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パレスチナ国連加盟の政治戦 - 40年前のドラマを再度
今日(9/23)の朝日毎日の社説は、パレスチナの国連加盟の問題を取り上げている。取り上げてはいるが、いつもながらの意味不明の論説で、何を言っているのか全く要領を得ない。外務官僚が国民に説教して聞かせたいところを、新聞官僚が幼稚な記事にしているわけだが、あまりのお粗末さに気が滅入ってしまう。これを英訳して、欧州や中東の市民に読んでもらったなら、どういう反応や感想が返って来るだろうか。日本の意識水準の低さ、国際情勢に対する感覚の鈍さ、米国に従順なイヌの態様について、ああなるほどと頷き、呆れ、軽蔑を誘う材料になるに違いない。この問題について、新聞は報道しているが、テレビはほとんど情報を流していない。世界中が注目し固唾をのんで見守っている問題で、日本人は全くと言っていいほど置き去りにされている。新聞の社説は陳腐で滑稽だが、実のところ、この問題は相当に報道が難しいことは間違いない。国連外交で何が起きているか、各国の思惑はどうで、事態はどう展開するのか、それを分析し理解するのは容易ではないのだ。まず第一に、総会でのパレスチナの「オブザーバー国家」の承認があるのか、あるとすればどのタイミングなのか、誰による、どういう決議案の提出なのかという問題がある。第二に、米国(オバマ)は本当に安保理で拒否権を行使するのか、できるのか、という問題がある。


新聞報道を読むと、パレスチナから加盟申請が届いた後、申請書を安保理で預かり状態にして、決議採択の延期をパレスチナに承諾させるべく、4者(米国・EU・ロシア・国連)で調整をしているという情報がある。問題は、この動きと「オブザーバー国家」の総会決議が連動しているのか、法的(規約的)にはどうなっているかだが、その点を説明している記事はない。一つの記事を読むと、安保理での「国連加盟」と総会での「オブザーバー国家」の二つは分離・独立していて、安保理で加盟問題がどう処理されても、総会での「オブザーバー国家」への格上げ決議案は上程され、過半数で可決されるように判断できる。つまり、安保理(P5)は、総会の決議に干渉できない仕組みになっていると解釈できる。私が首を捻るのはこの部分で、であるならば、何故これまで、かくも長きにわたって、国連オブザーバーであるパレスチナが「国家」資格のない「機関」の地位であり続けたのかという問題だ。パレスチナ側が、敢えて「オブザーバー国家」の地位を求めず、戦略的にそれを避ける選択をしてきたのだろうか。それとも、「オブザーバー国家」への格上げすら、総会で過半数を見込めないほど米国の世界支配が強く、世界中の半分が米国の言いなりになり、「中東和平」を米国主導に任せていたということだろうか。否、後者はない。国連総会はイスラエルに対する非難決議を上げ続けてきた。

別の記事を読むと、フランス(サルコジ)が、米国に対して拒否権を行使しないよう求め、「オブザーバー国家」への格上げで妥協を図ろうとしている。この書き方からは、パレスチナの国連での地位をめぐっては、安保理の判断と決議が最優先で、総会は(独立ではなく)非拘束的な脇役の立場でしかないように読め、P5で全てを仕切れるようにも解釈できる。ロシアの動向も複雑で、この問題をめぐるキーのポジションで立ち回っているようにも見受けられる。Voice of Russiaの二つの記事に注目したいが、9/21の情報では、4者(米・露・EU・国連)の仲介調停の立場を示し、外相のラヴロフが、「パレスチナの国連加盟申請が優先的テーマではない」と言っている。これは、どちらかと言えば米国寄りの姿勢であり、パレスチナに対して加盟申請を急ぐなと牽制するものだ。ところが、同じ9/21のもう一つのVoice of Russiaの情報では、外務次官のボグダノフが、「パレスチナの国連加盟をロシアは支持する」と言っている。パレスチナ側に立っている。この二つは一見して矛盾する。4者調停とは、主眼はパレスチナの国連加盟の棚上げであり、米国が拒否権を行使して国際社会から孤立するのを避けるための姑息なミッションである。そして、言うまでもなく、P5のもう一つの雄である中国は、一貫してパレスチナの国連加盟を支持している。中国は4者調停の中に入っていない。果たしてロシアは、米欧と組むのか、中国・新興諸国と組むのか。

もし、ロシアが中国と足並みを揃え、拒否権(米)にも反対し、棚上げ・先送り(英仏)の立場からも離れた場合、米国は相当に面倒な境遇に追いやられるだろう。ロシアの思惑はフランスに近いが、フランスと中国の中間にある。英国は米国とフランスの中間にある。それぞれが微妙な立ち位置を取り、この問題の国際政治でヘゲモニーを握ろうとしている。英国案は、「オブザーバー国家」を認める条件として、パレスチナに国連加盟申請の取り下げを求めている。これにはパレスチナが従えるはずがないが、この案以外では、米国は拒否権発動を撤回できないと思われる。ちなみに、安保理はP5を含む15か国で構成されていて、賛成票がP5を含む9票ないと申請は可決承認されない。非常任理事国10か国のうち、インド、レバノン、南アフリカの3国が加盟賛成を明らかにしており、賛成票9票を固めたとするパレスチナと、反対・棄権票7票で(拒否権を使わなくても)否決だとする米国とイスラエルとの間で、火花が散る情報戦が演じられている。反対・棄権票が7票だと、賛成票も8票となり、可決に必要な9票に届かない。P5の票は、米英仏が反対、中露が賛成。米国・イスラエル側の情報が正確であれば、非常任理事国10か国のうち、反対・棄権票の国が4か国あることになる。パレスチナ側の情報が正確なら、それは3か国以下だ。鍔迫り合いの結果はどう転ぶだろう。これは、米国とパレスチナとの綱引きであると同時に、米国と中国との覇権の戦いでもある。

中国は、パレスチナ支持票が拡大するように、水面下で振興諸国に働きかけをしているはずだ。場合によっては、米国が完敗する可能性もある。ハッキリ言って、拒否権行使は米国の負けだ。最後の切り札を使うのはパレスチナの勝ちだ。だから、拒否権を行使するぞというオバマによるアッバスへの通告は、政治的には全く意味がない。脅しにならない。安保理否決か4者調停だけが米国の勝利だが、現時点で4者調停で纏まる可能性は小さい。安保理採決のガチンコ勝負になり、加盟賛成派が9票を制し、米国が拒否権を行使した場合、国際社会は猛然と非難の声を上げるだろう。パレスチナは総会決議で「オブザーバー国家」となる道を選び、圧倒的多数で可決承認される図が現出するに違いない。米国の本音は、拒否権を行使したくないのであり、国際的に孤立したくなく、威信を失墜させる不面目な事態は避けたいのだ。ロシアは、米国を「中東和平」の主役から転げ落とし、フランスと共に有力な調停者の立場を得ながら、同時に、新興国が台頭して国際政治を動かすことを嫌い、P5で全てを仕切る保守的体制を維持したいと考えている。思惑が交錯している。ここから言えることは、最早、米国が仕切る「中東和平」は二度とないことだ。そこへ戻ることはない。米国が、国際社会の声を全て無視して、イスラエルとパレスチナの間に入るように見せかけ、パレスチナを滅亡へと追い立てる政治には戻らない。「中東和平」は18年前のオスロ合意の頃まで時計が巻き戻る。「中東和平」は正常化へと戻る。

思い出すのは、ずっとずっと昔、40年前、1971年10月25日の中国の国連加盟の瞬間である。あれは、アルバニア・アルジェリア決議案と呼ばれた。私はよく覚えている。黒い肌のアフリカの国々の代表が、総会の議場で沸き踊っていた。数を持つアフリカの代表は総会で絵になる。当時、夕刊だったか、田舎の地方紙の1面に、「中国、国連へ」と、これまで見たこともない、何段抜きとかいう巨大な文字(フォントサイズ)で見出しが打たれていた。あんな大きな新聞の見出しは、あれから記憶がない。戦後の国連の65年間の歴史で、おそらく最も大きく人々の印象に残った激動の瞬間であり、国連の政治が世界史を刻んだ一幕である。あれから40年、80年代以降、国連の存在は年を追って小さくなり、問題解決の能力を失い、理念が形骸化して事務的な存在となり、人々から軽んじられるようになった。米国の一極支配となった。忌まわしい新自由主義とグローバリズムの時代が続いた。ドラマを見せなくては国連ではないのだ。ひょっとすると、40年ぶりに国連を舞台にした世界史の大型ドラマが演じられるかもしれない。感動の再現を予感させる。20世紀は米国の時代だったが、21世紀はそうではないと、その画期を宣告するモニュメンタルな一瞬を、NYの映像で見ることができるかもしれない。大阪万博があり(70年)、中国が国連に加盟し(71年10月)、田中角栄と大平正芳が日中国交正常化をやり(72年9月)、ベトナムが戦争で米国に勝利し(75年4月)、70年代というのはいい時代だった。80年代に入り、悪い時代へ変わった。パレスチナの国連加盟を転機に、世界史と日本史がもう一度正気を取り戻して欲しいと願う。

パレスチナを国連に加盟させよ。誰も邪魔をしてはならぬ。



by thessalonike5 | 2011-09-23 23:30 | その他 | Trackback | Comments(2)
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Commented by イオアン at 2011-09-23 21:38 x
こんにちは。今回の記事も面白く読ませて頂きました。
どうもアメリカが拒否権を発動せざるを得なくなり、面目を潰す可能性が高いですね。アメリカの外務官僚や一部の政治家、それに国連官僚はイスラエルというお荷物にうんざりなのでしょう。その思いを押し殺さねばならぬほどにアメリカ政・官・学・産ともにユダヤロビーと宗教右翼に牛耳られているのでしょうか。これに新自由主義、新保守主義、さらに過剰な反共アレルギー、小さな政府信奉、銃保有の権利主張、イスラム・アレルギーを加えれば、もうがんじがらめでいやはや大変なイデオロギー不自由国家もあったものと呆れ返ります。
Commented by カプリコン at 2011-09-23 22:17 x
3年前の年末。確かオバマが大統領選挙に勝利した年ですよね。ガザ地区への空爆で、子どもを含むたくさんの民間の人々が殺されたのは。そして、そんなイスラエルをアメリカを始め国際社会は非難しなかったですよね。9・11以降、アメリカは同盟国というか、いいなりになる国(日本も)を巻き込みタリバンへの攻撃といいながらアフガニスタンへ侵攻し、さらに国連を無視し「大領破壊兵器」を持っているらしいからとイラクを攻撃しました。何人もの民間人が犠牲になりました。

『わたしの妹』というお話があります。いじめで妹をなくされた方の一通の手紙をもとに書かれた絵本です。作者の松谷みよ子があとがきで、手紙の中に「自分より弱い者をいじめる。自分とおなじものでないものを許さない。そうした差別こそが戦争へつながるのでないでしょうか。」という一節があったと紹介しています。相手を自分と同じ人間と思わないような傲慢さが、平気で人間の尊厳を踏みにじっていくのでしょうね。

アメリカやイスラエルがしていることは、第二次世界大戦中に行われたアウシュビッツ・南京大虐殺・そして原爆と何ら変わりません。

同じ過ちを繰り返さないために国連の果たす役割は大きいはずです。
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