田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)速報分析 2011年2月19日 http://tanakanews.com/si.php 「ソーシャルメディア革命の裏側」という記事を書き、無料配信しました。 http://tanakanews.com/110218net.htm ●覇権、通貨、世界的な問題 米国でジャンク債の相場が史上最高値を更新し、利回りが史上最低の6.8%ま で下がった。これまで巨額資金が流入していたBRICなど新興市場の政府が 投機規制を強化したため、多くの資金が新興市場から米国に戻り、ジャンク債 の需要が増えた。連銀が超緩和的な量的緩和策を続け、資金調達が容易なため、 投資家はリスクに鈍感なサブプライム危機前の状態に戻っている。WSJは、 ジャンク債のバブルが再膨張していると警告している。 http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703561604576150783690604042.html Junk-Bond Rally May Be Hitting the Wall http://www.ft.com/cms/s/0/7f6b156a-3b9b-11e0-a96d-00144feabdc0.html `Junk' bond yields hit record low ●米国、南北アメリカ 米国では全米各州の多くで財政難が悪化し、州職員の賃金引下げなど支出削減 策が検討され、各州の職員組合の反対が強まっている。ウィスコンシン州では、 州知事が職員組合の労働闘争権を制限する州法を提案し、労組などが3万人を 集めて反対集会が開かれた。この反対運動は、オハイオ、テネシー、ペンシル バニアなど、支出削減策がとられそうな各州に拡大している。米国ではインフ レ傾向が強まって食料やガソリンが高騰し、多くの市民が生活苦にあえいでい る。オバマ大統領は米国経済の再強化策に熱心だが、新たな経済顧問は大企業 の経営者たちで占められ、大企業の利益だけ増やし、庶民生活を改善させそう もない。長引く不況に耐えて黙っていた米国民が、いよいよ決起していきそう な流れが始まっている。 http://www.nytimes.com/2011/02/19/us/politics/19states.html Wisconsin Leads Way as Workers Fight State Cuts http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=165793 Inflation on the rise in America http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704900004576152254129083120.html Obama Talked R&D With Jobs, Zuckerberg ●東アジア、南アジア 中国政府は、国内の自動車市場における中国のメーカーの販売を伸ばしたいが、 市場における国内メーカーのシェアは30%で、外国車の人気が高い。そのため 中国政府は、中国市場に参入している日本勢など外国の自動車メーカーに中国 企業との合弁を拡大するよう圧力をかけ、中国企業が外国勢から技術移転を受 けて開発力を強められる体制を作ろうとしている。合弁によって外資の技術を 中国企業が体得し、外資よりも強いメーカーに成長し、国内市場や国際市場で 中国勢が他国企業を駆逐していく例は、すでに高速鉄道(新幹線)や家電など の分野で顕著になっている。こうした動きは世界からの中国批判につながって いるが、産業革命以来、先進国から途上国に産業技術が移転され、途上国の成 長で先進国の資本家が儲ける流れは200年間絶え間なく続き、明治維新後の日 本もその恩恵を大いに受けている。産業革命が日本に伝播して100年経った今、 日本や欧米から中国への技術移転が加速するのは、資本主義の歴史の必然とも いえる。 http://www.ft.com/cms/s/0/59a1a0a8-3b80-11e0-9970-00144feabdc0.html Beijing presses carmakers to share technology 中国の4大銀行の一つである国営の中国商工銀行が、中国で金地金に対する需 要が爆発的に増加していると指摘した。中国ではインフレが5%近くなり、人 々はドルペッグされている現金より金地金を信じる傾向を強めている。 http://www.reuters.com/article/2011/02/16/us-icbc-gold-idUSTRE71F1MO20110216 China Gold demand growing at "explosive" pace: ICBC ●西アジア、中東、アフリカ 米政府はバーレーンの王政に関し、ハマド国王とサルマン皇太子は開明派だが、 国王のおじで治安担当相を兼務するハリファ首相は腐敗して残虐な人物であり、 ハリファ首相が治安部隊に命じて2月17日深夜に首都の真珠広場で寝ている反 政府デモ隊を暴力的に鎮圧し、デモ隊ら国民の多数を占めるシーア派を怒らせ て、反政府運動を逆に激化してしまったと考えている。米政府は、国王に圧力 をかけ、ハリファ首相を解任させることで、バーレーンの混乱をおさめたい考 えらしい。これは逆に、ハリファが圧力に抗し、国王の意に反して傘下の治安 部隊(パキスタン人などスンニ派の外国人を集めて帰化させた外人部隊)を動 かし、反政府運動をさらに弾圧する方向に進みかねない。隣国サウジアラビア は、すでに自国の治安部隊をハリファ傘下の部隊に合流させ、反乱鎮圧に加担 しており、米サウジ関係の悪化に拍車もかけそう。サウジ国王はムバラクを辞 任させた米政府を批判している。 http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703803904576152710848378624.html U.S.'s Bahrain Efforts Threatened By Royal Rift, Saudi Distraction http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/17/bahrain-security-forces-sunni-foreign Bahrain security forces accused of deliberately recruiting foreign nationals 国連安保理で、世界の130カ国が支持して提案された、パレスチナでのイスラ エルの入植地拡大を非難する決議案が、米国の拒否権発動によって否決された。 米政府は以前から入植地拡大を批判しており、本来は決議案に反対でなかった のだが、イスラエルに牛耳られた米政界からの圧力で、オバマ政権として初の 拒否権を発動せざるを得なかった。米政府は「入植地拡大には反対だが、安保 理で決議すべきことではないので拒否権を発動した」と釈明している。途上諸 国の多くは、米イスラエルを批判。先進国の中でもEUは、中東和平に真剣で ないイスラエルへの批判を強めている。イスラエルは、トルコやアゼルバイジ ャンといったイスラム諸国の大使館を次々に閉鎖し、孤立を深めている。米国 はイスラエルに引きずられ、国際指導力を減退させている。 http://www.cnn.com/2011/WORLD/meast/02/18/un.israel.settlements/ U.S. vetoes U.N. resolution declaring Israeli settlements illegal http://www.haaretz.com/print-edition/news/netanyahu-faces-international-isolation-as-peace-process-stalls-1.343834 Netanyahu faces international isolation as peace process stalls http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/israel-closes-missions-in-turkey-due-to-hezbollah-threat-1.344014 'Israel closes missions in Turkey due to Hezbollah threat' イランの2隻の軍艦が、紅海からスエズ運河を通って地中海のシリアの港に行 こうとしている。2隻はサウジアラビアのジェッダ港に寄港した。イランはエ ジプトに対し、2隻がスエズ運河を航行する許可を求めている。エジプトは許 可する方向。イランの船がスエズ運河を通るのは、1979年のイラン革命後初め て。イランは、今回の革命後のエジプトで、イランと協調できるイスラム主義 の政治勢力が強まると予測しており、イランとエジプトの関係性を試すため、 自国の軍艦にスエズ運河の航行を試みさせていると考えられる。イランを強い 脅威と感じるイスラエルは、この時期にイランの軍艦が、自国の鼻先にあるス エズ運河を航行し、イスラエルを敵視してイランに接近するシリアの港に行こ うとしていることを警戒している。 http://www.haaretz.com/news/international/report-egypt-has-approved-iran-warships-to-use-suez-canal-1.344310 Report: Egypt has approved Iran warships to use Suez Canal エジプト革命後「エジプトでイスラム主義が強まる」と考える欧米の懸念を払 拭するため、最大野党であるイスラム同胞団は、本来の方針であるイスラム主 義をなるべく表に出さず、穏健リベラルの勢力としてふるまっている。だが表 向き同胞団と関係ないところで、エジプトのイスラム主義化が進んでいる。カ イロのピラミッド通りには、多くの賭博場が立ち並び、ムバラク政権時代には、 賭博が禁じられたサウジアラビアなどからの観光客が羽目を外して賭博や飲酒、 売春にふけっていた。革命前から、イスラム主義の若者集団がピラミッド通り の賭博場を「反イスラム的」だとして襲撃する事件がたまにおきていたが、ム バラク辞任から数日後の2月15日深夜、1000人の若者が賭博場を襲撃し、大規 模な打ち壊しをやった。同胞団は、同胞団を陥れるために治安当局が傘下の若 衆にやらせたに違いないと言っている。誰がやったにせよ、犯人は永久に捕ま らないだろう。米軍侵攻後のイラクと同様、エジプトは隠然とイスラム主義政 治の方向に動いている。 http://www.ft.com/cms/s/0/8dd89b4a-3b7d-11e0-9970-00144feabdc0.html Casino attacks raise Islamist fears http://tanakanews.com/110212egypt.htm やがてイスラム主義の国になるエジプト この速報分析はウェブサイトでも読めます。 http://tanakanews.com/si.php これまでの全分析が、日別、大区分・小区分別に整理されています。 メールアドレスの変更、購読料の支払いは、以下の会員メニューで行えます。 https://tanakanews.com/menu.php?i=8611&u=6caef