しかし、今回は当時とは事情が異なる。いかなIMFとて韓国ばかりにかまっていられないからだ。IMFは既に破綻しているアイスランドの救済に入っているし、ハンガリー、ウクライナ、パキスタンなどへの支援も行わなくてはいけない。この後、中南米、アラブ諸国、東南アジアなどが列をなすことも予想される。韓国はIMFを卒業したのだから、自分の面倒は自分で見ろ、ということになる可能性が高い。
前回の通貨危機では(米国の要請で)日本も韓国に大きな支援をしていた。ところが、いまの日本政府に前回と同様の支援を行えるだけの体力があるかというと、「?」である。というより、世界中で金融危機に陥っている現在、そういう経済力を持っている国は少ない。
そこで韓国は、8月に入り金利を上げた。高金利にして、世界からお金を集めようという考えである。その後、韓国銀行(中央銀行)は、世界的な金融危機などを受け、10月に金利を下げてはいるが、それでも銀行の定期預金の金利は5~6%と高く、他の国の預金に比べれば魅力的だ。
ただ、それだけでは効果は少ない。なぜなら、日本人は韓国に定期預金ができない。「高金利だから韓国に口座を作ってお金を預けてください」と言われても、口座そのものが作ることができないのだ。在日韓国人には認められているのだが、日本人には許可されていない。これでは、高い金利を保っている効果が半減されてしまう。
この制約については、わたしもアジア通貨危機の際に金大中大統領に進言したのだが、彼は実行しなかった。しかし、今回こそはこの制約を撤廃し、日本人が韓国で定期預金できるようにするべきだ。そうすれば日本から多額のお金が韓国に渡るだろう。しかも、ウォンが下落している現在のレートでは日本円が非常に有利なので、日本側にとってもメリットは少なくない。日本円を通常よりも多くのウォンに換えられるし、金利が極めて低い日本と比べて韓国の現行6%くらいの定期預金の金利は魅力がある。
したがって、もしこの提案を実行するならば、日本人の持つかなりの貯金が、韓国に移行することになるだろう。そうなれば、韓国は流動性が確保できる。
10月29日に韓国は米国中央銀行との間で通貨のスワップ協定を結んでいる。韓国ウォンを提供して米ドルを300億ドルまで調達できるようにしたものだ。米国は現在13カ国と同様な協定を結んでいるから、これ自身は特別なことではない。しかしその天井が3兆円というのは余りにも低い。日本の個人金融資産の1%がウォン買いに走ったとすれば15兆円である。これと比べてみればいかに3兆円が低い額か、逆に言えば、上記戦略がいかに有効であるかが分かるだろう。
実は日本から資金が流れれば韓国は円を得る。それをドルに転換すればよいだけの話しで、流動性危機は避けられる。しかし多くの日本人が自分の金融資産のごくわずかでもウォンで持つようになれば、ウォンは強くなり、日本人からの投資も資産価値としては上昇することになる。危機の時こそチャンスということで、今、株や通貨に走っている個人が多いが、ウォンであればイザとなれば週末旅行でも使える。慶州旅行などと組み合わせて魅力のあるパッケージ商品として開発することも可能である。韓国政府の早急な規制緩和を望みたい。