http://www.nikkeibp.co.jp/article/mental/20110316/263934/?P=2「バイオ」「サイコ」「ソシオ」の視点で「現代型」に対応
今のお話の中にもありましたが、従来のうつ病とは異なる「現代型うつ病」患者が増えていると聞きます。渡辺先生の日常診療ではいかがでしょうか。
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渡辺 従来の「メランコリー型うつ病」は40代〜50代に多く、20〜30代の若い世代では確かに「現代型うつ病」が増えており、明らかにタイプが異なります。うつ病の治療においては、「バイオロジカル(生物的)」「サイコロジカル(心理的)」「ソシオロジカル(社会的)」、それぞれの側面からのアプローチが必要です。メランコリー型においては生物学的な面からの治療(主として休息と薬物療法)が中心でしたが、「現代型うつ病」では心理面や性格面、さらには環境調整といった社会的側面へのアプローチが重要となってきます。
また、先ほども述べたように、環境への適応がうまくいかないために生じる「適応障害」は昔から存在しましたが、従来は神経症レベルにとどまり自殺しないと思われていたタイプに自殺が生じるようになってきました。こうした変化を、精神科医の中では経験的に何となく気づいていたのですが、このような方の自殺が増えたことが新たな課題となっています。しかし、何でもかんでも「現代型うつ病」と言うのでは、大切なことを見過ごしてしまいます。
その見過ごしてはいけない大切なこととは何でしょうか。
渡辺現代型のうつ症状の中でも、「適応障害」レベルか「気分障害(うつ病)」レベルかの鑑別は重要で、それによって治療やリワークは異なります。「適応障害」であれば人事異動や労務管理、研修など、会社の中での対応を主体にやってもらっていいのですが、「気分障害」となればエネルギーが落ちている状態で、脳の機能回復が必要です。そこを意識せずに対応するから会社で自殺が生じる。従業員のメンタルヘルス対策にはメディカルが関わらないと危険で、その意味で、精神科医療の導入は不可欠です。
また、精神医学的な診断には相当の経験が必要とされます。例えば、うつ病の診断基準として「抑うつ気分が2週間以上続く」という項目がありますが、ここに「抑うつ気分」を正確に評価できるのかという問題があります。「抑うつ気分」の存在を評価するためには相当の見識と経験が必要で、精神科医には10 年ほどの単位で精神科疾患を経験し、「多くの人をみる」、「より深くみる」両面の経験が欠かせません。したがって、適応障害と気分障害の区別をするためには、相当な精神医学的経験が不可欠です。
それでは、こうした新しいタイプのうつ病患者に、どのような治療をしていらっしゃいますか。また、そこでの課題などがあればお聞かせください。
渡辺 どのうつ病患者においても、その背景には前述した「バイオロジカル」「サイコロジカル」「ソシオロジカル」の3要素があります。この3要素全てにアプローチしていかなければ本来の治療はできません。現在の精神科医療体制においては薬物療法などバイオロジカルな面からのアプローチはできても、会社との対応が求められるソシオロジカルの部分へのアプローチは困難な状況です。今後は精神科医の責任のもとで、サイコロジストやケースワーカーらがチーム医療として関われる体制が組めるような診療報酬体系が望まれます。
また、別の視点になりますが、うつ病の患者は一般医、かかりつけ医を受診することが多いため、うつ病診療においては、一般医と精神科医の連携も必要です。日本医師会でも連携を推進していますが、未だに「うつ状態を見落とさないよう」というレベルでとどまっている感は否めません。また、かかりつけ医のうつ病対応力向上研修会に参加する顔ぶれはいつも同じで、純分な啓発にはまだまだ遠いと感じています。
「躁うつ病」もしくは「うつ病」なのか「適応障害」なのか、あるいは「パーソナリティ障害」なのか「不安障害」なのか、これらの見識がないと適切な対応はできませんが、一般医にとっては困難な仕事です。かといって、うつ病の治療を精神科医が全て引き受けるキャパシティはありません。そこで、一般医と精神科医の連携強化を図ると共に、うつ病を診断・治療できる一般医の育成が急務です。
posted by fukusyoku at 11:19|
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