194 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ:13/09/26 22:29:35 ID:V+mtHAl8 基地内の廊下を歩く少女の姿がそこにはあった。 既に正午過ぎと言うこともあって彼女以外に人の姿は見えない、まず非番でもない彼女がこの時間に廊下にいるということも不自然だ 「……(キョロキョロ)」 そして何よりもその挙動が非常に不審なのだ 何かを胸に抱えながら頻りに頭を振って周囲を見渡す、あまつさえ抜き足差し足にと足音を立てないように努力しているようだが…… ……だからこそ逆に目立ってしまっているのが現実だった 195 :タチアナ・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦/陸戦快速型:13/09/26 22:39:23 ID:zF93qYOW >>194 こそこそ行くものがいれば、堂々と廊下を歩くものもいる。 正確に言えば堂々と言う訳じゃないが、べつに隠れているわけでもない。 ほのかに頬を朱に染めた眼帯の女性が向こう側から歩いて来ている。 今日も一杯星見酒を楽しんできたところであった。 (だれにも合わなければいいんだけど、ね。まあいいか) もちろん、アルコールも入っていることもあって コソコソ進むなど、逆に転んだりして音を立てる可能性が高い。 ゆえに、開き直って堂々と廊下の真ん中を進んでいるのだった! 196 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ:13/09/26 22:47:36 ID:V+mtHAl8 >>195 きょろきょろと周囲を見渡していたヨゼは真っ直ぐ歩いてくるタチアナの姿には気づかなかった まさに灯台下暗し、廊下の向こう側ばかり気にしていたのが原因だろう タチアナとぶつかってしまうのは、ある種必然と言えた 「ぴっ……!?」 肩だけでなく、髪の毛まで浮き上がりそうな勢いで体を跳ねさせる そんな口からはとても言葉とは思えない短い悲鳴が飛び出てくる 瞬間、飛び退くようにタチアナと距離を取ったヨゼは 大きく開いた眼をせわしなくパチパチとしながらも、その視界はタチアナの姿をとらえているとはとても思えない 「こ、こんにちはターニャ!」 ぎゅっと胸に抱え込んだ紙袋を隠すように力を込めながら パニックで目をぐるぐるさせている状態でかろうじて挨拶だけは出てきたらしい 197 :タチアナ・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦/陸戦快速型:13/09/26 22:55:33 ID:zF93qYOW >>196 非番の兵士ならともかくヨゼは自分よりもはるかに 背の小さなヨゼ目の前に歩いていて、さらにはそれに気が付かずにいたのは ターニャにしても不覚であった。 「こっ、とヨゼカ。シー!静かにシろってバ」 体同士がぶつかると、その場で気をつけをし名乗ろうとするも それより先にヨゼが声を出して、彼女の存在を認識すると 若干パニック気味の少女の口を塞ぐように、前に出て更に自分の手で彼女の口を抑えようとする。 「それに、こんばんハ、だロ?」 暗がりだからか、彼女が核している紙袋にはまだ気がついていないようだ。 198 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ:13/09/26 23:07:33 ID:V+mtHAl8 >>197 「へっ!?キャッ……もがっ!」 口に手が伸びてくると、さっきよりもずっと目を見開いて思わず開いた口から悲鳴が飛び出してきそうになる しかしそれより早く口をふさいだタチアナの手によって、悲鳴の代わりとばかりにあんまり可愛くない声が出た絞り出された 「……もがもが」 タチアナの手の中で口が動いているのが分かるだろう ……が、何を言っているのかは絶対に分からないだろう、口をふさがれてるんだから当たり前である まだ眼が座っていない当り落ち着いたとはとても言い難いが 首をかくかく動かして手を放してほしいことを小さいなりに必死でアピールしているようだ 199 :タチアナ・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦/陸戦快速型:13/09/26 23:17:27 ID:zF93qYOW >>198 口を抑えた。後は落ち着くまでこのままだ、となったところで 彼女の階級を思い出す。自分は曹長に対して、彼女はなんとか曹長。 なんとかがついている分、彼女の方が偉いのだ。 (怒られるかなぁ) 靄がかった思考の中でぼんやりとそんな事を考えていると 彼女の手を離して欲しい、というアピールに気が付きゆっくりと口から手を離す。 手を離しながら、顔を近づけてターニャは小声で囁くように言う。 「声を出してもいいけド、小声でナ。デ、トイレに行きたイ訳じゃないみたいだナ? その様子ジャ」 後ろめたいのはこっちもだが、 うまく行けばなにか彼女の弱点を握れるかな、とやや打算的。 本当はこっちが責められないようにイニシアチブを取るのが目的であるが 200 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ:13/09/26 23:26:38 ID:V+mtHAl8 >>199 「ふぅ~……」 手で口をふさがれている間つい反射的に(と言うか几帳面に)息を止めていたらしく、解放された瞬間に大きく深呼吸をしていた そのおかげでヨゼの方はすっかり落ち着いたらしい いつものようにどこかぽわぽわした笑顔を浮かべながらタチアナの言葉に返事をする 「少し、星を見ていたの」 彼女の返しは何とも平凡な物だった 星見酒をしていたというタチアナとやっていることはほぼ同じだ、もっともヨゼのそれの方がよほど健全だが 「わたしね、星が好きなんだ、ターニャには言わなかったっけ?」 繰り返すようにもう一度返事をするヨゼ、大切なことなので2回言っているのだろう 屈託のない笑顔のまま、いつものように胸の前で指を組む代わりとして、抱えた紙袋をぎゅっと抱きしめた 201 :タチアナ・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦/陸戦快速型:13/09/26 23:39:09 ID:zF93qYOW >>200 「ン、鼻詰まリでもしてるのカ?」 彼女が深呼吸をし、さらに手に鼻息がかかってなかったのを思い出し やや心配そうに尋ねるターニャ。 そうして、彼女の答えを聞くとやや拍子抜けする。 彼女の浮いた話はまったく聞いたことがなかったが、もしや、と 若干期待していたのもあって、どことなく残念そうに方をすくめた。 「同じ星をみてたっテわけだナ」 同じ基地の中で、同じ時間で同じ空を見上げていた。 まあ、動機じゃ若干違うのだが。 「ヨゼ、それで三度目だヨ。星が好キって言うノ」 彼女がぎゅっと紙袋を抱きしめた事によって、紙袋から音が生じ それで初めて彼女が持っている紙袋の事に気がついた。 「その抱えてルのはなんだイ?」 202 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ:13/09/27 00:02:42 ID:47gQj92U >>201 「これですか?」 ヨゼは抱えていた紙袋を手に取ると、もごもごとその上をもみ始めた くしゃくしゃと言う音と共に、ヨゼの細い指を押し返すどこか柔らかそうな感触が伝わるだろう 「タオルケット、外は寒いかと思って」 体を温める手段にタオルケットを用いる、彼女らしいと言うか素直な考え方だ タチアナはそこにアルコールを用いたのであろうが、ここでも同じことをしているのに差が出てきている 「わたし本当は待機のはずだから、外に出ていたのは秘密にしてね?」 ちろりと舌を出しながら、ウィンクをしてお願いをするヨゼ どこかふざけた様で、どこかバツが悪そうなその笑顔はまさに平常運転だった 「ととっ、わたしそろそろ流石に部屋に戻らないとっ!」 先ほども言ったがヨゼは急な出撃に備えて待機をしていなければならなかった つまりあまり長い時間部屋を空けておくのはよろしくない 何よりもヨゼはその身長や容姿から基地内でも非常に目立つ、出歩いているを見たらすぐに分かるほどに つまりこうして外で話しているだけでも、ヨゼにとってはまずい状況だったりしたのだ 「それじゃターニャ!お疲れさま!」 駆け出すヨゼは背を向けたタチアナの姿を気にしつつも、ちらりと胸元の紙袋に視線をうつす その中にあるものを想像して、思わず頬が崩れそうになった ヨゼのポーカーフェイスは顔の色が変わるようなものでない限りそう崩れない、それがついつい崩れそうになったその訳…… ふわふわの毛立った布に縫い付けられた硝子玉のつぶらな眼 くるんと巻いた黒くて長い綿の詰まった尻尾 質感の違う布で作られた手のひらの肉球 前々から狙っていたものだったが、売れてしまわないかと心配でこれはチャンスとつい町に出て買ってしまった ばれたら怒られるなんてものじゃなかったりするが、タチアナなら多分大丈夫だろう……彼女もなにやら後ろめたい事があったようだし なんて考えながら、ヨゼはわき見も振れず脱兎のごとく廊下を走っていくのだった //0時が近いので、ここいらでお開きお願いしますー、申し訳ない 203 :タチアナ・トハチェフスカヤ@ヴォルガ連邦/陸戦快速型:13/09/27 00:32:30 ID:TXhzHTCK >>202 「なんだァ。もっと大きナ毛布とかもってけバいいのにナ」 腕を組み、ふぅと息を吐きだす。 あの格好とタオルケットだけで行ったならばけっこう冷えただろうに。 今度は一緒に誘ってウォッカでも飲むべきか。 「ハハハッ、早く戻りなヨ。他の人に見つかるまえにナ」 しっしっ、と追い払うような動作を加えて 彼女を見送るターニャであった。口元には楽しそうな微笑みを浮かべて さぁて、自分も行くか、と思った瞬間に背中を懐中電灯で照らされる感触を覚えると ほとんど同時に男の声が廊下に響く。舌打ちしたいのを我慢しながらもターニャは振り向いた。 「タチアナ・トハチェフスカヤ軍曹でス!所属ハ………」 非番の兵士に掴まったタチアナ。すでにこれで捕まったのが数回目。 さて、次の懲罰はなんだろうか。 204 :/オフィーリア・コールター/アルビオン/女物のトレンチコート:13/10/01 23:31:57 ID:SHbaQLCh アルビオン王国の首都、世界に名を轟かせる「ロンドン」。 連合軍の中枢とも言えるこの土地には、世界の各地からセイバー適合者が集う。 そんな彼女たちは、軍人である以前に年若い乙女である。 昔から『軍艦の居住性』やら、『紅茶が敵地で飲めるか』とか、 そんなことを考え続けてきたアルビオンの風土もあり、適合者たちにも外で思われているよりは自由な時間が多い。 と、前置きしておいて。 きょう、そのプラチナ・ブロンドに灰色の吊り目の少女――オフィーリア・コールター大尉は、昼の休み時間に基地を出た。 向かった先は、この街にあるアルビオン最大の博物館だ。 「……人類の歴史がここにある、とはよく言ったものね」 博物館の中の、とある展示列。 ちいさく呟く彼女の視線の先には、乾いた茶褐色の亡骸が横たわっている。 アイギュプトス――今や戦争の最前線となったかの地で、『わたしたち』の祖先が、永遠を願って作った木乃伊が。 ふと、少女は嘆息する。彼らが求めた永久の安らぎは、いつ来るのだろうかと。 その様子は、気丈に振る舞う彼女が日常見せるものとは異なる。 上官としてあるいは戦友として、彼女を知る者がそこにいれば、意外にも映るかもしれなかった。 205 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ/ニットワンピース:13/10/01 23:53:12 ID:B2O7InwS >>204 「あら?」 木乃伊が飾られている向こう側からオフィーリアとほど近い身長の少女がやってくる 髪の毛も同じ清く透ける白さを持った白金の色、違いと言えば赤と青が複雑に混じることで生まれたバイオレットの瞳だろう 基地内では常に軍服であったヨゼも、オフと言うことで肩の露出した白いニットのワンピースを着こなしている 「フーじゃない!今頃は紅茶を飲んでいる頃だと思ったけど」 ぱぁっと音が聞こえそうな笑顔で目を細めオフィーリアの元へトタトタと小走りで近づいて来た 少しばかり丈が短いのかワンピースが捲れ、下には常日頃ストッキングに隠されている彼女の白い足が見えているが…… 中にはきちんとホットパンツの類を身に着けているらしい、本人も気にしている様子はない 「フーはこんな所で何をしてるの、木乃伊が動いた?」 なんて嬉しそうに冗談を言いながら胸の前で両手の指を組み、隣に立って木乃伊を見るヨゼ オフィーリアとは逆に不安を感じさせない微笑みが展示物を囲うガラスに映っていた 206 :名無しさん :13/10/02 00:22:38 ID:YZF9YmTS >>205 「こんにちは、ジョゼ。だけれど展示室(ここ)であまり大きな声をあげるのは拙くてよ?」 アルビオン訛りの愛称で呼び返しながら、オフィーリアはヨゼを穏やかに窘める。 自分まで渾名で呼ばれていることを敢えて置いておくあたり、手馴れている感じだ。 「ふふ、動いてはいないわよ。  動けたならどんな気持ちで今の世界を見るか、とはたまに思うけれど、ね」 そう答えながら、落ち窪んだ眼窩を、茫洋とした骸の表情をじっと見つめる。 現在のアイギュプトスは戦いの最前線と化し、遺跡の発掘や保護も儘ならない状態。 辺境ともなると、フィーンドの破壊や同化侵蝕がどの程度進んでいるかもあやふやである。 「ああ、きっと寝床からひきずり出したアルビオン人に文句を付けてくるわ。真っ先に」 続けてふわりと紡いだジョークは、悲壮さを覆い隠すヴェールのようでもあり。 「……彼らのふるさと、アイギュプトスの戦場も、気にはなるのだけれど。  あちらを人類の圏域回復にまで持って行くには、先に欧州戦線を片付けなければならないのが現状、かしら」 207 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ/ニットワンピース:13/10/02 00:44:07 ID:H3s7JotO >>206 「ううっ……ごめんなさい」 どこかバツが悪そな笑顔を見せながら首を傾け、組んでいた指を下におろすヨゼ ごまかすように舌を見せる彼女はオフィーリアの言葉に耳を傾ける 「わたしはもっぱら博物館じゃなくてギャラリーの方にしか行かないから、この木乃伊がいつの時代の人か分からないけど……」 そもそもヨゼが博物館に来たのは版画を見る為だ。 基本的に絵は博物館ではなくギャラリーの領分であり、故に博物館には通常の絵画は展示されていない だが博物館に相応しい歴史資料である版画や素描に関してはこちらに展示されている。 ここから分かる通りヨゼは絵についてはある程度知識はあるが、こういった美術品の類はからっきしなのだ 展示物の説明を見ては木乃伊を見上げ、もう一度文章に目を落として木乃伊を見上げる 何時の時代の人間かは分からないが、少なくともフィーンドと言う驚異が現れる前の人間であろう ヨゼからしてみれば『今』の世界が全てだ。 まだ15と言う若さである彼女は本に描かれている様な砂漠も氷の大地も――――全て物語の様な物でしかない 「そうね……動いたらきっと、硝子に顔をぶつけるんじゃないかな」 ジョークに対してジョークを返しながら、ヨゼは相変わらずどこかぽわっとした笑顔を浮かべ続けていた 「そうだね、その戦線が大事なのはわかる……けど」 「正直な話をして、わたしの国は直接な戦場になってないから自分でもなんて言えばいいのか分からないけれど……ごめんなさい、よくわからない」 どこか他人事のように前線で戦う彼女は言う、その微笑みは陰りがあった。 彼女が戦う動機は『フィーンドに対する怒り』も『見知らぬ誰かへの正義』でもない ただそうすることが出来たから、そう言われたからしているだけ―――― 彼女が軍人の様に見えないのはそこが関係しているのかもしれない 208 :名無しさん :13/10/02 01:22:17 ID:YZF9YmTS >>207 「百点の答えね。それ、いただきよ」 ユーモアに満ちた返しを褒めながらも、見やるのはヨゼの複雑な顔。 オフィーリアとて、個々人の事情には軍人として以上に踏み入るまい、と日頃自身を戒めてはいる。 しかし、多くの適合者にとって、相談相手としやすいのは同性の上官というのも事実だ。 「アルビオンも、思い出したような空襲を除けばそんな具合の国ね。  前線が近く工業力に富んでいるから、連合の中枢のように振る舞ってはいるけれど、同時にどこか遠巻きに戦場を見ている気もするわ」 「……そうね、折角だから、博物館めぐりのついでに考えてみるのも悪く無いと思うわよ。  とりあえずギャラリーの方、見て行きましょう?」 ミイラの顔を再度一瞥すると、彼女はヨゼについてくることを促すように指を振るだろう。 オフィーリアの背中を追いかけていけば、それこそ彼女好みの版画が並んだ展示コーナーにたどり着けるはずで。 その道すがら、彼女は場所に合わせて小さな、だけれど確かな声で語る。 「確かにアルビオンもグロースクロイツも、戦場とは言い難い。  それでも《戦争》というもの自体は、この時代のありとあらゆる場所に潜りこんでいる。  この博物館もそうよ。前に比べて、愛国心を擽るような展示が増えたもの」 「……でも、戦う理由なんて、わからないくらいでも良いのよ。  凝り固まった考えのせいで後に退けなくなってしまうよりは、よっぽどね。  ただ、貴女が貴女の力で、自分が守りたいものを見つけられたなら、それはそれで素晴らしいことだと思うわ」 そう言うと、灰色の瞳の少女はにっこりとウィンクして、 「それまでは、還るべき場所を一緒にさがしてあげるわ」 と、いつもの穏やかな調子で結ぶことだろう。 209 :ヨゼフィーネ(ヨゼ)/白金髪青紫眼やわらかレイヤーボブ/ニットワンピース:13/10/02 01:55:19 ID:H3s7JotO >>208 先を行くオフィーリアの背についていきながら、横目で硝子の向こうに並んだ珍品たちを流して良く そうしている内に、版画や素描が並ぶ一角へとたどり着いいた いつの間にか組んでいた指は解かれ、歩くたびに彼女の腰で前後に揺れていた 「かもしれない、少なくとも戦争になってパラダイムシフトは起こった。  これって、フィーンドに変えさせられたとも取れるのかも」 それは単純な技術革命だけではない セイバーとして戦うことが出来るのは女性のみ―――女尊男卑とまでは言わないが、立場は大きく入れ替わった 前線に出るのは基本的に女性であり、男性は裏方を務める 恐らくは十数年ほど前からやってきた人間に言っても、馬鹿げだ御伽話だと笑い飛ばされてしまうだろう 「でもそれも、わたしの戦う理由にはならない……考えてもまだわからない」 ヨゼが見上げた先には大きな翼を背負い、虚空の白い背景にくっきりと浮かび上がる運命の女神が描かれた版画があった かの有名な『メネシス』と呼ばれている版画だ、球に乗って運命の舵を取る女神はその手に馬勒と酒杯を持つ 「運命の女神、メネシスの手に握られている馬勒と酒杯は懲戒と寵愛を意味している。  わたしにの手にはまだどちらもないけど、手にできるなら酒杯でありたい、戦う理由とするならば誰かへの寵愛のほうがいいかな」 「誰への愛なのかは、まだわかってないけどね」 気づけば彼女の指は最初と同じように胸の前で絡むように組まれていた ほんの少し頬を赤らめて、微笑みながら首を傾ければ柔らかく細い彼女の髪が揺れる そしてオフィーリアのウィンクに返すようにヨゼもパチリとウィンクをした /申し訳ない、流石に眠いのでここら辺が限界です……ごめんなさい 210 :天城/オフィーリア:13/10/06 20:37:10 ID:mRqlV0Eh >>207 こんな時代だから、戦わなければ生きてはいけない。 力を持つ人間が望む望まざるに関わらずそれを使わなければ、いずれすべての人類が死に絶える。 「ええ。戦い一辺倒の人生を悪いとは言わないけれど、貴女にそれは向いてないと思う。  だけれど、愛のために費やす人生が簡単だと言うつもりもないわ」 天罰と宿命の女神の手の内に握られた2つの在り方。 それぞれに、重さの違いがあるわけではない。そして、どちらか片方だけを選べるわけでもない。 愛を謳うにしても、それは戦いの中で。まったく難儀な時代ね、と呟いて、オフィーリアはジョゼに優しくも強い視線を向けた。 「ジョゼ。愛しい人はいずれ見つかるわ。きっとね。  それよりも、貴女が愛することになる人を、ちゃんと見ていられるように注意なさいな」 「そして、貴女を愛してくれる瞳にも気づいてあげられるように」 赤くなった頬に気付くと、彼女は何か含みがあるように笑う。 仲良き事は美しき哉。されど、友情と愛情の境界線というのは、こと少女の年頃では曖昧なものだ。 ただ、それが何であろうと、オフィーリアには部下を守る「ぐらいの」ことしかできない。 自分の心に気づいて、ちゃんと自分で自分を支えられる時まで、時間を稼いでやることしか。 ……さて。この後も暫くオフィーリアは博物館に居座って、二時半ごろに立ち去って行くだろう。 夕方には新兵の指導、それから基地司令官を交えた戦況会議と、彼女を長い夜が待っているのだった。 211 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/08 00:08:19 ID:uPfUS+Hd 【登場の5時間くらい前】 熱砂の果てのドンパチというのは色んな意味で心が踊る、とは とある適合者の言葉である。 その言葉には全面的に同意をしないといけない。 愛機の火砲は、中型下位であれば1000m先からでも撃破できる。 もっともそれは相手も同じことだ。 陸戦重装型の中型と出くわせば1200mからでも十分に、こちらのフィールドを抜かれるだろう。 相手に身を晒さずに、如何にこちらの弾を叩きこむか。 これが広大で稜線しか頼りにならない暗黒大陸の戦いってもんだろう。 【登場@前線基地の天幕にて】 「まー、結果として手遅れだったけどね」 偵察小隊の救難信号を受信して、同じく哨戒で展開してた身としては 恐らく最速で助けに向かったはずだ。 一番早く現場についた自分たちが助けられなかったんなら、それは彼らに運がなかった、ということ。 同化されたか、蒸発したか、それとも肉片になったか。 ま、そんなことは知ったこっちゃない。 回収できたドッグタグを担当に渡して、自分らは拾い集めた物資の管理、である。 「ツァイスの双眼鏡かー。隠しといたほうがいいかな、これは」 今日消えた部隊は偵察小隊。 目の前の“逆戦利品”を相手にいろいろともめとるのでした。 もっとも、適合者たる彼女に優先権はあるんですけどね。 どっちにしろこの場で広げられているアイテム各種は、書類上は部隊と共に消耗したことになっているのです。 お酒とか食料とかは兵士諸君で山分けしたとかしてないとか。 鉄砲の類は適合者は自前ので十分です。 結果として残ってるのは、扱いが難しいのばかりなのでした 212 :エルゼ/帝国軍服/航空爆撃型:13/10/08 00:24:11 ID:oHsVqmlt >>211 「はろろーん……って、何やらお取り込み中の様ですねー」 やけにフランクな挨拶と共に天幕に入ってくるエルゼ。 手にはバウムクウヘンが一塊、半ば齧られたものが握られていた。 どうやら食事代わりに食べていた処だったようだ。 「……まーた『戦利品の管理』ですか」 エディータの下に広げられた物資の数々を見て、エルゼは納得したような表情。 うんざりといった様子で溜息を吐くと、何も置かれていない箇所に腰を下ろした。 「何か珍しそうなものはありましたかー?」 アイテムに目を遣りながら、エルゼは尋ねた。 213 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/08 00:31:22 ID:uPfUS+Hd >>212 「んー、大半は履けたんだけどね」 手元にはごつくてでっかい双眼鏡。 まぁ遠くが見えそうだこと。 「形見になりそうなのは、担当者に投げつけて  換金しやすい金目の物は山分けして  あとはまぁ、飯盒とかペリスコープとか……」 軍用品だけど横流しにしたらバレそうなものから 本当の意味でのガラクタまで。 とにかく拾えるものは拾ったみたい。 「空組はこういうスカベンジャー業務には無縁そうでなにより」 214 :エルゼ/帝国軍服/航空爆撃型:13/10/08 00:39:59 ID:oHsVqmlt >>213 「皮肉ですかー?それ」 エディータの言葉をエルゼは笑いで返す。 飯ごうなんて売れそうにもないなーとか思いつつ手に取りながら。 「ま、確かにこういう仕事に縁が無いのは有難いですけどねー。 こんな事いつもしてたらストレスが溜まりまくりそうで……」 飯ごう側面の手触りを確かめながら、小さく呟くエルゼ。 気分が常時陰鬱になりそうで怖い。 「その双眼鏡はどうするつもりです?」 エディータが手に持っているものを見遣りながらの台詞。 215 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/08 00:48:16 ID:uPfUS+Hd >>214 「んー皮肉ってか、大マジかなぁ。  切実な本音ってやつ?」 不織布でレンズを拭いて覗いて、よし、と一人納得。 そういえば彼女のカメラもツァイス社のか。 クロイツの光学照準器が世界一なのもこの会社のおかげ。 「まぁ引き取り手が出ないなら、歩兵部隊で足りてないとこ探すか  どこぞの天体好きな適合者さんに流すかってとこかなぁ……。  これをさげてた、胴体真っ二つさんの供養にもなるし」 ストレスを切り離す術をマスターしてるらしいねーちゃんとしては 形見とかそんなのとっくに通過しているのです。 216 :エルゼ/帝国軍服/航空爆撃型:13/10/08 01:01:22 ID:oHsVqmlt >>215 「……やっぱり私には辛そうな仕事ですねー」 レンズを拭いているエディータの仕草を見ながら、エルゼは苦笑い。 とてもではないが、それに耐えれる精神を持ち合わせていない。 「その方が作り手さんも元の持ち主さんも浮かばれるでしょうねー」 道具はやはり使われるのが一番だ。 それがどのような紆余曲折を経ていようが、だ。 気にしなければどうという事でもないし。 「さーて、ここに長居したら浸っちゃいそうですし、そろそろ戻りますかね……」 よっ、と一動作で立ち上がると、エルゼは尻を叩いて埃を落とす。 そしてそのまま天幕から立ち去ろうとした。 217 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/08 01:08:12 ID:uPfUS+Hd >>216 「慣れよ慣れ。  どんなエグいのもだんだん日常に埋没するのさ」 よし、お掃除終了。 ……ストラップの血の染みはともかく、他はほぼ元通り。 次に取り出したのは夜光塗装済みの腕時計でした。 「ま、戦乙女の真似事も嫌いじゃないし  ハイエナの真似事もNG出すほどじゃないくらいには慣れたよ」 ちょっとだけ見上げる愛機は戦場でこさえた傷まみれ。 それはすなわち、適合者として長く生きている証でもあるわけで 陸戦セイバー乗りなら、それだけ多くの随伴歩兵と共に歩んだ歴史であり。 「ほしいものがあったら言いな。  取り置きしといてやるからさ」 止める意味もなし、と見送るだけに留めました 218 :天城 初恵/黒髪黒目三つ編みおさげ/軍服 :13/10/28 00:29:58 ID:ik2zrAT3 アイギュプトス共和国北岸、アレクサンドリア。 それは長い歴史に育まれた一大港湾都市にして、暗黒大陸における人類の「海の拠点」のひとつである。 補給や荷降ろしのため、連日連夜、様々な船がこの地に集っては旅立ってゆく。 見れば、今日は商船の他に、ユニオンジャックを掲げたアルビオン船籍のセイバー母艦が錨を降ろしたらしい。 【クレオパトラ】と名付けられたその艦は、軽巡洋艦を改装し、空戦・海戦機の発着および甲板での陸戦型の移動を可能としたものだ。 母艦化に伴って半分以上の火砲は撤去、艦上防衛は移動砲台役を担う陸戦型が担う、という代物。 こうした艦は世界各地で用いられており、牙を抜かれた平板なフォルムは、戦場の主役が今や特装歩兵であることを誰よりも雄弁に物語る。 つい先程乗員にも上陸許可が降りたらしく、世界中から集められた少女たちが異郷の大地に吐き出されていく。 じぶんの荷物を手に手に持って、年頃そのままにはしゃぐ娘たち。 だが、そんな輪の中から逸れる者もいた。 「……ふう。  陸地を足で踏んで、ようやく人心地つく、と言ったところでしょうか」 2つに結んだ黒髪のお下げ、という地味な容姿のせいで、ここでは却って目立つ瑞穂人と思しき少女。 数時間前までまでの通商護衛任務に寝ぼけた瞳を擦りながら、彼女は基地へと歩を進めていた。 さてさて、何に出会うのやら。 219 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/28 00:44:04 ID:YqHWAwA+ >>218 ぱしゃっぱしゃっとシャッター音。 音の方向には大型軍用トラックの屋根に座った適合者が1人。 着崩した軍服はクロームグロイツアフリカ軍団陸軍のモノ 荷台にごっそり積んであるのは、船団の積荷か。 「やっほー、ミズホ人! 街まで乗ってくかーい!」 港から司令部までの直行便。 ただし見るからに煩そうなクロイツ人と弾薬と、たぶん陸戦機の予備砲身と相乗り。 乗りますか、乗りませんか。 220 :名無しさん :13/10/28 01:03:16 ID:ik2zrAT3 >>219 フィルムに切り取られていく横顔が、そちらへと振り向いた。 しばらくの航海、洋上での哨戒任務を経て少し焼けつつも、つんと張った瑞々しい肌。 まだ中学生ぐらいと言った所だろう。地味だが、そういうコにこそ需要はある。 「あっ、これは」 そこまで考えが回ったわけではないけれど。 カメラが持つ意味をなんとなく悟り、少女は僅かに頬をふくらませる。 だが、すぐに咳払いして、 「……そうですね、こういう埃臭い道のほうが、性に合うかもしれません。  代わりに、売値の一部は頂きますね? わ、わたしも、育ちが悪いものですから」 と応えてトラックの荷台に乗り上げようとするものの、やはり若いのか、声には押し殺した憤りと、羞恥の色があった。 221 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/28 01:12:30 ID:YqHWAwA+ >>220 まぁ、百合っけは全然ないんですけどね。 登る時は腕をひっぱって手伝いますよ。 「『ミズホの援軍、王立海軍と共に熱砂の大陸へ降り立つ』  儲けは全額やるよ。あんたはその金で美味しいミズホの酒を買ってくれりゃいい」 さすがに厨房にタバコはやれないなー、と後ろ窓をノックノック。 内側から水筒を出してもらうわけです。 大丈夫、中身はお水だから。 そのままエンジンが回り出す音。 港から砂漠の古都へ。 「ま、とりあえずこれは持っときな。  ここの砂はドヘンタイでね。隙間があったら潜り込んでくる」 睡蓮の刺繍つき薄い黄色の大きめスカーフ進呈です。 あ、タバコ吸っていいかな? とジェスチャーで 222 :天城 初恵/黒髪黒目三つ編みおさげ/軍服 :13/10/28 01:39:57 ID:ik2zrAT3 >>221 「では、そういうことで手打ちにしましょう。帰郷の折には、できるだけ良い物を」 思いの外優しげな態度と手のあたたかさに、これはお父様がいつも呷るような金魚酒じゃあ拙いなと、ちょっと絆される。 瑞穂の酒はコメの酒。〝最重要戦略物資〟を潰して作るせいで統制がきつく、一番安いのはもはや水だ。 「ありがとうございます。  アイギュプトスの気候、そろそろ慣れたいのですけれどね……」 ジェスチャーに対してちいさく頷きながら、水筒を受け取って、二度三度振ってから口をつける。 吹き寄せる風から顔を守るように、左手にはスカーフをぎゅっと握り、砂を防ぐ。 「そういえば自己紹介が未だでしたね。自分は瑞穂海軍飛行兵曹長、天城初恵です。  暫くこちらでお世話になります……どうせ、また転戦でしょうが。それはいいっこなしでお願いします」 223 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/28 01:55:32 ID:YqHWAwA+ >>222 「海軍ならセンプクあたりを期待しとくかぁー。  前に頼んだ子は、ウィスキーくれたよ。  メモ帳一束でスコッチの秘密を盗んだ男が作った ってね」 あれはなかなか悪くかなかったなぁ、と。 最初の銘柄も、赤道を越えても美味しく飲めると評判のシロモノ。 こいつ、過去にも似たようなことやってたな、と理解させるにゃ十分だ。 車はごとごと。 適合者の着任なら、人類統合軍の司令部でよかろう、というわけ。 「クロイツ陸軍曹長のエディータ。よろしくなー。  こっちは砂地が気に入ってね、転属から逃げまわってるとこ」 使い込まれたオイルライターがタバコに点火。 ふい~~~。 いいねぇ、ワカイ子の相手しながら吸うのも一興よ。 「ぶっちゃけ、砂に慣れすぎてお固い本国より気に入っちまってさ。  ここの風は痛いしヤスリみたいだけど、懐の広さはピカイチだ」 224 :名無しさん :13/10/28 02:25:08 ID:ik2zrAT3 >>223 「ふふ……それはちょっと愉快な話です。  アルビオンのドル箱、いつかは瑞穂が食べ尽くしてしまうかもしれませんね……と」 酒に関する知識はあまりないが、彼女は人の武勇伝とかうんちく話を聞くのは好きな方だ。 その話を頭のなかのメモ帳にきりきりと書き付けては、満足する。 又聞かせする相手は、あまりいない。 「ふうん。わたしは瑞穂の柔らかい風がいちばん好きですね。  だけれど、この街はどこを切り取っても画になります」 さっきのエディータを真似るみたいに、指で四角を作りながら過ぎゆく景色を見る。 戦争がなければこんな世界があることを想像もできなかった。 幸せな時代だとはこれっぽっちも思わないけれど、胸の高鳴りを否定することもできない。 だって、いちばん正当な理由をつけながら、『家族』から逃げられるのだから。 「エディータさん、故郷のことはお嫌いなのですか?」 それでも、生まれ育った土地の澄んだ空の色は懐かしくて。 砂塵の街に揺れる瞳は、なんとなくそう問いかけた。 225 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/28 02:43:53 ID:YqHWAwA+ >>224 「ミズホにウィスキー売れる土壌作ったんだ。  女王様から勲章をあげるべきだねぇ。  商船が喜望峰周りになったし、今頃大儲けしてんじゃないかな」 一番安上がりなルートがなくなっちゃったからねぇ。 調べたらいろいろ出てくるのも楽しそうだ。 ごととんごととんと車は大通りへ。 街の案内はまた今度になりそうかしら。 「なんつーか、みんな頭固くてさ。  景色とビールは好きだけど、疲れるんだ」 こっちはいい。何やっても許される感じがあるから。 骨を埋めるならこういうとこがいいなぁ。 まぁ、悲壮感な感じの答えかたではないのでご安心を。 「ま、せっかく乾いたとこに来たんだから湿っぽい話はやめようぜ?  楽しい話をするクセ、お互いにつけとこうか」 226 :天城 初恵/黒髪黒目三つ編みおさげ/軍服 :13/10/28 03:08:03 ID:ik2zrAT3 >>225 「楽しい話、ですか……」 こういう時に考えこんで、「はいわかりました」と言い切れないのが、初恵の不器用な所だった。 迂闊な思慮深さゆえに、深く深く自分の気持ちを掘り下げてしまう。だから動けない。 下手すると、このままずっと黙りこんでしまいそうにも見えたが。 「……こういうとき、友達の話でもすればいいんでしょうか」 脳裏に何人かの顔を浮かべながら、悩ましげに少女は口を開いた。 そう言えば、思い出を作りはしてきたけれど、それを誰かに語ることは無かったな、と。 思い立って、少女は深呼吸する。砂を吸い込まないように、スカーフをしっかりアテて。 「はじめての出撃の時、わたしを頼ってくれた方が居るんです。  一緒にいると、不思議と敵地を翔ぶのも怖くなくて……。  誰かに必要とされるのって嬉しい事なんだなって、わたし思いました」 黒い瞳を笑むように細めて、彼女は空を見上げた。 彼女は自分と同じ空の兵士で……そしてなんとなく、相手の目を見て喋るには気恥ずかしいことだと思ったからだ。 227 :エディータ/クロイツの着崩し軍服 :13/10/28 03:21:11 ID:YqHWAwA+ >>226 「笑い話の数、かなぁ」 のんびりと友達の話に耳を傾ける図。 空軍はロッテがいるからなー。 長い話を聞いてやりたいところだけど…… どすん、と車は急停車。司令部前、ですね。 「ありゃりゃ、時間切れか。  こっちでも友人作るのが最初の目標ってとこかね。  話の続きは、どこかで飲みながらやろう」 にやっと。 次の機会は必ず作っておくタイプだそうです。 世の中に未練があったほうが長生きできるってね。 「んじゃ、またね?」 最後に司令部前の姿を撮ろう。 スカーフに刺繍された睡蓮はこの国の国花。 うん、いい絵になりそうだ 228 :天城 初恵/黒髪黒目三つ編みおさげ/軍服 :13/10/28 03:42:23 ID:ik2zrAT3 >>227 「は……はいっ。肴になるような話を、いっぱい捕まえてきます」 ぐらりと揺れる荷物の波に揉まれそうになりながら、上ずった声で初恵は答える。 こんな時代に次を約束させるのは卑怯だなんて思いながらも、反論はない。 「エディータさんこそ、フィーンドはともかく、お酒にやられないで下さいよ?  あなたが笑い話になってしまったら、泣くに泣けませんから」 ただ最高にいい笑顔にはちょっと悔しい気持ちがしたので、これだけは言っておく。 本人としては冗談のつもりだが、やけに真剣な面持ちになってしまう。 こんなんだから、付き合いにくいと言われるのに。 ……そんなくそ真面目な顔を、パシャリと撮られて。 「う、恥ずかしい……です」 一人残された彼女は、そう小さくごちるしかないのだった。