このページは、
@wiki
で 2017年12月12日 16:55:58 GMT に保存された
https://namidame.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1234895863/
の
キャッシュ
です。
ユーザがarchive機能を用いた際、
@wiki
が対象サイトのrobots.txt,meta情報を考慮し、ページを保存したものです。
そのため、このページの最新版でない場合があります。 こちらから
最新のページ
を参照してください。
このキャッシュ ページにはすでに参照不可能な画像が使用されている可能性があります。
@wikiのarchve機能についてはこちらを参照ください
@wikiはこのページまたはページ内のコンテンツとは関連ありません。
このページをキャッシュしたwikiに戻る
RPGキャラバトルロワイアル Part3
5ちゃんねる
★スマホ版★
■掲示板に戻る■
全部
1-
最新50
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
RPGキャラバトルロワイアル Part3
1 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:37:43 ID:RbSkt+fR
このスレはRPGゲーム(SRPGゲーム)の登場キャラクターでバトルロワイヤルをやろうという企画スレです。
作品の投下と感想、雑談はこちらのスレで行ってください。
RPGロワしたらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11746/
RPGロワまとめWiki
ttp://www32.atwiki.jp/rpgrowa/pages/11.html
前スレ
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221963170/
テンプレは
>>2
以降に
2 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:39:54 ID:Kh4M4AEo
参加者リスト
5/7【LIVE A LIVE】
○高原日勝/○アキラ(田所晃)/○無法松/○サンダウン/●レイ・クウゴ/○ストレイボウ/●オディ・オブライト
6/7【ファイナルファンタジーVI】
●ティナ・ブランフォード/○エドガー・ロニ・フィガロ/○マッシュ・レネ・フィガロ/○シャドウ/○セッツァー・ギャッビアーニ/○ゴゴ/○ケフカ・パラッツォ
5/7【ドラゴンクエストIV 導かれし者たち】
○主人公(勇者)/●アリーナ/○ミネア/●トルネコ/○ピサロ/○ロザリー/○シンシア
6/7【WILD ARMS 2nd IGNITION】
○アシュレー・ウィンチェスター/●リルカ・エレニアック/○ブラッド・エヴァンス/○カノン/○マリアベル・アーミティッジ/○アナスタシア・ルン・ヴァレリア/○トカ
5/6【幻想水滸伝II】
○2主人公/○ジョウイ・アトレイド/○ビクトール/○ビッキー/●ナナミ/○ルカ・ブライト
5/5【ファイアーエムブレム 烈火の剣】
○リン(リンディス)/○ヘクトル/○フロリーナ/○ジャファル/○ニノ
4/5【アークザラッドU】
○エルク/●リーザ/○シュウ/○トッシュ/○ちょこ
4/5【クロノ・トリガー】
○クロノ/○ルッカ/○カエル/●エイラ/○魔王
4/5【サモンナイト3】
○アティ(女主人公)/●アリーゼ/○アズリア・レヴィノス/○ビジュ/○イスラ・レヴィノス
【残り44名】
3 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:41:10 ID:Kh4M4AEo
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
「地図」 → MAPのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に2エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0087.png
【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
4 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:42:06 ID:Kh4M4AEo
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います。
・予約は必須です。予約せずに投下できるとしても、必ず予約スレで予約をしてから投下してください。
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)。
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。
【議論の時の心得】
・議論はしたらばの議論スレでして下さい。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全て議論スレで行う。本スレでは絶対に議論しないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は、修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「議論スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「議論スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
ただし、このような修正を行う際には議論スレに一報することを強く推奨します。
5 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:42:56 ID:Kh4M4AEo
【書き手の注意点】
・トリップ必須。 騙り等により起こる混乱等を防ぐため、捨て鳥で良いので必ず付けてください。
・無理して体を壊さない。
・残酷表現及び性的描写に関しては原則的に作者の裁量に委ねる。
但し後者については行為中の詳細な描写は禁止とする。
・完結に向けて決してあきらめない
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効。
携帯からPCに変えるだけでも違います。
6 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:43:50 ID:Kh4M4AEo
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
7 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:44:40 ID:Kh4M4AEo
【身体能力】
・原則としてキャラの身体能力に制限はかからない。
→例外としてティナのトランス、アシュレーのアクセス、デスピサロはある程度弱体化
【技・魔法】
・MPの定義が作品によって違うため、MPという概念を廃止。
→魔法などのMPを消費する行動を取ると疲れる(体力的・精神的に)
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる人物。(敵味方の区別なし)
・回復魔法は効力が大きく減少。
・以下の特殊能力は効果が弱くなり、消耗が大きくなる。
→アキラの読心能力、ルーラやラナルータやテレポート(アキラ、ビッキー)などの移動系魔法、エルクのインビシブル
・蘇生魔法、即死魔法は禁止
【支給品】
・FEの魔導書や杖は「魔法が使えるものにしか使えず、魔力消費して本来ならばそのキャラが使えない魔法を使えるようになるアイテム」とする
・FEの武器は明確な使用制限なし。他作品の剣も折れるときは折れる。
・シルバード(タイムマシン)、ブルコギドン、マリアベルのゴーレム(巨大ロボ)などは支給禁止。
・また、ヒューイ(ペガサス)、プーカのような自立行動可能なものは支給禁止
・スローナイフ、ボムなどのグッズは有限(残り弾数を表記必須)
【専用武器について】
・アシュレー、ブラッドのARMは誰にでも使える(本来の使い手との差は『経験』)
・碧の賢帝(シャルトス)と果てしなき蒼(ウィスタリアス)、アガートラームは適格者のみ使用可能(非適格者にとっては『ただの剣』?)
・天空装備、アルマーズ、グランドリオンなどは全員が使用可能
8 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 03:45:50 ID:Kh4M4AEo
テンプレは以上です。
>>1
スレ立て乙でした。
9 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/18(水) 12:43:27 ID:ltw5KM94
スレ立て&テンプレ乙!
ただ、テンプレの予約のところに修正期限しか書いてないんだよな。
というわけで、
>>4
の【予約に関してのルール】に
・予約期間は三日です。
を追加したい。
10 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/19(木) 01:56:04 ID:u2zK9M1a
そろそろ予約期限五日(+延長三日くらい)にしてもいいと思うんだけど、どうだろうか?
11 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/19(木) 01:58:05 ID:anWecUdt
そろそろの意味が分からないけど、この過疎っぷりなら3日で十分だろ
12 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/19(木) 20:28:30 ID:woomEv5R
書き手さんが大丈夫なら今のままでもいいんじゃないかな。
基本三日で延長二日くらいにするのもアリだとは思うけど。
13 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/20(金) 00:10:44 ID:FFywMMLh
まあ別に慌てて変えることはないと思う
14 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/20(金) 00:38:31 ID:k6gAlkpA
他ロワとかだと、第一回放送後に長文化を見越して予約期間伸ばしたりしてるね。
ここも放送終わったら伸ばす感じでいいんじゃね?
15 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/20(金) 04:37:25 ID:OyMq1J2H
でも結構書いてて足りなくなってあわてることはあんだよなあ
延長申請してもいいってくらいには緩めて欲しいな
16 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/20(金) 04:54:42 ID:MqLdigjB
あ、それと◆Rd1trDrhhU氏、エドガー、『夜明け』を待つ が大きくて一度にWIKI収録できません。
分割箇所を教えてください
17 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/02/20(金) 13:36:16 ID:k6gAlkpA
>>16
SS内の誤字等の修正もあったので、自分で編集しました。
今後は私のSSに限っては、適当なところで切ってくれれば大丈夫です。
ありがとうございました。
18 :
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 22:51:02 ID:+B7UqUb0
高原、イスラ、マッシュ、ビジュ、クロノ投下します。
19 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 22:53:27 ID:+B7UqUb0
灯台の上から人探しを始めて早数十分、人影らしきものは一切現れない。
「そういやマッシュ。お前奥義とか持ってるのか?」
ふと、人影探しに疲れたらしい高原が口を開く。
「ん? まあ、ダンカン流奥義は……あるけどな」
ほんの少し面倒くさそうにマッシュは答える。
「ふーん、実は俺さ。奥義って言う程の技が無くってさ」
ダンカン流奥義「夢幻闘舞」
それは死んだはずのマッシュの師であるダンカンから直接自身に刻まれた奥義。
師の数十年、いや人生の全てが詰まったといえるその技は正直今でも使いこなせている自信はない。
そういえば、あの時も楽しくてしょうがなかった気がする。まるでさっきの高原との戦いのように。
突き出す拳、蹴り上げる脚、一挙一動が楽しいとすら感じられた時間だった。
自分の目の前の人間、高原日勝は爆裂拳をいとも容易く習得して見せた。
彼ならこの奥義も、いやそれすらも超える技を……?
それ以前に自分は師の様に誰かに何かを教えるほど大きな人間になれているだろうか?
「おーい、マッシュ? おーい、もしもーし」
肩を叩きにきた高原が少し心配そうな顔をしてこちらを見ている。
自分でも気がつかないうちに相当考え込んでいたようだ。
とっさに笑顔を作り、大丈夫だと高原に返事をして人探しに戻る。
「それで、どんな奥義なんだ?」
息つく間もなく高原が再び問いかける。
何故だかかつてのマッシュ自身を見ているような気分になってくる。
「そうだな……お前がオーラキャノンが使えるようになったら教えてやるよ」
「えーっ、オレもまだまだってことかぁ?”オーラ”なんてオレに使えるのかな……?」
この場所で、自分も師匠のように生きていくことが出来るだろうか?
死んでいると思われても、不死鳥のごとく蘇ることが出来るだろうか?
「おいマッシュ! 人だ! 人影が見えるぞ!」
今度は深く考え込む前に高原の大声が脳に響く。
高原が指を指した先で、灯台の光が人影らしき姿を一瞬だけ捉えていたらしい。
マッシュ自身は確認が出来なかったが、高原自身は見たと言い張っている。
自分も確認するまでは降りるつもりは無かったのだが、そんな隙すら与えずに高原は灯台を駆け下りる。
「……考え事してる場合じゃない、か」
20 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 22:54:49 ID:+B7UqUb0
灯台が生み出す一筋の流れる光。
その光を手でさえぎりながら光を放つ灯台へと僕は進む。
誰かと馴れ合うつもりでもなくただ自身の目的のため、僕は灯台へと進む。
一定の周期で僕を照らし出す光が僕の機嫌を損ねていく。
とはいえ、立ち止まっている余裕は今の僕には無い。
灯台に人が集まる前に自分の用件を済ませて誰かに会う前に灯台を立ち去る。
誰もいないうちに灯台に着く事ができれば不可能ではない。
だから、出来るだけ早く。僕は灯台へと進む。
ふと、前方に二つのぼんやりとした光が見える。
恐らく支給品のランタンによるものだろう。灯台にたどり着いた人間か? それとも灯台を動かした人間か?
そこにいるのが誰であろうとかまわないが、姿を見られるのは都合が悪い。
これから灯台に人が集まるとなると、このまま灯台を目指すのは得策とは言えない。
工具や設備を見送るのは惜しいが、灯台を見送らざるをえない。
少し離れて、夜が明けてからもう一度灯台に近寄ってみよう。
僕は静かに身を翻し、灯台とは違う方向へと歩き始めた。
僕のその姿を、灯台はしっかりと照らし出していた。
21 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/25(水) 22:56:36 ID:mDFx9pna
22 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 22:56:46 ID:+B7UqUb0
「なあ高原、本当に人影なんてあったのか?」
半ば呆れ顔で辺りを見渡すマッシュ。
木か何かを人影と間違えたのではないだろうか?
何せタイミングは灯台が照らした瞬間というわずかな時間しかない。
灯台の近くまで来れば……話は別かもしれないが。
先に下りてきて待ち構えよう、というのもなかなか無理のある話だとは思う。
それに、ランタンを持っている今の状況は自ら場所を教えている危険な状況でもある。
高原の言う「見えた人間」に早く接触して、灯台の中に引き込む。
……この時点でも十分危ないのだが、もう四の五の言っている状況ではない。
これで「見えた人間」が殺し合いに乗っていようものなら……。
こうはなって欲しくない。
そんな考えを持っているときは大概そのなって欲しくない展開が待っている。
ならばなって欲しくない展開を逆に望めばその展開を避けられるか?
そんな考えを持とうものなら「待ってました」と言わんばかりに用意されたシナリオが舞い降りてくる。
つまり、神がいるのだとすればとんでもなく性根の曲がったクソ野郎だということだ。
時に、今神がいるとすれば。考えている事の更に上の最悪のシナリオを用意してくる。
性根どころか存在が曲がったクソッタレ野郎だということだろう。
「避けろ高原!」
突き刺さる数発の稲妻をなんとか避けきる二人。
咄嗟に出た言葉はそれだけ、それだけで動ける高原はさすが現役格闘家といったところか。
ただ、完璧な回避動作を取る事は出来ず高原はランタンを落としてしまった。
稲妻が焦がした平野に高原のランタンが落ち、わずかに火が立つ。
「高原、どうやら俺たちは」
言葉が途中で途切れる。立て続けに襲ってくる稲妻を避けるのが今は精一杯だからだ。
わずかに出来た時間の間にランタンを置いておいた。二人ともランタンを無くしては今後の夜に差支えが出る。
それに、持ったまま稲妻を避けても格好の餌になるだけ。稲妻を避ける程度ならランタンが無くとも何とかなる。
現状は襲撃者はこちらの大体の位置を把握しているが、こちらは襲撃者の位置を把握できない。
その上襲撃者は術を心得ているか術を使う手段がある。遠距離攻撃が出来る分こちらが圧倒的に不利だ。
こちらも位置さえ分かれば手段がない事はないのだが……。
「ああ、だが、それならそれで話は別だ。まず姿も見せずに襲ってきてるクソ野郎をぶっ潰す!」
高原、マッシュの両名が周囲へと気を集中させる。
そして、灯台の光が高原たちの目の前をゆっくりと照らし出していく。
23 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 22:58:28 ID:+B7UqUb0
「見えた!!」
その高原の声に振り向いたとき、既に高原の姿は無かった。
灯台を駆け下りたときよりも早く、一陣の風を残しどこかへ向かって走り去ってしまった。
先ほど言っていた人影をもう一度確認したのだろうか?
それが襲撃者の正体だったならば、高原の後を追うべきなのだろう。
「……おかしい」
マッシュの頭の中に疑問が浮かび上がる。
何がおかしいのかは分からないが、何かがおかしい。
今起こった全ての事象を頭の中でもう一度整理する。
襲撃者はどこにいるのか? 雷はどこから来たのか?
高原が指差した方角はどちらだったか? 高原はどちらに走り去って行ったのか?
マッシュの中でそれらが結び付いた時には、何もかもが遅かったのかもしれない。
「高原! 違う! そっちじゃ――――――」
叫びは、届かない。
パリンと、何かが割れる軽い音。
高原がランタンを落とした場所から閃光が走る。
白一色に視界が染まり。
マッシュは意識を、手放した。
24 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/25(水) 22:58:33 ID:KAVgT1EZ
25 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 23:01:04 ID:+B7UqUb0
高原は何を見たのか?
灯台が照らし出す一瞬だけの視界に、高原は黒髪の青年を確かに見たのだ。
高原が見た人影は一人だけ、そう一人だけだった。
そして青年=襲撃者と結びつけるのは簡単なことだった。
高原が人影を見た瞬間、その人影が身を翻したことだ。
高原はそれを「姿がばれたから逃げた」と認識し、襲撃者だという結論に達した。
走り出して間もなく、後ろで爆発音がした。
「マッシュ!」
咄嗟に振り返り短く叫ぶが返事はない。
恐らくは姿を見られた襲撃者がさっさと始末をしてしまおうと大体の位置に爆発を巻き起こしたのだろう。
爆発は凄かったが、マッシュはあの程度の爆発で死ぬ人間ではないとは思っている。
一刻も早く襲撃者をぶちのめし、マッシュの下へ帰る。それが一番の策。
襲撃者らしき人物を視界に捕らえた。更に加速し、距離を一気に詰める。
追っていた人物も高原に気がついたようで、咄嗟に振り返り剣を振る。
高原の気迫を感じての護身の為の行動だったのだが、それが高原の中で「襲撃者」であることを決定付けた。
剣を避けきった後、高原はファイティングポーズをとり襲撃者と向き合う。
それと同時に、襲撃者も剣を構えこちらへと向き合う。
「一つ聞く、何で俺たちを襲った?」
高原の落ち着いた声に、襲撃者の眉がわずかに動く。
「……何を言ってるんだ? 僕が君を襲っただって?」
襲撃者は答えた、「知らない」と言わんばかりに。
「そうか、分かったぜ。お前がそう言うなら……」
大きく息を吸い込み、高原は言葉と同時に駆け出した。
「ぶっ潰す!!」
襲撃者と決め付けられたイスラも動く。
とにかく、目の前の男の誤解を解くにしろ何にしろ。
まず、黙らせる。
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドU
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:目の前の男(高原)に対処、危険分子であるなら排除。
2:首輪を解除する為に必要な道具または施設を求めてI-1へ向かう。
3:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
4:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。
[備考]:
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
【高原日勝@LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:鯛焼きセット(鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2)@LIVEALIVE、
死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み、ランタンを紛失)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:襲撃者(イスラ)をぶっ潰す。
2:オーラキャノンの習得……できるのか?
3:武術の心得がある者とは戦ってみたい(特にレイ・クウゴ)
4:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※マッシュの仲間把握済。
※ばくれつけんを習得。 オーラキャノンの可能性については後述の書き手さんにお任せします
26 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 23:02:00 ID:+B7UqUb0
舞台は用意されていた。
一人の男のために。
幸運は待っていた。
一人の男の事を。
なにもかも、なにもかもが。
一人の男の考えどおりに動いた。
なにもかも、なにもかも。
ビジュが考えたのはサンダーブレード振ることによって起こる雷による牽制。
本来はこの牽制の雷から一気に詰め寄り切りかかるつもりだった。
この暗闇の中、灯台をつけた上にランタンを携帯しているアホどもに一気に切りかかるために。
だが、その雷は思わぬ結果を呼んだのだ。
アホどもの片方がランタンを落とし、小さな火が立った。
直感的にデイパックの中にあった「ガスのつぼ」へと手が伸びた。
幸運はまだ終わらない。
突然、一人が急に駆け出し始めた。
場所がバレたのだと思い咄嗟に剣を構えるが、こちらに向かってくると思いきやそんな気配はまったくない。
何もかもが上手く行き過ぎて笑いがこみ上げてくるが今は我慢する。
そして、巻き起こった火に向けて勢いよくガスの壷を放り投げる。
軽い音と共に爆発音が鳴り響く。
爆発の規模はそれほどでもないが、結構な威力を誇っているはずだ。
笑いが、こみ上げてくる笑いが止まらない。
気を失った青年の目の前に来たとき、笑いの感情が頂点を迎えた。
「フフフッ、ハハハハッ、ハァッハッハッハッハッハァーーーーーー!!」
片手で顔を抑えながら高笑いするビジュ。
数分間の高笑いの後、ビジュはゆっくりと剣を真上に振り上げ。
「死ね」
青年の首めがけて一気に振り下ろした。
27 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/25(水) 23:02:35 ID:mDFx9pna
28 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 23:04:10 ID:+B7UqUb0
振り下ろした?
「ッ……誰だァ?!」
いや、振り下ろせなかった。
自分が先ほどまで操っていたのよりも鋭い雷がその身に襲い掛かってきたからだ。
ビジュは咄嗟に飛び退き、辺りを見渡す。
「人殺しの悪党に名乗る必要は……」
視界の先の赤髪の少年はモップを構え、倒れた青年をかばうように言う。
「無い」
それが、もう一つの戦いの始まり。
【ビジュ@サモンナイト3】
[状態]:軍服黒焦げ、全身に熱の余波による軽度のダメージ
[装備]:サンダーブレード@FFY
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本: 皆殺し(アティ、アリーゼ、ちょこ、アナスタシア、弱者を優先的に)
1:赤髪の少年(クロノ)を殺す、その後倒れてる青年(マッシュ)も殺す
[備考]
※参戦時期は不明。お任せします。(ただし、死亡前です)
※ちょこやオディオ他を召喚獣だと思っています。
【クロノ@クロノ・トリガー】
[状態]:疲労(中)、半乾き。
[装備]:モップ@クロノ・トリガー、魔石ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーVI
[道具]:基本支給品一式(名簿確認済み) 、トルネコの首輪
[思考]
基本:打倒オディオ
1:軍服の男(ビジュ)と戦う。
2:打倒オディオのため仲間を探す(首輪の件でルッカ優先、ロザリーは発見次第保護)
3:魔王については保留
[備考]:
※自分とユーリルの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は魔王が仲間になっているあたり(蘇生後)、具体的な時期は後の書き手さんにお任せします
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。その力と世界樹の花を組み合わせての死者蘇生が可能。
以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(特大、詳細は不明)、気絶
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー最優先に仲間を探す
2:高原に技を習得させる(?)
3:ケフカについてはひとまず保留
[備考]:
※高原の仲間を把握済み。
※灯台は現代にあるような無人灯台です。
※灯台の明かりの種類は他にもあるようです。主催によって使いやすい設計に。
29 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 23:04:44 ID:+B7UqUb0
投下終了です。
何かあればどうぞ。
30 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/25(水) 23:07:51 ID:KAVgT1EZ
おお!ビジュ、やるなあ!立派なマーダーになってて吹いたw
そして知力25対イスラか。面白そうな展開になってきたな
31 :
正に悪夢、アクム
◆FRuIDX92ew
:2009/02/25(水) 23:13:51 ID:+B7UqUb0
あ、場所の明記忘れてる……!
イスラ、高原が
【H-2 平野南部 一日目 早朝】
マッシュ、クロノ、ビジュが
【I-2 灯台付近 一日目 早朝】
でお願いします
32 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/25(水) 23:17:42 ID:mDFx9pna
投下乙!
なんという誤解……対主催皆揃って大ピンチかあ。
筋肉コンビに誤解とは、彼ららしいといえば彼ららしいw
イスラ、やっと人に出会ったと思ったら誤解か。原作不幸なのに、ここに来ても報われないとは……w
そしてビジュ小物wでもこいつはもう何やったって小物にしか見えんわw
火種の少ない灯台周辺をここまで揺るがせたのは見事です。GJ!
33 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/26(木) 00:01:45 ID:7C4MmilF
クロノかっちょえええ!
ビジュ視点も奴のニヤニヤぶりを思わせてよかった
そして知力25、流石だw
見事に誤解しやがったw 気付けよ、馬鹿w
最初の感慨に浸るマッシュも後々に響きそうで乙でした。
GJ!
34 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/26(木) 16:22:29 ID:PEDaHEpK
投下乙!
流石ビジュ、上手くいきそうだったのに詰めが甘いぜw
誤解もあるし、結構乱れてきたなー。今後が楽しみだ。
35 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/27(金) 17:19:12 ID:ujKTQQp0
そして支給品一覧にWA2の分が!
いつもながらに面白いコメント付きでGJ!
36 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:21:51 ID:bT9jScH7
キャラごとの追跡表も追加されてるし、wiki更新してくれてる方々には感謝してます。
俺も暇を見つけて手伝っていかねば…
さて、投下しますね。
37 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:23:41 ID:bT9jScH7
潮の匂いが交じる冷たい空気が、岩肌の広間に満ちている。
例え日が昇ったとしても、外からの光が届きそうにないそこを照らすのは、壁に設えられた松明だ。
耳を澄ませば、洞穴の中を流れる水音が聞こえてくる。
海水の浸食によって作られた海辺の洞窟。
そこは、ある世界の現代と呼ばれる時代で、ヘケランと呼ばれる魔族が生息していた洞窟だった。
ほの明るいその内部で、二つの人影が、武器を手に向かい合っている。
一つは、勝ち気な瞳が印象的な少年――エルクコワラピュール。
もう一つは、黒髪を肩で切り揃えたつり目の女性――アズリア・レヴィノス。
エルクが手にしているのは、炎を具現化したような剣。アズリアが握り締めているのは、聖槍の名を冠した槍。
二人の額には汗が浮かんでいる。それでも、どちらの構えにも隙は見られない。
張り詰めた弦のような空気が、そこには広がっている。
アズリアの間合いの外で、エルクは剣を持ち直した。
――稽古とは思えねぇな……。
そう、こうしてアズリアと対峙しているのは、あくまで稽古に過ぎない。
なのに、今ここに広がる空気は鋭く、さながら実戦そのもののようだった。
まるで、砂漠の中にいるように、柄を持つ掌は汗ばんでいて、全身に熱を感じる。
エルクに宿る炎の力のせいではない。手の中にある炎の剣のせいでもない。
達人級の相手と対峙したときに感じる、身を焦がすような緊張感と、カノンやオディ・オブライトとの戦闘による疲労が、エルクの精神を削り取っていく。
そもそも、エルクはそれほど我慢強い方ではなかった。
防御に回り待ちに徹し、敵が見せた隙を突いて攻撃するよりも、燃え盛る火炎のような猛攻で圧倒し、一気に押し切る戦闘スタイルの方が性に合っている。
故に。
拮抗したバランスを崩し先に踏み込んだのは、炎使いの少年だった。
ゴツゴツした地面を思い切り蹴りつけ、一気に前に出る。
相手の得物はリーチに優れている。だがそれは同時に、小回りが利かないという欠点も併せ持つ。
即、距離を詰めるべきだ。
初動からフルスピードで、エルクは前に出る。
前傾姿勢で加速をしながら剣を振り上げる。アズリアの懐に入ると同時に攻撃を加えるための構えだ。
そのまま槍の間合いに入った瞬間、アズリアも動きを見せる。
淀みも隙も無駄も感じさせない、滑らかで素早い挙動で槍を突き出してきた。
取り回しの困難な武器を使っているとは思えないほどに、反応が速い。
アズリアの突きが、エルクの一撃よりも先に飛んでくる。
リーチというアドバンテージに加え、アズリアの高い技量と優れた反射神経が、先制攻撃を実現していた。
エルクは思わず舌打ちを漏らす。鋭い穂先は真っ直ぐ向かってきていて、悠長に対策を思考している暇などない。
反射的に地を蹴る力を強くし、跳躍した。
空中に躍り上がると同時、エルクは強く息を吸う。
一歩下がり、間合いを保とうとするアズリアを視界に捉えたまま、エルクは詠唱を開始した。
◆◆
――いい判断だ。
咄嗟に跳んだエルクに、アズリアが抱いたのはそんな感想だった。
こちらへと突っ込んでくる勢いが邪魔になり、後ろへは下がれない。
横に逃げられたなら、突きの動きを薙ぎ払いに変えて容易に追撃を叩き込める。
かといって姿勢を低くすれば移動速度が落ち、間合いを詰め切れなくなる。
最適解は、槍を掻い潜りつつ速度を増して一気に突撃することだが、既にスピードを出し切っていたため、そうはできなかったのだろう。
となれば、エルクは上に跳ぶしかなくなる。
握り手を支点にして槍を回転させ、石突きで迎撃するには、ロンギヌスは長すぎる。
故にそこは、追撃を受けづらく、かつ勢いを保ったまま攻撃に移れる場所だ。
良い手ではある。
だが、最良ではない。
真っ直ぐな突進に比べると勢いは落ちるし、中空では行動が著しく制限される。
そして、着地時に隙が生まれるのだ。
その一瞬が、狙い時だった。
腕と槍が伸び切る前にバックステップを踏み、槍を構えなおす。
これは実戦ではない。加減しなければならないと分かっている。
38 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:26:29 ID:bT9jScH7
だが、『それ』を使わないでいては意味がない。
『それ』のために、稽古に付き合って貰っているのだ。
エルクの着地地点を見定める。そこはエルクの間合いの外であり、アズリアの間合いだ。
槍を握る手を引き、大地を強く踏みしめ、疲労や緊張を振り切って集中力を高めていく。
少年の爪先が接地する。
その瞬間を、アズリアは見逃さない。
切れそうなまでに引き絞った弓から矢を解き放つように、槍を突き出した。
潮交じりの冷えた空気を貫いて、甲高い音を立てた穂先が弾丸のようにエルクに迫る。
紫電絶華。
剣から繰り出される紫電の突きに比すると、いくらか遅く軽い、未完成の技。
されど、槍の心得が多少ある、という程度の人間にはとても真似の出来ない、高い技術の塊だ。
槍が向かう先、エルクは穂先から目を逸らさず、そして、叫んだ。
「――炎の光よ。道を、照らせ!」
洞窟の壁に、まだ幼さの残る声が反響する。
同時に、着地によって機動力を失ったと思われるエルクが、更に移動する。
移動先は、横。
渾身の突きは、未完成故に必中の域へと届かず、空だけを引き裂いた。
薙ぎ払い、追撃を掛けようとするが、遅い。
エルクは既に、懐にいる。
急ぎ下がろうとするが、穿き慣れないスカートでは、疾駆する少年を振り切れなかった。
エルクが剣を振りかぶる。
回避も防御も、あらゆる挙動も間に合わず、切っ先がアズリアの眼前に突きつけられた。
「勝負あり、だな」
少年が得意げに言うと、アズリアは小さく笑って武器を下ろした。
◆◆
海辺の――ヘケランの洞窟に到着して、エルクたちはまず、洞窟内を軽く探索した。
結構な広さがあったため、奥まで調べられてはいないが、そこに人の気配はないと判断した。
設置されていた松明や縄梯子に、手が付けられた跡が見られなかったためだ。
そして彼らは、夜明けまでこの洞窟で待機することにしていた。
エルクとしては、リーザやシュウの捜索を続けたかった。
間に合わなかったら、取り返しがつかなくなったら、という不安があったからだ。
殺人鬼が息を潜めている可能性のある夜の道を闇雲に歩き回る危険性と、暗闇の中で特定の人物と合流を果たす困難さをアズリアに説かれても、探し続けると食い下がった。
そんなエルクが折れたのは、「仲間ならもっと信頼してやれ」と言われてだった。
仕方なく休もうとしたエルクに、アズリアは、稽古に付き合って欲しいと申し出てきた。
疲れていたが、身体を動かしている方が陰鬱な思考に陥らずに済みそうに思い、その申し出を受けたのだ。
39 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:29:05 ID:bT9jScH7
そうして、実戦さながらの稽古を終えたエルクとアズリアは、食事に移っていた。
全員に共通で支給された食料は、ほとんど味のしないパンと保存の利く干し肉だった。
洞窟の地面に座り込んでパンを咀嚼すると、エルクは、全身に溜まった疲労を捨てるように息を吐く。
「すまないな、付き合わせてしまって」
ランタンを挟んだ向こうから、アズリアの声が聞こえる。
その声はややトーンが低く、彼女もまた疲労が激しいようだ。
「構わねーよ。やっぱりあんた、強いな」
先の稽古では、エキスパンドレンジを唱えて移動力を伸ばし、強引にアズリアの側面に回り込んで勝利を収めた。
消耗の激しいインビジブルを使わない戦法が、これしか思い浮かばなかったのだ。
もしも詠唱が間に合わなければ、着地の瞬間を狙われて敗北していただろう。
だからエルクは、率直に強いと思った。
オディ・オブライトと交戦するアズリアを目の当たりにしていたため、彼女の強さは分かっていた。
だが、実際に戦ってみて、その印象は確信に近づいていた。
それなのにアズリアは、首をゆっくりと横に振る。
「いや、まだまだだ。あの技をもっと確実なものにしなければ……」
「あの技?」
「秘槍・紫電絶華。あの男と戦ったときは上手くいったが、まだ未完成だ。
威力も、精密さも、手数も、速さも足りないからな。あれでは切り札になり得ない」
エルクは思い出す。
あの魔人とでも呼ぶのが相応しい男にアズリアが浴びせた、苛烈な機関銃のような乱れ突きを。
高速の連撃だったが、未完成と言われれば確かにそのような気もしてくる。
実際に、あの突きを受けながらもオディ・オブライトはアズリアに肉迫し、痛烈な一撃を叩き込んだのだ。
仮に技を完全に体得していたのなら、あの魔人を近づかせずに倒せたのかもしれない。
「速さ、か。槍で手数を増やすなら、もっと短く持つとか。けどそうすると、柄が邪魔になるよな……」
ぶつぶつと呟いて腕を組むと、エルクはアズリアの脇に目を遣る。
視線の先にあるそこにあるロンギヌスの全長は、アズリアやエルクの身長を超えていて、速度重視の攻撃には不向きそうだ。
だが見ているだけでは、重量や使い勝手は分からない。
「ちょっと貸してくれよ」
「それは構わないが、槍、使えるのか?」
「おう、任せろ」
ロンギヌスを手に取ると、ずっしりとした重みが感じられる。まるで、素早い攻撃など使わせないと槍自身が伝えているようだった。
構わず立ち上がり、振り回してみる。
突き、払い、薙ぎ、振り上げる。
一挙手一投足ごとに、重みを実感させられる。その全てを受け止め、いなし、吸収して槍を振るう。
挙動ごとに野獣の唸り声に似た音が鳴り、大気が揺り動かされ、洞窟を照らす炎が風圧に煽られた。
破壊力や殺傷力は申し分ない。しかしこの重量と長さの武器で素早い突きを繰り出すのは、やはり難しそうだった。
一連の動作を終えると、エルクはロンギヌスをアズリアの側に置いて再び腰を下ろす。
「コイツをもっと速く使うのは難しいんじゃ――ん? 何だよ、妙な顔して」
アズリアは目を丸くして、呆けたように口を半開きにしてエルクを見つめていた。
「いや、まさかお前が槍も使えるとは思わなかったからな。見事なものじゃないか」
「言っただろ。任せろ、って」
「ああ、そうだな。お前に任せたほうがいいかもしれん」
頷くアズリアに、エルクは小首を傾げる。どうも話が見えなかった。
40 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:30:52 ID:bT9jScH7
「エルク。この槍はお前が使わないか? その代わりに、お前の剣を私に使わせて欲しい」
アズリアが、妙案だとばかりに言葉を紡ぐ。
彼女の提案に、エルクは僅かに眉を動かした。それに気付いていないのか、アズリアは続ける。
「私、剣の方が得意なんだ。さっき話した紫電絶華も本元は剣技で、それならばまともに使える自信がある。
悪い話ではないと思うんだが、どうだ?」
確かに、悪い話ではない。
エルクはアズリアのように、槍よりも剣の方が特に得意というわけではないし、剣でなければ使えない技があるわけでもない。
それにロンギヌスは、単純な攻撃力を考えれば恐らく、炎の剣よりも上だろう。
少しではあるものの、どちらも使ってみたのだ。それくらいは分かる。
しかし、エルクは即答できなかった。彼は迷うように、視線を横へと彷徨わせる。
そこあるのは、炎の剣。
たった一振りの、片手で扱える剣だ。
手を伸ばして触れてみると、温かいように思えた。
そのまま、温もりを包み込むように握り締める。
まるでエルクの一部のように、その剣は、掌によく馴染んだ。
手に取った剣を掲げる。ランタンのゆらめく灯に照らされて、刀身が赤く煌いていた。
その刀身に、エルクの顔が映り込んでいる。
そうやって炎の剣を握り締めて眺めると、安らぎを感じられる。
まるで、心許せる人のすぐ側にいるみたいだった。
そんな、穏やかな感覚に背を押されるように。
エルクは、ぽつりと呟いていた。
「これは」
すると、頭に記憶が甦ってくる。
かけがえなくて、愛おしい人たちの姿が浮かんでくる。
彼らは父であり、母であり、少年であり、少女である。
皆、多くの大切なものを与え、教えてくれた人たちだ。
そして同時に、もういない、過ぎ去りし思い出の住人たちでもある。
「この剣は」
エルクは少し前に、彼らと出会い、声を聞き、話をした。
それは夢幻でしかないのかもしれない。記憶が作り出した幻想に過ぎないのかもしれない。
だとしても、彼らは確かに存在したと信じている。
掌にある、憎むべき敵を倒し、まだ生きている大切な人を守るための力と。
心に残っている、行くべき道を示してくれた言葉こそ、彼らが居た証だ。
「この剣だけは、渡せない」
何故ならば。
「――大切な人たちがくれた、最後の贈り物なんだ」
41 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:32:05 ID:bT9jScH7
◆◆
並んで置かれたランタンの中で、炎が揺れる。
仄かに燃える明かりに照らされるエルクの口元は、笑みを形作っている。
それでいて、その双眸は、深く濃い憂いで染まっていた。
そんなエルクに、アズリアは微笑みを向ける。
それが、必要なように感じられたから。
「そうか、分かった。この提案は撤回しよう」
剣が惜しくないと言えば嘘になる。
だが、少年が宝物のように握るその剣は、自分のものにしてはならないのだ。
アズリアはそっと、ポケットに忍ばせたピンクの貝殻に触れて、得心する。
――私の、この貝殻と同じか。いや、それ以上に大切なものなんだろうな。
どういう出来事を経て、エルクがその剣を手にしたのか、アズリアは知らない。
だがそれでもきっと、素直に純粋に、喜べるような出来事ではないだろう。
もしもそうなら、あんな悲しい瞳なんて見せはしない。
もしもそうなら、『最後の』などと述べる必要はない。
憂いを湛える、まだ年端もいかない少年を前にして、アズリアは思う。
――守って、やりたい。
エルクの強さは分かっている。現に先ほどの稽古でも、アズリアは敗北を喫した。
それなのに守ってやるなど、おこがましいのかもしれない。
仲間を信頼しろと言っておきながら、守ってやりたいなどと思うのは、傲慢なのかもしれない。
だとしても、守りたいのだ。
まだ少年と呼べるような子が、こんなに悲しい瞳をしてはならないと思うから。
悲劇の舞台に立たせたくないと望むから。
そして何より、そんな少年を、見ていたくなどなかったから。
軍から退いていても、それでも、守るべきを守る力でありたいと。
心から強く、願う。
それをエルクに告げるにはまだ力が足りなくて、気恥ずかしい。
だから口にはせず、内心で決意をする。
エルクと彼の仲間を。
そして、イスラを始めとした自分の仲間たちを。
必ず――守り抜く、と。
ランタンの中の炎と、ポケットに入れた貝殻に、誓う。
そうするのが、正しい気がした。
そんなことを思っているうちに、アズリアは、胸の奥にある温もりに気が付く。
炎のエルクと共にいて、心が温まるのは当然だった。
炎は、凍え冷え切ったモノを温めるという面をも持っているのだから。
心地よい温もりに誘われ、アズリアは目を閉じた。
アズリアの全身に堆積した疲労が意識を引っ張っていく。
壁の松明にくべられた薪が、ぱちりと爆ぜた。
遠くからは波音が響く。
ざあざあと、波音が、響いている。
42 :
大切な人がくれたもの
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:34:10 ID:bT9jScH7
◆◆
壊れ物を扱うように丁寧に、エルクは炎の剣を置く。
いつしか、アズリアは規則的な寝息を立てていた。
しばらくここで待機する予定なので、それは問題ではない。
だが、エルクも眠気を覚えていた。油断をすればすぐに意識が飛びそうになる。
二人とも眠るわけにはいかない。
どんな危険人物が、いつ現れるか分からないのだ。仲良く眠っている間に殺されたなど、間抜けにも程がある。
気分を紛らわすために、魔人が残していったデイバックから、板状の機械を取り出す。
見たことのない規格の機械だが、武器には思えない。
それをいじって時間を潰そうとするが、すぐに工具がないことに気が付いた。
思わず、溜息が落ちた。
「しばらくしたら起こして、俺も眠らせてもらうか……」
独りごちると、今度は大きな欠伸が漏れる。
大きく伸びをしながら、エルクは思う。
――次に眠ったら、どんな夢を見んのかな。
【B-10 海辺の洞窟(ヘケランの洞窟) 一日目 早朝】
【エルク@アークザラッドU】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:炎の剣@アークザラッドU
[道具]:データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
オディ・オブライトの不明支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:みんなで力を合わせて、オディオを倒す。
1:夜が明けるまで洞窟で待機。
2:リーザ、シュウ、イスラ、アティ、アリーゼ と合流。
3:カノンを止める。
4:アシュレーは信頼できそう。
5:トッシュを殺す。
6:一応ビジュを警戒。
[備考]:
※参戦時期は『白い家』戦後、スメリアで悪夢にうなされていた時
※カノンからアシュレーの情報を得ました。
※データタブレットに入っている情報は不明です。
【アズリア@サモンナイト3 】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(大)、睡眠中
[装備]:ロンギヌス@ファイナルファンタジーVI 、源氏の小手@ファイナルファンタジーVI(やや損傷)
[道具]:アガートラーム@WILD ARMS 2nd IGNITION、不明支給品1個(確認済み)、ピンクの貝殻、基本支給品一式
[思考]
基本:力を合わせてオディオを倒し、楽園に帰る。
1:夜が明けるまで洞窟で待機。
2:エルクを必ず守る。
2:リーザ、シュウ、イスラ 、アティ、アリーゼと合流。合流次第、皆を守る。
3:アシュレーは信頼できそう。
4:トッシュを警戒。一応ビジュも。
5:『秘槍・紫電絶華』の会得。
[備考]:
※参戦時期はイスラED後。
※軍服は着ていません。穿き慣れないスカートを穿いています。
43 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/02/27(金) 18:35:38 ID:bT9jScH7
以上、投下終了です。
更新してもらった直後なのに、WA2の支給品を増やしてしまってごめんない…
44 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/27(金) 19:07:39 ID:et84IeuU
投下乙!
流石イスラエンド後だけあってアズリア優しいよアズリア。
情景描写の演出が見事。最後のマッタリ感を心地よく引き立ててます。
……でもリーザ死んでるんだよなー。放送がどう響くか、今からちょっと怖い。
訓練シーンもグッド。アズリアが槍に不慣れとはいえ、やっぱエルクは強い。
エルク、主人公らしいけど、この絶妙な参戦時期がどう響くか楽しみ。GJ!!
45 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/27(金) 20:58:47 ID:fvtXwMS6
投下乙!
エルクにとっての炎の剣の大切さがすごくよく伝わってきました!
アズリアが放送聴いたエルクにどう動かされるか……期待です。
46 :
創る名無しに見る名無し
:2009/02/28(土) 00:28:48 ID:RK1cqJCC
投下乙!
なんだかいいな、この二人のコンビw
やんちゃな弟と頼りになれるよう努力する姉って感じで。
両者のバックボーンを生かしたほんのり暖かい見事なお話でした。
うん、エルクの炎のおかげか読んでるこっちもほかほかだw
そして放送後とタブレットの中身が気になるーw GJ!
47 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/01(日) 16:20:22 ID:w8xKJQAk
そういや放送まで、あとどこのパートの描写が必要かな?
48 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/01(日) 18:05:28 ID:fxAMYAyG
早朝まで進んでないところではヘクトルとブラッドとアシュレーは必要。
ジョウイと魔王も後一話いけるかも。
進路方向や位置などを考えると残ったセッツァーとケフカは放置でもいいと思う。
早朝まで進んだところでは灯台付近全員が必要。
理由はまだかなり暗いようだったから贔屓目に見て早朝になった直後。
さすがに戦闘に2時間はかからないだろうし。
49 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/01(日) 18:09:21 ID:8q6rXKn0
とはいえネタあったら書いてくれると嬉しいからな、セッツァーとケフカ!
個人的には休憩決め込んでいる魔王も放置でも問題ないかな
ちなみに灯台組みは書きにくいなら放送投下後に、放送を組み込んだ話を書けばいいかと
50 :
R-0109
◆eVB8arcato
:2009/03/01(日) 19:53:51 ID:UeZ0adf+
どうも、こんばんは。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る3/8(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?
ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。
交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1229832704/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
51 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/01(日) 21:06:45 ID:lIPT1MXv
>>50
了解です
52 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/01(日) 23:35:44 ID:ikJThl+4
>>50
楽しみにしています
ところでジャファル・シンシア組みも多忙なため破棄みたいだ。
これで、先述のヘクトル・ブラッド、アシュレーに加え、ジャファルとシンシアも必須かな?
53 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/02(月) 00:32:17 ID:VbrfyDof
>>50
おお、楽しみにしております!
最初から聞くのは厳しいかもしれないが、できれば全部聞きたいぜ
そしてヘクトル、ブラッドに早速予約が!
あとはジャファル・シンシアとアシュレーかな。
もちろん、それ以外の投下も大歓迎だけれど。
54 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/04(水) 22:01:31 ID:c725W2N9
代理投下を開始します
55 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:02:17 ID:c725W2N9
太陽が重い腰を上げ、世界に光が満ち始めたことで、川の水は漸く本来の煌きを取り戻しつつあった。
愛憎渦巻く殺し合いの場には似つかわしくない清流。
その傍らにはこれまた爽やかな景色には相応しくない光景が。
「おらっ、せい、でやっ!」
掛け声と共に武器を振るい宙を裂くは一人の男。
もしも貴公子と言うに相応しい彼の親友が同じことをしていたのなら、絵になる構図だっただろう。
しかし、男の外見も彼の得物も日の光を受け汗を舞い散らせるには粗暴で無骨すぎた。
「うおおおおりゃあああああああ!」
雄たけびを上げ戦斧を振り下ろしつつ男――ヘクトルはイメージする。
闇夜の中戦った一人の戦闘狂を。
ヘクトルの知る限り無手の格闘術をあそこまで昇華した例は存在しなかった。
度々戦乱が起こり平和が長続きせずにいたエルブ大陸だ。
武器を集団に持たせて手軽に戦力を増強する気風が、時間をかけ形成されていたのかもしれない。
(重量や柄の長さで取り回しに癖がある斧や槍じゃ不利だ。踏み込みは相手の方がはええ上に、密着さると捌きづれえ)
一度身体の動きを止め頭を回転させることに集中する。
懐に入られると上手く刃を当てられなくなるのは、ある程度の長さを持つ柄付きの武器の共通の弱点だ。
槍にしろ斧にしろ柄による打撃でもダメージを与えられなくはないが、やはり出は拳より遅い。
(逆に距離を開けての攻撃、特にあの硬い篭手や筋肉の鎧に影響されない魔法なら一方的優位に立てそうなんだが……)
打開策も浮かびはしたが、あいにく弓も魔法もヘクトルには使えない。
それなりに扱え、武闘家相手でも目立った弱点は見られない剣で立ち向かってもあのざまだ。
アルマーズ級の武器ならともかく、このまま斧を手に再戦してもむかつく話だが分が悪い。
故にヘクトルは未だ目覚めぬ男の回復を待つ傍ら修行することを選んだのだ。
(めんどくせえ! ようは懐に入られるより早く一撃で切り捨てりゃあいいだけだろが!)
シンプルイズベスト。
単純極まりない結論に達したヘクトルは訓練を続行する。
より速く、より強く。
そんな彼に握られた斧の刃に施された細工が陽光により浮き彫りになる。
どこかゼブラの模様に似た装飾通りにゼブラアクスと名づけられたその斧の本来の担い手は二人。
一人は奇しくも同じ時刻、同じ島で、付き合いでとはいえ修行をしている少年。
そしてもう一人は彼の未来の仲間である『ブラキアの英雄』。
だからだろうか?
ブラッドは夢を見た。『英雄』の夢を見た。
▼
56 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/04(水) 22:02:43 ID:/PCH3uqZ
おk、支援は任せろ
57 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:02:49 ID:c725W2N9
夢だということにはすぐに気付けた。
ここには居ないはずの男が、立つこともままならない男が、生き残っただけでも奇跡的な男が、健康そのものの姿で立っていたからだ。
『スレイハイムの英雄』。
真にその名で呼ばれるべき男を、俺は、そいつとの絆の証である名前で呼ぶ。
「ビリー……」
「ああ、お前が『ブラッド』だ」
ふと、デジャビュを感じた。
眠りについていた『勇気』のガーディアンロード、ジャスティーンを蘇らせた時のことだ。
あの時も自分は親友と対峙していた。
違うとすればただ一点。
今の俺は迷っているということのみだ。
「辿り着いたんだろ、俺のじゃない、お前自身の結論に」
そのことも、あいつはどうやらお見通しらしい。
「『英雄』なんてものは存在する必要なんてない、か」
かって目の前の親友に誇示した言葉だ。
何も『英雄』が不要な存在だということではない。
『英雄』とは『勇気』を引き出す為の意志の体現であり、迷いを振り払い、踏み出し進むべき道を示す導であるべきだという俺の持論だ。
与えられるのを待つのではなく、すがりつくのでもなく、人々がまとまり一つの目的を共にして未来を手に入れる。
そんな未来が俺にとっての願いであり、その願いに向かって俺は戦い続けた。
そして遂に、一瞬だけでも世界中の人々が心を一つに繋げ焔の厄災を打ち破ったことで、その導としての役割さえ『英雄』は――俺は終えたのだ。
我ながら幸せなことだと思う。
友と掲げた馬鹿げた理想を叶えることができたのだから。
だが、願いの成就は戦うことしか知らない俺から戦う理由を奪ってしまった。
青空に照らされた日常の下で戦い以外の生き方を知ろうとしていた最中今回の事件だ。
結果は先刻の通り。
闘争心の核を失ったふぬけた俺では魔王相手に手も足も出なかった。
58 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:03:16 ID:c725W2N9
「でも、この島なら、日常から外れた非日常の世界でなら、どうだ?」
魔王オディオにより強制された殺人遊戯。
イカレタ世界、いつかのように首にぶら下がる爆弾。
否応なしに俺にARMSとして戦った日々を思い出させる。
あの頃の俺は何の為に戦っていた?
アシュレーやティム、リルカのように愛する人のためか?
カノンやアーヴィングのように血の宿命に沿ってか?
マリアベルのように古き約束を守ろうとしてか?
違う。
オデッサの壊滅に伴い、過去は全て清算した。
既にあの時に、一度俺の戦いは終わっていた。
ならば何故、戦い続けた?
世界の平和を、人々を守るために戦ったのではなかったのか。
「そうだな。皮肉にも、どうやら答えは探すまでもなく与えられていたみたいだな」
ゲームマスターとは異なる魔王は言っていた。
失ったものを取り戻す、と。
裏を返せば、あの魔王はオディオに願いを叶えてもらう気さえなければ、普段は人を殺さぬ者かもしれないということだ。
いや、何はどうあれ魔王を名乗る人間相手にその考えが甘いというこは分かっている。
ただ、道に迷い誤った方向へと突き進みつつある者達や、望まぬ偽りを抱いてしまった者達もいるかもしれないことが分かれば十分だ。
説得する気は更々ない。
それは、俺の役目ではないからだ。
俺にできるのは戦うことのみ。
オディオの誘惑に屈することなく、人々を守るためにオディオとこの殺人遊戯相手に戦おうッ!
「行くのか?」
「ああ」
今一度、力そのものではなく力を束ねる象徴として。
『英雄』の勤めを果たしに。
何者にも負けない心の力、全ての人々に同じ力が備わっていることを知らしめよう。
俺達の望む明日は、英雄や魔王に与えられるものではなく自分達の手で掴み取るもの。
オディオの甘言に揺れる者達にそのことを身をもって示す。
それが、俺の新しい戦いだ。
▼
59 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:03:37 ID:c725W2N9
斧の柄の上方を持ち突き出す。
斧の刃は厚く、こうすることで
まるで小さな盾が出現したように正面からなら見えよう。
本来は剣や槍や棍棒などの攻撃を防ぎ、受け流す為の動作だ。
攻撃の練習をひとしきり終えたヘクトルは、今度は仮想の拳撃相手に防御の特訓に取り掛かったのである。
襲いくる目に焼き付けた猛攻を受け流す。
砲弾の如き掌打を、死神のカマを思わせる真空二段蹴りを、脳天を揺るがす大打撃を。
受け流し受け流し受け流し――キレた。
「ああっ、めんどくせええええ! だいたい俺は守るより攻める方だろがあああああ!」
斧を大きく振りかぶり、一閃。
空想の敵は瞬く間に霧散し無へと帰す。
元来ヘクトルは気の長い方ではない。
加えて、彼は友か世界かと問われれば迷いなく友を選ぶと実の兄に評された男だ。
いわんや愛する者となら言うまでもない。
ネルガルとの戦いに明け暮れていた頃の彼なら、まず間違いなく見ず知らずのブラッドを置いてでも、フロリーナ達を探しに行っていた。
ここまで思いとどまってこれたのは、兄の後を継ぎリキアの盟主になったことで生まれた自制心、何よりも、命を救って果てた魔女の存在があってこそ。
けれども、それももう限界だ。
「待ってろよ、みんな! つるっぱげ、てめえもだ! 今度はさっきのようにはいかねえ、必ずぶっ倒す!」
右に斧を担ぎ直し、開いた左手で呑気に気を失ったままの首根っこを掴む。
少々荒っぽいことをしてでも叩き起こす、駄目だったなら担いででも行けばいい。
がっしりした身体つきのヘクトルをしても199cmを誇るブラッドの巨体を運ぶのは一筋縄には行きそうにないが、本人はどこまでも本気だ。
いや、ヘクトル自身からすればどうしてこの妙案にすぐに至らなかったのか不思議なくらいである。
「女一人守れなかったからって自信でも喪失してたのかよ、俺は。クソッ、らしくもねえ。最初っからこうするべきだったってえのに!」
思わず自分への愚痴が漏れる。
どこか弱気になっていたのかもしれない。
そんな考えを打ち破ったのは予想だにしていなかった人物の声。
「……即断は時に大切なものを見落とすことがある。
見直し、下準備をして臨めば、出遅れることはあっても得られるものは大きい」
見ると、今にも拳を叩き付けられんとしていた眠り姫ならぬ眠り野郎は地面とのキスも待たずに目を覚ましていた。
「なっ、てめえは!」
60 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:03:58 ID:c725W2N9
よくよく考えれば非常に誤解され兼ねない状況なのだが、お構いなしに斧を構えるヘクトルにブラッドは諸手を挙げる。
戦う意思のないことの表明だと見て取れるが、リーザやセッツァーの情報により媒介なしで魔法を使える人間がいることを知ったヘクトルは緊張を緩めない。
が、ブラッドは気にすることもなく口を開く。
「俺は『てめえ』なんて名前でもなければそこまで軽い人間でもない」
ヘクトルのぼやきから殺し合いに抗う意思を感じていたからだ。
魔王にやられたはずの傷の痛みはいささか退いているのも彼のおかげだろうと判断し、ブラッドは名乗る。
「俺はブラッド。スレイハイム軍の、そしてARMSの『ブラッド・エヴェンス』だ」
その名乗りを聞き、どうしてだろうか、ヘクトルは直感で理解した。
ブラッドが自身が目指す兄、前オスティア侯ウーゼルと同様、多くの人々の心を背負った人間なのだと。
大切な誰かの後を継いだという共通点から、何か感じるものがあったのかもしれない。
(これじゃあエリウッドの奴を笑えねえな)
すぐに他人を信じがちな親友の顔を思い浮かべ、ヘクトルも構えを解き笑みを浮かべる。
「そうかい。俺はヘクトル。オスティア候ヘクトルだ。よろしくな」
「ああ、こちらこそよろしく――ってとこかな?」
まあ、たまにはこういうのも悪くない。
にやりとしつつ返事をする男にデイパックを投げてよこしながらヘクトルはそう思った。
61 :
灯火よ、迷えるものを導け ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/04(水) 22:04:21 ID:c725W2N9
【H-6 北部、川辺 一日目 早朝】
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:全身打撲(小程度)
[装備]:ゼブラアックス@アークザラッドU
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、
基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル)
[思考]
基本:オディオをぶっ倒す。
1:仲間を集める。
2:ブラッドと情報交換しつつ、フロリーナ達を探す。つるっぱげも倒す
3:セッツァーをひとまず信用。
[備考]:
※フロリーナとは恋仲です。
※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。
※セッツァーと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。
ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。
【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(中)
[装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:不明支給品1〜2個、基本支給品一式
[思考]
基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。
1:仲間を集める。
2:ヘクトルと情報交換。
3:魔王を倒す。
[備考] ※参戦時期はクリア後。
62 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/04(水) 22:04:52 ID:c725W2N9
以上、投下終了。
-----------------
代理投下を終了します
63 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/04(水) 22:05:05 ID:/PCH3uqZ
64 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/04(水) 22:06:49 ID:/PCH3uqZ
投下乙、繋ぎの話か。
だが、これで両者の持っている情報がどうなるか気になるところだ
65 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/06(金) 00:05:18 ID:QAzm6dLK
投下乙!
猛進気味なヘクトルに冷静なブラッドと、いい味が出てる!
こいつら、頼もしいコンビだよなぁ。
セッツァーが残した情報が不安だがw
66 :
R-0109
◆eVB8arcato
:2009/03/08(日) 21:00:12 ID:7/Efx0VJ
ttp://r-0109.ddo.jp:8000/ (ラジオアドレス)
ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm (聞き方)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1236512429/
です。
67 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/09(月) 12:21:54 ID:HUPrZEjE
昨夜はラジオ乙でした!
トカが皆に愛されてることがよく分かったラジオだったぜw
68 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:22:01 ID:nORmzCpr
ラジオ乙でした。
ではせっつぁんと冷房投下します。
あと、期限今日かと勘違いしてました。繋ぎなのに遅れてすみません。
69 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:23:16 ID:nORmzCpr
「あー……。山か……」
鬱蒼と茂る木々の中で俺はため息をついた。
とりあえず別れてきたのはいいが、目に映るのは余すところなく地をうめつくす草木ばかり。
程なくして足を止め、地図を広げることになっていた。
傍らには川、遠くには山。思った通り、北には何エリアにも渡って森がひたすら広がっている。
このまま進んでも意味は無さそうだ。すぐにそう結論付けて俺は今来た道を辿り始める。
森の中で人を探すことだって骨が折れる上に、今から山を登るだなんてやってられねぇ、というのが本音だった。
そんな非効率的な賭けをするよりは、Uターンするタイムロスのほうがいくらかましだろう。
「仕方ねぇな……」
地図を片手に、槍をもう片手に持ち、再び歩き出す。
辺りを見回す。
本当に殺し合いの会場かと疑ってしまうほど静閑としていて、水の流れる音が響くだけだった。
さっきの奴らに会わないようにするとして……街へ行くか。
そう考えてから、俺の目が地図の右端を捉えた。
近場とは言えないが、おそらくこの辺りでは一番人の集う場所だろう。使わない手はない。
何より、ギャンブラーは街にいるもんだろ?
歩きにくい地面に悪態をつきながら、俺は足を進めていった。
◆
ひたすら歩いていた。
どこに行きたいのかも分からない。どこにたどり着くかも知ったことではない。
それらは歩きながら考えようとしたのに、すぐに別の感情が、声が、思考を遮る。
『そいつは勇者バッジ。勇者の証とも言われるものだ』
今俺はどこを歩いているんだろう。
――草原だ。何の変哲もない草原だ。
『そのバッジは勇者の剣に力を貸してくれる』
剣なんて……。第一、俺は魔導師だ。何の変哲もないからこそ、劣等感だけは立派だった魔法使いだ。
――何故俺はこの方向に歩いているのだろう。
勇者を陥れる側だった俺に持つ資格なんて。
――何故俺はここにいるのだろう。
『これからの俺にそれを持つ資格はない』
だからって、俺に託す必要もないだろう。
資格のある奴がいるというなら、そいつがこのバッジを持つべきなんだ。俺じゃない。
早く、この重さを手放してしまいたい。
70 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:24:39 ID:nORmzCpr
手の中の物を握りしめる。金属の端が手のひらに食い込む。
重い。
重いのに、手はそれを放さない。何故か捨てることをためらう。
お前はこれを知っていた。それを付けて戦っていたんだろ、カエル……。
『……グレンだ』
――今何故歩いているか?
簡単だ。
俺はあのカエルから、いや、騎士グレンから離れたかったのだ。
別の道へ行ってしまったあいつを見たくなくて、だからあいつとは全く別の方向へ歩き続けているのだ。
願わくは、再び合うことの無いように。再びその姿を見ることの無いように。
それを受け止めきれずにいるから、あいつの良く知るこのバッジが名残惜しいのだろうか?
俺は弱かった。
すぐに立ち直れる強さも無ければ、もう一度正面からぶつかっていく勇気もない。
オルステッドに挑み、全てを失った後、それらが再び俺の心で蘇ることはなかった。
カエルが見えなくなった後もただ呆然と立ち尽くし、一歩も踏み出せなかったことが全てを物語っている。
もっとも、以前のものだって歪んでいて酷いものだったが。
後悔が俺を変え、記憶が俺を縛りつける。
友という存在は、こんなに大きなものだったのか?
信じるという行為はこんなにも重いものだったのか?
俺には分からなかった。
長い長い年月を魔王の牢獄で過ごし、生前の記憶は色褪せ、所々かすれていた。
昔の俺はあいつに何と声をかけていたか。あいつは俺を信頼していたか。
思いだそうとしても、元々そんなものは無かったかのようにも感じられる。
酷く、惨めだった。
◆
気がつくと俺は走っていた。
友としてオルステッドに、カエルに何もできていなかった自分にほとほと嫌気が
さして。
もう何も考えたくない。
走っていれば悩む気も失せるかもしれない。そんなことを考えながら。
そして、そんな無意味な抵抗も……しばらくして終わりを迎えた。
突然のことだった。
いや、今まで気づいていなかっただけかもしれない。
懐かしい、とても懐かしい感覚が背に走った。
瞬間、俺の足が止まり、体も微動だに動かせなくなる。
その暖かさを追うのに全神経が傾き、瞬きすることさえままならない。
膝に勢いよく何かが当たる。
手のひらが続いて手をつく。
いつの間にか俺は膝をついてくず折れていた。
71 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:25:52 ID:nORmzCpr
「あ……」
声が漏れる。
俺の目の前に映る影がくっきりと姿を表していく。
草原が色を取り戻していく。
振り向くと、その光源は待っていたかのように俺の半身を光で覆った。
「光だ……」
目が痛い。容赦なく、光の束が顔に降り注ぐ。
けれども、開かずにはいられなかった。
「日の出だ……!」
頬を何か冷たいものが伝っていく。
地についた手がぶるぶると震える。
朝日を浴びる。それだけのことが俺にはあり得なくて、懐かしくて、たまらなかった。
長い年月、ルクレツィアから消え失せていた太陽が。
もう二度と見ることのできなくなった太陽が。
――ここにあるのだ。
「オルステッド……」
そして、感無量な気持ちとは別に、頭の中を一抹の疑問がよぎる。
あの国が闇に閉ざされたのはいつだったか。
その姿を最後に見たのはいつだったか。
その姿を取り戻しに来たのは誰だったか。
……なぜ、あいつはそんな人間を呼んでいたのだろうか。
「オルステッド……。お前は今、何を考えているんだ……?」
『――罪滅ぼしのためではなく、お前の意志で友を救えよ』
「俺は……」
不思議な感覚だった。
つい先ほどまで暗雲が立ちこめ、重さに根をあげていた俺の心は、今は見る影もなくすっきりと落ち着いていた。
朝日が暗雲を追い払い、その光が道を指し示してくれているように。
――俺は、俺の意志でお前を救いたい。
あいつが聞いたら、どう思うだろうか。
いや、あいつにとって、俺の言葉ほど聞きたくないものはないだろうな。
けれども、罪滅ぼしでは駄目なんだ。それでは俺の自己満足に過ぎないから。
お前を倒すことが救うことになるなら、何だってしてやる。
俺はどこまで行っても、酷く身勝手な人間だからな。
それはお前が一番分かってるだろ?
手の中のバッジを見る。
あいつもかつてこんな姿だっただろうか。光を受けて一層自身を輝かせるそれは、勇者そのものに見えた。
俺は勇者にはなれない。
この先どう変わろうとも、それだけは変わらないだろうと思った。
魔王を倒すのが勇者なら、そんなものはどこにもいない。
あそこには、俺を最後まで信じてくれた友がいるだけだから。
72 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:28:28 ID:nORmzCpr
そして、再び立ち上がろうとした時、俺は気付いた。向こうから近づいてくる人物に。
今度はどんな奴だろうか。
敵でなければ――今度こそ、友としての勤めを果たそう。
「――よお。どうした? そんな所で。誰かに襲われでもしたか?」
【I-7 草原 一日目 早朝】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:健康
[装備]:つらぬきのやり@ファイアーエムブレム 烈火の剣、シルバーカード@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:トルネコのランダムアイテム2個(セッツァーが扱えるものではない)、基本支給品一式×2
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:手段を問わず、参加者を減らしたい。今は無闇に敵を作らない
2:扱いなれたナイフ類やカード、ダイスが出来れば欲しい
3:人の集まりそうな城下町へ行く
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※名簿を確認しました。
※ヘクトルの仲間について把握しました。
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労 (小)
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒し、オルステッドを救いたい。
1:目の前の男と話す
2:カエルとは会いたくない
3:勇者バッジとブライオンが“重い”
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っているかもしれません(名前は知りません)。
73 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/09(月) 19:31:55 ID:nORmzCpr
投下終了です。
題名は「無くした翼と、届かぬ翼と」でお願いします。
書いてるうちにゲーム中のイボウを思い出せなくなった件について
74 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/09(月) 21:52:31 ID:d0xtwT+Y
確かにこの冷房は「誰お前www」って感じだなw
まあでも、ゲーム本編での不名誉を払拭するために頑張ってもらいたいもんだ
75 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/09(月) 22:01:04 ID:HUPrZEjE
投下乙!
なんときれいなストレイボウ。
主催者をよく知る唯一の人物だけに頑張ってほしいが、セッツァーに弄ばれそうだなー
76 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/09(月) 22:27:33 ID:L1CVlv92
投下乙
冷房よ、あんた誰ww
えーとなんかモロにカエルと同じ西方向に進んでるんですが。
カエルはI−8の森の爆発現場に向かったはずですし。
セッツァーも黎明とはいえ山付近まで進んだのち5マスほど移動しているような……。こっちは橋を使わず川を越えたと考えれば納得いくけど。
これが北に進んで会ったのがケフカなら自然になったんだけど。
77 :
◆jU59Fli6bM
:2009/03/10(火) 07:16:53 ID:9AoArkhp
あ、ハーレーか……。すみません、とんだ勘違いをしていました。
何故かリルカと魔王の激戦地跡に行くのかと勝手に思い込んでいたようです。
あと、カエルの思考欄1の東は間違いですよね…?
移動させすぎも自覚していたので破棄しようかと思います。すみませんでした。
78 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/11(水) 22:02:37 ID:S7hfxi9p
んーと、こないだシンシア、ジャファルで予約して破棄した者なのですが、
予約入る気配無さそうだし、投下してもいいですか?
79 :
R-0109
◆eVB8arcato
:2009/03/11(水) 22:04:51 ID:fxXtOfJb
>>78
どうぞどうぞ
80 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/11(水) 22:05:49 ID:fxXtOfJb
アーッ!!
コテが……
あ、ついでに録音アップしておいたんで実況スレの最後のうrlからどうぞ
81 :
◆k0Dka0fsDI
:2009/03/11(水) 22:09:22 ID:S7hfxi9p
ふむ、じゃあこれで、
82 :
◆k0Dka0fsDI
:2009/03/11(水) 22:09:58 ID:S7hfxi9p
あれ?
スペースいるのかな?
83 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/11(水) 22:11:02 ID:S7hfxi9p
むう、とりあえず新トリ
84 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/11(水) 22:13:24 ID:S7hfxi9p
『ドッペル』
東の空が白ずみ、夜が明けようとする時間帯。
険しい、という程ではないが、それでも道行く者に多少の負担を与えるであろう山道を軽快に……という表現は多少の語弊があるが、苦もなく進む二つの人影。
漸く上り始めた朝日を右手に進む二人の歩みは、常人のそれよりも多少早く、二人とも多少なりとも身に覚えがあるという事が伺える。
先を進むのは、黒い装束に身を包み、そこそこの長身を否定するかのような猫背で、音も立てず、体の動きも少ない、滑るような歩み、
まるで己の存在が影であるかのように歩きながら、唯一その燃えるように髪の毛だけは見るものの心に刻まれるであろう、赤い少年。
そして、その数歩後を進むのは、それほど上等な物ではないにせよ、赤く染め上げられ、飾りの入った中華服を身にまとい、三つ編みにした髪と野性的な表情が特徴的な少女。
歩みを進めながらもその三つ編みは歩きながらも殆ど揺れず、少女の歩みの巧さが伺える。
そんな、不揃いな二人組み……いや、彼らを二人組み、と呼ぶのは多少の躊躇が必要となる。
先ほど軽快にという表現を控えたが、彼らの間には言葉も無く、互いを気遣うような意思も無い。
むしろその逆、彼らのお互いに対する態度は、赤の他人のそれに対する無関心のほうが生易しい、明確な警戒心を含んでいる。
その、重苦しい空気を漂わせながら彼らはそれでも同じ方向へと歩みを進めて行く。
それは、二人の目的のみが唯一共通する事柄であるとの表れなのかもしれない。
「……ねえ、少し、待ってくれない……かしら」
何が切っ掛けなのか、長らく雄弁な沈黙の時間過ごしていた少女、シンシアが、前を行く少年、ジャファルに声を掛ける。
いや、これまでにも何度か、少女は少年に話しかけようととはしていた。
だが、その都度少年はそれを拒絶し続けていた。
彼がそれに応じたのは最初の一度、どちらの方角に向かうのかの決定の時のみ。
二人に唯一共通する目的である『人捜し』の為には、人の寄り付きやすい方角に向かう必要がある。
シンシアが捜し人であるユーリルの身体的特徴をジャファルに告げ、ジャファルはニノという名前しか告げなかったが、人里に向かうことを反対しなかった事からしてそれほど強くはないのだろうということをシンシアは悟った。
その為、とりあえずは近場にある北の村か、或いはその西の城を目指し、北上する。
そして、そのまま早足で歩き出して以来、ずっと二人の間柄に変化は無い。
「…………!!」
……だが、しかし。
今回だけは、どういうわけか少年の反応は劇的に異なった。
とっさに振り返りながら頭を腰の高さまで下げた低い姿勢を取り、利き手を腰の後ろに吊るした短剣に掛ける。
元から鋭い眼光は、今や睨み殺さんばかりに吊り上げられ、それでいてその顔からは元から少ない表情が消えた。
いつでも飛び掛かれる、切っ掛けがあれば即座に短剣を標的に埋め込める、そういう姿勢へと瞬時に変化したのだ。
いや、或いは少年の対応は当然のものなのかもしれない。
何故なら、先ほど彼に掛けられた声は、彼の記憶には存在しないもので、
彼の視線の先にいるのは、茶色の長い髪に作りは良いが質素な服を纏った見たことの無い相手なのだから。
「……誰だ」
少年は最低限の言葉だけを少女に告げる。
即座に飛び掛らないのは、相手の能力を警戒しての事。
先ほどまで確かに気配のあったシンシアという同行者の影も形も無くし、そして彼自身の背後を取るという力量。
と、そこまで考えたところで、ふと彼は気づく、
「私は…シンシアよ、ジャファル。
貴方の名前を知っているんだから信じてもらえるでしょ」
目の前の少女こそ、彼、ジャファルの同行者であるシンシア本人であると。
最初に出会った時、シンシアは他人の姿を取る事が出来る、と言っていた。
つまり今までのシンシアの姿は誰か別の人間のものであり、おそらく今の姿こそが彼女本来のものだと。
そこまで至り、ジャファルは僅かに体の力を抜く。
これまで色々な人間を見てきたジャファルの直感に従えば、シンシアは恐らく弱い。
無論魔道士に肉体的な強さは求められはしないが、それでも彼が元々属していた黒い牙や、ニアと共に加わったリキア同盟の部隊の魔道士達は、近接された時の為に多少の肉体能力は備えていた。
だが、彼女にはそれらしい力量は一切感じられない、それこそ出会った当初のニノと同じ位だろうか。
呪文を唱えようとしても、詠唱が終わる前に二回は殺せる、そのくらいの差を見て取った事で、僅かに警戒心を緩めたのだ。
85 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/11(水) 22:14:21 ID:S7hfxi9p
「……さっき言ったと思うけど、私は他人の姿を真似る魔法が使えて、それでさっきまではあの人の姿を借りていたの。
効果時間に制限があるのは知ってたのだけど、思ってたよりも早かったみたいね……」
「……さっきまでの女は、参加者か? そいつはどうした」
「……結構な怪我を負わせたのだけど、油断して逃げられたわ。
その後どうなったかは知らない……そう言えば名前も知らないから本当に死んだのか確認も出来ないわね……」
硬い響きを含ませながら、シンシアは色々な事実を述べる。
多少声に出てしまっているが、彼女の心中は穏やかではない。
今、ジャファルがその気になれば、シンシアの命は簡単に摘み取られてしまうのだから。
「……ねえ、この姿だと貴方に付いて行くのが辛いから、もう一度モシャスを使ってもいい?」
「……いいだろう」
付いて行くのが辛いのは、事実である。
山育ちとはいえ、普通の少女のシンシアでは、暗殺者の身でありながら黒い牙の最高の戦士である四牙の称号を得たジャファルの能力に追いつける筈も無い。
だがそれ以上に、最低でもジャファルがシンシアを殺すつもりになった時に、何とか逃げる事が可能な能力は無ければならない。
山道に、シンシアの短い詠唱が響く。
ジャファル自身とて、足手まといな相手に合わせるつもり等無いし、かといって今すぐシンシアを殺す事に価値を見出せない以上、妥当な対応ではある。
無論、シンシアが異なる呪文を使用して牙を向いたとしても、即座に対応できる距離には居るのだが。
そうして、
「モシャス」
短い呪文が唱えられ、シンシアの姿が煙に包まれる。
呪文書無しに使用できる、というのは多少の驚きをジャファルに与えたが、元より効果的な殺害方法にしか興味の無い身、その事を深くは考えない。
というより、それどころでない事態が起きた。
煙が消えたとき彼の前に現れたのは、赤い髪に黒い衣装、そしてその隙間から僅かにのぞく鍛えられた身体と、鋭い目。
他の誰でもない、ジャファル自身のものだったのだから。
「……どういう、つもりだ」
声に殺意を込めながら、自身の姿を取る意図を問う。
自分自身の姿が取られるという時点で、多少の嫌悪感を覚えるのは自然な事であり、ましてや今は殺し合いの場なのだから。
「……この魔法は目視している相手しか対象に出来ないの」
その口から紡がれるのは、やはり先ほどまでのものと違う、低い男性の、ジャファルの声だ。
今更、という感じで説明を加える、無論、意図的にその事は告げなかったのだが。
「……元に戻れ」
「それは無理、時間で戻る他は、別の人の姿を借りる事しか出来ないの」
(……私が死ねば、別だけどね)
「……そうか」
意外に……少なくとも、シンシアの予想よりもあっさりと、ジャファルは手を引いた。
腰の短剣に当てていた手も下ろし、少なくとも表面上は納得したように見える。
その反応に、シンシアは拍子抜けしつつも、力を抜き……
次の瞬間、声を出す間も無く地面に押し倒され、その喉元に短剣を突きつけられた。
「ひっ!」
「……首の布で顔は極力隠しておけ、それと誰か他の人間に出会ったら、そいつの姿になれ」
だが、遅れて声が出た頃には、ジャファルは既にその手を離し、シンシアを見下ろしながら、事務的に告げた。
瞬間的に感じた恐怖を抑えながら身体を起こすシンシアには構わず、進行方向に向けて歩き出す。
そうしてジャファルの言葉に従い顔を隠しながら、少し遅れて彼の後ろにまで移動したシンシアに、今度はジャファルが声を掛ける。
86 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/11(水) 22:15:21 ID:S7hfxi9p
「さっきの女の姿はどのくらい持った?」
「……四時間、くらい」
「目視している相手しか対象に出来ないと言ったが、どの位の距離まで可能だ?」
「え……、それは試した事は無いからよくわからないけど……」
「……そうか……」
そこで、ジャファルの言葉は途切れる。 必要な事柄を聞き終えた以上は用は無いと。
実際、中々便利な技能ではある。
先ほど試した限りでは、肉体を使用するのがあくまでシンシアである以上、そこまで大きな戦力としては期待出来ない。
だが、姿を変えられるならば、ジャファルの存在をまるで表に出さず他者を殺し、或いは意図的に生かして目撃させる事が出来る。
そして何よりも、その気になればほぼ確実に殺すことが出来る。
手を組むには最適に近い相手、ということだ。
「…………」
後を追うシンシアに言葉は無い。
ただ、殺されなかったということは、ある程度の価値は認められたと、そういう事かもしれない。
なら今はそれでいい、即座に殺される心配が無い上に、少しだろうが助力も期待できるかもしれない。
それに、ジャファルの先ほどの言葉、考えた事も無かったが、遠くから他人の姿を真似出来るとしたら……。
手を組むには不安が残るけど、それでも得るものも少なくない、そんな相手。
同じ姿を持つ二人。
何の信頼も存在しない関係ではあるが、それでも多少、お互いに価値は見出したようではある。
……もっとも、その歩みの重さは変わらず、距離が縮まる事も無いだが。
【D-4 山地 一日目 黎明】
【ジャファル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:アサシンダガー@ファイナルファンタジーVI
[道具]:不明支給品0〜2、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いに乗り、ニノを優勝させる。
1:シンシアと手を組み、参加者を見つけ次第殺す。深追いをするつもりはない。
2:いずれシンシアも殺す。
2:知り合いに対して躊躇しない。
[備考]:
※名簿確認済み。
※ニノ支援A時点から参戦
【シンシア@ドラゴンクエストIV】
[状態]:モシャスにより外見と身体能力がジャファルと同じ
肩口に浅い切り傷。
[装備]:影縫い@ファイナルファンタジーVI、ミラクルシューズ@ファイナルファンタジーIV
[道具]:ドッペル君@クロノトリガー、かくれみの@LIVEALIVE、基本支給品一式*2
[思考]
基本:ユーリル(DQ4勇者)、もしくは自身の優勝を目指す。
1:ユーリル(DQ4勇者)を探し、守る。
2:ジャファルと手を組み、ユーリル(DQ4勇者)を殺しうる力を持つもの優先に殺す
3:利用価値がなくなった場合、できるだけ消耗なくジャファルを殺す。
4:ユーリル(DQ4勇者)と残り二人になった場合、自殺。
[備考]:
※名簿を確認していませんが、ユーリル(DQ4勇者)をOPで確認しています
※参戦時期は五章で主人公をかばい死亡した直後
※モシャスの効果時間は四時間程度、どの程度離れた相手を対象に出来るかは不明。
87 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/11(水) 22:15:59 ID:S7hfxi9p
以上です、誤字脱字展開におかしな点などございましたら指摘お願いします。
88 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/12(木) 10:55:25 ID:CbwjVvuB
投下乙!
すげー殺伐としたコンビだな。互いに利用してる感がよく出てる。
この2人だと単純な戦闘力はそこまで高くないが、かなり戦場を引っ掻き回してくれそうだ。
1つ疑問が。状態表の時間表記は黎明でOKなのかな?
89 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/12(木) 11:40:44 ID:6Zt+FiXz
投下乙!
すげえ……お互いに容赦なさ過ぎる……
一人よりも二人というけれどここまで組んでて怖い二人はいないと思うぜ……!
90 :
焔英のうっかり
:2009/03/12(木) 21:58:39 ID:h0hoIARS
皆様感想あらがとうございます。
>>88
と、変え忘れですね、時間は早朝、になります。
91 :
◆26ciYcvhPA
:2009/03/12(木) 22:00:18 ID:h0hoIARS
や、やってしまったorz
92 :
◆xFiaj.i0ME
:2009/03/12(木) 22:22:32 ID:h0hoIARS
新トリでorz
93 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/14(土) 13:36:46 ID:CWz5CP2o
www
94 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/14(土) 23:00:05 ID:fh9nwSiG
はぁ?
95 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/15(日) 10:56:47 ID:jvATfKoP
ちょっと質問。
自己リレーってしてもいいのかな?
投下後、結構時間経ってるキャラなんだけど。
96 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/15(日) 23:05:57 ID:gFap4VNh
いいんじゃね?
97 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/17(火) 22:15:12 ID:9tQjYss7
予約したアシュレーなのですが、問題がありそうなので仮投下してきました。
本投下前にご意見を頂ければと思います。
98 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/17(火) 23:05:00 ID:P40rj3sY
いいんじゃないかな
99 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/17(火) 23:07:40 ID:HypgLr92
まあありだとは思いますー。
ミスティックの効果がなくなってるだけで中に何かいても別に変ではないと思うので
100 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/18(水) 06:22:37 ID:a6nUKEsl
投下乙
自分も特に問題なしかと思います
感想は本投下の際にさせてもらいます
101 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 20:55:04 ID:1z+RXKJN
皆様、ご意見ありがとうございました。
OKとのことなので、本投下させていただきます。
102 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 20:57:16 ID:1z+RXKJN
そこは、無限の荒野だった。
天を見上げれば漆黒の空が際限なく広がり、地を見下ろせば、真っ白い大地が何処までも続いている。
遮蔽物など何一つ存在しないそこで、<英雄>が私の前に立ちはだかっていた。
事象の地平と呼ばれるそこで、青く長い髪を靡かせて、<英雄>が大剣を振りかざす。
すると、眩い光が生まれ出た。
それはただの光ではない。
人間の感情が、ファルガイアに住まう命の全てが詰め込まれた輝きだった。
圧倒的な輝きの奔流が、大挙して押し寄せてくる。
その膨大な光は収束したかと思うと、一気に私を包み込んでいく。
それは眩く熱い、“希望”に溢れた光だ。
身が喰われ、蝕まれ、侵されていくのを感じる。
それは痛みであり、恐怖であり、絶望だった。
何よりも求め、欲し、喰らっていた感情が、他でもないこの私に迫り来る。
無数の希望に体が食われ、カタチを保てなくなっていく。
純然たる絶望が、私の中で肥大化していく。
そして初めて、気付く。
この身が震え怯えていることに、気が付いてしまう。
このような馬鹿なことがあってなるものか。
愚劣な人間ごときに、エサとなる感情を産み落としてくれる存在ごときに、この私が気圧されているなどとあってはならぬ――!
『そうだ。貴様は奴らごときにやられるような矮小な存在ではない』
ふと、音が聞こえた。それは、奇妙な声だった。
『災厄の名を冠した簒奪者、紅の焔であまねく生命を焼き尽くす魔神よ』
人間の声にも、人間を超越したモノの声にも聞こえる、不可思議な音だった。
二律背反を抱えた、正体不明のそれに、私は。
『誘おう。憎悪と悲哀と絶望に満ちた、極上の宴へと』
心地よさを、覚えていた。
痛みも恐怖も絶望も、その全てを払拭し塗り替えるほどの安息を、その声は与えてくる。
崩れ落ち消え行く私に、その声は“希望”を差し伸べてくれるようだった。
『人々の縋る愚かしい希望を、黒き焔で、完膚なきまでに焼き尽くすのだ……!』
滅びを前にしているというのに、私は、いつしか嗤っていた。
消滅の恐怖など、もはや微塵も存在しない。
聞こえてくる声に、全てを委ねようと決意した刹那。
私の身は、光によって撃ち滅ぼされていた。
◆◆
太陽が昇り始め、空が徐々に明るみを帯びている。
それはまだ薄明かりと呼ぶのが相応しいようなか細いものだったが、鬱蒼とした森の中を歩き続けたアシュレーにとって、充分な光のように思えた。
少なくとも、その破壊の爪跡を照らすには、朝焼けの光は眩しすぎた。
駆け続けたことで荒くなった呼吸も、思わず詰まるほどの惨状が、眼前に広がっている。
今、アシュレーが佇む周囲の植物は、例外なく消し炭となっており、痛々しい様相を呈していた。
炭化した草木に囲まれた、巨大な焼け野原。
103 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:00:35 ID:1z+RXKJN
その地表は焦土と化していて、地面が剥き出しになっていた。
焼け付くような、破壊の証。
そこからは、生命の気配も亡者の呻きも捉えられない。
そこは、驚くほど静かだった。
音すらも破壊しつくされたのかと錯覚してしまうほどの、静けさが落ちていた。
あらゆる存在を許さないような虚無の中から、何かを捜し求めるように、アシュレーは声を挙げる。
「誰か、いないかッ!?」
叫びながら、視線をあたりに走らせる。
だが、応じる者も人の姿も見つからない。
焦りが背筋をなぞっていく。
目の前で息を引き取っていく少女の姿と悲痛な声が思い起こされた。
繰り返したくないと思う。手遅れになりたくないと願う。
もはやここには結果しかない。
破壊は既に過ぎ去ったものであり、その場に居合わせなかったアシュレーが、当事者になることなど不可能だ。
それでも、あの紅の閃光を生んだ者や、破壊の力に呑み込まれた者がいるはずだった。
これほどの暴力に晒されて、身体も生命も、何もかもが消し飛んでいる可能性が高くとも、アシュレーは、くまなく目を走らせる。
かけらにしか見えない微かな希望も、決して見逃さないように。
本来そこに立ち並んでいたはずの木々は軒並み薙ぎ倒されていて、見晴らしはよくなっている。
だから、北に開いた穴をすぐに見つけられた。
その穴は破壊によって作られた穴や、天然の洞窟にしては、人の手が入りすぎていた。
一目見ればすぐに、遺跡の入り口と分かる。
ところどころが風化し磨耗しているにもかかわらず、造りはしっかりとしていて、丈夫そうだった。
そこにも人影は、見当たらない。
だが、アシュレーは、その遺跡へと駆け出していた。
ぽっかりと開いた入り口の前で、立ち止まる。
供物のように捨て置かれたデイパックと、墓標のように突き立つ一振りの剣が、そこにはあった。
禍々しい印象を与えてくる剣。
アガートラームを聖剣とするなら、それはまさに魔剣だった。
その刀身は、多くの血液を啜りつくしたかのように紅い。
剣の下に悪魔が埋まっていると言われたら、信じてしまいそうなほどに、その剣は異常な雰囲気を醸し出していた。
それから目を背けるように、アシュレーは転がっていたデイパックを見下ろす。
この中に剣が入っていたのだろうか。
もしそうだとするなら、剣やデイパックの持ち主はどうなったのだろうか。
武器も支給品も投げ捨てて逃亡したのか、あるいは。
先ほど見えた紅の閃光の中で命を落としてしまったのだろうか。
後者の可能性の方が高く思えるのは、ファイナルバーストに酷似したあの光が、アシュレーの意識に焼きついていたからだった。
何か手がかりを探そうと、デイパックに手を伸ばす。
そうしたとき、もう一つ、何かが地面に落ちていることに気が付いた。
小さな輪状のそれに、触れてみる。
指先に伝わったのは、硬い感触だった。
それは、アシュレーの首筋に巻きついた、忌まわしき感触とよく似ていた。
焼け焦げてさえいなければ、間違いなく、首で感じる質感と全く同じそれを、指に感じただろう。
――何故、そんなものがここに落ちている?
掌から汗が一気に噴き出す。
唾液が激しく分泌され、不愉快だった。
思考が上手く働かない。
意識が、最も在り得る可能性を回避しようとする。
だが理性は、回避しようとした不吉な可能性を訴えかけてくる。
あの眩い光を目にし大音響を耳にしたときから、ずっと感じていた不安感が、一気に現実味を増していく。
溜まった唾を、嚥下する。
緊張感が、心臓に鞭を打つ。
104 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:02:56 ID:1z+RXKJN
アシュレーは慎重に、落ちていた首輪を手に取った。
オディオが持つ絶対的なアドバンテージである、爆弾付きの枷。
それから解き放たれるためには、首輪そのものを解析する必要がある。
当然、それは危険を伴う行為だ。
命がかかっている以上、誰かの首に嵌められているままの首輪に手を入れるといったハイリスクな手段は避けたい。
故にこのように、首輪のサンプルを入手できたのは幸いだといえる。
それなのに、アシュレーは悔しげに歯を食い縛っていた。
首輪だけがここに転がっている訳を考えると、そうせずにはいられなかった。
希望的観測をするならば、首輪の制約から逃れた者がいたのかもしれない。
しかし、とてもそうは思えなかった。
外したにしては、首輪が綺麗過ぎたのだ。
焼け跡はあるが、解体した形跡や壊れた跡は見当たらない。
それに、仮に外すことができた人物がいたとしても、支給品を放置しておく理由が考えられない。
となると、やはり。
この首輪を付けられていた人物は、遺体すら残さず消滅した可能性が高くなってくる。
首輪がこうして残っている事実を考えると、体が消滅したなど、不自然だといえなくもない。
それでも、殺し合いの最中で誤爆防止や、参加者による解除防止のため、過度に丈夫に作ってあるとすれば、死体だけ消滅することもありえるのかもしれない。
アシュレーは歯を食い縛り、強くディフェンダーを握り締めていた。
硬い柄が五指と掌を圧迫し、痛みが生まれる。それを自覚しながらも、力を抜きはしない。
その程度の痛みが何だというのだ。
あのとき看取った少女や、ここで命を落としたと思われる誰かが負った痛みに比べれば、こんなもの痛みの範疇にすら入れられない。
まただ。
また、間に合わなかった。
しかも今回は、託してくれた少女のときよりも遅い。
看取るどころか、その遺体すらなくなってしまった後だったのだから。
非常時に矢面に立つはずの自分が、こうして無傷で生きているのに、命の数は確実に減っている。
――こんな体たらくで、何がARMSだ……ッ。
悔しさと無力さと情けなさがアシュレーを苛み、歯噛みする。
強烈な負荷に、奥歯が、ぎりっと悲鳴を上げた。
折れそうなほどに噛み締めた顎から、力を抜いて呼吸する。
気分を切り替えなければならなかった。
こんな状態では、救える命も救えない。
散ってしまった命を軽んじるわけでは決してないが、過去に捉われて未来を蔑ろにしては、更に失敗と自己嫌悪を重ねてしまう。
アシュレーは、瞑目する。
ここで散った命に、祈りと哀悼を捧げるために。
そして数秒の後、ゆっくりと、目を開ける。
すると、突き立った一振りの剣が視界に映った。
105 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:05:39 ID:1z+RXKJN
――これを持っていくことは、許されるだろうか。
投げナイフの扱いには慣れているが、それよりも、ある程度の長さがある武器やARMの方が得意だった。
殺し合いを是とする者や、怪獣の存在を考えると、ディフェンダーでは心もとない。
もう少し頼りになる武器が欲しいところだった。
手を伸ばし、柄に触れる。
その剣は、未だ、熱を持っているような気がした。
握る。
その禍々しい剣に、見覚えなどない。
だというのに、酷く懐かしいように思えた。
迷いが消えない。
その剣はやはり墓標に思える。
これを手に取った瞬間、ここに居たはずの“誰か”の存在が消え去りそうで。
ここで命を賭した“誰か”を冒涜するようで。
引き抜くことが、躊躇われた。
躊躇する時間が惜しいと分かっている。戦力的に見て、必要だと理解している。
だがきっと、理屈ではないのだろう。
自分の感覚を信じるように、アシュレーが、剣から手を離そうとした、その瞬間。
『――――――』
突然、誰かの声が、響いてきた。
それは、聴覚を通して聞こえるものではない。
頭の中に直接響くような、心の中に入り込んでくるような、そんな声だった。
その感覚を、アシュレーは知っている。
そしてその声も、アシュレーは、知っている。
『抜かないのか? アシュレー・ウィンチェスター?』
全神経を、戦慄が駆け抜ける。
熱病を思わせる不愉快な熱さを孕んだ、その昏い声を、忘れられるはずがない。
「何故、お前が……ッ? 何処にいるッ!?」
狼狽と驚愕に溢れた声で、アシュレーは中空に問う。
いつしか、剣を握る手が小刻みに震えていた。
『お前に滅ぼされる、その瞬間に、魔王に導かれたのだよ。今はお前が握る、剣の中にいる。
そして――』
不吉な予感が勢いよく這い上がってくる。肌の上で害虫が蠢いているような怖気が背筋を撫でていく。
急ぎ剣から離れようとするアシュレー。
だが、魔剣は――そこに宿る災厄は、かつての依り代を逃さなかった。
アシュレーの手に、真っ黒い靄が纏わり付いてくる。
剣から手を離しても、遅い。
朝陽の中に浮かび上がった黒い靄は、瞬時にアシュレーを包み込んでいく。
振り払おうとしても、執拗にそれは纏わり付いてくる。
痛みはない。
苦しみもない。
ただ、意識が遠のき、無意識に繋がろうとする。
夢と現実の狭間に、アシュレーは足を踏み入れていく。
眠りに落ちる間際によく似た不確かさだけが、そこにはあった。
崖の間に張られたか細い綱の上を、命綱なしで渡るかのような不安感に苛まれる。
106 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:09:57 ID:1z+RXKJN
『あの剣の中も悪くはなかったが、やはり生きた人間の方が良い。
お前の不安、後悔、無力感、全てがダイレクトに伝わってくるぞ』
内から声が響いてくる。
昏い声の主は、魔神と呼ばれ人々に恐れられた存在のもの。
焔の災厄。ロードブレイザー。
絶対的存在との対話は、懐かしい感覚だというのに、少しも嬉しくはなかった。
『お前に遭えたのは僥倖だ。かつて共にいただけあって、すぐに憑依することができたよ』
対して、アシュレーの内的宇宙に宿ったロードブレイザーの声は、愉悦に震えている。
『魔剣の中、怨嗟と苦痛と絶望に満ち満ちた意識に包まれて、傷ついた私は眠っていることしかできなかった。
そんな私を目覚めさせたのは、魔剣に“アクセス”してきた者だ。
奴は、私が存在していることなど知りもしなかったのだろう。
“アクセス”のおかげで、意識は活性化した。
苦しみ、悶え、嘆き、怨み、憎み、妬み、嫉み、絶望。
そんな意識の塊は、極上の糧だったよ。
それらを喰らい、吸収することで、ある程度の力を取り戻せた。
もっとも、実体を伴うどころか、かつて封印されていた頃にも及ばない。
もう少し“アクセス”の時間が長ければ、更に意識を貪れたのだがな。
まだまだあの魔剣の中には、痛烈な意識が残っている』
災厄は、饒舌だった。
アシュレーに、絶望を突きつけるかのように。
『とはいえ、あの小娘には感謝している。
だから剣に宿る意識と共に、私も少しばかり力を貸してやったのだが、奴では耐え切れなかったらしい』
語られる声に、アシュレーは息を呑む。
あの紅の閃光が、ファイナルバーストに酷似していたのも、ロードブレイザーの力を使ったとすれば頷ける。
そしてその結果、おそらく、あの首輪の主は消滅したのだろう。
小娘と、ロードブレイザーは称した。
それが真実なら、アシュレーの遅さが、二人の少女に死を迎えさせてしまったことになる。
迂闊さが、心にこびり付く。
自己嫌悪に背を押され、八つ当たりをするように、アシュレーは口をつく。
「力を注ぎすぎたんじゃ、ないのか」
想像以上に暗い声が、アシュレーの唇から落ちた。
それに対するのは、愉快そうな魔神の笑みだった。
『くくく……。いい声が出せるじゃないか、<英雄>。
私は小娘の望みに応じただけだよ。恐らく、奴は私に気付いていないまま逝っただろうがな』
さあ、と災厄は続けた。
『今一度、お前の中で力を蓄えさせて貰うとしよう。
奪え。潰せ。壊せ。破れ。裂け。
無論、力なら再び貸してやるぞ。次こそ『私』を取り戻すためになッ!』
胸の奥が、黒い焔に晒され理性が焦がされる。
炙り出され燻り出され煽られるのは、強烈な破壊衝動だ。
力を伴って露になるその衝動は、アシュレーを飲み込み別の存在に成り代わろうとする。
アガートラームが内的宇宙にない今、自身の力だけで魔神の侵食を抑えなければならない。
アシュレーは胸を押さえ、息を吐き出した。
責め苦によく似た声に抗うよう、意識を強く保ち手放さないようにする。
魔神に屈しないために、自分が自分であるために。
107 :
夜空の果て -再来-
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:12:48 ID:1z+RXKJN
そんなアシュレーを、ロードブレイザーは、ただただ嘲笑う。
『まあ、いいさ。今の私では、強引にお前を喰らうことすら叶わぬ。
故に見守ろう。必要ならばいつでも呼ぶがいい。
――直にお前は、更に強い後悔と無力さを味わい、噛み締めることになる』
「どういう、意味だ……ッ!?」
尋ねるても、含みを持たせた物言いを最後に、魔神の声は聞こえなくなる。
同時に、意識が急激に浮上を始めた。
まどろみが過ぎ去り、白昼夢が消えていく。
世界が色を取り戻す。
突き立った魔剣の存在が、現実に戻ってきたことを証明していた。
結局、また遅かった。
得られた情報は、小娘と呼ばれる年頃の少女が、命を散らしたことくらいだ。
それがどんな人物なのかも、どんな思惑で戦っていたのかも。
彼女と対峙した相手が、何者なのかも。
何一つ、分かりはしない。
ロードブレイザーに尋ねたところで、答えが返ってきそうにない。
もう、ここに留まる理由はなくなった。
先ほどはぐれてしまった道化師を探すか、あるいは、他の誰かを当てもなく探すか。
考えながらも、アシュレーは、魔剣に背を向ける。
次にそれに触れたら、大切なものを失い、戻れなくなるような気がした。
夜空は果てを迎え、太陽が高さを増していく。
世界は確かに時を刻んでいた。
立ち止まることを許さないように、振り返ることを認めないように。
無情に酷薄に、世界は回っていく――。
【F-7 遺跡(アララトスの遺跡ダンジョン)周辺 一日目 早朝】
【アシュレー・ウィンチェスター@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康。後悔、無力さを感じている。
[装備]:ディフェンダー@アーク・ザ・ラッドU
[道具]:天罰の杖@DQ4、ランダム支給品0〜2個(確認済み)、基本支給品一式×2、焼け焦げた首輪(リルカの首輪)
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:リルカやブラッドら仲間の捜索
2:他参加者との接触
3:アリーナを殺した者を倒す
※参戦時期は本編終了後です。
※道化師のような男(ケフカ)に猜疑心を抱いています。
※島に怪獣がいると思っています。
※内的宇宙にロードブレイザーが宿ったため、アクセスが可能になりました。
※焼け焦げた首輪が、リルカのものだとは気付いていません。
108 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/03/18(水) 21:14:25 ID:1z+RXKJN
以上、投下終了です。
何かありましたら、指摘などお願いします。
109 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/18(水) 23:20:30 ID:SecAvOCX
投下乙です!
アシュレーの内的宇宙にロードブレイザーが!これは後が怖いですねー。
意外なボスに化けそうで今後が楽しみです。
さて、これで放送にいけるのだろうか?
セッツァーとケフカは現状維持でいいのかな?
110 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/19(木) 00:02:43 ID:pY+cClqt
投下乙です
アクセスキター!!!
これは思わぬ強力マーダーフラグだ
しかし今アクセスしちゃうとアガートラームないから外見はプロトブレイザーっぽくなったりするか?
そうなったら誤解フラグもたちそうだwww
111 :
嘲律者 ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/20(金) 17:47:53 ID:KIvslK75
ついてない。
まったくもってついてないとオイラは思う。
目の前には狂った男。
オイラの名は■■■。
種族で言うならタケシー。
霊界サブレスの住人にして――非常に癪だが召還獣だ。
▽
愛憎渦巻き血風吹きすさぶこの地で、人は花を見て何を思う?
居並ぶ可憐な花びらに心奪われ、花畑に飛び込み遊ぶことで癒されるのだろうか。
いや、触れれば散り、引き抜けば枯れ果てるその儚さに、無力な我が身を重ねて嘆くかもしれない。
逆に、踏まれても踏まれても立ち上がり、陽の光を求めて気高く咲き誇る様に勇気付けられる者もあろう。
はたまた見たところで生き抜くには何の役にも立たないと、興味を示さず素通りする人とている。
そして、血に汚れることもなくのうのうと咲いている花々に怒りを覚える人間もまたしかり。
もっとも、その男は日頃から花も人も動物も全ての命が気に食わなかったのだが。
「キィーーーーッ! 人の気も知らずにお高く咲きやがってえええええ!」
色とりどりの花の中、風情を台無しにする奇声を上げる魔導士が一人。
ケフカ・パラッツォだ。
アシュレーの悪評を広めるにもまずは人と会う事が先決だと思い花園へとやってきたのである。
仮にも地図に名ありで記された施設。
それも何故か人間の多くはひ弱で仕方がない植物どもを愛でる癖がある。
ならば、何人か人が集まっていても不思議ではない。
そう思い、嘘の内容や、その効果が発揮され裏切られるアシュレーの醜態を考えつつ意気揚々とケフカはここまで歩いてきたのだ。
「クワァー! なのにどうして誰にも会わないー!」
見回せども見回せども人っ子一人いない。
思い通りにいかなかったという事実がケフカの心を苛立たせる。
「くっそー!! 腹が立つー! ちっくしょ、ちくしょう、ちくしょう、
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちく、ちっっっっくしょーーーー!!」
いっそこのむかつく小奇麗な花畑を燃やしてやろうかと本気で考える。
三闘神の力を手に入れ大陸一つさえ引き裂ける今のケフカにとっては容易いことだ。
炎に蹂躙される花々。涙を流すこと叶わず、塵と化し消え逝く生命。
想像しただけでぞくぞくっとなる。堪らない。
その上火災に伴う煙を見た誰かが寄ってくるかもしれない。
一石二鳥とはまさにこのことだ。
ケフカは大仰な動作で両の腕を広げ、ファイガを唱えようとして――
やめた。
112 :
嘲律者 ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/20(金) 17:48:40 ID:KIvslK75
「ふんっ! おもしろくない!」
そんな方法で人を集めたところで、放火魔の言うことなんて信じる人間がいるはずもない。
あたり前すぎることにぎりぎりで気付いたからだ。
ばれない様にやれば問題ないが、さっきはそれで危うく流れ弾で飛んできた剣に射されて死ぬとこだった。
その恐怖がケフカの衝動を引き止める。
ならば茎を折り、根を安息の地から引き抜き、文字通り千切っては投げるか?
腹部の痛みは流石に大分退いたとはいえ面倒だ、手間がかかり過ぎる。
「つまらん!! 大量の毒でもあればまとめて枯らせれるのにー!」
役立たず以下と切捨てはしたが皇帝の権力と財力は実に使い勝手が良かった。
帝国の為といえばすぐに欲しいものが手に入るまさに魔法のおもちゃ箱だった。
この殺人遊戯の支給品とてそれ位の融通は利いて欲しいものだとケフカは心中毒づく。
島の真ん中を通っているらしい川に毒を流し込めばどれだけの人間を殺しきれることやら。
とはいえ、ケフカは己が引き当てた支給品に満更でもなかった。
「しかしこの道具の仕組みを考えた奴は中々におもちろい奴でちゅねー」
取り出したおもちゃを前に子どもさながらにころっと気分を変える。
おもちゃとは先刻実験したばかりのサモナイト石。
威力こそ低いが使い道はあると踏んだそれを。
これでも一流の大魔導士であるケフカは暇つぶしとばかりに行きがかりに調べたことで新たな魅力を発見したのだ。
即ち、その使役の方法。
「脅迫、ですか。実に、じつうううに分かってます」
リィンバウムと呼ばれる世界で確立した技術、召喚術(サモーニング)。
近接する異世界より対象を呼び出し使役する力。
その要となるのは、契約で縛られた召還獣は主の意思によってしか元の世界に帰ることができないということである。
どれだけ強大な召還獣であろうとも主人に忠実なのは主にこれに起因するのだ。
地位や名誉や友や家族。別世界に放り出されるとはそれら全てを剥奪されるに等しい。
望まぬ殺傷や気に食わない命令に従ってでも元の世界に帰りたいと願うのは無理もないことである。
「ああ、そうだよ! 愛? 友情? 信頼? 忠誠? シンジラレナーイ!
そんな下らないものを後生大事に抱えていたレオは殺した!
アシュレー、お前も俺に騙され、遊ばれて死ね!
ティナ、あなたには真の召還術の使い方を教えてあげましょう!」
取り込めるだけ取り込み三闘神の力も得た以上、幻獣は用済みだとしていたが、まだまだ絞れる方法はあったのだ。
幻獣界。幻獣達が引きこもっているかの特殊空間。
そこからこのサモナイト石による使役と同様の仕組みで幻獣達を引きずり出せば!
「さて、じゃあ次は近場の神殿にでも向かうんだじょー! 水で打撲痕も冷やせるのだ!!」
護衛獣、誓約者、原初の召還術。
両者の合意と信頼、絆の上で成り立つそれら召還術の高みを知らず、知ろうともしない道化師は上機嫌で進路を決める。
再び心に湧き上がるのは、出会った人間にどう接すれば一番愉快なことになるかという打算の数々。
それらが成就し、命も、夢も、希望も、全てが壊れていく光景に心が躍る。
「……フォッフォッ」
113 :
嘲律者 ◇iDqvc5TpTI代理
:2009/03/20(金) 17:49:12 ID:KIvslK75
止まらない、止まらない。
笑え声が止まらない。
「フォッフォッフォフォッフォッフォフォォフォ!!」
花園に新たに加わった花一輪。
過剰なまでにカラフルなそれは、お約束に違わずどこまでも毒々しいものであった。
【E-9 花園 一日目 早朝】
【ケフカ・パラッツォ@ファイナルファンタジーY】
[状態]:上機嫌。顔、腹部に痛み(退いてはいる)
[装備]:無し
[道具]:タケシー@サモンナイト3ランダム支給品0〜2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:全参加者を抹殺し優勝。最終的にはオディオも殺す。
1:積極的には殺しにかからず、他の参加者を利用しながら生き延びる。
2:アシュレー・ウィンチェスターの悪評をばらまく。
3:2の為に神殿へと向かう
※参戦時期は世界崩壊後〜本編終了後。具体的な参戦時期はその都度設定して下さい。
三闘神の力を吸収していますが、制限の為全ては出せないと思われます。
※サモナイ石を用いた召還術の仕組みのいくらかを理解しました。
▽
呼び出された時、こりゃ駄目だと思ったね。
前の俺の主、ビジュもちょっとキテる奴だったけど、あっちのほうが全然上さ。
どっちも小悪党ではあんだけどスケールが違うっつうか、倫理を踏み越えたどころか置き去りにしちまってるというか。
やれやれ、つくづく主に恵まれない。
うっかりオイラを呼び出す前に石を壊されねえかな〜。
死ぬのや帰ってこれなくなるのはごめんだぜー。
――霊界サブレスにて あるタケシーのぼやきより――
114 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/20(金) 17:54:12 ID:KIvslK75
投下乙!
タケシーなんかかわいいな。
ケフカはこれから神殿行きか、そっちには狂皇子がいる危険だぞケフカ!
おいしいところをもっていくか、巻き込まれるか気になるところです。
115 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/20(金) 17:57:25 ID:KIvslK75
すいません。
>>113
の前にこれをいれてませんでした。
以上、投下終了。
-----------------
代理投下を終了します
116 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/20(金) 17:58:57 ID:KIvslK75
安価ミスした!
>>114
の前でした。
117 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/20(金) 18:48:13 ID:sN12fZTO
投下&代理投下乙!
ケフカらしさがよく出てるなぁ。すごくキャラ上手い!ケフカの暗躍に期待だぜ。
そしてタケシーがんばれ、超がんばれ。
118 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/20(金) 21:52:45 ID:jjomc6Ng
投下&代理乙!
タケシーといいスヴェルグといい、サプレスの住人カワイソス。
そしてまだ召喚されずにロリの死体と一緒な天使はどうなることやら…
119 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/21(土) 02:00:12 ID:rc42IVaE
あ、指摘が一つ。
召還じゃなくて、召喚かな。
「三人でいたい」もそうだったけど。
120 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/21(土) 02:01:34 ID:rc42IVaE
連投ごめん。
サブレス→サプレス。
121 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/21(土) 13:57:08 ID:u8SAi0oY
そろそろ第一放送について考えた方がいいのかな?
122 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/22(日) 00:39:00 ID:YPpDX9P+
テンプレによると、一度の放送で禁止エリア6つか。
マップが広いからか、多いね。
地図見ながらどこがいいか考えてみたが難しいなぁ…
123 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/23(月) 00:01:16 ID:qVUB0/Lc
したらばの雑談スレの意見だと、F−4が禁止エリア候補か。
いくつかはB−1やJ−7みたいな、もない端っこでもいいかな。
そういや放送も通常通りの予約になるの?
124 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/23(月) 01:34:07 ID:oKBJZjgB
放送の流れになっているところすみませんが、予約いいですか?残念ながらジョウイではないんですが。
125 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/23(月) 01:35:25 ID:35wX6baQ
いいと思います
126 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/23(月) 01:44:41 ID:e7tuqi9z
いけいけごーごー
127 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/23(月) 01:47:51 ID:oKBJZjgB
ありがとうございます。では予約しにいきまーす。
128 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/24(火) 01:07:50 ID:cZWdWkJ0
>>127
期待してます!
しかし放送について意見少ないな…
禁止エリアだが、数多いし、いくつかは放送書く人に任せるというのはどうだろう?
129 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/24(火) 07:31:43 ID:fOUQatG2
>>128
うむ、それもいいかもな。俺も特に希望するエリアはないし
ところで教えてくれごひ……じゃなくて誰か
ロザリーって呪文使えるような描写がされてるが、具体的には何の呪文が使えたりするんだ?
FC版しかやったことないので教えてくれるとありがたい
130 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/24(火) 07:58:02 ID:Av5uUKEO
リメイク版だとピサロのおまけみたいにパーティに入ったりするけど、戦えない。
小説とかはよくわからないけど、ロザリーが魔法を使うような描写がないから、
何の魔法が使えるかとかはわからない。
でも一応エルフだし、多少の知識があってもおかしくはないんじゃね?ってところかと。
131 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/24(火) 16:12:55 ID:fOUQatG2
ありがとう
じゃあ何を使えるかとかもある程度好きに決めていいのね
132 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/24(火) 19:09:40 ID:y50X6/yT
まあイオナズンだのギガデイン放ち始めたら流石に……
まあ空気読んでいきましょうって言うことでいいんじゃないかな?
133 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/25(水) 08:29:57 ID:oUzJFq+b
ところで放送ってもう予約してもいいのかな?
134 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/25(水) 09:10:29 ID:cvEFi1FG
>>133
まだ放送前を書きたい人いるかもしれないし、予約日を決めといた方がいいかも。
適当に、29日午前0時あたりでどう?ちょっと遅いかな?
135 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/25(水) 21:49:35 ID:oUzJFq+b
>>134
んーしたらばに投下だけしといて、後で死者が増えたら書き足すとかでいい気もするけど。
まあ時間的には大差無いしその日に予約でいいと思うかな。
136 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/25(水) 22:55:23 ID:cvEFi1FG
なるほど、仮投下か。いいかも。
したらばでは明日でもいいって意見も出てるね。
やっぱ29日じゃ遅いか。
明日の夜(10時くらい?)以降に予約OKして、仮投下してもらうトカ?
137 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/25(水) 23:14:34 ID:oUzJFq+b
ふむ、良いと思います>明日10時
したらばで無予約でもとあったけどそれはどうだろう?
個人的にはあってもいいと思うが…
138 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/26(木) 00:25:26 ID:OO7rVt/u
一応予約ありでいいんじゃね?
139 :
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:42:39 ID:Na6tru+B
高原日勝、マシアス・レネ・フィガロ、イスラ、クロノ、ビジュ
―――投下します。
140 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:44:44 ID:Na6tru+B
これは魔王オディオが催した殺し合いのなかで起こった物語の一つである。
未だ陽が昇らない場所で行われる闘劇。
役者は五人。
誇り高きフィガロの血を受け継ぐダンカン流格闘術継承者、マッシュ・レネ・フィガロ。
『最強』を目指す格闘家、高原日勝。
自らの欲望のため帝国を裏切った反逆の徒、ビジュ。
正義の心を胸に秘める時空冒険者、クロノ。
嘗て偽りの生に囚われ、ようやく自分の望む生を歩み始めた魔剣適格者、イスラ・レヴィノス。
用意された舞台は二つ。
片や正義と悪との対決。
片や誤解からの衝突。
二つの戦いの火蓋が切って落とされた。
◆ ◆ ◆
141 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:45:30 ID:Na6tru+B
舞台開幕。
舞台A――――イスラ・レヴィノスVS高原日勝
先手は高原。地面を蹴り上げ猛スピードでイスラに突進。対するイスラは迎撃するために身構える。
「うおりゃあああああぁぁぁぁぁ」
「……少し眠っていてもらうよ」
(まったく僕はいつも厄介ごとに巻き込まれる)
イスラはとりあえず様子を見ることにした。
戦闘力未知数の相手だ。自分から接近戦を挑まない方が良いだろう。見るからに相手は格闘家―――カウンター攻撃が得意な可能性がある。
(それに迎撃なら自分の得意分野だからね)
なにより―――。
―― 一つ聞く、何で俺たちを襲った?
さっき目の前の男―――高原日勝が言った事がイスラは気になっていたから。
(彼の話によれば、僕が彼と少なくとも一人以上いるであろう彼の仲間を襲ったとの事だ。だが僕はそんなことはしていない)
高原の拳が迫る。イスラは俊敏な動きで回避――思考を続ける。
(となれば可能性が一番高いのは誤解……か、今ここにいるのは僕と彼だけ……意味もなく言いがかりをつけて襲いかかるのは考えづらい)
しかしそれだけでは目の前の男が信用出来る者かと言われればまだ足りない。
(だが僕に負けたときの為に『誤解をしていると装っている』可能性だって十分にある)
この男が本当に誤解をしているだけで、殺し合いに乗っていないなら魔王打倒の戦力だ。殺してはいけない。
だがもし殺し合いに乗っているなら、イスラの姉――アズリアやあの島で会った先生――アティの危険を少しでも減らすためここで殺す。
そしてイスラは相手に話を聞く耳が無い以上、戦いの中で高原を見極めようとしていた。
(志の持たない力は災厄と同じだが、力を持たない志もまた無益な死を招く災いの元だ)
高原の志と――力を。
(君の志と力――試させてもらうよ)
「くらいなッ!!森部のじーさんの奥技が壱!!」
「!――消え……ウグッ」
あびせげり。別名、方回転踵蹴り。
自ら前回り受け身する勢いを生かし、
相手の顔・肩を目掛けて自分の踵で蹴りを打ち込む技。
高原のそれは高く、疾くイスラの視界から一瞬で消失、肩に強烈な踵の一撃を見舞う。
「ッッ……なッ!」
イスラは体勢を立て直した瞬間に驚愕する。
なぜなら真っ先に目に入ったもの――それは自分の顔に迫る高原の踵だったからだ。
(馬鹿な!!こんな連続で!!)
高原があんな体勢を崩す不安定な技を出した後、連続で攻撃してきたのだ。イスラがあびせげりを受け体勢を立て直す時間が僅かながらあったことをを差し引いても疾すぎる。
イスラが驚くのも無理はなかった。
すぐさま魔界の剣で迎撃に入るが――。
142 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:46:18 ID:Na6tru+B
「フェイントだ!!」
高原は上半身の力を使って空中でさらに一回転。両手を組み、それをハンマーの如くイスラの後頭部に叩き付けた!!!
「……あ」
それはまさに受けた者を奈落に落とすような一撃だった。
(ッ……まだだッ!!)
それでもイスラは倒れない。ここで倒れるわけにはいかない。
イスラの頭上を飛び越え後方に着地した高原に一閃。
高原の背中が切り裂かれる。
「テッ!! 見かけによらず頑丈だな…… だったらッ!!」
距離を取ろうとするイスラに高原は急速接近――。
懐に入って必殺技を放つ――相棒の必殺技を。
「熱き正義の燃えたぎる! 赤き血潮の拳がうなる! 爆! 裂! 拳!」
高原が放つは百を超える拳の嵐。それを受けたイスラは後方に大きく吹っ飛ばされる。
(……こいつすげえ。爆裂拳を見切りやがった)
拳がまともに通ったのは半分程度。爆裂拳を客観的見た事がある高原はそれを見切る難しさを知っている。例えそれが半分程度でも。
(こいつが暗闇からの襲撃なんて小細工を使うだろうか?雷も使ってこないし……こいつじゃないのか?)
イスラを強者と認めた高原は違和感を覚える。拳を通じてイスラに感じたものは悪人とは思えないものだった。
だったら――。
「おーい。大丈……ッ!!」
高原は硬直する……
目の前には銃を構えたイスラが立っていた。
舞台転換。
◆ ◆ ◆
143 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:47:58 ID:Na6tru+B
舞台B――――クロノVSビジュ
「死ねええええ!!オラァ!!」
(……遅すぎる)
ビジュは剣を振り回すも目の前の少年は余裕で剣やそこから生まれる雷を避けている。
ビジュは知らない。目の前の少年は中世ガルディア王国最強騎士サイラスを超える剣の使い手グレンが認めるほどの実力者だということを。
ビジュは気付かない。自分と相手との格の違いに。
(……問題ない。無力化は簡単に出来るな)
クロノからすれば極力悪人でも殺したくなかった。
自分の武器はモップ。武器として貧弱すぎる。
そんなもので無力化できるのかという不安があったが。全く問題なかった。
目の前の男の実力は論外だ。剣の使い方もまるでなってない。
これなら、一人でガルディア空中刑務所に乗り込んできたルッカの方がよほどいい動きをするだろう。
「ちょこまかとうざってえ!!黒焦げになれやあああ」
ビジュは実力差に気付かないまま、クロノに雷を落とす。
(……ちょうどいい、無力化なら自分の雷よりあれがいいな)
クロノは跳躍した。……雷に向かって。
バチッ!―――直撃
「ひゃはは、ひゃははは。どうだあああ!!」
「……サンダーソード」
「……へ?」
ビジュが見たもの……それは―――。
144 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:49:11 ID:Na6tru+B
「……モップが、光っ――――!?」
眩い光に包まれた……モップだった。
……
…………
………………
(……ん。こんな感じか)
クロノは使ったのは魔法剣――いや、剣ではないのだが。
ユーリルから聞いたギガソード……それを試したのだ。
今までルッカやマールとの連携で氷や炎を纏った斬撃を使ったことはあったが、自分の雷を使うという発想は無かった。
クロノは思ったのだ……それを自分で使えないか。
だが魔法の制御をしながらの斬撃はなかなか難しい。
故に……ビジュの雷を連携技の材料にした。
(……雷を纏わせるのは思いの外……楽みたいだ。これなら自分の雷でも出来そうだ)
そしてクロノは感覚を掴んだ。
(……とりあえず)
倒れているビジュに向かって歩き出し、ビジュが持っていたサンダーブレードを回収する。
(……こいつは暫くは目覚めないはずだ……それよりも)
再び歩き出す。今度は倒れている青年――マッシュの所に。
(……まだ息があるな)
魔法を唱え始める。クロノは回復魔法は使えないが気つけなら出来る。
「……生命をもたらしたる精霊よ 今一度我等がもとに! レイズ!」
「……うう」
目を開ける。全身が痛い。目の前の男は……
「……高…………原…?」
目が冴えてくる。そこにいたのは赤い髪の少年。心配そうにこっちを見ている。
「高原はッ!!」
周りを見回す。高原はいない。
145 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:54:54 ID:Na6tru+B
「なあ!高原知らないか!」
赤髪の少年は首を傾げている。言ってる意味が分からないようだ。
「あ、悪い。俺はマッシュ・レネ・フィガロ。
ダンカン流格闘術継承者のモンクだ。殺し合いには乗ってない。君は……?」
「……クロノ」
赤髪の少年は言葉はそれだけだった。
だがそれだけでこの少年も殺し合いに異を唱える者ということだけは……何となく分かった。
「高原知らないか!黒髪で筋肉質でバンダナ巻いたやつなんだけど!
さっき雷が落ちてきて、その後向こうの方に走っていったんだ」
クロノは話す。
その男の事は知らないと。
クロノの話はさらに続く。
おそらく、その雷はそこでのびている男がサンダーブレードを使って落とした事を。
その男が高笑いの後、俺を殺そうとした事を。
そしてクロノがその男を叩きのめした事を。
「そうか……ありがとな。とにかく高原が心配だ。
向こうの方に行ったはず……」
立ち上がるも足取りは重い……ふらふらだ。
そのときクロノが肩を貸してきた。
「悪い……」
「……気にするな」
二人は向かう高原が走り去った方角へ――ビジュを引き擦りながら。
舞台B――――クロノVSビジュ
結末―――――クロノ完全勝利
舞台B――――終幕
舞台転換。
◆ ◆ ◆
146 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 01:59:37 ID:Na6tru+B
舞台A――――イスラ・レヴィノスVS高原日勝
(やべえ……銃か)
正直なところ銃は苦手だ。勝てる気がしない。
ルクレチアでサンダウンの実力を目の当たりにしてさらに勝てる気がしなくなった。
(どうすればいい?)
相手との距離は7メートルといったところ……高原の射程外だ。
(だが……この位だったら一気に距離を詰めれば……ッ!!)
見てしまった……イスラの体が纏っている恐ろしい闘気を。
(ふぅ……『紅の暴君』は無くても闘気を叩き付けることは出来たみたいだ)
安堵した。このまま話し合いに持っていきたい。
(まさかここまでとはね……君の志と力――見せてもらったよ)
(近づけ……ない)
相手の手には銃、さらに強烈な闘気。
どうする……考えろ――COOLになれ!高原日勝!
(せめて闘気が無ければ……まてよ……闘気?)
高原は思い出す……世界に修行に出たときのことを。
――そういや、昔どっかの国のサウスタウンって街に闘気を固めて放つという不敗の格闘家がいたって話があったな。その気になれば衛星兵器に対抗できるとか。
そしてその男がいたという道場を訪れた。
(でもたしかその道場の総帥はバイクで武者修行に出かけたとかで会えなかったんだよな)
高原はその技を会得出来なかった。
その超必殺技ならこの状況も打開できるだろう。
(でも出し方がわからねえ……せめて一度見て……いや…………俺は見たことがある!)
そう、マッシュが放ったオーラキャノンだ。
高原は思い出す……あのときのマッシュの動きを。オーラキャノンを受けた自らの腕の感覚を。
高原は見据える……イスラが纏う闘気を。
(もしかして……こんな感じか?)
分かる……自分の体に流れる『気』の流れが。
(成功してくれよ……)
これが出なければ自分の負けだ。
147 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:00:22 ID:Na6tru+B
(銃を持った奴が相手なら、『オーラキャノン』を使わざるを得ない !!!!!)
「渦巻く怒りが熱くする! これが咆哮の臨界! オーラッ……キャノン!!」
「……なんだとッ!!」
迫り来る巨大な気弾、イスラは弾くため剣を薙ぐも……
パアアン!
反応が間に合わなかった為、弾くには至らず……オーラキャノンは爆発――高原もイスラも大きく吹き飛ばされた。
高原とって、これはこの島での二回目の出来事だった。
(あー、やっぱこいつ違うわ)
お互いの体が地面に吸い込まれる。
「はははははっ!!……楽しいなあ」
「……僕は全然楽しくないよ」
「いや、悪かった!!俺の勘違いだったみたいだ」
「……別にいいよ。たまにはこんなのも悪くないかもね」
「だろ?ははははははははっ!!」
高原は再び笑い始めた。子供のように。
「おーい。高原ー、無事かー」
声が聞こえる。マッシュの声だ。
声の方を向けば赤髪の少年に支えられたマッシュがいた。
「おー、マッシュ俺は平気だぞー」
高原は答えた――最高に楽しそうに。
舞台A――――イスラ・レヴィノスVS高原日勝
結末―――――和解
舞台A――――終幕
舞台終幕。
◆ ◆ ◆
148 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:01:43 ID:Na6tru+B
カーテンコール――――情報交換
(全く仕方ないな。逃げられそうにない)
イスラは人に会いたくなかったが、こうなってしまった以上情報交換をせざるを得なくなった。
「あ、ちょっと待て。高原が迷惑かけてしまったみたいだし。その怪我治してやるよ」
その前にマッシュがそう言ってきた。
「君の状態の方が酷いじゃないか。治すなら君が先だよ」
「お、悪いな。……空の下なる我が手に、祝福の風の恵みあらん! ケアルガ!」
マッシュが受けた傷が塞がっていく。
「それは……ストラかい?」
「ストラ?なんだそれ?……うっ」
マッシュがふらつく。
「マッシュ!大丈夫か!!」
「ああ……」
この違和感は……
(……おかしい。確かに俺は魔法が得意でないがケアルガならこんな傷一発なはず……それにこの疲労感は)
魔法の効果が……薄い?
「僕の怪我はいいよ」
イスラがそう言ってくる。
(あ―――気ぃ使われちまった)
イスラは感づいたのだ。今のふらつきは怪我のせいでなく、ケアルガを使ったからだと。
「すまん……」
「じゃ自己紹介だ。俺は高原日勝『最強』を目指す格闘家だ」
「マッシュ・レネ・フィガロ……ダンカン流格闘術継承者のモンクだ」
「……クロノ」
「……イスラ・レヴィノス」
情報交換が始まってまず驚いたのは、クロノが首輪を持っていたことだ。
首輪を手に入れた経緯を説明し、調べられないかといってきたが……
149 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:03:13 ID:Na6tru+B
高原曰く「悪い。完全に駄目だ」
マッシュ曰く「兄貴なら調べられそうだが……俺には分かんないな」
だ、そうだ。
イスラに聞いてみると……
「それなりに心得はあるつもりだけど専門家じゃない。僕より他の人に任せた方がいいよ」
そう言ってきた。
そして人物情報に進む。そこでもクロノは驚く情報を持ってきた。
なぜか死んだはずの参加者がいるかもしれないことを。
クロノはユーリルと考えた考察はまだ話すつもりはないが、本当に死者がいるとすればそれは遅かれ早かれ気付くことだ。
これはカマかけだ。……死者の蘇生に心当たりがないかと。
「死んだはずの参加者……か。俺もまだ魔法が使えるみたいだし……ケフカは本物……なのか」
名簿のケフカは同名の別人という考えもあったが……シンシアなるものも死んだはずの者となれば同名による偶然よりも、蘇ったのではないか?という気もする。
「生き返るねぇ……フェニックスがあればあるいは……とは思うんだが。あれはケフカを倒した後消えてしまったしな……」
(……マッシュは心当たりがあったみたいだがその手段は既に失われたはずのもの……か)
クロノは得た情報を頭に入れる。
「俺の仲間は……」
お互いに情報をまとめていく。
「こんなとこか……」
「……これから教会に行ってユーリルと落ち合おうと思っている。一緒に行かないか?その怪我も治療してもらったほうがいい」
「「ああ!!」」
「僕はいいよ、そっちから来たし」
視線がイスラに集まる。
「ごめん……さっきも話したけど姉さんには会いたくないんだ………一人で行動させてくれ」
「おいおい、別にいいだろ!」
高原がそう言うも。
「今の僕には姉さんに会う資格はないよ……あと……僕の気持ちは姉さんに伝えないで欲しい」
「……分かった。ならこれからどこに行くのかも聞かないよ」
「……クロノ!」
クロノは何も聞かずにイスラと別れる――そう言ってきた。
「……有り難う。姉さんを頼む」
「……今はそれでいい。でも……いつか自分の意志で会いに行ってくれ」
「…………え?」
「……大切な人に会いに行くのに資格がいるなんて誰が決めたんだ?そんなもの……必要ないだろ?」
「………………」
150 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:04:18 ID:Na6tru+B
イスラは黙り込む。
そう……会いたくないのは事実だ。だけど会いたいと思う気持ちも心のどこかにあったことも気付いていたから。
「……後はこの刺青をどうするか……だな」
高原がビジュをどうしたものか考える。
「……そいつは僕に任せてくれないか?あまり教会に遅れちゃいけないだろ?きつく灸は据えておくよ」
「……任せるよ」
「じゃあさっきの詫びにこれやるよ!!甘い物……好きか?」
高原は鯛焼きセットを差し出してきた。
「…………嫌いじゃない」
「じゃあ受けと……」
―――クロノが鯛焼きセットを欲しそうにこっちを見ている!!どうしますか?
「あー、お前にも半分やるよ」
その瞬間クロノの顔がパッと明るくなった気がした。
……
…………
………………
イスラと別れた三人はユーリルと落ち合うために教会に向かっていた。
もう周りが明るくなり始めていたがこのペースなら七時までには着くはずだ。
「あ、そうだ!!なあマッシュ、俺……オーラキャノン撃てたぜ!!
約束だぜ……後で教えてくれよな!!お前のとっておきを!!」
「もう使えるようになったのか!?
すごいな……お前」
高原はオーラキャノンを使えるようになってはしゃいでいた。
マッシュは高原の才能に一種の恐ろしさを感じた。
(今確信できた……こいつは『夢幻闘舞』を会得出来る)
マッシュは思う――高原に自分の全てを伝えたいと。
クロノは黙々と鯛焼きを食べながら歩いている。
三人は打倒オディオの心を胸に仲間のもとへ――。
151 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:04:57 ID:Na6tru+B
【H-2 平野北部 一日目 早朝】
【クロノ@クロノ・トリガー】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サンダーブレード@FFY、
鯛焼きセット(鯛焼き*1、バナナクレープ*2、ミサワ焼き*1、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、
魔石ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーVI
[道具]:モップ@クロノ・トリガー、基本支給品一式×2(名簿確認済み、ランタンのみ一つ) 、トルネコの首輪
[思考]
基本:打倒オディオ
1:……美味しい。
2:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
3:打倒オディオのため仲間を探す(首輪の件でルッカ、エドガー優先、ロザリーは発見次第保護)。
4:魔王については保留 。
[備考]:
※自分とユーリル、高原、マッシュ、イスラの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期はクリア後。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。その力と世界樹の花を組み合わせての死者蘇生が可能。
以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。
※服はややゴワゴワしてるものの完全に乾きました。
【高原日勝@LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(中)、背中に裂傷、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:鯛焼きセット(鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2)@LIVEALIVE、
死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:マッシュのとっておきってどんな技なんだろなー。
2:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
3:武術の心得がある者とは戦ってみたい(特にレイ・クウゴ)
4:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※マッシュ、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済。
※ばくれつけんを習得。オーラキャノン習得。
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
2:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー、ルッカを最優先に仲間を探す。
3:高原に技を習得させる。
4:ケフカを倒す。
[備考]:
※高原、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期はクリア後。
◆ ◆ ◆
152 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:07:17 ID:Na6tru+B
舞台裏――――
ビジュは感電して失っていた意識が戻って来ていた。
「……くっそあの餓鬼が」
「お目覚めかい?」
「!!!!」
目の前の男は……イスラ?
ちょうどいい。武器がない今……化け物の力を持つこいつに取り入るのが最善だ。
「早速で悪いけど君、今まで誰に出会ってなにを見た?」
俺は砂漠で女と小娘を見たこと……特に小娘は化け物みたいな力を持っていたことを話した。
さらにここであった事も。
「……ふーーん、それで全部?」
「あ、ああ」
「じゃあ君は用済みだね」
……え?
なんだ?俺……剣を向けられてるぞ……。
「な……なんの冗談だ……」
「冗談?なんの事だい?」
こいつの目……本気だ!!
「ま……待ってくれ!!俺、あんたの役に立ってみせるぜ……」
「君が役に立たないことはよく知っているよ」
「た……頼む……助けて……」
「そんなに死にたくない?ふーん……じゃあ……豚の真似をしてみてよ」
「……え?」
「聞こえなかった?豚の真似をしてみてっていったんだけど?」
「わ……分かった」
俺は四つん這いになって豚の鳴き真似をする。
「ぶー……ぶー……」
屈辱だ……。
「あはははははは♪面白いな♪」
助かったか……。
153 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:07:59 ID:Na6tru+B
「豚の真似をしたら助けるなんて一言も言ってないよ♪豚は死ね♪」
ザンッ
154 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:08:49 ID:Na6tru+B
……
…………
………………
「志も力もない君が生きていても迷惑なだけだよ」
ビジュの首輪を回収したイスラはそう独り言ちる。
ビジュを殺した理由は三つ
一つ目は首輪のサンプルの入手の為。
トルネコの首輪を貰わなかったのはビジュの首輪を入手することが念頭にあったからだ。
それに自分が専門家じゃないのは事実だし、彼らには首輪を外せそうな知り合いがいるらしかった。
故に首輪の解析を断った。
二つ目は自らの治療の為。
高原の背中を斬りつけたときに僅かながら体の痛みが引いた。
イスラはそれが魔界の剣の効果ではないかと考えた。
マッシュの治療を断ったのもそれを試す為。
その実験対象に自分の怪我の起因になったビジュを選んだのだ。
そしてその推測は正しくイスラの怪我は完全に治っていた。
最たる理由の三つ目
ビジュは間違いなく殺し合いに乗るであろうし、既にそれは証明された。
オディオを倒す戦力にもならない。生かしておいてデメリットは有れどメリットは無い。
危険分子の排除はアズリア達の生存率の上昇に繋がる。
ビジュの持っている情報を全部引き出してから後は殺す――ただそれだけの事。
クロノ達にはビジュとは顔見知りと伝えてない。故にビジュの名前も知らない。すぐ放送で呼ばれても問題無い。
首と胴が別れたビジュを海に捨てて、イスラは灯台に向かう。
155 :
いつか帰るところ
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:09:39 ID:Na6tru+B
(あの二人は機械に疎いみたいだし、まだ灯台を調べる価値は有るはずだ)
何かが有るかもしれないと。
(灯台を調べた後はどうするかな……ビジュの言うことを鵜呑みにするつもりはないけど昼になる前に砂漠に行く事も有り……かな)
ビジュが言っていた化け物の様な力を持った小娘の事を考える。
(……それとエドガー・ロニ・フィガロとルッカ・アシュティアか……あまり人には会いたくないけどこの二人には接触する必要が有るかもしれない)
自分が駄目だった時、首輪を外せそうな者をサポートすることも視野に入れ始める。
―――大切な人に会いに行くのに資格がいるなんて誰が決めたんだ?
不意にクロノが言ったことが頭によぎった。
俯いて立ち止まる。…………十秒、二十秒、三十秒……時間は過ぎていく。
イスラは顔を上げ再び歩き出す。
「僕が…………決めたよ」
それが今のイスラの答えだった。
【I-1 灯台付近 一日目 早朝】
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドU
鯛焼きセット(鯛焼き*2、バナナクレープ*3、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:灯台で首輪を解除する為の手掛かりを探す。
2:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
3:エドガーとルッカには会った方がいいかな?
4:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。
5:今は姉さんには会えない………今は。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※ビジュの首と胴は海に捨てました。
【ビジュ@サモンナイト3 死亡】
156 :
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/26(木) 02:13:32 ID:Na6tru+B
投下終了です。
タイトルの元ネタはFF9の曲「いつか帰るところ」です。
今回クロノ喋らせ過ぎたかな?
何かあればどうぞ。
157 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/26(木) 02:28:13 ID:B07WV61x
投下乙
なかなか面白い
パロディも盛り込みつつバトルを収束させる、いいと思うぜ
そしてビジュはやっぱりカワイソスがお似合いなんだなぁw
158 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/26(木) 18:44:58 ID:VI0xxmyn
投下乙
光っ――や使わざるを得ないやら豚は死ねやらパロディ満載で吹いたwww
強力な対主催チーム結成ですねー、今後が楽しみです。
ビジュ(笑)
159 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/27(金) 09:15:35 ID:EA0x+5pe
したらばの雑談スレで予約延長について話が出てるね。
延長アリに賛成。遅筆の俺には3日はちょっと厳しいんだ…
原則3日で、2日まで延長OKの、最長5日くらいがいいと思う。
160 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/27(金) 12:53:17 ID:Iz0rbsDZ
でもこのペースなら、ちょっとのんびり書いたって予約被ることなんてそうそうないと思うけどなあ
まあ別に期間延ばして何が困るってわけでもないけど
161 :
◆E8Sf5PBLn6
:2009/03/27(金) 18:28:57 ID:PZjwV5Vx
うわ、またミス発見。高原の道具から鯛焼きセットを外します。
状態表はこれで。
【高原日勝@LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(中)、背中に裂傷、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:マッシュのとっておきってどんな技なんだろなー。
2:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
3:武術の心得がある者とは戦ってみたい(特にレイ・クウゴ)
4:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※マッシュ、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済。
※ばくれつけんを習得。オーラキャノン習得。
あと、クロノの鯛焼きセット装備と森部のじーさんの「奥技」はミスじゃないです。念のため
162 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/29(日) 09:35:43 ID:khOok57P
したらばにあった延長についての多数決についてだが、俺は3日+延長2日がいいかな。
3作以上書いた人限定ってのはOK。
163 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 01:59:37 ID:gilB0jnH
したらばの放送案、仮投下乙です。
特に問題はないでしょう。
ただ、本投下の前に禁止エリアをどこにするかは仮投下などで示して欲しいかもです。
あと、放送後からの予約期間は「5日+延長3日」という意見が多いみたいですね。
これで決定して大丈夫ですよね?
164 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 09:56:47 ID:zJbqhvs5
放送仮投下乙。
細かいですが誤字の指摘を。
>“あの世でオレに詫び続けろオルスデットーーーーー!!”
となってますが、オルステッドですよー。
他に問題はないと思います。禁止エリアの場所は投下時に書いていただけるんですよね?
>>163
多数決とのことなので、多い意見である「5日+2日」でOKです。
放送が本投下され次第、放送後予約の解禁かな?
165 :
◆xFiaj.i0ME
:2009/03/30(月) 22:22:22 ID:affrR/xx
>>164
何と……10年近くオルスデットだと思っていましたorz
修正しておきます。
禁止エリアですが、
B-5
C-2
D-8
F-4
G-9
H-5
辺りでどうでしょうか?
166 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 22:33:09 ID:zJbqhvs5
>>165
時間がすごいw
禁止エリア、OKだと思います。
167 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 22:51:39 ID:TdE53F6d
168 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 22:58:30 ID:TdE53F6d
よし、やっと規制解除!
そして放送案乙です!
禁止エリアも了解!
覚え間違いはあるあるw
自分も最近指摘されたばっかりです。
予約の解禁はどうしましょうか?
放送投下の次の日の0:00くらいからかな。
169 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/30(月) 23:01:41 ID:gilB0jnH
禁止エリア了解です。上手い配置でしょう。
>>168
1日の0時(31日の24時)からになるかな。
170 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/31(火) 03:32:19 ID:48eBrOlO
きょ、今日の24時……だと……?
フフフ……ハハハ……アハハハハハハハハ……いや、何でもない……何でもないよorz
171 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/31(火) 03:34:39 ID:48eBrOlO
おっと、感想を忘れていた
投下乙です。禁止エリアもこれでよろしいかと思います
172 :
◆NQqS4.WNKQ
:2009/03/31(火) 22:24:30 ID:NgsBmmjx
おおっと、少し待ちかと思いきや今日予約ですかw
それではもう本投下してしまいますねー。
173 :
◆xFiaj.i0ME
:2009/03/31(火) 22:38:13 ID:NgsBmmjx
閉ざされた世界に声が降り注ぐ。
山に、森に、砂漠に、町に、城に、洞に、
重く、暗く、厳かな、不安を掻き立てる声が。
何処からともなく、それこそ太陽や雨が空から降り注ぐかのごとく、
刻まれた時を告げる声が、島に閉じ込められた者達に、等しく降り注ぐ。
「さて、時間だ……始めよう。
まず禁止エリアを告げる。
死者の名に気をとられて、気付かずに死なれては興ざめだからな。
7時からD-8とB-5
9時からF-4とH-5
11時からC-2とG-9
そして、死者の名だが……
リーザ
トルネコ
アリーナ
ティナ・ブランフォード
レイ・クウゴ
オディ・オブライト
エイラ
リルカ・エレニアック
アリーゼ
ナナミ
ビジュ
以上11名がその命を落としている。
少し多いが、死者が出た事で私の声を聞いている者の命は、今日一日は保証されたのだ、喜ぶと良い。
ああ、だがそんな言葉を言っても、お前たちは争いを止めはしないだろうな。
親しきものの名を呼ばれたものよ、喜べ、仇は必ずこの島の中に居る。 だが、急がねばその者は他の者に殺されてしまうかもしれないぞ?
己が手を血に染めた者は奮起せよ、最期まで残れなくてはそれも全て無意味だ。 時間が経てば経つほど、お前たちは不利になる。
復讐の為に、己が欲望の為に殺しあうが良い、他者を憎み、生を奪い合うが良い。
そして何より、お前たちをそのような境遇に追いやった、私を憎むがいい。
己が内に存在する憎悪を込めて叫べ、
この『オディオ』の名を!」
174 :
◆xFiaj.i0ME
:2009/03/31(火) 22:39:02 ID:NgsBmmjx
◇
ふと、今は無き親友の姿を思い出す。
友の名誉と己の武勇を重んじ、主君への忠義と神の正義に生きる。
彼も、今彼と共に在る者も、こうしてその道に殉じている。
今の彼の姿もまた、彼本来のものに違いは無い。
だが、
“あの世でオレに詫び続けろオルステッドーーーーー!!”
あの時の叫び、あれもまた、彼の本質なのだ。
かつての自分は愚かだったのでは無い。
今の彼らも愚かではない。
ただ、無知なだけなのだ。
名誉とは復讐を導き
武勇とは暴力の別名で
忠義は何時しか重荷となり
正義は憎むべきものに成り果てる
その事実を、知らないだけなのだ。
上辺の美しさのみを求め、その奥に秘められた醜さに気付くことも無い。
いや、見えない、あるいは見ようとしないだけで、その存在を拒絶している。
だが、この殺し合いの中で、いずれ気付くだろう。
己が秘める、消えること無き感情に。
他でも無い、ここにその『実例』があるのだから。
175 :
◆xFiaj.i0ME
:2009/03/31(火) 22:40:26 ID:NgsBmmjx
これでいいかな……
>>172
のトリは見なかった事に……orz
176 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/31(火) 22:57:07 ID:hHj0Jako
本投下乙です!
これで今夜0:00に予約解禁なんですよね?
予約ラッシュとかあるかなー
177 :
創る名無しに見る名無し
:2009/03/31(火) 23:38:12 ID:sMfeUq7n
投下乙!
ついに放送だーーー! なんか疲れたw
オディオの達観っぷりが切ない……。
こいつもただの悪者ってわけじゃないんですよね。
予約は0時からでいいかな。
178 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/01(水) 00:01:30 ID:e2/SYNtq
なん……だと……?
179 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/01(水) 00:08:46 ID:FaZPG4Wg
>>178
ど、どうした!?
180 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/02(木) 15:00:54 ID:yNRRq+Pb
あの、地図の人すいません。
現在位置表を見て気付いたんだけど、古代城がD−6じゃなくてD−7になっている。
181 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/02(木) 20:48:15 ID:ZHyI1kBp
>>180
あれ? 本当ですね。何で間違えたんだろ……。
今予約されている3つが投下されたら、それらを反映した現在位置を上げます。
指摘ありがとうございました。
182 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/03(金) 12:43:55 ID:vsFx+qQK
wikiの支給品を編集してみたんだが、サモンの魔剣みたいに途中から出てきた
アイテムとかって他に何かあったっけ?
183 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/03(金) 16:50:36 ID:Az5CU1XH
>>182
エルクの炎の剣
どっちも同じ書き手がやった
184 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/03(金) 23:27:34 ID:B9doU1es
>>183
d。そういやエルクの剣もあったか。
炎の剣はエルクから離れると消えるみたいな説明があったと思うけど、
アティの魔剣の方はどうするんだ?覚醒が終わったら送還されるのか、
キルスレスのようにその場に残るのか気になる。
185 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/04(土) 01:35:21 ID:egReD2pK
>>185
多分、覚醒が終わったら送還。
ただし、担い手が死んだ場合はその場に残る。
こんな感じかと。
まあ、抜剣覚醒・暴走な現状じゃあ時間切れでの覚醒終了はないだろうけど。
186 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:20:42 ID:VAAsTm7t
さて、投下します。
187 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:22:36 ID:VAAsTm7t
星たちが散らばる天空が、目も覚めるような蒼穹に塗り替えられていく。
浮かんでいる雲は白く、回遊する鯨を思わせるほどに雄大だった。
朝の空気に微かな焦げ臭さが入り混じる。
とはいえ悪臭というほどに強烈ではない以上、さほど気にはならなかった。
既に鎮火し、立ち上っていた煙も薄くか細くなっていて、すぐに消え行くだろう。
焼け焦げた草花の中心に、ぼろぼろになったハーレーが横倒しになっている。
残骸のそばにしゃがみ込み、使えそうな部品がないか探していたシュウが手を止めたのは、声が唐突に響き渡ったからだ。
それは、魔王の声音。この殺し合いが始まってから、六時間の経過を示すものだ。
表情を変えずに、地図を取り出した。
告げられていく禁止エリアの場所、時間を書き記していく。
そして、続けられる声を耳にする。
一番最初に告げられた名は、よく知ったものだった。
リーザ。
それは、リーザ・フローラ・メラノに相違ないだろう。
無表情だったシュウの眉間に、皺が寄る。
睨み付けるように見上げた空は、嫌味なほどに澄み渡っていた。
自分やエルク、トッシュに比べれば、彼女の戦闘能力は決して高くはない。
とはいえ、だ。
共に多くの死地を潜り抜けてきた仲間である彼女が、そう簡単に殺されるとは思えなかった。
この発表が虚偽の可能性が、ふと脳裏を過ぎる。
これはあくまで『ここで殺し合いが行われている』ということに真実味を持たせ、参加者の恐怖や不安、絶望感を煽り上げるためのハッタリではないのだろうか。
そんな思考を許さないように、魔王の声は告げていく。
そのいくつかを、シュウは知っている。
トルネコ、アリーナ、レイ・クウゴ、リルカ・エレニアック。
直接の知り合いではないが、打倒魔王の力になってくれそうな者たちの名だ。
もしもオディオが事実だけを告げているのならば、もたもたしてなどいられない。
オディオの言のごとく、憎悪や怨恨を燃え滾らせた者が増えれば、それだけ殺し合いは加速するだろう。
――あいつは、大丈夫だろうか。
ふと過ぎった心配の種は、炎使いの少年のことだ。
真偽はどうあれ、リーザの死を告げられたら、あの激情家は落ち着いてなどいられないに決まっている。
もし、『エルク』という人物がシュウのよく知る少年だとすれば、急いで合流しなければならない。
もう少しハーレーの残骸を調べたいところだが、まずはマリアベルたちと落ち合うべきだろう。
彼女らも仲間の名を呼ばれている。取り乱しはしないとは思うが、心配なことに変わりはない。
踵を返し、爆発点から立ち去ろうとして――。
シュウは、一つの影を発見する。
◆◆
石製の建物のとある一室には、ベッドがいくつも並んでいる。
宿として使われていたらしいその建物の中、ベッドの上に、二つの人影が並んで腰掛けていた。
オディオの声が過ぎ去って、数分。
静けさに満ちていた石の部屋に、小さな声がぽつりと生まれた。
「アリーナさんは、明るくて、前向きで、強い方でした。
一国の姫君だというのに、少しも気取らなくて、とても魅力に溢れた女性でした」
訥々と語るのは、豊かな桃色の長髪と、尖った耳が印象的な女性だ。
エルフであるロザリーが、俯き加減で語るのは、人間のこと。
「トルネコさんは、面白くて、お話が上手で、優しい方でした。
彼の周りにいるだけで、思わず楽しい気分になってしまう、素敵な男性でした」
188 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:24:43 ID:VAAsTm7t
全てが過去形で語られる言葉は、物悲しく沈痛だった。
その声を、緑髪の愛らしい少女は黙って聞いている。
手の中にあるクレストグラフが、やけに冷たくて硬かった。
「二人だけじゃありません。あのとき、蘇生を試みたクリフトさんだって、とても素晴らしい方でした。
なのに、なのに……っ!」
寒さに凍えているかのように自身を掻き抱くロザリーの手が、小刻みに震えていた。
その小さな唇は戦慄いていて、途切れたままの声の、続きを産み落とさない。
少しだけ迷ってから、ニノはおずおずと、自身の手をロザリーの手に重ねる。
ニノの方が安心感を覚えてしまうくらいに、ロザリーは温かくて柔らかかった。
エルフの女性が、手を握り返してくる。応じるように、指の力を少しだけ強くしてやる。
すると、悲痛に、悔しげに、ロザリーは、呟いた。
「涙、出ないんです。一滴も……」
ニノはちらりと、ロザリーの瞳を見る。ルビーの涙は、少しも落ちてはいなかった。
それでも、少女は手を離さない。
「私は、最低です……」
続けるロザリーの声に、ニノは首を横に振って応じた。
同意するつもりなど欠片もない。
ロザリーの声が、横顔が、瞳が、深い哀しみに沈んでいるのが分かる。
涙など落とさなくても、ロザリーが胸のうちに深く濃い悲しみを湛えていると、分かっている。
「そんなことない。今のロザリーさん見て、最低なんて誰も思いっこないよ」
だから言う。嘘偽りのない本心を、真っ直ぐに告げる。
繋いだ手は離さない。痛いくらいの力が返ってきても、構わない。
その手からも、想いを伝えたかったから。
今度はロザリーが、首を横に振っていた。
「だって、だって、私は……思ってしまったんです!」
弾かれたように、ロザリーの顔が上がる。
その美しい容貌はくしゃりと歪んでいて、今にも泣き出しそうなのに、彼女は、涙を湛えてはいなかった。
痛々しさすら感じられる表情から、ニノは目を背けない。
「多くの方が亡くなったのに!
素晴らしい方々や、サンダウンさんにマリアベルさん、シュウさんのお仲間が命を落とされてしまったのに!
私は、私は……ッ!」
堰を切ったように、ロザリーはまくし立てる。
その感情の出所がどこで、源泉が何なのか。
どんなことを想い、感じ、抱き、何を言おうとしているのか。
なんとなく、察しがついた。
「ピサロ様のお名前が呼ばれなかったことに、安堵してしまいました……。
それが嬉しくて、堪らなく安心できて、亡くなってしまった方々へ、涙を流すことすら叶わないのです……!」
懺悔するように、心情を吐露していく。
あまりに馬鹿正直なその態度のロザリーを、ニノは責められなかった。
手にロザリーの爪が食い込んでくる。その痛みに、ニノは逆らわない。
何故ならば。
「……あたしも、同じだよ」
ロザリーが言いたかったことを察せたのは、ニノが胸の奥で、同じことを思っていたからだ。
だからこそ。
罪悪感を帯びたロザリーの視線から目を背けない。
背けるつもりもない。背けたいなど、思うはずもない。
彼女が抱いている罪悪感を、共有できるのは、きっと自分だけだから。
目を見開いたロザリーに、ニノは小さく頷いた。
189 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:27:33 ID:VAAsTm7t
「正直、あたしもホッとしちゃったんだ。
フロリーナも、リンも、ヘクトルも、あたしの知ってる人じゃないかもしれないけど、エルクも。
そして誰より、ジャファルも。
みんな、みんな無事なんだって分かって、すごくホッとした」
心からの安心感を吐き出すように、ニノは溜息を漏らす。
それは、仲間たちが無事だったことへの安心感だけがもたらしたものではない。
「不謹慎だけどさ、安心してるのがあたしだけじゃなくて、嬉しかった」
「ニノさん……」
ニノが目を細めると、ロザリーの表情が少しだけ和らぎ、手を握る力が緩まっていく。
同じ罪の意識を共有することで、肩に圧し掛かる罪の重みを軽くしようとする。
それは傷の舐め合いでしかない。罪を正面から受け止められない、弱さの証明だ。
だとしても、彼女らを責める権利は、誰にもない。
大切な人たちの無事を願い、望み、喜ぶことは、決して、許されざる罪悪などではないのだから。
◆◆
太陽が昇り、日差しが徐々に強くなっていく。
明るさを増していく世界を、城下町にある宿屋のロビーから、奇妙な着ぐるみが眺めている。
着ぐるみの中、マリアベル・アーミティッジは、不機嫌そうに眉根を寄せていた。
苦手な日光に恨み言を漏らそうとしているわけではない。
今はもう聞こえない、魔王オディオの声。
その憎悪に溢れた音によって告げられた死者の名が、頭の中をぐるぐると回っていた。
隣室から、ニノとロザリーの話し声が微かに届いてくる。
それを聞かないようにして、マリアベルは振り返った。
椅子に、一人の男が座っている。
彼――サンダウン・キッドは、テンガロンハットを深く被り、俯いていた。
二人の間に会話はない。
サンダウンという男が、もともと寡黙なのだということは既に理解していた。
マリアベルは知っている。
一人ぼっちで自分の内に全てを溜め込むことの辛さと、無意味さを。
マリアベルは、重そうな着ぐるみを纏っているとは思えない足取りで窓際から離れると、サンダウンの向かいに座る。
「未熟なひよっ子じゃった。じゃが、いつも一所懸命で、どんなときも諦めない、強い心の持ち主であった」
サンダウンからの返事はない。だが彼は、いつしか帽子を持ち上げ、マリアベルへと視線を注いでいた。
「まだまだ未来があったというのに。頑張りすぎたんじゃろうな。バカチンが」
吐き捨てるような口調だが、言葉に込められているのは揶揄ではなく、悲しみだ。
「わらわよりも長生きしろとは言わぬ。じゃが、まだ逝くには早すぎるじゃろうに……」
親しい者や大切な人の死は、何度経験しても寂しく、辛い。
だからといって、慣れたいとは思わない。慣れてしまったら、きっと、もっと寂しいと思うから。
「……そのように思われる……リルカ・エレニアックは幸せ者だ……」
サンダウンの短い言葉に、マリアベルは哀しげに、それでも、小さく笑う。
湿っぽい気分をずっと引きずっていても、あの魔女っ子は喜ばないと思うから。
「違いないのう」
その言葉を最後に、沈黙が戻ってくる。
サンダウンを促したりはしない。そんなものが必要な子供ではないのだ。
やがて、男は声もなく立ち上がる。見上げたマリアベルの視線に、サンダウンは小さく口を開いた。
「偵察にしては遅い……様子を見てくる……」
「シュウか。奴なら大丈夫だと思うが、確かに遅いの。わらわが行こう。お主は休んでおれ」
立ち上がろうとしたマリアベルを、サンダウンは手で制す。
「お前は……二人を守ってやってくれ……。彼女らに何かあったとき、お前の方が力になれる……」
言って、男はドアに手を掛けた。そのまま開け放つ前にマリアベルを振り返ると、呟いた。
「……簡単に死ぬつもりはない。安心して……待っていてほしい……」
静かながら力が篭った言葉だった。
それは虚勢なのかもしれない。張りぼてでしかないのかもしれない。
190 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:29:40 ID:VAAsTm7t
それでも、そう言われるだけで、十分だった。
「よかろう、約束じゃ。絶対に、シュウを連れて戻ってくるのじゃぞ。
――できるだけ、早くの」
サンダウンは、マリアベルに声を返さない。
だが、彼は口角を小さく持ち上げ、余裕に満ちた不敵な笑みをマリアベルに見せ付ける。
笑みだけを残して、背中を向けてドアを開け放つ。
四角く切り取られた朝の光は、マリアベルには少しばかり眩い。
それでも彼女は、目を閉じることも細めることもせずに、その背中を見送った。
ドアが閉ざされると、マリアベルは、勢いをつけて椅子から降りる。
客室にいるロザリーとニノと、今後の方針を相談するつもりだった。
事態は、確かに動いている。
シュウとサンダウンが戻ってから案を出しているようでは、遅くなる可能性が高い。
マリアベルはふと、もう一度出入り口のドアを見やり、サンダウンの背中を思い出す。
うっとりメロメロ級にはまだ遠い。
だが、ナイスミドルであることは認めてやってもよいかと、そう思った。
◆◆
後ろ手に、静かにドアを閉めると、大きな城下町が広がっている。
朝の空気は、殺し合いの場にはそぐわないほどに澄み渡っていた。
それでも、この爽やかさや清涼感は、仮初でしかない。
透明感溢れる空気の向こうには、鮮血と肉片と屍の臭いが漂っていて、憎しみと嘆きと恨みが溢れかえっているに違いない。
そんな中、サンダウンは、表情を変えずに、確固たる足取りで石畳を歩いていく。
既に、十一人もの死者が出ている世界を、進んでいく。
死者の中には、容易に死を迎えるなどとは思えない人物も含まれていた。
レイ・クウゴも、そんな人物のうちの一人だ。
銃がなければまともに戦えないサンダウンとは違い、武芸に秀でた彼女にとって、その身に染み付いた技こそが最大の武器だ。
それはつまり、支給品が、戦闘能力にそれほど影響を与えないということを意味している。
多くの参加者に引けを取らない実力者である彼女は、しかし、殺害されてしまったという。
仲間の強さを、サンダウンはよく知っている。
だが、それ以上の強者が、この島で暴れている事実を、間接的にだが思い知らされてしまう。
今まで以上に、仲間との合流を急ぐべきだった。
手が震えそうになる。油断すれば、歯の根が合わなくなりそうにさえなる。
原因は無力さによる不安と、喪失感による恐怖だった。
この使い捨てである銃一丁しか、まともに使える武器を持っていない自分が、どこまで戦えるのか。
足手まといにしかならないのではないか。
一人、仲間が殺された。これから、その人数がどんどん増えていってしまうのではないか。
仲間や知人を守りきれず、力になれずに死ぬのは、怖い。
いや、見知らぬ他人だとしても同様だ。
理不尽な暴力に晒されて、嘆きを抱いて死んでいく様を見せ付けられるのは、堪らなく恐ろしい。
じわじわと広がっていく感情は、サンダウンの精神を削り取ろうとする。
だから、ロザリーとニノの護衛をマリアベルに任せ、行動することにしたのだ。
もしもあの場に残っていたら、情けない顔を見せてしまったかもしれないから。
それでも、進むサンダウンの顔は、いつもと変わらない無表情だ。
震えなど微塵も感じられない。怯えなどおくびにも出さない。
弱い心に負けないために、ただひたすら、サンダウンは往く。
レイのことを、心の拳の強さを思い出し、敬意と哀悼の意を表しながら。
191 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:31:27 ID:VAAsTm7t
【J-9 城下町にある宿屋 一日目 朝】
【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:健康
[装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーY、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣、 クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める。
1:ピサロ様を捜す。
2:シュウの報告を待つ。
3:ユーリル、ミネアたちとの合流。
4:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
※クレストグラフの魔法は不明です。
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流。
2:シュウの報告を待つ。
3:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
4:フォルブレイズの理を読み進めたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※クレストグラフの魔法は不明です。
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康
[装備]:マリアベルの着ぐるみ@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LIVE A LIVE
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:シュウ・サンダウンを待つ間、ロザリー、ニノと共に今後の方針の相談。
2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
3:この殺し合いについての情報を得る。
4:首輪の解除。
5:この機械を調べたい。
6:アカ&アオも探したい。
7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った?
8:アキラは信頼できる。 ピサロに警戒。カエルに一応警戒?
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※レッドパワーはすべて習得しています。
192 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:33:50 ID:VAAsTm7t
【I-9 一日目 朝】
【サンダウン@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[装備]:使い捨てドッカンピストル@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出
1:シュウを捜索し、合流後、マリアベルたちの待つ宿へ戻る。
2:ピサロの捜索。
3:ロザリー、ニノ、シュウ、マリアベル、自分の仲間(アキラ、高原日勝)の捜索。
4:まともな銃がほしい。
5:アキラを知るストレイボウにやや興味有り。
[備考]
参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。
◆◆
夜が明けた。
陽光は生命力に溢れていて、輝かしい希望を象徴し、明るい未来を予感させる。
だがその輝きは、強く眩し過ぎると、彼は思う。
朝の日差しを受けて、こんな感想を抱いたのは初めてだ。
何もない平野のど真ん中でうなだれる彼は、カエルの姿をしている。
バイオネットを担ぎ、ゆっくりと歩く彼の身は震えていて、弱弱しい印象を与えてくる。
余りにも、余りにも早すぎて、あっけなすぎた。
エイラのために――引いては国のため、守りたいもののために戦おうと決意したばかりなのに。
騎士として生きる道を閉ざし、自分のための戦いの道を選択したばかりなのに。
大切な国を守るための手段が、手の中から滑り落ちてしまう。
もしもこの、手袋に包まれた手が粘膜に塗れていなければ、しっかりと握っていられただろうかと、思う。
――下らない。
そんな仮定をしたところで、何の足しにもなりはしない。
変わりはしないし揺らぎもしないのだ。
エイラが死んだという事実は、変わりはしない。ガルディア王国の消滅は、約束されてしまった。
死を『なかったこと』にできる方法を、カエルは知っている。
だがそれは、現状で取ることのできる手段ではない。
今、時を超えることなど不可能だし、よしんば出来たところで、『エイラが死ぬ瞬間』に戻ってこられるとは限らない。
ならば。
――ならば、どうしたら王国を守ることができる?
自問する。
答えなど、分かっているにも関わらず。
――本当に、それでいいのか?
自問する。
迷いと躊躇いが、答えをブレさせる。
太陽は確かに昇っていて、時は前へと進んでいる。迷っている時間は、多くない。
光の中に、ずっといたいと願う。
顔を、上げる。
空は高く青く広がっていた。
何もかもを照らし出すように、映し出そうというように、広がっていた。
浮かぶ雲へと、手を伸ばしてみる。
そんなことをしたって、掴むどころか、届きさえもしないのだ。
だけどもし、届かせる手段があるのなら。
あらゆるものを、仲間の生命でさえ踏み台にすれば、届くのならば。
193 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:35:35 ID:VAAsTm7t
かざした手を、握り締める。
空から前へと戻したとき、人影が目に映った。
そいつも、ほぼ同じタイミングでこちらに気付いたらしい。
「お前は……」
呟いた先にいる男――シュウは、感情の読み取れない瞳をカエルへと投げかけている。
直立し、微動だにしないシュウから感じられるのは、お世辞にも友好的と呼べる雰囲気ではない。
だからといって、強い敵意が感じられるわけでも、ない。
『急いで行きたいところがあり、別行動を取った』と、ストレイボウからは聞いていた。
にもかかわらず、別行動を取った男が、出会った城からそれほど離れていない場所にいる。
これはつまり、ストレイボウが嘘を吐かれたか、あるいは、自分がストレイボウに嘘を吐かれたか。
しかしそんなことは、どちらでもよかった。
どちらにせよ、ストレイボウを責めるつもりなどない。
友を想い、そのために行動しようとする彼を、今の自分が糾弾できるはずがないのだ。
そして、眼前にいる男を責めるつもりもまた、ない。
信頼を得られなかったのは、きっと、理由があるに違いないのだ。
その心当たりだって、ある。
一定の距離を置いて、カエルはシュウと対峙する。
バイアネットの刃が届く距離ではない。
だが、カエルのジャンプ力を以って思い切り踏み込めば、一気に詰められる距離だ。
シュウは黙っている。黙したまま、警戒心を露にするその男は、一分の隙さえ見せはしない。
この男に剣を向けてしまったら、もう戻れなくなる。
下り坂を転がり落ちて、勇者でも騎士でもない、外道に身を落とすだけ。
だが、だとしても。
もう、縋るものがそれしかないのなら。
雲を掴むために、仲間も、誇りも、全て捨て去らなければならないのなら。
覚悟を、しなければならない。
良心、情け、甘えを完全に吐き出し、ただ一つのもののために、自分の手を汚す、覚悟を。
光の中にいられない、覚悟を。
深く酸素を吸い込む。
冷たい空気が、胸中に漂う靄を拭い去っていく。
カエルは、バイアネットを跳ね上げ、右手だけで器用に回転させる。
そして。
その鋭い刃を、切っ先を、勢いよく。
自らの左腕に、突き立てた。
粘膜を、皮膚を、筋肉を、刃が貫いていく。
硬く冷たい異物が入り込んでくる不快感と、筋繊維と血管が纏めて千切られる激痛が、腕の中で暴れ回る。
その全てを、カエルは、声を出さず目を閉ざさず、飲み込んだ。
左上腕が裂かれ、垂れ落ちた血液が、べっとりと衣服を汚していく。
ゆっくりと、引き抜いた。血液がごぽりと吹き出るが、構わない。
194 :
心の行き着く先
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:37:32 ID:VAAsTm7t
「許しを請うつもりなど、欠片もない……。
罪から逃れるつもりなど、塵ほどもない……!」
カエルは呟いて、血塗られた刃を、呆然とするシュウに、向ける。
「俺は、これより外道となろう。
無慈悲に一方的に身勝手に、全てを奪い尽くす悪鬼となろう!
国のためなどと言い訳をせず、俺自身の意志で、仲間すらもこの手にかける魔王となろうッ!」
そのための覚悟は、完了した。
全てが終わった後に、審判を受ける覚悟さえも、もう済ませた。
かくして勇者は騎士の称号を捨て、修羅の道へと足を踏み入れる。
踏み外したわけではなく、誰かにそそのかされたわけでもなく、自身による選択の結果だ。
故にその決意と信念と覚悟は、硬く強く揺るぎがない。
「止めるつもりならば――」
静かに臨戦体勢を取るシュウに向けて、カエルは、大気を震わせて一喝する。
「――命を奪いに来いッ!」
【I-8 西部 一日目 朝】
【シュウ@アークザラッドU】
[状態]:健康
[装備]:パワーマフラー@クロノトリガー
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、紅蓮@アークザラッドU、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。
1:カエルの撃退。
2:撃退後、マリアベルたちの元へ合流。
3:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間と合流。
4:この殺し合いについての情報を得る。
5:首輪の解除。
6:トッシュに紅蓮を渡す。
7:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※扇動を警戒しています。
※時限爆弾は現在使用不可です。
※『放送が真実であるかどうか』を疑っています。
【カエル@クロノトリガー】
[状態]:左上腕に『覚悟の証』である刺傷。
[装備]:バイアネット(射撃残弾7)
[道具]:バレットチャージ1個(アーム共用、アーム残弾のみ回復可能)、基本支給品一式
[思考]
基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。
1:シュウの殺害。
2:仲間を含む全参加者の殺害。
3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい
[備考]:
※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。
195 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/04/05(日) 13:38:25 ID:VAAsTm7t
以上、投下終了です。
何かありましたらどうぞよしなに。
196 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/05(日) 15:22:41 ID:DmgDRJI/
投下乙!
カ、カエルー!
悲壮だ、壮絶だ。
覚悟がひしひしと伝わってきた。
シュウと一緒に驚いてしまったよ。
くそ、なんであんたはそんなにかっかいいんだよ!
他のみんなもそれぞれがらしく誰かの死と向き合っているのがよかった。
なんつうか前半のしんみりがあった上で余計に最後がはえたというか
GJ!
197 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:38:27 ID:D+1xI0RT
投下します
198 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:40:47 ID:D+1xI0RT
空気が通るように積み上げた太い薪に囲まれて炎が踊る。
洪水の余波で常以上に新木は湿気てしまっていたが、火床として並べた紙が期待通り一役買ってくれていた。
ランタンに付属していた油を使用したことも上手くいった一因だ。
着火に成功したミネアは最後の仕上げとして火力を上げにかかる。
大切な人達の名前が書かれた名簿が燃えていく。
これから何かと不便になりそうだが仕方が無い。
濡れた状態で触ってしまい無為にした分を補うためには、後少し紙が足りなかったのだ。
ただでさえ血を流し冷たくなっていた少女。
自分はともかくこれ以上彼女の体温を低下させるわけにはいかない。
緑の髪を束ねていた飾り布も含めて、下着以外はすべて脱がせた。
空の色を写し取ったかのような蒼い衣服は絞って広げれ、火の傍に置いて乾かしている。
ミネア自身の服もまたしかり。
炎は命ある者にも無き物にも平等に暖を与えてくれる。
運よく拾った剣で切り落とした枝を火にくべる。
勢いを得た赤は相手が新木であろうとも容赦せず飲み込んでいく。
助かる。
流石に地図まで燃やしてしまっては、うっかり禁止エリアに入り込んで爆死してしまいかねない。
ふと思う。
空に浮かぶ城に龍の神。
御伽噺のような存在が実在していたのだから、天国もあながち人間の幻想ではないのではないか。
だったらこの昇り逝く煙は、いつしか父の、そしてクリフト達の待つ場所へと辿り着くのかもしれない。
下手すれば自分達のもとに危険人物を呼び込みかねない煙が、少し羨ましくなった。
ついさっき流れた放送。
どこからと知れず響く声が告げた死者の名前。
トルネコ、アリーナ、そしてアリーゼ。
多くの苦楽を共にした二人の仲間、出会ったばかりの一人の少女。
彼らは死んだ、居なくなってしまった。
無駄だと分かりつつも占った結果は単に事実を強調するばかり。
デスイリュージョンの名が示すとおり、めくったカードの絵柄は死神。
「オディオ、あなたはわたしに恨まれる理由をいくつ増やせば気がすむのかしら」
煙が目に沁みて押し留めたはずの涙が出そうになる。
お転婆だけど正義感が強くて父親や国民達を大事にしていたアリーナ。
お気軽で小心者で、でも、夢に向かってひたすら努力し、それ以上に家族想いだったトルネコ。
もう永遠に彼らに翻弄されることも、笑顔をもらうことも無いのだと思うと悲しかった。
「慣れないものよね、ほんと」
大切な人を理不尽に失うことは何も初めてではない。
クリフト以前にも父を裏切られ殺されたことがミネアにはある。
あのときに味わった絶望、怒り、悲しみ、憤り、喪失感。
それが立て続けにミネアの心に飛来していた。
唯一つ、最も強い感情を欠いた形で。
199 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:42:06 ID:D+1xI0RT
「アリーゼちゃんのこと、せめてそのアティ先生に伝えてあげないと」
「……うっ、く」
会って間もない少女のことに思いをはせていると、自分のものとは違う声が鼓膜を打った。
煙を追って空を見上げていた瞳を地に戻し右へとずらす。
助けた少女が身じろぎし、目を覚ましていた。
身体を起こしたばかり少女の見上げてくる視線と交差する。
あと少し待ってくれたら腫れたままの目を見せずに済んだのだが、仕方が無い。
こういう時はおはようございますでいいのかなっと変なことを考えつつ、口からは別の言葉が漏れ出ていた。
「人はどんな時に復讐に走りたくなるのでしょうか?」
それこそが『かって』と『今』の差異を端的に表す問い。
仕掛け人はオディオでも、仲間の命に直接手を下した別の誰かがこの地にいるはずなのに。
誰とも知らない彼らへの復讐心だけは湧き上がっては来なかった。
意味のない戦いだった。無価値なる戦いだった。
王の愛する者を奪ったのは人間ではなくて。どころか人の護り手である勇者によって再び命を得てこの地でも生きている。
教師が護れなかった生徒は、限りなく近く、極めて遠い世界の人間で、互いにすれ違いに気付かないまま。
オディオが掲げた勝者への権利を目指してでもなく、大事な人を救いうる道にも関せず、ただ殺す。ただただ殺す。
もしもピサロが名簿を一目でも見ていれば、人間への憎悪は消えなくとも、殺す以上に護ることを優先したかもしれない。
もしもアティが剣に身を委ねていなければ、この哀れな魔王の言動から事情を察し、救おうとしたかもしれない。
されどIfは現実の前には風の前の塵に同じ。
抑揚の効かない衝動じみた復讐心の赴くままに傷だらけの道化達は踊り狂う。
剣閃が舞い、殺意が飛び交う。
大切な者を失った二人の復讐者が己が喪失を埋めんと互いに傷を広げ合う。
吐き出された憎悪の言葉は、全て我が身に跳ね返る。
それでも。止まらない、止まらない。怨嗟の念を、後悔の叫びを。
湧き出るがままに浴びせていく。
「アナタガ、アリーゼちゃんヲ、レイさんを、殺したあああぁぁあアアアアアアァAAAAAAAAAAAッ!!!」
――私が弱かったから。私の心が、弱かったから。きれいごとばかりを夢見たから
剣の憎しみと同調した伐剣者が横薙ぎに剣を放つ。
煌くは碧の殺意。
弧を描き、禍々しい光を纏った刃が若き魔界の王へと襲い掛かる。
「……黙れ。黙れ、人間が! 私からロザリーを奪った身で何をぬけぬけと!」
――守れるだけの力はあった。なのに何故私はロザリーの傍らに居なかった!? 何故!
王は激昂をのせて上段からヨシユキを叩きつけ、シャルトスを撃墜。
すかさず左の手に持ったバイオレイターを繰り出し、心の臓を抉りにかかる。
が、不発。
切り払われ地に堕ちゆくのみだったはずの魔剣が宙空で消失。
身軽に腕が唸りを上げ、再度主の前に顕現した剣によって短剣の穂先を阻む。
「「ううう、あああああああああああああああああああああああああああっ!!」」
暗い、クライ、Cry。
守れなかったという事実に力なき人間も、力ある魔族も関係ない。
血の涙を流し、慟哭の声を上げることしか許されない。
200 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:43:29 ID:D+1xI0RT
「「があああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアア嗚嗚嗚嗚嗚ッ!!」」
剣の魔力が天を軋ませ空に悲鳴を上げさせる。
王の魔力が地を揺るがし星は嘆き泣き叫ぶ。
「コロ、ス……ッ! ブチノメスッ!! ハカイシテヤルッ!!」
――今更過ぎる力。もうそれしか使い道がないのだから。
天候さえ操る碧の賢帝が起こした嵐が銀髪の男を飲み込まんと顎を開く。
「滅びろ、人間っ! ジゴスパアアアアアアアアアアアアック!!」
――滅ぼさなければ、ならない。そうでなければ、ロザリーは何のために死んだ?
地獄より呼び起こされた黒き稲妻が地面ごと異形の女を砕かんと猛進する。
無色の風と漆黒の雷。
真逆の様をなす二つの力がぶつかり爆ぜる。
暴風が吹き荒れ、火災により朽ちた木々が粉砕される。
散弾銃で撃たれたかのような有様だ。
狂える雷神が落とした鉄槌も負けてはいない。
山をも砕き、抉られた大地は地層すら見えている。
咲き乱れる死の華が。
相殺されたにも関わらず圧倒的なエネルギーは消滅しきらずに二人を取り巻くように渦巻きだす。
常人では近づくだけで命を奪われかねない圧倒的な力の渦。
極光に覆われた破滅の世界。
それらを次の一撃で一瞬にして霧散させ、ピサロとアティは自らへの苛立ちを、外敵への憤怒をぶつけ続けた。
懐かしい夢を見た。
夢という形で過去の自分と交差した。
ラウス侯ダーレンに攻め込まれるよりずっと前。
マークに出会い、自身が公女だと知るよりもさらに前。
リンにとって最初の始まりとも言うべき出来事。
少女の部族は山賊団に襲われ、父と母とを失った。
守りたかった父が治めていた部族も、小さな少女には誰もついてはこなかった。
抱いたのは、怒り。
卑怯な手で全てを奪っていった山賊への。
弱かった自分自身への。
故に誓ったのだ。
いつか強くなってみんなの仇を取ってやるって。
それも今となっては昔話。
一時たりとも忘れることのなかった深い傷痕は。
もう、叶うことのない夢のまた夢。
「わかってくれたかしら。これが私の知っている限りの事の顛末なんです。私達の世界の武器が迷惑をおかけしてすみませんでした」
「そんなことないわ。剣に負けてしまったのは私の弱さのせいなんだし。とにかく、助けてくれてありがとうミネア」
乾いた服に腕を通す。
剣に憑かれている間の記憶はぼんやりとだが覚えていた。
神殿で意識が覚醒しかけた時のこともだ。
神秘的な褐色の肌の女性からもたらされた情報から推察するに、皆殺しの剣に拭いきれない憎悪の記憶を掘り起こされ利用されていたのだろう。
無理に殺意を植えつけるより、元からある憎しみを伸ばす方が遥かに効率がいいのは、言うまでも無い。
今のリンを形成している根底の一部に土足で入り込まれたことと、いいように操られた自分の不甲斐なさが堪らなく悔しかった。
201 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:45:32 ID:D+1xI0RT
「ミネア、最初の質問の答えだけど」
「ごめんなさい、いきなり変なことを聞いてしまって。独り言みたいなものですから気にしないでくださいね」
ミネアの生い立ちは聞いていた。
よっぽどばつが悪かったのか、起き抜けの問いの後、聞いてもいないのに話し出してくれたからだ。
神官の人も入れて三人の仲間を亡くしたばかりであることもだ。
運がよかったとリンは思う。
気絶していた自分を見つけたのが殺し合いにのっていない人物だったこと。
その人物が占い師で記憶力には自信があったこと。
彼女から聞かされた放送の内容には、リンの仲間の名前は含まれていなかったこと。
その全てが幸運だった。
そんな自分が、ミネアが求める答えを出せるかは分からなかったけれど。
草原の民は受けた恩を忘れない。
リンは、かって復讐を草原で一人生き残る為の力にした少女は、少しでもミネアの力になろうと口を開く。
「私も長いこと復讐を志していたわ」
語る、自らの過去を。
呪われし剣に冒されたそれを、自分のものとして取り戻すために。
一言一言過ぎ去った日々を言葉にしながら噛み締めていく。
「リンさんとわたしは似たもの同士ですわね」
似たもの同士。
そうかもしれない。
親を殺されたことも。
復讐を誓って生きてきたことも。
結果世界を救うことになったことも。
全部が全部、似通っていた。
でも違う。
リンはついぞ復讐することができなかったのだ。
「ワレスさんっていう父さんの友人で、私の力にもなってくれた人がいたの」
スキンヘッドで厳つい外見と、それに似合う頑固で無茶苦茶な性格の人物。
彼の方向音痴や新兵訓練趣味にはリンも何度も困らされた。
キアランへの帰国途中でまた道に迷い、北国へと辿り着いてしまったという噂を思い出し、自然と笑みが浮かぶ。
どうやらこれから話すことを根には持っていないらしい自分にどこか安堵した。
「その人に横取りされちゃったわ。私がぐずぐずしているうちにね」
真に主君を想う騎士の中の騎士。
どれだけ言葉を尽くしても、ワレスの芯はそこにある。
そんな彼はリンの心が過ぎた憎しみに囚われ、歪められてしまうことを良しとしなかった。
敵討ちではなく、リンに幸せになって欲しい。
その一心でリンの意に反してまで人知れず盗賊団を壊滅させていたのだ。
己が、本当に主君のためになる行動をしているかどうか。
常にそのことを考え続けていた男らしい行動だった。
「正直恨みさえしたわ。あいつらは私の仇だった。私が、この手で、殺したかった。
そうじゃなかったら意味がないってっ!」
202 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:46:53 ID:D+1xI0RT
当時は訳が分からなくなった。
復讐のために鍛えたはずの力は行き場をなくし、ワレスに怒りをぶつけようにもリンには彼を嫌うことはできなかった。
世界を滅ぼさんとする巨悪との戦いの最中だったこともあり、できるだけ考えないようにしていた。
「でも、今は少しだけ違う。ネルガルと戦い終えて、平和な日々を過ごしてた今なら」
あの時流れた血も、死んだ父さんたちのことも覚えてる。忘れられるわけが無い。
けれど、一つ新しく分かったこともあった。
「あいつらが生きてる限り、私は前に進めないと思ってた。それが私にとっての復讐の理由。
それは裏を返せば、私が前に進めるのなら復讐は必ずしもする意味はないということ……」
元気を取り戻した祖父と一緒に話した、散歩した、音楽を聴いたりした日々。
念願だった母の愛した草原を共に歩いた時、リンは紛れもなく幸せだったのだ。
「山賊団達が生きたままだったら気が気じゃなくておじいさまともあんなにも平和な日々を送れなかった……。
目先の復讐に明け暮れていたら後々後悔していたかもしれないわ」
ワレスが危惧していた心が曇るということはきっとそういうこと。
リンに復讐を否定するつもりはない。
未だ彼女の心のうちから憎しみは消え去っていないから。
ただ、肝には命じておくことにした。
復讐に縛られ、新しく得た者や、手の内に残っているものまでも取りこぼしてしまわないように。
そのことをミネアに告げ、リンは彼女なりの答えを出す。
「人はその人にとっての全てを亡くした時に、亡くしたと思った時に、復讐に生きようとするのだと思う」
いわばパンドラの箱の逆定義。
心という入れ物から全ての希望が抜け出た後に残るのは絶望という名の空っぽの入れ物。
その空白を満たそうと人は復讐という獣を飼う。
注意すべきは、その獣は希望さえも食い物にして育つという点。
見逃していた、見ようとはしなかった希望を、新たな絶望の苗床と化してしまう。
魔王の称号は伊達ではない。
ピサロには他の者の追随を許さないだけの魔力と剣技があった。
「――イオナズン」
超新星爆発。
宙に連なる星々が命を燃やし尽くすその一瞬の輝きの如き爆発がかっての森を埋め尽くす。
たとえ屈強な戦士であろうともまとめて5人は葬れるであろう殲滅魔法。
されど、その女は己が纏いし一枚のコートすら傷つけることなく爆炎を抜ける。
「AAああAaaaAaaAAあAAAaaあAaaAAああAaaッーーー!!!!」
女――アティを抱きしめ守護するは天使ロティエル。
本来なら召喚し憑依させようにも剣の意思にはじかれてしまう筈のサプレスの住人。
その欠点を剣はアティが左手に抱きかかえたままのアリーゼの死体に降ろすことで解決したのだ。
ロティエルがアリーゼの死体ごと光壁でアティを囲い魔法を弾く。
ピサロの全身から放出されたオーラが天使を吹き飛ばすころには、アティは彼の懐へと飛び込んでいた。
203 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:48:47 ID:D+1xI0RT
斬ッ!
殺意に駆られても帝国軍学校主席を勝ち取った足運びや身のこなしは身体が覚えている。
迸る魔力による身体能力・加速力のブーストもあいまって、女性とは思えない重い攻撃だった。
その一撃でさえピサロの技巧の前には届かない。
両の剣を交差させ受け止めた上でのサマーソルトキック。
意識を刈る蹴りがアティの顎下を打ち付ける。
だが足りない。その程度では今のアティを殺すには威力が足りなさ過ぎる!
アティの左腕の水の紋章が輝く。
世界を構成する5つの要素を司る真の紋章が一つ、真なる水の紋章の紋章の眷属たるその力。
制限された状況下とはいえ、大したダメージを受けていなかったアティを癒すには充分。
ピサロの蹴りの戦果は、吹き飛ばしたアティの眼鏡一つで抑えられる。
開戦以来この繰り返しだ。
レイ戦のダメージが残っていることもあり、防御を打ち崩しきれないピサロ。
回復魔法も扱える相手に対し決定打に欠け、地力でも劣るアティ。
このまま戦い続けてもジリ貧なのは明らかだった。
「バイキルトっ!」
状況を打開せんとピサロが動く。
破壊衝動に動かされ、やみくもに死を振りまくだけのアティと違い、ピサロには理性が残っていた。
この地に巣くう命を皆殺しにするためにも、一人にばかり時間を取られているわけにはいかないと判断したのだ。
短剣をしまい、刀の柄を両の手で握り大上段へと構える。
一人の格闘家を死に至らしめた魔人の洗礼。
攻撃補助呪文を受けたそれは、更に重く、更に鋭い。
当たればいかな魔剣の主でも、剣の加護ごと両断されるは必須。
あくまでも、当たればの話だが。
疲労こそしているものの、レイとは違いアティに動きを阻害するほどの外傷は無い。
ピサロの腕を以ってしても、伐剣者相手に命中させれる確率は五分と五分。
全力での一撃が故に、外した時の隙は致命的なまでに大きい。
ピサロは勿論、アティもまたそのことを理解していた。
猛り狂っていたのが嘘のように、静かに、優しく、傷痕の無くなったアリーゼの遺体を地に降ろす。
僅かに残っていた優しさが為せた業なのかは分からない。
あくまでに勝つために必要だったからかもしれない。
「ォォォオオオオオ……」
空いた左腕が取り出したのは破壊の鉄球。
強化された腕力が難なく腕一つで自在に振るうことを可能にしていた。
鉄鎖が円を描き、鉄球が風を喰らう。
頭上を守る位置で回転しているそれが、今か今かと獲物に向けられる時を待つ。
当てられるか、かわせるか。
ピサロには次が無い。
バランスを崩した状態では出の遅い鉄球ですら避けること能わず。
アティには先が無い。
素早さで劣る以上、かわさなければ反撃も叶わず断ち切られるのみ。
静寂。
荒野と化した地に、たった一度の静寂が訪れる。
相手の挙動を伺い、必滅を期す両者が睨みあう。
永遠とも思える刹那。
時計の針を動かしたのは一陣の風。
軽い音を立てて、少女が死した後も先生の命を守っていたサモナイト石が血の通わぬ手から転がり落ちる。
204 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:50:19 ID:D+1xI0RT
瞬間。
ピサロが地を蹴り、神速に神速を重ね太刀を振り下ろす。
アティが予測に従い身体の軸をずらそうとしながらも、同時に鉄球を打ち出す。
――そのどちらが届くよりも速く。
二人の間に衝撃波と、続く人影が割って入った。
「会ったことはないけれど分かります。リンさんは元の世界の人たちに、本当に愛されていたのですね」
火を消し、立ち上がったミネアがリンに笑いかける。
数分前にもらったリンの返答はミネアにとってすとんといくものだった。
そういうことなら復讐心が沸くはずはない。
彼女にとっての一番大切な人は。
たった一人の姉妹はこの殺人遊戯には巻き込まれていないのだから。
姉だけではない。
オーリンも、ペスタも、コーミズ村の人々も元の世界で平和に暮らしているはずだ。
「いえ、むしろピンチよ、これは。いけないわ、姉さんを一人にしていたら。
誰も止めてくれる人がいなくてまた借金が!」
余計なことにまで思い至ってしまったミネアは、今一度オディオ討伐の決意を固める。
復讐に意味はない。
使い古された言葉だが、半分嘘で、半分正解。
ミネアは復讐を遂げたことで確かに前へと進むことができたのだ。
多分、自分の選んだ道もリンが掴んだ結果も、どっちも間違ってはいない。
止められるべき復讐があるのだとすれば、それは先のない復讐のことかもしれない。
ミネアの中で整理がついた。
「大変ね、あなたも」
苦笑しながらリンはミネアからうけとったばかりの剣に目を落とす。
精霊剣マーニ・カティ。
流された時にいた神殿付近に戻ろうと話し合って決めた時に、丸腰だと辛いだろうとミネアが渡してきたのだ。
正直、少しその剣に触れるのに躊躇した。
占いで善人と出ただとか、どうせ拾ったものだからとか、ミネアは気を遣ってくれてはいたが、そういうことではない。
愛剣にして精霊に祝福された宝剣を前にして、呪われた剣に魅せられ、いいように使われた自分を恥じたからだ。
「大切にするって決めてたのにね。ごめんなさい、マーニ・カティ。私だけの剣」
二度と同じ過ちは繰り返さないと鞘を握り締め、リンは誓う。
洪水の原因、リンを襲った男、アリーゼを殺した人物。
神殿近くに行くと二人が決めた理由は多々あれど、リンにとっては皆殺しの剣の存在が大きかった。
誰しもリンのように大した被害を出してしまう前に剣から解き放たれるとは限らない。
意図せぬ惨劇で誰かが傷つくのも、剣に呪われた者が悔いることになるのも、リンにはごめんだった。
205 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:51:21 ID:D+1xI0RT
――であるからこそ、その光景を前にして、二人は迷わず止めに入った。
「そうか、やはりあの雷は勇者の仕業だったか。死ね、ロザリーを殺した人間どもの使いめがっ!」
ブラストボイスで横槍を刺し、戦いに介入したミネアはいぶかしむ。
今のピサロの様子はどう見ても、ロザリーを失い嘆き悲しんでいた時の彼に他ならない。
しかし放送ではロザリーの名前は呼ばれていなかった。
放送後すぐに殺された?
呼び出された時系列の違いに気付いていない占い師からすれば妥当な判断だった。
恰好の容疑者がピサロを挟んだ向かい側、見覚えのある少女の死体よりやや離れたところにいるのだから。
もっとも、アリーゼに意図的に情報を隠されていたミネアには、それが少女の先生だと気付くことはできてはいなかったが。
「死ね死ねシネしね死ねシネ死ね死ネしね死ねぇぇぇえええええええええええええええ!」
碧色に輝く紋様に右半身を侵食されつつあるアティの剣をマーニ・カティで受け流す。
右腕に一体化している剣が怪しいのは見るからに明らかだ。
だが原因を知ったところでリンに解呪魔法は使えない。
知るもんか。
僅かに浮かんだ弱気な考えを一蹴。
簡単な話だ、元凶である剣を折ればいいだけのことと、気合を入れなおす。
「リンさん、魔法が利き辛いみたいですし、主にその人をお任せしてよろしいでしょうか?」
「言われなくてもそのつもりよ! なんだか知り合いみたいだけど、そっちこそいけるの?」
「ピサロさんの手は一応知り尽くしていますから」
「分かったわ! こっちは任せて! 剣を折ってでも助け出す!」
互いに背中を預け、ミネアがピサロと、リンがアティと対峙する。
デスピサロ。
名前も、あるべき姿も、思い出も、愛する者のことさえ忘却した憎しみの果て。
全てを失い、全てを捨てた、先の無い復讐の終わり。
ミネアの知るすべも無い本来ありえた報われぬ未来。
伐剣者。
言葉を捨て、心を閉ざし、笑顔を生贄に力を得た理想の残骸。
復讐を為したところで彷徨える日々しか訪れない悲しき亡霊。
彼女の腕の中で息絶えた少女が望まなかった宿業の明日。
「止めましょう、哀れなデスピサロを」
「そして呪われた魔剣に父なる大地の怒りをっ!」
バッドエンドを打ち砕かんと、かっての復讐者二人が、今の復讐者二人へと立ちはだかる!
206 :
Avengers
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/06(月) 03:53:19 ID:D+1xI0RT
【C-7 荒野(元・森) 一日目 朝】
【アティ@サモンナイト3 】
[状態]:抜剣覚醒。コートとパンツと靴以外の衣服は着用していない。
強い悲しみと激しい自己嫌悪と狂おしいほどの後悔。コートとブーツは泥と血で汚れている。
水の紋章が宿っている。 暴走。 疲労(中)ダメージ自体は目だってなし。
[装備]:碧の賢帝@サモンナイト3、白いコート、はかいのてっきゅう@ドラクエW
[道具]:基本支給品一式
モグタン将軍のプロマイド@ファイナルファンタジーY
[思考]
基本:????
1:AaaAAああAaaッーーー!!!
[備考]:
※参戦時期は一話で海に飛び込んだところから。
※首輪の存在にはまったく気付いておりません。
※地図は見ておりません。
※暴走召喚は媒体がないと使えません。
※アリーゼの遺体、天使ロティエル@サモンナイト3、アティの眼鏡がアティの後方に転がっています
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:全身に打傷。鳩尾に重いダメージ。
疲労(大)人間に対する強烈な憎悪
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、基本支給品一式
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:皆殺し(特に人間を優先的に)
[備考]:
※名簿は確認していません。またロザリーは死んでいると認識しています
※参戦時期は5章最終決戦直後
【ミネア@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドU
[道具]:基本支給品一式(紙、名簿欠落)
[思考]
基本:自分とアリーゼ、ルッカの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:少女(リンディス)が起きるまで待つ。起きたら話を聞く。
2:アリーゼ、ルッカを探したい。
3:飛びだしたカノンが気になる
[備考]
※参戦時期は6章ED後です。
※アリーゼ、カノン、ルッカの知り合いや、世界についての情報を得ました。
ただし、アティや剣に関することは当たり障りのないものにされています。
また時間跳躍の話も聞いていません。
※回復呪文の制限に気付きました。
※ブラストボイス@ファイナルファンタジーYは使用により機能を停止しました。
【リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:腹に傷跡
[装備]:マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:なし
[思考]
基本:打倒オディオ
1:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
2:目の前の女性(アティ)を剣から解放する。
[備考]:
※終章後参戦
※ワレス(ロワ未参加) 支援A
※C−7西部の森や山の一部が吹き飛びました
207 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/06(月) 05:21:39 ID:uAS6tG5A
投下乙です
ついにカエルマーダー化キター!ですね
おい冷房、ゆっくりしてる場合じゃねぇぞ!w
サンダウンさん間に合うか?
そしてもう一つも投下乙です
こっちはなんだか対主催が戦力的に辛そうな予感w
リンとミネアが弱い訳じゃないが、抜剣アティもピサロも強すぎてもうねw
特にミネアさんが……ロザリー生きてるってピサロが知ったらマーダー辞めるかもしれんし
ミネアがそれをしゃべる前に死にそうな気がしてならんぜ
何故ミネアはこうも死亡フラグビンビンの状態に放り込まれることが多いんだwww
208 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 01:17:12 ID:vdAXVKgd
◆6XQgLQ9rNgさん投下乙!
カエルーーーー!!! ついに来ちゃったか。
しかし、最初の敵は対主催トップクラスのシュウ。いきなり辛い敵だなー。
個人的には、ロザリーとニノのシーンが好きですね。
弱いけど優しい彼女たちの魅せ方を教えられた気がします。
さて、マーダー転向したカエルは初戦を乗り切れるのか楽しみです、GJ!!!
◆iDqvc5TpTIさんも投下乙!
抜剣アティ対ピサロ様。スピーディで読み応えもあり、期待以上の面白さです!
あまりのチートバトルに、また緑が失われてしまったw
リンも立ち直ったので、ミネアさんと共にこの戦いを止め……られないだろw
しかしこの2人のやり取りを見てたら、そう簡単には死んで欲しくないんだよなぁ。
しかも近くには火種となりそうなキャラがいっぱい入るし、激戦の予感、GJ!!!
209 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:22:48 ID:vdAXVKgd
それでは投下します。
210 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:24:34 ID:vdAXVKgd
一目で分かった。
その城は戦場だったのだ、と。
眼前に佇むは、無残に蹂躙された白き巨城。
城壁、柱、モニュメント。その全ては嬲られるがまま無残に破壊されていた。
それらの傷が主張するのは、ここで大規模な争いがあったという事実。
砕け落ちた建造物の残骸も、除去されることなく大地に散乱している。
おそらくこの空間は、争いが終わったその瞬間の状態のままで、野ざらしにされていたのだろう。
足元に視線を移せば、長らく手入れされる事もなく放置されていた石造りの大地には、緑の雑草が生い茂っている。
そして、雑草が生い茂っているという事は、ここには太陽の光が降り注いでいるという事になる。
ここが『地下の城』であるのにもかかわらず、だ。
それは明らかな矛盾のように思えるが、上を見上げればその謎は容易に解き明かされる。
そこに存在するはずの青空は当然なく、視界を覆うのは茶色の岩肌。
しかし、その隙間から白い光が差し込んでいるのが確認できる。
どうやら、この空間は地下の中でも、非常に地上に近い位置に存在しているらしい。
ここの雑草たちはその光を吸収して自らの生存活動に利用しているのだ。
「ったく……妙なモン造りやがるぜ」
紅い髪をたなびかせ、廃墟に立ち向かうは炎の侍。名をトッシュと言う。
彼が零した不満は、おそらくこの殺し合いの主催者に向けたものであろう。
尤も、この廃墟自体はオディオが造った物でなく、一部の参加者たちが住んでいた世界から『持ってきた』物であるのだが、そんなことは彼の知ったことではない。
「人っ子一人いねェか……」
ジャリジャリと瓦礫を踏みしめて城に近づく。
城外から探る限りでは、城内に人の気配はない。もちろん、人以外の生き物の気配も感じられない。
握り締めていたひのきの棒をディパックに収め、一応の警戒を解く。
危険人物がいない事にホッとするが、同時に人がいない事を残念に思う。
山中でまさかの洪水に見舞われた彼は、何がなんだか分からないままこの城へ辿り着いてしまったからだ。
正直言って、彼は頭が悪い。
それは彼自身も分かっているだろう。
だから、効率よく地上へ帰るために、頭のよいパートナーが欲しかったのだ。
「あの隙間から出られる……わきゃねぇよな……」
岩の天井から差し込む光を見て溜め息をつく。
ここは巨大な城が丸々入るほど大きな空間である。
その天井が相当な高さとなっているのは子供でも分かる。考えなくても分かる。
流石に、あの遥か高い出口を目指してロッククライミングをするほど彼も愚かではない。
そのうえ、あの細長い隙間も人が通り向けられるほどの幅はない。
「仕方ねぇ、素直に来た道を……ん?」
聞こえた……ような気がした。
人の気配のない城に背を向け、再び地下水路へと踵を返した彼を呼ぶ声。
鼓膜を振るわせるのではなく、直接脳に響く声。
それは、彼がいた世界での精霊達の言葉に似た声だった。
「あぁ? ンだよ……」
不機嫌そうに振り返り、声の発信源を目で探る。
この城には入り口(らしきもの)が3箇所存在する。
向かって中央に、城の正門として使用されていたであろう巨大な扉。
そしてその両脇に小さな扉が1つずつ。
声がしたのは左側の小さな扉。
トッシュが意識をその扉に向けると、そこから異様な気配が放たれているのが感じられる。
それは、一流の剣士が放つ殺意に似ていた。
211 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:26:07 ID:vdAXVKgd
「へぇ……面白そうじゃねぇか」
自分に全力で向けられた敵対心に怯むことなく、彼は笑った。
強敵の予感に高揚した彼は、先ほど拾ったまま左手にずっと握っていた魔石を上空に放り投げた。
碧色に美しく光る石は、数メートルほど上空に投げ出されると、重力に逆らうことなく落下。
落ちてきたソレを、トッシュは殴りつけるが如く荒々しくキャッチした。
大切な石であることを理解しつつも、その扱いに丁重さが一切見当たらないのは彼らしい。
「鬼が出るか、蛇が出るか……ってなァ」
ポンポンと魔石を投げては受け止め、投げては受け止め……を繰り返しながら扉に近づく。
恐らく石の中の『彼女』は、激しい怒りと吐き気に見舞われていることだろう。
扉に手をかける。
中からは凄まじい覇気は感じられるものの、実体が感じられない。
ウィルオーウィスプやゴーストのようなモンスターであろうか。
勢いよく扉を開け放ちながら、そんな予感を脳内で否定する。
これはそんなキメラが放つ殺気ではない。
歴戦の剣士が放つものだ。
自分やモンジと同質の……。
暗い室内に光が差し込む。
長い事封鎖されていた室内は冷たく、少しだけカビの臭いがした。
「…………誰も、いねぇ……か……」
部屋を見渡しても、どこには人の姿はない。
狭い室内には隠れられる場所はなく、部屋の隅にある宝箱も既に開けられて中身は空だ。
「気のせい……かよ。気張り過ぎ、か……」
どこか詰まらなそうに吐き捨てた。
狂皇ルカと剣を交え、ナナミともはぐれた事で少し過敏になっていたのだろう。
頭を数回掻いたあと、チィと舌打ちを残して部屋を後にした。
さて、今トッシュが出てきたこの部屋で、かつてのエドガーたちはあるモンスターと対峙した。
部屋の隅に放置してあった宝箱に、その怨念が封印されていたのだ。
結果としてエドガーたちは、その暗殺剣と回避力に大いに苦しめられつつも、自縛霊サムライソウルを撃破した。
トッシュが感じたのは、その怨念の残りであろう。
同じ剣に生きるものとして、トッシュと刀を交えたかったのかもしれない。
もし彼が違う時代、違う世界に生きていたら、トッシュと戦うこともあったのかもしれない。
「ったく……面白くねぇ。…………って、お?」
とにかく地上へと脱出しようと、古城に背を向け地下水路へと繰り出そうとした。
しかし、なにか呪いでもあるのだろうか、彼はまたもや足止めを食らう事となる。
地下水路の入り口に、人が倒れているのを見つけた。
銀髪の男。ずぶ濡れになっているということは、トッシュと同じでさっきの洪水で流されてきたのだろう。
「……めんどくせぇ」
不満を漏らしながらも、息絶えていないのを確認すると、取り合えず古城の前の広間まで運ぶ。
介抱しようにも回復魔法も医学の心得も持ってないので、そこは自然治癒に任せる事にした。
死にはしないだろうと高をくくり、硬い地面に男を放置する。
男が起きるまではする事もなく暇なので、男の持っていた支給品を覗かせて貰う事にした。
◆ ◆ ◆
212 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:28:12 ID:vdAXVKgd
時刻は、黎明まで遡る。
偽報という置き土産を残してヘクトルに別れを告げたギャンブラーは、孤島の中央に鎮座する山の頂上を目指していた。
取り合えず向かう宛てもなかったので、高い位置から会場の状況を見渡そうという魂胆らしい。
尤も、その理由よりも単に『出来るだけ空に近い場所に行きたい』という願望が大きかったのだろうが。
「さて、あの巨木の辺りが頂上らしい……」
セッツァーは地図を広げながら自分の現在位置を確認する。
一際大きな樹木を見つけ、それが地図上に示されている『巨木』だと分かると、地図を綺麗に折りたたんでディパックに仕舞う。
ここまで歩いている間に、彼はこれからの事を思案した。
この殺し合いで優勝する為に、自分が取るべき行動についてだ。
今、自分に最も必要な事は、戦力の確保であろう。
扱いには長けている槍を保有してはいるので、丸腰というわけでは決してない。
だが、それだけでは心許ない。
ケフカやシャドウ、エドガーたちと互角に渡り合う為には、自分が最も得意とするカードやダイスなどの武器が必要となってくる。
だから、当面の目標は、戦闘よりも武器の捜索という事になるだろう。
だが、それらの武器が他の参加者に支給されているかも分からない。
どうやらこの殺し合いの優勝への道のりは、相当険しいものになっているらしい。
「そうでなくちゃな……」
それでもセッツァーは笑ってみせる。
前途多難な状況を目の当たりにしてそれでも……いや、だからこそ気分が高揚しているのだ。
ギャンブラーと名乗っている以上、賭け事に関してはかなりの場数をこなして来た。
そんな彼でも、こんな分の悪い賭けは初めてだ。
命をベットし、気の遠くなるほど長い綱渡りを終えた先に待っている報酬を思えば、ギャンブラーの血が自然と熱を帯びてくる。
「さぁ、頂上だ。これから……」
巨木へと歩み寄り、山の上から日の出でも拝もうかと考え、その腰を緑の大地に下ろした。
……その時であった。
「…………こ、これは……!」
セッツァー己の目を疑う。
口をポカンと開け、目を見開いたその表情は驚愕と言う以外他はない。
それも無理はない。
彼の眼前で起こっている『事実』はあり得ないことなのだから。
水は低きに流れる。
こんなことは普通の世界ならば、人間が人間らしく暮らす事ができるような世界であれば、絶対の普遍の真理である。
セッツァーが今まで歩いてきた山道に流れていた川も、頂上から裾に向かって流れていた。
それは当たり前のことであり、今更確認するほどの事でもないはずである。
「ば……馬鹿、な……!」
では、セッツァーの目の前で起こっているコレはなんなのだろうか。
山の頂上に向かって、大量の水がドドドドド……と流れてきている。
いや、『登ってきている』のだ。
つまり彼は、なんと山頂で洪水に遭遇したこととなる。
「ふ、ざ、け……がぁぶ……」
腰を持ち上げ、迫り来る水の大群から逃げようとする。
だが、恐ろしい速度で襲い掛かった災害に、セッツァーは成す術なく飲み込まれてしまった。
グルグルと規則性もなく流れ続ける水に翻弄され、槍とディパックを強く握ったままでその意識を手放す。
抜剣者アティが生み出した大量の水が引いたその後には、巨木だけが『何事もなかった』と言わんばかりに堂々とそびえ立っているのだった。
213 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:29:43 ID:vdAXVKgd
「……ここは?」
セッツァーが目を覚ますと、目の前には廃墟が広がっていた。
取り合えず、支給された時計を見て時間を確かめる。
どうやら、洪水に巻き込まれてから大した時間が経過したというわけではないらしい。
と、言う事はここは山頂からそう遠くない場所に位置していると考えていいはずだ。
だが、湿った地図に目をやっても、この廃墟らしき場所はどこにも記されてはいなかった。
北の城や南の城にしては移動した距離が大きすぎるし、神殿だとすると、その神殿の周囲にあるはずの泉がどこにも見当たらない。
夢か幻でも見ているのではないか。
セッツァーからしてみれば、それが一番納得できる答えだっただろう。
「はぁ! ……せぁあ!」
「…………カイエン……? いえ、違う……か」
聞こえたのは荒々しい声。かつて世界を焼き尽くした紅蓮よりも熱い声だ。
その声のする方向、つまり古城より後ろに振り返る。
信じられない速さで剣を振るう男の姿がそこにあった。
その刃の軌道と、その溢れ出る闘志から、かつての仲間であるカイエンの事を思い出す。
が、名簿に載っていないはずの彼が、ここにいるはずもない。
よくよく目を凝らしてみると、それは全く違う人物であった事が分かる。
ボンヤリと、やがてクッキリと目に映ったその男の姿は、声を聞いて抱いた印象をさらに何十倍にも凝縮したような風貌。
もしも世界中の魔法使いが同時にフレアを唱えたらこのような色になるのではないか、と思えるほど真っ赤な髪の毛。
そして『ベヒーモスの親玉だ』と言われても信じてしまいそうになる、あの暴力的な目つき。
「おぅ。目ぇ覚ましたか」
目覚めたセッツァーに気付いた男は、素振りをしていたその手を止める。
こちらに歩いてくる男は敵意さえないものの、全身から相当な威圧感を発している。
そして彼が乱暴に肩に担いでいるその剣は、セッツァーの持ち物だ。
正確には、彼本来の支給品ではないのだが。
彼が殺したトルネコという商人。
彼の支給品中に1本の剣があった。
セッツァー自身は使う事はないだろうと思い、ディパックに仕舞ったままにしておいたもの。
彼に剣の心得がなかったこともある。
だがそれだけでなく、彼は説明書を読んだ瞬間に、この武器は自分に扱えるものではないと理解する。
果てしなき蒼(ウィスタリアス)。
適格者に強大な力を与える魔剣である。
魔剣という説明文が気になったので、軽く握って数回振るってみた。
だが特に変わった現象は起こらず、自分に力がみなぎった様子もなかった。
おそらくセッツァーは適格者ではなかったのだろう。
それ以来ディパックに収めて、二度と出すつもりはなかったのだが……。
「あぁ……コレ、借りてるぜ」
セッツァーが剣に注目しているのを見た剣士が、差し込む朝日に蒼剣を掲げて言う。
勝手に人の持ち物を漁っておいて、特に悪びれる様子もないが、セッツァーもそれを咎める気は更々ない。
あの剣士から見たら、セッツァーは殺し合いに乗ってるかどうかも分からない人物である。
これで警戒しない方がおかしいという物。
その人物の持ち物くらいチェックして当然というわけである。
現にセッツァーは、既に他の参加者を殺害して2人分の基本支給品を持っているのだから。
「果てしなき蒼、ウィスタリアスだったかな。なかなかいい剣だな」
そう言って男は、コンコンと剣で石の大地を叩く。
剣の名前を知ってるという事は、説明書を読んだという事だろう。
214 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:31:19 ID:vdAXVKgd
「どうやら魔剣らしいが……何か分かったか?」
「いーや。そっちはちっとも分かんねぇな」
少しだけ笑みを浮かべながら、ドカンと地にあぐらをかく。
自分だけ武器を持っているという強みからだろうか、警戒心は薄い。
だが事実、先ほど剣を振るっていた様を見る限りでは、この男の実力は相当なもの。
マッシュならともかくセッツァーが素手で敵う相手でもなさそうだし、魔法だって詠唱し切る前に切り殺されてしまうだろう。
「どうやら助けられたようだな。礼を言おう」
「別に俺はなにもしてねぇよ」
余程剣が好きなのだろう。座ったままで果てしなき蒼を何度も振るう剣士。
どう考えても真っ赤なイメージのこの男には、蒼い魔剣はちょっと似合わない。
だが、その扱いは慣れたもので、不安定なはずの体勢からブンブンと恐ろしい速さで剣を振るっている。
おそらくこの男、カイエン以上の剣の腕前だ。
「俺はセッツァー。セッツァー=ギャッビアーニだ」
「俺はトッシュだ。苗字は……忘れちまった」
分かりやすい嘘をつく男だ。
名簿を見れば、ちゃんとフルネームで書いてあるだろうに。
偽名かと思ったが、それならば覚えられないような名前などわざわざ名乗らないだろう。
単に口に出したくないだけか。何故だかは分からないが。
「でよぉ、セッツァー。さっきお前の支給品を見させて貰ったらよ……」
「分かっている。『支給品がなぜ2人分もあるのか?』だろ?」
彼が言い淀んだ質問を補完すると、トッシュはばつの悪そうに「おぅ」とだけ呟いた。
普通、こういった質問をするときは、誰だって警戒をしてしまうものだ。
だが彼は、聞きにくそうな素振りさえ見せたものの緊張した様子はなく、剣を握る手にも大した力は入っていないようだ。
いつ襲い掛かられたって迎撃できるという自信の表れだろうか。
「中年の太った男。名前も知らない……誰が殺したかも分からない……。
俺が見つけたときにはもう死んでいたんだ」
悲しく目を伏せ、言い難そうな雰囲気を出しながら嘘をつく。
殺害犯をでっち上げるのは避けた。
既にトッシュがその人物と出会ってしまったりしていたら、嘘がばれてしまうからだ。
それを聞いたトッシュは、「そうか……」とだけ返事をした。
やけにあっさりだな……とセッツァーは疑問に思う。
「俺が言うのも変な話だが……疑ったりしないのか?」
素直に信じてくれるのはありがたいのだが、これではやけに張り合いがない。
嘘だと見抜いた上で泳がされている……なんて事はありはしないだろうが。
「正直な話……騙しあいとか、駆け引きなんざぁ俺にはさっぱり分からねぇからな」
言いながらトッシュは立ち上がる。
紅い長髪が炎のように揺れた。
「お前が『乗ってない』って言うんなら信じるさ」
そう言いながらセッツァーに背を向け、スタスタと歩いていく。
内心で『そんな無用心でいいのか』と突っ込みを入れたが、口に出す事はしなかった。
そして、倒れていた場所のまま放置していたセッツァーのディパックと槍を拾い上げる。
「よっ!」っと小さく声を上げつつ、その2つをこちらに投げて寄こした。
槍は宙を踊り、セッツァーの目の前にカランと音を立てて転がった。
「もし騙し討ちしたいんなら、いつでもかかって来やがれ」
首をしゃくって、「拾え」と合図を送るトッシュ。
トルネコの命を一瞬で奪い去ったその槍をゆっくりと拾い上げる。
確か、槍の長所の1つに『リーチの長さ』があったはずだ。
だが、トッシュと対峙しながら眺めた槍は、とても短く感じた。
215 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:33:17 ID:vdAXVKgd
「その首……切り落としてやるからよ」
剣をこちらに向けて告げる。
その顔に笑みはなく、眼光は第2の刃となって銀の勝負師に突き刺さる。
男を睨んで、セッツァーは溜め息を吐き出す。
なんと馬鹿げた思考なんだ。
だが、こういうタイプが一番騙しにくいというのも事実だ。
心理戦を放棄しているのだから、直接斬りあう他にない。
そして、そういう輩に限って……とんでもなく強いのだ。
「その剣は、俺のものなんだがな」
両手を挙げ『敵意はない』と伝えながら、セッツァーは静かに笑う。
彼のツッコミに、トッシュは「す、すまねぇ」と剣を差し出してきた。
どうやら、セッツァーを切り伏せるつもりはないらしい。
「冗談だよ。持っていけ。助けてくれた礼だ」
どうせ、自分には無用の長物。
ならば信頼を得る為に役立てられればそれで良い。
トッシュならば、魔剣としての力は引き出せなくとも、単なる名刀として使いこなせるはずだ。
ゲームの破壊を目的としているだろう男に戦力を与えるのは、多少不安だが……。
「そうか、悪いな……」
「なぁに、俺にはどうせ使えんからな。
それでだ、ここいらでお互いの情報を…………」
信頼を勝ち得たところで、情報交換を提案した。
トッシュの持っている情報を得つつ、こちらの偽報も流すいいチャンスだ。
トッシュの返事を待たず、セッツァーはディパックを拾い上げ、中から名簿と筆記用具を取り出そうとした。
その時だった……。
『さて、時間だ……始めよう』
魔王オディオの声だ。
最初の定時放送が孤島に響き渡る。
空から降り注いだ絶望の波長は、天井の裂け目を通り抜けて、セッツァーやトッシュの耳にも届けられた。
◆ ◆ ◆
「ここが出口か……意外と近くにあったんだな……」
呟いたのは、地下水路を抜け全身に朝日を浴びたギャンブラー。
あの放送の後、セッツァーはトッシュと情報交換を行う事に成功する。
トッシュから得られた情報は多く、かなりの数の参加者について知ることができた。
その内数人は放送で呼ばれた名前であったが、特にショックを受けた様子も気に病んだ様子もなさそうであった。
彼は意外とドライな性格なのかもしれない。
こちらからの情報は、自分の仲間の情報だけに絞って、ヘクトルの仲間の情報は伝えてはいない。
自分の仲間たちについては、ヘクトルに話したものと全く同じ嘘を伝えた。
ただ、トッシュは無法松という男からティナの事を善人だと聞いていたらしく、こちらもそれに合わせてティナの事は善人だと伝えるのも一つの手だったであろう。
だがしかし、ヘクトルの情報とトッシュの情報が食い違ってしまっていては、上手く嘘が広まったときにその効果が薄くなってしまう恐れがあった。
だから、ティナのことは『無法松が騙されたのか、ティナが改心したのか、俺にも分からない』と誤魔化した。
こんな状況である。どんな善人が人殺しをしても、どんな悪人が人助けをしても、全く不思議じゃない。
情報交換の後、トッシュとは別行動をとることにした。
彼はあの場所で少し休むとセッツァーに告げたのだ。
魔導アーマーにルカ・ブライトなどといった強敵との連戦だったらしく、彼にも疲労が蓄積したのだろう。
だが、セッツァーには武器の入手に参加者減らしと、やるべき事が山積みなのである。
洪水に流された後気絶したおかげで体力も余っていたので、一刻も早く地下から脱出したかったのだ。
216 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:36:06 ID:vdAXVKgd
水路は思っていたよりは入り組んでおらず、古城から出発してそれほど歩かずに出口まで辿り着く事が出来た。
しかし、途中で道が分かれていて、その先に広がっていた洞窟は随分と入り組んでいるようではあったが……。
「しかしあの廃墟、なぜ地図に載ってないんだ……」
地図と今来た道を見比べると、そんな疑問が脳裏に浮かんできた。
セッツァーがあの廃墟にたどり着けたのは、原因不明の洪水に巻き込まれたからで、最初からあそこを目指していたわけではない。
それはトッシュも同じだったらしく、彼も流されるがままにあの城に着いたらしい。
自分が今立っているこの地下水路の出入り口だって、地図にでも載ってなければ見つけようがないのではないだろうか。
では、なぜ魔王オディオはあの廃墟とこの地下水路、そして洞窟を地図から除外したのだろうか……。
可能性として考えられるのは、まず「わざわざ地図に記す必要がなかった」という事。
だが、地図には「巨木」や「座礁船」、果ては「小屋」まで記されているのに、あの巨大な古城を記さないというのは気がかりである。
地下だからと言うことも考えられるが、それならばこの出入り口くらいは示しておくべきだろう。
次に考えられるのは「あえて『地図にない施設』を造った」という事だ。
これも可能性としては低い。
こんな発見しづらい施設など、参加者が引きこもりを誘発するに決まっている。
殺人鬼に遭遇するリスクが極端に低くなる施設……。
そんなもの、この殺し合いのルールにそぐわない。
「ただの、気まぐれか……」
ならば残った選択肢が答えなのだろう。
オディオはそこまで考えておらず、適当に地図から除外した。
そんな事があるのかと思うだろうが、オディオはこんな殺し合いを主催する人物である。
そんな人物の考えなど、既存の物差しで測れるはずがない。
「くだらない事を考えていても仕方ない。俺は俺のすべき事をするだけだ」
今はただ、夢に向かって進むだけだ。
戦って勝つ事だけを考える。
そう心に誓って、セッツァーは槍をもう一度強く握り締めると、またどこかへ向かって歩き出したのだった。
【C-6 地下水路入り口 一日目 朝】
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:若干の酔い
[装備]:つらぬきのやり@ファイアーエムブレム 烈火の剣、シルバーカード@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:トルネコのランダムアイテム1個(セッツァーが扱えるものではない)、基本支給品一式×2(セッツァー、トルネコ)
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:扱いなれたナイフ類やカード、ダイスが出来れば欲しい
2:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後〜セリス達と合流する前です
※名簿を確認しました。
※ヘクトルの仲間について把握しました。
※トッシュと情報交換をしました。
◆ ◆ ◆
「あンの馬鹿……」
堅い地面に寝転がり、トッシュは朝日の差し込む天井を眺めていた。
彼の心にいつもの激情の炎はなく、怒りも悲しみも排除した穏やかな顔のままで、ただ呼吸だけを繰り返す。
「散々人のこと振りまわしといて……勝手に逝くんじゃねぇ……」
死んだ少女に向けて、恨み節を吐き出す。
セッツァーは、彼がナナミの死をそれほど気に留めていないと見たようだが、そんなことはない。
ただ、不器用な彼は、悲しみ方が下手糞なだけだ。
217 :
セッツァー、『山頂』で溺れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/07(火) 01:37:35 ID:vdAXVKgd
彼には護りたいものがあった。
一つは誇り。
自分の師であるモンジはトッシュにとって誇りであり、彼に託された剣術も彼の誇りであった。
だがそれは、この殺し合いに召還される前に既に失われてしまった。
殺人マシーンとなった恩師を、未だに受け入れられない自分が惨めに思える。
先ほどセッツァーに名前を聞かれたとき、『トッシュ・ヴァイア・モンジ』というフルネームを名乗る事が出来なかった。
それは、この名前を名乗るのを苦痛に感じたからなのだろうか、それともあの男の名を忌々しいと思ったからだろうか。
その理由は自分自身にさえ分からなかった。
一つは仲間。
アークやエルクたち。トッシュにとって彼らは自分の命を賭してでも護りたい仲間だった。
エルクやシュウ、ちょこなんかはそう簡単に死ぬ連中じゃあないだろう。
だが、リーザは違う。
優しい彼女は、独りでこの殺し合いを生き残れるほど強くはない。
誰かが護ってやらなくちゃならなかったはずだ。
そしてもう一つ。この殺し合いで出会った少女。
別に彼女に対して特別な感情があったわけじゃない。
ただ、この殺し合いに召還されて最初に出会った人物というだけだ。
だが……だからこそトッシュが護ってやらなくちゃならなかったのだ。
彼女は最初からトッシュを信頼し、無理やりにでも彼の行く道を示してくれた。
彼女は震える手で、自分の背中を押してくれていたのだから。
「何やってんだよ……クソッ……」
そんな大切なものを……護れなかった。
いや、違う。
『護るチャンスさえ得られなかった』のだ。
モンジとの決闘は魔王オディオによって強制終了させられ、その決着をつけることも許されなかった。
リーザは、自分の剣の届かないところで死んだ。護る機会など存在してはいなかった。
そしてナナミは、自分とはぐれた直後に死んだ。
「だったら……こんなもん……」
静かに起き上がると、セッツァーから受け取った魔剣を握り締める。
剣は驚くほど軽い。
さっき振るったときとは、まるで違う感触。
まるで中身を空洞にしたレプリカなのではないかとさえ思えてしまう。
「なんの意味もねぇじゃねぇか……!」
叫びと共に投げつけられた蒼剣は、回転しながら空を裂く。
グルグルと飛行しながら徐々に高度を落としていき、瓦礫の山に突き刺さってやっと停止する。
ウィゼル・カリバーンによって生を受けた剣は丈夫で、こんな手荒い扱いを受けてもその身には傷一つついてはない。
だが朝日を受けた刀身は、淡く蒼い光を悲しげに発している。
「なぁ……アークよぉ」
立ったままで、天井を見上げる。
空の裂け目に、シルバーノアが見えないだろうか……。
そんな期待を持ちながら。
強ければ、誰にも負けなければ、それでいいと思っていた。
目の前に立ちふさがった全てを切り伏せれば、護りたいものには傷一つ付かないと思っていた。
だが、そうじゃないのだ。
彼が今まで、そうやって生きてこれたのは仲間がいたから。
彼が切るべき敵を、仲間達が示してくれたからだ。
218 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 01:46:06 ID:wy7Lw2m3
219 :
代理投下 ◇Rd1trDrhhU氏
:2009/04/07(火) 01:50:11 ID:wy7Lw2m3
「誰かを護ンのは、難しいな……」
アークは凄い。
今更ながらそんなことを思う。
レジスタンスを率いた過去を以ってしても、自分はアークを越えられない。
剣技じゃない。魔法じゃない。
誰かを護るための力と、その使い方。
護れなかったときの苦しみに耐える心。
それらを兼ね備えているからこそ、アークは勇者足り得るのだろう。
「俺にゃぁ……コイツは振るえねぇ」
拾い上げた魔剣をディパックに仕舞う。
代わりに取り出したひのきの棒が、今の自分に相応しい。
ウィスタリアスを引き抜いた場所で白い瓦礫がガラガラと音を立てて崩れていくのを、トッシュは背中で感じていた。
【D-6 地下にある城(古代城@ファイナルファンタジーY) 一日目 朝】
【トッシュ@アークザラッドU】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ひのきの棒@ドラゴンクエストW
[道具]:不明支給品0〜1個(確認済)、基本支給品一式 、ティナの魔石 、果てしなき蒼@サモンナイト3
[思考]
基本:殺し合いを止め、オディオを倒す。
1:出口を探す。
2:果てしなき蒼は使わない。
3:必ずしも一緒に行動する必要はないが仲間とは一度会いたい(特にシュウ)。
4:ルカを倒す。
5:第三回放送の頃に、A-07座礁船まで戻る。
6:基本的に女子供とは戦わない。
7:あのトカゲ、覚えてろ……。
[備考]:
※参戦時期はパレンシアタワー最上階でのモンジとの一騎打ちの最中。
※紋次斬りは未修得です。
※ナナミとシュウが知り合いだと思ってます。
※果てしなき蒼@サモンナイト3はトッシュやセッツァーを適格者とは認めません。
※セッツァーと情報交換をしました。ヘクトルと同様に、一部嘘が混じっています。
エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。
【地下の施設について】
※D-7南部には地下水路入り口があり、D-6の古代城@ファイナルファンタジーYに繋がっています。
さらに地下水路は途中で古代城への洞窟@ファイナルファンタジーYに分岐します。
洞窟がどこに繋がっているのかは不明。
※これらの施設は全て地図には載っていません。
220 :
代理投下 ◇Rd1trDrhhU氏
:2009/04/07(火) 01:51:21 ID:wy7Lw2m3
以上、投下終了です。
さるさん食らったので、誰か代理をお願いします。
地下の施設は、前の話と矛盾がないようにはしたのですが、分かりづらかったでしょうか?
---------ここまで代理投下-------------
221 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 02:23:28 ID:wy7Lw2m3
さ読了
投下乙!
不器用なトッシュがいいなー。
セッツァーと別れて、一人ぼやき悔いる彼がかっこいい。
斬りたきゃこいをはじめ、魔剣や魔石の扱いといった細かいとこでも実にらしく魅せてくれる。
ティナのことを安易な嘘を重ねず徹底したりするセッツァーの判断力も光る。
加えて情景描写もうめえ!w
絵になってありありと浮かんだぜ!
自らの弱いとこに気付いたトッシュといい、果てしなき蒼といい、今後が気になる話でした。
GJ!
222 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 12:52:57 ID:O5Zwozn6
投下乙っす
山頂で溺れるなんてまぁセッツァーさんは貴重な体験をしたことw
強力な武器の果てしなき蒼をあっさりと渡す大胆さ&計算高さもGOOD
ナナミを死んだと知った時のトッシュの背中が哀愁に満ちていましたねー
223 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 19:15:48 ID:CgF1GSfL
>◆iDqvc5TpTI氏
投下乙!
アティとピサロ、どっちもすげぇ…!
アリーゼの遺体にロティエル憑依は素晴らしい発想。
暴走中とはいえ、アティとばしてるなー。
リンとミネア、大丈夫かなぁ…
>◆Rd1trDrhhU氏
投下乙!
相変わらず高い描写力で、イメージしやすい!
トッシュがらしくて、心情がありありと伝わってきた。
彼が『強さ』を得られたとき、ウィスタリアスを振るえるのかなー。
そしてセッツァー、地味に誤情報を広めてるなぁ。暗躍っぷりが素敵だ。
お二方ともGJでした!
224 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/07(火) 21:56:57 ID:jOs/LS02
ウィスタリアスって他の魔剣と違って、先生の魔力が源になってるから、
先生にしか完全な力を発揮できないんじゃなかった?
先生は今絶賛暴走中だから使えるかも怪しいし、
特に伏線とかないなら不滅の炎とか天空の剣の方がいいんじゃないかなと思う。
初登場でこれからの活躍が期待できない武器だとなんだか勿体無い気がする。
225 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/08(水) 03:58:49 ID:prDWzarE
>>224
不滅の炎は設定が少なすぎてまずいっしょw
今回の話だと守れなかったトッシュと守れた蒼の持ち主としての時間軸の先生との対比もあったんじゃね?
あと、武器としてはまあ書き手さん次第だけど、武器としてじゃない意味じゃ結構面白い使い方されそうだけどなー
なんか色々想像しちまったのは俺だけか?w
226 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/18(土) 01:59:11 ID:/EfUZqJk
久々の予約
リオウが切ないことになりそうだ…
227 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:51:30 ID:UVI7MQSq
それじゃあ、投下します。
228 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:52:21 ID:UVI7MQSq
雪を踏みしめるたびに、ザクザクと心地の良い音が聞こえる。
だが、それが何度彼の鼓膜を震わせようとも、彼の心を高揚させるには至らない。
目が痛くなるほど遥かに続く白景色の中を、少年は無心で歩き続けていた。
次々と心に浮かんでくる悲しみや怒り、焦燥といった感情を、必死で押し殺しながら……。
ただ、ただ、雪原に靴の跡を刻み続けていた。
目的地に向かって、一心不乱に。
「…………はぁ……」
冷え切った空気の中では、無意識の溜め息すら白い煙として可視化される。
無心であれと思ってはいるのに、それによって自分が焦っている事を無理やり自覚させられてしまう。
(まだ、城は見えない……か……)
この広い雪原では、四方八方を見渡しても目に映る光景には変化はない。
地図を見たところで自分が今どこにいるのか、目的地まであとどのくらいあるのかすらも分からないのだ。
だから、少年の足跡が描いた軌跡は、まるでミミズが這うかのごとき曲線。
見えないゴールに向かって、永遠とも思える広き大地を、少年は精神と肉体を激しく消耗させながら歩いていく。
だがそれも、目的地である北の城を発見するまでのこと。
(あれは……)
遠くに城らしき灰色の物体を見つけた。
『白でもなく』、『黒でもなく』それは『灰色』だ。
洗い立てのシャツに付いた汚れのように、白い風景に一点だけ混じった異色。
それを見た少年の足取りはやや軽くなり、その表情にも余裕が見える。
いっそう強く大地に踏み込まれたのだろう、その足跡も一段とクッキリ残されていた。
(あれが城で間違いなさそうだけど…………)
少年が近づくに連れて、徐々にその巨体を露わにする鋼鉄の城。
その姿に少年は僅かな違和感を覚える。
あれが『城』であることは明らかであり、それに関しては文句のつけようがない。
だが、何かがおかしい。
この風景の中で、あの城だけが孤立しているというか『浮いている』印象だ。
まるで、異なる写真を切り貼りして作り出されたかのような不自然さ。
そんな不思議な感覚が胸に湧き上がったのだが、城の門を潜ったあたりで少年は考えるのをやめにした。
浮かんだ疑問を脳の隅の隅に追いやって、先ずは目先の状況に集中する。
城の中に人がいるとして、その人物が殺し合いに乗っていない人物だとは限らないからだ。
さらに、殺し合いに乗っていないとしても、自分のことを無害な人物だと信じてくれるとは限らない。
ありとあらゆる状況を考慮つつ、少年は慎重に城の扉を開ける。
冷たい扉は、ギィィ……と軋みながらも、スムーズに少年を中へと招き入れる。
「…………!」
城内部に人の気配を感じ、持っていた槍を強く握る。
その槍の先端は一部だけ紅い、冷えて固まった野生の血だろうが、やけに目立つ。
これでは中の人物に疑われてしまうのでは……と気になったのだが、時間も惜しいのでそのままにしておく。
今まで少年が接触した人物といえば、漆黒の暗殺者と瀕死の女性の2人のみだった。
マトモな人物に未だ遭遇できてない彼にしてみれば、中の人物に一刻も早く接触したいのだ。
槍を握りながら、足音を立てないように気をつけて廊下を歩く。
自分の知り合いだろうか、それとも殺人鬼だろうか……。
中の人物について様々な事を予想すると、不安で胸が締め付けられる。
だが、どれだけ思考したところで、予測する事はできはしなかった。
そこにいたのが、自分の義姉の死体だったとは。
◆ ◆ ◆
229 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:53:12 ID:UVI7MQSq
「この城、本当にスゴイわよ……」
目の前の巨大な装置を見上げて呟くのは、年齢性別全て不詳のモノマネ師。
眉間に人差し指を当て、有りもしない眼鏡をクイと押し上げる。
「そ! れ! も! さっき私が言ったセリフよ!」
ヒクヒクとこめかみに血管を走らせた少女。
彼女は怒っていた。
モノマネとはこうも不快なものなのか。
このゴゴとかいう人(?)は現在、自分の『モノマネ』とやらをしているらしい。
仕草から言葉遣い、果ては雰囲気に至るまで……悔しいがそっくりだ。
だがそれでも、いやだからこそ腹が立つ。
目の前に自分がもう1人いて、先ほど自分が行った行動や言った言葉をワザと真似してきやがるのだ。
本人は至って真面目なようではあるが、モノマネされてる側から見れば小馬鹿にされているようにしか思えない。
「なんなのよ……全く……」
深呼吸をして怒りに震える心を落ち着かせる。
こんなくだらない事を気にするよりも、目の前の素晴らしいサイエンスに集中する事が大事である。
そう自分に言い聞かせるものの……。
「なんなのよ……全く……」
ルッカの嘆きをゴゴが速攻でモノマネする。
完璧だ。
声色から抑揚まで、なにもかもを完璧にコピーしている。
あのマフラーの下に録音装置でも仕込んでいるのではないだろうか……。
横目でゴゴを見ると、相手もまた同じように流し目をこちらに向けていた。
(む! か! つ! く〜!)
必死に気にしまいと努めるが、どうしても隣のモノマネ人間が鼻について仕方がない。
発明で忙しさを極めたときには、『自分がもう1人いたら』などと考える事が何度かあった。
だが、もし自分がもう1人いたとしても、それはストレスの種にしかなり得ないらしい。
しかし、ビッキーは『ゴゴのモノマネはとても楽しかった』などと言っていた。
自分が神経質すぎるのか、それともビッキーが能天気すぎるのか……おそらく両方だろう。
「……そういえば、ビッキーは平気かしら?」
ナナミの死後しばらく、彼女たち3人は泣き続けていた。
特にナナミと知り合いであったビッキーのショックは大きく、泣き止んだ後でも彼女はかなり深く落ち込んでいた。
膝を抱えたまま座り込んで、こちらから話しかけても返事は少ない。
そんな彼女となんとか情報交換だけ済ませると、ルッカは城内の探索を開始した。
落ち込んだビッキーを見ていられなかったこともあるが、それだけが理由ではない。
もちろんナナミの死は悲しい。だが、いつまでもその悲しみに囚われているわけにもいかないのだ。
ビッキーがあのような状態な今、自分がしっかりしなくてはいけない。
だから、気分転換も兼ねてこの城を見て回る事にしたのだ。
「相当堪えていたみたいでしょうし……心配ね……」
腕組みをしたゴゴがルッカに同意する。
当たり前だ。今ゴゴは『ルッカと同じ事を考えている』のだから。
ゴゴの返事を聞いたルッカは、ビッキーの待つ玉座へ向かう。
ちなみに、今まで彼女たちがいたのは、この城の地下に位置する部屋で、城を動かす為の言わば制御室である。
尤も、ルッカたちは『ここが制御室である』事も知らなければ、そもそも『この城が動く』ことすら知らないのだが。
地下の制御室から地上の玉座へ向かう為に、階段をカツカツと上る。
石で造られた階段は異常な寒さであり、その事がルッカの疑念を確信へと変えた。
230 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:54:03 ID:UVI7MQSq
「ねぇゴゴ。この城……」
「えぇ。おそらくは……」
それは、リオウがこの城を一見したときに感じた違和感の原因。
それをルッカは、持ち前の知識と洞察力を持って見抜いて見せた。
明らかに防寒対策が出来ていないのだ。一国の王が住まうであろう場所であるにも拘らず。
というか、寧ろ積極的に内部の熱を逃がすような造りをしている。
「「この城は……『雪原を想定していない』のよ」」
重なった2つの声は、全く同じ波長で階段を駆け抜けた。
第三者が聞いたとしても、響いたのはルッカ一人の声だったと思うことだろう。
完璧にモノマネされた事を全く悔いることなく、ニヤリと口の端を吊り上げる少女。
彼女の導き出した回答は、つまりこの城が『本来ここにあるべきものではない』という事を表している。
おそらく、無理やりどこかからこの雪原に運び出されたものだろう。
こんな狂った宴を主催するオディオなら、やりかねないだろう。
しかし、その先はルッカにすら分からない。
この城は本来どこにあったのか。何の為にここに置かれているのか。
それらを考察する手がかりは、今のルッカたちにはないのだ。
「まぁ、ゆっくり考えるとしますかっ! まずはこの首輪を…………」
当面の目標を掲げ、気合を入れ直す発明少女。
だが、謁見の間の扉を開けて中の光景を見た瞬間、その言葉は途切れる事になる。
「誰……?」
ナナミの死体を抱えたまま動かない謎の少年。
その目元は小刻みに震えており、溢れ出しそうな感情を必死で押し留めているのが伝わってくる。
そしてそれを静かに見守るビッキー。
眉一つ動かすことなく、悲しそうに、申し訳なさそうに少年を見つめている。
「リオウ……ね……」
ルッカの疑問に答えたのは、意外な人物。
……モノマネ師ゴゴだ。
ナナミの死亡時、ゴゴはリオウのモノマネをしていた。
それはビッキーから聞いた情報だけで構成された、不完全なもの。
案の定、義姉であるナナミを騙すには至らず、一瞬で見抜かれてしまった。
だが、それでもゴゴは理解する。
玉座の前でナナミの亡骸を抱えているあれが、本物のリオウなのだと。
あれが、さっき自分が失敗したモノマネの『完成形』なのだと。
「リオウって……まさか……!」
驚くあまり、つい大声が出てしまった。
「マズイ」と思いつつも、ルッカは恐る恐るリオウの方へと向き直った。
リオウも彼女たちの存在に気付いたらしく、顔を上げてルッカたちに目をやる。
しかし、大変なショックを受けているだろう少年のその顔に、ルッカが予想していたような悲愴感はない。
涙も怒りもなく、彼の顔には『無表情』がただ張り付いていた。
「……ルッカさんと、ゴゴさんですね?」
リオウはナナミを丁寧に床に寝かせると、スッと立ち上がってルッカたちに語りかける。
無表情のままで。
「…………」
彼の発した言葉が自分に向けられていた事は分かっていたのだが、ルッカはその異様さに言葉を詰まらせ、返事をする事ができないでいた。
僅かに開けた口元から静かな呼吸のみを行いながら、ジッと目の前の悲劇の軍主を観察する。
231 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:55:10 ID:UVI7MQSq
「……ルッカさんと、ゴゴさんですね?」
リオウはナナミを丁寧に床に寝かせると、スッと立ち上がってルッカたちに語りかける。
無表情のままで。
「…………」
彼の発した言葉が自分に向けられていた事は分かっていたのだが、ルッカはその異様さに言葉を詰まらせ、返事をする事ができないでいた。
僅かに開けた口元から静かな呼吸のみを行いながら、ジッと目の前の悲劇の軍主を観察する。
ルッカが今のリオウに抱いた印象、それは『ツマラナイ発明品』を見つけたときのソレと同じものだ。
発明というのは、革新的な技術があって、さらにそれを扱う確かな知識があって生まれるもの。
だが、それだけじゃない。
それだけで生まれた発明は、ツマラナイ。
そこには、『心』がないといけないのだ。
情熱、信念……狂気でもいい。
そこから生みの親の『心』が感じ取れて、始めて発明品はルッカの胸を高鳴らせるに至る。
「……ルッカさん……ですよね?」
「…………」
リオウの表情、目があって、鼻があって、人間が生きるための機能は備わっている。
だが彼の顔からは、ツマラナイ発明品と同じように、『心』が感じられなかった。
まさか……狂ったか?
最愛の姉の死に、少年の心は押しつぶされ、現実を忘れたのではないか。
そんな不安の雲が、彼女の心の空を一瞬だけ曇らせた。
ほんの一瞬だけ……。
「…………あの、ルッカさん?」
「…………あなた……!」
しかし、自分の目の前に少年が到着したとき……そんなくだらない不安はあっという間に吹き飛んだ。
少年の唇が震えていた。
少年の目が僅かに潤んでいた。
少年の声は、掠れていた。
そこにあったのは確かな『心』。
ソレは、万人が『くだらない』と罵るガラクタでさえ、ルッカの心に響く発明品に変えるもの。
少年の表情から僅かに感じられたものはそういうものだ。
少年は狂ってなどいなかった。
仮にもリオウは百人を超える仲間を率いていた人物だ。
そんな人物が狂うはずなどない。
(私の眼鏡が曇ってただけか……)
ルッカは心の中で自嘲する。
そう見えたのは、『姉が死んだら泣き叫んで当然』というルッカの勝手な決め付けだ。
少年は必死に耐えていたのだ。
姉の死体を前にして、それでも心を押し殺していた。
「リオウ……あなたは……」
「僕が……挫けたら……ダメ、なんです……。
みんなが……不安に、なるから……」
ルッカの言わんとしている事を悟ったのだろう、少年は彼女の疑問の答えを吐露する。
彼は、泣き叫ぶにはいかなかった。
彼の背中に、大勢の人間の命があったから。
それは、かつての友と決着とつけるために、国のリーダーとなることを放棄した今でも変わることのない思いだ。
今もビッキーやビクトール、シュウたちは、リオウのことを主だと思ってくれているのだろう。
ならば、君主である彼が、自分の仲間に弱いところを見せるわけにはいかない。
今も自分の後方には、胸元で両の手を固く握り合わせているビッキーがいる。
彼女にこれ以上不安を与えてはいけない。
232 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:56:41 ID:UVI7MQSq
少年は、自分の身よりも、周りの人間のことを優先的に考えてしまうようになっていた。
乱世の中心で大群を率いていく中で、少年は無意識に、耐える事を覚えてしまっていたのだ。
(…………でも)
ルッカは憐れむような目で少年を見つめる。
狂う事もなく悲しみに耐えうる……少年の強さは分かる。
悲しむことも拒否して仲間を勇気づける……少年の覚悟も分かる。
でも、それが本当に正しい事だとはルッカには思えない。
泣かない事が強い事だとは、彼女には思えなかったのだ。
「でも! …………本当にそれで……」
「待って!」
それでいいの? と尋ねようとしたルッカの肩を掴んで静止した人物。
ルッカは初め、その人物がビッキーなのかと思っていた。
リオウの事、ナナミの事は、自分よりもビッキーの方が詳しい。
だが、リオウの後ろ側に、無言で立っている少女が見えた。
彼を救ってやりたいがどうすればいいか分からない、と言った様子で悲しげにリオウの事を見つめている。
つまり、自分の肩に手をやってるのは、あのテレポート少女ではないということだ。
「待って……ルッカ……」
耳に届いたのは、優しいけど気が強そうな声。
ルッカは気付く。あぁ、これは『自分の声』なんだと。
モノマネ師の右腕が、眼鏡の少女の肩に添えられていた。
「……ゴゴ?」
「ここは、私に任せてもらえない?」
ゴゴの表情は殆ど黄色い布で隠されており、その真意を推して測るのは難しい。
唯一確認できるその目も、照明を僅かに反射して光るだけで、何も語ってはくれない。
どういうつもりなのだろうか、とルッカは不安になる。
「リオウと、1対1で話をさせて欲しいのよ」
少しだけ乱暴な言葉遣い。
ルッカは再び思い知らされる。
これは『自分の声』なんだと。
ゴゴは自分のモノマネをしているのだと。
そこまで思い至ったとき、紫色の髪の毛の下で、2枚のレンズがキラリと輝いた。
そうだ。ゴゴは今、『ルッカ』なのだ。
だったら彼(彼女?)の真意を知る事など容易いではないか。
もし自分がゴゴの立場だったら、何をする……?
自分にもゴゴの能力があれば、それをどう使う……?
思い描いたそれが即ち、求めた『答え』だったのだ。
「そういう事……」
彼の(というか『自分自身の』)真意に気付き、少女は納得のセリフと共に白い溜め息を吐き出した。
正直言って、彼のやろうとしていること事は、間違いなのかもしれない。
だが彼女は反論する気は一切ない。
迷うことなくゴゴを肯定した。
それは、他でもないルッカ自身が正解だと信じた行動なのだから。
「それじゃあビッキー。私たちは行きましょ」
「え? え?」
ワケが分からないといった様で、ルッカに手を引かれていくビッキー。
落ち込んでいたはずの彼女だが、信頼する仲間に出会えた事である程度は立ち直ってきたらしい。
233 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:58:20 ID:UVI7MQSq
「じゃあ、後は頼んだわよ……」
「えぇ。そっちも……」
「分かってる……」
当初は自分のモノマネをするゴゴを疎ましく思っていたルッカだが、今となっては絶妙なコンビネーションを発揮していた。
この短時間でモノマネの特性を完全に理解した少女と、それと同等の思考能力を持つモノマネ師。
そんな彼女たちであるから、目を見れば分かるなどというレベルを超え、最早意思疎通を図ることもしない。
紫髪の少女は自分が成すべきことを把握し、ナナミの亡骸を抱えて別室へと歩き出す。
連れて行かれる義姉を、少年の目が名残惜しそうに追いかけていく。
ルッカはそれを、見ないフリをした。
「そうそう……ルッカ!」
今更なにを伝えるのだろうか、ゴゴが扉を潜ろうとした少女を呼び止める。
少女は、その事務的な呼びかけに、めんどくさそうに「なによ」と一言。
「あなた……とっても優しい子だわ」
おそらくこれはモノマネの人格から来た言葉なのだろうが、ルッカの耳にはゴゴ自身の言葉として確かに響いた。
ゴゴの行動は、勿論ゴゴが自分で発案したものである。
だが、その発想を生み出したのはルッカの人格。
だから、本当に優しいのはゴゴではなくルッカなのだ。
「し、知ってる!」
真っ赤になっているだろう顔を背け、そそくさと扉の向こうに消えていく。
それを確認したゴゴは、少年に向き直った。
ルッカのように腕組みをして、目の前の少年を観察する。
リオウは敵対心こそないものの、ゴゴの不可思議な行動にハテナマークを抱えている。
「座りましょうか」
広げた手を振り、リオウを床へと誘導する。
それを確認した少年。取り合えず、言われたとおりに腰を下ろした。
敷かれた赤い絨毯は高級品らしく、そこに座る2人には外の冷たさなど全く感じさせない。
「……あの、ゴゴ、さん……何を…………?」
「だから言ってるじゃない。貴方と、話がしたいの」
「話って……何を?」
「何でもいいわ。貴方の事……あなたの仲間の事。そして……お姉さんの事……」
お姉さん……勿論ナナミの事だ。
それを聞いた瞬間に、リオウの顔色が曇る。
「そうだ。ナナミ……埋めなきゃ……」
「いいの。それはルッカに任せてあるわ」
立ち上がろうとしたリオウを静止する。
今、彼に必要な事。
それは、溜まりに溜まった感情を発散させる事だ。
少なくともルッカは、それが彼に必要なことだと判断した。
「…………ね? 少しだけ。お話してくれないかしら」
ゴゴの口調が微妙に変化する。
ルッカと同じで、それほど丁寧ではない言葉遣い。
それはさきほどゴゴの目の前で死んだ少女と、まるで同じものであった。
ルッカとナナミの喋り方が似ているせいだろうか、この変化にリオウはまだ気付いてはいない。
だが、無意識下で安心感を感じ取ったのかもしれない。
少しづつだが、ゴゴに自分のことを語りだした。
「えっと……僕は、都市同盟を率いて…………」
自分の境遇。
「……それで、ビクトールさんが言うんですよ…………」
大勢の仲間達。
234 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 03:59:20 ID:UVI7MQSq
「……そこで、リドリーさんが捕まっちゃって…………」
争いの日々。
それらをゴゴは、ナナミの声で相槌をしながら聞いていた。
時間が経つにつれて、少年の口数も多くなり、喋り方も姉に対するソレに変わっていた。
「……彼は、世界を救おうとしたと僕は思うんだ…………」
親友の事。
「……あのケーキ、酷かったよね…………」
ナナミの事。
それらをゴゴは、静かに聞いていた。
やがて少年が涙を流しても。
遂に少年が擦れた慟哭を響かせても。
泣き疲れた少年が眠りに付いても。
空からオディオの声が降り注いでも。
モノマネ師はただ、ジッとリオウを見守っていた。
それがナナミのモノマネなのだ。
それが、彼女が最期に望んだ事だ……とルッカのフリをしたゴゴは感じとった。
それが正しいのかどうかは、ゴゴは知らない。
真実などは、死んだ少女しか知らないのだから。
◆ ◆ ◆
「なるほど、それでゴゴが……」
別室に移動した2人。
ルッカはまず、ビッキーにゴゴが何をしているのかを説明した。
リオウたちと長い付き合いであるビッキーに無断で、勝手に事を運んだ事を彼女は一切責めはしない。
優しい子なんだな、とルッカは思う。
それに比べて自分はどうなんだろうか。
「結局は、ナナミには何もしてやれなかった……に等しいんだけどね」
微かに浮かべた笑みは、自分の不甲斐なさを笑ったものだろう。
ルッカが感じたナナミの願いが、正解だったとして……。
ナナミが最期に願った事が『リオウと一緒にいること』だったとして……。
ゴゴがナナミの変わりにそれを実現しても、ナナミ本人の願いが叶ったわけじゃないのだ。
結局はリオウのそばにいるのはナナミじゃなくて、ただのモノマネ師なのだから。
「でもね、リオウにはそれが必要なんじゃないかと思う」
死んだ少女は、何よりも弟の事を一番に考えるような姉であった。
それは短い付き合いであったルッカでも分かる。
ルッカは知らないが、事実、彼女は弟に国を捨てさせてでも自由を与えようとした。
自分は死んだ事にして、弟の元を離れる事さえ決意した。
「最期に彼女はリオウの為になる事を望むはずだって……私は思うの」
全てはリオウの為に。
ならば、彼女の願いもリオウの事を思ってのことなのだろう。
だから、それを叶えてやれば、弟は救われるはずだ。
そんな出来損ないのサイエンスを、ルッカは信じる事にした。
235 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:03:28 ID:UVI7MQSq
「うん! ナナミちゃんはそういう子だよっ!」
その顔に、久しぶりの笑顔が戻る。
ビッキーは知っていた。
自分を犠牲にするリオウを、ナナミが憂いていた事を。
彼女は破天荒で、自分勝手な行動ばかりしているように見えて、本当は全部リオウのためにあろうとした行動だという事を。
「ルッカちゃんは優しいね」
「……ッ! さ、さぁ……そろそろ、ナナミを休ませてあげましょ!」
ルッカはまたもや真っ赤になって照れる。
当のビッキーに悪気はなく、ただ本心を嘘偽りなく述べただけなのだが。
照れを隠すために早めに作業に移りたいルッカは、ナナミの遺体を持ち上げる。
「あの、ルッカちゃん……それなんだけどね……」
ビッキーが上目遣いで、言いにくそうに言葉を詰まらせる。
だが、ナナミの身体を一瞥すると、意を決したように喋りだした。
「ナナミちゃんを冷たい雪の中に眠らせたくないの……。
だから危険なのは分かってるけど……」
小さな声で「ダメかな?」と付け足した。
テレポートで花園まで飛んで行きたいということだろう。
勿論そんなことをすれば、危険人物に出会う確率は上がる。
それにビッキーのテレポートの精度も完璧ではない。
これは決して賢い選択ではないだろう。
だから、ビッキーはあまり強い形でお願いする事は出来なかった。
「そのつもり。私からしたって命の恩人なんだから」
当たり前じゃない、と言わん気な顔で答えた。
ルッカのモノマネをしていた彼も、その事は了承済みであろう。
「ありがとールッカちゃん!」
ビッキーはそれを聞いて、笑顔を見せる。
感情を隠す事が出来ない彼女を、ルッカは羨ましく思う。
「……私は優しいのよ」
自慢するかのようなその言葉は、ビッキーにも聞こえないような小さな声だった。
◆ ◆ ◆
「大丈夫ルッカちゃん?」
ビッキーが心配そうに首をかしげる。
テレポートで花園へと出発しようとした2人を引き止めたのは、突如として響き渡った魔王オディオの放送。
そこで呼ばれた名前に、ルッカの知り合いがいた。
共に戦った、野生の王女。
ちなみに、彼女はリオウの目の前で、ゴゴのかつての仲間に殺された。
だが、リオウとの情報交換を後回しにしたルッカとビッキーは、その事をまだ知らない。
「……悲しむのは、後にしましょう」
天井を見上げ、溢れそうな涙を押し戻すと、気丈に告げた。
長生きは出来ないな、と予想はしていた。
彼女は強いが、まっすぐ過ぎる。
こういった殺し合いで生き残るには適さない性格なのだ。
それでも、エイラの名前が呼ばれたのはショックだ。
彼女は腕っ節も強かったが、その心も強く暖かかった。
冒険中はずっと彼女たちの支えになってくれていた。
その彼女が死んだ事実は、ルッカの足元をふらつかせる。
236 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:04:49 ID:UVI7MQSq
だが今はナナミを休ませるのが先だと考え、ルッカは彼女の事について今は考えない事にする。
別室ではゴゴが頑張ってくれている。
自分達にできる事をしなくては、ナナミにもエイラにも申し訳が立たない。
ルッカは一時的に、エイラの事を心の隅に追いやった。
だから、カエルが殺し合いに乗った可能性にも、気付く事はなかった……。
「それじゃあ……行くよ……」
「えぇ、大丈夫よ」
その返事を確認すると、ビッキーが「えいっ」と叫ぶ。
ほんの一瞬だった。
時空を越えるときとは違い、真っ暗な異次元を経由したりはしない。
ビッキーの声が響いたその刹那に、鼻に届いた七色の香り。
冷たい廊下が一瞬にして暖かな花園へと変化した。
「やった、成功!」
「うわ……何度見てもすごいわね」
色とりどりの景色の中、ビッキーが嬉しそうに小さくジャンプする。
太陽のような少女が、久しぶりの朝日を全身に浴びながら着地。
大地に降り立った彼女の足の下に、妙な感触があった。
同時に聞こえたのは「ぐぇぇ……」という声。
「あれ? あれれ?」
「ぐえええぇぇぇ!!!」
何事か……と言わんばかりにオロオロと辺りを見渡す少女。
彼女が身体を左右に振るたびに、その足が下の人物にめり込む。
「ちょっと、ビッキー……下……」
こういう行為で喜ぶ人間もいるにはいる、というか結構いるだろう。
しかし、彼女に今踏まれている人物にはそういう趣味はなかったらしい。
少女の下でもがいていた人物に気付いたルッカが、知らせようとしたのだが……時既に遅し。
爆発した怒りが、花園の空気を一変させた。
「いい加減に……シナサーーーーーイ!!!!」
「きゃっ!」
怒号と共に立ち上がったのは、奇妙な格好をした男。
まるでピエロのようだ、とルッカは思う。
足元から現れた人物に押しのけられたビッキーが、可憐な花の上に倒れこんだ。
そんな事は知ったことかと、被害者は次々と感情を叩きつける。
「おいコラ小娘! 人を足蹴にしておいて謝罪もなしか!!!」
咲き誇る命を地団太で殺しながら叫ぶ道化師。
名をケフカという。
かつて、ゴゴたちのいた世界を絶望で包み、今踏み殺している花々よりも多くの命を消し去ってきた悪魔だ。
とはいえ、今回ばかりはビッキーに非があるのだが……。
「ご、ごめんなさい……。全然気付かなくって……」
「全く! 初対面の人間を踏んづけるなんて。
サイテーなオンナですね〜!」
先ほどまでの笑顔から一転、シュンと落ち込んでしまった少女。
そんな少女を、ケフカは容赦なく責め続ける。
彼の口から罵声の言葉が出るたびに、ビッキーの顔が悲しみに歪む。。
「あのまま……私を殺すつもりだったんだな?! あー怖いコワーイ!!」
「ごめん、な……さ……ふぇ……ふぇぇ……」
「ふんっ! 泣き落としですか?! それで許されると……」
ついに言葉を詰まらせてしまった少女だが、それでもなおケフカは罵るのをやめようとはしない。
彼女の顔を覗き込んで、「どうせ嘘泣きなんでしょー」などという始末。
237 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:06:27 ID:UVI7MQSq
「ちょっとアンタ! 謝ってるんだからもういいでしょう!?」
そんなケフカの非道に怒りを露わにしたのがこの少女。
初めはこちらに責任があるのが分かっていたため、ルッカも事態を黙って見守っていた。
だが、責められ続けているビッキーを見て、ついに我慢が出来なくなったようだ。
「ほー……ついには逆ギレですか……」
「えぇ逆ギレよ。悪い? 女の子を泣かせるなんてアンタの方がサイテーよ!」
ケフカの罵詈雑言など、ルッカには一切通用しない。
彼女にしてみれば、自分のモノマネをしたゴゴのウザさに比べたらこの男のソレなど屁でもない。
一歩も引くことなく、逆に相手を怒鳴りつける。
そんな少女を見て、対する道化師は激昂。
「クワァーーーーーー!!!! なんですって!
元はと言えば、このマヌケ娘が……」
「止めなさいって言ってるでしょう!」
ビッキーに人差し指を向けるケフカ。
それを見て、更に怒りを高める発明少女。
両者一歩も譲らない言葉の応酬が繰り広げられていた。
だがそれは、意外な形で強制終了させられる。
さて、再確認するが……ここは花園だ。
わざわざビッキーがナナミを埋める場所としてここを選んだのは、彼女がここの景色が綺麗だという事を知っていたからである。
彼女はこの場所が気に入っていたのである。
では、何故彼女はここから離れたか。
「ふぇ……ふぇ……」
簡単だ。テレポートしたからだ。
……性格にはテレポートが暴発したからだ。
この花々が撒き散らした……。
「ふぇっーーーくしゅ!」
花粉によって。
彼女は泣いていたわけではない。
クシャミが出そうで出なかっただけだ。
少女の紋章が転送の光を発生させる。
それに包み込まれたのは、この少女ともう1人。
「なんですかこの眼鏡女! シンジラレナーイ!」
ビッキーに指を突きつけていたままの道化師である。
眼鏡の少女よりもビッキーに近い位置にいたので、彼がだけが転送魔法に巻き込まれてしまったらしい。
だが、ルッカと言い争いを続けていたケフカは、ビッキーがテレポートを暴発させた事にも気付いてはいない。
そのまま光は球となり、2人を包み込んで……。
「大体ね! なんなのよそのダッサイ……服……は…………ってあれ?」
少女を1人残して消えた。
キョロキョロと周りを見渡しても、色とりどりの花が風に揺れているだけ。
ビッキーの泣き声も、道化師の金切り声も聞こえない。
「あ! なるほど……ビッキーかぁ……。……って、ちょっと! 嘘でしょ!?」
それがテレポートのせいであることに気が付いたのは、彼女の優れた頭がなせる業だ。
クシャミでテレポートが暴発する事は、彼女自身から聞いていた。
おそらくは、あたりに舞っているこの花粉が原因だろう。
「こんなところに1人で……どうすればいいのよー!」
あまりの事態に立っていられなくなり、大地に尻餅をついてしまう。
あわててディパックを開いて持ち物を確認しても、役に立つものなど見つかるはずもなかった。
ガックリと項垂れた彼女に待っていたのは、追い討ちをかけるような事態。
238 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:07:58 ID:UVI7MQSq
「その少女を殺したのは……君か?」
「……ッ!」
背後から投げかけられた声にハっとする。
振り返ると、そこにいたのは金髪の美少年。
だが、その顔は不信感と怒りに満ちている。
「ナナミを殺したのは君なのか、と聞いているんだ」
それを聞いて思い出した。
あの道化師に対処した後で埋めようと思っていたナナミの死体を、花の上に寝かせたままだった事に。
そりゃあ死体があれば疑うのも当然か、とルッカは納得する。
頭が冷えてきたのと同時に、少年の発言に疑問が湧く。
「あなた、なんでナナミの事……きゃぁ!」
思い浮かんだ疑問を素直に口にしたルッカの真横を、黒い刃が通り抜けた。
地面に刺さった小型の剣は、邪悪なオーラ発散させ、周りの花を枯らせてから消えた。
何かの魔法なのだろうか。
「僕の質問に答えて貰いたい」
その口調こそ冷静だが、少年の顔は激しい怒りで満ちていた。
そう。彼は怒っていたのだ。
この殺し合いに優勝する事を決意したときから……リオウと、ナナミと戦う事も覚悟していたはずのなのに……。
いざ放送でその死を告げられて、その直後に彼女の死体を前にしたら。
突如として怒りがこみ上げてきたのだ。
切り捨てたはずの感情が、湧き上がって来たのだ。
「答えて……くれないだろうか?」
その怒りをジョウイは静かに抑えようとする。
彼の理想を実現する為に、リルカの魔法を無駄にしないために……。
彼は冷静であろうとする。
奇しくも、彼の親友も『その死体』を見て同じような反応をした。
姉の死を前にして溢れ出しそうな感情を、理性で殺そうとしたのだ。
結果としてリオウの心は、ゴゴという太陽に照らされる。
暗く閉じた心に朝がやってきた彼は、その感情を爆発させたのだ。
だが、リルカを失い、魔王という強敵を前にしたジョウイの決意は固い。
彼の心には……未だ『夜空』が広がっていた。
【E-9 花園 一日目 朝】
【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝U】
[状態]:右手のひらに切り傷
[装備]:キラーピアス@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
[道具]:回転のこぎり@ファイナルファンタジーVI、ランダム支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(ルカや、魔王といった突出した強者の打倒優先)
1:目の前の少女(ルッカ)がナナミを殺したなら、殺害する(?)
2:利用できそうな仲間を集める。 花園or大樹に向かう?遺跡方面(南西)から離れる。
3:仲間になってもらえずとも、あるいは、利用できそうにない相手からでも、情報は得たい。
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているときです。
※リルカと情報交換をしました。ARMSおよびアナスタシア、トカ、加えて、カイバーベルトやクレストグラフなどのことも聞きました。
※魔王のこともあり、紋章が見当たらなくても、術への警戒が必要だと感じました。常識外のことへも対応できるよう覚悟しました。
239 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:18:48 ID:UVI7MQSq
【ルッカ@クロノ・トリガー】
[状態]:わずかながらの裂傷、疲労(小)、悲しみ
[装備]:なし
[道具]:オートボウガン@ファイナルファンタジーVI、17ダイオード@LIVE A LIVE 、サラのお守り@クロノトリガー
[思考]
基本:首輪を解除する、打倒オディオはそれから。
1:目の前の男に対処する。
2:ナナミを埋葬したい。
3:ミネア、アリーゼ、ビッキー、ゴゴ、リオウたちと合流したい。ルッカ、ケフカ(名前は知らない) は警戒。
4:首輪の解除、オートボウガンの改造がしたい。そのための工具を探す。17ダイオードの更なる研究もしたい。
5:オートボウガンに書かれていた「フィガロ」の二人を探す(マッシュ、エドガー)
6:クロノ達と合流、魔王は警戒。でも魔王に『お守り』は返したい。
[備考]:
※バイツァ・ダスト@WILD ARMS 2nd IGNITIONを使用したことにより、C-8東側の橋の一部が崩れ去りました。
※参戦時期はクリア後。 ララを救出済み。
※C-9の中心部にルッカの基本支給品一式入りデイバッグが放置されています。
※機界ロレイラルの技術の一部を解明し、物にしました。
※ビッキーと情報交換をしましたが、リオウとは情報交換をし損ないました。
※北の城が別の場所から運ばれてきた物だという事に気付きました。
【場所不明 一日目 朝】
【ビッキー@幻想水滸伝2】
[状態]:健康、テレポート暴発中
[装備]:花の頭飾り
[道具]:不明支給品1〜3個(確認済み。回復アイテムは無し)、基本支給品一式
[思考]
基本:決めてない。どうしよう。
1:ふぇっくしゅ!
2:ルッカと一緒に北の城へ帰りたい。
[備考]
※参戦時期はハイランド城攻略後の宴会直前
※ルッカと情報交換をしました。
※テレポートは暴発したものなので、どこへ行くかも分かりません。少しだけなら時間も越えるかも。
【ケフカ・パラッツォ@ファイナルファンタジーY】
[状態]:不機嫌、テレポート中
[装備]:無し
[道具]:タケシー@サモンナイト3ランダム支給品0〜2個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:全参加者を抹殺し優勝。最終的にはオディオも殺す。
1:な、なんだ?!
2:積極的には殺しにかからず、他の参加者を利用しながら生き延びる。
3:アシュレー・ウィンチェスターの悪評をばらまく。
※参戦時期は世界崩壊後〜本編終了後。具体的な参戦時期はその都度設定して下さい。
三闘神の力を吸収していますが、制限の為全ては出せないと思われます。
※サモナイ石を用いた召喚術の仕組みのいくらかを理解しました。
◆ ◆ ◆
「よいしょ……っと。全く……」
眠ったリオウをベッドに運び、モノマネ師は一息つく。
少年が穏やかな寝息を立てているのを見て、静かに笑った。
ナナミならそうするからだ。
花園に行ったであろうビッキーたちを待つ間、することもないので近くの椅子に座って、今までの事を考えるとしよう。
240 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:20:06 ID:UVI7MQSq
「これで2度目よね……」
ナナミの口調でゴゴが呟く。
彼には、あるポリシーがあった。
それは『その場にいない人物の真似はしないこと』。
人は常に変化していくものだ。
例えば、過去に旅をした仲間達の真似をしたとしても、それは現在の彼らの完璧な真似とはいえないだろう。
なぜなら、彼らは常に変化して生き続けているからだ。
同じように、この場にいない人間は、今どんな状況にいるか分からない。
そんな人物のモノマネをしても、不完全なものに終わるだけだ。
ゴゴは目で見たものしか真似したくないのだ。
だが、そのルールを既に2度も破ってしまった。
最初はリオウの真似をしたとき。
会った事もない人物のモノマネをした。
ビッキーから聞いた情報だけで構成されたにしてはかなりの出来栄えであっただろう。
だが、ナナミには見抜かれてしまった事からも分かるとおり、それは完璧なものではなかったのだ。
2度目は、今行っているナナミの真似だ。
死者のモノマネ。
こちらは実際に会った人物なので、出来栄えの方には問題はない。
しかし、彼のポリシーに大きく反するものである事には間違いはない。
なぜ、彼はそんな事をしてしまったのだろうか。
それは、彼のモノマネが完璧であるが故、だ。
1度目はビッキーの、2度目はルッカの精神が、それらのポリシーに反するモノマネをすることを強く望んだ。
彼が自分の主義に反したのは、彼女たちの願いを完璧に真似した結果なのである。
「……難しいものね」
でも、それも仕方ないか、とゴゴは思う。
彼女たちがそう望んだなら、それを実行するのが彼のモノマネだ。
それは仕方がないこと。
でも、それ以外の場合では、そこにいない人物の真似などするつもりはないが。
「…………さて、そろそろ……」
そろそろ、ナナミのモノマネをやめようか……。
彼はそう言おうとした。
先ほどモノマネに失敗したリオウが目の前にいる。
ゴゴは、彼の真似がしたかった。
ポリシーに会わない死者のモノマネを長く続けるのも限界だと思ったのだろう。
でも、彼はそれ以上は何も言わなかった。
『ナナミのモノマネを中断する』事をやめたのだ。
(……『もうちょっとだけ』……だったな……)
リオウが起きるまで、もう少しナナミでいよう。
静かに弟の寝顔を見続けよう。
それが彼女の願いだから。
(……モノマネに流されるのも悪くはないか)
そこでゴゴは気付いた。
人は面白い。
不完全だからこそ変わり続ける……そんな人間は面白いのだ。
だから、自分は人間のモノマネをするのが好きなのかもしれない。
241 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 04:21:06 ID:UVI7MQSq
(……ならば……お前はなぜ……)
疑問の矛先は、先ほどこの島に響き渡った声の主。
彼はなぜ人間を恨むのだろうか。
(いや、考えるのは、やめにしよう)
そこで思考を止める。
今、自分はナナミなのだ。
ナナミの真似をしなくては……。
彼女が消えるその瞬間まで、彼女の願いを叶え続けなくては。
ナナミの真似をしながら、リオウの事を眺める。
そこで感じたのは、ほんの少しの物足りなさ。
ゴゴはその正体に気付いていた。
リオウの話を聞いていたら、足りないピースに気付いてしまったのだ。
だからゴゴは、寂しげに笑う。
彼女の願いを叶えてやれなかった事を、申し訳なく思いながら。
ゴゴはナナミがそうするだろうと思い……笑顔のまま数滴だけ涙を零した。
「ごめんね……ナナミ……」
彼女の願いは、リオウと『2人でいる』ことではなく……。
【A-3 北の城(フィガロ城) 一日目 朝】
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:ナナミの物真似中、健康
[装備]:花の首飾り
[道具]:不明支給品1〜3個(確認済み。回復アイテムは無し)、基本支給品一式 、天命牙双(右)、
ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:リオウが起きたら、彼の真似をする。
2:ビッキーたちの帰りを待つ。
3:人や物を探索したい。
[備考]
※参戦時期はパーティメンバー加入後です。詳細はお任せします。
※基本的には、『その場にいない人物』の真似はしません。
【リオウ(2主人公)@幻想水滸伝U】
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:閃光の戦槍@サモンナイト3、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーY、、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルに乗らず、オディオ打倒。
1:信頼できる仲間を集める。ジョウイ、ビクトールを優先。
2:ルカ・ブライトを倒す。
3:首輪をなんとかしたい。
4:エイラが残した『黒』という言葉が気になる
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所へジョウイに会いに行く前です。
※ビッキーからナナミの死の状況を聞きました。
※第一回放送は聞いていません。
242 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/04/24(金) 04:22:19 ID:UVI7MQSq
以上、投下終了。
タイトルは「ビッキー、『過ち』を繰り返す」です。
243 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 05:03:50 ID:lQwkTDl1
投下乙!
ルッカピンチだなぁ、ものっそくやべぇぜ
そしてケフカ節全開だなあやはりケフカは面白い
244 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 07:00:35 ID:lkV68uoo
投下乙です
火種になりそうなケフカがどこに行くかで大きく今後の情勢が変わりそうだな
一人残されたルッカはその……頑張れw
245 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 09:52:32 ID:iMGub/iv
ケフカとジョウイの登場に本気で意表を突かれたw
確かに、予約してないキャラ出しちゃいけないなんてルールはないしなあw
で、いい感じにバラけたな
リオウはもう大丈夫そうだけど、今度はルッカとビッキーがヤバいw
ルッカはうまく誤解解けなきゃこのまま殺されそうだし
ビッキーはケフカからしたら最高のカモだろうし…
246 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 16:17:16 ID:aOleB2is
投下乙!
まさかこう来るとは…。
こういう展開はいいなあ。
指摘がいくつか
>>231
「……ルッカさんと、ゴゴさんですね?」
リオウはナナミを丁寧に床に寝かせると、スッと立ち上がってルッカたちに語りかける。
無表情のままで。
「…………」
彼の発した言葉が自分に向けられていた事は分かっていたのだが、ルッカはその異様さに言葉を詰まらせ、返事をする事ができないでいた。
僅かに開けた口元から静かな呼吸のみを行いながら、ジッと目の前の悲劇の軍主を観察する。
がかぶってます。
それとルッカの状態表3のアリーゼとルッカの部分。
あとリオウが城に着くのが速すぎると思います。「三人でいたい」の時点であと数分で放送でリオウは雪原に入った頃だったから。
放送タイミングをずらす(リオウは放送を聞いてから城へ)。
放送がずれたことによりケフカが花園にとどまっている理由が描写されれば問題なくなると思います。
あと前の話ですがセッツァーの位置はC-6とD-7どっちですか?
指摘多いけど話は好きだし文章は読みやすくていいと思いますよ。
247 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/24(金) 21:43:37 ID:Q8hJFcaG
投下乙!
予約の追加欄見ていなかったからマジびびったw
うむうむ、色々予想外w 面白いことになってるなーw
そして各自の描写が見事!
確かに物まねを延々とされ続けるのもなんかからかわれているみたいでむかつくよなーw
かと思えばある意味同一だからこそのコンビネーションか。
ジョウイはナナミの死に切れると思っていたが、『夜空』って表現は粋だな、リレー的にもw
ケフカは調子にのった結果がこれだよ!
ビッキー天然恐ろしい子!
そして何よりゴゴおいしいなーw
物まね師って基盤のままどんどんすばらしいキャラ付けされてくぜい!
GJ!
248 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/25(土) 04:12:29 ID:IN7QDMOc
新人さんktkr
249 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/25(土) 13:52:54 ID:wbaaMeK8
過疎なうちじゃあこれほどありがたいことはないなw
250 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/26(日) 14:37:08 ID:44UQhrhR
まあ完結は不可能だしな
251 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/26(日) 17:13:33 ID:UI00lQWW
パロロワにおいて、ありえないはありえない!
252 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/26(日) 18:16:54 ID:THTp0VvX
HIPHOPロワやアケロワを見てきた俺としては、何としても完結させるぞ。絶対に
筆の遅さ、リアルの忙しさが問題だがな……
253 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/26(日) 18:46:04 ID:UI00lQWW
ならば完結すると思っていなかったという最高の褒め言葉をもらったこともある俺も力を合わせよう!
254 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/26(日) 23:25:57 ID:+Gpt+oBu
俺も完結させられるよう頑張るぜ。
新規で来てくれる人もいるんだ、いけるさー。
255 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:30:36 ID:TMy4mlu1
投下します
256 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:32:50 ID:TMy4mlu1
最初に動いたのは馬鹿だった。
極めつけの馬鹿だった。
「……っ! ……ッ!!」
仲間の死を告げる放送を耳にし、怒りや悲しみ、困惑に襲われていた3人。
その中の一人である日勝は。残る二人から距離を取ると突如一心不乱に身体を動かし始める。
打突――拳が宙を穿ち
蹴撃――脚が空気をなぎ払い
突進――踏み込みが大地を揺らす
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「……っ!?」
いきなりの日勝の奇行に先までとは別の意味で唖然とするクロノを尻目に、マッシュには分かる気がした。
自分達は格闘家だ。
やり場のない想いを発散するには身体を動かすことしか思いつけなかったのだろう。
ティナ。
ティナ・ランフォード。
全てに決着がついた世界で、知ったばかりの愛情を胸に抱き、ようやく人としての幸せな人生を歩みだしたはずの少女。
幻獣界との繋がりが途切れても、繋いだ絆を導とし、大好きな人たちのいる人間界に残った彼女は。
これからだったのだ。
新たな命を迎えたモブリスの村でのティナの普通の少女としての日々は。
「う、うう……。ちくしょう、家族を置いてったら駄目だろ、ティナ。お前、あの村のみんなの母さんなんだろ」
人一人が背負うには余りにも馬鹿げた国という大きなものを背負った兄の助けとなるべく磨いた力は、小さな少女一人救う機会すら掴めなかった。
そのことが悲しくて、惨めで、悔しくて。
いても立ってもいられず、マッシュも日勝の横に並び拳を振るうことを選んだ。
少しでも気が楽になるように。落ち着きを取り戻せるように。何より、もっともっとこれ以上失わないよう強くなるために。
だからこそ、日勝の隣に立ち、彼の顔を覗いたマッシュは我が目を疑った。
「ははっ」
日勝は、笑っていた。
心の底から楽しそうに笑みを浮かべていたのだ。
マッシュは急に日勝のことが信じられなくなった。
他人の命を奪ってヘラヘラ笑うやつは大バカ野郎なのではなかったのか?
仲間の死を知らされ何故笑っていられる?
行き場のない悲しみを取り込んで、怒りがぐるぐると心の中を駆け巡る。
気付いた時には考えるよりも早く日勝の襟元を掴み上げていた。
「ばかやろう! 悲しくないのかよ! どうしてこんな時に笑ってられるんだ!」
文字通りたった一人しか手に入れられない最強の称号を目指す男にとっては、結局は他人なんかどうでもいいというのか。
一度は奥義を教え込もうとまでしていただけに、自分の見込み違いにマッシュの失望感は増すばかり。
いや、果たして失望したのは日勝に対してだけだったろうか?
ティナを、少女一人さえ救えなかった自分自身の無力に対してではないのか?
ふつふつと湧き上がるそれらがない交ぜになった混濁した感情を吐き出すかのように、マッシュは拳を強く握り直し、
「……駄目だっ」
打ち出すよりも速く割って入ったクロノに腕を掴まれる。
怒りに我を忘れかけていたとはいえ微塵も気配を察知させることなく自分の後ろを取ったクロノに、マッシュの武闘家としての本能が感嘆する。
それも一瞬、片腕の自由を奪われ殴ることのあたわなかったマッシュは怒鳴りあがく。
「止めるな、クロノ! 一発、いや、何十発も殴ってやらないと気がすまねええ!」
「……それでもだ」
257 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:34:23 ID:TMy4mlu1
鍛えていることが見て取れるクロノの腕を傷つけずに振りほどくことはマッシュからしても至難だった。
何よりも掴まれた腕を通して伝わる震えが、己が目を正面から見据える今にも泣き出しそうな瞳が、
クロノもまた果てのない悲しみを抱えていることを雄弁に語っていて。
マッシュには無碍に振り払うことができなかった。
「くそっ!」
掌を開き、日勝の服も解放する。
すると日勝は再び自分達から距離を置き、拳の型をなぞり出すのだ。
マッシュは怒りを通り越して呆れの域にまで達しかけ、そこでふと気付いた。
拳の、型?
直接拳を交えたからこそ断言できる。
日勝の格闘術は流派や型に囚われたものではない。
圧倒的な手数。
一つの道に染まらずバランスよく鍛え上げられた肉体と天賦の才からなるあらゆる武術のいいとこ取り。
それが日勝の強さの秘訣だったはずだ。
なのに。
今の日勝の一挙一動には確かな流れがあった。
「虎砲、精気法……っ!」
オーラキャノンの逆を思わせる体内への気の循環による回復法も。
「画竜天聖の陣っ!」
僅かなタメの後に放たれた拡散オーラキャノンじみた爆撃技も。
「心山拳奥義、旋牙連山けおわっ!?」
闘気が暴発して不発に終わった奥義も。
その全てが体系作られた一つの流派のものであることが、同じく一つの道に生きたマッシュには見て取れた。
そして思い出すのは日勝と拳を交えた直後に聞いた話。
――そう、このレイ・クウゴってのが俺の仲間ですんげえ強い格闘家なんだ。
あの時も、目の前の男は笑っていた。
本当に嬉しそうに、自らの仲間を、ライバルを。
誇っていたのだ。
「すげえだろ? レイはさ。こんな技も使いこなしてたんだぜ?」
オーラの扱いを我が物にしたことで、心山拳も模倣できるかと思ったが、そうは甘くはなかったらしい。
日勝は天を仰ぐ。
心山拳の極意は山のごとく動じぬ精神、水の如くたおやかなる心を常とすること。
格闘じゃねえと反発しながらもこの地でも死んだというオディ・オブライトを自らも怒りのままに殺してしまった未熟な精神では、
明鏡止水のその極意にはまだ遠いようだ。
258 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:41:14 ID:TMy4mlu1
「あいつが強かったのは腕っ節だけじゃねえ。ここもさ」
左胸を拳で小突いて心の臓がある位置を示す。
日勝にとっても鍛えたいと思う場所を。
「そりゃさ。俺だって仇が目の前にいるのなら怒りや悲しみをぶつけるさ」
それが間違っているだなんて到底思わない。
正しき怒りを行動に移せるのもまた強さだ。
「けどさ、今はそうじゃねえ。一緒にいんのは仲間なんだからさ。
だったら俺はあいつが、レイが心魂込めて磨いてきた武術がどんなのかを知ってもらうことを選ぶぜ!」
そうだ。怒るのもいい。悲しむのもいい。
だけど、その感情一色で、楽しかった思い出までも悲劇に染めてしまうのは駄目なのだ。
そんなのは死者への侮辱に過ぎない。
ならばどうすればいいのか? そんなこと、答えは決まりきっている。
「好きな奴らのことを話すんだ。笑顔なのは当然だろ?」
――心山拳は未だ絶えず。拳も想いもここにあり
本当にさもあたり前のことのように言ってのける馬鹿にマッシュは苦笑するしかなかった。
そして日勝の言葉が心に響いたのは、隣に立つクロノも同じだった。
「……マッシュ、俺を思いっきり日勝に向けて投げて欲しい」
突拍子もない発言だった。
けれども、手に持ったモップを掲げるクロノの様子に大体を察し、マッシュは大きく頷き抱え上げる。
「大切な誰かのことを知ってって欲しいと思っているのは、あいつだけじゃないって教えてやろう」
「ああ、たっぷり叩き込んでやろうぜ! メテオストライク!」
投げ飛ばしたクロノの後を追って、マッシュも日勝に向かって突撃する。
技という形では、自分にティナのことを伝えることはできない。
それがどうしたっ!
ティナと共に戦い抜いた自分の拳が応えてくれないはずがない。
自信を取り戻した拳が、マッシュには輝いているように見えた。
ちょうどいい。
自分の目に狂いは無かった。
日勝は自分の武闘家としての全てを、ダンカン流格闘術に込められた師と自分の想いを、継ぐに足る男だった。
「教えてやるさ。夢幻闘舞を、俺達の思い出ごとっ!」
時間を置いたことで疲労も少しはマシになり、事前にケアルガも使っておいた甲斐もあって、残像を残しつつマッシュは加速する。
過去を乗り越えたカイエンとは違って何度も振り返ってはしまいそうではあるけれど。
おのれの信ずる道を駆け抜ける位には充分だと確証できる位には、踏み込みは鈍っていなかった。
259 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:42:04 ID:TMy4mlu1
「……ハヤブサ斬り」
その彼の前方、クロノは空を行く。
吹きつける大気の壁との摩擦に肌が僅かに悲鳴を上げる。
その痛みすらも心地いいハヤブサ斬り特有の滞空感。
でも、記憶にあるものとはいくらか違う。
エイラの時はもっと速かった。
エイラの時はもっともっとずさんだった。
もうあの感覚を味わうことは二度とないのだと嫌でも身体で実感してしまった。
これが死別。
これが喪失。
かって自分がみんなに味合わせてしまった埋めがたい悲しみ。
マールが泣いたのも、ルッカが怒ったのも当然だ。
一秒一秒刻むごとに、エイラが居なくなってしまったという事実がのしかかってきて辛い。
この悲しみを乗り越えられたカエルは本当に勇者だと心から思う。
失った姉を取り戻す為に去っていった魔王の孤独が少しだけ身に染みる。
消え逝く未来に帰っていったロボは、何を思い最後を迎えたのだろうか?
そしてエイラは、エイラは……
「身体も心も強かったのは、エイラだって同じだっ!」
そのことをただただ知っていてもらいたかったから。
剣から持ち替えたモップを強く叩きつける。
相当痛いだろうに日勝はむしろ嬉しがって、直後に一人慌てていた。
「へっ、そうだよ、そうこなくっちゃな! 不射の射、試してっうおっ!? 後ろに回りこまれた!? これじゃあ撃てねえ!」
そのまま滑空の速度を殺すことなく日勝の後方やや離れたところに着地する。
ほんの少しだけだけど、鬱々と翳るだけだった気分に日が差した気がした。
思いっきり八つ当たりも込めて殴ったことで鬱憤を晴らせたというよりも、
もういなくなってしまったエイラのことを少しでも他人に知ってもらえたことが、嬉しかったのだろう。
ああ、そうだ。
エイラも感情表現が豊かで、思ったことがすぐに口や顔に出て、一緒にいるだけで自分もわくわくする人だった。
その笑顔を思い浮かべて、クロノは驚く。
思い出しても悲しいだけだと思っていたのに、無論悲しくないわけじゃないけれど、それでもやはり、いつものように自分自身の顔にまで笑みが広がっていたのだ。
「ああ……。こんなことでよかったんだな。誰かの死に沈む心を軽くするのって」
今もただボロボロの心で進み続けているのであろうユーリルを想う。
教会で再会したら、今度は情報交換としてじゃなくて、もっともっと亡くなったクリフトやトルネコ、アリーアについて話を聞こう。
悲しみで足を止めることを厭うなら、楽しいことをいっぱい話し合って先に進もう。
そうしたら、ユーリルの心を少しは救えるだろうから。もっともっと、どこか通じるもののある彼と仲良くなりたいから。
クロノは決心し、大切な過去の思い出と、希望溢れる未来の導を胸に、日勝の方へと振り返る。
「行くぞ、日勝! 次は俺の拳を受けてみろおおおおおおお!」
「おうよっ! アンタの奥義、受けきってみせる!」
まさにいい笑顔をした二人がぶつかり合うところだった。
クロノは目を細める。
汚しちゃ駄目な楽しいことは、思い出だけじゃなくて、今、この時間にもある。
仲間が死んだばかりなのに不謹慎だと言う人もいるかもしれないけれど、エイラならそんなことは言わないだろう。
――今日 クロ 友達 増えた うれしい日。飲め 食え 歌え 踊れ!
うん、そうだ。
二人が気が済むまで闘った後は、三人で鯛焼きを食べることにしよう。
ユーリルにも会って分けてあげたら喜んでくれるに違いない。
それまでに自分ももう一汗かくとしよう。
マッシュから聞いた魔石による魔法習得や、他の連携技のことも念頭に置き、クロノも再度、格闘の輪に身を投じる。
彼の顔からも笑みは消えず、浮かんだままだった。
260 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/28(火) 23:46:25 ID:TMy4mlu1
――数分後、平野に寝そべり、鯛焼きを食べながら談笑する3人の男性の姿があったことは、言うまでもない。
【G-2 平野北東部 一日目 朝】
【クロノ@クロノ・トリガー】
[状態]:心地よい疲労(小) ※ぶつかり合い分はミサワ焼きの回復効果で相殺
[装備]:サンダーブレード@FFY
鯛焼きセット(鯛焼き*1、バナナクレープ×1)@LIVEALIVE、
魔石ギルガメッシュ@ファイナルファンタジーVI
[道具]:モップ@クロノ・トリガー、基本支給品一式×2(名簿確認済み、ランタンのみ一つ) 、トルネコの首輪
[思考]
基本:打倒オディオ
1:ユーリルと合流する為教会へ向かう。その時は楽しい話をしたり、一緒に鯛焼きを食べたい。
2:打倒オディオのため仲間を探す(首輪の件でルッカ、エドガー優先、ロザリーは発見次第保護)。
3:魔王については保留 。
[備考]:
※自分とユーリル、高原、マッシュ、イスラの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期はクリア後。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。その力と世界樹の花を組み合わせての死者蘇生が可能。
以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。
※少なくともマッシュとの連携でハヤブサ斬りが可能になりました。
この話におけるぶつかり合いで日勝、マッシュと他の連携も開拓しているかもしれません。
お任せします。 また、魔石ギルガメッシュによる魔法習得の可能性も?
【高原日勝@LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(中)、背中に裂傷、心地よい疲労(中) ※ぶつかり合い分はど根性焼きで相殺
[装備]:なし
[道具]:死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
2:武術の心得がある者とは戦ってみたい(特にレイ・クウゴ)
3:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※マッシュ、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済。
※ばくれつけん、オーラキャノン、レイの技(旋牙連山拳以外)を習得。
夢幻闘舞をその身に受けましたが、今すぐ使えるかは不明。(お任せ)
【マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(中)、心地よい疲労(中) ※ぶつかり合い分はバナナクレープで相殺
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:ユーリルと合流する為教会へ向かう。
2:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー、ルッカを最優先に仲間を探す。
3:高原に技を習得させる。
4:ケフカを倒す。
[備考]:
※高原、クロノ、イスラ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期はクリア後。
261 :
ボボンガ
◆iDqvc5TpTI
:2009/04/29(水) 00:27:34 ID:7/SRNF1M
投下終了。
262 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 00:58:26 ID:TQbHEAHB
こいつらはw
何という暑苦しい奴らだw
263 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 11:04:09 ID:xqHJNg3f
投下乙!
脳筋どもにクロノが馴染んでるw
暑苦しいが、こうやって仲間の死と向き合うのはなんか新鮮だな。
264 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 17:29:03 ID:rtDNfdeX
投下乙!
どこまでも脳筋w
こいつらの熱気は伊達じゃないなw
しかも鯛焼きセット、意外に大活躍w
265 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 18:01:25 ID:ZKXTrda9
投下乙!!
高原SUGEEEEEEEEE!!!
オーラを使えるようになって心山拳を会得するとは…。
なんかクロノがだんだん萌えキャラに見えてきたんだが…大丈夫かな自分。
誤字などの指摘を
ティナの名字はブランフォードですよ、某AAAヒロインと同じ名字になってます。
それとアリーアでなくアリーナ。
あとは高原の状態表の思考3はいらないかな。
また前の話になりますが「傍らにいぬ君よ」にてマリアベル様の名前がアリアベルになってました。
266 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 19:27:06 ID:2uPukEX4
しかしここんとこうちは地味に調子いいよなw
6X氏とiD氏は相変わらず良作をこつこつ落としてくれるし、最近はRd氏もハイペースだし。
そして新人さんがなにやら長編をと至れり尽くせりだ
267 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:22:47 ID:VgaKogE+
お待たせしてます。
やはり24時付近の投下になりそうです。
もう少しお待ちくださいませ
268 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:49:58 ID:VgaKogE+
長らくお待たせしました。
これよりシュウ、サンダウン、ストレイボウ、カエル、ロザリー、ニノ、マリアベルの投下を開始します。
長丁場になりますがお付き合いくださいませ
269 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 23:50:07 ID:2uPukEX4
270 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 23:51:27 ID:jUDdH9ub
271 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:53:38 ID:VgaKogE+
「――はぁっ! ハッ、ハッ、ハッ…!」
朝露もまだ乾ききらぬ時間帯。
熱の篭った息を吐きながら、一人の男が疾走していた。
額に流れる汗を拭うこともなく、ただただ前を見つめながら走る。
曲がりくねる道を、真っ直ぐにのびた道を、急な斜面を、草原の中を、荒れた大地を。
彼はあらん限りの力をこめて、地を蹴る。
心臓がバクバクと激しく鼓動を打つのは、きっと疲労のせいだけではない。
虫の知らせとでも言えばいいのだろうか。
理屈はよく分からないが、今の彼は何かに突き動かされているかのようだった。
その何かの正体は知りようもない。
だが、この心に確かな何かを感じたからこそ、今の彼はこうして走っている。
当然のことながら、彼は急いでいた。
彼の名はストレイボウ。
かつて、嫉妬に狂い、大罪を犯した咎人。
ある意味、魔王オディオを生み出した元凶だ。
彼がこうして、周囲への注意を怠ってさえ走っているのには訳がある。
(カエル……! お前は今どこで何をしているッ……!)
今でこそストレイボウは一人きりだが、先ほどまで彼には同行者がいた。
カエルのような珍妙な、というよりカエルそのものの格好に騎士の服装をした男。
名は体を現すとはよく言ったもので、名前もカエルそのままだった。
ともすれば魔物の類と勘違いされそうな容姿を持ったカエルだが、意を決して協力を仰ぐと、任せろとばかりに快諾してくれた。
あの時、二人の心はほんの少しだが触れ合ったはず。
ストレイボウは自身が決して綺麗な人間ではないことを打ち明けた。
さすがにオディオその人を、とは言えなかったが、親友を裏切った天罰を受けるべき存在であることを自白したのだ。
それでも、カエルはストレイボウの同行を許可してくれた。
それは、カエルが慈悲深い正義の味方、ということではないだろう。
ストレイボウはあの時、カエルにシンパシーを感じた。
言わば似たもの同士であると、心のどこかで感じてしまった。
きっと自分ほどではないにせよ、彼もまた親友を裏切り、あるいはそれに類する行為を行ってしまったのだろうと。
それがストレイボウの勝手な勘違いではないだろうということも、心のどこかで確信していた。
そう思うと、カエルのことが他人には思えなくなった。
そして、きっとカエル自身もストレイボウに同じような抱いていたのではないか、とも思う。
短時間でカエルという存在が、自分の中でこれほど大きなウェイトを占めることになったのは、そういうことなのだろうとストレイボウ思った。
だからこそ、シュウにカエルの危険性を告げられたとき、あれほどまでにストレイボウは激昂したのだろう。
でも、同時に思う。
カエルの危険性を告げられた時、取るに足らない可能性だと一笑に付すことができなかったのは、きっと自分も心のどこかで、その可能性を否定できなかったからではないかと。
もう一度友を信じることができなければ、今度こそ自分は這い上がれない。
そう思ってはいたものの、いざカエルが何事かを決心して自分の下から去るとき、ストレイボウは何も言えなかった。
行くなと引き止めることも、止めろと諌めることもできなかった。
カエルが何か良くないことをしようとしていたのは分かっていたのに。
彼が破滅への道を歩もうとしているのは分かっていたのに。
彼の背中を追うことができなかった。
彼の背中をただ見つめるしかできず、ストレイボウは脱力して膝をつき、しばし無力感に苛まれる。
結局、またこうなった。
かける言葉が思い当たらないからと、どうすればいいものか分からないまま、ただ時間による解決を待つしかないと思った先がこれだ。
272 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:54:47 ID:VgaKogE+
どこまでいっても、自分は友を裏切ることしかできないのかとしばし放心したまま。
そしてそのまま、もう一人の親友による死者と禁止エリアの発表が始まった。
知己の存在など、元よりいないも同然の身。
ほとんど聞き流していたといってもいい。
禁止エリアだけは入念に支給された地図に書きとめて、『二人の』親友について思いを巡らせていた。
やがて、ストレイボウは立ちあがる。
そう、皮肉にも自分がかつて陥れた『元』親友の声を聞いて、彼は立ちあがったのだ。
(もう二度と、俺は……友を裏切りたくない!)
オディオのような暗い声を発するカエルを見たくない。
カエルも方向性こそ違うものの、オディオのような存在になってしまうのは嫌だった。
魂の牢獄とも言うべき空間に幽閉されてから、ストレイボウはずっと己の罪深さに悔いていた。
自分が如何に矮小な存在であるか、自分の犯したことがどんな事態を招いたかを。
誰もいなくなったルクレチアと、変わり果てたオルステッドの姿を見てようやく気付いてしまった。
ストレイボウはオルステッドのことを信じてなどいなかったし、死んでしまえばいいと常日頃から思っていた。
だが魔王オディオは、いや、勇者オルステッドは自分を信じてくれていたのだ。
それに比べれば、武術大会の決勝で負けて、姫君への求婚をする資格をオルステッドに取られた妬みと、
今回もオルステッドに勝てなかった悔しさで枕を濡らした夜の、なんとちっぽけなことか。
でも、そのことに気づいた時にはもう遅く、永遠にこの苦しみを味わい続けることしかできないと思っていたその矢先のこと。
不意に、贖罪の機会は与えられた。
ひょっとしたら、オディオはこうなることを予測して、どこか自分に似ているカエルをストレイボウのそばに配置したのかもしれない。
それを確かめる方法はないし、ストレイボウの勝手な推測かもしれない。
でも、だからこそ。
この偶然か必然か分からない巡り合わせを信じて、今度は自分が誰かを信じる番なのだろうと思う。
「……見つけた! あそこか――!?」
走り出して数分、あるいは十数分か。
ようやく、ストレイボウは見つけた。
それは会いたいと願っていたカエルと――
「カエルッ!!! シュウッ!!!」
カエルと戦うシュウの姿。
シュウが襲ったのか、はたまたカエルが襲ったのかストレイボウの視点からではもはや分からない。
だが、二人は今しがた戦闘を始めたばかりではないことだけが、ストレイボウの目にも理解できた。
互いの服装にも綻びや破れた部分がいくつもある。
周囲の地形にも戦闘の影響は出ていた。
不自然な形にバッサリと切られた草。
ボコリと穿たれた地面の穴。
自然の影響ではなく、明らかに人為的な原因で倒れたような木。
そして、二人の眼はこれが模擬戦ではないことを示す。
眼光鋭く、射るかのような視線は明らかに敵を見る瞳だ。
事態はストレイボウが想像する限り最悪の方向に動いていた。
273 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 23:55:30 ID:2uPukEX4
274 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:55:35 ID:VgaKogE+
◆ ◆ ◆
カエルとシュウの戦いは思わぬ長期戦の様相を見せ始めていた。
戦いが長引いているのには理由がある。
一つに、お互いが自分の武器に慣れてないことが挙げられる。
シュウの紅蓮も、カエルのバイアネットも、本来得意とする武器ではない。
といっても、その二つのメインウエポンがまったく未知の武器ではないのも確かだ。
紅蓮はシュウの仲間トッシュの武器であるから、身近でその武器の使い方は何度か目の当たりにしている。
その動作を見よう見真似でやっているのだが、やはりシュウは後方で援護、あるいは撹乱を得意としている。
正直、性に合わないというのが、実戦で使ってみて漏れた感想だ。
対して、カエルの持つバイアネットは銃剣型のARM。
剣を得意とするカエルにお似合いの武器なのだが、カエルにはある固定観念が邪魔してこの武器を十分に奮うことはできない。
その固定観念の原因に、ルッカ=アシュティアの存在が挙げられる。
ルッカは銃を装備して戦うことが多く、接近戦はあまり行うことはない。
銃床を使って殴りつけることもあるにはるが、ルッカはその衝撃で銃本体に動作不良が起こることもあるかもしれないと極力控えている。
また、クロノやカエル、ロボといった前衛を務める担当が抜群のチームワークをほこり、そもそもルッカに敵が近付くことが稀なこともあって、カエルにある固定観念が生まれる。
つまり、銃での打撃は極力控えるべきというもの。
カエルはつまり銃剣という武器に対し、以下のような判断を下す。
この銃の先端が剣のような形状になっているのは、威嚇の意味である。
銃を持った敵は接近すれば攻撃手段が失われることに対する保険として、先端が剣の形状をしている。
何らかの不慮の事態で動作不良が起こり弾が撃てなくなった場合、あるいは弾切れとなったときも最低限の戦闘力を確保するため、と。
バイアネットを使って撃てる弾丸が種類、威力ともに申し分もないこともカエルの誤解に拍車をかける。
きっちりと状況と敵の種類に応じて弾丸をセレクトできる汎用性の高さが、この武器の魅力なのだと決めてしまう。
故に、剣の部分を使っての接近戦は極力しない、できない、と。
実のところ、この武器の本来の持ち主アシュレー=ウインチェスターは剣による攻撃をメインに行っており、ちょっとやそっと乱暴に扱ったくらいでは壊れはしないのだ。
尤も、今述べた理由はいずれ大した意味合いは持たなくなる。
シュウはやはり接近戦よりも中距離、遠距離での戦闘を好み、不慣れだが魔法などをつかって迎撃に専念する。
カエルはバイアネットの銃剣が思った以上に頑丈にできていることを知り、積極的に使い、自分の手足としていく。
初めて使う武器への戸惑いは、やがて両者の抜群の戦闘センスを以てハンデをハンデではなくしてしまう。
最善の戦闘方法を、それぞれ独自に見出していったのだ。
そう、言ってしまえば、この一つ目の理由はつい先ほどまで長引いていた理由。
現在進行形で戦いが長引いた二つ目の理由こそが、最も大きな要因を占めている。
275 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 23:56:35 ID:2uPukEX4
276 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:57:07 ID:VgaKogE+
つまり、奥の手の存在と、それを使うことに対する躊躇い。
シュウにはいざとなれば、リニアレールキャノンという奥の手の存在があった。
無骨な外見と、人間が使用するには大きすぎるサイズに見合った威力を、リニアレールキャノンは間違いなく持っている。
用心深いシュウは、以前ストレイボウとカエルに出会ったときに、この武器の存在は隠していた。
切り札はできるだけ見せないようにしていたからだ。
だが、ここでシュウはその武器を使うことに躊躇を覚える。
図らずもその威力を間近で見たことがある存在、マリアベルにこの元艦載式磁力線砲の威力のすごさを教えられてしまったから。
本来の持ち主、ブラッド・エヴァンスでさえも、この兵器を使う対象は大型の怪獣や戦艦のみに限っていたから。
リニアレールキャノンにつけられた、「元艦載式磁力線砲」の肩書は決して名前だけのものではない。
しかし、その大きすぎる威力がネックなのだ。
一回しか使えない連射性能の低さがこの場合は仇となり得るのだ。
テロ組織オデッサが旗艦、ヘイムダル・ガッツォー。
その対地攻撃兵器『アークスマッシャー』を一撃で使用不能に追い込むその威力。
まさに対『人』兵器ではなく、対『艦』兵器の領域に当たる。
もはや、一人の人間に対して撃つものではない。
オーバーキルもいいところだ。
もし実際に撃つことになって、カエルに当たれば、間違いなくその死体すら残さずにこの世から消し去ってしまうであろう。
だからこそ、これを撃つ環境はもっと別のところにある、そう考えてしまう。
残り43人、この中に間違いなく他人と手を取り合うことを否定し、己が欲望のままに進んで殺しをする存在がいる。
強大な力を持ち、一人や二人が組んでも、傷つけることすら叶わぬ存在がいるかもしれない。
そういった強大な存在を撃つために、この武器は温存しておくべきではないか。
あるいは、意趣返しとしてこの武器を支給した魔王オディオに、この武器の威力を身をもって知ってもらうべきではないか。
様々な可能性が浮かび、シュウはこの武器を撃つことに対して踏ん切りがつかない。
何より、時間はまだ始まって6時間程度。
序盤も序盤、まだ魔王に反抗する足掛かりも得ていないのだ。
これからの長丁場を考えると、ここで気前よくこの武器を使うことに対する気おくれが生じる。
カエルを何とかしないと、自分以外の誰かが死ぬかもしれないのに。
まずは目の前を事態を何とかしないといけないのに、その後のことばかり考えてしまう。
277 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/29(水) 23:57:59 ID:2uPukEX4
278 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:58:39 ID:VgaKogE+
それは言わば、心の贅肉。
ある意味、シュウは憶病になっていた。
『大災害』を味わった身からすると、もうこれ以上間違いを犯すことができないと怯えている。
そうだ、シュウやエルクはアークとともに復活した闇黒の支配者を倒すことに成功した。
だが、待っていたのは大勢の民衆の笑顔でも、賛辞の言葉でも、平和な世界でもなかった。
残っていたのは荒れ果てた大地と、人類全体の半数が死亡するという現実だった。
世界は……救われてなどいなかった。
あの時の再来をシュウは恐れる。
何か一つでも間違いがあって、同じような事態を引き起こしてしまわないかと。
ここでリニアレールキャノンを使ってしまって、強力な手札を失うことに対する影響を考えるのが怖い。
世界を襲った『大災害』の経験が、時には感情に走ることもあったシュウという男に慎重な決断を要求する。
だから……シュウは大きく動くことができない。
一方、カエルもまた積極的に踏み込むことができない。
バイアネットを徐々に使いこなし、シュウを打ち取る準備も出来上がったところだが、それができない。
長年戦ってきた戦士としての嗅覚が、これ以上踏み込むことを躊躇う。
シュウには出してないだけでまだ何かがあると、カエルは本能で感じ取る。
その推測は確かで、シュウはリニアレールキャノンという超兵器を持っている。
それを、カエルはシュウの戦い方、表面に現れた動作の機微だけで理解する。
必要以上に踏み込めばその何かでやられると。
シュウの戦闘力は超一流、なればカエルの戦闘力も超一流。
カエルの方も、それを知ってか自分の手の内をわざわざ曝け出しはしない。
バイアネットによる攻撃を中心にし、自身の使える呪文や特技の類は一切見せない。
相手がどんな策、武器を持っているか知ることができれば対抗策や勝利法も見出すこともができるのだ。
この勝負、焦って手の内を見せた方が負ける。
カエルもシュウもそれを理解して、相手を焦らせるような攻撃法に限定する。
中距離、遠距離戦で戦おうとするシュウに応じて、接近戦を挑むのをやめて、あえてバイアネットのみで戦う。
それもブラスターギルティやマルチブラストのような大きく音が鳴るような武器であったり、広範囲に威力が広がる武器でプレッシャーをかける。
追い詰められたシュウが、焦ってその何かを繰り出すように誘いをかけているのだ。
しかし、シュウもその思考を読み取って下手を打つことはしない。
279 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/29(水) 23:59:23 ID:VgaKogE+
それは言わば、高度な精神戦。
カエルもまた自身の体に傷がつくことを恐れる。
これから、まともに眠ることすら許されないような道を選んだのだ。
クロノを含む43人の屍を築く道を選んだ以上、悪手を打つわけにはいかない。
体力もできるだけ消耗させるのはさけたいところだ。
それを考えると、この長い戦いはあまりカエルにとってうれしい展開ではない。
カエルもまたシュウと理由は違うが、長期的な展開を見据えた思考展開をするが故に踏み込めない。
一か八かの賭けをするなどもっての外だった。
だから……カエルは大きく動くことができない。
一流同士の戦いは、二人の慎重さが災いして決着がつくことはない。
「カエルッ!!! シュウッ!!!」
そんな時だった。
カエルにとって、クロノやルッカと並んで聞きたくなかった声が聞こえてきたのは。
◆ ◆ ◆
それからはあっという間だった。
ストレイボウの姿を見つけたカエルは、近くに転がってあったハーレーにバイアネットの銃弾を撃ち込み、完全に爆破。
爆風と爆炎を起こした隙にカエルは逃走。
シュウとストレイボウがカエルから目を離したのはわずかな時間だが、すでにカエルの姿はどこにもなく。
近くに潜伏した可能性も考えて、しばし気配を探っていたが、異常は見当たらず。
ストレイボウは戦闘が終わり、服についた砂や埃を払い落としているシュウに掴みかかり、激しく問いただした。
「何故だ、何故カエルはお前と戦っていたんだ!?」
「俺に聞かれても困る。 だが、カエルの方から襲ってきたのは確かだ」
280 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:00:09 ID:u4ccnG+B
淡々と起こった事実だけをシュウは告げる。
ストレイボウは信じられないとばかりに頭を振った。
「それよりも俺の方が聞きたい。 あの後何があった?」
そう言って、シュウは別れた後のカエルとストレイボウの動向の詳細を訪ねる。
シュウにとって知りたいのは何よりもその点。
同行していたカエルとストレイボウが何故別れていて、その際に何があったのか知れば、カエルの行動への説明も付けられるはずだから。
カエルは突発的な行動をとるような存在でも、気まぐれで動くような生き物でもないのは誰の目にも明らかだ。
事実と過程は必ず線で結ばれる。
カエルがシュウを襲ってきた理由は今までの過程の中に隠されている。
「それは――」
ストレイボウがあの時起こったことをすべて、嘘偽りなく証言する。
そうすると、シュウにもカエルの行動にも納得がいく。
同時に、やはり自分の予感に間違いはなかったと思った。
正直、当たって欲しくなかった予感だが。
“邪悪なる魔王オディオを倒すよりも、俺の全てを守る戦いを優先する!! ”
“俺は、これより外道となろう。
無慈悲に一方的に身勝手に、全てを奪い尽くす悪鬼となろう!
国のためなどと言い訳をせず、俺自身の意志で、仲間すらもこの手にかける魔王となろうッ!”
大きく関係しているのはこの二つの言葉だろう。
しかし、「全てを守る戦いを優先する」という言葉から「これより外道となる」という言葉の移り変わりに関しては、論理が飛躍しすぎている。
それを繋ぐのは魔王オディオによる死者の発表と、オディオが最初に言った、
“どのような薄汚い欲望でもよい。何でも望みを叶えてやる。
自らの欲を満たすのは、勝者に与えられた絶対的な権利なのだからなッ……!”
という言葉が答えを導いてくれる。
つまりカエルは死者の発表で仲間か親友か恋人か、はたまたそれ以外の大切な存在が死んだので、それを生き返らせるつもりなのだ。
カエルの仲間がここにいることは確定しているのだから。
「あいつを……どうするんだ……?」
「殺すしかない……」
ストレイボウの質問に対し、シュウは無慈悲な答えを返す。
カエルとその死んだ何某かの間にどれほどの絆があったかなど、余人には分かりようもないのだ。
昨日今日出会ったばかりの人間にどうこうできる問題ではない。
ならば、他人にしか過ぎないシュウやストレイボウの言葉を聞く可能性などない。
281 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:00:36 ID:2uPukEX4
282 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:00:57 ID:VgaKogE+
シュウにできることは、カエルの決心に敬意を表して、殺すことだけなのだ。
「……駄目だッ! それでは駄目なんだ!」
だが、ストレイボウはそれを否定する。
一目見てストレイボウは分かった。
カエルの眼は、かつてのストレイボウと同じ眼をしていたのだ。
破滅に向かおうとしていることも理解できず、ただただ坂道を転がり落ちるだけの道を選んでいることに、カエルは気づいていない。
その先に待っているのは栄光の日々ではなく、地獄の業火に焼かれる日々。
得るものは何もなく、失い続けるだけ。
そして、一番厄介なことは、本人が終わりに向かおうとしていることに気づいてないということ。
「ではどうする?」
「俺が、俺がとめてみせる……!」
「……」
本気かと言葉に出さずにシュウが聞くと、ストレイボウも力強く頷いて肯定の意を示す。
ストレイボウの決意が固いことを察すると、シュウはストレイボウに背を向けて歩き出した。
つまり好きにしろと、そういう意味を含めて。
どっちみちカエルがどこへ行ったかは分からない以上、ストレイボウの決意も空回りする可能性も高い。
「どこへ行く?」
「仲間を待たせてある」
付いてこいとは言わない。
それはシュウにとって別離の宣言のつもりだった。
それはカエルが再び襲ってきたときは、躊躇せず殺すことへの意思表示。
代わりに、ストレイボウがカエルに会ったときは遠慮なく説得なりなんなりをするがいいというものであった。
だが、ストレイボウは何を思ったのか、シュウの後を付いていくことにした。
「何を……?」
「俺も付いていく。 お前にカエルを殺されてはいけないからな」
「……」
シュウはまた何も言わず、ストレイボウの同行を許し、歩き出す。
今から向かう先で、もう一度カエルとの巡り合わせが起きるとも知らずに。
283 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:01:43 ID:VgaKogE+
◆ ◆ ◆
「わらわは生態系の頂点に立つ伝説のイモータル、ノーブルレッドにして、ファルガイアの支配者よッ!」
「へぇーっ! マリアベルってすごいんだ!」
簡単な朝食をすませた後、マリアベルたちは取り留めもない話に興じていた。
朝食を食べるのにつかったテーブルに、三人とも腰を下ろしたままだ。
食器もそのまま流し場に持っていくこともせずに、椅子から立つことすら惜しむかのように話を弾ませる。
女三人寄ればなんとやら、とはよく言ったもので、話題は本当にくだらないことばかりだった。
例えば、マリアベルが自身が人間ではないことを明かし、ノーブルレッドが如何に素晴らしい種族であるかを懇々と説き、それに対してニノは素直にすごいと喜ぶ。
「じゃあマリアベルって、国とか領地とかを政治で動かしたりするの?」
「いやいや、ノーブルレッドは確かに生態系の頂点に君臨してはおるが、人間のことがよく分かるのはやはり人間よ。
わらわは人間社会に不必要に手は出さぬ。君臨すれども統治せずというやつじゃな」
「……なんか良く分からないけど……とにかくすっごーい!」
マリアベルもそれに気を良くし、さらに語る。
ロザリーはある程度成熟した精神の持ち主のため、マリアベルの言うことは鵜呑みにせず、二人のやり取りを見て笑みを零している。
数百年生きているとマリアベルは言うが、ロザリーの既存の価値観に照らし合わせると、あまり真実味のない話。
どちらかというと、ロザリーはマリアベルの話そのものよりも、二人のやり取りを重視してみていた。
ロザリーの目から見ると、背丈の変わらない二人のやり取りは年の近い姉妹にも見える。
まるで、大げさに誇張した自慢話をする姉に、それにすっかり魅了されている妹のような、そんな関係。
それはもしかして逃避だったのかもしれない。
オディオにより、仲間の死が知らされてしまった悲しみからの逃避。
無理からぬ事情とはいえ、そんな状況で食べる食事がおいしいはずもなく。
パンは焼きたてのはずなのに、何故かカサカサした食感だけがひどく不快で。
カップに注がれた冷たかったはずの水は、室温と同じ水温になり、中途半端に温く感じる。
無言、全くの無言。
284 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:02:33 ID:2uPukEX4
285 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:02:48 ID:VgaKogE+
食べ物を租借する音と、食器のカチャカチャとした音だけが響く。
ネガティブな感情がネガティブな空気を呼び、さらにネガティブな考えに陥る。
そんな状況を憂いたニノが、今までは黙っていたけどこれ以上の沈黙はよくない!と一念発起。
勇気を出してこの状況を打ち破ろうと口を開き、二人を話題に巻き込み、次第に話も盛り上がり今の状況が出来上がっていた。
ロザリーとマリアベルの二人も、何も永遠にこの悲しみの中に沈んでいくつもりはないのだ。
ニノが何故あれほど、健気にも根気強く話を続けるかを察すると、ニノの考えを読み話に付き合っていった形となる。
「ところでニノよ、ずっと気になっておるのじゃが、何故ロザリーはロザリー『さん』でわらわは呼び捨てなのじゃ?」
「え? だって、ロザリーさんはロザリー『さん』って感じだけど……マリアベルはマリアベルって感じだから……かな?」
食卓に残っていたフォークでビシッと、テーブルを挟んで対面に座っていたニノを指差し、マリアベルがニノに聞く
ちなみに、着ぐるみは脱いである。
脱がないとそもそも食事ができないし、日光は苦手なだけで浴びれば死ぬということはない。
聞かれたニノは、自問してみたものの明確な答えは出ず、曖昧な答えを返す。
しかし、マリアベルはそのニノの答えを勝手に推測し、両手を組んでふんぞり返って憤慨し始めた。
「ほほう。あれか? どうせロザリーの方が背が高いからとかそういう理由であろうよ?
そりゃあ、わらわも年上を敬えなどと、器の小さいことは言わぬ。 そういう人間に限って、敬いたくなるような美点がとんと見つからぬからの」
まぁよい。 悠久に近い年月を生きてて、人里に下りることもあるが、子ども扱いされたことも一度や二度ではない」
なんだか長い説教、もしくは愚痴が始まりそうな雰囲気だったが、意外とあっさりとマリアベルは引き下がる。
無垢なニノはともかく、ある程度世慣れしているロザリーは地雷を踏んだかな、と思っていただけに安堵した。
「ノーブルレッドは寛容な種族だからの。 一つや二つの偏見に反応するようなみっともないことはせぬ」
ということらしい。
マリアベルは持っていたフォークを再びテーブルに置いてそう言った。
「リルカにも呼び捨てだったしのう。 あやつは基本的に誰にでも呼び捨てじゃった……が……」
マリアベルの語気が終わりの方で急に尻すぼみになっていく。
今度は正真正銘マリアベルが地雷を踏んでしまったのを、本人が自覚したが故にだ。
その地雷とは、リルカ・エレニアックの名前。
明るい話題を続けるために、三者の内には死者の話は出さないほうがいいと、暗黙の了解がとられていたからだ。
しかし、ここでマリアベルの失言により、予想していたとおりニノとロザリーの顔が曇りを見せる。
また気まずい沈黙が訪れる。
286 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:03:15 ID:0gn4H48y
287 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:03:35 ID:VgaKogE+
(いかぬ。 やってしまったか……。 せっかくいい雰囲気を取り戻したところなのに。
そういえば、ロザリーとニノとこれからの方針も話すのを忘れておったわ……。
やはり、自覚はないが、リルカの死をわらわも引きずっておるということかの……)
らしくないミスをしたとマリアベルは思った。
本来ならば、すぐにでもこれからの行動方針を検討したかったのだ。
だが、ロザリーの泣きはらした顔と、そのロザリーの手を掴んでいるニノの顔を見たら何も言えなくなり、気分転換も兼ねて先に食事を取るかという提案をした。
結局、マリアベル自身もその雰囲気に飲まれてしまい、さっきのような状況になってしまったが。
そんなこんなで今の状況に至るのだが、本来計画していた予定をまったく消化できてないのもどかしい。
さらに、普段なら有り得ない失言が、やはりリルカの死の影響が決して軽くないことをマリアベルは知る。
しかし、今この時においては停滞は何も生み出さない。
強引にでも話題を元に戻して、先に進まねばならないから。
そう思ったマリアベルはそれはともかく、と強めの口調で言おうとしたところ、意外にもロザリーが先んじて沈黙を解いた。
「リルカちゃんって子のこと……詳しく聞かせてもらえますか?」
「それはつまり、リルカの人となりについて、ということか?」
「……はい。 知りたいです。 リルカちゃんがどんな子で、マリアベルさんとどういう関係だったかを」
ロザリーがニノの方へ視線を向ける。
あまり楽しくない話ではないかもしれないが、いいか?と目線だけで聞く。
ニノもすぐにその意味を悟って了解した。
「そうか……おぬし等には言ってなかったかの……」
思えば、リルカの人となりについて語ったとき、隣にいたのはサンダウン・キッドのみだった。
座っている椅子を後ろにズズッっと下げ、嘆息して天井を仰ぎ見る
リルカ・エレニアックについての想い出を甦らせるためだ。
脳裏に浮かぶのは、未熟なひよっ子だが、ARMS隊員の名に恥じぬよう努力し続けるニノと変わらない年頃の女の子の姿と、魔法の発動体兼トレードマークのパラソル。
「未熟なひよっ子じゃった。じゃが、いつも一所懸命で、どんなときも諦めない、強い心の持ち主であった」
288 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:04:20 ID:u4ccnG+B
そこまではサンダウンに言ったことと一字一句違わない。
さらに、マリアベルは続ける。
ロザリーとニノがそれ以上のことを知りたがっていることが分かったから。
「ここにはおらぬが、ARMSにはティムという童の隊員がいての。 世界を救う『柱』などという厄介な存在に選ばれておった。
『柱』というのは言わば世界を救うための生贄よ。 『柱』には何人かの候補者がいての、ティムは悲惨なことに『柱』としての素質に最も恵まれておった。
ん? ああ? 安心せい。 ティムは今も生贄になることなく、元気に暮らしておる。 ファルガイアを襲う脅威もなくなったし、もう『柱』が必要とされることもない」
ロザリーとニノは揃って不可解な顔をする。
確かにティムという少年の境遇は哀れむべきだが、それがリルカとどう繋がるかが分からないからだ。
マリアベルは焦るでない、と前置きして続けた。
「『柱』に選ばれるには素質が必要と言ったじゃろ。 たしかにティムにはその才能と素質があった。
魔導の才能に近いじゃろうな。 『柱』に選ばれただけあって、ティムのミーディアムの威力は子供なのに申し分なかった。
だが―――」
「リルカちゃんにはそれほどの素質はなかった、ということですね」
「……うむ」
ロザリーが答えを予測して言うと、マリアベルは肯定の意を示す。
そう、リルカには魔導の才能がティムほどなかった。
むしろ、落ちこぼれの名を欲しいままにしてすらいたのだ。
「さらに、もう故人と言っても差し支えないが、あやつの姉はエレニアックの魔女っ子と呼ばれた稀代のクレストソーサーじゃった」
稀代の天才と呼ばれた姉と、同じ年頃にして自分よりもはるかに高い才能を持つティム。
リルカ・エレニアックはこんな天才に囲まれながら戦ってきたのだ。
「ティムの術を横で見て何度劣等感に襲われたか分からぬ。
姉ほどの才能がないと分かって、何度自分の才能のなさを自覚させられたかわらわは知らぬ。
でもな、リルカがそれを大した事ないと、笑って飛ばせるほど強くない人間であることだけは知っておる」
話に聞いただけだが、ミレニアムパズルでの作戦失敗の折、それを窺わせる心情を吐露させていたらしい。
でも、リルカは戦った。
ARMSの隊員として、誰もが認めるほどの活躍を成し遂げた。
決して諦めることなく、自分にできることを必死でやってきて、みんなの横で笑顔を振りまいていた。
289 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:04:44 ID:0gn4H48y
290 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:05:06 ID:u4ccnG+B
「『魔神』の能力を内包するアシュレー、スレイハイム解放戦線の『英雄』ブラッド、世界を救う『柱』のティム、
『剣の聖女』の血を継ぐカノン。 『ノーブルレッド』のわらわ。だが、リルカにはそんな肩書きはなにもない。 姉の才能はすごかったが、本人には特別な才能も肩書きもない」
本当は、アシュレーへの仄かな思いがあったからこそ戦えたのかもしれない。
マリアベルの目にもリルカのアシュレーを見る目が、年頃の女のする目だと気づいていたから。
だが、それだけで頑張ることがそもそもすごいのだ。
それだけでテロ組織オデッサや侵食する異世界と戦えることができたのなら、その気持ちは決して偽りのものではない。
思春期にありがちな、恋に恋するような安っぽい感情などではないはずだ。
「故に、わらわはリルカ・エレニアックを尊敬しておる」
これだけのメンバーに囲まれれば、普通の人はついていけなくなる。
自分はとりたてて才能も肩書きもない『普通』の人間だから、などともっともらしい理由をつけて。
でも、リルカはそんなことしなかった。
ARMS戦闘隊員として、最後まで戦った唯一の『普通』の人間、リルカ・エレニアックをマリアベル・アーミティッジは心底尊敬する。
そして、そういった人間が地上からいなくならない限り、マリアベルはこれからも人間の可能性を信じていくことができると誓える。
偉大な先人たち――マリアベルを残して全滅したノーブルレッドが、ファルガイアとそこに住む生き物を守ったのは、決して無駄ではないのだ。
「……」
「……」
ロザリーもニノもすぐに声を発することができなかった。
なんということだろう。
ニノとそう変わらない年頃の子供が、それだけすさまじい人生を過ごしていたのだ。
291 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:05:54 ID:u4ccnG+B
「その子が扱ってたのが……これ……」
ニノがポツリと呟いて、テーブルの上にクレストグラフが乗せられる。
ロザリーもつられるように、自分の持っていたクレストグラフを出す。
リルカがそれを使って戦っていた光景を思い出しつつ、マリアベルは言う。
「うむ。 使う人間がいなくなった以上、お主らにやろう。だが――」
「うん! 絶対大切に使うよ! 大切に使って、あたし、絶対死なないようにするよ!」
マリアベルの期待していた答えをニノが答えてくれる。
「ねぇ、マリアベル。 もし、あたしがリルカと会っていたら、友達になれたかな? ほら、あたしも落ちこぼれだし」
「……なれたであろうな。 お主はどこかリルカに似ておる」
“……そのように思われる……リルカ・エレニアックは幸せ者だ……”
たしかそのようにサンダウン・キッドは言った。
そのとおりだとマリアベルは思う。
会ったこともない人間の死に、これだけ悲しんでくれる人間がいるのだ。
それはきっとニノとロザリーの人の良さだけの問題ではないだろう。
二人はきっとリルカ・エレニアックの人物像に素直に惚れたからこそ、ここまで悲しんでくれるのだろう。
特に、このどこかリルカに似ている少女は、もしも出会うことができたのならば、必ずやよき友となっていただろう。
と、そこまで考えてマリアベルにある考えが閃く。
「のうニノよ?」
「何?」
「リルカの口癖だったんじゃがの、ちょっと言ってみてくれんか?」
「何なに? なんて口癖?」
「『へいき、へっちゃらッ!』というやつじゃ。 こう、いかにも元気よく今のを言ってみてくれんか?」
「うん。 ちょっと待ってて」
そう言うと、ニノは椅子から立ち上がり何回か深呼吸をした後、さらに咳払いをして声の調子を整える。
ロザリーとマリアベルが注視していることが分かると、恥ずかしさから少しばかり顔を赤らめる。
292 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:06:39 ID:0gn4H48y
293 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:06:48 ID:u4ccnG+B
「あ、あんまり見られるとあたしも恥ずかしいよ……」
舞台役者でもないのに、変に注目されるとニノも思ったとおりの声が出せなくなる。
しかし、マリアベルもロザリーも頑張って、とばかりに微笑して注視することをやめない。
もっとも、それはニノを揶揄する笑みではなく素直にニノの声を期待するものであった。
それが分かると、ニノもそれ以上は何も言うことなく、もう一度深呼吸してさっきの言葉を幾分か固さの残る声で言った。
「へ、へいき、へっちゃらッ!」
宿屋の一室にニノの声が木霊し、場の空間を満たす。
マリアベルは目を閉じて今の声を反芻して、在りし日のリルカを思い浮かべる。
声色こそ違うものの、マリアベルの脳裏に描かれたリルカが口癖を言うシーンとピッタリ重なる。
そして、マリアベルは心の中で別れの言葉を告げた。
(リルカよ、リルカ・エレニアックよ。 我が友、我が戦友よ)
そう、リルカの死について悲しむのはこれで終わり。
天国とは、あるいはそれに類するような場所はあるのだろうか?
あるとしたら、リルカはそこで穏やかに暮らしていくことができるだろうか?
そもそも、リルカは天国にいけるのだろうか?
答えは、分からない
死ねば確かめることはできるのだろうが。
(生憎、わらわは悠久の時を生きるノーブルレッド)
マリアベルの寿命はほぼ永遠に近い。
いや、永遠そのものかもしれない。
でも、成長が極端に遅いだけで、ノーブルレッドが完全に不死の存在かは分からない。
ちゃんと、成人した後も年月を重ね、老化もするのだから。
自然死で死んだ例が確認されてないだけで、ノーブルレッドも衰弱して死ぬかもしれない。
ならば、それを確かめるのがノーブルレッド最後の一人であるマリアベルに課せられた使命。
『永遠』を確かめる、それができるまでマリアベルは死なない。
死ぬわけにいかない。
なにより、ファルガイアはノーブルレッドが支配する惑星なのだから。
支配者不在の惑星など、格好がつかないではないか。
294 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:07:50 ID:0gn4H48y
295 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:07:53 ID:u4ccnG+B
(天国とやらで会うことはできん)
だから、マリアベルにできるのはこうやって言葉をささげることだけ。
オディオによる蘇生も望まない。
胸にこみ上げる熱いものを我慢して、向日葵のような笑顔をする少女に別れの言葉を。
(眠れよ、安らかに……な)
涙はいらない。
リルカ・エレニアックは笑顔の似合う少女だった。
だから。
マリアベル・アーミティッジも笑顔でリルカに別れを告げた。
でも、やっぱり友との別れは辛くて。
何年生きてても、誰か身近なものが死ぬと悲しくて。
オディオからその名を聞いたときに十分悲しんだはずなのに。
湿っぽい気分を引きずっても意味がないと思っていたのに。
気がつけば、マリアベルの真紅の瞳には涙が溢れていた。
椅子から立ち上がり、ニノとロザリーに背を向け、頬を伝う熱いものを見せないようにした。
(……そうよ、だから、わらわは今まで親しい者をつくらないようにしておったんじゃッ!)
選ばれし民ノーブルレッドと言えど、精神構造や価値観が人間やエルフとそう変わるものではない。
ノーブルレッドは元来、孤独に生きる種族ではなく、集団で立派な社会を形成していた種族なのだ。
喜怒哀楽の感情だってあるし、この世に一人取り残されたマリアベルに、寂しいという感情が生まれいずるのはある種当然のこと。
悠久の時を生きるマリアベルは今までにも、幾度となく人の生と死を見続け、何度となく別れ観察してきた。
仮に、寂しくて人間の友達を作ってたとしても、ノーブルレッドと人間ではそもそも寿命が違いすぎる。
友となったものは皆、年老いて死んでいくだろう。
同じ背格好の頃に友達になった者が年老いて死んでいっても、マリアベルは未だうら若い少女の姿のまま。
人では、駄目なのだ。
人ではいつまでたってもマリアベルは置いて行かれる側。
死ねないのがいやなのではない。
一人残されることに対する寂しさが怖いのだ。
マリアベルは自身に流れるノーブルレッドの血を誇りに思ってはいるが、時々我が身を呪ったこともある。
何故、わらわだけが一人ぼっちなのじゃ?
何故、父様も母様も他のノーブルレッドも、わらわ一人だけおいて死んでいったのじゃ?と。
一人だけで悠久の時を生きるのなら、いっそ死んだほうがマシだと思ったこともある。
そう、今この時、マリアベルの胸を打つこの感情こそがマリアベルがずっと怖れ、感じたくないと思っていた感情。
初めて経験して以来、もう味わいたくないと思い、ずっと遠ざけていた感情だ。
こんな辛い別れをするくらいなら、友など作りたくなかったのだ。
だから、剣の聖女アナスタシア・ルン・ヴァレリアを最後に、友はもうつくらないと決めた。
296 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:08:56 ID:WNe1S5dt
297 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:09:24 ID:0gn4H48y
298 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:09:55 ID:ZT6p6B9S
299 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:10:36 ID:ZT6p6B9S
300 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:10:59 ID:0gn4H48y
301 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:11:03 ID:TaGCCBHU
302 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:11:32 ID:ZT6p6B9S
303 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:11:42 ID:43IDSFWb
.
304 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:11:45 ID:TaGCCBHU
305 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:11:59 ID:u4ccnG+B
それから幾百年、その誓いを守り続け、友はつくってない。
でも、アシュレーは、ARMSのみんなはマリアベルの力が必要だという。
アシュレーとは遥か彼方の記憶の遺跡で、ともにファルガイアの危機に立ち向かおうと約束した。
いつか別れの日は必ず来る。
その時、自分は泣いているかもしれない。
でも、悲しいけれど、後悔はしないはずだと思っていた。
だから、マリアベルは他のノーブルレッドがそうしたように、人間と力をあわせた。
そして、侵食する異世界、カイバーベルトも倒し、ノーブルレッド一族の悲願であった焔の災厄の討伐も果たした。
残るは荒廃したファルガイアの復興を少しばかり手伝って、マリアベルの役目は終える。
そして、長い年月を経て、ARMSの隊員が年老いて死んでいくのを見届けてから、ひっそりと泣くつもりだった。
そのつもりだったのだ。
後悔などは決してしない。
何故なら、もう会えないことよりも、こうして出会えたことの嬉しさのほうが大きいから。
その先に待っているのがまた、冷たい棺おけの中で一人で暮らす日々だとしてもだ。
なのに……予定が数十年分繰り上がってしまった。
数十年かけて、来るべき時のために用意しようとしていた心の準備が間に合わなかった……。
あまりにも唐突な死に耐えられるほど、マリアベルの心は強靭ではなかった……。
「マリアベルさん……泣いているんですか?」
それを聞いたニノがマリアベルは今泣いているのか確かめるために、マリアベルの正面に回ろうとする。
しかし、ロザリーがニノの手を掴んで無言で首を振った。
マリアベルのために、それはしないであげて、と。
マリアベルの正面に回れば、それを確認するのは容易い。
けれど、それをするのは憚られた。
だから、ロザリーにできるのは泣いているか聞くことだけだった。
それをしないのはロザリーなりに気を遣ったからだ。
ニノとロザリーに背を向けて肩を震わせているのは、きっと泣いている姿を見られたくないから。
ならば、包帯もないのにここが痛いの、と他人の傷口に無闇に触れてはならないことをロザリーは知っているからこそ、ここで聞くだけに留めた。
元気出して、とかいったありきたりな言葉では、決してマリアベルの心を温めることはできないと知っているから。
306 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:12:06 ID:0gn4H48y
307 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:12:43 ID:ZT6p6B9S
308 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:12:46 ID:u4ccnG+B
「……」
ロザリーの声を聞いて、マリアベルは慌てて目元をゴシゴシと拭き始めた。
たぶん、涙を拭っているんだろうなとニノとロザリーは思ったが、口にすることは決してなく。
しばらくして、ようやくロザリーとニノの方を向いたマリアベルはもう泣いてなどいなかった。
マリアベルの紅い瞳は涙で腫らしきったからではなく、ノーブルレッド特有の色素によるもの。
何も知らない人間は今この場に入ってきても、今の今までマリアベルが泣いていたなどと思いもしないだろう。
マリアベルはいつもしているような、ノーブルレッドの誇りに満ちた表情を浮かべている。
「な、何をいっておるッ! この究極の生命体、ノーブルレッドのわらわは多少のことで涙など流したりせんわッ!
ふん、無駄な時間をとったものよ。 はやくシュウとサンダウンと合流して、オディオに支配者による裁きの鉄槌を振り下ろしてらんとな。
……か、勘違いするでないぞッ! ノーブルレッドのわらわが人間と協力するなどと、本来はありえぬのじゃッ!
わらわ一人でもオディオなどどうにでもなるが、どうしてもというからお主らにも手伝わせてやるんだからのッ!」
な、何を笑っておるか二人ともッ! 聞いておるのかッ!?」
泣いているのかという質問から、まさかここまで長い答えを返されるとは二人は思わず。
しかも、後半部分はもう照れ隠しにしか見えない。
何百年生きていようと、精神構造や物事に対する認識はやはり人間もエルフもノーブルレッドもそう変わりはなくて。
マリアベルの言動は外見に非常に似合ったものだ。
後半部分になるともう、ニノはあははと、ロザリーはクスクスと笑っていた。
擬音で現すとムキーッという音になりそうなマリアベルのリアクションを肴にして、しばしニノもロザリーも笑い飛ばしていた。
「えへへっ、頑張ろうねマリアベル!」
「頑張りましょうね」
「こら、勝手に手を握るでないッ!」
ニノがマリアベルの右手を握り、ブンブンと振る。
それを見ていたロザリーもマリアベルの左手を握る。
そこまでくれば、あとはそうするのが自然であるかのように、ロザリーとニノの手も結ばれた。
三人が輪になり、女三人による友情の誓いと、これからの決意表明がなされた。
309 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:13:35 ID:u4ccnG+B
「さっきの言葉、『へいき、へっちゃらッ!』って元気が出る言葉だね。 あたし、これから使っちゃうかも」
「よいよい、好きなだけ使うがよいわ。 わらわが使っておった言葉でもないし、使用に許可が必要でもない」
「その言葉は好きですけど、私が使うとちょっと似合いそうにないですね」
「えーっ!? そんなことないよ、ロザリーさんも似合うよ」
「ロザリーは似合わんじゃろ。 あれはニノとかくらいのちんまい子が言うてこその台詞よ」
「じゃあマリアベルも似合うんじゃない?」
「たわけがッ! この『やんぐ』で『あだると』なうっとりメロメロオーラに満ち溢れたわらわにそんな言葉似合わぬわッ!」
「……ヤングとアダルトって意味が正反対じゃないですか?」
「ふん、これだからわびさびの分からぬ人間は……」
「ロザリーさんはエルフだよ?」
「ふんッ! これだからわびさびのわからぬエルフはッ!」
「言い直したんですか?」
「あははっ」
「………………でも、な……」
「何、マリアベル?」
「何でしょう?」
「ありがとう……な」
そう言って、握『られて』いただけのマリアベルの両手が、ロザリーとニノの手を握『る』。
もう一度、友をつくるのは許されるだろうか?
答えは……分からない。
気づけば、ロザリーとニノも、さらに強く手を握り返した。
強く握れば握るほど、三人の絆は強くなっていくような気がしたから。
でも、ニノとロザリーは「ありがとう」の意味だけは図りかねる。
きっと、マリアベルの言葉の意味を100%理解することは誰にもできないだろう。
マリアベルが言ったありがとうとは、一つのことだけに対して言ったのではないのだから。
こうして、新たな友になれたロザリーとニノへの感謝の言葉とこれからもよろしくという意味と、リルカへの別れの言葉を。
そして、その他のリルカと出会えた運命など、諸々の物事に対して、ありがとうと言ったのだから。
(そういえば……)
ふと、マリアベルは考える。
(『すまない』とはよく言っていたものの、『ありがとう』なんて言葉を最後に使ったのは何時じゃったかな……)
そんなことを考えていたら、ロザリーとニノが笑顔で大きく頷いてくれた。
花のような笑顔と、花も恥らうような笑顔だ。
時に、饒舌な言葉よりも、ただ一つの行動の方が誠意を感じられることがある。
それはニノとロザリーがマリアベルの言ったありがとうの意味を、真摯に受け止めて探ってくれたからこそできる反応だった。
今、この場に、言葉はいらなかった――――――
310 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:13:42 ID:0gn4H48y
311 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:13:55 ID:TaGCCBHU
312 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:14:27 ID:ZT6p6B9S
313 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:14:51 ID:u4ccnG+B
◆ ◆ ◆
その後の会話には、もう硬さもぎこちなさも何もなかった。
食卓に並んでいた食器を片付け、再び席に着く。
クレストソーサレスを切っ掛けとして、マリアベルの各世界に関する魔法や、それに準ずる技法などへの考察と解釈が始まる。
こうしてニノの世界の魔導書やロザリーの世界の媒体を一切必要とせずに、言葉一つで効果を発揮する呪文などの話を聞くと、異なる世界の出身だということが改めて分かる。
『大災害』がどうのこうと、『焔の災厄』がどうのこうのという話をして異世界の住人だと思うよりも、住んでいる世界の特色などを話し合うほうが理解が早い。
エルフやノーブルレッドといったお互いの世界には決していない存在も、外見の違いとして鋭い角が生えてたり、長い舌を持ってたりするわけではない。
故に、お互いし合うために世界を隔てる壁を壊すのに一役買ったのが魔道、呪文、クレストソーサレス。
呼称する名称は違えど、己の精神力、魔力とも言うべきものを消費して発現する数々の奇跡の存在だった。
「雷を起こすのは、勇者様だけに与えられた力ではないのですか?」
例えば、雷を起こす呪文の存在。
雷雲を呼び寄せ、神話にも描かれる裁きのごとき光を落とす魔法。
ロザリーのいる世界では、それは選ばれし勇者のみが扱える呪文とされていた。
しかし、ニノの世界では、雷を起こす魔道は炎を操る魔道に次いで簡単な、理魔法の基礎でしかなかった。
マリアベルの世界でも、電撃を扱うクレストソーサレス、ミーディアム、レッドパワーなどは枚挙に暇がない。
ロザリーは信じられないとばかりに、軽いカルチャーショックに陥った。
「たぶん、遺伝子とかの問題ではなかろうか? ロザリーの世界は電撃を操る呪文を使える遺伝子を持った人間が、極端に少ないのかもしれぬ。
数少ないその遺伝子を持った人間、あるいは家計が勇者と呼ばれたりしてるのだと思うがのう。 マホステとやらも似たような理由かもしれぬ。
神に選ばれたのではなく、遺伝子に選ばれたと考えると、一気に神秘性が失われ陳腐になるものよ。 まぁ話を聞いただけでの推測じゃがな」
本当は、勇者という言葉を発した時のマリアベルの表情が僅かばかりに曇ったが、それに気づいた者はいない。
遺伝子という聞いたことのない言葉の意味を尋ねるのに、二人が気をとられていたからだ。
マリアベルの見せた僅かな違和感に気づくことはなく、会話は進む。
314 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:15:24 ID:0gn4H48y
315 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:15:37 ID:u4ccnG+B
「ああそうか。お主らの世界には、まだ遺伝子の概念が確立しておらぬのかもしれぬな。
説明すると長くなるから、戯言だと流してくれ。 知らぬからといって、不自由が出る知識でもないしの」
まだまだ話マリアベルの話は続く。
長い年月を生き続け、退屈する時間の多いマリアベルにとって、新しい知識と概念は大いに好奇心が刺激させられる。
「それよりも、呪文とやらは相当練りこまれた論理体系よ。
僅か何文字かの言葉に、起動プロセスから威力の設定までほぼすべての手順を行うよう設計されておるからの。
おそらく、途方もない年月を経て確立された、先達の偉業の賜物じゃろう」
「どういうこと、マリアベル?」
「よいかニノよ、我らの世界のクレストソーサレスとお主の世界の理魔法は似たものだというのは分かるな?」
「あっ、分かるよ。 使うのがクレストグラフが魔道書かの違いしかないもん。 ひょっとしたら魔道書よりクレストソーサレスの方が簡単かも?」
そう、媒体に魔力や精神の力を注ぎ込めば、後はクレストグラフや魔道書が勝手に力を発動する。
例えば、フォルブレイズに魔力を注げば業火の理となって顕現し、フリーズのクレストグラフに力を注げば、凍てつく氷が出来上がる。
魔道書にしても、クレストグラフにしても、力を注入するだけで魔法が発動するまでのプロセスをほぼ全てやってくれているのだ。
それに対して、呪文は発動するのに必要なものは魔力と言葉だけ。
1から10まで全て、術師がやらねばならないのだ。
メラを唱えようとすれば、魔法力を練り上げ、それを拳大の大きさの炎に変換して、敵に撃ちだす。
だが一見、非常に手間のかかる手法かと思いきや、そうではない。
呪文は、クレストソーサレスや魔道書のように手順が簡単にされてない分、発動が遅かったりするかといえば、そうではないのだ。
むしろ、詠唱から発動まで、その速度は他のものと比べてもまったく遜色がない。
これについては、ロザリーが実際に覚えている呪文を、マリアベルとニノの目の前で披露したので証明済みだ。
「おそらく研究に研究を重ねられた論理体系なのだろうな。 考えてみれば、魔法の発動までにタイムラグが生じるというのは致命的じゃ。
それが一人しかいない時なら尚更よ。 ミーディアムもガーディアンの力を借りてこそのあの速さじゃし、わらわのレッドパワーは使い方も含めて敵から吸収するものじゃし……」
どこの魔法も一長一短だが、全部が平等ではない。ひょっとしたらクレストソーサレスよりFEの魔導の方が優れているかもしれない。
もちろん各世界の魔法の特色を聞いただけでは優劣などなど分かりはしないし、優劣をつけること自体ナンセンスだとマリアベルは思う
ここにみんなが集まっているのは魔法の優劣をつけるためではなく、みんなが手を取り合って生き延びることだから。
話は続く――。
316 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:16:09 ID:ZT6p6B9S
317 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:16:39 ID:u4ccnG+B
◆ ◆ ◆
と、そんなこんなでマリアベルの講釈は続き、『ちょっとした出来事』を挟んで話すネタもなくなってきたときにニノがそれに気づく。
テーブルの上に乗せられたロザリーの指に嵌められている、どこかで見たことのある指輪。
落ちこぼれの自分には、して決して縁のないものだと思っていたものだ。
「あ、ロザリーさん」
「? どうかしたの、ニノちゃん?
「その指輪、ちょっと見せて欲しいな」
ロザリーは承知して、指に嵌めていた指輪を外し、ニノに差し出した。
ニノはそれを手に取り、指でその形をなぞり、目で注視して確かめる。
そして、自分の考えが間違っていなかったことを確認した。
「やっぱりこれ、導きの指輪だ……」
「そういう名前らしいけど、ニノちゃん知ってるの?」
「うん、魔道士が賢者になるのに必要なものだって」
それからマリアベルとロザリーによる、いくつかの質問が始まる。
賢者になるとはどういうものなのか。
これがないと賢者になる資格がないのか。
賢者になるとどういうことができるようになるのか、など。
説明することに慣れてないニノの、多少要領の悪い答えが返ってくる。
(まぁ、ナイトブレイザーがデメリットなしでオーバーナイトブレイザーになれる道具のようなものか……)
マリアベルはとりあえずそのように結論付けた。
使えば、本人の能力を大幅に高めるところも合ってるし、その認識で問題ない。
質問が終わって、指輪を返そうとするニノに、ロザリーが提案してみた。
318 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:17:12 ID:0gn4H48y
319 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:17:27 ID:u4ccnG+B
「ニノちゃん。 使ってみる気はない?」
「これ……を?」
「そう」
「ダメだよ。 これはロザリーさんの物だし、あたし落ちこぼれだから」
そういって、ニノは拒否する。
落ちこぼれだと言った瞬間、脳裏にはある苦い記憶がフラッシュバックした。
そう、その記憶がある限り、ニノは今もこれからも、自分を落ちこぼれだと思うことしかできない。
この脳裏に刻まれた癒えない傷がある限り、ニノは一生自分を蔑むことしかできない。
しかし、そんな事情を知らないロザリーはもう一度ニノに勧めた。
「これはニノちゃんの世界にある物なんだから、ニノちゃんが使ってみるべきよ」
ロザリーは知らない。
ニノの笑顔の裏に隠された心の傷を。
自分が知らず知らずの内にニノの心を抉っていたことに。
「……じゃ、じゃあ使ってみるからねっ」
そういって、自信無さげに自分の指に嵌めると、瞑想するかのように、ニノは目を閉じた。
思えば、マリアベルもロザリーも、使う資格のあるものが手にしたところで、どういう風に使うのか聞いてなかった。
目を閉じて、集中力を高めているのだろうか?
そんなことを二人が考えている間にも、ニノは目を閉じたままじっとしている。
果たして今の状態は、導きの指輪を使うのに成功しているのかしてないかが分からない。
マリアベルとロザリーは根気よくニノを待ち続けた。
そして、マリアベルとロザリーがジッと待っている間、ニノは賢者になるため精神と魔力を統一していた。
もしも、万が一賢者になれたら、少しはみんなの役に立てるかもしれない。
そう思って、ロザリーの勧めるままに使ってみようと試みたものの――
待っていたのは、辛い過去の想い出だった。
“まったく、どうしてこんな子を私が……”
ずっと、母親だと思っていた悪女の、痛烈な言葉の数々。
“……とことん役に立たない娘だわ”
320 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:17:59 ID:0gn4H48y
321 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:18:00 ID:ZT6p6B9S
322 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:18:34 ID:u4ccnG+B
ニノはまだ13歳。
“お前みたいなクズ、邪魔にしかならなかったわ!”
まだまだ親の愛情に飢えている年齢。
“私がそういうのを嫌いなこと、知ってるわよね?”
なのに、母親に好かれたい一心で必死で努力しても、母親だと思っていた人間からはいつも落ちこぼれ、役立たず呼ばわり。
“ククク……おまえの父親も母親も、おまえによく似て、反吐がでそうなくらいの甘ちゃんだったわ。
行き倒れを装って、家に入り込んだ私が子供を抱きこんだとき、心底驚いた顔をしていた。
クク……見ず知らずの人間を信用するなんて、愚かなこと。 後悔した時にはすでに遅いのにねぇ?”
それどころか、その女は母親どころか、本当の母親を殺した存在だった。
“!! 許さないっ! ぜったい……ぜったいっ許さないっ!!”
明かされた真実を知り、烈火のごとく怒り狂ったももの、勝てるはずもなく。
“許さなければどうしたというの!? お前もあの実の親とブレンダン・リーダスのところへ送ってあげるわ!”
敗北し、親の仇すら討てないわが身の未熟さと、やっぱり自分は落ちこぼれなんだという実感に深く打ちのめされた。
“そう、落ちこぼれ。 お前はクズよ。 役立たずよ”
気がつくと、いつの間にか、ニノの目の前にあの忌まわしき女が立って、自分を罵っていた。
(違うっ、違うっ! あたしは……あたしは落ちこぼれなんかじゃない!)
“あら、そうかしら? だったら何故私に負けたの”
(それは……あたしがまだ弱かったから……)
“『まだ?』 じゃあ今は強いの? 今のお前なら私に勝てるの? そんなことないわよね。 ネルガル様にもあんなに無様に負けたのに”
(あっ……)
323 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:19:00 ID:TaGCCBHU
324 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:19:18 ID:ZT6p6B9S
325 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:19:25 ID:u4ccnG+B
そこから始まる、過去を思い出させる罵倒の嵐。
(あたし、やっぱり……)
ニノはたとえ、目の前に立っているソーニャが幻影と分かっていても、それに耐えることができず――。
(落ちこぼれなんだ……)
反論することもできず、ソーニャから逃げ出すように、目を開けた。
ひょっとして賢者になれるかもと思っていた期待は、残酷な結末が待っていただけだった。
「ッ!? どうしたの、ニノちゃん!? 顔が……」
「ニノ? お主……?」
ロザリーがそういうのも無理はない。
目を開けたニノの顔面は絵に描いたような蒼白さで、生気のない顔をしていたからだ。
唇も紫色に近い色に変色してて、心なしかブルブルと震えているように見える。
他にも、冷や汗と思われる水滴が、ニノの額にいくつか浮かんでいた。
とりたててニノの魔力が上昇した気配もない。
間違いなく、賢者になるのには失敗したとみてもいい。
また、これがもし導きの指輪に認められて賢者になれる代償だとしたら、少し考えなしに勧めてしまったのではないかとロザリーは後悔した
「……うん。 なんでも……ない……よ」
そんなはずない、それがロザリーとマリアベルの共通見解だった。
何でもないはずがない。
ニノが二人を心配させまいとして、気丈に振舞おうとして言った台詞なのは誰の目にも明白。
仮に、本当に何もなかったとして、ともすれば今にも高いところから飛び降り自殺をしそうだ、と傍目から思ってしまうほどの顔になるのは間違いなく心の病か何かだ
「ごめんねロザリーさん、マリアベル。 やっぱりできなかった。
ほら、あたし落ちこぼれだから。 落ちこぼれじゃなかったら、父さんとにいちゃん達の仇もあの時討てただろうし」
それは悲しい響きを持った言葉だった。
落ちこぼれという単語を口にしたとき、そこには諦観の念が込められ、仇も討てただろうという単語を口にしたときは己が身を呪ってさえいるようだった。
その時、ロザリーの頭にある言葉が引っかかる。
父さんとにいちゃん。
それはついさっき、シュウとマリアベルの二人と初めて接触した時にも言っていた。
その一言が発端として、シュウ達とは不必要な闘争もなく和解できたのだ。
「ニノちゃん……ニノちゃんはもうお父さんもお兄さんもいないの?」
326 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:19:40 ID:0gn4H48y
327 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:20:11 ID:u4ccnG+B
――後に、ロザリーは後悔する。
興味本位でニノにそんなことを聞いてしまったことを――
しばし逡巡したものの、ニノは語りだす。
それは、マリアベルの口から語られたリルカの人生に、勝るとも劣らぬほど壮絶なものだった。
まだ物事の認識も満足に出来ない頃に、実の両親と弟を殺され、ニノは利用価値があるかもしれないと一家を惨殺した女を母親として育てられた。
女――ソーニャはブレンダン・リーダスという男と再婚し、ニノは新しい父親とロイド、ライナスという新しい兄ができることになる。
新しい家族はニノにとてもよくしてくれた。
ソーニャには落ちこぼれ呼ばわりする毎日が続いたが、新しい父と兄のおかげで、それなりに充実した人生を送っていたとニノは後に述懐する。
けれど、そんな新しい家族さえ、ソーニャと、その黒幕であるネルガルによって崩壊した。
それどころか、死んだブレンダンやロイド、ライナスをネルガルの意のままに動く人形、『モルフ』として作り直し、ニノやヘクトルと戦わせたのだ。
“父さん……とう……さん……。 あたしが、あたしが……終わらせるから……ごめんね……”
在りし日の姿を思い浮かべて、ニノは父親と戦った。
“ライナスにいちゃん……また……会おうね……。
きっと怒ってるんだろうけど……また仲良く……遊んでね……”
これ以上魂を冒涜されるのに耐えられなくて、口が悪くて乱暴な、けれど内に秘めた優しさが魅力の兄と戦った。
“あ…ロイドにいちゃ……うっ……うっうっ……。
どうして、何度も……こんな……ひどいよ……”
格好よくて、いつも頼りになる兄と戦うときは、ついに耐えられなくなって涙を流した。
328 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:20:33 ID:ZT6p6B9S
329 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:21:05 ID:u4ccnG+B
それだけならまだしも、ブレンダンも、ロイドも、ライナスも、形を真似ただけの偽物かと思いきや、そうではなかった。
武器を持って戦う襲ってくる彼らの姿は、生前と変わりなく見えて。
闇のような黒衣、凍てついた刃……気づいた時には敵は死んでいる……。
芸術の域に達するとまで言われたリーダス一家の武技を、もう一度その眼で拝まされた。
“化け物になっても結構男前だぜ”
そんな誰かの言葉に、少しだけ同意したくなった。
そして、眉一つ動かさずに能面のような表情で戦っていたモルフたちは、とどめを刺された瞬間に――
ニヤリと、口元を吊り上げて笑ったのだ。
モルフは姿形だけでなく、記憶まで再現できるのか知らない。
でも、父や兄の姿をしたモルフは、末期の笑みを見せた。
殺してくれて――助けてくれてありがとう、というような笑みだった。
もし、そこまでネルガルの設計した通りなのだとしたら、ネルガルとは人の感情を逆撫でる方法を極限まで知り尽くした男なのだろう。
モルフは死ぬと、体が崩れ、灰のようになくなっていく。
死体に縋りついて泣くことも許されず、ニノの嘆きは宙に消えていく。
代わりに残ったのは、圧倒的な怒りと憎しみという名の感情の激流。
モルフの一人が持っていた強力な魔道書を勝手に持ち出して、己が心の命ずるままに駆け、ネルガルのいる部屋へと続く扉を誰よりも早く開けた。
そこにいた憎き怨敵ネルガルは、どこの馬の骨ともしれぬ子どもが、とばかりに一顧だにせず言った。
“ん? なんだ、おまえは?”
“許さない! あたしの家族を……みんな奪ったおまえを許さないっ! ネルガルっ!!! みんなの仇はあたしが討つ……!”
“そうか、おまえ、確かソーニャの……”
そして、全てとの別れ――。
「……それで、どうなったのじゃ?」
「死ななかったのが不思議なくらい、コテンパンにやられちゃったよ……」
330 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:21:56 ID:0gn4H48y
331 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:22:15 ID:u4ccnG+B
勝手に持ち出した魔道書は結局使いこなすこともできなかった。
ジャファルやヘクトルたちの加勢がなければ、間違いなく死んでいただろう。
「だから、あたしは落ちこぼれなの……」
最初の家族と、二番目の家族を崩壊させられても仇を討つこともできない。
ソーニャにもネルガルにも手痛い敗北を喫した事実が、ニノに自分は落ちこぼれなんだという認識が植えつけられる。
それがたまらなく悔しく、歯がゆい。
ソーニャは死んだ。
けれど、死んだソーニャが常日頃から言っていた言葉に、ニノ自身が未だに囚われていた。
それはもはやトラウマにまでなるほど根深く、ニノという人間の奥深くに巣食っている。
落ちこぼれだから、いつまで経っても魔法が上達しない。
役立たずだから、みんなの足を引っ張ってばかり。
クズだから両親と兄弟の仇も討てない。
落ちこぼれだから。
役立たずだから。
クズだから。
そのことを思い出してから。
悔しさと、情けなさと悲しさから、ニノは顔をくしゃくしゃにして――泣いた。
◆ ◆ ◆
ロザリーは甘かった。
自分の認識が甘かった証拠を、まざまざと思い知らされた。
始めは、単なる興味本位だった。
ロザリーは、ニノが決して落ちこぼれじゃないことを知っている。
だから、よく落ちこぼれという言葉を口にするのは何故だろうと思っただけ。
確かに、ロザリーのしたことは、ニノが自分を落ちこぼれだと決めつける心的外傷――トラウマの原因も判明させた。
ニノが自分を無能扱いするのは単なる自虐趣味ではなく、暗い過去に根ざしたものだと分かったのだ。
けれど、それは事実のほんの一面に過ぎない。
同時に、ロザリーはニノの心の傷を抉った。
思い出したくもない過去を思いださせ、ついにはニノを泣かせるようなことさえしてしまったのだ。
(ああ、私はなんということをしてしまったのでしょう……)
332 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:22:20 ID:ZT6p6B9S
333 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:22:47 ID:0gn4H48y
334 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:23:11 ID:u4ccnG+B
自分のしでかした罪を自覚する。
それはマリアベルが背を向けて泣いていたときに、ニノに対してしたことだ。
包帯も巻いてやれないのに、他人の傷口に手を触れてはならない、と。
興味本位で始まった質問が、ニノを無自覚に傷つけた。
今、ロザリーはニノのトラウマを刺激――言うなれば、ニノの心の奥深くにある傷を直接手で触って、
ここが痛いの? ねぇ、ここが痛いの?と抉りながら聞くようなことを――したのだ。
時に、自覚のある悪より自覚のない悪の方が厄介なことがある。
無論、今回のことはロザリーが全面的に悪いことではない。
ニノにかける言葉が見当たらずに、ただ沈黙しているマリアベルだとて、ロザリーを責めることはしないだろう。
(私はどうすれば……?)
どういう言葉なら、ニノの悲しみを和らげてあげることができるのか。
どういう方法なら、ニノにごめんなさいという気持ちを伝えることができるのか。
どうすれば、ニノの涙を止めてあげることができるのか。
気がつけば、ロザリーは頭を胸に抱え込むように、ニノを抱きしめていた。
「ごめんなさい、ニノちゃん……」
「ロザリーさんの……せいじゃないよ。 悪いのはあたし……みんな死なせてしまったあたしの責任」
「それは違う! そんなことを言わないで、ニノちゃん!」
色んなことで人は死んでいく。
それはニノの責任ではない。
そもそもの原因はネルガルとソーニャだし、ニノの行動一つに全ての責任が発生することなど、決して有り得ない。
あの時誰かがああしていれば、こうしていれば、些細なことで人は死んでいく。
運命のダイスがもう少しだけ良い目に出れば、こうならないことだってあっただろう。
逆にいえば、少し悪い目が出ると、こういう運命になる。
幾つもに絡まった運命の糸が不幸な巡り合わせを導いただけだ。
ニノも家族に死んでほしくないから、家族の仇を討ちたい一心で行動しただけ。
良かれと思って行動した結果なのだ。
そして、その良かれと思ってした行動も悪い結果に繋がったりはしていない。
ニノに悪い点など、なにもないのだ。
335 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:23:32 ID:ZT6p6B9S
336 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:23:59 ID:u4ccnG+B
「どうしようもないことだってあるのよ」
そう、例えば自分が死んでしまったこと。
トルネコやアリーナ、クリフトが死んでしまった事実が覆らないこと。
「そう、世の中にはどうにもならないことの一つや二つくらいあるんだもんね。
その一つが、あたしの大切なものだった……それだけだよ」
ニノの両頬から伝う新たな涙がロザリーの服を湿らせていく。
カッとロザリーの胸に熱いものがこみ上げ、ニノを抱きしめる腕に一層力をこめる。
温厚なロザリーには珍しく、激情というものが渦巻いていた。
(このような言葉、子供が言うものじゃない……!)
そうだ、ままならないのが世の中だ。
正しいことばかりが認められるとは限らないのが世界だ。
けど、それを知って、認めるようになるのはもっと大人になってからのはずだ。
(誰!? この子にこんなことを言わせたのは誰!?)
そんなものを知るのは、あと何年か経ってからでいいはずだ。
だのに、ニノはまだ13歳にしてそれを知ってしまっている。
しかも、それを当たり前のこととして受け入れているのだ。
(でも、この子にこんなことを言わせたのは、半分私の責任……)
あらためて、ロザリーはニノの生きてきた環境の苛酷さを思い知らされる。
物心ついたときから暗殺者集団『黒い牙』の頭領の娘として育てられ、牙崩壊後は世界の命運を左右する戦いに巻き込まれたのだ。
名も無き市井の人として、平穏な生活を送ったことのないニノに、そういう認識が生まれるのは無理からぬ話でもない。
「この世界は……つらいことばかりね」
好奇心で突付いてみた藪からは蛇どころか、見通せぬ深い闇が広がっていた。
自分は弱いと、ロザリーは思う。
痛みに耐えることのできない、ちっぽけな女だとも。
こんな私が、この子を救うことができるんだろうか?
337 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:24:29 ID:0gn4H48y
338 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:25:12 ID:u4ccnG+B
「この世界は優しく見えるようで、でも、薄皮一枚剥いだだけで、その向こうには醜いものがたくさんあって」
思い出す。
人間に捕らえられて以来、苦痛の絶える日はなく、身も心も疲弊し、ボロボロの状態だった。
痛くて、苦しくて、捕らえていた人間の目当てにしていたルビーの涙を流して許しを請おうとしても、もっと流せと言われる日々。
デスピサロに助けられるまでは、心の休まる日はなかった。
世界は手放しで褒めることができるほど、綺麗ではないことを、ロザリーは身をもって知っている。
「でも、ね……」
少し、続ける言葉に窮する。
少ない語彙から、言葉を慎重に選ぶ。
多感な少女には、ほんの一言が大きな影響を与えることもあるから。
「そんなことを言っちゃダメ。 落ちこぼれだなんて、自分を見限っちゃダメ」
左手で、ニノの髪を撫でる。
右手で、ニノの背中をさする。
この子の苦しみを、少しでも取り除いてあげたいと思っての無意識の行動だ。
「ニノちゃんは落ちこぼれじゃないの。 落ちこぼれなんて言って、自分の限界を決め付けたりしないで。
ニノちゃんはいつも頑張ってる、笑顔の素敵な、かわいい女の子だって知っているから」
「でも、あたしは……」
やはり、少ない言葉ではニノのコンプレックスは解消できない。
でも、ロザリーには他に方法が思いつかない。
ならば、繰り返し繰り返し、同じ言葉を続けて、少しずつ心の闇を払い落としていけばいい。
「ニノちゃん……」
髪を撫でられる感覚と、背中に感じる優しい手、そして嘘偽りのない真心からの言葉。
それら一つ一つがニノの心に沁みこんでいき、洗い流していく。
ニノは確かにロザリーの存在に救われていた。
そして、抱きしめられるこの感触。
それはずっと欲しがっていた母親の温もりにも似ていて。
愛情に飢えていたニノはそれを振りほどくことをせずに、逆に自ら体重を預けていった。
「私は、ニノちゃんが落ちこぼれじゃないって信じ続けます」
ロザリーの言葉が続く。
本当はもうニノは泣いてなかったけど、もう少しだけロザリーの温もりが欲しくて。
もう少しこのままの状態を続けたかった。
そういえば、いつの間にかマリアベルがいない。
席を外したのだろうかとニノは考える。
が、何かあればすぐに分かるだろうと思い、この暖かさに身を委ねよう、そう思っていた。
けれど、悲しみの涙とは別に新しい涙が眼に溢れ出してきた。
本当は、ずっと認められたかったのだ。
屑だ屑だと言われて、自分を落ちこぼれだと言い聞かせてきたニノも、誰かに認められたい気持ちがある。
ロザリーの言葉に、ずっと満たされなかった心の隙間を埋められ、歓喜の涙が溢れた。
「あ、あたしのこと、認めてくれてありが、とう」
「うん、うん」
ニノがまた泣き始めた時は少し驚いたが、それが感謝の涙と知ると、ロザリーも笑顔でニノを抱きしめた。
339 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:26:01 ID:u4ccnG+B
◆ ◆ ◆
後ろ手にドアを閉めて、マリアベルは板張りの床を歩いて行く。
二人はマリアベルが退室するのに気づいたのか気づいてないのか、最後までマリアベルを見ることはしなかった。
持ってきた着ぐるみを通路で再び被って、その表情は読み取れなくなる。
「……正直、あーいうのは苦手じゃ」
あそこにマリアベルも必ずいないといけない理由もない。
ああいう雰囲気が嫌いなのではない。
ニノの境遇は同情できるものだったし、マリアベルも力になってあげたかったのだが。
ロザリーに先を越された以上しょうがない。
マリアベルはあまり他人を励ましたりすることにも慣れてないから、ロザリーの方が適任なのだろう。
しかし何故かこう、入れない空気みたいなものを感じ取ってしまった。
「別にこれからめくるめく官能の世界へ、とかそういうのではないんじゃがのう」
ニノの面倒はロザリーに任せて、マリアベルはもう一度宿屋の見回りをすることにした。
理由は至極簡単だ。
逃走経路の再確認と、敵が侵入してないかなどを確かめるため。
最初にここに来たときは、全員で手分けして人がいないかを確認したため、人によっては行ってない場所もあるのだ。
誰かが侵入してきたのを知らせる仕掛け等は用意していない。
それは逆に、敵側にも確実に誰かいると知らせることになるからだ。
「それにしても、ここは本当に不思議な場所よ」
隣の部屋のドアノブを静かに回し、入室する。
宿屋というのは民家はもちろん、他の店、施設とはまた違った構造をしている。
その性質上、宿屋毎日のように固定客が来ることは少ない。
来るのは旅人や今日は東へ明日は西へと、世界を回って商売をする商人など、基本的に一期一会。
今日来た客が次に来るのは数ヶ月、あるいは一年後かもしれない。
そういった事情もあって、宿屋側とお客側相互に信頼関係が発生することは極めてまれだ。
宿屋側は営業努力を続ければ、その評判を聞きつけた新規客も呼び込めるかもしれない。
だが、客からすれば、一年に数回宿泊するかしないかの施設に、そこまで愛着を持つ者の方が珍しい。
必然、そこには経営する側からすればありがたくない人間も増える。
宿屋代を踏み倒そうとするもの、食べるところと寝るところは好きなだけ楽しんで逃げ出すような輩だ。
この城下町はどちらかというと、政治的機能を重視した造りになっている。
街道は整然と整備されており、迷いやすい構造ではない。
町の外側にグルリと大きな城壁が囲んでいることもない。
逃げられれば、後は追いつくのは難しく、その後の行方も杳として知れないことがほとんどだ。
そういった事情もあって、宿屋側も事前に予防する方法がいくつか生まれる。
例えば、前金制度。
お金はあらかじめもらって、逃げられても被害を最小限に抑える方法。
例えば、客の重要な荷物を宿屋側で預かるやり方。
逃げ出したくても逃げられないようにするのだ。
しかし、中にはロクに荷物持たない身軽な客というのも存在する。
そういった対策として作られたのが、どの部屋にも必ず一つはある窓。
340 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:26:03 ID:0gn4H48y
341 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:26:10 ID:ZT6p6B9S
342 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:26:49 ID:u4ccnG+B
「閉まっておるな……」
窓から逃げられないように、窓は半分も開かない。
あくまで、明り取りとしての機能を重視したのと、窓から逃げ出す輩を防ぐ手立てだ。
マリアベルは二階に存在する合計8つの客室のうち、7個の部屋の窓を同じように確認して回る。
残る一つは、もちろんニノとロザリーがいる部屋。
しかも、そこだけは細工して、窓が全開できるようにしてある。
誰かが襲ってきたときに逃亡しやすいようにだ。
階下して、今度は一階へと移動した。
客の宿泊する部屋はすべて二階に配置してある。
それほど大きくもなく、小さくもないこの宿屋は客の数が連日満室になるほど盛況だったのだろうか。
マリアベルの見た目からは分からない。
けれど、閑古鳥が鳴くほど寂れていた訳でもなさそうだ。
宿屋自体の年齢は年月の積み重ねを感じさせるかなりのものではあるが、各部屋の清掃はしっかりと行き届いている。
部屋の隅に埃が溜まっているとか、クモの巣が張っているとかいうこともない。
ここを一時的な拠点にすることに選んだ理由の一つに、その細やかな清掃の跡が見られたから、というのもある。
「ここにも、かつては人が大勢にぎわっていたのじゃろうな」
一階。
外からは宿屋に入るための、唯一ある正面の宿屋の入り口に入ると、食堂兼酒場の広い空間に出る。
食事はここでとるか個室で取るかの二択であったのだろう。
また、宿屋で宿泊する客以外の人にも対応するため、ちょっとした場末の酒場のようにもなっている。
食事をする人間はいくつか備え付けられたテーブルで食事し、酒を目当ての客はカウンターで呑んでいたのだろう。
そういえば、サンダウンがここを探していたとき、カウンターの奥の棚にある酒瓶が、全て空になっていることに落胆していたことを思いだす。
こんな時に酒か?と聞いたところ――
「無いならないでいいいが……あると少しは助かる……」
とのこと。
ハマキもないし、時々口が寂しくなるようだ。
ノーブルレッドにとって、他人の血液を飲むことは、人間が酒を飲むことと同義。
吸血とは、酒やタバコと同じ嗜好品の位置づけにあたるのだ。
だから、サンダウンが落胆していた気持がわかるかと言えば、実のところそうでもない。
マリアベルはおいそれと人の血を吸ってはならないからだ。
物事にはデメリットがつきもので、例えばタバコを吸うと依存症が発症する。
マリアベルの吸血は、吸われた人間の体の成長速度と寿命が、ノーブルレッドと同じにしてしまう。
人の一生を大きく左右する行為のため、マリアベルは吸血をしたことがない。
寂しさを紛らわすため吸血しようと思ったこともないこともないが、今のところ実行に移したことはない。
そんな理由で吸血された人間がいても、マリアベルと友になるどころか敵視しかねない。
吸血の楽しみを知らない以上、酒を飲めないつらさも分かりようがない。
343 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:27:12 ID:0gn4H48y
344 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:27:36 ID:u4ccnG+B
「そういえば、あの子供はどうしておるかの……?」
カイバーベルトの最終決戦を前に、少年ARMSなる部隊を作っていた少年トニーとした会話のことを思い出す。
あの少年はマリアベルの心の寂しさを見抜き、一緒に生きていこうと言っていた。
そして、そのために吸血してくれ、とも。
「ま、生きて帰ることができれば、あと十年二十年は退屈せんじゃろうな……」
子供であるが故に、気づけることもある。
でも、子供が故に、覚悟もないまま易々と口にしてしまう言葉もある。
少なくとも、少年の吸血してくれという言葉が本気かどうか、これから長い時間をかけて確かめるつもりだ。
マリアベルは食堂兼酒場の奥にある扉をくぐった。
食堂兼酒場のカウンターの奥には、厨房がある。
大人数の食事をできるだけ短時間で用意するのに適したと思われる、大きな加熱調理用のかまどなどが存在する。
が、それとセットであろう、フライパンや鍋などの調理器具は存在しない。
包丁などももっての外だ。
できる限り、物資の調達ができないようにしてあるのだろう。
蛇口をひねると、水道からはなんの問題もなく水が出てきたが、これを飲んだりするのはマリアベルには論外だった。
浄水施設が完備、稼動してあるか分からない水など、飲料や調理に使用するなど絶対にできない。
正直、最初に支給された水ですら飲むことは躊躇われたが、さすがにその水まで飲めないようだと、そもそも殺し合いが成立しない。
そのように考えて、支給された水だけは百歩譲って(マリアベル的には百万歩だが)飲んだ。
その水さえも使い切った時はどうするか、という話になったときはマリアベルは憤慨したといっても過言ではないだろう。
なにせ、マリアベルのレッドパワーを使って、水を出せばいいという話になったのだから。
パケットフォールあたりのレッドパワーで、出力を調整すればできないこともないだろうが、マリアベル本人には面白くない話。
わらわは緊急飲料水調達用マシーンか!?と言いたくなったが、現状それしか方法がないと一億歩譲って許したのだ。
「まったくあやつら……ノーブルレッドをなんだと思っておるのじゃッ!」
思い出しただけで腹が立ってくる。
そのまま少しだけ音を大きめにたてて厨房を後にした。
一階の、玄関から一番奥に位置する唯一、一階に存在する部屋でベッドの備え付けてある部屋を訪れた。
そこは宿屋の主人の寝泊まりする部屋だった。
普通、宿屋の主人は宿屋の建物とは別の建物に寝泊りすることが多い。
例えば、敷地内に宿屋とは別の離れを造って、そこに住んだりすることが多い。
にも関わらず、ここを主人の部屋と判断した理由はその離れがないことと、他の宿泊用の部屋に比べて間取りが広いこと。
そして、地下室への階段が存在してあるからだった。
ここを見つけたのはロザリーのはずだ。
中には、宿泊者の預かっていた荷物を置いていたであろう空白の棚があったらしい。
地下室といえば、いかにも陰気臭かったり薄暗くて湿っぽい印象があるが、そうでもない。
空気が篭もったりしないように、ちゃんと考えて設計してあるのだ、角度とか。
かつては多くの荷物や、一時的には酒や必要な物資を保管していたかもしれない空間は今はその名残を示す棚しかない。
そう思っていたマリアベルの目の前に、ある不思議な光景があった。
『それ』は今まで見たこともなくて、けれどどこかで見たことがあるようで。
ロザリーの報告にはなかったので、おかしいと思い地下室への階段を上っていこうとしたその時、『それ』に異変は起こった。
『それ』は、初めからそのようなものなどなかったかのように、消えている。
狐に化かされたような気分になり、踵を返して今度は階段を下りていくと、再び『それ』が目の前に現れる。
気のせいかと思い、階段を昇ろうとしたら、『それ』はまた消えている。
345 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:28:35 ID:0gn4H48y
346 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:28:40 ID:u4ccnG+B
「おかしいの……」
どうもこれはマリアベルとの距離に応じて、現れたり消えたりするようだ。
マリアベルが地下室から去ろうとすると消え、再び階段を降りると見えるようになる。
何度か繰り返してみて、その推理に間違いがないことを確認する。
しかし、確認したのはそこまでで、マリアベルは『それ』に触れようとはせず、二階へと向かう。
下手に触れて、どんな効果を持つか分からない『それ』が発動すると厄介だからだ。
地下室から階段を昇り、さらに階段を昇って二階へ行って、さらにロザリーとニノのいる部屋に行こうとすると、ロザリーとニノが丁度よく出てきた。
「おおう、ロザリーよ。 丁度よかった。 地下室のあれは――」
「マリアベルさん、誰かが近づいていま――え、地下室ですか!?」
ロザリーの緊急事態を告げる声とマリアベルの声が重なる。
とりあえずマリアベルはロザリーの声を優先させた。
「誰かじゃと……!? ええい、地下室のことは後回しじゃッ、二人とも部屋に戻れ。 そやつがここに来るようならわらわが出迎えるッ!」
「北の方角から来ています。 お気をつけて!」
風雲急を告げる事態に、宿屋内部の空気が慌しくなってくる。
あらかじめ決められていた役割分担に従って、マリアベルが未知の人物との接触および交渉を務め、ロザリーとニノは後方待機。
仲間になるならそれでよしで、戦って強いのなら逃げるか、時間を稼いでシュウとサンダウンの合流を待つ手はずだ。
「はい! ニノちゃん、こっちっ!」
「うん! マリアベル、頑張って!」
ロザリーがニノを出てきた部屋に誘導しなおし、マリアベルはできるだけ音を立てないように階段を降り、玄関に待ち伏せる。
シュウとサンダウンが合流するまでは、誰にも会いたくなったのが三人の本音だ。
しかし、事実はそうはならず、戦力的には少しばかり心もとない状態で誰かに会わなければならない。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
玄関を開け放ち、すでに近くまで来ているというその人物を迎え打つ。
震える鼓動を感じながら開けた扉の先には、異形の姿をした騎士――カエルがいた。
◆ ◆ ◆
347 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:28:44 ID:ZT6p6B9S
348 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:29:28 ID:u4ccnG+B
ストレイボウの姿を認めたとき、気がついたら逃げ出すように走っていた。
ストレイボウにだけは見られたくないと思っていたから。
友を裏切ったというストレイボウ。
弱くて臆病だったばかりに、ガルディア最高の騎士サイラスを結果として死なせてしまった自分に似ている。
サイラスの期待を裏切ってしまったカエルと、醜い嫉妬をかかえ友を裏切ったストレイボウは同じ心の傷を抱えている
カエルは、ストレイボウに見られたとき、イタズラをしていたのを見つけられた気分になり、脱兎のごとく駆け出していた。
今更泥にまみれた姿を見られるのを躊躇うこともないのに。
それからは全速力とも言える速度で走り続け、気がついたら南の方に向かっていたのだ。
疲れはあまりない。
カエルの姿は不自由に見えて時々便利で、特に強力な脚力は色んなところで役に立っている。
天高く飛び上がり、重力を味方につけて勢いよく斬りかかったりもできるし、一足飛びをすれば、人間がどれほど努力してもできないほどの距離を一回のジャンプで飛べる。
それを考えれば、魔王によってカエルへと変化させられたのも存外悪い話ではない。
そして、気がつけば自分が決意と共に後にしたはずの城下町が見えていた。
何も考えずに、このまま一直線に走れば、見えるのは海だろう。
島の端に好んで行きたがる人間はそうそういない。
カエルは進路転換をし、島の中央やその近くの施設に行こうとした矢先に、目の前にある宿屋の扉が開いた。
そう、カエルは宿屋に誰かいるのを見つけたから向かっていたわけでも、城下町で探索をするために向かっていたわけでもない。
宿屋に向かっているとロザリーの目に見えたのは偶然で、実際はやり過ごすことも可能だったのだ。
「マリアベル」
扉から出てきたのは、胡散臭い着ぐるみを着て、尊大な言葉を話す少女……かは怪しい存在だった。
マリアベルが日光を浴びるのを嫌っていたのと、諸々の事情で着ぐるみを最後まで脱ぐことのなかったからだ。
マリアベルもまさかそこにカエルがいるとは思わず、棒立ちしていた。
そのまま数秒間、朝の光が差し込み始めた宿屋前で二人ともどちらから話すこともなく立つ。
カエルはシュウとの一戦のこともあって、まさかもうシュウとの一件が知られてないのかと探りを入れる。
マリアベルは傍らにストレイボウを伴ってないことカエルに、不審さを抱いたから。
そして、カエルには明らかに誰かと一戦を交えてきた痕跡が見られるため。
「どうしたマリアベル、こんなところで?」
「ああ、ちょっとな……」
平静を装ったカエルに対して、マリアベルは言葉を濁す。
シュウとサンダウンを待っているとか、ニノやロザリーが一緒にいるとは言ってはいけないような気がした。
しかし、カエルとて人の気持ちも分からない朴念仁ではない。
マリアベルがあからさまに言葉を濁したことに引っかかりを覚える。
(疑われているか……?)
349 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:30:08 ID:ZT6p6B9S
350 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:30:23 ID:u4ccnG+B
カエルには破れかかったマントや、新たな傷が増えている甲冑など、最後にマリアベルに会った時とは明らかに違う。
それに対して、何かあったのかと聞くのは当然だろう。
しかい、それをしなかった理由は、マリアベルが脳裏で正直に今の状況を話すかを計算していたため、そのことに言及する余裕までなかったことが挙げられる。
マリアベルも嘘があまり得意な方ではないからだ
これを、カエルはシュウと戦ったことを知られたか、あるいは疑われているかだと判断する。
「カエルよ、その傷はどうした……?」
マリアベルのあまりにも遅い疑問。
カエルには、着ぐるみに隠されたマリアベルの表情は読み取れない。
しかし、マリアベルがその質問をするタイミングを間違っていたことを悟ったのだけは見抜く。
「ああ、少し襲われた……」
最小限の情報に留めた回答。
一方、マリアベルもカエルの真意を読み取ろうとするが、中々それができない。
ロザリーとニノがハラハラしながら今の状況を見守っているだろうが、今のマリアベルにそこまで気を揉む余裕もない。
お互いに不審を抱いているが故に、ぎこちない会話がまたいくつか続く。
意味のない会話と、当たり障りのない会話。
11人が死んだとか、そんな当たり前の事柄の確認。
もはやお互いがお互いを疑っている状況は一目瞭然だった。
そして、ついに状況を動かすような、核心をつく言葉が同時に両方から出た。
「ストレイボウはどうしたか聞かないんだな」
「シュウはどうしているか、お主は聞かないのじゃな……」
……………………………………………………長い、沈黙。
カエルはシュウと戦ったために、その質問を出すことを忘れていたから。
マリアベルは当たり障りのない質問をするだけに留め、それ以上踏み込むのを躊躇っていたから。
回答は言葉ではなく行動だった。
カエルはバイアネットをかかげ、一足飛びにマリアベルに斬りかかる。
マリアベルはそれを避け、レッドパワーを繰り出すために精神を集中させた。
「当たり前だ……」
カエルの表情が険しく、目の前の敵を倒すためのものに切り替わる。
そして、マリアベルの精神に激しく揺さぶりをかける。
351 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:30:54 ID:ZT6p6B9S
352 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:30:57 ID:0gn4H48y
353 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:31:12 ID:u4ccnG+B
カエルには破れかかったマントや、新たな傷が増えている甲冑など、最後にマリアベルに会った時とは明らかに違う。
それに対して、何かあったのかと聞くのは当然だろう。
しかい、それをしなかった理由は、マリアベルが脳裏で正直に今の状況を話すかを計算していたため、そのことに言及する余裕までなかったことが挙げられる。
マリアベルも嘘があまり得意な方ではないからだ
これを、カエルはシュウと戦ったことを知られたか、あるいは疑われているかだと判断する。
「カエルよ、その傷はどうした……?」
マリアベルのあまりにも遅い疑問。
カエルには、着ぐるみに隠されたマリアベルの表情は読み取れない。
しかし、マリアベルがその質問をするタイミングを間違っていたことを悟ったのだけは見抜く。
「ああ、少し襲われた……」
最小限の情報に留めた回答。
一方、マリアベルもカエルの真意を読み取ろうとするが、中々それができない。
ロザリーとニノがハラハラしながら今の状況を見守っているだろうが、今のマリアベルにそこまで気を揉む余裕もない。
お互いに不審を抱いているが故に、ぎこちない会話がまたいくつか続く。
意味のない会話と、当たり障りのない会話。
11人が死んだとか、そんな当たり前の事柄の確認。
もはやお互いがお互いを疑っている状況は一目瞭然だった。
そして、ついに状況を動かすような、核心をつく言葉が同時に両方から出た。
「ストレイボウはどうしたか聞かないんだな」
「シュウはどうしているか、お主は聞かないのじゃな……」
……………………………………………………長い、沈黙。
カエルはシュウと戦ったために、その質問を出すことを忘れていたから。
マリアベルは当たり障りのない質問をするだけに留め、それ以上踏み込むのを躊躇っていたから。
回答は言葉ではなく行動だった。
カエルはバイアネットをかかげ、一足飛びにマリアベルに斬りかかる。
マリアベルはそれを避け、レッドパワーを繰り出すために精神を集中させた。
「当たり前だ……」
カエルの表情が険しく、目の前の敵を倒すためのものに切り替わる。
そして、マリアベルの精神に激しく揺さぶりをかける。
354 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:31:57 ID:u4ccnG+B
すいません同じ箇所投下してしまいました。
スルーすてください
355 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:32:45 ID:0gn4H48y
356 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:32:56 ID:u4ccnG+B
「シュウは俺が殺した……」
「何じゃとッ!?」
あと少しでレッドパワーを繰り出すことができたのに、マリアベルはカエルの言葉に心を乱し、集中力を欠く。
気がつけば魔力も霧散しかけていて、ここからの再構成はもはや無理に近い。
その隙を逃すことなく、カエルは強靭な脚の力を活かしてマリアベルの方に飛んでいく。
カエルの言葉はもちろん嘘だ。
シュウは予想外に強敵で、勝負がつくことはなかったが、マリアベルとシュウが別行動をしているのはカエル自身がよく知っている。
だから、シュウは死んだと言って、マリアベルを動揺させる。
言葉だけでは信用しがたくても、カエルの戦闘を経験したと思われる服装の乱れと、覚悟のしるしとして己につけた傷が、カエルの言葉に現実味を持たせる。
そして、シュウがどこにいたかも語ることで、マリアベルにとってシュウの死が確定したものに摩り替わっていく。
「あやつが、死んだじゃとッ!」
動揺でマリアベルの体が思うように動かない。
信じられないという気持ちと、有り得ない気持ちが交錯して、カエルの攻撃を避けきれない。
足を鈍らせていた代償は、マリアベルの右腕を深く貫くバイアネットだった。
カエルは着ぐるみごしに肉の感触を感じ取り、さらなる攻撃を繰り出さんとする。
一方、マリアベルもこのまま死ぬわけにもいかない。
痛みを堪えカエルに背中を見せ、汚く狭い路地裏へと駆けていく。
それはマリアベルがカエルに適わないと見て、逃亡を図ったからではない。
ロザリーとニノをカエルから少しでも引き離すためと、『もう一つ』理由があるからだ。
街灯も当たらない、日光を浴びるほどの時間でもまだない。
薄暗い空間を慌しい足音でかける二人。
着ぐるみを着た、傍から見れば正体不明の存在マリアベルと、騎士服を着たカエルの奇妙な追いかけっこ。
マリアベルは巧妙に逃げ、何度も曲がり角を曲がり、カエルにやすやすと追撃を許すことはない。
バイアネットの特性を知っているがために、多少距離が離れたところで意味などないことも知っているからだ。
(シュウが死んだ……)
地面を駆けずり回りながら、シュウのことを考える。
シュウが今そばにいないこと、ハーレーのいる場所にいたことを当てたカエルの言葉に疑う余地はなくて。
……本当は、シュウの使っていた武器を回収しない理由もない。
そのため、本当に殺したのなら、シュウの使っていた刀や武器を見せろと言われれば、カエルの方が論破されていたのだが。
マリアベルもそこまで考えが回らない。
下手に思索に耽れば、今度は右腕以外の場所を傷つけられるかもしれない。
着ぐるみを着ているため、その傷に直接手を触れることはできないが、動かすことは難しい。
右腕はもう使えないと見ていいだろう。
さらに、出血も早期に止めないと、破傷風や出血多量などの二次的な被害も出る。
何より、マリアベルはまだ二人の命を預かっているのだ。
ここで死ぬわけにはいかない。
(それよりもサンダウンめ、何をしておる……)
357 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:34:07 ID:0gn4H48y
358 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:35:32 ID:0gn4H48y
359 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:37:37 ID:u4ccnG+B
シュウが死んだことにより、サンダウンはシュウを埋葬しているのだろうか。
思ったより帰還が遅い。
まさかカエルに一緒に殺されたかと、考えたところで躓いてゴロゴロと転ぶ。
そこに、追いついたカエルが一気に跳びあがり、天から串刺しにせんとバイアネットをマリアベルの心臓めがけて突き出す。
転がるマリアベルの眼に移ったのは、命絶つ無慈悲な断頭台のような、串刺しの一撃。
間一髪でマリアベルはそれを避け切り、使える左手で体を起こす。
マリアベルのいた空間を食いちぎるかのような一撃が、一瞬の後に過ぎ、路地裏の地面を埋め尽くす石畳の道を破壊する。
(変われば変わるものよな……)
カエルの両生類の双眸を見ながら、マリアベルは思う。
人を殺すことを覚悟した、修羅の瞳だ。
マリアベルが知っていた頃とは何もかも違う。
接近するのを許さないように、マリアベルは風の刃たるレッドパワーを使う。
「エアスラッシュ!」
真一文字に圧縮された風の刃が、カエルの首を一刀両断せんと襲いかかる。
しかし、カエルはそれを避けることもなく迎え討ち、バイアネットで逆に切り裂く。
卓越した剣技でなければできない芸当に、マリアベルはこれならシュウも殺せたやもしれぬ。と唸る。
カエルはマリアベルが距離を離すことを良しとしない。
マリアベルが近接用の武器を持ってないからだ。
一旦離れた距離を詰め、カエルの斬撃がマリアベルに向けて放たれる。
いくつか斬撃をマリアベルはもらうも、牽制に撃ったレッドパワーが功を奏して距離が離れる。
マリアベルが逃走を再び開始し、カエルもそれを追う。
形勢は完全にカエル優位で進んでいる。
追うものと追われる側はどちらが有利かは明白だし、戦闘スタイルの相性もある。
マリアベルはその性質上、近接戦闘は得意ではない。
また、マリアベルがカエルに実力で劣っているわけでもない。
緊急任務遂行部隊ARMSにおいて、前衛はアシュレーやブラッド、カノンを遊撃担当に据えて、ティム、リルカ、マリアベルは後方で援護担当になっている。
アシュレーやブラッドがいない以上、マリアベルはいつもは分担されていた役割を一人でやらねばならないのだ。
接近戦ができるカエルとは相性が悪すぎる。
また、近接用の武器を持たないことも大きな要因の一つ。
懐に入られれば、マリアベルは使える手札が大幅に減るのだ。
マリアベルが路地裏から大通りに出る。
気がつけば、着ぐるみの中は熱気が立ち込めており、それによってさらに疲労は加速する。
大通りでは身を隠す場所に困る。
360 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:38:25 ID:0gn4H48y
361 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:38:25 ID:u4ccnG+B
屋上につながっている階段がある建物を見つけ、マリアベルはそれを昇る。
一瞬遅れてきたカエルがどこにいったと行ったのかと首を振るが、すぐに見つけた。
足を止めて、バイアネットを構えて狙撃しようとしたものの、すでにマリアベルは屋根の上へと登って隣の民家へと渡っている。
ここで逃がしては後々支障が出る。
カエルはこのまま逃がすまいと再び足を動かす。
ここは城下町の大通りで、民家も商店も連なって建っている場所だ。
建物と建物を繋ぐ距離はマリアベルでも易々と渡れるほど近い。
「ふぅ、久しぶりの運動は堪える……。 それよりも、くるかッ!?」
自分の後ろをつけてくると思っていたマリアベルは、後方を確認するが、そこには誰もいない。
高い所に上がったおかげで、上りつつある朝日が目に入るだけ。
しかし、気配は確かにするのだ。
(まさか撒いたか?)
いや、そんなはずはない。
撒けるほど足は速くないし、撒くとロザリーたちの方に行かれる可能性もある。
足を止めて、自分の登ってきた階段を見つめるが、やはり誰も来ない。
思わず足を止めて、カエルの姿を確認するまでそこに留まる。
やな雰囲気だった。
確かにいるはずなのに、いつまで経っても姿が見えない。
ビュウビュウと吹く風に不安を煽られ、焦れて動きたくなる。
しかし、マリアベルはある見落としをしている。
それは、カエルの人間的な言動に騙されていること。
カエルは元は人間だが、やはり今はカエルであり、その脚力を活かして戦うこともできる。
つまり、マリアベルの見落としが何かというと、カエルが階段を使ってくるという思い込み。
カエルの狙いは――
「ッ!?」
「もらった!」
文字通りバネのごとく飛んで、直接屋根に登ってくることだった。
正面からではなく、横からの奇襲。
マリアベルは完全に不意を打たれるが、せめてもの抵抗として、もう一度エアスラッシュを使う。
実体を持たない風の刃と、実体をもったバイアネットが激しくぶつかる!
エアスラッシュの威力は弱く、1秒もしないうちに再び消えてしまうが、マリアベルはまた距離をとって逃走する。
次にわたった屋根は、屋根の中央に大きな十字架がある。
つまり、マリアベルが足をつけている建物の内部は、荘厳な雰囲気に包まれた教会なのだろう。
もっとも、そんなことはマリアベルにとってどうでもいいことで、早く逃走を図ろうとするが、ついにカエルのバイアネットが火を噴く。
選んだ弾は爆発するタイプ。
362 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:39:11 ID:u4ccnG+B
「しまッ!?」
自分の足もとが崩れ、重力のままに瓦礫と一緒に落下するマリアベル。
落ちた先にはちょうど良く毛布や衝撃を和らげる何かなど、あろうはずもなく。
マリアベルは腰を強かに打ってうめき声をあげた。
(うぅ……)
外傷が激しい体が軋んで、悲鳴を上げる。
さすがのマリアベルも、死を覚悟せざるをえない状況だ。
だが、まだ終わりを迎えることはマリアベルのプライドが許さない。
「ここは……」
見渡すと、そこはマリアベルが一時休んでいた宿屋とは違って汚らしい空間だった。
壁から床から埃まみれで、信仰の廃れを感じさせる。
黒ずんだ壁の色が、もうここでは休日等にミサが行われてないことを示す。
参列者用の席は、最後に人が座ってから何年も経っているようだ。
楽廊にあるパイプオルガンはもう何年も調律がほどこされてないように見えて、きっと弾いてみたらひどい音がするのだろう。
その中で、それだけが綺麗に輝いていた。
剣の聖女アナスタシア・ルン・ヴァレリアを象ったステンドグラス。
ガーディアンブレード・アガートラームを抱え、佇むアナスタシア・ルン・ヴァレリア。
剣の大聖堂にあるものと全く同じステンドグラスがそこあった。
朝の光を透過光として教会の中まで照らし、光り輝くステンドグラスは一層美しく見える。
「ああ、そうよな……アナスタシア」
死ぬわけにはいかない。
その思いが強くマリアベルの中を満たす。
アナスタシアはマリアベルやファルガイアの人に、死んで欲しくないからこそ戦った。
生き返って、どこかにいるかもしれないアナスタシア・ルン・ヴァレリアと会うまでは死ねない。
もし、それがマリアベルの知るアナスタシア本人なら、話したいことがたくさんある。
「いい死に場所を選んだな……」
穴のあいた天井ではなく、入口の扉を開けてカエルが入ってくる。
老朽化した扉はギギィと重たい音をあげる。
マリアベルは立ち上がり、ステンドグラスを背にしてカエルと相対した。
「死に場所に教会とはな……」
偶然の巡り合わせにカエルは感慨深く呟く。
お前の死に場所にふさわしいと、そういう含みを持たせた言葉だ。
それを聞いたマリアベルは何を莫迦なことを、とカエルを嘲るように右腕を押さえながら低く笑った。
「お主、何か考え違いでもしておらぬか……?」
一歩、カエルが前に進む。
考え違いなどしていないことを示すためと、マリアベルの殺害を実行に動かすため。
今度はシュウと戦っていた時のように手加減は一切しない。
363 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:39:46 ID:0gn4H48y
364 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:39:58 ID:u4ccnG+B
「わらわは伝説のイモータル、ノーブルレッドが末裔よ」
逆光になってて、カエルからはマリアベルの表情を窺うのは難しい。
代わりに、カエルの目にマリアベルの背後にあるステンドグラスが目に入る。
信仰心がとりたてて厚くないカエルとて、額ずいて拝みたくなるような出来栄えだった。
もちろんそれを実際に実行に移したりはしないが。
「死など、わらわには無縁のもの……」
カエルの足がまた一歩進む。
もうカエルが一瞬で跳びかかれる距離だ。
言いたいことはそれで終わりか?とバイアネットを構えてカエルが聞く。
「故に――」
そこまで言いかけて、マリアベルの言葉が止まる。
何事かとカエルが問いただそうとするものの、すぐに異変に気が付く。
「ああ、やはり来おったか。 考えれば大人しくしている連中ではないしの……」
そう、何者かがここに接近している。
カエルとマリアベルが気配でそれに気が付く。
カエルが背後の入口付近の気配を探るが、そこには誰もいない。
後ろを見せた瞬間、マリアベルはレッドパワーの力を練り上げる。
「話の続きじゃったな。 故に――」
そう、不死のノーブルレッドにとって、教会など意味はない。
(背後じゃない……! となると――)
カエルの脳裏に天井が可能性として浮かぶも、やはりそこからも来る気配はない。
「お主がここを選んだ? とんでもない。 この教会はわらわが――」
用があるとしたら、目の前のような命に限りのある存在だけ。
(だとしたら――)
365 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:40:52 ID:u4ccnG+B
もう一つだけある入口の存在にカエルが気が付く。
そう、来たのだ。
マリアベルが逃がそうとしていた存在が。
止まっていた歯車が動き出すように、沈黙していた空間が大きく動き出す!
「お主のために選んだのじゃッ!!!」
(マリアベルの背後か――!!!)
マリアベルが炎のレッドパワーを繰り出す。
放たれた猛火を避けながら、カエルがマリアベルの背後のステンドグラスに向かってショットウエポンを撃った。
マリアベルの背後、カエルでさえも一瞬見とれたステンドグラスが大きな音を立てて割れる。
教会の内外に降り注ぐ破片とともに、舞い降りてくる存在。
ステンドグラスに描かれた女性が、実体を伴って顕現したように見える。
しかし、そこにいたのは実体化した聖女などではなく――
「マリアベル!」
「マリアベルさん!」
桃色の髪をした美しい女性と緑色の髪をした可愛らしい少女――ロザリーとニノが飛び降りてくる!
◆ ◆ ◆
366 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:41:06 ID:0gn4H48y
367 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:42:43 ID:0gn4H48y
368 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:43:05 ID:WNe1S5dt
369 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:44:01 ID:WNe1S5dt
370 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:46:03 ID:WNe1S5dt
371 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:46:25 ID:u4ccnG+B
したらばにも書き込みましたが、
長すぎるためなかなか支援が追いつかないようで、たびたびさるさんにまきこまれます。
読みながら支援をしている人もいるでしょうから、少しばかり時間をおかせてもらってよろしいでしょうか?
372 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:46:44 ID:WNe1S5dt
373 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:53:36 ID:u4ccnG+B
55分からまた投下させていただきます。
また支援の方、よろしくおねがいします
374 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:55:54 ID:u4ccnG+B
着地したニノとロザリーが、それぞれ持っていたクレストグラフでカエルを攻撃する。
無属性の攻撃魔法ゼーバーによる、攻撃性を持った魔力の塊そのものと、風の属性を持ったヴォルテックによる嵐が襲いかかる。
カエルは一時撤退を選択し、教会の外に出た。
「お主ら……グラスの破片がわらわに当たったらどうするつもりだったのじゃ……?」
「えっ? んーと、マリアベルは着ぐるみ着てるから多少は大丈夫かなって……」
「すみません。 入口から入って魔法を使っても、マリアベルさんに当たると思いましたから」
「ちなみにニノよ、今飛び降りてくるとき見えておったぞ」
「え? 何が?」
「ロザリーは上手く隠しておったが、お主は……」
「ああ、そんなこといいのっ。マリアベルになら見られても」
「わらわにそんな趣味はないわッ!」
「違うよ! 女の子同士だから気にしないって意味だよ!」
「マリアベルさん……私たちが飛び降りてくるときあの方に呪文を使っていたのに、よく見る余裕がありましたね……」
「…………………さぁ行くぞ、皆の者!」
「あっ誤魔化した! ひっどーい!」
幸い、ステンドグラスから距離が離れていたマリアベルに、特に被害はなく。
とんでもない場所から現れたニノとロザリーに、マリアベルも悪態をつくだけにとどめた。
マリアベルも感謝しているからだ。
「それよりもマリアベル、一人で行くなんて酷いよ」
「酷いもなにも、そういう手筈じゃったろうに……」
「ええ、でも私たちも戦います。 マリアベルさんだけ傷ついていい理由はありません」
マリアベルはそれをダメだとは言わない。
否定してもたぶん無駄だと悟っているからだ。
代わりに、付いてこいとばかりに教会の入り口に向かって歩き始めた。
しかし、怪我が災いして足取りは重い。
ロザリーとニノが付いてきたことを確認して、マリアベルはゼーバーと同じ無属性のレッドパワー、メガトンインパクトを使うべく、魔力の構成を始めた。
残った二人は何事かと思うが、それを聞くよりもはやく、放たれたメガトンインパクトが教会の入り口を派手に壊し、大きな穴ができる。
「入口付近で待ち伏せされてる可能性もあるからの」
用心に用心を重ねた上での行動と分かると、ニノもロザリーも感心する。
その行動は結果として無駄だったのだが、それを二人が馬鹿にすることはない。
カエルは三人が大きな穴の開いた教会の入口から出てくるのを、堂々と待っていた。
風が激しく吹き、マント、あるいは外套を羽織っている者はそれにつられて衣服がたなびく。
375 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:56:38 ID:0gn4H48y
376 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:56:57 ID:u4ccnG+B
「カエルよ、聞こうか。 お主はなぜこのようなことを?」
「答える義務も義理も……ない」
一時とはいえ、友誼を結んだマリアベルの質問。
マリアベルの問いを、カエルは無慈悲に斬って捨てた。
一方、マリアベルはシュウが死んだという情報を伝えない。
ロザリーとニノにそれを言えば、先ほどの自分のように動揺するだろうから。
「女三人か……」
カエルは自嘲するように呟く
まるでいたいけな女を襲う夜盗か何かのようだと思った。
しかし、夜盗でもなんでもいい。
ガルディアが復活させることができるのなら、天に唾吐くことさえやるし、大地に拳を突き立てることもするし、流れる川の水にさえ逆らってみせる。
三対一でもカエルは退くことを選択しなかった。
マリアベルが逃げていたのは、おそらくこの二人を引き離すためだと判断したから。
そんな二人にそこまでの戦力はないというのが、カエルの見解だった。
また、ニノとロザリーが、マリアベルと同じ術師タイプの戦闘スタイルだとも見破ったから。
「行くぞ……」
先手必勝。
カエルから三人に向かって飛びこむ。
狙いは手負いのマリアベルだ。
しかし、ニノとロザリーのゼーバーとヴォルテックに阻まれ、マリアベルの手前で足を止められる。
カエルが少し足を止める間に、三人は散開してそれぞれの放つべきクレスト、レッドパワーの準備をする。
ニノ、ロザリー、マリアベル。
この三人を同時に攻撃する手段は限られてくる。
ならば、その少ない手段で攻撃するしかない。
カエルが地を這う衝撃波、ショックスライダーを放つ。
カエルを起点にして、衝撃波が前方に扇状に広がりながら地面を食らいつくし、それぞれ三人に襲いかかる。
「ゼーバー!」
「ヴォルテック!」
二人がそれぞれの手段で衝撃波を相殺する。
残る一人、マリアベルは詠唱が遅れているのか、純粋な回避行動でショックスライダーから逃れた。
しかし、これはカエルの計算通りの行動だ。
カエルの攻撃方法はバイアネットによる剣技と、ARMによる銃弾だけではない。
シュウとの戦いのときでさえ見せることのなかった、カエルの手札が切られる。
377 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:57:43 ID:u4ccnG+B
「ウォータガ!」
それは何もないところから魔力によって水を召喚し、敵を押し流す魔法だ。
カエルのすぐ後ろに、大質量の水が生まれる。
これをマリアベル達にぶつければ、さすがにこの程度の水量で溺れさせることはできないだろうが、すでに魔法を放ったニノとロザリーにこれを防ぐ手段はない。
二人が慌てて呪文の詠唱が始まるが、時すでに遅し。
これでマリアベル以外に手傷を負わせることに成功する。
カエルは召喚した水をそのまま躊躇うことなく放った。
「考えることは一緒よの……」
しかし、そうは問屋が卸さないのがマリアベルだ。
「ニノ、ロザリー! 家の中か高い所かに隠れぃッ!」
ロザリーとニノが指示通りに、それぞれ身を隠す。
もはや眼前まで迫った水、いや、津波は火の魔法でも風の魔法でも防ぐ手段はない。
だが、同属性のレッドパワーなら!
「メイルシュトロームッ!」
マリアベルの背後にも、大質量の水が生まれる。
いや、水量はマリアベルの方が多い。
純粋な術師タイプと、あくまで補助的にしか攻撃呪文を使わない戦闘タイプの魔力の差がここで出る。
その激流で、眼前まで迫った津波を、もう一つの津波が押し返す。
何の変哲もない城下町に、津波が襲いかかるというあり得ない事態が起きた。
街灯を、たまたま近くにあった民家を、水は容赦なく押し流す。
「すごい……」
水が引いたあと、しばらくしてから、離れた民家に隠れていたロザリーが外に出て濡れた地面を踏む。
ロザリーは驚嘆するほかない。
これだけの実力を操るマリアベルなら、ニノとロザリーが足手まといな理由もよく分かる。
カエルのいた場所に目をやるが、そこにカエルはない。
まさかこれで勝利したのか、とマリアベルに聞こうとしたところ、不意にロザリーを照らす日光が遮られた。
雲でも差し込んだのかと思うが、今日は雲ひとつない快晴だったと気づく。
不審に思って空を見上げたロザリーに、同じく民家から出てきたニノが悲鳴に近い声をあげる。
「ロザリーさん! 上っ!」
つまり、その答えは――
「はあああああああっ!」
押し寄せる水から逃れるため、天高く空に飛び上っていたカエルの姿!
カエルはそのままの勢いを保ったまま、ロザリーにバイアネットを以て降りかかる。
378 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:58:26 ID:0gn4H48y
379 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 00:58:37 ID:WNe1S5dt
380 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 00:59:01 ID:u4ccnG+B
「ッ!? あうっ!」
ロザリーの回避が間に合わない。
大腿部を切り裂かれ、出血が激しく出るロザリー。
大腿部の傷は致命傷に繋がる。
そのままロザリーを殺さんとカエルは飛びかかるが、ロザリーに当てることさえ厭わない覚悟で撃ったニノのゼーバーで離れる。
このままでも、ロザリーの戦闘力は奪われたも同然。
そう思ったカエルはロザリーから離れ、今度はマリアベルに襲いかかる。
マリアベルのは着ぐるみごと壁にもたれかかれ、グッタリとしている。
ひょっとして水に押し流されて、気絶でもしたのかもしれない。
そう思って、カエルはそのまま心臓めがけてバイアネットを突き刺す。
マリアベルの心臓にあたる位置を、カエルは狙い過たず刺すことに成功した。
だが、聞こえてきたのは断末魔の叫びではなく――
「正気かッ!?」
氷のレッドパワーを展開し、隠れていたマリアベルの声ッ!
今度はカエルが奇襲を受けた形となり、左肩の部分が急速に凍りつき、凍傷になる。
「どこの世界に、ボーッとしたまま敵の攻撃を受ける奴がいると思うかッ!」
そう、カエルが大質量の水同士による激突で、人の目から隠れるように天高く飛んだのと同様に、
マリアベルもまた着ぐるみを脱いで身軽になって、ついでに囮にも使用したのだ。
カエルはこれで初めてマリアベルの姿を拝むことになる。
痛む肩を押さえ、カエルは少し距離をとる。
「それがお前の姿か……」
薄白い肌と、真紅の瞳。
自分とはまた違うが、彼女もまた彼女の言葉通り、人とは違う種族なのだろうとカエルは考える。
「日光は美容の敵なだけで、別段浴びても死ぬことはない……それにしても着ぐるみを着ての運動は疲れるものよ……」
熱の高まったマリアベルの体温を、朝の少し寒気の残る風が気持ちよく冷やしていく。
少しばかり身軽になったマリアベルが、今度は積極的に攻勢を仕掛けていく。
火、水、氷、風、無属性、マリアベルがこれまでにカエルとの戦いで見せた、レッドパワーの属性はこれで五つ。
元来、一つの属性の魔法しか使えないというのが常識だったカエルにとって、間違いなく脅威だった。
ここまで多種多様な魔法を扱える存在と言えば、圧倒的な魔力を持つ魔王くらいしか思いつかない。
しかし、相手を脅威に感じているのは何もカエルだけではない。
381 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:00:10 ID:u4ccnG+B
「どこの世界に、ボーッとしたまま敵の攻撃を受ける奴がいると思うかッ!」
そう、カエルが大質量の水同士による激突で、人の目から隠れるように天高く飛んだのと同様に、
マリアベルもまた着ぐるみを脱いで身軽になって、ついでに囮にも使用したのだ。
カエルはこれで初めてマリアベルの姿を拝むことになる。
痛む肩を押さえ、カエルは少し距離をとる。
「それがお前の姿か……」
薄白い肌と、真紅の瞳。
自分とはまた違うが、彼女もまた彼女の言葉通り、人とは違う種族なのだろうとカエルは考える。
「日光は美容の敵なだけで、別段浴びても死ぬことはない……それにしても着ぐるみを着ての運動は疲れるものよ……」
熱の高まったマリアベルの体温を、朝の少し寒気の残る風が気持ちよく冷やしていく。
少しばかり身軽になったマリアベルが、今度は積極的に攻勢を仕掛けていく。
火、水、氷、風、無属性、マリアベルがこれまでにカエルとの戦いで見せた、レッドパワーの属性はこれで五つ。
元来、一つの属性の魔法しか使えないというのが常識だったカエルにとって、間違いなく脅威だった。
ここまで多種多様な魔法を扱える存在と言えば、圧倒的な魔力を持つ魔王くらいしか思いつかない。
しかし、相手を脅威に感じているのは何もカエルだけではない。
「ケアルガ!」
カエルの左肩の凍傷が跡形もなく癒えていく。
マリアベルも、攻め、守り、癒しを効率よく使う、ここまで戦闘力のバランスがいい存在は初めて見る。
「回復まで使えるか……」
剣技は一流。
状況に応じて、効果的な戦闘方法を選ぶセンス。
回復、攻撃両方の魔法をつかいこなす魔力。
明らかにマリアベルたちとは相性が悪い。
マリアベルもロザリーもニノも回復魔法は持ってないし、唯一の回復手段のエリクサーはサンダウンとシュウに持たせてある。
多少の怪我は回復できるカエルと違って、一瞬の判断の遅れが致命的な事態を招きかねないのだ。
それに、マリアベルの魔力とて無限に使えるわけではない。
今のマリアベル達に足りないのは前衛を務める人物。
シュウは見た目通り忍者だ。
忍ぶ者という名の通り、直接の戦闘はあまり好まない。
サンダウンも銃――マリアベルの知識に合わせればARM――を使った戦闘が得意だ。
後衛タイプばかりが偏ってて、今のパーティバランスは非常に悪い。
マリアベルは、早いところアシュレーやブラッドのような人間に会わんといかんな、と思った。
382 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:00:15 ID:0gn4H48y
383 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:01:21 ID:u4ccnG+B
ふと、マリアベルはロザリーの身を案じる。
まだ多少は動けるようで、遠目にも立ちあがろうとしているのが見える。
しばらくはそれで我慢してもらうしかない。
ロザリーに向かわないように、マリアベルはカエルの注意をひきつけるために話をする。
「思えば、お主も愚かなことをしたものよッ!」
「ああ、愚かだと思う」
カエルも運よく話に付き合ってくれた。
マリアベルは攻撃をしながら、あるいは攻撃されながら、時々ニノの援護も混じりながら話を続ける。
「お主、自分が恥ずかしくないのか? あの魔王の言いなりになっておる自分を見てどう思う?」
「道化だとでも?」
マリアベルのレッドパワーをかわし、カエルがその隙をつこうとするが、ニノの援護がまた入る。
カエルは攻めあぐねていた。
ニノの持っていたクレストグラフの一つ、クイックがマリアベルの反射神経を高めていたから。
先ほどのように、思ったより攻撃が当たらない。
「分かり合えないというのは悲しいことだな……」
「知ったような口を……ッ」
すでに事態は最悪の方向へと向かってる。
時の引き金の名を冠する卵はもうない。
もう少しカエルが動くのが早ければ、運命は変わったかもしれない。
未来という名の幾筋にも分かれた道の中に、エイラが生きる道はあったかもしれない。
しかし、体が一つしかない以上、選べる道が一つしかない以上それは仮定「if」でしかありえない。
今カエルにとって大切なことは、あの時ああすればよかったかもしれないと後悔することより、起こってしまった物事に対する被害を防ぐ最短の道を走り抜けることだ
「マリアベル、お前が悪い訳ではない。 他の誰かが悪い訳ではない。 これは、こうなることを防げなかった俺の罪だ」
カエルがどんなに身を粉にして説明を重ねたところで、マリアベルの協力は得られないだろうし、
協力があったとしても、エイラを生き返らせることはできないだろう。
だから、カエルは戦う。
理不尽なことだとも思う。
6500万年もの昔から今現在まで、世界とやらは確かに繋がっているのだ。
だが、それを説明されたところで納得できる人間などそうはいない。
カエル自身も6500万年もの昔の人間が死んだことで、そのツケを払わされることになるなど思いもしなかった。
だが、ここで祖国がただ徒に消えるに任せるのは、あまりにも忍びない。
384 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:01:37 ID:0gn4H48y
385 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:02:07 ID:u4ccnG+B
ガルディアの建国から600年。
繁栄を極める祖国はこれからも滅ぶことなく発展し続け、ついにはクロノたちの生まれる年代で、建国1000年を祝った祭りまで起きているのだ。
カエルにはこれからの400年の発展の歴史を、これまでの600年の歴史をなかったことにするなどできない。
サイラスが命をかけて守ろうとしたものを、失いたくなどない。
「お主、プライドはないのか……ッ!?」
「プライド……だと……?」
プライド、それは騎士にとっての矜持であると同時に、今のカエルにとって一番必要のないもの。
騎士であることを捨て、ただのグレンであるカエルにはもう縁がないものだ。
だから、カエルは言ってやった。
「プライドで空腹が満たされることはない!」
そして、駆ける。
マリアベルではなく、ニノを襲うために。
そう、今のカエルに必要なのはプライドではない。
「それと、同じことだ!」
プライドがなければ、小さな子供だって蟻のように殺すこともできる。
そう言わんばかりに、ニノに襲いかかる。
ニノがゼーバーを使って迎撃しようとするが、カエルはそれをヒラリとかわす。
そして、カエルはニノの手にあるクレストグラフを、口を開けてカエル特有の長い舌で弾き飛ばす。
これもカエルが初めてみせる芸当。
マリアベルがカエルの人間的な言動に囚われて奇襲を受けたのと同様に、ニノもまさか本当にカエルのような長い舌が伸びるとは思わず。
生理的な嫌悪感もあって、ニノは尻餅をついて後ろに倒れる。
カエルの見たところ、ニノとロザリーはこのクレストグラフを使って魔法を使っている。
だから、それを弾き飛ばせば、ニノは必然的に無力化される。
それは正解だ。
ニノの手にはクレストグラフがもうなく、このままカエルの攻撃を甘んじて受け入れるしかないはずだった。
しかし、ニノはここで自身に秘められた才能の一端を垣間見せる。
ニノは尻餅をついたままの姿勢で、右手を開いてカエルに突き出し、呪文の詠唱を始めたのだ。
そして、放たれる拳大の火球。
それはロザリーの世界にある、初歩中の初歩の呪文でもあった。
「メラ!」
「なにっ!?」
カエルは完全に不意をつかれた。
◆ ◆ ◆
386 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:03:05 ID:u4ccnG+B
話は少しさかのぼる。
マリアベルの各世界の魔法の講釈、そしてニノが導きの指輪を使ってみようとした間に起きた『ちょっとした出来事』を今ここに記そう。
「ねぇロザリーさん、あたしに呪文っていうのを教えてっ!」
「おいニノ、わらわの話を聞いておったか? クレストソーサレスと違って呪文の習得は一朝一夕ではできん。
媒介がないから、全ての手順を自分でやらねばならんのじゃ。
それはマリアベルが得意げになって、魔道に関する知識を語ったり、自らの操るレッドパワーの素晴らしさについて語っている時であった。
神妙な表情になって、教師の教えを忠実に聞くような生徒のごとき態度だったロザリーが、急に話を振られてキョトンとした顔に変わる。
「どうしたのニノちゃん?」
「あのね、あたしクレストグラフがないとただの足手まといになるから、呪文とか覚えられるなら覚えたいの」
ロザリーにもマリアベルにも分からない話でもない。
何らかの事情でクレストグラフが無くなった時、ロザリーとマリアベルにはまだそれぞれ身を守る術があるが、ニノにはないからだ。
もっとも、無理だとは思っていたロザリーも性格上、ハッキリとは言いにくく。
ここは、ニノのみんなの役に立ちたい、という心意気を買って教えることにした。
当然習得は無理だろうが、その後でロザリーが少し慰めてあげればいいこと。
そう思っていた。
しかし、ロザリーとマリアベルの予想を裏切り、ニノは幾度かの失敗を経て一番初歩の呪文を成功させた。
「で、できたっ……!」
かざした掌に浮かぶ拳大の火球を見て、ニノが大いに喜ぶ。
ロザリーとマリアベルは開いた口がふさがらない。
落ちこぼれの言葉を鵜呑みにしていた訳ではないが、ニノの卓越した魔道のセンスに驚かされる。
それは、ニノに眠っていた本来の才能と、母親に愛されたい一心で得た技術によるだった。
ソーニャはニノを才能のない子供だと早々に見限り、正規の魔道の教育をニノにしていなかった。
しかし、ニノは母親になんとかして認められようと、ソーニャの隣でソーニャの唱える魔道を見て必死に学習していた。
門前の小僧、習わぬ経を読むという言葉がある。
ニノは必死にソーニャの口を読み、正確な詠唱が聞き取れる技術を身につけた。
魔法の詠唱を正確に聞き取れる技術を持った人間など、何年修行してもできる人間はそうそういない。
エレブ大陸にも、それができるのは数えるほどしかないほどだ。
そして、ニノの出自もその才能の裏付けをしている。
ニノはリキアに存在する名門の魔道一家の子供なのだ。
まさに魔道の申し子。
ソーニャはニノを役立たずだと思っていたが、とんでもない。
ニノは大成すれば、ソーニャなど比べ物にならない才能を秘めているのだ。
その才能の一端が、今ここで花開き始めている。
そしてこれこそ、ロザリーとマリアベルがニノを落ちこぼれだと思わなくなった理由。
さすがに、ホイミなどの回復呪文の習得はできなかったが。
ニノはまだ才能があるとはいえ、一介の魔道士。
賢者でもない限り、ホイミは使えないだろう。
レッドパワーも根本的な種族の違い故か、一度も使うことはできなかった。
マリアベルが、レッドパワーまでそう易々使いこなされてたまるか、と少しだけ安堵し、
また、やはりレッドパワーはノーブルレッドのみが使える選ばれし技よな、と息巻いていたのをここに付け加えておく。
◆ ◆ ◆
387 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:03:49 ID:0gn4H48y
388 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:03:53 ID:u4ccnG+B
カエルが驚愕して、今の状況になるまで時間は数秒もかからなかった。
ニノの思わぬ反撃に足を止め、マリアベルの追撃が加わった時に勝負は決した。
ニノが拾いなおしたゼーバーのクレストグラフに魔力を十分に充填して、カエルの目の前に立っている。
バイアネットはいまだこの手に残っているが、それを何かしようという間にカエルはゼーバーによって重傷を負うか、さもなくば死ぬだろう。
終始優勢で進めていたカエルの意外な敗北。
ちょっとした油断で勝負は決まった。
カエルはよく戦った方だと言える。
シュウとの戦いを経て、大したインターバルも挟まずに、三対一でロザリーもニノもここまで傷つけたのだから。
しかし、相性のよさがあってもそこまでが限界だった。
「よくやったニノよ。 あとはわらわが……」
殺すにせよなんにせよ、さすがに、子供にこれから先のことを任せるのはつらい。
マリアベルが近寄って、カエルの武装を解除しようとする。
しかし、ニノは何を思ったのかカエルに話しかけていた。
「これで、考え直してくれるかな……?」
「何を……? ニノ、やめぃッ!」
マリアベルがニノを戒めようとする。
カエルは微動だにせずに、強い決意を以てニノに答えた。
「俺は……この傷に誓った。 必ず、ガルディアを取り戻してみせると……!」
「その傷、自分でつけたの?」
「……ああ」
「ニノ!」
「マリアベル、静かにしてて! あたしに任せてほしいの……」
ニノの強い口調にマリアベルも止まらざるを得ない。
正気か?というのがマリアベルの本音だ。
ロザリーもマリアベル自身も深く傷つけた相手であるし、また、これはマリアベルの誤解に過ぎないが、シュウも殺した人間なのだ。
心情的に、マリアベルがもうカエルを仲間と思う理由もない。
「だったら、まだ戻れるよ」
「何……」
「だって、傷をつけてるってことは迷ってるってことだよね?」
ニノはこう思っていた。
自傷行為を行ったのは自分の決意がまだそこまで盤石ではないため。
何故なら、それは非効率的な行為だからだ。
本当に決意したのなら、自身にとって不利になるような行為はしないはず。
決心が鈍る度に傷を見て自分を戒めないと、そういうことができないと判断したから。
389 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:04:39 ID:u4ccnG+B
「……だが、俺は……」
「誰かの手を掴むことは、弱さなんかじゃないよ!」
カエルの心に迷いが生じる。
そうなのだろうか?
自分一人で背負い込まず、誰かの手を借りてもいいのだろうか?
この手を血で汚さずに、もう一度クロノたちと力を合わせるべきなのだろうか?
迷いを見せ始めたカエルに、自分の腕の傷が目に入る。
それで、カエルの心は決まった。
「……けるな」
「え?」
そう、耳を貸すのは他人の御託ではなく自分の声なのだ。
この先、誰の言葉にも耳を貸さぬよう、カエルは左腕の戒めの傷をつけたのだ。
「ふざ、けるな……」
カエルの目に再び火が灯る。
子供の声に惑わされるような安い決意でもない。
大喝するようなカエルの声が響く。
「俺は、ガルディアを取り戻さなくては『いけない』んだ!」
“英雄に『ならなくては』、ファルガイアを守ることができないのだッ!」”
その声を聞いたとき、マリアベルの脳裏にアーヴィング・フォルド・ヴァレリアの言葉が甦る。
そして、カエルの言葉とピッタリ重なった。
「いかんッ! ニノ、離れるのじゃッ!」
マリアベルが止まっていた足を動かし、ニノを助けようとする。
あれは、ARMS指揮官、アーヴィング・フォルド・ヴァレリアの目と同じ。
目的のためなら、いくらでも他人を犠牲にし、利用できる目だ。
説得など、不可能な話だった。
カエルがバイアネットを使い、ニノの腹を串刺しにしようとした瞬間、マリアベルよりもはやく動いていた影があった。
390 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:05:05 ID:0gn4H48y
391 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:05:40 ID:u4ccnG+B
ドシュッ!
「……え?」
ニノの呆けた様な声が響く。
ニノの目の前には、自分を庇って腹を貫かれたロザリーの姿があった。
尋常じゃない量の出血がさらにニノの思考を真っ白に奪っていく。
充填していたゼーバーの魔力も霧散していく。
ロザリーの腹からバイアネットを引き抜いたカエルはさらに、ストレイボウと別れるときにした騎士の宣誓のような格好で、バイアネットを天に向かって突き立てる。
だが今度は意味合いが違う。
今度は騎士の宣誓ではなく、相手の命を奪うための純粋な行動だ。
バイアネットから轟音が響き、何かが射出される。
(これは……アシュレーのッ!)
それはアシュレーが怪獣と戦っている時、相手の数が多いときによく使用していた技だ。
マリアベルが空を仰ぎ見ると、そこには文字通り、一切の比喩なしで、無数の弾丸があった。
回避が間に合わない。
もはやどうしようもないことを悟って、マリアベルは「絶望」を感じた。
マルチブラストによる弾丸の嵐が、断頭台のようにマリアベルに降り注ぐ。
ドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!
「……かはッ……」
弾丸に文字通り蜂の巣にされるマリアベルの姿。
そのまま受身を取ることもなく、地に伏した。
ドロリと流れるマリアベルとロザリーの血。
それを見ても、まだニノは動けなかった。
「――あれ?」
ニノがロザリーを見る。
動かない。
「――え?」
ニノがマリアベルを見る。
動かない。
間の抜けたような声を出すことしか、今のニノにはできない。
それはほんの少しまでは有り得なかった光景で、しかし自分がそうなる原因を作ってしまったことを自覚する。
よかれと思ってした行動が、最悪の結末を迎えていた。
やがて、ジワジワと理解し始める。
「あ、あた、し、が……」
カエルにはニノの気持ちも、震えるほどの声になっている理由も痛いほどよく分かる。
きっと自分を責めているのだろう。
カエルに情けをかけようとしていたりもしたし、そういう優しい子なのだと思った。
でも、同時に考えなしのお人よしだとも思った。
ニノのおかげで命を永らえたのだが、カエルはロザリーやマリアベルを殺したときと同じように、ニノを殺そうと動く。
392 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:06:12 ID:0gn4H48y
393 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:06:27 ID:u4ccnG+B
「すまない……」
そう言って、バイアネットがニノを刺し殺すまさにその瞬間!
ようやくサンダウン・キッドが到着して、カエルを突き飛ばしていた。
◆ ◆ ◆
サンダウン・キッドのマリアベルと別れてからの過程をここで説明しよう。
それはマリアベルと別れてから数十分。
ようやくハーレーのあった場所まで、半分の行程を過ぎたところだ。
ここまで慎重に移動していた理由は、サンダウンが身を守る手段に乏しいために移動に慎重にならざるをえなかったこと、
シュウと入れ違いになっても困るから、周囲への警戒を必要以上に行うという理由があってこそだった。
そして、偶然振り返って見たところ、目に入ったのはサンダウンの目にも見えるほど高く上がった大量の水。
それがウォータガとメイルシュトロームの激突の瞬間だとは分かるわけもないが、異常事態だと判断するには些かの不足もなく。
サンダウンはシュウとマリアベルたち三人のどっちに行くか迷った末に、シュウに申し訳ないと思いつつこちらを選んだのだ。
吹き飛ばされたカエルが体勢を整えて起き上がるまでの僅かな瞬間に、サンダウンはロザリーが護身用に持っていたナイフを持ち、言葉を続ける
「エリクサーを……」
そう言われて、ニノはようやく我を取り戻して、出てきた人影をサンダウンの姿だと認識する。
ニノは近くにいたロザリーに駆け寄り、サンダウンはナイフ一本で果敢にもカエルに挑んでいく。
サンダウンの行動を蛮勇と見たカエルはとりあえずニノを無視し、サンダウンの迎撃に専念した。
「ロザリーさん!」
「あっ…ニノ、ちゃ……服、汚れ……」
「そんなことっ!」
どうでもいい。
そんなことはどうでもいいとばかりに、ニノは激しくかぶりを振ってロザリーの服を掴む。
ニノの服をロザリーの血が染み込んでいく。
ロザリーは切り裂かれた大腿部の痛みを抑えて走り、必死にニノを庇ってさらに腹を貫かれたのだ。
重傷に間違いない。
ロザリーを激しい痛みが襲うが、心優しいロザリーはニノの心配を優先させる。
ニノは今きっと、自分自身を責めているからに違いないから。
「……いいの。 ニノ、ちゃ…何も…悪……」
「違うよっ! あたしのせいで!」
394 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:07:13 ID:u4ccnG+B
ニノがカエルを無理に説得しようとしたせいでこうなった。
それは明白だ。
考えなしに、きっとなんとかなると楽観的な考えを抱いたがゆえに迎えた結果がこれだ。
ニノにまた、家族を失ったときの記憶がフラッシュバックする。
あのときの再来を起こしてしまったことに、ニノは自分を激しく責める。
それを見ていたロザリーは、ニノを奮い立たせようと言葉を探す。
今のこの子に必要なのは、悲しみじゃなくて元気と勇気だと思うから。
「ニノちゃん……それをマリアベル…さん、に」
ハッとニノが自分の手に持っていたエリクサーに気がつく。
そもそもサンダウンに言われてこの薬を使うために、ニノはロザリーに駆け寄ったのだ。
エリクサーを使おうとするニノを止めて、マリアベルに使うように言いつける。
でもと言いかけたニノに、ロザリーはシュウがあと一個持ってきてくれるからと、心配のない旨も付け加える。
マリアベルの方が重傷だから、先に使ってあげてとも伝えた。
「うんっ! ロザリーさん、大丈夫だよね? 死なないよね?」
「指きりでも…しようか……?」
ニノを安心させるためのロザリーの言葉。
そうロザリーが言うと、ニノは急いでマリアベルの下へ走り出した。
頭部等、重要な場所は守っていたが、出血多量には違いないマリアベルを起こし、マリアベルの意識が残っていることを確認して声をかける。
「マリアベル!」
「ぬかったわ……どこの世界にボーッするやつがあるかと自分で言ったのにな……」
うめき声を上げてマリアベルが返事する。
声を出すのすら億劫で、口から血の塊が吐き出される。
しかし、マリアベルはニノがエリクサー使おうとするのを止めた。
何故かとニノが聞き返すが、マリアベルはそれに答えずに質問で返した。
「ロザリーは……何を、言って、おった?」
「え? 怒ってないから、マリアベルにこれを使ってあげろって……」
「そうか…ロザリーは怒らなかったか…」
なら怒るのは自分の役目だ。
そう思ったマリアベルは、ニノを頬を弱々しく平手でぶった。
ニノの頬に赤い血の跡が残る。
マリアベルとしては全力のつもりだったが、傷のせいで力が出ない。
でも、それでいいと思った。
ニノの心には、その痛みが確かに伝わっていたと感じたから。
「この……バカチンがッ!」
395 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:07:59 ID:u4ccnG+B
ニノのやったことは正しくもあり、悪くもある。
確かに、世の中には黒と白しかいないわけではない。
自分と意見を違えた者を片っ端から殺していけば、仲間になる人間もならないだろう。
でも、それは時と場合を考えないといけない。
他の人間の命も関わっている事態なのだから。
仲間にしたかったのなら、カエルの武器を奪ってから勧誘でもすればよかったのだ。
結果として、こうなったが、ニノの考えが間違っているのではない。
やり方が間違っていただけ。
ロザリーがそれは間違っているわけではないと教えたのなら、今みたいに最悪の事態が起こり得るということも教えないといけない。
だから、怒った。
怒って、反省するように促した。
「ごめんなさい……」
素直に謝るニノ。
この子は純粋で、人の意見をちゃんと聞く耳も持っている。
だから、マリアベルもごめんなさいの一言を聞いた後は、もう怒ることはしなかった。
それ以上言わなくても、この子はもう同じ失敗は繰り返さないだろうから。
「ん。いい子じゃ……」
だから、マリアベルはニノの頬を血まみれの手で、今度は撫でた。
手のかかる、でも優しくて無垢な少女を撫でて、褒めた。
血が付くのを嫌がることもなく、ニノは自分の頬を撫でているマリアベルの手を取った。
「ニノ、仲間を傷つくのは見たくないか?」
「うん……」
「わらわたちに死んで欲しくないか?」
「うん!」
「なら、戦えッ!」
マリアベルが残された力を振り絞って、ニノの手を掴む。
サンダウン・キッドはみすぼらしいナイフで善戦はしているものの、それが限界だった。
血だらけで今にも倒れそうなサンダウン・キッド。
このままではカエルに徐々に追い詰められ、マリアベルやロザリーと同じような結果が待つだけだろう。
「ほら、このままではまた人の子が死ぬ……行くのじゃ……」
見れば、ロザリーも最後の力を振り絞ってか、魔力をため込んでいる。
元気なニノが、一人だけここで何もしないままでいい訳がない。
最後の賭けに出るため、マリアベルはニノにサンダウンの援護に行かせる。
ニノは矢も盾もたまらない勢いで走っていった。
396 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:08:09 ID:0gn4H48y
397 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:09:28 ID:0gn4H48y
398 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:09:44 ID:u4ccnG+B
「あやつめ……エリクサーを置いて行くくらいはしてもよかったろうに……」
ニノが急いでいるのは分かったから、マリアベルもそこまで文句は言わない。
そもそも、マリアベルはエリクサーを使う気は全くと言っていいほどないからだ。
代わりに、ニノに無断で少しだけ元気をわけてもらったのだが。
微量だったのでニノも気づいてないだろう。
とりあえず、治療がなければ、座して死を待つしかなかったマリアベルの寿命は数分延びただろう。
(まぁ、ニノのせいでこんな怪我をした罰金……というには軽すぎるがの……)
マリアベルはロザリーと同じようにレッドパワーを使うべく力を込めるが、その作業は遅遅として進まない。
体力の消耗と、激痛による精神力の集中ができないからだ。
ロザリーもそのようで、中々作業がはかどらない様子。
ロザリーの選んだクレストはやはり使い慣れてきたヴォルテック。
何のレッドパワーを使うか迷いながら、マリアベルは魔力の構成を始めた。
決着の時は、近い。
◆ ◆ ◆
399 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:12:10 ID:0gn4H48y
400 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:13:26 ID:0gn4H48y
401 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:14:56 ID:0gn4H48y
402 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:16:06 ID:0gn4H48y
403 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:16:34 ID:u4ccnG+B
「サンダウンおじさん!」
ニノの声が響き、ゼーバーが飛んでくる。
バックステップしたカエルとサンダウンの間に距離が生まれた。
この距離、カエル、サンダウンともに好機と見る。
サンダウンが切り札の使い捨てのピストルを抜く。
カエルがバイアネットを構え、サンダウンに狙いをつける。
撃ったのは、カエルが先。
カエルがバイアネットから広範囲の敵を殲滅できるブラスターギルティを発射!
もはや満身創痍のサンダウンは避けることもかなわず、奇跡的に避けたとしても、ブラスターギルティは広範囲に爆発するタイプの弾丸。
カエルの勝ちは確定のはずだ。
サンダウン・キッドは満身創痍ゆえ、銃を抜くのが遅れる。
シュウとの対峙の時に見せた、神速のクイックドロウが披露できない。
サンダウン・キッドは満身創痍ゆえ、銃を撃つのが遅れる。
銃は超高速の弾丸を放つ武器。
一瞬の遅れで勝負がつく。
そう、断言しよう。
サンダウン・キッドは明らかにカエルより撃つのが遅れた。
だが、しかし。
この勝負、サンダウン・キッドの勝ちだった。
「!?」
ブラスターギルティの弾が、サンダウン・キッドに到着する手前で、不可思議な爆発をする。
カエルの目には、何が起こったのかまったく理解できなかったであろう。
サンダウンはカエルの目線と銃口の向きを確認し、その狙いが自分に間違いなく当たると判断。
そこでサンダウンがとった行動は、まさに神業だった。
サンダウンは、自身の動作がカエルに遅れを取っていると判断し、狙う対象をカエルの放つバイアネットの弾そのものに変えたのだ。
銃口と視線を読んで、それに対する手段を取る。
銃というものをよく理解し、己の身を守る愛用の武器として親しんでいる、サンダウンだからこそできる芸当。
剣の勝負では、サンダウンがどうやってもカエルに勝てないように、銃での勝負ならカエルがサンダウンに勝てる理由はない。
そこで、カエルの目にさらに不可思議な事象が起こる。
それはロザリーの最後の力を振り絞った魔法。
404 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:18:01 ID:0gn4H48y
405 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:18:16 ID:u4ccnG+B
◆ ◆ ◆
(駄目……まだ死んでは駄目……!)
激痛に耐えながら、思う
ピサロに出会うまで、ロザリーは死にたくない。
それはピサロに対して、純粋に思慕の感情を持っているためでもあり、また、ピサロが今どこで何をしているかが想像できてしまうから。
ロザリーの生前から、人間を滅ぼすと豪語していたピサロのことだ。
人間に虐待され、人間に殺されたロザリー。
そのロザリーが死んだことで、ピサロが人間に対する怒りの矛を収めるはずもない。
むしろ、一層激しく人間を憎んでいただろう。
だから、止めてあげたい。
ここにきて、今更ながら後悔している。
何故、もっと言葉を交わすことができなかったのだろう。
何故、生前に人間を滅ぼさないでと、ピサロに強く言うことができなかったのだろう。
夜が明けるまで、重たい瞼をこすりながら、欠伸を我慢して話せば分かりあえたのかもしれないのに。
ロザリーは蘇生呪文でも生き返ることのできなかった、完全に死んだ存在だった。
そんな今の自分は、何かの冗談で生まれた稀人のような存在。
自然の摂理に従って、生きている者に影響を与えないように、もう一度死なないといけないのかもしれない。
でも、偶然得た拾い物のようなこの命が、何故だか無性に捨てがたい。
ピサロに会いたくてたまらない。
願ってはいけないことを願ってしまう。
やはり自分は弱い存在だと、ロザリーは思ってしまう。
(それに……)
でも、ピサロのことよりも、今はニノやマリアベルのことが心配だった。
特にニノは今、失うことを極端に恐れている。
二度も家族を失った経験があるニノは、これ以上身近な存在が死ぬことは耐えられない苦痛なのだろう。
だから、今ロザリーが死ねば、ニノはきっと自分を責めるだろう。
それをさせてはならない。
そう思い、最後の力を振り絞って、ニノとサンダウンを援護するクレストを唱える。
(ニノちゃん……)
この魔法に全てを託して――
(頑張って――!)
「ヴォル……テック!」
ロザリーの意識は闇に沈んだ。
◆ ◆ ◆
406 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:19:19 ID:u4ccnG+B
女の魔法の声が聞こえてきたかと思うと、突然爆炎を囲むように風の嵐が発生する。
そしてそのまま、爆発し上昇しようとしている爆炎と爆風が、まるで意思を持っているかのようにカエルに襲いかかってきたのだ
荒れ狂う炎がカエルを焼き尽くさんと襲い掛かり、カエルはマントで自分の顔や体をできる限り覆い、炎に包まれる。
業火がカエルを覆い尽くすが、カエルは決して焦ったりはしない。
所詮、こけおどしだ。
炎はブラスターギルティと何かが爆発したときの炎が、こっちに向かってきているだけ。
爆発するための火種も燃料もないまま、こちらに叩きつけただけの、言わば残り香のような炎。
場所は石造りの民家が並んだ城下町。
木造住宅ならともかく、激しく燃えるような物も何もない。
故に、この程度の炎、すぐに消えさる。
カエルはそう判断する。
その判断通り、炎はカエルの皮膚をほとんど焦がすこともできないまま、消えていく。
(来るなら来い!)
そう、カエルはこの炎は単なる目くらましだと考える。
だからこそ、大量の炎にも惑わされることなく、迎撃の準備をしていた。
ようやく、目を開けても大丈夫なほど炎が引いてきたころに、飛び出してくる影が一つ。
ナイフを持ったサンダウン・キッドだ。
「この程度で!」
カエルは冷静にサンダウンを迎え討つ。
そもそもナイフでの戦いではどうやっても勝てなかった男が、ナイフ以外何も持たないまま突進してくるのだ。
何か策があるはずに違いないと、カエルは冷静にそれを見極める。
そして、カエルの予測通り、今度はカエルの背後からニノが飛び出してくる。
挟み撃ちだ!
だが、カエルは心の中で計算通りだと勝利を確信した。
今考えていた方法は、挟み撃ちに対する手段として、最も適切であったからだ。
ウォータガ。
一度だけ見せた大質量の水で、今度こそ二人揃って押し流す。
すでに呪文の詠唱も済ませ、発動するのを待つだけだ。
カエルが迎撃の準備を済ませていることをサンダウンとニノが気づくが、もう止まることはない。
片方が止まったら、片方に迷惑がかかるからと知っているから。
それはカエルにとって無謀であり、蛮勇であり、ありがたい行為でしかなかった。
カエルがウォータガを発動させようとしたその瞬間!
マリアベルの介入があった。
◆ ◆ ◆
407 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 01:22:55 ID:43IDSFWb
本格的にさるさんが厳しくなってきたので、したらばに投下します。
今までの支援ありがとうございます
408 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:53:44 ID:RP9UeSua
代理投下します
409 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:55:46 ID:RP9UeSua
(こんなレッドパワー、仲間を信じておらぬと使えぬわ……)
マリアベルは攻撃系のレッドパワーを選択することはしなかった。
ノーブルレッドの真の強さの秘密は、数多くの属性を持つ攻撃用のレッドパワーにあらず。
数々のロストテクノロジーと、搦め手を攻めるようなトリッキーなレッドパワーの数々
ロストテクノロジーは残念ながら今ここで披露はできないが、もう一つの強さは見せ付けようとマリアベルは思う。
それはトランプで言えば、ジョーカーでもキングでもエースでもない、8か7くらいの中途半端な手札。
でも、確かにその選択を間違ってない、今の状況においてはベストとも言える選択肢!
そのレッドパワーを唱えて、マリアベルの意識も途切れた。
◆ ◆ ◆
「バリバリキャンセラーッ!」
「……!? これは!?」
収束していたカエルの魔力が、カエルがなにかしたわけでもないのに急に霧散していった。
カエルが驚愕している間に、さらにサンダウンとニノが突っ込む。
サンダウンはナイフを、ニノは直接ゼーバーを撃ち込もうとする。
気がつけば、カエルは二人の射程範囲内。
ウォータガを使えなくなったことで、サンダウンとニノのどっちを迎撃するかの判断に一瞬迷う。
そのカエルの思考を、サンダウンとニノは読み取る。
別段、サンダウンとニノが超能力者という訳でもない。
おそらく同じ状況に置かれた人間なら十中八九その思考をするだろうから。
つまり、カエルの思考を読み取った二人の行動はまったく一緒。
どっちを先に迎撃するかって?
そ ん な の ッ ! ! !
「俺に決まってる……!」
「ッ!?」
「あたしに決まってるよ!」
410 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:57:36 ID:RP9UeSua
(俺が……負ける?)
カエルが敗北の二文字を予想する。
こんなところで潰えるほどの夢だったのだろうか。
もう俺はここで終わりなのだろうか。
否、有り得ない。
カエルはサイラスのことを思いだす。
姫の笑顔を思い出す。
仲間であると同時に、ガルディアを継ぐものであるマールのことも思い出す。
ガルディアに住む人々のことを思い出す。
それを思えば、今この状況など、窮地でもなんでもない。
(いや、負けられるか……!)
一度は諦めかけた体が動き出す。
カエルの中の熱い何かが、激しくカエルを突き動かす。
こんなところで死ねるものか、と。
バイアネットを振りかざし、サンダウン・キッドを袈裟斬りにしてしまう。
代償は、ニノのゼーバーによる左半身の負傷と、サンダウンのナイフによる刺し傷だ。
だが、それで終わりはしない。
サンダウンを完全に沈黙させたことを確認し、カエルは最後の一人ニノを殺そうと返す刀でバイアネットを振るう。
地に伏した存在が三つ。
三者、いずれも動くことはなく、流れ落ちる真っ赤な液体がその者の運命を示していた。
三人を致命傷に至らしめたその凶器、
バイアネットをその手に抱えたまま、男はニノに向かって突進する。
その心に微かな自嘲の念を浮かべて。
彼はかつて、正義感あふれる勇気ある若者だった。
魔王の邪悪なる所業に怒りの炎を燃やしていた。
だが、彼は、魔王の甘言に耳を貸してしまった。
魔王の誘いに、心を動かされてしまった。
だが、もう今更躊躇うことはない。
すでに三人斬った。
後戻りはできない。
する必要などない。
守りたいものがある限り、カエルは何度でも立ち上がる、立ち向かう。
(―――そうだ、俺は決めたんだ。必ず、ガルディアを取り戻してみせると―――!)
さしものカエルも体力が尽きかけるが、子供一人討ち取るのは容易い。
そう思っていた。
だが、ニノは健気に己を奮い立たせ、カエルに立ち向かっていく。
「まだ!」
411 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 01:58:23 ID:u4ccnG+B
412 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 01:59:01 ID:RP9UeSua
ニノは諦めない。
サンダウンが斬られたとき、ニノは悲鳴をあげてサンダウンに駆け寄りたい衝動に駆られる。
でも、それはみんなの今までの行動を無駄にするものだと分かってたから、カエルと戦うことを優先した。
「クイック!」
身体能力を上げて、ゼーバーとメラの魔法を唱え続けて、カエルと戦い続ける。
ニノの双肩には、三人の命がかかっているのだ。
泣きたい衝動を抑えて、マリアベルは必死にカエルの攻撃を避け続ける。
みんなを失いたくないからこそ、ニノは頑張り続ける。
崩れ落ちそうになる足を叱り付けて、身も世もなく泣き叫びたい衝動を抑えて。
「負けない! 負けないから!」
弱い自分に負けたくないから。
カエルの猛攻を受けながら、ここで、またあたしのせいだと嘆くのは簡単だ。
でも、マリアベルは言った。
戦わないと、人が死ぬと。
ニノはもう誰にも死んで欲しくない。
家族を失ったときのような、つらい思いはしたくない。
自分を落ちこぼれじゃないと言ってくれた、ロザリーを死なせたくない。
足手まといでも一緒につれていってくれた、サンダウンを死なせたくない。
だから、ニノは戦う。
……でも、本当は今にも心が折れそうで。
だから、ニノは自分を勇気付ける言葉を唱える。
「へいき、へっちゃらッ!」
カエルの耳に、何故か二人分の声が重なって聞こえたのは何かの気のせいか。
リルカ・エレニアックが唱えていた言葉をニノが真似する。
震えそうな心を勇気付けて、暖かくしてくれる言葉だ。
言葉にしてみると、本当に元気が出てくるような感じがする。
もう駄目だ、と思っていた心が、あと少し頑張ろう、という気にさせてくれる。
こんなすごいおまじないのような言葉を知っているリルカは、やっぱり自分よりすごいと思う。
だから、残り少ない魔力が枯渇する、まで待つしかなかった膠着状況を打開するため、ニノは最後の手に出る。
ニノの指が――不意に光った
413 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:00:23 ID:RP9UeSua
「ゼーバー!」
ニノが魔力を展開して、ゼーバーの魔法を使う。
対するカエルも、ニノが最後の手段に出たことを悟り、気を引き締めてかかる。
ゼーバーの魔法は放たれることなく、ニノの手で発射する準備だけを整えている。
何か策があるのかと、カエルが攻撃を繰り出しながら考えると、ニノがそれをよけながらもう一度叫ぶ。
「ゼーバー! え……って、あれ?」
見れば、ニノの手に展開してあったゼーバーの魔力が宙に消えてなくなっていく。
ニノの脚が止まったこともあって、カエルはこれを相手の魔力切れと判断して、一気に勝負をかける。
カエルが銃床の部分で横殴りにして、ガードされたニノの華奢な腕ごと吹き飛ばす。
「あっ!」
「終わりだ」
体力の限界もあって、ニノは即座に起き上がることもできない。
チェックメイトだ。
せめてもの情けとして、苦しまず逝けるように心臓を一突きにしようとしたところ――
「お前がな……」
怒りを胸に秘めた、男の低い声が響く。
◆ ◆ ◆
カエルの足がピタリと止まる。
いや、止めさせられたのだ。
そこにいたのは両足でしっかりと大地を踏みしめ、リニアレールキャノンを構えるシュウの姿。
もしそこから一歩でもニノに近づけば、容赦なく撃つという意思がカエルにも感じられる。
「そんな物を隠していたか……」
「ああ、だが……あの時躊躇わずにお前に使っているべきだった……」
大柄な体格のシュウと比しても、その兵器の巨大さは目立つ。
凶悪さは一目瞭然、威力も推して知ることができる。
やはり、カエルは最初にシュウと戦った時のいやな予感が当たっていたと確信する。
おそらく、二人が最初に全力で戦えば、あれほど長期戦になることもなく、勝負はついただろう。
カエルはニノに斬りかかる体勢から、冷静にシュウの方に向き直る。
焦りはしない。
シュウが無言のままにリニアレールキャノンを撃たなかったからには、その巨大さに見合った威力があると推測する。
そして、その威力故にニノの巻き添えを懸念したのではないか、と。
414 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:00:49 ID:u4ccnG+B
415 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:01:31 ID:RP9UeSua
カエルの読みは当たりで、シュウが問答無用に撃てなかったのは一度も試射したことがない故に、その威力を測りかねたから撃たない。
一度も使ったことがない、性能を確かめることもできない兵器など、まるでいつ爆発するか分からない爆弾のようなものだとシュウは自嘲する。
「去れ……」
だから、シュウは勧告で済ませる。
いいのか?と聞くカエルに対して、シュウはお前にかまっている時間より、そこの三人の治療に時間を割きたいと答える。
現時点でリニアレールキャノンを使う気になれない理由を、もっともらしい理由で隠すことも忘れない。
ニノは何もいうことなく二人のやり取りを見ている。
カエルはニノから手を引くことで、逃がしてもらえる条件を呑んで去ろうとする。
体力もそろそろ限界だったし、問題ない。
最後に、一言シュウに言ってやった。
「俺の……勝ちだな」
「……」
苦虫を噛み潰したような表情をシュウがする。
そうだ、今から再び、今度こそ手加減なしでやりあえば、シュウが勝っていたかもしれない。
だが、事実はそうならず、カエルを逃がす代わりに、ニノの命をようやく救えたに過ぎない。
シュウが慎重になりすぎた代償が、血だらけで倒れている三人。
そう、シュウは負けたも同然なのだ。
「カエル……」
(そういえば……)
カエルはいたたまれない気持ちになる。
そもそも、この男がいたからこそ、シュウとの戦闘は放棄したのだ。
自分とどこか似通っていると、そう思ったからこそ、去り際にアドバイスをした男がここにいた。
「ストレイボウか……」
「カエル……もうやめるんだ」
ストレイボウも悲痛な声を抑えることができない。
カエルがついに、人を手に掛けたのだ。
見れば、その中にはいたいけな女子供の姿もある。
かつての自分なら、その光景を見て笑ったかもしれないが、今はただただ胸が苦しかった。
「お前は、昔の俺と同じような道を歩んでいる……ッ」
「……そうかもしれないな」
「だったらッ!」
「だが、俺はもう戻らない。 分かるんだ。 俺はもう、誰を殺しても、なにをしても、何も感じることはないと」
「……悪いが、やるならよそでやってくれ。 時間が惜しい」
416 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:01:55 ID:u4ccnG+B
417 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:02:13 ID:RP9UeSua
カエルとストレイボウの問答を聞いていたシュウが、未だリニアレールキャノンを構えたまま口をはさむ。
遠目にも、サンダウンたち三人が重傷なのが分かるからだ。
それを聞いたカエルは、背中を向けてマントを翻し、今度こそどこかへと去っていった。
「さらばだ……友よ」
そう、呟いて。
「何故だ……俺のことを友だって言ってくれるのに……どうしてッ!」
ストレイボウの嘆きが、ずっと聞こえてくるのが辛くて……。
カエルは、回復魔法を唱えながら逃げるように走り去っていった。
(カエルの耳とは……ずいぶんとよく聞こえる……)
戦いのときに役立っていたカエルの能力が、今はひどくうっとおしかった。
【I-9 城下町 一日目 午前】
【カエル@クロノトリガー】
[状態]:左上腕に『覚悟の証』である刺傷。 疲労(大)
[装備]:バイアネット(射撃残弾1)
[道具]:バレットチャージ1個(アーム共用、アーム残弾のみ回復可能)、基本支給品一式
[思考]
基本:ガルディア王国の消滅を回避するため、優勝を狙う。
1:ここから離れる。
2:仲間を含む全参加者の殺害。
3:できればストレイボウには彼の友を救って欲しい。
[備考]:
※参戦時期はクロノ復活直後(グランドリオン未解放)。
418 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:03:40 ID:u4ccnG+B
419 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:03:43 ID:RP9UeSua
カエルが去った後は、三人で協力して、重傷の三人を横に並べて横たえた。
エリクサーを誰に使うかのが適切か、調べるためだ。
だが、残酷な結果が分かる。
サンダウン、ニノ、ロザリー、いずれも重傷。
しかも、全員意識を失っている。
それどころか、このままだと数分もしない内に死ぬことが発覚する。
「あたしのせいだ……」
「いや、俺のせいだ」
「いや、俺が……」
ニノが暢気に、カエルが武器を持ったまま説得をしようとしたから。
シュウが慎重になりすぎて、リニアレールキャノンを使うのを躊躇ったから。
ストレイボウがバイアネットをブライオンと交換しなかったが故に、カエルを引き止めることができなかったから、マルチブラストなどの弾で悲劇が起きた。
各々がそれぞれの理由で自分を責めるが、それは無駄な時間を過ごしただけに過ぎなくて。
決断の時間を迫られていた。
さて、ここでクイズをしよう。
死んでさえなければ、どんな傷でも治せるエリクサーが二つ。
今にも死にそうな重傷の患者が三人。
人間、エルフ、ノーブルレッド。
さあ、あなたならどうする?
420 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:05:11 ID:RP9UeSua
…
……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
……………………………
もはや使い捨てドッカンピストルも使い切ったサンダウンに、戦力を期待できない。
そう思ったニノは無慈悲に告げる。
「銃を持ってないガンマンなんて、南国のアイスホッケー部以下だよね♪」
その言葉に衝撃を受けたサンダウンは、急遽自分にも何かできることはないかと特訓を開始。
そしてついに得た新しい能力、それは催眠術!!!!!
催眠術を使って次からも大活躍できると意気込むサンダウン。
しかし、同じく新たな能力を会得しようとしてストレイボウもまた、催眠術を会得。
属性の被りを避けるため、ついに二人は決着をつけるべく激突する!
「暗示でお前は眠くなる!」
「いや、俺は暗示を自分にかけて眠くならないようにする!」
「お前は眠くなる!」
「いや、眠くならない!」
「眠くなる!」
「眠くならない!」
「眠くなる!」
「眠くならない!」
「眠くなる!」
「眠くならない!」
「眠くなる!」
「眠くならない!」
「眠くなる!」
「眠くならない!」
盛り上がっているか盛り上がってないかよく分からないバトルを繰り広げ、二人は意気投合する!
負けたサンダウンはキャラ被りを防ぐために、アニーのシミーズを手に入れた時の経験を生かし、女性の下着を盗む訓練に入る。
見事スカートめくり百人斬り達成なるか!? サンダウン・キッドの活躍に期待がかかる!
酒を飲んで、うにゅにゅと傷が再生していくサンダウン・キッドの生態についても迫るよ!
一方、シュウは無法松のハーレーをデイパックに回収し、一人修理を続けていた。
ついに修理が完了したバイクにまたがり、気分よくバイクをカッ飛ばし、彼はクールな言葉を叫ぶ!
「COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL! COOL!」
421 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:06:46 ID:RP9UeSua
ラジカセを使ってしゃべる能力を習得し、クールなシュウにさらなるクール属性が身に付く。
場所は変わって、どこの城下町にも一つはあるであろう何の変哲もない宿屋。
女三人による平和な時間が流れていた。
ちょっと早めの朝食を準備し、テーブルには宿屋に置いてあった食器やカップを用意。
いい感じに焦げ目のついたトーストと、ゆで卵などの簡単な料理が並ぶ。
温められたミルクが鼻孔を刺激し、はしたなくもお腹が鳴る。
それをマリアベル、ロザリー、ニノ、三食分。
お世辞にも豪華とは言い難い食事。
どこにでもあるような、ごくごく日常における朝食の光景だった。
でも、それでいいのだ。
粗末な朝食でも、三人で笑いながら食べればおいしいのだから。
どんなに豪勢な食事も、温かい雰囲気の食卓にはかなわないのだから。
「えへへっ、いっぱいジャムつけてね♪」
ニノが上機嫌でマリアベルとロザリーに、イチゴジャムの入った瓶を渡す。
それを受け取ったロザリーはジャムの瓶を置いて、何故かフォークを取り出した。
「ニノちゃんにはこっちのジャムが似合いそうですね」
そしてそのままフォークをニノの手に思いっきり突き刺す。
ザ シ ュ ッ! !
「ひあああああああああーーーーーーーっ!?」
フォークはニノの手を貫通して、そのままテーブルに突き刺さった。
「あっ……ぐ、あああぁぁ……」
ニノはテーブルと繋がった自分の手をつかみ、激痛に悶え苦しんだ。
それを見て、マリアベルとロザリーはコロコロと笑いだす。
「おうおう、ニノの血の色は綺麗よのう」
「これで当分ジャムに困りそうにないですね」
そう、お楽しみはこれから。
一日はまだ始まったばかりなのだから。
ニノの苦しみはもっと加速する。
渦巻く熱気。
駆け抜ける嵐。
止まらない妄想ハイウェイ!
422 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:07:56 ID:RP9UeSua
次回、RPGキャラバトルロワイアルは
『北方領土を取り戻せ!』
『多摩川の上流に落としてきた友情』
『伝説の樹の下で「やったか!?」と死亡フラグを叫ぶ』
の三本でお送りします。
お楽しみに!
【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:健康
[装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーY、導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣、 クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める。
1:ピサロ様を捜す。
2:シュウの報告を待つ。
3:ユーリル、ミネアたちとの合流。
4:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
※クレストグラフの魔法は不明です。
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
……………………………
…………………………
………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
――――なんて、サイコな展開にはなりませんのでご安心を。
423 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:09:30 ID:u4ccnG+B
424 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:09:48 ID:RP9UeSua
◆ ◆ ◆
そこには、城下町を抜け、一人でカエルを追っているストレイボウの姿があった。
あの五人の仲間と別れて、一人で行動する理由はただ一つ。
やはり、カエルのことが気になったからだ。
しかし、もうカエルのことであの五人に協力は得られないだろう。
三人が殺されかかってしまったのだ。
だからストレイボウはやりたいことがあると、一人で行くことを選択した。
ふと、五人と別れ、最後に集合していた宿屋を出るときの会話を思い出す。
「聞いてくれないか……?」
「何でしょうか?」
見送りに出てくれたロザリーと会話する。
ロザリーを質問の対象に選んだのは、五人の中で一番人情の機微が分かりそうだったから。
シュウとサンダウンは暗そう、ニノとマリアベルはまだ子供(マリアベルはストレイボウよりも大人だが)だからだ。
この思いを伝えるにはどうすればいいのか聞いてみた。
「友に、伝えたい言葉があるんだ……」
友、と呼んだときのストレイボウの表情に暗い影が落ちるが、ロザリーはあえて触れない。
ロザリーは沈黙をもって、ストレイボウの次の言葉を促す。
「でも、どうすればこの言葉を伝えればいいのか分からない……俺は口が下手で……心も心底醜くて……
あいつに伝えたい気持ちがあるのに……いつも言葉に詰まる。
実際、あいつと何度か言葉を交わしたが、たぶん俺が思っていることの一割も、言いたいことは伝わってない……
……まるで女に告白したいのにできない女々しい男だな」
「そんなこと、ありませんよ……」
「……何?」
「そんなことありません。 私も、会いたい人がいます。 この心を伝えたい人がいます。
でも、私も口下手で……本当に話したいことも話せないまま別れてしまいました……
だから、とロザリーが続ける。
「私は聖者のように、たった一言で誰かを悲しみから救ってあげることはできません。 そう、私の言葉はすごく軽い……。
でも、だからこそ、私は何度でも言葉を重ねることしかできません。
たとえ一晩中でも、夜明けまで重くなる瞼を擦りながら、欠伸を我慢しながらでも話したいと重います」
ああ、そうか、とストレイボウは思う。
自分は友を思うあまり、簡単な道に流されようとしていた。
誰とも誤解のなく打ち解けることのできるような、魔法のような言葉を探していた。
でも、それは所詮都合のいい幻想でしかない。
目の前のロザリーという女性は、自分の無力さを分かって、それでもなんとかしたいと模索している。
ロザリーの言うとおりだ。
一つの言葉が伝わらないなら、何度でも言葉を重ねればいい。
もしも運よくオディオと対峙することができれば、一度の謝罪で許されることなどないのだから。
「申し訳ありません……お力になれなくて……」
「いいや、参考になった……ところで、一つ聞きたいんだが、オディオについてどう思う?」
「え?」
425 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:10:46 ID:u4ccnG+B
426 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:10:50 ID:RP9UeSua
突然の質問に、狐につままれた様な顔をするロザリー。
だからだろうか、答えに少し間が空いた。
「私はたぶんあの人の力で生き返りました……こんな私が言うのはどうかと思いますが……
でも、こんなことをする人はやっぱり許せないと思います」
「そうか……」
その一言を最後に、ストレイボウは歩き出した。
ロザリーは今の一言に何か重要な意味があるのだろうかと考えるが、結論が出るには至らない。
代わりに、ストレイボウの背中に言葉を投げかける。
「ストレイボウさん! 私たちは仲間です……例え貴方がそう思っていなくても」
「ああ、俺もそう思っている」
「どうか、お元気で……」
ストレイボウは無言で去る。
そう、ストレイボウが言ったオディオについてどう思うかという質問は、ずっと考えていたことがあったからだ。
それは、オディオのことを話してしまいたいというもの。
自分こそが魔王オディオを生み出した元凶だと。
誰にも話さぬまま、醜い部分を心の奥にしまいこんでは、かつての繰り返しだ。
それを続けていれば、またあのどす黒い感情が自分を支配してしまうだろう。
そう、ストレイボウは第三者にいつか裁かれねばならないと考える。
ここにいる残った43名の中には極悪非道なオディオ討つべし、と憤慨している者も少なからずいるだろう。
それは当然の感情だ。
だが、だ。
同時に、オディオにそのようなことをさせるようにしてしまった者も、裁かれるべきではないだろうかと。
オディオを倒すという者がいるのならば、自分が止められることではないだろう。
しかし、ここにオディオ以上の、言わば諸悪の根源がいるのだ。
先にこの諸悪の根源を倒すのが道理ではなかろうか。
魂の牢獄に繋がれるのはオディオによる天罰。
では、第三者による裁きは?
考えるまでもない。
だが、今の自分にその勇気はない。
最初からそんな勇気があれば、ストレイボウもオルステッドも、こんなことにならなかったのだから。
お前のせいで、と誰かに掴み掛かられるのが怖い。
自分が裁かれるのが怖い。
この醜い心を誰かに打ち明けるのが怖い。
――罪滅ぼしのためでは無く、お前の意思で友を救えよ。
カエルの言葉が思いだされる。
(ああそうさ。 これは罪滅ぼしのためじゃなくて、俺自身が変わるためのものッ!
でも、誰かを救うことができたのならば、自分は変われるかもしれない、そう思う。
救いを求めている誰かに手を差し伸べることができれば、おなかをすかせている誰かにパンを差し出すことができれば、
あるいは悲しんでいる誰かに優しい言葉をかけてあげることができれば、寒くて凍えそうな誰かに温かい毛布を被せてあげることができれば、変われるかもしれない。
そう、オルステッドにかけていたような口先だけの偽りの言葉ではなく、心からの真心を届けることができれば。
427 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:12:19 ID:RP9UeSua
(変わりたいんじゃない……変わるんだッ!)
決意とともに歩みだす。
闇はまだ……深い。
【I-9 城より西 一日目 早朝】
【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:ブライオン、勇者バッジ、基本支給品一式
[思考]
基本:魔王オディオを倒す
1:カエルの説得
2:戦力を増強しつつ、北の城へ。
3:勇者バッジとブライオンが“重い”
参戦時期:最終編
※アキラの名前と顔を知っています。
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っているかもしれません(名前は知りません)。
「皆の者。 これを見よ」
さて、瀕死の存在が三つ、エリクサーが二つ。
加えて回復呪文を唱えることのできる人間は皆無。
以上のような状況から、三人全員が助かって宿屋の地下室に集まっている理由を述べよう。
まずはエリクサーをサンダウン・キッドとロザリーに使う。
これで二人が完全に回復する。
このままではマリアベルが死ぬかと思われたが、実際はそうならず、事なきを得たのだ。
実際のところ、計算でやった訳ではない。
最後の最後に、マリアベルがわずかに意識を取り戻したのが命運を分けたのだ。
では回答しよう。
マルチブラストで蜂の巣にされたとき、マリアベルはニノに無断でやった行為を、今度は許可つきでやったのだ。
レッドパワーの一つ、「ライフドレイン」を使って回復したのだ。
その名の通り、他者の生命力を吸い取って、自身の生命力に還元するレッドパワーで、まずマリアベルは比較的元気なシュウとストレイボウから吸い取り回復。
さらに、自分にエリクサーは使う必要はないと言った上で、
エリクサーで完全回復したサンダウンとロザリーからも少しずつ生命力をもらい、マリアベルも復活という顛末になったのだ。
ライフドレインの生命力の還元の効率もよくなかったので、四人からいただいたと言う訳だ。
これは、マリアベルが回復呪文を使えるわけではないと言ったのがそもそもの騒動の原因。
だが、厳密な「回復」の定義に入るかといわれば微妙なので、マリアベルが言わなかった理由も残った四人は納得した。
428 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:12:20 ID:u4ccnG+B
429 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:14:19 ID:u4ccnG+B
430 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:15:56 ID:u4ccnG+B
431 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:19:25 ID:u4ccnG+B
432 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:24:39 ID:u4ccnG+B
「これは……旅の扉ですか……?」
記憶のデータベースにある知識と似たものがあったのか、ロザリーは呟いた。
また、マリアベルの知識に合わせれば、ライブリフレクターにも似ている。
地下室の一番奥には、ユラユラと空間が不安定にゆれている場所があるのだ。
マリアベルが得意げな顔をして、説明を開始する。
カエルとの戦闘時に、マリアベル宿屋を戦場にしたくなくて逃げたもう一つの理由がこれだったのだ。
「どうじゃ? わらわが発見したのよッ! しかも、これはノーブルレッドが近づいた時にしか見えん」
「本当?」
「見ておるがいい。 ほうら」
マリアベルは揺れる空間からある一定の距離を境界線として、一歩前に出て、一歩後ろに下がることを繰り返す。
空間は、たしかにマリアベルに反応しているようで、消えたり現れたりしている。
それを見てニノは素直にマリアベルすごいと喜び、サンダウンとシュウは胡散臭げな顔をする。
ロザリーが見たときはなかったというのも、マリアベルに反応して現れるのなら説明もつく。
「あのオディオも、ノーブルレッドの価値が少しは分かるようじゃ」
被りなおした着ぐるみを着たまま、マリアベルは得意げに腕を組んでうんうんと唸る。
しかし、サンダウンが冷静に意見を述べた。
「いや……少しおかしい
「何がじゃ?」
「もう一度やってみてくれ……今度はデイパックを置いてな……」
「……用心深い男よの」
言いながらマリアベル手に持ったデイパックを下ろし、もう一度さっきの目測で計った境界線で行ったり来たりをする。
しかし、今度は何も起こらなかった。
何故じゃッ、と叫ぶマリアベルを置いて、サンダウンはマリアベルの持っていたデイパックを少しだけ前に転がした。
すると、ノーブルレッド族のみに反応すると思われていた蜃気楼のような、不安定な空間が現れた。
それを見て、シュウがなるほどと頷く。
ニノとロザリーはまだ原因も分からず、マリアベルと不思議な顔をしている。
「……おそらく、支給品に反応している」
サンダウンが説明するより先に、シュウが口火を切った。
そして、マリアベルのデイパックに手を突っ込み、ゴソゴソと中身を探る。
出てきたのは、ゲートホルダーだった。
「参加者は全員平等のはず。 首輪を無理に外そうとすれば、爆発させられたりするようにな。
その中で、ノーブルレッドだけにとか、特定の人種に反応するような仕掛けをするのはおかしい……」
つまりそういうことなのだと、シュウはゲートホルダーを持って、マリアベルの行ったり来たりしていた境界線を移動する。
たしかに、不思議な空間はシュウの持つゲートホルダーに反応していた。
その名のとおり、ゲートをホールドするもの。
433 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:40:56 ID:0gn4H48y
434 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:42:03 ID:RP9UeSua
……無論この恥ずかしい勘違いの一件で、わらわをたばかったオディオ許すまじ!とマリアベルが憤慨したのは言うまでもない。
◆ ◆ ◆
旅の扉のようでもあり、ライブリフレクターのようでもある、不思議な空間を前にして、五人の間で意見が交わされた。
それは、パーティを分割するべきだということ。
マリアベルが戦闘中に考えていたことだが、今ここにいる五人――仮にストレイボウを入れた六人でも――全員が後衛で戦うタイプ。集団で固まっても、思うように戦果がはかどらないのではないのかというものだ。
また、これだけ広大な島で生存者を探すには、一箇所に固まって探すには時間がかかる。
なにせ、24時間死者が出ない場合は全員が死ぬというルールなのだ。
短時間で効率よく探索するために、パーティ分割の案は全員が同意した。
問題はパーティ分割。
話し合った結果、綺麗に女三人と男二人に別れたのだ。
大丈夫かという男二人の疑問を、女同士の方が都合のいいこともある、とマリアベルは笑って飛ばした。
そして、恥ずかしながら、現時点で戦力的に最も心許ないサンダウン・キッドに、パワーマフラーと怒りの指輪が渡された。
初めて会ったときのように、サンダウンが石や何かを投げつけて攻撃すれば、多少は戦力になるという理由だ。
最後に、このゲートを使ってみるのも女三人に決まった。
「わらわの支給品だからのッ! わらわが持つのに何の異論もなかろう?」
とのこと。
これも慎重派の男二人がストップをかけようとするが、集団を形成した女性の独特の姦しさとパワーを発揮して押し切られた。
「なあに、ゲートがどこに繋がってても死んだりはせんだろう……」
そう行って、恐れることなくゲートに近づいていった。
ニノ、ロザリー、マリアベルが手を繋ぐ。
それぞれが違う場所に放り出されても困るという理由でだ。
「サンダウンおじさん、シュウさん! 行ってくるね!」
「では、行ってきます。 お二人もご無事で」
「シュウ、サンダウンッ! わらわの許可なく死ぬでないぞッ!」
「……」
「……」
無口な男二人の雰囲気に、これで誰かと接触したときに交渉ができるのかと、今度はマリアベルの方が心配になるが時すでに遅く。
ゲートに飛び込んだ三人は空間に呑まれ、二人の男からは見えなくなる。
ゲートホルダーの所持者がいなくなったことで、宿屋のゲートも跡形もなく消えていった。
少しして、無言で宿屋から出るシュウとサンダウン。
ストレイボウの向かった先とは別方向に歩き出す。
シュウが、ポツリと漏らした。
435 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:42:34 ID:0gn4H48y
436 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:43:01 ID:RP9UeSua
「俺は……マリアベルがライフドレインを使っていなければ、お前を切り捨てるつもりだった……」
「……俺とお前の立場が逆なら……俺もそうした……」
それは、二人が敵対しているから出た会話ではない。
寡黙な男二人に、奇妙な連帯感が出来上がる。
「もし、カエルに会ったら……あの武器がほしい」
「そうか」
カエルとの対戦でカエルが使っていたバイアネットを、サンダウンは思い出す。
マリアベルを蜂の巣にした弾といい、使い捨てのピストルを使って相殺した弾といい、ようやくサンダウンが見つけたまともな銃だ。
あれがあれば、戦力的にもっと活躍できる。
そういう旨をシュウに伝えて、シュウは了解した。
かくして、七人の運命の糸が絡まった物語はここで終わりを告げる。
シュウとマリアベルとストレイボウは再会の約束はしていない。
生きていて、オディオを倒すために行動していれば、いつか必ず会えると信じているから。
これからも、カエルのような心変わりをする者は必ずいる。
また、夜が明けて朝になったことで、本格的な行動を起こす人間が増え始める。
それぞれの胸にそれぞれの思惑を抱えて。
事態は、大きく動く。
【??? 一日目 午前】
【ロザリー@ドラゴンクエストW 導かれし者たち】
[状態]:疲労(中)衣服に穴と血の跡アリ
[装備]:クレストグラフ(ニノと合わせて5枚)@WA2
[道具]:双眼鏡@現実、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いを止める。
1:ピサロ様を捜す。
2:ユーリル、ミネアたちとの合流
3:サンダウンさん、ニノ、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
437 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:43:50 ID:RP9UeSua
[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:疲労(大)
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣、
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流。
2:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
3:フォルブレイズの理を読み進めたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:マリアベルの着ぐるみ(ところどころに穴アリ)@WA2
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:ゲートを通り、どこかへ出た後は適当に移動して仲間や協力してくれる人物の捜索。
2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
3:この殺し合いについての情報を得る。
4:首輪の解除。
5:この機械を調べたい。
6:アカ&アオも探したい。
7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った?
8:アキラは信頼できる。 ピサロに警戒。カエルに一応警戒
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※レッドパワーはすべて習得しています。
※ゲートの先はどこ通じてあるか分かりません。島の施設のどこかかもしれないし、森の真ん中かもしれないし、時の狭間かそれ以外に行くかもしれません。
また、ゲートは何度も使えるのか等のメリット、デメリットの詳細も後続の書き手氏に任せます。
438 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:44:33 ID:RP9UeSua
[備考]
※参戦時期は6章終了時(エンディング後)です。
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:疲労(大)
[装備]:クレストグラフ(ロザリーと合わせて5枚)@WA2、導きの指輪@FE烈火の剣、
[道具]:フォルブレイズ@FE烈火、基本支給品一式
[思考]
基本:全員で生き残る。
1:ジャファル、フロリーナを優先して仲間との合流。
2:サンダウン、ロザリー、シュウ、マリアベルの仲間を捜す。
3:フォルブレイズの理を読み進めたい。
[備考]:
※支援レベル フロリーナC、ジャファルA 、エルクC
※終章後より参戦
※クレストグラフの魔法はヴォルテック、クイック、ゼーバーは確定しています
【マリアベル・アーミティッジ@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)
[装備]:マリアベルの着ぐるみ(ところどころに穴アリ)@WA2
[道具]:ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式 、マタンゴ@LAL
[思考]
基本:人間の可能性を信じ、魔王を倒す。
1:ゲートを通り、どこかへ出た後は適当に移動して仲間や協力してくれる人物の捜索。
2:元ARMSメンバー、シュウ達の仲間達と合流。
3:この殺し合いについての情報を得る。
4:首輪の解除。
5:この機械を調べたい。
6:アカ&アオも探したい。
7:アナスタシアの名前が気になる。 生き返った?
8:アキラは信頼できる。 ピサロに警戒。カエルに一応警戒
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※アナスタシアのことは未だ話していません。生き返ったのではと思い至りました。
※レッドパワーはすべて習得しています。
※ゲートの先はどこ通じてあるか分かりません。島の施設のどこかかもしれないし、森の真ん中かもしれないし、時の狭間かそれ以外に行くかもしれません。
また、ゲートは何度も使えるのか等のメリット、デメリットの詳細も後続の書き手氏に任せます。
439 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:45:11 ID:u4ccnG+B
440 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:45:29 ID:0gn4H48y
441 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:46:08 ID:u4ccnG+B
442 :
◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:46:14 ID:RP9UeSua
【I-8 城下町 一日目 午前】
【サンダウン@LIVE A LIVE】
[状態]:疲労(中) 衣服を斬りさかれた跡と血がベットリついてます
[装備]:いかりのリング@ファイナルファンタジーY、パワーマフラー@クロノトリガー、アリシアのナイフ@LAL
[道具]:基本支給品一式、使い捨てドッカンピストル@クロノ・トリガー(残弾0)
[思考]
基本:殺し合いにのらずに、ここからの脱出
1:ロザリー、ニノ、シュウ、マリアベル、自分の仲間(アキラ、高原日勝)、また協力してくれる人材の捜索。
2:ピサロの捜索。
3:まともな銃がほしい(カエルの持つバイアネットに興味あり)
4: アキラを知るストレイボウにやや興味有り。
[備考]
参戦時期は最終編。魔王山に向かう前です。
【シュウ@アークザラッドU】
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:エリクサー@ファイナルファンタジーY、紅蓮@アークザラッドU、リニアレールキャノン(BLT1/1)@WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、オディオを倒す。
1:エルクたち、マリアベル、ニノ、サンダウン、ロザリーの仲間、協力してくれる人材を捜し合流。
2:この殺し合いについての情報を得る。
3:首輪の解除。
4:トッシュに紅蓮を渡す。
5:カエル、ピサロは警戒。アキラは信頼できる。
[備考]:
※参戦時期はクリア後。
※扇動を警戒しています。
※時限爆弾は現在使用不可です。
※『放送が真実であるかどうか』を疑っています。
※シュウとサンダウンがどこに行くかは後続の書き手氏に任せますが、
ストレイボウとは行き先が一緒にならないように別の方向です。
443 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:47:03 ID:0gn4H48y
444 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:47:19 ID:RP9UeSua
よしいけた。代理投下完了です。
445 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:47:35 ID:u4ccnG+B
446 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:49:36 ID:u4ccnG+B
447 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 02:50:52 ID:u4ccnG+B
代理投下ありがとうございます。
初作品で色々無茶やっているとは思いますので、遠慮なく指摘等お願いします
448 :
:◇SERENA/7ps氏 代理
:2009/04/30(木) 02:52:04 ID:RP9UeSua
投下終了いたしました。
手の空いている方は本スレに投下お願いします。
初作品で色々無茶やっているとは思いますので、遠慮なく指摘等お願いします
−−−−−−
すいません。これを入れてませんでした。これで代理投下完了です。
449 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 02:53:01 ID:RP9UeSua
>>447
ごめんなさい…遅かったようです。
450 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 02:56:04 ID:u4ccnG+B
>>449
いえいえ、どうもありがとうございます
451 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:07:11 ID:RP9UeSua
それじゃ感想を…すごい。
問題はあると思うけど…とにかくすごい。
そ ん な の ッ ! ! !
にはかなり燃えたし。予告には笑わせて貰いました。ゲートも登場して見所は盛りだくさんでした。
…それでは遠慮無く指摘行きます。
かなり問題なところ。
シュウはエルクに基本体術を叩き込んだ師匠で近、中、遠、全ての距離に対応しています。そもそも物を盗む人が近距離対応できないはずがない。
ちなみにエルクは設定上は(どっちが得意かと聞かれれば)魔法タイプだが高速で移動する飛行船から飛び降りて窓をたたき割ったり、ロマリア兵2人を対空砲ごと瞬殺して、さらには発射された大砲を切り裂いたりするぐらいの身体能力はある。
シュウは身体能力だけを取ったらそのエルクより上です(機神復活までエルクはシュウに全敗)。なのになぜわざわざ得意な体術で戦わず不慣れな刀で戦ったのか?
カエルが持っていたのはナイフじゃないし、速さに定評のあるシュウなら完全に距離をつめれば(マリアベルがカエルに勝てないように)勝ちは揺らがなかったはず。
カエルのバイアネットカートリッジのオンパレードは…有りかな?うーん微妙だ。
カートリッジの弾はそれぞれ別個になってるしなぁ。
細かい指摘
カエルはこのはなしで少なく見積もって弾を7発撃ってます。つまり残弾は0。
シュウの状態表にエリクサーがある。
>>419
の サンダウン、ニノ、ロザリー、いずれも重傷。
ニノではなくマリアベル。
マリアベルの状態表の思考8のカエルはもう「一応」警戒と言うレベルじゃない。
ストレイボウの備考の最終編キャラの顔を知っているかも?はこの話で片づけるべきかな。
カエルはマリアベルの姿を知ってると思います。最初に会ったときは陽が昇る前だったから着ぐるみは着ていなかったと思います。
452 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:21:24 ID:RP9UeSua
書き忘れです。
ロザリーの
私はたぶんあの人の力で生き返りました……
このセリフの意味が分からないんですが…世界樹の花は?
最後に…投下乙!!
453 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:22:59 ID:m7NbqD06
リレー企画なのにこんなに長いものを
もっと短く出来たんじゃないの?欲張りすぎ
454 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 04:27:50 ID:u4ccnG+B
>>452
指摘ありがとうございます
そこはロザリーの参戦時期を見てなかったため、オディオに生き返らせられたものと勘違いしていました。すいません。
上のレスで出た他の大きな問題部分も細かい部分も修正します
455 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:28:46 ID:RP9UeSua
>>453
そう言うなよ。SSの中の時間が思い切り進んだ訳じゃないし、文章が長くても問題ないって。
問題は有るけど話としてはすごく良かったと思う。
456 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:35:02 ID:RP9UeSua
>>454
あ、ちょっと質問を
失礼ですが…あなたは六代目さんですか?
457 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 04:39:24 ID:u4ccnG+B
>>456
え〜っと、すいません。違います
そもそも、六代目さんという方がどういう方かも知らないものでして……申し訳ないです
458 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 04:41:37 ID:0gn4H48y
投下乙!
指摘は上と大体同じですね。
ロザリーは6章後参戦です。傍らにいぬ〜とかでも触れられています
シュウは遠近万能、ってか、武器無しでもOKな体術が売りの一つですし
バイアネットは登場話ではっきり書かれていなかったからこれでありかと。
元々のゲームのあれは、後の3やFと違って通常弾丸消費しないから【残弾7】で登場された時点で、ん?でしたしね
バレットチャージ合わせても全部で14発しか撃てないなら総合的には扱いづらいし、その分手数多いくらいじゃないと
カートリッジの弾はそれぞれ別個ちゃあべっこだけど、そこはオディオパワーということでw
ってか、そうじゃないと後続の書き手も書きにくいし
で、本編感想
二転三転にとどまらない刻一刻と移り変わる状況にはらはらしました。
街を丸ごと使うおいつ追われつなバトルは面白かった
特にステンドガラス割って味方がってのはお約束だけどおいしかったね
リニアを構えてのシュウもかっちょよかったし。
覚悟完了しちゃったカエルと、少しずつ色々気づけてあるレイボウの関係もグー
また、マリアベルのカタコンベを思い出させるリルカの追悼は泣けた。
それぞれが傷や内面に踏み込んで絆が深まったからこそ、後々が燃えた!
ちなみにニノのへいきへっちゃらには萌えたw
旅の扉、各種魔法考察、宿描写、原作を思わせるニノの魔法見たのを習得、心情・バトル・基盤知識とどれも面白かったです
GJ!
後、息抜きのギャグには腹よじれたw
459 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 05:05:46 ID:RP9UeSua
すいません。
また見つけました。
シュウとサンダウンの位置がI−8になってます。
ストレイボウの時間が早朝になってます。
460 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 05:08:04 ID:u4ccnG+B
……度々の指摘すいませんorz
461 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 11:29:50 ID:RP9UeSua
>>437
と
>>438
で二重投稿しました。ごめんなさい。
462 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 20:42:57 ID:xkos4hw5
投下乙!
これは予想以上の大作だ!
心理描写が細かくて、キャラの感情がよく伝わってきたぜ。
戦闘も熱いね。誰が死ぬかマジでハラハラしながら読んでたよ。
ちょっと詰め込みすぎな気もするが、面白かった。
463 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 22:41:08 ID:RP9UeSua
指摘ミスです。こちらこそたびたびすいません。
よく見ると弾を八発撃っています。バレットチャージを使わないといけないようです。
自分が確認したのは最初のシュウとの戦いで最低でも二発。(ブラスターギルティやマルチブラストのような)
シュウから逃げる時にハーレーに一発
マリアベルを教会に落とすときに一発
ステンドグラスを割るときにショットウェポン一発
3人まとめてこうげきしたショックスライダー一発
マリアベルにマルチブラスト一発
ドッカン爆発ピストルで相殺したブラスターギルティ一発
…これは最初のシュウとの戦いで接近戦で圧倒されて一発も撃てず、防衛戦の状態になってそこにストレイボウが来るという流れなら自然になるかな?
片腕に傷。それに加えて相手はパワーマフラー装備で手数も上だし。
464 :
◆SERENA/7ps
:2009/04/30(木) 22:49:58 ID:43IDSFWb
感想および指摘ありがとうございます
特にID:RP9氏には感謝しています
指摘と同時にしてくれたアドバイスにもありますが、修正の方向性としては冒頭付近のシュウ対カエルのパートはほぼ省略する方向でいきたいと思います
そこまでお膳立てしてくれた書き手氏、申し訳ありません
また長いという意見にも対応するため、最後の電波ギャグパートを筆頭に物語の大筋に影響与えないように削ります
さすがに146kbはやりすぎでした……今日中の修正は無理ですが、早いうちに仕上げたいと思います
465 :
創る名無しに見る名無し
:2009/04/30(木) 22:57:31 ID:RP9UeSua
えーーマジですか。もったいないです。
電波ギャグこそ物語の大筋に影響与えないじゃないですか。
氏がそう言うなら仕方ないけど…。
まとめにおまけページでも作ってそこに載せるとか…ダメかな?
466 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/01(金) 01:49:50 ID:VQsdzMFy
投下乙
いきなりすごいのきましたねw
修正すべき点が多いのはちと残念ですが、総合的にはものすごく楽しめました
マリアベルもニノもロザリーもカエルもストレイボウも輝いてましたし、アナスタシアのステンドグラス割るシーンはベタだが燃えるw
戦闘描写も心理描写も上手くて最後までハラハラさせられました!
特に最後のギャグは不意討ち食らったw
北方領土とかどういう思考回路してたら出てくるw
正直、それを削るなんてとんでもない!w
修正は大変でしょうが頑張ってください
467 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/01(金) 22:49:12 ID:3anaBcs/
投下乙!
超大作すっげええええええええ!! 長文大好きな俺からすれば最高のSSですよ。
戦闘中の内面描写は相当難しいと思ってましたが、これほどまでの心理戦はアッパレです。
特にカエル対3人娘(?)のシーンは、キチンと心理描写されているのに全く先が読めない。
頑張るけど失敗するニノが健気で……。それを支えるマリアベルとロザリーも素敵。
カエルの修羅っぷりもカッコよかった。誇りを捨てたはずなのにカッコよくなるってどういうことだよw
最後どうなるのかと思ったら、どんでん返しまくりでビビりました。サイコ展開では笑ったけどw
とにかく多くのキャラが登場するにも拘らず、その全員が魅力的に動いていて最高でした、GJ!!!!
468 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:03:56 ID:3anaBcs/
それじゃあ、投下します。
469 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:05:20 ID:3anaBcs/
突き出された槍が啼く。
ひゅう、ひゅうと。
信じられない速度で突きが繰り出されるたびに、海上の空気はかき回されていく。
強い潮の香りが、アズリアの鼻をくすぐった。
だが彼女は、その臭いも額に流れる大量の汗も一切気にすることなく、槍を振り続けた。
「はっ! はっ!」
規則正しく繰り返される運動。
膝までを海水に浸らせているため、一撃を放つにも大きな抵抗が下半身にかかる。
しかし海上の槍と連動して前方に蹴り出された片足は、悠々と海水の圧力を突破してしまう。
舞い上がった水しぶきが朝日を拡散して、まるで悔し涙を流すかのように煌めく。
それでも彼女は、その美しい輝きすらも無視して訓練に没頭していた。
「やぁっ! はっ!」
彼女の放つ槍は、並の鎧なら容易く貫通してしまうほど力強い。
それでいて、歴戦の兵士ですら反応できるかどうか分からないほど速い。
そして、敵を仕留める事に極限まで拘るその姿は、大空を支配する鷹のような美しさをも併せ持つ。
(足りない。まだ、足りない……)
だが、彼女は満足しない。
彼女は雷を目指していた。
遥か天空から一瞬で大地に降り注ぐ、紫色の閃光。
音速すらも簡単に置き去りにするその災害は、巨木すらも瞬きの間に消滅させる。
その刹那の悪天候こそが、彼女が目指すイメージ。
だから、目で追えてしまったら意味がないのだ。
彼女の手元から放たれた金属製の殺意が、相手の身体を赤く染めるまで……。
対象となる人物に、『この一撃』を知覚されてはならない。
放電現象を目で追うことができる人間など、いないのだから。
技を放つ予備動作の時点で、殺気を気取られないのは勿論の事。
技が放たれてから相手に届くまでに、その軌道を目視されてしまっては、それは紫電とは言えない。
視覚情報など一切与えてはならない。
相手は自分の身体に走った激痛を以って初めて、この秘槍を理解するのだ。
(言うは易し……だな……)
槍を突き出した数が3桁に達した辺りで、手を止めた。
何度突いても、自分が描いたイメージには至らない。
目標として掲げたモノより遥かに遅く、遥かに弱々しい。
並の兵士ならともかく、この程度では先ほど戦ったあの巨漢クラスの実力者には全く通用しない。
「ふがいないな……」
目指したものが途方もない高みにある事を再認識し、思わず笑ってしまう。
だが、決して無謀な目標を掲げているわけではない。
彼女は既に、剣を用いての紫電絶華ならば習得していた。
技の土台は完成しているので、あとは槍の扱いに慣れるだけである。
さらに、この技の特性を考えれば、リーチのある槍のほうがその長所を活かしやすい。
ならば、もしかしたら秘槍・紫電絶華は、剣で放つソレよりも強力なものになるかもしれない。
……習得できれば、の話ではあるが。
「ゆっくり進むとするか……」
そんなに時間に猶予があるわけではないが、と心の中で付け加えつつも、彼女の顔に焦りの色はない。
一朝一夕で習得できるものなら、そんなものを『奥義』とは呼ばないのだから。
気負ってもマイナス面ばかり目立つ事を心得ている。鍛錬はここら辺で切り上げることにしよう。
砂浜に槍を深く突き刺すと、濡れないように腰元で纏めていたスカートを解いて寝そべった。
そこで初めて感じた海の香り。
それはアティや弟達と過ごしたあの島での日々を思い起こさせる。
470 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:06:28 ID:3anaBcs/
彼女の親友であるアティには、不思議な力があった。
類稀なる召還師としての力や、抜剣者としての選ばれし能力もそうだが、それだけじゃない。
彼女には、『人を惹きつける力』があった。
バラバラの方向を向いていた島の住人たちや、海賊たち、そしてアズリア……イスラも。
それらはやがて、アティという人物を中心として1つになっていく。
繋がるはずがなかった手と手が固く握られていく。
まるで、奇跡を見ているようだった。
同時に痛感したのは、自分は彼女には敵わないという事実。
アズリアはアティに憧れている。
もしかしたら……士官学校時代からずっとそうだったのかもしれない。
「……エルクは、起きただろうか」
支給された時計を見れば、もうすぐ放送とやらの時間になる。
エルクは先ほど自分が目覚めるのを確認して、入れ替わりで眠りについた。
放送が始まる前に、洞窟の中で休んでいる彼を起こさなくては……。
立ち上がり、背中に付着した砂を叩き落とす。
槍を引き抜いて、洞窟へ向かって一歩一歩ゆっくりと歩みを進めた。
「お前さん、1人か?」
そんな彼女に声をかけたのは、やっとのことで洞窟に辿り着いた男。
以上にカラフルな労頭髪と真っ赤なスカーフは、目がチカチカして仕方がない。
初対面のはずのアズリアに対しても、一切の礼儀などはない。
「……誰だッ!」
その身なりや態度からは、お世辞にも善人には見えなかった。
思わずアズリアは槍を構える。
「まァ、そうなるよな……」
溜め息と共に、言葉を吐き出す。
警戒されたのは残念だが、これが普通の反応だ。
自分だって、目の前の女性の事を安全な人間であると言い切れるわけじゃない。
さて、どうしたものか。無法松は考える。
信用を得るだけならば、持ち物を全部地面に放り投げて、危害を加えるつもりがない事を証明するのが一番手っ取り早い。
だが、目の前の女性が自分に襲い掛からないという保証はない。
それでアッサリ殺されでもしたら、笑い話では済まないだろう。
そして、やっかいごとは重なって起こるものだと相場は決まっている。
この状況の打開に四苦八苦している無法松の邪魔をしたのは、魔王オディオの放送であった。
◆ ◆ ◆
「そうか……アリーゼと……ビジュが逝ったか……」
悲しそうな目で、だけども涙の1滴も零すことなくアズリアが呟く。
放送で告げられたのは親友の教え子の名前と、かつての部下の名前。
アリーゼの死。
恐らくアティは、酷く悲しむのだろう。
そして、強く自分を責めるのだろう。
絶望することだけはないと信じたいが……。
471 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:07:25 ID:3anaBcs/
ビジュの死。
出来れば生きていて欲しかった。
前の人生で償いきれなかった罪を、今度こそは……と思っていた。
彼が罪を滅ぼすつもりなら、自分だって協力するつもりでいたのに……。
誰かを失った喪失感は、何度味わっても慣れる事はない。
しかし、泣いてなどはいられなかった。
洞窟で眠っている『彼』に伝えなければならない事がある。
彼の目は輝いていた。
『その少女』の話をするときは特に。
本人は否定するだろうが、好いていたのだろう。
護ってやりたいと思っていたに違いない。
だが……その少女の名前が、放送で呼ばれてしまった。
放送前に出会った男に待っているように告げると、アズリアはエルクを起こしに向かう。
こんな役回り、当然だが気が進まない。
洞窟へ進む彼女の足取りは重い。
だが、それをするのはアズリア以外にいないのだ。
「エルク、話が…………なッ!」
洞窟を覗いたアズリアは、そこで殺害現場に出くわしたかのように驚愕した。
思わず身体の力が一瞬抜け、持っていた槍を落としてしまう。
カランという音が洞窟内を反響し、何重にもエコーを響かせた。
眠っているはずのエルクが、いない。
洞窟内を見渡しても、誰の姿もないのだ。
気配を探っても、もちろん何も感じられなかった。
「これは……」
念のため、自分の荷物を確認する。
何も取られてはいない。
当たり前だ。エルクはそんなことをするような奴じゃない。
だが、荷物の置かれた近くの床に、「すまない」と剣で彫られた不恰好な文字が記されていた。
指でなぞると、炎の剣の熱がまだ残っているのが分かる。
おそらくこの傷は、あの放送を聞いてから付けられたものだ。
「エルク……なぜ……」
どこに行ったところで、少女が生き返るわけじゃない。
復讐をしようにも、誰に殺されたかも分からないではないか。
……まさか、優勝する気では?
そんな疑問が湧いてきたが、アズリアは一瞬で否定した。
それならば、アズリアの荷物を持っていくはずだし、そもそもアズリアから不意打ちで殺しにかかるはずだ。
そもそも、エルクはそんなことで殺し合いに乗る人間ではない。
ならば、なぜ……。
「男には……」
背後から、声がした。
幼さなど微塵も感じられないその声は、エルクのものではないと分かってはいた。
だが、アズリアはすがる様な期待を込めた目で振り返る。
「男には、走り出さなきゃならないときがあンのよ」
朝日を背に雄弁と語る男、無法松。
彼はなんとなくだが、事態を察していた。
そして、エルクとやらが走り出した原因も『なんとなく』気付いていた。
472 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:08:55 ID:3anaBcs/
「すまない、私は行かなければ……」
「待ちな。俺も連れてってくれ」
とにかくエルクを探さなくてはならないと、アズリアは洞窟を抜けようとする。
その手首を男が掴んだ。
男の手のひらから、確かな熱が伝わってくるのが感じたが、アズリアはそれを振り払う。
「私は貴方を信頼してはいない」
突き放すように言葉を投げつけた。
アズリアも、目の前の男が無害である事は薄々感づいてはいた。
だが、それでも放送の内容とエルクの失踪のせいで、警戒を強めなければと思い込んでしまっていた。
だから、男を置き去りにして走り出す。
草原に僅かに残された足跡を辿りながら……。
◆ ◆ ◆
「……リーザ……ちっく、しょう……」
少年は走っていた。
息を切らして、必死に、全力で。
理由はない。目的地もない。
それでも少年は走っていた。
走らなければいけなかった。
そうする以外に、この気持ちをぶつける方法を知らなかったのだ。
(誰が……リーザを……)
そんなことは分からない。
だが、リーザは誰かに殺されたのだ。
自殺をするほど、彼女の心は弱くない。
優しい少女だ。
戦場では、自らの傷より他人の傷を優先して癒すのだ。
優しい少女だった。
ついさっきまで自分の命を刈り取ろうとしたモンスターにすら、その慈愛を注げるほどに。
そんな彼女を殺した人物がいることが、エルクは許せなかった。
(誰だ? トッシュのヤローか……あのデカブツか……)
彼の怒りは、収まらない。
この会場で人殺しをしている人物に対して。
そして、呑気に眠っていた自分に対して。
「誰だ? 誰が殺したんだよッ!?」
叫び声だけが空しく響く。
無性に誰かを救いたかった。
無性に人殺しと戦いたかった。
そんなことをしてもリーザが戻ってこないのは分かっている。
でも、そうでもしないと、この気持ちは発散できなかった。
アズリアを置き去りにしたのは、申し訳ないと思っている。
だが、これは自分1人の戦い。
アズリアを巻き込むわけには行かない。
少年は走る。
悲しみと怒りを抱えながら。
少年は走り続ける。
自分が既に、リーザの仇をとった事など気付かずに。
473 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:10:04 ID:3anaBcs/
【B-8 北西部 一日目 朝】
【エルク@アークザラッドU】
[状態]:疲労(小)、位動力上昇中、激しい怒り
[装備]:炎の剣@アークザラッドU
[道具]:データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
オディ・オブライトの不明支給品0〜1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:みんなで力を合わせて、オディオを倒す。
1:殺し合いに乗った人間の撃破、乗ってない人間の救出など、とにかく何か行動がしたい。
2:シュウ、イスラ、アティ、アリーゼ と合流。
3:カノンを止める。
4:アシュレーは信頼できそう。
5:トッシュを殺す。
6:一応ビジュを警戒。
[備考]:
※参戦時期は『白い家』戦後、スメリアで悪夢にうなされていた時
※カノンからアシュレーの情報を得ました。
※データタブレットに入っている情報は不明です。
※第一回放送のリーザの名前より後の部分は一切聞いていません。
◆ ◆ ◆
「しまった……」
走りながらアズリアが呟く。
洞窟の中に槍を落としてきてしまった。
あれがないと自分は丸腰同然だ。
焦りは禁物だと、自分に言い聞かせたばっかりだというのに……。
(どうする……戻るか?)
しかしすぐに首を横に振った。
既にエルクの足跡は見失ってしまっている。
今はただ、少年が走ったであろう方向を追っているに過ぎない。
これから洞窟に戻ったら、少年に追いつくのは完全に不可能となってしまう。
「仕方ない……このまま……」
「探し物は、これか?」
槍を諦め、そのまま走り出そうとしたときだった。
またもや背後から声が聞こえた。
しかもさっきと同じ声。
今度は微塵も期待を込めないで振り返ると、そこには槍を抱えた男。
この男は、どうしても朝日を背に立たなければ気が済まないのだろうか。
「……だから、私は貴方を信用していないと……」
「そんな事はもうどうでもいいんだよ!」
性懲りもなく同行を求めてきたのだろう男を、再び突き放そうとした。
だが、彼はそんなアズリアの両肩を掴んで叫ぶ。
その目をしっかりと見据えると、言葉を続けた。
「男が走り出したんだ。力になってやりてぇじゃねぇか!」
気おされてキョトンとしているアズリアの手に、槍を握らせる。
なんとも理不尽でふざけたセリフではあるが、これでも無法松は真剣そのものである。
本当に理由はそれだけか? と尋ねたかった。
だが、男の真っ直ぐな目を見たアズリアはその疑問を吐き出すことは出来ない。
474 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:11:13 ID:3anaBcs/
「さぁ行くぞ。俺は無法松。松でいいぜ」
男が、誰かの為に走り出したのだ。
後先の事など一切考えずに。
信頼を得るにはどうしたらいいのか……。
少女が自分に襲い掛かってきたらどうしよう……。
さっきまで無法松はそんな事を考えていた。
だが、洞窟でエルクと呼ばれた少年が起こした行動を感じ、そんな事はどうでもよくなってしまった。
「おい、勝手に……」
「グズグズしてると、置いて行くぜ?」
アズリアが不平を言う暇もなく、松は勝手に走っていく。
そのマイペースっぷりに、思わず呆気に取られてしまう。
(なんて男だ……)
そう思いながらも、再び無法松を見やる。
その姿は、まるで草原を横に走る雷のようだった。
自らの望んだように、荒々しさを撒き散らしながら進み続ける。
彼女の槍が目指した通りのイメージが、そこにあった。
「……おう? ついて来る気になったか?」
自分に併走しだしたアズリアに告げる。
元々は、松が彼女について行くという形だったはずだが、いつの間にかその立場は逆転してしまっていた。
「……行く方向が同じなだけだ」
言葉こそ乱暴だが、そこに敵対心は存在しない。
寧ろ、その顔にはうっすら笑みさえ見える。
「アズリアだ」
「あ?」
「私の名前。アズリアだ」
なんて気持ちのいい男だ。
アズリアは、アティといるときと同じ感覚を松に覚えた。
もちろん、アティとは似ても似つかない、おそらく対極に位置するタイプの人間だろう。
だが、アティもこの男も、理屈を越えたところで人と繋がる事ができる。
無茶苦茶な理論で人を信じる事ができる。
アズリアが出会った数多くの人間や召還獣の中で、そういった事が可能なのはアティをおいて他にいなかった。
「よろしくな、アズリア」
「あぁ、松」
拳と拳を軽く付き合わせる。
それは、彼女が経験した中で、最も乱暴な挨拶だった。
その反動だろうか、スカートに足を取られてアズリアがよろけてしまう。
「ちぃ……」
はき慣れないスカートでは思うように走れない。
恐らくエルクは、移動速度を上昇させる魔法を使用しているのだろう。
自分達と少年との差は広がる一方だ。
いっそのこと、スカートを破いてしまおうかとも考えた。
だが、布地に手をかけた瞬間、ためらいが彼女の心を包む。
恥ずかしいとかそういうことではない。
このスカートは、今のアズリアの象徴なのだ。
あの島で彼女が犯してしまった過ちや、それを許してくれた仲間達との信頼。
それらの結果として今の彼女の姿がある。
不便だろうが、似合わなかろうが、これは今のアズリアになくてはならないものなのだ。
少なくとも彼女はそう思っていた。
475 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:12:39 ID:3anaBcs/
(エルク。お前の剣は、大切な人から貰ったものだったな……。
ならば、私のこの姿こそ……イスラが、アティがくれた宝物だ)
スカートから手を離す。
その代わり、しっかりと大地を強く踏みしめる事にする。
大切な思い出に、足元を救われない様に。
「……少しスピードを上げるぞ、松」
松と付き合わせた拳が、ジンワリと熱くなるのをアズリアは感じていた。
【B-9 中央部 一日目 朝】
【無法松@LIVE A LIVE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6、不明支給品0〜2(本人確認済)
[思考]
基本:打倒オディオ
1:エルクに追いついて協力する。
2:アキラ・ティナの仲間・ビクトールの仲間・トッシュの仲間をはじめとして、オディオを倒すための仲間を探す。
3:第三回放送の頃に、ビクトールと合流するためA-07座礁船まで戻る。
[備考]死んだ後からの参戦です
※ティナの仲間とビクトールの仲間とトッシュの仲間について把握。ケフカ、ルカ・ブライトを要注意人物と見なしています。
ジョウイを警戒すべきと考えています。
※アズリアとはまだ情報交換をしていません。
【アズリア@サモンナイト3 】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ロンギヌス@ファイナルファンタジーVI 、源氏の小手@ファイナルファンタジーVI(やや損傷)
[道具]:アガートラーム@WILD ARMS 2nd IGNITION、不明支給品1個(確認済み)、ピンクの貝殻、基本支給品一式
[思考]
基本:力を合わせてオディオを倒し、楽園に帰る。
1:エルクに追いつき、事情を問いただす。
2:シュウ、イスラ 、アティと合流。合流次第、皆を守る。
3:アシュレーは信頼できそう。
4:トッシュを警戒。
5:『秘槍・紫電絶華』の会得。
[備考]
※参戦時期はイスラED後。
※軍服は着ていません。穿き慣れないスカートを穿いています。
※無法松とはまだ情報交換をしていません。
◆ ◆ ◆
「……アリーゼか」
遥か空まで届くのではないか、とも思える灯台に寄りかかる。
その巨体は、僕の細身の身体程度ではではビクともしない。
その事を少しだけ羨ましいと感じた。
尤も、こんな大きな身体では、僕が会いたくないと思っている人たちにすぐに見つかってしまうのだけれど……。
ビジュを殺し、その死体から首輪を採取した後、灯台を探索していた。
だが、目ぼしい道具などは一切見当たらなかった。
そう簡単にはいかないか……思わす笑ってしまう。
その僕の笑顔を凍りつかせたのが、魔王オディオによる最初の放送だ。
476 :
アズリア、『熱』に触れる
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/01(金) 23:13:42 ID:3anaBcs/
「確か、アティの生徒の……」
そこで呼ばれた名前は、僕がこの手で殺したビジュともう1人。
忘れるわけがない。
忘れたくても忘れられるものか。
あの金切り声。
アティの後ろに隠れて、情けなく震えているだけかと思っていた少女。
世間の事など何も知らず、見るからに温室育ちなのがバレバレなガキ。
それがアリーゼだったはずだ。
それなのに、彼女は生意気にも僕に説教をかましたのだ。
次々と矢継ぎ早に罵声を浴びせかけた。
あの金切り声で。
その直後に僕は死んだ。
不死の呪いが解けたことによる反動で。
結局アリーゼに反論する事は、最期まで叶わなかったというわけだ。
だが、それを悔しいとは思ってはいない。
反論する機会が与えられたところで、どうせあの少女に言うべきことなど存在しなかったのだから。
『悔しいでしょう?』
「あぁ、悔しかったさ」
『悲しいでしょう?』
「あぁ、悲しかったさ」
『私のことが憎らしくて仕方ないでしょう?』
「あぁ、そうさ。全てお前の言うとおりだったよ!」
何一つ反論できない。
少女の言葉の1つ1つが、この心を遠慮なく抉り傷つけた。
ぐぅの音も出ないとはこういう事を言うのだろう。
『こういうひどいことを貴方は今まで、先生やお姉さんや、みんなにしてたんですよ!?
嫌われたって・・・当然じゃないですか』
「そうだ。だから……だから僕は! 今度こそ、姉さん達に……」
そこまで紡がれた言葉が、途切れた。
叫びながら僕は、自分の顔を手で覆い隠そうとしたんだ。
そこで気付いてしまった。
僕の両の掌が……真っ赤に染まっているのを。
なぜ、僕の手は紅いんだっけ?
あぁそうだった。人を殺して、その死体を解体したからだ。
なぜ僕はそんな事をしたんだっけ?
あぁそうだった。目的の為に、必要だったからだ。
じゃあなぜ、ビジュに無意味な命乞いを強制した?
死の恐怖に怯えるアイツに、豚の真似をさせるのは愉快だった。
だが、そんな事をする必要があったのか?
「なんだそれ?」
見事人を殺しました。見事死体を解体しました。すごい充実感を感じております。
そんなんで……僕は、変われたのか?
ちゃんと前に進んでいるのか?
477 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/01(金) 23:18:25 ID:3anaBcs/
死を求め続けたあの日々から……。
アリーゼに叱咤されたあの時から……。
僕は変われたのかよ?
「ははは、今の僕は、彼女に反論できるのかな?」
漠然とした、疑問。
張り付いた笑顔は、未だに取れてはくれない。
「これでいいんだよなアティ? 僕の答えは正解なんだよな?」
笑いながら人を殺した事も……。
人の命を弄んだ事も……。
僕は誇っていいんだよな?
誰も肯定なんかしてはくれない。
そりゃそうだ。
誰にも会いたくないと願ったのは、僕なんだから。
気付いたときには、走っていた。
息を切らして、必死に、全力で。
理由はない。目的地もない。
それでも少年は走っていた。
走らなければいけなかった。
そうする以外に、この気持ちから逃げる方法を知らなかったのだ。
イスラは知らない。
姉が異なる時間軸を歩んでいた事を。
そして彼女が、イスラといた日々のことを宝物と呼んだ事を。
炎の精霊に選ばれしエルクと、紅の暴君に選ばれしイスラ。
2人は殆ど同じ時間に走り出した。
似ているようで、全く異なる気持ちをそれぞれに抱えながら。
【H-3 南部 一日目 朝】
【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。両手にビジュの血が付着。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストW 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0〜1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドU
鯛焼きセット(鯛焼き*2、バナナクレープ*3、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:何も考えずに走る。
2:これで、いいんだよな?
3:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
4:エドガーとルッカには会った方がいいかな?
5:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。
6:今は姉さんには会えない………今は。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
※ビジュの首と胴は海に捨てました。
478 :
◆Rd1trDrhhU
:2009/05/02(土) 00:01:06 ID:NonP5DMA
以上、投下終了です。
479 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/02(土) 00:14:22 ID:QFTBhHg5
投下乙です。
まずは携帯故に転載できなくてごめんなさい
紫電絶華の習得を着々と進めるアズリア、リーザを殺されたエルクの怒りが上手く描かれてました
松はやっぱ粋な男だねw
イスラもここにどうかしたら来るかと思ったけど、さすがになかったかw
ビジュに命乞いさせた罪悪感とアリーゼに言われた言葉が上手く絡んで素晴らしいです
480 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/02(土) 00:27:23 ID:QFTBhHg5
あ、追加で。
専ブラ使ってみたら、今このスレの容量が484.93kbなんだ
創発板の1スレの容量制限って500だっけ?
ならそろそろ新スレ建てた方がいいかも
ただ、もし新スレ建てるなら俺は規制中で携帯のみなんでスレ建ては他の人頼む
481 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/02(土) 02:21:14 ID:abYhNLrm
新作投下乙!
が、すまない、感想は後で。
まずは新スレ立ててきました
RPGキャラバトルロワイアル Part4
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241197795/
482 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/02(土) 02:43:22 ID:abYhNLrm
そして改めまして投下乙です!
優勝だー!とはなれない不器用で、けど優しいエルクがそれだけに悲しい。
取れるはずのない、既にとってしまっている仇。
エルクの怒りの炎よ、どこに行く…
松はここぞとばかりに兄貴してるなあw
硬いとこもあるけど基本気性がさっぱりしているアズリアとはいいコンビになりそうw
そしてイスラはそら悔いるよな…
呪いから解放されてるのに、嫌いだった誰かを苦しめる行動をビジュ相手とはいえとっちまったんだし。
アリーゼに言い返せないってのがまた効いたぜ…GJ!
483 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/02(土) 16:21:53 ID:HlcRGMET
投下乙!
エルク切ないなー…。不器用さと哀しさ、そして優しさがよく伝わってきた。
ヘクトルに出会えれば少しは救われるのかな。頑張って欲しいぜ。
揺れ動くイスラの心理描写もいいね。
彼が心から笑えるときは来るのだろうか。
そして、常に朝日を背に立つ松の様子に吹いてしまったw
マイペース過ぎるぜ兄貴!
484 :
◆6XQgLQ9rNg
:2009/05/02(土) 23:47:15 ID:HlcRGMET
容量が厳しいので、次スレに投下しますね。
485 :
創る名無しに見る名無し
:2009/05/04(月) 22:08:42 ID:TyXsd42V
こっちは埋めた方がいいのかな?
487 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
>>1
>>1
>>1
>>1
>>1
>>1
>>1
>>1
>>1
★スマホ版★
掲示板に戻る
全部
前100
次100
最新50
read.cgi ver 05.04.00 2017/10/04
Walang Kapalit ★
FOX ★
DSO(Dynamic Shared Object)