田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)速報分析 2011年2月13日 http://tanakanews.com/si.php エジプト革命について長文の解説記事を書き、全国民的に重要な話題なので、 無料版として配信しました。 「やがてイスラム主義の国になるエジプト」 http://tanakanews.com/110212egypt.htm ●覇権、通貨、世界的な問題 米国が中国との経済摩擦を強めそうな様相になってきた。米議会上院で民主党 が、人民元の対ドル為替を操作し続けている中国を制裁する報復関税の法案を 提出した。また米政府は、中国政府が中国国内でビザやマスターカードといっ た米国のクレジットカードの利用を制限し、自国の銀聯ブランドのカードしか 使えないようにしていることを、市場参入障壁としてWTOに提訴することを 決めた。昨日発表された昨年12月の米国の貿易統計で、対中国の貿易赤字が増 加したことが、米国の強硬姿勢の一因。G20とIMFが、ドルに代わる基軸 通貨体制の一環として、人民元の国際化を要求する流れになっていることも関 係していそう。 http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gzTJm-BV0ghhKnOCzUju6Xxnutfg US lawmakers revive China currency bill http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704329104576138323179047178.html U.S. to Pursue WTO Cases Against China http://money.cnn.com/2011/02/10/markets/dollar/index.htm IMF calls for dollar alternative ●米国、南北アメリカ 米政府は「テロの危険性が911以来の最大になっている」と発表したが、これ は911を機に作られた米国の有事法である愛国法の延長と拡大が、米議会で反 対されて困難になっていることと関係ありそうだ。米当局が発表するテロ警報 は、以前から根拠の薄いものだった。米国民にテロの恐怖を思い起こさせ、米 議会に圧力をかけて愛国法の延長を実現しようとしているように見える。 http://www.csmonitor.com/USA/Politics/2011/0210/Why-is-Patriot-Act-under-fire-if-homegrown-terror-threat-is-rising Why is Patriot Act under fire if homegrown terror threat is rising? http://thehill.com/blogs/ballot-box/gop-primaries/143605-ron-paul-slams-patriot-act-backers-drown-out-jeers-at-cpac Ron Paul slams Patriot Act, backers drown out jeers at conference ●東アジア、南アジア 日本では菅政権の前原外相らが、中国やロシアとの対立を煽動することで対米 従属の国策を延命させる戦略を続けている。米国の覇権が衰える中で、前原ら の戦略に行き詰まり感が出ているのを見て、ロシアは訪ロした前原に対し、北 方領土問題で正面から非難する攻撃を加えた。ロシア外相は前原との共同記者 会見で、北方領土問題で日本と交渉しても意味がないと、前原をこき下ろした。 前原はほとんど言われっぱなしだった。世界の多極化の中でのロシアの台頭と、 日本が頼りにする米国の衰退を見ると、ロシアは2島返還すら二度と了承しな いだろうと感じられる。 http://edition.presstv.ir/TextOnly/detail.aspx?id=164802 Russia: Island talks with Japan pointless パキスタンのザルダリ政権が、国軍の黒幕である亡命中のムシャラフ元大統領 に対し、07年のブット(ザルダリの妻)暗殺に関与した容疑で逮捕状を発行し た。パキスタン当局は、これまでブット暗殺はタリバン系の勢力の犯行と言っ ていたのに、突然ムシャラフが犯人だと言い出した。これは法的根拠のない、 政治的な茶番劇だろう。米軍のアフガン統治の失敗でパキスタンに混乱が波及 するとともに、エジプト革命の余波で、パキスタンのイスラム主義勢力などが ザルダリ政権を転覆する運動を強めそうで、それを止めるために軍部がクーデ ターを起こしかねない。それらの動きに対抗するために、ザルダリはまずムシ ャラフを逮捕したいのではないか。パキスタンの国家体制の脆弱化はインドも 懸念しており、3年ぶりの印パ和解のための外相会談の予定が組まれたばかりだ。 http://www.cbsnews.com/8301-503543_162-20031636-503543.html Arrest Warrant for Pakistan's Ex-President http://tanakanews.com/sj.php?n=10658 印パ和解交渉に関する2月11日の分析 ●西アジア、中東、アフリカ ソーシャルメディアなどを活用してエジプト革命を主導した青年グループの一 つである「4月6日運動」は、2008年にニューヨークで開かれた「国際青年運動 連盟」(AYM)のサミットに参加していた。AYMサミットは、米国の国務 省や本土防衛省、外交問題評議会(CFR)といった米当局の肝いりで、グー グル、フェイスブック、米3大テレビ局、CNNなど米マスコミ大企業が資金 援助して毎年開かれている国際会議で、ソーシャルメディアを活用した若手の 政治活動家を世界各国から集め、社会運動や、独裁政権の転覆方法を含む政治 運動について議論している。2000年のセルビアと、2004-05年のグルジアやウ クライナの政権転覆は、AYMが結成される前の出来事だが、構図はAYM的 で、国務省やCIAが各国の青年政治組織を支援して政権転覆を画策した。エ ジプトの「4月6日運動」は、セルビアの政権を転覆した青年組織オトポールと 同じ、拳骨を振り上げたシンボルマークを使っている。エジプト革命にも、発 生前から米当局の操作が入っていた観がある。 http://www.activistpost.com/2011/02/googles-revolution-factory-alliance-of.html Google's Revolution Factory; Alliance of Youth Movements: Color Revolution 2.0 http://en.wikipedia.org/wiki/April_6_Youth_Movement April 6 Youth Movement From Wikipedia エジプト革命の余波で、パレスチナ自治政府(PA)が9月までに選挙を行う と発表した。PAのアッバス大統領の任期は2010年初めに切れているが、選挙 をやると反米イスラム主義のハマスが勝ってしまうので、PAも米国もイスラ エルも選挙をやりたがらず、アッバスは任期切れのまま大統領職を継続してき た。だがエジプト革命の進行に加え、PAがイスラエルの言いなりになってき たことが外交文書(パレスチナペーパー)の暴露でわかり、PAに対するパレ スチナ人の不信感が強まっている。ハマスは選挙への参加を拒否すると発表し、 PAは選挙の前にハマスと和解せねばならない。外交文書の暴露の責任を取っ て、PAでイスラエルとの交渉責任者だったサエブ・エレカットも辞任し、 PAにはイスラエルとの交渉役もいなくなってしまった。 http://www.ft.com/cms/s/0/5e91c0b6-36c6-11e0-bc9f-00144feabdc0.html Palestinian leaders promise polls by September http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2011/02/2011212135152355248.html Erekat quits over Palestine Papers イランは米欧から経済制裁を受けている上、イラン政府の経済政策の失敗もあ り、物価高や失業増で国民の不満が強い。そのためエジプト革命がイランにも 波及し、アハマディネジャド政権が転覆されるのではないかとの予測が米国の 右派などから出ている。だが、イランでここ数年間に起きている反政府デモは、 エジプトとかなり様相が異なる。今回のエジプトの反政府運動は、政府と民衆 の対立構造だが、イランの反政府運動は、政府と民衆の対立構造のように見え て、実は権力中枢のある派閥(たとえばラフサンジャニの派閥)と別の派閥 (たとえばアハマディネジャドの派閥)との対立が、民衆運動の形をとって現 れている。だから、エジプト革命はイランに波及しにくいとの指摘がある。表 裏のあるこの構図は、中国での反政府運動と同じである。イランや中国は、独 裁といっても、権力中枢が幾重にも割れていて、その内部の関係性の実態が外 部に漏れることが少ない。それだけに、民衆が政権を転覆することも簡単では ない。 http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MB12Ak01.html Mubarak plays into Iran's hands ●欧州、ロシア周辺 EU統合を推進したいドイツのメルケル首相は、今年10月に任期が切れる欧州 中央銀行のトリシェ総裁の後任に、ドイツ連銀のウェーバー総裁を横滑りさせ ようとしたが、ウェーバー自身は拒否し、さらにメルケルに対する拒否の意味 を込めて、予定より1年早く、4月末でドイツ連銀の総裁を辞任することを決 めた。ウェーバーは、欧州中央銀行がギリシャやポルトガルなどユーロ周縁諸 国の国債を買い取って救済することに反対していた。独仏のEU統合推進は難 しくなってきた。今年はユーロ圏周縁諸国の国債危機への対策を口実に、独仏 政府がEUの財政統合を主導できるかどうかという、EU統合の正念場の1年 になるだろうが、日本と同様に敗戦国として戦後長く英米の傀儡役におとしめ られてきたドイツでは、マスコミや政界に、EU統合に反対して英米の覇権延 命に頼ろうとする勢力がおり、EU統合よりドイツの国益を優先せよと主張し ている。 http://www.bloomberg.com/news/2011-02-11/weber-to-leave-bundesbank-in-april-throwing-race-for-ecb-chief-wide-open.html Weber to Leave Bundesbank in April, Throwing Race for ECB Chief Wide Open http://www.bloomberg.com/news/2011-02-12/weber-saw-credibility-problem-with-ecb-job.html Weber: saw credibility problem with ECB job この速報分析はウェブサイトでも読めます。 http://tanakanews.com/si.php これまでの全分析が、日別、大区分・小区分別に整理されています。 メールアドレスの変更、購読料の支払いは、以下の会員メニューで行えます。 https://tanakanews.com/menu.php?i=8611&u=6caef