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「産業突然死」の時代の人生論

IMFの支援でアジア通貨危機を乗り越えた韓国

 ウォン暴落といえば、思い出されるのは1997年のアジア通貨危機だ。この年の夏、タイで始まった通貨危機は、12月にはウォン暴落に飛び火したのである。

 経緯を簡単に説明しておこう。タイの通貨バーツに対して、ヘッジファンドが売り浴びせを仕掛けたことが事の発端だ。タイ政府は買い支えようとしたのだが、限界を迎えてしまったために、IMF(国際通貨基金)の支援を受けることになった。このバーツの暴落から東アジアに通貨危機が広がっていった。特にひどかったのが韓国だったのである。ちなみにこの後、ロシア・ブラジルにも被害は広がった。

 その後、韓国もIMFの支援を受けて、どうにか危機を乗り切った。しかしその後の非常に長い期間、いわゆる"IMF占領軍"がやってくることになった。IMFは支援した代わりに、財閥解体などのさまざまな経済政策を指導した。そこから回復するまでに、韓国もそうとう大変な思いをしたわけだ。今回の韓国も、当時と同じくらいシリアスな状況であることは間違いない。

 韓国は現在の危機を乗り切ることは可能だろうか。前回のアジア通貨危機のときのように、財政破綻まで行ってしまうのか。

 前述のアジア通貨危機のときは、ありていに言えば韓国の一人負けだった。そのため、IMFも韓国経済に集中して支援をすることができた。もちろん実際には韓国だけでなく、発生源となったタイ、インドネシア、フィリピンなどの国々も経済的な打撃を受けたわけだが、やはり最大の問題を抱えていたのは韓国だった。

 1998年には政権交代が起こり、金大中大統領が誕生した。そして生まれたばかりの大統領は素直にIMFの指導を受け入れた。それにはとんでもなく厳しい指導も多かった。財閥は基本的には三つの事業に集中しなくてはいけない、などの指導がその中に含まれていた。資本の対外開放によって特に米国系の金融機関やサービス産業、IT企業などが雪崩を打って参入してきた。

 一方、金大中大統領も奇抜な景気刺激策を使った。建築基準を変えて建物の容積率を倍にしたり、減価償却の期間を半分にしたり、投資を促すあらゆる手だてを矢継ぎ早に打った。なかには「キャッシュレジスターにトトカルチョを埋め込む」といった施策もあった。客がクレジットカードを使うとレシートに番号を振り、当たれば商品がもらえるといった射幸性の高いやり方で消費をあおった。もちろんクレジットの奨励は税金の捕捉率を高める隠れた目的も埋め込まれている。

 このように金大中政権はありとあらゆる施策を矢継ぎ早に実行した。その背景には、金大中大統領がその職に就いたばかりで、何が何でも経済政策で失敗するわけにはいかないという事情があったのだろう。ともあれこれで韓国は危機を脱し、IMF管理を予定より早く卒業して、元の高成長軌道に返り咲いた。

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