ベン・バーナンキ氏が連邦準備理事会(FRB)の議長として初めて行った定例記者会見では約20の質問が出た。その一つがなぜ記者会見するのかというものだった。当然の質問だ。
議長は「昔、中央銀行の業務が神秘的だったのは、行っていることを誰にも知らせないことがすべてだったからだ」と述べた。
年が経つにつれ、「非常に透明性のある中央銀行になったと思う。個人的には出来るだけ情報を与えることの重要性を確信するようになった。それにより、大衆と市場はわれわれのしていることを理解しやすくなる」と続けた。
1時間近い記者とのやりとりは、議会公聴会をやや速めたペースのようなものになった。この会見には質疑時間を長い演説に使う議員はいなかった。議員の代わりに何列ものテーブルに着席していたのは約50人の記者たち。大方がFRB担当だ。
冒頭、バーナンキ議長が連邦公開市場委員会(FOMC)での政策決定と最新の景気予測に関する声明を淡々した口調で読み上げたことで、会見のトーンが決まった。記者会見は歴史的なイベントかもしれないが、華々しいことは期待しないほうがよい。
そこで記者が手を挙げ、FRB関係者が質問者を選んだ。議長は国旗とFRBの旗に挟まれた低い演壇に座り、独特の丁寧なスタイルで質問に答えた。厳しい経済状況で苦労している国民にもわずかに共感を寄せた。
「多くの人たちが非常に困難な状況にある。従って(景気回復について)歯がゆい思いをしている理由は理解できる」と議長。
今回の会見については、「市場を不必要に混乱させる」とか「中銀は、神秘性を保ってこそ、最大限の力を発揮する」などとする指摘も一部で聞かれたが、会見が終わってみれば、そのいずれも間違いであったことが明らかになった。
議長は学者のように、多くの国民がガソリン価格を政策立案者に何とかして欲しいと望んでいるような時にFRBができることを説明する場として、今回の会見を利用した。需給要因に触れた上で、「FRBがガソリン価格について対応できることはあまりない」と述べ、FRBは経済全体の全般的なインフレだけにしか対応できないとの認識を示した。「FRBは原油を増産できない。新興国の経済成長率もコントロールしない」と述べた。
記者会見は、金融市場の悪化を懸念する向きにとっては期待外れとなった。会見中にダウ平均株価は約30ドル上昇した。
投資家はまた、金利をゼロ近辺に「長期間」維持する方針の説明など、FRBの考え方を探る手掛かりを得た可能性もある。
議長は「長期間」についての質問で「行動を起こす前に数回の(FOMC)会合がある」と述べ、定義を避ける傾向があるスポンジのような”FRB文学”についてヒントを示した。