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3党合意とは何か - 批准の見込みのない条約の締結
民主党代表選で重要な争点となり、現下の政局でも焦点となっている3党合意について考察をしよう。代表選では、小沢派の支持を受けた海江田万里だけが、3党合意の白紙化に言及し、他の4候補と異なる立場を際立たせていた。また、マスコミがそれを捉え、海江田万里の政策姿勢を論外な異端として演出し、非難攻撃を集中させる報道工作に徹していた。他候補とマスコミの言い分は、公党間で取り決めた合意は、政権が変わっても順守されなければならないという「正論」であり、一般常識からすれば然りで、海江田万里の主張は不当な逸脱として映る。マスコミは、増税問題に注目が集まると野田佳彦が突出して不利な状況になるため、投票前日の討論番組と翌日の新聞紙面で、3党合意の対立面をクローズアップし、人々の関心を喚起させる作戦に出ていた。ディベートの場での一対多の数的不利があり、レフェリー(テレビ)もジャッジ(新聞)も中立でなく敵であり、短期決戦の短い論戦期間の制約があり、海江田万里はこの問題の論争で劣勢に立ち、論点を深められず、説得的な切り返しを国民と党議員に示すことができなかった。果たして、3党合意は本当に順守されなくてはならないのだろうか。その正統性(Legitimacy)を検証したいが、それ以前に、3党合意とはそもそも何なのか、どれだけの国民が中身を正しく理解しているのだろうか。
 

3党合意の実体について、代表選の前も後も、マスコミ報道はそれを正確に説明していない。検索をかけて調べていくと、まず4月29日の3党合意の文書が出て来る。これは第1次補正予算を成立させるためのものである。震災以来、民主党執行部は自公に接近し、大連立含みの3党での政策協議を俄に進め、主流派のマニフェスト崩しを正当化する口実を外部に作り、周到に既成事実化する戦略に出ていた。4月から5月にかけて、福島の原発事故の問題が国民の関心の中心になり、脱原発の気運が盛り上がり、事故の実態や汚染の被害についてネットで情報と議論が溢れている頃、NHKの日曜討論では、岡田克也と石原伸晃と安住淳と逢沢一郎の4人が繰り返し繰り返し登場し、子ども手当をどうするかという議論ばかり延々と続けていた。震災復興の構想や原発事故の対応ではなく、財源問題から4K問題への脈絡で、子ども手当をどうするかという駆け引きと取引の説明を国民の前でしていたのである。自民党は復興にも原発にも関心がなく、マニフェストを撤回させるという一点を目標に据え、マニフェストを見直したい民主党執行部も、それに便乗し、抵抗するフリを見せつつ、民自公の馴れ合い芝居でマニフェスト潰しの歩を進めていた。3党合意の政治とは、ペイアズユーゴーの論理を復興政策に被せ、マニフェストを切り崩して財源作りをする政治過程である。

現在、問題になっている「3党合意」は、8/4のものと8/9のものと2本あり、特例公債法案を通すために結ばれた。8/4の合意文書は、「子どもに対する手当の制度のあり方について」と題されたもので、2012年度以降の児童手当復活を明記し、子ども手当の廃止を内容としている。8/9の合意文書は、報道では「確認書」と呼ばれ、高速道路無料化を2012年度予算の概算要求に計上せず、高校無償化と農家戸別補償についても見直す旨が項目列挙されている。要するに、特例公債法案成立を急ぐ民主党執行部の足下を見て、自民党が少しずつマニフェスト潰しのハードルを上げ、岡田克也と玄葉光一郎が唯々諾々と従ったという図に他ならない。これは、赤字国債の発行事務の期限に迫られてという行政上の理由からではなく、とにかく菅直人の退陣を早めるために、菅降ろしを急いだ執行部が自民党に妥協した所産だ。野田後継というレールを敷いた主流派が、菅直人の延命を許して原発政策の主導権を握らせないように、マニフェスト(4K)を棄てて菅降ろしを採った結果であり、ここまでの全面降伏は菅直人にも想定外の進行だった。党内議論は全くと言っていいほどしていない。小沢派は、当然これには不服で反対だが、菅降ろしという共通の利害と目標があり、代表選の政治戦に持ち込む流れとなったため、7月下旬から8月上旬の時期に、3党合意をめぐる党内論議が紛糾する幕はなかった。

3党合意を順守するかどうかという問題は、中身としては、子ども手当、高速道路無料化など、マニフェストの4K政策の問題であり、それを続けるか止めるかという問題だ。公党間で文書合意した政策事項だから、それを順守すべきという主張は正論だが、一方で、この合意が十分な党内論議を経ず、正式な党の意思決定の手続きを踏んでいないのも事実である。本来、マニフェストの見直しを含むこの重要政策の方針決定は、党の常任幹事会と両院議員総会の決議と了承を経て、その上で執行部に一任されるべきもので、政調会長と幹事長が独断で交渉して、署名をしたから事後承認しろと党機関や所属議員に迫れる性格のものではない。例の、8/19発行の「プレス民主」での子ども手当存続の「誤報」事件を見ても、4K政策を取り崩す3党合意について、党内部で受け止め方に混乱があった事実は否めない。「プレス民主」は党機関誌であり、記事の文責は岡田克也にある。順番として、マニフェストの検証があり、見直しの討議と正式決定があり、それを踏まえて自公と合意する必要があった。その点、手続きに問題があり、3党合意の正統性は十全に担保されているとは言い難い。すなわち、喩えて言うなら、この3党合意は、批准の成算のない条約の締結なのだ。政府は外国と条約を結ぶことができる。しかし、条約は議会で批准されなくてはならない。議会で承認され、批准書が交換されて初めて発効となる。

現時点では、野田佳彦の8/29の代表選勝利によって、半ば批准されたと強弁もできるだろうが、少なくとも、代表選がスタートした時点ではそうではなかった。また、マニフェストの諸政策の象徴である子ども手当の廃止についても、果たして、野田佳彦が言うような、復興財源の捻出のために制度変更して減額したという説明で、党内の多数が納得するだろうか。復興財源の捻出なら、他に方法は幾らでもあるではないかというのが、小沢派のみならず馬淵澄夫が強く訴えた主張だった。野田佳彦が勝利したから、3党合意は順守でマニフェストは撤回だとするのではなく、あらためて、3党合意とマニフェスト見直しを党内で冷静に議論し、党内の合意と結論を慎重に導くべきだろう。菅政権の執行部は、党内合意を疎かにして他党合意を急いだ。それは衆目の一致するところであり、子ども手当廃止を受諾してまで、あのとき特例公債法案を急がなければならなかったのか、誰もが疑問に思うところである。菅降ろしの動機が突出した奇怪な政局であり、岡田克也と玄葉光一郎の屈辱的な土下座外交だった。むしろ、今、民主党は明治国家のように条約改正こそを命題とすべきで、子ども手当復活を含む3党合意の修正に取り組むべきなのだ。海江田万里も、3党合意を白紙化するという過激な表現を使うのではなく、一部修正の必要があると言い、子ども手当の理念を論戦で訴えればよかった。多くの国民が、児童手当より子ども手当の方を支持している。

国民は、少なくとも子ども手当に関しては、2年前の自分たちの選択が否定されることを望んでいない。而して、党内合意が不全という問題に加えて、3党合意の正統性にはもっと決定的で根本的な問題がある。それは、民主党は、国民との合意を優先するのか、野党との合意を優先するのか、どちらの立場なのかという問題だ。自民党が4Kと蔑称する政策カタログは、2009年の政権公約で掲げられたもので、民主党はこれらの政策の利益以上に、マニフェストを国民との契約として履行する意味の重要性を訴えた。国民にとって大事なのは、政策カタログで約束された支給プロパーを貰うことではなく、それ以上に、国民との契約だと誓った政権公約を投票した政権政党が守り抜くことである。国民からすれば、選挙公約を政権政党に守らせることだ。3党合意は、政権公約を反故にする決定である。確かに、3党合意は野党との契約だろう。契約を交わしたならば、甲は乙に文面の義務条件を履行するのが当然である。けれども、忘れてならないのは、甲は丙とも重大な契約をしていることである。甲と乙との契約は、甲と丙との契約の破棄と不履行なのだ。二つの契約内容は矛盾する。そして、重要なのは、甲乙丙の三者は、民法が前提するようなフラットでイーブンな関係ではなく、明らかな上下関係があり、甲は丙に拘束される立場にあり、丙との契約が全てに優先するという公理である。国民との契約内容が優先し、民主党は国民との契約と相反する契約を他と結ぶことができない。

最も当を得た比喩は、国民との契約であるマニフェストは憲法であり、民主党が他の団体と結ぶ契約は実定法だという構造と関係の説明だろう。実定法は憲法の拘束を受ける。もし、憲法違反の法律を制定するなら、先に憲法改定の手続きを経なくてはならない。つまり、解散して新マニフェストを掲げ、選挙をすることである。野田佳彦は、政策の優先順位論を言い、震災と原発事故という事態が発生したため、政策の環境が変わり、マニフェストの実行に優先順位をつけなくてはいけなくなったと説明する。巧妙にマニフェスト破りを正当化する説得の口上だが、ここには騙しの詐術がある。それは、マニフェストの政策実行をする予算が固定で、財務省が計上する歳入しかないという前提が固定づけられている点だ。つまり、ペイアズユーゴーのドグマであり、ゼロサムのロジックである。ここでわれわれは思い出し、野田佳彦に反論しなくてはいけないが、民主党の09年マニフェストは、何より財源論がキーの政策体系に組まれていた。一般会計と特別会計を統合し、総額207兆円の予算全体を洗い直し、天下り法人を廃止し、官僚の無駄を根絶して、マニフェストの諸政策に充当するという構造である。これがマニフェストの本義であり、財源は掘り出して積み上げて行くのだ。マニフェストの新政策の財源として措定されていたのは、税収でも国債でもなく、官僚の無駄を削減した捻出分だった。だから、政策の優先順位をつける前に、民主党は特別会計から財源を掘り出さなくてはいけない。民主党は未だ着手していない。

天下り法人を全廃して、官僚の浪費分を国庫に入れなくてはならない。それなしに、勝手に政策に優先順位をつけてもらっては困る。


 
by thessalonike5 | 2011-08-31 23:30 | その他 | Trackback(1) | Comments(1)
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Tracked from ■遂に出た!!長澤まさみ.. at 2011-09-01 13:50
タイトル : ■遂に出た!!長澤まさみ 全裸露天風呂映 像!!ネット初..
今まで数ある有名人が露天風呂などで盗撮されている映像が流出してきたが…。 ついに 長澤まさみ まで盗撮されていた。 長澤まさみといえば若手No,1女優。その女優の全裸ということで この裏DVDには数十万円という高値が付いている。 かつて加藤あい・米倉涼子などが盗撮されて映像が流出し、話題になったがこの長澤まさみが盗撮された露天風呂も以前、他のアイドルが盗撮された場所にソックリなのだ。 『テレビ関係者がロケなどで使う温泉や泊まるホテルは限られています。だから(盗撮を)狙う方は、近くにロ......more
Commented by ゆたか at 2011-09-01 01:09 x
>自民党が4Kと蔑称する政策カタログ

いわゆる4Kについて財源が無いという者がいますが、財源が無いのではないでしょう。そうではなくて、財源を作るために必要であった「役所の仕事の整理」ができていないだけと思います。
マニフェストの金看板であったいわゆる4Kを根こそぎに放棄するなら、民主党が「国民の生活が第一」から「役所の都合が第一」に宗旨替えをしたことになります。
民主党は解散し、心ある者は社民党や共産党に、そうでない者は自民党に散るべし。
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