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選挙:大阪ダブル選 記者座談会 橋下人気、突破力期待も

大阪府知事選・大阪市長選ともに当選を確実にし、万歳する維新の会の関係者たち(右)。取り囲むカメラのフラッシュが星のように光った=大阪市北区で2011年11月27日午後8時42分、小川昌宏撮影
大阪府知事選・大阪市長選ともに当選を確実にし、万歳する維新の会の関係者たち(右)。取り囲むカメラのフラッシュが星のように光った=大阪市北区で2011年11月27日午後8時42分、小川昌宏撮影

 前大阪府知事の橋下徹氏(42)率いる大阪維新の会が27日、府知事選、大阪市長選ともに圧倒的な勝利を収めた。それぞれの勝因と敗因は何か。選挙結果は何をもたらすのか。「大阪秋の陣」の現場を、候補らとともに走り回ってきた記者たちが、選挙中に書ききれなかったエピソードや今後の課題を語り合った。

 ◇独裁不安かき消す

 ■勝因

 --大阪市長選では橋下氏の政治手法への批判も根強く、知事選では松井一郎氏(47)の知名度不足が指摘されたが、結果は大阪維新の会の2人の圧倒的勝利。勝因と敗因をどうみる?

「大阪維新の会」とダブル戦の経過
「大阪維新の会」とダブル戦の経過

 A 「橋下人気」が健在だったということに尽きる。女性層の支持を集めていた気がするね。街頭演説では、始まる前から主婦層が集まる姿が見られたよ。「ファンやねん」「イケメンやしな」との会話も聞かれた。

 B いや、単なる人気だけではない。個々の政策の是非はともかく、就任以来、橋下氏が、先送りされがちなさまざまな府政の課題に積極的に取り組んできたことへの支持と期待はあった。都構想が十分理解・支持されていたとは思わないけど、「あいつがあんなにやりたがっているのだから、任せてみるか」という一票が多かったのではないかな。

 C 表面では平松邦夫氏(63)支持でも橋下氏の手腕に期待している人もいた。児童虐待防止活動に取り組む関係者は「今の大阪市の虐待防止の仕組みは不十分。手法には問題があるが、橋下氏の方が改革のスピードが早いと思う」と話していた。

 D それに加え、橋下氏の話術は天才的だと改めて感じた。聴衆の年齢層に応じ、演説内容を巧みに変える。若者が多い繁華街では「選挙に行かない若者に政治家は顔を向けない。5年、10年たてば、10人に4人しか就職できない」と危機感をあおった。お年寄りが多い住宅街では「大阪市はつぶさない。敬老パスは守る」と訴えた。聴衆が気になっていることをつかみ、関心を引く。平松氏や知事候補の倉田薫氏(63)はそこまでアピールする力がなかった。

 E 選挙選中盤、大阪市淀川区の商店街で松井氏が練り歩きをした際、同行した維新議員らがビラを配ったが、たちまちなくなったと驚いていた。

 F 民主も自民も維新の勢いを甘く見ていたところがあるね。知事選で知名度の低い松井氏が出馬したことで、両党府連は対抗馬擁立に動いた。だが「よほど知名度のある候補でないと厳しい」と苦戦を予想した国会議員もいた。この見方が当たっていた。

 ◇反維新、一丸なれず

 ■敗因

 G そんな中、倉田氏は知名度不足が響いたね。街頭演説でも、有権者から「あの人、誰」という声が聞かれた。

 H 戦略ミスもあるよ。倉田陣営はキャッチフレーズ「卒維新」を掲げたが、相手陣営の党派名を有権者に繰り返し伝えることになってしまった。

 I 選挙戦最終日の26日、維新陣営は石原慎太郎・東京都知事や東国原英夫・前宮崎県知事らが駆け付けてにぎやかだったね。平松、倉田陣営は地味な印象が否めなかった。実は平松陣営も、東日本大震災で大阪市が支援した岩手県釜石市長に声を掛けていたが、臨時議会で多忙との理由で実現しなかった。来援していたら大きな力になっていただろう。

橋下徹氏 4年間の語録
橋下徹氏 4年間の語録

 J 橋下、平松両氏の直接討論の場面は少なかった。平松氏は今月24日に放送予定だったMBSのテレビ討論を突然キャンセルした。司会を務めるジャーナリストの田原総一朗さんが都構想に賛成と発言しているため、出演は得策ではないというのが理由だったけど。

 A あれは平松陣営の力不足を象徴する出来事だったと思う。実は平松氏は最後まで出演したがっていたそうだ。出演しないよう進言する陣営幹部との間の話し合いがなかなかまとまらず、放送日ぎりぎりのキャンセルになってしまった。

 B ただ、平松氏の今回獲得した約52万票は前回(07年)の市長選より大幅に多いんだ。平松氏が市民の支持を失ったわけではないのでは。

 I 橋下氏の政治手法に対する危機感も強かったと思う。橋下人気の一方で、橋下氏との握手を拒否する有権者や、「独裁はやめて」と維新のスタッフに詰め寄る有権者も見たよ。

 K 橋下氏の政治手法に疑問を持つ政治学者や評論家らが勝手連的に平松氏を応援したのも印象的だった。

 --維新の会対(公明を除く)既成政党という構図になったが。

 E そうはいっても府選出の衆院議員は次期総選挙で維新を味方につけたい思惑があった。地元の市議らとの温度差は最後まで埋まらなかった。

 L 倉田氏を支援する自民府連では、倉田氏の応援演説に立つ議員もいれば、積極的に関わらない考えの議員もいた。府連内では腰が引けた国会議員に対し「国政選挙では絶対に応援しない」と記者に怒りをぶちまける地方議員までいたほどだ。

 --平松氏を支援するための共産前市議の渡司(わたし)考一氏(59)の市長選からの撤退には驚いた。

 A 大阪市議会の一部には、撤退が裏目に出たとの見方もある。渡司氏は「反維新勢力を結集する」と訴えたけど、逆に橋下氏に「既成政党が手を組み、大政翼賛会的だ」と批判の材料を与えてしまった面があるね。

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2011年11月28日

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