2011年11月18日

メタンハイドレート開発妨害の「事情」(1/2)


《1》
 メタンハイドレート(methane hydrate)は、天然ガスが海底で氷になっているものを言う。燃える氷と言われる埋蔵エネルギー資源である。
 メタンガスと水分子が結合してできたシャーベット状の固体物質で、その体積の約200倍ものメタンガスを結晶中に貯蔵しているとされる。海底のほかに凍土にも堆積されている。
 メタンハイドレート(MH)は石油・天然ガスに代わる次世代資源として、今世紀に入ってから注目を浴びるようになった。

 とりわけ日本周辺の海底には世界でも有数の埋蔵量があると推定され、これが商業ベースで開発されるようになれば、わが国は一気にエネルギー資源大国に躍り出るのはまちがいない。

 わが国では経済産業省主導で、主に太平洋側(南海トラフ)あたりの海底に眠るメタンハイドレート(MH)を発掘しようとするプロジェクトを、税金500億円(10年間)を投入して進めてきた。しかしこの領域のメタンハイドレートは、3000メートルほどの海底のさらに地中に砂とまじって「広く薄く」存在するので、現状ではその砂から取り出す方法がネックとなり、採算ベースにのっていない。

 つまりこれまでの官製の研究はほとんど無駄であった…ということになっている。あるいはそういうことに為政者はしておきたいらしい。
 南海トラフのMHに関しては、以下のサイトが詳しい。
http://www2.plala.or.jp/yamateru/kankyo/atom/metan_1.htm

 しかるに、それとは逆に日本海側の海底で発見されるメタンハイドレートは、比較的浅い海底、もしくはその少し下の地中に、石ころのようにゴロゴロと集中的にかつ固まって見られる。どういうわけかズワイガニがこのメタンハイドレートのある場所に集まってきて、何かを食べているらしい。

 日本海のMHはなんと魚群探知機で簡単に見つかる。大掛かりでカネもかかる海底探査装置を使う必要がない。

 わが国はMHの研究開発では世界の先進国だそうで、その研究をされているのが、青山千春博士である。彼女は評論家・青山繁晴氏の奥方である。MHのある海底の位置を魚群探知機で見つける方法は、青山千春氏が見つけ、特許をとっている。

 YouTubeの動画では、チャンネル桜に出演してこのメタンハイドレートについて語ったものがいくつか見られる。
http://www.youtube.com/watch?v=KzX7FTHMr64&feature=relmfu

 青山繁晴氏もメタンハイドレートについて語っている。
http://www.youtube.com/watch?v=t8Jb_7y3tEw&feature=fvst
http://www.youtube.com/watch?v=zG-ku7bXH6Y&feature=related
 石油メジャーもメタンハイドレートに関心を寄せているし、青山氏によればアメリカ、中国、ロシア、韓国、インドなどの国はとうに日本が隠れた資源大国だと認識しているそうだ。また、そのことを日本政府は知りながら国民に隠し続けている不可思議な国、と評価しているというのだ。

 そのことを青山繁晴氏は田母神俊雄氏との対談で明かしている。
http://www.youtube.com/watch?v=TtVb_SglvdU
 このチャンネル桜で語られた事実には唖然とさせられる。
 なぜかなら、日本海の無尽蔵とも言えるメタンハイドレートが注目されるようになり、日本がわざわざ海外から高い金を払って天然ガスを輸入しなくてもよくなれば、こんなすばらしいことはないのに、それを喜ばない勢力が日本にはいるというのだから。

 それはどういうことかと言うと、一つにはこれまでのエネルギー資源に関しては利権がまとわりついているからである。近代以降、人類は石炭、石油、天然ガスと埋蔵資源を活用してきたわけだが、そのいずれもがわが国では、支配層(財界、官僚、政治家、大学など)が利益をむさぼる利権になっている。

 だから、もしメタンハイドレートが実用化されると、石油や天然ガスの利権を持っている役所や政治家らが困ることになるのだ。だから、いくら日本海に無尽蔵のエネルギー資源が眠っているとわかっていても、予算をつけて研究開発させないというのだ。

 それともう一つは、日本は先の戦争で敗戦国となったのだから、エネルギー資源を自前で確保してはいけないことになっているというのである。これまでも、そしてこれからも永遠に、と。
 ??なんのこっちゃ? 理屈にもなっていない。敗戦国は永遠に戦勝国からエネルギーを恵んでもらわなければいけないなんて! 
 けれど、この言い分には、重要な意図がこめられている。


(※ MHの研究者である東京大学の松本良氏の説明が以下で読める。
 http://www.ifsa.jp/index.php?21-75
http://www.bayfm.co.jp/flint/20091025.html




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2011年11月17日

北朝鮮・柳京ホテルはフリーメーソンと関連?


 11月15日のサッカーW 杯アジア予選の日本対北朝鮮戦があった。 
 TVニュースで見たかぎりだが、北朝鮮選手の異様な(ラフなプレー)張り切りように驚かされた。

 そんなことはともかくとして、久しぶりに平壌市街の映像が映し出されたのを見て、実はゲームよりも驚いた。
 それは2012年開業とされる、柳京ホテルの映像がしきりに何度も映し出されたことだった。

 YouTubeでそのホテルの像が見られる。
http://www.youtube.com/watch?v=yLhKhgi0AAQ&feature=related
 ほんの16秒ほどだからご覧いただきたいが、これを見ればもう露骨なほどのフリーメーソンのピラミッドと目玉の形である。「万物を見通す目」と言われる。
 このピラミッドと目玉のことは、本ブログ11月7日付「『ダンボ』に見るフリーメーソンの痕跡」で書いた。

 アメリカの1ドル札裏側に描かれているフリーメーソンの「印」とほぼ同じではないか。正面の上層の窓がちょうど目玉のように2つ開いているのがはっきりわかる。フリーメーソンのほうは目玉が一つ、柳京ホテルは二つになっているようだが、酷似と言ってよいのではないか。
 詳しい人に聴いてみたい。

 さらにホテルを上空から撮影した映像もある。
http://www.youtube.com/watch?v=8KxgDN2mmIg&feature=related
 この映像の1分13秒あたり(全体は2分23秒の動画)にホテルの周辺の地上部分の模様が見える。
 これも例のフリーメーソンの定規とコンパスのシンボルマークにも見えるであろう。

 北朝鮮に建設中の「柳京ホテル」は世界一高いとの触れ込みである。高さは世界一の330メートルで、105階建て。
 北朝鮮政府は故・金日成元主席の生誕100年を記念するため、柳京ホテルを2012年4月15日までに開業させる予定だという。

 着工は1987年であったが24年も経ってようやく完成する運びとなった。途中、カネがなくなったらしく工事延期や停止などの紆余曲折を経てやっと来年完成に至るようである。

 工事をはじめてから途中でストップし、実に16年間も放っておかれた。(土台が腐ったりしないのか?)
 それが2008年4月、エジプト通信大手のオラスコム・テレコムの投資により建設が再開。このエジプト企業は朝鮮での事業展開を計画しているとか。
 世界一高いホテルであるうえ、平壤で最も目立つシンボル的な建物になる
というので、TVニュースが(サッカーのニュースなのに)、しきりに平壌の最新映像などと言って柳京ホテルを映した理由はなんだろうか。ザイニチにサービスしていることもあるのかもしれない。

 日本人にとってはそんなことより、いまだ拉致被害者を返さない不届きな北朝鮮に怒っているのだから、こんなホテルを見せられたくはない。

 とまれこのピラミッド形のホテルは、北朝鮮がフリーメーソンの支配下にある証拠であろう。エジプトの通信会社が資金を提供したのが事実としても、その会社はきっとユダヤ資本ではなかろうか。そうでないかぎり、莫大な観光収入が見込めるわけでもない平壌に多額の投資をするわけがない。

 高さ330メートルというのも不気味ではないか? 「33」はフリーメーソンやユダヤ教が崇拝する数字である。フリーメーソンの位階は33まである。
だから330メートルのピラミッドを連想させる建物は、彼らが誇示しているものと考えられよう。







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2011年11月15日

ショック・ドクトリンの日本への適用(2/2)


《2》
 ナオミ・クラインが“発見”したアメリカ政府とグローバル企業のやり口がショック・ドクトリンである。

 自由放任資本主義推進運動の教祖ミルトン・フリードマンの“根城” シカゴ大学経済学部は要するにユダ金や投資家の利益を代弁している。彼らは、「大きな政府」や「福祉国家」をさかんに攻撃し、国家の役割は警察と契約強制以外はすべて民営化し、市場の決定に委ねよと主張してきた。反ケインズ主義である。

 そしてシカゴ学派は「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べてきた。
 だがそのような政策は有権者の大多数から拒絶され、アメリカ国内で推進することはできなかった。

 ちなみにシカゴ大学は、ロックフェラーがカネを出してつくったものである。いちばんノーベル賞受賞者を出している大学としてしられる。またオバマ大統領はシカゴ大学の法学部出であるが、シカゴ学派の人脈にあたる。だからすべてを自由化しろというTPP政策を推進しようとするのだろう。

 民主主義社会の下では、要するに民衆は個人の権利を主張してやまないから、国家の(民衆の利権を保つような)統制を全部取っ払えという大胆な自由市場改革は容易には実現できない。それを最初に断行したのが、ピノチェト独裁下のチリ(1973年〜1990年)であった。

 ピノチェトはCIA支援のもとに、アジェンデ社会主義政権をクーデターで倒して実権を握った。無実の一般市民の処刑や拷問を行ったことは悪名高い独裁者だが、それと同時にシカゴ学派による経済改革がチリで推進された。ナオミ・クラインによればこれは偶然ではなかった。チリの例がシカゴ学派が主導したショック・ドクトリンの、最初の適用例だったというのである。

 事実、ピノチェト大統領はフリードマンの弟子たちシカゴ学派のマネタリストを多数、チリに招き、いわゆる新自由主義経済を実施したのであった。

 ピノチェトがクーデターを起こす前までは、第二次世界大戦後の南米の南部諸国、チリ、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイは「開発主義」政策が成功しつつあって、貧困社会が徐々に豊かになり、貧富の格差が解消されようとしていた。
 それはユダヤ国際金融資本にとっては望ましい傾向ではなかった。ユダヤ戦略は、大勢の人が豊かに幸せになっては困るのであって、一握りの金持ちがもっともっと金持ちになる施策だけを採用したいのである。

 そのユダヤの欲望を「理論」にしたのが、フリードマンの主導するシカゴ学派であった。ユダヤ=アメリカは、南米の若者を大量にアメリカ本国へ、それもシカゴ大学に特化して留学させ(費用を負担し)、新自由主義経済を熱烈に信奉するようラテンアメリカのエリートたちを洗脳した。奴らはそこまで狡猾で遠大な計画をたてるのだ。

 そうして準備万端ととのえたうえで、アメリカはCIAを使って、ピノチェトにクーデターを起こさせたのであった。

 クライン女史はこう書いている。
 「ピノチェトによる暴力的なクーデターの直後、チリ国民はショック状態に投げ込まれ、国内も超インフレーションに見舞われ大混乱をきたした。
 フリードマンはピノチェトに対し、減税、自由貿易、民営化、福祉・医療・教育などの社会支出の削減、規制緩和、といった経済政策の転換を矢継ぎ早に強行するようにアドバイスした。

 その結果、チリ国民は公立学校が政府の補助金を得た民間業者の手に渡っていくのを呆然と見守るしかなかった。チリの経済改革は資本主義の大改革のなかでもいまだかつてないほど激烈なものだった。」

 この経済政策をフリードマンは「ショック治療」と呼んだのである。

 ピノチェトの経済政策は、フリードマンをして「チリの奇跡」と自讃した繁栄を招いた。そのチリの「短期的成功」を手本に、サッチャー、レーガン、クリントン、そしてわが国の中曽根、小泉政権が新自由主義経済を主張ないし実施したのであった。

 しかし、チリの実験は結局、失業者の増大や貧富格差社会を生み、今日では失敗とされる。日本の惨状は、小泉純一郎首相の政策で失業者を増やし、格差社会を出来させた。
 要するに国営企業の民営化とか、農地の大手企業への集約化などのユダ金が儲けた話になったのだ。

 ピノチェトがやったことは、スマートとはいえない悪名高い人権侵害ではあるが、これは世界中のマスゴミの解説では、反民主主義的な体制によるサディスト的な残虐行為とみなして非を鳴らしているように見える。
 けれど、実はこの仕掛けは民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画されたものであり、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきたのだ、とクラインは説くのである。

 このクライン女史の“発見”は見事であるけれども、彼女がいわば眼光紙背に徹する的に見抜いたというより、このようなことを公然と認める経済学者たちの発言が、たくさんの文献に残されているのである。

 自由市場経済を提唱するユダヤのマネタリストたちは、急進的な市場経済改革を実現させるには、大災害が不可欠であると書いているそうだ。
 「民主主義と資本主義が矛盾することなく、手を携えて進んでいくというのは、現代社会における最大の神話ですが、それを唱導してきたまさにその当人達が、それは嘘だと告白しているのです。この事実をふまえて、この数十年の歴史を振り返ってみることは、私たちがいま、どうしてここまできてしまったのかを理解する大きな手がかりとなるでしょう」とクラインは語っている。

 さて、ここまでナオミ・クラインの説くショック・ドクトリンの概略を紹介してきたが、彼女はあくまでアメリカ政府とグローバル企業が、CIAを使うなどして、戦争や災害などの惨事が「起きたら」それを利用して、民衆をたぶらかして市場経済改革を一気呵成にやってのけてしまうのだと言う。

 しかし私はユダ金どもが惨事が「起きる」まで待っているとは考えられない。それではまるで「木の切り株にウサギが走ってきて転ぶ」のを待っているようなものではないか。「起きるまで待つ」のではない「起こしている」のだと思うのである。だから惨事のほとんどは陰謀であろう。

 だから、従前から言っているように、もしかして…と留保しつつも、3・11の地震は引き起こされたのではないのかと言っているのである。人工地震の可能性を頭から否定するのはどうかしている。
 中野剛志氏のTPP批判は、実に教えられるところが多々あるが、彼は災害が偶然起きたと思い込んでいる。

 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』からもう一度引用する。
    *     *     *

 フリードマンはきわめて大きな影響力を及ぼした論文のひとつで、今日の資本主義の主流となったいかがわしい手法について、明確に述べている。私はそれを「ショック・ドクトリン」、すなわち衝撃的出来事を巧妙に利用する政策だと理解するにいたった。

 彼の見解はこうである。
 「現実の、あるいはそう受けとめられた危機のみが、真の変革をもたらす。危機が発生したときに取られる対策は、手近にどんなアイデアがあるかによって決まる。われわれの基本的な役割はここにある。すなわち現存の政策に代わる政策を提案して、政治的に不可能だったことが政治的に不可欠になるまで、それを維持し、生かしておくことである。」

 大災害に備えて缶詰や飲料水を準備しておく人はいるが、フリードマン一派は大災害に備えて自由市場構想を用意して持っているというわけだ。


     *     *     *

 かくのごとくクライン女史は、フリードマン一派は(つまりユダ金は)大災害に備えて自由市場構想を用意して持っていたのだと述べる。けれど、そんな「百年河清を俟つ」なんてことを強欲ユダヤがするわけがなかろう?

 ゆえに、アメリカは(ユダ金は)日本にTPPを押し付けるために、事前にショックを与える戦略をとったのである。それが地震と津波による大震災と放射能騒動の演出であったと私には思える。
 菅直人という無能で癇癪持ちの首相をこのときに就任させておいたのも、周到なショック政策の一環だったのではないか。






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2011年11月14日

ショック・ドクトリンの日本への適用(1/2)


《1》
 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を知ったのは、今をときめく反TPP論客の旗手である中野剛志氏(京都大学准教授)の動画を見てのことだった。
http://www.fullmusicasvip.com/videos/-xbqnk914pdmKyKY.html

この、桜チャンネルの座談会で語っている反TPP論のなかで、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を引き合いに、今次の震災後の“ある意図”を解説している。

 この動画の5分30秒あたりから、以下のように中野氏は説く。動画の解説から引用する。
    *     *     *

 中野氏:カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが書いた『ショック・ドクトリン』という本がある。
 ショック・ドクトリンとは、自然災害や恐怖政治、戦争とかの人に恐怖やショックを与えるような事が起きた後に、「私が解決します」と扇動家が出てきて「これをやれば解決します」といって過激なプランを出すとみんながそれに飛びつくというものだ。

 ショック・ドクトリンによって、通常、導入するのをためらわれる市場原理主義に則った政策などが採用されている。
  阪神大震災、オウムなどがあって、そのあと橋本龍太郎が6大改革という過激な事をやりデフレに陥れ金融危機を起こし、ますます閉塞感が出てきて小泉改革というショック・ドクトリンにみんなが飛びついた。

  リーマンショック後、尖閣問題などの後に「平成の開国」なども同じ。彼らは皆、一様に突破口だとか起爆剤と言い、ショック・ドクトリンにみんなが飛びついた。
 災害時に「ビジョンを持って大きく世の中を変えていくチャンスと捉える」までは正しいが、それをみんなが求めているが故に、安易なショック・ドクトリンに飛びつく可能性が出てくる。

 今は東北の人たちが辛抱強い、がんばっている。しかし人間が2〜3ヶ月もほおって置かれたら限界がくる。 「もういい加減にしろ」と言ったタイミングで、「私にはこんな妙案があります」というものが出される。いや既に出てきている。」

  TPP「平成の開国」や増税もその戦略の上で出されている、まさしく「平成の売国」だ。
 
(チャンネル桜の闘論!倒論!討論!平成23(2011)年4月9日放映の「どうする!?震災復興と日本の行方」で中野剛志教授が語られた内容を抜粋しました。)


     *     *    *

 ナオミ・クラインが2007年に発表したThe Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism(『ショック・ドクトリン:惨事活用型資本主義の勃興』 岩波書店)は、サブタイトルでは“惨事活用資本主義の正体を暴く”となっている。
 同書は、社会が大きな惨事や危機(戦争、災害、政変など)に見舞われたとき、民衆がショックと呆然自失に襲われ、あるいは、惑わされたとき、権力から目の前に出された救済策に飛びつくのにつけこんで、本来なら不可能と思われた過激な自由主義市場経済、あるいは企業寄りの政策を強行するアメリカ政府とグローバル企業の手口を論じている。

 ショック・ドクトリンの創始者は、シカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマンである。むろんユダヤ人だ。
 フリードマンは、ケインズ主義に反対して徹底した自由市場主義を主張し、規制撤廃、公営から民営化への移行などを主張した。

 戦争や天変地異などの惨事につけこみ、過激な荒治療をして民衆を言いなりにさせる(認識を転換させる)という発想は、アメリカCIAが用いる拷問の手法から転用されたものだとクラインは言う。

 「チリ、中国、そしてイラクに至るまで、グローバルな自由主義市場改革運動が手を携えてひそかに行われてきたこと、それが拷問であった。拷問は反抗的な人々に彼らの望まない政策を強引に押しつける手段というだけではない。それはショック・ドクトリンの底流を流れる論理のメタファー(隠喩)でもある。」

 とクライン女史は説く。「拷問(CIAは「強制尋問」と呼ぶ)とは、拘束者を深い混乱とショック状態に陥れ、本人の意思に反して屈服させるための一連の手法のこと」である。
 拷問でショックを受ければ、拘束者は理性的に考えることも、自分の利益を守ることもできなくなる。

 「この拷問の手法をそのまま真似て、大規模に展開しようというのがショック・ドクトリンである。いちばんわかりやすい例は9・11の衝撃だろう。多くの人々にとっての『慣れ親しんだ世界』が崩壊し、深い混迷と退行の時期が到来した。ブッシュ政権はそれをじつに巧妙に利用した」

 これはまさしく、中野剛志氏が指摘しているように、3・11東日本大震災と福島原発事故という大惨事により、日本人が今、受けているショック状態に思いをいたさねばなるまい。

 これまで世界中で起こされてきた惨事、たとえば天安門事件、ハリケーン・カトリーナのニューオリンズの災害、チリの独裁者ピノチェトによる軍事クーデターと暴力的弾圧、スリランカへの津波、サッチャー英首相時代のフォークランド戦争、ロシア・エリツイン大統領によるクーデター鎮圧、などを例をクラインは挙げている。

 今度の震災と放射能騒動につけこんで、アメリカはまさにTPPを日本に強要してきているではないか。

 震災と原発事故によって、「多くの人々にとっての『慣れ親しんだ世界』が崩壊し、深い混迷と退行の時期が到来した」と同時に、「私が解決します」と扇動家(野田佳彦首相)が出てきて「TPPをやれば解決します」といって関税自主権総撤廃という過激なプランを出すとみんながそれに飛びつくというものだ。
 そしてマスゴミがそれを煽っている。

 フリードマンら自由主義経済推進者どもは、端的に言えば、自由市場の形成、規制撤廃、民営化を自治減させようとしてきた。まさに今次のTPPはアメリカから日本への規制撤廃要求である。




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2011年11月11日

ロスチャイルド、通貨強奪の歴史


 以前、本ブログで宗鴻兵著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』(ランダムハウス講談社)を紹介したことがあった。

 例えば11年8月26日付「円高は誰のために起こされているか」で、「宗鴻兵著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』を読めば、こういう金融恐慌とか、世界株安とか、為替変動とかはみんなユダヤ金融資本家が操っているのである。
 疑う方はぜひこの2著を読まれたい。これまでのユダヤによる騙しの歴史がしっかり書かれている。今度の円高も結局はユダヤ金融資本が仕掛けているのである。」
 としたためておいた。

 昔、私の道場生だった歴史学の学究に、宗鴻兵(ソン・ホンビン)の本を教えたあげたところ、最近になって以下の手紙が届いた。それを今日は紹介したい。

   *     *     *
 先生には深々と感謝の礼をしなければなりません。
前回のお手紙で宗鴻兵著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』を紹介してくださったことです。
 この本のことがずっと気になっていて近所の2つの書店をいつも覗いてはいたのですが、みつかりませんでした。

 学生時代以来、恒例の神田神保町通いも足の具合がかんばしくないせいで途切れています。
 ところが5日ほど前に近所のスーパーの3階にある雑誌やコミック誌がほとんどの書店でこの本を発見しました。2010年8月3刷版ですが、何故このような本屋にあるのだと、奇跡の邂逅に感激、即、買い求めて読み始めました。

 読み始めてビックリ。この本を薦めてくださった先生の顔が浮かびました。
 これは名著だと思います。今年読んだ本(100〜150冊くらいだと思いますが)の中では群を抜いていると感じつつ、昨日、読了。

 この本に比べると、副島隆彦氏の本は(同じような内容のことを書いているのですが)知識の部分的な切り売りで、1冊ごとの内容が価格に対して薄くなります。出版資本主義のベルトコンベア(リズム)に乗ってしまった椎名誠のように。

 鬼塚英昭氏の『ロスチャイルドと共産中国が2012年、世界マネー覇権を共有する』も良い本ではありますが、資料の読み方(読み込み)が平板的で、おそらく宗鴻兵と重なる世界の構図(世界支配の実態)をご存知のはずなのに、充分描きだせていないと感じました。

 鬼塚氏の場合、経済や経済史は専門分野ではないので、それでも充分(価格以上の内容である)と言えるのですが、感情(感傷)や文学的要素も含んだ『天皇のロザリオ』や『20世紀のファウスト』のほうが質が高いと判断しています。

 とにかく、このようなすごい本を紹介していただいた先生に感謝します。この本は今年ナンバー1の収穫ですが、ここ10年の幅で見ても、八切止夫以来の喜びかもしれません。もちろん南郷先生のご著書と「学城」関係の本は除いてです。

 『看護のための「いのちの歴史」の物語』(現代社)は、はるかに上位ですが、それでもこの本を読了した後の興奮は、誰かに語りたくなる力を持っていました。著者が中国人で、自分より20歳も若い人だというのも驚きです。宗鴻兵の著書を考えると、もっともっと修業=勉強をしなければと思います。

 寒い季節になりました。先生もお体には充分ご留意ください。

    *     *     *
 宗鴻兵著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』は、昨日までブログに書いていた「ワン・ワールド主義者の世界戦略」に通ずるというか、実に科学的、実証的にワン・ワールド主義者の陰謀を明らかにした本である。

 鬼塚氏の本への感想も、私は同感である。鬼塚氏の最近の金融本は優れた評論とは思うが、手紙の彼が言うように、鬼塚氏の『天皇のロザリオ』や『20世紀のファウスト』のように氏がやむにやまれず、人生を賭けて書いたという感情面の昂揚はない。以下に述べるような副島隆彦氏の最近の著作のような、(言葉は悪いが)売るための本に近づいているような気がした。

 『天皇のロザリオ』『20世紀のファウスト』は鬼塚氏がまだ中央に知られずに、大分県で自費出版した処女作なのである。評論ながら、文学的香気すら漂う秀作になり得たものだ。

 さて、引用した手紙のなかに副島隆彦氏への批判があったが、私も同感で、彼は本を出し過ぎである。とにかくバタバタと政治・経済ネタで本を書きまきくっていて、あれで「おれは世界一の学者だ」はないものだ。まともに政治学でもいいし歴史学でもいいが、本にまとめようとするなら、年に1冊でも多いのではないかと思う。

 誰が読んでも、副島氏の矢継ぎ早に出される本と、宗鴻兵著『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』のいわば重量感の違いは歴然であろう。手紙の主が感動するとおりだ。

 ある医師からのメールでも、副島氏に関して、次のように辛辣かつ的確な指摘がなされている。
 「副島氏の〈学問道場〉掲示板お読みになりましたか? いよいよその正体を現したという感じです。今頃になってようやくTPPの話題です。中野剛志氏の 論文を転載して済ませています。たしかに中野氏の解説はすばらしい。
 確かに中野氏の論文は論点が整理されていてわかりやすく本質にせまっています。しかし副島氏はただそれをコピペして
《彼の意見をしっかり読むことが TPPについての一番優れた簡潔な理解となるだろう》なんて書くところがいかにも手抜きで怠慢、もうこいつは終わったなと思いました。」

 以前から言うように、私は副島氏が「国際問題評論家です」というならとりたてて批判などしない。次から次に、食っていくために本を上梓しても構わない、賛否は別として。けれど自分は学者だというから批判せざるを得なくなるのである。
 学者だというなら、別にTPPや原発被害について慌てて言及しなくてもいいのだ。じっくりと国家とは何か、経済とは何かといった論文をものしていけば、それが自ずとTPPの問題を考える学的中身になるはずだからである。

 ただ私はこの医師からのメールの副島批判はすべてに賛同するものではない。
「こいつはもう終わったな」などとはちょっと言い過ぎではないかと思う。
 私は、副島氏は(もともと)学者ではないが評論家なら評価すると言ってきた。だから評論家としてなら「終わった」とは思っていない。彼の〈学問道場〉は本来〈評論家道場〉とするべきであろうと思う。

 評論家なら中野剛志氏の文章をコピペして自分のホームページで公開してもいいのではないかと思っている。むろん学者がそれではダメであるという意味では、この医師の意見に賛成である。
 頭からもうダメだと切って捨てるのではなく、条件次第だという弁証法的な考慮が必要だと思う。
 
 比較するのもどうかと思うが、南郷学派の学問雑誌「学城」は年に1回程度の発行である。学問的な、後世の評価に耐えうる論文をということになれば自ずと、こういうスパン(?)でしか発表できないのである。




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