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泊原発、営業運転再開―原発推進派のささやかな勝利


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 3月11日に福島第1原発の事故発生以来、日本の原子力産業は防戦一方の劣勢に立たされている。全国各地の原発では、定期検査で停止中の原子炉でさえ、地元自治体の反対にあって再稼働できない状態だ。そして、このように反原発へ傾いた世論が変化しない限り、来年までにすべての原発が停止する可能性も取りざたされていた。

イメージ Reuters/Kyodo

営業運転が再開された北電泊原発

 ただ、ここに来て、一部の自治体に原発の稼働再開を容認する動きも出てきた。

 高橋はるみ北海道知事は17日の記者会見で、北海道の最北端に位置する北海道電力泊原発3号機の営業再開を容認する意向を明らかにした。これを受けて経済産業省原子力安全・保安院は再開の承認となる定期検査の修了証を交付。同3号機は定期検査を終え、営業運転を再開した。東日本大震災後に定検から営業運転に移行した原発は初めて。

 高橋知事は今回の決定にあたり、「私としては、原子力発電所に関しては、何よりも安全を優先し、道民の不安の解消に努めながら対応をすべきものと考えており、国においては、今回の福島の事故を踏まえ、今後、責任を持って安全対策に万全を期すとともに、原発立地地域との信頼関係を損なうことのないよう、誠実かつ丁寧な対応を強く求める」との声明を発表した。

 原発のあり方を論議する地方自治体首長の中で、高橋知事は原発に最も理解のある方かもしれない。同知事は、原子力発電の促進役であると同時に規制省庁でもある経産省の出身である。

 経産省の承認は実は形式に過ぎなかった。定期検査のために1月に停止した泊原発を所有する北海道電力は実際には3月中旬から、定検の最終段階にあたる「調整運転」という形で電力を供給してきた。実は同原発は実質的にはフル稼働していた。これまでは、「営業運転」への政府からの承認がなかっただけのことである。

 北電の広報担当者は今回の営業運転再開前、政府の正式な承認を受けていないことを認め、地元住民の理解が得られ次第できるだけ早く承認を受けたいと語っていた。

 泊原発の場合、地元住民の中には原子炉まで1キロ程度しか離れていないところに住んでいる人もある。同村役場の職員によると、今回の運転再開についての問い合わせはまだ1件もなく、村民から再開反対の声は一切上がっていないという。

 この職員は、この件が表面化して以来、運転再開反対のEメールが村役場に約550件届いたことを認めたが、それらは地元住民からではなく、反原発団体からのメールのようだと語った。

 一方、北電の広報担当者はこの夏の電力について、今回営業が再開された原子炉からの発電がなくても安定供給できると述べていた。しかし、寒さの厳しい冬には、原子炉の営業運転が正式に承認されない場合、供給不足に陥る可能性もあるとしていた。

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