出版社が謝罪広告 刊行前の調査怠る
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発行元の回収後、「最後のパレード」は大型書店の検索画面で「品切中」と表示されるようになった(15日、東京都内で)
ベストセラー「最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話」の盗用疑惑で、発行元の出版社「サンクチュアリ・パブリッシング」(東京都新宿区)は、社団法人「『小さな親切』運動本部」の発行物の著作権を侵害している可能性が高いとして、同本部などに謝罪する広告を16日の全国紙に出した。しかし同書に収録された33のエピソードのうち、著作権上、問題がある話がいくつあるのかは不明で、著者の中村克氏からも説明や謝罪はない。「感動」を売り物にした本を巡り、なぜ今回のような事態が起きたのか。
今年3月の発売以来、2か月足らずで約23万部を売り上げた「最後のパレード」について、同社は15日、エピソードの一つが、同本部の発行物に掲載された「あひるさん、ありがとう」の著作権を侵害している可能性が高いとして、同本部との間で、自主回収の実施と謝罪広告を出すことで合意。読売新聞と毎日新聞の16日朝刊に掲載された。ただ、書店などに卸した未販売の16万部の回収には6月までかかり、購入者から返金要求も相次いでいるという。
同社によると、東京ディズニーランドを運営する「オリエンタルランド」(OLC)での勤務経験をもとに講演活動などをしていた中村氏に対し、同社側が出版を依頼。その後、出版の1年ほど前に、中村氏が「ディズニーランドであった話」として、プリントアウトした200以上のエピソードを持ち込み、同社の編集者がネット上から集めたディズニーランドに関するエピソードも合わせ、中村氏が33の話を選んだという。同社は、中村氏がこの時、「(33の話は)自分が見聞きしたことだから著作権上の問題は大丈夫」と話した、と説明している。
社内調査では、このうち「あひるさん、ありがとう」以外に、6話がOLCの社内教育用文集と酷似していたとしている。しかし残りは原典が不明としており、著作権の帰属先はあいまいなままだ。
「著者の原稿を客観的な目で確かめるという編集者の認識が不足しており、著作権者への配慮も欠けていた」。同社の鶴巻謙介社長はそう弁明した。今後も社内調査を続けるとしているが、担当した編集者の責任や出版の経緯を、第三者が検証することには消極的だ。
さらに、「あひるさん、ありがとう」は別の遊園地での出来事をもとにしており、「ディズニーランドで本当にあった」とした同書の副題にも問題がある。
一方、OLCは4月上旬、著作権侵害を指摘する配達証明を中村氏に送っているが、現時点でも回答がないという。「小さな親切」運動本部も「中村氏に謝罪を求める気持ちに変わりはない」とする。中村氏は読売新聞の取材にも応じていない。
著作権に詳しい小泉直樹・慶応大法科大学院教授(知的財産法)は「出版社には刊行にあたって、著作権を侵していないか調べる義務がある。しかし今回はそれを怠ったまま出版し、ベストセラーになってしまった。多額の利益をあげた出版社として、問題がどこにあったか調査を尽くし、説明する責任があるはずだ」と話している。
(2009年5月19日 読売新聞)
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