ラノロワ・オルタレイション part11
1 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/14(土) 13:01:19 ID:nDm+Tlx2
このスレは、ライトノベル作品を題材にバトルロワイアルの物語をリレー形式で進めてゆく、
「ラノロワ・オルタレイション」という企画の為のスレです。
※内容に流血や死亡を含みますので、それを予め警告しておきます。



前スレ
ラノロワ・オルタレイション part10
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1272551306/l50



ラノロワ・オルタレイション@wiki (まとめ)
http://www24.atwiki.jp/ln_alter2/


ラノロワ・オルタレイションしたらば掲示板 (避難所)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/10390/


予約用のスレ(予約スレ part2)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1255965122/l50
※予約のルールに関してはこのスレの>>1を参照のこと。

2 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/14(土) 13:02:54 ID:nDm+Tlx2
    ○上条当麻/○インデックス/○白井黒子/●御坂美琴/○ステイル=マグヌス/●土御門元春
 4/6【フルメタル・パニック!】
    ○千鳥かなめ/○相良宗介/●ガウルン/○クルツ・ウェーバー/○テレサ・テスタロッサ/●メリッサ・マオ
 3/5【イリヤの空、UFOの夏】
    ○浅羽直之/●伊里野加奈/●榎本/○水前寺邦博/○須藤晶穂
 3/5【空の境界】
    ○両儀式/●黒桐幹也/○浅上藤乃/○黒桐鮮花/●白純里緒
 1/5【甲賀忍法帖】
    ●甲賀弦之介/●朧/●薬師寺天膳/●筑摩小四郎/○如月左衛門
 4/5【灼眼のシャナ】
    ○坂井悠二/○シャナ/●吉田一美/○ヴィルヘルミナ・カルメル/○フリアグネ
 2/5【とらドラ!】
    ●高須竜児/○逢坂大河/●櫛枝実乃梨/○川嶋亜美/●北村祐作
 2/5【バカとテストと召喚獣】
    ●吉井明久/○姫路瑞希/○島田美波/●木下秀吉/●土屋康太
 3/4【キノの旅 -the Beautiful World-】
    ○キノ/●シズ/○師匠/○ティー
 3/4【戯言シリーズ】
    ○いーちゃん/○玖渚友/●零崎人識/○紫木一姫
 3/4【リリアとトレイズ】
    ○リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ/○トレイズ/○トラヴァス/●アリソン・ウィッティングトン・シュルツ


 [35/60人]


 ※地図
 http://www24.atwiki.jp/ln_alter2/?plugin=ref&serial=2

3 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/14(土) 13:04:26 ID:nDm+Tlx2


 【バトルロワイアルのルール】


 1.とある場所に参加者60名を放り込み、世界の終わりまでに生き残る一人を決める。


 2.状況は午前0時より始まり、72時間(3日)後に終了。
   開始より2時間経つ度に、6x6に区切られたエリアの左上から時計回り順にエリアが消失してゆく。
   全エリアが消失するまでに最後の一人が決まっていなければゲームオーバーとして参加者は全滅する。


 3.生き残りの最中、6時間毎に放送が流され、そこで直前で脱落した人物の名前が読み上げられる。


 4.参加者にはそれぞれ支給品が与えられる。内容は以下の通り。
   【デイパック】
   容量無限の黒い鞄。
   【基本支給品一式】
   地図、名簿(※)、筆記用具、メモ帳、方位磁石、腕時計、懐中電灯、お風呂歯磨きセット、タオル数枚
   応急手当キット、成人男子1日分の食料、500mlのペットボトルの水4本。
   (※名簿には60人中、50名の名前しか記されていません)
   【武器】(内容が明らかになるまでは「不明支給品」)
   一つの鞄につき、1つから3つまでの中で何か武器になるもの(?)が入っている。


 ※以下の10人の名前は名簿に記されていません。
  【北村祐作@とらドラ!】【如月左衛門@甲賀忍法帖】【白純里緒@空の境界】【フリアグネ@灼眼のシャナ】
  【メリッサ・マオ@フルメタル・パニック!】【零崎人識@戯言シリーズ】【紫木一姫@戯言シリーズ】
  【木下秀吉@バカとテストと召喚獣】【島田美波@バカとテストと召喚獣】【土屋康太@バカとテストと召喚獣】



 ※バトルロワイアルのルールは本編中の描写により追加、変更されたりする場合もある。
   また上に記されてない細かい事柄やルールの解釈は書く方の裁量に委ねられる。

4 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/08/14(土) 13:05:21 ID:nDm+Tlx2


 【状態表テンプレ】
 状態が正しく伝達されるために、作品の最後に登場したキャラクターの状態表を付け加えてください。


 【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
 【(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
 [状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
 [装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
 [道具]:(キャラクターがデイパックの中に仕舞っている物の名前)
 [思考・状況]
  基本:(基本的な方針、または最終的な目的)
  1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
  2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
  3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)


 [備考]
  ※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)


 方針/行動の数は不定です。1つでも10まであっても構いません。
 備考欄は書くことがなければ省略してください。
 時間帯名は、以下のものを参照してそこに当てはめてください。


  [00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
  [06:00-07:59 >朝]   [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
  [12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
  [18:00-19:59 >夜]   [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]


5 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/14(土) 14:55:54 ID:N3+/kRmw
>>1乙です
6 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/16(月) 02:48:38 ID:8mnJGNtG
つまんね
7 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/16(月) 15:09:34 ID:mV7mvC/i
>>1乙です
8 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 00:21:38 ID:GrOOZlgr
>>1乙&ほしゅ
9 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:22:40 ID:H235yHNC
 夕闇に満たされつつある飛行場。
 長らく使われていないように思える滑走路の端から、音が響いてくる。
 飛行機の離陸と着地を補助するためのライトアップは必要最小限で、明滅する灯りからはどこか寂れた雰囲気が感じられた。
 寂寞とした僻地には違いない。だがそこに満ちる音は活気の表れであるともいえ、事実確かに、飛行場の隅には一組の男女が騒がしく活動していた。

「なんだそのへっぴり腰はっ。そんなことでは鴨にも逃げられぞ!」

 響く音は二種類。
 一つは女と銃が鳴らす発砲音。一つは男が発する罵声だった。

「いいか! 貴様は最低のウジ虫だっ! ダニだ! この宇宙で最も劣った生き物だ!
 俺の楽しみを教えてやろうか? それは貴様の苦しむ顔を見ることだ!
 腐った●●のようなツラをしおって、みっともないと思わんのか、この●●の●め!?
 ●●が●●たいなら、この場で●●●を●ってみろ! ●●持ちの●どもっ!」

 日常会話で用いるべきではない、それも女性に向けるには論外と言える下品な単語を多用しながら、男は銃声を鳴らす女を罵倒する。
 女の名前は黒桐鮮花。前方に置いたドラム缶、その上に置かれたさらに小さな塗料入りの缶を狙い引き金を絞っている。
 男の名前は相良宗介。鮮花の後方で姿勢正しく屹立し、鋭い眼光と激しい声でもって彼女の射撃を監督している。

「どうした! 命中精度がさらに下がっているぞ!? やはり貴様は●●の●か!
 悔しければ反論ではなく成果で見返してみろ! それができなければ貴様は●●以下の●●だ!
 ノルマがこなせるまでメシにありつけると思うなよ! ここは●●でもなければ俺は貴様の●でもない!」

 鮮花が引き金を絞り狙いが外れるごとに、宗介は罵声を放った。ドラム缶奥の壁には虚しくなる数、弾痕が刻まれている。
 相良宗介、彼の階級は『軍曹(サージェント)』だ。鮮花に浴びせる罵倒の数々は、訓練場では大して珍しいものでもない。

「もういい、いくらやっても弾の無駄だ! 貴様は無為に資源を浪費するだけの●●だ!
 ●●●でももう少し生産性があるぞ、悔しいとは思わんのか!? ●●を生むだけしか脳のないクズが!
 なんだその反抗的な目つきは、瞼よりも足を動かせ! 貴様の●はなんのためにある? ●●●を●●だけの役たたずか!?」

 塗料入りの缶がいつまで経っても弾け飛ばないので、教官は業を煮やし、教え子に飛行場での走りこみを命じた。
 しぶしぶといった様子で指示に従う鮮花。彼女は教えを請う側の人間だが、別に階級章つきの軍人というわけではない。
 ただの女子高生である。それも、世間ではお嬢様学校として知れ渡っているところの学生だ。淑女と言ってしまってもいい。

 そんな自分がなぜ、意味はよくわからないがおげれつであることだけはわかる罵声を浴びせられているのだろう……。
 根が素直な鮮花は、懊悩しながらも律儀に走りこみを続けていた。
10 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:23:25 ID:H235yHNC
「そのたるんだ走り方はなんだ!? 貴様は目の前に●●●がなければやる気にもなれないのか!
 甘ったれるなよこの●●●●がっ! どうやら貴様の●に●をつけてやる必要があるようだなっ。
 まったく手をわずらわせやがって、貴様は俺の●●●か!? ●●の●●にでもなったつもりか!?
 戦場に立つ気がないのなら●●●●●●●●で●●でもやっていろ、このあばずれがっ!」

 しかしいい加減、堪忍袋の緒も切れそうになってきた、そのときである。


 スパン!


 快音が、宗介の後頭部から響いた。リリアがハリセンで思い切りぶっ叩いた音だった。

「痛いじゃないかリリア」
「うっさい! さっきからなに下品なこと口走ってるのよ!」
「なに、以前、所属する学校のラグビー部を指導したことがあってな。そのときの経験を活かしたまでだ」
「らぐびー……?」
「知らないか? 日本を初めとした国々で普及しているスポーツなのだが」
「ど、どこにそんなお下劣なスポーツをする奴らがいるっていうのよ!」
「お下劣などと言っては郷田部長が悲しむ。彼らは花を愛で、お茶の味を語り合う清い青年たちだった。もっとも、それも過去の話だが」
「過去の話ってどういうことなのよ……嫌な予感がするけど一応、訊いておく」
「うむ。弱小チームだった彼らを強豪校との試合で勝たせろとの指令を受けてな。同僚のマオの勧めにより、海兵隊式の新兵訓練メニューを取り入れてみたのだが……」


 スパン!


 再び快音が響いた。

「痛いじゃないかリリア」
「うっさい!」
「それより、なんだそのハリセンは。どこか懐かしい……いや、俺はそんなものは知らないが」
「あ、これ? クルツがくれたのよ。ソースケに『ツッコミ』するんなら、これを使えって」
「そうか」

 宗介は微妙な顔をした。いつも仏頂面な宗介の微妙な顔は、いつもと絶妙に違っていた。
 そんな宗介とリリアのやり取りを眉間にしわを寄せた目で見やりつつ、鮮花は一生懸命走り続ける。
 リリアも鮮花に目をやりながら言った。

「……彼女、本気なのね」
「向上心は見られるな」
「ソースケも、本気なの?」

 どこか物憂げな視線を向けてくるリリアに、宗介はいつもの調子で返した。

「本気になれと言うのなら、メニューを一から組み直す必要がある。なにしろ期間が限られているからな。
 目的の達成が困難になる可能性を考慮すれば、時間はかけていられない。一日、いや、半日が妥当といったところか」
「あの……なんの話?」
「もちろん、彼女を一流の兵士にするための特訓の話だ。設備もろくに整わぬ環境ではいろいろと不便だが、それも本人しだいだろう。
 食事と就寝、それに排泄の時間を削ればなにも問題はない。あとは体力との闘いだ。正直、あの歳の女性にはキツイ訓練になる。
 しかし曲がりなりにもクルツが見込んだ人物だ。衛生兵(メディック)の不在は痛いが、それでも一割の数字は保てると俺は見る」
「……わたしにはあんたがなに言ってんのかわかんないわ」

 頭をかかえるリリア。
 宗介は飛行場を走りまわる鮮花を目で追いつつ言った。
11 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:24:08 ID:H235yHNC
「俺が見るに、彼女には技術よりもまず心構えが必要だ。現状の訓練に疑問点はまったく見いだせない」
「……前のほうには同意。後ろのほうは激しく否定しとく」

 目的のために自身を鍛え直す鮮花。
 彼女の教官役を務める宗介。
 その構図にため息をつくリリア。

 この奇妙な構図ができあがったのは、つい先ほどのことだった。


 ◇ ◇ ◇


 夕の帳が夜の帳に差し替わり、雲の流れも速くなっていく。
 北方に位置する飛行場では銃声もすっかりやみ、広大な敷地からは人の気配も消えていた。
 唯一、そこが飛行場であることを知らしめる格納庫の中だけは、足を踏み入れてみなければわからない未知の領域だった。


 男と女が一組、近づく。


 格納庫ははたしてもぬけの殻なのか、来訪者が足音を鳴らしても警告の鐘が響いてきたりはしない。
 これが車の走行音であればどうだろうか。中に人がいればあるいは、大慌てで外に飛び出すのかもしれない。


 男の女が一組、立ち止まった。


 ここから先をどう踏み込むべきか議論しているようで、小さな声を交わし合っている。
 男のほうは地べたに顔を寄せ、蟻塚でも探すような仕草で飛行場の敷地を眺め回したりもしている。
 そんな男を見ながら、女は盛大なため息をついたりもしている。


 男と女が一組、また歩を進めていった。


 どうやらまっすぐ格納庫の入り口を目指すようで、男のほうは銃を両手で握っていた。
 女のほうも負けじと、ナギナタと呼ばれる長柄の刃物で武装した。
 かえって邪魔になる、と男は女にナギナタをしまうよう指示した。女は反発した。


 また、ささやかな議論が始まる。そうやって、二人の姿は格納庫に近づいていった。


 ◇ ◇ ◇


「――ひょっとしたら連中、帰ってこないかもしれねえな」

 「え?」と黒桐鮮花が振り向いた。
 古ぼけた照明に照らされた、飛行場内の格納庫。その床に、六人分のマットレスと毛布が並べられている。
 クルツ・ウェーバーはマットレスの上に寝そべりながら、白井黒子が調達した物資の確認をする鮮花に話しかけた。
12 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:24:51 ID:H235yHNC
「ん。いや、ここを出てった連中。戦場のド真ん中でグループが散り散りって、映画とかでもよくあるフラグだろ?」
「戦場って……いやまあ、否定するつもりはないけど、彼女がついっていったんだから大丈夫でしょう?」
「黒子ちゃんのことかい? 不思議な力を持ってるし、あの年頃の女の子にしちゃやるほうだけど」

 だらだら、ごろごろと、とても戦場を口にする者とは思えないリラックスした態度のクルツ。
 射撃の先生――いや、『殺しの師匠』とも言える男の緩みきった姿に、弟子の立場にある鮮花は少しだけムッとした。

「ま、しがない傭兵の予感ってところさ。あんま気にする必要はねーぜ」

 クルツも決して冗談で言っているわけではあるまい。実際にありえる可能性として、最悪の事態を口にしている。
 それでもまるで悪びれず、脳天気でいられるのは、それが彼にとっての最悪ではないからなのだろう。
 いや、『彼にとって』ではない。鮮花にとっても、このまま誰も帰ってこないという事態は最悪たりえない。
 黒桐鮮花は復讐者。復讐者の目的は復讐対象の抹殺。ただそれのみなのだから。

「一蓮托生ってわけでもないんだ。いい加減、そのへん切って捨てようぜ鮮花ちゃん」
「べ、別に心配とかしてるわけじゃ」
「ならそんな顔は見せねえこった。こっちも遊びでやってるわけじゃないんでね」
「……っ」

 ふと、物資の中に手鏡がなかったかどうか探してしまう。
 切って捨てた気ではあった。とっくに割り切ったつもりだった。
 なら自分は、どうして六人分の寝床を用意したりしているのだろうか……と、鮮花は自問し歯噛みする。

「あの、クルツさん」
「どーしたよ、急にかしこまっちゃって」
「もし、六時までに誰も戻ってこなかったら……どうするの?」
「そうだなあ。探しに行く義理はねーし、先に飯食って寝てていいんじゃないかね」

 そんなものか、と鮮花は思う。
 いつの間にか大所帯になってしまったが、今はまた、クルツとの二人きり。
 時間を訓練と休息に当てるのはもちろんだが、今は再認のときでもあるのかもしれない。

 憎悪の再認。復讐心の再認。悪意の再認。殺意の再認。死んでもいい、という思いの再認。

 ありったけを済ませるのに、少女である鮮花はどれだけの時間を費やすだろう。
 蒼崎橙子から魔術を習ったときは、ある意味簡単だった。学習し、理解すればそれでよかった。
 銃は……殺しは、違う。なにより覚悟を保つことが大切だった。鮮度のごとく大切だった。こればかりは記憶力の問題ではない。

「とはいえ、だ」

 緩慢な動作で身を起こし、クルツは頭を掻きながら言う。

「今ここで黒子ちゃんたちと縁が切れる、ってのは好ましい話でもねーな。やっぱ、好き勝手動きまわるんならグループにいたほうがやりやすい」
「逆でしょ? チームを組む際のデメリットって、個人の自由に制約がつくことじゃない」
「チームじゃなくてグループ。組織じゃなく単なる集団なんだよ、俺たちは」

 首を傾げる鮮花に、クルツは低い声で説明を加えた。

「ただ目的地が一緒だっただけ、利害が一致しただけ、特に争う理由がない。だからなんとなく一緒にいる。リーダー不在命令無視しほうだいの自由の集団さ」
「……確かに、それは言えてるかもしれないけど」
「な? 仮にだ、鮮花ちゃんが復讐したい相手――あの男が、黒子ちゃんたちの知り合いとかだったらどうする?」
「殺すわよ。わたしの意思はそれくらいじゃ揺るがない」
「即答はご立派だがね。そしたら今度は鮮花ちゃんが黒子ちゃんに恨まれる番だ。復讐ってのはそういうこと。そのあたりも理解してる?」
13 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:25:03 ID:32Q6/q22
sien
14 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:25:33 ID:H235yHNC
 鮮花は即答できず、唇を噛んだ。
 復讐からはなにも生まれない。復讐はまた復讐を生むだけ――映画などでもよくあるテーマだ。
 自分が映画の登場人物であると考えれば、復讐などやめて、ここで話を終わらせることこそが美談の条件なのだろう。

 しかし鮮花はこう考える。
 復讐とは所詮、自己満足だ。

 復讐はまた復讐を生む。復讐を遂げることによってまた別の誰かに恨まれる。それがどうした。
 この身は既に、生きることを放棄している。いや、死んだも同然なのだ。この世界につれてこられた時点で。
 ただ、それでも、たった一つの目的、たった一つの生きる意味――復讐を果たすときまでは、生きていたい。
 もし、誰かが鮮花に復讐をしにくるというのであれば――そのときは甘んじて復讐されてやろうじゃないか。

「ま、覚悟があるのかないのかってのも今更か。話を戻すけど、俺たちみたいなのがグループに紛れるメリットはなんだと思う?」
「……囮と、盾よね」
「すげーな。正解だよ。鮮花ちゃんみたいに、他人の信頼を売ってでも成し遂げたい目的がある場合。仲間なんてのはデコイでしかねーのさ」

 なんともドライな発言だと、鮮花は思った。
 と同時に、クルツの言にかすかな引っかかりを覚える。

「クルツさんは?」
「うん?」
「わたしは目的さえ果たせればそれでいいけど、あなたは違うんじゃないの? 生きて帰る、それが最終目標でしょうに」

 これこそ今更だが――クルツが鮮花につきあう道理など、本来はないのだ。
 何時間か行動を共にしてわかったことだが、彼は面倒見がいいようで、その実かなりのプロフェッショナル思考だ。
 ここぞという場面では情よりも利を優先する、そういうタイプの人間。
 ある意味では、幹也の真逆とも言える――そういう、人間。

「ああ、そうさ」

 鮮花が予想したとおりの言葉が返ってくる。

「だからまー……俺だってずっと君の先生ってわけじゃない。いつかは絶対に、どっちかが切り捨てられる」

 どっちか――そう、それがクルツだとは限らない。鮮花がクルツを切り捨てる場合だって、ありえるのだ。
 両儀式に似たあの獣のような男には、クルツとて憎しみを抱いている。されとて、殺したいほどのものではない。
 利害は一致すれど、その温度差は実のところ大きい。いついかなる場面で、二人が対立する構図になるかはわからなかった。

(いつか……この銃を向ける相手が、彼になることもあるかもしれないってことか)

 鮮花は手元の銃に目をやった。
 コルトパイソン。いざ握るまでは、名前すら知らなかった.357口径リボルバー。
 引き金を絞れば弾はまっすぐ飛ぶと思っていたし、的に当てるのは縁日の射的くらいの難しさだろうと楽観していた。
 現実は、そんなに甘くなかった。そんな風に甘く見ていた自分を、銃に視線を落とすことで見つめ直す。
 わたしは橙子さんに習った魔術でなく、これを復讐の道具に選んだんだな、と。
 改めて、再認する。

「今はまだ足踏みの段階だし、そう怖い顔するもんじゃねーさ。ところでアレ、覚えてるか?」
「アレ?」

 クルツが立ち上がって伸びをする。覚えのない話題を出されて、鮮花はきょとんとした。
 その、一瞬の隙。
 クルツが右足を大きく蹴り上げ、鮮花の握っていた銃を掠め取るように弾き飛ばした。
15 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:26:01 ID:32Q6/q22
sien
16 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:26:15 ID:H235yHNC
 コルトパイソンはカランカランと音を立て、格納庫の床を滑る。
 突然のことに驚いた鮮花は、思わず声を荒らげた。

「い、いきなりなにをっ!」
「あー、ごめんごめん。そう怖い顔しなさんな。言っとくけど、こりゃ鮮花ちゃんのためなんだぜ?」

 似合わないウインクをして、クルツは一笑。
 顔は二枚目だが、こういう仕草が似合うタイプの男ではない。
 鮮花はしかめっ面で答えた。クルツは構わず、蹴り飛ばした銃を拾いにいく。

「なんせ、俺の同僚は『用心で』学校の昇降口に地雷埋めるような野郎だからな。
 思いつめた顔で銃なんて睨みつけてりゃ、死角から撃たれたって文句は言えねーさ」

 なにを言っているのかわからない。
 なにを言っているのかはわからないが――銃を拾いにいったクルツのほうに視線をやってみると、

「なー、ソースケ?」

 その奥側、格納庫の入り口付近に、見慣れぬ男女が一組立っていることに気づいた。
 その内の一人、男のほうが、こちらに銃を向けていることにも気づく。
 鮮花はすぐさま警戒に努めようとするが、

「……肯定だ」

 男は、クルツの呼びかけに答えるとすぐに銃を下ろした。


 ◇ ◇ ◇


「こちらの接近に気づいたことはさすがと言っておこう。しかし今の行動には感心できん。
 素人の手から、それもセイフティもついていないコルトパイソンを蹴り飛ばすなど、暴発の危険性を考慮しなかったのか。
 それに飛行機の格納庫を拠点にしているのはいいが、対人トラップの一つも設置していないのはどういうことだ?」

 身体に傷と火傷の痕が見られるその少年――相良宗介との邂逅は、そんな風に始まった。

 格納庫に敷いたマットレスを会議のテーブルとし、まずは自己紹介、そして行動経緯についての説明と情報提供をお互いに。
 宗介はクルツと同じ〈ミスリル〉という組織に所属する少年で、いわば同僚だった。
 宗介と共にやってきた金髪の少女はリリアという名で、出会って以来彼と行動を共にしているらしい。
 二人は飛行機目当てに飛行場を目指し、さらには近隣で浅羽直之や白井黒子と遭遇し、ここにクルツがいることを知ったそうだ。
 つらつらと、お互いの辿ってきたルートを無駄なく齟齬なく伝え合っていく。

「……なんだか手馴れてるのね、二人共」
「作戦行動中の情報交換は迅速かつ的確に、要点のみを抽出して提供しあうのが基本だ。俺もクルツもアマチュアではない」
「こういうのは、ホントは仕切り役がいてくれたほうが楽なんだがね。ま、文句の言えるような状況でもねーけどよ」

 宗介とクルツは単なる同僚というだけではなく、チームを同じくする相棒とも呼べる仲らしい。
 その情報交換は自身らがスペシャリストを自称するのも頷ける手際で、まったくと言っていいほど無駄がなかった。
 相手がどこでどういった事件に遭遇し、どのような成果を得たのか。ほとんど同席しているだけの鮮花とリリアにも、それを事細かに理解することができた。
17 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:26:58 ID:H235yHNC
「しかし、蜘蛛の糸ねえ」

 クルツが興味を持ったのは、宗介たちが飛行場を進路とした動機――飛行機を飛ばしてみる、という部分だった。

「空の上……ってのは、確かに盲点だったな。だがよ、実行するにはちとリスクが高すぎねえか?」
「四の五の言っていられる状況でもないだろう。現状の手札は極めて少ない。切れるカードはとにかく切っておくべきだ」
「言えてらあな。となると、必要になってくんのは航空機の燃料か。あいにく、俺たちの中に持ってる奴はいねえぞ」
「そうか。ならば、自動車用の燃料で代用するという案を本格的に視野に入れなければならないな」
「骨董品みてーなプロペラ機でお空の調査はいいんだけどよ。俺としちゃ、爆発するマネキン使いってのが懸念だね」
「トラヴァス少佐のことか。彼の目論見は不明瞭だが、未だこの近辺に潜伏している可能性は高いと見る」
「一度飛んじまえば、そこはもう逃げ場のない籠の中だ。ただでさえここには、RPGぶっ放す女の子がいるくらいだしな」
「被弾すれば最後、撃墜は免れないだろう。しかし空域が徐々に狭まっている現状、障害を取り除く暇も惜しい」
「せめてもうちょい、マシな機体が置いてあればなあ。ホヴィーみたいなのもあるんだし、誰か〈ペイブ・メア〉でも持ってねーかね」

 飛行機を飛ばす、それ自体はもはや不可能なことではないだろう。
 しかし設備も物資も限られるこの状況下、伴なうリスクもそれなりのものであると判断できた。
 宗介とリリアを襲ったトラヴァス少佐、その裏に潜む者、鮮花やクルツを襲った獣のような男に、
 炎を使う魔術師、それにティーの知己であるシズを殺害した人物と、敵も多い。

 加えて、外堀から埋められていくこの世界のルール。
 時間の制約を設けた背後の思考を辿れば、焦るのは得策ではないようにも思える。

 せめてこの場にもう一人、宗介とクルツの姉貴分であるメリッサ・マオがいてくれれば、判断は彼女に任されたのだろう。
 もしくは、二人の直属の上司にしてこういった作戦プランを検討することに長けたテレサ・テスタロッサ大佐。
 宗介もクルツも未だその所在を掴めずにいる、彼女との合流さえ果たせれば――より本格的な『プロの仕事』が行えたに違いない。

「ところで」

 議論も行き詰まり、宗介は話題を変えることにした。

「一つ訊くが、彼女に射撃の指導をしていたのはなんのためだ?」

 視線で示す彼女とは、響いていた銃声の正体にして発泡を繰り返していた張本人、黒桐鮮花。
 宗介は格納庫に入るよりも先に、外に即席の試射場が設けられていたことを確認している。
 発砲音から推測した銃の型も、先ほど鮮花が握っていたコルトパイソンと一致するため、宗介はそのように当たりをつけたのだ。
 紛れもない、戦場を生き抜いてきた兵士の鋭い視線に射竦められることもなく、鮮花は宗介の目を見て答える。

「復讐のためです」

 それは先んじて説明しようとしたクルツを制する結果となった。心なしか、渋い顔を浮かべている。

「話にもあったでしょ。わたしたちを襲った、式に似た男……わたしはあいつに、兄を殺されました。
 だからわたしは、あいつを殺す。兄さんの仇を討つ。銃は、そのために選んだ殺害手段。
 この目的を果たすためなら、他のものはなんにもいらない――格好悪く生き足掻いてみせるわよ、いくらでも」

 鮮花は、宗介やリリアからの心象など考慮に置いていない。
 この気持ちは正直に、たとえ他者に否定されようとも偽りなく、貫き通さなければならないのだ。
 そうでなくては、覚悟は保てないから。

「ちょっと待って」

 まず反応を返したのは、宗介ではなくリリアのほうだった。
 リリア・シュルツ。印象的だったのでよく覚えている。名簿に載っていたフルネームは確か、もっと長かったはずだ。
 そしてシュルツの名を持つ人間はこの地にもう一人、鮮花に対する幹也のように存在していたはず――
18 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:27:40 ID:H235yHNC
「復讐って……なに? どういうこと?」
「仇討ちっていう意味ですよ。この恨みはらさでおくべきか、ってやつ。外人さんみたいだけど、わかる?」
「わかるわよ、そんなの。わかるけど、なんで、そんな……あなたが殺すとか、他はいらないとか……」

 言いづらそうにするリリアに、鮮花はふんと鼻を鳴らした。

「わかればそれでよし。邪魔さえしなければ。別に、理解や同情を求めているわけじゃないしね」

 外行き用の上品な態度を一変して、鮮花は陰険な素振りを見せつける。
 綺麗事を聞くつもりはなかった。好かれようとも思わない。この手の手合いは、鬱陶しいだけ。
 自分は結局のところ、堕ちた人間なんだと――ここにきて、また一つ再認する。

「あなただって、肉親の一人くらいは殺されたんじゃないの? アリソンっていう人は、ご姉妹かしら?」
「……ッ!」
「アリソン・ウィッティングトン・シュルツ空軍大尉はリリアの母だ。惜しい人材を亡くしたと言える」

 わざとらしい悪態をつく鮮花。
 そのフォローに宗介が回ろうとするが、どうやらそれは逆効果のようだった。

「人材って、なによ……ソースケ、ママのことをそんな風に見てたの」
「む……すまん。少し言葉が悪かった。気に障ったのであれば謝罪する」

 頭を下げる宗介に、リリアはきつく唇を噛む仕草をした。
 その姿に鮮花は親近感を持つと同時、言いようのない苛立を覚える。
 彼女は――自分とは違うな。
 そばにいた人間の差なのかもしれないが――とにかく、自分とは違う。

「しかしクルツ。非効率的にもほどがあるぞ。このような状況下で新兵訓練など、つけ焼刃にもならん」
「別に鮮花ちゃんを戦場に立たせよーなんて気はさらさらないさ。こりゃちょっとした『気まぐれ』」
「気まぐれで時間を浪費するなどナンセンスだ。そもそも、おまえが黒桐を指導する動機はなんだ?」
「だから、それこそ気まぐれだっつーの。なあおい、ソースケよ」

 クルツは頬杖をつきながら言った。

「おまえがカナメちゃんじゃなく、リリアちゃんを守ってんのだって、そういう『気まぐれ』なんじゃないのか?」

 抑揚もない、語気が強いわけでもない、そのなんてことはない問いに――宗介は、口ごもった。
 鮮花は直感で、この相良宗介という男の人間関係もなかなか複雑っぽいな、と思った。
 肯定も否定もしない代わりに、宗介はある提案を口にする。

「事情は把握した。リリア。俺たちもクルツたちのグループに加入し、しばらくはこの飛行場をベースにしたいと思うのだが、どうだ?」
「……異議はなし。ソースケに任せる」
「そうか。では、ひとまずは休憩ということにしよう」
「飛行機飛ばすっていうのは結局どーすんだ?」
「保留だ。他の者たちの意見も聞いてみたいしな。アマチュアに意見を求めるのは褒められた行為ではないが、こちらの専門外の知識が役に立つとも限らん」
「ま、魔術や超能力なんてーのは俺たちのほうがアマチュアだしな」
「さしあたって、俺も黒桐の射撃訓練につきあいたいのだが、腕前のほどを見せてもらってもいいだろうか?」

 思わぬ申し出に、鮮花は顔を顰めた。
 欺瞞に満ちた眼差しで宗介を睨む。
19 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:28:25 ID:H235yHNC
「……あなた、他人に指導とかできるタイプの人なんですか?」
「問題ない。新兵訓練ならばそれなりに経験がある」
「クルツ先生。こう言ってますけどどうなんですか?」
「信頼していいと思うぜ? 狙撃屋の俺よりもかえって上手いかもな」

 ほわぁ〜っとあくびをするクルツ。
 どうにも心配だったが……プロはプロ。クルツの同僚ともなれば、鮮花よりも銃に秀でているだろうことは否定できない。

 結局、鮮花は宗介の申し出を受け入れ、日が完全に落ちきる前にもう少しだけ練習をしておくことに決めた。
 そして、冒頭のような『やりすぎのウォー・クライ』が始まった、というわけだった。


 ◇ ◇ ◇


「はぁ〜……」

 憂鬱なため息をついて、リリアは格納庫の中に戻っていった。
 マットレスの上ではクルツが寝そべり、ニヤニヤした視線をリリアに送っている。

「いやあ、いい音だったぜ。なんだ、ソースケもいい相方(ツッコミ役)を見つけたみたいじゃないか」

 ブロンドの長髪、タレ目でおどけていて、いかにも軽薄そうなお調子者。
 第一印象から覗えば、あの仏頂面の宗介の友人とはとても思えない。
 しかし、先の情報交換の場面を鑑みれば、紛れもないスペシャリストであることがわかる。
 飛行機の操縦ができるとはいえ、リリアはアマチュアもアマチュア。彼に意見するようなことはなにもなかった。
 ただ――アマチュアはアマチュアなりに、おせっかいをやきたくなることだってあるのだ。

「あなた、クルツさんだっけ?」
「クルツでいいぜ。俺も君のことはリリアちゃんって呼ばせてもらう」
「訊きたいんだけど」
「質問? なんでもどーぞ」

 リリアは膝をたたんでマットレスの上に座る。

「さっきは気まぐれって言ってたけど……クルツはどうして、アザカに銃を教えようとしたの?」
「せがまれたからさ。俺って、女の子の頼みごとは断れない奴なんだよねえ」
「……そんな理由で、仇討ちに加担なんてっ」

 目を伏せながら言うリリアに、クルツはおどけた態度を崩さない。
 ごろごろとマットレスの上を転がりながら、仰向けになて天井を仰ぐ。

「復讐はお嫌いかい? 人殺しはいけないことだって、リリアちゃんはそういうこと考えるような女の子なんだ?」
「そりゃ、状況が状況だし、すべてを否定するわけじゃないわよ。けど、アザカみたいなのが躍起になって銃を撃つのは……なんか、違う」

 リリアはまだ自分の中で意見がまとまっていないようで、言葉を濁す。視線も宙を泳いでいた。
 そんな彼女に、クルツは薄く笑う。

「ま、俺たちは人間だからな。ゲームの駒みたいに、規則正しくは動けないさ」
「どういうこと?」
「俺たちはみんな、それぞれ共通の目的を持ってるんだ。こっから家に帰る、っていうな」
「……アザカは違うみたいだけどね」

 哀しそうに言うリリアを見ても、クルツの声が重くなることはなかった。
20 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:29:08 ID:H235yHNC
「どうすりゃいいのかなんて簡単だ。家族や同僚ととっとと合流して、脱出ルートを確保して、障害は排除して、三日以内に全部済ませればそれでいい。
 ただ俺たちは人間だから、こうやって休むことも必要になってくるし、別の目的を持った奴と人間ドラマしちまうことだってあるのさ。
 誰もがみんな博愛主義者ってわけじゃないし、守るより殺すほうが得意な奴がここにいたことだって俺は知ってる。そういう奴らはまだごまんといるな。
 いろんな奴がいるからこそ、諍いは避けられない……リリアちゃんにだって、知り合いはいるんだろう? 俺やソースケにだっているし、鮮花ちゃんにだっている。
 そいつらまとめてここに呼び寄せて、家に帰るための作戦片っ端から実行して、ってな具合に進められりゃ、話はそんなに長くはならないんだよ」

 上手くいかないな、とクルツは失笑気味に漏らした。
 本当に、上手くいかない。リリアもこればかりは同感だった。
 ママは死んじゃうし、トレイズはどっかほっつき歩いてるし、トラヴァス少佐は意味がわからない。
 ……本当に、上手くいかないことばかりだ。
 どうしてこんなに上手くいかないんだろう、とリリアもクルツに釣られるように天井を仰いだ。

「……って、なんかうまい具合にはぐらかされた気がするんだけど」
「うん? そうか?」
「結局のところ、クルツはアザカにどうしてもらいたいのよ? 復讐、遂げてほしいの?」
「そりゃ本人がお望みっていうんなら」
「それでアザカ、死んじゃうかもしれないのよ?」
「かわいい女の子が死ぬのはいただけないなあ」
「……ソースケも大概だけど、クルツもよくわかんないわ。わたしには」
「ふふん。男の子ってのは不思議がいっぱいなのさ」

 とことんまで嘲るクルツだった。
 まったく……と呟きながら、リリアは今日の寝所となるマットレスの周りを整え始めた。

 用意されているマットレスは《五つ》。
 現在別行動中の人間は《三人》だから、そこに宗介とリリアが加わるとマットレスは《二つ》足りなくなってしまう。
 クルツに尋ねると、一応予備も用意してあるとのことで、リリアは自分と宗介の分、合わせて二つのマットレスを準備した。

 これでマットレスの数は《七つ》。
 リリア、宗介、クルツ、鮮花、それに今はここを離れている《白井黒子、ティー、浅羽直之の三人》を加えれば、ちょうど数が合う。
 白井黒子と再会したらきちんと挨拶しなくちゃな、とか、浅羽直之に会ったらなにを話せばいいのだろう、とか、リリアはそんなことを考えながら毛布も引っ張り出していた。

「そういや、ぼちぼち放送か……そっちの準備も進めとかないとな」
「放送……」

 クルツがおもむろに起き上がり、鞄から筆記用具を取り出している。
 六時の定時放送ももう間もなくだ。そこでは何人か、新たに脱落者として名前が挙がる者もいるのだろう。
 リリアは息をのみ、手元の時計に目をやった。
 時間は残酷だから懇願しても止まってなんてくれないが、時計は覚悟を決めるくらいの猶予は与えてくれる。

「最初は《59人》もいたのにね。この世界どんどん狭くなってくるし、中にいる人はだんだん少なくなっていくんだ……」

 辛辣そうなリリアの言葉に、クルツは適当な相槌を打った。
 それくらいなもので、別段、違和感を覚えたりはしなかった。


 世界は既に、書き換えられた後だったから――彼も彼女も、この世の本当のことには気づけないでいた。
21 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:29:51 ID:H235yHNC
【B-5/飛行場・格納庫内/1日目・夕方(放送直前)】

【リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ハリセン@現地調達、早蕨薙真の大薙刀@戯言シリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
 基本:がんばって生きる。憎しみや復讐に囚われるような生き方をしてる人を止める。
 1:飛行場にてしばらく休憩。白井黒子らとの合流、意見交換を済ませる。
 2:飛行機を飛ばしてみる。
 3:トラヴァスを信じる。信じつつ、トラヴァスの狙いを考える。
 4:トレイズが心配。トレイズと合流する。

【クルツ・ウェーバー@フルメタル・パニック!】
[状態]:復讐心、左腕に若干のダメージ
[装備]:ウィンチェスター M94(7/7+予備弾x28)
[道具]:デイパック、支給品一式、ホヴィー@キノの旅、ママチャリ
     缶ジュース×17(学園都市製)@とある魔術の禁書目録、エアガン(12/12+BB弾3袋)、メッセージ受信機
     デイパック、支給品一式、黒子の調達した物資
     姫路瑞希の手作り弁当@バカとテストと召喚獣、地虫十兵衛の槍@甲賀忍法帖
[思考・状況]
 基本:生き残りを優先。
 1:寝床と食事の用意をしながら黒子たちの帰りを待つ。
 2:その後は状況に応じて休息をとり、また今後の動きについて相談しあう。
 3:テッサ、かなめとの合流を目指す。
 4:鮮花の復讐を手助けする。
 5:メリッサ・マオの仇を取る。
 6:摩天楼で拾った3人。特に浅羽とティーの動向には注意を払う。
 7:次のメッセージを待ち、メッセージの意味を考える。
[備考]
 ※土御門から“とある魔術の禁書目録”の世界観、上条当麻、禁書目録、ステイル=マグヌスとその能力に関する情報を得ました。
 ※最初に送られてきたメッセージは『摩天楼へ行け』です。次のメッセージがいつくるかは不明です。
22 名前: <代理> 忘却のイグジスタンス ◇LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2010/08/19(木) 01:30:34 ID:H235yHNC
【B-5/飛行場/1日目・夕方(放送直前)】

【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]:全身各所に火傷及び擦り傷・打撲(応急処置済み)
[装備]:IMI ジェリコ941(16/16+1、予備マガジンx4)、サバイバルナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式(水を相当に消耗、食料1食分消耗)、確認済み支給品x0-1
[思考・状況]
 基本:この状況の解決。できるだけ被害が少ない方法を模索する。
 1:鮮花の射撃訓練を監督。まずは体力作りだ●●●●! そんな●●のような走りでメシにありつけると思うなよ!
 2:飛行場にてしばらく休憩。白井黒子らとの合流、意見交換を済ませる。
 3:飛行機を飛ばしてみる。空港へ行って航空機を先に確保する? 航空機用の燃料を探す? 自動車の燃料で代用を試してみる?
 4:まずはリリアを守る。もうその点で思い悩んだりはしない。
 5:リリアと共に、かなめやテッサ、トレイズらを捜索。合流する。

【黒桐鮮花@空の境界】
[状態]:復讐心、疲労(中)
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界、コルトパイソン(5/6+予備弾x7)
[道具]:デイパック、支給品一式、包丁×3、ナイフ×3
[思考・状況]
 基本:黒桐幹也の仇を取る。そのためならば、自分自身の生命すら厭わない。
 0:な、なんで、わたしはっ、走ってるんだ、ろう……。
 1:寝床と食事の用意をしながら黒子たちの帰りを待つ。
 2:暇な時間は”黒い空白”や”人類最悪の居場所”などの考察に費やしたい。
[備考]
 ※「忘却録音」終了後からの参戦。
 ※白純里緒(名前は知らない)を黒桐幹也の仇だと認識しました。


【ハリセン@現地調達】
白井黒子が調達した物資の中に『なぜか』紛れていた紙製のハリセン。
安全快音を保証すると共に、宴会の席で使えば大ウケ必至な信頼のパーティーグッズです。
23 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/20(金) 01:04:44 ID:s12xpnU/
投下&代理投下乙! てかスレ建ても乙!

で……
宗介wwww いきなりラグビー部指導モードwwwww
しかしクルツと宗介の合流はやはり一気に安定感増すなー
自然な情報交換でさりげなく株を上げてるのが
そして……最後にさらっと、その人数は……!
丁寧なお話、GJです。
24 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/20(金) 03:33:59 ID:Swqft+ic
はいはいつまんね
25 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/08/21(土) 16:11:15 ID:Jka/uLaw
投下乙!
宗介が本領発揮してやがるwwwまさかここで『指導』が見れるとはwww
やっぱりリリアと鮮花は相容れないかな……仲良くして欲しいもんだが
そしてイリヤが……そうだよなあ、世界から消えちゃったんだよなあ……
26 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/02(木) 10:53:43 ID:pg57ii8t
ハルヒらのパートが来ない…
27 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/06(月) 15:36:34 ID:d0d9u1Ce
最期の予約から2カ月しても予約が来なければ慌てるな
それまではまだ待てるよ
28 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:08:04 ID:IA1FIZ37
白井黒子、ティー を投下します。
29 名前: とおきひ――(memory once again)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:09:05 ID:IA1FIZ37
 【0】


Today is the first day of the rest of your life.


 【1】


時はさかのぼり、まだ西の空が紅く染まりきってない頃。

埃の中に錆の匂いが混じる薄暗い格納庫の中にいたティーは、物資調達に向かうと言う黒子を見送ると、
言いつけられていた浅羽と伊里野の見張りを放棄し、喋る猫であるシャミセンを両手に抱いて通用口から外へと出た。
滑走路から離れた芝生の上をサクサクと歩き、右を見て左を見て、そしてティーはこっそり飛行場を脱走してしまう。

彼の元へと、何かを確かめる為に。

ティーは小さな歩幅でゆっくりと、しかしよどみなく暮れかかる街の中を歩いてゆく。
ここは初めての《国》だが物覚えは悪くない。一度通った道ならば、大抵その一度で覚えることができた。
とはいえ、そのまま通りを辿ってゆけば自分の不在に気づいた者が追ってきた場合見つかってしまうかもしれない。
なのでティーは少し道を外れ、脇道や裏通りなどを使ってその場所へと向かうことにした。方向感覚にも自信はあるのだ。



たくさんの植木鉢が並べられた家の前を通り、空っぽの犬小屋の前を通り、垣根に囲まれた家の前を通りすぎてゆく。
壊れた自転車の転がる路地を抜け、子供でも狭いと感じる路地を抜け、ゴミ箱の並ぶ路地を抜けてゆく。
少しずつ紅く染まってゆく街の中を彼女なりのペースで、ゴムの靴で地面を踏み、小さな歩幅で少しずつ通りすぎてゆく。

途中、建築途中のビルの中を通った。むき出しのままの鉄骨とパイプ。敷かれたままの鉄板の上を歩く。
コンコンと音を立てる足裏の堅い感触はティーにとって懐かしいもので、少しだけ生まれ故郷を思い出した。

背の高い集合住宅の囲む中、ぽっかりと開いた場所にあった公園の中をティーは横切ろうと入ってゆく。
砂場のわきをすぎて、少し逡巡してからティーは目の前のすべりだいの上に上った。
その公園の中で一番高い場所から落ちかけの夕陽を探して西の空を見る。
けれども、背の高い建物のせいで夕陽を見ることはかなわない。
ティーは猫を抱いたまま上ってきた階段を下りて、そのまま進路へと戻り、また黙って歩きはじめた。

紅い陽の中と藍色の影の中とを交互に進み、そしてそのうちようやく百貨店の姿が建物の合間から見えるようになってくる。
後もう少しと……その時、自分の名前を呼ぶ黒子の声が背中に聞こえた。後もう少し、だからすこし早足にそこへ駆け込む。



そして彼はまだそこにいた。何も変わらず、ただ陽だけが落ちていて、影の中に。もう忘れられたもののようにそこにあった。
一度立ち止まって、三歩駆け寄ってまた止まった。そこから彼の――亡くなったシズの姿をティーはじっくりと見つめる。

倒れている彼の姿を見るとあの砂浜でのことが連想されて、ティーも一度はあの時と同じようにしようとしたけれど、
しかし止められて、そう言ったのは違う人だけれども、生きろと――彼の声を聞いた。
でも、どうすればいいのかわからないからティーはまたここに戻ってきた。
彼の声をもう一度聞きに、死んだ人間が口をきけないことなんて充分に知っているのだけど、それでも確かめに戻ってきた。

もう一歩前へ。彼の顔を見る。血と煤に塗れていてボロボロだった。ティーは彼のこんな姿は見たことがなかった。
耳を澄ましても声は聞こえない。
そしてふと気づく。彼が身に纏う深い緑色のレインコート。そしてふと思い出す。雨音の記憶。
強い雨の中、彼のレインコートの中で彼に寄り添い聞いたバラバラという楽器のような雨音のことを。

じくじくと思い出が心の中に染み出してきて、胸が締めつけられる。

もう一歩前へと足を踏み出し、彼の血を踏まないぎりぎりの所まで近づいて、――そこで黒子の声に呼び止められた。
30 名前: とおきひ――(memory once again)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:09:48 ID:IA1FIZ37
 【2】


「……結局、復讐ですのね?」

追いついてきた彼女の最初の台詞はこうだった。
ふくしゅう。
そうか、そんなことができるのかとティーは思い、その言葉を新しい寄り辺とすることに決めた。

「それで、いまきめた。つまりそういうこと」

生きる目的でも、生きる理由でもない。必要だったのはもっと実際的な、生き方というもの。
生まれ育ったあの《国》の中には与えられた生き方が存在した。シズと旅する間はそれがティーの生き方だった。
彼を失った今のティーの生き方。それは復讐。それは今のティーにとってとてもしっくりとくる生き方だった。
方法論でもない。理屈や理念でもない。自分自身の在りようを決めてくれる、そんな型をティーは欲していたのだ。

「たぶん、あのおおきなたてものがあやしい」

生き方が決まったのなら、それに従えばいい。すること、しなくてはいけないことは明白だった。
にじり寄る黒子にティーは逃げないといけないと考える。黒子に捕まってしまえば復讐できなくなるからだ。
半歩足をずらして――そこで、胸に抱いていた猫が喋り始めた。



「猫の主観での話になる可能性が高いと考え、敢えて発言は慎んだのだが――……」

そういえばずっと抱いたままだったことをティーは今更ながらに思い出した。
しかしこの猫の話は回りくどくて長ったらしい。
あの《国》の《船長》を思い出す。他の《国》でもこんな喋り方をする人やモノはいた。大抵の場合それは年寄りだ。
ならばこの猫も年寄りなのかもしれない。ティーは話の内容よりも猫が年寄りなのかが少し気になった。

結局、猫の話を要約すれば、個人の自由意志の尊重とそういうことだった。
そしてその意思に干渉する権利などどこの誰にも存在しないと、ティーにとっては風向きのよい話だ。
さてそうなれば今のうちに立ち去りたかったが、このまま抱いて走り去ると猫と黒子の会話が途切れてしまう。
じゃあ投げ捨ててゆけばいいと思うが、しかしそうするにはこの猫の抱き心地はよすぎた。あの陸という犬の次くらいには。
仕方ないので少し待つことにする。
会話はほとんど聞き流した。いつの間にかに自分ではなく黒子の話になっていたからだ。ティーはそんなことに関心はない。

「……ティー?」

呼びかけられる。どうやら猫と黒子の話は終わったらしい。

「ひょっとしてあなた……、その復讐が無謀だと、自分でも理解しているのではないですか?」

無謀。それが達成できるのかできないのか、それを全然考えてなかったことに気づく。
実際そうなのかもしれない。彼に痛手を負わせた相手に自分が勝てるのかというとそれはとても言えそうになかった。
しかし、生き方にできるできないは関係ないのだ。
それは男として生きたくないから女にしてくれと神に願うようなもので、後からどうこうするというものではない。

「自分でも意志が固いのか柔いのかが、わからないのでは? ……本当は私に、自分を止めて欲しいのではなくて?」
「あのひとをわすれて、いきていけってこと? それはいや。ぜったいにことわる」

駄目だ。生き方がないと生きてゆけない。生き方がなければティーはどうしていいのかわからなくなってしまう。

「復讐を企てない事と、その人の事を忘れる事。この二つは、同じではありませんわ。
 "仇討ちは武士の華"など今は昔。過激な行動など起こさずとも……彼を想い、彼の分まで生きる事が、弔いになる」

必要なのは彼を弔う方法ではなかった。必要なのは自分がどうすればいいかと定めてくれる決まりごと。
31 名前: とおきひ――(memory once again)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:10:31 ID:IA1FIZ37
「いずれ解る事ですわ。そして、いずれ解ると言うことはつまり、"これから生きていかねば解らないということ"。
 ……無駄に命を捨てるのはおやめなさい。彼を追い、彼だけの為に死ぬなんて……思い出の中で、じっとしているだけですの」

今わからないといけなかった。今、ティーは生き方を見失っていたから。どうすれば生きていられるのかわからなかったから。

「"貴女が彼の事を想い続けている限り、ただそれだけで彼は貴女の心で生きている"という事を、貴女もいつか理解する日が来る。
 "彼が本当に死ぬとき"とは、"誰にも思い出されることがなくなった"時。貴女の今の行動は、彼自身を真に殺害する事と同義ですの。
 忘れないということは、それだけで素敵な事ですから」

彼女の言っていることがティーにはよく理解できなかった。
ティーはいつでも答えを求めているのに大人たちの話は年寄りじゃなくてもみんな回りくどすぎると思う。

黒子が手を差し伸べる。この手の意味はなんだろう?
こちらも手を伸ばせばいいのだろうか。しかしけれども、両手は猫を抱きかかえるのに使ってしまっている。



10秒ほどたって、彼女は伸ばしていた手を引っ込め、両手を腰に当てて何か呆れたような大きな溜息をついた。
そのままあたりを見渡し、そしてもう一度こちらをきつく睨みつけると腰に手を当てたまま語気荒く喋り始める。
猫とティーの両方に向けて――

「確かに、にゃんこさんの言うとおり彼女の復讐という意思を肯定しその道に送り出すというのもひとつの判断ですし、
 彼女を一個人として扱いその主義を尊重するというこになるでしょう。ええ、それは間違っていませんとも。
 ですが、言うまでもないことですがそれが実際にそうできるかというとそうでない可能性が高く、危険も多い。
 いえ、危険などという話ではなく十中八九、口にもしたくない不幸にあってしまうことでしょう」

抱えている猫はそのとおりだと頷いた。ティーにはまだどうでもいい話だった。

「しかしですの。それらの諸々の現実的な事情を取っ払って、彼女の復讐が達成されると肯定したとして
 それがそのまま彼女が生きてゆくという条件を満たすかというと、それは絶対にありえませんの!
 なぜならばこの世界は3日で、今からなら後2日と四半日で消えてなくなってしまうのですから。
 つまり、成否に関係なく復讐の道は生きてゆくということ自体に繋がっていないということです」

なるほどと猫が喉をくるると鳴らした。ティーは嬉しくない時でも猫が喉を鳴らすのだと思った。

「そして、お分かりですか? 猫の主観とおっしゃいましたが、ええその通り猫と人間では生き方が違いますの。
 昨日も明日もないにゃんこと違って、人間は明日も明後日も一週間後も一年後もその先ずっとを見据えて生きるものなのです。
 私がここで主義主張を各々方とぶつけているのは何もディベートをしようと考えているからではありませんのよ?
 このたったひとつの事件を乗り越えて、その先に確かな人生を取り戻すため方法を模索する協力者を募るためなんですの」

黒子の声に熱がこもる。何か溜め込んでいたものがあったのだろうか、しかしそれよりティーは彼女の言う生き方が気になった。

「人は人の中で生きてゆくものです。係わり合い補い合いながら一緒に。易々と孤高の野良猫を気取るものではありません。
 わからないなら聞けばいい。できないなら助けてもらえばいい。
 そして、自分の他にできない人がいれば今度は自分がその人の話を聞き、手を差し伸べればいい。
 怖い時、不安な時は誰かそばにいてもらえばいい」

随分と実感のこもった意見だと猫が言った。ええ、最近私にも思い知るところがありましてと黒子は答えた。

「ティーもそうされたことがあるのではありませんか?」

その言葉からは熱も棘も取り払われていた。全然違う人間なのに、まるで彼のように優しい言葉だった。
32 名前: とおきひ――(memory once again)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:11:15 ID:IA1FIZ37
「人生は長い。それを忘れてはいけませんのよ?
 何年も何十年も、私もあなたもお婆ちゃんになるまで生きるのですから、慌てる必要などどこにもないのです。
 ここであなたと会ってまだ一日にも満たないつきあいですが、私はあなたをもう仲間だと思っています。
 勿論、ティーの意思も尊重しますけれど、それは私にとっては過ちや危険を犯す場面を見逃すという意味ではありませんの。
 お節介だろうと言われようとも、私白井黒子はあなたを助けたい。そこに主義主張なんて関係ありません」

そして、黒子は腰に当てていた手を再び差し伸べた。
今度はティーにもこの手の意味はわかった。これは、ティーに自分の生き方を見つけさせてくれる道しるべだ。


「私はあなたを見捨てたりはしません。……これからも一緒に助け合ってゆきましょう」


それは彼の声と同じだった。


ティーはその手を取り、そして――……



――地面に落ちた猫がふぎゃあと鳴いた。






 【3】


「――後、行方不明なのは”浅羽さん一人”ですけれども、もう時間ですので一旦飛行場に戻りますの」

黒子に抱かれ、そして猫を抱いて、ティーは黒子に連れられ茜色の帰り道を行く。
建物から建物へ、その屋上へ、その鉄塔の上へ、なんの遮りもない場所を彼女の能力で疾走してゆく。
その高さからはさっきは見えなかった夕陽がよく見えて、まるで今は空を飛んでいるみたいで――


――その紅い夕陽は、彼と一緒に見たあの夕陽と同じ色をしていた。






【B-5/飛行場の近く/一日目・夕方(放送直前)】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:鉄釘&ガーターリング、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ
[道具]:
[思考・状況]
 基本:ギリギリまで「殺し合い以外の道」を模索する。
 0:放送に間に合うよう急いで帰りますの。
 1:その後のことはクルツ達と相談して決める。
 2:状態が落ち着けば、この世界のこと、人類最悪のことなど、色々と考えたい。
 3:御坂美琴、上条当麻を探し合流する。また彼ら以外にも信頼できる仲間を見つける。
[備考]
 『空間移動(テレポート)』の能力が少し制限されている可能性があります。
 現時点では、彼女自身にもストレスによる能力低下かそうでないのか判断がついていません。
33 名前: とおきひ――(memory once again)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:11:59 ID:IA1FIZ37
【ティー@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:RPG-7(1発装填済み)、シャミセン@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:デイパック、支給品一式、RPG-7の弾頭×1
[思考・状況]
 基本:「くろいかべはぜったいにこわす」
 0:そらをとんでるみたい。
 1:黒子と一緒にいる。
 2:RPG−7を使ってみたい。
 3:手榴弾やグレネードランチャー、爆弾の類でも可。むしろ色々手に入れて試したい。
 4:『黒い壁』を壊す方法、壊せる道具を見つける。そして使ってみたい。
 5:浅羽には警戒。
[備考]
 ティーは、キノの名前を素で忘れていたか、あるいは、素で気づかなかったようです。
34 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 03:12:43 ID:IA1FIZ37
以上、投下終了しました。
35 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/13(月) 13:44:14 ID:hvoCovwC
投下乙です

復讐の道を行こうとしていたティーを黒子がとりあえずは止めたのか
なんかしんみりするわ…
さて、放送でお姉様の死を知ったら…
36 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/14(火) 14:24:27 ID:Dhu3SZH6
GJです。
取り敢ずティーの説得に成功したようで何よりです。
37 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/16(木) 14:43:29 ID:8Fp9DMAV
投下乙です
ティーの心理描写が上手過ぎる
38 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/16(木) 23:41:46 ID:yT7gcSrZ
規制解除されたので記念カキコ

そして投下乙
まだ禁書原作全部読んでないけど、黒子さんできる女の子ですなあ
39 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/21(火) 01:25:45 ID:wOE609f8
温泉組予約来たぞ!!
やばい、一つの予約だけで感動のあまり泣きそうなんだが
40 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/09/21(火) 01:30:22 ID:wOE609f8
一応あげておく
41 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/21(火) 09:29:28 ID:adOXoJpX
>>39
教えてくれてありがとう、今避難所見てきた
…ちょっと涙出てきたよ
42 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/21(火) 21:55:38 ID:5qpu9m3R
やっと来た……
嬉しいなあ……
43 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/22(水) 17:17:59 ID:Wvj7ZF8B
今更ながら初めて知ったw
キターw
44 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/09/30(木) 22:43:31 ID:qBJImG8L
コネー orz
45 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/01(金) 07:47:49 ID:t93ATxWf
>>44
病気は仕方ないと思え
最近急激に寒くなったので、こっちも体調崩しまくってる
46 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/01(金) 11:11:53 ID:Cv0ynZQJ
温泉パート投下されたらもう放送でいいのかな?
47 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/02(土) 20:31:10 ID:nCPS5lJO
温泉パートが1回だけでなく2回必要かも
内容次第では1回でもいいけど…
まぁ、温泉組以外が放送まで温泉組と絡んでないからこのまま放送まで行く何かをしてたんだと思うが…
48 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/02(土) 21:55:57 ID:MNxcAlUM
けっこう、温泉の展開次第で一話挿入しておくかどうか迷う、ような場所もいくつかあるよな
ちょっとメタ的な視点も入った話だけど
なので、あんまり焦られても困る。温泉終わったぞ、さあ放送だ、と大騒ぎされても困る
ま、遥か遠く、どう逆立ちしても絡みようのないパートの続きに興味津々の人が、先を急ぎたがる気持ちも分かるけど
49 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/02(土) 22:33:17 ID:/K1CK7OW
姫ちゃんたちは?
50 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/03(日) 07:16:10 ID:EQ0p9Rgo
>>49
休んでたとしたらいらないけれど、行動することにしたんだったら一話入れる必要があるって感じじゃない?
51 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/04(月) 23:02:02 ID:UNhXUUzx
Echan氏回復したみたい。
後はただ待つのみだな。
52 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/06(水) 00:44:45 ID:wHrOd0d9
回復したってホント?
53 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:14:03 ID:iZA3OCh7
とある海沿いの街。浜辺よりやや離れた場所にある宿を兼ねた温泉施設。
本来ならば安息の場所となるそこで、三つの現場から四つの死体が発見された。

滅多打ちにされた憂鬱な骸。
我利我利亡者の通りすぎた惨殺現場。
過ぎ去りし過去を思い出させる新しい首切り死体。

そこに居合わせる六人の男女。
彼らはそれぞれに知る情報を持ち寄り、事件の暗がりに潜む真相を想像してゆく。
果たして全ては明らかになるのか。
そして、そこから浮かび上がった真相という名のシルエットは彼らに安息を齎すのだろうか。

それとも……、それは誰かに牙を剥くのか――?






 【プロローグ 《melancholy girl x1》】


フレンチクルーラーにダブルチョコレート。

これらがなんなのかと言えば、それはぼくこと戯言遣い(いーちゃん)と、他称・《神》ことハルヒちゃんの昼食である。
一応、映画館でポップコーンやアイスなどを軽食と呼べるほどにはつまんだぼくたちではあるのだけど、
成人男子に片足を踏み込んでいるぼくとしても、またカロリー消費量が人一倍激しそうなハルヒちゃんにしても
それで満たされたかというと必ずしもそうではなく、温泉へと向かう道すがら通りにミスタードーナツを見つけるにあたり、
ぼくの進言とハルヒちゃんの許可を経て、ならばここで昼食をとろうということになった――ということの次第。

ならば、なぜミスタードーナツなのか? ――と問われれば、それに対しぼくは愚問だと言葉を返すしかない。
砂糖や油をふんだんに含んだものは痛みにくいので例え放置されてあったものでも食べられるだろうとか、
糖分は即効性のエネルギーとなり脳の働きも活発にしてくれるのだとか、たまたま目についたのがミスタードーナツだったとか、
理由に理屈をつけるのならばいくらでもそれは可能だろうとぼくも思う。
だがしかし、そんな理由も理屈もミスタードーナツには必要ない。
ミスタードーナツがミスタードナツである。ただそれだけが、戯言抜きにたったひとつのこの世界の真実なのだから。

という訳で、ぼくとハルヒちゃんはミスタードーナツの店内に入り、それぞれにドーナツを物色し、食していた。
ぼくはフレンチクルーラーばかりを。ハルヒちゃんはダブルチョコレートを含むいくつかのドーナツを。
この選択にどのような意味があるのか、やはりそこにも戯言の挟まる余地はない。特にフレンチクルーラーにおいては。
54 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:15:17 ID:iZA3OCh7
しかし、あえて語るとするならば、
物のありがたみというものに対してしばしば呆れられるほどに希薄なぼくにも理解できる価値のひとつがコレなのである。
この《フレンチクルーラー》というもの。
一見、ギザギザとした外見はまるで気を許さない針鼠のようだが、実際にその食感はというと――”もふもふ”。
戯言遣いがミスタードーナツでドーナツを10個買うと、持ち帰り用の箱の中にはフレンチクルーラーが10個入っている。
何故? どうして色々なものを買わないの? と、ぼくに問う人はいる。
ならばぼくは逆に問い返したい。フレンチクルーラー以外を選ぶ必要があるのかと。
最上の価値はぼくの中で疑いようもなく確定しているのだ。ならばぼくにそれ以外を試すなんて行為は必要ない。

それこそ、いちなる神を信じる者のように――。

と、ここまで言うといささか大げさすぎるきらいもあるが、それでもぼくはいつだってフレンチクルーラーを選ぶだろう。
フレンチクルーラーがフレンチクルーラーであり、ミスタードーナツがこの世に存在するかぎり。



「……ミスタードーナツには人を馬鹿にする成分が含まれているのかもしれない」

ひとりごち、自分で淹れたコーヒーを喉に流し込む。
砂糖の入ってないブラックの苦味ある液体はフレンチクルーラー3つを食した後の口の中には心地よかった。

「またわけわかんないひとり言? あんまり気分よくないからやめなさいよね」

テーブルの対面。ぼくに淹れさせたコーヒーを飲むハルヒちゃんは相変わらずの仏頂面だ。
いや、相変わらずというのは正確ではない。不機嫌な仏頂面であることは変わりないが、そこには明確な変化があった。

「人と一緒にいることに慣れてない性質でね。考え事とひとり言の区別が曖昧なんだよ」
「別にいいけど、それにしてもなんであんたは同じのばっか食べるのよ。もっと未知の可能性というものに興味はないの?」
「なにもわざわざこんなところで、はずれを引くリスクを負うことはないじゃないか」
「それは臆病とか面倒くさがりって言うのよ。まずいドーナツを引くリスクなんてひとつおいしいのを引けば一発で帳消しじゃない」
「なるほど。ハルヒちゃんの言うことはいつも正しい」
「納得した上でそれでも言うことを聞かないんだからあんたもたいした頑固者よね」

言って、ぼくから目をそらすと彼女は通りの方を向き、そして小さなあくびを噛み潰した。
疲労。睡眠不足。それらもあるかもしれない。しかし決定的に断言できるのは緊張感。それが不足していた。



なにも責めることはなくそれは当たり前のことだ。
俯瞰的に見ればぼくたちは常に危険と隣り合わせなのかもしれないが、主観から見れば今はそうでもない。
状況の開始よりぼくもハルヒちゃんも、それこそ一度たりとも危機一髪なんて目にはあっていない。
朧ちゃんの自殺という事件もあったが、あれもその後の結果が示すとおり、逆に現実味の薄い幻想的なものでしかなかった。
そしてあれから数時間。始まりからは半日強。緊張感を保てというほうが無理な話なのである。
55 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:17:17 ID:iZA3OCh7
ハルヒちゃんはあくびを噛み潰すように、自身が現状をどうとも思えないことを否定し続けているように見える。
長門有希の名前が呼ばれたとき彼女はひどく塞ぎこんだ。朝比奈みくるの名前が呼ばれた時はぼくの前から離れた。
友人の死を悲しむ気持ちは本心半分。しかし残り半分は彼女自身のポーズなんじゃないかとぼくは推察する。
ただ放送で名前が呼ばれただけで、それは否定するという判断もあるのだけど、彼女はその”逃げ”をよしとしなかった。
自身の弱さや曖昧さを否定する為にこの状況を精一杯受け止めようとする。
友人たちは無慈悲に殺害され、悪逆非道の輩が跋扈し、皆は必死にあらがい、脱出の鍵はどこかにある。
そう思い込むことで、自らが作り上げた正しさの中にいることを維持しようとしている。

ハルヒちゃんは自分から逃げない。だがそれ故に自分が作り上げた世界の中に逃げ込んでいる。

そうすることで自分を保っている。
悪に憤り、友人の死に悲しむ真っ当な人間だと。自身は薄情ではなく、常識的な人間であると。
しかしハルヒちゃん。実はそれが本当は非常識なんだ。
人間、わけもわからない状況に置かれて、そんな言葉だけの死に対して真には迫れないものなんだよ。
この場合、無感動なくらいで丁度いい。人間の心はそんな簡単には揺れない。揺れたりしないんだ。



そんなことを心の中で思いながらぼくもハルヒちゃんと同じく通りの方へと視線を移した。
天辺にまで昇った陽の光は街並みを照らし、風景は強い光に白けきっている。
その白けぐあいはまるでぼくたちの心を写し取っているかのようで。
もしかしたら、ぼくたちはこの美しい夢のような光景の中に囚われ続けるんじゃないかと錯覚するぐらいだった。

勿論。錯覚は錯覚で。錯覚は錯覚でしかなかったのだけれども。

30分ほどミスタードーナツで時間を過ごし、ぼくたちはいくらかのドーナツを箱に詰めてその場所を後にした。
そして、次にぼくたちを出迎えたのは、待ちわびていた(?)凄惨で凄惨さだけが鮮やかな真紅の殺人現場だった。

いやおうなしに目の冴える。無視することは不可能で、停止を余儀なくされる危険信号《レッドシグナル》がそこにあった。
56 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:18:49 ID:iZA3OCh7
 【第一殺害現場 《メッタウチメランコリー》 -実地検分】


それはあまりにもわかりやすく、あまりにもあからさまな殺人現場だった。

アスファルトに投げ出された四肢。飛散した血飛沫。じくじくと滲む赤色は何よりも雄弁な死の証だった。
なんらかの凶器で胸部から顔面を滅多打ちにされた死体は自殺や事故という可能性を頑なに否定しているようで、
死体は誰かに、他の人間に殺されたのだということを訴えているようにも思える。
そして、往来の真ん中に打ち捨てられた死体とはつまり生を終えたモノであり、生きていた人間の跡ともとれるそれは
まるでぽっかりと空いた穴のようにぼくたちを足止めし、回避できない現実というものをぼくたちに突きつけるのであった。



「…………ねぇ、いー」
「うん」

ハルヒちゃんがサイドカーの中から弱々しい声をかけてくる。
それを実に女の子らしい反応だと思いながらぼくはバイクのエンジンを切り、少し様子を窺った後、座席から降りた。

「大丈夫なの?」
「死体は襲い掛かってはこないよ。死んでない人間は襲い掛かってくるかもしれないけど」

やはり死体というものに目は取られるけど、アプローチをする際に気をつけないといけないのは死体(それ)以外だ。
これがここだけで完結《クローズド》しているのならば死体だけに注視していればいいのかもだけど、しかしそうじゃない。
あくまで、生き残りを賭けたステージ上の一場面に存在するひとつの死体。そうであるという認識をしなくてはならない。
つまり、死体を囮としてのトラップ。そういうものを警戒しながらぼくは一歩ずつゆっくりと死体に近寄ってゆく。
無論、死体そのものに罠が仕掛けられていることも考慮して、死体を含むこの一場面全体を警戒の対象としながら。

「こういうのはあまりぼく向けのシチュじゃないと思うんだけどな」

死体がある? オーケイ。確かに、自慢できることではないけどぼくは死体を見慣れている。それこそ飽きるぐらいに。
バリエーションだって記憶の中には様々にある。だから今更死体程度で緊張なんかはしないのだけれど、しかし
潜んで殺しあう――そんなシチュはやっぱり専門外だ。これはどちらかというとあの零崎人識の領分である。

いつでも走り出せるよう意識的に呼吸を整えながら、さも無警戒という風を装い死体へと一歩ずつ歩み寄る。
慣れない緊張を押さえ込みながら、あたりの気配を窺い物陰とそうでない場所へと等しく視線を走らせる。
もっともぼく程度がどれほど警戒したところで相手のスキルがそれを上回っていれば意味はないのだけれど。

「…………ふむ」

そしてどうやら、あくまで今のところはどうやらなのだけど、特に罠や仕掛けというものはなかったようだ。
とはいえ状況は常に進行中であるので、ここでゆっくりと時間をおくわけにもいかないのも事実。
ぼくは脳のチャンネルを切り替えると、改めて死体を注視することにした。
57 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:20:42 ID:iZA3OCh7
惨殺。乱暴な手段でもって惨たらしく殺された――というのが死体を見た第一印象で、それは遠目から見た時と変わりない。
死体には何度も刃物を叩きつけられた痕跡があり、その過剰な攻撃性は人体を損壊し尊厳を壊滅させグロテスクへと貶めている。
力なく伸びた手足と散り散りに飛び散った血飛沫が、おそらくは彼というべきすでに死亡した人物の無力さを物語っていた。
ろくな抵抗をすることもできず殺されたのだろう。ならばやはりそれは印象の通りの無惨な死体であった。

「ねぇ、いー」

声に振り返るとハルヒちゃんもバイクから降りて近くまでやってきていた。
しかし近くとは言っても、この死体とバイクとを結んだ線上のおおよそ半分というところらへんだ。
さすがに死体をまじまじと見たいとは思わないのだろう。いや、それが当たり前の感覚ではあるのだが。

「その人は…………その、どうなの?」
「死んでる――というのは間違いないね。死因なんかはもう少し詳しく見てみないとわからないけど」
「本当に死んでるの?」
「うん。とりあえず君の友人たちの誰かではないようだけど……確認してみる?」

ハルヒちゃんはぼくのその問いに対し、驚くように一歩後ずさりするとふるふると首を振った。
うん。けっこう新鮮なリアクションだ。ぼくの人生の中においても、ハルヒちゃん個人に対しても両方の意味で。
やっぱり死体を見た人間というのはこれぐらいおっかながるのが当然で、ぼくも含めて平気そうなのは皆異常なんだろう。
そういう意味で、ここ最近ぼくの周りには異常者しかいなくて、ハルヒちゃんは久々に接する普通の女の子ということだと言える。
はたして、これまでの人生の中でどれほど普通の女の子と接した機会があったかなんて、よくは覚えてはいないけれど。

「ねぇ、ハルヒちゃん。よかったらでいいんだけど、ちょっとそこらを軽く捜索してくれないかな?」
「捜索ってなにか探すの? 証拠品とか」
「いや、この人”持ってない”んだよ……”鞄”」

まぁ、殺されている以上、持ち去られたというのが正しいのだろうしハルヒちゃんも同じことを言ったけど、
ぼくとしてはあまり遠くから窺うように見続けられているというのも気持ちのいいものじゃないので、
もしどこか近くに転がっていれば儲けものだなってぐらいの気持ちでハルヒちゃんに近辺の捜索を頼んだ。
ハルヒちゃんの言った”証拠品”なんてのもひょっとしたら程度の可能性はあるし、多少の労力程度なら試してみる価値もある。
実際に探すのはハルヒちゃんなわけだしね。ちょうど昼食の後だし、少し運動するのも悪くない。

「さてと……」

改めて死体とこれが放置された現場とを検分することにする。
放っておけないのは性分もあるけど、殺害された方法と理由を知るのはぼく自身の安全の為でもある。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。だったらまず自分探しに行けというのがぼくのよく言われるところではあるんだけど。



まず殺害現場だけど、ぼくたちが向かっていた温泉。正確には宿を兼ねた温泉施設か――の目の前だった。
人が出入りする正面玄関の目の前。
であれば、なんらかの遭遇がここであり、この結果を生み出したと考えるのが自然な流れだろう。

死体になっている人物は上下ともに特徴のない地味な服装をした男性だ。
顔が潰されているので人相はわからないが、おそらくは年も背もぼくとそう大差ないんじゃないかと思う。
大きな違いがあるとすれば眼鏡の有無だろうか。リムが折れてレンズが粉々になった眼鏡がすぐ傍に落ちていた。
58 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:23:10 ID:iZA3OCh7
「致命傷となったのは……この傷かな」

死体には胸部から顔面にかけていくつもの裂傷があり、しかも顔面に関しては完全に崩れるほどに傷が重なり合っているが、
致命傷となったのはどうやら胸部の中心に叩き込まれた一際大きな傷ではないかと、そう見て取れた。
案外、顔面などはいくら傷つけようとも致命傷にはならないものだ。ならばこの推測はいい線いってると思う。

そして、おそらく。この致命傷が最初の一撃だとも思われた。
彼の両腕には専門用語言うところの”防御創”――生命の危機に瀕して防御しようとしてできた傷というものが見当たらない。
つまりまずは胸部への一撃を最初に受けて、直後に絶命したか、または抵抗もできないような状態に陥り、
その後、凶器を顔面へと繰り返し叩きつけられたのだろうと推察できる。

「わかりやすいな」

ここ半年ほどは随分と手の込んだ死体ばかり見てきた為か、不謹慎ではあるけどこういったわかりやすい死体は新鮮だった。
こういった状況に陥った経緯はまだ不明だけれども、被害者の傷を見ただけでも大体の犯人像というのが思い浮かぶ。
プロファイリングの初歩だが、このように被害者に致命傷を与えてもなお加害を加えるというのは女性に多い傾向だ。

どの程度負傷させれば死ぬのか、どこを狙えば致命傷になるのかがわからない。
なので生命維持に重要な役割を果たす器官や血管ではなく、イメージとしてわかりやすい顔面を狙い続けた。
そして、相手が致命傷を負ったことを冷静に観察できない故に、また反撃の恐怖から過剰に攻撃を続けてしまった。
また死体の足元にあるおそらくは犯人が吐き出したのであろうと推測される吐瀉物。
自らが作り上げた死体としでかしたことに対するおぞましさからだとすれば、これも推論を補強する材料になる。
と、常識の範囲内で考えれば難しい問題じゃない。もっともその常識がここでどこまで通じるのかは怪しいものであるけど。

凶器に関しては簡単に判明した。飛び散っている血飛沫の先を目で追ってみれば、すぐ傍に無造作に放り捨てられていたのだ。
手に取ってみるまでは鉈か手斧かと思ったが、それにしてはやや刃の厚みが薄いようにも思える。
使ったことはないけど、所謂肉斬り包丁の一種なのかもしれない。
刃にはべったりと血がこびりついているし、これが死体となった彼を絶命させるに至った凶器なのは間違いないだろう。

「血痕は死体を中心に広がってるし、死体を動かした形跡もない……とすれば殺害現場もここで間違いないか」

そして、ひとつ重要な手がかりが現場には残されていた。

「……いや、別にそうでもないか」

自身の思考を次の瞬間に否定しつつぼくは”それ”の前にしゃがみこんだ。そこにあったのは”足跡”である。
死亡した彼を殺害した人物のものだと思われるが、血で記された足跡がそこに残されていた。
おそらくは立ち去ろうとした時に流れ出た血を踏みつけ残ってしまったのだろう。
たった3歩程度で、しかもかすれてはいるが一応それなりに重要そうに見える証拠だ。

「あくまで重要そう程度だよな。靴の裏ならともかく裸足の跡っていうんじゃこんなかすれたものでは個人を判別できない」

残っていたのは”裸足の足跡”だった。
よく指紋というのは堅い証拠として扱われることがあるし、実際そうではあるのだと思うけれども
アスファルトの上に残されていた血の足跡は、残念ながら指紋が読み取れるほど鮮明なものではない。
それに読み取れたとしてもどうやって照合するのか。それならば靴の跡のほうがわかりやすい分、この場合は有益だ。

「でも、この殺人の犯人が裸足だったというのはひとつの収穫かな」

着るものも着ずにならず、履くものも履かずにというのは先のプロファイリングに沿っておりこれも補強する材料ではある。
これで足跡がずっと続いていれば向かった先もわかろうというものだが、そこはたった3歩では不明のままだった。
59 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:25:33 ID:iZA3OCh7
一応、これで一通りの現場検証は終りかとぼくは立ち上がり、掌を太陽に向けてぐっと伸びをする。
結局なにがわかったかというとなにもわかってないに等しく、この先情報が活かされるかというとそれも怪しかった。
広く見渡せばこの世界はクローズド・サークルではあるけれど、あまりに広すぎて実質的にはその意味合いはかなり薄い。
これはたまたま見つけた殺人現場でしかなく、そしてまたたまたまその犯人にこれから行き会う確率。
さらには今得た情報が活かされるとまでいくとそれはいかほどのものだろうというのか。

「まぁ、そんなこと言ってると足元すくわれるからいちいち立ち止まって情報を拾ったわけだけれども……」

転ばぬ先に杖というよりも、経験からくる生活の知恵みたいな。
それぐらいにはぼくはぼく自身の《事故頻発性体質並びに優秀変質者誘引体質》を信じているのだった。
あの人類最悪の言葉じゃないけれど、縁があった以上、この足跡の主とぼくとは絶対に”遭う”。

それは不可避の呪いか、神の采配を感じずにはいられないご都合主義のように。ぼくの意思とは関係なくそうなる。






 【第一殺害現場 《メッタウチメランコリー》 -検証】


「ねぇ、いーいー! こんなものが見つかったわよ」

ぼくが死体の傍からバイクの元に帰ってくるのと同じくして、ハルヒちゃんが”証拠品”を胸に抱えて戻ってきた。
まさか本当になにかが見つかるとは思ってなかったのだけど、たまには小さなリスクも負ってみるものなのかもしれない。
さておき、ハルヒちゃんが抱えてきたものだけども、それはかなり意外なものであると同時に納得できるものでもあった。

「そんなものどこにあったの?」
「温泉の入り口にある車止めにかかってたんだけど、これ制服だけじゃなくて下着もあるのよ。ほら」

ハルヒちゃんが抱えた中から持ち上げて見せたのは所謂女性用の下着であり胸部に装着するもの――ブラジャーだった。
それも一見してわかるぐらいに”大きい”。
ピンク色の布地に細かい刺繍の模様が浮かんでおり、もしこのブラジャーの持ち主の肉体を想像するならばと、いやそうではなく。
つまり、ハルヒちゃんが見つけたのはどこかの学校の制服であり、下着を含む衣装一式であった。
しかも女装用でないとしたならそれは間違いなく女の子のものだ。

「つまり裸の女の子がどこかにいるってことだね」
「ちょっといやらしい言い方しないでよ」

ただの事実にいやらしいもなにもないと思うが、ようするにそういうことに他ならない。
温泉。脱ぎ捨てられた衣装。裸足で逃げた犯人。おぼろげながら点と点との間に線が見えてきた気がする。



「あの死んでいた人を殺した”犯人”なんだけれども、女性で……どうやら裸足だったみたいなんだよね」

ぼくは死体とその周辺から得られた情報とそこから導き出された推論とをハルヒちゃんに説明した。
ハルヒちゃんは時折質問を挟みつつも素直にそれを聞いてくれる。
そして概ね納得してくれたらしく、説明を終える頃にはぼくが用意した答えへと彼女はたどり着いていた。

「つまり、この制服を脱いでいった子が犯人かもしれないって言いたいわけね?」
「うん。かなり乱暴な論だけどね」

ここから先は少ない情報を元に想像を重ねるしかないのだけど、今のところ浮かび上がるのはその可能性だけだった。
60 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:28:12 ID:iZA3OCh7
「でも、その子はどうしてここで裸になんかなったのかしら?」
「ここでとは限らないよ」

ここはただの往来だから、もしここで脱いだのだとしたらストリーキングそのもので、犯人が露出狂でないと辻褄があわないけど、
しかしここは女性が服を脱ぐにあたってなんら問題のない施設の目の前でもあるのだ。

「温泉でならそりゃ服は脱ぐんでしょうけど、でもだからってここに服があるからそうだとはいえないじゃない」

まぁもっともだ。いくら温泉施設だからってなにも玄関をくぐる前から裸になる必要はない。
普通ならば脱衣場で、そして犯人と思われる制服を置いていった子だって実際にはそうしたのは間違いないだろう。

「その発想は逆さ。この場合、犯人である彼女は裸のまま外に出てきたって考えたほうが辻褄があう」
「ふぅん……?」
「ここに衣装があったというのはひとまず置いておくとして、男性の死体と裸で逃げた女性というところから考えてみてよ」
「ええと……ちょっと待ちなさいよ。つまり……あぁ、そうか。それだったらありえるのかしら」

さすがに頭の回転が早い。どうやらハルヒちゃんもどういった条件ならばこういう状況ができるのか想像がついたようだ。

「うん。例えばこういうケースが想像できる。
 まずその女性は最初からいたのか、はたまたどこからかたどり着いたかでこの温泉施設の中にいた。
 そしてどうせならばと中の温泉に入ったんだろう。勿論、服を脱いだ状態でだ」
「けど、そこで温泉から急いで逃げ出さないといけない理由ができたのね? 例えば、あの男が痴漢だったとか」
「死んだ人の名誉を貶めるようなことはしたくないけど、結果的にそうなった可能性はあるね。
 女性の後にこの温泉にやってきた彼は温泉の中の彼女に声をかけようとした。
 けど、色んな意味で状況が状況だ。彼女が着るものも着ずに温泉を飛び出していってもしかたない」
「それで男も追いかけた。……そうか、あの衣装を持って出たのはその男かもしれないわね。
 ……だとしたら別に痴漢なんかじゃなくて、ただ誰かと一緒にいたかっただけなのかもしれないわ」
「うん。それで彼は半狂乱で逃げる彼女に追いついた」
「けど、そこで不幸な事故が起きた……というのが真相なのかしら?」

即興で組み上げたにしてはそれなりの推理だった。ここで納得して終わるだけならそれでいいって程度には筋は通っている。

「推理のベースとするにはいいけど、まだ色々と気になる部分はあるね。それにこれはほとんどが憶測でしかない」
「気になる部分って?」
「まずは殺害に使用された凶器だよ。かなり大振りの刃物だけど裸の女性が持っていたというのは不自然だ」
「じゃあ男のほうが持っていたのよ! 多分、護身のためにずっと握ってたのね。それで持ったまま彼女と遭遇した。
 だったら、彼女が裸のままで逃げ出したってのにも説得力がでるわよ」
「なるほど。確かに風呂に入っているところに刃物を持った男が現れたら服を着ている余裕なんかない」

あくまで与えられた情報を元にという条件であれば、この推理を支持するのは間違いではなさそうだった。
とはいえ、あくまではあくまでだ。現実には条件は限定されてないし、可能性はいくらでも存在する。

「だったらその女の子を捜してあげないと。すごく苦しんでいるはずだわ」
「いや、たったひとつの真実と言うにはこの推理はまだ杜撰だよ。行動の指針にするほど確かなものじゃない。
 登場人物は他にもいたのかもしれないし、足跡や衣装が犯人のものだってのも確証はないんだ」
「それも、そうよね……うん」

とりあえず、ぼくとハルヒちゃんとでの推理ごっこはこんなところだった。
グロテスクな死体を見たことで少し情緒不安定気味だったハルヒちゃんも推理に集中したことで回復できたようだし、
凶器を回収できたことと犯人と被害者両方の鞄が現場にないってのはぼくにとっても意味のある情報だ。
61 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:29:19 ID:iZA3OCh7
「とりあえず建物の中へと入ろうか。
 元々そのつもりで来たわけだし、殺された人のはともかくとして裸で逃げた彼女の鞄はそこに残ってるかもしれない」
「ええ、そうね。もっと決定的な証拠も残ってるかもしれないし」

今更また放置しておくのもなんだということでハルヒちゃんは見つけた制服を鞄に仕舞おうとする。
と、そこでぽとりと何かが服の中から滑り落ちた。

「これは……生徒手帳?」

腰をかがめて拾ってみるとそれは所謂生徒手帳というものだった。
そういえば学生はこれを身分証明として携帯してなくてはいけないんだっけ?
ぼくが中学生の頃はどうしていたか、それはもう記憶にはないけどどうやらこの制服の持ち主はちゃんと携帯してたらしい。
プライバシーという言葉はあるけれど、ここは緊急事態なので遠慮なく開いて中を見させてもらうことにした。

「いー、誰のかってわかる?」
「ああ、この名前は名簿の中にあったね」

生徒手帳を後ろから開いて1ページ目。
名前と連絡先などを書き記すための箇所はまるくかわいい文字で几帳面にも丁寧に全ての欄が埋められている。
もらったまま白紙にしている生徒も多いだろうに、なかなか真面目な子だ。


「彼女が”犯人”か」


そして、そこには――姫路瑞希――という名前が記されていた。
62 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:30:44 ID:iZA3OCh7
 【幕間 《melancholy girl x2》】


凄惨だと言えるかはともかくとして、もし目つきの悪いあの彼が見たならば悲鳴をあげるような現場がそこにもあった。

部屋の広さはそこそこ。畳敷きで中央にはつくりのしっかりしたテーブルが置かれている。
テーブルの上には包みの開かれたお菓子の袋や、発泡スチロールのトレイ、ペットボトルに瓶やコップなどが散乱していた。
いや、テーブルの上だけにはとどまらず、部屋中に包装紙が巻き散らかされ皿が積み上げられていた。
打ち上げでもあったのかそれは相当の量だったが、共通しているのはどれも綺麗に食べきられているということだ。
ポテトチップスの破片や肉汁が零れている程度ならいくらか散見できるが、しかし残っていると言ってもその程度でしかない。

円形のアルミの台紙の上にはホールケーキが乗っていたのだろうと想像できる。
使い捨ての燃料を使う焼き網には、おそらく貝を焼いて食べたのであろう痕跡が残されていた。
テーブルの端から畳の上に落ちている鳥の骨はけっして骨格標本などではなく、丸焼きにされたその成れの果てに違いない。

そしてその部屋には二人の人間が横たわっていた。
二人は同じ臙脂色の制服を着ており、また同じように長い黒髪を背中に流し、同じような格好で畳の上に横たわっていた。
片方は折りたたんだ座布団を枕に右側を下に身体を丸め、もう片方は大股を開き大の字で寝転がっている。

川嶋亜美と千鳥かなめ。
二人は、すらりと手足の長い姿がまるでモデルのような――というか片方は実際にモデルなのだが――所謂美少女であり、
この凄惨な現場をたった二人だけで作り出した、別腹というよりもはや別次元というべき胃袋を持った犯人なのである。

「………………ぅう、最悪」
「うぇえぇ…………、食べ過ぎたぁ…………」

――今現在は犯人というよりも被害者みたいな風であったが。これも自業自得か、はたまたは自爆というのか。
仮にここに警察が駆けつければ彼女達は無銭飲食および窃盗などの罪で逮捕されてしまうのだろうが、
しかしそんなことよりも、二人の白いおなかのぽにょっと出た部分が罪の証としてこれからしばらく彼女達を苛めるだろう。
また、明日の朝にでも鏡でテッカテカになったお肌を見れば、いかに自分たちが罪深い人間か自覚するに違いない。

まぁ、ともかくとして。特異な状況ではあるが女性の尊厳的な意味合いを抜けばそれほど危機的な現場ではなかった。



「あー、よっこらせっと……ふぅ」

地面に括り付けられたガリバーみたいになっていたかなめが、親父臭いしぐさでのろのろと起き上がってきた。
そして部屋を見渡し惨状に溜息をひとつ。げっぷをひとつ。もうひとつ大きな溜息をついてようやく立ち上がる。

「どうしたのぉ……?」

立ち上がったかなめの方へと横になったままの亜美が寝返りを打つ。
おなかの中のお菓子軍団もいっしょにでんぐりかえって口から激甘ブレスが漏れる。甘ったるさに亜美の顔が歪んだ。

「んまぁ、喰ったら後片付けぐらいはしとかないとと思ってねぇ。このままじゃ寝れないし」
「そんなの別に他の部屋に移ればいいだけじゃん……亜美ちゃんめんどーい」

それもそうだけど。と言いつつ、かなめはひとつひとつ畳に落ちたゴミを拾い集める。
大いにアバウトで融通のきく性格ではあるが、別にルーズというわけじゃない。むしろその逆なくらいだった。
63 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:34:37 ID:Ie7pc5ui
支援
64 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:35:03 ID:A8FeKXlr
支援
65 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:46:41 ID:Ie7pc5ui
私怨
66 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:49:02 ID:Ie7pc5ui
支援
67 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:51:11 ID:Ie7pc5ui
私怨
68 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:51:30 ID:iZA3OCh7
「でも誰もいないとはいえ勝手に人様のものをいただいちゃったわけだしさ。
 それに……なんか、ここまで散らかってるのを見ると落ち着かないっていうか、ほっとくにしのびないというか……」
「……………………」

集めたゴミをゴミ箱に……といっても客間の小さなゴミ箱じゃとても収まりきれそうにないほどゴミはある。
ならなにかゴミ袋の代わりになるようなものがないかとかなめはキョロキョロと部屋の中を見渡した。
と、そこで芋虫からこのまま蛹へと変化するんじゃないかと思われた亜美がのそのそと起き上がってきる。
それはさながらゾンビのようで、寝癖で前にたれてきた髪の毛がすこしホラーな雰囲気を醸し出していた。

「ん、なに? どったの?」
「…………あたしも手伝うから……掃除」

いぶかしむかなめの前で亜美は髪を整えながら甘い息を吐く。文字通り、比喩でない甘い息を。
ふしめがちと表現すれば少女っぽかったが、しかし眼差しはちょっと虚ろといった感じでちょっと以上に危なっかしい。

「……ふーん。川嶋さんって掃除とか得意なタイプ?」
「亜美ちゃんでいいよ。私もかなめって呼ぶし。
 ……掃除は、まぁ得意かな。亜美ちゃんなんでもできるし。それに、掃除は…………くんに教えてもらったから……」

言いつつ、亜美はふらふらとよろけると壁に背をついてふぅと小さな溜息をついた。
同じ大食い美少女といっても、人間火力発電所のかなめとセンチメンタルシュガーポットな亜美では身体のつくりに差がある。
食べた分だけ活力を取り戻したかなめと、溜め込んだ分だけ心身ともに重たくなった亜美との違いであった。

「大丈夫? 別にこれぐらいだったら私ひとりでするし、お布団しいてあげよっか?」
「えへへ……亜美ちゃん華奢な女の子だからぁ☆ …………うぇっぷ」

心配するかなめへと、亜美ちゃんは作り笑顔でウィンクしたまぶたから星粒をひとつキラリ-☆
で、途端に亜美の顔がまるで明け方の空のように薄蒼い色に染まった。

「ああああああぁ〜! ここで吐くな! 吐いちゃだめだってば!」
「ぉぷ……、ぅ…………吐いたら楽になれるかなぁ……? 全部吐いたらダイエットしなくてもいいかなぁ……?」
「は、早まらないで! ほらトイレいこ。それまでしっかりね。ほらこっち……靴履いて」
「うぅ……ありがとぅ…………」

やはり食べすぎは食べすぎだったのだろう。
リバース寸前で真っ青のガクブルな亜美へとかなめは肩を貸してはげまし、ふたりは揃って客間を後にしていった。

そして、不在の部屋ができあがり、惨状を惨状のままほったらかしにされた現場はしばらくの間そのままだった。
69 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:52:32 ID:iZA3OCh7
 【第二殺害現場 《ガリガリモウジャ》 -実地検分】


そこもまた、まるでこれまでに足りなかった分を補うかのように血の色で塗りたくられた凄惨な殺害現場だった。

正方形に近い形の部屋の中、中央にテーブルを置いて奥と手前にひとつずつ死体が横たわっている。
奥の死体は仰向けに。手前の死体はうつ伏せにと、まるでシンメトリーのように。
そして激しい流血の跡が壁や床へと赤い線を走らせ、まるで部屋全体を狂気の芸術へと昇華させているようでもあった。
だがしかし、そんなのはただの印象で。
実際には工業製品のような、単純なロジックだけで組み立てられると理解できるそんな薄ら寒い現場でしかない。



「くそっ……、なんだって北村がこんな目にあっちまうんだ……! 畜生……ッ」

勿論のことだが、この台詞はこのぼくこと戯言使いのものではない。
冷たい言い方になつけれども、ぼくは見ず知らずの人の死体を前に憤るほど熱いキャラじゃないし、
北村なんて名前を――ここで亡くなっているふたりの名前のどちらだって知りはしない。
そして別にハルヒちゃんの台詞というわけでもない。彼女だって条件は同じだった。
この台詞は、ぼくたちにとっては新しい登場人物のものである。

「…………俺はどうすればよかったんだ?」

部屋の入り口で立ちすくみ顔に悔恨の情を浮かべているツンツン頭の彼の名前は上条当麻と言うらしい。
そしてその後ろ。死体を見ないように彼の背中へとしがみついて震えている女の子の名前は姫路瑞希と言うのだった。

そう、先ほどの件の彼女も一緒なのだった。
ぼくとハルヒちゃんとは、あれから建物の中と入る直前に、あの凄惨な現場の前でこの二人組と行き遭ったのだ。
偶然……であるはずだけど、あまりの間のよさに我ながら驚いたというのが正直なところでもある。
犯人は現場に戻ってくるとはよく言うけど、まさかそのまま、しかもこんないい(?)タイミングでとは思いも寄らなかった。
もっとも、殺人の件に関してはまだそれを問いただしてはないし、
しかるに彼女が犯人だと確定したわけではないのでその点においてはなんとも言い切れはしないのだけど。

「なんだかなぁ」
「どうしたの、いー?」
「いや別に。
 お揃いの体操服姿なんかでいるとどうもあの二人、できの悪い兄としっかりした妹のように見えるよねとか思ってないよ」
「なによそれ。でも、まぁ……上条くんのほうはともかく瑞希ちゃんの方は逸材よね……うん」

逸材か。確かにあんなものを押し付けられたら健康的な男子としてはとても冷静ではいられまい。
スタイルだけでなく顔も可愛らしい。実に保護欲をそそるタイプだ。ふんわりとした髪も相まって実に女の子という感じがする。
とまぁ、そんなことは本当にどうでもいいのだけど、ぼくが実際になんだかなぁと思うのは今この現状に対してだ。

遭遇してから、ぼくたちは互いに害意がないことを示すとグロテスクな死体を避けて場所を移し、それぞれに自己紹介しあった。
正確に言うなら、ひどく怯えた様子の姫路さんは自分で自己紹介をしなかったから、彼女の名前は上条くんから聞いただけで、
ついでに言うならば、できるだけ丁寧に、特に転がってた死体の件については色々と聞き出して確かめたかったのだが、
上条くんが急いでいると訴えたので、先に述べた通りにそれも叶わなかった。

彼いわく、この温泉施設の中で2回前の放送で名前が呼ばれた北村という人物と待ち合わせをしていたらしい。
それだけならばそれほど急ぐことでもないように思える――なにせ死体はいくら待たせても怒るわけでもないし――が、
千鳥かなめという女の子が上条くんより先行してここへと向かってきていたとのこと。
ならばまず彼女と無事合流して、それから改めて互いに話し合おうというのが彼のその場での主張だった。

そして、上条くんに先導されてぼくたちは件の北村くんが待っていたはずの客間へとたどり着き、
結果として想像以上に凄惨で無慈悲な殺害現場を発見したという次第である。
70 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:53:22 ID:iZA3OCh7
千鳥さんという女の子はそこにはおらず、出会うことは叶わなかった。
実はまだたどり着いてないのかもしれないし、もしくはたどり着いたがどこかに立ち去ったのかもしれない。
上条くんが来るのを待つといってもけっこうな時間が経っているらしいし、どちらの可能性もありえた。
誰も言葉には出さないが、千鳥さんが何者かに出くわし危機に陥っている――最悪、もう死亡しているということもありえる。

まぁ、そんなことよりも。そんな現状であり、ぼくがなんだかなぁと思っているのはこの現状であり、この流れだ。
つまり、目の前のイベント的に上条くん主導権――イニシアチブを取られているという状況。
このままでは次のターンの行動も彼の主張により決定されてしまうだろう。

断っておくと、なにもぼくは率先して何事かの主導権を握りたいだとか、場を仕切りたいなどという性分がある人間ではない。
集団行動は苦手で、むしろ放っておいてくれ、一人勝手にさせてくれというのが基本のスタイルである。
しかし、今はぼく自身の狙いや役割がいつもとは少し異なる。
ハルヒちゃんの存在がそれだ。彼女を観察し、彼女を考察し、彼女を検証し、彼女を見極めて、彼女の有用性を実証する。
それが今現在のぼくの狙いでありこの事態における役割でもある。
故に、主導権を握るとは言わないまでもシチュエーションをコントロールできる程度の立ち位置は必要だ。
流されるままに流されてというのが本来のぼくではあるのだけど、今はそれじゃあ少し問題がある……ということ。

さて、とはいえここで大声をあげて『やぁ、ぼくに名案があるんだ』なんて言って先導するのは好ましくない。
他称ながら神様らしきハルヒちゃんを試すにあたって、ぼくがそうしていると彼女に気づかれてしまっては全てが台無しだ。
精密な実験にそれが必要であるように、正しい観測結果が欲しいのならば実験されているという認識すら不純物なのである。
なのでシチュエーションの設定にぼくの意思を潜ませつつも、それが介在するとは絶対に気づかれてはならない。
では、どうするかというと――

「それで、ハルヒちゃん。ぼくたちはどうすればいいんだろう?」

――とまぁ、やっぱりこうするしかないわけで。
幸いなことにハルヒちゃん自身はリーダー気質かつわがままな女の子なので、主導権を握ることになんらいといがない。
そして、ぼくの意思決定を彼女に譲渡すれば、彼女の押しは2倍になるという計算。
鳴かずなら鳴いてと土下座だホトトギス。ややという以上になさけない気はするけれど、ようはハルヒちゃん主導の線狙い。
彼女に前面へと立ってもらい、目立たない位置からアドバイスという形でぼくが彼女の選択に調整を加える。
つまり、躊躇した上に長考してみたものの、結局今までと方針は変わらないということだった。

「どうすればって、そんなの決まってるじゃない。上条くんたちと一緒に千鳥さんを探しましょう。
 もしかしたら怖いものを見てどこかで震えているのかもしれないし、怪我だってしてるかもしれないのよ」

うん、この流れだ。そしてぼくはぼくの思惑に従い微調整を加える。

「そんなに大げさに考えなくとも、案外こういうのは近くにいたりする場合もあるんじゃないかな?」
「うーん、それもそうねぇ……。たまたまトイレかなんかに行っててすれ違っただけってこともありえるかしら。
 とりあえずこの温泉の中から探してみることにすればいいわよね。うん」

そう言って、ハルヒちゃんは部屋の中で死体へとシーツを被せている上条くんの下へと駆けていった。と、これでよし。
なにもしなくてもこの後に千鳥さんを探す流れは変わらなかったろうけど、誰が言い出すかには意味がある。

ひとつの杞憂が晴れたところで、上条くんについての印象を確認してみる。
どうやら少年らしい風貌とこれまでの言動を見る限り、見た目どおりに青い熱さと正義感を持った好青年のようだ。
多少の縁があった北村くんとやらだけでなく、筑摩小四郎とかいう忍者の人にもシーツを被せてあげている。
それだけでなく、その忍者の人が連れていたという立派な鷹――これも死んでいた――もシーツで包んでいた。
こういった善良さはぼくの周りでは貴重なので、せいぜい迷惑をかけずかけられない距離を維持させてもらいたい。
71 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:54:02 ID:iZA3OCh7
「そうだな、とりあえずは千鳥のやつと合流しないと面目が立たねぇし。姫路もそれでいいか?」
「離れるのは危ないからみんな一緒に行動しましょう。
 まずはこのフロアにある部屋から当たっていくのがいいわ。大丈夫、きっと無事に再会できるわよ」

と、どうやら話はすんなりまとまったらしい。これでハルヒちゃんの”言ったとおり”に千鳥さんが見つかれば万々歳だ。



さて、ハルヒちゃんを先頭に千鳥さん探しに出かける一行。
その一番後ろでぼくはこっそり部屋を振り返り、もう一度だけこの光景を脳髄に焼きこむようしっかりと凝視した。
目的は先ほどの現場と同じで、ここで何が起こったかを知り、それをその危機から身を守るための情報とするためである。
そしてこの現場の場合、先ほどの現場とはその必要性および重要性が全く違うレヴェルにあった。

”素人が素人を偶発的に殺害した現場”と”プロがプロを計画的に殺害した現場”とでは言葉どおりレヴェルが違う。

筑摩小四郎という人は忍者であったらしいけど、その言が正しければ彼はある種のスキルの持ち主であったわけだ。
それが所謂”殺し名”などに匹敵するほどのものなのかはわからないが、なんにせよ彼の方はプロのプレイヤーなわけで、
その彼をただの一撃で、おそらくは真正面から撃破――死亡に至らしめているというのは、これは大きな脅威になる。

また、部屋の中には鷹以外にも”人間ではない”死体が転がっていた。
部屋の中央。戸口から覗き込めば二つの死体よりもよっぽど目に入ってくるのはウェディングドレス姿のマネキン人形。
こんなものがなんでここにあったのかは知らないけれど、それはなんらかの手段によって前面を破砕されている。

まるでマネキンの表面でいくつもの小さな爆弾が爆発したみたいな有様だったが、しかし爆発物を用いた形跡はなく、
ならばそれこそ、今こそ魔法や超能力がぼくの目の前に現れる頃合いなのかもしれない。

「戯言だけで幻想(フィクション)の中を渡り歩けって言うのか?」

本当に、戯言だと言って何もかもを投げ出したくなるような、そんな恐怖と非現実とが存在する殺害現場だった。
72 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:54:39 ID:5S+bVn07
 
73 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:54:45 ID:iZA3OCh7
 【第二殺害現場 《ガリガリモウジャ》 -検証】


そして、登場人物は出揃った。



先ほどの殺害現場とは別の、けど同じ正方形に近い間取りの客間の中。
部屋の中央には同じように足の短い大きなテーブルが置かれており、ぼくたち”6人”はそれを囲んで対面していた。

上座の位置には行方知れずとなっていた千鳥かなめさんが一同を見渡すように座っている。
彼女から見て右側には再会の際に一発殴られて頭にたんこぶをつくった上条くんがおり、
その隣には正座をして、未だ何も発言することなく妙に挙動不審な姫路瑞希さんが縮こまっていた。
対面には男女対応するようにぼくとハルヒちゃん。
ぼくは年下の人間ばかりという状況にやや居心地の悪さを感じているという程度だが、
ハルヒちゃんはというとまだ死体を目にした緊張が残っているようで、僅かながら顔がこわばっていた。
そして、6人目。
千鳥さんと対応する下座の位置には彼女と同じ制服を着た、同じように美人の川嶋亜美という女の子がいた。
彼女はここで千鳥さんと出会い意気投合したらしいけど、どうやら上条くんや姫路さんとも面識があるらしい。

簡単にまとめると、
体操服組の上条くんと姫路さん。制服組の千鳥さんと亜美ちゃん。そしてぼくとハルヒちゃんの3組6人だ。



しかし……、これは本筋とはなんら関係のない戯言なのだけど、出揃った女の子4人が4人ともすごい美少女である。
特に最後に登場した千鳥さんと亜美ちゃんはハッとさせられるような美人だ。
可愛らしい姫路さんを見て少し喜んでいたハルヒちゃんだったが、二人の登場の際には息を飲み、若干引いていた。
同じ美人系とはいえ、肩口までのセミロングのハルヒちゃんと違い、千鳥さんと亜美ちゃんは腰までのドストレートの黒髪だ。
ぼくは髪型で人を差別するような人間ではないが、しかしキャラとしてこの”武器”の有無はとてもじゃないが無視できない。

ゆえに、常にアイムナンバーワンなハルヒちゃんとはいえ、引け目を感じたとしてもそれはいたしかたないことだろう。
無論、こんなことは決して口にしない。Mを自覚しているぼくだけど、嫌われ主義者でも自殺志願でもないのだから。
この壁はハルヒちゃんが自分で乗り越えられるよう、ぼくは戯言を封印してただ見守るだけしかない。



閑話休題。
では、これからの流れを追う前に、ひとまずあれからこれまでの顛末をさらりと振り返ることにする。
あれからとは二人の死体があった部屋を4人揃って後にしてからのことで、これまでとは今この瞬間のことである。

ハルヒちゃんはトイレにでもと言ったが、実際にあの後すぐ千鳥さんと亜美ちゃんはすぐ近くのトイレで発見された。
正確には廊下を歩いていたら、トイレから出てきた二人にばったりと出くわしたのだ。
あまりのあっけなさに拍子抜けしたが、苦難を伴うよりかははるかにいい。
そして揃いの制服を着た美人姉妹みたいな二人の登場に、見蕩れること一瞬。
ぼくはそのままことの成り行きを後ろから見守ることにした。探していたのは上条くんで、ぼくがしゃしゃり出る場面じゃない。

「いつまでもどこほっつき歩いていたのよ……この馬鹿ッ!」

そう。わざわざしゃしゃり出て暴行を受ける必要はない。
探し人であった千鳥さんはというとどうやら少々暴力的なツッコミ属性持ちであるらしく、
謝罪の意思を土下座で示した上条くんに、空手の下段突きの要領でブラックアウトしそうな拳骨の一撃である。

「……まぁ、お互い無事でなによりだけどね」

まぁ、このいつどこで誰から襲われるともわからない状況。さらには近くに死体もある場所にレディを待たせたのだから
ゲンコツ一発で済んだのは幸運だろう。むしろここは千鳥さんの度量の大きさを褒め称えるところだ。
うん。彼女には絶対に逆らわないようにしよう。と、ぼくはひっそり心の中でそう決めた。
74 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:55:27 ID:iZA3OCh7
「ところで見ない顔が増えてるんだけど、どちらさま?」

その後、ぼくたちは彼女らの使っていた部屋に移り、でたらめに散らかっていたその部屋の惨状に仰天した。
現実的である分、さっきの部屋よりか酷く見えるというか、なんというか。

で、何故か全員で掃除することになった。
ちなみに、男女6人もいれば掃除が苦手な子もいそうなものだったが、この6人においては皆掃除が得意だった。
ぼくはどちらかというと掃除よりも、掃除をしないで済むように部屋を汚さないタイプだけども、
ハルヒちゃんも姫路さんも、若干粗暴そうな一面を見せた千鳥さんも、こういうことは苦手そうな亜美ちゃんにしてもだ。

そして、上条くんはというと、なんというかぼくと一緒だった。主義ではなく……その、使い走りっぷりが。
こういう場合において男が使役されるのは自然なんだけど、なんというか理不尽に対する受け入れっぷりみたいなものが
若くして年季が入っているというか、不幸慣れしているというか、その姿にどこか共感や哀愁を感じてみたり。

と、また少し話が脱線してしまったが、経緯としてはこんな感じである。
そしてぼくたちは改めて簡単な自己紹介をし、これまでと今現在、そしてできればこれからのことを話し合うこととなったのだ。



「――それで当麻。あんたはこのか弱い女の子であるかなめさんをほったらかしにして、今まで何してたのよ?」

彼女へのツッコミは各自心の中ですませておくように――ということで、ぼくたちの話し合いはこんなところから始まった。
これはぼくが提案させてもらったのだけど、千鳥さん、上条くん、姫路さん、亜美ちゃんの4人は顔見知りであるみたいだけど、
ぼくとハルヒちゃんは向こうから見たら完全な新顔にすぎない。
なので、お互いに馴染みあう準備期間という意味でも、まずはこれまでの経緯なんかを報告しあえばという話。
実際としては、いきなり殺人などというヘビィな話題に突入しては、信用のない新参のぼくたち二人はデフォで立場が危うい。
そういうところを懸念したというのが本音。人間、知らない人間に対しては思った以上に冷酷になれるものだから。

「あー……、話せば長くなるんだが。というか、上条さんからも重大な相談事があったりしまして……」
「ちょっと、これ以上イライラさせないっての。相談事ならいくらでも聞いてあげるからハキハキ喋る」

まずは改めてぼくたちは自己紹介しあった。
そして、詳しい部分は割愛するが所謂パラレルワールド論――各自、出身世界とその認識についてあれこれ。
ここはハルヒちゃんが大きく喰いついたところなんだけど、割愛するとして。
その後、千鳥さんから順にこれまでの経緯を簡単に説明して、今の話題は上条くんが遅刻した理由についてだった。

「まぁ、話すけどよ。
 あれから、教会の地下に落っこちてから……えーと、あれはなんて言うんだけっかな。ああ、そうそう”カタコンベ”だ」

カタコンベとは所謂地下墓所のことである。
ここが日本であると仮定するならかなり珍しいものだが、上条くんは不気味さに怖気づくことなくそこを突破し、
その先にあった下水道を伝って東進。地図で見れば1kmほどを踏破してあの学校の前でようやく地上に出れたらしい。
と、それをさも武勇伝のように語る上条くんに向けてハルヒちゃんが手をあげて問いかけた。

「ねぇ、ちょっといいかしら?」
「なんだ? えーと、涼宮さん」
「その前のことなんだけど上条くんと千鳥さんは外っかわの壁を調べに行ってたのよね?」
「ああ、それはさっき話したとおりだけど、なにか気になるようなところがあったか?」
「壁の話のところでなにか悪寒を感じたって言ってたでしょ? それで、地下墓所を通った時もなにか気配があったって。
 上条くんはやっぱり超能力者だからそういう……その、超感覚みたいなのが備わっててわかるのかしら?」

異世界の話をして以降、ハルヒちゃんの好奇心および探究心スイッチはオン状態だ。
そこらへん、今は別に後回しでもいいんじゃないかな? と思わくもないが、下僕の身ゆえぼくは口をつむぐ。
なによりこの対話の目的は互いに馴染むこと。ならば多少の遠回りはむしろ歓迎するところで、
ぼくとしてはハルヒちゃんがこの世の不思議を肯定する方向に向かうのは好ましいところでもあったりする。
75 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:56:36 ID:iZA3OCh7
「あぁ……いや、期待させちまって悪いが俺自身は無能力者(レベル0)なんだ。
 だから涼宮さんが期待してるような能力ってのはぶっちゃけると、これっぽちもない。
 悪寒とか気配ってのは、説明が難しいけど実際、その場ではそう感じたってだけなんだ」
「そっか……、まぁいいわ。じゃあ私も後でそこに行って確認してみるから。
 いー、あなたも覚えておきなさい。施設調査リストに教会の地下墓所を追加よ」

ハイハイと返事をして、ハイは1回でいいとぼくはハルヒちゃんに怒られる。
映画館からこの温泉。そして学校へと向かうのなら、その先は図書館、教会と並んでいるわけだし特別面倒なことでもない。
先送りになっていた世界の端についての調査も行えるなら、ハルヒちゃんの提案に反対する理由はなかった。

「施設調査って涼宮さんたちは何をしているの?」

と質問したのは議長ポジションにいる千鳥さんだ。
ちなみに、彼女は通っている高校にて生徒会副会長を務めているらしく、ならば議長役は適任であった。

「調査は調査よ。地図に書かれた施設を回ってこの事件を解決するためのヒントがないか探しているのよ」
「元々はそういう施設を回っていれば誰かに出会えるんじゃないかってことだったんだけど、
 この前に寄って来た映画館でちょっと発見があってね。そういえば学校にもなにかあったなって思い出して――」
「そう。それだったら片っ端から足を運んで調査していこうって思いついたわけなのよ!」

ハルヒちゃんはオールマイティそうでいてけっこう抜けてるところがあるので、その分はぼくがフォロー。
関心を持った上条くんと千鳥さん相手に、ぼくは映画館で見つけたものとその不思議さを説明した。

「ああ、魔方陣みたいのなら俺も学校で見たな。そうか……、オーパーツ的なものか」
「ここがあの狐面のおじさんの言うとおりの世界なんだったら、そういうのを調べる方が解決に近そうよね」

そうでしょう。とハルヒちゃんはここにきてはじめて機嫌をよくした。
上条くんや千鳥さんにしても、一見具体性のありそうなこの方針は魅力的に見えるらしい。
人探しも兼ねられるなら各施設を渡り歩くのも悪くないと、そんな流れへと彼らの心は傾いていた。

「涼宮さんの案はいい感じね……と、そうそう、それであんたの方の話はどうなったのよ。
 どうして当麻が姫路さんと一緒なのかとか、まだ聞いてないわよ」
「ああ、そうだったな。こっちが本題だ。それで学校の前に出た俺は、姫路が廊下を歩いているのを見つけて――」

脱線していた話は本筋へ戻り、そして本題へと突入する。
ちょうど学校の前に出た上条くんはそこでふらふらと学校の中を徘徊している姫路さんを窓越しに発見したらしい。
早く温泉に向かわねばとは思ったらしいが、彼女にしても尋常な様子ではない。
迷いはしたが結局、上条くんは彼女に声をかけることにしたのだ。
で、そこで問題となるのが姫路さんのその時の尋常ではない様子だったのだけど……。

「――つーか、裸だったよね。その子」

意地悪そうな声は、これまで話しに加わらず退屈そうにしていた亜美ちゃんのものだった。
76 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:58:03 ID:iZA3OCh7

「はぁ!? それって何があったのよ?」

千鳥さんの声が大きくなる。それはそうだろう。女の子が裸で歩いていたなどと、それは尋常じゃない話だ。
どうしてそんな事態に姫路さんは陥ってしまったのか。そしてその後、上条くんは裸の女の子とどうしていたのか。
などと、掻き立てられる妄想に場の空気が少しだけ冷たくなった。凍りつく、その前兆のように。



ぼくとハルヒちゃんはどうしてその時、姫路さんが裸だったのかを知っている。
推測はまだ推測でしかないが、少なくとも現場に残されていた彼女の制服だけは紛れもない真実の一片だ。
そして、出会ってからの彼女の、なにかを恐れるようにおどおどとしたその態度もまた真実を語っていた。

隣のハルヒちゃんが息を飲むのがわかった。
ここから先、何が語られるのかを思い浮かべているのだろう。そして、それを受け止められるのかということを。
果たして。
果たして、ならばぼくはどうなのか。ぼくは殺人者を許容できるのだろうか――?
77 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 01:58:45 ID:iZA3OCh7
 ■


「まず、みんなに聞いてもらいたんだが、姫路は……今、声を出すことができなくなってるんだ」

周りを窺うような神妙な顔で、上条くんはこの話をここから切り出した。
聞かされた皆の視線が姫路さんへと集中する。
そこには好奇はあっても、悪意があるわけでなく、むしろいたわりを含むものだったが、彼女はどう感じたのだろうか。
姫路さんは誰とも視線をあわせることもなく、目の前のテーブルのなにもないところをじっと見つめているだけだった。

「それって姫路さんになにかあったってことよね? それが当麻くんの相談事なの?」
「ああ。姫路になにがあったのかを承知して欲しい。……それで、それからそれでも姫路を仲間だって認めて欲しい」

それが俺の頼みだと、上条くんは頭を下げた。
誰も、すぐに答えを返すことはできず、場にうっすらと沈黙の空気が流れはじめる。
これから何を告白されるのか。
まだ言葉はなくとも彼と、隣の姫路さんの様子を見れば、それだけでどれほど重いものなのかは想像できた。

千鳥さんは少し怒っているような、そんな真面目な顔で頷き。
上条くんは無理をしているとわかる優しい顔で姫路さんに『いいか?』と尋ねた。
姫路さんは蒼白な顔で視線を震わせながらこくりと首肯する。
それを見つめる亜美ちゃんの表情はとてもつまらないものを見るようで、
ハルヒちゃんは再びぼくの隣で息を飲んだ。
ぼくは……、ぼくはどんな表情をしていただろうか? それはぼく自身にはわからない。



「どうする姫路? 俺からみんなに話したほうがいいか? それともメモのほうを見てもらったほうがいいか?」

上条くんに尋ねられると、それまで虚ろな様子だった姫路さんはなにか芯が入ったかのように雰囲気を変え、
自分の鞄から折りたたんだメモ用紙を取り出すと、それをテーブルの上で開いた。
そこにはわずかに乱れた文字の羅列が並んでおり、そしてそれらはおそらく彼女自身によって記されたもので、
つまり上条くんが尋ねた『メモのほうを』とは、自分で語るか? と、それを問う意味であったにちがいない。

姫路さんは鉛筆を取り出すと、そのメモ用紙になにかを追記し始めた。
その筆跡はどこか力強く、まるで自分自身を断罪するかのような、ある種の覚悟が垣間見えた。
書き終えるまでの少しの時間。カリカリと紙を引っかく音だけを聞きながら、皆は沈黙してそれを見守る。

そして――

「じゃあ、まずは千鳥からこれを読んでくれ」
「うん、わかった」

――試される時間が始まる。

理解と許容。理解した上での許容。理性と感情と道徳と優しさと厳しさと人間らしさを。
例え相手が刃物を持ってなくとも、例え相手が一言の言葉を発さなくとも、眼差しすら交わさないとしても。
ひとつの過去。たったそれだけの事実が、過ちであろうと栄光であろうと関係なく、危機を生み出すことがある。

それが理解と許容の問題。
安寧の為の鈍感さか、自らを無意味化するような包容力か、動じないが故の許容力か。
または、嫌悪としての拒絶か、不利益対象としての断絶か、それとも保身の為の無視なのか。

選ぶのではなく、選ばされる。本人と上条くんとを除く4人が選ばされる。それが今回の理解と許容の問題。
78 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:00:01 ID:iZA3OCh7
「あたしは……、本当に何があったのかなんてわからないし、それに……あの死体を見ちゃったしね。
 だから、姫路さんのことが怖いというのがぶっちゃけた本音。
 けど……あたしは当麻のことは信用できると思ってる。だから当麻に免じて姫路さんの言うことも信じるわ。
 過ちを繰り返さないっていうんなら姫路さんはもう私たちの仲間よ」

これが千鳥かなめの回答。

姫路さんが温泉施設の前にあった死体――黒桐幹也という人物だった――を殺した犯人であるのは正解だった。
ディティールは異なるが、大まかな流れとしては推測したとおりでほぼ間違いはない。
温泉から裸で外に放り出された姫路さんは、偶々通りかかった黒桐という人物に優しくし介抱され、
それなのに些細なきっかけからトラウマを発症し、”不本意ながら”に彼を殺害してしまい。そして逃亡してしまった。
口がきけなくなってしまったのはこの結果ということらしい。所謂、心因性失声症というやつである。

情状酌量の余地はある。
それに申告通りなら、姫路さんは心身喪失状態だったのだから責任を問えないという考えもできるだろう。
千鳥さんは、証言の曖昧さを上条くんへの信頼と照らし合わせ、最終的には彼女を信じ、許容することにした。
そこにはなんら駆け引きもなく。
自らの考えをそのまま口に出すことのできる千鳥さんは本当に、お世辞抜きに立派で気持ちのいい人間だ。



「私は、どんな事情があれ人を殺すのは許されないことだと思う。
 殺された人も、残された人に対しても、殺した側の事情で片付けてしまうのはアンフェアな考えだと思うから。
 だから、姫路さんのことを私は弁護しない。ちゃんと自分の犯した罪は償うべきよ。
 けど、それとこれと仲間と認めないかは別問題よね。
 私は姫路さんはいい人だと思うから償うチャンスは与えるべきだと思うし、それを応援したいとも思うわ。
 それに……、そもそも姫路さんが人殺しをしなくちゃならなくなったのは、私のせいだとも言えるし。
 むしろお願いするわ。私にも姫路さんの罪を償う手伝いをさせてちょうだいって」

これが涼宮ハルヒの回答。

姫路さんが温泉から裸で放り出されることとなったのには、彼女が言うとおりハルヒちゃんに遠因があった。
上条くんと千鳥さんが立ち去った後、姫路さんと殺害されていた忍者の人はここにたどり着いたわけだけども、
そこには上条くんたちの帰りを待つ北村くん以外に朝倉涼子という人物もいたらしい。
ハルヒちゃんが言う、SOS団団員ではない知り合いである、あの朝倉涼子だ。
そして、彼女と一緒に温泉で入浴していた姫路さんはそこで彼女に襲われ、ハルヒちゃん以外を殺害するように、
でなければ想い人である吉井明久を殺害すると脅され、そのまま裸で外に放り出されたのだという。

まるでどこかで聞いた話――というか、確実にあの古泉くんと行動方針は同一なのだろう。
ぼくは朝倉涼子という人物自体は知らないが、ハルヒちゃんの周辺事情を聞いていればそう推測するのは容易い。
ハルヒちゃんは彼らの思惑など知るよしもないだろうが、これは正しくハルヒちゃんの存在が原因だ。
また、これは知っている人物が限られる情報なので、この部分に関して言えば姫路さんの証言に信憑性はある。

逆に言えば、ハルヒちゃんの視点からだと姫路さんの言い分は意味不明だろう。
けど、ハルヒちゃんはそれをそのまま受け止めた。
優しさでも許容でもなく、それは彼女自身の強い責任感がなせるものだ。
言動の端々から感じられるが、ハルヒちゃんには無意識として全世界を背負っているという気概がある。
それは彼女が神様だからなのか、それとも人生における全責任は自分にあるという矜持からなのかは不明だけど。
なににしろ、彼女の意識と決断。それはぼくからしても好感の持てるものだった。
79 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:01:01 ID:iZA3OCh7
「ぼくは、姫路さんに関してはなんとも判別がつかないというのが本音かな。
 許すにしても断罪するにしても、妥当な罰を与えるにしても確証がないというのが正直なところだよ。
 もっとも、今このような状況で日常世界の倫理観が通じるのかって話もあるけどね。
 まぁそれはさておき、ぼくは殺人を最低最悪の行為だと思っている。
 人を殺すということは、自身の望みが殺した相手の人命より優先されると考えたことに他ならないから。
 だから、そんな願いを持つ人間は最低の屑だ。許されていいわけがないと考えている。
 けど、姫路さんのケースは少なくとも聞くかぎりはそうじゃない。
 姫路さんは自らの逃避や欲望のはけ口として黒桐さんの命を意識的に上書きし、塗りつぶしたわけじゃなく
 あくまでリアクションの結果として彼が落命するという事態になった。
 まぁ、ありがちな言葉で言えば”不幸な事故”だよね。
 だから、ぼくは姫路さんを責めることも助けることもしない。それはそのままというのがぼくの答えだよ」

これがぼく自身の回答。

言葉にしたことにも、ぼく自身の感情としても、ここに嘘偽りはないつもりだ。
明らかになってしまえばそれは陳腐とも取れるし、ある一面において姫路さんが被害者なのは事実でもある。
ゆえにぼくからすれば特別嫌悪の対象とはならない。無論、好意の対象にもなるはずがない。なので許容する。

現実的な話をするならば、ここでもし諍いや分裂といった事態が起こったりすれば、そこに取られる労力が惜しい。
なのでこの程度は妥協。必要経費として考える。という計算もいくらかはある。
この先、姫路さんが殺人を重ねられるかというと実行力は乏しそうにも思えるし、そういう意味でも許容範囲内。
あくまで姫路さん程度のリスクなら負えないことはないという判断だ。
非道い考え方だと思われるかもしれないけど、殺人者に対しては冷たいのがぼくだからこの考えはしかたない。



ここまで3人の回答は程度の違いこそあれ揃って許容だった。
当人である姫路さんとすでに彼女の味方となっている上条くんを抜けば、残りは4人。その内の3人までが許容。
多数決ならばもう議論は終わっているだろう。しかし、これは多数決の問題ではない。
この世の正義と真実。不動のそれらに民主主義は採用されない。

最後の一人である亜美ちゃんは、姫路さんの書いたメモを読み終えると冷笑を浮かべてそれを突き返した。



「亜美ちゃん。ちょっとこのメモだけじゃわかんないっていうか……、どうなんだろうなぁ。
 上条くんもみんなもちょっとお人好し(イイヒト)すぎるんじゃない?
 こんなのだったら亜美ちゃんでも書けるしー。
 それに、そもそも人を殺した子の話を信用するのが、おかしくない?
 だって、それって嘘に決まってるじゃん」

これが川嶋亜美の回答。

軽薄で思慮浅い発言だろうか? ぼくはそうは思わない。むしろ非情に現実的で実践的な思考と回答だ。
口調はともかくとして亜美ちゃんの言うことは残酷なくらいに正鵠を射ている。

誰も証人がいない以上、何が起こったかなんていうのは自分の都合のよいように書けるだろう。
実際、姫路さんは見てもいない”師匠”という人物が北村くんと忍者の人を殺害したと推測しているが、
これを信用する根拠はどこにもないのだ。あの二人も姫路さんが殺したと推測することはできる。
朝倉涼子の件にしても、実際にあった彼女とのやりとりがメモに書かれたものと同一かは確かめようがない。
ぼくと古泉くんの場合のようにただ会話しただけで、姫路さんがその情報を利用したという可能性もある。

そもそもとして人を殺した者の話を信用できるか?
信用と罪のあるなしは別問題だが、この問いに正面から反論できる者は稀だろう。
姫路さんを許容した千鳥さんやハルヒちゃんにしても、その部分には正面から向き合ってはいない。
ぼくにいたっては信用なんか欠片もしていない。
80 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:01:51 ID:iZA3OCh7
だから、皆がこうあってほしいと考える希望的な結論を蹴って亜美ちゃんが彼女を拒絶するのはしかたない。
リスクを孕む因子を集団の中から取り除く。それは徹底的に冷たく、そして正しいことなのだから。
罪を告白する以上、それは姫路さん本人が背負うべきリスクで誰も亜美ちゃんを責めることはできない。

できない……が、
困ったことになったというのが皆の本音だろう。正直ぼくも困ってる。亜美ちゃんまじで空気読めないというやつだ。



「――違うっ!
 このメモだけを見て姫路のことを全部信じろってのは、確かに無茶だって俺にもわかる。
 けど、お前だって見てるだろう? ボロボロの格好をして、姫路がひとりで学校をほっつき歩いていたのを!
 川嶋はあれすらも嘘だって言うのか?」

ここまで姫路さんをエスコートしてきた上条くんがテーブルを叩いて亜美ちゃんに反論した。
姫路さんを信用しうる情報が足りないというのはぼくたち共通の問題だが、彼だけは立場が少し異なる。

元々、彼が姫路さんを保護しようと考え、実際にそうしたのは彼女がボロボロの状態で徘徊していたからだ。
殺害したその場面を見たわけではないが、その直後の彼女に接している分、彼には情報が多い。
今は一応服を着て、身だしなみを整え、その時よりかは冷静になっているだろう姫路さんを見るのと、
殺害直後の時点とその後彼女が立ち直るまでの姿を見てきたのとでは、そりゃあ印象が異なるだろう。
千鳥さんやハルヒちゃんは言うに及ばず、ぼくだってそれを見ていれば彼女に対しもっと同情的だったかもしれない。

「あー、アレね。なんかウザい態度だとは思ったけど……なんか助けてくださいオーラ出してるみたいな」
「だったら! わかるだろう。姫路が俺たちに嘘なんかついてないってことが」
「逆じゃない? あんな見え見えの態度で接してくるとかわざとらしくて演技っぽいし。
 上条くんってばチョロすぎ。やっぱ男の子はこういうおっぱいの大きな子のほうがいいのかなぁ……?」
「そんなこと言ってんじゃねぇだろっ!
 姫路は心底傷ついてまいってたんだ。助けを求められたのはお前も同じじゃねぇのかよ!?」
「だからぁ、なんでそれがこの子が嘘ついてないってことになるのよ!
 あんた頭悪いんじゃない? 逆に、嘘をついてでも生きようとしたって考えられるじゃない!」
「嘘で自分の爪なんか剥がせるかよ。
 可能性があるとか証拠がとかじゃねぇ……そんなもんは姫路を見ればわかるって話なんだ」
「へぇ、すっごい。そんなに女を見る目に自信があるんだ、トーマくんは?」
「いいか。聞けよ。
 姫路は俺の前で、殺してくれって言ったんだ……そんな、そんなことを口走っちまうぐらいに――」
「――それも嘘に決まってるじゃない。私だって同じことが言えるもん。亜美ちゃんもう生きてくのがつら〜い☆」
「てんめぇ……!」

これはまずい。亜美ちゃんの態度も態度だが、上条くんは思ってた以上に沸点が低いっぽい。
ここで言い争い以上に発展するのは好ましくない。最悪、ぼくが動かないといけないのか? この戯言遣いが?
と、ぼくがそう思ったところで議長が動いてくれた。

「ちょっと待った! 二人とも落ち着きなさい」

そう大きな声を出して、千鳥さんは立ち上がりかけていた上条くんの肩をつかんで座りなおさせた。
上条くんは千鳥さんの顔を見たことで自分が冷静でなかったことを自覚したらしく、溜息をつくと素直に従う。
逆に亜美ちゃんはというと、そんな彼に冷笑を浴びせかけるとぷいっとそっぽを向いてしまった。

「ほら当麻。そのグーの手をパーにする。どんな理由があっても女の子殴ったりしたらあたしが許さないからね」
「ああ、すまねぇ。けど姫路のことは――」
「わーってるつーの。ちょっとあんたは大人しくしとれ」

なんというか貫禄があった。彼女も彼女でこういうのに慣れているっていうか。
ぼくの周りは善人だけど不器用か、段取りのいい性悪ばっかなので、千鳥さんのような真っ当な人はちょっと珍しい。
千鳥さんは上条くんを諌めると、亜美ちゃんの方……にではなく、姫路さんの方をキッと睨み付けた。
81 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:03:26 ID:Ie7pc5ui
支 援
82 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:05:05 ID:Ie7pc5ui
支援
83 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:05:31 ID:iZA3OCh7
「姫路さん。あんたがしたことってのはこういうことだってわかる?
 犯した罪を許されることはあっても、罪を犯したって事実は絶対になくならない。
 それでも受け止めてくれる人はいる。でもそうじゃない人もいるし、それは文句の言えないことなんだよ。
 だから亜美の言葉も甘んじて受けなさい。それはあんたが背負っていかなきゃならないことだから」

千鳥さんの言葉に、顔面を蒼白にしていた姫路さんはこくりと、ただ素直に頷く。
溢れそうになっていた涙が頬を滑り、顎の先から落ちたそれがテーブルの上に小さな水溜りを作った。

「亜美。あんたの言うことはもっともだけど、ここは私の顔に免じて姫路さんを受け入れてくれないかな。
 あたしは当麻のことを信じてる。だから当麻が信じる姫路さんも信じる。
 疑うのは仕方ないよ。私だって怖くないかって言われればやっぱそういうところもあるしね。
 でも疑いながらでもいいから彼女を受け入れて欲しい。でないと――」

姫路さんがひとりぼっちになっちゃうでしょ? と、千鳥さんは亜美ちゃんに、いや皆に聞かせるように言った。

「……べっつに、かなめがそう言うなら亜美ちゃんも我慢してもいーけど……でも、
 亜美だって根拠もなしに疑ってるわけじゃないから悪者扱いしないでよね」

そっぽを向いたままの亜美ちゃんは、そのままばつが悪そうな顔をして渋々といった風に承諾した。
けど、どうやら彼女にはそれでもはっきりさせておきたい疑念があるようだった。
亜美ちゃんは姫路さんを指差し……いや、姫路さんの後ろにあるものを指差して言った。

「バック。どうして2つ持ってきてるの? これって彼女の話と”ムジュン”してるんじゃないかな?」

皆は僅かな疑問を顔に浮かべ、指摘された姫路さんは涙の筋が残る顔にきょとんとした表情を浮かべた。

「そうでしょ? 服も一緒に持ってきてもらってるのに、そっちは忘れてバックだけ……、
 しかも殺した相手のも持っていくなんてどう考えてもおかしいじゃない?
 着るものはなくても、むしろ裸なくらいが油断させるのに都合がよかったけど、
 でも武器になるものは手放せなかったってことじゃないの?」

亜美ちゃんの言う”ムジュン”の意味をようやく理解すると、姫路さんは掌を顔の前でバタバタと振り出した。
そんなのは気が動転していたからだと、そういうようなことが言いたいんだろう。
実際にもそうだったんだろうと想像することは可能だ。
人を殺してしまい、気が動転してその場から少しでも早く逃げようとした。
その時、手を伸ばせば届く範囲に鞄は落ちていた。しかし制服はそうではなかった。それだけだと思う。
思うが……しかし、説得力の欠片もない想像だ。

「姫路は、人を殺めちまって……それで気が動転してたんだから、それぐらい――」
「そんなの、なんの説明にもなんないじゃない!」

その通りだ。これは釈明にも説明にもなりようがない。
混乱してたなんてワイルドカード。説得材料とするには万能すぎてなんの役にも立ちはしない。
とはいえ、逆に姫路さんが嘘をついていると証明するにしても亜美ちゃんの指摘には決定力が不足していた。
じゃあそれが逆に姫路さんが皆を殺そうとする証拠になるのかというと別にそうでもない。
本当に気が動転していた可能性も十分にあるため、解釈はあっても解答のない問題に議論の場は膠着してしまう。

「じゃあ、姫路さんの荷物は私が責任をもって預かるから、それでいいでしょう?」

宙ぶらりんの議場を取りまとめるのはやはり頼りがいのある議長さんこと、千鳥さんだった。

「姫路さんも当麻もそれでいいわよね?
 書くものとか水とかタオルとか必要なものは持っててもらっていいし、困ったことがあったら聞くから」
「千鳥がそうしてくれるなら俺も問題はねぇよ」

上条くんは声に出してそれを了承し、姫路さんは声の変わりに2つある鞄を差し出すことで了承の意を示した。
鞄を受け取った千鳥さんは、じゃあこれで問題はもうない? と亜美ちゃんのほうへと窺う。
84 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:06:24 ID:iZA3OCh7
「それは……それでいけど……」
「まだなにかあるの?」
「あるにはあるけど……別に、それはいい」

観念したというか、疲れきったという感じで大きな溜息をつくと亜美ちゃんも渋々それを了承した。
だがそれはあくまで千鳥さんに対してでしかなく、
亜美ちゃんは鞄を掴むとすっと立ち上がり、綺麗な足を伸ばし黒髪をなびかせて部屋の出口へと歩き始める。

「ちょっと、どこに行くのよ?」
「どっか適当な部屋。亜美ちゃん寝る時はひとりじゃないとイヤだから」

そして、そう言って部屋を出て行ってしまった。

亜美ちゃんの行動は、所謂こういったシチュエーションにて起こりうる定番中の定番。
所謂、『人殺しと一緒にいるなんて真っ平だ。俺は自分の部屋に引きこもる』というアレだった。
実際にはお目にかかれるとは貴重な光景かもしれない。シチュそのものが現実にはレアであるわけだし。

ともかくとして、亜美ちゃんを追って千鳥さんも出て行ってしまい、
ぼくたちの間での話し合いというのもここでいったん途切れることとなった。
まだまだ話す事柄については尽きないが、インターバルを取るというのならちょうどいい頃合だろう。
いや、こんなことになるならもっと早くてもいいぐらいだったか。

なんにせよ気が休まらない。これっぽっちもぼくたちの関係は気のおけるものへと進展してはいないのだから。
85 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:07:23 ID:iZA3OCh7
 【幕間 《melancholy girl x3》】


衝突の熱気が失せ静かな、そして微量の緊張を沈殿させる空間へと戻った正方形に近い形のとある客間。
その部屋の中に今、耳を澄ませば辛うじて捉えられるという程度の小さな衣擦れの音が聞こえていた。

「……………………」

やはり下着を有無は重要だ。と、姫路瑞希は下着のありがたさというものを改めて感じていた。
上条当麻から譲り受けた体操着で一応は服を着ているという状態であったわけだが、やはり全然違う。
たった一枚二枚の布地がもたらす安心感。
なるほど、下着というものも人類の英知の結集だったのだと、瑞希は感心し、心の中で先人達に感謝した。

濡らしたタオルで足の裏を拭いてソックスを履く。タイを締めて上着を着ればいつもの学生服姿だ。
瑞希は姿見の前に立ちその中に写る己の姿を確認する。
少し乱れていた髪の毛を手櫛で整え、襟を正し、スカートのしわを伸ばした。これでいつもどおりの自分自身。

「……………………っ」

瑞希は鏡から振り返り、後ろにいた涼宮ハルヒにぺこりと感謝のお辞儀をした。
てっきりどこかへとなくなってしまったかと思っていた服だが、彼女が見つけて取っておいてくれていたのだ。
本当なら感謝にはありがとうという言葉も添えたかったが、しかし口を開いても声は出なかった。
一度は出たのだが、いつものように戻るにはまだなにかきっかけが足りないらしい。

「うん。見つけた時にも思ったけど、姫路さんとこの制服って可愛いわよね。
 やっぱり可愛い制服って羨ましいなぁ。こんなことなら私も北高じゃなく光陽園の方に行っとけばよかったわ」

体操着も惜しいと言ってたハルヒだが、制服姿を見るとそれはそれで気に入ってくれたらしく上機嫌だ。
いや、そう振舞ってくれているのかもしれない。出会ってよりこれまで、何かと彼女は気を使ってくれていた。

「じゃあ座って座って。ほら、ドーナツもたくさんあるし、私たちはちょっとのんびりさせてもらいましょう。
 面倒なことは男連中に任せればいいしね。あ、姫路さんもいーのこと使ってもいいわよ」

言いながら、ハルヒは鞄からドーナツの箱をいくつも取り出し、それを次々と並べてゆく。
あっという間にテーブルの上はドーナツでいっぱいになり、食欲をそそる甘い匂いが部屋中に満ちる。
瑞希はドーナツの山に瞳を輝かせながら座布団の上に座る。そして、テーブルの上の湯のみを手に取った。
一口飲んでみると、彼女が淹れてくれた温かいお茶は、身体の中の緊張を溶かしてくれるようでとてもおいしい。

あの時――温泉施設の前でハルヒの姿を見た時、瑞希は気絶しそうなぐらい驚いた。
彼女があの朝倉涼子と同じ制服を着ていたからだ。そして、自己紹介で彼女は涼宮ハルヒだと名乗った。
多分、ひとりきりだったなら声をかけることもなく見かけただけで逃げ出していただろう。

「……………………」

朝倉涼子のことをより詳しく話し、そして彼女からも聞くべきなのだろうか。瑞希は考える。
しかし、もしかしたら彼女に嫌われてしまうのではないか。そんなことはないと思うのに、躊躇ってしまう。
いやそれよりも、本当はまだ彼女を信じきれてないのではないか、朝倉涼子のように突然牙を剥くのではと
考えている部分があるのかもしれない。人を信じきれないことに瑞希は申し訳なさと悲しみを覚えた。



何も言い出せないままの時間が過ぎ、
瑞希がフレンチクルーラーをもふもふとひとつ食べ終わったちょうどその時、千鳥かなめが戻ってきた。

「ただいまーっと、姫路さん着替えたんだ。その制服かわいいねー。姫路さんの学校の制服?」

かなめはさっきと同じ場所に腰を下ろすと、自分でお茶を入れてグっと一気に飲み干した。
大きな息を吐き、部屋の中を見渡してそしてようやくここにいるべき人間が何人か足りないことに気づく。
86 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:08:04 ID:iZA3OCh7
「あれ? 当麻といっくんはどこにいったの?」
「姫路さんが着替えるから出て行ってもらったの。
 それで、じゃあそのついでに千鳥さんの言ってたガウルンっていう人のを、……見に行くって」

なるほどねぇ。と、かなめは大量にあるドーナツからゴールデンチョコを選ぶと、パクリと食いついた。

「それで、川嶋さんの方はどうなの? ひとりで大丈夫?」
「うん。この廊下の突き当たりの部屋でね、今は一人になりたいって。
 フロントから鍵持ってきて戸締りはしてもらったし、なにかあったら内線使ってとは言ってあるから、一応は大丈夫」

言って、かなめはポケットの中からいくつかの鍵を取り出した。
鍵そのものは極普通のもので、それぞれに部屋の番号が記された棒状のキーホルダーがついてる。

「これがこの部屋の鍵。
 で、他の部屋のも一通り持ってきといた。寝るんだったら男連中には別の部屋使ってもらいたいしね。
 それで……これがマスターキー。どこでも開けられる鍵ね。何かあった時はこれ使って助けに行くから」

かなめは並べた鍵をジャラジャラと掻き集め、とりあえず使わない鍵は部屋の脇へと寄せた。
そして、この部屋の鍵はテーブルの真ん中に置き、マスターキーは自分のポケットの中に仕舞いこむ。

「じゃあ当麻たちが戻ってくるまでの間、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」

かなめはドーナツをまたひとつ取り、何気ない話のようにそれを切り出した。



「姫路さんを襲ったっていう朝倉涼子って子だけど、涼宮さんのクラスメートなんだよね?」

瑞希の中で心臓がドキリと音を鳴らした。

「んー、正確に言うとクラスメイトだった……よ。だって、一学期が終わる前に転校しちゃったもの」
「へぇ、そうなんだ。それで涼宮さんとは仲良かったの?
 その……、彼女のほうはあなたにかなり入れ込んでるみたいなんだけど」

ハルヒの顔が曇る。
いくら与り知れぬところとはいえ、自分のせいで被害を受ける人が出るというのは心苦しいものだろう。
そう瑞希は解釈した。口は出せない。出す資格もない。だから瑞希は聴いて観ることに徹する。

「……ちょっと見当もつかないわ。
 仲が悪かったってこともないし、彼女はクラス委員としては真面目で私にもよくしてくれたんだけど、
 でも言ってみればそれだけよ。学校の外じゃ会ったことないし、友達というほどでも……」
「そっか。じゃあ、朝倉って子が何を考えているかはわかんないか……」

かなめは腕を組んで溜息をつく。ハルヒも小さく息を吐くと腕を組んで同じように目をつむった。
瑞希も、溜息をついたり腕を組んだりはしないが、がんばって考えてみることにする。
辛い記憶ではあるが、その分鮮烈でもある。自分の記憶が助けになればと、その時を思い返し始めた。
そして、些細だが違和感のあるあることに気づく。
新しいメモ用紙に鉛筆を走らせ、それをかなめとハルヒの前へと差し出した。

「”涼宮ハルヒとずっとフルネームで呼んでいた”。かぁ……なるほどちょっと変だね。
 朝倉さんっていつも涼宮さんのことフルネームで呼んでるの?」
「別に、クラスでは普通に苗字で呼んでたけど……どうしてかしら?」

かなめは腕組みしたままで目をつむる。そしてしばらくしてハッと開いた。なにかに気づいたらしい。
87 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:08:47 ID:iZA3OCh7
「あのさ、転校のことなんだけど、なんかそこに変わったことはなかった?」
「変わったことっていうか、あれは明らかに何か変だったわ。
 前触れもなくその日になって急に海外に転校だってことになって、それで先生も驚いてたみたいだし。
 さすがに私もおかしいと思って、だからちょっと調べてみることにしたんだけど――」
「ふんふん、それでどうだったの?」
「それが、全然。
 彼女の家に……マンションだったんだけど行ってみたら、その日にはもぬけの殻になってて。
 管理人さんとかにも聞いてみたけど、誰も彼女がいつ引越ししたのか、連絡先だとかも知らなかったの」
「朝倉さんとはそれっきり?」
「ええ。こんなところで一緒になるなんて……しかもこんなことをするなんて驚いたわ」

薄気味悪い話だと瑞希は思った。
いきなり消息がわからなくなるなんて、それこそ神隠しか宇宙人の誘拐みたいである。
もしそんなことが起きたのだとしたらと想像すると、記憶の中の彼女がより不気味な存在だと思えた。

「……心当たりがあるかもしれない。もし私の思っている通りなら色々と説明がつくわ」

かなめは何かに納得すると、うつむいていた顔を上げてまっすぐ前を見ながらそう言った。
瑞希は、そしてハルヒも彼女に注目して耳を傾ける。一体、彼女はどのような解答を持っているのか。

「私の周りでも似たようなことがあったんだよね。
 まぁ、それは私の場合まだ現在進行中とも言えるんだけど――」

言いながらかなめは一枚の紙を取り出してそれを広げた。何かと思い覗き込むとそれは名簿だった。
かなめは羅列された名前のひとつに指を当てて話を続ける。

「この”相良宗介”ってのが私のクラスメートなんだけど、実はなんとかって組織の傭兵だったりするの。
 まぁちょっと胡散臭いってのは否定しないけど、本当のことだから信用して。後、これは他言無用でお願い。
 それで、なんでソースケが私のクラスにいるかって言うと、それは私を守るため。
 私ってばひょんなことからテロリストに目をつけられちゃってさ、
 だから極秘任務としてソースケが私を守る為に学生として学校に入り込んできたって話なの」

出そうと思っても今は出ないのだが、ぽかんと開けた口からは言葉が出なかった。
宇宙人。異世界人。超能力者。傭兵やテロリストも、日常の中ではそれらと等しく荒唐無稽に思える。
でも、かなめの周囲ではそれが日常なのかもと瑞希は思いなおした。
記憶が確かなら人型の起動兵器が闊歩する世界のはずだ。ならばそんなこともあるのかもしれない。

「ちなみにそのテロリストってのは、ここの女湯で死んでたガウルンってやつなんだけど。
 まぁ、それはいいとして私が言いたいのは涼宮さんと朝倉さんもそれと同じじゃないかってこと」
「えっと、それってつまり私がいつの間にかにテロリストに狙われていて、朝倉さんが傭兵ってこと?」
「傭兵かどうかはわかんないけど、そういうのだったら辻褄があうと思っただけ。
 知らないうちに涼宮さんは世界の秘密かなんかに触れていて狙われる身だったの。
 そこで朝倉さんが涼宮さんを守るために派遣されてきた。
 で、一旦は問題は無事解決して彼女は姿を消したんだけど、今回の事件が起きて――」
「――また私を守る為に働いてる? あの、朝倉さんが?」

ハルヒは身体を大きくのけぞらせるとうーんと唸り声をあげた。さすがに、簡単には受け入れられないらしい。
やっぱりかなめの言うことは荒唐無稽に思える。まるでスパイ映画かライトノベルのあらすじみたいだ。
けど、どうしてか。瑞希の目にはハルヒの表情は困っていそうでどこか嬉しそうにも見えた。
88 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:09:34 ID:iZA3OCh7
「そういえば、千鳥さんが狙われた理由って何? 失われたアークでも見つけたとか?」
「えぇ? あぁ、理由か。さぁ、……なんだろう。あたし自身よくわかってないのよね。
 お父さんが国連の高等弁務官だったりするから、その関係かな……?」
「へぇ、なんかすごい。私の家なんか全然普通なのに」

結局のところ。朝倉涼子がどういった理由でハルヒを守ろうとしているのか。その答えは出なかった。
やはり――瑞希としてはもう会いたくないのだが――彼女に直接会って確かめるしかないらしい。

「朝倉さんを見つけたら絶対、姫路さんに謝らせるからね。任せておいて」

ハルヒはまっすぐに、力強い表情でそう断言する。
それが本当にできるのか。とても危険なことじゃないかと、瑞希はそう想像し少し身体が震えたが、
けど彼女の真摯な眼差しに見つめられると、どうしてかそんなことは些細な風に思えて、
少しだけだけど安堵の笑みを浮かべることができた。
89 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:12:10 ID:Ie7pc5ui
支 援
90 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:13:14 ID:A8FeKXlr
支援
91 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:13:17 ID:Ie7pc5ui
支援
92 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:14:27 ID:Ie7pc5ui
支 援
93 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:17:11 ID:Ie7pc5ui
支援
94 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:18:45 ID:Ie7pc5ui
支 援
95 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:19:52 ID:Ie7pc5ui
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96 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:21:09 ID:Ie7pc5ui
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97 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:21:21 ID:iZA3OCh7
 【第三殺害現場 《クビキリメンバー》 -実地検分】


そこはそこでまた、これまでの二つとは異なる印象を持つ殺害現場だった。

これまでの殺害現場を、例えばアスファルトの上にグロテスクを晒したあれを無惨な殺害現場とするならば、
例えばミステリの1シーンのような流血に彩られたあれを無慈悲な殺害現場とするならば、
ここは、流れる湯の音と白い湯気に包まれたこの現場は、まるで無感動な、白けきった殺害現場だった。



「血が流れてないってのも……けっこう、それはそれで不気味っつーか、なんか違和感あるな」

現場を見に行きたいと言ったぼくに同行してくれた上条くんが、死体を覗き込みそんなことを言った。
こんな状況での単独行動には色々と問題があるので、快く同行してくれたのには感謝である。

さて、死体であるけれども、現場は温泉――と言っても銭湯の風呂場となにが変わるというわけでもないのだが、
そのタイルが敷かれた床の上に横たわっていた。
浴槽から流れ出るお湯が床を洗い続けているので、彼が言うとおり現場にはもう血の痕跡はほとんどない。
そして血に塗れていない死体はその生々しさだけが浮き彫りになって、やはり彼が言うように不自然な存在であった。

「この分だと、いわゆる証拠ってやつも流れちゃってるんだろうな。誰がやったなんかわかりっこねぇ」
「別にそれはいいよ。ぼくたちの中に犯人がいないってことが信用できれば、今はそれで十全さ」

実際、どれだけの登場人物がここを訪れ、そして今も潜んでいるかなんてわかりっこないのだ。
なので、ぼくは犯人を特定すること自体に興味はない。6人の中に犯人がいないと証明することが最重要課題なのだ。
今はまだ亜美ちゃんが部屋を別にするぐらいで済んでるけど、これ以上のトラブルはぼくのキャパを超えてしまう。

「しかし、凄腕のテロリストだっけ?
 正直なところ、ぼくはこの人がこうやって黙った状態になっていることに安心を覚えるよ」
「そりゃあ、俺もこんなゴツいオッサンとか相手にしたくねぇけどよ。それは死んだ人に悪くないか……?」

この死体となっている人物は、千鳥さんによるとガウルンと名前の国際的テロリストらしい。
そのスキルがどういったものかまでは聞いてないけど、しかしその身体の大きさだけで脅威としての説得力は十分だった。

黒桐って人や北村という人物。忍者の人など、ここには後3つの死体があったけれど、その体躯はどれも標準程度だ。
それに比べてこのガウルンという人物は、落ちた頭と身体とを合わせて見積もれば2メートル近くもある。
しかもその上、細身ではあるが引き締まった筋肉の持ち主でもあり、体躯とは関係ないが傷のある顔もやけにいかつい。
本当。こんなのと殺し合いなんかするはめにならなくてよかったと、心底思える人物だった。
しかし、考えてみれば彼を殺したという人物もどこかに存在するわけで、脅威の問題は解決はしていないのだが。
98 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:22:06 ID:iZA3OCh7
「しっかし、こいつも綺麗に切られてやがるな……」
「こいつも? 上条くんはどっかで似たような死体を見たことがあるのかい?」
「似てるといえば似てるんだけど、全然違うとも言えるかなぁ。
 学校で見た死体の話なんだけど、あれもこの死体みたいに切り口がいやに綺麗で印象に残ってんだ。
 まるでワイヤーで引いて切ったみたいにってな。
 もっとも、あっちは全身バラバラでこっちは首だけだから、やった人間が一緒かはわかんねぇけどよ」
「ふぅん……」

なるほど。確かに首の切断面は異常に綺麗だった。血がお湯で洗い流されている分、それがよくわかる。
剣術のスキルがあれば一刀両断ということも可能だろうが、上条くんの言うとおりワイヤーを使ってというのも考えられるか。
例えば、”曲絃糸”のような。もし”ジグザグ”な彼女がここにいればこんな現実を実現させることも可能と、そう言える。

「……戯言だけどね」
「ん? なんか言ったか?」
「いいやなんにも。気にしないでくれ」

しかし、学校の廊下に”ジグザグ”にされた死体……か。否が応でも”彼女”のことを想起してしまう。
無論。彼女はすでに死者であるので、こんなところで再登場するわけない。あくまでこれはぼく個人の妄想でしかない。
似たようなスキルの持ち主がこの場所にいる――それはそれで剣呑だけど、そう考えるのが現実的思考だろう。
99 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:22:53 ID:iZA3OCh7
スキルの持ち主と言えば、北村くんと忍者の人を殺害したのは”師匠”と呼ばれる人物である可能性があるんだっけか。
名簿上には確かに”師匠”という名前が記されているが、この呼称もまた”彼女”の存在を想起させる。
なんにせよ、それはぼく自身の感傷や思い出といったものでしかないけど。



「じゃあ、いっくん手伝ってくれるか?」
「手伝う?」
「ああ、このオッサンの死体。このままにはしておけねぇだろ?
 また誰かが風呂を使いたくなるかもしれねぇし、こんな湿っぽくて熱い場所に放っておいたらすぐに腐っちまう。
 大体、悪人って言ってももう死んだ人だしな。
 墓までは無理でもどっか落ち着いた場所くらいにはってのが、上条さんとしての礼節なわけですよ」
「なるほどね。それは賛成だ。少なくとも腐った死体なんてのは見たくもないしね」

幸いと言っていいのかどうか、死体は死後硬直が始まっているようで運びやすい状態だ。
上条くんの言うとおりこんな場所でほっとけば遠からず崩れてぐずぐずになってしまうだろうし、移動させるなら今の内だろう。

ぼくは死体の足元に回ると硬くなった足首を掴んで持ち上げた。
上条くんは”頭のない頭側”に回って、転がっていた頭部を身体の上に乗せてから肩を掴んで持ち上げる。
見た目どおりの重さだ。こいつはちょっとした棚なんかを運ぶ感覚に似ている。
そして既視感を感じる行為でもあった。
首切り死体の移送。それをぼくはこの春に2回も経験している。あれを2回と言うか1回だと言うかは微妙なところだけど。

「後で北村や黒桐さんの死体もどうにかしてやらねぇとな。あっちもあれでほったらかしじゃ悪いし」
「上条くんはなかなかに”いい人”だね」
「そんなことねぇよ。俺はただ自分の気持ち悪いことに我慢ができないってだけだから」
「普通の人はそういう時でも面倒くさがったり損得を考えちゃうものさ」
「だったら俺は頭が悪いだけだ。損な役回りだなって思うことばかりだしな」
「まぁ確かに、美徳と最善最良は似て非なるものだよね」

そして、ぼくと上条くんとは濡れた足場で足を滑らせないよう一歩ずつ慎重に浴室の中を横切ってゆくのだった。
100 名前: 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:27:41 ID:Ie7pc5ui
 【第三殺害現場 《クビキリメンバー》 -検証】


運び出した死体を適当な空き部屋に安置したぼくと上条くんはその後、皆の待つ客間へと戻っていた。
途中、部屋の番号をド忘れして迷子になりそうになったけど、そこは上条くんの記憶のおかげで事なきを得て、
同じく戻ってきていた千鳥さんに女湯での成果を報告し、お茶をいただいて一息をついたというところ。

「なんですか、女の子は甘いものでできてるって本当なんですか――って、なによこの大量のドーナツ?」
「ああ、これは涼宮さんが持ってきてくれたんだけどね。当麻は甘いもの苦手だっけ?」
「いや嫌いじゃねぇよ。むしろ糖分の補給はありがたいですよ。けど面食らったっていうか、まぁいただきます」
「上条くんもじゃんじゃん食べていーからね。まだまだあるし」

なんというか和やかな空間になっていた。あのビクビクしていた姫路さんも今ではもふもふしている。
ミスタードーナツ万能説か。いや、やっぱりドーナツには人を馬鹿にする成分が混じっているのかもしれない。
どうせなら亜美ちゃんも戻ってくればいいのに。フレンチクルーラーもいっぱいあるのだから。



「それで、千鳥さんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「ん? いいけどなに?」

ほうっておくと皆がドーナツを食べるだけの人間になってしまいそうな錯覚を起こしたので自分から話を振ってみる。
この場所におけるミステリ的な状況のうち、大体は概要を掴めたのだけど、まだひとつ不明な部分が残っているのだ。
正確にはこの場所の外で起きたことだけど、風呂場の死体と大きな関連性があると見られるので無視はできない。

「千鳥さんが遭遇したっていう”櫛枝実乃梨”の姿をした何者かについてなんだけど」

なにがミステリかというと、これこそミステリというものが最後に残っていたこれだ。
千鳥さんいわく、偽物の登場である。怪盗百面相もかくやとなれば、もうミステリというより古い探偵小説の趣だった。

「ああ、それのことね――」

経緯を説明するとこういうことだ。
温泉施設に向かっていた千鳥さんは、その温泉施設の近くで櫛枝実乃梨と再会した。
再会ということは既に面識のある人物であり、彼女は特に警戒することなく櫛枝さん(?)と会話をする。

その櫛枝さんが言うには、
温泉施設の中で北村くんの死体を見て、千鳥さんと上条くんの仕業じゃないかと思って彼女らを探していたらしい。
だが幸いにも誤解はすぐに解けた。
そして、櫛枝さんは温泉施設の中にガウルンとおぼしき人物が入っていったから気をつけろとも助言してくれたのだ。
101 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:30:58 ID:iZA3OCh7

ところがここらあたりから彼女の言動がおかしくなる。
武器になるものがあるかと尋ねられた千鳥さんがスタンガンを見せると、それが何なのかわからなかったらしい。
千鳥さんはスタンガンの説明をしているうちにそれに気づくが、そこで唐突に投げ倒され、気絶させられてしまった。

しばらくして気づくと櫛枝さんの姿はなく、自分の荷物も持ち去られたらしいとわかる。
さて困ったが、上条くんとの約束もあるので千鳥さんは危険を承知で温泉施設へと向かうことにした。
そこで――

「――ガウルンが死んでるのを見つけたのよね」

ついでに、ガウルンが持っていたらしい銛撃ち銃と、気絶している間になくなっていた鎌もそこで見つかった。
もっとも、どちらも壊れて使い物にならなくなっていたので、この部屋を掃除する際にゴミと一緒に捨ててしまったが。
重要なのは鎌の方だ。奪われた物がそこにあったということは、つまり奪った者がガウルンを殺したと推測できる。

「その、櫛枝さんって前の放送で名前を呼ばれちゃってた、わよね……?」

ハルヒちゃんがおずおずと尋ねた。その通り、彼女の名前は呼ばれている。
つまりすでに死んでしまった人間だということなのだけど、そこが問題をややこしくしていた。
彼女が存命なら、また会った時に問いただせばいいと結論は出るのだが、もういないのならそうはできない。
102 名前: 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:37:40 ID:Ie7pc5ui
「だったらあれか? 櫛枝が千鳥から武器を奪って温泉まで戻り、そこでガウルンってオッサンを殺して
 でもってその後すぐに他の誰かに殺されちまったってことになるのか?」

ひとつの可能性としてはそれも考えられた。
しかし時間的余裕や、千鳥さんや上条くんらの知る櫛枝実乃梨のパーソナリティを考慮すると大きな疑問が生じる。

「亜美は絶対偽物だって言ってたし、私もあれが本物の櫛枝さんだとは思えないのよねぇ……」
「だとすれば誰かが変装していたってことも考えられるね」

こういった状況下であるし、ましてや一度しか会っていない相手だ。
同じ制服を着たり、特徴を少し掴んだ姿をしていれば本物だと勘違いさせることは決して難しくはないだろう。

「だったら能力者ってのも考えられるぜ。
 学園都市には相手の感覚に偽の情報をつかませて、姿を消したり別の人間だって思わせるやつもいるんだ。
 そういう能力者や魔法使いみたいなのが千鳥を騙したのかもしれない」

変装の達人と言えばぼくはあの人を思い浮かべるが、なんにせよ一時的に騙すぐらいなら不可能ではないということだ。
そして、千鳥さんの前に現れた櫛枝さんが偽物だとすると今度は別の問題が生じる。

「えっと、じゃあ……なんでその櫛枝さんの偽物は千鳥さんのこととか北村くんのことを知っていたわけ?」

ハルヒちゃんの言うとおりだった。
偽の櫛枝さんとおぼしき人物は、本人かまたは彼女の近くにいた人物でないと知りえないことを知っていた。
そうだとするとあまり愉快ではない想像をしなくてはならないことになってしまう。

「ひとつの可能性としては、彼女と同行していた人物の中にその偽物になった人物がいたことになるね」
「木下さんか、シャナちゃんってこと? でも木下さんは亡くなってるし……」
「シャナがってのもちょっと想像できないな。絶対とは言えないけど、そんな柄には見えなかったぜ?」

千鳥さんが櫛枝さんと交流した時、その場にいたのは上条くんと、木下さんとシャナという少女がいたという。
もし犯人がいるとするならばこの中に潜んでた可能性が高い。
となると消去法で考えるとシャナという子しかいなくなるのだが、どうやら千鳥さんと上条くんはありえないと思っている。
だとすれば、どこからならば千鳥さんと櫛枝さんの情報を得られるのか?
盗み見していた人物がいたとも考えられるが、それよりも妥当で説得力のある解答がひとつ存在した。

「それじゃあ、こう考えるしかないね。偽者の櫛枝さんに千鳥さんの情報を教えたのは”櫛枝さん本人”であった」

これが、一番妥当で説得力のある答えだ。
103 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:38:44 ID:A8FeKXlr
支援
104 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:39:24 ID:iZA3OCh7

「どういうことなのいっくん?」
「何も彼女が進んで話をしたとは限らない。
 彼女がもう死んでいる以上、無理やりに情報を吐かされ、その後入れ替わるために殺害された可能性がある」

犯人に自由に変装できるスキルがあり、ある程度腕に覚えがあって、偶然を挟まないとするとこれが最もありえる。

「なんにせよ、本物の櫛枝実乃梨を殺した人物と、その偽者となった櫛枝実乃梨とが同一なのは間違いないと思う。
 多分だけど偽物が千鳥さんに語った櫛枝さんの動向は真実じゃないかな」
「私を探してたってところ?」
「そう。本物の櫛枝さんも、本当にひとりで千鳥さんを探してここを出た。
 けれど運悪く、偽物となった人物に行き当たってしまった。
 そしてなんらかの方法で事情を聞きだされ――それは穏便なものであった可能性も充分あるけど、
 相手に有益だと思われてしまい、入れ替わりのために……つまり、入れ替わる以上本物は邪魔になるので――」
「――殺されたっていうのかよ」
「そうだね。それで衣装や荷物を奪われたと見るのが、今のところは一番想像しやすい真相かな」

もっとも、言葉の通りに今のところは一番想像しやすいというだけにすぎない。
ぼくが今思いつくパターンの中では可能性が高いだろうというだけで、実際の真相に近い保障なんてできやしない。
なにせ情報が圧倒的に不足しているのだ。あらすじだけでミステリを解いてみようとするようなものである。
実際に無視できない穴はある。例えば千鳥さんはどうして殺されなかったのか等々。疑問を数え上げればきりはない。
けど、この場においての着地点としては上々なはずだ。
105 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:40:10 ID:iZA3OCh7
「じゃあ、今頃シャナはどうしてるんだろうな?」
「ここから櫛枝さんが飛び出して行ったって言うのが本当なら、シャナちゃんも追いかけて行ったと思うけど」
「それで誰かに襲われて木下が……か?
 どっちにしろ、入れ違いになったのは変わらないみたいだな。
 だったら、涼宮が言ったようにこっから教会に向けてひとつずつ当たって行くのがいいんじゃないか?」
「そうよね。ソースケもどこにいるのかわかんないし、地味にいっこずつ見て行くのがいいみたい」

うん。これは悪くない展開のはず。
もっとも、ぼく自身に”無意式”がある以上、100%の保障はできないのが辛いとこだけど。おそらく、今は大丈夫なはずだ。
あれはあくまでぼくの外側にある流れを破綻させるものだから、ぼく自身がこの流れの中で前を向いている限りは……、

おそらく。
きっと。
多分。
楽観的に見れば…………、ちょっと自信なくなってきたけど、どうかうまくいきますように。……ねぇ、神様?

「じゃあ! そうと決まればちょっと休みましょう。川嶋さんも説得しないとだしね!」






「それで、川嶋さんの機嫌がなおったらみんなでまずは学校に向かいましょう!」
「おいおい待てよ涼宮。みんな疲れてるはずだし、腹ごしらえもだな――」
「ここにたくさんあるでしょう?」
「だからドーナツだけでなくてだな、上条さんはこう晩飯的なものをいただきたいと思ってるわけですよ。
 その、主にたんぱく質だとか脂質だとか」
「ああ、別に勝手にすればいいけど。そう言えば、私もここで温泉に浸かりたかったのよね。
 1日に1回ぐらいはお風呂に入っておきたいし、せっかく温泉が目の前にあるのに入れないのは癪だわ」
「別にそれはいいけど、単独行動は危険だよハルヒちゃん」
「だったらあんたが見張りに立ちなさいよ。でも覗いたら絶対死刑だけどね」

「姫路はどうする……って、ちょっと大丈夫か?」
「……………………」
「色々あって疲れてたのよね。
 今は休むといいわよ。あたしがお布団引いてあげるし……ってことで男子は退出ー!
 そこに鍵があるから適当な部屋に……じゃなくて隣の部屋にいなさい。なんかあったら呼ぶから」
「まぁ、別にいいけどよ。じゃあ晩飯はどーすんだ? どーせ作るんならあんま量は関係ねーけど」
「じゃあ私たちの分もお願いしようかな。なんならあたしも手伝うけど?」
「千鳥さん。そんなの、いーにやらせればいいわよ。ねぇ、料理ぐらいできるんでしょう?」
「まぁ、いいけどね。上条くんが言うとおり量は増えてもそんなに手間は変わらないよ」

そしてぼくは上条くんと一緒に追われる様に、もしくは解放される様にその部屋を後にした。

仮初めの平穏はまったくもって戯言のそれでしかないけれど。戯言で築き上げられた砂上の楼閣にすぎないけれど。
ばくたちは今、死体に囲まれていて。そしてその外側には更に多数の死体があり、死体の数だけ殺人があるけれど。
状況は、これっぽちも変化しておらず、ぼくらは未だ絶望する中にしかいないのだけれども。そうでしかないのだけど。

まぁ、それでも。今はこうでもいいんじゃないかと、思った。ここにはこんなにも心地よい人間ばっかりなのだから――


この6人ではミステリは発生しえない。それが今唯一の、ぼくが保障できる解答だった。
106 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:40:55 ID:iZA3OCh7
 【エピローグ 《melancholy girl x0》】


ゴウンゴウンゴウン――と、金属の桶がぐるぐると回っている。率直に言えば洗濯機がぐるぐると回っていた。
ここは温泉施設の中にある洗濯室。コインランドリーのような場所と思ってもらってくれればかまわない。

あの後、ぼくと上条くんは女性3人が陣取る部屋の隣にぼくたちの部屋を確保した後、すぐにそこを出た。
そして上条くんが下水の匂いが染み付いた制服を洗濯したいと希望したので今ここにいるのだ。
姫路さんならともかく、上条くんの体操着姿なんかずっと見ていたくもないのでぼくは一も二もなくそれに賛成した。



「悪いな。つきあわせちまって」
「いやいやこちらこそどういたしましてだよ」

見納めだからといっても、ぼくは上条くんの体操着姿を凝視することなどなく、何もない壁を見ながら思索に耽る。
とりあえず、慌しい状況が落ち着いたので、現状の確認と今回の自己採点だ。

今現在、亜美ちゃんだけは別室に引き篭もっているという状況だけど、人間関係はそこまで悪くはない。
千鳥さんや上条くんは言うに及ばず、姫路さんの状態もこの人間関係の中なら大丈夫だろう。
懸念しておかねばならないのは、彼女が殺害した黒桐幹也の関係者であると想像できる黒桐鮮花の存在だ。
姉か妹か母か従姉妹かは知らないけど、無縁でないとするならば恨みを買ってもしょうがない。

まぁ、それはその時として、ハルヒちゃんの状態も良好だ。
どうやら彼女は人がたくさんいる場合の方が気丈になるらしい。今までよりも明るい顔が何度も見れた。
流れとしてはこの後、いくつかのミステリアスなスポットを当たって行くわけで、
その場所自体にはなんの期待もないけれど、ハルヒちゃん自身がそこに”当たり”を生む可能性には期待できる。
それもその時だけど、都合よくことが運べば思ったより早くに解決の糸口みたいなものが見つかるかもしれない。

となると、問題は引き篭もった亜美ちゃんの存在か。
しかしぼくは女の子をかどわかすスキルなんて所持はしていないので、これは時間に頼るしかないだろう。
おそらく、こちら側が楽しくしていれば亜美ちゃんも姫路さんへの疑いを緩くするはずだ。
所謂、天岩戸作戦。まぁ、これは千鳥さんやハルヒちゃんに任せておけばいい。
時間がかかってしまうのも仕方ない。
元々1日の4分の1ぐらいは休息に使わねばならないのだから、今というタイミングは丁度いいと前向きに捉える。

で、自己採点だけど……ぎりぎり60点ってところか。赤点は免れたけど、満点には程遠い。

表面上の問題はだいたい取り繕った。ここらへんは戯言遣いの面目躍如である。
この6人のグループ内において大きな問題がすぐに噴出することはない。この点はクリアだ。

しかし、外側の脅威に対する策はこれっぽちも用意できていなかった。
第一の殺害現場の犯人は素人――つまり姫路さんの犯行であって、これはもう脅威足りないけど、他は違う。
朝倉涼子に師匠と呼ばれる人物。そして櫛枝実乃梨を騙った何者か。どれも対抗するにはリスクの大きな相手だ。
そして、脅威の数はそれだけではないだろう。
実効的な実力による脅威いう意味においてはこの6人は脆い。むしろグループと化したことでなお脆くなった。
この点はぼくにはフォローできない。
そういう意味では60点は満点だと言えるけど、しかしそんな自己満足じゃぼくたちはぼくたちの命を守れない。

「ほんと、なんであいつは死んでしまったんだ。ぼくから見れば唯一の頼れる実力者だったのに――」



「なにか言ったか、いっくん?」
「ああ、なんでもないよ。ただのないものねだりさ」

……なんでみんなよりにもよって”いっくん”なんだろうね。上条くんにしても千鳥さんにしても。
まぁ、彼らに”いーちゃん”とは呼ばれたくないし、
”いの字”とか”いのすけ”なんかよりかは”いっくん”が選ばれやすいんだろうというのは承知しているけど。にしてもだ。
107 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:41:08 ID:A8FeKXlr
支援
108 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:41:58 ID:iZA3OCh7
「そうだ上条くん。ひとつ質問してもいいかな?」

ぼくのことを”いっくん”と呼ぶのなら。これも懐古のひとつだけど、この質問を彼にぶつけてみよう。

「君は、姫路瑞希を――殺人者としての姫路瑞希を許容できるのかい?」

庇護されるべき女の子としての姫路瑞希じゃない。殺人を犯した事実を持つ姫路瑞希を――だ。
それはつまり、現実的な妥協という意味での許容ではなく。一個人の価値観として殺人を許せるのかと認めるかということ。

「彼女のことを可哀想だって思ってあげることは容易い。彼女のことを保護するのは男性としてはある意味当然だ。
 けど、そういう問題ではなく、君は彼女が殺人を犯したという事実をどう捉えているのか、それを聞いてみたい」

本来ならば、この質問は姫路さん自身にぶつけるものだから、これは所詮戯言、所謂余興にしかすぎない。
ただの興味本位だ。上条当麻という人物が何者かであるのか。そこに対するちょっとした好奇心。

「そんなことは関係ねぇよ。やったことはやったことだ。”覆水盆に返らず”ってぐらいならこの上条さんだって知ってるぜ。
 姫路が黒桐さんって人を殺したのは事実だ。
 だからもしここに警察がいるってんなら、俺は姫路が警察に行くよう説得するだろうし引っ張ってでも連れて行く。
 姫路の罪自体を受け入れたり許したりってことはしない……っていうか、それは俺のすることじゃない。
 俺には姫路を裁く権利なんてねぇよ。だから罪を許容するとかしないとかは関係ないんだ。
 そして、俺は姫路を守る。
 誰にだって姫路をいたずらに傷つける権利なんてないし、そんなことは罪とは関係なく許されるもんじゃない。
 だから俺はここで最後まで姫路を守るって決めたんだよ。
 姫路を傷つける何者からも、姫路が自分自身を傷つけちまうってことからもな」

「どうして、君は姫路さんを助けるんだい?」

「困ってて助けを求めてたんだ。だったら助けるだろ。女の子でもオッサンでもな」

それが上条当麻の解答。

あぁ、戯言だ。この場合はぼく自身の存在がまごう事なき戯言。
彼は――上条当麻はぼくの意地悪に対し、見事なカウンターを返して見せた。
あまりに綺麗に決まりすぎて気持ちがよくなるくらいの一撃。そう。これこそが”正解”というものだ。
109 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:42:31 ID:Ie7pc5ui
支援
110 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:42:50 ID:iZA3OCh7
そして、”とある彼との共通点《メインヒロイン》”。

「そう言えば、いっくんも学校の校庭に書かれてた魔方陣みたいなのを見てたんだっけ?」
「ぼくは夜のうちだったから、そこにあると気づいたくらいだったけどね。上条くんは何かわかったのかい?」
「いんや。俺にはさっぱり――ここにインデックスがいたらなにかわかると思うんだけどな……」
「インデックスというと君が探している女の子だっけ?」
「ああ。いっくんのほうは玖渚友って女の子を探してるんだよな?
 まぁ、こっちの話だけどあいつは魔術(オカルト)の専門家だからな。それが魔術関係ならわかったろうになって話」
「なるほどねぇ。こっちのあいつは電子(デジタル)の専門家だけどね。だからこの場合は役に立たない。
 でも、記憶力だけは異常だからね。こういう場合、常に隣にいると便利なんだけど」
「インデックスも記憶力はすごいな。読んだ本の1頁1文字すら忘れない。
 もっとも食欲の方がすごいけど……あいつちゃんとメシくってるのかなぁ……」
「あいつは普段は食べないくせに食う時は異常に食うしなぁ。今がその飢えてる時でないといいけど……」
「玖渚友って子は小さな女の子だっけ?」
「インデックスって子は小さな女の子だっけ?」
「そうだな。ついでに貧相なお子様体型《ロリータ》だ」
「そうだよ。ついでに貧相なお子様体型《ロリータ》なんだ」
「…………」
「…………」
「早く無事見つかるといいな」
「早く無事見つかるといいね」



あの零崎人識を鏡の向こう側の自分とするならば、上条当麻は夏休み前に立てたスケジュールみたいな存在だった。
つまり、ある時描いた理想形というやつ。

ぼくと上条くんはおそらく、多分、本質や素材という部分で相似する部分が多くあるとそう思う。
そしてぼくは夏休みの宿題なんかこなす意味はないと置き去りにした結果、最後に痛い目を見た捻くれ者の愚か者だ。
彼の夏休みはこれからだろう。
そして、彼はぼくとは違って必要以上に宿題をこなす人物に違いない。それこそ、人の宿題にまで手を出すような。

「上条くんは夏休みの宿題はちゃんと計画立ててこなすタイプ?」
「いやー、そうしないといけねぇとはわかってんだけど、毎年八月末に大童ですよ」
「そう。じゃあこれからはちゃんと最初からがんばれるようにするといいよ。
 機会があるならぼくも少しぐらいは手伝ってあげてもいいさ。こう見えても、勉強を教えるのは得意なほうでね」
「それはありがたい……けど、どうして急にこんな話題に?」
「ああ、それはね――」


――戯言って言うんだよ。






【E-3/温泉/一日目・夕方】
111 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:43:37 ID:Ie7pc5ui
支 援
112 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:43:49 ID:iZA3OCh7
【千鳥かなめ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康、まだ喰えるけど?
[装備]:とらドラの制服@とらドラ!、ワルサーTPH@現実
[道具]:デイパック、基本支給品x2、御崎高校の体操服(女物)@灼眼のシャナ、黒桐幹也の上着
      客間の鍵(マスター)、客間の鍵(女部屋)、客間の鍵(その他全部)
      血に染まったデイパック、ボイスレコーダー(記録媒体付属)@現実、不明支給品x1-2
[思考・状況]
 基本:脱出を目指す。殺しはしない。
 0:姫路さんを休ませる。
 1:亜美を説得。
 2:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 3:知り合いを探して合流する。
[備考]
 登場時期は、長編シリーズ2巻、3巻の間らへん。

※「銛撃ち銃(残り銛数2/5)@現実」と「小四郎の鎌@甲賀忍法帖」は遺棄されました。


【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:弦之介の忍者刀@甲賀忍法帖
[道具]:デイパック、基本支給品、大量のドーナツ@ミスタードーナツ
[思考・状況]
 基本:この世界よりの生還。
 0:姫路さんを休ませる。
 1:休憩しながら晩御飯を待つ。
 2:その後、出発までに温泉に入る。
 3:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 4:朝倉涼子に会ったら事情を説明してもらう。
[備考]
 登場時期は、一学期終了以降。


【姫路瑞希@バカとテストと召喚獣】
[状態]:失声症、左中指と薬指の爪剥離、微熱
[装備]:ウサギの髪留め@バカとテストと召喚獣
[道具]:
[思考・状況]
 基本:上条当麻と共に生き続ける。未だ辛いことも多いけれど、それでも生き続ける。
 0:安心したらぼーっと……。
 1:このみんなとなら一緒にいれそう。

※御崎高校の体操服から元々自分が着ていた制服に着替えました。
113 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 02:44:42 ID:Ie7pc5ui
支援
114 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 03:00:18 ID:iZA3OCh7
【いーちゃん@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:森の人(10/10発)@キノの旅、バタフライナイフ@現実、クロスボウ@現実
[道具]:デイパックx2、基本支給品x2、大量のフレンチクルーラー@ミスタードーナツ
      ブッチャーナイフ@現実、22LR弾x20発、クロスボウの矢x20本、トレイズのサイドカー@リリアとトレイズ
[思考・状況]
 基本:玖渚友の生存を最優先。いざとなれば……?
 0:何か腹にたまるものを作ろう。
 1:当面はハルヒの行動指針に付き合う。
 2:↑の中で、いくつかの事柄を考え方針を定める。
 ├涼宮ハルヒの能力をどのように活用できるか観察し、考える。
 └玖渚友を探し出す方法を具体的に考える。
 3:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 4:零崎人識との『縁』が残っていないかどうか探してみる。
[備考]
 登場時期は、「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身に打撲(軽)
[装備]:御崎高校の体操服(男物)@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣、不明支給品x0-1
      七天七刀@とある魔術の禁書目録、上条当麻の学校の制服(洗濯中)@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
 基本:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない。
 0:何か腹にたまるものを作ろう。
 1:姫路を守る。
 2:千鳥や一緒にいるみんなを守る。
 3:出発前に温泉にある遺体を安置したい。
 4:施設を回り、怪しいモノの調査。
 ├まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 └特に教会の地下は怪しく感じている。
 5:その最中に知り合いや行方知れずのシャナを探して合流する。


【川嶋亜美@とらドラ!】
[状態]:満腹、不安、疲労
[装備]:グロック26(10+1/10)
[道具]:デイパック、支給品一式x2、高須棒x10@とらドラ!、バブルルート@灼眼のシャナ、
      『大陸とイクストーヴァ王国の歴史』、包丁@現地調達、高須竜児の遺髪
[思考]
 基本:高須竜児の遺髪を彼の母親に届ける。(別に自分の手で渡すことには拘らない)
 0:……………………。
 1:祐作のことはどうしようか?
115 名前: トリックロジック――(TRICK×LOGIC)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 03:01:27 ID:iZA3OCh7
以上、投下終了しました。
今回は長くお待たせして申し訳ありませんでした。以後、こういうことがないよう注意します。

代理投下を終了します
116 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 21:06:02 ID:PWSWEMGD
>>115
投下も代理投下の人も乙です!
な、長い、すごい…そして、ロワで案外こういう「現場検証と推理」ってやらないだけに、新鮮だった!
それにしても、確かにインデックスと玖渚は共通点が多いw
117 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/07(木) 21:42:15 ID:MgrfSVd/
乙でした。戯言っぷり半端ねぇしブレねぇないーちゃんwww
場所が場所だけにしかたないってのもあるけど、やっぱり亜美ちゃんが空気悪くしてるな・・・
でも黒いものを抱え込んだままよりはマシなのか?
いい女っぷりが復活してくれればいいが

明日の夕飯はフレンチクルーラーにするか
118 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/10/07(木) 21:44:10 ID:MgrfSVd/
折角だしage
119 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/08(金) 01:08:30 ID:j1nVYHJY
投下、代理投下乙です

個性的な六人が集まって、戦闘力を除けば申し分ない対主催集団が出来ましたな
姫路さんに対する各々の対応が面白かったです
いーちゃんと上条さんが意気投合しているのはちょっと意外でしたwやっぱり立場的に似ているところがあるからかな?

後、誤字を発見したので報告します
トリックロジック 2の上条さん登場シーンで「冷たい言い方になつけれども」となっているところがありました。
また、これは仕様かもしれませんが、トリックロジック 1の最初の方で、「ミスタードーナツがミスタードナツである。」となっているところがありました。
ご確認ください。
120 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/10/09(土) 16:49:40 ID:68cj9zZG
投下を心待ちにしてました

なかなかミステリーな面子なのにミステリーに発展する要素がほとんどねぇなあ……
そしてかなめはあれだけ食べておいてまだ喰えるのかwwwwww

ところで今回で南組の出番も来ちゃったから、姫ちゃんと如月左衛門のコンビとは
エピソード投下する必要性も話の上では別になくても話は進められるし(日中からずっと
動かないことになるけど)
この次かこの三人の話を展開させたらついに放送か
121 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/10(日) 09:54:34 ID:qxupCdZe
この次かこの三人ってどゆこと?
122 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/10/10(日) 18:03:18 ID:z3cgUv8O
>>121
姫ちゃん、如月左衛門ペアと玖渚の話→狐さんの放送

この三人のエピソードを入れずに狐さんの放送に突入
どちらも何かしらアクションを起こさなくても放送に行けるからどうするのかな〜って
123 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/12(火) 16:51:06 ID:Ty3nURzd
対主催が六人も揃うとか次かその次が嫌な予感しかしねえ…
マーダー来たら…
124 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/12(火) 17:23:55 ID:Vv2y75EB
いーちゃんは若干ステルスマーダーの気があるけどね
同行の切っ掛けも落ちたし
125 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/12(火) 18:46:48 ID:+UHaHB6G
といっても、ここは対主催固まる所だしなー
神社、飛行場と主だったところは皆集団だぜ
126 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/12(火) 19:35:11 ID:cZA3MR2V
そう言えば
いーちゃん、ハルヒ、姫路(黒桐を殺した)、上条(トーチが消えたらステイルを忘れる)と
マーダーに因縁のあるキャラが多いな、この集団
いーちゃんもハルヒも姫路も亜美も上条も、仲間や好きな男を殺したのが最強クラスのマーダーだし
(長門、みくる、明久、土屋、北村、竜二、美琴、零崎)
127 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 00:23:36 ID:6+DpFU0Z
>>126
…榎本と黒桐以外は軒並み強マーダーの餌食だろ…
128 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 01:49:28 ID:p6s0FhaW
というか大体強マーダーな気がするぞw
一般人マーダーっていないし
129 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 02:07:37 ID:NIfqYUKp
一般人マーダー…スタンスだけなら一時期の浅羽とか?
130 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/10/13(水) 17:06:15 ID:GW0QzwJy
ていうか作中最強レベルのキャラしかマーダーになってない
零崎と美琴が死んだ今、対主催の戦力の貧弱さと言ったらまあ
131 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 17:08:18 ID:qp2lEX8l
ここの上条さんはラノベ出典だからその気になれば最新刊モードとかにも出来るだろ
何が起きても不思議はない
132 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 17:15:06 ID:UAgTiiiu
人数だけで言えばマーダーの四倍ちかくいるのにね>対主催

しっかし、久しぶりにスレが活性化したなw
133 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/13(水) 18:30:51 ID:hJH2zuXF
まあ対主催にはシャナとヴィルヘルミナが残ってるし、宗介や黒子もそれなりに強い。
あとはトラヴァス少佐の手腕に期待だな。
134 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/15(金) 21:08:52 ID:Kn/0d6nI
安定性には欠けるが瞬間最大戦力ならヨハネのペンだろう
敵味方見境なしに有象無象の区別なくふっ飛ばしてくれそうだけどさ
135 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/15(金) 21:34:12 ID:aFK1yXeR
ヨハネのペンとアラストール、現時点考えられる最大戦力はこれか
誰かが首輪の遠隔操作霊装を持っていたらヨハネのペンも再現可能かもな
136 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 14:29:15 ID:NCn9HO0N
紅世の徒って上条さんの右手で強制送還出来んのかな
137 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 14:55:22 ID:Z7/19EID
最大戦力は友の水爆だろw
138 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 15:26:12 ID:EIMu5aCb
>>137
そ  れ  だ

今更だがこのロワには純粋にパワーでごり押しする
奴がほとんどいないなw
全員どこか癖のある奴ばっかだし
139 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 17:48:20 ID:kXX0wNAy
>>138
殺害数トップが(一応)一般人だしね
キノよりも強いだろうキャラたくさんいるのに、恐ろしく違和感がない
140 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 18:06:16 ID:cH8Myal3
上条さんは右手以外は…でも何とかなるかもな
それとハルヒはどう転ぶか…
141 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 23:33:04 ID:Z7/19EID
連続して温泉パートに予約来とるw
142 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 23:46:45 ID:L4/Gr6zA
マジだw
・・・不穏だw
143 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/16(土) 23:56:40 ID:EIMu5aCb
なん…だと…
Uc氏は久しぶりの予約か
今からwktkが止まらんぜ
144 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 14:34:35 ID:fCs9O+/S
そういえば上条さんまだ食事して無かったな。そして面子と彼の不幸体質考えれば……
145 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 18:29:05 ID:++39VFSD
ロワで集団で食事か…
146 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 19:25:40 ID:bV14lBbM
>>145
カレーかシチューじゃなければ、まだ何とかなる
147 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 20:37:59 ID:eZNPJvdA
そういえばそろそろ鍋が食べたくなる季節だな
148 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 21:58:39 ID:GQSX9oiA
ところどころにお肉が転がってますね
149 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/17(日) 22:34:17 ID:KNlN03QO
>>146
よーしカレーの中に水爆仕込もうぜ
150 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 00:26:07 ID:2HPpLo45
姫路の手料理を上条さんが食べるハメになるなw
151 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/10/18(月) 06:55:36 ID:/7suScUM
姫路料理は見た目だけはいいからな
だがヘタすりゃ姫路料理で全員死亡という実にマヌケな事態に……
でもそんなことしたらますます対主催が不利になるからそりゃないぜと信じたい
152 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 10:52:55 ID:iKkXNPwp
旅館組はフラグ的にはともかく戦力的には全滅してもあんまり惜しくは・・・
153 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 15:52:15 ID:/7suScUM
>>152
ただし役割的にみんな重要だから後々大変なことになる

上条さん→現時点で唯一、壁に干渉できる人物にしてまだまだ謎多き右手の持ち主
いーちゃん→友と姫ちゃんの暴走が危惧。死ねば狐さんと直接繋がる鍵を失うことに
ハルヒ→朝倉や古泉をはじめとした連中の働きがすべて無駄に
亜美→死ねば今度こそ大河発狂モノだと思う。発狂したら義手的に暴れたりしたらヤバい
かなめ→宗介の動向が心配
姫路→式や鮮花の(本人らは姫路の黒桐殺害を知らないが、それを知ったら)今後の行動がどうなるか
姫路料理で全員死亡だとトラウマ再発コース、しかもその場合上条殺害ともう立ち直れないんじゃね


神社に続きカレー第二回目は来そうだけど姫路料理で全員死亡はマジ勘弁
154 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 16:16:52 ID:lk+0sx6g
料理で全員死ねばトップマーダーだなw>姫路さん
155 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 18:00:03 ID:nPculWjh
そういや切り離しても効果ありって事は原作で実証されたんだっけ
>右手
156 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 18:24:52 ID:b2bV1xkh
・・・されたっけ?
157 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 19:46:33 ID:vvphTnn7
少なくともごく短時間は効果が失われない描写がある
158 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 21:52:05 ID:nPculWjh
用済みになった上条さんは殺して、ゆっくり咀嚼しようとしてたんだから切り離されても使えるんじゃね
159 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 22:00:17 ID:tFUWMzGG
最新刊のなら、解釈の幅はかなり残ってると思うぜ
仕掛けた側の目的が目的だから、まさにその目的に叶うよう術式を組み上げた上で仕掛けた可能性もあるし
単純切断の場合に起こることについては、解釈は一概に定まらないと思う
160 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 22:05:38 ID:+OFO2x8o
腕を切り離したら新しい腕が生えてきたんだよな、上条さんw
161 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 22:12:12 ID:nPculWjh
あのまま放っておいたらもっと高位の物が生えてきたのかなw
162 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/18(月) 23:22:22 ID:HsDI2Ew2
いっそのことビリビリ生やそうぜw
あれこんな漫画どこかでみたような
163 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/19(火) 01:10:29 ID:DS7KzVGP
チェンジで
164 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/19(火) 20:58:46 ID:T4bAoY9M
今月発売されたキノ新刊の
「たたかいだな。ばくだんならまかせろ」
はどっかで言わせられそうだと思うんだ
165 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/19(火) 21:06:12 ID:PorkhGOU
     ∧_∧
     ( ゚ω゚ ) ばくだんならまかせろー
 バリバリC○l丶l丶
     /  (   ) やめて!
     (ノ ̄と、 i
        しーJ
166 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/20(水) 23:35:52 ID:M48CPJzF
期限明日だっけ?
167 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/23(土) 18:54:55 ID:SyyEZhBI
今日の夜に投下だっけ…
168 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:38:56 ID:tcEMK0hT
大変お待たせしました。
投下開始します。
169 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:40:12 ID:tcEMK0hT

これは物語を更に彩る為の小さな小さな断片。
ちょっとした小話の中で、色々な動きを見せる登場人物。

そんな次の関係へ繋ぐ、三つの断片の物語を紐解こう。






【 scene 1 私は私の道を行く 〜川嶋亜美〜】




「うん、解ったから大丈夫だよ。だから亜美ちゃん、独りでいたいんだよ」
「ちょっと……」

がちゃんと勢いよく扉を閉める。
そのまま、鍵を閉めて、これであたしは独りきりだ。
未だにかなめの大きな声が扉越しに聞こえるけど、気にしない。
凄く悪い気がするけど、今は独りで居たいんだもん。

何処にでもある旅館の和室が今あたしがいる場所。
此処には誰も居ない。誰も入ってこれない。
扉にも窓にも鍵が閉まってるし。
まぁマスターキーとかあったら普通に入ってこれるんだけど。
というか絶対あるし。
これで、あたしが死んだらマスターキー持っている人が疑われるだろうね。
襲われたらひとたまりもないかな。亜美ちゃん美人だし。

…………はぁ。
そんな事考えたって仕方ないのかなぁ。
溜息を吐きながらあたしは押入れから布団を引っ張り出し、無造作に畳に置いた。
敷くんじゃなくて、置く。
色々滅茶苦茶だったけど、気にしない。
そんな事、気にするのも変だし。
こんな状況なんだしね。
畳みに置かれた布団にあたしは飛び込んだ。

うつ伏せになりながら、枕に顔を埋める。
制服が皺くちゃになっちゃうな。
どうでもいいか。
もう結構汚れてるんだし。
やっぱり、気分は最悪だった。

言うまでもなくさっきの出来事だった。
……お腹の調子もそんなによくないけど。
結局あたし一人が全力で空気を読まなかったって感じなんだよね。
亜美ちゃん超唯我独尊。
170 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:40:45 ID:38si4KgQ
 
171 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:40:49 ID:MTscw8Uh
 
172 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:41:10 ID:tcEMK0hT
でも、どっちの判断が正しいか悪いかなんて、あの場では言えないよね。
我侭かもしれないけどあたしは彼女の言っていることが本当とは思いたくない。
だから、あたしは彼女を信頼できない。
そして、受け容れたくもないし許したくもない。
皆は受け容れていたけど、あたしは無理。

だってさぁ……

もし、もしもだよ。

自分の大切な人を殺したと言う人が現れたら。

その人を許せるの?
その人を受け容れるの?

あたしは……無理。

あの女の子が祐作を殺していないという確証すらないんだから。
何も真実を知らないまま、受け容れる事なんてできないもん。

高須君も祐作も櫛枝さんも。
誰かに殺されたんだ。
そんな殺した人と一緒に居るなんて無理。
何もかも壊していった者をあたしはきっと許せない。

ねぇ、皆は違うのかな?

かなめは……きっとまだ失っていないのかな。
でも、かなめはきっと強く虚勢を張るのかな。
解らないけど、何となくそんな気がする。

トーマは……失っても変わらないよ、あいつは。
ただ、強い奴だ。
何でもかんでも破壊していくだけ。
強い『だけ』、破壊する『だけ』
多分、きっと、そう。

ハルヒは……よくわかんない。
会ったばっかりだし。
でも何だか……溜め込んでいる気がするな。

いっくんは…………『やばい』
ただの直感。
普通そうに見えて一番変だと思う。
失うとか失わないとかそういう以前の問題だ。
こわっ

173 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:41:32 ID:MTscw8Uh
 
174 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:42:20 ID:tcEMK0hT


…………ああ、なんだ。

結局、まだ誰も強い喪失を味わってないんじゃん。
それじゃ、解る訳ないよ。
特にトーマは解る訳がない。


うつ伏せになりながら、一房の黒い髪を見つめる。

ねぇ、高須君。
高須君はどうしてあんなにバラバラになったの?
お人好しすぎるあんたはどうやって死んだの?
そして、誰に殺されたの?

……こんなのに聞いたって解る訳ないか。


あーあ。
本当、よく解らないや。
誰もが正しいと思っている事やろうとしているだけなのにね。
なのに、こんなにも交差して複雑に絡まっちゃう。

たった一つの冴えたやり方なんて存在しない。
でも、皆信じているままの行動をして。
なのに、それは上手くいかなくて。

まるで、あの時みたいだよ。
終わってしまった恋の物語の時みたいだ。


でも、それでもね。

あたしは、亜美ちゃんは。

あたしが信じた道を、考えを貫くしかないんだよ。
その結果が貧乏くじをひいても、救われない結果でも。
進んだ道が、川嶋亜美なんだから。

だから、あたしは、姫路瑞希は信じない。

あたしが大切にしていた人達の為にも。


空気読めない?
我侭?

そんなの知らないよ。


これが、川嶋亜美なんだから。


あたしはあたしの道を行く。
175 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:43:05 ID:tcEMK0hT


それで……いいんだよね。


いいんだよねぇ……高須君。


あは……応える事なんて無いのに。
何期待してるんだか。

馬鹿だよ……本当……


本当……馬鹿。


可笑しくて、笑いそうになって。
なのに、何故か泣きそうになって。

そんな自分自身を見たくないから枕に顔を埋める。


たった独りの部屋で。


あたしはあたしの道を歩んでいた。



【E-3/温泉/一日目・夕方(放送直前)】

【川嶋亜美@とらドラ!】
[状態]:満腹、不安、疲労
[装備]:グロック26(10+1/10)
[道具]:デイパック、支給品一式x2、高須棒x10@とらドラ!、バブルルート@灼眼のシャナ、
      『大陸とイクストーヴァ王国の歴史』、包丁@現地調達、高須竜児の遺髪
[思考]
 基本:高須竜児の遺髪を彼の母親に届ける。(別に自分の手で渡すことには拘らない)
 0:あたしはあたしの道を行く
 1:祐作のことはどうしようか?











176 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:43:21 ID:MTscw8Uh
 
177 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:44:05 ID:tcEMK0hT
【 scene 2 見つけて Happy Life 〜涼宮ハルヒ〜】






「よっし……これでいいかな。姫路さんいいわよー」

和室に快活そうな少女の声が響く。
その少女――千鳥かなめは、手をはたきながら、上々な出来の自分がこなした仕事に満足していた。
彼女の前には三組の布団が綺麗に敷かれている。
それが彼女のこなした仕事だった。
少し微熱な気味な姫路瑞希を休ませる目的でかなめが自ら分担した作業が布団敷きである。

「うん、こっちもオッケーよ。似合う似合う」

別の仕事をしていた涼宮ハルヒがあげた言葉と共に、浴衣に着替えた姫路がその姿をかなめに見せた。、。
微熱のせいか、それとも羞恥のせいか、顔を真っ赤に染めていた。、
かなめは感心しながら

「お、可愛い可愛い……しっかし、でかいわねー」
「ちょっとおっさん臭い事いわないでよ、っていうかあんたに言われたくないわ」

まるでおっさんのような事を口にする。
尚更、真っ赤になる姫路さんを見ながら、少し不機嫌そうにハルヒは文句を口にした。
彼女の手は自分の胸元に置かれながら、姫路とかなめの胸元を一瞬見つめた。
自分も小さくは無いはずなのだが、これは霞んでしまう。

ちなみに、ハルヒも姫路のを直接見ている。
彼女の仕事は熱によってかいた汗を拭いて、着替えを手伝う事だったからだ。
みくるちゃん以上あるんじゃないかしらと一瞬思って、思った瞬間哀しくなったのは内緒の事である。
そんな素振りを見せず、ハルヒは熱のせいかぼーっとしていた姫路を布団まで連れて行く。

「ゆっくり休みなさいよ。休んだ後は色々動き回るんだから」
「ええ。準備とかはあたし達がやるからね。安心して休んでなさい。」

二人の活発な少女達は、労いの言葉を姫路にかけて微笑む。
姫路は無償の優しさが、何故だか嬉しかった。
嬉しくて、安心して。
布団に入りながら、会話用のメモとペンを取り出す。
丸っこい女の子の文字で書かれていく言葉。

それは

178 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:44:25 ID:FnO4HB4m
 
179 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:45:10 ID:tcEMK0hT
『――――ありがとう』


心からの感謝の言葉で。
こんなにも優しくしてくれる少女の気遣いがただ、嬉しかった。
少し涙混じりの笑みをハルヒ達に彼女は向ける。

「これぐらい、大した事無いって。ねぇハルヒ?」
「うん、当たり前じゃない」

少しくすぐったそうに笑みを浮かべる二人。
だけど、それだけじゃなかった。
姫路が伝えたい事はもっと大切な事だ。
不安だった。凄く不安だった。
疑うならば、いくらでも疑える状況で。
彼女達は


『――――信じてくれてありがとう』


信じてくれたのだ。
殺人者である自分を。
受け入れ、助けてくれると。
その事が、本当に嬉しかった。
ただ、ただ、嬉しかった。

「当然。だから、いつでもあたし達を頼ってね?」
「そうよ。あたし達は、仲間なんだからっ」

手を差し伸べながら、頼ってもいいというかなめと。
ウィンクをして、仲間と言ってくれたハルヒ。
その気遣いが本当に良かった。
助かった気持ちになって。
姫路も優しい笑みを浮かべた。

喜びと安堵から出た、自然で可愛らしい彼女の笑みだった。


そして、安心したように彼女は目を瞑る。


本当に久々に味わう優しさを感じながら。


心地よい眠りに姫路は落ちていったのだった。











◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
180 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:45:19 ID:MTscw8Uh
 
181 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:45:40 ID:FnO4HB4m
 
182 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:45:50 ID:38si4KgQ
  
183 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:46:09 ID:tcEMK0hT
「あー疲れた」
「それは解るけど、もうちょっとしゃんとしなさいよ」

姫路を寝付かした後、かなめは力の抜けた様にテーブルに突っ伏していた。
色々と疲れがどっと出た感じだった。
思えばこの十八時間ずっと薄氷の上を歩いてたような気がする。
かなり危なかったとも言えたのかもしれない。
そう思うと、かなめは改めて大きな溜息をつくしかなかった。

「ほら、何か食べる?」
「んーじゃあこれとこれとこれ」

やれやれと言いたげそうなハルヒが差し出した沢山のドーナツ。
かなめはエンゼルショコラ、オールドファッション、ハニーディップの三つを選んで早速もふもふし始める。
まだそんなに食べるんだというハルヒの呟きはあえて無視した。

「はい、お茶」
「ドーナツにお茶って……あわないなぁ」
「これしかないんだから仕方ないじゃん」
「……まあいいけど。ありがと」

エンゼルショコラをもふもふしながら、かなめはお茶を淹れ、ハルヒに手渡した。
コーヒーがいいだけど、と内心ハルヒは思うも、無いものねだりしても仕方ないかと素直にそれを受け取る。
そのままお茶を一啜して、お茶の苦さとドーナツの甘さが合わないことに顔を顰めつつも、ハルヒはかなめに話しかけた。

「千鳥さんは……」
「かなめでいいよ、同い年みたいだし」
「じゃあ、かなめは元はどんな所に居た? 聞かせてよ」

ハルヒが興味を示したのはかなめの元の居た世界の事だった。
傭兵とかテロリストとかがかなめを護ったり攫おうとする世界。
そんな話、ハルヒはテレビのニュースでしか聞いた事が無い。
傭兵が集まっている組織なんて初めて知った。
だから、今すぐにでも彼女の話を聞いてみたい。
ハルヒはそんな気持ちで揚々とかなめを見つめる。

「世界っつーてもねぇ……」

エンゼルショコラを早々食べ終わったかなめは対照的に醒めた様に宙を見つめる。
世界自体はなんてことない世界だ。
ちょっと未だに紛争とかが多いぐらいで。
むしろ、最近変わってきたのは身の回り。
あの馬鹿な戦争馬鹿が自分を巻き込んで学園生活を壮絶なものにしている。
生徒会の事とか、クラスでの出来事とかもだ。
主にあの馬鹿から発展して些細な事が大事になってしまう。
そう考え始めたら頭が痛くなってきた。
最も自分も大事にしている事には、当然本人も気付いていなかった。

「主に時代錯誤の戦争馬鹿があたしの平穏な学園生活をハチャメチャにしたくらいよ……」

かなめは額を右手で抑えて、お茶を啜った。
もし帰れても、平穏は無いんじゃないかとおもうと頭が痛い。
まあ、それも何となくはいいかと思ってはいるけれども。
でも、それを口にする事は何となく癪だった。

「へー……それもいいじゃない。平穏なんかよりもずっとずっとマシよ」

それでも、ハルヒにとって、かなめの生活はとても刺激的に聞こえた。
平穏しかない生活なんてそれはそれでつまらないから。
だから、ハルヒはかなめの生活はとても楽しそうに思えたのだ。
184 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:46:32 ID:38si4KgQ
    
185 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:47:27 ID:FnO4HB4m
 
186 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:47:34 ID:tcEMK0hT

「じゃあ、逆にハルヒの方はどうなの?」

そのまま、かなめは逆にハルヒに問う。
ハルヒの生活は平穏な世界のだろうか。
それともハチャメチャな破天荒な世界の中過ごしているのだろうかと。

「別に……宇宙人も未来人も異世界人も超能力者もいないフツーの世界よ」
「いや、それは当たり前だけどさ」

実の所、ハルヒの周りにはそれらが溢れているのだが。
勿論ハルヒ自身がそれに気づいている事は無いけれども。
でも、だからこそ、非日常を求めてしまう。
かなめは少し逡巡しながらも、疑問を口にする。

「でも、ハルヒの周りや生活はどうだったの?」

例え、普通の世界だとしても。
かなめみたいにハチャメチャ生活はおくれるだろう。
それなりに楽しい生活は自分で行動を起こせばおくれるのだから。

「そりゃあ……」

不意の質問にハルヒは面を食らう。
つまらないと一瞬言いかけるがそれは違う。
平穏だったかというと……それはきっと違うと思う。
真っ先に脳裏に浮かぶのはあのつまらなそうなやる気の無さそうな少年の顔。

「あたしはね、SOS団の団長なのよ」
「SOS団?」
「そ、世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団の略」
「それまた凄い名前だこと……」

かなめは呆れたようにハルヒを見つめる。
そんな、かなめを気にせずハルヒは思う。
そういえばあのバカはどうしているのだろう。
全く話を聞かない。
何処にいるのすら解らない。

「そのメンバーと一緒に……まあ楽しくやってわよ」
「へーそうなんだ」

そう、楽しかったと思う。
色々あったけど、あの中学時代よりはよっぽど。
五人で一緒に。

「でも……もうそれもきっと無理ね」
「なんで?」
「……なんでもよ」

かなめは哀しそうなハルヒに何となくだが察してしまう。
この島には知り合いごと巻き込まれてる人たちばかりだ。
ハルヒ自体、知り合いがいると公言している。
きっと、もう死んでしまったのだろう。
かなめはそう思って、

「ふわ……ごめん食べたら、少し眠くなった」
「え?」
「だから、あたしは少し眠る。ご飯できたら起こしてねー」
「ちょ、ちょっと!」
187 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:48:06 ID:wsfFljzN

188 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:48:23 ID:MTscw8Uh
 
189 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:48:49 ID:38si4KgQ
    
190 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:49:09 ID:FnO4HB4m
 
191 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:49:33 ID:tcEMK0hT
わざとらしく欠伸をして、そのまま自分で敷いた布団に潜り込んでいく。
ハルヒの戸惑いの声が聞こえたが、気にせず頭から布団を被る。
そして、眠れるように努力する。
それなりには疲れているから眠れるだろう。

何故こんな事をしたかなんて、理由は簡単。
彼女をひとまず、一人にしたいからだ。

それは『あたし』と自称する三人の女の子の共通項。
もしかしたら、女の子の共通項かもしれない。

虚勢を張って、強がって。
どんなに元気で明るくいようとしても。

誰にだって哀しい時がある。
誰にだって辛い時がある。

そういう時は、誰だって膝を抱えて泣きたくなるんだ。
それは弱さじゃなくて、哀しみに耐える儀式みたいなもの。

だから、今は一人で居ればいい。
大切な人達を思っていればいい。

きっと、そういう時間が必要なのだから。


そう思いながら、自分もそういうときが来るのかなとかなめは考えて。
何故か頭に馬鹿な男が浮かんで。
なんでと思いながら、かなめはゆっくりと目を閉じた。











◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







192 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:50:48 ID:FnO4HB4m
 
193 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:50:49 ID:tcEMK0hT
「何よ、何なのよ……それ」

かなめは頭から布団を被って眠ってしまった。
いびきが聞こえてきた気がするが、乙女の名誉として気付いていない事にする。
そして、ハルヒは一人で頬杖突ながら、思う。

「バカキョン……死んじゃったわよ、みくるちゃん」

あのバカは、いつもみくるの事を見て鼻の下を伸ばしていた。
そのだらしない顔がなんかいつもむかついた。
突っかかったりもした。
でも、もうそういう事も無いんだなと思う。
あのバカはみくるが死んでどう思っているのかなと思う。
哀しんでいるのだろうか。

「もう、三人しかいないじゃない……萌えキャラ全滅よ……男二人しか残ってないなんて最悪」

長門有希も死んだ。
朝比奈みくるも死んだ。
マスコットキャラも無口な文学少女も、もう居ない。
五人が三人に。
その事がとても、寂しかった。

みくるは最後に幸せだったのだろうか。
幸せな生活をおくれていたと思えたのだろうか。
そうであって、欲しかった。
有希もそうであって、欲しかった。

幸せな生活を見つけられたと思って欲しかった。

だってそれは自分自身も――――


「バカキョン……何やってんのよ」

あのバカは本当何をしているんだろう。
団長放っておいて、なにやってるんだ。
腹が立つ。とても腹が立つ。
苛々が募っていく。
だから、さっさと顔を見せろ。
あのやる気の無い顔を。

強くなきゃと思う。
だから、虚勢を張っている。
虚勢でもかまわない。
それがある意味、盾なのだから。

だから、早く顔をみせろ。

194 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:51:36 ID:tcEMK0hT


苛々が募って、お茶を啜る。
全然不味かった。
美味しさの欠片も無い。
明らかに適当に入れているお茶だ。

いつも、美味しいお茶を飲んでいるからわかる。
あの子はいつも、美味しいお茶を入れてくれたからだ。
どんな時でも、皆に。
でも、もうそれもないのだろう。

「まずい」

本当にお茶が不味かった。

そう思ったら、涙が一雫だけ。

一雫だけ、零れた。


口の中に、苦々しさだけが残った。


思うのは、あの幸せだった日々の事だった。



だから、早く、あたしを見つけて欲しかった。



195 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:51:54 ID:38si4KgQ
  
196 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:52:06 ID:FnO4HB4m
 
197 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:52:33 ID:tcEMK0hT
【E-3/温泉/一日目・夕方(放送直前)】


【千鳥かなめ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康、睡眠中、まだ喰えるけど?
[装備]:とらドラの制服@とらドラ!、ワルサーTPH@現実
[道具]:デイパック、基本支給品x2、御崎高校の体操服(女物)@灼眼のシャナ、黒桐幹也の上着
      客間の鍵(マスター)、客間の鍵(女部屋)、客間の鍵(その他全部)
      血に染まったデイパック、ボイスレコーダー(記録媒体付属)@現実、不明支給品x1-2
[思考・状況]
 基本:脱出を目指す。殺しはしない。
 0:ぐがー
 1:亜美を説得。
 2:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 3:知り合いを探して合流する。
[備考]
 登場時期は、長編シリーズ2巻、3巻の間らへん。




【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:弦之介の忍者刀@甲賀忍法帖
[道具]:デイパック、基本支給品、大量のドーナツ@ミスタードーナツ
[思考・状況]
 基本:この世界よりの生還。
 0:????????????
 1:休憩しながら晩御飯を待つ。
 2:その後、出発までに温泉に入る。
 3:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 4:朝倉涼子に会ったら事情を説明してもらう。
[備考]
 登場時期は、一学期終了以降。


【姫路瑞希@バカとテストと召喚獣】
[状態]:失声症、睡眠中、左中指と薬指の爪剥離、微熱
[装備]:ウサギの髪留め@バカとテストと召喚獣
[道具]:
[思考・状況]
 基本:上条当麻と共に生き続ける。未だ辛いことも多いけれど、それでも生き続ける。
 0:すぅすぅ
 1:このみんなとなら一緒にいれそう。
 2:信じてくれてありがとう

※御崎高校の体操服から元々自分が着ていた制服に着替えました。今は睡眠をとる為に浴衣に着替えています。






198 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:52:55 ID:FnO4HB4m
  
199 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:53:24 ID:tcEMK0hT
【 scene 3 果たせなかった約束(みさかみこと) 〜上条当麻〜】






――――上条当麻はヒーローだった。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「いっくん、そこの包丁とってくれ」

上条当麻は今現在、厨房で戯言遣いと共に食事を作っている。
普段とは比べ物ならないぐらい大きな厨房であったが、慣れたら、自宅の台所よりよっぽど楽だった。
材料も冷蔵庫などに充分あるし、六人分の食事は簡単に作れるだろう。
そう、『六人』分だ。
例え、亜美と喧嘩のようなものをしても、きっと解り合える。
そう、上条は一寸の曇りもなく信じている。
そして、皆で夕飯を食べれば打ち解けると思っているからだ。

「はい、包丁」
「お、さんきゅ」

渡された包丁を手に、料理作りを再開する。
だから、今は出来るだけ美味いものを作ろうと上条は思う。
それが、上条が今尽せるベストな事だった。

「ねえ、上条くん、ちょっと気になったんだけど」
「ん? ああ」

上条と戯言遣いは食事を作りながら、話に興じていた。
理由は相互理解という名を借りた間作りと暇潰し。
お互い淡々と食事を作るのは気まずかったし、それに暇でもあった。
それならばと、どちらかともなく話始めていた。
話の内容は無駄話と言える事から、互いの元の世界の話から何でもだった。
とはいえ、上条も自分の話を話すのに、若干戸惑った部分もある。
それは、インデックスとの出会いの事だった。
200 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:54:11 ID:tcEMK0hT
妙に戯言遣いの探し人との共通点があったせいか、彼が出会いの事を聞いてきたからだ。
とはいっても、上条当麻は『一度』記憶を失っている。
ある意味一度死んだようなものだ。
だから、彼女との出会いの時、どう感じたか、どうであったかなんて正直実感なんて無い。
まるで作り物を感じているような感覚だった。
だから、凄く誤魔化しながら話した。
最も、戯言遣いも誤魔化されていると気付いていたが。

何か悪い事をした気分になりながら、上条は戯言遣いの言葉の続きを待つ。

「きみは元の世界でも……宿題を作っていったのかい?」
「……宿題?」
「ああ、いや……姫路さんみたいに元の世界でも誰か助けていったのかい?」

戯言遣いが言った言葉は確認のように響いていた。
彼自身も上条当麻が沢山の人を助けていったのだろうという確信している。
けれど、改めて彼の口から、聞きたかったのだ。
その期待通り、上条当麻は戯言遣いの期待していた言葉を紡ぐ。


「ああ、当たり前じゃねーか。困った人がいるなら、助ける。これまでも、今も、そしてこれからもだ」


それが上条当麻であると言うように。
それは、例え記憶を失っただとしても、上条当麻の本質なのだから。

「うん、成程ね」
「ああ、そういう事だ」
「そういえば、此処にきみが助けた人は……?」

続けて、当麻に放たれた質問。
思い浮かぶ顔はやはり沢山居た。
その中でも、接点が多い少女が居た。

「ああ、いるぜ。ビリビリ……いや、御坂美琴というんだけど……」

常盤台のレベル5。
そして、いつも上条に突っかかる少女。
一方通行との戦いを経て、彼女を救い、そして、

「ある男と約束したんだ」
「……約束?」

ある男と結んだ約束。
御坂美琴に恋し、彼女と彼女の世界を護りたかった男。
その男と結んだ、大切な約束。
201 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:55:24 ID:FnO4HB4m
 
202 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:55:34 ID:MTscw8Uh
 
203 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:55:37 ID:fJjF1SFy
 
204 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:55:41 ID:tcEMK0hT
それは、


「俺は御坂美琴を守る。いつでも、どこでも、誰からも、何度でも。俺は都合の良いヒーローのように駆けつけてあいつを守るって約束したんだ」


あの男の望みと夢。
願いつつも決して叶えられない望みと本当は自分がやりたかった夢。
御坂美琴と彼女の世界を守るという望みと夢を、重みと共に受け取ったのだ。
約束したのだから。
だから、上条当麻は守ると誓っているのだ。

戯言使いは少し、驚いたように、上条当麻を見つめ


「それは、この殺し合いでも?」
「変わらない。俺は守ってみせる」

戯言遣いは上条当麻の宣誓とも思える強い言葉を受け取る。

だけど、戯言使いは心の中で思う。



――――守りたいのは、『御坂美琴』? それともただの『約束』だけ?




そして――――人の死を告げる、放送が流れ始めた。









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








205 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:56:09 ID:FnO4HB4m
 
206 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:56:25 ID:tcEMK0hT
――――上条当麻はヒーローだった。


御坂美琴が信じたヒーローであった。
彼女が信頼し続けて、そして、恋をした最高のヒーローだった。

上条当麻もヒーローであろうとした。
御坂美琴のヒーローとして居続けようとした。
それは、彼の本質からか、それとも感情からか。
それは、彼自身にしかわからないけれども。


だけどもう――――ヒーローではいられない。


あの男の望みと夢の塊である約束は、守れない。



何故ならば――――御坂美琴は死んだのだから。


最後に、上条当麻への恋心を綴りながら。


上条当麻を、御坂美琴のヒーローだけを想いながら、逝った。


その事実を、もう直ぐ、上条当麻は知る事になる。



その時、上条当麻は――――?




207 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:57:11 ID:FnO4HB4m
 
208 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:57:22 ID:tcEMK0hT
【E-3/温泉/一日目・夕方(放送直前)】



【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身に打撲(軽)
[装備]:上条当麻の学校の制服@とある魔術の禁書目録
[道具]:デイパック、支給品一式、吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣、不明支給品x0-1
      七天七刀@とある魔術の禁書目録、御崎高校の体操服(男物)@灼眼のシャナ
[思考・状況]
 基本:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない。
 0:約束を守る
 1:姫路を守る。
 2:千鳥や一緒にいるみんなを守る。
 3:出発前に温泉にある遺体を安置したい。
 4:施設を回り、怪しいモノの調査。
 ├まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 └特に教会の地下は怪しく感じている。
 5:その最中に知り合いや行方知れずのシャナを探して合流する。



【いーちゃん@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:森の人(10/10発)@キノの旅、バタフライナイフ@現実、クロスボウ@現実
[道具]:デイパックx2、基本支給品x2、大量のフレンチクルーラー@ミスタードーナツ
      ブッチャーナイフ@現実、22LR弾x20発、クロスボウの矢x20本、トレイズのサイドカー@リリアとトレイズ
[思考・状況]
 基本:玖渚友の生存を最優先。いざとなれば……?
 0:??????????????
 1:当面はハルヒの行動指針に付き合う。
 2:↑の中で、いくつかの事柄を考え方針を定める。
 ├涼宮ハルヒの能力をどのように活用できるか観察し、考える。
 └玖渚友を探し出す方法を具体的に考える。
 3:施設を回り、怪しいモノの調査。
 └まずは学校の魔方陣(?)。その次に教会地下の墓所の予定。その次は図書館?
 4:零崎人識との『縁』が残っていないかどうか探してみる。
[備考]
 登場時期は、「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
209 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:57:30 ID:MTscw8Uh
 
210 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:57:32 ID:fJjF1SFy
 
211 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:03 ID:tcEMK0hT









そして、日は沈む



断片が示した次の関係を踏まえ




『物語』は次の段階へ――――――








212 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:03 ID:FnO4HB4m
 
213 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:15 ID:MTscw8Uh
 
214 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:33 ID:fJjF1SFy
 
215 名前: Next Relation ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:52 ID:tcEMK0hT
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうございます。
此度は期限を大きくオーバーしてしまい大変申し訳ありませんでした。
何かありましたら、指摘をよろしくお願いします。
216 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:58:55 ID:MTscw8Uh
 
217 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 02:59:03 ID:FnO4HB4m
 
218 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 13:36:00 ID:KC8Xp3kS
GJです
219 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/24(日) 23:30:54 ID:fJjF1SFy
投下乙です。
前話では終始いーちゃん視点だったけど、今回はそれ以外の視点ってことで話に立体感が出ていい感じです。
特に女の子w やっぱ◆Uc氏は女の子が女の子らしくしているのがすごく上手いw
GJでした!

そして、放送後は遂に美琴の死が当麻届くわけか……はたしてどんな反応するのか。
220 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/25(月) 20:30:14 ID:l6g+/hQG
GJ

やはりいーちゃんは痛いところをつくなw
221 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/26(火) 07:41:19 ID:E/z+OKQe
GJ

さて、彼の戯言は幻想殺しすら殺すのか…?
222 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/10/26(火) 18:26:12 ID:gHTtr3Gf
乙です

まだ上条さんの知り合いは土御門しか死んでいないから美琴の死は堪えるだろうな……。
ハルヒも一人ずつ知り合いが死んでいっているから精神面の負担はかなり大きそう。
放送後がますます楽しみになる話でした。

後、誤記を発見しましたので報告します。

>別の仕事をしていた涼宮ハルヒがあげた言葉と共に、浴衣に着替えた姫路がその姿をかなめに見せた。、。
>微熱のせいか、それとも羞恥のせいか、顔を真っ赤に染めていた。、
の二文の最後に句読点が多いのと、ハルヒの台詞が
>「そのメンバーと一緒に……まあ楽しくやってわよ」
となっていました。
223 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/04(木) 21:37:34 ID:63jmrWOX
突然人気が無くなったな……
224 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/04(木) 22:09:33 ID:MZG299X3
>>223
新参か?力抜けよ
225 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/04(木) 23:09:12 ID:nACOiIae
抜けば作品を書いてくれるんですね?
226 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/04(木) 23:33:24 ID:sRAevos3
一人書き込んだ瞬間にみんな書き込み始めたなw
>>224の反応の速さに吹いたわw
227 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/05(金) 18:45:35 ID:2QHX35vn
今気付いたんだが
「いーちゃんに似てる」って死亡フラグじゃね?
228 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/05(金) 20:48:24 ID:WXMmJJsk
それ以前にいーちゃんに関わること自体が
死亡フラグな気もするがw
それもロワでどこまで通用するかわからないけどな
229 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/06(土) 16:48:34 ID:69+t6rqi
「人気」
×にんき
○ひとけ

いーちゃんに似てるキャラで
しかもいーちゃんの近くにいるなら
寧ろ生存フラグな気がする
230 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/06(土) 20:11:08 ID:A7Z/3mR3
そういやこれは次放送でいいのかな
一応ロリ忍者のコンビと眠り姫は動かせるけど
231 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/07(日) 13:44:19 ID:CSDYyiYH
まあ、もう人死にそうな所はないし、どこか書くとしても先に放送作っても大丈夫な気はする。
232 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/10(水) 00:06:50 ID:43Ij2FAn
申し訳ありません
Next Relationをwikiに投下する際、誤って◆UcWYhusQhw氏の名前もタイトルに入れてしまいました
誰かログインできる方がおられましたら、タイトルの修正をお願いします
233 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/10(水) 01:41:15 ID:ToOyHaUF
>>232
対応しました。確認よろしくです
234 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/10(水) 03:09:55 ID:43Ij2FAn
>>233
確認しました
素早く対応して頂きありがとうございます
235 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/12(金) 02:03:51 ID:gZG1bQ3E
今更ですが、上条さんと土御門さんの紹介ページを更新しておきました。
…前回美琴と上条さんのページを更新してから半年近く経って、やっと3人目。
先は長いです…。
236 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/12(金) 02:26:35 ID:3xi226iN
乙であります!
237 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/16(火) 10:48:51 ID:zEo9tjue
予約きたよー!
238 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 00:58:59 ID:ZcVZ4Owe
 
239 名前: 囁かれる者と喰らう者 ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:01:36 ID:4ZEPFn8X
「ウィスパード?」

もふもふと口にサンドイッチを頬張りながら、目の前の食いしん坊もといインデックスさんが首を傾げている。
何故なら、それは私が彼女に自分の物語である国家機密レベルの単語を彼女に聞いたからだ。

「ええ、そうです。ささやかれる者……ウィスパード。その様子だと、どうやらご存知無いようですね」
「うーん……少なくともその単語には覚えが無いんだよ。具体的にはどんなものなの?」

ウィスパード、ささやかれる者。
全世界でもこれに覚醒してるものは数人に限られる。
潜在的にはもう少し増えて数十人。
存在し得ない技術、ブラックテクノロジーを引き出す能力だ。
その名の通り、囁きが聞こえその知識を得、引き出すのだ。
またウィスパードになった者は知性が増え、天才へとなっていく。

そして、私――テレサ・テスタロッサもそのウィスパードの一人である。
最も、ウィスパードの中でも個体差があり、私は現在の技術より遙に進んだ潜水艦を作る程度しかできない。

最後にそう自嘲しながら、私はウィスパードを掻い摘んで説明する。
あの兄はきっとそんな風に私を思っているのだから。

「ふーむ……直ぐに浮かぶのは、そのまんま悪魔の囁きだね」
「悪魔の囁きですか?」
「そう、身に余る技術、魔術は時に人を滅ぼしてしまう。そういう意味では悪魔の囁きといえるのかも」
「それは…………」

私は反論しようとして、口を噤んでしまう。
確かにそれは一理あるのかもしれない。
ウィスパードとして生まれ、覚醒したかなめさんは否応なく非日常の世界に足を踏み入れてしまった。
ウィスパードはその能力故に、色々な所から狙われやすい。
かなめさんも例外に漏れず、そして浚われてしまった。
また、ウィスパードのブラックテクノロジーによって、紛争や戦争を更に広げた一面もあるかもしれない。

でも、だからこそ私はこの授かった技術や知識を平和に利用できるように努力してきた。
したつもりだった。依然として、平和にはほど遠く、そして今現在の状況は更に混迷している。
私の部下もその中で沢山死んだ。
そして、この殺し合いでマオすらも失ってしまった。
本当…………何やっているんだろうな。

私は滅入る気持ちを吹き飛ばす為におしるこを一気に飲み干す。
今は、前だけを見なければならない。
後悔を未来につなげる為に。
自問を繰り返しながらも、前を、ただ。
240 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:02:16 ID:ZcVZ4Owe
 
241 名前: 囁かれる者と喰らう者 ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:02:38 ID:4ZEPFn8X
「後やっぱり神託、予言といった類が思いつくかも」
「成程。私は何処かの未来から精神波が送られてる……と考察してましたね」
「未来からのテレパシーか。有り得なくもないかも……ともかく、私の十万三千冊の魔導書の中にはウィスパードは記されていない。
 未来の科学の超技術を受け取る能力というのは初めて知ったんだよ」
「そうですか……」
「けれど……」

頬張っていたサンドイッチをインデックスさんを飲み込んで、お握りへ手を伸ばしながら彼女は言う。
どうでもいいが、まだ食うのだろうか……?
予想以上の彼女の食欲に私は妙に不安に覚えた。

しかし、続く彼女の言葉に私はハッとする。

「その能力をどう捉えるか、そしてどう使えるかはやっぱりその人の気持ち次第だよ」


そうなのだ。結局そうでしかない。
私が授かったこの知識をより良い方向に持っていくには、私がどう思うかなのだから。
この力を未来につなげる為に。
自分を誇れる為に。
私は、頑張ろう。

精一杯、頑張っていこう。


そう思ったら、私は笑う事ができた。
とても柔らかい笑みで。
インデックスさんがホットドックをくわえながら不思議そうに見つめているけど、少し恥ずかしいけれども気にしない。
何となく、今は笑っていたいのだ。
例えこんな残酷な場所でも。
あの時、笑えていた川辺の時のように。

私は笑っていた。






「それで、何を観測します?」


ウィスパード関連の話が一段落した所で私は本題を切り出す。
天文台に来た目的がこれだ。
星を観測し、解る事を突き詰める事が私達がやる事だ。

「うーん……そうだね……でも、まず此処が『地球の何処か』を再現したものだと断定するには、まだ早いと思うんだよ」
「しかし、数々の『物語』を見る限り、何かしら特異なものがあるものの、地球である事は確かだと思いますが」

神社に集まった物語は紅世の関連者や魔術などを行使する世界があるものの、地球を舞台とした物語だったはず。
だから大方、此処も地球を模した世界である事は配置してるランドマークからみても、可能性は高いはずだ。

「んーでも……まだ何処に属しているか不明の人間が結構いたはずなんだよ。ほらやたら名前が長い外国人の人とか」
「ああ、居ましたね」
「特にあの人の姓の一部は『地球の世界』では余り見られないものもあったはず。少なくとも可能性がある以上、断定するのは危険だと思うんだよ」

彼女はそう言いながら、ハムサンドを口にした。
……あっ、それは私の………………
最後に食べようと残していたのに…………
というか、なんという食欲ですか……
242 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:03:01 ID:ZcVZ4Owe
 
243 名前: 囁かれる者と喰らう者 ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:03:19 ID:4ZEPFn8X
「? どうしたのだよ?」
「い、いえ何でもないです。ともかく、地球でない別の世界である可能性もありえるという事ですね」

こほんと私は息を整えながら、不思議そうに見てる彼女の考察を肯定した。
ならば、彼女が提案してくるものも推測できる。

「うん。だからとりあえず此処の一体、天体を観測して『地球の天体』との類似点がどの程度あるか調べたいんだ。協力してくれるかな?」
「ええ、勿論いいですよ」
「ありがとうなんだよ」

予想通りの提案に私は頷き、当座の目標は決まった。
もう暫くしたら、ヴィルヘルミナさんからも連絡があるはず。
そして三回目の放送もある。これで何かしらの動きはあるはずなのだ。
今は連絡が途切れた御坂さんの無事を祈るしかない。
だから、私達が今出来る事はスムーズに天体観測を始める事だ。
私はそのまま立ち上がり、

「さあ、インデックスさん準備をしましょ……」
「まってなんだよ。このイカの丸焼きを食べてから……」

ずるぺたーんと思わず何も無いのに滑って転んでしまった。
私は思いっきりお尻を打ちながら、呆れ気味にインデックスさんを見つめる。
何とも幸せそうにイカを頬張っていた。
私は打ったお尻をさすりながら、まだ食う彼女を見て溜息をついてしまう。

「しかし……貴方の凄い食欲を賄える人は凄いですね」

私は彼女の面倒を見ているらしい少年につい同情してしまう。
こんな食欲だと食費は酷くかかるだろうに……
けれど、インデックスさんは笑って


「うん、とうまは凄いんだよ。なんでも解決しちゃう」


ただ、無垢に笑って。


「だから、早く会いたいな」


244 名前: 囁かれる者と喰らう者 ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:04:09 ID:4ZEPFn8X


真っ直ぐとも言える想いを彼女が大好きな少年に向けていた。

私はそんな彼女を見て、思わず笑みが溢れて。


「早く会えるといいですね」
「うん!」


彼女の力強い同意が、二人しかいない天文台に響いた。


そして、陽が沈み、三回目の放送がやってくる。


けれど、私はそれを以前より強い気持ちで迎えられる。


そんな気がしたのだ。





【B-1/天文台/一日目・夕方(放送直前)】

【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:S&W M500(残弾数5/5)
[道具]:デイパック、支給品一式、予備弾x15、調達物資@現地調達、不明支給品x0-1
[思考・状況]
 基本:皆と協力し合いこの事態を解決する。
 0:放送を待つ。
 1:インデックスと協力して天体観測を行う。
 2:メリッサ・マオの仇は討つ。直接の殺害者と主催者(?)、その双方にそれ相応の報いを受けさせる。
[備考]
 『消失したエリア』を作り出している術者、もしくは装置は、この会場内にいると考えています。


【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン(x1)@現実
     試召戦争のルール覚え書き@バカとテストと召喚獣、缶詰多数@現地調達、不明支給品x0-1
[思考・状況]
 基本:みんなと協力して事態を解決する。
 0:放送を待つ。
 1:テッサと協力して天体観測を行う。
 3:とうまの右手ならあの『黒い壁』を消せるかも? とうまにはやくあいたいんだよ
[備考]
 『消失したエリア』を作り出している術者、もしくは装置は、この会場内にいると考えています。

245 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:04:30 ID:ZcVZ4Owe
 
246 名前: 囁かれる者と喰らう者 ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:05:05 ID:4ZEPFn8X
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうございます。
此度は期限を大きくオーバーしてしまい大変申し訳ありませんでした。
何かありましたら、指摘をよろしくお願いします。
247 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 01:07:58 ID:ZcVZ4Owe
投下乙ー!
インデックスさんは食ってばっかりで、テッサはずるぺったんでいつもどおりだったのであった、マル!
248 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/11/23(火) 12:06:15 ID:QNG6zz06
投下乙
あれ?インデックスさんそれは共食い(ry
249 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/09(木) 06:43:59 ID:frz1upcH
そろそろ放送やってもいいのでは?
250 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/12/12(日) 15:42:19 ID:4jzQ0hb+
しかし勢いを失ったな
251 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/12(日) 21:39:11 ID:0IfBoCJp
止まりさえしなければ大丈夫だと信じたい
252 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/13(月) 14:47:35 ID:cwhLbbW4
きっと放送を越えればかつての勢いを取り戻すさ!
多分
253 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/15(水) 07:48:24 ID:3dwHVjIf
てんさいー

197 名前: 名無しさん [sage] 投稿日: 2010/12/15(水) 02:11:04 rINb6TjM0
適当にまとめてみた
気づいた人いたら2ch
日中
友【E-5】
診療所組【F-3】

午後
なし

夕方
SOS団(水前寺)【B-4】
浅羽【D-5】
フリアグネ組【C-5】
時雨沢組【D-4】
キョン【D-2】
神社組【C-2】

夕方(放送直前)
師匠組【E-3】
温泉組【E-3】
天文台組【B-1】
空港組【B-5】
黒子組【B-5】
254 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/17(金) 22:50:42 ID:fahqpq5z
診療所組は特にいじる必要性はなさそうだが問題は友だな
せっかく狐さんがフラグ建ててくれてるし友としても、いつまでもひきこもる訳にはいかないし
友の今後の動向は必要あるんじゃないか
255 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/23(木) 01:10:15 ID:d0iUmsg/
キャラ項目を細々更新してる者ですが、ステイルの編集が(ようやく)終了しました。
前回から1ヶ月も開いてしまいました…。
明日には黒子か早期退場した面々(竜児、長門etc)を編集できそうです。

不具合や間違いがあれば指摘して頂けると嬉しいです。
256 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/23(木) 01:27:29 ID:d0iUmsg/
連レス申し訳ありません、wikiの高須君のページをもとに現在ページ作成されて
ないキャラのページを作っていくので、参加者名簿に全キャラのリンクが
張られるまで、高須君のページ編集をしないで頂けると助かります。

個人的な申し出で申し訳ありませんが、ご協力ください。
257 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/23(木) 17:11:46 ID:d0iUmsg/
たった今、各キャラのページを(形だけ)作り終わりました。
ご協力いただきありがとうございました。
258 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/24(金) 06:51:56 ID:cpZxKkeP
乙なんだぜ!
259 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/25(土) 20:11:15 ID:2+VMoXNr
予約こないな
260 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/25(土) 20:41:12 ID:iidQqyvo
場繋ぎ的なネタフリをしてみる
「逢坂大河と伊里野加奈で某タ○ガー道場みたいなの」
とか考えたことがあるんだが、誰か書いちゃくれないだろうか
261 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/25(土) 22:47:48 ID:tXYkG6Lj
ロワ語りで投下した書き手紹介を修正してこちらにも投下しておきます。


◆LxH6hCs9JU氏
極上の安定感でどんなキャラであろうが抜群の魅力を添える書き手さん。本当に何でも書ける書き手さんだと思う。
灼眼のシャナ出典キャラの動きや再現度などは特に素晴らしい。もちろんそれだけではないが。
「粗悪品共の舞踏会」や「エンキリサイテル(上)(下) 狩人vs.不知なるシズ」のフリアグネの雰囲気は必見。
また他にも「「葬儀の話」― Separation ―」や「お・ん・なビースト〜一匹チワワの川嶋さん〜」の二つの埋葬話の雰囲気にもなんとも言えない魅力アリ。


◆UcWYhusQhw氏
恐るべき心理描写の使い手であり、それと同時に少女達が本当に「女の子している」作品を次々と生み出す書き手さん。
悲劇の渦中にいる彼女達の心を、その独特の文体で描き尽くす女の子の教科書であるといえるかもしれない。
前述の通り、特筆すべきはまずとらドラ!の大河。「Triangle Wave」と「告別/再見」での再現度とシンクロ率は異常。
かなめと亜美の「「もーこーなったらやけ食いだぁーー!!」」もタイトルだけ聞けば異質なのに、しっかりと心理描写をしていたりしてやばい。


◆02i16H59NY氏
超高レベルの文章力と構成力、そして幅広く深い知識全てを結集させた重厚な作品を繰り出してくる書き手さん。
あのハルヒや紅世の王の力までも総動員させて驚愕を生み、かつ物語を決して破綻させないバランス感覚も持つ。
「硫黄の炎に焼かれても」でのトラヴァスの知略と蒼崎橙子の語りには本当に恐れ入った。
かと思えば「虎と機関銃」や「ドラゴンズ・ウィル」などの熱い話も書いてしまうから困る。


◆MjBTB/MO3I氏
肩の力の抜けた地の文やキャラの楽しげな掛け合い、そしてネタが放り込まれた清涼剤的作品を多数投下する書き手さん。
だがその一方でキャラの心の弱さやマーダーの黒い野心も描くという、二重人格の様な性質も持っている。
真逆なキャラである式と上条さんがそれぞれ活躍する「BREAK IN」と「ラスト・エスコート2」は、作品のまとう雰囲気がスレでも高評価されていた。
また、前者の清涼剤的作品に関しては「零〜zero〜」や「NINJA GAIDEN」などを挙げておくべきだろう。こいつらロワ充すぎワロタ。


◆EchanS1zhg氏
誰も疎かにせずに大人数をがっつり動かし、複雑なパズルを組み上げるように様々な作品を作っていく書き手さん。
OPから現在まで積極的に戯言出典キャラを動かし、このロワの根本をも作り上げた裏の主催者とも言える。西東天ー! 俺だー! 放送してくれー!
戯言キャラの鳥肌物な再現度と書き込みっぷりは「Parallel daze――(平衡幻覚)」や「トリックロジック――(TRICK×LOGIC)」に各放送話、
そして大人数の手腕に関しては「CROSS†POINT――(交錯点)」や、それもまた同じく上述の「トリック〜」などで実感してほしい。


◆olM0sKt.GA氏
キャラクター一人一人を確実に丁寧に描写する事で、安心のクオリティの作品を作り出す書き手さん。
痒い所に手が届き、次への期待を無尽蔵に上げる展開を繰り出すニクい演出家の才も備わっている。
なんといっても「「つまらない話ですよ」と僕は言う」を語らなければ話にはならないだろう。古泉死亡のあの流れは実に最高だった。
他の書き手さんと比べると投下数も少ないが、是非これからもラノルタで書き続けて欲しい。あ、個人的には「行き遭ってしまった」も好きです。
262 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2010/12/25(土) 23:38:01 ID:WMtepXdW
>>261
少々書き手さんを持ち上げすぎな内容だな
なぜ修正しようと思った


予約…こねえなあ…
どうせなら年内に放送ぐらいやろうぜ……
263 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/25(土) 23:44:36 ID:2nizHJK3
うおー、書き手紹介すげえ
あげられてる作品を読み返したくなるなw
264 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/27(月) 13:56:44 ID:y4H4DUie
年末だし人気投票でもする?
265 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/27(月) 23:32:51 ID:foJE4MpG
>>264
良いと思う
266 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/28(火) 00:12:01 ID:osFbXwIz
>>264
俺もいいと思うよ
そういや、前回の人気投票もこんな時期だった気がするしw
267 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/28(火) 14:15:20 ID:A+X5+9L0
前回のテンプレだけどこんな感じでいいのかな?
期間は少し早めてみたけど去年に合わせた方がいいんだろうか


☆ 第3回 ラノロワ・オルタレイション作品人気投票 ☆

【テーマ】:今までに投下された作品の人気投票をしよう!
【投票対象】:「130 街角にて ― Alternative ― 」より「164 囁かれる者と喰らう者 」まで。
【投票期間】:12/30(金)00:00〜1/8(日)24:00
【投票方法】:投票したい作品を5作選び、1から5までの点数をひとつずつ振り分けて記入(レス)する。
【テンプレ】:

 [5点]:[(話数):(タイトル)]
 [4点]:[(話数):(タイトル)]
 [3点]:[(話数):(タイトル)]
 [2点]:[(話数):(タイトル)]
 [1点]:[(話数):(タイトル)]

 例)
 [5点]:[081:「130 街角にて ― Alternative ―]



投票と一緒に、作品の感想も書いてくれると書き手は大いに喜びます♪
でもでも、タイトルが上がるだけでも嬉しいのでタイトルだけでもいいです。気兼ねなく遠慮なく投票してください。
あ、それと当然ですが投票できるのは1回限りです。間違っちゃわないよう気をつけてくださいね。


268 名前: ◆iMRAgK0yqs [sage] 投稿日: 2010/12/28(火) 20:09:53 ID:NdmSugdT
>>267
大丈夫だと思います。

>>all
投票スレはいつでも書き込める状態にしております。
269 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/29(水) 02:18:02 ID:GWkTXhzg
>>267
日時と曜日がずれてるかな
あと例のとこがちょっと変な感じ
270 名前: 267 [sage] 投稿日: 2010/12/29(水) 02:36:14 ID:0m0449Pg
したらばの方にテンプレを張ってきました
投票期間は12/30(金)00:00〜1/8(日)24:00です
時間はあるのでまったりと投票しましょう

>>268
したらばの点検乙です!
271 名前: 267 [sage] 投稿日: 2010/12/29(水) 02:56:06 ID:0m0449Pg
>>269
本当だ、指摘感謝です。

>>◆iMRAgK0yqss氏
こちらの不手際で指摘に気づかないまま張ってしまったので、申し訳ありませんが古いほうのテンプレの削除をお願いします
272 名前: ◆iMRAgK0yqs [sage] 投稿日: 2010/12/29(水) 07:06:46 ID:a/v/2eLU
>>269-271
気づかなかった(汗<日付間違え
削除対応しました。

今回の投票用テンプレのURLはこちらとなります。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1252763239/45
273 名前: 267 [sage] 投稿日: 2010/12/29(水) 18:37:53 ID:0m0449Pg
>>272
ありがとうございます
手間をおかけしてすみませんでした
274 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/30(木) 00:03:21 ID:Yr1a9BZZ
投票開始か。迷うぜ・・・
275 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/31(金) 12:20:37 ID:Mz/k2pmU
まだ誰も投票してないな
276 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/12/31(金) 20:40:32 ID:xuR+feCQ
まあ、読み返すだけでも時間かかるからな
感想とか書くならなおさら。
277 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/04(火) 01:09:48 ID:2oa9A8mi
…まだ一人しか投票してないってばよ…
278 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/06(木) 21:27:43 ID:GFob8Mpr
忙しくて…なんとか読み直す時間作りたい
279 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 04:37:22 ID:pjNrtwdL
遅くなりましたが、
あけましておめでとうございます。今年もラノロワ・オルタレイションを進める一員としてよろしく。

ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/24/ee2714552e883cd789fa3c0775bb6726.jpg?random=be96726a13194044baa949a2f6edd243
280 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 04:40:18 ID:pjNrtwdL
おっと、アドレスのおしりによけいなのがついてたかな?

ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/24/ee2714552e883cd789fa3c0775bb6726.jpg
281 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 11:18:55 ID:XC54HQFy
けしからんですね



・・・ふぅ
282 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/09(日) 00:04:23 ID:mFMzw604
これで投票終了かな?
結構すべりこみで来ましたね。
283 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/09(日) 12:14:24 ID:g+oa2lZ5
なんだかんだで投票数も二桁いって一安心だね

>>279
あけましておめでとうございます
今年も期待してます



……ふぅ
284 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/09(日) 20:06:31 ID:mFMzw604
集計しました。投票結果は下記となります。

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1252763239/59

お疲れ様でした!
285 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/10(月) 16:10:31 ID:HiZivHFB
集計乙です
286 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/01/10(月) 16:53:38 ID:5yCJIwG9
hosyuage
287 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/10(月) 21:47:02 ID:itbKP1+B
集計乙! 自分も結果を得点順に並べ替えたものを投下しておきました。
皆様お疲れ様です! 今年もこのロワがすごいことになりますように!

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1252763239/60
288 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/10(月) 22:15:07 ID:rjXHKhx0
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10390/1234719214/201

議論スレに書き込みあったので、こちらに転載
確かに最近、ペースダウンしているけど・・・
書き手氏たちがリアルで忙しいだけだと思いたい
289 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/10(月) 23:59:45 ID:6MdVjl72
募集するくらいで書き手が出てきたらどこも苦労してない
つか、普通に常時募集中だろ
290 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/11(火) 01:21:36 ID:Jf/gq5f0
予約スレからコピペ


79 : ◆02i16H59NY:2010/04/15(木) 22:53:22 ID:OKIJbj8E0
キョン、御坂美琴、  以上2名予約します。

93 : ◆olM0sKt.GA:2010/05/18(火) 03:14:14 ID:hp6BauKs0
水前寺邦博、坂井悠二、リリア、相良宗介、ティー、白井黒子、伊里野加奈、
フリアグネ、両儀式、トラヴァス、シャナ、島田美波、浅羽直之、

以上13名予約します。

101 : ◆MjBTB/MO3I:2010/07/01(木) 01:41:57 ID:GwMHZAQk0
伊里野加奈、浅羽直之、水前寺邦博、坂井悠二、シャナ、島田美波、白井黒子、ティー

以上8名を予約します。

106 : ◆LxH6hCs9JU:2010/08/12(木) 00:41:30 ID:DKUzrw8o0
リリア、相良宗介、黒桐鮮花、クルツ・ウェーバー予約します。

110 : ◆EchanS1zhg:2010/09/21(火) 00:47:52 ID:8d3L59bc0
再度、 いーちゃん、涼宮ハルヒ、上条当麻、姫路瑞希、千鳥かなめ、川嶋亜美 の6人を予約します。

118 : ◆UcWYhusQhw:2010/11/15(月) 22:23:28 ID:fFGEAabg0
インデックス、テレサ・テスタロッサの以上二名で予約します。


どうするにせよ、せめて生存報告は欲しいな……
291 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/01/14(金) 21:41:48 ID:zQ2mxgzD
マジで生存報告が欲しいな…
292 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/14(金) 23:20:48 ID:l9qtZmX2
なに、待つだけさ
293 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 03:28:09 ID:V4lrbeX2
疑問なんだが
>>280は生存報告にならないのか?
294 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 06:56:50 ID:X5o/XLXr
普通に入るだろ
つーか、ペースダウンが不満なら自分が書けばいいだけの話だろうに
それをせずに停滞だの何だのってバカじゃないのか?
295 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 14:45:48 ID:V4lrbeX2
だよね。そう思う人が他にもいてよかった。

気長に待っているので、時間に余裕が出来たときにでも予約してください
楽しみに待っています
296 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 19:58:54 ID:hDQGonPY
>>288みたいな勘違いはあれだけど、自分で書けとか言ってるやつはロワの質が下がる覚悟はあるのかね
この六人に混ざっても足を引っ張るだけだから参加してない人もいるだろ

少なくとも俺は通用する自信がないし、ロワの質を下げてまで先を進めたいとも思ってないから気長に待つつもり
ただそれでも>>280みたいな生存報告は欲しいな……
297 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 20:28:14 ID:X5o/XLXr
勘違いされてるっぽいが、俺は「お前が書け」って言ってるんじゃなく「自分で書かないんなら黙って待て」って言ってんだよ?
書かない名無しに、投下を要求する権利なんて無い
自分で書くか、おとなしく待つかの二択なんだよ

生存報告も、希望するのは自由だが議論スレで要求するようなことじゃない
スレが止まるとか言っちゃうのは、お前は何様のつもりなんだとしか言えないよ
298 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 22:13:18 ID:V4lrbeX2
まぁまぁ口調を荒げないで

ロワが止まるのは書き手氏が諦めた時で、それを読み手である俺らがどうこういう権利はまったく無い
元々趣味の延長みたいな企画に完結させる義務は無いしね。

別に書き手マンセーしろってわけじゃないが、生存報告も誰が書き手参加するも自由。

ただ、俺は作品書けない。大分まったから早く書けってのは論外。
黙って待っているのが暇に感じるなら、全話感想とか、参加作品についての雑談とか暇のつぶしようはいくらでもある。
299 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/15(土) 22:32:32 ID:DfSruL6R
というか書き手氏が事故とかにあってるんじゃないかとか心配なら、ここの書き手氏は大概ブログとかやってるから
チェックしてみればいいんじゃね?
チャットにもほぼ毎日来てるだろうし…
300 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/18(火) 21:14:16 ID:4COetnRW
予約キター!!
301 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/18(火) 21:31:53 ID:EgLAKRQ+
ははは、ご冗談をって、ホントにキター!
302 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/18(火) 23:37:21 ID:dnf4YFNT
キター!!wktk
303 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:01:13 ID:XugtWmgl
投下開始します。
304 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:01:27 ID:fPXEriQ7
 
305 名前: 小憩――(waiting game)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:02:05 ID:XugtWmgl
 【0】


――There is no little enemy.


 【1】


刻一刻と物語の終着が近づく、どことも知れない窮屈な世界。
真四角に切り取られたその舞台の南の端。
浜辺よりほど近い場所に、周りの建物よりかは少し大きく、しかし一見してみすぼらしい西東診療所という建物があった。

診療所とは名がついてあっても無論のこと医者はおらず、またろくに設備もない、どこに価値があるのかわからぬ建物。
その正門から玄関。そこを入って板張りの廊下をまっすぐ進み、一番最初のふすまを開くと畳みの敷かれた和室がある。
壁際。それなりに年季を感じさせる柱に背を預け、膝を立てて静かに休んでいる男がいた。

その男の名は甲賀弦之介――と見えるが然に非ず。その名を持つ男はすでに死んでいるが故にそれはありえない。
では何者なのかと言うと、最早語る必要もないが、変顔なる脅威の忍術でその姿を写し取った如月左衛門であった。

男は閉じていた目を静かに開いた。しかしどこを見るようでもなく、どうやら耳と肌とで辺りの気配を探ってる様子。
数秒の後、どこにも異変はないと確かめるとひとつ息を吐き、そして卓袱台の上に置かれたレーダーをちらりと見やった。
そこにも異変は映っておらず。目に入るのは男自身と、同行している紫木一姫の名だけである。
時計は――見ない。もとよりそのような習慣、いやそれどころか時計などとは縁のない世界の住人である。
そしてまた時計など不要な人間でもあった。今時分がどれくらいなのかなど、身体の感覚で充分に計ることができる。

さて先に進む前に解説すれば、レーダーのことにしても確認程度にしか見なかったのは本人に充分な能力があったからだ。
忍の者としてそこは研ぎ澄まされている。故に、気配の届く内のことであればレーダーなどに頼る必要もない。
事実、先の温泉でのできことの中において、彼は一切迷うことなく糸使いの少女を見つけてみせた。
加えて、確かに便利に使用できそうなレーダーという道具であるが、その性能を過信することはできない。
それがなんらかの仕組みである以上、その盲点を突破してくる輩や事柄がないとは限らない。と、そう考えねばならない。
例えば、このレーダーなるものには死者の名前は浮かび上がらない。
とすれば、単純に考えてこのレーダーには死者と生者を区分する何らかが存在するということが推察できる。
ならばその何らかを知ってから知らずか誤魔化している者が存在しないとも断言はできぬのだ。
“生きているのに存在としては死んでいる”――もしそのような者がいれば、レーダーは用をなさないということになる。
そのような出鱈目な者がおるものかと言うても、しかし忍者がいるくらいならもう何がいてもおかしくはないのである。
なればレーダーなる道具はあくまで道具。最も信用すべきは磨き上げた己が感覚と、そう結論付けられる以外にはないのだ。


 【2】


周囲に怪しい気配がないと確認すると、如月左衛門は脇に置いてあったデイバックからペットボトルを取り出し水を口に含んだ。
口内の乾きを癒し、続けてグビと喉を鳴らして水をもう一口、二口と飲み込む。
ほどなくして水は飲み干され、彼の持つペットボトルの中身は空となった。

例えば、ここが草木一本生えぬ荒野の只中であれば、
またはどこぞの城などに忍び込み、補給の当てなく屋根裏を這って諜報活動に勤しんでいるなどという場面であったなら、
持ち運べる器に入った水は至極貴重で、今のように安易に飲み干すことなど愚の骨頂。言語道断であったろう。
が、しかしここはそういった場所ではない。男からすれば些か以上に勝手の分からぬ土地ではあるが、街中なのだ。

空になった器に水を継ぎ足すなぞ造作もない。というわけで、男は立ち上がると奥のふすまを開くと台所へと踏み入った。
これが最新の、例えばIHクッキングヒーターなど電磁調理器具ばかりが並んでいるところであれば、
彼はこの部屋が何かすら理解できなかったやもしれないが、幸いかなこの西東診療所の作りは現代の最新と比べるとかなり古く、
そうであっても男の時代からすれば遥か未来なのではあるが、理解の範疇にぎりぎり留まる有様であった。

男はペットボトル――これも男からすれば実際、奇妙な物だが――を片手に、もう片方の手を流し台の蛇口のつまみに置く。
そしてまじまじとそれを見つめる。
別に使い方については案ずるところはない。先に糸使いの少女が使うのを見ていたのだ。
おそらくどこかで水桶なり井戸なりと繋がっているのだろうと、男はこの水の出る蛇口を理解している。
306 名前: 小憩――(waiting game)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:02:50 ID:XugtWmgl
そう、蛇口。この蛇口。これもまた時の経過により水垢などで汚れてはいるものの、錆びることはなくまだクロムの輝きを保っている。
作りも確かで歪んでいるなどということもない。
このような細い金属の管というと男は鉄砲などを思い浮かべるのであるが、はてしかしこれほどに出来のいい物はあっただろうか。
見聞が浅いだけかも知れぬと思いつつも、男はその疑問に否と答えを出した。

ただの台所。しかも貴族が住まうような屋敷ではなく、町人の、それも取り立てて裕福というわけでもなさそうな家にこれはある。
つまり、これはここでは安価なものであるのだ。なのに、自身の世界の基準と比べると極めて高等な技術が用いられている。
はて、ならばこの事実に男はいかなる感情を持つのか。まずは感心。次に――恐怖である。

もしも、いやそれはもしもなどではなく確実であると言えるが、この技術が武器や戦争に用いられているのだとしたら、
そんな軍隊があるのだとしたら、認めたくはないことだが甲賀卍谷の忍者全員でかかっても敵わないかもしれない。
そのようなものが自分らの知らぬ所に平然として存在したことを知り、自尊心は揺らぎ、かつてない恐怖を感じるのである。
ここまでに幾人かの人間と出会い、言葉も交わした。
彼らはどれも随分と奇異な存在に見えた。考えるまでもなく、あちらからすればこちらも同じく奇異に見えていたことだろう。
はて彼らはどこの国の人間なのだろうか。言葉は通じる。だが話は通じていない部分もあった。
彼らは自分のようにこの街の文化や技術に違和感を覚えていた様子はない。とすれば、恐怖すべき技術を持つ国の者となる。
ならば一度聞いてみようか。貴様らはどこにある国から来たのだ?と。

あの狐面の男が言うに、別々の世界――つまり、彼らが異国に住まう者であることは確実なようだ。
無論。これこのことは今行われている殺し合いとはなんら関係がない。
だが、如月左衛門には殺し合いを生き残った後の目的がある。
本来参加していた殺し合いを甲賀の側の勝利で終わらせ、更には甲賀一族の繁栄に身を捧げそれを成すという目的があるのだ。
となれば、甲賀の里の外に、また日ノ本の外にこのような潜在的脅威が存在するというのは看過できまい。
場合によれば、徳川幕府にこの事実を進言することも考慮せねばなるまい。国破らることあらば、最早忍の生きる道もないのである。

これが、殺し合いの開始より一日の三分の四ほどを過ぎ、
大きな憂いであったガウルンを始末してようやく気の休まった如月左衛門の心中に浮かび上がったひとつの考えであった。
しかしこれはまだ余談にすぎない。

男は蛇口からペットボトルに水を汲み終えると、栓をしてまた元いた部屋へと戻った。


 【3】


まず第一に重要なのはこの殺し合いを生き延びることである。
名簿に名の記されておらぬ者のうち、未だ不明の者がどこの誰とは知れぬゆえ断言はできぬが、
甲賀卍谷に帰れる身は如月左衛門その者ひとり限り。頼れる者、使命を託すことのできる別の者はいないのだ。
となれば、“その後”の話などは今どうこうと考えることではなかろう。それは自分が最後に一人となった後でも遅くはないはずである。

如月左衛門は気持ちを切り替えて現状を分析しなおす。
憎きガウルンめの始末を終えたことで、当座、焦らなくてはならぬようなことはもうなくなった。ゆえに、今はこうして休息もとっている。
心強い味方もできた。紫木一姫という名の“曲絃師”なる糸使いの少女。まだ幼く知恵も足りぬようであったが実力は申し分なし。
むしろ頭の悪さは好都合。己が甲賀弦之介に忠を尽くすように、少女は彼女が師匠と呼ぶ男に忠を尽くしている。
ならば、ことの次第によってはその師匠とやらを手中に収め、ガウルンにされたと同じように少女を意のままに操ることもできるやもしれぬ。
そのような策にどれもどの効果があるのか。それはこの身をもって証明済みであった。
無論。これは大きな恨みを買う方策。ならばするにしてもガウルンのようなあからさまなやり方は真似しないほうがよいだろう。
307 名前: 小憩――(waiting game)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:03:40 ID:XugtWmgl
男は水の入ったペットボトルを仕舞うと、代わりに缶をひとつ取り出した。どうやらこれが乾パンという名の食料らしい。
蓋を開け、中に詰まっているものをひとつ詰まんで目の前に持ち上げる。
挽いた粉を焼き固めたものだとはすぐにわかった。同じものではないが、似たようなものなら方々で見たり食べたりしたことがある。
匂いを嗅いだ後、端っこを少し削り舌の上にのせて毒見をする。
……どうやら毒は入っていない。
そもそも狐面の男が用意したものだと考えれば疑う理由もなかったが、確認すると男はそれを口の中に放り込み咀嚼した。

さて、糸使いの少女の実力については申し分ないが、では逆に己はというとどうなのだろうか。
これはこれまでの手ごたえからするとあまり楽観的には考えていられないというのが正直なところだ。
最後の一人になってみせると決意はしているものの、それが確実だとはとても言えやしない。
ガウルンにしてやられたこともある。糸使いの少女相手にだって、まともにぶつかっていれば勝てたかどうかかなり怪しい。
そして、甲賀弦之介やすでに全滅した伊賀の者共。これらを倒してみせたという者らもここにはいるのだ。

如月左衛門が持つのは忍者としての基本となる体術に変顔の忍術のみ。後は知恵を絞って足りない分を補ってゆくしかない。
さてそうなると困るのが、四半日に一度死者の名を読み上げられてしまうことだ。
これがあるばかりに、死人の顔を奪って己のものとする変顔の忍術が使いにくくてかなわない。
理屈の上では変顔の忍術は相手を殺さなくても使えぬこともないが、しかし難しい。
とはいえ、いくら難しがろうがこれからは殺さずに顔だけ奪うということもいくらか検討せねばならぬだろう。

糸使いの少女は出会う者を片っ端から切り殺しているらしく、またこれからもそうするらしいが、それは多少都合が悪い。
敵が死ぬのは結構なことだが、自らに利するところがなくしては現状は動いていないのと変わらない。
最終的に糸使いの少女を出し抜くためには、所詮アドバンテージというものが必要で、殺しは変顔の忍術とは相性が悪いのだ。
変顔の忍術とはすなわち騙しの術に他ならず、騙す余地がなければその旨みは半減以下である。
先に述べたように死者の名はすぐに知れる。ゆえに、この場において利する顔は生者の顔。“生きた顔”にこそあり。

あの“かなめちゃん”とやらをあえて逃がしたように、うまく言いくるめて“保険”となる“生きた顔”をどこかで得ておくべきだろう。
糸使いの少女と二人、無事に最後まで生き残れたとて、しかし少女に殺されましたでは、ただの阿呆なのだから。


 【4】


さて、もうそろそろ狐面の男が死者の名を読み上げる頃合かと如月左衛門は腰を上げた。
今度は逆の方のふすまを開いて廊下へと出て、その奥から階段を上って二階へと向かう。
あの糸使いの少女は二階の寝室で寝ているはずだ。
なんでも布団の上でないと休めないのだとかなんとか。いやはや戦場では考えられぬ贅沢と浅はかさである。やはり所詮は童か。

階段を上りきり、細い廊下を奥へと進む。少女が寝ている部屋の戸は開け放されたままであった。無用心極まりなく。
実力とは不釣合いな迂闊さに嘆息しつつ、男は少女に声をかけようと廊下より部屋の中を見る。
部屋の手前、鉄の棒で組まれた寝台の上にちょうど少女と同じくらいの大きさの布団の塊があった。
このような有様で、もし奇襲を受けたらどうするのかと、呆れつつも部屋の入り口を潜ろうとして――男はぴたりと動きを止めた。
308 名前: 小憩――(waiting game)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:04:20 ID:XugtWmgl
糸――である。

目を凝らさなくては気づかぬような細い糸が目の前に張られてあったのだ。
総毛立ち、肌が粟立つ。気づかなければどうなっていたのだろうか。鼻の頭を切っただけで済んだであろうか……?
もしかすれば全身を切り刻まれていたかもしれぬ。
どうやら無用心だというのは誤りだったようだ。子供だと舐めていたのは己の方だと如月左衛門は猛省する。

そして、少女は“寝台の下”より姿を現した。なんというか、古典的な方法ではあるが寝台の上の布団の塊は囮だったのである。
子供だまし程度だ。しかしその子供だましに引っかかってしまったのである。
何が恐ろしいのかと言うと、少女は“布団でなくては眠れない”とそう言ってこの部屋に篭ったのだ。
この嘘で“誰”が騙せる? そう、一応は仲間であるはずの己だけなのである。なのに、この少女は臆面もなく嘘をつき欺いてみせた。
一切の油断なく。隙を窺うならばいつでも殺してやるぞと、非情に。

どうやら、頭の回りは子供のそれとは違うらしい。一端のプロとして認めておかねばならない強かさを持ち合わせているようだ。
ひょっとすれば、その見てくれや舌足らずな話し方からすら、こちらを騙すための手段なのやもしれぬ。

ともかく、もう油断はするまいぞと誓い、如月左衛門は床をはって出てきた紫木一姫に声をかけた。

「そろそろあの狐面の男の始まる頃だが、どうじゃ? 板間の上に伏せておったのではあまり休めなかったのではないか?」
「いえいえ、ここに来るまでも肩車してもらいましたし、元々そんなに疲れてなかったので平気ですよ。
 姫ちゃんこう見えて見ての通りに貧弱ですけど、走ったりしなくていいなら三日ぐらいは平気でバトれるので、
 如月左衛門さんが肩車してくれるってならこの後はもう休みなしでもいいってくらいです」
「そうか、ならば――」
「――そうですね。あの変なおじさんの放送を聞いたら、たくさん殺しにいきましょう」

凄惨な、とても童のものとは思えぬ笑みを浮かべる少女を前に、男の背中に冷たい汗が流れた。
果たして自分はこの糸使いの少女を使いきることができるのだろうか。それとも、――逆に使いきられてしまうのか。



舞台の端で休んでいれば、他が潰しあって楽ができるかもなどという考えは、正しくあり正しくない。
楽ができるのは少女の方だけだ。己はこのままでは切って捨てられかねない。
やはり、動かねばならないだろう。少なくともなんらかの保険を、少女に対する切り札を用意しておかないことには、

殺されるのは自分だ。と、そうはっきりと、この時如月左衛門は認識したのである。






【F-3/診療所前/一日目・夕方(放送直前)】
309 名前: 小憩――(waiting game)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:05:08 ID:XugtWmgl
【如月左衛門@甲賀忍法帖】
[状態]:甲賀弦之介の容姿、胸部に打撲
[装備]:マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣、二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣、
      フランベルジェ@とある魔術の禁書目録、自分の着物
[道具]:デイパックx4、支給品一式x6、甲賀弦之介の生首、レーダー@オリジナル
      IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾7/8+1)、
      SIG SAUER MOSQUITO(9/10)、予備弾倉(SIG SAUER MOSQUITO)×5、
      金属バット、陣代高校の制服@フルメタル・パニック!、櫛枝実乃梨変装セット(とらドラの制服@とらドラ!、カツラ)
      不明支給品x1(確認済み。武器ではない?)、
[思考・状況]
 基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。
 0:放送を聞く。
 1:紫木一姫と同盟を組み、殺し合いを進め、生き残る。
   └後の決着を踏まえ、“生きた顔”や紫木一姫の弱みとなる情報を掴んでおきたい。
 2:残る伊賀鍔隠れ衆との争乱を踏まえ、朧か薬師寺天膳の顔を手に入れたい。
 3:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。

[備考]
 ※遺体をデイパックで運べることに気がつきました
 ※千鳥かなめ、櫛枝実乃梨、紫木一姫の声は確実に真似ることが可能です。
 ※「二十万ボルトスタンガン」の一応の使い方と効果を理解しました。
   しかしバッテリー切れの問題など細かい問題は理解していない可能性があります。


【紫木一姫@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:澄百合学園の制服@戯言シリーズ、曲絃糸(大量)&手袋、
[道具]:デイパック、支給品一式、
      シュヴァルツの水鉄砲@キノの旅、ナイフピストル@キノの旅(4/4発)、裁縫用の糸(大量)@現地調達
[思考・状況]
 基本:いーちゃんを生き残りにするため、他の参加者を殺してゆく。
 0:放送を聞く。
 1:如月左衛門と同盟を組、殺し合いを進める。
   └如月左衛門に裸を見られたことを忘れたわけではない。最後はきっちりその償いを受けさせる。
 2:いーちゃんを見つけたら存在がばれない範囲で付きまとい、危険分子を排除する。
 3:SOS団のメンバーに対しては?

[備考]
 ※登場時期はヒトクイマジカル開始直前より。
 ※SOS団のメンバーに関して知りました。ただし完全にその情報を信じたわけではありません。
 ※如月左衛門の忍法、甲賀と伊賀の争いについて話を聞きました。どこまで把握できているかはわかりません。
310 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:05:53 ID:XugtWmgl
以上で投下を終了します。
311 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/24(月) 23:30:23 ID:fPXEriQ7
投下GJ! 姫ちゃんKOEEEEEEEEEEE!
如月さんは自分の立ち位置を改めて認識しリスタートといったところか。
現代の技術に対し恐怖を抱かず、逆に興味を抱いた天膳殿は死んでしまったが、
この何事にも注意深臨む如月左衛門の場合、一体どうなるのやら……これからが楽しみだ。

しかしここのマーダーチームは本当に自重しねぇwwwwwww
このピリピリとした感じがたまらんwwwww謀り合いは誰が勝つのかwwwwwww
312 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/25(火) 01:28:45 ID:rMHtO/eg
投下乙!
いいなあ、これでこそマーダーコンビって感じの緊張感が漂いまくりで
うっかり左衛門は慢心するとすぐ姫ちゃんの糸にさっくりやられそうだから困るw
忍者ならではのカルチャーギャップは相変わらずおもしろいw 細かい描写で驚きがよく出てるわー
313 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/25(火) 18:00:55 ID:spZjntBG
投下乙です
いいわっ、こういうのw
確かにマーダーチームはこうであるべしw
左衛門さん、下手したらあんた死にますぜw
武器はあるが現代兵器を使いこなせるのかな?
314 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/01/31(月) 21:48:53 ID:QSiy0Pag
次の投下が来るまで暇だから支援MADを久しぶりに見てきた。
やっぱいいよね、これ
315 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:06:14 ID:HOflcJPj
放送案投下します。
316 名前: 第三回放送――(1日目午後6時)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:06:57 ID:HOflcJPj
 【0】


人間は毅然として現実の運命に耐えていくべきだ。 そこには一切の真理が潜んでいる。


 【1】


その日はまさしく茹だるような暑さという言葉にふさわしい天気だった。
真夏の陽光はまるで影を地面に焼きつけようとするかのように照りつけ、カラカラに乾いた空気の中で肌はジリジリと焼けていた。
また、その白光は風景に強いコントラストを浮かび上がらせ、その現実味を薄れさせてもいる。
加えて、そこらじゅうに配された無数の蝉が奏でる騒音交響曲が空間を埋め尽くし、その圧力で脳を押しつぶそうともしていた。

そんな中に男はいた。

男は当て所なく歩いていた。何を考えることもなく、ただあるがままになすがままに。運命に流されるがままに。
なので、彼がその何の変哲もない、強いて言えば作りが新しいくらいというとある市立図書館にたどり着いたのも偶然であり必然だった。
いくらかの涼をとろうと男は足をそちらへと向ける。
男は本を読み、本を好んだが、その時その場面での第一の目的はそれで、図書館に入るというのに本のことは全く考えてなかった。
そもそもこのような変哲もない図書館に興味を引くような特別な本があるとも思っていなかった。
もし、偶々にあるのだとすれば、それは偶々発見することになるだろうからそれはどちらでもいいと男は思っていた。

自動ドアを潜り、冷風にさらされる。
身体に篭った熱が奪われてゆく快感を味わいながら男は広々としたホールを抜け、カウンターの前を通り過ぎる。
同じように涼をとりに来ている者が多いのだろうか、館内はそれなりに――図書館の中なので静かに――賑わっている。
受験勉強中とおぼしき学生。本を読まずに雑談に興じている年寄り。新聞とにらめっこしている壮年の男性。
人種は多種多様でありながら、実に平凡でどこもおかしくなくどこにでもあるような、退屈で平穏な風景がそこにあった。

何を期待していたわけでもない。なので落胆もしない。
男は涼んだついでに本でも物色するかと止めていた足を再び働かせはじめる。縁が合えば引き合わされるだろうと、
だがしかし、不意に足が止まる。
ひとりの少女の存在に気がついた。一見、何の変哲もない少女。どこをとっても特別だとは思えない少女に目が留まった。

その少女はテーブル席に座り、ひとりで本を読んでいる。テーブルの上に積まれた本は3冊。どれもハードカバーのものだ。
セーラー服に上にカーディガンを羽織っている。寒がりか、そうでなければここで一日過ごそうと考えているのだと読み取れる。
ここまでは何もおかしいところはない。他にも同様の人間は多数いる。少女だけが特別なわけではない。
五分ほど棒立ちになって男は少女を観察し、そして違和感の正体に気づいた。

どうやら少女はここで人が現れるのを待っているらしい。
そう。違和感の正体は彼女が陣取っている場所だ。カウンターからホールまでを見渡せる、正面の位置。
ゆっくりと本を読みたい人間はこのような人の行き来が激しい場所は避けるはずである。
また実際にそうでもあった。少女はひとりでいるのではない。逆に少女のまわりには人がいないのだ。ここは人がいるべき場所ではない。
ならば、そこに目的があると考えてしかるべきで、そう思えるのならば、それが一番ありえるはずに違いない。
観察すれば更に憶測は確信へと変じてゆく。
少女は時折、本から顔を上げて視線をカウンターからホールへと走らせている。これは決定的な証拠だった。
317 名前: 第三回放送――(1日目午後6時)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:07:42 ID:HOflcJPj
待ち合わせ――というわけではないだろう。そうであれば場所はここでなくともいいし、そう頻繁に周囲を窺うこともない。
おそらくは、この図書館に通う、またはかつてこの図書館で縁の合ったことのある素性の知れぬ誰かを探しているのだと推察される。
恩人か、また恨みのある相手か。
少女の表情を見るに、そう差し迫ったものも、暗い感情も見えはしない。となると、前者か。
その相手に親切にでもされ御礼がしたいのかもしれない。もし相手が男であったならちょっとしたラブロマンスだった。
少女漫画の世界と言ってもいい。そして男は少女漫画を苦手としているなどということは全くなかった。

男は少女に話しかけてみることにした。
別にお節介を焼きたいと思ったわけではない。ただ単純に、少女そのものに少しばかり興味がわいただけだ。
縁が合うような取っ掛かりをこちらから勝手に見つけ出したというだけのこと。その先のことなどこの時は何も考えていなかった。
これが運命ならどう思い行動しようと結果は同じはず。ならば、今はただ流れに身を委ねればよい。

声をかける。


「嬢ちゃん。あんたいい眼鏡をしているな」


これが、世界の歯車が狂った瞬間。終りの始まりの、その始まりの瞬間だった――……






 【2】


「ふん。『夢か』。なるほど、少なくとも夢を見れるほどには眠れていたわけだ」

真っ暗な、温かみの欠片もない空間で狐面の男――《人類最悪》は目を覚ましそう呟いた。
固い床の上から身体を起こし、目の前に並んだモニタの明かりを頼りに腕時計を確認する。時間はそろそろ次の放送の頃合だった。
どうやら寝過ごすなどという格好のつかないことにはならなかったようだと息をつき、そして億劫さに欠伸を噛む。

「休めとは言ったが、どうやら連中は素直に休んでいたらしいな。案外聞き分けのいいやつらだ」

壁となって並ぶモニタの列に視線を走らせ、人類最悪は感心したような呆れたような言葉を吐く。
モニタの明かりを確認するに、先の放送の後から今この瞬間までに減った参加者の数はたったの“3つ”。
無論。当人やその関係者が聞けばいい気はしないだろうが、これまでのペースを考えればその“3つ”という数は少なかった。

「元々“58名”いた登場人物がこれで“34名”になり、おおよそ6割強といったところか。
 この流れでいけば一日が終わる頃は、現状維持か6割を切るくらい……少なくとも5割を切ることはあるまい。
 となれば、半数ちょいで残り2日。進むほどに物語の濃度が増してゆくことを考えればよい塩梅か」

人類最悪はひとり納得すると、午後6時ちょうどに合わせて己の役割である放送を開始した――。


 【3】
318 名前: 第三回放送――(1日目午後6時)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:08:31 ID:HOflcJPj
『――よぉ、3度目の放送の時間だぜ。

 もう聞き飽きたなんて奴もいるかもしれんが、もしそうなら聞き流してくれればいい。俺も勝手に喋るだけだ。
 例によって内容を繰り返したりはしない。寝過ごしたなんて言ってもそれは自己責任だから俺のせいにはするなよ?

 さて、期待している奴もいるだろうからまずはその期待に答えよう。解説の時間というやつだ。
 何分、俺の口から出る言葉なんでな。いい加減信用もならないという奴もいるだろうが、まぁそれはそれだ。
 これでもこちらもいくらか考えているんだ。信用できようができまいが喋らせてもらうぜ。
 もっとも、俺の本心としては、信用してもしなくても同じ――と、お前らが考えてくれるというのが一番ありがたいんだがな。

 今回は俺のことについてだ。
 と言っても自己紹介をはじめるわけじゃあねぇ。そんなものは話したくもないし、聞かせる意味もない。
 俺のこととは、『俺を探している人間にとっての俺という存在』のことという意味だ。

 どうやらお前たちの中には俺を探し出し、捕まえてしまえば一件落着。
 またはそうはいかないまでも、それなりに状況を改善する足掛かりにはなると考えている人間がいるみたいだな。
 それは二重の意味で無意味だとここで忠告しておいてやろう。

 まず、最初に言ったように俺はただの俺でしかない。舞台装置であり、舞台装置以下のここで喋るだけの俺だ。
 仮に俺を見つけだしたとしても、俺にはお前らをここから出す力もなければ、この物語の進行を止める術も持ち合わせてはいない。
 俺個人の力を借りたいってだけなら話は別だが、俺を見つければ物語が解決すると思うなんてのは見当違いも甚だしい。

 次に、お前たちは俺を見つけだすことはできない。
 お前たちはこう考えているんだろう。
 一番最初に俺と同じ場所にいたのだから、つまりその舞台と俺がいる所とに何らかの経路が存在するのだと。
 もしくは、外が《空白(ブランク)》で囲まれている以上、俺もこの中にいるのが必然だと。
 言っておくが、それらは全くの見当違いだ。見当違いなんてもんじゃない。
 盲目の人間だってまだいくらかはましだと言えるぜ。なんせお前らは見えないものを見ようとしているんだからな。

 冷静に考えてみな。お前たちは、あの箱の中からガラス越しに俺を見た。だから俺と同じ場所にいた。これは正しいか?
 そのガラスが俺を映しているだけのモニタだったかもしれないとはお前たちは想像することができなかったのか?
 これは真相がこうだったのだと言ってるわけじゃねぇ。お前たちの思考力の問題の話だ。
 そう想像することは、こんな発想を思いつくことは何も難しい話じゃあない。
 思いつくことができなかったとしたら、それはお前たちの心のどこかにこの状況を楽観している所があるってことだ。
 どこかで、この最後の一人を決めるという運命から“逃れられる方法があって当然”だと考えている。

 そういう“逃げ”は見ていて興ざめだ。なので断言しよう。そんなものは一切『ない』と。

 いいか、もう少しシリアスに考えるんだ。この放送にしたって舞台の中にいなければできないってのは絶対じゃないだろ?
 逆に考えてみろ。お前たちが俺と同じ立場にあると仮定して、その手の届く範囲に俺が置かれていると思えるか?
 どうだ。それが、それこそがお前たちの見ている逃走経路だ。現実よりの逃走。つまり、現実逃避。

 俺を失望させるな。お前たちはもっと面白いはずだろう?
 つまらない逃げで物語の可能性を収束させるな。もう一度目を開けば、お前たちの目の前にはもっと選べる物語の形があるはずだ。
 運命の流れがある故に、話の筋は変わらないまでにしても、“物語を面白くすることはできる”はず。
 いいか、これはお願いだぜ。見ている俺が退屈だと思うような陳腐な芝居は見せないでくれ。俺は期待してるんだからな。
319 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:08:52 ID:WlCpeF27
 
320 名前: 第三回放送――(1日目午後6時)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:09:16 ID:HOflcJPj
 ……とまぁ、ここまで言っても俺の言葉なぞ信じないという輩もいるだろう。そのこと自体は決してよくも悪くもない。
 だが少なくとも今の俺の言葉は覚えておけよ。
 たとえ無意味への挑戦だとしても、それが妄信ではなく、あえての邁進であるのならば面白さは大きく変わるものだ。
 では最後に、そんな奴がいるのならばという前提でひとつヒントをやろう。

 “俺はお前たちの上にはいない。あらゆる意味において俺はお前たちより下の存在だよ”

 しかし、俺を見つけても意味がないというのは一切の偽りない真実だぞ。
 忠告したのだからその点に関しては後で恨み言を言うのは勘弁してくれよ。俺は決して謂れのない責任は取らないからな。



 さてと、少し長くなったが本題である脱落者の発表だ。


 “古泉一樹”
 “シズ”
 “御坂美琴”


 この3名が脱落者だ。今回は名簿に載っていない者の脱落はない。
 次の放送はまた6時間後。今日の終りであり、明日の始まりである0時。ひとつの節目だな。
 となると半端なところでは終わりたくないだろう。せいぜい生きあがくことだ。なんならその時まで休み続けるのもいい。

 では、縁があったらまた会おう――』


 【3】


放送を終えると人類最悪は枕にしていた座布団をしきなおしてその上に腰を下ろした。
そして狐面の下で、滑稽なのか悲しいのか心底愉快なのかなんとも言えない笑い声を小さく漏らした。

「『夢か』。ククク……夢ねぇ。一体全体、夢を見ているのは誰なんだろうなぁ。俺か、あいつらか、それとも――……」



狐面の男は笑う。その意味はわからない。



321 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:10:23 ID:WlCpeF27
 
322 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:11:01 ID:HOflcJPj
以上で投下終了です。
しばらく様子を見て、問題ないようでしたら放送後に進むということでよろしくお願いします。
また、放送後の予約解禁の日時に要望などありましたらそちらもあわせてよろしくお願いします。
323 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:26:52 ID:FTNJ0ZVu
投下乙です。
狐さんちゃんと起きられたか。よかったよかった。
内容は問題ないと思います。細かなところで指摘をば。

>「元々“58名”いた登場人物がこれで“34名”になり、おおよそ6割強といったところか。
これってトーチ化して消えた伊里野のことが認知できてないのかな?
だとしたらマイナス1で59名では?

>【3】
ふたつありますね。
324 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:31:33 ID:WlCpeF27
投下GJ! 問題なしと思われます!
>>323で言われてる事に全く気付けなかったこの自分めが言ってもアレかもですが……w

狐さんは目覚めて放送をしてくれたものの、喋ってみればまた意味深な解説とな。
夢の中の話も凄く気になるし……続きを妄想する楽しい時間がまた始まるお! 改めてGJでした!
325 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:32:08 ID:lHJVQE1I
投下乙です
放送キター!あんた無理やり連れてこられた実は何も考えてないただの傍観者じゃなかったのかよ
この不気味さはいつも通り無意味なのかそれとも…
しかもこの人嘘はつかないから対主催の仮説も崩れたわけか、今後どうすんだあいつら
そしていまだ全貌がわからない主催側。よく考えたらこのロワの目的もまだわからないんだよな
今後が楽しみな放送でした改めて投下乙です
326 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/01(火) 23:45:22 ID:HOflcJPj
>>323
おおっと、間違えてステイルも消えたものと勘定してました……w 正確には、59名、35名ですね。
【3】がふたつあるのとあわせて、wiki収録時に修正します。
指摘感謝。
327 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/02(水) 00:04:20 ID:unl7UF/F
よっしゃー、待ってました!投下GJです! 
なんか放送が来るたびに、対主催が出来ることが少なくなってる気がするぜw
いったいこの先どうなっていくのか、まるで読めん
つーか狐さんもトーチ化の影響を受けてるとはwあんた仮にも主催だろとw
328 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/02(水) 15:11:27 ID:/TAI3S9m
投下がキテルー!
そして放送もキテルー!
うれしくて脳汁出まくりだw
329 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/02(水) 20:53:52 ID:xeC+N8ZB
問題もなさそうだし、解禁は週末含める意味でも金曜日24時はどうだろう?
330 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/02(水) 22:22:15 ID:p1q71Vkw
それまでに物言いがつかなければ、金曜の24時(=土曜の0時)に予約解禁ということでよろしいでしょうか?
331 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/03(木) 00:49:57 ID:Dk9hjd0Z
いいと思いますよー
332 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/04(金) 22:49:40 ID:Vgy1CnLh
とりあえず、今のところ問題はないようなのでこの後24時から放送後の予約を解禁ということでよろしくお願いします。
333 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 00:09:14 ID:lhjTqVR+
>>332
乙です

そして予約解禁…地獄がががw
334 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 01:37:52 ID:5vyU/g5s
一気に3つも予約がwww
335 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 07:34:14 ID:lhjTqVR+
予約4つ目きたwww
336 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/02/05(土) 08:50:17 ID:hTnhifHL
予約で取り扱う人数がヤバいことになってないかオイ
337 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 12:34:23 ID:YmHnGOIw
予約入りすぎw
一瞬目を疑ったよ
338 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 13:02:40 ID:lGNAmqA5
こんなに来るなんて感激だわw
急にロワが動いたって感じ
339 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 15:49:38 ID:yadkZR2q
なんかもう感動しかないw
340 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/05(土) 23:29:29 ID:lWAHbsAZ
予約すげぇww
来週は投下ラッシュかw楽しみ過ぎるww
341 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 12:23:25 ID:u2h1P2nz
マーダー組の予約が来てないがこれはまず対主催組を書いてからマーダー組を料理する算段を既に書き手同士で済ませてたのか?
それはそれで後の楽しみが増えたが
342 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 12:48:02 ID:I5SDwZ2F
>>341
マーダー組単体の予約は来てないね、うん
343 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 15:12:41 ID:LwAEFHgt
>>341
それは穿ちすぎだな
普通に考えても、対主催組の方が放送後のリアクションとかやること多いだろうに
マーダー側も見たい、って願うまでなら気持ちは分からんでもないけど、その勘ぐりは下衆すぎるぞ
344 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 15:33:28 ID:LwAEFHgt
ちょっと気になって確認してみた
前回の第二回放送明けも、基本的に対主催チームから売れてるね
放送直前の振りからして接触必至だった、神社に向かうキノとか、警察署の師匠組とかも一緒に売れてるけど
今回はそこまでの振りがないからかな
心配しなくても前回の時には、その後にちゃんとマーダー組とかも売れてるしね。まだまだ焦る段階じゃないと思うよ
345 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 16:09:22 ID:WQwmHKFO
つーか師匠組予約入ってるだろw
346 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 16:11:19 ID:VbN+HbPq
多分それに気付かなかっただけじゃないのw
347 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/06(日) 21:21:08 ID:BlowUttZ
にしても師匠組は順調に対主催ばかり削ってるなw
フリアグネ組はマーダーしか削ってないのに……トラヴァスさん流石です
348 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/07(月) 23:31:54 ID:9SGrES7o
長門……段々と謎が暴かれていくな
一枚噛んでるのは判るが……
もっともSOS団の連中、キョン以外はロワとか開催しようと思えば開催できるほどバックの力があるんだよなw
349 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/10(木) 09:10:12 ID:9OK32Rc9
予約きまくってて俺歓喜
350 名前: ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:34:31 ID:Yp/HGDx2
浅羽直之投下します。
351 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:35:42 ID:Yp/HGDx2
 浅羽直之は聡い少年である。

 この拉致事件の首謀者が宇宙人であることや、その実態が殺し合いであることは、始まってすぐに理解できた。
 だから浅羽は機関銃を手に取った。知り合いを前にしても、引き金を引く覚悟を決めたつもりでいた。
 仕方ないじゃないか。生き残れるのは一人だけなんだ。だったら晶穂も部長も殺すしかない。仕方ないじゃないか。
 五十八人も他人がいて、一人しか自分がいないのだったら、浅羽にとっては一択だ。生き残ろう。浅羽は決意した。

 誰か、自分を犠牲にしてでも守りたい女の子がいれば、違ったのかもしれない。

 そんな仮定の話はともかくとして、浅羽は虎に襲われた。グレイでもプレデターでもなく、虎。タイガーだ。
 浅羽直之は聡い少年ではあるが、機関銃が一丁あれば相手がエイリアンだろうと戦争してやるぜと粋がれるほどのタフマンではない。
 顔見知りの女の子と、見た目とは裏腹な凶暴性を秘める手乗りタイガーのタッグ相手に、乱射魔を演じきることはできなかった。
 生きることに懸命で、生き延びることに必死な、どこにでもいる普通の少年。浅羽は自他共に認める一般人だったのだ。

 虎から逃れた浅羽は、川を流れて病院にたどり着いた。一般人である浅羽にとって、そこは病院というより武器庫だった。
 現実的に考えて、機関銃を構えるのと毒薬を相手に飲ませるの。どちらが気持ち的に楽だろうか。浅羽は後者だと思ったのだ。
 そうだ、ぼくは毒薬使いになろう。機関銃を捨てた浅羽は、毒のエキスパートになろうと決意した。矢先、忍者に襲われた。
 虎に忍者に、おかしな人間が多い世の中だとつくづく思った。浅羽はこんなにも普通なのに、他のみんなは普通じゃない。ずるい。
 けれど、その忍者はすぐに死んだ。浅羽の持っていた毒を、自分で飲んで自分で死んだ。たぶん事故か自殺だ。浅羽はやってない。

 その後も、浅羽はいろんな場所を巡り歩いた。訪れた飛行場では、外国の女の子に出会った。不思議と言葉は通じた。
 先の毒死忍者の一件で半狂乱に陥っていた浅羽は、このとき男子中学生ならではのちょっとした情動にかられたりもした。
 具体的に言うと、親しげに話しかけてくれた外国の女の子を襲った。服を剥ぎ、裸にして、レイプしようとした。
 今を思えば、馬鹿なことをしたと反省している。だって目論見はすぐに失敗して、浅羽は彼女の彼氏に殺されかけたのだから。
 でも仕方がない。あの子は、やたらやかましいクラスの女子たちに比べればずっと魅力的だったのだ。襲いたくもなる。不可抗力だ。

 結局のところ、浅羽は決意などできていなかったんだと思う。彼の手は、人を殺めるにはあまりにも小さすぎたのだ。
 浅羽にはなにもない。守りたいものも、貫き通したい意地も。我が身だけがかわいい。そんな不幸な少年だった。
 精神的疲労困憊。緊張臨界点突破。活動機能無期限停止。ふと、浅羽はゼンマイの切れたからくりみたいに止まった。

 道端で榎本が死んでいた。
 そのせいでもあるのだろう。

 浅羽と榎本という男は、ちょっとした知り合いだった。中学二年の夏休み最後の日、夜の学校で知り合った。
 それなりの交友関係はあったと思うが、正直なところ浅羽は榎本のことが嫌いだったし、榎本も浅羽を好いてはいなかったように思える。
 そんな微妙な関係であるはずのに、榎本は不思議と浅羽にコンタクトを取ってくることが多く、彼の仕事につきあわされることも結構あった。
 と言っても、そのほとんどは雑用だ。別に浅羽でなくともできる、そんな類の。誰に誇れることもやっていない。と思う。
 詳細は、よく教えてもらっていないのだ。浅羽にとっても、いろいろと謎の多い男なのである。この、榎本という死体は。

 知った顔の死に様というのは、想像以上に来るものだった。なにが来るって、まず嘔吐感だ。続いて吐瀉物。気持ち悪い。
 しかし、浅羽は耐えた。精神的にはもういっぱいいっぱいどころか満杯といったところだが、ここで野垂れたら死んでしまう。
 そんな極限状態の最中、浅羽は白い髪の女の子に出会った。白い髪の女の子には同行者がいて、その子は浅羽を助けようとしてくれた。
 だが、白い髪の女の子は浅羽を敵視したのだ。まるで、当初の浅羽の決意を断罪するかのように。浅羽は怖くなって、卒倒した。
352 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:36:45 ID:Yp/HGDx2
 次に目を覚ましたとき、周りにはたくさんの人たちがいた。例の白い髪の女の子もいたし、金髪の外人男性もいたし、喋る猫までいた。
 数えてみると、浅羽を除いて四人と一匹。この四人と一匹は、生き延びるためにグループを組んでいるようだった。
 浅羽にはこれといった目的がない。ただ生き延びたい。しかし他の人を傷つけることは、できるなら避けたい。
 そう正直に主張したおかげかどうかはわからないが、浅羽はそのグループの一員になることができた。孤独からの脱却だった。

 団体行動を取るなら、浅羽もなにか仕事をしなければならない。働くもの食うべからずというやつだ。
 アリとキリギリスの話を知っていた浅羽は、みんなのためにせっせと働くことにした。最初の仕事は、物資の調達だ。
 目的と仕事を得て、訪れた百貨店の軒先では、男が死んでいた。例の白い髪の女の子の知り合いらしかった。
 白い髪の女の子はすごくすごく悲しんだが、金髪の外人さんがどうにかそれを慰めた。浅羽にはなにもできなかった。
 百貨店には危険な人間がいるかもしれないので、物資の調達は他所で行うことになった。
 車に乗って帰る直前、浅羽は道端に取り残されるように置かれていたデイパックを発見し、これを回収した。

 浅羽たちのグループは、しばらく北の飛行場に留まり休息を取ることになった。が、次なるアクシデントはすぐにやってきた。
 白い髪の女の子が、いなくなったのだ。誰にもなにも言わず、忽然と消えた。たった一匹、喋る猫だけを連れて。
 知り合いが死んだショックで、情緒不安定になってしまったのかもしれない。と浅羽は思った。
 すぐさま捜索が開始される。浅羽も白い髪の女の子を捜すために飛行場を出たのだが、一人で動いたのがいけなかった。
 いつぞや、浅羽がレイプしようとした外国の女の子。彼女の彼氏と鉢合わせになり、身柄を拘束されてしまったのだ。
 出来心だった。ついカッとなってやった。大事なところには触れていないのだから無罪だ。だって仕方がないじゃないか。
 浅羽は必死に弁明して、遅れてやって来た被害者本人から一応の許しを得た。あれは許しというより、単なる侮蔑だったのかもしれないが。
 他人の心象などどうでもいい。浅羽はどうにかこうにか助かった。それでいい。今は白い髪の女の子を捜すのが先決だ。

 走って捜し回るという体力的に酷く効率の悪い捜し方をしていた浅羽の前に、十字マークを掲げた救世主が現れる。
 それはたぶん、浅羽にとって一番親しいと言える人間だった。彼と再会した瞬間、胸中にどれだけの安らぎを得たか。
 事情を話すと、彼は浅羽に一台の自転車を提供してくれた。ママチャリだ。そして、白い髪の女の子を捜すための最終兵器だ!
 浅羽は自転車を漕ぎ、北から南へ一気に南下した。南を目指す理由はただ一つ。その方角に映画館があるからだ。
 白い髪の女の子がどこに向かったかはわからない。だけど、浅羽の頭の中には予感があったのだ。
 彼女は――なんだかすごく、映画を見たがっていたような気がする。気がするというだけの根拠で、浅羽はペダルを漕ぎ続けた。 
 もうすぐ、日が暮れる。白い髪の女の子が姿を消してから、結構な時間が経過しているようにも思えた。
 浅羽が懸命に自転車を漕いでいる一方で、他の仲間たちがとっくに捜索を終えているという場合も考えられる。でも。
 浅羽は己の予感に抗えなかった。そこにいる気がしてならない。確かめてみなければ気が済まない。それが少年を突き動かす原動力だ。

 ふと思う。
 なんでこんなに必死になってるんだろう?


 ◇ ◇ ◇

353 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:37:32 ID:Yp/HGDx2
「あれ?」

 映画館に到着してまず浅羽が口にした言葉は、疑問符を単なる音にしただけのものだった。

「誰もいない……やっぱり、ぼくの気のせいだったのかな」

 白い髪の女の子――ティーは、きっと映画を見たかったはずなんだ。
 そう考えてはいたものの、いざ現地を訪れてみれば、どうしてそんな考えに至ったのかが我ながらに理解できない。
 結論として、映画館にティーはいなかった。というより、浅羽以外には誰もいない。まったくの無人だった。
 隠れている……なんて可能性も抱けない。よく探してみたわけでもないが、不思議と、それはないんじゃないかと思えたのだ。

「はあー、無駄足だったかー」

 映画館入り口のロビー。そこに備えられたベンチに、浅羽は腰を下ろす。
 北の街から南の映画館まで、休憩も挟まず自転車を漕ぎ続けてきたから、足がパンパンだ。しばらくは動けそうにない。
 それに、浅羽はもともと怪我人でもある。容態は打撲に擦過傷、歯の欠損や単純骨折と、まさに全身傷だらけ。
 体調も悪く、頭がガンガンする。これでよく自転車なんかに乗れたな、と自分のバイタリティに呆れてしまう。

「とんだ骨折り損のくたびれ儲けだよ」

 それだけ、ティーのことが心配だったのだろうか。浅羽は自分の行動の意味が、よくわからなかった。
 だって浅羽は最初、彼女のことを怖がっていたのだ。
 こちらの心を覗き見してくるようなティーの視線に、得体のしれない不気味さを感じて恐れた。
 なのに今は、そんな彼女の存在を仲間と認め、骨身を削って捜し出そうとしている。しかも、こんなに遠出をしてまで。

「……あ」

 ふと、浅羽はロビーの柱にかかっていた時計を見る。
 時刻は夜の六時を示していた。
 あの男の放送の時間だ。

「ティー……まさか……」

 浅羽は嫌な予感がした。が、その予感は結果的には杞憂に終わる。
 今回の脱落者の数は、なんとたったの三名。その中に、行方不明のティーは入っていなかった。
 よかった。急にいなくなったからもしかして、と心配していたのだが、誰かに殺されたりなんてことはなかったようだ。
 とはいえ、たったの三名とはいえ今回も脱落者は出たのだ。この世界の活動範囲も確実に狭まっている。迂闊に安心はできない。

「古泉一樹、シズ、御坂……あ、この二人って!」

 名簿を広げ、脱落者の名前に線を引く作業の途中で、浅羽はあることに思い至った。
 今回脱落した、シズという人物。この人は確かティーの知り合いで、百貨店の前で死んでいた男ではなかったか。
 残された少女はもちろんそのことを知っているだろうし、今さらどうということはない。ただ、確認はできた。
 やっぱり、ティーは知り合いを亡くしたショックで飛行場を去ったのではないだろうか。だとしたら、今頃は……。

「戻ったほうが、いいのかな」

 浅羽がそう思う理由は、他にもある。御坂美琴という名前だ。彼女は確か、ティーの同行者である白井黒子の先輩だったはず。
 具体的な人物像は知らないが、白井黒子は御坂美琴のことをやけに慕っている様子だった。
 ならば、そのショックも計り知れない。もしかしたら、ティーと同じような選択をしてしまうかも……と、浅羽は心配になる。
354 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:38:42 ID:Yp/HGDx2
「……やっぱり戻ろう。部長たちもティーを捜してくれるって言ってたし、今頃はみんな集まってるかも」

 一人でティーを捜索する途中、浅羽は同じ中学校の先輩である水前寺邦博と再会した。
 映画館の表に停めてあるママチャリも、彼から譲り受けたものだ。
 いつも必要以上に頭が回り、無駄に行動力のある部長のこと。他のみんなを差し置いてティーを見つけていても不思議はない。
 うん、きっとそうだ。そうに違いない――とそこまで思って、浅羽はまた、疑問符を音にする。

「あれ?」

 本当に、そうだろうか?
 覚え違いかもしれないが、水前寺にはティーのことをきちんと話していなかったような気がする。
 ただ白い髪の女の子を捜していると、そんな風に説明したような……どうにも、記憶が曖昧だ。浅羽は首をかしげる。

「頭が痛い……やっぱり、もうちょっとここで休んでいこうかなあ」

 いまいち記憶が判然としないのは、この頭痛のせいかもしれない。時間はまだまだある。休養は必要だろう。
 それにせっかく遠出をしたんだから、このままトンボ帰りというのも格好がつかないのではないか。
 このあたりの探索をしてみるというのもいいかもしれない。付近には、立ち寄っていない施設がいくつかある。
 たとえば診療所。ここには薬や医療器具が置いてあるだろうから、調達しておけばいろいろと便利だ。
 それと摩天楼。ここで武器を調達したという話を仲間から聞いたことがある。なにか探してみるのもいいかもしれない。
 もしくは温泉。湯に浸かって疲れを癒す。日本人ならではの発想だ。あの夏休み最後の日みたいに、めちゃくちゃ気持ちいいかも。

「どうしよっかなあ」

 なに、あせることはない。
 浅羽には、誰かを守りたいという想いも、守りたいと想える存在も、守らなければならない約束も、なにもない。
 仲間が増えた今でも、我が身が一番かわいい。自分自身には嘘がつけない。生き延びたい、というのが切実な願いだ。
 あせることなんて、ないのだ。

「うーん……」

 それを思えば、あのグループに留まっているのは懸命ではないのかもしれない。
 だってあの人たちは、誰も最後の一人になることを目指してはいなかったのだ。
 脱出するための方法を探したり、仇討ちをしようとしたり、そのために協力しよう手を取り合おう、そんなことばかり言っていた。
 すぐに別れてしまったが、きっと水前寺もそんな考えでいるはずだ。しかし、さっきの放送であの男が言っていたことを考えると……。

「…………」

 考えて、考えて、考えて……浅羽はいつの間にやら、ベンチの上に横になってしまっていた。
 このまま眠ってしまうのもいいかもしれない。とにかく疲れた。成果は得られなかったが、壮大な一仕事を終えたような気もする。
 なんといっても、今の浅羽には大切なものがない。その存在は欠けてしまったから、あせることもない。空虚だった。
 まるで、なにかが抜け落ちてしまったような。けれどそれは、きっと錯覚にすぎないんだろう。浅羽は元からこうだったのだから。

 ……本当に?

 足りない。
 なにかが。
 なにかが。
355 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:39:56 ID:Yp/HGDx2
【E-4/映画館・ロビー/一日目・夜】


【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:全身に打撲・裂傷・歯形、右手単純骨折、右肩に銃創、左手に擦過傷、(←白井黒子の手により、簡単な治療済み)
     微熱と頭痛。前歯数本欠損。肉体疲労(大)。
[装備]:毒入りカプセルx1、ママチャリ@現地調達
[道具]:デイパック、支給品一式、ビート板+浮き輪等のセット(少し)@とらドラ!
     カプセルのケース、伊里野加奈のパイロットスーツ@イリヤの空、UFOの夏、伊里野のデイパック、トカレフTT-33(8/8)
[思考・状況]
 基本:生き延びたい。
 0:疲れた。
 1:周辺の施設に寄ってみる?
 2:少し休んだら飛行場に戻ろうかな。
 3:ティーや白井黒子のことが心配。

[備考]
 参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。
 伊里野のデイパックの中身は「デイパック、支給品一式×2、トカレフの予備弾倉×4、インコちゃん@とらドラ!(鳥篭つき)」です。


 ◇ ◇ ◇

356 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:40:52 ID:Yp/HGDx2
        l  /                    ,、
     、 \    /                    / \       ,. -─.,
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    ̄ (    j     ,. '´ ̄   `'丶     |    ,. -゙‐=<     /     l
    / `ー─'   /  /        ヽ.  /! //  /  ヽ`ヽ /  \  '  /
            /   {  :. ,i!       ',/// .,'  !    } ,ヾ  _ ,'⌒ヽー、 /
            ;'  ! ハ  i l_!       i ,'  i/⌒ヽ  -‐、i. |      !     ,ノ ─
             lj.  i .l゙`i. l!. | ヽ. i  i  |`l i´  ̄ `丶,. -‐ '-!,ノ     `ー一'′
            | i ハj 0 ヽjヽl0 V!  j.、 l⌒l!   0     0  /!
             ',|,.! ,,    ,,  | j /ノ jゝ-、⊂⊃     ⊂!ヽヽ
             ' ll、  「 ̄j  」'レ'l jリ  丶 _  `ー' _,ノノノ
              V` ‐,ゝ-'‐7ゝ ノル′"'´`ニノ\‐r、二! j、) )
                     /〈|:〉// ヽ       /´ ヽ/llヽ\` `
         ,.-,、   _._  /,'〈.|:/」 ',:  ',    ノ  ;' Ll l」 ! ヽ
        /:.:.:.:l.', ,:´:.:',∨.;' ノ′ .i   ',  `ト、,_」.、    |ノ!.    __   _
          {:.:.:.:..j j_{:.:.:.:.:! !:;、 {゙  .,::'i    !  |  / !  ,....」ヽ|_ /´ `!´ ヽ
        ';:::::::| !! ヽ:.::::l 、´ ゙`\ 、 i.   ゙、 / /  ..:::  , ' ̄`′  /|   }
        「::.:`!.j| [:.:.´:!. }、   \ .:L_,.. -{  /  ,'   /      r' ,!  ノ
        ゝ--'、,)__丶::;jノ_,)_,. -─ `‐-ゝ._ノ-'-‐--'─'───‐---'─-- '


          「狩人のフリアグネ!!」  「なんでも質問箱!!」

357 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:41:52 ID:Yp/HGDx2
マリアンヌ(以下マ)「みなさん、こんにちはー!」
フリアグネ(以下フ)「本コンテンツは、私と私の可愛いマリアンヌが、読者の疑問質問に答えていく由緒正しきコーナーだ」

マ「フリアグネ様、とうとうやりましたね! ついに私もラノロワ・オルタレイション進出です!」
フ「ああ、苦節167話、ついに私たちの愛の巣が完成したというわけだ。これもひとえに、私たちの愛の力――マリアンヌ!!」
マ「んぎゅうう〜、フ、フリアグネ様〜嬉しいのは私も同じですけど、まずは貰ったお仕事をキッチリしないと〜」
フ「そうか、そうだね……うん、がんばろう、私の可愛いマリアンヌ!」
マ「はい!(こっちのフリアグネ様は、本編からは考えられないほどの可愛さです……)」

フ「今回のテーマは『伊里野加奈の存在が消失したその後の世界について』だ」
マ「中には、設定が複雑すぎて訳がわからない、という人もいるかもしれませんからね」
フ「このコーナーは、そういった読者のための解説枠だね。ではマリアンヌ、お便りを読んでくれるかな」
マ「了解です! ではさっそく、質問のお手紙を読みまーす!」


 Q:マ『「存在が消える」のと「死ぬ」のって、どう違うんですか?』
 A:フ『存在の喪失は死と違って、その人の居た証がすべて消えてしまうんだよ』


フ「ただ死んだり、殺されたりしただけなら、周りの人間は故人を悼んでくれるし、時には思い出してももらえるだろう。
  しかし『この世に存在する根源の力』である“存在の力”をなくすと、『この世における存在が消える』。つまり……」
マ「最初からいなかったことになる?」
フ「そのとおりだよ、マリアンヌ。いなくなっても、誰も悲しまない。思い出されることも絶対にない。
  あらゆる『存在した証』も消えてしまう、完全なる消滅だ」
マ「でも、消えた人間が周囲に与えた影響はある程度残ってしまうため、いなくなったことによる矛盾や不自然な現象が発生する。
  それを『世界の歪み』というんですね」
フ「そうだ。その増大と蓄積による決定的な破綻を『大災厄』と呼んで恐れる“紅世の王”たちが、
  フレイムヘイズに力を与え、同胞を殺して回っている、というわけさ」
マ「なるほどー。ではフリアグネ様、この物語……ラノルタの中で『存在が消える』ケースといったら、なにが考えられるでしょう?」
フ「現状では、二通りのケースが考えられるね。一つは、“紅世の王”である私が、人間の“存在の力”を喰らうケース。
  もしくは、炎髪灼眼のおちびちゃんや『万条の仕手』らフレイムヘイズが、人間の“存在の力”を故意に糧とするケースだ」
マ「あれ? ということはつまり、今後フリアグネ様が手を下した人間はみんな、伊里野加奈のように『存在が消える』のですか?」
フ「いいや、そういうわけではないさ。『存在が消える』のは、あくまでも“存在の力”を刈り取った場合のみだよ。
  たとえば、私が致命傷を負わせてあとは放置した“剣士”がいるだろう? 彼は“存在の力”を失ってはいないから、
  死んだ今になっても皆の記憶からは消えていない。要は殺害方法の問題だね。人間のやり方で殺すか、“紅世”のやり方で殺すかの違いさ」
マ「そうだったんですね〜。では、続けて次の質問を読みましょう」
358 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:42:53 ID:Yp/HGDx2
 Q:マ『トーチになったから存在が消えるのではないんですか?』
 A:フ『「存在が消える」という事象にトーチは実のところ関係ないんだよ』


フ「よく『伊里野加奈はトーチ化したから存在が消えた』と誤解されがちだが、存在の消滅にトーチ化という仮定は必要ない。
  そもそもトーチを作る目的はなにかと言えば、“紅世の徒”が作る場合とフレイムヘイズが作る場合で意味合いが違ってね。
  フレイムヘイズは『世界の歪み』の衝撃を和らげるため、“紅世の徒”はフレイムヘイズへの目眩ましのため、トーチを作成するのさ」
マ「確かトーチは、人間を喰らう際“存在の力”を少しだけ残しておいて、その残り滓を使って作り出すんでしたよね?」
フ「そのとおり。たとえるなら、今日の晩ご飯を残しておいて明日の朝食にしてしまおうという魂胆だよ。
  この手法を使えば、手作り料理にうるさいフレイムヘイズにも手抜きをしているとは思われにくい」
マ「フリアグネ様、そのたとえは逆にわかりにくいと思います……」
フ「そうかい? ではもっと簡潔に説明しよう。先の質問にかかってくる話だが、存在が消滅すると『世界の歪み』が発生する。
  この『世界の歪み』はフレイムヘイズたちにとって察知しやすいものなので、“徒”も極力起こしたくないものなんだ。
  “紅世の徒”とフレイムヘイズは因縁関係にあるからね。食事をするたびに文句を言われては、誰だって参ってしまう」
マ「派手に暴飲暴食してると、またこんなところで食い散らかしてるなー、と注意されてしまうわけですね」
フ「いい例だ。困ったことに、注意を通り越していきなり殺しにかかってくるのが同胞殺しのフレイムヘイズという生き物だがね。
  そうやって文句を言われることを防ぐ、または見つかるのを遅らせるために作るのが、“徒”にとってのトーチなのさ」
マ「トーチを作っておけば、“徒”が人間を喰らったと、フレイムヘイズはすぐにはわからないわけですね」
フ「そういうことだよ、マリアンヌ。では問題だ。私が伊里野加奈やステイル=マグヌスのトーチを作ったのは、なぜだと思う?」
マ「この物語の中に登場する“紅世の王”は、“天壌の劫火”や“夢幻の冠帯”を除けばフリアグネ様ただ一人。
  もしそんな状況下で存在の消滅が起これば、『フリアグネ様が人間を喰らった』ということがフレイムヘイズにすぐバレてしまう……だからですか?」
フ「さあて、どうだろうね」
マ「えー、正解は教えてくれないんですか〜!?」
フ「うふふ、正解はマリアンヌにだけ、あとでこっそり教えてあげるよ。さて、このあたりでまとめようか。
  今回の場合、存在の消滅は、正確には『私が伊里野加奈を喰らった瞬間』に起こっている。つまり、彼女の存在はもう随分前に消えていたのさ。
  しかしながら、私は『伊里野加奈のトーチを作る』ことでその発覚を遅らせた。トーチを目眩ましと言ったのは、そういうことなのだよ」
マ「トーチとは、存在の消滅という事実の発覚を遅らせるものでしかない……それじゃあ、もしフリアグネ様がトーチを作らなかったら?」
フ「第148話の時点で、『この世の本当のこと』を知る者以外は伊里野加奈のことを忘れていただろうね」
マ「彼と彼女のラブシーンも、描かれなかったわけですね……」


 Q:マ『「存在した証」が消えるって、具体的にどのくらい消えるんですか?』
 A:フ『今回の伊里野加奈の例で検証してみよう』

359 名前: 浅羽直之の人間関係【改】 ◆LxH6hCs9JU [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:44:47 ID:Yp/HGDx2
フ「マリアンヌ。今回の伊里野加奈の喪失で変わったの最もたることといえば、なんだと思う?」
マ「はい、それはみんなの記憶です! この浅羽直之は特に伊里野加奈と縁が深かったですから。記憶がごっそり改竄されています」
フ「大正解だよマリアンヌ。『存在した証』、その最もたるものは『存在する者の記憶』なのさ」
マ「ですがフリアグネ様。私にはわからないことが一つあります」
フ「なにかな?」
マ「『浅羽直之と榎本の人間関係』についてです。本来、この二人は伊里野加奈の存在がなかったら出会うこともなかったはず。
  でも今回のお話を見ると、浅羽直之は榎本のことまで忘れてしまったわけではないようですが……」
フ「一人の存在が消えたところで、他の存在まで消えてしまうということはないのさ。浅羽直之と榎本は知り合い。この結果は覆らない。
  ただ、二人の出会いの形は、伊里野加奈を介さないまったく別のものになってしまうがね。そういう風に記憶が書き換えられる」
マ「でも、それって俯瞰的に見ればおかしいことなんですよね」
フ「ああ。だから今回のお話でも、浅羽直之は榎本との関係に違和感を拭えないでいる」
マ「記憶以外には、どんなものが挙げられるんでしょう?」
フ「本人の映っている映像や写真、直前まで身につけていた衣服、名簿などの記録媒体からも痕跡がすべて消える。
  本編の名簿からも、伊里野加奈の名前はきちんと消えているだろう?
  他にも、監視映像みたいなものがあれば、そこからもいなくなっているだろうね」
マ「あれ……でも、フリアグネ様」
フ「どうしたんだい、可愛いマリアンヌ」
マ「伊里野加奈の存在した証、まだ残っています。『彼女の支給品』ですよ。これ、浅羽直之が持ったままです」
フ「ああ、これか。よく気づいたね、マリアンヌ。しかし、伊里野加奈の支給品は彼女が存在した証にはならないのだよ」
マ「え、なぜですか?」
フ「浅羽直之の持つ伊里野加奈の支給品が、誰も伊里野加奈に配られたものだと認知できていないからさ。
  彼の記憶の上では、この支給品は拾った荷物。百貨店に立ち寄った際、道端に落ちていた――そういうことになっている。
  それは彼が百貨店を訪れるずっと前から置いてあったのかもしれないし、そもそも支給品ではなかったのかもしれない」
マ「支給品ではないって……でも、これの中身は他のみんなが持っている支給品と同じものですよ?」
フ「そうだね。ただ、それでもこれが伊里野加奈のものであるという証明にはならない。中身など些細な問題なんだよ。
  だからこそこの支給品は、世界からは『伊里野加奈が存在した証』とは見なされず、消えることもなかったのさ」
マ「それじゃあ、支給品は本来、一人につき1セット。だから59人いれば59セットあるはずなのに、実際にはなぜか60セットあると?」
フ「そういうこと。もっとも、そういった支給品の数に気づいている者など、誰一人として存在しないだろうがね」
マ「物語を俯瞰的に眺めている唯一の人物が、修復する力に巻き込まれているようですからね……」
フ「彼の言葉や感覚を信じるなら、という仮定の話だけどね」
マ「でも、どうにも釈然としない矛盾です。本編内のみなさんは、疑問に感じないんでしょうか?」
フ「それが『世界の歪み』というものなのさ。疑問程度には思うかもしれないが、それは勘違いと切って捨てられる程度のものだ。
  ただ、今後こういったことが頻繁に起こったとすればどうか……『世界の歪み』はそれだけ大きくなり、世界は破綻する。
  これが、フレイムヘイズと契約した“紅世の王”の恐れる『大災厄』だね。具体的にどうなるのかは、神のみぞ知るというところかな」
マ「あれ……フリアグネ様ー。私、消えていないものをもう一個見つけてしまいました」
フ「ほほう。それはなんだい、マリアンヌ?」
マ「『伊里野加奈のパイロットスーツ』です! これは支給品ではなく、物語が始まったとき、彼女が身につけていたものです。
  そのあとはすぐに脱ぎ捨てていますけど、そのあと巡り巡って浅羽直之のところに……これもセーフなんですか?」
フ「ふむ。それについてはいろいろと考察できるね。仮説だが……これはひょっとしたら、伊里野加奈のものではないのかもしれないよ?」
マ「ええ!? こんなにはっきり『伊里野加奈のパイロットスーツ@イリヤの空、UFOの夏』って書いてあるのにですか?」
フ「それはメタ発言だよ、マリアンヌ」
マ「それを言ってしまったら、このコーナー自体がメタ企画です」
360 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:46:41 ID:sTQPpc94
 
361 名前: 代理投下 浅羽直之の人間関係【改】 [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:49:12 ID:sTQPpc94
フ「フフフ、それもそうだね。話を戻すと、このパイロットスーツは伊里野加奈が消えた時点でまだ世界に残っていた。
  ということはつまり、これも『伊里野加奈が存在した証』にはならないということさ。結果論かもしれないがね。
  では、このパイロットスーツはいったい誰のものなのか……仮説にしかならないが、伊里野加奈以外の誰かのものなのだろう。
  伊里野加奈は存在しないのだから、このパイロットスーツを着ていたのも伊里野加奈以外の誰かということになる。
  いや、着ていたとも限らないか。まあ、深い問題でもないさ。このパイロットスーツは灯台に落ちていて、白井黒子が回収した。
  彼らにとってはそれだけのものでしかないのさ。わかったかな、マリアンヌ?」
マ「真相は闇の中……ということはわかりました。やっぱり、釈然としませんけど」
フ「世界とはそういうものなのさ。さあ、最後のお手紙を読むとしようか」


 Q:マ『伊里野加奈が初めからいなかったことになるのなら、榎本は誰に殺されたことになるのですか?』
 A:フ『「もうここには存在しない伊里野加奈」だよ』


マ「……えっと、つまりどういうことですか?」
フ「真相は闇の中、さ」
マ「えー!?」
フ「存在が消えても、消えた人間が周囲に与えた影響はある程度残ってしまう。榎本の死は、まさにそれだね。
  伊里野加奈が消えても、榎本が誰かに殺されたという事実は覆らない。となると、彼を殺害した人物は誰かという話になる。
  ここで伊里野加奈以外の誰かが榎本殺害の実行犯になる……というわけではない。そういう風にはならないんだ。
  では、どういう風になるのか。どういう風にもならない。榎本は『誰か』に殺された。そういうことにしかならないのさ」
マ「釈然としません!」
フ「そうだろうね。だからこその『世界の歪み』だ。放置していれば災厄が起こってしまう……そうさせないのが、フレイムヘイズなのだよ」
マ「今回の一件で、『炎髪灼眼の討ち手』や『万条の仕手』はフリアグネ様を狙うでしょうか?」
フ「さあ、どうだろうね。彼女たちが私の意図を正しく読み取れれば、あるいは……?」
マ「なんにせよ、世界はこういう風に修復された。そこに疑問や違和感が生じるのは当然で、それが『世界の歪み』というものなのですね」
フ「素晴らしいまとめだね、マリアンヌ。つまりはそういうことなのさ。
  さて、質問もこれで終わりかな? ではここから先は私とマリアンヌの愛の語らいのコーナーということで――」
マ「……残念ですが、フリアグネ様。どうやらそろそろ、お別れの時間みたいです」
フ「な、なんだって……!? そうか……そうなのか……それは……残念だな……」
マ「そんなに気を落とさないでください、フリアグネ様。きっと次の機会がありますよ」
フ「……そうだね。よし、では最後は元気よくしめようか!」

マリアンヌ「では読者のみなさん、今回はこのあたりでお別れです!」
フリアグネ「また諸君に、私とマリアンヌの愛溢るる日々を見せられるよう願っているよ」
362 名前: 代理投下 浅羽直之の人間関係【改】 [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 02:50:28 ID:sTQPpc94
以上1レス、代理投下終了です。

フリアグネ様&マリアンヌ。親切な説明ありがとー!w
363 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 11:55:19 ID:a4BVCeAy
投下乙
フリアグネ様楽しそうだなww
原作読んでないからわからんがこの二人って普段はこんな感じなのかw

そして浅羽……『世界の歪み』って怖い
悲劇的な状況なのに本人にはその自覚がないってのがまた……
364 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 12:27:42 ID:KqlPgtKt
投下乙です
イリヤに関する記憶があの怖がってたティーに置き換わってる滑稽さが哀しい

…しかし最後のフリアグネ様に全て持って行かれたw
ここで「何でも質問箱」を持って来るとは!
さすがシャナの得意書き手さまだ
365 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 14:24:05 ID:/Ox2gCw6
投下乙です

やっぱり一人の人間の消滅って大きいなあ……。
こういっちゃなんだけど、ステイルが消えた時の事も楽しみですw
しかし、二人の愛の巣の拡大っぷりに吹いたw
フリアグネ様のトーチ化の目的は、明言はしなかったけれどやっぱり……w
366 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 16:56:58 ID:sTQPpc94
投下開始します。
367 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 16:57:45 ID:sTQPpc94
 ◆


“もしまだ僕を待っていてくれているのなら、あの樫の木に黄色いリボンを結んでおいてくれ”


 ◆ Close to you ◆


地平の彼方に姿の半分ほどを隠した夕陽が影を遠くへ遠くへとのばす。
建物の影はその建物よりも大きくなり、木の影はその木よりも高く、人の影はその人よりもその輪郭を確かに浮かび上がらせる。
小さな所作も、僅かな震えも、隠そうとしている感情も、影は拡大しはっきりとそこに浮かび上がらせる。

静かな風の中、なびく黒髪を片手で押さえ遠い空を、その遠い空の彼方にあるかもしれない何かを見つめている少女がいた。

「よかったのかな」

少女はぽつりと呟く。誰ともなしに、言葉の意味すら確かでなく、問う意思すら曖昧に、ぽつりと呟いた。

「それを決めることができるのは恐らく本人達だけなのだろう」

少女の胸元にかけられたペンダントが答えを返した。威厳のある声色で、しかし何もかもを震わすことのできる声を今は静かに。

「そうね。きっと私達には決められない」

少女は踵を返す。陽の光を背にして表情が全て影の中に隠れた。そして少女は影の中から一緒にいる仲間達を見やる。
誰も悲しんではいない。人が一人この世界から失われてしまったのに。一人の少年がひとつのエピソードを失ったというのに。
それはどうしてか? 語ることはできるだろう。しかし少女と少女の中の神は語らない。
なぜならば。それは確かな形を持ったものではないから。形にしてしまうとそれは正しい姿を失ってしまうから。

本当のことは今見ているこの光景だけ。この赤色の光と藍色の影の中。そこに浮かび上がる彼らの姿と表情。
言葉ではとらえることのできない今という時だけが本当のことなのだ。
素朴で普遍の真実。ともすればうっかりと忘れてしまいそうなそれこそが、今この夕陽の光景の中にあった。

「シャナ。島田さんのリボンはそっちにあった? というか、探してないの?」

愛しい人から声をかけられる。今はその行為だけがとてもかけがえなく思え、ただ嬉しいと感じることができる。

「探してるわよっ!」

探すそぶりなどまったくせず、誰にも見られることのない影の中でいたずらな笑みを浮かべながら少女は言葉を返した。






 ◆ Waltzes, Op.69 (Chopin, Frederic) ◆
368 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 16:58:37 ID:sTQPpc94
縁側から見る夕陽は格別だった。
赤い光は全身を刺して、そして身体を通り抜け全て溶かしてくれるんじゃないかと、そんな気持ちにさせてくれるから。
このまま自分をこの世界から消し去ってあたたかい別の何かに作り変えてくれるんじゃないかと思えるから。

勿論、そんなことはない。それは願望からくる空想。ただそうだったらいいなと思う本当のことではないことでしかない。
身体を透かす赤色は心を剥き出しにしていつもよりか弱くする。だから、そんな空想もしたのだ。
感傷的に。センチメンタルに。憂鬱げに。太陽光線の中にある赤色に含まれる効用は、実際はこちらのほうが正しい。

「――日本語上手なんですね」
「え? あぁ、そうだね」

外人さんと話す時の挨拶のようなもの。
正直な話。外人さんが苦手なんてことはない。近くには米軍の基地があったし、街の中で見かけるのも当たり前だったから。

「あの、インデックスって子も上手だったし」
「彼女と話したんだ?」
「ええ、……あの、はい」
「まぁ、彼女も僕も魔術の世界に足を踏み入れているからね」

全然話が通じない。やっぱり普通人と普通でない人とでは使用する言葉は同じでも使い方が異なるのだろうか。
ならば、普通と普通でないの中間に位置する私より年上だけど小さな彼女に助っ人を頼むことにしよう。
さっき社務所に戻ってきた時はなんだか気があっているように見えたから。

「ねぇ、大河さ…………」

大河さん、泣いてる?

「ん? どうしたの晶穂?」

泣いてなかった。こっちを向いた大河の顔はいつもどおりで、じゃあなんで泣いてるって思っちゃったんだろう。
これも、夕陽のせいなのだろうか。光の反射とか角度とか、私の思い込みを含めてこみこみの効果で。

「いや、一瞬泣いてるのかなって」
「はぁ〜? まぁ、色々ムかついてはいるけどね」

大河は縁側から立ち上がると、裸足のままなのに土の上に立って、ロボットみたいになった拳を夕陽に向かって突き出した。

「晶穂は夕陽を見てなにか思い出す?」
「え? そんな急に言われても別に……」
「私は思い出す。例えば放課後に竜児の買い物につきあって、スーパーから出たら夕陽が出てた時のこととかね」
「それがムかつくの?」
「そう! だって、昨日までは夕陽を見てもそんなことこれっぽっちも思い出さなかった」
「……………………」
「おにぎり食べてても思い出すし、晶穂に着替えを手伝ってもらってても思い出すし、何かする度に思い出す。
 あいつはどれだけ自己主張が激しいのよってことよ。
 死んだからって、まるで強制的に私の心の中で永遠に生きてるってみたいで、
 まぁ少しぐらいなら……私の心は海のように広いから間借りさせてもいいけど、だからってずうずうしいのよっ!」

なんとなく、大河が泣いてるように見えた理由がわかった気がした。

「あいつは私の犬なんだからさ、与えられるべきスペースは犬小屋が当然でしょっ!」
「し、室内犬とかいるし……」
「あいつはそんな柄じゃないっての。……それに、あいつだけじゃない、し」
「…………大河さん?」
「悲しみを背負っていくヒロインはつらいって話よ。
 それにしても室内犬ね。あいつは今頃どうしてるんだろ。ビビって泣いて、どっかで引篭もりにでもなってるのかな」

小さいのに、夕陽を浴びる大河の姿はとても大きく見えた。
自称悲しみを背負うヒロインは、まるで本当に物語の中から抜け出してきたヒロインのようだった。
369 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 16:59:22 ID:sTQPpc94
「それで、あんたはどうして泣いてるのよ、バカ晶穂」

え? 私泣いてた? いつからなんだろう。というか恥ずかしい。みんなの中で私だけ子供みたいで。

「もしかして私に同情? それだったらぶっとばす」
「ち、ち……違う違う。自分でもよくわかんない」

本当にわからない。なんで私は泣いているんだろう? 夕陽を見続けていたから? それとも大河の姿に感動したとか。
でも、今のこの気持ちを例えるとするなら……、

「えーと、久しぶりに卒業アルバムを開いてみたら昔の友人の顔を見て泣いてるんだけど、でもその子とどんな遊びしたとか
 どうして悲しいんだとか全然思い出せないって感じ……?」
「何それ? 全然わかんないわよ」

だよね。うん、私も全然わからない。ただ、なんだろう。ぽっかりと心に穴の空いたような。なにかわからないけど、なんだろう。
意味がわからないけど、

どうしてか鉄人定食が食べたくなった。お腹はすいてないのに。



もう一度夕陽を見る。けど、やっぱり私には何かを思い出せるようなことはなかった。






 ◆ Tie A Yellow Ribbon Round The Ole Oak Tree ◆
370 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 17:00:07 ID:sTQPpc94
赤みの強い風景の中、そこから熱を取り払い夜を呼ぼうとする冷たい風を受け黄色いリボンが静かに揺れている。
少女はそれを拾い上げると、土を払いまた頭にくくりなおした。

いつものポニーテール。
髪の毛はぐしゃぐしゃになったし、ブラシも持っていなかったので完璧とはいえないけれども、だいたいいつもどおり。
ならばそうしなくてもいいんじゃないかと聞かれるかもしれない。そしたら少女は答えるだろう「いつもしている」からだと。

彼が自分の姿を見失わないように、彼が自分だとすぐに気づいてくれるように、彼が自分のことを気づかないなんてないように。

これから先、少女がいつまでこうしているかはわからない。
大人になればポニーテールは恥ずかしいと思うようになるかもしれないし、数日後にはショートカットの気分になるかもしれない。
だけど、それはわからない話で、今の少女はポニーテールであろうとしているのだ。

夕陽の風景の中で少女のポニーテールがゆれる。すこしだけ汚れた黄色いリボンがゆれている。



まるで、私はここにいるんだぞと自己主張するように――。






 ◆


少女達には愛するカレがいる。






【C-2/神社/一日目・夕方】

【ヴィルヘルミナ・カルメル@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン一箱(7/20)、缶切り@現地調達、調達物資@現地調達
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。しばらくは神社を拠点として活動。
 1:神社を防衛しつつ、御坂美琴とキョン。炎髪灼眼の討ち手と島田美波の帰りを待つ。
 2:状況に応じて、警察署や南の方にいるであろう上条当麻への捜索隊を編成して送り出す。
 3:ステイルは、警戒しながらも様子を見守る。


【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)、右腕義手装着!
[装備]:無桐伊織の義手(右)@戯言シリーズ、逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式
     大河のデジタルカメラ@とらドラ!、フラッシュグレネード@現実、無桐伊織の義手(左)@戯言シリーズ
[思考・状況]
 基本:馬鹿なことを考えるやつらをぶっとばす!
 1:ステイルのことはちょっと応援
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。
371 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 17:00:50 ID:sTQPpc94
【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、意気消沈
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
 基本;生き残る為にみんなに協力する。
 0:なんで泣いてるんだろう?
 1:部長が浅羽を連れて帰ってくるのを待つ。
 2:鉄人定食が食べたい……?
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。


【ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:“トーチ”状態。ある程度は力が残されており、それなりに考えて動くことはできる。
[装備]:筆記具少々、煙草
[道具]:紙袋、大量のルーン、大量の煙草
[思考・状況]
 基本:インデックスを生き残らせるよう動く。
 1:今は連絡待ち。
 2:とりあえずある程度はヴィルヘルミナの意見も聞く。
[備考]
 既に「本来のステイル=マグヌス」はフリアグネに喰われて消滅しており、ここにいるのはその残り滓のトーチです。
 紅世に関わる者が見れば、それがフリアグネの手によるトーチであることは推測可能です。
 フリアグネたちと戦った前後の記憶(自分がトーチになった前後の記憶)が曖昧です。
 いくらかの力を注がれしばらくは存在が持つようになりました



【B-4/市街地/一日目・夕方】

【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:メリヒムのサーベル@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品x1-2、コンビニで入手したお菓子やメロンパン、
[思考・状況]
 基本:悠二やヴィルヘルミナと協力してこの事件を解決する。
 1:悠二も水前寺も見つかったので、浅羽直之待ち。
 2:百貨店にいると思われる“狩人”フリアグネの発見及び討滅。そしてその為に、一度水前寺と美波を神社に帰す。
 3:トーチを発見したらとりあえず保護するようにする。
 4:古泉一樹にはいつか復讐する。
[備考]
 紅世の王・フリアグネが作ったトーチを見て、彼が《都喰らい》を画策しているのではないかと思っています。
372 名前: intermezzo――(間奏)  ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 17:01:38 ID:sTQPpc94
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、リシャッフル@灼眼のシャナ、ママチャリ@現地調達、贄殿遮那@灼眼のシャナ
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。
 1:シャナに贄殿遮那を渡し、一度神社に戻ってもらいそれからフリアグネを共に討伐する。
 2:事態を打開する為の情報を探す。
 ├「朝倉涼子」「人類最悪」の二人を探す。
 ├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
 ├”少佐”の真意について考える。
 └”死線の寝室”について情報を集める。またその為に《死線の蒼》と《欠陥製品》を探す。
 3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
 4:記録されていた危険人物(キノ)のことを神社に伝える。
[備考]
 清秋祭〜クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻〜14巻の間)。
 会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。


【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康だがフルボッコ、髪の毛ぐしゃぐしゃ
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式、「悪いことは出来ない国」の眼鏡@キノの旅、
     ママチャリ@現地調達、テレホンカード@現地調達、湊啓太の携帯電話@空の境界(バッテリー残量100%)
[思考・状況]
 基本:この状況から生還し、情報を新聞部に持ち帰る。
 1:浅羽の帰りを待つ。
 2:事態を打開する為の情報を探す。
 ├「朝倉涼子」「人類最悪」の二人を探す。
 ├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
 ├”少佐”の真意について考える。
 └”死線の寝室”について情報を集める。またその為に《死線の蒼》と《欠陥製品》を探す。
 3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
 4:記録されていた危険人物(キノ)のことを神社に伝える。
[備考]
 伊里野加奈に関連する全てからの忘却を免れました。「ほんとうのこと」を理解した結果です。


【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康だがフルボッコ、鼻に擦り傷(絆創膏)
[装備]:第四上級学校のジャージ@リリアとトレイズ、ヴィルヘルミナのリボン@現地調達
[道具]:デイパック、支給品一式、
     フラッシュグレネード@現実、文月学園の制服@バカとテストと召喚獣(消火剤で汚れている)
[思考・状況]
 基本:みんなと協力して生き残る。
 1:シャナに同行し、姫路瑞希を探す。
 2:川嶋亜美を探し、高須竜児の最期の様子を伝え、感謝と謝罪をする。
 3:竜児の言葉を信じ、全員を救えるかもしれない涼宮ハルヒを探す。
[備考]
 シャナからトーチについての説明を受けて、「忘れる」ということに不安を持っています。
 伊里野加奈に関連する全てからの忘却を免れました。「ほんとうのこと」を理解した結果です。
373 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 17:05:25 ID:sTQPpc94
以上で投下を終了します。



……えー、ごらんになってわかると思いますが(師匠組の未登場等)、予約していた時に考えていたものとは全く別の作品になりました。
これは、美波のリボンの色が黄色だなーと気づいたらこうなっていたわけで……、
もし問題がなければ当初予定していた話はこの後、(自己リレー)というかたちになりますが改めて予約しなおして投下したいと思います。
374 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/11(金) 20:12:35 ID:EG62KebI
投下おつ


ん?もしかしてこいつらまだ放送聞いてないのか?
古泉と御坂が死んだ以上シャナが反応なしなわけないし…まあ後の自己リレーに期待
375 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/12(土) 01:18:28 ID:JOmK4Iv0
投下乙です
気づいたらこんな話が書けてる氏の筆力がすごいw
読んでる間ロワってことを忘れそうになるくらいに心情も風景も描写がきれいだ
キャラの掘り下げがここの特色だなぁと改めて思える話でしたGJ
376 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/12(土) 01:27:39 ID:bAG1mVFn
投下おつです

雰囲気作り上手いなあw 
伊里野の喪失に関して直接的な描写が何一つないのがずるくも切ないw

指摘ですが、こういう形で見せるならヴィルヘルミナとか水前寺とか喋ってない奴の状態表はいらないんじゃ?
同じ人がもう一度同じ面子で繋ぐっていうんならなおさら、リレーとして困ることもないでしょうし
自己リレー自体も、多少イレギュラーだけど他に予約したいという人がいなければいいんじゃないでしょうか?
377 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/02/12(土) 23:15:24 ID:mQ+gsM9Z
>>374 放送前です。
>>376 確かに問題ない気もするのでwiki収録のほうで修正しておきます。>状態表



えーと、今回のは章題がそれぞれのテーマ曲になっているであわせて聞いてもらえるとよいかもです。

  シャナ―「Close To You」 http://www.youtube.com/watch?v=mqJPIh_pw3Y
逢坂大河┬「別れのワルツ」 http://www.youtube.com/watch?v=_SrqbsgEVDw
須藤晶穂┘
島田美波―「幸せの黄色いリボン」 http://www.youtube.com/watch?v=45WsiKKWGP0
378 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 22:50:07 ID:QJ0pyRSj
test
379 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:03:30 ID:QJ0pyRSj
大変お待たせしました。黒子組投下させていただきます
380 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:05:17 ID:ZT1N4H12
 
381 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:05:22 ID:sjaD6NEL
支援
382 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:05:37 ID:QJ0pyRSj





――――Two men look out through the same bars one sees the mud, and one the stars.









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「どう見る?」

あれだけ輝いていた太陽は幻だったかのように姿を失せ、夜の帳に包まれていた。
空は漆黒に包まれ、無数の星が輝いている。
そんな空を眺めながら、相良宗介は長年組んでいる相棒に言葉をかけた。

「まぁ……ブラフの可能性が高いだろ。ありゃ露骨過ぎる」

相棒、クルツ・ウェーバーはつまらなそうに、言葉を返す。
彼はある一点にずっと意識を傾けながらも、宗介と話していた。
話していた内容は、先程流れた放送。
『人類最悪』から語れた死者とヒント。
その中にあった一つのヒント、『俺はお前たちの上にはいない。あらゆる意味において俺はお前たちより下の存在だよ』
その言葉について、彼らは話していた。

「肯定だ。もし俺達の考えを否定するだけならば……あまりに稚拙すぎる。仮にもこの企画をたてた人間が言う言葉ではないな」

宗介達が立てた仮説は人類最悪は、自分達のもっと上。
そう、例えば空にいるのではないかという仮説を立てていた。
その為に、空に飛ぼうかと考えた、その矢先の事である。
タイミング的には余りにもピッタリで、逆に露骨過ぎて怪しい。
それ故に、ブラフである可能性が高いと踏んだのだ。

「とはいえ、散々意味ありそうげな事を吐いてた狐ヤローがブラフだけで、あんな事言う訳ねーだろ」
「じゃあ、何だ?」
「さあ……本当に、『下』なのかもしれないな? 例えば立場とか……まあ色々あるだろ」
「ふむ?」
「別に、あいつは『所在地』が下とは言ってない。だから立場とか立ち位置が下……って事もあるかもしれないって話だ」
「つまりは『人類最悪』は下っ端だから捕まえても意味がない事も言える……という事か」
「そーいうこと」 

しかしながら、ただブラフだけのヒントとは言い切れない。
他にも何か明確なヒントがあるはずだとクルツは考察する。
人類最悪は上には居ない、下の存在とはいったが、それが所在地である事を言った訳ではない。
だからこそ、例えば、『序列』と言った『立ち位置』などが下という可能性だって充分にありえるという事だ。
つまり、人類最悪のヒントを辿れば、人類最悪は所詮下っ端の存在でしかないという事になる。
人類最悪の言葉は、大切な所だけを誤魔化している、そういう奴だとクルツは思う。
383 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:07:26 ID:ZT1N4H12
 
384 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:07:26 ID:QJ0pyRSj

「けどまぁ……そう、考え巡らしたした所で、現状何かを判断を下す事はできねー」
「……まあ、肯定だ。迂闊に行動すれば、首を絞められるのは自分自身だ」
「だから、結局そーいうのは……俺達の『上官』テッサちゃんの意見を聞いて彼女に決断してもらう……というのがいいんじゃねえの?」
「だろうな……結局の所、合流を急ぐ他無い……という事か」

宗介がそのクルツの言葉に重々しく頷く。
やはり、現状では情報が不足している。
今の段階で早急な判断を下すのは好ましくない。
ならば、二人は情報を集め上官であるテレサ・テスタロッサに判断を仰ぐのが一番好ましい答えであろう。
それが『兵隊』である宗介達の役目なのだから。

「それと死者だが……随分減ったな」
「三人か……まあ、考えられる原因は幾つか思いつくな」
「まず、挙げられるのは二回目の放送で殺す側の人間が多く死んでいたかもしれないという事。これなら俺達にとって随分嬉しい事になるけどな」
「次いで挙げられるのは正しく俺達と一緒で殺し合いに乗った連中が休憩に当てた……という事か」
「だな。これも有り得るけど……しかし俺達みたいのは、これ位余裕だろ」
「肯定だ。二三日程度なら過酷を伴うが、継続して戦う事は出来る」

今回読み上げられた死者の数はたった三人。
それは殺し合いに乗らない、宗介達にとっては好ましい事柄だった。
考えられる原因は、一〜二回放送の間に殺し合いに好意的な人間が相次いで脱落した可能性がある事。
そして宗介達と同じく休憩にこの時間帯を回したという事。
とはいえ、戦闘の熟練者であるならば、何時間も継戦出来る事も確かだ。
例えば、クルツのような狙撃手ならば、好機を待つ為に何時間もその場で待機する事だってありえる。

「まぁ今は人数より……呼ばれた『人』だな」

幾つか減った要因は考えられるが、今はそれは重要ではない。
宗介達のグループにとって大切なのは呼ばれた『人物』だ。
呼ばれた三人の中で関わりがあるのは二人。
その内の一人の問題は完全とはいえないが、大方解決している。
そして、残り一人。

「御坂美琴……か。聞くところによればこの島でも有力な実力者だったらしいな」

御坂美琴。
学園都市レベル5の一人である彼女。
この殺し合いの中でも有数の実力者と呼ばれた彼女。
その彼女が呼ばれた。

そして、

「ああ……そして、黒子ちゃんの大切な『お姉様』らしい」

白井黒子が敬愛し、大切に思っている、お姉様。


そのお姉様を、白井黒子は失った。


クルツと宗介の目線の先には――――


大切な人を喪失した思いに押しつぶされそうな、小さな少女が、震えている身体を必死に押さえていた。




385 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:08:42 ID:ZT1N4H12
 
386 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:09:13 ID:QJ0pyRSj





【scene 1  白井黒子と黒桐鮮花の場合】





なんだ、この様か。
わたしが震える身体を抑えている白井黒子を見た思った事が、それだった。
薄情かもしれないけど、そう思わずにはいられない。
わたしに大見得切った彼女が、こんなにもうちひしがれているなんて。
仕方ない……とはいえ、無様にも思える。

無事にというか何の苦も無く、ティーさんを連れて帰還した白井黒子がこんな無様な状況になったのはほんの少し前。
人類最悪からの放送で、あっけなく呼ばれた名前。
御坂美琴という白井黒子の大切な人間の死が、現状を作り出す。
あれだけ余計な事を喋る彼女が一言も話さず肩を抑えていだけで。
そのまま彼女は黙って外に出て、独りぼっちで震えていた。
何故だか解らないけど、わたしは彼女を追っていた。
そして、今に至る。
わたしは震える彼女の背を見ながら口を開く。

「さて、貴方はどうするんです?」

さあ、わたしはどんな言葉をかける?
優しい慰めの言葉?
はっ、そんな訳がない。
わたしと白井黒子の中は断じてそんな繋がりではない。
気を許す仲間?
いえ、そんなものでも断じてない。

「ねぇ、貴方……わたしが以前言った言葉憶えてるかしら?」

わたしは今でも、忘れていない。
白井黒子を見続けて、ずっと心の中で思っていたこと。
あの時言った言葉は、今、この時だって通じる。

「貴方はただ単純に『覚悟』がなってないだけと……ねぇ?」

わたし自身に、その『覚悟』があったかどうかなんて今は定かではないけど。
そんな事は今は置いておく。
だから、わたしは今、彼女に聞いておきたい。

「まさか…………『御坂美琴が死なない』なんて本当に思っていた?」

金髪二人に言われた事でもあるけど。
御坂美琴が死んでしまうという可能性を白井黒子は考えていたのだろうかと思う。
幹也とは違い、御坂美琴は白井黒子が尊敬するほどの実力者だったらしいし。
本当に、死なないと思っていたんじゃない?
わたしはそう思わずにいられない。
だってねぇ……あの自信とかをみるとそう思ってしまうもの。
387 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:10:02 ID:ZT1N4H12
 
388 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:10:37 ID:QJ0pyRSj
「白井黒子……御坂美琴の死亡を聞くかもしれない『覚悟』があった?」

大切な人の死を聞く覚悟。
それを白井黒子は持っていたのだろうか?
聞きたかった。とても。
常に自信に満ち溢れていた彼女の言葉を。
今、この時、どんな言葉を発するのかと。


「ねえ……――っ!?」


振り返った白井黒子。
その瞳はとても冷たく澄んでいて。
憎しみとも哀しみとも取れない視線を私に向けていた。
ぞっとするような視線で、思わず身震いをしてしまう。

「……黙りなさい」

底冷えするような冷たい声が彼女から発せられる。
怒りだろうか、憎しみだろうか。
わたしにはそれをわかる事ができないけど。
でも、何故かわたしは笑えていた。

「仇討ちを、復讐を浅はかと言ったわよね? ねえ、今の貴方にその気持ちは無いの?」

別に、共感してもらいたくて言ってる訳じゃない。
わたしの復讐はわたしだけの復讐だ。
けれど、復讐を浅はかと言った彼女に今、その気持ちが無いのか。
ただ、それだけが気になって。

「そんな訳……」
「本当に? 憎いという気持ちが無いの? それを晴らしたいと思わないの?」

それは、大切な人を失った人が持つだろう当たり前の感情。
その気持ちをひとかけらも無いとは思えない。
わたしと彼女は対極ではあるけども。
同じ人なんだから、持つに決まっている。
だから、彼女が出す、答えを待っている。

「ねえ……改めて聞くけど、大切な人を失った貴方が『復讐』そのものを肯定するの? それとも否定する?」

貴方がどちらかを選ぶかは興味が薄い。
ただ、復讐と言うものに。
大切な人を失ったモノがどう判断するか、とても気になった。

だから、聞きたい。


貴方の答えを。

389 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:11:58 ID:QJ0pyRSj
さあ、どう答える? 白井黒子。


「どうな…………あぐっ!?」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」


言葉を紡ごうとした矢先、頭に衝撃が。
振り返ると、栗色した髪色をしたあのクソ長い名前の人が、ハリセンを持ちながら、憤然としていた。








【scene 2  白井黒子とリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツの場合】





どうしよう?
どうしよう? どうしたい?
わたしは震えて出ていったクロコと追っていったアザカをただ見るだけだ。
でも、何が起きたか付き合いの浅いわたしにだって解るぐらい。
それは、クロコにとって大切な人が死んだという事。
また、誰かの大切な人が死んで、哀しみが起きたという事。

それなのに、わたしは動いていない。
頭の中でどうしようという言葉が延々と巡っている。
だって、わたしの中で確固たる考えが纏まっていない。
それに、クロコとは出会ったばっかだ。
そんなわたしがかける言葉なんてあるの?
解らない、答えが見つからない。
なんだか、心が締め付けられていく。
まるで、あの時、ママを失った時のように。
わたしは胸を押さえながら、どうしようと思う。

大切な人を失った彼女。

そんな人に……わたしが出来る事なんて…………


390 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:12:44 ID:ZT1N4H12
 
391 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:13:41 ID:ZT1N4H12
 
392 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:13:42 ID:QJ0pyRSj
「いや、だから、そんなのじゃダメだってっ!」


バチンと頬を思いっきり叩く。
滅茶苦茶痛い。赤くなってそう。
けど、そんな事お構いなしだ。
ここで、へこたれるなんて、もうそんなんじゃ変われない。
わたしはリリアーヌ・アイカシア、以下略として、ちゃんと前を向かなきゃダメなんだ。
だから、わたしはここでぐずぐずしちゃダメだ。
前を向こう。
そう思って、大股で歩き出す。

わたしが出来る事、そんなの決まってる。
わたしが感じた事、伝えればいい。
わたしが思っている事、伝えればいい。
それだけの事だけ……だよね、ママ。


前を向いて、歩いた先にはクロコとアザカがいる。
そっと聞き耳を立てると、なにやらアザカが話していた。
えーと、なになに?

覚悟……ねえ。ふむふむ。
……わたしはあった?
ある訳がない。ある訳が無いじゃん……
だって……だってさ……




「本当に? 憎いという気持ちが無いの? それを晴らしたいと思わないの?」
「ねえ……改めて聞くけど、大切な人を失った貴方が『復讐』そのものを肯定するの? それとも否定する?」

続く言葉。
復讐を問う、言葉。
容赦の無い、言葉。
言葉の刃達が、クロコに向かって言われている。

復讐。
哀しみと憎いという気持ちが殺すという行為に昇華してしまう。
それは、それは……なんだろう。
肯定もできない、否定でもできない。

でも、わたしは。

わたしはね……とても、それは……


覚悟と復讐。

二つの言葉が巡って。

私は歩いて、手には妙に馴染む紙製の武器を。


393 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:14:39 ID:4s/a9F0P
支援
394 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:15:29 ID:ZT1N4H12
 
395 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:15:31 ID:cG3K+2kW
 
396 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:15:26 ID:QJ0pyRSj
「どうな…………あぐっ!?」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」

わたしはアザカの言葉をバッカじゃないのと思いっきり切り捨てた。
ついでにぶったたいた。すぱーんといい音がした。
ぶっちゃけちょっと気持ちよかった。
アザカは振り向いて、驚きながらも私を睨んでいる。
たじろく事なんかない、わたしはわたしの言葉と想いを伝えればいい。

「リリアさん、何の用でしょう?」
「何の用も何もないわよ。貴方何を言ってるの? 傷ついている女の子苛めて何が楽しいのよ」
「別に……苛めてる訳じゃないけど」

うーん、随分と剣呑とした雰囲気。
飲まれないように、強く心を持とう、わたしっ。

「そういうリリアさんはどうなんですか? 大切なお母様を失った時、覚悟はありましたか?」

そして、アザカの言葉の刃は、わたしに向かう。
わたしは、強く、言葉を紡ぐ。
その先に、立ちすくんでいるクロコに、言葉を届ける為に。


「当たり前でしょ――――無いに決まってるっ」


そして、わたしは堂々と無いと宣言する。
アザカは呆れるように驚いて、わたしを見つめる。
クロコは唖然と私を見つめている。

「だって、どんなに覚悟してるつもりでも、哀しいものは哀しいっ。当たり前でしょっ、大切な人なんだからっ!」

だって、大切なんだから、哀しい。
大切なんだから、心が張り裂けそうに哀しいもの。
だから、きっとそういうものなんだ。
大切の人の死ってものは。

「それに、願いたいじゃないっ、大切な人が大丈夫だって。死なないってっ、思いたいじゃないっ 大切な人なんだからっ!」

そうだ、願いたいんだ。
大切な人が大丈夫だって。
それは、理屈じゃない、心の底からの感情なんだ。


「ねえ、クロコっ。わたしは貴方の事はよく解らないけど……それでも聞いてっ」
「…………何ですの……?」

憔悴した目を私に向ける。
その目は、あの時のわたしと一緒なのかな?
わかんない、わかんないけど。
397 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:16:31 ID:ZT1N4H12
 
398 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:16:35 ID:vRBB+BTu

399 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:16:55 ID:cG3K+2kW
 
400 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:17:09 ID:QJ0pyRSj
「貴方の大切な人は、きっと貴方が『幸せ』に、前を向いて生きていく事を願っているよ」
「…………っ」
「哀しくても、苦しくてもいい。でも、きっと生きる事を望んでいる……だって」

ママは言ってくれた。
いや、遺してくれた。
その言葉はきっと、わたしだけじゃない。
大切な人を持つ人、皆に通じ合う。

そう、思う。


「『貴方の気持ちが永遠である限り、大切な人の気持ちも永遠だから』……ね?」


わたしは人差し指をたてて、笑って答える。
クロコが息を呑んで、わたしを見つめた。
ぱちくち瞬いて、

「わたくしの気持ちが……」

そう呟いて、クロコは立ち上がる。
表情は変わらずだったけど、きっと前を歩いていける、そう思う。

「御免なさい、少し一人にしてくださいまし。ちょっと考えたいですの」

そう言って、クロコは歩き出した。
私は、その姿を見送った。


伝えられたかな? わたしの思い。
ねえ、わたしはママのようにできたかな?


――うん、きっと大丈夫。


そして、


「やってくれましたね……と言えばいいですか? リリアさん」



まだ、終わっていない。

振り返ると、烏のように黒い髪の少女が、わたしを睨んでいた。








【intermission リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツと黒桐鮮花の場合】



401 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:17:30 ID:ZT1N4H12
 
402 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:18:47 ID:cG3K+2kW
 
403 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:19:19 ID:4s/a9F0P
支援
404 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:19:40 ID:ZT1N4H12
 
405 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:20:20 ID:cG3K+2kW
 
406 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:20:19 ID:QJ0pyRSj


「随分と甘い事言うんですね、リリアさん」

黒桐鮮花はリリアを睨みながら、溜息をつく。
結局、白井黒子への問いは目の前の少女によって邪魔されてしまった。
しかも、思いっきり彼女の考えを聞かされてしまった。
出会った直後から、思っていたが黒子以上にウマが合わないかもしれない。

「そうかな? 甘い言葉だって、誰かの助けになるならそれでいいじゃない」

涼しい顔をして、リリアは返事を返す。
しっかりと、鮮花を見据えて、負けないように。
逃げないように前を向いてよう。
そう思ったから、思えたから。

「ふん……甘い言葉が他人を傷つける言葉の刃になるかもしれない」
「それでも、他人を追い詰める言葉より、よっぽどまし」
「そう……まあ、いいです。ならリリアさん、貴方に聞きたい事があります」
「なに?」

目の前の少女に、鮮花は苛々しながら言葉を紡ぐ。
何か根本的な所で、違うのかもしれない。
それは、リリアが紡いだ言葉に原因があるのかもしれない。

「貴方、『貴方の大切な人は、きっと貴方が『幸せ』に、前を向いて生きていく事を願っている』と言いましたよね」
「うん」
「本当に、そうやって生きていく事が幸せになると思ってるんですか? 生きているだけでいいなんて、都合のいい言葉ですよ。
 ただのエゴの塊です。 大切な人が居なくても、生きていく事を強要させるだけ。それがどんなに苦痛かを知っていますか?」

鮮花はリリアのこの言葉を信じられないと思う。
人は、人間はそんなに強くない。
大切な人を失う苦しみは何ものにも変えられないぐらい痛い。
それなのに、生きている事を望んでいるから。
そうすれば、幸せになるから。
なんて、そんなの都合が良すぎる。
ただでさえ、今、失った事実がとても苦しいというのに。

だから、リリアの言葉はただの偽善に満ちたエゴの塊にしか見えない。
407 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:21:08 ID:ZT1N4H12
 
408 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:21:07 ID:QJ0pyRSj
「そりゃあ、苦しいよ。胸が張り裂けそうなくらい哀しいよ……けど、其処で歩みを止めたら、それはただの『停止』よ」

それでも、リリアは言葉を紡ぐ。
リリアだって、母親を失った事は、哀しみは深くて、苦しい。
でも、其処で歩みを止める事はただの停止で。
きっと、それは母親が望む事ではないから。

「苦しいから、哀しいから、生きれない。そこで耳を塞いで生きる事から目を逸らすのは、ただの逃げだっ!」
「……そんなに、ヒトは強くないですよ」
「だって、でも、思いたいじゃない。大切な人はわたしが幸せになる事を願っている。ならっ、わたしは幸せになる事から、逃げたくない」
「生きる事が幸せになるというのですか?」
「なると……思うよ」

言葉の応酬が続く。
けれど、二人の考えは何時までも平行線で、歩むあう事など決して無く。
そして、リリアは意を決して決定的な言葉を紡いだ。

「ねえ、アザカ。貴方は復讐を肯定するか否定するか、言ったよね」
「ええ」
「改めて言うよ。わたしは……復讐が正しいかどうかなんて、解らない。けど」


すぅーと息を吐いて。


「――――哀しい事、憎しみを引き起こす復讐なんて、やっぱり、ダメ」


リリアは黒桐鮮花の復讐を否定した。
たとえ反発する事が解っていたとしても。
言わずにいえなかった。
409 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:21:24 ID:cG3K+2kW
 
410 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:22:35 ID:ZT1N4H12
 
411 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:22:47 ID:QJ0pyRSj

「はっ、やっぱり。ちゃんちゃら甘い人間ですね。言ったでしょう? 別に理解や同情を求めていないって」

理解などされてたまるものか。
鮮花の復讐は鮮花だけのものだ。
鮮花の気持ちは鮮花だけしか知らない。
だから、リリアの甘さなど、疎ましいだけだ。

「でもっ……まだ、他にも道はあるはず。だから」
「だから? だからなんです? 道なんて求めてない。これが私の生き方なんです」

そう、これが鮮花の生き方だ。
誰にも邪魔されてもたまるか。
幹也の仇を討つ。
それが鮮花の最高の幸せだ。

「ねえ、リリアさん。もし、どうしても止めるなら、邪魔するなら」

鮮花は少し微笑んで。
その笑顔とてもとても、純粋で。


「――――殺すわよ?」


そして、とてもとても、邪悪だった。
彼女は笑って、踵を返してリリアの元を去っていく。
リリアは黙って鮮花を見送るだけ。

鮮花が去っていた後、リリアは拳を握って。

「違う……どうして、そんな極端なのよっ!」

黒桐鮮花の生き方はリリアにとって、とても極端に見えて。
兄の為に、復讐しかない生き方なんて、とても寂しく思えて。
リリアは失ってしまった、もう二度と会えない母の事を考えて。

ふと、思う。

あの子は本当に、心の底から大切な人の死に哀しんだのだろうかと。
ただ『認めたくない』だけじゃないかと。
だから、逃避するように、復讐の道を選んだのかと。
そう思ったら、もう納得できない。出来る訳が無い。

412 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:23:46 ID:cG3K+2kW
 
413 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:23:49 ID:ZT1N4H12
 
414 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:23:48 ID:QJ0pyRSj

「納得できる訳……無いじゃないっ」



だから、リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツは黒桐鮮花の生き方を認められなかった。



けれども、リリアは知らない。
黒桐鮮花にとって、黒桐幹也は『兄』以上の存在である事を。
自分の起源を『禁忌』と考え、純粋に、幹也を愛して。
本当に、それしかない事に。
もし、その事が無くなってしまったら、何もなくなってしまうかもしれないことに。

リリアが、知る訳もなかった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「甘い、甘すぎる」

そして、黒桐鮮花も、リリアの生き方が気に入らない。
大切な人を失って、どうしてもあんな綺麗事を吐けるのか。
ただ現実逃避のように、甘い考えをいえるあの女が気に入らない。
納得できる訳がない。

哀しいからダメ、憎しみだけじゃダメ。
他人の気持ちもしらないで平気で否定するのは納得がいかない。
あんなただの平和ボケしてそう少女が、言う綺麗事なんかに説得されてなるものか。


「ただの少女が……偽善を振り回して、私の生き方を否定するなっ」


だから、黒桐鮮花はリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツの生き方を認められなかった。


けれども、鮮花は知らない。
リリアが沢山の人が死んだ事件に巻き込まれて、生きていた事も。
戦争を知り、戦いの虚しさや哀しさを、命の尊さを母親からしっかり教えられていた事も。
そして、復讐に命を尽した女の結末が、とてもとても残酷で空虚に終わってしまったのを見ていた事も。
リリアが、平和ボケとは程遠い体験をし、色々な事を教えられて、その考えを持った事に。

黒桐鮮花は知る訳もなかった。


415 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:24:44 ID:ZT1N4H12
 
416 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:24:49 ID:QJ0pyRSj

二人は相容れない。
互いの譲れないものと、互いを知らないが故に。

決して、相容れる事はない。








【scene 3  白井黒子とティーの場合】




417 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:24:56 ID:cG3K+2kW
 
418 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:25:27 ID:ZT1N4H12
 
419 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:25:55 ID:cG3K+2kW
 
420 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:26:18 ID:ZT1N4H12
 
421 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:26:25 ID:4s/a9F0P
支援
422 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:27:14 ID:ZT1N4H12
 
423 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:27:55 ID:cG3K+2kW
 
424 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:28:40 ID:QJ0pyRSj
ティーは夜空を見ていた。
星が沢山輝いていて。
綺麗だなと思う。

あの人も、星を綺麗と思っていたのだろうか。
答えは、もう解らないけど。

でも、きっと綺麗と言ってくれるだろう。


ティーの好きだったあの人は、きっとそういう人だろう。


ずっと、ティーはあの人の事を沢山思っている。
あの少女が言ってくれた。
あの人を誰も思い出さなくなった時、本当に死んでしまうと。

だから、ティーは思う。

あの人との旅の事を。
あの人との想い出を。
あの人の優しさを。
あの人の温もりを。
あの人の言葉を。
あの人のてのひらを。
あの人の笑顔を。

たくさん、たくさん。


もう、戻らぬとおきひを。


たくさん、たくさん、思っている。


忘れないように、零れ落ちないように。
ずっと、ずっと、ずーーーっと、抱えられていられるように。


忘れない、あの人が、呼んでくれた名前を。


重くても、ずっと抱えて、生きていく。


425 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:29:54 ID:QJ0pyRSj
ふと見ると、あの少女がとぼとぼと歩いている。
大切な人を失った、あの少女が歩いて。

そして、地面に座って震えていた。


差し伸べてくれた手のひらを、ティーは思い出す。


助け合って生きていこうと言ってくれた。
怖い時、不安な時は誰かそばにいてもらえばいいと言ってくれた。


あの少女が震えていた。


ティーは歩き出す。
ゆっくりと、一歩ずつ。
あの手のひらの温かさと、優しさを思い出しながら。


「あ、ティー……情けない所を見せてしまいましたね」


少女は、気丈に笑っている。
無理をしている。
みれば、わかる。


「あ、ちょっと……ティー……?」


黙って、少女の膝の上に、ティーはちょこんと座った。
少女の胸に、おさまる形になった。
これで、いい。


「なけばいい」


ティーは小さく言葉を紡ぐ。
え、と少女は聞き返すが気にしない。
無理はして欲しくない。
だから、


426 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:30:02 ID:ZT1N4H12
 
427 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:30:27 ID:cG3K+2kW
 
428 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:30:44 ID:ZT1N4H12
 
429 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:31:07 ID:QJ0pyRSj
「かなしいとき、せつないとき、おもいっきりなけばいい」


言葉を紡ぐ。
あの人のように。
この少女のように。


「わたしはみすてたりしない……これからもいっしょにたすけてあっていこう」


この少女がティーに言ってくれたこと。
それはティーをささえてくれたこと。
だから、ティーもお返しする。


「だから、なけばいい」


哀しい時は、切ない時は、思いっきり泣けばいい。


あの人が、そう言ってくれたから。




「ああ……ああ……うう…………うぅ――――」


少女はやっと泣けた。
温かい雫が、沢山沢山零れていく。
ティーをぎゅっと抱きしめてくる。
温もりが、沢山溢れた。


あの人も、ティーをぎゅっと抱きしめてくれた時があった。
悲しい時、あの人はティーを抱きしめた。
あの人は、涙を流すかわりに、ティーの温もりを感じていた。

430 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:31:33 ID:ZT1N4H12
 
431 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:31:37 ID:cG3K+2kW
 
432 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:32:28 ID:ZT1N4H12
 
433 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:32:54 ID:QJ0pyRSj

だから、今は、こうやっていればいい。


星空が見えた。


あの人の笑顔も、見えた気がした。


ティーの頬に、少女が流した雫が沢山沢山つたう。


それは、


とても、とても、あたたかった。







434 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:33:19 ID:ZT1N4H12
 
435 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:34:06 ID:QJ0pyRSj
【final scene  白井黒子と御坂美琴の場合】






わたくしにとってお姉様とは何だったのでしょう。
考えても考えても、これといって正しい答えは思い浮かばませんの。
どれも当たっているようで、間違っている。
そんな気がしてならなくて。

そして、お姉様が死んでしまった。
それはやはり耐え難い程の喪失でして。
惨めにも身体を震わせて、湧き出る吐き気を必死に堪えるので精一杯でしたの。

けれども、涙を流す事は出来ませんでした。
それが、最後のわたくしの抵抗だったのかもしれません。
認めたくない気持ちがあるのに。
どうしても、理性的にお姉様は死んでしまったという納得をしている自分自身に納得がいかなくて。
ですから、喪失の涙を流したくなったかもしれません。


ですが――――涙を流してしまった。
ティーの言葉で。
哀しみの涙を沢山、流し始めてしまって止まる訳が無くて。
ただ、ぼろぼろと涙を流してしまったのですの。
その時のティーの温かさが救いだった。
哀しみが溢れましたけれども、その温かさがわたくしを此処に留めさせてくれた。


けれども、わたくしは、わたくしはその瞬間に。



――――完全に、御坂美琴の、お姉様の死を認めてしまった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




436 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:34:09 ID:cG3K+2kW
 
437 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:34:19 ID:ZT1N4H12
 
438 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:35:09 ID:cG3K+2kW
 
439 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:35:18 ID:ZT1N4H12
 
440 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:36:13 ID:ZT1N4H12
 
441 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:36:19 ID:QJ0pyRSj
「あー寒いですわね……」

わたくしはティーの前で沢山泣いた後、一人で星空を見ていた。
何となくそうしたかったのですが、夜になったせいか些か寒い。
それは心の空白もあるのかもしれないですが、気にしない事にしたんですの。

「お姉様……」

お姉様はもう、居ない。
その現実に心がジクジク痛む。
そして、わたくし自身も戸惑ってしまう。
お姉様が亡くなった事で、わたくしはどうすればいいんでしょう?と。
護りたい場所は、もう無い。
大好きな、お姉様が死んでしまったから。

わかってた、わかってたつもりでしたの。
鮮花さんに言われるまでもない。
お姉様だって命を落としかねない事に。
それでも、死ぬ訳が無いとも思ってました。
だって、当然ですもの。
あの、お姉様なのですから。

でも、もう居ない。

なら、わたくしはどうすればいいんでしょう?

迷う。
戸惑う。
答えが見つからない。

意味も無く、周囲を回る。
辿る道と一緒で、何も考えも変わらない。

お姉様が護りたかった世界。
お姉様が思っていた事。
あの温かい居場所。

わたくしも、上を目指しました。
あの温かい、居場所を護る為に。

でも、お姉様は、もう居ない。


なら、わたくしが望むものは?
望む上は?


解らない。
わたくしの中で答えが纏まらない。
442 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:36:56 ID:4s/a9F0P
支援
443 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:37:26 ID:cG3K+2kW
 
444 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:37:44 ID:ZT1N4H12
 
445 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:37:55 ID:QJ0pyRSj



「はぁ……」

思わず、溜息が出てしまう。
何やってんですの、わたくしは。
呆れるほど、何も見つからなかった。
吹き付ける風が冷たい。
わたくしは星空を見ながら、スカートのポケットに手を突っ込む。

「ん……?」

手に当たる、固い感触。
それを、取り出してみると、一枚のコイン。
物資を集めてる時に、一緒に取ったのでしょうか?
何故か、一枚がポケットに紛れ込んでいた。
わたくしはそのコインを手で弄び、そして。

「お姉様もこうして……」

わたくしはそれを指で弾いた。
コインは宙を舞って。
放物線を描いて。
わたくしはそれを打ち出した。

コインは、真っ直ぐ軌跡を描いて消えていく。

何処までも真っ直ぐ。

真っ直ぐ。

446 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:38:57 ID:4s/a9F0P
支援
447 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:39:02 ID:ZT1N4H12
 
448 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:39:51 ID:ZT1N4H12
 
449 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:40:48 ID:ZT1N4H12
 
450 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:41:06 ID:cG3K+2kW
 
451 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:41:56 ID:ZT1N4H12
 
452 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:43:33 ID:cG3K+2kW
 
453 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:44:13 ID:vRBB+BTu

454 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:44:45 ID:QJ0pyRSj
「あ――――」


途端に、頭に広がる光景。
思い出されるのは、お姉様のあの姿。
努力から打ち出される自信に満ち溢れたあの姿。


それこそが、学園都市のレベル5『超電磁砲』


お姉様が、見せたあのキセキは――――何処までも真っ直ぐで。


ああ、そうですの。


わたくしは




わたくしは――――!







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






455 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:46:09 ID:cG3K+2kW
 
456 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:46:22 ID:QJ0pyRSj
星がいつまでも、輝いている。
わたくしはいつまでも、それを見つめて。
すぅーと息を吸い込んで。


「聞こえていらっしゃいますか、お姉様」


大切な、お姉様に、語りかける。


「見つけましたわ、わたくしが進む道を」


迷って、戸惑って。
そして、見つけた道。


「わたくしは、やっぱり変わりませんの。変われませんの」

わたくしは、白井黒子ですの。
ここまで培ってきたものは簡単には変えることは出来ませんの。
お姉様を敬愛し、『白井黒子』と言う人物を固めてきたのだから。

「ですけれども……」

ですが、わたくしは、わたくしは

「わたくしの意志で、わたくしの思いで」

例え、未だに力が足りなくても。
未だに、程遠いのだとしても。

わたくしの、わたくし自身の意志で。


「お姉様が護りたかった居場所を、お姉様の護りたかった世界を、絶対に、わたくしが護ってみせますの!」


それが、わたくしが、お姉様に捧げられる手向け。
お姉様が、安心していられるように。
お姉様が、目指したものを、護りたかったものを。
わたくしが、わたくし自身が護ってみせる。


「わたくしが、ティーが、リリアさんが、鮮花さんが味わった大切な人を失うという痛みから、誰かを守る為にっ」

もう、こんな哀しみを、苦しみを、痛みを誰かに知ってほしくない。
瞳から涙が溢れてきたけれども、気にしませんの。
この光る涙を、それさえも、強さに変えて。

457 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:48:36 ID:cG3K+2kW
 
458 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:48:36 ID:QJ0pyRSj

「わたくしはお姉様を失った絶望に――――負けません!」


お姉様の失った絶望さえも超えてみせる。
絶対に負けてやるもんですか。


「わたくしはずっと……真っ直ぐ、真っ直ぐ、進んでみせますの! そして――」


ずっと、ずっと。
真っ直ぐ、真っ直ぐ、
何処までも、貫いてみせる。

わたくしが大好きな、お姉様のように。


「わたくしがわたくしを胸を張って全て誇れるまで――ずっと見守っていらしてください。黒子は、絶対に諦めませんの!」


わたくしが、わたくし自身を、わたくしが進んだ道を全て誇れるその時まで。
どうか、見守ってください。
わたくしは私が目指す所で、絶対に諦めませんですの。


――――いいわ、ずっと見てて上げる。あんたが無様になりながらも、絶対諦めない姿をね。だから、真っ直ぐ進みなさい。


そんな、お姉様の声が聞こえた、聞こえた気がした。
だから、わたくしは答える。


「ええ、必ず。どんなに傷ついても……走り続けますの」


そうしたら、お姉様が笑った、笑ってくれた、そんな気がした。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





459 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:49:18 ID:cG3K+2kW
 
460 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:49:45 ID:QJ0pyRSj
「よっし……黒子ちゃんはもう大丈夫だな」
「ああ、そのようだな」

クルツは、そう呟いて。
照準から目をそらし、黒子にずっと向けていた銃口を下げた。
何時でも殺せるようにしていた、その銃を。

「クルツ、白井黒子が暴走していたのなら、やはり殺していたのか?」
「……とーぜんだろ。あれだけの実力者が暴走したら全滅の可能性だってあるだろ」

理由は単純。
白井黒子が御坂美琴の死亡を聞いて暴走した場合。
クルツは、直ぐに殺すつもりだった。
自分や、集団を護る為に。

「それもそうだが……」
「お前は違ったのか? 其処まで牙を失ったか?」
「いや、そうだな……俺もそうしていたかもしれん」

宗介をクルツに対して重々頷く。
クルツは飄々としながらも、その言葉は何処か、冷たいものだった。
現実を見れば、生き残る事だけを考えれば、クルツの行為はあくまでも正しくて。


結局の所、クルツ・ウェーバーは人情派(オヒトヨシ)でもあり、そして、現実主義者(リアリスト)でもあった。

ただ、それだけの事だった。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





461 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:49:56 ID:vRBB+BTu

462 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:50:29 ID:QJ0pyRSj
「あ、戻ってきた」
「何だ、戻ってきましたか。つまらない」
「………………」

わたくしが戻ると、其処にはリリアさん、鮮花さん、ティーが揃っていました。
鮮花さんはどうか知りませんが、皆心配してくれたようで。
少しだけ、申し訳ない気分になってしまう。

「まよいはきえた?」

ティーがわたくしを見つめて呟いてくる。
わたくしは、笑顔で言ってやるですの。

「ええ、とっくの昔に吹き飛ばしましましたわ」

お姉様、見ていて下さい。

「わたくしは、わたくしの道を見つけました。わたくしが進むべき道を、望みを、誰にも邪魔させない」


もう、限界なんて知らない。意味無い。


「わたくしは、最後まで抗って……私が守るべき、あの世界を、絶対に護って見せますの。だってわたくしは――」



だから、笑顔で言ってやるのですの。


「白井黒子っ!――――『風紀委員(ジャッジメント)』ですの!」



打ち出した答えが今も、わたくしの胸を駆け巡る。
463 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:50:39 ID:cG3K+2kW
 
464 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:51:46 ID:QJ0pyRSj



さよな……いえ、ありがとう。




      only my   railgun
――――たった一人の、わたくしだけの、『超電磁砲』





465 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:51:53 ID:cG3K+2kW
 
466 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:52:41 ID:cG3K+2kW
 
467 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:53:18 ID:vRBB+BTu

468 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:54:19 ID:cG3K+2kW
 
469 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:55:06 ID:QJ0pyRSj

【B-5/飛行場/一日目・夜】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:鉄釘&ガーターリング、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ
[道具]:
[思考・状況]
 基本:ギリギリまで「殺し合い以外の道」を模索する。お姉様が護りたかった居場所を、世界を守る。
 0:ジャッジメントですの!
 1:その後のことはクルツ達と相談して決める。
 2:状態が落ち着けば、この世界のこと、人類最悪のことなど、色々と考えたい。
 3:上条当麻を探し合流する。また彼ら以外にも信頼できる仲間を見つける。
[備考]
 『空間移動(テレポート)』の能力が少し制限されている可能性があります。
 現時点では、彼女自身にもストレスによる能力低下かそうでないのか判断がついていません。


【ティー@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:RPG-7(1発装填済み)、シャミセン@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:デイパック、支給品一式、RPG-7の弾頭×1
[思考・状況]
 基本:「くろいかべはぜったいにこわす」
 0:よかった
 1:黒子と一緒にいる。
 2:RPG−7を使ってみたい。
 3:手榴弾やグレネードランチャー、爆弾の類でも可。むしろ色々手に入れて試したい。
 4:『黒い壁』を壊す方法、壊せる道具を見つける。そして使ってみたい。
 5:浅羽には警戒。
[備考]
 ティーは、キノの名前を素で忘れていたか、あるいは、素で気づかなかったようです。


【リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ハリセン@現地調達、早蕨薙真の大薙刀@戯言シリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
 基本:がんばって生きる。憎しみや復讐に囚われるような生き方をしてる人を止める。
 1:飛行場にてしばらく休憩。
 2:飛行機を飛ばしてみる。
 3:トラヴァスを信じる。信じつつ、トラヴァスの狙いを考える。
 4:トレイズが心配。トレイズと合流する。
 5:鮮花に納得がいかない
470 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:56:31 ID:QJ0pyRSj


【黒桐鮮花@空の境界】
[状態]:復讐心、疲労
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界、コルトパイソン(5/6+予備弾x7)
[道具]:デイパック、支給品一式、包丁×3、ナイフ×3
[思考・状況]
 基本:黒桐幹也の仇を取る。そのためならば、自分自身の生命すら厭わない。
 1:寝床と食事の用意をする。休憩する。
 2:暇な時間は”黒い空白”や”人類最悪の居場所”などの考察に費やしたい。
 3:リリアがうざい
[備考]
 ※「忘却録音」終了後からの参戦。
 ※白純里緒(名前は知らない)を黒桐幹也の仇だと認識しました。


【クルツ・ウェーバー@フルメタル・パニック!】
[状態]:復讐心、左腕に若干のダメージ
[装備]:ウィンチェスター M94(7/7+予備弾x28)
[道具]:デイパック、支給品一式、ホヴィー@キノの旅、ママチャリ
     缶ジュース×17(学園都市製)@とある魔術の禁書目録、エアガン(12/12+BB弾3袋)、メッセージ受信機
     デイパック、支給品一式、黒子の調達した物資
     姫路瑞希の手作り弁当@バカとテストと召喚獣、地虫十兵衛の槍@甲賀忍法帖
[思考・状況]
 基本:生き残りを優先。
 1:休息をとり、また今後の動きについて相談しあう。
 2:テッサ、かなめとの合流を目指す。
 3:鮮花の復讐を手助けする。
 4:メリッサ・マオの仇を取る。
 5:摩天楼で拾った3人。特に浅羽とティーの動向には注意を払う。
 6:次のメッセージを待ち、メッセージの意味を考える。
[備考]
 ※土御門から“とある魔術の禁書目録”の世界観、上条当麻、禁書目録、ステイル=マグヌスとその能力に関する情報を得ました。
 ※最初に送られてきたメッセージは『摩天楼へ行け』です。次のメッセージがいつくるかは不明です。


【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]:全身各所に火傷及び擦り傷・打撲(応急処置済み)
[装備]:IMI ジェリコ941(16/16+1、予備マガジンx4)、サバイバルナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式(水を相当に消耗、食料1食分消耗)、確認済み支給品x0-1
[思考・状況]
 基本:この状況の解決。できるだけ被害が少ない方法を模索する。
 1:飛行場にてしばらく休憩。白井黒子らとの合流、意見交換を済ませる。
 2:飛行機を飛ばしてみる。空港へ行って航空機を先に確保する? 航空機用の燃料を探す? 自動車の燃料で代用を試してみる?
 3:まずはリリアを守る。もうその点で思い悩んだりはしない。
 4:リリアと共に、かなめやテッサ、トレイズらを捜索。合流する。
471 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:57:13 ID:cG3K+2kW
 
472 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:57:15 ID:QJ0pyRSj
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうございます。
此度は期限を大きくオーバーしてしまい大変申し訳ありませんでした。
以後、起きない様に気をつけます。
何かありましたら、指摘をよろしくお願いします。
473 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:58:21 ID:QJ0pyRSj
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうございます。
此度は期限を大きくオーバーしてしまい大変申し訳ありませんでした。
以後、起きない様に気をつけます。
何かありましたら、指摘をよろしくお願いします。
474 名前: only my railgun ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/02/14(月) 23:59:18 ID:QJ0pyRSj
おと、二重ミスです
475 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 20:37:24 ID:OBRe29Mr
お疲れ様です。
476 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 21:06:59 ID:hwclTYtz
乙です
477 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 21:12:08 ID:IUuBhYQ0
投下乙です!
どんな反応が返ってくるのかなって思ってたけど、黒子はこうなるのか……かっこいい!
なんというか、どんどん男前度が上がっている気がするw
「only my railgun」の使い方は震えましたw
けっこうバラバラな飛行場組だけど、どうまとめていこうとするのか先が楽しみです。

そして、地味にフルメタ組もかっこいいw

GJでした!
478 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 21:15:23 ID:IUuBhYQ0
したらばから転載です

>投下乙です
>タイトルにもなっているあの曲名の使いどこがうまいなー
>かっこいいなあ、黒子……! 
>のちのち、後輩にお姉さまと慕われそうだ

>規制のためこっちに。支援もできないなんて
479 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 21:36:50 ID:9XLUnz3q
まとめて投下乙&GJ!

>>362
凄い。イリヤ消失の影響が凄い丁寧に描かれてる!
フリアグネとマリアンヌの解説編には思わず吹いたけどw、これもまたよく考えられてるなあ

>>373
静かに染み入るようなお話だなあ……
竜児の思い出と、鉄人定食に思わずうるっと来た

>>473
黒子は踏みとどまったかー。ティーの存在感がパないな
何気にグループ内での孤独を深めてきている鮮花が、今後波乱を起こしてきそうだ
480 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/15(火) 21:39:06 ID:G2Erw8uk
黒子のキャラ違くね?
481 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/16(水) 00:19:22 ID:f6qHZePR
>>480
そうか?自分は違和感なかったけど…

投下乙です
黒子とティーの友情が着々と深まってきて感動した
良いコンビに成長したものだ
……しかし、ティーのがずっと年少に見えるけど、このコンビ同い年ぐらいなんだよな……
482 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/16(水) 12:52:52 ID:iRjrhPz/
あ、いまさらながらに細かい指摘を1つ。
>>384で「この島でも有力な実力者〜」って発言してるけど、この会場、「島」だっていう考察とかあったっけ?
マップ見る限り、孤島っぽい感じはむしろないのだけど
単純ミスでしょうけど、気づいてしまったので。
483 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/16(水) 19:20:09 ID:S5ZWKL5s
投下乙です

ティーと黒子の支え合いが微笑ましかったです。
鮮花がクマーのAAで再生されてしまったw
ひと波乱ありそうだけど、騒ぎを起こすとクルツにすぐに射殺されそうだから怖いw

あと誤字を見つけたので報告します。
【scene 1  白井黒子と黒桐鮮花の場合】の二行目で、白井黒子を見て思った事?が見た思った事となっていました。
484 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/19(土) 19:51:56.67 ID:YwojHv/+
なんて言うかさ
出会いがロワでなければ仲良しになって青春を謳歌してた奴が多いんだよな
一部は除くけどw
485 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/20(日) 09:21:48.74 ID:JY0mc6jf
その点で美波と大河はすごいよな
誰が相手でもすぐ馴染む
486 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/21(月) 14:30:16.90 ID:Hbv1EBnN
ムッリーニ辺りに男子キャラが寄ってきて、あるいは巻き込まれて女性キャラと絡んで一騒動とか
バカテスの延長だけどそういうクロスがあったかもしれない
出会いがロワでなければ…
487 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/22(火) 01:59:15.30 ID:rBBgIdAf
ところで話は少し変わるけど、
ムッツリーニみたいに殺し合い自体を楽しんでいるわけではないけどロワ内で幸せな目にあってる奴ってロワ充に含まれるの?
488 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/22(火) 10:45:29.56 ID:07TiWR3S
広義のロワ充だと思う
489 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/22(火) 20:00:01.85 ID:akKaE5wi
朝比奈みくるというムッツリーニとしてのネタの宝庫が死ぬまで一緒だったし…

というかこのロワ、本編より「ムッツリーニ」より「土屋くん」と呼ばれた回数が多いんじゃなかろーか
490 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/22(火) 21:36:53.19 ID:2sZOjG4B
そりゃ初対面の場合あまりあだ名で呼ばないだろう
491 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/23(水) 19:57:00.31 ID:Opt99cxK
他原作の男の子と、悪友と呼べるような関係が結べていれば違ったろうなあ>ムッツリーニ
まあ、近くにそういう相手が居なかったのは運が悪かったとしか
492 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/23(水) 20:33:53.81 ID:53FF6ExG
バカテスは相性が悪い相手と絡むとひとたまりもないな
せめてロワ内で戦闘で戦術を立てる役割になるか考察の要になれたら……
無理だなw
493 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/02/23(水) 23:37:40.27 ID:HbfPG6GZ
>>492
唯一戦闘能力を持つ明久が早々と退場したしな…せめて雄二さえいれば
494 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/03(木) 19:28:02.89 ID:agJJEjHu
キノは学園の方だと面白いかもw
495 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/05(土) 10:21:24.59 ID:Pdfk+R39
予約きたよー
496 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/03/05(土) 23:16:35.89 ID:Wy4dzLjE
来てるな
497 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/09(水) 13:23:53.93 ID:xyxLxtZ7
まだ良く理解出来ていないんだけど、トーチステイルって戦闘力はどれぐらいなの?
498 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/09(水) 14:14:40.83 ID:dkNKBJr1
戦闘力自体は変わらんのじゃないの?
禁書の魔術師って魔力とか使って術式使うような感じじゃないし
知識さえ十全なら本人がトーチだろうと魔術は使えそう
499 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/09(水) 22:19:56.43 ID:T95fq3nH
理論上は生命力から魔力を生成しているんだったと……
通常魔力の大小はどれだけ効率よく魔力に変換できるかで決まるとかステイルが言ってた
原作2巻で確認できるはず
500 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/03/12(土) 08:17:20.70 ID:y/q9ATv+
まあ日本中大変だしね
書き手さん無事で良かった
501 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/03/22(火) 08:28:44.56 ID:I0SFvvVO
投下きてたがこの状況どーすんだ悠二ぃぃぃぃぃぃぃぃ
502 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/22(火) 23:57:29.45 ID:s+TQ/Qq3
仮投下されたの代理投下してもいいのかな?
503 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:03:59.99 ID:PVOmn/ZV
っと、支援しますぜ
代理投下しようと思ったこともあったけど、支援ないとどう考えてもさるさんで止まるw
504 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:32:57.06 ID:ZVqhvYgY
 【0】


――情報が多ければ判断が楽というものではない。


 【1】


「これでよし、と」

ショーウィンドウに写る自分の姿に満足すると島田美波は「うん」とひとつ頷いた。
あわせるように黄色いリボンとくくりなおしたポニーテールの髪の毛も頷くように揺れる。

先刻、水前寺と激闘を繰り広げたために髪は見るも無惨に、リボンもいずこへと飛んでいっていたのだが今はもう元通りだ。
右斜め45度から見ても、左斜め45度から見ても、もちろん正面から見ても。
どの角度から見てもこれまでの――まぁ、多少は激闘のなごりも残るものの――可愛い島田美波の姿である。
背筋をピンとのばし、ジャージにほつれた部分がないかを確認すると、短く息を吸って美波は皆の方へと振り返った。

「ん?」

美波の頭の上に“?マーク”が浮かび上がる。振り返ってみれば、どうしてかまた水前寺がぼうっとしているのだ。
まさか、またらしくもない虚無感やアンニュイに囚われているのだろうか?
叩く回数が足りなかったのか。ならばと拳を握ると、美波はアスファルトを踏んでつかつかと水前寺に歩み寄る。

「ちょっと水前寺。なにまたぼーっとしてるのよ?」
「……うむ、島田特派員か。
 呆けているなどとはひどい言いがかりだな。が、しかし今はそんなことで言い争うつもりはないのだよ」

少しばかり静かにしてくれたまへと、水前寺は目の前へと掌を突き出してきた。
どうやらぼうっとしていたのではなく考え事をしていたらしい。では、その考え事とはいったいなんなのだろうか?

「ねぇ、一体なんなのよ。また一人で抱え込んで、なんて許さないわよ」
「いや、そういった感情的な問題ではない。今、俺が脳内で行っているのはシミュレーションだ」
「……シミュレーション?」
「うむ」

集中することは諦めたのか、水前寺は美波の方へと向き直ると腕を組んで大きく頷いた。

「シミュレーションって、何のシミュレーション?」
「我々が今帰りを待ちわびている浅羽特派員の行動シミュレーションだ。今現在、彼はどのように行動しているのか? とね」
「こっちに向かって戻ってきてるんじゃないの? だからここで待っているんだし」

手を広げ美波があたりを示してみると、水前寺は「然り」と頷いた。
美波とシャナ、水前寺と悠二、この4人がここで合流して以降、ここに留まっているのは何もなくなったリボンを探すためではない。
そのうち“戻ってくるはず”の浅羽直之の帰りを待つためなのだ。だがしかし、そこに水前寺は疑問を呈した。

「確かに、じきに帰ってくるのではないかと踏んでいたのだが、よくよく考えるとそうならないのでは? と思い至ったのだ」
「え……、それはどういうことなのよ?」
「実を言うと、浅羽特派員に対してはトーチに関する“ほんとうのこと”を一切伝えておらん」
「アンタ、それって――」

絶句する。が、水前寺はまたも掌を突きつけて美波のリアクションを押しとどめた。
505 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:33:41.33 ID:ZhwHpIrR
支援
506 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:34:49.66 ID:ZVqhvYgY
「まぁ、このこと自体の是非については今は置いておこう。答えの出ない議論に時間を費やす暇はないからな。
 問題は、伊里野特派員が消失した後、彼は素直にこちらへと戻ってくるのか? ということだ」
「えっと、それは…………」

美波も水前寺と同じように腕を組んで頭をひねった。
伊里野加奈の消失。これは間違いない。なので今現在、浅羽直之はひとりだけでいるはずだ。
そして彼女の消失にともない彼が映画館へと向かう理由は失われる。ならばその時点で引き返してくる。……はずだが。

「映画館に向かってたんでしょ。それで、途中で隣にいる伊里野さんが消えた――」
「――そう。そしてその時、その伊里野クンが消えたことすら浅羽特派員が意識しないのだとすれば?」

しかし彼は“ほんとうのこと”を知らないらしい。じゃあ、どうなるのか?
確かシャナから話を聞いた時に、“周りの人間は存在の消失から発生する矛盾には気づかない”と教わったはずだ。
その空恐ろしさに驚いたので美波はそのことについてはよく覚えている。ならば、だとすれば――。

「……もしかして、浅羽くんはそのまま今も映画館に向かってるわけなの?」
「では、専門家に意見を伺ってみようではないか」

互いに冷や汗を一滴たらすと、美波は水前寺と揃ってシャナと悠二の方へと足を向ける。
彼女らは彼女らで何か相談でもしていたらしいが、こちらが近づいていることに気づくとそれを中断して振り向いてくれた。

「坂井特派員とシャナクンにひとつ尋ねたいことがあるのだが――」

悠二を特派員と呼ぶことにシャナがまた目じりを吊り上げたが、水前寺はそれを無視して二人に事情を話した。
浅羽直之には“ほんとうのこと”を一切伝えていないこと。そして彼と伊里野加奈が映画館へと向かうことになった経緯。
更にその上で、現在に彼が状況をどう認識しどう行動しているのか? それを専門家たる二人に問いかける。
答えたのは、悠二とシャナのどちらでもなく、シャナの首から下がったペンダントから響く声――アラストールだった。

「伊里野加奈が消失するまでに心変わりしていないのだとすれば、彼は今も映画館を目指しているのだろう」

彼の厳しい声は、重大な真実を伝えるにはあまりにも効果的だった。
それまではあまり関心なさげだったシャナの顔もわずかに強張る。美波の胸にもざわざわとした不安が湧き上がっていた。

「……で、でも、そうだったとしても一度映画館まで行ったらここまで戻ってくるんじゃない?」
「それを待つ猶予は我々には――いや、我々よりも浅羽特派員にはあるまい。
 あの満身創痍の身体では何かあった時逃げることもままならんぞ。いや、そもそも戻ってくる体力があるかどうか」
「じゃあアンタ、なんでそんな状態で行かせちゃったのよ!?」
「彼らには時間がなかったのだからそれについては仕方あるまい! と、言い争っている場合ではない――」

言うが早いか、水前寺は踵を返して駆け出した。
その先には一台の救急車が停めてある。どうやら、映画館に向かっているはずの浅羽を追いかけようということらしい。
時間が経てばいずれは浅羽もここに戻ってくるかもしれない。だがそれまで無事であるという保障はないのだ。
ならば確かに急いで彼を追いかけないといけないだろう。車を使うというのならそれはきっと最良の手段だ。
そう、少なくとも宙吊りで空を飛ぶよりかは大分ましなはずである。

507 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:36:43.60 ID:ZVqhvYgY
「ねぇ、美波」

ん? と、美波は水前寺を追っていた視線をシャナの方へと戻した。何か彼女から話があるらしい。
一瞬、心の中を覗かれたかと思ったがそんなはずがあるわけもなく、美波は彼女の口元へと注目して次の言葉を待つ。
思い返せば彼女は先ほどなにやら二人で相談していた。
彼女の第一目的は坂井悠二との合流だったわけで、ならばそのことに関することかもしれない。
神妙なシャナの顔。その小さな口が開き――しかし、次に聞こえてきたのはあの“人類最悪”の声だった。

数えて3回目になる定時放送が流れ始める。そして――

救急車のエンジン音が静かな夕暮れの中に大きく響き渡った。まるで、これから加速する物語を暗示するかのように。






 【2】


「御坂美琴に古泉一樹。なぁんだ、私だけでなく師匠もちゃんと仕留めていれたのね」

人類最悪の放送を聞き終え、一応とその内容をメモに記すと朝倉涼子はくすりと笑みを漏らした。

「もし古泉くんが死んでなかったらこちらが優位に立つための材料になったと思うのに、残念だわ」

言いつつもそうは感じさせない表情を顔に浮かべ、朝倉は滞在しているファミレスの中を滑らかな動作で進んでゆく。
浅上藤乃が眠る席を通り過ぎ、ひとつ、ふたつめのテーブル。そこまで行くと、そこであるものを手に取った。

「電池の残りが少ないけど問題はないかな。御坂さんじゃなても、充電くらいなら“私”でもできるし」

朝倉の手の中にあったのはピンク色をした二つ折りの携帯電話であった。
おそらくはこのファミレスに食事に来た客がテーブルの上に出して、そのままだったのだろうと推測できるものである。
どうして客はいなくなったのか。それはいつからなのかは依然として不明なままであるが、
ともかくとして、携帯電話自体は使用にあたって特に問題はないものだった。
彼女の言葉通りに電池の残量は乏しかったが、この程度の電量であれば情報改変を用いて充電することはわけもない。

「さてと、浅上さんはいったい誰に電話したのかしら。今もまだ生きている人だといいんだけど――」

あらかじめ聞いておいた電話番号をすばやく入力すると朝倉は電話を耳に当て、相手が出るのを待とうとした。だが、

「あれ?」

しかし聞こえてきたのは“通話中”を知らせる電子音のみであった。






 【3】


508 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:38:15.04 ID:ZVqhvYgY
物語の舞台の中央に位置する城。その城を囲む堀を右側に一台の救急車がややゆっくりとした速度で南下していた。
運転席にはハンドルを握る水前寺がおり、隣の助手席には悠二が、シャナと美波は後部の患者を収容するスペースの中にいた。
病人を搬送するという目的上、この車の乗り心地は決して悪いものではないが、
よくわからない医療機器などが犇いているからか、シャナや美波の表情を見るに居心地はあまりよくないらしい。

浅羽直之を追い越したり見逃さないよう徐行運転で進む中、悠二は携帯電話を耳に当て、ヴィルヘルミナと連絡を取り合っていた。
シャナと無事に合流できたこと。伊里野加奈がトーチとして消失したこと。病院で発見した凶行の証拠など、報告することは多い。
また御坂美琴と古泉一樹の死亡の報を聞き、キョンの安否が気にかかったこともあった。
元はと言えば、警察署に行こうとしていたのは自分なのだ。そのせいで犠牲が出てるのだとしたら悔やんでも悔やみきれない。



「――それで、キョンはまだ戻ってないんですね」

しかしキョンは未だ神社には帰還しておらず、警察署で何があったのかということも不明ということだった。
ヴェルヘルミナの声に悠二は自分がここでこうしててもよいものだろうかと、僅かな焦燥を募らせる。

『御坂美琴及びキョンなる者が順調に帰還を果たしたならば、次に上条当麻の捜索を開始する予定でありました。
 ですが、今はそうもいかなくなってしまったのであります』

常に冷静を務める彼女の声の中にも僅かな焦燥があるように思えた。
警察署の捜索は悠二捜索の足掛かりになるはずで、古泉一樹を捕らえれば貴重な情報源にもなるはずだったのだ。
そして、彼らが帰還すればシャナが出会ったという上条当麻なる“全ての異能を破壊する男”を探す予定でもあったのだ。
だがそれらは警察署で起こったなんらかのトラブルによりご破算となり、計画は大きく後退することとなってしまっている。

『炎髪灼眼の討ち手の早急なる帰還を要請するのであります』
『即時実行』

ヴィルヘルミナの声に彼女の冠するティアマトーの声が重なる。
御坂美琴という人員が失われた以上、その空白を埋めるためにシャナを帰還させるというのは当然の道理だろう。
悠二と合流するという当座の目的は達したのだ。
ならば、次に優先すべきはキョンの捜索と警察署で起きた事実の確認に他ならない。

「それは、そのつもりだったけど」
『何か公開していない事情が――?』
「……シャナがフリアグネの居所を掴んだんだ」

フリアグネの名前を聞き、電話の向こうにいるヴィルヘルミナの気配が変わったように悠二は感じた。

『詳細を』
「うん。直接フリアグネを見たというわけじゃないんだけど――」

悠二は、シャナが百貨店の屋上でフリアグネの燐子を発見したという事実を伝え、
また悠二自身も付近で燐子に遭遇したことから、フリアグネが百貨店を拠点にしているだろうという推測を語った。
そして、水前寺や美波の避難をシャナに任せた後、単独で百貨店に潜入。そこで少佐なる者の狙いやフリアグネとの関係を突きとめ、
その後にまたシャナと合流して二人でフリアグネの討滅に当たる予定だったと。

「アラストールは再び《都喰らい》が行われるかもと言ってるんだ。だからここは早く手を打たないと――」
『待つのであります』

悠二は事の緊急性をアピールしたが、ヴィルヘルミナはそれを遮り加えてその計画に問題が多すぎることを指摘した。

509 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:39:56.77 ID:ZVqhvYgY
『フリアグネは“狩人”の通り名が示す通りに強者として名高き紅世の王。
 尋ねるのでありますが、今現在あの王と合間見えたとして再び勝利を得ることが可能だと考えているのでありますか?』

それは……と、悠二は口ごもる。
シャナはあれ以来、戦闘の経験を重ね確実に強くなっている。悠二にしても“存在の力”を制御するに至った。
二人の実力は大きく高まっていると言えるだろう。だがしかし、そもそもとしてあの王に勝てた一回が偶然と幸運の産物でしかない。
フリアグネはヴィルヘルミナが言う通り、幾多のフレイムヘイズを狩ってきた最強の王の一人。
冷静に指摘されてしまうと、悠二としてもまた勝てるとは断言できなかった。

『加えて、今は“少佐”なる不確定要素が存在するとのこと。ならば事を起こすにはより慎重であるべきでありましょう』
『早計』

そして、万条の仕手なるフレイムヘイズがここにいるのにも関わらず、そちらだけで決めるとは何事かとも悠二は怒られた。
確かにそれはその通りで、そう言われてしまうと悠二としても返す言葉がない。
相手は紅世の王なのである。ならば、その討滅にあたってヴィルヘルミナも参戦するのが当然なのだ。
だが、悠二もそれらについてまったく考えていなかったわけではない。それを踏まえても今回は緊急性が高いと判断したのだ。

「けど、もしフリアグネが再び《都喰らい》を企てているのだとしたら――」

周辺の物質をすべて存在の力へと還元してしまう《都喰らい》。もしこれが実行されればこの狭い世界は跡形もなく消えてしまうだろう。
その後に生きていられるのは恐らくフリアグネ本人のみ。だとすれば、これだけはどれだけ犠牲を強いても回避しなくてはならないのだ。
打倒は無理だとしても計画の阻止だけは、と――だがそれについてもヴィルヘルミナは疑問を呈した。

『《都喰らい》……それを想定するに至ったトーチの存在についてでありますが、
 伊里野加奈は自然消滅したと、それで間違いないのでありましょうか?』
「その瞬間は見ていないけど、おそらくは……、存在の力も希薄だったし、間違いないと思う――」

自分で発言し、その瞬間に悠二はこの事態における根本的な矛盾に気がついた。
ヴィルヘルミナが疑問を感じるのも当たり前だ。
フリアグネが真に《都喰らい》を画策しているのだとすれば、用意したトーチが“自在法が発動する前に消滅してしまう”のはおかしい。
《都喰らい》の要は、同じ場所に多くのトーチを同時に存在させることにある。これではこの条件が満たされない。

『どうやら理解された模様』
『単純明快』
「うん、確かにフリアグネが《都喰らい》を狙っていると決めつけのは早かったよ。けど、何も狙いがないとも思えないんだ」
『同感でありますが、現状では情報が不足しているのであります。それについては後々に』

悠二は食い下がるも、ヴィルヘルミナはあっさりと話を切り上げてしまうとシャナと電話を代わるように命じた。
シャナから話を聞いてやってきたというトーチが今神社にいるらしく、詳しく事情を聞きたいらしい。
逡巡し、返す言葉がないことに気づき悠二はおとなしく従うことにした。

「シャナ。カルメルさんが聞きたいことがあるって」
「うん、わかった」

後ろで待機しているシャナに声をかけて携帯電話を渡すと、悠二は前に向き直り座席に深く身を預けて大きな溜息をついた。
相変わらずヴィルヘルミナ相手だと緊張するということもあるが、
それよりもフリアグネに対峙する為に決めた覚悟が肩透かしに終わってしまったからという部分が大きい。
決死の覚悟であり、また存在の力を扱えるようになった自身が紅世の王と対峙することに対する高揚も少なからずあったのだ。
ヴィルヘルミナの言うことはもっともで、今ここでフリアグネに接触することが必ずしも得策ではないことは理解できている。
けれども、機会を逃したことが惜しいという気持ちが離れないでいた。

510 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:41:14.06 ID:ZhwHpIrR
支援
511 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:42:07.06 ID:PVOmn/ZV
 
512 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:42:12.57 ID:ZVqhvYgY
「(……もしかすると、僕はただシャナと一緒に戦いたかっただけなんだろうか)」

シャナがヴィルヘルミナと話している内容をそれとなく聞きながら窓の外の景色を眺める。
ゆっくりと流れる風景の中にはなんら剣呑なところはなく、そしてまた浅羽直之の姿もそこにはなかった。






 【4】


物語の舞台の中央に位置する城。その城を囲む堀を左側に一台のパトカーがゆっくりとした速度で東進していた。
その運転席には師匠と呼ばれる妙齢の女性がハンドルを握っており、隣の助手席には携帯電話を片手にした朝倉涼子が座っている。
そして後部座席では浅上藤乃が横になってすやすやと静かな寝息を立てていた。

「あなたの見込みどおりであればいいのですが」
「そんなこと言って、師匠ったら乗り気な癖に」

朝倉は携帯電話を耳に当てる。だがまだ相手は通話中のようだった。
そして、この通話中であるという事実が彼女と師匠にある可能性を想像させ動かしているのであった。






 【5】


「――うん、だから私の存在の力を注いであげた。ステイルはインデックスが言ってた仲間だから」

水前寺と一緒に浅羽がいないか窓の外を眺めながら、悠二は時折バックミラーに視線を移してはシャナの様子を窺った。
聞いたとおり、ヴィルヘルミナがシャナに確認したかったこととはもう一人のトーチであるステイルのことであるらしい。

「わかった。とにかく一度そっちに戻るから」

バックミラーの中のシャナは携帯電話を耳から離すと眉根を寄せた。どうやら彼女もヴィルヘルミナにやり込められたらしい。
シャナは電話を切ろうとする――と、そこで悠二はまだ報告していないことがあったのに気づいてシャナに声をかけた。

「シャナ。まだカルメルさんに報告しないといけないことがあるんだ。電話をかしてくれるかな」
「ヴィルヘルミナちょっと待って。悠二がまだ話すことがあるって」

シャナから携帯電話を受け取ると、悠二はもう一度バックミラーへと目をやって今度は美波の様子を窺った。
どうやら今彼女は救急車の中にあるものを色々チェックしているらしい。箱を開けてみたり、何かのボンベを持ち上げてみたり、
とにかく彼女がこちらに気を払っていないことを確認すると、悠二は彼女に聞こえないよう小さな声で喋り始めた。

「……病院で死体を見つけたって前に報告したけど、その犯人がわかったんだ」

その内容は、あの録画機能付きの眼鏡に残されていた映像に写っていた人物についてだ。
つまり、病院での4人殺しの犯人であり、美波の友人である吉井明久や土屋康太を殺害した人物のことである。
いつかは知らせるべきだろうし、彼女が彼らの遺体と対面したいと言えばそうさせるべきだろう。
しかし今は浅羽直之を探している最中でもあるし、彼女の心を悪戯に乱す必要はないと悠二は判断した。

513 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:42:40.38 ID:PVOmn/ZV
すまん支援遅れた支援
514 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:42:44.22 ID:ZhwHpIrR
支援
515 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:43:23.42 ID:PVOmn/ZV
 
516 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:43:48.97 ID:ZVqhvYgY
『なにか証拠を見つけたということであるのですか?』
「うん。その場面を写した映像がそこに残っていたんだよ」
『ではその人物とは?』
「“キノ”と呼ばれていたよ。本当の名前かはわからないけど、コートを着た背の低くて僕くらいの年齢の人物だ」
『その人物なら、先ほど面会したのであります』

思わぬ反応に、悠二の口から驚きの声が小さく漏れた。
相手はあの冷酷な殺人鬼である。一体二人の間に何があったのか。いや、神社にいた面々は大丈夫だったのか?

『物腰は柔らかなれど剣呑なるところも感じられた故に退去を願いましたが、なるほど殺しを行う人間でありましたか』
『不審人物』
「うん。どうやら集団の中に潜伏して、油断したところを一網打尽に……という戦略らしいんだ」
『納得したのであります。あの時、キノなる者は「手伝えることはないか?」と我々に接触してきたのでありますから』
『常套手段』
『間違いなく我らに対しても同じことを行おうとし狙っていたのでありましょう』
「でも無事ならなによりだよ、こちらも気をつけるからそっちも気をつけて」

どうやらヴィルヘルミナが追い返してくれたおかげで特に被害はなかったと知り、悠二はほっと胸を撫で下ろした。
あのモニターの中に見た光景を思い出すと、本当に何事もなくてよかったと思える。

『して、その殺しの手段はいかに?』
「見た限りでは銃と刀を使っていたよ。自在法のようなものを使っているようには見えなかった。
 それと……、これはシズさんが前に言ってたんだけど死体を見る限りかなりの手練だって」
『なるほど。そしてシズでありますか。味方になる可能性があったとしたら彼もまた惜しいことをしたものであります』
「うん……」

先程の放送で名前を呼ばれたのは御坂美琴と古泉一樹だけではなかった。シズの名も一緒に呼ばれたのだ。
悠二も彼の死は惜しいと思う。贄殿遮那を返してもらった時の感触から彼の本質は悪人ではないと感じていたからだ。
もし少しでも出会うタイミングが異なれば一緒に協力できたかもと、そう思うととても残念だった。

『しかし、この報告により新しい問題が浮かび上がってきたのであります』
「え?」
『キノなる者に我々が神社を拠点としていることが把握されているのであります。
 不審者の接近は警戒してるとはいえ、これでは拠点としての機能は半減したも同然。移動の必要がありましょう』
「じゃあ、今度はどこに?」
『天文台なのであります。
 現在、テッサとインデックスが先行し、更に天体観測中の警備として人員を送る予定でありましたが、
 もはやそれも難しいとなれば、全員が一度天文台へと集結し今晩を乗り切るというのが最善の選択であります』
「なるほど了解したよ。こちらのみんなにも伝えておく」
『ではこちらは移動の準備を開始し、炎髪灼眼の討ち手の帰還を待って天文台へと移動を開始するのであります。
 そちらも浅羽直之を確保次第こちらへと帰還することを改めて要請するのであります。
 フレイムヘイズはともかくとして、人間はちょうど疲労のピークを迎える頃合。
 寝て夜を越すにしても固まっていたほうが警備は行いやすいのでありますから』
「わかった。浅羽くんを保護できたらこっちも一度そちらと合流するよ」

ではこちらの者にも説明が必要なので、という言葉を最後にヴィルヘルミナとの通話は終わった。
悠二は携帯電話を握り締めながらまた溜息を漏らすと、隣の水前寺に車を止めるように声をかけた。






 【6】


517 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:44:34.17 ID:ZhwHpIrR
 支援
518 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:44:40.49 ID:ZVqhvYgY
「この電話が鳴るたびに問題が増えるような気がするのであります」
「轗軻数奇」

溜息こそつかないが、傍から見ればそうしそうだと思うような台詞を吐いてヴィルヘルミナは受話器を置いた。
電話のせいかはともかくとして、言葉の通りに問題は増えるばかりだ。
しかし彼女がそこで止まってしまうことはなく、衣擦れの音をさせることなく身を翻すと他の人間が待つ部屋へと戻った。



日焼けした畳敷きの狭い和室に揃っていたのは、ステイル、大河、晶穂――つまりここ残っているうちの全員だった。
半日前はこの倍以上の人間がいたが、しかし今はヴィルヘルミナ自身を数えてもたったの4人しかいない。
そして、御坂美琴や零崎人識などもう戻ってこない者や、行方の知れない者もいる。

「長かったね。なにか重要な情報でも得たのか、それとも話が弾む相手だったのかな?」
「前半分は肯定。後ろ半分は否定なのであります」

詳しい事情を把握してないせいか、それともトーチなのでそうなのか、緊張感がない風にステイルが聞いてくる。
それを軽くあしらうとヴィルヘルミナはスカートの裾を折りたたみ、上品に畳みの上へと腰を下ろした。

「また悠二ってやつからの電話? だったらシャナと美波はちゃんと合流できたの?」
「大きな問題はなく坂井悠二の発見と合流は行われたのであります」

次に発言したのはいつもなにかに怒っている風に見える大河だった。
リハビリのつもりなのだろうか、彼女はずっと鋼鉄の義手の掌を閉じたり開いてガチガチと音を鳴らしている。

「炎髪灼眼の討ち手は速やかに戻ってくる手はずであり、また水前寺他の面々も浅羽直之を保護次第戻ってくる予定であります」
「浅羽が見つかったのッ?」

伏せていた顔を上げ驚くように声を上げたのは晶穂だ。
その顔は少し青ざめている。見知った人物の名前が続けて挙げられるのはかなり堪えるらしい。

「一度は合流し、その後“事情”により僅かに離れはぐれてしまったとのことであります」
「何やってんのよ部長も、浅羽も……」

再びうなだれる晶穂。彼女に対してヴィルヘルミナは“事情”については話さなかった。
彼女は伊里野加奈のことを忘れ去っている。話したところで理解できるはずもなく、逆に混乱し不安を煽ってしまうだけだろう。
そして、話さない、知らせないことがフレイムヘイズの常で、ヴィルヘルミナは常にフレイムヘイズであった。



「ともかくとして、今晩を乗り切るに当たって再び全員を集合させることになったのであります」

ヴィルヘルミナは3人にこれからの予定を説明する。
シャナは悠二と合流し、水前寺も当初の目的であった浅羽を保護しつつある。
美波の友人である姫路瑞希の捜索や、悠二が提案した人類最悪の居場所を探ることなど、他の案件もあるが
そのどちらも具体的な手がかりもなく、いつ達成できるのかも定かではない。
なのでひとまず仲間を集結し、できることからひとつずつ潰していこうというのがヴィルヘルミナの方針だった。

「じゃあ、インデックスもこちらに呼んでくれるのかい?」
「いえ逆なのであります。我々が現在インデックスとテッサが滞在する天文台へと移動するのであります」

なるほど。と、ステイルは頷いた。インデックスが天文台にいるというのは彼からするととても自然なことらしい。
同じ魔術師だけに相通じ理解できるところがあるのだろう。
居場所を知ればいてもいられなくなったのか、今にでも立ち上がりそうなステイルだったが、晶穂の発言がそれを制した。
519 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:44:42.52 ID:PVOmn/ZV
 
520 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:45:26.16 ID:PVOmn/ZV
 
521 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:45:36.25 ID:ZhwHpIrR
支援
522 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:45:43.82 ID:ZVqhvYgY
「あの、キョンさんはどうするんですか? 帰ってくるかも、しれないのに」
「それについては案があるのであります」
「用意周到」

御坂美琴と一緒に警察署へと出向いたキョンは現在行方不明だ。
定時放送で名前が呼ばれなかった以上生きてはいるはずだが、どこでどうしているのかはわからない。
今まさにここへと戻っている最中かもしれないし、逆に怪我を負ってどこかで動けなくなっているかもしれない。
待つか探すかしたいが、残念ながら今はどちらも難しい。なのでヴィルヘルミナは次善の策を用意していた。

「ここに書置きを残すのであります」
「書置き?」
「“後に迎に行くのでここで待たれたし”と記した紙を発見しやすい場所に置いておくのであります」
「天文台にいるって書けばいいんじゃないの?」

思いのほか単純で原始的な回答に晶穂はきょとんとし、大河は義手をガチガチと鳴らしながら疑問点を挙げた。
言葉の通りに、天文台へと誘導する旨を書いてもいいと思える。
しかしヴィルヘルミナはそれは問題があると、大河と残りの2人にその理由を説明した。

「先刻、ここを尋ねてきたキノなる人物が坂井悠二の報告により、集団に入り込み殺人を行う者だと判明したのであります」

晶穂の口から小さな悲鳴が上がり、大河の義手がガチッと音を立て、ステイルの目が剣呑に細められた。

「幸い、前回は追い返したのでありますが、再び訪問する可能性もなきにしもあらず、
 また我々がここを拠点としていることを相手に知られてしまっているのは看過できない問題なのであります」
「夜襲警戒」
「故に拠点を移動するに当たって次の移動場所を書き残すことは、その危険性から考えてできないのであります」

仮にキノが神社の面々に接触、または奇襲することを諦めていたとしても、来訪する危険人物はキノだけとは限らない。
逆に、キョンをはじめ行方の知れない上条当麻や姫路瑞希などの歓迎したい人間も来訪するかもしれない。
しかし前者を呼び込むことだけは絶対に避けたい――故に、待機を命じる書置きであった。

「天文台に拠点を移した後、定期的に神社へと偵察へ赴き、害のない人間がそこにいれば迎えるとするのであります」

そして、以上であります。とヴィルヘルミナは説明を終えた。


 ■


「……キョンさん大丈夫かなぁ」

晶穂がテーブルの上の“待たれたし”とだけ書かれた――いや、それだけしか書いてない紙を見て溜息をついている。
誰がとも、誰にとも、何時とも書かれてないのは期待してない何者かがこれを見た時、余計な情報を与えないためだという。
本当に大丈夫なんだろうかと、大河もそう思いながら鞄の中に自分の荷物を詰め込んでいた。

これもあの几帳面すぎるメイドが言うには、歓迎しない来訪者に余計な情報を与えないためらしい。
自分達がいた痕跡すら残さずに――というのはけっこう本格的っぽい。まるでスパイ映画のようだった。
そして冗談でも笑い事でもない。うきうきしたりなんてしない。本当に人が死んでいるのだから。

「ムカつく……」

右手をぎゅっと握り締めるとガチッと固い音がした。今置かれているこの状況が嘘でないという正真正銘の証拠だ。
結局つけることを諦めたブラジャーを乱暴につっこみながら舌打ちをする。
晶穂が肩をビクっと震わせ(ちょっとゴメン)、紙バックしか荷物のないステイルがクスっと笑った。

523 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:46:08.17 ID:PVOmn/ZV
 
524 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:47:11.30 ID:PVOmn/ZV
 
525 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:47:25.75 ID:ZVqhvYgY
「あんたさっきからなんかおかしーの?」
「……あぁ、いやなんだろうね。どこかで君みたいなのを見たことが、いや聞いたことがあるような気がしてね」

ゴシックパンク野郎の言うことは時々、意味不明だった。
神父で、魔術師で、巨人みたいな身長なのに年下。どんな面白存在だと、ツッコまざるをえない。



ゴミも残していかないほうがいいらしいので台所へとゴミ袋を取りに来たら、そこでヴィルヘルミナがシンクを洗っていた。
メイドがキッチンで洗い物をしているなんて当たり前のようでいて、ひどく奇異な光景。
呆れ半分、ピカピカのシンクを見て「洗いすぎ」と――そして不意にモヤモヤとムカムカが心に湧きあがってくる。

ゴミ袋をひったくるように取って部屋に戻ると、もう晶穂とステイルは準備を終えているようで部屋はすっきりとしていた。
元々、そんなに綺麗な部屋でもない。畳みは古くて薄黄色だし、テーブルには焦がした痕があるし、柱も傷だらけだ。
どこにでもあるようなこじんまりとした庶民的な和室。

「晶穂。終わったんなら私のも手伝って」
「う、うん……」

そう、どこにでもあるような、まるで普段から入り浸っている場所のような居心地のよさがここにはあったのだと気づいた。
そして、すこしだけすっきりとした引越し準備中みたいなこの部屋を見て、大河は行きたくないなと思う。
新しい「いってきます」は、これまでに対する「さようなら」みたいだったから。


拳を握ると、またガチッという音がした。


526 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:47:38.06 ID:ZhwHpIrR
 支援
527 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:47:52.96 ID:PVOmn/ZV
 
528 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:48:46.46 ID:PVOmn/ZV
 
529 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:48:49.62 ID:ZVqhvYgY




【C-2/神社/一日目・夜】

【ヴィルヘルミナ・カルメル@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン一箱(7/20)、缶切り@現地調達、調達物資@現地調達
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。
 1:シャナの到着を待ち、天文台へと移動。
 2:天文台を新しい拠点とし、今後の予定を改めて組みなおす。
 ├キョンを保護する為、また警察署で何があったかを確認する為に警察署へと人を送り出す。
 └上条当麻を仲間に加える為、捜索隊を編成して南方へと送りだす。
 3:ステイルに対しては、警戒しながらも様子を見守る。


【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)、右腕義手装着!
[装備]:無桐伊織の義手(右)@戯言シリーズ、逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式
     大河のデジタルカメラ@とらドラ!、フラッシュグレネード@現実、無桐伊織の義手(左)@戯言シリーズ
[思考・状況]
 基本:馬鹿なことを考えるやつらをぶっとばす!
 0:ちょっとアンニュイ。
 1:ヴィルヘルミナについて天文台へと移動する。
 2:ステイルのことはちょっと応援。
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。


530 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:49:10.12 ID:ZhwHpIrR
支援
531 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:49:34.56 ID:ZVqhvYgY
【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、意気消沈
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
 基本;生き残る為にみんなに協力する。
 0:……大河さんの機嫌が悪いなぁ。
 1:ヴィルヘルミナについて天文台へと移動する。
 2:部長が浅羽を連れて帰ってくるのを待つ。
 3:鉄人定食が食べたい……?
[備考]
 伊里野加奈に関する記憶を失いました。


【ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:“トーチ”状態。ある程度は力が残されており、それなりに考えて動くことはできる。
[装備]:筆記具少々、煙草
[道具]:紙袋、大量のルーン、大量の煙草
[思考・状況]
 基本:インデックスを生き残らせるよう動く。
 1:ヴィルヘルミナについて天文台へと移動する。
 2:とりあえず、ある程度はヴィルヘルミナの意見も聞く。
[備考]
 既に「本来のステイル=マグヌス」はフリアグネに喰われて消滅しており、ここにいるのはその残り滓のトーチです。
 紅世に関わる者が見れば、それがフリアグネの手によるトーチであることは推測可能です。
 フリアグネたちと戦った前後の記憶(自分がトーチになった前後の記憶)が曖昧です。
 いくらかの力を注がれしばらくは存在が持つようになりました。


※神社の社務所内の一室のテーブルの上に「待たれたし」とだけ書かれたメモが残っています。






 【7】


「美波は私と一緒に戻らなくてもいいの?」
「うん、水前寺のことはほっとけないし、それに瑞希だってこの近くにいるかもしれないから」
「そっか。じゃあ悠二のこともよろしくね」
「まかせといて。ウチが二人にはバカなことはさせないから」

美波といくつか言葉を交わすと、シャナは夕闇の中へと飛び上がり火の粉を散らして優雅な羽を背中に広げた。
この世のいかなる生物も持たざるその羽で大気を打ち、フレイムヘイズの少女は飛び去ってゆく。
悠二は藍色の空の向こうに光の点となって遠ざかる彼女の姿を名残を惜しむように見送り、
小さなクラクションの音に急かされ、ようやく水前寺が待つ救急車へと戻った。



「なんならこの場合は坂井特派員が一緒に戻ってもよかったのだぞ?」

悠二が助手席につくと水前寺がそんなことを言う。

532 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:49:42.97 ID:PVOmn/ZV
 
533 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:50:12.70 ID:ZhwHpIrR
 支援
534 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:50:27.89 ID:ZVqhvYgY
「いや、いいんだ。贄殿遮那も渡すことができたしね。それに今はできることをしたいんだ」
「なるほど。引き続き浅羽特派員捜索の任についてくれることを部長として感謝しよう。島田特派員にもな」
「とってつけたような言い方。……でも、いいわ。まだしばらくは特派員でいてあげるから」
「なぁにがしばらくだ。部長の許可を得ない退部などこの俺は許さんからな」
「人権を無視して勝手に部員にしておいてよく言うわよ」

夕暮れの四つ角にエンジン音が響き渡り、浅羽直之を追って救急車が再び走り始めた。



「――しかし、トーチとフリアグネとかいう紅世の王の話だが」
「うん、当ては外れたし、思い違いもあったみたいだ」
「だがそいつの行動がただの無意味ではなかったと、坂井特派員は考えているわけだな?」
「そうだね。あの紅世の王が意味のないことをするとは思えないから何かしらの意味はあるはずだよ」

車の運転席と助手席で、またいつかのように二人は考察を開始する。
今回の議題は、『フリアグネがトーチを作った理由』についてだ。
あの紅世の王が《都喰らい》を企てているかもしれないという可能性はヴィルヘルミナからの指摘により否定された。
かといって、トーチを作った理由が皆無だとは考えられない。なので二人は今ある材料を元に思考を始める。

「トーチとしての伊里野クンに残された時間は通例よりもかなり少なかったらしいな」
「そうだね。本来、トーチの役割はフレイムヘイズに対する目くらましみたいなものだから数日以上もつのが普通だよ」
「ならば、そこから2つの可能性が考えられる」
「あえてそうしたのか、もしくはそうせざるを得なかった――だね?」

うむ。と水前寺は満足そうに頷いた。
確かに考えるべきはここからだったようだと悠二は認識しなおす。
シャナとアラストール、そして自分はトーチを見てすぐにフリアグネが策を打ってきたものだと考えたが、
そう考えること自体がまだ早まったことだったのだ。

「あえて消えるまでの時間を短くした場合であるが、
 この場合、トーチの消失に坂井特派員やヴィルヘルミナ女史らが気づけるのかを試したのかもしれんな」
「普段は気づかせない為のトーチを、あえて逆の目的に使ったってことか……」

フレイムヘイズは、トーチの消失を感知して現場に急行しそこから紅世の王を追い始める。
紅世の王は追跡を逃れる為、逃げる時間を稼げるようそれなりの時間をトーチに与えてその場を去る。
それが通常であるが、その時間差を利用すれば逆にトーチが消える瞬間の世界の歪みを囮にすることも可能だ。
存在の力を感知することが難しい今、気兼ねなくトーチを作れる紅世の王側にすれば、それはアドバンテージとなる。

「逆の場合、残り時間の少ないトーチしか作れなかったということになる」
「僕やシャナが遭遇した弱すぎる燐子と同じようにか……」
「だが安心はするなよ坂井クン。形勢不利とみて、あえてそういうふりをしているだけかもしれんのだからな」

確かにフリアグネの立場から見れば、シャナと自分だけならともかくヴィルヘルミナもいるというのは苦境と言えるだろう。
蓄えた宝具を持ち合わせていないのも、彼の王の性質から考えればかなりの痛手のはずだ。
ならば、力の弱い燐子やトーチにしてもそうしかできないのではなく、ただ力を節約しているだけなのかもしれないし、
弱まっているフリをしてこちらの油断を誘っているのかもしれない。

「そして、もうひとつの可能性がある」
「人類最悪だね」

先刻の放送で人類最悪の口から伊里野加奈の名前は読み上げられなかった。
果たして人類最悪は“ほんとうのこと”を知らず記憶が改竄されたのか、知っててあえて呼ばなかったのかは不明だが、
少なくともトーチとして登場人物が消失しても彼は名前を読み上げないということだけは判明したのである。
ならば、このリアクションこそがフリアグネがすぐに消えるトーチを作った理由だったかもしれない。

535 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:50:37.53 ID:PVOmn/ZV
 
536 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:51:02.31 ID:ZhwHpIrR
支援
537 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:51:17.37 ID:ZVqhvYgY
「これらの可能性から何が導き出されるのか、……専門家ではない俺にはわからん。
 だが、何らかの意味があったのだとしたら、
 それ単体では意味をなさないトーチの存在は次のアプローチの為の布石ととらえるべきだろう」
「フリアグネが次に考えること、か……」

水前寺と考察する中、悠二はこれまでの思考の中にある考え方が欠落していたことに気づいた。
相手はあのプライドの高い“狩人”フリアグネなのである。
ならば、この状況において彼の視線や矛先を向ける相手が必ずしもフレイムヘイズや他の人間らだとは限らない。
彼に虜囚の辱めを与えた人類最悪――この事態を作り上げた者にも向かっていて当然だ。

「まぁ、そこらへんのことはヴィルヘルミナ女史と合流してから詰めてゆくのがよかろう。
 あちらはあちらで俺達が戻るまでの間に話を進めているだろうからな」
「そうだね。僕たちも早く浅羽くんを保護して戻らないと」
「まったくタイムイズマネーとは言ったものだ」

考えてみれば、自分達もフリアグネもこの場所で目的とするところは全く変わらないのかもしれない。
ただその立場と取りうる手段が異なるにすぎないのだ。
邪魔者を排除し、事態を解決し、この世界から元の世界へと帰還する。可能ならばこの事件を解決した上で。
フレイムヘイズは紅世の王を排除対象とし、紅世の王はフレイムヘイズを排除の対象とする。差はこれだけしかない。

「(だったら、あえてこの場は共闘することも可能なのか――?)」

もしフリアグネがすでに事態解決の切欠を掴んでいて、その方法が《都喰らい》のように犠牲を必要としないのだったら。
そうであるなら、この事件を解決するまでの間ならフレイムヘイズと紅世の王が手を組むことができるかもしれない。

「(……カルメルさんには虫がよすぎると怒られるかもしれないな)」

一度冷静になったことで、クリアになった頭の中にいくつかの道筋が見えてきた。
そして、悠二が討滅の対象としてではなくフリアグネに興味を持った時、不意にポケットの中の携帯電話が震え始めた。

「……カルメルさんからかな?」

なんとなしに思いながら悠二は携帯電話を取り出し、淡く光るディスプレイを見つめた。
神社の電話番号ならもう暗記している。表示されているのがその番号ならば相手は十中八九ヴィルヘルミナだろう。


だがしかし、番号は神社のものではなかった。






 【8】

538 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:51:19.64 ID:PVOmn/ZV
 
539 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:51:49.94 ID:ZhwHpIrR
 支援
540 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:52:01.35 ID:PVOmn/ZV
 
541 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:52:13.95 ID:ZVqhvYgY
「しかし随分と長く通話していますね」
「そうね。多分このタイミングだし仲間内での報告会を兼ねた作戦会議じゃないかしら」

そうだといいのですが。と言って、師匠はハンドルをゆっくり切って車を誰もいない道へと進めた。
朝倉が放送の後から数分おきにかけている電話番号からの反応は、最初から今までずっと通話中のままだ。
もしかすればただ単に通話中の状態で電話が放置されているのでは、とも思えてくる。
だがもしそうでないのだとしたら、当たり前だが通話して連絡を取り合っている人間が最低二人はいることになる。
そう、つまり……彼女達からすれば最低でも二人の“獲物”が期待できるということになる。

「さっきの放送では御坂美琴、古泉一樹、シズと3人の名前しか呼ばれなかったわけだけど、師匠はこれをどうみる?」
「あなたの報告が正しいのならばその3人は実際に死んだのでしょう」
「もう、疑うふりなんてやめてよ。どうせ師匠も聞いてたんでしょう? それで師匠はどう考えるのって聞いてるの」
「そうですね――」

膠着状態に陥ったのでしょう。と、師匠はそれを簡潔に表した。

「3人のうち、御坂美琴と古泉一樹は我々が仕留めた獲物です。
 となると我々が関与しなかった場所では一人しか死んでいないことになります」
「そうね。私達の視点から見れば、私達を取り巻く環境はほとんど進行していないことになるわ」
「状況が開始してから半日強で、早くも安定した状態に落ち着いてしまったということです」

この場所には59名の人間がおり、それぞれが暗黙の了解として互いに殺しあうことを前提として理解しあっている。
なので人間同士が出会えばそこで殺し合いが発生し、大抵の場合いずれかが死亡する。
これが続き、ゲーム盤となる場所の広さに対して人の数が少なくなれば、結果として遭遇――死亡の数も減少する。

そして、進行が膠着する原因は他にもある。この催しの参加者はゲームの駒でなく人間なのだ。
温泉や警察署で遭遇したように、今現在生き残っている参加者は目的の為に徒党を組んでいる可能性が高い。
おそらく、その傾向は殺人を許容しない“人間らしい”参加者の方が顕著だろう。
つまり、遭遇して殺しあうパターンと同時に、遭遇して殺しあわないパターンもありえたことだ。
殺しあわないパターンであった場合、その2人が1組となれば殺しあった場合と同様に遭遇の機会を減らすことになる。

「結果として、こういうったゲームは参加者が殺し合いに積極的だろうがそうでなかろうが
 それなりに状況が進めば遭遇しあえるユニットの数が減り、膠着状態に陥ってしまうというわけね?」
「そのとおりです……が、それこそあなたには説明する必要のなかったことでしょう?」
「ふふ、師匠ったら。互いの認識を確認しあうのに会話はとても重要よ?」
「……なんにせよ、現状としては突発的な遭遇戦が起こりづらい状況となっているというのが私の見解です」

朝倉は満足そうにうんうんと頷いた。逆に師匠の方は何を今更という顔である。だからこそ彼女達は動いているのだから。

「つまり、この電話を使用している彼らは、それぞれに複数人で固まっている可能性も充分にありえるということよね」
「そうですね。この状況で電話口のそれぞれにいる人間が各自一人ずつというのは少し考えづらい。
 ある程度の信頼があるのならば二人で行動した方が安全ですし――」
「――もしその安全を確保しているのだとすれば、それは互いに複数人で行動してるって計算できる……ということよね」
「取らぬ狸の皮算用にすぎませんが」
「勿論、計算できない要因が多いのは私も承知の上よ。
 でも、師匠もその“期待値”に賭けた。だから運転もしてくれているんでしょ?」
「それもありますが、私が危険視しているのは時間切れですよ。膠着状態が続いたまま3日を終えるのは御免ですから」

言葉通り、師匠が一番危険視しているのは時間切れであった。
この手のゲームにおいて一番恐ろしいことは、ゲームが進まないターンを安易に見逃して
最終盤において決着に必要な手数が足りなくなってしまう事態であると、彼女は豊富な経験から知っている。
この人類最悪の用意した世界の場合、時間とともに舞台は狭くなるので兎の様に逃げ続ける獲物を追う手間は省けるが、
だからといって最終盤に人間を残しすぎると計算して生き残るのが難しい大混戦が発生しかねない。

542 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:52:58.46 ID:ZVqhvYgY
「師匠は楽をしようとは考えないのねぇ」
「怠けていい時間など人生の中にはありませんよ」
「生まれた時から時間制限付きってわけ? ふぅん、有機生命体はそんな風にも考えるのね」
「“今日終わらせられることは今日終わらせろ”という言葉を守っているだけです」
「確かに。実は私も待つのは苦手なの」
「では、そろそろもう一度電話をかけてみてはどうですか?」

了解。と、朝倉は携帯電話を開いて通話キーを押した。ゆっくりと電話を耳に当て、待つこと数秒――……。

「どうやらもう向こうの長電話は終わったようね」
「交渉は任せますが油断はしないように。とりあえず今はその相手さえ確保できれば十分です」
「残りの仲間の居場所は拷問でもして聞き出すわけ?」
「それで聞きだせるのならそうしますし、相手の電話番号が知れれば人質なりなんなりに使えばいいのです」
「本当、師匠ったら物騒なんだから」
「海老で鯛を釣るという方法ですよ。
 小さな獲物を釣り上げ、次の獲物の餌にすることで最終的には一番大きな獲物を釣り上げる算段です」
「はいはい。じゃあ、最初の獲物は私に任せて――と、もしもし、聞こえている?」






 【9】


『――もしもし、聞こえている?』

電話の向こうから聞こえてきたのはまたしても女の声だった。だがしかし以前に聞いたものとは声色が全く違う。
声色そのものが不幸の色を帯びていたあの不吉な声ではなく、それよりも随分と穏やかな感じのものだった。

「はい、聞こえています」

また不吉なことを聞かされるのではと身構えていただけに意表を突かれたが、
悠二はなんとか平静を保って返答することに成功した。そして、電話の相手に対しあなたは誰なのかと尋ねてみる。

『私は朝倉涼子よ。よろしくね』
「朝倉、涼子……」
『ん? もしかして誰かから私の名前を聞いていたのかしら? 涼宮さん? それともキョンくんかな?』
「キョンから聞いてますよ」

名前を聞き、悠二はこの通話が非常に重要であり、また油断すべきものではないことを認識した。
朝倉涼子とはキョンが頼りにしていた万能の宇宙人のひとりであり、かつては彼を殺そうともした人物(?)である。
味方にすることができればかなり頼もしいが、しかしそこには大きな危険が潜んでいるかもしれない。

『そうだったんだ。じゃあキョンくんはそこにいるのかしら?』
「いえ、今は別行動中ですよ」
『そう。彼の声が聞けないのは残念だわ。それであなたは誰なのかしら?』
「え? ……ああ。坂井悠二です。
 えーと、それじゃあ朝倉さんはどうしてこの電話の番号を知ったんですか?」
『ふふ、そうなの。私もこの電話番号にかけて誰が出てくるのか知らなかったのよ。
 知ってたのは番号だけ。藤乃さんてわかるかな? 浅上藤乃さん。一度、あなたに電話したはずなんだけど』
「前に電話をかけてきたのが、その藤乃さんなんですか?」

どうやら以前に不吉な電話をかけてきた女性は浅上藤乃と言うらしい。
悠二はこれまでに得た情報の中を探り、今のところ全く誰とも縁のない名前であったことを確認した。
543 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:53:05.30 ID:ZhwHpIrR
支援
544 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:53:34.74 ID:PVOmn/ZV
 
545 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:54:10.31 ID:ZVqhvYgY
『ええ、こちらのほうで彼女を“保護”してね』
「保護?」
『そうよ。彼女ったら変なことを言ってなかった? 友達を殺したとかなんとか』
「ええ、聞かされました」
『じゃあ安心して頂戴。それは彼女の妄言で全部嘘なのよ』

少しだけ気持ちが楽になった気がした。
あれが嘘なのだとすれば、吉田さんかもしくは関係ない誰かがその彼女に殺されたのではないとなるのだから。
とはいえ、それも含めて全部嘘なのかもしれない。なので悠二は慎重に通話を続ける。

『彼女ったらどうやら最初から心身ともに失調をきたしているらしくてね、だから私達で保護したの』
「そうなんですか。…………私達?」
『ええ、私と師匠と藤乃さん。私達はこの3人で行動しているの。この世界から速やかに元いた世界へと戻れるようにね』

師匠とは名簿にそのまま師匠とだけ書かれていた人物だろうか。
悠二はもう一度記憶の中を探るが、その人物もまだ誰とも縁のない正体が不明なままの人物であった。

「元の世界に戻る、ですか?」
『ええ、そうだけど。あなたたちは違うの? キョンくんならそう考えると思うのだけど』
「いえ、こちらも同じですよ。僕たちも元の世界に戻りたい。できれば、全員でです」
『ならよかったわ。私達協力しあえるわよね。そっちは何人なのかしら?』

電話から聞こえてくる朝倉の声が弾む。
事前に聞いてなければ彼女が宇宙人だとは気づけなかったろう。
もっとも今でも彼女が宇宙人だとは感じられないが、ただの前向きで明るい女の子としか認識できなかったはずだ。
しかし、フレイムヘイズには変人が多いからという訳ではないが、
逆にこの人当たりのよさが油断ならないのではと、悠二は僅かに緊張の度合いを高めた。

「こちらも今は3人ですよ」
『それはキョンくんも含めて? 今はってことはもう他にも仲間がいっぱいいるのかしら』

物怖じがないのか、それともこちらの隙を見逃さないのか。それが宇宙人だからなのか、声色からは全くわからない。

「……ええ、そうですね。何人かいます」
『んー、すこし歯切れが悪い感じかなぁ。もしかしてキョンくんから何か言われて警戒している?』
「正直に言うと、その通りです。あなたは物事を解決するのに殺人を厭わない、と」
『そうね、それは否定しないわ。
 キョンくんにも言ったけど、命というものに対して私はまだあなたたち有機生命体と同じ価値観を持っていないの』

それはぞっとするような言葉であり、また覚えのある感覚だった。

『でも私がキョンくんを殺そうとした理由まで聞いていれば解るのだと思うけど、
 今現在の私には彼やその他の人物を殺す理由が存在しないわ』
「そうですね。キョンも同じように言ってました。だから、あなたを探して協力を要請しようとも」
『――でしょう♪ だったら私達は協力しあえるわよね』

朝倉の声にまた喜色が浮かぶ。話としては今のところ何もおかしくはない。キョンの言ってたことにも誤りはなさそうだった。
なのに、悠二の心にはまだなにかすっきりしない部分があった。まとまらない漠然とした不安のようなものが。
546 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:54:35.92 ID:PVOmn/ZV
 
547 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:54:43.23 ID:ZhwHpIrR
 支援
548 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:55:02.35 ID:ZVqhvYgY
『それで彼はどこまで私のことを話したのかしら?』
「あなたと長門有希という人は宇宙人の作ったロボットみたいなもので、ほぼ万能だとか」
『うんうん』
「それで、あなた達の目的は涼宮ハルヒの保護と観察だと」
『キョンくんったらそんなことまで……、でも話が早いわ。
 聞いてのとおり、私達の……と言っても長門さんは死んじゃったので私ひとりだけど、目的は涼宮ハルヒの保護と観察よ。
 ここは彼女の観察に適した環境とは言えないから、今の目的は彼女を元に世界に戻すことね。
 勿論、キョンくんにも生きて帰ってもらいたいわ。こんなところで死なれちゃったら、それはそれで困るもの』
「それがあなたの優先順位ですか?」
『ええ、そうね。あなた達もこの事態の解決と元の世界への帰還を目指しているなら私達が対立する必要はないはずよ。
 もしここから出られる手段が宇宙船のようなものだとして、その定員が2人だけなら
 私は涼宮ハルヒとキョンくんを生き残らせる為に仲間やあなた達に危害を加えることになると思う。
 けど、定員が10名ならその必要性は下がると思うし、全員が帰れるなら全く必要ないことになるわよね。
 そういう方法を一緒に模索してみないかしら?』
「ええ、そうできるなら僕達もあなた達にとっても一番だと思います」

実に冷静で、冷静すぎる。口調こそ普通の女の子だが、悠二の印象としては朝倉はヴィルヘルミナに近いと思われた。
交渉するにあたり、情に訴えず、ある程度の手札を曝し、あくまで理性的な取引を求める。
こちらが仕事をする限り、むこうも仕事をしてくれる。契約するのならば理想とも言える相手だ。

「……質問しますが、朝倉さんの方では何か事件解決の為の取っ掛かりのようなものは見つけているんですか?」

キョンは長門有希が生きていればどうにでもできると言っていた。そして朝倉も同等の力を有していると。

『うーん、痛いとこを突かれちゃったかな。正直に話すとこちら側の収穫は今のところゼロよ』
「キョンはあなた達ならなんとかできるかもと言ってましたが」
『まず、私達そのものは外宇宙に存在する情報統合思念体が辺境惑星に用意した端末でしかないの。
 そして普段使用している力のほとんどは上位体からダウンロードして初めて使用できるものばかりなのよ』
「つまり、情報統合思念体というものにアクセスできないと普通の人間と変わらないってことですか?」
『普通の人間よりかは頑丈だし、能力も持っているわ。でも、確かにこの事態の中ではそんなに変わらないかもね。
 あなた達にわかりやすく言うと、ネットワークに繋がってないPCのようなものよ。
 プリセットされた能力は所持しているけど、それ以上はまず統合思念体との接続を回復させる必要があるの』

なるほど。と悠二は頷いた。これで事態が迅速に終息しない理由や、長門有希が死亡した理由は判明したことになる。

『期待を裏切ってしまったかしら? でも人間はこういう時、“三人寄れば文殊の知恵”って言うでしょう?
 上手につきあえるなら、協力して互いが損をするってことはないはずよ。どうかしら?』
「その通りだと思います。できるなら僕も朝倉さんとは会って詳しいことを聞いてみたいですから」
『じゃあ――』
「けど、僕の一存じゃ決められません。少しだけこのまま待ってもらっていいですか?」
『うん、いいわよ。
 ただ、こっちには“時は金なり”ってすごく怒る人がいるの。だからできるだけ早くしてね♪』


 ■


549 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:55:18.25 ID:PVOmn/ZV
 
550 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:55:44.32 ID:ZhwHpIrR
支援
551 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:56:00.39 ID:PVOmn/ZV
 
552 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:56:03.86 ID:ZVqhvYgY
「ふう……」

携帯電話を耳から離し、いつの間にかに前かがみになっていた姿勢を戻すと悠二は小さく息を吐いた。

「どうやら交渉を受けているようだな坂井クン。相手と相手が要求している条件を述べたまへ」
「なんだか難しい顔でよくわかんない言葉使ってたけど、もしかして脅されてるの?」

すぐさまに隣の水前寺が口を、そして気づけば座席の間から顔を出してこちらを窺っていた。

「相手はキョンが言ってた朝倉涼子って女の子だよ。実は宇宙人に作られたロボットらしいんだけどね」
「実に胡散臭くて俺好みだな。それで用件とは?」
「むこうは、彼女と師匠と朝上藤乃の3人でいるらしいんだけど、脱出の為に協力しないかって」
「なんだそういうことだったんだ。ウチは女の子が増えるのは歓迎するわよ」

美波はほっとしたと顔を緩め、その向こうで水前寺は正面を見たままなるほどと頷いた。
しかしこのなるほどは納得したという意味ではなく、そこまでは理解したという意味のなるほどだ。

「それで、相手は坂井特派員が即座に決断できないような無理難題をふっかけてきているのかね?
 例えば物資を全てよこせだの、命令権はこちらによこせだのとかかね?」
「いや、それはないよ。彼女達は偶然にこの電話番号を知って、ただ仲間になりましょうって言ってるだけさ」
「それに何か問題でもあるの? もしかしてウチらの中の誰かの仇とか……?」
「それもないかな。僕が浅上さんに変な電話をかけられたけど、他の人は今回がはじめての接触のはずだよ」

だったらなぜそんな煮え切らない態度なのか。と、水前寺と美波が眉根を寄せた。
無論、こんな状況だから誰かと接触するのならばそれは慎重ではなくてならないだろう。
しかしこれまでの悠二の行動は慎重さを持ち合わせながらも、いつも大胆で素早いものであった。
それが何故、今回に限ってこんなにも躊躇してしまうのか。それは悠二自身にも明確な理由は見当たらない。

「どこかに引っかかりを覚えるというのなら、それはまだ見落としている問題があるということだろう」
「そうかな? キノのことで少しナーバスになっているだけかもしれない」
「……キノのこと?」
「島田特派員。現在君のクラスの者に対してはそれはトップシークレットとなっている。
 皆と合流すれば改めて説明するので今は余計な詮索はやめたまへ」
「説明が面倒なら面倒って言いなさいよ。……クラスが低いってのはちょっとヘコむわ」

心の中で美波に頭を下げつつ、悠二は病院で見たあの光景をもう一度思い浮かべた。
この場所には善人のふりをして近づき、不意をついて危害を加えるものがいる。
もし、朝倉や彼女の仲間の中にそんな人物がいたとしたら――それが、不安の元なのだろうか?

「(それとも、僕は朝上藤乃と接触するのを嫌がっているのだろうか?)」

この事態が始まって早々にかかってきた電話の内容と、その後の想像により彼女の印象はかなりおどろおどろしい。
だから無意識に恐怖を抱き、それを遠ざけたい心理が働いているのかもと悠二は考える。
しかし考えても曖昧な不安の理由はわからなかった。曖昧な不安はそのままの形で心の中に残っている。



「接触に慎重になりたいのならば時間を作ればよい」

水前寺の声に悠二は顔を上げた。
553 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:56:37.50 ID:ZhwHpIrR
 支援
554 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:56:48.65 ID:ZVqhvYgY
「簡単な話だ。待たせておけばいいのだよむこう側をな。
 我々は目下浅羽特派員を捜索中だということも忘れたかね?
 ならば相手方にはどこか適当なところで待っててもらい、こちらが後から接触する形にすればよかろう。
 その時坂井特派員がひとりで接触すれば、いざという時、戦えない我々が足手まといになることもないだろうしな」

ああ、と悠二は納得した。そう。むこうからもち掛けられた提案ならば多少こちら側の事情も鑑みてもらえるはずである。
それに元々、どちらかが場所を指定しなければ合流することはできないのだ。

「ありがとう水前寺。そうすることにするよ」

言って、悠二はもう一度携帯電話を耳に当てた。
なんなら接触する際にシャナを呼び戻してもいい。こういった事情ならヴィルヘルミナも賛成してくれるだろう。
そしてシャナとふたりであれば、どんな問題であろうと乗り越えられるはずなのだ。


 ■


「もしもし」
『結論はでたかしら?』
「うん、でたよ。悪いけど、今こちらは人を追っている最中なんだ。だからすぐに合流ってのはできない。
 だから時間を置いて、どこかで待ち合わせる形になるけどいいかな?」
『別にかまわないけど……その必要はもうないかもしれないわ?』
「え?」
『確認したいんだけど、あなた達は自動車で移動してるわよね。私、耳がいいから電話越しでもわかるのよ』

悠二は顔をあげてゆっくりと流れてゆく周りの景色を見渡した。
こちらが車で移動していることを知って、もう待ち合わせの必要がない。では彼女はどこから電話しているのか?

『実はこっちも車の中から電話してたんだけど気づいた?』

サイドミラーの中に見える後方の風景。その中に速度を上げてこちらに接近する車両の姿があった。

『そっちは救急車でしょ? こっちはパトカーなの。こういうのって奇遇って言うのかしら。どう思う?』

白と黒のツートンカラーに赤色のランプを備えた特徴的なデザインはまさしく日本のパトカーそのものだ。


『はじめまして。よろしくね♪』


サイドミラーの中で朝倉涼子が綺麗な笑顔を浮かべ手の平をひらひらと振っていた。






【E-4/市街地(映画館より北)/一日目・晩】

555 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:57:02.64 ID:PVOmn/ZV
 
556 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:57:25.47 ID:ZhwHpIrR
支援
557 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:57:43.97 ID:PVOmn/ZV
 
558 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:57:45.36 ID:ZVqhvYgY
【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:メケスト@灼眼のシャナ、アズュール@灼眼のシャナ、湊啓太の携帯電話@空の境界(電池残量75%)
[道具]:デイパック、支給品一式、リシャッフル@灼眼のシャナ、ママチャリ@現地調達
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。
 0:どうする?
 1:接触してきた朝倉涼子達に対応する。
 2:浅羽直之を探して保護し、ヴィルヘルミナらと合流する。
 3:事態を打開する為の情報を探す。
 ├「朝倉涼子」「人類最悪」の二人を探す。
 ├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
 ├”少佐”の真意について考える。
 └”死線の寝室”について情報を集める。またその為に《死線の蒼》と《欠陥製品》を探す。
 4:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。

[備考]
 清秋祭〜クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻〜14巻の間)。
 会場全域に“紅世の王”にも似た強大な“存在の力”の気配を感じています。


【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康だがフルボッコ、髪の毛ぐしゃぐしゃ
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!、救急車@現地調達(運転中)
[道具]:デイパック、支給品一式、「悪いことは出来ない国」の眼鏡@キノの旅、
     ママチャリ@現地調達、テレホンカード@現地調達、
[思考・状況]
 基本:この状況から生還し、情報を新聞部に持ち帰る。
 0:む?
 1:接触してきた朝倉涼子達に対応する。
 2:浅羽直之を探して保護し、ヴィルヘルミナらと合流する。
 3:事態を打開する為の情報を探す。
 ├「朝倉涼子」「人類最悪」の二人を探す。
 ├街中などに何か仕掛けがないか気をつける。
 ├”少佐”の真意について考える。
 └”死線の寝室”について情報を集める。またその為に《死線の蒼》と《欠陥製品》を探す。
 4:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
[備考]
 伊里野加奈に関連する全てからの忘却を免れました。「ほんとうのこと」を理解した結果です。


【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康だがフルボッコ、鼻に擦り傷(絆創膏)
[装備]:第四上級学校のジャージ@リリアとトレイズ、ヴィルヘルミナのリボン@現地調達
[道具]:デイパック、支給品一式、
      フラッシュグレネード@現実、文月学園の制服@バカとテストと召喚獣(消火剤で汚れている)
[思考・状況]
 基本:みんなと協力して生き残る。
 0:え?
 1:状況を見守る。
 2:人を探す。
 ├親友の「姫路瑞希」をがんばって探す。
 ├「川嶋亜美」を探しだし、高須竜児の最期の様子を伝え、感謝と謝罪をする。
 └竜児の言葉を信じ、全員を救えるかもしれない「涼宮ハルヒ」を探す。
[備考]
 シャナからトーチについての説明を受けて、「忘れる」ということに不安を持っています。
 伊里野加奈に関連する全てからの忘却を免れました。「ほんとうのこと」を理解した結果です。
559 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:58:25.64 ID:PVOmn/ZV
 
560 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:58:33.30 ID:ZVqhvYgY
 【10】


「どうやら電話している間に偶然見つけることになっちゃったみたいだけど、こういうのってどういうのかしら?」
「さぁ、ただの幸運ではないですか」
「彼らにとっては?」
「これからしだいです」

師匠はパトカーを救急車の後方15メートルほどの距離まで近づけると、アクセルを弱めスピードを落とした。

「それで、私達はどうするの師匠?」
「交渉がうまくいっているのならこのまま事を推移させていいでしょう。時に情報は金よりも価値があります」
「了解。上手くやってみせるわ」
「警察署から逃げ出したキョンという人物から情報が伝わっているのだとすれば、網にかけられているのは我々です」
「なので決して油断はしないように――でしょ?」

姿を現したことに対してまだ電話の向こうからリアクションはない。向こうとしても対応を決めかねているらしい。
携帯電話で連絡を取り合っている以上、警察署での朝倉達の行動を見たキョンの情報が伝わっている可能性は十分ある。
とするならば、先程の待ち合わせという提案は罠だったのかもしれない。

「言っておきますが、いざという時はあなたも後ろで寝ている子も見捨てますからね」
「じゃあ私が師匠を見捨てても恨まないでよ」
「恨みはしますよ。理屈と感情は別の問題です」
「ほんと、有機生命体の思考って理不尽だわぁ……」



朝倉は携帯電話を持ちながら。師匠はハンドルを握りながら。そして何も事情を把握してない藤乃は眠りながら。
次の相手の一手を待つ。






【E-4/市街地(映画館より北)/一日目・晩】

【師匠@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:FN P90(35/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x17)@現実
      両儀式のナイフ@空の境界、ガソリン入りペットボトルx3、パトカー@現地調達(運転中)
[道具]:デイパック、基本支給品、医療品、パトカーx3(-燃料x1)@現地調達
      金の延棒x5本@現実、千両箱x5@現地調達、掛け軸@現地調達
[思考・状況]
 基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。
 1:目の前の集団と接触。仲間の情報を引き出した後、始末か利用かする。
 2:朝倉涼子を利用する。
 3:浅上藤乃を同行させることを一応承認。ただし、必要なら処分も考える。よりよい武器が手に入ったら殺す?

561 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:59:17.20 ID:ZVqhvYgY
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:疲労(中)、長門有希の情報を消化中
[装備]:なし
[道具]:デイパック×4、基本支給品×4(−水×1)、軍用サイドカー@現実
      シズの刀@キノの旅、蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、人別帖@甲賀忍法帖、フライパン@現実、
      ウエディングドレス@灼眼のシャナ、アキちゃんの隠し撮り写真@バカとテストと召喚獣、金の延棒x5本@現実
[思考・状況]
 基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する(?)。
 1:坂井悠二と通話を継続し、直接接触できるように計らう。
 2:長門有希の中にあった謎を解明する。
 3:師匠を利用する。
 └師匠に渡すSOS料に見合った何かを探す。
 4:浅上藤乃を利用する。表向きは湊啓太の捜索に協力するが、利用価値がある内は見つからないほうが好ましい。
[備考]
 登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。
 銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。
 長門有希(消失)の情報に触れたため混乱しています。また、その情報の中に人類最悪の姿があったのを確認しています。
 長門有希(消失)の保有していた情報から、ゲームに参加している60人の本名を引き出しました。


【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:無痛症状態、腹部の痛み消失、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
 基本:湊啓太への復讐を。
 0:……むにゃむにゃ。
 1:電話があればまた電話したい。
 2:朝倉涼子と師匠の二人に協力し、湊啓太への復讐を果たす。
 3:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。
 4:後のことは復讐を終えたそのときに。
[備考]
 登場時期は 「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。(最後の対決のほぼ2日前)
 腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。朝倉涼子の見立てでは、3日間は持ちません。
 「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。
 湊啓太がこの会場内にいると確信しました。
 そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。
 警察署内で会場の地図を確認しました。ある程度の施設の配置を知りました。


 ■


【D-4/上空/一日目・晩】

【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ、メリヒムのサーベル@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品x1-2、コンビニで入手したお菓子やメロンパン、
[思考・状況]
 基本:悠二やヴィルヘルミナと協力してこの事件を解決する。
 1:まずは神社に戻りヴィルヘルミナと合流する。
 2:その後、一緒に天文台へと移動し、今後の対策を練ってからそれに沿って行動する。
 3:百貨店にいると思われるフリアグネはいつか必ず討滅する。
562 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 00:59:24.64 ID:PVOmn/ZV
 
563 名前: CROSS†POINT――(交語点)  ◇EchanS1zhg 代理投下 [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 01:00:05.40 ID:ZVqhvYgY
702 : ◆EchanS1zhg:2011/03/20(日) 21:38:53 ID:0SJ8MdD20
以上で投下を終了します。

代理投下を終了します。
支援していただきありがとうございました。
564 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/23(水) 01:42:18.45 ID:gPlOsou0
投下乙
読み応え有る交渉でした
そして時間を置いて……と思っていたら即接触かw
これからどうなるどうする

誤字ですが、浅上が朝上になっている箇所が二つありました
565 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/03/27(日) 00:28:38.77 ID:gaFsbHok
今更ながらになってしまいましたが投下GJ!
相変わらずいろいろと考えながら進んでいかなければならない状況で……朝倉たちがー!wwww
現状では互いに情報を欲している同士のチームだが、これは一触即発……血を見る可能性も十分あるでぇ!
そして美波は、朝倉が姫路さんに嫌がらせした張本人だと気づくことが出来るのか!wwwww
頭がいいやつら大集合のこのパート、またまた続きが気になる……!
566 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/22(金) 12:39:21.91 ID:cTWIAH1s
……皆、無事か?
567 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/22(金) 18:14:09.70 ID:oYxbgSHy
ここにいるぞ!
…書き手じゃなくてごめん
568 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/22(金) 23:46:37.70 ID:kru2gR/Q
無事だぞ!
……書き手として作品残してるけど、最近全然書けてなくてごめん
地震とか原子力とかの関係じゃないんだが
569 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/23(土) 01:29:54.87 ID:wFXigTiK
地震でないとするならば雷、火事、おやじのどれかか・・・
570 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/23(土) 02:26:14.08 ID:EDdN/1Xj
正義崩壊の序曲!
571 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/24(日) 02:54:43.69 ID:CsKOHFk9
ゲ、ゲェーッ!
お、お前は…
572 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/04/25(月) 10:17:42.10 ID:wfhyD8a1
さ、佐藤裕也!
573 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/05/08(日) 10:14:06.63 ID:EttWXVrQ
保守
574 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/05/23(月) 21:55:06.72 ID:DKkZN0j+
おわこん
575 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/01(水) 18:10:39.55 ID:aRLyK5RO
本家の方がしたらばで投下中ですね
まさか再開するとは…
576 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/02(木) 02:41:36.57 ID:SsOoY5Cg
本家言うな
漫画と新漫画くらい無関係だろ
577 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/15(水) 07:50:04.25 ID:tsEB2NWJ
第一次と第二次のスパロワくらい違う、の間違いでは?
新漫画が始まったのは、漫画が終わってからなのだし

そろそろ予約来ないかな・・・・
578 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/16(木) 02:51:42.43 ID:BnwkAYSs
たしかにそろそろ予約来て欲しいね
いつまでも待つ気ではいるけど不安になってくるのは確かだし

面白いssが多いからここは気に入ってるんだが、
書き手スキルが無いと、感想や支援動画くらいしか出来ることないんだよなあ…
579 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/19(日) 13:22:11.18 ID:45hv224B
書き手スキルはあるけどここは見てるだけの人ってどのくらいいるのかな
580 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/06/21(火) 21:04:02.09 ID:7/LkJ67R
なにその遠回しなクレクレ宣言
ウザいわks
581 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/07/20(水) 14:03:38.14 ID:TsATRMVv
ho
582 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/07/21(木) 08:24:15.09 ID:EtJ/UVwd
そろそろ夏休みだし、予約来てほしい…
583 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/07/23(土) 17:51:47.19 ID:47VwWGGn
最後の投下からもう四カ月か……
584 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/09(火) 02:23:44.22 ID:aNn+t9oo
予約きたぞー!
585 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/09(火) 06:16:43.89 ID:pBrxWo7J
おお、あの三人か…wktk
586 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/09(火) 12:57:53.33 ID:R9f1f8aT
キター!!!!!!
587 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/09(火) 20:44:16.38 ID:6gEXh9R/
ハハ、そんな餌に釣らr…キター!
588 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:31:24.88 ID:1ewVYDoV





――――有能な者は行動するが、無能な者は講釈ばかりする。










◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






589 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:32:23.76 ID:1ewVYDoV
「……ふぅん。なんだ、零時迷子ってそんなモノだったのか」
「そう、秘宝中の秘宝さ。……ああ、欲しくてもあげないよ? あれは僕のものだからね」
「別に興味ない。勝手にしろ」
「つれないねぇ、和服は」

甘く踊るような抑揚をもった男の声と、逆に心底冷め切った女の声が西日の射す室内に響いている。
声の主は、『王』であるフリアグネと『和服』の式。
偽りの同盟を組む彼らのやり取りを聞きながら『少佐』である僕――トラヴァスは考えをまとめていた。
目的の大きさに反してとり得る手段は極めて少なく、そして非情にデリケートだ。
例えるなら時限爆弾の解体だろうか。
僕は慎重に言葉を選び『王』に質問をする。

「では、その『零時迷子』なるものがミステス――坂井悠二の中にあると考えて間違いないのですね?」
「間違いないと思うよ。そのトーチの現状と和服の証言を信じるならばね」

“トーチ”と“ミステス”。
今と、その前の王との会話によってもたらされた新しい知識だ。
これにより僕が見た白い髪の少女――伊里野加奈。彼女が生きていた理由が判明した。
いや、正確に言えば“生きているように見えていた理由”か。
僕が見たアレはいなくなってしまった彼女自身の代替物でしかないということらしい。
なので、もう“彼女”と呼ぶのも正確ではない。フリアグネはアレをただの“トーチ”でしかないと言った。

彼女から“トーチ”を作ったことに対してフリアグネは王の義務を思い出したからと言った。
しかし僕が考えるにそれは義務というよりかは生理的欲求というものだ。
紅世の王というのは人間の――それと、それ以外のあらゆるものが持つ“存在の力”を糧に生きているらしい。
簡単に言えば、彼らは人を喰って生きている。
人を喰わなければ生きてゆけない。人間が他の生命を食べて生きているように。

彼らが人を喰えばそこに死体は残らない。しかし、存在の力が消えうせた見えない空白が生まれる。
紅世の王に対する者等は、この空白――歪みというものを目印に追ってくるのだそうだ。
そこで生み出されたのが、喰った人間と瓜二つの偽物――“トーチ”を残すという方法。
穴の開いた壁に壁の柄を描いた布を貼り付けて誤魔化すような一時しのぎだが、実に有効なのだという。

ともあれ、そういった彼の食事の過程、または王と追跡者の対立の狭間で彼女はいなくなりトーチが生まれた。
トーチの行く先は知らない。元となった人物と同じように振舞うらしいが、すぐに消えてしまうらしい。
消えてしまうと、彼女がいた痕跡と記憶も丸ごと世界から失われるのだそうだ。
それが――存在の消失ということなのだとか。実に空恐ろしい。
もっとも、この仕組みを知っている者に対しこれは働かず記憶は保持されるらしい。
つまり、僕はフリアグネからこのことを聞かされたから伊里野加奈のトーチが消失しても彼女を忘れはしない。
もしこの先、僕の親しい人が紅世の王に喰われ消失したとしても、その事実を認識し続け忘れることもできないだろう。

…………そして、その“トーチ”の亜種、この場合は異種と言ったほうがいいか。“ミステス”というものがあるらしい。
件の坂井悠二という少年がこれに該当するという話だ。
“ミステス”も“トーチ”ということには変わりない。それが生まれ消え去る過程もなんら変わりない。
一点だけ特別なのは、“トーチ”として生まれた瞬間に“宝具”をその身に宿すということ。
“宝具”とは僕がフリアグネに献上したあの『吸血鬼(ブルートザオガー)』という名の剣のようなものだ。
どうしてそんなことが起こりえるのか、原理は詳しく聞けなかったが、本当に極稀にそういうことがあるらしい。
そして、誰もがそれに気づかずトーチがそのまま消失すると、宿っていた“宝具”は別のトーチへと転移するらしい。
そのことから、紅世の住人からは『旅する宝の蔵』などとも呼ばれているそうだ。

坂井悠二もまた偶然にも、幸か不幸か“宝具”を宿し、ただの“トーチ”ではない“ミステス”になったのだろう。
そのこと自体に対して僕の思うところはない。しかし彼の宿した“零時迷子”に対しては別だ。
590 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:32:37.52 ID:WCxOm2vv
 
591 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:33:04.62 ID:1ewVYDoV
「つまり、坂井悠二は零時迷子の効力によって消失を免れているのですね」
「あのトーチがずっと消えずにいるのだとしたらそうとしか考えられないからね」

“トーチ”というものは例え“ミステス”であろうと、残された存在の力をじょじょに減らしほどなく消えてしまう。
しかし、唯一(?)の例外が坂井悠二が宿していると目される『零時迷子』という“宝具”であるらしい。
その効果は名前の通り、毎夜零時に所持している者の存在の力を回復されるものだという。
なので、本来ならすぐに消えてしまう“トーチ”も『零時迷子』があればその効果によりいつまでも存在しえる。

つまり……、“トーチ”が人間と見かけ上変わらないのならば、彼は人間として生き続けているのとなんら変わりない。
実際、僕は彼と直接会っているわけだが、彼が人間ではないなどとは全く思わなかった。
ある意味、彼は死を超越しているのだと言えるだろう。無論、それは『零時迷子』あってのことだが……。
人として死に“ミステス”として存在し、そして蒐集家である紅世の王に狙われる。
あまりにも数奇な運命だ。
羨むべきなのか、それとも同情すべきなのか、どちらとも判断できないくらいに。

「――そう。そして、だからこそ『零時迷子』は秘宝中の秘宝なのさ」
「それはつまり、強力だからというわけですか?」

悪いが彼の境遇に思いを馳せるのは後だ。
重要なのはフリアグネが『零時迷子』を欲していること。そしてそれが渡るとどうなってしまうのかだ。
なので僕は質問してみた。
しかし、彼は優雅に指を立てるとそれは違うと否定した。

「……実はそうでもないんだ。あれは所詮その持ち主の存在の力を一日に一回だけ元の値へと戻すにすぎない。
 有用か強力無比かで言うならば大したことはないモノでしかないね。無論、使い道がないわけではないけども」
「では、何故それほどまでに関心を?」

僕の質問にフリアグネは額に手を当て、まるで舞台の上にいる役者のような動きで天井を仰いだ。

「何故と問うかね? 君が。私は『狩人』だよ?
 そして『零時迷子』は発揮する力はともかくとして時の事象に干渉する極めて珍しいものだ。
 その名前も、価値も、知れ渡っている――とすれば見逃す手はないだろう?」

これこそ千載一遇なのだよ――と、フリアグネは大げさに手を広げギラギラと輝く目で僕を見つめた。
喜色いっぱいの表情に気圧され、背筋に寒気が走る。

「ふふっ。早く欲しいなぁ……、僕のコレクションに加われば『零時迷子』もなお一段と輝くというのにっ!」

どうやら、『零時迷子』というものは価値はあれど特に脅威になるような宝具ではないらしい。
とはいえ彼がこれを手に入れようとすれば、その時坂井悠二は間違いなく消失させられているだろう。
できる限り、それは避けたい――が、それはなかなかに難しそうだ。
彼が武器や道具としてそれを欲しているのならば代わりを用意することも状況を変えることもできるだろう。
しかし、彼は蒐集家として、単純な性分としてそれを欲し手に入れようとしている。
まるで我侭な幼児のように一切の聞き分けもなく、ただ貪欲に。
だとすれば、興味の対象を移す方法などはないに等しい。
蒐集家というものはそういう厄介なものなのだ。手に入れるまでは諦めない……。

「さて、説明はこんなものでいいかな? じゃあもう一度考える時間を作ろうか。放送を聞き終わったらまた集まろう」

フリアグネはご機嫌な様子で手拍子を打つと、ふわふわとした軽い足取りで通路の奥へと歩み去っていく。
律儀に最後まで話を聞いていた式ももたれていた柱から背を離すと何も言わずにこの場を去った。
さて、考えなくてはいけないのは今後の方針だ。
見通しの悪さに心の中で大きな溜息をひとつつき、考えをまとめるために僕もこの場を離れることにした。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
592 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:34:26.03 ID:1ewVYDoV






さて、まずはいくつか推測できることをまとめておこうか。
“本当のこと”を知ったおかげで、新しく思いつくこともあるからね。

まず、確実に言えるだろうことだが、あの魔術師――ステイル=マグヌスだったか。
間違いなく彼は今現在トーチとなっていることだろう。
フリアグネは伊里野加奈を殺害した際に、初めて思い出したと言ったが、それは考えられない。
あの王が一番最初の魔術師の捕食で、それを思い出さないわけが無い。
どこかふざけた様子の裏に隠されている、冷酷で計算高い本性。
そういったものを持つ彼が、ましてや紅世の王として常時の振る舞いであるトーチを作ることを忘れるわけがない。
故に、王自身がそれを言わなかったとしてもあの魔術師がトーチとされたのは確実なことだ。
対立者であるフレイムヘイズとやらが未だ迫っていないのもその証拠と言える。
人を喰うという世界の歪みが言うほどのものならば、現段階で見つかっていてもおかしくないからね。

しかし、僕は魔術師をトーチにした可能性をあえて王へと追求はしなかった。
これくらいならば話を伊里野加奈の場合の話を聞いた段階ですぐに推測できることだし、
王も明言こそしなくても、ばれてもかまわない。あるいは僕がすぐにでも気づくと考えていたはずだ。

それは置いておくとして、問題はその魔術師だ。
彼のトーチが未だ健在か、または既に消滅してしまっているのか。
それはまだ僕には判断できないけれど、ここは存在しているものとして考えよう。
消えていたのだとしたら別に大きな影響はない。
強いて言うならステイル=マグヌスという存在が忘れ去られるということだが、その程度だ。
それに、彼は殺戮者だった。ならば、僕にとっては好都合だというわけである。

重要なのは存在していた場合だ。
彼が殺戮者だったという点はこの場合でもあまり重要ではない。
なぜならば、消える寸前のトーチは減ってゆく存在の力にそって無気力となってゆくかららしいからだ。
なので、ステイル=マグナス――正確には彼から作られたトーチは無害だと推測できる。

この場合、懸念しなくてはならないのは別のところにある。
ステイル=マグヌス。そして伊里野加奈のトーチが殺し合い否定派の人物と“接触”しているかどうかである。
特に、坂井悠二とシャナ、フリアグネが交戦したというメイド――つまりフレイムヘイズの一派。
彼らは王と同じくトーチの知識があり、それを認識することができる。
ならば、魔術師や少女のトーチを見てどう思うだろうか。
簡単だ。フリアグネか、まだ存在の明らかでない紅世の王が作り出したとすぐに理解できるはずだ。

彼らはフリアグネがこの状況に対して積極的に干渉しはじめたと知るだろう。
そうでなければトーチが生まれるはずもないのだから。
そして、トーチと出合った場所から痕跡を辿り、僕を含めたこのフリアグネの元へと向かってくるだろう。
だとするならば、遅かれ早かれ僕らと追ってきた者が衝突する可能性はある。

尤も、それはトーチとフレイムヘイズが接触できていればの話だが。
……しかし、僕は接触できている可能性はけっこう高いのではないかとも考えている。
593 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:34:28.51 ID:WCxOm2vv
 
594 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:35:52.37 ID:WCxOm2vv
 
595 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:36:02.70 ID:1ewVYDoV
そう考える根拠は、先ほど見かけた金髪の軍人と平凡そうな少年少女のグループだ。
彼らがここに近づいたのは物資補給の為だと僕はその様子から推測している。
最終的に彼らは北の方角に去って行ったが、おそらくはそちらに根拠地があるのだろう。
地図を見るに、病院か飛行場か……、どちらも拠点とするにはふさわしい施設だ。
病院は広いし、何より治療器具や寝室が多数揃っている。
飛行場はその種類によるが、休憩室や一晩を過ごすための施設が併設されていることが多い。
僕の考えが正しく彼らが物資調達に来ていたのだとすれば、根拠地に残った者も相応にいるはずだ。
つまり、少なく見積もっても5人……それ以上の集団ができていると期待できる。

さて、伊里野加奈のトーチはこの百貨店を出て、大通りのほうへと向かって歩き去った。
ちょうど、金髪の軍人達が宙に浮かぶ車で向かって行ったほうでもある。
あの直後、僕からは見えなかったが、彼らは互いの存在に気づいただろう。
そしてその結果……、少女は軍人達に保護され、仲間の下に連れ帰られたんじゃないかと想像できる。

重要なのは、その集団の構成員だ。
まずは金髪の軍人。ごく平凡な少年。もしかすると死んだ剣士と縁者であったかもしれない少女。
ここからは曖昧で願望に近い推測となるが、……リリアと、リリアの傍にいた少年も一緒かも知れない。
あのダンスパーティの再演で、リリアの傍にいた少年は少なからず負傷していた。
死に至るほどの負傷だったとは思わない。かと言って、そこいらで簡単に治療できるほどでもなかったと思う。
リリアには手の施しようはなかったろう。とはいえあの子が彼を見捨てるわけもない。
ならば、病院に向かったのではないか。
そして病院の中で軍人達の集団と合流できたのではないか。
もし軍人達の根拠地が病院でないとしても、物資の補給を考えた彼らが病院まで手を伸ばさないわけがない。
リリアと、あの集団との接点はあったはずだ。

そして、これもおそらくだが、僕はその集団にフレイムヘイズのメイド服の女性が加わっているのではとも考える。
メイド服のフレイムヘイズは実に優秀だと僕はフリアグネから聞いている。
遭遇した際に、彼女が足手まといとなるシスターと一緒にいたとも。
保護対象を連れてそう頻繁に移動するとは、戦場を知る人間ならば考えづらい。
すでに半日と四分の一が過ぎているが、だとするなら彼女が拠点とする場所もこの近くではないかと思うのだ。
根拠はもうひとつある。軍人らしき男を調達に向かわせていることから、
彼と同等かそれ以上の立場、実力を持った人間がいるのではと考えられるのだ。
そう考えると、僕の頭の中にはメイド服のフレイムヘイズという候補しかいない。

まとめると……、ここより北の集団にいると確定しているのが金髪の軍人。平凡な少年。小柄な少女。
加わっている可能性が高いのが、伊里野加奈と、リリアと同行者の少年。
そして、メイド服のフレイムヘイズがここに加わっている可能性がある。
フレイムヘイズがいると仮定すると、帰還した仲間からフリアグネがここにいると気づく可能性は高い。
そうなれば、戦力を整えた上でここへと征伐しに来る可能性だってある。もう向かっているかもしれない。
もしそうなってしまえば、双方に少なくない被害が出るはずだ。
リリアやその仲間の安全を考えるならば、僕たちが早めにここから立ち去るのがいいだろう。



さて、そろそろ放送の時間だ。
少し散漫に考えてしまったが、まとめると……、
現在、フリアグネの生み出したトーチがいずれかのフレイムヘイズや、殺し合いを否定する者と接触してる可能性が高い。
その中でもほぼ確実なのが、ここより北の集団が伊里野加奈のトーチを拾っているということだ。
そして、その北の集団の中にはメイド服のフレイムヘイズがいるかもしれない。
その場合、彼らがここへと戦闘をしかけてくる危険があり、それを避ける為にここを早急に離れる必要がある。

……と、こんなところだろうか。
翻って、坂井悠二はここより西か南にいると推測されている。
もし北の集団を避けて逆へと向かえば、彼と遭遇し被害を与えてしまう可能性があるということだ。
とはいえ、北の集団と坂井悠二……天秤にかけるならやはり、集団の方を優先するのは仕方ないか……。



ふぅと僕が溜息交じりの大きな息を吐いたその時、頭上からあの人類最悪の声が響いてきた。
596 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:36:47.77 ID:1ewVYDoV







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







……………………ああ、参ったな。
…………僕は知らない内に追い詰められていた……という事か。
手詰まり、チェックメイト寸前……か。

ぐしゃりと紙が潰される音が響く。
僕が思い切り名簿をを握りつぶした音だ。
全参加者『59人』と書かれた名簿を。

やられた、やられたとしか言い様が無い。
あの短い放送でここまで追い詰められる事に気付くとは。

人類最悪の放送を要約すると、
彼はやはりあくまでも舞台装置であり、あらゆる意味において下にいるということ。
そして、死亡者が『三人』であったことだ。

下にいる……彼の居る場所が下、立場が下、立ち位置が下……など色々考えられるが今は優先順位が低い。
重要なのは、死亡者が『三人』ということだ。

『シズ』『古泉一樹』『御坂美琴』

呼ばれたのはこの三人だ。
そこにステイル=マグヌス、伊里野加奈の名前はない。
それはいい。トーチの存在を生きているか死んでいるのか判断するのは難しいだろう。

だが、この名簿には“伊里野加奈の名前は無い”。
まるで、最初から存在しなかったように。
当たり前のように、彼女の名前は失われていた。
世界から、忘れ去れたように。

つまり、これは、彼女が消失してしまったと言うことだろう。

彼女に籠めた存在の力は微少だとフリアグネも言っていたし、僅かな時間で消えたのも理解できる。
これで、完全に伊里野加奈が殺し合いから退場したと言えるだろう。
しかし、人類最悪は彼女の名前を放送で呼ばなかった。
伊里野加奈の存在を忘れた人に配慮したという可能性も考えられるが……、
しかし……最も考えられて可能性が高く、且つもっともこちらにとって最悪なパターンは



――――人類最悪が、紅世の仕組みを知らなかったと言う可能性だ。


597 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:37:15.25 ID:WCxOm2vv
 
598 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:38:18.21 ID:1ewVYDoV
これは、僕にとっては最悪なケースだ。
突拍子も無い考えに見えるが、彼は今回の放送でも自分を下だと言った。
立場が限りなく下なら、参加者よりも下なら、知らなかった可能性は大いにある。
故に忘却してしまった、伊里野加奈という存在を。


ああ、しまったな、やはりフリアグネは飼いならすと考えるべきでは無かった。
ワイルドカードはワイルドカードでしかなかったということか。
フリアグネがこんな力を持つと言うなら……早々に始末するしか方法が無いかもしれない。
何故ならば、


――――フリアグネは、主催側の人間に一方的に干渉する力を持っているというのに等しいのだから。


これは、最悪な場合、僕のプランを破綻させるのと等しい力かもしれない。
人類最悪の裏に真の主催者がいるとしても、この力は危険だ。
もし、主催に接触する機会が出来た人物が殺し合いを否定する中にいたとしても、
その人物がフリアグネによって喰われてしまえば、それで完全に終わりだ。
受け皿になる人物最悪が忘却してしまえば、何も出来ないのだから。
勿論接触の機会が出来た人物だけではない、脱出できる決定的な何かを持つ人物が居たとしても、
その者がフリアグネに消されてしまえば一緒だ。
世界の仕組みに取り込まれて、他の参加者が知る由もなくなってしまう。
此方が、主催者や人類最悪の接触の切欠になる人物を置いても、フリアグネに消されれば、それでも終わりだ。
全てが後に続くことなく消失してしまう。

主催側からの接触を望む僕にとって、間接的とはいえ、自分より先に干渉できる力を持つフリアグネはもう邪魔でしかない。

だから、フリアグネを殺す?
いや、それも、もう遅い。
殺すならあの剣士との戦闘の最中でなければならなかった。
今は不意を打とうにも、和服がいる。
あの気分屋がいる状況で不意を打てるかなんて……限り無く不可能に近いだろう。

じゃあ、どうする? 
考えろ、考えろ。
詰みに近い現状で、それをひっくり返す為に。

考えろ、考えろ、考えろ、考えろ。

考え…………


…………ああ、くそっ


やはり、フリアグネに張り付きすぎた。
僕がやっていることが、スパイと同じようなことなら、
現状では、情報が不足している。他の参加者の情報が、決定的に足りない。

例えば、今、紅世の仕組みを知っている大きなチームが確実にいると断言できたら。
フリアグネが主催に間接的に干渉できる能力を持っていたとしても。
フリアグネが参加者の存在を忘却させる力を持っていたとしても。
致命的なダメージにならない方法があるだろう。

しかし現実、今、この状況に抗う人間達の中にどんな集団がいるか、僕は全く知らない。
おぼろげに北部に集団がいるらしいぐらいしか知らない。
重要な鍵を持っているフレイムへイズの名前すら僕には解からないのだからね。
もしかしたら、僕らのチームに匹敵するほどの生き残りに肯定的なチームが他にいるかもしれない。
……けれど、僕はそれを知らない。
599 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:38:25.43 ID:WCxOm2vv
 
600 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:39:17.79 ID:1ewVYDoV

ああ、くそっ……押さえ付けることに必死になりすぎて。
大切な、参加者の情報を知らない。

フリアグネに恐ろしい力があると知っても。

それを知らせるべき味方を知らない。

少なくとも内情は知らなければならないのに。


今、判断を求められてる時に、判断を下す情報が



――――圧倒的に足りない。



この場では、僕は



――――肝心な情報を知らない弱者でしかなかったというのか。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「さて、皆揃ったようだね。あの放送への議論は後回しにするとして……」

陽が沈み、窓の外に星が瞬き始めた頃。
放送を聞き終えた僕らは、マネキンが立ち並んだフロアに集合していた。
白に包まれた王、フリアグネはゆっくりと口を開く。
何処か楽しそうな口振りで、集まった僕らに問いかける。
僕は心の動揺と緊張を隠しながら、フリアグネの言葉を聞いていた。



「坂井悠二、つまり零時迷子のミステスを探索することを指針にすることは、先ほど言ったわけだけど」

これは、放送前から言っていたことだ。
フリアグネは抑えきれないように、楽しそうに言葉を紡ぐ。
601 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:39:20.09 ID:WCxOm2vv
 
602 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:40:45.46 ID:1ewVYDoV
「このことに、何か異論はあるかい?」

フリアグネはぐるりと周囲を見回して、つまらなさそうにしていた和服を見る。
和服はやはりどこか気だるげそうで、不機嫌そうに。
王の視線にも、興味なさそうに、

「別に、オレは無い。というか、さっさと行こうぜ」

ひらひらと手を振って、異論は無い事を示した。
なんとも淡白な反応だったが、もう慣れたのか王は気にするそぶりもない。
そしてフリアグネはそのまま僕へと何かを期待するような眼で見つめてくる。
まるで、こちらの内心を見透かすように。

「少佐。君はどうだい?」

僕は静かに眼鏡を抑えて、王を真っ直ぐ見る。
王の瞳は何処か楽しそうな割りに鋭利な鋭さを持っていて。
僕を射抜くように見つめて、僕の返事を待っていた。

「そうですね――――」

僕は息を大きく吸い込んで。
決心するように頷き。
心の底から覚悟をして。


そして――――


「提案があります―――別行動を取らしてもらえないでしょうか?」



僕は、『詰み』の盤面を大きく動かすための賭けに出たのだ。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






603 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:41:11.66 ID:WCxOm2vv
 
604 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:41:42.09 ID:1ewVYDoV
「へぇ、それは何とも意外な提案だね。どういうことかな?」

フリアグネは、あくまで楽しそうに、踊るような抑揚のまま言葉を続ける。
瞳は全く笑っていなく、こちらを射抜くように。
僕は緊張したまま、言葉を紡ぐ。

「そうですね、まず確認も踏まえて、聞きたい事があります」
「へぇ? なんだい?」

こちらの提案を飲んで貰う為には、気分屋の王を納得させるしかない。
だから、僕はあえて、先ほど黙っていたことを口にする。

「ホテルで殺害した魔術師、ステイル=マグヌスですが、彼も当然、トーチにしましたよね?」
「…………うん、やっぱり解かっていたか。放送で呼ばれなかったし当然だけれども」
「えっ、そうだったのか」
「……君は気づいてなかったのかい? 和服」

くくっとフリアグネは口に手を当てて笑う。
和服はそっぽを向いたが、気にする事はない。
僕は表情を変えずに、握られた名簿を示す。

「名簿を確認しましたが、今『59人』になっています。消滅したのは、伊里野加奈ですね」
「そうだね、僕も確認したよ……まあ、元々トーチに籠める存在の力は微少なものだし」
「……あ、確かに消えてるな」

名簿を興味深そうに確認する和服を尻目に、僕は名簿を手で叩き、言葉を紡ぐ。
そう、ここにおかしい所があり、漬け込む余地がある。

「トーチに籠める存在の力は微少なのですよね? フリアグネ様」
「ふぅん……君も気付いたか、少佐。
 ……そうだよ。なら君が不思議に思っている事を、理解できていない和服に教えてあげなよ」

やはり、王も気づいていたか。
気づいていなければ、困るのだが。
僕はむっとしている和服に語りかけるように、言葉を紡ぐ。

「そう、籠められた存在の力が同じくらい微少なら、『先にトーチになっていた魔術師が消えていないのはおかしい』のですよ」
「……あ、そうか」
「この名簿が『58人』になっていなければ、辻褄が合わない……つまり…………」

驚いてる和服に、魔術師が消えてなければおかしいことを告げる。
そう、矛盾が発生しているのだ。
同じぐらい微少の存在の力なら……後にトーチになった伊里野加奈だけ消失しているのはおかしいのだ。
何故このような事態になってしまったのか、説明できるとするなら、

「『存在の力を使えるフレイムへイズが魔術師に接触していた』……君がいいたい事は、こうだろう? 『少佐』」

僕が告げたかった言葉を、王が取り次いで先に述べた。
そう、フリアグネと同じように存在の力を使える、フレイムへイズが接触し、そして魔術師のトーチに何かをしたのだろう。
このことを王も把握してたらしい。考えていたことが一緒で王はとても嬉しそうだった。
605 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:43:27.21 ID:WCxOm2vv
 
606 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:44:30.27 ID:WCxOm2vv
 
607 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:45:11.41 ID:WCxOm2vv
 
608 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:46:09.65 ID:1ewVYDoV

「言っていなかったけど、存在の力をトーチに注ぐ事はフレイムへイズも可能だ。
 だから魔術師のトーチは存在の力を注がれたと考えていいだろうね」

これで、魔術師が存在している理由が明らかになった。
そして、トーチとフレイムへイズが接触していた事実も。
だから、僕はあえて王の好ましくない事態を口にする。
僕が達成する目的の為に。

「つまり、フリアグネ様がトーチを作成した事がフレイムへイズには理解されていると言っていいでしょう」
「だろうね……仕方ないことだが」
「そして、フリアグネ様が人を狩り始めていると思われてもよい……恐らく優先してフリアグネ様を探そうとするでしょう」

僕が淡々と事実を述べると、少しだけフリアグネの表情が険しくなっている。
それは本心からか、演技かは今の僕には理解できないが。
ここまではあくまで確認事項、解かってることを言ったに過ぎない。
だからこそ、ここからは、僕が告げるべき大切なことだ。
緊張で声が震えそうになるが、それを抑えて、平静を装い言葉を紡ぐ。

「そこで王に提案したいことに戻るのですが……暫く僕に別行動をさせてもらえないでしょうか?」
「魔術師のトーチの話をしたから、そのことに関係するんだろう?」
「はい……まあ、端的に言うと簡単な敵情視察したいと考えています」

そう、敵情視察。
あくまで敵情視察と言う名分で、僕はこの事態を打開しようとする者らと接触を計ろうと考えているのだ。

「幾らフリアグネ様といえど強力なフレイムへイズに同時に襲われるのは難儀でしょう?」
「……まあ、そうだろうね」
「実際に接触を取るかは兎も角、殺し合いに乗らない者達の内情を覗いたりなどをし、戦力を確認したのです。
 己を知り、敵を知る事は大切ですし」
「……つまり、スパイみたいなものか?」

黙っていた和服が、こちらに視線を向け、言葉を紡ぐ。
解かりやすい単語を出してくれたが、まあ既にスパイみたいなことを僕はしているのだけれども。
まあ、ダブルスパイになるのだろうか。

「まあ、解かりやすく言えば、そうですね。僕は職業上、こういうものには慣れていますし。
 それと、僕が内情視察を行っていれば、その間フリアグネ様は『零時迷子』探索に集中することができると思います。  
 ですので、フリアグネ様の役に立つと思いますが……どうでしょうか?」

さりげなくフリアグネの蒐集にもメリットがあることをアピールする。
そして、こちらから告げられることを言い終え、僕は王の言葉を持つ。
柄にも無く、鼓動が早まっている気がした。
王は瞳だけこちらに向けて
609 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:47:01.61 ID:1ewVYDoV


「――――本当に『それだけ』かい?」



とても、冷たい視線を僕に向け、


そして、王は笑っていた。


何もかも見透かした上で、それでもなお、微笑を崩さないように。


ただ、笑っていた。


背筋が凍りつくような気がした。



「……なんてね、冗談だよ。いいだろう。『少佐』……内情視察の任務を宜しくお願いしたい」



けれど、途端に甘く愉しそうな声をだして、僕の提案を受理しようとする。
冗談とはいったが、それは本心かどうか……僕にはわからない。
わからないが、僕に残された道はもう、それしかないのだから。
冷や汗が噴出したか、拭うことはしなかった。

「『和服』もそれでいいかい?」

王は和服に視線だけ向けて、答えを求める。
和服は一度瞼を閉じ、そして瞼を上げて

「……言ったろ? オレは――――あいつさえ殺せれば、それでいいんだ」

彼女は宙に手を振った。
その瞬間、周りにあったマネキンが断ち切られて、次々と崩れ落ちていく。

「それだけだ……好きにしろ。オレもオレで――――ただ、殺していくだけだ」

興味無さそうに、崩れ落ちたマネキンを一瞥して、彼女はまた瞼を閉じた。

その美しいともいえる光景を僕と王は眺めて、そして、

「ふふっ……和服は変わらないね。ならば『少佐』……一先ず、単独行動を許す」
「ありがたき幸せ」
「そして、そうだな……僕らは南部に向かおうと思うから、24時以降に、天守閣辺りで一度会おう、それでいいかい?」
「構いません。了解しました」

僕にとっては充分な時間だろう。
この間にどれ位、情報を得れるかは、僕の腕次第かな。
610 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:47:23.72 ID:WCxOm2vv
 
611 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:47:50.24 ID:1ewVYDoV


賽は投げられた……詰みに近いこの盤面を。


僕はどれだけ動かせる?


いや、確実に、動かし、変えて見せよう。


それが、僕の仕事なのだから。


やって見せなければならない。


死んだ彼女の為にも、今を生きるあの子の為にも。



僕は僕にしか出来ない仕事を、遂行するのみ。




「ふふっ……本当……楽しみだねぇ、少佐」


出口に向かって歩き出す僕へと、そんな言葉が聞こえたような気がしたが、気にはしない。


もう、始まっているのだ。


王との戦いは既に、会戦の火蓋が、切られていて。



そして、最後に勝つのは――――僕でしかないのだから。








612 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:48:39.00 ID:1ewVYDoV
【C-5/百貨店・1F女性用衣服売り場/一日目・夕方】

【フリアグネ@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:吸血鬼(ブルートザオガー)@灼眼のシャナ、ダンスパーティー@灼眼のシャナ、コルデー@灼眼のシャナ
[道具]:デイパック、支給品一式×2、酒数本、狐の面@戯言シリーズ、『無銘』@戯言シリーズ、
     ポテトマッシャー@現実×2、10人名簿@オリジナル、超機動少女カナミンのフィギュア@とある魔術の禁書目録(?)
[思考・状況]
基本:『愛しのマリアンヌ』のため、生き残りを目指す。
0:????????????????
1:零時迷子の確保の為、南へ式と共に出撃する。
2:24時以降に、天守閣付近にてトラヴァスと合流する。。
3:トラヴァスと両儀式の両名と共に参加者を減らす。しかし両者にも警戒。
4:他の参加者が(吸血鬼のような)未知の宝具を持っていたら蒐集したい。
[備考]
※坂井悠二を攫う直前より参加。
※封絶使用不可能。
※“燐子”の精製は可能。が、意思総体を持たせることはできず、また個々の能力も本来に比べ大きく劣る。

【両儀式@空の境界】
[状態]:健康、頬に切り傷
[装備]:自殺志願(マインドレンデル)@戯言シリーズ
[道具]:デイパック、支給品一式、ハーゲンダッツ(ストロベリー味)×5@空の境界、日本酒
[思考・状況]
基本:ゲームを出来るだけ早く終了させ、“人類最悪”を殺す。
1:フリアグネについていく。
2:ひとまずフリアグネとトラヴァスについていく。不都合だと感じたら殺す。
3:幹也の言葉に対しては、今は考えないでおく。
[備考]
※参戦時期は「忘却録音」後、「殺人考察(後)」前です。
※自殺志願(マインドレンデル)は分解された状態です。

【トラヴァス@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ワルサーP38(6/8、消音機付き)、フルート@キノの旅(残弾6/9、消音器つき)
[道具]:デイパック×3、支給品一式×3(食料・水少量消費)、フルートの予備マガジン×3、
     アリソンの手紙、ブラッドチップ(少し減少)@空の境界 、拡声器、早蕨刃渡の太刀@戯言シリーズ、
     パイナップル型手榴弾×1、シズのバギー@キノの旅、医療品、携帯電話の番号を書いたメモ紙、
     トンプソン・コンテンダー(0/1)@現実、コンテンダーの交換パーツ、コンテンダーの弾(5.56mmx45弾)x10
     ベレッタ M92(6/15)、べレッタの予備マガジン×4
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗っている風を装いつつ、殺し合いに乗っている者を減らしコントロールする。
1:詰みの状況を打破する為に、殺し合い否定派と接触し情報を集める。北の集団優先?
2:24時以降に、天守閣付近にてフリアグネ、式と合流する。
3:最悪の場合、フリアグネを殺す。
4:当面、フリアグネと両儀式の両名と『同盟』を組んだフリをし、彼らの行動をさりげなくコントロールする。まずは北に行かせない事
5:殺し合いに乗っている者を見つけたら『同盟』に組み込むことを検討する。無理なようなら戦って倒す。
6:殺し合いに乗っていない者を見つけたら、上手く戦闘を避ける。最悪でもトドメは刺さないようにして去る。
7:ダメで元々だが、主催者側からの接触を待つ。あるいは、主催者側から送り込まれた者と接触する。
8:坂井悠二の動向に興味。できることならもう一度会ってみたい……が……致し方ないか。
613 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:50:15.09 ID:WCxOm2vv
 
614 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:50:56.49 ID:WCxOm2vv
 
615 名前: 盤面の瀬戸際で ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 02:51:27.84 ID:1ewVYDoV
投下終了しました。
沢山の支援ありがとうございます。
此度は期限を少々オーバーしてしまい大変申し訳ありませんでした。
何かありましたら、指摘をよろしくお願いします。
616 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 10:56:46.18 ID:AJWMEvHe
投下乙でした。

少佐動くか…吉と出るか凶と出るか。
フリアグネもどう動くか読めんし、次の一手が楽しみすぎる。
617 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 14:33:50.55 ID:SU50bkpc
投下乙でした

緊張感あふれる会話で、式の「あ、そうか」が可愛かったw
少佐は飛行場に向かってるけど、そこにはリリアがいるんだよね…
そしてフリアグネたちが向かってる先は正に修羅場…
イイ感じにフラグが詰まれてるなぁ

あ、時間帯が夕方になってるのはミスですか?
618 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/16(火) 16:04:49.98 ID:WCxOm2vv
投下乙です。

さすがに少佐も出会う人間が片っ端から殺されたりトーチにされてたんじゃ手詰まりだよね。
とはいえ、他に人間に会って今からどんなアプローチができるのか……。
近くにいるのは飛行場組だから話は通じそうだけど、逆に信用を勝ち取るのも難しそうw
フリアグネ様が南に行くんなら北部は平和になるけど、どうなることやら。
619 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/17(水) 09:21:09.82 ID:TetfTQ8r
投下乙でした
他所の集団でもトーチ化に関する考察が挙がってるというのに、
肝心のフリアグネはただの食事としてしか考えてなさげってのがw
少佐は相変わらず格好いいが、式さん戦闘以外だと存在感ねぇ…w


さて、次の予約が来てますね
620 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/17(水) 09:32:14.39 ID:GFzv7Gbm
本当だ!
予約が来てる!!

予約が……
予約の組み合わせが……


…………………………浅羽、南無
621 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/17(水) 22:57:26.64 ID:bAWChbM6
浅羽終了のお知らせだろwww
622 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/21(日) 17:15:00.47 ID:CFxjYN4s
感想有難うございます。
>>617
単純なミスですね、収録後修正したいと思います。
623 名前: ◆EchanS1zhg [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:10:36.76 ID:pli1GiBz
投下開始します。
624 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:11:27.31 ID:pli1GiBz
 【0】


『もう、あの夏の夜には二度と戻れない。全ては過ぎ去って終わってしまったことなのだから』


 【1】


ジージーと錆びたベルのような音で蝉が喧しく鳴いていた。
夏の日差しはとても強く、足元にはまるでぽっかりと穴が空いたみたいに黒い影が射している。
その真っ黒な影だけを見つめ、ただひたすらに歩いていた。
滝のように流れる汗を拭うこともせず、ただまっすぐに伸びる列車のレールに沿って今も歩いている。
レールとレールの間を、乾ききった枕木をひとつずつ踏みしめながら、そこに汗の粒を零しながらひたすらに歩き続けていた。

顔を上げて空を仰ぐ。
大空に浮かんだ灼熱の太陽から注ぐ光線を遮るものは一切無く、ぎらぎらとした刃のような光は全身に深く突き刺さった。
顔を歪めて呻き、また足元へと頭を垂れて、直射日光の中、自分が作った暗がりの中を歩き続ける。
それから、眉毛のデフェンスを抜きまぶたの上まで侵入してきた汗を拭おうとして、しかし腕が上がらないことに気づく。
いつからだろうか? 拭うことを諦め、また呻き声を漏らしそのまま歩き続ける。
痛みを通り越して感覚の鈍くなった足の裏で枕木をひとつひとつ踏みしめ、蝉の鳴き声に押されながら線路を辿る。

その辿りつく先に向かい、真夏の風景の中をひたすらに歩き続ける。
行く先にはまだなにも見えない。なにに向かっているのかもわからない。どうして向かっているのかも覚えていない。
ただ義務感のようなものだけがあって。そうしなくてはいけないという強迫観念だけがあって。
誰もいないのに。たった独りで歩いている。

――誰も?

そして、ふと後ろを振り返って――振り返るとそこには“誰”もいない。

誰も。誰も、いない。誰もいなかった。

おかしい。じゃあどうして歩いているんだろう? 自分のためじゃなきゃ、誰かのためじゃなかったんだろうか。
延々と続く線路の上で立ち止まる。
蝉の声は鳴り止まない。太陽も照り続けたままだ。来た道にも、行く道先にもなにも見えない。

本当にこれでよかったんだろうか? 本当に、本当にこれでよかったんだろうか……?

ぼくは、なんのためにここまで歩いてきたんだろう?




 【2】
625 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:12:10.52 ID:pli1GiBz
「――――起きろ小僧」

大人の男の声に浅羽は薄く目を開く。
滲んだ視界の中に映るのは、父親がよく見ていた時代劇のビデオの中にいるような男の姿だった。

今さっきのは夢だったのだろうか?
あの陽射しの強さと蝉の声の五月蝿さはひどくリアルでとても夢とは思えなかった。
現に今も身体中はぐっしょりと汗に濡れていて気持ち悪く、頭の中ではくぐもった虫の羽音が幾重にも木霊している。
身体も重たくぴくりとも動かすことができない。
痛めた腕はどくどくと鼓動に合わせて脳に鈍痛を送り込んでくるし、酷使した足は感覚そのものが死んでいるようだ。

「小僧。おれの顔が見えておるか?」

時代劇の中の男が問いかけてくる。見たこともない、本当に役者のような顔をした男だ。
いわゆる美丈夫というやつだろうか。なんでこんな人が目の前にいて、自分に話しかけてくるのか。
さっぱり理由がわからないし、おかしなくらい現実味がなかった。
これは線路の上を歩いていた自分が見ている夢なのかもしれない。
夢の中でそれを夢だと気づくことをなんと言ったか……、そうそれは、確か明晰夢と言ったはずだ。
その夢の中だと超能力でも魔法でもなんでも思いのままだって部長に聞いたことがある。

「……ふむ。思いのほか困憊しておるようだ」

だったらもっと楽になりたい。
辛く悲しいのはいやだ。夢が覚めて、そしたらまた歩き続けることになるのなら、今はもっと楽でいたい。
この急きたてる虚しさから解放され……そう、自由に青い空を飛んでみたりしたい。
真っ青なキャンバスをジグザグに切り裂くように……どこかで見たUFO(未確認飛行物体)のように飛びたい。

「死にぞこないですか?」

どこか見えないところから小さな女の子の声が聞こえた。死にぞこないって、それはなんのことだろう?

「いや、命にかかわるような傷は負っておらん。ただ手酷く痛めつけられ朦朧しておるだけだ」
「じゃあいっそのこと“梟”にしてあげたらいいんじゃないかと姫ちゃんは思うんですけど?」
「……? よくわからんが、しかし急くな。
 このように痛手を負っておるということは、この小僧はどこぞで人に出会っておるということだ。
 それを聞き出せばぬしの探す師匠とやらの行方もわかるやもしれんのだぞ?」
「んー、それじゃあしかたないですねぇ」

男と少女は会話をしているらしかった。しかしなんの話をしているのかよく理解できない。
誰かが痛めつけられて重体らしい。それは誰のことなのか。いや、そんなことよりも近くで話すのをやめてほしかった。
今はただ寝ていたいのだ。
たくさん歩いて、ずっと歩いていたから、疲れたから、もう休みたい。もう、……歩き続ける理由も思いつかない。


 ■


青色の中にいた。青く、青く、深い青色の――水の中に。なんの自由もない深い水の底に身体が沈んでいた。

ゴブゴブと音を立てて身体中から酸素が水中へと逃げ出してゆく。
冷徹な水の温度に全身は痺れ、もがくこともできず、上下の感覚もわからず、ただ沈んでゆく恐怖にだけさらされる。
怖い。
息をすることもできず、手足をばたつかせても触れるものはなく、目の前も見えず、声も出せず、誰の声も聞こえない。
どんどん沈む。ささいな抵抗をあざ笑うかのように無慈悲に身体は水の中で沈む。
助けはない。このまま死んでしまう。生きてきた意味もわからずにもがき苦しんで死んでしまう。ただ死んでしまう。

痛いのも怖いのも苦しいのも嫌だ。死ぬなんて嫌だ。死にたくない。怖い。死ぬのは怖い。死にたくない。

もがいてもがいて、一生懸命必死にもがいて――たった一瞬で浅羽は覚醒し、現実に戻った。
626 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:12:52.56 ID:pli1GiBz
 ■


「――目を覚ましたか?」

また時代劇の男が自分の顔を覗き込んでいた。その向こうには映画館の天井。白い蛍光灯が煌々と瞬いている。
そう、ここが現実だ。自分にとっての本当の居場所。理解すると、夢の中での感覚は一瞬で遠ざかった。
代わりにその前の記憶が急速に戻ってくる。
ティーを探してこの映画館まで来て放送を聞いた。そしてもう一度出る前に少しソファで横になって……寝てしまったのだ。

「寝ていたところを起こしたのは詫びよう。だがこのような所で現を抜かしておれば命がいくつあっても足るまい。
 ならば、そちらもこちらに感謝するところがあるであろう?」

どれくらい時間が経ったのか、何時間も経っていたらみんなに心配をかけるなと思ったが、案外時間は過ぎていなかった。
視線だけを動かし、壁にかかっている時計を見ればまだあの放送の時間から30分くらいしか経っていない。
放送を聞いて、考え事をして、横になって、そして起こされたんだから、実際に寝ていた時間は15分くらいだろうか。

「安心せよ。このおれは無闇に人を殺める性分は持ち合わせておらぬ。
 して小僧の名前はなんという? なにゆえここにおり、いかにしてそのような傷を負うた? このおれに聞かせてくれまいか?」

時代劇の男の名前は、時代劇の男にふさわしく如月左衛門というらしかった。
もうひとりいた小さな女の子は紫木一姫といって、ふたりは殺し合いなどせず、いーちゃんという人を探しているらしい。
そんな人とは会ったことがなかったけど、そう言っても二人はぼくをほうってはおいてくれずあれやこれやと質問攻めにあった。

「――なるほど、では直之殿はその身体で飛行場なる場所からここまで歩いてきたのか。
 みかけによらず中々の胆力の持ち主よな。場合が場合でなければ里に連れ帰ったやもしれぬ。
 ま、戯言はさておき帰り道は安心めされい。このおれがおぶって帰ってやる故、直之殿はゆっくりと眠っておるとよい」

ほうっておいてくれればそれでよかったんだけど、それだと部長や他のみんなにも心配をかけるから好意を受け取ることにした。
それに、なにより本当に眠い。どうしたらこんなにがんばれるのかわからないくらい身体はくたくたで、なにをするのも億劫だった。
どうせなら寝ているうちにすべてが終わればいいとさえ思う。
それが地球存亡の危機だろうとなんだろうと、ぼくの知らないところで始まって、ぼくの知らないうちに終わればいいんだ。

例えどんなことがあろうと……、ぼくはもう“本当のこと”なんかに興味はないのだから。






 【3】


「飛行場とやらに3人。行方知れずの童が一人。そして道中に水前寺邦博とやらが一人か」

存外収穫はあったなと如月左衛門はひとりごちだ。しかし隣の紫木一姫は不満そうな顔だ。

「けれども師匠のことがわからないんだったら無駄骨ですね。もっとも姫ちゃんはその骨を断つのが役割ですけど。
 それじゃあこの無駄骨はさくっと断っちゃっていいですか?」

紫木一姫はソファに横たわり寝苦しそうにしている浅羽へと向け人差し指をついと立てる。
だがしかし、如月左衛門は慌てたようにその間へと割り込み、少女の行動を制した。

「まて、水前寺邦博や飛行場の輩と接触するのにこいつの顔は必要となる」
「じゃあ顔を取ったらさくってもいいんですか?」

そうではないと如月左衛門は首を振る。

「例え顔を取っても、そのふりをしている最中に放送でこやつの名前が呼ばれればそれで全てはご破算よ」
「別に一瞬でも隙を作ってくれれば姫ちゃんが全員諸共ジグザグにしちゃいますけど?」
627 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:13:35.24 ID:pli1GiBz
その諸共とはおれも含んでいるのか? というツッコミをぐっと飲み込み如月左衛門は紫木一姫にいちから説明した。
殺しさえできればいい者と生き残らなくてはならない者とでは事情が違うのである。
ここに寝ている浅羽直之という少年はいかにも頼りなさげだが、
如月左衛門からすればいくら細くともこれが命綱であることにかわりないのだ。

「これより先、ただ闇雲に殺しをしていてはいずれ手詰まりとなる時がこよう。
 ならば、今しがたしてみせたように見つけた者からはできるだけ情報を抜き出すのが肝要だ」
「だったらやっぱりこの人は用済みなんじゃないですか?」
「確かに、こやつそのものは用済みよ。だがしかしこやつの顔は次の輩から情報を抜き出すのに有用となる。
 また相手は我々でも一筋縄ではいかぬ者かもしれん。となればますますこやつの顔の重要性は増す。
 そこで、その途中でこやつの死があの人類最悪の言で明らかになってみい。おれはどうなる?」

なるほど。と、紫木一姫はぽんと手のひらを叩き合わせた。

「その時は、如月左衛門さんが八つ裂きになっていますね」
「……であろう。それはそれでおぬしとしても困るはずだ。ならば我々のためにここは殺すのをこらえてくれい」
「うーん……。でもそれじゃあ、この“朝餉さん”って人はどうするんですか?」
「なに、縛り付けて納戸やどこかにでも放り込んでおけばよい。明後日にはここらも全てはあの闇の中よ」

それもそうですね。と言うと紫木一姫は立てていた指をついと下ろした。
ひうんという音に、一瞬、如月左衛門は構えを取るが、しかし自分の首も浅羽直之の首も胴からは離れるようなことはなかった。

「縛っておいたんで、隠すのは如月左衛門さんにお願いしますね」
「…………承知した。」

お願いをすると、紫木一姫は踵を返しホールの端へと歩いてゆく。
その後姿を見つめながら如月左衛門は額に垂れた冷や汗を拭い小さく溜息を吐いた。。
なにやら硝子の箱の中やらを覗きこんでいる姿は本当に童女のようだが、彼女の術はまっことに恐ろしい。
とはいえおののくばかりではより自らの命運を縮めるだけ。
気を取り直すと、如月左衛門はデイパックを肩から下ろし、その中からまずは洗面器に持った土とペットボトルの水を取り出した。
街中に入ると思いのほかに土を手に入れるのが難儀と気づいてここにつく前に砂浜で用意したものである。
生きた者からどう顔を奪うかは思案しなければならぬとこであったが、今回は幸いにも寝ている相手なので苦労はない。
糸で縛り上げられた浅羽直之の身体をゆっくりとソファから下ろすと、如月左衛門はその顔を洗面器へと押し付けた。






 【4】


それは旭日祭(きょくじつさい)まで後10日を切った晩のことだった。

園原電波新聞部は大それた企画に対して部員の数は3名と少なく、女の子の晶穂は毎日家に帰っていたけど、
ぼくと部長は各々の仕事をこなすため――もっとも部長は行方不明なことも多かったけど、連日連夜部室で寝泊りしていた。
その晩もぼくは近くの銭湯で湯に浸かり、早く寝袋へともぐりこもうと部室長屋への道を急いでいた。

「お。なんだ風呂帰りか。いやあよかった、留守ならこれを置いて帰ろうかと思ってたところだ」

そして新聞部の前でパンパンに膨らんだコンビニ袋を提げた榎本と会った。
会うのはこの時が2度目で、1度目よりも、その後のことよりも、この時のことが一番記憶に残っている。
だからこそ――こんな夢にも見るのだろう。

「――なあ、どっかに梯子ないかな?」

多分、榎本さんは屋根の上でラーメンを食べるのが好きなんだろうと思うけど、
その日もぼくと榎本さんは部室長屋の上へと昇り、ざらざらのコンクリートに腰を下ろして二人でラーメンをすすった。
この時、なにを話したかについては今はよく覚えていない。
628 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:14:17.47 ID:pli1GiBz
今思えば榎本さんは大人の中では親しみやすい人柄だったんだろうけど、
この時はまだ得体の知れない人物だったし、突然屋根の上でラーメンを食べると言われてもわけがわかるはずもなく、
ぼくはラーメンの味にも榎本さんの話にも集中することができず、ただ箸を握ったまま適当な相槌を打つだけだった。

「礼と言ってはなんだが、いいものを見せてやる」

だから、その榎本さんの言う“礼”というのが今も不明なままなのだけど、けどその後のことは鮮明に覚えている。

「あと五秒だ。四、三、二、一。上を見ろ」

地上に光のない田舎の満天の星空。小さく瞬く星の光の中、その間を縫うように飛び回る何かが見えた。
言われなければ気づかないような些細な、しかし確かにその宙(そら)を飛んでいる光。
普通の飛行物体ではありえない複雑で無軌道な動き。時々明滅するオレンジ色の未確認飛行物体(UFO)。

どうしてこの時、榎本さんがこれをぼくに見せたのかはわからない。
飛んでいたものが本当にそこにあったのか、それともトリックだったのかもわからない。
その後、榎本さんがこのことをぼくに尋ねることはなかったし、ぼくも榎本さんに尋ねたこともない。


けど、忘れてはいなかった。


ぼくは魅入られたんだ。あのオレンジ色の光に。


あれがなんだったのかは結局わからずじまいだけど、今わかったことがある。


ぼくが目指していたのはあの光だ。


ぼくは、ずっと、あの光を目指していた。


それが、


――ぼくだけの空、UFOの夏。








【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏 死亡】






 【5】
629 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:15:00.69 ID:pli1GiBz
「(別にかまいませんよね。次の放送までは6時間もあるわけですし)」

紫木一姫は浅羽直之の首にくくりつけていた極々細の糸を引いて回収すると、心の中だけでひとりごちた。
如月左衛門の前ではああ納得してみせたものの、かつて狂戦士であり、今また狂戦士であろうとする彼女には
殺せる相手を殺さずに置いておくということは堪えられなかったのだ。
無論、如月左衛門の《策》は理解している。理解していてなお彼女の性分はそれを上回ったのである。

「(でも、どうせすぐに“会える”んですし、一度離れたら姫ちゃんが殺したなんてのもわかりませんしね)」

そして彼女は狂戦死でありながらそれを取り繕う狂言師でもある。
何も一分の理由もなく凶行を強硬したわけではない。
如月左衛門が使えるの事実なのだ。なので一分ほどの理由はあった。それは彼女が握るレーダーの中にである。

「如月左衛門さん見てください。レーダーにいくつも反応がありますよ」
「ほう? どの方角に何人だ?」

紫木一姫の下で彼女を肩車している如月左衛門がその言葉に反応した。

「0時……と言ってもわかりませんか? 地図の上の方に6人です」
「子の方角か。レーダーに映ったからにはそう遠くはあるまい。して何者らだ? 知った名はそこにあるか?」

新しくレーダーの範囲に入ってきたのは『師匠、浅上藤乃。朝倉涼子、坂井悠二、島田美波、水前寺邦博』の6人だ。

「水前寺邦博って人がいますねー。後は全然知らない人ばっかりです」
「なるほど。ではさっそくこの顔を使う時が来たか。おそらく浅羽めを探しに来たのだろうが重畳、重畳」

浅羽の顔を真似、声を真似、風体を真似、負っていた怪我すら真似た如月左衛門が笑った。
彼の頭上、見えないところで紫木一姫も笑う。


危うき一本綱渡りの上で狂戦士の笑みを――……。





【E-4/市街地/一日目・夜】

【如月左衛門@甲賀忍法帖】
[状態]:浅羽直之の容姿(衣装、包帯など)、胸部に打撲
[装備]:マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣
      二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣、フランベルジェ@とある魔術の禁書目録
[道具]:デイパックx7、支給品一式x9
      金属バット、毒入りカプセルx1、カプセルのケース、
      IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾7/8+1)、
      トカレフTT-33(8/8)、トカレフの予備弾倉x4
      SIG SAUER MOSQUITO(9/10)、予備弾倉(SIG SAUER MOSQUITO)×5
      甲賀弦之介の生首、甲賀弦之介の衣装、自分の着物
      伊里野加奈のパイロットスーツ@イリヤの空、UFOの夏、陣代高校の制服@フルメタル・パニック!
      櫛枝実乃梨変装セット(とらドラの制服@とらドラ!、カツラ)、変顔セット@現地調達
      ビート板+浮き輪等のセット(少し)@とらドラ!、インコちゃん@とらドラ!(鳥篭つき)
      不明支給品x1(確認済み。武器ではない?)
[思考・状況]
 基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。
 0:レーダーの反応がある場所へと向かう。
 1:浅羽の顔を利用して水前寺や他の人物に接触し、情報や顔を得る。
 2:紫木一姫と同盟を組み、殺し合いを進め、生き残る。
   └後の決着を踏まえ、“生きた顔”や紫木一姫の弱みとなる情報を掴んでおきたい。
 3:残る伊賀鍔隠れ衆との争乱を踏まえ、朧か薬師寺天膳の顔を手に入れたい。
 4:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。
630 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:15:45.02 ID:pli1GiBz
[備考]
 ※遺体をデイパックで運べることに気がつきました
 ※千鳥かなめ、櫛枝実乃梨、紫木一姫、浅羽直之の声は確実に真似ることが可能です。
 ※「二十万ボルトスタンガン」の一応の使い方と効果を理解しました。
   しかしバッテリー切れの問題など細かい問題は理解していない可能性があります。
 ※浅羽直之本人より、彼自身や人間関係について詳細に聞きました。
   が、朦朧としていたのでどの程度まで聞けたか(聞けなかったか)は不明です。


【紫木一姫@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:澄百合学園の制服@戯言シリーズ、曲絃糸(大量)&手袋、レーダー@オリジナル
[道具]:デイパック、支給品一式、
      シュヴァルツの水鉄砲@キノの旅、ナイフピストル@キノの旅(4/4発)、裁縫用の糸(大量)@現地調達
[思考・状況]
 基本:いーちゃんを生き残りにするため、他の参加者を殺してゆく。
 0:レーダーの反応があった場所へと向かう。
 1:如月左衛門と同盟を組、殺し合いを進める。
   └如月左衛門に裸を見られたことを忘れたわけではない。最後はきっちりその償いを受けさせる。
 2:いーちゃんを見つけたら存在がばれない範囲で付きまとい、危険分子を排除する。
 3:SOS団のメンバーに対しては?

[備考]
 ※登場時期はヒトクイマジカル開始直前より。
 ※SOS団のメンバーに関して知りました。ただし完全にその情報を信じたわけではありません。
 ※如月左衛門の忍法、甲賀と伊賀の争いについて話を聞きました。どこまで把握できているかはわかりません。


※浅羽直之の乗ってきたママチャリ@現地調達は映画館の近くに乗り捨てられています。

【変顔セット@現地調達】
診療所にあった洗面器と、近くでとった変顔の術に使う泥のセット。水があればどこでも変顔の術が使える。
631 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:15:48.46 ID:aPB0XDng
 
632 名前: なんでもなかった話――(SHATTERED MEMORIES) [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:16:26.94 ID:pli1GiBz
以上で投下終了です。
633 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 22:48:19.95 ID:aPB0XDng
投下乙。

姫ちゃん容赦ねぇ……! 如月さんの話に納得したかと思いきや……!
それにしても綺麗な終わり方だ、浅羽。「その記憶」が残ってたってのは実に見事。お疲れ様でした。

で……おい、誰を見つけたって!? なんてとこにぶつけやがるwwwww
634 名前: ◆UcWYhusQhw [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 23:30:42.02 ID:X3ZeycuX
投下乙ですー。
いやぁ浅羽のラストが……本当にいいw
凄く綺麗で憧れる……本当にいい終わり方だなぁ、素敵。
姫ちゃん容赦ないけど、左衛門兄さーん!w
行く場所も危ないし……どうなる?
GJでした
635 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 23:31:27.25 ID:X3ZeycuX
と、鳥は見なかったことに……
636 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/23(火) 23:35:09.59 ID:uMosrslr
投下お疲れ様です
そこか、そこが残ってたかあ!
僕だけの、なのに、UFOの夏過ぎる
浅羽のさいごのくだりがいいなー
そしてなんか毎回貧乏くじだなー、忍者さんw
本人がうまくいっているつもりだから余計に気の毒だw
637 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/24(水) 01:10:21.46 ID:I+kmp+bQ
投下乙です

浅羽が逝ってしまったか…最後の最後で彼は報われたんだろうか
そしてお前らはどこに行くw
対主催チームとマーダーチームで一触即発なところに狂戦士放り込んだらどうなるのっと
638 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2011/08/24(水) 10:55:27.60 ID:+QuadENo
投下乙
浅羽、今までのフラグ回収と予約時の面子を見た時点で、
脳内に蛍の光が流れるくらいには覚悟してたけど・・・
嗚呼、なんつーか、切ない


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次スレは次回の予約が入るくらいで立ててもいいいのではと思うのですが、いかがでしょうか
(AAで埋める、という手もありますがw)
なお、wikiに掲載されてる次スレ用のテンプレは修正済みなので、次スレ立てる方は参考にしてください
639 名前: 創る名無しに見る名無し 投稿日: 2011/08/27(土) 23:51:44.01 ID:NzEtLj79
次の予約が来てからでもいいと思うが?
告知あげ