|
第13回 連結経営の今日的課題
菊地 倫子、上條 圭 連結経営が目指すものは、グループ全体での企業価値の向上である。そのためには、各グループ企業や各地域の特性を最大限に活用できるように、グループ全体の理念・戦略に基づいて各企業が活動できる体制が求められる。内部統制の整備で「見える化」された業務ルールなどを活用し、グループ全体での業務標準化・共通化など、経営基盤を整えることが重要である。
連結経営が目指すもの経済のグローバル化により、様々な形態でのM&A(合併と買収)が発生しており、資本提携による企業グループ間の競争は激化するばかりである。こうした環境に勝ち抜くうえで、ビジネスの実態を単独ではなく連結でとらえ、全体感をもって機動的に対応することが必須要件になってきている。 振り返ると、1990年後半の“会計ビッグバン”で実施された、連結中心の考え方に基づく会計制度変更から約10年、企業は様々な制度変更に対応してきた。2008年には四半期決算や決算日程の短縮も求められ、もはや経理部門だけでは対応しきれない範囲に広がってきている。 日本版SOX法(金融商品取引法の「内部統制報告制度」、以下J-SOX)への対応も、財務諸表を切り口としたリスク・アプローチであるが、その分析対象は決算プロセスのみならず、販売や購買など業務プロセスそのものに及んでおり、いわば基幹業務そのもののあり方が問われているのである。 企業には、多業種・多国籍にわたるグループの業務をマネジメントできる経営の仕組みを構築することが求められている。“グループ最適化”を目指すグループ全体の理念・戦略に基づき、グループ企業や地域の特性を最大限に活用するための基盤を整備する必要があるのだ。
連結経営上の課題を解決のための経営基盤事業のグローバル化が進むなかで、J-SOX対応をきっかけに、企業では以下のような連結経営上の課題が顕在化することが想定される。
(1) グループ経営管理基盤の不備
(2) フロント業務の非効率
(3) 包括的なリスクマネジメントの不備 ここに挙げたような、J-SOX対応を進めるなかで明らかになった連結経営上の課題を解決するためには、グループ全体の理念・戦略に基づき、グループ企業の持つ力を各々の分野で最大限に高めつつ、例えば下記のような目標を立てて経営基盤を整備する必要がある。
(1) グローバル規模で顧客の価値創造に寄与する
(2) グローバル全体のリソースを最適活用する
(3) グローバルでビジネスのリスクを最小化する
(4) グローバルでグループ全体をあたかも一つの事業体のように把握する 以上の目標を実現するための、グローバル連結経営基盤のイメージを図13-1に示す。
企業価値向上に寄与する取り組みへの第一歩以上の課題やあるべき姿に対し、これまで体系だった検討が十分になされてこなかった企業は多い。今回のJ-SOX対応は、そのきっかけを与えたとも言える。 まずは経理部門だけでなく、経営管理部門、関係会社管理部門、情報システム部門などを巻き込んだ、グループ全体のあるべき姿やそれに至るステップの検討が必要と考える。ともすると対応手法だけが問題視されがちなJ-SOXだが、各企業はこれを契機に連結経営基盤の整備を進め、企業価値の向上に寄与する改革に向けた一歩を踏み出して欲しい。
キーワード
記事
|
|