田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)速報分析 2011年2月11日 http://tanakanews.com/si.php ●覇権、通貨、世界的な問題 これまで国際原油価格の基準値とされていた米国WTIは、国際相場の実勢と かけ離れる現象がひどくなっている。エジプト革命でスエズ運河のタンカー航 行の先行きが不安になり、原油の国際相場は上昇傾向にある。新たな国際基準 値とされている北海ブレントは、この1か月間に6.5%上がったが、WTIはノ ースダコタやカナダからの供給増という地域限定の要因を受け、逆に2.1%の 下落となった。ブレントとWTIの価格差は、この3週間に8ドルから16ドルへ と倍増し、WTIのお門違いな様相が増している。それでも日米の金融「専門 家」の間ではWTIを正統とみなす傾向が強い。 http://www.ft.com/cms/s/0/379af0ec-3552-11e0-aa6c-00144feabdc0.html Divergence puts Oil traders on different track http://tanakanews.com/sj.php?n=10620 2月4日の分析 http://tanakanews.com/sj.php?n=10533 プロパガンダ機能としての金融専門家 ●米国、南北アメリカ 米国の不動産担保債券の90%は、フレディマックとファニーメイという米政府 傘下の住宅ローン専業金融機関2社が債務保証している。債券市場が下落して 2社が破綻に瀕した場合、米政府が公金で2社を救済することになっているが、 米政府は、こうした公的体制を不健全だとして、2社に対する政府の関与をや め、2 社を民営化して解体していく10年計画を検討している。実際には、米住 宅市況の悪化が続き、不動産担保債券市場も下落傾向で、すでに2社は破綻に 瀕しており、財政難の米政府は公金による救済をしたくないので「逃げ」とし て民営化を言い出している。今は米連銀の量的緩和策(QE2)のドル大増刷 が債券市場を下支えしているが、6月にQE2が終わったら、その後は2社の債 券も下落するので、中国政府は5000億ドルの2社債券を早期に売却するだろう と、中国の興業銀行のアナリストが指摘した。日本の金融機関の多くは2社債 券を保有しているが、対米従属の日本勢は逃げ遅れるだろう。2月9日には、フ レディマックの社長が「個人的な理由」で突然に辞任している。2社に暗雲が 垂れ込めている。 http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703989504576128403630694340.html White House Plans to Revamp Mortgage Market http://online.wsj.com/article/BT-CO-20110210-707625.html Chinese Economist Warns Of Risks In Freddie Mac, Fannie Mae Bonds http://www.bizjournals.com/washington/news/2011/02/09/freddie-mac-coo-resigns.html Freddie Mac COO Bruce Witherell resigns ●東アジア、南アジア 米軍アフガニスタンの失敗で隣国パキスタンが不安定になり、国家破綻やイス ラム主義化が懸念される中、自国へのテロなどの波及を恐れるインドが、よう やくパキスタンに手を差し伸べ、7月に3年ぶりの印パ外相会談が行われること になった。対米従属の傾向が強いインドはこれまで、パキスタンの安定化を米 国に任せてきたが、覇権が衰える米国はパキスタンに対し無責任なことしかし ない傾向が強まり、インドはしかたなく自分で動き出した。印パは02−06年に 対話を加速したが、その後パキスタンはムシャラフ大統領が辞めさせられて混 乱が始まり、08年にはムンバイでテロ事件が起こり、印パ間は敵対が決定的に なった。今年から来年にかけて、うまいこと印パが和解すると、米国が無茶苦 茶にしたアフガニスタンも、米国抜きで、インド、中国、ロシア、イランとい った周辺の上海協力機構の国々によって安定化できる状況に近づく。これと同 期して、茶会派の影響で孤立主義に傾く米国では、アフガンから米軍を撤退し ようとする動きが強まるだろう。 http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2011%5C02%5C11%5Cstory_11-2-2011_pg7_26 Gilani appreciates progress in Indo-Pak talks in Thimphu ●西アジア、中東、アフリカ エジプトで反政府運動が盛り上がるのはイスラム教の礼拝がある金曜日だが、 その前日である2月10日の木曜日、エジプト軍の中から、金曜日の反政府デモ の暴走を避けるにはムバラク大統領が辞めるしかないという、クーデター寸前 の要求が起きたようだ。陸軍参謀長がタハリル広場に出向き、群衆に向かって 「皆さんの要求はすべて今夜かなうだろう」と宣言した。軍の広報官はテレビ で反政府デモを「国民の正当な権利」と呼んだ。しかし、その後テレビで演説 したムバラクは、軍の代表であるスレイマン副大統領に全権を委譲することを 了承したものの、大統領を辞めることは拒否した。在米エジプト大使は「ムバ ラクは名目のみの元首にすぎない」と表明した。エジプト国民は納得しておら ず、今後の数日間で、ムバラクは辞任まで追い込まれるかもしれない。ムバラ クの粘り腰はイスラエルに支えられたものだろうが、米国では親イスラエル系 のシンクタンクだったはずのAEIの分析者が「オバマはムバラクの即時辞任 を求めるべきだ」と述べ、米国の親イスラエル勢力の多くが「親イスラエルの ふりをした反イスラエル」である正体を現し始めた。911以来の10年間の米国 の世界戦略の大団円という感じがする。 http://www.hindustantimes.com/Tonight-it-is-ending-says-Egyptian-army-chief/Article1-660922.aspx Tonight, it is ending, says Egyptian army chief http://www.cbsnews.com/8301-503543_162-20031433-503543.html Egypt Ambassador: Suleiman "De Facto Head of State" http://www.abc.net.au/worldtoday/content/2011/s3127935.htm Analyst fears Mubarak speech will inflame protest この速報分析はウェブサイトでも読めます。 http://tanakanews.com/si.php これまでの全分析が、日別、大区分・小区分別に整理されています。 メールアドレスの変更、購読料の支払いは、以下の会員メニューで行えます。 https://tanakanews.com/menu.php?i=8611&u=6caef