予見した通り、ただの一撃で戦況は覆された。左腕はもはや使い物にならないだろう。
 しかし鬼丸は、残った右腕一本で穿心角を握り直してコウ・カルナギへと向けた。

「へえ? まだやらせてくれるのかい」
「フン、き、貴様など……右腕一本で、十分だ……!」
「ククッ。テメエは本当に面白えな。いいだろう! こいつで楽にしてやるぜ!」


522 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:03:23.24 ID:Zl8xNyaY [8/13回発言]

 余裕のつもりか、今度は小細工無しにゆっくりと歩み寄ってくるコウ・カルナギを前に、鬼丸は全身の闘気をかき集め穿心角へと流し込む。
 左腕が伝えてくる痛みが邪魔だ。だが、ここで膝を折る訳にはいかない。
 再度、意図しない脱力。だが鬼丸はそれを無視した。
 今すべきは眼前のコウ・カルナギを打ち砕く、ただそれだけ。
 剣持つ侍として、剣持たぬただの蛮人にこれ以上の後れを取る訳にはいかない。
 侍の命である片腕を破壊された借りは、命を以て償わせねばならないのだ。
 白熱する思考が攻撃色に染まり、鬼丸の精神から水の心を失わせていく――コウ・カルナギと同じく、巨大な一つの火の玉となる。

(力――もっと、もっとだ! 奴を粉砕する力を!)

 鬼丸の闘気に呼応し、穿心角が暗い光を帯びた。膨大な質量を発生させるこの技ならば、コウ・カルナギの筋肉すらも貫けると確信する。
 対するコウ・カルナギもまた、かつてない一撃を放とうとする鬼丸を阻止しようともせず、楽しげに喉を鳴らした。

「この闘気……! 俺の本能がヤベぇって叫んでやがる。だが、それがいいぜ! かかってきな! ジャバウォックの前の肩慣らしってやつだ!」
「ヌゥゥウウウウ……オオオオオォオオオオオッ!」

 鬼丸はカッと目を見開き、振り上げた穿心角をコウ・カルナギへと叩き付けた。
 剣先に集めた闘気が気の結界を形成し、膨大な疑似重力を生成する 鬼丸猛必殺の剣。
 その剣を――コウ・カルナギは両の掌で挟み止めていた。

「な……!?」
「ぐうううううっ……や、やるじゃねえか……だがな!」

 人が受け止められる衝撃量ではないはずだ。しかし現実にコウ・カルナギは膝を屈さず、真っ向から受け止めている。
 脂汗が吹き出て、血管が全身至る所で切れ始めている姿を見るに、コウ・カルナギとて余裕はないのだろう。

 だが、受け止められている。
 命を賭した一撃が。
 鬼丸渾身の、生き様そのものとも言える剣が。
 『生まれながらに全身のチャクラが開いている』と評された、アサイラムの最危険指定ミュータントによって。
 完膚なきまでに、否定された。

「おおおおおおらぁあああああッ!」

 何かが砕ける音が――今度は腕からではなく、握る武具から聞こえた。
 超重力の中、コウ・カルナギはその発生源たる穿心角を力任せにへし折った。
 フッと重力が消失し、同時に鬼丸を支えていた侍の矜持すらも叩き潰された。
 力が抜ける。敵を前にして、地に膝を突いていた。


523 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:05:42.62 ID:Zl8xNyaY [9/13回発言]

「ハァッ、フゥッ、ハァッ……へへへ、今のは中々楽しめたぜ。なぁ!」

 頭部に衝撃。コウ・カルナギの頭突き。両の手からひどく出血しているためだ。
 鬼丸の技を見事に破ったとは言え、、さすがにコウ・カルナギとて疲弊しているのだろう。
 通常なら鬼丸の頭部は西瓜のように破裂していたはずだが、この時ばかりは押して倒した程度の衝撃だった。

 しかし鬼丸は痛みなど感じていなかった。感じているのは、胸の内の虚無だ。
 侍として積み上げてきた全てを打ち砕かれた。
 剣十郎のもとで学び、鉄刃を超えるはずが――こんな無頼の輩に、侍ですらない男に敗れようとしている。

 だとしたら、自分とは何なんだ?
 ただの中学生でもない、侍でもない、そんな鬼丸猛とは何者なのだ?


―― が     ?


「鬼丸つったか。テメエの名は覚えといてやるぜ。
 あと、テメエの探してるのは鉄刃だったな。心配すんな、そいつもすぐに後を追わせてやるからよ」

 テメエの相手ってんなら、それなりに楽しめるだろうしな――そんな呟きが聞こえる。
 鉄刃。宿敵と定めた侍。奴と再び剣を交えるために研鑚を積んできた。
 それなのに――宿敵すらも、奪われるというのか。
 侍としての矜持を砕いただけでは足らず、この鬼丸が超えるただ一つの壁までも。

「じゃあ、あばよ」

 コウ・カルナギが足を振り上げる。鬼丸の頭を踏み砕くつもりなのだろう。
 命が潰える。こんな道半ばというところで、路傍のゴミのように。


――“力”が   し  か?
 

 茫洋としていた鬼丸の瞳に、僅かな炎が灯る。
 その炎が宿す感情の名は怒り。しかし、死の恐怖からくる怒りではなかった。
 鉄刃を殺す? それだけは、許せない。
 奴だけは、鉄刃との決着だけは――誰にも邪魔させはしない。


524 : ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:06:25.64 ID:Zl8xNyaY [10/13回発言]

 そのための  が欲しい。

 刃へと辿り着くための――
 刃と闘うための――
 コウ・カルナギを退ける――
 コウ・カルナギを打ち砕く――




――“力”が 欲しいか?


 ああ、欲しい。
 最強の力。

 コウ・カルナギを殺す“力”が!


――“力”が 欲しいのなら


 無意識に伸ばした指が、何かに触れる。
 自分もついさっき手にしたばかりの、どういう仕掛けか理解もできない、

 内部に自身より大きな物を収納できる、主催者から支給された玉が、
 コウ・カルナギが食料と水を出した後、放り捨てられたままになっていたコウ・カルナギ自身の支給品が、


――くれてやる!


 今、鬼丸の手の中で産声を上げた。
 開封された『ソレ』は鬼丸の掌に収まる。
 初めて触るはずなのに――何故か、気味が悪いほどに指に馴染む感触がある。
 欠けていた物が埋まった、そんな感覚があった。


525 : 魔王 ~セイタン~ ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:08:30.17 ID:Zl8xNyaY [11/13回発言]

 それは剣――黒の刀身、骸骨を模した柄を持つ、一振りの剣。

 銘を、魔王剣。
 月の女王が創造した、使い手の心の邪悪を吸い込み力へと変える魔剣。
 『魔王鬼丸』が愛剣にして、鬼丸猛の新たな刃。

 侍でない鬼丸猛は何になる? 何になる?
 『牙』に対抗するのは、『角』――角持つ強き生物、すなわち『鬼』。
 『侍』ではなく『鬼』として、戦場の修羅として、再びこの手に剣を握る。

「――アアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「テメエ、まだそんな力が!」

 コウ・カルナギの斧鉞のごとき足刀を、鬼丸の手にした魔王剣はしかと受け止めた。
 骸骨に灯る輝きは三日月を示している。
 コウ・カルナギへの敵意、殺意――水の心を忘れた鬼丸の内に生まれた、悪なる感情を吸い込み、魔王剣は歓喜の咆哮を上げる。
 夜闇の中にあって、天上の月と比するほどに輝く剣。
 その輝きを本能的に恐れたか、コウ・カルナギが恐るべき反射速度で後退した。
 だが、鬼丸は構わず魔王剣を振り落とす。

「こ、これは――!?」

 コウ・カルナギの驚愕。
 数十メートルは離れた位置のコウ・カルナギを襲うのは、鬼丸の剣から放たれた暗黒の闘気流。
 魔王三日月剣。その技の名は、そう呼ばれていた。

「くっ……テメエ! この借りは必ず――!」

 避け切れないと悟ったか、コウ・カルナギは自ら崖下の河川へと身を躍らせる。
 コウ・カルナギが数秒前までいた位置を、巨大な漆黒の刃が通過する。
 切り立った崖が、消しゴムをかけたかのように一瞬で消失した。
 あまりにも静かな、極大の破壊。
 それを成した中心、魔王剣を手にした鬼丸猛は――哄笑した。

「ハハハハハッ……ハーハハハハハッ! これだ、この剣さえあれば……!
 コウ・カルナギだろうと鉄刃だろうと恐るるに足りん! 俺が、俺が……世界最強の侍……『魔王』なのだ!」

 否――そこにいたのは、『もう』鬼丸猛ではなかった。
 魔王剣の人知を超えた力に呑み込まれた、一匹の鬼。
 力に溺れ、正道を見失った侍――その末路。


526 : 魔王 ~セイタン~ ◆l8wFU63Y6c : 2011/04/02(土) 21:09:15.25 ID:Zl8xNyaY [12/13回発言]

「クククッ、ハァーハッハッハッ……!」

 月の輝きを潜めた魔剣を手にし、鬼は、いつまでも哄笑し続ける。
 水の心は、折れた穿心角と共に打ち捨てられた。
 だがその様を哀れと見るのは正しくない。
 この穿心角こそが、鬼丸猛の精神を極限まで削り取った真犯人とも言えるのだから。

 穿心角とは光覇明宗の僧が振るう法具にして、あまりに危険との理由で封印された逸品。
 並みの僧では振るう事すらできないこの法具を、僧ですらない鬼丸が自在に操った事自体が奇跡だ。
 生み出す力は巨大にして、その代償もまた甚大。
 法力を持たぬ鬼丸に力を与えるため、法力の代わりに精神を少しずつ削り取って力へと変えた。
 その精神の傷は鬼丸に水の心を忘れさせ、魔王剣の強大な力に酔わせてしまった。
 穿心角は役目を終えた。このまま誰にも知られず、無人の荒野でひっそりと朽ちていくだろう。
 自身が生み出した邪悪の末路など関知する事も無く。

 鬼丸は破壊された左腕の出血を止めようともせず、魔王剣に魅入られたかのように笑い続ける。
 『牙』が去り、角持つ『鬼』が生まれたこの闘いを――月だけが見ていた。



【E-2 平原/一日目 深夜】

【コウ・カルナギ】
[時間軸]:第五部開始時
[状態]:軽い疲労、両掌に軽い怪我、満腹
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:サーチアンドデストロイ。ARMS、鬼丸を特に優先。刃も見つけ次第ブン殴る


【E-1 崖/一日目 深夜】

【鬼丸猛】
[時間軸]:24巻、刃との闘う直前
[状態]:左腕粉砕骨折。疲労(大)。精神不安定
[装備]:魔王剣@YAIBA
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:鉄刃、コウ・カルナギを斬る。出会った者も斬る

穿心角@うしおととら は折れた状態で放置されています。


【穿心角@うしおととら】
光覇明宗の武法具。形状は剣とランスを合わせたようなもの。
威力こそ凄まじいものの、引き換えに使い手の法力を極限まで吸い取るため、鍛錬不足の法力僧では精神に失調をきたす恐れがある。

【魔王剣@YAIBA】
月の女王かぐやが生み出した、人の心や宇宙に存在する悪を吸い取って力に変える魔剣。
出力によって三日月剣、半月剣、満月剣と三段階の技を有し、満月剣は星をも砕く威力を叩き出す。


527 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 21:10:10.70 ID:Zl8xNyaY [13/13回発言]
以上です。

528 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/02(土) 21:34:31.02 ID:aeatJnca [1/1回発言]
投下乙!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
とりあえず叫びたくなったwww

鬼丸とカルナギとのバトルが熱い! 織田信長御前試合の時の鬼丸はやっぱかっけーw
と思ったら支給品の運が良いのか悪いのか、再び魔王へ……
剣十郎の指南で前の魔王鬼丸よりも技量は高いだろうし、これはヤバイww
YAIBA好きの俺大歓喜の作品でしたw

改めて投下乙です!!

529 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/03(日) 08:45:48.74 ID:Tr9NApnA [1/1回発言]
投下乙

ヤバイぞこれはww最強レベルのマーダー誕生か
コウ・カルナギもまだまだ猛威を奮いそうだし

530 : ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 08:55:25.01 ID:toYuDq5o [1/6回発言]
長らくお時間をいただいて申し訳ありませんでした。
ドットーレ投下いたします。

531 : 思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 08:56:37.28 ID:toYuDq5o [2/6回発言]
その自動人形は泣いていた。

 地面に膝をつき、身も世もなく。

 黒い帽子が広げる大きな鍔が、月光を切り取るようにその体に影を落としている。
 西洋風の大きなひだ襟が乱れるのも構わずに、彼は中空に向かって高く高く腕を伸ばす。
 決して掴めない光を掴まんとするかのように。

「ドットーレの本心ではないのです。フランシーヌ様……」

 その頬に光る液体は無い、しかし彼は確かに泣いていた。
 握りしめた作り物のこぶしを月へと突き上げ、堅牢な素材でできた作り物の歯を軋らせて、嗚咽を漏らし。

 彼のすぐそばには、大きな黒い建物が腰を据えていた。
 建物は広い庭のような砂地を擁し、ただ静かにむせび泣く彼を見下ろしている。
 その砂地のほぼ中央に、彼はいた。
 ゆるい夜風が乾いた細かな砂を巻き上げ、どこかへとさらっていく。
 
 ここへ連れてこられる前、彼は己が主人へ反逆をした――最も恐ろしい手段をもって。 
 思い起こす数分前。暗闇の中で覚醒した彼は、壇上に照らし出された男の言葉を耳にし考えていた。
 その者たちがいかなる目的を持ってこのような場を用意したのかはわからないし、彼にはどうだって良い事だった。
 
 彼は考える。

 『これは罰だ』――と。

 確かに覚えている。今でも簡単に思い起こすことができる。
 自身からあふれ出る擬似体液、その温かくも冷たくもない無情の感触。
 彼は己が創造主を否定した。
 そして、確かにあのまま朽ちるはずだったのだ。

 しかし、どうだろう?

 彼は全くの無傷のまま、こうして生きながらえている。
 その上自分に課せられたらしいバトルロワイアルという殺し合いゲーム。
 人間を殺すことは造作もない、これをしなくては彼らは生きることができない構造なのだから。
 けれど最も大切な『もの』を否定してしまった今、彼は何を望むのか。

 言わずもがな、それは「存在する」こと――そしてその存在理由は、「フランシーヌ人形を笑わせること」。
 だが運命のあの日、彼はその存在理由を否定し、永久に仕えるべきであったはずの女主人を否定した。それはすなわち絶望への服従。
 
 では、主を失った彼はなぜいまだに存在することを欲しているのか?

532 : 思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 08:57:32.67 ID:toYuDq5o [3/6回発言]
 
 ――彼は赦されたかった。

 いつかのように、温度を感じない自分の頬にその麗しい手を当て、お前を許しますと言われたかった。
 生命の枠から外れた、思考する存在である彼は、何よりもすべてを許されたかった。

 彼は考える。

 これは機械仕掛けの神が与えた罰だ。
 自分を創造してくれた尊き存在を拒んでしまった自分は、その忠誠心を再び試されるのだ。

 そしてこの罰は一千一遇の好機でもある。
 どのような願いもかなえられるという『景品』は魅力的だ。
 真意のほどは定かではないが、ここを疑えばきりが無くなってしまうことも彼は思い至っていた。

 多少特殊な能力を持っているにせよ、取るに足らぬ人間にへつらい、『願う』などということは癪に障りもしたが――すべてはフランシーヌ人形のため、彼は望む。
 
 【柔らかい石】を。

「フランシーヌ様……どうかこのドットーレを、もう一度お側に」

 『罰』とはすなわち――『試練』だ。
 過去の過ちを打ち砕く試練だと彼は受け取った。

 悔恨を噛みしめ、憐れみを乞いながら頭を抱え込み、地面へとこすり付ける。
 帽子がばさりと彼の横へずれ落ちた。

 不意におぞましい記憶がよみがえる。
 機械装置で形作られた耳に、あの夜対峙した憎い女の幻影がささやく。  
 ただ悲痛に身をよじり。乾いた声が幾たびも、回路の中へとこだました。


 ――フランシーヌの永遠の歯車奴隷が!


 歯車奴隷。
 歯車。
 奴隷。



533 : 思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 08:58:01.55 ID:toYuDq5o [4/6回発言]

「ルシィィィィイイイルゥゥゥゥウウウ……」

 仮面の上から激しく顔面を掻き毟る。
 吹き込まれなければ思いもしなかった――自身の存在理由に対する冒涜を囁きかけた、憎い女。
 呪詛のごとくその名を呟いて、憤りを温める。

 フランシーヌ人形を否定し躰が動いたとき、確かにあの女の体を肩口から深くえぐってやったはず。
 しかし、石化を見届けたわけではない。しぶとく生き残って、どこかでまだフランシーヌ人形を狙い続けているのかもしれなかった。
 加えてルシール達に率いられた多くのしろがねどもも、まだ根絶やしにはしていない。

「げに憎らしきはしろがねどもよ……己の全身全霊を持って、駆逐してくれる」
 
 顔を上げ、片膝をつく状態で身を起こすと帽子を拾い上げて被りなおす。鍔に手を添えて角度を直し。
 彼の口元は笑いの形を作っていた。唇の端を釣り上げ、目元は月影の中に隠したまま。

「そして、人間ども――中には何やらおかしな能力を使う者もいるようだが――いただくぞ、その血を。たっぷりとな……」

 彼は近くに放り出していたデイバックを引き寄せ、中を物色し始める。
 自動人形たちが最も軽蔑する人間たちから配られた物を、なぜ彼は使う気になったのかはよくわからない。
 フランシーヌの元に帰るためならば、そのようなプライドなど捨て去ってなんともないのだろう。

 袋の中身を地面へとぶちまける。地図や名簿、人間の食糧が乾いた砂の上に散乱する。
 と、奇妙な珠が2つ転がり出た。支給品とやらはこんなものか、と苛立ちがわいたが、始まりの部屋で男が言っていた言葉を思い出す。
 人形に『念』などというものがあるかわからないが、とにかく2つの珠を手に握った。

 そこから出てきたものは――
 

534 : 思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 08:58:45.43 ID:toYuDq5o [5/6回発言]
 ※   ※   ※ 

「己のショーは人間どもの血液で満たされるだろう」

 彼の右手に握られているのはAK-47――俗にカラシニコフと呼ばれる歩兵用アサルトライフル。
 連射可能のフルメタルジャケット、その貫通力は近距離であればボディアーマーすら貫通する。
 彼自身の能力とこの武器を組み合わせれば、近距離・長距離でかなり戦術の幅が広がるだろう。

 あの黒服の男も、下らぬ人間どもの道具の中でも比較的ましなものをよこしたらしい――彼は歩き出した。

「全てはフランシーヌ様のためだ……なあ?」

 歩みを進めながら、左手に持った『物』に語りかける。   
 
 それは奇妙な出で立ちだった。
 紙製の平べったい立方体。その側面の上下左右に2本ずつ木の棒を差し込まれている。これは手足のつもりだろうか。
 そしてこちらはおそらく口のつもりなのだろう、上部にぱっくりと開けられた隙間は彼の歩みに合わせて開閉している。
 細いプレッツェル菓子が印刷された表面、その上から油性マジックでぞんざいに書かれた歯の絵柄と、何かのメーターのような扇形の絵柄。

 その下には片仮名で文字が書かれている。

 『バルカン』――これがこの紙人形の名だった。

「この名簿とやらを見ろ。やはりあの女ども、ゴキブリのようなしぶとさで生き残っていやがった。
 フランシーヌ様のため、俺が殺し尽くさんとなあ?」
 
 参加者名簿を指先ではじき、忌々しげに笑う。
 紙製の、人形未満の存在であるバルカンはドットーレの語りかけにも無言。
 しかし満足したようにうなずくと、彼はバックへ名簿を仕舞い込み立ち上がる。
 バルカンは何も語らず、ただ割り箸製の手足をかたかたと揺らしている。 

 目の前の建物を物色するため、黒い大きな影がゆっくりと動き出した。
 道化のように大股を開けて飛び上がり、スキップをしながら彼は進む。

 右手にはライフル『AK-47』、左手には紙人形『バルカン』。

 ――たった一人の真夜中のサーカスが、その血なまぐさい幕を開けた。



535 : 思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o : 2011/04/03(日) 09:00:17.67 ID:toYuDq5o [6/6回発言]

【2-B 小学校前 一日目深夜】

【ドットーレ@からくりサーカス】

[時間軸]:本編死亡直前
[状態]:健康
[装備]:バルカン@金色のガッシュ!!、AK-47@現実
[道具]:基本支給品一式
[基本方針]:優勝し、柔らかい石を手に入れフランシーヌの元へ帰る
      1.小学校を物色。
2.しろがねを殺す。
3.人間を殺す。
      4.コロンビーヌとは気まずいので会いたくない(フランシーヌ人形を否定してしまったから)      


以上です。非常に短いssに一週間もいただいてしまい、重ね重ね申し訳ありませんでした。
ご指摘があればお待ちしております。

536 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/03(日) 11:58:22.94 ID:yePT0oUq [1/1回発言]
投下乙です
ドッドーレはこの時間軸からか……
エレオノ―ルに会ったらどうなるのか気になる

537 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/03(日) 15:39:01.00 ID:eXzs+ZNt [1/1回発言]
時間軸

538 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/03(日) 21:33:11.35 ID:HNmSuKnj [1/1回発言]
お二方投下乙です


魔王 ~セイタン~ ◆l8wFU63Y6c 氏

うおおおおおおおおおおおおおお、すげえええええ
まさかの鬼丸の参戦時期&そこからのマーダー化
一般人に毛が生えた程度の能力でカルナギとわたり合ってた前半、そして魔王剣に飲まれて力とひきかえに心を失った後半
鬼丸とカルナギ、どっちが勝ってもおかしくない手に汗握る素晴らしいバトルでした
両者ともに厄介なマーダーになりそうだw



思考する機械、あるいは――  ◆PbH8Onsw.o氏

ドットーレ……。
ルシールの時も思いましたが、心情を描くのが上手い!
フランシーヌに許されたいという気持ち、しろがねや人間を憎む気持ち
こいつも中々暴れてくれそうだ、これからに期待

でもバルカンに語りかける様だけはシュールすぎるwww
いや、気持ちは分かるんだけどさ

539 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/04(月) 00:19:30.45 ID:yzPaYhoR [1/1回発言]
魔王剣出たか~
うろ覚えだけど横浜を一撃で全壊させた技あったね。
期待!

540 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/04(月) 10:05:13.28 ID:TwQD+aGZ [1/1回発言]
>>539
鬼丸より使いこなせてなかったゲッコーの魔王半月剣で横浜壊滅だからな
制限があるにしても、かなりの脅威になりそうだ

541 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 20:46:26.48 ID:6c7P2HXO [1/9回発言]


542 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 20:50:38.68 ID:Lg/RLyei [1/16回発言]
test

543 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:06:57.44 ID:N+JFTgZ+ [1/1回発言]
sien?

544 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:20:34.31 ID:SPXMuHZ+ [1/15回発言]
当方に支援の用意あり!

545 : ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:30:39.21 ID:Lg/RLyei [2/16回発言]
だいぶ時間をいただいてしまい、申し訳ない。
これより投下します。

546 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:30:39.83 ID:gJ0Aq6oO [1/3回発言]
支援

547 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:31:37.31 ID:6c7P2HXO [2/9回発言]


548 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:31:41.01 ID:Lg/RLyei [3/16回発言]
 ◇ ◇ ◇



 僕等はもがき苦しんでるだけの人間様さ。



 ◇ ◇ ◇


 高槻涼は、海岸で座り込んでいた。
 いや、へたり込んでいると言ったほうが正しいか。
 オリジナルARMSとしての運命から抗い続けてきたはずなのに、赤木カツミ一人失ってしまっただけで涼は立ち上がることさえできなくなっていた。
 手元にあったリュックサックは確認もせず地面へと置き、虚ろな瞳を水平線へと向けているだけだ。
 眼前の海など視界にはなく、カツミの頭部が身体から離れていく光景だけがフラッシュバックし続けている。
 どれだけの時間が経過したのかなんて、涼には分からない。
 少し月が傾き出していることすらも、目に入っていない。
 やがて、涼の脳内に異変が訪れる。
 喪失感でいっぱいだったはずの心に、別の感情が生まれたのだ。

『憎い』/(憎い)

 カツミを喪失した悲しみが、彼女を殺した男への怨恨に変わり始める。
 身体に埋め込まれたARMSコア『ジャバウォック』から響く声が、涼の思考とシンクロしていく。
 そうならないように、生きてきたはずだった。
 ジャバウォックの強い憎悪を、抑えつけてきたはずだった。
 苦しみながらも、なんとか耐えてきたはずだった。
 これからだって、そうしていくつもりであった。

『憎い! 憎い! 憎い!』/(憎い! 憎い! 憎い!)

 だが現在の涼には、赤木カツミを失った涼には、憎悪しかない。
 ジャバウォックを縛り付ける意味も理由も、先ほどなくなってしまっている。

『――――が、憎い!』/(キース・ブラックが……キースが、憎い!)

 どくんどくん、と。
 鼓動によく似た低音が、涼のなかで響きだす。
 身体に熱が籠り、右手を乗せていたアスファルトにひびが入った。

「よう、えーと……高槻涼、だよな?」

 近付いてきた何者かが声をかけてきたが、涼の耳には入っていなかった。
 もはや彼が聞こえているのは、体内から響く声のみだ。
 ジャバウォックから幾度なく尋ねられてきた問い――ただ、それだけ。

「……しい」
「え?」

 一拍置いて、涼は言い切った。

「力が、欲しい」

549 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:32:33.65 ID:SPXMuHZ+ [2/15回発言]
 

550 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:33:08.15 ID:Lg/RLyei [4/16回発言]

 涼の身体に、異変が起きる。
 髪が逆立ち、全身に亀裂が走り――姿が変わっていく。
 全身の筋肉が膨張して服が弾け飛ぶ。
 歯と爪は肉食獣を思わせるほど鋭く尖り、肉体が鉱物じみたものに。

 高槻涼は消失し、魔獣・ジャバウォックが殺し合いの舞台に出現した。

『人類(ヒト)が…………憎い!!』/(――――――――)

 涼の意識は沈んでしまい、ジャバウォックの声に反応を示すことはない。
 ゆえに、怒りをぶつけようとする対象にも気付かない。
 ■■■の深すぎる憎悪をすでに知っていたはずだというのに、身を任せてしまった。


 ◇ ◇ ◇


 一人の男が、深夜の住宅街を駆ける。
 黒い服の上からでも分かるほど鍛え抜かれた身体を持つ、彼の名は加藤鳴海。
 目的地など存在しないのだが、それでも足を止めようとしない。
 殺し合いの説明の際にキース・ブラックが二人を殺害したとき、彼は何もできなかった。
 せめて『殺し合え』と告げられた時点で動き出していたなら、ああはならなかったかもしれない。
 考えれば考えるほど動けなかった自分のことが許せず、鳴海は他の参加者を探し続けていた。
 ブラックの言葉に従おうとする者を止め、反対する者と手を組み、戦う力を持たない人々を守るために。
 自動人形(オートマータ)との戦いにおいて血を流しすぎて意識を失い、目を覚ました途端に『殺し合え』などと命ぜられる。
 そのような異常事態においても、加藤鳴海は加藤鳴海として進んできた道を外れる気はなかった。
 最後の一人となる気も、笑って命を落とす気も、自分たちが助かるために足手纏いを切り捨てる気も、ない。
 このプログラムには子どもまで呼ばれていた。思い返して、鳴海は歯を軋ませる。
 彼らは自分で戦うことなどできないだろう。
 ならば鳴海の身体は、まだ小さく戦えない子どものためにある。
 だというのに、みすみす死んでいくワケにはいかないのだ。

「っと、そこの……!?」

 ようやく視界に捉えた影に振り向き、鳴海は言葉を詰まらせる。
 そこにいたのは、人と人形。
 初めて見るタイプではあったが、人形破壊者(しろがね)が操るマリオネットなのは明確であった。
 しろがねとは肩を並べて戦ったのだ。こんなにも早く同志に会えるとは。
 と、そこまで考えて、鳴海は自分の考えが甘いことに気付く。
 意識を失う寸前に庇ってくれたしろがねたちは、この場には呼ばれていない。
 また、しろがねの中にはオートマータを破壊することだけ――本当にそれだけを目指している者たちも多数いるのだ。

「へえ……こりゃまた。兄さん……ククッ、死んでやせんでしたか」
「なに、を言っている……?」

 人形の陰から現れたのは、裾の長いコートを羽織った目つきの悪い男。
 どうやら自分のことを知っているような口ぶりであるが、鳴海に心当たりはなかった。
 マリオネットを操っていることからてっきりしろがねかと思いきや、強面の男は黒髪に黒目である。
 最後の生命の水(アクア・ウイタエ)を飲んだ鳴海でさえ、ついに髪が一房ほど銀色になっているというのに。

「奇妙な縁、ってヤツなんですかね。
 しかし軽井沢のあんなとこで腕もぎ取られて、どうやって生き延びたんです? そりゃ義手ですかい?」

 電撃が身体を走り抜けたかのような感覚が、鳴海の肉体を走り抜けた。
 軽井沢という名は知っている。かつて過ごしていた日本の地名である。
 となれば眼前の男は、鳴海自身の記憶から抜け落ちてしまった過去を知っているのではないだろうか。

551 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:33:18.19 ID:SPXMuHZ+ [3/15回発言]
 

552 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:33:52.27 ID:Lg/RLyei [5/16回発言]

「日本での俺を……知っているのか?」
「へ?」
「俺に何があったのか、教えてくれないか」

 男が僅かに息を呑んだのち、真剣な眼差しになる。

「兄さん……アンタ、記憶がねえんですかい」

 鳴海が深く頷くと、男はどこから話すかを悩んでいるのか黙り込む。
 急に、両者の視界がぶれた――いや、大地が激しく震動した。
 すぐに収まったものの、確かに地面に衝撃が走ったのだ。

「……悪い、また後に聞かせてくれ」

 鳴海は短く告げると、男に背を向けて走り出す。
 何があったのかは分からないが、南が衝撃源であることは分かった。
 もしも爆弾などを使ったのであれば、しろがねでさえ危険だ。一般人であれば一層、さらに子どもであれば――

「待ちなせい」

 男が鳴海を引き留めながら、両手の指を小刻みに動かす。
 指一本一本に取り付けられた糸に操られ、マリオネットの足に付属したキャタピラが回転を始める。
 少しずつ動き出したマリオネットに乗り、男は言葉を続けた。

「ジョージの野郎とは離れちまったが……兄さんといても、退屈はしなそうだ。
 ま、あたしゃ兄さんと違って、わざわざノーギャラで人助けなんて気はねえですが。連れてくくらいなら構いませんぜ。危なくなったら一人で逃げやすがね」

 口元を吊り上げた男に、鳴海も笑みを返してマリオネットに飛び乗った。
 鳴海がマリオネットに掴まるのを待って、男は腕ごと指を動かす。
 キャタピラが激しい回転音を立てて、一気に加速していく。

「すまねえな、えっと……」

 自動車と変わらないほどの速度となったマリオネットの上で、鳴海は口を開く。
 直接風を身体に受けてしまうが、特に動じた様子もない。
 視線を前方から離さずに糸を繰ったまま、人形遣いの男は返答する。

「阿紫花ですよ。ついでに言やあ、この懸糸傀儡はグリモルディ」
「ありがとよ、阿紫花さん!」
「…………兄さんにそんな呼び方されると、鳥肌が立ちやがる」

 阿紫花の指が微かに乱れ、グリモルディが斜めに傾いた。

553 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:33:58.67 ID:6c7P2HXO [3/9回発言]


554 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:33:59.17 ID:SPXMuHZ+ [4/15回発言]
 

555 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:34:14.38 ID:Lg/RLyei [6/16回発言]


 ◇ ◇ ◇


 全身黒ずくめに、左目部分だけが開いた仮面。
 後ろ髪と前髪を長く伸ばしており、黒いコートの袖は長く、ほとんど肌は見て取れない。
 見えるのは、左目とピアスをつけた両耳くらい。
 そんな近寄り難いを風体した紅麗は、海岸で立ち尽くしていた。
 先刻の震動にも狼狽えることなく、一点だけを見つめている。
 左目に映るのは、高槻涼であった魔獣。
 だいぶ離れているが、障害物がない平地である以上は彼の視力ならば視認することはできる。
 キース・ブラックについての情報を得るために接触しようと思っていた矢先に、涼は暴走したのだ。
 魔獣の唸り声が大気を切り裂いて、鼓膜を震わせる。
 赤木カツミという少女を殺された際の高槻涼の叫びが、紅麗のなかに蘇る。
 紅麗が心を寄せていた相手も、紅麗の目の前で殺害された。
 そのときも、気付かぬうちに設置されていた爆弾によって――であった。

「そうか」

 長い袖の下で、紅麗は拳を握りしめる。
 鈍い音を立てて、関節が鳴った。

「それが貴様の選択か」

 涼と同じく、紅麗も喪失している。
 愛していた女性だけでない。
 両親も、一族も、信頼を寄せていた仲間もだ。
 それでも、紅麗は決して止まりはしない。
 何度も止まりそうになったが、そのたびに戦場へと舞い戻っている。
 失ってきた者たちが信じた自身の目的を果たすために。

「失望したよ、高槻涼」

 紅麗は、涼に関心を寄せていた。
 自身と同じように愛していた人間を殺害されたからという、理由だけではない。
 いち早くこのプログラムを破壊して帰還するためには、彼の知識と異能が必要だと考えていたのだ。
 その興味も、もう霧散してしまった。
 戦うべき相手を見定めることもできず、見境がなくなってしまうのなら、そんなものは邪魔なだけだ。
 何より思い――人を殺害した男にとって都合よく動いていることが、かつての誰かを見ているようで気に入らない。
 魔獣の元へと歩み出した紅麗の身体を、微弱な炎が覆っていた。

556 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:34:31.35 ID:JhRrrvlM [1/3回発言]


557 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:34:40.03 ID:SPXMuHZ+ [5/15回発言]
 

558 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:34:59.98 ID:Lg/RLyei [7/16回発言]


 ◇ ◇ ◇


「――ちッ!」

 派手な舌打ちを鳴らし、御神苗優は横に跳ぶ。
 ジャバウォックの右拳をあわやというとこで回避し、カウンター気味のハイキックを顔面に叩き込む。
 相手の勢いを利用してのカウンターであったのだが、ジャバウォックはのけ反るどころか微動だにせず左腕を伸ばしてくる。
 身体を捻るも、避けきれずに頬に傷が入る。
 だが、優もまた動じない。
 眼だけでなく己の五感全てで相手の動きを追っている優には、読めない攻撃ではなかったのだ。
 あえて離れずに距離を詰めたままでいたのには、理由がある。
 リュックサックは戦闘開始とともに放り投げたが、武器は手元に置いたままだ。
 ポケットから蔵王というらしい玉を取り出し、両刃の片手剣を取り出す。

「ッ、らあ!」

 斬撃を受けようと出て来たジャバウォックの右手に、刃が入っていく。
 優が持つ片手剣は、精神感応金属(オリハルコン)と同系金属であるヒヒイロカネ製だ。
 ARMSの肉体とはいえ、切り刻めない道理はない。

「なっ!?」

 優は、自身の目を疑った。
 ジャバウォックが勢いよく右腕を横に振り、肘から先をもぎ取ったのだ。
 唖然とする優の前で、ジャバウォックの右腕が再生する。斬り落とした腕が地面に落下するよりもい。

(細胞復元能力がイカレてやがる……っ!)

 再生を終えて攻撃を再開しようとしたジャバウォックに、優はタクティカルベストから取り出した巨大な拳銃を向ける。
 フェイファー・ツェリザカという名のそれは、象や装甲車とて相手取ることができる逸品だ。
 使う人間のことを考えずに破壊力だけを求めた代物ゆえ、並の軍人でも反動で腕を持っていかれてしまうだろうが、優はスプリガンだ。
 アーカム財団直属のS級特殊工作員であるスプリガンに、使いこなせぬ銃器など存在するはずがない。
 重量六キロの化物銃を片手で操り、ジャバウォックの両膝を二回ずつ撃ち抜く。

「そんなもん続けてたら、体内のエネルギーが尽きちまうぞ!?」

 倒れこんだジャバウォックを見下ろしながら、優は声を荒げた。
 彼には、高槻涼を殺害する気はない。
 大切なものを失う悲しみを、優はよく知っている。
 手当たり次第に破壊したくなる気持ちも、分からなくはない。
 だからこそ赤木カツミを殺害されて歯止めが利かなくなった涼を、見てはいられなかった。
 怒りをぶつけるべき相手ではなく、無関係の人間を相手するなど――――

「いまのお前は、キース・ブラックの言いように操られてる殺人機械(キラーマシーン)じゃねえか!!」

 言葉の半ばで、ジャバウォックが急再生をして跳び上がった。
 予期していなかった動きに焦った優が引き金を引くも、ジャバウォックは止まらない。
 肩に巨大な穴を開けながらも、優に拳を叩き込んだ。

「グ、ァ……」

 優は弾丸の切れた拳銃を捨ててバックステップで距離を取りながら急所を庇ったものの、ガードの上からでも威力は凄まじかった。

「…………AMスーツを着てりゃあよかったと、心から思うぜ」

559 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:35:20.99 ID:JhRrrvlM [2/3回発言]


560 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:35:21.13 ID:SPXMuHZ+ [6/15回発言]
 

561 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:35:29.37 ID:6c7P2HXO [4/9回発言]


562 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:36:12.09 ID:SPXMuHZ+ [7/15回発言]
 

563 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:36:35.38 ID:Lg/RLyei [8/16回発言]

 地面を数回バウンドしながら二十メートルほど吹き飛んだ優が、よろめきながら悪態を吐く。
 そんなものみ耳を貸そうともせず、ジャバウォックが飛びかかっていく。
 最後の銃撃によって空いた穴は、すでに埋まってしまっていた。
 獣人(ライカンスロープ)を元に作り出された合成獣(キメラ)の姿が、優の脳裏を過る。
 もともと高槻涼が人間としての姿を持っていたことから同じものとは思えないが、再生速度は合成獣に匹敵していた。
 肉薄してくるジャバウォックを見据えながら、優は思う。
 涼はなぜこれだけの力を持っていながら、ブラックに仕掛けたときは右腕だけを変化させていたのだろう――と。

(……簡単じゃねえか。俺と変わらねえ)

 優は、自分のなかに眠る殺人機械としての能力を恐れていた。
 力を解放して、自分が人間ではなく機械となることが怖かったのだ。
 おそらく、涼もそうだったのだろう。
 腕だけでなく、自分の全身が人間でなくなってしまうことを避けたかったのだろう。
 だというのに、どうしていまはこうなっているのか。考えるまでもない。
 怒りに任せて、嫌っていた力に身を委ねているのだ。
 自分にも使いたくない力があるこそ、自分だって何度も失っているからこそ、優は涼のことが気に入らなかった。

「はッ、知ったことかよ!
 こちとら、両親から始まって三ケタじゃ足りねーくれー失ってんだ! 甘ったれてんじゃねーぜ!」

 目を見開いて、優は言い放つ。
 さながら彼の師匠である朧のような動きで、振り下ろされたジャバウォックの拳を掻い潜る。

「俺やアンタはフツーじゃねえんだろうが、どう生きてきても何かしら背負っちまうモンなんだとよ、人間ってのはッ! だってのにいちいち拒んでんじゃねえ!!」

 鳩尾に右ストレートを叩き込んだのち、続くように左拳を打ち込む。
 薙ぎ払われたジャバウォックの爪を五感で感じ取って、やり過ごしてから足を払う。
 体重を前に向けていたこともあり、ジャバウォックはよろめく。
 それを好機とばかりに、優は両手と足を交えてラッシュを浴びせていく。

「ざけんじゃねーーぜ! てめー人間……『高槻涼』をやめちまったのか!? それでいいのかよ!」

 一際大きい動作で放たれた上段蹴りも、ジャバウォックを数歩後ずさりさせるだけに終わる。
 渾身の一撃がこれといったダメージを与えられなかったことに優は表情を険しくするが、反撃は即座には来なかった。
 腹部に浮き出てきた高槻涼の顔面が、困惑したような表情で首を傾げるだけだ。
 勘付いた優が駆け寄って声をかけようとするも、その前に涼の顔はジャバウォックの体内に沈んでしまう。
 しかし一度姿を見せたことから、まだ涼は人間に戻れる、と優は確信した。

(とりあえず、もう一度追い詰めれば――ッ!?)

 優の思考は、そこで切り上げられた。
 ジャバウォックが、その巨体に似合わぬ速度で迫ってきていたのだ。
 このままでは鋭い爪が腹部を貫いてしまう。
 回避することは不可能だと判断し、優は致命傷を受けてしまわないように左腕を出す。

 結果を言おう。
 ジャバウォックの爪が、優の肉体を貫くことはなかった。
 横合いから放たれた猛火により、ジャバウォックは吹き飛ばされたのだ。

「『発火能力者(ファイアースターター)』……!?」

 掌から炎を飛ばした紅麗に視線を向け、優はぽつりと漏らす。
 だが同時に、その考えが誤っていることにも気が付いていた。
 彼の知る見た相手を炎上させる発火能力とは、まったく違っている。
 わざわざ視界を遮る仮面を被る理由もなければ、そもそもの威力自体が遥かに格上だ。
 僅かな時間しか確認できなかったが、炎からは妖気のようなものも感じ取れた。
 おそらく単純な発火能力というより『魔術』や『呪術』のほうが近いのだろう。
 そう結論付けた優の前で紅麗は再び炎を放ち、立ち上がったジャバウォックに追撃を喰らわせる。

564 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:36:52.41 ID:SPXMuHZ+ [8/15回発言]
 

565 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:37:45.31 ID:SPXMuHZ+ [9/15回発言]
 

566 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:38:05.42 ID:6c7P2HXO [5/9回発言]


567 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:38:06.71 ID:Lg/RLyei [9/16回発言]

「目障りだ、消えろ」

 他者を射抜くようなプレッシャーを抑えようともせず、紅麗は短く吐き捨てた。
 砂煙のなかにいるジャバウォックだけを見据えて、顔を向けることすらしない。
 自分を避けるように炎を放っておいての口ぶりに、優は小さく笑った。

「んなこと言っても、炎だけじゃ倒れねえみてえだぜ」

 二度も炎の直撃を受けたジャバウォックは、すでに体勢を立て直していた。
 治癒も終わったらしく、万全の状態となっている。
 両手を広げて唸り声をあげているジャバウォックを眺めながら、優は手放していたリュックサックから小麦粉の袋を取り出す。

「これバラまいたら頼むぜ」

 優が言わんとしていることを理解したのか、紅麗は飛ばしかけていた炎を掻き消す。
 背部から空気を放出して加速しているジャバウォックに、優は思い切り袋を放り投げる。
 業務用の大きなものだが、ジャバウォックにダメージを与えるほどのものではない。
 鋭い爪であっさり薙ぎ払われ、小麦粉が舞い上がる。
 その飛散する瞬間を狙い、紅麗が炎を射出した。
 粉の一つに引火した炎が、大気中の小麦粉に燃え移っていき――粉塵爆発。
 密室のほうが起こりやすいが、屋外だとしても小麦粉が辺りに散らばってしまう前にすべてに炎を放てば起こすことはできる。
 炎が上がるのは僅かな時間だけで、すぐに消えてしまう。
 そう、粉塵爆発だけならば。
 爆発を見据える紅麗の両肩から、天使じみたな大きな翼が伸びている。
 赤く、紅く、燃え盛る翼が。

「翅炎」

 静かに告げると、翼の羽一つ一つが拳大の炎弾と変化して放たれる。
 機関銃のような速度で飛ばし続けても、炎弾が尽きてしまうことはない。
 撃ち出すのと同じ速度で、新たな羽が生み出されているのだ。
 金属を焼いたような臭いと黒煙が辺りに立ち込めるが、紅麗は一向に攻撃をやめようとしない。

「お、おい。アンタ、そろそろ……」

 見かねた優が声をかけるが、翅炎は止まらない。

「アイツ、いまの姿じゃ分からねえかもしれないけど、最初の部屋で――」
「高槻涼だろう。知っている」

 鬱陶しく思ったのか、紅麗は振り向かずに応える。

「だが、それがなんだと言うのだ。
 暴走して手当たり次第に破壊せんとする獣など、プログラムを破壊する上で障害となるだけだ」

 優は、言い返すことができなかった。
 まだ涼が人間に戻ることができると信じているが、確証なんてない。
 プログラムを叩き潰す上で障害となるという意見も、もっともだった。
 自分たちスプリガンの仕事は人殺しではないが、どうしても任務の邪魔になるのなら殺すしかない。いままでだって、何人も殺してきた。
 そんなことは、よく分かっているのだ。
 ただ、ジャバウォックの腹部に浮かんだ涼の顔が、優の脳内から離れない。

 ――――唐突に、ジャバウォックの咆哮が大地を震動させた。

 瞬間、炎のなかから何かが飛来する。
 フェイファー・ツェリザカの弾丸を体内で精製しなおしたことなど、ジャバウォック以外には分かるはずもない。
 紅麗はすんでのところで跳躍して回避したが、優は思考から復帰するのが遅れてしまう。
 胸に撃ち込まれた弾丸は、肉も骨も臓器も根こそぎに奪い取って貫通する。
 口と胸から大量の血を流しながら、優はくずおれた。

568 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:38:51.00 ID:SPXMuHZ+ [10/15回発言]
 

569 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:39:02.56 ID:Lg/RLyei [10/16回発言]

「くッ!」

 もはや戦力とならないであろう優から意識を外し、紅麗は空中で自らの幻影を無数に作り出す。
 別魅という技術で生み出された身代わりは、見抜くことなど不可能と言っていい。
 相手が飛び道具を使うのならば、的を増やしてしまえばいいだけだ。
 その紅麗の考えを見抜いているかのように、ジャバウォックは銃口に変形していた右腕を元の形状に戻す。
 にたりと笑って、ジャバウォックは口を動かす。
 ARMSを持たぬ紅麗にARMSの言葉は届かないというのに、不思議と意味が理解できたような気がした。
 ジャバウォックがその鋭い爪で何もない空間を払うと、たった一薙ぎで紅麗の幻影はすべて切り刻まれた。
 『空間ごと』幻影を切り裂いたのである。
 いや、幻影だけではなかった。
 何とか致命傷は免れたものの、着地した紅麗は脇腹から血を流している。
 地に膝を付けた紅麗を意に介さず、ジャバウォックは死にかけの優へと意識を向けた。

 立ち上がることもできず、優は晴れていく煙を眺めている。
 ようやく露になったジャバウォックの姿は、かつてのものとは変わっていた。
 まるで熱した金属のように、赤黒く輝いているのだ。
 悠然と歩み寄ってくる魔獣を、見ることしかできない。
 一歩進むごとにコンクリートが焼ける臭いが、鼻を刺激する。
 そして、ついにジャバウォックが止まり腕を掲げた。
 不甲斐なさに歯を噛み締める優の前に、男が割って入る。
 その背中が、優にはやけに大きなものに見えた。
 男は腰を低く落として鋭く息を吐くと、ミサイルのような弾道で正拳を放った。


 ◇ ◇ ◇


「あの腕は……」

 胸に穴を開けた青年に歩み寄る巨大な化物。
 その様子を見て咄嗟に飛びかかった加藤鳴海が、何か引っかかるかのように呟く。
 が、すぐに考えるのをやめて、抱え上げた優を阿紫花が操るグリモルディの元へと動かした。

「アンタ、氣法師か……?」
「いや……ただ中国拳法を習っていただけだ。難しいことはできねえ……」

 横たわらせた優からかけられた言葉に、鳴海は申し訳なさそうに応える。
 生命の水を与えたところで助からないのは明白だ。もしも医療に使うことができるほど、気の熟練者であったのなら――
 そんな鳴海の考えとは対照的に、優は口角を吊り上げた。
 攻撃を受けたジャバウォックが蹲ってしまったのも、中国拳法の使い手だというのなら頷ける。
 そして氣を使えるのならば、ジャバウォックを止めることもできるはずだった。

「アイツ、最初の場所にいた高槻涼だ」

 鳴海が絶句してしまう。
 思っていたことがそのまま表情に出る男らしく、迷っていることが見て取れた。

「ヤワな攻撃じゃ死にゃしねえよ。
 全力で氣を叩き込んで、暴走しちまっているアイツを眠らせちまってくれ」

 優に背中を押され、鳴海がジャバウォックへと向き直る。
 誰かを救うために戦うという、鳴海を最も強くするシチュエーションがここに展開された。

570 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:39:44.19 ID:JhRrrvlM [3/3回発言]


571 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:40:18.58 ID:Lg/RLyei [11/16回発言]

「おォォォォォォ!!」

 鳴海とジャバウォックの咆哮が重なった。
 思い切り地面を蹴る鳴海だが、遅い。
 人間のレベルを超えたスピードとはいえ、戦闘に特化したオリジナルARMSを相手にするには遅すぎる。
 不意を突いた先刻とは違い、やはり正面からではジャバウォックのほうが早い。
 そのことに気付いているのは、当事者たちだけではない。
 横になったままで眺めている優からしても、明確であった。
 銃は手放してしまったし、そもそも弾丸が尽きている。
 ヒヒイロカネ製の剣は手元にあるが、刃が届くはずもない。
 ジャバウォックの意識を一瞬でも奪えれば、それでよいのだ。
 せめて石でも――と手を伸ばした優の手が、奇妙なものを掴んだ。
 鉱物のようで生物のような、そんな物体。
 視線だけを飛ばして確認してみると、少し前に斬り落としたジャバウォックの腕であった。
 落下の衝撃で千切れたらしい爪を掴んで、優は投擲する。
 立ち上がることもできず、力も入らない上にまともなフォームですらない。
 普段のスピードにはまったく及ばない。
 しかし優の球は本来時速四百キロ。少しばかり遅くなったところで、それでも十分な速度だ。
 接近してくる鳴海を払おうとしていたジャバウォックの左二の腕に、自身の爪が突き刺さった。
 抜き取ろうと左手を伸ばすジャバウォックだが、それより早く炎の天使が爪を握り締めている。

「やれ、紅」

 傷口を焼くことで無理矢理に止血した紅麗が、戦闘に復帰したのだ。
 主の指示を受け、紅という炎の天使が爪を一閃した。ジャバウォックの腕が宙を舞う。
 またしても、ジャバウォックが声を張り上げる。
 だが今回はこれまでの雄叫びとは違い、痛みに対する絶叫だ。
 その悲鳴は、半ばで止まってしまう。
 加藤鳴海が、ついに辿り着いていたのだ。
 体内の気を残らず放出する気持ちで、全身全霊の正拳。
 斬り落とされた腕が落下するのと同時に、ジャバウォックは倒れこみ――――高槻涼の姿となった。


 ◇ ◇ ◇


 来た道を引き返すように、鳴海は走る。
 背中に高槻涼を背負い、首にリュックサックを二つぶら下げている。

 どうにか暴走を止めたとはいえ、涼の肉体が受けたダメージは大きい。
 まるでしろがねであるかのように傷が修復していたが、なぜか左腕だけは血が止まらなかった。
 そのため一度通った住宅街に戻り、適当な民家で安静にさせねばならない。
 そうでなければ、涼を止めた意味がないのだ。
 御神苗優と名乗った青年が命を賭したというのに、助けられた彼までも死なせるワケにはいかないのだ。

 本当は阿紫花の操るグリモルディに乗せたほうが速いのだが、彼と紅麗は優が引きとめた。
 なんでも最期に話があるらしい。となれば無理は言えなかった。
 だから、全力で加藤鳴海は走る。
 どうにか高槻涼を死なせてしまわないように。

572 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:40:20.35 ID:gJ0Aq6oO [2/3回発言]
支援

573 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:40:26.33 ID:6c7P2HXO [6/9回発言]


574 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:40:41.16 ID:SPXMuHZ+ [11/15回発言]
 

575 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:41:06.60 ID:6F6bpVam [1/1回発言]
粉塵爆発www

576 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:41:27.86 ID:6c7P2HXO [7/9回発言]


577 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:41:31.82 ID:SPXMuHZ+ [12/15回発言]
 

578 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:42:07.86 ID:Lg/RLyei [12/16回発言]



【F-5 北部路上/一日目 黎明】

【高槻涼】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にて招待状を受け取って以降、同話にてカリヨンタワーに乗り込む前。
[状態]:気絶中、疲労大、全身にダメージ大(ARMSによる修復中)、左二の腕から先を喪失
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:――――――――――――――――――――
※左腕喪失はARMS殺しによるものなので、修復できません。


【加藤鳴海】
[時間軸]:20巻第32幕『共鳴』にて意識を失った直後。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(確認済み)、高槻涼のリュックサック(基本支給品一式、支給品1~3)
[基本方針]:仲間と合流し、殺し合いを止める。戦えない人々は守る。ひとまずF-4の民家で、涼を安静にさせる。


 ◇ ◇ ◇


「仮面の兄さん、本当によかったんですかい?」

 阿紫花の軽口を叩くような口調に、紅麗は反応を示さない。
 紅麗は高槻涼を殺害するつもりであったのが、優の言葉を受けていったん止めたのだ。
 キース・ブラックに関する方法はいずれ必要になるものだし、もしものときは今度こそ殺害すればいい。
 その内容に異論はないが、だからと言って従ったと思われるのも気に入らなかった。

「御神苗優、用件を言え」

 涼が去った以上、紅麗にこの場にいる必要はない。
 ただ、優が引きとめたからいるだけだ。

「……お前、このプログラムを破壊する、って言ったよな」
「何度も言わせるな。このような児戯で時間を浪費するほど、私は物好きではない」

 即座に返された言葉に、優は頬を緩めた。
 力がほとんど抜けてしまっている身体に喝を入れて、右手を動かして蔵王からヒヒイロカネ製の剣を取り出す。

「首輪、いるだろ。取れよ」

 それだけ言って、優は片手剣の刃を握って柄を紅麗へと伸ばす。
 プログラムを破壊する上での大きな障害の一つが、首輪だ。
 主催者に命を握られているのと同義であるのだから。
 優も紅麗と目的が同じであったからこそ、そのことは分かっている。
 だからこそなんとしても解除せねばならないが、そのためにはいくつか分解せねばならない。
 首輪を回収するために、誰かを殺したり死体を傷つけねばならない。
 そのことが優はずっと気がかりであったが、死に行く自分から取るのであれば躊躇はない。
 加藤鳴海には――暴走していたのが高槻涼だと知ったときに戸惑っていた彼には、頼むことはできなかった。
 ゆえに、ためらうことなく行動に移すことができる二人を残したのだ。
 紅麗のほうはすでに行動を見ていたし、阿紫花は眼光から悟ることができた。

「俺の名簿の裏に、考えがまとめてある。役に立つかは分からねーがな」

579 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:42:31.94 ID:gJ0Aq6oO [3/3回発言]
支援

580 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:42:48.97 ID:Lg/RLyei [13/16回発言]

 紅麗が片手剣を掴んだことを感覚で認識した。
 もはや、視界は曖昧だ。
 ほとんどが霞がかってしまっている。
 それでも、優は紅麗が剣を振り上げたことを肌で感じる。

 ――――他人には愚かに見える行為でも、常にあなたにとって一番いい選択をしなさい。

 この場にもいるらしい師が残した言葉が、優の脳内で響く。
 まだ人間に戻れると信じて高槻涼を生かしてしまったのは、いま首を斬り落とそうとしている男からしてみれば愚かな選択かもしれない。
 けれど、優にとっては一番いいと思えた選択だったのだ。
 殺人機械であった自分が、何度も殺人機械に戻ってしまった自分が、人間として戦ったのだ。
 ならば、涼もなんとかなるのではなかろうか。
 などと考えている優の前に、一人の少女が現れる。

「お前かよ」

 この状況で、いきなり現れることなどありえない。
 そもそもほとんど視界は曇っていたというのに、なぜやたらと明瞭なのか。
 死に際に幻を見るという話はよく聞くが、これほどまでにはっきりと幻であると分かるものなのだろうか。
 まあいいか――と半ば投げやりに決めて、優は口を開く。
 どうせどこかでうまくやっているだろう遺跡荒らしの少女に向けて、一言だけ残すことにした。

「死ぬなよ」



【御神苗優 死亡確認】
【残り74名】


【F-5 海岸/一日目 黎明】

【阿紫花英良】
[時間軸]:20巻第33幕『合流』にて真夜中のサーカス突入直後。
[状態]:健康
[装備]:グリモルディ@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(確認済み)
[基本方針]:さぁて、どうしましょうかね。


【紅麗】
[時間軸]:22巻210話『地下世界の消滅』以降、SODOMに突入するより前。
[状態]:脇腹に傷(処置済み)、疲労中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(確認しているか不明)、首輪(御神苗優)
[基本方針]:プログラムを破壊し、早急に帰還する。そのために役立つ人物や情報を手にしたい。

581 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:42:54.11 ID:SPXMuHZ+ [13/15回発言]
 

582 : 人間 ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:43:09.01 ID:Lg/RLyei [14/16回発言]



【支給品紹介】


【小麦粉@ARMS】
御神苗優に支給された。
高槻涼たちが通う高校の家庭科室に保管されていたもので、涼が粉塵爆発に用いた。


【ヒヒイロカネ製の剣@スプリガン】
御神苗優に支給された。
KGB極東支部の諸刃功一が所持していた両刃の片手剣。
なお、ヒヒイロカネは精神感応金属(オリハルコン)と同系金属である。


【フェイファー・ツェリザカ@現実】
御神苗優に支給された。
全長550mm、重量6kg、装弾数5、60口径で15.24mmライフル弾を使う。
装甲車を相手にできると言われるほどの凄まじい威力を誇る。
その分反動も大きく、下手に使うと持っていた腕ごと後ろに吹っ飛んでいく。
予備弾はなかったようだ。


【グリモルディ@からくりサーカス】
阿紫花英良に支給された。
誘拐組の尾崎がもともと使っていた懸糸傀儡で、のちに阿紫花英良が使用することになる。
キャタピラによる高速駆動や、首を伸ばしたり回転させるギミックを用いた戦闘を得意とする。



【備考】
※一日目黎明に、F-5海岸を中心としてジャバウォックが大地と共振しました。

583 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:43:10.20 ID:6c7P2HXO [8/9回発言]


584 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:43:44.94 ID:SPXMuHZ+ [14/15回発言]
 

585 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:43:57.17 ID:6c7P2HXO [9/9回発言]


586 : とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:44:57.50 ID:Lg/RLyei [15/16回発言]
 ◇ ◇ ◇


 御神苗優の首輪をしばらく眺めてからリュックサックに収納し、紅麗は阿紫花のほうを向く。
 怪訝な表情を浮かべた阿紫花ではなく、グリモルディに付属している球体を指でさす。

「魔道具は、貴様のような一介の極道が所持していいものではない。渡せ」

 言い終えるよりも前に、紅麗の右腕が炎を纏う。
 先ほどのジャバウォックとの戦闘を思い返し、阿紫花は息を呑む。
 トリックは分からないが、紅麗は激しい炎を放出することができる。
 阿紫花とて殺し屋としてそれなりに修羅場は潜ってきているが、あくまで人間同士の騒動しか知らない。
 人形破壊者(しろがね)と自動人形(オートマータ)の戦争に巻き込まれかけたものの、本格的に戦場に飛び込む前にこのプログラムに呼び出されているのだ。
 裏の世界などほとんど知らない、ただの人形遣いにすぎない。
 そんな自分が、紅麗に敵うはずがない。
 実際、支給された魔道具『形傀儡』は阿紫花にとって必要がないものなのだ。
 原理は分からないが、形傀儡は糸を使わずに意思で人形を動かすことができる。
 もしも糸が切れてしまったときのためにグリモルディに付けておいたが、懸糸傀儡の糸は丈夫で滅多に切れてしまうことはない。
 ならば紅麗に従って素直に渡したほうが得なのではないか。わざわざ逆らって、無駄に命を散らしてしまうこともない。
 そう考えて、形傀儡を外そうとし――阿紫花は静止する。

「は、下らねえ」

 自分らしくないことをしようとしているな、と。
 やけに冷えていく頭で、阿紫花は思った。
 危なくなったら逃げると鳴海には言ったはずなのに、まるで逆のことをやろうとしている自分に気付いたのだ。

「すいやせんね、仮面の兄さん」

 ロングコートのポケットから取り出したタバコを加えて、ジッポライターで火を点ける。
 二つの肺をニコチンで満たしながら、阿紫花は薄ら笑いを浮かべた。

「そんな態度で、欲しけりゃくれてやるとはいきませんぜ。
 惚れた女ならともかく、偉そうなガキにプレゼントなんかやる義理なんざねえ」

 白い煙を吐き出して、阿紫花はまだ点火したばかりのタバコを踏み潰す。
 その足でグリモルディに乗り、両手を掲げてグリモルディの糸を張らせる。

「悪いが、そんなに欲しいんならやり合って奪い取ってくだせえ」
「愚かだな」

 切り捨てるような短い言葉とともに、紅麗が炎を飛ばす。
 阿紫花がグリモルディの腕に受けさせているうちに、紅麗はいなくなっていた。
 しまったと阿紫花が思った瞬間に、前方から冷たい声。

「終いだ」

 グリモルディから球体をもぎ取った紅麗が、炎を手元に収束させている。
 目当ての形傀儡を手に入れても、見逃す気はないらしい。
 自分から仕掛けたのだから当然かと、阿紫花は口角を吊り上げた。
 紅麗はチェックメイトをかけたと思っているだろうが、阿紫花の思考はまだ落ち着いている。

「取られてから言うのもなんですけどね。正直、それいらねえんですよ」

 阿紫花が腕ごと動かして糸を引く。
 形傀儡によって懸糸傀儡を操っていたと思っているらしく、その動作を見ても紅麗は微動だにしない。
 しかし歯車が回る音を捉えたのか首を上げ、グリモルディが首を小刻みに動いていることに気付く。
 グリモルディの頭部には、斧が二つ装着されている。
 首の速度が上がれば斧もまた回転し、紅麗を切り裂くだろう。
 阿紫花へと放つつもりであった炎を使い、紅麗はグリモルディの頭部を吹き飛ばす。

587 : 創る名無しに見る名無し : 2011/04/05(火) 21:45:10.28 ID:SPXMuHZ+ [15/15回発言]
 

588 : とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ ◆hqLsjDR84w : 2011/04/05(火) 21:45:28.65 ID:Lg/RLyei [16/16回発言]

「いまだッ!!」

 伸ばし切った腕を戻して、阿紫花は指を小刻みに動かす。
 キャタピラが回転を始め、紅麗へと突っ込んでいく。
 斧に意識を向けていた反応しきれず、なすすべもなく轢かれてしまう。

 ――――紅麗に触れた途端、グリモルディが動かなくなった。

 グリモルディに乗ったまま阿紫花はひたすらに糸を動かすが、反応はない。
 視線を前方に向けると、紅麗の身体から生える炎の腕がグリモルディを受け止めていた。
 その腕の主は少しずつ姿を現し、最終的に天使のような全体を見せる。
 ジャバウォックの腕を斬り落とした、紅という炎だ。
 紅が頭のないグリモルディを抱き締めると、残った部位もすべてが炎上する。
 炎のなかから飛び出した阿紫花は、紅麗に足を払われてしまう。

「形傀儡を必要としないのなら、なぜすぐに手放さなかった。隙を突けば勝てるとでも思ったか」

 うつ伏せの状態で阿紫花の腕を背後に回して固定し、紅麗は尋ねる。
 自嘲気味に笑ってから、阿紫花は口を開く。

「…………気に入らなかったかったんでね」
「なに?」
「いくら強えとはいえガキにあんな口利かれて素直にくれてやりそうになったテメェが、気に入らなくなりやしてね。
 ガキに媚び売って生き延びても、待っているのは持て余した退屈な人生だってのに、なにやってんだか、って。そう思ったときには、もう仕掛けてやしたよ」

 阿紫花を抑えつける力を僅かに緩めながら、紅麗はさらに問いかける。

「貴様、名はなんと言う」
「阿紫花ってんで。それがどうかしましたかい」

 拘束を解いて、紅麗は立ち上がる。
 続いて起き上がった阿紫花の前で、紅麗は仮面を外す。
 左顔面に痛々しい火傷の痕があるが、素顔は意外なほど整っていた。

「お前は愉快なヤツだな、阿紫花。私の名は紅麗」
「……だからどうしたってんです。
 こっから第二ラウンド、って話ですかい。あたしゃ人形なきゃ戦えませんぜ」

 命(タマ)殺(と)るってんなら勝手にしてくれと続けて、阿紫花は再びタバコを吸い出す。
 その態度に、紅麗は僅かに口元を緩めた。
 そして真剣な眼差しとなって、ゆっくりと切り出す。

「私と来れば退屈はしないぞ」

 切り札の一つである紅を使わせるほどの力を持ち、相手を殺害することに躊躇がない。
 キース・ブラックのプログラムを破壊する上で、求めていた戦力として阿紫花は申し分ない。
 魔道具を使わずに紅麗の知らぬ技術で戦うというのも、興味深かった。

「…………で」

 阿紫花はタバコを咥えたまま、右手の親指と人差し指で円を作って引っくり返す。
 言わんとすることを理解して、紅麗はくくっと笑った。

「お代はいかほどいただけるんで?」


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