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浜岡に続いて玄海の陣でも勝利 - 今夏の再稼働阻止
松本龍の任命責任で菅直人が袋叩きにされる政局になるかと思いきや、一転、昨日(7/6)の国会では、ストレステストと九電のヤラセメールの問題が浮上し、一気に形勢逆転して、玄海を含め、停止中原発はこの夏の再稼働が困難な情勢となった。久し振りの共産党のお手柄と活躍であり、実力と存在感を示した一幕である。政治の攻防はクイックリーに動く。昨夜のテレビ報道では、九電社長の会見の様子と、古川康の無念の弁が放送され、九州の政治が彼らの敗北で決着した事実を伝えていた。浜岡の陣に続き、玄海の陣でも脱原発が勝利した。春と夏、二つの政治戦にわれわれは勝利した。産経新聞が臍を噛み、NHKの大越健介の形相が醜く歪んでいる。菅直人は、松本龍の騒動で仕立てられた菅降ろしの再版を、ストレステストで切り返す政治の妙技を見せ、再び延命遊泳を安定化させる軌道を得た。ストレステストの戦略兵器は、どうやら菅降ろしへのカウンターとして隠し持っていた波動砲で、タイミングを計って効果的に発射された感がある。放たれた一撃で、海江田万里、古川康、岸本英雄、大越健介のガミラス艦隊が粉砕された。ストレステストを政局の土俵にすれば、世論のフォローウィンドを受ける菅直人が圧倒的に有利な位置に立つ。今夏、停止中原発の再稼働なしに電力ピーク時を乗り切る意味は大きい。原発は不要だという既成事実ができる。


この政治は、来年度予算の概算要求と密接に絡んでいて、同時に、細野豪志と海江田万里との間の縄張り争いとも表裏一体である。通常、概算要求のデッドラインは8月末から9月初で、原子力村の4500億円は今後2か月の政治次第という運命になる。原発相の細野豪志は、経産省から保安院を切り離し、原子力行政全般を一手に掌握して、原子力村の利権共同体を切り崩す構想を持っているはずで、菅直人から受けた指示はそういうものだろう。そういう任務でなければ、原発相の新設など何の意味もない。ところが官僚たちは、この動きに必死に抵抗して、細野豪志を補佐官時のままの単なる福島の事故処理係に留め置くべく画策し、法律を楯にして、権限を経産相から引き剥がさないように足掻いているのである。そして、玄海の再稼働も、官僚側のなりふり構わぬ政治の立ち回りで、夏のピーク時の電力需給の既成事実を作りたくない一心で、内閣を無視して、下から政治の暴走と工作をしているのだ。菅降ろしの政治構図は、単に政界の中だけの、すなわち菅直人vs自公+民主党執行部という水平的な対立だけでなく、もっと大きな、菅直人vs官僚という垂直的な対立図式があり、脱原発の世論だけが菅直人の延命を支えているという実態がある。一見すると、菅直人は四面楚歌だが、脱原発の世論の力は大きく、菅降ろしの陣営の方が国民に包囲されているのである。

私は先週末の時点で、玄海の再稼働は潰れるのではないかと予想していた。などと言えば、後出しジャンケンでみっともないが、ここは正直に、そう楽観視していた根拠を言おう。その一つは、マスコミの勢力配置である。決定的に感じたのは、7/3の日テレのバンキシャで、明らかに再開反対の姿勢でトップで取り上げていた。あの反動報道と捏造報道の代名詞のような福澤朗の番組が、それまでのテレビの玄海原発報道の中でも、おそらく最も説得的と思われる批判と解説を提供していたのだ。久し振りにこの番組を見た私は、大いに驚かされたし、狐につままれたような感想を抱いた。スタジオには落合恵子が来ていて、何を言うかは聞かなくても分かる。ところが、バランスを取るために出演させたかと思われた元警視総監の米村敏朗が、玄海再開に否定的なコメントを堂々と吐いたのである。結局、7/3の時点で、テレビ各局の陣取りを並べると、テレ朝・TBS・日テレの3社が再開反対、フジ・NHKが再開賛成の陣営に分かれる構図になっていた。しかも、フジの報道2001の世論調査でさえ、再稼働反対が58.4%の数字を出している。こうなると、政治が判断する方向は一つであり、この国民の多数意見を押し切って、強引に玄海を再稼働に持ち込むのは不可能だ。まして、延命遊泳のために世論の支持を必要とする菅直人が、佐賀まで行って再稼働を要請する政治の図はあり得ない。

そういう記事を書こうとしていた矢先に、あの松本龍の衝撃的な事件が起きた。玄海再開の政治は、最初から再開強行側が浮薄であり、戦略戦術がお粗末で、見通しと詰めが甘かった印象が強い。九電のヤラセメールとその発覚は、作戦全体の杜撰さがよく露呈されている。周到さや緻密さがない。私は、あの説明会を企画して出演した保安院の審議官の黒木慎一の軽薄さが、何とも象徴的だと思うのだ。おそらく、この男が今回の政治の作戦計画を立案した参謀だろう。今の日本の官僚貴族の人格像を典型的に体現していて、惰弱で、幼稚で、身勝手で、世の中を舐めきっていて、客観的状況が何も頭に入ってなくて、計算違いばかりをしている。本人は、テレビで顔を売って有名人の仲間入りをした程度に思っているのだ。こういう男たちが無数にいて、4500億円の税金を浪費しているのであり、それを当然と思い、浪費と享楽の生活を続けるために愚かな政治工作に狂奔しているのである。先週末、古川康がうわずった表情で、菅直人の佐賀訪問と直接要請が再稼働の条件だと言ったとき、古川康や官僚たちにはどのような勝算が描かれていたのだろうか。着々と菅直人を追い込み、詰めに出たと確信していたのだろうか。それを条件にし目標にする戦略設計が、そもそも破綻と失敗の元だという政治分析が、この愚かな連中にはできないのである。霞ヶ関も、佐賀も、大越健介も、自分たちに都合のいい情報だけで政治戦を組み立て、最後に裏をかかれ、恥をかく顛末になったのだ。

大越健介や原発推進派に残された道は、唯一、即刻に菅直人の引き降ろすことである。ストレステストの議論が始まれば、当然、安全基準の見直しという問題になる。安全基準の見直しに入れば、停止中の原発は再稼働できなくなる。経産省・エネ庁・保安院も、斑目春樹も、必死で抵抗して安全基準の見直しを阻止しようと出るし、ストレステストを中身のない骨抜きにしようとする。しかし、彼ら原子力村が醜悪に頑迷に抵抗すればするほど、世論は安全基準の見直しを支持する方向に強く傾くのであり、結果的に、原子力村の官僚はマスコミ報道の悪役になって手足を縛られてしまう。安全基準の見直しが7-8月の重要な政治争点になった場合、菅直人にとっては、この問題が注目され議論されるほど、延命引き延ばしを安定化させる条件を得て、政局を自らの主導権で操縦できるのである。また、これは細野豪志と海江田万里の権限をめぐる綱引きに絡み、来年度予算の概算要求に影響する。ストレステストと安全基準の見直しが関心の表面に浮上して常駐することは、原発官僚にとっては不利な立場に自分たちを追い込むことになるわけで、それを阻止するべく、仙谷由人を中心に菅降ろしを決めようと攻勢をかけるだろう。菅直人を降ろしさえずれば、ストレステストも骨抜きにできるし、安全基準の見直しも白紙にすることができる。菅直人を降ろす。再稼働させる。原発を国有化する。4500億円は維持する。それが官僚の課題だ。

政争は続く。



by thessalonike5 | 2011-07-07 23:30 | 東日本大震災 | Trackback | Comments(0)
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