弁護士会の活動について H22.12.8、 於 南山大学名古屋キャンパス 弁護士  木 下 芳 宣 1 弁護士の使命 (1)弁護士の使命 弁護士法第1条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使 命とする。 2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び 法律制度の改善に努力しなければならない。 (2)基本的人権の擁護 弁護士法でいう基本的人権とは、憲法1 1条及び9 7条にいう基本的人権と同義 (3)社会正義の実現 弁護士法でいう社会正義とは、アリストテレスの正義概念(広義の正義-法的正 義、狭義の正義-配分的正義・匡正的正義、実質的正義)の意味の全てを併せ持つ ことを前提としたうえで、社会生活に即したもの 2 弁護士会の活動のうち委員会活動 (1)各種委員会など(愛知県弁護士会における委員会・対策本部・協議会など) 人権擁護委員会・資格審査会・懲戒委員会・綱紀委員会・司法修習委員会・司法制 度調査委員会・民事弁護委員会・刑事弁護委員会・広報委員会・公害対策環境保全 委員会・消費者問題対策特別委員会・民事介入暴力対策特別委員会・子どもの権利 特別委員会・両性の平等に関する特別委員会・その他各種委員会 裁判員制度実施本部・多重債務対策本部・取調べの可視化実現本部その他 (協議会を含め合計6 0委員会など) (2)委員会活動以外の弁護士会の活動 3 人権擁護委員会の活動に関連して (1)任務 人権擁護委員会は、基本的人権擁護のため必要な調査をし、かつ必要な措置を審 議することを任務とする。 (2)人権救済について 人権救済申立とこれに対する対応(司法的処置、 ・警告、勧告又は要望、助言又は 協力など) (3)人権救済申立に対する勧告の具体例(日弁連において要望を行ったもの) 「名古屋市が白川公園内に居住する野宿者らに対して行った行政代執行が、実 効的で十分な交渉ないし説明がなされた上で行われたとは言えず、野宿者らの生 存権を侵害するおそれがあったとして、名古屋市に対し、今後は安易に行政代執 行手続を発動するのではなく、十分に時間をかけて話し合いによる解決を最優先 にすることを要望した事例(白川公園路上生活者人権救済申立事件 2009.3.31名 古屋市長宛要望) 」 (4)その他、最近の人権擁護委員会の活動内容について 死刑部会・生活保護部会・医療部会その他 4 多重債務者被害救済活動について (1) 「サラ金地獄」と呼ばれた被害状況について (2)サラ金二法について S58.ll.1 「貸金業の規制等に関する法律」の施行、 「出資の受入れ、預り金及 び金利等の取り締まりに関する法律」の改正 ← 利息制限法の定める利息との差  グレーゾーンとして存在 サラ金二法に対する弁護士会の当初の対応 (3)その後の貸付金利の変動と被害状況について 個人破産事件の増加・任意整理の増加など (4)グレーゾーン金利をめぐる最高裁判例の動向 最判18.1.13判決 「利息制限法所定の制限を超える約定利息とともに元本を分割返済する 約定の金銭消費貸借において、債務者が元本又は約定利息の支払を遅滞 したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下で、制限超過利 息を支払った場合には、特段の事情のない限り、制限超過部分の支払は、 貸金業の規制等に関する法律43条1項にいう「債務者が任意に支払っ た」ものということはできない。 」 何故に、上記最高裁判決による判断がなされたか。 (5)多重債務者被害の現状と対策について 5 民事介入暴力被害救済活動について (1)民事介入暴力とは 「民事執行事件、倒産事件、債権取立事件その他民事紛争事件において、いわゆ る事件屋・整理屋・取立屋及び暴力団員もしくはこれらに類する者が、被害者等 に対し行使する暴行、脅迫、強要、威力行為その他これに類する違法行為及び社 会通念上権利の行使または実現のための限度を超える不相当な行為をいう。」 (2)暴力団などによる違法行為の横行とその対策 刑事法制による取り締まりの限界と民事的対応の限界 刑事処罰の対象となるか否かが問題となる事案 民事事件としての被害救済の限界 仮処分・民事訴訟の限界 →刑事事件の対象になりにくく、民事手続としても対応しにくい行為がグレー ゾーンとして存在していた (3)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)後の状況 H4.3.1施行。一定の要件を備えた暴力団を「指定暴力団」として指定し、指定暴 力団に属する組員が、暴力団の威力を示し、一定の行為を行うことを禁止した。 暴力団からの離脱の援助なども制定 (4) H19.6.19 企業が反社会的勢力による被害を防止するための政府指針 について 反社会的勢力による被害を防止するための基本原則 ・組織としての対応・外部専門機関との連携・取引を含めた一切の関係 遮断・有事における民事と刑事の法的対応・裏取引や資金提供の禁止 6 質問事項(講演の途中で、私から聴講者のみなさんに下記の点をご質問します。) 質問1 白川公園路上生活者人権救済申立事件において、日弁連が要望を発したことは適切 と考えますか、不適切と考えますか。そのように考える理由は? 質問2 グレーゾーン金利という状態が存在していることは是としますか、非としますか。 そのように考える理由は? 質問3 反社会的勢力との取引関係を企業がすべて遮断するということは是としますか、非 としますか。そのように考える理由は? 以上