2011年4月28日7時15分
[ワシントン 27日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は27日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後、初の定例会見を行った。
発言内容は以下の通り。
<景気減速は一時的>
概して、FOMCは、第1・四半期の景気減速の大半を一時的なものとみていると言うことができる。
そのうえで、建設部門の一段の軟化や、恐らく景気の勢いがわずかに弱まるといった要因を考慮し、われわれは経済見通しを若干引き下げた。
<ゼロインフレについて>
インフレをゼロに維持しようとすれば、長期にわたるデフレ、あるいは賃金と物価の下落に直面するリスクが高まる。そうなれば、雇用が減少し、持続可能な最高の水準を長期にわたって下回る可能性がある。ゼロインフレを目指すことは、米連邦準備理事会(FRB)の2つの責務に一致しない。
<インフレ期待について>
総じて、中期的なインフレ期待はほとんど変化しておらず、FRBがその責務に一致した水準と近いレベルに中期的なインフレを保つという信頼感を引き続き反映していると言っていいと思う。
<ドルについて>
強く安定したドルは米国および世界経済の利益だとFRBは確信している。FRBが物価安定と最大雇用という2つの責務を果たすために必要な措置を講じれば、ドルを中期的に支援するファンダメンタルズ(基礎的条件)も生み出すとわれわれは考えている。
中期的にドルを支える強いファンダメンタルズを形成するためにわれわれにできる最善の措置は、第一にインフレを低く抑えることだ。そうすれば、ドルの購買力が維持される。第二の措置は、強い経済を維持することだ。
<長期間の文言>
引き締めサイクル開始までにどの程度の時間がかかるかは明確には分からない。明らかに見通し次第だ。長期間の文言は、リソースの緩みや抑制されたインフレ、安定的なインフレ期待などを条件としており、これら条件が損なわれるか、もしくはかけ離れることになれば、引き締めを開始する時期となる。
長期間の文言は、行動を起こす前に数回のFOMC会合が開催されることを意味している。しかし、どの程度早急に対応が必要となるかが不明であるため、残念ながらこのように漠然とした表現を用いている。従ってわれわれの見解を伝えるよう最大限努力する。しかしこれはあくまで経済動向次第となる。
<追加刺激策>
追加的な措置が正当化できるかどうか判断し続けなければならない。FRBの2つの責務を念頭に置いて行う必要がある。成長率とインフレ率の双方を注視しなければならない。
<償還資金の再投資>
FOMCで行われてきた議論に基づけば、債券の償還資金のすべて、もしくは一部の再投資をやめることが、おそらくFRBの出口戦略の初期段階における措置となる公算が大きいと考えている。
ただ重要なのは、これは比較的控えめな措置であるとは言え、引き締め政策になることだ。FRBのバランスシート規模縮小につながり、基本的に金融情勢が引き締まることが予想されるためだ。
こうした措置については、見通し、およびFRBが景気回復がどの程度持続可能と見ているか、またFRBのインフレ情勢に関する見解に照らし合わせて、決定を行う。FRBの決定は、こうした変化する見通しに基づくものとなる。
<回復は緩やか>
回復は比較的穏やかなペースだ。原因の1つは、信用に関する要因。もう1つの重要な要因は、これが住宅市場のバブルがもたらしたものであり、住宅市場が引き続き低迷していることだ。通常の状況下では、居住用・非居住用ともに、建設が回復過程の大きな部分を占める。だがわれわれは現在、原油価格上昇やその他の状況にも直面している。高い失業率、高いガソリン価格、高水準の住宅差し押さえ率というのはひどい組み合わせで、多くの人々が困難な状況に置かれている。人々が忍耐強さを失うのも十分に理解できる。回復プロセスは比較的緩やかになる可能性が高いようだが、回復ペースは時間とともに加速すると予想している。
<東日本大震災による米経済への影響>
非常に注意深く影響に注目している。これまでのところ日本の状況が米経済に与えた影響は、サプライチェーン(供給網)を通じたものだ。一部の国内自動車会社は、日本での生産がほとんど、あるいは日本でのみ生産されている特定の部品の取得に苦労していると認識している。その結果、当面は減産する方針を示す会社も出ている。そのため米経済にも一定の影響が及ぶ可能性はあるが、影響は穏やかで一時的と予想している。
<スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の米格付け見通し引き下げ>
ある意味で、S&Pの米格付け見通し引き下げがわれわれに伝えることは何もない。新聞を読む人なら誰でも米国が非常に深刻な長期的財政問題を抱えていることは知っている。その上で、見通し引き下げが、米議会と政府にこの問題への取り組みを促すことを望む。これは少なくとも長期的には米国が直面する経済の最重要問題だ。
現在、米国の財政赤字は長期的に持続不可能で、対応しなければ金融安定や経済成長、生活水準に大きな影響を及ぼす。対応を迫ったという点で、S&Pの見通し引き下げは建設的だ。
<QE2(量的緩和第2弾)の効果>
QE2には効果がなかったという結論は、QE2を、全ての問題を解決し一夜で完全雇用を回復させる万能薬と考える場合のみ正当化できる。
われわれは最初から、QE2は重要な措置と捉える一方、万能薬ではなく、経済を正しい方向に戻すだけのものであると、非常に明確にした。われわれが期待し想定した範囲でみれば、プログラムは成功したと思う。
では、なぜ追加措置はないのかと問われれば、現段階では相殺関係で魅力度が低下しているからだ。インフレは上昇し、インフレ期待もやや高まった。ある程度のインフレリスク増大を伴わずに雇用の持続可能な改善が実現できるかは不透明だ。
わたしは、長期的に持続可能な回復を実現するのであれば、インフレを抑制していく必要があると考えている。