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右翼の嫌韓デモ - 安穏とギャラ稼ぎする「韓流スター」
昨日(8/21)、右翼4千人が大挙してお台場のフジテレビに押し寄せた事件について、一部のスポーツ紙を除いてマスコミの報道はなかった。ネットでも、右翼同士が盛り上がって騒いでいるだけで、政治問題として関心を向けて批判的に考察する者がいない。こうした動きが、確実に日韓関係を変え、そして日本の将来に影響を及ぼしている弊害について、正面から言及し、問題視しないことは嘆かわしいことだと思われる。フジテレビが韓流ブームを捏造した事実があるかどうかとか、公共の電波を使った不当な「韓流押し」で暴利を貪った疑惑とか、そうした点も重要だが、見落としてはいけない本質は、これが右翼による韓国排撃の政治行動であることで、マスコミ批判を標榜しつつ、真の標的は韓国であり、韓国を敵視し挑発する世論を拡大することが狙いであることだ。明らかに、この動きは、自民党の極右3議員が訪韓して騒動を起こした一件と連動しているし、右翼による「韓国プロジェクト」の一環であり、その主要な目的は、ネットで盛り上がっている脱原発から関心を逸らすところにある。現在、ネットの議論でブームとなっている脱原発に、自陣が押さえているマジョリティが流れて行かないように、右翼が別の方向性を作っているのである。そして、昨年の反中運動の勢いを再現させ、日本の対韓世論と対韓外交を変えようとしているのだ。敵対と憎悪の感情を煽って冷戦関係に持ち込むべく。


この流れと勢いが大きくなると、今後、民間で日韓友好事業を進める動きに躊躇や障害が生じるし、政府も日韓外交に親善や妥協の要素を積極的に入れることに二の足を踏む環境になる。韓国との友好を演出することは、時流に乗る右翼と公然と対立する立場を得ることになるからだ。民間の企業や団体は嫌がらせを受ける。こうして、日本全体が次第に韓国に対して冷ややかになる。そのような現象は、この10年間に日中間で起きたことだ。今、日中友好の立場の論者は一人もいないし、Blogも一つも見当たらない。テレビで中国が論じられるときは、まさに「悪の帝国」か「悪の枢軸」として排斥される。経済関係のみ例外にして、日本と中国が冷戦状態にあることを否定する者はいないだろう。右翼の狙いの一つは、天皇の訪韓と謝罪を阻止するところにある。本来なら、現在の両陛下がご健在な時間に実現しなければならない外交テーマだが、右翼はこれを引き延ばし、実現を物理的に阻止する魂胆だ。これは、戦後日本の平和外交にとって重大な挫折に他ならない。現在の両陛下の訪韓するのと、皇太子が天皇に即位して訪韓するのとでは、同じ天皇の訪韓でも意義が全く異なる。両国の国民にとって重みが違う。天皇訪韓は、植民地支配の時代を知る高齢の人々が存命中に果たされなければならず、同時代の人である今上天皇の訪韓と謝罪だからこそ意味がある。それこそが歴史の清算になる外交だ。

今の政治状況の延長線上で、両陛下の訪韓があると考える者は少ないだろう。その現実的可能性は日毎に遠のいていて、国家目標として何やら諦めの境地に入りつつある。それを実行できる政治家がいない。外交官もいない。日韓関係が最も冷却化し、一触即発の事態にまで緊張が高まったのは、2006年4月に安倍晋三が測量船による海洋調査で挑発し、それに対して韓国側が拿捕を含む強硬姿勢で反発、4/22にソウルで日韓事務次官協議が行われた際、交渉が決裂して韓国側が武力衝突を覚悟したときだった。このとき、チキンレースで勝てると高を括って挑発をエスカレートさせていた安倍晋三が、韓国側の決意に慌てふためき、東京から谷内正太郎に電話して、ホテルの駐車場まで柳明恒を追いかけて和睦を入れさせ、ようやく事なきを得た見苦しい顛末があった。あのときの緊迫と衝突をピークにして、2008年の韓国の政権交代と2009年の日本の政権交代を契機に、日韓関係は不和から融和に戻るかに見えていた。政権交代は、過去の政権の外交方針を転換させるバネの生理を持つ。しかし、日本側の逆コースにより東アジア共同体の路線は簡単に潰え、従来のタカ派外交が復活し、昨年の尖閣問題を弾みにして、竹島問題でも右翼路線に据え戻し、韓国が反発して、両国の政権交代以前の状態に舞い戻ったのである。李明博政権の対日姿勢で、過去と違って特徴的なのは、産業競争力や文化輸出での韓国の自信である。

日本経済の没落と韓国経済の健闘、文化やスポーツの領域での韓国の台頭、この事情が両国関係に被さり、日中関係と同じような性格に日韓関係をしていて、対立感情の内面が複雑骨折の様相をきたし、葛藤の中身が容易ならざるものに変質している。80年代や90年代の対話や理解の地点に立ち戻るのを難しくしている。日本で韓国文化に対する抗議デモが起きるなど、韓国の壮年世代にとっては意外きわまる珍事で、日本もここまで堕ちて萎んだかという思いだろうし、また、韓国の老齢世代は、平和路線から脱して戦前の凶暴さを取り戻した日本に、過去を想起して恐怖と警戒心をつのらせていることだろう。いずれにせよ、今後、政府の対韓外交やマスコミの韓国報道は、右翼の睨みと脅しに振り回され、鼻面を引き回され、2006年に安倍晋三が思惑した方向が基調として定着することになるに違いない。韓国についてのテレビ報道の論調はネガティブになり、ネットの空気と同じになり、韓流ドラマを見て、韓流スターを追いかけながら、韓国に対する蔑視と嫌悪を世論の「常識」にするだろう。これは矛盾した行為だが、中国に対する日本人の態度が同じで、中国を悪魔のように呪い、一点の評価も尊敬もせず、国家の破滅を願いながら、企業の生産拠点を中国に移せと言い、中国人観光客を土下座して迎え、衣料品から家電から食料品まで中国製と中国産を購入して生活している。部屋の中も、買い物カゴの中も、何から何まで中国からの輸入品だ。

一部の在日の者のTwitterには、昨日(8/21)の右翼のデモを脅威に感じると率直に語るものもある。今は攻撃の鉾先はテレビ局だが、次に竹島絡みで何かアクションがあれば、必ず、昨年の尖閣問題のような運動が立ち起こるだろう。5年前の緊張の時点を思い出すと、島嶼の領土をめぐるイデオロギー的喧噪の前に、その基礎に日本海の漁場をめぐる漁師間の縄張り争いがあった。その後、漁場の問題は二国の政府が事務協議で丸く収めたフシがあり、現在は紛争として特に顕在化していない。だが、韓国の自信と獨島防衛のナショナリズムの高揚は、昨年の尖閣の中国漁船の場合と同様、海域の現場で大胆な行動に踏み出すというアクシデントに繋がりやすい。実際、尖閣の事件のときに、海保が外国漁船を拿捕した最近の事例が報道されたが、多くは韓国漁船で、派手な暴力行為での現行犯逮捕もあった。海保の内部にも、昨年の一色正春のような突出した者がいる。末端だけでなく幹部にもいる。現場で何かが起きる可能性は十分にあり、何かが起きたとき、現在は外交当局が互いに相手を信頼し協力して、双方が自制に努めて、素早く事態を鎮静化するということが困難なはずだ。そういう意思疎通が迅速にできないはずだ。昨年の尖閣のときと同じように(前原誠司)、政府の中に火事を拡延させたい思惑の者がいる。敢えて陰謀論的な視角で一つの仮説を試みるなら、今回の一連の右翼デモの騒動は、次に日韓で紛争が起きたときの戦略的布石だとする見方ができなくない。

そのときは、ネットでもマスコミでも、公平かつ冷静に問題を検証する議論はなくなるだろう。不思議なのは、これほど日韓関係が危機になり、嫌韓運動を大衆的レベルで右翼が扇動している状況にもかかわらず、それに警鐘を鳴らすべき者が、テレビに出演して何も言わず、電波芸人のギャラ稼ぎに精を出している異常な光景である。姜尚中のことだ。韓流芸人とは、まさしく姜尚中のことではないか。右翼ではないが、日本のテレビ局は、あまりにこの「韓流スター」を重宝しすぎだと私は思う。在日の姜尚中が、お台場で咆哮する右翼を見て何も言わず、ネットの嫌韓ファナティシズムに何も警告を発せず、状況を黙認して悠々とギャラ稼ぎをしているのに、私のような者が、何で村山談話だの慰安婦問題だのを大声で言い続けているのだろうと、全くバカらしい気分にさせられる。冗談じゃないよと思う。立教の李鐘元もそうだ。何で、この深刻な局面で何も発言しないのか。関東大震災のパニック時に、罪のない朝鮮人が数千人も虐殺されたのは、わずか90年前の出来事である。犠牲者の末裔である姜尚中や李鐘元には、同じ狂気と暴力が再現されるという危機感がないのだろうか。在日の人々が日本社会で平和に暮らし、権利を積み重ねられる条件というのは、まさに日本国憲法と村山談話の理念的基礎と社会的拘束だろう。それらが撤廃された地上での在日というのは、戦前と同じ無権利な存在でしかないはずだ。暗黒化する状況の進行に対して、両手を広げて立ちはだかる勇気ある者がいない。在日の者が勇敢に正論を言う場面がない。

ちゃらけた「韓流スター」で遊興している。問題を正視せず、右翼と対決しようとしない在日の論者の不感症と自己欺瞞に、辟易とさせられる。



by thessalonike5 | 2011-08-22 23:30 | その他 | Trackback | Comments(0)
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