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台風の被災地に無関心なNHKと福島瑞穂と小池晃
昨夜(9/6)の報ステでは、山口豊が本宮(旧本宮町)に入り、被災から3日目で初めてカメラが現地の様子を報道した。スクープ取材と言える。本宮は、近くを流れる熊野川が氾濫し、町中が泥まみれになっていて、水道も電気も復旧しない中を、人々が泥の掻き出し作業に追われていた。ここは熊野本宮大社がある聖地である。後白河上皇が34回も行幸を重ねたという熊野三山の中心地。山口豊のレポートは、本宮大社の境内は映したが、なぜか正面の社殿を撮ろうとしなかった。ここの社殿は立派で風格がある。無事を確認したかった。熊野川は清流の大河で、一度見ると忘れられない鮮烈な印象を残す。南四国を流れる四万十川や仁淀川に姿と趣がよく似ている。雄大で美しい熊野川が茶色の濁流になって氾濫し、本宮の門前町を呑み込んでいた。不思議なのは、それを上空から捉えた映像がないことだ。紀伊半島で大雨の被害が出たのは9/4だった。テレビ報道は、那智勝浦町(井関)、新宮市と紀宝町、そして田辺市(伏菟野)や十津川村にはヘリを飛ばし、上空からの映像を東京に送ったが、熊野川が氾濫して本宮を水浸しにしている絵を撮っていない。あの大きな熊野川が氾濫する図というのは、想像しただけでも(表現が不適切かもしれないが)壮大なスペクタクルである。しかも、その濁流が、日本史の肝とも言える熊野本宮に襲いかかっていたとすれば、この映像を撮らずしてカメラマンは何を撮るのか。


特に不思議なのは、その映像の撮影にNHKが無関心だったことだ。上空からの映像も無ければ、地上の報道でもテレ朝に先を越された。あり得ない話だ。おそらく、本宮については、そのとき通信手段が途絶え、状況を外部に説明することができなかったのだろう。NHKは、被害の情報が報道センターに入った那智勝浦や田辺の上空飛行のみをヘリに指示し、官僚仕事で絵を切り取らせたのに違いない。しかし、普通の感性を持った者ならば、渋谷で地図を見ながら指示を出す立場の者であっても、熊野川本流の上流がどうなっているかに懸念が及ぶはずで、NHKに入社する程度の知性を持った文系の者なら、そこに日本史の肝である八咫烏の熊野本宮が鎮座していることを知っているはずだ。否、ヘリに乗ったカメラマンがプロの人間だったら、言われたままの映像を撮って引き返すのではなく、熊野川の上流方面へ行ってみましょうと、操縦士と局の上司に提起するはずなのである。本来、地方に対して最も注意を払わなければならないNHKの職員が、地方に対して最も無関心になり、無神経になり、地方を報道から切り捨てている。歴史や文化にもひどく無知で鈍感になっている。那智の滝の上部に張ったしめ縄が切れたニュースは映像で出たが、当日の、しめ縄を切るほど強く濁流が噴出して落下する様は、われわれは(上空からの映像を)テレビで目撃していない。

山口豊は、本宮までのルートを田辺から入っている。古代の中辺路、熊野古道を通っての紀伊半島の東西横断だが、国道311号線が崖崩れで通行不能になり、車が1台通れるだけの狭い県道を這って山奥へ進入していた。海岸から本宮までの距離を見れば、当然、南の新宮からのアクセスが近い。距離にすれば半分だ。しかし、わざわざ2倍の距離をルートに選んだのは、国道311号の本宮-新宮間が不通で、迂回する側道もなかったからだろう。本宮-新宮間の線とは熊野川沿いの道路である。私はこの道を走ったことがあるが、素晴らしい景観で、明るく眺望が開け、最高のドライブコースだった。逆に、田辺-本宮は薄暗い森の中を走る。熊野古道そのもの。奥へ分け入るほどに霊気が漂ってきて、神秘的で不安な感覚に包まれる。田辺-本宮と本宮-新宮の二つの道路は、運転する者にとって全く対照的な世界だ。私は、小栗判官が浸かったという伝説で有名な「つぼ湯」のある湯の峰温泉で一泊したのだが、正直に言えば、温泉も旅館も満足できるスペックからは遠かった。1800年の歴史のある温泉で、古より熊野本宮に参詣する旅人をもてなしてきた伝統ある観光地にもかかわらず、それを感じさせる洗練された接客の中身がまるでない。そこらの田舎にある温泉宿と同じで、失望させられる体験だった。世界遺産に登録され、精力的にプロモーションを展開し、外国人客が増えている現在はどう変わっただろうか。

報道によると、野田佳彦は9/8に福島に入り、翌9/9に和歌山・奈良・三重を訪れ、9/10に宮城・岩手と、3日連続で被災地を行脚する予定だと言う。首相が現地に入る次第になったことは、被災地にとってはよかった。おそらく、官僚は、野田佳彦が和歌山や奈良へ入るのを阻止しようとしたはずで、この日程は本人の念頭にもなかったはずだ。予算が出るからである。発足したばかりの新政権であり、支持率を気にして人気取りを第一に考えなくてはならない境遇だから、和歌山・奈良への視察に踏み切った。東北の被災地に足を運びながら、台風12号の被害で苦しんでいる者を放置することはできないからである。それをすれば、当然、どこからか叩かれる。首相が被害を受けた現地を視察するとなると、内閣府、国交省、総務省等々の官僚がお付きで同行することになる。彼らは野田佳彦の席の隣に侍り、現地の首長や県幹部から被害状況の説明を受け、具体的な支援要請を受ける。その場に、県知事も、選挙区の国会議員も同席する。首相の来臨なのだから、当然のことだ。「支援要請」とは、予算と法律の措置と適用である。無論、そんな場を設定してはるばる官邸から来た野田佳彦が、要請に対してNoと拒絶を言うことはない。被災地に対して見舞いの言葉を言い、「検討させていただきます」と言う。「後は事務方に調整させます」と言い、お付きで並んだ官僚どもの顔を一瞥する。正式に承ったという確認であり、「聞いてない」はこれでなくなる。

金額算定の交渉のフェーズになる。これが日本の政治のやり方であり、権力者による下の者のrequestのhearは、半ばacceptであり、半ばcommitである。だから、9/8の野田佳彦の訪問は、現地にとってはきわめて重要な機会なのだ。単なる視察ではなく、100億単位のカネが動く場であり、国の予算に関わる正念場である。だからこそ、本省から課長級の官僚がぞろぞろやって来る。官房副長官も来る。「総理が視察された席で、そんな話は出なかったじゃないか」と、後で官僚に言い返されたら、県や市長村の立場はそれで終わりなのだ。今ごろ、県の土木部長とか防災課長とかは、必死で県庁のExcelを操作し、病院や学校の損壊を含めたインフラの被害額を積み上げていることだろう。復旧復興の予算の陳情のためだ。選挙区の国会議員は、秘書に電卓を叩かせ、業者のマージンの鉛筆を舐め、多めの被害額算定書を作成する。9/8に野田佳彦が和歌山・奈良・三重に入ることで、台風12号の被害に対する手当が、第3次補正に入る見通しになったと考えていいだろう。昨日(9/6)の記事で、財務相に就任した安住淳が、9/4のテレビ番組に生出演しながら、台風の被害に遭っている人々に何の言葉もなかったことを批判した。それから、和歌山県選出の議員が、この災害についての言葉をTwitter上に発してないことを批判した。普通、こんなときに国会が開かれていれば、儀礼であれ、委員会の質問者は冒頭に、「まず最初に、この台風で被害に遭われた皆様に」云々という口上を切り出す。

委員会の開会を宣言する委員長は、「お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りして」とテンプレートに従って述べ、委員である議員全員に起立を促し、1分間の黙祷とかをする。どれほど形式であり、形式と分かる所作と言動であっても、国民の代表たる議員だからそれをする。気になって、社民党の福島瑞穂のTwitterを調べてみた。9/3から今日まで15個ほどのTweetがある。が、和歌山や奈良で被災した人々への見舞いの言葉は一つもない。どこへ行ったとか、どこへ移動中だとか、自分の関係している講演会の告知と宣伝ばかりだ。Blogの方も同じで、出版した本の宣伝と講演会をやったという報告である。福島瑞穂に限らず、左翼系の有名人のTwitterやBlogというのは、このところ、こういう宣伝話か自慢話か無駄話ばかりで溢れるようになっている。彼らは、互いにフォローし合ってTLを流すから、Twitterで発信する情報について、こういうものだと「標準」のコードとプロトコルを理解するのだろう。宣伝話と自慢話と無駄話。共産党の小池晃のTwitterを見ると、9/3以降、8個ほどのTweetを上げているが、台風12号の被害についての言及はない。岩手県を旅行している話ばかり。政治業界のタレント様をやっている。保守だけでなく、革新の議員もこのありさまで、私は言うべき言葉を失って呆然とする。よく分からない。菅直人に政府の「ボランティア連携室」の室長に任命された男のTwitterは、5/13から更新がない。

再就職活動で忙しいのだろうか。和歌山・奈良・三重へボランティアに行って下さいとか、そういう呼びかけをしなくていいのだろうか。やるべき任務をやっているのは、自衛隊と消防隊の隊員だけではないか。



by thessalonike5 | 2011-09-07 23:30 | その他 | Trackback | Comments(0)
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