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泊再開の政治 - 巧妙な奇襲作戦、道新と札幌市長の不作為
泊原発の営業運転が再開された。経産官僚と道知事による一瞬の早業で、お盆休みを狙った不意打ちを受け、反撃する間もなく押し切られてしまった。原発維持推進派による巧妙で周到な電撃作戦の成功と言える。5月の浜岡の陣、7月の玄海の陣と、連戦連勝してきた脱原発の陣営は、この狡猾な奇襲で初めて敗北を喫し、再稼働側の巻き返しを許してしまった。今回の政治の意味は小さくない。調整運転が続いている原発は、もう1基、大飯にあり、次は福井が攻防の戦場になる。脱原発の多くの者が、高橋はるみによるこの時期のこの謀略を予測していなかったはずで、油断していたところを寝首をかかれた。私自身、再稼働をめぐる戦いの舞台が、次は「冬場の電力」を口実にした北方面だとは思いつつも、決戦は秋以降だろうと想定していたのである。菅直人の退陣が確定し、実権を完全に失った真空の時機を官僚側は衝いてきた。新代表(新首相)がこれを認める判断をするのは、世論の評価の手前、そう簡単には踏み切れない。政権移行期という、謀略を仕掛ける側にとって絶妙の機会を見逃すことなく、彼らは奇襲作戦を強行した。しかも、この時期、マスコミは被災地のお盆報道にシフトし、国民の関心を泊に向けさせず、論議させる隙を与えなかった。経産官僚が海江田万里の辞任を止め、菅直人との我慢くらべに持ち込ませたのは、この作戦計画があったからだ。


泊3号機の運転再開を既成事実にしたことで、新代表(新首相)は、大飯1号機の運転再開も逡巡なく承認する環境を得たと言える。調整中の2基を営業運転に移行させることで、定期点検で停止中の原発を再稼働させる政治のハードルが低くなる。西で失敗した官僚側は、北の工作を準備し、最初の戦闘で勝利を収めた。佐賀と同じく、北海道は東京から遠い。脱原発の勢力が抗議行動の動員をかけるのに都合が悪く、おまけに、お盆休みでは身動きがとれない。飛行機の切符も思うように手配できない。しかも、狸婆の高橋はるみは目眩ましの演技を幾度もして、経産官僚に抵抗する「中立」のポーズを見せ、世間をあざとく騙していた。敵ながら、よく考えた政治である。反省して振り返れば、浜岡の停止は菅直人の直接要請で実現したものだ。玄海の再稼働阻止も、菅直人が土壇場でストレステストを持ち出し、薄氷で結果を得たものである。二つとも、菅直人の最高権力という要素があったから、官僚側の動きを封じることが可能だった。菅直人が失権した後、政府内で脱原発の方向へ政治決定をする力はない。秋以降、われわれは、このことの深刻な意味を思い知るようになるだろう。原発担当相である細野豪志が、経産官僚とグルで、再稼働に積極的である政治的事実も判明した。今回、この件で何もマスコミ上で発言していない。保安院と安全委を動かし、泊の営業運転を先送りさせようとしなかった。

不作為は細野豪志だけではない。私が特に問題だと思うのは、北海道新聞と札幌市長である。道新は脱原発ではないのか。この問題が急浮上して世間を騒然とさせたのは、8/14から8/15の2日間だが、道新は社説で再開反対の論陣を張っていない。8/10の社説で、再開に慎重であるように知事に求めているが、その主張と要請を踏み躙る知事の暴挙に対して、8/14と8/16の社説で何も糾弾していない。これは何だ。おそらく、北海道民の圧倒的多数は、高橋はるみの泊再開同意に賛成していないだろう。拙速だと感じ、今後に不安を感じているだろう。単に事故発生の危険だけでなく、泊3号機を稼働させることで、外国人観光客のニセコや札幌への客足に悪影響が出る懸念がある。今回の営業運転は、明らかに来年春のプルサーマル稼働を睨んだステップで、北電と官僚と知事が一体になってプルサーマル計画に狂奔している図に他ならない。知事周辺の刻々の情報を掴んでいた道新は、泊再開について緊急世論調査を行うべきであり、結果を紙面に掲げて道民の意向を示すべきだった。道新が本気で再開を阻止しようとすれば、それは十分に可能だったはずである。一夜明けた今日(8/18)になって、ようやく社説を上げているが、奥歯にモノが挟まったような論調で、知事を手厳しく批判する姿勢になっていない。知事と道民の間に立つ蝙蝠のスタンスであり、民意からすれば原発維持の側に偏っている。道新もすっかり堕落した。

札幌市長の上田文雄の不作為も同罪で、今日(8/18)になって「市の意見聞くべきだ」などと言っているが、世間向けのアリバイ工作のエクスキューズである。何故、8/15から8/16の正念場に、このコメントを大声で発して道新の記者に書かせなかったのか。個人で開設しているHP上に、札幌市民を代弁した知事への抗議を載せなかったのか。この男の経歴情報を一瞥すると、まさに絵に描いたような人権派弁護士で、旭川学テ事件の弁護まで担当している豪の者ではないか。2003年に民主・社民の支持で出馬し、自民・公明が支持する対抗馬を破って初当選している。今年4月の選挙も民主・社民・国新の推薦で戦い、自民推薦の候補を押さえて堂々3選を果たしている。プロフィールだけ見ると、虹と雪の北の都の首長として相応しい人品骨柄であり、国民として安心した気分にさせられる。この経歴と立場の人物が、何で泊再開阻止に鋭意動かなかったのか。普通に考えて、誰もが不思議に不自然に思う。その気になれば、マスコミに出て運転再開反対を訴え、全国の脱原発の世論を動かすことができただろう。全国的な知名度の政治指導者になれただろう。社民党の党首の福島瑞穂は、上田文雄に電話をかけて、泊再開阻止に動くよう働きかけなかったのだろうか。それとも、説得を重ねたけれど、上田文雄に拒否されたのだろうか。北海道では社民党の勢力は他地域一般ほど小さくなく、上田文雄の3選を導いた集票の原動力として貢献しているはずだ。

福島瑞穂のTwitterのタイムラインを見ると、私のツイートを載せていて、これはありがたいことだが、8/14から8/16の福島瑞穂が泊問題にどう対処したのか、ベストを尽くしたのか、過失や不作為はなかったのか、検証されなくてはならないと思われる。福島瑞穂がTwitterで8万4千人のフォロワーに呼びかけ、道庁や北電に電話攻勢をかけさせる檄を飛ばしていれば、香山リカと雨宮処凛ときっこを動かしていれば、上田文雄や三津丈夫との電話のやりとりを刻々に公開していれば、8/15から8/16の政治情勢に大きな影響を与えることができていただろう。福島瑞穂のTwitterが泊再開の政局の中心になっていただろう。この間、マスコミは泊原発の報道を控えていて、8/17に再開が固まるまで何も情報を国民に伝えなかった。だからこそ、ネットが報道機関の役割を代行できるのであり、アクセスが集中するサイトが政局(政治情報の発信地であり中心地)を作ることができるのである。昨夜のテレビ報道は、NHKもテレ朝も、泊村の住民を「地元の声」として出し、「仕方がない」だの「電力不足はいけない」だの言わせている。これが本当に北海道の住民の声なのか。北海道JAの反応はどうなのか、北海道漁連はどうなのか、北海道観光協会はどうなのか、道経済の重要な柱である彼らの代表の声を聞いて確かめる必要がある。後志沖で地震と津波が起き、泊で事故が起きれば、北海道の第1次産業は福島と同じ全滅状態になるのである。原発の安全神話の崩壊は、北海道だけを例外にしているわけではない。

残念ながら、泊の営業運転再開の既成事実が作られたが、北海道の市民には、ここから粘り強く脱原発の運動を起こし、泊を稼働停止へと追い詰めて欲しい。政治の材料と武器は幾つもある。例えば、東京新聞が暴露した高橋はるみと北電との資金面の癒着がある。全国の知事が再稼働に慎重姿勢をとっているときに、突破口を開くように高橋はるみが暴挙に出たのは、佐賀県の古川康と同じように、そこに特別な裏の関係と動機があるからだ。今後、市民は疑惑の真相究明に尽力し、世論と議会で知事を追及するべきで、リコール運動の開始を示威するべきである。そして、停止を求める道民の共闘会議を作り、知事と直接交渉する場を持ち、運転再開承認の根拠を問うべきである。優柔不断な道新に対しては、泊再開についての世論調査を打つよう圧力をかけるべきだ。JAと漁連と観光協会に声明を出させ、脱原発で道の世論を一つに纏め、道庁を人間の鎖で包囲するべきである。周辺自治体の議会に働きかけ、反対決議を上げさせ、住民投票を仕掛ければいい。2006年に泊原発増設の是非を問う道民投票の動きがあった際は、実施を求める署名が78万人も集まっている。福島の事故後のこの局面であれば、さらに大量の署名が集められるだろう。この不意打ちに怯むことなく、諦めずに、一つ一つ目標を組み、運動を起こして行って欲しい。脱原発の成否は、日本の民主主義の試金石でもある。それぞれの地域現場で市民が立ち上がり、街頭をデモする渦と波を起こし、それを全国の市民がネットで応援する流れと勢いを作る必要がある。

心の純粋な北海道の人々は、きっと脱原発で大きく動くことだろう。



by thessalonike5 | 2011-08-18 23:30 | 東日本大震災 | Trackback | Comments(0)
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