2011年11月26日

読売巨人軍の内紛を斬る


 ある人から昨今話題の、プロ野球巨人軍の内紛をどう思うかと尋ねられた。
 この人は巨人ファンであるらしく、とても心配している様子であった。
 私は別に巨人のことなど好きでも嫌いでもないけれど、聞かれたから答えることにした。

 スポーツ報知のウエブ版から記事を引用しよう。11月25日付けである。
 「プロ野球巨人の渡辺恒雄球団会長(85)を企業統治の観点から批判し、球団代表を解任された清武英利氏(61)が25日、東京都内で記者会見を開き、解任はコンプライアンス(法令順守)違反を隠すためで報復措置でもあり違法、不当なものとして「そう遠くない時期に必要な訴訟を提起する」との声明を出した。
 巨人の桃井恒和球団社長(64)は会見を受け「解任理由は全て正当であり、変更すべきところはないとあらためて確信した」とのコメントを発表した。」

 清武氏にも言い分があるのだろうし、あそこまで頭に来て不満をぶちまけたのだから、たぶん非は渡辺恒雄球団会長にあったのだろう。
 そもそもナベツネ氏は野球ファンから嫌われている。傲慢、ワンマン、野球を私物化しているなどと、読売以外のマスコミで叩かれ、庶民もそれに同調している。

 私もそうやって漏れ聞こえてくる評判で判断すれば、ナベツネは嫌な男だと思う。
 CIAのエージェントだった正力松太郎の衣鉢をついでか、ナベツネも政治にクビを突っ込んで、政局を思うままに動かそうとするほうが問題であるが、ここは野球のことにのみ答えたい。

 ナベツネは嫌な男ではあるが、見方をちょっと変えると、「我が身すなわち巨人軍」あるいは「我が身すなわちプロ野球」と君臨している姿勢は見事ではなかろうか。

 「たかが選手」とか「たかが清武ごとき」とかの、傲慢不遜を良いと言っているのではない。しかし、トップに立つ人間としては、ナベツネ氏のありようは「あり」だと思う。くどく言っておくが、彼のやり方、発言が良いというのではない。また、所詮は大衆娯楽の世界の話ではある。
 だから君臨するトップが自分の意向、判断を部下に命令するのは間違っていない。中身がどうあれだ。

 一度決め、承認した人事案を一声でひっくり返したのは良くなかろうが、しかしそれがトップである。「我が身すなわち巨人軍」なら、そうなる。
 その内部事情を外部にバラした清武氏のほうがどうかしている。

 石原慎太郎都知事が、巨人の内紛に関して「ツルの一声ってのもあるんだよ」と発言したらしいが、まあそういうことだ。彼は怠けものの都知事ではあるが、権力のトップに立っているからわかるのであろう。「民主的」を金科玉条にしていたら何も進まないということだ。ただ作家ならもう少しまともな見解を述べたらどうかとは思うが。

 清武氏がバラした話が本当なら、たしかにクビにされるコーチの肩をもちたくなるのが人情ではある。だけれども、あんな話は企業内のことである。どんなに上役が馬鹿でも、ひどい事をしても、法に触れる話でないかぎり清武が税金で使われている文科省を借りて、内々のことを世間に訴えるのはスジが通らない。

 日頃、会社で嫌な上司に苦労しているサラリーマンには、清武氏の「ご乱心」というかまるで松の廊下で刃傷に及んだ浅野内匠頭みたいで、胸のすく「快挙」であったかもしれないが、それこそ哀れである。

 なにがコンプライアンス(法令順守)だ、アホか、というのが私の感想である。野球ファンがナベツネ氏を嫌っているから、自分が騒動を起こせばみんな味方になってくれると踏んだのだろうが、自分だって読売やナベツネの威光をバックに偉そうにしていたくせに。

 トップに立つとはどういうことかが、清武氏には理解できていないようだ。たしかに現場の声というか、スジは清武氏が通したつもりなのであろう。言い分も清武氏が正しいようにも聞こえる。

 しかし、組織とはそういうものではない。上が「こうだ」と言えば、それが通る。「カラスは白い」と言われれば、部下が個人的にはそんな馬鹿なと思っても、トップがそういうなら、カラスは白いのである。それは通さなければならない。民主的手続きなんか幻想である。だからトップは責任が重い。

 清武氏が訴訟に出ると言いだしたらしい。訴訟をやれば、裁判所は受け付けるだろうし、もしかしたら清武氏の主張が通って巨人のGMに復帰できるかもしれないが、それは法の問題である。私にはどうでもいい。

 私が興味があるのは、ナベツネ氏のその「我が身すなわち巨人軍」という感情である。私物化するなとマスゴミは叩くけれど、私物化して何が悪かろう? ファン心理はわからないでもないが、それで興行が成功すればいいだけのことではないか。なにも巨人軍が公的慈善団体なんかじゃないのだから。なにをやったっていい。嫌なら見なければいいのだから。

 私はそもそもプロ野球なんてものは、日本からなくなったほうがいいと思っているけれど、それとこれはまた別である。

 第二次世界大戦でマッカーサー元帥は、フィリピンから脱出(すなわち敵前逃亡)したときに、有名な台詞を吐いた。"I shall return"であった。
 これに対して、アメリカ人たちは何を言ってやがるテメエ一人の軍じゃないぞ、"We shall return"と言うべきだった、と怒ったらしい。

 しかし、これはマッカーサーの発言のほうが正しいと私は思う。それは別に彼の作戦が良いとか、戦争はいけないとかの話とは別である。将軍とはそういうもので、「俺が必ずや戻ってくるぞ」でよい。全軍を率いるとはそういうことだ。
 だから私はナベツネ氏はほとんど老害だという意見には賛成であるけれども、彼が全読売グループを率いている将軍という立場を堅持しているのであるから、いったん決めた人事案を、彼の考えでひっくり返しても良いと思うものだ。

 清武氏はきっと『プルターク英雄伝』を読んで胸をときめかしたことがないのだろう。





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2011年11月24日

TPPと流通問題


 選挙などで国民の信託を受けたわけでもない官僚どもが、勝手に政治家をたらしこんでTPPを推進しつつある。
 先のAPECでの野田首相が「日本は全ての物品サービスを(TPPの)貿易自由化交渉のテーブルに乗せる」と発言したかしなかったかで、日本政府とアメリカ側の言い分が真っ向から食い違っている。

 この食い違いを生じさせた元凶が宗像直子・経済産業省通商機構部長(グローバル経済室室長)だと暴露されている。(TPPの黒幕 経産省女性官僚がやったコト)
http://www.asyura2.com/11/senkyo122/msg/567.html

 この阿修羅掲示板の記事によると、宗像直子は「東大法卒、ハーバードでMBAを取得した後、1984年通産省に入省した。通商経済政策局経済協力課、総務課課長補佐などを経て、ブルッキングス研究所やジョージワシントン大で研究をした。新自由主義に染まった役人の身勝手な暴走は許されない。」となっている。

 「新自由主義に染まった」とある。
 11月14、15日にアップした「ショック・ドクトリンの日本への適用」で述べたように、「新自由主義」経済とは、いわば「大企業やユダ金の好き勝手自由放任資本主義推進経済」のことである。
 経産省官僚・宗像直子の経歴を見ると、いかにもユダ金の手先として育てられたことが見てとれる。

 ナオミ・クライン女史の『ショック・ドクトリン』は、主として南米で猛威を振るって国民を塗炭の苦しみに突き落としたフリードマンとシカゴ学派の狂気の振る舞いが書かれている。その南米、チリやアルゼンチンですでに実験済みのことをユダ金は日本でもこういう経産省の官僚どもを使ってやらかそうとしているのだ。

 だから「新自由主義に染まった役人の身勝手な暴走」というより、これは確信犯なのである。本来、官僚がメモとして首相に渡したつもりが間違って…などというレベルの話にすり替えてはいけない。むしろわざと間違えるように仕組んで、日米政府間で受け止め方に食い違いが出るようにしたのであろう。

 ところでTPPのことであるが、いろいろ勉強しているなかで、一つだけ解せないことがある。それはTPPの慎重派も推進派も触れていないのではないか。
 
 TPPそれ自体は、端的に言えば各国の関税を撤廃して、貿易を活発にするものだと、推進派は説く。事はそんな簡単なものではなく、われわれから見れば、ワンワールド主義者=ユダ金による日本文化の破壊がその本質であろう。さはさりながら、関税を取り払って得をするのは、流通分野ではなかろうか。

 例えば、日本からアメリカに自動車を輸出するとして、関税がなくなればアメリカに安価な自動車が売れるようになる、と説明されるのだが、それはそれで理屈はわかるけれど、輸出が盛んになれば一番儲かるのは流通関連になるのではないか。
 ものを売った、買ったの話ばかりなされるが、「ものを運ぶ、届ける」そして「手数料を取る」話があまりされないのはどうしてだろう?

 商売をやってみればすぐ分かるが、モノを作るのも大変だが、それを売りさばくために流通ルートに乗せるほうがむしろ大変なのである。
 だからせっかく無農薬の米を栽培しても、流通ルートを開拓しなければ消費者のもとへは届かない。

 これが日本国内だけの話なら、例えば宅急便で届ければいいじゃないか、となるかもしれないけれど、ことは外国との貿易の話である。
 いくら日本の「モノづくり」が優秀であると誇っても、この貿易という世界の流通ルートの確保に失敗したら売れないのだ。
 
 これも商売をやってみればすぐ分かるが、モノを作るより、売る立場、あるいは流通させる立場のほうが強いのが一般性である。
 本で譬えれば、出版界で力を持っているのは流通であって、トーハン(東販)や日販の名を聞いたことがある人は多いと思うが、この出版社と小売り書店の間をとりもって本を流通させる「取り次ぎ」という会社が力を持っている。

 トーハンと日販の2大大手の出版取次だけで全流通出版の7割を扱っている。書店に回して売れないと出版社に回収されるが、それでもマージンはしっかりとる。
 出版社が取次に手数料として定価の9%を払い、返品の場合も2%程度の手数料を払っている。
 
 出版社がこれは良い本です、書店に流通させてくださいと取次に頼んでも、東販や日販などの出版取次が「うん」と承知しなければ、流通させてくれない。出版社もだから売れそうな本しか作らないことになる。本を流通させるのは、取次の胸三寸であり、出版社や書店の希望が通ることはほとんどない。これは出版界の常識である。

 ことほどさように流通の持つ比重は大きい。
 そしてこの世界の貿易という流通ルートは、いわずと知れたユダヤ、すなわちワンワールド主義者たちが握っているのである。流通こそカネのなる木なのだ。
 だから、ユダ金にとって、TPPやFTA(自由貿易協定)が盛んになればなるほど、傘下の流通ルートが殷賑を極めることになる。流通ルートと言った場合、手数料だけではない。その決済の仕方も含めるのである。みんなユダ金の支配下にあるのは言うまでもなかろう。

 日本が貿易立国だなどと浮かれているが、ユダヤに頭を下げて流通してもらっているのである。船があれば貿易できると思ったら大違いだ。
 貿易に必要なものは、代金+輸送費用+手数料である。そこに為替が介在する。円高に振れたり円安に振れたり…。
 それが現実である。

 戦後、敗戦から日本が立ち直って優秀な工業製品を作って海外に輸出して、経済大国にのし上がれたのは、ユダヤの支配する流通ルートに乗せてもらえたからである。

 日本の後に韓国が続いた。韓国製品が日本製を駆逐して世界に広まったのは、ワンワールド主義者たちが許したからであり、そういう戦略のもとに韓国財閥を大きくしたのである。
 そして最近は中国の経済の伸張が著しいが、これも今や世界の工場とされる中国自身の努力よりも、その製品を世界に流通させてやっているユダヤの意向なのである。

 また、こんな話もある。
 ある人が会社を早期退職し個人で輸入業務を始めたとする。為替相場変動による損失を回避する目的で、取引銀行に外国為替先物予約取引を依頼しても、業務経歴が浅いため応じてもらえない。やむなく、輸入契約時に同額の外貨(米ドル)預金をしなければならない。これでは資金効率が悪い。そこでFX取引で輸入取引の為替ヘッジをする…とかなんとか、こうなっているのだ。

 全部ユダ金にからんでくるのがわかるであろう。
 それに以前、本ブログで米国による「司法占領」について書いた。アメリカは石を投げれば弁護士に当たるというほどの訴訟社会であり、掃いて捨てるほど弁護士があり余っている。その弁護士たちの仕事を増やそうというのが、おそらくTPPの一つの狙いではないかとも思われる。モノを世界で流通させれば必ず弁護士の出番がある。
 司法世界はこれまた言わずと知れたユダヤ人が席巻している世界である。

 TPPについて言うなら、これはもう経産省の官僚が暴走したとかの問題ではない。わが国がTPPにいろいろ注文をつけて“交渉”しようとしたり、もし不参加にしたいと言ったりするならば、ユダヤはただちに世界の流通ルートから日本を閉め出すと言うようになっていくであろう。

 と、私は推測するのである。
 ユダヤ・ワンワールド主義者たちは流通を握ることで、世界中の国家や民族を掌中に納めているのである。
 野田首相はいかにも売国奴であろう。それに異論はない。しかし、たとえ彼が愛国者であっても、手の打ちようがないと思われる。従うしかない。
 従わなければ、日本のものが売れなくなる。石油や穀物といった生命線も断たれかねない。





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2011年11月23日

OKの語源


 TPPの騒動を見ていると、アメリカという国は狡猾なんだかアホなんだかよくわからないところがある。
 武力を頼んで陰謀を巡らし、他国を脅し上げて自分達の利益になるようにことを運んできているけれど、世界中の人たちがアメリカとアメリカ人を嫌う。

 TPPもどうやらアメリカ自身にとってもたいしたメリットはなく、国内の業界にも反対があるようだ(例えば自動車業界)。それなのに、現職オバマが再選されたいがために、TPPを強行して日本の雇用を奪ってアメリカ人の雇用を拡大しさえすれば(それも一時的に?)、もっと満足するというのだから、アホか、である。

 世界中から嫌われようとも、自分さえリッチな暮らしができれば気にならないのだから、アホである。

 ときに、英語というか米語では「良い」と言うとき、「OK」と言う。これは世界中から軽蔑の対象になっているらしい。「アメリカ人は何かというとOK、OKでしかない」と馬鹿にされる。

 「OK」または「O.K」は、辞書では「よろしい(all right)「間違いない(correct)」の意味だとなっている。

 で、このOKの語源とは何か。
     *    *    *

 アンドリュー・ジャクソン(第7代米国大統領)は二つのことで知られる。一つは、無学で字が読めなかったことだ。「all correct」つまり「これでいい」という承認の意味の言葉が、略してACになるところを、無学だから発音どおりにOKと書いた。実は、これがOKの語源で、アンドリュー・ジャクソンの隠された逸話である。

もう一つは、新聞を使ってアメリカを統治した最初の大統領と言われている。新聞人60人を政府委員に採用し、新聞の力で政治を行なった。政府と新聞は、切っても切れない関係にある。新聞の効用は事実を伝えると同時に、国内世論を統一して対国際関係も国家、国民を一丸にできることだ。
      *    *    *
 
 これは高山正之氏の『「官僚は犯罪者」は世界の常識』(PHP)のなかにあったエピソードである。
 アメリカの民度の低さを示すエピソードだから紹介した。

 ジャクソン大統領は、貴族出でない最初のアメリカの大統領である。ということは、頭が良かったわけでもなく、ただ英国にいたロスチャイルドの覚えめでたかっただけで大統領に指名されたのだろう。

 アホだったから、OKという米語としてもかなり品のない言葉が生まれたのであろうか。
 アメリカ人が今も好んで「OK」を使いたがるのは、今のアメリカ人もジャクソン並の「無学」だからであろう。





posted by 心に青雲 at 06:47| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする

2011年11月21日

ブータン国王、国会演説全文


 過日、ブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王(31)とジェツン・ペマ王妃(21)が来日された。お二人は結婚後最初の外遊先に日本を選ばれ、そして被災地の福島県相馬市を訪問され犠牲者を悼んでいただいた。
 握手してもらった少年が、「この手はもう洗いたくない」と言っているのが微笑ましい。
http://www.youtube.com/watch?v=2j2dIaA6d4E

 国会で感動的な演説をされたが、演説がネットで見つけにくいので、今回はこのブログに全文を転載させていただく。私は、読んでいてやや涙腺が緩むのを禁じられなかった。
 そのわけはなんと言っても、ブータンの農業に革命を起こし、豊かな国土に変えた日本人・故西岡京治氏のことを思い出したからである。
 2006年のころに私は西岡氏のことをブログで紹介したことがあった。
 それが以下である。

    *    *    *

 テレビ番組で、ブータンの街の野外市場を映しだし、人々がにぎやかに野菜などの商いや買い物をしていた。東南アジアや中東のどこにでもある市場の風景…と思ったら、「実はこういう市場はわずか30年前まではブータンにはなかったのです」という。

 昔はブータンでは野菜はほとんど食べなかった(食べられなかった)。それを日本人が行って、農業改革をやったおかげで、国民みんなが野菜を食べられるようになったのだという。その日本人は西岡京治さんという。ブータンの市場で売られている野菜が、大根やキャベツ、なす、さつまいもなど日本で見かけるものばかり。それもそのはず、西岡さんが日本から種を取り寄せて広めたからであった。

 先代のブータン国王から依頼を受けて、西岡さんはブータンに家族で移住する、それから約30年、住み着いて米つくり、熱帯原野の開墾、野菜つくりなどの指導普及を先頭に立って行った。
 それまでのブータンで野菜といえば、自然のワラビやキノコを食べるしかなかった。米つくりも、非常に非効率。平均寿命もせいぜい40、こういう国だった。

 西岡さんが近代農業を教えようとしても、当初はみな言うことを聞かない。古いやり方を変えようとしない。外国人が何をいうか、だった。しかし西岡さんは、自分でまず野菜をつくってみせ、村人たちを集めて何十回と説得した。この根気と情熱には頭がさがる。

 熱帯原野の開墾は、激しい抵抗にあいながら、やっとのことではじめるが、それも手作業、あとになってようやく日本の援助でブルドーザ−が導入される。この原野の開墾成功で、西岡さんはブータン最高の尊称を国王からいただく。国王は最初に西岡さんを招いた方から、次の王(16歳で即位)に替わっていた。若い国王(第4代)は、西岡さんに「あなたの功績に応える贈り物を差しあげたいが、ブータンは貧しくて何もさしあげるものがない。だから最高の栄誉を称えた称号をさしあげたい」と言った。

 残念ながら、西岡さんはブータンの地で永眠された。ブータンでは西岡さんを知らない国民はいない。

    *     *     *

 西岡氏の業績については以下の「西岡京治物語」が詳しく、かつ感動的である。
http://www.youtube.com/watch?v=xctivYQ7C14
http://www.youtube.com/watch?v=36MjTAkPa1k&feature=fvwrel
http://www.youtube.com/watch?v=TNvC4m1adQs&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=KITmWAvIITU&feature=fvwrel


 下記が国会ピーチの全訳。
 日本国民全員に聞いてほしいスピーチである。
 いちばんは国王が、日本人の偉大さを讃えてくださっている所だと思う。

   *      *     *
 天皇皇后両陛下、日本国民と皆さまに深い敬意を表しますとともにこのたび日本国国会で演説する機会を賜りましたことを謹んでお受けします。衆議院議長閣下、参議院議長閣下、内閣総理大臣閣下、国会議員の皆様、ご列席の皆様。世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会のなかで、私は偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様の前に、ひとりの若者として立っております。皆様のお役に立てるようなことを私の口から多くを申しあげられるとは思いません。それどころか、この歴史的瞬間から多くを得ようとしているのは私のほうです。このことに対し、感謝いたします。

 妻ヅェチェンと私は、結婚のわずか1ヶ月後に日本にお招きいただき、ご厚情を賜りましたことに心から感謝申しあげます。ありがとうございます。これは両国間の長年の友情を支える皆さまの、寛大な精神の表れであり、特別のおもてなしであると認識しております。

 ご列席の皆様、演説を進める前に先代の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク陛下およびブータン政府およびブータン国民からの皆様への祈りと祝福の言葉をお伝えしなければなりません。ブータン国民は常に日本に強い愛着の心を持ち、何十年ものあいだ偉大な日本の成功を心情的に分かちあってまいりました。3月の壊滅的な地震と津波のあと、ブータンの至るところで大勢のブータン人が寺院や僧院を訪れ、日本国民になぐさめと支えを与えようと、供養のための灯明を捧げつつ、ささやかながらも心のこもった勤めを行うのを目にし、私は深く心を動かされました。

 私自身は押し寄せる津波のニュースをなすすべもなく見つめていたことをおぼえております。そのときからずっと、私は愛する人々を失くした家族の痛みと苦しみ、生活基盤を失った人々、人生が完全に変わってしまった若者たち、そして大災害から復興しなければならない日本国民に対する私の深い同情を、直接お伝えできる日を待ち望んでまいりました。いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。

 皆様が生活を再建し復興に向け歩まれるなかで、我々ブータン人は皆様とともにあります。我々の物質的支援はつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からの真実味のあるものです。ご列席の皆様、我々ブータンに暮らす者は常に日本国民を親愛なる兄弟・姉妹であると考えてまいりました。両国民を結びつけるものは家族、誠実さ。そして名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちなどであります。2011年は両国の国交樹立25周年にあたる特別な年であります。しかしブータン国民は常に、公式な関係を超えた特別な愛着を日本に対し抱いてまいりました。私は若き父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化に導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時開発途上地域であったアジアに自信と進むべき道の自覚をもたらし、以降日本のあとについて世界経済の最先端に躍り出た数々の国々に希望を与えてきました。日本は過去にも、そして現代もリーダーであり続けます。

 このグローバル化した世界において、日本は技術と確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値における模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。世界は常に日本のことを大変な名誉と誇り、そして規律を重んじる国民、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ国民、不屈の精神、断固たる決意、そして秀でることへ願望を持って何事にも取り組む国民。知行合一、兄弟愛や友人との揺るぎない強さと気丈さを併せ持つ国民であると認識してまいりました。これは神話ではなく現実であると謹んで申しあげたいと思います。それは近年の不幸な経済不況や、3月の自然災害への皆様の対応にも示されています。

 皆様、日本および日本国民は素晴らしい資質を示されました。他の国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は最悪の状況下でさえ静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処されました。文化、伝統および価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、我々の現代の世界で見出すことはほぼ不可能です。

 すべての国がそうありたいと切望しますが、これは日本人特有の特性であり、不可分の要素です。このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年数十年で失われることはありません。そうした力を備えた日本には、非常に素晴らしい未来が待っていることでしょう。この力を通じて日本はあらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国のひとつとして地位を築いてきました。さらに注目に値すべきは、日本がためらうことなく世界中の人々と自国の成功を常に分かち合ってきたということです。
ブータンは小さな国ではありますが強い国でもあります」


「ブータンには寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています」
ニコニコニュース(オリジナル)
 ご列席の皆様。私はすべてのブータン人に代わり、心からいまお話をしています。私は専門家でも学者でもなく日本に深い親愛の情を抱くごく普通の人間に過ぎません。その私が申しあげたいのは、世界は日本から大きな恩恵を受けるであろうということです。卓越性や技術革新がなんたるかを体現する日本。

 偉大な決断と業績を成し遂げつつも、静かな尊厳と謙虚さとを兼ね備えた日本国民。他の国々の模範となるこの国から、世界は大きな恩恵を受けるでしょう。日本がアジアと世界を導き、また世界情勢における日本の存在が、日本国民の偉大な業績と歴史を反映するにつけ、ブータンは皆様を応援し支持してまいります。ブータンは国連安全保障理事会の議席拡大の必要性だけでなく、日本がそのなかで主導的な役割を果たさなければならないと確認しております。日本はブータンの全面的な約束と支持を得ております。

 ご列席の皆様、ブータンは人口約70万人の小さなヒマラヤの国です。国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように人々のあいだに深い調和の精神を持ち、質素で謙虚な生活を続けています。


「両国民の絆をより強め深めるため不断の努力を行う」
ニコニコニュース(オリジナル)
 今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気や品位を持ち先祖の価値観によって導かれる社会。そうした思いやりのある社会で生きている我々のあり方を、私は最も誇りに思います。我が国は有能な若きブータン人の手のなかに委ねられています。我々は歴史ある価値観を持つ若々しい現代的な国民です。小さな美しい国ではありますが、強い国でもあります。それゆえブータンの成長と開発における日本の役割は大変特別なものです。我々が独自の願望を満たすべく努力するなかで、日本からは貴重な援助や支援だけでなく力強い励ましをいただいてきました。ブータン国民の寛大さ、両国民のあいだを結ぶより次元の高い大きな自然の絆。言葉には言い表せない非常に深い精神的な絆によってブータンは常に日本の友人であり続けます。

 日本はかねてよりブータンの最も重大な開発パートナーのひとつです。それゆえに日本政府、およびブータンで暮らし、我々とともに働いてきてくれた日本人の方々の、ブータン国民へのゆるぎない支援と善意に対し、感謝の意を伝えることができて大変嬉しく思います。私はここに、両国民のあいだの絆をより強め深めるために不断の努力を行うことを誓います。

 改めてここで、ブータン国民から日本国民の皆様への祈りと祝福をお伝えします。ご列席の皆様。私簡単ではありますが、(英語ではなく)ゾンカ語、国の言葉でお話したいと思います。

「(ゾンカ語での祈りが捧げられる)」

 ご列席の皆様。いま私は祈りを捧げました。小さな祈りですけれど、日本そして日本国民が常に平和と安定、調和を経験しそしてこれからも繁栄を享受されますようにという祈りです。ありがとうございました。

    *     *     *

 拡張高い国王の演説の映像は以下のYouTubeで。
http://www.youtube.com/watch?v=-h5CzvtJky8&NR=1

 また、数年前からブータンでは「体育教育」が日本の教師たちの手で始まっている。以下でそのすばらしい映像が見られる。ブータンの子ども達が体育の授業で見せる笑顔に感動せずにいられない。
http://www.youtube.com/watch?v=gGpXwZ_VEPA&feature=related





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2011年11月19日

メタンハイドレート開発妨害の「事情」(2/2)


《2》
 つまりは、「日本には資源がない」ということになっていなければいけないのである。日本に資源があってもらってはむしろ困る、それがわが国の「定め」なのであろう。

 日本の支配層にとっては、国民にそういう「常識」を埋め込んでおくことになっている。だからTPPにしてもそうだし、食糧自給率なんて変な数値にしても、様々な(アメリカや中国への)売国の口実や、国民への脅しに使われている。
 譬えていうなら、戦時中のスローガン「欲しがりません、勝つまでは」や「贅沢は敵だ」であろうか。

 資源がないことに耐えよ、金持ちになれると思うな、爪に火をともして勤労に励め、あの石油ショックを世界で真っ先に克服した血のにじむような努力をつねに心がけよ、であろう。私たちはそれしか日本人に生きる道はない、とガキのころから教え込まれている。

 わが国は「日本には資源がない」と言うことを前提としたシステムの上に成り立っていて、そういう環境でなければ自らの存在意義を見いだせないようになっているのであろう。
 日本は他国依存(経済も、資源も、軍事も)という観念と実体に適応していなければならぬと、日本の指導層は国民に強い、隠れた世界政府たるユダヤ勢力も、日本人にそう思わせるようにしている。
 他国に依存しなければ生きられない、とは、つねに大木に寄生するヤドリギのようであり続けよ、である。

 世界の支配層は、無尽蔵な埋蔵エネルギー資源を目の前にしながら、わざわざ他国に依存しなくてはならないようなシステムの下に、日本人を押し込めておかねば、きっと日本人が世界一になってしまうと恐れられているのだろう。

 日本政府が南海トラフで成果の出ないメタンハイドレート(MH)開発をやめて、日本海に予算措置を転じれば、あっという間に日本は明治開国以来の悲願である資源大国に躍り出て、世界中のエネルギー資源供給国になってしまう。
 それでは石油メジャーもそれを支配しているユダ金も、あるいは世界の列強も立場を失ってしまうのだ。

 先日、ナオミ・クライン女史の『ショック・ドクトリン』(岩波書店)を紹介したが、同書にチリのピノチェト政権が反体制側になる可能性のある市民を片端から拷問していき、シカゴ学派の新自由主義経済を導入しやすくした経過が説かれてあった。
 ナオミ・クラインは、シカゴ学派のユダヤ人が財界や反動政権と結託して惨事活用資本主義を実施することで、「国民は混乱し、苦悩し、従順になり、指示を待つようになっていった。皆、退行してしまいました。依存的になり、不安になっていったのです」というチリ人の話を紹介している。

 つまりは、われわれも「資源がない」「外国が資源を売ってくれなかったら生きていけない」と思わされることで、一種のショックを受け続けてきたのだ。
 資源小国だと呪縛されてきたから、私たちは世界に対して羊のごとくに従順になり、退行し、依存的になってしまっている。

 メタンハイドレートの開発はこの精神的奴隷状態から脱却する契機になり得る。国民全体で依存体質から脱却できるであろう。アメリカを日本の資源で跪かせることになればTPPなんて屁のカッパになろうか?
 あるいは国の莫大な借金も、あっという間に解消してしまう。

 所得は誰もが今の10倍得られるようになり、教育も無償、医療も無償、介護も無料、新車を1年ごとに乗り換えるなんて贅沢もできてしまう。サラリーマンはみんな残業しなくて済み、夏休みはフランス人みたいに8月まるまるバカンスになる。
 …そんなことになったら、庶民を貧困に押し込み、隷属させることで富を独占しておきたい支配層は困ることになる。だからなんとしてでもメタンハイドレートの開発をさせたくない。

 韓国や中国、アメリカはもうすでに着々と手を打ってきているそうだ。韓国が竹島領有を主張し、日本海の故障を東海に変えようと画策しているのは、単なる領土問題ではなく、ひとえに日本海の MHを奪いたいからだという。
 尖閣諸島の問題も、実は中国はあの海域のMHを狙っているからだそうだ。

 まずは国民誰もがこの未来のエネルギー源のことを知るようにしなければと思う。昨日も紹介したが、ぜひYouTubeの動画で青山氏の話に耳を傾けていただきたい。
 青山千春氏、青山繁晴氏の活躍に期待したい。

《3》
 ちなみに、埋蔵エネルギーでいえば海水に含まれるウランも、日本にとっては有力な研究対象であるらしい。海水からさまざまな有効資源が採取できる時代がやってくる。こういう研究が進めば、レアメタルのことで他国に脅されなくても良くなるのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=U4ssguJxB3Q&feature=related

 とはいえ、ウラン燃料はどうしても原子力発電になる。われわれは原発がいかに危険かを身をもって知った。だから海水からウランを取り出す方法では未来はあまり明るくない。

 海水からエネルギーを取り出すといえば、リチャード・コシミズ氏が支援している「常温核融合」の開発者・荒田吉明大阪大学名誉教授の存在も忘れてはなるまい。
 YouTubeのリチャード・コシミズ氏講演の動画「世界の未来はこんなに明るい」(11回分)に詳しい。
http://www.youtube.com/watch?v=JQcyB22DZQc

 海水からほぼ無尽蔵に取り出せる重水素を使って常温核融合が実験段階で可能になったのである。これは画期的な技術で、実用化されればMHよりも日本の未来を明るくしてくれるであろう。あとは政府が税金を投入して実用化を図ればいいだけのことなのだ。

 ところがこれもマスゴミも、官庁も、研究者どももみんなで無視なのである。「トンデモ説」などと言って妨害する輩もいる。
 これも日本国民を奴隷状態に置いておきたい勢力の陰謀なのであろう。

 MHは無限にあるわけではないことを考えると、こちらの常温核融合技術のほうが未来は明るいのかもしれない。
 既存の天然ガスを燃料にした火力発電所を活用してすぐにも実用化できるMHを優先開発し、次のエネルギー源として常温核融合を実用化していけば良いのではないか。






posted by 心に青雲 at 06:44| Comment(2) | エッセイ | 更新情報をチェックする
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