裁判員の模擬選任手続きで、裁判員候補者(手前)に質問する裁判長(中央)。左列は検察官、右列は弁護士=東京・霞が関の東京地裁で5月30日午前10時42分、須賀川理撮影
裁判員を選ぶ手続きも含め初めて本番同様の手順で行われた模擬裁判は1日、東京地裁で3日間の日程を終えた。愛人を刺殺したとして殺人罪に問われた女性が正当防衛を主張する架空の事件で、裁判員6人と裁判官3人は懲役4年の実刑を言い渡した。参加者の感想から課題を探った。【高倉友彰、銭場裕司】
■選ばれぬ理由
ドアを開けると、裁判官、検察官、弁護士計9人がズラリ……。候補者が「圧迫感を感じた」と話す「面接」から模擬裁判は始まった。裁判員を選ぶ「選任手続き」の試行は初めて。協力企業の社員名簿から無作為抽出された候補者20人が地裁に呼び出された。
面接の後、弁護士の要求で4人が候補者から外され、パソコン抽選で6人が決まったが、本人はその過程を知り得ない。選ばれなかった東京電力社員の一宮裕樹さん(33)は「3日分の仕事を調整してきたのに……」と残念そう。関係者からは「理由が分からなければ参加意欲をそぐのでは」という声も出た。
■スピード審理
初日の午後からはさっそく審理に。キヤノン社員、加藤吉幸さん(59)は「証拠って何?」ととまどった。裁判員制度では、裁判員の負担を軽くするため数日間のスピード審理が行われる。「初歩的な疑問で聞きそびれた。事前に勉強しておけば」と加藤さん。裁判員6人は一様に「時間が足りなかった」と話した。
■プロと素人の間
3日目の最終評議。有罪の結論が出た後、量刑について9人全員が一人ずつ意見を述べた。裁判官3人はいずれも実刑だったが、裁判員は実刑3人と執行猶予3人に割れ、多数決で実刑となった。
住友商事の子会社役員の鎌田憲二さん(53)は執行猶予派。再犯の恐れがなく、反省していると感じたからだ。「専門家3人がそろっていたので」と従ったが「人の人生を左右するのだから、本番は納得いくまで話し合う」と話した。他の裁判員からは「予想以上に自分の意見を言えた」「本番もぜひ務めたい」といった感想も聞かれた。
裁判長役の合田悦三裁判官は「今回は候補者が会社員ばかりで円滑にできたが、いろいろな職種や年齢層の方になれば面接により時間がかかるかもしれない。経験が必要だ」と振り返った。