「私への最高の告白」 もう、この街の魔法少女はほむらちゃんしか居ない。私が契約すれば・・・。 私は、自分との葛藤に苦しみ、どうしたらいいのか、迷っていた。 「希望を持つことが間違いなの?」 いくら考えても、答えは出ない。 食事ものどを通らないので、パパもママも心配してた。どうしたらいいのかなぁ。 そんなとき、今日学校で先生から聞いたほむらちゃんの住所を記したメモを取り出した。 「なんだ、近くじゃない」 でも、ほむらちゃんいつも恐い顔で見るので、相談に乗ってくれるかな。 そういえば、さやかちゃんが魔法少女になったときは、快く相談にのってくれたけど・・・。 結局「美樹さやかの事はあきらめて」っていわれちゃった。 悪い子じゃないとおもうんだけど、なんか冷たい事言うんだよね。 でも、魔法少女になることが危ない事だって、ずっと教えててくれたんだ。 ほむらちゃんは、いつも冷静でただしい方向に私たちを導いてくれてたんだ。 今回だって。 そう私は決心して、家を出た。 「ママ、ちょっと友達の所に行ってくる」 雨が降るのに、急に飛び出した私を、ママが心配そうに見ていた。 「ここかぁ」 大きなマンションだった。 えと・・・。505号室はっと・・・。あ、あった。「暁美ほむら」 私は、恐るおそる、ドアホンのボタンを押した。 ピンポン ドアにチェーンの掛かった重そうな扉がゆっくりと開いた。 ほむらちゃんは、少し驚いた様子で私をみている。 「は、入っていいかな?」 ほむらちゃんは、その言葉を聞いた瞬間、瞳が大きくなり頬がピンク色に染まった。 もしかして照れてたのかなぁ。ウェヒヒヒヒ。 ほむらちゃんは、無言で扉を開けてくれた。 私は、部屋の中に進んで行った。廊下は幅が1.5mほどで、脇にトイレとお風呂があるようだ。 廊下を歩いてリビング出た途端、その光景に驚いた。 なんと、複数の液晶ディスプレイが空中つり下げられ、 何かを研究している資料のようなものがあった。 ま、まさか、これが杏子ちゃんが言っていた、ワルプルギスの夜なのかな。 「これが、『ワルプルギスの夜』?杏子ちゃんが言ってた」 私は、おそる恐るほむらちゃんの方を見ながら、話した。 「街中が危ないの?」 「なら、絶対にやっつけなきゃダメだよね」 私がその言葉を発した途端、ほむらちゃんは、恐ろしい形相で睨み付けた。 私は、思わず腰が引けてしまった。 恐い。怒られる。 ほむらちゃんが、やっと重い口を開けた。 「今までの魔女と違って、コイツは結界に隠れて身を守る必要なんてない。 ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になるわ」 ほむらちゃんは、冷静な、いつもの口調でたんたんと話した。 私は、家で悩んでいた事をぶつけるため、ほむらちゃんに打ち明けた。 「杏子ちゃんも、死んじゃって…戦える魔法少女は、 もうほむらちゃんだけしか残ってない。だったら、私が魔法少女になるしか無いじゃない!」 その言葉を聞き、ほむらちゃんの瞳に涙が浮かんでいる様にみえた。 ほむらちゃんは、私の言葉を遮るように「一人で十分よ!」と、切り捨てた。 後ろを向いてこっちを見てくれない。 私は、ほむらちゃんが本当の事を言っていると思えなくなり、私も涙が溢れてきた。 そのとき不意に思い出したのが、ほむらちゃんが転校してきたときの夢だった。 夢の中でほむらちゃんは、魔女の猛攻撃に手も足も出ない状態にやられてしまった。 まさか、あんなふうになるんじゃ・・・。人が死ぬところは、もう見たくない。 私は、押さえきれない涙を手で拭くことなく 「何でだろ、私、ほむらちゃんのこと信じたいのに、嘘つきだなんて思いたくないのに」 「全然大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない」 と、本当の気持ちを打ち明けた。 すると、ほむらちゃんは、大きな声で 「本当の気持ちなんて、伝えられるわけないのよ」 「だって、私は…私はまどかとは、違う時間を生きてるんだもの!!」 え?どうゆう意味だろ?違う時間? え?ぇええ? その瞬間、リビングの端の方にいたほむらちゃんは、私の方に走って来て、私を抱きしめてきた。 本当に驚いた。私には、この瞬間が、コマ送りのビデオの様にゆっくりと進んだ。 何? 私は、正直何が起こっているのか分からなかった。 別に女の子同士だから、抱きつかれても嫌じゃないけど、なんでほむらちゃんが・・・。 私の体とほむらちゃんの体には1mmの隙間もないほど密着していて、 体の半分がほむらちゃんと一体化したようだった。 それは、ママの抱擁よりも迫力があった。 ほむらちゃんの髪からは、シャンプーの香りだと思う、優しい香りが私の体を覆っていた。 「ほ、ほむらちゃん?」 私は、動転して名前を呼ぶことしか出来なかった。 ほむらちゃんは、抱きついたままつぶやいた。 「…私ね、未来から来たんだよ。何度も何度もまどかと出会って、 それと同じ回数だけ、あなたが死ぬところを見てきたの」 ええ? 何の話?未来? 言っている事は分かるが、理解するのに時間が掛かる話だった。 「わ、私、死ぬ・・・の?」 寂しい問いかけだが、ほむらちゃんは、確かに何度も死ぬところを見たと言った。 その刹那ほむらちゃんは、一層強く抱きしめ、 「いいえ、死なないわ。死なせはしないわ」 と言って言葉をかき消した。 「どうゆう事?」 「ごめんね。わけわかんないよね…」 ほむらちゃんは、私の肩で泣き崩れた。 私は、ほむらちゃんが落ち着くまで、ほむらちゃんの腰のあたりに手を回し、 やさしく抱き寄せた。 どのくらい時間がたったろう。ほむらちゃんは、やっと落ち着いた。 私とほむらちゃんは、サークル状のテーブルに腰掛け、真横に並んだ。 「ちゃんと、教えてくれる?」 この言葉を飲み込み、ほむらちゃんは、ゆっくりと頷いた。 ―――――小一時間は経過しただろうか、ほむらちゃんは、 今まで繰り返して来たこと全てを、話してくれた。 そして、私が死ぬ事も。 私が、死んでしまうという恐怖もあったが、それ以上にほむらちゃんは、 私のために何度も何度も涙を流して、私のことを守ろうとしてくれた。 過去に戻って歴史を変えるというのが、どんなものか経験が無い以上、ほむらちゃんの 苦しみは私に理解できない。ただ、こんなにも愛されていたんだという事は、はっきりと分かった。 「じ、じゃ、ほむらちゃんが魔法少女になった原因は?」 「あなたを守る。それが私の最初の願い・・・。」 「魔法少女になったら、死ぬしかないんでしょ? それで、私を守るって・・・私・・・・どうしていいか」 私は、もはや何を言っているのか分からなくなり、下を向いた。 悲しいわけじゃないのに、さっきから、涙が溢れてとまらない。 ほむらちゃんは、私の涙を手ですくい取り私の方を見ている。私はうつむいたままだ。 椅子の上に無造作に置いた手の上に、ほむらちゃんの手が重なった。 その瞬間私は、ドキンッとした。私、変なのかな女の子同士でこんなに意識して・・・おかしいよ。 下を向いている私の真横に、ほむらちゃんの顔が来た。 えと!、えとっ! じたばたする、私を見て、やっとほむらちゃんは微笑んでくれた。 私は、立ち上がり 「私決めた!」 と大きな声を出した。 「まさか!」 「私、魔法少女になる」 「そ、そんな、私の・・・」 「ほむらちゃん、一緒にワルプルギスの夜を倒そう」 「―――やっと決まったのかい」 暗闇から突然キュウべぇが現れた。 「ほむらちゃん、私、自分の魂をかける願いが決まったの。ほむらちゃんが やってきた事も魔法少女の願いも決して無駄にしない。」 私は願い事をキュウべぇに告げる。 「希望と絶望は等価ではない。希望さえあればソウルジェムを 永遠に輝かせる事ができる新たな法則を私は作る。希望があれば ソウルジェムは決して濁らない。これが私の願い。さぁキュウべぇ叶えてよ!」 感情の無いはずのキュウべぇは、思わず後ずさりした。 「そ、その願いは、そんな願いが叶うとすれば、君たちからエネルギーを回収する事が 不可能になってしまう。そんな事が許されるはずが・・・」 キュウべぇの言葉を遮るように、まどかのソウルジェムが出現した。 「ほむらちゃん、さぁ行こう!」 「ええ、行きましょう!」 <終わり>