メキシコ湾内で続く原油流出で、沿岸のルイジアナ州で24日、除去作業にあたる作業員ら=AP
【ワシントン=勝田敏彦】米商務省のロック長官は24日、メキシコ湾で4月末以来起きている原油流出に関連して、同湾に面したルイジアナ、ミシシッピ、アラバマの3州に「漁業災害宣言」を出した。今後予想される漁業被害に対し、連邦政府の予算で手厚く、機動的に対応できるようにするための措置。
流出の原因となった海上石油掘削基地の爆発事故発生から約1カ月たち、流出原油は広がっている。ルイジアナ州の広い範囲の沿岸に油が漂着。湿地にも影響が出ている。また一部水域の禁漁も続いている。流出量は1日800キロリットルと推定されているが、実際には数倍に上るとの見方も出ている。
これまで、巨大な構造物を海底の流出地点にかぶせる作戦や、流出元のパイプに別のパイプを接ぐ作戦が実施されたが、いずれも有効な対策にならなかった。採掘権を持つ国際石油資本(メジャー)の英BPは今週、油井の安全弁に泥などを注入して流出を食い止める「トップキル」と呼ばれる作業を行う予定だが、うまくいくかどうかはわかっていない。
油滴を細かくして分解を早める薬剤の散布も行われているが、薬剤による環境汚染の心配も出ている。米環境保護局(EPA)はBPに対し、より毒性の少ない薬剤の使用を指示した。
米政府は、原油流出に伴うあらゆる経済被害は、BPなどに責任があるとの立場だ。だが地元の州や自治体から、連邦政府の取り組みが甘いとの批判が出ており、漁業災害宣言にはこうした批判をかわす狙いもあるとみられる。
オバマ大統領は先週、今回の原油流出に関する大統領委員会を設置して本格的な調査を指示した。大統領委は、1979年のスリーマイル島原発事故や86年のスペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故でも設置されている。