田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)速報分析 2011年3月3日 http://tanakanews.com/si.php ●東アジア、南アジア 米右派シンクタンクAEIの日本担当者が「ロシアが北方領土にミサイルを配 備したり、極東海域に潜水艦部隊を新設するのは、日本を標的にしたものでは なく、中国の軍事台頭に対抗するためのものだ。ロシアは北方領土問題を隠れ 蓑にすることで、中国に警戒されぬよう軍事強化している。ロシア極東では中 国商人が貿易利権を握っており、今後さらに極東やシベリアへの中国の影響力 が増すので、ロシア中枢は警戒している。日本は(北方領土問題を棚上げして) ロシアと協調関係を持ち、日本が極東やシベリアに経済進出して中国を抑える ことが、日露双方の国益にかなっている」という主張をWSJ紙に載せた。 これは、日本に対し、ロシアと組んで東アジアの地域覇権国の一つになれと求 める誘導だ。ロシアは中国を警戒しつつも、中国が極東開発に金を出すことを 歓迎しているし、国際政治の分野では中露は広範に連携しており、仮想敵とは 逆の同盟関係に近い。この論文は中露対立を誇張している。「中露は対立して いるので、日本はロシアと組んで中国と対抗せよ」という言い方は、対米従属 に固執して国際政治の場で「いないふり」を続ける日本を、何とか引っ張り出 そうとして、以前から米国が断続的に言ってきた誘い文句だ。しかし日本側は、 この誘いをほとんど無視してきた。今回もたぶん無視だろう。日本では、マス コミなどがロシア敵視の世論醸成を加速している。 http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703559604576175660916870214.html Russia Fears China, Not Japan ●西アジア、中東、アフリカ サウジアラビアで3月11日に「怒りの日」の反政府集会の開催が呼びかけられ ている。バーレーン対岸の東部州のシーア派の町カティーフなどでは、すでに 反政府行動が起こり、シーア派の聖職者が当局に拘束されている。サウジ政府 が反政府集会の開催を抑圧できる可能性も高いが、海外投資家はすでにサウジ を見放す傾向で、サウジの株式市場は13日連続の大幅下落となり、3月1日の 7%下落に続き、2日も4%の続落となった。原油も史上最高値を更新している。 サウジ東部が混乱すると原油は確実に急騰し、世界経済が混乱する。サウジの シーア派の運動がどうなるかが世界の今後を決めるといって過言でない。 http://www.irishtimes.com/newspaper/world/2011/0226/1224290928849.html Saudi Arabia witnesses first signs of unrest as 'day of rage' planned for March 11th http://seekingalpha.com/article/255982-saudi-stocks-down-13-days-in-a-row Saudi Stocks Down 13 Days in a Row http://tanakanews.com/110302oil.php 中東革命とドル危機の悪循環 米国政界で、リビアに軍事介入すべきかどうかについて議論が続いている。ゲ ーツ国防長官は3月2日、リビア上空に飛行禁止区域を設けると、不可避的に米 軍がリビア軍の地対空攻撃施設を空爆せねばならなくなり、リビアとの戦争を 覚悟する必要があると米議会で警告した。一昨日に「あらゆる手段を使ってリ ビア反政府派を支援する」と力んでいたクリントン国務長官も同日「国連での 議論は、リビア上空に飛行禁止区域を設ける決議をするには程遠い状況だ」と、 及び腰に転じた。オバマ大統領は、記者会見でリビアについて尋ねられたが、 無視して答えなかった。米政府はリビアに軍事介入したくないが、米議会では、 リビア反政府派を軍事支援せよという声が出ている。米マスコミには「内戦が 長引くほど、オバマ政権は軍事介入せざるを得なくなる」との予測も出ている。 http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/n/a/2011/03/02/national/w085739S86.DTL Gates: Air cover over Libya would require attack http://www.miamiherald.com/2011/03/02/v-fullstory/2094565/despite-reluctance-us-could-be.html Despite reluctance, U.S. could be forced to act in Libya 「リビア反政府派の武器が古くて使い物にならない(だから米国による武器支 援が必要だ)」という軍産複合体の提灯記事みたいなのも早速出ている。こう した状況は、米国がイラク戦争に向かった2002年ごろを思い出させる。軍産複 合体の利益を重視する議会やマスコミの右派が「イラクに侵攻すべきだ」とさ かんにたきつけ、消極的な米政府を侵攻決断に押しやった。オバマはブッシュ より有能だと考えるなら、不介入に踏みとどまるかもしれないが、今の時点で オバマが姿勢を明確にしないのは、今後の状況しだいでどっちにも転べるよう にする風見鶏戦略にも見える。リビアの反政府派の広報官は、外国の軍事介入 や政治介入には反対だと表明したが、そんな現地の声は軽視され、米国の都合 だけで介入が議論されている。 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/03/01/AR2011030106071.html Rebels repel Gaddafi loyalists in battle for key Libyan oil port http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MC03Ak03.html War porn is back in Libya http://tanakanews.com/110301libya.php 内戦化するリビアに米軍が侵攻する? この速報分析はウェブサイトでも読めます。 http://tanakanews.com/si.php これまでの全分析が、日別、大区分・小区分別に整理されています。 メールアドレスの変更、購読料の支払いは、以下の会員メニューで行えます。 https://tanakanews.com/menu.php?i=8611&u=6caef